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日録2003年5月
●31 mei 2003(土)
・朝から雨模様.昼前にはざあざあと本降りに.北上する台風4号の影響.
・石黒耀『死都日本』読了.基本的にこういう本はなじみやすいので,即読OKですね.霧島火山の破局噴火の場面は映画化してほしいほどですが,東海地震や富士山噴火まで匂わされると,筋書きとしてサービス過剰ではないかとも思える.この本に登場するエーゲ海のサントリーニ火山の爆発とミノア文明の滅亡との関連は,パラレルに読んでいる巖谷國士『地中海の不思議な島』(2000年,筑摩書房)にも出てくる.
・返す刀で登攀の最後のオーバーハングに挑む.月が変わらないうちにぜひ読了させたい.うーむ,こういうときに〈神の手〉があればなあ.
・お向かいの奥さんが鹿児島出身で,先日〈あくまき〉なる郷土菓子をいただきました.竹の皮に包まれた,モチ米の粉を蒸したような,もちもちした食感はいいとしても,困ったことは「味がない」こと(「味ない」とはちごてぇ...).でも,菓子であるかぎり「甘いもん」を添えるべきだろうという長男の提案で,おもむろに「あんこ」の登場.つぶし餡を乗せるとたいへん美味でした.あとでお隣さんに確認したところ,いただいたブツは〈灰汁巻き〉というもので,モチ米を灰汁につけてゆでるのだとか.調べてみると,保存食として長い歴史があり,しかもなかなかぶっとんだレシピの産物のようです.また,食べるときには砂糖きな粉とか黒砂糖をまぶすのだとか.黒砂糖というあたりが,いかにも薩摩
・うー,そろそろ非日常へワープしようか――ということで,午後6時に草津温泉に向けて出発.常磐→外環→関越と高速乗継ぎ.途中,台風くずれの低気圧の影響で土砂降りに遭遇したりしましたが,渋川伊香保インターで下りてそのまま吾妻渓谷を進みます.長野原からバイパスに曲がって,気温13度の草津に入ったのは,午後10時.中沢ヴィレッジのログ・ハウスにチェックインし,先に来ていた義理の両親たちと合流.ここのログ・ハウスは全館床暖房が入り,外とは別世界の暖かさ.本館の温泉に入りに行ったり,呑んだりして,気がつけばもう5月とはおさらば.寝よ寝よ.
・『生態学』本日の登攀は979ページまで;前日からの進捗は979−944=35ページ;完読まであと1154−979=175ページ;本日までの読破率は979/1154×100=84.8%
・本日の総歩数=2768歩.※話になりまへんな.

●30 mei 2003(金)
・昨日はとっても暑かったー.今日は雲が多いけど,台風の前ぶれか? そーかそーか,などと久しぶりの二日酔いアタマを絞りつつ昨日の回想モードへと突入.
----- 回想モード・オン! -----
・上野にたどり着いて,パソコン2台&OHPたくさんを抱えたまま,丸善・日本橋店に直行.さすがですなあ――『死都日本』平積みでんがな(4月に3刷).『歌声喫茶「灯」の青春』もありました.4階の洋書コーナーへ.改築されてからというもの,語学書・美術書以外の洋書が冷遇視されているのはみえみえ.コーナー自体も不遇な一角に追いやられているし,通路はすれちがいにも困るほど狭いし.
・でも,ウィンドウ?ショッピングの収穫はいろいろと――まずはハーバード大学出版局から:E.O. Wilson (2003),『Rheidole in the New World』※どう見てもアリのモノグラフとしか思えない電話帳だが平積み.Michael Ruse (2003)『Darwin and Design』※あいかわらずゼッコーチョーということで.Brian K. Hall and Wendy M. Olson (eds.)(2003)『Keywords and Concepts in Evolutionary Developmental Biology』※「Keywords」シリーズの1冊ね.
・続いてはケンブリッジ大学出版局:Alessandro Minelli (2003)『The Development of Animal Form』※著者には新境地の本かな.Bill Shipley (2002)『Cause and Correlation in Biology』※見落としていたなあ.経路解析(path analysis)の解説書でした.とくに構造方程式を用いた共分散構造分析とか潜在構造分析を詳しく解説してくれてるかな.
・ということで,狭いながらもいろいろ収穫物があったのですが,実際に買い物かごに入れたのは――Peter J. Bowler (2003)『Evolution: The History of an Idea, Third Edition』でした.14年ぶりの改訂版.わざわざ「Completely Revised and Expanded」と銘打ってある.ペーパーバックでUS&24.95.でも,店頭だと「本体価格4,510円」(涙).進化学の近現代史の章が大幅書き換えされているとのこと.
・さらに重みを増したバッグを抱えて,湯島のデリーに行き着いたら,開店前.げげっということで,東大に直行し,農学部正門前の自然食レストラン大きなかぶで日替わり弁当を味わう.玄米がおいしい(店本体は加速度的に廃墟化しつつあるという印象を受けましたが.床も抜けそうだったし...).
・でもって,今日の本務は集中講義の第3回目.湿度が高いのでエアコン(ドライ設定)を入れてもらう.ムカシはこんなもんなかったぞー,と爺臭いことを言ってみる.
・今回は,先週積み残した「祖先復元問題」にカタをつけ,「統計づくし」へと――例によって,統計曼荼羅を見せながら,しばし統計学概論.ブーツストラップ,ジャックナイフ,無作為化とコース料理を次々に出した上で,「R」によるデモを少しばかり.さらに,PAUP*の検定メニューあれこれ(ブーツストラップ,ジャックナイフ[Jac],PTP/T-PTP/Compare-2 検定,ILD検定)を実演したところで終りの時間に.
・終演後,PhilBioデュオのお二人とともに,本郷3丁目のベトナム料理〈ミュン〉本郷店にただれこむ.まだ5時前なのに,日が高いのに,こんなパラダイスなことをしていていーのか――などと考える前にビールのピッチャーやら焼きビーフンやら腸詰が並び出し,肉林なしの酒池に溺れていく.おおっ,ルアモイ45度!誰だボトルをもってこさせたのは〜などと考える前に,早くもロックでぐひぐひと進む若人たち(そら負けまんがなー).ライスペーパーで巻いたり,豚の耳を食べたりして,気がつけば9時過ぎ(4時間!)まで淀んでいた.へろへろになりつつも,常磐線に乗りこんだまではよかったが,顛末はきのう書いた通り.深酒はもうあきまへんわあ.反省反省また反省.
・〈ミュン〉の呑み会(おっと「打合せ」だったか)では,哲学エリートなる新たな言葉を仕入れる.おそるべし!てつがく系.
----- 回想モード・オフ! -----
・朝方の「ルアモイぐにゃぐにゃ状態」からようやく脱却して,進化学会福岡大会の参加登録をすませ,講演要旨を送信する.残りの要旨も至急書かないといけないのだが.急にハッスル・モードに入れと言われましてもなあ....
・裳華房ゲラの修正箇所をファクス返信.来月に出版されるとしたら「夏の学校」の教材に使えるかもしれない.
・午後,スタイナー樹プログラムの打合せ.PAUP 3.1のマニュアルがオンライン配布されていることを知らされた.いつから置かれていたのか.PAUP*のマニュアルが未完成なので,旧バージョンであっても役に立つ部分はある.
・な,なんと,きょうもまた登攀なしとは!※ルアモイの威力まことに恐るべし.
・本日の総歩数=7048歩.

●29 mei 2003(木)
・今日も暑くなりそうね.明け方にカッコウが鳴きはじめました.季節の風物なんてのは,ずっと忘れているくせに,それがやってくると時間の流れが妙にストンと納得できてしまう.
・「Rでブーツ」――前にhtml化していただいた久保さんのページ〈「を用いたブーツストラップ法の講義資料〉にリンクさせてもらいまして,っと.もとがヘボでも手練れの手にかかるとこんなに立派なページになる見本(with感謝).
・「系統樹のルーツが単一である」というよくある仮定のテストがきわめて難しいことが示唆されている:Elliott Sober and Mike Steel,“Testing the Hypothesis of Common Ancestry”(J. theor. Biol., 218: 395-408, 2002)→※ソーバー・サイトからpdfでダウンロード可.ここでもまたAICで正面作戦に出るのか.それにしても――この著者のタッグマッチは...生物学哲学と数理系統学の超獣合体と見た.
・さて,あとは東京から帰ってきてからですね〜.
・な〜んて,日も変わろうという時刻に終点の土浦駅で駅員さんに起こされたワタシ.げ.ルアモイ効きましたわ.※水戸や勝田に運ばれなくてよかったー.
・今日の顛末は明日まわし.
・というわけで,本日は登攀なし
・本日の総歩数=15044歩.

●28 mei 2003(水)
進化学会福岡大会の講演要旨の締切が5月31日だったことをころっと忘れておりました.でびるまん殿,通知感謝.で,わたしゃ,いったい講演要旨をいくつ用意しないといけないのでしょ? 「夏の学校」でふたつ;シンポがひとつ;ワークショップがふたつ――ま,頑張りましょねー(なに青ざめてんねん).
・今日は天気予報がはずれて,実によい天気.ウォーキング日和.現実逃避のために,さあ,元気に歩きませう....(なにアタマ抱えてんねん)
・共立出版『生態学辞典』の発売日決定!――『生態学事典』(巌佐庸・松本忠夫・菊沢喜八郎・日本生態学会編集)/A5判・上製・708頁・ISBN4-320-05602-7/本体価格13,000円(税込13,650円)/出来上り2003年6月17日/書店配本:6月25日前後――とのこと.さあ,みんなで書店に走るんだあ!
・裳華房の近刊論文集『生物の形の多様性と進化』も6月中の出版を目指しているとのこと.へえ〜,のべ30人も寄稿者がいて,総頁数が350ページとはね.大論文集やんか.今日,編集担当からゲラが返ってきたので,またまたチェックしないと.あれま,この期に及んでこんなミスが見落としー.こういう「目を皿仕事」が近ごろ多いな.
・さて,また徘徊の時間だ....で,4km完歩.
・ん?〈ケセン語〉を独立語とみるかどうかは【種問題】に通じるか.とにもかくにも,社会的に認知されている「独立言語の3条件」――文法書・辞書・聖書――がすでにそろっている現時点では,すでに1方言とみなすことはできないのかな(認知的に).『ケセン語訳マタイによる福音書』が手元にあるが,いいできばえです.
・あ,ヤバ.別件でついに某新書編集部から電話が....はいはい,観念して目次案を作りますです,ハイ.〈転んでもタダでは起きない系統樹〉って,ダメ? じゃあ,〈ああ単純,またまた単純,ほら単純〉ってえのは.やっぱダメ? え,6月に入ったら押しかけるって,きゃー.
・明日の講義のための準備――MacCladeでの祖先形質復元とPAUP*を用いての各種統計手法のデモ.それにしてもMacCladeって「よくできたソフト」だと思う。今回のような教育用にはピッタリ.随所でPAUP*との連携が示唆されているわけだが,アップデートとともに両者の接点はますます広がっているように感じる.これに加えて,明日は「R」を使ったノンパラ統計談義が混じるので,時間が足りなくなるのは目に見えているなあ.モデル選択の話題は最終日にもちこしでしょう.またまたPowerBookとDynaBookを2台かついでの上京となる.
・暑い季節になってくると「怪談系」のネタに目が向きますが...ぼくはかつて『新耳袋』(扶桑社,1990年)でとっても怖い思いをしたので,それ以来みだりに読まないようにしています.こわいこわい.
・『生態学』本日の登攀は944ページまで;前日からの進捗は944−930=14ページ;完読まであと1154−944=210ページ;本日までの読破率は944/1154×100=81.8%
・本日の総歩数=12184歩.

●27 mei 2003(火)
・雲が厚いし,気温・湿度ともに高い――よくない天気.そろそろ麦秋ですなあ.昼休みに通りかかった稲荷川を橋から見下ろすと,でっかいカメさんたち(甲長30cmほどもある)が岸辺で甲羅干しをしていた.と思ったら,通り雨がさあーっと.よくない,実によくない.
・東北地方の地震はマグニチュードこそ阪神大震災並みの規模だったものの,揺れ方がちがっていたので被害が軽くすんだとか.東北大のワルモノ胴元からは「改装して耐震処理もしたので大丈夫」とのメールが.ううむ,ワルイ人たちは,しぶとい,実にしぶとい.
・昨日の地震は揺れている時間が長かったので,後々のために,研究室居室内のどの箇所が危なそうかを見回して観察した.ほとんどの時間座り込んでいる机のまわりの本棚は,まあ大丈夫そう.最上段に積み上げてある『ケセン語大辞典』とか『日本国語大辞典』など辞書のハコがちょっとずれたけど,実害なし.もっとも大きく揺れたのは,耐震処理していないまま,壁から離して置いてあるスチールラック.地震波が到達するとともに,上の段に置いてあるの分厚い『中世思想原典集成』が舟をこぎはじめ,隣接する岩波の『旧約聖書』シリーズと小競り合いに.結局,『中世末期の神秘思想』が『マタイによる福音書』に押し倒されるという事態に.『言語学大辞典』はさすがにびくともしませんでした.
TaxaComメーリングリストに,ベルギーの昆虫学者Serge Kiriakoffに関する情報を求めるメールが.鱗翅目(ガ)の分類と系統の大家として知られるKiriakoffだが,系統学や生物地理学の理論に関わる論文は,そのほとんどが母国であるフラマン語(=オランダ語)で書かれている.1950〜60年代にかけては体系学の理論書も出しているのだが,これまたフラマン語.Willi Hennigの理論発展史をたどったClaude Depuisでさえ「未見」のままだった文献がいくつかあるほど.
・学部の4年の頃に,日本蛾類学会の例会が世田谷区赤堤の杉繁郎さんの家で開催された.そのおりに誰だったか(井上寛さん?大和田守さん?)が「キリアコフに標本を貸すとゲニタリアが壊れて戻ってくる」と言われたことを今でも覚えている.
・話は続くが,もともとぼくがオランダ語を勉強してみようと思った至近要因は,やはり鱗翅目(ハマキガ)学者だったA. Diakonoffのオランダ語の伝記記事(1970年代後半)を読むため.当時はワルサをせずにまっとうな昆虫学者になろうとしていたんですねえ.
・『武満徹全集・第1巻』に関わるようになった経緯はもっと複雑.同書の英語翻訳を担当していたのが,たまたま東大オケの打族後輩.小学館の全集編集部からオランダ語翻訳者を探すように頼まれた彼女は延髄反射でぼくを指名し,大原哲夫編集長から電話が入ったという次第.〈ノヴェンバー・ステップス〉〈ジティマルヤ〉〈群島S〉などいくつかの作品のオランダ初演記事を翻訳しました.尺八とか琵琶とか,これまでの西洋音楽とは無縁の楽器たちがどのように受け止められたかが垣間見えてなかなかおもしろい.
・明後日は集中講義の第3回目.今回は「統計づくし」となる予定.教材はすでに受講者メーリングリスト経由で配布してあるので安心.
・『生態学』本日の登攀は930ページまで;前日からの進捗は930−910=20ページ;完読まであと1154−930=224ページ;本日までの読破率は930/1154×100=80.6%
・本日の総歩数=14019歩.

●26 mei 2003(月)
・Sober『The Nature of Selection』(1984)は,出てすぐくらいに生態学勉強会の輪読に用いたことがあります.たいへん噛みごたえありました.後に,蒼樹書房で『過去を復元する』の翻訳作業をしていたとき,仙波社長に「できればぜひこの本も訳したいですね」と勧めたことがあります。自然淘汰のベースの部分を論じた基本文献として,今でも役に立つ内容がたくさん含まれていると思います。とくに,複数レベル淘汰理論を展開したSober and Wilsonの『Unto Others』(1998)のルーツですからね.え,訳したらって?――大昔に書評を書いたことがありますが(三中信宏 1987. “Gene Selectionism”は揺らぐか? 昆虫分類学若手懇談会ニュース, No.53, pp.33-60),たいへん満腹しましたでございます(苦).
PhilBio勉強会の題材は,Sober『Philosophy of Biology』(1993)に決まったそうだ.頑張ってねー.
・なんとまあ〈インターネット西夏学会〉なんてのが見つかった.西夏文字の検索までできてしまうとはねー.ぐわ,〈西夏語四週間〉――これでマスターせよというのは至難ですぅ.
・判明→丸山明日果『歌声喫茶「灯」の青春』(2002年11月,集英社新書144)でした.あとで買いに行こ.
Philosophy of Science誌の最新号に種概念の記事あり→Thomas A.C. Reydon, “Discussion: Species Are Individuals Or Are They?” Vol.70 (January 2003) pp.49-56.一昨年の同誌に載ったK.A. Coleman and E.O. Wiley 2001. On species individualism: A new defense of the species-as-individuals hypothesis. Philosophy of Science 68(4):498-517 への反論.【種】ネタはすでに定着しきっているようだ.※農水省研究所にいると哲学にかぎらず人文系のジャーナル(農業経済関連は除いて)へのアクセスが途切れがちになる.「そんなんいらん」という人が多いのだろうから,そういう数と力の問題があることを了解しつつ,勝手に探しに行くだけー.
・岩波『科学』最新号(2003年6月号)に生き物文化誌学会の旗揚げを記念する座談会記録が掲載されている(pp.696-703).せっかく民俗生物学(folk biology)の学会を立ち上げたのに,会長自身が「分析ではダメだ;全体が大切だ」とか「いまの科学は知識のブツ切りだ」と言っている基本認識では先がないと思う.林良博のように「学としての将来像」をきちんと考える参加者が多くなればまだ望みがあるのだろうけど,もともと「学」がいやさに「生き物文化誌」というネーミングをしたそうだから,やっぱりダメかな(それくらいだったら「学会」という名称もやめにしたら首尾一貫したのに).鳴り物入りで立ち上がったばっかりだけれども,もう終っているなと感じた.
・夕方に地震.地鳴りの時間が長かったので,震源が遠いことは感じ取れた。※東北地方で震度6.ワルイ人たちは無事だったろうか? 東北大学理学部は建物の基盤強度がイマイチだそうで,一揺れしてもあぶないとのこと.内装改修よりも,土台の問題?
・『生態学』本日の登攀は910ページまで;前日からの進捗は910−800=110ページ;完読まであと1154−910=240ページ;本日までの読破率は910/1154×100=78.9%
・本日の総歩数=6506歩.

●25 mei 2003(日)
・朝から好天気.本日は,小学校のPTAおやじの会主催で,親子ドッジボール大会なり.朝から芝生の上を飛び&跳ね&転がって,気がつけばもう昼下がり.明朝は物理的に起床不能かも.終わったネ.
・奥原哲史『琥珀色の記憶』(2002年,河出書房新社)読了.新宿の〈茶房・青蛾〉は,ぼくが上京したときはまだ営業を続けていたのか.とんかつ茶漬けの「すずや」がもとは民芸喫茶だったとはねー.喫茶店の回想録やカラー図版目録が昨年あたりから何冊も出版されているが,絶滅危惧生物リストを見ているよう.喫茶店て,博物館に展示される存在になってしまうのかと思うと,フクザツな気持ちがする.
・神保町の〈茶房きゃんどる〉はかつてよく通ったが,ご多分に漏れず,ここもなくなった.最近,神保町再開発に伴って立った高層ビルの1階に〈きゃんどる〉がリバイバルしたというので,GWウィークをはさんで何度かその前を通ったが,いつも休業中.フシギ.絶滅生物が無理に生き返らされたような違和感あり.
・1990年以降,急速に街中の喫茶店が消えていったという.そういえば新宿にあった「歌声喫茶〈灯〉」の回顧録が中公新書?から出ていたのでチェックしておこう.続けて,林哲夫『喫茶店の時代』(2002年,編集工房ノア)をめくる.
・先日,佐倉くんと話をしていて,「三中さんはどうしてそんなにいろんな言語を」という質問が.単に言葉が好きだからとその場は答えたのだが,つらつらと思い起こしてみると,小学校6年から中学にかけて早稲田速記の通信教育を受けた経験が大きかったのではと思う.数年かかって速習課程と専門課程を終わらせた.文字やことばに対する関心は高まっていて,高校に入った時点で旧漢字体を日常的に使っていた.西夏文字研究に感銘を受けたのも高校1年の頃.西田龍雄『西夏文字』(1967年,紀伊國屋新書A-30)は何遍も読んだ(そして書写練習した)記憶がある.
・これまた佐倉情報で,最近ホルストの〈惑星〉をペリオド楽器を使って演奏したCDが出たとのこと.と言っても,たかだか1世紀前の曲なのに「古楽器」というのはいささか違和感あり.打楽器セクションに関しては,華やかだけれどもスタイルそのものはごく古典的.一橋大学国立キャンパスの兼松講堂で〈惑星〉を演奏したのはムカシの話.
・もたもたと活動ページをつくってみたりして.
・Semple and Steelの『Phylogenetics』を読み進む(=這い回る).「現在,系統学――すなわち系統樹と系統ネットワークの復元と分析――の分野は,数学・統計学・計算機科学・生物学が関わりあって反映している領域である」(p.ix)――プラス歴史[哲]学を加えれば,ぼくは全面賛成です.実際,そういう講義をしているわけだからね.
・『生態学』本日の登攀は800ページまで;前日からの進捗は800−702=98ページ;完読まであと1154−800=354ページ;本日までの読破率は800/1154×100=69.3%.※やっと「第4部・群集」に到達.
・本日の総歩数=9921歩.

●24 mei 2003(土)
・今日は〈祝!日録 1ヶ月存続記念日〉だったりして.今日までだらだらと日録を肥満させてきましたが,今後は月ごとに分割いたします.ほれ,この通り.>T中さん,‘無限成長’のご心配をしていただき,すみませぬ.
・そーかあ,「ポストモダン=ポモ」という略し方は日本独自の略記法(セクハラみたいな)ではなかったということか(目ウロコ).Philosophy of the Social Sciences誌の33巻1号(2003年3月)に Jean-Philippe Bouilloud,「 The Reception of the Sokal Affair in France--_Pomo_ Hunting or Intellectual McCarthyism? A Propos of _Imposture Intellectuelles_ by A. Sokal and J. Bricmont」という論文が載っています(luhmann-ML情報).ほほー,Pomoねえ.英語で書くとカワイイ.でも,この記事自体は読む価値ないんじゃなかろうか...(「知的マッカーシズム」と言われてもねえ).
・溜まっている原稿の一掃処分をしないと,にっちもさっちも.やば,現代新書編集部からハガキが.きゃ.
・きょう朝日新聞に打たれていた草思社の大広告を見たら,『生命40億年全史』って実に〈9刷〉にかかっていたのねー.グールドの『ワンダフル・ライフ』並みやん.さすが訳師さま
・ちょっとつっついただけで,カメになったらあかんでー.
・「日録」ファイルの分割アーカイヴ化のついでに,ホームページのタイトルなどをgif→jpgに取り替え.CSS設定に翻弄される.
・『生態学』本日の登攀は702ページまで;前日からの進捗は702−664=38ページ;完読まであと1154−702=452ページ;本日までの読破率は702/1154×100=60.8%
・本日の総歩数=8007歩.

●23 mei 2003(金)
・きのうワルイ原稿が青葉山から飛んできた.読むべし.
・あ,サダムの一撃の恐怖をすっかり忘れていたわい.コメント付けて帰さないと.
・午後はスタイナー樹プログラムの開発についての打合せ.branch-swappingを効率的に速く計算する方法についてディスカッション.このアイデアはなかなか!というのがひとつ.そのあと,販売の打合せ.
・アマゾンから出荷通知メール→Jorge Crisci他『Historical Biogeography』がもうすぐ届く.
・新聞で話題になっている『死都日本』って,どこのオンライン書店でも品切れになってる.昨秋の出版/講談社/話題性という条件がそろっていても,在庫のないものはない.つい『死都ブルージュ』を連想して,店頭で手を伸ばさなかったワタシはあさはかでした.
・その一方で,いま売れまくりは『生命40億年全史』.きのうリアル書店の平積みを確認したら「8刷」! わ,こりゃタダゴトじゃない.
・定例の新刊チェック→1325号.※今週もシュミ本がいろいろありますなー.至福.
・『生態学』本日の登攀は664ページまで;前日からの進捗は664−632=32ページ;完読まであと1154−664=490ページ;本日までの読破率は664/1154×100=57.5%.※「五合目までなら車でも登れる」というプッシュメールあり.うう.さらに頑張りますです.
・本日の総歩数=13513歩.

●22 mei 2003(木)
・2週目ともなると,心理的ハードルは格段に低くなる.もうはじまってしまったのでね.てなわけで,またまた東京へお噺にお出かけー.
・その前に浜松の吉村仁さんから電話あり.生態学会でつくっている教科書の系統進化のセクションへの協力依頼.書くのにやぶさかではありませんが,ワタシ,生態学会会員ではないですよー.と言いつつも,共立出版から近刊の『生態学辞典』に6項目も書いたりしてるので,回避する言い訳にはならないか.生態学会前会長に言わせれば,「三中さん,非会員なのに6項目も書いてる.それは実にいけませんねー.すぐ入会するように」って(汗).それってハナシがちゃうでー,巖佐さん.
・統計言語「R」を農水省研究計算センターに導入するという話が出ている.ハードルはいくつかあるだろうけれども,実現するといいですね.
・湯島のデリー上野店でいつもの「コルマ・カレー」をば.大学2年のときからここに通い詰めて,もう四半世紀になろうというのは驚異的かもしれない.味がぜんぜん変わりませんな.人気メニューの「カシミール・カレー」はほんの数えるほどしか食べた経験なし.判で押したように「コルマ・カレー」のみ注文.自分でつくるカレーのモデルもこれ.ギーが手に入ったら,またつくりたいのだが.デリー上野店ではカレーの薬味がいろいろと変遷してきた.思い出すかぎりでいうと「粒チーズ」や「チャツネ」が出された時期もあった.いまは「キュウリ」と「オニオン(真っ赤)」.
・受講者がさらに6人増.4番講義室も詰まってきました.系統樹の【乾燥度】から話しはじめ,瑞々しいヘッケルの系統樹と乾ききったグラフ理論の樹形図を対比.系統樹に含まれる半順序関係の腑分けをした上で,系統推定の当面の目標が姉妹群関係の構造解明(クレード構造)にあると結論.祖先子孫関係を表す「系統樹」や時空的存続を示す「進化樹」ではなく,クレードの包含構造のみを表示する「分岐図」(cladogram)がデフォルトということ.
・テストデータを用いてPAUP*による系統解析の手順を説明.最節約法でも最尤法でも現実的なサイズのデータに対しては「発見的探索(heuristic search)」しかないので,オプション設定についての説明をする.最尤法についてはさらに分子進化モデル(JKからGTRまで)の設定が問題となるが,確率過程の内容は後回しに.その後,得られた系統樹に照らした形質の判定(一致指数など)に進む.
・祖先形質の復元は次週回しに.やっぱり時間がかかるねえ.来週は形質復元問題と統計学の二本立てで締め上げてあげますねー>受講生さま.
進化学会福岡大会で開催予定の〈形態測定学・夏の学校〉への新たな参加希望者が受講者の中に2名いた.らっきー.そろそろこちらの方も進めないと.講師あと1名を探索すること.
・夕方5時近くまで高座をつとめあげ,その後は情報学環の佐倉統さんとワルイ密談.本郷キャンパス全土にわたって大々的なビル工事がされていて(わ,二食前の理学部の建物があとかたもなし),情報学環も遠目には見えるのに到達できない....ラピュタにたとえたのは不適切で,カフカのというべきか.2階にある佐倉ルームを訪問.この蔵書の変異幅はただごとではないぞ.>佐倉くん.
・でもって,連れ立って本郷の〈た喜ち〉へと.なかなか美味でございました.オイル漬けニンニクの串焼きなど,とりわけ.
・佐倉情報によると,Hull and Ruse編集による『The Philosophy of Biology』を勁草書房から翻訳出版するという企画が進んでいるとのこと.進捗は遅々として....>廣野くんはしっかりがんばるよーに.
・「その前に,ソーバーの教科書『Philosophy of Biology』(1993)を訳した方が」と水を向けたところ,「それはもちろん三中さんが〜」と丸投げ返しされそうになった.その他,いろいろと情報交換など.
・パスタを賞味して,午後8時前にお開きになったりして(ヘルシー過ぎっ).佐倉くんてネイティヴ下戸なんだもん.
・そんなこんなで,今日はちっとも登攀せず
・夜半にちらっと通り雨あり.
・本日の総歩数=16778歩.

●21 mei 2003(水)
・やっと晴れたか....
・明日の集中講義のための準備をする.今週のテーマはグラフとしての系統樹.離散構造としての系統樹の性質について話をする予定.最節約法と最尤法による系統推定法の手順をPAUP*の計算オプションをデモしながら説明することになる.併せて,分子進化の確率過程にも触れる必要あり.ただし,数式の詳細は,昨日のうちに受講者メーリングリストを通じて流してあるので,きょうはが中心.ツカム?ツカメる?
・昼休みの徘徊4.5km.ハルゼミの鳴き声が.
・データベース会社の大手である日外アソシエーツから登録承諾の郵便.今年の秋に『新訂・現代日本執筆者大事典』(紀田順一郎他編,全4巻&索引CD-ROM,予価98,000円)といういかにも日外らしい事典を出版するとのことで,そこに項目掲載したいという依頼.1992年〜2002年に出版された図書・新聞・雑誌の文献から「執筆者・ライター12000人」をピックアップしたそうだ.このうち理系の研究者は約1割のようだ(少ない?妥当?).
・日外から送られてきた資料を見ると,ぼくの個人情報は『生物系統学』の著者紹介からピックアップしたものらしい.出版した文献の情報は日外が独自に調べたものらしいが,2001年あたりまではけっこう頑張ってひろってあるようだ.おお,朝日新聞の記事――新聞に載ったら,もう逃れようがありませんな.でも『武満徹全集・第1巻』(2002年,小学館)への寄稿がヌケておるぞ(ふふふ,勝ったぜ).記載情報をアップデートして返送することに.日録作家という肩書きはどないしましょー.
・日外アソシエーツの「事典」類にはいつも関心があるのだけど,値段が高くってねえ.個人ではなくって,図書館が主たる購入者と想定されているのだろう.
・で,ぼくももう「公認執筆者」になったということ? かつて,グールドの『ニワトリの歯』(1988年,早川書房)を出したときは,とある翻訳系雑誌に「新進翻訳者」として名前が載っていたそうだ(未確認).
・『生態学』本日の登攀は632ページまで;前日からの進捗は632−612=20ページ;完読まであと1154−632=522ページ;本日までの読破率は632/1154×100=54.8%.※牛歩とはこのことか....
・本日の総歩数=12937歩.※こっちはではないな.「walk」する前に「work」しなさいって?

●20 mei 2003(火)
・朝から不穏な天気で,晴れてみたり,雲が寄ってみたり,夕方にはついに雷雨.〈五月晴れ〉というのは死語ですかねー.
・朝早く,軽井沢の〈ブランジェ浅野屋〉からパンがクール便で届く.定番の軽井沢レザンとお気に入りのフルーツライ.ま,これで昼ご飯にあぶれることはしばらくないだろう.
・午前の空き時間に,メーリングリスト関連ファイルの引っ越しをする(旧PowerMac→PowerMacG4).開設して9年が経過した evolve/biometryをはじめとして,ぼくが管理する恒久MLは10個ほど,臨時の貸会議室MLも常時数個は抱えている.それだけの時間があれば,メールの過去ログの堆積とか関連ファイルの分量はばかにならない.昔の入会申請メール(数千通ある)などはMOに保管することにした.そのうちメーリングリストのためのWWWサイトもつくる必要があるかもしれない.昨年夏の「季刊・本とコンピュータ」No.4の記事(大メーリングリスト)でも書いたが,基本的にボランティアMLは運営者一個人の利己的行為であって,それがすべてだろうと思う.他人のためにやろうとしたことはないのです.
・お,そうでしたか.京阪・木幡駅の京都市側ということは木幡池の向こう側ですね.昔はなんにもなかったけど,いまや大規模な公団住宅ができて,完全にベッドタウンとなりましたねー.まったく,奇遇だ.世の中狭い! 実は,つい最近まで「向こう側」に足を踏み入れたことがなかったのですよ.マジ,terra incognita.
・昼休みのお散歩で,コクワガタ♂の死骸発見.ことし初めて.実に初夏ですなあ.農環研横を流れる稲荷川の葦原からはギョッギョッという鳴き声が(オオヨシキリだっけ?).ここにはカワセミがいるはずだが,今年はまだ見ていない.
Hennig XXII(N.Y.)発表の構想を練り始める.今日の報告だと,500(OTU)×1000(bp)の最節約分岐図の計算が約40秒.分枝交換アルゴリズムが完成すればもっと速くなると思う.PAUP*TNTと比較できる規模の系統推定とともに,それ以上(半歩先でもOK)のサイズの問題が解けることをアピールしたい.
・夕刻から本降り.今年初の夕立か.
・Semple and Steel『Phylogenetics』をつらつら眺めつつ,明後日の講義のイメージづくり.シャドウ・ボクシングみたいなもの.
・放置されていた『Molecular Systematics and Evolution』と『Techniques in Molecular Systematics and Evolution』の書誌情報と目次を入力.MLに流すとともに,html化してリストに追加する.もろ,クラディストの本やん.ヘニック・ソサエティの常連さんばっかし.
・そのついでに『生物系統学』のプロローグインテルメッツォ,およびエピローグの文章をリストに追加した.さらに,初版への正誤表を公開した.
・そうそう、先週の講義で「寿司の系統樹」に触れましたが,関心のある方は日比野光敏『寿司の歴史を訪ねる』(岩波新書[新赤版]641,1999年)をご覧あれ.
・『生態学』本日の登攀は612ページまで;前日からの進捗は612−432=180ページ;完読まであと1154−612=542ページ;本日までの読破率は612/1154×100=53.0%.※やっと第2部まで読了.適切に配置された実例の豊富さが魅力的.
・本日の総歩数=12033歩.※電池を代えたので表示くっきりー.

●19 mei 2003(月)
・いわゆる棒の手紙のハナシ――祖本からの写本過程で生じる共有派生的な過誤(書き写しまちがい)は,子孫写本群の系統関係(manuscript stemma)の推定にとって重要な形質情報を与える.しばらく前に新聞ネタにもなった〈棒の手紙〉はその現代版である.evolve(進化生物学ML)への昨秋(7/Oct/03)の投稿で,ぼくはその詳細を知ることになった([evolve:9952][evolve:9953]).紹介されたページ〈これが「棒の手紙」だ!〉を見ると,元の祖先が「不幸の手紙」だったのが,どのような書写過程を経て「の手紙」へと系統分岐していったかがよくわかる.このページには〈棒の手紙の系統樹〉まで描かれているので,必見.もちろん,東大の集中講義ではネタとして使わせてもらいます.まさにいたるところ系統樹ありの様相ですな.
・なお,上のページの作者は,「棒の手紙」に着想を得て,『悪意の連鎖』なる小説まで書いてしまったという(未見).これまた【棒】なる虚構の〈reification〉というもうひとつのおもしろいテーマに連なる.妖怪学や民俗学・民話学とも絡むということ→『日本妖怪学大全』.わ,たのしい.
翻訳修業のこと(1)――鈴木主税の伝記エッセイを読んでいると,修行時代の下訳のことにかなりのページが割かれている.理系の研究者が片手間にやる「ホンヤク」とはちがい,プロの翻訳者の修業は師匠について下訳者としてキャリアを積むことから始まるという.ぼくの場合は,昔を思い起こしてみると,どうぶつ社から出たマクファーランド『オックスフォード動物行動学辞典』の項目翻訳が下訳修業に相当する期間かな.修士の頃に,当時,森林動物学科で長く助手をしていた樋口広芳さんに依頼され,下訳者として「自然淘汰」など進化生態がらみの数項目を翻訳した(1980年代前半のこと).この本の翻訳は全体として長らく進捗しなかったが,駒場の木村武二さんが監訳者としてずいぶん尽力され,十年後の1993年にやっと出版された.そのときにはぼくは下訳者ではなく分担翻訳者として名前が表に出ることになった.十年寝かされていた間に,進化したということか(ほんま?).
翻訳修業のこと(2)――グールド『ニワトリの歯』の翻訳も印象に残っている.この本は東大農学部の同じ生物測定学教室に在籍していた渡辺政隆さんとぼく,そしてやはり樋口さんの3人で分担翻訳するというのが当初の予定だった.しかし,樋口さんが東大を離れて日本野鳥の会の研究センターに出るということになり,結局,渡辺さんとぼくの二人で翻訳を担当することになった.ぼくが博士1〜2年のときだったと思う.原書は1984年に購入し,学位を取った翌年(翌々年だったか?)の夏休みに翻訳を終えた.早川書房から出版されたのは1988年の秋だった.当時としてはずいぶん多額の印税をもらい感激したものだった(社会全体がバブルってた時代だったから).渡辺さんはその後もグールドの翻訳を何冊も手がけたが,ぼくにとってはあの手ごわい文章はもう「ご馳走さま」ですねー(大汗).だって,冒頭のパラグラフで毎度毎度つまづいたから.
・東大の集中講義にモグリの受講依頼がさらに2名あり.まだ増えるかもしれない.
・わ,某ジャーナルの査読を早くすまさないと,サダムの一撃が〜.
・『生態学』本日の登攀は516ページまで;前日からの進捗は516−480=36ページ;完読まであと1154−516=638ページ;本日までの読破率は516/1154×100=44.7%
・本日の総歩数=約9000歩.※万歩計のボタン電池が切れていたので概算.

●18 mei 2003(日)
・午後,牛久自然観察の森を散策.運よく仔フクロウの姿を見かける.羽毛はまだ白いものの,もう巣穴からは出ていて,杉の木のてっぺんに留まり,親と鳴き合っていました.飛ぶ練習でも始めていたのかも.
・ぼくの小中学生時代に京阪宇治線で電車通学していた頃の最寄り駅は,「黄檗」(学校寄り)と「木幡」(自宅寄り)でした.黄檗駅前の「ベーカリー・ナカジ」は今でもずっと続いてるねー.京大・宇治キャンパスは出身中学の隣接敷地.旧国鉄・奈良線を通学利用しだしたのは高校に入ってから(木幡←→新田).ただし,御蔵山の自宅から近かったのは,京阪・六地蔵駅.いまではJR六地蔵駅がもっとも近くなってしまいましたがね.>A谷さん,OK?
・夕方,近くの古本屋へ.マンガばっかり置いてあるので,あんまり期待はしていなかったけど,作曲家・武満徹の遺著『時間の園丁』(新潮社,1996年,600円)と翻訳者・鈴木主税の2冊『私の翻訳談義』(河出書房新社,1995年,500円)&『職業としての翻訳』(毎日新聞社,2001年,500円).おトクといえば確かにそうなのだが,武満の本なんか安過ぎて申し訳ないという気持ちが.(安いのはええねんけど...)
・鈴木主税がむかし翻訳版『ファン・ゴッホ書簡全集』(みすず書房)の高価な限定版(1963年刊行・全3巻)を即決で買った話が載っていた.ぼくがもっているのは1970年に出た普及版(全6巻)ですけど,それだって定価で買えば2万円近くする.著者が古書店で見かけた限定版は印税を全部つぎ込んでも足りないほどの値段だったとか....最近になって,新版のゴッホ書簡集(抄)が同じくみすずから出ましたけど(→『ファン・ゴッホの手紙),元のオランダ語版・全4巻(1990年)をよく圧縮したなーと思う.図版の仕上がりが原書『Brieven』ほどではないのが難点といえば難点だけどね.
・〈系統学書籍リスト(分類リンク版)〉――反響あり.Dank u !
・後れ馳せのTRC新刊チェック→1324.※今週は趣味系の本が目立った.
・うほほ〜い,久々にちょっとだけ登ったいう感じですな:『生態学』本日の登攀は480ページまで;前日からの進捗は480−432=48ページ;完読まであと1154−480=674ページ;本日までの読破率は480/1154×100=41.6%
・本日の総歩数=8342歩.

●17 mei 2003(土)
・ほとんど梅雨に入っていると言ってもいいような,ぐずついた天気が続く.今日は自治会の草刈り清掃日(...).気温とても低し.
・肉体労働ののち,系統学書籍リスト(分類版)の改訂にとりかかる.これは,東大の講義のための配布資料(読書ガイド)に使う予定だが,各タイトルに過去evolveやbk1に流した目次紹介and/or書評文をリンクしていこうと思う.ただし,リンク件数が多い(過半数が該当すると思う)ので,もとのテキストファイルのhtml化に時間がかかる.InDesignはかんぺきファイル・コンバータと化する.
・午後から夜にかけてそういう作業をし続けて,ようやく形になる――

系統学書籍リスト(分類リンク版)

・約40冊について,書評・目次の情報がリンクできた.まだリンクしきれていない本については,見つけしだいにつないでいくことに.
・草刈りで枝剪定機を振り回し過ぎたせいか,腕の痺れが指先にも広がる.
・夜にまた地震あり.震度2くらいか.
・そんなこんなでシンプルな1日が過ぎていく.いくら『すべては「単純に!」でうまくいく』ったってねー.疲れまっせえ.
・でもって,おそるべきことにまたもや登攀なし.※こんなことでいーのかっ.ちょい反省.
・本日の総歩数=12051歩.

●16 mei 2003(金)
・前夜ドロのように寝たにもかかわらず,やっぱり4時過ぎに目が覚める.研究所に直行し,アロンアルファで「えいやあっ」とスピーカー・コーンの外れたところ(周囲全部)を貼り付ける.音響特性の変化やら左右バランスへの影響などは無考慮.実に単細胞.※とても理系人間の行為とは思えない.でも,これでいいのだ.乾いたらヴェルディの〈レクイエム〉とかバッハの〈トッカータとフーガ〉で強度テストすればOKさ.
・ウンベルト・エーコ『カントとカモノハシ』の下巻は7月29日発売の予定だそうですよ(>N君).出版元の岩波書店からの情報.ただし,進捗状況によっては遅れる可能性もありとか.
・ウーファーを取り巻くエッジのゴムが劣化してぼろぼろ.ひょっとして15年選手のこのスピーカー(ONKYO)も寿命かな.わ,剥がれてきたあ.ついに昇天か....サブスピーカーのAURATONEに切り替える.実はこのAURATONEの方が古株(学部時代からなので25年もの)なのに,へたらず音を出し続けてくれる.高校時代の知人(横笛アーティストのF君)が「ぜったい買うとけ」言うもんで,サイコロみたいなのを買った記憶があります.
・午後,Steinerプログラム〈Bogen〉の販売戦略会議.
・東大の集中講義受講者のためのメーリングリストroom33を開設とアナウンス.これからいろいろな情報を流すことになる.と言っている間に,10通ほどポンポンと.1ヶ月で100通ほどにはなるでしょ.
・お,N&D君,生物学哲学の勉強会やりますかあ.がんばってねー.構想が固まってきたら,諸方面・諸MLに宣伝してください.
・集中講義のための〈ブックリスト〉をつくりましたので,ご参考に――
    系統学書籍リスト(列挙版)
    系統学書籍リスト(分類版)
  「列挙版」はabc順,「分類版」はカテゴリー別.
のように疲れが積もっている気が....時差付きでくるもんねー.
・でもって→『生態学』本日まったく登攀せず.寝袋にくるまってテントで寝続けているようなもんではないか.いかん,これでは,いかーん.週末に読みまくろう.
・本日の総歩数=6029歩.

●15 mei 2003(木)
・またも未明から研究室でゴソゴソする.BGMは,ええい大盤振る舞いだあっ.バルトーク〈Cantata Profana〉→ブルックナー〈7番〉→マーラー〈復活〉.わはは,どーだぁっ! と気を良くして,がんがん音量を上げたら,右スピーカーのウーファーがエッジから外れてふっ飛んでしまいましたとさ...(涙).※早く自前修理しないと.
・今日の講義のためのOHPやらパソコン2台など機材をとりそろえて...と.重そー.さて,と,あとは出発するだけ.
・雨また雨の中,ひたち野うしく駅から旅立ち→まずは神保町へ.さぼうるにてコーヒーしつつ,OHPの並べ替えと,パソコン(Win/Mac)をチェック.湿度高し.結局ランチする間もなく,そのまま東大へ直行.
・1号館地下の生圏システム科会議室が講義室.昔の農業生物学科の院生室の隣.あいかわらず廊下がせせこましい.昼休みに今回呼んでくれた生圏の吉田薫さんがセッティングをしてくれていた.ちょっと狭いか....「いつもは十数人なので 」とのこと(やばいっすよ).案の定,モグリの学生が十人あまりも増えたので,部屋は満杯に.石田健さん,部屋からあふれる.
・で,ぼくの担当するのは名目上は「保全生態学特論」――う〜む,看板にイツワリあり,どうゴネまくっても生物系統学特論ですな.いつものように,系統学/分類学の区別をアジった上で,学問分野を越えた「系統樹」の広がりを鳥瞰.系統樹がデータから導かれる最適グラフとしての離散数学的特性とともに,系統発生の推定値としての統計学的特性をもつことを指摘する.にぎり寿司の系統樹からカンタベリー物語の系統樹まで,いろいろと陳列.
・講義初日なので必殺数式は出さない.かといって,最尤法の説明にはいつもながら苦慮.最節約法の延長線上に最尤法を位置づけるのがもっともラク.最適性基準・NP完全性・発見的探索などグラフの離散最適化について話をする.プロシェクターの体調が悪く黄疸になってしまったので,休憩時間に4番教室に移動.学部生の頃からなじみの講義室.内装や照明は変わっても地下のいささか鬱屈した雰囲気は昔のまま.
・デモで用いるPAUP*/MacCladeを少しだけ見せる.これらのソフトを用いた講義は次回以降になる.PowerBookG4でビデオ出力する際に解像度が落ちてしまうのは何とかならんかねー.DynaBookではそういうことはないのですが.
・さっきよりも部屋が大きくなりました.系統推定法の相互比較について:分子系統学が広まった1990年代のシミュレーション研究(Felsenstein域Farris域)に言及し,どのようなデータ条件のもとで,それぞれの系統推定法のヒット率が影響を受けるのかを概論.Long branchのエラーを低減させるためにデータ巨大化(端点数の増加)が有効であることを示す.分子系統学の説明には確率過程の話題をする必要があるが,それは来週まわしね.
・系統推定における最適性基準について話を続ける.現象を単純に説明すること――すなわち「単純化」(simplify)すること――が最適性の根幹にあることを論じる.最節約基準も最尤基準もこの単純性の発現にほかならない.なぜ単純化された説明に人間は納得してしまうのか?――そういう「単純性」(simplicity)が必ずしも真実ではないことを十分わかっているにもかかわらず.進化心理的におもしろい話題だと思う.いずれにせよ,最終的かつ絶対的な真実が原理的に到達不能である系統学では,推論様式としてのアブダクションが不可欠であり,単純化はその推論のための強力な(唯一ではないかもしれないが)ツールであるとぼくは思う.最節約法と最尤法はこのレベルでやっと合体することになるのだろう.
・情報量統計学でいうモデル選択問題もまた単純化のあらわれだが,この話題は第3週目に触れる予定.駒場のDさんがいたので,モデル選択論におけるElliott Soberの最近の研究(AICの一般化)について情報提供.
・メーリングリスト立ち上げのため,受講生のメールアドレスを集める.30人あまりのうち農学生命科学研究科の登録受講生は約半分.残りは外部からのモグリ.理学部から10人ほど,あとは哲学系おふたりさん.明日にも貸し会議室MLを農水計算センターに開設する予定.
・講義終了後,吉田さんと栽培の経塚淳子・渡辺政隆夫妻とともに,根津の〈味工房〉へ.新しい店がたくさんできてますなあ(感慨).純米吟醸〈みちのく〉をかなりいきましたわ.渡辺さん,ネクタイしたりして,もう文部科学省お役人に大変身っすね(『SET』訳してねー).千代田線→常磐線とへろへろ乗継いで,つくばにたどり着いたのは10時過ぎのこと.起床後すでに20時間が経過し,もうジ・エンドですわあ.
・当然の結果として→『生態学』本日はまったく登攀せず
・本日の総歩数=18056歩.※歩き過ぎやね.

●14 mei 2003(水)
・またも未明に研究室へ.いつものことですがね.ニールセンの3番とともに起動.第2楽章のパストラールになごむ.とある書類がやっと仕上がる.A4版で70枚.物件数はもうすぐ500件.ふう〜.
・西方浄土から「寄り道してもいいよ」という天の声が聞こえてきたので,うはうはと『蒐書日誌・三』の続きへ.やっと‘二〇〇〇年’が終わり,400ページもある‘二〇〇一年’へ.気になる言葉が...:「書誌を作製しようとする者は,絶望してはいけないのだ.各方面からせめかからねばならない」(p.137).森鴎外研究家にして,さまざまな文庫本書誌をつくってきた著者ならではの述懐.さてさて,どーしましょ――太田邦昌書誌
・明日から4週間にわたる東大の集中講義が始まるので,その準備に入る.パソコンはDynaBookとPowerBookを両方もっていくのかな(計3kg余り,うきゃ).OHPも必要だし.講義のアウトラインは,いつも通りT-Timeでつくるとして,あとの資料はできるだけ画像ファイルにしてもっていこう.終ったあとは呑み会の予定が.
・隙間時間を利用して,旧マックのEudoraメールボックスをG4のAppleMailに移植.メールボックスのバックアップサイズが700MBにも.あんさん,たいがいぎょうさんメール書かはってんなあ....あれ,インポートできてないメールボックスあり.ありり?
・クワイン『論理学的観点から』(勁草書房)をリアル書店で見かける.2001年で4刷か.刷を重ねていますねー.冒頭の「なにがあるのかについて」――くー.わ,クワインのWWWサイトがあるぅ.
・『生態学』本日の登攀は432ページまで;前日からの進捗は432−414=18ページ;完読まであと1154−432=722ページ;本日までの読破率は432/1154×100=37.4%.※じぇんじぇん進んでへんやん! くそー.
・本日の総歩数=11971歩.

●13 mei 2003(火)
・未明にAdobe InDesign 2.0iTextをPowerMacG4にインストール.これで文書作成はOK.さ,マーラーの3番を聴いて元気になろう....おいっ,ニールセンの不滅のCDに手を伸ばしてどーするっ.
・コンピュータのリニューアルに合わせて,机まわりの整理・整頓などを少し.基本キャラとしてローカル几帳面ではあっても,グローバルものぐさなので,こういう機会でもないと,大規模な片づけができない.→でもって,意外に時間を喰ったりする.あちゃー.
・長らく編集委員を務め,活発に投稿してきた太田さんの追悼企画が『生物科学』誌で進められるようです.それに当たって,故人のbibliographyをつくる必要があるのですが,コレたいへんな仕事になるかもしれない.
世代論の続きですが,ドイツでの動物形態学の歴史を研究者たちの「世代論」と結びつけて論じたのは,Lynn Nyhart (1995年,Univ. Chicago Pr.)の『Biology Takes Form』(←実に良質の掛け詞)でした.18〜19世紀にかけての100年間にわたる形態学者(Ernst Haeckelももちろん含まれる)たちを6つの世代コホートという研究者集団に分けることにより,彼女は錯綜したドイツ形態学史を解明しようとした.
・学派・流派とはまた別の世代というファクターが研究者社会にどれくらい寄与しているのかは調べて損はないと思う.何よりも,David Hull の現代体系学史書『Science as a Process』(1988年,Univ. Chicago Pr.)に匹敵するようなスタイルの本がもっと出てほしい.Hullの本は〈ウワサ本〉だとクラディストたちからこき下ろされたわけだけど,得られるものも多かった.
・HullやNyhartの本は,シカゴ大学出版局の同じ叢書〈Science and Its Conceptual Foundations〉に入っていたが,生物学哲学のシリーズとしてはもっとも初期のものだと思う(Series EditorはもちろんHull).その後,オックスフォード大学出版局の〈Monographs on the History and Philosophy of Biology〉とかケンブリッジ大学出版局の〈Cambridge Studies in Philosophy and Biology〉のような同類の叢書が刊行され始めたが,すでに固定読者がついている証なのかもね.
・太田さんの主著となった『進化学:新しい総合』の目次はこちらを→学会出版センターのサイト
・『生態学』本日の登攀は414ページまで;前日からの進捗は414−364=50ページ;完読まであと1154−414=740ページ;本日までの読破率は414/1154×100=35.9%.※豊富な実例が適切に配置されているところに,本書の教育的配慮の細心さがうかがえる.
・本日の総歩数=7642歩.

●12 mei 2003(月)
・夜中に地震あり.午前零時半前後に2回.震度3くらいかな.また,茨城県南部から鹿島灘あたりが震源かもしれない.茨城って直下型地震が多いのね.前ぶれがほとんどなく,いきなりグラッとくる.※→新聞報道によると,実は震度4もあったそうな.
・件の太田蔵書は,すでに1ヶ月ほど前から神田の古書店に入りはじめたとの情報あり(→哨戒地点/5月11日).明倫館書店,すばやいですな.
太田さんの書き込みスタイルは一目見ればわかります:1)ミミズがのたくったような悪筆で;2)アンダーラインがびしびし挿入され;3)細かい註や文献リストもちゃんと目を通した形跡あり;4)同意箇所には「よし」,反対箇所には「あほう/たわけ/てめえが〜」と殴り書きされている――こういう判別形質をチェックすればまちがいなく同定できます.ぼく自身,そういう書き込みの入った本を何冊も太田さんから譲ってもらったことがあるので.
・書き込みがあると古書価格はすごく安くなるので,その気がある人は蒐書しておくべきかもしれません.それよりも,今ではもう入手が難しい洋書などがどのように古書店業界を流れていくことになるのかがむしろ気になります.
・巖谷國士の紀行エッセイ集がまとめて4冊届く――『アジアの不思議な町』(1992年),『フランスの不思議な町』(1998年),『地中海の不思議な町』(2000年)以上筑摩書房.プラス『日本の不思議な宿』(1995年,平凡社).筑摩書房の本はちくま文庫にも入りはじめているが,やっぱり元の大判の方が写真の見栄えがちがう.そんな寄り道をしていては『生態学』読破に支障があるだろう,それまでまとめて預かってあげましょうかという優しい〈クギ〉メールが届く...(汗).でも,読みたい.
・太田さんがらみの昔のことどもを想い起こしていて,ふと生態学勉強会のことに行き当たった.東京で長年にわたって続いていた「生態学勉強会」にぼくが初めて参加したのは学部4年生の頃で,Ernst Mayr(1970)の『Populations, Species, and Evolution』を輪読していたときだった.同じ研究室だった渡辺政隆さんに引きずり込まれて参加したような記憶がある.アメリカにわたる前の吉村仁さんや数理生物の高木さんもいたし,嶋田正和松田裕之という猛者もいた.本多健一郎さんはゼミのたびに名古屋から来ていたし,いまは農工大にいる國見裕久岩淵喜久夫さん,そうそう小俣さんや山下恵子さん,そして新妻昭夫さんとも,このつながりで知り合ったはず.札幌から移ってきた黒須詩子さんの参加申込の電話を研究室で受けたのは,ほかならないぼくでした.その後,輪読のテキストを何冊もこなし(合宿勉強会というのもあったなー),大学院を通じてこの勉強会は連綿と続いていたのですが,その後どうなったのか.ひょっとしたらぼくらが最後の世代だったのかな....
・昼前から雨がざあざあ降り始めた.にもかかわらず5kmの徘徊...ちゃう,ウォーキング(物好きなことで).
・生態学勉強会は長い歴史があるので,上のジェネレーションまでたぐると,太田さんはもとより,同世代の生態学者たちがヒットしてくるはず.そろそろこの研究者集団の歴史を語りはじめてもいい頃かもしれない.
東大オーケストラから,サマー・コンサートの案内が届く.オベロン序曲・三角帽子・ブラ4.サブの三角帽子がいいなあ.カスタネットはいったい何人で叩くのかしらねえ.
・太田さんに関する私信メールがぽつぽつと届く.ジェネレーションのちがいを感じ取る.なぜって,おそらくある世代以上しか,太田さんの実物を知ってはいないだろうから.いたずらに世代論を強調してもしかたがないことはわかっているが,その人と物理的(時間的・空間的)に接した経験があるかどうかは軽視できませんから.
・『生態学』本日の登攀は364ページまで;前日からの進捗は364−306=58ページ;完読まであと1154−364=790ページ;本日までの読破率は364/1154×100=31.5%
・本日の総歩数=16239歩.

●11 mei 2003(日)
・快適な日,温度・湿度ともに絶好の日録日和ですな.
・さっそくTRC新刊チェックをば→1323号
・5月5日発行のARG(Academic Resource Guide)No.159に,日本生態学会つくば大会の大会運営メモが紹介されていた.実際に学会大会を運営する身になったとき,一般論ではなく具体的かつ詳細な事項がよほど重宝する.文責者(竹中明夫実行委員長)が目指しているように,この運営メモの内容がうまく継承されていけば,生態学会にかぎらず,もっと広く役立てられると思います.進化学会福岡大会実行委員会にも周知しておこうかな.
・物故した研究者が生前収集した蔵書や資料の行く末を考えると,また少し暗くなったりして.確認したわけではありませんが,太田さんの場合はロシア語などで書かれた昔の文献を多数所蔵されていたはずで,かなりの量の書き込みがされた状態で残されているはず.古書としての商品価値はほとんどないでしょうが,蔵書としての価値はなおなくなってはいないと思われます.ご遺族がどのように処理される(された?)のかが気になるところ.
・古書店をめぐっていると,ときどき前の所有者の存在が嗅ぎ取れることがあります.先月も神田の崇文荘書店で紙魚に変身していたとき,あるドイツ語の植物学書に挟まれていたレターから,この本が1970年代始めに植物学会から木村陽二郎氏に書評依頼されたものであることが読み取れました.院生の頃に入手した松村松年の『自伝』(1960年,自費出版)にも,モト夫人から配布者への挨拶状が添えられていました.そういう経験はたびたびあります.
・ふと思い出して,しばらく放り出してあった『蒐書日誌・三』を拾い上げる.この著者,微笑ましくなるほど(=身につまされるほど)徹底して書籍コレクター.2段組500ページ余が,まるまる探書日録.うらやましー,かくありたい,でも無理か....もっと見たい人→および一・二
・午後になって曇ってきた.つくば中心部で開催されている国際フェスティバルを見に行く.ナシ・ゴーレンを食し,泡盛古酒をがば〜と呑んで帰る.雲が厚くなってきた.明日は雨かも.
・太田さんに関係する個人メールがぽつぽつと集まりはじめる.明日からはさらに反応が活性化するかも.
・『生態学』本日の登攀進捗は306ページまで;完読まであと1154−306=848ページ;本日までの読破率は306/1154×100=26.5%.第1部「生物」を終え,第2部「相互作用」に入る.不思議な訳語あり――ティーセン分割多角形(p.293):図を見るかぎり最適配置におけるボロノイ図以外の何ものでもないと思うのだが.原書で確認する必要あり.
・本日の総歩数=11510歩.

●10 mei 2003(土)
・残念なことに訃報がまた届きました.それも2ヶ月遅れで:故・太田邦昌氏――2003年3月8日,腎細胞癌のため東京医大病院でご逝去.理論生物学・進化学・生物学史など幅広い分野にわたり,長年にわたって研究・著述活動を続けてこられました.主著:『進化学:新しい総合』(1989年,学会出版センター,共著),『20世紀自然科学史:生物学(下)』(1983年,三省堂,共著)ほか;訳書:ベルタランフィ『一般システム理論』(1973年,みすず書房,共訳)ほか.還暦を待たずにお亡くなりになったのは,たいへん残念なことです.遅れ馳せながら,これから追悼企画について考えたいと思います.
・5月3日の日録で言及したある同一人物とは,ほかならない太田さんのこと.この頃からいろいろな筋からの状況証拠により今日の訃報はうすうす予想していたのですが,3月始めに逝去されていたとは,意外でした.ご冥福をお祈りします.ぼくの周囲でも,太田さんと旧知なのに,ご逝去のことを知らない人は多いと思われます.太田さんは昆虫分類学若手懇談会が創立された1970年代はじめの発起人の一人でもありました.さらに,日本計量生物学会が1982年に創立されたときは,林知己夫・奥野忠一両氏とともに,会計幹事として学会の船出を舵取りされました.
・こういう訃報をMLに流さなければならないというのは,つらいことです.
・予想していたこととはいえ,かなりショックだったのでやるべき仕事がぜんぜんできない.でも,やらないと――
・『生態学』本日の登攀進捗は187ページまで;完読まであと1154−187=967ページ;本日までの読破率は187/1154×100=16.2%.←※数値目標を掲げよという愛の尻叩きメールが届いたものでして...(痛).なお,ページ数は文献リストと索引を除く本文1154ページのみ.
・本日の総歩数=9189歩.

●9 mei 2003(金)●
・昨日の悪天候がウソのような晴天.気温・湿度ともに低く快適.ウォーキング日和.昼休みに職場の周囲を5キロ徘徊した.キジとヒバリの天下.畜産草地研究所の飛地に接する稲荷川には昼休みにバス釣りをする研究員まで出現.なんともゆったりした日.カワセミ,ウサギ,タヌキなどが出没するこのあたりはただのイナカ.
・共立出版から近刊『生態学辞典』のpdfゲラが届く.担当した【グールド】の項目で,文献の発行年に関する確認をしたいとのこと.この辞典は,投稿・査読・修正などの作業がすべてWWWサイトを通じての完全オンライン化を計った点で画期的.今後はこういう形式での辞書づくりが広まるのかもしれない.刊行予定は6月――もうすぐ.
・PowerMacG4へのOSX用ftpソフトのインストールに手間取る.結局,ドイツから配布されている〈RBrowserLite〉というフリーソフトを使うことに.ま,基本的にはWinノート機からftpするので,必須ではないのだけれど.
・ネイチャー(8/May/2003号)に載った短報「南極大陸でのハエ化石の発見」をめぐるプチ論議がTaxaComで交わされている.この短報はネイチャー・ジャパンのサイトから全文を読めるのだが,翻訳がヘン.「偉大な遺伝学者ウィリー・ヘニング」と言われましてもなあ.「偉大な系統学者ヴィリ・ヘニッヒ」と即座に気づく人は少なくないだろうに.著者の一人が「ネイチャーはfancy/catchyなペーパーが好きだからね」と応えているのは確かにその通り.先週号のやはり短報に載った矢原徹一さんたちの記事(万葉集植物のジェミニ・ウィルス病斑)も<とってもファンシーだもんね.
・『ヨーロッパの不思議な町』読了.巖谷國士――なかなかいいですねえ.週明けに「不思議」シリーズが全部届くことになっているので愉しみ.イギリスのソールズベリで,ミシュラン一つ星のレストランに遭遇した話は印象的.※「ガイドブックのミシュラン」と「タイヤメーカーのミシュラン」が同一だったとは知らなかった...(恥).
・この本の後半で登場するポルトガルの古い大学都市コインブラ――汎生物地理学者Leon CroizatのEuphorbiaのモノグラフのひとつはコインブラ大学の紀要に載っている.一度は行ってみたいと思う街.
Euphorbiaで思い出したのが富岡市の故・下山昭八氏.ぼくが高崎で予備校講師をしていた頃に,予備校にいきなり電話がかかってきて,やりとりがはじまった.生物地理学のレヴューを読まれたとのこと.下山さん自身はEuphorbiaが専門とのことで,Croizatについてもそうとう知っていたようだ.実際にお会いしたことはなく,電話でのみの付き合いだったが,夜中に数時間の長電話がかかってきたのには閉口したものだ.学校の先生をされていたのだが,遺伝研の井山審也さんのところで研究員をしていたこともあったと井山さん自身からうかがった.その後,ぼくがつくばに移ってからは途切れてしまったが,数年前,富岡の群馬県立自然史博物館にダーウィンの書簡が収められるにあたって,下山さんが助力されたとパンフレットに書かれていた.とってもエキセントリックな人だったことは確かだ.お亡くなりになっていたとは,その時まで知らなかった.
・まだまだ続く『生態学』....いったいどこまで続くのか.
・本日の総歩数=12703歩.

●8 mei 2003(木)●
・未明から不穏な風が吹きわたる.雨は降るか? 気温はすでに22度を越えていて,生暖かい.低気圧が近づいているとか.湿度も異様に高い――居室の窓を開けたとたん,床が湿っぽくなった.じめじめした季節がまたやってくる.
・何の前ぶれもなく,部屋の物品の整理(要するに中古パソコンの肩たたき)と年度末に届いていた新しいパソコンを並べる下準備.肉体労働あるのみ.本の山を少しずつずらし,まずは大昔のMac si と ci をお払い箱にする.よくぞ働いてくれました(漢字talk6の時代の遺物).ML管理用に十年近く使ってきたPowerMacintosh 9500/132もついに現役引退.NEC PC98 RA は,もしもの場合のファイルコンバーターとして別室にて延命させることに決定.世代交代を実感する.新しいラインナップは,PowerMacG4(Dual)とPowerBookG4(12inch),携帯用にWinXPの入ったDynaBookをば.マックが新しくなったので,一挙にホワイトカラー化してまぶしい.あ,スピーカーがころころと....PowerMacG4はグラフィック・カード差し替え,メモリー→2GB,SCSIボード追加というお化粧も.
・世代交代とともに,液晶ディスプレイにしたので,隣の机のスペースが広く空いてしまった.すかさず,本を並べて,植民地拡大戦術.とはいえ,構成員2名のユニットで拡大もヘチマもないねんけど.すでに向かいの部屋の侵略は進みつつある.
・昼ごろから本降りになってきた.
・系統解析の計算に使ってきたG3を脇に押しやって,カラーレーザープリンターの設置場所を確保する.蔵書が方々で溢れかえっているので,押しやるにも力が必要.ヘニックの本もクロイツァの固まりもずりずりと.プリンターを乗っけるのは,後日まわしにしよう(重いし).
・ということで,何かしら仕事をした気になってしまう自分がカナシイ.頭脳労働したかー? ま,ちょうどいい気分転換になったので,きっかけとしてはムダな労働ではなかったなあ――ということで,しゃんしゃん.
・しばらく別室に置かれていたアンプ,プレーヤー,スピーカーなどなどを再セットアップ.これでまた早朝にガンガン鳴らせる.スピーカー4つですぅ.
・と言っているうちに,雨脚がしだいに激しくなって.
・パソコンや本を運びつつも,『生態学』を読み進む.まだまだでっせー.先は長い.製本上のことですが,厚さと重さのわりにのどの部分が弱いのではないかなあ.そのうち割けてしまうようなどきどき感が.
とある事務書類を早く提出せよというお達しが....パラダイスは儚かったか.はいはい,あしたがんばりまーす(気合いこもらず).
Vandenhoeck & Ruprechtはゲッティンゲンにある出版社.旧市街からゲッティンゲン大学の植物園(アルプレヒト・フォン・ハラーの名が冠せられる)に向かう坂道に入った右手,グリム研究所のすぐ隣にある建物がそれ.真向かいにはゲッテインゲンでも最高級のレストラン〈ガウス〉がある.もちろん,数学者ガウスにちなんだ店名.ゲッティンゲンにはライプニッツの像もあるし,ビッグネームがうようよ.
・ついでなので,1999年のゲッティンゲン紀行をリンクしておきました.Hennig Societyに入ると全世界を回れたりする(実感).
・『ヨーロッパの不思議な町』順調に読み進む.こういう紀行文っていいですねえ.この著者,同じような紀行を何冊も書いているようなので,ついオンライン古書店に一括注文してしまう.『フランスの不思議な町』,『アジアの不思議な町』,『地中海の不思議な島』そして『日本の不思議な宿』.
・寄り道していると怒られるので,また『生態学』タイムに戻る.
・夜になって,雨が上がるとともに,気温がぐんと下がってきました.
・本日の総歩数=14552歩.

●7 mei 2003(水)●
・朝からずっとベゴン『生態学』――読んでますよ,登ってますよ,疲れてますよ.職場と自宅との間で持ち歩く2.8kg.監修者の思惑通り,果たして筋力がつくかどうか.鉄のエコロジストになれるか?(今さら何を)
・いまや年中行事となった感のあるとある事務書類の作成にケリをつけないと――とGW前から言っているのに,まだ終わらない.よっぽどイヤなんでしょうねえ.>ワタシ.
・ケンブリッジ大学出版局から今月の新刊でダーウィン・コンパニオンが出たようです――『The Cambridge Companion to Darwin』.さっそく注文しないと.出版局のWWWサイトにも情報が→ハードカバー版ペーパーバック版.この「The Cambridge Companion」シリーズは,既刊がすでに200ほどもある大きな叢書です.著者たちは――わ,常連さんばっかり.
・他の数冊の本とともに amazon.co.uk に注文する.amazon.co.jp に注文すればラクでいいのだろうけど,今までの習慣で,米語は amazon.com,英語は amazon.co.uk,独語は amazon.deにオーダーを送ってしまう.現地の方が品揃えとか在庫ステイタスが安心できるから.日本語の本?――もちろん bk1 でんな(なんて貢献しているのだろー).amazon.fr とか amazon.ca は利用したことなし.前者はまだしも,後者はきっとこれからも使う機会はないでしょうが.
・インターネットでの書籍・古書の探索については,さまざまな情報が流れていますが,主要言語(英仏独)からはずれると,とたんに細く貧しくなってしまう.そういうときに役に立つのが,実践女子大学の図書・雑誌検索ページから入れるオンライン書店目録オンライン古書店目録.こまめにアップデートされているし,何よりも情報が得にくいオランダ語・ポルトガル語・スペイン語・ロシア語・ハングルなどの言語圏でのオンライン書籍購入にはとても役立つ.
・つくば美術館の「マンダラ展」――夕方に立ち寄りました.基本的に青また青の色調がイマイチでしたが,力作の胎蔵界曼荼羅金剛界曼荼羅が隣り合っているのはさすがに迫力ありました.
・帰りにピーターパン吾妻店にて,予約しておいたシュロート・ブロート1本(1.5kg)を引き取ってくる.重い.つくば中心部には,洞峰公園前通り沿いにベーカリー激戦地帯がある(モルゲンvsアンデルセン vs クーロンヌ).ピーターパンはこの戦場から外れているが,本格的なドイツパンはここにしかない.何といっても,ドイツで食べたのと同じブロートを焼いてくれるから.朝に電話予約しておくと,午後には焼き上がっている.たいていプンパニッケルかシュロート・ブロートをまるまる1本買っている.氷温室で保存しておくと,1週間〜十日間はもつ.こういうドイツパンが手に入ることはあまり知られていないようだが,知っている人は知っている.そういう店.
・本日の総歩数=8013歩.

●6 mei 2003(火)●
茨城県つくば美術館で,いま「マンダラへの道――前田常作展」という展示が行なわれているそうだ.知り合いがパンフレットを研究室に投げ込んで置いてくれた.わーうれしい.行かねば.
・裳華房から,長らく遅れていた論文集『生物の形の多様性と進化』の第28章(「生物形態とその変形をどのように定量化するか――幾何学的形態測定学への道」)の再校ゲラ(文献リスト)が届く.速攻でチェックして返送する.来月には店頭に並ぶかな.うまくいけば「夏の学校」向けの教材に使えるかも.
・BristolにあるThoemass Pressという出版社から19世紀の進化思想・反進化思想を代表する著作がたくさん復刻されていることが判明.少部数出版なのか値段は相当高いが資料的価値はあるものも含まれているみたい.たとえばこのサイトの科学ページを見ると――1)ダーウィニズム関連書:『Design after Darwin 1860-1900』,『Darwin's Theory of Natural Selection』;2)Louis Agassiz関連書:『Louis Agassiz: His Life and Correspondence』,『Agassiz on Evolution』3)Robert Chambers関連書:『Vestiges and the Debate before Darwin』;4)Alfred R. Wallace関連書:『Alfred Russel Wallace: Writings on Evolution, 1843-1912』などなど.
・この出版社の最新刊で,Louis Agassizの復刻編集をしているJohn Lynchは,形態測定学文献データベースをつくっている研究者.科学史の素養もあるらしい.
・ぼくの基本的なスタンスは,科学と科学史と科学哲学はひとつの統一体(unity)であって,互いに不可分の関係にあるということ.だから,科学のにいつも科学史・科学哲学は座っていてほしいと思う.言い換えれば,経験科学に対して超然として遠くから眺めるだけの歴史学や哲学には何の価値も認めないということ.なぜって?――そんなものは役に立たないから.哲学は役に立たないというのはまちがっているけど,役に立たない哲学があるというのは正論.
・N君にコメント――“Life Sciences”という言葉には“Biology”よりももっと「応用分野」に軸足を置いたニュアンスがあるようにぼくは感じます.たとえば,zoologyではなくanimal sciencesといえば畜産学・獣医学を連想するし,botanyではなくplant sciencesと言うと農学・バイオを思い浮かべるのと同じことがbiology / life sciencesにも当てはまるだろうということ.訳語?→すなおに「生物科学」にしましょ.
・アマゾンから4冊まとめて着便――Clara Pinto-Correiaが2冊:“The Ovary of Eve”(1997)と“Return of the Crazy Bird”(2003).そして,故S.J. Gouldの新刊2冊(どちらも2003年):“The Hedgehog, the Fox, and the Magister's Pox”と“Triumph and Tragedy in Mudville”.また時間がなくなるやん.
・グールド本――『Hedgehog〜』科学エッセイ集.これはまあよし.で,もう一方の『Triumph〜』.これって完全な野球ネタの本ですな.著名な球界人のポートレートもたくさん.野球ファンにはこたえられないかも.昔の『フルハウス:生命の全容』(1998年,早川書房)の第3部をぐわっと拡大して,もっと野球寄りにしたような.
・ピント-コレイアの『Ovary』を訳本『イヴの卵』と照らし合わせる.翻訳にあたって索引がはしょられたことは明白.事項索引が省略されている.ただし,カバージャケットは訳本の方がいい感じ.
またもやドードー!――いまかじりついているベゴン『生態学』のカバーにもドードーが描かれている.絶滅のイコンとしてのドードーの地位はもはや揺るぎないということか.ピント-コレイアの新刊『Return of the Crazy Bird』は,ドードー学の史的成立を論じた本である.16世紀に発見されたドードーをめぐる錯綜した情報から,当時の人々がその生きものをどのように分類して理解しようとしたのかをたどることで,科学と想像力との関わりあいを解きほぐすというのが中心テーマ.もちろん蜂須賀正氏も登場する.ドードーという言葉は著者の母国語であるポルトガル語に由来する.ポルトガル,オランダ,フランスなど当時の大航海時代を支えた国々の動きも読めると思う.
カモノハシもしかり,ドードーもしかり――見慣れない奇怪な生物が目の前に出現したとき,ヒトがそれらをどのように分類するかは根源的な認知行為です.ピント-コレイアの本はドードーの分類学的位置づけという認知分類のケーススタディとみなすことができるでしょう.ウンベルト・エーコの『カントとカモノハシ(上)』もまた,カモノハシという異常な動物のカテゴリー問題を記号論の観点から論じています.分類学史の観点からカモノハシ問題を扱ったのはHarriet Ritvoの『The Platypus and the Mermaid』(1987年).溢れかえる分類イメージが印象的でした.副題にある「分類想像の虚構」というのは言い得て妙.
・家に帰る途中で,産総研の知り合いに会い,伊勢田哲治さんの『擬似科学と科学の哲学』(2003年,名古屋大学出版会)は,物理学史の記述に詰めの甘さがあると指摘される.生物学史についてはどうかもチェックする必要あり.
・本日の総歩数=12027歩.

●5 mei 2003(月)●
・四万温泉の泉質はナトリウム・カルシウム塩化物-硫酸塩泉.泊まっている旅館は源泉かけ流しで,温度も高いがそれ以上にぴりぴりする感覚.強酸性・高温の草津温泉と似ているか.明け方に露天風呂に入る.やっぱり熱かった.少し緑がかった色だが,ほとんど無色.でも硫黄臭がからみつく.
・今月から東大農学部での系統学集中講義が始まるので,その準備をしはじめる.シラバスは,今年はじめの筑波大での集中講義に準じればいいのでラク.講義と並行して受講生メーリングリストを開設するのも前と同じ.吉田薫さんから受講生アドレスのリストをもらわないと.モグリの学生が多くなるというウラ情報が入ってきているが,ML登録はすべて同列にする予定.
・今回の講義での新たな点はWWWサイトを開くことか.データファイルとかテキスト以外のファイルをそこに置くことにしよう.
・講師と受講生の双方向の流れはどうしても必要になるだろう.過去に,都立大・信州大・筑波大の集中講義に際してメーリングリストを開設したが,学生の反応はかなりよかった.ただし,レポートをワードやエクセルで送りつけてくる学生がたくさんいたのには閉口した.「テキストファイルしかダメよ」と言ったのに.
・系統学のベースになる部分をどのように講義しようかと思う.筑波大学のときは「系統樹がそもそもいかなるものかがわかってよかった」という声があった.系統推定の作業過程はよく知っていても,推定の対象である系統樹そのものについては意外に知らされていないのかもしれない――ということは,系統樹の数学を避けては通れないか.
・数理系統学の新しい本としては Semple & Steel (2003)『Phylogenetics』しかいまのところないが,離散数学を少しでも知っていないと受講生の大量死は免れないだろう.でも,内容的にはこの本が取り上げているテーマはぜひすくい上げたい.演習問題を易しくして提示するという手はあるかも.
・Joe Felsensteinの新著『Inferring Phylogenies』が今月出版される予定だが,講義に間に合うようだったら,系統推定法の参考書としてアナウンスできる.でも,出版が遅れ気味というアマゾンからの通知があったばっかりだからねえ.
・四万→伊香保→高崎のコースで帰路に.GW帰りのラッシュはきびしそう.
・夜につくばにたどり着く.疲労が服を着て歩いている....
・本日の総歩数=7741歩.

●4 mei 2003(日)●
・やはり早朝に目覚めてしまう.午前4時半起床.ベゴン他『生態学』読み進む.すぐに満腹.ホワイトノイズのような校正ミスどもが気になる.砂粒が顔に降りかかるような感触.しかし,登攀するためには,その程度のことでめげていてはいかんのだ.まだ200ページしか読んでいないではないか!ただ登るべし;這い上がるべし.
・バッハのカンタータに出てくるスライド・トランペットなる楽器がお気に入り.バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)のカンタータ全集CDでいうとBWV-12(第3巻)とBWV-77(第13巻)のアリアでソリストの伴奏楽器として対旋律を演奏している.綿でくるんだような,コルネットみたいな音色.音の動きがゆるゆるしているのは,スライドがあるからか.楽器の系統進化では絶滅してしまったのに,古楽ではしたたかに復活している.
・それにしても――教会カンタータって垂訓的ですな.BWV-12のアリアは「誠実であれ(Sei getreu)」とテノール歌手が言い諭し続け,BWV-77ではアルト歌手が「Ach!」(ドイツ語の[x]の発音練習)と深いため息をつく.この世のものじゃない.
・さて今週の世俗的新刊チェック――ブックポータルのTRC-1322.おお,『江戸語大辞典』が出ている.お買い上げ〜.
・そーだったのか.“Occasionalisme”には「機会原因論」という定訳があったのね.>Nくん,ありがと.
・確かにねえ――“philosophy of biology”を生物学哲学と訳すのは「すわり」がワルイ.以前はぼくも生物哲学と訳していたときがありました.ただし,生物哲学と訳すと「生物学に関わる哲学」ではなく「生物に関する哲学」たとえばNaturphilosophieみたいな連想をされる可能性があるなあというひっかかりはずっとありました.しかし,決定的だったのは佐倉統さんのコメント:「科哲学が言葉として通用するのなら,生物哲学だってそうでしょう」――これで4文字へのこだわりは消えました.
・さてさて,今日はGWらしいことでもしましょうかねー.―――
―――ということで,やって来ました四万温泉.もともとが古い温泉なのですが(国民温泉指定第1号とか),最近またまた注目を集めているようで,年配客はもちろん若い客も多く見受けられます.四万温泉の中でももっとも奥にある積善本館(レトロな大浴場あり)に泊まっていた頃は,いわゆる鄙び系の雰囲気が色濃かったのですが,いまはだいぶひらけてしまったかな.鳥勢でチャーシューメンを平らげたあと(本業は肉屋なのに副業のラーメン屋で売れている),当然のごとく焼きまんじゅうを食べ,河原の湯を横目に見つつ,もりまた旅館へ.四万川沿いで渓流の音がよく聞こえる部屋.
・鞄に入れてきた『ヨーロッパの不思議な町』には,ブダペストとソフィアの胎内的温泉について書かれていて,都市の「はらわた」にもぐりこむがごとき書かれ方がされている.ブダペスト市内でもっとも古いゲッレールト温泉にはぼくも行った.確かに頽廃に身を溶かすような一角もあることはある.しかし,それは国のキャラクターに関係なく,日本だって時間に染まった温泉場であれば,そういう雰囲気が漂うのはごく自然のことだと思う.
・そう言えば,阿蘇の近くだと長湯温泉がいいと粕谷師が言っていたのを思い出した.確かに炭酸泉(サイダー泉)として独特の性格をもつ温泉のようで,機会があれば行ってみたい.あとは宮崎のサンヨーフラワー温泉と青森・五能線沿いにある森田温泉が炭酸泉の代表格か.しゅわしゅわしてみたい.
・夜はせせらぎの音とカジカの鳴き声.
・本日の総歩数=11122歩.

●3 mei 2003(土)●
・昨日はGW初日らしく?道路はよく混んでいました.とくに高速道路は混み混みということでした.高崎に到着したのは,夜遅く.
Robinet本を舐めはじめる.ナイフでページを開いていくという行為は期待感を高揚させるねえ.いまもある袋綴じのワクワク感覚と同じ.何が出てくるかこないかという不安感がまたよし.
・スタンドの照明を斜めから当てて初めて気がついたのだけど,この本,活版印刷なんですね(当たり前なんだけど).鋳造活字が紙にプレスされたときの凹みがきちんとついている.つい指で触ってしまう.組版が乱調だったりするのも,DTPでは決して再現できないこと.
・いつものように目次を入力する.この本は,マルブランシュ(1638-1715)とライプニッツ(1646-1716)の半世紀にわたる往復書簡,手稿,未発表原稿などを編集した本で,各章は解説とテクストの対で構成されています.17世紀当時のデカルト主義をめぐる思想史がテーマで,話題も,数学・物理学はもとより,神学・形而上学,そして文学にも及んでいます.
・骨までデカルト派のマルブランシュとバロック鬼才のライプニッツとの間でたびたび勃発した論争と,それが周囲の知的コミュニティに及ぼした波紋が多くの書簡を通して描かれているようです.とくに偶因論(occasionalisme)をめぐって激しい論戦が展開されたみたい.モナド論はいったいどのように登場してくるのか.
・その前に,マルブランシュの「前成説」なるものがどのように書かれているのかちょっと調べてみようとしたのですが...,あちゃー,エライことになったあ.フランス語とラテン語の絶唱デュエットにあえなく降参!それでも虫の息で,マルブランシュの著書『真実の探求(Recherche de la Verite)』(1674-5)に関するライプニッツの講演原稿(1685, pp.136-7)をかき分けると,こんな文章が(p.160)――スワンメルダムらによる微小世界の発見に触れつつ,「人間のからだも動物のからだも,世界の創造と同時にそのすべてが創られたのだろう.言い換えれば,最初の動物のメスは母種とともに創られた」,「人間がその体形のまま無限に小さくなってダニのようになったり,樹木が無限に胚子の中に入っているという考えを荒唐無稽とは思わない」etc...まだまだ,他にもありそう.前成説に関するかぎり,マルブランシュとライプニッツはさほど意見を異にしてはいなかったのかな.
・今日は暖か過ぎ,夏日だろうねえ.ねむ....炎天下を3キロほど徘徊する.
生物学哲学(philosophy of biology)に関心をもつ若手がじわじわと増えてきそうな気配なのはとてもうれしい.ぼくがこの世界に関心をもちはじめたとき(大学院時代),いくつかの決定的要因があった:
1)国内には所蔵されていないと言われていたJoseph H. Woodger 『Axiomatic Methods in Biology』(1937年)の白上謙一蔵書コピーを貸してくれた人がいたこと(最初はすぐ気を失った);
2)John R. Gregg の『The Language of Taxonomy』(1954年)コピーをくれた人がいたこと(D論構成を最初から組み換えた);
3)D論の内容がまとまりそうだった時期に,『生物科学』誌への投稿を勧めてくれた人がいたこと(1985年にぼくの最初の投稿論文となった);
4)学位をもらった後,D論の内容を当時編集が進んでいたある論文集に寄稿してはどうかと申し出た人がいたこと(結局は実現しなかったが);
5)「将来きっと君が必要になる本でしょう」とDavid Wigginsの『Sameness and Substance』(1980年)を譲ってくれた人がいたこと(最初は放り出していたが,今ではその予言が的中したことを実感している);
6)思い立ってElliott Sober『Reconstructing the Past』(1988年)の訳出を進めてみたものの,出版社のあてが全然なかったときに,蒼樹書房から出せるように折衝してくれた人がいたこと(1996年に出版できた)――研究歴のエポックを区切るこういう出来事がすべてある同一人物によってもたらされたとは,正直言って驚きである.本当に感謝しています.
・〈Libertango〉の‘Mumuki’を聴きながら....Gary Burton / Chick Coreaの〈Crystal Silence〉(1972)は,中学3年のときにたまたまジャケット・デザインに惹かれて購入した初めてのレコードでした.Gary Burtonは Vibraphone を4本撥で奏するときのマレットの握り方(柄の交叉の仕方)が,通常の Marimba でのマレット奏法とは正反対になっている.試してみるとちょっと不安定なグリップになるが,あれほど見事な演奏ができるのだから大したもの.彼のWWWサイトを覗いてみると,マレットの注釈が延々と書かれている.マレット・ヘッドの巻糸はナイロン繊維がいいのだそうな.さすが!
・本日の総歩数=5402歩.

●2 mei 2003(金)●
・千駄木の往来堂書店でバーゲン売りされていた巖谷國士『ヨーロッパの不思議な町』を読み始める.1980年代に書かれたヨーロッパ紀行なので,状況的にはズレが隠せないのですが,こういうエッセイは心して手に取るようにしています.冒頭でまず惹かれたのは,ブダペストの市内温泉記.著者は温泉目的でハンガリーを訪れたのだが,その見聞はぼくの過去の体験と通じるものがある.
第5回国際系統進化学会(ICSEB-V)に参加するため,1996年夏に初めてハンガリーに行ったときの突撃レポートは,進化学研究会の会報SHINKAにも掲載した(Vol.6, No.3, pp.171-174).たまたま「建国1100年」というお祭り年にハンガリーの地を踏んだということもあったのだろうが,フン民族の由来,旧共産圏中欧,マジャール語,etc. などなどさまざまな意味での欧州他国との「ちがい」を体験できた.
・この本,他にも多くの国や都市の紀行文から成る.楽しめそう.モノクロ写真がいいです.
ブックポータルで先週の新刊案内のチェック.今日更新されてしまうので,忘れないうちに.今週はいろいろと収穫がありました(→No.1321).エーコの新刊と日本進化思想史本をお買い上げ〜.
・痩せ細っている今年のGWですが,明日からはそれなりにまとまった休日が始まる.
・連休中は,右手にはベゴンの『生態学』,左手にはグールドの『SET 』でキマリですな.計5kg余という重凶器.向かうところ敵なし.うりゃー.
・名古屋大学出版会から Arthur O. Lovejoy の新刊『観念の歴史』.この本,同じ著者による名著『存在の大いなる連鎖』(晶文社)との関わりが気になるところ.1998年には同じLovejoyの『人間本性考』を出しているし.
・それにしても,名古屋大学出版会は,数ある大学出版会の中では珍しく,ぼくの食指がぴくぴく動く本を出し続けているなあ.これまで読んだ中からセレクトすると,たとえば福田眞人『結核の文化史』(1995年)とか井上進『中国出版文化史』(2002年)の2冊がまず挙げられる.いずれも,資料を緻密に調べあげた労作で,読み甲斐のある本.
・本日の総歩数=15213歩.

●1 mei 2003(木)●
・今日から5月.メーデーにも行かずにお籠り.仙台進撃の疲れが抜けきっていない.にもかかわらず,出先から「日録」を更新し続けたのは絶倫である証拠だというメールをいただく.そうか,絶倫「日録」男あるいは「ニンニクぱわーメール男」か....【絶倫】――「技術,力量などが人なみはずれて,すぐれていること.群を抜いていること」(『日本国語大辞典・第2版』).誉めてくれてありがとさん(笑).
・そういえば,この“日国”の別巻をまだ買っていなかったことを思い出した.
・Nくんからの個人メールでは,「思わず息を抜きました」とも.まだ駆け出しのページですが,お読みいただき感謝です――だから,あなたも息抜いて
・おおっと,evolve / biometryの月例メールを送らないとね.毎月のことながら,細々としたアドレス変更作業をば.
・東大出版会『UP』誌の最新号が到着.小池裕子・松井正文(編)『保全遺伝学』がやっと今月出版に.実に時間がかかりましたなあ.
・なあんて,他人事のように言っていたら,『生物科学』誌からオニ編集長の最後通告が...「6月末が限度」――そろそろ懸案の八王子大学セミナー・科学論にもケリがつくのか.←自動詞で語ってはいかんぞ.
・地域雑誌『谷中・根津・千駄木』(略称:谷根千)の発行人である山崎範子さんの伴侶が癌でなくなったことを,谷根千最新号(72号)で知る.山崎範子さんは当時千駄木に住んでいたぼくのD論の清書を手伝ってくれた一人で,谷根千は創刊時から愛読しています.ご冥福をお祈りします.
・記憶をたどると,千駄木にいた頃(1970年代末〜1980年代後半)に通った店の多くは今はもうない.たとえば不忍通から入ってすぐにあった〈八十八〉.「千駄木のヒゲ」と呼ばれた名物おやじの店.メニューなんかありゃしない.定価なんか適当だし.酒だって越之寒梅しか置いていないので,もとより選択の余地なし.ときどき雪中梅が並んでいることもあった.〈八十八〉の終焉――あるとき,水戸からの知り合いが訪ねてきて,せっかくだからと〈八十八〉に連れていったところ,おやじが半病人のように出てきて,「今日は具合が悪いからこれでガマンしてくれ」と越之寒梅の一升瓶を.あとで払いにきますからと店を出てきたところで,連れが声をひそめて「あのおやじ大丈夫か?」とひとこと.数日後,代金をもって〈八十八〉に行ったところ,【店主逝去のため閉店】との貼り紙が.そして,酒代は永久に払えなくなった.
・不忍通に面していて,よく通ったおでん屋〈こけし〉もなくなったしねえ....みんなローカルな昔話ですが.
・粕谷師から新たなる情報が――Journal of Negative Results (Ecology & Evolutionary Biology).こりゃあ,[bio]medicineよりは,ぐっと身近な話題のジャーナルではないか.ISSN(1459-4625)もちゃんと付いてるし.でも,まだ刊行されてはいないような気が.
・レフリーすべき原稿が届いてしまった.あと3週間か....
・系統樹販促戦略会議.午後すこし.売る売る.まだ粗削りだが,性能的にはすでにPAUP*を大きく越えている.TNTとの比較はこれからの課題.Hennig XXII(7月,ニューヨーク)にはできるだけいい結果をもっていきたい.
・今月のbk1書評本であるベゴン他『生態学』をゆっくりと撫でつつ,しばしたたずむ.いかに重厚長大本フリークであっても,このサイズでは....中世の大版聖書みたいに太い鎖を付けて書見台に安置しておくとか.あるいは学生の首輪に鎖で結わえつけて読了するまで外せないようにするとか.
・マルブランシュ情報――日本だと九鬼周蔵の著作(たとえば『現代フランス哲学講義』)に詳しく載っているそうだ.>Nくん,感謝.こういう未知の知的世界ってあるのね.Robinet本のページを少しずつペーパーナイフで切り開いているのですが,何となく心が騒ぐ.※「マルブランシュ」でGoogle検索すると中世哲学関係のサイトがちゃんとヒットするのに,同じ綴りを「マールブランシュ」と別読みすると“ケーキ屋さん”がぞろぞろと釣り上がる.とってもフシギ.
・本日の総歩数=7061歩.

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