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日録2004年8月


31 augustus 2004(火) ※台風の強風圏に入る,八ヶ岳に逃れる

◇練馬春日町で午前5時起き ―― 強い風の音に目が覚める.日本海側を通過している台風16号の強風圏に関東地方が入っているらしい.雨は降っていないが油断はできない.交通への影響は今のところないようだ.

―― 台風が通過してしまうと今度は「にわか猛暑」がやってくる.甲府の今日の最高気温予想は35度だそうだ.早く八ヶ岳方面に上がってしまおう.盆地よりは高原だ.

◇午前7時半に出発.大江戸線に乗って新宿に着いたのは8時過ぎ.プラットホームに熱気と湿気が渦巻いている.とても気持ち悪し.9時前に〈あずさ9号〉到着.定刻発車.空いている.遅めの朝食に「あじ・さば寿司」(675kcal)を買い込んで乗る.台風は朝のうちに東北地方に抜けたらしく,東京の天気はすでに回復しつつある.八王子を過ぎたあたりから,晴れ間がのぞき始めた.※台風通過直後の残暑が襲来するのは時間の問題だろう.間一髪でかわしたか.

◇この「日録」とか,あの「ぎょーむ日誌」を見て,生態学会に入っておけばよかったと後悔されている向きがあるようだ.しかし,入らなくても行けばいいとぼくは思うのです.学会に入るかどうかは個人の研究活動の足場あるいはホームグラウンドをそこにつくりたい(だからその学会に対してある貢献をしたり運営面での関わりをもちたい)という意思があるはずで,だからこそ決して小額ではない年会費を払い続けているのでしょう.しかし,もうひとつは,研究拠点となるソサエティは別にあるのだけれど,なんだかおもしろそうだから行ってみるという動機づけによる参加があり得る.単発的だけれども自由度は高い.

―― ぼくは生態学会の会員ではありません.ここ10年ほどはほぼ毎年の恒例行事のように大会に参加し,場合によっては(今年のように)呼ばれて講演したりすることもあります.また個人的な知り合いはすごく多いし,会場の中でも外でも,あるいは昼も夜も,交際接点の機会は事欠かない.刺激を受ける発表もある.「その場に行く」そして「そこにいる」ことで得られるものやことは少なくありません.ぼくとしてはそれで十分.生態学会会員にはなるだけの,それ以上の強い動機づけはいまのところありません.

―― いくつかの学会に入っていると,「どの程度この学会にコミットすべきか」という見極めがしだいに付けられるようになる.時間の限りがそろそろ見えてくるようになると,選別の基準(ランキング)もしだいに厳しくなってくる(そうならざるを得ない).会費を払って学会に入るということは,[可能性として]いろいろな雑用や[場合によっては]役職が降ってくるということだ.それを担う覚悟がないとやっていられない.

―― 学会はいったん入ってしまうと出るのがなかなか難しい.それにひきかえ,大会に行ったり行かなかったりするのはとてもラクです.

―― ということで,しばらくは生態学会を愉しませていただこうと思っています.次回大会は来年3月末に大阪にて.※半年後ではないか!

◇甲府盆地に入る.天気はほぼ晴れ.日射しがとても暑そう.あと30分で小淵沢到着.小海線に乗換える.[10:34]

―― 小淵沢で「狐の嫁入り」.天候はまだ不安定なようだ.11:40に小海線の2輌電車が発車.八ヶ岳山麓をのろのろと登って,二つめの甲斐大泉駅で下車.正午.パーフェクトにローカルな駅.八ヶ岳ロイヤルホテルに連絡して送迎車に来てもらう.運転手の話では昨夜は風雨が激しかったとか.道路に大小の枝が散らばっている.気温以外に高い(ということは“下界”はもっと暑いのだろう).

―― 大きな荷物をフロントに預けて,周囲の散歩とともに蕎麦屋のはしご.ホテルの周囲はぐるっと「別荘地」に囲まれている.夏休みの最終日だったせいか人気はほとんどない.ショップやレストランもシーズンオフ休業に入っているようだ.別荘集落の奥の行き止まりにある〈さかさい〉.“九割五分”蕎麦とのこと.硬めの黒い蕎麦がざるに盛り上がる.続いて,ホテルの真ん前にある〈手打ちそば・曄〉.こちらの方は蕎麦がもっと細切り.つるつるしている.〈さかさい〉のワイルドさに軍配か.

◇大泉高原八ヶ岳ロイヤルホテルでのJST異分野研究者交流促進事業ワークショップ〈進化生物学と人間観〉は定刻よりも20分遅れで 14:20 に始まった.JSTからのあいさつ,コーディネーター(長谷川眞理子),自己紹介に次いで本論.高座では「腹式呼吸」しなければならないとは,マイクの嫌いな内井惣七氏の弁.

―― [1]知っているようで知らない「心の理論」:自閉症研究を中心に(千住淳).サルのマキャベリ的知能(社会的な知)の進化.社会的脳(他者の認識,言語,表情認知,心の理論).「心の理論」に障害をもつとされるヒトの自閉症(autism)研究の意味するもの.“自閉”ということばは社会的にも誤解されまくり.背後に想定される the Bell Curve を考えると,自閉症の対極(ハイパー協調人間)がいるだろうとのコメント.自閉的行動の適応的意義.ある脳機能の「実装」とは? 「心の理論」の定義(Premack):自己や他者の行動に心の状態を帰属させる.「理論」とは直接観察できないものの意味.経験(連合学習)だけではなく,内的な心理状態による行動要因が重要だという歴史的背景(contra 行動主義).D. Dennett ―― 他者の誤った信念に基づく行動が予測できたならば theory of mind は「ある」と言えるだろう(誤信念理解があれば心の理論はある).自分と他者を同レベルに見られるかどうか.自分と同じ「心」が他者にもあるのだという考え,およびそれに基づく予測.単純性の発現かな.領域固有/領域一般に関する誤写真理解.心の理論は領域固有的との結果.誤信念課題は検出力が低い(対立仮説の間の判別ができない).共感(empathy)―― 体系化(systematize)しようとする動機づけ.それによって行動を予測する.

…… 休憩時間に安藤寿康さんから心理学におけるベイズ推定の現況について情報をもらう.日本でも心理学的パラメーターを含むモデルに基づくベイジアンが立ち上がっているそうだ.

―― [2]「法と生物学」方法論序説:進化生物学・進化心理学による「ヒトの法とは何か」の解明(和田幹彦).17:30〜.言葉をもつことがヒトのヒトたる由縁であるとするならば,他生物との共通性を強調しつつ進化生物学を他分野に応用しようとしてきた分野にとっては痛手だろう.進化と倫理の関わり.進化生物学によって法を説明するとはどういうことか?(内井) Evidence-based な法学ではない.法体系とヒト系統とのパラレルな変遷(法の「進化」とは何か?).法体系のベースとしての human nature.自然法(“性法”)を擁護する学派とそれに対抗する実証主義法学派とのはざまで進化法学の可能性を探っていきたい.

…… 内井惣七『進化論と倫理』(1996)は版元絶版になっているが,内井さんのもとには在庫がいくらかあるとのこと.

◇19:20にいったん終了.夕食は会議室の隣室にて中華料理コースのパーティ.紹興酒をしこたま呑んだりする.食べる方は控えましたよ(正直に).〈さきがけ〉人脈ネットワークとこれからの研究資金配分のあり方について,同席した「長」と名のつく複数の方々から情報を得る.

◇20:45から自由討論の時間 ―― まりまりの導火線:〈他者理解〉と〈自然主義的誤謬〉.赤白ワインが並んだりする.ぼくは勝手に Caol Ila のシングルモルトを舐めていたりする.ナイトアワーの討論時間としては絶妙なセッティングではないか(司会者がもう酔っていてどーするって?).

―― Theory of Mind が成立するためには,自己の「心」の様式が他者の「心」のそれと一致するという「単純性」の仮定,あるいはその前提として自己と他者との「心的同一性」の認知という仮定が不可欠だと思う.

―― 母親と子どもとの関係は特別だ(入来篤史)との発言.ふーむ,そうか.

―― 内井惣七吠えまくる:「自然主義の誤謬」(G. Moore, 1903)へのコメント.それは推論としては誤りだが,結論は正しいかもしれない.日本の倫理学界はいまだにカント主義が主流でおもろない.そやし,私は倫理学会にも入ってへんし,哲学会にも入ってません.つまらんもん.seinとsollenの差異.事実と規範とのギャップがあることを認めた上で進むべき道がある.認知的だけでなく,非認知的な要素が重要だ.Desire, commitmant, preference.哲学的な分析には年期が要る.概念分析は大事.

◇午後10時,初日のプログラム終了.さらに眞理子部屋に集結して,もっと談義.トツジョとして匿名化して(バレバレでんがな)―― U井さんさらに:九鬼修造に失望して物理学者を目指した〈くりこみのおおの氏〉について,さらに〈K大文学部二重履修登録の怪〉に関連する〈I勢田くんの貢献〉について.※ほほーっというハナシ.こういう話題は〈耳袋〉として残しておく価値がある.

◇日が変わった頃にやっと就寝.明日も一日中こういうスケジュール.

◇本日の総歩数=13178歩[うち「しっかり歩数」=2895歩/28分].全コース×.朝○/昼○/夜○


30 augustus 2004(月) ※今日だけの平日

◇霧の早朝,気温20度 ―― 明日からは八ヶ岳にしばらくトンズラするものの,帰ってきてすぐに都立大学の集中講義(統計学)が始まるので,段取りを立てておかないとどこかで破綻する[懸念].通常の平日勤務日といえるのは今日だけ.

◇いきなり雨.ざあざあと降る.この変わりようは台風が接近している証拠だろう.気温も上がり始めた.

◇明日から八ヶ岳ロイヤルホテルで始まる JST異分野研究者交流ワークショップ〈進化生物学と人間観〉のプログラムも時々刻々と変わっている.しかし,ほぼ収束したか....

◇組合の次期執行委員選挙の投票用紙を配布する.明日から週末まで不在なので,9月1日の週票は別の人に依頼する.

―― 農環研に入ったときから「組合の組織率とは全員加入が原則だ」という先入観があったのだが,全農林の組織率の高さ(四捨五入すればほぼ100%,かつてはかぎりなく100%だったらしい)は例外なのかもね.

◇昼前に晴れる.体感的に猛烈な蒸し暑さ ―― JTBに中央線特急〈あずさ〉の指定席を取りに行く.行きは8月31日新宿9:00発の〈あずさ9号〉.帰りは9月2日午後の〈スーパーあずさ22号〉をゲット.

◇午後も曇ったりまた晴れたりして,不快指数のみ着実にアップ.

◇八ヶ岳の直後から都立大学の大学院集中講義(生物統計学)が入るので,そちらの準備もなにやらかにやらしないといけない.ダウンロードし忘れていた〈R〉の最新版(version 1.9.1)を取ってくる.資料については,7月の東北大学での講義資料をベースにして用意しよう(どこで?).2日に帰ってきてからか……とはいえその翌日にはもう南大沢にいたりするのだけれど.

◇夕刻,高速で練馬春日町に向かう.光が丘の〈いちばん星〉にて煮卵ラーメン.麺が太い……釧路ラーメンの印象が残っているのだろう.

◇台風が着実に近づいているらしく,性悪そうな南風が強く吹いてきた.不快指数が吹き荒れているという心地.

◇本日の総歩数=12006歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース○.朝○/昼○/夜△


29 augustus 2004(日) ※ほんの隙間の週末

◇明け方から小雨が降っていた.今日は台風の余波で終日ぐずつくのか.雨粒の直径が大きくなってくる.

―― 現在の予想進路だと31日に本州中部に最接近するとのこと.それってちょうど「まりまりワークショップ」が開催される当日だよねえ.関係者は風雨の中を八ヶ岳に集まるわけか.※滞在を断念した家族もあるようだが....

◇ずっと小雨.ときどき雨足が強くなる.日中になっても気温は20度ほど.釧路並み.

―― 次男の夏休み自由研究の手伝い.※あまりリキ入らず...

◇尾崎彰宏『レンブラントのコレクション:自己成型への挑戦』(2004年4月25日刊行,三元社,ISBN: 4-88303-135-7)読了.レンブラント自身の蒐集したコレクションの意味をたどる.当時の「驚異の部屋」の流れか.愛好者の多かった〈貝殻〉が「東洋」の異国的イメージを想起させる〈もの〉だったとは知らなかった.David Freedberg への言及あり.

◇『生物科学』の次年度「特集」企画案 ―― ひょえ〜(汗).

◇夕方になっても雨また雨 ―― 今日が最終日の〈まつりつくば2004〉に出かけてみる.といっても,午後8時過ぎからのお出かけだったので,単に食べに行っただけというハナシも.傘さしながら屋台の間を縫うというのはたいへんだった.

◇佐野眞一『宮本常一の写真に読む失われた昭和』(2004年6月18日刊行,平凡社,ISBN: 4-582-83225-3)の写真をぱらっとめくる.オート三輪とかミゼットとか1960年代の「三輪自動車」は小さい頃によく乗せられた記憶がある.バランスが悪く乗りごごちはイマイチだったが,驚異的に小回りの効く自動車だった.※そういう記憶を持ち合わせている人はもう少なくなっているかも.

◇終日雨だったので,本たちが湿気っている.

◇本日の総歩数=9774歩[うち「しっかり歩数」=1388歩/11分].全コース×.朝○/昼○/夜△


28 augustus 2004(土) ※パラダイス・ロスト

◇昨夜はほとんど意識なく寝てしまったようで,午前4時半に目が覚める.外はすっかり明るい.チェックアウト当日はホテル部屋の電話回線が止められてしまうので,外のグレ電からつながないと.

―― ということで,短い釧路ライフは今日でオシマイ.釧路駅前8:55発の空港行きバスに乗り,10:15発の JAL1142 にて羽田に向かいます.生態学会大会は今日もあるのだけれど,それに出てしまうと「帰るに帰れなくなりますよ」とのJTB窓口さんの“アドバイス”に従い,早目の帰途となった.

◇またまた早朝のお散歩をする ―― 幣舞橋から啄木ロードへ.集魚灯を提灯のようにぶら下げているのはイカ釣り漁船か.日陰はとても涼しいのに,日射しは極端に暑い.1時間ほど街中をうろうろする.釧路に来てからとてもよく歩いたと自己評価してみる.

◇午前7時過ぎにホテルをチェックアウト(げげっ,この電話料金は,いったい....1泊分より高いやんか).駅前から空港への連絡バスは7:50に出発した.8時半すぎに空港着,釧路ラーメンを追加で買う.JAL1142 は10分遅れとのこと.喫茶店でしばしくつろぐ.※いつもくつろいでいたのではという疑惑はあえて否定せず.日録をものし,メールを書き,本を読む.

―― 学会大会自体は今日もあるので,大半の参加者はなおハードでルーズな「大会ライフ」を送るのだろう(お疲れさんです).それにしても台風16号のコースがとってもヤバそうですが,西日本から来た人は明日とか明後日に無事に帰りつけるのだろうか?(他人事ながら)

◇満席で釧路を出発したJALは,正午ちょうどに羽田空港着.曇りで小雨.台風の遠い影響だろう.ほぼ30年ぶりに遭遇した中学の同級生とその同伴の方たちとともに,空港内の〈銀座ライオン〉にてランチ.たまたま千歳空港からの便の羽田到着時刻がほぼ同じだったため.何十年経過していても変わらないものは変わりません.すぐに判別できてしまったりしたもんね.ヱビス黒ビールを昼間っから呑んでしまう.

―― そのまま東京に出て,つくばね号にてつくばにたどり着いたのは午後4時近くだった.長距離移動な日だった.

◇釧路空港の待合室で読んだ ―― 『Milestones in Systematics』の Joe Cain 論文.〈SSZ〉こと〈Society for Systematic Zoology〉の学会創設(1947年)に関わる歴史的事情を追究する.アメリカ植物分類学会に刺激されて,動物体系学の学会をつくろうとしたとのこと.コメンテーターである昆虫学者 Richard E. Blackwelder の一連の記述が批判されている.ぼくも彼の記事を頻繁に引用したが,今となっては根拠が危うくなったかな.学会アーカイヴの資料を踏まえての修正見解を Cain は出そうとしている.Waldo LaSalle Schmitt がまたもオモテに.

◇〈まつりつくば2004〉のアナウンスが遠方から聞こえてくる.ありゃ,この声は「もえみ」さんじゃないか!

25日付の記述 ――『Entangled Tree』ではなく『Tangled Trees』でした.>のぞみチェック,鋭し.感謝.

◇自分の足で歩いてきたわけではないが,はるばる長距離移動したという心理的疲労感により睡魔が来たりて笛を吹く.おやすみなさい.

◇本日の総歩数=14502歩[うち「しっかり歩数」=3320歩/27分].全コース△.朝○/昼○/夜△


27 augustus 2004(金) ※アホウドリのように羽根伸ばす

◇午前3時半に目が覚める.東の空がもう明るいではないか.4時半を過ぎて朝焼け.5時になるともう日中と同じ.※「北海道だけサマータイム制を導入せよ」という大舘見解は正しいかもしれない.

◇とても時間が余っているので,街中のお散歩をば(午前6時半).釧路川河畔沿いに往復する.今日もいい天気だ.南海上の巨大台風は西に逸れてくれるらしい(道東地方には関係のない話).

―― そのまま駅前の〈和商市場〉に向かう:午前7時の“勝手丼”.ほほー,こういうもんですか.丼ご飯を買って,その上にネタをどんどん乗せていく.決して安い外食ではないけど,雰囲気を買うと考えればいいのかな.葡萄海老,甘し.※でも,もう来ないだろう…….

―― さらにてくてくと歩く.朝早いのに日射しが強くなってきた.釧路北大通六郵便局隣りにある〈純喫茶ブラジル〉に思わず惹きこまれる.大当たりです.なごんで,つい長居してしまった.この日録を「いま」読んでいる大会参加者は,万難を排して是が非でもこの喫茶店に行きましょう.その理由は ―― 行けばわかる.とても欧州的な珈琲を出してくれる.うれしい.超速でリピーターと化す.※Tully's なんぞ競争相手ではない.

◇ということで,大会会場に行くのが遅れてしまった…….※またかよ.

◇釧路プリンスホテルの口頭発表会場を覗きに行くが,ぎゅうぎゅう詰めで立錐の余地なし.ラムサール記念センターに戻り,混まないうちにポスター会場をざーっとブラウズする.宿主植物・アリ・カイガラムシの三者間の共生関係を系統学的に見たポスターがあった.二者でも十分にたいへんなのに,三者になったら,どういうふうに共進化シナリオのベースになる「最適解」を探索するのか,想像するだけでくらくらする.でも,研究ベクトルの延長方向にはそういう問題が待ち構えていることも事実だろう.

◇昨日のシンポジウムについて,“怒れる生態学者”と,次いで“ジョーカー”氏とお話しする.おお,なるほど輪郭が見えてくるようだ.“修道士”殿からも討論の雰囲気についてうかがう.長時間のディスカッションをジャグリングしていくというのはたいへんなことだと思う.

◇大会割引価格だったので,思い切って佐藤葉子・瀬野裕美『姓の継承と絶滅の数理生態学』(2003年3月5日刊行,京都大学学術出版会,ISBN: 4-87698-612-6)を買う.姓名の変遷を分枝過程(Watson-Galton過程)としてモデル化するという,おもしろいテーマを扱った本だと思う.こういう視点で日本人の名字の移り変りを見ることができるのか.

―― 同出版会より,論文英語の本が全5巻で刊行開始.第1巻が会場ブースで売られていた.700ページ近い大著.このボリュームで5冊出るのか.全巻予約して,あとで郵送してもらうことにする.

◇晴れているが,今日は風が強い.海からびゅーびゅー吹いてくる.

◇まりまり秘密指令を実行に移す.“某氏”をプリンスホテルにて捕捉し,八ヶ岳に拉致することへの内諾を強要する.

◇午前のプログラムが終わり,ポスター会場の人口密度が(それとともに気温も)上昇してきた.すかさず避難し,北大通沿いの〈豊文堂書店〉に吸い込まれる.北海道関係・アイヌ関係の古書多し.スペイン語/カタロニア語の辞典(『Diccionari: Castella-Catala / Catala-Castella』1985, Barcelona)を買う.なかば語彙集のような内容構成だが,原価は48,000円もする(マジかい).買い値はたった2,500円なり.

◇本がだいぶ増えてしまったので,いつものように「ゆうパック」にてつくばに送り出してしまう.紙の集積がなくなると荷物はぐっと軽くなる.これで帰りはとてもらくちんだ.

◇今日の午後は,総会・宮地賞授賞式と受賞講演 ―― きっと「釧路湿原行き」組が多いだろーな.夜はプリンスホテルでの懇親会.しかしぼくはそれには[珍しく]出ないのだ.といっても,ひとりホテルに立てこもるわけではない.

◇なんのかんのと言いつつも Tully's でパソコンを出したり,ブラジルで本を読んだりする.午後の時間がさらさらと流れ去っていく.※ほとんど“オフ”ですな.

◇午後6時にホテルを出て,夕暮れの市内を徘徊し,栄町の〈みや〉に到着.秋刀魚刺とか鱈かま焼きとかメークイン焼きとか.地酒は釧路の「北の勝」,根室の「福司」,そして増毛の「鬼ごろし」.ひとりなのにそうとう呑んだ[よーな気がする].※たいへん居心地のいい店でした.その後,近くのラーメン屋〈河むら〉にてとどめの釧路ラーメン.この極細縮れ麺はぼくの好みだ.あとから入ってきた数人の客で麺がなくなってしまったらしく,店じまい.間一髪間に合ったことになる.

―― 自発的にホテルに帰ってきたものの,そのまま寝込んでしまった[よーな気がする].

◇本日の総歩数=23819歩[うち「しっかり歩数」=10127歩/85分].全コース×.朝○/昼○/夜△


26 augustus 2004(木) ※フライングな夜明け

◇気がついたら外が明るかった.「わ,寝過ごしたか」と思ったら,まだ5時代.夜明けが早いのは「東」にいる証拠.部屋でうだうだして,8時半頃にロビーにおりる.おにぎりと味噌汁の朝食(ちょー最節約的).

―― 大会会場に行って当日参加登録をしようと思ったら,長蛇の列でげっそりする.まいったー.予想外に当日参加者が多いとのこと.

◇9:30からA会場にて企画シンポジウム〈日本生態学会の目指すところ:純粋科学,基礎科学,応用科学のはざまで〉が始まる.怒れる生態学者,対する推進派,大岡越前,ジョーカー,巻き込まれてしまった前会長など多士済々.1時間ほどで基調コメントを各人が述べたあと,ラウンドテーブル.“怒り”は抽象に流れたと思う.ジョーカー,大魔神に変身.

◇昼前に Tully's に入り,まりまりワークショップの趣意書チェック.メールと日録を書く.そして読書.

◇午後2時,JR釧路駅前から阿寒バスに乗って釧路湿原に向かう.湿原の周囲をぐるりと周るコース.丹頂鶴自然公園→釧路湿原展望台→コッタロ湿原展望台→細岡展望台と周って,釧路駅に帰ってきたのが18:30.湿原の大きさ実感.コッタロ湿原展望台が眺望よし.

◇『Milestones in Systematics』の Mary P. Winsor 論文.ビッグネームたちによる体系学史の“捏造”への異論.

[W]e are still largely ignorant about the history of systematics. The trouble is that a few taxonomists, including those respected by their peers, wrote anything reflective, and those who did usually represented their principles as more rational than they actually are. What we are most in need of are detailed examinations of past taxonomic practice, and no one is better qualified than taxonomists to under take that sort of history. [p.14]

―― 何ごとも「鵜呑み」にしてはいけない.Peter Sneath や Ernst Mayr が何を言おうと.

◇〈天龍食堂〉にて晩ご飯.イカ刺し,300円でこんなに出してもらって.醤油ラーメンなど.おいしい.〈釧路フィッシャーマンズ・ワーフ〉を起点にして,釧路川沿いをずんずん歩く.対岸が方々でライトアップされていた.

◇ホテルからのダイヤルアップ接続が異様に遅くて困った.なんですねん,これ.

◇本日の総歩数=23375歩[うち「しっかり歩数」=10269歩/92分].全コース○.朝○/昼○/夜△


25 augustus 2004(水) ※道東に向かう

◇午前5時起き ―― すかさずチェックアウト.ホテルから空港までのシャトルバスに乗り込んだのが5時15分.10分ほどでビッグバードに到着.けっこう人がいる.チェックインをすませ,荷物を預けて軽くなる.パソコンだけは手もとに残しておかないと,今夕の講演準備ができまっしぇん(方々で日録もアップできないし).※まだやってへんのんか!

◇かなり大きな台風がやって来るみたいだが,今週末の釧路からの帰路がひょっとしてヤバイかな.

◇7:15発のJAL1163にて,まずは函館に向かう.

―― 機中にて,Rod Page 編『Entangled Trees』(2003年,The University of Chicago Press, ISBN: 0-226-64466-9)を復習する.とりあえず方法論の総説記事6本.複数の系統樹間で〈歴史的関連(historical association)〉の推論をするにあたっては,樹形ベースの「マッピング」と事象ベースの「トラッキング」のふたつがある.組合せ論的マッピングの計算破綻を,たとえばベイジアンのMCMCで切り抜けるというのは本質的解決ではないだろう.まだまだ読む.※う゛,あと「8時間」だったりする(大汗).

―― ということで,定刻通りに函館空港に到着(8時半頃).雲が多いものの,本州よりは不快指数が低い.たいへんいいことだ.釧路行き(10:35発,HAC2783)の出発まで2時間ほど余裕があるので,メール書いたり,講演準備したり,日録書いたり.夕張メロンジュース飲んだり.

◇まだまだ続く空の旅.ボン・ボヤージュ >ぼく

―― 定刻どおり,釧路行きの搭乗がアナウンスされる.おお,北海道エアコミューターって〈双発プロペラ機〉だったのですね.定員は30名だが,半分ほどしか埋まっていない.いかにも「ワタシははるばる生態学会に行ってきます」というオーラを漂わせた人たちが数名.閑散とした函館空港を短距離で離陸した HAC2783は急旋回して東の方向へ.シアトル・タコマ空港とポートランドを往復したプロペラ機を思い出す(→〈Hennig XXI 報告〉).

―― 11:30頃に釧路空港着.涼しい.釧路市街地行きのリムジンバスに乗り込み,1時間ほどで中心部の「十字街」に着く.広くてどこまでもまっすぐな道は北海道そのものだ.

◇宿泊先の東横イン釧路十字街は4:00からのチェックインなので,大きな荷物だけ預けて,市内をうろうろと歩く.曇ってきた.丸井今井の近くにある〈茶々菜々〉で釧路ラーメンなるものを食べる.焼鮭が乗っかった塩ラーメン(なんやこれ).山下書店で買った本:釧路観光協会編『くしろ2004年度』(300円).この価格で250ページほどもある.オビには「これ一冊で釧路の街を知ることができる隠れたベストセラー」と銘打たれている.内容は釧路のガイドブック.マップが付いていないのが難ありか.

◇雨が降ってきた.海が近いせいかカモメが市街地を群れ飛ぶ.釧路にもあった〈Tully's〉でカプチーノをすすりつつ,パソコンをごそごそと引っ張り出して,講演準備.InDesignを立ち上げてあれこれと内容をいじったり,画像を貼りこんだり.全16枚のスライドができあがったのは午後4時過ぎ.今日の高座はコレでいきましょう! 雨が上がり青空に.

―― ホテルにチェックインする.大会参加者とおぼしき長蛇の列がフロント前にできている.部屋でメールチェック.いろいろと督促やら依頼やら教育的指導やらが届いている.まりまりからヒミツ指令:「某氏を拉致せよ」と.もうあきらめてください.>某氏.

◇午後5時過ぎに学会会場に向かう.場所は,釧路フィッシャーマンズワーフに隣接するラムサール記念センター.徒歩10分.参加登録は放置して,とりあえず小集会会場へ.オーガナイザーである大舘さんが作務衣姿でうろうろしている(今年は袴ではなかった).定刻18:00の5分前に開始.演者が多いので,さくさくと進めていかないと予定の20:30に終わらない.

◇〈日本列島の生物地理学的歴史〉というタイトルに沿った具体的なトークが続く.地史的イベントから成る“系統”は,生物の“系統”とまったく同じく,testableな形式で述べられる必要がある.かつて Don E. Rosen がカリブ海沿岸域の淡水魚類相の分断生物地理学を論じたとき,〈geocladogram〉の綿密な論議をした.地質学側ではそういう「地史系統」を構築するための方法論があるのかどうか.

◇Fred Ronquist の〈DIVA〉を用いた「祖先地域」の推定アルゴリズムだと,分断(vicariance)が過少評価される気がするが.Gareth Nelson の1974年論文を見ること.端点の地域からの最節約復元による祖先地域の推定は計算はラクだが,イベント(分断と分散)のコスト関数を設定したステップ行列を組み込んでやるともっと現実的になるかな.

◇ぼくの高座は最後でさくっと終わらせました.定刻ぴったりに小集会終了.みなさん,お疲れさまでした.

◇小集会演者を交えた懇親会は午後9時から〈くし炉・あぶり家〉にて.だいぶ呑んでしまいました.海のもの,とてもうまし.釧路と根室の冷酒がよく効く.矢原さん,お茶漬け2杯も食べたらダメですよ.

―― 午後11時過ぎに解散.蛇行する大舘さんたちとともにホテル帰還.欲も得もなく寝てしまった次第.

◇本日の総歩数=10908歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×.朝○/昼○/夜△


24 augustus 2004(火) ※ついに20度を割りこむ

◇霧雨の午前3時 ―― もう窓を開けては寝られませんな.最低気温19.1度.大台を割り込みました.日常の服装とか生活の習慣とかをそろそろ「秋」に変えないとか.※残暑は続くという予報もあるけど.

◇明日(25日)の夕方から釧路で予定されている高座は,〈日本列島の生物地理学的歴史:主に第四紀・最終氷期以降について〉です(18:00〜20:30,B会場).ぼくのネタは「生物地理の歴史を推定する理論とその哲学」.内容的には,こんなふうな話題提供になります――

系統樹ベースの比較分析が近年の進化生物学において広く普及するとともに,単一の系統推定問題だけでなく,より高次の「系統推定」を行なう必要性が高まってきた.その問題状況を体系学の過去に沿ってたどると,1970年代の歴史生物地理研究,1980年代の共進化研究,そして1990年代の遺伝子系譜学研究という三つのルーツを見出すことができる.個別の生物群に関する系統樹を推定するための理論と手法が論じられていた時期と並行して,複数の系統樹間の比較やそれに基づく推論がなされてきた.ポイントは単一の系統樹の累積による高次レベルの推定問題にある.系統樹間の連関の存在はどのようにして推測されるのか,そしてなぜそのような連関が生じたのか.単一の生物群の系統推定問題と,ある部分では類似し,別の部分では異なる問題群がそこにはある.系統発生パターンとしての系統樹の樹形一致や地理的一致,進化プロセスとして一致要因の探究,さらには統計学的な信頼度やモデリングの考察も関わってくるだろう.

―― 要旨はあるのに(ホントはいらなかったそうだ),講演準備がまだ…….うーむ.※あと35時間か(冷汗).

◇〈すごい人〉続き ―― なるほど朝7時のフライトだと,どうあがいてもつくばから到達することはできないと.なあるほど.※それにしても「首都高途中下車」のハナシ,〈さらにすごい人たち〉がいたことを知る.おそるべし.一念あれば岩をも通し天にも通じるって?(笑)

◇あらら,まりまりワークショップ,なかなかタイヘンです.こりゃたいへん.人も時間も準備も.

◇え? 前橋市内のカレー専門店といえば,表町の〈マハトマ〉でキマリでしょう.高前バイパスの姉妹店の方が大きいですけど.それとも新しいイチオシ店ができたのでしょうか? >なかざわさん

◇昼間はまたも蒸し暑くなってきた.しかし,一月前の「狂暴」さ(幸いぼくは経験せずにすんだのだが)はもう見る影もなく,まだふんばっているかなという程度の暑さ.※暑いことは暑いんですけど.

◇備忘 ―― The Quarterly Review of Biology の最新号(Vol.79, no.2, June 2004):P.-M. Agapow et al. (2004), The impact of species concept on biodiversity studies. 〈Phylogenetic species concept〉は保全生物学にどのような影響を与えるかという総説(pp.161-179).

◇歯医者の待合室にて,明日の自分の講演の「脚本」をつくる.素書きで2ページほど.

◇夕方までばたばたと準備して,いったん帰宅.午後9時にひたち野うしく駅を発って,東京モノレール・天空島駅に着いたのが午後11時前.送迎バスで羽田東急ホテルにチェックインしたら,もうこんな時間.5時間後には起床しないと.※あわただしいっす.

◇本日の総歩数=17724歩[うち「しっかり歩数」=10153歩/79分].全コース○.朝△/昼○/夜×(またドヤされるぅ).


23 augustus 2004(月) ※スズムシ鳴く未明

◇午前3時起床.小雨.最低気温20.8度.農環研玄関脇の植え込みで鈴虫が鳴いていた.

―― BGMで流していたマーラー〈一千人の交響曲〉の第1部を聴いていて気がついた.ぼくは7度音程が好きなのかもしれない.たとえば,バーンスタインの〈ウェスト・サイド物語〉とかね.※いま総譜をチェックしてみて,なあるほどと納得.

◇後れ馳せ仕事の消化 ―― 某学会論文賞のレポートを送る.>遅くなってもうしわけありません./まりまりワークショップの追加人選をJSTに通知(ちょい時間不足かな)./まだほかにもあるある…….

―― 学会活動に対する〈賞〉を選考するってのは一種の「賭け」みたいなもんですね.たとえば,今回関わった論文賞であれば,論文の内容達成度はまあなんとか目に見えるからいいとして,今後のベクトルを予想する将来度とか,ましてや外部へのアピール度にいたってはとてもとても確信をもって評価することはできない.にもかかわらず,それをしないことには〈賞〉を出す意味がない.さまざまな〈賞〉を選考する側のみなさんはボランティアとはいえたいへんな難行をしょいこんだことになります.ごくろうさまです.

◇夕方,構内外を徘徊する.ツクツクボウシが弱々しくなってきた.「つくつく」の16分音符の刻みがアレグロからアレグレットへと遅くなっている.最高気温が20度台前半なのだから当たり前なのだが.Birkenstockの新しいサンダルは歩くのにたいそう心地よい.

◇来月に北大で開催される〈第64回日本昆虫学会大会〉のプログラムが公開されている.※もう一声,講演要旨もアップされているとうれしいな.※〈MothBlog〉からの情報です.

昭和堂書店からの新刊『鳥類学辞典』が今月下旬にようやく出版されることになった.税別本体価格18,000円でーす.ほしい人,このユビとーまれっ.ほれ,ナニ引いてんねん! ほれ.※マジでほしい人は2割引で購入可能ですので,ご連絡を(分担執筆者ゆえ).

◇釧路行き航空券を大会三日前に買いに走るとは〈すごい人〉だと言われてしまった….しかし,その代償は大きかった.25日朝に羽田から函館に向かう JAL1163 は朝の7:15発.つくばを始発で出たとしてもヤバイかもしれない.だもんで,気にしぃなワタシは羽田東急ホテルに前日宿泊の予約を入れることにした.立替移転により来月末をもってなくなるこのホテルに泊る機会があるというのも「縁」だろう.※「気にしぃ」を自認する人間がなぜ三日前まで航空券の手配をしなかったのかなどという細かいことを気にしてはいけないのだ.そーなのだ.

―― ま,25日に講演する小集会の懇親会場も早々と決まったことだし,あとは講演準備だけかぁ?(おいっ) ※プロジェクタも持参する...と.

◇夕方から空気が湿り始める.夜になって雨.しだいに強くなる.気温低い.夏の終わり.ウマオイ鳴く.

◇本日の総歩数=16856歩[うち「しっかり歩数」=10428歩/86分].全コース○.朝○/昼○/夜△.


22 augustus 2004(日) ※心地よい季節になったかも

◇晴れて涼しい朝.昨日と同じく,早朝にBook-Aceから洞峰公園をまわるコースを歩く.

◇日中でもエアコンは不要だった.都内の姪っ子から「丸投げ」された夏休みの宿題をやる.音楽の課題とのこと.ヘ長調で書かれた〈浜辺の歌〉の主旋律を移調せよという問題.ト長調やニ長調はまだしもホ長調とか変ト長調って高校レベルじゃないの? 中学2年生にこんな悪問を出すんじゃないですよ(>K立女子中学校は反省しなさい).小一時間かかってしまう.

◇今頃になって「釧路行き」の航空券を手配しに行く ―― 三井ビルのJTBは手際悪いので,つくばセンターのJTBに.「25日,午後4時までに釧路に入りたい」という正攻法は当然のごとくはねつけられる.この日の釧路着便はことごとく満席.「釧路で何かイベントがあるのですか?」という担当者のことば.「千人規模の学会がありまして」「ははあ,あの小さいキャパではたいへんですねえ」などとやりとりしつつ,釧路空港直行以外のルートを探索してもらう.帯広空港×,女満別空港×,中標津空港×,旭川空港×,札幌でさえダメ[ことごとく×].ということで,最終的に函館空港乗継ぎで釧路に飛ぶということになった.帰路の航空券も予約できたが,28日は早々に釧路を出ないとまたまた大混雑になるそうだ.※まったくもって,タイヘンなことですな,こりゃ.

―― 紆余曲折はあったものの,25日から始まる〈日本生態学会釧路大会〉には,とりあえず物理的に会場までたどり着くことができそうです.※講演準備はまだだったりする...(汗).

◇夜,近くのスーパーと〈LALAガーデン〉で同時にお祭りイベント.歩いているうちに小雨がぱらぱらと.

◇本日の総歩数=18991歩[うち「しっかり歩数」=15413歩/134分].全コース○.朝○/昼○/夜△.※歩き過ぎてサンダルの底が割れた....


21 augustus 2004(土) ※爽やかな晩夏の週末

◇気温・湿度ともに低い早朝.うん,秋の訪れを体感する.10000歩ほど歩く.Book-Ace からクーロンヌ経由のコースをまわって.水を抜かれた水田の泥地にもがくザリガニ.中の道をたどる.

―― Book-Ace にて:NHKラジオ『スペイン語講座9月号』テキストと佐野眞一『宮本常一の写真に読む失われた昭和』(2004年6月18日刊行,平凡社,ISBN: 4-582-83225-3).“昭和”ってもうロストされつつあるんですか? フクザツな気持ち.ぼくが育った時代は心理的にはもっと近かったはずなのにね.宮本常一が残した写真をランドマークとして“ロスト昭和”を補間しようとする本.

◇時間の経つのが早い.午後は,市内の下平塚にある筑波ハムの近くで,NPO〈つくば環境フォーラム〉主催の里山林ウォーキングと蕎麦の種まき.夕方まで.※腰痛い....

◇腰をさすりつつ,早くも寝てしまう.寝る寝る.

◇本日の総歩数=16523歩[うち「しっかり歩数」=10721歩/89分].全コース○.朝△/昼○/夜×[さんざん締められた]


20 augustus 2004(金) ※その翌日

◇最低気温「28度」って,いったい何ですねんな,この暑さ.節々痛し.いたた…….

◇溜まっている堆積物を切り崩しつつ,あらたな堆積があったことを知る.※シジフォスか....もうしわけありません >諸方面.

◇いくつかの滞留仕事を片づけて,炎天下の昼休みウォーク.気温34.6度.皮膚が焦げる心地ぞする.10000歩あまり.暑....路上でセミの屍骸が目につくようになってきた.

―― からだがばきばきいう.※とんでもねえ〈結界〉に引きずり込まれた....

◇東北大から集中講義レポートが早々と届き始める.締め切りは来月ですが,お忘れなくね.>受講生のみなさん.

◇東京農大から連絡 ―― 書類作成がめんどうそう(引く).

◇さらなる堆積岩切り崩しのための資料を集め始めたところで,タイムアップ.歯医者に行き,さらに美容院での剃髪……ちゃいますぅ,単に髪の総量を削減しただけですがな.

◇夕刻,心地よい風が吹いていた.夜〈LaLaガーデン〉まで買い物歩き.今晩は快適な睡眠が保証されるにちがいない.そういう季節になってきた.

◇本日の総歩数=18646歩[うち「しっかり歩数」=12768歩/112分].全コース○.朝○/昼△/夜○.


19 augustus 2004(木) ※決意表明

◇熱帯夜 ―― 空調してあるのに寝起き悪し(何か憑いたか).5時半に研究所に到着.いろいろと郵便物やら配布物が山になっていた.

―― 先月,出版社に直接注文した J.-W. Wägele(2001)『Grundlagen der phylogenetischen Systematik』(第2版)が着便していた.本書だけでなく一般的に,装丁や製本に関して言えば,ドイツやオランダの学術書は完成度が高いと感じる.手にしたときの満足感のちがい.※中身まだ読んでいません.

◇日中,ありがたいお言葉を彼方より拝聴する.※おおきに.

◇【プチ宣言】とある行きがかりにより,本日よりトレーニングを開始いたします.※やる言うたら,やるんやあっ.いえ,ゼッタイやりますぅ.

―― よく死にました.十分に逝きました.ハイ....※明日も続く? ずっと?(_| ̄|○)

◇西にある台風の影響か,夕方から南風が吹き荒れる.雲はなく青空.土煙と熱気.今夜は寝苦しいだろう.

◇本日の総歩数=17472歩[うち「しっかり歩数」=10940歩/89分].全コース○.朝○/昼○/夜△.


18 augustus 2004(水) ※天国と地獄

◇今日はお盆休み最終日 ―― 夜半の雨はあがり,湿度の高い生暖かさ.何も考えずごろごろする.これが天国.

◇ウィンチェスター本,読了.辞書編纂者がつぎつぎに物故するも,OEDは成長し続ける.1928年のOED初版の出版パーティがクライマックスだが,真に祝福されるべき人たちはすでに墓の下.やはり翻訳文がイマイチだと思う.今年出たウィンチェスターの『クラカトアの大噴火』や『世界を変えた地図』と比較したとき,本書『オックスフォード英語大辞典物語』の訳文のクオリティは明らかに劣っている.

―― しかし,訳書の内容から見ると,適切な訳注の配置により,理解がおおいに進んだことは事実.その点は評価します.

◇さらにうだうだと転がっていた昼下がり,トツジョとして〈天罰〉が下る ―― “さあ歩きなさい”との西方浄土からの一声.弾かれたように飛び出し,春日の友朋堂書店まで一万歩のウォーキング.西日に焼かれて死にましたわ.※きびしー.これが地獄.

◇へろへろになってビール.お盆休みは今日でおしまい.

◇本日の総歩数=11337歩[うち「しっかり歩数」=10010歩/83分].


17 augustus 2004(火) ※朝寒くて固まる

◇さすが涼しい,というか寒い.燈火に集まる蟲たちも固まるし,見ている方も固まる.最低気温は10度台前半か.ログハウスの周囲をしばらく散歩.

◇おにぎりの朝食とソーセージ,前夜のカレーの残りなど(食い過ぎ反省).※そのうち天罰が下るにちがいない

◇ウィンチェスター本をさらに読み進む.OED製作に関わった多数のボランティアたちの挿話 ―― 前著『博士と狂人』の主人公についてもさらりと触れている(前著への言及がなかったのはなぜ?).

◇午前10時にチェックアウト.そのまま沼田の奥にある玉原[たんばら]に向かう.ラベンダー色に酔いそうだった.※とても押しつけがましいぞ!(反省しましょうね)

◇午後,高崎に帰還.ちょっと休憩して,夕食.その後,つくばに向かう.高速は超混んでいるとの道路情報により,国道354号をたどることにする.

―― 帰路途中,雨が降り始める.つくば着は午後11時.大粒の生暖かい雨が降る.欲得なく寝る.

◇本日の総歩数=7805歩[うち「しっかり歩数」=1316歩/13分].


16 augustus 2004(月) ※さらに逃避行は続く

◇薄曇りの朝焼け.気温は10度台.雨上がりは上毛三山の輪郭がくっきりと浮く.

―― 早朝ウォーキングを5kmほど.昨日とほぼ同一コース.ハグロトンボがひらひら飛ぶ.日中は晴れそうだが,湿度は低いようだ.許そう.

◇今日は高山村に行く ―― 榛名→箕郷→水沢とたどり,伊香保から東村方向に下りる.中之条から高山村はすぐ.直線距離はそれほどないものの,高度差は大きい.

◇高山温泉に午後3時過ぎに到着.ま,ふつうの温泉センターということで,雰囲気を味わう(アルカリ性単純泉).露天風呂で寝る.

―― 予約しておいたログキャビンに荷物を運び込み.夕食の準備.標高数百メートルあるはずだが,昼間は日射しが強く暑い.30度くらいはあるのではないか.

―― 日がかげってくるとともに気温がみるみる下がってきた.あ,こりゃ涼しいわい.8時過ぎにカレーライスとハム・ステーキ.くくっと呑む.

◇ウィンチェスター本をざざっと読み進む.OEDが完成するまでの数十年の間に,その企画は何度もつぶれかかり,そのたびに甦ってきたそうな.中盤の章では,言葉の津波が周囲から押し寄せてきて,編纂責任者ジェームズ・マリーがもがく.

◇よく寝られそう.

◇本日の総歩数=14221歩[うち「しっかり歩数」=9883歩/82分].


15 augustus 2004(日) ※通りすがりの「秋」になる

◇夜中に前線が通過したようで,雨粒交じりの強い風が吹く.気温が急降下.朝起きてみると,雨.おそらく最低気温は10度台だと思われる.今日だけは「つかの間の秋」ということらしい.大事にしましょ.

◇ずいぶん久しぶりに8kmほど歩いてみる.ときどき雨がぱらついたものの,烏川堤防沿いに城南大橋から野付小学校まで.河川敷グラウンドではサッカーの試合中.帰路は高崎高校周りで.高高横の〈みさとまんじゅう〉にて団子をば.石原で人気のパン屋〈アミラの店〉でカマンベール入りフルーツライ.テヘラン出身のパン職人だとのこと.

◇やっと,つかの間の“真夏日からの解放”となるか.つかの間の.

◇わわ,前橋の花火大会は今日でした.遠くから打上げの音が聞こえる.

◇夜になってさらに涼しい.今夜は寝心地いいだろう.ごろごろしながら,ウィンチェスター本を読む(第3章まで).ジェームズ・マリーがやってくるまでの紆余曲折の物語がおもしろい.

◇本日の総歩数=14559歩[うち「しっかり歩数」=9647歩/84分].※人前に出して恥ずかしくない歩数というやつですな.


14 augustus 2004(土) ※上州秋景色 ―― 朝は

◇もう秋が来ていた.この虫の音と気温の低さは感動的ですらある.5時起床.高崎の朝は涼しい.ウソみたい.ホント.

―― “読書の秋”がやってきた.

◇わお,続々と〈エレガントな解答〉が集まりつつある ―― 津村ゆかりさんの〈技術系サラリーマンの交差点〉の「5年考えて解けなかった問題」.「解答日」は今日から.すでに〈解答A,A'〉,〈解答B〉,そして〈解答C〉が公開されている.解答A'はアクロバティックやねえ.※更なる解答がどれくらい出てくるか.

◇東大出版会「夏の一括重版」―― 『生物系統学』(第3刷)もここに入っている.

◇備忘 ―― 『Networks in Evolutionary Biology』.いつのまに全部電子化されていたのか.ぼつぼつやってますとは聞いていたが.※キンタ君,最節約的すぎるぞ.月末には八ヶ岳に召喚するので覚悟なされい.

―― 在北京まりまりからもヒミツ指令が飛んでくる(15日には福井市に実在する予定では? あれはクローンですかぁ).ん,月末にはキンタを確実に拉致せよと.ほほー.※キミの運命は決まった.

◇日が昇るとともに「いつもの」暑さがぶり返す.雲があるせいか湿度も加わって,相当にうっとおしい.今日は前橋の花火大会ということだが,みだりに利根川河川敷に近づいたりすると,人波と混雑でにっちもさっちもいかないことはわかっているので,空想するだけにとどめよう.

◇榛名の〈あらゝぎ食堂〉で昼食.高崎市内ならレトロな〈一二三食堂〉かカツ丼の〈栄寿亭〉あるいは〈もりや食堂〉が当然のラインナップだが,周辺地域になると選択の幅が狭まる.〈あらゝぎ食堂〉は榛名エリアでは悪くないと思う.片岡なら〈キッチン真美〉.

◇不快指数が増しつつある昼下がり,ウィンチェスターOED本を読み進む.訳者・苅部恒徳自身がやはり辞書編集者(かの研究社『英和大辞典』の)ということもあり,随所に挿入される訳注がたいへん参考になる.ただ,訳文はイマイチじゃないかという気はするのだが.

―― 【欹耳袋】 訳者註(p.8)によると,かのDNBこと『Dictionary of National Biography』は,『Oxford Dictionary of National Biography』(ODNBという略される?)と改称されて,全60巻(&オンライン版)として来月2004年9月に出版予定とのこと.

◇本日の総歩数=1585歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


13 augustus 2004(金) ※さて荷物をまとめて逃走準備

◇今週末は気温が下がるらしいが,「いま」暑いのはどうしよーもないということですな.一晩の「睡眠治療」が効いたようだ(“へこみ”なお残る).

―― 考えてみればねえ,百戦錬磨の〈京女〉たちに囲まれて育ってきたのだから(家庭でも学校でも),もう少しきちんと「学習」しておけばよかったのかもしれないが.あるいは関東生活が長かったので,そのあたりの皮膚感覚が低下していたのか.“敵地”に乗り込むときは事前トレーニングが必要かも.※洛中サバイバル....

―― おお,北の御方より〈七条河原落書〉が届く.戯れ言は真理に通じる.※闇夜の刺客にお気をつけなさいませ.

◇ああ,時間がない:富山大学の課題レポートの評価をちくちくと進める.脳死寸前に陥った受講生の声が…….不死鳥のごとく復活するのだよ,とはいえ大学入学直後の集中講義30時間というのは,やはり精神的にも肉体的にもきつかったことは確かのようだ.集中講義というのは多分に講師側のつごうで決まる〈例外的〉な時間割だ.学生側にとっては「いい迷惑」かもしれない.一日数時間を束縛しての講義というのは集中力の維持が大きな問題になる.適当に緩めたり駆け出したり,死んだり生きたり,寝たり起きたりという起伏は当然ある(個人的には集中できるインターバルは「上限30分」と心得ている).そういうプラス/マイナスの要素はつねに相伴うのだが,相殺されたのちの純利得はどの程度あるのでしょうね.

◇タイムリミットぎりぎりに,今月末の〈まりまりワークショップ〉の人選リスト(案)を送る.これも早くしないと時間切れになりそう.※そんなのばっかり.

◇ばたばたと荷物をまとめ,高崎に直行.帰省ラッシュを心配したが,夕刻になって高速道は意外に流れていた.午後8時過ぎに到着.藤岡インター脇の「道の駅・ららん藤岡」内の〈魚健〉にて鮪をたっぷり食べる.

◇明日からは〈お盆休み〉という名の仕事期間になる.

◇本日の総歩数=6632歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].※もっと「しっかり」歩きましょうね >ぼく


12 augustus 2004(木) ※気分は夏季休暇(逃避)

◇朝の最低気温は22度台.着実に季節は進んでいく.でも,関東地方の真夏日の連続記録はさらに更新されるのだろう.

◇やはりこのお盆休みには,いま反響を呼びつつある津村ゆかりさんの〈5年考えて解けなかった問題〉に取り組むべきなんだろうか.※すんません,ちょっと考えてみて詰まって放棄してます(恥).

◇細々と堆積岩の切り崩し続く ―― 7月の東北大集中講義のレポート課題を今になって“これ論”師に送る(3題よろしく)/茶道系統学原稿へのコメントを裳華房に返す/進化学会からの賞状コピーを人事に提出(履歴変更なんちゃらという書類に押印)/ソーバー本1冊売れる(郵送)etc...

―― しばし一服:ひさしぶりに立ち寄った〈青空文庫〉に,薄田泣菫の『茶立虫』がアップされていた.チャタテムシが「と,と,と,と,...」と鳴く話.静謐で趣きあり.かつて冨山房百科文庫の『完本・茶話』(全3巻)を読んだときの読後感がよみがえる.

―― 先月出たあの厚い本,ダレか読んでます? 書評頼まれたりしてます? よく出たなあと思ったら,あ,このヘンシュウシャさんでしたか(妙に納得).※引く...

◇例の〈学会事務センター〉が更生法からも見放されて「破綻」が確実視されているわけだけど,影響を被る[大きな]学会はとってもたいへんそうで.今月17日に説明会があるとのことですが,どう説明されたところでけっきょく学会事務(会員・会費処理,出版事務 etc)がすべて各学会に返されるわけでしょ.どーするんでしょ(マジで).

◇げに恐るべきは〈京女〉―― ゆめゆめ勝とうなどという幻想を抱いてはいけません.ただただ平身低頭(_| ̄|○)するしかない.とりわけ,タバになった〈京女〉は完全無敵.その驚異的な過去記憶と致死的なイケズそして俊敏なるツッコミにより,幼少のみぎりより数々の手痛い経験を通じてそうであることを知り尽くしているはずの〈京男〉でさえあえなく絶命するのであった.合掌.※はなっから太刀打ちできまへんで,ほんま.こわすぎ.油断したら死にます.

◇白昼の「闇」を経て,ふたたび堆積岩の切り崩し作業に没頭する ―― 富山大レポート評価/とある学会の論文賞審査/まりまりワークショップ事務連絡/とある事典の項目選定/現代新書原稿(……)

◇相当な「深手」を負っていることを自覚したので,じっと癒えるのを待つ.そのうち寝てしまう[仮死状態だったかも] ―― 本日の教訓:〈泣く子と〈京女〉には勝てない(絶対に)

◇本日の総歩数=5410歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


11 augustus 2004(水) ※“崖崩れ”に埋まる……

◇5時半起床.さすがに朝方はしのぎやすくなってきた.朝もはよから“掘り崩し”―― わー,“崖崩れ”〜.

◇何だかもう,出張届・年休届・休暇届をぽんぽんと提出したり,あわてて本を速達で郵送したり,賞状をコピーして人事担当に提出したり.※どれもこれも雑用なのですが,回避するすべはまったくなし.

◇ウィンチェスター『オックスフォード英語大辞典物語』を吾妻の友朋堂書店で見かける.いかにも研究社らしいジミめな装丁で,とても売れっ子作家の新刊とは思えないぞ.※まったく予想した通りの地味さにげっそりする.でも,めげずに買いましょうね.

―― それにしても今年はウィンチェスター本がたて続けに出たね.

◇肉体鍛錬こそナルシスト人生の大目標とみなす〈別世界〉が存在することを知る.おそるべしおそるべし.腹直筋の definition がちゃんと見えなあかんねんて....※目指せ「体脂肪率ヒトけた」とは...(驚倒)

◇形態測定学の感性工学への応用ですか ―― 人間にとって心地よい「かたち」が定量的に分析できるとしたらおもしろいですね.直感的にはアフィン変形はグローバル(人類普遍的)な形態的印象を規定し,非アフィン変形は[規模の差はあっても]ローカル(個々人の好み依存的)な形態的好悪を決めているような気がしますが,そういう先入観がくつがえされるならなおおもしろい.とくに,非アフィン変形の規模(仮想変形の固有値あるいはマグニチュード)が人間の感性にどのように関わってくるのかという点.これについては,直交分割した部分歪みを人為的にひとつずつ除去した「かたち」を用意して被験者に実験してみるとわかることかもしれません.※ご連絡ありがとうございました.

◇竹島茂『速記曼荼羅鉛筆供養(上)』をぱらぱらと読み始める.東大紛争最高潮当時の総長・大河内一男の父・大河内翠山の伝記.文学者崩れの速記者として鳴らした翠山は,明治維新の没落士族の出身で,上野の貧民窟に住んでいたという.よく調べてあるようだ.

―― そろそろお盆休み用の本を決めないとかな.

◇本日の総歩数=5820歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


10 augustus 2004(火) ※“堆積岩”をせっせと掘り崩す日

◇いつの間にか蝉しぐれの中でツクツクボウシの声部が強まってきた.夏も後半期になったということだ.ほぼ平常通り5時に起床.

◇机の周囲にいろいろな雑用が“堆積”している.せっせと切り崩すしかないか.電話やメールでの督促もぱらぱらと飛び込んでくる.

―― 〈これ論師〉が【R経】の執筆を手がけられるらしい.

◇ずるずると時間だけが過ぎていくぞ.

実に不覚であった〜 ―― サイモン・ウィンチェスターの最新刊『オックスフォード英語大辞典物語』が「辞書の研究社」から翻訳出版されてしまったー.ゆるゆると進んでいた原本『The Meaning of Everything』の公園読書が夏場休業していた間に先を越されてしまった.実に不覚.

―― 原本を読み進んでいる途中に訳本が出てしまうというのは,心理的に非常によくないことだ.そのままガマンして原書を読み進もうとタテマエでは思うのだが,当然買い込んである訳本がちらちらと視野に入ると,通読意欲が目に見えて減退する.かといって,訳本に鞍替えするというのもシャクだ.こういう心理的にらみ合いの結果,原本と訳本のどちらも読了できないという最悪のパターンがあり得る.困った困った.

―― でも知らんぷりするわけにもいかず,訳本を注文してしまう.※どーせ早川書房からいずれ出るだろうとは思っていたが,研究社が版元とはね.フェイントかけられました.

◇印刷業者から進化学会大会要旨集の原稿とUSBメモリーの返却.これにて〈御用〉も過去のこと ―― と思いきや,殿から大会レポートを出すようにとの御下命.“クラカトア噴火”の余波はなお地球をまわるということか.月末締切.

◇世間的にはそろそろ「お盆休み」のはずだが,お盆締切の仕事がいくつもあるというのは精神的に消耗しますな.※切り崩すしかないか....

◇富山大の集中講義レポートを読む ―― 形態測定学を学部1年生相手にに30時間も講義するというのはかなりの“背伸び”にはちがいない.講義の感想を読むかぎり,〈基礎動物形態学〉という科目名からは予想されない講義内容にとまどった学生は少なくなかったようだ(当然だよねえ).で,ビックリしたその後でどのように吸いこませるかというのが,噺家の腕の見せ所でね.

◇本日の総歩数=4453歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


9 augustus 2004(月) ※じりじりと灼熱アゲイン

◇ううむ,これは暑い.同じ茨城の併置でも,森の中の方がはるかに快適であった.なすすべもなくひたすら夏日に焼かれる.

◇なんとなく進化学会の荷物の後始末をしたりとか,さりげなく富山大から届いたレポートを眺めたりとか,はたまた某学会の学会賞審査とかレフリーとか,丸まった賞状を伸ばしてみたりとか,溜まっていた1000通のメールを受診してみたりとか,東北大のレポート課題を出さないとなとか,東大出版会の〈蟲〉リストをまだ送っていなかったなとか ―― そうこうするうちに昼になってしまう.

◇午後は,東京に出る用事がある.午後3時から神田小川町にて,DGC基礎研究所の総会あり.会計監査として出席する.ばたばたと荷物をまとめてひたち野うしく駅に直行する.

◇ちょい遅れて3時半に新御茶ノ水駅に到着.日経広告社ビルの会議室にもぐりこみ.総会参加.議題はすぐに完了し,あとは雑談いろいろ.最近の「カテキン」ブームの影にあるもの.おお,〈独立系研究者〉という肩書きが!(独立系書店のような自立を感じさせる).午後5時半に散会.そのままつくば直帰.

◇どこに行っても蒸し蒸しとした一日.

◇本日の総歩数=8284歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


8 augustus 2004(日) ※真正の「抜け殻」になりきる

◇午前3時に目が覚める.まだヒグラシすら鳴いていない.懐中電灯をもって深夜の森のお散歩ひとまわり.※ただただ真っ暗でしっくりなじむ.しかし,ゴミ箱片手にうろつくのはただのアヤシイ人かもしれへんな.

◇早朝から宿舎でごろごろと本を読んだりして,いかにも〈抜け殻〉らしく過ごす.森らしく至近距離でセミが鳴きはじめた.

◇午前10時にチェックアウトする.家に帰ってもなおごろごろと非生産的に時間を浪費してあげる.

◇夕立もなく暑さ持ち越しのまま日が暮れる.メリハリまるでなし.

―― しまりなくだらだらとそのまま寝てしまう.だらだらと.

◇だらしなく心地よい一日だった.※しばらく肉いらん.

◇本日の総歩数=3092歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


7 augustus 2004(土) ※あたふたと帰路を目指す

◇単調増加する蓄積疲労のせいか,午前6時まで寝てしまう(なんたることか).とにかく朝ご飯を詰め込んで,荷物も詰め込んで,午前9時過ぎにチェックアウト.今日もぎらぎらと蒸し蒸しと暑い.東京駅に直行し,つくばセンター行き高速バスに乗り込む.

―― ほぼ予定通り,午前11時半につくばセンターに到着.

◇午後は,〈ゆかりの森〉にてバーベキューの準備.雷雲が育って,ときどきぱらぱらと雨粒が.火だけしっかり起こして,スペアリブと骨付きチキンをじわじわと焼き始める.森の中だけあって多少は気温が低いのだろうが,火の世話をしているので,焦げそうになる.焼き方ではなく喰い方の方がはるかにハッピーだと思う.夕闇が迫るとともに,焼肉から焼きそばへと徐々に移行.午後8時頃に動けなくなる.

―― そのまま〈宿舎あかまつ〉に泊る.なかなか広くて居心地よし.ごろごろしつつ,遠藤哲夫『汁かけめし快食學』(2004年7月7日刊行,ちくま文庫,ISBN: 4-480-03978-3)を速攻ほぼ読了.ノイズの多い文体やね.もっとストレートに書かないとね.椎名誠の名著『全日本食えばわかる図鑑』の方が食欲直撃だったなあ(シソ肉バター丼とかね).食いもんの本は最節約的に書くべし.

―― 学会疲れと火奉行御奉公でいつの間にやら爆睡.

◇本日の総歩数=5437歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


6 augustus 2004(金) ※最終日に〈灰〉と化す

◇進化学会も最終日となった.もちろん,明日7日には〈夏の学校〉があるのだが,個人的には今日でオシマイ.

◇6時前に起床し,ぱたぱたと必要な荷物を用意して,パタパタと1階のレストランで朝食.余裕なくホテルを飛び出して千代田線に乗り込む.駒場の会場に到着したのは始まる10分前(ぎりぎり).

―― 8:50に始まった朝イチのシンポジウム〈非生命体の進化理論2〉は佐倉統さんとの共同オーガナイズ.最初の演者である徳永幸彦さんは「人工生命の系譜学と進化学」.の系統発生が given である人工生命系を用いれば,確かに系統推定法のような推論ツールの比較検討はできると思う.分子進化シミュレータのソフトがいくつか公開されているが,形態進化についても同様のシミュレータができるということか.Caminalculesの再来.

―― 続いて佐藤啓介さんの「考古学における型式学」.モンテリウス流の型式学(Typologie)について話題提供.おそらく佐藤さんが感じている以上に生物の変換系列と遺物の変換系列とは類似度が高いのだろうと思われる.系譜のハイブリッドとか水平移動など,およそあり得る現象は生物・非生物を問わず両者で生じている.分類と系統との関係についても同じことが言える.→この講演については佐藤さん自身のレポート「進化学会報告」が公表されている.

―― 次に,矢野環さんによる「茶道古文書の定量的文献系図」.こういう古典籍の資料にもとづく系統推定はリアルでいいですねえ.形質のピックアップといい,系譜の推定作業といい,形態形質にもとづく系統樹の構築とよく似ているように感じる.池田亀鑑おそるべし.仮想祖本が「現実」に見つかるというのは,確かにインパクトが大きいのでしょうね.写本の混態(contamination)は系統の reticulation そのもの.系統ネットワークの推定を考えなければならないという点では,生物も写本も本質的なちがいはないと思う.

―― 最後に,和文の書式変遷についての屋名池誠さんの講演「書字方向と書式の系統進化」.これまた,豊富な資料を提示して日本語書字の移り変りが論議された.錯綜した明治前後に書字様式に関するいろいろな「ドリフト」が出現したという話.時間が超過して,ウシロから迫ってきたのは次期会長さん(こわ).※次のシンポのみなさん,ごめんなさいね.

◇昼食後,こもってしばし講演準備.オーガナイザーと講演がハシゴであるというのは消耗的.

◇午後4時からシンポジウム〈祖先の復元は進化学になにをもたらすか?〉の開始.山岸明彦さんと本多元さんは生命の大系統のルーツに関わる化学進化と分子進化について.倉谷滋さんは祖先的な個体発生様式についての話題提供.で,最後にぼくが「共通祖先への遡及――体系学的推論の観点から」というトーク.祖先に関する体系学の概念体系をふりかえり,「祖先的な形質」を論じることはできても「祖先そのもの」を論じることはできないだろうという趣旨の話をした.質疑はやや“かけあい漫才”気味でしたか?>青木さん.

◇これでやっと今大会でのデューティがすべて完了した.午後6時に〈非生命体〉演者たちが集結し,渋谷の〈西楼厨〉になだれこむ.ずいぶん食が進んだような気が.松本修『全国アホ・バカ分布考:はるかなる言葉の旅路』(1993年8月5日刊行,太田出版,ISBN: 4-87233-116-8)は,バックについた「大物」効果により,国語学的にはまれに見る成功例なのだそうだ.こういう言葉に関するアンケート調査はなかなか難しいとのこと.個人的には『ケセン語大辞典』の国語学的な受容が気になります.

―― 屋名池誠さんから『d/SIGN no.8』(太田出版,2004年)所収の記事「読むためのデザイン:文字の機能と明治・大正の新聞・雑誌」(pp.88-91)のコピーをいただく.見出しや目次の形式がどのように変遷してきたかという話.音読がふつうだった新聞がしだいに黙読されるようになってきたとき,内容の区切りを明示化する目次や見出しが成長していったのではないでしょうか.

―― いろいろと話題が飛びつつ9時頃にお開き.みなさん,どうもお疲れさまでした.※で,〈非生物3〉はどーします? さくら君.

◇燃え尽きました……「灰」となって弥生会館に吸い込まれる.アモルファスなまま夜は更けていった.

◇本日の総歩数=8661歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


5 augustus 2004(木) ※ドレスコードに右往左往

◇午前5時半起床.遅いぞ>ぼく.今日はめっちゃ忙しくなる.

◇ホテルの予約が遅かったせいで,南青山会館は今日チェックアウトしなければならない.今夜からは根津の東京弥生会館に宿泊先が変わる.

―― それだけでも十分にめんどうなのだが,午前11時から落合斎場にて先日亡くなった酒井清六さんの告別式があるので,それに参列しないといけない.当然〈ドレスコードその1〉が適用され,黒服(&黒タイ)を着ることになる.

―― さらに午後3時からは進化学会大会の表彰式があるので,〈ドレスコードその2〉が適用され,黒服ではない平服(つまりスーツ)に着替える必要がある.

―― さらにさらに午後6時からは大会懇親会があるので,それまでには自主的〈ドレスコードその3〉による通常服(つまりいつものアレな服)に変身しないといけない.

―― というわけで,一日のうちにくるくると“着せ替え人形のごとく”いでたちが変わることなる.問題はいつどこで「変わり身」するかということですな.困ったー.今日もまた暑くなるだろうしね.

◇でもって,一日が終ってみると,確かに「着せ替え人形」を体験したのであった.以下,回想モードにて……

―― 南青山会館チェックアウト後,表参道駅のコインロッカーにトランクを放り込んで,東西線・落合駅に直行.数分の徒歩で,落合斎場に到着.この季節に黒服(ドレスコードその1)というのは“がまん大会”にほかならない.久しぶりの寺山さんとか河野さんとか.焼香をすませて正午前に斎場を出る.

―― またも表参道に戻り,コインロッカーからスーツ(ドレスコードその2)を取り出して駒場に直行.「どーしたんですか?」「何かあるんですか?」という数多のコメントを浴びつつ,900番教室に.たいへんありがたいことに,今年度の日本進化学会教育啓蒙賞をいただくことができました.受賞理由は〈10年にわたる EVOLVE-ML の見事な運営 〉とのこと.ほー.10年続けりゃそういうこともあるのか.※今年9月1日で満10年になる.

―― 式ののち,正面玄関にて記念撮影.これでやっとドレスコード(その2)から解放される.表参道に戻り,すべての荷物を抱えて千代田線・根津駅に.東京弥生会館にチェックインした後,ふつーの服(自主的ドレスコードその3)に着替えて,またも駒場にUターン.生協食堂カフェテリアでの懇親会はすでに始まっていて,主だった食物はすでに喰いつくされていた(去年とは歴然としたちがい).2時間ほど談笑しつつ,渋谷に転戦.

―― 道玄坂の〈酒怪くんなまし〉の屋根裏ちっくな部屋に20人ほどが集結.おお,いつのまにF君は結婚していたのか? 娘まで...(「愛の写真」たちを何十枚も見てしまった...).進化学会〈シモねたトリオ〉として知られる【SSF】はこの日新たに〈シモねたカルテット【SSFM】〉として再出発したのだった.シモねたの大嫌いな某氏が早退したことは言うまでもなし.

―― 11時半に散会.千代田線に転がり込み,弥生会館にたどり着いたら,もう日は変わっていた.くるくると丸めた賞状をトランクにぶち込む.

◇本日の総歩数=5820歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


4 augustus 2004(水) ※大会初日:早くもへばり気味

◇昨夜はとてもよく寝られた ―― 上質のチリ・ワインが効いたのだろう.目覚めたら午前7時だったー!(がっぱし) 即座に着替えて,前日の日録を書きつらね,その後,朝ご飯たっぷりと.

―― ホテルを出た時点で,早くも蒸し暑さに卒倒しかける.進化学会大会は暑さとの勝負か(甲子園並み).8時50分からシンポジウムがもう始まっているというのに,駒場東大前に降り立ったのが9時半.受付でしばし淀む(軽く1時間ほど).要旨集がなかなかいい出来なのでほっとする(これでワタシの大会は終ったのだ).大会受付向かいのプレビュー室にて,シンポジウム趣旨説明のスライドをあたふたとつくる.※前夜ドロナワという最後の一線を軽々とクリアしているぞ.

◇午前11時から,オーガナイズした〈ベイズ進化学〉シンポ.強烈に冷房の効いた部屋で(わたしゃ快適),定刻に開始.岸野洋久さんの講演は,いつものように心地よく必殺.「経験ベイズ」と「階層ベイズ」のちがいはクリアにわかる.パラメーターを支配する超パラメーターを設定するというところの融通は階層ベイズの方がやりくりしやすい気がする.ただし,パラメーターの階層化に起因するモデルの複雑化にどのように歯止めをかけるか.続く宮正樹さんの講演は,MrBayesを用いた分子系統推定のケーススタディー.聴衆の理解度は相当高かったのではないか.Paul O. Lewis の〈MCRobot〉はぜひ体験してみるべきだとのこと.最後の北門利英さんの講演はとても教育的.ベイズのメカニクスを理解する上では役に立つ.

―― “ベイズ”といえば philosophical な統計学理念の対立がかつてはあったわけだが,ここ数年浮上してきた“ベイズ”はそれとは別の次元での「解析ツール」として効用がつねに強調されている.これまでは数値的に解けなかった問題が MCMC を用いて解を出せるようになったという技術的なブレークスルーが,ツールとしてのベイズをいろいろな分野に普及させた原動力なのだろうと思う.

―― モデルがいくら複雑になっても数値的に解けてしまうというのは,モデル選択の立場からいえば「諸刃の剣」のように感じられるけど,そのあたりはどういう論議が進められているんでしょーね.オッカムの再来?

◇昼食は,南部くんとともに,駒場キャンパス内に新しくできたばかりのフレンチ・レストラン〈ルヴェ・ソン・ヴェール〉にて.牛の赤ワイン煮込みのランチ(800円なり).安い&早い&うまい.※ということで,大会参加者はこの機会を逃さぬよーに.

◇それにしても,なんという蒸し暑さか.明日からが思いやられる.“駒場寮遺跡”の前を通り過ぎる.※草ぼうぼうで「古墳」のような趣が....

◇午後はポスター発表とシンポジウム午後の部.ところどころつまみ食いしつつ,休憩室にて日録を書き連ねる.宮さんにフランスワイン名称の綴りまちがいを指摘されたりとか(羅甸方画記をあわてて書き直す),某氏に「明日は何を着てくるの」と訊かれたりとか(汗),自己紹介されたり/したりとか,休憩室ならではの交流いろいろあり.

◇夕刻,nested clade analysis についてのポスター発表の個人講義をたまたま受けることができた.オサムシのネットワーク推定に用いられたソフトウェアには使い勝手に難点があるらしい(作図がたいへんそう).

◇午後6時からは学会の評議員会が別室であり.議題がとても多く,解散したのは午後9時をまわった頃.石川統会長から「みなかくん,明日の表彰式は何を着てくるの?」と念押しされる(大汗).※方々で同じ質問を受けた一日だった.

―― 学会大会は初日がもっとも疲れるというのは事実だと思う.寄り道したりワルイことしたりせず,表参道に直帰.午後10時.※良い子は夜遊びしないのだ.

◇本日の総歩数=10158歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


3 augustus 2004(火) ※暑くてぐったり〜

◇4時半に目が覚める.しばしのたうつ.

◇プチ旅行の準備 ―― パソコン関連グッズ,本,服,本,コルク抜き,本,靴,本,黒服,本,スーツ,本…….

◇今月予定されている『生物系統学』の第3刷印刷のための正誤リストをばたばたとつくる.なんでまだこんなに〈蟲ども〉が残っているのかと暗然とする(く...).数ヶ所どころではなかった(げ...).原本を郵送することに.

◇某NPOの監査報告書もばたばたと仕上げる.

◇午後,東京に出発.今回は〈ドレスコード〉を満足させるための服がかなり重い.何しに行くんだかって感じ.「つくばね号」に乗って常磐道で爆睡.※出張に行くのが唯一の骨休めになるという矛盾.

◇表参道の南青山会館にチェックイン.すかさず有楽町に出撃し,阪急ビル最上階の〈クルーズクルーズ〉にて生物地理学会の面々と会食.とってもいいチリ・ワインを飲んでしまった.

◇明日からのために今日は寝るのだ.

◇本日の総歩数=13986歩[うち「しっかり歩数」=1714歩/14分].


2 augustus 2004(月) ※あー,のらくらしていたい……

◇午前4時に起床 ―― ヒグラシの合唱で目が覚める.明日の夕方にはまたプチ旅が始まるので,いろいろと準備しないと.パリでも東京でも旅支度に大きなちがいはない.

◇備忘(1)―― 一昨日の隅田川花火大会に向かう上り常磐線内での読書:アン・ファディマン『本の愉しみ,書棚の悩み』読了.多少おもしろいけど,内容的にはイマイチ.本をネタにした個人エッセイではあっても,本に関しての文章ではない.軽く読み飛ばしてそれでオシマイ.

◇備忘(2)―― 同じ日の帰りの常磐線内での読書:『Milestones in Systematics』所収の Mary P. Winsor 論文「Setting Up Milestones: Sneath on Adanson and Mayr on Darwin」(pp.1-17).業界(guild)内のオハナシがいろいろと.こういうのは愉しいですね.とくに,「科学者」「哲学者」「科学史家」の人生訓.

学会ドレスコード問題 ―― 今回の進化学会では中日に〈表彰式〉なるイベントがあって,最後の方で壇上にのぼるはずのぼくとしては,「はたして進化学会にはドレスコードがあるのかないのか?」が緊急重大問題としてにわかに急浮上してくる.多くの学会大会に参加してみると,デフォルトの〈ドレスコード〉は学会によって大きく異なっていることがわかる.たいていの研究者は限られた数の学会しか行かないので〈それ〉に気づかないことが多い.しかし,確かにちがいはある.医学関係の学会の参加者は一律に〈スーツ着用義務〉という厳格なドレスコードを布いているようだ(掟破りはゼロだと思う).次いでフォーマルっぽいのは植物学会とか応動昆.〈スーツ&ネクタイ〉が基準であって有職者は基本的にそういういでたちをしてうろうろする.ひるがえって,ほとんど無法地帯と化すのは昆虫学会や生態学会という租界文化地.インフォーマルな服装という表現をそのまま字義通りに解してくれる.

―― で,進化学会は? “えいすけ”君とか“おおだち”氏と同レベルに徹するならば,これはほとんどアヴァンギャルドかダダイスト並みのドレスコード粉砕状況になる(基本的にぼくはそれに近いとみなされている).で,大会委員長におそるおそる「表彰式ではどのようないでたちが求められているのでしょうか?」とお伺いをたてたところ,すかさず「あのミウラ君でさえネクタイを締めていたという事実を考えよ」という教育的指導&面ありぃ一本メールが返ってきた.そーか〈あのミウラ君でさえ〉ということか.この進化学会でさえ最低限のドレスコードは厳然として存在していたという事実に気づかされた.※う〜む.

―― そーか,最低条件として「ネクタイ」をちらつかせればいいということか.※ちがうだろ,それって...

―― →うわ! さっそく出不ろぐに釣り上げられちまったい...(汗).※たいとさん,すばやいっ.社会学系学会の“ドレスコード”やいかに?(やっぱし先端破壊的社会構築的センスに満ちあふれているんでしょーか)

―― 〈ワイルドさ〉にかけてはワタシなんぞ赤子のようなものでして.はるかに“兇悪”なメンツが集う駒場なんちゃって(サファリパークかいっ).「外れ値」な人たちは学会を問わずそういうコスチュームを身につけるのであり,一貫して「ソレな人」を演じるのであった.紋付袴,いかがっすか? 目がつぶれそうなアロハ系.野犬,絞め殺してあげますです. 外れ値に抑えは効かない……ほとんどケダモン.※遠目に見にきません?(咬まれたりとか)

―― 表彰する/される?……「される」方でございます.何ごとも10年続ければこーゆうことになるものでしてね.

◇いろいろとこまごま大小とりそろえて雑用が溜まっている....西日が射し込んできたので,そろそろ退散かもしれない.またドロナワがするすると伸びている気がする.※あ,ごめんなさいごめんなさい,第2章の原稿まだですぅ.

◇旅支度ばたばたと ―― そこに酒井清六さん逝去の報が.生物地理学会関係者としては通夜・告別式に出ないとね.進化学会大会の真っ最中ではあるけど,時間をつくります.こちらの方の〈ドレスコード〉ははるかに強制的なので,黒服を箪笥から引きずり出す.黒服とスーツと“平服(文字通りの)”を持ち歩くのか...(重そう).

◇本日の総歩数=6391歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


1 augustus 2004(日) ※怠惰がごろごろと寝転がる

◇〈大花火大会〉の翌朝は気だるい ―― だらだらと日が高く昇るまでごろごろする.怠惰が寝転がっている.とても非生産的で心地よい.農水省サーバーはまだ不調のようだ(ダイヤルアップ接続だけかも).さらに引きこもり的にぐでぐでする.今日も暑そうで活動レベルがちっとも上昇しない.ここぞとばかりに何もしない.

◇午前中にやっとサーバーが復旧し,滞留していたメールが押し寄せてくる.進化学会大会の〈当日運営マニュアル〉が駒場から届く(わーどファイルが腐ってましたけど>殿).長かった〈御用〉もいよいよ終盤だ.

―― 大会間近となったので,講演要旨集(pdf版)のサイトもどーんと公開してしまおう:〈日本進化学会第6回大会(東京大学)講演要旨集[pdf版]目次〉 ファイルサイズの合計は17MBになるので,ダウンロードの際にはご注意を.※関係するメーリングリストなどにもURLを周知する.ま,大会直前の打ち上げ花火ってところ.

―― おお,〈大雑用〉が軽やかに?完結しているではないか! 今月下旬の生態学会釧路大会の「講演要旨集」がオンライン公開された(html版とpdf版).頁四分割の定型枠に各要旨を詰めていくというのはOED縮刷版を想起させて興味深い(大学会ではよく見るけど).そのうちCD-ROM要旨集という道を進むことになるのではないですか.※お疲れさまでした >ご担当者どの.数々の自動化のわざ,見せていただきました.

―― 進化学会大会の場合はまだ300そこそこの講演数なので,講演要旨集に〈本〉としての読みやすさを求めるだけのゆとりがある.多くの大会参加者にとって,紙バージョンの要旨集というのは,持ち歩くには重過ぎる.しかも個々の研究者にとって大半の講演は“関係がない”わけで,そういうものまでごそっと含まれる〈本〉を暑い最中にかついで歩くというのは覚悟がいる.「プログラムと要旨集を分割してほしい」とか「要旨集はCD-ROMで十分だ」という声があるのはもちろん知っている.ただ,要旨集の〈本〉としての性格を考えるとき,それをただの〈ドキュメント集〉に帰してしまう(講演記録の単なる「束」)のでは,本づくりの智恵はなにひとつ必要なくなる.そのとき要旨「集」としての存在価値はなくなるだろう.個々の要旨はあっても,それを集積した要旨集は必要なくなるということ.学会大会が大規模になっていくにつれて,要旨「集」の価値は相対的に低下していく.

―― ぼく個人としては要旨集の〈本〉としての可読性にこだわっている.データだけではなく,ちゃんと読めるかどうかが重要なポイント単なるレファレンスではあるのだが,「読める要旨集」であってほしいという目標はいつも置いている.大会参加者に要旨集を持ち歩かせるための動機づけとしてそれはとても重要だろうと思う.もちろん,pdf版を公開したということは,大会に来られない人あるいは一般の人も見にくるかもしれないということだ.そういう潜在的読者に対しても「可読性の高い出版物」を出すということは学会として重要な社会的広報活動になるだろう.金をかけてりっぱな要旨集を出すということではなく,〈本〉としてのクオリティの高い出版物を公開するということ.内容のクオリティは個々の講演に帰せられるが,〈本〉としてのクオリティは組版・書体・体裁など「本づくり」を統括する担当者の責任だ.

◇というわけで,上記の〈進化学会要旨集サイト〉は学会による電子本の公開だと個人的には位置づけている.

―― 問題なのは,こういう方針はある年度のある要旨集担当者のみに限定されることであって,過去の年度あるいは将来の年度とは何の関係もないということ.要旨集にかぎらず,学会大会の運営をするときには,「今年はこれでやったけど,来年度以降はどーするのだろうか?」という懸念を抱くことがたびたびある(大会役員をやってみてはじめて気づくことだ).もちろん,予期されるリスクについては“申送り事項”ということで,次年度役員に受け渡されるわけだが,受け渡されたとしてもなお対処できない事項はいくつか残るだろう.

◇本日の総歩数=1477歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


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