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oude dagboek

日録2004年9月


30 september 2004(木) ※ 南風に煽られて

◇午前4時前に目が覚める.外はざあざあ降り.天気予報を見ると,柏崎付近まで台風はきているらしい.今が関東地方のピークとか.午後5時にはもう小降りになる.

―― 日が昇るとともに青空が広がり,気温上昇.日中は真夏日になるそうだ.台風に吹き込む強い南風に雲が千切れ飛ぶ.

【欹耳袋】Matthew Battles の『Library: An Unquiet History』の翻訳近刊予定 ―― 原書がなかなかよかったので,きっと晶文社か草思社あたりが版権をとって翻訳するのだろうと思っていたら,予想的中で意外に早く来月出ることになったようです:マシュー・バトルズ『図書館の隠された歴史』(2004年10月刊行,草思社,ISBN: 4-7942-1353-0).この近刊情報は〈これから出る本[2004 - no.19:10月下期号]〉によるものですが,いま草思社の「近刊情報」サイトを見てみたら,『図書館の興亡 ―― 古代アレクサンドリアから現代まで』というタイトルになっていました.内容的には『図書館の興亡』の方がピッタリなのですが.※原書をまだ半分までしか読み終えていなかった.オンライン書店に入荷していないようなので,届くまでに読み終えないと,またまた自己嫌悪することになってしまうぞ.>ぼく.

―― その他,近刊メモ:岩崎学『統計データ解析のための数値計算法入門』(朝倉書店,ISBN: 4-254-12667-0 ※モンテカルロ法)/『オックスフォード植物学辞典』(朝倉書店,ISBN: 4-254-17116-1)/久米康生『和紙の源流:東洋手すき紙の多彩な伝統』(岩波書店,ISBN: 4-00-002650-X)/フランソワーズ.デポルト『中世のパン』(白水社,ISBN: 4-560-07376-7).

それってフェイントやんかあ!―― な,なんと,一昨日ダウンロードしたばかりというのに,〈Mesquite〉がさらなるバージョンアップ(version 1.05)を遂げてしまった.くー,と思いつつ,あわててWindows版をダウンロードしたらみごとにインストール失敗(「JAVAが見つかりません」やて...).きーっと言いつつ,再度ダウンロードしてインストール.Macintosh版の方はまったく何事もなくスムーズにアップデート完了(このちがいはいったいナニ?).腹いせにマニュアルをダウンロードして印刷してしまう.100ページあまり.すっげー.

◇南風がごうごうと吹きすさぶ.ホコリが入ってくるので窓を閉めたら即「温室」と化した.

◇え,空腹時に池波正太郎の食いもん本ですか? それはいけません.カラダによくない.自分をいじめているようなものです.

◇速攻でいろいろと書類を書く.東北大の成績報告書を簡易書留で追っ払う./都立大学のレポート課題を出す.東北大よりもちょっと難度がアップした(15時間と30時間のちがいということで)./昭和堂書店の新刊『鳥類学辞典』の著者割引購入の申込を忘れていたので,あわてて担当編集者にメールする./某学会と別の某学会の会費振込とか(そういう季節ですな)./上田徳三郎・武井武雄『製本』(2000年10月31日復刻,トランスアート,ISBN: 4-88752-129-4)が届いたので撫で撫でしたりする.

◇来週10月5日〜7日に予定されている〈畜産統計研修〉の講義準備を始めないとな ―― とはいえ,先日の都立大学の資料がほとんどそのまま使えるのでありがたい.ただし,OHPシートどものスキャンが必要だ.肉体労働.

◇夕方近くになってようやく南風がおさまった.台風の位置とともに上空の風向きが変わったのか,千切れ雲は北から南へ.

◇マーラーの〈復活〉第4楽章「Urlicht」とオルフ〈カルミナ・ブラーナ〉の第3部「Cour d'Amours」の総譜を見比べる ―― “Der Mensch liegt in grösster Noth!”か,それとも“Oh, oh, oh, totus floreo! Iam amore virginali totus ardeo”か.オルフに軍配.※何年でも待ちましょう.

◇本日の総歩数=7958歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg.


29 september 2004(水) ※ 台風前日の朝焼け

◇5時前に起床.雲が薄くかかっている.きれいな朝焼け.気温は19.9度.

―― 研究室にて本日のセミナー準備.内容は先週金曜の都立大セミナーと同一(ラクちん)だが,気分的に緊張させるためにスライドを入れ換えたりする.これが重要(完全に同一の内容にしてはいけない).Mesquite デモ用に mlrA 祖先配列復元に用いた 18S のデータファイルを用意する.ひょっとしてパソコンを2台用意した方が効果的かも(こういう点ではちっとも最節約的にはならない).とすると,Mesquite ではなくって,MacClade の方がベターか.

◇薄曇り状態 ―― ううむ,これはうっとおしいな.

◇“これ論”師がついに〈R で行う一般化線形モデル:初心者による初心者のための備忘録〉の完成を宣言(9月28日付)された.そーですか,全89ページですか.一般化線形モデルの講義の参考にさせていただきます.まずは一日も早い公開をよろしく.※内々の「人体実験」は手荒にすませてくださいな(拙速拙速).

―― あ,成績評価はいまやってます,やってますって

◇午後3時からのセミナーの準備は続く.スライドの方はまあいいとして,実演データの調整をきちんとしておかないとね.見せるのは MacClade でやるとしても計算は PAUP* ですませておかないと.

◇傘もって昼の散歩.途中で降り出してきましたが.

◇第21回生態システム研究セミナー(15:00〜16:00)―― 三中信宏「生物資源探索ツールとしての系統樹」.アオコ解毒細菌の探索について.bioremediation 研究とも関係するだろうというコメント.茶道流派系統樹のハナシ,とっても受けましたわよ.>M岡さま.

◇ピーターパン吾妻店でセサミ・ロッゲンブロートを1本買う.その足で友朋堂書店 ―― 井上真琴『図書館に訊け!』(2004年8月10日刊行,ちくま新書486,ISBN: 4-480-06186-X)/平山洋『福沢諭吉の真実』(2004年8月20日刊行,文春新書394,ISBN: 4-16-660394-9)/スティーヴン・ピンカー『人間の本性を考える:心は「空白の石板」か』(2004年8月30日[上・中]/9月30日[下]刊行,NHKブックス1010/1011/1012,ISBN: 4-14-091010-0/4-14-091011-9/4-14-091012-7).※井上本,ぱらぱらしてみる.なかなかおもしろいんじゃないですか.ただし,言説のウラの取り方がザツなように感じる(あ,こういうマネをしてはいけませんよという反面教師を演じているわけね).諭吉バクロ本,痛快かも.ピンカー3冊,ぐ,読まねばならぬぞよ.

◇『季刊・本とコンピュータ(13号)』(2004年9月10日刊行,トランスアート,ISBN: 4-88752-190-1)―― だいたい読み終える.しょっぱなの座談会がいいですね(かの「山の上ホテル」でやるなんて[どこ見てるねん>ぼく]).やっぱり“モノ”としての本は最後まで「抵抗勢力」として残存し続けるという点の再確認./そうか“深層”資料の発掘がまだ未開拓ということなのですね.「海底油田」,ほほー.

◇夕方にぽつぽつと降っていた雨は,夜になって本降りに.いよいよ本体の接近か./夜9時に大阪再上陸,その後,北陸へ抜けるという予想.

◇本日の総歩数=19371歩[うち「しっかり歩数」=11481歩/82分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.2kg.


28 september 2004(火) ※ またまた台風来襲とは……

◇5時半起床.気温18.1度.涼しいが曇り空.霧雨あり.その後,いったんは晴れ間が見えたが,再び雲がかかってきた.

◇Amazon ダメダメ.半年以上も待たされた上,キャンセルの通知かよ.David N. Stamos 『The Species Problem: Biological Species, Ontology and the Metaphysics of Biology』(2003,Lexington Books,ISBN: 0-7391-0503-5 [hardcover]).とりあえず,ペーパーバックの方を再注文したけど,版元の Lexington Books に直接注文した方がはるかに早かったかもね(しかも15%割引だし!).

◇今朝アップした「多変量解析概論」を早々と更新 ―― 最後に〈心得〉を付け加えた:

4.おわりに:道を踏みはずすべからず
多変量解析のツールを使おうとするユーザーが陥りがちなのは,知らず知らずのうちにそのツールに使われてしまうという陥穽である.多変量解析の手法を用いたからといって万能薬のようにすべての疑問が解決できるわけではない.ましてや「真実」がその向こうに見えてくるわけでは必ずしもない.クラスター分析に夢を見てしまった1970年代の数量分類学者たちのたどった末路(三中 1997 参照)は,多変量解析ツールのユーザー一般にとって教訓的である.他の統計手法と同じく,多変量解析もまた「推論」のための便法にすぎない.多変量解析のもっとも重要な効用はユーザーにとっての“発見用ツール”あるいは“説得用ツール”となることだと私は理解している.そのためには,ユーザーが自分の取り組もうとしている問題のありかを的確に理解し,その解決のために多変量解析をどのように主体的に使いまわせるのかを考えるという基本的姿勢が必要だろう.しかし,その点を心得違いしてしまったユーザーによって,多変量解析はかぎりなく誤解され得るし,はてしなく誤用され続ける.とても残念なことだ.

―― 上の1節を追加した原稿(pdfhtml)を正午前に公開した.差替えページを統計研修事務局にも送付完了.

◇曇っては晴れる.気温は20度そこそこ.昼休みに歩くにはまあいい天気か.

◇〈Mesquite〉の最新版(version 1.04)をダウンロード.いつもながら一筋縄ではすまないインストールのめんどうさ.でも,使えるかもしれない期待感をもたせてくれるところはさすが.※ parametric bootstrap のデモに使えってみたい.それと morphometrics module も.

◇大阪府立大学の総合情報センターから電話連絡あり.中尾佐助関連資料の公開されている範囲と利用可能性について.すでに整理されている資料の目録を送ってもらえることになった.スライド・データベースについてはサーバーが故障していて利用できないが,印刷された資料については大丈夫らしい.

◇夕方近くになって晴れ間.台風が接近しているとは思えないほど.※でも来るんでしょ? 午後4時の予報では九州から関東にかけて串刺しになるとのこと.くそー.

◇集中講義の成績処理をしたり,メーリングリストの入退会処理をしたり,いろいろとこまごまと.

◇ふーむ,総務省発の「報道資料」(15:30発)―― 農環研を含むいくつかの独立行政法人の〈非公務員化〉の方針決定とのこと.

◇朧月夜を眺めつつ,お月見団子を味わいつつ,アイスランド音楽のCDをば鑑賞する:Claudio Puntin(Cl., Bass Cl.)& Gerður Gunnasdóttir(Vn., Vocal)による〈Ýlir(冬)〉(ECM 1749 158 570-2).とてもフシギな味わいのCD.基本はクラリネットとバイオリンのデュオだが,ときどきクラリネットを伴奏にして女性ヴォーカルが入ったりする.50分あまりの大曲.瞑想できるかも.

◇山川啓介・真島満秀『驛の記憶』(2003年10月20日刊行,小学館,ISBN: 4-09-681162-7)を読了.おお,なつかしや!

◇本日の総歩数=17226歩[うち「しっかり歩数」=10898歩/80分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=0.0kg.※だめだめ.


27 september 2004(月) ※ 降る降る……

◇目が覚めたらまた降っていた.5時の気温は18度ほど.涼しいというか,肌寒いと言ってしまおう.しかし,あわてて長袖なんぞを出してしまうと日中に後悔することになる.しばらくガマンして半袖を着続けるのだ.

―― 朝の時点ではまだサーバーが止まったままでどーしようもなし.

◇本降りになってきたがな.まったくもう.湿度が高いので爽やかさ皆無.お,やっとサーバーが生き返ったみたいね.

◇『生物科学』の最新号に載ったヘイドン・ホワイト他『物語と歴史』書評を読んだ版元トランスアートから“印刷カスレ”のないのが送られてきた.ぼくのもっていたのがたまたまよくない印刷だったようだ.どうもありがとうございます.恐縮です.>株式会社トランスアート御中.

◇いろいろな細々とした雑用どもをちぎっては投げ,まるめては蹴り,…… /多変量解析概論の原稿は事務局宛に送付完了しました/進化学会ニュース原稿校正チェックを返信しました/次年度,研究室で購入する洋雑誌のタイトルをやっと発注しました(ほとんど“体系学研究室”と化すな,来年度からは)/〈租界R〉に置くデータファイルをテキストファイルに置換しました/諸方面に振り込みました(残りあり).

【欹耳袋】中尾佐助著作集(全6巻)』が北海道大学図書刊行会から近刊予定.第5巻は『分類の発想』とか.本日,この巻の「月報」への原稿執筆依頼が来ました(OKですよ>N田さん).民俗生物学・民俗分類学とも深く関わる仕事をしてきた故人の著書『分類の発想:思考のルールをつくる』(1990年9月20日刊行,朝日選書409,ISBN:4-02-259509-4)を読んだのはもうムカシのことだった.『オーストロネシアの民族生物学:東南アジアから海の世界へ』(1999年1月刊行,平凡社,ISBN:4-582-48305-4)という大著もあったな.

―― 本ネタ続く:〈J-J〉氏の magnum opus が没後四半世紀過ぎて復刊されるとはねえ.『植草甚一スクラップブック(全40巻+別巻1)』(晶文社,2004年9月〜).

◇あれもこれも,それもどれも…….

◇うーむ,〈非公務員型にする〉というのは人生のさまざまな局面に影響する変化だろう.

◇結局,一日中降ったり止んだりの繰り返しだった.

◇夜,「多変量解析概論」のhtml版をアップロードした.InDesign からそのままhtml出力したので,こまかい手直しをしたのですが,まだ不自然かも.

◇本日の総歩数=7139歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg.※怠けている.


26 september 2004(日) ※ 秋雨前線しぶとし

◇午前3時半に目覚める ―― 雨の音.ひょっとするまでもなくこりゃダメですか? あれれ,ウェブ・サーバーにつながらないぞ.未明からよろめく.午前5時には雨があがったようだが,グラウンドの状態がねえ.

―― 小学校グラウンドにテーブルを運んだものの,水たまりができていたり,ぽつぽつと降っていたりして,コンディション最悪.予想通り,クラス連絡網から「運動会延期」のお知らせが.く.腹いせ?に1時間ほどうろうろと徘徊する.

◇雨は降ったりやんだり,秋雨前線が関東の南に下がり,北東からの気流が入っているそうで,気温は日中でも20度を少し越えるくらい.しのぎやすいというか,肌寒いというか.

◇午後から一念発起して,統計研修テキスト用の〈多変量解析概論〉の原稿をつくってしまおうと思い立つ.

―― 単変量から多変量への跳躍のための「柱」として,“一般化”,“視覚化”そして“次元減少”というキーワードを立てる.方法論的に自然な“一般化”は,たとえば[一般]線形モデルでは説明しやすい.1変量分散分析(ANOVA)から多変量分散分析(MANOVA)への“一般化”を例にとって説明することにする.事例としては2変量で十分なので,形態測定学の2次元形状座標に関する群間差の MANOVA をとり上げる.2次元の円形正規分布は tpsTriSB morphometrics site)の「sample scatter」の機能を使わせてもらう.このプログラムもともとは Kendall 形状空間を表示するためのものだが,ランダム三角形の生成や Bookstein 形状座標の図式表示をさせるのにとても重宝する.Windows metafile 形式で図を出力することもできるし.

―― 多変量データの“視覚化”についてはクラスター分析を例にとって解説.“次元減少”は主成分分析の出番か.

―― 〈R〉に入っている Edger Anderson の Iris 属の形態データファイルを共通のテストデータとして用い,多変量分散分析・クラスター分析・主成分分析の実習が行なえるように〈R〉のソースコードをつけておく.もちろん,〈R〉グラフィクスの出力を添付して.

◇原稿が仕上がったのは午後11時過ぎ(→租界Rの中の「多変量解析概論」:pdfで1MBほどのサイズ).さてアップロードして,と思ったら,サーバーにまだつながらない.この週末はずっと死んだままだったということか.くー.

◇運動会が原稿に変換されたということで,それはそれで有意義な一日だった.

◇本日の総歩数=9258歩[うち「しっかり歩数」=6175歩/49分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+1.0kg.※ヤバ...


25 september 2004(土) ※ 雨に濡れる多摩パルテノン

◇5時半に目覚める.地面が濡れている.今日もぐずつくという予報.大型台風21号が来るらしい.

◇聳え立つ多摩“パルテノン”の向こう側を探検.多摩ニュータウン内を徘徊する.一帯がペデストリアンで結ばれた「空中都市」のような感じ.車道から一層上に公園と居住地域が配置されている.坂道を下れば京王多摩センター駅に通じる.ふむふむ.4kmほどうろうろする.湿度が高いのでべたべたして気持ちわろし.太い青虫のように野菜を食べる(畑ではなくホテルにて).

◇あわてて9時半にチェックアウトし,都立大へ.南大沢駅で下りると,“はるかかなた”に理学部棟が見えるのでけっこうめげる.片道11分の徒歩.講義室は,いつものように蛍光燈的スローモードの空調のおかげで,午前いっぱいは蒸し暑い.

◇10時40分に講義開始 ―― 昨日の続きで〈R〉によるリサンプリング統計学について説明する.ブーツストラップとジャックナイフによるデータからの無作為再抽出をすることで,ある統計量の誤差評価をし,併せてその統計量の経験的確率分布を構築するという話.あっという間にランチタイム.

◇駅前のスタバで食料を仕入れて,会場に舞い戻る.往復2500歩.雲がいっとき切れて晴れ間が広がる.とっても蒸し暑いぞ.

◇午後1時半に講義再開 ―― 多変量解析概論から始まる.Edgar Anderson の有名な〈Iris〉データを用いて,多変量データに取り組む基本スタンスの説明.「次元低減」および「可視化」という二本柱で多変量空間を生存可能な場所にしようという骨子.Anderson のデータが〈R〉に入っていたのは幸いだった.同じデータセットを使って,次元低減の代表的方法として主成分分析を挙げ,次いで可視化の代表例としてクラスター分析を説明する.判別分析も取り上げた方が Ronald A. Fisher への礼を失しなかったのだろうが,イマイマ使いみちの限られた(マイナーな)ツールなので,黙って失礼させてもらった.

―― 午後4時に全コースを完了する.国際交流会館の池に落ちる雨粒の同心円がいくつも.これにて退散です.お疲れさまでした.>受講生のみなさん.

◇帰路,『チャペックの本棚:ヨゼフ・チャペックの装丁デザイン』(2003年3月12日刊行,ピエ・ブックス,ISBN: 4-89444-249-3)を読了.なかなかよろし.上野駅のブックガーデンは実に広大な「不毛の地」であることを知る(改装後はさらにダメダメになってしまった...).

◇ひたち野うしく駅に到着したのは午後8時過ぎ.東京よりも気温は低かった.11時に就寝.明日の小学校の運動会は天気だいじょうぶ?

◇本日の総歩数=20248歩[うち「しっかり歩数」=11422歩/88分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測.


24 september 2004(金) ※ 秋の南大沢を再訪

◇おはようございます.午前0時半に起床.夜風は涼しいな(19度ほど).研究所に直行する.

◇『日本のイカリソウ:起源と種分化』(1990,八坂書房)や『マルハナバチ・ハンドブック』(1997,文一総合出版,共著)などの著者だった鈴木和雄さんが昨日,膵臓癌で亡くなったそうだ.著書でしか会ったことはないのだが,マルハナバチのイラストが印象的だった.故人の前勤務校にたまたま今日行くことになるという偶然.

◇本日の都立大セミナーは下記の通りです ――

第6回都立大学生物学教室セミナー

【演題】生物資源探索ツールとしての系統樹
【演者】三中信宏 (独立行政法人農業環境技術研究所)
【日時】2004年9月24日(金)16:30〜
【場所】都立大学国際交流会館1F大会議室(京王相模原線南大沢駅から徒歩7分→アクセス

【要旨】生物の系統樹は近年ますます広範な研究領域で用いられるようになってきた.それとともに,データから推定された系統樹の用途も拡大してきた.以前は,系統推定することによって得られる知見は,狭い意味での系統分類学であり,対象生物群の系統発生に基づく体系化と整理,そしてそれに付随する生物多様性の評価が系統推定の主たる目的だった.しかし,系統推定のもたらす知見はそれだけにはとどまらない.既存の形質情報(形態や分子)に基づいて推定された系統樹の樹形およびその上で復元された仮想祖先は,未踏査の生物資源のもつ特性や機能を探索する上で強力なツールとなり得る.今回のセミナーでは最近共同研究がスタートした有毒藻類(アオコ類)の解毒細菌の分子系統樹にもとづく機能探索のケースを例にとって話題提供をする.

【参考図書】
  1. P.H. Harvey, A.J.L. Brown, J. Maynard Smith and S. Nee(eds.) 1996. New Uses for New Phylogenies. Oxford University Press.
  2. 三中信宏 1997. 生物系統学. 東京大学出版会

―― ということで,このセミナーの準備にいそしむ午前2時.

◇午前5時になってようやくセミナー用のプレゼン素材が仕上がった[ような]ので,これから南大沢に向けて出撃します.やや曇り気味か.雨が心配.※ううむ,腹減ったぞ.

―― ひたち野うしく駅に行くうちにもう霧雨が.やっぱり降るのか.6時14分発に乗り,通勤ラッシュ直前の都内を抜けて,京王線・南大沢駅にたどり着いたのは8時半のこと.駅横のスターバックスにて朝食兼休憩.

◇行きの車中で,Elliott Sober 2002「Bayesianism - its scope and limits」(所収:Richard Swinburne ed. Bayes's Theorem. Oxford University Press, pp.21-38)を読了.ベイズ主義者も尤度主義者もこてんぱん.とてもおもしろかったです.Sober さんは,赤池弘次&オッカムの流れを汲む〈predictive accuracy に則る単純主義〉で乗りきるつもりですね.撹乱母数(nuisance parameters)の扱いをめぐる“best-case strategy”を突くというやり方は,『過去を復元する』以来,Sober 氏の格好の標的であり続けている.ベイズの定理とベイズ主義とは関係ない――そりゃそうだ(定理の各項が well-defined であるかどうかという点).ベイズ主義が対立仮説が「真実であるかどうか」について口にした時点ですでに失格だとぼくも思う.

  • It does no good for the Bayesian to point to examples of scientific inference in which simplicity plays no role. Granted, there are such cases. However, in biology and the social sciences, scientists frequently compare models that contain different numbers of adjustable parameters. Simplicity is central to science because model selection is a pervasive problem. [p.34]
  • Bayesians typically see truth as the goal of inference - the point of evaluating data is to say which of the competing theories one has formulated has the highest probability of being true. When predictive accuracy is substituted for truth as the goal of inference, the epistemological landscape undergoes a fundamental change. [p.36]

◇さて,一休みしたので,講義の[心]準備とセミナー資料のさらなる改良をば.講義開始は10時半なので,まだ時間がある.外は曇り.今にも雨が降りだしそう.

◇10時過ぎに講義会場(国際交流会館)に到着.雨粒が池に波紋を描いている.蒸し暑し.定刻10分過ぎに講義開始.最初は〈R〉のパッケージについての概説.それから,前回に続いての乱塊法の分散分析についての解説と多要因での交互作用の説明.ここでランチタイム.

◇午後1時半から講義再開 ―― 線形モデルと一般化線形モデルの話題に触れながら,回帰分析の事例紹介.さらにパラメトリック/ノンパラメトリック統計学の対比についても.午後4時に今日の講義を終える.

◇午後4時半から,同じ国際交流会館の大講義室にて,生物学教室セミナー.ここで話をするのは昨年に続いて2回目.聴衆は40人ほどか.田村浩一郎さんから〈evolutionary trace method〉(J. Mol. Biol., 257: 342-358, 1996)が使えるのではないかとの情報提供.立体構造モデリングを利用しながら,系統発生的な復元推定をしていくという方法らしい.可知さんから,microcystin解毒酵素の獲得が細菌にとって適応的なのかどうかによって探索方法は変わってくるのではないかとのコメント.さらに,mlrAそのものの系統樹の方が 16S-rDNA よりも使えるだろうとの指摘も.どうもありがとうございます.午後6時前にセミナー終了.

◇6時半から,駅前のイトーヨーカ堂5階の広東料理〈春庭花〉にて懇親会.※よく飲み食いしてしまいました.

―― 田村さんと系統樹噺を.“宇宙よりも広い”系統樹空間をどう探索すればいいのかという現状認識.距離法では距離推定がカナメであること.NJを用いた巨大系統樹(数千OTU)推定の論文(K. Tamura, M. Nei and S. Kumar 2004. Prospects for inferring very large phylogenies by using the neighbor-joining method. PNAS, 101: 11030-11035, 27 July 2004).

◇京王多摩センター下車.雨がぱらぱらと.そのまま京王プラザホテル多摩にチェックイン.欲も得もなく寝てしまった.

◇本日の総歩数=19930歩[うち「しっかり歩数」=2933歩/26分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=未計測.


23 september 2004(木) ※ Buena Vida にほど遠い秋分の日

◇晴れて曇る.気温は20度そこそこなのだろうが,湿度が高いの快適指数は低いぞ.早朝に“藪の木陰コース”を歩く.

◇明日から都立大学の非常勤(後半戦)が始まるので,その準備をしないといけない.今回はセミナーもあるので,その用意ももっていかないと.午前中は研究室で準備中.―― 昨日のBGMにつられて〈Buena Vista Social Club〉など流したりして.※ぜんぜん仕事になりまへんがな.

――〈R〉のパッケージをダウンロードしたり,スキャンしたり,原稿書いてみたり.なんやかんやでお昼過ぎまで.

◇午後は「〈R〉使いまわしメモ」なるものをつくりながら,明日の講義準備.さらに,多変量解析全般に関して〈R〉をベースにしてうまく噺のネタを調整する必要がある.明日からの都立大の講義とか,続く10月アタマの畜産統計研修でも,そして11月の数理統計研修でも使えるように.この部分はゆくゆくは「多変量解析概論」の教材にする予定.ごちゃごちゃと夕方まで時間がつぶれる.

◇いけない(=美味い)夕食をすませて,早々と就寝.明日の集中講義後に開催される都立大セミナーの準備は当日の朝ガシガシとやるのが新鮮でいいのだドロナワの弁解は苦しいぞ).

―― ということで,3時間ほどの tacet の後,attacca で翌日に作業は続くのだった.※おやすみなさい.

◇本日の総歩数=10194歩[うち「しっかり歩数」=7463歩/60分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前日比=−0.2kg.


22 september 2004(水) ※ とどめのエスパニョール

◇5時起床.最低気温24度.蒸し暑い.腹が立つ.日が昇るとともにかーっと暑くなってくる.当然,今日も真夏日なんでしょ.

◇〈PhilBio翻訳計画〉―― 勁草書房へ提出する企画書(案)がアップされている.※何だか現実味が濃くなってきたよーな.

◇本日は年休なり ―― JICAのキューバ特設コースの統計学講義の最終日.研修生はそろそろ自分のデータを手にし始めているので,今日は一日かけて個別指導とコンサルティング.午前9時半に高野台に到着.コンピュータ室が今日の会場となる.研修生はそれぞれ自分のパソコン(スペイン語版ウィンドウズ機)を使っている.それぞれのテーマごとにデータを見ながらの対話.実験計画そのものは比較的単純なものがほとんどだが,春に教えたはずの分散分析を中心とする統計手法の手順の記憶が揮発してしまっている研修生もちらほらと.その記憶復旧にかなりの時間がかかってしまう.

―― 休憩時間に空を見ると入道雲が急成長中.今は夏ですか? そのうち空一面真っ暗になってきて,昼前にはぽつりぽつりと.午後の授業で〈R〉を教えることになったので,農環研に舞い戻り機材の準備をしているうちに,バケツをひっくり返したような土砂降りに.雷鳴もとどろく.こりゃどう考えても真夏のスコールだよねえ.数10分であがってしまった.

―― 午後は,〈R〉を用いての統計分析.英語版をダウンロードしてきて配る(スペイン語版Rってあるの?).研修生たちのデータのうち使えそうなもの(2要因乱塊法と3要因完全無作為化法)を例にとって,データファイルの作成から始まって,Rの起動と操作,分散分析と多重比較の手順を実際に演習してもらう.ときどき,スペイン語ウィンドウズに関する質問(コンパネの使い方など)が飛んできて泣きそうになる.午後4時に一通りの内容が完了.研修生のみなさん,いいレポート書いてね.Adiós !

―― そういえば,講義中ずっと“カリビアン”なBGMが最前列にすわっていた研修生のノートパソコンから流れ続けていた.

◇部屋をあけていた間に届いていた本たち ―― リチャード・スプルース著(アルフレッド・R・ウォレス編)『アマゾンとアンデスにおける一植物学者の手記[上・下]』(2004年4月1日刊行,築地書館,ISBN 4-8067-1284-1 / 4-8067-1285-X)/『季刊・本とコンピュータ(13号)』(2004年9月10日刊行,トランスアート,ISBN: 4-88752-190-1)/二ノ宮知子『のだめカンタービレ#10』(2004年9月13日刊行,講談社コミックスKiss505,ISBN: 4-06-340505-2).※お,のだめちゃん,コンセルヴァトワールですね.すげえ.スプルース本はなかなか魅力的かもしれない.

◇夕方になってまたぱらぱらと雨が降る.気温がすっと低くなった.通り雨にしては本降りか.

◇10月5日(火)〜7日(木)に実施される〈畜産統計処理II〉の最終連絡.今回は〈R〉だけの講習会なのだが,内容的な仕分けはあまり考えていない.講師は三人(ぼくと和田康彦@佐賀大さん,そして吉ざわ努@農研機構さん).前半8コマ(90分×8)がぼくの担当.研修参加者数は10名あまり.ほどよい規模だと思う.

◇夜,千野栄一の遺著『言語学フォーエバー』(2002年7月刊行,大修館書店,ISBN: 4-469-21274-1)をめくっていると,故人が「チャペック兄弟協会」の会長だったことを知る.なるほど.

◇本日の総歩数=9109歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前日比=+0.2kg.


21 september 2004(火) ※ マティス,チャペック,団子坂

◇朝から暑いやんけ(ああ,なんてお下品なことばを).南から熱風が吹き込んでいる.早朝ウォーキングをしたのに,朝特有のすがすがしさが感じられない.くー.

◇今日は東京へのプチ出張日 ―― 朝早く出て根津の日本医大に直行する.とあるワクチンがらみ.簡易書留で送ってしまって,この件はおしまい.昨日まで根津神社のお祭りだったようだ.〈芋甚〉は残念ながらお休み(「豆カン」食べ損ねる).往来堂書店にて涼む:カレル・チャペックの兄であるヨゼフ・チャペックの装丁を集めた本『チャペックの本棚:ヨゼフ・チャペックの装丁デザイン』(2003年3月12日刊行,ピエ・ブックス,ISBN: 4-89444-249-3)をゲット.チェコ・アヴァンギャルドですか.千野栄一に捧げられている(『チェコの古本屋』を読まないとね).ついでに,『谷根千』の最新号を2冊買う.最新号(第77号)は江戸川乱歩の“D坂”が特集.

―― かつて10年あまり住んでいた団子坂下の下宿の前を通り過ぎ(奇跡的にそのまま残っている),三崎坂を上がって〈愛玉子〉へ一直線.久しぶりで美味かったです.芸大前から上野公園に抜け,国立西洋美術館で開催されている〈マティス展〉に.初期よりも1940年代以降の後期の作品がいいなあ(「赤い部屋」とか).唇ばっかり描いたデッサンの〈痕跡〉というのが出品されていた.

―― さらにそのまま東京へ出て,オープン間もない〈丸の内オアゾ〉へ.平日なのに混んでました.丸善の新しい本店をば探検.当然のごとく4階の洋書売場に向かう.東京ステーションに面した明るい店内.D. Freedberg の本(『The Eye of Lynx: Galileo, His Friends, and the Beginnings of Modern Natural History』)はペーパーバックになっていたんだ.J. W. Valentine がまたも大著を:『On the Origin of Phyla』(2004年,Univ. Chicago Press).OEDの特別展示があった.奥にある〈本の図書館〉が居心地よさそう.

◇地下の〈Il Bar〉にて一休み.その後,新大久保へ.畸人堂百人町店に引き摺り込まれる.山川啓介・真島満秀『驛の記憶』(2003年10月20日刊行,小学館,ISBN: 4-09-681162-7)が半額だった.“鉄分”が多いわけではないのですが,つい.

―― 午後3時より国立科学博物館分館にて,分類学会連合の会議.来年のシンポジウムの件とか,科研費申請のこととか.学会事務センターのごたごたでもっとも大きな被害を被ったのは,法人格をまだもっていないクラスの中規模学会なのだそうだ,数百万円の損失が出ている学会もあるらしい.文部科学省は今年度の科研費を食いつぶして,学会の“救済措置”を取るそうだが,何やってんだかって感じ.※大金がケムリのごとく消えた当事者学会はもっとたいへんなのだろうけれど.

―― 会議は1時間半ほどで終わる.直行でつくばに帰る.リフレッシュしたのか疲れたのかようわからん一日だった.帰りの車中で,森まゆみ『[カラー版]明治・大正を食べ歩く』(2004年1月5日刊行,PHP新書279,ISBN: 4-569-63292-0)を読了.ごちそうさまでした(満腹).

◇本日の総歩数=26377歩[うち「しっかり歩数」=14020歩/116分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前日比=0.0kg.


20 september 2004(月) ※ 動く敬老の日

◇曇り.敬老の日は晴れるんとちごたんかいっ! とゴネてみても,とくにどこかに行楽のアテはないのでしかたがないのですが.

◇早朝からつい歩いてしまう ―― Book-Ace にて:森まゆみ『[カラー版]明治・大正を食べ歩く』(2004年1月5日刊行,PHP新書279,ISBN: 4-569-63292-0).おお,万定,芋甚,愛玉子!(なつかしや〜).もう1冊:多田眞作『Macで始める研究生活:レポート作成から学会発表まで』(2004年9月20日刊行,講談社ブルーバックスB1454,ISBN: 4-06-257454-3).

◇研究室にて日本計量生物学会メーリングリストのメンテに暗くいそしむ.たくさんMLを管理していると,投資エネルギー量に有意な差が出てくるのはいたしかたないですな.いくつかの更新をした上で,依頼されていた役員選挙についてのアナウンスを転送する.ここまでで3時間ほど費やされている.

◇みすず書房からリチャード・モランの新刊『処刑電流:エジソン,電流戦争と電気椅子の発明』(2004年9月刊行,ISBN: 4-622-07104-5)が出た(→版元アナウンス).社会派映画のタイトルみたいですな.食指やや動く.

◇夜,オリヴァー・サックス『オアハカ日誌:メキシコに広がるシダの園』を読了する.いい本です.この叢書(ナショナル・ジオグラフィック・ディレクションズ)の他の本も手にしたい.シダ狂いもここまでの境地にいたれば大したもの.Wagner tree に名を残す W. H. Wagner もちらっと登場する(p.124).

◇本日の総歩数=12589歩[うち「しっかり歩数」=10858歩/89分].全コース○|×.朝○|昼○|夜△.前日比=−0.6kg.


19 september 2004(日) ※ ワルイ 良い血ぃ抜かれる

◇早朝からカラッと秋晴れ ―― とても気分よろし.なので,捲土重来の献血に再挑戦.つくばセンターにある茨城献血ルームまでてくてくと.ささ,ワルイ血をたっぷりと,じゃなくって,いい血を心ゆくまで抜いてくだせえ.規程通り 400cc 抜かれましたです.ぶっとい献血針がささったまま10分ほど(タオルかけてね).献血ポイントが溜まったのでマグカップがもらえた.今後の献血には「身分証明書」が必要になるそうだ.とにもかくにも今日の社会貢献はこれにて終了.

―― クレオ向かいの〈なかやま〉にてしばし休息.J. -W. Wägele の教科書『Grundlagen der Phylogenetischen Systematik』をぱらぱらと.Rupert Riedl の進化的認識論の影響はドイツ語圏には広くその痕跡が見られるようだ.本書もその例外ではない.現象論的形質分析(Phänomenologische Merkmalsanalyse)とモデルベース形質分析(Prozessorientierte [modellierende] )の対比(pp.129-131).これに対応して,系統解析も〈現象論的手順(Phänomenologische Verfahren):第6章〉と〈モデル依存的手順(Modellabhängige Verfahren):第7章〉に分かたれる.

―― この本,ドイツ語圏にしては英語圏の最近のトピックスを広く深く渉猟してある教科書のように感じられる.ただ,著者独自のスタンスなのだが,〈phänetishce Kladistik〉と〈phylogenetische Kladistik〉を対置させる際に,必要以上に前者を矮小化し後者を拡大化して図式化している気配はある(たとえばp.210の図135).しかし,プラスマイナスを勘案したとき,総合点ではかなりいい線行ってる本.色合いとしては明らかに「生物寄り」(理論寄りではなく).生物学者の読者死亡率はきっと低いだろう.

◇午後はこまごまとしたことを.休日の時間は飛ぶように過ぎていく.

―― LALA Garden に水をもらいに行く.ついでにくまざわ書店にてNHKスペイン語講座テキストの10月号をゲット,Tully's にてちょっと休憩.チキン・カレーのさらなるバージョン・アップとバグ取り.

◇オリヴァー・サックス『オアハカ日誌:メキシコに広がるシダの楽園』を半分まで読み進む.アメリカ・シダ学会所属のシダ狂いの集団,メソアメリカを練り歩くの圖.ニューヨーク植物園の登場人物多し.なかなかおもしろいかも.政治よりも,貧困よりも,シダ.

◇ひさしぶりに ARG のメルマガが届く(第192号,2004年9月18日発行)―― ほほー,早稲田大学eスクール教材:〈ハンバーガーショップで学ぶ楽しい統計学:平均から分散分析まで〉.こういう教材はとても気になります.※う〜む,でもいきなり Excel シートをつかわせるとは(イマイチだぞ).

◇本日の総歩数=18703歩[うち「しっかり歩数」=13735歩/111分].全コース×|×.朝−|昼○|夜○.前日比=0.0kg.


18 september 2004(土) ※ まだ納め足りないって?

◇早朝から曇って日射しなし.気温・湿度ともに高し.

◇真夜中に最後の遅着レポートが届いていた.これで東北大の成績評価がやっと始められる.※ご教示いろいろと感謝です.

◇[つくばローカル]―― 東新井の電気街ウラにあった和食〈いしだ屋〉が手代木に移転.21日に新装オープンとのこと.松代五丁目交差点の近くらしい.

拙速のツケ(早々と)―― すみませんです,所定の書式に[できるだけ]準拠しますです,ハイ.週明けに人事書類の書き直し(汗).

◇駒場COEトークは引き受ける(来月の予定).自然科学・人文科学にわたる普遍的 tree-thinking の話をしよう.

〈カレーなる午後〉―― 午後,トツジョとしてカレーをつくろうと思い立つ.久しぶりなので,チキン・カレーにしましょうか.タマネギ4個をみじん切り,ニンニクとショウガもみじん切り.サラダ油(ギーがなかった)を1カップ,深鍋で熱して,みじん切りたちを2時間ほど炒める.飴色のルーになったら,香辛料たち(カルダモン,クローブ,シナモン樹皮,クミンシードなどなど)を混ぜてさらに炒める.香りが立ってきたら,ホールトマト(缶詰×2)を混ぜてルーをのばす.塩と醤油&ワインで下味を付けたチキン(胸と腿)を1キログラムほどドカッと入れて,ワインを材料が浸るほど注ぎ,いったん沸騰させる.アクをすくった上で弱火でずっと煮続ける.3時間後の夕食の時点ではまだトマト味が勝ちすぎてイマイチ.さらに一昼夜煮続ける必要がある.食べごろは明日の夜だろう.

◇カーハート『パリ左岸のピアノ工房』(2001年11月30日刊行,新潮クレストブックス,ISBN: 4-10-590027-7)読了.読後感の爽やかな本ですねえ.秋にはぴったりかも.スタインウェイ・ピアノの本と日本のピアノづくりの本を前に買ってあるので,覚めないうちに読んでおいた方がいいかも.

◇夜になっても蒸し暑い.窓を開けて寝よう.

◇本日の総歩数=6629歩[うち「しっかり歩数」=3892歩/35分].全コース○|×.朝○|昼×|夜○.前日比=−0.6kg.


17 september 2004(金) ※ 年貢をいろいろ納める金曜日

◇5時半起床.気温は18.3度.昨日よりも5度ほど高い.雲がかかっているせいかも.

◇夜中に,駒場から動員メール ―― COE(Center Of Enslavement)の本領いよいよ発揮か.※高座はいつでもOKです.ハイ.

◇お,“某K教授”でしたか.よろしくお伝えくださいな.※ふみふみ,元気してる? >某Kくん.

◇〈ソライロタケ〉―― シンプルに感動してしまうなあ,こういうの.真っ青だもんねえ.いまのぼくのように(笑えないって).

◇【拙速主義みごとに復活!】―― ということで,ひたすら“堆積岩”に発破をかけ,わらわらと出てきた“もののけ”どもをちぎっては投げ,蹴っ飛ばしては踏みつけ,丸めては餌食にする …… 履歴書/個人業績評価表/出張伺(2件)/復命書/大会参加費立替払請求書(2件)/年休届/査読依頼/購入雑誌希望調査票を一網打尽にする.郵送すべきものはとっとと出してしまい,メールでの返事はさっさとすましてしまう.ふふふ.まいったかー.

―― 「完璧」とか「パーフェクト」などという言葉はワタシの辞書にはないのだ.進捗スピードこそすべてだあ.※…… などと書いてしまうと,「では,アレはどーなったのでしょうか?」とヤブからオオヘビが出てきたりしてしまうかな.こまったー.

―― ま,とりあえず,本日は昼食ヌキでいろいろと雑用をしてしまったのであった.雑用こなすのにアタマはいらないぞ.【拙速主義】さえあればいい.※ほんとにやるべきことは別にあるからね.

―― この際,某辞典の項目ピックアップとか,個人的に頼まれていた原稿査読もついでにやってしまう.拙速だ,拙速だー.

◇しかし,敵(って誰やねん)もさるもの,「12月締切の例の原稿の進捗やいかに」などというジャブをくりだしてくる.そんな頼まれ原稿のことなんか脳裏からきれいさっぱり揮発していたワタシは,ごくさりげなく「現時点ではいまだ進捗ないものの大晦日の締切までには必ずや」とバッファーを配備する.※マジで,忘れてたー.

◇午後2時にになってやっと,前衛から撤退し,しばし休息 ―― 工作舎から近刊メール:杉浦康平『宇宙を叩く:火焔太鼓・曼荼羅・アジアの響き』が10月刊行予定.全篇にわたってただただ大太鼓を追いかける本とは.大太鼓って楽器にして楽器にあらずということか.叩いた経験のある人間だけが知っているあの地鳴りと快感.

◇午後になって雲が厚くなってきたようだ.蒸し暑い? しかし,気温21.5度の居室にたてこもっていると“外界”の状況はなにひとつ体感できなくなる.本日は「しっかり歩き」はまったくできず.たんに研究所内をウロウロしていただけ.

◇備忘 ―― 新しい名刺をそろそろつくらないとね.

◇来年度,研究室で購読する雑誌の選定.和雑誌は年明けでもいいのだが,洋雑誌は今月いっぱいに決めないと公費購入ができなくなる.購入単価が平均的にずるずると高騰し続けているので,情報資料課(図書室)で一括購入するタイトル数はじわじわと減っている.雑誌は継続購入することに意味があると個人的には思う.万難を排して買い続けるという強い意志がある? めちゃ高額な雑誌は研究所間で共有するなどの方法をとれば,価格的に弱小な(内容的にではない)多くの雑誌の継続購入が可能になるだろう.理想的には,ごく専門的なジャーナルは図書室に常備し,一般的な総説誌は各研究室に置き,趣味的に狭い研究分野の雑誌は個人購読するという「分業」が望ましい.しかし,図書室が必ずしも頼りにならないので,各研究室の負担が増えることはある.

―― 電子ジャーナルについては,いまの独占企業的状況を考えると,将来的にはヤバいかもしれない(バックナンバーまで含めて「一括アクセス不能」になるという悪夢).電子版ジャーナルだけあればいいという気にはなれない.

―― あれやこれや考えつつ,研究室購入の雑誌タイトルを絞りこんでいく.あれれという雑誌が農水省のどの機関にも所蔵されていないということが少なくない.単に「ワタシ」の守備範囲が“平均値”から大きくズレているだけなのかもしれませんけど.何も BJPS とか Biol. Phil. を公費購入しろなどと無理無体な要求をしているわけではないのです.せめて MBE / MPE / Syst. Biol. / Evolution くらいは部屋で取っておいてもいいよね.これまで部屋で購入していた TREE はマジで研究所で購入してくれるわけ? 途中で打ち切られたら目も当てられない.

◇〈Bogen〉はスコア的には〈TNT〉とほぼ互角になってきたようだ.※あとは計算速度の問題か.

血ぃ抜かれそこなう ―― 夕刻,ふと思い立ってつくばセンターの献血ルームを訪れる.筑波事務所に献血車が来るときはだいたい欠かさず献血しているのだが,ここんとこ不在がちなので半年ほど社会貢献していなかった.でもって,献血したいのですがと窓口に申し出たところ,昨日,歯医者に行ったという理由で即リジェクト.歯科治療を受けてから72時間以内は献血できないそうだ(知らんかった).予期しない大外刈で一本負けした心地.

◇おお,満を持してついに 詩人-生態学者 の登場だ!―― 「〆切は遠くにありて思ふもの/そして悲しくうたふもの」,うーん,胸に染み入る文言ですな.「遅れちまった〆切に/なすところもなく日は暮れる」,まさにその通りですなあ.とりわけ,“なすところもなく”というくだりが同業者の涙腺をゆるませるではないか.※【締め切り日まで−n日】というよくない思念が「北」から忍び込んでくる.まだ余裕あるっちゃ!(ないって?)

◇本日の総歩数=10353歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前日比=+0.2kg.


16 september 2004(木) ※ 放射冷却のはしりか?

◇5時起き ―― 「肌寒い」という単語を半年ぶりくらいに口にしてしまう.午前6時前の気温は「13.8度」.そういう季節になったのですね.

◇〈PhilBio翻訳計画〉への参加希望者がまたひとり.ご連絡ありがとうございます.ソーバー攻略に関してはもうひとり候補者がいますので.翻訳グループの中での調整が必要かと思います.とりあえず,お申し出があったことをグループに周知いたします.

Elliott Sober's Home Page の中にある「Recent Papers」で,いま読んでいるベイズ論文は公開されていましたね.

◇はい,後れ馳せながら「捕捉」させていただきました.>ほんとに単位いらないですか? ※[追記]そーですね,たとえ遅れたとしても,「ない」よりは「ある」方がワタシとしてはとてもうれしいのですが.その際,気の利いた〈延着理由〉が付いているとさらにうれしいですね.たとえば:「某助教授がムリにサッカー練習を強要したので,膝を痛めてレポートが書けませんでした」とか,「理学部校舎が老朽化していたためにトツジョとして大停電し,書きかけのレポートがわやになりましてん」とか,ま,いろいろとあるでしょ.

―― さ,そろそろレポートの集計と成績評価をしないと.

◇つい,机まわりの掃除を始めてしまったのが運の尽き ―― こういう片づけというのはエンドレスな連鎖反応をひき起こし,思わぬ大仕事に.ま,見つからなかった“書類”や“仕事”が出土したりして,よかった[のか悪かったのか].結局,午前いっぱいかかってしまう.

◇ああ,暑い暑いと言いつつも,正午の気温は「夏日」に達せず.さしもの酷暑もいよいよジ・エンドか.農環研の集中空調も今週いっぱいでおしまいとなる

◇東大出版会から『生物系統学』の「第3刷」(2004年9月15日刊行)が届く.つい撫で撫でしてしまう./農文協から『生物科学』の最新号(56巻1号)が届く.今号の特集は「進化と創造主義」.例によって〈“みなか”の書評ワールド[5]〉が載る.今回の標的は,小川眞里子『甦るダーウィン:進化論という物語り』,ヘイドン・ホワイト他『物語と歴史』,そしてカルロ・ギンズブルグ『歴史を逆なでに読む』の3冊.

◇〈PhilBio翻訳計画〉―― 確かに原書は1998年の出版なので,パートによっては(とくに生物学が社会が絡む後半部分では),いささか時機を逸したと感じられる章があるのは否定できないと思います.これは先日の打合せでも論された点でした.ただし,ヒトゲノム計画のように,新たな段階を迎えた生物学の技術的側面がもたらす社会的影響を考える足場として,1998年当時の「視点」をそのまま提示し,必要に応じて訳注や解説などで補っていくという方針でどうだろうかということになりました.

◇げ,月末締切ですか…….[汗]

◇机の上が整理されると掘り出された〈仕事〉たちが剥き出しになる.まったくもって目のやり場に困る 現実から目を背けてはいけない.

◇明日は年貢を納める日.※納めろよっ.>ぼく

◇本日の総歩数=17142歩[うち「しっかり歩数」=10147歩/85分].全コース○|×.朝○|昼○|夜△.前日比=−0.3kg.


15 september 2004(水) ※ 絵に描いたような秋晴れ

◇午前5時半起床.最低気温19度,快晴で涼しい.紫外線が燦々と降り注いでいる心地.

◇〈PhilBio翻訳計画〉への参加希望,確かに承りました.【淘汰単位】セクションよりも【種】セクションの方がいいですよね.きっと.Phylogenetic species concept 2論文(Mishler & Brandon 1987 と de Queiroz & Donoghue 1988)をまとめてたたんじまいますか? ついでに,Ereshefsky の【種】多元論(1992)も寄り切ります? ※さ,あとは unit of selection セクションの3論文か.Sober さんと対戦したい人,どこかにいません?(自分でやれって? きゅ〜)

◇わ,体重計の「仕様」まで読まれてる!(→てくてく:9/14) 偶数表示がトグルするときは“平均値奇数”と解釈しています.「今度こそっと実測値交換など。トップシークレットで」―― クニエさん,そりゃあいかにしても命知らずですぜ(月夜の晩だけとちゃいまっせー).※【教訓】カレーと揚げ物は御法度だそうで.ふふふ,クニエさんにはつらいかな.ふふふ(プチ反撃……のつもり).

◇リチャード・スプルース著(アルフレッド・R・ウォレス編)『アマゾンとアンデスにおける一植物学者の手記[上・下]』(2004年4月刊行,築地書館,ISBN 4-8067-1284-1 / 4-8067-1285-X)を盛岡の東光書店に発注.定価の2/3の価格で.

―― 半年ほど購入しようかどうか迷っていたのだが,オリヴァー・サックスの紀行文『オアハカ日誌:メキシコに広がるシダの楽園』(2004年2月29日刊行,早川書房,ISBN: 4-15-208547-9)を読んでいて最終決断を下す.“レナードの朝”を迎えた“タングステンおじさん”はただのシダ狂いということか.ナショナル・ジオグラフィック・ディレクションズはあまり書店で見かけない叢書だけど,内容や構成はとてもよさそう.

◇あ,また書評用献本が届く.※だ,だぶってるやんか…….毎年,「読書の秋」になるとこういうことがよく起こる.

◇郵便局&公園読書&ウォーキングな昼休み.日射しとても強し.

レッド・ロット(red rot)―― かつて東大の総合図書館でヘッケルの『一般形態学(Generelle Morphologie der Organismen)』を閉架書庫から借り出したとき,胸に抱えたとたんにTシャツが赤褐色に汚れてえらいことになった.あれは革装の本には宿命的な〈レッド・ロット〉という症状であると『古書修復の愉しみ』の始めの方に書かれてあった.本の「壊れ方」にパターンがあることもわかった.

農環研,地環研にあえなく敗れる!(_| ̄|○)―― そーか,そうだったのかぁ.一月も前の「評定」に今頃気づく……→〈幾霜::残日録::2004/08/06 (金)〉.くぅ〜.袈裟懸けにバッサリって感じでーす(痛).「インターネット不適合者」って(ひー).※「機械可読性」という基準があったとははまったく知らなんだ.まいった.逝きました.

◇ああ,もうこんな夕方になってしまって…….

◇東北大学集中講義レポートの締切時間が近づいている.どどっとメールで送られてくるレポートたち.みなさんご苦労さんです.大学によっては忌まわしい〈***.doc〉とか添付してくる輩もいるのだが(***.xls を貼ってきたケースあり;***.jtd はまだない),今回はメールの本文として送ってくれるので良心的.

◇夜9時の気温が20度を下まわっている.明日の明け方はぐっと冷え込むかもしれない.

◇Richard Swinburne (ed.) 『Bayes's Theorem』(2002年,Oxford University Press, ISBN: 0-19-726267-8)に所収されている Sober の論文(「Bayesianism - its scope and limits」, pp.21-38)を読み始める.ベイズ主義の限界について.※この本は The British Academy の議事録(Proceedings)として位置づけられているようですね.Bayesian vs. Likelihoodist の対決.そして単純性原理(simplicity)の再来.

◇本日の総歩数=15604歩[うち「しっかり歩数」=11059歩/92分].全コース○|×.朝○|昼○|夜×.前日比=+0.1kg.


14 september 2004(火) ※ ううむ,やや寝不足かもしれない

◇あまり爽やかではない明け方(気温湿度ともに高め).午前5時半に目が覚めてしまう.雲が多い.

◇あ,クニエさんに気取られたっ!(→「今日のてくてく(9/12)」).※もう,あとに引けないワタシ....

◇真夏日の再来,30度を越しました.暑い.残暑だからよけいにそう感じる.

◇献本感謝 ―― 遠藤俊次・上田恭一郎『世界の希少アゲハチョウ全種』(2004年7月28日刊行,ESI,ISBN: 4-901273-14-0).どうもありがとうございました.カラー写真,美しい(さすが高度な印刷技術).レッドデータブックに基づいてカテゴリー分けされ,分布域がひとつひとつ明記されている.ボルネオ島やミンダナオ島のあるひとつの山にのみ分布しているアゲハチョウの例を見るにつけ,ある種の“はかなさ”を痛感してしまう.ちょうど,アゼルバイジャンのシャフダク山でのみ話されている〈ヒナルク語〉(話者二千人ほど)を思いやるときの“はかなさ”と同じ種類の感慨である.

◇メモ ―― 丸善の新店舗が入る〈丸の内オアゾ〉が今日オープンした.東京駅の北口近くなので,機会を見つけて行ってみよう.サイト重過ぎ[混んでいるだけ?]./『数学セミナー』の今月号(10月号)の特集は「データサイエンス」.※イマイチよくわからないネーミング.

◇昨日の続き ―― 〈PhilBio〉翻訳グループのメーリングリストが開設された.

◇〈チェロ・マリンバ〉ってナニ?―― という疑問を持っていたのだが,なるほどこういう楽器だったのか.音盤下の共鳴筒が木製なわけね.試聴するかぎり,残響感がずいぶんとちがうような気もする.世界でこれ一台だけとか(音域はC〜Fの5オクターブ半).楽器のメンテがさぞやたいへんだろうと思う(全部「木」だもんね).

◇アニー・トレメル・ウィルコックス『古書修復の愉しみ』(2004年9月10日刊行,白水社,ISBN: 4-560-04787-1)読了.予想通り,味わいのある本でした.ありていに言ってしまえば「壊れた古本をひたすら修理し続けるだけ」の内容なのですがね.そこがまたいい.本に書かれてある文字情報を保存する(〈preservation〉:内容保全)だけだったら,デジタル化なりマイクロフィッシュ化という方法によって何とかなるわけだが,著者はむしろ“本そのもの”(モノとしての本)をそっくりそのまま保存する(〈conservation〉:現物保全)ための技法に関心をもつ.ディテールへのこだわりは「匠のわざ」の世界を感じさせる.読み心地は,並行して読んでいる古ピアノ修理本,T・E・カーハート『パリ左岸のピアノ工房』(2001年11月30日刊行,新潮クレストブックス,ISBN: 4-10-590027-7)にも相通じるものがある.

―― HONCOレアブックス『製本』(2000年11月刊行,ISBN: 4887521294)がふと読みたくなった.和書修復の「わざ」本.※あ,『本とコンピュータ』の最新号(2004年秋号)が発売中だ.買わないと.

―― 〈ephemera〉というわくわくさせる言葉があることを初めて知った.

◇本日の総歩数=17763歩[うち「しっかり歩数」=9797歩/83分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前日比=−0.6kg.


13 september 2004(月) ※ 夜中にリラックスしてみる[眠たい]

◇前日から「アタッカ」のまま作業はなお続く ―― 畜産統計研修IIで用いる〈Rでブーツ〉を出力完了,即アップ[0:35].あとは〈Rによる統計解析〉だけ.畜産統計研修の方はテキスト締切がもう過ぎているので,とにかく早く仕上げないと.農水省の統計研修の方は来月はじめが締切なので,〈多変量解析概論〉をまとめるだけの時間はあるだろう(とたかをくくっているうちに,首をくくられるのだ).

◇締切が間近い東北大学の集中講義レポートがぽつぽつと集まり始める.みなさん,ご苦労さんです.受講生の感想:「今までは統計に使われていたが,今度は自分が統計を積極的に使う立場にかわろうと意欲がかなり湧いた」―― ありがたいコメントです.杜の都まではるばる出張高座に出向いた甲斐があったというものです.

◇お,とにかく早く教材づくりを終わらせないと ―― 他にも書類書きがあるのだよ >ぼく.

―― 気温がぐんと下がってきた.窓から冷気が侵入する.

◇なんだかんだで〈Rによる統計解析〉の原稿が完成したのは午前2時過ぎ.農林水産省生産局の研修担当部署にメールにてURLを通知する.念のため明日速達で教材原稿を郵送する.畜産統計研修の教材づくりはこれにて一件落着した.

―― と思ったら,履歴書を書け? あほかー.いらん書類作らすなって.※見なかったことにしましょ.

◇農水省の統計研修テキストの方も,できた原稿を封筒に入れて,宛て名を書いてしまう.残った原稿を仕上げて投函するだけ.〈多変量解析概論〉ねえ,そんなアブナイ橋を誰が渡ると了承したの? だいたい,農水省の統計研修に〈概論〉などという科目はどこにもなかったんですよん.概論はラクだなんて思わないようにね.やっかいだからこそ誰も引き受けなかったんでしょ.当たり障りのない概論は単なる時間潰しに過ぎないしね.受講生に「引導」を渡す覚悟あります?

◇とある書類を書き始める.人事がらみの書類って相手の結界に飛び込んでいくような緊張感がある.

◇調書やら履歴書を書き終わったのが午前5時.でもまだ残っている.

◇ドイツ体系学の教科書もう1冊 ―― B. Wiesemüller et al. 『Phylogenetische Systematik: Eine Einführung』(2003年刊行,Springer Verlag, ISBN: 3-540-43643-X).200ページほどの入門書のようだ.書評(G. Purschke, J. Zool. Syst. Evol. Res., 42(1): 88, February 2004)には J. -W. Wägele の教科書『Grundlagen der Phylogenetischen Systematik』と対比した上でキビシイことが書いてあったけど.図がヘボいとか,分子系統学の記述がおざなりだとか.値段がほとんど変わらないのだから Wägele の本を読もうねとか.要するに Wiesemüller らの本は内容的に“古めかしい”ということか?

―― 書評が載っているこの雑誌(J. Zool. Syst. Evol. Res.)は,継続前誌である『Z. zool. Syst. Evol.-forschung』が Blackwell に買収されて“英語化”されてしまってからは,ほとんど見ることもなくなっていたのだけれど,バックナンバーを眺めていると,Ernst Mayr / Walter J. Bock という不滅デュオがまだ存続しているではないか.たとえば,フリーで読める Mayr & Bock 「Classifications and other ordering systems」(Vol.40, no.4, pp.169-194, 2002)とか,それに対する Michael T. Ghiselin のコメント(Vol.42, no.2, pp.165-169, 2004)とか,Bock の種概念ペーパー(Vol.42, no.3, pp.178-190, 2004)とか.けっこう賑やかそうでいいですね.でも,この雑誌を購読している機関が今はほとんどないのが難点.

◇ゲルギエフ指揮でスクリャービンの第5交響曲〈プロメテウス:火の詩〉を聴くと,とてもBGMにおさまってくれないのがこれまた難点.キーロフ,鳴りまくり(絶叫する金管部隊 ※ 曲が曲だし).このCDは[火の鳥&プロメテウス]という組合せだが,同じゲルギエフの別のCDは[春の祭典&法悦の詩]という無敵のカップリングだったりする(聴衆はことごとく薙ぎ倒される).

◇早朝に一時帰宅.欲も得もなく寝て寝て寝る(3時間ほど).今日も低湿度のカンカン照りの一日みたいだ.

◇再び研究所に舞い戻り,書類づくりの再開 ―― 履歴書やら業績目録を書き続ける.提出先によって書式がばらばらなのはまだしも.わーどの罫線憑き文書を強要しないでね(体調とてもわろし).うーむ,単行本の「版形」まで記入するんですか?(アンタは書誌学者かいっ?) いろいろとカルチャー・ショックを受ける.でも書かないといけない.

―― それにしても,この様式と要求はサディスティックだと思う:「西暦では記入しない」(こんなのはほんの序の口であって……);「所属する学会、団体等その名称を加入した年月順に記入する」(学会に加入した年なんか忘却の彼方);「業績をさらに明確にするため、次のa〜hに分類し、それを欄外右の余白部分に手書きで記入する」(なぜことさら“手書き”にこだわる?);「共著の場合、寄与の状況を次の記号で表し、欄外右の余白部分に手書きで記入する」(“手書き”大好きな人たち);「研究業績ごとにそれぞれ200字以内で簡潔に概要を記入するとともに、著書の場合は、末尾に判型及び総ページ数を明記する」(よほど時間があり余っているにちがいない.書く方も読む方も);「業績の全部(本部保管用)と主要な業績(教授会用)を記載したものそれぞれを提出する」(ま,マジですかあ?)

―― おそるべき「事務方文化」だと思う.ほんとうにこれに対応しなければならない?(脱力)

◇午後3時に「とある人事異動」の内示が出ました.10月1日付.辞令をもらうときには「ネクタイ着用のこと」と太いクギを刺されたりして....※またドレスコード問題かいっ.

◇箱崎発〈動物行動学会大会〉のアナウンス.行く予定はないのだが,コッソリ愉しむのはタダでしょう.うひゃひゃ.こりゃもはや「ウラ」情報ではなく「半オモテ」と言うべきだろう.※なんだか「クレヨンしんちゃん」に出てきそうなキャラ顔になってません? >実行委員長どの.

◇午後4時にひたち野うしく駅に立っていた.午後5時過ぎに日本橋・丸善へ.来月の完全閉店に向けて「残務処理・在庫一掃モード」になっていた.洋書の多くは大幅値下げ(とくに,オクスフォード大学出版局の本は半額に:Semple & Steel『Phylogenetics』も,Craw他『Panbiogeography』も,Humphries & Parenti『Cladistic Biogeography』も).Richard Swinburne (ed.) 『Bayes's Theorem』(2002年,Oxford University Press, ISBN: 0-19-726267-8)を半額で購入.E. Sober の論文含む.

―― 明日(14日)に八重洲北口の新店舗がオープンするそうだ.日本橋の旧店舗は10月16日に完全閉店となる.

◇午後7時,印刷博物館のすぐ近くにある勁草書房の会議室に集まる.David Hull & Michael Ruse (eds.) 『The Philosophy of Biology』(1998. Oxford University Press, ISBN: 0-19-875212-1)の翻訳企画の打合せ.果たして売れるかどうか.部数はどうするか.今後の進め方について話し合う.企画書の素案はあとで.午後8時半に解散.

―― 飯田橋駅前の〈KUON〉にて翻訳チームで夕食.翻訳分担について話し合う.ぼくは〈自然淘汰単位〉と〈【種】問題〉のパート.おお,その霊長研の人事,なかなかスルドイですねえ.歴史のあるとある勉強会の“人脈”が今の日本の生態学界・進化学界の“底脈”にあるのではという指摘(フリーメーソンか,はたまた「ときわ荘」か?).午後10時過ぎまで.グールドもイマニシも知らないいまどきの学生さんにのけぞった話とか.※科学について何かものを言いたい人は科学の世界の中に居続けるべきだ.強くそう思う.生物学哲学は最初からその傾向が強かった.いまの日本にその受け皿があるかどうかは心許ないけれども.

◇つくばにたどり着いたのは午前様.寝たのは午前1時半.

◇本日の総歩数=13944歩[うち「しっかり歩数」=2938歩/25分].全コース×|×.朝−|昼○|夜△.前日比=−0.2kg.


12 september 2004(日) ※ 痩せない干物

◇明け方の最低気温は18度.いよいよ秋の気配か.窓を開けて寝るのはそろそろ止めた方がいい.

―― 「明け方」ではなく「丑三つ時」に起きてさくさくと作業する予定だったのだが,昨日の“日干し”の影響か,とてもよく寝てしまった.※とてもよくない.たいへんヤバい.

◇休日出勤.なかなかノリがワルイです(当然か).うつろう.

―― 【欹耳袋】林知己夫著作集編集委員会(編)『林知己夫著作集』(2004年9月下旬刊行予定,勉誠出版,ISBN: 4-585-05100-7).全15巻(計5,000ページ),税込定価 84,000 円.分売不可.いっぺんに全部ドカンと出るような気配.“数量化理論”や“データ科学”の提唱者として有名な故人の著作集.もちろん,公費購入でしょうな.

◇とりあえず,はじめに農水省の統計研修教材を仕上げよう.他のはこれまでの蓄積があるのでなんとかなるけど,今年から新設されることになった〈多変量解析概論〉……どーしましょ?(高座は“扇子”だけでしのぎましょーか,アカン?)

―― 〈統計学概論〉は例年通りの内容なので(というか,テキストなんかあってなきがごとしなので),教材原稿はすぐに完成.〈実験計画法〉については,過去の講義資料のスキャンをしなおしたので時間がとられる.さらに〈Rでラクラク分散分析〉については,コマンド入力文の改訂とともに,全体としての可読性の改善.Shapiro-Wilk正規性検定とBartlett等分散検定の補足説明.関連して,Kruskal-Wallis検定とWelch検定も追加.多重比較についてはBonferroni補正ではなくHolm補正を前面に出す.これらの修正点を加えたInDesign ファイルからpdfに出力完了.この時点で午後7時.いったん帰宅.

―― 午後9時過ぎに農環研に舞い戻り,続きの作業.〈Rによる統計解析〉は改訂点多し.今年になって増えた日本語のR参考書を付け加えたり,関連サイトのURLもバージョンアップしないといけないし.時間がさらさらと流れ去っていく.

―― 今までのスキャン資料はとても読めたものではないことを痛感する(過去の受講生のみなさん,ごめんなさい).明日の未明には〈租界R〉に最新版の資料をアップしておきます.pdfファイルのサイズは数倍に肥満したが,可読性は確実に向上しています.

―― いま初めて気がついたのだけれど,〈R〉ってのは「ISBNをもっている著作物」だったのですね.Win / Mac 共通で「ISBN 3-900051-00-3」が最新バージョン(1.9.1)に付いています.

―― ううむ,それにしても時間が取られるな.この時点ですでに日が変わりそう.道なお遠し.とりあえず,できあがった資料(農水省統計研修と畜産統計研修)を〈租界R〉にアップ完了[23:45].

◇おほ,日が変わるから,これからの丑三つ時記録は明日まわしっと.

◇本日の総歩数=5726歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前日比=+0.2kg.


11 september 2004(土) ※ 秋口の日干し

◇5時起床.気温は20度くらいか.きもちよし.

―― りーぜん先生が夜中に降臨されていた.誠にありがたいことでございます.感銘を受けつつ:

Veni, Creator Spiritus!
Mentes tuorum visita.

この交響曲が初演されたのは1910年の奇しくも明日9月12日のこと.額面通り「千人」の演奏者が舞台に乗ったそうな.

◇献本感謝 ―― ロバート・アンジェ(編)『ダーウィン文化論:科学としてのミーム』(2004年9月7日刊行,産業図書,ISBN: 4-7828-0149-1).ミーム学(mimetics)をめぐる論集.執筆者は S. Blackmore, D. Hull, D. Sperber, R. Boyd ら.本書の書評は『図書新聞』に掲載されることになっています[書評受諾メールをいま送りましたので].

◇参議院の〈速記〉が廃止されるそうだ(→朝日新聞記事:「100年超の歴史に幕.参院が国会速記廃止の方針」).衆議院もそれに続くとのこと.これからは“パソコン速記”になるらしい.速記検定一級は「分速320字」で書き取れることという基準だったと記憶している(アナウンサーはこれくらいの速度で読み上げている).慣れた速記者は「分速360〜400字」も可能らしいが(うろ覚え).キーボード入力の場合,略字(簡字)などはどーするのかな?

◇朝から中学の運動会に行く.気温はさほどでもないが,日射しがたいへん強い.湿度が低いので,運動会的にはいい日和だったのだと思う.

―― でも,疲れました.とても.とくに何かをしたというわけではないのだが.午後3時に帰宅.

◇ごろごろしてしまう.『オランダ大好き!』読了.濃厚マヨネーズつけまくりの「patates frites」なんてぇのはカラダにとっても悪いことはよーくわかっているのですが,ライデンではさんざん食べたのですよ.まったくもう.※かの「haring」の方がまだマシか.

◇あー,こりゃダメです.意識なくなりそう.あの書類やらこの資料やらあるんだけど.

―― ムダな抵抗をせずに寝た方がいいのかもしれない.

◇本日の総歩数=8454歩[うち「しっかり歩数」=1217歩/11分].全コース×|×.朝△|昼○|夜×.前日比=−0.8kg.


10 september 2004(金) ※ “閾値”越えました

◇午前1時半起床.研究所の温度計では「20度」.雨は上がっていたが,路面は濡れたまま.

◇寝起きだったので,組合関係のメールを班員に出しまくる.次期職場委員が幸い決まったので,肩の小さな荷がひとつなくなることになった.今日は農環研分会の定期大会(ぼくはパスしますね).

◇某書類の作成にとりかかる ―― 他機関のものとはいえ,事務文書に寄生するこういう“爛熟腐敗的罫線文化”は今すぐに息絶えてほしいと思う.どーせ,そういう書式とはまったく無関係にコンテンツを埋めていくので,ぼくには関係ないことなんだけど.※でも時間はかかりそう.

―― ぐえ,と落ち込みそうになったので,ヤナーチェクの〈グラゴル・ミサ〉をがんがんかける.こういうワイルドで異教的なのがふさわしいこともある(というか,そういうCDしか持っていない).きゃー,この目が回りそうなティンパニの「音変え」がとってもサディスティック(ペダル踏みまくり).でも,1ヶ所だけ「どーしても足が3本必要」と思われる音変えがあるのだけれど.単純に考えて,ひとりの奏者が3個のペダル・ティンパニの音を同時に買えるにはどーすればいいの? とてもフシギだ.ニールセン〈不滅〉もティンパニストにとっては極度にサディスティックなパート譜ではあるけれど,台数そのものは2個ですむ.ヤナーチェクは総譜を読みこむ価値があると思う.

◇あ,もう6時になってしもた…….今日も日中は日射しが強そうだ.

◇EVOLVE / BIOMETRY / TAXA に月例アナウンスをやっと送った.EVOLVE には,開設10周年であることを知らせるついでに進化学会で〈教育啓蒙賞〉をもらったことも報告したところ,「祝電メール」が何通も届いた(ありがとうございます).

◇今年度の国際生物学賞の受賞者は,細胞進化の Thomas Cavallier-Smith 氏に決まったそうだ(→読売新聞記事).細胞共進化の Tangled Tales の話し手.ご本人はブダペストの ICSEB-V(1996年)で見たことがある.

◇〈訃報:水上勉〉―― 初期の『飢餓海峡』『雁の寺』『五番町夕霧楼』などは高校生の頃に文庫本でほとんど読み尽くしていた.大学に入ってすぐの頃,池袋の文芸座地下で内田吐夢監督の映画〈飢餓海峡〉を見たが,モノクロ,脚本,長さ,暗さ,そして映画館の雰囲気などなどをすべて総合してみると,とてもハマりすぎて怖かった記憶が今でも残っている.※社会派とか辺境物に惹かれていた(る?)ということ.

◇来月はじめの〈畜産統計処理II〉の教材をあわててひねり出す(放り出すという表現がより適切か).まあ,これまで用いた〈R〉教材をアレンジすればなんとかなりそうのでひいひい言うことはないのだけれど.担当するのは12時間なので,イメージとしては東北大の集中講義を思い浮かべればいいか.

◇腐れ罫線文書の方は,いやはやなんとも.見るだにイヤになる.※ごちゃごちゃ言うてんと,はよ,ケリつけなはれ.>ぼく.

◇David Hull & Michael Ruse (eds.) 『The Philosophy of Biology』(1998. Oxford University Press, ISBN: 0-19-875212-1)の翻訳打合せ会議は来週月曜の夜,勁草書房にて.翻訳グループの初顔合わせ.※この“電話帳”ったらもう....

―― 翻訳って難行苦行.数々の痛い目を見ているのに,またもや…….

◇夕方,少し雨が降る.しかし,すぐあがる.

◇本日の総歩数=18030歩[うち「しっかり歩数」=11285歩/88分].全コース○|×.朝×|昼○|夜×.前日比=+0.4kg.


9 september 2004(木) ※ 熱帯低気圧接近中

◇最低気温22度.昨日の朝に比べるとしのぎやすい.5時起床.台風19号崩れの熱帯低気圧が関東に近づいているという.

◇〈Mesquite〉が 1.04 にバージョンアップされた.最近,いじり方が足りないので,機会があるたびにいろいろと触ってみよう.

◇統計学関連のメモ ―― 生態学会釧路大会での統計二人囃子〈デ−タ解析で出会う統計的問題:多重検定と多重比較をめぐって〉の講演pdf資料をダウンロード.いつもながらできのいい脚本だと思う.来年3月の大阪大会でも新たなネタが予定されているそうだし./かの〈これ論師〉が〈R調教師〉に急速変身しつつあるようだ,いま進行中という『R備忘録』の完成を待ってます(一般線形モデルの教材として).あ,そろそろ提出レポートが集まってくる頃かな./あらきけいすけさんの「業務日誌」(9月3日)での「実験から確率分布関数を求めること」について.経験的確率分布の構築ということでしょうか? もしそうであれば,たとえばぼくの〈租界R〉の壁新聞にメモしたような手順でデータから経験的密度関数を構築することは難しくないと思います.

◇新刊備忘録 ―― 『Studies in Stemmatology II』(2004年9月刊行予定,John Benjamins Publishing Co,ISBN: 1588115356).文献系図学の論文集.前著『Studies in Stemmatology』(1996年3月刊行,John Benjamins Publishing Co,ISBN: 1556195079)の続刊.両方とも US$ 100 を越える高い本だけど,そのうち手元に置きましょうね./Ernst Mayr 新刊『What Makes Biology Unique? : Considerations on the Autonomy of a Scientific Discipline』(2004年8月刊行,Cambridge University Press, ISBN: 0521841143).ここ数年の Mayr 氏の新刊タイトルは収斂しつつあるように感じる(『〜とは何か?』的タイトル).

◇系統解析を手伝った共同研究の投稿論文がひとつアクセプトされたとの連絡が入る(Theoretical and Applied Genetics誌).よかったですね.

◇埼玉大の矢野さんからの情報 ―― 今月はじめにベルギーで〈Textual Criticism and Genetics - Confronting Methods〉というワークショップがあったとのこと.文献系譜と遺伝学との関係.Bielefeld 大学から Andreas Dress ら数学者の参加あり.文献系譜ネットワークを系統学的に推定するというテーマもきっと論議されたのだろう.ほー,「Unrooted trees and networks. Perspectives in stemmatology」などという講演があったりする.問題意識あるいは問題設定が生物系統学とパラレルなのがとても印象的.大系統問題とかハイブリッドとか系統樹概念それ自体についてとか.『カンタベリー物語』プロジェクトは続いているようだ.なお,このサイトでは,プログラム・講演要旨・参考文献がまとめられているので便利.

◇ついでに ―― 〈Res: もの研究会〉に佐藤啓介さんによる進化学会大会記事が載っている.後半の佐藤講演の内容について:遺物の分類が monothetic ではなく polythetic であるというのは,考古学の型式学(typology)ではいわゆる本質的形質に基づく分類がそれほど重視されていなかったということでしょうかね.Mary P. Winsor の昨年の論文「Non-essentialist methods in pre-Darwinian taxonomy」(Biology and Philosophy, Vol.18, no.3, pp.387-400, June 2003)は,生物分類学でもそれは成り立つと言っています.※とすると,essentialism は?

◇夕方から気温が下がり始める.夜半になって雨.涼しい.早く寝る.

◇本日の総歩数=17082歩[うち「しっかり歩数」=9537歩/78分].全コース○|×.朝○|昼○|夜△.前日比=本日測定開始.


8 september 2004(水) ※ 台風側方一過で残暑居座る

◇昨夜は一晩中強風がびょうびょうと吹き荒れ,ベランダでいろんなものがごろごろと転げ回り(憑喪神かいっ),木々が揺さぶられていた.

―― 当然のごとく,今朝は朝から蒸し暑さがまとわりつく.日中が思いやられる.

◇そろそろ秋の統計研修シーズンなので教材をつくったりしないとね,と思っていたところ,見透かされたように農水省畜産振興課から電話あり.来月,白河で予定されている「中央畜産技術研修会」の〈畜産統計処理II〉で用いる洗脳教材を今週中に極秘に準備すべしという指令を受ける.農水省の統計研修の教材とともに,今週中にケリつけよう.

◇わ,組合の次期職場委員を決めないと.

◇わわ,まだメーリングリスト管理を放置したまま.

◇わわわ,学会大会の参加費領収書を提出していない.

◇わわわわー,もっともっとたいへんな仕事もあるのよん.

◇オモテの仕事がらみで,〈環境統計学〉についてこれから考える必要がありそう.まだ未開拓か.

◇正午の外気温は32度を越えている(ええ加減にせえって).茨城南部地域の稲刈りは真っ最中.稲荷川の鯉,でかすぎ.※残暑炎天下,これでもかぁの一万歩でーす.

◇あ,これは延髄反射の衝動買い ―― アニー・トレメル・ウィルコックス『古書修復の愉しみ』(2004年9月10日刊行,白水社,ISBN: 4-560-04787-1).こういう本はいけません.とても罪深いです.こんなそそるようなカバーをつけるのは罪悪です.“書物への愛”などという禁断の言葉がオビに書かれている.訳者は市川恵里さん.『オリーヴ讃歌』も『パンをめぐる旅』もすでに読んでしまっている.たいへんまずい状況です.ああ,いけません.懺悔しないと.※ブツが手元にあるのにナニ言ってんだか....

―― 崩壊した書物を修復する「ブック・アーツ」をテーマとする本.崩壊した書物そのものは,いわゆる“廃墟”本の中にもときどき見られる.個人的にはかぎりなく“屍体”本に近い Midas Dekkers の『De vergankelijkheid[儚き物たち]』(1997年,Uitgeverij Contact,ISBN: 90-254-9627-X)に載っている「本の屍体」がとても印象的.それ以外の図像がなかなか衝撃的なので,オランダ語から訳されることはないだろうけど.

◇今年はオランダ本の当たり年なのか,立て続けに語学書やらいろいろと新刊が出ている.本日手元にまとめて届く ―― 清水誠『現代オランダ語入門』(2004年7月20日刊行,大学書林,ISBN: 4-475-01867-6)とクレインス桂子他『オランダ語の基礎』(2004年4月20日刊行,白水社,ISBN: 4-560-00638-5[CD付]).少し前に買った松崎八千代監修『オランダ大好き!』(2004年8月1日刊行,JTB,ISBN: 4-533-05525-7)とともに書影を並べて見ると,その“明るさ”に驚いてしまう.大学書林の本でさえハデに見えるとはね.

―― かつて[といっても四半世紀ほど前だが],学部生の頃にオランダ語を勉強しようと思っても,ほとんど教材はなかった.まず辞書がない(その後,神田でカッセルの蘭英/英蘭辞典を買った).文法書も大学書林の薄いの(塩谷饒『オランダ語文法入門』1979年初版)しかもっていなかった.音響教材なんてあるはずもなし.当時は日本で300人くらいしか蘭語学習者がいないと言われていた(そのほとんどは蘭学史研究者とも).その頃に比べれば,格段に関心が高まってきたのだろーか? 講談社の『オランダ語辞典』(1994年初版)の登場以降,確かに日本での出版物は増えているみたい.語学書だってとても読みやすそうだし.

―― そう言えば,同じオランダの中の「フリジア語」についても,大学書林から児玉仁志『フリジア語文法』(1992年10月)と同『フリジア語辞典』(2004年5月)が出ている.言語系統的には,フリジア語は英語に最も近縁な姉妹語.

◇本日の総歩数=16951歩[うち「しっかり歩数」=10226歩/81分].全コース○|×.朝○|昼○|夜×.


7 september 2004(火) ※ Estoy un poco cansado...

◇Hola, buenos días ! 5時半に起床 ―― 昨日から湿度が極端に高いようで,いたるところべたべたしている.

◇おお,ルイス・キャロルの『Tangled Tales』に懸けたタイトルだったのですね.それは知らなかった.こういうところで無知が露呈される.確かに『Tangled Trees』はこんがらがっている(内容的にではなく,問題そのものが).※御礼と言ってはなんですが,『ニワトリの歯』にサインしましょーか?(くふ)

◇今日は9:30〜16:00まで JICA の講義日(だから年休日).春に統計学概論を担当したキューバ特設コースのスペイン語クラスに行く.そろそろ稲のデータがとれはじめているでしょうかね.個別に進捗の具合を確認しつつ統計コンサルタントと講義.教材?―― いつも“扇子”ひとつもって“高座”に向かうので,今日もいらないかな.あるいは〈R〉の入ったパソコンを持参するだけでなんとかしましょうか.あ,統計関係のOHP類はぜんぶ都立大学に置きっぱなしにしてきた....

―― Hasta luego ...

◇JICA〈キューバ国別研修・小規模稲作技術〉コース ―― 春にやってきたJICA研修生たちは,イネの収穫が間近いちょうど今がデータ集めの真っ最中で,とても忙しそうだ.統計学概論の講義は春に終っているので,今回の講義〈統計分析手法〉では,個別の研究テーマごとに進捗確認をしながら,これから必要になる説明を補足していく.

―― 午前中は個別のコンサルタント.JICA圃場(campo)での実験計画はそれほど複雑ではないが,2要因の乱塊法(bloque al azar)や3要因の完全無作為化法というのがある.前回と同様に,スペイン語の同時通訳さんがついてくれたので,コミュニケーションにはとくに問題ないのだが,eye contact が疎かになってしまうのはしかたないのかな.それと,伝えたい内容が何割か少なくなってしまうということ.専門的な用語がぽんぽんと出てくるので,通訳さんはたいへんだったようだ.

―― 昼休みに,JICA近辺をうろうろと徘徊する(8000歩ほど).とても暑いので難行苦行でございました.南風とともに,ときおり雨滴が落ちてくる.

―― 午後は乱塊法の追加説明などをする.しっかり〈R〉の宣伝もしてしまう.訊いたところ,スペイン本国とキューバではスペイン語の言い回し自体に差異があって,キューバ人がスペイン本国でスペイン語の検定試験を受けても,いい成績が取れるとはかぎらないそうだ.※すでに言語系統の divergence が始まっているということだろう.

―― 午後4時に講義終了.次回の講義は2週間後.そのときはレポート作製でばたばたするにちがいない.

◇帰りに LALA Garden に立ち寄る.くまざわ書店にて,思いがけず千野栄一『プラハの古本屋』(1987年3月20日刊行,大修館書店,ISBN: 4-469-21096-X)をゲット.こんな“古書”が新刊書店に並んでいるとは.ついでに,NHKラジオ〈スペイン語講座〉の8〜9月分のCDを入手.

―― 千野本にも言及されている徳永康元『ブダペストの古本屋』はいつか入手しよう.先月新刊の『ブダペスト日記』はbk1の買い物かごにもう入れたのだけれど.

◇井上理津子『大阪下町酒場列伝』(2004年8月10日刊行,ちくま文庫,ISBN: 4-480-03989-9)と佐野眞一『宮本常一の写真に読む失われた昭和』(2004年6月18日刊行,平凡社,ISBN: 4-582-83225-3)を同時読了.井上本は雑誌『大阪人』連載だったもの.おっちゃんら,よう呑んだはります.佐野本はいつもの調子でした.

◇夜になって,風が強まってきた.車体が風に煽られる.今夜半に日本海を台風が駆け抜けていくらしい.生暖かい風が吹きつける.

◇本日の総歩数=19631歩[うち「しっかり歩数」=8215歩/69分].全コース△.朝○/昼○/夜○


6 september 2004(月) ※夢か現か魍魎か

◇5時起床.気温は20度そこそこだが,湿度が高い.霧が少しかかっている.研究所に行ってみる.しだいに気温が上がり,不快指数やや高し.

―― 八ヶ岳→八王子と駆け抜けたので,日常感覚がまだ戻っていないようだ.時差ボケならぬ,非日常眩みが続く.

◇先月末からずっと不在がちだったので,メーリングリストへの月例アナウンスなどなどをずっとほったらかしにしている.ここまできたら,明日でもええですか? 明日できることは今日するなって(捏造格言).※ごめん.

◇東で雷雨があり,西では地震,そして南からまたまた台風の気配ということで,とてもせわしない.外は27度ながら湿度が高いので,歩くには適していない.にもかかわらず,昼休みに10,000歩もつい歩いてしまう.暑〜.

◇細々とした仕事をしてしまう.組合関連,自分関連,対外関連.

◇東大出版会『UP』の9月号に,『生物系統学』の重版予告(「夏の一括重版・第2弾」)が載っていた.第3刷ですので,よろしく.※今回も“蟲”がたくさんいたりして....

―― 統計学総説誌『Statistical Science』の「ベイズ」特集号(Vol.19, no.1, pp.1-218, February 2004).いつもよりはるかに厚い号.詳細なトーマス・ベイズ伝(pp.3-43)を含む,現代のベイズ統計学的手法の概観.

―― Francis Galton のもう1冊の伝記 Michael Bulmer,『Francis Galton: Pioneer of Heredity and Biometry』(2003, Johns Hopkins University Press, ISBN: 0-8018-7403-3)は,以前(2001年)オンライン公開されていたものの直接子孫本にあたるのだろう.

◇ほとんど使っていない携帯電話のバッテリーが「虫の息」になってきた.そろそろ機種交換すべきか.それよりもパソコンにPHSを付ける方が先か? ※議論の余地はないとも言うが.

◇とある時刻に,とある意思確認の連絡.おっけーと返事.

◇細々とメールしたり,電話がかかってきたり.

―― JST からワークショップのアンケート集計が届く.すみません,もっと開催の周知を早くすべきでしたね.1講演の持ち時間が「2.5時間」という構成はとても評判がよかったようだ.これくらい十分に時間をとると,言い足りないとか訊き足りないという欲求不満はなくなるのだろう.通常の学会講演の「15分」は事業報告あるいは街頭演説と同じで言葉が向こうからやってくるだけ.特別講演の30分とかセミナーでよくある1時間という長さは実は短過ぎるのであって,ひとりの持ち時間は2〜3時間という一見非常識な長さが最適なのかもね.※大きな会議をオーガナイズするときは要注意.

◇わ,またまた堆積しつつある仕事たち.※くー.

◇本日の総歩数=22117歩[うち「しっかり歩数」=11202歩/91分].全コース○.朝○/昼○/夜○


5 september 2004(日) ※心地よく擦りつぶれる

◇明け方に目覚め,そのままぐずぐずとしてしまう.午前7時過ぎに小雨混じりのホテルを出て,旧甲州街道沿いに府中あたりまで往復のウォーキングをしてしまう(とっても長距離).曇り時々小雨.足痛い....

◇10時前にチェックアウト ―― そのまま東京駅に向かい,昼前のつくばね号に乗り込む.

◇午後はほとんど死んでました.昼寝したり,勉強見たり,本読んだり,そのまま寝たり,起きたり.

◇暗くなってきて,意識レベルがさらに低下する.無反応・無応答状態.そのまま寝てしまった[よーだ].

◇本日の総歩数=18314歩[うち「しっかり歩数」=11209歩/92分].全コース×.朝○/昼○/夜△ ※歩き過ぎたか?


4 september 2004(土) ※調布からのご出勤

◇午前5時半に目覚める.昨日がきつかったので,睡眠時間やや長し.曇り空.傘をもってきたのは正解か.

◇進化学会大会の報告を早く出せという殿の御下命メール.駒場方面にはできるだけ近づかないようにしよう.※出します出しますって.

―― ということで,400字詰めにして6枚分の原稿をかしかしと仕上げて,ばばっと送信してしまう.

◇あ,今日の講義の準備をしないと…….(汗)

◇午前9時過ぎにホテルを出て,南大沢へ.講義室はすでに開いていたので,OHPを並べかえたり,T-Timeノートに書き込んだり.昨日と同じく,10時半の講義開始.統計的検定の〈リクツ〉について話をする.あっという間に昼になってしまう.ランチは,南大沢駅前のアウトレット街にて,寿司&蕎麦.ミニ列車が走り回っている(ほとんど遊園地並みのにぎわい).

◇午後は,完全無作為化法のもとでの分散分析を中心に,分散比(F値)の検定と素朴統計学的推論との関わり,帰無仮説と帰無分布の構築,正規性と等分散性をめぐる論点とチェック方法,多重比較の論議まで.〈R〉を使いつつ,計算と噺のサンドイッチ.終了予定時刻の午後4時はすぐだった.これにて前半二日間が終わる.後半は下旬.

◇夕刻に,いきなり土砂降りの雷雨.こら,たまらん.あっという間に結界に囚われる.夜はとても長かった.

◇本日の総歩数=19387歩[うち「しっかり歩数」=5748歩/46分].全コース×.朝○/昼△/夜○


3 september 2004(金) ※久しぶりに南大沢へ

◇午前2時半起床 ―― 研究所に向かう.たくさん書類やら郵便物やらが積み重なっていたが,すべて押しのける.それどころではないのだ.

―― 都立大学の集中講義(生物統計学)が今日から始まる.ところが,その準備がまだ終っていなかったりする!  しかし,あまりに押し詰まってしまうとかえって冷静になって[「開き直り」ともいう],さくさくと資料や機材を積み上げていく.

―― 贈っていただいたとある図録によると,これは〈妖怪いそがしに憑かれた〉状態なのかもしれない.

◇ま,何にせよ,午前5時過ぎには何となく講義準備が終ってしまう(ホンマか?).返す刀で,講義資料も力わざでアップしてしまう.

◇午前7時過ぎにひたち野うしく駅に到着.新宿から京王線に乗換え,南大沢にたどり着いたのは午前9時半.蒸し暑い.駅前のスターバックスで朝食兼ひと休み.講義室のある都立大の国際交流会館に入ったのは開始予定時刻の10分前.※大旅行ですな.八王子は遠いというべきか,つくばは僻遠の地というべきか.

◇午前10時半からは,統計学概論ということで,「ものの見方」としての統計学マインドについて話をする.データの「バラツキ」を解析すること.そして,データの変動を「可視化」すること.※高座がいったん始まってしまうと,あとは“扇子”だけで進んでいける.

―― T-Time でのプレゼンはあらかじめ「白紙ノート」をつくっておかないとダメですね(講義をやって初めてそのことに気づくとは).

◇ランチ後も講義は続く ―― バラツキの定量化を地べたから行ない,「分散(variance)」の概念に到達する.ここまでやっておくと,明日の「分散分析」の講義がしやすくなる.

―― 引き続いて〈R〉のイントロ.受講生には〈R〉をインストールしたノートパソコンを用意してもらった.〈R〉の起動と操作についての簡単な説明,コマンド入力と計算結果の出力について.いくつか簡単な演習.7月の東北大での講義のときも,Windows環境での拡張子の表示設定でトラぶったが,今回も少しつまずく.また〈R〉の作業ディレクトリの設定でも時間を取られたり(講義内容とはまったく無縁のことなのだが).確率分布の描画をしたりして,時間が過ぎていく.午後4時に今日の講義は完了.外は曇り空.

◇夕刻,可知さんたちと,京王永山駅前の豆腐料理〈梅の花〉にひっそりと隠れる.お,なかなか美味ですな.八海山とか天狗舞とか少し.かの「某氏」は飲めないのではなく実は飲まないのだそうだ(思い当たるアナタはすなおに告白しなさいね).論よりランとは言い得て妙(メモメモ).あと,例の“根性棒”のハナシとか.

―― その後,実に健康的に調布クレセントホテルにたどり着く(調布駅前のPARCOビルの最上階).ここに2泊する.

◇本日の総歩数=16240歩[うち「しっかり歩数」=1685歩/14分].全コース×.朝○/昼○/夜○


2 september 2004(木) ※雨に濡れる最終日

◇午前5時起き ―― 外が暗いなと思ったら本降りの雨.しかし,傘をもって外を歩いてしまう.当然のことながらだいぶ濡れてしまう.林間を歩いているうちに小降りになる.今日がワークショップ最終日.

◇朝食のとき,中村雄祐さんから図的言語について話をうかがう.Edward R. Tufte の一連の研究について.量的データのグラフィック表示の歴史は浅いようで深く,古いようで新しい.中村さんの話では,各国の日刊新聞の紙面で数値グラフがどれほど多く掲載されているかを比較したところ,日本の『新聞あかはた』がダントツで一位とのこと.その他,朝日新聞など日本のメジャーな日刊新聞では数値グラフがよく載っている.それに対して,Wall Street Journal,Times, Die Spiegel など海外のメジャー紙では「グラフ」が載ることは相対的に少ないらしい.これは意外,というか気にしたこともなかった.背景には,「図」で説明するというスタイルは「言葉」での説明とくらべて,表現としての順位がより低いという社会的認識があるそうだ.グラフィクスがあると「わかりやすい」という見解は一面的なのかもしれない.ダーウィンの著作で「図表」がほとんど出現しないという事実がある(私的なノートブックや書簡とは対照的に).これまた中村さんの話では,「図」を紙に印刷する技術の限界が制約条件になっているのではないかとのこと.Tufte の本は The Chicago Manual に相当する地位をグラフィック・デザイナーの間で得ているそうだ.Tufte の本(『Visual Explanations』2000とか)は,以前 amazon で検索して,数冊を買い物かごに入れた記憶がある.統計学の分野でも,「華やか」なグラフィクスが幅を利かすようになったのは比較的最近のことで,ピアソンやフィッシャーの文章には「図」はほとんどない.統計学グラフィクス史の大部の論文を前にコピーしたことがあったな(帰ってから書棚を発掘しよう)./本のタイトルページの「進化」について:M. M. Smith (2000),『The Title Page: Its Early Development 1460 - 1510』(The Britsh Library)/〈例の新書原稿〉を早く仕上げてくださいとの側面刺激を受ける(あ,やば...).

◇そーか,小海線は「電車」ではなく,「ディーゼル車」だったのか…….※日々是勉強.

◇いったんチェックアウトして,荷物を部屋から出す.JSTセミナーの続き(9:30〜) ―― [6]フェミニズム(長谷川眞理子・坂東昌子).性差の存在の説明理論.フェミニズム論議の中で社会的構築論が流行しているが,性淘汰理論に基づく対抗理論を提示する.脳の基本的なふたつのはたらき:Systemizerである♂とempathizerである♀(Simon Baron-Cohen『The Essential Difference』).Systemizerは,対象をシステムとして理解して制御しようとする(パターン認識,input / outputの関係に関する論理的把握,順位づけ).対して,empathizerは感情移入することで相手を理解し,制御ではなく,共同によってやっていこうとする.そのような性差が進化してきた理由は何か ―― 狩猟採集活動・子育て・配偶システム.Systemizer / empathizer は領域一般的な説であって,まだ未熟ではないか?(平石) 作業仮説として育てていきたい.[以上,まりまり]/日本物理学会における女性科学者の率は諸外国と比較するとダントツの最下位である(最上位はハンガリー).2002年,パリでの〈Women in Physics〉国際会議の話題.日本物理学会では60歳台以上と30代以下の女性研究者が多い.男女雇用機会均等法の制定がクリティカル・ポイントになった.「性差の科学」の最近の進展(「差異のフェミニズム」という見解).体力の性差:オリンピック記録の陸上種目記録の変化率を外挿するとそのうち性差はなくなるのではという推測もある.クーベルタンは女性がスポーツすることに反対した.かのナイチンゲールは統計学を武器にして政治的パワーを発揮した.日本物理学会では,50歳台に急激に論文生産を上げている女性科学者が多い(〈黄昏時の疾走〉仮説).彼女たちは家庭でも職場でも働きまくる Golden Age ならぬ Recovery Age を送っている.Rachel Carson の話.[以上,坂東]

◇定時の正午に今回の全スケジュールを完了する.ランチ後,小淵沢駅へ.小雨.

―― ランチ時,「女性[研究者]は50を過ぎると年齢不詳になる」というおそるべき会話が“お二人”の間で交わされていた.「それに比べて,男性[研究者]はすぐ老け込むわよねえ.進化的背景があるのかも」とも(引く).

◇ん,浅間山が噴火?(あれま) 13:42の〈あずさ20号〉にて新宿へ一路.さらに東京駅に向かい,つくばね号にてつくばへ一路.寄り道なし.この蒸し暑さはいったい何なのだ.

◇JSTワークショップについては,これから報告書づくりという実行委員長としての「本務」が待ち構えている.※げー.

◇とりあえず磨り減ったみたいなので,まずは寝よう.

◇本日の総歩数=13638歩[うち「しっかり歩数」=7815歩/65分].全コース×.朝○/昼○/夜△


1 september 2004(水) ※八ヶ岳山麓の朝,心地よし

◇遅起きの朝 ―― 午前6時に目覚める.すでに明るい(ちょっと自己嫌悪).ロビーのグレ電からメール送受信&日録アップロード.都立大からの事務的連絡.高波が十重二十重に押し寄せているがごとし.

―― バイキングの朝食の後,ホテルの周りから駅前まで40分ほどウォーキング.日射し強し.林間のところどころに別荘や店が点在する典型的な避暑地の風景.甲斐大泉温泉なる温泉センターあり.そういえばホテルの露天風呂にまだ入っていない.

昨日に続き,午前9時半からワークショップ開始.前夜は午前1時半までやっていたそうである.

―― [3]言語の進化と人間性(岡ノ谷一夫・長谷川寿一).直前に到着した演者ふたり(...).言語の進化の漸進説(S. Pinkerら)と断続説(N. Chomsky,Fitchら,Hauserでさえ.彼らの論文[科学,74(7): 871-877, 2004]).言語が「突然に」できるかどうか.Jackendoff & PinkerのCognition誌論文を見ること.FLB(Faculty in Broad Sense)からFLN(Faculty in Narrow Sense)へ.再帰的認知操作モジュールは他の言語モジュールから独立しているか?(創発による) 言語の定義(恣意性・生成性・超越性).以上,岡ノ谷/言語進化理論タペストリー.“言語遺伝子”FOXP2 の話題.ショウジョウバエのForkhead遺伝子に関係(菌類にもあり).頭部の形成に関わる遺伝子.チンパンジーからヒトにいたるリネージでふたつものアミノ酸置換がある(それまではネズミにいたるまで6500万年の間に1つしか置換がなかったのに).20万年前の現象と推察される.Homo sapiens が生じるにあたって強い淘汰圧が存在した証左か.Homo での肉食と咬筋退縮の同期.以上,ダブル長谷川.

◇朝食と同じレストランでランチ(フルコース).JSTのイベントではいつも食事がいい(良過ぎるかも).※食欲に負けてはならぬぞよ.>ぼく

―― 午後1時〜.[4]Darwin's Principle of Divergence(内井惣七).ダーウィンの「分岐原理」との格闘の報告.1842のスケッチに始まり,1844のエッセイ,そして15年間の「ミシング・リンク」を経て,1859の『種の起源』にいたるまで.分岐原理は Wallace には見られない Darwin のオリジナリティーである.この形質分岐の原理に関する Dov Ospovat(1981)の研究について.微小な差異がどのようにして拡大していくかのメカニズムを提唱.三つの原理(自然淘汰・分岐・絶滅:Origin, p.116)――どれが独立であるか/従属であるか(論理的に見て).まずはじめに.絶滅原理は自然淘汰原理の系である.では,分岐原理は? 『種の起源』には自然淘汰から分岐が導かれるように書かれている.しかし,事実は「No」―― 分岐原理と形質分岐とは別物である.分岐原理は自然淘汰とは独立だが,形質分岐は独立ではないということ.自然淘汰に導かれた形質分岐は最適化による差異の拡大をもたらす.その結果,亜種から種,属,科への差異が生まれる.続いて,ダーウィン・フィンチの研究概観.さらに,哲学的に考えてみると …… philosopher の内省や人間観察だけで倫理学をやっていくのはもはや不可能だろう.適応主義が不可欠.科学的探究の対象としての倫理学のビジョン.進化倫理学を実現するためには概念分析である.とくに“preference”(意思決定論)に関する概念分析.Frans de Waal の論の検討.

◇3時過ぎにちょい休憩.参加者の集合写真を撮る.初めてホテルの露天風呂に入る.なごむ.※つるつる系の泉質だが,源泉が50度もあるとのことで加水されている(塩素臭少しあり).

―― 午後4時〜.[5]脳神経科学と進化生物学(入来篤史).サルを用いた道具実験を通じて,動物知と人間知について実験的に調べる.身体感覚のありようは脳の反応部位をチェックすることでわかる.“根性棒”できびしくトレーニングしてはじめて実験が可能になるサルもいるそうだ.enactive - ikonic - symbolic という段階を追って実験していく.実験に次ぐ実験.教育やトレーニングについての「将来指針」がつくれる? 脳内に machinery はすでにあるのだが,いまだ使われていないものが少なくなさそうだ.※テグーも道具を使うそうだ.

◇午後6時にいったん終了.隣室にて夕食.今夜は和食メニューです.

◇午後8時半から,夜の自由討論(またワイン付き) ―― 中村雄祐さんによる話題提供.文化人類学を中心にしたもの.現在は参与観察による研究者の内省と政治的反省が主流とのこと.人間の「生物」的側面を軽視する傾向あり.対して記号論重視(政治的カル・スタ化).次いで,文化進化(ミーム)の話題.Dan Sperber の『表象の感染』について.表象(representation)と実装(implementation)との区別.

―― 午後10時過ぎにやっと終了.その後〈眞理子部屋〉にてさらに談義.ワタシは11時過ぎに退散.※昨夜のうちに Caol Ila がだいぶ消費されていた.58.5度もあるシングル・モルトを大量に召し上がったのはだーれ?

◇おやすみなさい〜.

◇本日の総歩数=11451歩[うち「しっかり歩数」=4671歩/39分].全コース○.朝○/昼○/夜○


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