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oude dagboek

日録2008年6月 


30 juni 2008(月) ※ 梅雨の中休みに農大通りを往復する

◆午前4時半起床.雨のち曇り.しだいに空が明るくなってきた.北東からの涼風.

◆月末になった.トドどもの巨大化が目に余るようになってきた.今日は東京プチ出奔なのでムリだが,今週中には主だった大トドたちはすべて仕留める心づもりでいる.【教訓】トドを大きく育ててはいけません.勝手に繁殖させてもいけません.

◆経費ではなかなか落ちませんなあ…… —— 仲俣暁生さんのブログ記事「ランキング依存その後」(6月14日付)に,こんなくだりがある:

いま本を読む人は、研究者や評論家や編集者といった職業読書人*2を除くと、むしろ多くの「弱者」たちなんじゃないだろうか。

*2) ようするに本を(本そのもの、あるいは知識の)再生産のための道具として用いる人。本の購入費を経費で落とせるため、普通の読者とは本との付き合い方が異なる。

ワタクシもきっと“職業読書人”のひとりなのだろうが,少なくとも「理系」に限定していえば,仕事の必要上“本”を読むということはなくなってきているのではないだろうか.必要な情報は,最新のものであれば電子ドキュメントをダウンロードしてくるわけだし.あえて本を読むとしても,必要な部分のみをつまみ取るくらいのはしょった読み方がきっと多いだろう.

何よりも,「経費で落とせる」というのは,今の時代にはかなりの確率で外れかねない指摘だと思うが,どうだろうか.学術雑誌にしろ学術書にしろけっして安価な買い物ではないので,他の研究経費の使い道との競合のもとでは優先順位は低くなるかもしれない.それでも,今までであれば,機関の図書館が公費購入してくれたので(オンライン購読も含めて),研究者個人は救われていたところもあるのだが,毎年毎年これほど購読料金が上がってしまうとそれすらおぼつかなくなりつつある.

—— そんな事情を鑑みれば,大学や研究機関の“職業読書人”は風前のともし火かもしれない.※生き残るのは“私的読書人”だけかも…….

◆午前10時にはいったん青空が広がったが,またすぐに雲が出てきた.高層階は体感的に涼しいが,地表近くは蒸し暑い.

◆11:41のTX快速で経堂へ.曇ってはいるが雨は降らなさそう.講師控室にてスライドの調整とか.14:40〜,農大かもし高座(11回目).今日は2変量間の共変動(covariation)について.期待値演算子の復習をしてから,共変動の直感的理解に進む.共分散と相関係数についての解説をした上で,2変量正規分布の意味と図示.最後に一般の多変量正規分布について,さらっと.行列代数の記法がたくさん出てきた.そのつど“毒抜き”しながら話をしたつもりだが,あとで回収した質問票を見ると,“食あたり”してしまった受講生もいたようだ.16:00におしまい.

◆経堂への道すがら,農大通り沿いの商店街はいちどしっかり“探検”する必要があると思った.谷中銀座にしろ昔からある商店街は通り過ぎただけでは発見しそこなうことが多々あるから.

◆いつもと同じく16:35経堂発の小田急急行で代々木上原まで,千代田線に乗換えて湯島で途中下車.〈うさぎや〉でどら焼きを買ってから北千住に向かう.北千住も実は“探検”すべきスポットあるいは「修行の場」がいくつもあることはわかっているのだが,いまのところその時間がまったくない.つくばに帰り着いたのは午後6時過ぎだった.晴れ.北寄りの風が涼しい.

ここのところ日が長いのであちこち移動したりあれこれ働いたりしても,日中の時間の経過に気づかないことがある.しかし,疲労は着実に蓄積されているので夜になるとその影響が出てくる.

◆往復車中読書 —— 新刊:リヴィエル・ネッツ,ウィリアム・ノエル著[吉田晋治監訳]『解読!アルキメデス写本:羊皮紙から甦った天才数学者』(2008年5月30日刊行,光文社,カラー口絵12pp. + 442 pp.,税込価格2,205円,ISBN:978-4-334-96203-6 → 版元ページ).唯一伝承されたアルキメデス写本の物語.“トークン”としてのこの書物がたどった歴史は唯一無二だ.羊皮紙の“パリンプセスト”といういかにも謎めくお話し.眼力(心眼)のある人たちがぞろぞろ登場する.古写本の専門家が奇数章を,ギリシャ数学の研究者が偶数章を書くという形式の共著だ.確かに推理小説的な色合いが強い.まだ第2章までしか読んでいないが,たいへんおもしろい.光文社は実にいい本を出してくれた.

◆夜のこまごま —— 『』の連載が終わってほっとしていたところに,音羽から〈新書化プロジェクト〉の立ち上げが通知された./来月はじめのヒミツの会について.密会場所が本郷から変わったとの連絡あり.洞爺湖サミットに伴う警備上の理由らしい(大うそ).

◆本日の総歩数=10149歩[うち「しっかり歩数」=4355歩/40分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/−0.7%.


29 juni 2008(日) ※ 小人梅雨に降り籠められ不善を成す

◆午前5時起床.雨強し.湿った南風が通り抜け,木の床がしっとりする.

◆朝からいささか黴つつ —— 『』のゲラ読みを終えて修正箇所リストをつくっていたところへご指摘メールあり.先般読了した博物学史本『The Science of Describing : Natural History in Renaissance』の著者名は,ずーっと「Oglivie」だと思いこんでいたのだが,正しくは「Ogilvie」だったことが発覚してしまった.これは相当にヤバいことかもしれない.

というのは,著者名を読み間違えてケアレスであったという事実以上に,実は「目が見えていないのではないか」というここのところヒソカに気にしていた現実を他者から指摘された気がしたからだ.その昔,大学に入る前はメガネいらずで視力1.5を誇って?いたのが,大学院のころ,とある飲み屋の壁に貼ってあるお品書きがボヤけて見えないことにハッと気づかされ,視力を測ったところ“驚愕の事実”に直面することになった.半強制的にメガネをかけることになり,その後の人生を送ることになった.

—— 要するにですねえ,寄る年波には勝てずに〈◎眼鏡〉のお世話になる覚悟を決めよという天の声だったのかもしれない.く…….

◆そんなこんなでヘコみつつも,『』原稿修正リストを仕上げて,午前11時に音羽に向けてメール送信した.連載に関する毎月の追いまくられ仕事もこれで解放だ.

◆午後は北寄りの風に変わる.一時的に雨は止み曇天が続く.

◆午後の一掃処分 —— 午後2時から2時間ほどかけて,農大かもし高座の質問たちへの回答をすべて〈R-statistiker〉にアップした.これでやっとここ2ヶ月あまりの肩の荷を降ろすことができた.これまた解放だ.

◆夕方になって,再び雨がざあざあ降り出した.夜は,Château Puy Fombrauge をばいただいて,と.

◆新着本 —— 浜本隆志・柏木治・森貴史(編著)『ヨーロッパ人相学:顔が語る西洋文化史』(2008年7月10日刊行,白水社,319+xiv pp.,本体価格3,400円,ISBN:978-4-560-02634-2 → 詳細目次版元ページ).人相学・観相学(physiognomy)の歴史をたどった本.このテーマで1冊の本になるとはめずらしい.形態測定学の過去を掘り返していくと何世紀か前の「顔」の計測という水脈に突き当たる.アルプレヒト・デューラーやレオナルド・ダ・ヴィンチの人体計測の中でも「顔の計測」はたいへん重要な位置を占めている.この本は届いて間もないのでまだブラウズしているだけだが,図版もたくさん載っていて参考になる情報が豊富であると期待される.

◆明日はまたまた桜丘へ“出勤”する.

◆本日の総歩数=2106歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.1kg/+1.1%.


28 juni 2008(土) ※ 夏野菜ラタトゥイユをつくる昼下り

◆午前4時起床.曇り.気温19.0度.研究室にてこまごまはなお続く.帰りがけに天久保の Brotzeit で朝食用のパンを買い込む.

◆「みなか農環研不在率」の月推移 —— 昨日,7月分の出張・兼業・年休の届けを出したついでに,今年の残りの月にいったいどれくらい「実在しない」かを試算してみた.現在までに日程が確定している分のみで算出したところ,次のようになった:

7月 —— 8不在日/22労働日→約36%いません
8月 —— 7不在日/21労働日→約33%いません
9月 —— 8不在日/20労働日→約40%いません
10月 —— 14不在日/22労働日→約64%いません
11月 —— 15不在日/18労働日→約83%いません
12月 —— 9不在日/19労働日→約47%いません

やはり,誇張でも何でもなく,「労働日の4割以上は不在である」と言えそうだ.とくに9月〜12月にかけては方々からお座敷がかかっているので,農環研の館内でワタクシに遭遇できる確率はきわめて低くなります.

—— さて,このような高不在率の労働形態のもとで,所内のもろもろのことをちゃんとこなしていけるのか(すでにムリだが……),ましてや組合の役員を引き受けられるかな?(われ亡き後に洪水は来たれ……)

◆休日の朝の備忘メモ —— 府立高校の統廃合により,ぼくの出身高校は今年度でなくなることになった(校名の痕跡だけは残るようだが).それに伴うOB関連イベントのことなど.確かにその高校に在籍はしていたが,学級活動・生徒会活動を含めて高校内でのパブリックな活動にはほとんどコミットしなかったので(昔から selfish だった),「母校が消滅する」と言われてもイマイチ感慨は湧かないな.記憶の中にのみ“RIP”ということでいいんじゃないですか.

もうひとつ —— 一度は頓挫しかかった〈ICSEB-VII〉だったが,Daniel R. Brooks 委員長らの努力により,2009年7月5日〜10日に,メキシコのシーリゾート地 Veracruz の Hotel Galeria Plaza にて開催されることが確定した.あとは,シンポジウムなどの企画立案とともに,全世界から参加者を募るという仕事がある.大まかな大会スケジュールはすでに立てられているが,いずれにしろ大旅行になることはまちがいない.前回のパトラス大会と同様に,今回もまた「生物多様性」が中核テーマなので,生物体系学に関係する日本からの多くの参加者を集めたい.

◆朝方,いったん晴れて青空が広がったが,昼前にはまたまた曇天にもどる.北東風が涼しい.午後になって日射しが強くなり地表近くは暑くなってきた.

◆昼下りのラタトゥイユしこみ —— 夏野菜が安く出まわる季節になったので,久しぶりにラタトゥイユを大量につくることにした.今回はトマト味を強めに効かせて,酸味で食欲増進をはかる.大鍋に夏野菜たちをざく切りで詰め込んでたった1時間そこそこの煮込みでもう完成.

まずは夏野菜の彩りの鮮やかさを愉しもう.朝買ってきた Brotzeit の全粒粉トーストパンを薄切りでカリッと焼いてから,塩漬けオリーヴのペーストを塗ったものを付け合わせに.うんうん,なかなか美味ですな.

—— これから煮込みが進むにつれて,ラタトゥイユの味はどんどんまろやかになり,しだいに煮崩れながらも,次にはパスタソースとなり,そして最後には野菜カレーのルーとしてその役目を終えることになっている.旬の野菜はムダがない.

◆午後のこまごま —— 『』のゲラを読み終える.5行分ちゃんと削りました.雑誌連載の原稿だと,単に「字数」の制約だけでなく,刷り上がったときの「行数」の制約もとてもきびしいことを初めて知った.

◆夕方,小野崎の〈Shingoster〉にて,デンマーク製のライティング・デスクを買う.半世紀ほど前のアンティーク家具.

◆本日の総歩数=10663歩[うち「しっかり歩数」=1569歩/14分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−0.9%.


27 juni 2008(金) ※ 終日,未処理のトドを撃ちまくる

◆午前4時15分に起床.雨上がりの青空.気温15.1度.涼しい.

◆朝のトド撃ち —— 朝イチで車の整備作業.『捏造された聖書』を読了.後半は聖書の異本群がもたらす“信仰上の危機”ですな./来月7月分の出張伺3件・兼業届4件・年休届4件を出す.あ,半日年休がもう1件あった.ということで,7月の農環研不在率は「不在8日/全22労働日≒0.36」だ.うん,3日に2日も所内に実在するなんて久しぶりのことだ./7月12日(土)に秋葉原である〈第1回ARGカフェ〉のライトニングトークのメンバーがほぼ確定したとのこと(→演者リスト).ほんの数分のトークだからこそ支度が必要.

◆午前11時,曇り.気温は21.4度.その後,しだいに青空が広がってきた.湿度は低め.不快指数も低め.

◆昼休みのトド撃ち —— 海游舎・本間さんから電話あり.カマジン本の体裁と組版について.図版入りゲラは来週早々にもつくばに着弾するらしい.避難準備をしないと……./長らく堆積していた統計関連の質問メールの回答に着手する.ごめんなさいごめんなさい./とある投稿論文の査読依頼メールへの返事.半分はお引き受けしましょう./これまた塵のように積もっていたメーリングリスト関連の雑用をすませて,と.

◆農林水産研究交流センター(筑波事務所)での〈分子系統学〉ワークショップ企画の進捗.春先に話だけはしていた案件を動かし始める.担当者とメールでの連絡あれこれ.とりあえず,開催日程の第一候補は「10月6日(月)〜8日(水)」ということで,計算センター電農館のコンピュータ実習室をおさえてもらった.あとは講師候補者への打診と調整というワタクシがもっとも苦手とする事務仕事が待っている.※ヒショがほしいです…….マジで.

◆〈The First International Symposium on Biological Shape Analysis〉 —— 確かに日本では初めての形態測定学国際シンポジウム.来年2009年6月3日(水)〜6日(土)につくばで開催します.まだ First Circular の段階だが,関係しそうな方々,参加と発表をぜひぜひよろしく.主宰者のひとりである Pete Lestrel さん(フーリエ形態解析の研究者)にはすぐにOKの返事を書いた.

◆午後のトド撃ち —— 統計質問メールと格闘し続ける.送られてきたデータを〈R〉に入力して,一連の出力をまとめて相手方に送り返したりとか.複雑系ネットワーク解析の「闇」にトラップされかけたりとか.質問を送ってくる方々は悩みをよくよく抱えてのことなので,こちらとしてもできるだけの対応はしないといけない.

◆そんなこんなで,あっという間に夕方になった.しかし,まる一日のトド撃ちのおかげで,受信箱の未処理メールどもはすっかり空っぽになってくれた.久しぶりの爽快感だ.何もないことは快楽だ.

—— とはいえ,黄泉の國で蠢く亡霊トドはまだまだいる.とても処理しきれないものはプリントアウトして封印したりしているので,こーいうことになる.進化学辞典の項目執筆者の確定/ISHPSSB Kobe の進捗/進化学会大会の参加申し込みとワークショップ要旨の提出(7月10日締切り)/『生物科学』の哲学特集のこと/『遺伝』のダーウィン特集の記事(今月末締切り)/組合関連のことども……あきまへんな,まだまだトド撃ちは終わっていないことを知る.

◆気を取り直して,夕方のトド撃ち開始 —— 『』のゲラを読み始める.あれれ,博物学者 John Rey の生年が確定できない.C. E. Raven『John Rey: Naturalist』(1942年初版刊行[1986年復刻],Cambridge University Press[Cambridge Science Classics],xxvi+506pp.,ISBN:0-521-31083-0 [pbk])を見て,「1627年12月6日生まれ」であることを確かめた.その他のところは大きな修正なし.

◆読了本 —— バート・D・アーマン[松田和也訳]『捏造された聖書』(2006年6月10日刊行,柏書房,294 pp.,税込価格2,310円,ISBN:4-7601-2942-1 → 版元ページ目次).祖本復元に関する原理とは:

「外的証拠:写本自体から推測する」.「オリジナル」と判断される文は,通常,最良の写本および最良の写本グループの中に見いだされるものだ.(p. 168)

「内的証拠:内容から推測する」.異文の中で尤もオリジナルに近いのは,他の異文の存在を最もうまく説明するものである.(p. 170)

なかなか絶妙な“モデル選択”の基準を本文批評では構築してきたようだ.

◆午後5時に撤収.晴れときどき曇り.気温24.7度.夜になって北寄りの風が通って涼しくなる.今年はあまり不快な日がない.個人的にはとてもよいことだ.

◆本日の総歩数=6792歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.1%.


26 juni 2008(木) ※ ではワタクシも系統樹タトゥーを

◆午前4時半起床.北風強く曇り空ときどき霧雨も.気温15.1度と低め.

◆ついに出たか,“系統樹刺青” —— タトゥーでの決意表明は「一生変わらない(変われない)」という点に尽きる.yuiamiさんの〈まとまり日記〉から参照されている Carl Zimmer のイレズミ記事「Carl Zimmer's Science Tattoo Emporium」に載っている各自自慢の“サイエンス刺青”をどんどんたぐっていくと,やがて“系統樹刺青”のページに到達する.ヘッケルとかダーウィンのツリーだったら不滅の歴史的イコンとしていつまでも永続的に人目にさらせるが,昨今の Tree of Life プロジェクトの推定結果をサークルツリーでいちいち掘っていたら,年がら年中,タトゥーを追加しないといけないし,修正されようものならもうどーしようもない.痛い痛い.

◆朝のこまごま —— 来年6月につくばで開催される国際形態測定学シンポジウムへの招待メールが届いた.開催期間は2009年6月3日〜6日.これは積極的に関わらないわけにはいかない./某学会から査読依頼メールあり.あ,これはワタシがやれる内容ではなく,アノ方向きです.ハイ./農大の講義で受けた質問“短冊”を整理し,要返答のものだけピックアップする.これまで9回分の講義でのべ900枚が手許にあるが,返事をブログに書く必要があるのは数十枚のみだ.それでも十分に多いのだが.

◆梅雨寒の日中 —— 午前10時の気温は16.7度.曇りときどき霧雨.北東風が吹いて肌寒い.日によって顔つきがぜんぜんちがうのでまごつく.昼近くになって雨が降り出す.

◆昼ご飯は〈Brotzeit〉のブリ・ド・モーをはさんだバゲット・サンドイッチと初めてのビオナーデ(オレンジ&ジンジャー味).ひたすら“オーガニック”に邁進するとこーなる.

◆午後1時から来客あり.インドネシアつながりということで.意外な人脈だった.1時間ほどの会談./ついでに,先日の産経新聞掲載記事をいただいた.

◆のたうつトドども —— キャリアデザインシート.締切もう過ぎてます./夏祭り実行委員,締切り過ぎます./いろいろあります.はてしなくあります.

◆午後4時過ぎに撤収.曇りときどき小雨.肌寒い.

◆備忘メモ —— いま読んでいる:バート・D・アーマン[松田和也訳]『捏造された聖書』(2006年6月10日刊行,柏書房,294 pp.,税込価格2,310円,ISBN:4-7601-2942-1 → 版元ページ目次)の著者インタビューがオンライン公開されている.また,昨日,東京堂書店で同じ著者(と訳者)の新刊:バート・D・アーマン[松田和也訳]『破綻した神キリスト』(2008年5月刊行,柏書房,ISBN:978-4-7601-3333-8 → 版元ページ)が出ていることを知った.個人的には本文批判がらみのテーマに関心があるのであって,異本捏造が引き起こす“信仰心の危機”については別の読者が読むべきだろう.

◆夜のこまごま —— 『』最終回のゲラが届く.月末までに返送するべし./23日に出た最新版 R 2.7.1 のダウンロード./別件の書類作成.

◆本日の総歩数=5839歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.4kg/−0.2%.


25 juni 2008(水) ※ TX沿線を本を探して東奔西走する

◆午前4時半起床.晴れのち曇り.北寄りの風が涼しい.

◆探書特命 —— 今日は出張日だが,とある本を至急に探さないといけない.うち1冊はすでに絶版だったので,安心して〈日本の古書店〉サイトで発注した.もう1冊の方はやっかいなことに in print なので,リアル書店をあちこち捜しまわらないといけない.

◆ということで,9:48発のTX区間快速で早々とご出立.曇って涼しい.流山おおたかの森ショッピングセンターに入っている紀伊国屋書店はあえなく玉砕.北千住ルミネの丸善でもまた連敗.他の書店をまわる時間がなくなってしまったので,根津に向かう.

◆東大農学部にたどり着いたのは正午前.ほどなく専攻会議室にて新しく連携大学院の教授になった八木一行さんの歓迎昼食会.湯島の〈扇〉の仕出し弁当が並ぶ.午後1時過ぎからは専攻教員会議.いつものように連絡事項とても多し.午後3時にいったん終わって,続いて専攻会議.大学院入試の実施要領について.午後4時前に散会.

備忘メモ —— 7月14日(月):学部見学旅行.午後5時に笠間の附属牧場に到着予定.夕食買い出しの車を提供することになった.8月28日(木):大学院入試の面接試験がある.午後の予定.

◆さすがは —— 南北線で神保町に出る.午後4時半に〈書泉グランデ〉にて目的の本をあっさりゲット.さすがです.そんじょそこらの書店が束になってもかないまへんな.ついでに,副都心線の開通に合わせて改訂された:『東京地下鉄便利ガイド・第4版第8刷』(2008年刊行,昭文社,ISBN:978-4-398-28031-2)を購入.

◆つくばに帰り着いたのは午後6時過ぎだった.曇り.北東風が吹き抜けてとても涼しい.今日は蒸し暑さとは無縁だった.

◆往復車中読書 —— バート・D・アーマン[松田和也訳]『捏造された聖書』(2006年6月10日刊行,柏書房,294 pp.,税込価格2,310円,ISBN:4-7601-2942-1 → 版元ページ目次).聖書をめぐる本文批判(textual criticism)の長い歴史を論じた興味深い本.Karl Lachamann をはじめ,文献系図学の成立についても詳しく論じている.驚くべき指摘は,中世の修道院のスクリプトリウムで写本に特化した写字生(スクライバー)が聖書に関する知識も教養もある“プロフェッショナル”であったのに対し,もっと初期の写本を担当したのは,自分の名前がかろうじて記せる程度の識字力しかない奴隷などだったという点だ.したがって,聖書の古い写本の“変異性”は中世のものよりもはるかに高かったという.まるで“祖先多型”みたいなものか.

いくつか関係する箇所をピックアップ:

つねに念頭に置くべき問いは —— 「この中世の書記たちは,これほどプロフェッショナルな技術で複製するテキストを,いったいどこから入手したのか」ということだから.[……]オリジナルに最も近い形のテキストというのは意外にも,標準化されたプロフェッショナルな仕上がりの中世の複製ではなく,間違いが多くて素人臭い初期の複製の方なのだ.(pp. 99-100)

18世紀のヨハン・アルプレヒト・ベンゲルは聖書の系図(ステマ)の方法論を提唱した:

ベンゲルによるもうひとつのブレイクスルーは,私たちの手許にある大量の異文よりもむしろ,それを含んでいる大量の文書自体に関するものだ.彼は,複製された文書というものは当然ながらその元になった底本に最もよく似ているし,同じ底本から作られた他の複製ともよく似ているということに気づいた.つまり,数多い写本の中には,お互い同士で似通っているものとそうでないものとがあるということだ.ということは,すべての現存する写本は,一種の家系図のような関係に並べることができる.(p. 146)

ベンゲルに続く,ラハマンら多くの聖書学者が写本間の系譜関係の推定を試みてきた.19世紀のウェストコットとホートはテクストの“共有派生形質”に基づくステマの推定を原理として確立した:

彼らの考えは,同じ家系に属する写本は,お互いにその語法が一致するという原理だ.つまり,もしもふたつの写本が,ある一節で同じ語法を使用しているなら,その理由は,両者が究極的に同じ源に遡ることができるからに違いない —— 同じ写本か,あるいはその複製かだ.この原理はしばしば,次のように言われる.「異文のアイデンティティは,その源のアイデンティティを意味する」(p. 160)

◆昨日(6月24日)の朝日新聞朝刊に,『源氏物語』の写本系図研究の新展開を報じた記事「写本研究に新潮流:細部を比較・系統樹で分類・大島本見直し」が載った.そこに示されている写本系図は最節約ネットワークである.池田亀鑑以来,やっと『源氏物語』のステマ推定が本格的に進み出したということか.こういう“系統樹”はニュースバリューがあるのだろう.

◆明日と明後日は農環研に実在します.二日も続けて本務地にいるというのはめずらしいな.

◆本日の総歩数=10862歩[うち「しっかり歩数」=1383歩/13分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.4kg/+0.2%.


24 juni 2008(火) ※ 集中空調が効き過ぎて季節感なし

◆午前4時半起床.曇り.南風が吹いているが,気温は低め.17.9度.

◆朝のこまごま —— 朝イチで定期歯科検診.次回は3ヶ月後の9月24日(水)9:30〜./ダカインのリュックサックが届いていた.前のモデルとの共有派生形質は明確だが,固有派生形質もちらほら見える.ジッパーがダブルからシングルになるという大域的トレンドも検出された.

◆外は晴れてとても暑い.午前11時の気温は26.9度.しかし,今週から館内の集中冷房が動き始めたので,居室はとても快適.気温は22度台っす…….

◆さらなるこまごま —— 形態形質からの系統推定についての先日の質問に対する返信を書いて送った./9月の植物病理・若手の会(日大・湘南キャンパス)でのぼくの演題を伝えた:三中信宏「生物分類学の終わりの始まり:【種】の憑依と除霊」.よろしくお願いします.

◆献本ありがとうございます —— 加納圭『ヒトゲノムマップ』(2008年6月10日刊行,京都大学学術出版会[学術選書035],xiv+402 pp. [付録:一家に1枚ヒトゲノムマップ],本体価格2,200円,ISBN:978-4-87698-835-8 → 版元ページ目次).折り込みで添付されている「一家に1枚ヒトゲノムマップ」の説明に実に100ページも費やしている.

◆午後のこまごま —— 6月26日(木)午後1時から,インドネシアからの来客を迎える./農大かもし三点セット(11回目).来週の講義用のハンドアウトを早々とつくった(pdf公開済み).週明け早々に高座があるときは,前の週のうちに支度をしておかないと気分的によろしくない.この講義もあと3回となった.試験問題をつくる心の準備をそろそろと.

◆Alex Rosenberg の本の情報 —— Alex Rosenberg and Daniel W. McShea『Philosophy of Biology: A Contemporary Introduction』(2007年刊行,Routledge,London,256 pp.,ISBN:978-0-415-31592-0 [hbk] / ISBN:978-0-415-31593-7 [pbk])/Alex Rosenberg『Philosophy of Science: A Contemporary Introduction, 2nd Edition』(2005年刊行,Routledge,London,224 pp.,ISBN:978-0-415-34316-9 [hbk] / ISBN:978-0-415-34317-6 [pbk]).2冊とも〈[Routledge Contemporary Introductions to Philosophy]〉という叢書に含まれている.

◆午後2時半から1時間弱,ほぼ1ヶ月ぶりに,『Modern Morphometrics in Physical Anthropology』の輪読セミナーの第18回.Chapter 5 : Waleed Gharaibeh「Correcting for the Effect of Orientation in Geometric Morphometric Studies of Side View Images of Human Heads」の続き(pp. 138-141).今日で読み切り.3D物体の“ズレ”が2D画像においてどのような体系的誤差をもたらすのか,推定や検定に対する影響の大きさをシミュレーション研究で示す.まずはじめに,検定の方法によってその影響をもろに受けるときとそうでないときがあると著者は指摘する.ケンドール形状空間上における形状差を検定する Goodall test では,プロクラステス計量が複素ワトソン分布(null model)のもとで近似的にカイ二乗分布をすることから,F検定による形状差のテストを構築する.この Goodall test は“ズレ”の影響の直撃を受けるので使えないそうだ.一方,座標に関する多変量分散分析は“ズレ”の方向性と集団間差異の方向性が直交していれば射影補正によっていい結果が得られるが,並行しているとよくない.実際,ヒト顔面の画像を用いた例では,“ズレ”の方向と集団間差異の方向が並行するとき,主成分が縮退してしまうことがある.

◆昼下りから夕方にかけて西から射し込む日射しが強かったが,元気のいい空調のおかげで居住性は保たれている.午後5時,空調が切れる前に退散.外は気温27.4度で,風もなく,ただ暑い.

◆本日の総歩数=9694歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.6kg/0.0%.


23 juni 2008(月) ※ “亜熱帯”な蒸し暑さに包まれる

◆午前4時起床.曇りときどき霧雨.南風.その後,東方から晴れ間が広がってきた.気温は18.0度.しだいに暑くなってきた.

◆早朝のこまごま —— ひさびさに〈R-statistiker〉を更新した.すみませんすみません.ハンドアウト公開のアナウンスをば.載せるべき記事はエンドレスだが,.とりあえずは堆積しまくりの質問処理からはじめよう.

◆「ワタクシハ嘘ツカナイ」 —— 絶妙なヒット率を誇る検索キーワードに【種って何さ】がある.たいていの場合,この dagboek が釣り上げられる確率が高いのだが,たまに「お!」という記事が掘り起こされることがある.先日,たまたま1年以上も前のブログ記事「種って何さ?」(2007年 3月 18日付)にたどりついた.読み進むうちに,こんなくだりが:

しかし「種」と言う概念は非常に便利な考え方です。かつてある生物学者が朝日新聞のインタビュー記事で「やがて種概念が無くなる」と答えていましたが、環境保護や生物多様性に関心が高まる昨今、「種概念」はむしろ重要視されていると思います。

おお,そーだそーだ.確かにワタクシは前世紀末の朝日新聞(1999年12月15日夕刊)の割に大きなコラム〈21世紀・序奏〉の中で,「10年後に“種”はなくなる」と発言したことがある.そして,「“種”はなくなる」は見出しとして大きく載った記憶がある.昔からアヤシイことばっかり口にしてきたんだなあ.

いずれにせよ,この記事のことはすっかり脳裏から消えていた.当時は『生物科学』にそーいう記事を書いていたこともあって(完結しなかったが……),あのようなアジ演説をしたにちがいない.しかし,今にして思いかえせば,その路線は脈々と途切れずに生き続けていたということだろう.今年中に『分類思考の世界』が首尾よく出版されれば,ぼくなりの答えは出したことになるはずだ.「われらが時は過ぎ去れり」と骸の兵隊どもが裏声で歌っているではないか.

◆午前8時を過ぎて,北風が強まってきた.晴れて日射しは強いが,体感的に涼しい.

◆午前いっぱいは午後の講義準備として新作スライドをつくった.全21枚.線形モデルから一般化線形モデル,そして一般化加法モデルへの道すじと,その混合効果モデルへの拡張についての説明図.

◆亜熱帯的な雲が厚く広がり,蒸し暑さがまとわりつく正午に出発.12:11発のいつものTX快速に乗り,午後1時半に経堂へ.講義前に農学部長殿が非常勤講師控室に御出座〜.これから厚木に向かうとのこと.ご苦労様です.14:40から農大かもし高座(10回目).今日は,統計モデリングについて解説する.モデル選択の原理について話をしたり,〈R〉を立ち上げてみたり,直前までひねり出し続けたGLMスライドを流してみたり.午後4時過ぎにおしまい.

—— 教務にて,7月14日(月)を休講とする件を届け出る.補講日は同じ週の7月17日(木),時間帯は同じで,教室は階上の「212号室」と確定した.

◆帰路の農大通りもトロピカルに蒸し暑かった.夕立が来るかと思ったがぜーんぜん何にも降らなかった.ただただ不快に暑いだけ.あっつ〜.

◆車中読書 —— Jörg Jochen Berns「Baumsprache und Sprachbaum. Baumikonographie als topologischer Komplex zwischen 13. und 17. Jahrhundert」, pp. 155-177 in: Kilian Heck und Bernhard Jahn (Hrsg.)『Genealogie als Denkform in Mittelalter und Früher Neuzeit』(2000年刊行, Max Niemeyer Verlag[Studien und Texte zur Sozialgeschichte der Literatur: Band 80], ISBN:3-484-35080-6 → 目次版元ページ).系統樹言語(Baumsprache)に関する論考.中世の古い“系統樹”の図版がたくさん載っている.とりわけ,16世紀ドイツの「聖なる樹(Heiligenbaum)」のイコンの衝撃力は大きかったのだろう.いわゆる「薔薇十字団」文書のひとつに載っている樹だったから.

◆蒸し暑さの残る夕方は,コロナビールを瓶飲みしつつ,〈アンマーカリヤ〉の辛いマトンカレーを食す(トロピカルというかコロニアルというか).夜になって北東風が心地よく吹き抜ける.

◆本日の総歩数=14137歩[うち「しっかり歩数」=4056歩/36分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/+0.4%.


22 juni 2008(日) ※ 本降りの梅雨に打たれて成田空港

◆午前4時すぎにいったん起床下.雨がざあざあ降っている.北東風.二度寝して午前7時前に完全起床.Brotzeit で朝食用のパンを買ってくる.雨はいったん小降りになって霧雨がさらさらと.湿度は高いが気温は昨日よりも低め.

◆再びナリタへの道 —— 13:25つくばセンター発の成田空港行きエアポートライナーに乗る.また雨足が強くなってきた.午後3時過ぎに第二ターミナル着.雨降り続く.気温22.2度.

◆往路車中読書 —— ダニエル・ケールマン著[瀬川裕司訳]『世界の測量:ガウスとフンボルトの物語』(2008年5月20日刊行,三修社,334 pp.,本体価格1,900円,ISBN:978-4-384-04107-1 → 版元ページ目次).ガウスとフンボルトの伝記的記述が交互に続く.フンボルト兄弟の非凡さが印象的.もちろん,ガウスは数学の神童です.

◆空港のカフェでの待ち時間に読み始め —— Elliott Sober『Evidence and Evolution: The Logic Behind the Science』(2008年4月21日刊行,Cambridge University Press,Cambridge,xx + 392 pp.,ISBN:978-0-521-87188-4 [hbk] / ISBN:978-0-521-69274-8 [pbk] → 目次著者サイト正誤表[pdf]).著者は「normative philosophy of biology」について語ろうとしている.ただし,科学哲学が健全に「normative」であるためには,個別科学についてよほど知っていないと科学者には相手にしてもらえないとも.“sollen”を口にするのはラクな仕事ではないということ.

◆約3時間ほど空港に滞在したのちに18:45発の帰りのバスに乗る.つくばセンター到着は午後8時過ぎ.雨はなお強く降っているのに,傘もささずに歩くあほうども…….

◆本日の総歩数=12637歩[うち「しっかり歩数」=2455歩/26分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/−1.0%.


21 juni 2008(土) ※ 梅雨の中休みにはマリンバワンを

◆午前4時半起床.雨.北寄りの風,湿って涼しい.

◆耳寄り情報メモ —— 姉小路にあった〈酒陶 柳野〉は,この2月に店舗移転のためいったん閉店していた.昨秋行ったときは「どこに移転するかぜんぜん決まってません」とのマスターの言だったので,その後どうなるのかとときどき気にはしていた.それがとあるサイトの情報により,今月の28日(土)に三条新町西入ルで再オープンすることを知った.x座標は烏丸通をはさんで反対側になってしまったが,y座標はほとんど変わっていない(“−1”ってところか).とにもかくにも,実にめでたいニュースではないか.

—— この夏,京大理学部を襲撃するときの根城にしよう.※その前に伏見桃山駅前の〈もろみね〉であえなく迎撃されたりして…….

◆朝のうちに雨は上がり日射しがまぶしくなった.伊豆地方では大雨警報が出たというのにいったいどうしたことか.

◆強制的雑用消化週末 —— 午前10時半に研究所に潜入する.晴れときどき曇り.やや蒸し暑く,気温23.8度.大トドを何頭かしとめる —— 農大かもし三点セットの耳を揃える.ハンドアウトづくりと印刷.あわせて〈租界R〉に農大講義ハンドアウトのこれまでの分をpdfで公開した.残るは,講義ブログの更新か……./カマジン本の「脚注」は訳し忘れていたことが今になって露呈してしまった……./『遺伝』編集部から,ダーウィン特集の原稿の進捗はどーですか,との探針メールあり.てやんでぇ,無い袖を振れってかぁ.(汗)./そんなこんなの立ち往生原稿はあっちこっちに散らばっている.

◆献本感謝 —— 高槻成紀・山極寿一(編)『日本の哺乳類学・第2巻:中大型哺乳類・霊長類』(2008年6月10日刊行,東京大学出版会,x+474 pp.,本体価格5,000円,ISBN:978-4-13-064252-1 → 版元ページ目次).大泰司紀之・三浦慎悟監修のシリーズ〈日本の哺乳類学〉(全3冊)の第2巻.先月出た:本川雅治(編)『日本の哺乳類学・第1巻:小型哺乳類』(2008年5月1日刊行,東京大学出版会,viii+312 pp.,本体価格4,400円,ISBN:978-4-13-064251-4 → 版元ページ目次)の翌月に続いて出るとは.この分だと,最終巻:加藤秀弘(編)『日本の哺乳類学・第3巻:水生哺乳類』もそれほど待たずに手にできるかな.

◆午後,梅雨前線はどこへやら,青空が広がって初夏の陽気になる.久しぶりに〈青葉〉でつけめんを喰う.午後2時から,カピオにて〈古徳景子&POZO〉のマリンバ・コンサート.さすが Marimba One は木のカタマリで,音色が深くていいなあ.他にもJPCの打楽器がたくさん登場した.

◆夕方になって,再び曇ってきた.蒸し暑さ度がじわじわと高くなる.夜は,竹園の〈おでん屋・はなび〉でちょいと.おでんよりもカウンターの大皿料理の方がうまかったです.夜遅くなって,雨が降り出した.

◆本日の総歩数=8546歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.1kg/0.0%.


20 juni 2008(金) ※ たまに職場に行くと仕事にならん

◆午前4時15分起床.晴れのち曇り.気温20.4度.梅雨の真っ最中なので,湿度はもちろん高いが,今朝は気温も高い.

◆二日間の“空白”を置いて久しぶりに研究所に顔を出す.机の周囲は“火山灰”で真っ白だ —— 応用統計学会の座長レポートを事務局宛に再送する.宛先メールアドレスがまちがっていたという脱力なミスが不着の原因だった./組合関連でたーくさんの動員要請が堆積している.いくつかは気楽に頼めるのだが,農環研夏祭り(8月7日(木)に開催予定)の実行委員という重い役回りはリジェクトが相次ぐ.どーしましょ./北九州からブツが戻ってきた.お役に立ててよかったです./掲載された産経新聞記事と先日取材された朝日新聞大阪本社の件で広報連絡表を情報資料課に報告する./メーリングリスト雑用多数あり./放置していた居室の鍵リストを施設管理課に提出する.

◆すでに昼休みが近づいた.外は湿度の高い曇り空のままだが,雨は降っていないようだ.

◆〈第1回ARGカフェ〉の開催 —— ARG主宰者の岡本真さんから,『ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)』の創刊10周年を記念するイベントを秋葉原で催しますとの連絡をいただいた.日時は2008年7月12日(土),場所はTHE SPACE OF AKIBA3021.タイムテーブルは,「第1部(15:00〜17:00)」がトーク・セッションで岡本さんの基調トークに続いてひとり数分の持ち時間で“ライトニングトーク”を複数名で行なう.第2部「懇親会(18:00〜20:00)」は HUB秋葉原店 にて.

なかなかおもしろそうな企画なので,ぼくも下記のタイトルでライトニングトークさせてもらうよう折り返し申し込んだ:三中信宏「学術系メーリングリストのライフステージ:〈EVOLVE〉15年の軌跡から」.さいわい空きがまだあったようで,組み込んでもらえることになった.当日はよろしくお願いいたします.

—— 「ライトニングトーク」とは初めて耳にすることばだったが,岡本さんからの情報では,「What are Lightning Talks?」や「電光石火の一発勝負 ライトニングトークの極意教えます」という紹介記事がある.以前,植物分類学会大会に参加していたころ,ポスター発表の内容をひとり2〜3分で次々に説明するという「ポスターフラッシュ」という時間帯が設けられたことがあった.あれは参加者には好評だったが,それと同じ趣旨のトークなのだろう.

◆午後のこまごま(雲が厚くなってきた) —— 東大の見学旅行の旅程表(7月14〜15日)が届いた.公務は14日昼の農環研見学.あとはまあ,笠間の附属牧場でバーベキューをするだけだから,気楽ではあるのだが./就職が決まったポスドクさんの領域内送別会の通知.別件があるので欠席メールを返す./今年度のキャリアデザインシートの提出を放置していた.ううむ,いったんフォーマットを開いたのだけど,またそのまま閉じてしまった……./節電のためとのことで廊下の証明が半減された.※クラいぞ.

◆講談社『』の最新号が届く —— 今回は“時空ワーム”が主役です.哲学者はもっとサイエンスを勉強した方がブッ飛んだ噺ができるはずだ.:三中信宏「時空ワームの断片として」.節構成は:「木を見て,森も見る 46|系譜はかぎりなく変化する 48|四次元空間の“時空ワーム” 50|「生命の樹」の断片として生きる 52」.次号最終回の原稿はもう渡してしまったので,気はラク.いま初めて気がついたのだが,先月号から,あの福岡伸一センセの新連載「世界は分けても分からない」が始まってたんじゃない!(ぜんぜん目に入らなかった,ということでして……)

◆仕留めきれなかったトドども —— 来週の農大かもし三点セット.講義ブログもそろそろ更新しておかないと.試験問題,どーする?/キャリアデザインシート(……)./その他,質問や問合せなどなど.すでに,部分的に“変成岩”と化しつつあるが.

◆午後5時に撤収.空気が濡れている.そのうち小雨がぱらつき始めた.予報通り.夜になって本降りとなる.

◆本日の総歩数=8796歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+1.0kg/+0.4%.


19 juni 2008(木) ※ 蒸し暑い休日は蔘鷄湯で制覇する

◆午前4時起床.曇り.南風だが早朝だけは涼しい.しかし,すでに湿度は高まりつつある.

◆朝のこまごま —— 明け方のリュックサック買い.日常的に背負っていると,どうしても擦り切れる部分がでてくる.たいてい3年ほどで寿命になる,いまもっている〈Dakine〉のリュックは使い勝手がなかなかよいので,次も同じ銘柄にしよう.産経新聞(ビジネス版)に,先日取材を受けた記事が載った.あまり伝わってないな……./何日か休むと“火山灰”の堆積が無視できなくなる.組合の動員依頼がなんだかたくさん降ってきた.

◆新刊本届く —— ダニエル・ケールマン著[瀬川裕司訳]『世界の測量:ガウスとフンボルトの物語』(2008年5月20日刊行,三修社,334 pp.,本体価格1,900円,ISBN:978-4-384-04107-1 → 版元ページ目次).数学者カール・フリードリッヒ・ガウスと博物学者アレクサンダー・フォン・フンボルトの伝記的小説.2005年出版の原書はドイツでバカ売れだそうだ.まだ読み始めたばかりだが,あのガウスが偏屈爺さんのように描かれている.訳者はレニ・リーフェンシュタールの本を出している人だ.

◆しだいに蒸し暑さが増してきた.不快この上ない空模様だ.今日は振替休日なので,気合いを入れるために,下広岡の韓国料理〈辛〉に行って,猛烈に熱い蔘鷄湯(サムゲタン)を喰うことにした.暑さには熱さで対抗するしかない.

つくばで「蔘鷄湯(サムゲタン)」といえば,その驚異的コストパフォーマンスの高さで知られる,ここ〈辛〉しかない(→ 参考1参考2).

正午前に店に入った,幸いまだ混んでいなかったので,韓国語のテレビの真ん前に陣取り,「蔘鷄湯」の到着を待つ.まず,前菜三品が運ばれる.ほどなく石鍋に煮えたぎった「蔘鷄湯」の登場だ.すでに熱々なのに,さらにガスコンロで熱し続ける.

ここの「蔘鷄湯」はご飯がすでに入っていて,鶏肉をほぐして食べている間に,雑炊にしてしまおうということらしい.それにしても冷房らしい冷房もない店内で,ハングル文字と韓国語会話の飛び交う中,額に汗して「蔘鷄湯」を食べ続けるというのはガマン大会ではないか.

でかい骨付きの鶏肉が入っていて,食べる前にはさみでホネをはずしてくれる.ダシもあっさりしていい具合だし,朝鮮人参やナツメもごろごろと入っている.石鍋いっぱいの量があるのだが,意外にもどんどん食べられてスタミナつきそう.

きりたんぽのようにかたまっていたご飯も最後にはとろとろの雑炊となる.熱い+暑いのダブル攻撃にへばっているようではダメだ.しっかり最後までいただいて,これでたったの「1,050円」(税込)とは驚異的ではないか.いやあ,満腹満足.

◆午後も曇って蒸し暑さがきびしい.夕方5時すぎに小雨が降ったが,その後は晴れてきた.しのぎにくいシーズンになると足元快適なサンダルがほしくなる.〈ASSE〉の靴屋で,Birkenstock の TATAMI シリーズの新製品「ミシシッピ」を衝動買いしてしまった.

◆夜の至福 —— 早くも評判になっている FireFox の最新版(version 3)をインストールしつつ,王碌の〈渓[うすにごり]〉をぐいぐいっと.やっぱりこの酒の強さと炭酸の爽快さは心地よいなあ.

と,いい調子で呑み進んでいたら,そのうちストンとノックアウトされました.へろへろとヨコになったり,またタテになったり.お香の夢を見た記憶がかすかにあるのだが,瞬間的に涅槃にいたのだろうか.

◆明日は久しぶりの平常営業日だが,すでに山積している事務仕事に追い回されることになっている.締切を過ぎてしまった大トドも何頭かいるし,群れ騒ぐ小トドにいたっては数える気にもならない…….事務的な仕事がぜんぜん進捗しないというのはビョーキなのかも.

◆本日の総歩数=9747歩[うち「しっかり歩数」=927歩/10分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.3kg/−0.6%.


18 juni 2008(水) ※ 成田でフルムーンを仰ぐ平日年休

◆午前4時半起床.曇りのち晴れ.北寄りの風が吹く.気温17.4度.一瞬だけ農環研に実在するも,瞬時にして撤収する.本日は年休日ゆえ長居は無用.

◆朝のこまごま —— 方々に買い出しに向かい,雑用をこなす.ぜーんぜん休んでいない……./午前11時前にTXつくば駅改札にて,海游舎の本間さんと会い,1年ほど停滞していた:スコット・カマジン他著『生物システムにおける自己組織化(仮題)』(松本忠夫・三中信宏共訳,2008年近刊,海游舎 → 目次感想サイト)の今後の予定についてミーティング.秋には出そうということになったが,索引とか proofreading とかハードルがいくつかある.刷り上がりは600ページくらいとのこと.

◆よく晴れて日射しが強い.気温は高め.もちろん夏日だろう.

◆午後からの遠距離往復 —— すべての段取りが直前に終わり,14:50つくばセンター発の成田空港バス「エアポートライナー」に乗り込む.第2ターミナルビルに着いたのは午後5時半だった.平日のこんな時間帯なので,カウンターも店もガラ空きで.約2時間ほど滞在したのち,生ビールをぐいっとあおり,チキンソテーとオムライスを喰ってから,20:10発のバスで帰路につく.晴れ上がった夜空には満月がこうこうと.つくばセンターに到着したのは午後10時前だった.夜になっても気温は高め.

◆往復バス中読書 —— 高野潤『アマゾン源流 「食」の冒険』(2008年6月13日刊行,平凡社[平凡社新書425],208 pp.+カラー図版16pp.,ISBN:978-4-582-85425-1 → 目次版元ページ).読了.食材も調理法も魅力的.前著:高野潤『アマゾン源流生活』(2006年1月11日刊行,平凡社,ISBN:4-582-83297-0→目次書評)の「食」の部分に特化した新書.主食である“ユカ”と“バナナ”のバリエーションがすごいな.もちろん,アマゾンの肴たちも.読んでいるうちにブユがぶんぶんとまとわりつく感じがする.カラー図版がこれまた楽しめる.ヤシの実ジュースがとてもうまそう.

この著者が,同じ平凡社新書で:高野潤『アンデス 食の旅:高度差5000mの恵みを味わう』(2000年11月刊行,平凡社[平凡社新書064],ISBN:978-4-582-85064-2 → 版元ページ)という本を書いていることを知った.シンプルに買い忘れです.

◆今日は年休のはずが,ぜんぜん休めなかった.しかし,明日はまたまた振替休日だったりする.※なーんだか徹底的に休んでいる気がする.昨日のさなぶりのときも「みなかさん,ぜんぜん会いませんねえ」という声が方々から聞こえた.だって,いないんだもん.

◆本日の総歩数=14674歩[うち「しっかり歩数」=1039歩/11分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.前回比=+0.3kg/+1.2%.


17 juni 2008(火) ※ 方々から有言無言のプレッシャー

◆午前5時半に遅い起床.前夜の鶏さんやら豚くんやら御犬様の祟りだろうか,すこしよろっと…….北寄りの風がとても強くて涼しい.晴れときどき曇り.

◆朝からプレッシャーいろいろ —— 11月のISHPSSB(神戸)の段取りを進めないといけない.諸連絡が滞ってます./農水交流センターからの督促メール.10月の分子系統学講習会のコーディネートの件で.うう,これもまだ./岩波書店から“真剣”な執筆してくださいメールあり./その他,無言ながらいろいろと圧力がかかっている.

◆午前11時半,晴れ.気温22.3度.日射しは強いが,北東風が心地よし.

◆正午,別棟にて「さなぶり」.やや喰い過ぎの気配が濃厚だが,デンプン質が主体なので,アタマをかじったり,セボネに食いついたりという“野獣”に変身することはなかった.ごく健康的な昼間の食事会ということで.午後1時前にヘルシーに終わった.先日の松戸での〈展覧会の絵〉のDVDをいただいたので,こわごわ鑑賞する(汗).

◆届いた古書 —— Willi Hennig[Translated by D. Dwight Davis and Reiner Zangerl]『Phylogenetic Systematics』(1966年刊行,University of Illinois Press, Urbana, vi+263 pp.[hbk]).初版を買うのを,まるで盲点に入ったように,今の今までうっかり忘れていた.

ぼくが学部4年生のときに買ったのは,第2刷:『Phylogenetic Systematics』(1979年刊行,University of Illinois Press, Urbana, xvi+263 pp.,ISBN:0-252-00745-X [hbk])で,新たに書かれた序文:「Forward by Donn E. Rosen, Gareth Nelson, and Colin Patterson」のアジ演説を読んでしまったのが,今にして思えば“運の尽き”だったかな.その後,ペーパーバック版で第3刷:『Phylogenetic Systematics』(2000年刊行,University of Illinois Press, Urbana, xvi+263 pp.,ISBN:978-0-252-06814-0 [pbk] → 版元ページ)が出て,現在,新刊でも買うことができる.

しかし,初版時のドイツ語からの翻訳ミスはまったく直っていないので,できることならドイツ語の原書:Willi Hennig『Phylogenetische Systematik』(1982年刊行,Verlag Paul Parey, Berlin)を参照するのがベストだろう.とくに,Hennig の種概念に関しては,英訳本では明らかに誤訳されているので,それでは著者の意図はきっと正しく伝わらないだろう.

◆秋のお座敷 —— 植物病理学会関東部会(9月14日,日大湘南キャンパス)の「若手の会」に呼ばれることになった.ありがとうございます.タメになる話がいいんでしょうか,それともヤバい噺がいいですか?>きみたむさん.

◆かなり強い“衝撃”を受けました —— ある学部学生さんから質問メールがあり,「形態の情報から進化の道筋を推定したり、共通祖先の形を推測したような論文などをご紹介頂けないでしょうか」と訊かれた.「え?冗談でしょ」と思って,何度か読み返してみたのだが,やっぱりストレートに受け取るしかない.

形態の情報からの系統や進化に関わる推論は,少なくとも1980年代末までの「それしか情報ないじゃん」な時代では,当たり前に行われていて,形態形質のコード化や最適化の問題は,教科書や論文でも“山のように”あったはず.Systematic Zoology 誌でも Cladistics 誌でも枚挙にいとまはありません.

これは非難しているとか,糾弾しているということではなく,シンプルな疑問なのですが.ひょっとしていまの若い学生さんたちは,いきなり「ブンシケイトウガク」から入門してしまったので,それ以前の体系学や系統学の“学的伝統”みたいなものを受け継いではいないのでしょうか(そうなんでしょうねえ).あるいは,形態系統学は想像以上に急速に忘却されつつある?

—— ご質問につきましては,のちほど,ご返事いたします.たとえば,形態形質のコーディングの問題はいまでも未解決です.また,形態測定学と系統推定とを組合するというアプローチもありますね.論文集・教科書も何冊か思い浮かびます.

◆明日は年休なれど,ちーとも休めないのだ.

◆本日の総歩数=11173歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=0.0kg/−0.8%.


16 juni 2008(月) ※ 鶏を齧り,田螺を吸い,犬を喰う

◆午前4時起床.曇り.北東風が涼しい.気温16.8度.早朝の研究所にてばたばたと本日の講義資料をつくったり印刷したり.

◆晴れて日射しがまぶしくなってきた午前のこまごま —— オーストラリア$を買ったり,銀行で振り込んだり,成田空港行きバスのチケットを取ったり.

◆11:41発のTX快速で早めに経堂へ.農大通りは初夏らしい日射しの強さだった.講師控え室にてスライドやデモの準備をする.14:40から農大かもし高座(9回目).処理平均の差に関する多重比較の原理とさまざまな補正法について説明する.16:00まで.次回は線形モデルの仮定と一般化線形モデルへの拡張に進む予定.来月の試験と学生アンケートの実施をそろそろ考えないといけない.

◆経堂から池袋に向かう.時間があったので西口メトロポリタン前の〈カムデンタウン〉に立ち寄って,生ギネスを1パイントあおる.

午後6時前にJR池袋駅の北口改札にてワルイ面々が集結する.警官が異様に多いのでびくびくする.その足で,ふだん来る機会がない北口の駅前繁華街に潜入し,とあるビルの深い地下階段を降りて,目的の中国延辺料理店〈金王府〉に入った.独特の香りが漂う店内は,まさにチャイナ一色で,日本語もほぼ通じないようで,チャイニーズが方々のテーブルで飛び交っていた.しかし,壁に張られた料理の写真はどれもたいへん魅惑的で,食慾が大いにそそられる.

「延辺料理」というのは,中国国内の北朝鮮国境近くでの料理とのことで,中華料理と朝鮮料理のハイブリッドなのだそうだ.

それにしても食材がぜーんぜんちがうぞ,これは.まずは北京の燕京ビールを呑みつつ,いくつか注文してみた.セロリと干し豆腐の煮物などという理性的なものもあるのだが,それは序の口にすぎなかった.

まず最初にドギモを抜かれたのが「鶏頭の煮物」.まさにこの写真(→)の通り,トサカが付いたままの鶏の頭が二つ割りになって煮込まれている.ホネも脳みそも目玉もぜーんぶそのまま.薄味に煮込まれていて,独特の香辛料(八角か)の匂いもあいまって,とても美味い.しかし,グロい.くちばしはさすがに硬かったが,それ以外の部分はすべて喰うことができた.鶏の頭をがりがり喰うなんて誰がみてもケダモンだ.

しかし,それで終わりはしなかった.次に,「骨付き豚肉の煮物」が大皿に山のように盛り上げられて運ばれてきた.しかも,ひとりずつに台所用のビニール手袋が配られ,手掴みで齧れと店員さんが店内第二外国語の日本語で説明してくれた.盛られた肉をよくよく見れば,縦にすっぱり割られた豚の巨大な背骨がそのまま煮込まれているではないか.背骨に張りついた肉をこそげ取って食べる.「なんちゃら白酒」という「42度」もある“ワイン”(ラベルにそう書かれていた)をストレートであおりながら,ケダモンたちはひたすら背骨をしゃぶり尽くす.黒ミサだ,サバトだ.

そういえば,早く注文したタニシの辛味煮込みがまだ来ないので急っついてみたら,どうやらとても手間のかかる料理だったようだった(地下への階段の途中にタニシがいる水槽があったそうな).やがて,大皿に二百個ほども小粒のタニシが赤唐辛子とともに煮込まれたのがやってきた.しかも,ひとつひとつの貝殻の“頂上”がていねいに潰されていて,身が吸い出しやすくなっている.時間がかかるはずだ.ときどき口直しにタニシをすする音が方々から聞こえる.

さて,今日この店に来た第一の目的は「犬を喰う」ためだ.日本では犬が喰えるところはほとんどない(と思う).さっき立ち寄った〈カムデンタウン〉のマスターは「池袋で犬が食べられるんですか」と半信半疑だったが,確かにいま目の前にはさばかれて煮込まれた犬肉が並んでいる.辛い薬味と香草とともに食べるのだが,なかなか美味いじゃないか.白酒にとてもよくマッチしている.初めての犬食体験だったが,肉と脂身のバランスが好ましい.ここまで来た甲斐があったというものだ.

—— 午後6時過ぎに店に入って,出てきたのが午後10時半.アクマのような食慾で肉を喰い尽くした感があったが,会計は意外にもリーズナブルだった.上海料理にある豚の脳みそとかアヒルの血の煮込みはそれはそれで心地よいショック体験だったが,トサカや背骨やタニシを喰うというのもまた新たな食文化ショックだった.

◆つくばに帰り着いたのは零時過ぎ.午前様かよ.今日は荷物をひとつにまとめたので,車内に忘れ物をするような失態はなかった.

◆本日の総歩数=15297歩[うち「しっかり歩数」=4048歩/37分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.2kg/−0.3%.


15 juni 2008(日) ※ さくさくと連載原稿を書き終える

◆午前5時起床.晴れときどき曇り.北風が涼しい.ここのところ湿度の低い日が続いているので快適.

◆早朝から『』の連載原稿をなおも書き続ける.朝食までにほぼ半分まで書き進む.すでに慣性運動で書き進み始めているのでもう止まることはできない.午前中に3/4まで進む.もう少しだ.午後2時半に書き上げる.これでおしまい.連載終了記念に髪の毛を切ってから,研究所に潜入し,文面の最終確認.そして音羽にメールで原稿送信完了.

—— というわけで,最終回は次のようになりました:三中信宏「“種”よ,安らかに眠りたまえ」.『』連載第14回(最終回),2008年8月号掲載予定.節構成は:「ゲッティンゲンの石畳を踏みしめて/パウルとフランツィスカの物語/新しい革袋に古い葡萄酒を詰める/永遠なる「種」を慕って生き続ける」.最初の予定とはだいぶ変わってしまったが,エンディングとしては悪くないかなと少しだけ自画自賛してみる.

◆日曜午後のこまごま —— 組合動員メールを放ちまくる.当たった人,よろしくよろしく./講談社の原稿の次は,日経サイエンスの補足囲み記事だ.ヒルガタワムシだ.

◆午後4時前.晴れ.気温は22.6度.日射しは強いが湿度が低くてよろしい.赤紫色の夕焼けが広がる.

◆夕方の待ち時間の読書 —— 山田慶兒(編)『東アジアの本草と博物学の世界(上)』(1995年7月21日初版刊行/2007年10月5日復刊第2刷,思文閣出版,京都,x+333+xix+2 pp.,本体価格7,500円,ISBN:4-7842-0883-6[初版]/ISBN:978-4-7842-0883-8[復刊]→ 目次版元ページ)の第1部〈分類〉所収論文の残り:木村陽二郎「植物の属と種について」(pp. 43-71)/西村三郎「東アジア本草学における「植虫類」:西欧博物学との比較の一資料として」(pp. 72-101)

木村陽二郎は,「種とは何か」という設問に対して:

かつて「種とは何か」という問いが雑誌に連載され私も問われたので私は「人がこれこれの形質をもったものがこの種であると定義したものが種である」とした.(p. 50)

という絶妙な答えをしている.ここでいう“雑誌連載”とは,『採集と飼育』(日本科学協会)の1983年第45巻に掲載された連載のことだ.あとでチェックしよう.

続く西村三郎は,植虫類(Zoophyta)の分類学的・本草学的地位の変遷を論じているのだが,「西欧博物学との比較の一資料として」というサブタイトルがあるように,博物学的精神の東西差についての考察が最後になされている.

東アジアの伝統的な本草学・博物学[……]に顕著なのは,個々の自然物を薬効・その他の点で有用な部分に焦点を合わせながら記述していくという姿勢である.[……]そこでは,自然物全体よりも個物が,さらに,個物の有用な「部分」が個物の「全体」に優先さえする.そして,この姿勢が貫かれた場合には,全体としての自然物の配置=体系づけについての目配りが希薄になるばかりか,時として,同じあるいは同類の自然物がまったく別個の部類に配属されて扱われ,記述されるという,奇怪な事態もしばしば起こる.(p. 96)

本草学では「記載の科学」から「分類の科学」への進展が滞っていたということなのだろうか.西村は,実用性という観点が東洋の本草学の中心的教義であり続けた点に着目し,西洋との差異を特徴づける:

そもそも本草学とは,薬効のある自然物をしからざる類似物からはっきりと,しかも簡便に見分けることを主目的としたひとつの技術体系である.必ずしも物自体の本性を究めようとするものではない.物がどの部類に配属されようとそれはいわば第二義的な問題でしかない.[……]これに対して,いち早く本草学の段階から抜け出た西欧の博物学はどうであったか? 単に自然物を正確に見分けるだけでなく,物それ自体の本性を問い,人間中心の立場をはなれて,自然全体の秩序のなかにおけるその位置を明らかにする —— これを目標とするものであった.(p. 97)

のちの大著『文明の中の博物学:西欧と日本(上・下)』を髣髴とさせる論考だ.

◆雑誌連載という“山”を制覇したので,ちょっと乾杯してみたり.しかし,明日の農大かもし準備が滞っている.夜はその準備をして,明日未明にコピーして支度を完了させないと間に合わない.“のりしろ”のない生活が続く.

◆本日の総歩数=6268歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.9kg/+0.3%.


14 juni 2008(土) ※ 地面が揺れて,北風が吹きわたる

◆午前5時起床.晴れ,北の風.すでに暑い.玄関近くで,ずいぶん久しぶりにヒゲナガガを目撃した.

◆午前8時43分に大きく揺れる.室内ではいくつかものが落下してきたが実害はなかった.しかし,農環研の居室ではきっと本の“プチ崩落”があったにちがいない.「岩手・宮城内陸地震」と命名されたとのこと.震源地では震度6強.つくばあたりは震度4だった.

◆日射しは強いが,北風もまた強い.湿度が低いので,日陰にいるかぎりは快適だ.ただし,部屋を閉め切るとすぐ“温室”になってしまう.

◆今日は午後から夜にかけて,『』の連載原稿を書き続けた.全体の半分ほどまで書き進み,節構成は大きく変わることになった.連載のエンディングにいたり,ようやくヘッケルが登場し,“das ewig Weiblich”を求めて彷徨する.舞台はゲッティンゲンです.

◆夜になっても,北寄りの風がときおりごうごうと吹いていた.

◆本日の総歩数=6103歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.7kg/−0.5%.


13 juni 2008(金) ※ 紫外線を浴びまくって突然変異中

◆午前4時起床.薄曇りながらも晴れ.気温11.1度と低め.南風が涼しい.朝日がのぼるとともに紫外線攻撃そこかしこ.

◆午前の捕獲大作戦は失敗に終わる —— だいぶ前に依頼があった「l'oiseau de feu」を捕獲せよとの指令を実行すべく,自宅の書棚から貸倉庫の本の堆積まで方々調べたのだが,どこかに飛び去ってしまったようだ.東大オケでやったときに買ったことは確かなのだが,こうも頑固にお隠れになっているところをみると,いまは出たくないということだろう.l'oiseau de feu の場合,Eulenburg の「全曲版」よりももっと薄い「組曲版」の方が,総譜の値段が1.5倍もするというのはフシギなことだが,出版社がちがえばしかたがないことか.国内での総譜の価格は昔からめっちゃ高いのだが,とくにフランスで出されているものは極度に高い.高すぎる.

—— ということで,すみません,ブツを捕獲できませんでした.

◆午前11時.ぎらぎらと晴れて気温は25.5度.暑い.こまごまは続く —— 組合の動員依頼をサボっていた.全国交流集会とか研究職なんちゃらとかいろいろある.あとでまとめて白羽の矢を立てます./次期の地本役員とか分会役員の選出についてのあれやこれや.ノミネートされる順位がほぼ“トップ”なので覚悟しないといけない……./海游舎からずいぶん久しぶりに電話があった.例のカマジン本:スコット・カマジン他著『生物システムにおける自己組織化(仮題)』(松本忠夫・三中信宏共訳,2008年近刊,海游舎 → 目次感想サイト)の翻訳作業がほぼ1年ぶりくらいに再起動するとのこと.6月18日(水)につくばにて打合せをする予定.

◆あわてて買うワタシ —— 倒産してしまった九天社の買い忘れ本が2冊届いた.

データマイニングに関する姉妹本で:熊谷悦生・舟尾暢男『Rで学ぶデータマイニングI:データ解析の視点から』(2007年5月7日刊行,九天社,ISBN:978-4-86167-176-0 → 版元ページ)と熊谷悦生・舟尾暢男『Rで学ぶデータマイニングII:シミュレーションの視点から』(2007年10月18日刊行,九天社,ISBN:978-4-86167-198-2 → 版元ページ).

—— これで,九天社から刊行された「R本」全6冊(→リスト)を入手完了できた.

◆昼下りの新聞取材 —— 朝日新聞大阪支社から電話取材あり.またも「【種】って何さ?」という質問.最近は方々からかなりダイレクトにこの質問を受けるようになった.とある琉球の島々に産するヤモリの“新種記載”論文についての問い合わせでした.約半時間ほどかけて電話口で【種】の除霊をしたので,近日掲載予定の記事ではきっとスッキリしているでしょう.※ホンマかっ.

◆のんだくれる夕べ —— 午後4時に早々と撤収し,いったん帰宅する.

まだ暑さが残り,気温は27.4度.晴れときどき曇り.南風.午後6時半に小野崎の〈食遊房・田〉にて,三輪哲久さんの計量生物学会賞受賞祝賀会をば.午後9時過ぎまで呑む呑む.一次会はこれで終了.

しかし,さらにのんべたちは新たな空きニッチを求めて,〈どやどや〉に向かうもののすでに飽和していた.しかたなく転戦して〈円喜門〉に転がり込む.

—— けっきょく日が変わる直前に帰宅.午前様にはならなかったが,リミットすれすれ.

◆明日からの週末は原稿書きと高座支度に費やされるだろう.

◆本日の総歩数=13600歩[うち「しっかり歩数」=1413歩/13分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.4kg/−0.2%.


12 juni 2008(木) ※ 今日は梅雨寒にして雨降りまくり

◆午前4時半起床.雨また雨.ざあざあ降ってます.気温は午前5時は19.5度だったが,その後は冷たい北寄りの風が強まりさらに低下傾向.今日は梅雨寒で最高気温は20度に達しか達しないかという予報.

◆早朝のこまごま —— 昨日の大学院ガイダンスの報告を他の連携教員に流す./来月14日(火)の東大学部学生の農環研見学に関する打合せ.午後はじめの1時間弱という時間設定なので,見学コースを最節約的に計画しないと間に合わない.宿泊先は例年とは違って岩間の東大附属牧場なので,やっぱり襲撃するしかありませんか?(ん?)/日経サイエンス編集部より連絡あり.本文にも登場するヒルガタワムシに関して、分子系統樹から判明した遺伝子の水平伝播に関する Science 論文 —— Eugene A. Gladyshev, Matthew Meselson and Irina R. Arkhipova, 2008. Massive Horizontal Gene Transfer in Bdelloid Rotifers. Science, 320 (30 May 2008): 1210-1213(DOI:10.1126/science.1156407)の要約をボックスとして設けてほしいという依頼.タイムリーでよろしいのではないでしょうか.ベイズ法と距離法による系統推定.

◆『もやしもん』についてのメモ —— 先日の三重大学でのシンポジウム講演では,日本菌学会“公認”のマンガとして,石川雅之『もやしもん』を講演スライドに登場させた.夕方の懇親会でのVIPの挨拶ではそのことに触れられたのだが,学会員には予想していたほど浸透していなかったようで,三重の大会で初めて『もやしもん』を知った教授が帰ってから研究室で宣伝したというような話があるブログに載っている.関東支部会で原作者が講演したこともあったので,てっきり周知されていたのかと思っていたが,意外です.

手塚治虫文化賞と講談社漫画賞のダブル受賞ということで,『もやしもん』はイッキにメジャーになった.これに後押しされて,某農大を受験しようという高校生が増えているらしい(ホンマかっ).

◆届いた新刊 —— Robert J. Richards『The Tragic Sense of Life: Ernst Haeckel and the Struggle over Evolutionary Thought』(2008年5月13日刊行,The University of Chicago Press, Chicago,xx+551 pp. with 8 color plates,ISBN:978-0-226-71214-7 [hbk] → 目次版元ページ著者ページ).ずいぶん待たされたが,やっと現物が届いた.約600ページという大著だ.まあ,相手がヘッケルという大物なので,これくらいは書かないとダメなのかもしれない.

著者は前書きで,この本は前著:Robert J. Richards『The Romantic Conception of Life : Science and Philosophy in the Age of Goethe』(2002年12月刊行,The University of Chicago Press,ISBN:0-226-71210-9 [hbk] → 目次)の“姉妹本”であるとの位置づけをしている.前著ではドイツのロマン主義の影響がダーウィンにまで見られると論じて物議をかもした.となると,本書でも,ロマン主義者としてのヘッケルの側面が強調されているにちがいない.

しばらく前に,Mario A. Di Gregorio『From Here to Eternity : Ernst Haeckel and Scientific Faith』(2005年6月刊行,Vandenhoeck & Ruprecht, Göttingen[Religion, Theologie und Naturwissenschaft : Band 3],ISBN:3-525-56972-6 [hbk] → 目次)という,これまた650ページもある大きなヘッケル伝が出ている.両方を並べて読むというのは気力と体力の勝負かも.

◆午前11時,雨が降り続く.気温は14.8度.明け方よりも5度も下がっている.梅雨寒.

◆朝のこまごま —— 農大かもし高座(9回目)の支度をはじめる.三点セットのうち出席カードはすぐに用意できたが,スライドとハンドアウトはまだ.処理平均の差に関する多重比較についての新作スライドがどうしても必要だが,今日はその気力が出ない.あとまわし./用事のメールがまたまたホコリのように堆積し始めた…….

◆その後はひたすら原稿書きに勤しむ.

◆午後2時すぎには雨はやみ,西から空が明るくなってきた.午後3時には青空が広がる.午後4時に撤収し,涼しい北風に吹かれつつ.つくばセンタービルで2年ぶりの“血抜き”をしてもらった.ワルイ血の瀉血ではなく,良い?血の献血を400ccほど.しばらく社会貢献をしないうちに,ずいぶんと近代化されたようで,献血手帳が献血カードに,問診票もコンピュータ入力になっていた.

◆Robert J. Richards のヘッケル伝をぼちぼち読み始めているが,わくわくする事実がいくつも出てきて飽きない.ヘッケルの家系をことこまかに詮索した:Heinz Brücher『Ernst Haeckels Bluts= und Geistes=Erbe : Eine kulturbiologische Monographie』(1936年刊行,J. F. Lehmann, München,ISBNなし→目次)の著者はナチ親衛隊(SS)の一員で,当時のイエナ大学学長のナチ高官 Karl Astel の影響下でこの本を著した.

Astel は第三帝国の崩壊と運命をともにして,ドイツ敗戦時に総統閣下のあとを追い執務室でピストル自殺したのだが,Brücher については戦後も長く生きたということしかわからなかった.Richards のこの本には彼について興味深い記述が見られる(p. 505 footnote 21).ナチス党員だった Brücher はご多分に漏れず敗戦とともに南米アルゼンチンに亡命した.彼の最期はなかなかドラマチックだ.専門だった植物遺伝学の知識をもって彼はコカの栽培に関わったのだが,それが災いして麻薬密売組織に暗殺されたとか,戦時中のユダヤ人迫害のかどで,イスラエルの諜報組織モサドに消されたと言われている.

—— ヘッケルが悪いわけでは必ずしもないのだが,彼の生前と死後に関わる人間模様は確かに“悲劇的”な雰囲気が色濃く漂う.

◆夜,ついいい気になって,〈〉が空っぽになってしまった…….またイチコロでした.

◆明日は農大かもしのためのスライドづくりと,ひたすら原稿書きの一日になりそう.

◆本日の総歩数=8110歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.9kg/+0.4%.


11 juni 2008(水) ※ 本郷での合法的オルグ活動に専念

◆午前4時半に起床.曇り.北寄りの微風が涼しい.

◆早朝の善行 —— 実にめずらしいことに,『』の連載最終回の原稿を書き始めることにした.いつもなら『本』の最新号が届いてからあわて出していたのだが,どーいう風の吹き回しか.実は,締切までまだ10日もあるのだが,先日から書くべき内容をメモしていたら,すでに400字詰20枚ではおさまりきらないほどになってしまったという事情がある.節の構成も書き進むとともにじわじわとアップデートすることになるだろう.

◆曇り空とともに湿気が襲来する.もっとも歓迎されざる空模様だ.

◆【種】の残響は長いぞ —— 『』の連載の反響が諸方面からぼちぼち聞こえるようになった.コピーのリクエストや読後感を送ってこられることもある.ありがとうございます.yuiamiさんの〈まとまり日記〉の6月10日付の記事「ジンマーの〈種〉記事をめぐって」には,カール・ジンマーの記事「種とは何か?」に関連する情報が提供されている.

John Wilkins のブログ記事でいう「phenomenal salience」とは,Scott Atran たちが使ってきた「phenomenal world」における認知可能パターンのようなものではないでしょうか.“山”や“集落”のたとえはダーウィン自身も言及していますし,David Wiggins (1980) にも出てきます.もちろん,ワタシも『』の連載3回目で登場させました.

◆12:11発のTX快速で東大に向かう.根津で地上に出たら,青空がのぞいて蒸し暑かった.弥生キャンパスの隠れ部屋で原稿をちくちくと書いているうちに時間になった.

今日の公務は,農学部の生物・環境工学専攻の大学院入試ガイダンスでのオルグ活動だ.定刻の14:00を少しすぎてガイダンスは始まった.参加した学生は20人ほど.学外からの参加者も数名いる.全体説明に続いて各研究室ごとの説明がある.エコロジカル・セイフティー学講座について5分ほど説明した.午後4時過ぎにガイダンスが終わったあと,ひとりの学生が質問に来た.志望してくれそうな感触だ..わざわざ来た甲斐があったというものだ.

—— 根津神社脇から不忍通りにおり,いつもの〈芋甚〉にてあんみつを買い求める.晴れて蒸し暑い.こう暑くなってくると,鯛焼きではなくあんみつか豆寒ですな.そのまま根津から乗車.つくばには午後5時半に早々とたどりついた.北の風が通り抜けてはいるが,まだ気温は高いまま.

◆往復車中読書 —— Alberto Manguel『The Library at Night』(2008年3月17日刊行,Yale University Press,New Haven,viii+376 pp.,ISBN:978-0-300-13914-3 [hbk] → 目次版元ページ)をさらに読み進む.第1章読了.後半はバベルの塔の話.第2章は図書分類の話.たのしいたのしい.分類とカテゴリー化には終りがないという指摘:

Then there would be groupings within groupings. As I learned then, but was not able to articulate until much later, order begets order. Once a category is established, it suggests or imposes others, so that no cataloguing method, whether on shelf or on paper, is ever closed unto itself. (p. 39)

もうひとつ,とてもいいことばが出てくる:

Habent sua fata libelli. (p. 42)

そうそう,だから本は大切に見守りましょう.そして,一期一会を旨とせよ.

◆〈R〉本をたくさん出してきた「九天社」がいきなり倒産していた(→会社サイトには「自己破産」したと公告されている.書籍データは別サイトに移されているがこちらも近日中に閉鎖予定とのこと).そんなバカな.いずれにせよ,買い残した本は,まだ流通している在庫があるうちに入手しておかないとたいへんだ.

◆今日は日中とても暑かったので水分が不足気味.だから,鯖江の加藤吉平商店が出している〈〉のうすにごり活性生原酒を夕食でごくごく呑んだものだからイチコロでした.炭酸が効いているからといって油断してはいけません.ハイ.酒米は山田錦ではなく五百万石.

◆本日の総歩数=9011歩[うち「しっかり歩数」=3071歩/29分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.7kg/0.0%.


10 juni 2008(火) ※ 【種】の憑依からようやく逃れる

◆午前5時起床.濃霧で霧雨.弱い南風.気温14.6度.湿度は高いが涼しい早朝.のち急速に霧が晴れ,青空に.

◆“エクソサイズ”成就 —— 朝イチで「訳者ノート」を書いて,午前10時に翻訳原稿とともに日経サイエンス編集部にメール送信する.これにて一件落着.やっと憑き物が落ちました.

カール・ジンマーの元記事「種とは何か?」の本文だけで400字詰の原稿用紙で30枚ほどだが,図表のキャプションなどでさらに10枚弱.あの版形とフォントサイズならば納得できる分量だろう.

ぼくの記した「訳者ノート」は下記の通り:

「種」は生物多様性に関わる根幹となる概念であると考えられてきた.しかし,本記事で解説されているように,現在にいたるまで「種とは何か」をめぐる論争は終結するきざしがない.種とその定義に関心をもつのは生物学者だけではない.種の存在論的地位をめぐっては生物学哲学でも論議が続いている.これについては,種の形而上学に関するマイケル・T・ギゼリン(Michael T. Ghiselin)の著書『Metaphysics and the Origin of Species』(1997年,State University of New York Press, Albany)が参考になる.また,人間に固有の認知心理学的性向が生物分類や種概念の根底にあるという研究も一方で進められている.スコット・アトラン(Scott Atran)の認識人類学の著書『Cognitive Foundations of Natural History : Towards an Anthropology of Science』(1990年,Cambridge University Press, Cambridge)やブレント・バーリン(Brent Berlin)の民俗分類学の著書『Ethnobiological Classification: Principles of Categorization of Plants and Animals in Traditional Societies』(1992年,Princeton University Press, Princeton)を見られたい.このように,種問題をめぐるアプローチは生物学・哲学・心理学の多岐にわたっている.ジョディ・ヘイ(Jody Hey)による包括的な論考『Genes, Categories, and Species: The Evolutionary and Cognitive Causes of the Species Problem』(2001年,Oxford University Press, New York)は,種問題の根の深さについて考えるきっかけとなるだろう.

◆昼前には快晴,日光も紫外線もさんさんと降り注ぐ.午前11時半の気温は26.0度.午前のその他のこまごま —— 三輪さんの受賞祝賀会は6月13日(金)の夜,東新井のジンギスカン〈綿羊〉にて.札幌スープカレーが食べられるそうだが,ホンマかいなあ./郵便小為替とか./明日の東大での専攻ガイダンスの打合せ.プレゼン資料をつくらないと./Cladistics誌バックナンバーの荷作りをして発送完了./『』連載記事のハードコピーを郵送完了./「業績評価結果通知書」なるビラを手渡される.今年は「A」でした./来月の“密会”は一日早まることになったというワルの元締からの電話あり.場所も変更された.

◆午後もこまごま —— 応用統計学会大会の特別講演報告をちゃちゃっと書いて,大会事務局にメールで送信する.原稿用紙二枚弱./計量生物学会大会参加費の立替払いを請求する./NHK出版会に書評コピーを送る.

◆午後3時の気温は27.2度.強い西日が射し込んで居住性が急速に悪化する.

◆夕刻のこまごま —— 明日の東大・専攻ガイダンスは対象が大学院受験者なので,連携講座の内容について各研究室から説明しないといけないのだが,人がそろわなさそうなので,ワタクシが代理で一席ぶちあげましょう.そーしましょう.めったにつかわないpptのプレゼン用スライドをアップデートし,自分用とピンチヒッター用のスライドを取りそろえる.いずれにしても,ひとりの持ち時間はたった二分半なのであっという間だろう.

◆午後5時半に撤収.気温24.7度.確かに暑いことは暑いのだが,湿度が低くからっとしているのが救いだ.南風が心地よい.

◆夜の図書館 —— 追い込まれ翻訳作業から解放されたので,すかさずアヤシイ系に逃げ込む:Alberto Manguel『The Library at Night』(2008年3月17日刊行,Yale University Press,New Haven,viii+376 pp.,ISBN:978-0-300-13914-3 [hbk] → 目次版元ページ)を読み進む.“夜の図書館”の描写がかっこいい:

But at night the atmosphere changes. Sounds become muffled, thoughts grow louder. “Only when it is dark does the owl of Minerva take flight,” noted Walter Benjamin, quoting Hegel. Time seems closer to that moment halfway between wakefulness and sleep in which the world can be comfortably furtive, my activity secret. I turn into something of a ghost. The books are now the real presence and it is I, their reader, who, through cabbalistic rituals of half-glimpsed letters, am summoned up and lured to a certain volume and a certain page. The order decreed by library calogues is, at night, merely conventional; it holds no prestige in the shadows. (pp. 14-15)

たまに夜中に研究所の居室に籠っていると,暗い本棚の隅のあたりから黒い煙が立ち上り,何やらあやかしのものどもがごそりごそりと…….昼と夜ではがらりと変わるようで.

During the day, the concentration and system tempt me; at night I can read with a lightheartedness verging on insouciance. (p. 18)

—— よい子は夜に本を読みましょう.

◆明日は午後から東京にプチ出奔する.

◆本日の総歩数=10500歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.6kg/−0.3%.


9 juni 2008(月) ※ 雨が降り雷が鳴り原稿が舞い飛ぶ

◆午前3時起床.曇り.気温19.2度.研究所に直行し夜明け前の一仕事をすませる.しだいに明るくなるはずが,雨模様となる.予報通り.

◆午前中は統計スライドを新しくつくりはじめてしまう.もうドロヌマ…….けっきょく,午後の講義には関係ないことが判明した.

◆12:11発のTX快速で経堂に向かう.蒸し暑い曇天.農大通りでぽつぽつと雨が降り出した.予報では本降りになると言っていたが.

◆農大かもし(第8回目) —— 世田谷での講義も後半に入った.大教室が蒸し暑いな.今日は実験計画に関わる線形モデルと分散分析に関する最後の講義.分割区法(split-plot)と細分区法(strip-plot)についての解説.〈R〉でのデモをまじえつつ.最後に,多重比較の門前まで進むことができた.来週は,多重比較の補正と一般化線形モデルへの拡張について説明する予定.

—— ここのところ講義ブログを更新している余裕がないのが実に申し訳ない.

◆講義室を出るころには本降りどころか晴れ間がのぞいていた.あらら.しかし,帰路,千代田線に乗り込んで来る客の傘から水が滴っているところをみると,地上ではしっかり降り始めたようだ.北千住で雷雨に遭遇.夏並みですな.つくばに帰り着いたのは午後6時半.雨は降っていなかった.南風で蒸し暑い.

◆夜は翻訳一筋です.わき目もよそ見も禁物.大量に割りつけられている図表のキャプションをどんどん訳すのみ.午後11時すぎにやっとゴールが見えてきた.「種って何さ?」を何日も背負い続けるというのは負担が大きい…….

◆本日の総歩数=12502歩[うち「しっかり歩数」=4121歩/38分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.6kg/+0.1%.


8 juni 2008(日) ※ 乾いた北東風に吹かれ翻訳三枚……

◆午前4時半にいったん起床,再度寝て午前7時前にのろのろと活動開始.曇り.

◆朝から翻訳三枚…….

◆日中はよく晴れた.高層階は北寄りの風が通り抜ける.さらに翻訳三枚…….

◆備忘メモ —— 応用統計学会の座長要約は6月16日(月)までに.400〜600字./6月11日(水)の東大・大学院ガイダンスの準備.前回に準じる./6月25日(水)の東大・専攻教員会議の前に八木一行さんの歓迎昼食会あり.

◆〈鈴音〉をちょい飲んで,夜も翻訳三枚…….

◆これだけ「三枚」が積み重なれば,翻訳三昧の一日と申し上げてよろしかろう.午後11時までに本文はなんとか完了した.あとはキャプションのみ.とはいえ,これがまた分量多し.明日は丑三つ時からの仕事開始になる.訳者解説も必要だ.

◆著者カール・ジンマーは,過度にテツガクに入り込むことなく,あくまでも生物学者がいま【種】をどのように理解しようとしているのかについて,この総説記事の中で書いている.その意味では“食あたり”する心配はないし,ましてや“アナフィラキシー・ショック”で絶命する懸念は皆無だろう.それにもかかわらず,「種なんて幻想でしょ」と言ってしまう人,「種問題はメルトダウン中です」と避難準備をはじめた人,「でも,やっぱり種が」とこだわる人,などなど登場キャラクターには事欠かない.

—— というわけで,すぐに元ブツを読みたい方は:Carl Zimmer (2008), What is a species?, Scientific American, June 2008, pp.48-55 に直行するよーに(ただし入り口まで).

◆明日は農大かもし(8回目)の日.しかし,準備がイマイチはかばかしくないのがよろしくない…….

◆本日の総歩数=8481歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.1kg/+0.9%.


7 juni 2008(土) ※ またもや筑波大学でプチ仕事をする

◆午前5時半起床.晴れ.北寄りの風が涼しい.

◆早朝のこまごま —— 懸案だった日本進化学会(編)『進化学辞典[仮]』の項目担当案がバルセロナから送られてきた.理研CDBからも関連して提案があったので,この際ざっくりと執筆者のイッキ割り振りをしてしまおうと思い,半時間ほどで約20項目の想定執筆者を考え,バルセロナに返信メールを送った.依頼はまだぜんぜん出していませんので,これから諸方面に“白羽の矢”を乱射しようと思います.届いた方は観念して自発的に刺さってください.よろしく.

◆朝のうちに快晴になり日射しも紫外線も強い.ただし,北からの乾いた風が通り抜けるのでしごく快適.午前中はまたまた翻訳作業にしっかり取り組む.正午過ぎまで.

◆昼は,テクノパーク桜の博多ラーメン〈一休〉にて久しぶりに替え玉など.シンプルに食い過ぎ.その足で,筑波大学大学会館に向かう.一昨日の計量生物学会年会と同じ会場で,今日は日本応用統計学会年会があり,ぼくは非会員だが午後の特別講演の座長を引き受けている.計量生物学会と応用統計学会とは会員の重なり度が大きいはずだが,会場で見るかぎり重複はあまり強くは感じられない.

午後3時10分からの特別講演:岸野洋久(東京大学)「ゲノム進化と変異の統計解析」の座長がぼくの今日の仕事だ.化学平衡の反応式における乖離定数を“尤度比”とみなし,反応速度論の方程式系の定数をデータから最尤推定という話題提供だった.分子配列の統計解析の次に来るはずの物質合成過程の統計解析を狙っているのだろう.ちょうど1時間でお開き.

質疑の時間は岸野さんと“対談”してしまった(フロアからの質問がなかったので).1980年代はじめ,東大の理学部数学科の修士をとってすぐに統計数理研究所に採用されてまもなく,統数研「公開講座」(所員は無料だそうだ)の分子進化学の講義で,ふたつ隣りの研究室にいた長谷川政美さんに出会ったことが大きな転機となったそうだ.

—— 続く特別講演は金融工学関連の話だったので出てきた.そのまま筑波大学からゆらゆらと歩いて帰る.午後5時前に帰宅.日射しがあって,気温は高め.北寄りの風.

◆帰路の歩き読み —— 山田慶兒「本草における分類の思想」.Pp. 3-42 所収:山田慶兒(編)『東アジアの本草と博物学の世界(上)』(1995年7月21日初版刊行/2007年10月5日復刊第2刷,思文閣出版,京都,x+333+xix+2 pp.,本体価格7,500円,ISBN:4-7842-0883-6[初版]/ISBN:978-4-7842-0883-8[復刊]→ 目次版元ページ).いくつか興味深いキーワードが登場するので,下記に備忘メモ:

「世界分類」

世界には本来的な秩序がそなわっている.[……]分類はその秩序をできるだけ正確に表現するものでなければならない.いいかえれば,分類の原理は存在の原理でなければならない.このような存在論の優越こそ,古代人の思考を特徴づけるものだった.ことわっておくが,自然科学者の思考の根底にも根強く存在論すなわち形而上学が横たわっている.[……]古代中国人にとっては,分類を生物に限る理由はどこにもなかった.自然と人間と社会を貫いて同じ秩序原理がはたらいており,したがって人間や社会も自然と同じ空間に位置づけらるべきであった.その空間とはいうまでもなく世界にある.こうして世界像としての分類が生まれる.ここではそれを世界分類と呼んでおこう.(pp. 4-5)

本論考では,過去二千年にわたる中国の百科全書類における「世界分類」のあり方を概観している.登場するのは,『爾雅』(漢代)・『藝文類聚』(624)・『太平御覧』(984)・『本草綱目』(1593)などの中国の百科全書あるいは本草学書だ.著者は,これらの文献に見られる中国の普遍的な「世界分類」のいわば“部分空間”として動植物と鉱物の分類体系が成立したとみなし,「共世界分類」という用語を提示する:

「共世界分類」

この分類が,中国の伝統的知識人にとって結局は通時的なシステムとなった.世界分類の一部を成す動植鉱物の分類である.言外に世界分類を共有しているという意味で,それを共世界分類と名づけておこう.共世界分類は梁の陶弘景によってはじめて本草に適用された.いうまでもないが,共世界分類は一種の自然分類であった.(p. 12)

共世界分類は一種の自然分類であり,本草の分類はその適用である,とわたしは述べた.ここで,自然分類とは,自然的存在が織りなす秩序にもとづく分類,という意味である.一応はそう言ってよい.だが,事柄はあくまで人間の認識にかかわり,それほど単純ではない.(p. 15)

なぜ「単純ではない」のか.それは,自然分類を標榜しつつ,実は人間にとっての有用性という実用分類の視点がつねにあったからだと著者は指摘する.

要するに,類書にあっては視点がつねに人間の生に置かれているのだ.自然分類からの偏れはどうしてもそのぶんだけ大きくなる.(p. 18)

その結果,日本の本草学にも大きな影響を与えた李時珍『本草綱目』では,大綱は自然分類としての共世界分類に従ってはいるのだが,細目にいたると実用分類に一転すると著者は言う.複合的な分類基準が実際には採用されていたということだ.

共世界分類と三品分類[上位群を「上・中・下」に三分するという『神農本草経』以来の分類法]から共世界分類と実用分類へという複合分類の移行は,換言すれば,静的な秩序から動的な無秩序への世界像の内実の変容にほかならず,知的世界の全般的な変容にみごとに照応していた.『本草綱目』の分類はとうぜんにもただちに本草界に迎えられ,ながく権威として君臨し,こんどは逆に本草家の思考を縛ってゆくことになる.(p. 23)

このような,中国の世界分類が日本に輸入されたときの大きな改変として,普遍的な世界分類を「フィルター」(pp. 32)で濾過してしまい,“部分空間”としての動植鉱物に関する共世界分類のみを取り込んだと著者は指摘する.源順の『倭名類聚鈔』はその好例だという.このようなフィルターが作用した結果:

中国の世界分類と対決することなく,その部分たる共世界分類を自然分類として受けいれたことにあるのだろう.そのような受容の形態にあっては,自然分類の存在論的基礎はついに明らかでないのである.(p. 33-34)

貝原益軒『大和本草』(1708)や三浦梅園『玄語』(1775)に萌芽的に見られる日本独自の自然哲学・形而上学はけっきょく全面開花するにはいたらなかった.そうこうするうちにスウェーデンからリンネの体系学的方法が極東にも押し寄せ,日本の本草学は消滅したと著者は締めくくる.

—— 西村三郎の考えとも共鳴する主張であるように思えるが,Brian W. Oglivie『The Science of Describing : Natural History in Renaissance 』(2006年6月1日刊行, The University of Chicago Press, ISBN:0-226-62087-5 [hbk] → 詳細目次著者サイト版元ページ)が提唱する,西洋の博物学における「記載の科学」から「体系の科学」への移行というモデルが,東洋の本草学にもあてはまるのかどうかがおもしろい点だろう.(おそらくは肯定的な結論になると推測される)

◆さ,翻訳翻訳.じりじりと匍匐前進する夜…….

◆本日の総歩数=7272歩[うち「しっかり歩数」=4388歩/39分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=−0.3kg/−0.1%.


6 juni 2008(金) ※ 一転,夏日になり居室に幽閉される

◆午前4時半起床.霧雨霧吹き.北の風.気温18.5度.前日の名残の空模様.

◆早朝のこまごま —— 群馬県農業技術センターで予定されている統計研修に関連しそうな資料をそろえる.詳しくは本日午後の打合せにて./明日6月7日(土)の外勤振替えは19日(木)に指定する.外勤でも振替えが取れるとは知らなかった.いまの職場にかれこれもう19年もいるが,よくわからない制度とか決まりがある./科研費申請の“通知票”が返ってきた.ううむ,“赤点”ですか,これって……(汗)./農環研のことしの「さなぶり」は6月17日(火)の昼休みに.作業棟にて.昨年と同じ要領.昼飯を喰う儀式(ちがうだろっ).

◆午前9時すぎには天気回復.しかし,晴れたり曇ったりで蒸し暑い.午前11時の気温は23.9度.きっと夏日になるだろう.午前中は居室に閉じこもって翻訳三昧.※まだまだぁ.

◆本日の着便本 —— Lars Brundin『Transantarctic Relationships and Their Significance, as Evidenced by Chironomid Midges : with a Monograph of the Subfamilies Podonominae and Aphroteniinae and the Austral Heptagyiae』(1966年刊行,Kungliga Svenska Vetenskapsakademiens Handlingar, Fjärde Serien, Band 11, Nr. 1, Almqvist & Wiksell,Stockholm,472 pp. + 30 plates).

ドイツから届いた古書.この本が入手できたのはとてもうれしい.ユスリカの研究者だった Brundin は,パタゴニアやニュージーランドなど南極大陸周辺地域(Transantarctic Region)での現地調査を通じて,Willi Hennig の系統生物地理学の方法論に沿ってこの地域のユスリカ相の類縁関係を解明した.分岐学の生物地理学への大規模な研究としては最初期のものといえる.

本書は29×25cmの大判で500ページもある厚い論文で.中ほどの350ページあまりは,ユスリカ類の詳細なモノグラフに当てられている.前半の序論では Hennig の系統体系学と生物地理学に関する方法論の概略が述べられている.また,後半の総括の部分は南極大陸周辺地域の「地域分岐図」が結論として提示されている.それについては,数年後にも発表されている(L. Brundin 1972. Phylogenetics and biogeography. Systematic Zoology, 21: 69-79.).

本論文は分岐学の歴史の中ではとても影響力があって,たとえば先日送られてきた:Gareth Nelson (2007), Colin Patterson. Pp. 30-34 in: New Dictionary of Scientific Biography, volume 6. Charles Scribner's Sons を読むと,魚類学者の故 Colin Patterson は Brundin のこの本を読んでその場で“改宗”したという.今日でいう系統地理学(phylogeography)のルーツはこういうところにあったりする.

本書の存在はもちろん知っていたのだが,実物を手にする機会はまったくなかった.今から四半世紀前,まだ大学院生だったころに,たまたま山本優さんの蔵書を越中の殿が借り受け,それをコピー製本したものを入手できた.簡易製本されたものすごい量の“紙の束”が送られてきたが,読んでいるうちに崩壊し始めたので,出入りの製本業者に依頼してあらためてハードカバー製本してもらったことがある(今でも本棚に鎮座している).

論文のテキスト内容だけであればコピーで十分なのだが,付録として付けられた図版の可読性がイマイチだった.もともとはカラー図版なのだが,当時はカラーコピーをするのはたいへんだったので,モノクロ複写にされた.それでも,手にできただけでも幸運だった.当時,越中の殿から聞いた話では,この本はたいへん高価(3万円とか4万円とか)だったそうだ.発行部数自体がきっと少なかったのだろう.

先月のことだが,たまたまオンライン古書店で原書がたいへん安く入手できることがわかり,こういうときに逡巡は禁物(本との出会いは一期一会)なので,即発注した.現物の図版を見てみるとやはり美麗なカラー図版だった.今から半世紀前(1950年代後半)のパタゴニアやニュージーランドでの渓流調査のようすとか万年雪に覆われた極地の山々の写真が何葉も続く.

—— ついでに Webcat で調べてみたら,現在,日本の公的機関でこの本を所蔵しているのは,北大農学部と科博そして極地研の3ヶ所だけだった.あるべきところにはちゃんとあるのだ.

◆昼下りこまごま —— 午後1時から半時間ほど,別件の会議でつくばに来られた群馬県農業技術センターの担当者と秋の統計研修に関する打合せをする.向こうの意向では9〜11月にかけて各月1回回ずつ(計3回)の講義をお願いしたいとのこと.場所は伊勢崎(北関東道・伊勢崎インター近く)の群馬県農業技術センターにて.とりあえず「OK」の返事をしたので,あとは群馬県庁の事務との間で日程などの詳細を詰めることになった.形式上は「依頼出張」ということになる.できれば〈R〉の実習もとの希望だが,時間的な制約もあるので「検討いたします」ということで,よろしく./農大三点セットの用意.とりあえずは出席票だけ創った.ハンドアウトはどうするか.分散分析に関する話は次回で終わるので,残り時間は多重比較・変量間相関・線形モデルのいずれかの話題に移る必要がある.新規のスライドづくりをしないといけないかも.

◆分岐学よもやま話 —— 北九州の某博物館の知人から依頼メールあり.雑誌 Cladistics のバックナンバーの欠号補充のため原本を貸してほしいとのこと.幸い,私物のバックナンバーでなんとか対応できそうだったので,その旨返事をする.週明けに送ります.

その知人と何通かのメールをぱらぱらとやりとりする.「大御所たちはけっして反省することはない」という話とか,「Brundin さんの手紙をもってます」というエピソードとか,日本の場合,50代以上のジェネレーションでは分岐学の影響を受けた研究者は少なからずいるはずだ.しかし,ぼくの世代よりも下になると,むしろ分子系統学を最初から学んできたキャリアをもつ割合が増えている.

—— 雑誌 Cladistics は日本では驚くほど所蔵館が少なく,Webcat で見るかぎりわずか「14館」(紙版)しかなく,創刊号からコンプリートにそろっているのは京大理学部のみだ.Systematic Biology 誌が国内でその5倍近い所蔵館があることを考えると差は思った以上に大きい.

◆強い西日のために居室の居住性が急激悪化したため,午後4時半に撤収.晴れ,気温27.1度.北東風がしだいに強くなってきた.夜は翻訳一筋です.ハイ.※まだ終わらん…….

◆本日の総歩数=10636歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/−0.7%.


5 juni 2008(木) ※ そぼ降る霧雨に濡れて歩く筑波大学

◆午前4時半起床.薄曇りときどき晴れ間.

◆早朝のこまごま —— 土浦お忍びコッソリな夜の予定.了解しました./冬学期の駒場「生物統計学」講義に関する下準備がもう始まった.講義に関する事務連絡など.基本的には昨年と同じということでよろしく./進化学会ニュース用の書評原稿をさっさと送る.D. S. Wilson の『Evolution for Everyone』です.

◆計量生物学会年会へ —— 午前9時過ぎには再び曇り空に.10時過ぎに家を出たら霧雨が降り始めていた.そのうち大粒の本降りになる.筑波大学まで半時間ほど濡れて歩く.計量生物学会年会会場の大学開館に入り,大会受付をすませる.当日参加がとても多かったらしく,講演要旨集が品切だそうな.めずらしいことだ.あとで送ってもらうことにして,会場のホールに入る.

11:45から別室にて評議員会.1時間後にホールで総会(第1部).学会賞の授賞式(学会賞の三輪哲久さん,功労賞の塩見正衛さん,おめでとうございます).午後は大東くんの口頭発表があった.2週間後にはバンクーバーで国際会議に臨むということで,英語のトーク.たいへんお疲れさまでした.

◆外に出たら雨は一時的に止んで,湿度の高い曇り空だった.まだ大会は続いているのだが,すき間にロビーで翻訳業務に勤しむほど追い詰められているので,このまま帰らせてもらいます.てくてく歩いているうちに,霧吹きのような細かい霧雨がまとわりつきだした.傘をさしても何の効果も望めなかったので,そのまましっとり湿りながら半時間歩いた.帰宅したのは午後4時半のこと.

◆筑波大学の丸善で遭遇してしまった本(ここで会ったが運の尽き) ——

まずは上巻:山田慶兒(編)『東アジアの本草と博物学の世界(上)』(1995年7月21日初版刊行/2007年10月5日復刊第2刷,思文閣出版,京都,x+333+xix+2 pp.,本体価格7,500円,ISBN:4-7842-0883-6[初版]/ISBN:978-4-7842-0883-8[復刊]→ 目次版元ページ).本論文集(全2巻)は複数の学術出版社がつくっている〈歴史書懇話会〉による復刊企画「歴懇リバイバル2007」(全62冊)に所収され,2007年秋に12年ぶりに復刊された.上巻の第I部「分類」では,日本を含む東アジア地域のかつての本草学における「分類」のあり方が論議されていて,執筆者・内容ともに興味深い.

次は下巻:山田慶兒(編)『東アジアの本草と博物学の世界(下)』(1995年7月21日初版刊行/2007年10月5日復刊第2刷,思文閣出版,京都,x+350+xiv+2 pp.,本体価格7,500円,ISBN:4-7842-0885-2[初版]/ISBN:978-4-7842-0885-2[復刊]→ 目次版元ページ).下巻では,第V部「渡海」で東アジアの博物学における事物と思想の行き来が論じられているようだ.また,第VI部「考証」では,李時珍『本草綱目』と小野蘭山『本草綱目啓蒙』を題材とする議論が展開されている.

◆夜はまたまた日経サイエンスの翻訳原稿にとりくむ.空気がまだ湿っていて,木の床がしっとりしている.しかし,まだ終わらず…….そろそろヤバいかもしれない.

◆明日は,計量生物学会のチュートリアルがあるのだが,それには参加しない.明後日は同じ会場で応用統計学会大会が開催され,午後の特別講演で座長を依頼されている.したがって,明日はたいへん貴重な“すき間”の平日.だから,翻訳をしないと(ちがうやろ,それ……).

◆本日の総歩数=12275歩[うち「しっかり歩数」=10050歩/90分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.4kg/+0.4%.


4 juni 2008(水) ※ またあわただしく東京に逃亡したり

◆午前4時起床.路面はまだ濡れている.最初は雲が多かったが,そのうちよく晴れてきた.北東風が涼しい.気温15.4度.

◆早朝のこまごま —— 群馬県農業研究センターとの研修打合せは6月6日(金)午後1時から居室にて.予定では秋に3回(2時間ずつ)とのこと.センターは伊勢崎にあることを知った.

◆午前9時を過ぎて雲が出てきた.10時半の気温は18.5度.午前いっぱいは“翻訳マシン”と化してひたすら「種とは何か」を訳す.【種】を魔除けなしのむき出しにしてしまったので,毒気にあてられる.く,くるしい…….

◆午前のこまごま —— 名刺がそろそろ底をついてきたようだ./午前中に領域内会議があったことに終わってから気づいた.よくある.

◆コンウェイ・モリスの“収斂”論文集 —— Simon Conway Morris『The Deep Structure of Biology: Is Convergence Sufficiently Ubiquitous to Give a Directional Signal?』(2008年5月刊行,Templeton Foundation Press,x+243 pp.,ISBN:978-1-59947-138-9 [pbk] → 目次版元ページ).編者の前著 Simon Conway Morris『Life's Solution: Inevitable Humans in a Lonely Universe』(2003年刊行,Cambridge University Press,ISBN:0-521-82704-3 [hbk] / ISBN:0-521-60325-0 [pbk] → 目次|サイモン・コンウェイ・モリス[遠藤一佳・更科功訳]『生命の選択肢』講談社[近刊予定……])を受けて,宇宙レベルでの“収斂”についての論文集.

Michael Ruse をはじめ有名人がずらっと並んでいるが,本書の版元がキリスト教原理主義やID運動と絡んでよく登場するあのテンプルトン財団であることにまず注意したい.『Life's Solution』の最終章が宗教的意味を帯びていることと関係があるのかな.

◆午後1時.青空,気温21.4度.日射しはとても強いが,湿度が低いので快適.14:41発の TX 快速で千駄木へ.往来堂書店を探索.〈不忍ブックストリートMAP(第4版)〉(2008年4月6日発行,不忍ブックストリート実行委員会)をもらい,ついでに町田健『言語世界地図』(2008年5月20日刊行,新潮社[新潮新書266],ISBN:978-4-10-610266-0 → 版元ページ)をゲット.世界中の主要言語の「いま」を各4ページで鳥瞰した本.月刊誌『フォーサイト』の連載の新書化だそうだ.

◆東大に向かい,午後4時からの「専攻研究会議」に出席する.所内の成績検討会と同じ趣旨の会議だが,もっと簡略されているので気がラク.前年度の研究成果の報告と今年度の研究計画について説明する.午後5時過ぎにおはまい.※もっと質問を出し合った方がいいですよ.

◆つくばに帰り着いたのは午後6時半だった.北風が通って涼しい.

◆ああ,ほんやく…….しかし,明日は筑波大学で開催中の日本計量生物学会年会に顔を出さないわけにはいかない.それでもすき間時間はどこかに立てこもって翻訳するのみ.

◆本日の総歩数=15271歩[うち「しっかり歩数」=5098歩/49分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.4kg/−0.3%.


3 juni 2008(火) ※ たまに居室にいると雑用に翻弄され

◆午前4時半起床.雨本降り.北風.気温14.9度.傘をさすだけムダという感じでして.ぬれぬれ.

◆明け方のこまごま —— 私設印刷工房にて,どたばたと組版してコピーをとる.そこへ思わぬ御方からメールあり.ワタクシは『組版原論』以来の隠れファンなのですよ.よもやご本人からとは.ありがたやありがたや.今後ともおつきあいのほどをよろしく./蛾類業界の“ドン”がお隠れになったそうな.四半世紀前に赤堤にて一度だけ御尊顔を拝したのみですが.ご冥福を.

◆今日もまた着便です —— Trevor R. Hodkinson and John A.N. Parnell (eds.)『Reconstructing the Tree of Life: Taxonomy and Systematics of Species Rich Taxa』(2006年12月26日刊行[奥付?は「2007年」だが],Systematics Association Special Volume Series 72, CRC Press, Boca Raton, xvi+351 pp.,ISBN:0-8493-9579-8 [hbk] → 目次版元ページ).前半は巨大データとかスーパーツリーの話とか.後半はケーススタディ.

◆雨が降り続く午前のこまごま —— 進化学会関連.後援事業とか学会ニュース編集の件とか.午前11時の気温は14.3度にしかなっていない.昨日よりも5度ほど低いか./先月の兼業に関する何ちゃらという事務からの電話があったが,「はいはい」とスルーする.※めっ.

◆午後はひたすら書類書き.今月の兼業届4件・出張伺3件・年休5件.けっきょく1時間あまりもかかってしまった.受難の日は〈マタイ受難曲〉をBGMにする./その後は,メーリングリスト関連の堆積雑用の一掃処分.そして月例アナウンスを流す./東大の夏期実習に関する仲介業務.これはすんなり決まりそう.

◆午後もずっと梅雨空だったが,夕方になってやっと小止みになった.午後5時過ぎに帰宅.気温14.8度.涼しい.

◆いただきもの(ありがとうございました) —— 大久保憲秀『動物学名の仕組み:国際動物命名規約第4版の読み方』(2006年8月31日刊,伊藤印刷出版部,津,xvi+302 pp.,税込価格3,000円,ISBN:4-9903219-0-1 → 版元ページ).

三重での私の高座に来られた著者からの献本.ICZNの“読み方”に関する参考書で,条文の詳細にわたる内容だが,関連するコラムが多数置かれていて,一般読者にも読むべき内容が少なくない.「学名本」というジャンルはつい身構えてしまうのだが,“法律書”という先入観があるからだろう.

以下,著者の大久保さんへ —— 【種】問題が「形而上学」的であるという私の主張は,生物学者にとってそれが関わりのない問題であるという意味ではありません.まったく正反対に,生物学の問題であって,同時に「存在の学」としての形而上学に踏み込む性格をもっているのが【種】問題であり,だからこそ生物学者だけではどうにも解決できない部分を長年にわたって抱えてきたのだと私は考えます.「存在」について問うというまさにその問題設定のあり方が形而上学的ということです.ですから,ここで再び形而上学を切り離して,ピュアな“生物学”に沈潜することは問題解決への一歩ではなく,出発点への退歩であり,それでは何の展望も開けないでしょう.経験的データをさらに蓄積されれば【種】問題は解決に向かうだろうというのはまったく根拠のない楽観論ですね.心理的本質主義が単に追認されるだけだろうと私は考えます.生物学だけではどうにもならない問題がそこには厳然としてあるという基本的認識を私はもっています.

◆夜のこまごま —— 上州から「統計行脚」の依頼が届く.都道府県の農業試験場の場合,つくばでの統計研修の倍率が高いため,なかなか選ばれないという.群馬県も例外ではないとのことで,出張講義の依頼だ.相手方の予定は秋に全3回の予定.今のところは何とかなっても,この調子で各県からお座敷がかかるようになったら,ワタクシひとりでは手が回らなくなるにちがいない./来年につくばで形態測定学の会議をやろうというプランが立つ.いいですねえ./コッソリ“犬を喰う”のは16日(月)に.都内某所にて.

◆ほんやくほんやくほんやく……(冷汗).しかし,そうもいかず.明日は夕方から東大で「研究会議」なる専攻の“成績検討会”がある.それまでは翻訳一筋.これしかない.明日と明後日は,ほんとうは日本計量生物学会年会が筑波大学の大学会館で開催されているのだが,もちろん行くことあたわず.明後日は評議員会と口頭発表があるので強制的に出るしかないが.

◆本日の総歩数=10039歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/−0.1%.


2 juni 2008(月) ※ 梅雨に入り経堂農大通りが湿っぽい

◆午前4時半起床.生活リズムをまた平日モードに戻さないといけない.曇りのち晴れ,北寄りの風.気温14.4度.その後,日がのぼるとともに晴れて南風になる.早朝の研究所に侵入し,今日の講義資料などを奪取完了.そそくさと撤収.※とても本務地とは思えぬ滞在の短さよ.今日は兼業日なので農環研に来ることはもはやない.

◆三重に行く前に着便していた新刊 —— Elliott Sober『Evidence and Evolution: The Logic Behind the Science』(2008年4月21日刊行,Cambridge University Press,Cambridge,xx + 392 pp.,ISBN:978-0-521-87188-4 [hbk] / ISBN:978-0-521-69274-8 [pbk] → 目次著者サイト正誤表[pdf]).ごくごくニュートラルな書名だけでは何の本やらとらえどころがないかもしれない.しかし,目次をざっと見ると,本書が進化学における推論の基礎となる「証拠(evidence)」について論じた本であることがわかる.つまり,統計学的な意味での「証拠」(Richard Royall の尤度本から議論は始まっている)のもつ生物学哲学的な考察を目指す.

自然淘汰仮説のテスト,そして系統推定の論理など,著者がこれまで何冊かの本で進めてきた論議がこの本では集成されているのだろう.ベイズ主義に対する厳しい批判が,モデル選択論における赤池情報量基準(AIC)の科学哲学バージョンとともに示されているのは,現在進行中の論争の反映と思われる.

届いたばかりでまだブラウズの域を出ていないが,そのうちしっかり読むことになるだろう.進化学・系統学における仮説検証を論じている点で,前著『The Nature of Selection』(1984)と『Reconstructing the Past』(1988)の直接子孫にあたる本と位置づけられるだろう.ID説(インテリジェント・デザイン説)に関する大きな章が置かれているのが目新しい.

—— なお,最後のパラグラフ(pp. 366-367)で,“palaetiological sciences”と書かれるべき箇所が“palaeontological sciences”と誤記されているが,この点についてはすでにソーバー教授に連絡済み.久しぶりにメールをさしあげたのだが,出張から帰られた日にすぐ返事をいただいた.蒼樹書房亡き後の『過去を復元する』の訳本の出版社探しの件と,上記の要修正箇所について.※「Shunkichiにもよろしく伝えてね」とのことでした.>該当するMさま.

◆“台本づくり”のためのよそ見 —— ストーリー展開からいえば,三重での噺をベースにするのがベストの案なのかもしれない.当日あるいはその後に分類関係者からの反応がぽつぽつと聞こえている.「やはり」という反応もあれば,「マジっすか」と引く答えもあった.この件はまだ時間があるので,しばらくかもしましょう(“ヒオチ菌”は来るなよっ).

◆12:11発のTX快速で経堂に向かう.家を出るときは曇り空だったが,農大通りを下っていくうちにぽつぽつと雨粒が落ちてきた.予報通りだ.午後2時前に農大に到着.蒸し暑いような気がするが,気温はさほど高くなく20度前後.

◆農大かもし高座(7回目) —— 今日は,乱塊法の分散分析を1要因と2要因について説明した.ほとんど「定食メニュー」なのだが,R Commander のデモを併用しつつアクセントを添えてみた.要因間の交互作用についてはわかってもらえたようだが,ここ何回かの講義で「数式に耐えられません」というほぼ一定数の声が返ってくるようになった.おそらく他の統計学講義よりは数式の登場頻度は格段に低いはずだが,それでも耐性限界を越えているのかもしれないな.個人的には,生物学系・農学系の受講生を相手にするときは,できるだけ数式は“見せない”ようにしまっておき,いったん開陳するときは“呪力”が消え去るまで徹底的に言葉で説明するにかぎる.午後4時過ぎに終了.

◆経堂への帰り道でもぽつりぽつりと雨が落ちてくる.しかし,傘をさすまでもなかった.つくばに帰りついたのは午後6時半.曇り空のまま.南風がしだいに強くなってきた.梅雨前線が上がってきたか.と思ったら,関東地方はさっさと梅雨入りしてしまった.平年よりは早かったそうだ.

◆ここ数日の読書 —— Brian W. Oglivie『The Science of Describing : Natural History in Renaissance 』(2006年6月1日刊行, The University of Chicago Press, ISBN:0-226-62087-5 [hbk] → 詳細目次著者サイト版元ページ).買ってブラウズはしたものの,しっかり読んでいなかったので,三重の往復の長旅や東京へのプチ出張のおりに読み進んだ.全部をほぼ読了したので近いうちに書評をしようと思う.

16世紀ルネサンス時代にイタリアに生まれた「ナチュラル・ヒストリー」が,普遍ではなく個物に関心を寄せた当時の人文主義の影響のもとに,一世紀の間にどのような変遷をしたのかが考察されている.ほぼ30年ごとに(つまり博物学者の“一世代”ごとに)学問としての姿が変わっていったと著者は結論する.

興味深いのは,認知心理学的に見たときに(著者は Scott Atran の認識人類学に依拠している),記載された【種】の総数が数百のオーダーという少なさだった16世紀の博物学は,「記載(description)」のみにエネルギーを注ぐことができ,それらのアイテムの「分類」とか「体系」を考える必要性がまったくなかったという点だ.実際,当時の博物学者たちは,民俗分類(folk taxonomy)の認知原理に則った整理をしていたという.

ところが17世紀以降,探検博物学の興隆とともに世界の果てからさまざまな自然物(naturalia)が蒐集されるとともに,博物学者の「認知上限」はあっさりと越えてしまい,そこで初めて「分類」の方法論や「体系化」のあり方への関心が高まってきたというのだ.

—— 実にわくわくする結論ではないか.

◆本日の総歩数=14176歩[うち「しっかり歩数」=4364歩/41分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.6kg/+0.4%.


1 juni 2008(日) ※ 梅雨入り間近の月初めは遠距離復路

◆午前5時前いったん目が覚めたが,また寝て,午前7時半に怠惰な起床.一仕事が終わってハジけた翌朝はこうなる…….午前8時半に遅めの朝食をすませて,その後はホテルの部屋で日録を書いたり.今日は晴れて天気がよさそうだ.

◆午前9時半にチェックアウトし,10:00津発の近鉄特急アーバンライナーに乗り込む.約50分で終着の名古屋に到着.名古屋駅構内はコンコースから地下街から何だかとてもごったがえしていた.この人出はいったいどーしたことか.とにかく人多過ぎ.日曜だからか,それともナゴヤだからか.たった二日間このような雑踏から離れていただけなのに違和感がある.

◆昨日の菌学会ショップで購入した本 —— 『Setas: Catálogo de Sellos Temáticos, 2a edición』(2000年刊行,Domfil, Sabadell, Barcelona[Domfil Catálogos Temáticos Internacionales],ISBN:84-922776-9-6 → 版元ページ).世界中の“きのこ切手”のカタログ.1999年までに世界各地で発行された切手のカタログで,250ページもある.ぱらぱらと見た感じでは1960年代くらいからカバーされている雰囲気.それはもう,いろいろあります.すごいです.菌類と昆虫類が同居するデザインも多いようで興味深い.「第2版」ということは“きのこ切手”に人気がある証しなのだろうか.カタロニア語ではなく,スペイン語と英語の併記.

◆混み合うナゴヤに長居は無用なので,予約してあった新幹線の指定席をさっさと変更し,12:11名古屋発の「のぞみ80号」でとっととオサラバする.東京着は14:13.つくばには午後3時半に早くも降り立っていた.からっと晴れて乾燥した北風が通り抜ける.気温は高いがまあ許そう.台風はどーなった?

◆迫り来るトドたち —— 昨日の菌学会トークに基づいて『』の連載最終回の筋書きを立てることにしよう.しかし,その前に日経サイエンスの翻訳原稿の締切が目前なのだが,津でかもされてしまったので,進捗はかばかしくありません.困った…….

◆遠距離往復で疲労感が色濃く漂っている.とりあえずは寝るに限るのだが,つごうよくそうはいかず,日が変わってしまった…….今週はつくばでの学会がふたつ連荘で開催され,共同発表者だったり,理事会に出たり,特別講演の座長をしたりと連日駆り出される予定.

◆本日の総歩数=7111歩[うち「しっかり歩数」=1280歩/13分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


--- het eind van dagboek ---

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[sinds 19 april 2007] 無料アクセスログホームページ 素材集