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日録2004年4月


30 april 2004(金) ※振替休日なのでやっぱり仕事(…)

◇うん,きょうもいい天気だ.さぞや休み甲斐があるはずなのだが,そうも言っていられない(いろいろあって).

◇まずは〈Hennig XXIII〉の参加登録をば.演題と要旨はあとで送るとして,今日が締切の early registration だけは先にすませておかないと.※どなたかいっしょにパリに行きません? 毎年毎年,日本からの[ほぼ]ひとりだけなので.

◇〈iPod〉君がゴネてしまう ―― MP3プレイヤーではなく,外付けHDDとして用いるとしても,あっちゃこっちゃにつなぐたんびに初期化されてうっとおしいと思ったら,結局どれかひとつのホストマシンに縛られるというなんですね.USBメモリーのようにプラグ&プレイというわけにはいかないのか.転送速度を考えると,G4の FireWire に接続して使うのがラクでいいかな.旧 iPod 君と同様に PowerBook につなげてもいいんだけどね.

◇なんだかすごく暑いんですけど(汗)―― タテマエ上は振替休日なので,タテマエ上はのびのびしている.でも,ホンネ的にはアレもコレもソレもあったりする.午後は悠々自適するはずが,結局夕方までこまごまと仕事してしまう.※なんてこった.

―― アレはGWをまたぐとマズイんですね? アレアレ.ふむ.また〈一気書き〉かな.※一筆書きじゃあるまいし…….

◇5時過ぎに長男の中学校の家庭訪問あり.緊張しましたデス.

◇夜,『写真でつづる宮本常一』を静かに読み進む.古い写真や資料をよく掘り出したものだと思う.旧・澁澤敬三邸のアチック・ミューゼアムがいい感じ.こういう研究環境があの時代に私設でつくれたということ自体が驚き.宮本[一家]はそこに何10年も起居したという.

◇明日からはゴールデンウィークということで,あちこち仕事を抱えて移動するのだ.まずは高崎にワープし,すかさず草津温泉に隠遁する予定.

―― いま漢字変換してみて気がついた,上州人は必ず【くさ】と発音するのだが,それでは変換できませんな.【くさ】しか受けつけないということか.

◇本日の総歩数=5129歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


29 april 2004(木) ※休日なので仕事(天邪鬼)

◇朝から一足早い五月晴れの空がきれいに晴れ上がっている.今週末からのゴールデンウィークを感じさせる斥候日ではあるが,まだ平常心は保っていられるようだ.

―― 未明に研究所に忍び込み,進化学会東京大会の企画シンポ応募や一般講演受付間近になっていよいよ再始動がかかった〈Qshinka〉の“死に体アドレス”を大量に粛清する(グレーっぽい半死アドレスもついでにシュレッダーにかけてしまう).逝ってらっしゃい.50人ほどを一挙に配送リストから削除し,エラーメッセージ津波を防波する.年度の変わり目と国立大学法人化の影響で,不配エラーがてんこ盛りで弾き返されるのは目に見えているから.

◇いつのまにか月末が迫ってきたので,進化学会大会に公募シンポとして出そうとしている〈非生命体の進化理論〉の演者を詰めないといけない ―― アタリをつけておいた候補者にメールで打診してみる.すでに1名は確定しているので,あと3名か.うち2名の候補者にはすぐに届くだろう.

―― 実に幸いなことに,その2名の方から「講演受諾」の返事がすぐに返ってきた.これは幸先がええですな.もうひとりのオーガナイザーである佐倉統くんに連絡して,明日にも大会事務局に申し込めるように手筈を整えよう.あと1名は近日中になんとかします.

―― 今年の〈〉シンポのキーワードは現時点では,【A-life進化】【考古型式学】【茶道書系譜】でございます.※あとひとり「アノ人」が入ってくれると,さらにパワーアップできるかもね.乞うご期待.

◇某辞典の見出し項目の検討とか./某原稿の改訂作業とか./某学会への参加申込みとか.※エンドレス…….連休前にもかかわらず,メニューは豊富.

◇夏前の巡業予定 ―― 6月に越中[形態測定学],7月に青葉山[生物統計学].いずれも15時間の高座です.冬学期には,稲毛,南大沢,浅間温泉と予定が入っている.※襲撃予定地のみなさん,よろしく.迎撃しないでねー.

◇新しい iPod(40GB)が届いたのでセットアップ.Mac の方は今まで通りだからいいとして,Windows 機への接続にちとまごつく.あ,iTunes だけじゃなくて iPod ソフトウェアがないとダメなのね.パソコンとの接続が FireWire(IEEE 1394)かまたは USB 2.0 推奨とのことだけど,DynaBook も Latitude も USB 1.1 しかないので困ってしまう.曲の転送は PowerBook でやればいいということか.オプションの Belkin のボイスレコーダーとメディアリーダーをつないでみる.これで音声ファイルとか画像ファイルの扱いがラクになってほしい.メディアリーダー,意外にかさばる.ボイスレコーダーは超コンパクトでよろしい(なくしてしまいそう).

―― 旧 iPod(20GB)には BCJ の Bach カンタータ全集(1〜22)をはじめ約 4GB 分の秘曲が詰まっている.こちらの方は最初から MP3 プレイヤーとして使っているので,そのまま使い続けましょう.牛久運動公園体育館のフットサル大会に出ていた次男が,iPod のスクリャービン〈プロメテウス:火の詩〉をちょっと聴いて,「スターウォーズのBGMみたいで,カッコイイ〜」と感想を述べた.今度は〈法悦の詩〉でも体験してみる? ※アヤシイ方向に誘ってしまう父.

ちっとも本を読んでいないではないか! ―― おおいに反省して明日は読書にいそしもう.※その前に「やること」があるのではないか? ――アレ,いま何か言いました? 空耳かしら…….

◇本日の総歩数=4096歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


28 april 2004(水) ※よりどりみどり(sehr teutonisch ...)

◇昨日は南風が吹き荒れ,気温も湿度も高かった.前線が通過した今日は,まだ曇ってはいるものの,湿り気と涼しさの点では快適になった.

◇忘れないうちに〈azur〉をダウンロードしておく ―― 成長し続ける〈青空文庫〉を読むためのビューアー.ダウンロードしてから30日間は無料の試用期間.その後も使い続けるには2100円のライセンス料を払うという販売方式.※あ,また時間がさらさらとこぼれ流れていきますわ.

〈救出大作戦〉 ―― たたみかけるように方々にさらなる「サイフのヒモ緩ませ工作」を進める.蒼樹書房から書簡が届く.単に売り切るだけではなく,auferstehen させなさいという秘密指令ですね.ラジャー!

◇〈テュートン的〉な文体は腹持ちがいい? ―― Willi Hennig の書くドイツ語が良くも悪くも「ドイツ語」的であることはよく知られていて,ドイツ語を母国語とする Ernst Mayr でさえ『The Growth of Biological Thought』の中で:

Hennig's work is written in rather difficult German, some sentences being virtually unintelligible. (Mayr 1982: 226)

と書いている.もっと分岐学派寄りであるはずの Sergei G. Kiriakoff でも,ベルギー昆虫学会の会報に寄稿した Hennig (1950) 『Grundzüge einer Theorie der phylogenetischen Systematik』の書評の中で:

Cet ouvrage fondamental est, malheureusement, assez difficile à lire. (Kiriakoff 1952: 294)

などとぶつぶつ言う始末.David Hull のゴシップ本(1988)には,やはりドイツ語圏で育った Robert R. Sokal から見ても Hennig の文章は「very tough」だったと書かれている(p.131).※スルメみたいなもんかな.

―― これだけ「証言」がそろうとなると,Hennig の文体がそうとう歯応えがあるものだったことは想像がつく.ちょっと味見してみます?

Wenn die biologische Systematik in diesem Konkurrenzkampf in neuerer Zeit gegenüber anderen und, wie man vielfach hören kann, jüngeren oder moderneren Teilgebieten etwas an Boden verloren hat, so liegt das weniger an der geringeren praktischen oder theoretisch-wissenschaftlichen Bedeutung der Systematik als vielmehr daran, daß diese es nicht recht verstanden hat, ihre Bedeutung im Rahmen der biologischen Gesamtwissenschaft in das gebührende Licht zu setzen und ein festgefügtes Lehrgebäude ihrer Probleme, Aufgaben und Methoden zu errichten. (Hennig 1950: 1)

てな具合.え,ものたりない? じゃあ,こんなのはいかが?

Da es nun einerseits der Vorgang der Artspaltung ist, der die spezielle Form der biologischen Phylogenese bestimmt, und da dieser Vorgang in seinen Besonderheiten anderseits auch dafür verantwortlich zu machen ist, daß wenigstens die Arten und alle übergeordneten systematschen Kategorien, wenn man ihre phylogenetischen Beziehungen zueinander darstellen will, in ein hierarchisches System gebracht werden müssen, so scheint tatsächlich die Tatsache, daß die Aehnlichkeitsbeziehungen der Organismen im allgemein am zutreffendsten durch die Einordnung dieser Organismen in ein hierarchisches System von Gruppen zum Ausdruck gebracht werden können, für sich allein zu genügen, um die Annahme einer Phylogenese, und da diese nur eine spezielle Form der Evolution ist, allgemeiner überhaupt die Annahme einer Evolution der Organismen zu begründen. (Hennig 1950: 24)

おなかの調子は?

―― 教養時代の第2外国語では南原実という先生にドイツ語を学んだのですが,「ドイツ語では修飾句をタマネギのようにつなげていくと,ずらずらと長い一文が書けてしまう」という話がウソではないことを上の文で実感しますね.こういうのを正統派「teutonisch」なドイツ文体と言うのでしょうかね.同じ頃に畑中正一さんの「生物学ドイツ語」のセミナーも受けていましたが,少なくとも理系ではもっとさらさらした文体がふつうだったような気がします.平均的に短文であるのはもちろんだが,たとえ長くても修飾関係が相対的にシンプルということ.たとえば,同じ生物体系学の本でも Peter Ax の教科書(『Systematik in der Biologie』1988)は対極的に見える:

Das Ziel der phylogenetische Systematik ist ein System der Organismen und nicht eine Klassifikation von Lebewesen. Was ist der Untershied und warum bezeichne ich das Verfahren der Überführung stammesgeschichtlicher Verwandtschaftsbeziehungen in ein von uns konzipiertes Gebilde als Systematisierung und nicht als Klassifizierung? Die Termini Klassifikation und Klassifizierung erstrecken sich auf die Konstituierung von Klassen der Logik. ... Die Taxa des phylogenetischen Systems sind aber nun einmal keine Klassen der Logik. ... Die Taxa des phylogenetischen Systems sind Abbilder realer Einheiten der lebenden Natur, deren Komposition die Natur in der Evolution selbst bestimmt hat. (p.6)

―― 「文体のちがい」としか言いようがないよね.Hennig と Ax のどちらの文体がより Teutonic なのかはぼくには結論できません.ただ,比較の上からいえば,Hennig のはいかにも読後に「胸やけ」しそうだ.あるいは,Ax の方がより「更科蕎麦」的であると言うべきか.

―― ほほー,なあるほど,並み居るビッグネームたちと比較しても Hennig 文体は互角に立ち回れると.Kant といえば,かつて神保町の信山社でレクラム文庫を何冊か買って,即死したことがあります.あれは実に心地よい「末期」であった(何が何だかさっぱりわからぬまま……).

◇それにしても,テュートン的といい,ヴィクトリア朝的といい,かの時代の「悠揚迫らざる文体」と正しくつきあうには,どのような読み方をすべきなんですかね ―― 斎戒沐浴すれば,意おのずから通じる?

◇本日の総歩数=2925歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


27 april 2004(火) ※足の痛いすね毛,腰の痛い馬ふん

◇未明からもう地面が濡れている.今日は荒れ模様の天気で,風雨が強まるそうだ.こんなときにまだ駒場に登城しなければならないとは…….ふうっと雨足が強まっては,ざーっと.

◇〈煥乎堂〉の本店ですか ―― 群馬の中では品揃えが充実してますね.上州コーナーは見るべきでしょうね.いまはビルの中の新しい店舗ですが,道をはさんで向かい側にあった昔の店舗も趣きありました.煥乎堂で本を買いこんで,表町の「野口氷店」でかき氷を味わい,そのまま前橋駅に向かうというのが夏場の理想的なコースかと.

◇ええやんええやん,どーせ〈すね毛〉なんやし,もうグレたる〜 ――〈馬ふん〉さん,連れもって行きまひょかー.どつき漫才なんかどないだー.え,腰にワルい.そら難儀なこっちゃなあ.〈馬ふん〉にも腰がありますのん? え,〈すね毛〉にかて足があるやんかって? こら参ったー,やられましたなぁ.ま,うちらも早いこと〈生物〉に進化したいなあて思てましたけど,もう腰やら足が付いてんのやったら,進化する必要ありまへんなあ.どないしまひょー? 今のままでかましまへん?

◇メールに返事を書いたり,非常勤出講日を調整したり,いろいろこまごまと.

◇メルボルンの Gareth Nelson さんからメール ―― Willi Hennig 『Phylogenetic Systematics』(1966, Univ. Illinois Press, ISBN: 0-252-00745-X)の中で〈最節約原理〉を示唆する該当箇所(p.121)が1999年の第3刷でやっと「改訳」されたというメッセージ.ドイツ語の原文では――

Je mehr sicher als apomorph zu deutened Merkmale (nicht: Merkmale uberhaupt!) bei einer Anzahl verschiedener Arten vorhanden sind, desto besser ist die Annahme begründet, daß diese Arten zusammen eine monophyletische Gruppe bilden. (Hennig, 1982:121)

―― となっていた.英訳の初版(1966)と第2版(1979)では,この部分を:

The more certainly characters interpretable as apomorphies (not characters in general) are present in a number of different species, the better founded is the assumption that these species form a monophyletic group.

すなわち「派生的と判定された形質の存在が“より確実”(more certainly)であるほど」という意味であると解釈されました.しかし,1999年の第3刷では,この部分を:

The more characters certainly interpretable as apomorphies (not characters in general) are present in a number of different species, the better founded is the assumption that these species form a monophyletic group.

と「改訳」したとのこと.これにより,ドイツ語原文の意味:

確実に派生的と判定された形質(単なる形質ではなく)がたくさんあるほど,これらの種が単系統群を成すという仮定の論拠は強化される.

が通るようになりました.

―― Nelson さんは「English can sometimes be a troublesome language!」と結んでいますが,むしろ Hennig の書く厄介なドイツ語に悩まされたというのが真相でしょう.

◇目黒から早飛脚 ―― 大会登録システムが何とか稼動できるまでになったということ.あとはデータ管理システムの方ですか.ほとんど傍観していただけですが,お世話さまでした.※無力なワタシ(しょせん「すね毛」やし……それが言いたかったんかいっ)

◇天気はどんどん悪化して,風強く,雨足も横向きになってきた.こういうときにやっぱり出仕しないといけないんですかー>殿.

◇そーですか,先週末の明倫館デュエルの「勝者」は判然としないのですね.ふむふむ.

〈救出大作戦〉 ―― 旧蒼樹書房本の割引購入連絡先リストをメーリングリストに流す.連絡先が判明しているのは,下記の7冊:

  • 日浦勇『蝶のきた道
  • 日浦勇『海をわたる蝶
  • フツイマ『進化生物学
  • ソーバー『過去を復元する
  • リドレー『新しい動物行動学
  • ハーストン『野外実験生態学入門
  • クレブス&デービス『進化からみた行動生態学
一方,連絡先が不明(あるいは関係者がまだ動いていない)のは下記の7冊:
  • ファルコナー『量的遺伝学
  • ウィルマー『無脊椎動物の進化
  • 小林四郎『生物群集の多変量解析
  • 菊沢喜八郎『植物の繁殖生態学
  • 菊沢喜八郎『北の国の雑木林
  • 町田洋『火山灰は語る
  • ケストラー『偶然の本質
なお,上田恵介『一夫一妻の神話』と伊藤嘉昭他『動物生態学』については別の出版社から販売されることが決まっている.

―― まだ〈救出大作戦〉に参画していない関係者の掘り起こしが必要だ.あと2ヶ月だからね.

◇須藤功編『写真でつづる宮本常一』(2004年3月31日刊行,未來社,ISBN: 4-624-20078-0)―― 貴重な写真集だと思う.いい顔してるね.武蔵美時代のスナップ写真,秀逸.佐渡の鬼太鼓座創立にも関与.アチック・ミューゼアム時代の同人に知里真志保.※四の五の言わずにすぐ買うべし.

◇進化学会大会のシンポ講演者のリクルート再開.もう,たいへん.ぱたぱた仕事をこなしたいものだ.

◇さて,と,風雨の中を東京に出発しましょうかねー.※気が重いなあ.嵐になったらどーしようかなー.

―― と外に出たとたん,葉っぱや小枝が飛び散って,とんでもない天候になっていることを実感.吹きさらしのひたち野うしく駅から乗り込み,御徒町→デリー→湯島→渋谷と経由して,午後6時過ぎに駒場にたどり着いたときには,すね毛も大人毛も関係なく誰も彼もが強風になびいていました.雨もぱらっと降ったりするが,それ以上に風が強いねえ.

◇進化学会の大会実行委員会 ―― そろそろと実務的な話が具体化してくる.要旨集の印刷担当なので,業者に見積もりを出してもらう必要がある.大会登録システムは LATEX を出力してくるので,dviからテキスト部分を抽出するようにしないと,その後の編集に支障がある. LATEX ではなく InDesign で組版するつもりなので.

―― 話し合いの最中も,外は猛烈な風が吹き荒れ,駒場の巨木たちも吹き流されている.

―― 午後8時半にお開き.駒場下に拉致しようという殿の御意向よりも,つくばに帰れるかどうかの方が重要案件.案の定,強風によるJR運行の乱れがあり,上野駅で待たされる.11時過ぎにやっと帰還.

◇本日の総歩数=8936歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


26 april 2004(月) ※蛙もすなるサックス(バスクラか?)...

◇気温6度の早朝(冷えてる)―― 藤の花が咲き始め,熊蜂の羽音がうなる.ちょっとガマンして半袖着てますけど,やっぱりすーすーするなあ.

◇きのう「「青焼き」はもう死語だよね」などと書いたところ,ほぼ同時に京都とメキシコから「建設業界では青焼きはいまでも現役である」との通報が届いた.うーむ,ワタシはまちがっていたようだ.コピーに比べて経費が数分の一ですむ「青焼き」は図面の複写方法としてなお重宝されているそうだ.※自分が知らないからといって「勝手に殺してはいけない」という教訓だ.

◇先月さんざんじたばたしたJSTフォーラム〈進化生物学によって人間観は変わるか?〉の報告書が届いた.A4版で130ページほどの分量.じたばたした甲斐があったというもの.今年度はフォローアップの企画がまたもや開催されるという.今度は段取りよく進めたいものだ.

◇〈辞書苦界〉再び ―― 西方浄土より電話あり,例によってあれあれという間に巻き込まれ巻き取られていく.あれあれ.それにしても,どこでもかしこでも「辞書」づくりが盛んなこの数年だけど,なぜ? 辞書って売れてるの,それとも日本人が辞書をつくったり読んだりするのが好きということか? ようわかりませんが,またまた「メイキング・オヴ・辞書」のはじまりはじまりぃ.まずは見出しの選択ですね.

◇日が昇るとともに気温上昇.昼休みには20度くらいには達しているのではないかな.とある事情でつらいのだが,本読みウォーキング.久しぶりのウィンチェスターOED本を公園読書.James Murray の生い立ちと経歴.天性のpolyglotっているんですね.経済的にも家庭的にも不遇な時代が長く続いたという.その頃まさに風前の灯だった OED が Murray を獲得できたのは幸運なことだった.

◇献本いつもありがとうございます ―― リチャード・ドーキンス『悪魔に仕える牧師:なぜ科学は「神」を必要としないのか』(2004年4月30日刊行,早川書房,ISBN: 4-15-208565-7).「初のエッセイ集」と銘打たれているが,ドーキンスはいままで寄せ集めでない「書き下ろし」ばかり出版していたということか.前著『虹の解体』から数えて3年ぶりに出た.

【欹耳袋】(その1)―― ごく一部で話題?になっている『Journal of the History of Biology』誌の「Romantic Conception」号(Volume 37, Issue 1, Spring 2004)はフリーでダウンロードできますね.やじうま的にはおもしろそうな Michael Ruse と Robert Richards の“取っ組み合い”とか,Yule の「進化的総合」の話,そして書評セクションをpdfでゲットしました.※Richards の『The Romantic Conception of Life』をまだ読み終わっていないぞ>ぼく.

【欹耳袋】(その2)―― 〈知泉書館〉のラインナップは確かにそそるものがある.〈以文社〉を連想させる.※「新刊案内」や「近刊案内」はどこの書店でも見られるが「続刊案内」というのはみたことない.

◇おお,〈三中トンネル〉!―― 何かの機会に詣でないと.

◇とある事情は好転せず,早々と就寝.いたたた.

◇本日の総歩数=11727歩[うち「しっかり歩数」=7386歩/67分].


25 april 2004(日) ※「あなたの前世は、すね毛です!」(あのなぁ)

◇さて,サイト開設1周年記念日の今日を快晴で迎えた練馬の朝 ―― ひさびさに光が丘公園の一周コースをば.気温は低いものの日射しと紫外線はとても強そう.日なたにずっといると日焼けしそう.光が丘の高層団地の隙間を飛び回る燕たち.田んぼへの灌水が始まった茨城はGWにかけてそろそろ田植えシーズンに入ることを思い出した.

◇もともと「占い」の類は気にしない気質なのでどーでもいいことなのだが,「前世は“すね毛”です」と言われてハイそーですかぁとは言えへんでしょう.プテラノドンでもタンポポのタネでもいいので,せめて認知的に見て「生物個体」を割り振ってほしかったなー.※「すね毛」やでぇ,よりによって.怒 a little.

◇昨日の朝日新聞夕刊にこんな記事(2004年4月24日,東京版12面)が――

四ノ原恒憲筆:【転換点:出来たては湿っていたコピー】[前略].../当時の文化界の大スター,植草甚一は,日本一ニューヨークに詳しいといわれた人だが,晩年の74年まで一度も行ったことがなかった.知識は,すべて,雑誌,本,映画から得ていた.昨年出た『植草甚一コラージュ日記(1)』(平凡社)を読むと,76年でも,自分の原稿を,編集者本人に会って手渡す前に「ゼロックスにする」という記述が何度も出てくる.今や日常のFAXやメールで原稿を送ると,同じものが,手元に残るが,当時はコピーしか,手がなかったからだろう./いや,植草と親しかった高平哲郎の『ぼくたちの七十年代』(晶文社)は,もっとすごい.71年,最先端の外資系広告会社に入った時,「当時,ゼロックスは特別の場合しか使わせて貰えず,コピーといえば青写真で,出来たては湿っていた」と. ...[後略]

―― 「湿ったコピー」の触り心地ってそんなに昔の体感ではなかったはずだけど,それって単なる錯覚か.「青焼き」って冷たくてしっとりしていたことを思い出した.上のコラージュ日記には「ゼロックス一枚35円」という記述もあったが,確かに外の図書館などで複写依頼するときの基本料金は35円だった(ん,今でもか?)よね.※「青焼き」はもう死語だよね.「ガリ版」と同じで.

◇今日は籠っていくつか仕事をする ―― まずは,『Panmixia』太田邦昌著述リストを完成させないと.すでにウェブ公開しているリストをテキストファイルにして,それから手を入れよう.単純作業さ./進化学会大会の公募シンポの申請もそろそろしないとね.連絡をとってプッシュします./Hennig XXIII の参加申込み期限は今月末だったっけ.

◇スクリャービン〈Sym.5: プロメテウス――火の詩〉ってとっても妖しいです.BGMにしてはいけない.〈法悦の詩〉と同様,またもトランペットが絶叫する.おまけに天上から合唱が聞こえてくる.これに色光ピアノのソロが入れば,ホール全体はいったいどーなるんでしょ.※つい最近亡くなったスヴェトラーノフの『スクリャービン交響曲全集』は食指が動かなくはないが,〈4〉と〈5〉だけできっと満腹するでしょ.

◇え,ソーバー『Simplicity』を逃しました? 明倫館書店のアノ棚になかったですか? ソノ棚じゃなくってアノ棚です.近いうちに機会を見つけて発掘してみましょう.

◇【種】の哲学は「全体論」よりはむしろ「システム論」の方に着目した方が見通しがいいような気がする.南アフリカの Jan C. Smuts よりは,東側に目を向けた方がいいかなということ.たとえば,旧東独の Urlich Sucker が著わした【種】哲学本『Philosophische Probleme der Arttheorie』は,弁証法的唯物論の立場から,【種】とは自然界の中で「全体性」をもち「客観的に実在するシステム」であるという点を主張する.階層論・全体論・システム論は多系統的な系譜をもつ観念なのだろう.しかし,【種】に関していえば,旧共産圏には多くの【種】哲学者がいた.そのうちいくつかが日本語にも訳されていることから想像されるように,「【種】システム論」のもうひとつのルーツはここにあるだろう.

◇『骨単』に続いて,『肉単』やら『脳単』も出るらしい(汗).この際,『肝単』『腎単』『皮膚単』『眼単』『歯単』などなどどんどんいきましょう!

◇夕刻に,Panmixia用の著述目録原稿が仕上がる.メールで越中に送ってと ―― これでしばらくテポドンは飛んでこないかな.でも「届いたぞ」テポドンがやっぱり着弾するかな./他にも著述目録をアップデートしたりとか.自分の原稿も修正したりとか.※こういうのってエンドレス.

◇夜遅くにつくばに帰還.ふ〜っ.※試しにスティーヴ・ライヒの『Sextet』をBGMにして外環→常磐道と走りましたが,曲の中身を知っているとついリズムをたどってしまって,睡魔はエクソサイズされることがわかりました.今度は『The Desert Music』あたりで試してみようか(高速道で“睡眠実験”しなさんなって).

◇GW前の今週はもうひとつの原稿をぜひとも仕上げますです.

◇本日の総歩数=12172歩[うち「しっかり歩数」=10080歩/86分].


24 april 2004(土) ※アニヴァーサリイ

◇久しぶりに寒い朝,晴れ上がる.

◇今日は「日録(dagboek)」の1周年記念日です ―― 思い起こせば昨年の4月25日に〈ふと魔がさして〉日録をつけはじめたのが運の尽き.このように1年も書き続けてしまいました.実際につくり始めたのは4月25日ですが,日録の記載は24日から始まっています.だから,今日が日録の1周年.サイト(pagina)そのものの1周年記念日は明日.

―― ともあれ,愛読者あるいは立ち読みのみなさん,たいへん感謝してます.

◇今日は,組合の動員で有楽町「よみうりホール」に出陣.そのあとはお愉しみ……(うふ).

―― ということで,まずは有楽町駅前ビル7階のよみうりホールに到着.この人口超高密度ぶりはいったい…….ホールに入れないのはもちろんのこと(定員千名あまりのウツワなので決して小さいわけではない),ロビーも芋の子洗い状態.全農林の窓口で参加登録して,しばしボー然とする(居場所がないぞ).ロビーにあるモニターテレビでホール内のようすはかろうじてうかがえるが.教育基本法改悪に反対する“連帯感をともに確認しあう”以前に,主催者ロジ担の采配ミスとしか思えないのですが,ワタシには.ある程度の義務を果たしてフェイドアウトする.

◇晴れて冷たい風が吹く.銀座ヤマハ店地下にて,いくつかチェック ―― 渋谷店ほど狭くないので,メシアン『トゥーランガリラ交響曲』の総譜を立ち読み.グロッケンシュピールとヴィブラフォンの鍵盤打楽器以外に8人の打楽器奏者が必要.壇上の配置をうまく考えないと「共有」に失敗しそう.グロッケンシュピールとチェレスタがほとんど同じ譜面じゃないか./ヴィラ=ロボス『ブラジル風バッハNo.5』の〈アリア(カンティレーナ)〉が基本的に5/4拍子の曲だったとは今まで知らなかった./ストラヴィンスキー『火の鳥(全曲版)』の新しい原典版総譜あり.5管編成でハープが3台ね.その昔,ピエール・ブーレーズの「全曲版」をずっと聴いていたので,東大オケで「組曲版」を演奏する機会をもったときまでそういうものが別にあるとはまったく露知らなかった.火の鳥(l'oiseau de feu)の出現から魔王カスチェイの兇悪な踊りあたりが聴きどころ.3部作の中では,『春の祭典』は別格としても,『ペトルーシカ』に比べれば,『火の鳥』の方がはるかに印象的だと思う.物語性のちがいか./コダーイ『ハーリヤーノシュ』のツィンバロン譜をチェック,ついでにヤナーチェク『シンフォニェッタ』のピッコロ・ティンパニをチェック./そーか,スクリャービンの“神秘和音”はルドルフ・シュタイナーの神智学に憑かれたせいだったのか.

―― 姪っ子に特別指導するためのポケット楽典を2冊買って,ムルギーランチ.そして「ゆりかもめ」に乗って,東京ビッグサイトへ.

◇〈東京国際ブックフェア2004〉―― 何もこんな「地の果て」でやらなくたって.駅を降りてから相当な距離を歩いたぞ(確かに駅前にはちがいないが).ぼくの目的は「デジタル・パブリッシング・フェア」の方だったので,ブックフェアとはゲートが別(中ではつながっている).名札を首からぶら下げて入場.

―― ボイジャーのブースに直行.新作のビューアー〈azur〉は,このブックフェアに合わせて22日からもうオンライン販売されているのだそうだ.デモ機を少しいじってみる.〈T-Time〉とほとんど同じ使い勝手なのかな.azur体験版が添付された青空文庫の〈これ一枚『蔵書3000』〉CD-ROMを買う.NTTソルマーレの〈モバイルコミック〉って,どーして「サラリーマン金太郎」がサンプルなんでしょ.向かいのアドビのブースでは,これまたリリースされたばかりの〈Adobe Creative Suite〉のデモ.とにかくシームレスなんですね.Win/Macもシームレスにしてね.〈InDesign CS〉はさらに難しく簡単になっているようだ.Mac版の〈CS〉はきのう研究所に届いているので,連休前にバージョンアップしようかな.

―― 他のブースもつまみ食い:モリサワやイワタのフォントカタログをもらったり,田中優子(和服は当然)講演を立ち聞きしたり,ギネスを呑んだり.台湾・韓国・東南アジア・フランスなどのブースもあった(ことはあった).

―― ブックフェア領域にも入り込もうとしたのですが,寄せては返す人波に翻弄されてしまって.洋書バーゲンコーナーはただただわあわあしていてダメですよ,あれじゃ.即退散.「一日ではまわりきれません〜」とエンドレスに連呼していたけど,リピーターで来る人っているの?

◇汐留駅から大江戸線に乗って,練馬区某所に潜入.嫌がる姪っ子に音階と調性についてひとくさり講義する(否も応もなし).

◇本日の総歩数=12705歩[うち「しっかり歩数」=2748歩/24分].


23 april 2004(金) ※曇っては晴れ,風吹いて雷雨,のち寒気

◇朝から雲が広がっている.昨日と比べると格段に気温が低い.でも,半袖.湿度高し.でも雨は降らないかな.

〈救出大作戦〉進捗 ―― 蒼樹書房へのソーバー本の注文票を郵送.ぼくの注文分などを含めると計250冊ほどになった.まだ時間があるので(2ヶ月ほど)更なる販促作戦を決意する.

―― ここのところ,ソーバー本に限らず「蒼樹書房本,欲しい」メールが個人的に何通もできるだけ関係者(著者,訳者)に転送するようにしています.※欲を言えば,関係者のメールアドレスをここに載せてしまえばいいのだろうけど,そりゃできない相談なので.

【欹耳袋】―― Elliott Sober さんの処女作である『Simplicity』(1975年,Clarendon Press, 0-19-824407-X)はもちろん out of print ですが,神保町の明倫館書店にずっと前から定住していますね.3000円くらいじゃなかったかな.数学の棚の近くにあったと記憶しています.うまく表現できないけど〈分析哲学〉っぽい香りがする本です.科学哲学者 John Beatty による本書の長文の書評が Systematic Zoology 誌に載ったので(Vol.28, no.4, pp.643-651, 1979),そういうアンテナを備えた体系学者ならば知っている本.※Elliott Sober という名前が生物体系学界に登場したのはこのときが初めてではなかったかな.

―― ついでに:同じく Sober 氏の『The Nature of Selection』のハードカバー版(1984年)は J・J 氏お気に入りの崇文荘書店にこれまた数年前から棚にありますね.※みんな,ソーバー本に気づかないのか.はたまた買う人がいないのか.

◇変な天気 ―― 北から風が吹きつけて,体感温度低い(半袖ポロシャツは選択の誤りか).晴れて日射しが見えたと思ったら,夕方,にわかに空がかき曇り,スコールのようにざーーっと.雷鳴まで.元気な前線が関東の上空を通過中ということだろう.

◇[いつものことながら]遅れて届いた Statistical Sciences 誌(Vol.18, no.3, August 2003)は,2000年に亡くなった統計学者 John W. Tukey 追悼号だった.「探索的データ解析」(『Exploratory Data Analysis』1977)という[良くも悪くも]特別な統計手法の提唱者として有名な Tukey だが,統計学者としての長いキャリアがもたらした貢献度の貢献度の大きさは誰もが認めることだろう.

―― 2004年1月7日「日録」に書いたが,Joel Hagen の生物統計学史の論文:

Joel Hagen 2003. The statistical frame of mind in systematic biology from Quantitative Zoology to Biometry. Journal of the History of Biology, 36: 353-384.

には,Tukey とある体系学者との交流が言及されている.植物分類学者 Edgar Anderson は,同時代のG.G. Simpson と同様に生物体系学には統計学的手法が必要だと考えたが,これまた Simpson と同じく,「直感的(eye and mind)」で単純な統計手法が必要であり,難解で複雑な方法論は不用だとみなした.Anderson にとっての「直感的」な手法とはグラフに基づく方法であり,彼はそれを〈ideograph〉法と命名した.この文脈で Tukey が登場する:

In 1959 Anderson spent part of a year working with John Tukey, the eminent Princeton statistician. There was apparently some discussion between the two men about collaborating on a book or a series of papers. But in the end, Anderson was unwilling to move beyond his semi-quantitative graphical methods. For his part, Tukey rejected the sharp distinction that Anderson continued to make between “pointer reading data” of the experimental sciences and “pattern data” of systematics. The statistician also had difficulty understanding Anderson's commitment to intuition and the inexplicit interplay between “eye and mind” that Anderson believed was so central to research in systematics. Ultimately the collaboration broke down, although Tukey was sufficiently intrigued with Anderson's ideas that he dedikated a book on grahphical analysis to the botanist. [p.363]

最後の一文には脚注が付いている.Tukey が書いた「graphical analysis」の本とは:

Tukey 1977 [“Exploratory Data Analysis”]. It should be noted, however, that although Tukey's book dealt with the graphical presentation and analysis of data, Anderson's graphical techniques were not discussed. [p.363, footnote 51]

―― 体系学者と統計学者の間の(結果としてオモテにはあらわれなかった)関わりあいを推測するエピソードとしてたいへん興味深い.

◇夜になって雨が止んだと思ったら,急速に気温が下がってきた.え,北関東では雪の予報,マジですか?

◇本日の総歩数=9208歩[うち「しっかり歩数」=1235歩/12分].


22 april 2004(木) ※John Maynard Smith の訃報

◇昨夜は午前1時まで夜更かししてしまったが,やっぱり5時半には目覚めてしまう.損な体内リズムだ.今日も暑いに決まっている.長袖類はすべて押し入れの奥深くにたたき込んでしまおう.半袖・短パン・サンダル(or下駄)が,これからの季節に立ち向かう正しい独法研究員のコスチュームだ(過度の一般化).

―― 午前中に居室の窓ガラスに紫外線よけの透明フィルムを張る作業に立ち会った.0.1mm厚のフィルムを気泡なく貼っていく「技」に感心する.これで西日が射し込んできても温室化する程度が緩和されるのだという.※ホンマですか?

◇都立大の知人から John Maynard Smith の訃報(4月19日)を知らされた.享年84歳.進化学者としての名声は言うまでもないが,かけがえのないキャラクターだったと思う.日本にも来日したことがあるが,ぼくは1996年にブダペストで開催された国際進化生物学会議(ICSEB-V)の会場で見かけた.数理生態学のセッションでは前の方に陣取ってよく質問していたことを覚えている.勤務校だったサセックス大学の訃報「Evolutionary biologist John Maynard Smith dies」によると,自宅で安らかな死を迎えたとのことだ.天寿を全うしたという表現がふさわしい.同大学の進化学研究所(Center for the Study of Evolution)の訃報には関連リンクが張られている.きっと,これから方々で追悼企画があることだろう.

通知表とどく ―― 「aadda」の〈A〉ですね.ははー.「d」って何やねん,いったい.「所内貢献度」と「行政部局への貢献」か.ま,当然のことですわね.ぜんぜん貢献してないもんね.※ここで「ごめんねー」の一言が出てこないんだな,これが.

◇昨日は駒場のイルカに振り回されて[いる院生たちを傍観して]きたが,今日はイルカの本が献本されてきた(ありがとうございます) ―― 神谷敏郎『川に生きるイルカたち』(2004年4月16日刊行,東京大学出版会,ISBN: 4-13-063323-6).こんな巨大淡水生物が棲めるような川がうらやましい.

―― 昨日,出入りのアカデミア洋書が,オランダの古書店 Junk とドイツの古書店 Asher の稀覯書カタログを持ってきてくれた.よく造られたカタログは読む愉しみがある.〈Antiquariaat Junk〉のカタログは博物学と旅行記の稀覯書を集めてある.〈Asher Rare Books〉のはスゴイ. ダーウィン『種の起源』初版本(1859)がなんと11万ユーロ(1,419万円!:今日の為替レートは1ユーロ=129円)で売りに出されている.同じく『ビーグル号航海記(全4巻)』の初版は43,250ユーロ(558万円).マンションくらいだったら買えてしまうぞ.※ま,カタログを手にして「目の保養」ということですな.

―― もともとベルリンにあった Asher 書店は1830年創業という古い歴史があるが,第2次世界大戦前夜にアムステルダムへの退去を余儀なくされた.きのう読了したオスカー・モンテリウスの考古学本も自費出版ではあったが,Asher 書店を通じて一般に販売されたという.今回もらったカタログ(←)は大版カラー印刷でシアワセになれそう.※稀覯書って別世界ね.遠目に眺めるだけにしておこう.

―― Junk古書店はもちろんかの〈Dr. W. Junk〉書店の系列.堅牢な製本と物理的重量,そして驚くべき高価格で読者を悶絶させていた.

◇シアワセに浸ってはいられないワタシ ―― 現代新書の1章分原稿とPanmixia太田書誌の原稿をこの週末に何とかしないと.

◇午後3時から〈J-STAGE〉の人が学術雑誌の「電子化」についての説明に来た.ぼく一人のためにわざわざ東京から二人で(お疲れさんです).いろいろとデモや説明を聞いて,情報交換した(名刺交換も).学会として電子化します?(>某学会理事のみなさん) 印刷所から J-STAGE にわたされるデータ作成にともなう実費を学会が負担しさえすればいいとのことだが.まずは見積もりをとる必要があるのかな.他に,学会大会の講演要旨の「電子化」という事業も付随しているらしいけど,これって例のあのアレなんでしょうか?(>北の方角を見やる)

◇そう言えば,気のせいか,今日は「灼熱の西日」を背中に感じないですんだようだ.※えらいぞっ,遮光フィルム君.明日も負けずに頑張るんだっ.

◇夜,Ernst Haeckel (1866)『Generelle Morphologie der Organismen』のつまみ食い ―― 体系学(Systematik)に関する記述の確認:

Nach unserer Ansicht giebt es ein natürliches System der Organismen, und dies System ist der natürliche Stammbaum der Organismen, welcher uns den realen verwandtschaftlichen Zusammenhang, die Blutsverwandtschaft zwischen allen Organismen enthüllt, die ursprünglich von einer und derselben Stammform abstammen. (Band I, S. 37) 太字は 隔 字 体 Sperrdruck を表わす]

―― 生物の体系(Die Systeme der Organismen)を任務とする体系学は,ヘッケルの学問体系の中では,形態学を構成する2分科のひとつである解剖学(Anatomie)に属する(当時はこう考えられていたのだろうが)という考えを否定し,もうひとつの形態形成学(Morphogenie)に属させている.後者は個体発生学(Ontogenie)と系統発生学(Phylogenie)から成るのでこの点は明らかだろう.

―― キーワードである〈Stamm〉の定義が問題.リンネ階層分類の〈門〉を指すという字義はこっちに置いといて,ヘッケル自身は Stamm を血族(tribe)すなわち単系統群の意味で用いている.

◇本日の総歩数=2551歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].※怠惰....


21 april 2004(水) ※またもプチ登城 to 駒場

◇今日もからっとした朝.きっと夏日になるだろう.しかし,湿度が低いので許す.この気温でジメっとしたら,即手討ちにいたす.

―― 手討ちにされないように,今日は午後から駒場城に出仕しなければならない.ほれ,アレですよ,例のアレ.今日は〈真珠の神様〉がいるとのことなので,安心しよう(安心しろって).手討ちされた上に神罰まで下された日には目も当てられない…….

―― またも飛んできた“越中テポドン”を間一髪でかわしつつ,perlの書換箇所をつぶしていく.土曜日からは〈神無月〉になるそうなので,それまでが勝負.来週火曜日は大会実行委員会なので,それまでにケリをつけておかないと.

〈救出大作戦〉がらみ ―― 4月20日までに届いたソーバー蒼樹本の集計をする.自分の分を除いて200冊あまりの購入希望が集まった.第1弾は明日にも発注する予定.感謝です.>注文したみなさん.※あとまだ2ヶ月あるので販促に頑張りますです.

◇4月22〜25日に東京ビッグサイトで開催される〈東京国際ブックフェア2004〉の招待券がボイジャーから届いた(ありがとうございます).一般の入場が解禁となる24日には,ちょうど別件の「ついで」が午前中にあるので,午後にでもちょっとだけ足を伸ばしてみよう.

◇あー早く「登城」しないと〜と言いつつ,もう午後2時半だったりする(汗).※きー.

―― 東京にもっていく書類やパソコンをぱたぱたと詰めて,ひたち野うしく駅へ.行きの車中にて,松井ゆみ子『ケルトの国のごちそうめぐり』を読了.食欲増進.北千住→表参道→渋谷とたどり着いたときにはもう5時を過ぎていた.道玄坂上での“ナゾの空白30分”:

…… 渋谷Yマハの店内改装はイマイチですな.おお,久々にメシアンの電話帳こと〈トゥーランガリラ交響曲〉の総譜に再会.ぐぇ,28,800円ですって! とどめのショスタコーヴィッチ〈10〉だぁ.改装で楽譜売り場が実質的に削られたのでは? ぶーぶー.ブーイングのままにムルギー・カレー.

の後に駒場東大前に到着,シマダ城の控えの間に這い上がったのは午後6時(もう夕闇が迫っている).今日は一日がとても長いぞ.

―― 有能なる〈真珠師〉のみなさんのおかげで,イルカの上で登録システムを転がすことができるようになるかな(現在進行形).※傍観しててどーすんねんな.と申されましても,まったくもって無力ですので一歩下がっていないとね.よろしくよろしく.

◇シマダ城の控えの間にて,オスカー・モンテリウス『考古學研究法』(原書1903年,翻訳初版1932年,復刻1999年9月20日刊行,雄山閣書店,ISBN: 4-639-00365-X)を素読開始.19世紀末のセピア色ダーウィニズムが匂いたつ.それにしても1世紀前の本が新刊でなお入手可能とは驚きだ.〈型式(Typus)〉の体系(System)とか順序(Ordnung)というものの言い方は,かつての生物体系学を強く連想させるものがある.

― 上の写真はベニカミキリ.幼虫は竹を食害するという.この季節,コデマリの花などに訪花する.以上,D畑くん教示(夜).―

◇それにしても,こういう学会大会の登録サイトを構築するというのはたいへんな作業で,それなりの知識がないと手も足も出ないことがわかる.毎年使うこういうシステムはどこかのサーバーに固定して置いた方がラクでしょうねと神様とお話ししたりして,手練れの院生たちが格闘している傍で茶などすすっていてよろしかったのでしょうか?(すまぬ) 必要なファイルやガイドをパソコンに入れてもっていったのがよかったみたい(少しは貢献したか).「イルカがダメなら,ワタシのマシンで」という慈悲深い神様のお言葉があったりして.

―― 結局9時前まで駒場城内にとどまったものの,最後まで見届けることを得ず.長い一日の終わりにとぼとぼと坂下門に向かって歩いていたら,国際生物学賞イベント帰りの殿とぱったり遭遇:「おお,ミナカくん,例のアレはできたかな?」「いえ,殿,まだ完成してはおりませぬ」「なにっ,できあがっておらんのに帰るとはっ(刀のツカに手がかかる)」「あ,いえいえ,有能なブレーンたちがその点はしっかりと(汗)」「ならぬ,ほれ,そこの〈学園〉のお白州で申し開きを聞こうではないか(手を引く)」「あ,それだけはひらにひらにご容赦を.お慈悲をぅ」と駒場下引き廻しの刑をかろうじて逃れ(来週火曜は逃れられないか……),帰路につく.

―― 上野に向かう銀座線で廣野さんとばったり.蒼樹書房に関するビックリ挿話をひとついただく(確かに生活の糧が保証されるかと考えると後継候補が引いてしまうのもムリはない).あと,例の翻訳話とか(ヤブヘビだったかも……).

―― 常磐線にて『考古學研究法』読了.壷やら留針やら剣やらもういろいろと.方法論と銘打ちながらも,各論のウェイトが大きかった.遺物の「痕跡器官」への関心などダーウィン(とヘッケル)の影響はありあり.「型式(Typus)」とは「種(Art)」である:

考古学者にとっては自然科学者が個々の「[アルト]」を他のものから区別することを理解しなければならないように,一の型式を他のものから正しく区別し得ることがまことに必要である.(p.21:原文の歴史的仮名遣いは変更した[強調みなか])

◇朝から夜までたいへん長い一日でした.

◇本日の総歩数=11378歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


20 april 2004(火) ※いろいろと動き出す……

◇夜半の雨も明け方にあがり,一瞬だけ霧が立ち,大鷲神社の叢あたりから雉子の鳴き声.もうしばらくすると郭公の囀りが宿舎に谺する季節がやってくるはず.今日は晴れ上がるようだ.また夏日にちがいない.

―― もうそろそろだろうと机の下の容器を開けて木屑を掘ってみたら,案の定,オオクワガタ夫妻が越年から目覚めてごそごそしていた.そろそろ餌をやらないといけないかも.水を足して木屑を湿らせておく.

―― ベランダの亀たちも日中は動き回っているようなので,先週末に水槽を大掃除して,こっちにも久しぶりに餌をやった.何でも喰うので世話ないがそのときは桜海老.

―― いろいろと有機体が動き始めている.昼休みの散歩で実感.

◇科学哲学者の Alex Rosenberg が京都と東京で講演する(<網谷さんの4/17情報より)―― まずはじめに,5月14日(金)午後3時から京大文学部(→第14回PaSTA研究会)にて.次いで,5月18日(火)午後5時から東大文学部哲学研究室(→Alex Rosenberg講演会)にて.演題はいずれも「Fitness, probability, and the principles of natural selection」で,その内容は彼のウェブサイトの〈Links〉からpdfとしてダウンロードできる.

―― 生物学哲学に関心のある人は見逃さないように.思い起こせば,彼の初期の著作『The Structure of Biological Science』(1985年,Cambridge University Press, ISBN: 0-524-27561-X)を輪読したのは博士課程にいたころのこと.Ed Wiley の長文の書評が Systematic Zoology 誌に載った(Vol.35, no.2, pp.262-265, 1986)ので,体系学者の間でも Rosenberg の知名度は高い(HullやRuseやSoberほどではないにしても,Kitcherと同程度には知られているだろう).機会をつくって行ってみようと思う.

【欹耳袋】車の運転中に「聴いてはいけない曲」があるらしい(→「ドライブするとき危険な曲――第1位は意外にも……?」 ―― イギリスの自動車関連の調査機関である〈RAC Foundation〉の調査結果(4月14日発表).「聴いてはいけないクラシック」の第1位は(予想通りか)ワーグナー〈ワルキューレの騎行〉,次いでムソルグスキー〈禿山の一夜〉やヴェルディ〈レクイエム[怒りの日]〉がリストアップされている.むべなるかな.

―― RAC の調査によると,“アブナイ曲”の要件は「一般的に、60BPM(Beats per Minute)を超えるテンポの楽曲を聴くと、心拍数と血圧が上がる」にあるらしい.強弱の起伏が大きかったり,音の数が多いというのも危険要因になるそうだ.ということは,心拍にシンクロするテンポの曲,具体的には拍のアタマがきちっと刻まれる行進曲風のものはすべてヤバイだろうな.もちろん高揚オスティナート系(カール・オルフ〈カルミナ・ブラーナ〉みたいな)は全滅だろう.変拍子系たとえばストラヴィンスキー〈春の祭典〉はどーでしょう? 同罪かもね.第1部〈大地礼讃〉の終曲「大地への口づけ――大地の踊り」あたりは要注意.個人的には第2部の終曲〈生贄の踊り〉がヤバイっす(煽る変拍子は超キケン).

―― 上の調査はドライバーをつい「熱くさせてしまう」という意味で事故につながる[かもしれない]危険な曲のランキングを発表したということ.同じ RAC の調査では「安全な曲」のランキングも発表されている.おお,バッハの〈無伴奏チェロ組曲〉は安心なのですね.なあるほど.

―― しかし,「居眠り運転を誘発する曲」というのも一方できっとあるはずだ.個人的には“ミニマル・ミュージック”は車のBGMにしない方がいいと思う.スティーヴ・ライヒなんてダメダメ! 〈Sextet〉とか〈Drumming〉には催眠作用あり(しかも常習性があるのでタチ悪い).

◇ん? 徹底的に車社会のつくばでは,「食べ歩き」という概念そのものが成り立たないのではという森山さんの指摘 ―― みなさん,「食べ走って」ます,ハイ.

◇夜になって強風が吹いた.北関東では「暴風警報」が出ていたけど,いったいどういう気圧配置か.

◇明日から来週始めにかけては,方々に「神出鬼没な人」になる予定.

◇本日の総歩数=11731歩[うち「しっかり歩数」=5598歩/48分].


19 april 2004(月) ※ ¡ Hola ! ¿ Qué tal ?

◇Buenos días. Hoy no está estupendo ―― 晴れ上がった昨日とは打って変わって朝から雲が厚く,午後から夕方にかけて雨になるという予報.そのせいか湿度が高いな.半袖をごそごそと引っ張り出す.寒さには鈍感;暑さには敏感.

◇今日は,JICA 筑波国際センターでの統計学講義〈キューバ国別研修「小規模稲作技術」〉のため,朝から夕方まで拘束される.聞くところでは,キューバは意外にもコメ消費国とのこと(一人あたりの消費量では日本以上とも).しかし,コメ自給率は40%台で,主として中国から輸入しているらしい.それではいけないということで,JICAへの研修生派遣とあいなったそうだ.去年からはじまったこのコースは今年が2年目.10名が先ごろ来日し,10月までの研修課程を受ける.ご苦労さんです.

―― 9時半から講義開始.スペイン語オンリーのクラスなので,複雑な仕様の講義になる.ぼくの噺は日本語で行ない,スペイン語への逐次通訳をしてもらう.板書とOHPは英語.予想していた通り,昨年までの英語コースよりも牛歩的な進行速度になる.キューバ研修生に日本語で講義するとどうなるか? もちろん,通訳さんがいるのでワンテンポ遅れで内容は伝わるのだが,リアルタイムに日本語で伝える努力を怠るわけにはいかない.アイ・コンタクトとジェスチャーがものを言う(通訳さんに話しかけてはダメね).

―― データのバラツキをイントロにして,平方和,分散,F値といつも通り話を進めていく.逐次通訳なので,いつの間にか一文一文を短く,しかもゆっくり話をするという新たなスタイルが出現したことがわかる.JICAの通訳さん,たいへん.スペイン語の統計学語彙集を傍らに置き,メディア[平均]とかバリアンサ[分散]などと確認しつつ翻訳している.

◇昼休み.JICA食堂でランチして,高野台公園に散歩.かすかに雨滴が飛んでいる.

◇午後の講義は1時半から再開.完全無作為化法の実験計画と分散分析の講義.母国に帰ってからの状況を考えると電卓でできるだけ計算を完了するような手順を教えないとダメらしい.う〜む,電卓のプロになる道はなかなかキビシイね.スペイン語のマニュアルあるかな?

―― 意外な落とし穴:日本では数字の区切りをコンマで表わすが,キューバではそういう習慣がなく,3桁ずつ‘わかち書き’することで対処しているそうな.うっかり数字にコンマをつけてデータ行列を板書したら,小数点と間違われてしまった.

―― 計算の答えを研修生に書かせるのだが,正答のたびに「祝福のキスを!」いうのんは何とかなりまへんか? 午後4時に本日のコースを完了.¡ Muchas gracias ! 次回はデータの集まりはじめる9月にまた来るよん.

◇夕方からぽつぽつと雨が降り出す.研究所に戻ると,アノ仕事の督促が…….今週中になんとかしなあかんなあ.

◇やはり1日講義するといろいろと疲弊します ―― 夜遅くなって雨足さらに強くなる.とりあえず,adiós, buenas noches ということで,今日は沈没.¡ Hasta mañana, entonces !

◇本日の総歩数=9152歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


18 april 2004(日) ※今日こそは活字したい……

◇朝から快晴.湿度低く,寝読書日和.でも,その前に ――

―― TRC週刊新刊案内を2週分チェック:1369号1370号.新年度に入ってますます豊漁.スーザン・セリグソン『パンをめぐる旅』(河出書房新社,ISBN: 4-309-26735-1):パンのエッセイ集(済).訳者はモート・ローゼンブラム『オリーヴ讃歌』も訳している.松井ゆみ子『ケルトの国のごちそうめぐり』(河出書房新社,ISBN: 4-309-26733-5)も済.秋庭俊編著『写真と地図で読む!帝都東京・地下の謎』(洋泉社,ISBN: 4-89691-811-8):はいはい,はまりますからね.礒山雅『バッハ・カンタータの森を歩む CD book 1:マリアの3祝日』(東京書籍,ISBN: 4-487-79960-0):この著者にしてこのテーマそしてこの出版社,まさに三位一体!(きっと美味いにちがいない).でも何巻ぐらい出るのでしょ?(見極めとてもむずかし) 間瀬茂他『工学のためのデータサイエンス入門:フリーな統計環境Rを用いたデータ解析』(数理工学社,ISBN: 4-901683-12-8)は献本していただきました.須藤功編『写真でつづる宮本常一』(未來社,ISBN: 4-624-20078-0):全集を出している未來社からのポートレイト集.宮本常一ってどうみても‘おっちゃん’なんですが,話芸とオルグ能力はバツグンだったそうだ.※リスト以外からも新刊エントリー ―― 都築響一『珍世界紀行:ヨーロッパ編』(筑摩書房,ISBN: 4-480-87617-0)とアラン・ド・ボトン『旅する哲学:大人のための旅行術』(集英社,ISBN: 4-08-773407-2).

―― ここ2ヶ月ほど書評ライフが虫の息となっている.そろそろ再開しよう.登攀もはじめます(雑用嵐を回避すべく7合目あたりでビバークしたまま年度を越してしまったソレとか).

◇その前にアレがあった…….お待たせしてごめんごめん.待っててくれてるアナタにもかんにんかんにん.

◇昼前に万博記念公園にて,野球とサッカーの基本練習(with 次男).今日は天気もよく(昨日に続いて夏日となるのは確実)運動日和なので,公園の駐車場がどんどん詰まっていく.昼過ぎに帰るときには車が溢れて周辺の道路まで動脈硬化していた.※腰ひねって痛いです.くっ.

◇日が傾く頃,『植草甚一コラージュ日記(1)』読了 ―― 山あり谷ありとは対極的なそれでいて充実した定常状態のダイアリー.ジャズを聴き,本屋をまわり,人と会い,原稿を書く.無条件でうらやましいねー.

―― 岩波ブックセンター隣りにあった辞書・言語学の専門古書店〈進省堂書店〉はJ・J氏も行きつけだったとか.数年前に店がなくなったなあと残念に思っていたが,本書の注で2000年に神保町から逗子に移転していたことを初めて知った→逗子市の〈進省堂書店サイト〉※そーだったのか.いつだかの日録で〈進海堂書店〉と書いた記憶があるが,それはまちがい.いずれにせよこの古書店が残っていてよかった.

―― 〈茶房きゃんどる〉しっかり登場してます.この喫茶店がなくなったのはかえすがえすも残念だ.土間のようなフロア.注文を受けるたびに奥の小扉が開いて中からコーヒーが出てくる.道路側の窓際席には植草甚一のポートレイトが飾ってなかったっけ? ※再開発ビルにリバイバルしたという新生〈きゃんどる〉にはまだ足を踏み入れていない.

【欹耳袋】来月上旬に慶應義塾大学出版会から西脇与作著『科学の哲学』という新刊が出版されるそうだ.※果敢にも三田に潜入するというヒミツ工作員のコードネーム三味一体クン,情報収集をヨロシクね.

〈救出大作戦〉の進捗 ―― 今月に入ってからソーバー『過去を復元する』の4割引での割引購入希望を募ってきた.幸い希望者が多く,この3週間に200冊を越える注文が寄せられている.6月まで受け付けていますので,買いたいという方はいつでもご連絡ください.他の訳本についても同様の割引販売のアナウンスが流されている.早いうちにまとめておこう.

◇本日の総歩数=10257歩[うち「しっかり歩数」=6188歩/61分].


17 april 2004(土) ※とことん活字するぞ

◇日が変わったのにまだ起きているとは…….早寝早起きしないと.『植草甚一コラージュ日記(1)』(2003年10月22日刊行,平凡社,ISBN: 4-582-83186-9)をつい引っ張り出してしまう.[東京1976]というサブタイトルがついている.ぼくが東京に出てきた年だ.姉妹編の[ニューヨーク1974]は去年のうちに読んでしまった.ニューヨークでは憑かれたように本を買い漁った「J・J」氏も東京ではゆったりと飲んだり食ったり.ええですなあ.

◇あ,さっそく訂正だ ―― きのう書いた〈PAUP*〉プログラムは非最節約的だった.Dsetの行の冗長部分をもっと単純に書き直すと:

BEGIN PAUP;
Lset Base=equal Nst=6 Rmat=(1.0000 2.2438 1.0000 1.0000 4.4158) Rates=gamma Shape=0.2610 Pinvar=0;
Dset Distance=ML;
END;

でおしまい.距離法のオプション設定を最尤法に「丸投げ」するということ.※でも,最尤法ができる状況であればわざわざ距離法をする必要はないともいえるけど.

―― 〈PAUP*〉を用いた最大平均尤度(MavL: maximum average likelihood)をもつ樹形の計算は上の手順でいい.距離法は付け足しみたいなもの.ステップ行列を用いた最大節約尤度(most-parsimonious likelihood)の一般化最節約法による計算は別の手順となる.

◇〈茶の道は蛇〉というメールが届く(ほれほれ家元に座布団1枚っ!).そーですか,ワタシなんぞが首を突っ込むとそこら中を咬まれるでしょーか.※新しい中期計画の課題を立てないと....

◇ある書籍業者から連絡あり ―― ダーウィンの『種の起源』の初版(1859)第1刷の価格は1,400万円.『ビーグル号航海記』初版は全3冊で600万円ほどするとか.さすが「ダーウィン初版本」は豪華なお値段ですこと.※だれか清水の舞台から飛びおりたつもりで払ってもらえません? あるいは,どこからかヒネリ出すか(どこから?).

◇いつになく夜更かししてしまったので,起床がとても遅く,7時前.朝から小学校の授業参観と保護者懇談会とPTA総会とPTA懇親会のフルコースをたどる予定.最近は教壇に立つとき以外,チョーク(白墨)を手にする機会がほとんどない(板書といえばホワイトボード).だから,たまに小学校の先生の手慣れた板書風景を目にすると感心する.チョークのメーカーによって“書き心地”がぜんぜんちがう.よく見かける「粉が飛び散らず汚れないチョーク」は硬過ぎて長時間の板書には向かない.昔からある「いかにも肺に有害な粉飛び散りチョーク」の方が実は書き具合がいい.

―― 回想モードに突入:板書のうまい教師は確かにいる.高校に入ってすぐの古文の授業を担当したのが水川先生という人で(最近聞いた話では天理大学図書館のなんちゃらという古文書の研究では第一人者だったそうだ),この人がとてつもなく板書がうまかった.なぜチョークで黒板に達筆な行書体が書けたのだろう? いまだに謎である.

―― ひるがえって自分の板書をつらつらと思い起こすと……いや,やめときましょう.講義後のアンケートで板書(OHP含む)の字がよく読めませんでしたという声があったしあ.字形なんか問題外の外か.漢字の書き順もきっと「Anything goes」状態になっているんだろうなあ(‘右’も‘左’も同じ筆順で書いているにちがいない).

◇午後になり,夏日はかぎりなく真夏日に接近しているようだ.学校関連のイベント連鎖によりまたたく間に夕方に突入.暑かったので疲労度高し.

◇『植草甚一コラージュ日記(1)』を読み進む ―― ぼくが赤門前の旅館に立てこもって入学試験を受けたりしていた頃,J・J氏は相変わらず神田やら渋谷で古書・アクセサリーを蒐集しては原稿を書きまくっていた.ほぼ同所的でもニッチ軸はまったく別.コラージュ日記の本文はロットリング・ペンで書かれていたのか.縦横のラインの太さを見るとカリグラフィー用のものに見える箇所もある.ぼくが駒場寮の入寮手続きなどなど新生活に向けてばたばたしていたときも,J・J氏は相変わらず.

◇「とことん活字するぞ」と宣言した割にはイマイチ没入できない一日だった.

◇本日の総歩数=4778歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


16 april 2004(金) ※谷津田に群れる御玉杓子

◇原稿のひとつが山場を越えたので,もうひとつの峰への登攀の心準備をする.アレですよ,アレ.ソレじゃなくってね.

―― と思ったら,足を引っ張られる.え,ウェブ公開ダメ? いいじゃん,いいじゃん.未定稿だからこそどんどん出して,意見や情報を求めればいいですよ.※かわすかわす.

◇〈茶の湯文化研究会〉で創立10周年記念講演をする大槻幹朗氏は『煎茶文化考:文人茶の系譜』(2004年2月刊行,思文閣出版,ISBN: 4-7842-1183-7)の著者ですね.所属の黄檗文化研究所って,ありゃ,萬福寺の中にあるのか.ということは,ぼくがいた宇治小学校の近くね(この前,男が乱入した学校).

―― 進化学会に呼ぼうとヒソカに思っている矢野環さんも研究発表するし,お点前の多変量解析とか茶道書の系譜も演題に見える.※やっぱり逝く行くしかないか.茶の湯文化こそ農環研に必要なんです!とかなんとか言うてだまくらかして.

◇系統解析ネタいくつか ―― 先日受けたダイズの分子系統推定に関する質問のレポートをまとめる.データサイズが比較的小さいので,教科書的な例題としても適しているかも.〈PAUP*〉で推定した最節約分岐図から判断するかぎり CI=0.895 / RI=0.867 と雑音が小さいことがわかる.

―― 最尤法と距離法を適用する前に,あらかじめ〈ModelTest〉で塩基置換モデルを絞りこんでから,〈PAUP*〉の PAUP Block に貼りこむ.尤度比検定で導かれたモデルは下記の通り:

[! Likelihood settings from best-fit model (TrNef+G) selected by hLRT in Modeltest Version 3.06 ]

BEGIN PAUP;
Lset Base=equal Nst=6 Rmat=(1.0000 2.2438 1.0000 1.0000 4.4158) Rates=gamma Shape=0.2610 Pinvar=0;
Dset Base=equal Distance=ML Rates=gamma Shape=0.2610 Pinvar=0;
END;

―― 〈ModelTest〉の出力のうち PAUP block 部分を元データファイルに上のように貼りこむと,尤度比検定で選択された置換モデルのもとで,最尤法と距離法のもとでの系統推定を〈PAUP*〉を用いて計算できる.〈PAUP*〉の距離法のオプション設定(Lset)は最尤法のそれ(Lset)ほど精密にはチューニングできないが,「Distance=ML」と設定して,最尤法のオプション設定をアクティヴにしておけば,同一の置換モデルのもとで最尤法と距離法を実行することができる.

―― 系統樹の出力はユーザー側の自由度を確保しておくのがいいので,〈PAUP*〉のツリーファイルを相手に送り,表示や印刷についてはフリーの〈TreeView〉を使ってもらうことにする.

◇大学への非常勤出講の問題点は意外に広く共有できそうだ.多少なりとも光が見えてきたか.

◇あまりにぽかぽかしているので,ミニ散歩 ―― 構内の谷津田ではもうオタマジャクシが田んぼに群れている.あと一月もすればそこらじゅうカエルだらけになるだろう.ビオトープをひとまわりする.メダカもずいぶん増えているようだ.

―― 朝から夕方まで研究所にずっといると,“ランチの愉しみ”を満喫することはほとんど不可能になる.最近,つくばローカルなランチ・ガイド本の改訂版が出た:『つくばランチ完全マニュアル2004』(第6版,2004年4月1日刊行,つくばで人生を楽しむ母の会事務局発行).これだけ版を重ねている割には,これまで一般書店で一度もお目にかかったことがない.ISBNなしの簡易製本だから,通常の流通ルートには乗っていない刊行物なのだろう.ウェブサイト〈つくばランチ食べ歩き〉での公開内容を本にまとめたものらしい.いい本が出たなあ……とはいえ,本書をもっとも活用できる機会があるのは奥様たちかな.きっと.でも,学会大会などの用事で出張する人たちにとっても必須本である気がする.つくばに来る学会参加者のランチ難民化は深刻な問題だからね(ホテル難民化という別の問題はさておき).

―― 研究所での食生活は,内容的に「質素」ではないとしても,精神的には「貧困」なのかもしれない.たまに海外の学会などに出かけると【彼我の差】にガクゼンとすることが少なくないから(慣れてしまえばなんということもないのだろうが).※ギリシャとブラジルのランチタイムはまじで昼寝できそうなほどゆったりしていた.他方,ドイツの学会では足早に食堂(メンザ)と会場とを行き来しなければならないほどだった.

◇〈青空文庫〉専用のビューアー〈AZUR〉が間もなく販売開始とのこと.〈T-Time〉の後継になるのかな.※〈青空文庫〉って3700作品にまで膨らんでいたとは.

―― ちなみに,ぼくの「日録」は〈T-Time〉の壁紙をバックに使わせてもらっています.※フスマの下貼りみたいな和紙っぽい肌触りが好ましい.

◇形態測定学サイト〈SB Morphometrics〉で薄板スプライン(tpsSplin)の新バージョンが配布され始めた.

◇おお,〈真珠の神さま〉ついに降臨か!(多少の綴りのちがいは目をつむってしまおうっ)―― 駒場の殿からじきじきの電話.なんと,「あれくらいの cgi の書き換えはちょろいもんですよっ」と豪語する神さまがおわすとか.こら,もう〈丸投げ〉でっせー.あとでメールしますので,よろしゅうに〜.※Perl / cgi の本を抱えて泣いていたワタシって…….

―― とたんに,さっきまで垂れ込めていた暗雲がきれいさっぱり晴れてしまって,その勢いでストックホルムの自然史博物館にメール.植物DNAのとある巨大データファイルを〈Bogen〉のテスト用に借り受ける依頼のため.

―― これで,かの「登攀」もグンとはかどるだろう.おそらくは,いや,必ずや.

◇アゲイン,津村ゆかりさん〈実名を名乗っていてうれしいこと〉(4月16日付)を読む――いややわあ,もう,恥ずかしいやん……(赤).「さっぱり言い切」り過ぎました? 日常感覚がズレてるのかしらん.ぼくにとっては,〈匿名〉で何かを言ったりしたりするというのは精神的に緊張してしまって,窮屈なことこの上ない.〈実名〉の方がはるかにラクでいいでしょう.津村さんいわく:「実名でネット上に現れるのは思ったほど怖いことではなく、それに対して、うれしいことはたくさんあります」―― はいはい,日々それを実感しています.その通りですね.他人に「実名を出せ」と強要することはないですが(管理下のMLは別ね),ぼくはこれからも実名のままでしょう.

◇本日の総歩数=8104歩[うち「しっかり歩数」=1684歩/15分].


15 april 2004(木) ※太田アーティクル第2弾の完成

◇霧の明け方――朝日が昇るとともにみるみる晴れていく.今日も暖かいか.

◇私的キャレルに籠って昼前にやっと書き上げました――昆虫分類学若手懇談会会報『Panmixia』原稿:三中信宏「太田邦昌氏の【真正分類系統学】再考」.これで昨年後半から引きずっていた太田追悼企画にやっとピリオドが打てそう.ついでに,姉妹編である三中信宏「太田邦昌氏の系統分類学理論――体系学史における位置づけと限界」を修正したり.こちらが掲載された『生物科学』の55巻4号(2004年5月1日発行)はすでに届いている.※ウェブサイトはまだ更新されていない.

―― 『生物科学』記事とはちがって,太田の〈真正分類系統学〉の理論について形質進化モデルの検討にまで踏み込んだので,分量が1.7倍ほどになった.400字詰で30枚あまり.

―― ウェブ用にhtml化したりして午後が消費されていく.アップが完了したのは夕方のこと.

◇Keith Jarrett〈The Köln Concert〉の終曲とともに,日が暮れていく.

◇〈茶の湯文化学会〉―― 今年のシンポジウム(5月16日,主婦会館プラザエフ,東京)はとてもおもしろそうですね.※出張にしようか.でも,出張届でどう説明する? 「茶の湯の系統なんですけど...」「逝ってよし」「……」.

◇津村ゆかりさんの〈私がネットで実名を名乗る理由3〉(4月14日付)を読む――同意できる点が多々ある.「匿名の人は,実名の人にまともに相手にしてもらえない場合がある」というのは控えめな表現ですね.少なくともぼくの場合,〈匿名者は石ころと同じ〉という認識をしています.〈石〉がそこにあってもあるいは〈石〉が何かものを言っていてもぼくの知ったことではないということです.まともに対面する以前に,相手として認識していないと言った方がいいのかな.以前,ニフティーのあるフォーラムで「ハンドルネームな人たち」と議論した経験がありますが(ぼくは実名で),基本的にフェアではないですね.そういう「場」というのは.

―― ですから,私がいま運営しているメーリングリストでは,発言に際しては必ず「実名と所属」を名乗ってもらうことを義務づけています.あえて匿名またはハンドルネームで参加したいという希望者はときどき出現します.その際には,「投稿を読んだり過去ログを検索したりするのはかまいませんが,議論には参加しないでください」とクギを刺しています.匿名であったとしてもリード・オンリーの会員としてその「場」にいることそれ自体はとくに問題ないですね.道端に〈石〉が転がっていても誰も気に留めないのと同じことです.しかし,〈石〉には〈人〉に対して発言する資格はまったくありません.ですから,〈人〉どうしの議論に〈石〉が混ざるのは御法度なのです.

―― メーリングリストでの〈匿名会員〉に関する上のような方針を公開したところ,とある別メーリングリストの管理者氏から,参考にしたいので転載を許可してもらいたいという依頼を受けたこともあります.場合によっては,こういう指針が有効であるケースもあるのかもしれません.

―― もうひとつ,「匿名の人は,実名の人にまともに相手にしてもらえなくなるような行為をしてしまいがちである」という津村さんのコメントについては,どれくらい一般的に成り立つのかな.〈実名の人〉であってもそういう行為をしてしまう例は少なくないので,最終的にはパーソナリティ(あるいはエキセントリシティ)の問題かとも思えます.もちろん,匿名であるがために心理的ハードルが低くなっているということは十分にあり得ますがね.

◇本日の総歩数=3419歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


14 april 2004(水) ※へいっ,らっしゃい〜

◇今日は,つくばエリアにある研究所の〈一般公開日〉.よろしかったら農環研にもぜひどーぞ ―― 朝から夕方までたくさんの見学者にきてほしいが,天気の具合がよろしくないみたい.朝のうちは晴れ間も見えているが,午後の予報は雨.

◇昨日の原稿の続きを書き進める.形質進化モデルの節はほぼ完了.

◇なんとか持ちこたえていた空模様も午後になって予報通りぐずつく.雨がぱらぱらと.

◇書評専門サイトである〈The Complete Review : A Literary Saloon and Site of Review〉を久々にチェック ―― 着実に堆積している.覗いたカテゴリーは,「Darwinism and Evolutionary Theory」,「Philosophy」,そして「Science and Technology」の三つ.いくつか挙げてみると――

―― この書評サイトのいいところは,既出の書評をブラウズして大まかな評判をざっと見渡した上で,サイトとしての書評をアップしているところ.関連リンクも張られているので書評をたぐり歩くことができる.

◇午後3時から1時間,一般公開の説明用ソルジャーとして駆り出される.2階の大会議室を仕切った即席の展示室にて.といっても,もう終わり間近のせいか,来る人もぽつぽつと.外の雨もぽつぽつと.地球温暖化やら古地図やらFACE実験やら近接リモート・センシングやらいろいろと説明[したと本人は強弁する].うしろではインベントリー・センター[昆虫部屋]が魅力的な標本の数々を展示.ついつい見入ってしまったり,写真を撮ってしまったり.午後4時に解放される.

◇また原稿の続き ―― Dollo model から出発してベイズ的に樹形推定をする手続きは Farris (1977) に明示されている.さらに,対立分岐図の尤度比検定の方法についてもこの論文に書かれている.最節約スコア(樹長)差が1である樹形間には4倍の尤度差がある(p.86).太田の〈真正分類系統学〉は虚空から湧き出てきたわけではない.本人の知る知らないとはまったく関係なく(知らなかったはずがないのだが),競合理論は確かにここにあった.1980年代に入ると,Joe Felsenstein が形質整合性分析の統計学的な検討を開始している.それは,太田が〈真正分類系統学〉をつくろうとしたまさにその時期にあたる.分岐学と統計学の関わり,形質進化モデル,系統仮説のテストなどなど,太田の主張と直接的に関係する論議が行なわれていた「場」から自らを切り離すことで太田が得たものは何もなかったと思う.

◇おお,こんな楽しいものをメーリングリストにくっつけられては困りますなあ,ホンマ ―― 人脈検索機能にスキル検索機能とはねえ.楽しすぎ.すでにない時間がもっとなくなるー.

◇本日の総歩数=5394歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


13 april 2004(火) ※独楽鼠あるいは独楽熊

◇朝から雲が厚く,気温が低い.下り坂との予報.

◇年度始めということもあって,異動にともなうメーリングリスト登録アドレスの変更依頼がここのところ殺到している.手動登録しているので40件も依頼があると,午前中はあっという間に食いつぶされる.名簿の変更もしないといけないし.※MLメールのあっちこっちへの転送はやめてね.

◇要領を得ない電話に一瞬キれてあげる.

◇ふっと現実逃避 ―― 〈和菓子礼讃〉.水無月喰いたい.※洋菓子でもいいんですけど.

◇Panmixia原稿(三中信宏「太田邦昌氏の【真正分類系統学】再考」)の続きを書き進める.「単一生起派生形質」(uniquely derived character)による系統解析は,整合性分析派(クリーク派)だけでなく,分岐学派も注目していた.とくに,統計学的な視点からこのテーマを論じた――

Farris, J.S. 1977. Phylogenetic analysis under Dollo's law. Systematic Zoology, 26: 77-88.

―― を読み直し(整合性分析に関する J. Felsenstein の一連の論文が出始めたのはその後のこと).統計学サイドからこういう研究成果があったことを太田邦昌はいっさい引用していない.別文脈では引用しているから知らなかったはずはない.

◇単一生起派生形質という言葉は1969年の W. Le Quesne 論文以降に広まった.彼は形質進化における〈Dolloの法則〉という文脈で単一正規性を論じた.そのことは形質進化の「不可逆性」をどのように解釈するのかという点で混乱を招いた.確かに,原始的形質状態0から派生的状態1への遷移確率αが「十分に小さい」(だからこそ単一生起が生じ得る)という点に関してはおそらく同意に達しているだろう.解釈が分かれるのは,いったん派生的状態に達した「」の行く末だ.これまで提案された解釈は次の二つ:

  • Dollo model ―― 単一生起派生的状態(1)から原始的状態(0)への逆転の可能性を許容する.しかし,再度 0 から 1 への形質進化は生じないと仮定する.[Le Quesne 1969 や Farris 1977 の形質進化モデル]
  • Camin-Sokal model ―― 単一生起派生的状態(1)から原始的状態(0)への逆転はいっさい許容しない.すなわち,1→0 は生じないものとする.[Camin and Sokal 1965 での形質進化モデル]

◇Dollo あるいは Camin-Sokal の「不可逆進化モデル」は,分岐図上での形質状態の最適化(最節約復元)に関する制約条件である.したがって,最節約分岐図を探索する上での目的関数として用いることができる.

―― Dollo model のもとでは,任意の形質は任意に与えられた分岐図(rooted)の上で「単一生起派生形質」として最節約復元することができる.派生的状態の端点をもつという条件を満たす,root にもっとも近い枝の内部分岐点に連なる内部枝の上で 0→1 という形質変化を仮定し,その内部分岐点によって規定されるクレードの中にもし原始的状態(0)をもつ端点があったならば,その端点に連なる枝において逆転 1→0 をアドホックに仮定すればいいからだ.すなわち,Dollo model のもとでは,すべての形質は単一生起派生形質としての最節約復元が可能である.それは ACCTRAN 最適化のアルゴリズムによって枚挙できる.もちろん,ACCTRAN 以外の他の最節約復元モード(たとえば DELTRAN)も可能だろう.

―― しかし,Camin-Sokal model のもとではそれは成り立たない.形質変化の逆転 1→0 を許容しない以上,いったん派生的状態(1)が生じたならば,それは決して失われずにクレード内のすべての内点と端点に保持され続ける.したがって.与えられた分岐図の上で最節約復元するときには,派生的状態をもつ端点またはクレードに連なる枝で別々に 0→1 という形質変化を仮定するしかない.つまり,Camin-Sokal model の採用は必然的に DELTRAN 最適化に基づく最節約復元を強制するということだ.進化的に見れば仮定が厳し過ぎることの反映である.たとえば,ACCTRAN 最適化ではこの仮定を満たさないケースが生じるだろう.

◇で,問題となるのは,太田の言う「単一生起派生形質」が上述のどちらのモデルにより近いタイプの形質なのかという点だ.太田自身にとっては既存の学説は[ごく少数の例外を除いては]すべて攻撃の対象にほかならないので,項目ごとの比較や検討がなされていない.そういう論争スタイルがエキセントリックなのは当然のことなのだが,相対的な比較をしないことには論の進めようがない.

―― 太田(1989)と太田(1993)とを比較してみると(→参照:〈太田邦昌(1944-2003)著述目録〉),興味深いことがわかる.太田(1989)では,あるクレードにいたる枝で生じた単一生起派生形質がその後どのように変化するかについては仮定を置いていない.これは〈Dollo model〉に近いスタンスであると思われる.ところが,太田(1993)では,1989年のモデルに加えて,単一生起派生形質が生じた枝以外のすべての枝では 0→1 変化が生じないという新たな仮定を付加している.この付帯条件は「単一生起」という条件をさらに強化した帰結とみなすことができる.太田のモデルのもとでは ACCTRAN 最適化のみが許容される.これは,DELTRAN 最適化のみを認める Camin-Sokal model とは逆の意味で厳しい仮定である.

―― Dollo model の統計学的な取扱いは Farris (1977) がすでにしているので,太田(1989)の統計モデルはオリジナルとはいえない.しかし,Dollo model の単一生起条件をより強調した形質進化のモデル化は太田に独自のものかもしれない.しかし,その独自性は決していい意味での特徴ではない.Camin-Sokal のモデルが非現実的であるのとまったく同じ程度に,太田のモデルは非現実的であるとぼくは思う.

―― 以上のような内容を盛り込みつつ原稿を書き続ける.明日には仕上がるか……な?

◇夕方,質問を受けていた分子系統樹の予備分析をすます.きれいな結果が出そうな予感.データのサイズが小さいからね./別件の方も新たな進展がつくばで見られたそうだ.実績を積み重ねる機会ができたことはまずは歓迎しましょう.

◇本日の総歩数=4136歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


12 april 2004(月) ※夏日・扇風機・鯉のぼり

◇暖か過ぎてぼーっとする.今日は夏日の予報 ―― となると,とーぜん扇風機の登場か.早くも鯉のぼりを見かけたり.

◇日中の活動性イがマイチ.週末に張り切り過ぎた報いか.※それとも,昨日「空中浮遊」したせいか....

◇夏日の昼下がりウォーク.今日はサンダル履き.久々のビルケンシュトック快調.

◇またやっかいな〈壁〉ができつつあるようだ ―― そんなに囲い込んでどーするつもりか.「ただ働き」の機会だけは着実に増えている.※JICAも今年かぎりにしておこうかな.

◇暑いのでさらに活動性が低下する.困ったー.しばらく諸般のことどもを放置していたので,またまた堆積と変成が始まりつつある.

◇献本感謝です ―― 松久明生『言葉の孤独』(2004年3月30日,郁朋社,ISBN: 4-87302-244-4).詩集,バイオ? ことば.※ W. Garstang の発生学詩集を想起した.

◇今日はダメかも.意識レベルまで低下してきた ――

◇積み残し某原稿,さくさくっと仕上げましょ.※マジ.

◇本日の総歩数=12031歩[うち「しっかり歩数」=6728歩/60分].


11 april 2004(日) ※春めくセントポールズ(大会続く)

◇午前5時頃からごそごそ動きだす ―― うーむ困った.今日のシンポジウムのイントロ資料がまだできていないぞ.InDesignを起動し,シンポジウム趣旨文をベースにして,プレゼン文書にとりかかる.「もっと早く準備を」という教訓は通用しないのだ.いつもいつも何かしらの〈直前〉なので,こーなってしまうんですぅ.考えようによっては,1年前だって直前だし,1時間前だって直前.どんと・まいんど.

―― 午前9時過ぎに池袋着.イラク邦人人質の解放を伝える号外が駅で配布されていた.立教大学に到着.今日も暖かくほこほこしている.昨日はサークル勧誘でがやがやしていたが,今日は一転して静かなキャンパス.構内の教会から賛美歌など聞こえたりする.

◇会場に入ってからもプレゼン準備.ぱたぱたと文を整える.9時55分になってようやくpdf出力.ぎりぎりセーフというか,見切り発車ですな.ま,直前になってカタチになってよかった.

◇生物地理学会シンポジウム〈共進化の分子生物地理学〉―― 午前10時すこし過ぎに始まる.最初にぼくがイントロの趣旨説明(「共通ツールとしての歴史生物地理方法論」)を15分ほど.複数の系統樹を比較することによる高次の推論の共通構造についてのコメント.

―― 最初の講演は安倍弘さんの「海産ダニ類の歴史生物地理学:分布パターンからみた進化経路の推定」.歴史生物地理学の方法論(Brooks parsimony analysis [BPA], Bremer's ancestral area analysis [AAA], Ronquist's DIVA)の概説.最節約的推論のためのツールを比較.いずれも〈祖先地域〉をどのように復元するのかという共通の目標がある.BPA の場合は DELTRAN 復元をするので祖先復元のバイアスはぬぐいきれない.Bremer法はその点を克服できているのかな.DIVAは基本的にステップ行列によるコスト最小化をするので,同じ最節約法とはいえ,BPAやAAAとはちがう最適化をしている.ケーススタディーとしての海産ダニ.

―― 続いて五箇公一さんの「外来昆虫の導入にともなう寄生性ダニの侵入:分子共進化解析」.クワガタムシ愛好文化は日本だけのものだったとは.移入される側の日本“防衛軍”の思惑と送り出す側の東南アジアとの思惑のちがいは印象的.これって生物多様性保全の問題の枠組みを大きく踏み越えているように感じる.

◇スタバで買ってきて,のどかなキャンパスでランチ.ふ....

―― 午後もシンポの続き.神崎菜摘さんの「キボシカミキリと共棲線虫:分子系統からみた片利共生系の共種分化」.カミキリと線虫との分子系統樹を比較することで,対応関係の有無が見えてくる.対応のない場合の個別的説明もさることながら,対応が一見ある場合の検討も必要だろう.樹形的な一致が要因レベルでの一致を示すかどうかは別問題だろうから.もちろん,観察レベルで寄主と共生生物との依存関係が密接であれば,過去への遡行推論にはプラスになるだろう.

―― 最後の講演は川井浩史さんの「褐藻アミジグサ類に寄生するソコミジンコの食性と進化」.硫酸を体内に蓄積し,pHが1を下まわる強酸性藻類に leaf-mining するソコミジンコ(ハルパク...:下半分失念)の生活史と共進化.早送り動画で生活史を通して見られてとても印象的.“ハルパク”ってキャッチフレーズ.サックス奏者・坂田明のグループは“ハルパク”を名乗っているそうな.

◇午後3時前にシンポジウム終了.続いてミニ・シンポジウム〈次世代にどのような社会を贈るのか?〉―― 最初に森中さんの趣旨説明.引き続いて長谷川眞理子さん,さらに松田裕之くん.午後5時半まで.これにて大会終了.※お疲れさん.

◇メモ:長谷川眞理子『動物の行動と生態』(2004年3月20日,放送大学教材1891219-1-0411,ISBN: 4-595-23780-4).※会場でいただきました.

◇またも懇親会になだれこむ.なーるほど,1日6食を3食に減らすとダイエット効果あるんですね.ほほー.漫画キャラは「目が命」とな.アニメ作家の系統関係で萌える,ちゃう,燃える.大友克洋,えらいっ.ぜんぜんあかでみっくでないのが,またよろし.8時過ぎに退散.つくばに直帰.いささかお疲れでーす.>ぼく.

◇本日の総歩数=9303歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


10 april 2004(土) ※華やぐセントポールズ(大会初日)

◇朝から暖かい,暖かすぎる ―― クラい部屋でじっと学会しているよりも,どこかにハイキングした方がいいのでは? などと学会副会長が問題発言をしてはいけないのだ.今日と明日は立教大学(池袋)にて〈日本生物地理学会大会〉.今日のスケジュールは午前中が評議員会,午後が一般講演と総会.夜は懇親会(その1).※最後までもつやろか…….

◇朝,かなり睡眠不足のまま,練馬区某所を出発.半袖姿多し.コートやカーディガンはもう季節外れか.大江戸線→西武池袋線と乗継いで池袋へ,iPod からはショスタコーヴィッチ〈8番〉が流れ続ける.陰鬱なフォルテッシモ.不協和音を容赦なくがんがんとぶつけてくる.どの交響曲でも相通じるものがあるが,オケ編成は大規模なのに,線がとても細い.ブルックナーとは対極的か.その点は総譜を比較するとよくわかる.ある楽器だけが延々と“独奏”し続けるという場面がまれではない.贅沢な使い方といったら表現がよすぎるか.よくも悪くも「いびつ」なオーケストレーション.〈8番〉の第1楽章(29分)をやっと聴き終えたところで,もう立教大学に到着してしまった.

―― おおっ,キャンパス全体がとっても華やいでいるではないか.土曜なのに学生とても多し.聞けば,今日はサークルの公開勧誘日だとか.あちらこちらでサークルの溜まりができている.いたいけな新入生たちを頑張って引きずりごんでねー.午前9時過ぎだがもう気温が20度ほどもありそうだ.

―― 大会会場(8号館3階)を確認し,10時からは太刀川記念館会議室にて評議員会.今年は役員改選がないので余裕で終わる.早めのランチ.上野輝彌さんから,新装オープンした新江ノ島水族館は一見の価値があるとうかがう.あと,福島の小名浜水族館は海外でも名が通ったいるそうだ.アクアリウム情報網.

◇ランチ後,大学前のスターバックスにて,総会資料の原稿づくりと明日のシンポで用いるプレゼン資料作成.またもドロ縄.

◇午後1時半から一般講演はじまる.多毛類にフナ,ミズウオ…….明日のシンポ演者である神崎菜摘さんと初対面.えっ,男性だったんですか(絶句っ...).ワタシ,てっきり....神崎さんの方もぼくを見たことがなかったので(応動昆とか林学会がホームグラウンドとのこと),会場を見回して“それらしい年配者”を捜し回ったのだそうな.ワタシゃ,最初から外されていたみたい.※先入観ってこわい〜.

◇蒼樹本の割引販売のアナウンスを〈FKONCHU〉に流しても問題ないと西原さんからうかがった.つくばに帰ったら流そう.

◇夕方5時で定刻通りに一般講演は終了.引き続き6時から懇親会(いつもの〈養老の瀧〉にて).明日がハードなので,2時間あまりで退散.睡眠不足気味.池袋西武・書籍館を散策して(ショスタコーヴィッチの交響曲総譜を何ヶ所か確認して),再び練馬へ.

―― 姪っ子が待ち構えていて,楽典のお勉強:ほらほら,音符と休符の長さをちゃんと覚えなさいね.移調の規則は主音の5度音程のズレで変音位置が決まるからね.あれあれ,ト音記号とヘ音記号を混ぜないでね.ピアノの鍵盤図をいつも用意しておくようにね.ほれほれ,寝るなーっ.

◇明日のプレゼン資料をつくるふりをしたりして,もう「おねむの時間」でーす.

◇本日の総歩数=13541歩[うち「しっかり歩数」=2965歩/28分].


9 april 2004(金) ※駒場城潜入ならびに参宮橋ミッション

◇午前10時から国立大学法人への非常勤出講に関する個別ヒアリング ―― はあ〜,やっぱりその線でいきますか.ま,オモテ向きはそーでしょうね.逃げ道ないもん.でも,現実問題としてあれこれもがいて乗り越えるしかないでしょ.ねー.こっちも困り,あっちも困る.とすると落とし所を見つけるしかないでしょう.

―― 農環研所内での貢献ですか.ワタシ,とっても低いですよ.もともと〈壁〉を感じていないので,内も外もないのですよ.それが何か? 〈内〉で頑張れば「もっと対外的な評価を」,〈外〉で頑張れば「もっと所内的な存在感を」じゃ立つ瀬ないやんか.なあ.

◇今日の午後からトンズラするので,持参品や武器たちを並べる.また,荷物が増える.

◇ぽかぽか陽気の昼下がりに東京に向けて出発 ―― iPod で〈レニングラード〉の通し聴き.第1楽章の息苦しい圧迫感は,全楽器が拍のアタマを執拗にオスティナートしているためか.モーリス・ラヴェルの〈ボレロ〉ではなく,むしろカール・オルフを思い出すべし.小太鼓はもちろん3台ですね.第3楽章の金管きつそう.弱音器つけての最強奏.鉄下駄履いての全力疾走みたい.

◇午後3時過ぎに駒場に潜入,すかさず3階のシマダ城を襲撃.進化学会大会のための某システムを構築しようともがく(D畑くんの真後ろで格闘).マジ,もがいたのですが,Perlの書き換えがぜんぜん終わりません.それ以前に,このcgi仕事ヤバイかもしれない.ドロナワとドロヌマでドロドロか.来週,再度攻めることとし,1時間そこそこであっさり退却する.作戦立て直しでーす.※話がちがうぜ.マンパワーがほしいなあ.求む,Perl/cgiの遣り手!

―― 転戦することとし,引き続き階下のトシカズ城に侵攻する.しかし,阿闍梨餅なんぞをいただいたりして,しばしくつろいでしまう.ははー,例の話も法人化の影響ありありですか.そーですか.※クラカタウ火山の大噴火の[文字通り]の波が地球を何周もまわり,数ヶ月後にヨーロッパ大陸沿岸の潮位を上げたようなものか.

◇ややへろへろになりつつも,山手通りをひたすら北上.これからが本日のメイン ―― 夕闇迫る頃,タケミツ・メモリアルホールもある初台の某所に〈敵〉が出現するとの極秘情報を関係筋から得たので,すかさず【迎撃作戦・その1】:ポンデザールにて〈敵〉の進撃をくい止める.19時からは〈敵〉が同所での「ピアノ黒ミサ」に参列するとのこと.わが防衛軍のチカラが圧倒的に不足しているので,埼玉県から強力な助っ人(コードネーム「カイト」)を招聘し,しばしビールとともに今夜の応戦体勢について詰める.21時,黒ミサでさらにパワーアップした〈敵〉を前にして,さらなる【迎撃作戦・その2】:参宮橋近くのロス・レイエス・マーゴスに〈敵〉を誘い込み,バルセロナ直輸入の数々の「秘密兵器」(生ハム,トルティーリャ,パエリャ,ワインなどなど)を駆使して徹底抗戦する.夜更けの23時過ぎに本日の作戦を終了する.〈敵〉を参宮橋直近のオリンピックセンターに連行し,絶対零度に封じ込める.

―― 日が変わり,練馬の屯所にたどりつく,ドロのように寝る.※夜が明けると学会日でーす.

◇本日の総歩数=17257歩[うち「しっかり歩数」=2857歩/24分].


8 april 2004(木) ※雨降る入学式と設計検討会

◇明け方にはもう強い雨が ―― でも回復しそうな空の色.きょうは中学校の入学式.幸い午前8時頃にははやくも雨が止み,雲が切れてきた.昼休みまでにはからっと晴れ上がる.※きっと日頃の行ないがよろしいからだろう.(うそうそ)

◇午前10時から職場の設計検討会(午後3時まで)―― 今年1年間の研究計画を発表.

◇JICAから今年のコース〈キューバ国別研修「小規模稲作技術」〉の研修生名簿が届く.10名余り.スペイン語,やらないと....

◇いろいろと ―― 進化学会の役職ポストの最節約化,生物地理学会の企画幹事報告を送信,もっといろいろしないといけないのだが....

◇岐阜の亀井喜久男さんからハガキが届いた ―― 長年にわたって学校の数学教育で実践してきた〈エジプト紐〉がNHK教育テレビで放映されるとのこと.超高次元立方体の展開プログラム〈HyperCube〉とともに,亀井さんの大看板.

◇本日の総歩数=6956歩[うち「しっかり歩数」=1220歩/11分].※いったいどこを「しっかりウォーク」したのか記憶なし.フシギ.


7 april 2004(水) ※『のだめカンタービレ8』読了

◇朝からぬくい ―― 岩城宏之/アンサンブル金沢の〈系図〉はダメダメ.この語り,生理的にダメ.谷川俊太郎の詩の〈怖い部分〉がよけいに増幅されているみたいで,救いがない.未来がない感じ.すでにもっている遠野凪子か小沢征良がナレーターのCDの方がはるかによかった.

◇〈Bogen〉打合せ ―― 新しいバージョンで,アミノ酸配列データからの最節約系統推定のテスト結果を見せてもらう.いい線いってますね.〈PAUP*〉より速いのは当然として,真のコンペティターとの比較が問題か.関連することがらについて意見交換.まずは,アピールできる点を強調しましょう.〈Hennig XXIII〉での発表の件についても少し.

◇〈Wheldon & Wesley 書店〉の閉店 ―― 学生時代からお世話になっていた古書店だったが,このたび閉店するとのメールが届いた.店主いわく,離婚した上で,仏教に改宗し,静かに暮らすそうな.こういう書店の閉め方もあるのか.Léon Croizat のかの「汎生物地理学」3部作『Panbiogeography』(1958),『Principia Botanica』(1961),『Space, Time, Form: The Biological Synthesis』(1964)は,修士2年のときにこの書店から買った.ベネズエラで自費出版されたこれらの本のコンスタントな在庫をもっていて,いつでも手に入れられる唯一の窓口が Wheldon & Wesley だったわけで,今後どうなるのかな.断裁される心配はないにしても,方々に散逸していくのだろうな.

◇系統樹ハンドブックがやっと届いた ―― Malco Selemi & Anne-Mieke Vandamme (eds.)『The Phylogenetics Handbook: A Practical Approach to DNA and Protein Phylogeny』(2003年,Cambridge University Press, ISBN: 0-521-80390-X).自習書かな.どーして〈MacClade〉をいれなかったの? 最尤法に〈TreePuzzle〉をもってきたのは失敗じゃないか(直後の〈PAUP*〉の章は最節約法に限定されているし).でも,こういう本が出てくればクイック・マニュアル的に重宝するユーザーはきっと多いかもね.データベース検索から始まって,アラインメント,分子進化モデル選択,そして系統推定まで,ひととおりのトピックスは載ってるようだし.

◇とりあえず,アレとソレの原稿を書いてます.コレではありません.アレとソレです.お間違いないように.

◇〈R〉情報いろいろと ―― この4月から群馬大学に異動された中澤港さんの新しいサイトを拝見.〈R〉の新着情報をたくさんいただいてしまった(ごちそうさんです)――

1) The R Development Core Team (2003年12月刊行)
The R Reference Manual: Base Package』, Two volumes
Network Theory Ltd
2) 間瀬茂他 (2004年3月25日刊行)
工学のためのデータサイエンス入門
数理工学社
3) 渡辺利夫 (2004年5月刊行予定)
フレッシュマンから大学院生までのデータ解析・R言語
ナカニシヤ出版

4) 『The R Book --データ解析環境Rの活用事例集--』(2004年5月頃刊行予定,九天社)

―― 短期間にこれだけまとまって〈R本〉が出るとなると,インパクト大きいでしょうね.

◇あー,どうしよー,困ってしまいますぅ.〈鵜呑み〉ダメダメ,ダメー.松宮秀治『ミュージアムの思想』はテーマの選び方そのものは悪くないですよ(こういう類いの本はもっとあってほしいくらい).ぼくの評価が低いのは,包丁の入れ方と切り口がイマイチかなあということ.ミュージアムを取り巻く制度とか社会には目配りしているのに,主体である人間側の視点が欠けているような気がしてね.なぜ,ものを蒐集し分類し整理するのか――洋の東西を問わず根源的な部分での共通性は否定できないと思います.そういう体系化の精神が共通のベースとしてまずあって,その発現のあり方が時代と地域によってどのようにちがっていたという話の展開になってほしかったなあという個人的な感想です.いきなり「東西対決」を出されても戸惑うばかり.

◇夜は,査読レポート1件を書き,ある原稿の感想をまとめる.

◇緊急の人集め.まあたいへん.

◇本日の総歩数=5253歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


6 april 2004(火) ※東京プチ出張,またも

◇ううむ,また寝過ごしてしまったか.朝5時半まで寝てしまうとは,不覚であった ―― ショスタコーヴィッチ〈レニングラード〉でも聴いて,目を覚まそう.ぅわぉ,インバル/ウィーン響,リキ入ってるぅ.

〈国立大学法人化〉の余波 ―― なあるほど,ただ働きしろっつうことですか.国立大学法人という私学に対しては,独法としては当然「併任人事」などという小技は通用しない.したがって,時間内兼業で報酬をもらうか,あるいは時間内に無報酬で講義するしかない.この3月までだったら併任人事で前者を選択することが可能だった.しかし,国立大学が法人という〈私学〉になってしまったので,前者のままだと勤務日数の減少やそれに伴う給与引き下げという「実害」がある.そこで農環研としては後者を採用するという方針を決めた.これで,今年度以降,国立大学法人という名前の〈私学〉での非常勤講義はすべて無報酬ということになる.国立大学法人さん,いったいどーするつもり? 時間外の週末とか夜中に講義しましょか? 個人的には「午前3時から午前8時まで開講する」などとという時間設定はとくに問題ないですけど(夜はダメよ).※〈国立大学法人〉がらみのごたごたはまだ余震段階だと思う.本震はこれからでしょう.どーなっても知らないよー.対岸の火事ではないのだ.>ぼく.※でも,よくよく考えてみればなんとかできるかなーという気もしないではない.

◇さて,尻にいろいろな火が着きそうなので(燃え盛っているというウワサも),東京にトンズラしましょ.

◇つくばを出たのが遅かったので5時過ぎにJR大久保駅に降り立つ.新宿・百人町の国立科学博物館分館にて分類学会連合のミーティング.来年はじめのシンポジウムの企画(【種】をやるんだって!)や科研費申請などが議題.7時前に散会.分館の展示室がすべて撤去されて「倉庫」と化したとは知らなかった.※ミュージアムの展示関連はすべて上野の本館に集結させるということか.考えそうなことではあるけどね(主語は特に秘す).

◇周達生『カエルを釣る,カエルを食べる:両生類の雑学ノート』を読了.カエルを喰うはなしがいいですね.生きたカエルの頭をストンと落とし,皮をぐいぐいと剥いでいく.ウシガエルを“トッピング”した焼きそばってうまいんでしょうか? このあたり,ほとんど小泉武夫化しているよーな.

◇Chick Corea [Pi]〈Expressions〉入手 ―― スタンダード・ナンバー集.初期の〈Improvisations 1 & 2〉のトンガリとはもう無縁ですね.中期の〈Children's Songs〉は愛聴盤.それと,岩城宏之/アンサンブル金沢の〈三善晃「三つのイメージ」・武満徹「系図」〉も ―― 〈系図〉はもとの3管フルオケ用をアンサンブル用に編曲したそうだ.語りは吉行和子……ぜんぜん「少女」ちゃうやん.いや,実年齢を超越してしまうのが大女優ということか.うーむ.

◇本日の総歩数=9078歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


5 april 2004(月) ※桜吹雪か

◇低気圧が通過し,朝から晴れ上がる.冷え込んだ明け方の起床時刻が遅め.春眠暁を〜状態か.ゆるゆると立ち上がる.

〈救出作戦〉進捗(続々) ―― 旧蒼樹書房との相談により,在庫を個人的に頒布するに当たっては,定価の60%の割引価格,消費税なし,送料無料ということになった.この取り決めは,ソーバー『過去を復元する』はもちろん,より需要が多いと思われるフツイマ『進化生物学』やクレブス&デイヴィス『進化からみた行動生態学』にも適用される.※関心ある人はぼくまでメールして下さいね.

―― ソーバー本は順調に注文が集まって80冊を越えた.フツイマも3時間で40冊の注文があったと青葉山から連絡あり.まだまだ営業努力が足りませんか.別MLにも広報を流すか.

―― それにしても,「ポスト蒼樹書房」をどうしましょう…….書く側も売る側も改善の余地が多々あると思うけど.ん,読む側は? 評する側は?

◇編集仕事ひとつ.ある学会誌の完成原稿が届いたので,投稿者に返事を書き,併せて編集長にメール送付.この原稿はこれにて一件落着.※まだ落着していないアレ,なんとかしないと.

◇業績評価に関する個人面談を少しばかり.

◇昼休みウォーキング ―― 稲荷川の鯉は超弩級サイズ.農環研外回りから畜草研飛地を経由して,高野台へ回り込む.菜の花に染まる.

◇周達生『カエルを釣る,カエルを食べる:両生類の雑学ノート』(2004年3月17日,平凡社新書217,ISBN: 4-582-85217-3)を読み進む ―― 民族動物学者としての自伝的な内容を含む本.要するに,この著者,カエルが好きなんですね.京大で動物生態学を学んだだけあって,知っている名前がごろごろ出てくる.とりわけ回顧的な第1章「カエルの昔と今」がほのぼのしている.第2章以降はカエルを釣ったり喰ったりする話.カエルが好きなアナタ,いかが?

◇満月が映える夜だった.※lunaticにならないよーに.

◇本日の総歩数=15076歩[うち「しっかり歩数」=7392歩/63分].※熊が穴から這い出したようなもの.


4 april 2004(日) ※特設キャレルに自己幽閉

◇朝からしとしとと冷たい雨が降り続き,水たまりが桜色に染まりはじめる.昨日までの晴天に慣れてしまっているので,急に気温が下がると「お籠り」状態に相転移してしまう.今日は籠ろう,そうしよう.

◇いきなりグラッと揺れる.震度3ほどか.北茨城が震源だったようだ.

◇定例のTRC週刊新刊案内チェック:1368号 ―― 今週は収穫物多し.とくに,スプルース&ウォレスの博物学探検紀行書『アマゾンとアンデスにおける一植物学者の手記(上・下)』が目玉か.もうひとつの探検紀行である『マラニャン布教史:マラニャン見聞実記』は岩波の予約出版叢書〈17・18世紀大旅行記叢書・第2期〉で,すでに書店に届いている(まだ引き取りに行っていないが).今週は大探検時代の紀行ものがたまたま集結したが,最近はこういう歴史的資料への関心が再び集まっているのか.上記叢書から既刊のアレクサンダー・フォン・フンボルト『新大陸赤道地方紀行』(全3巻)の出版について荒俣宏さんが賞賛していたが,その気持ちわからないでもない.趣味的には『〈読書国民〉の誕生:明治30年代の活字メディアと読書』も気になる本.

〈救出作戦〉進捗(続) ―― 訳書以外の蒼樹在庫本については,一昨日「引取先が決まった」と書いてしまったが,直接の連絡が入り,どうもそうではないらしい.引き取り話がある程度確定しているのは1タイトルのみで,他についてはまったくの白紙状態だとか.なかなか前途多難ではある.

―― 『過去を復元する』の注文数は60冊を越えた.売り上げ順調,感謝です.>購入者諸氏&宣伝していただいたみなさん.

◇昼になっても,午後になっても,雨また雨.最高気温なんか10度に達していないのではないかな.そのまま夕方から夜に突入.花見どころではない.

◇とにかく籠っています.ふらふらと徘徊せず.

◇松宮秀治『ミュージアムの思想』(2003年12月24日刊行,白水社,ISBN: 4-560-03898-8)を読了.ミュージアムやコレクションのもつ「政治性」を強調した立論.イマイチかなー.なんでもかんでも,西洋の植民地主義や帝国主義に結びつけてしまうのは――

その意味で十六世紀中葉以後のヨーロッパでは,コレクションが内在的に秘めている「侵略性」と「政治性」を隠蔽する論理が構築され,それらを自然哲学,自然科学として正当化していく作業が継続されていく.[p.79]

「蒐集」という行為が性的倒錯か退行か逸脱かは別としても,その情熱は一種の狂喜であり,病理的現象であることだけは間違いない.[p.82]

一方で,すでに述べておいたように儒教文化圏でははやくから「玩物喪志」という思想があって,蒐集行為に負の記号を与え,西欧のようにコレクションを積極的に制度化する土壌を育ててこなかった.[p.88]

その意志とは,コレクションという行為を通じて,世界を分類し,カタログ化していく意志である.いいかえれば世界の掌握【マステリー】であり,世界の支配【マステリー】である.それは権力による世界の支配【マステリー】というより,知による世界の支配【マステリー】を意味する.[p.145]

わたしの真の意図はミュージアムを通じて「西欧」とは何か,「近代」とは何かを考えてみたいということである.[p.193]

―― この著者は問題の立て方を根本的に外していると思う.ミュージアムとかコレクションの社会的・政治的存立を強調するあまり,もっと分類者寄りの〈体系学的精神〉のありようをたどるという方針を見ていないのが本書の主張を空回りさせている原因なのだろう.要するに「最初から最後まで外したことを言い続けている本」ということ.

◇Panmixia原稿『太田邦昌氏の【真正分類系統学】再考』はもうすぐ仕上がります.>テポドン勘弁ねっ.

◇本日の総歩数=312歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].※ほぼ冬眠です,ハイ.


3 april 2004(土) ※満開引き籠り

◇朝型人間がたまーに「にわか夜型」化すると,その後,数日間たるんでしまう.未明に目が覚め,再びご就寝してしまう.天気とてもよし.暖かくフヌケてタワケな週末の始まり.※「トシだから」という恐るべき指摘も....

〈救出作戦〉進捗 ―― 昨日,メーリングリストにソーバー本の割引購入アナウンスを流したところ,一日で50冊近くの“注文”が届いた.ありがたいことです.とある方は一挙に20冊もお買い上げ(感謝の極み).もう何発テポドン打たれても笑って許してしまおう!(→アノ原稿はどーした,などとヤボなこと言わないで.わははは...汗.やってますってば.

―― 他の訳書についても訳者がそろそろ動き出しているものもあるようだ.商業ベースではなく個人ベースでの書籍流通なので,“線が細い”のはしかたないだろう.蒼樹本がほしい人は「つて頼りまくり」で頑張るしかない.著者・訳者もその点では同じ.ごく原始的な流通形態に戻ったかのよう.

◇蝶学者・白水隆さんの訃報が届く(4月2日逝去,享年86歳) ―― 蝶学のビッグネーム.生前に会う機会はまったくなかったが(昆虫学会大会ですれちがったりしたことがあったかな?),その珍しい名字は小学生の頃から知っていた.というのも,故人の初期の著書である『原色台湾蝶類大図鑑』(1960年5月1日刊行,保育社,大阪)は,ぼくが小学校の5年か6年の頃に親にせがんで買ってもらった本だったから(1968年6月1日に出た「第6刷」をもっている).この図鑑は,保育社からその後続いた「大図鑑」シリーズの最初のものだったと思う.当時「2800円」という定価がついていたが,同じ保育社の他の図鑑と比べて2倍以上もする高い買い物だったと記憶している.書棚の奥からほぼ十数年ぶりにこの本を引っ張り出してみた.これもまた〈コーネルの箱〉のひとつだったか.30年あまりも前の記憶の糸が再び紡ぎ出される.※それにしても,こんなに高い大図鑑が版を重ねたというのは虫コミュニティの購買力おそるべしということか.

◇農林団地はまるで遊園地のように人出があった.さすが〈県南随一の桜名所〉!(ほんまか?) わらわらと子ども連れあり,シートを広げての花見宴会あり,菜の花ウォーキングあり.団地内道路はほとんど動脈硬化の症状を呈する.

◇その後,夜にかけて,本を読んでみたり,原稿をいじってみたり.ま,いろいろと.

◇本日の総歩数=5318歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].※最近,でれでれ歩くばかり.


2 april 2004(金) ※“gek”長引く……

◇日が高くなってもずっと惚けていた ―― 一晩中降り続いた雨の余韻が翌日まで残ったが,昼過ぎにはあがった.この天気に,この気温.これで今年の花見の絶好調の舞台準備は整ったことになる.この週末は農林団地にはきっと近寄れないだろう.

―― 昼近くに,のろのろ花見車の群れをかきわける.ちらちらとかすかに舞いはじめている.来週の入学式には〈桜吹雪〉かな.※週末はまたまた雨模様だというが…….

―― 視力検査のような写真(→)を載せてすまぬ.桜に訪花するハナバチが見えればよし.

◇系統推定の質問たち ―― 高知大学医学部から電話.とある有名な病原菌の分子系統解析を PAUP* でやっていて,character symbols の扱いに困っているとのこと.通常のPAUPの使用では「symbols」オプションをいじる必要はないはずなので,その旨お答えする.ステップ行列が必要ならむしろ「usertype」の設定をしなければならないだろう.

―― 同じ建物にある作物研究所の研究員氏来室.とあるメジャーな作物の分子系統樹に関する質問.データのサイズと配列長を確認して,実際にデータをもってきてもらうことにする.PAUP*で解決できるだろう.実際にデータを前にしてのチュートリアルがいいな.

―― 毎年提出している「業績評価表」には,農環研研究員が1年間に受けた質問や依頼の集計を報告する項目がある.昨年度は項目数にして60件ほど.1項目のやりとりは平均して2〜4回あるので,のべ質問数は200件ほどになるだろう.最近はメールで届く質問が多いので記録はラクだが,対面とか電話での質問はなかなか記録されにくい(研修や講義に行ったときの質問などはもちろん記録していない).だから,実際に受けた質問の実数はもっと多いのかもしれない.ぼくの場合は系統学と統計学の両分野にわたるので,それだけ質問数が多くなるのだろうが.

◇組合の職場委員を引き受けたのでその引継とか,人間ドックの受診申請とか.年度はじめにはこういう〈砂粒〉でざらざらする.

ソーバー『過去を復元する』救出大作戦! ―― 蒼樹書房が廃業され,在庫本の行く末が関係者の間で取りざたされている.翻訳以外の著書については,さいわい引き受けてくれる出版社が決まったのでよかった.問題は翻訳書.フツイマ『進化生物学』,クレブス&ディヴィス『進化からみた行動生態学』,ウィルマー『無脊椎動物の進化』などなど,教科書としても使われている多くの本が6月にはすべて断裁される.原書の出版社との契約上,新たに出版契約を結ばないかぎり別の出版社への移行は不可能だそうだ.すでに書籍流通ルートからは外れているので,これらの訳書は今となっては訳者の個人的買取り分(定価の60%で引き取る)を個人的に譲り受けるというかたちでしか売れないことになった.

―― という事情があるので,ぼくが訳した蒼樹書房本であるエリオット・ソーバー『過去を復元する』について〈救出作戦〉を展開しようと思う.今月中にぼくまで連絡してもらえれば在庫を取り置きしておきます.周知をよろしく.※〈EVOLVE〉と〈TAXA〉にはアナウンスしておこう.

―― ソーバー本に限らず,蒼樹在庫本の「救出大作戦」についてはその都度レポートします.断裁まであと3ヶ月!です.

◇帰宅しようにも,農林団地内のこの混雑と渋滞はいかんともしがたし.稲荷川沿いのダート道から国道に抜ける.

◇本日の総歩数=8126歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


1 april 2004(木) ※“aprilgek”の長丁場

◇今日も花見日和.天気よし,日射しよし.残務ありまくり.

◇年度末に出すはずの事務書類をパタパタとまとめようとする.今日が〆切の「業績評価表」と来年度(ああもう今年度か)の「設計会議用資料」と毎年恒例の「昇格書類」と ―― ぜんぜん捗りませんな,これが.気が入っていないということ.全出力は常時リストアップしているのでさほど手間はかからないが,全活動の方が洩れ落ちが多そうだ.昨年度1年間にどこで何をしてきたかの記録は心してメモしてはいるのだが,それでも遺漏がある.そういう基礎資料をこの機会にコンプリートにしようとすると,またまた時間が削りとられていく.これをちゃんとしておけば,業績評価表への流し込みと昇格書類の年度差分ファイルの作成はほとんど終わる(はず).

―― 朝からかかりきりのはずなのに夕方になってもいっこうに終わらない.こういうときは秘書さんがいるといいなあと思う.日が暮れていったん退散する.ダメなもんはダメです.できないっ.

◇夜陰に乗じて〈督促テポドン〉がまたも飛んできたので,「アリバイ」証拠として未完成原稿(400字詰で10枚ほど)を送る.あと10枚ほど書く必要あり.※すみませんねー.このあとの番です.

◇うだうだして夜10時過ぎに再出勤.昼間は天気がよかったのに,夜になってぽつぽつと雨滴が落ち始める.夜半過ぎには本降り.ここのところ天気予報がたいへんよく当たる.ところが,こんな雨の夜なのに,夜桜見物の車が農林団地内にいるとは!(みなさん,気合い入ってますねー)

―― 日が変わった午前3時半に業績評価表(9ページほど)をテキストファイルで出す.あらずもがなの手間だが doc に変換して,メールにて提出.これで一つめが完了.午前4時半に設計会議資料をこれまたメールで送信して,二つめが終了.昇格書類用に前年度の業績差分ファイルをつくる.あとは PageMaker でちょこちょこすればいいかな(めどはこれで立った).※毎年「昇格書類」を出し続けるというのは惰性以外の何ものでもない.年に一度の〈蹴鞠〉の儀式と思えばいい?

◇明け方の雨音をガラス越しに聞きつつ,メーリングリストたちへの月例アナウンスを用意する.年度が変わるので就職や進学で異動する会員が多いだろう.それとともにエラー返信も倍増するシーズンでもある.

◇〈長谷川フォーラム〉報告書をコッソリ見せてほしいという問合わせがちらほらと届いている.見たい?/見たくない? 「実行委員長」という奴隷階層の身分ですので,ぼくの一存で決めることはできないのですよ.

◇遅まきながら,常用している〈Wz Editor〉を version 5 にアップデートした.PC98 の〈Vz Editor〉時代から長く使い続けてきたエディターなので,愛着がある.version 4 に安住していてうっかりしていた.インストールして差分をダウンロードしてくる.習慣的に使用モードを「Windows準拠」ではなく「Vz準拠」にしているのはほとんど条件反射みたいなもの.version 5 からはファンクションキー割付の表示もしてくれるのね(これまた昔の Vz Editor を想起させてくれる).

―― とりあえずはテキストファイルと htmlファイルの編集ができればいいはずだが,ついついカスタマイズにこだわってしまったりする.

―― メーラー〈Vz Mail〉の仕様がやや大きく変わってますね.とりあえず「旧バージョン4」形式で使っていればいいか.ベースフォルダの切り替えひとつで,複数の〈Wz Mail〉が起動できるのは考えようによっては便利(最初は混乱した).〈Wz Mail〉の詳細設定は後回しにしよう.ずぶずぶと入り込むと無限時間が削り取られるから.

◇まだしとしとと雨が降る午前7時過ぎから何時間かの記憶がまったくないんですけど,あれー,どーしたんだろー??? 霧雨は止まず.しかし空は何となく明るくなりはじめてきた.

◇今年の“aprilgek”はぜーんぜん余裕がなかった.

◇本日の総歩数=7923歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


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