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oude dagboek

日録2006年5月


31 mei 2006(水) ※ 〈E.F.G.H.〉アゲイン

◇午前4時20分起床.晴れ.気温15.6度.明け方に「古語辞典」を買いに来る客ってやっぱり変かしら.いと怪し.

◇「取立て」の始まり —— 方々の学会大会の講演要旨の提出締切が迫ってきた.東北大学での統計関連学会大会(9月),北大での科学哲学会(10月).おっとその前に8月はじめの Hennig Society Meeting(Oaxaca)もあったな.ん? そういえば8月末の進化学会大会の講演要旨締切がまだ公表されていないぞ.例年どおりだと7月はじめのはずです.>ikushimoさん.

 とりあえず,今日締切の科学哲学会から始めるか.

◇午前10時に,東大から吉田さんが来室.7月11日(火)〜12日(水)に予定されている,農学部6類の学生見学会の打合せ.農林団地のいくつかの研究所を中心に施設見学をする予定.農環研は11日の午前中が当てられている.エコロジカル・セイフティー講座としての対応が必要になるので,連携教員の打合せもこれから詰めなければならない.今日のところは大まかな話だけ.

 筑波事務所宿泊棟の予約手続きと,情報資料課への広報連絡,そして農環研食堂の昼食手配は速攻ですましました.>関係者のみなさん.

 農学部での「隠れ居室」の分割と事務用品の購入についても,まだペンディングのままだ.

◇ヘッケルつながり —— さすが,叩けば Chinese gong のように鳴り響く細馬さんのコメント(5月29日付)を読む.絵はがきと絵便箋・絵封筒はルーツが同じだそうだ.ヘッケルのこの書簡集(1898〜1903年の文通)の場合は,どうやら手彩色の絵便箋が多いようで,絵はがきは少ないみたいです(ヘッケル・ハウスをはじめドイツ内のいくつかのアルヒーフを掘り返す価値はあるでしょう).また,残された作品から見て,ヘッケルは水彩画(Aquarell)が得意だったと思われます.さらさらっと描いては投函していたのかな.

 横道入り —— 細馬さんの「なんでこんな本持ってるんですか、三中さんは」とのご質問には,「そこに本があるから」と答えましょう(うそやー).たまたま,ヘッケル書簡集が出たことを Amazon.de で知ったので買ったところ,かつて遺族と編集者・出版社の間でごたごたと因縁がいろいろあったことを知り,さらにドイツ語での匿名出版(『Franziska von Altenhausen』1927年)とその英語版(『The Love Letters of Ernst Haeckel』1930年)も短期間のうちにすべてそろってしまったということでした.念を飛ばせば本は集まる.

 もうちょい横道 —— ヘッケル書簡集にかぎらず,ドイツ語圏では大部な日記や手紙がどんどん活字化されて出版されていますね.ギュンター・グラスの自伝的作品がつい最近になって翻訳出版されましたが(『私の一世紀』2006年5月刊行,早稲田大学出版部,ISBN:4-657-06512-2).原書『Mein Jahrhundert』は1999年にゲッティンゲンに行ったとき,偶然にも書店の新刊コーナーに平積みされていたのを手に取りました.

 さらなる横道 —— 先日読んだ西野嘉章『チェコ・アヴァンギャルド:ブックデザインにみる文芸運動小史』(2006年5月15日刊行,平凡社,ISBN:4-582-83332-2)の中で,ヴィーチェスラフ・ネズヴァル『絵葉書のための詩』という本が1926年に出版されていると書かれています(第60図).「絵はがき」そのものが詩になるとはねー.※お,また Chinese gong が響きわたるか.Quando rangola il gong…….

◇日射しの強い午後のプチ歩き読み —— 青木正美『古本商売 蒐集三十年』(1984年7月15日刊行,日本古書通信社,ISBN なし→目次)の「自筆もの」の続き.著者の蒐書経験から,小川未明と田村泰次郎(『肉体の門』著者)について.とくに,田村泰次郎の詳細な論議が印象に残る.作家が後世に名を残せるかどうかというのはたいへんなことなのだ.これにて読了.

◇午後のアブスト書き(くぅ) —— 10月21日(土)〜22日(日)に北大で開催される日本科学哲学会(→第39回大会サイト)の講演要旨は下記の通り:

【演題】とても役に立った生物学哲学−進化学と系統学の系譜をたどって
【演者】三中信宏(農業環境技術研究所/東京大学・院・農学生命科学研究科)

地球上の生物が過去にたどってきた系統発生の経路を推論する「系統学」と,その過程に作用したさまざまな要因を考察する「進化学」は,実験系の生物科学研究とは異なる方法論が求められる研究分野である.とりわけ,直接的な観察や実験を通じて結果を得るという典型的な“自然科学”には必ずしもうまくあてはまらないという特徴がある.むしろ,過去の進化を論じるためには,必然的にさまざまな証拠から妥当な説明や仮説を逐次的に絞りこんでいく“歴史科学”に近い性格をもっているといえるだろう.このことに関連して,進化学や系統学の過去半世紀の現代史を振り返ると,進化研究や系統推定を実践する上でどのような科学方法論に依拠すべきかをめぐる論争が何度も繰り返されてきたことに気づかされる.つまり,科学哲学のレベルでの論議や科学史に関わる知見は,少なくとも一部の進化学者・系統学者にとっては科学を「現場」で進めていくために必要な“知恵”であり,同時に論敵と闘うための“武器”でもあった.そして,進化学や系統学の方法論的基盤が科学哲学によって鍛えられてきたというのはまぎれもないことだ.科学哲学と個別科学との関わり合いについて論議するとき,進化学や系統学は格好の「データ」を与えてくれる.しかし,この事例は個別科学にとって科学哲学が単に「天から降ってくる」ことを意味しているわけではないという教訓をも突きつけている.というのは,現場の科学者が自らの方法論的基盤について“科学哲学的”な論議をするときには,時に自分に必要な“哲学”を自ら造りだすことがあるからだ.科学者は科学哲学者の言うことを自分なりに消化して,個別科学の実践にとって不足している哲学的部分を補うことがある.種(species)をめぐる論争や分類と系統に関わる論議ではそれが如実に現れている.生物学哲学が個別の生物学にとってどれほど有効な“知恵”や“武器”を提供できるかという視点から見たとき,鳥瞰型グローバルではなく,地域密着型ローカルであることがこれからの生物学哲学に期待される望ましい属性だろう.科学そのものが進化する知の系譜であるならば,科学論もまたそれら個別科学とともに生きる道を歩んでほしい.少なくとも進化学・体系学に関わる生物学哲学はその道を歩んできたと私は考える.

 近いうちに,この科哲シンポのメンバーの顔合わせを都内でするとのこと.

◇本日の総歩数=14435歩[うち「しっかり歩数」=3542歩/32分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/0.0%.


30 mei 2006(火) ※ “プロボノ”してますか?

◇いつものように午前4時半起床.曇り.18.1度.北風が体感的に涼しい.

◇朝のこまごま —— メーリングリスト管理作業.溜まってしまってごめんなさい./ 進化学会の学会賞公告文案に関する事務連絡.またそういう季節がやってきた./ 先週の出張に伴う立替払い請求書類./ 兼業許可願の内容チェックと返却.山をなす事務書類./ 過去の「人事記録」の項目を初めて確認した.※「えんま帳」みたいなもんですな,これって./ 瀬名さんにOKの返事.今週中に出る予定の新書のゲラを仙台に送ります./ Pro bono publico.

◇気温23.5度,快晴の昼休みの歩き読み —— 青木正美『古本商売 蒐集三十年』(1984年7月15日刊行,日本古書通信社,ISBN なし→目次)の続きを50ページあまり.映画関連の「紙もの」と肉筆本の話がさらに続く.

◇午後1時半から1時間ほど,〈形態測定学講義〉の第8回目.第3章「Simple size and shape variables : Bookstein shape coordinates」の続き(pp. 65-72).複数の標識点三角形に関する分析.ベースラインが決まっていれば,基本的な手順は単一の三角形の場合と変わりがない.しかし,Bookstein 形状座標の差異に関する検定をする場合は,多重比較に関わる補正措置(たとえば Bonferroni 補正のような)を施す必要がある.最後に,ソフトウェアの紹介文.

◇午後の着便 —— Cladistics 誌の今年度 nos. 1 と 2 がやってきた./ 「岩波新書」史:鹿野政直『岩波新書の歴史:付・総目録1938〜2006』(2006年5月19日刊行,岩波書店[岩波新書・新赤版・別冊9], ISBN:4-00-439009-5).岩波文庫の総目録がすでにあるのだから,新書の方もと思っていたら出てしまった.目録部分はは後半172ページで,前半の解説部分は386ページもある.合わせて550ページを越える新書2冊分のサイズだ.

◇夜になって遠雷.しだいに雷鳴と稲妻が接近してきて,午後8時過ぎに雷雨になる.しかし,1時間もしないうちにやんで,北寄りの風が吹き込んできた.

◇本日の総歩数=16524歩[うち「しっかり歩数」=7108歩/63分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/−0.5%.


29 mei 2006(月) ※ 積もるホコリはかぎりなく……

◇午前4時半起床.曇り.18.1度.

◇先週は細かい出張が続いたので,農環研の実在時間が極端に短かった(明け方にしかいなかった).だもんで,いろいろな書類やメールや郵便物が堆積している.「いないときを見計らって」というよりは,斉一的に絶え間なく堆積しているのをちょっとでも放置するとこうなるわけでして…….

◇午前はその処理だけでもう手一杯.昼休みに先日のメーデー反省会があることもまったく脳裏から揮発して,終わり近くになって反省会で注文してあった弁当を喰いに[のみ]出向く始末で.いやはや.

◇午後2時から1時間ほど —— Alan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読(第15回目).Chapter 3:「Moments and Cumulants」の最後の節(pp. 116-117)はモーメントによるパラメータ推定について.続く Chapter 4:「Characteristic Functions」は難物.少しだけ読んでは見たものの(pp. 125-127),複素関数の知識がないとぜんぜん歯が立たないし,イメージすら湧かない.生物系の研究者にはもともと複素関数はあまり関わりがないのをいいことに放置しておいたツケが今になってまわってきたのかもしれない.複素幾何学は形態測定学に関係するのでいいとしても,数理統計学の特性関数を勉強するときには,複素関数の微積分までやっておかないとダメね.遅まきながらなんとかしないとか.

◇新刊メモ —— 高橋輝次『関西古本探検:知られざる著者・出版社との出会い』(2006年5月20日刊行,右文書院,ISBN:4-8421-0069-9).最初に手にした『編集の森へ:本造りの喜怒哀楽』(1994年6月刊行,北宋社,ISBN:4938620650)以来,この著者の本は心して買うようにしている.

◇げ,もう夕方じゃん…….時間が経つのが速すぎっ.

◇本日の総歩数=12361歩[うち「しっかり歩数」=2231歩/21分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.5kg/+0.5%.


28 mei 2006(日) ※ 秩父から濁世に下山する

◇午前5時起床.いつの間にか外は雷雨になっている.

◇プッチーニ〈ラ・ボエーム〉をDVDで.ううむ,こりゃ乱痴気騒ぎですなあ.“ミミ”はいいキャラクターだけど,やっぱり結核で命を落とすわけね.このDVD(TDBA-0085)だと,“ロドルフォ”はどこぞの大店のぼんぼんが放蕩が過ぎて勘当されてしまいましたっていう感じの肉づきのよさなのがなんとも.演出家のカーテンコールがもっとも大きかったというのは,さすがスカラ座.

◇午前8時に朝食.そのあと,しばしごろごろして,西武秩父駅まで車で送ってもらった.10時25分発の〈ちちぶ20号〉に間に合い,そのままつくばに直帰.午後1時過ぎにたどり着いた.この頃には雨はもう上がって晴れ間がのぞき,蒸し暑さがもどってきた.

◇車中読書 —— 西野嘉章『チェコ・アヴァンギャルド:ブックデザインにみる文芸運動小史』(2006年5月15日刊行,平凡社,ISBN:4-582-83332-2).読了.本文200ページにカラー図版96ページが付いている.1920年代からの20年間の間に,ヨーロッパの方々で同時多発的に生じたアヴァンギャルド運動をたどる.個人・組織・国が幾重にも錯綜する.当時出版された単行本や雑誌の装幀に焦点を当てているが,それにとどまらないテーマを含んでいたことを知る.また,本書自身の装幀も,前著である西野嘉章『裝釘考』(2000年4月15日刊行,玄風舎,ISBN:4-250-20025-6)と同じ装釘者が担当したのだそうだが,本書の完成直前に亡くなったとのこと.

◇連日の小出しプチ出張が続いたので,累積された疲労が今になってオモテに出てきた.

◇本日の総歩数=7469歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=未計測/未計測.


27 mei 2006(土) ※ 週末は秩父でアオバトに鳴かれる

◇午前5時起床.くもり.気温16.1度.

◇今日は東京農大の昆虫学研究室の新刊合宿が秩父である.一泊の泊まりだ.空模様がイマイチなのが何ですが,まあ夜は呑むしかないので雨が降ろうがヤリが降ろうがどーでもええのですがね.

◇午前9時10分発の TX 快速で東京に向かう.都内はもう雨が降り出していた.池袋から11時30分に出発する西武池袋線のレッドアロー〈ちちぶ17号〉に乗った.途中,雨足が強かったのでどうなることかと思ったが,飯能から先は不思議なことにまったく雨が降っていないようで,地面が乾いている.12時47分に西武秩父駅に降り立った.曇天ではあるが,雨粒ひとつ落ちてこない.日頃のおこないがいいからにちがいない.

◇駅からは路線バスに乗る.13時30分発の栗尾行きに乗り込み,40分あまりで滝原団地前停留所に到着.20分ほど坂道を上りきった公園の一角に,今日の目的地〈おがの山荘〉があった.到着が早すぎたせいか,参加者はまだぜんぜん集まっていないので,玄関前の椅子で本を読む.こういう逃避的時間は心して現実逃避しないといけない.

◇“お〜あお〜,あ〜お〜,おあ〜お〜” —— 山の上の森からしきりに間延びしたさえずりが聞こえてきた.アオバトだそうだ.バード・ウォッチングの趣味はないので,バード・ヒアリングだけにとどめておいた.何とも緊張感のないコールだ.夕方,早風呂に入り,またごろごろする.

◇夕方5時に約40名の学生&教員が山荘に集結し,夕食の後,呑み始める.がーっと呑んでつぶれるというのではなく,コンスタントに時間が過ぎていくのがこわいな.ワタクシは零時過ぎに寝ました.今後のことがいい方向に決まりそうでよかったよかった.呑みにきたかいがあったというものだ.

◇夜遅くなって,雨が降り出した.学生さんの話では,「ナイター」はぜんぜん収穫がなかったらしい.この天候と気温では灯火採集はダメでしょう.

◇本日の総歩数=13570歩[うち「しっかり歩数」=2549歩/22分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/−0.5%.


26 mei 2006(金) ※ 今日も和光市をうろうろ

◇午前4時起床.曇り.15.6度.今日も和光市へ.

◇8時17分発の TX 区間快速に乗る.和光市駅に着いたのは9時44分のこと.路線バスに乗って会場にたどり着いたのは,定刻10時を数分まわっていた.

◇今日は計量生物学会シンポジウムの2日目で,〈Rによる生物統計解析〉というチュートリアルセミナーが開催される.医学統計学の会員シェアが高いこの学会では,統計ソフトウェアといえば〈SAS〉なので,そこに〈R〉が殴り込みをかける(というか,飛んで火に入る……)というのは,それなりの覚悟が必要なのかもしれない.

会場は昨日と同じ豪華なホールだ.遅れて入っていったのだが,すでに後ろの方まで参加者が座っていた.100名ほどいただろうか.

最初の講義は,群馬大学の中澤港さんによる「R を用いた統計解析入門」で,11時半まで.SAS との比較をしつつ,R による統計解析の手順について説明された.概論にしろ,これだけの内容を1時間半で,というのは誰がやっても厳しかったですね.とりあえず,頑固な“馬”たちは“水場”に引き連れていかれた.

続く講義は,国立がんセンターの吉村公雄さんによる「ゲノム解析におけるRの利用」で,1時間あまり.R の〈genetics〉パッケージを用いた集団遺伝学と遺伝子情報の解析についての解説と実習.「Rも,SASと同じような意味での,教育と普及を積極的に推進する組織が要るかもしれない」という発言をピン留め.確かにその通りかもしれない.インターネット上のつながりだけではない,もう一歩進んだ体制づくりを念頭に置く必要があるということか.

午後1時前に会場をあとにする.明日は,同じ会場で,応用統計学会のシンポジウムがある.

◇和光市駅までは徒歩.曇って湿度が高い.今後しばらくはこのあたりに接近する予定はない.

◇都内をうろうろして,北千住を午後4時11分に出る TX 快速に乗ってつくばに帰る.

◇往復車中読書 —— 細馬宏通『絵はがきの時代』(2006年6月7日刊行,青土社,ISBN:4-7917-6274-6→目次書評)をさくっと読了.

前著である細馬宏通『浅草十二階:塔の眺めと〈近代〉のまなざし』(2001年6月01日刊行,青土社,ISBN:4-7917-5893-5→目次)と同じ触感あり(どちらも「299ページ」という偶然一致だけではなく).遥か昔に倒壊して現実には昇れないはずの「十二階」を一段ずつ昇っていく読後感が前著の味わいだった.今回の新刊は,読者にあえて“スケール・エラー”を犯させて,「古絵はがき」のワールドに迷い込ませるという趣向がおもしろい.風景画やアイドル画などすぐに想像できる絵はがきばかりではない.透かし絵,立体視,災害図絵など,絵はがきの裾野の広がりには驚いてしまう.

しかも,著者は単にそれらの古絵はがきを蒐集しているだけではない.まったく見知らぬ差出人が,やはりまったく見知らぬ受取人に出した絵はがきのひとつひとつに入り込み,出し手と受け手の人間としての関わり合い,さらにはその背後に広がる当時の社会や風俗についてまで推論を進めている.他人のやりとりをそっと覗き見るような,少しばかりイケナイことをしているような気持にさせられる.

「アルプスからの挨拶」の章では,現在のような“観光資源”ではなく,むしろ“畏敬(恐怖)”の対象としてのアルプス山脈について,絵はがきから見えてくる眺めが語られる.サイモン・シャーマの大著:『風景と記憶』でのアルプス論を想起させる.

また,「色彩と痕跡」の章では,写真絵はがきと彩色絵はがきが論じられている.たとえば,昨年出た田中正明(編)『柳田國男の絵葉書:家族に当てた二七〇通』を見ると,みごとな写真・彩色絵はがきがかつては流通していたことがわかる.あるいは,エルンスト・ヘッケルの完全手彩色の書簡はどうだろう:Norbert Elsner(編)『Das ungelöste Welträtsel : Frida von Uslar-Gleichen und Ernst Haeckel [3 Bände]』.チャールズ・ダーウィンとはちがって,卓越した画才があったヘッケルの手になる絵はがきは,そのひとつひとつが[覗き]見る者の想像力をかき立てる.ヘッケルが愛人に宛てた書簡は,本書の言う絵はがき文化の「全盛期」,すなわち19世紀末から20世紀初めという時代にちょうど合致していた.絵はがきと封書では根本的にちがうものがあることはわかっているのだが,“絵”を介して語り合う時代があったことは確かだろう.

—— デジカメとメールの影で,今ではほとんどその“痕跡”しか残っていない「絵はがき文化」を論じた本書は,もう忘れられてしまったさまざまな周縁的ことがらを読む者にそっと開封してくれる.覗いていいんですか,細馬さん?

◇脇道ネタですが,この本の「ミカドとゲイシャの国」の章で言及されていた,ギルバート&サリヴァンのオペレッタ〈ミカド〉に登場する“われら学校帰りの三人娘”というキャラクターは,プッチーニの〈トゥーランドット〉の準主役“ピン・ポン・パン”の祖型と考えていいのかしら.「シラー翻案ウェーバー作曲」の「トゥーランドット」が p. 195 で引用されているので,きっと関係があるのではないかと推測するのですが.

◇本日の総歩数=21832歩[うち「しっかり歩数」=5098歩/41分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.6kg/0.0%.


25 mei 2006(木) ※ 今日は和光市をとぼとぼ

◇午前4時半起床.すっきりと晴れ渡る.北寄りの風が吹く.

明け方のにわかシェフ —— 〈ドライフルーツ巻きこみローストポーク〉.1) 豚ロース肉の塊(500g)を厚さ1センチに切り開いて展開し,岩塩で下味をつける.2) Hediard のオレンジ・マーマレード(ビター)をたっぷり塗る.マーマレードならばどこのメーカーでもいいが,肉に負けないためには「苦味系」である必要がある.3) ドライフルーツ(今回はレーズン100gとクルミ50g)を肉の上に均等にばらまく.4) 端から肉をきっちり巻いていく.最後にたこ糸でぐるぐるに縛る.肉の緊縛スタイルはローストビーフと同じ要領ね.5) ビニール袋に肉を入れ,溜まり醤油と赤ワインで下味をつける.6) 深めの肉厚フライパンを高温に熱して,肉塊にしっかり焦げ目をつける.トングでつかんで,全体に焼き色をつけるのがポイント.7) 弱火にして,下味つけに使ったたれをフライパンに注ぎ,ふたをして蒸し焼きにする.水気がなくなりそうになったら,赤ワインを適宜注ぎつつ,約30分の蒸し焼き.最後に水気を飛ばしながら(焦がしてはいけない),仕上げる.ここまででおよそ1時間の作業だった.

◇起き抜けに肉を焼いたせいか,アタマが重い…….※どういう因果関係かしら.

◇今日と明日の2日間は,計量生物学会の大会が和光市の国立保健医療科学院で開催される.9時18分の TX 快速に乗り,東武東上線の和光市駅にたどり着いたのは,11時過ぎのこと.理研方向に歩きはじめたのだが,意外に遠い.迷いつつ30分ほどあるいて正午前にやっとたどり着いた.はじめて来る研究所だが,とても立派な建物に,ゴージャスな講演会場に圧倒される.※厚生省系って[農水省系とはちがって]リッチだったのね.

◇昼休みに評議員会.2010年の IBC を日本に引っ張ってくるという企みあり.午後2時前の計量生物学会総会で,学会賞の表彰式.今回は,鵜飼保雄さんが今年度の「功労者」として表彰された.(拍手) その後,午後の一般講演セッション.例年のことながら,医学統計学の発表が多い.幾人かの参加者から言われたが,「医学統計学“以外”からの発表が年々少なくなっていますね」というのは事実だ.

◇今日は晴れて気温が高くなった.湿度が低いのでそれほど不快ではないが,とぼとぼと和光市駅まで歩いて戻るのはつらいな.明日は路線バスだ.

◇帰路の車中読書 —— 青木正美『古本商売 蒐集三十年』(1984年7月15日刊行,日本古書通信社,ISBN なし→目次)を200ページほど.先行書:青木正美『東京下町 古本屋三十年』(1982年12月1日刊行,青木書店,ISBN なし)と比較して,さらに“資料性”が高まっている.戦後の古書業界の「初版もの」ブームの分析はおもしろい.戦後文学書の「初版」がブームになったのを契機として,時代を逆にさかのぼった戦前の文学書にまで「初版ブーム」に煽られることになったのだという.

古書店主としての著者の経験は単に狭義の「古書」だけではなく,戦後の漫画本などの周縁的な「紙もの」にも及んでいる.とくにおもしろいのは,古い「絵はがき」の古書店業界での扱いだ.もともと商品価値が認められなかったのに,あるときからいきなり高い価格で取引されるようになったのだという.国内外を問わず古絵葉書の愛好者は多いらしく,国内の同好会の経緯についての言及もある.絵はがきの世界はディープで,生半可な知識ではヤケドしてしまうそうだ.

◇ここまで読んで,いささか“絵はがき化”しつつあったところ,帰りに寄った神保町の〈書肆アクセス〉で,『彷書月刊』などいくつかの雑誌が軒並み「古絵葉書」特集を組んでいることを知った.どーしたんでしょ,これ.きっと近所にある青土社の“陰謀”にちがいない.誰もが予想するように,東京堂書店の新刊コーナーには,細馬宏通『絵はがきの時代』(2006年6月7日刊行,青土社,ISBN:4-7917-6274-6)が威圧的にどんと平積みされていましたぞ.※あっさり籠絡されてしまったことはいうまでもない.「トドメを刺された」ってことでして,ハイ.

◇都内に滞留することなく,さささっとつくばに舞い戻る.明日も引き続き和光に通う.

◇本日の総歩数=22025歩[うち「しっかり歩数」=8197歩/61分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−0.1%.


24 mei 2006(水) ※ 本郷通りで時間と闘う

◇午前4時半起床.雨上がりで朝からもう蒸し暑い.気温17.4度.明け方の研究所に立ち寄る.今日から明後日までは東京方面への日帰り出張の連続なので,時間外に農環研に潜入するしかない.※時間外は毎朝のことだが.

◇研究所に届いていた新刊 —— 近刊予告が出てからずいぶん待たされたが,イギリスのマクドナルド考古学研究所から言語系統学の新刊論文集が出た:Peter Forster and Colin Renfrew (eds.)『Phylogenetic Methods and the Prehistory of Languages』(2006年刊行,The McDonald Institute for Archaeological Research[McDonald Institute Monographs],ISBN:1-902937-33-3→目次).最近の言語系統学の主要な寄稿者は網羅されているようだ.

◇9時18分の TX 区間快速に乗って,本郷へ.〈ルオー〉にて訳稿ひたすらチェック.1章分はまず攻略完了.残る1章と格闘していた正午前に,お代官様から電話召還される.菊坂手前を脇道に入ったところにある,金魚やとレストランが超越合体?した〈金魚坂〉にてランチ.情報学環の佐倉統さんと JST の福士珠美さんが同席.「現代新書」執筆者という“原罪”を背負った者たちがお代官様の前に平伏すことになった(佐倉くん,これから頑張ってちょーだい).

日替わり定食を賞味しつつ,原稿進捗のこととか.コンウェイ・モリス収斂本の最初3章分の初校ゲラを手渡された.刷上がりで 700 ページになるらしい.また,『だから,系統樹!(仮)』のゲラは来週になるとのこと.瀬名さんにはゲラができしだい編集部から送りますとのことです.>瀬名さん.

“古傷” —— 『現代思想』の進化特集でとある翻訳をしていた頃,例によって時間に追いまくられて,最終的に神保町の青土社編集部にカンヅメになって翻訳原稿を書いたことを同誌編集長がまだ覚えているらしい(佐倉談).ううむ,そういう“古傷”があったことをしばらく忘れていたのに…….みなさん,そういう都合の悪いことは,ぜひ,さっさと忘れていただきたい.すぐに.即座に.跡形もなく.

◇午後1時から,農学部で「専攻教員会議」.連携講座による講義の形式とか,大学院入試のこととか.午後3時過ぎから,「専攻内会議」.延々と続く伝達事項に悶死する.とても苦しい.専攻教員会議と専攻内会議のどこがちがうのか最初はわからなかったのだが,訊けば参集範囲がちがっているらしい.ううむ.

◇予報通り,雷がごろごろなり始める午後3時過ぎ.

◇雨がぽつぽつと降り始めてきた中,またまた〈ルオー〉に舞い戻り,訳稿の残る1章分をやっつける.1時間ほどで何とか作業を完了.午後4時過ぎに海游舎の本間さんが狙いすましたように入ってきて,原稿を即手渡し.これで本文は終わったのだが(まっちゃん,あとはよろしく),図表のキャプションの翻訳がまだ残っている.訊けば,このカマジン自己組織化本も700ページ程度の厚さになるという.あっちでもこっちでも極厚本を出すのに加担するようになるとは思わなかったな.

◇今日は本郷通り沿いでの“時間”との格闘が続いたのだが,やっと空き時間ができたのでメールチェック.おお,『進化学辞典』ですかっ! >殿.

◇午後6時から,農学部7号館にて第6類/生物・環境工学専攻の懇親会.立食形式.雨足が強まったと思ったら,いきなり雷雨がざあざあと降り出して,会話にもさしつかえるほど.午後8時過ぎに散会したときもまだ雨が降り続いていた.

◇帰路の TX 北千住駅にて,偶然にもコンウェイ・モリス本の訳者である遠藤一佳さんに出会う.翻訳の進捗などやりとり.あとの章もよろしくお願いします.コンウェイ・モリス訳本でのワタクシの役割は「監訳者」あるいは「監修者」ということになっている.

◇午後9時半頃につくば着.しっかり降り続いている.

◇往路車中読書 —— 青木正美『東京下町 古本屋三十年』(1982年12月1日刊行,青木書店,ISBN なし→目次).最後の「付録」100ページを読了.「肉筆もの」の蒐集ってとてもなまなましい.書影やハガキなどなどたくさん.全体としてたいへんおもしろい本だった.引き続き,続編:青木正美『古本商売 蒐集三十年』(1984年7月15日刊行,日本古書通信社,ISBN なし→目次)に進もう.

◇本日の総歩数=23461歩[うち「しっかり歩数」=9506歩/80分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/+0.2%.


23 mei 2006(火) ※ 青山にて〈ダーウィンの悪夢〉試写会

◇午前2時半起床.寝たか寝てないかで目を覚ます.夢見に,プー・ティン・パオが断頭刀をもってやってきた.※チャン・イーモウの演出は怖過ぎるー.

◇曇り,気温18.7度の研究所にて,訳稿のチェックが続く.生暖かい南風が.月は出ていない.どう考えても“じたばた”しているのだが,しかたがない.プレスティッシモ.

◇今日は年休を取っているので,午前中も心置きなく(汗)訳稿との格闘を続けられる.11:11の TX 快速にて表参道へ.A4出口にて海游舎の本間さんに原稿5章分を渡す.あれだけ“じたばた”してもなお2章分が積み残されてしまった.明日また本郷にて渡すという約束にした.何だか蒸し暑いぞ.地下から地上に出ると,そこはアオヤマ.「存在的に場違いである」ことを実感する…….

◇今日,青山にやってきたのは,ドキュメンタリー映画〈ダーウィンの悪夢〉(→公式サイト)の先行試写会のため.全国ロードショー上映されるのは今年の冬になる予定とのことで,それに先だつはずの試写会をさらに先行する試写会が,ここ青山の〈アウラ・スクリーニング・ルーム〉で午後1時半から始まる.パーソナルに場違いな表通りから一本ウラに入った,さらに場違いにおしゃれな一角を地下に降りていく途中に会場があった.受付にて,今日招待していただいた広告会社ムヴィオラの武井みゆきさんにあいさつし,さらにこの映画の配給元であるビダーズ・エンドの関係者にも紹介してもらった.

上映室はとても小さく,四列で40人入るかどうかというサイズだ.こういう上映会はほとんど経験がない.

今回呼ばれたのは,試写会に先立って,映画の内容と体裁(字幕)などについてのコメントをするためだ.〈ダーウィンの悪夢〉は前から機会があれば見ておきたいと思っていたので,渡りに舟ということでやってきた.

1時間47分のこのドキュメンタリーは,つい最近までシクリッドの適応放散の絶好の例として繰り返し進化学の教科書で引用されてきた,タンザニアのヴィクトリア湖が舞台だ.こういう“社会派”の映画らしいややざらついた映像と音源は,事前に知ってはいてもなお衝撃的な内容に似合っている.映画のネタばらしをここでするわけにはいかないが,タンザニアの国内産業と雇用の振興という名目で,「小さな科学実験」として人為放流された大型魚ナイル・パーチが,瞬く間にヴィクトリア湖のすべての魚類相を絶滅に追いやった.その後の「ことども」が映画の主題になっている.だから,予習勉強としては,この映画の科学アドヴァイザーの一人でもある Tijs Goldschmidt の著書『Darwins hofvijver: een drama in het Victoriameer』(1994年刊行,Prometheus,ISBN:90-5333-611-7) — ティス・ゴールドシュミット『ダーウィンの箱庭 ヴィクトリア湖』(1999年9月16日刊行,草思社,ISBN:4-7942-0886-3) — が必読になるだろう.

ヴィクトリア湖での「小さな科学実験」のもたらした結末をこの映画は複線的に執拗に追い続ける.ナイル・パーチの切り身をヨーロッパに運ぶイリューシン機のパイロットが登場し,あやしげな国立魚類研究所の守衛が持論を展開し,殺される娼婦が唄を歌い,片足のない子が夜の街を駆け回り,パーチの“あら”を大量処理する湖岸が映され,腐ったパーチのアンモニアで片目がなくなったり,予想通りエイズが蔓延していたり,全土に飢餓が広がっていたり —— 要するにそういう映画だ.日本は無関係だと思わない方がいい,パーチの大口輸入国のひとつはほかならない Japan だ.

内容とメッセージは十二分に伝わってくるのだが,それでもなお〈ダーウィンの悪夢〉というタイトルには違和感がある.ナイル・パーチはヴィクトリア湖の魚類を食い尽くした.だからといって,ナイルパーチは適者生存だとはけっして言えない.ナイル・パーチの輸入国たちは豊かなのに,輸出国タンザニアは究極の貧困だ.だからといって,それは「ダーウィンの〜」という文脈では論じられないだろう.社会ダーウィニズムという伏線があるのだとしたら,それは誤解を招くおそれが大いにあるだろうから.(参照:→2005年11月8日の日録

終わって,感想を書き(字幕の間違いを指摘したり),外に出たら〈悪夢〉とは無縁なアオヤマが広がっていた.小雨がぱらぱらと降ってくる.

◇小雨の千駄木をしばしぶらぶらして,TX でつくばに帰還する.夜,雨は本降りに.どっと疲労感に包まれる.※プー・ティン・パオでも何でもいらっしゃい…….

◇明日も東京だ.

◇本日の総歩数=12930歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.3%.


22 mei 2006(月) ※ 『だから,系統樹!』の内的成就

◇午前4時半起床.曇り.朝イチに歯医者にて定期メンテ.

◇方々から湧き出る書類たち —— 人事から「兼業申請」関連書類がどさっと届く.ううむ,大学ごとにそれぞれ別々に.チェックして返さないといけないのだが,その時間がありまっしぇん./ 分類学会連合から進化学会の会員調査.事務局に丸投げっ./ 明日の年休届.

◇午後1時から,RP の研究計画に関する打合せを1時間ほど.対外的に“シームレス”に見えるように(……).あとは中期計画がらみの文面の手直しが必要だ.

◇午後は,明日東京で手渡す予定の翻訳原稿のチェック作業の続き.気がつけばいつもラルゴになってしまう.せめてアレグレットでありたいが.まだまだ.

◇鹿児島産の新茶をいただく.ありがとうございます.

◇夕方,一念発起して,『だから,系統樹!』の html 化を完了させる.原稿段階で長く足踏みしていたが,やっと全部終わらせて,初校ゲラがもうすぐ出ることになったので,とりあえずはヒミツのサイトに原稿の html ファイルをひとそろい置いておこう.

西村三郎『文明の中の博物学:西欧と日本(上・下)』(1999年8月31日刊行,紀伊國屋書店)が最後に登場することになった.もちろん「正名思想」との関わりで.そして,トゥーランドット姫,満を持して武満徹の隣りに降臨.これですべては終わった.お疲れさん>ぼく.

◇しかし,疲れてはいられない.夜もなお訳稿のチェックが続く.気分的にはすでにアレグロになっている.終わらん…….でも,午前零時にならないうちにあえて寝る.明日は未明に起きる予定.Nessun dorma.

◇本日の総歩数=10108歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/−0.6%.


21 mei 2006(日) ※ 今日は快晴,爽快サンデー

◇午前5時起床.快晴.気温17.2度.昨日の蒸し暑さとは打って変わった,爽快な五月晴れ.今年の5月は晴れた日がほとんどないので,貴重だ.

◇北寄りの涼風に吹かれつつ,訳稿チェックはなお続く.

◇ごろ寝しつつ読み進む —— 青木正美『東京下町 古本屋三十年』(1982年12月1日刊行,青木書店,ISBN なし).付録を残して,本編300ページまで読了.敗戦後から30年あまりの古書業界の内情の「具体的」な回顧.ここまで,内輪の事情について踏み込んで書かれている本は他には少ないのではないか.

ピン留めされた一言:

蒐集とは,単に蒐集したいから蒐集するのであって,蒐集してどうしようと考えて蒐集するものでもないのかもしれない.蒐集されて,やがて蒐集者が死に,いづくかへ散逸されていく, —— 凡人の蒐集の運命などというものはそんなものであろう.(p. 232)

なお,日本の古書店業界に文学書の良書が流通した最盛期は「昭和三十七年から昭和四十四年くらいの頃」(p. 173)だと著者は言う.

◇夕方,散歩がてら立ち寄った〈竹園珈琲〉にて,水だしコーヒーをば.美味.

◇帰宅後,またまた訳稿チェック作業.

◇夜,瀬名秀明さんからメールが来る.岩波書店から刊行中の叢書〈フォーラム 共通知をひらく〉の1冊としていま書かれている共著本の中で,『だから,系統樹!(仮)』を参照したいとのこと.前向きに検討させていただきます.>瀬名さん.

◇深夜,トツジョとして『だから,系統樹!(仮)』の加筆修正の開始(エピローグと文献解題).明日には,すべての章の原稿をhtmlにしてヒミツの場所に載せてしまおう.

◇本日の総歩数=10368歩[うち「しっかり歩数」=4904歩/49分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/+0.5%.


20 mei 2006(土) ※ 本もたわむフライング初夏の雷雨

◇午前5時起床.曇り空.強い南風に乗って,ときどき雨が降る.今年は五月晴れを飛び越して,早くも梅雨がやってくるらしい.湿度が異様に高いので,本の紙がたわんでいる.こりゃ書物の敵だ.

◇朝のうちに雨はあがり,初夏の日射し.南風.蒸し暑いので仕事にならん.翻訳原稿を広げたものの能率は上がらず.自己組織化的に巣の温度調節をするミツバチの方がはるかに利口かもしれない.

◇昼前に少し散歩してみたり.

◇午後になって雷雲が湧いてきて,雷鳴.午後5時頃に予想通りの雷雨が.近くに落雷したようだ.この前線が通過したために,南風が北風に変わり,気温が下がってきた.午後6時過ぎには雷雨は止み,西の空には夕陽が映える.

◇夜,原稿仕事の続き.ううむ…….

◇研究者の評価指標としての〈Hirsch's h index〉 —— TREE の4月号の記事:Clint D. Kelly & Michael D. Jennions「The h index and career assessment by numbers」(TREE, vol. 21, no. 4, pp. 167-170, April 2006)を見ると,最近提唱された新しい科学研究アウトプットの指標である〈h index〉(→元論文 : PNAS, vol. 102, no. 46, pp. 16569-16572, 15 November 2005)とその増加率〈m index〉がどのような研究者キャリアの要因に影響を受けているかが分析されている.進化学の主要ジャーナルの出版論文データをもとに考察した著者らは,〈h index〉は総論文数・ジェンダー・年齢・研究分野などのバイアスを受ける可能性があると警告している.

◇本日の総歩数=6672歩[うち「しっかり歩数」=2614歩/25分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.1kg/−0.1%.


19 mei 2006(金) ※ はしり梅雨の原稿読み三昧

◇午前3時起床.つい寝てしまった…….暗闇に小糠雨が降っている.気温16.4度.うかうかしていると「プー・ティン・パオ」がやってくるぞー.

◇すぐさま研究所に直行し,昨夜からの原稿読みの続き.ここ数日ずっと格闘している Scott Camazine et al.『Self-Organization in Biological Systems』(2001年4月1日刊行,Princeton University Press, ISBN:0691012113 [hardcover] / ISBN:0691116245 [paperback]→目次)の訳稿の第14章まではチェックが何とか終わるめどがたった.これで,本文500ページのうち,やっと300ページ.しかし,残る章はまだ不完全のまま.プレスティッシモで駈けても,今日の午後1時にはぜったい間に合わないだろーな,こりゃ.

◇午前いっぱいは原稿にひたすら齧りつく.残りの7章(第21章まである)も健闘はしたのだが,いかんせん検討すべき訳文のサンプリングが粗すぎて,今日はとても“納品”できない.雨はなお降ったり止んだり.

◇午後1時過ぎ,TX つくば駅改札にて,海游舎の本間さんに会う.〈なかやま〉にて第7章までの訳稿を渡した上で,今後の打合せ.この訳本を優先して作業したいとのことなので,時間的余裕はあまりなさそうだ.文字校正とか図版(&キャプション)を考えると道のりはなお長い.つくづく,翻訳って割に合わない仕事だと思う.

 残る章の訳稿については,来週火曜に原宿に出たときに渡すことになった.キャプションの翻訳もしないとか.※「プー・ティン・パオ」の刃を逃れ,かろうじて首はつながったが,まだ気を抜けず…….

◇午後3時に研究所に戻ったとたん,所内のリサーチ・プロジェクト(RP)の切り分けの再検討についての打合せと中期計画の作文改訂依頼(週明け早々).誰がどの RP に属して仕事をするのかというもっとも基本的なことで,なお決着が着かないとはね.いやはや.

◇こまごまと —— 今年の人間ドック受診日が決定した.

◇午後4時を過ぎてやっと晴れ間が覗くようになった.しかし,前線はまだ通り過ぎてはいない.

◇夜,再び雨.またまた翻訳原稿に絡めとられる.でも,体力の限界を感じる.

◇ルチアーノ・ベリオが補作した〈トゥーランドット〉 —— 2002年のザルツブルクでのライヴ録音をついでに聴いてみたのだが,最終場の補作音楽は主旋律の背後で,シロフォン,バス・シロフォン,グロッケンシュピールがころころと走り回っている.いいですねえ,これって.メシアンかブーレーズのパッセージを聴いているような.

 それにしても,こ,この舞台演出は…….個人的には DVD ではなく,CD の方がよかったかな(言わんとするところを汲み取っていただきたい).

◇台風1号崩れの低気圧のせいで,風雨がしだいに強まってきた.

◇本日の総歩数=11720歩[うち「しっかり歩数」=1161歩/10分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.2kg/+0.5%.


18 mei 2006(木) ※ “今日こそは寝てはならぬ”(……)

◇午前4時半起床.小雨に煙る遠景.15.3度.

◇ううむ,時間がないぞ…….ぜんぜんないぞ.ゲラにかじりつく時がさらさらと流れていく.

◇これは朗報 —— 日本でも方々の上映会で話題を呼んだドキュメンタリー映画〈ダーウィンの悪夢〉が今冬にようやく劇場公開される(配給:ビターズ・エンド).来週に表参道で開催される試写会に招待されているので,しっかりきっちり観てきます.元のフランス語版と続くドイツ語版のDVDはすでに出ているのだが,英語版もまもなく販売されるとのこと.日本語版については,劇場公開の後なので,あと1年は待つ必要があるらしい.※この3月に NHK-BS で放映されたそうだが,ぼくは見なかった.

◇初夏の近刊辞書たち —— 日本バイオインフォマティクス学会(編)『バイオインフォマティクス事典』(2006年6月刊行予定,共立出版,ISBN:4-320-05628-0→版元ページ)/ 豊田秀樹(監訳)『数理統計学ハンドブック』(2006年7月10日刊行予定,朝倉書店,ISBN:4-254-12163-6→版元ページ)/ 宮原英夫・池田憲彦・鶴田陽和(訳)『医学統計学辞典』(2006年6月28日刊行予定,朝倉書店,ISBN:4-254-12162-8→版元ページ).※お金がいくらあっても足りまへんなあ…….

◇こまごま —— メーリングリスト関連の作業.処理が遅くなってすみません./ 午後になって,空が明るくなったが,いまいちぱっとしない天気が続く.

◇午後の現実逃避(〈R〉方面へ) —— 最新の〈R-2.3.0〉が公開されたので,さっそくダウンロードした.げ,100MB もあるっ./ オーム社の新刊企画『生物学者のための〈R〉統計モデリング:理論と応用(仮)』の目次案を編集部にやっと送った.ついでに,北と西の“共犯[予定]者”のふたりにも“犯行計画書”を送る.執筆予定者にも早く引導を渡さないといけない.

◇デイヴィッド・サルツブルグ『統計学を拓いた異才たち:経験則から科学へ進展した一世紀』(2006年3月23日刊行,日本経済新聞社,ISBN:4-532-35194-4→目次書評)の書評を〈leeswijzer〉とメーリングリストに流した.

◇どこもかしこも〈トゥーランドット〉 —— ぼくが知っているだけでも,今年は〈トゥーランドット〉公演がいくつも集中しているらしい:本家本元!“紫禁城”コンビの再来は,ズビン・メータ指揮フィレンツェ歌劇場の公演.チャン・イーモウ演出だけど,今回は「京劇」は入らないのかな./キエフ・オペラの公演./ そして,ぼくらの新宿区民オペラの公演.※公演期日がいずれも近接しているところがスゴイねー.日本中,“誰も寝てはならぬ”.

劇的な第1幕に続いての第2幕第1場はいいんですよ,ミラキュラス・マンダリンたちの「掛け合い漫才」だから.そのあとの第2場の王宮の場面は“絶叫マシーン”と化した独唱者たちの独壇場.fffで咆哮するフル・オーケストラにただひとりで対抗するトゥーランドット姫やカラフ王子にはご苦労さまと言うしかない.

〈トゥーランドット〉の打楽器陣容の写真を見つけたので,ページにリンクさせていただきます.この写真でも,あるいは“紫禁城”ライヴでも,4 oct のシロフォン1台でバス・シロフォンも兼ねているようだ.低音域がカヴァーできるかどうかちょっと心配だけど.

いつもそうだが,打楽器群は練習や本番前のセッティングするときが楽しい.※事後のリセッティングは疲れるだけ…….(当たり前か)

◇さて,今晩こそは“寝てはならぬ”.>ぼく.

  —— と自ら命じつつ,ゲラを読む夜更け.しかし,午前零時前に睡魔がやってきて,沈没.Nessun dorma, nessun dorma,…….

◇本日の総歩数=8773歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.7kg/−0.9%.


17 mei 2006(水) ※ “私は寝てはならぬ”(……)

◇午前4時起床.晴れ.気温12.8度.

◇早朝から「ゲラ読み」がひたすら続く —— 快調にアンダンテ,ときどきプレスト,たまにラルゴ,ふと気がつけばゲネラル・パウゼ……(汗).※まだまだー.(はよ,やれ〜)

その昔,グールドの『ニワトリの歯』の翻訳する前に,ディヴィッド・マクファーランド『オックスフォード動物行動学辞典』(1993年12月25日刊行,どうぶつ社,ISBN:4-88622-500-4)のいくつかの項目を担当したことがあった.まだ修士に在籍していた頃(1980年代始め)で,当時,林学科にいた樋口広芳さんの“下訳”を担当した(「自然淘汰」などいくつかの項目を訳した).農学部3号館の地下にあった「樋口部屋」はいつ行っても雑誌やら本やらがうずたかく積み上がっていたことを覚えている.で,ぼくの下訳への「樋口メモ」というのは,下訳の文章をうまく手直ししたものだった.こういうふうにやるものなのかと感心したしだい.

結局,この翻訳が世に出たのは,10年以上も後のことで(その頃には,ぼくは学位を取って就職してしまったし,樋口さんも野鳥の会に[いったん]出てしまった),監訳者である木村武二さんがだいぶ苦労したそうだ.そして,最初は“下訳”だったはずなのに,出版されてみたらちゃんと訳者に“昇格”していたのには驚いた.訳者チームをずらっと連記すると,「浦野明央・桜井勝・堂前雅史・林進・樋口広芳・廣野喜幸・町田武生・松本明・松本忠夫・三中信宏・山内兄人・和田勝」(50音順)となる.

—— この本の場合はもとが大部の辞書ということもあったのだが,翻訳はたいてい苦労が多くてたいへんな作業なのだ.

◇昼休みの逃避的歩き読み —— デイヴィッド・サルツブルグ『統計学を拓いた異才たち:経験則から科学へ進展した一世紀』(2006年3月23日刊行,日本経済新聞社,ISBN:4-532-35194-4→目次)を読了.第22〜29章.120ページあまり.ジョン・テューキーはやっぱり鬼才だなあ.計算機統計学のこととか,最近の医療統計学の動向など.最後に,統計学のもっとも“哲学”的な部分について言及があって,考えさせられるものがある.「確率」とは実生活では何を意味しているのかとか,そもそもわれわれは「確率」を認知的にどのように受容しているのかという問題が最終章で議論されている.「欠点のある崇拝物」とは言わないまでも,「the idol with feet of clay」であることは確かだろう(おんなじか).確率論・統計学の背後にある基本仮定については「哲学的分析」が必要なのだが,それがいまだになされていないという著者の問題提起には耳を傾けるべきだろう:

哲学は,哲学者と呼ばれる一風変わった人々による深遠な学問的練習などではない.哲学は日々の文化的思想や行動の背後に潜んでいる仮定を考察するのである.われわれが自らの文化から学んだ世界観は,ちょっとした仮定に支配されている.そのことに気づいている人はほとんどいない.哲学研究はこうした仮定を暴き出し,その正当性を検討することにある.(p. 371)

全体にわたっていえることだが,数理統計学についてある程度の事前知識をもっている読者は,本書に散りばめられているエピソードや内輪話を楽しむことができるだろう.歴史の「挿話集」は,たいていの場合,そういう想定読者を念頭に置いて書かれているはずだから.この本は読者を選んでいる.

なお翻訳に際しては,人名索引はついているが,事項索引は省かれている(原書では両者は混ざっている).原書の参考文献に加えて,引用箇所についての独自のリストが掲載されていて,読者の便宜を図っている.

◇夕方,統計コンサルティング1件 —— 一般化線形モデル(glm)は,データの説明だけではなく,「予測」にも使えるだろうかという質問.回帰分析のような意味での「予測」はできないのではと答えた.※これでよかったでしょうか.>導師あるいは同志のみなさん.

◇夜になって雨が降り出す.ほんとうに天気の悪い5月だ.

◇ゲラ読みの続き.「誰も寝てはならぬ」とまでは言わないが,少なくとも「私は寝てはならぬ」.ぐー(こら).銅鑼が3発響き渡るぞー.

◇本日の総歩数=14459歩[うち「しっかり歩数」=6842歩/60分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.5kg/0.0%.


16 mei 2006(火) ※ 音符も活字も超快速

◇午前4時半起床.曇り.気温13.2度.

◇早朝のこまごま —— 『蛋白質 核酸 酵素』書評初校を返送./ 〈第13回東京国際ブックフェア2006〉の招待券が届く.例年通り東京ビッグサイトにて,会期は7月6日(木)〜9日(日)まで.

◇♪東大オケから今年のサマーコンサートの案内状.三石精一指揮で,メインが〈悲愴〉,サブはドボルザークの〈チェロ協奏曲〉とグリンカ〈ルスランとリュドミラ〉序曲.〈ルスラン〉はサマコン日程が進むに従ってきっと“超高速”になるんじゃないか? かつて,精ちゃん指揮でサマコンに行ったとき(中国地方だったな),アンコールのカバレフスキー〈道化師のギャロップ〉が演奏会ごとにどんどん速くなって,最終日は「今日は速いですよお」とのお言葉通り,バイオリンが後方のプルトからどんどん脱落していくのを尻目に,シロフォンだけは駆け抜けた“戦績”があったぞ(勝ちっ!).

◇午前中は文書づくりにいそしむ.曇り空から雨粒が落ちてくる.正午の気温は18.7度.

◇午後1時半から,〈形態測定学講義〉の第8回目.第3章「Simple size and shape variables : Bookstein shape coordinates」の続き(pp. 61-65).2次元の三角形に関するアフィン変形の歪みテンソルの「主軸(principal axis)」の求め方について.代数的な解法と幾何学的な解法の二つが考えられるが,本書では後者のアプローチを採用している.三角形どうしのアフィン変形が確定した時点で,変形の前後で一組の主軸の直交性は保たれる.逆にその主軸に対して三角形の辺や角がどのような方向に配置されるかによって,アフィン変形を表現する変数が決まってくるという(p. 63 の Figure 3.9). いまいち論旨が不明瞭な議論だ.午後3時前まで.

◇夕方,入校寸前の進化学会ニュースにあわてて加筆.これでもう大丈夫でしょう(ね?).

◇夜は,翻訳原稿に手を入れ続ける.これまた“超高速”でやらないと間に合わないぞ.

◇〈The Hilliard Ensemble〉の CD が並ぶと,そこだけジャケットのデザインがモノトーンになる.アルヴォ・ペルトの〈Arbos〉のアルバムで初めて聴いて以来,着実に.

◇本日の総歩数=8451歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.8kg/0.0%.


15 mei 2006(月) ※ ゲラ・ゲラ・ゲラ

◇午前4時半起床.快晴.気温13.1度.湿度も低く,とても快適な朝を迎える.

◇それにひきかえ,仕事の溜まり具合はけっして快適ではない.午前のこまごま —— まりまり本の書評ゲラが『蛋白質 核酸 酵素』誌から届く.チェック完了.修正すべき点はほとんどない.明日,編集部に速達返送します.8月号に掲載される予定./ オーム社から生物統計本の目次案の督促.ごめんなさいごめんなさい.まだですまだです.水曜日には送りますので.

◇住宅調査票の提出.厚生からの依頼.“公務員”宿舎はつくばにはたくさんあるのだが,どんどん“非公務員”化が進んでいるので,関東財務局(関財)が想定している宿舎の使用者の範囲から外れてしまう割合が急速に増大している.独法職員ですら,すでに“公務員”宿舎の「正規ユーザー」ではありえない.関財と法人との協約によって,なんとか利用させてもらっているだけだから.実際,今後つくばに新築される“公務員”宿舎には独法職員は入居する資格がないと関財から断言されている(独法は自前で宿舎を用意すべきであるという建前).ましてや,今年からは“非公務員”になったので,ますます関財の「視野」に入らなくなってしまったことは誰もが知っていることだろう.TX が開通して以来,沿線に新築の住宅やマンションが次々にできて,“公務員”宿舎から“非公務員”がどんどん転出している.宿舎のハード的な老朽化という問題以前に,生活実感として“肩身が狭い”(ほんとうはいてはいけないのだが,いさせてもらっている)という思いがじわりと広がりつつあるあるからだろう.

◇翻訳原稿のチェックは続く.

◇晴れた昼休みの歩き読み —— デイヴィッド・サルツブルグ『統計学を拓いた異才たち:経験則から科学へ進展した一世紀』(2006年3月23日刊行,日本経済新聞社,ISBN:4-532-35194-4→目次)の第14〜21章まで.100ページあまり.研究者としても,また教育者としても,さらには家庭人としても「全き人」であったコルモゴロフが印象的に描かれている(14章).人格的に問題があったルベーグや性格的に難があったフィッシャーとの対比がおもしろい.続く15章では,女性統計学者の先達として,ピアソン父子やフィッシャー,ゴセット,ネイマンと同じ職場の同僚として UCL で研究を続けた F. N. ディヴィッドが登場する.“F. N.”の名は両親の親友だったフローレンス・ナイチンゲールにちなんでつけられたという.そのナイチンゲールがクリミア戦争の戦傷者の統計を図示化するにあたって,現在も使用されている「pie chart」を発明したのだと著者は記している(p. 190).

そうだったのか! と思って,〈Florence Nightingale's Statistical Diagrams〉というサイトを覗いたりすると,こちらではナイチンゲールは統計グラフのパワー・ユーザーではあったが,けっして発明者ではなかったと書かれている.Edward R. Tufte の図的言語本:Edward R. Tufte『The Visual Display of Quantitative Information』(2001年,Graphics Press,ISBN:0-9613921-4-2)によると,pie chart の発明者は William Playfair (1801)だそうだ.

経歴的におもしろいのは,ほぼ哲学者の I. J. グッドと P. ダイアコニス.グッドは第二次世界大戦中は,ドイツ軍の〈エニグマ〉暗号機の解読に従事していたそうだ.一方,高校中退後,プロの大道芸人の修行をしたダイアコニスが,後にブラッドリー・エフロンらとともに「コンピュータ統計学」を立ち上げることになったのは周知のこと.

  —— 統計学のビッグネームたちの業績(行跡)はそれぞれおもしろい.

◇午後1時半から,修行を1時間あまり —— Alan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読(第14回目).Chapter 3:「Moments and Cumulants」の続き(pp. 111-116).特性関数による確率分布の間の比較.低次のモーメントが一致するかどうかで,確率分布間の近似的な同等性を見る話.さらには,情報理論的な比較も.午後3時前まで.

◇講談社から電話 —— 『だから系統樹!(仮)』は7月20日に刊行される予定とのこと.来週からゲラが出始めるそうだ.本郷で受け取りましょう./ コンウェイ・モリス本『生命の選択肢(仮)』のゲラも同時にやってくるそうだ.

  —— ゲラに埋もれる日々がこれから始まる.

◇本日の総歩数=17934歩[うち「しっかり歩数」=8510歩/76分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+0.6%.


14 mei 2006(日) ※ BMW も空を飛ぶ日曜日

◇次に目覚めたのは午前7時半のこと.まだ霧雨が降り続いているが,空はもう明るくなっている.今日は天気がやっと回復するそうだ.

◇昨日はあいにくの雨で人出が少なかったという〈つくばフェスティバル2006〉だが,上から見下ろすかぎり,今日は賑わっているようだ.昼過ぎにひやかしに(&歩きランチに)出かける.エスニック料理がいろいろと.

◇昼下がりに,進化学会の大会実行委員会からメールがあり,申請していた下記の企画シンポジウム案が委員会で承認されたとの連絡を受けた:

日本進化学会2006年大会・公募シンポジウム
【企画名称】哲学はなぜ進化学の問題になるのか:生物学の哲学の多様な展開
【開催日程】2006年8月30日(水),19:30〜21:30
【使用会場】国立オリンピック記念青少年総合センター・センター棟講義室
【ワルモノ】三中信宏(農環研/東大・院・農生)・南部龍佑(上智大・院・哲学)
【開催趣旨】科学者にとって「科学哲学」はあってもなくてもいい研究分野なのだろうか? しかし,進化学や体系学の現代史をふりかえると,いたるところで“哲学”に関わる論争が絶えなかったことを現場の科学者は誰もが体験したり見知ったりしているはずだ.哲学的な文脈がどうでもよくないからこそ科学者や科学哲学者たちは機会をとらえては論議し続づけてきたのではなかっただろうか.科学哲学はたとえば1970年代以降の社会生物学論争や体系学論争を通じて,進化学という個別科学に大きな関心を向けてきた.それは生物進化研究が提起する議論が,経験科学の研究対象としてだけではなく,哲学的あるいは概念的な分析を必要とする諸問題を含んでいるからである.現在の「生物学の哲学」は,進化学の方法論だけではなく,適応度の解釈や系統推定論,さらには倫理の起源や機能の問題などにわたって多様な展開を見せている,このような生物学の哲学の現代的論議は「進化学はなぜ哲学を問題にするのか」という問題意識のもとに展開されてきた面がある.その一方で,進化学者の側からの「哲学はなぜ進化学を問題とするのか」という問いかけは十分に検討されてきたとはいえない.今回は,生物学の哲学の「いま」を代表するいくつかの具体的テーマを通じて,この問いかけに答えてみたい.
【演者・仮題】
  1. 三中信宏(農環研/東大・院・農生):「趣旨説明に代えて」
  2. 森元良太(慶應義塾大・文・哲学):「進化と確率概念の哲学的問題」
  3. 南部龍佑(上智大・院・哲学):「系統推定の哲学的問題」
  4. 田中泉吏(京大・文・科学哲学科学史):「進化倫理学について」
  5. 他1名,交渉中

近いうちに大会サイトでも公表されるが,それとは別にサイトをつくっておく方がいいだろう.

◇日中は晴れて暖かだったが,夕方になって北寄りの風が吹き抜けるようになった.ベランダにて原稿仕事.

◇本日の総歩数=4984歩[うち「しっかり歩数」=1058歩/119分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.6kg/−0.6%.


13 mei 2006(土) ※ Non piangere, Liù !

◇午前5時起床.曇り.気温は低い.

◇早朝のこまごま —— 進化学会ニュース(Vol. 7, No. 1)のゲラをチェックする.事務局の活動報告に関する加筆修正1カ所.連絡済み./ 東大からの依頼出張に関する事務手続きをメールでする./ 先日のメーデーの反省会資料のチェック.完了.場所取りは早朝でなくてもよろし.

◇午前8時頃から雨が降り出し,しだいに本降りに.5月に入ってからというもの,空模様がほとんど一日ごとにころころ変わっている.

◇センター広場では,この週末,〈つくばフェスティバル〉をやっているのだが,この雨ではねえ…….

◇翻訳原稿を抱える週末.

◇午後になって,禊の断髪のため,降りしきる雨の中を髪結いに向かう.まるで走り梅雨みたいな降り方だ.気温も低いし.刈られたアタマがすーすーする.

髪切られつつ読書 —— 青木正美『東京下町 古本屋三十年』(1982年12月1日刊行,青木書店,ISBN なし).さらに60ページほど読み進む.下町の古書店と「中心地」たる神保町との微妙な関係が見えていておもしろい.

◇夜も原稿.ついでによそ見 —— プッチーニ〈トゥーランドット〉の譜読み(第1幕).筋書きの「劇的さ」あるいはドラマの「盛り上げ度」という点では,第2幕や第3幕よりも,むしろ第1幕の方が勝っている気がする.第1幕ラストは,運命の歯車を象徴する重々しい三連符の刻みの上に,独唱者がパラレルに歌いつつひたすらクレッシェンドしていく.このいかにも劇場的な演出は,シェーンベルクの〈グレの歌〉に出てくる「山鳩の歌」とまったく同じ心理的な緊張感と高揚感をもたらす.※配役の上でも「求婚者の首をすぐ切る姫」とか「鳩を切り裂く兇悪な女王」がいるという点でも両者は同じだ.

ストーリー全体の底流は実に“肉麻”な内容で,それはこの歌劇に登場する「中国の不思議な役人」トリオ(Ping, Pong, Pang)の歌詞をたどればわかる.掛け合い漫才のような進行で唄うのも,オケ合わせも難しいだろうね.立ち居振る舞いはコメディな3人組だが,内実は黒いものがある.第1幕エンディングのフォルテッシモで,トゥーランドット姫の華やかなライトモティーフの長調からいきなり短調の運命動機へと暗黒転調するときに,死神の高笑いが響き渡るのは戦慄的だ.

—— なんにせよ,打楽器の使われ方はたいへん効果的でしかも難しいなあ.チャイニーズ・ゴング(音程あり)はとても魅力的.

◇メモ —— 社団法人日本書籍出版協会から公開された文書:「読み聞かせ団体等による著作物の利用について」(pdf 2.6MB).このガイドラインは小学校などでのお話会や読み聞かせなどの活動を念頭に置いているように新聞報道されている.しかし,パワーポイントやOHPでのプレゼンも明示的に含まれているので,講演や授業もその適用から免れることはできないかもしれない.

◇歌劇と総譜と原稿と —— 寝たのは夜中の1時半.とんでもない夜更かし.

◇本日の総歩数=18732歩[うち「しっかり歩数」=11824歩/109分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=−0.2kg/+1.2%.


12 mei 2006(金) ※ つかの間の「五月晴れ」に徘徊

◇午前4時半起床.ここ数日は睡眠時間4時間の日が続いている.曇り.気温12.8度.涼しい.弱い北風が吹き抜ける.

◇早朝の仕事 —— 進化学会ニュース原稿.なんとか仕上がる.事務局にメール送信.ゲラpdfはすでにできあがっているので,あとはそれほど時間をおかずに印刷・発送になるだろう.とりあえず一件落着ということで.

◇朝のうちにしだいに晴れ間が広がってきた.午前中は翻訳原稿と格闘.(まだまだ……)

◇晴れ上がった昼休みは18度超.暑いくらい.郵便局経由で,歩き読み —— 青木正美『東京下町 古本屋三十年』(1982年12月1日刊行,青木書店,ISBN なし)を50ページほど.昔の古書商いの「現場」について“内側”からとても具体的に書かれている.たくさんの写真が魅力.

◇セミナー連荘 —— 13時から,まずは〈文化系統学〉セミナー第13回目.Chapter 6「The resolution of cultural phylogenies using graphs」(Carl P. Lipo)を読み進む(pp. 99-107).最節約ネットワークを考古学のデータに適用する.多次元形質空間でのハミング距離(=マンハッタン距離)を計算し,〈NetDraw〉 を使って描画したと書かれている.OTU間のハミング距離を計算しただけでは,最適ネットワークは求まらないはずなので,グラフ最適化は別のプログラムを用いているのだろう.※そこのところは明示的ではないのだが.この章,読了.

◇午後2時からは,〈形態測定学講義〉の第7回目.次の第3章「Simple size and shape variables : Bookstein shape coordinates」に入る(pp. 51-60).3標識点がつくる三角形についての size と shape の議論.ある2標識点を両端とする線分を基準線(baseline)として変位・回転・拡縮の変換をした後に,残る1標識点がもつ座標を Bookstein 形状座標と呼ぶ.Bookstein 形状座標は三角形の shape を表わす.一方,それと独立な唯一の size 変数は重心サイズである(両者に相関があるならばアロメトリーの存在を考えなければならない).基準線の変更の影響(複素平面での等角写像により互いに関係づけられるので相似以上の影響はない),および Bookstein 形状座標の差異に関する多変量分散分析の適用について説明される.

この教科書は「生物学者向け」の教育的配慮が随所に見られるのだが,必要な“数式”さえパージしてしまっている箇所がある.いずれは勉強しなければならないのだから,隠さなくてもいいのではないか.2次元の形状に関しては複素平面で記述するのがもっとも幾何学的直感に強く訴えるものがあると思う.

—— たとえ今までは無縁の数学であっても,それが必要であることが自覚できれば,誰だって勉強せざるを得ないでしょう.

◇五月晴れは今日だけで明日からの週末はまたぐずつくのだそうだ.まったくもう.

◇本日の総歩数=15544歩[うち「しっかり歩数」=6662歩/58分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=0.0kg/+0.8%.


11 mei 2006(木) ※ 「五月晴れ」はもう忘れたぞ

◇午前4時半起床.強い南風とともに昨夜から雨が降り続いている.南側のベランダは水浸しだ.気温18.9度.蒸し暑いぞ.いったん空が明るくなって回復するかと思わせておいて,またまたざあざあ降るとは気まぐれな空模様だ.

◇早朝からこまごま —— 組合のアンケートにオンラインで回答する.独法研究所におけるポスドクと任期付研究員に関すること./ メーリングリストの登録作業残務処理./ 首都大学東京の非常勤講師の承諾書を返送する./ 5月24日(水)午後は東大の専攻教員会議.夕方からパーティだそうで.※なんだかんだで,みなさんよく飲むこと.

献本ありがとうございます —— 鷲谷いづみさんから送られてきたサクラソウ論集:鷲谷いづみ(編)『サクラソウの分子遺伝生態学:エコゲノム・プロジェクトの黎明』(2006年1月16日刊行,東京大学出版会,ISBN:4-13-066156-6→目次).2000年から始まったプロジェクトの論文集だ.

◇まだぐずつく昼のこまごま —— 計量生物学会シンポジウム(5月25日)に続く同チュートリアル〈Rによる生物統計解析〉(5月27日)への参加申込をする./ 出張届け2件を書いて提出する.

◇新刊メモ —— 杉本つとむ『江戸の博物学者たち』(2006年5月10日刊行,講談社[講談社学術文庫1764],ISBN:4-06-159764-7).20年目にしてやっと文庫化.1985年に出た元の本(青土社)はたいへんおもしろく読んだ記憶がある.そのころから江戸の本草学に関する本がぽつぽつと出始めたのではなかったか./ 小笠英志『4次元以上の空間が見える』(2006年5月刊行,ベレ出版,ISBN:4-86064-118-3).高次元を“視る”技術は,系統学者にはつねに必要だ.既刊の宮崎興二(編著)/石井源久・山口哲(共著)『高次元図形サイエンス』(2005年2月20日刊行,京都大学学術出版会,ISBN:4876986452→目次)もそうだが,高次元を「視覚」に訴えてわからせるというのは常套手段だ.どれくらいのアピール度があるかがポイント.

◇またも“年貢”を納めるときがきた —— 海游舎から電話があり,来週金曜日につくばに例の翻訳原稿を受け取りにくるという.原稿取立は TX とともに(汗).いずれにせよ,あと1週間でケリをつけないといけなくなった.

◇午後のこまごま —— やや「化石化」していた某作業に着手する.こういう気の重いのはむしろオンライン査読システムにやってもらうといいのかもしれないが.メールを書いたり,郵送したり,謝ったり.

◇午後4時を過ぎて,ようやく晴れ間が見えてきた.しかし,不快指数は高め.

◇進化学会ニュースの原稿づくりを夕方ちくちくと書き進める.今月中に発行しないといけない.事務局の活動記録を過去メールのログからピックアップしていく.

◇午後5時過ぎから,2階食堂にて,メーデー後夜祭のパーティ.例年ならば,前夜祭でパーティをし,メーデー本番を迎え,さらに後夜祭でスポーツをするという「三点セット」で臨むのだが,今年は時間の関係で変則的になった.午後7時前まで.

◇その後,部屋に戻り,またまた進化学会ニュースの原稿書き.大筋は書き終えたので,明日の午前中には送れるだろう.

◇夜,月が見えるほどに天気は回復した.風向きが変わって,北からの涼しい風が通る.

◇本日の総歩数=14555歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/+0.8%.


10 mei 2006(水) ※ ひたすら書類を書く水曜日

◇午前4時半起床.雨.気温13.9度.

◇朝のこまごま —— 厚生でもらった映画鑑賞券を転居のごたごたでなくしてしまったので,始末書を書く./ 共済組合員証の変更申請./ 名大の非常勤出講日は変更しなくてもよくなった./ 契約職員の賃金支払いに関する予算コードの確定.今年度から運営費交付金がユニット単位ではなく個人単位になったので,誰のどの予算枠から支出するのかをいちいち特定しないといけなくなった.慣れればいいことなのだろうが,めんどーです.

◇10時23分に弱い地震あり.

◇午後10時半から領域内会議.所内全体にわたって,居室を引っ越すのどーの.組織の上で“居室”という概念がなくなったのだから,そのまま放置していただくのが最善だと思うのだが…….1時間ほどで終わる.

◇今日の大仕事 —— 「兼業承認申請書」の作成.今年度から非公務員化されることになり,大学などへの非常勤出講は,これまでのような無給のボランティア依頼出張という道のほかに,兼業を申請できるという別の選択肢が現れた.そのための申請書類を大学ごとに別々につくらないといけない.

最初に人事から送られてきた書類様式は「***.jtd」だった.これでは話にならんので,「とある宗教上の教義により,ワタクシは ***.jtd なるファイルに触ると神罰が下ります」と事務に申し出た.次に送られてきたのは当然「***.doc」だった.今の世界を支配する巨大宗教に立ち向かう気力はないので,だまって,InDesign を起動して,所定の「罫線たっぷり」な書式を模倣することになった(1時間ほど).

書式だけに時間を取られていてもしかたがない.コンテンツが問題だ.最初の項目は事務的にすませたのだが,後半ふたつでフリーズする.ひとつめは:「兼業が職務に与える影響」.15cm×10cmの広大な記入欄が用意されている.「影響」ったってねえ.30時間とか15時間とか教壇に立てばとても疲弊しますわという「影響」はあるかもしれないし,相手校のホスト役に夜にぐぐっと呑まされて二日酔いで困りますわという「影響」もあるかな.でも,そういうことは書いてもしかたがないので,ひとこと「短期間の集中講義なので,経常業務への影響はまったくない」というそっけない1行を記入しておしまいにする.

もっとやっかいなのは,ふたつめ:「兼業を必要とする理由」.“主語”がぜんぜん書かれていないのが悩ましい.農環研が? それとも三中信宏が? あるいは相手校が? しばしフリーズしてしまったのだが,勝手に自分に引き寄せて書いてしまう.これまた15cm×10cmの巨大なスペースが用意されている.そんなにたくさん書けるわきゃないでしょーが.今年度出講予定の大学ごとに科目がちがうので,ひとつひとつ文言を用意しないといけない.生物統計学(首都大学東京と信州大学)や生物系統学(京大霊長研)はまあいいのですよ.本務直結の科目だしね.問題は名古屋大学情報文化学部.〈メディア社会系特論I〉なる科目を教えるという所内的に正しい理由を述べるというのは容易なことではない.うんうんと字を書き連ねていく.

結局,すべての大学の兼業承認申請書を書き終えて人事に提出したのは午後4時過ぎのことだった.まる1日,書類書きですかー.もちろん,これから兼業に関わる所内審査とそれに伴う内容修正やら再提出やらのサイクルがまわり始めるので,解放される日はまだ遠い.

—— あるいはもっとダイレクトに「無給で労働するのはイヤだから」と書けばよかったのかな.もちろん,「兼業」なので,ウィークデーの出講については,本給から該当日数分の給料は差し引かれることになる.一時金がどういう扱いになるかはまだ決まっていないらしい(やや不安).

◇合間に,進化学会東京大会の公募式シンポジウムの申請内容を“共犯者”と謀議する.ほぼ確定か.夕刻に,進化学会のメーリングリストと大会委員会にメールで申請書を送る.採択されるかどうかはまだわからないが,とりあえず「看板」だけでも載せておこう:〈哲学はなぜ進化学の問題になるのか — 生物学の哲学の多様な展開〉.

◇夕方,曇って蒸し暑い.気温20度台.夜になって雨がざあざあ降り出す.湿度高過ぎ.黴びそう.いやな季節が近づいてきた.

◇本日の総歩数=11615歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/−1.1%.


9 mei 2006(火) ※ いきなり 逃避 出張につき東京へ

◇午前4時半起床.曇り.気温11.2度.この季節にしては寒いではないか!

◇今日行く出張の届けを今日出す……(よい子はこういうことをしてはいけません)./ 9時10分の TX 快速に乗る.根津に着いたのは10時過ぎ.東大の農学部図書館で入館証をつくってもらう.発行は明日だというが,取りに来れるのは来週の水曜になる.これで出入り自由だ./ 東大出版会にあいさつに行く./ 〈ルオー〉でパソコンを打つ.※店の人にもう覚えられてしまったようで,窓際の“指定席”にしっかり案内されてしまった.

◇午後1時半から,湯島で生物科学学会連合(生科連)の会議.今後の活動方針とか,国際生物学オリンピックへの協力依頼とか.日本学術会議が新体制になってから,会員は“母体学会”を背負っての選出ではなく,あくまでも“個人”としての参加を前提とするようになったとのこと.ということは,研究者コミュニティーとしての「ロビー活動」が以前に比べて制度的にやりにくくなることを意味する.生科連の認識としては,工学や農学に比べて基礎生物学分野は学会としての結束が必ずしも強くなく,それがマイナスに働く場面が今後は増大する懸念を抱いている.午後3時半で散会.

◇上野広小路から浅草線に乗って田原町まで.〈JPC〉にてただの撥フェチと化してしまう.マレットの入荷には「波」があって,あるメーカーの在庫が豊富にあることもあれば,ごそっとなくなることもある.最初の予定では,〈Mike Balter〉か〈Vic Firth〉をと考えていたのだが,シロフォンのマレットがほとんどない.〈Iñaki Sebastián〉のマレットはいくつかあったのだが,ヘッドがちょっと軽すぎないか? 結局,試奏してみた上で,日本の〈Playwood〉を選ぶことにした.黒檀のマレット(XB-20)があったのはラッキー.Mike Balter のメイプルと紫檀(ローズウッド)のマレットは東大オケ時代から愛用していたので,これでやっと「木撥三点セット」が揃った.

〈トゥーランドット〉での Xilofono [basso] の出番と音色を何度も聴いていると,マレットのイメージがしだいに湧いてくる.もちろん鍵盤打楽器奏者にとってマレットは「腕の自然な延長」みたいなものなので,相性がいろいろとうるさかったりする.最初の練習のうちはできるだけたくさんの“腕”を持ち歩かないとダメかも.

Xilofono はまだしも,Xilofono basso は音色が難しそう.あんまり硬いので叩くと倍音しか聞こえないだろうし.でも,マリンバではなく,“木琴”らしい音色が要求されているみたいだし.第1幕では同時に出てくる箇所があるが,ひとりで演奏できる?

◇午後5時前に TX 浅草駅から区間快速に乗る.午後6時前に帰宅.

◇車中読書 —— 樽見博『古本通:市場・探索・蔵書の魅力』(2006年4月10日刊行,平凡社[平凡社新書318],ISBN:4-582-85318-8→書評目次).読了.日本古書通信社の生え抜き,ベテラン古書店員の話の数々はとてもおもしろい.あとがきに書かれているが,「古本屋の書いた本」というのは800冊もあるらしい.本を扱っていると本について書きたくなるものなのか.もちろん,新刊書店ではなく古書店だからという但し書きは付けないといけないのかもしれないが.後半に書かれている「蔵書のあり方」は教訓的でたいへん参考になる.元気なうちから自分の本の行く末のことを考えておかないと.

当然予想されるように,著者は[古]本の扱いに対してはとても気を遣っている.たとえば,本への書き込みについてはこう言う:

同じ線を引くにも「愛情ある」引き方があるように思うのである.[……]何のためにラインをあれほど強く引かなければならないのか,私は理解に苦しむ.(pp. 152-153)

ぼくの場合は「パーソナライズ」された本は(私費本・公費本を問わず[ただし共有本は除く]),徹底的に“書き込み”をしながら読むことにしている.思いつくことや備忘メモや連想事項などはすべて欄外に書き込むという主義だ.ノートブック代わりに本を使い倒しているということだろう.もちろん日常的に使う白紙のノートブックは持ち歩いているのだが,それとは別に常用のメモ用紙が本の「マルジナリア」にほかならないわけで,こればかりはだれが何と言おうが変えられるものではない.だから,たとえ何十年経っても,パーソナライズされた蔵書たちは,改めて読み返さなくても,「マルジナリア」だけをたどることでだいたいの内容を思い出すことができる.これだけ深くパーソナライズしてしまうと,他人が何かの機会に読むことを考えて,いつでも「初期化」できるように配慮しようなどということはまったく思いもつかない.そういう選択肢ははなから存在しない.

読んで消化してパーソナライズする — この繰り返しだ.だから,ぼくは図書館の本を借りて読むということは,よほどのことがないかぎりしない.図書館ではブツとしての本の“実在”を確認するにとどめて,あとは必要箇所のコピーをするか,あるいは別途購入するか,いずれかしか道はない.だって借りた本はパーソナライズできないもん.

—— なお,p. 129にある「日本生物地理学会の創設者蜂須賀正のような」という記述は誤り.正しくは,「日本生物地理学会の創設者蜂須賀正のような」ね.日本生物地理学会副会長がそう言うのだからマチガイなし(笑).

◇今日は一日中曇って肌寒かった.5月だからって半袖に自主的衣替えしてしまったのは軽率だったかも.

◇さあ,研究者人生を何度もリプレイしましょ! —— 〈研究人生を楽しむ会〉.

◇夜になって霧雨が降ってきた.気温は低いまま.

◇明日は忙しいぞ!>ぼく.

◇本日の総歩数=17509歩[うち「しっかり歩数」=4500歩/37分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.6kg/+1.1%.


8 mei 2006(月) ※ 天気予報は外れ,冷たい霧雨が降り続く

◇午前4時半起床.曇り.霧雨が降っている.気温17.4度.研究所にてごそごそとプリントアウトしたり.

◇朝のこまごま —— メーリングリスト登録の残務処理が続く./ 朝日カルチャーセンターの今月からの講座は集客にやや難があって,開講しないことになった./ 計量生物学会の会誌編集に関する事務連絡メール.

◇進化学会関連 —— 今月発行予定のニュースに載せるコンテンツの確認作業.事務局だよりを書かないといけない(早く).他,まだ決まっていなかった渉外幹事と監査担当の「一本釣り」をする.渉外担当はうまく釣られてくれた.ありがとう(>と南大沢に向かってお辞儀)./ 夏の進化学会大会での生物学哲学ワークショップ案の詰め.まずは趣旨文と予定演者が決まっていればアプライすることが可能だ.N部くん,よろしくね.

◇晴れて夏日に,という天気予報は大きくはずれまくり,霧雨の低温状態は昼になってもぜんぜん変わらず.

◇おお,〈leeswijzer〉のカウンターが「14万」を突破したぞ.読者のみなさん,ありがとうございますだ.

◇昼休みの〈撥フェチ〉 —— 打族の忌まわしき宿痾なのか,「ものを見ればすぐ叩いてしまう」癖は,「叩くもの」と「叩かれるもの」の双方に発揮される.叩かれるもの(楽器本体)は場所をとるという制約があるが,叩くものはもともと場所要らずなので無制限に増える危険性が高い.もうすでに,ティンパニのマレット=たくさん,マリンバのマレット=たくさん,シロフォンのマレット=たくさん,スネア・ドラムのスティック=たくさん,なので,ぜんぶ合わせりゃいったい何対の“撥”が家にあるのか想像もできない.

でもって,今回の〈トゥーランドット〉の譜面を見ながら,適材適所の“撥”を選び始めるとまたまたワルイ病気が.今回はシロフォンやグロッケンシュピールが「叩かれるもの」なので,“撥”のセレクションの基本方針は最初からだいたい決まっている.とりあえず,〈Mike Balter〉とか〈Vic Firth〉とか,これまでよく使ってきたマレット・メーカーの製品リストをちょこちょこと調べる.※わ,Vic Firth のサイトには Gary Burton の実演が載っているじゃないか(貴重).

それにしても,「トリノ」以降,〈トゥーランドット〉関連グッズが払底し続けているのは何とかならんかな.タワーレコードを見るとそれがはっきりしていて,〈ボエーム〉や〈蝶々夫人〉はよりどりみどりの品揃えなのに,〈トゥーランドット〉のコーナーだけ“ごそっ”と抜けている.スコアにしても,本郷のアカデミア・ミュージックに在庫状況を訊いたところ,「〈トゥーランドット〉のフル・スコアは国内在庫が現在まったくありません」との返事.もちろん,amazon.co.jp ではとうの昔に(といっても少し前からのことだが)「在庫切れ」のままになっている.あんな400ページを越えるリコルディの“電話帳”スコアがほんとうに飛ぶように売れているのか? いましばらくは,ヴォーカル・スコアで勉強するしかないか.

◇午後1時半から,Kendall —— Alan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読(第13回目).Chapter 3:「Moments and Cumulants」の続き(pp. 108-111).Karl Pearson の提唱した分布特性量の残る二つ,歪度(skewness)と尖度(kurtosis)について.いきなり「数学的」な一般化がわらわらと書かれていていささかめげる.数式の奥にあるものの的確な imaging がひときわ求められるセクションだ.午後2時半まで.

◇夕方になってもなお降り続く霧雨.午後4時の気温はわずか 12.7 度.北東の風が吹くこの季節にはときどきある冷涼日だ.

◇名古屋大学の非常勤出講の日程を変更する必要があるとの大学からの電話連絡あり.定期試験とちょうどダブってしまうらしい.ううむ.

◇本日の総歩数=10629歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.7kg/−0.5%.


7 mei 2006(日) ※ GW千秋楽,天気は乱調,肩凝り不調

◇夜更かししたものの,午前5時半にはお目覚め.雨.体感気温はやや低め.いったん小降りになったと思ったら,南寄りの風がびょうびょうと吹き出す.昨日とは一転して荒れ模様の天気だ.

◇連休の蓄積疲労のせいか,肩が凝っている気がする.アタマが重いような.イマイチな具合.

◇蜂須賀正氏つながり —— 朝からカリフォルニアと北アイルランドと日本の間でメールが飛び交う.こういう“偶然”から予期しないつながりが生まれるというのはとてもハッピーなことだ.

◇〈あーる・あーる・あーる〉 —— ちょっと油断したスキに,山のような〈R〉本の新刊・近刊ラッシュ.まずは Chapman & Hall からの怒濤のイッキ攻め:Dani Gamerman『Markov Chain Monte Carlo: Stochastic Simulation for Bayesian Inference, Second Edition』(2006年5月10日刊行,Chapman & Hall/CRC[Texts in Statistical Science Series 69],ISBN:1584885874→目次) / Simon Wood『Generalized Additive Models: An Introduction with R』(2006年2月27日刊行,Chapman & Hall/CRC[Texts in Statistical Science Series 67],ISBN:1584884746→目次)/ Brian S. Everitt & Torsten Hothorn『A Handbook of Statistical Analyses Using R』(2006年2月17日刊行,Chapman & Hall/CRC,ISBN:1584885394→目次)/ Jana Jureckova & Jan Picek 『Robust Statistical Methods with R』(2005年11月29日刊行,Chapman & Hall/CRC,ISBN:1584884541→目次

さらに,畳み掛けるように Springer-Verlag から〈Use R〉叢書の創刊だ! —— Bernhard Pfaff『Analysis of Integrated and Co-integrated Time Series with R』(2006年刊行,Springer[Use R],ISBN:0-387-27959-8→目次)/ Emmanuel Paradis『Analysis of Phylogenetics and Evolution with R』(2006年9月出版予定,Springer[Use R],ISBN:0-387-32914-5→目次

—— もう溺死〜.

◇午後になって雨足が強まり,南風に煽られて横殴りの風雨.プチ台風みたい.

◇午後のよそ見読書 —— 飯島朋子『映画の中の本屋と図書館・後篇』(2006年4月10日刊行,日本図書刊行会,ISBN:4-8231-0685-7).速攻読了.前篇と同様に,50本の映画をよくぞここまで綿密に調べ挙げたものと思う.歴史のある大図書館の奥まったキャレルは,映画の舞台としてふさわしいようだ.図書館映画の“禁断の世界”に足を踏み入れる覚悟はなくても,お薦めのDVDを見るだけだったらこっちの世界に留まっていられるだろう.各項目ごとの書誌情報だけでなく,巻末にはレファレンスが完備されている.さすが本職のライブラリアンの仕事だ.

◇ぐわ,仕事が.うげ,原稿が.と言いつつ,今年のGWは過ぎゆく…….

◇本日の総歩数=1956歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.5kg/−0.2%.※ああ不調.


6 mei 2006(土) ※ 引き蘢る週末 GW は初夏の陽気

◇午前5時半に起床.研究所に顔を出し,荷物を運びこんだり運び出したり.晴れ.午前7時の気温がすでに20.2度もある.今日は夏日かな.

◇北アイルランドから質問メールが届く —— 蜂須賀正氏のことで.質問してきた女性の父親(Lancelot Turtle)が蜂須賀正氏とケンブリッジ大学時代(1920年代)の鳥類学の学友であり,正氏のアイスランド探検やモロッコ調査にも同行したとのこと.アメリカにいる娘の蜂須賀正子さんと連絡を取りたいので紹介してほしいという依頼だった.当時の写真画像数葉が添付されていた.これはたいへん興味深い情報なので,さっそく正子さんにメール転送する.

◇鳥類学といえば,メシアンの“鳥”への傾倒ぶりも尋常ではないものがある.ピアノ曲〈鳥のカタログ(Catalogue d'oiseaux)〉はもちろんのこと,〈トゥーランガリーラ交響曲〉だろうが〈クロノクロミー〉だろうが〈彼方の閃光〉だろうが,メシアンの作品のいたるところで“birdsong”が聞こえる.いま読んでいるメシアン伝の後半に「Birdsong into music: 1952-1959」という章がある.また,ぼくはまだ手にしていないが,彼の死後に出版された7巻からなる音楽論書のタイトルが『Traité de rythme, de couleur et d'ornithologie』(1994〜2002年,Alphonse Leduc)だったことからもそれはうかがえる.

◇晴れて南風がとても強い.筑波大方面へ昼下がりの歩き読み —— 飯島朋子『映画の中の本屋と図書館』(2004年10月1日刊行,日本図書刊行会,ISBN:4-8231-0785-3).読了.ネタばらしにならないように,しかも“図書館”と“本屋”が映画のストーリーの中で果たす役回りをうまくピックアップしている.見出しとして取り上げられた映画だけでも50本.それぞれの項目の中で言及されたものも含めれば200本はくだらない.ぼくが知っていたのは,図書館映画だと〈薔薇の名前〉,本屋映画だと〈ノッティングヒルの恋人〉くらいだが,実は他にもたくさんあることがわかる.著者も加わっている「図書館映画メーリングリスト」というのがあって,ときどき燃え上がるそうだ.そういう世界があったのか.続いて続編:飯島朋子『映画の中の本屋と図書館・後篇』(2006年4月10日刊行,日本図書刊行会,ISBN:4-8231-0685-7)に進むことにしよう.

—— 筑波大の構内は新緑がとてもきれいだった.

◇この連休中にするべき仕事のプレッシャーがまたまた強まりつつあるのだが,“空気”がスカスカ抜けていく心地ぞする…….

◇夕方,〈トゥーランドット〉DVDと読譜(そんなことをしている時間が……[自己叱責を小一時間]).オペラの打楽器譜はほとんどが「Tacet」と「休符」の連続なので,パート譜をいくら見つめても読み取れるものがほとんどない.やっぱり総譜がないと話にならんな,これは.まずは鍵盤楽器のパッセージごとのマレット選定を始める.シロフォンやグロッケンシュピールはそれほど広い選択肢がないが,それでもどの程度のヘッドの硬さが必要かは考えないといけない.バス・シロフォンのマレットは難しい(どんな楽器が用意されるのかにもよるし).いずれにせよ,近いうちに田原町の〈Japan Percussion Center〉に久しぶりに顔を出して,マレットを物色することになるだろう.

◇あ,もう夜だ.

◇本日の総歩数=15423歩[うち「しっかり歩数」=10747歩/94分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.5kg/+0.4%.


5 mei 2006(金) ※ つくばで待つトゥーランドット姫

◇午前3時半に目が覚めてしまう.暗闇の中で日録を書く夜明け前(なんてぶっそうな).今日も晴天のようだ.

◇早朝の烏川河畔歩き読み —— デイヴィッド・サルツブルグ『統計学を拓いた異才たち:経験則から科学へ進展した一世紀』(2006年3月23日刊行,日本経済新聞社,ISBN:4-532-35194-4→目次)をさらに70ページほど.第13章まで.苦労人イェジー・ネイマンはこの上もなく good guy だったということか.数理統計学の大看板カール・ピアソンとロナルド・フィッシャーが性格的に“ちと”難ありだったからよけいにそう見えるのかもしれない.

◇きょう発行された岡本真さんのメルマガ〈ACADEMIC RESOURCE GUIDE〉の最新号(ARG-241号)に,「新着だけではもったいない−学術分野でのRSS普及に向けて」という鼎談が載っている.話者のひとりである林賢紀(農林水産研究情報センター)さんは以前から知っている.鼎談の中で,林さんが10年前を回顧している:

林 :1993年は農水省の研究所がインターネットに接続された翌年で、単なる電子メールの送受信などにとどまらず「インターネットでの情報発信事例を集めてほしい」という上司からの指示が元です。

そういうことだったのか.ぼくが〈EVOLVE〉を農林水産研究情報センターのサーバー上に開設したのは1994年9月のことだった.当時は学術系メーリングリストをどのようにして立ち上げるのかについては,ハードウェア的にもソフトウェア的にもスタイルがまったく確立されていない状況だった(今だったらウェブからの登録ひとつでいくつでもMLをもつことができる).〈EVOLVE〉を開設するときには,情報センターにたいへんお世話になった.センター川としても今後のテストケースということで積極的にサポートしてもらったことを記憶している.農水の研究情報センターがいろいろな点で“先進的”であるとは方々で耳にしていたが,今回の鼎談を読んでそれを確認できた.

ついでに —— 岡本真さんの記事が pdf 公開されている:岡本真「『これからホームページをつくる研究者のために』刊行を前にして ―いまなぜ研究者の個人ホームページなのか」(『情報管理』49-2、2006-05、科学技術振興機構→配布ページ).

◇世界最長の音楽 —— ドイツのハルバーシュタットの教会で,ジョン・ケージの作品〈オルガン2 / ASLAP〉が2001年から延々と演奏され続けているという記事が今日の上毛新聞に載っていた.この5月5日目にやっと第1小節目の「第6音符」が演奏されたとか.計算上この作品の完結には「639年」かかるそうだ.※……まことにご苦労さまでございます…….かのサグラダ・ファミリアも形無しですなあ.

◇午前11字過ぎに高崎を出発する.晴れあがって気温がとても高い.GWの真っ最中なので,高速道はさほど混雑していない.とくに渋滞もなく,東京でちょっと寄り道したのに午後5時過ぎにはつくばに着いていた.

◇不在中に溜まっていた郵便物の中に,京島経由でつくばに降臨された〈トゥーランドット〉姫を発見.恐れおののき,下へも置かぬ丁重な読譜を始める.届いたのは Xirofono と Campanelli のパート譜.Xirofono basso もやるそうだ.Bass marimba は知っていても,Bass xylophone という楽器は初めてだ.紫禁城ライヴDVDを聴くかぎり,メシアンによく出てくる xylorimba のような音色を考えればいいのかな(音域的にはマリンバに近いし).全曲にわたっての“オリエンタル”な雰囲気を醸し出す効果を狙っての鍵盤打楽器群の起用ということだろう.週明けには総譜がアマゾンから届くことになっているので,オペラ全体の勉強と暗譜はそれからにしよう.

◇ああ,疲れた疲れた.GWの遠出はこれでおしまい.

◇本日の総歩数=10790歩[うち「しっかり歩数」=4754歩/43分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


4 mei 2006(木) ※ サクラ満開,猿ケ京(2)

◇午前2時にいちど目が覚めてしまうが,さすがに二度寝する.午前5時に再び目覚め.そのまま朝風呂に.

昼間はとても熱かった源泉だが,明け方の冷気の中ではちょうどいい湯加減だ.このGW中はここ猿ケ京ホテルは満室のはずだが,この時間帯に温泉に入りに来る客は少ない.しばらく,内湯と露天風呂でふやける.

◇早朝のロビーで読書 —— Peter Hill & Nigel Simeone『Messiaen』(2005年10月刊行,Yale University Press,ISBN:0-300-10907-5→版元ページ)を最初から.フランス現代音楽の筆頭であるメシアンの伝記はすでにたくさん書かれている.しかし,彼が「何を創ったか」については詳細に論じられていても,「なぜそれを創ったのか」については未解明部分が少なくないと著者たちは言う.私生活や作曲過程に関するメシアン自身の“秘密主義”がその理由のひとつだった.今回の伝記では,これまで未公表だった日記や書簡などの内部資料を踏まえてそのハードルを越えようという意図がある.掲載写真の多くは初めてのものだという.生い立ちから二十歳までの彼の経歴を見ると,“栴檀は双葉より芳し”ということわざがテロップのように脳裏をよぎる.フリニー(Fuligny)に生まれ,家族とともにグルノーブル,ナント,そしてパリへと移り住んだメシアンは,パリのコンセルヴァトワールで頭角を現わすことになる.

◇朝食は豆腐を中心とするバイキング.

◇赤谷湖の周囲をしばらく散歩する.月遅れの桜が満開で,辛夷もちょうど見頃だ.散りゆく桜の背景には残雪の谷川連峰.

◇午前10時過ぎにチェックアウトし,ゆるゆると帰路につく.今日もよい天気で,気温は高め.行楽客でどこもかしこも人と車が多すぎる.沼田の〈永井食堂〉でモツ煮込みの真空パックを買い,渋滞する国道17号をあっちこっち迂回して,やっと高崎に着いたときにはもう午後4時を過ぎていた.

◇またまた,疲労がじんわりと熟成されて,睡魔がやってくる.午後10時過ぎにはふとんへ直行.

◇本日の総歩数=13575歩[うち「しっかり歩数」=4398歩/42分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=未計測/未計測.


3 mei 2006(火) ※ サクラ満開,猿ケ京(1)

◇前夜の疲れのせいか,午前6時半まで寝過ごしてしまう.晴天.今日は行楽日和だ.

◇烏川の緑地公園をぐるっと散歩して,朝の歩き読み —— デイヴィッド・サルツブルグ『統計学を拓いた異才たち:経験則から科学へ進展した一世紀』(2006年3月23日刊行,日本経済新聞社,ISBN:4-532-35194-4→目次)を100ページほど.近代統計学の概略をあらかじめ知っている読者にとっては,とても興味深い歴史絵巻が繰り広げられている.講義ネタとして使えるエピソードもたくさんある(ばくぜんと知っていた知識の確認にもなる).しかし,本書でいきなり「統計革命」という言葉が登場するのだが,これについては説明不足である気がする.今世紀に連なる“probabilistic revolution”の発現のひとつであることは明らかだが,その歴史的文脈の流れが科学史的挿話に埋もれて必ずしも明確には見えてこない.今日読んだところでは,フィッシャー vs. ピアソンの根深い対立や,極値統計学を確立したグンベルの話題がおもしろかった.有名なクラーメルの数理統計学本(1946)がフィッシャーの“解説書”を意図していたとは知らなかった.アデレード大学で出版されたフィッシャーの5巻論文集は,まだ大学にいた頃に公費で買ってもらったが,今では入手しがたい文献になってしまった.

◇昼前に,三国峠中腹の猿ケ京温泉に出発する.湿度の低い晴天で,たいへん気持ちがよい.榛名の〈いち川〉で太打ちの蕎麦を大量摂取する.道路はどこも混んでいたが,吾妻渓谷を越え,高山村経由の裏道をたどって猿ケ京に着いたのは午後4時近くだった.今日は〈猿ケ京ホテル〉に泊まる.二度目の来訪.温泉よろし.

◇チェックインして,まずは別棟の温泉に.ふやけつつ本を読む —— 土井庄一郎『めぐりあいし人びと:築地書館の50年』(2006年3月26日刊行,築地書館,ISBN:4-8067-1321-X).読了.題名からは想像できないほどおもしろい回顧話の連続だ.築地書館の,というよりは,出版印刷業に長年携わってきた土井父子の「歴史」というべきだろう.

著者の父である土井儀一郎は,典文社という印刷会社を起こした.典文社は,斎藤昌三の書物展望社など印刷にうるさい出版人の要求を十分に満足するだけの出版物(限定本を含む)を世に出してきた実績があった.子の土井庄一郎にもそういう“本へのこだわり”が伝わったのはもちろんのことで,築地書館の出版物には造本や装幀に並々ならぬ情熱が注がれているという.杉浦康平をはじめとして“良き本”への熱意をもった人たちがいたということだ.築地書館の限定本も少なからずあるらしく(ぼくはぜんぜん知らなかった),たとえば山岳書籍の集大成である『山と書物』の限定本を出すにあたっては,ほとんど斎藤昌三が生まれ代わったかのような著者のこだわりようが印象的だ.しかし,それだけのこだわりが必ずしも収益に結びつかないというのが現実で,「良い本が必ずしも売れるとは限らないのだ」(p. 294)という独白を読者は繰り返し聞くことになる.実際,築地書館も一度は倒産の憂き目に遭っている.

—— 書店創業者の懐古譚という点で(そして,装幀のレベルの高さという点で),この本はみすず書房創業者の小尾俊人の回顧本『本は生まれる。そして,それから』(2003年2月5日刊行,幻戯書房,ISBN:4-901998-00-5)に相通じるものを強く感じる.

◇ゴージャスな夕食後,長旅の疲労がこたえたらしく,睡魔がまとわりつく.午後10時を過ぎて早々に寝てしまった.

◇本日の総歩数=16064歩[うち「しっかり歩数」=11266歩/99分].全コース×|△.朝○|昼×|夜×.前回比=未計測/未計測.


2 mei 2006(火) ※ ゴールデンウィークのはざまに長距離移動

◇午前3時30分起床.曇り,気温16.8度.

◇未明の研究所に潜り込む.メールの堆積と郵便物の石筍にたじろぐ.除去作業には時間がかかるにちがいない.

◇早朝のこまごま —— 計量生物学会の理事会(5月24日)の開催アナウンスと出欠の問い合わせ(東京理科大@九段下).出席します.ついこの間,25日の同学会の会議にも出るという返事をしたはずだがといぶかしく思いつつ,過去メールを掘ったら,25日は評議員会であって理事会ではなかった.メンバーがほとんど重複しているのだから一つにすればいいのだが,制度上そうもいかない.24日に理事会,25日に評議員会,同日夕方に総会という予定だ./ 提出するのがずるずると遅れていた「転居届 | 住所届 | 通勤届」の三点セットの書類を書き込む.朝イチで提出しないと./ 首都大学東京から生物統計学の講義依頼.

◇曇天から雨が降り出した.ときどき止んではまた降る,の繰り返し.

◇パロル舎から新刊メモ —— 米田綱路編著『はじまりはいつも本:書評的対話』(2006年4月25日刊行,パロル舎,ISBN:4-89419-051-6)./ 江本創『幻獣標本採集誌』 (2006年5月20日刊行予定,パロル舎,ISBN:未詳).この本は,前著である:江本創『幻獣標本博物記』(2004年2月4日刊行,パロル舎,ISBN:4-89419-283-7)の続編にあたる.

◇昼のこまごま —— メーリングリストの作業をちくちくと進める.年度始めは異動件数がもともと多いが,GWまでだらだらと続くとは…….今日中に月例アナウンスを流さないと,連休明けになってしまう.

◇非公務員化された今年度からは大学への非常勤出講が,昨年度までの“無給ボランティア”ではなく,“兼業”として認可されることになった.今年はいまのところ4校への出講が決まっているので(京大霊長研,名大文化情報学部,首都大東京,信大理学部),すべてを“兼業”にすることにした.ただし,兼業日数の分が本給からどれくらい引かれるのかという問題は残る.基本給のみなのか,それとも一時金にも関わるのか,いまだに不確定な部分があるらしい.いずれにせよ,これまでは“締め付け”がめちゃくちゃ厳しかったのが,非公務員化によって緩和されたのはいいことだ.非常勤を依頼する側にとっても,「無給で15時間(あるいは30時間)講義をお願いします」とは言いづらいものがあるだろう.そういう人の動きをさえぎる「壁」が格段に低くなったのだから,(いろいろ事務的な未解決点はあるにせよ)まずは歓迎したい.※兼業申請の書類を書かされるのは気が重いが…….

◇午後1時から2時まで,〈形態測定学講義〉の第6回目.第2章「Landmarks」を読み終える(pp. 37-50).マウスとラットを例にとって,標識点の具体的な設定についての説明.比較可能な標識点のペアをどのようにつくるかという問題.次いで,形態の写真撮影に関する実践的な説明.被写体を置く位置,レンズの焦点距離や深さの問題,照明をどうするかなどなど.さらに,画像ファイルの様式とデジタイズのしかたを tpsDig を用いて説明する.

◇午後のこまごま —— メーリングリストの作業を終え,月例アナウンスを配信(16:00少し前に)./ 連休明けの5月9日(火)の生物科学学会連合(生科連)の議事次第が届いた.

◇新刊 —— 〈知の自由人叢書〉の第3巻が出た:市島春城『春城師友録』(2006年5月刊行,国書刊行会[知の自由人叢書],ISBN:4-336-04717-0)./ 土井庄一郎『めぐりあいし人びと:築地書館の50年』(2006年3月26日刊行,築地書館,ISBN:4-8067-1321-X).理系の出版社としても知られる「築地書館」創業者の自伝.御年80歳になるという.第二次世界大戦後の日本の地質学や生態学を支え,さらには社会問題にもコミットしてきた出版社らしく,井尻正二・磐瀬太郎・土門拳などの想い出話がずらっとならぶ.

◇夕方,速攻で帰宅.旅支度をして,夜の常磐道をひた走る.三郷までは順調に流れていたのだが…….外環道,混んでます.関越道,さらに混み混みで.夜9時過ぎに下りの渋滞があるとはねー.高崎に着いたのは午後11時前のことだった.これは疲れます.疲弊の沈澱.

◇本日の総歩数=11101歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜×.前回比=0.0kg/−0.9%.


1 mei 2006(月) ※ 真夏日メーデーのデモ行進

◇午前2時半に目覚める.変に早く寝ると,こうなる.

◇夜中のこまごま —— とある行きがかり上,夏の進化学会大会で「生物学哲学」のオーガナイズの片棒をかつぐことになった.大会実行委員会への申請は5月10日が締切なのであまり時間はないのだが,とりあえずオーガナイザーと開催主旨,そして演者・演題の概要が決まっていればいいでしょう./ 午前3時過ぎに,隣接する大清水公園に,きょう開催されるメーデーの農環研用集結サイトの場所取りをする.花見じゃないんだから,明け方から巨大なブルーシートを桜の木の下に敷き詰める必要はまったくないのだろうが,これもまたメーデー実行委員のお仕事のひとつということで.午前4時前に農環研分会の“幟”を立てて,一段落.メーデー実行委員にその旨メールする.

◇未明の天気予報によると,今日の関東地方は「夏日」あるいは「真夏日」になるらしい.5月に入ったとたん,これだもんなあ.炎天下のメーデー行進はつらいぞ.

◇早朝の原稿書き —— 現代新書の「文献解題」は,昨日のうちに分野カテゴリーに分けて整理をすませ,ほぼ100冊近い引用文献をコメント付きで紹介した.引用文献をきちんと示すとか,索引をしっかり造るというのは“常識”であって,それ以上の意味はぼくにはない.その一方で,次のような主張:

『分類の発想』を読み返して感じたことをもう一つ述べる.中尾佐助は博覧強記である.博覧強記を自負する者が文章を書く時,一般になじみのない文献や研究者などを引用して知識をひけらかし,読者を煙にまくと同時に自己顕示欲を満足させるのが常である.しかし,驚くことに中尾佐助は淡々と語る.博覧強記の臭みは全くなく,彼の文章にはけれんみは一切感じられない.文章は人格を表わす.
(馬渡峻輔 2005. 文章と人柄.『中尾佐助著作集・第V巻:分類の発想』月報5,p. 8,北海道大学図書刊行会)

を見るとき,そういう“常識”が必ずしも通用しない世界があることを痛感する.著者はおそらく[ぼくが知らないどこぞの]ある人の目に余る行為に腹を据えかねて一言記したにちがいないか,あるいは文献引用に関する根本的な誤解ないし曲解を書き連ねているにちがいない.なるほど,「文章は人格を表わす」とはよく言ったものだ.

—— 新書原稿はこれですべて脱稿したのだが,全体を見てちょこちょこと手を入れはじめる.章ごとの最初と最後の引用を整備しないと.

◇第77回つくばメーデーは,午前9時から大清水公園で始まった.日射しはすでに強く照りつけている.演説と決意表明の連続の後,午後10時半からデモ行進を1キロあまり.今年初めての炎天下の行進は難行苦行だ.これはたまらん.

◇デモの後,昼前に弁当が配られて,今年のメーデーはこれにて解散.ぼくはまる1日の年休を取っているので,そのまま〈Q't〉のスターバックスにて読書三昧:『武満徹:Visions in Time』(2006年4月9日刊行,Esquire Magazine Japan,ISBN:4-87295-102-6)を読了.「絵画楽譜」がたくさん載っていて,見ているだけでも楽しい(演奏する側はこの上もなく緊張するだろうが).杉浦康平との共同作品楽譜があるとは意外だった.機会があったら東京オペラシティでの展示〈武満徹|Visions in Time〉(会期:4月9日〜6月18日)もぜひ見に行きたい.

◇関東は,午後,のきなみ今年初の「真夏日」になってそうだ.5月に入ってすぐこれでは,先が思いやられる.明日は今日よりも10度ほど気温が低くなるらしい.いやはや.

◇夕方,暑さと疲れでごろごろしていたら,地面がぐらぐら揺れた.ごろごろしたくらいでぐらぐらしたのでは,このマンションもはやりの“耐震偽装”かっ,と思ったら,実際16時1分頃に茨城地方で地震があったとのこと.安心した(するなよっ).

◇夕刻の畳上読書 —— 結城千賀子『歌集 系統樹』(2001年6月11日刊行,角川書店,ISBN:4-04-871911-4).読了.詠まれる系統樹.

この本,新刊で出たことを知って以来,方々を探しまわったのだが,まったく入手できなかった.気づかないうちに出版されていて,それを知ったときにはすでに品切れだったというのであればまだしも,近刊予告を見てすぐにオンライン書店に発注したのに数週間待たされたあげく「絶版品切れ」でキャンセル扱いにされた.これから出版されようというのに「絶版」はないでしょう.その後も思い出しては探索したもののまったくヒットしなかった.歌集とか句集という世界の出版物はもともとサーキュレーションが悪いのだろうか.それにしても,仮にも商業出版されている本が八方手を尽くしてもゲットできないのは初めての経験だった.つい最近,たまたまとあるオンライン古書店でこの本が売られているのを見つけ出し,5年目にしてやっとブツを手にしたしだいだ.

◇真夏日の行動で疲弊する.さっさと寝よう.23時就寝.

◇本日の総歩数=18363歩[うち「しっかり歩数」=4247歩/43分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=−0.2kg/+0.7%.


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