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日録2005年3月


31 maart 2005(木) ※ 東海道中4日目:さあ帰ろうか

◇だらだらと緊張感なく午前6時半に起床.ごそごそと着替えて朝食をばくばく食べてしまう.昨日の宴会では,複数の人から「みなかさんはどーして食べないのですか?」とコメントされてしまった.いやー,喰ってるはずなんですけどお,となりの粕谷師の圧倒的食欲の影に隠れてしまったのだと思いますです,ハイ.

◇桜色に染まりつつある大阪城を遠景に眺めつつ,とてもよく食べたので,また部屋に帰ってぐでぐでとくつろいでしまう.デューティのない移動日なので,こういうていたらくに.昨日,グランキューブの喫茶店で出会った五箇公一さんは,応動昆から生態学会までの期間中に5回ものトークをこなしたという.しかも,自筆の昆虫イラストで世界デビューもしてしまったそうだ.マルチ才能,恐るべし.

そういえば,今回もまた「非会員」のまま,高座に上がってしまったな…….でもねえ,Ecological Research 誌やら和文誌やらがどさっと送りつけられるよーになっても困るし.人脈的には惹かれるものがある学会ではあるけど,期待ヒット率でいえば必ずしも高くない.それだけ大きな学会なのだということなんでしょ.

◇京都に住んでいた頃は,大阪に来る機会はほとんどなかった(不思議といえば不思議).だから,大阪の市街地の地理的構造がまったく理解できていない.イメージ・マップが完全に欠如しているということだ.『携帯・大阪マップ』(2004年3月刊行,アルプス社,ISBN:4-901877-67-4)なる新書サイズの地図を駅の売店で買ってはみたものの,全体像がぜんぜん思い描けないので,部分部分のマップを見てもどうしようもない.

◇10時過ぎにやっとチェックアウト.大阪駅で買い物したり,京都でうろうろしたりして,午後の新幹線に乗り込む.トン・コープマンの弾く〈フーガの技法〉を聴きつつ,杉田敦『白い街へ:リスボン,路の果てるところ』(2002年2月28日刊行,彩流社,ISBN:4-88202-734-8)を読み進む.ゆらゆらと酔歩する心地の本.

午後4時に東京着.そのまま〈つくばね号〉でつくばへ.途中雨がぱらつきはじめた.夜は Köstritzer の黒ビールを飲んで,そのまま“灰”になりました.

◇明日は,年度が変わり,人の動きや状況の動きがある.

◇本日の総歩数=11274歩[うち「しっかり歩数」=1978歩/18分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


30 maart 2005(水) ※ 東海道中3日目:上方での高座

◇6時半に起床.昨日が遅かったのでしかたないでしょ.よく晴れて気温は低めか.

◇旅行会社にパスポート関係の連絡をする.帰路アトランタで一泊するホテルもいっしょに頼んでしまおう./すでに上方に来ている会長氏から夜中のメールあり.ほほー,さっそく対応いたします.

◇本日の高座は,生態学会大阪大会での自由集会〈デ−タ解析で出会う統計的問題 — 検定かモデル選択か〉(2005年3月30日,グランキューブ大阪).関係者の間で交わされたメールなどを再点検したところ,げげ,ワタクシは単に Neyman-Pearson ワールドを説明するだけではなく,モデル選択基準とは何かということまで守備範囲を広げなければならなかったのねー.

ということで,あたふたとスライドを新たに数枚つくりこんだりしていたので,ホテルのチェックアウトが10時を過ぎてしまった.※こんなに日ぃが高くなってしもたら,ぜんぜん「お忍び」にならへんやん.

◇朝のうちは気温が低めだったが,しだいに暖かくなってきた.JR京都駅に直行し,新快速で大阪まで.とりあえず森ノ宮の〈KKRホテル大阪〉に行き,大きな荷物だけ預けることにする.大阪城公園はもう桜が開き始めている.

森ノ宮から再び環状線に乗り,大阪駅をひとつ乗り越した福島で下車.ここから中之島まで歩く.目的地(生態学会大会会場)である〈グランキューブ大阪〉の中には飲み食いできるところがほとんどないぞよという大会事務局の「反復刷り込み」のおかげで,中之島にわたる橋のたもとでふと思い立って穴子天丼を食べてしまう(うまかった).そのまま川沿いの遊歩道をゆらゆらと歩いていたら,グランキューブの「四角」が向こうに見えてきた.静岡の〈グランシップ〉といい,大阪の〈グランキューブ〉といい,ウツワ大き過ぎー.

中もとてもきれいで,確かに飲食環境はとても厳しいことがひしひしと伝わってくる.今日は大会最終日なので,午後になるとそろそろ帰り支度の参加者もいるのに,その中をゆらゆらと登場するというのはなかなかオツなものだ.2階の喫茶店に陣取って,スライドの最終調整と,読書と,メールチェック.結局,ロードに出ている間,サーバーへのアップロードができずじまいで,日録は28日以来ずっと放置状態になっている.

◇午後5時頃に10階の会場近くを徘徊し,お久しぶりなみなみなさまと挨拶したりする.挨拶しにわざわざ中之島まで来たようなもんですなあ.昨年の釧路大会の半年後の開催だったせいもあるのか,場所ほどには参加者数が多くなかったという話だ.それでも「ん百人」もわらわらといれば十分に人口密度は高くなるのだけどね.

◇北の調教師〈久保センセ〉と言葉を交わしつつ,向かいの部屋で行なわれていた別シンポの総括を終えたばかりでやや磨り減り気味の〈馬車馬・粕谷師〉とともに,これから始まる自由集会会場に入る.コメンテーターの〈これ論・酒井氏〉はサッカー日本戦のことですでに「心ここにあらず」か.

いかにも〈グラン〜〉なつくりの会議室で,すでに客が集まり始めている.最終日の夜になろうというのに,みなさま,たいへんお疲れさまでございます. 5時半の開演時刻の時点でほぼ満席になっていたので,150名くらいは入っていたのではないかな.定刻に開始 ―― 久保センセのややくぐもった声調の「前口上」が10分あまり.十分によくまとまっているので,自由集会の“アブストラクト”としてはよかったと思う.個人的には,フォントがもっと大きな方が目に優しかったのではと感じた(ハンドアウト用にはOKです).※久保さん,ひょっとして裸眼視力がとても良かったりする?

◇前半のぼくの噺(「統計的検定:ネイマン-ピアソンの仮説検定ワールドから始まるモデル選択論のルーツ」)では,正統派な Neyman-Pearson 仮説検定(1933)の手順をいま一度振り返り,いま的な統計分析のスタイル(というかユーザーのニーズ)との〈ずれ〉があることを確認した上で,仮説検定とモデル選択とでは「仮説」のもつ意味そのものにちがいがあるのではないかという論点を提出する.仮説の真・偽をめぐる Rudolf Carnap / Karl R. Popper の帰納論争を踏まえて,Neyman-Pearson ワールドのバックボーンである仮説の真偽へのこだわりに言及.とくに,帰無仮説は,もともと対立仮説とは「格」がちがうのだという点を指摘する.この点に関して,モデル選択における仮説間の「選択」は,その基準が何であれ,仮説の「絶対的真偽」ではなく,むしろ「相対的比較」にすぎないだろう.Abductive inference のひとつの発現としてモデル選択を理解できるという意見を述べた.質疑も含めて1時間ほどの時間を使わせてもらった.

◇続く粕谷トークは,どのような状況で「仮説検定」を使うべきか,あるいは「モデル選択」を使うべきかは,解かれるべき問題の性格によって絞り込めるという話だった.つまり,新たな要因や関係の存在について調べたいならば「仮説検定」に頼るべきであり,そうではなく,可能な対立仮説間の良し悪しについて調べたいならば「モデル選択」が有効だという使い分けである.な・る・ほ・ど.だから,どちらかだけ使えばいいということにはならず,たとえばモデル選択で得たAIC値の差を統計的に検定するというような状況があり得る.

◇午後8時の終了定刻ちょうどに集会は終わった.タイムリーな話題に関する集まりだったので,個人的には得るものが多かった.

―― 終了後,福島駅近くの〈風火山〉にて打ち上げ.なんだかんだで人が増えて,20人近いアヤしい集団が2階の隔離部屋を占拠することになった.いろいろとパーソナルな話題とか(実に学会らしくてよろしい),杜の都を震撼させる「青葉山シンドローム」とか,まあいろいろと.午後11時近くまで管を巻き続ける.

◇散会後,環状線にて再び森ノ宮に帰着.だらだらと上り坂を這い上がり,KKRホテル大阪にチェックインしたのは,午後11時半.なんちゅう1日か ―― ドロのようにアモルファスに寝てしまった.

これにて東海道中のすべての任務を完了し,あとは帰るだけ.

◇本日の総歩数=16571歩[うち「しっかり歩数」=5202歩/41分].全コース×|×.朝△|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


29 maart 2005(火) ※ 東海道中2日目:晴れ上がる都

◇朝6時までぐーぐー寝てしまう.ホテルの窓の外は,昨日の雨がうそのように,からりと青空が広がっている.なかなかよろしい.

午前9時14分発の〈ひかり403号〉で西に向かう.愛知万博に行くのか浜松や名古屋での乗降客がとても多い.

◇車中読書 ―― Vic Barnett『Comparative Statistical Inference, Second Edition』(1982年,John Wiley & Sons,ISBN:0-471-10076-5)の第5章「Classical Inference」を読む.とくに,仮説の検定に関する歴史的な混乱と論争を論じた節を中心に.R. A. Fisher の〈pure significance test〉は,ある仮説とデータがどれくらい整合的であるのかを分析しようとする推論的(inferential)なスタンスである.これに対し,推論に基づく仮説の棄却という行動までも含む〈significance test〉は「有意水準(significance level)」という新しい概念をもちこむ.さらに,Neyman-Pearson の〈hypothesis test〉は,ある仮説に対抗する対立仮説を設定することにより,決定理論的(decision-theoretic)な仮説検定を確立した.Barnett は仮説の検定に関して「推論的」かそれとも「決定理論的」かを峻別することは一般的にできないと言う.

◇11時前に到着.静岡よりは気温が低い.“アラビアの真珠”を味わいつつ,メールチェックと日録書き.昨日はサーバーの調子が悪くてうまくつながらなかった.メールチェックはできるのに,日録のアップができない.研究ウェブサーバーがまたまた止まっているらしい.

◇旅行会社からメキシコ行きのチケットが取れたとの連絡あり.時間があまりないので,代金支払いとかその他についての諸連絡は出先からメールで済ますことにする.アトランタ経由での往復というコースは確定しているのだが,帰りは接続便のつごうで,アトランタ泊になりそう.会議自体はたった二日間なのに,往復六日間の“大旅行”になってしまった.

◇そのまま,某所にて講演準備の開始 ―― 午後いっぱい,延々と作業を続け.夕刻,ラム・ステーキとギネスをちょいとひっかけて,またまた作業を続行.結局,日が変わって,午前1時過ぎまで InDesign とつきあう.

統計学の知的系譜の中で,“仮説検定クレード”と“モデル選択クレード”では「仮説」の位置づけがそもそも異なっているのだろうという点に着目して,トークをつくっていった.要するに,decision-theoretical な仮説の取捨選択ではなく,evidential (forensic)な仮説の相対的重みづけがモデル選択の基本理念としてあるのだろうということ.もしこれがとくに心理的抵抗なく受け入れられているのであれば,モデル選択という考え方は実はすでに科学者の間に広まっている心的態度だということになる.

―― pdfのスライドは全部で29枚.これで 明日の 今日の発表準備は「ほぼ」完了だ.お疲れさん.>ぼく.

◇本日の総歩数=5632歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


28 maart 2005(月) ※ 東海道中初日:雨の駿府にて

◇午前4時過ぎに帰宅.2時間ほど寝て起きる.予報通り,小雨が降り出した.けっきょく,大阪の講演準備は移動しながらやることになりそう.※「素材」をたくさん鞄に詰め込む.

なんだかなあ……

◇8時半にひたち野うしく駅に着.常磐線は数分遅れで上野に到着.さくさくと東京駅に移動して,新幹線〈ひかり407号〉に乗り込む.雨の中,静岡にたどり着いたのは午前11時過ぎ.静岡駅に到着する直前に,きょう呼ばれているシンポジウム〈第8回植物病害生態研究会〉の会場「静岡グランシップ」がどーんと見えた.JRで一駅離れているだけだが,この空模様の中を歩いていくのはやめにしよう.

車中では,生態学会の講演準備(イメージトレーニング)をする.スライドはまだできていないが,そんなものは付けたしであって(おお傲慢なひとこと),大事なのはトークの方ね.客は噺を聴きにくるのであって,スライドを見に来るわけではない.J. Neyman & E. S. Pearson の原論文など読みつつ.統計学の手法もまた「知的系譜」の産物であると考えると,異なる文脈と動機づけを背景とする手法を同次元的に「比較」するというのはムリがあると思う.少なくとも,“Student”の進言により Pearson が思いついた「対立仮説の設定」という要素と Neyman が強く主張した「決定理論(decision theory)の導入」という要素は,ルーツが異なっているのではないか.少なくとも〈the Neyman-Pearson theory〉というハイフンで結びつける前に,その成立の過程を知っておく必要があるだろう.

静岡で下車して,とりあえず宿泊先の「ホテル盛松館」にスーツケースだけ預けに行く.駅から徒歩数分でラクラク.途中で見つけた自家焙煎珈琲〈アルビーユ〉でコーヒーとサンドイッチ.そして,メールチェック.昨夜つくった事務所類たちへのコメントや修正があるにちがいない,きっと.

◇さて,そろそろ会場に向かいましょうかね.シンポジウム開始は午後1時から ――

駅前からタクシーで乗り付ける(道が混んでいて高くついた).たどりついた「静岡グランシップ」は巨大な空母のごとし.ウツワが大きすぎる.その割に自動販売機がほとんどなかったりするので,飲み物の調達に苦労する.シンポジウムの会場は9階の910号室.いかにも会議室な部屋.植物病理学会大会は明日からということで,今日はその前哨戦にあたるらしい.来る人来る人がみんなスーツにネクタイという出で立ちなので,あちゃー場違いな風体だったかと居直る.学会によってそれぞれ暗黙の“ドレスコード”が文化習慣としてあるので,こればかりは個人が抵抗してもどうしようもない.服従するか居直るかしか選択肢はないだろう.

進化学会大会ではスーツを着てはいけない(受賞者以外は)ということになっているし(ホンマか),生態学会や昆虫学会でも「スーツ率」はとても低いと思う.しかし,同じ昆虫を扱う学会でも応動昆は「スーツな人たち」が有意に多いと感じられるし,植物学会もきわめて「スーツな学会大会」をやっているようだ.医学系は厳然としたドレスコードがありますな.

◇今回の植物病害生態研究会シンポジウムは〈植物病害生態研究のフロントライン〉と銘打たれている.かぎりなく「役に立つ研究」がひとり1時間という持ち時間で話題提供されている.ぼくの噺は最後なのでそれまではゆっくりしていられる(あ,睡魔が).長野県野菜花き試験場の藤永真史さんは「レタス根腐病菌レース分化」について講演された.分子系統樹に基づいて根腐病菌の全世界での地理的分布とレース分化の話.進化学的に見てもなかなかおもしろい素材だと感じた.

◇ぼくの噺は特別講演ということで最後の1時間をもらった.「〈親の因果が子に報い〉:生物のすべては系統進化の産物である」というタイトルで,系統学のものの見方(分類学との違い)と系統推定法の原理ならびに相互比較について,けっきょく質疑込みで1時間半もしゃべくってしまった.みなさん(&ぼく),お疲れさまでした.しゃべっている間は睡魔もヘチマもやってこないのがいいですね.

◇終了後,司会をしてくれた茶人氏と学部時代からの知人とともに,静岡駅ビル内の〈沼津魚がし鮨〉にて魚を喰いまくる.店内は混んでいたが,とてもうまかったです.昔話なんぞをしたりする.「家系ネタ」で盛り上がったのは,この3人が「比較的めずらしい」名字の持ち主だったからだろう.※「Smith-Quackdoodle の定理」はとても役に立つ.

◇午前9時前にはお開きとなり,ざあざあふる雨の中をそのままホテルにたどり着いた.ようやく疲れを表面化させても,周囲の迷惑にならなくなったので,そのままドロのように寝てしまう.ひたすら寝る寝る.

◇今回の講演要旨(ハンドアウト)は,同会の出版物「植物病害研究会レポート第4号」(2005年3月28日発行)に掲載されている.ぼくのハンドアウトは pp.20-33 に載っている.

◇本日の総歩数=15322歩[うち「しっかり歩数」=1414歩/13分].全コース×|× .朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/−1.1%.


27 maart 2005(日) ※ 春めく月末のドロナワ

◇5時半に目覚めたが,6時まで惰眠をむさぼる.朝からさんさんと春の陽射しが.

◇今朝の朝日新聞書評欄の広告で,川原拓雄『現代ギリシア語辞典[第3版]』(2004年7月刊行,リーベル出版,ISBN:4897986443 ※→Webcat書誌情報)が出ていることを知った.昨年のアテネ・オリンピック開催に合わせての改訂版らしい.税込18,900円という価格は,日本で出ているマイナー言語の辞書としては特段に高いわけではないと思う.

たまたま,検索していてヒットしたのだが,ギリシア語書籍を専門とするインターネット書店〈ヘルソネス書房〉というのが日本にもあるのね.知らんかったー.

◇昼前から研究室に立てこもり,またまた事務書類を書きまくる.まずは〈研究業績報告書〉からカタつけてと.

―― なんでこんなに時間かかるんだか.夕方6時過ぎにやっと印刷完了.

◇いったん帰宅して,午後10時に再度の休日出勤.今度は年中行事としての〈昇格書類〉作成.毎年の“差分”を追加していけばいいだけのことなのに,とてつもなく時間を消費されまくりで.PageMaker 6.5 はもはや〈昇格書類書きワープロ〉と化してしまった.他の書類はぜんぶ InDesign にしてしまったのだが,昇格書類だけ乗り遅れたということでして.

―― 70ページあまりのプリントアウトが完了したのは午前2時前のこと.時間は取られたが,これでしばらくこんちくしょーな書類書きからは解放されるだろう.※「年度内は」だけど…….

でもって,これから講演準備をしなければならないという事態に追い込まれているのだが,残された時間を考えると,これはもう「素材」を持ち歩きつつ東海道の旅路をたどるしかないのかもねー(汗).

◇しかし,さらにその前に頼まれていた某書類をいよいよ書くしかないな.ごめんなさい,いま書いてますぅ.[2:07]

◇本日の総歩数=6924歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.前回比=−0.2kg/−0.3%.


26 maart 2005(土) ※ コブシのつぼみがふくらんで

◇午前6時まで寝てしまう.外はもう明るくて.よい天気.敷地の中の辛夷の蕾が少し膨らみはじめた.来週はもう4月だから,辛夷の花咲く時期は例年並みか.つくばでは,辛夷の後に,桜が続く.

◇近刊情報2冊 ―― Larry L. Mai, Marcus Young Owl, and M. Patricia Kersting (eds.)『The Cambridge Dictionary of Human Biology and Evolution』(2005年2月刊行予定,Oxford University Press,ISBN:0-521-66250-8 [hardback] / ISBN:0521-66486-1 [paperback]).※ヒトの「生物学」「進化学」「考古学」まで含む資料集みたいなものか./Thomas Wiehe and Bernhard Haubold『Introduction to Computational Biology: An Evolutionary Approach』(2005年4月刊行予定,Birkhäuser Verlag,ISBN:3-7643-6700-8 [hardback with CD-ROM]).※進化学をベースにしたバイオインフォマティクスの教科書とのこと.

◇2週間後に迫った生物地理学会のシンポジウム〈種内動物系統地理学の新展開 ― 分子データを用いてわかること/わからないこと〉のアナウンスをメーリングリストに流す.ぼく自身はメキシコに行ってしまうのだが,できるだけ多くの参加者があればいいと思う.

◇生物地理学関連の新刊 ―― Y日記からの情報(Science 誌[2005年3月25日号]に書評が載っているそうな):Mark V. Lomolino and Lawrence R. Heaney (eds.)『Frontiers of Biogeography : New Directions in the Geography of Nature』(2004年11月刊行,Sinauer Associates,ISBN:0-87893-479-0 [hardback] / ISBN:0-87893-478-2 [paperback] →目次).※即注文しないと.ほぼ同時に出た Mark V. Lomolino, Dov F. Sax, and James H. Brown (eds.)『Foundations of Biogeography: Classic Papers with Commentaries』(2004年,The University of Chicago Press, ISBN:0-226-49236-2 [hardback] / ISBN:0-226-49237-0 [paperback] )の姉妹本.同じく,国際生物地理学会が進めてきたプロジェクトの出力のひとつのようだ.姉妹本『Foundations of Biogeography』が生物地理学の「過去の歴史」をたどったのに対し,この本『Frontiers of Biogeography』は生物地理学の「最前線」を見ようということだろう.なお,『Frontiers』は400ページ強の厚さなので,“兇器度”からいえば,1300ページもある『Foundations』の方が3倍アブナイはず.

◇研究室にてごそごそと ―― まずは満杯になっているプリンターの「廃トナーボックス」をこそっと“掃除”して,とりあえず印刷ができるようにした.※よい子はこういうことをしてはいけません./ソーバー本の発送準備完了.※週明けには郵送します.(うっかり忘れてました)/一般定期健康診断受診予定連絡票の提出.※今年も受ける〈人間犬〉./これまた直前になってからの「海外渡航申請書」を書いたりする.研究交流法の適用ではなく,年休で行くことに./生物地理学会のシンポジウムに関する連絡とか,4月はじめの予定についての関係者への通知とか.

―― あっという間に夕方になってしまう.※生態学会の準備がまだできていないんですけど.

◇夜は自宅にて,年度末〆切の〈研究業績報告書〉ならびに恒例行事の〈昇格書類〉づくりを前にしてしばしボー然とする.※時間的にやりきれるのかしらー.

考えてもしかたがないので,寝る.明日が勝負だ.※もうすでに日本各地から上方に向かっている人たちが多いのだろうな.きっと.

◇本日の総歩数=8090歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−0.5%.


25 maart 2005(金) ※ 冷たい北風が吹きまくる

◇4時半に目が覚める.北風がごうごうと吹いている.何月やと思てんねん(怒ってもしゃあないけど).夜中に雨が降ったようで,地面が濡れている.気温は4.8度.明け方の空を雲がちぎれ飛ぶ.

◇ウリカ・セーゲルストローレ『社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた』の書評を〈leeswijzer〉にアップする.異様に縦長のページになってしまった.

◇事務的こまごま ―― 放射生物質確認チェック報告を急かされて済ませる.※引き出しの奥とか,冷蔵庫の隅から“放射性物質”が転がり出てくるという笑ってすまされないことが可能性としてあり得るので,くどいほどの存在確認を求められる./農環研玄関展示パネル原稿(ppt)の修正完了./トナー・カートリッジを交換したプリンタが,今度は「廃トナー・ボックスが満杯」と文句を言い出したので業者に連絡し,交換パーツを手配する.年度がまたがってしまうので,次年度の支払いにしてもらう.

◇空のようすは“冬空”に逆戻り.北風もこの季節にしてはとても冷たいし.

◇「形態測定学」の新刊2冊 ―― Denice E. Slice (ed.)『Modern Morphometrics in Physical Anthropology』(2005年2月刊行,Plunum,ISBN:0306486989).※もともと幾何学的形態測定学のホームグラウンドは形質人類学で,その後に魚類をはじめ,さまざまな生物群に適用領域を広げていったという経緯がある./Ashraf M. T. Elewa (ed.)『Morphometrics : Applications in Biology and Paleontology』(2004年7月9日刊行,Springer Verlag,ISBN:3540214291).※どんどん出ますなあ.この本も,こういうケーススタディー本でなかったら,最初にプロポーザルがあったときに引き受けていたかもしれないのだが.

―― 関連して:〈2005年度・統計関連学会連合大会〉の一企画として,「幾何学的形態測定学における統計学」というシンポジウムをオーガナイズすることになった.大会開催日は9月12日(月)〜15日(木),場所は広島プリンスホテルにて.※これから演者たちを集めないといけないのだ.

◇おお,こちらも“表紙”が公開されてしまっているではないか!―― 間近に迫った生態学会大阪大会での自由集会〈デ−タ解析で出会う統計的問題 — 検定かモデル選択か〉(2005年3月30日,グランキューブ大阪)の準備あたふた.

◇この4月からうちの研究室にやってくる東京農大の学生とこれからの打合せ ―― まあ,やることは系統学・統計学・形態測定学の三本柱が既定なので,あとはそれをどのように進めるかという点だけか.とりあえず走ってみないことには感触がつかめないかも.>来月からよろしく.

◇インターネットで,メキシコ行きの航空券を探索する.今の季節はオフ・シーズンなんですかね.だいたい6万円台で往復できるようだ.今回の〈IOSEB〉の council meeting に関しては,米国科学基金(NSF)から一定額の旅費が支給されることになっているのだが,上限が決まっているので,航空券はできるだけ安価な方がこちらとしては助かる.

―― でもって,いくつかの選択肢の中から,デルタ航空の格安航空券を手配することにした./あとは滞在先のホテルをこれまたインターネットで予約しないと.会議はメキシコ国立自治大学(UNAM)で開催されるのだけど,メキシコ・シティの地理がまだよくわかっていないので,これから確認しないと.

と思っていたら,グッド・タイミングで IOSEB 事務局からメールあり:ホテルの手配とか空港との行き来は事務局でやってくれるらしい.※ちょっとだけ気分的にラクになった.

◇「国外」の次は「国内」:夕方,東海道中膝栗毛のためのJR指定席券と乗車券を買いに,つくばセンターのJTBに行く.こちらの方はとくに迷うこともなく,必要なものを揃えた.つくば→静岡→京都→大阪という旅程.

◇暗くなってきても,まだ風はおさまらない.寒気が上空に入ってきているとのことだが,明朝は冷え込んだりするのかな?

◇〈ヘッケルフォン〉という楽器 ―― いろいろな総譜を見ていると,ときどき聞いたことのない楽器名に出くわすことがある.Richard Strauss の交響詩『アルプス交響曲』には〈ヘッケルフォン(Heckelphon)〉という木管楽器が登場する.前から気になっていたのだが,いま製造元紹介ページをチェックしたところ,この楽器は「オーボエの2倍の長さ」があり,1オクターヴ低い音が出るらしい.コール・アングレよりもさらに低い音(ファゴットみたいなものか)が出るのか.Richard Wagner の発案による楽器で,1904年に世に出たもの.Wagner の楽劇では〈ヘッケルフォン〉が用いられているのかな.

関係ないことですが,1915年に完成したこの『アルプス交響曲』は,当時ドイツで流行した「山岳映画(Bergfilm)」と何か関係があるのかな?

◇ん,また「研究データ交換用ウェブ」が死んでいるぞ.[0:06]

◇本日の総歩数=12328歩[うち「しっかり歩数」=1070歩/10分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.7kg/+0.5%.


24 maart 2005(木) ※ 石抱きの刑に服する〈はてなー〉

◇昨夜は夜更かししたのに,午前5時過ぎに目が覚める.気温5.8度.昨日よりは涼しいか.雨は止み,雲が切れ始めている.

え! まだ「研究データ交換用ウェブ」が死んだままですかあ.参ったなあ.

〈はてなー〉無限増殖中 ―― ほー,そちらの業界でもですか.互いにコメントやトラックバックで“高めあっている”之圖.

◇年度末にばたばたと注文した本やら事務用品がどんどん積み上がっていく.やっとご来室:林知己夫著作集編集委員会(編)『林知己夫著作集(全15巻)』(2004年11月30日刊行,勉誠出版,ISBN:4-585-05100-7 [set]).なかなかいい感じの装丁だと思う.全巻の構成については,出版元である勉誠出版のページに情報が載っている.第1巻『科学を考える:科学基礎論』(2004年11月30日刊行,勉誠出版,ISBN:4-585-05141-4)をぱらぱらしてみると,『科学基礎論研究』に載った論考がたくさん含まれているのに気づいた.そういう方面でもアウトプットがあったのか.

この著作集には,編集委員会によるパンフレット『林知己夫讃歌』(2004年11月30日刊行,勉誠出版,非売品[だろう])が付いている.各巻ごとの内容紹介とコメントが寄稿されている.とりあえずこれを読めばいいのだろう.

◇午前11時になって,やっとサーバーが生き返った.いろいろとファイル転送をすませる.

◇来週から「春の学会ツアー」が始まるので,その準備をいろいろしないといけない.28日の静岡でのトークはすでにプレゼン用ファイルもハンドアウトも送ってあるのでいいのだが,30日の大阪の高座の準備がまだできていない.「うちあげ会場」まで早々と決まっているのだから,これはもう頑張って準備するしかありまへんなあ.

◇農環研・玄関ホールに展示するポスターの校正が戻ってきた.また PoorPoint でうじゃうじゃといじるわけね.とても盛り下がりますです.※こういうのこそ,ささっとすませないといけない.

◇昼休みに,ウリカ・セーゲルストローレ『社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた』(2005年2月23日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07131-2 / ISBN:4-622-07132-0)の書評をアップする.予想通りとても長くなった.午後,メーリングリストにも流そう.

◇音羽から〈石抱きの刑〉用の紙の束が送られてくる.これでもまだ一部分に過ぎないのだそうだ.Life's Solution は必ずしもシンプルではなかったということか.原書も十分に厚いけどね./それとは別件の寄稿依頼メールあり.う゛,とてもおもしろそうではあるのだが,どーしましょ.

◇磁石が鉄片を引き寄せるように,研究室にどんどん新刊が届く ―― 数理系統学の大学院生向けテキスト:Olivier Gascuel (ed.)『Mathematics of Evolution and Phylogeny』(2005年4月刊行,Oxford University Press, ISBN:0-19-856610-7).※章構成はなかなか魅力的ですね(未入力).数学と統計学の事前知識がないと「つらい山登り」になるかもしれない.でも,Semple & Steel『Phylogenetics』ほど,遭難者は多くないのではないか./C. Barry Cox & Peter D. Moore『Biogeography: An Ecological and Evolutionary Approach, Seventh Edition』(2005年,Blackwell Publishing, ISBN:1-4051-1898-9).※もう第7版まで達したか.最初の頃のバージョンは比較的薄目のペーパーバックだったが,今回の改訂版では400ページを越えるハードカバーになっている.モノクロではなく「青」との2色刷り.

◇夕方になって,雲間から陽射しがのぞくようになった.

◇たったいま発見 ―― 『理戦』(第80号,2005年4月15日発売予定,実践社,ISBN:4-916043-78-2).※特集〈ヒトの進化論〉.あれあれ,あの人やこの人も寄稿してるんだ.(知らんかったー).

◇年度末に向かって,〈残務処理心理圧〉がひたすら高まっている.東海道中膝栗毛の前にケリをつけるべき項目なお多し.

◇〈TreeViewX〉―― 広く用いられているフリーの系統樹描画ソフト〈TreeView〉の後継にあたるのかな.Rod Page さんの作.

◇睡魔降臨.

◇本日の総歩数=8287歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.前回比=−0.6kg/+0.7%.


23 maart 2005(水) ※ 暖かい霧雨が降り続く

◇午前5時起床.霧がかかっているのかと思ったら小雨がずっと降り続いていたようだ.気温11.5度.二桁台の最低気温とはね.数日ぶりに研究室にもぐりこみ,積み上がっているものどもを一掃処分する.※本郷の某センセは出張で留守していた間に溜まっていた郵便物はいっさいがっさいひっくるめて“廃棄処分”にするとか.その「思い切り」の良さは敬服する.ワタシは小心者なので,いちおう中身をチェックしたりするのだ.

◇〈バッハ:幻の結婚カンタータ 全体像復元され世界初演〉―― 毎日新聞3月21日記事.猿ケ京ホテルで新聞報道を読んだ.長らく失われていたカンタータ『満ち足りたプライセの町』の復元初演が,前日20日にサントリーホールで行なわれたのを受けての記事.この楽譜は日本で発見されたということで,東京書籍から近刊予定:ヨハン・ゼバスティアン・バッハ『《満ち足りたプライセの町》 BWV216 オリジナル・パート譜ファクシミリ版』(2005年3月刊行予定,東京書籍,ISBN:4-487-80015-2).

Cladistics誌の最新号(Vol. 20, no. 6, December 2004)が届いた.昨年 Paris で開催された Hennig XXIII のアブストラクトが掲載されている(ぼくらのも:p. 601).

◇昼休み,霧雨の中を歩き読み(無謀!):醍醐麻沙夫『アマゾン河の食物誌』(2005年3月20日刊行,集英社新書0285D,ISBN:4-08-720285-2)の残りの章を読了.著者だけでなく,登場する人々がことごとく誘引力あり.旅行者や探検者ではない,アマゾン在住者ならではの「ゆとり」と「生活のにおい」が行間から漂ってくるようだ.ピラニアやピラルクなどアマゾンの淡水魚をどのように“アマゾン的”かつ“日本的”に調理するかを現地人と日系人社会をまたにかけてたどり歩く.けだもんや六本足ではなく,淡水魚と作物がつくる食生活の基本形がしだいに見えてくる.サンパウロでシュラスコを賞味するのとはひと味もふた味もちがうな.ウォレスは魚好きだったが,ベーツは魚が嫌いだったそうだ.【結論】この本,アタリです.

関連アマゾン本:H・W・ベーツ『アマゾン河の博物学者[普及版]』(2002年9月30日刊行,新思索社,ISBN:4-7835-0227-7)./アルフレッド・R・ウォレス『アマゾン河探検記』(1998年3月刊行,青土社,ISBN:4-7917-5615-0)./アルフレッド・R・ウォレス『アマゾン河・ネグロ河紀行』(2001年7月刊行,お茶の水書房,ISBN:4-275-01869-9)./リチャード・スプルース『アマゾンとアンデスにおける一植物学者の手記(上・下)』(2004年4月1日刊行,築地書館,ISBN:4-8067-1284-1 / ISBN:4-8067-1285-X).

―― 歩き読みしているうちに,新書がだんだん濡れてページがふやけてきた.と思ったら,雨脚が急に強まり,筑波事務所に避難.購買部で傘を買って帰る.

◇今月に入って以来,計算センターの機器更新のために,メーリングリスト関連の作業が静かに降り積もっていた.きょうやっとML管理ができるようになったという連絡があったので,堆積していた作業を開始する.いくつかまだ不具合が残っているようだが,とにもかくにも動いていれば問題はありません.※でも,ftp でファイルをウェブサイトにアップロードできなくなってるぞ.「日録」更新ができない.

◇音羽から狙撃 ―― 未払いの“年貢”とその“上乗せ”(く).Amazon にささっと発注する.※450ページもあるハードカバーが3,000円弱で買えてしまうとは.

◇夕方になってざあざあと降ってきた.まだ湯疲れがどこかに残っているようなので,早々に退散する.

◇計算センターの作業予定では,このサイトが乗っている「研究データ交換用ウェブ」は夕方には利用再開の予定のはずなのだが,夜になってもまったくアクセスできないまま.※いまになって,この日録ページが「研究データ交換用」という条件がついていたことを思い出した.ま,細かいこと言わないで,すごく広い意味でその条件を十分に満足しているものとみなしても実害はないでしょう.ね.

◇本日の総歩数=18133歩[うち「しっかり歩数」=12329歩/102分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+1.6kg/+0.6%.※げげげっ!


22 maart 2005(火) ※ 猿ケ京で超早起き

◇午前4時前に目が覚める.速攻で朝風呂に直行.もちろん,今日は平日なので誰もいない.夜明け前の真っ暗な露天風呂にこっそり入ったり,内湯で長居したりする.含食塩-石膏泉の源泉掛け流しのシアワセということで.年休は蜜の味だ.

入湯後,猿ケ京ホテルの玄関ロビーにて,日録を書いたり,原稿を書いたりする.まだ世が明けていないが,三国峠を行き来する車がホテルの下に見える.赤谷湖をまわりこむこの地は確かに三国峠の麓だ.昨夜,炉端で民話を語ってくれた女将さんは,もう朝食のパンの仕込みを始めている.

◇ウリカ・セーゲルストローレ『社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた』第2巻(2005年2月23日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07132-0)の第3部の続き ―― 第17章「論争による真実:社会生物学論争とサイエンス・ウォーズ」.社会生物学論争と「サイエンス・ウォーズ」との関わりについて論じる.ウィルソンは,グロス&レヴィットの反ポストモダン科学論本『高次の迷信』(1994年)に同調して,科学を擁護する発言をしていたが,社会生物学を推進してきたウィルソンの立場と,反ポストモダン陣営との間には無視できないズレがあった.というのも,反ポストモダニズムはグールドを自分たちの陣営に引き入れたからだ(ルウォンティンは無視された).一方,ポストモダン科学論を推進してきた左翼から見ると,グールドやルウォンティンは「古い世代のマルクス主義者」と見られ,距離を置かれたという.このごちゃごちゃしたストーリーは何とかならないのかな.著者の意図とは裏腹に,社会生物学論争と「サイエンス・ウォーズ」は絡めて論じない方がむしろよかったのではないか.

第18章「啓蒙主義的探求の解釈」は,ウィルソンの著書『コンシリエンス』をめぐる話題を集める.諸学問の「統一(unification)」を求めるこの本は:

ヒューウェルにとって,コンシリエンスが異なった科学分野からのさまざまな説明の結合を意味したとすれば,ウィルソンにとってコンシリエンスは,それ以上のものを意味した.それは,知の単一性,それも,とりわけ特定のタイプの単一性を意味した.ウィルソンは普遍的「コンシリエンス」すなわち,知の統合に向けての探求をはるか遠く啓蒙主義の時代にさかのぼって跡づけた.(p. 608)

という.著者は,ウィルソンの主張に沿って,『コンシリエンス』の意味を説いているが,もっと至近的に,それは近代の「統一科学運動(the Unification of Science Movement)」の一環だったという解釈もあり得たのではないか(V. B. Smocovitisのように).動機づけはともかく,ウィルソンが進化学を中核とする諸学の統一を目指していたことは明白だった:

『コンシリエンス』は,実際に,さまざまな形で,自然科学と人文科学が進化生物学の信条のまわりで統一することを強く説いていた.(p. 633)

著者は,ここにウィルソンの社会生物学が目指していたものと「統一科学」との連続性を見いだす.

続く第19章「科学的真理と道徳的真理の緊張関係」では,著者の見解が前面に出されている.著者は科学理論のもつ“道徳的影響”を重視してきた:

自然主義的誤謬といった事柄についてのおしゃべりは学者にとってのもので,自らの生き方の指針を必死になって探し求める人々にとってのものではない.進化生物学が,少なくともこうした種類の推論から身を守る訓練を受けていない人々,あるいはそれに代わるべき確固とした道徳的枠組みをもたない人々にとって,暗黙の道徳的/政治的メッセージをもっていることは疑問の余地がない.(p. 648:訳では「道徳的/道徳的」となっているが間違いだろう)

この認識の上に,著者は進化生物学の戦略を三つに分ける(p. 652):1)科学を価値から切り離す;2)科学を積極的に価値と結びつける;3)望ましい社会的価値をもつような科学をつくる.

第3の選択肢の例として,著者は最近の群淘汰モデル(具体的には Sober & Wilson『Unto Others : The Evolution and Psychology of Unselfish Behavior』)を挙げる:

ソーバーとウィルソンの群淘汰への忠誠心は,科学的真理と道徳的/政治的真理の結合というハイパー啓蒙主義的探求の好例かもしれない.(p. 666)

??? 本当にそうか? 最近の「群淘汰」理論の復活が,結果として一部の人々に「大きな慰め」(p. 664)を与えているのは事実かもしれない.だからと言って,それを目指しての理論構築というのはおそらく深読みし過ぎだろうとぼくは思う.しかし,全体として本章には傾聴すべき論点がいくつもある.

科学の潜在的な意味合いをめぐる道徳的/政治的論争をすることがとるべき唯一の方策かもしれない.(p.676)

まさにこの主張が,次の最終章の基調となる.

第20章「魂を賭けた闘い:そして科学の命に懸けて」は,社会生物学論争の全体を「道徳的/政治的」な関心(懸念)をめぐる論争だったと総括する.それは決して否定的意味においてではなく,むしろ積極的意味において述べられている点が著者の見解の特徴だ:

社会生物学論争は,道徳的/政治的懸念に満ちあふれていた.…… しかし,まさしく,道徳的懸念が含まれていたという事実が,社会生物学に有益な効果を及ぼしていたかもしれない.それは,この発展中の分野を,まっすぐな狭い道に保つことはなくとも,少なくともある種の引き綱に−−方法論的・認識論的に−−つなぎとめてきたのかもしれない.(p. 704)

私は,道徳的/政治的懸念が,解消されるべき障害というにはほど遠く,実際には,この分野における科学的主張の創出と批判の両方における原動力であり,そのゆえにこの分野はよりいいものになったということを,主張しているのである.(p. 707)

こういう表現って科学社会学の定番スタイルなのかもしれないが,「下界を見下ろす」ようなものの言い方をするなよなっ.まあ,そういう延髄反射的に正しい感想は別にして,社会生物学論争の勝者はウィルソン陣営でもルウォンティン陣営でもなく:

社会生物学論争における真の勝者は進化生物学そのものかもしれない.(p. 544)

という締めくくりの言葉はまさにその通りだと思う.この大作「社会生物学オペラ」の結末を飾るモノローグとしては実にふさわしい.(嵐のような拍手.果てしなく続くカーテンコール,……)

―― 以上で,この本の書評パーツがやっとそろった.それらを組み合わせた総括書評はこれからね.

◇ゆっくりとチェックアウトして,沼田経由で高崎着.曇り空から雨がぽつぽつと.一休みして高速を伝ってつくばに帰り着いたのは午後4時半のこと.本降りになっている.

◇雨中の長距離運転で疲れたのか,気力と体力が極小となる.寝よう,寝よう,そうしよう.

◇本日の総歩数=5481歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼×|夜−.前回比=未計測/未計測.


21 maart 2005(月) ※ 空っ風にあおられて湯煙道中

◇夜中じゅう強風がびょーびょーと吹き荒れ,午前5時半に目が覚める.この時期の空っ風にしてはとても荒っぽい.

◇読後感が残っているうちに,ケリをつけよう ―― ウリカ・セーゲルストローレ『社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた』第2巻(2005年2月23日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07132-0)の第3部「科学をめぐる闘いの文化的な意味」について.この大著の最後にあたる第3部では,長きにわたった社会生物学論争の意味と意義について,科学社会学の観点から総括する.「社会生物学オペラ」もいよいよ再終幕となった.とくに,科学論争における「道徳的論議」が重要であるという著者の見解が末尾で展開されているのが注目される.単に,1970〜1980年代の「社会生物学」だけでなく,それをとりまく現代進化学の“その後”(たとえばウィルソンの「生物多様性」論の起源とか)を視野に入れた立論がなされている.錯綜したストーリーを無理に解きほぐすのではなく,それでいてこの社会生物学タペストリーを紡ぎだした縦糸と横糸を明快に指し示す著者の力量はたいしたものだと思う.

第16章「社会生物学者とその敵:二五年後の棚卸し」−−この章では,20年に及んだ社会生物学論争の「その後」の知的状況の変化をたどる.1990年代以降のもっとも特筆されるべき変化は,人間そのものを進化的に考えるという観点への「抵抗」がしだいになくなってきたことだと著者は指摘する:

一九八〇年代の終わりに向かうにつれ,科学的発展と歴史社会的発展の両方の影響によって,顕著な風潮の変化がすでに現われていた.人間行動を生物学的に説明することに対する世界大戦後のタブーは破綻したように思われた.(p. 535)

人間行動の説明に生物学的な制約をもち込むことへの文化的な抵抗も比較的弱まっていった.…… 長きにわたった文化主義者と普遍主義者の闘争は,普遍主義者にとって有利な形で解決してしまったように思われる.(p. 536)

推進側を後押しする生物学における知的変化と同時に,批判側にとって不利な政治的要因が二つ重なったことも同時に考えなければならない:

いくつかの歴史的な出来事もまた,批判者たちの立場を弱体化させるのに力を貸したかもしれない.一九八九年[ベルリンの壁崩壊の年]以降,中心的な批判者の一部に見られたマルクス主義的立場は政治的により危ういものになってしまったようで ……(p. 537)

若い世代のポストモダン的関心に照らしてみれば,急進的な社会生物学批判者は,今や時代遅れの真理の擁護者として退けられてしまう危険があった.(p. 537)

つまり,マルクス主義そのものの危機とともに,ポストモダン科学論の擡頭が結果として社会生物学批判者の足を引っ張ることになったと著者は言う.この点については次の第16章で詳述される.

批判派がこのようにぐらつきつつあったようすを横目に,ウィルソン自身は社会生物学を推進した頃の〈Wilson I〉から,生物多様性への愛を伝導する〈Wilson II〉へとさらなる「進化」を遂げた(pp. 538 ff.).この移行は大成功で,政治的にまちがった〈悪い Wilson I〉と比べれば,政治的に正しい〈良き Wilson II〉は急速に学界と社会に受け入れられるようになったという.しかし,それはウィルソンが社会生物学から「転向」したことを決して意味せず,むしろ新たな次元での社会生物学的統一を目指していたのだと著者は言う.その現れが第17章の中心テーマである彼の著書『Consilience』(訳書『知の挑戦:科学的知性と文化的知性の統合』)だった.

これらの次なるステージに進む前に,著者は「ウィルソンは何を成し遂げたのか」という疑問に答えて,彼は社会生物学という「分野」を一挙に構築したのだと結論する:

すなわち彼[ウィルソン]は,その潜在的なメンバーに向かって,それが存在することを示すことで,一つの分野をつくりだしたのである−−部分的には,彼のプロジェクトへの貢献者として招き入れることによって!(p. 547)

この第16章の中で,ぼくが関心をもったのは,社会生物学を批判してきたルウォンティンと当時新たに発展しつつあった生物学哲学との関わりだ.遺伝子淘汰説に対抗する立場としての提出された Sober & Lewontin (1982) 「Artifact, cause, and genic selection」(Philosophy of Science, 49: 157-170)は,因果過程としての自然淘汰の単位は,必ずしも遺伝子だけでなく,それよりも上のレヴェルにも作用し得るという群淘汰(複数レヴェル淘汰)を主張した.この論文はエリオット・ソーバーがルウォンティンのもとで研究していたときの出力のひとつだ.後に,ソーバーの『The Nature of Selection: Evolutionary Theory in Philosophical Focus』での論議の核になる「selection for」と「selection of」の区別は,もともとルウォンティンとの共同研究が出発点となって結実したものだということに注目したい.同様に,「社会生物学に対する最も厳しい批判者」(p. 550)だったフィリップ・キッチャーの『Vaulting Ambition』(1985年,Cambridge University Press)もまた,ルウォンティンのもとで彼が研究を進めていた時の著作だと言う(p. 551).ルウォンティンには「後進をうまく育てる」力量があったのだ(p. 545).

群淘汰(複数レヴェル淘汰)をめぐる論争には表層と底流のふたつの「流れ」が潜んでいるようだ.この点については,第19章で再び論じられる.※何ともフクザツなことでして.

ポスト社会生物学論争(1990年代)を見渡すこの章には,ほかにも人間行動進化学会(HBES)設立の経緯とか,グールド/ドーキンスの踊る“タンゴ”とか,数多くのトピックスが詰め込まれていて,まとまりが悪い気がする.しかし,それだけ多くの「泡」が生まれ続けた時期でもあったということなのだろう.

◇昼前に高崎を出発.伊香保から吾妻に抜け,箱島湧水に立ち寄ったあと,猿ケ京温泉に一直線.午後2時前には今夜の宿泊先である〈猿ケ京ホテル〉に到着した.明日は年休を取っているので,ゆったりとふやけられる.露天風呂に沈んだりとか.

―― 夕食後,初めて【不機嫌なジーン】を見てしまう.南原教授が仁子に求婚する一言:「世界中の生物が滅びても,キミを守ってみせる」―― ほほー,ウィルソンならそんな言葉はきっと口にしないぞ.※この「社会生物学オペレッタ」は来週が最終回だそうな.

◇本日の総歩数=10716歩[うち「しっかり歩数」=3233歩/28分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


20 maart 2005(日) ※ 久しぶりの雁行川河畔にて

◇5時半起床.寝ている間に鼻が詰まってしまった(参ったなあ).新聞を見ると,秩父あたりで山全体が黄色く煙るほどの花粉が放出されている写真が載っている.え,4月半ばまでこの「病状」は続くのですか? 拷問やなあ.

◇連休中日に高崎に移動する.高速道はそこら中でプチ渋滞.みなさん,たいへんですねえ.常磐道→外環→関越道経由で午後2時過ぎに到着.荷物を降ろして,一息ついて,お散歩をば ――

雁行川から烏川に抜ける遊歩道を通り,烏川河川敷の公園をうろうろする.さいわい風が強くなかったせいか,花粉でぐすぐすする不快感は少ない.城南大橋から聖石橋まで歩いて帰る.歩き読み:醍醐麻沙夫『アマゾン河の食物誌』(2005年3月20日刊行,集英社新書0285D,ISBN:4-08-720285-2)のはじめの2章.アマゾン在住の著者ならではの生き生きとした食べ物紀行.アマゾン河口のベレン(ベツレヘムのポルトガル語化だそうだ)の街の描写に始まり,しだいに上流部までさかのぼるという旅の始まり.まったく異なる[食]文化はとても魅力的だ(ただの食いしん坊ともいう).冒頭にある「アマゾン河がいよいよ海に入るとき,河口にある九州くらいのおおきさのマラジョ島によって……」(下線みなか)という表現に早々と圧倒される.スケールちがいすぎ.

◇今日は移動日だった.アマゾン河本と高次元図形本Scientific Evidence 本を交互に眺めつつ,一日が終わった.

◇〈絡まりすぎ.よく見えません〉の続報 ―― 確かに,系統ネットワークを実際に“工作”してみて,その構造をもっともよく表現できる「軸」を見いだすというのは[もしそれが可能ならば]たいへん有効な方策だと思います.いま読みつつある『高次元図形サイエンス』の中にも,実際に高次元図形を現実世界に作り出した模型や作品がたくさん載っています.たとえば,アメリカ製の〈ゾムツール〉という模型キットを用いた高次元立体の工作とか,乙部融朗という僧侶がつくった針金製の高次元立体とか.こういう手作業は「造る=見る」という理解の手段が説得的であることを再認識させてくれますね.そういえば,戸田浩『次元の中の形たち[増補版]』(1990年9月刊行,日本評論社,ISBN:4-535-57866-9)の中にも同様の工作可視化がありました.

Gareth Nelson & Norman Platnick の『Systematics and Biogeography: Cladistics and Vicariance』(1981年,Columbia University Press)で展開されている分断生物地理学の理論には「地域分岐図ネットワーク」が導入されています.『高次元図形サイエンス』の解説にしたがえば,彼らの導入したネットワークは,4次元立方体の2次元への「中心投影」に相当するものでした.

◇本日の総歩数=14150歩[うち「しっかり歩数」=6638歩/58分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.5kg/−0.9%.


19 maart 2005(土) ※ ホコリと花粉にまみれる

◇午前5時半に起床.外は晴れ上がる.一晩中,風が吹いていたので,とてもホコリっぽい.春先の関東ではよくあることだが,春先に乾いた風がホコリと花粉を巻き上げる日というのは外出要警戒日だ.

ところが,長男が学校で風邪を引き込んできたようで,熱が38度を越えた.とにもかくにもかかりつけの医者に駆けつけたまではよかったのだが,医院の玄関まで立錐の余地もないほどの“大入り満員”の病人が.この時期,よほどインフルエンザや風邪が流行っているということなのだろう.待っていてもしかたがないので,保険証だけ出して番を取り,午後あらためて出直すことにする.

◇ん? 今日は新書・文庫の大漁日ですな ―― 石浦章一『東大教授の通信簿:「授業評価」で見えてきた東京大学』(2005年3月10日刊行,平凡社新書263,ISBN:4-582-85263-7).※とてもおもしろいと直感したのでさっそく速攻読了(→目次と書評).「駒場」ならではの教育システムを前提にした,大学での授業のあり方についての本.学生による9万通を越えるアンケート調査に基づく,教員の授業評価の分析と提言(ファカルティ・ディベロップメント)が本書の核心部分だ.かつて,そのシステムのもとで授業を受けた学生のひとりとして,また今では[ときどき]そのシステムのもとで教壇に立つ非常勤講師のひとりとして,この本に書かれていることは他人事ではない.書かれてある内容がどれくらい一般化できるか,「本郷」や他の大学にもはたして当てはめられるのかという予想される論議の以前に,授業を提供する講師はそれを提供される学生からつねに「見られている」という認識が必要だという“ごく当然のこと”を著者が繰り返し強調していることに耳を傾けたい.

柳本通彦『明治の冒険科学者たち:新天地・台湾にかけた夢』(2005年3月20日刊行,新潮新書108,ISBN:4-10-610108-4).※日清戦争の“戦利品”のひとつとして獲得された「台湾」を目指した探究者の足跡をたどった本.10年あまり前に出た山崎柄根『鹿野忠雄:台湾に魅せられたナチュラリスト』(1992年2月20日刊行,平凡社,ISBN:4-582-37381-X)がすぐに脳裏に浮かぶが,最近ではこの手のテーマを扱った類書はほとんどないと思う.数年前に焼津の魚類科学研究所に蔵書整理にうかがったおり,故・渡部正雄蔵書の中に戦前の台湾に関する民俗調査書や先住民の記録のたぐいが大量にあったことを記憶している.戦前の資源科学研究所の活動にからむ資料だったのだろうか.『明治の冒険科学者たち』は3人の主人公(伊能嘉矩・田代安定・森丑之助)に順番にスポットを当てていく.3人目の森丑之助は台湾先住民族のルポルタージュを作成するという業績を残したが,最期は鹿野忠雄のように謎の失踪(死亡?)を遂げる.読書慾をそそる本.

醍醐麻沙夫『アマゾン河の食物誌』(2005年3月20日刊行,集英社新書0285D,ISBN:4-08-720285-2).※ほとんど「ウォレス」か「ベーツ」の世界みたいね.目次をブラウズするかぎり淡水魚の食材が多いのは当然のことか.ダイレクトに食慾がそそられる.

ジェフリー・スタインガーデン『すべてを食べつくした男』(2005年2月10日刊行,文春文庫,ISBN:4-16-765147-5).※同じ著者による『やっぱり美味しいものが好き』(2005年3月10日刊行,文春文庫,ISBN:4-16-765148-3)と相前後して翻訳が出ていたのか.これまた食慾本ということで.

志賀夘助『日本一の昆虫屋:志賀昆虫普及社と歩んで,百一歳』(2004年7月10日刊行,文春文庫PLUS,ISBN:4-16-766077-6).※1996年の元本が文庫になっていたとは知らなかった.創業者はついに1世紀を生き抜いたわけですね.

◇午後になって,さらに風が強くなり,土ぼこりやら何やらが巻き上げられる.医院への行き帰りだけで,もう外出は十分という心地.

◇夕方,『ウェブログの心理学』の著者のひとり(山下清美さん)からのトラックバックが〈leeswijzer〉に届いた.さっそくサポートページを訪問してコメントを残してくる.

◇翻訳二題噺 ―― やっとあの訳稿がそろったとのこと.たいへんお疲れさまでした.翻訳はほんとうに大仕事だと思う./おお,Biophilosophy のあの大著を訳そうというのですか!(げー)

◇あの返事と,その文書と,この原稿も……

◇こういう憂鬱な日が続くと,保湿ティッシュが手放せない.気力が失せて,すべてがのろのろと牛歩のごとく,進捗は望むべくもないな.

◇本日の総歩数=7280歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.1kg/−0.2%.


18 maart 2005(金) ※ ぬく過ぎ〜

◇だらしなくも5時半まで寝てしまう.気温7.6度という暖かい朝.夜中に再び雨がぱらついたのか,地面が濡れている.

ということで,系統樹にお悩みの皆様は,いままさに萌えいづる「系統学ブログ」群 ―〈幾霜〉とか〈草行洞ぶろぐ〉― で若い衆によーく揉んでいただくのが健康上よろしいのではないでしょうか.

―― などと言いつつ,ラチェットの巻き上げに関するコメントを書いたりする:

ここにもまた系統学ブログが新たに萌え出た(拍手).

で,本題―― parsimony ratchet でも likelihood ratchet でも同じだと思いますが,ratchet はランダムに「揺らして」「締め上げる」というのが Kevin Nixon の基本的なアイデアだとぼくは理解しています.ですから,NNIでもTBRでもいいですから,サイクルをかせぐのが先決でしょうね.

ただし,likelihood ratchet だと当然死ぬほど時間がかかるのは十分予想されることなので,parsimony ratchet で十分に締め上げた解を likelihood ratchet に送り込むというような便法が必要ではないかと思うのですが,いかがなもんでしょ.(みなか)

たとえばですねー,初期値として「締め上げた最節約系統樹」を設定するというのは現実的なやり方だろうとぼくは思います.なんのかんのと言っても,最尤法のもとでの系統樹探索能力って「しょぼい」でしょ? とすると,せめて初期値で「ある程度いいもの」を与えておかないと,その後が苦しいのでは?という意味です.

よくこの手の探索で初期値に「NJ樹」を置いてはじめるという“お作法”みたいなのがありますよね.でも,それって初期値にいたるまでの計算でラクしているだけで,それ以上の積極的な意味がないと思うのです.

確かに,parsimony ratchet と likelihood ratchet の最適値の樹形が異なることはあるだろうと思います.しかし,両方の解は広大の tree space の中で言えば実はごく「至近距離」にあるのではないですか? 先行研究があるのかどうか定かではないですが,初期値に NJ樹を使うよりはMP樹を使った方がリーズナブルではないかとことです.OTU数が少ないケースでのシミュレーションでは,MP樹とML樹との「ちがい」が強調されますが,OTU数が増えてくるとその「差異」は実はたいしたことなくなるのではないか.という“予想”です.

Model-based な系統推定はpattern-based な系統推定の延長線上に置くのが自然だろうとぼくは感じています.

別件ですが,Joe Felsenstein の『Inferring Phylogenies』にハマりそうでしたら,ぜひ「オンライン輪読会」(なんやそれ?)を企画してみてくださいな.(みなか)

(※掲示板への発言は,書き捨てしてしまうとあとで参照できなくなったり,紛れてしまったりするので,いちおうメモっておいた.)

◇こまごまとしたこと ―― せっかくトナー・カートリッジを換えてこれでよしと思ったら,今度は廃トナー・ボックスが満杯間近との警告.トナーが漏れてるんとちゃう?(疑念).ま,とりあえず正しいプリントアウト機能が復旧したということで満足./あれ,シアンのカートリッジを換えたとたん,今度はマゼンダのも換えろという天の声が…….要するに,全部交換する潮時ということですか? >エブソン様.

◇押し寄せる“津波”本 ―― 年度末に駆け込みで買った図書たちがわさわさと押し寄せてきた:山崎耕宇他(編)『新編 農学大事典』(2004年3月1日刊行,養賢堂,ISBN:4-8425-0354-8).※「基礎統計学」(pp. 1613-1615)と「実験計画」(pp. 1615-1618)のふたつの項目を書いているので,いちおう執筆者の端くれではある.しかし,本体価格42,000円という電話帳を私費購入する勇気はとても出なかったので(いくら「著者割引」できますぅと言われてもねえ),年度末に1年遅れの公費購入とあいなった.編集主幹のひとりである山崎耕宇さんには学部の頃,「栽培学」の講義を受けたことがある.駒場から進学するときの説明会(昔の山上会議所で)のときの自己紹介で,「私はずっとイネの“根”をやってきました.ずっとです」と言われたことをいまも覚えている.東大・農生の栽培学教室はかつてはそれほど“根”一筋な研究室だったのだ.引いたぼくは後に生物測定学教室というところに転んでしまったのだが.『農学大事典』の原稿提出が相当に遅れていた秋のある日,山崎さんから「未提出につき督促」という封書が届いた.即座に「優先順位を入れ替えて」原稿を仕上げたことはいうまでもない(延髄反射のごとき素早さだったなあ)./林知己夫著作集編集委員会(編)『林知己夫著作集(全15巻)』(2004年11月刊行,勉誠出版,ISBN:4-585-05100-7).※「分売不可」というこれまた公費購入には“最適”な統計学全集かも(笑).農環研の情報資料課の登録作業がまだすんでいないので,引き渡しは来週になるもよう.

◇届いた献本1冊(感謝してます)―― スペンサー・E・ワート『温暖化の〈発見〉とは何か』(2005年3月15日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07134-7).※「地球温暖化」をめぐる科学論争を再考する本(ですね).

◇陽射しの暖かな今日は,ことのほか“粉っぽい”1日で,目が痒いなあ.

◇〈絡まりすぎ.よく見えません〉―― まことに御愁傷様でございますぅ.しかし,系統ネットワークの道に足を踏み入れた時点で,高次元酔いは「職業病」みたいなものだろうと思います(潜水病みたいなもんかな).宮崎興二(編)『高次元図形サイエンス』(2005年2月20日刊行,京都大学学術出版会,ISBN:4-87698-645-2)の図版の部分だけをブラウズしているのですが,おそらく系統ネットワークの高次元酔いの治療に有効な部分があるかもしれません.というのは,系統ネットワークは,確かに十分に絡みあっていて,よく「見えない」のはその通りなのですが,たかだか「n次元立方体」に過ぎないわけで,この本で一般的に論じられているような「n次元多胞体」(多面体の高次元バージョン)に比べればはるかにシンプルですね.こういう高次元酔いには,次元減少と視覚化というのが常套手段でして(統計学でいう多変量解析と同一の戦略),この本でも高次元図形をどのように射影・切断・展開するか,そしてどのようにそれをヴィジュアル化するかということに主眼が置かれているようです.お近くの生協書籍部にあるはずでしょうから(お膝元だし),何かの機会にごらんになると少なくとも精神衛生上はラクになるのではないかと.※ということで,4月の講演は よ ろ し く(とプレッシャーを忘れない企画者).

◇今月は計算センターのシステムが大々的に更新される関係で,メーリングリストの業務がことごとく停止している.今月下旬まではまったく手がつけられない(アクセスできない)ので,アドレス変更依頼のメールなどが着実にメールボックスに溜まりつつある.ごめんねごめんね.

◇Adobe Acrobat の version 7 (Professional)を Windows 機と Macintosh にインストール完了.ついでに Norton AntiVirus も.※Acrobat 7 になってから,ますますブレゼン用の機能が充実してきた.「環境設定」の「全画面表示」での「効果設定」が豊富になっている.たいていの場合,ぼくは Acrobat でのプレゼンをしている.最初から A4横 でスライドを組版して,pdf に出力し,プレゼンのときは全画面表示にすれば,何の不自由もなく噺ができる.しかし,Acrobat の「全画面表示」という機能そのものを知らない人が意外に多いようだ.みなさん,PoorPoint でいつもすませているから,Acrobat のようなマイナーなプレゼン・ツールのことは,あまり注目していないのかもしれないが.

プレゼン・ツールで思い出したが,ボイジャーの電子本ソフト〈T-Time〉とビューアー〈azur〉の新バージョンが4月15日にリリースされるとのこと(→報道資料).書き出し機能が新しくなって,携帯電話や iPod そして プレステポータブル(PSP)でも電子本が読めるようになるらしい.

◇こまごまとする ―― JICAからの統計学講義依頼.4月初めに.去年と同じく,キューバ特設コース(稲作).スペイン語のハンドアウトはすでに用意した./某学会の某レフリーについての連絡メールがベトナムから届く.おお,いないなと思ったら,そんな遠くにいらっしゃったんですか.今月中はどちらもばたばたしているので,4月に入ったらやりましょうということに./筑波大の月例談話会(数学)での形態測定学に関する話題提供は9月にやることに内定.

◇眼はかゆい,鼻はぐすぐす,アタマはぼー.これでは仕事にならんわなあ…….

◇夜になって強い北風が吹く.気圧配置が変わったか.

◇本日の総歩数=7640歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=+0.3kg/−0.8%.


17 maart 2005(木) ※ 春の雨が降る

◇午前5時起床.昨夜は遅く寝たのに早起きしてしまう.因果な体内リズム.空は雲が厚く,気温プラス6.7度(あらま!).今日は雨が降るとの予報.研究室にて,Varery Afanassiev[Piano]の〈平均率クラヴィーア〉(DENON : COCO 70746-47 / 70748-49)を流しつつ,仕事の開始.第1集と第2集あわせてCD4枚で3,000円とはとてもお買い得.しかも石丸電機で溜まったポイントで先日買ったので百何十円かの負担のみ.ただ同然.

◇昨夜つくったばかりの植物病害研究会プレゼン用のファイルの発送準備,ハンドアウト用のpdfファイルは1.4MB程度なので,メール添付で世話人氏(&座長さん)に送信する.プレゼン用のpdfファイルは60MB超のサイズがあるので,CD-ROMに焼いて郵送することにした.国内外を問わずプレゼン用ファイルいつもはUSBメモリーに入れて持ち運んでいて,CD-ROMに焼いて事前に送るという習慣がこれまでほとんどなかったので早朝にじたばたする.たまたま手近にあったCD-RWが〈DirectCD〉というフォーマットで切られたディスクだったので,当然 Macintosh では読めませんわな.でもって,またまたじたばたして〈ふつー〉のCD-RWを探し出し(掘り起こし),やっとのことで作業完了.菊池郡への郵送の手はずを整える.朝のお仕事はこれにて完了.

◇正午少し前から小雨が降り出す.気温は9度台.文字通りの“春雨”ですな.でも“濡れて参ろう”などという殊勝な心構えが欠けているので,歩き読みはなし.その代わりに,昨日,速攻で読了した山下清美・川浦康至・川上善郎・三浦麻子『ウェブログの心理学』(2005年3月25日刊行,NTT出版,ISBN:4-7571-0149-X)の書評をさくさくと書いてアップする.※コンパクトながら,たいへんいい本だと感じました.未読の方は焦って買うべし.

◇「匿名」であること ―― そういえば,この本の中にウェブサイトやウェブログの〈匿名性〉に関する調査結果が示されていた:

著者らが二〇〇四年三月に実施した,はてなダイアリー・ユーザーを対象とする調査によると,ウェブログで実名を使用している人は一二・一七%にすぎない.その他は仮名だが,実名を隠す努力をしている人が五三・二四%を占め,同じく仮名でも実名を隠す努力をしていない人の二八・三七%を大きく引き離している.(p. 143)

なるほどねー.実名使用者は1割ほどしかいないわけですね.ぼくなんか〈leeswijzer〉などという“芸名”を付けたもんだから,いろんなところで使いまくっているのはもちろんのこと.ごていねいに(みなか)などと署名なんかつけたりしているので,ほぼ「準実名」のステータスやね.とすると,「仮名でありながら実名とのリンクをあえて強調する」よーな輩はどのように集計されているのでしょーか?(そんな酔狂な人はいませんて?)

◇春雨とともに,わらわらと新刊が萌え出る ―― まずは彩流社ポルトガル本3冊:杉田敦『白い街へ:リスボン,路の果てるところ』(2002年2月28日刊行,彩流社,ISBN:4-88202-734-8).※読み終えたばかりの『アソーレス,孤独の群島:ポルトガルの最果てへの旅』(2005年1月5日刊行,彩流社,ISBN:4-88202-925-1)からさかのぼる.ダストジャケットのデザインが秀逸./フェルナンド・ペソア『ポルトガルの海』(1997年1月31日刊行,彩流社,ISBN:4-88202-435-7).※勢いで……./フェルナンド・ペソア『ペソアと歩くリスボン』(1999年7月10日刊行,彩流社,ISBN:4-88202-583-3).※勢い止まらず……./Peter Armitage & Theodore Colton (eds.)『Encyclopedia of Biostatistics,Second Edition』(全8巻,2005年,John Wiley & Sons,ISBN:0-470-84907-X [set]).※生物統計学の事典.小項目立てでアルファベット順に統計手法や概念が解説されている.各項目には数ページから10ページが当てられている.総頁数は6,000ページを越える.まあ,なんてゴージャスな装丁とお値段かしらあ.もちろん,研究室用に公費購入ね.

◇〈化学哲学〉―― Philosophy of Chemistry と銘打った初の論文集が出るらしい(科学史MLからの情報):Davis Baird, Eric Scerri, Lee McIntyre (eds.)『Philosophy of Chemistry : Synthesis of a New Discipline』(2005年5月刊行予定,Springer Verlag,ISBN:1402032560).あの「Boston Studies in the Philosophy of Science」シリーズの1冊として.物理学哲学や生物学哲学に並ぶ“第三の個別科学の哲学”が登場したということなのでしょうか?

◇夕方になって雨は上がったが,生暖かい南風が入ってきた.ぬくいなあ.今夜は暖房器具はいらんかもね.

◇萌える「系統学ブログ」たち ――〈PhyCom〉が海の向こうで新しくできたと思ったら,国内でもその萌芽が育ちつつあるようで,実に喜ばしい.どんどん萌えましょう.

◇本日の総歩数=7620歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/+0.9%.


16 maart 2005(水) ※ さらに暖かくなるらしい(天災)

◇うっかり6時前まで寝入ってしまう.春眠.気温1.7度.

◇〈こ、これが噂のきつね丼か!〉(3月13日付)―― ソボクな感動に水を注すようで申し訳ないのですが,それはまちがいですね.「正しい“きつね丼”」のレシピは:

  1. 大量の油揚げを短冊切りにする.
  2. ネギ(浅葱でも白葱でもない正しい青葱)を斜にきざむ(多め).
  3. なべに出汁と砂糖(味醂も)と薄口醤油を煮立てる(甘めの味付け).
  4. 油揚げをなべに入れ,煮立ったところで,ネギをばさっと入れる.
  5. あまり煮過ぎずに,丼飯にばばっと汁ごとかけ,粉山椒をかけていただく.

です.これはぼくが家でつくるときのレシピですが,念のため,複数のネイティヴ“京おんな”(世代いろいろ)に確認して「よそさんに教えても大丈夫」とのお墨付きをもらっていますので,致命的まちがいはないと思います.

―― では,N部君がバイト先で遭遇した「それ」はいったい何なのか? 記載文から推測するに,京都で言う“衣笠丼”(「卵とじ」という固有派生形質が ancestral な“きつね丼”に付加された descendant な丼)と“木の葉丼”(「かまぼこ」を「卵とじ」する別リネージの丼)が超合体したハイブリッド丼ではないでしょうか.少なくともそれは“きつね丼”ではありません.また「正しい“きつね丼”」は「しっとりとした油揚げがつゆを含んでいる」ところに滋味があると思うので,「揚げが油で揚げてあってカリカリだった」という更なる固有派生形質はその基本形に反していると考えられます.N部君の「これが正式なきつね丼なのかどうかは、疑問が残るなぁ」という危惧は残念なことに正しかった.※次回は「正しい“きつね丼”」を賞味してくださいませませ(という前に,自分でつくるのが手っ取り早い).

◇おお,『裁かれたキャンパスの神社:信州大学政教分離訴訟』(2005年3月10日刊行,あずさ書店,ISBN:4-900354-61-9)の著者・藤原英夫さんから予期せず初めてのメールをいただいてしまう.ありがとうございます.

◇朝から,〈第8回植物病害生態研究会〉のスライドづくりにいそしむ.系統学についての教育的講演をとの依頼なので,1時間の特別講演で「講義」しないといけない.もちろん,素材はすでに手元にたくさんあるので,あとはそれをスライドにしていけばいいわけだが.いつものように,〈台本〉を思い描きながら,InDesign に向かっているとどんどん時間が過ぎていく(小気味よいほどに).スライドを「A→B」にすると「B→A」にするかで,噺の筋書きを大きく変えられるというのが,こういう〈トークを書く〉ときの愉しみだとぼくは思う.例によって,いろいろとオカズやツッコミを混ぜながら書き進めて,ああもう昼休みだ.

◇午前の着便本2冊:山下清美・川浦康至・川上善郎・三浦麻子『ウェブログの心理学』(2005年3月25日刊行,NTT出版,ISBN:4-7571-0149-X).※まずは届いて安心.出版日は「8日」ではなく「25日」だったのね./宮崎興二(編)『高次元図形サイエンス』(2005年2月20日刊行,京都大学学術出版会,ISBN:4-87698-645-2).※「触れる」高次元図形というのがとても魅力的.カラー図版ふんだん.とっても大判な本.系統樹や系統ネットワークあるいは系統ジャングルに関心のある人や予期せず絡めとられてしまった人にはこういう本がきっと必要なのだ.

◇よく晴れた昼休み.気温はなんと16.8度にまで上昇(暑いくらいの陽射し).花粉を浴びつつ歩き読み:届いたばかりの『ウェブログの心理学』をば.あらあら,するすると200ページを読了してしまったわ.紙色がことのほか真っ白だったので,日なたで読むと目がとっても痛いぞ(そういう読み方は想定されていないのか).諸外国にない「日本的ブログ」のもつ特徴とか,ブログを書く社会心理的な潜在要因を共分散構造分析を用いて解明する第3〜4章がとりわけ読み応えあり.ぼくがこの1月9日から立ち上げた〈leeswijzer〉は,本書の提示する因果構造モデルで言うと,個人的表現と被理解によって動機づけられる“日記型ウェブログ”(p. 118)ではなく,事実情報の提供と獲得に動機づけられる“データベース型ウェブログ”(p. 117)ということになるらしい.なるほどね.タイプの別を問わず,要するに書き続けることにこそブログの意義があるのだという本書の中心的メッセージは確かに受け取りましたよ.ウェブログをやっているそこのアナタもぜひ読みましょうね.

◇午後もプレゼン資料づくり(台本づくりと一体化)が続く.やっと骨格部分の台本をpdf出力完了.夜に仕上げる予定.

◇夕方,飛び込みで,とある打合せを半時間ばかり.

◇夜,自宅にて再び作業の再開.ブレゼン用pdf(70ページ)とそのハンドアウト(参考文献リストを合わせて14ページ)を出力し終えたのは午前1時前.やっと寝られる.

◇本日の総歩数=14366歩[うち「しっかり歩数」=8223歩/71分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/−0.1%.


15 maart 2005(火) ※ 低いハードルたちをくぐり抜け

◇午前4時半起床.気温マイナス1.5度.研究所に直行する.

◇昨夜仕上げた『理戦』原稿を再チェックする.pdfで校正ができるようになったのはありがたいことだ.参考文献をふたつ付ける:カール・ジンマー『「進化」大全 ―― ダーウィン思想:史上最大の科学革命』と,あと100頁あまりで登攀完了予定のウリカ・セーゲルストローレ『社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた』.まあ,文章内容を考えれば,現時点では妥当なレファレンスでしょう.

付図には,生物全体の系統樹とヒトまわりの霊長類の系統樹の2枚をつけようと思って,いろいろ出典をあさる.霊長類の系統樹は,Claus Nielsen『Animal Evolution : Interrelationships of the Living Phyla, Second Edition』(2002年,Oxford University Press,ISBN:0-19-850682-1)の cladogram を採用してもよかったのだが,ビジュアル性にこだわって,Guillaume Lecointre and Hervé Le Guyader『Classification phylogénétique du vivant』(2001年,Éditions Belin,ISBN:2-7011-2137-X)の折り込み図に決定.絵がついているのがよろしい.

生物全体の系統樹は,湿った Stammbaum の生木でなく(Ernst Haeckel のはいろいろ使い回しすぎたので今回はやめる),十分に乾燥した cladogram で十分なのだが,やはり最も新しいことを最重視して,先日届いたばかりの Joel Cracraft and Michael J. Donoghue (eds.)『Assembling the Tree of Life』(2004年,Oxford University Press, ISBN:0-19-517234-5)の総括図(p. 555)を採用する.全生物をカヴァーできる系統樹というのは意外に少ない.少し前だったら,1988年に開催されたノーベル会議の論文集 Bo Fernholm et al. (eds.)『The Hierarchy of Life : Molecules and Morphology in Phylogenetic Analysis』(1989年,Excerpta Medica,ISBN:0-444-81073-0)の総括図(p. v)が繰り返し引用されていたのを記憶している.ただし,この論文集,とてつもなく高価で,当時の購入価格で35,000円を越えていたはず.国内の公的機関にもあまり所蔵されていないようだ(お,上智大にはありますな).『Assembling the Tree of Life』の出版により,ほぼ15年ぶりに全生物の the tree of life がアップデートされてよかった.

―― 本論文集の末尾で,David M. Hillis が両書を比較している(「The tree of life and the grand synthesis of biology」, pp. 545-547).彼は1980年代の系統学がその後20年の間にどれくらい発展したかをあとづけて,1988年のノーベル・シンポジウムは確かに現代系統学の歴史の上で画期的なイヴェントだったと結論する.というのも,Science Citation Index を手がかりに〈phylogeny〉あるいは〈phylogenetic〉をキーワードとする論文を拾って集計したところ,1989年までは年に数百報しか系統学論文が発表されなかったのに,1990年以降はいきなりその数が1000報を突破し,2001年の段階では年5000報に及んでいるからだ(Figure 32.1).確かに,狭い意味での系統「分類」学だけでなく,系統推定をツールとしてもちいる研究者と研究領域の裾野が広がったと多くの人が感じているはずだ.しかし,Hillis が言うように,ここ10年あまりの系統学革命が本当の意味で浸透しているとするならば,Science Citation Index のグラフは近い将来“頭打ち”になるだろう.というのも,「系統分析」に基づいてとか「系統樹」を描いてということをわざわざ口にしなくても,空気のように透明にその手順は日常的な研究手続きの中に組み込まれるだろうから.「微分積分学」を用いてとか「線形代数学」を使ってとわざわざ言わなくても,個体群生態学の研究ができるようになったのと同様の状況が近い将来やってくるという予想だ.系統学はそういう段階にまで枯れ上がれればそれはそれでいいことなのだろう.もちろん.いまの統計学に見られるような強行突破問題とか無思考症候群もきっと歩調を合わせて表面化してくるにちがいないと推測するけど.※それはそれで学問としての「成熟」の証とみなす?

◇午前中に〈leeswijzer〉の累計アクセス数が2万を越えた.開設してまだ2ヶ月だが,今のところまではほぼ1万アクセス/月というペースだ.

◇薄曇りの昼休み,気温は9度台.程よい寒気.畑の上には早くも雲雀が舞い上がり,茂みからは雉子の鳴き声.季節的にはいつ「春」になってもいいくらい.いつもの歩き読みは,ウリカ・セーゲルストローレ『社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた』第2巻(2005年2月23日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07132-0)の最後をなす第3部全4章を読み終える.第3部はたいへん刺激的で,社会生物学とその後の進化心理学・人間進化学をめぐる攻防戦,さらには当事者たちと「サイエンス・ウォーズ」現象とのねじれた関わりなどなど興味深い話題とエピソードにこと欠かない.社会生物学にかぎらず現代進化学を取り巻く知的文化環境に関心をもつ人にとっては,本書はとても informative であり,体系生物学におけるDavid Hull の『Science as a Process : An Evolutionary Account of the Social and Conceptual Development of Science』や社会学における伊勢田哲治の『認識論を社会化する』とも響き合うスタイルをもつことがわかる.研究分野の「行間」を読み込むのに必要となる本.これにて上下巻およそ800ページを読了.まとめの書評は近日中にも.

◇午後2時半からグループ内会議.うっかり忘れて遅れて行ったら,すぐ終わってしまった.年度末らしいイヴェントが今月下旬にいろいろと.でも,ちょうどその頃は東海道を西に向かう旅路にあって,すべてに参加できないのだ.

―― 旅路の準備(噺ネタなど)をそろそろ何とかしないと.

◇本日の総歩数=17268歩[うち「しっかり歩数」=8199歩/72分].全コース×|×.朝△|昼○|夜○.前回比=+0.6kg/−0.1%.


14 maart 2005(月) ※ 障害物競走な週の開始(きっと)

◇5時目覚め,5時半起床.外はもうすっかり明るくなっている.気温マイナス3.7度.昼間の暖かさと明け方の冷え込みの隔たりがとても大きい.薄暗がりに霜が降り,静電気がぴりぴり飛ぶ.

◇先週後半のピストン出張の荷物やらを抱えて早朝出勤.『生物科学』(56巻4号,2005年3月下旬発行予定)のゲラ(「“みなか”の書評ワールド(8)」)が届いていた.返送〆切は「3月14日(月)まで」とのこと(今日やんかー!).今号では,リン・L・メリル『博物学のロマンス』,戸田山和久『科学哲学の冒険:サイエンスの目的と方法をさぐる』,そしてロバート・アンジェ(編)『ダーウィン文化論:科学としてのミーム』の3冊.

◇埼玉農試から返送されてきた講義グッズの数々.某大学の成績評価のトラブルもうまく事態を収拾していただいた(感謝).これで今年度の“統計巡業の旅路”もようやく終着点が見えてきた.―― とある技術会議の集まりで,とある公立試験場の場長氏が「都道府県の農業試験場から毎年研究員をつくばの数理統計研修に応募させているのだが,定員枠が厳し過ぎてなかなか通らない.研修の回数をもっと増やしてもらえないか」との要望が出ているそうだ.担当者いわく「埼玉県農林総合研究センターのように,つくばから講師を呼び寄せるという手も考えていただきたい」とのこと.これからの行脚の機会がもっと増えたりして(汗).そのためには統計学の素養のある研究者を[農水省の中で]もっと育成しいひんかったらあかんねんで.わかってるか?

◇化けて出られても困りますので,Panmixia ゲラを速達にて越中にささっと飛ばす.※あとはよろしゅうに.あんまり組版にこだわると心臓に悪いでっせ./『生物科学』ゲラはとくに致命的なミスはなさそう.これまたすすっと返信してしまおう.そうしようそうしよう.

◇昼休みに,筑波大学中央図書館に先日借りた本を返却に行く.今日も気温が高めで花粉飛びまくり.戸外に出るのは難行苦行です.帰りに吾妻の〈ピーターパン〉でイチジクとオリーヴのドイツパンを買い込み,その後,つくば市立図書館のボックスに返却本を落としてくる.鼻がぐすぐす,目も痒いぞ.

◇午後は事務仕事を少々.次年度の和雑誌の購入希望書を書く.品質管理関係と農学系の雑誌を中止にして,生物学関係とコンピュータ関連のジャーナルを追加./メキシコの航空券のことで知人に問い合わせメール.所内の事務手続き(研究交流法関連の)も早くはじめないと渡航できなくなってしまう.

◇早川書房から刊行されている叢書〈ナショナル・ジオグラフィック・ディレクションズ〉の新刊2冊:アリエル・ドーフマン『世界で最も乾いた土地:北部チリ,作家が辿る砂漠の記憶』(2005年2月28日刊行,早川書房,ISBN:4-15-208620-3).※本書は2005年3月15日の毎日新聞で書評されている.塩湖の広がるチリの高原地帯は,昨年出た印象的な写真集である片平孝『地球 塩の旅』(2004年10月20日刊行,日本経済新聞社,ISBN:4-532-16487-7)でも取り上げられている./フランシーン・プローズ『シシリアン.オデッセイ:地中海の十字路,眩惑の島』(2004年12月31日刊行,早川書房,ISBN:4-15-208611-4).※イオニア海をはさんでギリシャと向かい合うシチリア島.以前読んだ巌谷國士の紀行書『地中海の不思議な島』(2000年12月20日,筑摩書房,ISBN:4-480-81428-0)でも魅力的に書かれていた.

この叢書には,昨年読んだオリヴァー・サックスのシダ狂い本『オアハカ日誌:メキシコに広がるシダの楽園』(2004年2月29日刊行,早川書房,ISBN:4-15-208547-9)も含まれている.平均的に質の高い紀行本の揃ったシリーズだと思うのだが,リアル書店ではあまり見かけない気がする.

◇『生物科学』のゲラ校正を完了した.いつも通り,大きな訂正点はなし.メールに流した文体をそのまま活字にすると違和感がありそうな箇所だけ修正する.明日返送.

◇本日の総歩数=12946歩[うち「しっかり歩数」=1408歩/12分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.8kg/−0.2%.


13 maart 2005(日) ※ ぽかぽかと花粉にまみれる

◇だらしなく6時起床.とてもよく晴れて憂鬱だ.

◇引き蘢って,仕事をする ―― まずは,『理戦』の口述原稿(三中信宏「進化学とはどういう科学なのか:人間という生き物に進化論でアプローチする[仮題]」)に手を入れはじめる.口述からの原稿起こしというのは今まであまり経験がないが,しゃべるときっていうのは,書くときとはちがって“滑ったり”あるいは“こけたり”する確率が高いことを再認識する.ええかげんなことを口走ってますなあ(消し消し……).あらま,ヤバそうな表現も(塗り塗り……).テキストファイルをpdfに変換した上で,Acrobatの校正機能を使って訂正や加筆をしていく.意外に時間がかかり,なかなか進まず.やっと半分まで.

◇新聞書評について ―― オンラインあるいは「紙」新聞での新刊書評はできるだけ眼を通すようにしている.毎週出荷される新刊タイトルを網羅的にチェックしていると,「この本はきっと新聞書評されるだろうな」という予想ができて,そのヒット率はここのところそれほど低くない.もちろん,これはという本はぼく自身が積極的にオンライン書評を流しているので,速報性からいえばぼくのサイトの方がはるかに早かったりする(だからこそ献本を送ってもらえたりするのだろうけど).今日の朝日新聞の書評欄は収穫がとりわけ多かった.最近「理系の本」がほとんど書評されない不毛な朝日新聞だが,今日は「豊作」だ.もちろん,例によって理系本はまったく見当たらないのだけれど(苦笑):

クラウス・クライマイアー『ウーファ物語(ストーリー):ある映画コンツェルンの歴史』(2005年1月刊行,鳥影社,ISBN:4-88629-872-9).※20世紀初めのドイツ映画界の頂点に立った巨大映画会社〈Ufa〉の栄枯盛衰の物語.ほほー,800ページ超ですか(食欲湧きますです).ナチスのゲッベルス宣伝相に取り込まれてからは第三帝国と運命を共にするが,戦後も生き延びている.レニ・リーフェンシュタールの伝記 Jürgen Trimborn『Riefenstahl — Eine deutsche Karrierre: Biographie』(2002年,Aufbau-Verlag, ISBN:335102536X)を見ると,彼女が主演した映画はもちろん Ufa の映画館で公開されたのだが,監督業に携わるようになってからは,Ufa や他の映画会社とは独立して,小さな製作集団を率いたという(pp. 84, 187)./幸福輝『ピーテル・ブリューゲル:ロマニズムとの共生』(2005年3月刊行,ありな書房,ISBN:4-7566-0585-0).※池上俊一書評を読むかぎり,ブリューゲルに関する偶像破壊的でとても興味が湧きそうな本だ./本田靖春『我,拗ね者として生涯を閉ず』(2005年2月刊行,講談社,ISBN:4-06-212593-5).※伝記好きにはもってこいの600ページ本.

◇昼前に,LaLa Garden まで歩く.鼻がむずがゆい.よくないなー.午後は引き蘢り.

◇触手が長く伸びる新刊 ―― 宮崎興二(編)『高次元図形サイエンス』(2005年2月刊行,京都大学学術出版会,ISBN:4-87698-645-2).※高次元の世界をヴィジュアルに見せてくれるのだそうだ.あの戸田浩『次元の中の形たち[増補版]』(1990年9月刊行,日本評論社,ISBN:4-535-57866-9)に連なる内容の本なのだろうか.戸田本に描かれていたような高次元ネットワークは,その後数年を経ずして,生物系統学の世界で広く見られるようになった.

◇夕方近くにまたふらふらと徘徊する.今日はとても花粉飛散量が多かったのだろう.どこもかしこも“立体マスク着用者”ばかりだ.ABC Mart にて,格安の ROCKPORT(APM22711)を買ってしまう.サイズはやや大きめだが,幅がぴったりで快適.靴だけは着実に増えつつあるな.

◇あわてる ―― 山下清美・川浦康至・川上善郎・三浦麻子『ウェブログの心理学』(2005年3月8日刊行,NTT出版,ISBN:4-7571-0149-X).すでに市中に出回っているものと思い,つくばやら神保町やらのリアル書店を探しまわっているのだが,いまだに現物に遭遇できないでいる.bk1にもまだ入荷していないようだし.そうこうしているうちに,先ほど配信されてきた『Academic Resource Guide』の最新号([ARG-211]:2005年3月13日号)には,この新刊を祝する特別記事が載っている.しかも,「ACADEMIC RESOURCE GUIDE を読んでいる方であれば,すでに本書を入手済み,せめて発注済みであって当然と思う」などと煽られてしまうと,げげっとあわててしまいますな(罪).なんにせよ早く手に入れないと〜.

―― と思って,いまbk1を見に行ったら「24時間以内発送可能」になっていた.ぼくが籠原にトラップされていた頃に入荷したということか.※さっそく注文完了.

◇暗くなってから,また『理戦』原稿との格闘再開.くー.

◇ちょいとよそ見 ―― 新刊:ナイルズ・エルドリッジ『ヒトはなぜするのか』(2005年3月刊行,講談社インターナショナル,ISBN:4-7700-2790-7).※もちろん遺伝子淘汰主義への批判の書だが,「ヒトはなぜするのか?」というナゾめいたタイトルは,もう少しなんとかならなかったのかな.まあ,個人的には,『系統発生パターンと進化プロセス:比較生物学の方法と理論』(1989年,蒼樹書房)の後のエルドリッジの本はもう読まなくてもいいだろうという評価なので,きっと手にすることはないでしょうがね.

◇花粉症の症状がしだいに悪化しつつある.鼻を“愚種愚種”いわせつつ.こんなに粉粉した天気が続いた日には商売あがったり.ジ・エンドですわあ.ほんま.

◇本日の総歩数=10301歩[うち「しっかり歩数」=7341歩/62分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.2kg/−0.1%.


12 maart 2005(土) ※ 一時のみなし引き蘢り

◇今日も5時半に起床.ここ数日は目覚まし時計をかけていないので,体内リズム的には午前5時過ぎあたりに目覚めの時が訪れているのだろう.外は視界のないほどの濃い霧.こんな明け方にウォーキングしたりしたら“くだん”に出会ってしまうかもしれないなあ(六甲山エリアじゃないから大丈夫か).

―― などともごもご言いつつ,家でごそごそする.とある原稿3件(現代新書,理戦ゲラ,Panmixia ゲラ,某文書作成);講演準備2件(植物病理,生態学会);海外逃亡準備;業績報告と昇格書類.※うむむぅ.

◇埼玉県農試から統計研修に関するメールが来ていた.受講生の評判はよかったとのこと.次回来る時は,しっかりR演習しましょーね.

◇朝のうちに晴れていた空模様は,昼頃から下り坂.気温は低くないのだけれど.歩きにて Book-Ace まで.見かけた新刊3冊:藤原英夫『裁かれたキャンパスの神社:信州大学政教分離訴訟』(2005年3月10日刊行,あずさ書店,ISBN:4-900354-61-9).※先日の埼玉県農林総合研究センター集中講義でこの話題について初めて知った.キャンパス内に昔からあった神社を国立大学がそのまま管理し続けるのは問題があるだろうという訴訟.ただし,だからと言って,大学敷地内から外に移転させるにしても,その費用を大学が負担したりすると,それ自体が問題視されてしまうというので,いまは手詰まりの状態だそうな./荻野昌利『歴史を〈読む〉:ヴィクトリア朝の思想と文化』(2005年2月25日刊行,英宝社,ISBN:4-269-71107-8).※ラスキン,ダーウィン,ミルらの著作について言及されている.本の造りがイマイチなんだけどなあ./ジェフリー・スタインガーデン『やっぱり美味しいものが好き』(2005年3月10日刊行,文春文庫,ISBN:4-16-765148-3).※うう,つい衝動買いということで…….

◇週末のこまごま ―― 某ジャーナルから投稿原稿の再査読依頼.こんどはちゃんと英語が直っていればいいのだけれど./進化学会のピンチヒッター業務引き継ぎについて,学会役員に連絡する.

◇東京農大の人事委員会にてこの4月から客員助教授になることが正式決定されたとの連絡あり.近日中に農環研に正式の申し入れがあるそうだ.名目上の担当科目は〈応用昆虫学〉だって(マジですかー[笑]).実際には,系統学的考古学(phylogenetic archeology)を某君に教えることになるのですけど(※そろそろ受け入れ態勢を整え始めないと).台湾の温泉は概して炭酸泉系みたいね.先住民族は30ほどあって,台湾全人口の2%を占めているとか.

◇曇りがちの午後はじっと籠りますです ―― 仕事たち:もうすぐ発行される Panmixia(第16号,近刊)のゲラをチェック完了.全般的に印刷所の組版ぶりがとてもええかげんで,個人的には“リジェクト”に相当する程度なのだけれど,まあしかたないか.下記の3原稿に眼を通す:

  • 鈴木邦雄・三中信宏「太田邦昌追悼号に寄せて」(p. 2)
  • 三中信宏「太田邦昌氏の『真正分類系統学』再考」(pp. 30-37)
  • 鈴木邦雄・三中信宏「太田邦昌(1944. 1. 28〜2003. 3. 8)著述目録」(pp. 38-43)

残る二つの原稿 ―― 鈴木邦雄「「若手の会」設立の頃」と粕谷英一「太田邦昌氏の階層的自然淘汰理論」―― のゲラはぼくは見ていない.ぼくの分については,週明けにも返送します(近江の国? いや,その前に越中か).

◇続けて,9月の統計関連学会連合大会での形態測定学シンポジウムの趣意書を大会委員長宛に送る.タイトルは〈幾何学的形態測定学における統計学的問題〉とする.個別の対象に関するケーススタディーは,これまで数度にわたる形態測定学関連企画で取り上げてきたので,今回はもう少し数学と統計学寄りの話題提供と論議に方向づけようと思う./併せて,筑波大学の「数学系月例談話会」での形態測定学噺を引き受ける返事を出す.※できれば,数学系の演者のリクルートを兼ねて.

◇さらに続けて,某学会の査読OKの返事メールを出す.※英文チェックされてるんでしょーね,今度は.

◇ああ眠たいなー.粉っぽい日が続いていて,ぼーっと惚ける呆ける.さあ寝ましょ.

◇本日の総歩数=7284歩[うち「しっかり歩数」=5587歩/47分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.6%.


11 maart 2005(金) ※ ピストン出張や〜

◇5時半起床.夜明けが早くなってきた.東京出張の今日は曇り空.

◇農環研に顔を出す.書類いろいろ積み上がる.次年度の和雑誌購読申し込みがやっと来た.来週締め切り.人間ドックの申し込み(健康管理には十分に注意しようね).Molecular Phylogenetics and Evolution 誌の3月号到着.一般化 Gibbs sampler の元論文は昨年発表されたばかりらしい(応用確率論の雑誌に).

◇ひたち野うしく駅に着いたときにはもうぽつぽつと雨が降り始めていた.

◇車中読書:ウリカ・セーゲルストローレ『社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた』第2巻(2005年2月23日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07132-0)の第14章「科学の本性についての対立する見方」と第15章「論争につけこむ」を読了.60ページほど.とてもおもしろい.前章に続いて,社会生物学批判派(ならびに反IQ運動)を率いたルウォンティンの科学観をさらに分析する.実験科学的な方法こそ「善き科学」の本来のあり方だとみなす彼の(そして批判派の)立場からすると,進化生物学や行動遺伝学で実行されているモデルに基づく立論やさらには統計学的な推論まで含めて「容認されざる行為」という判決を下されることになる.これは,事実関係のレヴェルでの違いなどではなく,認識論のレヴェルでの断絶があったのだと著者は言う.

こうした研究者[社会生物学者ならびに行動遺伝学者]にとって,モデルづくり,統計学,その他は,最終的な目標に達するための暫定的な方法であった.測定は実在の現象に近づくための間接的な方法であった.しかし,批判者にとっては,科学的成功の秘密を握っているのは実験的な科学だけであり,「非実在的な」前提と統計的数式に基づいたモデルではなかった.(p. 482)

グールドもまたこの点ではルウォンティンと同じ歩調を取る.『The Mismeasure of Man』の中で,彼がIQに反対する論拠の核心は ――

統計学的な構成物であるg[一般知能]の「物象化」だという主張を行なった.グールドによれば,gにかかわる問題は,明らかに多次元的な概念である知能を,単一の次元に還元し,さらに,それは人工物であるがゆえに,根底に横たわる物理的実在性を明らかに表していなかったことであるという.グールドがとりわけ嫌悪したのは,「単なる一要因の存在が,それ自体で,因果的な推論のライセンスが与えられると仮定する慣行」だった.(p. 487)

グールドがここで批判している,統計手法としての因子分析(あるいはその延長線上にある共分散構造分析)は,潜在因子に基づく統計的モデリングの手法であって,それぞれの因子が「物象化(reification)」されるかどうかはどうでもいいことだとぼくは理解している.しかし,グールドはそれこそが問題であると言う.統計学を知らないはずがない(というか,大学院生の頃から因子分析に通じていたはず)の彼がそういう発言をする真意がよくわからなかったのだが,ルウォンティンの(ならびに批判派に共有されていた)科学観の文脈のもとであらためて考えてみれば確かによく理解できる(というかそれ以外の反論の立て方はなかったとさえ言える).もちろん,ここで批判された心理学者アーサー・ジェンセンが当然の反論をしていることを著者は見逃さない:

実際には,グールドが「物象化」だと誤解しているものは,任意の領域の内部で観察される関係を説明するために,説明的なモデルや理論を仮説としてつくるという,あらゆる科学に共通の慣行にほかならない.……それならば,グールドは,観察できる現象の因果的な説明に関して仮説的な構成物あるいは何らかの理論的な推論を用いるというあらゆる科学に共通の権利を,心理学が使うことを否定するというのか.(pp. 487-488[ジェンセンからの引用])

批判派は「真の因果関係」(p. 488)を見いだすことに科学の目標を置いたと著者は指摘する.単に,モデルづくりや統計分析では相関関係はわかっても,因果関係には到達できないだろうという見解である.本章の後半で論議されている「還元主義(reductionism)」をめぐるごたごたもまた,批判派が方法としての「還元主義」を存在論としての「還元主義」と同一視したという事実を軸に理解することができると著者は考えている.確かにそうかもしれないね.

第2部の最後にあたる第15章は,社会生物学論争を通して,「最適化戦略家」たる科学者たちの動機づけと収穫物を探っている.推進派にしろ批判派にしろ,科学者たちはその論争を通して「何を得た」のかという点について,著者は推進派は「科学」の領域で利益を得たのに対し,批判派は「道徳」の領域で社会的認知を獲得したと結論する.

◇神保町にたどり着いたときはもう本降りになっていた.東京堂書店に危うく引きずり込まれそうになったが,正気に戻って,薬膳カレー〈じねんじょ〉神保町店にて日替わりカレーをば賞味.その後,駿河台にてとある所用をすませる.さらに,その後,飯田橋に移動し,進化学会事務局にて,急な幹事長業務引き継ぎのための打合せをしばし.とりあえず,東北大での大会実施のための資金的なこととか,学会書選考のこととか,会計監査実施のこととか,学術会議関連のこととか,諸事いろいろと.※空中給油のようなアクロバティックなことをしなくてもすみそうなのは幸いだった.

◇夕方,常磐線に揺られてつくばにもどる.雨脚強し.夜遅くなって,雨は上がったが,今度は濃い霧が立ちこめてきた.明朝は視界がゼロになるのではないか.

◇お疲れさん,お疲れさん.>ぼく.

◇本日の総歩数=16981歩[うち「しっかり歩数」=6548歩/58分].全コース×|×.朝△|昼○|夜○.前回比=+1.0kg/−0.2%.


10 maart 2005(木) ※ 鉄路の際の籠原の朝

◇始発電車のレール音で目覚める午前5時.まだ夜明け前.

◇今日は午前9時から午後3時までの講義が予定されている.講義スライドの確認とチェック.午前中は,まずはじめに統計モデル選択をめぐる「単純性」問題に関する話題から始める.尤度やベイズの定理について説明した上でAICに基づくモデル選択基準に進み,予測確度としての単純性基準に到達する.その後は,昨日の実験計画法の分散分析における線形統計モデルを復習し,一般化線形モデルへの橋渡しをする.並行して,多重比較の問題にも言及し,いくつかの補正方法(ボンフェローニ,ホルム etc.)を説明する.多変量解析と計算統計学について話題提供して,全体を終える ―― という予定.

◇さて,8時半に試験場からの迎えが来るので,そろそろ荷物をまとめないと.今日は天気が下り坂で,雲がしだいに厚くなってきた.

◇午前9時ちょうどから講義開始.予定通り,モデル選択論議からはじまって,一般化線形モデルへの導入とデモンストレーション.昼に〈幸楽〉にてラーメンを喰って,午後の講義.多重比較における危険率(Type I Error)の補正方法に関する説明.続いて,計算機統計学の原理とRを使ったデモンストレーション.最後に多変量解析について述べて,時間通り午後3時に全コースを終了した.今回は,お話が中心だったが,次年度はR実習を中心に,新たな研修計画を組みたいとの相手方の意向だ.

◇15時44分籠原発の上野行きに乗る.春めいた日射しが燦々と(予報はずれ〜).いまは吹上あたりを通過中.――

―― 上野でそそくさと常磐線に乗り換え,リーズナブルな時間帯につくばに帰還する.

◇車中読書:ウリカ・セーゲルストローレ『社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた』第2巻(2005年2月23日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07132-0)の第12章「社会生物学論争の中のハムレットたち」と第13章「伝統の衝突」を読了.70ページほど.第1部での historiography を踏まえた第2部は,なかなか読み応えのある章が多い.第12章では社会生物学論争の中で“微妙な”立ち位置にあった研究者たちのエピソード.続く第13章では,一方の社会生物学推進派が「ナチュラリスト」的伝統を背景に,現象に関するモデル化や仮説づくりのもつ発見的意義を積極的に認めようとしたのに対し,他方の社会生物学批判派がむしろ旧来的な「実験主義」的伝統をバックにしてナチュラリスト的「ええかげんさ」を叩くという構図が見られたと指摘する.

ウィルソンにとって重要なのは,モデルが現実の「真の記述」であることではなく,モデルの予見的な力(あるいは「適応性」)だった.けれども,ルウォンティンにとっては,モデルは現実を「正しく」記述していなければならなかった.…… このように,ウィルソンとルウォンティンの衝突は,普遍主義者のレヴェルで起こったのであり,そこには相互理解のためのなんらかの基盤を提供するような共通のナチュラリスト精神 ―― あるいは,この問題に関しては,批判精神 ―― は存在しなかった.(p. 458)

著者が指摘するこの「ナチュラリスト的アプローチと実験主義的アプローチの対立」(p. 463)は,社会生物学をめぐる推進派と批判派との間に,ほとんど認識論的な断絶に近い状況を生んだ ――

かくして,IQ論争および社会生物学論争の基盤の上に形成された二つの学者陣営は,事実に関する知識,当然とされる前提,そしてメディアといった事柄に対する態度について,実質的に,二つの異なる世界で別に生きることになったと言うことができる.(p. 479)

◇形態測定学関連で連絡ふたつ:1)筑波大学数学系の月例談話会での morphometrics 講演依頼.了解しましたー.;2)先日,企画が通った統計関連学会大会(広島)での,形態測定学シンポジウムの趣意書を提出してほしいとのこと.

◇終わった集中講義の成績に関する問合せひとつ:ひょっとしてその学生さんのレポートがメール事故で届いてなかったのではないかしら.※あとでチェックします.

◇なんだかとっても憑かれたなー,じゃなくって,疲れたなー.ぐーぐー.

◇本日の総歩数=11030歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


9 maart 2005(水) ※ 彩の国へお出かけ

◇午前4時に起きる.気温は2.9度.もつべき荷物をまとめて,まずは研究所へ.手渡すべき本を仲介者に依頼し(ドアノブに引っ掛ける),昨夜連絡のあった〈まりまりワークショップ〉のさらなる追加改訂を仕上げた上で,ひたち野うしく駅にたどりつく午前6時.高崎線の籠原駅までは2時間あまりに乗車時間.ではでは.

―― 午前7時過ぎに上野駅に到着.Beck's にて軽く朝食.車中では,当面の課題本であるM. L. Taper and S. R. Lele (eds.)『The Nature of Scientific Evidence: Statistical, Philosophical, and Empirical Considerations』(2004年,The University of Chicago Press, ISBN:0-226-78957-8)を読み進む.まずは「Part 1: Scientific process」から.統計学の基本的な「ものの考え方」を概観する.知っている人にとっては必修項目ばかりなので,pedagogical な目的での講義アイテムを確認をする上で役に立つ.

たとえば,第1章「A brief tour of statistical concepts (Nicholas Lewin-Koh, Mark L. Taper, and Subhash R. Lele) 」は,Ronald A. Fisher の性比理論をテストするという課題を提示し(Guinea pig のデータ),それを〈Fisher's P-value test〉,〈Neyman-Pearson test〉,〈Bayesian test〉,そして〈尤度比検定〉という4つの観点からのテスト結果を導出する.たとえまったく同一のデータに対して統計的検定をする場合でも,テストの方法が異なれば結果がまったく異なるという状況を読者に確認させる.具体的にいえば,帰無仮説 H0:「性比0.5」と対立仮説 H1:「性比0.45」を設定したとき,与えられたデータのもとで,Fisher test と Neyman-Pearson test はH1を受容するが,Bayesian test と尤度比検定は逆にH0を受容する.

本書全体を通じての基本的主張のひとつは,統計学的な「ものの考え方」として,Fisher test や Neyman-Pearson test のような「decision making」な姿勢でもなく,また Bayesianism のような「belief-oriented」なスタンスでもない,第三の「evidence-based」なアプローチを推進しようという点にある.あとに続く章では,証拠(evidence)を踏まえた尤度基準のもとでの仮説(モデル)の相対的サポートという考え方をめぐって論議が交わされるのだろう.

―― あ,もうすぐ籠原に到着だ.

◇いかにも「地方」らしい風情の駅前で喫茶店に入り,メールチェックなど半時間ほど.研修担当の人に駅まで迎えにきてもらって,車で10分足らずのところにある試験場に到着.

◇午前10時から講義開始.受講生は30名ほど.定石通り統計学概論(曼荼羅話)からはじまって,実験計画と分散分析についての講義(たまにRデモを交えて)に進む.昼飯は〈元祖・田舎っぺ〉にて,コシありまくりのざるうどんをば.午後も分散分析とそれに関係する線形モデルの仮定(正規性と等分散性)について話をする.あっという間に午後5時の終了時刻.

◇6時から籠原駅前の〈とんふみ〉にて懇親会.とんでもなく多量のアルコールを摂取した気配あり.れろれろろになって,駅反対側の宿泊先〈ホテル City Field〉に転がり込む.部屋にインターネット接続のパソコンが完備されていて,快適 ―― という間もなく爆睡.

◆緊急事態発生!(帰ってからがたいへんかも)

◇本日の総歩数=15351歩[うち「しっかり歩数」=1011歩/10分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=+0.2kg/0.0%.


8 maart 2005(火) ※ あまりの春のうららに自発的蟄居謹慎

◇5時半起床.日中はともかくとして,明け方はまだ氷点下の気温.今日もマイナス0.7度.霜が降り,霜柱が立つ.

◇〈解剖学講義ノート〉―― 寺島俊雄著「解剖学講義ノート」(全5巻)が,神戸大学電子図書館から順次公開されている.骨やら肉やら神経やら.※メルマガ『ARG-210』から得た情報.

【欹耳袋】―― 近刊情報:山下清美・川浦康至・川上善郎・三浦麻子『ウェブログの心理学』(2005年3月8日刊行予定,NTT出版,ISBN:4-7571-0149-X ※→目次).※やっぱり読むしかないでしょうね./和田幹彦(編)『法と遺伝学』(2005年3月下旬刊行予定,法政大学出版局,ISBN:不明).※法学と進化生物学との関わりについての論考が集められていると予想される.

◇とても天気がよくて,とても暖かくて,こんなコワイ日に外出するのはとんでもねえこった.ひたすら蟄居謹慎を決め込む.

◇ドロナワでばたばたしましたが,JST長谷川眞理子ワークショップ〈進化生物学と人間観〉の報告書は予定された原稿がすべてそろい,とくに大きな問題がなければ,印刷段階へと進めることができます.130ページくらいの分量になるでしょう.

―― 午前いっぱいかかって,連絡のあった修正点などを InDesign に反映させる.文字化けやら素材の使い回しに苦労したのは,またもや Word と PoorPoint.もうかんにんしてくれえと言いたい.とくに,ワードで組版されたものは話にならんので,いったんテキストファイルにしてから,もう一度 InDesign に配置するしかない.厄介なのはワードに張り込まれた画像でして,あれこれ苦労したもののどうしてもコピーすることができず,やむを得ずワードからプリントアウトして,それをスキャンし,そのjpeg画像を InDesign に読み込むという迂遠な手順を取るはめに(もっと賢明な方法があったのかしら).まあ,喉元過ぎてしまえばどうでもいいことなので,そういうごたごたはさっさと記憶の表層からから消えつつあるのだけれど.

―― 数年前には〈パシフィコ横浜・魔宮の伝説〉などというなかば“都市伝説”と化した某イベントが JST がらみの事業として開催されたりしたわけですが,よもやこのぼくがそれと同じ事業に関わることになろうとはね.ロジスティクス担当者は偶然にも〈魔宮の伝説〉をとりしきった人でもあったので,それとなくいろいろと訊き出したりして…….

◇明日から2日間は埼玉県に出張高座.午後はその最終準備をちくちくと進める.※まあ,本番を何度も経験しているので,致命的トラブルに遭うことはないと思うけど.

◇今月末に予定されている「東海道中膝栗毛」の宿を確保する.静岡(28日:植物病害生態研究会)を起点にして,京都(29日:移動日),そして大阪(30日:生態学会自由集会)という予定.つくばに帰るのは31日になる.

◇夜,いつものようにぱたぱたと旅支度をする.そしてそそくさと早寝.

◇本日の総歩数=7605歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/0.0%.


7 maart 2005(月) ※ いきなりの「春」到来で

◇午前5時起き.きりきりと冷え込んで凍結している.きっと氷点下なのだろう.晴れわたる明け方.

―― と思ったら,自動車のドアがいきなり開かなくなっている.取っ手がぶらぶら.ロック部分がどうやら破損したようだ.他のドアは問題ないのだが,運転席側のドアだけ外から開けることができない.急遽,修理工場に電話する.朝のうちに調べてもらったら,破損パーツの部品交換が必要になるらしい.入荷するまでは,ちょっとだけ不便なカーライフが続く.

◇日が昇るにつれて気温急上昇.ぽかぽかと暖かいのはいいのだが,飛散する機会をうかがって手ぐすね引いていたにちがいない花粉軍団の総攻撃は間近かと思うと憂鬱になる.昼前の気温は8度台.午後はきっと10度を越えるだろう.

◇〈理科教育メーリングリスト〉が今月末で閉鎖されるとのこと ―― 1995年に開設され,今年で10年の節目を迎えての解散か.EVOLVEBIOMETRY と同年代だったのですね.とんでもなく大所帯で,日々恐るべき数のメールが活発に飛び交っていたようだが(未加入のぼくはたまーに過去ログを覗いていただけ),管理人氏はさぞかしたいへんだっただろうなとつい感情移入してしまう.

ただし,できることなら「過去ログ」は何らかの形で「共通財産」として存続させておいてほしいですね.機能するメーリングリスト本体がたとえ絶滅したとしても,そのコミュニティが10年という時間の間に遺した「ログ」は,lineage としてメーリングリスト本体とは別の価値があるとぼくは考えます.メーリングリストを廃止するからといって,過去ログもそれと同期させて閉鎖してしまうというのは早計だろうと感じます.たとえば,Robert J. O'Hara が1993〜1997年にかけて運営していた〈Darwin-L〉という進化生物学メーリングリストは,ML本体はとっくに閉鎖されたのですが,過去ログはアーカイヴとして管理され,いまも公開され続けています(利用者は少なくないようです).電子コミュニティとその過去ログとは,必ずしも「運命共同体」として一括処理されるのではなく,それぞれ「別々の運命」をもっていてもいいのではないかと思うのです.

◇ぽかぽか陽気の昼休みに歩き読み(気温は10度近くまで上がる):ウリカ・セーゲルストローレ『社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた』の第2巻(2005年2月23日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07132-0)に入る.第二部〈社会生物学論争を読み解く〉の第10章「批判者たちの心のうち」と第11章「科学の庭園における攻防」読了.60ページほど.社会生物学の批判者たち(「人民のための科学」グループ)の批判の理念と戦略についての論議.とくに,彼らが陥った「道徳主義的誤謬(moralistic fallacy)」が描かれていて興味深い.道徳的・政治的な誤りは必然的に科学的にも誤っているにちがいないという先入観が批判者側に犯させた過誤.とくに,社会生物学者を「プランター(植える人)」,それに反対する批判者を「ウィーダー(抜き取る人)」と性格づけることにより,著者はウィーダーに割り振られた“消防士”的役割あるいは“警察官”的役回りをあぶりだす.

◇〈ごっつりと読み込む〉―― クニエ姉さま,そういう自虐快感的読書に飢えていないわけではないのですが,なんせこの年度末はいろいろと立て込んでいましてなあ.〈竹中明夫・優先ランキング〉ていえば,「おもしろそう」で「大事」で「社会的信用にかかわりそう」な事どもがずらっとならんでいるのでねー(それらの間での fine-tuned ranking があらまほしう思う今日この頃).

でもって,今月の「自虐本(和書)」一覧:ウラジーミル・ナボコフ,エドマンド・ウィルソン/サイモン・カーリンスキー(編)『ナボコフ=ウィルソン往復書簡集 1940−1971』(2004年12月20日刊行,作品社,ISBN:4-87893-485-9).読中.[約500ページ]./竹沢泰子(編)『人種概念の普遍性を問う:西洋的パラダイムを越えて』(2005年2月20日刊行,人文書院,ISBN:4-409-53030-5).読中.※つい加虐的になったりして…….[約550ページ]/ウリカ・セーゲルストローレ『社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた』第2巻(2005年2月23日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07132-0).※本日から下巻に突入.[約800ページ]/ジョゼフ・ブレント『パースの生涯』(2004年12月5日刊行,新書館,ISBN:4-403-12017-2).※溜まったbk1ポイントでもらいましたです.[約700ページ]/香内三郎『「読者」の誕生:活字文化はどのようにして定着したか』(2004年12月10日刊行,晶文社,ISBN:4-7949-6640-7).※まあね,衝動買いみたいなもんでして.[約550ページ]/ピーター・アトキンス『ガリレオの指:現代科学を動かす10大理論』(2004年12月31日刊行,早川書房,ISBN:4-15-208612-2).※いただきものですので,ありがたく.[比較的薄くて450ページあまり]/鹿野忠雄『山と雲と蕃人と:台湾高山紀行』(2002年2月22日刊行,文遊社,ISBN: 4-89257-037-0).[軽〜く450ページ].

―― 時間をちょうだい,お願いっ.

◇夜は,あさってから〈埼玉県農林総合研究センター〉で開催される統計高座のための準備をする.まる2日間(15時間)なので,大学の非常勤講義(1コマ分)に相当する生物統計学の集中講義だ.試験場の場所は高崎線の籠原駅近く,国道17号線沿いとのこと.

Rを使った演習をする予定なので,その手順を確認しておく.

◇本日の総歩数=12355歩[うち「しっかり歩数」=6398歩/55分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.5kg/+0.1%.


6 maart 2005(日) ※ じわりじわりと進捗中

◇午前5時にいったん目が覚める.しかし,ぐずぐずとまた寝入ってしまう.次に目覚めたのは午前7時.変拍子の無調音楽みたいなウィークエンド・ライフですなあ.天気は持ち直しているようだが,北風強し.啓蟄にはほど遠い寒気だ.

◇先日インタヴューを受けた『理戦』編集部から,テープおこしされた掲載原稿がメールで送られてきた.そのチェックとともに,Panmixia 太田追悼原稿のゲラも読まないといけない.それが今日の仕事.※某依頼ヒミツ文書も書きますからね.

昨日の夜なべ仕事のアウトプットを点検したら,PoorPointからもってきた文書は文字化けやら組版ズレが目立つ(まったく「Poor」なこと,この上なし).いざとなったら,画像形式に変換して InDesign に貼り込まないといけないかもしれない.その作業は明日まわしにしよう.

◇備忘メモ ―― 農環研〈湯浅文庫〉には,『Lansania』というクモ・ダニを含む土壌動物学会誌の1930年前後のバックナンバーが並んでいる(1929[vol. 1]〜1931[vol. 3]).発行元は「蘭山会」で,蘭山会機関雑誌と銘打たれている.「蘭山会」という学会は初めて目にした名前だが,江戸時代の小野蘭山にちなむ会なのだろうか.最近の外来昆虫問題では,ペットとして輸入される生物の寄生虫による在来生物相への悪影響が論議されている.クワガタムシに寄生する「クワガタナカセ」というダニがいるが,この『Lansania』誌には,クワガタナカセの和名命名者(氏名失念)による,クワガタナカセに寄生するカビの論文が載っていた.進化的な意味での parascript は重層的でとてもおもしろい(&難しい)と思う.なんたって系統樹が絡み合う世界だから.

◇くまざわ書店にて:『地球の歩き方・メキシコ['04〜'05]』(2004年12月27日刊行,ダイヤモンド社,ISBN:4-478-03138-X).※そろそろ短期海外逃亡の準備をば.

◇Deborah Cadbury 本 ―― 去年出た『ルイ十七世の謎と母マリー・アントワネット:革命,復讐,DNAの真実』(2004年9月刊行,近代文芸社,ISBN:4-7733-7173-0)の著者デボラ・キャドリーは,数年前に出版された恐竜本『恐竜の世界をもとめて:化石を取り巻く学者たちのロマンと野望』(2001年6月25日刊行,無名舎,ISBN:4-89585-951-7)の著者デボラ・キャドリーと「同一人物」だったのですね.書籍データベースなどではきっと“別人”扱いされているにちがいない.

◇なんだかあっという間に夜になってしまった.よそ見のブラウズ:ウラジーミル・ナボコフ,エドマンド・ウィルソン/サイモン・カーリンスキー(編)『ナボコフ=ウィルソン往復書簡集 1940−1971』(2004年12月20日刊行,作品社,ISBN:4-87893-485-9).書簡集編者による「序文」を読んだだけで,もう十分に錯綜し入り乱れた手紙のやり取りであることが予想される.個人的関心は――

また,ウィルソンは,ナボコフのもう一つの主要な関心領域である鱗翅類学に少しでも関心を持つことのできた数少ない文学者仲間の一人であった.(p. 12)

あたりにあったりする.

◇明日からまた平日に復帰.※カレンダーの曜日と行動実態とが何一つ相関していないなあ.

◇本日の総歩数=12711歩[うち「しっかり歩数」=10083歩/90分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−0.5%.


5 maart 2005(土) ※ にわか徹夜人間の短い昼間

◇そのまま日が変わり,長い夜の始まり.目標ははっきりしていて,昨年晩夏のJST八ヶ岳ワークショップ〈進化生物学と人間観〉の報告書の版下を仕上げることだ.各演者からすでに送られてきた .doc やら .txt やら .ppt やら .pdf などなどの素材を InDesign に配置していく作業.テンプレートをいったん設定してしまえば,単純作業になるのだろうが,それはそれで消耗的.いつもいつも迷苦労粗負徒系のソフトウェアでつくられた文書が悩みのタネでね.PoorPoint 文書なんか「なんかウラミでもあるんかいっ」というほど使い回しがめんどうなのだが,ぜんぶいっしょくたに pdf にしてしまって処理する.pdf自体を割り付けることができるようになって,ほんとうにラクになった.

―― こういう徹夜作業の際には,不意に意識がなくなることがあるので,BGMの選択にはよくよく配慮しなければならない.今夜は自発的マーラー・ツィクルスということで,8番→5番→3番→7番→2番というゴージャスなプログラム.宇宙が鳴り響き,挽歌に打ちひしがれ,春が向こうから近づいてきて,木の芽時の不安定な精神状態に苦しみつつも,力強く復活を決意するというストーリーが実にバッチリではないか(ハンマーで叩きのめされる6番はあえて外した).当然,この時間帯の農環研にはだれもいない[はずな]ので,ボリュームは満開です.眠気も吹っ飛ぶ,Becken 一発.

◇午前5時過ぎにすべての編集作業を完了し,ゲラ用にpdf出力する.まだ原稿が届いていないひとりを除いた分量は全部で100ページあまり.延着分や前書きなどなどをつけると120ページくらいの厚さに仕上がるものと予想される.大仕事も年度末ぎりぎりにやっと山場を越えた.

―― 目次用の html を書いて,各 pdf にリンクする.午前6時過ぎにJSTワークショップの各演者にゲラ完成の通知を出し,各自内容をチェックしてもらうことにする.すべての作業が終わったのは午前7時前.今日は7:00〜19:00まで,農環研全館が停電するので,これ以上の長居は無用だ.とっとと撤収する.間一髪だった.

◇自宅に帰り着いたのは,午前7時過ぎ.空はどんよりしていて,小雨がぱらついている.そのままふとんに直行して,次に目が覚めたのは正午過ぎのことでした.日射しがまぶしい.なんだか日中がとても短い心地.※生活リズムはまったくもって senza tempo だ(へぼな cadenza ad libitum とも).

◇昼下がりにごそごそと起きだして(気分的に不健康なこと),La La Garden まで歩く.北風が冷たい.くまざわ書店にて:ジャン・ルクレール『修道院文化入門:学問への愛と神への希求』(2004年10月25日刊行,地泉書館,ISBN:4-901654-41-1).※中世哲学と書籍文化の母体としての修道院についての本./嶋中労『コーヒーに憑かれた男たち』(2005年1月20日刊行,中央公論新社,ISBN:4-12-003603-0).※コーヒーの名店と言われる銀座〈カフェ・ド・ランブル〉,南千住の〈カフェ・バッハ〉,そして吉祥寺〈もか〉の店主をめぐる物語だそうだ.

◇珈琲といえば ―― この本の舞台のひとつである銀座〈カフェ・ド・ランブル〉には何度か行ったことがある.銀座ヤマハの行き帰りのことだったか,あるいは当時,その近くの高木[元国鉄総裁]事務所の一室で開催されていた生態学勉強会に出かける折りだったか.最近はとんとご無沙汰だ.そういえば,10年ほど前に,森尻純夫『銀座カフェ・ド・ランブル物語:コーヒーの文化史』(1990年3月刊行,TBSブリタニカ,ISBN:4-484-90203-6)を読んだことがある.いまbk1で調べてみたら,店主本人による著書の増補版が昨年出ていることがわかった:関口一郎『銀座で珈琲50年:カフェ・ド・ランブル[増補版]』(2004年11月刊行,いなほ書房,ISBN:4-434-05301-9).

◇珈琲といえば(続) ―― 農環研の書庫の一隅には「寄贈文庫コーナー」があり,そこはいつも人気(「にんき」ではなく「ひとけ」)がない.先日,そこを徘徊していたとき,たまたま〈湯浅文庫〉で長年探していた日本生物地理学会の Transactions である『Biogeographica』の Vols. 1〜3(1930年代末)を発見したのだが,その棚のすぐ裏手に昭和初期の日本の珈琲文化を論じた和書が何冊かあった.手にしたもののすぐに戻してしまったので,どういう本だったかは後の機会に確認しようと思う.

◇生物地理学会の機関誌は,現在は英文誌『Biogeography』と和文誌『会報』のふたつ,だが,かつては Bulletin にあたる『日本生物地理学会会報』と Transactions に相当する『Biogeographica』の二つに分かれていた.農環研〈湯浅文庫〉に所蔵されていた巻には,北海道・大雪山の生物相特集や男女群島の生物相特集など,地域ごとの生物地理に関する特集が組まれていた.内容的には戦前の『Bulletin』とほとんど差異がなく,その後『Biogeographica』が発行されないままになっていることを考えると,『Bulletin』の方に吸収される運命をたどったのかもしれない.現生物地理学会副会長の言にしては曖昧この上ないのがもどかしいのだが,この学会,70年以上の歴史があるのだが,学会としての確たる史的記録を残そうという姿勢が欠けていたせいか,よくわからない部分がいまだにある(いかにも“殿様博物学”らしいことで).まあ,個人的には,大判の『Biogeographica』の現物を手にできたのは幸いだった.それにしてもこの『Biogeographica』はいったい何巻まで出版されたのか(それすらまだ確認できていない).

◇体内リズムが変拍子生活のせいで調子わろし.早々と寝てしまう.

◇本日の総歩数=9445歩[うち「しっかり歩数」=4063歩/37分].全コース×|×.朝−|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+1.1%.


4 maart 2005(金) ※ 粉雪の降り積もる明け方

◇午前5時起床.おお,雪が降っている(天気予報アタリ!).牡丹雪ではなく粉雪で,すでに5センチほど積もっている.午前いっぱいは降り続くとのこと.気温0.1度.気温はやや高めなので,道路は融けたシャーベット状だ.凍結するとたいへんだろうが,今日はきっと大丈夫だろう.※明朝がヤバいかも.

◇エディター仕事なお続く…….Word やら PoorPoint やらの書類をどんどん pdf にしてしまって,InDesign に割り付ける作業.今日中には版下をつくらないとね.

◇よそ見の近刊情報 ―― David Grimaldi and Michael S. Engel『Evolution of the Insects』(2005年6月刊行予定,Cambridge University Press,ISBN:0-521-82149-5).※昆虫全体のわたる系統を論じた本らしい./Michael Ruse『The Evolution-Creation Struggle』(2005年5月刊行予定,Harvard University Press,ISBN:0-674-01687-4).※相変わらず精力的な./Alex Rosenberg『Philosophy of Science : A Contemporary Introduction, Second Edition』(2005年4月刊行予定,Routledge,ISBN:0-415-34316-X [hbk] / ISBN:0-415-34317-8).※どういう意味で「Contemporary」なのか気になる./Eva Jablonka and Marion J. Lamb『Evolution in Four Dimensions : Genetic, Epigenetic, Behavioral, and Symbolic Variation in the History of Life』(2005年5月刊行予定,The MIT Press,ISBN:0-262-10107-6).※またもこのペアでの出力か./Michael Begon et al.『Ecology : Individuals, Populations, and Communities, Fourth Edition』(2005年5月刊行予定,Blackwell,ISBN:1-4051-1117-8).※さらに「物理的兇器度」アップ?! /C. U. M. Smith and Robert Arnott (eds.)『The Genius of Erasmus Darwin』(2005年1月刊行,Ashgate Pub.,ISBN:0-7546-3671-2).※エラズマスの人気衰えず.

◇新着誌 The Quarterly Review of Biology,vol. 79, no. 4(2004年12月刊行).Stephen J. Gould による免疫系進化に関する共著論文が載っている???と思ったら,医学系の another グールドさんでした(ミドルネームは同じではないのかも).

◇午前中,ずっと雪が降り続く.湿った牡丹雪.

◇雪のようにしんしんと降り積もり,それでいて雪のようには融けてくれない厄介なことども ―― 1)もう独法の研究員に講義を依頼するのは止めた方がいいんじゃないですか?(マジでそう思う)※ヴォランティア出講では積極的な動機づけはもうムリでしょう.2)今月末に静岡で開催される〈第8回植物病害生態研究会〉(2005年3月28日,静岡グランシップ)の講演ハンドアウトの作成依頼.それに続く生態学会大阪大会での自由集会〈デ−タ解析で出会う統計的問題 — 検定かモデル選択か〉(2005年3月30日,グランキューブ大阪)のネタもそろそろ揃えないと.3)統計関連学会連合大会(2005年9月12日〜15日,広島プリンスホテル)でのシンポジウム企画案の提出を依頼される.今日中に.※案をつくるだけとはいえねえ.4)とある“拘束度”の高い依頼1件.※こちらは少し考えさせていただきますね.

◇たまにはいいこともあったりする ―― おお,ついに発現しましたか! E. coli えらいっ! 誉めてつかわす.

◇昼休み.なお降り続く雪の中をウォーキング.気温1.1度!(さむ……)※ガマン大会みたい.

◇さらなる統計学近刊の嵐 ―― B. Everitt『An R and S-Plus Companion to Multivariate Analysis』(2005年1月刊行,Springer Verlag,ISBN:1-85233-882-2).※多変量解析のR本はあまりないので重宝するかも./R. Nielsen (ed.)『Statistical Methods in Molecular Evolution』(2005年3月刊行予定,Springer Verlag,ISBN:1-387-22333-9).※この手の本がどんどん増えている.

◇午後3時を過ぎて.やっと雪がやんだ.晴れ間がのぞく./明日は農林団地のネットワーク全体がメンテ作業のため止まってしまう.必要なことは今日中にすませないとダメ.

◇広島の統計関連学会連合大会では,〈形態測定学〉のセッションをオーガナイズすることになりました(汗).2時間〜2.5時間枠が使える予定.我と思わん方はぜひ立候補されたし.>アナタ,いかがですか? /もう1件の“拘束度”きわめて高い案件については,速やかに「撤収」する方向で話を進めたい(ぜひ,そーしたい).

◇“お茶”の因果が“病”に報い,可愛そうなは“M岡”でござるぅ〜.まことに御愁傷様でございます.静岡ではよろしゅうに.※あ,ハンドアウト,まだつくってへんやん.これでアウトやあ.[さぶ]

◇午後6時過ぎにいったん帰宅する.自宅に『東京大学学友会ニュース』なる出版物が届いていた.国立大学法人に変身してからというもの,卒業生サービス?がずいぶんとよくなったように感じる.

―― 9時前に再々出勤.今日中に報告書を仕上げないとね.

◇横道に入り込む ―― 浅間山の噴火についての情報をスウェーデンに送る./ソーバー訳本の注文が届いたので発送の準備を完了(週明けに送ります)./〈Bogen〉問合せへの返信.

◇まだまだ夜は長かったりする…….あらあら,日が変わる.

◇本日の総歩数=13905歩[うち「しっかり歩数」=5481歩/50分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=+0.4kg/−1.1%.


3 maart 2005(木) ※ 黙々と登ろうね,文句言わんと.

◇4時半起床.気温−1.1度.3月になったとたんに寒い朝が続いている.この週の後半は雪の予報が.

◇日本生物地理学会大会シンポジウム〈種内動物系統地理学の新展開 — 分子データを用いてわかること/わからないこと〉のページを更新した.講演要旨と参考文献をアップ.※「nested clade analysis 逝ってよし」という持論をお持ちの方も,「NCA いのち」という方もぜひぜひお越し下さい(2005年4月10日,13:00〜15:00,立教大学).

◇農林水産研究情報センターにてしばし『図書新聞』のチェック ―― 本の本ウィリアム・ブレイズ『書物の敵』(2004年10月刊行,八坂書房,ISBN:4-89694-849-1)は紀田順一郎評(2005年1月5日号:通巻2708号).その隣には,マシュー・バトルズ『図書館の興亡:古代アレクサンドリアから現代まで』(2004年11月1日刊行,草思社,ISBN:4794213530)の井上真琴評(2005年1月5日号:通巻2708号).評者としては実に適材適所でしょうね.やっぱり,『ナボコフ-ウィルソン往復書簡集 1940-1971』(2004年12月20日刊行,作品社,ISBN:4-87893-485-9)は入手しておくべきかも(諫早勇一評.2005年2月12日号:通巻2713号).

◇次年度のフレックス出勤の届出.額面?上は「7:00〜15:30」という勤務時間設定になっていたりする.

◇春の新刊どっと到着 ―― まずは献本[感謝]1冊:小川和夫『魚類寄生虫学』(2005年2月18日刊行,東京大学出版会,ISBN:4-13-070100-2).※専門書なのだが,寄生虫研究者のエピソードいろいろ./見計らい本:August Weismann『The Evolution Theory(2 volumes)』(1904|2003復刻,Thoemmes Press,ISBN:1-85506-965-2).※1世紀ぶりのリプリント.あのテームズ社なので,値段はゴージャスにしめて6万円なり!

◇「系統樹」本も2冊届く ―― Joel Cracraft and Michael J. Donoghue (eds.)『Assembling the Tree of Life』(2004年,Oxford University Press, ISBN:0-19-517234-5).※すごく大判でとても重たい.開催直前にあった〈9・11〉にために延期を余儀なくされたアメリカ自然史博物館でのシンポジウムにもとづく論文集./Richard Dawkins『The Ancestor's Tale : A Pilgrimage to the Dawn of Evolution』(2004年,Houghton Mifflin,ISBN:0-618-00583-8).※700ページほどもある大著.実際に手にするまで,本書が〈系統樹物語〉をテーマとしているとは知らなかった.上の『Assembling the Tree of Life』が系統史の年代記(クロニクル)であるとするならば,この『The Ancestor's Tale』はその〈モノローグ〉化.祖先生物たちの「一人称の語り」で構成されている.また,各章ごとに「舞台」となる系統樹のクレードが描かれている.これってマジにドーキンスの本?

◇ここんとこ「エディター」になりきっています.

◇昼休みの歩き読み.気温7度台(心地よい寒さ).杉田敦『アソーレス,孤独の群島:ポルトガルの最果てへの旅』(2005年1月5日刊行,彩流社,ISBN:4-88202-925-1)を読了.「最果て」ということばがぴったりの本.アソーレス[Açores / Azores]諸島の紀行文を通してポルトガルのリスボンが見えてくる.ということは,同じ著者による『白い街へ:リスボン,路の果てるところ』(2002年2月刊行,彩流社,ISBN:4-88202-734-8)も読みなさいというお告げなのかもね.ここまできたら,ついでにフェルナンド・ペソアにも手を伸ばした方がいいかしら.>びわさん.

ううむ,《陸這記》を読んだら,ますます『白い街へ』を手にしたくなってきたではないか〜.

チャールズ・ダーウィンのビーグル号航海日誌『Charles Darwin's Beagle Diary』(R. D. Keynes ed., 1988年,Cambridge University Press,ISBN:0-521-23503-0)によると,ダーウィンはイギリスに帰り着くほんの1ヶ月前の1836年9月末に,アソーレス諸島のTerceira島に停泊した折に上陸している.しかし,「焼き払われた野山は心地よい光景ではない」(9月20日)とか「見るべきものはほとんどない」(9月21日)という記述からわかるように,アソーレスに対してはナチュラリストとしての関心をほとんど払わなかったように見える.数日後,隣のSt. Michael島(Saõ Miguel島)にも立ち寄ったが,ほんの1時間そこそこで碇を上げ,「then getting a good offing from the land, we steered, thanks to God, a direct course for England」(9月25日)と,心はすでに故国に飛んでいるようすだ.

◇夕刻に突発事態 ―― 科研費の金額をまちがっていたことが発覚し,あわてて業者への善後策の指示と対応に追われる.ああ,申し訳ない.ごめんなさいごめんなさい.

◇夜になって雨が降り出す.夜中には確実に雪が降り,確実に積もるだろうという力強い天気予報官のことば.そーかそーか.

◇ドーキンス『The Ancestor's Tale 』をばぱらぱらと.最節約法に基づく系統推定の説明例として,〈The Canterbury Tales Project〉の文献系図が登場している(pp. 127-131).その後には,最尤法とベイズ法による分子系統樹の推定についての説明が続く.こういう話題がドーキンス本で読めるとは.

◇本日の総歩数=15056歩[うち「しっかり歩数」=6866歩/56分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=0.0kg/+1.1%.


2 maart 2005(水) ※ 弥生三月の登攀計画を立てる

◇午前4時起き.気温−2.0度.JST長谷川ワークショップの要旨集の組版開始.ここしばらくは Adobe InDesign とごく親密な間柄になるだろう.

◇〈generalized Gibbs sampler〉を用いた系統樹探索(PhyCom)―― Molecular Phylogenetics and Evolution, 34(3): 459-468, 2005. Mark A. Ragan さんたちのグループによる論文(「Sampling phylogenetic tree space with the generalized Gibbs sampler」→要旨).要旨を見るかぎり,単にベイズ法(MCMC)による系統推定にのみ適用しようということではなく,最尤法や最節約法にも適用できる系統樹探索の新しい方法として〈generalized Gibbs sampler(GGS)〉を提唱しているようだ(PHYLIP の DNAPARS と速度比較してもなあという気がするが).

―― GGSについては:J. S. Liu and C. Sabatti (2000). Generalized Gibbs sampler and multigrid Monte Carlo for Bayes computation. Biometrika, 87: 353-69. こういう「一般化」っていろいろなバージョンがあるのだろう.尤度抜きのMCMCという「一般化」を提唱した研究(Paul Marjoram et al. (2003), Markov chain Monte Carlo without Likelihoods. PNAS, 100(26): 15324-15328)もあるしね.

◇朝からこまごま ―― 計量生物学会ニュースの配布方法についてのやり取り.基本的にメール添付でファイルをやり取りするのは止めた方がいいだろうという意見をあげる.トラフィックへの負担・受け手側の不便・セキュリティ上の問題の3点で.※その代わりに学会サイトに置いて各自がダウンロードすればいいでしょう./農林水産研究計算センターの年度末利用報告書をオンラインで申告する.完了.|今月初めから計算センターのネットワーク・サービス・システムが更新された.ウェブ・メールもずいぶんと使いやすくなるそうだ.『計算センター速報』(65号,2005年2月22日発行)に詳しく書かれている./予算執行に関わる書類(納品書・アップデート書類など)を事務に提出完了./10時半からグループ内会議.今年度の業績報告は月末までに提出.昇格申請書類も月末まで(また年中行事かいな).また仕事の堆積量が増えたぞ.

◇昼休みの歩き読み.今日も風が冷たいが,陽射しは暖かく感じる.竹沢泰子(編)『人種概念の普遍性を問う:西洋的パラダイムを越えて』(2005年2月20日刊行,人文書院,ISBN:4-409-53030-5)の第I部:〈総論〉の論考・「人種概念の包括的理解に向けて」(竹沢泰子,pp. 9-109)と第V部:〈ヒトの多様性と同一性:自然人類学からみる「人種」〉(pp. 435-514)を読了.総論はこの手の本ではよくある「社会構築主義」がそこかしこに顔をのぞかしているが,そういう“雑音”をすべて排除してしまえば,けっこういいレヴューになっているかもしれない(批判的に読むべし).ただし,総論全編を通じて「分類」と「系統」がごっちゃになっていて,この点については著者の発言を真に受けてはいけないと感じた.たとえば ――

「人種」は,近年その生物学的実在性が否定され,社会的構築物にすぎないという知見が浸透してきた.(p. 14)

と断言されている.“本質主義”を叩く前半はよく見られるスタンスなのでまあいいとして(ほんとはよくないけど),それが一足飛びに社会構築主義に直結するというのは著者の単なる勇み足だろう.

―― また,同じ著者は,人種をめぐる「分類による暴力」(p. 79)から解放されるためには:

つまり,分類の根拠となる共通性・類似性をつねに多元的に模索すること,換言するならば,境界線を固定化させず,攪乱させること,それがつねに見る側の角度や次元によって揺れ動くものであると意識化すること――そこに分類が内在的にもつ暴力に抗うひとつの鍵が隠されているように思えるのである.(p. 78)

と言う.そうかなあ? 分類はヒトの意思でどうにでもなるという主張は根本的にまちがっているだろうとぼくは思います.著者は何か考え違いをしているのではないかな.

この著者の「分類」に関する見方は割にはっきりしている:

人種にせよ集団(population)にせよ,そこにはらまれる最大の問題は,そもそも分類という行為自体が内在的にもちうる矛盾と暴力である.分類とは人間の業であり,回避不可能である,そして分類を「人種」のように目に見える外見上の違いにもとづいておこなうのは人間にとって自然の帰結である,という考え方がある.…… しかし本当にそうであろうか.ここでアプリオリとされているのは,視覚的認知分類が分類に先行するという発想であるが,そうではなく,分類があってそのレンズを通して認知しているという考え方も成り立つはずである.(p. 77)

ヒトによる認知分類が“人種”というヒトの分類にもあてはまるだろうという選択肢は何の根拠もなくアプリオリに排除されている.500ページを越えるこの厚い論文集のどこにも[まだ全部読んでいないけど],分類の認知心理的基盤を論じた章がないというのは実に印象的で,その欠落は多くのことを物語っている.「視覚的認知分類が分類に先行する」というのは認知心理学での多くの研究成果の蓄積があるとぼくは理解している.したがって,対立的説明としての「分類があってそのレンズを通して認知している」という著者の見解は,単に仮定されるべきことではなく,それを支持する何らかの論拠が必要だろう.しかし,それはアプリオリに提示されているだけであって説得力がない.

―― さらに,この著者は,系統推定について奇妙なことを言い続ける:

つまり系統樹やクラスター研究での遺伝的差異の発見とは,本来,連続体である人間の多様性のある断片に名前をつけ,別の箇所の断片と比較して,その間の差異を確認するという作業なのである.(p. 72)

系統樹はさまざまな遺伝子座にもとづく数値の平均値を基準とし,種分化を推測するにすぎない.平均値をとることにより多元的な近縁関係が一次元に還元される危うさを示す事例である.(p. 74)

本来文化的社会的価値とは無関係であると思われている科学も,結果の社会的な解釈や意味づけだけではなく,その出発点においてすでに,多分に文化的社会的構築物の影響を受け,束縛されているという事実をも直視する必要があるのである.そして人間集団間の遺伝学的差異を強調するのではなく,人間集団間の遺伝学的同一性や差異の少なさにもっと関心が注がれてよいのではないだろうか.(p. 76)

だからあ,系統推定がクラスタリング(「人種」分類のような)とはちがって,ある基準に基づく歴史推定であるという基本的なことに加えて,系統樹には系統的な意味での差異と類似がどちらも含意されていること,そして系統推定とはさまざまなノイズを含むデータのもとで対立する系統仮説間での選択をすることがわかっていれば,上のような誤解は公表される前に訂正されていたのではないだろうか.

―― ということで,こういう“汚れ”をぜんぶ拭き取ってしまえば(笑),“人種”をめぐる現代的論議の枠組みが浮かび上がってくるように感じる.

◇実にタイムリーなことに,“分類”をめぐる認知心理学的カテゴリー化を論じたお口直し本がアマゾンから届いた:Susan A. Gelman『The Essential Child : Origins of Essentialism in Everyday Thought』(2003年,Oxford University Press,ISBN:0-19-515406-1).心理学的本質主義(psychological essentialism)の由来を分析している.もちろん“人種”もまた認知カテゴリーの対象であることは明らかで,この本にも引用されている Lawrence A. Hirschfeld『Race in the Making : Cognition, Culture, and the Child's Construction of Human Kinds』(1996年,The MIT Press, ISBN:0-262-58172-8)は“人種”カテゴリーの認知心理的由来を論じる上で避けては通れないだろう.

◇生物地理学会シンポジウムの講演要旨がすべてそろった.明朝に公開しよう.Alan Templeton の提唱する「nested clade analysis」が今回のシンポの方法論的共通項といえるので,各演者にはこの「共通話題」に関して何らかの“総論的言及”をしていただく必要がある.この点は連絡しておかないといけない.

◇本日の総歩数=17597歩[うち「しっかり歩数」=9216歩/79分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.2kg/+0.1%.


1 maart 2005(火) ※ 春の気配の土石流が過ぎ去って

◇午前3時起床.即,研究所に出勤.気温−1.9度.よく晴れて寒い.メーリングリストに月例アナウンスを流し,ゴミ化したアドレスを一掃処分する.千人を越えるような大所帯になると,死んだ[と判断される]アドレスをどんどん掃き集めて捨てないと,エラーメッセージがあふれかえってしまう./その後,会計入力システムを立ち上げて,文房具類とかコンピュータまわりの消耗品(iPod shuffle も消耗品ねっ)を発注して,20万円あまりの残金をほぼ使い果たすことができた[ようだ].おつりは「1909円」.お金関係の雑用はこれにておしまい[かな].主だった事務書類書きもこれにておしまい[にしたい……].

◇イタリア語の体系学史本 ―― M. Zunico and M. S. Colomba『Ordinando la Natura: Elementi di Storia del Pensiero Sistematico in Biologia』(1997年,Editore Medical Books, Palmero, 156 pp., ISBN:88-8034-064-6).※『自然を秩序化する:生物学における体系学的思想史入門』とでも訳せばいいのかな.生物体系学史を論じた単行本はあまりないので,心してチェックするようにしている.英語圏やドイツ語圏,フランス語圏の情報は比較的入手しやすいのだが,それ以外の言語エリアになるとどうしても漏れ落ちが多くなる.出版元〈Editore Medical Books〉も初めて見る名前だし.※医学系の出版社だからしかたないか.

本書の著者 Mario Zunino からたどって(昨年,Cladistics誌に Daniel Rosa の hologenesis に関する記事を書いた),イタリアの理論生物学会〈Associazione Italiana di Biologia Teorica〉とその機関誌『Systema Naturae: Annali di Biologia Teorica』にたどりついた.Giuseppe Sermonti というなつかしい名前も見える(『Rivista di Biologia』誌はその後どーなったんだろう?).

―― 以下,備忘録:Boncinelli Edoardo『Le forme della vita : L'evoluzione e l'origine dell'uomo』(2000年,Einaudi,ISBN:8806151959)./P. Omodeo et al. (eds.)『Il problema biologico della specie』(1988年,Mucchi)./Continenza B. & E. Gagliasso (eds.)『Giochi aperti in biologia : Una riflessione critica su adattamento, struttura, specie』(1996年,Franco Angeli)./Alberto Mario Simonetta『 Breve storia della biologia : Dalle origini all'inizio del XX secolo』(1994年,Camerino,408pp.)./M. Zunino M. and A. Zullini『Biogeografia : La dimensione spaziale dell’evoluzione』(1995年,CEA Ambrosiana,370 pp.,ISBN:8840813039).

◇竹沢泰子(編)『人種概念の普遍性を問う:西洋的パラダイムを越えて』(2005年2月20日刊行,人文書院,ISBN:4-409-53030-5)の目次を掲載した.自然人類学的には「否定」されたはずの“人種(race)”がなぜ陰に陽にいまなお影響を及ぼし続けるのか ―― 認知心理学系の章がひとつでもあればいいのだけれど(ダメっぽい気もするのだが).まだブラウズしている段階です.

◇日中は晴れているものの気温はぜんぜん上がらず.午後4時に5.9度.寒い.

◇お,麗面人ご夫妻,またまた来日ですか.

◇JST長谷川ワークショップの報告書版下は今週中に仕上げる予定.原稿はほぼ集まった./JICAから例年通り統計学の講義依頼.今年もキューバ特設コースを担当してほしいとのこと.4月4日の講義予定.※もう新年度の仕事が積もり始めている.

―― その新年度早々の仕事の一つ:日本生物地理学会大会シンポジウム〈種内動物系統地理学の新展開 — 分子データを用いてわかること/わからないこと〉の演者・演題・要旨を[部分]公開した.日時は2005年4月10日(日),13:00〜15:00.場所は立教大学(池袋).最近の分子生物地理学に関心のある方はぜひご来場くださいませ.

あ,尻叩いているわけではありませんので(ホンマか),動転なさいませぬよう.※でも[要旨未着]とか書かれるとアセるわなあ.[ワタシってとってもイケズ...]

◇帰宅したら,赤十字血液センターから先日の献血の報告が届いていた.今回とくに引っかかるような数値は出なかった.※しかし油断してはいかんのだ.

◇本日の総歩数=10091歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.7kg/+1.0%.


--- het eind van dagboek ---