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日録2005年7月


31 juli 2005(日) ※ 灰……

◇午前7時起床.真綿がまとわりつくような,この蒸し暑さ.もう「下界」にはいられまへんなあ.

—— という願いを見通したかのように,〈草津山荘〉のパンフレットが届く.「牢屋」もパラダイスと感じられたりするのだろうか.「カンヅメ」もまた善きかな(ちゃうか).

◇花火で弾けていた間に,進化学会関係のメールがたくさん届いていた.大会が近いので,評議員会やら総会での議事進行と案件の整理が必要みたい.箱崎と駒場の間で“高速メール”が飛び交っているようなので,明日はそれに混ざらないとダメかも.

◇でも,今日は日がな一日〈灰〉になっていよう.

◇本日の総歩数=4496歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.1kg/0.0%.


30 juli 2005(土) ※ 隠れ家と花火の月末

◇午前5時起き.すでに蒸し暑い.所用にて東京に向かう.台風が通り過ぎてからというもの,温度と湿度が許容範囲を超えつつある.

—— JR東京駅の八重洲北口にあるスターバックスにて日録と原稿を書く.締切が[いつも]迫っているので.

◇日中は都内を徘徊し潜伏する.とても暑かった.

◇得た情報たち —— 上野公園の国立西洋美術館で〈ドレスデン国立美術館展:世界の鏡〉が開催されている(9月19日まで).サイモン・シャーマ『風景と記憶』(2005年2月28日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-25516-7)の主題画であるカスパー・ダーフィット・フリードリッヒの絵が出展されているそうだ.惹かれるものあり./ 南陀楼綾繁(編)『不忍ブックストリートMAP』(2005年4月1日発行,谷根千工房).※とある隠れ部屋にてゲット.ふむふむ.

◇昼間さんざん歩いて,最後は京島のさる隠れ家に集結する.昨年と同じく,「ディープ下町・京島で夜風に吹かれて花火大会をじっくり鑑賞する会」.“浴衣”な人たちが目につく東武伊勢崎線の曳舟駅にたどり着いたときには,ちょうど隅田川花火大会が始まったばかりだった.京島のとあるマンション屋上にセットされた会場に集まる.先陣はすでに集結していた.去年は,脇を走っている東武線の踏切に入り込んで花火を鑑賞するというややイノチ懸けの会だったのだが,今年は屋上なのでイノチを懸ける必要はなくなった.間近の隅田川花火大会と,やや遠くの両国花火大会が両方とも見られてなかなか贅沢なロケーションだった.午後8時半まで年に一度の目の保養.花火大会の終了後,下に降りてさらにボルドー・ワインなど舐めつつ,9時半頃までクダをまく.

—— そういえば,酔っている耳元に聞こえてくる〈ダスビダーニャ〉の合い言葉.そーですか,毎回ショスタコーヴィッチで“炸裂”しているわけですね.打楽器が主役で,後のパートは脇役なのかー.コンサートのたびに「満員御礼」というのもうなずける.※次回は『8番』ですか(暗〜く破裂するって).

◇帰路は,曳舟→北千住→ひたち野うしく.家にたどり着いたのは午後11時を過ぎていた.か・な・り 疲れたかも.

◇本日の総歩数=30818歩[うち「しっかり歩数」=11837歩/103分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.2kg/+0.9%.※明日は燃え尽きているだろう,きっと.


29 juli 2005(金) ※ 迫りくる月末と締切

◇午前5時起床.熱帯夜というほどではないが,けっして快適ではない,やや粘り気の多い明け方.曇り.気温23.7度.

◇メーリングリストとブログの「時差」 —— ブログ〈leeswijzer〉の方は意識して頻繁に新刊情報や書評を載せているのだが,そのあおりで?メーリングリストへの配信が遅れてしまった.バランスを取るのが難しい.というか,使い分けの境界線がまだ固まっていないというべきか.

◇朝から変な電話とメール —— 今朝,研究室に電話がかかってきた,おお,英語ではないか.「とても大切なことがあるので,メールで資料を送りたい.つきましては,あなたのメールアドレスを教えてほしい」というような要請.てっきりJICAの研修生が実験データに関する質問でもしてきたのだろうと思って,アドレスを教えたところ,間髪入れずに,国際投機市場への勧誘メールが来ました(汗).そしてさらに間髪入れず電話があり,「メールの内容に関心があるか?」とのダメ押し.「すまない.公務中にこういう対応をするわけにはいかないし,関心もない」と応えたら,あっさり引き下がってくれました(もっとゴネるかと思ったのだが).いったい何だったんだろー.新手のセールス電話なのだろうか.わけのわからん体験だった.※みなさまもお気をつけ下さい.

◇午後1時の気温が32.0度で,かんかん照り.なかなかきびしいなあ.

◇こまごま雑用 —— 新規購入したコンピューターの計算センターへの登録書類.完了./ 次期中期計画に関わる打合せ.※なんだか内容がぼろぼろで……(小声)./ JST領域探索プログラムの第1回研究会の日程と場所が確定しつつある:9月17日(土)〜18日(日),葉山の湘南国際村にて.※第2回目の研究会は11月4日(金)〜5日(土),場所は未定.

◇言葉もなく,ただ見るのみ —— 森山大道『DAIDO MORIYAMA BUENOS AIRES』(2005年7月4日刊行,講談社,ISBN:4-06-213020-3).“ブエノスアイレスのマリア”がそこかしこにいる.まだ行ったことのない国だからこそ,根拠のない先入観やらイメージを勝手に投影しながら「読んで」しまうのかも.隣国のサンパウロの街角を想起させる風景も.途中,一葉だけカメラマンとカメラが映り込んでいるモノクロ写真がある.「こんな小さなカメラで」と驚いてしまった.

◇近刊メモ —— ジークフリート・ウンゼルト『ゲーテと出版者:一つの書籍出版文化史』(2005年7月28日刊行,法政大学出版局[叢書ウニベルタシス822],ISBN:4-588-00822 →版元ページ).※著者 Siegfried Unseld は,かの Suhrkamp 社の社主だった人.とてもおもしろそうなのだが,この値段……(_| ̄|○)./ 椎名誠『全日本食えば食える図鑑』(2005年7月刊行,新潮社,ISBN:4-10-345617-5).※名著『全日本食えばわかる図鑑』(1985年3月刊行,小学館,ISBN:4093593019)の「続刊」が実に20年後に出るとは感慨深いなあ.

◇錦三郎 『飛行蜘蛛』の書評と目次を公開.

◇月末の〈年貢〉の取り立てが〜(汗) ——

◇本日の総歩数=7658歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.3kg/+0.3%.


28 juli 2005(木) ※ 厳しく暑い日は続く

◇午前5時起床.雲が多かったが,朝日とともにすぐ健康的な青空になる.気温22.6度.体感的になんとか許容範囲におさまるのは明け方のみ.

進化学会東北大会の再アナウンス.大会参加費の割引は7月31日までですので,参加予定の方はご注意ください.

◇朝から事務作業の消化 —— 労金の書類書き1件./ 教育研修生の計算センター利用届出./ まだ届かない DELL コンピュータの納品督促,など./ クラスター分析(らしい)の質問に応対する.データを見ないことにはコンサルタントできないので,来週来室してもらうことにする.

◇雑 —— 昨年11月にイスラム原理主義者に殺された映画監督 Theo van Gogh は,Vincent van Gogh の弟 Theo van Gogh の孫であること(→Wikipedia:).

◇系統樹空間の視覚化〈Tree Set Viz〉 —— Systematic Biology 誌の最新号(vol. 54, no. 3, June 2005)の表紙を飾っている.〈Mesquite〉のモジュールとして開発された系統樹空間の「非計量多次元尺度法(nMDS)」を用いた視覚化の方法について:Hillis, D.M., T.A. Heath, and K. St. John (2005). Analysis and Visualization of Tree Space. Systematic Biology, 54 (3) : 471-482(上記サイトから論文pdfダウンロード化).研究ツールとして,また教育プレゼン用のツールとして使えるかも.

◇統計関連学会連合大会(広島)のプログラムが届いた.

◇昼休みの炎天下ウォーキング(汗):錦三郎 『飛行蜘蛛』 (2005年6月25日刊行, 笠間書院, ISBN:4-305-70280-0)を読了.本書の後半は,蜘蛛の配偶行動に関する観察記録もあるが,中心は,蜘蛛の民俗と伝承そして文学.Arachnida はギリシア神話の神にちなむ名前だったか.水上勉は蜘蛛へのオブセッションがことのほか強かったとのこと.古今東西の文学作品の「蜘蛛話」が登場する.

—— 稲荷側沿いの木陰でハグロトンボが群舞していた.午後1時前の気温は31.3度.昨日よりは少しだけマシ.

◇午後1時から〈系統学的考古学〉セミナー(第13回).Chapter 4 : 「Constructing Cultural Phylogenies」.文化系統学への第2の批判に応える(pp. 104-111).「文化進化は“網状的(reticulate)”だから,系統樹では表現できない」というこの批判はまちがいではない.しかし,reticulation それ自身は系統解析を不能にする要因ではないという立場に立って,著者たちは文化系統の reticulation の原因を論じる.introgression や hybridization などのこれに関係する進化プロセスが説明される.とくに,因果に関する intralineage / extralineage の対比は文化系統の説明にとって重要なキーワードになる.分岐図が「分岐的」であっても,それと整合的な系統樹は必ずしも「分岐的」であるとはかぎらず,場合によっては「網状的」であるかもしれない.この問題は,分岐分析のターゲット(推定対象としての最適グラフ)を x-tree とみなすか,それとも tree semilattice として設定するかによって,ある程度は解決されていると思う.

◇朝,督促したら,夕方には届いていた DELL のコンピューター(この因果的叙述には問題あり) —— 〈Dimension XPS Gen5〉.“タワー”という形容がぴったり.排気口がとても大きい(強力な「熱源」となるかも).※大東くん,頑張って仕事してねー.

◇19:15に震度4の地震あり.実害なし.

◇本日の総歩数=13263歩[うち「しっかり歩数」=5463歩/46分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/−0.3%.


27 juli 2005(水) ※ 真夏日への復帰

◇台風が上空を抜けていった昨夜は,とても蒸し暑かった.夜中にも時折雨がざーっと降っていたようだ.目が覚めた午前5時にはすでに天気は回復に向かい,残党の雲が残っていたが,日中はかーっと晴れ上がるにちがいない.気温24.4度.

—— 朝の研究所にて,進化学会関連の連絡メールとかいくつかの作業.

◇文化系統学の論文集:Ruth Mace, Clare J. Holden, and Stephen Shennan (eds.)『The Evolution of Cultural Diversity: A Phylogenetic Approach』(2005年,The UCL Press,ISBN:1-84472-065-9)の目次をやっと公開した./ サイモン・シャーマ『風景と記憶』(2005年2月28日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-25516-7)の目次は〈leeswijzer〉送りとした.

◇午前中は,8月の進化学会大会と9月の統計関連学会大会の出張届の書類書き.エンドレスに時間がかかる.とにかく出してしまえばいいのだ./大会参加費は今日中に振り込む予定.

◇届いた新刊 —— 田中正明(編)『柳田國男の絵葉書:家族に当てた二七〇通』(2005年6月25日刊行,晶文社,ISBN:4-7949-6654-7).※これまで未発表の家族宛絵葉書をカラー図版(全部ではない)で出版したもの.文章よりは,つい絵柄の方に目がいってしまう.国内外からの家族に届いた古い絵葉書には“絵”になる構図(風物・民俗・文化)が切り取られている.絵葉書ファンとか博覧会ファンには本書は必読でしょう.なお,初版では,図版のまちがい(209ページ)があるので(差し替えシートがはさまれている),買うなら第2刷以降を待った方がいいかもしれません.

◇昼前には明るいブルーな真夏の青空が広がった.次期中期計画にからむブルーな打合せとは実に対照的だ.暑そー.

◇昼休み.気温33度に達する.でも,歩きましょ.錦三郎 『飛行蜘蛛』 (2005年6月25日刊行, 笠間書院, ISBN:4-305-70280-0)をさらに80ページほど歩き読み(日光で目がちかちか).梶井基次郎の作品に gossamer が出てくる,サイデンステッカー訳の『かげろう日記』のタイトルは『The Gossamer Years』だそうな.“陽炎”とは gossamer ではないかという説があるが,著者は懐疑的だ.古今東西の文学作品などを渉猟して,飛行蜘蛛の軌跡をたどる努力.それよりも何よりも,クモ類の系統関係と「飛行性」を論じた箇所(pp. 86-87)に注目したい:

わたしは現在のクモの造網性,徘徊性,地中占座性のいずれもが,これまでの進化の途上に,一度は太陽の照る地上生活を行ない,持ち前の糸を利用して,空中分散を行ない,個体の維持と種族の繁殖をはかった,そういう時期をへたのではないだろうかと思っている.その時の習性が,現在のクモの習性となって残り,孵化後のバルーニングとなってあらわれるのであるとみたいのである.(p. 86)

さて,こういう進化仮説をテストするための系統樹はすでにあるのかな?

◇午後は,とあるNPO法人の会計監査書類をチェックする.夕方,証明書その他の返送準備完了./進化学会大会での評議員会の議事次第の策定など.殿,快調.

◇強い西日が射し込んできて,居室の気温がどんどん上がってきた.そろそろ滞在可能閾値を越えそうなほど.5時前に撤収しよう.

◇夜,『柳田國男の絵葉書:家族に当てた二七〇通』の「国内篇」を80ページほど読んでみる(というか眺めてみる).切り取られた風景が絵葉書になっているのだが,既製品の絵葉書もあれば,手製のものもあるようだ.当時の柳田國男は,貴族院書記官長の「公務」の一環として方々を旅行したらしい.それにしても自筆が読めないぞ.

カバージャケットの反対側の方がよりカラフルかも.

◇昼間の暑さがそのまま夜まで持ち越され,熱帯夜になりそう.ここしばらくはトロピカルな天候が続くらしい.

◇本日の総歩数=14136歩[うち「しっかり歩数」=7442歩/61分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.1kg/−0.8%.


26 juli 2005(火) ※ 台風直撃の日

◇午前5時起床.いかにも台風が近づいている気配濃厚な雨空.ざーざー降り続く.風もあるので,傘をさしてもしかたないかも.気温22度台.

◇朝のこまごま —— 統計関連学会連合大会の事務連絡1件./ 8月の来訪日程調整1件./ メーリングリスト登録などの作業.

◇かなり重要そうな統計質問が隣の研究所から飛び込んでくる.やはり社会的にインパクトが大きいテーマに関しては,統計学からもいろいろと論議が絶えないようで.午前いっぱいかけて返事をちくちくと書き連ねる.

◇昼前にいったん雨が上がっているようだが,いつなんどきざばあっと降り出すかもしれないので油断は禁物.歩き読みは当然なし.蜘蛛も飛ばない台風日.

◇京ことばな古典文学たち —— 中井和子(訳)『現代京ことば訳・源氏物語[新装版]』(全5巻,2005年6月刊行,大修館書店,ISBN:4-469-12065-0 / ISBN:4-469-12066-9 / ISBN:4-469-12067-7 / ISBN:4-469-12068-5 / ISBN:4-469-12069-3).※意外な復刻.ぼくは15年前に出た元の3巻本:中井和子(訳)『現代京ことば訳・源氏物語』(1991年6月1日刊行,大修館書店,ISBN:4-469-22080-9 [分売不可])を持っているので,あらためて買わないとは思うけど.この『京ことば源氏物語』が,昨年,CD10巻に吹き込まれたとはぜんぜん知らなかった(→〈京ことばで綴る源氏物語〉).

文面を見るかぎり,「とても古風な京ことば」に訳されている(半世紀ほどずれてるんちゃう).それなりの声優さんに朗読してもらうと雰囲気が出るかもね.

—— “今風”の京ことばに訳された『落窪物語』の方が語感的にはぴんとくるかもしれへんな.

◇台風7号最新情報:「27日午前0時には、茨城県つくば市付近を中心とする、半径110キロの円内に達する見込み」(読売新聞) —— おいおい…….

◇午後1時から,〈統計学〉セミナー(第13回) —— 今日からは分散分析の章に入る.第10章「Multisample Hypotheses: The Analysis of Variance」(pp. 177-189).1要因の完全無作為化法について.正規性・等分散性の仮定.非等分散の場合の Welch 検定.固定効果モデル(Model I)とランダム効果モデル(Model II)など.あっさりと2時半で終わる.

◇夕方以降に台風の影響が懸念されるとのことで,午後4時過ぎには研究所を撤収する.生暖かく吹く南風が兇悪そう.雨はほとんど降っていない.

◇大々的な提出書類の修正を指示される —— 事務書類が1回で通過した試しがないので,とくに感想はない.何回か書き直し,何週間かかければそのうち書類は目の前を通り過ぎていくものだから.悩む前に書き直せばいい.アタマを使う必要はない.

◇夜は雨になる.いちおう台風らしいプチ突風が吹いているけど,凶暴さはない.本体は東に逸れていったのだろうか.

◇本日の総歩数=6130歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+0.1%.


25 juli 2005(月) ※ 台風7号接近中

◇午前5時起床.晴れ.気温21.3度.湿度が高い./万歩計の電池(LR43)を交換する.

朝のうちにカンカン照りになった.台風が来る前の一時的な晴れ間だろうが.予報では,明日26日に東海から関東地方に接近し,上陸する恐れもあるという.空気がどんどん湿ってきた.

◇朝からいろいろと —— 某NPO法人の監査関連書類がどさっと届く.くらくらする.

◇勉強なお続く —— Charles Semple and Mike Steel 『Phylogenetics』(2003年刊行,Oxford University Press,ISBN:0-19-850942-1)の第8章「Markov models on trees」(pp. 183-217)の 8.5節「Stationary and reversible process」.時間可逆的な定常マルコフ過程の論議.この本はボリュームはあまりないのだが,記述を端折ってしまう傾向がとても強いので,[生物系の]読者はきっと苦労しているにちがいない.読者に対する事前知識の要求レベルがとても高いのだと思う.数学系の読者であれば苦にならないのかもしれないが.rate matrix からのマルコフ過程の計算なんか「1行」ですませているもんね(レファレンスなしで).他人に説明するときは確率過程の教科書が傍に必要だ.個人的には,D. R. Cox and H. D. Miller 『The Theory of Stochastic Processes』(1965年,Chapman and Hall,ISBN:0-412-15170-7)があれば十分すぎる.

◇昼休みの歩き読み.曇って蒸し暑く,ときどき雲間から雨粒が落ちたりする —— 錦三郎 『飛行蜘蛛』 (2005年6月25日刊行, 笠間書院, ISBN:4-305-70280-0)を60ページほど.蜘蛛が糸を吐いて飛翔する“雪迎え(gossamer)”のその瞬間に遭遇するまでの苦労が縷々綴られている.ファーブルのような根気強い観察が印象的.井上靖の『しろばんば』のキーワード“しろばんば”とは“雪虫”ではなく“雪迎え”のことではないか,という問題提起とか,アリストテレスの動物学書を英訳した D'Arcy Thompson が“gossamer”のことに言及しているとか,ときどき新聞ネタになったこともあるとか,それはそれは幅広く資料を渉猟している.

◇午後1時から,Alan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読第2回目.Chapter 1「Frequency distributions」の途中から.確率関数(probability function:f (x))の導入.本書で用いられている確率関数という用語は,離散型変量だと質点関数(mass function),連続型変量だと密度関数(density function)になる.このf (x) の累積確率関数F (x) を定義し,その微分 dFf (x)dx を用いて,確率分布の基礎がつくられていく.頻度分布の kernel smoothing の話がいきなり差し込まれたりして(1.21),転びそうになったが,先はまだ長いぞ.

◇9月15日の〈筑波大学・数学系談話会〉での講演要旨が公開された.

◇午後になって雲はさらに暑くなり,ざーっと通り雨があったり,またあがったり.しかし,夕方以降は本降りとなる.やはりいらっしゃるようで.

◇本日の総歩数=10761歩[うち「しっかり歩数」=4577歩/39分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−0.7%.


24 juli 2005(日) ※ 天災に崩壊したマルブランシュ……

◇寝過ごして午前5時半起床.曇り.明け方の気温は今日も低め.

◇午前中は勉強タイム —— Charles Semple and Mike Steel 『Phylogenetics』(2003年刊行,Oxford University Press,ISBN:0-19-850942-1)の第8章「Markov models on trees」(pp. 183-217)の前半.スタイルに慣れているからか,生死に関わるようなクライシスは訪れず.マルコフ過程に基づく系統推定にとって必要となる3つの仮定:

M1) π[ρ]α>0, for all α∈C.
  ただしρ:root; C:形質;α:形質状態;
  π[ρ]α:根ρにおける形質状態がαである確率.
M2) det(P(e))≠ 0, for each eE.
M3) det(P(e))≠ ± 1, for each eE.
  ただし E:枝の集合;e:枝;P(e):枝遷移確率行列.

を確認.次いで,網状ネットワーク上の Markov random field への拡張ができることを知る(やっかいらしい).さらにこの手の議論の根幹である「Markov性」そのもの:

Pv=α|∧[w < v]ξw)=Pv=α|ξu)
  ρを根とする x-tree 上で定義されたノードの全順序関係
  (total order:≤)から直接祖先子孫順序「<」を定義する.
  根ρからノードvへの弧(直接祖先子孫順序の連結)を考える.
  vの直接祖先をu(u < v)とする.

がどのように機能しているかが課題となる.要するに,上の3つの仮定(M1M3)があれば,マルコフ過程によって生じた OTU集合 X に関する形質の情報から x-tree を“多項式時間”で推論することが保証されるということだ(Corollary 8.4.4, p. 193).X における OTU の対の間で双方向的にマルコフ移行する条件付き確率の行列(P xy)を求め,それを LogDet変換したメトリック(dissimilarity map)に基づいて一意的に x-tree を決定する.

◇晴れて暑くなってきた.郵便局に速達を出しに,1時間ほど歩いてくたばる.台風が接近しているとは思えない青空.でも,真夏日ではなさそう.

◇午後,研究所に行ってみた.書棚から荒俣宏(編)『平田篤胤が解く稲生物怪録』(2003年10月1日刊行,角川書店,ISBN:4-04-883841-5)が転げ落ちてきて,そのあおりを喰って,André Robinet の『Malbranche et Leibniz』(1955年,Librairie Philosophique J. Vrin)がまっぷたつに断ち割られていた.地揺れて,東西の妖怪同士で書物合戦でもやらかしたのだろうか.※昨日の地震による実質的な被害はこれだけ.

査読の事務書類補遺を1通用意する.祟りが来ないうちに研究室からさっさと退散.

◇ん,Pieter Bruegel the Elder の〈Jäger im Schnee〉(1565)の実物を Kunsthistorisches Museum Wien で見る機会があるとは,実にうらやましい.国際会議の「余録」としては申し分ないですなあ.

◇本日の総歩数=14090歩[うち「しっかり歩数」=8191歩/71分].全コース×|×.朝△|昼△|夜△.前回比=+0.3kg/+1.0%.


23 juli 2005(土) ※ 地震,自治会,夏祭り

◇午前5時起床.雲って涼しい.20度を越えていないかも.

◇午後,日頃の悪行を悔い改めつつ剃髪,じゃなくって散髪.神谷美恵子『本,そして人』(2005年7月7日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-08185-7)を読了.書評・書簡・読書日記など.巻末の60ページに及ぶ中井久夫の論考「神谷美恵子さんの『人と読書』をめぐって」(pp. 291-349)がおもしろい.クエーカー教と精神医療との関係とか,結核文学とハンセン病文学の比較とか.

◇16時35分に大きな地震 —— 体感的に震度4くらいだろうと感じたが,その通りだった.東京では震度5強という地域もあったというニュース速報.家の中ではとくに被害はなかった.タテのものがヨコになったくらい.

◇地震の影響で常磐線が止まってしまい,そのせいで(因果の輪をいくつかはしょる)夕方からの自治会夏祭りへの参加が遅れてしまった.午後7時過ぎになってやっとスペアリブやステーキを焼き始める.ほどよい気温と風で〈屋外で肉を焼く〉には最適な夕暮れだったと思う.ビールをしたたかに.※やば.

—— ちょっと疲れたかもしれない.

◇ゴッホ書簡集のこと —— 去年の3月に日録に書いたゴッホ書簡集のことで(→2004年3月30日),一昨日,質問のメールをいただいた.ぼくが駒場下で入手した古いゴッホ書簡集:

Vincent van Gogh 1924. Brieven van aan zijn broeder. I & II. (tweede druk) Maatchappij voor Goede & Goedkoope Lectuur, Amsterdam, Deel I [1872-1882]: lxiv+564 pp. / Deel II [1882-1886]: 646 pp.

は,1914年に出版された初版に続く第2版です.ゴッホは1888年以降はフランス語で手紙を書いていたのですが,それ以前はオランダ語のみですね(英語の書簡はロンドンにいた短期間を除いてほとんどないはずです).上記の第III巻がもしも入手できていれば,この時期の仏文が載っているかどうかが確認できるのですが(I, II巻はオランダ語の手紙のみです).なお,1990年に出た4巻本書簡集では,すべての書簡はオランダ語に翻訳されています.ぼくの記憶では,ゴッホのフランス語の書簡(部分的)はかつてフランスで出版されたものがあるはずです.ご参考になれば幸いです.

◇本日の総歩数=9178歩[うち「しっかり歩数」=1565歩/14分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.4kg/+0.4%.


22 juli 2005(金) ※ ドキドキは禁物

◇午前4時半起床.22.6度.少し蒸し暑い気がする.曇り.

◇朝からガシガシとこなしてみる —— 論文査読依頼1件.郵送完了.査読者の人選に手間取ったが,昔のことはそれなりの世代に訊くのが正道だと思う./ DGCbase の監査書類が届く.出納のチェック.来月5日までに./ 進化学会がらみの事務対応をする.ま,これはしかたないでしょう./ 後れ馳せな東大集中講義(6月)の成績付け.報告完了.

◇本がらみ —— 献本感謝(菊地さん):服藤早苗・小嶋菜温子・増尾伸一郎・戸川点(編) 『ケガレの文化史 — 物語・ジェンダー・儀礼』(2005年3月8日刊行,森話社,ISBN:4-916087-51-8).日常生活とは別次元にある“タブー”の歴史的・文化的成立についての論文集.〈ケガレ研究会〉10年目の活動報告書だそうな.叢書「文化学の越境」の第11巻./ イタリア書房への発注本:M. Zunico and M. S. Colomba 『Ordinando la Natura: Elementi di Storia del Pensiero Sistematico in Biologia』 (1997年刊行,Editore Medical Books,ISBN:88-8034-064-6.→※版元サイト).この機会に生物体系学史の本をもう1冊.

◇曇りのまま.気温上がらず./ どこからか「げんこー」という木霊が(幻聴か).

◇形態測定学メーリングリスト〈Morphmet〉の過去ログが公開されていることを知った:The Mail Archive.昨年12月から蓄積されていた.うっかり…….

◇午後4時にメディカルセンター病院に行く.先日の検査結果の説明を受ける.ほほー.時ともなしに“ドキドキ”するんですね.みだりに“ドキドキ”しないよーに気をつけるんですね.難しいなあ,それって.

◇暗くなっても曇りがち.涼しい.小雨が混じったりする.

◇本日の総歩数=8985歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.5kg/−0.6%.


21 juli 2005(木) ※ アブラゼミの鳴きはじめ

◇午前5時起き.晴れ.気温21.6度.陽射しが強い.研究室にてごそごそと資料を漁る.

◇早朝のJR取手駅.スターバックスにて読書(神出鬼没) —— W. R. Gilks, S. Richardson, and D. J. Spiegelhalter (eds.),『Markov Chain Monte Carlo in Practice』(1995年,Chapman & Hall / CRC,ISBN:0-412-05551-1).※ごたごたしそうなときは“ルーツ”に戻るのが鉄則.Chapter 1: W. R. Gilks et al. 「Introducing Markov chain Monte Carlo」(pp. 1-19)と Chapter 2:「Hepatitis B: A case study in MCMC methods」(pp. 21-43)を読了.手触りと肌触りを確認しつつ.ベイズな著者たちが書いているが,MCMCは必ずしも“ベイズ”ではないことを確認する.最初の「MC」をどう構築するかが最重要で,後半の「MC」は筋力があれば何とかなるわけですね.事後確率分布が定常確率分布と一致するという「定理」を頼みにしてマラソンすればよいということか.

◇こまごまと —— 進化学会の学会賞関連の対応など./年休届の修正をする./JST実行委員会の日時と場所が確定した.

◇すぱにっしゅな献本あり(Muchas gracias!) —— Clara López Beltrán and Akira Saito (eds.)『Usos del documento y cambios sociales en la historia de Bolivia』(2005年7月15日刊行,国立民族学博物館,ISBN:4-901906-32-1.→目次).※叢書〈Senri Ethnological Studies〉の第68巻.『ボリビア史における社会変化とドキュメントの利用』.16世紀のスペイン語古文書とかいろいろ.中村雄祐さんの章を見ると.文字テクストと図像マップとの対比が論じられていたりする.続く章では,ケチュア語とスペイン語のバイリンガル環境での識字の問題も.

◇炎天下の昼の歩き読み.だらだら歩いてしまう.神谷美恵子『本,そして人』(2005年7月7日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-08185-7)の第IV部を読了.80ページほど.マルクス・アウレリウスとヴァージニア・ウルフが暑さに喘ぐ…….

◇午後1時から〈系統学的考古学〉セミナー(第12回).Chapter 4 : 「Constructing Cultural Phylogenies」の続き.文化系統学への批判に応える節.第一の批判は「考古学が対象とする人工物には生物進化の論法は当てはまらない」という反論(pp. 97-103).著者は,ドーキンスの「延長表現型」の主張に則って,organism / artifact の境界設定を緩和しようとする.“進化”を遺伝子が伝達されるケースに限定するのではなく,replicator の波及する範囲を広義に解釈することにより,文化的構築物にも“進化”や“系統”という考えが適用できると著者は言う.言語系統樹と写本系図が生物学で言う分岐分析(cladistic analysis)をそれぞれ別個に開発してきた点を指摘した上で,文化的形質をデータとして用いることにより文化系統樹の推定は可能であると述べる.

◇朝が早いとナイトライフはないも同然.午後11時前に早々とご就寝っす.

◇本日の総歩数=14991歩[うち「しっかり歩数」=8014歩/69分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/+0.4%.


20 juli 2005(水) ※ 可視と錯視の朝

◇午前4時に目覚めたものの,涼気が心地よかったので,窓際で5時まで再び寝てしまう.夏らしくない深い青空で,気温は19.9度.気持ちよし.

◇快適な朝は〈錯視〉から始まる —— 数々の錯視パターン作品で有名な北岡明佳さん(→〈北岡明佳の錯視のページ〉)が今月末に錯視本の新刊を出すとのこと:北岡明佳『トリック・アイズ グラフィックス』(2005年7月近刊,カンゼン,ISBN不明).※駒場ではちょうどいま展示されているのですね.→〈錯覚展:心の働きにせまる不思議な世界〉.

動かないはずのものが動き,見えないはずのものが見えてしまうという「錯視」をうまく使って系統樹の「可視」化の手法を改良できないかと考えているところ.見えないはずの枝を錯視で見せてしまう,ヤバそうな枝は後景に後退させる,重なっているところは3次元ステレオグラムで見せてしまう,というような誰でも思いつきそうなことはきっと誰かがやるだろう.

むしろ,[超]巨大系統樹の可視と錯視による「絵化」が愉しそうですね.たとえば,巨大系統樹の可視化ソフトウェア〈TreeJuxtapozer〉を開発したチームは,最近〈H3Viewer〉というさらに強力なツールを配布している.これを用いると30万エッジのグラフやツリー,ネットワークが描けるという.また〈Walrus〉という別のソフトウェアでも,同程度の規模のグラフの静止画と動画が描けるという(→ギャラリー).こういう,可視化ツールに錯視技術を組み合わせて,人間側の“系統樹把握度”を向上させるという研究があってもいいはず.phylogenetic supertree あるいは phylogenetic network も最適グラフの推定手法の開発と併せて,可視化手法の開発もやらないとユーザーに染み込んでいかないと思う.

「"phylogenetic tree", visualization」で検索してみると,あるわあるわ.

—— さっそくご指摘をいただく.〈H3Viewer〉の方が〈TreeJuxtapozer〉よりも“祖先的”だろうとのこと.開発者Tamara Munzner博士のページを見る.確かにそのようだ.さらに言えば〈Walrus〉も同根みたいだし.

◇朝のうちは曇って,小雨がぱらついたりした.

◇〈国際生物学五輪〉 —— 初めて聞いたぞ.先日,北京で開催された第16回大会では日本人高校生ふたりが初めて入賞したそうな(→毎日新聞記事).Cf. :〈The International Biology Olympiad〉.

◇午前中に,農環研 Annual Report の文章を仕上げる.学会賞受賞に関する記事を英語でとの依頼.締切を大きく過ぎているけど,ごめんねごめんね.>部長.

「掲載写真を」との追加依頼.ところが,“まともな写真”がなかなか見つからない.コンパとか飲み会でショットされた写真ばっかし.いったいいつも何やってんだかって感じ.手頃なのを1枚送りました.よろしくよろしく.>部長.

◇昼休みは,5階の「教養室」にて昼食会.生態システム研究グループにはこの4月から多くの“新人”が入ってきたので,その紹介をかねての会.弁当を喰った.※久しぶりのまともな昼食だ.

◇午後のあれこれ —— 秋(10月24日)に予定されている東大教養学部でのスポット講義の事務連絡.「広域システム系」での講義ということなので,〈システマティクス:体系化,進化史,歴史推論〉というタイトルの高座にする.メールで連絡完了.

統計関連学会連合大会のプログラムが公開された(→pdfファイル).これにあわせて,われわれが企画しているシンポジウム〈幾何学的形態測定学における統計学〉の非公式サイトも立ち上げた.演者・演題・要旨・参考文献などを掲載した.

◇ああ,もう夕方か —— ぐわ,また事務書類の修正.※年休届ひとつ満足に書けまへんねん…….

◇新刊メモ —— エロル・C・フリードバーグ『著作から見たジェームズ・D・ワトソン:人間性と名著誕生秘話』(2005年8月刊行予定,丸善,ISBN:4-621-07606-X).※“二重螺旋”の史的評価のための本か? / 池谷和信・長谷川政美(編)『日本の狩猟採集文化』(2005年7月近刊,世界思想社,ISBN:4-7907-1128-5).

◇本日の総歩数=6825歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜○.前回比=+0.3kg/+0.1%.


19 juli 2005(火) ※ いきなり日常復帰の全力走

◇午前4時起床.ヒグラシの輪唱.気温23.2度.

—— 明け方の研究所にて原稿を独り書きまくる.まだ終わらず./ 旧・蒼樹書房本の復刊計画への支援メール届く./ いつの間にか〈leeswijzer〉のカウンターが50,000を越えていた.みなさん,来訪感謝でございます./ 〈ARG〉の岡本真さんが本を執筆中だそうだ(7月14日付・編集日誌).ウェブサイトによる研究者の情報発信に関する本とのこと.コメントを送る./ JST領域探索プログラムの実行委員会日程を詰める.8月上旬に開催予定.

◇午前中は地下書庫にて原稿を書く書く書く.昼過ぎに何とか完了.pdf出力する.これでやっと統計関連学会大会の提出書式に準拠できた.実行委員会宛に講演要旨とともにメール送信.公式のシンポジウム・サイトは近日中に公開されるが,その前に非公式サイトの方を立ち上げておこう./ そのついでに,その大会の翌日に予定されている〈筑波大学・数学系談話会〉への演題と要旨も送ってしまった.一石二鳥の形態測定学噺だ.

◇午後1時から,〈統計学〉セミナー(第12回) —— 今日は第9章「Paired-sample hypotheses」の残り(pp. 169-174).2×2分割表データに関する「McNemar 検定」と「Gart 検定」.ぼくが知らないだけかもしれないが,どれも初耳なテストたち.McNemar 検定とよく見る分割表検定(Fisher検定)とは帰無仮説がちがっていて,McNemar検定では分割表の非対角成分のペアの対称性に関する検定を行なうものだそうだ(通常の分割表検定は行と列の独立性をテストする).Gart 検定はイマイチよくわからないなあ.午後2時まで.

◇午後2時から,グループ内会議.またまた次期中期目標と中期計画に関する会議.1時間半ほど(く゛).

◇〈進化学会仙台大会〉のポスターがpdf配布されています.がんがんダウンロードして,周囲にべたべたと貼りまくってください.よろしく.

◇午後のあれこれ —— JST領域探索プログラムの実行委員会の日程は8月8日(月)の夕方からに確定.同日午後に予定されている進化学会学会賞選考委員会の後に./ 公益信託進化学振興「木村資生基金」に関する公告文の配信を学会事務局に依頼する.これで,学会賞関係の事前事務作業はほぼ終わった.あとは候補者が集まってからのこと.

◇11月18日(土)に神戸で予定されている〈第3回最先端育種セミナー〉の演題を事務局に送る:三中信宏「生物進化の歴史を推定する:分子系統樹を構築する理論と方法」.今回は系統推定の高座だ.

◇夕方,外に出てみて,意外に涼しいことに気づく.今夜はしのぎやすいかも.はっぴー.

◇本日の総歩数=8234歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.7kg/−0.2%.


18 juli 2005(月) ※ 気分はもう梅雨明けしました

◇連休最終日も5時起き.珍しく霧がかかる早朝.しかし,すぐ夏空になる.九州北部まで梅雨明けしたとのこと.関東も間近だろう.※と思っていたら,あっさりこちらも梅雨明けしてしまった.

明け方からとても蒸し暑いが,ちょっとだけ歩いてみる.神谷美恵子『本,そして人』(2005年7月7日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-08185-7)の第II部〜第III部まで歩き読み.80ページほど.第II部のうち,著者が赴任した長島愛生園にからむ話はおもしろい.小伝を集めた第III部はイマイチ波長が合わず,概して伝記的記事は当たり外れがあるが,それは著者の責任ではなく,読者側にどれだけ受け皿があるかという点にかかっているのだろう.

◇『國文學(50巻8号)』(2005年8月10日刊行,學燈社,ISSN:0452-3016).計150ページ余りの特集〈南方熊楠 — ナチュラル・ヒストリーの文体〉.「等身大の熊楠」像を目指しているとのこと.いくつかの記事を拾い,寝読みする.

—— こういうのどかなことをしているヒマはないはずなのだが,とにかくめっちゃ暑すぎて活動性が低下している.

◇夕暮れとともにヒグラシの鳴き声が —— 名実ともに「夏」になった.

◇ビデオで〈ドラムライン〉(2002年) —— シンバルが花びらのように舞い,バスドラムが宙に浮く.スネアドラムのオープン・ロールがたいへんきれいに決まっていて,さすが.〈コーラスライン〉は知っていたが,〈ドラムライン〉は知らなかった.※マーチング・バンドって体育会系?(修辞疑問です).

—— 当然,次は〈ブラスト!〉か?(笑)

◇本日の総歩数=8842歩[うち「しっかり歩数」=6682歩/53分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−1.1kg/−0.6%.


17 juli 2005(日) ※ 何となく滞る連休2日目

◇今日も午前5時起き.曇っていたようだが,急速に晴れ上がる.朝からもう暑そうで,何も言うことはない.

—— セミの合唱が聞こえる.今年もまた熱帯夜と真夏日の繰り返しシーズンが始まる気配が濃厚.むー.

◇サイモン・シャーマ『風景と記憶』(2005年2月28日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-25516-7)の第2部「水」を読了.160ページほど.第5章「意識の流れ」は,水を操る人々のエピソード.屋敷の中に大掛かりな「水流」を敷設することのもつ意味.“知の泉”と“始原水”との関わり.続く第6章「血また流れる」では,南米の「エル・ドラド」伝説から始まり,そして一転いきなりターナーの絵が登場.ディテールを縦横に紡ぎ合わせる著者と対抗するには,訳者も役者でなければならない.ターナーの作品〈雨,蒸気,速度 — グレート・ウェスタン鉄道〉に関する記述:

しかし,この茫々と文目も分かぬ水色情緒,湖と紛われるような無方向性あればこそ,走り抜ける鉄道の決然たる方向性,というか力の線の簒奪ぶりがくっきりと鮮やかになるのである.実際にはターナーは,左側にある人馬の通る古い橋の角度を少しうそに描いて,向うの方では川を渡るというより川に従うように見えるようにしている.ところがこちらの新橋は確かに横切るのだ.水と石の大きな流れが鉄と煙の線に切られる.わざわざ新しい世代のもの書きたちに,昔は水にたとえた百代の過客たる時間も今や汽車百台の貨客ですとか何とかわざわざ教えてもらう必要など,ターナーには毫もなかったわけだ.(p. 422)

ガンバレ! 役者,じゃない,訳者.

—— 続く第3部は「岩山」が主題.

◇午後,西日の射し込む研究所に到着.気温30.1度.げっそり.事務作業の続き.メーリングリストの世話とか,いろいろ.

◇午後6時頃に雷鳴.しかし,夕立は降らず.昨日と同じく,蒸し暑いまま夜を迎える.滞り,甚だしい.困った.

◇本日の総歩数=7104歩[うち「しっかり歩数」=1009歩/10分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.5kg/+0.4%.


16 juli 2005(土) ※ 連休初日はゆるりと

◇午前5時起き.曇り.連休初日だが快適ではない.ものすごく蒸し暑い.ぐったりする.

午前の買い出しに来て,Creo 前の〈サロン・ド・テ 中山〉にて日録を書いたりしている.しゃきしゃきと作業がはかどる空模様ではないな.こりゃ.

◇Michael J. O'Brien, R. Lee Lyman, and Michael Brian Schiffer『Archaeology as a Process: Processualism and Its Progeny』(2005年,The University of Utah Press,ISBN:0-87480-817-0)の第1章「The “Old” Archaeology」(pp. 8-35)をやっと読了.伝統的な〈文化史考古学〉から,1960年台に出現した〈プロセス考古学〉にいたるまでの前夜.Lewis Binford はまだやってこない.口さがない Walter Taylor の糾弾書『A Study of Archeology』(1948)によって,前夜のアメリカ考古学界は揺れる.その余震は40年経っても続いたりする:

Bitter memories sometimes die hard. In 1985, at the fiftieth annual meeting of the Society for American Archaeology in Denver, a panel of distinguished archaeologists reminisced in front of a packed house about how the discipline had changed over the years. Jerry Sabloff, the moderator, innocently asked if any panel members cared to comment on the furor that Taylor's monograph had created forty years earlier. Several panelists made critical remarks, and [James] Griffin, whom Taylor had berated so pointedly, snapped, “Harvard never should have given him a degree.” A few seconds later, Walter Taylor got up from his seat. which was toward the front of the ballroom, walked down the aside, and left the room. He never again attended an SAA meeting. Taylor was seventy-two, and Griffin, eighty. (p. 31)

ひょぇ〜.一瞬にして場が「凍りつく」状況が目に見えるようで.パネルディスカッションのモデレータがうっかり地雷を踏んでしまった典型的な例だと思われる.※こういうことに〈時効〉はないのだ.

学会大会などでごくたまにあるこういうたぐいの「事件」に居合わせた運のいい(運の悪い)聴衆は,各自がその記録を何かの形で残しておくと同時に,その「事件」の背景にある歴史的経緯についてたどってみるといいですね.過程としての科学のもつきわめて人間的な関係と側面を知る契機として.

—— 続く第2章「A New Perspective in Arch(a)eology」は Binford が舞台に登場する第一夜.はたして〈指輪〉はいずこに.

◇暑気の残る午後5時頃,熱い雨粒がぼとぼと落ちてきて気色悪い.上空まで気温が高いということか.積乱雲が湧き起こり,遠雷.夜になって稲妻が雲間に閃く.

◇熱帯夜になるのは確実だ.

◇本日の総歩数=9474歩[うち「しっかり歩数」=1122歩/10分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.3%.


15 juli 2005(金) ※ 全力雑用,残響2日目

◇またも5時まで寝てしまうあかんたれ.雨上がりでむしむしする.もう気温21.6度.Non-periodicalなセミたちの声.

早朝の研究室にて懸案の事務書類に関わる作業.なかなか進まず.でもようやく残響が弱まりつつある./ 進化学会の事務連絡とか.大会メーリングリストの登録とか.木村資生賞に関係するアナウンスはさくさくと転載してしまおう.

◇朝のこまごま —— 農環研の次期中期計画に関わるコメントをまとめる./ 年休届けの修正.こんなことも満足にできまへんねん./ 今日は土浦行きなし(ハッピー).代わりに,情報収集をばしばしと.

◇静岡大学の吉村仁さんから新刊献本(ありがとうございます) —— 吉村仁『素数ゼミの謎』(2005年7月15日刊行,文藝春秋,ISBN:4-16-367230-3 →目次).※カラーイラストがふんだんにあしらわれた,とてもいい造りの本です.大人から子供まで楽しめる新刊ではないかと思います.American Naturalist の論文も絵本になるんだ!

◇気がついたらもう昼休み.アタッカで午後に突入.

◇え,こんな新刊! —— J. C. スマッツ『ホーリズムと進化』(2005年7月刊行,玉川大学出版部,ISBN:4-472-40316-1→目次).※21世紀になって“スマッツ全体論”の本が訳出されるとは意外や意外.これはすごいです.買って読む意欲はさらさらないけど,そういう本が出たという情報はちゃんと記録しておこう.原著:Jan Christiaan Smuts『Holism and Evolution』(1926年,Macmillan).※ほりずむほりずむ.

◇午後2時,気温31.5度.久しぶりの真夏日という気がする.蒸し暑い.

◇午後のじたばた —— 3年目に突入した JST の研究プロジェクト〈人間進化学〉の計画づくり.フォーラム,ワークショップに続く「領域探索プログラム」の趣意書を用意し,想定される参加メンバーを詰める.8月に実行委員会.9月と11月にそれぞれ1回ずつの泊まり込み会議を予定する.3回目ともなるとやり慣れてしかるべきなのだが,ダメですね.またせっつかれるはめに.これもまたかつての〈パシフィコ横浜・魔宮の伝説〉の祟りの続きかも(JAREC担当者はその時とおんなじだし).

◇さらにじたばたする —— 今年度の〈数理統計短期集合研修〉の日程がほぼ固まったとの連絡.「基礎編」は11月7日(月)〜11日(金)で,統計学概論と実験計画法の講義,そして〈R〉の演習を担当する.続く「応用編」は11月14日(月)〜18日(金)で,多変量解析概論の講義を担当することになる.

◇夕方,やっとJST計画書をメール送信する./ ここ数日からめとられていた事務作業の件はようやく残響が聞こえなくなってきた.善きかな善きかな.

—— と油断したら,夏休みの監禁計画が新たに発覚.8月のお盆前の数日間を講談社の“草津監獄”に自発的に拉致監禁され,酸性泉で十分に拷問を受けつつマジメに原稿仕事をするようにとの「最終警告」が届く(「放っておくとタイヘンなことになりますよ〜」).※く…….

◇とてもバテたので,即撤収〜.積み残し仕事がいくつもあるが,それは連休用にとっておきませう(汗).

◇夜になっても蒸し暑いまま.“海鼠”になる.※突っつかれてもハラワタを吐いたりはしない.

◇本日の総歩数=8983歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.0kg/−0.5%.


14 juli 2005(木) ※ 全力雑用,残響1日目

◇うっかり午前5時まで寝過ごしてしまう(バカバカ).霧雨.気温19.0度.ここ数日,最低気温が20度を下回る日がずっと続いている.

—— 進化学会関連の早朝作業.事務連絡.メーリングリスト登録.

◇新刊・近刊いろいろ —— 吉村仁『素数ゼミの謎』(2005年7月15日刊行,文藝春秋,ISBN:4-16-367230-3).※「素数」周期で大発生するアメリカのセミの進化./ マイケル・ノヴァチェック『化石はタイム・マシーン:恐竜と古生物をもとめて』(2005年7月刊行,青土社,ISBN:4-7917-6195-2).※訳者はいつもの通り瀬戸口烈司・瀬戸口美恵子のペア.原書は Michael Novacek 『Time Traveler: In search of Dinosaurs and Ancient Mammals from Montana to Mongolia』(2002年刊行,Farror, Straus and Giroux,ISBN:0-374-27880-6)をもっているから買わなくてすむのは幸い./ 本田計一・加藤義臣(編)『チョウの生物学』(2005年8月近刊予定,東京大学出版会,ISBN不明).※数年かけてやっと出版にこぎつけたか.

◇くー,またも土浦市内の某銀行に駆けつける.まだ書類が完結できない.ハンコを持っていったら,これまた不適合(おいっ).今日もムダ足だったか.徒労感とともに,〈洋食・大かわ〉でハヤシライスを喰って帰ってくる(また半日年休だ).懸案の書類はボケボケだったが,〈大かわ〉のハヤシライスは絶品だった(旧・丸善日本橋本店の屋上でよく食べたハヤシライスよりも美味).

◇待ち時間に読み進む —— 神谷美恵子『本,そして人』(2005年7月7日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-08185-7).第I部を読了.100ページほど.「ミッシェル・フーコーとの出会い」(pp. 42-53)が印象に残った.神谷が訳したフーコー『臨床医学の誕生』(1986年,みすず書房,ISBN:4-622-02217-6)について,こう語っている:

『臨床医学の誕生』は,医学全体の認識論的基盤を問うている.十八世紀には植物学におけるリンネらの分類学のアナロジーから,疾病分類学も種々試みられた.『狂気の歴史』には,それらの「図表[タブロー]」のいくつかが載せられている.それはもちろん,精神疾患の分類であるが,『臨床医学の誕生』では,身体病をも含めたあらゆる疾患を,一つの平面の中におさめた図表のことが書いてある.初期の臨床では,医師はいわばこの図表を頭に入れて患者に接した.(pp. 49-50)

分類学史でいうところの「2次元マップ」が医学の世界でも見られたということなのだろう.今度機会を見つけてフーコーの本をひもといてみよう.※普遍分類学に関わる『言葉と物:人文科学の考古学』(1974年6月刊行,新潮社,ISBN:410506701X)しかいま手元にないので.

◇昼を過ぎても霧雨は強まるばかり.スプレーで水を吹き付けられている心地.

◇午後1時から〈系統学的考古学〉セミナー(第11回).今日から Part II :「Cladistics in Archaeology」に入る.Chapter 4 : 「Constructing Cultural Phylogenies」の最初の部分では,20世紀後半の人類学・考古学において,なぜ「系統樹」が軽視されてきたのかを振り返る.その元凶は“歴史”ではなく“機能”を重視した〈プロセス考古学〉(1960年代〜)にあるというのが著者たちの見解だ.それに続く〈ポスト・プロセス考古学〉については本書では論じられていない.しかし,著者たちは逆に“歴史”を復活させるという立場から,文化系統樹を擁護しようとしている.言語データがその情報源としてとりわけ重要であると述べられている(p. 94).午後2時過ぎまで.

◇午後3時から,第7回農環研昆虫グループセミナー.演者は,土原和子(金沢工業大学)「チョウの味覚受容 — 産卵の機構の解明を目指して — 」と春山直人(千葉大学)「ヤマトクサカゲロウ Chrysoperla nipponensis における求愛信号の2型と交雑の可能性について」.クサカゲロウの配偶行動としての「振動打撃」パターンの分子系統学的考察.打撃の周波数は数十ヘルツということなので,楽器でいえば,コントラファゴットの最低音あるいはパイプオルガンの最低音域に相当する可聴域に属している(クサカゲロウが「鳴く」のを聞いたことはまだないが).クサカゲロウ類の分子系統樹と末端 OTU の振動打撃パターンがデータとしてあれば,波形パターンを決定するパラメーターに関する“祖先復元”を行なうことは難しい作業ではないだろう.先行研究としては:

M. J. Ryan and A. S. Rand 1995. Female response to ancestral advertisement calls in Túngara frog. Science, 269: 390-392.

がいろいろなところで引用されているが,具体的な分析手順(とくに「波形」の祖先復元の手順)に関しては:

M. J. Ryan and A. S. Rand 2001. Feature weighting in signal recognition and discrimination by Túngara frogs. Pp. 86-101in : M. J. Ryan (ed.) Anuran Communication. Smithsonian Institution Press, Washington, ISBN:1-56098-973-4.

が参考になるだろう.

◇夕暮れ時になっても霧雨は降り続く.疲労する.

◇本日の総歩数=9785歩[うち「しっかり歩数」=1070歩/10分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=+0.3kg/+0.7%.


13 juli 2005(水) ※ 全力雑用ここに極まる

◇5時半起床.曇り.気温18.3度.涼しい.

—— 進化学会関連の事務メールいくつか.

◇急遽,朝から年休を取り,あちこち駆け巡る.書類づくりは time-consuming(公私問わず).つくば市役所と1往復,土浦の銀行と2往復.終わったのは午後4時.※タイム・ワープしたのかと思った.

◇昼ご飯を完璧に抜いてしまったので,土浦からの帰りに,〈Morgen〉で食パン3斤を買い,半分1.5斤をまるごとトーストして喰ってしまう(ケダモン並み).午後5時のこと.

◇待ち時間に,三木宮彦『ジャンヌを旅する』(2004年4月10日刊行,未知谷,ISBN:4-89642-098-5)を読了.どこもかしこもジャンヌ・ダルクだらけ.とてつもなくマイナーな田舎町ばかりを訪ね歩くところが魅力か.とくに,ママチャリもどきの折りたたみ自転車で,いたるところを駆け巡る記録がおもしろい.

◇公私の“私”な1日だったので,“公”がそのまま放置されてしまった.明日からは復帰しよう.

—— 午後10時に寝てしまう.

◇本日の総歩数=13372歩[うち「しっかり歩数」=3007歩/27分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.前回比=+0.1kg/+0.7%.


12 juli 2005(火) ※ 全力雑用続く

◇午前4時起き.霧雨まじり.気温19.6度.涼しい.上空で梅雨前線が踊っているのだろう.

研究室にて明け方の会計事務仕事.コンピュータ周りのアイテムをいくつか決済する.〈Mathematica 5.1〉は後回しに.とりあえず,Adobe の〈Creative Suite, version 2〉の Mac / Win を買う. /鈴野藤夫『山釣り談義』を1冊発送完了. /例の件での連絡をする(急ぎます). /進化学会メーリングリストの登録作業数件.※どんどん溜まるから.

◇統計関連学会大会でのシンポ要旨は昨夜のうちに集まった.あとはぼくの分だけ(汗).※演者のみなさん,どーもありがとうございます.

—— ということで,またもワタクシが“律速段階”となってしまった.

「またも」というのは,もちろん放置質問の件を念頭に置いている.ぼくのいる研究室には統計学や系統学のメールでの質問が年に100件以上届くので(それに対応するのも「公務」のうち),おのずと「相対ランキング」をつけることになる.もちろん,「すぐ対応できる質問」とその対極にある「私の手には負えない質問」は,スペクトルの両極端である.そういう「白/黒」がはっきりしているときはラクだ.このタイプの質問が届けば,「大脳」を動員するまでもなく,「延髄反射」で返信メールを書く.

やっかいなのは,大脳を動員しなければならない「灰色」なゾーンの質問.実は難問なんじゃないかとか,自分も関心があるぞというケースでは,対応が自然と遅くなる.だいたいメールを一読してみれば,相対ランキングは瞬時につけられるものだ.自分の行動パターンをつらつらと振り返ってみると,明らかにランキングには“閾値”があるようで,この“境目”を越えると何日もレスポンスがなかったりするのです.う〜んと呻吟しても,結果としてろくな返答ができなかったりもする.>ごめんね,T口さん.

では,自分が質問する身になった場合どーするか —— それはもうはっきりしていて「複数の人に質問する」に尽きる.それも,メールの同報(cc)でずらずらと相手先を書くというのは禁物.訊かれた相手は「誰か他の人が答えてくれるだろう」と考えてランキングが有意に下がる(メーリングリストへの質問がえてして不発に終わることを思い出すべし).したがって,「特定個人宛」への質問メールとして出すことが肝要だ.「ヘルプ・ミー!」という対個人メールを読み飛ばすことはまずない.それにもかかわらず,受け手側の相対ランキングが下位にとどまることはなおあり得る.困ったことですなあ.

あ,それから,まれに「匿名」で質問がやってくることがある.しかも,それが重要な(おもしろい)質問であることがあるがたまにある.そういうときは,自分でよく考えて答えを出した上で,相手にはけっして教えたりしない.匿名質問者に benefit を与えるほどワタシは altruistic ではない.※なーんてイケズなワタシ.

◇本日の献本(ありがとうございます):倉谷滋『個体発生は進化をくりかえすのか』(2005年7月8日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-007448-2).事前に原稿を読ませてもらった上に,1冊いただき,さらに謝辞に載せてもらうというのは幸福至極にございます.

◇昼休みの歩き読み —— 三木宮彦『ジャンヌを旅する』(2004年4月10日刊行,未知谷,ISBN:4-89642-098-5).買ったまま放置していた本をふと思い立って手に取る.ジャンヌ・ダルクの足跡をフランス各地に追い求める旅路.とんでもない田舎にも入り込む.おもしろいです.未知谷の本はよく造られていて,全体的評価はぼくの中ではとても高い.第4章まで100ページほど読む.曇り空からぽつぽつと雨粒が落ちてきた.

◇午後1時から,〈統計学〉セミナー(第11回) —— 第9章「Paired-sample hypotheses」の前半(pp. 161-169).標本間に対(pair)のある場合の平均と分散の検定.対の間の「相関」の有無で,paired-sample t testか,それとも通常の two-sample t test かが決まるという話.差の正規性が満たされない場合には,Wilcoxonの順位検定が代替として使える.

◇共著論文の別刷りが届いた —— H. Matsumura et al. 「Molecular linkage mapping and phylogeny of the chalcone synthase multigene family in soybeen」, Theoretical and Applied Genetics, 110 (7): 1203-1209, May 2005. 〈DOI システム〉での参照は「DOI 10.1007/s00122-005-1950-7」です.

◇すべて進化学会関連 —— 屋久島から箱崎へ Flying した Professor から返信あり.事務局に連絡して,会計関連の1件は落着./学会賞関連での事務連絡あり.これは評議員に諮る必要があるだろう./会長はドイツへ逃亡予定…….丸投げされたっ./うーむ…….

◇午後のこまごま —— とある投稿原稿の査読先を模索する.「水戸のあの人はいかがでしょー」「リタイアされたのでどーでしょ」「では,土浦のあの方だったら」「お,それ,適役っ」.さっそく連絡を取らせていただきますです./遅れまくっている NIAES Annual Report の原稿は気配的にまだ余裕がありそう.

◇あー,統計学会の講演要旨〜〜.

—— 絶叫フェイドアウトで,日が変わる.その頃から,とある大量書類をドロナワ作成開始.

◇本日の総歩数=17288歩[うち「しっかり歩数」=5985歩/51分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.5kg/−1.1%.


11 juli 2005(月) ※ 全力雑用

◇うっかり6時前まで寝てしまう.晴れ上がって,気温はすでに24.2度.今日は暑いぞー.

◇朝からじたばたと —— 某連続講座のアナウンス文をチェック.※問題ないっす./〈JST領域探索プログラム〉に関する連絡を受ける.人選など早く進めないとダメとのこと.1泊2日の会議を2回開催できる.大まかな日程を電話で調整する./またもメーリングリストのお世話を10件あまり.わらわらとやってくるメールたち./計量生物学会のアンケートをさささと書いて返信する.これはラクちん./とある事務書類の扱いをめぐってプチ紛糾する.まあ,悩んでもしかたがないので“指導”の通りにする.よくわからないけど,もうすぐすべて決着すると思う.半年以上かけてきたと個人的には思うのだが,そういうのとは関係のない“作法”があるらしく,結局よくわからないまま.※ということで,あまりアタマを使わずじまいに終わったことをよしとしよう.事務仕事ではよくあることだから.

◇おお,ここでもうお昼だ.午後は緊急のグループ内会議があるというお達しがあったので,セミナーの時間帯をずらさないとか.

◇献本感謝です —— 伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(2005年7月10日刊行,ちくま新書545,ISBN:4-480-06245-9).※わ,イマニシがー(笑).“疑う”ことのトレーニング本.役に立つテツガク.そういえば,ずいぶん前に職場の年度末成績検討会で,「“ポパー”ってすごく役に立つんですよお」と口にした記憶が.でも,ここのところ過去の記憶が decay しつつあることが発覚してしまったので,大きな声では言えない.(言ってるってば)

◇午後1時半からグループ内会議 —— 次期5年間の中期目標への意見と中期計画の策定に関するライン会議.今年はこれがらみの会議が多くなる.午後3時まで.

◇午後3時半から,Alan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読初回.ついにこの本の読破登攀の機会がやってくるとは感慨深いですなあ.Chapter 1「Frequency distributions」の pp. 1-13 までを1時間ほどかけて賞味する.うん,ハイキング歩き始めの穏やかな時間かな.John Tukey(『EDA』)の「stem-and-leaf plots」で蹴つまずきそうになったが,これはまだ“小石”だろう.※大東くん,頑張ってください!

◇一日中蒸し暑かったが,夕方,日が陰っても熱気だけは残ってサウナ状態.

◇神田神保町の〈イタリア書房〉から在庫カタログが届いた.この書店はイタリア・スペイン・ポルトガルの3カ国語圏をカバーしているので,この機会に探書を依頼してみようかな.

◇本日の総歩数=10544歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.4kg/+0.1%.


10 juli 2005(日) ※ 揮発する記憶,飛行する蜘蛛

◇5時起き.夜半はずっと雨が降っていたが,明け方にはあがり,急速に青空が広がる.今日は洗濯日和かも.

—— 研究所に届いていた献本:錦三郎 『飛行蜘蛛』 (2005年6月25日刊行, 笠間書院, ISBN:4-305-70280-0).1972年に丸の内出版から出た初版の復刻.オンライン書店の新刊としてアナウンスされていたのでさっそく買おうと思っていたところ,すばやく出版社から献本していただいた.ありがとうございます.

蜘蛛が糸を吐いて空を飛ぶという現象は,日本では〈雪迎え〉,外国では〈gossamer〉と呼ばれて昔から知られていた.著者は,自らこの現象を観察しただけでなく,国内外の文学作品や資料をも渉猟した上で,蜘蛛をめぐる民俗・伝説・寓意を集成する.Folk arachnology としてとても珍しく貴重な本だと感じる.※→目次

分断生物地理学(vicariance biogeography)の初期の論文のひとつに,クモ学者 Norman I. Platnick による「Drifting spiders or continents?: Vicariance biogeography of the spider subfamily Laroniinae (Aranae: Gnaphosidae)」(Systematic Zoology, 25: 101-109, 1976)がある.飛行するクモ類の歴史生物地理学を論じた論文だ.クモ類の系統発生の過程で「空中飛行」という行動はいったいいつどのようにして進化してきたのだろう.

◇「揮発する[した]記憶」 —— やはり実名は書くものである.昔のジュネス噺を書いたとたん,メールがやって参りました.菊地くん,どーもご無沙汰しております.赴任地の神津島にお邪魔してからずいぶん年月が過ぎてしまいました.多幸湾にちなむ“多幸くん”という元気のいい男の子のことを今でも覚えています.

それはさておき,あのときわれわれが夜中の渋谷で見た映画は,〈スターウォーズ〉ではなく,〈スーパーマン〉ではなかったかとのご指摘,うー,そう言われてみれば…….何ともあやふやな生体記憶装置で申し訳ない.はなはだ劣化しているのかもしれませぬ.

—— 関東地方の淡水系での毒流し漁法についてのご質問ですが,鈴野藤夫さんがよく知っているだろうし(『山釣り談義』にも言及がありますが,むしろ『川漁』の方がより詳しいでしょう),澁澤敬三の著書にも日本漁法史の著作がありましたね(あれは「海」だけだったか?).

◇日本動物分類学会和文誌『タクサ』からゲラが戻っていた:三中信宏「Ernst Mayr と Willi Hennig:生物体系学論争をふたたび鳥瞰する」(タクサ,(19),2005).「72時間以内」に編集部に返せとのお達し.ひー.

◇今日は蒸し暑い.久しぶりの感覚だ.

◇午後の仕事 —— 『タクサ』のゲラ修正を完了し,郵便局へ投函に行く.作業完了./首都大学東京での生物統計学集中講義(9月)の時間帯が変更になったことを確認.

◇角田光代・岡崎武志『古本道場』(2005年4月30日刊行,ポプラ社,ISBN:4-591-08627-5)を夕方読了.ここのところ“古本”本がどっと出版されているようだが,みなさん,古本が好き? 新刊は嫌い?

◇今日は温度・湿度ともに高かったので,ほどけてだらける.

◇週明けの立て込み仕事をリストアップする.

◇本日の総歩数=988歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−0.5%.


9 juli 2005(土) ※ 転んでもタダでは起きず

◇午前5時起き.雨模様.強く降ったり,弱まったり.今日も気温低し.

◇サイモン・シャーマ『風景と記憶』(2005年2月28日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-25516-7)の第4章「緑の十字架」を読了.舞台はアメリカに移る.セコイア巨木発見のエピソードから始まり,異教的な樹木崇拝の底流の上にかぶさるキリスト教の「十字架の樹」の広がり,そしてゴシック建築様式の展開を論じ,最後に本書を象徴するカスパー・ダーフィット・フリードリッヒの絵画作品にすべての話題を集約させる.著者の筆力を感じさせるエンディングだ.

P. 266に載っているハインリッヒ・フォークテールの〈信仰の木〉という絵が気になる.

—— やっと第1部「森」を通り抜けた.ここまでで約300ページ.次は,第2部「水」.

◇午前10時前にメディカルに到着.心電図の24時間計測が終わったので,装置を外してもらう.データは無事に取れていたようだ.よかったよかったと言いたいところだが,診断は2週間後なので油断してはいけない.ドキドキは禁物.

病院を出て,天久保の〈今城屋古書店〉を徘徊 —— 澁澤龍彦『滞欧日記』 (1993年2月5日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-00814-3)を安く入手.ハッピー.1970〜1981年の間に,著者が経験した4回に及ぶ欧州旅行の記録ノート.久しぶりにあの「黒サングラス男」の姿をたくさん見てしまう.この本は没後出版だが,巻末にまとめられた編者の巌谷國士による「補注」が役に立つ.編者の単著である『〜の不思議な町』シリーズとよく似た印象を受けるのは,単に出版社が同じせいか,それとももっと親密な類縁性が著者たちの間にあるからか.

他にも,入院時のエッセイ集とか,いろいろ澁澤本があったのだが,ドキドキしそうなのでささっと通り過ぎる.

—— 澁澤敬三や澁澤龍彦ら「澁澤クレード」の本たちがうちにはたくさんあるが,この家系に惹かれるものがあったりするのだろうか.※彼らの“共通祖先”である澁澤栄一にまではさすがにさかのぼらないとしても.

◇昼間はいったん天気は回復したのだが,夕方5時過ぎになって,夕立のように雨が降り始め,そのまま本降りに.夜,雨脚はさらに強くなる.ざーざーと.

◇〈即刻やらねばならぬリスト〉をつくってみて暗然とする.※まいったなー,こりゃ.あー,こりゃこりゃ.

◇本日の総歩数=9094歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.8kg/+1.5%.


8 juli 2005(金) ※ “電車男”ならぬ“くだ男”

◇午前4時半に起床.湿度低く快適.晴れ.気温20.1度.研究所にて進化学会メーリングリストの世話.大会の講演申込締切が近づいてきたせいか,ここ数日は新規加入申請が多い.

◇新刊メモ —— 日浦勇『海をわたる蝶』(2005年7月刊行,講談社学術文庫1719,ISBN:4-06-159719-1).※昨日の情報通りだった.つくばの書店にはまだ現物は店頭にないようだ.1973年に旧・蒼樹書房から出た本の文庫化復刻.同じ著者によるもう1冊『蝶のきた道』(蒼樹書房版は1978年)も同様に文庫化されればいいと思う(きっとそうなるだろう).分岐学的生物地理学(cladistic biogeography)の本として今でもその魅力を失っていない.

◇午前9時過ぎに,筑波メディカルセンターに入る.先日の人間ドックで“不整脈”との診断を下されたので,その精密検査.いつものことながら,待合室はすでに満杯.30分ほどして,まずは心臓エコー.その後,24時間連続で心電図を計測するデータ・ロガー(“ホルター”)を胸部にセットされる.「管」が何本もぶらさがって,なんだか冴えないことになってしまった.これからまる1日にわたって,活動記録をとりつつ,心電図が記録される.むやみにドキドキしてはいけないでしょーか.※取り付けられた装置は日本光電の〈Cardio Memory〉というやつ.

◇細切れ待ち時間に読了:杉浦康平(編著)『アジアの本・文字・デザイン』(2005年5月27日刊行,トランスアート,ISBN:4-88752-196-0).アジア各国のブック・デザイナー/タイポグラファーたちとの対談集.たいへん魅力的で,示唆に富む.終巻した『本とコンピュータ』の読者ならばすでにおなじみの顔ぶれが次々に登場するのは予想されていたことではある.数年前,銀座の〈ggg〉で,本書で言及されているアジアの本や雑誌類(韓国の『報告書/報告書』,台湾の『漢聲』など)の現物を手にしたことがある.それだけいっそう読後感が印象深かったのだろう.

しかし,後半の「インド・カリグラフィー」についての対談は初めての内容だ.インド文字の分岐図(p. 14),ハングル文字の morphospace(p. 106),ジョン・ケージの図的楽譜(p. 109),梵字の transformation series とその polarity(p. 272),インドの神々の系図(p. 306)など,心臓がドキドキする図像がたくさん登場する.

20近くもあるというインドの公用文字のデジタル・フォントをつくる話は,伝統的なカリグラフィーとつながっていく.その制作者は『クルアーン』の書き綴ったアラビア・カリグラフィーの美しさに驚いたと書いている(p. 287).そうだろうな.

◇マルジナリア —— 杉浦康平は講談社現代新書のカバー装幀を35年間担当してきた(昨年まで).なるほど,うっかり見逃してきた./梵字の本を1952年に出版した「ロベルト・ファン・フーリク」という著者には,博品社から『中国のテナガザル』(1992年9月刊行,博品社,ISBN:4-938706-04-0)という本も出ている(きっと同じ著者だろう).博品社の解説には著者に関しての情報は得られなかったと書かれてあったが,「ライデン大学を卒業したオランダ人で,中国大使を勤めた人」(p. 273)だったそうだ.

◇昼前に病院を出て,午後は中学の授業参観に顔を出す.

◇今日の日中は日射しは強めだったが,風が吹いて湿度も低く,しのぎやすかった.

◇「くだ」をぶらさげたまま静かに寝る.

◇本日の総歩数=7510歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−0.7%.


7 juli 2005(木) ※ たなばた東京アゲイン

◇午前5時半起床.晴れ.最低気温は久しぶりに20度を越えている.紫陽花とアメンボ.

あわてて研究所に.受けていたいくつかのメール質問に答える./進化学会関連の連絡メールを出しまくる.箱崎と屋久島宛に./学会賞関連の電話連絡を銀行担当者にする.

—— もう10時.ひたち野うしく駅に向かう.車中日録書き(きのうと同じく).JR東京駅に着いたのは正午前.東京ステーションホテルの喫茶店にて待ち合わせをする.今日の用件は,とある解散書店の復刊に関する打合せだ.

◇「夢二」と「モデル」 —— モデル選択本の口直しには夢二本:『夢二デザイン』 (2005年4月11日刊行,ピエ・ブックス,ISBN:4-89444-417-8).竹久夢二による本・雑誌・広告などの装幀デザイン.いかにもピエ・ブックスらしい本.リフレッシュしたところで,再びモデル選択の世界へ:『モデル選択:予測・検定・推定の交差点』(2004年12月22日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-006843-1).最後の竹内啓の「補論」は射程が遠すぎて,本論との距離が遠いような気がするけど.「AIC」と「MDL」の本論に分け入った方が手っ取り早いか.※「縮小推定」って初めて耳にするキーワードだ.

—— 「“夢二”と“モデル”」でまったく別のことを連想してしまった読者諸氏にはどーもすみませんねえ.

◇午後1時を少し過ぎて,相手と落ち合う.喫茶店にて1時間ほど会談.出版業界の事情について話を聞く —— 翻訳書のエージェンシーをどう選ぶかとか.いくつかの出版社の経営立て直しとか.今回の件については,元の版下(フィルム)をそのまま使うのではなく,組版し直すということらしい.現時点で売れる可能性のあるタイトルをいくつか推奨した.ぼく自身も情報を集める必要があるが,うまく話がまとまればいいと思う.

—— 日浦勇の「2冊」は講談社学術文庫からリプリントされたらしい(未確認).前から予想されたことだが,いい本は長生きする.

※のちほど関係者にはメールしますので,よろしく.

◇丸の内オアゾの丸善にて —— いずれも Springer から:Rasmus Nielsen (ed.)『Statistical Methods in Molecular Evolution』 (2005年刊行,Springer Verlag,ISBN:0-387-22333-9).※MCMC, AIC, など総動員.下平英寿さんの総説あり./ Dieter Ciesnik 『Shortest Connectivity: An Introduction with Applications in Phylogeny』 (2005年刊行,Springer Verlag,ISBN:0-387-23538-8) .※系統推定論における「スタイナー問題」の本./Dick Husmeier et al. (eds.) 『Probabilistic Modelling in Bioinformatics and Medical Informatics』 (2005年刊行,Springer Verlag,ISBN:1-85233-778-8).※隠れマルコフが隠れている.

◇さてと,つくばに帰ろうか —— 常磐線での車中読書で,『夢二デザイン』を読了.※腕のいいデザイナーだったんですね.

◇ひたち野うしくで“狐の嫁入り”.そのまま,農環研に直行し,業務棟にて構内草刈りをしていた所員の慰労パーティに一時参加.労働せず喰うだけというのは…….

◇やっかいな仕事が溜まっていた(く).

◇慣れない連日の東京行きは疲れる.明日は反強制的病院送り込まれ.

◇本日の総歩数=11748歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.前回比=+0.2kg/+0.4%.


6 juli 2005(水) ※ 雨中の東京お出かけ

◇午前4時半に起床.研究所にてごそごそ.進化学会東北大会のオンライン参加申込をすませる./今日手渡す予定の“年貢”原稿の準備.※ほとんど“週貢”と化しているが./なお「積み残し」あまたあり.

◇映画〈スターウォーズ〉は今回封切られる最新作をもって「完結」することを初めて知った.ぼくが映画館で見たのは,1977年の第1作目だけ.そのことをよく覚えているのは,その夜,NHKホールでのジュネス・オーケストラの演奏会(Richard Strauss 交響詩〈英雄の生涯〉)に出演した余勢を駆って,打楽器の面々で渋谷駅前に繰り出し,オールナイトの映画館(東急?)でそれを見たからだ.映画館を出て,そのまま始発で千駄木に帰った記憶がある.演奏会用の衣裳を一晩中ずっと抱えたままだったのだろう.※もう30年近く前のことだから「大昔話」ですなあ.

おそらくこれから数年経つうちに,そのときの打楽器メンバーの固有名詞と担当楽器の記憶がどんどん薄れていくおそれがあるので,いまのうちにメモメモ —— Pauken:みなか/Große Trommel:津田美香子(日大)/Kleine Militärtrommel:鈴木隆太(慶應)+渡部仁美(青学)/Große Rührtrommel:渡辺三希子(法政)+菊地照夫(國學院)/Becken:矢崎順一(成城).※書き記したとたん,想い出すこともいろいろ多い.

◇朝のうちに東京に出発 —— まだ雨が残っているものの,天気は回復傾向.根津に着いた頃にはすっかりあがっていた.今日は傘は不要.

ここのところ「にわか常連」になってしまった本郷通りの〈ルオー〉にて,またも原稿執筆に勤しむ.正午前に講談社の担当者が“いつものように”やってきて,斜め向かいに座る.編集者が「隣室で待つ」というのが“正しい作法”かとも思うが,残念ながら〈ルオー〉には隣室がない.視野の右半分に編集者のカゲを見ながら原稿を書くというのは,よくよく考えてみれば(書き手によっては)相当なプレッシャーになるのではないだろうか.第3章の第2節を書き終え,原稿ファイルをUSBメモリーで手渡す.

—— この原稿仕事も今年の夏でやっとケリをつけられるだろう.見透かされたように,「三中さん,講談社の草津の宿泊施設に籠りません?」との提案.ついについに【花のカンヅメ作家】の誕生か,はたまた進捗遅すぎな書き手に業を煮やした講談社側の最後の強硬措置か.ま,理由は何にせよ(汗),酷暑の平地を逃れて草津で避暑できるというのは喜ばしいことだ.※親方講談社.

◇昼過ぎに〈ルオー〉を出る.晴れ間が見え始めた.そのまま真砂坂を春日に下り,神保町へ.ほとんど時間がないので,東京堂書店に立ち寄っただけ.ピエ・ブックスの本がたくさん目につく.

◇1時間ほどイノチの洗濯をして,飯田橋の日本進化学会事務局へ.今日の本務は,病気静養中のはずの駒場の「殿」とともに,進化学会の昨年度会計監査と次年度予算案の編成を行なうこと.統数研の長谷川政美さんが監査だ.午後3時から,事務局にて会計に関する出納の説明を担当者から受け,項目ごとに確認とチェック.進化学会の会員数が1000人を越えるようになり,経済的にはやっとラクになってきたようで,会計上のマイナス要因がひとつずつ消えていくのはいいことだ.

午後5時前にひととおりの作業完了.JR飯田橋駅前にてひとやすみしてから,つくばに直帰.

◇車中読書 —— 遅まきながら:叢書〈統計科学ののフロンティア〉第3巻『モデル選択:予測・検定・推定の交差点』(2004年12月22日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-006843-1).著者は,下平英寿(第I部「情報量規準によるモデル選択とその信頼性評価」)/伊藤秀一(第II部「情報圧縮と確率的複雑さ:MDL原理」)/久保川達也(第III部「スタインのパラドクスと縮小推定の世界」)/竹内啓(補論「分布の検定とモデルの選択」).定石通り?序文の後は「補論」に進む.統計学にかぎらず,新しい「考え」に触れるときは,既存のワールドとの橋渡しを意識的につないでいく必要があるから.

◇明日はきっと晴れるだろうな.東京アゲインなんだけど.

◇本日の総歩数=13945歩[うち「しっかり歩数」=4775歩/40分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=+0.1kg/−0.4%.


5 juli 2005(火) ※ 今日は晴れそう

◇午前4時起床.研究所へ.夜中もずっと雨が降っていたようだが,明け方には上がっていた.青空が広がる気配あり.気温20.1度.爽やか.

◇〈Jungle〉には〈Tarzan〉あり.※うーむ.

◇日が昇るとともに気温がじわりじわりと上がってきた.暑そう —— サイモン・シャーマ『風景と記憶』(2005年2月28日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-25516-7)の第3章「緑林の自由」を読了.ヨーロッパ大陸からイングランドに場所が移る.“ロビン・フッド伝説”を基調テーマとして,英国における「森林」のイメージを復元していく.大陸における伝説的・神話的な風景としての〈黒い森〉とは異なる記憶がそこにはあったと著者は言う:

こうして緑林は想像界裡のユートピアなどではなかった.実際それは力強く動くひとつの社会であった.イングランドの森がかくも,こうして忙しく立ち働くすべての社会的,経済的活動の本拠地であったため,ノルマン的な森の概念の押しつけは無理無体なことと映ったのである.(p. 175)

「forest」という言葉そのものが,もともと特別な法(「森林憲章」)によって管理される地域というだけの意味しかなく,必ずしも樹木が生い茂った「森」と等価であったわけではない(p. 175).その歴史的経緯が,支配者側による地域の法的な「フォレスト化(afforest)」を正当化し,その結果として,イングランドの大規模な「森林破壊(deforest)」をもたらした(p. 191).“ロビン・フッド”が立ち回った「森」にはそういう色づけがなされていたのだと著者は言う.

—— 記憶の古層を掘り起こそうとするシャーマの文体は,読者によってはディテールにはまり過ぎという評もありえるだろう.しかし,ぼくにとってはこういう細部の積み上げによる語りは好ましく感じられる.

振り返って見ると,カルロ・ギンズブルグの初期の著作に最初に惹かれたのも,同様の文体が感じ取れたからだと思う.たとえば,日本語訳された最初の本:カルロ・ギンズブルグ『チーズとうじ虫:16世紀の一粉挽き屋の世界像』(1984年12月19日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-01196-4)は,博士論文の最終段階であがいていた年の瀬に,たまたま本屋で見かけ,後ろ髪を引かれて買ったものだ.歴史学の本にしては,とんでもなく「マイナー」な主人公(歴史の塵かも)と彼の思想に光を当てて,当時のようすを復元していくというやり方は,新鮮という以前に「何だこりゃ」という印象を残した.

1年ほど後に出た第2作:カルロ・ギンズブルグ『夜の合戦:16−17世紀の魔術と農耕信仰』(1986年1月28日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-01211-1)も,出版されてすぐに買ったのだが,これまた書名に釣られたようなものだ(本のタイトルはとても大切だ).この本もまた,ヨーロッパの辺縁に遺された農耕信仰の全体像を異端裁判の記録を手がかりに復元していくという,とんでもなく些末な対象をとりあげた本だった.

どちらの本も,その扱っている題材のユニークさもさることながら,どういう動機でこういう研究を進める気になったのかという著者の内面にも関心があったことは確かだ.その後,歴史家ギンズブルグの著作は何冊も訳本が出たが,再び向き合うことになったのは,世紀が変わってから出た2冊:『歴史・レトリック・立証』と『歴史を逆なでに読む』だった.

—— ギンズブルグになじんでいたから,シャーマも違和感なく読めるようになったのか,それとも読み手側にもともとそういう姿勢ないし嗜好があったからかはさだかではない.〈マージナリア〉が好きな読者ならばわかってくれると思うが:澁澤龍彦とか,種村季弘とか,枚挙すればぞろぞろと類は友を呼ぶ.

それにしても,このシャーマ本,第3章までやっとこさ読んで,220ページ.まだ全体の1/3にも達していない.登攀の道,なお険し.

◇午前いっぱい,地下書庫に逃避して,火のついている原稿を進めようと思ったら,トツジョとして企画調整部某氏が乱入してきた.書類の不備があって,至急の訂正が必要とのこと.ついに地下キャレルも安住の地ではなくなったのか.

何年経っても事務と書類の進行がスムーズに進まない.何度もごつんごつんと修正を求められて,はいはいと応えているうちに,結局どーいうふうにすればすんなりとコトが運ぶのかがわからなくなってしまう.だから,同じ失敗のリピーターになる.

◇午後1時から,〈統計学〉セミナー(第10回) —— 第8章の続き,Mann-Whitney の「U検定」で悩み,時間が取られてしまう.検定統計量Uをなんとか導出したところでおしまい.1時間あまり.

統計関連学会広島大会のオンライン参加申込が今日から始まったので,さっそくすませる.シンポ後援者にも連絡する.

◇夕刻から再びぽつぽつと降り出し,夜になって本降りに.梅雨も末期になってから,やっと雨量が本調子に戻ったようだ.気温はもちろん低めに推移.

◇明日は東京にプチ出張.またも本郷で原稿を“むしり取られる”予定(汗).※まったく事態は改善されていないなあ.

◇本日の総歩数=9961歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−0.2%.


4 juli 2005(月) ※ なお降り続く雨

◇午前4時半起床.一晩中降り続いた雨は止む気配なし.午前7時の気温は18.8度.

—— 『生物科学』のゲラ返送完了./密室にて原稿をものする(進行中).※なお道遠し…….

◇朝のこまごま —— 放置してしまった系統樹質問に答える.OTU数に対して形質情報が少なすぎる場合の“縮退”の問題.Informative sites が少なすぎると metric 的に「等距離」(距離ゼロも含む)なペアが多発して,等スコア系統樹が溢れるだろうということ.OTU数 and / or 形質数を増やすしかないか.The bigger, the better.

◇数理統計学者の増山元三郎氏の訃報(→朝日新聞報道).名著『少数例のまとめ方』(1977年,竹内書店新社,ISBNなし?)のお世話になった人は少なくないはずだ.初版は1953年,1964年に改訂版が出て,1977年には改訂増補版というロングセラー.

統計関連学会広島大会のホテル予約をすませる.学会会場である広島プリンスホテルに宿泊する.大会最終日(9月15日)の午後には,筑波大・数理科学系で同じ形態測定学のセミナー演者を引き受けているので,シンポジウムと座長をすませたら速攻でつくばに帰らないといけない.※どーやって?(汗)

◇雨はなおざーざー降っている.読み無しの歩きのみ.エビガラスズメ♀を手なずける.気温21.6度.

◇午後のいろいろ —— 今週の出張伺(2件)と年休届(1件).※ほとんどトンズラしてます./統計関連学会大会シンポの演者に「報告集」の原稿依頼.※急いてますがよろしく./きんた君から大会ポスターの件で電話.ごめん,〈殿〉に訊いてね./進化学会の決算レポートを見る.※ゑくせるぅ./大東くんを囲むセミナーの本は,『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6 th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)に決定.来週から毎週月曜午後1時から行なう.

◇あ,もう5時だっ! きー.

◇農環研の英文年報『NIAES Annual Report 2005』掲載原稿を依頼されていたのだが,すっかり忘れていた.締切まであとマイナス4日なので急がないと.

◇その前に…….(あぶら汗)

◇夕刻,広島プリンスホテルからメール:統計関連学会大会参加者には「割引料金」での滞在が可能だと大会委員会はい言っていたのだが,その申告のしかたがわからなかった.オンライン予約した際に「備考欄」にその旨記入したら,折り返し「処理完了」との連絡が返ってきた.レスポンスが速くて,とてもいい感じです.

◇大東くんから頼まれて,探索作業しばし.

◇夕刻,いったん雨は上がったものの,夜になってふたたび本降り.

◇李白の漢詩などつい読み始めてしまう.※あ,逃避してる,してる.>ワタシ.

◇本日の総歩数=13233歩[うち「しっかり歩数」=5703歩/48分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.8kg/+0.2%.


3 juli 2005(日) ※ とても涼しい週末

◇午前5時起床.雲って涼しい.気温は20度を下回っているのではないか.とても珍しいことだ.

◇午前中の徘徊.LaLa Garden から始まって,つくばの南端でラーメンを食べ(大河は田舎にあり),万博記念公園で歩き回る.日中になっても日射しは戻らず,20度台前半のまま夏日にも達していないみたい.

◇『生物科学』の書評ゲラをチェックする.今回は頁数が多いので,いろいろと修正箇所がある.完了.明日返送の予定.

◇新刊メモ —— 倉谷滋『個体発生は進化をくりかえすのか』(2005年7月刊行予定,岩波書店,ISBN:4-00-007448-2).やっとISBNが判明した.〈岩波科学ライブラリー〉の108番目./橋爪節也編『モダン道頓堀探検:大正,昭和初期の大大阪を歩く』(2005年7月刊行予定,創元社,ISBN:4-422-25040-X).

◇〈St. Louis〉の「gueuse lambic」を少し.美味.

◇夕方,一瞬雨がぱらついたが,すぐあがった.しかし,天気は下り坂.夜遅くなって本降りに.梅雨らしいざあざあ降り.

◇本日の総歩数=8860歩[うち「しっかり歩数」=6149歩/53分].全コース×|×.朝○|昼×|夜×.前回比=+0.1kg/−0.3%.


2 juli 2005(土) ※ 晴れときどきブロック

◇午前4時半起き.研究所に直行する.夜半に雨が降ったようで地面が濡れていた.青空が雲間に見えている.気温21.6度.とある涼しい閉所に籠って原稿を書く.なかなか進まん.すまん,進まん.すまん,すまん.

—— それでも,どーにかこーにか1節分にケリをつけられそうか.※待っててつかあさい.

◇午前中はつくばの中を徘徊する.Creo 発 LaLa Garden 経由で Asse まで.帰ってきたのは正午過ぎ.雲がだんだん厚くなってきた.気温はさほどではないが,湿度がとても高いぞ.不快指数も.

◇マルク・ブロック『新版・歴史のための弁明 — 歴史家の仕事』(2004年2月20日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-002530-9)の感想を少し ——

第1章「歴史,人間,時間」では,まずはじめに歴史学とは「過去に関する学問」ではなく,「時間における人間たち」を対象とする学問であると定義する(p. 7).歴史の説明では〈起源〉を遡求することにこれまで多大な努力が払われてきたが,その由来はドイツ・ロマン主義にたどれると著者は言う(p. 11).しかし,進化学や発生学の場合とは異なり,歴史学における〈起源〉の追求の動機づけについては:

過去が現在を説明するためにあれほど活発に使われたのは,よりよく現在を正当化するか断罪するという目的でしかなかった.したがって多くの場合,起源の悪霊とは,真の歴史学にとってもう一つの悪魔的な敵である判断への固執の変形にすぎないのかもしれない.(p. 13)

と批判する.「系譜を説明と混同する誤り」(p. 14)は,〈起源〉を求める行為が,過去の出自のみに関心を向け,現在の状態が維持されている理由を探ろうとしないことにある.したがって,歴史の十全な説明のためには,系譜とともに過程を知る必要があると著者は主張する:

一言で言うなら,ある歴史現象は,その瞬間を研究しないならば十分に説明することはできない.進化の段階すべてに関してそれは言える.(p. 16)

さらに一歩進んで,「現在の知識が過去の理解にさらに直接的に重要な場合がある」(p. 27)とまで言う著者には,歴史学の中で「過去」と「現在」とのつながりをより強固なものにしようとする姿勢がうかがわれる.

続く第2章「歴史的観察」は,現在に残された史料(データ)からどのようにして過去の歴史を復元するのかを論じる.まずはじめに,断片的にのみ残された史料は「痕跡による知識」(p. 37)なのだが:

過去とはその定義からして,もはや何によっても変えられないような所与である.しかし,過去の知識は進歩するものであり,絶えず変化し改良される.(p. 40)

という点を考えるならば,史料の解釈の基本的スタンスがまず問われる.「受動的な観察は何ら豊かなものを生み出していない」(p. 46)と断言する著者は,もっと積極的かつ批判的な史料の解読を歴史家に要求している.

次の第3章「批判」は,まさにこの点 — どのようにして史料を批判的に読み取るか — を主題とする.その根幹には「比較」の論理があると著者は言う:

ほとんどすべての批判の基礎には比較の作業が含まれている.(p. 89)

諸動機の微妙な比較検討に基づく結論には,無限に確実であるものからせいぜいありえそうなものまで,長い段階的移行が考えられる.(p. 91)

こうして批判は,正当化する類似性と信用を失わせる類似性というふたつの極端の間を動いている.それは,遭遇の偶然にはその限界があり,社会的な一致は結局のところかなり緩い編み目でできているからである.[……]したがって要するに証拠の批判は,類似と相違の,一と多の直観的な形而上学に基づいている.(p. 94)

系統学者ならば,homology と homoplasy の対置を上の引用に読み取ることは容易だと思う.みかけの類似性とそうでない類似性との弁別が比較には必要だということだ.

興味深い点は,著者がここで「確率論」をベースにして,比較を進めようとしていることである.それは,さまざまな事象の組合せの中からもっとも妥当な結論を確実に引き出すための手法[の一つ]であると言う:

ある事件の確率を測るとは,それが起こりうる可能性を測ることである.そう認めたところで,過去の事象の可能性を語ることは正当であろうか.絶対的な意味ではもちろん否である.未来だけが不確かである.過去は,可能性に余地を残さない与件である.[……]しかしよく分析すると,確率の概念を歴史研究が使う仕方には何ら矛盾する点はない.(p. 103)

つまり,過去に考察の基線を設定するならば,「過去の時点における未来」(p. 103)にほかならないのだから,確率を論じても論理的な問題は生じないだろうという“りくつ”である.生物進化のプロセスを論じるときにも,もちろんこの“りくつ”は発効している.

この“りくつ”の背後にある仮定としての「等確率性」を著者は指摘する:

しかしながら,偶然の数学はひとつの虚構の上に立っている.あらゆる可能な場合のうち,出発点において諸条件が公平だと仮定する.(p. 104)

現実的な多くの状況の中でこの仮定は往々にして破られているが,例外的ケースとして著者が挙げているのがほかならない「系統推定」である.言語系統樹と写本系統樹を例にとり,著者はこれらの問題を解決する上で「確率論」がなじみやすいと言う:

実を言えば,ひとつの歴史的学問は例外である.それは言語学,少なくとも,諸言語の間で類縁性をうちたてようと努める分野の言語学である.その実効範囲は純粋に批判的な作業とは大いに異なるが,この研究は,系統を発見しようと努めるところは批判的作業の多くと共通である.さて,この研究が推論を行なう際に基づく条件は,偶然の理論に馴染み深い,平等という第一の規約ときわめて近い.この特権は,言語現象の固有性自体によるものである.実際,音の組合せの可能性の膨大な数によって,異なる言語において偶然それらが大量に反復されるという確率がごくわずかになるだけではない.それよりはるかに重要なのは,いくつかの模倣的諧調を別にすれば,これらの組合せに与えられる意味がまったく恣意的だという点である.[……]多様な可能性のうち,人間としてはどれを選択しても大差がないところから,ほとんど純粋な確率計算がこの決定をもぎ取ったのである.(pp. 103〜104)

ここで言及されている言語系統樹の推定に適用された「確率論」は,ごく単純な最節約法の確率論的擁護である.一方,写本系統樹では事態はもう少し複雑だと著者は言う:

原則は単純である.ある同一の著作の写本が三巻(B,C,D)あるとしよう.これらが三巻とも,明らかに間違った同じ読みを示すことがわかったとする.[……]そうすると,これらの写本は「同系」だと決められるだろう.[……]実際たしかに,これほど一貫した一致は偶然ではありえないであろう.(p. 106)

しかし,写字生という「人間」の意思がそこに働き得る可能性(実際,それに由来する過誤があった)を考えたとき,確率論の前提はあっさりくつがえされるだろうと著者は言う:

偶然的一致の賭けにおいて,集団の力の圧力と同じく個人の意思は偶然に対していかさまをするのである.(p. 107)

第4章「歴史的分析」は歴史の解釈の問題,最後の第5章は短い断章だが,歴史学における因果分析の問題をもう一度論じている.

—— 全体として本書は,人文科学としての歴史学にとどまらず,もっと一般的な「歴史推論」のテーマを論じた著作として読まれるべきだろう.生物や言語あるいは写本の系統学もまたマルク・ブロックの歴史学理論の射程の中にあったと見るのはけっして深読みではないとぼくは思う.

なお,訳文はイマイチ.読んでいてすっと意味が通らないのは,原文のスタイルなのか,それとも…….

◇夜,寝読みの筋力トレーニングの一環として,サイモン・シャーマ『風景と記憶』(2005年2月28日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-25516-7)をば.第2章「林道 — 森を抜ける道」を読了.第1章のキーワードがシャーマのルーツである“リトアニア”なら,第2章のそれは“ゲルマニア”.タキトゥスからヒトラーにいたる「ゲルマン文化」と「森」との関わり合いを「森の絵」の図像から読み取る.そういえば,ギドン・クレーメルの『Kindheidssplitter』の結末で,生まれ故郷のラトヴィアとの別れ(Abschied)が Kindheid との別れだと書かれていた.後年,エストニア出身の作曲家アルヴォ・ペルトとの関わりが生じるわけだが,一種の心象的回帰か.

◇夕方から涼風が吹き始め,気温がするするっと低下する.今夜はきっと寝心地がよろしいでしょう.この季節にはめずらしいことだ.

◇本日の総歩数=8230歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.6kg/+0.5%.


1 juli 2005(金) ※ 「新人」登場!

◇午前5時起床.曇り.気温23.6度.やや蒸し暑いな.

—— 早朝のこまごま:〈つくば国際音楽祭〉のチケットを申し込む./形態測定学に関する質問への返答./メーリングリスト関連の作業.月例アナウンスとか,BIOMETRY過去ログの〈MOCA〉検索機能の作動確認.

◇午前9時に異動辞令をもらった「大東健太郎」さんが登場.今日から正式に環境統計ユニットの一員となる.机周りの整理とか,これからのこととか,いろいろとお話し.午前いっぱいかかる.※まあ,ぼちぼちと慣れてください.>大東さん.

3月以前の研究室員年齢(/室員1名)が「平均47歳」だったのに,4月になっていきなり「平均33.5歳」に大幅若返り,さらに今日「平均32歳」になった.※ひとえにワタクシが平均年齢を引き上げているだけというウワサもある.

—— 自らのことを思い起こしてみると……1989年10月1日付で選考採用によって農環研のウラから就職したその日は日曜だった.そして,翌月曜に辞令をもらって研究室に行ってみたら,誰もいなかった.室員たちは育種学会大会で出払っていたのだ.出勤してきたパートさんには「これから何します?」と言われる始末.まあ,本など読んだりして変にゆったりとできたのだが.※ケース・バイ・ケースでいろいろありますわな.

◇昼休みの歩き読み:これまた久しぶりの角田光代・岡崎武志『古本道場』(2005年4月30日刊行,ポプラ社,ISBN:4-591-08627-5).40ページほど読んだところで,曇り空から雨がぱらぱら降り始めた.まったくもって,うっとおしいですなあ.

◇献本感謝 —— 佐藤衆介『アニマル・ウェルフェア:動物の幸せについての科学と倫理』(2005年6月16日刊行,東京大学出版会,ISBN:4-13-073050-9).※読まずに言うのもなんですが,そもそも「動物の幸せ」って何? — とちょっとでも感じてしまった人は,迷わずこの本を読めという思し召しなんでしょう.

◇昼のこまごま —— ある返信が届く.なるほど,相手方にはそのように伝えましょう./稲盛財団から電話連絡あり.今年度の〈京都賞〉を受賞した Simon A. Levin 教授の受賞記念シンポジウムに関する広報の依頼.プログラムが確定した段階で,進化学会および関係メーリングリストにアナウンスすることになった./『生物科学』誌からゲラが届く.こちらもセーゲルストローレ『社会生物学論争史』書評か.刷上がりで12ページもある.めっちゃ多いやん! /進化学会の会計監査と選考委員会の日時場所が確定した.こっちの仕事もそろそろ増えてくる./統計関連学会の確認と連絡をしないとね.

◇長年,人口密度の低い職場環境に慣れていたので,このように短期間のうちに個体数が増加すると,意識するしないにかかわらず,戸惑うことが多い.学生の出入りが多い大学であればきっとたいしたことではないのだろうが,こういう独法研究機関では研究員の‘新人’(それもピュアな)がやってくるというのは「一大事」なのだ.昨日の新人報告会に続く懇親会で理事の一人が,「みなかくん,大切に育ててくださいね」と真顔で言うので,つい酒杯のピッチが上がってしまった(汗).ワタシ,「3σ」から外れてますしぃ.ワルいことを教えたり,アヤしい世界に誘ったりしてはあかんのでしょーか.

—— すでにつんつんとシゲキし始めているのですけどね.

◇夕方,やや疲れ気味に帰宅.ごろごろしてしまう.怠惰が寝転がっている風情あり.

◇原稿はまた未明か…….※すみませぬ.

◇本日の総歩数=15294歩[うち「しっかり歩数」=6037歩/53分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.8kg/−0.5%.


--- het eind van dagboek ---