【書名】Das ungelöste Welträtsel : Frida von Uslar-Gleichen und Ernst Haeckel [3 Bände]
- Band 1: Briefe und Tagebuecher 1898-1900
- Band 2: Briefe und Tagebuecher 1900-1903
- Band 3: Briefe der Familie, Dokumente und Anhang
【編者】Norbert Elsner
【刊行】2000年
【出版】Wallstein Verlag, Goettingen
【URL 】http://www.wallstein-verlag.de/buecher/377-7f/377-7b.html
【頁数】Band 1: pp.1-480/Band 2: pp.481-936/Band 3: pp.937-1342
【価格】DM 98.00 [set] / cloth
【ISBN】3-89244-377-7 [set]


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ヘッケルはダーウィンと同じくらい筆まめで,過去にも妻や親族宛の書簡がすでに出版されています.しかし,今回出版された全3巻に及ぶこの書簡集の意義は,1世紀以上にわたって堅く「封印」されてきたヘッケルの女性関係の全貌を初めて明らかにした点にあります.
相手の Frida von Uslar-Gleichen はゲッティンゲン近郊の Gelliehausen に領地をもつ貴族の長女で,ヘッケルの進化論普及書『自然創造史』に感銘を受けたことが,彼との文通の始まりとなりました(1898年).このとき,フリダは34歳,ヘッケルは64歳.30歳の年齢差を埋めるように頻繁な文通が始まりました.
ちょうどこの頃,ヘッケルは一元論哲学に基づく『宇宙の謎』(Die Weltraethsel)の原稿を準備しており,その校正刷をフリダにチェックしてもらうこともありました.フリダ自身は宗教や精神にかかわることまでも一元論的に説明し去ろうとするヘッケルの姿勢には終始批判的で,『未解決の宇宙の謎』というこの書簡集のタイトルは,そのままフリダの見解でもあるわけです.
未解決(ungeloest)あるいは解決できない(unloesbar)という言葉は,この二人の人間関係の別の側面をも表わします.当時,ヘッケルは2度目の妻であるアグネスと家庭をもっており,子どももいました.一方のフリダは独身で母親や姉妹たちとともに暮らしていました.すでに社会的名声の高かったヘッケルとの交際はスキャンダルともなりかねず,往復書簡のはしばしには「これからどうしようか」というやりとりが見られます.この点に関しては,いささか弱気なヘッケルを,フリダが終始励ますという構図が見られるのは興味深いことです.
もちろん,かなり早い段階で,"Sie" の距離が "du" と呼び合う仲にまでなっていたわけですから,それ相応の覚悟があったものと想像されます.その一方で,精神的に不安定な妻と娘を抱えたヘッケルが「心の妻」(Herzensfrau)と呼び,フリダが応えて「わが夫」(mein Mann)と言い合う関係は確かに unloesbare Liebe ですね.
この書簡集の構成は下記の通りです:
【目次】
Band 1 ***********************************************************
Einfuerung 7- 13
Biographische Vorbemerkungen
Frida von Uslar-Gleichen 15- 28
Ernst Haeckel 29- 57
Hinweise zur Texteinrichtung 58- 59
Frida von Uslar-Gleichen und Ernst Haeckel
Briefe und Tagebuecher 1898-1900 61- 478
この第1巻には,フリダとヘッケルの伝記,ならびに1898〜1900年までの書簡が収められています.
Band 2 ***********************************************************
Frida von Uslar-Gleichen und Ernst Haeckel
Briefe und Tagebuecher 1900-1903 487- 935
第2巻は,1900〜1903年までの書簡です.フリダとヘッケルとの往復書簡は,19〜20世紀をまたぐ6年間しか続きませんでした.ヘッケルがイタリアに滞在していた1903年の暮れに,フリダは心臓発作のため急逝したからです.
Band 3 ***********************************************************
Anna von Uslar-Gleichen an Ernst Haeckel 1899-1904 943- 949
Luise von Uslar-Gleichen an Ernst Haeckel 1903-1919 951- 988
Briefwechsel zwischen Bernhard von Uslar-Gleichen und Ernst Haeckel 1903-1919 989-1116
Testamentarische Bestimmungen Ernst Haeckels 1117-1120
Briefe und Notizen Heinrich Haeckels 1121-1202