【書名】Library: An Unquiet History
【著者】Matthew Battles
【刊行】2003年
【出版】W.W. Norton & Company, New York
【頁数】x+245 pp.
【定価】US$ 24.95 (hardcover)
【ISBN】0-393-03039-0
【備考】翻訳あり
M・バトルズ『図書館の興亡:古代アレクサンドリアから現代まで』(白須英子訳,2004年11月1日刊行,草思社,ISBN: 4-7942-1353-0,税込定価2,625円)

【書評】※Copyright 2004 by MINAKA Nobuhiro. All rights reserved

生命体としての「図書館」の誕生・成熟・衰退


本そのもの,読書そのもの,活字文化そのものを大きく包み込む「うつわ」としての図書館を主役に据えた本だ.図書館をつくろうとし,また同時に壊そうとする社会・文化・政治についての古今東西のエピソードが開陳されている.ライブラリアンとしての職歴をもつ著者は相当に博識なのだろう.本の戦いを図像化した絵画とかメルヴィル・デューイによる図書分類法の起源とか.著者がウンチク傾けまくっているのも楽しいが,方々に挿入されているめずらしい図像が印象的だ.

第6章「Knowledge on fire」は,図書館がいかに破壊されるかをいろいろな事例を挙げて論じる.半世紀前のナチス・ドイツによる“ホロコースト”は,「人」に対するばかりではなく「図書館」に対する殲滅作戦でもあった.億の単位で図書が灰燼に帰したという(ゲッベルスを怖れた市民が「自発的」に蔵書を焼いたそうだ).近年のサラエボでも大規模な図書館の打ち壊しがあったとか.かつての中国での“焚書坑儒”の話もこの本の前の章に載っていたが,図書館を苦労して造りあげるというプラスの話よりも,せっかく造られた図書館があっという間に消え去るというマイナスの話の方がはるかに強く印象に残る.

三中信宏(21/October/2004)

【目次】
Acknowledgments x
1. Reading the Library 3
2. Burning Alexandria 22
3. The House of Wisdom 56
4. The Battle of the Books 82
5. Books for All 117
6. Knowledge on Fire 156
7. Lost in the Stacks 192
Notes on Sources 215
Index 229