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日録2003年7月
31 juli 2003(木)
・またも早朝に起きてドロナワ.学習能力なし.とほほ.
・信州大の井上健さんが,サハリンの最北端で植物調査をしていて,高圧電線に触れて感電死との新聞報道.昨年の信州大学での非常勤講義のおりに,セミナーの司会をしていただいたことを思い出した.それにしても,フィールド調査で遭難する研究者が多い.惜しいし,悲しい.
・国内旅行用トランクに着替えを詰めて,パソコンを放り込んで,OHPの束を投げ込んで,道中本をセレクトして――さあ,出発〜.
・梅雨明けしていないくせに,日射しが強くて腹が立つ.行きの常磐線では,ずっと放置してあった『系図が語る世界史』を読み進む.系図なんぞは「社会的構築」だと言いたげな論者が多いようだが,取り上げられている過去の系図学者たちはもっとリアリストが多いぞ.
・ビッグウィング5階にある銀座ライオンで,昼間っからヱビスビールなんぞを飲んだりして....ええ気持ちぃ....ありゃ,あっという間に福岡空港じゃん.『系図が〜』読了→引き続き,『アナロジーの罠』を読み進む.ブーヴレスさん,ほとんど匙を投げているふうに読めるんですけど.さくさくと切り込んでくれて,とっても爽快です.
・祇園のホテル・スカイコート博多にチェックイン.さすが暑いねえ.たまらんねえ.会期中,ずっとこんな天気だったら,どこかでへばってしまいそう.
・荷物をほどいて,一休みしてから,天神に出撃.ま,ご挨拶みたいなもんですな.こらっ,丸善なんかに立ち寄ってどーするっ.なにを新刊を漁ったりしているっ.こら,そんなイケナイ本を手にしてどーするんだっ.なぜレジに並んだりするんだっ.あ〜あ,お金なんか払ったりして,あ〜あ.てなわけで,『欧文書体百花事典』(郎文堂)ゲットでーす(ぐふふ).こんな電話帳みたいな本,持ち歩くのかしら(汗).続刊として『和文書体百花事典』が構想されているそうだ.印刷史とか活字史ってとってもイケナイ世界みたい.
・天神西通りを散策して,岩田屋で食材を少し買い出しして,そのままホテルに帰還.今日はおとなしくワインとパンとチーズの夕べ.
・本日の総歩数=15746歩.
30 juli 2003(水)
・朝型がまたまた行き過ぎて,午前2時に出勤.雨がしとしと.関東の梅雨明けは8月にずれこむそうな.
・山本義隆著『磁力と重力の発見』は,著者の経歴(東大全共闘議長→大学中退→駿台予備校教師)とはまったく無関係に,読んでおもしろい本だと思う.どこかのメディアできっと著者のキャリアに絡めた書評が出ると予想していたが,案の定でしたね.書評は人物評であってはならないはずで,著者の個人的な経歴とかキャリアは二義的なことに過ぎないと思う.ましてや,書評者の私的経験に絡めて書評するというのは,ぼくには興醒めです.そういう「内輪受け」(あるいは「特定の世代受け」)をかまされたのでは,埒外の読者は読む意欲を喪失します.本はその内容で勝負してほしいし,書評は第一義的に本の内容にこだわってほしい.この本は,そういう世代限定的情緒を越えて,読む愉しみを与えてくれる本だと感じました.
・同じ山形浩生さんの同じ本の別書評は,たいへん好ましい.こういうチャーミングなスタイルは,ぼくの好み.1000ページの本でも迷わず読みたくなる.それにしても,朝日新聞のはいったい何だったのでしょう?(想定される読者層の世代的感性期待値を考慮したということか...)
・またも,ばたばたと講演資料をかき集める.もっと落ち着いてやれへんのか,と言われましてもなあ....
・Hennig XXII 事務局から大会参加費の領収書が郵送されてきた.距離的に離れてしまうと気分的にも遠く感じられる.デジカメで撮ったマンハッタン写真集もそのうちアップしたいのだけれど,時間的にも精神的にも余裕なし.九州から帰ってきてからまとめて整理しましょ.
ストランド書店の謎――日本にいるときに,このマンハッタンでは超有名な書店に関する情報を集めた.すると,どこのサイトでも【8 miles of books】つまり「8マイルにも及ぶ本」というキャッチフレーズが出てくる.実際,ストランドの店内で配られている栞とかパンフレットにもその文言が載っていた.と・こ・ろ・が,帰国してデジカメ写真をブラウズしていたら,店頭の頭上を飾る真っ赤なアーケード?には,確かに【16 miles of books】(→証拠写真:208KB)と映っている.ひょっとして蔵書量が「8マイル→16マイル」へと2倍になったということか? マンハッタン距離にして3ブロック離れたところにはアネックスはできるは,アート関連書だけの部門もできるは,とさらに成長し続ける,ストランド.おそるべし.
・ポスターをぱたぱたと印刷し,OHPをばさばさとかき集め,必要なソフトをぽんぽんとインストール.はい,おしまいっ.あとは野となれ――
・本日の総歩数=9473歩.
29 juli 2003(火)
・今月末締切のGTIつくば会議の講演要旨を提出.いったいどれだけの参加者があるのか,予想できない.ワルイ元締から電話があり,発表するかどうか打合せ.ぼくはすでに〈Bogen〉でポスター発表することになっているので,もうひとつは別のワルイ人をかつぐ必要があるだろうということに.明後日の締切までに間に合うかな? なお,青葉山では校舎倒壊というような甚大な被害はなかったそーだ.
・限られた時間にいろいろと詰め込む.とりあえずは進化学会大会の準備をばたばたとする.形態測定学「夏の学校」関連のソフトのインストール.結局60名ほどの参加が見込まれ,会場は満席になると予想される.OHPをそのまま持っていくことになるかな(時間切れ).
・他の講演も素材をできるだけ電子化し,ダメだったらOHPを抱えていこう.これまた見切り発車ということで.だって,ない袖は振れないもん.
・――というふうに,ばさばさと切っていったら,気分的にとってもラクになった.
・昆虫学会大会での若手懇談会シンポの要旨も月末締切.これまた,えいやっと書いてしまおう.
拙速主義は日頃のモットー.
・それにしても,タイトなスケジュール.ほかに何もできひんやん....
・本日の総歩数=10031歩.
28 juli 2003(月)
・日曜に帰国し,あくる月曜からもう出勤というのはツライなあ.もっとラクラクしていたいなあ――などと独り言をぶうたれているヒマはないのだ.超ハードな進化学会大会が三日後から始まるからね.その準備を考えるとアタマが痛い....
・というか,時間的に発表の準備がすませられるのかという問題.マジで.系統解析の講演とポスターは Hennig XXII での発表素材をそのまま流用できる.非生物系統学と種概念の2講演は,最近書いたものからそれぞれ素材を集めることは可能.形態測定学・夏の学校での講義は非常勤で話をした内容がそのまま使える.――うん,まあ何とかなるでしょう(ほんまか?).何とかやりましょう.OHPになっている素材を電子化するという作業があるなあ.それに,夏の学校のためのソフトをいくつもインストールしないと(DELLちゃんに).
・ニューヨークも暑かったけど,ウィーンも負けずに暑かったそうな――ISHPSSB大会に参加された網谷さんの〈ウィーンの記録〉,読ませていただきました.耳ピアス男Paul GriffithsとヒゲだるまKim Sterelnyは昨年ギリシャでの〈ICSEB-VI〉でもつるんで歩いていました.Michael Ruseさん,体もでかいが声もでかい.次回のISHPSSBはGuelph大学がホストになるそうですが,Ruseさんが引き受けるということですね.Polly Winsorさんが企画した「分類学シンポ」の内容に関心があります.
・まだ,睡眠時間の絶対数が足りないようで,ときどきふら〜っとするみたい――の割には,昼休みに4kmも歩いてしまったりする.農環研敷地外の樹液ポイントにはカブトムシやノコギリクワガタが集まっている.季節的には盛夏のはずだが.
・夜になって,うつらうつらと『カラー版・本ができるまで』(2003年6月20日刊行,岩波ジュニア新書440,ISBN: 4-00-500440-7)を読了.とってもいい本だと思う.ジュニアだけじゃなく,シニア?が読んでも楽しめる.
・うう,眠たい/おお,準備が/ぐわ,時間が....
・本日の総歩数=17287歩.
20〜27 juli 2003→ terug naar 紐育あたふた日録
19 juli 2003(土)
・またも朝から研究所に出没――泥縄という言葉は死語ではないのだ.講演原稿をさらに書き,共同発表者にテストデータ(サイズは357taxa × 2925bp:Systematic Biology, 49(2)の分子データ)のチェックを依頼.このサイズのシーケンスをランダムに生成すると,PAUP*で23分かかった計算結果よりも,ブランチ・スワップなしの〈Bogen〉が73秒で出した系統樹の方が最節約スコアが勝っている.リアル・データでの結果を見たい.
・もっていくパソコン一式をそろえ,もっていく本とか,デジカメとか,いろいろとかばんに詰める.
・午後は自治会の夏祭り――スペアリブを焼きビールをしこたま飲み,ステーキを網焼きしワインをうんと呑み,気がつけば午後9時.ん? あした何か予定があったっけー?とボケる間もなく,トランクにすべての荷物を格納し,即就寝.あとは野となれ山となれ
・本日の総歩数=13357歩.
***** 渡米まで【あと1日】*****
18 juli 2003(金)
・午前3時から,ひたすら講演準備をしています,ハイ――やってま〜す,やってますってば!(もう,うたぐり深いんやから)
・十日ほど前に,高校の同窓会名簿の新版(15年ぶりのアップデート)が送られました.ところが,それ以降,新手の勧誘が職場にかかってくるようになり,たいそう迷惑しています.いわく,「○○高校の同窓生のものですが,資産運用のご案内に〜」だの「同窓会名簿で拝見したのですが,都内の新築マンションはいかが〜」だの,まあいろいろと.名簿業者も多いことだし,同窓会名簿とか卒業生名簿は市場価値があるらしいので,予想はしていたのですが.こうもしつこいとね.腹立ってくる.
・お,ついに満を持して,ウンベルト・エーコ『カントとカモノハシ』の下巻が出るよん>N部くん.8月始めに店頭に並ぶとか.上巻の内容もだいぶ記憶が揮発してしまった....
・データを図表に取りそろえる,どーせ細かい数字を出したって,読みゃしないんだし.ここは,大きな活字でどーんとスローガンだかアジビラを出すことにする.テキストファイルでどんどん詰めていって.見栄えは〈T-Time〉に任せると.画像の貼りこみだけが問題か.原稿しっかり高座はゆったり/きちんと言わなきゃ伝わらない/宣伝宣伝また宣伝――なんだか〈これ論〉みたいになってしまった.『これから発表をする若者のために』とか....(「誰が若いねん」というツッコミは御法度)
ケセン語による聖書――マタイに続く第2巻『マルコによる福音書』関連のイベントがいろいろ企画されている.この「ケセン語福音書」全4巻はとてもりっぱな体裁の本になっていると思う.同じ著者による『ケセン語大辞典』はまさに偉業ですな.
・疲れたので午後3時過ぎにお散歩(フレックス外なので).クワガタ取りの子どもたちが道沿いの樹液ポイントに群がっている.夏休みが始まった.スズメバチに気を付けようね.4km弱歩く.
・さてと,トランクを引きずり出して,いろいろ詰めたりしはじめる.
・本日の総歩数=13313歩.
***** 渡米まで【あと2日】*****
17 juli 2003(木)
・人前で「はなし」をすること――学会発表など人前で「はなし」をする機会はすべて「高座」である.日常の講義も同じ.〈〉という国字は「新奇なことを話す意」(日本国語大辞典・第2版)を表わすのだそうな.とすると,学会発表にふさわしい漢字ではないか.ぼくら科学者はみんな(言葉の正しい意味において)〈噺家〉であるという自覚が必要だろう.とすると,芸人としてのどのように高座をつとめあげるかという点に心を砕く必要がある.わかっている人はわかっているはず.
・1997年の応動昆大会(東大農学部)の小集会で,学会プレゼンテーションに関する噺をしたことがある.そのときの配布資料がまだ残っていたので,公開しておきました.→〈実践プレゼンテーションテクニック:講演はショータイム!〉.6年も前の講演内容ですが,基本的な考えは何も変わっていません.昔の傑出した芸人や役者たちは,今でもそのまま通用する正しい点を指摘していると思う.
・それにしても――噺のスタイルっていったん確立されると変わらないもんだ.煽り方がイマとおんなじ.こわいほど.そのムカシは「無口なミナカくん」のはずだったのに....
Hennig XXII サイトがどんどん更新されている.「野球は好きかい?――ラッキーだぜぇ! New York Yankees 対 Tront Blue Jays 戦がヤンキー・スタジアムで〜」なんて書いてある.「ブロードウェイの劇チケットは〜」などというケシカラヌ項目も.うーむ,毎度のことながら,この軽いノリは...(汗).松井秀喜を見に行ってどーするって(近いんだけど).おいっ,なんでそんなところを見てるんだっ.講演準備は?
・トラベラーズチェックをつくってみたりとか,ドル現ナマを用意してみたりとか――さらにこまごまといろいろ.海外旅行前の儀式みたいなもの.
・忙しいときにかぎってよそ見の原因が向こうからやってくる――ジャック・ブーヴレス『アナロジーの罠』(2003年7月20日刊行,新書館,ISBN: 4-403-23096-2)届く.『「知」の欺瞞』をすでに読んだ人は,続編として本書をひもときたくなるにちがいない.なるほど,黒木玄,田崎晴明,堀茂樹...も登場か.目次を見ながら「そうだよねえ」と相槌を売ってしまう.ほんと,当たり前のこと言ってるだけなのにねえ.
・〈形態測定学・夏の学校満員御礼まであと一歩――Qshinkaにアナウンスした効果があったようで,今日になって受講申請者が8名も.現在の受講者数は「47名」.したがって定員まであと3名!
・講演原稿をプロジェクター仕様に整形しないと――デモに使うソフトはT-Time.図表はJPEGにしておけばいいかな.念のためpdfにも出力する必要があるか.
・本日の総歩数=9896歩.
***** 渡米まで【あと3日】*****
16 juli 2003(水)
・Hennig XXII のプログラムがやっと公開された.ぼくらの発表は24日(木)の午後,ソフトウェア・セッションで.例年通り日本からの発表者はなし(宮正樹さんの名前が共著者になっている1題を除けば).共同発表者にその連絡をしたり,メトロ・ノースの時刻表を調べたり.こまごまといろいろ.特許広報が届いたので,内容をチェック.急に慌ただしくなってきた心地.
・当然のことかもしれないが,アメリカ自然史博物館のスタッフが絡む企画がとっても多い.[アンチ?]ベイズ法セッションが初日のはじめにある.ほかには分子系統学とアラインメントのセッション,生物地理学のセッションなど.
・ううむ,毎日使うことになる「植物園駅」はローカルっぽいのだが,ホテルのある「大中央駅」は何というか派手〜な感じ.ほとんど東京駅と同じであることを確認.店舗もたくさん,レストランもわんさか,人もうじゃうじゃ.この駅のための写真サイトまであったりする.大したものですな.
・さ,発表の準備準備....ヴィジュアルに,しかもアピールするように.
・職場の次期組合役員の選出委員打合せ――ま,雑用ということで.拝み倒し口説き落とすワルいやつ.
・マンハッタンから帰国してすぐに,もう次の進化学会福岡大会が控えているので,うかうかしていられない.〈形態測定学・夏の学校〉は受講者がついに40名を突破(定員50名に達するのも時間の問題か...).
・ありゃりゃ,そーか,ポスター発表もすることになっていたのだった.ころっと忘れていた.奇数番は3日に発表,時間帯が16:00〜18:00――ということは,さらに空き時間がなくなるやん.最密パッキングのような事態になってきた.
・今回の進化学会大会では会期中ほとんど空き時間がないので(前代未聞),とっても消耗することは目に見えている――うう,磨り減ってしまう.どこかで再生しなければ...
・...ということで,最終日(4日)の夜は,日本一の炭酸泉である〈長湯温泉〉に潜伏することに決定――筆頭の〈大丸旅館〉に予約完了.炭酸でもラムネでも何でもこいっ,いう感じ.俄ニューヨーカーのあとは,ディープなじゃぱにーずとなるのだ.日豊本線の「ソニック号」にも乗れるし.帰りは(行きでもいいけど)〈別府温泉〉という付加価値もあるし.なかなかゴクラクということで.
・最近,超朝型なので,夜10時を過ぎるとアタマが半分寝ている.
・本日の総歩数=7889歩.
***** 渡米まで【あと4日】*****
15 juli 2003(火)
・この時期になるとサマコンですな.夏の風物詩.がんばってねー.〈三角帽子〉――うらやまし.
ヴァーチャル生物学入門の掲示板に質問への解答を投稿したり――匿名掲示板ってあんまり好きじゃないので,最近はほとんど相手にしないことにしている.通りすがりはいいとしても,コミットしたくないということ.まあ,今回は例外としてね.
・午前中は Bogen 関連の発表打合せ――Celeron(840MHz)搭載のノートパソコンでデモできるテストデータを検討.100端点で20秒弱,500端点で4分弱ほど.これでなんとかなるかな.デスクトップだと5000端点で60時間あまり.3万端点まではとりあえず計算できるとのこと.早期に並列計算システムをつくる必要あり.アルゴリズムの説明には特許広報の情報を使うことにする.他の系統解析ソフトとの比較宣伝の戦略を練る.※こう書いたらほとんど間髪入れずに‘ichan’に気取られてしまった(すばやい).
・先日キれたDynaBook-SS君はどうやらWin-XPの再インストールが必要らしい.データのみなさん,さよーならー(T_T).性根をきっちり叩きなおしてあげるからねー>ダイナブック君(怒).
・ついつい〈マンハッタン書店リスト〉なんてのを盗み見したりして....わお,ゴクラク.しばし現実逃避.ジャネット・ワトソンが現在オーナーをしている〈レノックス・ヒル書店〉みっけ.ほかにも〈ブック・アーク〉とか〈ミステリアス書店〉とか〈シェイクスピア&Co.〉とか.〈ストランド書店〉だけでも満腹しそうなのにぃ.〈セント・マークス書店〉すみにおけまへんなあ.なになに,カミング・アウトのための〈クリエイティヴ・ヴィジョン〉もあり,ほえー,〈ブック・オフ〉まで.きゃー,きりがないー.
・ということで,しばし昼休みのお散歩をば.→日射しの中を久しぶりの5km完歩.暑い.
・結局,日本計量生物学会の公式メーリングリスト(JBS)を立ち上げることになり,開設申請を提出した.一つ運営するのも,十個運営するのもさしてちがいはないのさ.ふふんだ.でも,離陸してから水平飛行に入るまでがたいへんなんですけどね.なんだかこの十年ほどの間に,ずいぶん「飛行時間」が長いパイロットになった気がする.※2時間ほどで〈JBS〉メーリングリストは立ち上がった.学会理事に連絡する.一般会員には事務局経由でメール通知してもらおう.
・おいたをしたダイナブックちゃんは某所できつくカツを入れられて,明日きれいになって戻ってくるそうです.データもな〜んもなくなって,きれいさっぱりな白無垢なハードディスクだとか(うう...).
・高座を毎年うけもっている農水省の統計研修では,今年から〈SAS〉に三行半を叩きつけて,全面的に〈R〉に乗換える計画をヒソカに(どこがやねん...)進めている.研究計算センターが組織として〈R〉を導入することが本決まりになったのかな.いずれにせよ【さすがのSAS】にも黄昏がやってきたということか.ついでに【呪われゑくせる】にも鉄槌を.〈R〉がやってくるとなると出番が増えるかしら.
・マンハッタンのアメリカ自然史博物館(AMNH)にある分岐分析のためのリナックス PC クラスターについて――HotWiredが Ward Wheeler に取材して記事を掲載している(>N部くん,さんきゅ/某書類がらみの成就を祈願してます).今回の Hennig XXII でもWheelerの発表があるはずだが,ソフトはすべて自作とのこと.系統解析とアライメントを同時に行なう〈Dynamic Optimization〉のプログラムが有名.ただし,これを使うには AMNH のリナックス・クラスターを使うしかない(あれまあ).
・今後,形質データ行列がますます巨大化していくと,並列計算システムが常用されることになると予想される.ノートパソコンにほいほいつっこんで,道端で大道芸するというわけにはいかなくなるか.〈Bogen〉もすでにリナックス・クラスターへの移植を開始している.
・『古本カタログ』(2003年6月30日刊行,晶文社,ISBN:4-7949-6577-X)読了――×.こんな密度の薄い本,どうしょーもないやん.タイトルに惹かれたワタシはおばかさん.
・本日の総歩数=15195歩.
***** 渡米まで【あと5日】*****
14 juli 2003(月)
・朝方は雨模様,午後になってようやく晴れ間がのぞく.車検のため車を持っていかれる.成田空港行きのバス券を購入.ついでに,福岡行き航空券をJTB窓口まで買いに行き,その【あまりにゴージャスなお値段】に卒倒しつつも「公費出張」と自ら言い聞かせる.羽田←→福岡間の往復で66,000円なりぃ〜.すでに旅行づいている.
Hennig XXII――開催一週間前の今日になってようやく参加登録と要旨投稿を締め切った.ということは,セッションの組み割りはこれから始めるということか(???).もともとこの学会は年会に関して独自のスタイルがあって,形式はあってないようなものだし,時間が守られたことはないし,一見うちわのセミナーのような雰囲気がある.今回もまた New York Style が見られるのかな.
・『ブックストア』読了.ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』がよく似合う書店だったそうな.ストランド書店から人が流れてきたり,また他に流れていったり.まるで【島】のように点在する独立系書店を渡り歩いた人脈があった.それでも,時間をかけてしかし不可避的に廃業に追い込まれていったようすが痛々しい.ビジネスとして考えると書店ほど割のあわない商売はないとみんなが自覚しているところが印象的.いい本が訳されたと思うが,「ロスキルド」(→ロスチャイルド:p.135),「タスチェン・ブックス」(→タッシェン・ブックス:p.147),「加熱」(→過熱:p.277)というようながっくりする誤訳が残っている.編集ミスだろう.
・『生物科学』科学論特集の本文原稿と図版(pdf)を編集部にメール送信する. もっと早く書けよなとは思うものの,いつも起動がのろのろしてこういうことになってしまう.とりあえず,伊藤正直(序)・三中信宏・村上陽一郎・倉本由香利の4人分の原稿は集まった.長谷川眞理子原稿は果たして....
・肩の荷を放り投げたので,少しラクになった.あと数日間は学会の準備に集中しよう.
・いつものように〈ピーターパン吾妻店〉にプンパーニッケル1本を予約.夕方に引き取る.1.6kgで1800円.もちろん出発するまでに喰い尽くすわけではない――念のため.
・本日の総歩数=9686歩.
***** 渡米まで【あと6日】*****
13 juli 2003(日)
・降ったり晴れたり....
入試での系統樹出題について――ある方から大学院入試で出題された系統樹の設問に関する問合わせが転送されてきた.霊研のこの出題は典型的な分岐分析の出題だが,共有派生形質の一般性(generality)の判定ミスを指摘させるということか.共有原始形質かまたはホモプラジーであると答えればいいのかな.むかし,東大の2次生物でアミノ酸配列から距離法によるデンドログラムを書かせるという出題があった(すげー).分岐分析で植物の系統関係を推定させるという問題も金沢大(だったかな?)で出されたし.指導要領もヘチマもあったもんじゃない....
・形質を見ただけで共有派生形質がわかるという誤解が広まっているようだが,ちゃんと系統学を教わっていないんでしょ.基本的には「難しく悩ましい話」ではないのですがね.樹形と形質との絡みで決まることだから.分岐図も形質方向性もどちらも【歴史仮説】である点では差がないのですが,形質仮説を統合する上位仮説として分岐図があり,ある基準で分岐図が選択されたとき,その樹形制約のもとで形質の方向性が推論されるということ.真なるものはどこにもないが,ある時点での最良の仮説は確かに手に入れられる.
・もちろん,本当に難しい未解決問題はあるにしても,系統学の敷居のところで門前払いするというのは本意ではないですね.系統学の動機づけはごくシンプルだと思うし,それは誰にでもきっと理解できるはず.たとえば,北村雄一著『恐竜と遊ぼう』は分岐分析の基本的な考えをうまくビジュアルに解説してあると思う.こういう本はもっとあっていい.
科学論原稿――14KBほど書き上げました.>U田編集長,お待たせ!(明日送ります)※まりまりはタイムアウトか....
・本日の総歩数=1938歩.
***** 渡米まで【あと7日】***** ※カウントダウン〜(汗また汗).
12 juli 2003(土)
・雨は上がったものの,極度に蒸し暑く.背骨がへなへなになるほど,気力が喪失.無脊椎動物と化す.
・でも,毎週恒例の新刊チェックだけおこたらない(※ほとんど延髄反射行動か)→TRC新刊チェック1332号.今週は収穫多し.
・ブーヴレス著『アナロジーの罠』――ポストモダン思想に対してどのような批判的スタンスを取るのかが気になる.猪野修治著『科学を開く思想を創る:湘南科学史懇話会への道』も気になる.
・もうすぐ『ブックストア』読了――この書店伝のヒロインであるジャネット・ワトソンさんの出自はあっと驚きですな.そして,こういう人生もあるのか.
・彼女の祖父トーマス・ワトソンは International Business Machines Corporation の創業者,父トーマス・ワトソン二世はその後継者――確かにIBM社史を見ると,1917年にトーマス・ワトソンによってIBMが創業されたと記されている.それにしてもこのプロフィールは確かに巨人を思わせる.
IBMには創業者の名を冠するThe IBM Thomas J. Watson Research Centerという巨大な研究所があって,生物統計学者のJim Rohlfはニューヨーク州立大学に移る前はここに在籍していた.
・で,そういう家に生まれたジャネットさんは幼い頃から「本の虫」で,本書はマンハッタンのアッパーイーストにあった彼女の書店Books & Co.(1978-1997)をめぐる話.評判を聞きつけてやってくる人々の多彩なこと.おもしろいのは,経営が危なくなるたびに父がスカイフックのように顔を出し,窮地から脱するという筋書き.
・前半部分は,一風変わった味わいをもつこの書店を切り盛りする経営者・マネージャー・バイヤー・客の交流が中心だが,後半になるとバーンズ・アンド・ノーブルやボーダーズなどの大手量販書店の出現によってしだいに圧迫されていく独立系書店の運命がストーリーの中心を占めるようになる.
・書店伝といえば,昔の『チャリングクロス街84番地』(※リーダーズダイジェストで読んだ記憶がある)が思い浮かぶ.大手書店とかオンライン書店ではこういう物語は紡ぎ出されないだろうね,きっと.
・本日の総歩数=8604歩.
11 juli 2003(金)
・明け方は空気が濡れていたが,午前中に晴れ間が広がり,暑い日射しが.久しぶり.でも,蒸し蒸し.
・いろいろしながら,ニューヨーク情報をぽつぽつと収集する.ひょっとしてマンハッタンて,パラダイス? この書店の数と規模はいったい....うーむ,ストランド書店なんかにハマった日には,社会復帰できひんやん.いややわあ,こわい町やん...(何にやにやしてんねん.>ぎくぅ
・ついでに手元にある川成洋編『世界の古書店I〜III』(1994〜6年,丸善ライブラリー117,159,199)を見返すと,ニューヨークは「本の町」であることを実感.いやあ,実に罪なところで学会をやってくれましたなー.かんらかんら.
・また,こまごまとしたことですり減って....
・目の前に並んでいるのに,今はじめて気がつく――リン・ティルマン著『ブックストア:ニューヨークでもっとも愛された書店』(2003年1月30日刊行,晶文社,ISBN:4-7949-6558-3).読書優先順位大幅アップ.
・あらま,こんなオイシイ本まで――『The Time Out Book of New York Walks』.もー,どーしましょ.(講演の準備はどーしたんだっ!?
・ここのところ,いろいろなリクエストがやってくる――統計分析の質問とか,もっている本の照会とか,系統推定法の問合せとか,夏向き料理のレシピとか,まあいろいろと.たいていメールで質問が飛び込んでくるので,ぜんぶ積み上げて年ごとにカウントすると,相当な数になる.メールはいいのだが,電話での質問は意外にもどかしい.リアルタイムのやりとりよりは,メールで必要な情報を流した方がラクに解決できると思う.時間の流れを断つこともないしね.
・ふむ,小尾俊人著『本は生まれる.そして,それから』(2003年2月5日刊行,幻戯書房,ISBN:4-901998-00-5)には,ニューヨークの二大書評誌〈New York Times Book Review〉と〈New York Review of Books〉とのちがいが書かれている(pp.317-319).後者の方がずっと“ハイブラウ”なのだそうだ.確かに,長大な論文みたいな書評が載るもんね.
・あーダメダメ,今日は【本憑き】になってる....
・いきなり夕立――もう夏ですな.
・いったんあがったものの,夜中にざあざあとスコールが.
・本日の総歩数=13675歩.※蒸し暑くても歩く.
10 juli 2003(木)
・連日,雨また雨で気温低し.でも,服装はすでに「夏化」している.さぶ.室内の気温20度(おいっ).
科学論原稿のさらなる復元――「やり直す」とか「書き直す」ってツライですね.とほほ.
・わき見して,佐藤和歌子『間取りの手帖』(2003年4月16日刊行,リトル・モア,ISBN:4-89815-090-X)を読了.こんなジミ〜な新書(紙だって再生紙)がどーしてよく売れているんでしょねえ.と言いつつ,ぼくも愉しませていただきました.アパートやマンションの〈間取り〉が一種の「象形文字」あるいは「表意文字」のようになって,読者の創造力(好奇心)を掻き立てるというのが新鮮だったのかもね.
・確かに,とんでもない間取りの家(にょろにょろと細長い家とか,変なロフトのある部屋とか)の間取りを見せられると,そこに住んでいる(はずの)人間の生活ぶりをつい思い描いてしまう.で,実際,著者はそういうストーリーを随所に置いている.全体として言葉は少なく,間取りそのものを「鑑賞」させるという書き方が特徴.包み紙のような表紙を展開すると全99間取り図が一望できる.どーして【100】にしなかったのか?――祟るから?(家相も何もあったもんじゃない)※ぼくは隔離ロフトつきの「12番」「22番」「62番」がいいなあ.
考現学の創始者である今和次郎が,1922年にすでに,自らの調査に基づく〈間取り本〉を出版している――『日本の民家』(1989年3月16日刊行,岩波文庫,ISBN:4-00-331751-3).この本では,大正年間に蒐集した全国の農村民家を調査し,その間取りを比較することで農村生活を論じるという民俗学(というか考現学)の関心が背後にある.間取り論の先駆か.『間取りの手帖』とは視点も関心も大きく異なっているが,考現学的には両者に共通する要素がたくさんあるように感じた.
・ん?「文字」ではないかな,もっと生活感あふれているわけだから――古生物学でいう【生痕化石】みたいなもんでしょうか.
・今年の暮れに『Handbook of Evolution』という3巻本が出版されるそうだ――編者は Franz Wuketits.昨年オクスフォードから出た2巻本『Encyclopedia of Evolution』とは方針がいささかちがうみたいで,人間の認識・倫理・文化の問題まで含むらしい.進化的認識論がそれなりの勢力を保っているのはローレンツの知的遺産か?
・夕方から蒸し暑さが急激上昇.ヌカのような雨だったのが,まともな雨滴に成長.
・本日の総歩数=7698歩.
9 juli 2003(水)
・未明の大格闘劇で1日のエネルギー分配量をすでに使い尽くした感がある....攻めの勢いで,PowerBookG4にも分散基地を置くことにした.矢でもテッポでももってこいってゆう気分.そんなに気張るんやったら,日頃からもっと用心しなさいって? はい,まったく(しおれる).
・えいやあっと,『理系白書』の書評を復元しましたです.長いのは evolve / biometry 行き,字数を調節したものは bk1 行き(7月10日夜アップ→「それでも生きていくサイエンティストたちの姿」).
・昨夜はなんのかんのと文句たれましたが,今日になって InDesign がちゃんとインストールできました.>でるちゃん,えらい,よちよち.※これでやっと「へたりダイナブック」と同じ環境が復元されました.
・あ〜あ,また未踏峰が出現してしまった....→ビョルン・ロンボルグ著『環境危機をあおってはいけない』(2003年6月30日刊行,文藝春秋,ISBN:4-16-365080-6).2段組みで671ページ(参考文献と索引はWWW掲載).夏山登山か?(笑)
・著者名の和訳のこと――原著者はデンマーク人なので,〈Bjorn Lomborg〉は〈ビョアン・ロンボー〉と訳す方が原語の発音に近いはず.デンマーク語の恐るべき発音はカール・ニールセンの歌曲を聴けば感じられる.なお,この本のデンマーク語原書(1998年)のメインタイトルはきわめてストレート:『Verdens Sande Tilstand』すなわち『地球の本当の状況』.これは訳本だとサブタイトルに落とされているが,英訳(2001年)『The Skeptocal Environmentalist(懐疑的な環境主義者)』→日本語訳『環境危機をあおってはいけない』という重訳を経て,いやに煽りが鼻につくメインタイトルになってしまったのではないか.
・ブロック肉じゃないから分量(頁数)のことだけを言ってもしかたがないのだが,日本人の書く科学本(専門書も啓蒙書も含めて)が明らかに薄いというのはどういう理由からなのか.徹底的にしつこく書かない/関連する話題をすべて枚挙しない/賛成・反対の見解を網羅しない――こういう著者側の定着スタイルもさることながら,読者側に読み通すだけの体力がないというのが実はもっとも大きな理由なのかもね.
・もうひとつの復元原稿は遅々として....渡米する前にケリつけておかないと.
・こまごまと本が届く――『古本カタログ』(2003年6月30日刊行,晶文社,ISBN:4-7949-6577-X),『カラー版・本ができるまで』(2003年6月20日刊行,岩波ジュニア新書,ISBN:4-00-500440-7),『スコットランド』(2003年6月23日刊行,日経BP,旅名人ブックス58,ISBN:4-8222-2219-5).とりあえずは〈積ん読〉しかないかな.
・本日の総歩数=9819歩.
8 juli 2003(火)
・未明から小糠雨.梅雨明けはまだみたい.
・ウィーン!――いいですねえ,ぜひ行きたいっすねえ.プログラムも魅力的じゃないですか(→ISHPSSB).グールドの〈SET〉をめぐる基調講演があるんですね.ほほお,「分類学史の本質主義的ストーリー」を問い直すとはまた刺激的な(Hullマッサオ?).「生物学の統計学的基盤」もまたグッド.生物学と形而上学のセッションも魅力的.今月の16〜20日が会期ということは,20〜25日のHennig XXIIとの連チャンも可能だったか....
・ウィーンと聞くと,世紀末・廃墟・〈第三の男〉...と月並みな連想をしてしまう.ウィーン関連で印象的だった本は,『ウィトゲンシュタインのウィーン』とか『ポパーとウィトゲンシュタイン〜』かな.時を刻んだカフェでじっと根を生やしたいものだ.ブダペストと同じく(歴史的には同根だし),ややくすんだ愉しみ方はきっとたくさんあると思います.そうそう,ウィーン時代のポパーの伝記『Karl Popper: The Formative Years, 1902-1945』でのウィーンの描写も濃密です.
・〈ウィーン日記〉をよろしくね.>A谷さん.
・う〜む,確かにねえ,中途半端に噛むだけではダメという評価は当たっているかもしれない.でも,それでもやるしかないと思いません? ま,必死の形相でやられても暑苦しいだけですけどね.ある種の宣教師的使命感はもっと静かでしたたかだと思います――しかも周囲をどんどん巻き込んでいく.一般の人たちが全員ふりむく必要はないのです(大事件でもなければ誰も気にとめないでしょ).もっと長期的でもっと深い作戦が必要だろうということ.しかも,それは個人がその気になればいつでも始められると思います.個人が科学の出発点というのは今でも有効な視点だとぼくは思うので,順風でも逆風でも〈物言う草〉であり続けたい(木は倒れても草は倒れない).
・上記ISHPSSBウィーン会議要旨集がpdfで配布されているので,ざっとブラウズ(100ページあまり)――グールド〈SET〉シンポ(p.86)の演者は,Smocovitis, Burian, Gayon, Lloyd, Ruse, Richards, Sterelny.分類学史「本質主義ストーリー」批判シンポ(pp.66ff.&74ff.)のターゲットはHullじゃなくってMayrだったか――Winsor, McMahon, Scharf, Amundson, McOuat.Robert Richardsの新刊『The Romantic Conception of Life』(2002年12月刊行,シカゴ大学出版局,ISBN:0-226-71210-9)をめぐるシンポ(pp.80ff.)も盛り上がるかな――Ruseさん,大反撃を演じるか.ほかには,「分岐図における人間中心主義」(p.44)とか「進化学と歴史学」(p.98)なんていう講演も.日本からの参加発表者は,見落としがなければ京大の網谷祐一さん(p.46)と愛媛大の中島敏幸(p.105)さんだけかな.中島さんとは昨年ギリシャのICSEB-VIで顔を合わせました(今度の進化学会福岡大会でもね).
災厄は前触れもなくやってくる――午後,書評担当本となっている『理系白書』の書評を書き終えてパソコン(DynaBook SS)を終了させ,グループ会議から戻って再度起動しようとしたところ...Win-XPがちっとも立ち上がりませんわ.おそるべき地獄のメッセージ【Unmountable_Boot_Volume】なんていう青い画面が凝固している.「ふざけんじゃねえ,こんな腐れうゐんどうずなんか死ね死ね死んでしまえ」と悪態をつきつつも(ほとんど子ども),もう一台ある研究室のノートパソコン(DELLの速いやつ)で環境復元を試みたのです.ほんま,日頃の行ないがワルイとこういうことになる....
・でもって,家に帰って,夜中の1時に再度出勤(超朝型).いろいろと常連ソフトをDELLマシンに詰め込んでいったのですが,イマイチ勝手がちがうというか,調子がよくない――Adobe InDesignのセットアッププログラムが起動しない.Wz XHTML Editorが立ち上がらない(Wz HTML Editorがオープンされる)など.つい,「オモテへデル!この野郎」なんていわさ以下の駄洒落をふりまきつつ,ま,それなりの環境をつくったのですが,DELLはあくまでもピンチヒッターかな,計算は軽くても,目方が重いし.※XHTML Editorについては,単にインストールし忘れていただけであることが判明.誤爆してゴメン > でる様.
・この際だから,Mac(いまや旧モデルと化したG4デュアル)にも近似環境をつくることにした.最低限,エディターとftpソフトがあれば「日録」はメンテできるので,miエディターとRBrowseLiteをダウンロード――なかなか快適ですな.InDesignも2.0.2にアップグレードしたし,これからはMacに乗換えよーかな(>へーんだ,うゐんどうずなんかもう使たらへんもん――さらに退行している).と言いつつも,いまはまだDELLで書いたりしている,優柔不断なワタシ.
・さてと,消えた原稿はどーしよーもありまへんなあ――書評原稿の仕上がりと科学論原稿の書きかけが電子の藻屑となってしまいましたが,記憶のあるうちに再度入力しましょ.
・【教訓】1)バックアップ励行;2)代行マシンを常時用意;3)めげるな.
・原稿原稿また原稿.続けて講演準備もね(汗).
・本日の総歩数=8946歩.
7 juli 2003(月)
・七夕だけど,朝から雨.
昨日読み終わった『理系白書』にいたるまでの長期連載を総括するシンポジウム(「理系白書」シンポジウム)が6日に開催された.オンライン報告が森山和道さんの日記(7月6日分)に掲載されている(いつになくlong!じゃないですか).個人史に関わる個々の事例については確かに印象的なのだが,それをどのように一般化するのかというところが論者の腕の見せ所.苦しいのは,たとえば【文理融合】っていったって,成功したケーススタディーは必ずしも一般化できないという点.無理に一般化しなくてもいいのかもしれないけどね.
・日本がもともと社会的あるいは文化的に科学に対して冷淡であるというのは事実だろうし,それがすぐに好転する兆しはない.ここは科学者個人が使命感なりアジェンダを掲げて頑張るしかないと個人的には思う.もちろん,科学者の卵となりえる若手や一般社会への浸透を狙った「草の根作戦」もありなんだろうけど.
一般論が空しいというのは,科学・科学者・文系/理系・文化などなどがすべて定義不能の「個」であるから.個体群動態のような要約統計(科学者数や予算の変遷)を論じることは可能でも,それだけでは不十分だろう.SimCityやSimAntばりの【SimScience】をつくってみて(個体ベースのボトムアップゲーム),科学者集団のシミュレーションをするというのはあってもいいんじゃないかな――In silico 科学論.科学論モデルのテストもきっとできるだろうしね.もちろん,〈実例〉に取って代わるものではないけど.
♪ロンロン♪いろいろ――〈今日のてくてく(7月5日分)〉にあるように,科学に関する論(科学論)を論じるのは「科学論論」でOKですね.確かに,ぼくはきちんとした科学論論があるべきだと思うし,いま書いている原稿でも科学論論への期待を表明しています.進化論なら,「進化論論」もあるし,「進化論論論」もありえる.ではイヤという向きには「科学の学」たる科学学が自然なネーミングだし,とするとぼくが書こうとしているのは「科学の学の学」たる科学学学か.故・太田邦昌さんは確かにそういうネーミングにこだわっていた.科学史に関する学は「科学史学」,その学史は「科学史学史」,etc....♪ロンロンロンにガクガクガク♪.歌う生物学者なら気のきいた作詞と作曲をしてくれるだろう.
・富山から情報――太田邦昌さんの本が大量に神保町・明倫館書店に流れたのは,故人の遺言によるものだそうな.覚悟していたということか.店主の話だと,まだ整理しきれていない本が大量にあるらしい(洋書が主).
・思い立って,日録に日毎のマーク(#)を付けてみた.とりあえず7月分だけ.問題なさそうなら,過去ログにもマークを付けよう(増える仕事;なくなる時間).
・忘れないうちに先週の新刊チェックをしたものの(→TRC 1331号),今回はいささか不発やねえ.夏が近づくとどんどん不作になっていく....
・『生態学事典』の売れ行きが好調で,予想を上回る出荷が続いているそうだ.初版2000部は間もなく完売,9月にも重版の見通しらしい.項目執筆者のひとりとして,うれしいなー.
・♪ロンロン♪の原稿を書きつつ,横目で〈sumus〉別冊『まるごと一冊中公文庫』(2003年6月10日刊行)をめくる.文庫本蒐書の趣味はぼくにはまったくないのだが(書き下ろしでもないかぎり文庫落ちの前の原書を買うから),凝るとおもしろそうかも.こわい〜.気をつけて買うようにしているのは,岩波文庫の【復刊】ものだけ.ごく少部数しか刷らないと聞いているので.
・本日の総歩数=5781歩.
6 juli 2003(日)
・ぼくの中学・高校の同級生のひとりは,先週末,石垣島で開催された凧上げ大会に参加したそうだ.何十人も協力して大凧を上げたりして,感動の日々と命の洗濯をしたとか.いま住んでいる埼玉でももちろん凧を上げ,長期出張先のタイでもむろん凧を上げ,いたるところで機会さえあれば凧を上げ続ける凧男に幸あれ.
・長男の付添いで朝から飯田橋までお出かけ――空き時間ができたので,スターバックスにて『系図が語る世界史』を1/3ほど読む(第1部読了).歴史学の中の系図は打算的・政治的に脚色されてきた背景がわかった.だからこそ系図学はいまいち重きを置かれてこなかったということか.系図の写本伝承というメタ過程はわくわくするね.『尊卑分脈』とか『音楽相承系図』,さらには『系図御屏風』なんていうものまであるそうだ.要チェック.
・まだ時間があったので,近くの〈印刷博物館〉を訪問.特別展示がない期間なので,客は少ない.1階のP&Pギャラリーで〈BD:フレンチ・コミック展〉の最終日展示.かの〈タンタン(TinTin)〉は,フランス語圏ベルギーのキャラクターだったのね.
・フレンチ・コミックの原画をいろいろ見たあとで,ショップを物色――土屋礼子『大阪の錦絵新聞』(1995年12月20日刊行,三元社,ISBN:4-88303-029-6)があったので購う.最近出た同じ著者による明治時代の〈小新聞〉についての本『大衆紙の源流:明治期小新聞の研究』(2002年12月10日刊行,世界思想社,ISBN:4-7907-0962-0)の姉妹編に位置づけられるか.江戸時代の瓦版の直系子孫にあたる錦絵新聞の解説本.カラー/モノクロの図版がたくさん所収されている.巻末には錦絵新聞一覧も.こういう「うずうず本」はすぐ憑いてしまう.
bk1の今月の書評本『理系白書』を読了――これじゃあ不完全燃焼ですな.新聞連載記事をそのまま束ねたような本.もう少しオーガナイズした方がよかった.新聞報道としてはその速報性が評価されるでしょうが,単行本としては食い足りない.ある特定の人にインタビューした内容をそのまま書くだけでは,主張のウラを取ったことにはならない.もちろん,取り上げられているテーマはそれほど偏ってはいないし,むしろ一般の関心を喚起するという点ではプラスに作用するだろう.しかし.随所に見られる喰いつきの甘さ(「甘噛み」という表現が適切か)は読者に欲求不満を募らせる.〈本〉にしてしまうのではなく,むしろオンラインの〈掲示板〉のような形で,双方向の意見交換を息長く続けていった方がいいようにも思う.書評を早く仕上げよう.
・飯田橋駅ビル内の本屋で,『東京地下鉄便利ガイド(第3版)』(2003年5月,昭文社,ISBN:4-398-28024-3)を入手.東京に出るときの必携本.とくに最近は新しい路線や駅が増えているので,最新版にアップデートする必要に迫られる.
・本日の総歩数=16548歩.※都内歩き回りの末.
5 juli 2003(土)
・朝からいい天気.休日なので,起き抜けに読み切ってしまった――クラフト・エヴィング商會『どこかにいってしまったものたち』(1997年6月25日刊行,筑摩書房,ISBN:4-480-87292-2).同著者による一連の本たちの最初のもの.フィクションなんだけど,【もの】が実在しているというズレ感覚が愉しい.こういうセンスって,ぼくの好みです.目次を入力して,1日の始まり.
・胸がまだ痛いので,ぐでぐでしつつ時間を過ごす.
・反町茂雄『一古書肆の思い出』(全5巻,1998〜1999年,平凡社ライブラリー)が,ここ数日,ちらちらと視野の端に入っているが,見て見ないふりを決め込む.計2000ページ超の登攀は命懸けだし.これまでに買ったまま積まれている本の多さはいかんともしがたい――「しかしそれにしても,私はなんという本の購い方をしているのか.以上購った本,すべて読む気でいるのか.私は無言でいるしかない」(『蒐書日誌・三』,p.250).ぼくも沈黙を守りましょ.(ビョーキやて言うてるやん)
・夜になって,練馬春日町の別宅に潜む.夜半に雨音.涼しい.
・本日の総歩数=1866歩.※病人やな,まったく.
4 juli 2003(金)
・またまた3時起き.慣れれば周りの暗闇感がむしろ快感となるのさ(倒錯).ごそごそと研究所にもぐりこみ,ニールセンの〈不滅〉を微音量で聴きつつ,仕事の開始.原稿待っててね>U田編集長.
ドードー噺の続き――蜂須賀正子さんから連絡のあったドードー本の新刊は,ピント-コレイアが今年始めに出した本『Return of the Crazy Bird』とは別の本で,3月にオランダから出版されたもの:Jan den Hengst『The Dodo: The Bird Who Drew the Short Straw』(2003年,Art Revisited, Marum, ISBN:90-72736-26-5).英語版とともにオランダ語版(ISBN:90-72736-25-7)も出版されているとのこと.英語版はあとで蜂須賀さんから送ってもらえる.オランダ語版は別途注文するかな(Euro 25.00).
・現在全会員5名!の〈ドードー学会〉会長でもあるHengst氏の新刊では,正子さんの父・蜂須賀正氏のドードー関連著書についても詳しく触れられている.正氏の肖像写真は徳島城博物館から入手したものとか.ブツを見ていないので確認できませんが,全編にわたって写真や図がたくさん入ったカラフルな本のようです.
・蜂須賀さんには,お返しにピント-コレイアの本の情報を渡しておこう.そうそう,彼女の本のオンライン書評が〈complete-review〉に掲載されていた.全体としては「まとまりに欠ける」という辛口の評定.
・『非線形物理』――第5章が新たにアップされている.さらに広がる結界
・午後は研究所の理事との懇談会;その後は毎年恒例の敷地内【草刈り清掃】;さらに夕方からはちょっとしたお疲れさん会――こまごまとしたイベントが続く1日.なかなかまとまった時間が確保できませんな.
・と身を引いて言い訳しつつも,溜まった本の情報だけは流しておかないとね.『蒐書日誌』も本の記録を書くことが生きている証しみたいなこと言うてるし.つげ義春の作品に触れつつ,著者は言う:「私が延々と‘蒐書日誌’なるものを書き続けているのは,何か書いていないと生きている気がしないからに過ぎない」(p.172).御意.‘日誌’はともかくとして,著者の蒐書慾には鬼気迫るものがある.憑かれたように古書市を徘徊しては,片端から買い求める.他人事ではない.
・まずはいま書いている原稿に直接関係する科学論の2冊をば――ソーカル&ブリクモン『「知」の欺瞞』と金森修『サイエンス・ウォーズ』から.ずいぶん前に書評を書いたものですがね.一応ね.
・夕刻からの慰労会で,呑み過ぎたかな.それよりも喰い過ぎか.ドラム缶コンロでの焼肉,ステーキ,サンマ!,焼きそば,スイカ――黄昏時の野外パーティはいいものでして.
・...ということで,夜はさしたる仕事の進展もなく,ただ惰眠を貪るのみ.おやすみなさい.
・本日の総歩数=10657歩.
3 juli 2003(木)
・またも3時起床――ちょっと忙しくなると,自発的に起床時間が早くなっていく.孤独な未明の研究所.
・え,琵琶湖の〈ノーリリース運動〉で釣られたブラックバスをどう料理するかって? そりゃ,〈ふなずし〉ならぬ〈ブラックバスずし〉にするんでしょ,きっと.『ふなずしの謎』にそんな話が載っていました.転んでもタダでは起きない〈ふなずし〉,実におそるべし.>M山さん.
・旅行会社にニューヨーク行き航空券のための個人情報をファックスする/生物地理学会への査読原稿の返送を完了.
・寝返りを打ったりせきやくしゃみをするとまだ胸が痛い――念のためちょっと調べてみたら,「肋骨の骨折やひびが疑われる」なんて書いてあるやん.でも,その程度は心筋梗塞に比べれば,「心配のない症状」なんやて.心配ない言われてもねえ....肋骨は「知らないうちに折れたり,ひびがはいったりしていることがある」そうです.気を付けようね.で,折れたりしているのかしら...>ぼく(冷汗).
・松波淳一『イタイイタイ病の記憶』(2002年12月10日刊,桂書房,ISBN:4-905564-50-6)なんて本を引っ張り出したりしてみる.いまも発病者が続いているとはね.
・「科学論」原稿を書き始める――題して「科学論は科学からみれば〈たわごと〉なのかもしれない」.ありゃりゃ,時間が経つとこんなにも突き放したような物言いに.〈敵〉とか〈味方〉以前の問題ということ.
・昼休み,約3kmのプチ・ウォーキング.歩きながら原稿のネタの組合せと構成を考える――科学は定義できない(contra Gould)/概念の系譜的理解/系譜に関するアブダクション的推論とそのテスト/科学論的言明のテストも同様/テストされざるものは〈たわごと〉である/武器としての哲学.こんなところか.
・瀬川裕司『ナチ娯楽映画の世界』(2000年7月17日刊行,平凡社,ISBN:4-582-28238-5)読了.戦時中のドイツ映画界に対する先入観とか偏見がふっ飛ぶ本.映画オタクの著者は当時(1920〜40年代)製作された1000本あまりの映画の過半数を実際に見たという.リーフェンシュタールだけじゃなくって,名優・名監督がたくさんいたということ.いわゆる〈山岳映画(Bergfilm)〉についての知識も得られた(pp.69ff).自然の雄大さを強調する山岳映画は,当時の自然崇拝あるいは自然回帰の思潮と連動していたそうだ.
・リヒアルト・シュトラウスの交響詩〈アルプス交響曲〉(1915年初演)は,ちょうど典型的な山岳映画のストーリー展開と同一の筋書きをもつ標題音楽だ.冒頭のアルプスの夜明けから始まり,牧場,氷河,頂上,嵐,下山,夕暮れというストーリーの流れは実に「映画的」だとあらためて感じる.もちろん,〈アルプス交響曲〉と〈山岳映画〉との間にはダイレクトな関わりはきっとないだろう(10年ほどの時期のズレがある).むしろ,それらは共有された思潮に導かれたということか.※いろんな盤があるけど,個人的には「ルドルフ・ケンペ&ドレスデン」の録音(1970年代)が今でもピカイチだと思う.大学に入ってすぐにラジカセを買って,駒場寮(中寮)の一室で最初にスイッチを入れたときにFMから聞こえてきたのがこの演奏だった(まさに刷り込みというやつですな).
ドードー再び――4月24日以来2ヶ月ぶりに蜂須賀正子さんから連絡あり.ドードー本の新刊についての情報が送られてきた.うへ,ドードー・マニア(=dodologist)っているんだあ.詳細はあとで.
・Michael Ruseの新刊がまたまた届く――『Darwin and Design: Does Evolution Have a Purpose?』(2003年,Harvard University Press, ISBN:0-674-01023-X).Ruse氏って,毎年1冊(以上)単行本を出しているよねー.本人も「とにかく頑張ればいいんだあっ!」って宣言しているそーだし.〈筋肉番付派フィロソファー〉か.
・夜半から雨――滝のごとし.高校の同窓会名簿が自宅に届いていた.みんな年寄りになるなよ.
・本日の総歩数=12853歩.
2 juli 2003(水)
・午前3時過ぎに起床→研究所.さすがにまだ暗いが,東の空は白くなっていた.ニイニイゼミの鳴き声.
・農環研Annual Reportの文章をひねり出す:生物多様性研究と系統学との関わり,巨大系統樹を推定する必要性,そのためのソフトウェア開発.現状と展望.テーマとしてはこんなところか――うー,でもって700語ほどの作文をやっと完了.ちょっと疲れたかもしれない.図表は「なし」だけど,ここは勘弁してもらおう(おお,強気な).
・しばし現実逃避して,翻訳家・鈴木主税の自伝エッセイ2冊をむさぼる――『私の翻訳談義』(1995年,河出書房新社,ISBN:4-309-01031-8)と『職業としての翻訳』(2001年,毎日新聞社,ISBN:4-620-31492-7).『私の〜』は仮想対談形式での,翻訳よもやま話.「直訳は翻訳ではないというのは言い過ぎかもしれませんが,いわゆる直訳が不完全な翻訳だということだけははっきりさせておくべきでしょう」(p.31)――ほんま,そうやなあ.著者は,翻訳を通じて読者に原著者のメッセージが正確に伝わることを旨としていると書く.この点から言うと,いわゆる「誤訳糾弾本」(かのベック先生とかね...)は,正義を振りかざしているようで鼻持ちならないと眉を顰める.確かに話はわかるのだが,別宮貞徳の糾弾対象となった本はどれも「話にならないケース」ばかりだったと理解している.
・「翻訳者は弁解してはいけない」という指摘(第4章)はその通りだと思う.翻訳に関する弁解は訳文のクオリティに対する免罪符にすぎない.青土社&瀬戸口烈司という〈無敵デュオ〉は,ベック本だけでなく,本書にも登場する.研究者が翻訳を手がけるというのは,実にリスクの大きな仕事であることを痛感する.
・理想を言えば,職業研究者にして職業翻訳者である同一人が訳を担当すれば言うことなしなのだろうが,それが現実的でないことは誰もが知っていること.でも,あえて翻訳をしようと研究者が考えるときは,その本のもつメッセージを伝えようという使命感みたいなものがあることは確か.それがえてして空回りしてしまうのが問題か.「原書を読めばいいだろう」というのはタテマエでは通っても,実際問題として読まれていないのが現実.
・むしろ,研究者の立場からすれば,他人(潜在的読者)のためではなく,利己的な動機づけ(自分の属する研究分野の勢力拡大とか若手への影響)で翻訳をしてしまうというのが,いいのかもしれない.職業翻訳者と職業研究者とでは,翻訳に対する姿勢がちがうのも当然だろう.
・2冊目の『職業としての〜』は,まさに職業翻訳者ができるまでを自伝的にふり返った本.下訳者としての修業からはじまって独り立ちする過程をたどっている.職業研究者の場合,そういう意味での「翻訳修業」の期間はゼロであるのがふつう.とすると,この期間に「文章」とか「翻訳」に対する心構えに有意な差ができるのは十分に理解できる.この本は,出版社との金銭関係とか契約など職業翻訳にともなう事例集としても読める.これほど有名な翻訳者にして,なお出版社との「綱渡り」みたいなやりとりがあるという.職業研究者が翻訳に気軽に手を出すことの怖さを感じる.ええかげんなことはできないという教訓.しない方がどれほどラクか.
・そういえば研究社の『新和英大辞典』の新版(第5版)が今月出版されるとのこと(→研究社サイト).30年前に出た旧版(第4版)よりも20万項目も増えているというのはただごとではないな.えいやあっと買ってしまうか.
・生物地理学会から査読依頼原稿が届く――すぐすまそう→すぐすんだ.およそ,仕事はかくありたいもの.クラスター分析のデンドログラムをそのまま〈系統樹もどき〉あるいは〈みなし系統樹〉って考えちゃダメだってば.
・本日の総歩数=5603歩.
1 juli 2003(火)
・未明から原稿書いたりとかあ,メーリングリストに月例アナウンスを送信したりとかあ.ふわわ.
・伸びをすると強打した肩から胸にかけての筋肉が痛く,シフトキーを打つと突き指した小指が痛い――身体的ダメージがいつまでも残るのは老化している証拠だそうな.ちっ.
・荒俣宏の〈新・想像力博物館〉――おもしろいけど,暑苦しい.万有図書館は時間があったら探検してみたいが.閲覧できるブラウザの制約がある.Internet Explorerは大丈夫,Safariも問題なし.でもOperaではダメ.凝ったつくりであることは確かだけど,個人的にはアラマタ蔵書をどんどん電子化してくれる方がありがたい.
・かりかりと英語していたら,突如としてKOされてしまった....いきなりやってきて,いきなり結界を結んで,さっさと帰国しようとするんだからもう〜,数理物理学者ってキライさ.なになに...『Introduction to Nonequilibrium Statistical Thermodynamics』――いややー,統計物理学の英語の本はー.あれ,これとちごてぇ〜,こっちか...『非線形物理:これからの基礎物理と数理のために』.ふんふん,日本語やん(安心).うわ,でも233ページもあるのに未完とは.このタイトルを見ても,生物学者はゼッタイ手に取りませんてば.第5章,待ってます.
・銀座のビヤホール〈ピルゼン〉が一昨年の9月に店を閉じていたとは今まで知らなかった.残念.〈ライオン〉ではなく〈ピルゼン〉という主義だったのに.あるときヴルストを食べていたら,隣のテーブルのドイツ人が「ヴルストにはナイフはいらない.1本まるごとかじるんだ」と忠告されたことを想い出した.ソーセージ1本にも食のスタイルがあったということか.
・雨滴がぱらつく中を4kmほど歩く.ひさしぶり.
・細馬宏通さんの〈日記〉(The Beach)の6月28日分に,琵琶湖・沖ノ島での〈ふなずし食い倒れ顛末〉が.ハスずしにフナずしとは.くー,うらやまし過ぎる.腹ごなしに湖岸で Trb のロングトーンしないとダメですよ>細馬さん.
Jean Geoffroyの〈Marim'Bach〉をしばし聴きつつ,メンタル集中.5-octaveのマリンバが欲しくなる.中学のときにYAMAHA 400cを買った当時は,4-octaveマリンバでもこんなにでかい楽器が存在し得るのかと思っていた(楽器店の人は「京都で3台めの納入です」とか言っていた記憶がある).それが30年経つうちに,低音域への志向が強くなり(マリンバなんだから当然なのだが),4→4+1/3→4+1/2→5とデフォルトの音域が広くなっていった.マリンバ作品もいまでは4-octave楽器では演奏できないものが多いだろう.でも,いまどき低音域に使えるローズウッドがふんだんに入手できるとは思えないのだが.ま,当面の越え難きハードルは資金とスペース(なんというシンプルな理由か).YAMAHAだと150万円,Marinba-Oneだと250万円――自家用車並みですな....だいいち,間口が3mもあるような〈家具〉をどこに置くのん?(マリンバので寝泊まり?)
・amazon.co.ukから着便2冊――ダーウィン論文集『The Cambridge Companion to Darwin』(2003)と分岐学史Henry Gee『Deep Time: Cladistics, The Revolution in Evolution』(2000,Fourth Estate).Geeの本は見落としていた.
・原稿原稿とつぶやきつつ寝る――明日こそ決戦だ!
・本日の総歩数=14439歩.※久しぶりの1万歩越.

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