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oude dagboek

日録2004年6月


30 juni 2004(水) ※そこに〈紙〉があるから

◇早朝からフシギな天気 ―― 蒸し暑い曇り空,晴れ間がちょっと覗いたと思ったら,すぐ下り坂,ぽつぽつ降ってきたなと思う間もなく本降りに.※出勤途中に螢蛾がひらひらと.

◇〈進化学会大会〉の参加費振込をすませる.明日からは金額が上がるので.唯一ぼくが講演をする企画シンポ〈祖先の復元は進化学になにをもたらすか?〉の講演要旨も今日が提出締切.せっせと500字書き上げる.系統推定における祖先は“脇役”にまわったからこそ脚光を浴びるようになったのだというのが骨子.

―― これは〈御用〉:印刷業者選定結果の通知を各社に出す.あとはブツを粛々と用意するだけ.

◇すっぽかしていた組合の動員依頼をアナウンスする.※順位が低いのでどんどん後回しにしてしまって....

◇富山大学の後始末 ―― レポート課題(その2)を出題しないといけないのだが,ぐっと詰まる.計算させるわけにはいかないし,とすると課題の出しようがないし.ハングアップしたところで即後回し……と思ったら,見透かしたように越中からプチ・テポドンの着弾(汗).

◇おお,相次ぐ増刷がぁ ―― 『生物系統学』の3刷が8月に出ることが決定したという連絡(400部).〈蟲〉がまだいやがるので駆除リストを東大出版会に送らないと(来月中旬までに――駆除ご協力,おおいに歓迎します)./さらに,朝倉書店から〈古生物の科学1〉の『古生物の総説・分類』に2刷(100部)がかかるとのハガキ(とっても高いのにねえ).※多少とも印税が入ってくるのだけれど,増刷ごとにその率が変わることがあるとは知らなかった.ま,印税を最初から出すつもりのない大手商業出版社(文系)もあるからね.

◇昼前には空は完全に晴れ上がって,とっても暑くなっている(よーな気がする.外に出ていないからわからん) ※ポン=レヴェックはまだ若過ぎたか(もっと熟成させないと,食べられまへんな).

◇いつの間にか〈白足袋の巨塔〉に足を踏み入れてしまったみたいです.おそるべし「O-CHA」の結界.“刺客”に気ぃつけやという密書が.※で,業績報告に出します? それとも,茶室のウラに隠します?

◇夕刻,西日を浴びつつ,万博記念公園を2周ほど歩く.こうでもしないと「しっかり歩き」ができないんですぅ.※鴉に喰われたらしきカブトムシ♂の残骸が落ちていた.

津村ゆかりさん(6月30日)経由で,三浦麻子さんの〈人はなぜウェブ日記・ウェブログを書き続けるのか〉に到達.こういう「社会心理学」的研究もあるんですね.研究会での発表資料(→pdf)を読みつつ,「なぜワタシはウェブ日記を書き続けるのか」と自問自答 ―― 答:そこに〈紙〉があるから

◇本日の総歩数=8881歩[うち「しっかり歩数」=4090歩/35分].


29 juni 2004(火) ※新人さん,いらっしゃい〜

◇最低気温20度.ま,朝にしてはそこそこの気温か.曇り.〈グレの歌〉を全曲流してしまう.

◇せっつかれていた海外出張届をようやく提出.項目記入を方々でまちがって線を引く.訂正印のアラシ.ワタシ,基本的に事務能力ないのかしら.鈴木センセの話では「そんな事務書類は自分の人生にとってたいした意味をもたない」からてきとーに蹴っ飛ばしてしまうのだそうな.なるほどなるほど.

◇晴れるとともに暑くなってきた.

◇蒼樹書房から最終報告書が届く ―― 〈救出大作戦〉の結果,ソーバー『過去を復元する』は結局〈301冊〉売れたそうだ.

◇午後は,来春予定されている新人さん(from神戸)との面接[not試験]―― ははー,「ミナカさんはマジメな人だから,ちゃんとしないとダメですよ」と指導教官から言われてきたわけですね.※学生さんにそういうバイアスを吹き込まれては困りますなあ,G司さん.

―― この研究室の紹介とか独法研究所での研究者ライフについて2時間ほど四方山話.はたして来てくれるかどーか.

◇何だかとっても疲れてるみたい.※寝りゃなおるって(それはケダモン).

◇本日の総歩数=7601歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].※最近「しっかり歩き」がまったく途絶えているぞ.>ぼく


28 juni 2004(月) ※宴の後のバッカスは……

◇体内時計とともに5時起き ―― 曇り.霧雨ライクに空気が濡れているような.この時期のこの天候は北東気流が流れ込んでいる証拠か.

◇月末が近づき,そろそろ向こう1ヶ月の事務仕事をすませる必要がある.来月早々に東北大学での集中講義(7月7〜9日:生物統計学),そしてその1週間後にはパリでの Hennig Society 年会(7月16〜25日)が待ち構えている.※海外出張届をまだ出していない…….

◇裳華房『遺伝』の最新号(2004年7月号)で新連載〈非生命体の進化理論〉が始まる.第1回は佐倉統さんのミーム論概説,次回(9月号)は眞岡哲夫さんの茶道所作系統学,そして次々回がぼくの担当(「汎系統学序説」)というつながりになる.

◇Alibrisから着便 ―― W. G. Rogers『Wise Men Fish Here: The Story of Frances Steloff and the Gotham Book Mart』(1965年刊行,Harcourt, Brace & World, LCCN: 64-18293).マンハッタンの古書店〈Gotham Book Mart〉の伝記,とくに創業者 Frances Steloff の物語.時代はちがっているが,Jeannette Watson 本と同じような感触がありそう.James Joyce と関わりがあるのかな? ※なんたって「the Finnegans Wake Society」の本拠地だもんねえ.

―― “フィッシング”は好き? きらい?

―― それにしても「bookman(bookwoman)」たち,おそるべし.パワーありまくり.

◇なんだか磨り減っているのかもしれない....月末までに進化学会大会関係の〈御用〉を消化しないと困るんですけど.

◇本日の総歩数=9387歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


27 juni 2004(日) ※バッカスの最終日と強制送還

◇午前5時起き.今日使うデモ・ソフトのチェックとOHPの準備.曇り気味.さほど暑くはなさそうだ.せっかく「Tシャツ&サンダル」という初夏の定番スタイルでキメてきたのに.

◇バッカスといえば,サン・サーンス作〈サムソンとデリラ〉の中の佳曲「バッカナーレ」を思い出す.聴いているときには気がつかなかったのだが,演奏してみて初めて主旋律の出だしが拍からずれていることを知った.意外にむずかしい.ま,酔っぱらいと乱痴気騒ぎの曲なので,めいっぱい音量出させてもらいましたがね.昔の話.※近辺の奏者はさぞうるさかっただろーねえ.

◇今日が最終日.いつも通り9:15に講義を始める.学生さんはウィークデーもウィークエンドも吹っ飛んでたいへんな2週間でした.データからの「最良」の説明をする上で“単純性(simplicity)”がどういう意味で重要な基準と言えるのかについて話をする.共通要因[CC]/個別要因[SC]による説明様式の基本的なちがいについて,統計モデリング(CC=処理要因/SC=偶然誤差)・形態測定学(CC=大域的アフィン変形/SC=局所的非アフィン変形)・系統推定(CC=synapomorphy/SC=homoplasy)などの例を挙げつつ.ここのところはなかなかウケがいいようだ(沖田プロ,またもホールインワンでした).

―― 休憩後,形状の変異(ばらつき)をどのように定量化するかという話題に移る.統計学概論の噺として「分散って簡単やろ,なあ」という引導を渡した上で(「なあ」という京都弁は,相手に「同意を求める」のではなく,むしろ「相手がどう思おうが念を押す」言葉だと思います.だから,「なあ」と呼びかけられたら即座に「そやそや」と受けてあげないといけません.でないと気まずくなります.そう思わへん? なあ),まずはじめにかたちのばらつきを「分散」として数値化するというイメージを描いてもらう.2次元形態ならばx,y座標ごとの分散およびx,yの間の共分散を定義し,理想的な円形正規分布の場合は(多変量)分散分析をBookstein形状座標に適用することで,線形接空間の中での標準的な統計手法が適用できることを示した.

―― さらに,実際のデータ解析の場面では,Kendall形状空間の接空間への射影が妥当な近似であるかどうか(裏返せば外れ値 outlier が含まれているかどうか)が重要なので,Kendall空間のリーマン計量である測地線距離φを形状間で定義し,φの接空間への射影をプロクラステス距離Lとして計算した上で,φとLとの間に線形関係があるかどうかを検定するという方法を紹介した(tpsSmallによるデモ).

◇ここでランチ休憩.混み混み直前の〈民芸〉に滑り込みセーフ.穴子でスタミナ.※もうつき過ぎでっか?

◇午後の講義は,形状の集団内変異を調べる方法のひとつとして,相対歪み(relative warps)の概念について話をする.多変量解析がなぜ必要なのかを刷り込み,“次元の減少”は高次元空間を生き抜く上で必要不可欠な「救命胴衣」であると刷り込む.主成分分析のイメージを各自つくってもらい(行列代数の操作はすべて回避),最大分散軸(主成分)を直交性を保ちつつ逐次的につくれるという点を理解してもらう.ここまでこぎつければ,相対歪みは集団内のスプライン係数に関する主成分分析そのものなので,形状変異のパターンとしての相対歪み(すなわち主成分)はすべて可視化することで(tpsRelwを用いたデモ)直感的に理解してもらうことは難しくない.tpsRelwの“動画機能”を用いて主成分軸に沿った形態変異のパターンを「映画上映」する.ついでに,tpsTreeを使って,系統樹上での形状変化のトレースも動画デモする.

―― サイズとシェイプの関係である相対成長(アロメトリー)を回帰分析で求める tpsRegr とか,シェイプ変量間の関係をPLS回帰で調べる tpsPLS についてちょっとだけ触れて,最後の総括に突入.3時過ぎに今回の集中講義を終了.先週のレポートの提出とかもうひとつのレポート課題の提示とか,まだ決着していないことはあるものの,一仕事終わりましたねという心理状態.

◇いくぶん事後虚脱のまま,剱岳ふもとの馬場島にある鈴木邦雄さんのフィールドに拉致される.1ヶ月ほど前までは数メートルの積雪が残っていたそうだ.1時間あまり走って標高千メートルにある沢に到達.気温は10度くらい.落石だらけの沢を這い上がり,ヤシャブシやら何やらの群落のあちこちにいる〈なんちゃらハムシ〉を次々に見せられる(さすが虫屋).剱岳の雪渓が遠くに見えたり,川霧が立ったりして,リフレッシュ.帰りに〈あさくら〉でスタミナ・ラーメンをいただいて,そのまま富山駅に送ってもらう.またまた「鱒の寿司」を買って(今回は〈青山總本舗〉の二段重ね),はくたか→とき→常磐線と乗継いで,ひたち野うしく駅にたどりついたのは先週と同じ午前0時直前のことでした.※4時間あまりの車中読書で,やっとカーター『西洋書誌学入門』を読了する.

◇荷物をほどいたり茶を飲んだりしていたら,もう午前1時前.あと4時間で起床なんですけど,ワタシ…….

◇本日の総歩数=9106歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


26 juni 2004(土) ※バッカス・イン・富山だっちゃ

◇午前3時起きだっちゃ.早寝し過ぎたか.T-Timeアウトラインを手直ししたり,OHPを並べかえたり.気がつけば朝食の時間.

◇駅前の停留所からちんちん電車にて出勤.曇り.気温は20度そこそこ.

◇9:15からの講義開始時には学生がほぼ全員そろっているようだ.薄板スプラインの基底関数を標識点ごとに張り合わせるというデモを〈R〉のグラフィクスを使って行なう.関数グラフがいろいろ描けていいのだけれど,どうみてもこの内容は1年生向きではないよねえ.最小ノルム原理を曲線と曲面について説明したのだが,第2次導関数を積分して曲線・曲面の“曲がり”と関連づけるところで“死亡者”が続出し始める.高校でやってない? ん,微分積分を履修していない人もいるようで(がーん).そりゃ,息絶えるよねえ.ごめんごめん.

―― 高校の履修課程のバラツキと入試での選択科目のバラツキ,さらに大学に入ってからの登録授業のバラツキを考えると,何十人かをひとつの部屋に集めて講義するという形式はもう終っているのではないですか? 〈テーラーメイド医療〉ならぬ〈テーラーメイド授業〉しかない.※それって「マンツーマン講義」あるいは「家庭教師」か.

◇中華料理店〈高尾〉でチンジャオロースの冷やしラーメンをすすりつつ,午後の講義の基本路線を全面改訂する.本当だったら屈曲エネルギー行列の固有値分解による固有ベクトル(主歪み)とそのベクトル積(部分歪み)の導出をしないといけないのだが,その部分はぜ〜んぶカット.代わりに,ソフトウェア(tpsSplin)を用いての薄板スプラインの「紙芝居」に差し替える.※形態測定学を講義するときの「手練手管」にはなお再考の余地が多々あることを感じる.

―― 〈忘れな草〉に立ち寄り.おお,マランツのアンプが現役だー.

◇午後の「紙芝居」の時間は意外にするすると話が進む(そりゃそーでしょう).統計学概論をする時間もでき,平方和と分散の導出.そして tpsTri を用いての標識点座標の分散の話に進む.明日は形状(shape)のプロクラステス適合,形状座標の2次元分散分析,そして相対歪み解析が残っているが,学生の“死に具合”を見ながら舵取りをする必要があるだろう.難破しないようにしないと(ナンパはしません,ハイ).

◇午後4時に終了 ―― いつの間にか雨が降っていたようで,地面が濡れている.ホテルに直帰.

―― と思ったら,すぐ外出.駅前ビル地下の〈ごんべい舎〉にてしばしくつろぐ.白海老刺身,とってもうますぎ.はちめ(店員さんは「柳はちめ」と言っていた)も絶品.里芋田楽にだしまきたっぷりで,どーもごちそうさまでした.※なるほど,小ラーメンにごはんを付けるというのがスタイルなのか.メモメモ.

◇うう,ちと呑み過ぎたか.明日最終日の準備をしているフリをしつつ,実は意識がなかったりする.※まったく〜.

◇本日の総歩数=9192歩[うち「しっかり歩数」=1740歩/15分].


25 juni 2004(金) ※またまた週末出奔

◇東の空が明るくなるとともに蝉が鳴きはじめる.これから夏場にかけてずっと続く音の風景 ―― 午前4時過ぎにふらふらと一時帰宅.曇り空の下でこもっているような明け方.これは不快だ.エアコンしつつ,しばし仮眠を3時間ほど.今日は年休日.

◇9時頃に雨が降り出す.ひたち野うしく駅でざーざー降りに.しかし,上野に着く頃には小降りになる.昼前の Beck's でチキンシーザースサラダ・サンドイッチなど食べてしまう.寝不足でも食べる食べる.カプチーノとともにほったらかしの日録を書いたりする.

◇カーター『西洋書誌学入門』がなかなか読了にならない.400ページもある「大著」なのにそうは感じられないのは紙が薄いせいかな.内容的にはとてもおもしろい.

◇さて,これから先週と同じく上野→越後湯沢→富山コースをたどる.富山着15:38の予定.

―― 越後湯沢でぱらぱら降っていた雨は,直江津で日本海に出たとたんに再び本降りに.特急〈はくたか〉の窓には太い雨滴の筋が幾本も.前回はフェーン,今回は雨に祟られるのか? ※越中に祟りありと.

◇出版が遅れていた David M. Williams and Peter L. Forey (eds.)『Milestones in Systematics』がやっと届いたので,車中でブラウズする.体系学の歴史と哲学の論文集.こういうテーマはしっくりなじむ気がする.理論や数学の論文に目を通す機会がたとえ増えても,歴史と哲学への関心はいわばホームグラウンドみたいなものなのでね.※富山で目次の入力だけはすませておこう.→すませました:『Milestones in Systematics

―― ずいぶん前に原稿をいただいていた Gareth Nelson 論文とか Mary Winsor 論文とか,いろいろ載っている.表紙カバー図柄は chironomid midge かな.Lars Brundin の巨大なモノグラフ(1966)を山本優さんから借りて,鈴木邦雄さんがコピーし,製本されたそれを手にしたのはもう20年も前のことか.※縁ですな.

◇富山駅に到着するのとほぼ同時に雨があがる.※日頃の行ないがいいせいだろう(反証不能).

◇先週と同じく駅前のα-1にチェックイン.部屋まで同じだった.今回はLANケーブルをもってきたのでさっそくいくつかチェック.LANにつながっていると大きいファイルのダウンロードがラクなのでいいですね.

◇駅前の〈大喜〉でラーメンを食べる.ウワサどおり,つゆが真っ黒でーす.ごはんのオカズにぴったりのラーメンだった(変な表現だが).この醤油味のシナチクとかチャーシューをごはんにちょいと乗っけて食べるときっとうまいぞー.

◇明日の講義資料として〈形態測定学に関する教科書および参考書リスト〉を公開した.以前つくった〈生物体系学に関する教科書および参考書リスト(分類リンク版)〉の形態測定学の節のみを切り出して書影をつけたものだ.母ファイルからのリンクも貼っておくことにした.

◇とりあえずいったん寝てしまおう.そうしようそうしよう.[20:18]

◇本日の総歩数=6905歩[うち「しっかり歩数」=1227歩/12分].


24 juni 2004(木) ※セミの初鳴き,モンマルトル

◇まったくロクなことはない ―― せっかく昨日JRチケットを買ったのに,ウッカリな凡ミスで「出発日」をまちがえてしまった.そういうミスはあるはずがないのに....JTBに行ったら定休日,別の支店に走り,買い直す.※時間が着実に削られていく.

◇〈Hennig XXIII〉の要旨投稿は今日が締切日.状況がくるっと変わり,共同発表者のメンツも変更.ううむ,要旨文面の調整が必要か.時差を考慮しても急ぐしかないね.

〈御用〉関連(その1) ―― 大会講演要旨集の印刷業者(3社)に依頼していた見積もりがすべて出そろった.おお,この戦略的な見積価格は攻めそのものですな.実行委員会に諮り,週明けに正式決定する.

◇夕刻,農林団地で蝉の初鳴き.

◇いったん帰り,ぱたぱたとまた再出勤.まずは〈Hennig XXIII〉の要旨を仕上げ,日が変わる頃にオンライン投稿完了.共同研究者にその旨を連絡する.返す刀?で,パリの滞在ホテルをオンライン予約.へー,日本語のサイトが用意されているとは.EURO80〜90/泊の予算.モンマルトルにカルチェ・ラタンか.※物見遊山に行くつもりかいっ>ぼく.

〈御用〉関連(その2) ―― 大会の企画シンポと公募シンポの関係者に要旨提出の連絡をする.今月末までなので時間との競走.あ,祖先復元シンポの要旨を自分が書かないと.

◇でもって,深夜になってやっと富山大の講義準備にとりかかる.OHPとソフトの用意.内容構成のチェック.資料のとりまとめ.今回は「統計学講義」と「線形代数講義」がサテライトで必要になるので,形態測定学そのもの以外の準備も必要だ.実際の計算過程をフォローするには,『Principios de Morfometria Geometrica』が適当だと思う.※この教科書,英訳されるという話はどうなったのだろう.

―― そうこうするうちに明け方が近づき,限界を感じはじめた.至急にすませるべき残務はいちおうカタがついたようだ.退散するタイミングはいま.

◇本日の総歩数=6798歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


23 juni 2004(水) ※リュートとともにサンライズ

◇しばらく前に巨大なサイズのエラーメッセージを受け取って以来,Apple Mail の「迷惑メール」フィルターがうまく機能していないようだ.本来ならばフィルターされるべきメールが“あふれ出て”いるような.

◇形態測定学のカリキュラム構成について検討.残りの15時間で教えられる内容とその流れ.走りながら考えているようなもの.当初の予定では15時間だけだったのだが,富山大学のつごうで30時間に倍加された.15時間であれば表面をなぞるだけの箇所もあっただろうが,30時間となるとそうはいかない.

―― だいたいの時間配分:Kendall形状空間でのプロクラステス距離(1時間)・スプラインによる非アフィン変形の解析+tpsSplinデモ(4時間)・統計学概論+Rデモ(2時間)・形状座標の分散分析+tpsTriデモ(1時間)・主成分分析+tpsRelwデモ(1時間)・相対成長とtpsRegr/tpsPLSデモ(1時間)・系統解析と祖先形態の復元+tpsTree/Mesquiteデモ(2時間)・楕円フーリエ解析+SHAPEデモ(1時間)・形態測定学の応用(1時間)・総括(1時間).※ま,こんなところか.

◇溜まっていたメーリングリストの入会者登録をすませる.20名ほど.ひとつひとつの作業量はたいしたことないのだが,いったん堆積してしまうと重くて疲れる.進路相談へのお答えとか,ソーバー本注文の返事とか,いろいろと.※これでメールボックスがずいぶん軽くなった.

◇公務員試験の農環研面接日 ―― うまくいけばうちの部屋に新人が入ってくれるかも.え? あれまー,それは〈縁〉ですか?(一瞬,引く...) 数年ぶりに神戸に電話をかけ,情報を訊きだす.あれあれ,別件の方もつながったか.これまた大津に電話してみる(こちらは不在).いずれにせよ,大学ほど人の動きが大きくない独法研究所なので,こういう機会はうまくことが進んでほしいものだ.何もなければ10年以上も人事的に動かないというのは大学でも独法研でもちがいはないのかもしれない.しかし,独法研の場合は,「学生」という概念がそもそも存在しない(教育機関ではないので)ので,人間の“流れ”がもともとないに等しい.それだけに,数少ない人事の機会がその後に及ぼす影響は長期間にわたって大きい.

◇ウィークエンド出奔のためのJRチケットを買いに行く.北陸方面行きの指定席は意外に混んでいるんですねえ.なかなかいい接続の便が見つからない(窓口のお姉さん,まだ手際ワルイかも).

―― それにしても,週末ごとに越中詣というのは気分的に落ち着かない.もともと集中講義は気力と体力の一本勝負なので,今回のように2回に分けられると,インターバルの平日まで不安定になってくる.やっぱり15時間一本勝負あるいは30時間一本勝負という潔さが必要か.週イチの講義形式だと非日常の色合いはぐんと薄まる.ここはやはり,「非常勤集中,イッパツいったらんかいっ!」という心構えが不可欠だと思う.

◇まずいなあ,諸般の進捗状況を考えると,「時間外超過労働」が不可避だぞー.

◇本日の総歩数=7171歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


22 juni 2004(火) ※台風一過,路上はゴミだらけ

◇4時起き.からっと青空.しかし強風の名残.木々がまだ揺れている.今日は湿度の高い真夏日になるらしい.※働かなくてもいいよというお告げか.

◇しかし,徐々に(斉一主義的に)仕事は堆積している.週末に出奔したために,メーリングリストの管理が遅延している.進化学会の新入会員が一挙に増殖中.他に,本の注文,シンポの質問,悩みの相談室などなど.がー.とてもとても対処しきれない.

◇まずは,富山大学のレポート課題(その1)をまずつくってしまおう.標識点の三角形を出発点として前形態→前形状→形状の順に導出させる課題.数値がとても汚くなるが,まあしかたないでしょう.Kendall形状空間を描かせるのはきついので,最後の設問はサイズとシェイプの関係についての推論問題でかわす.tpsTriを使うとうまくデモンストレーションできるのですね.「Target」ウィンドウでの“Sample Scatter...”メニューを用いると,三角形の確率的バラツキのようすも見られる.ただし,形状のストカスティックな変動について話すには,統計学概論のイントロがどうしても必要になる.※なんだか「障害物走」に参加したような気分.

◇関東地方は軒並み30度を突破したらしい.熊谷の予想最高気温は37度.しかし,農環研にやっと集中冷房が入った(「試運転」でもなんでもいいから歓迎)ので,居室の生存性はぐっと高まる.

◇午後にずれこんでしまい,課題用紙とあとで掲示する解答用紙をどうにかつくり終える.課題は即越中送り.

◇なんとなく進捗ペースが均一にのろのろしている.ガツンと打破しないとダメですな,こりゃ.

◇ビブリオフィル叢書が続々到着 ―― ジョン・ヒル・バートン『書物の狩人』(1993年11月30日刊行,図書出版社,ISBN: 4-8099-0512-8),ジョン・ウェルズ『ロンドン図書館物語』(1993年6月30日刊行,図書出版社,ISBN: 4-8099-0510-1),清水一嘉『イギリスの貸本文化』(1994年3月31日刊行,図書出版社,ISBN: 4-8099-0513-6),谷田博幸『ヴィクトリア朝挿絵画家列伝:ディケンズと『パンチ』誌の周辺』(1993年5月31日刊行,図書出版社,ISBN: 4-8099-0509-8).すべてイギリス関連の「本の本」.もうすぐ読了するジョン・カーター『西洋書誌学入門』もそうだ.ごく短期間にまとめて出版されたとおぼしきこの叢書全体の性格なのかな.

◇夕方6時になって冷房が切れる.とっとと帰ろう.※冷房の切れ目は縁の切れ目.

◇あっという間に寝る時間.

◇本日の総歩数=4228歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


21 juni 2004(月) ※いきなり日常復帰

◇ほぼ熱帯夜.寝苦しい.未明から小雨が降っている.スプライン近似の極意は接続点で“滑らか”につなげることと言ったにもかかわらず,週末の「非日常」と週明けの「日常」とがそのままむりやりつながってしまった.

◇フェーンだった昨日の富山の最高気温は実に36.4度だったそうだ.さもありなん.

◇接続が“滑らか”ではないので,一挙一動がぎくしゃくする.蒸し暑さのせいでのろのろする.でも今週は,ずっと進捗しなかった「講演要旨たち」にケリをつけないといけない.

◇雨が降り続き,しかしいったんは薄日が射したと思ったら,アヤシイ風が吹き始め,いよいよ台風接近.四国から近畿を縦断して日本海側に抜けたとのことなので,台風進路と関東との“垂線距離”が最短になるのは午後以降.この気温とこの湿度.仕事にならないですな.

◇日々の健康管理には気をつけましょう.※独り善がりはダメなのよ.

〈御用〉関連 ―― 進化学会要旨集の業者選定.いくつかの印刷業者に見積もりを出してもらったところ,組版をすませた150ページの要旨集を1000部印刷するのにかかる経費は40万円台が相場のようだ(大きなばらつきはない).印刷出力時の不測の文字化けとかレイアウトの崩れを防止するためには,文書全体にわたってフォントを〈アウトライン化〉しておく必要があるとのこと.InDesign ファイルでの原稿のやり取りは問題なし.校正ゲラは紙またはpdfで戻されてくるとのこと.納期はどこでも2週間だが,一社のみ1週間でもOKとのこと.今週中に業者を決定する.

―― 今後の予定は,講演要旨の締め切りが6月末.7月に入ってすぐに要旨集を編集し,フランスに行く前に業者に渡し,ゲラをもらってチェック完了とする予定.

◇夕方になって風雨強まる.空を雲がちぎれ飛び,傘はもはや用なしに.台風の強風圏に入ったか.夜,雨はあがっているようだが,風が吹き荒れる.方々でいろいろなものが飛び散らかっているらしい物音がする.

◇富山大・集中講義(前半)の演習レポート課題を考えてみる.やはり,Kendall形状空間についても設問がいいように思う.受講生が解ける(描ける)レベルの「形状」をうまくつくれるかどうかがポイント.授業では1次元上に並ぶ標識点のケースを取り上げたので,レポートでは2次元の「かたち」を課題とする.明日までに越中送り.

◇本日の総歩数=6272歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


20 juni 2004(日) ※格闘2日目・イン・越中

◇またも午前4時前に目覚めてしまう.今日の講義のアウトラインを準備し,OHPの並べかえ.しかし,今日は「数学のセンセ」になりきらないといけないようなので,ブランクOHPに“板書”しまくるんだろーな.※疲れそう.

◇このギラギラ陽光はいったい…….窓ガラスが熱くなっている.大型台風が接近しているせいかな.その割には青空が広がっているのだが.

◇重い講義資料をフロントで宅急便送り.チェックアウトをすませて,再びちんちん電車.今日も長時間労働です.それにしても暑い.朝から夏日(推定).

◇鈴木アチックに潜入し,折り紙作品やら標本やら秘本類やらゴミやら宝やらを見る.物慾そのものですなあ(昂進してるし).週末で仄暗い廊下を伝って講義室に行く.新入生,賑やか&マジメ.何の因果か,〈基礎動物形態学〉がいきなり〈線形代数〉に大変身する.高校の教育内容がいまどーなっているのかつかんでいないが,必要な知識はそのたびに教えないとダメということですね.行列によるベクトルの1次変換について概説.とくにアフィン行列による平行性保存と斜交変換について書きまくる.形状(shape)を導出する平行移動・スケーリング・回転移動はすべてアフィンだが,一般のアフィン変換は座標系の斜交にともなう対称テンソルの発生により,大域的な歪みを生じる.受講生には一般のアフィン行列のもとでのテンソル主軸を実際に計算してもらい,伸縮比が最大となる直交軸を求めさせた.おお,分数関数の導関数も未知でしたかっ.※思わぬところに陥穽あり.

―― そのままランチタイムに突入する.〈味の民芸〉またまた混んでいました.真夏日になった富山.北上中の台風6号から流れ込んできた南風がフェーンになっているらしい.たまりまへんな.

◇午後は,アフィン変形を説明し終え,いよいよ最高の山場となるはずの非アフィン変形のイントロへ.スプライン基底関数を求めるという作業は,いろいろな数学が必要なんだけどどーしましょ.今日のところは,イメージと直感に訴えて,局所的な変形をどのように定量化するのかという基本テーマについて話す.おそらく,幾何学的形態測定学にしろベイズ系統学にしろ,やっかいな問題を〈視覚化〉するツールを与えたという点をまず評価すべきで,教えるときにもまずはじめに【御利益】を強調した方がいいようだ.

―― 非アフィン変形の“直観幾何学”をさらに続けて,午後3時過ぎに講義終了.これでやっと全体の半分が終った.1週間後の週末にまたまた富山に来る.

◇大学近くの水墨画博物館で抹茶を味わい,さらに難波田龍起・史男記念美術館にてガラス工芸展(安田泰三・創作ガラス展)を鑑賞(繊細なレース模様が特徴).そのままJR富山駅へ.

◇越後湯沢でまたまた時間があいてしまう.日録の更新分をアップロードし,メールをダウンロード.夜9時過ぎの新幹線でやっと関東平野に戻ってきた.

―― しかし不快指数はさらにアップし,湿度と南風でげんなりする.今夜は熱帯夜か.日が変わる頃,自宅に到達.

◇本日の総歩数=9153歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


19 juni 2004(金) ※格闘初日・イン・越中

◇午前3時半にまたも起床.そとは暗闇で天気はようわからん.

―― さっそく〈T-Time〉による講義アウトラインの作成.形態測定学史と幾何学的形態測定学の方法についての ttx ファイルを用意する.それを見ながら,またまたOHPの微調整.※アウトライン・プロセッサーとしての〈T-Time〉の威力は実に偉大だと思う.

◇進化学会大会のシンポジウムの日程と時間帯が公表されたが.〈非生命体2〉の時間帯が午前中にセットされている.午後じゃないとマズイんでは?>さくらくん.※あとで確認しておこう.

◇午前6時頃に講義準備完了.今日はプログラムのデモンストレーションをしている時間はないが,いくつかの形態測定学ソフトウェアの動作をチェックしておく.Kendall形状空間を図示するための〈tpsTri〉がなかなか教育的なのに感心する.形状リーマン多様体(shape space)はもちろん,前形状空間(preshape space)と接部分空間(tangent space)も図示でき,しかもマウスのドラッグで,形状差を実感できる.円形正規分布によるランダム三角形の生成とBookstein形状座標の計算ができるので,形状差に関する線形統計学の演習に使えるかもしれない.

◇ホテルで朝食バイキングののち,停車場からちんちん電車に乗って五福の富山大学まで出陣.OHPがとても重い.太陽がぎらぎらと照っていて,とてもつらいな.鈴木センセに正門まで迎えに来てもらう.キャンパスがきれいになってると思ったら,大々的に建物の改装工事をしたそうだ.おかげで,理学部の内部がわけわからんようになっている.鈴木部屋はさらにわけわかんなくなるほど,モノが増えている.

◇9時から講義開始.教室となる会場は縦方向に大テーブルが2本置かれていて,講義室というより会議室.受講生は全部来たとしておよそ40人ほどいるという.人数的にはウツワの上限か.

◇午前9時から講義開始.新入生なのでさすがに幼い雰囲気が漂う(未成年だもんね,なんたって).さっそくツカミにかかる.ううむ,あっさりツカメているのか,それとも.「かたち」の定量化への道程と克服すべき問題点などなど,イントロの部分を長めに話をして引導を渡してあげる.休み時間に学生から聞いた話でば,行列は勉強していても1次変換は知らないそうだ.確率・統計についても「数C」に載ってはいるがトバされたとか.なかなか前途多難かもしれない…….

◇昼食は富山での人気店〈味の民芸〉.系列店でも人気のばらつきに差があるのはなぜ.

◇午後は,さらにデータからの推論の問題とか統計学的直感噺とか,いろいろ撒き餌をバラまきつつ,さらにツカミ.形態測定学が要求する素養についてちらっと触れる.サイズとシェイプのちがいを説明し,“かたち”の変換不変量としての性質に着目して,Kendall形状空間を導出する.ここで,受講生に簡単な実例について実際に計算してもらい,リーマン多様体が描けることを体験させる.形状空間は図的デモツールとしてなかなか効果的だ.

―― どうやら【線形代数】と【基礎統計】のサテライト講義をくっつけないと先に進めないことが明らかになってきた.ううむ,これは初の体験だ.大仕事を予感させつつ,この日の授業は4時半に終了.

◇鈴木センセに富山市郊外(国道41号を南下)にある〈楽今日館〉という温泉センターに連れられていった.気温26度ですか(暑).アルカリ性ぬるぬる系の温泉で,しばらく浸かっているとなんだか融けたみたいです.神通川の河畔に建っていて,露天風呂からの眺めよろし.夕食をご馳走になって,そのままホテル直帰.

―― いろいろと本読んだり,メール書いたり,講義準備したりするはずが,睡魔の連続強烈攻撃によりまたもノックダウン.

◇本日の総歩数=6086歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


18 juni 2004(金) ※出奔

◇というわけで,時間君や仕事さんとかけっこしつつ日が変わり,午前2時に起床.今日も“農環研サンライズ”を拝みましょう.今日は年休を取っているので,やりたい放題.

◇途中で放り出したOHPの選択と並べかえを午前4時頃に完了し,初日の配布資料――「形態測定学入門(裳華房本の章)」,「形態測定学文献リスト」,そして「学部1年生のための統計学概論」のpdfを富山に逆テポドンする.第1週目の15時間は講義と演習が中心になるので,コンピュータを用いたデモンストレーションをする時間はあまりないかもしれない.

―― 初日の講義のイメージはほぼできあがったので,まずは安心.あとはそれを降臨させるだけ.

◇今日もからからと暑いのでしょうか? 日の出を拝みつつ,トランクに必要な武器やら呪文やら護符を詰め終える.ニールセン〈不滅〉とともに一休み.

◇JRの指定席の関係で朝のうちに常磐線に乗る予定.上越新幹線は12:26発「Maxとき17号」,越後湯沢1時間あまり待って14:45発の富山行き「はくたか12号」に乗換え,16:46に富山着.

―― ということで,次回の更新は越中・富山からということに.

…… [と言ったのに,越後湯沢の時間待ちに書いてしまったりする.新幹線と最適接続な特急〈はくたか〉が満席でとれなかったため1時間あまり隙間時間ができた] このまま口説かずに神戸に行かせたのではあとあとまで祟るにちがいない.この際,思い切って夜這い...ちゃう...表敬訪問してしまおうということで,上野で途中下車,そのまま東京都美術館に直行.平日の午前中とのことで割に空いているような雰囲気(週末は行列しているそうですな).ブリューゲルとかテル・ボルフとかレンブラントとかウィーン美術史美術館(早口言葉か)所蔵の genre painting の数々を眺める.gouden licht を感じとる.

―― で,目的の「クリオの女神様」は,あらまあこんな最上階の,それも最奥の個室におられましたか.箱入り娘はたまた深窓の御令嬢の待遇ですな.ま,フェルメールの〈絵画芸術〉が初めてアジアにやってきたという鳴り物が鳴りまくりだったので,主賓のクリオ様は当然厳重警備にくるまれて,言い寄るどころじゃないか.ここだけとりわけ分厚い人波をかき分けて,ご尊顔だけ鑑賞してくる.※東京都美術館での〈栄光のオランダ・フランドル絵画展〉は7月4日まで.

◇古書で手に入れたジョン・カーター『西洋書誌学入門』(1994年5月31日刊行,図書出版社,ビブリオフィル叢書,ISBN: 4-8099-0515-2)を読み進む.勉強なりまくり.あやふやにしか理解していなかった用語や略語の意味が的確に書かれている.“interleave”って「白紙を綴じ込んだ原稿」という書誌学用語だったとはね.

◇お,〈はくたか〉の到着時刻が近づいている.いくつかのメールを送信し,日録を更新した上で,今度こそ富山までバイバイだ(ほんまかっ?).

―― ほんまほんま.午後5時前にJR富山駅に到着.そのまま駅前のホテルα-1にチェックイン.まだ外は明るいが,雲が厚くなってきている.蒸し暑さがさらに増しているようだ.駅となりの〈MARIER〉で晩ご飯.明日から「重労働」が待っているので,アルコールはビールだけに抑えてっと(どこがー).徘徊するでもなく修行僧のごとくホテルに直帰.雨がぱらついてきた.

◇まずは,最大の難所である講義イントロ部分の“脚本”に沿って素材を並べてみる.こういう集中講義では出だし1時間の「つかみ」がどれくらいうまくいくかがあとあとまで響くので気が抜けない.以前,京大で形態測定学の講義をしたときは,叩いても死ななそうな大学院生が相手(しかも15時間)だったのでよかったけど,今回はほんの3ヶ月前まで高校生だった新入生を前にするので(2倍の30時間も),ひさびさに“予備校教師モード”でいってみましょうか.

◇越中は関東に比べればちょっとは涼しいかと期待していたが,街中の蒸し暑さは解消されず.夕暮れとともに通り雨までざーっと降り始め,不快感いや増す.いやいや.

◇ホテルα-1は全室LANがつながっていて無料で使えるとのこと.さっそくLANケーブルを借りて接続.農水省のメールサーバーにはつながらないようだが,インターネットそのものには入れた.しかし,時間との競走状態なので,必要なファイルをダウンロードしてきたり,いくつかの事項をオンラインで確認したりしてどんどん時間が消費されていく.

―― 大量のOHPを抱えてきたので,その並べかえをして“脚本”の流れを確認.形態測定学のたどってきた歴史については概観するのはいいとして,最近20年の進展にどのように結びつけるか.artisticでナイーヴな「かたちの計測」と幾何学的なセンスを要する形状空間論とは似て非なるものだと思う.ネタはだいたい決まっていても,その出しよう見せように注意しないとね.

―― 今朝早かったので,睡魔の反復来襲.たまりまへんので,ここいらであえなく無抵抗に沈没.雨はもうあがっているようだ.

◇本日の総歩数=12713歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


17 juni 2004(木) ※臨界点

◇朝方は涼しかったが,しだいに蒸し暑くなってきた.よくない徴候だ.

◇新聞報道で歪みやバイアスが入るのは多少はしかたないけど(伝言ゲームみたいな系譜だから),言っておかないとか ―― 常陽新聞の記事〈世界最速の進化系統探索ソフト開発:農環研と筑波大〉(6月15日付)はまあいいでしょう.日刊工業新聞の記事〈生物の近縁解析,1年を1日に短縮:筑波大が高精度ソフト〉(6月15日付)だって.お前の耳はフシアナかっ! 共同研究グループが存在していることすら書いていないとはね.たいした新聞やねえ.

―― 記者クラブ発表のその場にいたのかいなかったのかしらないけど,そんなんじゃダメダメ.せめてウラ取りなよ.

―― 農環研の“上”の方からもいろいろ「言霊」が降ってくるし,これは早いことトンズラした方がいいかな.※逃げてすまそうとする.

◇話題?の本,木乃倉茂『ツチノコ:幻の珍獣とされた日本固有の鎖蛇の記録』(2004年6月20日刊行,碧天舎,ISBN: 4-88346-658-2)を読了.100ページそこそこの冊子.戦時中に著者の祖父が信州の山中で発見し飼育したという“野槌”の「記録」とのこと.ツチノコと呼ばれる“生物”の遺伝子解析から名大の熊澤さんは「ヤマカガシの類」だろうと結論したはず.しかし,本書の著者は形態や生態そして毒の組成から見て,ツチノコは「新種のクサリヘビ」だという.ところが,この「観察記録」以外のすべての証拠(骨格標本,毒素の分析データなど)はすべて戦火で消失したという.ここまで読めば,プロットはほとんどシュトゥンプケ『鼻行類』と同一と言わざるをえないし,今年のエイプリルフールに出たイェティ(雪男)の分子系統樹論文の方がおもしろい.

◇とっても大きい買い物をしてしまう.脱力.

◇抜け殻になっても富山大の講義準備が残っているので,早く寝て再生しないと.空蝉が脱皮する.

◇本日の総歩数=7920歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


16 juni 2004(水) ※からからと晴れて,くるくる回る独楽熊

◇湿度が低い分,朝だけはとても快適 ―― 講義に使うソフトウェアの更新をする:〈R〉version 1.9.0 (12 April 2004)※はてさて 1.9.1のテスト版がもう出ているけど.〈SB Morphometrics〉※いくつかの形態測定学ソフトについてはアップデートが必要.〈Mesquite〉version 1.02 (6 May 2004)※1.01からすぐにアップデートしなければならないほどの更新はないようだ.必要なものをごりごりとダウンロードしておく.

―― ソフトは軽くていいのだが,かさばるOHPが難物.前もって電子化しておけばいいのだろうけど,過去の遺産をひきずっているのでなかなかそうはいかない.いつも「直前ドロナワ」で生きている.配布資料はpdfを送信しておくか,あるいは原稿(紙)を持参するか.

―― 資料などの準備をしながら,同時並行で講義構成のビジョンを思い描く.まだ「30時間」分のイメージ・ファイティングはできていない.ここ一両日で確定するはずだけど.

◇組合関連で,今日は午前10時から農環研との評定者交渉がある.1時間ほどで終わりになるかな.

―― ま,ほぼ予定通り,粛々と終わりました.

◇昼休みに〈洋食・大かわ〉でデラックスセット.うまかったっす.知っている人は知っているが,知らない人は知らない.※なんやねんな,それ.

◇本日の総歩数=10586歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


15 juni 2004(火) ※七転八倒,七転八起.

◇今日は比較的さわやかな朝.アカビロードコガネをたくさん拾う.

◇算段続く.段取りへとへと ―― 組合関連の雑用が今日明日と続く.隙間に富山での講義準備.本・OHP・パソコン・ソフト・プロジェクタ etc.

―― 富山では形態測定学が講義のメインだが,話の行きがかり上(30時間もあるし),統計学と系統学にも裾野を広げる必要がある.ただしいたいけな学部1年生が対象なので,あたりはあくまでもソフトに(鬼瓦になってはいけません).数学的素養のレベルが気になるけど,そこはそれ「何も知らない」と想定しておいて失敗することはまずない.相手が何かを知っていると仮定するから失望するのであって(何の根拠もないのに),最初から何も知らないことを前提に話を組み立てればおのずと噺の全体像は“かたち”を成してくる.

◇使うデモ用のソフトは,形態測定学が〈TPS〉薄板スプライン系のいくつか,統計学は〈〉,さらに系統学は〈Mesquite〉の三つ.配布資料はひょっとして膨大になるかもしれない(過去の資料をうまく転用しつつ).

―― 同じ宿舎に住んでいる筑波大の数学者から形態測定学に関する思わぬ問い合わせあり(意外だ).積分幾何学を専攻されているとのことで,2次元断面から3次元立体の復元という積分幾何学のテーマは,生物の形態測定学と関係があるのではないですかとの質問.ピンポン! おおありですね.諏訪紀夫さんの『定量形態学』とか『病理形態学原論』(いずれも岩波書店)で論じられている〈stereology〉はまさに積分幾何学のテーマでしょうね.

日本特価書籍,いますぐ逝ってよし ―― 〈灰〉なりのリベンジだ!

◇フォローアップとなるJSTワークショップの場所が確定しつつある.飯綱高原ですか,オッケーっす.

◇ボイジャーから〈azur〉のライセンス・キーがメールで届く.単に〈青空文庫〉を読むためだけのビューワーではなく,ウェブサイトやxhtml文書を読むためにも使えることがわかる.とすると,html文書のデモンストレーション用ツールとしても有望だから,さっそく富山大学の講義で試用してみましょ.

◇え,教育啓蒙賞受賞者どうしで〈漫才〉やるんですか? “人形劇”を越える“噺芸人”って?

◇昼休みに組合の班会 ―― 勤評反対活動の意見集約と調整.午後に当局へのま提出文書をまとめる.※昼飯時間なし,ウォーキングなし.へばる.梅雨の中休みとのことで,初夏の太陽が照りつけ,居室の気温が「真夏日」に接近する.そろそろ“避暑地”に活動の本拠を置くことを考えないと.

―― 『世界古本探しの旅』を読了.いーないーな.本にぐるっと囲まれたいな.パリの古書店など舐めるように読んだりする.マドリッドの古書店が魅惑的.※さすが“神の言葉”.

◇昨日の記者発表は早くも新聞記事になりつつあるようだ ―― まずはローカルに日刊工業新聞と常陽新聞に掲載済(6月15日付)との連絡を受ける.

◇夕方5時から農環研恒例の〈さなぶり〉―― ひたすら炭水化物(餅,おにぎり,焼きそばなどなど)を短時間に大量摂取する.餅の真っ黒なつけ汁が〈トウモロコシの黒穂菌を煮詰めた汁〉との説明で,「要するにキノコ汁ですよ」と言われたのだが,おい,それって〈カビ〉とちゃうんか??という疑念がむくむく.とはいえ,カビもキノコも同じやんということで自分を懸命に納得させる.喰うてしもたらええねん.こんなもん.うん,なかなか,エスニックでスリリングで美味いやん(強がり).※ちょっと前は従順な人間「犬」だったことをどこかに置き忘れてしまう(予想通りの展開か).

―― 腹持ちがよすぎて重くなる.※〈カビ〉が効いたか?

◇鈴木雅明『わが魂の安息,おおバッハよ!』をほぼ読了 ―― カンタータ BWV12 のアリアのバッハ自筆譜が載っている.テノール独唱が「忠実であれ」と唄い,スライド・トランペットがオブリガートを奏でるこのアリアは出色だと思う.※「食慾に忠実であれ」などというくだらんつまらんオチはつかない.

◇さ,明日のために今日も寝ましょ.

◇本日の総歩数=5660歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


14 juni 2004(月) ※東奔西走,多事多忙.

◇朝から快晴,久しぶり.雲一つなく.今週は忙しいです.マジ.

◇週末からのメール遅配は農水省のメールサーバーが「DoS攻撃」を受けていたことが原因だったらしい.タイムラグのあるメールがぱらぱらと降ってくる.

学会の教育啓蒙賞を受賞したという正式通知が遅配されてきた ―― ほんまに教育したんか? 啓蒙したんか?(赤面) ※“大物”って……確かに,理的にきいことを認めるのにやぶさかではないが.

◇午後3時から,竹園の研究交流センターに学園記者クラブでの発表――杉浦則夫(筑波大)・三中信宏(農環研):「生物の進化推定を利用した画期的な新種生物・機能探索法の開発:最節約法分子系統樹ソフトを用いた新奇な機能性生物の探索」.アオコなどの藻類が産生する毒素 microcystin を分解する菌の16SrDNA最節約樹に基づいて,未知の毒素分解菌を探索し,併せて解毒酵素の祖先復元に基づく機能性探索の方法を発表.これまでの近隣結合法ではダメだったんですよ.最尤法は時間かかり過ぎ.解毒菌のクレード内部をターゲットとして絞り込むことにより,これまでよりも効率的に未知の菌や未知の機能を探索しようという方法.筑波大の院生・岡野邦宏さんを中心として実験と解析現在を進めている.進化学会大会でも発表してもらおうかな.

―― 記者クラブという場での発表は初めてだったが,各報道機関(10社ほど集まった)の担当者からの質問を受けつつ話を進めていくという一般向けセミナーのような形式.質疑を含めて1時間ほどかかった.とくに,〈Bogen / Blance〉の計算原理とかパフォーマンスについての質問が多かった.わかる記者さんにはもうわかっているんですね.

―― 記者会見後に関係者で打ちあわせ.中国には“アオコが層を成す湖”があるそうだ.今後の論文投稿について相談する.

◇その後,三井ビルのJTBで今週末の富山行きのJRチケットを買う.予定していた時間帯の新幹線や特急が軒並み満席.いろいろと検索してもらい,結局,富山には夕方早く着き,つくばには夜遅く帰還するという旅程が確定した./さらに雑用をいくつかこなす.

◇寝よう寝よう.

◇本日の総歩数=7774歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


13 juni 2004(日) ※こりゃあ,大当たりっす!

◇夜の雨は明け方には小ぶりとなり,天気は回復に向かう.いつもいつも湿気があるので,蔵書が水分を吸ってごわごわのしわしわになっている.

◇鈴木雅明『わが魂の安息,おおバッハよ!』,第2章を残して読了.第4章の北ドイツ・オルガン行脚が味があっていいですね.この著者の言うように,数世紀もの時を越えて伝承されてきた歴史的オルガンは“かけがえのない個物”あるいは“変遷するリネージ”としての性格を強くもっている.著者はそれをひとつひとつ味わっているようすがよくわかる.オルガン大国であるオランダの「オルガン・ビルダー系譜」が載っている(p.261).オランダ人特有の命名法〈〜ゾーン(「〜の息子」)〉によって家系的つながりが明示されるオルガン・ビルダーたちの「様式」もまた伝承されてきたということだ.

―― 草野厚『癒しの楽器パイプオルガンと政治』(2003年1月20日刊行,文春新書298,ISBN: 4-16-660298-5)という本がある.鈴木雅明をはじめ日本の名だたるオルガニストたちが糾弾されている.おそらくある部分は真実が含まれているのかもしれない.しかし,草野自身の言う「公共財としてのオルガン」という見方は歴史のない日本ならではの視点ではあっても,歴史的産物としてのオルガンにはあてはまらないのではないか.

―― 残された第2章は〈バッハ・コレギウム・ジャパン〉の活動の中心となる教会カンタータについて.いちばんおもしろそうなのは最後にとっておく.

◇いつもは「クジ運」に見放されるはずなのに,きょうにかぎっては大当たりぃ.天のお告げか,はたまた試練の兆しか.※久しぶりにしっかり歩いたのでバテ.

◇どーも,昨日からメールサーバーの調子がよくないようだ.昨日からスパムメールも用件メールもほとんど配信されていない.明日にならないと復帰しないかな.※心配しないでね.(え,もともと心配してませんて?)

―― 〈バッハ一族の系統樹〉:こりゃ,ほとんど40年後の「ヘッケル」そのものじゃないか!(発見〜)→ Allgemeine Musikalische Zeitung, Nr.12 [März 1823] に載っているそうだ.こういう意外な資料がどこに潜んでいるかわからないのが,また探求慾をかきたてる.

◇明日はまたもばたばたと忙しい[はず]なので,体力と精神力を温存しておかないと.※ちょっと足が痛かったりする(やば).

◇本日の総歩数=5548[うち「しっかり歩数」=2891歩/25分].


12 juni 2004(土) ※晴れたり干したり曇ったり蒸したり降ったり

◇あらま,朝から久しぶりの日射し.蒸し暑い.『川に生きるイルカたち』を読み進む.カワイルカの進化を論じた第2章はもっときっちり書かないと.定向進化説みたいな表現に出くわして失神しそうになる.筆がすべったというわけではなさそうだ(こりゃ問題).各章末のイラストがとても可愛かったりする.

TRC週刊新刊案内のチェック:1377号 ―― 今週は収量そのものが少ない.『丸山眞男書簡集 4 1987-1991』は必修.ウミウシ本とか「本の本」あたりか.『ヴェイユ自伝』ってどんな感じでしょ.

◇〈Hennig XXIII〉大会事務局から参加登録書のコピーが郵送されてくる.参加費が引き落とされたという通知.これで気分はもうパリジャン.今月中にいろいろとすませておかないと.

―― 海外での国際会議に参加するとなると手間も資金もかかるし(確かにその通りだけど),考えただけで二の足を踏んでしまうという研究者は少なくないようだ.個人差は大きいと思われるが,毎年,海外での研究集会や海外調査の場数を踏んでいれば,少なくとも心理的なハードルは低くなるだろう.しかし,学部生や若い院生の場合はよほど強い動機づけがないと,参加そのものに結びつかないことが多いかもしれない.開き直って,〈延髄反射で参加登録してしまう〉というのが案外いいのかもしれませんよ.「あ,これは」と思ったら,何も考えずに registration form にすかさず記入してオンラインで送信してしまうと.これで第1段階はクリアされたので,あとは流されるままかの地に運ばれていくというのがいいんじゃないでしょうか.大切なことは,自分が行きたいかどうかで,まわりの人がどうかということではない.行けば必ず何か収穫はあります.行かなければゼロ.

◇午後になって雲が厚みを増してきた.湿気も増大.独楽鼠のようにつくば市内を走り回って用事を消化する.

◇写本系統樹(manuscript stemma)の例としてB・E・ペリー『シンドバードの書の起源』.表紙の印象的なステマを見て,延髄反射でレジにもっていき,価格を聞いて〈灰〉と化した.この本といい,聖書のステマを論じた田川建三『書物としての新約聖書』(1997年1月刊行,勁草書房,ISBN: 4-326-10113-X)といい,いい値段です.※しかも税込8,400円の田川本が実に「11刷」にまで達しているとは! いったいどういう読者層がこの本を買っているのでしょー.フシギフシギ.

◇夜になってまた雨になる.梅雨ですなあ.

◇『川に生きるイルカたち』を読了.書評を久しぶりに書いてみた.第2章と第3章はイマイチだったが,両端章はたいへん印象的で生き生きとしていて読ませる.※メーリングリストにも流しておこう.

◇本日の総歩数=2510歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


11 juni 2004(金) ※Για ολους υπαρχει ενα βιβλιο.

◇いかにも梅雨らしいというか,空気がねっとりしていて,寝起きがよろしくない.夢見はよかったが.最低気温19度.

◇朝から力強いことば ――〈本は万人のためにある〉→

〈御用〉関連 ―― 講演要旨集のマスターページと大まかなセクション構成づくり.読みやすくしかも持ち歩きがラクにという要求を同時に満たすのはとても難しいと思うが.表紙画像の流用についての問合せ.

◇「組合仕事」―― いろいろまとめて降ってきます.“夏祭り実行委員”の選出をせよと.これも急ぎですか(みたいですねー).

◇前に献本されてきた神谷敏郎『川に生きるイルカたち』(2004年4月16日刊行,東京大学出版会,ISBN: 4-13-063323-6※→bk1)の第1章を読了.なぜ東大の“雪男(Yeti)”調査団が“カワイルカ調査団”に豹変したのかがおもしろい.※それにしても「イルカ顔」って感情移入しやすい形態測定学的特徴があるのかな.

◇台風崩れの温帯低気圧の影響か,曇っている.湿っているか降っているかの境界線.午後になって本降りに.いちおう「接近」してきたということか.気温は比較的低い.

◇受賞決定の通知 ―― ありがとうございます.他の面々も……おお,なるほど.なかなかいい人選でしたね.

◇1990年代前半に図書出版社という版元から出ていた〈ビブリオフィル叢書〉を急にぽつぽつと蒐め始めている.新刊で出た頃はほとんど店頭で見かけなかったし,見かけたとしても1冊7000円もするようなのをほいほいと買えるわけでもなかった.今になって古書で揃えようという気になった.Webcatで調べた範囲では,この叢書からは「18冊」も出版されたらしい.しかし,予告されて出ていないと思われるタイトルもあり,総冊数は未確認だ.先年,この叢書の1冊である富田修二『グーテンベルク聖書の行方』(1992年3月20日刊行,ISBN: 4-8099-0504-7)を手に入れたまま,「叢書」の存在自体をすっかり忘れていたのですが,今日たまたま本の入れ換えをしていて「そういえば〜」と思い出した次第.少なくともWebcatに登録されているタイトルはすべて古書で(新刊で入手できるかどうかは不明)手に入れることができるようだ.『書物の狩人』,『ロンドン図書館物語』,『イギリスの貸本文化』などを発注してみる.どれもマニアックな本のようで,待つ愉しみと読む期待感がふくらむ.並外れた高価格設定から考えると,このシリーズは印刷部数がもともととても少なかったのではないか.その意味では,〈Για ολους υπαρχει ενα βιβλιο〉ではないのかもしれない.

◇記者発表は14日(月)の午後に決まった.急ぎ足でぱたぱたと話が進んでいったという感じ.研究企画科で不手際を怒られたり,情報資料課にドロナワ広報届を出したり.論文の準備もしないと.

―― 別件の投稿論文原稿もいま読んでます.※遅くなってすみません

―― さらに別件のデータ解析については導出される結論を再検討しないといけないように思う.いろいろと付帯状況はあるのだろうけど,どうせそのうちハッキリするわけだしね.

◇〈非常勤での大学出講〉についていろいろと ―― 1週間後の土曜には富山大学で「基礎動物形態学」を学部生に教えているだろう(2週続きで週末は富山滞在.計30時間の集中講義).そして来月上旬には,東北大学で生物統計学の集中講義(15時間)がある.富山大学はウィークデーではないので規程通りの非常勤講師給をもらう.しかし,東北大学の講義は平日なので,新たに敷かれた「国立大学法人への非常勤出講に関する規則」が適用され,基本的に依頼出張という名前での無給のボランティアになる(「給料」という形では法的に難しいらしい).これまでとは異なり,公務員型の独法職員が非公務員型の法人(大学)に出講することになるので,今まではなかった新たな制約が科されることになった.

―― ぼくの目から見れば“敷居がとても高くなった”ということだ.それは心理的なもやっとしたハードルではなく,即物的な金銭的ハードルであるだけに自分を言いくるめて納得させることはできない.「無給で働け」と他人に要求できますか? アナタ,やれますか? 本来もっと融通の利きやすいはずの法人どうしの間で予期しない(されていたのかな)人事的な「壁」ができてしまうというのは不条理だ.※まあ,大学も独法もいろいろと考えてくれているようなので,いい「落とし所」がそのうち見つかればいいのだが.

―― 本務地のある非常勤講師は「無給ボランティア」でいいという意見がある.さらに専任非常勤講師の地位を守るためには,もっと積極的に,本務地のある非常勤講師は原則として禁止すべきだという強硬な主張も聞こえる.もちろん,ぼくも4年半ほど専業非常勤や予備校で食いつないだ経歴があるので,本務地が「ない」という“デラシネ”的な境遇の心理がわからないわけではない.しかし,大学への出講に関しては〈非常勤/常勤〉とか〈本務地あり/なし〉という区別よりも,担当科目を教えることができるのかどうかという点が先決だろうと思う.教える能力のあるなしは教える側の“身分”とは相関しない.もっと個人的でローカルな話だろうとぼくは考える.だから,「常勤よりも非常勤の方が熱心に教える」というような通説がどれほどあたっているのを論じるのはもともと不毛なことだろう(誰も結論を期待していないのだから).

―― ぼくは出講を依頼されれば多少ムリをしてでも出かけていきます.15時間とか30時間というコースの中で,どれくらいの学問的内容をどのように体系立てて教えられるのかというのは,個人的な知識レベルをアップさせスキルを鍛える上でたいへん役に立つ.受講生の“ツカミ”とか“煽り”のわざは教壇に立って初めて体得できることだと思う.「非常勤に出かけるくらいだったら本務地で仕事しろ」という意見に対しては,「オマエ,何にもわかってへんやろ」とつぶやくだけだ.いろいろな意味で自分にとってプラスになるから出かけていく(たとえ「ファイトマネー」が出なくってもね).専業非常勤や専任がどれくらいのレベルの講義をしているのかは,一般論ではなく,「客席」にすわって観察すればすぐにわかることだろう(たとえバイアスがあったとしても受講生の「声」は参考になる).予備校で絶えず授業評価されたことのある経験からいえば,やる気のない「高座」を平気でするのは犯罪だ.専業だろうが非常勤だろうが受講生にとっては何の関係もない.

―― たとえば,ほくがいつも引き受けている「生物系統学」,「形態測定学」,「生物統計学」というようなコースを担当できる講師のマンパワーがどれだけあるかを考えると世界は思った以上に狭いかもしれないことを思い知らされる.専業非常勤とその他との間でのワークシェアリングということばがこの文脈で用いられることがあるけれども,科目の専門性の程度やマンパワー度そして個人的属性によってシェアリングができるかできないかは大きく変わってくると思う.そういう各論的要因の方が総論的方針よりも重みがある場合があることは否定できないでしょう.

―― 「高座」ひとつひとつを大切にしたいというのが,ぼくの身の丈サイズの持論です.

◇夜になって雨がしとしとと降り続いている.肌寒い.※ぼくも“すじカレーうどん”を賞味してみたいな.

◇本日の総歩数=5435歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


10 juni 2004(木) ※Querendo invenietis(探せ,さらば見出さん)

◇空気が湿っている(かすかに降っているというべきか).霧がかかって焦点の定まらない朝.一晩中,最尤法のブーツストラップを計算させていたが,replication 40でいったん打ち切る.「意外な結果」はまったくでなかった.

◇ふーん,“アントクアリウム”ねえ.蟻を飼って癒されるんですか??? よーわからん.

◇あ,ワタシも「全部yes」かも ―― 津村さんの「「ネット世代論」を「匿名性」とスッパリ切り離してみる」にある〈三つの踏み絵〉.正確に言えば,三つめは「気に病まないが気にかかる」って感じかな.もとになった梅田望夫版の〈踏み絵〉だと,AもBも「No」で,Cのみ「Yes」ですね.個人主義者はみだりに相手を信頼したりはしないのです.

◇昼休みに共同研究についての打合せ.どのように発表するか&どのように論文にするか.何といっても旬の話題だし,一般の関心も引きそうなので,多少ともジャーナリスティックに提示してもいいのではないですか.想定される問答を考えてみる.

◇組合の職場委員なので,この季節恒例の“勤務評定反対闘争”の班内取りまとめをしないと.来週にも班会と評定者交渉を予定する.組合員に連絡と日程の調整さくさく.

◇うーむ,生態学会釧路大会事務局の奮闘乱闘格闘ぶりを遠目に眺めつつ,はてさてワタシの講演要旨はどーしましょうねとスオミ帰りのオーガナイザーに問合せ.はは〜,自由集会だから個々の演者のアブストラクトはいらないと.せっかく書いたのに(あらま).※非会員はこういうときにとんだヘマをする.ホテルとか交通手段とかも手配しておかないとエライことになりそうだし.

―― 今月下旬から9月まで3ヶ月間は,国内外への学会やら講義に行くことが多くなる.往復手段とか滞在先を確定させる必要がある.ロジで漏れ落ちがあるとつらいので.

〈御用〉関連 ―― 進化学会東京大会の講演要旨集の組版を考え始める.印刷業者との折衝.データのやりとりとかまだまだ出てくるのだろうけど,まずは駒場城サーバーからの要旨データをダウンロードして,テスト素材とする.

◇だらだらと読み休み進みしていた David Freedberg『The Eye of Lynx: Galileo, His Friends, and the Beginnings of Modern Natural History』を思い出したように読んでみる.第2部「天文学」の章.太陽の黒点が太陽表面での現象なのかそれとも太陽のまわりを回る小惑星なのかという当時の論争を踏まえて,ガリレオはAcademia Lincei創始者チェシに書き送る(1612年5月)――

I only want to tell you what you know much better than I, namely that we should not wish nature to accomodate itself to what seems better ordered and disposed to us, but that we should rather accomodate our own intellect to what nature has made, in the certainty that is the best and only way. [p.121]

―― 400年も前の『天文対話』の“精神”がいまだに古びていないのように見えるのも当然のことか.時代差をぜんぜん感じさせないのは驚くべきことだと思う.

◇この本自体は「博物学におけるヴィジュアル性の起源」を中心テーマに据えている.とくに,アカデミア・リンチェイに見られる,図や絵のような〈視覚的〉なものに対する「信頼」がその後の博物学に大きな影響を与えたという筋立てが読み取れる.早く第3部に進もう.

X-trees,aspects, components ―― せっかくの機会なので,知っていることをまとめて書いておきます.1970年代以降の分岐学の変遷過程を追うときに〈欠けた破片〉がひとつある.Gareth Nelson が書いた原稿がそれで,同時代の論文には「Trees and cladograms」というタイトルで頻繁に引用されています.紆余曲折ののちに Nelson & Platnick (1981), 『Systematics and Biogeography』という本の一部として出版された.この本はパターン分岐学の“聖典”みたいな扱いだが,系統樹に関する章はどうみても不完全.つながるべき論理の鎖が方々で欠落している.分岐図(cladogram)に関しては〈成分分析(component analysis)〉に関連づけて詳述されているのに,系統樹(tree)に関してはほとんど書かれていない.だから読者は類推しなければそれらの間の関係が見えてこない.Nelson の言う系統推定の〈相(aspect)〉のちがいが分岐図と系統樹とを分けているのだが,そこのところが説明されていないということ.しかし,元の原稿にはちゃんと「tree analysis」という節があり,その中核にあるのが〈X-tree(X樹)〉という仮想祖先を含むグラフの概念.おそらく,パターン分岐学の理論がつくられるごく初期の段階で,系統樹(tree)に関する部分が捨てられた(結果として分岐図のみに限定)ために,「相」とか「X樹」という関連要素もまたひとまとめにお蔵入りしてしまったのではないかと推測しています.

―― 現在の系統学(MP / NJ / MLに関係なくすべて)は黙っていても「分岐図」をつくっているわけだけど,いまだにそれは「系統樹」だと誤解している人が大部分のように感じる.

◇夜の時間がとても早く過ぎるのはなぜ?

◇本日の総歩数=5616歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


9 juni 2004(水) ※梅雨寒,バッハ,考現学

◇夜半の雨は明け方に上がる.最低気温は14度.こんなに温度が下がると宿舎の街燈に虫が飛来しないので,飼いカエルの餌集めに苦労する.きょうは大蚊でガマンしてもらおう.昨日はヤニサシガメを喰わせてしまった(悪食だぞ).ミクロレピでも許す?(腹持ち悪そうだが)

◇演奏楽器の〈復元〉と〈標本〉―― 与えられた楽譜は「絶対」なので,演奏者は万難を排してそれを演奏しなければならない.ときとして作曲者が「無体な要求」をしたとしてもぐっと堪えるしかない.アルバン・ベルクが3オクターブ音域のグロッケンシュピール(ふつうは2オクターブ半)を求めるならばだまって音域を上げ下げし,ゾルタン・コダーイが通常のチューブラー・ベル(C〜Cの2オクターブ)の音域を下まわるB音が〈ウィーンの音楽時計〉に必要だと言うのであれば御徒町の金物屋に真鍮パイプを買いに走る.打楽器奏者に“ハード”的な意味での「演奏不能」はない(“ソフト”的には……多々ある).しかし,“絶滅楽器”を復元するというのはこういう「苦し紛れのやりくり」とは別の推論作業が必要なのだろう.楽器の「標本」は残されるべきだ.東大オケには〈コントラバス・トロンボーン〉という楽器が保管されている.日本国内では唯一残っている「標本」だそうだ.通常のトロンボーンのスライドにさらに“延長ハンドル”が付いている.ときどき楽器庫から出されては虫干しかたがた吹いてもらっていた.

◇さりげなく督促されたりする.※オニ・アクマ・ヘンシュ...

◇別件の系統樹計算をしてみる ―― どの方法でtree-buildingをしてみても結果は変わらないですね.クレードの信頼度も高そうだし.ということは,帰結を変更しないわけにはいかないか.とりあえず,出てきた結果を先方に返してみてからの話になる.※というか,単にNJだけやってそれでオシマイではないという教訓なんです.

◇『ゴランツ書店』読了.ゴランツ社主の左翼ぶりもさることながら,J. B. S. ホールデンをはじめ当時のシンパたちの動向が本の向こうに見え隠れする.ソルジェニーツィンやキングズレイ・エイミスもゴランツ育ちということですか.大きな社会的影響を長年にわたってもち続けた,たいした書店.それにしても,このインパクトのある宣伝戦術は効果的だな.さすがスタンレー・モリソン.類は友を呼ぶことも確かだった.

◇うっかり忘れていた〈azur〉のライセンスキーをあわてて買う.

◇しばらく滞貨していた『TREE』誌がまとまって届く(2〜5月号).Felsenstein『Inferring Phylogenies』の書評(Mike Steel, 19(4): 173-174, 2004)とか,モデル選択問題の総説(J.B. Johnson & K.S. Omland, 19(2): 101-108)とか,D.S. Wilsonの個体淘汰説逝ってよし宣言(19(5): 245-248)とか.でも,今月号の方がもっと刺激的か――「万人のための系統樹(Evolutionary trees for all)」(David Penny, 19(6): 273)って,いいタイトル.ほかにSupertree推定法の総説とか,PhyloCode記事とか.※総説は読むのも書くのも自分のためになると思う.

◇久しぶりの〈考現学〉本 ―― 川添登『今和次郎:その考現学』(2004年5月10日刊行,ちくま学芸文庫,ISBN: 4-480-08860-1→bk1).1980年代後半から1990年頃に一時期「考現学ブーム」があって,考現学創始者である今和次郎や吉田謙吉関連の本もいろいろ出た.当時,復刻された『モデルノロヂオ』を買っておかなかったことを今になって後悔している.古書でもほとんど出ないし……と思って〈日本の古本屋〉をいまチェックしたらあることはあった.でも3万円前後という値段がついている.定価は1万円しなかったのにね.※本をめぐるこういう「後悔」はきりがない.

―― 川添本はそのうち読むことになるかな.藤森照信がけちょんけちょんにされてるね.ほー.

◇煽られて「バッハ本」―― 新装復刊された小林義武『バッハ:伝承の謎を追う』(2004年6月10日刊行,春秋社,ISBN: 4-393-93172-6→bk1).この著者の本はバッハ手稿の文献系図についての話題が載っているので参考になる.前著『バッハとの対話:バッハ研究の最前線』(2002年6月20日刊行,小学館,ISBN: 4-09-386058-0)と並べて読むべし.※『新バッハ全集』を出しているゲッティンゲンの〈バッハ研究所〉って惹かれるなあ.

―― 〈伝承(tradition)〉は文献学のことばだが「系統」そのもの.しかも,楽譜の系譜だけでなく,用いられている紙に漉き込まれている透かし模様も系譜をもつという.

◇本日の総歩数=7997歩[うち「しっかり歩数」=3072歩/27分].


8 juni 2004(火) ※「イケズ」が「みやび」であるとは

◇蒸し暑い.明け方の最低気温は23度.そろそろあの〈熱帯夜〉の季節が近づいている前兆か.熱帯夜こそ真の悪霊.退散してほしい

◇昨日は職場に顔を出さなかったので,郵便物やら書類が机に積み上がっている.金沢の明治堂書店から『世界古本探しの旅』(1998年5月1日刊行,朝日新聞社,ISBN: 4-02-257245-0※絶版).大屋幸世『蒐書日誌』に神保町でゾッキ本で詰まれていたと書かれていた本.出た当時その場で買わなかったことを後悔しつつ,以来あちこち探していた.大版でカラー図版たくさん.眼福.でも売れなかっただろうねー(高いし).

◇『季刊・本とコンピュータ』の最新号(2004夏号)が届きました(>どうもありがとうございます).巻頭コラムの「廃業出版社の在庫本を救え!」(pp.15-16)に,蒼樹書房在庫本の〈救出大作戦〉の経緯が載っています.関心のある方は読んで下さい.※う゛,この表紙...(ピアスもなかなかよろしいやん.いろいろあって,なあ〜

◇今月から来月にかけての非常勤講義 ―― 宿泊先とか教室とか宴会とかいろいろと確定し始める.越中にはやっぱり飛行機でひとっ飛びですかねー.JRはぜひ避けたい.そろそろ講義内容も確定しないと(まだしてへんのかいな).越中は基礎動物形態学,川内は生物統計学.※ちょっと待ってねー.

◇〈Likelihood Ratchet〉メモ ―― Vos, R. A. 2003. Accelerated likelihood surface exploration: The likelihood ratchet. Systematic Biology 52(3): 368-373 の著者が,〈PAUPRat〉の入力データファイルを書き換えることで,Parsimony Ratchet を Likelihood Ratchet にする方法を公表している.※当然予想される展開ですね.もちろん〈PAUP*〉が手元にないとダメですよ.

◇日中は曇り.降ってはいない.いちおう北寄りの風が通り抜けている(5階だからかな).北側の別室に籠る.

◇方々からデータ解析の結果が寄り集まってくる.なあるほど,結果だけ見れば妥当でも,それとは別のファクターが問題だったりするわけですね.信頼度をチェックしてやればいいと思います.別件は,時間刻みでデータが更新されたりとか.なかなかおもしろいですねえ.でもとりあえず系統樹を出してみないことには先に進めない.

◇う〜ん,こらもう〈ぼろくそ〉言われまくりやん…….どないしまひょ....ま,よそさんが何言うてもかまへんねんけどな.わかる人にはちゃんとわかるのが〈仄めかし〉の妙.それは〈イケズ〉? それとも〈みやび〉? 少なくとも「ホンマのことは人に言うたらあかんねんで」という躾を家庭で受けてきたワタクシは,いつのまにか〈饒舌〉に〈仄めかす〉というやっかいなスタイルを身につけてきたのかもしれない.※これもまた〈リネージ〉のひとつですか(autapomorphyが付加されているかもしれないが).

◇夕方の気温は16度.北東気流が入って気温がさらに下がっている.雨もときおりざーざー降る.受賞の連絡あり.

◇『本とコンピュータ』最新号を読了.あと4号で終巻となるそうだ.創刊号以来欠かさず買ってきた.毎号テーマのバラツキが大きくて関心度の変動が大きかったが,旬の話題をうまく拾っていたと思う.終巻後はウェブサイトを通じて細く長く情報発信し続けてほしい.

◇本日の総歩数=5303歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


7 juni 2004(月) ※従順な人間“犬”と化す年休日

◇ワタクシ,今日は人間“犬”となって,まる一日つくばの某病院にて従順に検査を受けます ―― 毎年のことですが,人間“犬”はひたすら従順でなければなりません.医師や看護士を吠えたり噛んだりしてはいけないのです.針を刺されようが血ぃを抜かれようがバリウム飲まされようが,ひたすらじっとしているのが人間“犬”としての「しつけのよさ」とみなされます.

◇昨夜の“モーニング娘。”同一性問題は夜陰に乗じて波紋?を広げつつあり,いつものようにスルドイのぞみメールが夜明けに届くは,かの森山日記に引用されるは,という展開になっています.

◇今日は“犬”なので,人間様のつかう言葉に物申すのはおそれおおいことかもしれませんが,本日の自分の身分にも関わることなのでひとこと書かないわけにはいかない.数日前,さる知人たちとのメール会話の中で,「人間犬に入る」という表現が飛び出し,誰もが違和感なくそれを会話に組み込んでいたのだが(ワタクシもその意味するところを理解できた),人間ドックがなんで人間ドッグになるねんな!?という素朴な疑問がふつふつと.オランダ語由来の「dok」はどう転んでも「dog」にはならへんねんで.

―― おお,これで晴れて“犬”ではなく,人間になれるのかと希望を膨らませていたところ.「人間ドッグ」というキーワードでのGoogle検索が数万件のヒットをするという驚愕の事実を知る.総合病院だろうが保険会社だろうが軒並み人間ドック受診者を「人間“犬”」とみなしてるようだ.誤字追放委員会による告発状を見ると,人間“犬”の〈誤字指数〉は7%とのこと.“犬”扱いはもうやめよーね.>関係諸方面.

―― さらに話は続く.「ブルドック」という言葉を耳にして違和感ない人がいる(それはワタシ).「ホットドック」という言葉に抵抗しない人もいる(それもワタシ).御“犬”様を勝手に「ドック入り」させてはいけません.正しくブルドッグとかホットドッグと言いましょうね.ところがところが,かの有名ソースメーカーは正式社名が「ブルドッソース」だったりするので困ってしまう.また,おびただしい数のペットショップが「ブルドッ」を売っていたりする.まったくもう…….

◇明け方から咆哮する人間“犬”ですが,もういっちょ.昨日書いた“omnibus”の件 ―― 確かに,OED2 で調べると,言葉そのものは「四輪乗合馬車」という意味で1829年に登場していますね.とすると,「造語者」ヴィクター・ゴランツはホラ吹いたか.「選集」としての新しい用法を与えたということですね.※のぞみ様,ダンケ.

◇グサっ! ―― 〈「ほのめかしがおもしろい」というのは京都人らしい気がしないでもない〉というコメント(あえてリンクなしね).なんだか深層心理をズバリ言い当てられたような気がして,即死しました.本人はそういう意識がなかったんですけどねー.出自は消せませんかねー.京都人だけが知っている例の本をめくると――

かくのごとく裏で交わされるもの(ある種の京都人の娯楽に近い)であって決して表面化しないもの[p.20]

―― それは〈イケズ〉.※あ〜あ,言うてしもたら〈イケズ〉にならへんやん.なあ.ワタシって性格ワルイかしら.

◇昨日梅雨入りした関東はどんよりと曇って雨が降ったりやんだり.人間“犬”受診日にはふさわしい日和だ.さて,午前7時半には病院に行っていなければならないので,そろそろ出発です.※即死したはずのに健康診断に行くとはこれいかに.

◇午前いっぱい,人間“犬”としてキビシク調教され,「三中さんねー,健康上ナニに気をつければいいかはよ〜く自覚されているとは思いますがねー」と調教師さまに仕込まれ(ひー).待ち時間に『ゴランツ書店』をかなり読み進む.いよいよ Left Book Club 創立の経緯に話が及ぶ.バリウム飲んで台の上でのたうったり,本読んだり,「血の気が多いのねー」とたくさん血ぃ抜かれたり,本読んだり,下剤飲んでぐるぐるしたり,本読んだり,視力検査でええ加減に答えたりした後に,医師面談でさまざまな引導を渡されてようやく解放.

◇それにしても蒸し暑いですな.腹が減って2食分ほど食べてしまう(オマエ,懲りてへんやろ,ぜんぜん).ほんま,賢いお人どすなあ〜.この5月に改築された天久保古書店街(と言っても2軒だけになってしまったが)を散策する.学園古書センターはまだ新店舗に移ったばかりで,色がついていない.富士川英郎『讀書游心』(1989年6月20日刊行,小澤書店,ISBN: なし)を入手.小沢書店ってもうないですよね.

◇吾妻の〈なかやま〉珈琲店にて,鈴木雅明『わが魂の安息,おおバッハよ!』(2004年4月30日刊行,音楽之友社,ISBN: 4-276-13015-8)の第3章「演奏の現場から――制作ノート」を読了.不完全に伝承されているバッハ楽譜に基づく演奏形態の復元過程がおもしろい.とりわけ,当時のピッチ設定が「a'=360〜510」の範囲でばらついていたとは驚き.現在の標準ピッチ「a'=440あるいは442」でいえば,標準のAをはさんでF#〜Cの範囲で変異していたことになる.さらに,現代ではもう用いられていない管楽器(トロンバ・ダ・ティラルジとかオーボエ・ダ・カッチャ)の形態を譜面に記されている演奏機能から逆に“リバース・エンジニアリング”により復元するという試みを行なっている.最近の「音楽考古学」という分野がどちらかといえば認知考古学に近い路線を進んでいるのと対照的に,ここには一般的な意味での系統推定に通じる要素がある.このような一連の実践を著者はBCJでの演奏活動を通して行なっていたそうだ.※それにしても,この本のタイトルはどーにかならなかったのかな.新刊アナウンスで見たときは思わず引いたもんね.

◇本日の総歩数=7217歩[うち「しっかり歩数」=1325歩/11分].


6 juni 2004(日) ※シモフリコメツキを拾う朝のお散歩

◇朝方は日が射していたので早朝散歩をば.自宅→Book-Ace→クーロンヌ→自宅の5kmコース.昨日よりも湿度が高くなっている.タマムシかと思ったらシモフリコメツキ.Book-Aceは今日は収穫なし.この本屋,文庫・コミック・雑誌がほとんど.棚が荒れ気味なので“24時間営業”という点のほかはとくに行く意欲が湧かない.しかし,ただ1ヶ所「新刊本コーナー」だけはとんでもなくマイナーな書店の本まで台頭に並んでいて,しかもタイムラグがないので重宝することもある.※だから売場面積が広いわりには,すぐブラウズできてしまう.

◇午前10時前に雨が降り出す.もう梅雨だもんね.

◇明日の検査のため〈みなしラマダン断食〉に入る.日頃,暴飲暴食悪逆の限りを尽くした報いか.天の裁きやいかに…….

―― う〜む,お腹がすいたっす.※欠食耐性のないヤツめ.

◇代償行為として読書に耽る ―― 『ゴランツ書店』を読み進む.二段組なので,すぐに「お腹いっぱい」になる.〈選集(omnibus)〉という言葉は創業者ヴィクター・ゴランツが1928年に造語したものらしい(p.76).ほほー.また,アメリカのサイモン&シュースター社はゴランツ社からの分社とのこと.かの Penguin ペーパーバックスよりも前にゴランツは文芸書の廉価版シリーズを構想し試行してみたそうだ(失敗したが).単行本の“原稿査読員”(出版に値するかどうかを判断する)の話題がよく出てくる.出版すべきか否かの難しい判断を経営者に諮問する立場にあるらしい.日本ではそういう制度があるという話は聞かないが,彼の国ではそれが当然のことなのか.こんなくだりも――

ふつう作家や出版社はひどい書評が出てもこれは職業上の災厄のようなものだとして無視する.(p.132)

―― 書評は(いかなるものであっても)甘受すべしということか.ヤバそうな書評は先手を打って妨害するという選択肢はないわけね(ふっ).

TRC週刊新刊案内をチェック:1376号 ―― 当然,ツチノコ本と『科学の哲学』か.趣味的には『彩色中国看板図譜』がいいなあ.

◇日中いっぱいざーざーと降っていたが,夕方近くなって雨はいったんあがる.湿度は高いが気温が低めなので許す.

◇トツジョとして〈「モーニング娘。」同一性問題〉が勃発しているではないか!―― ほほー,なるほど.現代版「テセウスの船」とは言い得て妙.いまや元々のオリジナルメンバーがすべて新メンバーと入れ替わった“モーニング娘。”は,はたして元の“モーニング娘。”と〈同一である〉といえるのかという問題だ.確かに,形而上学者はこの重大問題に口をつぐんでいてはいけない.どういう根拠で“モー娘。”はグループとして同一であるのか(あるいはないのか)を決死の覚悟で明らかにしていただきたい.中世思想普及を狙う某工作機関では連日連夜真剣な討論が続けられているという.

―― この形而上学的大問題を解決するアプローチとして〈実在論〉・〈本質主義〉・〈構造主義〉・〈因果説〉という提案が出されているという.もうひとつ〈リネージ説〉を追加しておこう.“モーニング娘。”はそれが結成された時点で時空的に可変なリネージ(系譜)として存在しているのであり,メンバーの出入りによるパーツの入れ換えはリネージとしての存在になんら影響しない.極端な話,いっぺんに全メンバーが入れ換えられたとしても,プロダクションが「やっぱり“モーニング娘。”です」と宣言し,歌番でアナウンサーが「さあ心機一転,生まれ変わった“モーニング娘。”をどーぞ!」と紹介すればリネージとしての“モーニング娘。”はそのままあり続ける.たとえ,演歌グループに大変身したとしても“モー娘”は“モー娘”だ.グループの内容や活動とは無関係にリネージはそこにある.

―― 〈リネージ説〉は上述の〈因果説〉にもっとも近いが,よく考えるとちがいはある.リネージにとって因果関係(原因と結果のつながり)は大した意味をもたない.むしろ時空的な前後関係(由来関係)にまず着目するからだ.

―― なお,上の〈本質主義〉的アプローチを救済する方法はあるかもしれない.“モーニング娘。”のプロトタイプとなるメンバーを中心として形成された心理的カテゴリーが“モーニング娘。”であるという心理的本質主義のスタンスを擁護すればいいだろう.

―― さらにいえば,プロ野球球団のように絶えず選手が入れ替わり,何年かのうちに全メンバーが現実に交代しているのに,「なぜ“読売巨人軍”は同一なのか?」というような同一性問題がこれまで浮上しなかったのかという点も解決してほしい.個別領域ごとに,形而上学的な問題認識のレベルにちがいがあるのかもしれない.

―― 実におもしろい問題だ.ぜひぜひ論議を深めてね.>N部くん.

◇本日の総歩数=11923歩[うち「しっかり歩数」=8389歩/74分].※久々のしっかりウォーク.


5 juni 2004(土) ※系統樹はアート(=数学)だ!

◇早朝から快晴.湿度低し.ものがよく乾く.いつもこうあってほしいな.

◇Google でしばし〈イメージ検索〉―― キーワードは【樹】.系統樹とか分岐図ではあまりヒットしない.phylogenyあるいはcladogramだとおなじみの図が釣れるだけ.genealogyでは家系図ばっかり引っかかってきて(系図産業はとても盛ん),ピントがずれてしまう.日本語圏や英語圏ではダメなのかな.Stammbaumで少し〈ぴく度〉が高くなる.arbre genealogiqueでベートーベン系図を楽しむ.albero genealogicoで検索すると,中世写本やら得体の知れない(=愉しい)のやらがわらわらと登場し,stemma codicumでやっと落ち着くべきところを見出す.

―― 【樹】のイコン系譜を遡ったようなもの.とりわけ Tree of Life をキーワードにしてヒットしてくる12000件あまりの〈生命樹〉が見物.生物の系統樹と「アートとしての樹」が渾然一体となっている.みんな,【樹】がとっても好きなんですねえ.

―― ぼくの理解では,「ウェットだった系統樹」を「ドライな分岐図」に乾燥させた張本人のひとりがパターン分岐学で,それがあったからこそ現在の“tree science”が成立し得たのだと思う.生物学者が想像する以上に tree science の根は広がっていて,そういう裾野から吸い上げられた成果が生物系統学に還元されていくという図式をぼくは念頭に置いている.系統学はもともと別のところにあって,たまたま生物を対象とする下位系統学とか写本を相手とする下位系統学などが別個に生じてきたという理解だ.

―― こういう論を展開するためには,【樹】というイコンが人間の理解を高めるツールあるいは何かしら provoking な図像であることがまずはじめに示される必要があるだろう.

【欹耳袋】 昨年出た『Tangled Trees』の姉妹編(内容的に見て)が近いうちに出るらしい ――

Olaf Bininda-Emonds (ed.) forthcoming (spring 2004)
Phylogenetic Supertrees: Combining Information to Reveal the Tree of Life.
Computational Biology Book Series 3
Kluwer Academic, Dordrecht
Table of Contents

――“Supertree”の構築を中核テーマとするはじめての論文集.分岐的な〈樹〉では対処できないようなケースをもっと制約の緩い網状の〈ネットワーク〉で解決しようという提案は,通常の系統推定よりも厳しい計算上の負担が問題になる.複数のデータや系統樹をベースとする“supertree”の構築を実際に行なうときにもそれがいつも問題になる.単一の系統樹構築を越えた高次の推論問題(発見的探索)がそこに横たわっているからだ.

◇ゆる〜りゆる〜り(のてー)―― だから,常日頃から相互に読んでいるようなウェブ日記の場合,あえて参照を明示するまでもないということでして.わかる人にはわかり,わからない人にはそれなりに.排他的とか閉鎖的という論議以前に,何かを平均的に期待できそうなページは日常的に読んでいますというimplicitな意思表示みたいなもんですかね.逆に新しく発見したようなページとか情報源については,“備忘”のためリンクを張っています.

◇ゆる〜りゆる〜り(くてー)―― でも,それでは欲求が不満してしまいますか? “ウェブ日記相互関係プロット”についてかなりいい線まで解読しているように見受けられる〈Systematic Neutral〜メモの下書き〉での一連のコメント――

―― をたどってみると,ひょっとして「見知らぬ読者」に対してぼくは“失礼”なことをしているかなという気にもなります.しかし,ぼくの場合,「日録」は自分のためにつけているので,自分の流す情報の「解読レベル」は自分で設定したいと思っています.たとえば,新刊情報のようなものであれば,知っている範囲のことを明示するのは当然でしょう.しかし,ごくパーソナルな返信やコメントはいわば“暗号”(しかしターゲット読者側はちゃんとそれを“デコード”してくれる)のように書かれることになります.

―― 「リンクをしていないほうが日記間の信頼関係がある気がする」というコメントはその通りでしょう.少なくとも,読まれているという確信がなければ書きませんからね.「私信」と言われればその通り――では個人メールすればすむかというと,それでは「日録」をつける意味がなくなるわけでして.ついでに言うと,「「仄めかし」って何で面白いのかな」という疑問には,「それはちょっとばかり後ろめたい遊びだから」と答えましょう.ダイレクトに言わないというのはレトリックの常套手段ですが,表現的には少し排他的な罪深さ(だからこそ深みが出てくる)がありますよね.だからこそ愉しい(性格わる〜).

――「「何これ〜、はっきりして〜」と思うこともまた多い」.なあるほど,そうでしょうねえ.でも,世に数多く出版されている〈日記・書簡〉のたぐいを第三者が何の助けもなく解読するのはかなり困難なことが多いですよね.だからこそ,編集者の手になる膨大な脚注や解説が不可欠なわけで.それと同じことがウェブ日記の多くについても当てはまるのではないでしょうか.つまり,日常的に目を通しているウェブ日記のほとんどは注釈なしのナマ日記なのだということ.パーソナルな日録は書いている人がわかれば,それで十分.そして,さまざまなレベルでそれを解読してくれる読者がいるなら,それで十分.

◇本日の総歩数=935歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].※油断すると,すぐこういうことになる.


4 juni 2004(金) ※アップデートなお続く

◇3時半に目覚め.そうですか,やっぱり上方落語の方が愉しめると.笑うこと&笑わせることが生きていく上で大きな意味をもつ日常生活環境では,聞手も「笑うてあげる」レベルがもともと高いし,噺手もそれにふさわしいだけの「笑わせる技量」が厳しく鍛えられるということか.ボケればツッコむという阿吽の呼吸を会得するのは話芸でもあり聞芸でもある.

◇ときどき方々の〈ウェブ日記〉を読ませてもらい,これはという話題があれば dagboek で引用&リンクしています.いきなり引用されてしまったとびっくりされることもあるようですが,取り憑いたりしませんのでご心配なく.また,書いた日記が誰にも読まれていないのではなどと考えるまでもありません.ワタシは読んでいる.もちろん,引用もリンクもなしで“仄めかし in 文中”という高等ワザを使うこともあります.ちゃんと読み取っていただいてるようでウレシイな.※こういうのが〈実名の人たちのゆるいコミュニティ〉(5月31日付)の密やかな愉しみなんでしょうかね,津村ゆかりさん.

◇昨日,アミール・D.アクゼルの新刊『羅針盤の謎:世界を変えた偉大な発明とその壮大な歴史』(→bk1)を書店で見ましたが,もっと詰まった本かと思ったら(ほら訳者が訳者だし),意外に活字が大きくてスカスカした感じですね.それよりも何よりも,木乃倉茂『ツチノコ:幻の珍獣とされた日本固有の鎖蛇の記録』(→bk1)が気になりますねえ.いったいどんな本でしょ(なんだか『鼻行類』を思わせる).ツチノコの次は西脇与作『科学の哲学』(→bk1).げ,500ページかあ.

◇中澤港さんの〈『Rによる統計解析の基礎』正誤表〉のリンク先がまちがっていたので訂正しました.

◇お,このまま息絶えるかと思いきや,アレを復活させようということですか.こりゃ,力仕事になりますねえ.※ふうっ.

◇蒼樹書房から小林四郎『生物群集の多変量解析』(1995年4月10日刊行,ISBN: 4-7891-2053-8)が届く.著者が1998年に逝去されていたことを確認.ついでに仙波社長からの嬉しいメッセージ.

◇わらわらと近刊情報が到着 ―― 伊勢田哲治『認識論を社会化する』(名古屋大学出版会,ISBN: 4-8158-0489-3),バーン&ホワイトゥン『マキャベリ的知性と心の理論の進化論』(ナカニシヤ出版,ISBN: 4-88848-854-1),丸山眞男『丸山眞男書簡集4』(みすず書房,ISBN: 4-622-08104-0),宮永孝『日本洋学史:葡・羅・蘭・英・独・仏・露語の受容』(三修社,ISBN: 4-384-04011-3),『ファーブル博物記5:植物のはなし』(岩波書店,ISBN: 4-00-006689-7),『シリーズ進化学4:発生と進化』(岩波書店,ISBN: 4-00-006924-1),竹村真一『宇宙樹』(慶應義塾大学出版会,ISBN: 4-7664-1003-3).※エンドレス新刊波.

〈御用〉関連 ―― 進化学会大会事務局から届いた大会ポスターを貼る.あと2ヶ月か(ポツリ...).※そろそろ地鳴りと地響きが…….

―― さらにまた,南大沢と青葉山での集中講義に絡む“振動”も伝わってきた.※ん? でも至近に迫っている「五福」高座の打合せが全然進んでないぞ.テポドンもここのところ飛んでこないし,この静けさはいったい…….

―― たたみかけるように,畜産草地研究所(白河)での〈R〉研修の打合せ.まる2日間にわたって〈R〉の講義を担当する.10月のことだからまだ先の話.

◇データ解析続く ―― 昨日のまちがいデータを訂正して,あらためて系統樹をつくってみる.それでもなおひとつのクレードに収まるようだ.ブーツストラップの値を計算してもらう.枝の信頼度が悪くなければ,先に進めそうだ.念のため18S-rRNAとrbcLの情報をつき合わせる必要がある.タンパク活性の話はそのあとで.

◇山田実『サンクト・ペテルブルク断章:遺伝研究者のロシア滞在記』(2004年5月25日刊行,未知谷,ISBN: 4-89642-107-8)をめくり始める.農水省放射線育種場にいた元研究員による新刊.世間は狭いのでいろいろと情報が入ってくる.未知谷がこういう方面の紀行本を出し始めたのは,三木宮彦『ジャンヌを旅する』(2004年4月10日刊行,未知谷,ISBN: 4-89642-098-5)というジャンヌ・ダルク本ですでに知っていたが,トウモロコシを専攻した植物育種学者の手になる新刊が出るとはね.挿入写真もいいし,何よりもかのヴァヴィロフ研究所に滞在していたという著者の文をまず読んでみたい.※未知谷の本の“造り”はとてもいい.

◇新書イッキ読み――萩野矢慶記『カラー版・ギリシャを巡る』(2004年5月25日刊行,中公新書1748,ISBN: 4-12-101748-X).さすが今年に入ってから「ギリシャ本」が次々に登場している.なんたって“空”の色がちがうもんね.誰しも食欲旺盛になるのも当然だ(ムリな正当化).※ぼくの〈ギリシャ紀行〉にも写真を貼りこもうかな.

◇夜,『ゴランツ書店』読み.第2章まで.

◇本日の総歩数=6581歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


3 juni 2004(木) ※アップデートいろいろな日

◇涼しい明け方.午前4時にふと目が覚め,メールチェック.おお,“蒟蒻”への鉄槌メールが届いたばかりではないか.どーもありがとうございます.でも,放置しておいた方がいいですよ.かの“海綿”と“蒟蒻”は踏んでも叩いてもふるふるするだけですから.

◇諸方面での講義が近づいてきたので,オンライン資料のアップデートを始める.まずは〈〉関連.今年に入って,日本語の「R本」が次々に出版されている.〈租界R〉の文献リスト〈Rを学ぶ〉に数冊付け加える.ついでにいくつか細かい修正をば.

◇昨日のうっかりデータ取り違えの続報 ―― 正しいデータファイルで再計算させたところ,結論にそれほど大きな修正は必要ないことが判明.よかったっす.これからは気を付けましょう.

◇放り出しては拾い上げている〈LaPorte本〉だが,John Duprè によるオンライン書評がある電子ジャーナル(『Notre Dame Philosophical Reviews』誌,ISSN: 1538-1617)で公開されたという情報をいただいた(どうもありがとうございます)――

John Duprè, University of Exeter:
[Review] LaPorte, Joseph, Natural Kinds and Conceptual Change, Cambridge University Press, 2004, 221p., $70.00 (hbk), ISBN 0521825997.
Notre Dame Philosophical Reviews 2004.06.01

―― いろいろときついことが書いてありますが,生物学側から見るかぎり,Duprèさんの基本的な姿勢には異論なしです(全面的とは言わない).少なくとも LaPorte 氏よりははるかによく「わかって」いるようだ.ヘンなこと言わないしね.

◇ボイド『ナボコフ伝:ロシア時代(上)』の最後の部分の1節――

ナボコフは,進化とは本来創造的なものであり,生存競争というダーウィン的概念とは相反する,とベルグソン以上に信じていた.ナボコフにとって,生存競争とは,創造的というよりは破壊的で,革新的というよりは退歩的な概念だった.……すでに短編「ドラゴン」にも見ることのできたその見解は,のちには,もっとはっきりとしたかたちをとって,「『生存競争』ときたら! 争いと労苦に蝕まれて,人間は豚に戻ってしまう」とか「『殺人者は〈いつも〉犠牲者に劣る』という,実に半ダーウィン的な警句」といった表現になる.[pp.347-348]

―― 20世紀初頭の一般的なダーウィン受容の反映をここに見ることができるかもしれない.しかし,それ以上にアメリカに渡ってからのナボコフが職業的な昆虫分類学者として身を立てたことを考えるなら,彼の中で進化学的あるいは体系学的な思考がどのように変遷していったかをたどるのは意味があるだろうと思う.何人かの著者はナボコフの南米産シジミチョウの分類体系は,明らかに分岐学の色合いを帯びていたと主張している.このあたりになると,もはや文学者としてではなく,体系学者としてのナボコフの掘り起こしが必要になるだろう.

◇ナボコフ関連でもうひとつ ―― この伝記にはナボコフが〈決闘(デュエル)〉をさまざまな機会に申し込みそして申し込まれたと書かれている.19世紀末〜20世紀はじめにかけてのドイツでは「決闘文化」のようなものがあったという.渡米する前の人類学者フランツ・ボアズもまたドイツで学生生活を送っていた頃,さんざん決闘の場数を踏み,そのせいで顔じゅう傷だらけになったそうだ(後世に残る彼の肖像写真はどれも修正が施されているという→参照:Douglas Cole『Franz Boas: The Early Years, 1858-1906』).ナボコフもボアズに負けず劣らず喧嘩っ早かったらしい.

◇常盤新平『ニューヨークの古本屋』を読了.ニューヨークの古本屋についての本ではなく,ニューヨークの古本屋の追憶を記した本.ぼくの興味とはちょっとずれていたかな.でも,購読慾を刺激される点は多かった ―― 引用されていたゴサム書店の伝記:R. W. Rogers (1965)『Wise Men Fish Here: The Story of Frances Steloff and the Gotham Book Mart』を〈Alibris〉に注文(US$ 14.95).ついでに,長らく探していた朝日新聞社『世界古本探しの旅』(1998年5月1日刊行)を〈日本の古書店〉で偶然見つけ,これまたゲット.今日は「打率」が高かった.

―― 本書でも言及されていたが,「本屋の本」としてあまりにも有名なのはヘレン・ハンフ『チャリング・クロス街84番地:書物を愛する人のための本』だ.アンソニー・ホプキンズ主演?で映画化もされている.ぼくはこの本を『リーダーズダイジェスト日本版』で読んだ覚えがある.1970年前後のことなので,小学校6年か中学1年の頃だと思う.単に本の注文のやり取りだけの“しょうむない”ストーリーと思わせて,後半部分で盛り上げるという演出だったが,ぼくが読んだのはどうもダイジェスト版じゃなかったようなおぼろげな記憶がある.薄い本だったしね.※いま思うとフシギなのだけど,リーダーズダイジェストってどういう読者層が購読していたんでしょーね.どーしてウチにあったのか不思議フシギ.『かもめのジョナサン』もリーダイで最初に体験したはず.

◇現代新書・第2章のための「系統樹ストック」をアップデート中 ―― とんでもねえところに思わぬ“系統樹”がいろいろあるんですね.探してみるもんだ.とくに,内外問わず企業・機関・組織の〈中〉にまだ掘削されていない素材がたくさんあるような気がする.インターネットで公開されているものも少なくない.※〈プレゼン・ツール〉としての系統樹の威力は偉大だ.

◇〈生物体系学・参考書リスト〉もそろそろアップデートの時期かな.これまた講義用の資料として使うことになるので,この1年間の「増分」を追加しておきたい.※タイトル順にソートした旧リストもアップデート復活させようか……などと慾をかくと,時間がさらさらと砂のようにこぼれてなくなってしまう.

◇もの狂おしい満月の夜.※大変身するなよ....

◇本日の総歩数=5778歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


2 juni 2004(水) ※濃霧の明け方に本の本

◇3時過ぎに目が覚める.夜明け前だが空はもう白んでいる.冬場ではないこのシーズンに濃い霧がかかるのはめずらしい.昨夜も月に靄がかぶさっていた.

◇お,ドーキンス『悪魔に仕える牧師』(→bk1)の感想や書評が出始めていますね.たとえば,林広樹さんの日記〈つくばの日々〉(6月1日付).前著『虹の解体』を読んだときにも感じたけど,ドーキンス特有の“煽り”が口に合うか合わないかで読後感はずいぶんちがってくると思います.ついでに言えば,ドーキンス本は“内容的”に決して読みやすい本ではないですね.グールドは“翻訳的”にはきつい本ですけど,読む分にはまだラクかもね.

―― ドーキンス本については「全然書き足りない」とのことだそうなので,書いてね書いてね.

◇今日はほどよい天気かもしれない.暑すぎもせず,湿度も高くなく.晴れ間もちょいのぞく.組合から写真撮影の依頼――マジ,あれ載せるんすか?

◇蒼樹書房からウィルマー『無脊椎動物の進化』(1998年9月25日刊行,蒼樹書房,ISBN: 4-7891-2057-0 絶版!)が届く.ウッカリ忘れの滑り込み注文でした.小林四郎『生物群集の多変量解析』も土壇場オーダー.※いつまでもあると思うな,本と…….一期一会の出会いです.

―― 蒼樹への代金振込は即完了.※“未払い”のみなさんはよく見習うよーに.

◇お散歩にふさわしい昼休み.公園読書は.常盤新平『ニューヨークの古本屋』(2004年6月5日刊行,白水社,ISBN: 4-560-04993-9).1980年代はじめから四半世紀にわたる著者のマンハッタン紀行.決して“古本屋”ネタだけではなく,いろいろな人・場所・追憶が散りばめられている.雑誌『ニューヨーカー』編集者であるウィリアム・ショーンとの会話とか,ストランド書店はイマイチ気に入らなかったこととか(著者はもっと古くて小ぶりなのがお気に入りか).表紙図柄は老舗ゴサム書店(The Gotham Book Mart)の書棚風景.マンハッタン書店ガイドブックである『Marden's Guide to Manhattan Booksellers』(1994, ISBN: 0-9636646-0-3)や『The Bookworm's Big Apple』(1994, ISBN: 0-231-08494-3)をつい引っ張り出す.いずれも新刊では手に入らなかった本.新しいガイドブックはもう出ない(出せない)ということか.

◇午後は,筑波大に出向いて顔見せと今後の共同研究の進め方についてのいくつか打合せ ―― ありゃりゃ,そういううっかりマチガイもあるんですねー.再計算しないと先に進めません.ラボを見学させてもらったり.

◇あっという間に夕方になり,なんだか睡魔が.朝早かったせいか.

◇本日の総歩数=12716歩[うち「しっかり歩数」=7055歩/60分].


1 juni 2004(火) ※「世界でもっとも高貴なスポーツ」とは?

◇昨日は高温・強風・土埃だったのに,一晩中雨が降り続き,一転して気温の低い朝になった.明け方はひさしぶりに本降り.しかし次第に回復して,昼前には空が明るくなってきた.

◇注文していた岡田昌史編『The R book データ解析環境Rの活用事例集』(2004年6月1日刊行,九天社,ISBN: 4-901676-97-0※CD-ROM添付)が届く.本日発売.こりゃ,厚い本だ(xii+435 pp.).これをマジで短期間に完成させるとはね.たいしたもんですねえ.こういう“勢い”というのはコミュニティがもつ“慣性”のなせるわざかな.同時多発的しかもやる気のある人材が自然に集まってくるというのは「場」ができつつある証拠でしょ.

―― 〈R〉ユーザーの多くはデータ解析のツールとしてこのソフトを使う機会(と動機)がほとんどだろうと思う.ぼくの場合は,統計プレゼンテーション用のソフトとして〈R〉を使うことがほとんどなので(いまのところは),グラフィクス関連の章や節から読んでいこう.

―― お,さっそく〈The R Book 正誤表〉がアップされている./中澤港さんによる〈『Rによる統計解析の基礎』正誤表〉もついでにメモメモ.

◇メーリングリストへのグリーティングを出す.〈EVOLVE〉の会員数が先月1700名を越えた.同じく,先月のうちに〈BIOMETRY〉は800名,〈TAXA〉は600名の大台に乗った.いずれも一般的な基準で言えば「大メーリングリスト」の部類に入るはずだ.

―― MLが大きくなるほど〈スケール効果〉が出てくるだろうと前にも書いたが,少なくとも〈BIOMETRY〉に関してはこのあたりの動向が間もなく「可視化」できるようになる.電子メールに基づく知識マネージメントのための MOKA の運用が〈BIOMETRY〉で近日中に開始される予定.このシステムを用いると,あるスレッドでの話題の検索だけでなく,〈BIOMETRY〉会員の「人脈」や「スキル」の検索まで可能になる.いろいろと楽しい時間が過ごせるのではないかな.※個人的には,〈EVOLVE〉の MOKA がほしいんですけど >K浦さ〜ん.

◇晴れ間が覗くようになってくると,またまた居室の気温が高くなる.向かい側の別宅...とちごて...別室に避難.これから夏場に近づくにつれて,とにかく“涼しいところ”を求めて館内を彷徨うのだ.

〈救出大作戦〉が終って ―― 今月解散する蒼樹書房の〈在庫本〉の個人販売は先月末ですべて完了した.公的には3月末時点で入手することはできなかったが,著者・訳者の協力により“窓口”を開くことができたのはよかった.今後は著者・訳者の手元にある分をパーソナルに問合せるという細い道が残されているだけ.

―― ソーバー『過去を復元する』については,購入を希望される方はぼくまでご連絡下さい(氏名・住所・冊数をお忘れなく).

◇推薦していただいてありがとうございます.感謝感謝.

◇年度末にとてもじたばたしたJSTフォーラム〈進化生物学によって人間観は変わるか?〉のフォローアップ・ワークショップを企画する時期が近づいてきた.JARECから連絡あり.8月にやるんですかあ? 涼しいところがいーなあ.寒いくらいに.※などと勝手なことを言う“実行委員長”>それはワタシ....

TRC週刊新刊案内をチェック:1375号 ―― 買うべき本はもう買いましたよん.常盤新平『ニューヨークの古本屋』とか延髄反射で発注済(というかもう届いてるし).中公カラー新書の萩野矢慶『ギリシャを巡る カラー版』も.篠永哲『ハエ 人と蠅の関係を追う』どないしまひょ?

◇読了したブライアン・ボイド『ナボコフ伝:ロシア時代(上)』(2003年11月20日刊行,みすず書房,ISBN: 4-622-07071-5)にこんなくだりがある.新婚まもないウラジーミル・ナボコフと妻ヴェーラとの亡命ベルリン生活(1926年のこと)を描いた1節――

ナボコフ夫妻は,リューゲン島にある,バルト海に面したもうひとつの保養地ビンツに旅立った.今回も子供の付き添いだったが,連れてきたのは,ブロムベルグという名まえの,アンナ・フェイギナの親戚たちで,十歳から十六歳までの三人の子どもたちだった.子どもたちが帰ると,ナボコフ夫妻は,近くのミスドロイまで足を伸ばし,そこでウラジーミルは,「世界でもっとも高貴なスポーツ」である蛾の採集を楽しんだ.[p.325:ボールド三中]

―― ほほー.

―― 十数年に及ぶベルリンでの滞在中,ナボコフは蝶や蛾の標本を調べに,ダーレムのドイツ昆虫学研究所(DEI: Deutsches Entomologische Institut)によく通ったという.大学を終えた Willi Hennig が DEI に配属されたのは1937年1月1日付のことだから,ナボコフがベルリンにいた最後の年と重なっている.「重なる」とはいえ,紙一重.ナボコフがドイツを去ったのは同年1月18日のことだったから.

◇なんだかなりゆきで,農環研分会ニュースに原稿4枚ほどの投稿(「農環研サンライズの日々――今日も夜明け前に起きるのだ」) ―― はあ,ぜんぜん組合っぽくなくてごめんねー.individualist にはしょせんこういう書き方しかできないので.>書記次長どの.

◇本日の総歩数=6600歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


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