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oude dagboek

日録2005年4月


30 april 2005(土) ※ 県南部は田植えシーズン

◇5時半起床.晴れ.気温13.3度.昨日ほどの高さではない.今日も夏日か.

◇“原稿アタマ化”―― Edward R. Tufte『Visual Explanations: Images and Quantities, Evidence and Narrative』(1997年,Graphics Press,ISBN:0-9613921-2-6)に載っている「ロックンロールの系統樹」(pp. 90-91)を眺めつつ,普遍図的言語としての“ツリー”について考える.しかし,これは知識の「要約」としての樹状図というよりは,ばらけそうな断片を「束ねた」グラフか.1950年代に放散した元にあるルーツ(そのひとつはロカビリー)が示されているだけでも十分に「要約」の意味はあるのかもしれない.この図的言語は J. G. R. Forlong の宗教系統樹と共通する要素がありそうだ.

そろそろ臨界点.

◇〈ピーターパン吾妻店〉にてオリーブを練り込んだブロートを一塊買う.

◇湿度が低く,快適な1日だった.

◇本日の総歩数=6356歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.5kg/−0.5%.※ちょっとだけ動いた.


29 april 2005(金) ※ 労働連休

◇いつも通り午前5時に起床.そのまま研究所に.よく晴れて南風.気温17.8度.今日も夏日かも.暑くても湿度が低ければ許せる.

◇昨日の「系統学的考古学」セミナーのノートを公開する.考古学で「表形分類」が昔からブームになっていたとは知らなかった.R. Lee Lyman and Michael J. O'Brien『W. C. McKern and the Midwestern Taxonomic Method』(2003年,University of Alabama Press,ISBN:0817312218 [hardcover] / ISBN:0817312226 [paperback])の主人公である考古学者 W. C. McKern は1930年代すでに表形学的な遺物分類の方法について論じているらしい.

◇新着本 ―― Marjorie Grene and David Depew『The Philosophy of Biology: An Episodic History』(2004年,Cambridge University Press,ISBN:0-521-64371-6 [hardcover] / ISBN:0-521-64380-5 [paperback]).昨年出た生物学哲学史の新刊.ことしはじめに David Hull の書評Notre Dame Philosophical Reviews: 2005年1月2日)がオンライン公開されている.Marjorie Grene さんは1910年生まれだという(え!そんなお年だったとは).

◇対“迷惑電話セールス”迎撃戦[新展開]―― 相変わらず毎日毎日「都内マンションはいかがですか〜」という類の電話セールスが研究室に繰り返しかかってくる.〈酒井聡樹ストラテジー〉−「回線を開いたまま受話器を机上に長時間放置する」−という有効な撃退法を採用してから半年というもの,それなりに快適な研究室環境を保全することができたと自分では思っていた.どーせ相手は人間じゃないんだし人間らしい応対をしてあげる必要はない,ましてや感情を高ぶらせたり声を荒らげたりしてエネルギーをムダ使いするまでもない.「マンション」とか「株」というキーワードが耳元で聞こえた時点で,即座に無言のまま受話器を切らずに机の上に放置すればいいのだから.ところが,昨日新たな展開があった.例によって「マンション〜」が聞こえた時点で“処置”した.30分後,事務から内線電話が入り,「外線からお電話です」と転送されてきたのが,先ほどの迷惑セールスマン:「どうして無視したのか」などとたわけたことを向こうで口にしているので,またも酒井ストラテジーの発動(今度は1時間あまり).どうやら外線と内線では通知音が異なっていることを“敵”は知ってしまったようだ(事務に取り次がせるとははっきりいって業務妨害).こうなったら駒場のK子研究室のように,研究室の電話回線そのものを切ってしまおうかな(こちらからかけるときだけつなぐ).あるいは常時「留守録」設定にしておくとか.※外線電話がつながらなくても痛くも痒くもないので,こういう“遊び”ができる.

◇くれぐれも〈拙速主義〉遵守のこと>ぼく.

―― ということで,とある依頼文の書き上げ完了./event-based biogeography に関する質問への返信完了.

◇「外」はものすごく暑そうだが,日中は自主的カンヅメ状態だったので,窓越しに初夏並みの陽射しを眺めるのみ.

◇書評引受 ―― ナイルズ・エルドレッジ『ヒトはなぜするのか』(2005年3月11日刊行,講談社インターナショナル,ISBN:4-7700-2790-7 →紹介ページ).※この著者がほんの25年前にはクラディストの先頭を走っていたとはねえ.まったく面影ないなあ.「ウルトラ・ダーウィニスト」という言葉は彼によって広まったが,意外に定着しているような気配あり.Simon Conway Morris の収斂進化本『Life's Solution: Inevitable Humans in a Lonely Universe』(2003年,Cambridge University Press,ISBN:0-521-60325-0)にも出てくるし.

◇新刊雑誌 ―― Journal of the History of Biology 誌の最新号(Vol. 38, no. 1, March 2005)で,「ダーウィン革命」特集が組まれている.“ダーウィン革命”といえば当然 Michael Ruse がゲスト編集者として登場することになる.もちろん,P. J. Bowler は“悪代官”ね.

◇夜,別件の督促あり.明日が勝負.(汗)

◇本日の総歩数=1083歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.2kg/−1.0%.※不動の1日であった.


28 april 2005(木) ※ ……変成岩を噛む

◇午前5時前に起床.晴れ.気温10.6度.今日はとても暖かくなるという予報だ.

◇朝から“変成岩”を切り崩す.まだ先は見えないが.

―― ピーテル・ブリューゲルの寓意画〈ネーデルラントの諺(De Spreekwoorden)〉の解説書である森洋子『ブリューゲルの諺の世界:民衆文化を語る』(1992年1月20日刊行,白凰社,ISBN:4-8262-0070-6)を手に取る.〈小斧を探す(Hij zoekt het bijltje)〉のはもう止めようね>ぼく(多汗).

◇今日も天気がとてもよい.明日からは行楽日和のはずだが,ワタクシは原稿をただただ書き続けるのだ.〈小斧〉はもうないのだ.

◇午後1時からは,「系統学的考古学」セミナーの第2回.今日は,進化分類学と表形学について.

―― やはり修士に入りたてだと,こういう体系学の基本的な“流れ”にまだ乗り切れないのかもね.頻発する見慣れないことばとか概念で足をすくわれているらしき気配あり.頑張ってくだされ>南保くん.

◇晩年の Ronald A. Fisher 伝 ―― John Ludbrook (2005), R. A. Fisher's life and death in Australia, 1959-1962. The American Statistician, 59(2): 164-165. ※晩年,フィッシャーはオーストラリアのアデレードに移住してその生涯を終えた.著者は,その当時からの同僚として,この伝記記事を書いている.David Salsburg のFisher伝『The Lady Tasting Tea: How Statistics Revolutinalized Science in the Twentieth Century』(2001年,Henry Holt and Company,ISBN:0-80507-134-2)に言及し,そのいくつかの誤りを指摘している(とくに,彼の死因は結腸癌であって心臓発作ではないとのこと).その生涯にわたって“敵”が多かったフィッシャーだったが,アデレードの日々は実に穏やかだったという.「ハーメルンの笛吹き男」が子どもを従えて歩いたように,老フィッシャーは近隣の子どもたちを連れてはアデレードの郊外をめぐったそうだ――

In short, while he [Fisher] was in Adelaide he made only friends, never enemies.(p. 165)

うーむ,フィッシャーに対するイメージが大きく変わるなあ.

―― ついでに,アドレード大学で公開されているフィッシャーのアーカイブをメモ:〈The R.A. Fisher Digital Archive〉.※フィッシャーの主要著作と論文はここからダウンロードできる.1971〜74年にかけて同大学から刊行された『Collected Papers of R.A. Fisher』(全5巻,University of Adelaide,ISBN:0909688001)を踏まえて電子化されたものだ.この論文集は東大の生物測定学教室にいたときに公費購入したはずだが,いま調べてみたら Webcat に載っていない.フィッシャーの娘が書いた伝記 Joan Fisher Box『R.A. Fisher : The Life of a Scientist』(1978年,John Wiley and Sons,ISBN:0471093009)も同時購入したはずだが,やはり Webcat から漏れている.

◇夕方,研究交流課から連絡 ―― たった1日のスポット講義なのに半年間も“拘束”する大学.深く反省しなさい.>駒場.※弥生はそんな無体なことはしなかったぞ.

◇明日も労働.

◇本日の総歩数=12505歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=0.0kg/+1.0%.


27 april 2005(水) ※ 窮鼠……

◇午前5時起床.晴れて霧が薄くかかる.気温9.6度.

◇事務仕事こまごま ―― 研究推進費による海外出張申請書作成完了(行くぞノルウェー)./健康管理に関するアンケート(厚生係)提出完了.

◇国際化〈R 2.1.0〉の実行ファイル(Windows版)がやっと公開された(→CRAN).さっそくダウンロードしてみる.インストールの手順は「R-2.1.0(Windows)のインストール方法」を参照のこと.日本語環境で〈R〉を使いたいときの注意点は,インストール途中にあらわれる〈Select Components〉画面で「Chinese / Japanese / Korean installation」を正しく選択すること.これをしないと“Version for East Asian languages”が組み込まれないので,起動画面の日本語メニューが文字化けする.[ワタクシも最初ドジってしまった.]

―― Mac版の実行ファイルはまだでしょーか?(あるいは“虎”待機中?)

でも,〈R〉で日本語メニューが出てきたりするのは,とても新鮮な心地ぞする.これからは方々で「R高座」をするときに,受講者の言語心理的ハードルが格段に低くなるにちがいない.

◇気温20.6度,ぽかぽかした昼休みの歩き読み ―― スペンサー・E・ワート『温暖化の〈発見〉とは何か』(2005年3月15日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07134-7)を読了.最初はよく知らない科学史的エピソードに彩られたジミな出だしだったが,中盤になっていきなり“地球環境モデラー”たちが暴れ出し,そのまま政治家や一般社会を巻き込んだ肉弾戦に突入し,「死ね死ね社会構築論」というとても見応えのある終幕を迎えた.この本,最初の3章あたりまではぐっと我慢して読み進み,後半の華々しい展開を期待するというのが正しい読み方かもしれない.

記憶にピン留めされた言葉たち:

自然の巨大な力のなかであまりにも弱々しい人類の活動が,地球全体を支配しているつりあいを乱すことができるとは,ほとんど誰も想像できなかった.自然に対するこの見かた — 超人的で,慈悲深く,本質的に安定した存在という見かた — は,人類の大部分の文化に深く浸透していた.(p. 16)

人間の活動による「地球温暖化」という可能性そのものの認知を拒んできたのは,ほかならないわれわれの“自然観”そのものだった.漠然とした Mother Nature という感覚的受容から脱却して,「宇宙船・地球号」というものの見かた(初出は1956年:p. 58)に移行するには,時間と努力を要したということだろう.実際,「大気がどれほど壊れやすいものか」(p. 161)という警告を科学者たちが一般社会(と政治家たち)に向けて発することで,はじめてその現象に対する社会的な認知が広まった.

一部の懐疑論者は,地球温暖化などまったくおこりそうにないと信じつづけていた.[……]彼らは「地球温暖化」など社会的構成物にすぎないと信じていた — 手に持つことのできる石のような事実というよりも,あるコミュニティーによってつくり上げられた神話のようなもの.(p. 243)

二〇世紀末になると,昔ながらの信念を保つためにもがいているのは,気候の自己調節を主張する批判派のほうだった.そのころまでには科学者だけでなく大多数の人々が,自然界とその人類文明との関係について,不本意ながらもいささか不安な見解に達していた.一般大衆と科学界の見解は,それぞれが互いに影響を及ぼして,必然的に一緒に変化してきた.[……]確かに,狭い意味では,結果として得られた気候変化の理解は人間社会の生産物と呼べるだろう.それを社会的生産物にすぎないと呼ぶべきではない.将来の気候変化はこの点では,電子や銀河など私たちの五感では直接的にアクセスできない数多くのものと似ている.これらすべての概念はアイデアの精力的なぶつかり合いの中から現れ出たもので,ついには大部分の人々が説き伏せられてその概念は現実の何かを表すものだと言うようになったのだ.(pp. 244-245)

科学と社会とのかかわり合いに関する穏当な見解だとぼくは思う.

―― 本書は,地球規模の気候変化に関する学際的なモデリング研究を核にして,それが一般社会や政治の世界とどのように関わってきたかという問題意識のもとに書かれたことがわかる.もちろん,科学者としての立場から言えば,影響力や発言力そして研究資金を獲得するためにどのような戦略をとればいいのかという指針をも与えているようにも読める.前半で挫折せず,最後まで読了してよかった.

もう一点,“歴史”と“現在”の境目について ――

出来事の説明が現時点に近づくにつれて,それは「歴史」とは呼べなくなっていき,ほかの何かに似てくる — それはジャーナリズムかもしれない.歴史の記録の中に求められる特別な長所,つまり長期的な視野に立った展望と客観的な分析は,だんだん減ってしまう.(p. 201)

逆に言えば,ダイレクトな知見と雑音が聞こえるくらい「現在」に近いと,情報が多過ぎて仮説の絞り込みに苦労するということだろう.Robert J. O'Hara がいう「体系学的一般化(systematic generalization)」は現在から離れるほどラクになるのかもね.→ R. J. O'Hara (1993), Systematic generalization, hitorical fate, and the species problem. Systematic Biology, 43: 231-246.

◇追いつめられてきたわけですが ―― 夜になっていきなり「発破」が炸裂し,別件の“変成岩”化しつつあった仕事に風穴 があいてしまった をあけてもらった.※今年中にイッキにけりをつける決意です.はい.>関係者のみなさん,ごめんなさいごめんなさい.

◇磨り減って寝る.

◇本日の総歩数=16082歩[うち「しっかり歩数」=8455歩/72分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/−0.6%.


26 april 2005(火) ※ 深みにはまるか

◇5時半起き.小雨.気温14.9度.湿って暖かい.

◇おお,これは「深み」だ,「底なし沼」だ,「セイレーン」だ ―― 府川充男(編)『聚珍録』(全3巻,2005年2月23日刊行,三省堂,ISBN:4-385-36232-7).※計3,000ページを越える和文タイポグラフィーの図譜.ごめんなさい,もう近寄りませんから,後ろ髪を引かないでね.ひぇ〜.→版元サイト

◇学会大会情報:日本計量生物学会2005年度シンポジウム(2005年5月20日〜21日,慶應義塾大学矢上キャンパス).

◇昼過ぎから雲が厚くなってくる.また夕立でもあるのかな.

◇午後1時から統計学のセミナー(→カリキュラム).今日やった2章はいわば「序論」なので,1時間あまりで軽く終わらせた.

◇午後2時半からグループ内会議.来年度の予算要求/非公務員化にともなう想定問答集/次期中期計画策定に向けての予定などなど.

―― お,いきなり強い雨が降り出す.雷鳴も.[15:04] /でも,すぐに晴れ間が.めまぐるしい移り変わり.[16:12]

◇〈ウォシュレット系統樹〉―― 公開された朝日広告賞(2004年度)の「第2部受賞作品」の「準朝日広告賞」トップに掲載されている.

◇昨日,車中完読した本 ―― 鹿野忠雄『山と雲と蕃人と:台湾高山紀行』(2002年2月22日,文遊社,ISBN:4-89257-037-0).※1941年の初版本の復刻と合わせて,中国語版(台湾)からの脚注と解説を載せ,さらに関係者の記事を含む.『明治の冒険科学者たち:新天地・台湾にかけた夢』(2005年3月20日刊行,新潮新書108,ISBN:4106101084)の著者である柳本通彦氏の解説記事も.鹿野忠雄は1930年代に台湾の山々を踏破し(初登頂も含む),その際,同行した台湾先住民と起居をともにしている.本書はその登山記録を主とするが,博物学者らしく台湾山系の動植物や民俗の詳しい日録を残した.貴重な記録写真も掲載されている.好戦的な先住民部族による〈首狩り〉を気にかけつつも,ひたすら山頂を目指す気概が行間からにじみ出る.本書が〈台湾山岳文学〉の代表作品と評されるのももっともなことなのだろう.

◇「あと2日」―― きー.※書きます書きます.

◇夜,知人から情報あり ―― 台湾博物学に関する著作が台北で出版されているらしい:呉永華『被遺忘的日籍臺灣植物學者』(1997年6月30日刊行,晨星,ISBN:957-583-570-0※→参考サイト1参考サイト2)/呉永華『被遺忘的日籍臺灣動物學者』(1995年刊行,晨星,ISBN:957-583-501-8※→参考サイト).いまの日本よりも,臺灣の方が再評価の気運が高まっているということですかね.

あ,もちろん,この本はすでに“視野”に入ってます:山崎柄根『鹿野忠雄:台湾に魅せられたナチュラリスト』(1992年2月20日刊行,平凡社,ISBN:4-582-37381-X).新刊で出てすぐ買ったにもかかわらず,10年以上も通読していなかった(つまみ読みしていただけ).

◇本日の総歩数=9800歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+1.1%.


25 april 2005(月) ※ 下り坂の東京出張

◇5時起床.曇り,気温9.7度.雨がぽつっと落ちてきたり.

―― 研究所にて進化学会ウェブサイトの「退会申請フォーマット」見本をつくる.

◇朝からぶくぶくと溺れる本津波 ―― サイモン・シャーマ『風景と記憶』(2005年2月28日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-25516-7).※買うのは狂気,投げると兇器,読んだら驚喜./石塚純一『金尾文淵堂をめぐる人びと』(2005年2月28日刊行,新宿書房,ISBN:4-88008-333-X).※ゴールデンウィークのお愉しみ本ということで./『中尾佐助著作集第IV巻・景観と花文化』(2005年5月25日刊行.北海道大学図書刊行会,ISBN:4-8329-2871-6).※750ページを越す分量.生前書きまくったということか.この調子であと3巻が続いたら本棚のスペースをとるにちがいない.

◇最節約系統推定ソフトウェア〈TNT〉のレビュー記事がいくつか出ている.Mac OSX 用ファイルをダウンロードする:

  • Peter Hovenkamp 2004. Review of: T.N.T.−Tree Analysis Using New Technology. Version 1.0. Cladistics, 20: 378-383.
  • Rudolf Meier and Fahran B. Ali 2005. The newest kid on the parsimony block: TNT. Systematic Entomology, 30: 179-182.
  • Gonzalo Giribet 2005. TNT−Tree Analysis Using New Technology. Version 1.0. Systematic Biology, 54: 176-178.

◇新刊情報(其の壱)―― 『日経サイエンス200→2004:DVD-ROM版記事データベース』(2005年4月25日刊行,日経サイエンス社,ISBN:4-532-52301-X).※過去5年間の誌面6600ページをpdf化したものとのこと.

◇新刊情報(其の弐)―― 『季刊・本とコンピュータ[第II期第15号・2005年春号]』(2005年3月10日刊行,トランスアート,ISBN:4-88752-193-6)から.片塩二郎『秀英体研究』(2004年12月12日刊行,トランスアート,ISBN:なし).※736ページ!(食指を伸ばすべからず>ぼく).→紹介ページ

◇今日は午後3時から,百人町の国立科学博物館分館にて分類学会連合の役員会がある.雨が心配だが,そろそろ出発しないと.ん,でも晴れ間がのぞいたりしているぞ.

―― 出だしが遅くなったせいで,中央線大久保駅にたどり着いたのは午後3時半.科博分館の会議室にやっとたどり着いたのは午後3時40分のこと.ずいぶん遅くなってしまいまして.ん,きょうは参加者が少ないじゃないか.会長と副会長そして庶務幹事の3人しかいない.ううむ,せっかく来たのに.

来年1月はじめの連合シンポジウムについての打合せ.6月には演者・演題を確定させたいとのこと.ついでに,先日の IOSEB Council Meeting の報告をして,今後の協力をお願いする.Academia Sinica に接触するには“VIP”とどのようにコネをつけるかが大切だとのアドバイスをもらう(つねづねそう聞いてはいたのだけれど).進化学会代表の代理の件(ぼくがピンチヒッター)は了承された.

午後4時過ぎに会議は終了.実に短い滞在時間だった(実質40分ほど).「つくば」というと「東京のすぐ近く」と思われているふしがある.しかし,実際に東京との往復を何度もしてみると,“心理的距離”と“所用時間”との隔たりの大きさを実感する.つくばは辺鄙だ

◇速攻で引き返し,午後6時過ぎにひたち野うしく駅に降り立つ.今日はけっきょく思ったほど雨は降らず,湿度の高めな1日だった.

◇夜は,明日の準備として J. H. Zar『Biostatistical Analysis (Fourth Edition)』(1999年,Prentice Hall,ISBN:0-13-081542-X)のはじめの2章分を読む.いい入門テキストみたい.第1章のヒストグラムの説明文の中に,ダレル・ハフの『How to Lie with Statistics』(1954年)が引用されている.なつかしい.高校生の頃に手にした初期のブルーバックスの1冊として『統計でウソをつく法:数式を使わない統計学入門』(1968年,講談社ブルーバックス120,ISBN:4061177206)というタイトルで翻訳された本だ.あの頃は,相対性理論とか量子力学の知識はもっぱらこのシリーズで得ていた.当時は,刊行頻度が今ほど高くなかったので,ブルーバックス新刊が出るたびに買いそろえていた記憶がある.※調べてみたら,講談社には〈ブルーバックスのページ〉というのがちゃんとあるんだ!

◇本日の総歩数=13599歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/−1.5%.


24 april 2005(日) ※ すっきり晴れて3年目

◇5時半起床.青空が広がる.今日は dagboek をつけ始めて3回目の“誕生日”になる.

◇来週から,もうひとつの講義が始まるので,そのためのページ〈Rを用いた基礎統計学 ― 幾何学的形態測定学への導入として〉を開設した.講義に関連する生物統計学・形態測定学に関する情報はここに載せます.>南保さん(&潜在的受講生諸氏)

◇からっと晴れ上がる.フライング気味の五月晴れ.明日からは下り坂になるという予報だが.気温もそれなりに高いが,風がやや冷たいので長袖でも許容範囲内.

◇ベンチでスペンサー・E・ワート『温暖化の〈発見〉とは何か』(2005年3月15日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07134-7)を読み始める.地球温暖化をめぐる「気候変化の科学の歴史」(p. 1)をたどる本書は,やや地味な出だしだが,どのようにストーリーが展開していくのかな.

◇先週届いたばかりの Systematic Biology 誌の最新号(Vol. 54, no. 1, February 2005)をざっとブラウズ.新しく Editor-in-Chief になった Rod Page さんの懐古的コメントが載っている:

My own perception of systematics are inevitably colored by events at the time I started to join the field. Rather like stereotypically lumbering dinosaurs unaware of the small mammals scurrying about their feet, arguments about cladistics versus phenetics rumbled on while all about them statistical methods started to blossam. [...] Yet, the 1980s was also a period of great interest in large-scale patterns in biogeography, diversification, coevolution, palaeontology, morphology, and development. [...] I hope the current generation of systematists will occasionally step back from the animated cursors and Beowolf clusters, and revisit some of the big questions that so engaged the discipline 20 years ago.(p. 3)

なんだか,すっかり“むかしばなし”口調になってますねえ.確かにこのジャーナルほど,数々の「闘い」の場となり,それとともに性格的にも内容的にも大きく変遷してきた雑誌は珍しい.2003年時点のインパクト・ファクターでいえば,Systematic Biology 誌は進化生物学分野の学術誌ではトップ(IF=7.74)だそうだ(p. 1).総説誌である Trends in Ecology and Evolution 誌に次ぐランクとのこと.50年前の創刊号を手にしたとき,半世紀後にこのような姿になるとは想像できなかっただろう.

個人的には,〈systematist〉という言葉そのものの意味がずいぶん変わってきている気がする.“体系学者”はニアリイコールで“進化学者”と同義? そもそも「体系学」という言葉自体が日本にはいまだに定着していないようだけど(原語でも訳語でも).

―― この号には,系統仮説によるデータ圧縮効率を論じた C. Ané & M. J. Sanderson 論文(pp. 146-157),系統ネットワークの可視化の方法を提唱する B. R. Holland et al. 論文,tree reconciliation の頑健性を論じた A. P. Jackson 論文が含まれている.※昔も今も刺激的なジャーナルだ.

◇三つの原稿,二つの査読.※う゛〜.

◇本日の総歩数=5981歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼△|夜△.前回比=0.0kg/+1.5%.


23 april 2005(土) ※ さわやか週末

◇午前5時半に自然に起床.晴れて涼風.湿度低く快適.

◇進化本新刊近刊情報 ―― 横山利明『日本進化思想史(1):明治時代の進化思想』(2005年4月刊行,新水社,ISBN:4883850765)./横山利明『日本進化思想史(2):人間を探し求めた人々の記録』(2005年5月近刊,新水社,ISBN:488385048X).※「横山利明」&「新水社」というペアですでに何冊も進化本が出ているが,どれもリアル書店では実物をほとんど見かけないし,いつのまにか品切れになっているタイトルがある.せっかくの進化本なのだから,もう少しちゃんと宣伝すればいいのにといつも思っている.今回の新刊も参考のために忘れないうちにオンライン書店で入手しておこう.

◇ガソリン・スタンドで洗車してもらっている間に,しばらく放置してあった Panmixia の再校ゲラ(三中信宏「太田邦昌氏の【真正分類系統学】再考」Panmixia, No. 16, pp. 13-20, 2005年近刊[いつ?])のチェック.マイナーな訂正箇所をちょこちょこ書き込んでおしまい.この文章は,ちょうど1年前に出た姉妹記事である三中信宏「太田邦昌氏の系統分類学理論:体系学史における位置づけと限界」(生物科学, 55: 229-233, 2004)での内容を受けて書かれた「続編」と位置づけられる.『生物科学』記事では踏み込めなかった,太田の「真正分類系統学」の中身を論じたのが Panmixia 記事ということ.

◇たまたま立ち寄った松代の Book Market にて各500円でゲット ―― キャロル・アン・リー『アンネ・フランクの生涯』(2002年9月28日刊行,DHC,ISBN:4-88724-192-5)./ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧(新版)』(2002年11月5日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-03970-2)./フランセス・アッシュクロフト『人間はどこまで耐えられるのか』(2002年5月30日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-25160-9).※どこまでも「耐えられる」ようにみえて,あっさり「壊れる」こともある./酒井シズ『病が語る日本史』(2002年5月20日刊行,講談社,ISBN:4-06-210566-7).※立川昭二の本と同じカテゴリー.疾病史の本は気になる.

いずれも2002年の新しめの本.定価の1/4で買わせてもらってうれしいやら[著者に]申し訳ないやら.

◇また詰まってきたみたいで…….GW前に仕上げるべき仕事がいくつか.

◇本日の総歩数=6140歩[うち「しっかり歩数」=1372歩/11分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=+0.2kg/−1.1%.


22 april 2005(金) ※ 曇りのち晴れて

◇4時半に起床.晴れる明け方.気温8.7度.研究所にて進化学会メーリングリスト(Qshinka)の大掃除をする.1時間あまりの清掃作業で,およぞ50名の腐敗不配アドレスを一挙に抹殺完了.これから東北大会が開催されるまでの期間はやりとりが多くなるので,きれいにしておかないと.

―― それにしてもMLへの配送メールを「hotmail」などに転送するのはぜひぜひ止めてほしいな.転送先からエラーが返ってきても,手の打ちようがない.メール転送を利用しているユーザーはきっとこういう“尻拭い”があるのだということさえ考えが及ばないにちがいない.※おバカさん.

◇またまた雲がかかってきて,ときどき雨がぱらつく.気温は意外に低めだ.

◇系統学的考古学の新刊などなど ―― Michael J. O’Brien, R. Lee Lyman, and Michael Brian Schiffer『Archaeology as a Process : Processualism and Its Progeny』(2005年3月31日刊行,The University of Utah Press,ISBN:0-87480-817-0).このところ系統学的考古学の新刊が相次いでいる.それもほぼ同じサークルの研究者コミュニティが推進力になっている印象がある.つい最近出た本書もそういう1冊のようだ.タイトルはあきらかに David L Hull の生物体系学史本『Science as a Process: An Evolutionary Account of the Social and Conceptual Development of Science』(1988年,The University of Chicago Press,ISBN:0-226-36050-4 [hardcover] / ISBN:0-226-36051-2 [paperback])を意識して付けられているようだ.アメリカにおける“プロセス考古学”(proxessual archaeology)とその知的末裔が形成する学問クレードのたどった歴史を描いた本.とても楽しみ.※→出版社サイト./R. Lee Lyman, W. C. McKern , Michael J. O'Brien『W. C. McKern and the Midwestern Taxonomic Method』(2003年,University of Alabama Press,ISBN:0817312218 [hardcover] / ISBN:0817312226 [paperback]).ほぼ新刊.未知の研究の世界が広がってるなあ./付帯情報:近刊が予告されていた2冊の論文集のうち,Carl P. Lipo, Mark Collard, and Michael J. O'Brien (eds.) 『Mapping Our Ancestors: Phylogenetic Approaches in Anthropology and Prehistory』(2005年3月刊行,Transaction Publishers,ISBN:0202307514)はすでに出版されているようだ.一方,Stephen Shennan, Ruth Mace, and Clare Holden (eds.) 『The Evolution of Cultural Diversity: A Phylogenetic Approach』(2005年近刊,UCL Press,ISBN:1844720659)はまだみたい.

◇こまごまと書類書き ―― 設計会議で修正された報告文書./出張伺1件./研究推進費による海外出張申請書.

わ,もう,「津波」のごとく押し寄せてきて……

◇昼休み,からりと晴れて,歩き読み.気温19度台で,北風がやや強いが,さすがに冷たくはない ―― 柳本通彦『明治の冒険科学者たち:新天地・台湾にかけた夢』(2005年3月20日刊行,新潮新書108,ISBN:4106101084)の第1章「台湾に科学の光を当てた−伊能嘉矩」と続く第2章「時勢を駆け抜けた反骨の植物学者−田代安定」を読む.130ページほど.明治以降,日本「初」の植民地だった台湾の地で,さまざまな人たちが交錯したことを知る.最初の主人公・伊能嘉矩には,当時の人類学・民俗学の人脈が見え隠れする.台湾で行なわれた博覧会で「人種」が陳列されたという記述があるが,これは同時代のアメリカ自然史博物館でも公開されていた同様の“展示”と響き合うものがある(→ケン・ハーパー『父さんのからだを返して:父親を骨格標本にされたエスキモーの少年』).アメリカ自然史博物館で当時,人類学展示を牛耳っていたのは,ほかならないフランツ・ボアズだった.第2の主人公である田代安定には,当時の「台湾植物学」界の人脈が顔をのぞかせる.動的分類学の早田文蔵への言及があったりするのも興味深い.後世のゾルゲ事件への言及とか,柳田国男との関わりとか,本書全体を通じて,一見狭い台湾(と言ってもその具体的イメージをぼくがほとんどもちあわせていなかったことに気づかされた)の中で,当時の幅広い人的ネットワークが交わっていたということか.悲劇的な第3の主人公・森丑之助の章は明日読むことにしよう.

◇〈世界ミーム博覧会〉とは? ―― 数日前,伊勢田さんの Daily Life(4月16日付)にて,このイベント情報を知り,即引いたのですが,稲葉さんの インタラクティヴ読書ノート別館の別館(4月18日付)でも言及されていたことに今日になって気がついた.“ミーム”で万博! こういうところで「商品価値」があるとは意外.ロバート・アンジェ(編)『ダーウィン文化論:科学としてのミーム』(2004年9月7日刊行,産業図書,ISBN:4-7828-0149-1)の感想メモにも書いたように,少なくとも進化研究では,“ミーム”はもう安心して捨てられる状態になっているのではないですか.※ほかの「業界」ではいざ知らず.

◇午後も急ぎの書類作成あれこれそれどれ…….出張届と訂正文書を提出.海外出張申請書はまだ./あいまに「とある打合せ」が予期せず挿入されたりとか.※また東京動員だ./東京農大の人事書類が届いていないかという人事からの問合せ.※それを訊きたいのはワタシ.

◇客員教員としての所属先となる東京農大・昆虫資源学研究室の“同窓会ニュース”なるものがpdfで送られてきた.ほうほう,研究室に「属しているな」という(久しぶりの)実感がじわじわと.農環研に来てからもう16年になるが,たいていの場合,ある研究室に属している「一要素」ではなく,むしろ自分のウシロから研究室の名前がついてくるという感覚の方がつねだった.※農大の厚木キャンパスに出向くことはほとんどないだろうから,所属研究室とはいえ,実体としては“幽霊”あるいは“生き霊”みたいなもんですけどね.[オルグに行ってもいいんだけど……]

◇とある原稿がやってくる.おお……(心の準備が).読ませていただきますです.

◇隙き間時間に,『明治の冒険科学者たち』の残る第3章「〈蕃人〉に一生を捧げた人類学者−森丑之助」を読み,読了.この人,まるで天狗.台湾の峰々を飛び歩いたようだ.首狩りの風習が残る台湾奥地の〈生蕃〉―〈熟蕃〉ということばとともに本書で初めて知った―の生活環境に深く入り込むことができた森はもって生まれた独自のキャラクターの持ち主だったという.鳥居龍蔵から教わったという写真術を駆使して台湾先住民の映像記録を遺した森の晩年の数年はほとんど闇の中.伝記を書いた著者の苦労が行間から伝わってくるようだ.

本書は,明治時代に台湾研究に身を捧げながら,いまではその痕跡すら消えつつある〈忘れられた3人〉に光を当てた伝記本だ.当時の日本の対外植民地政策のあり方と抗日武装蜂起の勃発を背景にして,“内地”の行政官や研究者たち(とくに人類学・民俗学・生物学)がどのような意図をもって植民地・台湾に渡っていったのかがうかがえる.もちろん,本書の主人公たちは公的な地位も低く,現地調査中絶え間なくさらされる身の危険の割には経済的にはまったく報われなかったという.明治時代以降の日本では,そのような境遇の研究者がとても多かったような気がする.だからこそ,彼らのピュアな研究意欲がよりいっそう印象に残るのかもしれない.

―― この本で“脇役”として登場する坪井正五郎や鳥居龍蔵は,日本の人類学界を築き上げた功労者とみなされている.たとえば,ぼくの手元にある寺田和夫『日本の人類学』(1981年1月20日刊行,角川文庫4682,ISBN:4-04-326601-4)の第2章には,明治時代に日本の人類学がどのように立ち上がってきたのかが描かれている.

◇本日の総歩数=17595歩[うち「しっかり歩数」=8805歩/76分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/+1.5%.


21 april 2005(木) ※ 系統学的考古学な日

◇午前3時に目が覚める.外はまだ雨.明け方に止む.

◇〈プランタン・モレトゥス博物館展〉―― 水道橋の「印刷博物館」にて.〈印刷革命が始まった:グーテンベルクからプランタンへ〉というタイトルが付いている.4月23日〜7月24日の会期.機会を見つけて行くことにしよう.印刷博物館の特別展示は図録が充実しているのでいつも期待している.さすが「トッパン」のソコヂカラというべきか.

◇うー,こまごまと ―― 設計会議資料の修正と提出[完了]./来年度の「非公務員化」とともに,非常勤出講に際しての“制約”は格段に緩くなるだろうとのうれしい見通し.※さる筋より.

◇〈R 2.1.0〉国際対応バージョンの公開(ソース)!―― ほほー,ついにですか.実行ファイルの公開もきっと近いだろう.

◇今日は,院生の南保くんと始める「系統学的考古学」のセミナーの初日.テキストは Michael J. O'Brien and R. Lee Lyman『Cladistics and Archaeology』(2003年,The University of Utah Press,ISBN:0-87480-775-1 →目次).

著者のひとり Michael J. O'Brien さんのサイトを覗いたところ,山のように関連文献が転がり出てきて,南保くんとともにのけぞった.この“熱さ”はワクワクさせるものがある.将来的な研究発表の「場」を探す手がかりになるだろう.出力先候補のジャーナルもさることながら,どのような学会が舞台となり得るのかが重要.

―― 今後の講義のためのサイト〈系統学的考古学 — 考古学データに基づく遺物の系統推定論〉を開設した.ハンドアウトやその他の資料・情報はここに置く予定.

◇そういえば,先日,南保くんからもらった今年度の東京農大のパンフレットには,大学院農学専攻の教員のひとりとして「三中信宏(客員助教授)・応用昆虫学」と書かれてしまっている.そーかあ,ワタシ,応用昆虫学者だったんだー.※岡島秀治さんには人事の上で苦労をかけてしまったな.

◇公開されたばかりのMac OSX の新バージョン(10.3.9)で Java 関連の大きなバグがあるというニュースが飛び交っている.「Terminal」で「java -version」とキー入力して「segmentation fault」というエラーメッセージが出たら,バグがいる証拠らしい.昨日バージョンアップしたばかりなので,さっそく確かめてみる — おお,たしかに「segmentation fault」と表示される.これでめでたくバグ病みだ(くそー).※早く Tiger に移りなさいという営業戦略かっ!?

迷える衆生を救済すべく幾霜さまのご降臨 ―― 魔除けのおまじないのおかげで,無事「segmentation fault」を悪霊退散完了! だんけ.[11:58]

◇“花粉”な日々はもう過ぎ去り,花水木が映える季節となりました.

◇午後1時から〈系統学的考古学〉第1回セミナー.ぼくと南保くんのふたりしかいないので,超こじんまりと…….こういう形式の「輪読」をやったのはいったい何年ぶりのことか.ひょっとしたら10年以上ごぶさたしているかも.アメリカ人類学における諸学派の変遷,生物進化理論との関わりの推移,そして生物系統学が考古学と合体しなければならない理由について,輪読と講義を午後3時まで.

―― この教科書は,文化史考古学→プロセス考古学→ポストプロセス考古学という流れの中でどのように位置づけられるのだろう.新しく勉強する分野なので,背景知識がすぽっと抜け落ちている危険性がつねにある.

◇午後3時過ぎ,いきなり雷雲が立ち上がり,遠くから雷鳴が.※いったい何の祟りか?

―― と思っている間に,あらあら夕立が〜.夜まで断続的に降り続く.

◇実に不覚であった ―― サイモン・シャーマの新刊『風景と記憶』(2005年2月28日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-25516-7)が2月にすでに出ていたとは.近刊予告だけ見ていたが,昨日,くまざわ書店で現物を初めて見てしまった.ほぼ800ページ.登攀意欲をそそりますなあ.定価9,500円!(く...)

◇朝が早かったので,夜寝るのも早くなる.とっとと就寝.

◇本日の総歩数=9462歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/−0.4%.


20 april 2005(水) ※ 雨の一般公開日〈春の祭典〉

◇5時起床.曇っている.気温9度.今日は雨の予報.一般公開日にかぎって空模様がアヤシくなる年が多い気がするが,たぶん有意差はないのだろう.

◇進化学会関連あれやこれや ―― 事務局から転送されてくる書類多し:国際生物学賞の選考依頼./生物分類技能検定の広告転載依頼./大学評価・学位授与機構からの評価委員推薦依頼./学会細則の変更論議 etc.※粉雪が根雪とならないうちに払おう.

◇事務仕事それやどれや ―― 非常勤職員の賃金支払科目に関する登録完了./昨日の設計会議に関わる修正の提出は今週中./研究推進費での海外出張の締切緩和.※さあノルウェーだ! /所内の法人プロの申請締め切りは月末./バイオインフォマティクス関連プロジェクトの申請も月末締め切り.※書くだけやったらなんぼでも書きまっせえ.

◇〈今西錦司デジタル・アーカイヴ(The Kinji Imanishi Digital Archive)〉について ―― アルバータ大学のサイトで最近公開されたという情報を得た.今西錦司の手稿やノートブック類をデジタル化したアーカイヴ.1920年代から始まるこれらの資料集は,単に今西だけでなく,同時代の研究者コミュニティに進化学や生態学がどのように受容されていったのかをたどる上でも貴重な資料だと思う.このサイトについては,画像デジタル化のスタイルがとてもスマートで,読みやすく感じる.数年前にぼくが書評を書いた今西錦司『今西錦司フィールドノート:採集日記 — 加茂川1935』(2002年12月1日刊行,京都大学学術出版会,ISBN:4-87698-603-7)についても,その復刻源になったノートブック4冊が,このサイトの中で「Kamogawa Research 1935」として,すべてデジタル化されている.

目立ったところでは,上記の“蜻蛉日記”のほかに,学生時代のノート類,都井岬の野生馬に関する調査資料,学位論文の原稿,世界各地での探検・登山記録などが公開されているが,これからもさらに増えていくのだろう.

◇くふぅ,Panmixia 特集のゲラ進捗せず.※越中殿が蠕動しつつある(噴火間近か).※わ,噴火したあ〜っ.

◇予報通り,昼前に雨が降り出す.雨脚やや強い.気温が急に下がってきた.

〈ことば〉づきあい ―― きのう読了した黒田龍之助『その他の外国語:役に立たない語学のはなし』(2005年3月20日刊行,現代書館,ISBN:4-7684-6892-6 →目次)に釣られて.ロシア語を含むスラブ語族の専門家である著者は,長期の外国生活の経験はまったくないという.さらに,著者は,たとえ日本にいても外国語は十分に勉強できるだろうという.いきなり常識破壊的.ことばで苦労している読者は,本書に精神的な“救済”を求めない方がいい.ウィット漂う文体の向こう側には,著者自身が[楽しみつつも]とても努力して“ことば”を勉強している姿が垣間見え,メジャーで経済的に強い言語の影に隠れた「その他の外国語」を相手にひとりで頑張るイメージが湧いてくる.〈ことば〉はけっしてラクしてものになるようなものではないということだ.

本書は全体としてエッセイ集だ.第1章「三十三文字の日常」は,ことばを学びそして教える「風景」を切り取る.ことばをめぐるさまざまな常識がころっとくつがえされる意外感覚が心地よい.「ああ,そういうことなのか.そうだったのか」と教えられること多し.〈洋食のような日本のわたし〉では「留学経験がなくても.困ることはない.ナントカなる」(p. 44)と言い切る.しかし,読者は油断してはいけない.著者は,「留学しなくても,国内で頑張れば,ナントカなる」と言っているのであって,学ぶ本人が努力しなければどうしようもないのはもちろんだ.また,〈耳がいいとは何なのか?〉では,若い世代は必ずしも外国語に関して耳がいいとはいえないと自らの教師経験を踏まえて言う.「世代のせいにして努力しないこと」(p. 98)がもっともいけないことだと釘を刺す(やっぱり頑張らないといけない).この本,その文体に釣られて読み飛ばせない.キビシイことをさらりさらりと口にされる.常識破壊的といえば,第2章「二十二の不仕合せ」.「英語」マニア/語学的完璧バカ/留学至上主義/会話崇拝・読書蔑視/ラクして語学勉強 etc. すべて心地よくあの世に昇天できます.でも,いちばん「すぐ役に立つ」のは第3章「海外旅行会話十一の法則」かな.日本を出て現地に到達し帰国するまでの“言語生活”についてうまくまとめられている.とりわけ,著者は本を買いに外国に行くことがよくあるらしく,書店での振る舞いとか郵便局での郵送のこととか,ぼくの行動パターンと合致する点が少なくない.

言語の研究者に上質のエッセイストが多い(ように思われる)のは何か理由があることなのだろうか.単に“ことば”に対する感覚がするどいというだけではなく,異空間から現実世界を見ているような,非-言語研究者(一般人ね)には気づかないような面を読み取る感覚があるのだろう.著者のことば:

わたしが言語学とチェコ語とセルビア語を習ったC先生は,本当にビールがお好きだった.(p. 80)

あらまあ,そうだったのですか.上の条件を満たす「C先生」と言えば,『プラハの古本屋』(1987年3月20日刊行,大修館書店,ISBN:4-469-21096-X)などの言語学エッセイ本も書いた「あの人」しかいないように思う.遺著となった『言語学フォーエバー』(2002年7月1日刊行,大修館書店,ISBN:4-469-21274-1)の口絵なんかまさに「その人」ではないか.そういえば,エッセイの書き方にも相通じるものがあるような.※はずしていたらごめんなさい.

◇ぼくはといえば ―― 2週間より長い外国経験はいまだにまったくない.生まれて初めて外国旅行したのは 1996 年のハンガリー行.だから,実に「38」になるまで,まったく国外に出たことがなかったということ.その初めての旅行というのも,ブダペストでの〈国際系統進化生物学会議(ICSEB-V)〉に招待されたからにほかならない(→ハンガリー狂詩曲異聞).呼ばれなければきっと行かなかっただろう.その後,1998年にサンパウロで開催された〈Hennig XVII〉での招待講演が2度目の海外経験となる(→報告).これが40歳のとき.その後は毎年1〜2回は必ず海外での学会参加があったので,「回数」だけは人並みかもしれない.しかし,「日数」で言えば,これまでの人生で外国の地に足を踏み入れたことは,「ほとんどない」に等しい.マジでそう.

それではアナタは“ことば”的に不毛な人生を送ってきたのですかと問われれば,必ずしもそうでもないよと答えよう.著者だって言ってるじゃない:

留学経験者はとかく「現地に行かなきゃダメだ」という発想が強い.[……]でも外国語学習者は,みんながみんな外国へ勉強に行けるわけではない.[…… ]留学がすべてではない.だから日本で勉強しておきたい.現地に行かなくても頑張っている学問はあるはずだ.たとえば,天文学の先生がみんな月や火星に行くわけには…….(pp. 45-46)

そーだそーだ!(爆) 

〈ことば〉づきあいに一般論があるわけない ―― ぼくがむかしデンマーク語を勉強したのはカール・ニールセンの文章が読みたかったから/ぼくが学部の頃にロシア語を第3外国語のように頑張ってみたのは『Энтомологическое обозрение』というロシア語の昆虫学雑誌を読みたかったから/ぼくがオランダ語を勉強するようになったそもそものきっかけは,Alexei Diakonoff というオランダのハマキガ研究者の伝記を読みたかったから.一般化不能.メジャーだろうがマイナーだろうが,たまたまその言語と遭遇し,たまたま相応の動機づけがあったから,その〈ことば〉に入っていったというわけで,言語学者のような「体系性」はまったくない.

いまや自然科学の世界では,かつての“ラテン語”のような,あるいは“lingua fránca”のような役割を背負いつつある「英語」について言えば,ぼくの場合,毎年計20時間ほど教えているJICAでの講義体験が唯一の英語経験だ.JICAのようにいろいろな出身国からの研修生を前にすると,いろんな「英語」があること(あるいは分岐する英語クレードがあること)が体験できる.人によってはもっときちんと勉強しているのだが(ラジオ講座を定時に聴くなど),恥ずかしながらそういう習慣が身に付かない.だから不勉強なんです.※すみません.

―― でも,ぼくは“ことば”が大好きです.語学オタクと言われると違和感を感じますが,ことばオタクと言われるのは本望.これは単に外れた好奇心をもつ変人というだけではなく,日々の研究生活にとって利得になることも[たまには]あります.ウンベルト・エーコの指摘を噛みしめるべし:

われわれに未知な珍しい言語で,決定的な著書がこれまでに書かれたことがないなどと,誰が断言できようか.(ウンベルト・エーコ『論文作法:調査・研究・執筆の技術と手順』,1991年2月25日刊行,而立書房,ISBN:4-88059-145-9,p. 30)

というわけで,「その他の外国語」との〈ことば〉づきあいはなお続く.

―― むしろ驚愕すべきことは,「第2外国語」というものを何一つ学んでいない学生がいるということ.昨年の八ヶ岳のJSTワークショップで,そういう世代が想像上の産物ではなく,実在することを初めて見知った.ぼく(ら)にとってはドイツ語にしろフランス語にしろ「第2外国語」は空気のごとく当たり前の存在で,たとえイヤな思い出しかなかろうが,それが原因で留年しようが,つねに身にまとわりついていた.ぼくの第2外国語はドイツ語で,例によって当時の駒場では,よくわからない教材(『Faust』を読まされた記憶あり)に苦しんだわけだが,たまたま畑中信一という生物の先生がドイツ語で生物学の論文を読むセミナーというのを開講していて,それに参加したことで生き延びたという経験がある.もちろんオーケストラではドイツ語の総譜は日常的に読むわけで,いやでもなじまざるを得なかったわけだが.※第2外国語なしの学生生活ってどういう感じなんだろう?

◇黒田龍之助−千野栄一というスラヴ言語学者-エッセイストの〈スラヴ脈〉をたどれば,当然その先には「徳永康元」という“祖先”がいる.ここ数日,黒田本をつっついたおかげかどうか,長らく探していた「徳永三部作」の最後の1冊がやっと入手できそうな気配:徳永康元『ブダペストの古本屋』(1982年4月刊行,恒文社,ISBN:4-7704-0486-7).きょう久しぶりにネット検索してみたら,静岡県のある古書店で売りに出ていた.だいぶ高い価格だが,ブツが入手できるのであれば文句はまったくありません.さっそく注文メールを出す.さて返事はどーでしょう? ※さんざん空しく探しまわった末の〈スラヴ脈〉のご利益ありやなしや?

◇夕方になっても雨は止まず.

◇夜遅くなって,古書店から連絡メールあり:「すでに売れていました」とのこと.くー,またもダメだったか.『ブダペストの古本屋』,これだけ探しまわってもブツに出会えないとはねー.Webcat をチェックしても,国内で所蔵している館は100に達していない.数々の賞を取ったはずの本にしてはサーキュレーションが悪いというかなんというか.こういうとき,あくまでも「〈モノ〉としての本」にこだわる蒐書家とはいえないワタクシは,あっさりとどこかの所蔵館から館外借出してとりあえずは読んでしまおうか,ついでに必要箇所はコピーしてしまおうか,などという次善の策を考え始めたりしている.「〈情報〉としての本」ですむことも多々あるので.

◇明日は「系統学的考古学」のセミナーの初回なので,いくつか準備をしつつ,もう睡魔が隣にいたりする.午後11時.※今日はいやに早いお越しですな.

◇本日の総歩数=9075歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.2kg/−0.4%.


19 april 2005(火) ※ 昼下がりの設計会議

◇午前5時半に朝帰り.よく晴れそうだ.今日の午後は,今年度の「研究設計会議」というのが夕方まであるので,その前に体調を整えておかないといけない.※でも,うだうだしてしまう.

◇新着図書 ―― Jan Sapp (ed.)『Microbial Phylogeny and Evolution: Concepts and Controversies』(2005年,Oxford University Press,ISBN:0-19-516877-1).※系統学の本なのだが,微生物系統学の「歴史(現代史)」に関する論文集としても読める.The Tree of Life のもっとも深い“根幹”部分に関わる論議の集成.→目次.編者の Jan Sapp さんは生物学史研究者で,これまでにも20世紀遺伝学史をデーマにした『Beyond the Gene: Cytoplasmic Inheritance and the Struggle for Authority in Genetics』(1987年,Oxford University Press,ISBN:0-19-504206-9)や共進化研究史『Evolution by Association: A History of Symbiosis』(1994年,Oxford University Press,ISBN:0-19-508821-2)などの単著がある.今回の本も新刊予告では単著みたいな書き方だったが,ブツが届いてみたら実は編著だった.

◇昨日は,黒田龍之助『その他の外国語:役に立たない語学のはなし』(2005年3月20日刊行,現代書館,ISBN:4-7684-6892-6)について書いているヒマがぜんぜんなかった.今日の昼休みはぽかぽかと晴れて,久しぶりにお散歩.気温21度.ぬくい.歩き読みで最後の数十ページを読了.この本,おすすめです.この著者のスタイルはときどき「毒」が強めだったり「薬」が苦かったりする.でも,基本的にはとてもマジメな内容で,くすっと笑ったりしつつ,“ことば”とつきあう上での基本姿勢について教えられるところが多い.

書くべきことは多々あるが,あとは明日まわしね.

◇午後1時過ぎから生態システム研究グループの「研究設計会議」.今年1年の研究計画についての討議.年度末の成績検討会議ほどのシリアスさはなく,“希望”を語れるだけラクかも.もちろん,年度末にはそのツケを払うわけだけど…….午後5時半まで続く.※疲れました.

◇夕暮れとともに,雲が厚くなり,気温が下がってきた.昼間が暖かかっただけにこたえる.

◇寝不足でふらふらしてきた.もう寝ましょ.

◇本日の総歩数=15514歩[うち「しっかり歩数」=6872歩/58分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.7kg/−1.0%.


18 april 2005(月) ※ 役に立った『その他の外国語』

◇午前5時半起床.肌寒く感じるが,気温は9.0度もあったりする.体感温度の感覚はあてにならん.農林団地の桜はことごとく散り果て,葉桜にメタモルフォーズしつつある.今週水曜日(20日)はつくばの研究所群の一般公開日だ..

◇〈T-Time 5.5〉がリリースされたので,さっそくダウンロード.今回は,携帯電話とかデジカメ,あるいはiPod や PSPを「書き出し先」に指定して,電子読書ができるというふれこみのバージョンアップ.でも,書き出し先の制約がいろいろあるみたいね.iPod だと「iPod Photo」しかダメということか.デジカメだと Casio のEXILIM が秀逸らしい.PSP はいつでもオッケーと.※まあ,電子辞書はパソコンでしか読まないので,どうでもええのですけどね.

◇『季刊・本とコンピュータ』の新刊第15号(2005年春号)をうっかり買い忘れていた.わわ,その前の第14号(2004年冬号)も買ってへん〜.げー.※『本コ』は次号(2005年夏号)で終巻となる.

◇明日の午後にある「研究設計会議」のための配布資料をかしかしと書く.

◇あいまにメール返信いろいろ ―― 進化学会への事務連絡./信州大学への成績再評価に関する依頼./東大非常勤出講の時期を決める./すでに変成岩化しつつある,とある根雪業務のケリをつけないと(いよいよ)./とある申し出に断りメールをだす.※ごめんなさい./溜まっていた復命書をまとめて書いてしまう.※正しい研究員はそーいうズボラはしない....

◇関村利朗・野地澄晴・森田利仁(編)『生物の形の多様性と進化:遺伝子から生態系まで』(2003年6月30日刊行,裳華房,ISBN:4-7853-5837-8)が第3刷になるという連絡が版元からあった.けっして安くはない本なのだが,着実に売れているらしい.著者の一人として感謝です.

―― そういえば,今年度の第21回〈国際生物学賞〉のターゲット領域は“かたちの生物学”すなわち“Structural biology in fine structure, morphology, and morphogenesis”だという.

◇うー,書類づくり,終わらん…….いったん自宅に退散する.

午後10時過ぎに再出勤.午前1時半までぐりぐりと Word をいじり,4ページの配布資料を作成する.※心証をさらに害する.(くそー,“役に立たない”なー)

3時間ほど仮眠(どこでも寝る).午前5時に起床.夜中に雨が通ったようで,地面が濡れていた.気温7度.涼しく心地よし.

◇本日の総歩数=9758歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.7kg/+1.7%.


17 april 2005(日) ※ 不養生

◇午前6時起き.よく晴れている.ぱたぱたと朝の準備をば.

◇いろいろと私用が重なり,あっしー君&家事労働.ときどき,活字に逃避する.

◇昼は,洞峰公園北側にある〈Eberbach〉にてヴィーナー・シュニッツェルとか.ほー.

◇夜は,稲荷前の〈Arzonie Italia〉にて,おすすめ「本日のコース」など.最後に出てきたカプチーノ,とてもうまし(もちろん料理も).

◇メキシコ帰り以来,腹の調子がコンスタントによろしくない割にはとてもよく喰っているというウワサが…….正岡子規のごとし.(そんなええもんちゃうか?)

◇飲んだ・喰った・読んだ.※う〜む.

◇本日の総歩数=8960歩[うち「しっかり歩数」=1171歩/11分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=+0.2kg/−0.1%.


16 april 2005(土) ※ テツガクなことども

◇午前5時半起床.晴れてはいるが,気温はやや低め.

◇朝イチで,小学校の授業参観と学級懇談会,それに続いてPTA総会.昼過ぎまでかかる.役員さんはご苦労さんです.以前,PTA本部の書記をやっていたときは,好き放題にPTA広報を書かせてもらっていた.ここしばらくは,学校のPTA活動から遠ざかっているなあ.

◇やや強い風に桜吹雪.この週末できっとぜんぶ散ってしまうにちがいない.

◇確率論の新刊1冊 ―― ドナルド・ギリース『確率の哲学理論』(2004年11月15日刊行,日本経済評論社,ISBN:4-8188-1703-1).昨年出たことは知っていたのだが,買いそびれていた.経済学のポスト・ケインジアン叢書(第33巻)に含まれているのだが,どうみても科学哲学の本だよねえ.本書は,確率の概念史を通観し,古典的確率ならびに論理的確率を出発点として,その後の頻度的解釈・主観的解釈そして傾向性解釈を比較検討する.著者自身は一種の“多元的確率観”を提唱しているらしい.

確率論あるいは統計学をある自然現象の研究(進化学でも系統学でもいい)に適用する場合,単に問題解決のためのツールとしての「お役立ち度」だけではなく,その理念的バックグラウンドが問題になることがある.個別科学での論争が長期化するとき,表層レベルではなく,理念対立のレベルで賛否の論議が展開されていることが少なくない.系統樹の最尤推定は許せても,ベイズ推定には二の足を踏む研究者は,統計学に関してナイーヴでないほど,より割合が高くなるだろうと思う.ベイズ推定が要求する prior がどのような「意味」をもつのかを真剣に考え始めるとき,単に MCMC を使って「解」が出せてよかったねというだけではすまないものがあるのではないか.

たとえば,最節約法の立場から言えば,最尤法でさえ進化モデルやパラメータに関する背景仮定を重すぎるほど課した上ではじめて解の推定が可能になる.ましてやベイズ法では事前分布に関する数々の仮定が上乗せされることを考えると,それほどまで背景仮定を積み上げて得られた「解」っていったい何なの?という素朴な疑念がつきまとう(これはぼくだけの感想ではない).詳しく言えば,それはけっして“素朴な疑念”というだけにとどまらず,最尤法やベイズ法では,系統樹の験証度(degree of corroboration)がより低くなっているだろうという,系統推定論における最近の論争で明示化された論点だとぼくは考える.

“確率”の高い系統樹がほしい?―― だったら,論理的確率でいえば,完全多分岐樹でいいんじゃない(ロジカルにすべての樹形を包含しているから).あるいは,複雑な進化モデルを設定して尤度を高くしてやれば,“データ”へのフィットはいくらでも高くなるだろう.でも,それでは困るというので,「モデル選択」の論議が系統学でも浮上してきたのだとぼくは理解している.モデルが複雑すぎるとまずいことがある.だから(たとえば)AIC みたいな“罰則付き”の最適性基準を置いて歯止めをかけようと.

つまり,単に“確率”が高いというだけでは,ある系統樹を売り込むセールス・ポイントにはならないという共通認識ができつつあるということだろう.AIC(あるいはそれと同類のモデル選択基準)はモデル選択の観点から ―― ありていにいえば「統計学」の世界の中にとどまりつつ ―― この問題を解決しようとしてきた.しかし,その解決の方向性と平行的に,「生物学哲学」の世界でも解決に向けてのアプローチがあるにちがいない.たとえば,Malcolm Forster や Elliott Sober は,AIC それ自身を科学哲学の世界に引きずりこんで,最節約性や単純性という哲学プロパーの概念との連結を計ろうとしている.このやり方は,系統樹の験証度(それ自身は論理的確率によって定義される)と AIC とのつながりをつけるというやり方を示唆しているのかもしれない.※この点についてはまだよく考えていないが.

もちろん,「系統樹の“確率”っていったい何?」という,より根源的な問題は残されるわけだが,それは(ギリースの本のテーマだが)確率論・統計学を取り巻く科学哲学の問題としてとらえるべきだろう.

―― 統計学よりは科学哲学の方が先行するとぼくは考える.

つ,釣られたーっ!

◇ほっとなごむ“語学本”1冊 ―― 黒田龍之助『その他の外国語:役に立たない語学のはなし』(2005年3月20日刊行,現代書館,ISBN:4-7684-6892-6).すごく役に立つ.これはいい本だと思う.母国語ではない「ことば」に直面して“あがく”のは誰でもそうなのだが,“取り憑かれる”必要はないと思う.他にやることがたくさんあるしね.時間はかぎられてるしね.でもなんとなくワクワクするものがあるから,“その他の外国語”たちとつきあっているわけで.

◇腹の調子なおわろし.※こういうときに「腹の探り合い」とかしいひん方がよろしおすえ.(なんて尾籠な……)

◇本日の総歩数=5258歩[うち「しっかり歩数」=3125歩/27分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=−0.7kg/+1.0%.


15 april 2005(金) ※ 寝過ごして花見

◇ふと気がついたら午前6時半.途方もない寝過ごしだ.研究所とピストン往復してしまう.はらはらと散りはじめる桜.とても暖かい.今日も農林研究団地は花見客がきっと多いだろう.

◇年度が変わって,異動にともなうメーリングリスト登録変更の依頼がすでに数十通“堆積”している.塵も積もりすぎると掃くのに気力と体力がいるのだが,とりあえず積もるにまかせている状態(かんにん).

◇備忘メモ ―― 〈日独分類学会議〉:2005年9月1日〜3日.多摩大学ルネッサンスセンター(品川インターシティ27F)にて.詳細情報はまだ公開されていないようだが,IFCS(International Federation of Classification Societies)に加わっている日本分類学会(Japanese Classification Society)とドイツ分類学会(German Classification Society)の2国間合同会議だと推測される.クラスター分析を主とする(ときどき系統推定も論議されている)分類学会の活動は,生物体系学にも深く関係しているとつねづね思っているのだけれど,生物系の研究者からはほとんど関心を払われていないのでは? たとえば,北アメリカ分類学会(CSNA)が出している Journal of Classification 誌って,生物系の研究者はちゃんと読んでます?

◇オンライン書店〈bk1〉が今月からサイト・リニューアルされた.もうブック・ナビゲーターをやめてからだいぶ経つ.一利用者の立場からいうと,投稿書評に対する「反響」がパーセント表示から実数表示に変わったことがもっとも評価できる点かな.個々の本に対する読者書評が〈bk1〉のウリであることはもう広く知られているわけで,書評への反響度が,たとえば Amazon のように,実数で(何人が投票したか)表示されない方がよほど不思議だったのだが,リニューアルされる前はシステム自体の仕様の関係でそれがムリだと当時の担当から聞いたことがある.今回はかなり大幅にシステム自体を変更したということなのだろう.

過去にぼくが投稿した200冊近い本のオンライン書評をいくつか検索してみると,確かに「実数」で“役に立った/立たなかった”の反響度がつかめる.書評読者だけでなく,書評投稿者にとっても,反応がよりダイレクトに感じ取れていいのではないだろうか.統計分析と同じく,「パーセント」ではダメで,やはり「実数」を使うべきなのだ.

◇昼休み.気温は20度を越えた.桜も菜の花も満開.

◇原稿〜 ……(逝くなよ,おいっ.)

◇午後,溜まりまくりのメーリングリスト作業をする.3時間ほどで完了する.入りたい人,出たい人,そして移りたい人,いろいろ.異動の多い年度始めは毎年こうなってしまう.

◇夕方,宿舎植え込みのツツジの蕾がもうふくらんでいるのに気づく,茂みでササキリが鳴き始めた.辛夷→桜→躑躅と花相が進んでいくのが,つくばの平地の春.

腹調なおよろしからず.タコスの呪いか,はたまたテキーラの祟りか.伏せる.

◇本日の総歩数=9962歩[うち「しっかり歩数」=2822歩/26分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.5kg/+0.4%.


14 april 2005(木) ※ 暖かさが戻り,桜ははらはらと

◇午前5時起床.地面は濡れているが,雨は上がった.榎戸交差点あたりで,濃霧に包まれる.気温は6度台.今日は暖かくなるだろう.

◇〈メヒコ記〉―― 本日公開しました.

◇細かい仕事がたくさん積もっているのだが,ラテンでマリアッチな日々を体験してしまったために(?),「そんなん,もうええやんか,ええやんええやん,どーでもええやん」というアクマの声が聞こえる(幻聴かはたまた自らそうつぶやいているのか).

しかし,締め切りの近い仕事がいくつか迫りつつある.来週は今年度の研究設計会議も.

◇現実逃避して,本の「山」を隣室に移動したりする.生物体系学の棚・形態測定学の棚・科学哲学の棚 etc. が新たに誕生.※日本のどこにもない(はずの)本もここにはあったりする.ふふふ.

まだ,おなかの調子が復活していないので,ちょっとだけ肉体労働もかなりこたえる.タコスおそるべし.

◇げにおそるべきは「やはら」センセ ―― まだ箱崎には届いていない本の“書評”があ(笑).これまでの常識ががらがらと collapse してしまう〜.

◇体調わろし.寝る.

◇本日の総歩数=8961歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.7kg/−1.3%.


13 april 2005(水) ※ 時差ボケる間もなく日常復帰

◇時差ボケも吹っ飛ぶ午前5時半起床.※ワタシって鈍感なのかしら?(ひょっとして)

ある部分では「鈍感」なのだが,別の部分では「敏感」だったりする.昨日帰国して以来,おなかの調子がよろしくない.もちろん,メキシコに滞在していたときは生水など飲まず,氷もホテルが指定したものを使っていたので「水」が原因ではないはず.最後のアトランタの夜に「ええぃっ」とビールを飲みまくったわけだが,それでもビールにあたった経験は今までないので,この可能性もない.いくつか考えられる対立仮説の中でどれがベストなのかを abduction する気も失せるほどおなかが痛かったりする…….こまったなあ.

外はまだ雨が降り続いている.研究所の気温計は「5.6度」.いくら花冷えだといってもただごとではないぞ,これは.農林団地の桜も盛りを過ぎ,雨に散り始めている.これで天気が回復して暖かくなれば,桜吹雪になるだろう.

◇研究所に籠ってこまごまと(これぞ「日常」)―― IOSEB の資料は整理しておかないと.あと,メキシコ旅行に関わるレシート類をまとめて郵送しないといけないし(NSFからの reimbursement が受けられない)./回覧物だの郵送物だのが机にわらわらと積み上がっている./Panmixia 誌〈太田邦昌特集〉の再校ゲラが届いていた./人間ドックの受診申込みとか.※締め切り過ぎてるやん……./〈殿〉から直メール.ご恢復順調そうで安心する.

◇天気は回復するという予報だったが,夕方近くになってもまだぐすぐずしている.

◇院生の南保さんと,農環研での輪読・演習テキストを選ぶ ―― 東京農大側の講義の曜日が確定しつつあるので,そろそろ今月から農環研側でも“講義”体勢を固めないといけない.こういうノウハウはたいていの場合,共有されていないので,しばらくは試行錯誤が続くかも.とりあえず,次の3冊を「教科書」として指定する ――

  • 系統学的考古学:Michael J. O'Brien and R. Lee Lyman『Cladistics and Archaeology』(2003年,The University of Utah Press,ISBN:0-87480-775-1 →目次

  • 生物統計学:Jerrold H. Zar『Biostatistical Analysis, Fourth Edition』(1999年,Prentice Hall,ISBN:0-13-081542-X)

  • 形態測定学:M. L. Zelditch, D. L. Swiderski, H. D. Sheets, and W. L. Fink 『Geometric Morphometrics for Biologists: A Primer』(2004年,Elsevier,ISBN:0-12-778460-8 →目次

Zar の本は今回はじめてテキストにするのだが,どういう感じかな.Rohlf & Sokal 『Biometry』みたいなもんなんでしょうか?(実例は Zar 本も同様に多いけど) 個人的には,近刊予告されている M. Crawley『Statistics: An Introduction Using R』(2005年5月刊行予定,Wiley,ISBN:0470022973 [hbk] / ISBN:0470022981 [pbk])が将来的なテキストに使えるかどうかに関心があります.

ほかにも“アイデア”はあるけれど,それはまたおいおいね.>南保さん.

おお,そういうことだったんですか!(納得) ―― ぼくの場合は,細馬さんとはちがって,メキシコ滞在期間がごく短期間だったので,日本に帰ってきてからその「症状」があらわれたということだったのか! つまり,「腹痛の原因はトルティージャである」という細馬説.うーむ,メキシコにいたときは,ほとんど毎食トルティージャをばくばく喰っていたもんなあ.腸内細菌相が激変したという説明にはとっても説得力があるぞ.ううむ,豚の脂ですかあっ.「最後の段落」はことに重大ですぞ.メキシコでは気取られなかったとしても,日本ではイッパツで“犯人特定”されてしまうのでは? 【教訓】アヤシイ屁[and/or 便]の出るうちはメキシコから出国すべからず.※あ,また,おなかが痛くなってきた.こまったなあ.

◇「メヒコ記」もまだ完成していないんだけど,イマイチその気力がなくって…….

◇Christiane Zschirnt『Libros: todo lo que hay que leer』(2005年2月刊行,Santillana,ISBN:968-19-1513-5)は,それと同時に入手した Dietrich Schwanitz『La cultura: todo lo que hay que saber』(2005年1月刊行,Santillana,ISBN:968-19-1428-7)の後継的姉妹書なのだろう.タイトルや装丁からして同じシリーズであることは明らかだし,著者たちは同じハンブルク大学に所属している.ひょっとして師弟関係かも.Schwanitz 本は“文化”(独語原書では“教養(Bildung)”となっている)を学ぶガイドブック.NAXOS の CD が付いている(パレストリーナからガーシュウィンまで).歴史的に見たヨーロッパ文化概説であるように感じる.「これが読むべき本のすべてだ」とか「これが学ぶべき文化のすべてだ」と言われると違和感があるのだが,そういう読まれ方は著者たちの意図するところではきっとないのだろう.Schwanitz 本はドイツでは100万部を売りつくしたミリオンセラーとのこと.日本ではそういう情報はまったく耳にしなかった(翻訳の気配もないと思う).

日本では遭遇する機会すらなかったドイツの本とメキシコでたまたま出会うというのは一期一会.

◇夜になってもいっこうに腹痛おさまらず.こまったなあ.

◇本日の総歩数=11895歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.1kg/−0.8%.※メヒコであれだけ暴飲暴食したはずなのにフシギだなあ.腹調子がよろしくないから?


12 april 2005(火) ※ なんなんだこの寒さは!

―― ということで,とくに致命的なトラブルもなく成田に到着できたわけだが,着陸直前の機内アナウンスで「地上の気温は摂氏7度です」と流されたときは,乗客の間にどよめきがわき起こった.そりゃそうでしょ,かんかん照りの夏日で,そこらじゅうみんな「半袖短パン」だったアトランタの雰囲気のまま帰ってきたら,母国は20度近くも気温差があったわけだから.出国するときはそれなりに春めいていたのに,いったいどういうことなのか.

◇空港第2ターミナルに降りたち,レンタル携帯を返却したり,荷物を詰め直したりして,外に出てみたら,確かに寒い.雨まで降っている.気温表示計は「13度」になっている.空港周りに見える桜はすでに満開のようだったが,これでは散るのも時間の問題か.

◇つくばセンター行きのシャトルバスに乗り込んだのが,午後2時35分のこと.雨脚はやや強め.ぼくのように半袖の人は …… どこにもいない.※当たり前でしょ.

◇会議が終わってからの3日間は,ひたすら「本」を読んでいた気がする.ノートパソコンをトランクに詰めてしまったのは,はたして不運だったのか.それとも裏返しの幸運だったのか.メキシコシティのベニート・ファレス国際空港でたまたま見つけた Christiane Zschirnt『Libros: todo lo que hay que leer』(2005年2月刊行,Santillana,ISBN:968-19-1513-5)は,文字通り「本の本」それも“Bildung”志向の「読書リスト」だ.聖書から『ハリー・ポッター』まで登場するこういうタイプの「読書リスト」が出ていたとは驚きだ.英訳はまだないみたいね(独語原書は千葉大学文学部で教科書指定されているらしい).「世界観」「愛」「ユートピア」「経済」「シェイクスピア」などのカテゴリーごとに,さまざまな本たちが登場する.それも単なる辞書的ぶつ切りではなく,ストーリーがある[ような]点で気になる.Friedlich Gottlieb Klopstock,『ウェルテル』,そして〈La fiesta de primavera〉(=〈春の祭典〉)のつながりっていったい何?(p. 251)

◇何はともあれ,日本にたどりついたことでよしとしよう.帰宅して荷物を片付けたりしていたら,あっという間に夜になった.あとの選択肢はただ寝るのみか.

◇本日の総歩数=5032歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


メヒコ記(7〜12 April 2005)

―― IOSEB Council Meeting(8-9 April 2005, Mexico City)にともなう記録と感想です.


7 april 2005(木) ※ 国外逃亡の明け方に

◇午前4時前に目が覚める.ごそごそと荷物をかき回したりする.成田空港へのシャトルバスがつくばセンターを出るのは午前8時50分.それまでは日録を書いたり,茶をすすったり.

◇旅行中の突撃レポートは ―― メヒコ記


6 april 2005(水) ※ 桜ほころぶ

◇4時半起床.夜明け前の気温は4.7度.高め.農林団地の桜がそろそろ開き始めている.今日はとても暖かくなりそうだ.

◇研究室で,先月下旬から溜まっていたメーリングリスト関係の作業をすませ,遅れていた月例アナウンスを流す.年度の変わり目なので,メールアドレスの変更依頼の件数が多いのは毎年のことだ.今月も早々と五月雨的にリクエストがやってくるにちがいない.

◇散発的作業 ―― 蕎麦本を2冊発送する.ぼくの手元にある在庫もついにヒトケタとなり,残部は「たった8冊」./今年度の研究設計会議が19日にある.その資料づくりは帰国後ということになる.

◇旅行準備あれやこれや ―― 米ドルとトラベラーズ・チェック(T/C)を買いに銀行に行く.一般旅行者の場合,T/Cはとても重宝するそうだが,国際会議のように日中の拘束時間が長いと,T/Cはとても不便だ.理由は単純で,空港を出ていったん町中に入ってしまうと,換金する時間がないから.以前,サンパウロに行ったときにそれで痛い目にあったので(現金が底をついた),それ以降は国際会議の際には,カードかまたは現金に頼り,T/Cは当てにしないという習慣が身についている.今回も T/C は“お守り”として購入するだけ.ほとんどは現金./新しくなった〈クレオ〉の旅行用品店〈Travel Garage F〉(ついこの前まで〈トラベランド〉と呼ばれていた店)にてトランクを新調する.おお,そうですか.かの「サムソナイト」というブランドはなくなったのですか.代わりに,「ProtecA」という新ブランドがその跡を継いだそうだ.でもって,ProtecA のトランクを買う(出費……).

◇今年度の東京大学農学生命科学研究科での非常勤講義〈保全生態学特論〉の日程が確定した ―― 6月9日,16日,23日(いずれも木曜日).時間帯は午後1時から5時まで.場所は弥生の農学部1号館だと思う.〈保全生態学特論〉と銘打たれてはいるが,前回と同様に,中身は「生物系統学」の集中講義です.森林総研の津村義人さんがもうひとりの非常勤講師.

Molecular Phylogenetics and Evolution誌の最新号(Vol. 35, no.1, April 2004)が届いた.ほほー,こりゃまた,とてもそそられる論文が:

  • Kevin G. Helfenbein and Rob DeSalle 2005. Falsifications and corroborations: Karl Popper's influence on systematics. Molecular Phylogenetics and Evolution, 35(1): 271-280.

Popper の科学哲学が体系学の方法論にどのような影響を及ぼしてきたかを振り返った上で,初期(1970年代)は体系学の「科学的地位」をめぐって Popper が取りざたされていたのに対し,最近は最尤法の哲学的基盤を Popper 哲学によって補強しようとする新しい(&まちがった)解釈が広まりつつあると指摘する.この論文の具体的な「ターゲット」は,もちろん:

  • K. de Queiroz and S. Poe 2000. Philosophy and phylogenetic inference: A comparison of likelihood and parsimony methods in context of Karl Popper's degree of corroboration. Systematic Biology, 50: 305-321.

  • K. de Queiroz and S. Poe 2003. Failed refutations: Further comments on parsimony and likelihood methods and their relationship to Popper's degree of corroboration. Systematic Biology, 52: 352-367.

系統仮説の corroboration を真剣に考えるのであれば,degree of corroboration C(h, e, b) を構成する「背景仮定(b)」の妥当性を論じる必要がある.論じないはずの(だから「背景」)を論じよというのはとても皮肉なことなのだが.最尤法をポパー的に基礎づけようというのなら,なおさら(最節約法よりもいっそう)この「背景仮定」について論じなければならないという重荷があるはずだ.

笑ってしまったのは,MPEのこの論文の最後に「哲学用語集」が1頁付いているということ.Syst. Biol.読者ならば“Popper”とか“corroboration”などという科学哲学業界用語への耐性は長年にわたって培われてきたので,まったく問題ないのだろう.しかし,その点で「うぶ」なMPE読者には「毒」が強過ぎるのではという編集サイドの「親心」なのかもね.

◇午後3時の室内の気温が24.5度! 暑すぎる〜.

◇お,今年の Willi Hennig Society の年次大会アナウンスがやっと公開された ―― 〈Hennig XXIV〉.場所はノルウェーの Fagarnes.会期は今年7月25日〜29日.

◇さてさて,新しいトランクに荷物をどんどん詰めないと.出発は明朝.

◇本日の総歩数=13180歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+0.2%.


5 april 2005(火) ※ 時ならぬ本の引っ越し

◇午前5時起き.冷え込んだ明け方に霜が降りている.気温0.6度.放射冷却みたいなもんかな.

◇季節外れの「雹」のように,こまごまと仕事や連絡がぱらぱら落ちてくる ―― 今月からうちの研究室にやってくる東京農大の南保紀善さんが,今日から農環研に“通学”することになったので,早朝に部屋の片付けをする.会計システム用のパソコンを移動し,机をひとつ空ける.いらんもんが詰まっていた本棚の片付け.7月から正式配属になる大東健太郎さんの向こう側のスペースもついでに調整する.とりあえず,これで〈祈祷部屋〉の隣の〈若人部屋〉は何とかなるでしょ.

◇〈ウォシュレットの系統樹〉―― 今朝の朝日新聞に「2004年度・朝日広告賞」の選考結果が発表されていた.広告主公募での準朝日広告賞のひとつとして,TOTOの〈ウォシュレット系統樹〉というポスターが選ばれている.「ダーウィンもびっくり!」「ウォシュレットの進化は止まらない」だって.この素材は使えるぞ.近日中に朝日広告賞のサイトに掲載されるだろうから,そうなったら申し入れてみよう.

◇朝イチで予約しておいた歯科診療を済ませて,研究所に登場したら,すかさず昨年度業績評価に関する個人ヒアリングが待っていた.(被)評価項目がたくさんあるのでくらくらしてしまう./よくわからないまま,とある寄稿予定が「ご破算」になった.遅れていたことは確かなんだけど,あきらめが潔すぎるのでは?(強いことは言えませんが)./

◇東大出版会からいきなり印税振込の通知:『生物系統学』の「第2刷」(1999年10月15日刊行,東京大学出版会,ISBN:4-13-060172-5)800部について.第2刷が発行されてから5年目の入金だが(すっかり忘れていた),ありがたいことです(揉み手).この分でいくと,「第3刷」(2004年9月15日刊行)の印税が入るのは…….

◇献本:スティーヴン・ストロガッツ『SYNC[シンク]:なぜ自然はシンクロしたがるのか』(2005年3月31日刊行,早川書房,ISBN:4-15-208626-2).いつもありがとうございます.打楽器をやっていると,他の楽器とのリズムの「シンクロ」の有無が気になる曲(特定の作曲家か)がときどきあります.

◇『季刊・理戦[80号]』(2005年4月10日刊行,実践社,ISBN:4-916043-78-2).特集〈ヒトの進化論〉.口述してもらった記事・三中信宏「心も情念も進化的につくられてきた」(pp. 14-29)が最初に載っている.今号の目次は,実践社サイトの「理戦」ページを参照.また今号では,あの府川充男さんが,「印度散人曝書録(十)」というコラムで,柴谷篤弘『今西進化論批判試論』(1981年7月刊行,朝日出版社,ISBN:なし)を取り上げている(pp. 228-235).彼もかつては昆虫少年だったとか.それはそうと「柴谷篤弘」の最近の消息をまったく耳にしないのだが,だれかご存知ありません?

―― ついでに備忘メモ:ウリカ・セーゲルストローレ『社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた』(2005年2月23日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07131-2 / ISBN:4-622-07132-0)の訳者あとがきで,日本の現代進化学史における批判勢力としての“構造主義生物学”に言及している:

柴谷篤弘や池田清彦らによって,構造主義生物学の立場からの社会生物学批判・ネオダーウィン主義批判が精力的になされたことは明記しておくべきであろう.池田らの批判について個々で論じる余裕はないが,私見によれば,哲学的な議論は別にして,批判の実質はルウォンティンおよびグールドの適応万能主義批判に通じるものであり,社会生物学者の側からの応答もそれに準じるものであろう.(p. 724)

私見によれば,“構造主義生物学”という単独の学問的「実体」はなく,固有名詞付きの〈〜の構造主義生物学〉なるものがあるだけだ.だから,あたかも“派”としての“構造主義生物学”が批判勢力として存在していたと考えるのはまちがっている.むしろ,批判したい人たちが近くに集まっているように見えたとみなすべきなのだろうとぼくは考える(「星座」みたいなもの).批判派という点についてのみ共通点を見いだそうとするのは,はっきり言って,まちがい.

生態学会大阪大会のおりに,「セーゲルストローレ本の“日本版”みたいな本が必要ですね」というさりげない会話が交わされたこともメモっておこう.※そういう本が書ける人って,ほら「アノ人」しかいないでしょ.

あ,そうそう,「〈青葉山シンドローム〉って何?」と訊いてきた青葉山住民さま,もちろん,同じ「アノ人」に確認してくださいな.

◇〈農環研食堂デビュー〉のこと ―― 昼休み,南保さんとともに,はじめて農環研食堂に足を運ぶ.「はじめて」といっても,独法になる前の「相馬食堂」が入っていた頃はたまに食べていたのだが,業者が変わってから4年間はまったく足が遠のいていた.南保さんに食堂を紹介するという目的のためだけに〈食堂デビュー〉してしまったということで.

たくさん喰ってしまった…….まずい.※あ,食い過ぎて「よろしくない」という意味でして,決して「不味い(味ない)」ということではありませんので,誤解なきよう.

◇午後は,時ならぬ本の引っ越し作業 ―― 南保さんにも必要になるはずの体系学・系統学の理論書たちを掘り起こして,ガラス戸棚に移す.Hennig 以降の数十冊の本ですぐいっぱいになってしまった.とても重くて疲れた.

◇三時のお茶の時間.大東さんが八ッ橋をもってきてくれた(焼いてある).南保さんに紹介するとともに,「ところで実年齢はおいくつなんでしょ?」とさりげなく訊いたら,「24です[大東]」/「23です[南保]」とのこと.のけぞってしまう.これでは〈若人部屋〉というよりは,むしろ〈子ども部屋〉になってしまうではないか.うーむ.

◇夕方まで,本を移したり,つい立ち読みし始めたり……./メキシコ旅程表をつくって研究室に掲示する.

◇夜は,スーツケースを引っ張り出して,荷物を詰めるか,と思う間もなく寝てしまう.※おいっ,旅支度はどーしたっ? >ぼく

◇本日の総歩数=15761歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.3kg/0.0%.


4 april 2005(月) ※ 全世界,喰えばわかるぞ

◇4:30起床.この季節,外はもう明るいはずなのだが,昨夜来ずっと雨が降り続いている.気温4.7度.やや肌寒い.

◇メキシコからの帰途,アトランタで1泊する宿を明け方にオンライン予約した:〈Wellesley Inn Atlanta Airport〉.空港から至近とのこと.街中はホテル代がとても高いらしい.これで,少なくともあちらで宿無しになる心配はなくなったな.オレゴンでモーテルに泊まったときにも感じたことだが,日本[人]的にはとても“もったいない”スペースの使い方をしているらしいホテル.貧乏性なワタクシは,だだっ広い部屋に通されると「一晩ではとても使い切れないぞー」と落ち着かなくなってしまう.

◇今日は午前9時半から午後4時まで,JICA筑波国際センターでキューバからの研修生相手に統計学の講義.「Buenos dias」だの「varianza」だのとごにょごにょ言う間もなく,とても有能な通訳さんがばしばしと同時通訳してくれる.さすが JICA にはこういう達人がたくさんいるなあ.実験計画の基礎と分散分析を中心とする統計解析について講義する.自己紹介で「ダンスとスポーツ」が好きだと全員が言っていたけど,そういう国民性か?

◇4月1日付で農環研採用になり,3ヶ月にこの環境統計ユニットに配属される予定の大東健太郎さんと採用後始めて対面した.しばらくはつくばと東京での新人研修コースが忙しいと思いますが,ぜひ頑張ってやってくださいねー.※環境統計ユニットが“関西語圏”になる日ぃも近いでえ.

◇文字が喚起する食欲 ―― 中澤さんのメモ(4月1日付)に,醍醐麻沙夫『アマゾン河の食物誌』(2005年3月20日刊行,集英社新書0285D,ISBN:4-08-720285-2)が「食いしん坊には堪らない本」と評されている.そーなんですよ.視覚的に食欲をかき立てるカラー写真が載っているわけでもない.グルメ本によくあるレストラン紹介でもない新書なのに,むやみに読み手側の食欲が亢進してしまうのはどーしてか.筆者の食欲が伝播してきたにちがいないと思います.椎名誠の20年前の“名著”『全日本食えばわかる図鑑』(1985年3月刊行,小学館,ISBN:4-09-359301-9)もそうだった.あからさまに健康にワルいことが見え見えな〈紫蘇肉バター丼〉をつい[何度も]つくってしまわせるだけの文章力がこの本にはあった.

◇農環研の新理事長が〈佐藤洋平〉というフルネームであることを今日になって初めて知った.

◇お,そろそろ午後の“キューバ”に出国しなければ.アスタ・ルエゴ!

―― 雨は昼前には上がり,快適な気温と湿度の午後になった.実験計画と分散分析についての講義が続く.完全無作為化法と乱塊法についての解説.まる1日計5時間の講義ではあっても,逐次通訳なので,単純計算でいつもの半分の内容しか話せない.午後4時ちょうどに高座を終える.今度来るのは研修生が自分のデータを集め始めている9月以降のことだ.その頃までにはもっとスペイン語を身につけておこうね.>ぼく.

◇珈琲を味わいつつ,『ユリイカ』37巻4号(2005年4月1日刊行,青土社,ISBN:4-7917-0132-1)の〈ブログ作法〉特集をほぼ読了する.これからのウェブログの「可能性」うんぬんよりは,むしろはしばしに言及される「昔話」の方がずっと印象的だった.来年には完全消滅する,ニフティの“パソコン通信”時代の想い出とか.本題である〈作法〉について何が書かれていたのかは,「更新されてなんぼ」ということ以外はほとんど記憶に刻みつけられなかった.それならそれでとてもシンプルでいいんじゃないですか.

今回の特集では,ぼくも使っている〈はてな〉が主役なので,思い当たる節がいくつもある.たとえば,特集冒頭の「青土社頂上対談」(pp. 64-102)の中に,こういう一節がある(p. 85):

[鈴木]…… はてなは,学者や人文系の人が最近はどんどん増えてきていて.

[栗原]もともと多かったけど,さらに?

[鈴木]そう,多かったところに,あの人がやっているなら自分も,という感じで参加してきて.学者にはプライヴェートなことを書くという動機がないから,プレゼンスを保つことが目的ですね.学会とかでも「id:何とかさんですよね」といった会話がほんとにあるんですよ.

[仲俣]学会がすっかりオフ会になってる(笑).

先日の生態学会大阪大会を思い起こすと,ごく最近は“理系”でも近いものが感じられるぞー.ねえ.>これ読んでる諸氏.

※ぼくも,今度どこかの学会講演で「id: leeswijzer で〜す.よろしくぅ」と言ってみようかしら.(はずしたときがコワいけど……)

でも,「学者にはプライヴェートなことを書く動機がない」という主張は,ぼくがまわりを見るかぎり,繰り返し反駁されているように思われる.動機はあると思う.これが「学者にはプライヴェートなことを書く機会がなかった」という指摘だったなら,ぼくは多いに賛同しただろう.

稲葉振一郎さんの記事「BBSからブログへ:極私的ブログ考」(pp. 112-117)にも,立ち止まる記述がいくつかあった.かの〈黒木掲示板〉についての追想は耳をそばだてる人も少なくないはず.『「知」の欺瞞』ネタあり(あれ,禍々しきルシフェルへの言及は? それと一歩間違っていたら,アノ人が翻訳に関わっていたかもしれなかったという点は?).匿名発言に関する見解は納得しました:

匿名ではなく,身分をきちんと明かしておくことは,逆説的な形でむしろ一種の安全策−−悪意に対する自己防衛策となるのではないか,という直感があります.

具体的にはたとえば,身分を明らかにした相手に対しては,たとえば「荒らし」も一定程度遠慮することが多いのではないか,ということです.…… 具体的に実在する人物としてのアイデンティティを表示しておくことは,ある種の遠慮や警戒心を呼び起こす可能性が高いのではないでしょうか.(p. 117)

ぼくはもともと「匿名発言は虫の鳴き声」という意見をずっともっているので,基本的に匿名者は相手にしていないのです.たとえば,ぼくが運営するメーリングリストでも,匿名参加したいという入会希望者に対しては,「匿名で存在[参加]することは認めますが,発言したり討論に参加したりしないでね」と釘を刺したことがあります.匿名者が存在したり独りごちるのは何の問題もないのですが,他者と関わる資格はどこにもないのだよということです.

◇出国準備じわじわ ―― 夜,DoCoMoの〈World Wing〉をオンラインで申し込む.FOMAだとカードをレンタル機(N900iG)差し替えるだけで,海外でも携帯電話の番号を変えずにそのまま使用できるそうな.ラクな時代になったなあ.

着替えとかもろもろの荷物はまだ詰めてない.

◇本日の総歩数=12471歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.2kg/0.0%.


3 april 2005(日) ※ まことに良きお日和で

◇なんと!午前7時まで寝てしまった.記録的な遅起きだ.いかに春眠とはいえ,恥ずかしくてとても他言できない…….いやはや.昨日と同じく春霞.〈クーロンヌ〉までパンを買いにウォーキング.眼が痒いぞ(だったら外出るなって).辛夷がほぼ満開.桜はまだまだ.

◇朝日新聞書評欄の新人として〈訳師さま〉のご登場! これからは期待できるかな.※今まではちょいダメだったしぃ.ねえ.

◇新刊・近刊:N・ボアズ,R・ショホーン『北京原人物語』(2005年4月刊行,青土社,ISBN:4-7917-6177-4) /石川統他(編)『進化学の方法と歴史』(2005年4月刊行,岩波書店,ISBN:4-00-006927-6).※そういえば,この〈シリーズ進化学〉はまだ1冊も買っていなかったなあ(ぽか)./川崎敏和(監訳)『折り紙の数理と科学』(2005年4月刊行,森北出版,ISBN:4-627-01691-3).※オリガミアンは元気よし./入江重吉『人間観と進化論』(2005年4月近刊,晃洋書房,ISBN:4-7710-1623-2) /島尾敏雄『死の棘日記』(2005年4月刊行,新潮社,ISBN:4-10-310108-7).※何だか読むのがとてもコワそうな本ですが……./エドマンド・ウィルソン『エドマンド・ウィルソン批評集1』(2005年4月刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07240-1).※『フィンランド駅』,どーしましょ?

◇IOSEB事務局から,メキシコシティでの会議に関する案内状と議案がメールで届く.ほほー,すでにメキシコでヴァカンスを楽しみつつ,会議のときだけやってくるというハッピーな人もいるようだ.スケジュールを見ると,会議が予定されている4月8日(金)〜9日(土)の2日間は,朝8時半から夕方6時まで宿泊先のホテルにずーっとカン詰めにされて,来る2008年にメキシコシティで開催予定の〈第7回国際系統進化生物学会(ICSEB-VII)〉の企画と運営に関する打合せをすることになる.こういう大きな国際会議の立案に関われる機会というのはそうそうないことなので,できるだけ記録を残すようにしておきたい.

会議が行なわれるホテルは,メキシコ国立自治大学(UNAM)のすぐ近くにある[という]Radisson Paraiso Hotel Mexico City.ほほー,ごーじゃすなホテルではないですかー.※何を期待してんねん.>ぼく

でも,そーいう(どーいう?)エンターテインメントの「前」にある会議の資料読み込みと意見・提案をあらかじめ準備しておかないとね.こりゃたいへん./あと,帰路アトランタでの一泊は自分で用意しないといけないらしい.―― ということで,『地球の歩き方 B-19:メキシコ』(2004年12月27日刊行,ダイヤモンド社,ISBN:4-478-03138-X)に加えて,『地球の歩き方 B-12:アメリカ南部』(2004年11月8日刊行,ダイヤモンド社,ISBN:4-478-07988-9)を買うはめになる.

―― さすがに,メキシコ行きの旅支度を明日から始めないとまずいなあ.海外旅行の基本セットはいいとして,電話ケーブル・アダプタとか,なにやらかにやら.※いつもいつも“ドロナワ状態”で日々を過ごしている気がする(マジ).

◇入手したばかりの『ユリイカ』37巻4号の特集〈ブログ作法〉(2005年4月1日刊行,青土社,ISBN:4-7917-0132-1)を読み進む.目次はこちら.『ユリイカ』が「詩と批評」という副題をもつ雑誌だとはぜんぜん知らんかった.

◇夕方から雨が降り出す.

◇久保師から御下命 ―― 先月末の第52回日本生態学会大阪大会自由集会〈データ解析で出会う統計的問題:検定かモデル選択か〉で用いたプレゼン資料を年貢として納めよとのこと.へへーっ,さっそく〈租界R〉にさらしましたので,ダウンロードはご自由に.他の演者の資料にもリンクを張った.

◇明日の未明は,JICAの講義準備をしないといけない.あと,放置してあったメーリングリストのアナウンスとか.

◇本日の総歩数=7024歩[うち「しっかり歩数」=6525歩/50分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+0.2%.


2 april 2005(土) ※ 東京プチ往復,華やぐ池袋

◇午前6時起き.研究所に行って,ここ1週間ほど接続が不調だったウェブサーバーの設定を再点検する.何とか回復できたようだ.

◇今日は『生物科学』編集会議が午後東京である.お昼頃に出発.池袋の立教大学にたどり着いたのは午後3時.新学期に華やぐキャンパスの一角にある太刀川記念館の会議室が会場.『生物科学』誌の今年度の企画の進捗についての話し合い.分子生物地理学の特集を第3号で進めてはどうかと提案し,その線でいくことになった.来週の生物地理学会シンポジウムの演者には寄稿を提案しようと思う.

◇John C. Avise の『Phylogeography: The History and Formation of Species』の翻訳がもうすぐ東大出版会から出るというウワサについて,編集会議の席上,「ガセじゃないでしょーね」「事態が急転直下で好転したのか」という意見が飛び交う.翻訳の草稿自体はすでに仕上がっているのだが,“とある律速段階”氏がキーパーソンと聞き及んでいる.はてさて.もし今年中に出るようならたいへん喜ばしいことだ.

◇投稿規程の改変をめぐってやや紛糾する.とくに,引用文献の「形式」について,意見が分かれた.『生物科学』誌は,もともと【著者/年/雑誌名/巻号/頁】という文献参照形式を採用してきたが,参照の便宜を考えると文献の「タイトル」を付けるべきではないかという提案があった.たとえば,想定される読者層が学部生とか院生の場合,タイトルがあった方がいいのではないかという理由だ.個人的な見解としては,ここにはふたつの論点があって,“情報量”と“参照性”に分けて考える必要があるだろう.第一の“情報量”に関していえば,論文タイトルは,読者に対して,その文献の内容を類推させるとともに,参照しようとする心理的動機づけなるという点で確かにプラスに働くだろう.しかし,第二の“参照性”についていえば,タイトルは必ずしも原典へのアクセスを容易にするものではない.むしろ,タイトルではなく,雑誌名をフルに記載する方がはるかに便宜的であるように思われる.もちろん,現在であれば,単行本の ISBN,定期刊行物の ISSN,そして個々の論文ならば DOI という識別番号が付いているはずなので,それを明記すれば完全なる“参照性”が保証されるだろう.しかし,時代をさかのぼって,そういう識別番号がないときのアクセス可能性を考えると,雑誌名はタイトルよりも重要だとぼくは考える.

ただし,文献の記載量が増えれば,当然,校正の作業量が増すことは明らかなので,その理由で投稿規程の内容が制約されるということは十分にありえるだろう.

◇午後5時過ぎに会議はお開き.二次会に行く面々を尻目に,つくばに直帰.午後7時半に家にたどり着く.とんぼ返りですなあ.

◇車中読書 ―― 行きに,杉田敦『白い街へ:リスボン,路の果てるところ』(2002年2月28日刊行,彩流社,ISBN:4-88202-734-8)を読了.※ヴァルター・ベンヤミンの最期に触れた章が印象的./帰りに,ジェームズ・M・バーダマン,スティーブ・ガードナー『わが心のディープサウス』(2004年9月20日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-26781-5)を読了.※出た当時から気になっていたのだが,今回たまたま立ち寄ることになったアトランタが起点の紀行文なので,ま,めでたくお買い上げということで.旅行の前はつい「旅の本」に手が伸びる.

◇『生物科学』最新号(Vol. 56, no. 3:2005年4月)には,小野山敬一「LaPorte 著『自然類と概念的変化』を読んで」という書評記事が載っている(pp. 179-183).ぼくが途中で放り出した Joseph LaPorte『Natural Kinds and Conceptual Change』の書評だ.【種】の好きなそこのアナタ,お見逃しなく.※あ,まだ返事書いてない…….>小野山さん./「“みなか”の書評ワールド(7)」は,倉谷滋『動物進化形態学』,神谷敏郎『川に生きるイルカたち』,デイビッド・スプレイグ『サルの生涯,ヒトの生涯:人生計画の生物学』,そしてリチャード・モラン『処刑電流:エジソン,電流戦争と電気椅子の発明』の4冊です(pp.189-192).

◇東海道中に読んだ統計学本のコメントも順次あげていかないと.

◇備忘メモ ―― 森洋子の「ブリューゲル本」は何かの機会にまとめて入手しようと思う.まずは,森洋子『ブリューゲルの「子どもの遊戯」:遊びの図像学』(1989年2月刊行,未来社,ISBN:4-624-71052-5)と森洋子『ブリューゲルの諺の世界:民衆文化を語る』(1992年1月刊行,白鳳社,ISBN:4-8262-0070-6)の2冊かな.まずはオンライン古書店を物色してみよう.定価はめっちゃ高そうやし.

◇本日の総歩数=10175歩[うち「しっかり歩数」=5009歩/44分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/−0.7%.


1 april 2005(金) ※ とても重症な1日だった

◇5時半起床.気温6度台.晴れ.関西よりも,関東の方が花粉密度が高いせいか,昨日帰ってきてからの“症状”がよろしくない.機械作業のようにティッシュ箱に手を伸ばす.

◇久しぶりに研究所に行ってみたら,書類や郵便物が机に積み上がっている.捨てるべきものを捨て,残ったものだけ開封.出張中に滞留していた回覧物も多い.年度末に発注した品々がどどんと届いていたりとか./査読予定の原稿がメール添付されてきたりとか.

◇4月1日付で何だか農環研理事長が変わったようだ.でも,ファーストネームを誰も知らないらしく,「サトウさん」と名字で呼ばれるだけなのが,ちょっともの悲しい(※正体を知ろうにも,「サトウさん」では検索のしようがない……).その「サトウさん」の就任挨拶というのが夕方にあるとの所内通知あり.年度が変わり,退職する人や入ってくる人などいろいろと動いている.辞令をもって階段を行き来する人多し.季節の風物詩みたいなもんですなあ.

◇年度始めのばたばたで,メーリングリストの月例アナウンスもまだしてない.

◇〈個人情報保護法〉施行開始 ―― メーリングリストといえば,今日から施行された「個人情報保護法」は,いまぼくが運営しているような電子コミュニティのあり方にどのような変化をもたらすのかな.とりあえず当面は(「5000人」という同法の閾値に達するまでは),これまでと同様にやっていけばいいのだろう.ただし,「会員名簿」の扱いはより慎重にならないといけない.しばらく前から,新入会員への会員名簿の提供はやめているのも,事前対応みたいなものだ.

ただし,同法を「先取り」(あるいは「深読み」)して,個人情報をまったく受け取らない形で(たとえば)メーリングリストを運営していけるかというと,ぼく個人としては,難しい気がする.というのも,前から言っているように,ぼくの場合,「利己的な動機づけ」がこういうコミュニティをつくっていくベースになっているので,完全に個人情報を抜きにした運営というのは何の魅力もないということだ.“カオナシ”相手に「場」をつくる意欲は毛頭ない.加入したい人は個人情報を提供した上で入会を申請し,管理者はそれを踏まえて入会を許可するという手順,そして,どのような人が新たに加入したかあるいは異動したかは,毎月,会員に連絡するというやり方は今のところ変えるつもりはない.「相手の顔」を見ながらのコミュニケーションを続けていく上で必要な前提条件はきっといくつかあり,それなくしてはコミュニティは続かないだろうと思う.

ただし,「形式」としてのメーリングリストはそろそろ下り坂ではあると思う.ネットニュースやパソコン通信が退場していったのと同じコースを歩み始めているということか.「なくてもすむ」という認識が広まった時点で命運は尽きるにちがいないが,その「Xデー」は意外に近いことなのかもしれない.

◇不在中に,〈まりまりワークショップ〉の報告書が届いていた.毎度のことながら年度末のドロナワ仕事のアウトプットということでして:平成16年度JST異分野研究者交流促進事業ワークショップ『進化生物学と人間観』(2005年3月刊行,科学技術振興機構,非売品).A4版で116ページの本.市販はされないが,少なくとも国会図書館には納本されているはずだ.※同機構によるこれまでのフォーラムとワークショップの報告書も同じ扱いだと思う.〈魔宮の伝説〉報告書もね.

本報告書の目次構成を公開した.

◇一日中とても暖かく,かぎりなく花粉が飛び,鼻はぐすぐすと.心地よく不快なエイプリルフールだった.

◇本日の総歩数=8717歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.5kg/+1.6%.


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