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日録2007年4月


30 april 2007(月) ※ 月末の de verboden vrucht は何の味?

◇午前4時半起床.晴れ.久しぶりに研究所に早朝出勤.気温7.5度.

◇月末の朝のこまごま —— 5月の予定を確認./ メーリングリスト関連作業を小一時間ほど.異動の多い4月はどうしても降り積もる火山灰./ 進化学会京都大会ウェブサイトはほぼ公開できる段階になったとの連絡.URLが確定した時点で全会員に周知してもらうことにする.これで参加申込や企画募集が可能になる.この件はこれでおしまい.しかし,公式企画の方は詰めるべき部分がまだ残されている./ サン=テックスのデッサン集は入手できるときに買っておいた方がいいかもね./ 晴れて気温がぐんぐん高くなってきた./ 昨日しあがったカマジン本の最後の数枚を海游舎に郵便で返送した.一段落.

◇翻訳落ち穂拾い —— カマジン本の本文はこうして終わったのだが,昨年,著者から送られてきた「日本語版への序文」が3枚あったことを思い出した.勢いで訳し始める.個人的には,「ですます体」の方が好きなので,そのスタイルで翻訳を進める.午前いっぱいかかって終了.メールで海游舎に送信する.また一段落.

◇ふっとよろめく“禁断の果実” —— 笹原宏之『国字の位相と展開』(2007年3月31日刊行, 三省堂, ISBN:978-4-385-36263-2→概略目次版元ページ).序章「研究の目的と方針」と第1章「国字の定義と分類」を読み進む.著者は“語”に関する「語誌」とその語を表記する“字”に関する「字誌」とを区別した上で,従来の国語学では「語誌」の研究の深まりに比べて,「字誌」は未探究の課題がたくさん残されたままであると言う.本書の中心テーマである「国字」の定義に関しては:

「国字」は,第一義的には,日本人が漢字に倣って作製した文字を指すものである.(p. 43)

という簡明な定義を置く.しかし,「国字」としての条件を満たすかどうかの検証はけっして容易ではなく,表現型的には“国字”のような外見であっても,実はそうではないケースが多々あると著者は指摘する(p. 45).

たとえば,「佚存文字」と呼ばれるケースは,もともとは中国にその字体があって,日本に伝播してきたのだが,中国ではその字体が失われて後代に伝わらず,結果として「日本固有の字体」のように見えるものを指す(第3節第1項).生物地理学でいえば,phylogeographic tree の末端OTUだけが残存してしまって,その ancestral area に関する推論を誤ってしまう場合に相当するのだろう.

それだけではない.真に日本で造字された「国字」がたまたま中国に存在していた別の字体と一致してしまうという「衝突」,あるいは字義がたまたま一致してしまうという「暗合」が国字であるかどうかの判定を難しくする(第3節第2項).形態形質に基づく系統解析で言えば,字体上のあるいは字義上の homoplacy による収斂が生じることにより,字間の系統関係の推論を誤るというケースである.

著者は,このような「国字」をめぐる定義上・概念上の問題の数々,そして字体間の系統関係を推論する際に生じ得るさまざまな過誤の原因を列挙することによって,論議を進める露払いをしている.生物系統学や生物地理学の知識がある読者ならば,ここで書かれている著者の問題意識や論旨を生物間の系統関係の推論問題にそのままなぞらえて容易に理解できるのではないかと思う.

—— この第1章だけで「197ページ」もある.先は遠いな.※ De verboden vrucht の豊穣なる味わい.

◇高崎の〈きゃらばん〉の自家焙煎コーヒー豆をもらったので,マンデリンを賞味.深みのある味わい.焙煎後60日間は大丈夫らしい.

◇初夏のような日射しの昼下がり,かすみがうら市にある〈四万騎農園〉まで栗のジャムを買い出しに行く.つくばの中心部からたった30分でたどりつけるとは知らなかった.菜の花畑の中に栗園と石倉とショップが点在している.プレーンのマロン・ジャムもあるが,他にラム酒入りと,ウィスキー入り「オー・ド・ヴィー」がある.いずれも他では手に入らない.木のうろにはニホンミツバチの巣があり,方々に掛けられた巣箱からはヒナの鳴き声が.夏日の午後をしばしくつろぐ.つくばに戻ってきたのは午後4時のこと.

◇明日からはGWのはざまの平日だが,仕事はしっかりあるのでちーとも休めない.かかえている原稿仕事とともにいくつかの案件の処理について考える.

◇本日の総歩数=8553歩[うち「しっかり歩数」=2324歩/21分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.6kg/−0.4%.


29 april 2007(日) ※ “アイガー北壁”の登攀完了は午前1時過ぎ

◇前夜からずるずる引きずる夜なべ仕事.午前1時前に,カマジン本の最終章の最終8ページのチェック作業を完了した:Scott Camazine et al. 『Self-Organization in Biological Systems』(2001年4月1日刊行,Princeton University Press,ISBN:0691012113 [hbk] / ISBN:0691116245 [pbk]→目次)|スコット・カマジン他(松本忠夫・三中信宏訳)『生物システムにおける自己組織化』(2007年刊行予定,海游舎).

この章はゲラのすべてのページが隙き間なく「朱」の呪文で埋めつくされ,さながら“耳なし芳一”のようになった.もちろん“耳”も怠りなくチェックしたので,遺漏はないはず.下訳の文章の生存率はかぎりなくゼロに近い(文章適応度が低いための当然の結末だ).結果的に,これまでの章よりもかなり高率に地べたからの訳し直しをしたことになる.

本書全体の総括である最終章を訳していて強く感じるのは,「自己組織化」を標榜するこの本は,同時に「自己組織化」に対する批判の書でもあるということだ.誤解されないように付けたすと,本書の著者たちはつねに〈自己組織化では説明できない〉という一種の帰無仮説を念頭に置きつつ,対立仮説群(blue-print仮説やスティグマジー仮説など)との対比のもとに自己組織化仮説のよしあしを判定しようとしている.時として歯がゆくなるほど慎重な姿勢を崩さない点で,Stuart Kauffman(1993)のような鼻息の荒さ,あるいは一般書として出ている他の自己組織化本に見られる勇み足とは一線を画するといえる.

著者たちは現状では自己組織化を経験的仮説としてテストするだけのデータが質・量ともにまだまだ不十分であると述べる.そして,今後どのような実験を組めばいいのかという指針が,具体的な事例を通じて読者に提示される.「自己組織化」という仮説のもつ潜在的能力を評価しつつも,けっしてそれに心酔していないことが読者にはきっとよくわかるだろう.何よりも,自己組織化を自然淘汰理論に代わる対立理論と位置づけようと目指す Kauffman 的なスローガンをはっきりと否定していることは,現代進化理論の中での自己組織化プロセスの適切な位置付けを論議する上で生産的な姿勢ではないだろうか.

過去の日録を検索したら,今回の翻訳話が松ちゃんから持ち込まれたのは2005年10月6日だったことがわかった.あまりの分量に半年ほど放置してしまったこともあったので(ちょうど現代新書の執筆とも重なる時期だったので),実質的には1年ほどで翻訳作業を終えたことになる.

—— とにもかくにも,てっぺんまで登ってしまったので,あとは下山あるのみ.図版のキャプションと索引づくりが残された大きな作業だ.膨大な文献リストにはすでに邦訳のある書物も含まれているのでその確認が必要だろう.その進捗によって,翻訳出版の時期が決まるが,とてもうまくいけば8月末の進化学会京都大会に間に合うらしい.9月の昆虫学会神戸大会が妥当な線かな.さらにずれ込んで,10月の行動学会岡山大会で初顔見世なんてことにはなりたくないなあ…….

◇やや寝不足気味なので,午前中はうつらうつらしつつ,都築響一『やせる旅』(2007年3月10日刊行,筑摩書房,ISBN:978-4-480-87778-9→版元サイト宣伝サイト)を読了する.タイのチェンマイ,秘境ブータン,トルコのボスポラス海峡あたりが御利益ありそうですな.巻末の“ご褒美”である台湾の温泉群にはとても惹かれるものがある.

◇中間報告 —— さて,この日録(dagboek)のアクセス解析を始めて10日が経った.この期間のアクセス合計数は「3100回あまり」なので,平均すれば「300回/日」ということになる.日ごとの集計を見ると,平日は「350回/日」で,週末は「250回/日」程度.まあ,予想を大きく外れるものではなかった.むしろ,〈なかのひと〉の動向の方がおもしろいかもしれない.日録と本録(leeswijzer)では明らかなちがいがあるようだ.

◇日中はとても暖かかった.昼下がりに自転車で今田の蕎麦屋〈いちい〉まで.GWらしいいい日和だった.

◇毎日ひとつずつタスクをこなしているのだが,まだいろいろと残っているので気が抜けない.進化学会の企画に関するやりとりをこれから進めていく必要がある.意見を関係者にメールして反応を待つことにする.

◇あとは,残された別件の原稿たち…….GW中にできるだけ進めてキレイにしないことには先がないぞ.>ぼく.

◇本日の総歩数=3831歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+0.8%.


28 april 2007(土) ※ 滑り込むGW初日,一転して降雹と雷雨に

◇午前5時10分起床.晴れ.涼しい朝だ.予報では,春めくのは朝のうちだけで,午後は一転して荒れ模様になるという

◇早朝の必死アブストラクト書き —— だからぁ,ドロナワはダメなんだってば(うう).昨年の Hennig XXV は6月末が締切だったのに,今年の Hennig XXVI は2ヶ月も早まるとは(愚痴る).しかし,大会開催がそれだけ早くなったのだからこればかりはしかたがない.しばしうんうんとうなりつつ,アブストラクト文面をこね上げて,午前9時過ぎに大会サイトから講演のオンライン登録する.滑り込みで無事にアブストラクト登録完了となった締切3時間前.この件はおしまい.コンテンツは共同発表者たちとあとで練ることにしよう.

◇GW本として —— 笹原宏之『国字の位相と展開』(2007年3月31日刊行, 三省堂, ISBN:978-4-385-36263-2→目次版元ページ).そろりそろりと進みだす.明らかにタダモノではない著者の自画像は:

思えば,些細な契機により小学生にして漢和辞典を眺める癖を覚えて音訳表記の抜き出しを始め,漢文を習わない段階で諸橋轍次先生の『大漢和辞典』を購入したのが中学生の時であり,高校に入ると杉本つとむ先生の『異体字研究資料集成』を揃え,それに触発され,種々の資料から国字を抜き出して辞書・索引のようなものを作り始めた.中国を中心に据えて漢字圏全体の漢字及び漢字系派生文字について学ぶことを志し,早稲田大学第一文学部に入ってからは中国文学専修に籍を置く.(p. 881)

と「後記」で描かれている.著者は,生い先いみじう見えし頃から文字通りの“天職(calling)”を自分でつかんでいたということなのだろう.すごいなあ.

ぼく自身も中学の頃から漢字の舊字體に凝っていて,高校に入った頃に書いた文章やノートや答案はすべて舊字體で記していた.その後,西田龍雄の「西夏文字」本の影響をもろに受けて,しばらく西夏文字にのめり込んでいたこともあったが,ひょっとしてそのラインを突き進んでいったとしたら“別の人生”があったのかもしれない.

「序」を寄せている野村雅昭は:

世に,漢字少年や漢字博士と称される人は少なくない.しかし,その人が優れた漢字研究者になったと聞いたことはない.氏は,そのまれなる一人である.(p. vii)

と記している.余人をもって代え難しということか.

◇昼前にあちらこちら買い物に出かけていたら,遠くの空から遠雷が轟いてきた.そうだ,予報では今日の午後は,文字どおり青天霹靂の荒れ模様になると言っていたな.と言う間もなく,空がどんどん暗くなってきて,雷鳴が接近.午後2時前に突然“雹”がばらばらと降り出した.ベランダの柵にカンカンと衝突する.直径は1センチほど.割に大きめ.当たると痛い.30分ほどで“降雹”はおさまったが,今度は“雷雨”の襲来だ.空は一面真っ黒で,兇悪そうな黒猪が西から東に向かって空を走っていく.とても強い風が吹き抜ける.ごうごうと鳴る風だ.まるで台風.午後4時になってようやく空が明るくなってきた.

◇夕方から,翻訳作業の最終段階に突入する.何とか今日中に終わらせるぞー.夜もなお続くぬかるみ…….

◇本日の総歩数=5821歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.5kg/−0.8%.


27 april 2007(金) ※ ゴールデンウィーク直前にじたばたしてみる

◇午前4時10分起床.北の風が吹き,朝焼けが鮮やか.気温8.0度.明け方は冷え込むとの予報だったが,それほどでもない.

◇午前のこまごま —— 「人間犬」志望者への事務連絡./ Hennig XXVI のアブストラクトは今日中に書いて送らないといけない.グッドタイミングでいい情報がやってきたので,それを盛り込むことにする.とても役に立つ系統樹./ 外はとても暖かく,晴れ上がる.10時の気温は13.6度./ 研究室備品の確認依頼.5月15日までに返事./ 東大農学部はタダ働き……(涙)./ 今日の夕方,東京農大・昆研では学生との初顔合わせがあるらしい.小島さんが来てからはさらに大規模な研究室になるとの予想.※とても「1研究室」とは思えないほど./ 木村賞の文書が届く.進化学会の方も早急に公告文を取りまとめる必要あり./ 〈発見!農林水産研究を知る〉.こういう広報活動は重要だと思う.まだコンテンツが少ないみたいだが,今後の展開に期待しましょう.

◇統計学新刊情報ふたつ —— 熊谷悦夫・舟尾暢男『データマイニング1:データ解析の視点から』(2007年4月26日刊行, 九天社, ISBN:978-4-86167-176-0).CD-ROM付き.「1」ということは,「2」以降も続くということか.→版元ページ./ Michael A. McCarthy『Bayesian Methods of Ecology』(2007年4月刊行, Cambridge University Press, ISBN:978-0521615594).WinBUGS を用いたベイズ・モデリング.→版元ページ

◇統計学ではない新刊情報ひとつ —— フレデリック・スタール『お札行脚』(2007年4月刊行, 国書刊行会[知の自由人叢書・第5回配本], ISBN:978-4-336-04716-8).700ページ超.ここのところ“超重量級”の本ばかり手にしているが,そういう「重い本」が立て続けに出版されているのか,はたまた単にワタクシ個人がそういう「重い本」にしか目を向けていないのかは定かではない.

◇なおも立て続けに着弾する重量級ブツ —— 笹原宏之『国字の位相と展開』(2007年3月31日刊行, 三省堂, ISBN:978-4-385-36263-2→目次版元ページ).狙いすましたようにGW前日に届くとは実に絶妙のタイミングじゃないか.“国字まみれ”のこの本の原稿をいったいどうやって「活字」にしたのかと思うとクラクラしてしまう.実際,この本では「漢字コード」のことが論議されているようだ.

◇出張やら何やらでしばらく研究室を空けていた間に,別格超弩級のブツが届いていた:Mac Pro〈Quad Xeon 3.0 GHz〉.セットアップは連休明けですな.ううむ,でかいぞ…….重いぞ…….

◇昼過ぎにいったん帰宅して着替えてから,14:11の TX 快速にて国会議事堂前へ.いつも通り?に警備されている国会議事堂を横目に,第1回〈みどりの式典〉授賞式が開催される憲政記念館へ.尋常ならざる警備体制が敷かれている.さては“ロイヤル”かと思いつつ,受付で進化学会代表者の名札をもらい,午後4時からの式次第を見ると,やっぱりそうだった.長居は無用ですな.今年から始まった「みどりの学術賞」の受賞者のひとりはタバコ葉緑体ゲノムの全塩基配列を決定した杉浦昌弘さん,もうひとりは植物生態学者の中靜透さんだ.1時間ほどの式典には,皇室あり,大臣あり,衆参両院の議長あり,というとてもゴージャスな面々だった(式辞の張本人はいまアメリカで頂上VIP対談に望んでいるのでもちろん代読).午後5時からレセプションが予定されていたのだが,ぼくはごめんなさいさせてもらった.思いがけず東京芸大の弦楽アンサンブルの演奏が聴けたことをよしとしよう.逆コースでつくばに帰り着いたのは午後6時半のこと.日が長くなったな.

◇車中読書 —— 田村義也『のの字ものがたり』(1996年3月25日刊行, 朝日新聞社, ISBN:4-02-256785-6)を最後まで読了する.装幀を通しての著者へ編集者との交遊がいろいろ綴られている.司馬遼太郎がものしたという非売品の「大阪本」とか,坂口謹一郎の「酒」つながりとか.それほど遠くない昔は今よりもはるかに濃密な執筆者-編集者-装幀者のつながりがあったのだと推測される.なお,装幀家から見た「ISBN問題」とは,函やカバージャケットの裏に無粋な「数字」や「バーコード」が傍若無人に印字されることだった.

—— さて,『のの字』のあとは『ゆの字』が待っている.

◇しかし,今はそれどころではない.夜は必死のアブストラクト書き.締切まであと12時間だ.

◇世間的には明日からは「ゴールデン・ウィーク」ですなあ,ほんまよろしおすなあ,と他人事のように言ってみる.※ちょっと性格がワルくなってしまったかしら…….

◇本日の総歩数=10729歩[うち「しっかり歩数」=1023歩/10分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+1.0%.


26 april 2007(木) ※ 今日はえすぱにょーるにエスタディスティカ

◇午前4時半起床.明け方は濃霧だったが,日が昇るとともに急速に晴れて,青空が広がってきた.気温は9.3度.

◇今日は JICA のキューバ稲作コースの統計学講義日だ.午前9時過ぎに高野台のJICA国際センターに到着.JICAは人の出入りと組織の変動が大きいので,年度が変わると中の体制ががらっと変わっていることが多い.今回も年度始めだったので,いろいろと挨拶したりされたり.

午後10時前から講義の開始.例年通り,実験計画法と分散分析の話をする.JICAの講義では,スペイン語の同時通訳が付くので,板書だけ英語で書いて(統計学用語はスペイン語で),話そのものは日本語でできるのがありがたい.しかし,このキューバ・コースは今年限りらしいので,来年からはまた別のコースが設けられることになるのだろう.

午前いっぱいは実験計画の実例を挙げながら,「統計学的なものの考え方」について話をしつつ,平方和の分割から分散分析にいたる計算手順を解説した.

◇昼休み.雲が多めかな.気温はやや高い.近くの〈david pain〉で買ってから JICA に戻る.Kanti V. Mardia & Peter E. Jupp『Directional Statistics』(2000年1月刊行,John Wiley & Sons,ISBN:0-471-95333-4→目次)を読み始めたり.そうか,軸性データθはθ'=2θの変数変換で方向性データに直すことができるのか.現実世界への適用可能領域はとても広そうだし,とっつきはわかりやすいのだが,踏み込むとわらわらと大鬼小鬼が出てきそうなところが,いやはや…….

◇午後1時半から講義再開.完全無作為化法と乱塊法による実例演習をする.もちろん,JICAで研修員たちが実施する実習のデータは適当な統計解析ソフトウェアで行なうのだが(9月に〈R〉の演習が予定されている),今日は電卓でできる範囲で,何をやっているのかを体験してもらう.午後2時過ぎ,いきなりの雷雨.しかし,雨雲はあっという間に通り過ぎていった.午後4時に講義終了.いい研究計画を立てていただきたい.

本日の講義を終えるにあたって,研修生のみなさんからキューバのマラカスのキーホルダーをもらった.振るとちゃんとシャカシャカ音がする.ありがとうございます.次回は9月にまた来ます.アディオス.アスタ・ルエゴ!

◇久しぶりに〈Cafe de しっぽな〉に寄る.Olivier Rieppel (2003), Popper and systematics. Systematic Biology, 52(2): 259-271 (→DOI:10.1080/10635150390192762)の続きを読む.Popperの背理法(modus tollens)に基づく反証の考え方は厳格な演繹を前提とする論議なので,体系学や系統学にそれを適用するのはそもそも不可能だろうと著者は言う.たとえば,Elliott Sober も立場としては Rieppel に近いのだが,Sober の場合は Popper の見解を緩和することによって,体系学・系統学のアブダクションが実現できるだろうとみなしているようだ.一方,Rieppel はそういう緩和策に与するつもりはないらしい.

◇今年度の〈猿橋賞〉は東大の高藪縁さん(53Vn:熱帯気象学専攻)に贈られることになったそうだ(→授賞公告).おめでとうございます.mixi の東大オケ「50あたり」コミュに通知する.

◇夜はまたまた翻訳を少しだけ進める.いたるところに“崩落箇所”や“オーバーハング”があって登攀に手こずる.しかし,ここまで来てあえなく“滑落”するわけにはいかない.

◇本日の総歩数=11361歩[うち「しっかり歩数」=3074歩/29分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/−1.0%.


25 april 2007(水) ※ 霧雨の本郷通りとすずらん通りをうろうろ

◇午前5時10分起床.雨.気温は高め.

◇朝のうち翻訳をさらに進め.9:41発のTX快速で東京へ.東大生協書籍部を一回りするも,目指す本は見つからず.不安がよぎる.

◇午前11時過ぎに〈ルオー〉の2階“独房”へ.またまた翻訳原稿に取り組む.しばらくして,海游舎の本間さんがやってきたので,第20章の残り13ページと,最終章の最初の2ページを手渡す.残るは8ページだ.やっとここまでたどり着いたか.今後の予定について打合せ.松っちゃんは図のキャプションをしっかり翻訳するよーに(いいですね).

◇店を出て,霧雨の中を〈カヤシマ〉ベーカリーに立ち寄ってから東大農学部へ.“隠れ部屋”に直行して,さらに翻訳を数十分.こうなりゃ,早く最後までやってしまわないと.

◇午後1時過ぎから,専攻教員会議.今年度の第1回目なので伝達事項がことのほか多く,いつも以上の 苦痛 修行だ.午後4時前まで延々と会議は続いた.

◇霧雨が降ったり止んだり.東大前駅から神保町に向かう.東京堂書店×,書泉グランデ×,三省堂書店×,岩波ブックセンター×.神保町で玉砕となると,リアル書店の店頭で発見できる見込みはないようだ.帰ってからオンライン注文しよう.品切れという可能性はゼロだろう.あんな電話帳みたいな本が飛ぶように売れるはずがないじゃないか.

通りすがりに情報いくつか:国書刊行会[知の自由人叢書]の新刊が出ていた(これまた電話帳).ロッパ日記,2冊も溜まってます……(やっぱり電話帳).サン・テックスの新刊デッサン集は大判でとても魅力的だ.

—— しかし,目指す獲物は最後まで姿を見せなかった…….

◇未來社の広告誌『未来』2007年4月号に,「読書会」アンケート特集が組まれている.独り読みが基本だと信じているぼくには,「読書会」とか「朗読会」というものそれ自体のイメージが湧いてこない.大学で授業の一環としてよくある「輪読会」みたいなものとはちがうんでしょ? しかし,それ以上にぼくにとって知らない世界は,人文系ではよくあるらしい「合評会」なる活動だ.注目新刊が出ると,関心のある人たちが集まってそれを評価し合う活動らしいのだが,まったく想像できない.その場でみんなが読み合って,「ここがどうこう〜」とか「あそこはいやはや〜」と言い合うのだろうか.それとも,事前に1冊読んできた人びとが群れ集って(ときに著者も加わったりして),丁々発止のディベートをするのだろうか? 本を読んだり評したりするのは独りでと勝手に決めているワタシには無縁の世界だが,それはそれでまた別の愉しみがあるのかもしれない.

同じ号に,大岡淳「知的コミューンとしての予備校」という寄稿が載っている(pp. 12-13).1980年代の「予備校文化」を振り返った一文だ.駿台も河合も当時は“豪傑”がつどう梁山泊だったのだろう.かく言うぼくもその時期に教壇に立っていたことがあるから,ここに書かれていることは実感として理解できる.しかし,浪人生の数が減少している今の時代には,そういう「予備校文化」も変質してしまっているらしい.

◇車中読書 —— Olivier Rieppel (2003), Popper and systematics. Systematic Biology, 52(2): 259-271 (→DOI:10.1080/10635150390192762).この雑誌の Point of View 欄に延々13ページも書かれると,フォントの小ささに目が酷使される(電車は揺れるし).「結局 Popper は体系学とは無縁だったのではないか」という著者の最近の見解が述べられている.強い意味での反証はもちろん系統推定論に当てはめることはできないが.歴史仮説のテストということを考えた時点で,Popper とは袂を分かつしかないだろうというのが著者の基本的信念だ.Deductionとは「What must be the case」を論じること,Inductionとは「What is the case」を論じること,そして Abduction とは「What could be the case」を論じることと著者は言う(p. 261).言い得て妙.

—— ふと思ったのだが,こういう科学哲学に関心のある哲学者は,自分のホームグラウンドの専門誌(BJPSとかPSとか)ではなく,Systematic Biology 誌とか Cladistics 誌に投稿した方が研究者キャリア形成としては合理的ではないのかな.だって,Syst. Biol. って「IF=15」もあるわけだし,Cladistics だって「IF=5」はある(科学哲学畑には同程度のIFをもつジャーナルってないでしょ).実際,どう考えても“哲学”な論文がこれらの生物系ジャーナルに載ることがあるが,冗談ではなくマジでそういう戦略をとっている若手研究者はいるようだ.

◇つくばに帰り着いたのは午後6時半.霧雨がまだ降り続き,路面には水たまりが方々に.明日は JICA の統計学講義が午前から午後までまる一日続く.久しぶりのえすぱにょーる.

◇本日の総歩数=10421歩[うち「しっかり歩数」=1297歩/12分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.2kg/+0.9%.


24 april 2007(火) ※ あれこれ片付けつつ,今度こその再起動中

◇午前4時半起床.曇りときどき霧雨.気温9.6度.ここ数日の空模様は春とは呼べない.

◇朝の目次入力 —— 山本義隆『一六世紀文化革命(2)』(2007年4月16日刊行, みすず書房, ISBN:9784622072874→目次版元ページ).きわめて短縮された“読書”としての目次入力.15分ほどですむ.たとえどんなに長い本でも,目次を読むだけだったら数分ですむ.しかも,キーワードはすべて含まれているのだからこんなに効率のよい速読法はない.論文でいえばアブストラクトと同じ役割だ.

さて,本書の目次には,オランダの“シモン・ステヴィン”の名が頻繁に出てくる.何年も前に読んだ K・ファン・ベルケル(塚原東吾訳)『オランダ科学史』(2000年10月5日刊行, 朝倉書店, ISBN:4-254-10573-8→書評・目次)では,オランダ科学の“偶像”として(いい意味でも悪い意味でも)ステヴィンの名前が掲げられていたことを思い出した.

◇午前10時半.曇り.気温は13.5度.午前いっぱいは進化学会関連の事務メールを方々に連射する.大会関連の企画立案とか,木村賞公告との擦り合わせとか,学会賞選考の段取りとか.気がついたときにばしばしと作業を進めておかないと.昼休みまでメール書きがずれこむ.

◇その後,歩き読みする.曇り.気温15.3度.気温は高くないが,湿度は高め.青山潤『アフリカにょろり旅』(2007年2月10日刊行,講談社,ISBN:978-4-06-213868-0)を第6章まで読み進む.120ページほど.うなぎがにょろにょろと逃げ回っていますな.潤クンも俊クンもがんばれ.

◇本当に久しぶりに,かつて〈bk1〉に投稿した書評群を見渡してみた.2000年〜2005年の5年間に全部で「129件」の書評を投稿していた.多いと言えば多いのだが,最初の何年かは森山和道さんの配下で書評を書いていたので,半分は仕事みたいなものだった(残り半分は趣味).振り返ってみると,あの時期に半定期的に書評を書いていたことが,その後の「自立的書評マ[シ]ン」としての修業時代だったのかもしれない.bk1 には投稿書評に対する読者評価投票システムがあり,イエス/ノーの集計がついてくる.しばらく見ていないうちに,投票数がずいぶん増えているようだ.2005年に自前の書評サイト〈leeswijzer〉をもったのと入れ替わりに,bk1への書評投稿はまったくしなくなった.同じ文章を2カ所に出すのは気が引けたからだ.それでも,過去に bk1 に出した書評はそのまま残っていて,しかも読者の反応が続いているというのはいいものですな.>森山さん,感謝してます.

◇岩波の新刊 —— 時枝誠記『国語学原論(下)』(2007年4月17日刊行,岩波書店[岩波文庫 青N110-2], ISBN:978-4-00-381502-1).前月に出た上巻に続く./ 西尾哲夫『アラビアン・ナイト —— 文明のはざまに生まれた物語』(2007年4月20日刊行, 岩波書店 [新赤版1071], ISBN:978-4-00-431071-6).

◇みすず書房の新刊 —— アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(山崎庸一郎・佐藤久美子訳)『サン=テグジュペリ デッサン集成』(2007年4月25日刊行予定, みすず書房, ISBN:978-4-622-07283-6→版元ページ).「限定2,000部」.ぐぐぐ,食指が…….

◇夕方,再び霧雨が降り出し,しだいに本降りとなる.つくばあたりは例年GWが田植えシーズンだが,これくらい降るのがちょうどいいのかもしれない(それにしても今年の4月は雨が多いな).

◇夜はまたまた翻訳.最終章10ページなのだが,この“オーバーハング”はきついなあ…….「下訳」はないものと考えて,地べたからの再翻訳を地道に続ける.

◇明日は東京で“原稿年貢”を納めた後,東大の専攻教員会議.雨になるという予報.

◇本日の総歩数=11879歩[うち「しっかり歩数」=6064歩/54分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/+0.7%.


23 april 2007(月) ※ 雨あがりの高湿度な週明けに原稿も湿り気味

◇午前4時半起床.曇りときどき小雨.前夜から降り続いていた雨はようやくあがったようだ.気温11.6度.日が射すとやや蒸し暑いかも.

◇着弾する大著 —— 山本義隆『一六世紀文化革命(1, 2)』(2007年4月16日刊行, みすず書房, ISBN:978-4-622-07286-7 / ISBN:978-4-622-07287-4→版元ページ:12).ペジネーションは,上巻が「i-v, 1-390, [1-29]」,下巻が「i-v, 391-737, [1-101]」なので,総頁数は実に「877ページ」ということになる.それにしても,いろいろとせっぱ詰っているときにかぎって,こういう大著が出るというのはとっても罪作り…….

◇備忘メモ —— 〈EvoViz〉:進化生物学に関わる“視覚化”に特化した wiki.もちろん,系統樹や系統ネットワークの視覚化も守備範囲に入っているようだ.テーマ的にはとても興味深いのだが,できたばかりで「工事中」の項目が多い.wiki だからどんどん書いていけばいい?

◇もう一つ備忘メモ —— 〈日本ピクトさん学会〉:ピクトグラム(絵文字)の中でもとくに“ヒト”に特化した学会.この学会の会長さんは,つい最近こんな本を出版した:内海慶一『ピクトさんの本』(2007年4月20日刊行, ビー・エヌ・エヌ新社, ISBN:978-4-86100-504-6→版元紹介ページ版元特設ページ).

この「ピクトさん」といい,先日読んだとり・みき『街角のオジギビト』(2007年1月25日刊行,筑摩書房,ISBN:9784480816542→目次書評)に出てくる「オジギビト」といい,ジャンルとしては“路上観察な方々”の手になるコレクション集成なのだろう.しかし,日本の社会の中ではいずれも「アイソグラム」として定着していることを考えると,「絵言葉あそび」という側面をあわせもつテーマなのだろうと思う.

◇昼前になって再び雲がかかってきた.正午の気温は13.8度.風があって,体感的にはやや涼しい.歩き読みは万城目学『鹿男あをによし』(2007年4月10日刊行, 幻冬舎, ISBN:978-4-344-01314-8).結局,最後まで読了した.前作:万城目学『鴨川ホルモー』(2006年4月20日刊行, 産業編集センター, ISBN:978-4-916199-82-0)に登場する〈楠木ふみ〉の路線に沿って,一見“見映えのしない女の子”が大活躍するという共通点がある.〈堀田イト〉ちゃん,よく頑張ったねー.かっこいいねえ.拍手また拍手.

◇午後のこまごま —— 南保くんのDELL機の HDD が今朝から「がりがり」と不穏な音を立てて,ほぼ死んだ気配だ.早く後継マシンを買わないとダメみたい./ 原稿プレッシャーは感じてます感じてます./ 〈なかのひと〉を〈leeswijzer〉にも添わせることにした.

◇夕方,曇り空.北の風が吹いてきて涼しい.

◇夜のこまごま —— ちょいと翻訳(最終章)./ 駒場の殿からの御下命あり./ 季節はずれの“根雪”となりつつある原稿に喝を入れないとどーしようもない.ごめんなさいごめんなさい>と三方向に謝る.

◇途中経過 —— 〈leeswijzer〉の「なかのひと」は,予想通り出版業界の訪問を盛んにカウントしつつある.しかし,組織・団体の中から見に来る訪問者よりは,どちらかといえば「なかのひと」にカウントされない個人としてのアクセスの方が多い気がする.まだ24時間も経っていないので,あいまいなことしか言えないが,これはこれでおもしろい傾向が見えそうだ.

◇夜遅く,山本義隆『一六世紀文化革命(1)』(2007年4月16日刊行, みすず書房, ISBN:978-4-622-07286-7→目次版元ページ)の目次項目を入力しつつ考える.こういう専門書のたぐいは,その中身を知らないと購入する動機と意欲が高まらない.そのためのもっとも手っ取り早い方法は「詳細目次」を開示することだと個人的には思う.目次を見ればどんな本かはだいたいわかる.逆に,目次情報がない本を買うのは賭けに等しい.この点で小説の類とはちがいがある.

海外の大手出版社だと(とくに大学出版局),確実に詳細目次の情報を含むコンパニオン・サイトが開設されている.一方,日本の出版社の場合は,単に書誌情報が掲載されているだけという場合が多く,簡略目次が公開されていれば御の字だ.

みすず書房の上記新刊も,章のタイトルだけは版元ページに開示されてはいるが,節のタイトルは実物を手にしないかぎり知ることができない.これだけのページ数,この手の科学史的な大著を売ろうという意欲が出版社側にあるのであれば,もっと中身を開示して,商売っ気を出した方がいいように思う.

◇本日の総歩数=11556歩[うち「しっかり歩数」=5416歩/49分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/−0.3%.


22 april 2007(日) ※ 雨に煙る萬福寺,瞬間ワープして魚鐸と化す

◇午前5時起床.晴れのち曇り.気温高し.今日は私用で京都に出向くので,その出発準備に追われる.

◇午前6時57分の TX 快速にかろうじて間に合う.東京発 8:13 の「のぞみ11号」で京都へ.予報通り,ところどころで雨が降り出している.

◇車中読書 —— 田村義也『のの字ものがたり』(1996年3月25日刊行, 朝日新聞社, ISBN:4-02-256785-6).第4章まで読み進む.100ページあまり.表紙の「字」をひとつひとつ刻む苦労が綴られている.著者が実際に装幀した本の書影がたくさん載っているが,どれを見ても“表紙買い”したくなるものばかりで困ってしまう.著者が築地書館の創業者・土井庄一郎と大学時代からの知り合いとは知らなかった.土井庄一郎『めぐりあいし人びと:築地書館の50年』(2006年3月26日刊行,築地書館,ISBN:4-8067-1321-X→書評)にもきっと言及があるだろう(気づかなかったかも).著者・編集者・装幀者の協同作業として「本」ができ上がること.そして,ISBNをめぐる出版界の騒動,プリントゴッコの意外な顔などなど.

◇京都着は 10:33.タクシーで宇治の実家に立ち寄る.これが本務[のはず]なのだが,半時間ほどですんでしまう.諸方面から凹まされたり,言い諭されたり,まあいろいろと(さながら“魚鐸”のごとくコンコン叩かれる……).

その後,またまたタクシーで〈萬福寺〉門前の〈白雲庵〉にて普茶料理など.禅寺の料理ということなので,“肉”はもちろん出ないのだが,味付けが“和”ではないな.これまたひとつの cuisine chinoise かも.

◇小雨の中を萬福寺前からタクシーに乗る.ぼくが卒業した東宇治中学校の真向かいにできた〈たま木亭〉でパンを買い,そのままJR京都駅に直行.14:46発ののぞみ24号で東京へ.途中の車窓は,雨模様だったり,曇ったり,はたまた晴れたりとせわしないことこの上ない.東京に着いたときは曇っていた.秋葉原からTXで直帰.

—— 日帰りの京都往復は消耗するなあ.一日中蒸し暑かったし.

◇夜,また翻訳を少しばかり.第20章はこれでオシマイ.残すは終章10ページのみ! —— 夜になっても気温の高い外では,蛙と青松虫の鳴き声.

◇本日の総歩数=6167歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.9kg/−1.5%.


21 april 2007(土) ※ 苦役のウィークエンドはやはり翻訳一筋

◇午前5時半起床.晴れときどき曇り.気温高め.

◇朝から日射しがさんさんと射し込み,南風が吹き抜ける.暖かいというよりは暑いくらい.

◇しかし,今日はひたすら翻訳に勤しまねばならない.午前いっぱいちくちくと進める.午後も同じ.夜も同じ. なんという最節約的な記述か.

—— というわけで,日が変わる頃,長丁場の第20章は1ページを残すのみとなった.明日は長距離移動しないといけないので,このへんでおしまいにしよう.

◇本日の総歩数=3404歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+0.7%.


20 april 2007(金) ※ 天候回復,暖かな一般公開日は翻訳日和

◇午前4時20分起床.曇り.気温6.0度.ここのところぐずついていた天気もやっと平年並みに戻りそうだ.朝のうちは南風が吹いて,晴れたり曇ったり.気温が高くなってきたが,湿度が低いので快適.今日は,農環研を含む農林団地の研究所の一般公開日.天気がよくなったので人出があるにちがいない.

◇“プチ電話帳” —— 飯田隆(責任編集)『哲学の歴史・第11巻[20世紀II:科学の世紀と哲学]:論理・数学・言語』(2007年4月10日刊行, 中央公論新社, ISBN:978-4-12-403528-5→版元ページ).中央公論新社の創業120周年記念出版として企画された叢書〈哲学の歴史〉(全12巻+別巻1→全集サイト)の第1回配本.新刊情報を知ったときにはその質量感を想像できなかったのだが,サイズこそ選書並みに小さいものの,「750ページ」という“プチ電話帳”並みのボリュームを手にしてしばし絶句しつつ実感.

—— 本体価格3,200円はとても割安だと思う.これから毎月1冊ずつ,こういう“プチ電話帳”が積み上がっていくのだろうか?

※「責任編集」ということばはときどき目にするが,“責任”と明記していない本は「無責任編集」になるのだろうか? というか,何に対して“責任”をもつのか?

◇今日は「原稿納税日」なので,午前いっぱいは翻訳を続ける.英文翻訳はある程度は慣れているつもりだったのだが,この本の英文はとてもきついものがある.どう考えても文法的にヘンな箇所が散見されるし,複文で修飾節がだらだら続く文体も目立つ.何なんでしょ,これって.それでも正午までぎりぎり粘って,午後1時前に TX つくば駅にて海游舎・本間さんに14ページ分を手渡す.この調子なら次回までには第20章はケリがつくだろう.次は4月25日(水),11:00に本郷〈ルオー〉にて.

◇午後になって,雲が多くなってきたが,気温は逆に上昇中.20度に達しただろうか.

◇〈ステキ〉な〈なかのひと〉の24時間経過報告 —— 昨日から24時間が経過した午後3時に,この dagboek へのアクセス集計を調べてみた.〈ステキ〉のカウンターは「385」アクセスを示している.なるほど,それくらい読まれているわけね.アクセス時刻別の集計を見ると,午前9時・午後2時・午後10時に頻度の“山”がある.読者たちの生活リズムが垣間見える.〈なかのひと〉でドメイン名とその場所を確認する↓


ほほー,日本全国いろいろなところから来られているわけですね.ぜんぜん知らんかった.誰が読んでいるかがだいたい推測できるドメインもあるが,まったくわからないのもある:「日本テレビ放送網」って? 「高輝度光科学研究センター」って? もちろん,ドメインが特定できたからといって,「農林水産省農林水産技術会議」じゃあ,それが霞ヶ関かつくばかそれとも羊ヶ丘か桃山かはたまた石垣島かはつきとめられないな.

◇午後のこまごま —— 別方面(日本統計学会)から新たな「原稿プレッシャー」が郵送されてきた.ううむ./ この週末はトツジョとして遠距離ピストン移動かも./ Steve Farris から事務メール.Hennig XXVI のアブストラクト締切が早くなって「4月27日」だと.マジっすか……(汗)./ 形態測定データの MANOVA に関する質問.交互作用効果の検定をどうするかという内容.「manova()」であっさりやってしまいましょう.

◇午後5時から,遅めの〈形態測定学講義〉の輪読30回目.第12章「Disparity and variation」の続き(pp. 296-302).「Disparity」を“無色化”した上で,operationalize しようとする試み.形態サンプル集団(species 群で構成される)があるとき,全体の平均形状から各 speceis の平均形状へのプロクラステス距離(あるいは部分歪みスコア)をもって「disparity」と再定義する.一方,各 species の群内でその平均形状から各サンプルへの距離は「variation」とみなされる.これでおしまい.こんなに“脱色”するくらいだったら,主義主張のうずまく「disparity」などということばを最初からなくしてしまった方がはるかに健康的だと思う.群間変動 vs. 群内変動で十分だ.

◇またまた翻訳の夜は更けゆく.※他の「原稿圧」は[すでに]閾値に近づきつつある…….

◇本日の総歩数=4574歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+0.5%.


19 april 2007(木) ※ マノン・レスコー,あるいは破局への道……

◇午前4時20分起床.小雨のち曇り.気温5.7度.季節はずれ.寒過ぎ.

◇書評公開 —— 和田敦彦『書物の日米関係:リテラシー史に向けて』(2007年2月28日刊行,新曜社,ISBN:978-4-7885-1036-4→目次)の書評を日が変わってすぐに〈leeswijzer〉にまとめて公開.久しぶりの長い書評になった.

◇そろそろ「大団円」が近づきつつあるよーで —— Scott Camazine et al. 『Self-Organization in Biological Systems』(2001年4月1日刊行,Princeton University Press,ISBN:0691012113 [hbk] / ISBN:0691116245 [pbk]→目次)|スコット・カマジン他(松本忠夫・三中信宏訳)『生物システムにおける自己組織化』(2007年刊行予定,海游舎).全21章の翻訳のうち,やっと第20章の半ばを過ぎて,頂上が見えてきた.しかし,登頂間近だからといってうかうかしていられない.膨大な数の図版とそのキャプションを含むゲラのチェックが下山路で待ち構えている.しかし,今は何はともあれ登頂することだけを考えよう.秋の昆虫学会大会には間に合いますか.できれば,その前の進化学会大会に滑り込めればいいのですが,ムリかな? 

これまで登攀してきた道を振り返ってみると,粘菌のパターン形成をはじめとして,魚群の構造化や,ハチ・アリなどの社会性昆虫における自己組織化現象(巣作りや集団形成など)を中心に,「自己組織化(self-organization)」を手がかりにして自然現象がどこまで説明できるかを論じた大著であることを再認識する.理論的な部分は最初の百ページほどで,残る四百ページは個別事例のコンパイルしている.同じ自己組織化の本でも,Stuart Kauffman(1993)の“理論電話帳”とは趣きがだいぶちがっている.

—— 筆頭著者のホームページに本書のコンパニオン・サイトが置かれていることに今になって気づいた.

◇朝から北東の風が強く,気温は上がらず.午前10時を過ぎても12.1度しかない.しだいに雲が切れてはきたのだが.

◇ほんのメモ —— John Wakely『Coalescent Theory : An Introduction』(2007年9月刊行予定,Roberts & Company Publishers, ISBN:0-9747077-5-9).コアレセント理論の教科書.集団遺伝学は,個体群レベルの系統ネットワークやコアレセントの研究分野で生き続けるのだろう.遺伝子頻度から遺伝子系譜への推移.→版元サイト.※ISBN-13はもう決まっているのでしょうね?/ 黒羽清隆著(池ヶ谷真仁編)『黒羽清隆 日本史料購読 日米開戦・破局への道:『木戸幸一日記』(一九四〇年秋)を読む』(2002年10月25日刊行,明石書店,ISBN:4-7503-1641-5).どーもありがとさんね.〈破局への道〉というオソロシイことばが身に沁みたりして(文脈ちがうだろっ).

◇「フロリゲン」発見!(asahi.comScience 解説 20 April 2007) —— ついに見つかったんですかあ.予備校で生物を教えていた頃は,「花成ホルモンはあると仮定されていても,まだ物質としては見つかっていなくて……」と説明していたのだが.

◇正午の気温13.1度.曇り.歩き読みは:万城目学『鹿男あをによし』(2007年4月10日刊行, 幻冬舎, ISBN:978-4-344-01314-8)を80ページほど.どんどん  に変身していくわけですね.ほほー.それにしても,全400ページの本の章構成が,第1章(6 pp.)・第2章(54 pp.)・第3章(376 pp.)・第4章(15 pp.)なんですけど,このページ配分の偏りはいったい…….「神無月」は書くことが極度にたくさんあったということでしょうか.

◇午後のこまごま —— 統計研修の日程調整(早々と):今年の霜月の統計研修は「11月5日(月)〜11月16日(金)」に実施する線で調整してもらうことになった./ 出張届けの精算書類3件を提出する.

◇「カウンター」と「アクセス解析」 —— この日録を書き始めてからもうすぐ4年になろうとしています(→日録書庫).書き始めた当初は「アクセス・カウンター」を付けようとしたこともあったのですが,農水省計算センターはセキュリティの点で自前のcgiプログラムを許す仕様ではなかったこともあり,そのままずっと放置していました.しかし,今ではcgiをわざわざ実行させなくても,html内でリンクを張れば,無料のアクセス・カウンターのサービスがいくつもあることを,今日になってふと気づき,ちょっと調べてみたらあるわあるわ.

 あまり複雑な分析をするつもりはないので,今回は〈suteki-tool.com〉のアクセス・カウンターとアクセス・ログのふたつのサービス,そして〈なかのひと.jp〉のアクセス解析サービスを利用させてもらうことにしました(いずれも無料で無広告).本日午後3時から,日録の末尾でひっそりとカウンターを動かし始めます.いったいどういう読者がどこから来られているのかを見るのは,愉しみでもあり不安でもあり.

◇北寄りの冷たい風が吹く夕方.春じゃないな.夜はまた翻訳.明日は「納税日」.

◇本日の総歩数=9721歩[うち「しっかり歩数」=6671歩/60分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.4%.


18 april 2007(水) ※ 仕事も天気も晴れ時々曇り所により春雨

◇午前4時20分起床.雨上がりの曇り空.気温6.1度で薄ら寒い.春らしくない夜明け前.地面はまだ濡れている.

◇早朝の翻訳タイム,しばし.※“賽の河原”状態…….どこまで続く泥濘ぞ.

◇「美術情報学特論」用の教材として —— カスパー・シュワーベ,石黒敦彦『ジオメトリック・アート:幾何学の宇宙教室』(2006年5月30日刊行, 工作舎[神戸芸術工科大学レクチャーシリーズ], ISBN:4-87502-392-8→版元ページ).うっかり買い忘れていたことに気づいた.高次元立体に関する工作品がいろいろ./ ブルーノ・ムナーリ(菅野有美訳)『ファンタジア』(2006年5月18日刊行, みすず書房, ISBN:4-622-07209-2→版元ページ).最後の方に出てくる「かたちの計測」についての文章は morphometrics そのもの.というか,幾何学的形態測定学の本をめくれば,まったく同じ「図」が載っている.視点が収斂しているのかもしれない.

◇朝のうち,一瞬だけ青空が見えたものの,再び曇天に復帰する.予報では関東地方の今日の最高気温は10度そこそこまでしか上がらないらしい.2月並み.

◇午前のこまごま —— JICAへの事務連絡./ 首都大学東京の兼業申請./ ML作業を小一時間.

◇どんよりと曇った昼休みは気温が10.3度しかない.季節が逆戻り.歩き読み:万城目学『鹿男あをによし』(2007年4月10日刊行, 幻冬舎, ISBN:978-4-344-01314-8)を100ページほど.出だしは漱石のかの名作を髣髴とさせる雰囲気があったのだが,おお,こういう展開になっていくのですか!

◇備忘メモ —— 和田敦彦『書物の日米関係:リテラシー史に向けて』(2007年2月28日刊行,新曜社,ISBN:978-4-7885-1036-4→目次)の第8章「連携する日本語図書館 —— 蔵書どうしの関係史」で,近年の図書館の共有化と図書データベースの電子化についての著者の見解をピン留め:

むろん図書情報の共有化,そしてネットワークで結ばれた大学間での図書や電子データの迅速なやりとりがもたらす恩恵ははかりしれない.それは疑いがないことだが,それによって書物やそれを所蔵することの意味自体が変わりつつあることも意識する必要があるだろう.書物はもはや特定の場所にあるという意味を薄れさせ,特定の場所をもたないデータのような存在へと移行してゆくのである.
 ただし,ここで私が一貫して問題にしてきたのは,こうしたときに書物から剥がれおちてゆくもの,なのである.書物が特定の場所をもたない情報のような存在となるときに見えなくなるもの,個々の人びとの手を経て,固有の歴史をくぐり抜けてきたその書物が,その書物であることの意味なのである.そうした書物の固有性,その書物がそこにある理由や経緯のうちには,本書で明らかにしてきたように,まさにそれらを取り巻いてきた時間が,人びとが,あるいは国家がその歴史的な役割とともに刻みこまれているのである.(p. 301)

続く終章「書物と場所、読者を問うこと —— はじまりに向けての結語」でも,まったく同じ問題意識が語られる:

なぜ本書でリテラシー史を問題にしてきたのか,なぜ書物の内容や表現ばかりでなく,その書物がどこから来て,どこに,どのように置かれ,どう扱われてきたのか,ということが重要なのか.本がどこで,どうやって手に入るのか,読めるようになったのか,ということを問うことがなぜ必要なのか.それはこうした問題領域こそが,私たちの知の地平を形づくっているからであり,この地平のうえに学問領域や思考の制度がつくりあげられているからである.そして,その地平自体を批判的に,歴史的にとらえるプロセスのうちには,私たちをとりまく情報環境のかかえる問題を解きほぐし,考えてゆくための端緒が数多くはらまれている.(p. 309)

◇先日の生物地理学会シンポジウムへのフロアからの感想2件 —— 「日本生物地理学会参加日誌2007」(4月14日付:shorebird−進化心理学中心の書評など)/ 「系統樹リテラシー@立教大」(4月8日付:べぇのうぃき)

—— 確かに,演者のトークどうしを結びつけるはずの「総合討論」の時間が取れなかったのは悔やまれるなあ.

◇いったんは凍結された“翻訳企画”を解凍できるかどうか —— 出版社側の意向でボツになったわけで,翻訳の意義は今でも薄れてはいないと思う.しかし,ぼくも含めて当時の関係者がそれぞれ多忙になってきたことを考えると(すでに他の仕事が最密パッキングされている),この企画を解凍して再起動をかけ当時の体制のままで進めるというのはムリじゃないかと思う.時期を逸したということか.

◇「方向統計学」に関する質問が箱崎から舞い込む —— 確かに,この分野を専攻する日本人研究者はほとんどいないみたいですね.昨年の応用統計学会シンポジウムの特別講演で,慶應義塾大学の清水邦夫さんの講演「方向統計学 (Directional Statistics) の最近の話題」がぼくの目に留まったもっとも新しいレビューです.この講演のpptファイルは上記サイトからダウンロードできます.

◇午後になって,雨が降り出してきた.引き蘢りの翻訳仕事.夕方5時には7.3度に.なんだこの寒さは.夜もなお翻訳は続く.雨はいよいよ本降りになってきたようだ.気温は低いまま推移している.

◇もうひとつ備忘メモ —— 四方田犬彦『月島物語ふたたび』(2007年1月20日刊行,工作舎,ISBN:978-4-87502-399-9→目次書評)の書評(の一部分)が工作舎のページに転載されていた.気づくのが遅れてしまった.ありがとうございます.

◇本日の総歩数=9886歩[うち「しっかり歩数」=6797歩/60分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/−0.2%.


17 april 2007(火) ※ やや肌寒いが蟲は飛んだり跳ねたりする

◇午前4時半起床.小雨そぼ降る夜明け前.気温6.8度.肌寒い.北から南へ雨雲が流れていく.後に曇り.

◇志賀昆虫普及社・志賀夘助氏逝去(享年104歳) —— 昨夜,東京農大・昆虫学研究室OBから入った情報によると,志賀昆虫普及社・創業者である志賀夘助氏が4月15日に逝去されたとのこと.享年104歳.故人が93歳のときに書いた自叙伝が,101歳のときに文庫に入っている:志賀夘助『日本一の昆虫屋:志賀昆虫普及社と歩んで,百一歳』(2004年7月10日刊行, 文春文庫PLUS, ISBN:4167660776→書評).なお,文庫になる前のハードカバー版は1996年に出ている:志賀夘助『日本一の昆虫屋:わたしの九十三年』(1996年5月刊行,ネスコ,ISBN:4-89036-921-X[絶版]).まる1世紀を生き抜いたというのは,それだけで頭が下がります.

[追記]昨夜のうちにオンライン新聞報道されていました: 「志賀昆虫普及社相談役の志賀夘助氏死去」(asahi.com:2007年04月16日19時43分) .

◇「蟻学(myrmecology)」のカルチュラル・スタディー —— 蟲は“カル・スタ”も呼びよせる.カルチュラル・スタディーにもいろいろあるのだろうけれど,新刊で出たこの本はちょっと読んでみてもいいかな:Charlotte Sleigh『Six Legs Better : A Cultural History of Myrmecology』(2007年刊行, Johns Hopkins University Press[Animals, History, Culture], ISBN:978-0-8018-8445-0 [hbk]→目次版元ページ).人間が「蟻」を通して何を読み取ろうとしてきたかを文化史の立場から論じている本.著者サイトの経歴を見ると,明らかに“カルチュラル・スタディー”系の人のようだが,同じく「蟻」を扱う前著:Charlotte Sleigh『Ant』(2003年10月31日刊行, Reaktion Books, ISBN:1861891903)があることから考えて,昆虫学の造詣が深い研究者であると推測される.

Johns Hopkins から創刊されはじめたこの叢書〈Animals, History, Culture〉の Series Editor は Harriet Ritvo なので(彼女には『階級としての動物:ヴィクトリア時代の英国人と動物たち』という著作がある→書評),今後,生物学と文化史とを絡めたおもしろい本が出版されると期待される.ただし,ハードカバー版は値段がやや高いので(『Six Legs Better』の場合,公費購入だと取次店通しで約1万円),個人購入者はペーパーバック版(出るのか?)が出るのを待った方がいいかもしれない.

◇献本感謝 —— 日高敏隆(監修)/日本ICIPE協会(編)『アフリカ昆虫学への招待』(2007年3月30日刊行, 京都大学学術出版会, ISBN:978-4-87698-716-0).蟲はもちろんさらなる蟲を呼びよせる.どうもありがとうございました.アフリカの昆虫誌と研究史.日本ICIPE協会て何?と思ったら,なんだ国見さんが会長じゃない.ご無沙汰しています.

◇午前9時を過ぎて,しだいに晴れてきた.このまま天気は回復する気配だか,予報だと一両日は曇り時々雨らしい.関東地方の気圧配置はとても不安定.10:30の気温は11.3度.

◇午前のこまごま —— 先月「急逝」してしまった居室の電話機をやっと更新できることになった.新製品ほど親機も子機もさらにコンパクトに,取扱説明書はさらに厚く…….いずれにせよ,日常業務への差し障りはなくなった./

◇正午にはさらに気温が下がって 10.8度に.ときどき日が射すことはあっても,基調はどんよりと曇ったまま肌寒い —— 和田敦彦『書物の日米関係:リテラシー史に向けて』(2007年2月28日刊行,新曜社,ISBN:978-4-7885-1036-4→目次)の最後の2章を読み終える.第8章「連携する日本語図書館 —— 蔵書どうしの関係史」は戦中から戦後にかけての図書館どうしの協力体制の変遷について.結びの終章「書物と場所、読者を問うこと —— はじまりに向けての結語」は,“タイプ”としての本ではなく,リネージを担う“トークン”としての本に著者の関心があることを再び確認している.

“トークン”としての本(=蔵書)は時空的に限定されているために,内的形質(所蔵者・所蔵館・移動特性など)だけでなく外的形質(地理的位置,すなわち「場所」)をも併せ持つ.著者は,内的形質を捨象してしまう電子化された図書データベースや外的形質を消し去ってしまう遠隔書庫ではすくいきれない“トークン”としての本(蔵書)に視点を置き続けることをここで宣言している.

◇午後のこまごま —— そーか,iPod で Google Calendar が読めるのか!(知らんかった)/ 出張届提出1件(4月25日東大)./ 契約職員の支出予算項目届./ 非常勤講師関連書類の提出2件(首都大学東京と北海道大学).

◇夕方から再び雨になる.夜はシメイ・ビールなど.

◇翻訳ナイト,1ページ進む.外はしとしと.

◇本日の総歩数=8552歩[うち「しっかり歩数」=6620歩/57分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/−0.4%.


16 april 2007(月) ※ 丑三つ時の戦闘三拍子,燃え尽きる夕闇

◇午前2時過ぎに飛び起きる.寝不足だが,もうあとがないのだ.残された時間は「11時間」.研究所に直行する.風が強くて気温9.8度の曇り空.星も見えず.

◇午前3時を過ぎて,ニールセンの“戦闘三拍子”に鼓舞されつつ,今日のRP設計検討会の資料をひねり出す.アップテンポの三拍子を二拍ずつ切り分けるという独特のリズムが〈不滅〉と〈第5交響曲〉のそれぞれ最終楽章にあるのだが,ティンパニがときどき「オチたり」あるいは「飛び込んだり」している(CDによっていろいろある).けっしてライヴ・レコーディングではないのにそういうことがある.総譜を見ればすぐわかるのさ(って総譜見ながら仕事してるんかいっ).

先につくるべき書類は1時間あまりでできたので,午前5時前に関係先にメールで送り,続いてプレゼン用スライドにとりかかる.しかし作業未了のまま早朝にいったん帰宅する.

◇朝,気分転換に?翻訳を1ページ進める.1時間ほどかかってしまう.※こんなもんがリフレッシュになるんかねぇ.(終わた……) 午前10時前,曇り時々小雨.気温11.6度.昨日に比べてずいぶん低い.午前いっぱい,検討会のスライド作成とハンドアウト印刷に追われ,正午前にやっと作業完了.あと1時間しかない滑り込みセーフだった.

◇13:15からRP設計検討会の始まり.休憩をはさんで16:15まで延々と.消耗戦ともいう.磨り減る.……しか〜し,検討会では健闘したものの,判定負けかしら(涙).もう終わったんだし,まあいいでしょう.あとは年度末の“領収書”が切れればよしとしよう.外は小雨が降り続いている.

◇昨夜からの高度ストレスの反動はこわいぞぉ —— 万城目学『鹿男あをによし』(2007年4月10日刊行, 幻冬舎, ISBN:978-4-344-01314-8).第2作目にして早くも「幻冬舎デビュー」とはねえ.“平安京・ホルモー”の次は“平城京・鹿男”だ.なんちゅうストーリーか.真っ白に燃え尽きた夕闇にはポルコも真っ青の鹿男だ.夜のお愉しみっ.

◇地理的変異としての「国字」 —— これは言語系統地理学(linguistic phylogeography)の格好の素材だろう:asahi.com 記事〈漢字にも「方言」:早大教授が100以上の地域文字発見〉(2007年4月16日6時6分配信).この記事で取材されている笹原宏之さんの本は以前読んで,書評を書いたことがある:笹原宏之『日本の漢字』(2006年1月20日刊行, 岩波書店[岩波新書(新赤版)991], ISBN:4004309913→書評版元ページ).

この本のあとがきに書かれていた予告本が先月刊行され,それが上記の記事のソースになっている:笹原宏之『国字の位相と展開』(2007年3月31日刊行, 三省堂, ISBN:978-4-385-36263-2→目次版元ページ).900ページを越える大著だという.機会があればぜひ手にしてみたいものだ.そして,機会は積極的につくるものだ.

それにしても,中学生の頃から『諸橋大漢和』を読み耽ったという著者はタダモノではない.スゴすぎ.まねしたいな.

◇明日からはまた原稿書きの日々に復帰する予定.夜になってまた雨足が強まってきた.

◇ああ,ダメダメ.シズカに着実に燃え尽き中 —— だいぶ前の外山滋比古『思考の整理学』に「三上・三中」という一節がある.いいアイデアが思い浮かぶのは「睡眠・入浴・歩行」の「三中」なのだそうだ.そーかそーか,いい言及に出会えた.

◇本日の総歩数=3913歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−0.6%.


15 april 2007(日) ※ 爽やかな陽気に追い立てられて仕事と休息

◇午前5時にいったん起きたものの,二度寝してしまう.次に目覚めたのは午前7時半.醜態…….晴れ.北寄りの風が通り抜ける.

◇「系譜学史」関連書2冊(Kilian Heck) —— 昨日から読んでいる:Sigrid Weigel, Ohad Parnes, Ulrike Vedder, and Stefen Willer (Hrsg.)『Generation : Zur Genealogie des Konzepts — Konzepte von Genealogie』(2005年刊行,Wilhelm Fink Verlag[Trajekte : Eine Reihe des Zentrums für Literaturforschung Berlin],ISBN:3-7705-4082-4→目次)の第2部「Konzepte von Genealogie : Bilder, Metapheren, Narrative」には,中世から近世にかけてのヨーロッパ社会における「系譜」の描かれ方と読まれ方に関するおもしろそうな論考が入っている.

 ここには,古文書の manuscript stemma の復元に関するラハマン法を考察した Carlo Ginzburg の寄稿もあるのだが,それは後回しにして,冒頭の Kilian Keck の論文「Die Weltenrettung als Familiensache. Formen und Bilder von Verwandtschaft in Richard Wagners Der Ring des Nibelungen」(pp. 173-190)は,ワーグナーの〈指輪〉の登場人物たちを系譜学的に分析するという興味深いテーマを論じている.

 少し調べてみると,Heck には系譜学史に関する著作が何冊かあることがわかった:Kilian Heck『Genealogie als Monument und Argument : Der Beitrag dynastischer Wappen zur politischen Raumbildung der Neuzeit』(2002年刊行, Deutscher Kunstverlag[Kunstwissenschaftliche Studien: Band 98], ISBN:3422063382→版元ページ)/ Kilian Heck und Bernhard Jahn (Hrsg.)『Genealogie als Denkform in Mittelalter und Früher Neuzeit』(2000年刊行, Max Niemeyer Verlag[Studien und Texte zur Sozialgeschichte der Literatur: Band 80], ISBN:3-484-35080-6).「Max Niemeyer」というのは,最近 Walter de Gruyter 社のインプリントになったんですね.平均的価格の高さはきっちり継承されているなあ.

—— 調べれば調べるほど,“闇の底”から湧き上がるように,いろいろな資料や著者や情報が思わぬところから現れてくる.ものを知らないということはこういうことだ.

◇午後のこまごま —— 東大から「駒場ガイダンス」に関する連絡あり(ポスター案も添付).5月18日(金) 18:00〜19:30 に,駒場11号館にて専攻ガイダンスが開催される.農学部〈生物・環境工学専攻〉への進学に関心のある駒場生のみなさんはぜひお越し下さい.進振りが迫る2年生はもちろん,まだ心理的余裕のある1年生も歓迎します.

◇風が吹いて爽やかな昼下がり,つくば中心部を自転車で走り回る.雲が多くなってきた.久しぶりの〈Brotzeit〉で Früchtebrot を一塊(水曜に加えて火曜も休日になったんですね).いろいろと買い物したり,引き取ったり.〈竹園珈琲〉にてスーパー・マンデリンを一杯.ケニアの「ルイス・グラシア」とグァテマラの「ラグリマ・アンティグア」の豆を買う.帰りに,〈翁屋〉にて季節の上生菓子をば.ゆるゆると日が暮れていく.

◇昼にくつろいでしまうと,当然のことながらそのしわ寄せは夜にやってくる.明日のRP設計検討会の資料をまだぜんぜんつくっていないので,よろよろとパソコンに向かう.

—— ということで,午後10時過ぎにはもう就寝だ.明日未明が勝負だ! ※またかいな…….

◇本日の総歩数=5479歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.7%.


14 april 2007(土) ※ つくばの蛙も思わず鳴きだすほぼ夏日

◇昨夜の夜更かしが効いたようで,午前6時半までゆるゆると寝過ごす.案の定,夜中に雨が降ったようで地面が濡れている.しかし,夜が明けて青空が広がり,気温はすでに高い.

◇早朝のこまごま —— 出版業界の動向も短期で変わるようで,以前, 一度は断られた企画がまだ息を吹き返しそうな気配だ. ここにきて,「生物学哲学」に出版社が再び目を向けてくれるか.しかし,もう他の仕事が“充填”されているので,スキ間はぜんぜんないんですけどね.

◇午前いっぱいは翻訳に勤しむ.昼前までに5ページほど進む.放っておくと他の時間は別件で埋まってしまうので,やれる時間にやっておかないと.

◇昼過ぎに所用でお出かけ.日射し以前に空気が暖か過ぎる.夏日かも.乗り継いで都会周縁部の田園地帯へ.午後4時まで.帰宅したのは午後5時半.

◇車内読書 —— Sigrid Weigel, Ohad Parnes, Ulrike Vedder, and Stefen Willer (Hrsg.)『Generation : Zur Genealogie des Konzepts — Konzepte von Genealogie』(2005年刊行,Wilhelm Fink Verlag[Trajekte : Eine Reihe des Zentrums für Literaturforschung Berlin],ISBN:3-7705-4082-4→目次)に所収されている:Helga Meise「Er-zählen ohne Ich. Genealogie und Kalenderführung in der höfischen Gesellschaft des 17. Jahrhunderts」(pp. 191-213)を読む.近世ヨーロッパの貴族社会における「系譜図式表現」の歴史についての論考.系譜のモデル化としての「系統樹」と「血縁表」についての一節:

Ich möchte mich auf einen Aspekt dieses Fragekomplexes konzentrieren, auf das Verhältnis zwischen dem Bezug auf die Genealogie einerseits und der Fokussierung, der Darstellung des Selbst anderseits. Im autobiographischen Text des Schreibenden artikuliert sich eben der Proband, der in Stammbäumen und Ahnentafeln, den beiden verbreitsten Repräsentationsmodellen der zeitgenössischen Genealogie, erscheint.(S. 191)

「思考形態(Denkform)」としての系譜がこの論文の中心テーマになる.

◇本日の総歩数=7125歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/0.0%.


13 april 2007(金) ※ 原稿納税日の憂鬱とトンネルの向こう側

◇午前4時20分起床.晴れのち曇り.気温8.6度.

◇朝から原稿年貢のひねり出しに余念がない.時間もない.カリバチの巣形成がスティグマジーで説明できるという第19章をやっと終え(3 pp.),いよいよ最後の山場の第20章「カリバチの順位制」に到達した.最後のスパートを,と行きたいところだが,またまた地べたからの訳し直しなので,1ページ1時間という低速運行が続く.正午までにさらに3ページをこなす.

 午後1時に TX つくば駅改札にて,海游舎・本間さんに年貢を手渡す.次回は来週金曜日に同じ場所で,さらにその次は本郷にて.GW前には何とかケリをつけたいと思う.

◇午前の督促(汗) —— 今月初めの締切から「マイナス日数」がだいぶ増えてしまった原稿の有形無形のプレッシャーあり.これもそろそろ限界か…….

◇年越しでやっと届いたテンプルトン —— Alan R. Templeton『Population Genetics and Microevolutionary Theory』(2006年9月刊行,Wiley-Liss,ISBN:0-471-40951-9 [hbk]→目次版元ページ).系統ネットワークいっぱい.700ページ超で,おなかもいっぱい.

◇午後は晴れて南風が入る.気温は19.6度.こまごま続く —— 教育研究実習生の届出書式.書くのは南保くんね./ 〈みどりの式典〉の招待状.内閣府から./ メーリングリスト作業を少し./ 月曜のRP設計会議までに用意する資料は「様式3」と「プレゼン用スライド」.当日朝までに提出すること.

◇午後4時から1時間ほど,ほぼ3ヶ月ぶりに〈形態測定学講義〉を再開する.第29回目.今日から第12章「Disparity and variation」に入る(pp. 293-296)を終える.形態的多様性を,分類群内の「variation」と分類群間の「disparity」というふたつの尺度によって形態測定学的に分析するための手法が解説される.S. J. Gould が1989年に「disparity」を Bauplan 間の差異を表す概念として提唱して以来,この概念に対する批判が多く見られた.著者は,それに対して,Mike Foote による再定式化を踏まえて,「disparity / variation」を再登場させようとしているようだ.

 参考文献:Mike Foote 1997. The evolution of morphological diversity. Annual Review of Ecology, Evolution, and Systematics, 28 : 129-152. [DOI:10.1146/annurev.ecolsys.28.1.129]

◇夕方になって,さらにつよい南風が吹いてきた.予報通り,夜は雨になるのか.翻訳夜なべ仕事は午前1時まで(3ページほど進む).外は轟々と風が吹き荒れている.

◇本日の総歩数=3835歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.2kg/−0.4%.


12 april 2007(木) ※ 駈けては転び,歩いては躓く春の一日

◇午前4時40分起床.前夜の雨も上がり,霞んだ春らしい朝.気温7.3度.今日は暖かくなるという.

◇午前のこまごま —— 進化学会関連.大会公式企画の原案づくりは執行部で行なうことになった.メンツを集めて作業を開始する.進化関連学会の世界ネットワークづくりの件./ メーリングリストの火山灰を吹き払う./ “監訳”という役回りのあいまいさが災いのもと.人によって理解の仕方がちがっている.“監修”ということばは“編集”よりも強く「著作の監督業」という意味ですでに定着したことばだが,“監訳”が何を意味するかは実はまだ定着していない(“監修”の類推でいえば「翻訳の監督業」ということになるのだろうけど).“監訳者”のみなさん,その翻訳書ができあがるまでに実際にどういう作業をしました?(シンプルな疑問として)

◇いただいた本 —— R. Frankham, J. D. Ballou and D. A. Briscoe著(西田睦監訳/高橋洋・山崎裕治・渡辺勝敏訳)『保全遺伝学入門』(2007年3月31日刊行, 文一総合出版, ISBN:978-4-8299-1067-2→版元ページ).750ページを越える大著.このボリュームで「7,200円」は安いと言えるだろう.この本のように,訳者と監訳者の役回りが明記されているのはたいへんわかりやすいし,それぞれの貢献が読者にはすぐに理解できる.翻訳出版おめでとうございます.※さあ,次は『Phylogeography』だ!>西田さん.

◇暖かな昼休みは気温15度.歩き読み —— 和田敦彦『書物の日米関係:リテラシー史に向けて』(2007年2月28日刊行,新曜社,ISBN:978-4-7885-1036-4→目次)の第6章「日本の書物をどう扱うか —— 分類と棚をめぐる葛藤」と第7章「書物の鎧 —— 国防予算と日本の書物」.60ページあまり.すでに読み終わった章と合わせて備忘メモをば.

第4章「日本占領と図書購入 —— 占領地の書物エージェント」は,第二次大戦直後の混乱期にアメリカに買われていった本たちの経緯について考察する.敗戦直後という状況を考えれば,当然,戦勝国と占領国との力関係が厳然とあるわけだが,著者はアメリカが一方的に日本の図書を収奪したわけではないと言う:

だが,実際に占領下の日本における[米国]各大学の図書収集活動を具体的に追っていったときに見えてくるのは,そうした一方的な収奪という見方ではとらえきれない,むしろ双方向的で,活発な図書の交換や取引,駆引の実態なのである.この時期,書物は,相手を統治するための武器として,好意を示す贈り物として ,そしてむろん生き延びるための財として,日米両国の間で,さまざまな人や組織の間を活発に行き交う.そしてまたその動きは,後述するように通常の商取引が困難であっただけに,多様なルートを生み出しながら展開する.(pp. 142-3)

敗戦後の混乱期に,日本の書籍に関する的確な情報を得て,それを獲得する交渉ができたのはいくつかの有力なルートだった.とくに,スタンフォード大学のフーバー図書館はわざわざ東京にオフィスを置き,書籍取引のエージェントを利用して積極的に図書収集に当たったという.同様に,ミシガン大学やカリフォルニア大学(バー クレー)も日本での図書収集に資金と熱意を注いだそうだ.

そのような日本とアメリカとの間で活躍したエージェントの中でも,東京のチャールズ・E・タトルと京都のP・D・パーキンスが抜きん出ていたそうだ.タトルの会社は現在も存続し(「チャールズ・イー・タトル出版」),その一方で翻訳出版エージェンシーとして今も活動する「Tuttle - Mori Agency」の母体ともなった.

第5章「占領軍と資料収集 —— 接収活動と資料のその後」は,戦勝国との力関係がさらに前面に出る「図書接収」を論じる.著者の立場はこうなる:

ここで私が関心を向けているのはむしろ,これらの[接収]書籍が,その後たどった運命,つまりどのような人や組織を巻き込み,何を引き起こすこととなったのか,といったプロセスの方である.結果的に目の前にある蔵書にのみ目を向けるのではなく,また,接収した時点の究明にのみ力をそそぐのでもなく,それらの書物があること,残ることによってひきおこされてゆく多様な問題との関係の網の目のなかでこれらの書物をとらえてゆきたい.それがリテラリー史からのアプローチと言える.(p. 184)

図書接収を推進したのはワシントン文書センター(のちに議会図書館に移管)のような大きな機関がほとんどだったが,メリーランド大学の「プランゲ・コレクション」のような別のルートもあった.

第6章「日本の書物をどう扱うか —— 分類と棚をめぐる葛藤」は,アメリカにおける「和書分類」をめぐる長年にわたる論議を追う.とてもおもしろい.図書分類とは何か−著者は言う:

重要なのは,分類された瞬間に,その書物自体が,それを利用する読み手に対して付加的な意味を帯びるということだ.[……]つまり分類は,それ自体,分類する人びとの価値,判断基準,場合によっては偏見をも投影しているのである.そしてそれが書物自体にも影響を与える.(p. 214)

この章では,ハーバード大学で用いられてきた中国語・日本語図書の分類方式である「イェンチン分類方式」をめぐる論争を紹介している.イェール大学にいた朝河貫一によるイェンチン方式への反論は,図書分類というものの基本的性格を示していると著者は考えている(pp. 232-233).しかし,さらに後には,中国語図書とか日本語図書という地域別の分類そのものを排して,もっと普遍的な図書分類基準を立てようという気運が高まってきたそうだ(pp. 245 ff.).

第7章「書物の鎧 —— 国防予算と日本の書物」は,アメリカでの軍事研究としての「地域研究」の旗のもとに形成された日本語蔵書についての章だ.

—— せっかくたどり着いたのに,今日の〈david pain〉は早々と“売切御免”だった.午後1時にすべてのパンがなくなってしまうとは…….

◇午後のこまごま —— 農大・昆研の新歓合宿は,伊豆・湯ヶ島温泉〈白雲楼〉に決定.6月2日(土)〜3日(日).全館貸切になれば何をやってもええゆうことですか?(汗)./ 来週月曜の設計検討会のプレゼン用スライドを早くつくらないといけない./ 大学院生の今年度の受け入れに関する届出書類を至急出せとのお達し.※地獄への道は事務書類が敷き詰められている.[シャレにならん]/ あ,明日の「納税原稿」もまだ…….※地獄への道は年貢原稿が敷…….[もぉええって]/ 農大・新歓合宿への参加をメールで返信した.

◇夜,明日の“納税”用の翻訳作業は続く —— いかにして削ぎ落とした豚ロース塊の「脂身」を美味く喰うかとか(イベリコ豚がいつでも喰えるわけではないし),根井正利教授も堪能したという上海の超高級「鯉の髭の料理」をめぐるミクシィ雑談はまあ気分転換ということでお許しあれ.※喰いもん談義にリミットなし.

◇本日の総歩数=10454歩[うち「しっかり歩数」=6971歩/62分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+0.4%.


11 april 2007(水) ※ 復活日はカール・ニールセンとともに

◇午前4時起床.晴れ.気温8.9度.

◇春の大著 —— 山本義隆『一六世紀文化革命(1, 2)』(2007年4月16日刊行予定, みすず書房, ISBN:9784622072867 / ISBN:9784622072874→版元アナウンス).上巻が420ページ,下巻が430ページというから,合計850ページにもなる大きな本.前著:山本義隆『磁力と重力の発見(1, 2, 3)』(2003年5月22日刊行, みすず書房, ISBN:4-622-08031-1 / ISBN:4-622-08032-X / ISBN:4-622-08033-8→目次書評1書評2書評3)に続く科学史の著作と位置づけられているそうだ.

◇朝のこまごま —— 進化学会オルグはなお続く.補足ターゲットに次々と勧誘メールを送りつけたり./ 午前9時半に早くも気温は15.3度に.今日は暖かいようだ./ 午前10時半から正午まで領域内会議.業績評価システム改訂のこととか,4月20日の一般公開日の段取りとか./ 東京農大から辞令と学生便覧が届く.

◇なんだかんだで午前中が消し飛んで,やや磨り減った昼休みに届いた:『Carl Nielsen : Complete Symphonies』(2006年6月27日刊行, DACAPO, 2110403-05).カール・ニールセンの交響曲全集(DVD3枚組).やっぱり,すごいなあ.Michael Schønwandt 指揮/デンマーク国立交響楽団.3枚目のDVDには,Karl Aage Rasmussen による記録フィルム〈The Light and the Darkness : On Carl Nielsen's Life and Music〉という1時間に及ぶ映画が入っている.歩き読みを忘れて,昼休みの1時間をじいっと見続けてしまった.国内で買うと7,000円ほどするようだが,海外取り寄せだとたった US$21 という廉価で入手できた.

もちろん聴くだけでもすでに十分にいいのですが,視覚刺激がさらに付け加わると感動も倍加するというわけでして.つい,オーデンセの博物館〈Carl Nielsen Museet〉だの生家〈Carl Nielsens Barndomshjem〉を覗いてみたり.生家の写真は,ずいぶん前に,増田正『北欧のカントリーサイド:さまざまなパブや旅籠,民家や町並み』(1993年5月刊行, 集英社, ISBN:4-08-532045-9)に載っているのを見て,たいへん感銘を受けた記憶がある.

◇午後のこまごま —— 先日来,メーリングリストの管理画面で頻繁に悩まされていた「システムエラー」問題の顛末.計算センターから「解決しました」とのメールに,半信半疑で(失礼)管理画面にしてみたところ,みごとにすべての問題点が解消されていた.もう計算センターに足を向けては寝られません.ありがたやありがたや./ 東大の専攻同窓会誌への研究室紹介記事を書く./ 〈academia semplice〉などと戯れ言を.

◇午後3時過ぎにいったん帰宅.ネクタイを締めて(く),PCプロジェクタを抱え,雨がぽつぽつと降り始めた中を,午後4時にオークラフロンティアホテルつくばのロビーに向かう.午後4時半に上海の復旦大学生命科学学院の Jin Li 教授と会う.昨年9月に上海で初めてお会いして以来のことだ.2時間ほどミーティングをしてから,ホテル最上階のレストラン〈シエルブルー〉にて会食(おお).午後9時過ぎに雨の中をTXつくば駅までお送りする.

◇本日の総歩数=5432歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.2kg/−1.1%.


10 april 2007(火) ※ 日常復帰・再起動しないとなあの火曜日

◇午前4時半起床.晴れ.地表は霧.気温3.6度.桜が散り舞う

◇春の愉しみたち —— 最相葉月『星新一:一〇〇一話をつくった人』(2007年3月30日刊行, 新潮社, ISBN:978-4-10-459802-1).570ページもある新刊の長編伝記.日本語でもこれくらい充実した伝記が出て,それを読む読者層がいるというのは心強い./ 須賀敦子『須賀敦子全集・第8巻』(2007年4月20日刊行, 河出書房新社[河出文庫す4-9], ISBN:978-4-309-42058-5).本巻の内容は,書簡/年譜/ノート・未定槁「聖心の使徒」所収エッセイほか.→版元ページ

◇午前のこまごま —— 非常勤職員の勤務届を出したものの,書く必要はなかったそうだ……./ 生物地理シンポジウムのお礼メールを講演者に出す./ 東京農大の新歓合宿は6月2日(土)〜3日(日)に伊豆で./ 配布物をさばいては返事したり,捨てたり./ 南保くんとこれからの輪読の予定について調整.

◇午前10時半の気温.晴れて暖かく15.3度.生物地理シンポジウムを聴いた学生さんから質問メールあり.「手話」や「身振り」の系譜について調べたいとのこと.たとえば,とり・みき『街角のオジギビト』(2007年1月25日刊行,筑摩書房,ISBN:9784480816542→目次書評)では,まさに「オジギ」という「身振り」に基づいて系譜を考察したわけだし,動物行動学の歴史を振り返っても Konrad Lorenz の時代から「動物行動」そのものを形質とする系統関係の推論という研究テーマは現在まで連綿と続いている.手話を「言語系統学的」な観点から見た研究があるかどうかはまったく知らない.しかし,以前から速記文字の進展に関する著作もあるし,ごく最近ではハングル文字の歴史を論じた単行本が出たりしているので,手話のような“人造文字”の系譜をたどるという研究がひょっとしたらどこかでなされていても不思議はないのではないか —— という返事を書いた.

◇「方向統計学」(directional statistics)文献メモ —— Kanti V. Mardia & Peter E. Jupp 『Directional Statistics』 (2000年1月刊行, John Wiley & Sons, ISBN:0-471-95333-4→目次).現物がやっと届いた.30年前に出て以来,いまだに類書がほとんどない初版 Kanti V. Mardia『Statistics of Directional Data』(1972年刊行,Academic Press,ISBN:0-12-471150-2→目次)の改訂版.2次元の円形統計学(circular statistics)や3次元の球面統計学(spherical statistics)に関するパラメトリック理論,最後に形状理論(shape theory)への適用が一章を割いて解説されているのが目につく.

ついでに,関連書の備忘メモを.N. I. Fisher 『Statistical Analysis of Circular Data 』 (1996年1月16日刊行, Cambridge University Press, ISBN:0521568900 [pbk]→版元ページ).2次元の方向統計学の教科書./ S. Rao Jammalamadaka and Ashis SenGupta 『Topics in Circular Statistics』(2001年5月刊行, World Scientific, ISBN:981-02-3778-2→版元ページ).これも2次元の方向統計学の本.著者の一人は方向統計解析のソフトウェアを公開している:Ashis SenGupta〈DDSTAP : Directional Data Statistical Analysis Package 1.1〉./ N. I. Fisher, T. Lewis and B. J. J. Embleton 『Statistical Analysis of Spherical Data 』(2003年12月22日刊行, Cambridge University Press, ISBN:0521456991 [pbk]→版元ページ).これは3次元の方向統計学の教科書.

◇暖かく晴れた昼休みは17.3度.歩き読み:和田敦彦『書物の日米関係:リテラシー史に向けて』(2007年2月28日刊行,新曜社,ISBN:978-4-7885-1036-4→目次)の第4章「日本占領と図書購入 —— 占領地の書物エージェント」と第5章「占領軍と資料収集 —— 接収活動と資料のその後」を読了.50ページほど.第二次世界大戦後の混乱した中で,日本の本がどのようにしてアメリカに渡っていったかを,購入・交換(第4章)と接収(第5章)という大きなふたつのルートに分けて考察している.

◇午後のこまごま —— 領域会議は明日4月11日(水)の10:30から./ 同日夕方4時に,ホテルオークラつくばに集結.PCプロジェクタ持参のこと./ 東大・紫工会の名簿作成./ Hennig XXVI 参加に伴う調査./ 情報科学芸術大学院大学の「美術情報学特論」に関わる事務連絡./ メーリングリスト作業をするも,またまた「システムエラー」になる.神の声が聞こえ,“リモート・コントロール”モードですべしとのこと.ははー.

◇アタッカで続く,夕方のこまごま(進化学会関連) —— 評議員会に連絡し,京都大会(8月31日〜9月2日)の企画に関わる提案をする.公開企画(公開シンポジウム・夏の学校など)に関するガイドライン設定に関する提案.学界執行部でガイドラインを設定して,大会実行委員会に渡そうということだ.うまくいけば今日中にゴーということになる.午後7時までオルグしたり,根回ししたり.しかし,さらに働くべしとの指令が飛ぶ飛ぶ.

◇今日は,やや復帰モードだが,こまごましすぎて,大物とど撃ちがおろそかになっている.

◇本日の総歩数=10543歩[うち「しっかり歩数」=6987歩/61分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+2.3%.


9 april 2007(月) ※ 桜吹雪と雷雨と虹の休日はのの字とゆの字

◇午前5時20分起床.今日は振替休日なのでゆっくり寝過ごす.前夜の雨が残っていたが,朝のうちにいったん晴れて,また薄曇りになる.気温は低め.

◇手話同時通訳の妙技 —— 昨日の生物地理学会シンポジウムでは,事前に依頼があって聴覚障碍のある聴衆のための「手話同時通訳」を頼んだ.事前にとくに打ち合わせはなく,当日の会場で初めて二人の通訳がつくことがわかった.なぜ二人か−−要するにインターバル(15分ごと)で交代しながら手話通訳する.演者はいつも通り話をしてよいとのことだっただが,それだけ神経を使う仕事なのだろう.議会速記者が時間交代制をとっているのと同じ理由と思われる.他の学会大会ではこういう手話通訳が入ることはほとんどないだろう.もちろん,ぼく自身にとっても初めての体験だった.専門語や業界語が飛び交う学会講演の手話同時通訳はさぞやたいへんだろうと推し量るしかない.

◇研究所に行ったら,石神井書林から本が届いていた:田村義也『のの字ものがたり』(1996年3月25日刊行, 朝日新聞社, ISBN:4-02-256785-6).ほんの10年前の本なのに,すでに絶版で,古書店にもほとんど出ていないようだ.新刊の田村義也『ゆの字ものがたり』(2007年3月10日刊行,新宿書房, ISBN:978-4-88008-365-0→版元ページ)から遡って,この本にたどりついた.“ゆの字”がどちらかといえばエッセイ集であるのに対し,“のの字”は装幀そのものに傾斜した本.横長(函は縦長だが)の本書ももちろん著者自らの装幀だ.本文中の載っている書影をぱらぱらとブラウズしてみると,僕の私蔵本の中にはこの著者の装幀した本がたくさんあるようだ.

◇午前中ばたばたしていた残響が残り,学界の荷物を抱えて研究所に向かったのは午後2時を過ぎていた.それまで晴れたり曇ったりしていた日和見な空が,にわかにかき曇り,雷鳴が鳴り響き,にわか雨がざばーっと.農林団地の並木は桜吹雪が風雨に煽られていた.気温10.8度.小一時間で雷雲は遠のき,みごとな虹がかかって,ワタクシは数ヶ月ぶりに髪を切った.髪を切られながら,『石神井書林古書目録71号』(2007年2月発行)を読む.金尾文淵堂とかボン書店の本が出回っているのかと感心したり,稲垣足穂の総銅製(函も表紙も本文頁も)の『機甲本イカルス』(1974年刊行,呪物研究所[限定13部])という稀覯書にのけぞったり,妖しげなエログロ発禁本を眺めたり.

◇田村義也と築地書館「昆虫本」の装幀 —— “のの字”と“ゆの字”にリストアップされている装幀本一覧を見ると,「昆虫本」が何冊も入っていることに気づくるそのほとんどは築地書館とサイエンティスト社であることがわかる.

築地書館の田村義也装幀本でぼくの書架に入っているのは,今井彰『蝶の民俗学』(1978年7月10日刊行,築地書館,ISBNなし)と今井彰『鎌倉蝶』(1983年7月15日刊行,築地書館,ISBNなし)の民族蝶学の2冊だ(1992年に同じ築地書館から三部作の最後を飾る『地獄蝶・極楽蝶』が出版されたが,うっかり買い損ねてしまった).

また,蝶学者・磐瀬太郎の遺著論文集:磐瀬太郎『日本蝶命名小史:磐瀬太郎集I』(1984年4月10日刊行,築地書館,ISBNなし)と磐瀬太郎『アマチュアの蝶学:磐瀬太郎集II』(1984年4月10日刊行,築地書館,ISBNなし)も田村義也の手になる装幀だ.

いずれの本も,「装丁で最も肝要なのは著者名と書名がはっきり見えることである」(“のの字”の「まえがき」より)という基本姿勢そのままに,意匠としての蝶が大きくあしらわれていて,とてもよく目立つ.

—— 田村義也は,こういう昆虫本だけでなく,安岡章太郎・本田勝一・藤田紘一郎らの数多くの本の装幀も手がけているのだが,その基本姿勢がいつも貫かれていることは一目でわかる.

◇“のの字”と“ゆの字”で日が暮れて,振替休日は蜜の味.※社会復帰できるかしらん.

◇本日の総歩数=6670歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/−1.1%.


8 april 2007(日) ※ 一転とても静かなセントポールズ(二日目)

◇午前4時起床.雨上がりは8.0度もある.ばたばたと研究所に直行し,夜明け前のプレゼン準備.午前6時半にあたふたと帰宅する.ドロナワのスライドづくりと機材準備は続く.

◇9:10 TX 快速で池袋へ.車中読書:青山潤『アフリカにょろり旅』(2007年2月10日刊行,講談社,ISBN:978-4-06-213868-0).ツカモト教授,とってもヘンです.

◇10時半の一般講演開始10分前に会場にすべりこむ.一般講演の間もなお“内職”は続くのだ.延々と.お昼前にやっとトーク準備完了.

◇備忘メモ —— 微細形態(mmスケール)の2D / 3D座標データ取得装置.キーエンス社製.科博分館に最新機が入ったそうだ.

◇昨日とは一転し,今日は学生の姿もほとんどなく,静かなキャンパスだ.写生する年配者の一団,そしてベンチで寝続ける学生が1名.大学近くの古書店〈夏目書房〉にてゲットした本:ディヴィッド・カスバートソン(永富久美訳)『書物の世界の三十三年間の冒険』(1991年11月20日刊行, 図書出版社[ビブリオフィル叢書], ISBN:4-8099-0501-2).19世紀末の大英図書館ライブラリアンの回想録.この叢書は古書店で見つけるたびに買うようにしている.

◇昼休みに登場するシンポ講演者のみなみなさま.挨拶もそこそこに,持参のパソコンの接続をテストしてもらう.講演者4人中3人が Macintosh というのは「おじさん度」の高さの証しかも.

◇午後1時から,大会シンポジウム〈進化と系譜:ツリー,ネットワーク,視覚言語リテラシー〉の始まり.系統樹が系譜情報に関する「視覚化」のツールであり,それゆえ「図形言語」としてのリテラシーを描き手と読み手に要求するだろうというのが,そもそもの開催趣旨だった.「絵」「リテラシー」「系譜」というキーワードたちを各演者がどのように“三題噺”に仕立ててくれるのかという点に,オーガナイザーとしての関心はあった.

 リテラシーの程度が人間の生存率(寿命)に直結しているという現実のもとで,「リテラシー」ということばの定義そのものがいまなお論議され続けていると中村さんは言う.人間社会での識字(literacy)と識数(?)(numeracy)の意味について.空間的理解のためのマップは有効だが,数字と数学は敬遠されるという話.

 細馬さんはもちろん絵葉書の話.イギリスの郵便制度の変遷と,絵葉書の流行について(1900年以降の).もともとは封書が基本で,1830年代に電報というシステムが成立した.葉書という郵便制度が制定されたのはもっと遅く1869年になってからのことだった.絵と文章とが渾然一体となってひとつの視覚言語をつくっているということだ.それだけいっそう「読み」が複雑になる.絵葉書の送信者と受信者だけでなく脇からそっと“読む”第三者もいるわけだし.

 田中さんは,1990年代の「iconic turn」についての講演.Goethe に影響された形態学的思考の系譜が20世紀以降にあった(C. G. Jung, C. Ginzburg, O. Spengler ら).Aby Warburg の作品〈ムネモシュネ〉についての視覚的イメージの系譜とネットワーク分析.George Kubler の系譜的思考に関する論文を北浦千尋氏が書いているという.〈ムネモシュネ〉についての系譜分析は inferential というよりは,むしろ heuristic と言うべきなのだろう.

—— 午後3時40分にシンポジウムは終了.その後,ミニ・シンポジウムが延々と午後7時過ぎまで続いた.シンポジウム講演者4人で,メトロポリタン・プラザ7階の〈ブラッスリー LION〉にて黒ビールを呑む.kaeru-san を囲んでひたすら音楽談義が続く.

◇午後9時半にお開きとなり,つくばに直帰.午後11時に到着.地上に上がったらまたまた雨が降っていた.

◇明日は振替休日だ.

◇本日の総歩数=9598歩[うち「しっかり歩数」=1017歩/10分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/+0.7%.


7 april 2007(土) ※ セントポールズは若者たちで華やぐ(初日)

◇午前5時半起床.晴れ.生物地理学会大会の初日.

◇午前8時28分の TX 快速に乗る.池袋に着いたのは午前9時半.会場になっている立教大学は,今日は新入生のオリエンテーションとか,サークル勧誘に当てられているらしく,大勢の学生が行き交う.晴れて暖かく華やいで賑やかな春のキャンパス.午前10時から太刀川記念館の会議室にて評議員会.今年はとくに重大な議題がなく,1時間ほどであっさり終了.その後,セントポールズ・ハウスにてランチ.

 午後1時半から年次大会の一般講演の始まり.しかし,ワタクシは明日のシンポジウムのスライドをつくらなければならないので,あからさまに「内職」し続ける(ごめん).いくつか画像が足りないのだが,それは明日未明に用意するとして,大部分が完成したのは午後5時過ぎのことだった.※学会期間中は“他の仕事”がとてもよくはかどったりする.

◇最後に総会をささっとすませて,午後6時半から例年通り大学近くの〈養老之瀧〉で懇親会.午後9時過ぎに店の外に出たら路面が濡れていた.そのまま帰路に.つくばに帰り着いたのは午後10時半のこと.こちらはまだ雨が降り続いていた.

◇明日も朝から学会大会があり,午後はオーガナイズしたシンポジウムがある.スライドがまだできていないので,めっちゃ早起きしないといけませんなあ.つらいわあ.

◇本日の総歩数=7797歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/−1.6%.


6 april 2007(金) ※ 出張と私用と年貢の金曜日に淫酒する

◇午前3時半起床.月夜.気温5.2度.研究所に直行する.講演準備.合間にメーリングリストの埃払い.

◇未明のよそ見は「インパクト・ファクター(IF)」がらみ —— ぼくは参加できなかったが,Thomson Scientific のセミナー〈学術ジャーナルを計る:インパクトファクターの意義とジャーナル評価〉(4月5日)に参加された機器会械さんのレポート(「竹橋周辺で道に迷う」)を読む.10年ほど前に,IFの歴史とその意義を論じた窪田輝蔵『科学を計る:ガーフィールドとインパクト・ファクター』(1996年10月25日刊行, インターメディカル, ISBN:4-900828-02-5)を読んだことを思い出した.指数の「正しい使い方」は造った側が知っているわけだから,ユーザーはそれを無視するわけにはいかないだろう.誤解してはいけないし,曲解するのはもっといけない.

◇献本感謝 —— やっと出た Philip S. Corbet著(椿宜高・生方秀紀・上田哲行・東和敬監訳)『トンボ博物学:行動と生態の多様性』(2007年4月5日刊行, 海游舎, ISBN:978-4-905930-34-1→版元ページ|紹介ページ)がつくばにも着弾した.とても重いっす.

◇午前10時48分発の TX 区間快速で出発.柏を経由して,東京へ.東大の進学生ガイダンスには間に合わなかったので,〈ルオー〉の2階独房で翻訳苦役に服する.午後4時半に海游舎・本間さんが到着.午後5時過ぎまで粘って7ページ分を手渡す.次回は4月13日(金),午後1時にTXつくば駅改札にて.

◇午後5時半から,東大・安田講堂下の生協中央食堂にて,農学部進学生の歓迎パーティ.場所は十分に広かったのだが,どんどん人が増えてきて,身動きにも窮する.人口密度高過ぎ.午後8時でおしまい.その後,農学部7号館の「619号室魔窟」にて,60度の“どなん”などなどさらに呑み続ける.午後10時にへろへろと根津の坂を転がりおりて,帰路.午後11時半につくばに帰り着く.

◇講演準備は明日,大会会場にて,ということで.即寝てしまう.

◇本日の総歩数=15143歩[うち「しっかり歩数」=5810歩/59分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+0.4%.


5 april 2007(木) ※ からっと晴れても,内側は土砂降り……と

◇午前4時半起床.昨夜の雨は上がり,晴れている.地表付近は霧がかかる.気温,なんとマイナス1.0度!とは.※4月なのに氷点下になるなよっ.

◇原稿のプレッシャーはほぼ極限…….

◇朝のこまごま —— 年度始めのメーリングリスト「火山灰」除去作業.久しぶりに“システムエラー”が出なかったので,まとめて処理する./ 東大の新任教員の歓迎昼食会が4月11日にあるのだが,午後に密議があるので,当然パス.※大学ごと(というか専攻ごと)の文化や慣習がいろいろあることを知る./ 東大理学部の人類学談話会は5月11日(金)午後4時半から.形態測定学と系統推定論について.演題と要旨を早々と送ってしまった.

◇太っ腹なミシガン大学 —— 今度は『The Blue Book』のフリー配布の情報:F. J. Rohlf and F. L. Bookstein (eds.)『Proceedings of the Michigan Morphometrics Workshop』(1990年刊行, The University of Michigan Museum of Zoology [Special Publication No. 2], Ann Arbor, ISBN:0-9628499-0-1 [pbk]→目次).幾何学的形態測定学の業界で『The Blue Book』として知られている1990年に出版されたミシガン・ワークショップ論文集.約400ページの本として出版されたが,今回このURLからpdfとして無料で配布されてことになった(26.8MB もある巨大ファイルだ).形態データの取得法や解析方法のいくつかはすでに時代遅れだが,幾何学的形態測定学の考え方や実例は今でも賞味期限内だ.

◇今日はからっと晴れている.午前9時半の気温は8.4度.正午には12度台になる.風もなくはらはらと散る桜花.〈david pain〉でフィナンシェとカヌレなどを買い,歩き読む昼休み:和田敦彦『書物の日米関係:リテラシー史に向けて』(2007年2月28日刊行,新曜社,ISBN:978-4-7885-1036-4→目次)の第3章「戦時期日本語教育と日本研究」.40ページほど.第二次世界大戦中のアメリカでの日本語教育を蔵書史の観点から論じる.大戦中の日本が「鬼畜米英の敵性語」とみなして英語を徹底的に排除していたちょうどその頃,アメリカ本土では逆に〈日本語・虎の穴〉ともいえるスパルタ叩き込みで選りすぐりの人材に日本語教育を施していたそうだ.たとえば,コロラド大学の海軍日本語学校では,週6日,1日14時間という強行課程で1年にわたって日本語を生徒に詰め込んだという.もちろん校内では英語禁止で日本語漬けの日々を受講生は過ごしたらしい(彼らは試験前の「金曜の夜の地獄」とか,タテ書きに酔う「日本頭」に悩んだそうだ).しかも,この日本語学校の校歌の歌詞は,「進めつわもの いざ進め/星条の旗 先立てり/民主の民の 弥栄え/理想の国を 建つるまで/勉め励めよ 国のため/世界に光 及ぶまで」(p. 110)と日本語で書かれていて(6/8拍子のアップテンポ),受講生たちは日本の他の軍歌とともに放歌したという.両国のあまりのちがいにくらくらしてしまう.

◇午後のこまごま —— 〈Hennig XXVI〉 の early registration が今日までなので登録完了.ついでに,ホテル(Royal Sonesta Hotel New Orleans)の予約も完了.あとは講演要旨のみ(5月1日締切).会期は6月28日から7月2日まで.ニューオーリンズ./東大の連携大学院辞令をもらう./ 北大に振込口座の通知(未)./ 首都大に非常勤出講に関わる事務書類(未)./ 岐阜の大垣市にある情報科学芸術大学院大学から「美術情報学特論」の講義依頼あり.形態測定学についてのレクチャーをとのこと.1日ですむというので引き受けることにする.6月15日(金)の午後を希望します.

◇まいったなあ.原稿…….(冷汗)

◇しかし,今夜は今週末に迫っている生物地理学会シンポジウムの講演準備をしないといけない.明日は,いくつか用件を抱えて走り回るので,残された時間はあまりない.未明起きは必定.寝よう.

◇本日の総歩数=11019歩[うち「しっかり歩数」=6404歩/56分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.4%.


4 april 2007(水) ※ ワタシもぬるりつるりと逃れたいのだが……

◇午前4時半起床.曇りときどき小雨.東の空は晴れているのだが,まだぐずついている.気温4.4度.農林団地の桜は少し散り始めているが,気温が低いのでまだまだもつでしょう.

◇朝のこまごま —— 4月11日(水)午後4時からつくば某所で密議決定./ 4月14日(土)の黄昏時に都内某所で某農業生物資源研理事長と呑む予定は急用が入ったため延期との連絡あり.

◇午前10時の気温7.4度.雲多し.雑用を放置して,地下書庫に立てこもり原稿を書く.1時間あまり粘ってスターターを起動する.午後はしっかりきっちり走れるようにしよう.

◇昼休みの歩き読み —— 和田敦彦『書物の日米関係:リテラシー史に向けて』(2007年2月28日刊行,新曜社,ISBN:978-4-7885-1036-4→目次)の第1章「対立する国家、対立するコレクション —— 蔵書史の起源をめぐって 」と第2章「蔵書の記憶、蔵書の記録 —— コロンビア大学の日本語蔵書史から」を60ページほど読む.第1章では,戦前(1920〜30年代)から戦中(1940年代)のアメリカの大学や図書館で日本語蔵書がどのように形成されたかを論じる.多くの人物が登場するが,フランツ・ボアズやドナルド・キーン,そしてライシャワー兄弟などが思わぬところで顔を出すのがおもしろい.外国で日本語蔵書をつくりあげるという行為は,単に「本を集める」というだけにとどまらず,外国のなかでの「国威発揚」という意図が見え隠れしていたと著者は言う(p. 66).

 次の第2章では,コロンビア大学の日本語蔵書史に焦点を当てる.英語圏の中で「日本語の蔵書」を運用していく上での大きな問題ひとつは目録作成だったと著者は指摘する(p. 82).和書の内容を踏まえて適切な図書カテゴリーに分類していくかは,日本語に通じたライブラリアンの力がなければどうしようもない.彼らの知識や力量がなければ和書の書名や著者名さえ読み取れないからだ(p. 89).

 著者は,蔵書の形成史(「リテラシー史」)を通して考察することについてこう述べている:

リテラシー史は,単にいつ,どこで,どのような本が入った,という単なる記録の集積ではない.それはむしろ書物をめぐる人びとの記憶の集積といった方がよいかもしれない.ある書物がその場所にあるのは,それを,誰が,なぜ,どのようにもたらし,あるいは探し,扱ったか,といった書物をめぐる行為の集積の上にあるのだ.そして調べているうちに,それぞれの人びととその行為は,のがれがたくその時代や状況のなかに編み込まれ,翻弄され,変貌してきたことこと[ママ]が見えてくる.それこそが蔵書の歴史をとおして何かを「考える」,「とらえる」というリテラシー史の意味なのである.(p. 97)

 モノとしての「本」(まさにトークン)のたどった歴史を見ようという姿勢がうかがえる.

◇昼休みは曇って7.6度しかなかったが,晴れ間から日が射してきた午後1時過ぎには9.7度まで暖かくなってきた.

◇ベルリンまわりの備忘メモ —— 「クヌートちゃん,かわゆい!」と思ったら,〈Zoo Berlin〉に行こう.今回のブームで,「Knut der kleine Eisbär」という特集まで組まれるほど(壁紙まであるのかぁ).ナカちゃんにしろ,クヌートちゃんにしろ,天然でヒトにアピールできる生き物はうらやましいなあ./〈Darwin Gesellschaft zu Berlin〉.ベルリンのダーウィン協会のサイト.まだ工事中のページが多い.

◇昼下がりの原稿格闘 —— なお続く.まだ続く.いよいよ続く.

◇午後のこまごま —— 生科連会議は5月2日(水)午後3時から,東大・山上会館(地下001会議室)にて./ 石神井書林に『のの字ものがたり』を発注する.ほんの10年前の本なのに絶版,しかも古書店にもほとんど出ていない./ メーリングリスト火山灰が激しく降り積もりつつある.年度をはさむこの時期はしかたがないのだが.

◇タイトル再考の余地ありまくり —— 青山潤『アフリカにょろり旅』(2007年2月10日刊行,講談社,ISBN:978-4-06-213868-0).だからぁ,「アフリカにょろり旅」などという“椎名誠ちっく”な題名を見て,この本が東大海洋研を一躍有名にした「ウナギ研究」に関係しているなどとどーやって見抜くのかなあ.的確なサブタイトルを付けなかったのは営業的には敗因だと思う.ぼくだって,リアル書店で実物を手にして初めて「そーいう本だったとは」と絶句したのだから.あるいは,想定読者層がちがっているのか?(放浪大好き系をターゲットにしている?) まだぱらぱらしている段階なのですが,とてもおもしろいフィールド[脱線]レポートみたい.それにしても,アフリカまで鰻を捕りにいくとはね.

◇夕方,またまた雨が降り出し,夜には本降りの風雨に.気温急降下中.※東京では季節はずれの霙が降ったそうだ.

◇夜の原稿仕事は続く.しかし,なんではかどらないのぉ…….

◇本日の総歩数=10904歩[うち「しっかり歩数」=4920歩/43分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.3kg/+0.2%.


3 april 2007(火) ※ 冷たい雨に打たれる桜とワタシ,遠のく春

◇午前4時40分起床.雨足強し.午前6時の気温は7.6度.肌寒い.と思ったら,午前7時の気温は6.5度に下がっていた.

◇朝のこまごま —— 進化学会関連の連絡とプッシュ:京都大会の会期は8月31日から9月2日まで.さらに,来年の横浜大会の関係者にもメール連絡をする./ メーリングリストの“火山灰”を掃除しているうちに,気温はさらに下がって,午前10時には5.6度.これじゃ季節が逆戻りじゃないか.窓の外は雨が降り続いている.寒過ぎ.

◇いったいいつ原稿を書くんでしょ…….(ぽつり)

◇「Tree Visualization Tools」に関する仮まとめ —— 1980年代末から90年代はじめにかけての第一世代の計算系統学で用いられてきた2次元の系統樹表示ツール(たとえば〈MacClade〉とか〈TreeView〉などの tree viewer / tree editor)はもちろん今でも現役だし,広く用いられている.しかし,その後,さらに進化した tree visualizer がいくつも開発されていることは潜在的ユーザーに意外に知られていないのかもしれない.たとえば,「Trees - software for visualisation and manipulations」というサイトには,何十もの tree visualizer がリストアップされていて,いま利用することができる主要な系統樹表示ツールはここに含まれている.

 第一世代の tree viewer は伝統的な系統樹のスタイルをできるだけ保持しつつ,系統樹ユーザーが必要とする情報をそこに表示しようとしてきた.〈MacClade〉(〈Mesquite〉もか)や〈TreeView〉のような視覚化機能と編集機能をもつ初期のツールが扱える規模の系統樹は,ある意味では“等身大サイズ”だったと言えるだろう.しかし,系統推定のためのデータが肥大し,それに伴って系統樹が巨大化してくると,それらのツールでは満足できる可読性が得られないという段階に入るようになる.

 たとえば,「Phylogenetic tree visualisation」というサイトには,後継世代の tree visualizer がいくつか挙げられているが,巨大なツリー(100,000端点規模のデータ)を 2D / 3D で可視化していこうという方針が読み取れる.〈HyperTree〉や〈Walrus〉のような「双曲型(hyperbolic)」と呼ばれる visualizer が開発されている.これらのツールは,うまく使えば,系統樹の「ことばとしての雄弁さ」を高めることができるだろうが,まだユーザーは多くないようだ.しかし,主要ジャーナルに登場し始めているので,普及するのは時間の問題だろう.

 もうひとつ,「系統樹」そのものの可視化と並んで浮上してきたのが,「系統樹空間」の可視化という問題だ.たとえば,最適解の tree islands の配置をMDSで整列した上で“見る”ための〈Tree Set Viz〉はそのためのツールだ.

◇正午の気温はさらに低下して,何と4.6度.真冬並み.〈david pain〉まで昼食の調達に出かけたものの,寒過ぎる.雨で足元の泥がはね上がるし,もちろん歩き読みなし.

◇午後のこまごま —— 人類学談話会での話題提供.OK.東大理学部2号館で5月に./ またまた進化学会関連のメール連打.木村資生基金への挨拶と連絡.駒場のご隠居へのお伺い./ 新年度の出張届(4/6, 4/7-8, 4/25)と振替休日指定(4/9, 4/26)./ 健康診断と人間犬の申込.

◇午後になって雨は小止みに.しかし,夕方になってもなおしとしとと降り続く.

◇いやが上にも苦しいワタシ —— 海游舎への原稿年貢は4月6日(金)午後5時に〈ルオー〉で納税する./ 音羽からさりげないプレッシャーあり./ あからさまな心理的圧力が2方向からやってくる.

 この畳み掛けるような重圧は久しぶりだなあ.

◇夕方のさらなるこまごま —— ご隠居から大仕事を持ち込まれる.やっかいな仕事ほどぱぱっとやった方がいいのでしょうなあ.

◇あ,もう夜.

◇ゆったりゆの字 —— 田村義也『ゆの字ものがたり』(2007年3月10日刊行,新宿書房, ISBN:978-4-88008-365-0→版元ページ).タイトルからは中身はぜんぜん見えない.装丁者として知られている著者の遺著になる.坂口謹一郎『酒学集成』とか安岡章太郎『僕の昭和史』などを手がけたこの人の装幀はすぐそれとわかる.著者は,本書の前篇にあたる『のの字ものがたり』という本を朝日新聞社から出しているというが(1996年刊行),まだ手にしたことがない(絶版みたい).なお,『田村義也:編集現場の115人の回想』という追悼集が出ているが(2003年12月刊行),この本は新宿書房内にある田村義也追悼集刊行会から直接頒布されていて,一般書店では販売されていないそうだ.

◇本日の総歩数=10266歩[うち「しっかり歩数」=6653歩/59分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−1.0kg/−0.7%.


2 april 2007(月) ※ あっちへばたばた,こっちへどたどた

◇午前4時半起床.曇りときどきぱらっと小雨.気温12.6度.

◇早朝のこまごま —— 今日は年度始めなので,異動の挨拶のための来室が限りなく.去る人,来る人./ メーリングリストの管理作業と月例アナウンス.また「システムエラー」が生じてしまった(恒常的やな)./ 北大の集中講義の兼業に関する事務連絡./ ある方面に遅延のお詫びをしたら,別方面から督促が…….

◇今日は花曇りで気温は低めだが,花見客も車もとても多し.今が見頃だ.これからは一雨来るたびに散るだろう.

◇午前中は原稿仕事なんだけど…….ぐわわ.

◇生物地理学会大会が今週末に控えている.大会シンポジウム〈進化と系譜:ツリー,ネットワーク,視覚言語リテラシー〉のサイトを更新し,講演者にメール連絡をする.時間と場所は下記の通りですので,興味のある方はぜひどーぞ:

【日時】2007年4月8日(日),13:00〜15:30
【場所】立教大学・池袋キャンパス(7号館 1階 7101教室)
【地図】http://www.rikkyo.ne.jp/~koho/campusnavi/ikebukuro/index.html
   (会場は「(30)」として図示されています)

今回のシンポジウム企画を思い立ってからの短期間に,「系統樹」に関する視点が複線化してきたことを実感する.一見,同じものを見ているようでいて,実はそうではないということだろう.逆に言えば,異なる対象を論じていることばが実は同じルーツをもっていたということでもあるはずだ.

—— 自分のトークの準備もしなければならないのだが,そこに到達する前に幾山か立ちはだかっている.

◇薄曇りの昼休みは気温16.9度.寒くもなく暑くもなし.花見客さらに増えている.やや重いけれども今日からはこの本を歩き読む:和田敦彦『書物の日米関係:リテラシー史に向けて』(2007年2月28日刊行,新曜社,ISBN:978-4-7885-1036-4→目次).まずは序章「日本の書物・イン・アメリカ —— 蔵書史から見えてくるもの」を40ページ.戦前のアメリカで議会図書館や主要大学に日本語蔵書をつくったという女性・坂西志保の活躍がとても輝いている.そして,全米を走り回ったという「日本参考図書館」という移動図書館もおもしろい.さらに,坂西を要とする当時の日本の古書店業界(反町茂雄や横山重という名前が見える)とのつながりもあったという.この本はアタリです.

◇午後のこまごま —— 進化学会あれこれ.学会ニュースの編集のこと,そして京都大会のこと.そろそろ起動をしないといけない案件がいくつかある.関係者に連絡する./ 4月11日(水)夕方,都内某所にて金力さんとミーティングが組まれるだろう./ 4月6日(金)午後の東大ガイダンスのタイムテーブルを確認./ ジョイフル本田に名刺を受け取りに行く./ RP設計検討会は4月16日(月),13:15〜.

◇あれやこれやと雑用どもで時間が削り取られて,原稿を書く時間がないなあ.どこかで一点突破をしかけないとダメみたい.夕方,北の風が入ってきたせいか,気温が低下中.やや湿り気味.

◇amazon.com から着便 —— George Kubler『The Shape of Time : Remarks on the History of Things』(1962年刊行,Yale University Press, ISBN:0-300-00144-4 [pbk]→目次).芸術史における「系統樹」について論じた古典.Ernst Cassirer が敷いた路線をひっくり返そうという意図があるらしい.

The purpose of these pages is to draw attention to some of the morphological problems of duration in series and sequence. These problems arise independently of meaning and image. They are problems that have gone unworked for more than forty years since the time when students turned away from "mere formalism" to the historical reconstruction of symbolic complexes. (p. viii)

かなり一般化された「事物の歴史(history of things)」が本書のテーマになっている.いまから40年も前の本であるにもかかわらず,生物学者はぜったい読まないだろう本であるにもかかわらず,作品の系譜関係の表現理論としてダイグラフ(digraph)に言及しているのは驚くべきことだと思われる(pp. 33-34).ただものじゃないなあ.生物系統学者はあるいは文化系統学者はこの本をまたいで通ってはいけません.

◇夜はふたたび原稿書き.ぐむむ.

◇本日の総歩数=10083歩[うち「しっかり歩数」=4927歩/43分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.3kg/+0.3%.


1 april 2007(日) ※ 原稿はすべて書き上げましたのでご安心を

◇午前5時30分起床.晴れ.昨夜の雨は上がり,春らしい霞んだ青空.ほどよい南風とほどよい気温.暑くもなく寒くもなし.

◇卯月のふんばり開始 —— 締切り日までプラス/マイナスさまざまな日数のいくつかの原稿を前にして佇むワタシ.今日のつくばはきっとお花見日和なのだろうな.しかし,そのような世の中の動きとはまったく無関係に,さらにさらに原稿を書き進めなければならない.ひと山もふた山も.

◇午後は気分転換に農林団地へ —— 案の定,団地内の道路は渋滞していて,桜並木も菜の花畑もたいへんな人出だ.曇ってさほど気温も高くはないのだが,桜もちょうど見頃で日和としてはよかったのではないか.来週末にはもう散り始めるだろう.牧園の〈david pan〉で一休みして帰る.もう夕方だ.

◇新刊メモ —— 鈴木俊幸『江戸の読書熱:自学する読者と書籍流通』(2007年2月22日刊行,平凡社[平凡社選書227], ISBN:978-4-582-84227-2→目次).いつの時代も人がいれば本がある.江戸時代の本を論じた本はこれまであったが,当時の本屋と読者との関わりに言及した本は珍しいのではないか.江戸の本屋さんはとっても商売上手./ 都築響一『やせる旅』(2007年3月10日刊行,筑摩書房,ISBN:978-4-480-87778-9→版元サイト宣伝サイト).北にあっては礼文島を縦走し,南にあっては杖立温泉で湯に打たれ,中欧ブダペストでは温泉プールに溺れ,ヨルダンの死海では塩湖に浮かび,さらに老荘思想やらアーユルヴェーダやら,ブータンにトルコにハワイですか.世界を飛び回る「やせる旅」もたいへんやなあ.

◇でもって,「嘘八百」をかましている余裕はそろそろなくなってきて,非常事態宣言かも…….

◇本日の総歩数=6172歩[うち「しっかり歩数」=3032歩/29分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/+1.2%.


--- het eind van dagboek ---

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[sinds 19 april 2007] 無料アクセスログホームページ 素材集