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日録2005年11月


30 november 2005(水) ※ 銀杏の絨毯,月末のあがき

◇午前4時半起床.乾いた明け方は6度台の緩い冷え込み.風が少しある.

研究所に直行して,某書類の仕上げ.文章体裁が重要なので,InDesign でこまごまといじりたおす.午前7時前に印刷完了.字体スタイルや段落スタイルを事前に設定しておくと,やっぱりとても効率が上がる.

◇午前のこまごま —— 進化学会の次期評議員選挙の投票をすます.※返信用封筒に「80円切手」を貼るのを忘れずに.>学会員のみなさん./ 東京化学同人が出版を計画している『生物学大辞典』の統計学関連項目の執筆を了承する返事を書く(200〜400字で10項目).執筆依頼書類がタイミング悪く「編集代表=石川統」のまま届いてしまったが,このへんはどーするのかな? それよりも,Y村さんから依頼された,この辞典の別分野の方はどーしましょ?(汗) / 別件の訳稿チェックの締切が迫っていることに今日になって気がついた(大汗).これこそ急がないと.

◇快晴冬晴れの昼休みは,風やや強く,気温15.1度 —— 出口保夫『物語・大英博物館:二五〇年の歴史』(2005年6月25日刊行,中公新書1801,ISBN:4-12-101801-X)を読了.第2章「草創期とウィリアム・ハミルトン」と第3章「ロマン派時代とギリシア彫刻群」は19世紀までの大英博物館の発展ぶりを記述.ロゼッタストーンやポートランドの壷をはじめとして,誰もが認める“至宝”が次々にそこに集まってくるようすは壮観だ.

続く第4章「ヴィクトリア時代の光と影」そして第5章「中興の祖オーガスタス・フランクス」は,19世紀の百年の間に,リーディング・ルームが建築され,自然史部門が独立するなど,大英博物館がさらに変貌していく過程を見る.急速に増える蔵書との闘いはいっこうにおさまらない.その格闘を取り仕切ったのは,マシュー・バトルズの図書館本『図書館の興亡:古代アレキサンドリアから現代まで』(2004年11月1日刊行,草思社,ISBN:4-7942-1353-07→原書訳書)にも登場する,大映図書館の図書管理者アントニオ・パニッツィだった.彼の発案に沿って造られたのが,後のリーディング・ルームである.

本書の中でもエピソードとして関心を惹くのは,第6章「大英博物館を訪れた人びと」だ.ほとんど一生を大英博物館の中で過ごした一般人(準ホームレスも含む)も多くいる中で,当然のごとく名のある人びともここに集まった.南方熊楠のように通い詰めたあげく館内で暴力事件を引き起こした人物もいれば,サミュエル・ジョンソンや夏目漱石のようにほとんど訪れなかった著名人もいた.続く第7章「困難な時代 — ふたつの大戦をはさんで」は,20世紀の戦火の中での大英博物館の生き残りとその後を述べる.最後の終章「大英博物館のさまざまな至宝」はいわばミニ・ガイドブックだ.

◇さらに〈多田謡子〉 —— 多田謡子遺稿追悼文集『私の敵が見えてきた』(1987年刊行,編集工房ノア,ISBNなし).本津波の“第四波”として到達.友人・同窓生・同僚たちの寄稿を含む追悼文集.この手の本は故人との関わりについてのパーソナルな想い出が書かれているものなので,内容そのものにとくに関心はない(というか“外部”の者にとっては理解できない部分が多い).ただし,社民党の福島瑞穂党首や中西印刷の中西秀彦専務,あるいは松田道雄とか鶴見良行という名が見えるので,まあパブリックといえないことはない(出版当時と18年が過ぎた“今”ではだいぶちがうが).

それよりも,たった一つしか年齢差がないこの女性弁護士さんが体験した「時代」は確かにぼくも共有していたので,さまざまな文面の背後に見える時代的な“共通部分”を味わったりする分には疎外感はまったく感じない(そういうこともあったという淡い記憶の浮上).ぼくの実家のあるのは宇治の御蔵山というところだが,三中家が深草からそこに引っ越してきたしばらくあとに,多田道太郎家が近くに転入してきたというのも,母親の言葉によれば「京大のセンセがぎょうさんいやはる」御蔵山の土地柄を考えれば不思議ではない.

転入は偶然であっても,当然のことながら多田謡子さんが通った小学校はぼくと同じ地元の木幡小学校で,おそらくまちがいなく廊下ですれちがったりしたこともあるのだろう.ひょっとしたら集団登下校でいっしょだったかもしれない(記憶はまったくないが).しかし,ぼくはそのまま地元の東宇治中学校(京大宇治キャンパスに隣接)に進んだしたのに対し,彼女は中学から“付属”に行かはったので,小学校での約2年の同窓の後はまったく交点はない.接近してはいたが互いに交わりのない,いわば「捻れの位置」にあったということだろうか.

急死するまでの弁護士時代の愛称である“アラレちゃん”でも“ダンボ”でもなく,中学時代に呼ばれた“ベトナムおばさん”というニックネームの方がピンとくる.そういう中学生や高校生はあの頃は少数派ではあったが確かにいた.この追悼文集をブラウズしてみて,かつての「時代の空気」を思い出した.

追記)今朝の朝日新聞に〈多田謡子反権力人権基金〉の第17回人権賞の受賞者が決まったとの報道があった.グッドタイミング.[12月1日]

◇本日の総歩数=14819歩[うち「しっかり歩数」=7576歩/66分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=+0.5kg/+0.2%.


29 november 2005(火) ※ 師走への序奏

◇午前4時半起床.気温5.2度.寒くない(めっ).研究所に直行.

◇昨夜から続きの書類作成.ぜんぜん終わらず(_| ̄|○).

◇年頭の5冊 —— 先日依頼された『月刊みすず』の年頭〈読者アンケート〉に答える5冊を選びはじめている.ウリカ・セーゲルストローレ『社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた』(2005年2月23日刊行,みすず書房,上巻:ISBN:4622071312 / 下巻:ISBN:46220713207 →目次書評),サイモン・シャーマ『風景と記憶』(2005年2月28日刊行,河出書房新社,ISBN:4309255167 →目次書評),そして坂野徳隆『バリ,夢の景色:ヴァルター・シュピース伝』(2004年12月3日刊行,文遊社,ISBN:4892570435 →感想)の3冊は確定している.残る2冊が問題.

有力候補の1冊は,刊行以来ときどき思い出したように読み進んでいる“フォント系統学書”:組版工学研究会(編)『欧文書体百花事典』(2003年7月7日刊行,郎文堂,ISBN:4-947613-55-6→目次)だ.もう1冊は,今年はじめから翻訳出版を期待していた本で,昨日の“本津波・第二波”で届いたばかりのコレか:ポーラ・フィンドレン『自然の占有:ミュージアム,蒐集,そして初期近代イタリアの科学文化』(2005年11月15日刊行,ありな書房,ISBN:4-7566-0588-5→目次).自然誌と博物館の歴史を扱った本としてはきわめて重要な新刊だと思う.(目次入力はまだ)

—— これでいちおう「5冊」がそろった.※それにしても,これら5冊を全部積み上げたらいったい何キロくらいの重さになるんだろう.

◇午前いっぱい書類づくり(汗).※なんでこんなことを…….

◇午後1時半から,農環研の消防訓練があった.想定避難訓練と消火作業の実習.今日は晴れて北風が強く,落ち葉が舞い飛ぶ昼下がり.気温はさほど低くないのだが,体感的にはこたえる.

◇“本津波・第三波” —— 今度は「グールド」が大挙して押し寄せてきた.連作エッセイ集の最新刊:スティーヴン・ジェイ・グールド『マラケシュの贋化石:進化論の回廊をさまよう科学者たち』(2005年11月30日刊行,早川書房,ISBN:4-15-208685-8 [上巻] / ISBN:4-15-208686-6 [下巻] ).さっそく買わねばとオンライン書店に発注した宅急便が届いたのと同時に,訳師さまからじきじきの献本をいただくことになった.ありがたいことで〜.と上下計4冊の「グールド」に囲まれて立ち往生しています.ハイ.

◇“第二波”で届いていたポーラ・フィンドレン『自然の占有:ミュージアム,蒐集,そして初期近代イタリアの科学文化』(2005年11月15日刊行,ありな書房,ISBN:4-7566-0588-5)の目次はすでに入力して,関心のありそうなメーリングリストに情報を流した.もし「今年の5冊」にエントリーさせるには,急速消化がどうしても必要だ.800ページの読破に必要な日数はどれくらいだろう.

ミュージアムがそもそもどのような社会的文脈のもとで成立したのか,コレクションを蒐集するとはいったいいかなる行為なのか,について考えてみるときに,本書はきっと参考になる.価格的には個人がけっして気軽に買える本ではないが,少なくとも博物館・図書館・大学・研究機関などに備えておく価値のある本だろう.原書と比較すると,脚註と文献はきちんと訳されているが,残念なことに事項索引が省略されているようで(人名・書名・作品名索引はある),この点は訳書として減点されるべきだ.原書のペーパーバック版の2.5倍もの代金をとっているのだから(?),翻訳に際しての情報損失はミニマムにしてほしい.

◇午後4時から,いささか遅めの〈Zar統計学本〉セミナー(第29回) —— 今日からさらなる新章 Chapter 18. Comparing Simple Linear Regression Equations (pp. 360-368).複数の回帰直線の間の比較について.t検定をベースにして,回帰直線の差の検定,切片の差の検定.まあ,この辺まではいいとして,差がないときに,共通の回帰直線を求めるという段になって,自由度の算出基準がわからなくなって,停滞してしまう.なんじゃらほい.“共通の”という制約を付けた時点で,自由度がさらにひとつ減少すると考えればいいのかな.

◇夕方のメーリングリスト管理作業いくつか.

◇あ,もう夜っ.

◇本日の総歩数=7600歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.2kg/+0.1%.


28 november 2005(月) ※ 寒い朝がもどってきた

◇5時半起床.晴れ.気温1.6度.週末は朝も日中もわりに暖かかったが,今日は冷え込んでいる.なんたって,今週中にもう12月に入るんだから,そこんとこよーく自覚して冷えてもらわないとね.

◇午前のこまごま —— 宿舎の立ち木剪定のため,車2台を旧ショッピングセンター駐車場に移動する.〈セイフー〉亡きあとは〈カドヤ〉が入るそうですが,ほんま? / 次期中期計画(二次案)の公開.次は小課題の検討に移るのだろう.年内に詰めきれるとは思え長./ とある事務連絡の返信郵送.つくばセンター近辺の駐車場不足はそうとうに深刻らしい.

◇午前の“本津波・第一波”は半額でゲットした本たち —— フィリップ・ホートン『南太平洋の人類誌:クック船長の見た人びと』(2000年8月25日刊行,平凡社,ISBN:4-582-52212-2).南太平洋地域(ポリネシア,メラネシア,ミクロネシア)の形質人類学の本.骨また骨.新刊で店頭に並んだときは引いたのだが,いま手に取ってみるといい本かもしれない.400ページ強./ ジョン・ティ・セント・ジョア『オリンピア・プレス:ある出版社のエロティックな旅』(2001年9月30日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-20354-X).出版人モーリス・ジロディアスの生涯.500ページもあるぅ.※訳本のサブタイトル,なんとかしてー./ 他,オランダ関連のエッセイ2冊:根本孝・ねもとすみこ『オランダ生活物語:続・生活王国への旅』(1994年2月28日刊行,同文館,ISBN:4-495-85961-7)および根本孝・ねもとすみこ『オランダ歩・歩・歩:新・生活王国への旅』(1996年3月10日刊行,同文館,ISBN:4-495-96221-9).この2冊に先立つシリーズ第1作として根本孝・ねもとすみこ『オランダ豊かさ事情:生活王国への旅』(1992年1月刊行,同文館,ISBN:4-495-85641-3)という本があったとは知らなかった.

◇More on 「多田謡子」 —— 『見晴らし荘のころ』というノンフィクション記録(小節風伝記)がオンライン公開されている→〈「見晴らし荘のころ」(「謡子追想」改題)のページ〉.彼女が旧国鉄の労働争議問題に[も]絡んでいたとはぜんぜん知らなかった.

◇ほどよく暖かい昼休みの歩き読み —— 高橋徹『月の輪書林それから』(1998年10月10日刊行,晶文社,ISBN:4-7949-6685-7)の後半:第II部「二〇〇五年三田平凡寺を歩く」を読了.120ページほど.明治の三田平凡寺という人物をめぐる目録づくり.今年の話題なので,知っている固有名詞や書名は格段に多くなる.それにしても,月の輪書店の「目録」とはいったいどんなものなのか,手にしたくなる.

さらに続いて,ずっと積んだままだった出口保夫『物語・大英博物館:二五〇年の歴史』(2005年6月25日刊行,中公新書1801,ISBN:4-12-101801-X).序章:「新しく甦った大英博物館」と第1章:「創立とハンス・スローン」を読了.50ページほど.大改築される前に一度は円形劇場みたいな“リーディング・ルーム”なる場所に入ってみたかったなあ.

◇午後1時過ぎから,久しぶりのAlan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読第7回目.今日から,Chapter 3:「Moments and Cumulants」に入る(pp. 74-80).モーメントの定義と性質の復習ののち,reference value を変更したときのモーメント間の関係式を導き,低次のモーメントから高次のモーメントを導出する漸化式を証明する.いくつかの具体的な確率分布について,モーメント計算の実例を挙げる.1時間ほど.

◇〈ハンマー〉の次は〈光〉か —— いつの間にか夕暮れが忍び寄ってきて,ひとやすみ.アレクサンドル・スクリャビンの第5交響曲〈プロメテウス:火の詩〉の総譜を眺めている.冗談じゃないって感じ.スクリャビンの〈プロメテウス〉といえば,てっきりあの“色光ピアノ”というあり得ない楽器を使った交響曲というイメージしかなかったのだが,総譜を見たら,もっとすごい“大物”が潜んでいたことに気づかされる.ふつう総譜といえば,てっぺんはフルート(あるいはピッコロ)からはじまるのが相場だが,〈プロメテウス〉の総譜では“Luce”という“楽器”の譜面が最上段に鎮座している.「何それっ?」とあわててイタリア語の辞書で確認したところ,“Luce=光”.要するに,“光”のパート譜があるということ.しかも,冒頭から終結部まで出ずっぱりの重要パートである.どこぞの“ハンマー”もビックリ.おそらくスクリャービンの〈神秘和音〉の基準に則って,音符と“色光”とがきちんと対応しているのだろう(強弱記号はもちろん光量の強弱に反映される).とすると,この交響曲の「完全なる演奏」(そういう演奏はされたことがあるのだろうか?)を鑑賞するためには,CD 録音で「聴く」だけではダメで,DVD 録画で「見る」必要があるのだろう.作曲者は鍵盤を叩くたびにちがう色の光を放つ色光ピアノだけでは飽き足らず,舞台全体を色光でイルミネートすることを考えていたのかと思うと…….いやあ,これはすごいです.

◇別件の書類づくりの夜 —— あっという間に日が変わる…….ねむ.

◇本日の総歩数=15062歩[うち「しっかり歩数」=7571歩/64分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/−0.7%.


27 november 2005(日) ※ 公園散歩にはいいお日和で

◇前日の疲労が残っていたのか,午前6時半まで寝てしまった.記録的な遅起きだ.晴れ.冷え込み,まるでなし.こんな中途半端な寒さのまま師走に突入してもらっては困ります.

◇「ウェストポーチ」の更新 —— 10年近く使い込んできたウェストポーチはそろそろ寿命が尽きかけている.角が破れはじめ,ジッパーの金具もいくつかなくなっている.いま使っているのはサムソナイトの薄型で,とても気に入っていたのだが,すでに生産されていないようで残念だ.ときどき気がついたときに店を物色したりしているのだが,基本的に“厚く”て“大きい”ものが多く,これはというものにまだ遭遇できていない.昨日,JR新宿駅構内で安く売っていた山羊革のウェストポーチを試しに買ってみたのだが,しばらく身につけていないと“同化”できるかどうかの判定は難しい.

そもそも,ウェストポーチをする気になったのは,10年前の1996年にブダペストで公用パスポートを国際会議の会場内で盗まれたことがきっかけだ(→顛末はここ).その後,帰国してからも,大事なものはとにかく“身につける”ようにとの教訓を忠実に実行している.その事件から早くも10年が経ち,かの地での巌佐庸さんの「三中さんは10年分の“不幸”を1回ですませてよかったですねー」というコメントの効力もそろそろ時効かもしれないし.

—— ということで,心機一転の更新中.

◇早朝から,とある学会のジャーナル電子化に関するメールのやり取り.〈J-Stage〉に乗るかどうかということ.ぼくは慎重派なんですけどね.

◇今日は昨日以上に暖かく感じる.晴れた昼下がりの歩き読み —— 高橋徹『月の輪書林それから』(1998年10月10日刊行,晶文社,ISBN:4-7949-6685-7)の前半:第I部「二〇〇二年李奉昌と出会う」(pp. 9-187)を読了.前著である高橋徹『古本屋 月の輪書林』(1998年6月30日刊行,晶文社,ISBN:4-7949-6359-9)と同じく,『蒐書日誌』風のスタイルで綴られる.この古書店主さん,本を売りたいのか,蒐めたいのか,はたまた読みたいのかの境目がぼやけているところがおもしろい.「目録」づくりにイノチを懸けているところは前書と同じ.

ときどき知った人名や書名が顔をのぞかせる.そのひとつ:多田謡子遺稿追悼文集『私の敵が見えてきた』(1987年刊行,編集工房ノア,ISBNなし).自宅にかかっている女の暦編集室(編)のカレンダー『姉妹たちよ! 女の暦2005』(2004年発行,ジョジョ企画)の11月の写真がたまたま多田謡子だったので,pp. 130-131 に書かれてある内容の背景はよくわかる.遺稿集らしからぬ本だそうだ.それにしても,〈女の暦〉では愛称“アラレちゃん”が,この本だと“ダンボ”とあだ名されている.だいぶちがうんじゃないかなあ,イメージが.多田謡子は,1957年京都市生まれで,弁護士活動をしていた1986年に29歳の若さで過労死したという.ひとつ年上だが,ほとんど同ジェネレーション.※著者は「ぼくより一歳年下の」(p. 131)と記しているが,奥付の経歴からみて著者はぼくと同年齢と思われるので,この箇所はきっと「一歳年上の」のまちがいだろう.

◇そうこうするうちに,もう夜になり,あれこれするうちに,日が変わりそうになる.それそれと就寝あるのみ.

◇本日の総歩数=5843歩[うち「しっかり歩数」=4166歩/35分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/+0.5%.


26 november 2005(土) ※ 2週間ぶりの新宿登頂

◇午前6時前にやっぱり目覚めてしまう.晴れ.しかし冷え込みはない.朝風呂と朝食.

◇いつも通り午前8時28分発の TX で新宿へ.予定通り9時半過ぎに新宿住友ビルに登頂.コンピューターのセッティングをして,プレゼン内容の確認をする.

10時半から高座のはじまり.今日は「植物」がテーマなので,葉緑体の進化的起源(共生説含む)とか,5界説とか,生態系の中での“生産者”の役割とか,サイモン・シャーマちっくに〈風景と記憶〉に関わる植物群落の“原風景”形成作用とか.順調に進み,質疑を含めて,ちょうど正午に終了する.朝日カルチャーセンターの講座も,あと1回を残すだけになった.

◇所用でやってきた大塚駅前のスターバックスにて読了 —— 橋口侯之介『和本入門:千年生きる書物の世界』(2005年10月19日刊行,平凡社,ISBN:4-582-83292-X).第2章「実習・和本の基礎知識:本作りの作法を知る〈中級編〉」は,和本を手にしたときの目のつけどころとか.著者名・題名・出版年のいずれをとっても一筋縄ではいかないわけですね.さらに後半の章に進むにしたがって,どんどんディープな「和本界」の深みにはまっていく.第3章「和本はどのように刊行されたか:刊記・奥付の見かた〈上級編〉」.入り組んだ迷路のごとき闇といったふう.たとえば,和本への“書き入れ”や“傍線引き”には一定の作法があり,ぼくがいつも洋本に書きなぐっているような“書き込み”などとは品格がそもそもちがうらしい(pp. 200-204).最終章である第4章「和本の入手と保存:次の世代に残すために」では,とりわけ“蟲たちとの闘い”が印象に残った.紙を食い荒らすシバンムシの幼虫を殺すためには「ラップにくるんで電子レンジで50秒チン!」するのが有効だそうだ(pp. 238-239).

本を「千年残す」ことを当然と考える世界があるということを知っただけでも収穫だった.なお,この本,洋本なのだが,手にした重みや手触りが和本的なのはその効果を狙っているからだろうか.

◇このままここで2時間ほど原稿を書いてから神保町に向かう予定.東京に出るたびに,たたみかけるように予定がセットされてしまう.

—— 午後3時半に神保町着.書肆アクセス→東京堂書店→書泉グランデと足早にまわってから,〈さぼうる〉の半地下へ.午後4時過ぎに講談社の担当氏が登場.原稿6枚あまりを年貢として納める.ここ1〜2ヶ月は東京に出たときにしか原稿を書いていない(たいていは喫茶店でかりかりと書いている).つくばでも常時逃げ込める“キャレル”を確保しておけばもう少しはかどったのだろうが(すみません).

その後,今月出た「ウィトゲンシュタイン日録」の新刊のことでしばし雑談.初版の刷り部数のこととか(おお,強気っ),講談社らしからぬ装幀デザインのこととか(),Wittgenstein-free な世代のこととか.根掘り葉掘り.ウィトゲンシュタインと聞けば延髄反射で買ってしまう層が少なくないとか.なるほど.

[加筆]そーですか,ウィトゲンシュタイン直弟子の von Wright はフィンランド的読みでもスコットランド的読みでもいいわけですね.なーるほど.講談社学術文庫に入っている分析哲学の著書(G. H. フォン・ヴリグト『論理分析哲学』2000年7月刊行,講談社学術文庫1438,ISBN:4061594389)は手元にあります.

—— 午後5時前に店を出る.今日は一日中気温が高めだったが,日が陰るとさすがに寒くなってきた.

◇今週木曜に発売になったばかりの〈ファーブル昆虫記〉が東京堂書店で平積みされていた:ジャン=アンリ・ファーブル『完訳・ファーブル昆虫記・第1巻上』(奥本大三郎訳:2005年11月24日刊行,集英社,ISBN:4-08-131001-7).集英社創業80周年記念企画.第1回配本は,スカラベ・アナバチ・ツチスガリを含む第1巻の上巻(11月24日刊行).12月20日に同下巻が刊行される.それ以降は,隔月で1冊ずつ出される.最終的には全10巻(計20冊)になるとのこと.立ち読みしたかぎりでは,訳文以外の解説・訳注・図版がたくさん含まれていて,現代昆虫学からの補足説明も豊富だ.昆虫に関心のある読者はきっと手に取るにちがいない.税込価格は一律2,940円/冊(第1巻上下のみ同2,500円/冊).

個人的には,3年後に全巻完結してから,あらためて購入を考えてもいいかなって感じ.急を要する本ではない.手にした感じはとても重厚.

◇都営大江戸線づたいに〈アカデミア〉を経由して(神秘和音にあてられる),新御徒町まで.TX区間快速に乗ってつくばに帰り着いたのは午後6時半のこと.〈Q't〉の外の席で本を読む.夕食は東新井の和食〈土筆〉にて(〈Bar KAICHI〉のすぐ近く).鯵のたたきを食べる.

◇夜遅くなって小雨がぱらっと./先週,現実逃避にオンライン発注した本のいくつかが郵送完了されたとの連絡メール.来週はまた本津波か…….

◇本日の総歩数=16691歩[うち「しっかり歩数」=4003歩/35分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.6kg/−0.9%.


25 november 2005(金) ※ 気分的に実在してません

◇午前5時半起床.雲が多いが,ほどよく寒い.

◇いくつか事務書類を出したり,返信を郵送したり.

◇明日はまた朝日カルチャーセンターの講義(4回目)があるので,そのスライドづくりをする.図を描いたり,キャプションを書いたり,方々から画像を蒐めたり.これまでの経験から,50枚も用意すれば何とかなることはわかっている.

—— 回を重ねるうちに,カルチャーセンターという「場」で話をするときは,どの程度“地べた”に近いところからはじめればいいかがしだいにわかってきた(最初はそうではなかった).もちろん,方々での大学や研修の講義でもそうなのだが,〈つねに非最節約であれ〉というのがポイントで,「これくらいはわかっているだろう」とか「こんなことまで説明しなくていいだろう」という講師側の“最節約願望”はたいていの場合みごとに裏切られる.足りないよりは重複させるべきであり,言わないよりは繰り返した方がいいのだ.

◇昼休みの出奔 —— 牛久まで.往復の車中読書:橋口侯之介『和本入門:千年生きる書物の世界』(2005年10月19日刊行,平凡社,ISBN:4-582-83292-X).誠心堂書店店主の和本の本.いい装幀.第1章「和本とは何か:その歴史と様式を知る〈初級編〉」を読む.90ページほど.江戸時代は書物(和本)が大量に流通した本読みの時代だったそうだ.(そういえば,中野三敏の新刊に江戸時代の書籍流通を論じた本があったっけ.)“外題”と“内題”のどちら重視すべきかとか,“物之本”と“草双紙”ではサイズがもともとちがうとか,本書で初めて知る話題も多い.続く章も楽しみ.

◇午後もスライドづくり.いっこうに終わらず.夕方,いったん帰宅.

◇午後9時,再出勤.さらにスライド.日が変わる頃やっと作業完了.pdf出力し,高座のハンドアウトと進化本リストのコピーを人数分そろえる.帰宅したのは午前1時前.※まあ,マシなほうか.

◇明日のために寝る寝る.

◇本日の総歩数=8441歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/+1.5%.


24 november 2005(木) ※ なんだかバタバタして

◇午前5時半に起床.地表付近は霧がかかっているが,青空.気温5.8度.凍えるほどではない.

◇午前のこまごま —— 別件の翻訳原稿が急速に蓄積されてきた.そろそろ何とかしないとな./ またまた,生物学系の大辞典の項目執筆依頼.生物統計学の分野で10項目ほど.ずっと放置してしまった進化関係の項目選定はその後どーなってしまったんだろう(良心の呵責).何よりも筆頭監修者が物故してしまったし……./ 午前10時半からグループ内会議.30分ほどでさらっと終わる.来年はじめの成績検討会は1月13日(金)に決定./ 石川統さんの葬儀について学会として対応すべきことについて事務連絡いくつか./ また,追いまくられる[にちがいない]週末が近づいてきたぞ.高座と“年貢”と(汗).

◇割に暖かな秋晴れの昼休み.気温15.0度 —— 関口義人『ジプシー・ミュージックの真実』(2005年10月1日刊行,青土社,ISBN:4-7917-6210-X).第6〜8章を読み,読了.ハンガリーからチェコ,スロバキア,そしてウィーン.日本でも有名なロビー・ラカトシュはとても歴史のある正統派のロマ・ミュージシャン家系の出であることを知る.全体にわたって,困難な現地入りを繰り返して報告された濃厚なルポルタージュ.民族問題と職業音楽との関わりについて深く考えさせられる.とてもいい本.

◇午後1時から,ほぼひと月ぶりの〈系統学的考古学〉セミナー(第24回).Chapter 5 : 「Taxa, Characters, and Outgroups」の続き(pp. 149-158).鏃の形質を例にとって,「形質選択」についての解説.石器のかたち(スタイル)の形質とその機能に関わる形質を考えたとき,これまでの進化考古学では,かたちの形質は相同形質だが,機能的形質は収斂しやすい相似形質とみなしてきた.しかし,系統学的情報に関しては,かたちも機能も大きなちがいはない.最初から,かたちの形質を相同とみなして重視し,機能的形質をノイズとして軽視するのではなく,両方の形質群がもつ系統学的情報をそのつど判定しながら系統推定を行なうべきであるという結論に達する.

◇午後のこまごま —— みすず書房から来年早々の「読者アンケート」の執筆依頼が届く.ことしはどの本(5冊)を選ぼうかしらねえ./ 夕刻,石川統さんのご葬儀への進化学会としての献花を葬儀社に発注する.

◇新着本 —— ルートウィッヒ・ウィトゲンシュタイン『ウィトゲンシュタイン 哲学宗教日記 1930-1932 / 1936-1937』(2005年11月15日刊行,講談社,ISBN:4-06-212957-4).1993年に新たに発見されたウィトゲンシュタインの「日記」だという.まだ撫でているだけの段階ですが,この組版とこの装幀そしてこの分量で,どーして「2,000円」という安価な価格設定が可能だったのか.下手をすれば「4,000円」で売られてもフシギではないのに.気になる点:ウィトゲンシュタイン研究者である“Georg Henrik von Wright”が“ゲオルク・ヘンリク・フォン・ライト”になっているが(たとえば p. 6),これはふつう“ゲオルク・ヘンリク・フォン・ヴリグト”と訳されているのではないか? ダスト・ジャケットは眼がチカチカするが,臙脂色の本体はなかなかのものです.※〈外〉ばっかり見てんと,〈中〉も読まんかいって?

◇年末調整の書類を取り揃える.明日提出.

◇本日の総歩数=12796歩[うち「しっかり歩数」=7184歩/63分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.7kg/−0.3%.


23 november 2005(水) ※ 勤労感謝の日はユリイカ

◇午前5時前に起床.呑んだ翌朝のだらけ朝風呂.その後,研究所に車を引き取りに行く.そこそこに寒いが,しだいにぬるみつつあるようだ.

◇勤労感謝な寝読み —— 伊達得夫『詩人たち ユリイカ抄』(2005年11月10日刊行,平凡社ライブラリー558,ISBN:4-582-76558-0).ささっと読了.前に,田中栞さんのパンフレット『書肆ユリイカの本』(2004年11月15日刊行,紅梅堂,ISBNなし)を視て以来,敗戦後に立ち上がった詩書を専門に出版した〈書肆ユリイカ〉が気になっていたのだが,ほかならない社主の本が復刻された.口絵の蔵書コレクションの多くは田中栞さんのものとのこと.大戦前後の時期に活動した詩人たちの想い出とか,書肆ユリイカの創立のこととか.巻末には60ページにおよぶ「書肆ユリイカ出版総目録」が付けられている.

その伊達得夫も40歳の若さで肝硬変のため亡くなったという.遺稿集にあたる本書は,もともと限定200部の自家出版として,関係者にのみ配布されたそうだ.ごくパーソナルな記述が多いのは,パブリックにされるのを念頭に置かなかったためだろう.逆に,それだからこそ,書けなかったことまで書けたのかもしれない.パーソナルに徹することは,意外なことに,パブリックな意味を持ち得るのだろうと思う.

—— 紙の日録にしろウェブ日録(ブログも含めて)にしろ,「パブリックであれ」と考えるのは個人の信念だが,それを他人に強要してはいけない.「パブリックであれ」と言われてめげそうになっている人,そんなスローガンは気にする必要はありません.徹底的に「パーソナルである」ためには,個人的な日記を書き続けるためには,それなりに強い意志が必要であることは,毎日書いている人ならばわかっているはず.「パーソナルである」ことは,これまた意外なことに,“攻めの姿勢”であるとぼくは考えます.

◇昼前に買い物など.日射しが暖かいな.横浜〈サンドリヨン〉の黒パンをゲット.“ロシアのシンデレラ”は重量級.

◇進化学会会長だった石川統さんが昨日亡くなったという連絡が,進化学会の評議員メーリングリスト経由でまわってきた.数年前から体調を崩されて,手術を受けていたという話は聞いていたのだが,突然の訃報にびっくりする.通夜:11月25日(金)18時〜/告別式:11月26日(土)10時〜11時.場所は桐ヶ谷斎場(品川区西五反田5-32-20/TEL. 03-3491-0213).献花・弔電は,葬儀を担当する日本博礼社が受け付けているとのこと.

—— 石川さんとは進化学会の大会や会合で顔を合わせたことしかない.数年前に,オレゴン州立大学に行ったときのレポートをメーリングリストに流したところ,松本忠夫さん経由でそれを読まれたらしく,「ぼくも3年ほどコルヴァリスに留学してましてね,夜になると街に呑みに出たものです」という思い出話をうかがったことがある./あとひとつ,とても印象的だったことは,学会賞の選考委員会の席上,「実験による裏付けがなければわかったことにはならないでしょう」とかなり強い口調で言われたことだ.

◇夜,またつくばセンターあたりを大荷物を抱えて徘徊する.遠東の〈けんちん亭〉で遅めの夕食.

◇本日の総歩数=11300歩[うち「しっかり歩数」=2789歩/25分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.8kg/+0.6%.


22 november 2005(火) ※ 収穫祭の夜は更けて

◇前夜が遅かったせいで,午前6時まで寝過ごしてしまう.晴れ.気温0.5度.やっぱり霜がおりている.

◇年末に向けての毎年恒例事がやってきた —— 車の保険の更新書類./ 年末調整に関わる手続きや書類./ 所内の忘年会の打ち合わせ.※あとひと月あまりで今年も終わる.

◇〈生物統計学・春の学校〉の構想がほぼ固まった.あとはメンバーをそろえるだけ.出家者には今日中に箱崎の陰陽師から式神が放たれる予定.※覚悟されたし.

◇晴れた昼休み.気温14.1度でほどほどの体感温度.歩き読む —— 関口義人『ジプシー・ミュージックの真実』(2005年10月1日刊行,青土社,ISBN:4-7917-6210-X).第4〜5章.セルビア・モンテネグロからマケドニア,そしてアルバニアへの道.ジプシーを取り囲む厳しい現実と超絶技巧なブラスバンドの熱狂の繰り返し.80ページほど.

◇午後1時過ぎから〈Zar統計学本〉セミナー(第28回) —— 今日からは新章 Chapter 17. Simple Linear Regression (pp. 344-353).回帰分析の続き.各独立変量に対する複数個のデータがある場合は,線形性からのズレを分散分析によって検出できるという解説.全平方和=回帰平方和+残差平方和という通常の分割とは別に,全平方和=回帰平方和+線形性残差+群内平方和と分割し,右辺の線形性残差の F 値が有意であるかどうかを検定するということ.

◇新刊いくつか —— 富士川英郎『讀書散策』(2003年3月30日刊行,研文出版,ISBN:4-87636-217-3).『讀書〜』シリーズの最後にあたる本書は,著者の死の直後に出版された.今の時代には考えられないような,とても立派な装幀だ.限定500部とのことだが,まだ書店経由で購入できる./ 井口壽乃『ハンガリー・アヴァンギャルド:MAとモホイ=ナジ』(2000年12月5日刊行,彩流社,ISBN:4-88202-684-8).うーむ,井口壽乃・圀府寺司(編)『アヴァンギャルド宣言:中東欧のモダニズム』(2005年9月5日刊行,三元社,ISBN:4-88303-161-6)を読み切る前に,こちらを先行させるべきだったかな.

◇夕方5時から業務棟にて,所主催の〈収穫祭〉.夕闇の外はもう気温が十分に下がっているのだが,人口密度の高い別棟の中は超強力ガスバーナーと煮炊きの火,そして人いきれで熱気が漂う.毎年のことながら,収穫祭では,新米おにぎりやら餅やらで炭水化物の短期集中摂取となる.呑むヒマもなくひたすら食べているという感じ.

—— 理事長の臺灣みやげという瓶入りの紹興酒をなめつつ,とある部長の独白を聞く:

「みなかさん,やっぱりサイモン・レヴィンの受賞シンポジウムよりも,隣りの大ホールでやっていたニコラウス・アルノンクールの講演会の方がおもしろかったですねえ.最後の1時間は実際にプロのオーケストラを前にしてモーツァルトの第37番を演奏指導するんですね.それがまたすごい.“そこは音を大きく”なんていう月並みなことはいっさい言わない.たとえば,緩徐楽章では,“この小節は男の子が想いを伝えているのに女の子がはにかむ様子で”とか“そのパッセージは幼なじみどうしが家庭をもって幸せに浸る情景なのです”と団員に説明するんですね.ドイツの絶対音楽といえども,そういうふうな文化的解釈があり得るのかと思うと感じ入るものがあります」

だそーで(いかにもアルノンクールらしい?).※いやいや実に充実した京都出張でしたなあ.[ワタクシも同行したかった……]

—— そんなこんなで午後7時半に業務棟から引き上げる.まだあとには何人も残って呑み続けているのだが.

◇研究室に戻り,ごそごそする.まだ夜は長いぞ.

—— と思ったら,向かいの部屋の部長室に強制召還され,そのまま二次会になだれこむ.アルコール度数急上昇.モルトウィスキーの瓶が空中浮遊したり.夜11時過ぎまで酩酊する.へろへろになって帰宅.そのまま寝る.

◇[夢の中]“式神”がすでに全国に散っていったようですが,夢枕に“glm[m]”とか“べいづ”とか“AIC”が立つ方はもう観念なさいませ.

◇本日の総歩数=18647歩[うち「しっかり歩数」=7127歩/63分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.1kg/+0.5%.


21 november 2005(月) ※ さらに急速冷凍中

◇午前5時半起床.寒いなと思ったら,案の定「0.1度」という表示が.車のフロントガラスは霜が凍りついている.天気は雲が多い空模様.

—— 早朝の研究所にて,神戸行の荷物を整理する.処理すべきメールがたくさん堆積している./ 年末調整の書類提出が今日までだったことに今日気づいた.※あちゃー./ メーリングリスト関連の作業やや多し.

◇進化学会関連のことども —— うむむ,来年に向けての「後始末」がいろいろありそうで.すでに千人超の大きい学会に成長した割には,制度の上では“プチ学会”的な relict が残っていて,それがときどき問題化する.うひー./ [比較的]分厚い進化学会ニュースの最新号(Vol. 6, no. 2)が届く.先だっての仙台大会の報告などがたくさん.

◇とあるオンラインサイトで,書籍の「半額バーゲン」をやっているよというセイレーンの聲が聞こえ,逃避的にふらふらと迷い込む.『オリンピア・プレス物語』とか『南太平洋の人類誌』とか“4匹”ほど釣り上げてウハウハしているうちに,あえなく餌食となって,難破→沈没.※おそるべし,ファム・ファタール.(ぶくぶく……)

◇統計研修関連の質問がメールで届く.サンプル・サイズの決め方に関する問い合わせ.速攻処理.とにもかくにも研修期間が無事に終わったので,今年の“大口公務”はほぼ終わったことになる.あとで研修生のアンケート調査結果を見せてもらう必要がある.講義に関するファカルティ・ディヴェロップメントは大学だけのことではない.教育を本務としない研究機関であっても,“高座”をつとめあげる能力は必要ということ.

◇昼休みの歯医者の待合室にて読了 —— ウラディミール・クリチェク『世界温泉文化史』(1994年12月10日刊行,国文社,ISBN: 4-7720-0371-1).温泉地での保養について.有名なボヘミア・グラスはかの地の有名温泉地で名を売ったのだという.また,バースの温泉施設の管弦楽団を指揮したのは,かの天文学者ウィリアム・ハーシェルだという(びっくり).ギリシャ・ローマ時代から続くヨーロッパの温泉文化に立脚すると,それ以外の世界各地の温泉は「付けたし」のように見なされてしまうのはしかたがないのだろうか.

◇北海道大学図書刊行会から(いや,この11月からは北海道大学出版会と改称したわけだが),昨年末から刊行されている〈中尾佐助著作集〉(全6巻)の第V巻が届いた:中尾佐助『中尾佐助著作集・第V巻:分類の発想』(2005年12月25日刊行,北海道大学出版会,ISBN:4-8329-2891-0).第5回配本.1990年に朝日新聞社から出版された『分類の発想』の復刻,および,その祖型にあたる論考「分類の論理」を含む論考や記事を集めた巻で,総計で800ページを越す大冊だ.

著者にとって最期の本となった,この『分類の発想』の成立経緯については,大阪府立大学まで調べに行って,少しはわかってきたように思う.知りたい人は,この巻に挟みこまれているぼくの月報記事「書かれなかった〈最終章〉のこと:中尾佐助の分類論と分類学について」(pp. 1-4)をぜひ読むべし.

—— なお,最終配本の第VI巻『照葉樹林文化論』は来年1月に出版予定とのこと.

◇書類を書いたり,注文を出したりしているうちに,もう外が暗くなってきた.日没が早くなってきたことを実感する.

◇本日の総歩数=9740歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.5kg/−0.8%.


20 november 2005(日) ※ 初冬つくばの週末は

◇午前6時半になってのろのろと起きだす.イツツユビナマケモノ.外は初冬の快晴だ.日射しがあるので布団を干したり.

◇昨日,丸善でもらった新刊カタログから —— F. Burckhardt (ed.)『The Correspondence of Charles Darwin, Volume 15: 1867』(2005年12月刊行予定,Cambridge University Press,ISBN:0-521-85931-X).レファレンスとして必須./ Richard Dawkins 『The Selfish Gene, 3rd Edition』(2006年3月刊行予定,Oxford University Press,ISBN:0-19-929114-4).いったいどの程度アップデートされるのだろう?/ Charles W. Fox and J. B. Wolf (eds.)『Evolutionary Genetics: Concepts and Case Studies』(2006年3月刊行予定,Oxford University Press,ISBN:0-19-516817-8 [hardcover] / ISBN:0-19-516818-6 [paperback])./ Julian J. Faraway『Extending Linear Model with R』(2005年刊行,Chapman & Hall / CRC,ISBN:1-58488-424-X).どんどん出る〈R〉本.

もう1冊,Paolo Rossi『Logic and the Art of Memory : The Quest for a Universal Language』(2006年1月刊行予定,Continum Pub.,ISBN:0-8264-8861-7).ん,これって新刊?(それともリプリント?) と思って調べてみたら,どーやら1960年イタリア語初版のリプリントみたい.日本語訳あり:パオロ・ロッシ『普遍の鍵』(1984年刊行,国書刊行会,ISBN:4336025517).The Complete Review にも書評が見つかった.「やや専門的だけど,いい本だ」との評.その通り.

◇よく晴れてぴしっと乾いて,今日のつくばはいたるところでイベントだらけ.車も混み混み,人も混み混み.

◇続いて和書近刊情報 —— ジャレド・ダイアモンド『文明崩壊(上・下)』(2005年12月下旬刊行予定,草思社,ISBN:4-7942-1464-2 [上] / ISBN:4-7942-1465-0 [下]→目次).今年はじめに出た本が一年も経たないうちに早くも翻訳出版される.原書は,Jared Diamond『Collapse: How Societies Choose to Fail or Succeed』(2005年刊行,Viking,ISBN:0-670-03337-5).内容的には,同じ出版社から5年前に翻訳が出た話題作ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎(上・下)』(2000年10月2日刊行,草思社,ISBN:4-7942-1005-1 [上] / ISBN:4-7942-1006-X [下])の続編にあたる.※きっと「文明論」のひとつとして読まれるようになるにちがいない.

さらにもう1冊,ポーラ・フィンドレン『自然の占有:ミュージアム,蒐集,そして近代イタリアの科学文化』(2005年11月刊行,ありな書房,ISBN:4-7566-0588-5).今年はじめから近刊予告が出ていたが,やっと出版されたようだ.生物分類学史の本としても[きっと]読めるにちがいない.大著だが[だから],関心がある.

◇久しぶりに“紙魚”と化しているうちに夕暮れが近づいてきた.

◇夜,Douglas Walton『Abductive Reasoning』(2004年刊行,The University of Alabama Press,ISBN:0-8173-1441-5)の第1章を読み進む.

◇本日の総歩数=8277歩[うち「しっかり歩数」=4244歩/35分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+1.2kg/−1.7%.


19 november 2005(土) ※ 坂の上のセミナー最終日

◇ぐずぐずと午前6時に起床する.晴れて寒い.神戸インスティテュートの真下にある灘丸山公園をひとまわり散歩する.早朝から運動している人多し.このあたりは住宅街が斜面いっぱいに広がっているのだが,年配の生活者にとっては急坂の上り下がりはこたえるのではないかと他人事ながら心配になる.おまけに野良イノシシやらくだんやら出た日には…….

◇昨日と同じく午前8時から朝食.昨日はトースト中心だったが,今日は和食.ここの厨房にはとても腕のいいシェフがいると昨夜聞いた.昨日の懇親会は結局,夜中の2時くらいまで続いたらしい(夢の中で何も知らん).部屋に戻って,一休み —— 松田行正『眼の冒険:デザインの道具箱』(2005年4月30日刊行,紀伊国屋書店,ISBN:4-314-00982-9)の第2章「面の愉しみ」を読了.本の装幀における“周辺重視主義”とか(あるある),透明人間の系統図.マルセル・デュシャンの思想系統ネットワークが大きく描かれている.イメージや想念を系譜として図式化するのはとても刺激的.「奥行き反転」の錯視は多次元立方体の低次元射影ではよく体験する.系統ネットワークの常用患者は,日頃から錯視とか立体視とか幻視(ウソ)の鍛錬を積む必要があると思う.※常人では見えない“もの”を視る必要があるのだから.

◇午前9時からセミナー開始:愛媛大学農学部の高木基裕さんによる「胎生魚ウミタナゴの乱婚とその意義」.稚魚を胎生で産むウミタナゴの雌が複数の雄と交尾していることをマイクロサテライト・マーカーで示す.腹の中の稚魚は相対的に大きな鰭膜を経由して母体から栄養を吸収しているという.これもまた収斂のひとつか.

◇また合間読書 —— 伊庭幸人他『計算統計 II —— マルコフ連鎖モンテカルロ法とその周辺』(2005年10月28日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-006852-0→目次)の第1章:伊庭幸人「マルコフ連鎖モンテカルロ法の基礎」をゆるりゆるりと読み進む.う゛,このスタイルは「饒舌でいて寡黙」だと思う.この章だけで100ページを越す分量があるのだが,要するに「わかる人には楽しめるが,わからない人には〜」ということ.少なくとも前著である伊庭幸人『ベイズ統計と統計物理』(2003年8月27日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-011158-2→書評)は,この章に取り組む前の必読書だろう.

もちろん,MCMC の考え方(イメージ)の説明はていねいで,実例も多く,きちんと読む価値はある.メトロポリス法とギブス・サンプラーの説明を読む.探索の可視化の図がいくつか載っているが,探索制約条件がない場合については,昨日の宮さんの講義で見せてもらったP. O. Lewis の〈MCRobot 2.1〉でデモすることができるだろう.

平均 0,共分散を b とする2変量 x1,x2 の正規分布 N(0, Σ) については,条件付き分布がやはり正規分布をするので,ギブス・サンプリングはラクになる.こういう実例はしっくりと理解できる.あとは,高次元・多変量になった場合の MCMC サンプリングがきちんとイメージできるかどうか,そしてある確率分布を定常状態とするマルコフ連鎖がつくれるというところの納得が次の問題だろう.

◇午前10時半から最後の講義:広島大学の西堀正英さんの「キジ目の分子系統:系統と形態分類とのギャップ」.メニューたくさん:キジ,ヤケイ,ニワトリ,イノシシ,マンボウ.いずれも分子系統.これこそ“高座”ですなあ(感服).

◇そういえば,昨日,〈Mesquite〉に以前インストールした〈Tree Visualization Module〉を初めて動かしてみた.系統解析で得られた tree set を多次元尺度法(MDS)によって,低次元空間にマップするプログラムだが,MDSがじわじわと進行していくようすが可視化されて,とてもおもしろい.探索するたびに“stress度”がしだいに収束して,tree islands が徐々に出現していくありさまが手に取るようにわかる.

◇正午を過ぎて,すべての日程を無事終了.

通常の学会大会とはちがって,あるテーマについて十分に考えたり論じたりする時間があるので,追い立てられるような気がしない.この点では,先日の JST 研究会と同じ.今回の最先端育種セミナーは3回目だが,初回は1週間ぶっ通しでやったそうだ(体力の限界を見ただろう).

—— 動物遺伝育種学会とセミナー事務局のみなさん,ありがとうございました.世間から[標高的に]隔離された山の上だったので,出家修行をするには最適な場所だったと思います.もちろん,中長期にわたってここに滞在するのは精神的にタフでないとつらいかもしれませんが(実際そのようだ),今回のように短期の研修には向いた会場だったと感じました.

◇昼食後に解散.新神戸駅まで送ってもらう.14時15分発の〈のぞみ56号〉に乗車.うつらうつらしつつ,松田行正『眼の冒険:デザインの道具箱』(2005年4月30日刊行,紀伊国屋書店,ISBN:4-314-00982-9)を読了する.第3章「形のコラージュ」.ジョアン・ミロの“画像パーツ図鑑”が圧巻.これらを組み合わせるとああいう絵になるのか.対するベルティヨンの人体パーツのコレクションは不気味.第4章「数字・文字・暗号・シンボル」.フォントの起源,読めない漢字,浮かぶメッセージ.「! と ?」の成立は目ウロコ.第5章「見ること・見られること」.視線の動き方のパターンと地震計の針の振動の類似性(?).

—— 目を遊ばせるには格好の本です.

◇東京駅で一時下車し,オアゾの丸善へ.新刊カタログをごっそりともらって,秋葉原へ.TX 快速でつくばに着いたのは午後7時前のこと.寒くなってきた.神戸にいた間はそう感じなかったが,やはり関東は格段に寒いということだろう.

◇本日の総歩数=10130歩[うち「しっかり歩数」=879歩/10分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=未計測/未計測.


18 november 2005(金) ※ くだんの山に隔離されて

◇午前5時前に起床.冷たい風が通風口から流れ込んでくる.外はまだ暗い.本日の講演準備を続ける.昨夜,寝入りばなに思いついた追加スライドをつくりこむ.また,脇道のスライドを削除して,本筋に集中することにする.それでも150枚を越えるスライドがある.持ち時間が足りるだろうか.

昨日の日録を書いたり,用件メールを送ったりしているうちに6時が過ぎ,ようやく明るくなってきた.外をうろうろと散歩したいところだが,野良イノシシやら“くだん”やらに接近遭遇するのはぜひとも避けたいので,じっと部屋で仕事することにする.

◇午前9時からセミナー開始:三中信宏による「生物進化の歴史を推定する:分子系統樹を構築する理論と方法」.系統推定の哲学,系統推定論の歴史と動向,ユーザーの取るべきスタンスなどなどについて100分ほど話をする.予定よりも時間が過ぎてしまったが,話すべき内容はすべてトークできた.ぼくの講演のあとには,ベイズ法やネットワーク法の具体的なプレゼンが予定されているので,あくまでも「概論」の役回りにとどめた.

—— ああ,疲れましたわ.ぼくに与えられた本務はこれにておしまい.

◇午前11時過ぎから次の講演:神戸に今朝やってきたばかりの宮正樹さんの「ミトコンドリアゲノム分析に基づく魚類の大系統:ベイズ法による大規模データの解析と系統学における世界的潮流」.〈MrBayes〉に基づく系統推定のデモンストレーション.とりわけ,Paul O. Lewis の〈MCRobot 2.1〉を用いた MCMC の「可視化」のためのプログラムとしてたいへん印象的だった.前回の進化学会東京学会ではパソコンの問題でデモできなかったが,今回はじめて目にすることができた.そして,“事業”としての系統学は“ビッグ・サイエンス”たりえるか.※実際のベイズ演習は夜に行われるとのこと.

—— 12時40分に終了.その後,ランチ&休憩.

◇午後2時から午後の部の開始:麻布大学獣医学部の田中和明さんによる「集団解析におけるネットワーク解析の利用」.Median network を構築する,Windows 用のフリー・ソフトウェア〈Network 4.x〉を用いたデモンストレーション.semilattice として表示される複数系統樹の網状グラフを〈Network〉でつくる.このソフトは,他の類似ソフトと比較して,出力グラフの表示・保存そして編集の点できわめてすぐれているということだ.(なお,このソフトは毎年はじめにアップデートされていて,旧バージョンは自動的に使えなくならしい.) 適用可能なデータのタイプは,塩基配列・アミノ酸配列・マイクロサテライトのハプロタイプ・言語学的データなど(NZ の R. Gray らはこのソフトで言語系統ネットワークを構築しているとのこと).

〈Network〉では,Reduced median network と median joining network がつくれるが,後者は HTU をフルに仮定する(前者は閾値を設定して HTU を“オッカムかみそり”する).ネットワーク・エディターの機能は MacClade 的でとても秀逸(このソフトが急速に普及したのもうなずける).さらに,構築したネットワークに即して,時間推定するステップも含まれている.この場合,HTUをひとつ選択し,それから派生したOTUを指定する.そして,それらをつなぐ枝の突然変異率を指定することにより,基準点HTUからの最短経路に沿っての経過年代を推定する.午後3時半に終了.

◇続いて,3時45分から次の講演:東北大学農学部の池田実さんによる「水産生物における集団構造解析:ボトムアッブとトップダウン」.保全生物学を念頭に置いた話.Evolutionarily Significant Unit (ESU) / Operational Conservation Unit (OCU) / Management Unit (MU)−【種】ではなく集団ないしリネージを保全の対象とする.系統学的視点(ボトムアップ/ESU)対 集団遺伝学的視点(トップダウン/MU)のちがい.家畜ならぬ“家魚”.5時半に終了.

◇合間の読書 —— Douglas Walton『Abductive Reasoning』(2004年刊行,The University of Alabama Press,ISBN:0-8173-1441-5).論証様式としての「アブダクション」の詳細な議論.人工知能(AI)研究が「アブダクション」の理解を大きく進めたとはまったく知らなかった.科学だけでなく,日常生活の場面でのアブダクションの機能について.さらに法学的なアブダクションまで.仮説の相対的評価としての〈法学的アプローチ〉と呼応するところがきっとあるだろうと予想する.第1章は,Charles Sanders Peirce へのさかのぼりと彼のいう“abduction”概念を検討する.

◇夕方6時から夕食&懇親会.今日は立食のバイキング.ワインも食事もたいへん美味でした.昨日から滞在したかぎり,ここの食事はたいへんグレードが高いと判断した(グルマン宮正樹も同様のランクづけをしたと思う).午後7時半でいちおうのおしまい.

◇午後8時から「夜の部」の開始.系統樹のベイズ推定に関する宮さんのフォローアップ講義.さんざん飲んだ後での講義はたいへんだっただろうと思う.ベイズ系統推定では樹形とパラメーターの同時推定を行っているということ.3rd codon のもつ情報量の重要性について.続いて,田中さんによる系統ネットワークの実習も.

◇夜の合間の読書 —— 伊庭幸人他『計算統計 II —— マルコフ連鎖モンテカルロ法とその周辺』(2005年10月28日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-006852-0→目次)を読み始める.明らかに(というか当然のことながら),伊庭幸人『ベイズ統計と統計物理』(2003年8月27日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-011158-2→書評)の続編を読んでいる心地が濃厚にする.簡単なMCMCの説明にはイジング・モデルを用いている(第1章)が,あまりに「簡単だ」とか「これだけだ」と言われると,かえって「ほんまですかぁ」と言いたくなるのだが……(あまのじゃく).

◇午後9時過ぎに今日のセミナーは終了し,引き続いて1階の談話室にて飲み会.“魚”群に取り囲まれる(つつかれたわけではない).11時半に退散.寝る寝る.

◇本日の総歩数=7768歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


17 november 2005(木) ※ くだんの神戸の山の手へ

◇午前2時前に研究所を出たときの気温がすでに2.8度.澄み渡る秋空(放射冷却ありあり).ということは,明け方はこの秋いちばんの冷え込みになることはまずまちがいないだろう.氷点下になるかならないか.

しかし,そういう寒さ比べはこっちに置いといて,とりあえずは数時間寝る必要がある ——

—— でも,やっぱり午前6時前に目が覚めてしまった.長らく身に染み込んだ生活リズムは慣性があるので,そうそう融通が利くものではない.

◇旅支度を点検し,午前8時47分の TX 区間快速にて秋葉原へ.東京でプチ探索し(お,今日は Talisker があるっ),10時33分発の〈のぞみ73号〉岡山行きに乗車.意外に空いているなと思ったら,次の新横浜で満員になった.平日のこんな時間帯なのに,混んでいるとは.

◇TX での車中読書(睡眠中断はさむ) —— 松田行正『眼の冒険:デザインの道具箱』(2005年4月30日刊行,紀伊国屋書店,ISBN:4-314-00982-9).朝日の新聞書評で見て以来,ずっと気になっていたのだが,現物に遭遇する機会がなかった.先日,東京堂書店でたまたま見かけたのが幸いだった.デザイナー的な図像学エッセイ.モホイ=ナジとかさまざまなアヴァンギャルド運動とか.まずは第1章「直線の夢」.おお,ネットワーク系統樹とか,ナチ党大会映画とか,WTC追悼式典とか.すべては「線」が織りなすアイコンとして.視るべし読むべし.

◇13時24分に新神戸に到着.さすがにつくばほど寒くない.駅前からタクシーにて,会場の神戸インスティテュートに向かう.神戸の海を見下ろす高台を縫うように,さらに高みを目指して細い坂道を登っていく.確かに,これでは荷物を抱えての徒歩はムリでしょう.灘丸山公園を回り込んだ山側に神戸インスティテュートはあった.下界が広がり,夜はさぞ夜景がきれいなことだろう.受付で登録をすませて,主催者の万年英之さんに挨拶する.この会場の正式名称は〈セント・キャサリンズ・カレッジ(オックスフォード大学)神戸インスティテュート〉という.ここの来歴は万年さんもよく知らないというが,要するに大学セミナーハウスのように,研修や会議のために開放されている組織とのこと.164ページもある要旨集は超りっぱ.

◇まずは,荷物を宿泊施設に放り込む.シングルルームで,よく手入れされている.メールチェックしたら,先日読了した『ニューヨークの書店ガイド:アメリカの書店事情最前線』の著者・前田直子さんから返事のメールが届いていた.マンハッタンの書店ガイドの新しいものが英語で出ていないかとメールで尋ねたところ,『New York's 50 Best Bookstores for Book Lovers』(2000年,ISBN:1885492847)という本があるのだが,これまた絶版になっているとのことだ.情報感謝.>前田さん.

◇午後2時から〈第3回最先端動物遺伝育種セミナー〉の開始.主催者である万年さんからの挨拶.この近辺は野良イノシシがたくさん出没するとのこと.神戸大の学生の話では「毎日見てます」というほど.積極的に向こうから人間に危害を加えるわけではないが,コンビニの袋のがさがさいう音とか,食べ物のにおいには敏感に反応して接近してくるので,そういうときは持ち物を放棄して逃げましょうとのこと.※「“くだん”は出ないんですか?」と訊こうとしたけど,それはやめておいた.(「たまに出ます」とか言われるとコワイし……)

◇さっそく講演に移る.生物資源研究所(ジーンバンク)の峰澤満さんから「動物遺伝資源の保存と利用」というタイトルで,2時間の講演.経済的価値あるいは文化的価値を(比較的)付けやすい家畜動物では,そういうものとは縁遠い一般の野生生物に比べて,保全や保護がしやすいのではないかと思う反面,人間社会に近すぎてかえって難しい面もあるのかなとも感じたり.MoDAD で遺伝的距離にもとづく家畜の系統関係の推定が大々的に行われていることを知る(どーして「距離」なのと質問したりして).※やはり,今朝つくばを出てきた峰澤さんにうかがったところ,「朝は霜が降りていました」とのこと.やっぱり氷点下になったのかもね.

続く広島大学生物圏科学研究科の山本義道さんからは「家畜・水産動物における遺伝的多様性研究:その目的と新しい方法論」という1時間ほどの話題提供.系統関係を調べるにあたっては,遺伝的変異の程度を勘案したサンプリングの規模(数)を集団遺伝学的に決定する必要があるだろうという話.それは家畜動物など十分なサンプル数が確保できる場合を除き,一般の生物には適用できないのではないかと思う(「1サンプルしかない」状況は多々あるだろうから).

◇午後6時から,食堂にて夕食.バイキング形式でワインが出た.ほろほろ酔う.その後,7時半から再び講義室にて,万年英之さんの「ブータン紀行」.ヤギの家畜化と系統が専門なので,ヤギの御姿がたくさん.ブータンではカティッジ・チーズと生の唐辛子が主食なのだそうだ(おなかにインパクトありそうですが……).午後9時まで.

◇今日は寝不足と遠距離移動で疲れたので,部屋でごろごろしてしまう.ぼくの講演は明日の朝一番.

◇本日の総歩数=8358歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+2.7%.


16 november 2005(水) ※ 見る視る診る観る

◇午前5時起床.やや曇り.気温は4.8度.冷え込みはじめた.午前6時18分に少し揺れた.天気はその後は回復し,青空が広がる.

◇今日はセミナー準備の続き.いったんつくったスライドに手を入れ始めると,とめどなく「書き換えの連鎖」が始まってしまう.こういう作業は“部分”だけの修正ではすまず,どうしても“全体”の構成そのものが変わってくる.トークはひと連なりの行為なので,何枚か前に話したことを受けてその後の話の展開が続くので(さらに後に出てくるスライドを先取りしたりもするし),とっても「非マルコフ過程」だと思う.

◇セミナー準備は昼休みをはさんでなお続く.冬型に晴れた2時過ぎに,クラスター分析の質問回答とドキュメントをもって,統計研修の会場に出向き,壁に貼付けてくる.プチ往復の歩き読みは,ウラディミール・クリチェク『世界温泉文化史』(1994年12月10日刊行,国文社,ISBN: 4-7720-0371-1)の続き.飲泉・効能・保養の節.120ページあまり.ヨーロッパ古来の温泉地では「温泉を飲む」ことに重きが置かれていたことを知る.

◇さらに続くセミナー準備.pdfファイルはもう200MBに達しそう.夕方,いったん帰宅する.あとは夜の仕事か.

◇なんやかんやで研究所に再出勤したのは午後11時.毎度毎度の夜なべかと思いきや,意外に早くケリがついてしまい,午前1時半には印刷も終わってしまった.210MB の巨大pdfの出現.あらら.さあ,寝ましょう.

◇明日は神戸の山の手に向かいます.旅支度は明朝点検することにしよう.

◇本日の総歩数=15768歩[うち「しっかり歩数」=3091歩/26分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−0.4%.


15 november 2005(火) ※ ベイズとエーゲ海

◇午前5時半起床.小雨.気温8.2度.午前6時39分,ゆっくりと揺れる.2分ほど.研究室の本棚からの落下が見られなかったので「震度3」と自己診断する(当たっていた).

◇午前中は,間近に迫ってきた〈第3回最先端遺伝育種セミナー〉のスライドの改訂作業.ベイズ関連のスライドの挿入といくつかの差し替えをする.参加者は全員で20名あまりという小規模のセミナーで,しかも講師ひとりの持ち時間は1時間半もあるので,十分な議論ができることを期待しよう.会場となる「神戸インスティテュート」の場所を確認する.往復の新幹線チケットの予約を今日中にすませよう.

◇次第に天気は回復し,正午には晴れ間がのぞくようになった.だもんで,さっそく歩き読み —— 伊庭幸人『ベイズ統計と統計物理』(2003年8月27日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-011158-2).ちょうど100ページある小冊子なので,さくっと読了.叢書〈岩波講座・物理の世界〉の中の〈物理と情報3〉にあたる本.これはとてもおもしろい本です.まだ読んでいない人はすぐに書店に走るべし.ベイズに限らず統計学の入門書としても薦められる.まず,この“語り口”がいい.こういう軽口をそのまま活字にしたというだけで,明らかに“同種”の書き手だと認知できる.さらに,ベイズ統計学にからんで夢魔のように中空を飛ぶさまざまな概念や考え方(ギッブズ・サンプラーとかシミュレーティッド・アニーリングなど)がひとつひとつ糸でつながれていくというのは,感動的でさえある.MCMCの「物理アナロジー」に感じられたもろもろは,実は「物理そのもの」ということか.遺伝学の家系分析を基礎例として説明されているので,生物系・農学系の読者にとっても致死率は高くないはず(物理なアイス・ルールとかイジング・モデルなどはとりあえず見なくてもいいでしょう).しかし,事前分布の“闇”はお天道様の下でもしっかり暗かったぞ.どーする?

◇午後1時から,〈Zar統計学本〉セミナー(第27回) —— 今日からは新章 Chapter 17. Simple Linear Regression (pp. 333-344).回帰分析に伴う分散分析と有意性検定.総平均からの全平方和を,回帰直線に関する平方和と残差平方和に分割すること.次いで,従属変数から独立変数に関する「逆推定」を行なう手順について.Zar 本は,単に計算例だけでなく,もっとリクツを書かないといけませんなあ.この点では Rohlf and Sokal の『Biometry』の方がまだマシかもしれない.

◇昨日読了した本のメモ —— 立花隆(文)・須田慎太郎(写真)『エーゲ:永遠回帰の海』(2005年11月1日刊行,書籍情報社,ISBN:4-915999-15-7).いわゆる“立花隆の本”だったらきっと買わなかっただろう.しかし,書肆アクセスでブツを見たら,実は“須田慎太郎の本”であることがわかったので購入.330ページもあるフルカラーの写真集がたった「1,500円」で買えるというのも驚きだが,何よりもとても印象に残る写真の数々に目を奪われる.廃墟となった神殿とか,首のない立像とか.とりわけ,ギリシャ北部のアトス半島にある「修道院共和国」はこれぞ結界というだけのインパクトがある.デルフィのアポロン神殿にある言葉〈γνωθι σε αυτον〉.汝自身を知れ.眼福眼福.

◇夕方から再び雨がぱらつく.気温低く,しんしんと冷える.湿度が高めだからだろう.

◇夜はセミナー対策用の論文読み:

  1. M. J. Sanderson and J. Kim 2000. Parametric phylogenetics? Systematic Biology, 49 : 817-829.
  2. P. A. Goloboff 2003. Parsimony, likelihood, and simplicity. Cladistics, 19 : 91-103.
  3. P. A. Goloboff and D. Pol 2005. Parsimony and Bayesian phylogenetics. Pp.148-159 in: V. A. Albert (ed.), Parsimony, Phylogeny, and Genomics. Oxford University Press, Oxford.

Sanderson と Goloboff は系統推定に対する基本スタンスは大きくちがうのだが(パラメトリック系統学かそれともノンパラメトリック系統学か),いずれもこの問題は“哲学的”にではなくあくまでも“経験的”に決着がはかられるべきであるという点では同意しているようだ.

◇本日の総歩数=12573歩[うち「しっかり歩数」=6487歩/57分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+0.1%.


14 november 2005(月) ※ 「高次元」萌え,ん?

◇午前5時半起床.薄い霧がかかり,曇り空.気温5.9度.

◇朝から,今日の講義に使う「高次元画像」をいろいろと集めてはスキャンしたり,ダウンロードしたり.今日から始まる数理統計研修(応用編)の中心テーマは「多変量データの解析」なので,高次元に対する“耐性”を研修生に体得してもらうのが,本日午後の最初の講義〈多変量解析概論〉の目的だ.

「多変量」なる世界はもともとわれわれ人間にとっては,多くの場合,生存不能な空間なのだが,ただひとつ例外といえるのは「かたち」の視覚データである.「かたち」に含まれる膨大な数の座標データを瞬時に見分けたり比較したりする能力がわれわれに備わっている進化的背景はそれ自身たいへんおもしろい.しかし,「〈かたち〉は多変量データである」という月並みな表現を逆転し,「多変量データは〈かたち〉である」と言い換えてみると,とたんに多変量ワールドを生き抜くためのサバイバルツールが身に付く.つまり,すべての多変量データは何らかの意味で〈かたち〉と解釈してしまえばいいということだ.たとえば,有名な〈チャーノフの顔〉などはこの逆転の真理を実際に解析ツールにしてしまったよい例だ.こういうアプローチ(あるいはスタンス)はもっと一般的に通用させてもいいだろう.

—— このように言いたいことはもう決まっているので,あとはプレゼン用の素材を貼り込めばいいだけだが,残された時間がねえ〜.

◇10時半から,グループ内会議.次期中期計画における小課題の策定についてというたいへん“身近”な議題.11時半過ぎまで続く.※こりゃまだ紆余曲折があるにちがいない.

◇午後の講義までの限られた時間に,スライドをつくり続ける.昼食なし.ぎりぎりまでつくってから pdf 出力して,そのまま会場である農研機構の会議室に直行する.

◇午後1時15分から,数理統計研修(応用編)の〈多変量解析概論〉講義.スライドを大幅に入れ換え,枚数を増やした.まずは,「多次元空間」のイメージを研修生各自につくってもらうことを目指す.多変量データの料理法としては,素材の味をそのまま活かすペア変量プロットを手始めに,次元減少,視覚化,そして一般化という多くの多変量解析手法に共通する大まかな基本方針を説明した.午後2時40分に講義終了.ひたすら高次元フリークなひとときだった.※「800次元超立方体」とか.

—— 応用編の受講者は,基礎編よりもぐっと少なく,人数がおよそ1/3なので“顔”がよく見える.

◇終了後,研究所に直帰.ハンドアウトが欲しいというリクエストがあったので,pdfをプリントアウトする.今回の統計研修は,この講義をもってすべてのデューティが終わった.毎年のことだが,怒濤のよーに講義準備し,予備校のようにトークし,灰のように燃え尽きる.この繰り返しがすでに15年か…….

◇今日は一日中曇り空で気温は上がらず.雨が降るという予報だったが,夕方の時点ではまだ濡れていない.午後4時から統計コンサルタント業務を少し.畜産実験計画について.

◇東京大学出版会から新刊2冊 —— 野中健一『民族昆虫学:昆虫食の自然誌』(2005年11月刊行,東京大学出版会,ISBN:4-13-060185-7).また「蟲喰う人」が登場か./ 三村昌泰(監修)・松下貢(編)『生物にみられるパターンとその起源』(2005年11月刊行,東京大学出版会,ISBN:4-13-064092-5).叢書〈非線形・非平衡現象の数理[全4巻]〉の第2巻.第1章「バクテリアコロニーの多様性」(松下貢・三村昌泰)|第2章「蝶の翅のパターンと進化:実験と数理モデル」(関村利朗)|第3章「生物の表面パターンと数理モデル」(望月敦史)|第4章「生物の形づくり」(本多久夫).この巻はおもしろいかも.

◇そろそろ神戸行きのJRチケットを買いに行かないとか./名古屋から来年度の出講の依頼あり.体系学哲学の集中講義.おもしろいかもしれないな./ 出版メディアパルから返事あり.イベント情報をいただく./ 頼まれ定型文書づくり1件.

◇本日の総歩数=11420歩[うち「しっかり歩数」=3071歩/27分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.前回比=+0.3kg/−0.3%.


13 november 2005(日) ※ 燃え尽きるウィークエンド

◇午前6時半起床.2日分寝ましたということで.雲は多いものの晴れている.乾いて寒そう.ここ数日,静電気がぴりぴり飛び始めている.

◇昨夜のうちに〈leeswijzer〉のカウンターが「80,000」を越えていた.今年1月の開設からの平均では「8,000アクセス/月」となっている.※いらっしゃった方,ありがとうございます.

◇午前中はインフルエンザの予防接種を受ける.この冬はインフルエンザの大流行が危惧されているそうだ.

◇朝日カルチャーセンターの講座の準備をしていて思い出したのだが,そういえばサラ・ブラファー・ハーディー 『マザー・ネイチャー(上・下)』(2005年5月25日刊行,早川書房,ISBN:4-15-208639-4[上]|ISBN:4-15-208640-8[下])と Frank J. Sulloway『Born to Rebel: Birth Order, Family Dynamics, and Creative Lives』(1996年,Pantheon,ISBN:0-679-44232-4)がまだ“放置”されたままだった.いずれも,ヒトの「家族」のつながりがもつ進化的なルーツを論じた力作だ.せめて目次情報だけでも〈leeswijzer〉に入れておきたい.

◇昨日の収穫物の続き —— 書肆アクセスにて:大久保徹也(編)・前田直子(著)『ニューヨークの書店ガイド:アメリカの書店事情最前線』(2005年9月1日刊行,出版メディアパル,ISBN:4-902251-07-8).ガソリンスタンドでの洗車待ち時間に読了.マンハッタンの書店ガイドの最新版がどこかから出ないかと待ち望んでいたのだが,まさか日本語の新しいガイドを手にすることができたとは予期しないうれしい驚きだ.2年前にニューヨークに行ったときは,10年も前に出された,1990年代はじめの古いガイドブックたち — William Marden『Marden's Guide to Manhattan Booksellers』(1994年刊行,Marden Books,ISBN:0-9636646-0-3)と S. P. Barile 『The Bookworm's Big Apple: A Guide to Manhattan's Booksellers』(1994年刊行,Columbia University Press,ISBN:0-231-08494-3) — しか参考にならなかった(2冊ともすでに絶版).これらの案内書は確かに網羅的だが,それらの書店ガイドに掲載された情報はすでに古くなってしまい(なくなった書店も多いという),最新版の情報が期待されていた.ひょっとしてマンハッタンではアップデートされた案内本がその後出たのかもしれないが,ぼくの耳には入ってこない.

だからこそ,今回出版された『ニューヨークの書店ガイド』は“飢餓感”を癒すのにはびったりの案内書だ.マンハッタンのエリアごとに分割して,それぞれの地区を代表する書店を紹介している.必ずしも網羅的ではないが,それぞれの書店のもつ特徴とか置いてある品揃えの性格などが,書店員へのインタビューなども交えて記されている.老舗の古書店もあれば,開店したばかりの新しい書店も載っている.Strand 書店,Lennox Hill 書店,Posman 書店など,すでにぼくが行ったことのある本屋も含まれている.今度行ったときには Gotham 書店に行きたいなあ.

—— 100ページあまりのコンパクトなガイドブックだが,これからマンハッタン蒐書旅行を目指す人たちにとって本書は必携だろう.

◇形態測定学の質問への回答 —— 以前,ぼくが『古生物の形態と解析』に書いた形態測定学の総説(三中信宏,「形態測定学」 pp. 60-99)の内容に関して,〈重心サイズ〉の導出式がまちがっているのではないかという指摘を先日メールで受けた.今日,該当箇所(「サイズ変数 — 重心サイズの導出」節の p. 72)を点検してみたところ,結論はまちがっていないものの,中間の式変形は確かにまちがっていることがわかりました.いやあ,6年間もまちがったまま放置されていたとは汗顔の至りでございました…….

該当箇所について,元の文章では,複素数で表現された平面上のn個の標識点座標 Zi (i = 1,2, ..., n) に関する重心サイズ S の式の導出を次のように書きました(p. 72左中から右上にかけて):

重心サイズ S = S(Z1, Z2, ..., Zn)とは,点間の平方距離の和の平方根
  S = sqrt(Σ[i < j]| Zi - Zj |2)
として定義される.ここで,n個の標識点の重心(centroid)を
  Zbar = (1/n)・Σ[i=1〜n]Zi
で定義すると,上式の重心サイズの平方は以下のように変形される.
  S2 = Σ[i < j]| (Zi - Zbar) - (Zj - Zbar) |2
絶対値部分を展開して
  = Σ[i < j] {| Zi - Zbar |2 + |Zj - Zbar |2 - 2・| Zi - Zbar | | Zj - Zbar |}
総和演算子Σを各項に分配して
  = (1/2)・Σ[i=1〜n]Σ[j=1〜n] | Zi - Zbar |2 +
    (1/2)・Σ[i=1〜n]Σ[j=1〜n] | Zj - Zbar |2 -
    Σ[i=1〜n] | Zi - Zbar |・Σ[j=1〜n] | Zj - Zbar |
積である第3項は 0 になるから
  = (n/2)・Σ[i=1〜n] | Zi - Zbar |2 + (n/2)・Σ[j=1〜n] | Zj - Zbar |2
Σの 2 項を1つにまとめて
  = n・Σ[i=1〜n] | Zi - Zbar |2
簡単にいえば,重心サイズの平方は,重心 Zbar と各標識点 Zi との平方距離の総和(平方和)に比例するということである.
  S = sqrt(n・Σ[i=1〜n] | Zi - Zbar |2)

要するに,上の文章の「絶対値部分を展開して」から「積である第3項は 0 になるから」までの赤字部分が大ウソだったわけでして……(汗).この赤字部分は正しくは次のように書き換えられるべきでしょう.

[……ここまで同じ]
絶対値部分を展開して(Z' は Z の共役複素数である)
  = Σ[i < j] [ | Zi - Zbar |2 + |Zj - Zbar |2
    - ( Zi - Zbar ) (Z'j - Z'bar) - ( Zj - Zbar ) (Z'i - Z'bar) ]
総和演算子Σを各項に分配して
  = (1/2)・Σ[i=1〜n]Σ[j=1〜n] | Zi - Zbar |2
    + (1/2)・Σ[i=1〜n]Σ[j=1〜n] | Zj - Zbar |2
    - (1/2)・Σ[i=1〜n]( Zi - Zbar ) Σ[j=1〜n](Z'j - Z'bar)
    - (1/2)・Σ[j=1〜n]( Zj - Zbar ) Σ[i=1〜n](Z'i - Z'bar)
右辺の第3項と第4項はそれぞれ 0 になるから
[ここから同じ……]

—— ああ,燃え尽きた燃え尽きた.「灰」になってしもうた.ミスが気づかれないまま何年もさらされていたかと思うと……(滝汗).ご指摘いただいた院生氏にはたいへん感謝です.

◇ほどよく燃え尽きたところで,おくればせながら『生物科学』誌のセーゲルストローレ本の書評ゲラをチェックする.1時間ほどで完了.明日返送します.>U田編集長どの.

◇ああ,もう日が変わる〜.明日からは数理統計研修(応用編)のコースが始まる.初日の午後に〈多変量解析概論〉の高座が待っている.※その準備は? ん? >ぼく(激汗).

◇本日の総歩数=3945歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−1.6%.


12 november 2005(土) ※ またまた新宿に登る

◇前夜からアタッカで夜なべ仕事.いろいろスキャンしたり,イメージ検索したり.「〜 tree」とか「〜 phylogeny」とか(各国語で)をキーワードで検索すると,ときどきおもしろいイメージがヒットしたりする.

—— おもしろがっている余裕は(今は)ないのだが…….

◇午前5時過ぎにようやく今日の高座のためのプレゼンpdfとハンドアウトの印刷を終了する.こういうドタバタはこれっきりにしたいなあといつも思いつつ,何度繰り返されてきたことか.

◇6時前に研究所を出たら雨が降っていた.夜中に降り始めたのだろうが,ぜんぜん気づかなかった.割に強め.気温は10.6度.いったん家に帰り,風呂に入ってから出発準備をする.雨脚強し.

◇行きの車中読書 —— 高橋徹『古本屋 月の輪書林』(1998年6月30日刊行,晶文社,ISBN:4-7949-6359-9).続刊である高橋徹『月の輪書林それから』(1998年10月10日刊行,晶文社,ISBN:4-7949-6685-7)が最近手に入ったので,あわてて前書から読み始める.五反田の古書店・月の輪書林ができるまでの経緯.1997年分の日録を中心にして,エッセイがいくつかまとめられている.ごくパーソナルな[その意味で正しい]独白の数々.

◇いつも通り8時28分つくば発の TX 快速に乗り,新御徒町駅で大江戸線に接続.都庁前駅で降りた午前9時半にはもう雨はやんで空が急速に明るくなりはじめていた.風がやや強いかも.朝日カルチャーセンターのある住友ビルの上層48階の窓からは遠景に富士山の山稜がくっきりと見え,下界の新宿西口公園は木々が色づきはじめていた.

◇定刻10時半に高座の開始.今日が3回目で,テーマは「ヒト」だ.進化的人間観がどのように受容されてきたのかを歴史的に振り返り,ヒトの分類,ヒトの系統,そしてヒトの化石,さらには“生物”としてのヒトの見方などなど,アラカルト的にいろいろな話題をとりあげた.予定通り,正午に終わる.3度目ともなるとそれなりに慣れてきたように思う.今週はいたるところで講義ばかりしている.来週もだが.

受講者から,現在の行動生態学でたとえば“戦略”というような軍事用語が説明の中で頻出するのはいったいどういう理由かという質問が出た.生物がそのような“戦略”を自らの意思で採用したかのような誤解を与えているのではという懸念だ.確かに,そういう誤解の危険性はある.また,別のリクエストで,一般読者向けの「生物進化本ガイド」をつくってくれないかということ.これにはきちんと対応すべきだろう.

◇転戦して,神保町へ.〈さぼうる2〉でホットドッグとともに,原稿を書く.しかし,当然のことながら兇悪なる睡魔が降臨してきて,しばしば作業が滞る.これはいかんぞ.悪霊退散! 1時間弱ほど PowerBook を打ち続けたところで,担当編集者氏が登場したので,となりの〈さぼうる〉に場所を移し,半地下の席にてさらに原稿を書く.しかし,ここでもやはり睡魔に取り憑かれてしまう.このような歴代の落書きと多くの人の“気”が籠ったような閉鎖空間はいつでも「逢魔が辻」と化してしまうので要注意.ああ,眠い眠い.結局,数枚分しか“年貢”を手渡せなかった.>すみません.

◇何はともあれ“年貢(の一部)”を納めた後は,すずらん通りの書肆アクセスへ直行.この書店に入るたびに新しい発見があって楽しい.大屋幸世の新刊『追悼雑誌あれこれ』(2005年9月刊行,日本古書通信社,ISBN:4-88914-023-9)を立ち読み.ここのところ『蒐書日誌』の続刊が出ていないなと思ったら,こんな「脇道」に逸れていたとは(いや,著者にとってはこれがむしろ「本道」か).

◇ついでに,近くの東京堂書店の新刊コーナーなどをふらふらし,さらに崇文荘書店の平棚あたりをふらふらしているうちに,こっちがふらふらしてきた.そろそろ限界かも.

◇新御茶ノ水駅から千代田線で北千住まで.15時56分発の TX 区間快速に乗り換え,午後4時半過ぎにつくばに到着.帰りの車中で,高橋徹『古本屋 月の輪書林』(1998年6月30日刊行,晶文社,ISBN:4-7949-6359-9)を読了.間断なく睡魔が降臨し続ける.

◇帰宅後,夢か現か状態のまま,高橋徹『月の輪書林それから』(1998年10月10日刊行,晶文社,ISBN:4-7949-6685-7)にとりかかる.第I部「2002年 李奉昌と出会う」(pp. 9-187)/ 第II部「2005年 三田平凡寺を歩く」(pp. 189-311)の2部構成.前著に比べてさらにうまく細かく日録とエッセイが混ぜ合わされているようだ.毎号著者が全力を傾けてつくりこんでいるという『月の輪書林古書目録』は何かの機会に手にしたいものだ.

—— しかし,寝読みのはずが,「寝」だけが増幅し,ちーとも「読」にならないな.

◇本日の総歩数=10800歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+1.6%.


11 november 2005(金) ※ 死んで生きて逝って復活する

◇午前4時半起床.晴れているが,地表付近は霧が漂う.気温5.8度.

◇夜明け前から,今日の研修の〈R実習〉に使おうと思っていた DynaBook を立ち上げたら,まったく起動しない.ハードディスクが“カタカタ”言うだけという症状は,以前にも起きたことだ.「当日」の朝,逝くか,ふつー.これじゃあ,研修生のほとんど全員が持参している Windows 機での〈R〉のデモができないじゃん.

—— しのごの言っても,ノートパソコンの“死体”がおもむろに蘇生するわけではない.次善の策として,必要なファイルをすべて PowerBook に急遽移し替え,今日は Macintosh で〈R〉を動かすことにする.

◇午前9時から統計研修の講義開始.今から昼休みをはさんで,午後2時までが〈R実習〉の時間だ.ぼくを含めて3人の講師が担当する.研修生には全員〈R〉をインストールしたノートパソコンを持参させているので,あとは机間をまわって,立ち往生したり,シズカに息絶えている受講生がいないかどうかをチェックするのが大仕事だ.

講義の最初はぼくが〈R〉の起動からはじまって,GUIの設定,作業ディレクトリの確認,外部ファイルの読み込み方.Excel ノートブックからのデータ読み込みの手順などについて説明する.今までの経験で,〈R〉の「門」をくぐる以前のこの段階で,多くの脱落者がいることは予想していたので,講師で手分けして,野戦病院のように走り回り,手当と治療を施す.それでも,実際に〈R〉をまともに動かし始めるまでには1時間弱の時間が経っていた.その後,分散分析に関係するいくつかのコマンドを説明し,線形モデルの記述方法を解説し,実習する.結局,一通りの講義が終わったのは11時半のこと.2時間半もしゃべってしまった.

◇その後,竹澤邦夫さんが,〈R〉を用いたヒストグラムの作成と経験的確率分布の構築について昼休みを挟んで説明し,その後,岩田洋佳さんが,〈R〉の「関数」の書き方やその他のティップスについて講義した.ほぼ時間通りに終了.

◇幸い,死んだ Windows 機の代わりが講義室にあったので,それを使えたのは幸いだった.少しだけ[気分的に]生き返る.

◇10分間の休憩を挟んで午後2時10分から質疑と総合討論の時間.研修生からたくさんの質問が届いていたので,それを講義別に整理し,次々にこなしていく.こういう質問は“ちぎっては投げる”という即決処理が肝心なので,さくさく応えることにする.最後に,ぼくが一般化線形モデルの話(翌週の「応用編」では2コマの講義があるのだが)をして,午後3時に全コースを完了.

—— 今日は昼休みも講義室で過ごしたので,実に一日仕事だった.外はずっと曇りで,気温は低めだったようだが,外出しなかったので,ようわかりません.心地よく逝きました(>ワタシ).

◇〈R〉のデモをするときに感じたのだが,GUI設定(とくにフォントまわり)の自由度は Windows よりも Macintosh の方が高い.今回は講義室のサイズの割にはディスプレイが小さかったので,〈R〉画面のフォントを大きくしないと後列の研修生にとっては“視力検査”を受けているも同然になってしまう.Windows の場合フォントサイズの最大値は「18」だが,Macintosh ではもっと大きく設定できたので,ディスプレイの“可読性”は後者に軍配が上がった.

◇午後5時過ぎにいったん帰宅し,夕食と2時間ほどの仮眠ののち,午後10時に再び研究所に出勤.これから明日の朝日カルチャーセンターの講義準備を朝までする予定.“年貢”どーしましょ?(汗) ※BGMはもちろんマーラーの〈復活〉だー.Auferstehung するぞー.

◇本日の総歩数=15695歩[うち「しっかり歩数」=2946歩/25分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.6kg/+0.1%.


10 november 2005(木) ※ 魔王と年貢で引きこもり

◇前夜のアルコールの影響か,午前6時まで寝過ごしてしまう.晴れ.冷え込んで気温4.9度.

◇統計研修が始まって以来,そこはかとない“ざわつき感”が漂い,落ち着きがなくなっている.絶えず「質問表」が舞い込んだり,講義室に走ったり,コンサルタントしたり.2日にいっぺんずつ教壇に立っていればそうなるのもしかたがないのだが.

—— 質問表6枚に回答する.午後掲示に行く必要あり.昨日の〈実験計画法〉ハンドアウト原本も持参する.少し複雑な実験計画法(たとえば split-plot のような)の分散分析については,Michael J. Crawley『Statistics : An Introduction Using R』(2005年4月刊行,John Wiley & Sons,ISBN:0470022981→目次)の分散分析の章に詳しく書かれていて参考になる.しかし,同じ著者による前著『Statistical Computing: An Introduction to Data Analysis using S-Plus』(2002年4月刊行,John Wiley & Sons,ISBN:0471560405→目次)の方がもっと詳しく書かれているという.やっぱり買わんとあきまへんなあ.※「なか身!検索」で覗き見たりして.

◇別件のコンサルタント業務 —— クラスター分析の樹形比較について.とりあえずは consensus tree の計算ができればいいということか.〈R〉でできましたっけ? ※PAUP* にインポートすればすぐできるのだけれど.

◇進化学会ニュースのゲラに対する追い込み修正の依頼.ほとんど時間との勝負みたい.

◇気温は低めながら青空の広がる昼休みはもちろん歩き読み —— 富士川英郎『讀書間適』(1991年11月20日刊行,小澤書店,ISBN:なし)の第I部(「菅茶山」論)と第II部.第II部では,富士川游と森鴎外との関わりについて,その経歴や仕事を比較しながら詳しく論じている.両者は同時代に医学関連ジャーナリズムに関わりを持っていた.英米系の医学につながる『東京醫事新誌』を編集したのが森鴎外であり,一方,ドイツ医学寄りの『中外醫事新報』を編集したのが富士川游だった.『中外醫事新報』は,その後,『日本醫史學雜誌』と誌名を変えて現在まで続いているという.興味深いのは,2001年に不二出版から復刻された,富士川游の編集による雑誌『人性』だ.エルンスト・ヘッケルがイェナ大学で活躍していたちょうどその時期に留学した富士川游は,当時のヘッケル流の進化論や一元論をそのまま持ち帰ってきたという.『人性』にはそういう記事がたくさん載っているそうだ.>だからといって超高い『人性』を買ったりはしないからね.>YKNちゃん.

◇形態測定学の総説記事 —— 生形貴男「現代形態測定学:化石,人骨,石器等のかたちの定量・比較ツール」(第四紀研究,44(5): 297-313, 2005年10月刊行).「外」に複写依頼を出したのだが,なんのことはない農環研にちゃんと所蔵されていることがわかった(あらら).標識点ベースと輪郭ベースの形態測定学についての総説.とくに「第四紀学」への形態測定学の適用を念頭に置いている.そこでは化石だけでなく遺跡も対象となる.

◇夕方,ほんの一瞬の柏往復 —— 車中読書は,富士川英郎『讀書間適』(1991年11月20日刊行,小澤書店,ISBN:なし)の続きで,読了.『讀書〜』エッセイ集の巻が進むとともに,物故した知人や遠い時代の追憶がだんだん多くなるのは当然のことだろう.さらさらした文章.

続いて,関口義人『ジプシー・ミュージックの真実』(2005年10月1日刊行,青土社,ISBN:4-7917-6210-X)を第3章まで.100ページあまり.ジプシー(ロマ)の人類学的な起源についての分子進化の研究に言及されている.インドがルーツとのこと.そこから西に移動してヨーロッパに達したらしい.

◇明日は数理統計研修の〈R演習〉と〈質疑〉で日中はほぼ全部つぶれる.時間のやりくりがそろそろ限界かも.

◇夜は,そのための講義準備をする.PowerBook ではなく DynaBook のご登場.

◇本日の総歩数=10251歩[うち「しっかり歩数」=2821歩/25分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/−0.3%.


9 november 2005(水) ※ 寒さ戻って今日も高座

◇午前5時起床.晴れ.気温5.0度.またまた寒くなってきたようだ.

◇お,〈はてなリング〉登場 —— それでは,さっそくおじゃまさせていただいて,と:

こういう新手のサービスがどんどん出てくるんですねえ.

◇昨日届いていた新刊 —— シリーズ最終巻にこんな厚いのが出るとは:伊庭幸人他『計算統計 II —— マルコフ連鎖モンテカルロ法とその周辺』(2005年10月28日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-006852-0→目次).350ページもある.〈統計科学のフロンティア〉叢書(全12巻)はこれにて完結した.とりあえず全巻揃えたものの,読んでいない巻ばかりで……(汗).

◇今日の〈実験計画法〉の講義は午後からなので,午前中は他の仕事がそれなりにできるかと思っていたのだが,グループ会議が入るので,実質的な“空き時間”はないも同然.「拙速主義遵守」とひとりごちる.

◇午前のこまごま —— 今年度の成績評価もまだ出していないのに,早くも来年度の首都大学東京への出講依頼(生物統計学).はいはい./ 計量生物学会の email 理事会への返信./ 午前10時半からグループ内会議.そろそろ成績検討会の日程決めが浮上.もちろん次期中期計画関連のことも.半時間ほど.

◇昼休みに,進化学会の次号ニュースの校正をチェックして,選挙関連の返事.ランチのヒマなし.

◇午後1時から統計研修の講義〈実験計画法〉.例年通りの内容なのだが,今年はカリキュラムの都合で,応用編であるはずの〈要因実験〉(ぼくの担当ではない)の講義が,基礎編の〈実験計画法〉に先立って,今日の午前中に行なわれた.本番競技が終わってから準備体操をするようなものだ.いやはや.3時間の講義は大きな問題なく午後4時に終了.

—— 午後5時から部長面談.その後,午後5時半から筑波事務所の食堂にて統計研修の懇親会.午後8時に散会.

◇さくさくと時間が過ぎて,いろいろ“堆積”しつつあるのがコワイんですけど…….

◇本日の総歩数=15258歩[うち「しっかり歩数」=1428歩/12分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=+0.1kg/+0.6%.


8 november 2005(火) ※ 落ち葉舞う晩秋の晴天

◇昨晩も夜更かししてしまったので,午前5時半まで寝入ってしまった.早朝から晴天.気温11.5度.次第に下がりはじめているようだ.学園郵便局に速達を出しに行く.

◇お,前月 dagboek へのリンクし損ないのご指摘感謝 —— さっそく訂正いたしました.

◇昨日は408号沿いのセイヨウフウが紅葉し,折からの南風に吹かれて舞落ちていた.今日は研究所内のさまざまな木からやはり落ち葉が風に流されて飛んでいた.ここ1〜2週間のうちにあっという間に紅葉から落葉へと進んでいくのだろう.

◇統計研修の受講生から早くも質問状が飛び込んできた.今年はなかなかレスポンスがよさそうだ.速攻で返事を書いて,昼休みのうちに講義室にもっていこう.※こういうのは早い方がいいのだ.

研修での質問の中には,ほぼ毎年繰り返される“FAQ”がある.たとえば,「自由度って何ですか?」とか「分散を計算するときに“n−1”でわる理由は?」という質問がそれにあたる(今年もあった).“FAQ”への対応は手慣れているからいいとして,そうでない個別的な質問にはひとつひとつ対処していかないといけない.

—— ということで,リクエスト通り,昨日の〈概論〉のハンドアウトと他の講義の質問への回答を持参して,実験圃場を横切って講義室まで歩いて直行,貼って即直帰.青空が広がり,気温は21度を越えていた.

◇きのうピーターパンで買った「ライ麦粒入りヒマワリ種まぶしブロート」がことのほか美味である.穀粒がホールで混ざったパンはいつもうまいと思う.概して,“黒くて重い”パンにハズレはない.

◇午後1時10分から,毎週定例の〈Zar統計学本〉セミナー(第26回) —— 今日からは新章 Chapter 17. Simple Linear Regression (pp. 324-333).まずはじめに,回帰(regression)と相関(correlation)とのちがいについて.相関は任意の2変量の間で定義される期待値の比である.しかし,回帰は一方の独立変数(定数あるいは変量)に対して説明される他方の従属変数(変量)がどのような関数関係にあるかを示す技法であるから,その“従属性”が現実のものである必要があると著者は考えている.この章では,単回帰に関する回帰係数と切片の計算手順を説明しているのだが,残差平方和の最小化に関する「最小二乗法」の説明が足りないので,この部分を読んだだけではわからないと思う.回帰分析の前提にある諸仮定(正規性,等分散性,線形性,ならびに独立変数の無誤差性)の解説.午後2時40分まで.

◇〈ダーウィンの悪夢〉続報 —— 届いたばかりの『UP』誌の最新号(no. 397,2005年11月号)に,西谷修「人みなそれぞれのアフリカを……:『ダーウィンの悪夢』から」という記事が載っている(pp. 41-45).いま方々で話題になっている映画〈ダーウィンの悪夢〉に関する記事で,進化学者ならだれでも知っているビクトリア湖の魚類相の適応放散と導入魚ナイルパーチによるその短期的破壊の物語だ.日本ではローカルな上映が行なわれただけだそうだが,西谷記事によると,つい最近 DVD が発売されたとのこと.これは10月12日発売のフランス語版(→ amazon.fr)だが,おそらく他国語版 DVD も近い将来リリースされるのではないだろうか.※と思って,調べてみたら,ドイツ語版 (→Amazon.de)がこの年末に販売されるらしい.英語版はさらにその後か…….

西谷さんの記事では,ビクトリア湖に導入されたナイルパーチについて:

ダーウィン流の「適者生存」という考えに照らしてみるなら,ナイルパーチはみずからが「適合種」であることを示したということだ.(p. 41)

と書かれている.確かに,ティス・ゴールドシュミット著『ダーウィンの箱庭 ヴィクトリア湖』(1999年9月16日刊行,草思社,ISBN:4-7942-0886-3)の目次にある通り,「お前の魚はいなくなった」ことは事実だ.しかし,人為的に放流されたナイルパーチは,導入生物にはよくある暴力的増殖をビクトリア湖内で実行しただけであって,進化的な意味での「適合種」であるというのはおそらく正しくないだろう.進化理論の政治的な過剰解釈ではないかとぼくは感じた.

Tijs Goldschmidt のこの訳本の原書は,『Darwins hofvijver: een drama in het Victoriameer』(1994年刊行,Prometheus,ISBN:90-5333-611-7)というオランダ語の本だ.“hofvijver”とは「宮殿前の池」という意味で,オランダにはよく見られる光景(→たとえばこのサイト)らしい.少なくとも「箱庭」(日本語訳)とか「夢の池(dreampond)」(英訳本)とはちょっとちがうんじゃないかなー.

—— いずれにせよ,このドキュメンタリー映画の DVD が発売されたというのは朗報だ.

◇新刊メモ —— 関口義人『ジプシー・ミュージックの真実』(2005年10月1日刊行,青土社,ISBN:4-7917-6210-X).10年ほど前にブダペストで聴いたジプシー・バンドのツィンバロンの見事な演奏もさることながら,バイオリンの独特の奏法を今でも覚えている.この本,とてもおもしろそうです.

◇明日の統計研修は〈実験計画法〉の講義を担当する.T-Time のプレゼン資料をちくちくとつくりこんだりして,夜が更けていく…….

◇本日の総歩数=9245歩[うち「しっかり歩数」=2882歩/24分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.8kg/−1.1%.


7 november 2005(月) ※ ほぼ夏日の立冬は研修初日

◇午前4時半起床.雨.気温15.8度.その後,急速に天候は回復し,青空が広がる.気温,めちゃ高し.これが立冬か?

◇午前10時半から数理統計研修(基礎編)の最初の講義〈統計学概論〉が始まる.場所は農研機構のつくばリサーチギャラリー内にあるオリエンテーションルーム.今年の受講者は全国から60名弱.国研(独法)から20名ほど,あとは都道府県から.毎年のことながら,数理統計研修は〈自己啓発セミナー〉はたまた〈予備校集中特訓〉のノリなので,しょっぱなの〈概論〉の役回りは受講生への「引導渡し」にほかならない.正午に終了.※受講生のみなさん,これからの1週間(ないし2週間)の出家修行をがんばってください.

◇昼休み.気温は23度を越えている.東奔西走のはじまり —— まずは土浦の銀行へ.戻って,つくば市役所へ2往復.さらに筑波大学の中央図書館にヒミツ資料を返却に行き,ピーターパン吾妻店から石丸電機へと転戦し,農環研を経由して,自宅に帰ったのは午後7時.午後だけで70kmも走ってしまった.

◇車中読書 —— 富士川英郎『讀書好日』(1987年3月20日刊行,小澤書店,ISBN:なし)第VII部の読み残し部分をば.かつての鎌倉は“文士村”だったわけね.400ページをすべて読了.引き続き,富士川英郎『讀書間適』(1991年11月20日刊行,小澤書店,ISBN:なし)へ.手元にある『讀書〜』3冊のうちでは,これがもっとも好みの装幀だ.

◇方々走り回ったせいで,やや磨り減ったかもしれない.

◇「研究者ブログははたしてアウトリーチになっているか?」(森山日記:6 Nov. 2005) —— 他の研究者はどうなのかな.ぼくはあくまでも自分のためにウェブ日記とブログを記していますので,それが何らかの意味で“アウトリーチ”になると考えたことはありません.たまたま付随的にそういう結果になることがあったとしても,それは偶然のことであって意図したわけではないですね.もちろん,森山さんが言われているような「アウトリーチとしての研究者ブログ」は可能だと思います.しかし,それはあくまでも研究者としての selfish な動機づけの「延長線上」に現れるものだろうと思います.とりあえずは「毎日書き続ける」ことを当面の目標にしているということです.それ以上でもそれ以下でもありません.

◇本日の総歩数=19314歩[うち「しっかり歩数」=4019歩/36分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.8%.


6 november 2005(日) ※ 雨だから〈讀書好日〉

◇午前6時起床.曇り.な〜んとなくごろごろする.※燃え尽きたか…….

◇そのまま讀書突入 —— 昨日の富士川英郎『讀書好日』(1987年3月20日刊行,小澤書店,ISBN:なし)の続きをば.第III部の「グロートのこと」では,明治初期の日本の医学教育がなぜ“ドイツ語”によって行なわれたかを振り返る.明治に入り,蘭学がすたれるとともに,大勢は“英語”へと向かったが,医学教育だけは「徹底的にドイツ的な教育を行った」(p. 138)という.つまり,ドイツから教師を招聘し,ドイツ語による医学教育を叩き込んだ.そういう教育を受けたひとりが森鴎外だったそうだ.

◇午後になって雲がさらに厚くなってきた.さらに読み進む.第IV節は著者が伝記を著した「菅茶山」のエピソード.頼山陽とのつながりがおもしろい.頼山陽が『日本外史』を書き上げたのが自宅の座敷牢の中だったとは知らなかった.常軌を逸した挙動の末だったそうだ.著者は江戸時代の漢詩にとくに関心を向けているが,そういう分野を対象とした先人(国文学者)はほとんどいなかったとのこと.

◇夕方になって雨が降り出し,夜には本降りに.ときどきざあざあと強く降る.しかし,読書にはふさわしい空模様か.さらに読む.第V部〜第VII部までは,知人・恩師の伝記記事だったり思い出だったり.ときどき知った名前が出てくる.最後の第VII部は,著者が生まれ育った鎌倉のエッセイ集だ.

—— こうして夜遅くまで読書.本日200ページあまり.次は,当然,富士川英郎『讀書間適』(1991年11月20日刊行,小澤書店,ISBN:なし)か.

◇備忘メモ —— 〈Das Wörterbuch-Netz〉.ドイツ語のオンライン[古]辞書サイト.グリム兄弟のドイツ語辞典があったりする.

◇明日から2週間は,毎年恒例の数理統計研修だ.明日はしょっぱなに統計学概論の講義がある.あとは2日にひとつずつの講義を担当する.スライドの調整を少ししないといけないが,それは明日未明まわしということで,今日はもう寝ましょーかねえ.

◇本日の総歩数=4089歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+2.0kg/+1.0%.※むむ“読み太り”か…….


5 november 2005(土) ※ 晩秋の大磯ロングビーチへ(翌日)

◇午前4時半起床.ホテルと大磯ロングビーチの間を走る西湘バイパスは未明からすでに交通量が多く,車の通過音がひっきりなしに響き渡っていた.夜明けとともにオーシャンビューが広がる.

ごそごそとパソコンを起動し,原稿を書き始める.こういう日常から“隔離”された環境になって(初夏のルオーとか晩秋の湘南とか),はじめて書く気になるというのは困ったことだが.系統樹に関わるグラフ理論的な定義など.形質と形質状態とか.離散最適化としてのアブダクションについて.※書いてます書いてます.

—— ホテルには〈大磯温泉〉という食塩泉が湧いていて,朝7時に入りに行った.朝日を浴びて露天風呂.循環されているが,確かにしょっぱい(当たり前か).宿泊客は少ないかと思っていたが,たくさんの風呂客がいる.実はヒソカに混んでいたのか? 午前7時半からメインダイニングにて朝食バイキング.

◇朝食後,午前9時から研究会の再会.今日の話題提供は長大なひとつのみ ——

【4】巌佐庸・大槻久(九州大学大学院理学研究院):「リーディングエイト:間接互恵により高いレベルを維持できる社会規範について」.間接互恵により高い協力レベルを維持できるような ESS を網羅的に探索するという数理モデルの話.ある行動をとることによる「評判(reputation)」のダイナミクスを「社会規範(social norm)」と呼ぶ.評判として good / bad という二値的なスコアを考えると,28=256通りの場合がある.それぞれの評判の組み合わせに対して,24=16通りの行動戦略があるので,結局 28×24=4096通りの場合をしらみつぶしに調べて,高い協力レベルを維持できる ESS 解を探索する.得られた 161 解のうち〈All-Discriminator〉という自明な解を除外し,残る非自明な 27 解を協力レベルでランキングをつけると,b/c 比を変更しても頑健にトップ8を維持する解の集合が残る.この解集合を〈Leading Eight〉と命名する.この解探索においては,評判のエラーと行動のエラーが組み込まれている.この解の考察とその大域的行動を分析する.一連の論文は Journal of Theoretical Biology に掲載されるとのこと. また,Nature 誌の最新号に Nowak and Sigmund による間接互恵に関する総説が載っている./評判の均一化は言語の使用により,さらに自意識と共感により,実現される.ヒトではこういうモデル化は確かに当てはまるが,他の生物ではどうか.そもそも互恵的利他行動の実例は“ホモ・サピエンス”しかないだろう(“チスイコウモリ”の話は虚構だった).午前11時まで.

10分の休憩をはさんで,最後の総合討論.長谷川眞理子さんによるプチ話題提供.さまざまな動物における利他行動の実例について.正午まで.

—— これにて JST 第2回研究会は終了.1階の中華レストラン〈李芳〉にて昼食の後,写真撮影をして,大磯駅までバスで送ってもらう.研究会は終わったが,これから「報告書」づくりという別の仕事が待っている.※しかも,年内だって…….

◇13:21 発の東海道線各停に乗って横浜まで.乗り換えて関内駅に到着.南口のモスバーガーで原稿書きの続きをする.シンプルに時間との闘い.2時間ほど書いて,午後4時に,関内までやってきた担当編集者氏に USB メモリーを手渡す.横浜スタジアム脇にある〈コーヒーの大学院〉というタイムスリップな喫茶店にて.サイフォンでいれたコロンビア・メデリンをば.

◇別れた後,その足でこれまたレトロな横浜開港記念会館に向かい,午後4時半からの第59回日本人類学会大会ポスター発表を見る.こういうところでも学会大会が開かれるとは.階段を上がった2階6号室が会場.目的はポスター講演:藤田正勝,山崎京美,ポール・オーヒギンス,サミュエル・コブ,キース・ドブニー「[P-1]:家畜化および拡散の研究のための新技術『幾何学的形態測定学』の適用:特に遺跡出土のイノシシ類臼歯について」を説明してもらう.イノシシの臼歯に関する morphometrics.共著者の一人である Paul O'Higgins が開発した形態測定学ソフトウェア〈Morphologika〉を用いて解析したとのこと.今回の発表では2次元座標データからの分析だったが,このような臼歯サイズの形態でも3次元座標を取得する技術もすでにあるそうだ.標識点の設定のしかたについて議論する./生形貴男さんが形態測定学に関する総説を『第四紀研究』誌に書いている(vol. 44, no. 5, pp. 297-313, 2005).

—— 人類学会が自然人類学と文化人類学で別々の学会に別れたので,人類学会の今大会の参加者は200名弱とのこと.その割には会場で知り合いに高い頻度で出会ったが,“学術的”には結局このポスターを1枚見ただけでおしまい.

◇外が暗くなりはじめた午後5時半に会場をあとにして,関内駅に向かう.そのまま京浜東北線で秋葉原へ,そして TX 快速でつくばまで.今回の日程はこれですべて消化された.

◇車中読書 —— 富士川英郎『讀書好日』(1987年3月20日刊行,小澤書店,ISBN:なし).またまた木下杢太郎,萩原朔太郎,そして堀辰雄.ゲーテの『ファウスト』の翻訳史など.120ページほど読む.

◇疲れた疲れた疲れた.

◇本日の総歩数=9076歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼△|夜○.前回比=未計測/未計測.


4 november 2005(金) ※ 晩秋の大磯ロングビーチへ(初日)

◇午前3時半起床.外は霧がかかっている.気温9.2度.冷え込みはほどほど.

—— 研究所にて早朝のこまごま.今日と明日の2日間は大磯プリンスホテルにて JST 領域探索研究会〈人間行動と社会・文化現象の進化と適応をめぐって〉が開かれる.前回の湘南国際村に続く第2回目で,今回のテーマは〈制度進化〉.前回と同様に小規模でクローズドな会議だが,せっかくの機会なので討論の場としてうまく活かしたいと思う.コーディネーターとはいえ,主体はあくまでも講演者と参加者なので,前面に立って旗振りをするまでもないだろう.

◇旅の友には —— 富士川英郎『讀書好日』(1987年3月20日刊行,小澤書店,ISBN:なし).先日,土浦の〈古書あやめ書房〉から届いた本.富士川英郎『讀書間適』(1991年11月20日刊行,小澤書店,ISBN:なし)も.すでに読んだ富士川英郎『讀書游心』(1989年6月20日刊行,小澤書店,ISBN:なし)とともに3冊並べてみる.いずれもいい風合ですなあ.

◇あ,原稿原稿,書いてます書いてます.落ち合う場所は後ほどメールにて.※内部連絡(汗).

◇午前9時10分発の TX 快速に乗り,秋葉原で乗り換え,東京駅へ.八重洲地下街の〈リカーズ・ハセガワ〉にて新入荷の17年もののマッカラン(シングル・バレル,アンフィルタード)を発見.※ブラッカダー,えらい!

10時44分発の東海道線各停に乗り込む.ぼかぼかと暖かい.ガラス越しの日射しを浴びつつ,湘南の海へ.車中,富士川英郎『讀書好日』を読みつつ(森鴎外の漢文日記についてのエッセイなど).正午前に大磯駅に着く.ソテツが植わっていたりして,ここにはまだ寒さが届いていないようだ.同じ研究会に参加する北大の高橋泰城さんと京大の渡部幹さんといっしょにタクシーで大磯プリンスホテルへ直行.

夏場のシーズンであれば,大勢の海水浴客できっとごった返していたのだろうが,晩秋の大磯プリンスはごく静かだった.広大な敷地(建物もガーデンも)の人口密度はこの時期ミニマムに近いのだろう.団体客がいくつかあるだけのようだ.

研究会会場に指定されている部屋で JST / JAREC の担当者に挨拶する.巌佐庸さんはもう来ているとのこと(階下のレストランで会った).参加者が10名そこそこの会なので,前回と同様の雰囲気だろう.

◇価格的にとてもゴージャスなランチ(汗)を食べて会場に戻ってきたら,もう参加者全員が顔を揃えていた.午後1時ちょうどに研究会の開始.事務局とコーディネーター(ぼく)からの最節約的な挨拶を経て,すばやく第一の話題提供 ——

【1】川越敏司(公立はこだて未来大学システム情報科学部):「限定合理性研究の新展開:合理性の階層モデルによる利害対立のあるコミュニケーションの分析」.従来の経済学における人間観(「利己的かつ合理的な人間」)がどのように変わってきたかを概観する.とくに,ゲームのプレイヤーがある戦略をとる際の「質的応答均衡」(QRE : Quantal Response Equilibrium)理論について詳細に論じられた.極値分布(Gunbell 分布)のパラメータλが「合理性の程度」と解釈され,この合理性パラメータの意味について論議が交わされた.あるゲームの状況を記述するモデルを選択するという問題として定式化するとのこと.さらに,より改良された合理性の「階層モデル」を提唱する.午後3時50分までの長丁場トーク.

◇今月2日に亡くなった個体群生態学のパイオニア,故・内田俊郎さんの葬儀と告別式は,隣りの二宮町にて(セレモニーホール二宮斎場):前夜式は今夜7時から;告別式は明日12時半〜13時半.※関係者に周知よろしく.

◇休憩後,午後4時過ぎから引き続き2題目の話題提供 ——

【2】高橋泰城(北海道大学大学院文学研究科)「神経経済学」.経済活動におけるさまざまな行動のを“内分泌的”に調べる.体内の内分泌的な条件が経済活動に与える影響についてはすでに研究例があり,オキシトシンのホルモン投与により実験的に「投資額」に有意な差が生じたという Fehr らの研究がある.オキシトシンは対人恐怖症の治療に使われているが,社会的協調行動に影響していることが示唆される.また,トラストや企業のような利他的経済現象はどのように説明できるのかについては,認知的な制約条件(個体識別能力の制約)が貢献している可能性がある.この個体識別能力はコルチゾルというホルモン分泌が関わっているらしい.実験的に社会的ストレスをかけると,コルチゾルが分泌され,「社会的記憶(→社会的強調)」が低下するという結果が得られている./時間に関する選択のひとつとして future discounting をとりあげられた.時間による価値低下の関数形に関して,導関数が定数となる指数型と導関数が減少関数になる双曲線型のふたつの関数タイプを比較し,社会的協調との関係が論じられた.Neuroimaging 研究により,近未来(数ヶ月先)の評価にはドパミンが関わるが,もっと遠い未来に関しては前頭葉など別の場所が活性化されるという./喫煙者と非喫煙者の間で比較すると,前者の方がリスク総量がより低い(リスク意識が低い)ことがわかった.午後6時まで.

◇午後6時10分から,初日最後の話題提供.なんだかとってもハードなタイムテーブルですなあ ——

【3】渡部幹(京都大学大学院 人間・環境学研究科):「公正感の機能と起源について」.社会の「制度」(「法」はそのひとつ)をゲームの複数均衡のひとつとみなすこと.進化するのは制度そのものではない.では,その制度を支える心理的要因はどのような進化的背景のもとに形成されてきたのか.「公正感」を定義するならば,AとBの間で「OA / IA =OB / IB 」(I:投入量;O:成果量)が成立するときに A と B は「公正」であると感じる(Adams 1965 の「衡平理論」).「不公正」に対する対応にはいろいろある(I や O を変更すべく努力する,あるいは逃避する etc.).「公正感」を維持するために“サンクション”(協力者は褒め,非協力者は罰する)が重要な機能を持つのだが,“サンクション”そのものを維持する負担を誰が追うのかという問題が生じる.Fehr らは〈ホモ・レシプロカンス〉の立場に立って,人たるものその負担をいつでも背負う覚悟はできていると主張した.それが正しいかどうかを実験的に調べてみた(大学生を対象として).その結果(分散分析と主成分分析),サンクションには私的に制裁する「報復」と公的に注意する「戒め」のふたつがあり,それぞれはどのような社会的環境(高信頼群の中の低公正感者と低信頼群の中の高公正感者)によって異なる./さらに,因子分析により,正のサンクション(協力者を褒める)と負のサンクション(非協力者を罰する)とは異なる要因によって支配されている可能性が示唆された./公正感の国別(日米間)のちがいについて,日本では相手に対するコミットメントをするための公正感という位置づけだが,米国では機会を活かすための公正感とみなされている.したがって,日本では深くつきあう相手に対しては公正だが,米国では誰に対しても公正になる.午後8時前に終わった.

◇午後8時から懇親会を兼ねた夕食会.1階の「高砂」にて.中華のディナー.午後10時からは隣室にて二次会.午後11時半に散会.

—— 部屋に戻って,即,爆睡しました.ハイ.

◇本日の総歩数=7361歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.3kg/−0.2%.


3 november 2005(木) ※ 「文化の日」は暖かく

◇午前5時半起床.曇りときどき晴れ間.冷え込まず.

◇飛び石連休とはいえ,どこかしらに行楽に行くわけでもないので,せめてヴァーチャル旅行をば —— 『世界の車窓から ― あこがれの鉄道旅行 ― Vol. 2:大自然を駆け抜ける』(2005年11月21日刊行,テレビ朝日,ISBN:4-88131-288-X).6月に出た『世界の車窓から ― あこがれの鉄道旅行 ― Vol. 1:遺産と古都をめぐる』(2005年6月7日刊行,テレビ朝日,ISBN:4-88131-282-0)とはちがって,この号には DVD がついている.

まあ,休日のささやかな愉しみということで,お目こぼしを.

◇近刊情報 —— 小学館『日本国語大辞典・第2版』の〈精選版〉なるものがこの12月から出版されるそうだ(全3巻):『〔精選版〕日本国語大辞典・1巻(あ〜こ)』(2005年12月2日刊行予定,小学館,ISBN:4095210214).

◇いろいろ買い出しに出たりしているうちにもうお昼になってしまった.今日はまことに行楽日和である.午後2時の気温は18度を越えている.

◇〈iSpecies〉 —— まずはアイデア勝負ってことですな.画像は Yahoo Image Search を使っているらしい.試しに“Nipponia nippon”で検索したりすると,「朱鷺色」の日本酒まで拾っていたりして笑ってしまう.さらに,『ONE PIECE』までつながったりして…….※もちろん,「ちゃんとした」体系学的情報源もヒットしている.

◇自己申告する“前衛” —— 井口壽乃・圀府寺司(編)『アヴァンギャルド宣言:中東欧のモダニズム』(2005年9月5日刊行,三元社,ISBN:4-88303-161-6)をいつのまにか読了.第2部〈国家を越えた国際交流の場へ〉はひたすら「宣言」に次ぐ「宣言」の連呼.中東欧圏をひとくくりにできないほど,国によって“アヴァンギャルド運動”はさまざまであることを知る.読者が「迷子」にならないためには,このような幅広い流れの全体を総括する章があってもよかったのではないか.最低限,本書全体を通じてのキーワードである“アヴァンギャルド”とか“構成主義”ということばの解説があった方がよかった.それがないために,読者は各自がこの本の中に「手がかり」を求めなければならなかったので.

一カ所だけ,ステラ・トドロヴァ・ジブコヴァの「ブルガリアのアヴァンギャルド運動」というコラム(pp. 227-228)の一節がまさにこの総括の役を果たしていた:

そこで注目すべきは,人によってアヴァンギャルドについての理解がさまざまであるということであり,それは,固定された,一枚岩的な形式ではありえないその性質によっている.これらの運動のさまざまな動向にただひとつ一致しているのは,それはもっとも重要な特質であるが,古い芸術と呼ばれた当代に先立つ芸術を攻撃する点であろう.その攻撃にはまず理論が必要であり,アヴァンギャルド運動家あるいはモダニストとも呼ばれた作家たちは,雑誌において理論を展開しつつ,実際の作品を制作していくこととなった.(p. 227)

実に明快な「まとめ」だと思う.また,“構成主義”という概念に関しては,本家本元のオランダの主唱者テオ・ファン・ドゥースブルフがこう述べている(p. 251):

  • 【構成主義的】今日の時代意識にそくした,普遍的な表現手段による,生活の新しい形態化.そしてこの表現手段の論理的に説明可能な応用.
  • 【反構成主義的】主観を重視した,感情に定位する芸術生産全般.

これまたシンプルな声明だと思う(是非は別として).当事者の「肉声」によって説明させるという編集方針ならば,それはそれでまちがいではないだろう.

◇午後5時近くなって小雨がぱらぱらと.

◇う゛,原稿は明け方仕事か…….夜10時過ぎにはもう寝てしまった.

◇本日の総歩数=8923歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=0.0kg/−0.4%.


2 november 2005(水) ※ ホーミーな明け方

◇午前5時半起床.今日も晴れ上がって,冷え込んだ.明け方の最低気温は5.3度.吐く息がもう白くなる.

—— 明け方の BGM に Tan Dun のライヴ録音による〈新マタイ受難曲〉を流していたのだが,2枚目の最初の曲で独唱者がいきなり「ホーミー(khoomii)」唱法で歌いだしたのにはびっくりしてしまった.まさか[いちおう]クラシックな[はずの]CD で「ホーミー」が聴けるとは予想していなかった.ぼくの知るかぎり,「ホーミー」はモンゴルの伝統的な二重唱法で,そうとう訓練しないと発声できないと思っていたのだが,クラシックの独唱者でも練習すれば十分に体得できるものだったわけね.いずれにせよ,かぎりなく“自然”に近い「ウォーターパーカッション」と倍音酔いする「ホーミー」のダブルパンチで,この新マタイ受難曲はなかなかいい曲かもしれない.※でも,「ホーミー」を聴いていると耳の奥がじーんとしてくる.

◇飛び石連休の合間に JSTの第2回研究会が大磯で開催されるので(11月4日〜5日),また休めないな.出張先で休んでしまうという「ウラわざ」もあるけど,今回は5日に散会したあと,横浜開港記念会館で開催されている第59回日本人類学会大会のポスター発表を見に行くというタスクが入っているので,余裕なし.さらに,そのはざまに関内駅で“年貢”原稿を渡すというアクロバティックなやりくりを迫られている.どこかで作業進捗が狂うとすべておじゃんになる(こわ).

◇昼休みの歩き読み.気温17度台の晴天は絶好の空模様 —— ウラディミール・クリチェク『世界温泉文化史』(1994年12月10日刊行,国文社,ISBN: 4-7720-0371-1)を200ページまで読み進む.単に「温泉」それ自体ではなく,「温泉文化」を見渡している.「中世の浴場」の章(pp. 105-135)とそれに続く「湯治場」の章(pp. 137-160)がおもしろい.西洋の中世において外科手術が民間の理髪師らに移行した経緯についての記述:

中世のはじめまで,外科手術は主として聖職者の特権だった.1163年のトゥールの公会と1215年のラテラノの公会議が,「教会ハ血ヲ忌ム」(ecclesia abhorret a sanguine)を宣言し,聖職者に対してこれらの仕事を禁止した.1298年のヴュルツブルク司教会議はすべての信徒たちに手術に立ち会うことをさえ拒んだ.かくして外科医療の医学一般からの完全な分離が生じ,やがてはアカデミックな教養のない,一連の湯番,床屋,創傷医上りのしろうとが,それまではちいさな怪我や骨折や抜歯の実地しか踏んでいなかったのに,外科手術の独占権をにぎった.(p. 123)

堕胎手術を床屋がしていたという歴史的経緯のルーツにはキリスト教からの命令があったということだ.

また,当時は「蛭」による放血療法も盛んだったが,医者によっては何万匹も飼育していたというその蛭たちをどのようにして集めたかについて:

蛭は,大多数がハンガリー,ポーランド,ロシアから輸入された.当地の住人たちの捕獲法はざっと次のようなものだった.裸になって池に入るとあっという間に吸血蛭にとりつかれる.これは容易にはがすことができるので,……(p. 133)

いやだいやだ,やめてくれ〜〜.※映画〈スタンド・バイ・ミー〉の池のシーンを思い出した.

◇午後のこまごま —— 年末調整に関わる提出書類.まだいいか./ 『生物科学』ゲラ.今回はセーゲルストローレ本の書評が刷り上がり10ページ.来週火曜までに返送せよとのこと./ 午後3時から2階大会議室にて理事長による全所説明会.次期中期計画に関わる基本方針など.40分ほど.今月からいよいよ次期中期計画の小課題・実行課題の検討が始まる.大波小波が打ち寄せてくるにちがいない.

◇来週は,統計研修のあいまに,市役所への事務書類の提出だの,銀行への駆け込みだのをこなさないといけない.この件は遅延なしです.それにしても長期にわたる書類津波だ.

◇進化学会ニュースのゲラpdfが事務局からメールで届く.仙台大会の報告やレポートが載っている今回は,なかなか読みでのある号です.中身のチェックを週明けまでに.※キンタくんは原稿よろしくね.

◇うう,日が変わってしまった…….

◇本日の総歩数=13941歩[うち「しっかり歩数」=7637歩/69分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.5%.


1 november 2005(火) ※ いきなり冷え込む霜月はじめ

◇午前5時起き.晴れあがる.気温5.4度.いかに放射冷却とはいえ,11月になったとたんに,この冷え込みとはねえ.

早朝のこまごま —— メーリングリストへの月例アナウンス./ 学会関連の編集事務にケリをつける.こういうことはさくさくしないといけないのだが,ごめんなさいごめんなさい./ Macintosh では OSX 用の〈LunchMenu〉をこれまで使ってきたのだが,Windows 環境ではそれに類するランチャー・ソフトウェアを使わなかった.PowerBookG4 はデスクトップ自体に「黒板」としての機能をもたせているのでランチャーは不可欠のツールなのだが,OSを問わずデスクトップには“できるだけ何も置かない”に越したことはない.ということで,Windows ノート・パソコン用のランチャーとして〈Ninja〉をダウンロードした.※ソフト製作者さま,ありがとうございます.

◇版元直送本 —— 府川充男『印刷史/タイポグラフィの視座』(2005年10月25日刊行,実践社,ISBN:4-916043-82-0).出版社がちがっても「府川本」は装幀的にスルドク収斂する傾向がある(Conway Morris さん,注目してねー).今回出た本もそう.いい造本の大判サイズで,これがどうして2,500円という安価な本体価格で出せたのかがよほどフシギだ.※個人的には同じ著者による『聚珍録』(→三省堂サイト),まだ迷っているのだけれど…….(「やめとき〜」という天の声あり.)

◇メールを書いたり,手紙を出したりしているうちに,もう昼休み —— JST第2回研究会のリクルートの最後のあがきで増えそうかも.郵便局へゴー.そして,晴天下の歩き読み:ウラディミール・クリチェク『世界温泉文化史』(1994年12月10日刊行,国文社,ISBN: 4-7720-0371-1).今年始めに買ったまま積まれていた本.種村季弘が翻訳しているが,数ある種村本の中でももっとも高価な本だろうと思う.古代エジプトからはじまり,ギリシャ・ローマ時代にいたる「温泉・鉱泉」の文化史.まずは50ページほど読み進む.『カンタベリー物語』にも登場するイギリス古来の温泉地バースは豚が発見したという伝説があるそうだ(p. 32-33).鹿や猿ならまだしも,豚に発見されるとは…….

◇午後1時30分から2時30分まで,〈Zar統計学本〉セミナー(第25回) —— 今日は短いChapter 16. Multivariate Analysis of Variance (pp. 312-323).多変量正規分布を仮定する多変量分散分析(MANOVA)の解説.ならびに,変量間の共分散・相関係数について.数式をいじるではなく,図による説明だったので,かえって話がはっきりしなかった.次章は単回帰分析.

◇夕方のこまごま —— 諸方面に電話をかけまくり,明日早くもライフラインが通じるようになった.最低限,そこで生きていくため[だけ]の条件が満たされたということ.当面は“別宅”ということで.

—— テンポラリーな“仕事場”にするという手もあり.

◇日が暮れて,東の空に輝く火星.

◇夜,原稿を書く……はずが,よそ見して「アヴァンギャルド」してしまったり,「タイポグラフィー絵」に魅入られたり.

◇Amazon.co.jp が〈Search Inside!〉の日本語版〈なか見!検索〉サービスを今月から開始したとのこと.本を買うかどうか決めるときには,「目次」(と「索引」)の情報があれば,ぼくにとってはほぼ十分なので,このサービスがあると和書(もちろん洋書も)の購入の意思決定をするときに役立つだろう.→ IT Media News 記事

国内の出版社のどれくらいの割合が,このサービスのための情報を提供するようになるのか,そこのところに興味がある.高価格な専門学術書の情報が公開されれば個人的にはうれしいのだが,出版サイドの危惧はきっとあるだろう.ハードルは意外に高いかな.少なくとも,「全文検索」とはいかないまでも,目次と索引に関する「部分閲覧」ができればそれでいいのだが.

—— 要するに,題名と著者名だけでは「お買い上げ」ボタンを押す動機づけとしてはもの足りないということ.とくに,複数の著者が寄稿する論文集の場合はそれがいえる.

◇本日の総歩数=8940歩[うち「しっかり歩数」=3277歩/29分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−0.1%.


--- het eind van dagboek ---