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日録2004年2月


29 februari 2004(日)※つくば→東京→つくば

◇前線が通過したらしく,未明は少し湿っていた.しかし,夜明けとともに天気は回復.ただし,昨日よりも気温は低い.

◇今日は東京に出る予定があり,方々のキャレルにて原稿を書き続けたいな.あっちこっちで.

◇忘れないうちに,TRC週刊新刊案内の今週分:1363号――『九竜城探訪』あたりが食指ものか.今月は中公新書新刊におもしろそうなのがちらほらと:『ニューヨークを読む』,『漱石が聴いたベートーヴェン』など.※そういえば,夜,JR東京駅構内の書店で,『50歳からのニューヨーク』(タイトルうろ覚え)という本を見かけた.

◇お昼近くに高速バス〈つくばね号〉に乗車.さすがに日曜の昼下がりに都内に向かう人はあまりいない.首都高も空いていて,ほぼ定刻にJR東京駅日本橋口に到着.駅ビル2階に見えるスターバックスにて原稿を書く.あ,プロローグ,意外に長くなってきた.2時間ほどスタバ隅が〈みなしキャレル〉と化す.

◇『クレーの詩』(2004年1月25日刊行,平凡社,コロナブックス111,ISBN: 4-582-63408-7)を入手――パウル・クレーが高校時代に書いた解析幾何学のノート.楕円曲線の講義録の端っこには,泣き叫ぶ女性のスケッチ.その脇に――

einsam in frühen Tagen ... [こんなに朝早くただひとり……]

◇夕方4時にようやく一段落――本郷通りにある東京ガーデンパレスにて,午後5時から森中定治さんの祝賀会に出席.アマチュアの蝶研究者で学位を取ったのは森中さんが二人めだとか(もっといると思ったが).日高敏隆さんと同じテーブル.埼玉を中心に関東の虫屋約40名が集結.高尾ゼミナール主催者を初めて見る.マイクを握ったり,フルコースをいただいたり.おめでとうございました.

◇午後7時に予定通り散会――そのままJR東京駅に戻り,高速バス乗り場前のサンディーヌが〈みなしキャレル〉と化す.つくばね号の出発時間まで,かしかしとキーボードを打ち続ける.うう,さらに成長するプロローグ(やば).※今度からは「みなし」ではない〈キャレル〉をちゃんと確保しておこう.

◇午後9時半(ほぼ定刻)につくばに到着――またもキーボードに向かい,日が変わる頃,沈没でーす.

◇本日の総歩数=7145歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].※都内をフラフラ歩いているようではアカンわけですな.


28 februari 2004(土)※つくば→大洗→つくば

◇明け方は霜が降りていた.プチ氷点下.でも日中はぽかぽかするにちがいない.月末だが,いよいよ「やばやば」な残務がいくつか残っていたりする.

◇「プロローグ」と「第1章」〜〜.※絶叫モードの週末.

――執筆パターンに関して〈gradualist〉かそれとも〈punctuationalist〉かと問われれば,躊躇なく後者と答えよう.なんたって「stasis」の期間が長いもんね.「〜字/日」という定速計算がちっともできない.漸進的に書き続けられる人は心底うらやましいと思う.人工雪の〈核〉がふっと出現して,あるいは〈沸騰石〉みたいなものがぽとんと落ちてきて,がーっと書いていくというのがいつものパターン.今回はどーかな?

◇前から予定されていた〈アクアワールド・大洗〉に向かう.久しぶり.群泳するイワシとか,ぼおっと浮かぶマンボウとか.那珂湊漁港の〈小舟〉で鮪カマ塩焼き定食魚を食べて帰還.

◇原稿用紙200枚分と考えると,200枚×400字=80,000字.つまり160KBのテキストファイルを思い描く.1章あたり20〜30KBということ.これで具体的なイメージが湧く――「stasis」の終わり.

津村ゆかりさんの別館〈技術系サラリーマンの交差点〉に続報――「続「世間体」を気にかけながら書く」(2月28日).津村さんの考えはわからないではない.ぼくにしても独法の研究員なので,タテマエ的には言われているような慎重さなり配慮が必要なのかもしれない.しかし,そういう有形無形の「世間体」とか「弁明」は,自分を縛るものでしかないし,何よりも不完全燃焼のモトあるいは後悔のタネになる気がします.欲求が不満しません? たとえば,周囲のことをちょっとでも考えたりしたら,自分の研究内容に関わる本を単著で書いたり,ひとりで何かコトを起こしたりできなくなるでしょ? 研究でも興行でも,〈スターター〉役はひとりで十分だが,その人がいないと何もはじまりません.〈スターター〉の辞書には「世間体」という言葉はない.やったもん勝ち.

◇むしろ,そういうしがらみは最初から「ないのだ」と自覚して,職場の周囲とは「連動しないよ」という姿勢でやってきたし,それ以外の選択肢はまったくなかったというのがぼく個人の経歴だったわけ.自分の仕事の内容を考えたとき,農環研という職場はかぎりなく希薄で,類縁のある研究者はむしろ所外にいました.31歳のときに選考採用で入省した時点でそういうことははっきりしていたので,ためらいなく所内で「非単系統」宣言をし,職場の〈内〉ではなく〈外〉に軸足を置いて今日まで過ごしてきました.「農水省の中でよく仕事を続けられますねー」と言う人もたまにいるのですが,日頃からそういう意識が欠落しているので,言われてみて逆に「そういう見方もあったのかぁ」とこっちが新鮮に感じてしまったりして.

◇こういう事情はごくパーソナルなことなので,「職業としての研究に従事する人たち」へ一般化しようという意図はまったくありません――職業上の〈individualist〉であれば,誰しもそういうふうに考えると思いますよ.「自分がすべて」だということを.

◇こんなぐあいに書いてくると,同じ「職業的研究者」とひとくくりされるカテゴリーの中には,職場環境・職場文化・職場慣習などなどの点で互いに異質なサブカテゴリーがあるのかもしれない――が,ここでもまた〈individualist〉たるぼくは「ま,結局は個人ごとにばらばらなんでしょ」とあえて言ってしまうのだ.研究者ウェブサイトをいろいろ見回すと,その「異質ぶり」が見えてきて愉しい.もっとたくさん増えてくれれば,さらにばらけてくるだろうと思う.それがまたいい.

◇本日の総歩数=6398歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


27 februari 2004(金)※誕生日だったりする

◇朝方はたいそう冷えましたな.名残の氷点下.日中はその気配も消えることだろう.46歳の誕生日にはこの一曲――〈すべては薄明のなかで〉.タケミツ?/パウル・クレー? ※武満徹がこんなに多くのギター曲を書いていたとはね.知らんかった〜.

◇今日は書きます――農環研〈奥の院キャレル〉に,しばしお籠りでーす.※わ,iPod もっていくの忘れた〜.

◇あんまり天気がいいので,お誕生日ウォーキング(場外コース)を昼休みに1時間ほど.※畜草研の飛び地で,一面に黄色い花を咲かしていたアブラナ-likeな牧草(草丈低し)はいったい何? 切り株読書のひととき.Vincent van Gogh 書簡集.

◇『生物科学』誌から太田特集記事のゲラ刷(5pp.)が届く.週末フリータイムを見透かされたか.ん,同封されているこの分厚いのはいったい……〈“みなか”の書評ワールド(その4)〉.なんでゲラが13ページもあるねんな!(いったい何冊詰め込んだん,編集長さまぁ@ダーウィン逃亡中)――内訳は,小川眞里子『甦るダーウィン』,ヘイドン・ホワイト他『物語と歴史』,カルロ・ギンズブルグ『歴史を逆なでに読む』,ランドル・ケインズ『ダーウィンと家族の絆』,ロバート・クリッツマン『震える山』,そして,山本義隆『磁力と重力の発見(全3冊)』.※要するに〈大もん〉ばっかしやん!

◇松田裕之さんから講演要旨が届いたので,該当ページを更新――日本生物地理学会大会ミニ・シンポ〈次世代にどのような社会を贈るのか?〉.

津村ゆかりさんの〈分析化学のページ〉に,先月末から blog の新しいページ〈技術系サラリーマンの交差点〉ができていた.たまたま徘徊して出くわしたのだが,あらま,ワタシに声がかかってるやん――“「世間体」を気にかけながら書く”(2月25日付)での言及.確かに,ぼくはウェブサイトにしても,メーリングリストにしても,研究者が「何ごと」かをしようとする動機づけは,利他的ではなく,利己的であるべきだと考えています.それは,何ごとも〈自分のためにやる〉というシンプルな行動規準.津村さんは,「組織の一員」としてのサラリーマン研究者は,自営業的研究者とは異なり,「自分のため」というだけでは「不十分」だと書かれている.ホンマにそう思います?

◇blog にコメントするというのは初めてのことだったが,せっかくの機会なので,次のようなコメントを返した――

投稿者: みなか (February 27, 2004 02:35 PM)

津村さんにコメントされてドキドキしている「みなか」です.ども,はじめまして.「本館」もときどき読んでます.

私がウェブ公開に際して「自分のために」という点にこだわるのは,「他人のために」という利他的なスタンスに個人的に堪えられないという実にシンプルでパーソナルな理由からです.「他人」のためにということを看板に出した時点で,その重荷をこれから担いでいく自分を想像しただけで,ウェブ公開を持続していこうという気力が萎えてしまいます.

だから,「貢献/有益/鍛錬/社会」というような想定される利他的キーワードをすべてオフにして,あくまでも「自分のために」というだけにとどめておきたいという意味です.個人的な動機づけが何よりも重要なのだということは,過去10年に及ぶ学術系メーリングリストの運営を通して,私が学んできたことです.

もちろん,私のサイトに掲載してある情報や資料を見て,ひょっとしたら「役に立った」と言ってくれる他人がいるかもしれません.

しかし,それは私にとっては嬉しい「おまけ」であり,サイトを公開したことに付随する「付加価値」みたいなものに過ぎません.それを目的とするわけでもなければ,それを期待するわけでもありません.

blogへの返信コメントというのは初の経験ですので,読みづらかったらごめんなさいね.

――ずっと前に『本とコンピュータ』に書いたぼくの記事でも,利己的な動機づけということは繰り返し強調しました.それは,「個人」を単位にして行動していきたいというスタンスの表明でもあります.

◇ぼくが「ウェブ日記」なるものを記録しはじめて10ヶ月ほど経過したわけですが,いろいろな人がそれぞれ書いているウェブ日記間の〈連動〉――ある人の日記内容への応答なり感想が別の日記に見られることなど――があることを考えれば,個体レベルの「ウェブ日記」はそれよりも高次の「ウェブ日記」集団レベルでは〈擬似blog化〉していると見られないこともない.

◇ただ,ぼくのような〈individualist〉の立場からいえば,〈blog〉は「異教の世界」そのものだけど.※blogしている人って疲れたりしないのかな?(素朴な疑問です)

◇本日の総歩数=15419歩[うち「しっかり歩数」=8390歩/73分].※なあるほど,あれくらい歩くと,これくらいのスコアになるわけね.


26 februari 2004(木)※年休@筑波山潜伏→社会復帰

◇筑波山から見る霞んだ夜明け.明け方5時に起床――氷点下の気温かな.内湯に入り,目を覚ます.※ヘソが曲がってしまった DynaBook 君の性根は,丑三つ時に叩き直されたとか(導師により相当お仕置きされたようだ).今日からは生まれ変わるのだよ.

◇筑波山頂と下界を交互に眺めつつ E. O. James 『The Tree of Life: An Archaeological Study』(1966,E. J. Brill, Leiden)を読み進む――生命樹(the tree of life)とか宇宙樹(the cosmic tree)の発祥地は,メソポタミア文明が繁栄した〈近東〉の地であると著者は推測する.楔形文字で粘土板に刻みつけられたシュメール神話に出てくる,万物の起源としての「始原水(the primordial water)」が〈生命樹〉を育んだ神話的背景をなしているそうだ.近東の多くの社会で,樹のもつ〈聖性〉が神話化されているとのこと.

◇朝食後,打合せ再会――話題は,分子進化工学とか放線菌ハンティングとか,TVドラマ『白い巨塔』ウラ話とか北大恵廸寮廃寮譚とか,過去を推定するか将来を予測するかとか,スクリーニングにどのように利用しようかとか,ま,いろいろと.プロジェクトがこれからいい方向に進めば,ここに来た甲斐があるのだけど.

◇某所に大量のLPレコードの遺産があるという情報を仕入れる.クラシック3000枚.旧持ち主(故人)は,連日連夜タンノイの超弩級スピーカーでワーグナーやマーラーを流し続けたそうだ(※う,うらやましい....社会のメイワクかも).ナガオカとかシュアとか〈針噺〉に花が咲く.

◇そういえば,同席した某氏から,ヤン・ガルバレクがいま来日公演中で,本当だったらそっちに行きたかったのだとか(ご愁傷さまです,ハイ).今回はヒリヤード・アンサンブル連れではないとのこと.

――なんやかんやで,午前中いっぱい筑波山に潜伏する.その後,下山.

◇社会復帰して研究所に戻る.ふむぅ,あれこれいろいろと新たな用事が堆積し,プレッシャーが増している.そやけど,今日は1日年休やし,ええやんええやん(少汗).

いま方々で(ウソ言いな)ベストセラーになりつつあるという山下好孝『関西弁講義』!――設問:「京都人と大阪人を判別するには?」→解答:「〈東京=とうきょう〉を発音させるべし」.京都人なら低音から始まる〈L0〉型で「○○○○●」(○=低;●=高)と発音し,大阪人は高音から始まる〈H0〉型で「●●●●●」(すべて高音)と発音する(p.95).とりわけ「へぇ〜度」が高かったのは,この設問:「シャベルとスコップではどちらが大きいか?」→解答:「関西人は“スコップ<シャベル”と言うが,関東人は逆に“シャベル<スコップ”と言う」(p.171).確かにそうですな.※どや,読みたい思わへん? さあ,みなさんも一家に1冊(もっと煽りぃな)

◇命令形の表現はとても微妙.とくに肯定命令と否定命令の「」はむつかしいなあ.たとえば――

文1:「おいしいお酒やし,もっと飲みな」(肯定命令)
文2:「そんなつよいお酒,もう飲みな」(否定命令)

――の太字部分をどう発音するかという問題.著者は文1は〈L0〉型,文2は第2拍目にアクセントがある〈L2〉型「○●○」という(p.141).でも,ぼくの発音タイプだと,文1の場合もまた〈L2〉型となって,「○◆○」(◆は拍の中で音が下降する)が耳によりしっくりくる発音と感じられる.もともとが文字表記しにくいのだが,あえて肯定命令と否定命令を強調する表現にするなら――

文1’:「おいしいお酒やし,もっと飲みぃな」(肯定命令)
文2’:「そんなつよいお酒,もう飲みなや」(否定命令)

――ってな感じになるでしょうか.傍に「自動再生機」をお持ちの方はぜひ何度も確認してくださいませませ.

◇本日の総歩数=3762歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


25 februari 2004(水)※農環研→筑波山隠遁

◇冷え込みまったくなし.氷点下にもならない明け方.

◇使用資料を作成したり,事務書類を書いたり,「日録」記したり……ん,昨日もそんなふうなことを書いた覚えが...(なんの成長もないヤツめ).でも,年度末だしぃ.

◇念のため,ノートパソコンのクローンをつくっておこうと思い立ったのが運の尽きで,意外に時間を取られてしまう.昨年,ふとした拍子に DynaBook 君が息絶えてしまい,その代替に DELL 氏をずっと使っていたのだけどやっぱり重い.冷たくなった DynaBook 君はとある導師の手で息を吹き返したのだが,静養のためしばらく放置しておいたところ,イマイチぐあいがよろしくない.あちこちいじり始めたら,やっぱり時間を喰われてしまった.

◇そろそろと〈執筆慾〉が湧いてきました――今晩あたりが山場かと.>K治さん.

◇タケミツの〈雨の樹〉をぽつぽつと聴く.マリンバ2台にはさまれたヴィブラフォンという楽器構成と舞台配置.そして,数多のアンティーク・シンバル.確かに,音が上の方からぱらぱらと滴り落ちてくるようだ.ホールで聴けばきっとさまざまな倍音がすみずみにまで残響し混ざりあうのだろうな.岩城宏之・吉原すみれの〈クロス・ハッチ〉はあっという間に終ってしまう小品.

◇昼前に「大物」がご到着〜――〈Pickering版ダーウィン全集〉(The Works of Charles Darwin, 29 volumes).さてさて,いったいどこに「安置」すればいいんでしょう.まさか,段ボール函のままいうわけにはいかへんしねえ.しばらくは撫で撫でしてるけど.※フジツボのモノグラフを初めて目にした.ビーグル号航海の記録だけで9巻もあったりする.

◇年度末締切の決済とかなんとか,ホントはまだいろいろあるんですぅ.(汗)

◇「しっかり歩き」する時間なし.天気はとってもいいのにねえ.残念.

――その代償行為として,野瀬泰申『全日本「食の方言」地図』を読了.インターネットを利用した投票で,食の地理的変異を集計した本.メール本文をぺたぺたと貼り付けたような体裁なので,いまいち座りが悪い読後感だが,内容的にはとてもおもしろい(というか食欲が湧いたり湧かなかったりする).「京都でいうところの「きつね丼」(油揚げの短冊切りを似て乗せた丼)を卵でとじたバージョンをどう呼ぶか?」 ある投書ではそれは〈衣笠丼〉だと書いてあった.しかし,ぼくがいつもJR桃山駅近くの食堂で食べていたときは,確かに〈桃山丼〉という名前だったと思う.別の投書には,そういう卵とじバージョンは〈木の葉丼〉だと書かれてあるが,京都では〈木の葉丼〉の主役はかまぼこだったはずだ.……というような議論が延々と続く本である.※な,食欲湧くやろ?

◇今日の夕方からは,ちょっとした所用にて,筑波山中腹あたりに潜伏します(捜索しないでねー).いろいろとお話ししたり,説得したり,デモしたり,洗って染めたりと,まあいろいろとね.明日いっぱいは「実体」がどこにいるかは不明です.

◇夕方頃,筑波山中腹に到着――少し標高が上がっただけでも,気温がはっきりと低くなっている.下界が一望のもとに.潜伏先の真向かいにある〈つくば湯〉で露天風呂(ちょっと寒かったか...).筑波山上のホテルなのに〔受験生御一行様〕の歓迎札が下がっている(筑波大学の2次試験日だからね.).

――夕食後,ひたすら打合せ.「正答」を射止めるためのメソッドではないのです.もともとそういうものを目指しているわけではない.むしろ,拙速でもある程度の「絞り込み」をしてくれるツールをつくろうということ.天文学的な可能性の中から,ターゲットとなる候補集団を選択しようというのが目標.悪いところがあれば,走りながら修正していけばいいでしょう.

◇日付が変わる頃,ぼくはあえなく布団に沈む(ぐー).他の参加者たちは午前1時過ぎまで論議を続けたとか(タフやねえ).

◇本日の総歩数=5778歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].※う〜む....


24 februari 2004(火)

◇明け方,一瞬だけ氷点下になるも,強い日射しでどんどん暖かくなる.冷え込む季節はもう終わりか.強風もおさまったみたいだし.並木あたりではもう並木[シャレちゃいますぅ]の梅がほぼ満開か.

◇〈ベイズ進化学〉続報――岸野さんの演題が確定.北門さんの演題を再変更の上,確定.ここんとこ,連絡メールが五月雨てます...(殿のお言葉).お,宮さんの演題も確定したぞ.これで,演者と演題はすべて決定された.

架空生物のサイト――かの有名な鼻行類こと〈ハナアルキ〉,および体系学者の愛玩動物〈Caminalcules〉.すでに生誕40年になる〈Caminalcules〉には,まだ「標準和名」がないんですね.試しに公募してみるか.

◇追い立てられるように,方々に連絡したり,返事書いたり,頼み込んだり…….でもって,もう正午.今日は「しっかり歩行」するぞー.

――日射しも気温も虫の動きぐあいも,冬は遠のいたと実感する.

うっかり滞めてしまっていた小学館〈武満徹全集〉が届く.【映画音楽】の2巻(第3〜4巻)が壮観だ.石原裕次郎主演の『狂った果実』,ショーン・コネリー主演の『ライジング・サン』,そして黒澤映画『乱』――1960〜90年代につくられたおびただしい数の映画に武満はユニークな音楽を付けていることを知る.ひと昔前の日本映画を観ていて,「ん,この現代音楽っぽいBGMは?」と感じたら,それがタケミツだということなのか.この世界に入ってしまうと,またまた出てこられなくなるので,まずは第2巻の【器楽曲・合唱曲】からね.う,フルート・ギター・リュートのための〈環(リング)〉,ハマリますねー.何たってまん丸の環状楽譜だもんね.※続く最終巻(第5巻)は音源探索と新資料の発見により,刊行予定が2ヶ月ほど遅れるらしい.確かに「音源探し」に時間をかかるのも無理はなかっただろう.「本」とはちがって,「音」だしね.CDはもちろんだが,各巻についている解説書がよくできているので,それだけ独立に読むこともできる.

◇生物地理学会シンポ〈共進化の生物地理学〉演者の神崎菜摘さんから早々と講演要旨が届いたので,ウェブで公開する.

◇いろいろと書類書いたり,解説資料つくったり,ちょこっと作文したり,あれこれ集めたり.ソレもやらんとあかんでぇ.ほれ,アレはすんだんかぁ,はよ,しよし.※きー.

◇本日の総歩数=12209歩[うち「しっかり歩数」=4636歩/37分].※ううむ,昼休みの徘徊時間まで記録されてしまった…….


23 februari 2004(月)

◇春の「嵐」が通り過ぎ,最低気温プラス12度の朝――さすがにあれだけ強風が吹き荒れると,地表近くのもやもやはすべてすっきりと消え去り,筑波山から丹沢方面までくっきりと見える.今日は晴れ上がるだろう.

◇細々と黙々と仕事をこなす(と本人はあくまでも言いはる)

◇晴れ上がったのはいいが,今度は北風がびょーびょーと.またまたホコリがたち,遠景は茶色く霞んできた.今日もまた,「しっかり歩行」には絶悪な天気ということか.

本日の献本は,William Hamilton のお弟子さんの性淘汰本,どうもありがとうさんです ―― オリヴィア・ジャドソン『ドクター・タチアナの男と女の生物学講座:セックスが生物を進化させた』(2004年2月25日刊行,光文社,ISBN: 4-334-96165-7).一寸見には週プレの連載コラムみたいなノリですが,これがまたけっこうおもしろい.こういうスタイルもありですかって感じ.たとえば――

「タチアナ先生: 私の名前はトゥイッギー,ナナフシです.交尾をしながらこの手紙を書いているので,とても違和感があります.でも彼と私は,もう10週間も交尾中なのです.私は頭がぼーっとしているのに,彼は相変わらずギンギンみたい.…… (インドのセックス酔い娘)」(p.16)

――てな調子の問答が延々と続くのだ(タチアナ女医さんの解答もなかなかノッてます).それにしても訳師さま,よく訳されましたねぇ〜.なんたってタイトルが『Sex Advice』だもんね.しかも,先入観を裏切るように「ちゃんとした本」だったりする.にくいねー.

◇3月のイベント〈ダーウィンで科学を楽しむ〉の事務局から参加登録受領の返事あり.最後はやっぱり抽選で参加者を絞るわけね.結果がわかるのが1週間前か.

◇進化学会大会〈ベイズ進化学〉シンポでの北門さんの演題が確定した.生物集団の遺伝構造と資源利用との関係について話題提供してもらえる予定.実行委員会に連絡しないと.そろそろ大会ウェブサイトも公開されることだし.

〈アナタ,ヒマそうですねえ〉――と一方的に話しかけてきたのは,1980年の国際昆虫学会議(京都国際会議場,宝ヶ池)の帰りシャトルバスで,たまたま隣りの席に座った池田清彦という人.学部4年生だったぼくは,同じ研究室だった渡辺政隆という人とともに,宇治の実家を根城にして,連日遠距離を宝ヶ池まで通った(弁当持ちで).オタワから参加していた松田隆一という人の独特のオーラを遠巻きに感じつつ(鈴木邦雄という人がいつも一緒だったな),昆虫体系学のセッションでパリ自然史博物館の Claude Dupuis という人による Hennig 分岐学史の講演を聴いていた.昆虫遺伝学の長老 M.J.D. White という人はタイムキーパーなんかおかまいなしでしゃべっていた.今となっては,これら「〜という人」たちがいろいろなかたちで(プラスでもマイナスでも符号は問わず),ぼくの日々の生活やものの考え方に関わっているのはと言うべきだろう.※〈TAXA〉での青木重幸さんという人のコメントを見て,ずるずると過去の記憶を引きずり出してしまった.

◇本日の総歩数=5580歩[うち「しっかり歩数」=0歩!].※昨日に続きまたも「しっかり歩いていない」1日であった.今後もこういうふうな「悔悟の日々」が続くのか? とほほ.


22 februari 2004(日)

◇暖かい霧の朝――昨日の暖かさに明け方の冷気が入ったためか,ミルクのような霧が立ちこめる.とくに畑地から立ち上がる霧が濃い.松代5丁目交差点を南下した当たりは,早朝の視界がまったくゼロだった.果樹試験場[昔の名前がすぐ出てくる]あたりになってようやく先が見えはじめる

◇進化し続ける万歩計――10年ほど前から万歩計を常用している.まあ,いちおう歩いた歩数をカウントしたいなというような健康志向というわけではなく(ちょっとくらいそーいう色気がないわけではないが),むしろ時計代わり.腕時計しない派としては計時機能のついた万歩計はたいへんありがたい.懐中時計の感覚でいつも使用している.昨日,先代があえなく急逝してしまったので,後継機に来ていただく.〈OMRON HJ-107〉――うう,万歩計も着実に進化し続けていることを知る.単に歩数をカチッカチッとカウントするだけが能ではない.時計機能はもちろん.カロリー計算・距離計測・歩数集計・週間メモリーなどどんどん新しい機能が付いている.新しく登場した後継者にはついに「しっかり歩数」機能というのが搭載された.要するに,「60歩/分以上のスピードで連続10分以上歩いたときだけ歩数カウントする」機能だそうだ.たらたら,てれてれ歩いているようではカウントしてくれないのだ!

◇嗚呼,今日からは万歩計に歩かされる日々が始まるのか…….そのうち,メッセージ機能が憑いたりして――〈もっと歩きよし〉とか.かんにんしてくれー.

TRC週刊新刊案内を3週分まとめてチェック:1360号1361号1362号――読了分でいえば,やっぱり山下好孝『関西弁講義』か.資料として役に立ちそうなのは『OEDの日本語378』.手が出そうなのは,中村禎里『近代生物学史論集』(みすず書房,ISBN: 4-622-07082-0)とオリヴァー・サックス『オアハカ日誌:メキシコに広がるシダの楽園』(早川書房,ISBN: 4-15-208547-9)かな.

OED〉あれこれ――年明けてから〈OED〉がらみの新刊が次々に出ている.上に挙げた福田陸太郎監修『OEDの日本語378』(2004年2月10日刊行,論創社,ISBN: 4-8460-0500-3)の他に,そのものズバリの西山保『オックスフォード英語辞典第3版(2010年発行)その栄光と影』(2004年2月,英宝社,ISBN: 4-269-77030-9)なんてのも.数年前の『博士と狂人』に続く,〈OED〉の歴史と今後を見渡した Simon Winchester の新刊『The Meaning of Everything』(2003年,Oxford University Press,ISBN: 0-19-860702-4)が出たことを考えると,これから〈OED〉のちょっとしたブームがあるかも.〈OED3〉の出版が予定されている2010年が当面のゴールか.※James Murray諸橋轍次が重なって見えてしまうのは気のせいか.

◇夜遅くになって,トツジョとして突風と横殴りの雨足.昼間のホコリが吹き払われたと思いきや,葉っぱやら小枝が飛び散っている.誰か【呪】を飛ばした? …… 確かに〈EVOLVE〉には「邪鬼」がお久しぶり再来したけどー.※他人に読んでもらおうという意図がちっとも見られない.単に文字をバラまいているだけ.これでも「作戦成功」にカウントするつもり?

◇本日の総歩数=7332歩[うち「しっかり歩数」=0歩!].※なんだかすごくキビシイ業績評価をされた心地ぞする…….


21 februari 2004(土)

◇春の陽射し――ああ,これはもう春なんですね.ことばはもういりませんな.春.陽光も,ホコリも,花粉も....

◇万歩計くん,息絶える――このうららかな春の陽気の中,ふと気がついたら常用の万歩計[OMRON HJ-104――御室ゆかりの社名とはねー]が腰の辺りで息絶えていた.おいっ,気は確かか.いくら揺すっても,子どものゲーム機のようにがちゃがちゃ振っても,歩数カウントしてへんぞ! 電池は問題なし.ということは,計測メカの部分がダメなんでしょうか.使い始めてから1年あまり.累計歩数は300万歩に達していたと思われる.よく頑張ってくれましたな.合掌.RIP.※あとは時計機能だけ,使わしてもらいまひょか.

◇進化学会大会の企画シンポの講演依頼をしていた北門さんからOKの返事――これで,やっとシンポジウムとしての「かたち」ができあがった:〈ベイズ進化学――進化研究における新しい計算統計学手法の利用〉.大会実行委員長に進捗の連絡をする.古生物関連の企画シンポも「古生態学」をテーマとして動きはじめたとのこと.

◇コワイ京[女]ことばの話――「これをしてほしい」という意味で用いられる複数の「京ことば」表現がある:(1)〈これ,してんかー〉;(2)〈これ,しとぉみ〉;(3)〈これ,しよし〉;(4)〈これ,したらわ〉;(5)〈これ,しなはい〉.【問】:どの表現がもっともコワイでしょうか?[「どれもコワイやん」とゆうよーな気弱な解答は認めへんしなぁ]

◇〈ケセン語〉の辞書・文法書・聖書が出始めた頃から,日本の各地の方言は「独立語」であるという主張が広まりつつあるのかという気がしていたが,やっぱりね.出ましたね――山下好孝『関西弁講義』(2004年2月10日刊行,講談社選書メチエ292,ISBN: 4-06-258292-9).「関西弁は外国語なのである」(p.212)というスタンスから,独立語としての関西弁(著者は1956年,京都市伏見区生まれ――ち,近い...)の言語学的特徴を論じる.

◇でもって,さっきの質問の解答――もちろん(3)やね.ふつう,こう言われたら,すべてを打ち捨てて「それ」をやるしかないのです.しゃあないやん.〈これ,しよし〉のココロは「これ,やらへんかったら,あとでどーなるかわかってんのやろねー」という心理的恫喝.まかりまちがっても「柔和で親密な婉曲的表現」などと誤解してはいけない.こわー.※別の文脈では(5)も相当な強制力がある(とくに世代差がある場合には).

◇本日の総歩数=2056+α歩.※万歩計が壊れたので正確な歩数は計測されず――本日までの累計歩数275.81万歩[274日間].平均歩数=10066歩/日.


20 februari 2004(金)

腐れわーど地獄(死ね死ね死んでしまえ〜)――朝からとても盛り下がる.昨夕,私的にケリをつけたはずの主要成果報告文書ファイル(わーど)のトラブル.図表を jpeg で貼り付けたところ,プリントアウトできないとのクレームが.doc のファイルサイズそのものは「760KB」ほどなのに,印刷時には「5MB」もの巨大スペースを占有してしまうそーだ.そんなもん,知らんぞお.ま,再チェックしてみますがねえ.またダメだったら,事務保管用のdocファイルと印刷出力用のpdfの二本立てに再分割して,ケリ(again)をつけまくろう.そうしよう.※こーゆうことばっかりしてはいられないのですよ.マジで.

――でもって,結局,図表のキャプションをつくり直すなどというオマケのおしごとまで増えたりして(くー),InDesign→pdf→プリントアウト→スキャナー→jpeg画像化→わーど貼りこみ→プリントアウトという「お笑いコース」をたどり,めでたく完成.ファイルサイズは850KBなのに印刷時には奇怪にも6.5MBにまで膨れ上がるブキミdocファイルをさっさと提出して,私的にも公的にも農水省主要成果関連事務書類無限苦界からよーやく脱出.※ブキミわーどの憑きもの落としには,ことのほか手練手管が必要なのだそーだ.事務界デフォルト文書ソフトがこれだと,ちょっとねー.まあ某太郎だって同罪だけどね.doc とか jtd って拡張子を見るたんびにきーっとなってしまう年度末.

◇朝早く,昨日の進化学会大会シンポ〈進化生物学における計算統計学の利用〉での講演要請に対して,岸野洋久さんから承諾のメール.ついでに〈MCMC〉の話をしてくれそうな「生物寄り演者」を紹介してもらう.※これで演者が3人そろいそうなので,企画としてはなんとか成立しそう.4人目は公募シンポの応募が公表されてから考えましょうか.

◇ぐふー,なおも蔭から次々に出現する太田邦昌アイテム――「著述目録」の洩れ落ち項目が続出.越中かりかり.つくばぐにゃぐにゃ.ワット(1972)『生態学と資源管理』に分担翻訳章があることが判明.※M井部長,『生物科学』原稿とともに情報感謝.

◇気分一新,ゲン直しにヨーヨーマの〈無伴奏チェロ組曲〉の1番をBGMに――ああ,春だ春だ,春のせせらぎだ.ぼくの手元にあるこの〈無伴奏チェロ全集〉(SRCR 1955-6)は映像化(映画・舞台・アイスダンス・歌舞伎など)されているらしい.1番の「プレリュード」はいわく【うねる川の光景】,続く「アルマンド」は【さまようリスの足跡が残る森】,3曲目の「クーラント」は【野の花の咲く草原をぐるぐるとまわる道】,etc... ※しばし現実逃避.ここで正午のチャイム.

◇〈JSTフォーラム〉の講演メモ文書を事務局宛てに一挙送信.こちらの方も一心地つく.次のステップは各演者からの資料集めか.※年度内に報告書を仕上げるというのがプレッシャー.

◇午後の室温が25度の夏日に達した.ああ,ぬくいぬくい――昼下がり,宮さんから,講演タイトルが届く.あとは3人目の演者からの返事待ち./進化学会大会事務局に置く予定の登録システムのインストールのことなどで連絡など少々.予算残額を使い尽くすための書籍・消耗品の選定など少々.お腹が空いたのでパンなど少々.穏やかな早春の午後が「ばたばた」と過ぎていく.

◇なんだかサボってしまって,3週間分のTRC週刊新刊案内のリストが溜まっている.早くチェックしてしまわないと,現物の方が先にやってきてしまうやん.※ほほ.

◇本日の総歩数=8328歩.


19 februari 2004(木)

◇晴れた翌朝は久しぶりの氷点下2度――〈神々の黄昏〉の「ジークフリートの葬送行進曲」など聴きつつ.※長過ぎ〜.

◇午前中に,生物地理学会ミニ・シンポ演者の松田裕之さんから演題を送ってもらう.あとはまりまりだけ.

◇今日は進化学会大会がらみの積み残し仕事を消化――古生物学関連の大会企画シンポジウムを後れ馳せながらプッシュする.E藤さん,ごめんねー.よろしくねー.とコッソリ焚き付けたところ,わ,大会委員長にすかさず居合切りの袈裟懸けでばっさりやられて,あえなく絶命する:「こら〜ぁ! 今頃になって、初めて声をかけたんかい!」 ※えろー,すんまへんなあ.【学園】でのアルコール液浸発言の記憶なんかとっくに揮発してますやん....

◇春が近いことを感じさせる穏やかな天気.でも,海鼠のようにぐてっと動かず,キーボードに固着する.

◇もひとつの大会企画シンポ〈進化生物学における計算統計学の利用――とくにベイズ関連手法に着目して〉も,この期に及んでぴしぴしと連絡メールを飛ばす(もう切られてしもたし,失うものは何もない).

◇コンピューター統計学の進展に裏打ちされたベイズ統計手法の最前線を論議する場としてのシンポジウムだ.できれば現代ベイズ統計学の鳥瞰図を与えてくれる講演がひとつ入ってほしいと思う.ただ,日本で階層ベイズとかマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)の理論を進化生物学の文脈で考えている研究者がはたしてどれくらいいるのか,イマイチつかみきれない.ピュアな数理統計学者ではダメだし.科学哲学からひとりとも考えたが,外す可能性があるかな.最近,MCMCの適用領域として注目されている集団遺伝学にも演者探索の幅を広げるべきか.人選の段階で,ちと悩ましい.※もちろん岸野洋久さんには分子進化学での階層ベイズの応用について話をしてもらうつもりで声をかけてはいる.

◇夕方になって,予定演者の宮正樹さんからさっそく講演承諾メール――ミトコンドリア配列データに基づく魚類系統樹のベイズ推定について話題提供をしてもらう予定.実践的な問題のいくつかを話してもらおう.昨日までアメリカ巡業旅行だったとかで,詳細きわまりない〈巡業日録〉を送ってもらった.※こら,おもろいやん.FSU直撃やもんなあ.海外遠征するとテンションが高くなるな.

◇先週の〈JSTフォーラム〉の講演メモがすべてそろった.内容をチェックして,明日にも事務局にファイルを送る予定.4人の学生アルバイトが議会速記者並みに交代できっちり記録してくれたので,単純に合計しても50ページくらいの分量になる.これに各演者の講演資料(PowerPoint)が足されると,とんでもない厚さの報告書になるのではないかいなあ.

◇夕闇が迫る頃,主要成果候補の報告書の再々々々々(くらい)バージョンを提出――わーど文書に画像を貼り付けるのにとっても苦労する(日頃使っていないので).ま,考えるのもめんどうなので,てきとーに処理して提出.※そろそろケリがついてほしい.

◇夜になって,『生物科学』に生前投稿された太田邦昌遺稿の取扱いの問題が浮上――死者の文章に対して生者がどこまで手を入れられる? 覚悟して〈中〉に手を突っ込む? 体裁を整えるくらいのことはできるか.これもまた〈縁〉なのか.

◇さらに夜遅くなって,生物地理学会ミニ・シンポ演者のまりまりから演題と要旨が到着.※細切れ並行に仕事スレッドが伸びる.

◇本日の総歩数=8900歩.


18 februari 2004(水)

◇晴天・強風・土埃――この季節の関東はこういう日が連日続く.遠方はすでに褐色に煙っている.黄砂かはたまた花粉か(気のせいか?).

◇生物地理学会の公式サイトができるまでの間,大会シンポジウム情報はここに置いておきます.シンポジウムの趣旨文を書いたり,演者の順番を調整したり,ま,いろいろと.※とりあえず,これで当面はだいじょうぶだろう.月末までに講演要旨を集めること.

◇駒場の殿からじきじきに電話――ふぇ,大会参加者登録システムの管理も仰せつかる.それって,ひょっとして重労働かつ重責だったりしません? この1月に千葉大に移られた大きい〈知恵袋〉さんに懇願メールを送ったりする.フォームをそのまま使わせてもらえるのであればいいのですが,実際に動き始めてから大きくトラブったりしたときのことを考えると,白くなったり青くなったり…….額に暗い影ができたりする.※稲毛の〈知恵袋〉氏から連絡あり.やっぱし cgi いじったりするわけやね.げー.

◇気付けクスリ代わりに,〈神々の黄昏〉なんぞを低ボリュームで通聴してしまったりして――ワーグナーの〈指輪〉はこういうときにこそ威力を発揮する(ほんまかっ?).……発揮してほしい(弱気なヤツ).

泣きっツラに現代新書――はいっはいっ,今月末っすね.例の原稿っすね.ひー.※積もる積もる.

◇【平均】と【分散】revisited ―― 長年いろいろな状況(予備校だったり,統計研修だったり,巡業高座だったり)で教えてきて,とてもはっきりしていることは,「平均だったらすっごくわかるけど,分散になるとぜんぜんダメ」という生徒さん側の理解度の格差.ばらついた対象物の集まりを目の前にしたとき,〈平均〉という量はごく直観的な〈location parameter〉として,その役割をするっと理解してくれる傾向がある.単に定義式の複雑さのちがいではなく,皮膚感覚でそれが浸透していることを意識できるかどうかのちがいだと思われる.

◇計算式を与えるまでもなく,平均値は〈まんなか〉というごく直観的な参照点であることが認知できる.一方,〈ばらつき〉の程度としての分散はそうはいかない.しかし,統計学概論の講義で必ず話をするが,分散そのものは(さらに言えばF比でさえ)直感的に生活者が理解できるものだし,実際そうしてきたと考えられる.日常生活の中で遭遇する「ばらつきのある状況」での判断に際して,データの分散の構造化なりパターン化は無意識のうちにわれわれがやっていることなのではないか.だからこそ,偏差平方和・平均平方・分散比(F比)には素朴統計学的な基盤があるだろうと推測している.

◇確か,ある大学の今年の入試問題で,指導要領外の分散をうっかり出題してしまったという新聞記事を見た覚えがある.平均は指導要領内/分散は指導要領外というような制度的差別化をしているようでは,いつまでたっても「平均しかわかんない人々」は減らないよねえ.平均だけじゃなくって分散だって皮膚感覚でわかってしまうということを体感する機会は決して多くはないというのが残念.※分散の「定義式」なんてのは,その日常的理解に対して何一つ貢献していないのさ.教壇に立って実際に教えてみれば自明のこと.

◇〈分散〉のような統計学の基礎概念を理解するのに,実際に計算してみるというのは体感的理解にとって想像以上に役に立つと思う.最近の講義では欠かさず〈R〉によるデモを含めるようにしているが,それは個々の統計手法の説明をするための計算ソフトというよりは,むしろごく基本的なものの考えかたを示すために用いる教育ソフトという位置づけだ.基本的な〈正規分布〉にしろ〈ブーツストラップ〉にしろ,まずは自分で計算してみる(あるいはグラフを描いてみる)というのは啓育の上で効果的だと思う.

◇コンピュータの高速化は単なるツールの進歩ではない.これまではできなかった計算ができてしまうようになったことにより,手法や理論あるいはものの考えかたそのものが変わるということ.とくに,対立する研究プログラム(research traditions)が競合するとき,計算ツールの進歩により,これまでは劣位だった研究プログラムの順位が上がるということはあるだろう.

◇本日の総歩数=8593歩.


17 februari 2004(火)

◇暖かく天気よし.春 ――しかし,なお吹きすさぶ春一番

◇朝イチで,懸案の〈太田邦昌著述目録〉のケリをつけるべく.農林研究団地内を激しく移動.食品総合研究所を急襲し,とある蔵書(『生態学への分子的アプローチ』,1970年,築地書館)を書庫から掘り起こす.太田さん,26歳のときにこんな本まで訳していたとはね.借り出すまでもなく,コピーするでもなく,書誌情報を確認して返却.これですむかと思ったのだが……

……食総研書庫での一期一会の出会い―― Unberto D'Ancona の英訳書『The Struggle for Existence』(1954, Bibliotheca Biotheoretica Vol.6, Leiden).Vito Volterra に献呈されていたりする.こういう古典(数理生態学や進化生物学に限らず)が無造作に転がっているのは,農水省旧国研の図書室ではよくあること(みんな,読まへんのん?).今となっては誰も手に取る人もないのか.図書貸出カードを見ても1980年にただ一度借り出されただけ.せっかくだから,ぼくが借りてあげようね.撫で撫でしてあげよーね.ということで,急遽,予定外の館外貸出しの手続きに向かう.

◇ライブラリーカードでのオンライン手続きにまごまごしていたら(デジタル弱者かいっ),ライブラリアン(?)とおぼしき女性がさりげなくヘルプしてくれた.ぼくのカードを見て,「あら,みなかさん,お名前は存じあげていました」とのこと.あわわ,ワタシはあなたを存じあげていませんわ,とアタフタしていたら,「だって,有名なお方ですし……」――ちょっと待てぇ,ボク,悪名を食総研にまで轟かせた覚えはありまへんでー.それ以上,突っ込んで訊く勇気なく,そそくさと図書室をあとにする.※どこで風評が飛び交っているかわからんな.用心用心.

◇その足で,筑波事務所隣接の農林水産研究情報センター図書室に転戦.『数理科学』のバックナンバーを調べる.改装中なのかな,養生のためのビニールシートが書架を覆っている.うん,これで何とか「太田目録」はほぼ完成したか.即,越中にメール添付にてファイルを送る.『生物科学』の太田追悼特集の原稿はこれですべて揃ったことになる.

◇生物地理学会の今年の年次大会シンポジウムが確定――4月11日(日)立教大学にて:〈共進化の生物地理学――分子から歴史へ,歴史から形態へ〉と〈次世代にどのような社会を贈るのか?〉.※この際,懸案だった生物地理学会のウェブサイトを国立情報学研究所のサイトにつくってしまおうということになった.せっかく場所を確保してもらったのに,コンテンツをまったく詰めていなかったので,やっと動き出したかという感じ.

◇お,ついに殿の御下命が!――進化学会大会の企画シンポもがしがしと詰めていかないと.え,あれはワタシの担当でしたっけ?としらばっくれてもアカンのやろねえ,きっと.[汗].※この1週間が勝負!

◇ダーウィン伝記作家の集い【東京編】――京都では3月18日に〈The Road to the Origin〉がPaSTA研究会により開催されるが,東京では3月22日にもっと一般向けに公開集会が催される→科学技術政策研究所『政策研ニュース184号』(2004年2月発行)掲載のアナウンス〈ダーウィンで科学を楽しむ〉.

◇本日の総歩数=14519歩.


16 februari 2004(月)

◇ずいぶんと久しぶりに農環研に復帰――明け方はもう冷え込まないかな.プラス1度ほど.

◇〈雑用春一番〉が吹き荒れる.この抵抗感は砂嵐のようだ.ざらざらと吹きつけてはそこかしこに積もっていく.いったい何から手をつけようかなどと考えずに,さくさくとこなすのがいいのだろう.※大脳はほとんどアイドリング状態,両手だけ目まぐるしく動く〈I佐人形〉のような.

◇〈Res:もの研究会〉のサイトに,昨年のぼくの発言へのコメントが載っていた――大賀克彦「三中信宏氏への反論」.クリプキが本質主義に対するアンチテーゼだという見解はムリっぽいですよ.※こういうわくわくするものを見てしまうと,アイドリング状態を脱してまたまた時間がなくなってしまう.ガマンするのだぞ.くー.

◇先日の〈長谷川フォーラム〉の「討議メモ」があがってきた.学生アルバイトさん,ダンケ.こうやってまとめて見ると,いろんな話題が飛び交ったんですねえ.※この取りまとめもまた春一番の一部であったりするのだが,まだ全部が届いているわけではないので,とりあえず放置してしまったりする(からいけないのだろうとはわかっちゃいるけど……).

◇パリで開催される Willi Hennig Society の今年度の年会〈Hennig XXIII: Phylogenetics and Evolutionary Biology〉のアナウンスが流された――ホストは国立自然史博物館で,会場は〈CNRS〉.期間は7月18-23日.さっそく,締めきり間近の所の海外出張費の申請書類をばたばたと用意する.

◇そのついでに,しばらく放置してあった〈IOSEB Council〉への返事を書く.こちらのカウンシル会議もこの夏にメキシコシティーでの開催が予定されているが,なかなか予定がきついかもしれない.〈Hennig XXIII〉の他にも,8月1〜4日には駒場で〈進化学会大会〉があり,同月の8月25〜29日には釧路で〈生態学会大会〉がある.国内外を往復して,パリ行きやらメキシコ行きか?

春一番によろめきつつも,グループ内会議とか,太田原稿のチェックとか,非常勤出講書類とか,もろもろ.書き直したり,ひそひそ話したり,いろいろ.※大脳使えよっ >ぼく.

◇おお,そうでしたか,チャールズ・ダーウィンが乗った〈HMS Beagle号〉がついに海底で発見されたのですね.そーかそーか――『The Observer』誌の記事:Robin McKie「Evolution of radar points to HMS Beagle's resting place」(15/Feb/2004).イングランドのエセックスにある内陸島 Potton Island 沖に沈んでいたそうな.1世紀におよぶ「謎」がようやく解けたとのこと.1820年に建造された Beagle 号は,1831年から5年間にわたる南米〜ガラパゴス諸島の歴史的航海の後は,エセックス沖で密輸摘発船として長らく使われていたが,1870年に廃船として売られた後のことは記録に残っていなかったそうだ.今回の「発見」は海洋考古学者 Robert Prescott のチームのレーダー探査によるもの.

◇本日の総歩数=10887歩.


15 februari 2004(日)※高崎→つくば

◇夜半にお湿りがあったようななかったような――しかし,夜が明ければもう晴天.春一番の翌日は埃っぽい強風が吹き荒れている.しかし,昨日とはちがって,低気圧が通過したあとなので,北からの空っ風@元祖.

進化考古学のもう1冊――『Style, Function, Transmission: Evolutionary Archaeological Perspectives』は,完全に〈cultural descent with modification〉の本.徹底してるね,こりゃ.考古学における遺物・文化・スタイルの伝達をダーウィン理論の観点から見ようということ.もちろん,生物系でもすでに文化進化は論じられてきたわけだが,考古学側からどんな新しいものが見えてくるのかが期待される.文化史的考古学(cultural historian)に始まり,プロセス考古学(processual archaeology)を経て,現代のポスト・プロセス考古学(postprocessual archaeology)にいたる現代考古学の系譜を考えるとき,この進化考古学あるいはダーウィン考古学の位置づけが気になる.この論文集や『Cladistics and Archaeology』をブラウズするかぎり,著者たちは1930年代の「進化的総合」に相当するような統合(unification)への志向が色濃く漂っている.

◇今年の進化学会大会では,昨年の〈非生命体の進化理論〉の続編として,「進化考古学」をテーマに取り上げてみようかな.佐倉くんと相談してみよう.演者としては,認知考古学では松本直子さん,型式学では〈もの研〉の佐藤啓介さん,進化考古学を国内でやっている人はいるかな? ※そろそろ,駒場の殿からの召喚状が届きそうな気がするが,まだ大会シンポの進捗がちょっとね……(汗).

◇昨年11月に〈Res:もの研究会〉関連で情報交換したオスカー・モンテリウスの「型式学(typologie)」以来,考古学での系統推定に興味の針が向いていたが,やっと〈脈〉に当たったという感じか.

◇〈脈〉と言えば,日本の天台宗や真言宗では,経典の一子相伝(口伝)の系譜を記した図で,本流は朱で記されているらしい.昨日どこかで読んだ記憶があるのだが,出典不明.新聞記事だったかな? ※光速で揮発する記憶…….

◇また,強風の中,ぶっ飛ばしでつくばへ帰還.下の道だからいいのだが,関越スキー渋滞が早く消滅してほしいですな.

◇本日の総歩数=4700歩.


14 februari 2004(土)※つくば→高崎

◇まったくもう落ち着きのない生活ですな――今日はほかほかと暖かく,居心地よし.ん,でも,何だか暖かい南風が吹き荒れているよーな,と感じはじめたら,それが関東の今年の〈春一番〉だったそうな.湧き立つような土埃がひどい.そのうち花粉も飛びはじめるかな.ベランダの越冬カメさんの水を代えたり,越年オオクワガタのケージに加水したり,お祭り長命金魚の水槽掃除をしたり…….その後,高速ぶっとばしで高崎へ.

◇昨日の統計噺のおりに指摘されて初めて気づく――粕谷ピンク本の書評をうっかりアップしていなかった.あわてて掲載.書影も用意しないと.

◇この1週間ほど,ほとんど農環研に実在しなかったシワ寄せがいろいろと褶曲してきた.あの書類,この決済,その申請,どの雑用,ってな感じで,来週はあれこれとカタをつけないといけない.メーリングリストのグリーティングなんかもう半月遅れでっせ(どーするねんな).そーいう細々事務仕事をきちっとやってくれる秘書さんが欲しいなあ(切実に).

進化考古学〉あるいは分岐学(cladistics)の考古学への導入――今日は本を読みましょ.amazon.com から実にタイムリーに届いた本たち:Michael J. O'Brien & R. Lee Lyman の教科書『Cladistics and Archaeology』(2003年刊行,The University of Utah Press, ISBN: 0-87480-775-1)と同じ著者たちによる論文集『Style, Function, Transmission: Evolutionary Archaeological Perspectives』(2003年刊行,The University of Utah Press, ISBN: 0-87480-748-4).そういえば,JSTフォーラムの松本直子さんの話では,進化考古学についてはあまり触れられていなかったな.

◇生物体系学の分岐学について少しでも知っていれば,『Cladistics and Archaeology』は何の違和感もなくするっと読み進めるだろう.対象物が生物ではなく考古学の遺物や文化というだけのちがいしかない.本書で使われているメソッドはすべて分岐学の直輸入だし,考古分岐図(出土した矢じりのデータが主)の推定には〈PAUP*〉が,そして遺物の形質変化の推定には〈MacClade〉が用いられている.これだけ概念や用語が共通していれば,理系/文系の【壁】などどこにもないかのようだ.1980〜90年代にかけて,歴史言語学と写本系譜学の世界で現代分岐学がざざっと浸透していったのとまったく同じコースを考古学もきっとたどるのだろう.tree-thinking の浸透とみなすのもよし,分岐学の汎用性とみなすのもよし.メソッドとしてのあるいはものの考えかたとしての分岐学の一般性について知る上で,この教科書は生物系の読者にとってもきっと「畑違い」ではないと思う.学問分野を問わず,まず最初に〈系統樹〉という離散構造が導入され,その後で進化モデルの背景仮定や確率統計的な考察が追ってくるというのはほとんど確定したコースのように思える.その意味を上空から考えるのは大切なことだ.何もないところでは,認知化された最節約原理がきっと最初に要求されるのだろう.もろもろのことは,その後から上陸してくる.最初に上陸したものは背後に回るが,消滅することはない.バックグラウンドでじっと生き続ける.

◇考古学や先史学での体系学的方法については,最近リプリントされた Robert C. Dunnell『Systematics in Prehistory』がある.しかし,この本は数量表形学華やかなりし1970年代前半のオーラの〈缶詰〉にほかならない.歴史的には価値があっても,いまそのままの形で使えるわけではない.それに比べると,上記の新刊は〈使える度〉がはるかに高いだろう.

◇本日の総歩数=4065歩.


13 februari 2004(金)※つくば→城ケ島→つくば

◇午前2時起き――前日にあたふたするというのはよくあるが,当日の未明にばたばたするというのは精神上実によろしくない.でもしかたないのだ.時間がないのだ.

◇今日は,三浦半島の突端・城ケ島にある神奈川県水産総合研究所にて〈統計噺〉を午後4時間ほどすることになっている.プレゼン素材は常時30時間分あるので,あとはその順列・組合せだけ.毎年やってる農水省統計研修の「統計学概論」を膨らませたかたちにすることはすでに決まっているが,はてさてどのように膨張するのでしょ(自動詞的に言うヤツ).

◇片道3時間はみておかないと不安か――つくば→ひたち野うしく:常磐線→上野:山の手線→品川:京浜急行→三崎口:バス→城ケ島という乗換え手順.(遠い) 念のため午前7時前には常磐線に乗り込もう.

◇でもって,やってきました城ケ島(初めて).10時過ぎに三崎口に到着――茨城・千葉・東京・神奈川を串刺しにして,予想通り3時間あまりの鉄路旅行.京浜急行の終点まで初めて乗り尽くした.遠景には海が見え,日射しもよく,植生も〈南〉っぽいし,ここはもう春か.それにしても,三崎口の駅前って終着駅の割には何にもないじゃん(終着駅だからということかな).バス・ロータリーだけが広がっている.ふふーん,「とろまん」ねえ…….

◇時間がまだたっぷりあるので,バスで三崎港に直行.と思ったら三崎東岡止まりのバスだったので坂を下っていく.典型的な「漁港」ですな.第三セクターの直営センター〈うらり〉ってのが波止場にどーんとある.しかし,それを除けば,伊豆半島の西側沿岸によくある型式の集落と同じように感じる.〈うらり〉のベンチで『生物科学』用の「太田邦昌(1944〜2003)著述目録」原稿を仕上げ,グレ電から越中に送信.※出先での車中とか空き時間に原稿を書くという悪癖が定着しつつある.

◇11時を過ぎたので,〈うらり〉近くの回転寿司〈海鮮〉に入る.やはり鮪ネタが多い.回転寿司とはいえちっとも回転していない.まだ昼時ではないので on demand で握ってもらう.「地金目」とか「地黒むつ」とか「地さば」とか,ま,いろいろと.うまいっすね.もうこれだけで満足してしまったりして.※仕事,これからなんですけど…….

◇それにしても今日はことのほかぽかぽかとして.「南」に来たからというだけではなさそうな気圧配置かな.平日で人のいない港をふらふらしつつ,城ケ島へのバスを待つ.港町の真中にあるバス待合所には地元らしき乗降客しかいないようだ(当然か).三崎港から城ケ島への路線バスは海岸縁を蛇行しつつ,岬の高みに上がっていく.三崎から城ケ島にいたる大橋は地上高く渡されているので,下の漁港からだとぐるっと巻いて登ることになる.瀬戸を越えて対岸の島に渡るこの風景は,仙崎から青海島への道行きと同じか.城ケ島にはかつて北原白秋の住まいがあったそうだ.その碑が近くにある「白秋碑」バス停で下車.

◇神奈川県水産総合研究所は白秋碑バス停から至近.ちょうど昼休みに到着した.時間にまで余裕があったので,会場に先に入り,パソコンのセッティングとか,いろいろと.

◇たいへんに長いタイトルだ――〈平成15年度研究人材活性化対策事業研究推進支援研修第2回研修「応用統計学概論」〉.とってもたいへんそうなレクチャーだ.どないしまひょー.時間は13:30〜17:00.定刻に開始.10人あまりの参加者を前にして,いつもの曼荼羅・認知心理・誤差いろいろ・〈R〉礼讃・統計涅槃の噺を延々とする.OHPなしで,pdfによるデモが中心.〈R〉を用いた確率分布・分散分析・重回帰分析・クラスター分析を実演する.まあね,いったん高座が始まってしまえば,あとは何とかなるもんで.この日も予定時刻の数分前にばっちり終わりました.

◇「岬渋滞」なる現象――帰りにバス停で待っていたら,受講していた部長さんが三崎口駅のひとつ手前の三浦海岸駅まで来るまで送ってあげようということに.ありがたいことです.ところが,道が詰まって動かない.「あ,岬渋滞ですな」と一言.要するに,海岸縁から毛細血管のように這い上がってくる道が岬の「背骨」を通る幹線道路に流入するので,帰宅時間帯にはこういうことになるのだとか.そこはそれ,ジモティの智恵を発揮して,三浦半島をウラからウラへ縫うように走り,めでたく三浦海岸駅に到着.ここはずいぶんにぎやかではないか.ふと目にとまった〈海鮮〉(昼とは別の店)にまたまた誘い込まれ,まだ賞味していなかったネタを網羅的リベンジ.カワハギとカマスがことのほかうまかった.ビールなんかちょっと飲んでしまったりして.

◇前夜から連チャンで動いていたのでそろそろ限界か――日経BPの旅名人シリーズ58『スコットランド』を読みつつ寝入ってしまったようだ.

◇夜半にぱらぱらと雨が降るも,すぐにあがる.

◇本日の総歩数=21571歩.


12 februari 2004(木)

◇今日は〈チャールズ・ダーウィン誕生日〉――明け方はまだ氷点下とはいえ,気持ち的にはもう春めく.

◇久しぶりに平常勤務に復帰(今日だけね).

◇JSTフォーラムでの〈考古学〉演者の松本直子さん.どこかで聞いたことのある名前と思ったら,何のことはない買おうと思っていた最新刊『認知考古学とは何か』(2003年12月刊行,青木書店,ISBN: 4-250-20335-2)の著者のひとりだった.その前にも九大出版会から『認知考古学の理論と実践的研究:縄文から弥生への社会・文化変化のプロセス』(2000年2月刊行,ISBN: 4-87378-617-7)という単著も出されている.フォーラムの懇親会では型式学(typology)の話ばっかりしてしまったが,そうとわかっていれば別の会話もあり得たかも.

◇培風館から間接的にクレーム――同社から刊行が予定されている『植物育種学辞典』でぼくが担当する執筆項目リストをウェブに載せるのはやめてほしいのだそーだ.へぇ〜.もっとダイレクトに言ってきてね.そういうクレームがあったことを明記した上で,リンクを外しましょう.※というわけで,ぼくの担当項目はいっさい不透明になりましたとさ.よかった?/わるかった?

◇明日は午後いっぱい神奈川県水産総合研究所にて,統計高座を興行する予定.なので,その準備をしないといけない.統計曼荼羅と〈R〉洗脳を交えた「御利益のある噺」をしてほしいとの希望だそうだ.ふふふ.←※ナニ考えてんねん(ワル).

◇ん,神奈川水総研は城ケ島ですか――ああ,三崎港が呼んでいる……と思っていたら,読心されてしまったかのように,水総研の担当の方(昨年の統計研修受講生)から「三崎港だったら回転寿司〈海鮮〉沿岸店がうまいっすよ」とのメール.ほほー.←※喰いに行くつもりかいっ.

◇ダーウィン伝記作家(Randal Keynes & James Moore)の集い――京都では3月18日に京大で開催される→〈PaSTA研究会〉からの情報.東京では相前後して3月××日に開催されるが,正式なアナウンスは来週火曜日まで伏せられている.

◇長谷川フォーラムの全参加者から成るメーリングリストを立ち上げる――これから年度内にまとめる報告書のこともあるし,またフォローアップ的な情報交換ややりとりが必要かもしれないし.ひょっとしたら次年度に予定される2回目の会合について議論することもあるかな.

◇明日は超早起きする予定.

◇本日の総歩数=10301歩.


11 februari 2004(水)※休日@妙義→つくば

◇長谷川フォーラム最終日――またも朝風呂&バイキング.今回参加したフォーラム監査役の方と同席した.なかなか印象がよかったとのことで,来年度フォローアップのための会議をあらためて開催できるかもしれないとのこと.規模とテーマを絞りこんだ上でやるとのこと.今度こそ〈まっとうな温泉〉がいーなあ(まりまり推薦の軽井沢・星野温泉か).

◇フォーラム・朝の部(1)【行動遺伝学・発達心理学】(安藤寿康・柏木恵子)――安藤さんの行動遺伝噺は初見ではないので安心して聞ける.〈仲良しこうもりのお誘い〉っすか? 統計モデリング問題としても興味深い.性格の〈5つの因子〉――マジック・ナンバーですな.reification への防御は遺伝子ハンターとなるしかない? 柏木さんの発達心理講演は現代社会での母子関係の変遷.これはぼくの他に適役のコメンテーターがいたのではないかな?

◇フォーラム・朝の部(2)【社会心理学】(渡部幹)と昼の部【認知心理学】(平石界)――進化心理の話題提供だよねえ.社会心理学ってそのうちなくなるの?

◇フォーラム【総合討論】――午後2時から1時間余り.そろそろ疲れてきたぞー.でもゴブリンが出てこなかっただけよかった(「獲得形質の〜」とか「種の保存〜」というアヤシイ言葉も聞こえたけど気のせいかな).

◇午後3時半に予定通り解散――さらにさびれたJR松井田駅にバスで送り届けられ,松井田→高崎→上野→ひたち野うしくと逆コースをたどる.やっと生還.

◇それにしても今回のフォーラムでは,「温泉」に釣られたという参加者が多かったのに驚く.また,〈実行委員長〉なる肩書きがむしろフォーラム終了後の仕事のためであることを知る.これから年度末にかけて,報告書の作成があり,その統括をするのが実行委員長なんですと(そんなん知らんてば!) フォーラムの全講演と質疑はすべて録音され(専属担当あり),それとは別に学生アルバイトが,国会速記者のように,ふたりずつ交代で討論のメモ取り.さらに講演者のパワーポイント・ファイルを入手――そういうのをすべてコンパイルして報告書とするらしい.(たいへんじゃん)

◇参加者のみなさま,どうもおつかれさまでした.実行委員長さま,これから疲れてください.>ぼく.

◇本日の総歩数=8555歩.


10 februari 2004(火)※妙義

◇長谷川フォーラム,まだまだ続く――朝5時起きで地下大浴場での朝風呂.このぬるぬる感はアルカリ性か(2000メートルも掘れば当然のことか).But 循環&塩素少々.温泉の雰囲気を味わう.

◇7時から最上階でゴージャス(笑)なバイキング形式の朝食.すぐ対面には,朝日に映える妙義山.その隣りには榛名山.赤城山は反対側.とてもよく食べました(朝から).ホテルの周囲がゴルフコースとなっていることもあり,群馬だけでなく長野あたりからもゴルフ目当ての泊まり客多し(平日なのにね).

◇今日はとっても過密なスケジュール――2時間のコマが全部で5つ.午前9時前に始まり,終わるのは夜10時!の予定 体力限界に挑戦する国際会議並みの詰め込みね.

◇リメンバー〈パシフィコ横浜・魔宮の伝説〉――ここに来るまで知らなかったのですよ.今回の異分野交流フォーラムが,かつて(数年前のことか?)横浜で開催された〈伝説〉の系譜に連なる「子孫」であることを初めて知った.JST / JAREC の事務局の人に訊いたところ,それを担当していた方だった.なるほど,このフォーラムのフォーマットはかの伝説を髣髴とさせるものだったのか.かの〈魔宮の伝説〉に遭遇した多くの「インディー・ジョーンズ」たちが書き残したプライベートな「冒険譚」を思い起こすにつけ,実に感慨深いものがある.このフォーラムは,基本的にクローズドな会議であり,あとで出される予定の報告書もうちうちにしか配布されないそうだ.

◇フォーラム・朝の部(1)【経済学】(荒木一法・清水和巳)――経済行動の統計モデル化には,仮想的事例ではなく,経験的確率分布をベースにすれば自ずと収束するような気がするが.レプリケーターを何にするか以前に,経済学(法学でも同じだが)での適応度(fitness)って何?という疑問が残る.

◇通常の進化生物学では,supervenient な概念としての適応度をいつも念頭に置くわけで,それではじめてある形質なり属性の進化を論じることができる.ぼくの理解ではある〈もの(形質)〉に物理的ではない supervenient な〈もの(適応度)〉が付随(随伴)しているということは,共通のある〈力(淘汰)〉が原理的に遍く作用し得るということだろうと思う.そういう標準的な舞台設定がないところで,進化とか淘汰を論じたところで,しょせんは「記述的に有効なモデル」ないし「役に立つヒューリスティック」以上の実質的な意味はもちえないのではないか.

◇フォーラム・朝の部(2)【哲学・倫理学】(田中泉史・高橋久一郎)――進化とはこれからつながっていくのかな.進化倫理学は〈sein / sollen〉桎梏をいつまでも引きずるのか.自然主義的誤謬は明示的には登場しなかったが.

◇最上階レストランでコースの昼食――とにかく飽食ですな.

◇フォーラム・昼の部(1)【文化人類学】(関雄二)――アメリカ文化人類学の系譜と現在に関する要約.やっぱりフランツ・ボアズ一派は〈犬神家の一族〉だったのね.ボアズ=犬神佐兵衛か.アンチ進化呪文は解けずということ.退歩的ひきこもり,あるいは魔界転生.

◇フォーラム・昼の部(2)【考古学】(松本直子)――実にわかりやすい考古学の鳥瞰.文化史的考古学→プロセス的考古学→ポストプロセス的考古学という流れとともに,相対主義・ポストモダン論争のありか,そして現代のダーウィン考古学の登場まで.認知考古学は相対主義論争の産物だったか.

◇ホテルの部屋からダイヤルアップできないと言ったが,ティップスを太田勝造さんに教えてもらう.確かに PowerBook は何とかつながった.げ,1700メールっすか?(電話代金が……)――やっと,くだんの原稿を越中に送信することができた.ごめんねごめんねS木さん(もうプリニー式噴火しないでねー).

◇夜は懐石膳――とにかく食べましょう.そういえば,ここに来て以来,ホテルの外に一歩も出ていないぞ.フォアグラ化.

◇フォーラム・夜の部【フェミニズム社会学】(大沢真理)――フェミニズムの敵は実は民間の〈素朴生物学〉であることがわかった.心理的本質主義とか直感的因果理論への対抗手段としてジェンダー的見解が出てきたのだろう.理解はするが,武器はまちがっていると思う.一時的な対抗手段としては有効でも,長期的には弊害があるだろう.

◇すべて終了したのは夜9時半.隣室に席が設けられ,乾きもの少々とアルコールでミキサー.Inchgower を呑み過ぎましたかね.ちょい酔い.またまたすぐ寝る.

◇本日の総歩数=4844歩.


9 februari 2004(月)※つくば→妙義

◇休日などというものはどこにもないのだ――今日から三日間は,妙義山中にお籠りして,JST異分野交流フォーラム〈進化生物学によって人間観は変わるか?〉.

◇昨夜の大阪からの帰宅時刻は午後10時過ぎ,今朝の出発時刻は午前9時半.実質的な〈自宅滞在時間〉は10時間.ほとんど寝に帰っただけか.

◇常磐線→高崎線→信越本線と乗継いで松井田駅到着.すべて鈍行(高崎線はアーバン号)なので格安.つい高崎駅で「鳥めし弁当」なんぞを買ってしまう.盲腸線と化してからの信越本線は見る影もないねえ.発着ホームもただのローカル線と同じ6番線だし(昔は1番線だったぞ).

◇車中の数時間はすべて原稿入力に当て,ほぼ完成.これで「越中大噴火」は未然に防げるか――三中信宏「太田邦昌氏の系統分類学理論:体系学史における位置づけと限界」(『生物科学』55巻4号に掲載 ※2004年3月出版予定)

◇松井田駅にて,妙義グリーンホテルの送迎バスに乗り込む.今回の企画の元締めである長谷川眞理子さんたちと一緒.※妙義グリーンホテルはロケーションとしては妙義山を対面に眺められる丘の上にあって見晴らしはいいのだが,周囲はすべてゴルフコースですな,これは.

◇とりあえず参加登録をすませ,部屋にチェックイン.午後4時から始まるので,それまではしばし休息……してられませんて! メールチェックしようと思ったら,またダイヤルアップがつながらない.持ってきたWinXP機とPowerBookG4のどちらもダメ.またグレ電に走るのですかあ――と思ったらロビーにはそれすらない(緑電話ばっかし).こりゃ,隣接するゴルフ場のゲストハウスに遠征するしかないか.うーむ,早く原稿を送らないと「大噴火」が懸念されるのだが.※とりあえず忘れてしまおう.そうしよう.

◇でもって,定刻5分遅れでフォーラムの始まり――わ,バブリーな会場ですなあ(結婚披露宴会場並み).シャンデリアは下がるは,金かかってそうな看板は掲げられるは,1人1冊ずつ『社会生物学の勝利』が配布されるは.※あとでJST事務局に訊いたら,前日から泊まり込んで会場設営したとか.てえへんなことです.

◇元締め眞理子さんの趣旨説明から始まる.ふむふむ,なるほど月並みな「交流」には終わらせないという決意表明ですか.続いて参加者30余名の自己紹介.え,ぼくが司会? マジっすか? だって「実行委員長」なんだしという眞理子メッセージ.なあるほど,JSTフォーラムの実行委員長は司会を勤めるという大役があったのね(んなもん,知りまへんがな)――それにしても,みなさん自己紹介と自己宣伝がうまいですねえ.沈黙が支配する心配はないとみた.甘利俊一さんまでいたりして,ほっときゃいたるところで「センセー攻撃」が頻発することが予想されたので,実行委院長権限で「さん付け御触れ」を発行する.先生だろうが学生だろうがみんなみんな「さん」付けで呼ぼうね.

◇フォーラム・夜の部【法学】(和田幹彦・太田勝造)――法体系が replicator か?と言われても,なかなかぴんとこない.「法が進化する」というイメージがうまく膨らまないということ.〈法〉は認知的には natural kind なのかな? アナロジーを越えてというモットーが響きわたる.

◇午後8時過ぎから別室にて懇親会――こりゃまたゴージャスな立食パーティですこと.いろいろとお話しをする.え,せっかくの新設学部なのに,そんな人を引っぱってしまったんですか(ご愁傷さまです).ほほぉ,民博には〈HRAF〉がそろっているのにユーザーが皆無とはね.考古学における〈型式学(typology)〉について松本直子さんと少々.日本では型式学が絶好調だが,逆にアメリカでは時代錯誤と見られているらしい.明日ぼくがコメンテーターをする予定の「経済」演者お二人とも話をする.寿康さん,帰国したばかりでお疲れさんでした(グランドピアノ買いまくりの話とか).etc...

◇なんだか疲れてそのまま就寝.

◇本日の総歩数=15006歩.


8 februari 2004(日)※京都→千里中央→つくば

◇午前中にホテルに籠ってせっつかれ原稿をものしようとする.火事場のなんちゃらですが.

◇その後,阪急→大阪モノレールと乗継いで,千里中央へ.おお,数十年ぶりに〈太陽の塔〉を見てしまった!――今日の仕事は,千里ライフサイエンスセンターで開催される〈食の安心協議会〉第2回シンポジウム.役員をしているNPO法人〈DGC基礎研究所〉のイベントとして.中澤港さんのリスク講演.リスク・マネージメントは,結局は「個人の責任において評価する」ことに行き着くのだと思います(国とか社会ではなく).しかし,それがリスク心理での「不安感」をぬぐい去ることはできないでしょう.不安をいつまでも抱えつつ共存していく.あるいは,個人の意思決断によって,不安感を覆い隠すということになるのかな.安全はコミュニティーの共通通貨となり得るが,安心は個人個人の内なる意識の問題だろうから.

◇遅めのシンポ終了後,JR新大阪に駆けつけて,そのまま帰還.慌ただしい.ホンマ.

◇帰りの車中にて,倉谷本の第5章を読了.気分転換に小川百合『英国オックスフォードで学ぶということ』(2004年1月20日刊行,講談社,ISBN: 4-06-212219-7)を読了.ペトロスキー『本棚の歴史』に出てくるボードリアン図書館の書庫を実際に歩き回った話も出てきた.

◇本日の総歩数=14901歩.


7 februari 2004(土)※つくば→京都

◇しかし,慌ただしい日々が続くなあ.今朝も3時起き――某シンポジウムの企画メールを関係者に流し,あからさまな人釣り.※お願い,釣られてねー.年齢が加算されるとともに,自分で話すだけでなく,他人に話をしてもらう興行主の割合が高まってきた.いいこと? ワルイこと?

◇所内の主要成果原稿の再改訂を完了――またまた〈わーど〉に手を染めてしまう.事務書類が降ってくるたびにこういうことになる.InDesignからpdfに落として,そこから図やら表やらを〈わーど〉にカット&ペーストするなんてばっかみたいっ

◇昔の本は貴重品だったので,ことごとく書見台に〈〉で結わえつけられていたそうだ.ペトロスキー『本棚の歴史』の中でもとりわけ印象深い引用文がこれ――

「論争の書はとりわけ悪霊がとりつきやすく,他とは別の小屋に閉じこめられるのが常だった.互いに暴力をふるっては困るので,おとなしくさせるために丈夫な鉄鎖で縛り付けるのが賢明だと,私たちの先祖は考えたのだ.…… 今後も平和を維持するために,大きめの論客はすべて鎖でしっかりつなぐべし,というおふれが出された」[p.71]

――ぎゃはは,いったいどの本が【悪霊憑き】なんだろうねえ〜.やっぱり「アレ」ですかぁ? ※こら,『生物系統学』に鎖をつけるなよっ!

◇ん,とすると,印刷博物館でずらずらと特別展示されていた中世の彩色聖書群はのきなみすべて【悪霊憑き】ということに…….

◇結局,方々のメーリングリストに「月例あいさつ」を流さないまま,今日になってしまった――しかし,今日から向こう1週間はつくばに実在しなかったりするのだ.すべてを放り出して,国内遁走するのだ.わははー(汗).手始めに,今日明日は近畿圏を急襲.京都から大阪を総嘗めにしてっと――

◇行きの新幹線の中で,おもむろに倉谷滋『動物進化形態学』を読み始める.とりあえず第3章まで休みなし.ヘッケルもオーウェンも何もかも生き返りましたな,これで.しかし,この図表の多さは,いったい…….ジェットコースターのように時代を行きつ戻りつ.ポルターガイスト...ちゃう...ツァイトガイストも目まぐるしく変わる.形態学者,おそるべし.でも,やっぱり「先験論」ではなく「超越論」でしょうね.

◇寺町二条の〈三月書房〉で,ファン・フーリク『中国のテナガザル』(1992年9月25日刊行,博品社,ISBN: 4-938706-04-0)とかハンス・カロッサ『カロッサ詩集』(1999年5月15日刊行,小沢書店,ISBN: 4-7551-4022-6)をふらふらと買ってしまったり.※倒産した書店の本を定価の半額で買ってしまったりするのは胸がちりっと痛まないでもないが.

◇だいぶかたち酔いしてしまったみたいだが,そんなことで負けてはいられないのだ――京都市内の某〈キャレル〉?にて,生ギネスを2パイントほどあおりつつ,巨大なフィッシュ&チップスとか,アイリッシュ・シチュー&ソーダ・ブレッドを賞味しつつ,第4章をがしがしと登攀する.行けども行けども,骨また骨,遺伝子また遺伝子.こんな本を短期間に書き上げないでほしい(お願い).

◇ギネスと骨に当てられつつ,さらにディープな別〈キャレル〉に転戦.柳野さん,どうもごぶさたでーす.スペイサイドの猛者〈Inchgower〉にストレートで殴られる.加水すると絶妙に香りたつ.

◇ホテルに帰って,メール打ったり,仕事してみたり.でもやっぱり寝てしまったり.

◇本日の総歩数=15391歩.


6 februari 2004(金)

◇それなりに日射しは春めいてき方かな――風邪を引いているので,感覚が痺れているような.

◇この週末から来週いっぱいはつくばにほとんど実在しないので,やるべきことは今日中に.※でも,なかなか進みまっしぇん.有能なアシスタントあるいは秘書がいてほしい今日この頃は,事務的には〈破綻している〉も同然.

◇越中から怒りの督促電話――へいへい,念書でも願書でも楷書でもなんでも書きまっせー.週明け締切.く.※どこかに「カン詰め」されたいなあ.自主的にそうなろうかなあ.

◇ペトロスキー『本棚の歴史』読了――第3章に登場するキーワードは〈キャレル〉すなわち〈個人用閲覧席〉.これが気分的にぴったりですな.かつて,ヨーロッパの修道院では,回廊の柱と柱の間にひと一人が入れるだけの読書空間が設けられていたそうだ.それがキャレル.著者は言う――

通路と中庭を隔てる柱のすきまは,腰掛けて本を読むのに打ってつけの小さな空間で,ここにすわると読書にちょうどいい明かりを得ることができた.特に個別の「写字室」や書き物用の部屋がない修道院の場合は,回廊の柱と柱のあいだにできた日当たりのよいくぼみには特別の価値があり,年長者や立ち回りのうまい修道士に占領された.というのも,読書や書き物,書写にこれほど適した場所はなかったからだ.やがてキャレルと呼ばれるようになるこの場所は,あまりじゃまされることなく静かに勉強し,目の前の作業に集中できる空間だった.[p.52]

――わかるわかる,確かにその通り.恒久的にせよ一時的にせよ〈キャレル〉を確保することが先決だ.人によっては賑やかなオープンスペースでも仕事ができるらしいが,ぼくにはちょっと信じられない.〈閉鎖・静謐・孤独〉の三条件をばしっと満たしてくれる〈キャレル〉はどうしても不可欠だ.そのキャレルは,場合によっては図書館の地下書庫の一隅だったり,あるいはめったに他人が来ない古書保管庫の一角だったり,あるいは喫茶店の端の[指定]席だったり,居室の一部だったりする.出先でキャレル候補場所を見つけやすいかどうかは,たいへん重要なことである.以前は神田の「学士会館」が格好の〈キャレル〉だったが,改装してからというもの居心地が悪くなった.東大の総合図書館もロケーションとしては悪くないが,イマイチ「孤独性」に欠けるし,対外的にはたとえ閉鎖的であっても,中に入ってしまうと意外に人口密度が高い(今でもそうか?).むしろ,かつての農学部図書館の地下書庫がたいへん〈キャレル度〉が高かった記憶がある.新しく増設された書庫はレンタルルームみたいで,印象があまりよくないし.……てなことを考えてみると,いまある数少ない〈キャレル〉はこれからも大事に使わなければならないのかな.

◇居室のさらなる〈キャレル〉化に向けて――いろいろな大学に行く機会があるが,学生さんの机まわりは(教官部屋もそういうことがあるが)それなりに快適な〈キャレル〉と化していることがある.もちろん,単にごちゃごちゃしているだけではあかんわけで,狭いからこそメンテをきちんとしないとね(センスも必要か).『本棚の歴史』には,図書館のキャレルが時に厳し過ぎるほどの制約の中で維持されてきた経緯が綴られている.

◇そういえば,「いざとなったら研究室の電話機のケーブルを根元から引き抜いて立てこもります」と真顔で言っていたのは金子邦彦さんだった.[たいていは]しょうむない電話たちの罪状を考えれば実に名案だと思う.※周囲にとってはメイワクだろうけど.〈キャレル〉を保つにはそれほどの悲壮な覚悟が必要だ.

TRC週刊新刊案内をチェック:1358号.※読むべき本(●)はすでに読了し(『丸山眞男書簡集』はとりあえず並べておく),あとは『透視も念写も事実である』がどんなもんなのかを現物でチェックするだけか.『洞窟学4ヶ国語(英日韓中)用語集』っていったい...(読者層が想像できない――洞穴男女が読み耽る?).『ジョーク・ユーモア・エスプリ大辞典』には多少ぴくぴくする.

◇夜になってもまだ体調がイマイチ.

◇本日の総歩数=12148歩.


5 februari 2004(木)

◇年休をとって東京でプチ特務――夜明け前に特急〈フレッシュひたち〉に乗り込む.今日で特務もおしまいか.

空き時間に都営三田線で神保町に直行.スタバ小川町店にて,ヘンリー・ペトロスキー『本棚の歴史』(2004年2月10日刊行,白水社,ISBN: 4-560-0289-4)を読み進む.巻子本からコデックスへの書物形態の変遷とともに,それを陳列・保管する本棚がどのように〈共進化〉(p.285)していったかが詳しく述べられている.いつもながらペトロスキーの着眼点には目を見開かれる.

◇本と本棚の〈共進化〉――どちらが host で,どちらが parasite かはどうでもいいのだが,「本の側の必要性に家具を合わせるという原則」(p.39)はつねに〈力〉として作用し続ける.本の形態の移り変りもさることながら,増え続ける蔵書数への切迫した対応が書棚のありようを変えてきたのだという著者の主張には納得できる.最初は本を保管するための入れ物だった〈保管箱(チェスト)〉がタテ置きされることにより,次世代の〈アルマリウム〉が出現し,さらに所蔵効率を高めるための内部に「棚」が付けられることで〈書棚(ストール)〉が出現したと著者は「系統推定」する.書棚の出現とともに,それまでヨコ置きされてきた個々の本は次第にタテ置きが主流となる.これは本棚が本に対して逆作用したことになるのか.「人工物の進化」がペトロスキーの過去の著作での一貫したスタンスだ.とくに,工学的な視点での記述は著者ならではのスタイルだ.本の累積重量に耐えるには本棚にどれだけの力学的必要条件が課せられるかが述べられている.

◇『本棚の歴史』はまた図書館の歴史でもある.個々の本と本棚のあり方とともに,それらの集合的形態としての図書館のあり方がどのように変遷したかが本書のもうひとつのテーマである.かつては修道院にあった図書室にはじまり,大学や公共機関の図書館が生まれる,インターネット図書検索が普及した現在にいたるまでの道程だ.ディテールを追うのはなかなかたいへんだが興味は尽きない.読む読む.

崇文荘書店〉の平台でゲット――Ernst Haeckel 『Die Lebenswunder』(1905年刊行,Alfred Kröner Verlag, Stuttgart)と E. O. James 『The Tree of Life: An Archaeological Study』(1966年刊行,E. J. Brill, Leiden, ISBN: なし)と .※『The Tree of Life』は「生命樹」概念の宗教史的起源を問う著作.「聖心女子大・教養課程63-18」のシールあり.教養課程の廃止にともなって放出された本か.内容的には杉浦康平『生命の樹・花宇宙』(2000年7月30日刊行,NHK出版,ISBN: 4-14-080488-2)と同じテーマ設定だろう.ヘッケルの本は,装丁はだいぶ崩壊しているが,かつてのベストセラー.『生命の不可思議』(岩波文庫 33-933-1/2)の元本.絡みつくような Fraktur 書体で組まれている.

◇書肆アクセスで『谷根千』の最新の2号(74と75)を買う.74号の特集は「白くふわふわしたもの」.75号の特集は「不忍通りラーメン街」.

◇乾燥した冬の街を歩き回ったのが祟ったのか,帰宅後微熱「37.4度」.すぐさま寝てしまう.寝る寝る.

◇本日の総歩数=18809歩.


4 februari 2004(水)

◇午前2時起き――ひたすら書いてます.ぐらっと揺れたりする午前4時11分.

◇自分で演奏した経験のある曲は,どうしても〈擬似追体験〉しつつ聴いてしまうので「離れて愉しむ」わけにはいかない.明け方のシベリウス2番――お疲れさまでした.ティンパニーのパート譜の目線位置まで思い出してしまう.その点,マーラー3番の方がまだ「離れられて」いいか.

◇積み残し「分子系統」の原稿をば.※すみませんです.

――ということで,かりかりと書いて,午前7時にその原稿 11KB を信州県(まだか)に送信.図版はまだなれど,本文はとりあえず完成.※うう,一仕事したのに,道なお遠し.わさわさと事務書類を書きまくって溜まったホコリを掃う(未掃残額多し).

◇ぐわ〜,今度は〈EVOLVE 歌会始〉ですかあ ―― Monthly Greeting も出さずに,ひたすら引く.げー.※「岸に sun,sun」とか,「今西に没す」とか詠まれましてもなあ……(汗).

◇谷沢永一『本は私にすべてのことを教えてくれた』を読了.著者が勤務していた関西大学の図書館は,東京経済大学図書館と同じ設計者の手になる建物で,使い勝手がグッドデザインだそうな.こういうタテ書きの本に索引が付いていないというのは片手落ちだと思う.※かつて『生物系統学』を書いていたとき,原稿中にあった「片手落ち」という表現について差別用語かもしれませんねと編集者に指摘され,別の表現に改めたことがあった.いま,念のために『日本国語大辞典』でチェックしてみたのだが,〈片手落ち〉あるいは〈手落ち〉はもともと剣道でいう〈片手打ち〉に由来する言葉とのことで,ことさら障害者に対する差別用語とは思われなかった.

◇本日の総歩数=12457歩.


3 februari 2004(火)

◇雨上がりの翌朝は寒さなし――数日ぶりにメールをチェックしてみたら〈EVOLVE〉が腐っていた.ここも無法地帯ってか? また「患部」を切除するのかと思うと,早朝から気力が萎える.※だから「エントロピー」が絡むとダメなんだってば.それに「情報」が憑いたりすると,ナンジャタウンのお化け屋敷みたいな「解脱状態」になりまっせ.いややー.

◇週末のツケがまわりまわって…….

◇午前中,打合せ――とりあえず解説書類を用意することに.※また仕事が積もる.

◇中澤港さんの〈メモ〉に,先日ここで記した「SARS感染の言語間差異説」についての追加情報が――なるほど,単に言語だけに起因するととらえるのは,人目を引くことはあっても,モデルとしては単純すぎるわけですね.※The Lancet 誌にもいろいろなコラムがあるわけか(Nature や Science でも同じことだけど).

◇午後から小雨がしとしとと.なんとなく〈鬱〉になる――〈大噴火〉が間近いのでしょうか?(笑) >T山さん.

◇またも中澤情報により〈R〉の新しいオンライン資料が公開されていることを知る――かの竹澤邦夫サイトに〈舟尾暢男さんの作品集〉というページができていた:『R-tips』の html / pdf / TeX-eps 版が公開.プリントアウトすると280ページ!

◇うへ,最終通告――あとがない〜.

◇本日の総歩数=12009歩.


2 februari 2004(月)

◇なおも都内某所にて特務――今朝は雨がぱらついている.気温は上がらず.北関東は雪が混じっているらしい.

◇昨日に引き続き,山の手線を跨いで往復運動.

◇特務の終了――おお,以前にセンター試験の「生物」で出た問題と同じじゃん.脱皮ホルモンと幼弱ホルモンのバランスか.高校生だったら解けたでしょうねえ.※「学習指導要領」ってもう死語であることを実感.無法地帯か,ここは.

◇谷沢永一『本は私にすべてのことを教えてくれた』(2004年2月6日刊行,PHP研究所,ISBN: 4-569-63411-7)を大半読み終える.なんとも醜い罵り方.でも,個人の日記を読ませてもらったと考えればそれなりにおもしろいのかな.

◇本日の総歩数=31030歩.※記録的な日歩数.これで,過去250日の平均歩数が10,000歩を突破.


1 februari 2004(日)

◇引き続き,都内某所にて特務――何度も山の手線の跨線橋を往復する.

◇サイモン・ウィンチェスター『クラカトアの大噴火』を読了.砂粒のような事実をかき集めて,一服の絵に仕上げる力量はこの作家ならではのもの.もちろん,1883年8月27日のクラカトア大噴火の「その日のようす」がみごとに復元されている第8章(この章だけで全体の1/4の分量)は本書のクライマックスだが,この噴火の波及効果(物理的な,そして文化的・社会的・政治的な)の探索が読み応えあり.おそらくこれからいろいろなメディアで書評されることになるだろう.翻訳もなかなかいいと思う.

◇爆裂消失したクラカトアの「子」アナック・クラカトアがぐんぐん成長しているらしい.とても頼もしい(などと言っていられるのか?).

◇「安山岩(andesite)」がアンデス山脈に由来する言葉とはね(p.345).安山岩の「安」はアンデスの「アン」.へぇ〜.

◇こりゃ難しいわ(モノローグ).※物理の定積分問題を出すのは高校生以上にしてほしい.

◇本日の総歩数=26376歩.※棒どころちゃいますな,これは.


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