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日録2009年2月 


28 februari 2009(土) ※ 初積雪の翌日は読み書きする月末

◆午前5時過ぎ起床.曇り.地面はまだ濡れている.昨日薄く積もった雪はもう跡形もなく消え去っていた.

◆2009年2月26日の午後,山階鳥類研究所名誉所長の黒田長久さんが92歳で逝去された(→朝日新聞訃報読売新聞訃報).1980年代から90年代はじめにかけては,生物地理学会の大会や評議員会で同席する機会が多く(昔からこの学会はそういう人脈のある会だった),また当時は大会終了後の懇親会にも参加されることがよくあった.

1990年か91年の大会のとき,会場だった東大総合研究資料館(現・博物館)近くの〈庄や〉で懇親会をしたときに話をしていて,「そういえば,三中さん,こういう本を最近読んでいるのですが……」と見せてくれたのが:N. R. Scott-Ram『Transformed Cladistics, Taxonomy and Evolution』(1990年刊行,Cambridge University Press, Cambridge, xii+238pp., ISBN:0-521-34086-1 → 目次版元ページサンプルページ)だった.発展分岐学の歴史を科学哲学の観点から論じた真っ赤な表紙のこの本が黒田さんの手提げかばんから取り出されるとは予想もしていなかったので,20年近く経った今なお鮮やかに記憶しているエピソードだ.

—— 物故した人のことをゆかりのある「本」を通じて(のみ)覚えていることが他にもあるが,どういう心象のありようなのだろうかとつくづく思う.

◆翻訳情報クリップ —— Adrian Desmond and James Moore『Darwin's Sacred Cause: How a Hatred of Slavery Shaped Darwin's Views on Human Evolution』(2009年1月28日刊行,Houghton Mifflin Harcourt, Boston, xxii+485 pp., ISBN:978-0-547-05526-8 [hbk] → 目次版元ページ)は日本語訳が出るとのこと.期待しましょう.

◆午前のうちに雲は晴れて青空が広がってきた.空気は冷たいが,そのうち上がってくるだろう.

◆昨日の車中読書 —— 皆川達夫『中世・ルネサンスの音楽』(2009年2月10日刊行,講談社[講談社学術文庫1937],東京,268pp., 本体価格960円, ISBN:978-4-06-291937-1 → 目次版元ページ).たまにはこういう本もよし.本書の元本は1977年というから,もう30年以上も前のことだ.しかし,ここで論じられている音楽がつくられた時代はさらに数世紀もさかのぼるので,ぜんぜん古びていない(当然か).

本書はとても勉強になります.たとえば,ポリフォニーの対語として「ホモフォニー」ということばがあるとは知らなかった.12〜13世紀のフランスのペロティヌス(ペロタン)や16世紀フランドルのラッスス(ラッソ)のような人名が出てくる.その音楽だけはヒリアード・アンサンブルによる合唱やスティーヴ・ライヒの音楽で知ってはいたが,このように音楽史の中での位置づけが定位されると安心できる.パウル・ヒンデミットの講義は受講生によるグレゴリオ聖歌の合唱とともに始まったというエピソードも.

—— そういえば,かつて NFK-FM をよく聴いていたころ,毎朝6時からバロック以前の古い音楽を流す番組〈バロック音楽のたのしみ〉があった.本書の中でも言及されているように,著者はその番組での解説者だった.NHK-FM の中でもとびきり長寿の番組だったが,あるとき打ち切りになって以来,FMというものを聞かなくなった覚えがある.

◆理論生物学をオランダから見ると —— Thomas A. C. Reydon and Lia Hemerik (eds.)『Current Themes in Theoretical Biology: A Dutch Perspective』(2005年刊行,Springer-Verlag, Berlin, vii+310 pp., ISBN:978-1-4020-2901-1 [pbk] → 版元ページ目次).ライデン大学が出している雑誌 Acta Biotheoretica の創刊70周年を記念する論文集.“オランダ学派”の理論生物学・生物学哲学の論文が所収されている.

長らく公刊されなかった:D. J. Kornet and James W. McAllister「The Composite Species Concept: A Rigorous Basis for Cladistic Practice」がやっと本論文集に所収された(pp. 95-127)ことはぼくにとっては「大収穫」だ.この論文は,Dina J. Kornet の学位論文:D. J. Kornet『Reconstructing Species: Demarcations in Genealogical Networks』(1993年刊行,Instituut voor Theoretische Biologie, Universiteit Leiden, 121 pp., ISBNなし → 目次)の「第3章」として15年も前に出版されていた.そこでは「投稿中」と記されていたが,その後,どこかの雑誌に出版されたという情報がまったく得られなかった.

さらに幸運なことに,この論文はライデン大学デジタル書庫(the digital repository of Leiden University)から,全文を無料ダウンロードできることもわかった(→ダウンロードサイト).

—— 長年にわたって引っかかっていた“小骨”が外れたようなプチ幸福感が漂う.論文を公刊するまでにはこのように長丁場になるケースもあるということだ.

◆午後も晴れたり曇ったり.昨日よりは気温が高くなったが,それでも10度には遠く達しなかった.明日から3月だが,春めいた空模様ではない.

◆ここのところ,タガがはずれたように「料理人」になりきっている.先日と同じローストポークをもう一本焼くことになったので(今度は自宅用として),夕方,またまた豚肉の肩ロース肉の塊を700グラム買ってきた.具を詰めてたこ糸で緊縛したら,前回以上に巨大な肉塊になった.下味をつけてそのまま冷蔵庫へ直行させる.実際に焼くのは24時間後の明日の夕方だ.夕食に簡略版トルティーリャを焼いた.先日はタマネギとポテトでジャーマンポテト風のしっかりした「具」を用意したが,今夜は単にポテトをふかして塩こしょうしただけだ.シンプルだが味に深みはまったくない.ノンアルコールな夜はビオナーデとともに.

◆本日の総歩数=5085歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.2kg(+0.1kg)/24.4%(+0.1%).


27 februari 2009(金) ※ 雪が降ってまたひとつ齢を重ねる

◆午前5時過ぎに目が覚めた.外は冷たい雨が降っている.天気予報を見たら,「関東地方は雪になる」と言っている.こんな日に東京に出るのはつらいなあ.

◆朝からまたまた料理人 —— にわか料理人に休みはない.朝イチでまず始めにすることは,大きなスペイン風オムレツを焼くことだ.タマネギを大量にスライスし,オリーブ油で焦がさないように厚手のフライパンでじっくり炒める.ついでに赤パプリカスライスも炒めてしまおう.ジャガイモを皮むきし,5mm厚にスライスして電子レンジで柔らかく蒸し上げる.別フライパンにオリーブ油を熱してジャガイモをしっかり炒めて,そこにタマネギとパプリカを合流させてよく混ぜる.これでスペイン風オムレツの「具」ができた.

次に卵10個をボールに割る.厚手のオムレツパンを強火で熱して油をひき,卵の半量を流し込む.間髪入れずに具の半量を投入し半熟になるまで加熱する.大皿にひっくり返して,残り半量の卵と具をオムレツパンで焼く.半熟どうしの反面ずつを合わせて合体させ,接合面に注意しながら火を落としてじっくりしっかり焼く.きつね色がついてきたら,あとはフライパンの予熱だけで十分だろう.

—— 上のレシピを2回繰り返して,午前9時には大きなスペイン風オムレツをふたつ焼き上げた.厚さは7センチほどもある.卵10個と具の重量がずっしり感じられる.

◆さて,昨夜用意した〈ローストビーフ〉と〈ローストポーク〉をスライスするときがやってきた.

ローストビーフは某シェフ殿の教えにしたがい,いったん冷凍してから解凍した.ローストポークは昨夜焼いたまま,戸外で冷ましてある.ローストビーフの方はミディアムくらいの生さで,これだったら筑波大学に運び込んでも大丈夫だろう.個人的にはもっと生々している方が好きだが.周囲にクレソンを敷いて盛りつけてみる.

さて,今回の主役であるローストポークだが,スライスしてみたら,ちょうどいい火の通り具合で,中心部分はピンク色,ドライフルーツはしっかり巻き込まれていた.緊縛が緩いと,スライスの途中で「具」がぼろぼろとこぼれてしまうのだが,今回はしっかり固まっていた.ドライフルーツのほの甘さと柑橘マーマレードの苦甘い風味が豚肉にはとても合うと思う.

〈ドライフルーツ巻き込みローストポーク〉は,ローストビーフよりは(そしてふつうのローストポークよりも)はるかに手間と時間がかかる一品だが,つくればテーブルの注目を必ず集めるので,こういうハレの場の主役料理としては適役だろう.オレンジのスライスで盛りつけを飾ってみる.

◆雪の東京へ —— 午前10時,外は雨からみぞれに変わっていた.にわか料理人としての仕事が終わり,筑波大学構内某所への料理の搬入も無事にすんだらしい.しかし,ぼくの本務は実はこれから始まる.11:25発のTX快速で根津に向かう.都内に近づくにつれて大粒の牡丹雪が降りしきるようになり,根津で地上に上がったらみぞれではなく,雪景色になっていた.〈芋甚〉にて粒餡の「昭和焼き」を買い求め,その足で東大に向かう.安田講堂前の広場にも雪が降りしきっていた.正門を出て,午後1時前に本郷通り向かい側の〈ルオー〉に入る.寒さで手がかじかむ.いつものウィンナコーヒーをば.

◆新たなるダーウィン本へ —— 午後1時から NHK Books 井本さんとの打ち合わせ.ずいぶん前に送った目次案に沿って,おおまかな構想と章間のつながりについて話をする.序章については3月27日(金)までに進捗を見せるということで.それまでに現代新書は少なくともケリをつけておきたい.

NHK新刊(Nスペ) —— NHK「病の起源」取材班(編著)『NHKスペシャル・病の起源(1)』(2009年2月25日刊行,日本放送出版協会,142 pp., 本体価格1,300円, ISBN:978-4-14-081340-9 → 版元ページ).「睡眠時無呼吸症」,「骨と皮膚の病」,そして「腰痛」という三つの現代病をとりあげ,その進化的遠因について解説している.カラー写真がいっぱい.ありがとうございました.放映は全6回だったそうで,後半の巻もきっと近いうちに出版されるだろう.

◆本郷通りは雪から雨に変わってなお降り続いている.とても寒い.午後2時前に東大農学部へ.今日は朝から専攻卒論発表会がある.午後の部に参加する.夕方,小雨の中をつくばに直帰.TX沿線は雪景色が広がっていた.積雪したのは今シーズン初めてのことかも.

◆車中吊り広告で知った新刊 —— 先月格闘したニュートンムックのダーウィン本が本日発売されたようだ:ニュートン編集部『ダーウィン進化論』.頁数は144ページ.税込価格は2,499円.現物は農環研に届いているにちがいない.※今日は行ってないからわからない.お誕生日プレゼントかも.

◆手も足も出ません —— 本日2月27日(金)午後8時から3月2日(月)午前5時まで,農林水産研究計算センターのシステム更新作業のため,メールの送受信不能・メーリングリスト機能停止・ウェブサイト更新不能という三重苦の週末がやってきた.ウェブサイトはすでに一週間前からアクセス停止となっていて,日録などの更新はできなくなっている.このように舞台ウラでは毎日書き続けているのだが,オモテに公開するのは週明けの未明だ.そのときにはメーリングリストのアップデートにともなう仕様変更について会員に周知しなければならない.来月はじめはそういう雑用が集結している.

◆今日の日中は外気温は1度くらいまでしか上がらなかったとのこと.どうりで寒かったはずだ.

◆本日の総歩数=10459歩[うち「しっかり歩数」2655歩/26分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.計測値(前日比)=83.1kg(−0.8kg)/24.3%(−0.9%).


26 februari 2009(木) ※ 昼間は本読み,夜はにわか料理人

◆午前4時半起床.曇りところどころ晴れ.気温プラス5.3度.

◆クラディストたちが世界同時多発蜂起? —— ストックホルムから Steve Farris 氏のメール.「シンガポールで次の〈Hennig XXVIII〉をやるから早く登録を」とのこと.会期と場所が次のように確定したわけだ.今年の6月22日(月)〜26日(金)の日程で,場所はシンガポール植物園(Singapore Botanic Gardens).ワタクシ,実はシンガポールはもちろん「東南アジア」という地域にいまだかつて一度も足を踏み入れたことがないのです.事前参加登録締切は4月22日.とすると,講演要旨締切はその一ヶ月後か(と予想する)./さっそく,遅れていた Willi Hennig Society の年会費を払ってと./〈Hennig XXVIII〉の宣伝はした方がいいよねえ.アジア地域では最初の開催だし./今度はメルボルンからメールだ.Gareth Nelson さんから新しい論文が pdf で送られてきた:Gareth Nelson and Pauline Y. Ladiges (2009), Biogeography and the molecular dating game: a futile revival of phenetics? Bulletin de la Société géologique de France, 180 (1): 39-43, January 2009. どうもありがとうございました.この論文は,2007年にパリで開催された〈First International Palaeobiogeography Symposium〉(10 - 13 July 2007, Paris)の論文集(→目次)として出版されたものとのこと.

◆今日もうっとおしい曇天で,今にも雨が降り出しそうな空模様.もうすぐ3月だというのにぱっとしない.だいぶ中だるみしているので,原稿を書く気分を盛り上げないとどうしようもないな.それでもよそ見をコッソリしてしまうイケナイわたし.

◆生物学哲学関連の電子本たち —— ライデン大学デジタル書庫(the digital repository of Leiden University),えらいっ! まずは同大学の公刊博士論文から:

  1. Thomas A. C. Reydon『Species as Units of Generalization in Biological Science: A Philosophical Analysis』(2005年6月1日刊行,Faculty of Mathematics & Natural Sciences, University of Leiden, Doctoral Thesis, 153 pp., ISBN:90-8559-090-6 → ダウンロードサイト).この学位論文では【種】を Wittgenstein の言う「family resemblance」概念の観点から考察している.上記レポジトリーからpdf(910KB) としてダウンロードできる.
  2. Marco G. P. van Veller『Unveiling Vicariant Methodologies in Vicariance Biogeography : Not Anything Goes』(2000年11月29日刊行,Faculty of Science, University of Leiden, Doctoral Thesis, 148 pp., ISBN:90-9014087-5 → ダウンロードサイト).分断生物地理学のさまざまな方法論について長短を比較検討している.「何でもあり」ではなく,「どれもダメ」だったということか.この学位論文もまた上記レポジトリーからpdf(767KB) としてダウンロードできる.

◆午後4時過ぎに撤収する.小雨が降り続き,気温は4.5度でしんしんと冷えてくる.

◆ヤミの料理人は夜になって働く —— とある内輪の(といっても20名近くの人数になるらしい)パーティの“料理人”を引き受けることになった.報酬をいただくわけではないので,ただのボランティア(しかも食材費もこっちもちという踏んだり蹴ったりの)仕事ではあるのだが,せっかく引き受けたからにはちゃんと働かないといけない.

・〈ローストビーフ〉 —— 年の瀬から正月にかけてローストビーフをよく練習したので,今回は温度設定を誤ることなく,「150度で35分」という焼き加減で400g×2本をしっかり焼いた.やや火の通りを強くしたのは,搬入場所が筑波大学のとある学群校舎で,あまり生々している肉を遠距離運搬するのはためらいがあったからだ.ベランダであら熱を取ってから即冷凍庫へ直行させた.スライスは明日の早朝だ.

・〈ローストポーク〉 —— 今回のメインディッシュはビーフではなくポークだった.しばらくつくっていなかったのだが,ぼくのレパートリーのひとつに〈ドライフルーツ巻き込みローストポーク〉という一品がある.備忘メモとレシピ確認のため下記に手順を書き出す.

  1. 豚もも肉500g×2本を室温にもどしてから,肉塊を厚さ2センチに展開する.このとき厚さにできるだけムラがないよう注意する.展開した面に砕いた岩塩をすりこむ.その後,ビター系マーマレードを展開面にたっぷりすりこむ.※甘ったるいマーマレードは禁物.できれば,〈フォション〉か〈エディアール〉のビターなマーマレードが望ましいがお値段がちょい高い.そこで今回は少し安くあげて〈サン・ダルフォー〉の無糖マーマレードを使った.
  2. 干しぶどう適量を赤ワイン+コアントロー+アルマニャックにつけこみ,柔らかくなったらいったんしぼる.残った汁は保存しておく.クルミ適量を砕く.展開した肉に干しぶどうとクルミをばらまいて(写真上),巻いた中身のフルーツがこぼれ落ちないように端から巻いていく.巻き終わったらたこ糸でしっかり緊縛して,塩こしょうする(写真中).
  3. ビニール袋2枚を用意し,赤ワイン+醤油+味噌+豆板醤+ゆずをいずれも適量混ぜ,さらに干しぶどうの戻し汁を混ぜる.巻いた肉をそれぞれの袋に移し,つくった浸け汁をたっぷり注いで,袋の口をしっかりしばる.そのまま冷蔵庫で一晩寝かす. —— ここまでの下準備は手間がかかるので,前夜にすませておいた.
  4. 一晩漬け込んだ肉を取り出し,半日ほどかけて室温にもどす(冷たいまま焼き始めると中心部分が生焼けになってしまうから).十分に熱したフライパンで周囲にしっかり焦げ目をつける.とくに,巻き込んだ口が開いている両端部はパンに押し付けてしっかり封印すること.なお浸け汁はローストポークの卓上ソースにするので,そのまま保存しておく.
  5. オーブンの準備をする.「180度」でまず予熱.タマネギを適量スライスして,オーブン皿に敷き詰める.予熱がすんだら「45分」に時間を設定し,肉を2本とも入れて焼き始める(付け合わせのジャガイモやニンジンをいっしょに焼くのもいい).焼き上がったら,肉を上下逆にしてさらに「5分」焼く.金串を中心にさし込んで10秒おいて引き抜いたときにやや熱ければよし(しみ出す肉汁は透明になっているはず).
  6. 焼けた肉はあら熱をとって冷ます(スライスは翌朝).肉を取り出したあとのオーブン皿のタマネギと肉汁をフライパンに移し,上の浸け汁を加えて加熱する.ほどよく煮詰まったらこし取り,ローストポークのソースとして卓上へ.

・〈紙カツ〉 —— 肉を焼く合間に「まかない飯」としてつくってみた.

関東で暮らしはじめて以来,「ビフカツ」というものを食べる機会がぜんぜんないが,関西では「肉」といえば「牛肉」であり,それを揚げた「ビフカツ」もまたなじみがある食べ物だ.レシピというほどのものはない.ポイントは,肉を「薄く大きく広げる」ことにある.

  1. ステーキ用牛肉1枚(100g相当)を薄く2枚に切り開く.このとき破かないように注意する.両面に塩こしょうをふる.
  2. 肉たたきで薄く大きく広げる.おおよその目安としては「30cm×15cm」くらいまでたたき広げるつもりでがんばる.※「わらじトンカツ」をイメージして.
  3. 小麦粉→溶き卵→パン粉という揚げの基本手順にしたがう.
  4. 口径の大きなフライパンに揚げ油を熱して,高めの温度でさっとカリッと揚げる.薄いビーフだからしっかり揚げる必要はない.
  5. 〈紙カツ〉を食べるときは,どろっとしたトンカツソースよりも,さらっとしたウスターソースの方がむしろ合うかもしれない.

—— この〈紙カツ〉は,「肉を味わう」というよりも,むしろ「コロモとアブラを味わう」ような料理なので,子どもはいいとして,大の大人はあまり食べないようにした方がヘルシーだろう.

◆夜になって再び冷たい雨が降り出した.明日は東京に出る.

◆本日の総歩数=9117歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前日比)=83.9kg(−0.1kg)/25.2%(+0.8%).


25 februari 2009(水) ※ 生物地理学会はまた【種】ですよ

◆午前5時半起床.曇りのち雨になる.気温は低め.晴れればそれなりに春めいて暖かいが,このようなぐずついた天気だと冷え冷えする.雨足が強くなってきた午前9時半の気温は4.4度.寒いはずだ.

◆“カンジ”・フランセーズ —— 新刊の小宮山博史『日本語活字ものがたり:草創期の人と書体』(2009年1月23日刊行, 誠文堂新光社[文字と組版ライブラリ1], 東京, 270 pp., 本体価格2,400円, ISBN:978-4-416-60902-6 → 目次版元ページ)をぱらぱらとめくっている.本書の最終章「アイディアは秀,字形は不可 —— 偏傍・冠脚を組み合わせる分合活字」では,かつてのフランス王立印刷所での漢字の活字について述べられている.同じような本を以前に読んだことがあると記憶をたどってみたら,この本(というか写真集)だった:港千尋『文字の母たち』(2007年3月23日刊行, インスクリプト, 110 pp., 本体価格3,000円, ISBN:978-4-900997-16-5 → 書評版元ページ).フランス王立印刷所を引き継ぐフランス国立印刷所に遺されていた古い漢字活字(秀英体明朝)とその印字の写真がたくさん載っている.「旅する漢字」(pp. 58 ff.)では,中国からフランスへ渡った「漢字」について触れられている.「分合」という特殊な組版の方式にも言及されている.

◆またも【種】のサバトが —— 4月4日(土)〜5日(日)にいつもの立教大学で開催される日本生物地理学会第64回大会では,またまた【種】をめぐるシンポジウムを開催します(5日).オーガナイザーがまだ講演要旨(というか“チャッカマン”)を用意していなかったので,あわててひねり出す.そのあとで,演題と要旨がまだ届いていなかった講演者1名に厚顔にも督促メールを出したという次第.今年は次のような構成で開催します:

日本生物地理学会第64回年次大会シンポジウム(→大会サイト

“種”をめぐる諸問題:錯綜する論争と解決への道筋

【オーガナイザー】三中信宏・森中定治
【司会】三中信宏
【日時】2009年4月5日(日),10:00〜14:40
【場所】立教大学・池袋キャンパス・14号館
   →地図(会場の「14号館」は細長い「10号館」の向かいにあります)

【演者・演題】→要旨はシンポジウム・サイトにて公開
 10:00 - 10:20 三中信宏「趣旨説明:【種】問題とそのおとしどころ」
 10:20 - 10:55 中村郁郎・真壁壮・高橋弘子「真核生物の分子的な種区分 “ipsum” の提案」
 10:55 - 11:30 森中定治「“種”とは何か?−側系統群をめぐって」
 13:00 - 13:35 久保田耕平・久保田典子・乙部宏「コルリクワガタ種群における隠蔽種の発見」
 13:35 - 14:10 直海俊一郎「種問題の解決に向けて」
 14:10 - 14:40 パネルディスカッション(司会:三中信宏)

—— 【種】に関心のあるみなさん,ぜひぜひご来場を.

◆もうひとつのオーガナイズも —— 昨日,交流センターから依頼されたワークショップ〈分子系統樹推定法:理論と応用〉のフォローアップ企画書を,同じタイトルで農環研の企画戦略室に提案した.次期は昨年と同じく10月を予定している.講師人選はまだ先のことだが,昨年,講師としてお越しいただいたみなさんには再度お世話になるかもしれません.その節はよろしくよろしく.また,昨年は受講者の選から漏れてしまった方々もまたアプライしてください.

◆午後のこまごま —— 昨日受けた質問は,比較法の独立対比較(independent contrasts)を実行するプログラム〈PDAP〉に関してだった.PDAP を使った経験はないが,NEXUS形式で系統情報(形質情報&ツリー情報)を用意すれば使えるようだった.PDAP マニュアルには〈Mesquite〉の data editor を使って NEXUS ファイルを準備せよと書かれているそうだ.現時点では確かに Mesquite の NEXUS editor を使うのがベストなのかもしれない.Java をごちゃごちゃ立ち上げるのはちょっと,という向きには〈NDE(Nexus Data Editor)〉という単体の Windows 用ソフトもあることはあるが,何せ古すぎるしね.

◆午後3時半.曇り.すっきりしない空模様.気温は8.5度.やや上がってきたかも.その後もときどき晴れては曇る.午後5時に撤収.気温は8.9度.

◆「どらやき」における「兎 vs. 雀」バトルについて —— 先日,南池袋にある〈すずめや〉のどらやきを送っていただいた.ここはどらやきがとても人気のある店で,基本的に並ばないと買えないそうだ.執念の行列の果てにやっとたどりつける〈すずめや〉のどらやきとは.

「どらやき」といえば上野広小路の〈うさぎや〉本店という連想と味の刷り込みはすでに完了している.確かに,かつて谷根千エリアに住んでいたころから,近場の〈うさぎや〉にはよく行った.まだできたてで,餡が暖かいのがまたうまい.こういうデフォルト設定でどらやきを口にすると,つい「〈うさぎや〉と比べると〜」というマクラことばがついてしまう.この店の「甘味のあるしっとり皮にはさまれた流れ出すような粘度の餡」を基準にして,ほかの店のどらやきを評価してしまう癖がつくということだ.いいことだか,わるいことだか.

しかし,いただきものはいつでもおいしい.ありがたくさっそくいただきました.〈すずめや〉のどらやきは,皮はしっとりしているが〈うさぎや〉ほどべたつき感はない.餡も意外にさっくりした甘味に抑えられていて〈うさぎや〉ほど甘過ぎない.お,これはこれでうまいじゃないか!(ぜんぜん評価になってへん……)

これだけ長く関東に住んでいると,「三笠」よりも「どらやき」の方が言葉としてなじんできてしまった.つくばにも〈志ち乃〉というどらやきの有名店があって,テクノパーク桜にある〈志ち乃・つくば店〉でときどき買っている.ただし,この店では小倉餡をはさんだふつうのどらやきではなく,白隠元豆「てぼ(手亡)豆」のどらやき「特選・手亡」がイチオシです.小倉餡入りだったら大粒栗が入った「栗どら」かな.

—— どらやきの写真をアップしても,店のちがいがあまりはっきりしないことが多い.東十条〈草月〉の「黒松」のように,皮が「虎斑」だったりしたら,識別形質としては申し分ないのですがね.

◆本日の総歩数=7802歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=84.0kg(+0.9kg)/24.4%(−0.9%).


24 februari 2009(火) ※ 「牛丼」が進化を遂げる小雨の夜

◆午前4時半起床.曇りときどき晴れ.気温プラス1.6度.お金まわりのトドが「幻獣」だったことが判明したので,エアポケットのようにぽっかりと.原稿でも書くか…….

◆日経サイエンス届きました —— 『日経サイエンス・2009年4月号(Vol. 39, no. 4)』(2009年4月1日発行,日経サイエンス社,ISSN:0917-009X → 版元トップページ).特集〈進化する進化論:『種の起源』から150年〉が載っている日経サイエンスの最新号(2009年4月号)が届いた.まもなく書店にも並ぶでしょう.対談記事「世界を束ねる進化の系統樹」は pp. 82-87,監修(という役回りの)記事:H. A. オール「ゲノムから見た自然選択のパワー」は pp. 26-35.他にもおもしろい記事があり,詳細は日経サイエンスのサイトをごらん下さい.対談記事はゲラを十分にチェックしたはずなのに,“灯台下暗し”的にミスが二カ所も残っていた…….

◆午前10時.曇り,気温4.7度.寒い.午後になっても気温は上がらず.午後1時半,曇天が続き,気温は6.2度.

◆ベイズ系統学とベイズ生態学の新刊訳本 —— 共立出版,やりますなあ.まずはベイズ系統学本から:Ziheng Yang著[藤博幸・加藤和貴・大安裕美訳]『分子系統学への統計的アプローチ:計算分子進化学』(2009年3月19日刊行予定,共立出版,東京,ISBN:978-4-320-05677-0 → 版元ページ).おお,この本が翻訳されるとは! 原著は:Ziheng Yang『Computational Molecular Evolution』(2006年12月刊行,Oxford University Press[Oxford Series in Ecology and Evolution], ISBN:0-19-856699-9 [hbk] / ISBN:0-19-856702-2 [pbk] → 目次).ベイズ系統学がお好きでしたらどーぞ.

次はベイズ生態学本 —— Michael A.McCarthy著[野間口眞太郎訳]『生態学のためのベイズ法』(2009年3月9日刊行予定,共立出版,東京,本体価格4,500円,ISBN:978-4-320-05678-7 → 版元ページ).うーむ,“罪”な共立出版は生態学会盛岡大会で大会参加者のサイフをさらに軽くしようという魂胆らしい…….原書:Michael A.McCarthy『Bayesian Methods for Ecology』(2007年刊行,Cambridge University Press, ISBN:978-0521850575 [hbk] / ISBN:978-0521615594 [pbk])は有名な「かえる本」ですが,翻訳書の書影はもっと無難みたい.

◆午後のこまごま —— 『現代思想』編集部より連絡あり.ダーウィン特集の「ブックガイド」の編集方針と今後の進捗について.メールのピンポン.何と「4月号」での特集だそうで,3月末がマジなデッドラインとか./農林水産研究交流センターより電話あり.昨年10月に開催したワークショップ〈分子系統樹推定法:理論と応用〉がことのほか評判がよかったので,ぜひ今年もよろしくとの依頼.ご要望があればやはりお応えするのがお勤めでしょうか.あとでライン経由で申請書書式が届くという./またひとつ年をくってしまう2月27日(金)は東大の専攻卒論発表会だが,午後1時に〈ルオー〉にて NHK Books 編集部と打合せ.※新たな「加圧」の日々の始まりか…….

◆午後4時半に撤収.小雨が降っていた.気温6.3度.夜になってもしとしと降り続く.

◆「牛丼」の“進化形”は? —— 今夜の夕食は突発的に「牛丼」をつくることになった.特価の激安牛肉を大量に買い込み,塩・清酒・白ワイン・アルマニャックで下味をつけ,いつもどおりの「関西風すき焼きレシピ」にしたがって,肉を炒めながら砂糖をふっていく.つぎに野菜(今日は玉ねぎと白菜)を投入し,ついでに椎茸と豆腐もぶちこんで,しょうゆと清酒で味つけして、水気を出していく.うちの場合、水を足すことはなく,野菜からの水分で牛丼にしてしまう.あとは弱火でことことと気長に煮込めばすむはずだった.しかし ——

「これだけいい肉汁が出ているのだから,ひょっとしてジャガイモを一緒に煮たらさぞやうまかろう」とふと思いつき,昨日届いたばかりのジャガイモをよく洗って,煮崩れて汁が濁らないように皮付きのまま二つ割りにして,五分ほど電子レンジで電磁波蒸し.ごろんと牛丼鍋に投入した.さあ,これでもうあとは弱火でことことと気長に煮込めばすむはずだった.しかし ——

「ジャガイモだけでなく,ゆで卵を煮たらさぞやうまかろう」とさらに思い立ち,急いでゆで卵(半熟卵)を用意して皮を剥き,すでにふつふつと煮えている牛丼鍋の底に深く沈めた.これでようやくできあがりだ.ジャガイモと煮玉子には味はやや濃いめの方がいいので,きび砂糖でそのつど調整する(味醂は使わない).

夕方しこみはじめてから,もう2時間ほど経った.さて,できあがったこの料理は何と呼べばいいのだろうか.元の出自は確かに「牛丼」だが(そのつもりでつくりはじめた),その後の“進化”の過程でいったんは「肉じゃが」に変身しそうになったものの、さらに煮玉子が加わった時点で,トラッドな飲み屋によくある「肉豆腐」みたいな姿へとさらなる“進化”を遂げた.悩んでもしかたがない分類不能の料理なので,あえて命名はせず,肉だけひろって出自のまま「牛丼」にするもよし、また肉とジャガイモで「肉ジャガ」として食するもよし,さらにまた肉と豆腐と煮卵を皿に盛りつければきりっと冷えた〈郷乃誉〉の肴にもなる.

—— お好みの食べ方をすればそれぞれシアワセな夕食になるではないか.うまければそれでいいのだ.

◆本日の総歩数=7475歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.1kg(−0.3kg)/25.3%(+0.3%).


23 februari 2009(月) ※ 冷たい雨が降りお金の始末をする

◆午前4時半,平日のデフォルト起床時間だ.予報通り外は本降りの雨.気温は5.5度.その後,明るくなってからも雨がしとしと降り続いている.

◆未明のこまごま —— 確定申告に絡む必要経費の領収書などをがさっと束ねる.これで“素材”は準備完了だ./カマジン訳本の割引購入アナウンスを作成する./2月27日(金)は早朝から「料理人」になりきれとの天命が下る.

◆新刊着便 —— Nicolaas A. Rupke『Alexander von Humboldt: A Metabiography』(2008年6月刊行, The University of Chicago Press, Chicago, 316 pp., ISBN:978-0-226-73149-0 [pbk] → 目次版元ページ).ドイツにおいて「アレクサンダー・フォン・フンボルト」の人物像がこれまでどのように描かれてきたかをたどった本.彼が没した1859年以降,ドイツという国家がたどってきた道のりとフンボルト伝記との関わりについて考察している.序章の p. 14 図1に,フンボルトに関する引用分析のグラフが載っている.生年(1769年)と没年(1859年)のそれぞれ一世紀ごとに,鋭いスパイクのような“引用の峰”が目を引く.しかし,そのようないわば“一過性”のブームを除去しても,なお残る増加トレンド(著者の言う「フンボルト現象」)に注目しよう.「フンボルト」は時代を超えて着実に注目を集めつつあるということだろう.著者もまたその事実をふまえて本書を著したにちがいない.海流やペンギンだけが「フンボルト」ではないのだ.

—— 原本は,2005年に Peter Lang から出版された同タイトルのハードカバー版:Nicolaas A. Rupke『Alexander von Humboldt: A Metabiography』(2005年刊行,Peter Lang, Frankfurt am Main, ISBN:978-3-631-53932-3 [hbk] : out of print → 版元ページ).

◆午前のこまごま —— 3月の出張予定をチェックする.遠出はないけれども,近場は何日かある.すべて大学関係(いずれもセレモニーがらみ)./メーリングリスト宛にカマジン訳本の生態学会盛岡大会限定の事前割引購入アナウンスを流した.たくさん売れてくれますように./海游舎から電話あり,3月10日(火)に刷り上がったばかりのブツを引き渡す場所について.中野坂上の日本酒〈豆柿〉にて,午後6時からとのこと.了解いたしました.

◆午前11時,まだ雨が降っていて,気温は6.0度どまり.寒い.

◆午後のガクゼン —— さて,予算残額の執行をと思って,忌まわしき会計システムを立ち上げて,再度,今年度の残額を確認してみたところ,ぶわーっと決済されていて,ほとんど残額が「ゼロ」であることが判明してしまった.あれれ.ちくちく項目入力しなくてすんでよかったともいえるが,何だかフトコロが寒くてさみしいな…….この件,完了です.今年はもうなーにも買えない.というか,ほとんど何にも買っていないうちにすべて削り取られた感じがするなあ.※来年はもっと「裕福」になる努力をしましょうか.

◆雨は午前のうちにあがり,午後は天候回復,夕方には晴れ間も見えてきた.ただし,気温は低く,撤収した午後5時前には5.3度まで下がっていた.

◆地元茨城県の須藤本家(友部)がつくっている〈郷乃誉〉の「純米吟醸・無濾過・生々」が手に入った.「火入れ」したのは前に飲んだことがあったが,「生々」は初めてだ.吟醸香が高いのが〈郷乃誉〉の特徴.ちょこちょこと肴を用意してちびりちびりと.肴といっても,油揚げの片面に味噌を塗ったものをトースターでちょい焦げにするだけというお手軽なもので.ついでに,ジャーマンポテトもつまんだけれど,これは×だったかも.

—— 体組成計の数値を横目にしてまで飲み続けますか,アナタっ.

◆本日の総歩数=8500歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前日比)=83.4kg(0.0kg)/25.1%(+1.0%).


22 februari 2009(日) ※ 地下から出て世間的雑事に絡まる

◆午前6時起床.快晴.早朝やや冷え込む.日射しはもう春を感じさせるが,夜明け前は冬のまま.

◆「体組成計」という名の王様 —— 毎朝定時に体重測定をしているのだが,いままで使っている体重計がそろそろへたってきた(測定ごとにばらつきが大きくなってきた).先日,計測機器メーカー〈TANITA〉の「体組成計InnerScan BC-710」という最新鋭機が届いた.「体重」と「体脂肪率」だけではなく,「内蔵脂肪レベル」,「基礎代謝量」,そして「体内年齢」まで測ってくれるという.さっそく身体データの入力など初期設定をすませて,いざ計測をと乗ってみたところ,「げ!」というほど体重と体脂肪率の数値が高く出てしまった.その他の数値も総合すると,要するに,単なる「メタボ系おじ[い]さん」のカテゴリーに入ってしまうわけで,しばしガクゼンとした.しかし,強く反抗するわけにもいかず,体組成計の言われるままその「評決」にひれ伏すしかないのだろう.で,毎日の計測データの日録への公表をどうしようか.隠すわけにはいかないし,かと言って,そのまま書いたら「あの野郎は連日飲み歩いているから“身から出た錆”だ」と思われるにちがいない.

◆日射しを受けているときは暖かいが,風が吹くと寒い.しかし,花粉だけはふんだんに飛び交っているらしく,今年になってから初めて「体内センサー」が本格的にぐすぐすと始動しはじめた.遠景は春霞がかかっていて,筑波山の輪郭がぼんやりしている.

◆「書影」の著作権と使用許可願について(続報) —— 先日の指摘を受けて以来,日録に公開する「書影」(←この言葉は業界用語なので辞書にはまだ載っていませんね)の新規分については,一冊ずつ出版社に連絡して了解を取るようにしている.本当は過去の日録についても同様の措置をとらないといけないのだが,すでに6年近くのログが堆積しているので,いっぺんにカタをつけることは不可能だ(専従のバイトでも雇います?).数年間かけてぼちぼちとさかのぼるしかないだろう.

さて,それぞれの出版社には下記のような定型的文面で「書影使用願」をメールで送るようにした:

From: minaka@affrc.go.jp
Subject: 【許可願】貴社出版書籍の書影画像のウェブ使用
To:   ******@******

●●●書房御中:
三中信宏と申します.はじめまして.

貴社から出版されている本の書影(書籍画像)を,私が開設しているウェブサイトで使用
させていただきたく連絡いたしました.

私が個人的に開設しているウェブ日記(dagboek):
http://cse.niaes.affrc.go.jp/minaka/diary.html
において,貴社から出版された下記書籍を紹介・書評しています.

  ○○○○著『◎◎◎◎◎』
  △△△著『□□□□□□』

つきましては,上記のサイトでの当該書籍の書影利用を許可していただけないでしょうか.
事後連絡で申し訳ありませんが,ご一考をお願いいたします.

また,今後,貴社の他書籍につきましても上記サイトで紹介や書評を公開することがある
かと思いますが,書影の利用許可は今回と同様に連絡させていただくということでよろし
いでしょうか?

※初めてメールをいたしましたので貴社の中での対応窓口がわかりませんでした.適切な
 ご担当者さまに本メールを転送していただければ幸いです.

このような「書影使用願」を出し始めたばかりで,まだ十社ほどしかメールを送信していない.しかし,幸いなことに,メールを出したすべての出版社から「どうぞ使って下さい」という快諾の返事をすでにいただいている.どうもありがとうございます.

書影の著作権についてはまだ論議が尽くされていないところがあって,ひょっとしたら出版社がOKしただけでは(法的に)不十分なのかもしれない.しかし,ぼくとしてはこの点に関して「100%パーフェクト」を達成するつもりはさらさらない.「たった10%の努力」で「90%もの達成」が得られればそれでいいでしょう.何も手を打たない場合に比べれば「潔白度」はきっと高いだろうから.一方,「残り10%」の完璧さを期すのに,さらなる「90%」の努力をせよというのはぼくのタスクではないと思います.

◆午後になって雲が多くなり,晴れときどき曇りの空模様に.天気予報によると,これから下り坂で,明日前半にかけてしだいに雨になるらしい.

◆韓国の〈カウルデジュ〉 —— 近所のスーパーで遭遇した韓国製の「秋ナツメのジュース」.180mlの小さな缶ジュース.「食」に関しては怖じ気づくことは日頃あまりないのだが,ハングルがびっしりと呪文のように書き込まれていて,最初はちょっとびびる.描かれた絵柄を見ないと「なつめ(棗)」のジュースであることはわからない.ひょっとして韓国の国内向け商品で,海外で売られることを想定してはいなかったかも.ちょっと調べてみたら,この〈カウルデジュ〉は韓国国内ではかつて大ブレークしたそうだ.

で,肝心のお味は? —— 一口飲んでみると「ややビミョーな甘味」というビミョーな評価.「プルーンを薄めたような」という形容詞がつけられているようだが,個人的にはそこはかとなく「やや酸味のある薄いひやしあめ」という形容詞が色と味を表現するのにより適切かも.要するに,ベタ甘では決してなく,人生の機微を知りつくした(なんのこっちゃ)シブイ甘味というか何というか.

ただ,成分は「なつめ」と「クコ」なので,健康的であることはオリガミつき.だから,日本酒を呑んだくれては毎朝ビクビク体重計に乗っているような生活習慣をあらためて,〈カウルデジュ〉をもっと飲みなさい>ワタシ.

◆あれやこれやの世俗的雑事のついでに,今年もまたそのシーズンとなった「確定申告」の書類をちくちくと取り揃えてみる.源泉徴収票類はすべてOK.しかし,領収書の束が必要だった.週明け早々の明日,きちんと耳を揃えないと作業が進まない.

◆本日の総歩数=4764歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.4kg(−0.3kg)/24.1%(+0.3%).


21 februari 2009(土) ※ 日録はしばしアングラ潜伏となる

◆午前5時半起床.晴れ.やや冷え込む.

◆しばし地下潜伏活動へ —— 昨日の夜から,計算センターのウェブサイトにftpできなくなってしまった.そうだった.昨夜からはシステム更新作業の準備として研究用ウェブサーバーにはアクセスできなくなったのだった.したがって,更新作業がすべて完了する来月2日(月)までのおよそ10日間は,日録の更新もまた不可能になる.したがって,この期間は dagboek は「オモテの世界」での活動を停止し,パーソナルな「ウラの世界」でこつこつと日々の更新がなされることになる.しかし,よく考えてみれば「日記」というものはもともとそういうひっそり内観的な性格をもっているはずなのだ.ほかの誰かが読むことをまったく想定せずに,ひとえに書き手のためだけに書き綴られていく極私的行為.予定になかったこの「地下潜伏」中はこの原点にいま一度たち帰ることにしよう.

◆午前中は冷たい西風が吹き荒れた.昼前に牧園の〈david pain〉へ.おめでたいことに第二子が無事に生まれたと David さんから聞いた.すみらーにも妹ができたということだ.善哉善哉.その後,農環研に潜入.気温は7.1度だが,西風の風速が10.1メートルと強い.体感的に寒いはずだ.

◆土曜の居室にてカマジン訳本の販促活動に耽る —— とりあえず,つぎのような宣伝文を付けた上で,いくつかのメーリングリストに近刊予告することにした:

本書は,「自己組織化(self-organization)」の理論に基づいて,生物界に見られるさまざまな「群レベル」の現象がどのように説明できるかを論じています.

「自己組織化」の理論に関する研究や著作はこれまでにもたくさんありますが,本書の最大の特徴は「具体例」の豊富さにあります.とりわけ社会性昆虫におけるさまざまな群レベルの行動が詳しく取り上げられ,個体どうしの単純な規則からいかにして群における統制のとれた複雑な挙動が生まれるのかが理論・実験・シミュレーションを用いて考察されています.

また,自己組織化による説明を提出するにあたって,つねに対立仮説との比較検討を怠らない姿勢を全編にわたって貫いている点で,本書は生物現象の健全なモデリングのあり方を提示していると私は感じました.「自己組織化,いつでもOK」というナイーヴな信念に安住することなく,場合によっては対立仮説による説明の方が妥当であると率直に結論しているケースもあります.

本書で実行されている自己組織化シミュレーションを実行するスクリプトは〈StarLogo〉によって書かれていて,各章ごとにアルゴリズムとスクリプトの説明がなされているので,数理モデリングに関心のある読者は実際に自分で試すこともできます.

とても分厚い本ですが(値段も高いし),マクロな生物現象を説明する理論とそれを支えるデータとの絶妙なバランスが感じとれる著作であると翻訳しながら感じました.

著者の一人である Nigel R. Franks さんは,日本語版への序文の中で:

    本書の著者の一人として,この翻訳書を手にするすべての日本人読者のみなさん
    が,本書で述べた生物学の事例とそれを記述する数理モデルからインスピレーシ
    ョンを得ることを期待しています。そして,自己組織化という新しい,魅力ある,
    そして進展の著しい科学領域のお  もしろさをぜひ分かち合いましょう。

と書いてくれました.

本書の翻訳には途方もなく時間がかかりましたが,とてもいい仕上がりだと自画自賛しています.

さあ,おもしろさをぜひ分かち合いましょう!

—— ブツが並ぶ最初の機会は来月下旬の生態学会大会(盛岡)だ.そのときまでに「特価割引販売」に関する次なる宣伝を打つ必要がある.海游舎にメールをして割引価格などについて確認する.

◆午後3時過ぎに帰宅.冷たい西風はなお強く吹いて,とても寒い一日だった.春なお遠し.

◆タイポグラフィー史の新刊 —— 小宮山博史『日本語活字ものがたり:草創期の人と書体』(2009年1月23日刊行, 誠文堂新光社[文字と組版ライブラリ1], 東京, 270 pp., 本体価格2,400円, ISBN:978-4-416-60902-6 → 目次版元ページ).本書が出版されたことは,先月,府川充男さんからもらったメールで知った.出版記念イベントも開催されたそうだ.漢字や仮名の活字が明治以前の国際社会の中でどのように生み出され,そして明治時代初期の日本に伝わってきたかをたどった活字史の本.たくさんの歴史的資料が図として載っていて,見飽きない.活字ファンは必見.

◆夜は,系譜学史に沈潜する.

◆本日の総歩数=5364歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.7kg(−0.3kg)/23.8%(0.0%).


20 februari 2009(金) ※ 冷たい雨がやんで急速に天候回復

◆午前4時前に起床.冷たい雨(not雪)が降っている.気温はプラス1.3度.北関東では雪が積もりつつあるらしい.

◆明け方のこまごま —— 東大農学部より連絡あり.「エコロジカル・セイフティー学特論I」の追加履修登録が認められたとのことで,UT-mate から該当院生の成績登録を完了する.これで農学部関係の成績評価とオンライン登録はすべて完了した./来たるシステム更新に先だって,メーリングリストの設定ファイル(config.ph)をダウンロードして保存する.新システムが稼働したあとで,旧システムの設定との照合をしないといけないので,ま,念のためです.いずれにしても,移行期間終了後のスタートとなる3月2日(月)午前5時が「勝負」かな.

◆実録「An entomologist in prison」 —— 川村俊一『虫に追われて:昆虫標本商の打ち明け話』(2009年1月30日刊行, 河出書房新社, 東京, 238 pp., 本体価格1,600円, ISBN:978-4-309-01903-1 → 目次版元ページ).タイトルに惹かれて手にしたのだが,「打ち明け話」というやや軽めのタイトルにしては,本書に書かれてある内容は本人にとってはもっともっと深刻で,笑い事ではすまされない.かつて19世紀の「プラントハンター」たちは,身の危険も省みず,珍奇な植物をもとめて危険な地域にも飛び込んでいったという.本書の著者は現代の「バタフライハンター」として生計を立て,東南アジアをはじめインドからヒマラヤ地域を採集旅行してきた.本書の第1章「タイガーヒルに始まる」では,著者は自らの「昆虫少年」としての生い立ちを振り返っている.より珍奇でもっと美麗な昆虫を求めて海外に雄飛するまでの個人史は,続く第2章へのイントロだ.

まちがいなく多くの読者は,豊かな自然と昆虫相に恵まれたこれらの地域を旅してきた“虫屋”の夢のある冒険譚を期待して本書を手にするにちがいない.オビにも「虫にまつわる面白い話満載」と書かれている.しかし,本書の大半(240ページ中の130ページ)を占める「インド獄中記」(第2章)は,そういう軽いお話などではけっしてなく,むしろ映画の題材になりそうなほど“生死を懸けた”数ヶ月間の記録だ.ぼくも最初にこの「獄中記」を読んだときはかなり重い衝撃を受けた.誰一人として頼りにできない場所で,当局から違法行為を犯したとして拘束されたとき,どのように生き延びるのか.国外でのフィールド調査では,ときとしてこういう危険が身近にあるという体験談のひとつだが,この著者はよく生きて日本に戻ってこられたと思う.

「昆虫標本商」という世間的には珍しい生業の日々をどのようにして送っているのかについても文面と行間の双方から伝わってくる.標本商は「商品」としての昆虫(著者の場合はチョウ)を売買する「商人」に徹するべきなのか,それとも昆虫という生き物に好奇心を持ち続ける「研究者」としての側面を堅持すべきなのか.著者自身がその間を揺れ動きながら生きてきた経緯がわかって興味深い.しかし,インドの獄中から著者を救い出した「蜘蛛の糸」は,彼が非合法な麻薬密売人などではなく,「サイエンティスト」であるという証拠の提出だった.

素朴な意味での「虫屋の冒険」をエンジョイしたい向きは,むしろ第3章「昆虫を巡る人々」から読みはじめるのがいいかもしれない.膨大なコレクションをつくってきた有名な昆虫標本商との長年にわたる交際が綴られているからだ.もちろん,彼らの「顧客」たち(プロの昆虫学者も含まれる)とのつきあいにも触れている.著者の言葉を借りれば「虫で食べていく」とはこういうことなのかという達観のような読後感を最後に漂わせている.

本書のいたるところ,著者が追い求めた珍品の蝶のエビソードが散りばめられている.あれだけ危険な目に遭いながら(インドだけの話ではないらしい),蝶を語るときの生き生きとしたようすはそれだけの「魔性」をこの昆虫がもっているからにちがいない.本書を真っ先に手に取るのは,多かれ少なかれ「虫に追われた」経験のある昆虫マニアや昆虫コレクターかもしれないが,“六本足”がお好みではない読者も世の中にはこういう人生があるのかという新鮮な感想を抱くにちがいない.

—— それにしても,この著者はこれからどのような人生を送っていくのだろう.

◆午前10時半,雨足はさらに強くなる.気温は3.6度.湿った寒さがじわじわとしみ入る.

◆日中のこまごま —— 日本数理生物学会のニュースレター最新号(no. 57, February 2009)が届いた.先月,短期決戦で格闘した記事:三中信宏「【研究最前線】幾何学的形態測定学:「かたち」の数理と統計の最前線」は pp. 6-13 に載っています.たいへんお世話になりました(葉山に一礼っ).最新の1年間のニュースレターは会員以外は閲覧できませんが,それを過ぎればpdfで誰でも自由に読めるようです.※かく言うワタクシは非会員なのですが./研究交付金の会計処理の締切が一週間後に迫ってきた.早々に残金の大半を決済してしまおう.ということで,今年度の残額をにらみながら,会計システムにちくちくと入力していく.MacBook Air 買いますぅ.

◆午後になって急速に天候が回復してきた.正午過ぎに雨が小降りになったと思ったら,見る間に空が明るくなって,日射しがさんさんと降り注ぎ,午後1時半には4.6度しかなかった気温が,午後3時には8.2度まで上がってきた.低気圧が関東南岸を通過して,前線を境に寒気と暖気がいっぺんに入れ換わったのだろう.午後4時,からっと晴天,気温は9.2度.

◆夕方のこまごま —— 公費購入する予定の物品について周辺機器まで含めて購入金額の見積もりを出した.公費での書籍購入についてはリッチな大東くんに相談する.これで何とかなるでしょう.残金はいつものように雑多な消耗品の購入にまわすことにする.で,忌まわしき「会計システム」への入力作業は(やり方をまた忘れてしまった……)この週末かまたは週明けにするか./そういえば,年度内の出張伺も日程が確定しているものからどんどん出していかないと.

◆午後5時半に撤収する.晴れ,気温7.0度.また気温が下がってきた.

◆本日の総歩数=7248歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=84.0kg(−0.1kg)/23.8%(−0.5%).


19 februari 2009(木) ※ 寒くて凹凸のない日が過ぎていく

◆午前6時起床.北風が強く晴れわたる.寒い寒い.

◆いつの間にか「80万台」に —— 〈leeswijzer〉のアクセスが,次の大台である「80万」に達していた.昨日の朝にカウンターをふと見てみたら「801000」を越えていたので,逆算して2月17日には「80万台」に到達していたようだ.「70万」に達したのが昨年9月28日でしたので,今回もまた約4ヶ月ほどでさらなる大台に乗ったことになる.どうもありがとうございました.今後ともよろしく.

◆午前のこまごま —— 東京農大の「教授の会」のお知らせ.今回も欠席ということで./生物地理学会の評議員会への出欠の問合せ.こちらはもちろん出席ということで返信を出す./分子系統樹の推定に関するコンサルティングの要請./日経サイエンス編集部から図版用の原本が返されてきた.Forlong画像の eps ファイルも.どうもありがとうございました./東大理学部から来年度の生物統計学シラバスのチェック.問題なかったので即返事をする.

◆午前10時半.晴れ.北風が吹いて6.5度.春から冬への逆戻り.

◆トツジョとして巨大トドが出現する —— 昨夜は呑んだくれていて気づかなかったのだが,計算センターからネットワークの「次期システム」への移行作業のだんどりについて急な連絡があった.とくに,メーリングリストの管理運営への影響が気にかかる.明日2月20日(金)から下準備に入り、来週の27日(金)から週末にかけてイッキに作業が進められることになった.この作業期間中はメーリングリストでの送受信はもちろん,設定を変更したり,登録アドレスを処理するという基本操作がいっさいできなくなる.そして来月3月2日(月)からは新システムが稼働することになるが,旧システムでのML設定がどのように継承されるかが当面の問題だ.現行の config.ph を取得しておくのが安全策だろう.

◆いよいよゴールか! —— 海游舎から表紙カバーの最終決定版が届いた.あわせて目次と日本語版まえがきのテキストファイルも.これで,事前の宣伝を打つことができるというものだ.


電話連絡によると,翻訳本の現物は3月9日(月)に見本刷ができるという.そして,盛岡での生態学会大会会場で予定通りにブツをずらっと並べることができるそうだ.ページ数は550ページに達する.本体価格も「6,800円」と確定したところで,書誌情報を記しておこう:

スコット・カマジン,ジャン-ルイ・ドノブール,ナイジェル・R・フランクス,ジェームス・シュナイド,ギ・テロラ,エーリック・ボナボ著[松本忠夫・三中信宏共訳]『生物にとって自己組織化とは何か:群れ形成のメカニズム』(2009年4月1日刊行,海游舎,東京,本体価格6,800円,約550ページ, ISBN:978-4-905930-48-8 → 版元ページ原書目次原書感想

見本刷ができた翌日の3月10日(火)に初台までブツを受け取りに行くことになった.この3年間というものとても長い道のりだったが,これでやっとカマジン本がらみの「翻訳トド」はすべていなくなった.次にやってくるのは「販促トド」ですか? それから,カマジン本サイトもこちら側でつくっておいた方がいいですかね.

◆午後のこまごま —— 『現代思想』誌のダーウィン特集での「ブックガイド」の企画に乗ることにしたと佐倉さんに返事をする./NHK Books の打合せの件で返信をする./メーリングリスト移行に伴う事務連絡を各MLに配信する.この移行作業の真っ最中の「2月27日〜3月2日」はMLダメ・メール不通・ウェブ閉鎖という「三重苦」の期間となる.死んだも同然か.あるいは,どこかに出家でもするか.

◆午後5時に帰宅.北風が寒い.夜遅くなって雨が降り出した.予報では夜中には雪になるとか.明日は不安定な天気で,前線通過の前後で季節が切り替わるらしい.朝方までは雪が降り積もり,午後からは春の陽気とか.めちゃくちゃ.

◆本日の総歩数=5291歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=84.1kg(+0.5kg)/24.3%(−0.2%).


18 februari 2009(水) ※ 寒風吹いて鯛焼きから湯気が立つ

◆午前5時半起床.晴れわたり,きりきり冷え込む氷点下(きっと).今日は東京出張の日.

◆朝のこまごま —— 『生物科学』特集「枕詞」の原稿を改訂し,池袋にメール送信する.この件はこれにて一件落着.改訂に際して,生物学哲学がらみの翻訳書近刊2冊についての情報を入れようと思う.元締にメールで書誌情報などを訊く./その後,寒風の中を農環研にちょっと出向いて2時間ほどごそごそする.さくっと帰宅.午前10時半の気温は6.8度.乾いた冬晴れでぴりぴりと寒さが刺さる.北寄りの風が身にしみる./某査読トドが黙って立ち去ってくれた.ありがとうございます&ごめんなさい./所内の交付金の会計事務は月末まで,処理しなければならない案件多いです.ごめんなさい.ぜんぜん進んでいません.

◆東京へ —— 11:25発のTX快速で都内へ.正午過ぎに根津で下車したのち,ちょっと寄り道して〈根津のたいやき〉にて7匹釣り上げる.焼きたてなので湯気が立ち上る.ここの鯛焼きは冷めてもそのまま食べるのが餡の風味が味わえていいとのこと.トースターや電子レンジで再加熱してはいけないらしい.知らなかった.

S坂を上って,地震研裏口から東大に侵入する.農学部事務で堆積していた大量の郵便物・配布物を受け取ってから,隠れ部屋へ.ここも静かになったものだ.郵便物の仕分けをする.所属先がふたつあると,業務や会議は正確に二倍になり,飲み会は三倍?増し,そして郵便物は1.5倍ほど増えてしまう.東大農学部宛に届けられたものは場合によっては受け取りがかなり遅くなってしまうことがあります(関係諸方面,ご注意を).

◆あ,ぼく宛の献本が郵便物の山に埋まっていた(どうもありがとうございます):齋藤晃(編)『テクストと人文学:知の土台を解剖する』(2009年1月20日刊行,人文書院,京都,290pp.,本体価格3,200円,ISBN:978-4-409-04095-5 → 目次版元ページ).本書は編者が提唱する「テクスト学」をめぐる論文集.テクストすなわち「文字や数字,図などの視覚的記号を定着させた人工物」(p. 9)が社会や文化の中でどのような働きをしてきたかを広くとらえようとしている.執筆陣は多彩だが,南米ボリビアや東南アジアでのフィールド調査,そして日本での事例研究が挙げられている.なお,本書の編者は,本書と内容的に関連するボリビアにおける調査論文集:Clara López Beltrán and Akira Saito (eds.)『Usos del documento y cambios sociales en la historia de Bolivia』(2005年7月15日刊行,国立民族学博物館,ISBN:4-901906-32-1 → 目次)の編者でもあるが,同時に南米宗教美術と建築に関する大著:岡田裕成・齋藤晃『南米キリスト教美術とコロニアリズム』(2007年2月25日刊行,名古屋大学出版会, ISBN:9784815805562 → 目次)の共著者のひとりでもある.

◆午後1時過ぎから2時間あまり,専攻教員会議.年度末だからか,人事案件の報告がとても多い.備忘メモ:3月23日(月):東大・農院・学位授与式/3月24日(火):東大・農学部・卒業式.いずれも午後から.専攻謝恩会もあるんでしょうね.

◆直帰.つくばに帰り着いたのは午後4時半.まだ日は高いが,北風は相変わらず冷たい.

◆寒い夜は不節制の極み —— 東京農大・昆研のVIPトリオが農環研のプロジェクト推進会議のため昨夜からつくばに来ている.今日から明後日の午前中までは会議漬けとのことだ.せっかくの機会なので,〈笠真〉での宴席を予約しておいた.予定よりも少し遅れて午後7時過ぎに店に入る.今日は予約客が多く,賑わっている(初めて見る光景だ).たとえ農学部長やK島さんが飲み過ぎて気分が悪くなってももう心配はないぞ(まわりは医者だらけだし病院は近いし).

今夜もとてもたくさんいただきました:出だしはいつもの〈大山Gビール〉から.ただし,今夜は白ビールのヴァイツェンではなく,もっとダークな「スコッチエール」の方だった.その後,順番に:新潟の〈村祐〉,筑波山麓・明野の〈来福〉,山形の〈十四代〉の「純米吟醸・生・出羽燦々」,兵庫の〈奥播磨〉の「うすにごり」,高知の〈文佳人〉,そして再び〈来福〉の「真向勝負」(東京農大人脈だし).料理はいつものあんこう鍋に加えて,鰹のたたき,ししゃも,あん肝の味噌練り,そしてそれを塗った油揚げ焼き.

健康的に午後10時に店を出て,宿泊先のホテル松島までお送りする.夜になって気温が下がりはじめたが,アルコール摂取量が多かったせいかさほど寒くはない.明日の午前中は“ちゅう”さんの発表だそうだが,だいじょーぶですか? K島准教授もやや崖っぷちみたいだし,いざとなれば農学部長がピンチヒッターかっ.

【追記】あ,この夜の「証拠写真」が店主ブログにアップされているっ!:「久々満席御礼」(2009年02月18日 20時48分37秒).手前のアヤシイ4人組がワタクシたち.遠景の華やいだみなさんは筑波大病院の女医さんたち.写ってないもっと手前にこれまた筑波大のお医者さんカップルが.それにしても,やっぱり「満席」は久々のことか.

◆うう.呑み過ぎ…….

◆本日の総歩数=16853歩[うち「しっかり歩数」4778歩/46分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前日比)=83.6kg(−0.1kg)/24.5%(−0.1%).


17 februari 2009(火) ※ 一トドが去らずに一トドが増える

◆午前4時15分起床.晴れ.北風が強くてプラス0.1度という最低気温以上に寒く感じる.

◆未明のこまごま —— メール受信箱を見たら4ヶ月も前の質問メールが隅の方に押しやられていた.ときどきこーいうことがあって,失礼をしている.とくにやっかいそうな手間のかかる質問ほど「あとで」の連発で順位が下がっていく傾向がある.申しわけありません.忘れてはいないのですが,またあとで.これに比べるとメーリングリスト関連の業務はささっとすませられてうれしい.

◆トド撃ちリストの更新 —— ここのところ原稿の決着を次々とついているので,月半ばだがトド撃ちリストを更新することにした.月初めに比べればだいぶ減ってはいるが,次なるトドが擡頭しようとしている.要注意.

◆午前10時.晴れ上がって北風がとても強い.気温は5.4度.

◆生き残る旧トドとやってきた新トド —— 昨日ケリがついたはずの『生物科学』原稿へのコメントが届いた.気分はもうネクストなのですが,指摘された箇所について少し再考してみよう.でも,大きく改訂するつもりはありません./計量生物学会から連絡.J-Stage の電子化ジャーナルに関する説明会に出席をとの依頼.もう何年も前に同じような説明会に参加したことがあったなあ.今回は3月13日(金)13:00〜16:00にメルパルク東京にて.

◆突発的「著作権」トドの狼藉 —— 昼下りに領域長が来室.次期の研究ウェブ(研究情報センター)を利用する際には,公開内容に関する「著作権がらみ」のトラブルがないようにとのこと.とくにぼくの場合,この日録に公刊図書の「書影(=書籍画像)」をどんどん掲載していることが,潜在的なトラブルのもとになるかもしれないとの指摘を受けた.書影画像の著作権は出版社にあるのは確かだ.しかし,この日録を公開してもう6年になろうとしているが,いまだに一度もクレームを付けられたことはない.しかし,「万が一」を想定せよという危機管理のポリシーがこの独法にあるのならば,その方針に従うのはしかたないだろう.

では,どーするか? —— 答えは実に単純で,「著作権者の許可が必要」であるとしたら,その許可を取ってしまえばいいわけだ.「抜け道」とか「けもの道」をわざわざ探すまでもない.正面突破で合法化すればいいわけだ.そこで,ぼくの日録でよく取り上げる出版社数社(とりあえず)にメールを出し,「貴社の書籍の書影をウェブ公開してもいいか?」と問合せた.すぐに二社から返事があり,「まったく問題ありませんからどーぞ」とすぐにOKの返事があった.なーんだ,悩むことなんかぜんぜんなかった.ことの顛末を領域長に報告した.これからもこのやり方で書影に関する著作権問題をクリアしていけばいいのだ(出版社の数だけ時間はかかるが).それでいいのだ.

ウェブサイトやブログを見渡すと同様の「書影著作権」の問題は他でも起きているようだ.その場合,たとえばオンライン書店の「アフィリエイト」システムに乗っかれば,そこでの書影の画像は“合法的”に転載できるという意見がある.ここで注意すべき点は,その“合法性”は,オンライン書店が各出版社と書影などに関わる著作権にからむことどもを前もって処理し終えているという前提にひとえにかかっているということだ.しかし,その前提がほんとうに満たされているのか,どなたかちゃんと確かめたことがありますか?

—— そういう「小技」に頼るのではなく,堂々と「正面突破」しましょう.大した手間ではありません.昼下りの突発的大トドの出現には一瞬あわてたが,意外におとなしかったのでよかったよかった.※「実名」でサイトを開設しているメリットですね.

◆あるトドの静謐なる昇天 —— 曇り空のすき間に真っ赤な夕陽が輝くころ,海游舎から電話があった.カマジン本のゲラはすべて印刷所にもどされたとのこと.これでやっとこの巨大トドは天に昇っていった.訳本のブツが地上に降臨するのは1ヶ月後の3月10日前後だそうだ.お待ちしています.

◆午後5時過ぎに撤収.北風はおさまったが,気温は低いままだ.となると,明朝は放射冷却でぐっと冷え込むかな.明日の午後は東大の専攻教員会議,そして夜は〈笠真〉にてまたもや迎撃のひととき.あいまに,次の原稿トドに取り組みます.それは勁草書房の原稿か,あるいは講談社現代新書の原稿のどちらかということです.

◆旧トドの夜のよみがえり —— 『生物科学』原稿へのさらなるコメントが返ってきた.半分は受けいれます.残り半分はリジェクトです.よろしく.

◆記憶と現実 —— ここ数日,かつての東大オケの兇悪な面々による「想い出話」がメールで飛び交っている.この四半世紀,実物の彼らに会う機会はぜんぜんない.しかし,メールの口調とか公表される写真の面影はかつての記憶を明瞭に呼び起こす.紅茶に浸したマドレーヌどころではない.福岡での演奏旅行(サマーコンサート)で強烈な印象を刻みつけた〈ピオネ荘〉という宿のこと.海辺の砂でじゃりじゃりする床が微妙に歪んで平衡感覚が喪失し,指揮者が夜中に逃げ出したといういわくつきの宿だ.こんなところに寝泊まりした九州場所の力士たちは心身ともにさぞや鍛えられたことだろう.今はもうなくなってしまったそうだが,記憶だけはリアルに残っている.また,別の年の演奏旅行では北陸の親不知で海にボートで連れ出された女性木管奏者が着衣のまま投げ込まれたこともあったという(そうそうその話を聞いたことを思い出した).某国による abduction が繰り返された時代と地域のことだ.メールでのバーチャルなやりとりに乗ってリアルな名前とよみがえったイメージがディスプレイの向こうからいきなり飛び込んでくる.驚きつつも楽しいが,何人かはすでに幽冥境を異にしてしまったという.年月の流れはいかんともしがたい.

◆本日の総歩数=7343歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.7kg(+0.1kg)/24.6%(0.0%).


16 februari 2009(月) ※ たなびく春霞にキーボードも霞む

◆午前4時半起床.朧に霞む欠けた月.気温プラス5.8度.暖かすぎて気持悪い.

◆明るくなっても遠景は霞んでいる.朝からトド撃ち —— 査読コメントを編集部に戻す.露払いのような仕事./東大がらみで,2月18日(水)の専攻教員会議と2月27日(金)の卒論発表会.いずれも本郷への出張伺を提出する./大学院特論の追加履修に関する事務連絡のやりとり./東京農大(世田谷)の次年度出講に関する事務書類の返信./日本生物地理学会第64回大会(4月4日(土)〜5日(日))に関する連絡.とくに,5日(日)に予定されているシンポジウムについて.

◆午前9時の気温は9.2度あった.週末ほどではないが,その後も順調に気温は上がっているようだ.薄曇りでときどき晴れ間がのぞく空模様.

◆午後のトド撃ち顛末 —— 午後は『生物科学』特集の「枕詞」書きに専念する.生物学哲学は英語圏とオランダ語圏で「教科書」と呼べる本が出たのは1970年代はじめだった:

  • Michael Ruse『The Philosophy of Biology』(1973年刊行,Humanities Press, Atlantic Highlands, 231 pp., ISBN:0-391-02810-3)後年の改訂版(?:Michael Ruse『Philosophy of Biology Today』 SUNY Press, ISBN:0-88706-911-8)よりも,この初版の方がインパクトが大きかったのでは?
  • W. J. van der Steen『Inleiding tot de wijsbegeerte van de biologie』(1973年刊行, Oosthoek's Uitgeversmaatschappij [Academische Paperbacks], Utrecht, x+274 pp., ISBN:90-6046-618-7 [pbk]).かっちり書かれた本だと思うが,いかんせんオランダ語だったので,その後あまり言及されなくなってしまった.
  • David L. Hull『Philosophy of Biological Science』(1974年刊行,Prentice-Hall [Foundations of Philosophy Series] , Englewood-Cliffs, x+148 pp., ISBN:0-13-663609-8 [pbk]).とてもできのよくない日本語訳があるが,ここであえて言及する価値はないだろう.

生物学哲学が1970年代以降に“確立”される前の段階まで掘り起こしてみる.とくに,1940年に出版された Julian Huxley (ed.)『The New Systematics』(1940年刊行,Oxford University Press, Oxford)に所収されている J. S. L. Gilmour の論文「Taxonomy and Philosophy」(pp. 461-474)を参照しつつ,体系学と科学哲学との関わり合いのルーツを探る.

—— 約4時間ほどかけて,午後5時半に400字×10枚ほどの原稿を書き上げた:三中信宏「生物学哲学は生物学にとって探照灯たりえるか」.立教大学にメールで発射して,この件はようやく幕となった.

◆献本ありがとうございます —— 大隅清治(監修)/笠松不二男・宮下富夫・吉岡基(著)/本山賢司(イラスト)『新版・鯨とイルカのフィールドガイド』(2009年1月30日刊行,東京大学出版会,xx+148 pp., 本体価格2,500円,ISBN:978-4-13-063329-1 → 版元ページ).1991年に出版された同名の初版の改訂版.前半30ページは総論で,後半100ページが分類群ごとの各論に当てられている.今回の改訂に際しては,ストランディングしてしまって息も絶え絶えの写真ではなく,大海原で遊泳したり潮を噴き上げる生態写真をたくさん取り入れたという.シャチが獲物のアカウミガメを水面から突き上げる瞬間の写真もあったりする.

◆やっぱりトドは「真空」を嫌う —— 長らく引きずられてきた『生物科学』トドを仕留めたと思ったら,佐倉統さんから「進化本ガイド」をいっしょにいかがですかめとのプロポーザル.返事しますします./NHKブックスから懸案の「ダーウィン本」に関する打合せの申し出メールあり.返事しますします.

◆やや磨り減ってしまったので,復活を期して呑んでしまう —— 今夜は宮城の〈黄金澤〉の「橘屋(山廃純米吟醸)」をば.ゆるりとした飲み口で,なかなかよろしいですな.

◆今日の日中はまだ気温が高めだったが,夕暮れとともに北風が強く吹きはじめ気温は急降下開始.天気予報通りであれば,明日はまた「冬」に逆戻りするらしい.三寒四温の振幅が大きすぎる.

◆本日の総歩数=9803歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.6kg(−0.1kg)/24.6%(+0.2%).


15 februari 2009(日) ※ チョコの日の翌日は原稿を書く日

◆午前6時起床.曇りのち晴れ.北風は吹いているが冷え込みはない.季節外れの暖かさだった昨日は,関東南部では広く「夏日」すれすれで,神奈川は実際に25度を越えたというから,三ヶ月ほど先走った陽気だった.

◆『生物科学』特集の「枕詞」原稿を書いている.イマイチ進捗がよろしくない.査読コメントは完成.古書のホコリと飛び交う花粉でふがふがする.調子がよくない一因かも.

◆今日は,日中いっぱい晴れたり曇ったりと落ち着きのない空模様だった.昨日ほどではないがそれでも例年を上回る最高気温だった.明日からは一転して寒気が流れ込むという.行きつ戻りつ季節が進んでいくというのは今の時期の特徴なのだろうが,その振幅があまりにも大きすぎてついていけない.花粉シーズンの真っ最中というのも悩みのタネだし.

◆夜も原稿書きが続く.明日には耳をそろえて出したいものだが,日が変わる頃に力尽きてしまった.

◆本日の総歩数=2497歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.7kg(+0.3kg)/24.4%(0.0%).


14 februari 2009(土) ※ 季節はずれの夏日に厚木の丘の上

◆午前6時起床.曇りのち晴れ.南風とともに湿り気と砂塵と花粉が乱れ飛ぶ.気温高し.

◆もうあとがないトド撃ち —— 『生物科学』特集にケリをつけるための原稿読みと資料そろえ.ドロナワをひねりだすぞー.しかし,今日は関東圏内で遠出しないといけない.

◆初夏の陽気の厚木にて —— 10:25発のTX快速に乗る.つくばは南房総のような春の陽気で,風もなくただただ暖かい.冬の気配はまったく感じられない.さぞや花粉も舞い飛んでいるにちがいない.代々木上原で地上に出て乗換える.気温はさらに高いらしく,半袖姿の乗客もちらほらと.ひょっとして20度を越えているのかも.12時半に本厚木にたどりついた.駅前はもはや「春のように暖かい」どころではなく,「初夏のように暑い」というしかない.南国ですか,ここは.半袖はもちろんのこと,ノースリーブな人もいたり.

PASMOが使えるようになった路線バスで,丘の上の東京農大キャンパスへ向かう.午後1時過ぎに到着.今日は朝から昆研の卒論発表会が始まっているが,午後の部からの参加だ.みなさんお疲れさまでした.発表会は終わったが,卒論がまだ書き終わっていない学生が多いという.卒論生の人数が多いので教員はたいへんだと思う.卒論発表会自体は予定よりも早く進み,午後4時前にはあっさり終わってしまった.外はまだ初夏のような日射しが降り注いでいるが,発表会の会場で早くも呑み始める.こんな真っ昼間からですかとも思うが,呑み会のスタートがこんなに早いので,3時間経ってもまだ宵の口だ.

しかし,どうせ今夜はエンドレスに続くにちがいないので(「農大で呑み始め→駅前で炸裂二次会→農大で夜明かし」という定番コース),途中で帰らせてもらうことにした.午後7時ちょうどの路線バスで農大から本厚木に向かった.夜になっても気温はぜんぜん下がらず,小脇に抱えたコートがじゃまになる.19:13発の新宿行き急行に乗り,町田で快速急行に乗換え,つくばに帰り着いたのは午後9時過ぎだった.遠方での呑み会にもかかわらず,早く帰宅できたのは,ひとえに明るいうちから呑んでいたからだ.

◆備忘メモ(東京農大関連) —— 今年の農大の卒業式は3月21日(土)の午前中にある.昆研の謝恩会はその日の午後になる./来週の2月17日(火)〜20日(金)の岡島・小島・石川トリオが農環研(昆虫標本館)に来るという.19日(木)は農環研の昆虫関係者が所内で“歓迎”するしたくをしているとのことなので,ワタクシはその前日の18日(水)の夜に〈笠真〉で“迎撃”する体勢を整えようか(またかよっ).

◆本日の車中での仕事 —— 『生物科学』特集のための原稿読み.明日にも返事します.ぼくの原稿書きは日曜のお仕事ということです.2月に入ってからというもの,呑んでは書き呑んでは書きという日々が続いている.規則正しい生活リズムというか,寝ても覚めても「魔王」が背後から追いかけてきているというか.

◆本日の総歩数=6352歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前日比)=83.4kg(−0.5kg)/24.4%(+1.3%).


13 februari 2009(金) ※ 春一番に乗って古参トドを攻める

◆前夜,夜更かしをしたので,午前6時になるまで寝過ごしてしまった.不覚だ.曇り.気温は高めで,冷え込みはない.

◆全世界的にこう不景気になってくると,「学問」とか「文化」とか「スポーツ」が真っ先に憂き目にあうことになっている.先ごろ,オランダの名門ライデン大学で進化生物学の研究部門がごっそりお取りつぶしになり,知名度の高い研究者たちがクビになるかもしれないというニュースが飛び交った.今度は同じオランダで,〈La Petit Band〉というこれまた世界的に有名なオーケストラへの公的援助が全面的に打ち切られるという話が飛び出てきた.そういえば,大阪府立大学への研究交付金を打ち切りにするかもという声があるらしいが,マジですか?

◆午前9時半.曇り.気温5.9度でやや肌寒い.

◆まずは一頭め —— 駒場「生物統計学」の成績登録のうち,とりあえず急務の4年生の分だけ「完了」処理をした.あとの学年については時間の余裕があるというが,放置しておいてもしかたがないので,今日中にケリをつけることにしよう.と思っていたら,今ごろになって2回目のレポートがぽつりぽつりと届いた.どうやら締切日の指定をミスった(月日と曜日がズレていたようだ).当方のミスなので受領にして,成績評定を再度やり直す.そして,また UT-mate での登録作業のリニューアルだ./農学部の特論についてはとくに問題なさそうだったので,全員分を「完了」して,成績評定作業はおしまい.しかし,もう昼休みになってしまった.

◆ダーウィン関連のメモなど —— 昨日の〈ダーウィン・カフェ〉で,キクマルの父母が,チリ産のシャルドネのスパークリングワインにその名も〈Darwin's Path〉という銘柄があると言っていた.ビーグル号航海でチリ沿岸を旅したダーウィンにちなんだネーミングだそうだ.先年,ジョン・メイナード・スミスさんの祝宴のときに用意したので,この日もと探したそうだが入手できなかったと残念そうだった.ダーウィン邸(ダウンハウス)のすぐ近くの酒屋にはこの銘柄が常備されているそうだ.調べてみたところ,チリの首都サンチャゴにあるワイナリー〈Viña Manquehue〉がこのワインを出しているようだ.ある評価レポートを見ると,とても上質のワインらしく,国際的な賞をいくつも取っている.

◆昨夜の〈ダーウィン・カフェ〉については,すでに早くも「反響」が聞こえてきた.まずは,〈Science and Communication〉の記事「【サイエンスカフェレポート】ダーウィン生誕200年を祝うサイエンスカフェに行ってきた」(2009年2月12日)には,ぼくが持参した『The Descent of Man』とフォーロング曼荼羅が写真入りで載っている(ふりかえってみれば「本」の話しかしなかった).また,参加者のひとりが開いているブログ〈けやきのき〉の記事「ダーウィン誕生会@駒場」(2009年2月12日)や〈星雲☆見聞録〉での感想「ダーウィン生誕200年」(2009年2月13日)も参照してください.ワタクシは会場でけっして呑みまくっていたわけではないのですが(いつもどおりのペースなので),めっちゃ呑んだはるように傍目には見えてしまったよーだ.[追記]もうひとつ,〈shorebird〉さんの詳細な参加記事「サイエンスカフェ@駒場」(2009年2月13日)をごらんになれば,当日のカフェの雰囲気がよく伝わってくるだろう.

—— こういう形式の〈サイエンス・カフェ〉はここ数年,方々で開催されていると聞くが,ぼく自身が高座にあがるのは今回が初めての経験だった.講演会などとはちがって,話す側と聴く側が同じ“目線の高さ”に並ぶというのがかたちの上でのお作法なのだろうが,同じ場に居合わせるだけではきっと不十分なのだろう.もう一歩踏み込んで,どれくらい両者が“混じり合える”かどうかがカフェの「繁盛度」と深く関係していると推測される.しかも,その“混じり合い”は話す側が最初のきっかけをつくる必要があるだろう.その意味で,話し手は,学会大会などでの講演以上に,「芸人」を演じなければならない.

◆午後2時.曇り.気温10.8度.空気が湿ってきた.「本郷」のトド撃ちは終わっても,「駒場」の決着はまだついていない.提出レポート2回分の内容を再度チェックして,評定結果の再検討に入る.午後4時すぎ,ようやく全員分のチェック完了.そして,UT-mate に再度ログインして,保存しておいた評点の変更と最後の「完了」処理.これでやっと「駒場」のトド撃ちも完了だ.

◆次の二頭め —— 返す刀で,これまた昨年から長らく引きずってしまった,某誌の投稿原稿の査読報告書をつくった.再投稿なので初回ほど時間はかからなかったのだが(だったら早くやれって?),およそ1時間ほどで報告レポートを作成終了.即,編集部にメール返信完了.この時点で午後5時を過ぎた.

◆夕方の「加圧」タイム —— 暗くなりはじめた「逢魔が時」は要注意だ:まずはじめに,海游舎からカマジン訳本の索引をつくり直したという連絡があり,送られてきたpdfゲラを再度チェックする.とくに大きな修正箇所は見つからなかったので,さっさと返事を書く.これでおしまいですか?/次は伏兵だ.すっかり放置してしまった進化学会(編)の『進化学事典』の項目執筆の懸案事項を何とかされたしという加圧メールが共立出版から届いた.そーだった.きれいさっぱり忘れていたが,何ひとつ進捗していなかった.やらないと./勁草書房の生物学哲学論文集の件.編者から電話あり.先月中に送る予定だったのだが,ぜーんぜん締切を守れず.でも今月中にはケリをつけよう.撃ちます.仕留めます./計量生物学会から学会サイトの改訂に関する依頼メールあり.用件を聞いてからの「最初の30秒」の判断がその後の命運を分ける.「学会サイトをアップデートせよ」&「予算的措置はある」となれば必然的に「外注する」という結論になる.それでおしまい(よかったよかった).あとはコンテンツの管理だけ何とかすればよい(誰が?).

—— 要するに,「トドは“真空”を嫌う」ということか.せっかく,大物トドたちを撃ちはたしたのに,間髪入れずにその空きニッチを次のトドどもがきっちり埋めてしまう.

◆しかし,いま待ったなしの作業は『生物科学』特集のケリをつけることだ.こう書いてしまったからにはやるしかない.

◆午後5時に撤収.南風が強く吹きつけて,気温は15.1度にもなっている.これから気温が高くなるということかも.帰宅してニュースを見たら,関東地方では今日が「春一番」だったとのこと.暗くなってから風はさらに強まり,ベランダのものが風に煽られてあちこち散乱するようになった.そのうち,ごうごうと風の音がしてきた.気温は高めなのだろうが,風が吹いている分だけ体感温度は低い.

◆よみがえるトド一頭 —— 夜,東大農学部の院生からメールあり.年度はじめの履修届を出し損なってしまったが,修士修了のための単位が必要なので何とかならないかとの依頼.さっそく農学部教務に連絡して,週明けにも早々に対応してもらうよう連絡を取る.他の履修生の成績をすでに登録を「完了」して確定してしまったが,今からでも何とかなるんでしょーか?(ようわからん)

◆明日は,東京農大・昆研の卒論発表会(→スケジュール)が朝からあるので,厚木キャンパスに出向かなければならない.いつものことながら大きい研究室なので,発表会ともなれば朝から夕方まで延々と続く.もちろん,夕方からは懇親会なので,体力も肝臓力も必要だ.もっとも,ぼくの場合,厚木の丘の上に一升瓶を抱えて登場するのは午後になってからでしょう.天気予報だと,明日の関東地方は強い南風が暖気を運んでくるので,季節はずれの20度近いぽかぽか陽気になるらしい.服装が悩ましいな.

◆本日の総歩数=5805歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.計測値(前日比)=83.9kg(+0.1kg)/23.1%(−0.5%).


12 februari 2009(木) ※ 春めく駒場でのダーウィン誕生会

◆午前4時半起床.晴れ.気温マイナス0.5度.

◆朝のこまごま —— 駒場「生物統計学」の集計作業の続き.ちくちくと入力をする.その後,UT-mate にログインしてオンライン登録作業.一通り入力が終わって「保存」する(まだ「完了」ではない).ついでに,農学部の大学院「エコロジカル・セイフティー学特論」の成績登録もすませて,他の連携教員に確認を依頼する.以上,午前9時までの仕事.成績登録作業はほぼ完了した.あとは UT-mate で「完了」のボタンをぽちっと押すだけ.

◆ダーウィン氏お誕生会の準備 —— 当日になってばたばたする.今夜のサイエンス・カフェ@駒場は今日の夕方6時半からの開始だからまだ時間はあるのだが,東京に出てから寄り道するので,準備は今やらないといけない.他の演者はスライドを用意してのトークがあると聞いているが,ぼくはその準備をぜんぜんしていないので,「噺」ではなく「ブツ」をもちこむことにしよう.ダーウィン『The Descent of Man』(1871年刊行)の初版本が「お祝いもの」としてふさわしいでしょうね.決めたっ.あとは,日経サイエンス編集部に貸しているフォーロングさんの宗教系統樹かな.

◆午前10時,春めく陽気.気温はすでに9.0度に上がっている.

◆さらにこまごま —— 日経サイエンス対談記事の図版キャプションを作文して,編集部にメールする.折り返し,これでOKとの返事あり.午後,編集部を急襲するので,そのときに改訂ゲラのコピーをいただくことにしよう.

◆昼過ぎにいったん帰宅し,出かける用意をする.14:25発のTX快速にてまずは大手町へ.午後4時前,日経サイエンス編集部に出向いて,改訂された対談ゲラをいただく.これで内容的には確定です.掲載図版の原本のうち,重くないもの二冊を返してもらう(駒場でのサイエンスカフェ用に).フォーロング系統樹のスキャン画像を合体したファイルは後ほど送ってもらうことになった.

ささっと退去して,次は神保町へ.いつものように東京堂書店フロアを巡回する.東大出版会からおもしろそうな(しかも高そうな)新刊が:西野嘉章『西洋美術書誌考』(2009年1月29日刊行,東京大学出版会,本体価格8,800円,ISBN:978-4-13-080211-6 → 版元ページ).この用紙と装丁は,かつての:西野嘉章『裝釘考』(2000年4月15日刊行,玄風舎,ISBN:4250200256 → 目次書評)とまったく同じですね.実際,書物としての外観だけでなく,手に取ったときの質感もそっくりだった.まさに既視感というやつ.

その後,〈カラコルム〉にて午後5時頃まで論文読み:Mary Bouquet (1996), Family trees and their affinities: the visual imperative of the genealogical diagram. Journal of the Royal Anthropological Institute (N. S.), 2: 43-66. 図形言語としての「系統樹」の図像史学的考察.たいへんおもしろい.とくに,ダーウィンやヘッケルが生物の「系統樹」を描いたとき,その文化史的基盤として西欧社会に伝承されてきた「家系図(arbor consanguinitatis)」あるいは宗教的な「エッサイの樹(arbre de Jesse)」さらに「文献系図(stemma codicum)」があるにちがいないと正しく指摘している点.読了.

◆サイエンス・カフェ〈チャールズ・ダーウィン、200年目の誕生会〉の会場へ —— 午後5時半に駒場東大前に到着.夕闇迫る駒場キャンパスを歩く.ずいぶん日が長くなったとはいえ,この時刻ともなれば,大学構内は人気が少なくなっている.しかも試験がすでに終わっているので,いつもなら賑わう銀杏並木もかなたまで見渡せる.梅の花がもう咲き始めていた.旧・駒場寮の跡地に建てられたコミュニケーションプラザのあたりだけが明るく輝いていて,別世界のようだ.サークル活動の団体らしきグループ,あるいは図書館やオープンスペースに集う学生たちで賑わっている.個人的には,駒場にもまだ残っている「廃墟探索」をする方が気性に合っているのだが,それだけの時間的余裕は今日はない.

ぼくらの年代であれば,当然このエリアの「過去」を無意識のうちに「透視」してしまうので,自分の立ち位置がかつての「北寮」だったり.あるいは「中寮」だったり,かなたに「明寮」があったりしたことを知っている(1970年代なかばには「南寮」はすでに教官研究棟だった).駒場寮に2年も住んだのだから,このキャンパスが「通学する場所」ではなく,「生活する場所」だったという刷り込みは十分に完了している.あとでキクマル父から聞いた話では,駒場寮がなくなってからというもの,東大前(駒場下)の商店街は総崩れになったそうだ.学生の生活基盤がもはやないのだから,当然の成り行きだったのだろう.

◆今日の「ダーウィンお誕生会」の会場は,このコミュニケーションプラザ南館の3階にある「交流ラウンジ」というフロアだった.すでに会場のセッティングが進められていて,本日のスピーカーであるキクマルのご両親と矢島道子さんはすでに到着していた(キクマルは自宅待機だったが).定刻の午後6時半にカフェの開店.最初に矢島さんが「地質学者ダーウィン」のプロフィールについてトーク,ついでキクマル父母のかけあいトークでダーウィンゆかりの土地(イギリスとガラパゴス)のスライドショーがあった.

その後,ダーウィン氏の誕生日を祝って乾杯したあとは,軽食と飲み物(アルコールもあり)をご自由にという雰囲気で進行した.ぼくは持参してきた『The Descent of Man』を参加者に回覧し,ダーウィンに関する本ではない,ダーウィン自身の本を実際に手に取ってもらった.フォーロングの巨大タペストリーはぶら下げられなかったので,べろべろ〜と広げて見せただけだが,インパクトはあったようだ.他のスピーカーもそれぞれに「ダーウィングッズ」を持参してきた.

最後に,参加者からもらった質問へのお答えとディスカッションをしているうちに,あっという間に終了予定の午後8時をまわってしまった.東大のサイエンスカフェを駒場で開催するのは初めてとのことだったが,主催した東京大学科学技術インタープリター養成プログラム(日本学術会議と共催)のイベントとしては成功ですとのキクマル父の感想だったので,今日ここに来た甲斐があったというものだ.

—— カフェでの新たな「加圧」の予感.ずっと前から話があったNHKブックスの「ダーウィン本」と開店したまま休業中の「ダーウィン全集」.この両方が動き出したらいったいどーなるのだろう.

◆サイエンスカフェ閉店後は,最後にやってきた殿とともに,駒場ウラの洋食レストラン〈Mai Audrey〉にてスピーカーたちの打ち上げ.ワインとともに牛肉とかサーモンとか.ごちそうさまでした.午後9時半におしまい.「キクマル宅に泊まってはどうか」という父のお誘いもあったのだが,諸方向から「加圧」されている身としては,ここでじゃれあって親交を深めているわけにはいかない.そのまま代々木公園駅まで歩いて千代田線に乗る.

—— 北千住乗り換えでつくばに帰り着いたのは,午後11時半だった.今日の昼間は気温が高かったが,夜になってもさほど寒くならない.帰宅後,あれやこれやで寝入ったのは午前1時半.ほぼ完全に燃え尽きました…….

◆本日の総歩数=21626歩[うち「しっかり歩数」2888歩/28分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前日比)=83.8kg(−0.1kg)/23.6%(−2.1%).


11 februari 2009(水) ※ 休日が成績評定業務で消え去って

◆午前6時起床.曇りときどき晴れ.前夜,「ど」にどつき倒されたらしく,ややダメージが残っている.「へこみ」もまだ痛々しい.

◆朝からこまごま —— 日経サイエンス編集部より,図版入りのゲラが送られてきた.いくつかの図について,出典とレジェンドを明日までにお願いしますとのこと.対談記事のタイトルは「世界を束ねる進化の系統樹」と確定した./明日の駒場でのサイエンスカフェ〈チャールズ・ダーウィン、200年目の誕生会〉の事前質問が届く.

◆J. G. R. Forlong 本の電子化 —— ここのところ,いろいろな場所に持ち歩いている Forlong さんの「宗教系譜タペストリー」だが,調べてみたらこのタペストリー(Big Chart)も含めて原書全体がいつの間にか〈scribd〉から電子化され公開されていた.ぜんぜん知らなかった:J. G. R. Forlong『Rivers of Life, or Sources and Streams of the Faiths of Man in All Lands; Showing the Evolution of Faiths from the Rudest Symbolisms to the Latest Spiritual Developments. Two volumes and chart』(1883年刊行[予約限定出版],Bernard Quaritch, London → 目次第1巻(電子版)第2巻(電子版)チャート(電子版)).本文はともかくチャートに関しては,完全な復刻ではなく,宗教系統樹の部分だけをピックアップしているようで,両脇のレジェンドはとくに下半分が略されていることがわかる.やっぱり「現物」をもっている方が強いです.

◆昼前に農環研に潜入し,駒場での出席カードと提出レポートをチェックする.曇って肌寒い.気温は7.3度.2時間ほど頑張ってみたがまったく終わりそうにないので,ごそっと紙の束を抱えて帰宅する.小雨がぱらぱらと降ってきた.出席カード(800枚ほどある)の仕分けとレポートのチェックを午後3時からおよそ4時間ほど自宅で格闘して,夕闇の中やっと完了した.残るデータ集計と成績評定は夜の仕事だ.スプレッドシートでの集計計算が終わったのは午後11時だった.

—— UT-mate システムへの成績のオンライン登録は明朝まわしにしよう(登録締切は2月13日だ).ついでに,農学部の大学院特論の成績登録もさっさとすませてしまおう.これで,大トド2頭をしとめることができる.

◆評価評価で日が暮れて,明日はダーウィン誕生日.午後6時から駒場でお会いしましょう.

◆本日の総歩数=1153歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前日比)=83.9kg(+0.9kg)/25.7%(+1.8%).


10 februari 2009(火) ※ いきなり圧力が高まって暴発する

◆午前4時半起床.夜明け前の西空に凖満月が輝く.月に憑かれるワタシ.気温はプラス1.6度.

◆明け方のこまごま —— 日経サイエンス対談記事の画像の出典を調べて,編集部にメールする.図版が貼り込まれたら,つぎはキャプションだ./カマジン訳本の索引項目のチェックを開始する.もともと厚い本なので,アイテムもたくさんある.また,ドロヌマか?(汗)

◆春めいてきた.午前11時の気温は10.6度.身を切る風は吹かず,日射しは暖かく,しかも花粉もほんわか飛んでいるらしい.春ですなあ.今夜,〈笠真〉に予約してほしいとの依頼を受けて,任務完了.午後7時からです.最初だけちょこっと挨拶に行きます.

◆午前のこまごま —— 日経サイエンス編集部から連絡あり,掲載する系統樹の図案に関する相談.本草学的な「図像」はないかとのこと.いくつか調べてみる./海游舎から連絡あり.カマジン訳本の表紙については夕方までに印刷所に入れるので,それまでに優先的にチェックしてほしいとのこと.著者紹介文など改訂箇所を再度チェックする./『生物科学』編集部からも加圧される.遅滞たいへん申し訳ありません.優先順位はほぼトップですので.

◆ダーウィン伝記の新しい一冊 —— Adrian Desmond and James Moore『Darwin's Sacred Cause: How a Hatred of Slavery Shaped Darwin's Views on Human Evolution』(2009年1月28日刊行,Houghton Mifflin Harcourt, Boston, xxii+485 pp., ISBN:978-0-547-05526-8 [hbk] → 目次版元ページ).奴隷制に対する反感がダーウィンの「人種観」と「人間進化論」にどのように影響したかを論じている.これもまたいわゆる“社会構築主義”本?

◆しかし,情け容赦ない加圧は続く —— 今度は大学関係だ.まずは東大農学部のエコロジカル・セイフティー学特論の成績登録についての質問を農学部に投げる.しかし,これはきっと埒があかないにちがいないから見切り発車で進めることになるだろう.だって,履修登録がきちんとすんでいないのだから,ワタクシ[たち]の所掌ではありません.他の連携教員からの成績が届いたので集計作業を開始する./首都大学東京の次年度兼業に関する届け出を出す.これは単なる事務書類だから時間が削られただけ.午後2時に提出完了./カマジン訳本の表紙はこれで万全だ,と連絡する.ついでに索引項目にびしびしと朱を入れてこれまた返送完了.ここまでですでに午後4時半になった.

◆「身から出た錆」と「馬の耳に念仏」 —— 1992年に京都の国際会議場で開催された万国地質学会議(IGC)に講演に行ったことがある.大規模な国際会議だったが,大会受付で参加者にそれぞれ日本の格言を刷った和手拭いが配られた.同じセッションで発表した名古屋大学の堀寛さんに,会議後「ワタシはこんな手拭いでしたよ」と見せたのは〈身から出た錆〉と黒々と染め抜かれたもの.堀さんは「ワタシのはコレ」と〈馬の耳に念仏〉手拭いを広げられた.笑いがしだいにディミヌエンドしたりして…….

さて,これほどまで連日の「加圧」を受けていると,とにかく目の前に立ちふさがる用務を千切り投げることだけに集中してしまうので,detach することがなかなかできない(attachされた仕事ばっかし).仕事を溜め込んでしまうのは,まさに〈身から出た錆〉だ(正論ですよ).しかし,大きな流れのよどみに流木が溜まるように,わーっと流されて,ふと気がついたら,身のまわりが流木だらけということでしてね.

そんなこんなの「トド撃ち」やら「流木掃除」を同時並行でやるのは身一つでは限度があり,関係者にはもうしわけないです.お怒りごもっとも.次にやります(しかし,その「次」がたくさんある).加圧されれば内的な優先順位が上がるのは確かなので,表面的には〈馬の耳に念仏〉でも,実はそうとうへこんでいたりするのです.

—— というわけで,べこんとへこんだまま午後5時過ぎに撤収する.

◆〈笠真〉でのピンチヒッター —— 今夜7時に,苅間の〈笠真〉にて,「三人で行きたいので予約ヨロシク」と急に言ってきた昔からの知人のご一行と落ち合うことになっていた.この「トリオ」にとっては初めての店なので,いちおう顔つなぎにワタクシが事前にお出迎えをするため,6時半過ぎに〈笠真〉に出向いた.マスターをいろいろお話しをしているうちにご到着.ところが三人のはずがうちひとりが都合が悪くて「デュエット」になってしまった.

しかし,あんこう鍋はすでに三人分の食材が皿に盛りあがっている.ワタクシはあいさつだけして帰るつもりだったのだが,「食べきれないから急遽トリオになれ」とのことで,急転して宴席にまざることになってしまった.まずは,前回とおなじく〈大山Gビール〉で乾杯.続いて,新潟の〈村祐〉の「亀口取り・無濾過生原酒」を最初に「19BY」で一献,つづいて新酒の「20BY」のフレッシュさが続く.あんこう鍋をつつきながら,さらに地元の〈来福〉と秋田の〈白瀑〉の「ど」をいただいた.とーってもうまかったなあ.午後10時すぎに店を出て,そのまま帰ったという実に健康的な夜だった.突発的な飲み会で昼間の「へこみ」は少しは癒された

—— はずだった…….

◆帰宅後,メールをチェックしたところ,本郷の理学部二号館から教務メールが届いていた.駒場での「生物統計学」履修者の中に「4年生」が含まれているので,早急に成績評価をオンライン登録していただきたいとの急告だった.マジっすか(大汗).てっきり本郷に進学する予定の学生ばかりだと思っていたのだが(その場合は成績登録の締切はまだ先だ),卒業がかかっている学生がいるとなれば,他のことはぜーんぶ放り出すしかないでしょ./駒場からの締切間際滑り込みレポートがだだっとなだれ込んでくる.これじゃ「土石流」だ.

—— ということで,当初予定していたトド撃ちや流木処理の優先順位はがらがらと崩れ去り,明日の休日はまる1日をかけて成績処理の作業にいそしむことになった.「トド」と「流木」に加えて「土石流」まで来た日には一巻の終わりだ.

◆本日の総歩数=9002歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前日比)=83.0kg(−0.4kg)/23.9%(−1.3%).


9 februari 2009(月) ※ 満月の明け方には式鬼を飛ばそう

◆午前3時半に起床.即,研究所に直行する.西の空高く満月がこうこうと輝いていた.冷え込みはきびしく,マイナス3.3度.

◆未明のこまごま —— まずは,日経サイエンスの対談ゲラのスキャンとpdf化.5.5MBもあるファイルを大手町に送るのは気が引けるので,ヒミツのサイトに置いて,URLのみ編集部に伝える.本文はこれで大丈夫だが,あとは図版の問題がある./海游舎からカマジン訳本の表紙・目次・索引など“ゴール寸前”のブツが送られてくる.チェックしますします./駒場から生物統計学講義の第2回レポートが散発的に着弾していたので,受領メールをひとつひとつ返信する.明日が締切なので遅れないように>履修生のみなさん.

◆曇りときどき晴れ間.日中になっても気温は上がらず.午前11時なのに4.9度.寒い.

◆デューラーは「メモ魔」 —— アルブレヒト・デューラー(前川誠郎訳)『自伝と書簡』(2009年1月16日刊行,岩波書店[岩波文庫・青571-2],ISBN:978-4-00-335712-5).前著:アルブレヒト・デューラー(前川誠郎訳)『ネーデルラント旅日記』(2007年10月16日刊行,岩波書店[岩波文庫・青571-1],ISBN:978-4-00-335711-8)に続く2冊目の文庫本.「メモ魔」は時代と国を問わずどこにでもいる.

◆午後はシラバスとの格闘 —— 2月に入り,次年度の講義シラバスづくりというトドが急成長している.まずはじめに,締切をとうに過ぎてしまった横浜国大の〈統計道場〉の告知を速達で常盤台に返送する.今年の〈道場〉は生物統計学だけなので,昨年よりも時間数が増えるそうだ.次は,東京農大のシラバス.こちらはオンライン登録させるシステムだ.昨年のシラバスに準じて微修正して登録完了.あわせて,オフィスアワー(世田谷に“オフィス”はないけど)の設定も.

◆あいまに「加圧」される —— 『生物科学』の生物学哲学特集の「枕詞」がまだ書き上がってません…….え,査読もあり? /「査読」ということばが言霊を呼んでしまったのか,ずーっと放置していたとある査読原稿の編集長氏と予期せず廊下でバッタリすれちがい,瞬時にして〈蕎麦屋の出前〉のような受け答えをしてしまった.※そんなことでごまかせるとは思っていないが.

◆夕方は成績評価との格闘 —— 次年度のシラバスづくりの前に,今年度の成績評価をしないといけなかった.東大農学部での「ES特論I」の成績評定について,原案を作成し,他の連携教員にまわして,記入を依頼する.全員分が集まった時点で集計し,これまたオンラインでの登録作業が必要だ.成績登録の締切は2月20日(金)だが,できれば今週中にカタをつけよう./そのあいまにも,駒場から課題レポートの五月雨着弾あり.そのつど迎撃する.

◆午後5時過ぎに撤収.気温は5.4度.けっきょく一日中ずっと寒かった.

◆夜は福岡の銘酒〈三井の寿〉の季節限定品「木槽しぼり(純米吟醸生原酒)」をちょこっといただく.お米の味がしっかりしています.フレッシュな日本酒がいろいろ選べる早春はとてもいい季節だ.

◆リンネ『自然の体系』の原書画像 —— 日経サイエンスのゲラを読んでいて,ふと思い立って,『Systema Naturae』の原書がどこにあるか調べてみた.1735年刊行の「初版」は京都大学図書館で公開されていた:Carl von Linné『Systema naturae sive regna tria naturae systematice proposita per classes, ordines, genera et species(初版1735年)』(→ 公開サイト).本書は,京大での展示〈京都大学所蔵資料で見る博物学の時代〉のひとつとしてスキャン画像が公開されていた.『自然の体系』初版の本文がたった「十数頁」の分量しかないのに驚く.まだ「記載の時代」の名残がある.

現代分類学のマイルストーンとなった1758年刊行の「第10版」は,〈Biodiversity Heritage Library〉から全ページのスキャン画像が公開されている:Carl von Linné『Systema naturae per regna tria naturae, secundum classes, ordines, genera, species, cum characteribus, differentiis, synonymis, locis.(第10版1758年)』(→ 公開サイト).全2巻構成で,計「1,384頁」もある.初版からたった20年しか経っていないのにページ数は約100倍にも達している.

◆明日のトド撃ちリストを確認してから日が変わらないうちに寝る.今朝はいつもよりかなり早く起きたので.

◆本日の総歩数=10101歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.4kg(0.0kg)/25.2%(+2.0%).


8 februari 2009(日) ※ 強風で糸は切れ砂嵐で痕跡も消え

◆午前6時半まで惰眠を貪る.晴れ.しかし北風が強いので,とても寒い.今日はとくに用事はないので,日経サイエンスのゲラ読みと,トツジョとして加圧されてしまった『生物科学』特集のマクラ記事に取り組むことにする.

◆「糸」と「痕跡」 —— カルロ・ギンズブルグ[上村忠男訳]『糸と痕跡』(2008年10月24日,みすず書房,266 pp., 本体価格3,500円, ISBN:978-4-622-07436-6 → 目次版元ページ).本書は,Carlo Ginzburg『Il filo e le tracce』(2006年刊行,Giangiacomo Feltrinelli Editore, Milano)として刊行された論文集の15論文と付録から六つの論文を選んで翻訳されたものである.

編訳者あとがきによると,残りの所収論文のいくつかはすでに:カルロ・ギンズブルグ[上村忠男訳]『歴史を逆なでに読む』(2003年10月24日,みすず書房,305 pp., 本体価格3,600円, ISBN:4-622-07064-2 → 目次書評版元ページ)として刊行されている.『歴史を逆なでに読む』の第2章「展示と引用 —— 歴史の真実性」は,今回出版された論文集の「I-1 描写と引用」と重複しているが,内容が大幅に書き換えられたので新たに訳出したと記されている.最初に置かれたこの章を読んで,すごくよくわかってしまったのは,何のことはない,ぼくにとっては“再読”だったからだろう.年代記(chronicle)と歴史(history)との根本的なちがいを指摘したこの章は,生物体系学の世界で20年前に Robert J. O'Hara が言及した「年代記としての分岐図 vs 歴史としての進化シナリオ」という対置図式を想起させる.要するに,系統樹思考(tree-thinking)のルーツはここらへんにあるということだ.

このように,『糸と痕跡』と『歴史を逆なでに読む』は姉妹本だが,すでに翻訳されている:カルロ・ギンズブルグ[上村忠男訳]『歴史・レトリック・立証』(2001年4月16日,みすず書房,212 pp., 本体価格2,800円, ISBN:4-622-03090-X → 目次書評版元ページ)も,このクレードに属する近縁本だ.著者が,ヘイドン・ホワイトに代表される歴史学におけるポストモダン的懐疑主義(構築主義)に抗するスタンスを一貫して取り続けてきたことは知られている.これら3冊の論文集は,「歴史の語りの科学性にたいして加えられた懐疑論的な攻撃」(p. 9)に対していかにして反論するかという共通テーマを掲げている.

—— タイトルの「糸」とは「わたしたちが現実の迷宮の中に入っていくのを手助けしてくれる物語の糸」(p. 5)であり,「痕跡」とはそれ「を利用しながら真実の歴史を物語ろうと努め」(p. 5)るための証拠という意味だ.膨大な脚注と引用の洪水は快楽以外の何ものでもない.

◆午前中ずっと北風が強かったが,午後になって遠景で砂塵が巻き上がっているのが見えた.これから春先にかけては乾燥した砂嵐が頻発し,それとともに悩ましい花粉の季節がやってくる.午後3時すぎには風はおさまったが,乾いた晴天は続く.

◆ギンズブルグの本が届いたのとほぼ同時並行で,彼の論文を読み終えた:Carlo Ginzburg (2004), Family resemblances and family trees: two cognitive metaphors. Critical Inquiry, 30: 537-556. この論文を最初に目にしたのは,系図史の論文集:Sigrid Weigel, Ohad Parnes, Ulrike Vedder, and Stefen Willer (Hrsg.)『Generation : Zur Genealogie des Konzepts — Konzepte von Genealogie』(2005年刊行,Wilhelm Fink Verlag[Trajekte : Eine Reihe des Zentrums für Literaturforschung Berlin],ISBN:3-7705-4082-4 → 目次)に所収されたドイツ語訳だった(S. 267-288).

Ludwig Wittgenstein の「家族的類似性(family resemblence)」と Francis Galton の「合成写真(composite photography)」との秘められた関係を論じている.monothetic な本質的形質を優生学的な観点から抽出しようとした Galton の意図をひっくり返して,みごとに polythetic な類似度に置き換えた Wittgenstein の鮮やかさ.その動機には,因果的・歴史的な説明を排して,全体俯瞰的(übersichtlich)な説明を好んだという Wittgenstein の基本姿勢があったという.しかし,本質主義ではなく,家族的類似性という個体の変異を束ねる概念を提唱したことで,むしろ系譜学的な伝統に接近したと Ginzburg はみている.その例証として,西欧社会における「家系図」の歴史ならびに比較文献学における「文献系図」の歴史をふりかえる.

Wittgenstein と Galton に始まり,家系図や文献系図の歴史に飛び,さらに Sigmund Freud の夢判断の方法論は Textkritik の応用だと結論する Ginzburg の力わざは大したものだ.「類似性」と「系統樹」というレトリックのふたつの知的伝統の流れがいかに交わったのかをこの論文は示してくれる.すばらしいなあ.どうせ書くのだったら,こういう“アクロバティック”な論考をものしたいものだ.読み手もきっちり試されているにちがいない.

—— 図形言語としての「ツリー」のルーツは深い深い.

◆夕方から夜にかけては日経サイエンスのゲラ読み.会話の流れでハミ出たりよろけたりしているようなので,そのつど朱を入れる.午後11時過ぎにやっとチェック完了.細かい年代や数字については明日未明に確認しよう.そのあとは加圧されまくりの『生物科学』特集の「枕詞」をものします.そのあいまにシラバスと成績評価の連絡と作業など.

◆本日の総歩数=2274歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.4kg(+0.7kg)/23.2%(−0.4%).


7 februari 2009(土) ※ 穏やかな日射しの渋谷に肉が舞う

◆午前4時起床.よく晴れてきりっと冷え込み目が覚める.今日は東京へ.

◆まずは大手町へ —— 9:32発のTX区間快速に乗る.まず,第一の目的地である,大手町の三菱総研ビルにある日経サイエンス編集部へ.4月号掲載の対談記事用に図案のタネ本を数冊もっていく.J. G. R. Forlong 本の巨大な「宗教系図」はスキャンして編集してもらえるとのこと.日本国内にはほとんど所蔵されていないはずのものなので,今回はこれが目玉かな.絵がとーっても下手なチャーリー君に出番はなく,やはりあふれる絵心のあるエルニー君にスポットライトが当たる.残りはクリスティアーヌさんの家系図図鑑から数点.以上.タネ本ひとそろいを手渡して,編集部を退去する.いい図版をセレクトしてください.

次に向かうのは渋谷だ —— 大手町から半蔵門線に乗り渋谷へ.今日の主目的は渋谷でのパーティだ.毎週の駒場での高座のときはただ通り過ぎるだけだったが,渋谷駅前の雑踏に揉まれるのは久しぶりだ.日射しが柔らかく降り注ぎ,北風もなく暖かかった.コートは不要.東急本店の道をはさんだ向かい側にあるビルの地下に降りる.目指すはシュラスカリア〈Tucano's〉だ.

今日はここで東大農学部生物測定学教室の高野泰さんの定年記念パーティがある.主賓である高野さんには,学部時代から大学院にかけてたいへんお世話になった.とくに,大学院に入ってからは,高野さんと同室だった期間が博士からオーバードクター時代にかけて何年も続いた.その後,人の入れ替わりが大きく,岸野洋久さんが教授になってからもさらに変わり続けている.

店の入り口に設けられた受付で訊いたところでは,今日は遠方からの参加者を含めて三十数名もの参加者があるとのことだった.大きなパーティになった.ずいぶん久しぶりに会う顔も少なくない.斎尾乾二郎さんや上村賢治さんに会うのもいったい何年ぶりのことか.塩尻の中信農試からもなつかしい顔が.おお,わざわざ琉球大学から立田晴記さんも.お疲れさまでした.

まあ,こういう会はなかば「同窓会」なので,あちらこちらで[主賓抜きで]同窓会的話題が花開いている.この季節はいずこでも「去る人たち」を送り出す送別会がある.とくに定年によるリタイアともなれば,長年にわたる年月は本人がもっともよく知っているだろう.取り巻く関係者は「お疲れさまでした」という以外にかけることばがない.高野さんは四月からは東京を離れて松本市に転居するとのことだった.

シュラスカリアに来たからには,昼間から肉を喰いまくるしかない.10年前にサンパウロで初めて本場のシュラスカリアにて「宙を飛ぶ肉塊」を体験した.ここシブヤでは,豪快に肉が飛ぶ光景こそ見られなかったが,長い金串に刺された巨大な肉の塊が次々に運ばれてきて,目の前で肉刀でずばっと削ぎ落とされていくようすを見ると,「肉派」ならば食欲を激しくそそられるにちがいない.ちょうどいいレアの焼け具合なので,どんどん食べられる.

シュラスカリアでは,盛岡のわんこそばと同じく,客がギブアップして「ノー」と言うまではいつまでも肉が飛んでくる.サンパウロでは,“こぶ”の肉が出されてワタクシはダウンしたが,この風味は日本ではふつう味わえない.今回のパーティでも最後に出てきたが,とっても美味かった.とくに脂身のところがグッド(いかにも健康に悪そうなところがまた食欲をそそります).単に炭火でローストするだけではなく,下準備の手間ひまがかかっているらしい.

—— 午後2時半までという限られた時間だったが,とてもエンジョイした.

◆昼間っからワインを飲み,再び渋谷の雑踏に流されて駅に向かう.一行は本郷の研究室にもどって二次会をするらしいが,それはパスして,つくばに直帰.午後4時半にはもう帰り着いてしまった.都内とはちがって北風が強くてとても寒く感じる.日射しはもう春だが,吹く風はまだ冬のままだ.

◆車中読書 —— 帰りの神保町・東京堂書店で手に入れた新刊:谷根千工房(編著)『ベスト・オブ・谷根千:町のアーカイヴス』(2009年2月3日刊行, 亜紀書房,354 pp., 本体価格2,400円, ISBN:978-4-7505-0901-3 → 版元ページ).今年終刊となる地域雑誌『谷中・根津・千駄木』(→〈谷根千ネット〉)からのセレクション.細かい活字でずっしりと重い.ぱらりぱらりと.特集は誌面そのままの復刻だ.巻末には創刊号から第90号までの「総目次」がまとめられている.最終巻まであと三巻.

◆本日の総歩数=10886歩[うち「しっかり歩数」1099歩/11分].全コース×|×.朝○|昼×|夜△.計測値(前日比)=82.7kg(0.0kg)/23.6%(+0.1%).


6 februari 2009(金) ※ ゲラまたゲラまたゲラの並行処理

◆午前4時起床.晴れ.気温プラス0.6度.氷点下になった昨日よりは気温が高いはずなのに寒く感じるのは北風が強いからだろう.

◆朝のこまごま —— 『日経サイエンス』と『ニュートン』にゲラをメールでそれぞれの編集部宛に返送する.『植物防疫』については「紙」のゲラを宅急便で送り返すことになっている(夕方)./『日経サイエンス』編集部から,今度は先月の茂木健一郎対談のゲラが届いていた.げ,こんな大きな顔写真が載るんですかっ(アヤシすぎ……).言いたい放題言ってますぅ.うまく編集していただきましたが,何ヶ所かは口にしたことの裏づけが,そして場所によっては“墨塗り”が必要なところも? 内容をチェックして10日までに返送すること.

◆備忘メモ —— 東京大学サイト(→キャンパスマップ)から,「本郷キャンパスレストランマップ」(→ pdf 1.2 MB)なる巨大なマップが配布されていることを知った.本郷キャンパスの「内」にはこんなにたくさんのレストランがあるんですか?とガクゼンとする.かつては,安田講堂下の巨大〈中央食堂〉とか,ツタの絡まる〈二食〉とか,ちょっとお高い〈銀杏〉とか,ドーバー海峡の向こうだけど味はいい〈農学部食堂〉くらいしかなかったはずなのに,スターバックスはあるはタリーズはあるは,松本楼に精養軒に,イタリアンもありとは隔世の感あり.本郷通り沿いには大学の「外」にも歴史のある店がたくさんある.しかし,「内」と「外」で喰いまくっていたのでは仕事にならないかもしれない.

◆午前11時,快晴.気温10.1度.北風が強く吹きつけて寒い.

◆昼下りのこまごま —— 『ニュートン』編集部より返信あり.執筆者情報を送る.ぼくの記事が含まれるムックの書誌情報を教えてもらった:ニュートン別冊ムック『ダーウィン進化論(仮)』(2009年2月26日刊行予定,ニュートンプレス,ISBN:4-315-51853-5 ※ん,ISBN-10 ですか?).大物ももちろん書いています.ぼくのようなワルモノも書いています.元締めキンタも書きます./『日経サイエンス』編集部より返信あり.Orr 記事がやや(かなり)selectionism 寄りなので,neutralism のための日本語書籍紹介(一般向け)をしてほしいとのこと.この翻訳の「監修者ノート」として一文を書いて送る.

◆それにしても,分子進化学の一般向けの新しい日本語本というのは意外なほど少ない気がするのですが.たとえば,新書クラスだと,もう20年も前の木村資生『生物進化を考える』(岩波新書,1988年)とか,その10年後の宮田隆『分子進化への招待』(講談社ブルーバックス,1994年)が挙がります.しかし,その後,現在までの15年間にはまったくといっていいほど一般向けの新刊書が出ていないようです.もちろん,専門書だったら日本語でもたくさん新刊が出ているのですがね.今年はちょうどタイミングもいいですから,たくさんの進化関連本が出てくれるといいな.

◆その後もこまごま —— メーリングリスト関連の作業を少し./放置していた査読作業を再起動する.週明けには報告書を返す予定./大学関連のシラバス登録とか成績報告の締切日をチェックする.東大のES特論は連携教員間での成績評価の打合せを早くしないと.わ,横浜国大,シラバス登録の締切がもう過ぎてるやん…….

◆急な仕事が —— 日経サイエンス対談記事のことで編集部から連絡あり,対談ページに掲載する図版をどうするかということ.この内容ですから,できれば arbor consanguinitatis とか arbre généalogique をたくさん入れましょう,ということで,明日,東京に出るついでに編集部に立ち寄ってタネ本を何冊か持ち込むことにした.図版著作権のことがあるので,基本的には1世紀以上前の図版からとれば問題ないでしょう.

◆〈ビオナーデ〉の短期間価格変動について —— 最近,「休肝日」にはオーガニック炭酸飲料〈ビオナーデ(Bionade)〉を飲んでいる.ビール風の炭酸醗酵飲料だが,ノンアルコールで甘味が強過ぎない.このビオナーデは昨年頃からやっとつくばでも入手できるようになったが,定価そのものがバカ高く「350円」もしていた.いくらカラダによくっても,たった「330ml」でこの値段では日常的に買えるわけがない.ところが,10日ほど前から,つくばセンターMOGの〈やまや〉に並ぶビオナーデが,いきなり「98円」という超廉価で売られはじめた.もともとこの店では「250円」という安値だったのだが,さらにいきなり「98円」にまで急降下するとは! この投げ売り的価格だったらその辺で売られている清涼飲料水よりも安いくらいじゃないか,と衝動的まとめ買いをしてしまった.定価「350円」というバカ高さもフシギなら,超特価「98円」というのもまたフシギ.この価格差はいったい何?

◆北風吹く午後5時前に撤収.明日持参するタネ本数冊がずっしり重い。途中,『植物防疫』宛の宅急便を送ってから,直帰.夜は,図版選びと対談ゲラ読み./ミクシィつながり.ここのところ,オーケストラOB関係とか,旧知関係のマイミクが急に増えてきた.よろしくよろしく.

◆明日は,午前のうちに日経サイエンス編集部に立ち寄ってから,渋谷に向かい,昼間っから呑んだくれる予定.今日は「arbor bona」が育ち,明日は「arbor mala」が育つ.

◆本日の総歩数=6680歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=82.7kg(−0.8kg)/23.5%(+0.2%).


5 februari 2009(木) ※ 梅がほころぶ筑波事務所で高座を

◆午前4時起床.晴れ.マイナス0.7度.やや寒い.

◆午前中は高座のしたく —— 今日の午後は,筑波事務所の農林水産研究情報センター「電農館」にて,種苗管理センターから依頼された生物統計学の講義がある.午後の4時間でR実習も含めて話をまとめなければならない.いつもの大学での講義だと15時間とか30時間かけて講義する内容から関係するテーマをピックアップしなければならない.実験計画法にからむ分散分析・多重比較・線形モデルが中心なのでとくに下準備が必要なことはない.しかし,新味のない講義ではこちらがダルになるので,検出力(power)からサンプル数を決定するという,今日の受講者にとって関係の深いトピックを新たに付け加えることにした.Rだと「power.t.test()」とか「power.anova.test()」などのコマンドを用いての,あるいはパッケージだと「pwr」を使っての実習となる.スクリプトをちょこちょこ書いてみる.

◆探すべきか,探さざるべきか —— あるはずの蔵書やもらったはずの提出書類が所在不明になることがときどきある.もっと若かったころは,「行方不明」という状態にがまんできなかったので,他の仕事を放り出しても徹底的に探しまくっていた.今でも「あるはずなのに見つからない」という中ぶらりんの状況は独特の不愉快さの入り交じった焦燥感を引き起こす.しかし,周囲で舞い踊るトドどもを横目に,発掘作業にいそしむ余裕はこのところまったくない.だから,探すべきか探さざるべきかという二者択一を迫られたら,「見つからない本は迷わずもう一度買う」&「なくした書類はもう一度もらう(あるいは放置する)」という基本ポリシーを堅持しようと思う.じたばた探すのはもうやめにしよう.

—— と,あえて書きつつも,未練たらたら捜し回っている自分がここにいる.くーっ.

◆朝のうちは薄曇りときどき晴れ間.しかし,気温は低めで午前10時になっても6.4度どまり.肌寒い.

◆昼休みに筑波事務所に向かう.日射しが暖かい.いつの間にか事務所の前庭に植わっている紅梅や白梅の花がもう咲き出していた.そういえば,筑波山の梅林もそろそろ梅見客が増えるシーズンだ.早めに電農館3階の実習室に入り,プレゼンの準備を始める.午後1時から講義開始.講習会の名称をきちんと書き下すのはいささか気が重い:「栽培試験専門技術研修中級者専門技術研修(栽培試験実施責任者育成コース)」.実施期間は今日を含めて3日間.このとても長い名前の講習会にわざわざ集まった受講生は,種苗管理センターに研修に来ている岡山県からの研修生が大半で,受講者数は20名ほど.種苗管理に関する資格試験の準備でもあるらしい.国際機関(「国際植物新品種保護連合(UPOV)」)で各国統一の管理基準が設けられていて,その中には統計処理に関する基準もあるそうな.日本の場合,種苗管理は「行政職」と位置づけられていて,担当者が必ずしも生物統計学を知っているわけではないという問題があるらしい.種苗管理センターからの講義依頼を受けたのは今回がはじめてだが,次年度以降もまたお座敷がかかるかもしれない.というか,2年後には,農環研と種苗管理センターは生物資源研とともに有無を言わさず「合体」させられるので,内部研修ということになるのかも.

統計学概論から始まり,一段落したところで,USBメモリーで配布したR関連のソフトウェアのインストールと設定をする.Rコマンダーの基本操作について解説したのち,実験計画法の講義とRを用いての分散分析・多重比較の実習.最後に,サンプルサイズの決定方法を話し終えたら,ほぼ時間いっぱいになってしまった.さすがに3〜4時間ではぜんぜん足りない.午後5時前に講義と質疑を終了する.みなさん,お疲れさまでした.

—— 生物統計学・系統推定論を含めて,今年度の「高座」はこれですべておしまいかな.

◆今月の緊急トド発生 —— うっかり忘れていたが,今月は方々の大学で成績評価だの次年度シラバスだののオンライン登録の締切日が設定されている.これは遅れるわけにいかない作業なので,気をつけよう.大学ごとにデッドラインが少しずつずれているので要注意.明日からさっそく始めるべし>ぼく.

◆ゲラ舞う夜 —— 筑波事務所から自宅に直帰する.今夜はいくつかの雑誌記事のゲラをまとめて読まないといけない:

  1. 3月に出る『日経サイエンス』2009年4月号の特集〈進化する進化論〉の H. A. Orr の寄稿記事「ゲノムから見た自然選択のパワー」翻訳原稿の監修.中立進化論の“後退”を印象づける内容.きっと激昂する向きもあるだろうな.selectionism vs. neutralism の“五十年戦争”はいまだ止まず.要修正箇所のコメントを付けてチェック完了.
  2. 近刊予定の『ニュートン』別冊ムックの記事:三中信宏「「種」とは何か:今なおとけないなぞの由来」(pp. 138-141).とくに大きな修正箇所もなかった.チェック完了.
  3. これまた3月に発行予定の『植物防疫』(第63巻第3号)の記事:三中信宏「分子系統学:最近の進歩と今後の展望」.人名のファーストネームが軒並み削られていたので復活させる.本文については他は問題なさそう.明日,末尾の文献リストをチェックして,編集部に返そう.あ,いっしょに返送するはずの「事務連絡表」がどこかにお隠れになってしまった.“基本ポリシー”にしたがって,再度送ってもらうことにしよう.

◆明日は来週のための離陸助走日ということで,諸方面のダンドリをするべし.

◆本日の総歩数=9299歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.5kg(0.0kg)/23.3%(−0.6%).


4 februari 2009(水) ※ 立春には「ダーウィン」を読もう

◆ちょっと遅めに午前5時半起床.薄曇り.気温プラス3.4度.今日も平常労働日なので,農環研に行くしかない.

◆今年に入ってから心して「ダーウィン本」の新刊チェックをしているのだが,グッドタイミングで「ダーウィン本本」を献本していただいた —— 北村雄一『ダーウィン『種の起源』を読む』(2009年2月12日刊行,化学同人,京都,折込み図+302 pp., 本体価格2,000円,ISBN:978-4-7598-1170-4 → 目次版元ページ).さあ,『種の起源』を読もう.ということで,『種の起源』を章ごとにたどり,その内容を要約・紹介するとともに,19世紀当時の進化思想とその現代へのつながりを解説している.このガイド本には,もちろん原書よりもはるかにたくさんの“イラスト”が載っているが,アレっ「萌えキャラ」はないんですね?(「ひげ爺」はいらないですけど)

もう1冊の新刊「ダーウィン本本」も届いた —— Michael Ruse and Robert J. Richards (eds.) 『The Cambridge Companion to the “Origin of Species”』 (2009年1月刊行,Cambridge University Press[叢書〈Cambridge Companions to Philosophy〉], ISBN:9780521870795 [hbk] / ISBN:9780521691291 [pbk] → 目次版元ページ).この叢書にはすでにダーウィン自身の Companion もある(第2版がもうすぐ出るはず)のだが,『種の起源』という1冊の「本」だけを取り上げた Com@anion って他にあるのだろうか? 執筆陣は正道の進化学者・科学史家だけではない.文学や政治学の観点から書かれた章,さらには古書店の目から『種の起源』を論じた章(発行部数とかその流通そして古書価格の変動について)まで含まれている.

◆天気は晴れたり曇ったりを繰り返している.11時半,気温6.9度と低めの気温だが,午後になって晴れ間が広がり,日射しが暖かそうだ.さすが立春.

◆昼下がりはトリヴィアルな書類をちくちくつくる —— 昨日は農大に出す人事業績書類,今日は農環研に出す個人業績書類.書式はぜんぜんちがうし,カテゴライズの基準も別世界.昨日は InDesign で何とかなったが,今日は最初からエクセル呪われ雛形が天下りで指定されている.エクセルの cell に業績項目をちぎっては詰めるという非生産的な作業でどんどん時間が過ぎていく.本務地の「懲役刑」だと思って毎年つくっているのだが,年によって書式が変更されるので,前年度のアップデートというわけにもいかない.およそ3時間ほどムダな時間を費やして,午後3時すぎにメール送信.これでおしまいと言いたいところだが,まだ「中間報告」であって,年度末の「最終報告」のときには再度この作業にいそしまないといけない.

せっかくのムダ作業だが,ほんのちょっとは参考になる集計結果もある.去年1年間に他大学などへの出講に費やした時間(往復移動時間を含む)は「計444時間」,国・県からの要請出張は「計65時間」,学会業務は「計42時間」,そして対外的コンサルタント業務は「計30時間」.以上を加算すると,この1年間に農環研のでの仕事は「計581時間」ということになった.週40時間の標準労働時間の場合,年間の総労働時間はおよそ「2,100時間」なので,ぼくの場合,本務地以外での労働時間が占める比率は,「581÷2,100≒0.2857」すなわち「約30%」ということになる.まあ,そんなもんでしょうね.

◆ゲラゲラゲラ —— 昨日までかかえていたゲラは,『日経サイエンス』の自然淘汰記事と『植物防疫』の分子系統学記事のふたつだった.そのチェックが終わらないうちに,『ニュートン』の【種】記事のゲラが届いてしまった.と思ったら,『日経サイエンス』の対談記事のゲラも近日中に送られてくるという.さらに,音羽から「新書の原稿は?」という加圧メールとともに,「コンウェイ・モリス訳本のゲラもまとめてドン」らしいので,一挙にゲラと花粉が渦巻く早春となってしまった…….

◆明日は,筑波事務所「電農館」にて,種苗管理センターの統計研修の高座がある.スライドとハンドアウトを用意し,実習用のPCのRとRコマンダーの動作チェック.それとともにインストール用のUSBメモリーを用意した.

◆午後5時過ぎに帰宅する.風が出てきて,気温は降下中.

◆本日の総歩数=8428歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.5kg(+0.2kg)/23.9%(−1.0%).


3 februari 2009(火) ※ 居室引きこもりで鬼が誘因される

◆午前4時40分起床.晴れ.気温マイナス1.5度.夜明け前はまだまだ冷え込む.

◆午前のこまごま —— 遅くなってしまったが,メーリングリストの雑用をすませた上で,月例アナウンスを流す./とある査読の再度の督促.いよいよやるしかないか,と観念しましたメールを編集部に返す./領域会議は明日4日の10:30から.明日は農環研に実在するので,久しぶりに出ましょうかね.

◆毎年恒例の「読書アンケート特集」 —— 『月刊みすず・2009年1・2月号(568号)』(2009年2月1日発行,みすず書房 → 版元ページ).とても細かい活字でびっしり組んであるので,しっかり読むと時間がかかります.ちなみに,ぼくの選んだ五冊は pp. 37-38 に載ってます.

◆午前11時.晴れ,気温は7.8度.日中は風もなく暖かい.

◆鬼が来る昼下がり —— 東京農大から電話あり.先月“勝手にリジェクト”した人事書類を早く出すようにとのこと.しかたがないので前回(二年前)に出した文書ファイルを開けてみる.エクセルの罫線で文書をものするのはやめてね.これをいじって遊ぶほどヒマではないので,さらにその元になる InDesign ファイルを掘り起こし,これをアップデートすることにした.2年あまりの期間に増えた「差分」をそれぞれの業績カテゴリーに貼りこんでいくのだが,ちくちくと改訂しているうちにほとほと嫌になってきた(鬼がやって来た).結局,午後6時近くまで作業を続けてやっと完成.あわせて個人調書もアップデートし,まずはメールで厚木に送る.さらに押印した書類を速達で送る手配をした.これでやっと作業完了だが,実に一日仕事になってしまった.しかも所内用の業績リストも[まったく別の書式で]作らないといけないのだが(ほんとうは2月2日までに),その作業は明日まわしになる.

◆さらなるこまごま —— 計算センターから次のシステム更新の際に,研究用ウェブサーバーの中身に関するチェック体制を強化するという.これに伴い,サーバーのユーザーがするべき「トド」も増えるらしい.とりあえず,次期体制になってもサーバーを使用しますという返信を書いた.

◆午後6時に撤収し,『植物防疫』のゲラと『日経サイエンス』のゲラを小脇に抱えて帰る.

◆本日の総歩数=7445歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.3kg(+0.4kg)/24.9%(0.0%).


2 februari 2009(月) ※ 三年に及んだ翻訳苦界からの脱出

◆午前4時半起床.晴れ.きりきり冷えこんでマイナス3.6度.

◆翻訳作業の「第四コーナー」をまわる —— しかし,外が寒かろうが暑かろうが,とにかく正午までにはカマジン訳本のゲラ読みを終えるしかない.海游舎・本間さんがつくば駅にやってくるこの時刻はもう動かしようがない.昨日は最初から300ページまでイッキに読んだところで力尽きたが,まだあと200ページ(5章分と文献リスト)も残っている.元の本が厚過ぎる.それでも,さすがに「三校」ともなれば,ガレキに埋まった山道を登攀する苦行ではもはやなく,ところどころ小石がちらばる野道を進むくらいのラクさはある.しかし,ホトケ心が残っていた最初の数章では,この期に及んでまだ片づけきれない前世の落石が転がっているので,そのつどぱたぱたと清掃処理する.一方,大魔神に変身した後半章は,いったん“裸地”として整地したので,問題がある翻訳箇所はすべて自分の責任ということになる.

寄り道して,過去の「日録」を検索してみたら,今回のカマジン本の翻訳原稿を最初に手渡されたのは,三年以上も前の「2005年10月6日」のことだった:

午後2時半に“まっちゃん”から研究室に電話あり.予定より早く着いたとのこと.TXつくば駅にて落ち合い,Creo 前の〈なかやま〉にてしばし打ち合わせ.こりゃあ,タイトルとは裏腹に,パーフェクトに社会性昆虫の本じゃないですかー.時間がないなあと思いつつ,ブツを手渡される.哲学の部分はまだしも,シミュレーションの部分は手強い気がする.

とその日の日録には記されている.そして,意外になことに,一年もたたないうちに「いちおう」全部チェックして海游舎にもどしていた.翌年の「2006年5月24日」の日録にはこう書かれている:

雨がぽつぽつと降り始めてきた中,またまた〈ルオー〉に舞い戻り,訳稿の残る1章分をやっつける.1時間ほどで何とか作業を完了.午後4時過ぎに海游舎の本間さんが狙いすましたように入ってきて,原稿を即手渡し.これで本文は終わったのだが(まっちゃん,あとはよろしく),図表のキャプションの翻訳がまだ残っている.訊けば,このカマジン自己組織化本も700ページ程度の厚さになるという.あっちでもこっちでも極厚本を出すのに加担するようになるとは思わなかったな.

しかし,この時点では,パソコン草稿の文章チェック(というか語句チェック)をざっとやっただけで,そのあとに2年にもおよぶ「長期登攀」が待っていようとは想像もしなかった.

日録はウソつかない.初校ゲラとの格闘がやっと終わった1年後の「2007年4月29日」にはこう書かれている:

前夜からずるずる引きずる夜なべ仕事.午前1時前に,カマジン本の最終章の最終8ページのチェック作業を完了した [……] この章はゲラのすべてのページが隙き間なく「朱」の呪文で埋めつくされ,さながら“耳なし芳一”のようになった.もちろん“耳”も怠りなくチェックしたので,遺漏はないはず.下訳の文章の生存率はかぎりなくゼロに近い(文章適応度が低いための当然の結末だ).結果的に,これまでの章よりもかなり高率に地べたからの訳し直しをしたことになる.

しかし,道なお険しく,その後およそ一年あまりほど停滞したのち,昨年なかぱになって再び再起動することになる.「2008年6月18日」の日録は語る:

午前11時前にTXつくば駅改札にて,海游舎の本間さんと会い,1年ほど停滞していた:スコット・カマジン他著『生物システムにおける自己組織化(仮題)』の今後の予定についてミーティング.秋には出そうということになったが,索引とか proofreading とかハードルがいくつかある.刷り上がりは600ページくらいとのこと.

でもって,その後の半年の間に図版入りの再校ゲラと今回の三校ゲラが浅間山の火山弾のように降り注ぎ,そしてようやく長かった苦行の道のりはジ・エンドとなったのだった.午前11時にすべての三校ゲラをチェック完了.正午前にTXつくば駅構内のスターバックスにて本間さんにどさっと手渡して,ほぼ完全解放された.この三年にわたる酷使により,原本は完全に崩壊し,もはや「本」ではなく「紙の束」と化してしまった.

—— こまごまとした修正とか著者紹介文などの残務はあるが,あとは3月半ばのブツの完成を待つばかり,そして,岩手県立大学で開催される生態学会大会のブースでは先行割引販売されるでしょう.ということで,みなさん,お買い上げをよろしくよろしく.お,そーか,訳本のタイトルもこれで確定だ:スコット・カマジン他著[松本忠夫・三中信宏共訳]『生物にとって自己組織化とは何か:群れ形成のメカニズム』(2009年4月1日刊行,約600ページ,海游舎,東京 → ISBN:978-4-905930-48-8 → 版元ページ原書目次原書感想).翻訳作業に従事するのはしばらく免除にしてほしいのだが,そーもいかない…….

◆午後,「火山灰」が降り積もる —— そんなこんなで昼過ぎまでばたばたしていた.午後2時,快晴,気温8.2度.風もなく暖かな昼下り.腑抜けになっていたら:今週木曜(5日)は種苗管理センターの研修で生物統計学(R)の講義・実習を担当する.農林研究センターの電農館を使うのだが,RとRコマンダーのインストールから始めないといけない.そのだんどりと全体の予定をイメージする.持ち時間は午後の4時間./年末に送った『植物防疫』分子系統学原稿のゲラが忘れていたころにもどってきた.2月10日までに返却せよとのこと./その前に処理するのは『日経サイエンス』のダーウィン特集ゲラ.こちらは2月6日までだったかな.対談ゲラはまだ届いていない./出講している大学の成績評価と登録を忘れずにやらないと./今月の出張伺をまとめて出さないと.出張高座はもうないので兼業申請は不要.年休届も今月は出さずにすむ./4月4日(土)〜5日(日)に立教大学で開催される生物地理学会大会シンポジウムのあれやこれや./わ,メーリングリストの月例アナウンスをまだしていない〜.

◆午後5時半に撤収.「ど」をうぐうぐ呑んで燃え尽きる…….明日からは「火山灰」の除去作業を再開しないといけない.

◆本日の総歩数=10510歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=82.9kg(−0.2kg)/24.9%(+1.3%).


1 februari 2009(日) ※ 地震のひと揺れでゲラ読み完了か

◆午前5時にいったん起きたが,また二度寝.次に目覚めたのは明け方の地震のひと揺れで.しかし,さらに寝続けて午前7時を過ぎてやっとのろのろ起き出す.

◆明け方は寒かったが,朝から風もなく日射しが暖かで,立春を予期させるいい日和だった.午後も穏やかな空模様.

◆今日は,途中ちょこちょこと買い物で短時間外出はしたものの,朝〜昼〜夜まで終日ずーっとカマジン訳本ゲラのチェックに没頭した.それしかしていないので,日記に書くことがほんとうに少ない.しかし,明日月曜の正午が締切なので,うかうかしてはいられない.

◆夜は,前々から買おうと思っていた秋田・山本合名会社が出している〈白瀑〉の季節限定の純米酒「ど」をあおりつつ,とんかつなど.どぶろくに揚げ物とはこの上もなく不健康ですなあ.酒屋の店先で黒々とした巨大な「」という字を見るのとき,そのインパクトの大きさを実感する.「へ」でも「お」でもなく,「ど」だもんね.炭酸ガスがぶくぶく泡立つ辛口の濃厚なにごり酒.ぜんぜん甘くないので料理には合わせやすいが,調子に乗って飲み過ぎるときっと一巻の終わりのイチコロでしょう.あぶないあぶない.

◆「ど」の後はまたまたゲラ読みに復帰する.300ページあたりまで進んだところで午後11時になってしまった.できれば今日中に最後の500ページまで進みたかったのだが.

◆不滅の〈木管精神注入会〉と打族の兇暴性について —— 東大オケでひとつ上の楽年だった SKinsui さん(50Fl)が記している〈SKinsui's blog〉を見る.今日の記事「木管精神注入会」に,一昨日,本郷のとある中華料理店で開催された〈木管精神注入会〉のプチ同窓会のことが書かれていた.いまや国語学の大御所になってしまった SKinsui 氏だが,オケ合宿で「ひょっこりひょうたん島」を毎度踊り狂ったお姿を即座に連想するのはわれわれの世代のオケOBだけだろう.上記〈注入会〉の証拠写真を見ながら,何十年ぶりかで見る「顔」と「名前」がうまくつながったりつながらなかったり.経てきた年月の長さをまたしても実感してしまった.

この記事の中では,その頃のオケ内でのパート間の関わりが書かれているのだが,とくに打楽器パートについては:「打楽器は、暴力性と繊細さが同居した、個性的な人が多かったように思います」とのコメント.ま,「精緻!」な木管パートから見れば,われわれ打族はちょっとクセモノなケダモノ集団だったかもしれませんな.昨日の新百合ヶ丘での打族同窓会のようすを見れば誰でも納得できる.しかし,ぼくが記憶しているかぎり,「繊細さ」のある人は早々に立ち去り,「暴力性」を帯びた人は長〜く残ったんじゃないですか?

◆さてさて,明日正午までにはたして残りのゲラ読みを完了成就なるか.マジで仕上がるんですかぁ?>ワタシ.

◆本日の総歩数=4723歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.1kg(+0.3kg)/23.6%(−0.8%).


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