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日録2009年1月 


31 januari 2009(土) ※ 真夜中の嵐が過ぎて新百合ヶ丘へ

◆真夜中になって風雨が強まり,その音でときどき目が覚めてしまった.強い北風に煽られて窓ガラスに横殴りの雨が叩きつけられる.午前5時に起床.季節はずれの台風のような空模様だったが,午前9時には小雨になり,空も明るくなってきた.北風が吹きつけ,気温はしだいに低下してきた.

◆午前中は,形態測定学スライドの展開作業と編集.これで次回以降の高座がラクになるだろう.

◆新百合ヶ丘にてオーケストラ打族のみなさんと —— 小雨がそぼ降る中,11:55発のTX快速に乗る.代々木上原で地上に出たときは,一転して晴れ間から日射しが射すまでに天候は回復した.その後は,曇りところどころ晴れ.冷たい北風が吹く.車中ではカマジン訳本のゲラ読みを続行.だいたいはそのままOKなのだが,ところどころなお改訂の必要箇所が見つかる.あとは訳語の統一という問題も.前半の総論のところはするすると進むが,後半の各論の章がね.

そうこうするうちに新百合ヶ丘に着いた.午後1時40分すぎだった.今日ここに来た目的は,〈のぐっちゃん〉が80歳になったのを祝って,都内の大学でかつてお世話になった打族のOBが集まる同窓会みたいなイベントだ.駅からすぐのところにあるイタリアンの店〈Il Girasole〉を貸し切りにして,50名ほどが集まり,さほど広くない店は立錐の余地もなかった.午後2時から開始.十数年ぶり(あるいは20年ぶりか)というお久しぶり顔ぶれもあり,2時間半の時間はあっという間に過ぎていった.ここ〈Il Girasole〉はピザがことのほか美味だった.ワインの飲み過ぎ.

かつて四半世紀前にのぐっちゃん宅で忘年会やら新年会をしていたころは,新百合ヶ丘の駅周辺は造成されたままの裸地が茫漠と広がっているばかりで,高い建物などぜんぜんなかった.宴会からの帰路,真っ暗な道の果てに駅のライトが見えたときはほっとしたものだ.ところが何年かぶりに来るたびに,駅前がどんどん開けて,デパートやら大学までもできるようになった.それとともに行き交う人の波も都会を思わせる.時代は流れていくことを実感する.

—— 午後4時半に一次会は解散し,都内数大学から集まってきたうちの有志は,そのまま続く二次会に流れていくという.しかし,ここでトラップされたのでは,またまた長い夜になってしまいそうなので,残念ながらそのままつくばに帰ることにした(ここのところ飲み過ぎているし).何度かの大きな病気を経ても,のぐっちゃんはなお元気そうだった.つくばセンターに着いたのは午後6時半.酒と高座と原稿に交互に追いまくられた日々を考えると,今夜はあまりにも健康的すぎますな.

◆長距離を移動しての飲み会というのは疲れます.はい.天気は曇り空.明日はカマジン本のゲラ読みをおおいに進捗させないとえらいことになる.

◆本日の総歩数=10023歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼×|夜○.計測値(前日比)=82.8kg(+0.3kg)/24.4%(−0.5%).


30 januari 2009(金) ※ 【酒】の翌日に【種】の原稿完成

◆午前6時過ぎによろよろと起床する.前夜の「鼎談」に伴う深酒のダメージが大きいな.外は雨がふり続いている.昨夜,痛飲したはずの外部評価委員氏は,はたして午前9時に納棺権の講堂にたどり着けただろうか.

◆午前のこまごま —— 今日が締切の雇用計画書を出すよーにという事務連絡が.あわてて次年度の契約職員雇用の書類をつくって出したら,日付が去年のままだった.もう一回作業のリピート./東大の専攻で今年度でリタイアされる田中忠次教授の送別パーティのお知らせ.期日は3月11日(水)の午後6時から.場所は東大の山上会館の地下にある〈御殿食堂〉にて.参加の方向でスケジュールを調整する.

◆午前11時,なお雨が降り続き,気温は10.3度.寒くはないが,この季節にしてはめずらしい雨模様.

◆こちらでも“評価”を受ける —— 駒場の「授業アンケート」の集計ができたので,さっそく公開しました.履修生集団のサイズが昨年よりも小さいが,結果の傾向はあまり変わっていないように思う.ちょっとだけ改善されたかも…….※「ゆーい差」でも出してみるか.

◆決戦の午後 —— いつの間にか正午をまわってしまった.先日の“ダメ出し”以来,ぜんぜんケリがつかずに引き伸ばしていた『ニュートン』の【種】御祓原稿に引導をわたしたるぅ〜.いてこましたるぅ〜.ということで,午後はねじりバンダナで原稿を書き続けた.「中高生にもわかる【種】問題」という至上命令がくだったので,普遍論争だの唯名論だの本質主義だの,という「使用禁止用語」はことごとく排除するという方針で書き進めた.

およそ4時間後の午後5時前にやっと書き上がった:三中信宏「「種」とは何か:いまなお解けない謎の由来」.400字詰にして13枚ほど.テツガクな言葉づかいはすべて排除しました.代わりに,ダーウィン自身が使った〈星座〉と〈集落〉のアナロジーを使うことにした.これで中高生の“洗脳”もうまくいくだろう(ほんまかいな).

—— 編集部にメール送信完了.折り返し,編集部から「ブラボー!」との返事が返ってきた.これで,ずっと引きずってきた大トドをさらに一頭しとめることができた.予定では4月号に掲載かな.

◆午後5時半に撤収.小雨がまだ降り続いている.そのうち風も強まってきた.へんな天気.夜は,これまた加圧され続けているカマジン訳本のゲラ読みを続ける.日が変わるころから風雨が強まってきた.季節はずれの嵐.

◆明日は午後から新百合ヶ丘に出向いて,ぱあ〜っと呑んできます.ぱあ〜っとね.

◆本日の総歩数=4512歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜 .計測値(前日比)=未計測/未計測.


29 januari 2009(木) ※ 駒場高座から笠真に直行して鼎談

◆午前5時起床.曇り.昨日の疲労をそこはかとなく引きずりつつ,新たな巡業の一日がまた始まってしまう…….

◆巡業のあいまのトド撃ち指令 —— 海游舎からメールあり.カマジン本のカバージャケット案ができたとのこと.なかなかいいのではないでしょうか.原書は「シマウマの尻」がでかく写っていてドン引きだったが,この図案だったら問題ないと思います.しか〜し,アメとムチはセットでやってくる.「2月2日(月)正午」までにゲラ読みを完了させることというタスクが降ってきた.これはきびしいな./東京農大から連絡.前回提出した人事書類のファイルを送るので,必要な加筆修正をした上で返送されたしとのこと.アナコンダが飛び出しそうなので,まだファイルを開かないことにする./『日経サイエンス』から依頼されたダーウィン特集記事の査読(みたいな作業).2月6日まで.茂木=三中対談のゲラは来月にならないと届かない./2月12日(木)の〈チャールズ・ダーウィン、200年目の誕生会〉の進捗について連絡.そろそろ満員御礼になりそうとのこと.メニューについての相談事.

◆午前9時.曇り.気温6.3度で肌寒い.

◆しかし,喫緊の作業は,今日午後に駒場である高座で配布するための「第2回レポート」の問題用紙.何とかひねり出して,完成できたのは正午前だった.ウェブ公開とコピー完了.その他,ハンドアウト類も用意完了.

◆いったん帰宅.小雨が降っている.13:25発のTX快速に乗って駒場へ.講義準備とかいろいろと.16:20〜17:40 今期の最終講義.最終回は系統推定論に関わる統計的問題を講義する.すでに幾度となく高座にかけたネタなので,とどこおりもとちりもなく無事に終わった.レポート課題を配布したり.みなさん,ありがとうございました.

◆さて,今日はこれからが夜の本番だ.霧雨が降る駒場東大前から乗って,さくさくと足早に帰路につく.つくば着は午後7時半だった.こちらでも小雨が降り始めていた.車中で農環研に潜伏中の非行教授より「参加します」との電話がかかってきた.これで「夜の部」は,対談ではなく,鼎談になった.

◆暗闇の〈笠真〉につどうワルモノとクセモノと非行教授 —— いったん帰宅して身軽になってから,再び家を飛び出す.雨足はしだいに強くなってきた.目指すは,約20分ほど歩いたところにある居酒屋〈笠真〉.

つくばに住んでかれこれ20年になるが,この店に来るのは今夜が初めてだ.松代から筑波大方面への抜け道沿いにあるので,店の存在そのものは知っていたが,店先に雑草がぼうぼうと生い茂り,ほとんど廃屋のようだったので近寄らないでいた.ところが,つい最近ここがかなりディープな品揃えの店であることを知り,今日のヒミツ鼎談の場所に選んだしだいだ.遅めの時間帯で午後8時半から予約を入れておいたのだが,ほぼ廃屋のガラス戸を開けると中は意外なほど広いスペースで,ご主人がひとりで切り盛りするのはたいへんそうだった.しかし,われわれ以外に客はなく(けっきょく日が変わるまで来店客はぜんぜんいなかった),店を独占させてもらっただけでなく,店主からいろいろと「酒の話」をうかがうことができた.

ぼくが店に到着したときには,今日,筑波大学でミッションを完了させた ikushimo さんがネクタイを締めた姿ですでに座っていた.まずは鳥取の地ビール〈大山Gビール〉(Valentine Gold)で乾杯(ヴァイスビアだった)をば.そうこうするうちに,今日と明日の二日間にわたって開催される農環研の業績検討会議に外部評価委員として箱崎からわざわざ飛んで来た非行教授氏も合流し,やっとワルい面々が顔をそろえることになった.この顔ぶれで集結するというのは空前絶後かもしれない.とてもハッピーな話をうかがいました.おめでとうございます.

料理はメインが「あんこう鍋」で,それ以外に白子とか,常陸牛の刺し身とか,手羽先の塩焼きとか.そして,われわれが呑んだ日本酒の銘柄は:1)諏訪〈翠露〉あらごし直汲み活性にごり;2)新潟〈村祐〉亀口取り・無濾過生原酒;3)山形〈十四代〉おりがらみ原酒;4)会津〈天明〉弐番・おりがらみ;5)佐久〈帰山〉参番(ぬる燗).記憶している範囲では以上の通りだった(ほかにもあった?).初めて飲む銘柄が多かったが,いずれもいいセレクションで,この店は「アタリ!」だった.とても満足いたしました.※〈黒龍〉の「しずく」もちゃんとありましたぜ,ダンナ.

—— 日が変わる直前にタクシーを読んでもらい,銘酒の連射でほぼつぶれかけた一名と,出張先でそこはかとなく解放感を漂わせているもう一名を宿泊先にひとりずつ落してから,ぼくもちょっとだけ午前様になって帰宅した.雨はなお降り続いている.

◆本日の総歩数=10015歩[うち「しっかり歩数」2125歩/19分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前日比)=82.5kg(+0.4kg)/24.9%(+0.9%).


28 januari 2009(水) ※ 駒場でのお座敷二つで燃え尽きて

◆午前4時前に起床する.晴れて冷え込みがきびしい.

◆朝からスライドづくり —— 今日は午後イチで駒場での連続高座があり,形態測定学について詰め込むつもりだ.ケンドール形状空間の実例についての説明スライドをつくりはじめる.けっきょく3時間ほどかけて,10枚ほどの新作スライドを用意した.展開すれば40枚くらいにはなるだろうが,展開作業のための時間は今はない.

◆10:25発のTX快速で東京に向かう.正午前に駒場到着.生物統計学補講:13:00〜14:30 と 14:40〜16:10の2コマ続き.形態測定学の講義をみっしりと詰め込む.講義アンケートを実施する.お疲れさんです.

◆その後,南北線に乗換え,東大前で地上に上がったら小雨が降っていた.今日は朝から専攻の修論発表会があったのだが,駒場での補講がぶつかってしまったので,こちらには出られなかった.発表会後の専攻交流会が午後6時から開催されるというので,こちらだけ顔を出すことにした.〈神亀〉の「元旦搾」は今年の元旦に詰めたという限定品で,「18〜19度」という日本酒としては上限に近いアルコール濃度だが,「甘露」ということばがぴったりだった.うますぎます.飲み過ぎるととってもアブナイなあ(「成仏」とか「昇天」という表現をしよう).午後7時前に中途で退席し,そのまま根津からつくばに直帰.午後8時半にはつくばセンターを歩いていた.雨が降りそうな曇り空で冷え込みはない.

◆つくばで今年6月3日(水)〜6日(土)に開催される〈国際形態測定学会議〉の second circular がカリフォルニアの Pete Lestrel さんから送られてきた.さっそく事前参加申込をすませた.近いうちにメーリングリストやウェブを通じて講演者・参加者の募集を働きかけた方がいいだろう.

◆高座ふたつと〈神亀〉でパーフェクトに燃え尽きました.しかし,明日は灰の中から復活して,ふたたび駒場に向かわないといけない.しかも「夜の部」の気力と体力も残しておかないと.

◆本日の総歩数=11396歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=82.1kg(−0.1kg)/24.0%(−0.5%).


27 januari 2009(火) ※ 穏やかな冬晴れに新たな加圧開始

◆午前4時15分起床.晴れ.気温はさほど下がらずマイナス1.0度.昨日よりは高い.

◆明け方のこまごま —— 堆積しつつあったメーリングリスト作業をこなす./明日の駒場補講の資料や備品のチェック.ふたコマ続きの補講なので,配布物が重い.講義アンケートも実施しないと.

◆「系統地理学(phylogeogrpahy)」の定番教科書の翻訳 —— 献本ありがとうございました:ジョン・C・エイビス[西田睦・武藤文人監訳/馬渕浩司・向井貴彦・野原正広訳]『生物系統地理学:種の進化を探る』(2008年12月26日刊行,東京大学出版会, xii+304 pp., 本体価格7,600円, ISBN:978-4-13-060219-8 → 目次版元ページ).本書は系統地理学を学ぶための必修本です.そんなに手間暇かけないで“原書”で読めばいいではないか,とものの道理を知らない人たちは言うのだが,「翻訳」という出版文化が存続しているということはもっと積極的意味があるでしょうと反論しないとね.いずれにしても,長年にわたる翻訳作業はたいへんお疲れさまでした.他人事ではないぞ >ワタシ.

◆午前10時.晴れ.気温はまだ4.8度だが,筑波颪も吹かず,日射しが暖かい.

◆午前のこまごま —— 『ニュートン』編集部からさっそく朝の「加圧」あり.ごめんなさい.今日中には何とかします./明日の講義準備.ケンドール形状空間の実例スライドをつくった方がきっと教育効果は高いにちがいない.とりあえず素材だけでもスキャンしておこう.配布資料の追加./午後になって外は暖かな日射しが降り注いでいるが,引きこもっているぼくには何の関係もない./お,毎月のアンケートの投函締切が今日だった.

◆緊急トドたち —— 『ニュートン』原稿.早く早くっ./形態測定学のRスクリプト書き.前形状空間とか形状空間についてのデモはすべて〈tpsTri〉で行なうことにする.一般化プロクラステス解析についてはRの〈shapes〉パッケージを用いる./明後日の最終講義用の生物体系学文献リストの印刷.第2回目のレポートは明日出題するつもりでいたのだが,ぜんぜん時間がないので.明後日まわしにしよう(それでもヤバいかもしれない.).

◆「ベルツ先生」の再来かも —— 阿岸祐幸『温泉と健康』(2009年1月20日刊行,岩波書店[岩波新書・新赤版1173],ISBN:978-4-00-431173-7 → 版元ページ).ただの「温泉本」ではない,温泉医学の入門書.ドイツの温泉について言及多し.ベルツの再来か.以前読んだ:ウラディミール・クリチェク[種村季弘・高木万里子訳]『世界温泉文化史』(1994年12月10日刊行,国文社,ISBN:4772003711 → 紹介)を思い出した.海外の温泉といえば,ハンガリーに行ったとき,ブダペストの「ゲッレールト温泉」に入湯したのがぼくにとっての唯一の海外温泉体験だった.確かに,日本の温泉とは文化的なバックグラウンドがぜんぜんちがうことを嗅ぎとった.あとがきで,日本の温泉利用は「新鮮な生の素材にこだわる刺身料理」だが,ヨーロッパの温泉療法は「五感すべてを楽しませてくれるフルコースのフランス料理」だとまで言う(p. 200).著者の主張はリクツではわかるが,個人的にはどちらかといえば「刺身料理」の方がいいな.どっちがいいかと問われれば,両方あった方がいいと虫のいい答えを用意しよう.

◆吹きつける「砂粒」が着実に時間を削り取っていく.年度末恒例の所内の山盛的雑用が実はあるのだが,パーフェクトに放置している.先日,数ヵ月ぶりにログインした会計システムもその後は放り出したままだし.とりあえず,優先順位からいって,月末までの契約職員雇用手続と年度末業績報告だけは must だろう.そういえば,東京農大のカリキュラム変更にともなう業績報告というのが,先日電話で知らされたが,今月末が提出締切だったよーな(聞こえません見えません知りません).

◆午後5時に帰宅.明日の準備と『ニュートン』原稿を並行させて……(それムリ).

◆本日の総歩数=8344歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=82.2kg(−0.9kg)/24.5%(+1.3%).


26 januari 2009(月) ※ 九段に幽閉され会議はエンドレス

◆午前4時半起床.晴れわたって放射冷却が厳しく,午前5時半の気温はマイナス4.6度まで下がった.霜がびしっとはりついている.しかし,日がのぼるとともに,しだいに寒さは和らいできた.午前11時の気温は7.0度.快晴無風.

◆早朝から散発的に昨夜のゲラのこまごまとした修正など.この件はやっとケリがついたか:三中信宏「【研究最前線】幾何学的形態測定学:「かたち」の数理と統計の最前線」日本数理生物学会ニュースレター,no. 57, pp. 6-13(2009年2月発行).次の原稿の段取りに取りかかろうとするも,もうお昼になってしまった.ダーウィン本数冊を抱えていったん帰宅.

◆九段の坂を上がって —— 13:30発のTX区間快速で秋葉原に出る.岩本町から九段下へ.地上に出ればそこはもう武道館やら靖国神社やら.しかし,今日の目的地はその脇にある東京理科大・九段校舎.今日はこれから夜まで日本計量生物学会の対面役員会議が続く.まずは,午後3時から院生室の一角で,企画担当理事会.今年の年次大会とかシンポジウムの企画立案と業務計画について.年次大会は,5月20日(水)〜22日(金)に大阪大学(吹田キャンパス)にて.また,シンポジウムは,9月6日(日)〜9月9日(水)に同志社大学(京田辺キャンパス)で開催される統計科学関連学会連合大会のひとつとして.午後6時前まで話し合いが続いた.

会議はとぎれない.午後6時からは,同じ階の別室にて全体理事会.今期は,企画担当・広報担当・編集担当という「三役」を引き受けているので(すべて「副」だが),何だかいろんな学会業務に浅く広く絡めとられそうな気配がする.大会の段取り,学会英文サイト,ジャーナル電子化問題.ほかにも,立て続けにいくつもの案件が論議された.International Biometric Conference(IBC)は2012年に日本で開催されることになっているよう画策している.その体制作りも本格化しはじめた.前回,日本でIBCが開催されたのは1983年だった.実現すれば30年ぶりということになる.ついでにひとこと:雑誌 Biometrics については,ちゃんと会費を払っているにもかかわらず,届かないということが頻発しているらしい(ぼくにも経験がある).クレームをつけても事態がほとんど改善されない(=やっぱり届かない)というのは,こういう巨大学会が発行するこの分野ではメジャーな雑誌の事務運営のあり方としては驚くばかりだ.※退会するぞ.

—— 予定よりも長引いて午後8時に本日の会議たちからやっと解放される.次回の対面理事会は3月27日,同じく東京理科大(神楽坂キャンパス)で開催される国際多重比較会議〈MCP 2009 Tokyo〉のあとに開催される予定.時間は午後5時以降とのこと.よろよろと九段下に転がり落ちて,つくばに直帰.帰り着いたのは午後9時半だった.寒気がないせいか,夜になってもちっとも寒く感じられない.

◆夜遅くなって原稿を書き始めようとするのだが,もうすぐ日が変わってしまいそうで…….

◆本日の総歩数=14938歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜−.計測値(前日比)=83.1kg(+0.5kg)/23.2%(−0.9%).


25 januari 2009(日) ※ すっきり冬晴れに原稿も舞い飛ぶ

◆午前5時前にいったん目が覚めたのだが,しばらくごそごそした後に,再び二度寝を決め込む.やっと惰眠から目覚めて本格的に起きたのは午前8時過ぎだった.寝坊は罪深し.

ここ数日に気温や天候の日変化がとても大きい.初雪から晴天へとめまぐるしく空模様が変わった昨日とは打って変わって,今日は朝から雲一つない冬晴れの空が朝から広がっている.その分,夜明け前は厳しく冷え込み,まちがいなく氷点下だったにちがいない.

◆『Darwin Pedigrees Online』 —— 先日の日経サイエンス対談で,茂木さんが興味をもっていたダーウィン家の「系図」のことで備忘メモ.ダーウィン関連資料の電子化を進めている〈Charles Darwin Online〉サイトで,昨年この系図集:R. B. Freeman『Darwin Pedigrees』(1984年刊行,Printed for the author, London)が電子化公開されていることを知った.16世紀に始まる長大なダーウィン家の家系図がページごとにスキャンされている.なお,「紙」版の『Darwin Pedigrees』は,少なくとも Freeman によるリプリントだと,古書業界で入手しやすいようで,値段も手頃だ.しかし,Webcat で検索するかぎり,日本の大学や研究機関にはまったく所蔵されていない.

◆午前いっぱいは,昨夜ようやく脱稿した数理生物学会ニュースレターの読み直しと,図版を貼りこんだ整形文書のpdf化.A4版で11ページになった.今度の駒場の補講で受講生に配布する予定.

◆ついでに〈ダーウィン年イベント〉あれこれ情報 —— 今年はダーウィン生誕200年&『種の起源』出版150年なので,もちろん世界中でイベントや出版が目白押しだろうとは予想していたが,上記の〈Darwin Online〉サイトに新設されている祝賀コーナー〈Darwin 2009 commemorations〉をブラウズすると,英国はもちろん,すでにたくさんの記念イベントが計画されていることがわかる.日本発信の企画や情報もこのコーナーで宣伝するようにしたらいいのにね.また,出版物に関しては,昨年のうちからすでに予兆はあったが,今年はどかどかっと伝記や本や論文集が並ぶようだ.ダーウィン書簡集の最新刊(vol. 16)も久しぶりに出るという.スペイン語版のダーウィン著作集とか(日本のはどーなった?>当事者),ダーウィン夫人のクックブックとか(ほしいな).

◆午後,快晴で風なく気温低し.久しぶりに〈竹園珈琲〉にてコーヒー豆を調達する.帰宅後は別件の原稿(たち)の討伐にさっそくとりかかる.今月のトド撃ち目標は一頭だけではないのだ.

◆さらについでに,『種の起源』と『人間の進化と性淘汰』のデンマーク語訳もすでに全スキャンとテキスト化が完了していた:

  • On the Origin of Species』からリンク:Darwin, C. R. (1872) Om Arternes Oprindelse ved Kvalitetsvalg eller ved de heldigst stillede Formers Sejr i Kampen for Tilværelsen. Translated by J. P. Jacobsen. Copenhagen: Gyldendal
  • The Descent of Man』からリンク:Darwin, C. R. (1874-1875) Menneskets Afstamning og Parringsvalget. Translated by J. P. Jacobsen. Copenhagen: Gyldendal

これらダーウィン本のデンマーク語訳(とくにその訳者)についての物語は,ぼくの連載〈生物の樹・科学の樹〉の第12回目「目覚めよ、すべての花よ」に書いた通りだ.

◆夕ご飯のきりたんぽ鍋とともに〈開運〉の「無濾過純米」をば.手に入るうちにもう一本確保しておきたい.

◆夜のじたばた —— 数理生物学会ニュースレターの原稿をいちど読み直して,修正点をリストアップしたり.しばらくへこんでいたが,再び気を取り直して,明日が締切の『ニュートン』原稿のリライトに手をつけたりする.『生物科学』の生物学哲学特集の“枕詞”をどうしようかと思案中.けっして「書きなぐる」わけではないが,追い込まれて「書き散らす」という表現がぴったり.散らかりまくり.

◆明日は,午後から東京に出て,東京理科大(九段校舎)にて日本計量生物学会の大会担当理事会(15:00〜17:00)と評議員会(18:00〜19:30)がある.学会の規模の割には長丁場の会議が続く.

◆本日の総歩数=2045歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=82.6kg(−0.2kg)/24.1%(+0.1%).


24 januari 2009(土) ※ 初雪つくばから葉山に原稿を送る

◆午前5時前に起床.雨は止んでいるようで,北風がごうごうと吹き渡っている.夜明け前の曇り空.しんしんと冷え込む.

◆夜明け前の原稿書き.形状変形論に関する節を書き上げる.数式の導出などはこの記事では書かないので,TeXの出番は今回はない.

◆休みの日の連絡こまごま —— 年度末なので大学関連の行事がいろいろと(独法にいるとそういう感覚が薄れてくる):1)東京農大の卒論発表会と懇親会の連絡あり.2月14日(土),午前9時から午後4時半までぎゅうぎゅうに演題が詰まっている.人多過ぎ.午後5時からはいつも通り懇親会タイム.昼過ぎから出かけることになりそう./2)東大の専攻交流会の通知あり.1月28日(水)は朝から修論発表会なのだが,ぼくは午後に駒場での補講が2コマ続きであるので出られない.発表会のあとに専攻交流会があるとのこと.こちらは出られるかなと思ったのだが,翌日がトツジョとして↓こんな↓ことになりそうなので交流会への参加はビミョー.

◆ワルモノとクセモノと飛行教授が集結する夜 —— きたる1月29日(木)のつくばはいきなりにぎやかになる気配が濃厚.杜の都から某氏がナイーヴなつくば人民を洗脳しにやってくるという.ばたばたと迎撃態勢を整えることにした.潜伏場所のすぐ近くに砲台を設け,「うすにごり」とか「活性日本酒」という必殺兵器を用意することに.実はこの日は,箱崎から flying professor 氏が農環研の“断罪”にやってくるので,これまた懐柔しないといけない.可能であれば,西と北からやってくる方々をまとめてたたんで迎撃したいのですが,この夜は農環研の「殿上人たち」に拉致されるのでしょうか.いずれにしても,迎撃砲台はすでに苅間に確保しました.なお,ワタクシはこの日の夕方までは駒場での最終講義のため,つくばにはずっと実在しません.夜になって帰還してから,迎撃砲台に向かうことになります.関係者のみなさん,よろしく.

◆初雪 —— 今年のインフルエンザはどこもかしこも猖獗をきわめ,互いに兇悪ウィルスをまき散らし合っているという感じ.ワクチンを接種していようがいまいがまったくおかまいなしに罹病しているみたい.朝のうちに医者に行こうとしたら冷たい小雨が降っていた,待合室でのごほごほの大合唱を踏み越えて,正午過ぎに帰路についたら小雪が降り出した.予報もなく予想もしていなかったのだが,午後1時前には本降りの雪になり,遠景まで真っ白に.今シーズンの初雪となった.気温は3度台でとても寒い.しかし,1時間ほどでやみ,天気は急速に回復.午後3時には晴れ間ものぞくようになった.気温はなお低いまま推移している.

◆ゴールがやっと見えてきた —— 午後6時にようやく方向統計学の節とエピローグを書き終え,終着点が向こうに見えてきた.夕食後に文献リストの参照をチェック,さらに図版を準備して,そのキャプションを書く.けっきょく午後11時過ぎになって,本文原稿30枚×400字と図版8葉をそろえて,葉山にメール送信した:三中信宏「【研究紹介】幾何学的形態測定学:「かたち」の数理と統計の最前線」日本数理生物学会ニュースレター,no. 57掲載予定(2009年2月発行か).ついでだから,来週の駒場での補講ハンドアウトの追加としてpdfにしておこう.

—— 長らく引きずってしまったが,これでやっと肩の荷をおろしたことになる.よろしくお願いいたします,編集長どの.

◆気がつけばもう日が変わる.明朝は寒気の流れ込みで冷え込みがとても厳しいらしい.寝よう寝よう.日が変わる直前になって,来週月曜に九段である日本計量生物学会理事会(大会運営セクション)の資料がメールでどかどかと大量に降ってきた.すぐには見ませんてば.

◆本日の総歩数=2324歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=82.8kg(−0.4kg)/24.0%(+0.1%).


23 januari 2009(金) ※ 冷たい雨が降り続きトドが吼える

◆午前3時半起床.雨はざあざあと本降りだ.気温6.2度で,肌寒い.予約しておいた歯医者に寄ってから,久しぶりに農環研へ.

◆アマゾンから着便本 —— Deborah Heiligman 『Charles and Emma: The Darwins' Leap of Faith』 (2008年12月23日刊行,Henry Holt and Co., ISBN:978-0-8050-8721-5 → 版元ページ著者サイト).予想通り,ダーウィン夫妻の家庭生活物語らしい.まあ,精神的内面は別として,イングランド郊外での静かな生活だったんでしょうねえ.Richard Strauss の〈Sinfonia domestica〉 に描かれているような「絶叫的夫婦喧嘩」なんぞけっしてなかっただろうし.

◆はい,原稿書いてます.焦ってます.やばいです.

◆朝から電話やメール経由で「圧縮加圧」されまくる.もうぼこぼことへこんでるって —— 編集長さんから「序文をすぐ書くよーに」との簡潔なメールあり.『生物科学』の次々号の特集のために.ひょえー.そういえば,1月31日(土)午後3時から立教大学で編集会議が開催される.しかし,その時間帯は新百合ケ丘で酩酊しているはずなので,ごめんなさい.と許してもらえるためには,特集序文を書いて余裕をもってちゃんと送らないといけないんでしょうねえ./海游舎より電話あり.岩手の大会会場でブツをずらっと並べるためには,すでに読まれないまま勢揃いしている三校ゲラを今月末までに返送するようにとのこと.ぎょえー.

◆午前10時半,霧雨.気温8.5度.天気予報では,今日は天気が回復して,関東は15度超の春めく暖かさになるはずなのに,湿った冷気がとても寒い.

◆午後もトドが吼えまくる —— 東京農大から電話あり.またまた,大学院の人事書類を月末までにつくってほしいとの依頼.新規雇用でもないのに,またあのやっかいな文書フォーマットと格闘するのかと思うと,ぺちゃんこにへこみそうなので,「時間がないので書けません」と延髄反射でお断りした(おいっ……)./ずっと放置していたレフリーの再度の督促メールあり.いいかげんにケリをつけないといけないことは重々承知しているのです(が……)./所内の業績報告は領域長締切が2月2日.その前に次年度の契約職員雇用届が今月末まで.そろそろ交付金の残額決済についても考えないと.

◆午後5時まで原稿を書き続ける.『数理生物』の原稿はそろそろ完成のメドが立ちそうだ.湿って寒い夕暮れの曇り空の下を帰宅.夜も原稿執筆あるのみ.あとがない.でも睡魔が…….ケンドール形状空間論まで終わりました.次は,線形接空間の正規直交基底(アフィン変形の uniform components と非アフィン変形の partial warps)の構築.その後,複素正規分布にしたがう標識点セットを出発点として,まず複素Bingham分布(前形状空間),さらにFisher分布(ケンドール形状空間)の確率密度関数の導出まで.最後に,Directional statistics と幾何学的形態測定学との関係に触れる.

—— 睡魔が来りて笛を吹く午前零時.

◆本日の総歩数=7874歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.2kg(+0.6kg)/23.9%(−0.2%).


22 januari 2009(木) ※ またまた東京,雨の駒場でべいづ

◆遅めの午前6時に起床.雨が降って肌寒い.湿り気のある冷気はこたえる.

◆午前はずっと『数理生物』の原稿書き.あいまに,午後の講義のためのRスクリプトをちょいちょい書く.今日はベイズ統計学を解説するのだが,講義時間内にMCMCについてどこまで説明できるかわからない.MCMCpack パッケージを使うときのためのスクリプトを用意する.〈MC Robot〉(→ヘルプ)とか〈WinBUGS〉のデモはきっとはみ出るにちがいない.外は冷たい雨が降り続く.

◆今日も東京へ —— 霧雨に濡れながらつくば駅へ.13:25のTX快速で渋谷方面に向かう.駒場東大前に着いたのは午後3時前.小雨がしとしと降り続いている.気温は低いまま.時計台下の講師控室にてしたくをする.16:20〜17:50 高座.ベイズの定理を出発点として,beta-prior binomial と normal-prior normal の例を挙げ,解析的に事後確率密度関数が求められる場合もあることを説明する.Paul O. Lewis の〈Bayesian Coin Tosser〉はデモ用ソフトウェアとして役に立った.さらに,MCMCの原理について話をしたが,予想通り途中で時間切れになった(次回まわし).Bayesian MCMC は受講生の関心を惹いたらしく,この分だとこの春には本郷キャンパスでベイジアンが増殖するかもしれない(「殺虫剤」が必要か).

—— 来週は水曜(28日)に2コマ続きの補講がある(このとき第2回のレポートを出題する).翌29日は通常の講義の最終日なので,この日に「講義アンケート」を実施する.今期の駒場での講義もそろそろ終わりが近づいてきた.

◆夕方も小雨が降り続いている.つくばに帰り着いたのは午後8時だった.車中読書:向笠千恵子『すき焼き通』(2008年10月刊行,平凡社[平凡社新書439],ISBN:978-4-582-85439-8 → 版元ページ).すき焼きを求めて全国を歩いた本.すき焼きのルーツは「福沢諭吉」では,と著者は推測している.バーチャル名店めぐりで「パブロフの犬」に変身しながらも読了.ごちそうさまでした.それにしても,いい牛肉を食べ過ぎてません? ごはんが進みそうでこわいです.すき焼き鍋は熱しすぎてはいけないと書かれている.鍋がある程度暖まったら牛脂を塗って肉を敷き詰めるというイメージ.京都ではもちろん割り下は入れないスタイルなので(すいません,寺町三条の〈三嶋亭〉のことはよう知りません),肉を焼いて(温めて)からの砂糖の入れ具合など「鍋奉行さま」がいないと始まらないだろう.

◆昨日の日経サイエンス編集部での対談については,茂木さんの〈クオリア日記〉2009年1月22日のエントリーに書かれている.彼がケンブリッジに留学していたときの指導教官が,ダーウィン伝記作家ノラ・バーロウの息子(つまりチャールズ・ダーウィンの曽孫)だったとは知らなかった.

◆夜,また原稿書きに復帰する.いくつかのパーティに関するこまごま —— 1月31日(土)の「野口力を囲んでしまう会」は,14時から,新百合ケ丘〈Il Girasole〉にて./2月7日(土)の「高野泰さんお疲れさま会」は,正午から渋谷〈Tucano's〉にて.

◆本日の総歩数=7169歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前日比)=82.6kg(−0.7kg)/24.1%(−0.6%).


21 januari 2009(水) ※ 臨界点に達したテポドンは東京へ

◆午前5時前に起床する.曇り.湿度が高いのでしんしんと冷え込む.昨日はさまざまな方向からへこんでしまったので,内圧が臨界点に達してしまった.予定通り東京へ出奔する.

◆車中読書 —— 午前の対談のネタ本として,できるだけアヤシそうな系譜本を選りすぐって持参してきた:

  • R. B. Freeman『Darwin Pedigrees』(1984年刊行,Printed for the author, London)
  • Heinz Brücher『Ernst Haeckels Bluts= und Geistes=Erbe : Eine Kulturbiologische Monographie』(1936年刊行,J. F. Lehmann, München → 目次
  • Christiane Klapisch-Zuber『L'arbre des familles』(2003年刊行,Éditions de la Martinière,ISBN:2-7324-2825-6 → 目次
  • J. G. R. Forlong『Rivers of Life, or Sources and Streams of the Faiths of Man in All Lands; Showing the Evolution of Faiths from the Rudest Symbolisms to the Latest Spiritual Developments. Two volumes and chart』(1883年刊行,Bernard Quaritch, London, Privately printed for subscribers only → 目次

トツゲキ用の武器としては,これでもう十分でしょう.ねえ.

◆「対談」してきました! —— 9:00発のTX区間快速で東京へ.大手町の迷路のごとき地下通路を実験用ラットのようにうろうろ歩き回り,日本経済新聞社ビル近くでやっと地上に出たのは午前10時すぎだった.曇り空で気温は低め.

道路を隔てて向かい側にある日経サイエンス編集部のフロアに余裕をもって到着.今日は,10時半から『日経サイエンス』誌の〈茂木健一郎と愉しむ科学のクオリア〉での対談の仕事が入っている.対談部屋にはすでに録音機材とレフ板などが設置されていた.ふたりだけでしばし静かに茶話などと思っていたのだが,編集部のみなさんがオーディエンス(というかギャラリーというか)として10人ほども同席されたので,部屋がもういっぱいになってしまった.定時にモギケン登場.彼は〈EVOLVE〉の古参会員だし,毎年の進化学会大会会場でも会っているので,どうもご無沙汰してましたという感じで.

今回の対談は,『日経サイエンス』4月号でのダーウィン記念年特集〈進化する進化論〉に連なるひとつの企画ということ.ワタクシは「日本の進化生物学の歩みを語る」という役割を背負って今日ここに来たはずなのだが,いきなり系統樹やら【種】やら認知心理やら民俗分類やら,ありとあらゆる話題がばらまかれてですね.ダーウィン進化学に到る道は魑魅魍魎がいっぱいでして.予定されていた2時間の対談時間はわりにすぐに使い切ってしまった.お疲れさまでした.

—— さて,今日の「対談」がいったいどのようなゲラにアレンジされてくるのかは来月はじめのお愉しみということで.帰りがけに今回の特集記事のひとつの翻訳チェックを依頼された.

◆肖像写真のアップデート —— 今日は対談の写真を撮られることがわかっていたので,個人的にはそこそこに恥ずかしくない格好をしていった.対談が終ってからカメラマン氏に何枚か見映えのする肖像写真をその場で撮影してもらった.そんなわけで,トップページの写真は今日から新しくなります.※ん? 本棚が背景というのはちとおとなしすぎるかな.

◆さて,休みなく東大へ向かうぞ —— 大手町から東大前に向かう.本郷通りに出たのは午後1時前.すぐさま農学部7号館に入り,会議室に直行する.午後1時10分から専攻教員会議.午後3時半まで.来年度の「大学暦」のチェック.「農事暦」みたいで大学独特の習俗の香りが漂う.

◆最後にお白砂だ —— ドーバー海峡をわたって,正門を出る.久しぶりに〈ルオー〉にて一休み.午後4時すぎに音羽からご登場.今日は本当だったら『分類思考の世界』のプロローグを手渡すはずだったのだが,ぜーんぜん書けていない.ごめんなさい.今後の予定として,いちおう「6月刊行」を目指して逆算で原稿を書き上げていくことになった.ちょっとだけ加圧されて,またへこむ.

◆長い一日が終わり,JR東京駅を一回りしてからつくばに直帰.午後6時すぎにつくばセンターの地上に出たら,小雨がぽつぽつ降りはじめていた.朝から出奔,そして仕事をハシゴしてしまったので,疲れました.へこみました.でも,原稿書きがそのまま残っている…….雨の夜.

◆明日は午後に駒場高座があるが,それまでは原稿ひとすじで書き上げないとヤバいです.

◆本日の総歩数=12146歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.計測値(前日比)=83.3kg(−0.1kg)/24.7%(−0.8%).


20 januari 2009(火) ※ 居室カンヅメ加圧でへこみ続ける

◆午前4時起床.薄曇り.欠けた月がおぼろにかすむ.午前4時半の気温はプラス2.1度だったが,午前6時前にはプラス0.9度まで下がっていた.その後も曇天で日射しがなく,気温は上がらず寒いまま.

◆原稿また原稿.フランシス・ゴルトンの合成写真術(composite photography)とルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインの家族的類似度(Familienähnlikeiten)の間の捻じれた関わり.ゴルトンは各「人種」の本質的形状特徴に基づいて monothetic な分類をするために定量的な合成写真をつくろうした.ところが,彼の研究に啓示を受けたウィトゲンシュタインは,部分的な類似度の「たば」(これが「家族的類似性」)によってある類を定義するというアンチ本質主義的かつ polythetic な分類の可能性を『Philosophische Untersuchungen』で論じた.

◆午前10時.曇り.5.3度.計量生物学会から電話があり,大会担当の業務に関してプッシュあり.加圧されてへこむ.

◆原稿また原稿.ケンドール形状空間論.『数理科学』原稿ではこの話題が中心となる.何たって「数理」だし.

◆午後,葉山方面から加圧される.ごめんなさい.押されてさらにへこむ.

◆原稿また原稿.カルロ・ギンズブルグによる写本系図の話.系統樹として写本系図(stemma codicum)が描かれたのは,1827年のことだった:Gosta Holm (1972), Carl Johan Schlyter and textual scholarship. Saga och Sed (Kungliga Gustav Adolf Akademiens Aarsbok), 1972: 48-80. ロバート・J・オハラの「系統樹思考」論文で初めてこのことをぼくは知ったのだが,ギンズブルグはこの写本系図について論じている.オハラ論文ではこの写本系図の拡大図だけが示されていたのだが,ギンズブルグはこの図を含む全体図を示している.写本系図の元は紀元9世紀にまでさかのぼれる「類縁表(Tabula consanguinitatis)」の図像であることがやっと理解できた.Christiane Klapisch-Zuber が研究した家系図と写本系図とが「類縁表」を介してつながったということだ.これは収穫.

◆午後5時に帰宅.インフルエンザには気をつけましょう.ワクチンを摂取していたのに罹患したという話を聞く.タイプがちがう病原体が混在しているのか.

◆夜のとどめの加圧 —— 海游舎からメールあり.残りの章の三校ゲラを郵送するとのこと.そして,ここ何年か引きずってきた訳本:スコット・カマジン他[松本忠夫・三中信宏訳]『生物システムにおける自己組織化(仮)』(2009年3月刊行予定,海游舎,約600ページ,ISBN:978-4-905930-48-8 → 版元ページ)の刊行予定「2009年3月刊行予定」が,「2009年4月1日刊行」となったとの連絡.実際には「3月10日」までに印刷所に入れて,生態学会岩手大会の会場ブースにてブツを並べるという,とっても具体的な今後の予定が決まってしまった.ゴールの日にちが確定すれば,あとは“日程逆算”によってものごとは“機械的”に進んでいく.

—— ぐぐっと加圧されてへこむへこむ.

◆へこんだまま,明日は東京にてハシゴする.まず午前10時半からは,大手町の日経サイエンス編集部にて『日経サイエンス』対談.午後1時からは東大農学部にて専攻教員会議.さらに,午後4時からは本郷〈ルオー〉にて音羽さまから“加圧”される予定.

◆本日の総歩数=8649歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.4kg(0.0kg)/25.4%(+1.8%).


19 januari 2009(月) ※ 暖かくなっても鉄鎖につながれて

◆午前4時半起床.夜中に降っていた雨はすでに上がっていたが,道路のそこかしこに水たまりができている.午前5時の気温はプラス3.6度なので,凍結するようなことにはならなかった.曇り空が東から白みはじめた.

朝のうちに雲はきれいさっぱり吹き払われて,青空が広がる.気温もどんどん上昇し,午前11時には9.9度に.この分だと午後は10度を大きく上回る暖かさになるだろう.風もなく久しぶりの暖かさ.

◆さっくり着便しました —— John Earman『Bayes or Bust? : A Critical Examination of Bayesian Confirmation Theory』 (1992年5月刊行,The MIT Press[Bradford Books], ISBN:0-262-05046-3 [hbk] → 版元ページ).おお,これはビシッと正しい「科学哲学」な本じゃないですか.“べいづ本”というとわれわれの業界では「論よりラン」な計算統計MCMC本をつい連想してしまうのですがね.

タイミングよく,複写依頼してあった「Bayes and Bust」書評論文も図書室から到着 —— Malcolm R. Forster (1995), [Review article] Bayes and Bust: Simplicity as a Problem for a Probabilist's Approach to Confirmation. The British Journal for the Philosophy of Science, 46 (3): 399-424 (doi:10.1093/bjps/46.3.399). 日本だとこういう長文の「書評論文」をものする人があまりいない.

これで,ずっと前に届いていた反撃「Bayes Not Bust」論文:David L. Dowe, Steve Gardner, and Graham Oppy (2007), Bayes not Bust! Why Simplicity is no Problem for Bayesians. The British Journal for the Philosophy of Science, 58 (4): 709-754 (doi:10.1093/bjps/axm033草稿pdfファイル) と合わせて,「Bayes/Bust三点セット」がやっとそろうことになった.

◆着弾なお続く —— しかし,届いたのは「いいもの」ばかりとはかぎらない:海游舎からカマジン本の三校ゲラの続き三章分(第11〜13章).既着分もまだ読んでないんですけど……./某査読の督促メールも.どーするのよっ(冷汗)./あらゆる方向からのプレッシャーは言うに及ばず.

◆午後になって,外はさらに暖かくなったようだが,東京ほどのぽかぽか陽気ではない.

◆午後も続く着弾の嵐 —— 『日本生物地理学会会報(和文誌)』の最新号:第63巻(2008年12月20日刊行,258 pp., ISSN:0067-8716).過去にない厚さになった./『医学書院 医学大辞典・第2版』(2009年2月下旬刊行予定,医学書院,約3.600ページ,本体価格18,000円,ISBN:978-4-260-00582-1 → 版元ページ).初版が出たのは6年前の2003年3月だった.ぼくは系統学関連15項目を執筆しているので,著者割引価格(半額)で購入できるらしい.それでも「9,000円」もするんですけど…….

◆昼も夜も『数理生物』原稿に追われています.ごめんなさいごめんなさい.連日,「鉄鎖」をずるずると引きずっている心地ぞする.

◆本日の総歩数=5037歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前日比)=83.4kg(−0.6kg)/23.6%(−1.0%).


18 januari 2009(日) ※ 追いつめられたら猫でもトドでも

◆午前5時に起床する.曇が多い.湿度が高めで底冷えのする夜明け前.午前中は曇りときどき晴れ.ぱらりと小雨が降ったりしたようだ.日射しは弱く,寒さは続く.

◆トドの「かため撃ち」を狙って —— こうも追い込まれてしまったら,いっぺんにまとめてケリをつけてしまおうということで,一石二鳥どころか「一石四鳥」の作戦をしばし練ってみる.ダメ出しの『ニュートン』原稿はそっくりそのまま,勁草書房本の“着火パラグラフ”に流用できそうだ.一方,これから書き直しする『ニュートン』原稿の筋書きは,現代新書プロローグとしても使えそうだが,連載全体を総括するためには「結い紐」をさらに補強をする必要がある.そして,その「結い紐」部分自体は『生物科学』の特集記事の原稿にもっていけるだろう.※まさに,捕らぬ狸の皮算用というやつだ.

—— というわけで,いま現在は,別の一石を投げて,もっとも時間的余裕がない『数理生物』の原稿を撃ち取ろうとしています.ハイ.

◆午後も晴れたり曇ったりしていたが,夕暮れが近づくとともにしだいに雲が厚くなってきた.

◆「おしるこ」と「ぜんざい」と「亀山」 —— 祇園の八坂さんのちかくにある老舗〈甘泉堂〉の懐中汁粉「四君子」をいただいたので,さっそく賞味する.塩漬けの蘭の花が浮かび,半ば強制的ながらも雅(みやび)な雰囲気が漂う.

やっぱりこうさぶいときはおしるこやなあ,とほっこりしつつ.いま住んでいる関東では,こういう粒々のないさらさらのおしるこはめったに出会わないことを実感する.そう,京都では「おしるこ」と「ぜんざい」とは「汁気がある」という共通点があり,「おしるこ」は小豆の「粒がない」のに対し,「ぜんざい」は「粒がある」という明瞭な区別ができる.

ところが,関東では,「おしるこ」と「ぜんざい」は「汁気の有無」によって区別されていて,汁気のあるものは小豆粒の有無にかかわらず「しるこ(汁粉)」と呼ばれる.細かく分ければ,粒がないのは「御前しるこ」,粒があれば「田舎しるこ」と呼ぶそうだ(「御前しるこ」なるものは未経験だが).その一方で,関東の「ぜんざい」とは汁気がない“あんこ”そのものだ.京都出身のぼくとしては関東風の「ぜんざい」は京都で食べた経験がまったくなく,そういう食べ物自体が関西には存在しないとばかり思い込んできた.

ところが,今日たまたま宇治の実家に電話をしたおり,何の気なく「ところで,汁気のないぜんざいて京都にもあるんか?」と訊いたところ,それまで風邪でごほごほ咳き込んで弱っていた母親がいきなり元気になって,「何をあほなこと言うてんのやろ,この子はぁ.それはなあ〈亀山〉言うねんで」とキッパリ一言.え!「亀山」? そんなもん知らんぞと,しばし押し問答したのだが.さっぱり調子の出ない日馬富士のごとく,喜寿をとうの昔に越えた老母に土俵際に追い込まれあっさり寄り切られてしまった.

知らんいうことはこわいもんやな.驚愕の「亀山」がトツジョ出現したことにより,ワタクシの中での「おしるこ/ぜんざい」クレードの体系化は根底からがらがらと崩壊してしまった.それまでは,「おしるこ/ぜんざい」という共通の名称体系が指示する実体が関西と関東ではズレていて,両者の対応関係は:

関西  おしるこ / ぜんざい /  なし
関東   なし  / おしるこ / ぜんざい

だと思っていた.ところが,上の「なし」の箇所が実は埋まっていて,現実には:

関西  おしるこ / ぜんざい /  亀山
関東  御前汁粉 / おしるこ / ぜんざい

という完全なる対応関係が関西と関東の間にはあることが判明したということだ.ただ,関西での「亀山」がそれほどポピュラーな食べ物ではなさそうであることは,関東での「御前汁粉」のマイナーさに相当しているのだろう.推測だが,ネイティヴ京都人であっても「亀山」を知らない若い世代はきっと少なくないにちがいない.

—— しかし,個人的には,トラッドな「亀山」という名称よりは,むしろ「小倉」と言われた方が“あんこ”らしいイメージが実感を伴って湧いてくる.

◆ま,「おしるこ」はこっちに置いといて,と.夜の10時過ぎから再び原稿を書き始める.いつまで続くぬかるみぞ.明日からはまたふつうの労働日が始まってしまうというのに.

◆本日の総歩数=5075歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=84.0kg(+0.3kg)/24.6%(+0.5%).


17 januari 2009(土) ※ 厳寒から解放され原稿に拘束され

◆「午前さま」は午前7時を過ぎてようやくのろのろと起きだす.今日もよく晴れているが,北風が吹かない分,昨日までよりも格段に暖かく感じる.それにしても,目覚めたときからアタマがずしんと痛っ……(身から出たサビ).

◆いまひとつメリハリに欠ける土曜日で,“石抱き”の原稿執筆に向かわねばと思いつつ,からだの方は十歩ほど後ろからのろのろとついてくる感じ.日射しのある昼過ぎと夕方にちょっとだけ買い出しに歩き回ったが,あとは引きこもり.しかし,肝心の作業進捗はイマイチで,こんなことではぜんぜんあきまへんな.

◆寒さが緩んだせいで,気分も緩んでしまったか…….もう明日しかないっ.

◆本日の総歩数=4058歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=未計測/未計測.


16 januari 2009(金) ※ 苦あれば苦あり,楽あれば楽あり

◆午前5時起床.スコットランドの潮の香りと薬草のごとき後味がなお残る.今朝も晴れて冷え込んでいる.今日は平日労働の日.

◆またもや“加圧”され続ける午前 —— 『ニュートン』編集部より,原稿リライトに関する電話連絡.とりあえず,「ですます調」で書き換え,文献リストはなし,そして実例を入れるようにとのこと.

◆駒場の〈河野書店〉は,サイトが新しくなって,直接オンラインで古書を注文するシステムもつくられていた.さっそく会員登録をした上で,絶版後の古書価格がとんでもなく暴騰している「ベイジアン本」:John Earman『Bayes or Bust? : A Critical Examination of Bayesian Confirmation Theory』(1992年5月刊行,The MIT Press[Bradford Books], ISBN:0-262-05046-3 [hbk] → 版元ページ)を発注した.この本がたった3,000円というのは,とても安い買いものだ.10年ほど前に出た本書の長文の書評は「Bayes and Bust」というタイトルだった.そして,ベイジアン側からの反撃論文「Bayes not Bust」が一昨年に出た(いずれも BJPS 誌).肝心のネタ本だけが長らく入手できなかったのだが,これでやっとケリをつけられる.

◆ダーウィン興行「サイエンスカフェ@駒場」続報 —— 駒場の「キクマル父」よりメールあり.すでに東大のインタープリター養成プログラムのイベントとして広報されたとのこと:〈チャールズ・ダーウィン、200年目の誕生会〉.日時は:2009年2月12日(木)18時30分〜20時.定員のあるイベントなので,関心のある向きは上記サイトから(というか「キクマル父」に)申し込んでください.

◆さらに“加圧”される昼下がり —— 『数理生物』編集長より再度の進捗探針メールが葉山から届く.ぜんぶぜーんぶ,この週末の時間外労働にかかっているということですかね.苦しいなあ.

◆「苦」を傍らに「楽」に走る —— 午後5時過ぎに撤収.いったん家に帰ってから,午後7時過ぎに再び外出.閉店間際のたがみ酒店にて,いつもの出雲の王祿酒造〈〉「にごり」の一升瓶を抱えてくる.その後,上原にある某氏のお宅におじゃまして,午後8時過ぎに少人数の酒宴の始まり.会津の曙酒造がつくっている〈天明〉の新酒「中取り壱号(おりがらみ)」を初めていただく.コロイド溶液のようなかすんだ澱の半透明さがとても魅惑的だった.〈渓〉の方は,しゅぽんと開栓したとたん,底にたまっていた真っ白の澱が浮き上がるほど元気よくしゅわしゅわと発泡してくれた.

にごり酒におりがらみがたたみかけて,たいへんアブナい日本酒の飲み方をしてしまった.当然のごとく日が変わってしまい,午前1時になってやっとお開き.結局,二升を実質的に三人で飲みきってしまったことになる.昨夜といい今夜といい,連日連夜こんなに呑み歩いているようでは困ったもんだ.

◆この週末こそは心を入れ替えて原稿を書くことにしよう.

◆本日の総歩数=8181歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前日比)=83.7kg(+0.1kg)/24.1%(−1.5%).


15 januari 2009(木) ※ 北風に吹き寄せられて駒場に立つ

◆午前5時前に起床.晴れて寒い.昨日のハンマーによる精神的打撲傷が痛い.今日は農環研に行かない日なので,じっとしている.

◆午前のこまごま —— 『ニュートン』記事のリライトの構想を練りつつ,午後の駒場高座のためにリサンプリング統計学デモ用のRスクリプトをちくちく書いてみる.この講義はR実習の科目ではないので,あくまでも計算デモのみというのがちと歯がゆいが,こればかりはじたばたしてもしかたがない.ただ洗脳あるのみ.ブーツストラップ[ノンパラメトリックとパラメトリック]そしてジャックナイフのスクリプトを書き,バグ取りをしてちゃんと動くことを確認し,この件はおしまい.

◆今日はよく晴れて,北風がとても強い.そのせいで体感的にしびれるほど寒く,ばっちり防寒 して出かける.12:25発のTX快速で駒場東大前へ.

◆車中読書 —— 円満字二郎『漢和辞典に訊け!』(2008年12月10日刊行,筑摩書房[ちくま新書756],ISBN:978-4-480-06462-2 → 版元ページ).

シンプルに漢和辞典を「読む」ための本.思い起こせば,ぼくが最初に漢和辞典を手にしたのは,小学生(中学生?)のときに買った『角川新字源』だった(この点では著者と同じだ).親字数は一万ほどあったと記憶している.中学から高校にかけては舊字體で文章を書いていたので,漢和辞典は手放せなかった.その後も厚めの漢和辞典を何冊か買い替えたが,漢和辞典へのこだわりはしだいに薄れていった.しかし,いまだに『諸橋大漢和』を全巻そろえなければという半ば強迫観念がときどき湧き上がってきてしかたがない.ちょっとはずれ気味の辞典フリークなのかもしれない.フトコロが十分に暖かく,収納スペースも十分にあれば,まちがいなく衝動買いしてしまうにちがいない.

本書は「漢字検定」受験者をターゲットにしているようだが(オビのコピーでは),ピュアな「漢字好き」読者にとっては得るものが多いだろう.また本書の巻末に「漢和辞典ガイド」がついているが,他書ではこういうのを見たことがない.さすが.

◆早めに着いたので,駒場下の〈河野書店〉(いつの間にかサイトがずいぶんよくなっている)でしばし時間調整をする.午後2時半に駒場東大前駅に戻り,改札にて海游舎・本間さんよりカマジン訳本の三校ゲラ(前半の十章分)を手渡される.早く片付けないと,生態学会大会に間に合わないぞ.日に日に「石抱きの刑」の“石”が積み上がっていくような.

◆今年初の駒場高座 —— 今日は計算統計学の中で「リサンプリング手法」についての講義とデモ.Rスクリプトはみごとにそのお役目を果たしてくれた.アップテンポで,「♪恋人がブーツストラップ〜♪|♪本当はジャックナイフ〜♪」(→元歌を再改変してごめんね).17:40に講義終了.来週はベイズ統計の噺をする予定.さらに,レポート(二度目)の出題と,講義アンケートを書いてもらわないといけない.

◆夜の神保町にてぱあ〜っと —— 午後6時過ぎ,夕暮れで真っ暗な構内をあとにして駅に向かう.偶然にも本郷に向かう殿のご一行に混ざって半蔵門線に乗りこむ.農学部で『Theoretical Ecology』の輪読会があるとのこと.途中で別れて神保町に到着.夜のスズラン通りはずいぶん久しぶりのことだ.東京堂書店を一回りする.本また本また本.

三省堂書店奥で待ち合わせて,まずは路地裏の中華料理〈徳萬殿〉にて軽く腹ごしらえをば(なーんだかとてもうまくて量が多かったな).ついでに紹興酒のボトルもさくっと空いてしまったんですけど…….

その後,同じ神保町内で転戦し,学士会館前の再開発巨大ビルの1階に入っている〈カラコルム〉というバーにて,モルト・ウィスキーなど.

シングル・モルトの品揃えがとても多い店.アイラの「Caol Ila」や「Bowmore」を中心においしそうな銘柄を選んでいるうちに,しだいに店の風景がゆらゆらしてくる(加水なしで60度もあるのを注文するからさ).天井近くに並べられているボトルたちもそこはかとなくゆらりゆらりと.午後10時にお開き.次回来るときは「Port Ellen」をぜひいきますっ.冷たい北風にも冷めない酔い方だった(やや飲み過ぎか).神保町から都営三田線→大江戸線→TXと乗り継いで,つくばに帰り着いたのは午後11時半だった.寒い寒い.

◆ううむ,トドが増殖しているだけではなく,それぞれが巨大化・粗暴化しつつあるよーな不穏な空気が漂ってきた.困ったな…….

◆本日の総歩数=10427歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜×.計測値(前日比)=83.6kg(0.0kg)/25.6%(+0.4%).


14 januari 2009(水) ※ きついハンマー三発でよろめいた

◆午前4時半起床.今朝も冷え込む.気温マイナス2.6度.見渡せば一面の霜がおりている.乾いた冬空が遠くまで真っ青に突き抜ける.

◆今日も朝からこまごまと —— からみつく線虫のこと.昨日からの論文改訂の件で,系統樹の描画をもう一度する手間はなくなったが,最尤法と最節約法のふたつを併記するのに対応して,本文とレジェンドの該当箇所を改訂する必要はなお残っている.ちょこちょこと修正してから共著者へメール送信.これで流木がかなたへ流れ去ってくれればいいのだが./そろそろ,今年度の確定申告に向けて必要書類をそろえ始めよう.足が出ないようにしないと./農環研の分会旗開きは1月26日(月)の夕方に予定されているが,この日は計量生物学会の理事会が東京理科大(九段)であるので,欠席.チケットは買います./ここ数日で状況がいろいろ変わったので,トド撃ちリストを更新した.

◆午前10時.快晴,無風.気温5.9度.安定した冬晴れの日.

◆ベスト・オブ・谷根千 —— 谷根千工房(編著)『ベスト・オブ・谷根千:町のアーカイブス』(2009年1月下旬刊行予定, 亜紀書房, 本体価格2,400円, ISBN:978-4-7505-0901-3 → 版元トップページ).〈ナンダロウアヤシゲな日々〉の記事(1月12日付)によると,本書は今年終巻となる地域雑誌『谷中根津千駄木』(→〈谷根千ネット〉)からのセレクションだそうだ.例によって更新の遅い版元サイトには(最週更新が「2008年8月」とは),新刊・近刊情報がまったく載っていないが,忘れずに買うようにしよう.

◆立て続けに三発の「ハンマー打撃」を受けてよろめく —— 『ニュートン』編集部よりさっそく返信があり,あっさりダメ出し(「難しくて硬いです」とのこと).「中高生にもわかるよう」に【種】について書けとは(書けるヤツがいたらちょっと来い).まじリライトじゃん……(汗).※マーラー〈悲劇的〉一発目のハンマーが鳴り響く./音羽さまより電話あり.1月21日(水)16:00に本郷〈ルオー〉にて『分類思考の世界(仮)』のプロローグ原稿を待つとのこと(大汗).※二発目のハンマーでふらふらに./そして,『数理科学』の原稿がまだだったりして.※おお,とどめの三発目のハンマーで逝きました.合掌.

 —— 今日はもう立ち直れないかもしれない…….

◆ゲン直しの新刊届く —— 『Annual Review of Ecology, Evolution, and Systematics : Volume 39』(2008年12月刊行, Annual Reviews, Palo Alto, ISBN:978-0-8243-1439-2 → 版元ページ).系統学関連だと,Daniel C. Fisher の「stratocladistics」とAndy Purvisの「絶滅系統学」のふたつくらいかな.今年はちょっと少ない.Douglas J. Emlen「動物兵器の進化」がおもしろそう.モノクロ図版にそこはかとなくヘッケル的な図像学の匂いが漂っている.あとは,「Ever since Owen」という四足類の系統発生の総説を挙げるべきか.

◆よろよろしている足もとで,スネコスリのごとくトドがまとわりつく —— 統計質問2件と要望1件,ずっと放置してます./査読依頼2件,なお未処理です./進化学事典編集の件,手つかずです.

◆午後5時前,ふらふらと農環研を出て,夕焼けを横目に帰宅する.風は弱いが気温は低いまま.ここ数日は今の季節に典型的な空模様がずっと続いている.

◆で,まずはいかにして「ハンマーの打撃」から復活するかということで,とりあえずは文章を書き続けるしかないんだろうねえ…….泥濘苦界・無間地獄・賽の河原などあらゆる「苦しい世界」の図像が脳裏に浮かぶ.

◆年越しのナゾが解けた! —— ハンマーに打ちのめされた一日だったが,最後にひとつくらいいい話題を.昨年,アルヘンティーナのトゥクマンに行ったとき,名称不詳のスナック菓子だったマテ茶のお茶うけの名前がついに判明した.

南米つながりの知人がかの地の事情通に訊いてくれたところでは,この菓子は〈クリオージョ(criollo)〉と呼ばれているそうだ.インターネットで発見した,かの国のとあるブログに載っている記事「Criollo o “Criollito”」の添付画像を見ると,確かに「これだ!」と断言できる.ただし,聞くところでは,この菓子は同国の中でも中部のコルドバから北部のトゥクマンにかけてのみ限定的に分布しているようだ.しかも,南米スペイン語の「クリオージョ」とは、英語でいうところの「クレオール(creole)」に相当することばなので,ひょっとしたらもともとこの地域にはなくスペインあたりから伝承されてきた食べものの末裔なのかもしれない.手元にあるスペイン語辞書には「criollo」ということば自体は載っているが(「クレオール」の語義で),このお菓子の意味で用いられるとは書かれていない.※ご教示,感謝.

◆明朝も冷え込みが強いにちがいないが,駒場の講義があるので,霜柱を踏み分けての未明出勤からは解放される.

◆本日の総歩数=7835歩[うち「しっかり歩数」982歩/10分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.6kg(0.0kg)/25.2%(−0.1%).


13 januari 2009(火) ※ 系統樹の流木に押し流されていく

◆午前4時半.放射冷却で冷え込んで,外の車は霜がびっしり,地面には霜柱が立つ.気温マイナス3.9度.今季の最低を更新したにちがいない.こういう凍える明け方は紅の朝焼けが映える.

◆午前のこまごま —— 平日にもどるといきなりこうなる:駒場ハンドアウト類を一括公開しました(→ 〈R-statistiker〉).これで今月末までの講義のしたくはすべておしまい.あとは第2回のレポート出題のみ./公費購入する図書の一覧表.10万円ほどですみますか.あとの残額でPCを買うことにしましょう./種苗管理センターの統計講義は2月5日(木)13:00〜17:00と確定した.場所については,筑波事務所・研究情報センターの〈電農館〉を予定しているとのこと.これでR実習ができる./『ニュートン』編集部に原稿をメール送信完了.

◆午前11時.空高く真っ青の快晴.気温6.1度.風なし.

◆あのグールドもついに「評伝」の対象となってしまったか —— ビッグネームが逝去すると,いかにも待っていたかのように伝記的な記事や著作が出版される(「X-day」に備えて事前に密かに準備を進めておくことは大切だが).進化学者もその例外ではない.2005年に亡くなった故 Ernst Mayr もすでに大きな伝記(Jürgen Haffer『Ornithology, Evolution, and Philosophy : The Life and Science of Ernst Mayr 1904-2005』2007年刊行, Springer-Verlag, ISBN:978-3-540-71777-5 [hbk] / ISBN:978-3-540-71778-2 [pbk] → 目次|版元ページ:hbk / pbk)が出ている.

今度は Mayr に先立つ2002年に逝去した Stephen Jay Gould に関する論文集だ:Warren D. Allmon, Patricia Kelley, and Robert Ross (eds.)『Stephen Jay Gould: Reflections on His View of Life』(2008年11月6日刊行,Oxford University Press, xiv+400 pp., ISBN:978-0-19-537320-2 [hbk] → 版元ページ).Richard Lewontin や Richard Levins らかつての「同志」たちを含む十数名による寄稿が含まれていて,最後にグールド著作目録が40ページあまり付けられている.

—— かつて,博士課程に入ったころ,彼のエッセイ集:スティーヴン・ジェイ・グールド[渡辺政隆・三中信宏訳]『ニワトリの歯:進化論の新地平(上・下)』(1988年10月刊行,早川書房,ISBN:4-15-203372-X [上] / ISBN:4-15-203373-8 [下])を翻訳する機会を得た(ほんとうは樋口広芳さんが訳者トップにくるはずだった).四半世紀前の当時,飛ぶ鳥を落とし地を這う貝を舞わせるだけの馬力があった著者が後に病に斃れるとは想像すらできなかった.彼のエッセイはどれも翻訳に手こずったが,要するに出だしの衒学的なパラグラフは目を閉じて通り過ぎればいいのだということがそのうちわかるようになった.でもって,一通り最後まで終えてから,おもむろに冒頭パラグラフに戻ると「なるほどそういうことか」とうなずける趣向が凝らされていることがわかる.

◆午後のこまごま —— あさっての1月15日(木)はとてもいそがしい:まずは,午後2時半に駒場東大前改札にて海游舎の本間さんと落ち合って,カマジン訳本について打ち合わせ.続いて16:20〜17:50は駒場での年明け最初の生物統計学講義,さらに,午後7時には神保町某所にてワルい方々と飲み会.世の中は“真空”を嫌うのか.

◆久しぶりに地下書庫に融けゆく —— 約半世紀前の Science 誌のバックナンバーを掘り起こしに,農環研の地下書庫に入り込む.書棚の間をゆらゆらと徘徊しつつ,ボルヘスかはたまたマラキーアか.ワタクシの真の居場所はやはりここしかないなあ.掘り起こした記事の数々:

  1. Peter H. Raven, Brent Berlin, and Dennis E. Breedlove (1971), The origins of taxonomy. Science, 174 (17 Decmber 1971): 1210-1213.
  2. Brent Berlin, Dennis E. Breedlove, and Peter H. Raven (1966), Folk taxonomies and biological classification. Science, 154 (14 October 1966): 273-275.
  3. Jared M. Diamond (1966), Zoological classification system of a primitive people. Science, 151 (4 March 1966): 1102-1104.

—— 民俗分類と科学分類が同じ【種】の区切り方をしているからと言って,【種】の「実在性」を軽々に口にしてはいけないという教訓として.とくに,Raven et al. (1971) は,生物分類学が将来的に「情報科学」に変身することを予期した上で,こう結んでいる:

With modern electronic data processing equipment, it has become possible to record information about organisms, to retain this information in a data bank, and to utilize it for various purposes, including the construction of various taxonomic systems. [……] By using such equipment to its full potentialities, we should be able to achieve a qualitative improvement in our perception of the living world (p. 1213)

この記事では,リンネ以降の近代分類学に内包された民俗分類のコアを指摘している.したがって,生物体系学が情報科学として変身するとしても,生物界の実体(reality)がよりよく解明されるとは彼らはけっして言わない.そのような生物界に関するヒトとしての知覚(perception)が改良されると彼らは言っている.卓見ではないか.

◆昼下がりの「流木」漂着 —— 昨年のうちに出るはずだった線虫論文は最後の段階に来てレフリー側からのリクエストにより,解析セクションの再考を求められることになった.イランからの系統樹たちに包囲されて,再び解析をしてみたり,ツリーファイルをチェックしたり.しかし,短時間ではラチがあかない.データの見直しか? そうこうするうちに元シーケンスが何本もメール経由で押し寄せてきた.こら,たまらん.

◆流木の海に騒ぐトドどもをそのまま放置して,夕闇迫る午後5時に帰宅する.今日も晴れ上がって寒く,夕焼けが鮮やかだった.

◆明日もトド撃ちは続く…….

◆本日の総歩数=8840歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.6kg(+0.5kg)/25.3%(+0.2%).


12 januari 2009(月) ※ 連休最終日は改心して原稿を書く

◆三連休の最終日は怠惰な生活を深く反省して再起を期すはずが,いきなり午前7時まで寝過ごしてしまう.もちろん外は明るくなっていて,すっきり冬空,乾いた北風.気温はあいかわらず低い.前日のポトフに火を入れておく.太陽がのぼるとともに風もおさまって,日溜まりは暖かい.

◆執筆生活への自己幽閉 —— 百人町で内職した原稿がまだ書き上がっていなかった.最後の数枚を午前中に仕上げて完成:三中信宏「「種」とは何かを問い続けること:ダーウィンの時代から現代への照射」.本文11枚+文献リスト2枚(×400字換算).文献項目の不明箇所を確認し,参考グラフィクス画像をひとつ用意すれば,編集部に送信することができる.ま,この件はほぼ終わったということだ.

—— 次は『数理生物』と『生物科学』の寄稿記事だ.内容的には,『生物科学』の生物学特集が関連が深いので,その「枕詞」記事を先に片付けることにしようか.しかし,より切羽詰まっている数理生物の形態測定学記事は書くべきことは最初から確定しているが,まだなーんにも書いていないぞ…….

◆成人式の喧噪と雑踏が去った今日のつくばセンター界隈は静かだ.昼下がりにベーコンの塊を買いにちょっとお出かけする.昨年末以来,肉屋の前を通るたびに立ち止まって肉塊をじっと値踏みする癖がついてしまった.つくばあたりだと,キロ単位で肉塊を買う客はあまりいないようで,〈肉のハナマサ〉は別としてほとんどの肉屋ではスライスした肉しか陳列していない.肉塊が必要な場合は,そのつどオーダーカットで切り分けてもらうしかない.

◆チャペック旅日記の続編 —— 2年ほど前の日録(→ 2007年3月23日)で,そのころ新刊で出版されたばかりのカレル・チャペックの紀行本について書いていた:

  1. カレル・チャペック(飯島周編訳)『イギリスだより[カレル・チャペック旅行記コレクション]』(2007年1月10日刊行,筑摩書店[ちくま文庫 ち-8-1], ISBN:978-4-480-42291-0 → 版元ページ
  2. カレル・チャペック(飯島周編訳)『チェコスロヴァキアめぐり[カレル・チャペック旅行記コレクション]』(2007年2月10日刊行,筑摩書店[ちくま文庫 ち-8-2], ISBN:978-4-480-42293-4 → 版元ページ
  3. カレル・チャペック(飯島周編訳)『スペイン旅行記[カレル・チャペック旅行記コレクション]』(2007年3月10日刊行,筑摩書店[ちくま文庫 ち-8-3], ISBN:978-4-480-42296-5 → 版元ページ).

その日録の最後に,「次はどこの国かな?」と書き添えてからはや2年が経ち,このたびようやく続編が出版された:カレル・チャペック(飯島周編訳)『北欧の旅[カレル・チャペック旅行記コレクション]』(2009年1月10日刊行,筑摩書店[ちくま文庫 ち-8-4], ISBN:978-4-480-42498-3 → 版元ページ).彼が周遊したのは,順にデンマーク→スウェーデン→ノルウェーだ.既刊と同じく丸みのあるほのぼのイラスト線画がいたるところに描かれている.

しょっぱなに,デンマークを代表する作家の一人として,ハンス・ペーター・ヤコブセンの名前が挙がっている(p. 14).ぼくの『生物の樹・科学の樹』の連載第12回目「目覚めよ、すべての花よ」に書いたように,19世紀デンマークでのダーウィン思想普及に大きく貢献したヤコブセンは,同時にアルノルト・シェーンベルク作曲〈グレの歌〉の原作『サボテンの花ひらく(En Cactus springer ud)』を書いた作家でもあった.早稲田の五十嵐書店でヤコブセン作品集(全1巻)の古書を手にしたが,その中には残念ながらこの未完の習作は所収されていない.しかし,幸いなことに,この作品にかぎっては,鷺澤伸介さんによる翻訳が現在インターネット公開されている.

—— なお,あとがきによると,この本がチャペック生前の最後の旅行記だそうだ.※ということは,この翻訳シリーズも打ち止めですか?

◆午後5時を待ちかねたように,西の空に日がすとんと落ちていく.緋色に暮れなずむ寒い夕方.連日こう寒いとついついほっくり暖かい料理が好ましくなる.今日はベーコンの脂でしっかり味付けしたジャーマン・ポテトをつくることにしよう.ポトフにポテトにベーコンじゃ,まるで「北の国」の食卓だ.熱量ありまくりだ.

◆夜,『ニュートン』記事原稿に残っていたいくつかの要確認事項にケリをつけることができた.これで原稿トドは一頭いなくなった.今月26日締切の原稿を2週間も前に仕上げてしまうとは,近年まれに見る驚くべき puctuality だ.年が変わって人も変わってしまったのだろうか.※誰もほめてくれないので自己ツッコミしてみる.

その後,追い込まれている他の原稿のための助走と資料の読み込み.明日からはまた平常労働日なのだが,原稿書きのイバラの道はなお続くのだ.

◆本日の総歩数=1775歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.計測値(前日比)=83.1kg(+0.9kg)/25.1%(0.0%).


11 januari 2009(日) ※ 成人式のつくばは外も内もポトフ

◆夜中に何度か目が覚めた.アタマいたたた.これはもう昨夜の飲み過ぎにちがいない.呑むときは気力・体力ともに万全の備えで立ち向かわないといけない.外がすっかり明るくなった午前7時頃過ぎまでぐでぐでしてしまう.

◆午前9時過ぎに中央公園の〈つくいち〉に出向いて朝食を仕入れる.雲一つない快晴の空だが,北風が身を切るように冷たく吹きつける.つくばでは今日が成人式なので,セレモニー会場となっているカピオ界隈をベランダから見下ろすと,「主役たち」とその「随伴者たち」の人と車でごった返している.騒音度もかなりのものだ.今日は寒いけれども日和がよかったのは幸いだった.

◆駒場で「キクマル」が呼んでいる —— サイエンスカフェ@駒場〈チャールズ・ダーウィン:200年目の誕生会〉に出るようにと召喚された.二つ返事でOK.日時:2009年2月12日(木)18:30〜20:00,東京大学駒場キャンパス・コミュニケーションプラザ南館3階・交流ラウンジ.参加費500円(ドリンク・サンドウィッチ付き)/定員50名.主催:日本学術会議・東京大学科学技術インタープリター養成プログラム/コーディネーター:長谷川寿一(東京大学)/ゲスト:長谷川眞理子(総合研究大学院大学)・渡辺政隆(JST)・三中信宏(農業環境技術研究所).これもまた「ダーウィン年」の企画のひとつということで.

◆ポトフの夕べ —— 今日は冬らしい寒さと乾燥した冷気に包まれた一日だったので,暖かいポトフを久しぶりにつくることにした.とてもシンプルな料理ではあるのだが,肉の下準備に多少手間をかけてみた:

  1. 豚モモ肉800グラムの塊を二つに分け,カマルグの塩とクレイジー・ソルトそして粒黒胡椒をしっかりもみこみ,たこ糸できつく緊縛する.フライパンを強火で熱して,表面に焦げ目をつけた上で,予熱190度で準備したオーブンで20分ローストする.
  2. タマネギ2個・ニンジン3本・下仁田ネギ1本(ポロねぎの代理)・キャベツ1/2個・ジャガイモ4個を大ぶりにカットする
  3. 大鍋を用意し,上で用意した肉と野菜をどんどん放り込み,ひたひたに水を注いでブイヨンを入れる.
  4. 強火で煮立ててアクをすくい,ローレルを数枚加えたあとは弱火でことこと煮続ける.1〜2時間ほど煮こむとほろほろと素材が崩れ始めるので,それを目安にしてできあがり.煮くずれにくい野菜から先に鍋に入れるようにするとよい.
  5. 肉塊はいったん鍋から取り出して糸をはずしてからカットする.スープ皿に盛りつけて,粒マスタードを添えてテーブルへ.たっぷり召し上がれ.

野菜は煮くずれた方がおいしいが,肉が煮くずれるとばらけた「筋繊維」になってしまうので,上のように緊縛したまま煮込んだ方が安全だと思う.今回はモモ肉を使ったが,やや淡白すぎたかもしれない.バラ肉かすね肉だったらもっとコクが出たのではと反省している.肉を計800グラムも投入したのにあっという間になくなってしまった.スープと野菜がまだ大量に残っているので,明日はヴルストを鍋に投入することにしよう.スープがあるかぎりポトフに終わりはない.

今夜のお相手のワインは Bodegas Santa Ana(Mendoza)の vino blanco 「Torrontés 2007」にした.白ワイン用のアルヘンティーナ固有品種だそうだ.

◆そんなこんなで原稿の進捗がイマイチなのはたいへんやばいことだ…….「ポトフをつくるヒマがあったら〜」,あ,それ以上もう言わんといてぇ.

◆本日の総歩数=7010歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.計測値(前日比)=82.2kg(−1.3kg)/25.1%(+1.6%).


10 januari 2009(土) ※ 百人町でこっそり内職してしまい

◆午前6時起床.晴れてとても寒い.外に出てみたらペデストリアンデッキも道路もこちんこちんに凍結していた.つるりつるりと.快晴だが北風が強くて凍える.

◆あわてて切っちまったクラリーヌ —— 賞味期限が切れたウォッシュタイプのチーズ〈クラリーヌ〉(Fromager des Clarines)が半額で売られていたのを買ったまではよかったのだが,朝食のときについまちがってカマンベールみたいに切ってしまった.ほんとうは〈モンドール〉と同じく上皮を切りとってスプーンですくって喰うんだった(→ 喰い方焼き方).しかし,熟成がまだ浅いのか,買ったクラリーヌはカットしてもとろとろ感がぜんぜんなく,しっかり形をたもったままだ.どーせカットしてしまったのだから,知らんぷりしてこのまま喰ってしまうか.それともしばらく熟成を深めた上で,ニンニクと白ワインを加味してオーブンで焼いて喰うか思案中.

—— 【教訓】フロマージュをあわてて切ってはいけません.

◆東京プチ出奔イン百人町 —— 8:32発のTX区間快速で東京に出る新大久保に着いたのは10時前だった.科博分館にて日本分類学会連合の総会が10時半から始まる.正午過ぎまで.午後1時半からは,同じ会場にて連合の第8回公開シンポジウム〈分類学におけるDNA情報の活用〉が続く.演者・演題ともにまったく知らないわけではないので,安心して“内職”に励むことができました.おかげさまで,『ニュートン』誌から執筆依頼されていたダーウィン特集の【種】記事:「「種」とは何かを問い続けること:ダーウィンの時代から現代への照射」の予定の10枚(×400字)のうち9枚まで書くことができた.よしよし.

最尤法の系統推定ソフトウェア〈RAxML〉は超絶すぐれていると宮正樹さんは力説していた.「もう〈MrBayes〉にはもどれません」とのこと.ほー.

◆その後の酒宴 —— 日本酒三昧.まずは石川の〈宗玄〉のにごり酒.とても濃厚でゲル化しつつあるのに,ちゃんと炭酸が効いているというとてもアブナい日本酒.次は静岡の〈開運〉の無濾過純米.正月にも飲んだが今年のできはとてもいい.なくならないうちにもう一本ゲットしておくか.さらに次は香川の〈悦凱陣〉,最後に大阪の〈秋鹿〉の「へのへのもへじ」.その合間に,届いたばかりの〈開運〉の新酒.肴はいろいろあったのだが,順に「カワハギの刺身」,「ポテトのゴルゴンゾーラ・グラタン」,そして「鴨の串焼き」.午後9時前にお開き.

◆寒風吹きすさぶつくばにふらふら帰り着いたのは午後10時半だった.さむ〜.明日も原稿また原稿.

◆備忘メモ —— インターネット・ワインショップ〈京橋ワインリカーショップ〉.ワイン産地ごとに「リコメンダー」という担当者が配置されている.

◆本日の総歩数=13876歩[うち「しっかり歩数」=1234歩/11分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前日比)=83.5kg(−0.6kg)/23.5%(−0.4%).


9 januari 2009(金) ※ 初雪になりそうでならなかった日

◆午前4時半起床.気温2.0度.すでに小雨が降っていたが,小雪ではなかった.東京ではこの時間帯に初雪が舞ったらしいがつくばは雨のまま終わりそうだ.雪が降ったからといっていいことはほとんど何もなく,たいていの場合よろしくないトラブルが起きることが多いので,一喜一憂するのもどーかと思うが,降るぞといって降らないのは肩すかしだ.

◆またも「蟲喰う日々」の本 —— 献本ありがとうございます:野中健一『昆虫食先進国ニッポン』(2008年12月24日刊行, 亜紀書房, 294 pp., 本体価格1,600円, ISBN:978-4-7505-0815-3 → 目次版元トップページ).同じ著者によるこれまでの本は,どちらかといえば「民族昆虫学」的な冒険譚風の内容だったが,今回いただいた本をざっとブラウズすると,軸足の置き方と記述の姿勢がちがっているようだ.日本における「昆虫食」をもう一度見直して,食材としての「蟲」を再評価しようという意図が伝わってくる.

◆日中の天気の推移:午前10時半,曇り,気温4.7度でとても寒い.雪はもちろん雨も降らず,時おり空の一角が明るくさえなってきた.午後1時,再び小雨,気温4.8度.底冷えということばを久しぶりに思い出す.

◆メジャーへの道? —— 〈R〉関連の報道が立て続けにあったのだが,ついに大ブレークして「メジャー」への道を歩み始めたということか:Ashlee Vance「Data Analysts Captivated by R’s Power」(New York Times, 6 January 2009)とその後日譚:Ashlee Vance「R You Ready for R?」(New York Times, 8 January 2009).日本語だとこんな記事も:「「R言語」、企業や研究機関での利用が急拡大」(Technobahn 2009年1月8日付)./ついでに,巨大な『The R Book』の翻訳原稿がぱらぱらと降ってきた.翻訳おつかれさまです.読ませていただきますね.

◆午後の圧力 —— 岩波書店編集部よりプッシュあり.長らく停滞している:三中信宏『かたちをはかる:生物形態の数理と統計学(仮題)』(forthcoming,岩波書店[シリーズ〈確率と情報の科学〉第I期] → 版元ページ)を今年こそ進捗させるべしとのこと.…….

◆夕方になって再び雲ゆきが怪しくなってきた.午後5時,農環研を撤収したときの気温は3.9度.とても冷たい雨が降っていた.その後,雨足が強くなり,風も強く吹いて荒れ模様の天気になる.夜遅くなってやっと風雨は治まり,雲間から星空がのぞいていた.冬型の気圧配置になるのだろう.

◆明日からは三連休だが,もの書きに休日などないのだ.しかし,明日は東京へプチ出奔してしまう.

◆本日の総歩数=7764歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=84.1kg(−0.7kg)/23.9%(−0.3%).


8 januari 2009(木) ※ 暖気運転がちょっと長過ぎるなあ

◆午前4時半起床.星空.気温はマイナス1.9度.一月らしい冷え込みかただ.未明派の生活者にとっては夜明け前の「暖気運転」が不可欠なので,ありがたくはないのだが.

◆「力」は釣り合っていないのに立ち往生中 —— 方々からの“原稿督促圧”が高まってきた.うまく相殺されてくれればいいのだが,まちがいなく同じ方向のベクトルなので,ずりずりと押し動かされている.某雑誌からの再レフリー1件(昨年末に依頼されたままスルーしていたら督促された);『生物科学』の特集記事のイントロ(書きます書きます);最も逼迫しているのは数理生物の記事(静かなる“葉山圧”は威力あり);『ニュートン』の進化記事(またしても【種】の噺);勁草書房の生物学哲学論集の一章(うう……);もちろん,現代新書『分類思考の世界』もあります —— 作用するベクトルが多すぎてかえって動けないみたい.執筆者の「暖気運転」はなお続くのだった.

◆しかし,いくつかの執筆圧ベクトルは【種】に沿ってうまく束ねられるようなので,昨日新設した居室内別宅キャレルに【種】本を何冊か並べてみる.かつては遺伝学あるいは体系学がらみだった【種】論争は,その後の生物多様性に結びつけての【種】論議としてその後も続いているのだが,理論的・概念的な話題は生物学哲学に絡めとられていった感がある.【種】は認知心理学の研究対象とみなせばいいでしょうということで,個人的にはずっと前からもう結論は出ている.しかし,生物学的種概念に対置される系統学的種概念の行く末には関心をもたないわけにはいかない.どうやって「連続的」な系譜の連なりから,「離散的」な【種】を切り分けるのかという問題だ.synapomorphy を“定義形質”として「離散化」するというのは,クラディストならば誰でも思いつくことだが,そのあたりのリクツをどうつけようとするのかはつっこむ価値がある.

◆午前11時.晴れ.気温7.4度.気温は低め.日射しがあって風がないのでつらくない.

◆系統樹から【種】を切り出すロジック —— 今から15年ほど前に単発的ながらこういう試みがあったことは記憶しておきたい:Dina Johanna Kornet『Reconstructing Species: Demarcations in Genealogical Networks』(1993年刊行,Instituut voor Theoretische Biologie, Universiteit Leiden, 121 pp., ISBNなし → 目次).ライデン大学に提出された著者の学位論文.一般には流通していない出版物.系統樹(あるいは系統ネットワーク)の祖先子孫関係に基づいて,系譜間の「永続的断裂(permanent splits)」を同値類(equivalence class)として切り出そうとする試み.著者はこの同値類を「internodon = internodal species」と呼び,internodon の複合体としての【種】を「composite species」として厳密に定義しようとしている.Woodger - Gregg 流の数理論理学の“ことば”が通じる読者ならば,著者がめざす目標がどこにあるかが理解できると思われる.なお,この学位論文の一部は雑誌論文として別途公表されている:

  1. D. J. Kornet (1993), Permanent splits as speciation events: a formal reconstruction of the internodal species concept. Journal of Theoretical Biology, 164: 407-435
  2. D. J. Kornet et al. (1995), Internodons as equivalence classes in genealogical networks: building blocks for a rigorous species concept. Journal of Mathematical Biology, 34: 110-122.
著者は植物分類学者でもあるので(10年前のライデンでの Hennig Society Meeting で一度お目にかかったことがある),分類学研究の現場からの要請を動機の一つとしてこの研究を進めたと推測されるが,残念ながらその後はあまり反響がなかったように記憶している.

—— 「連続」から「離散」を切り離すロジックは確かにある.問題はそれがわれわれのもつ認知的カテゴライズのありようとどれほど整合的かということだ.

◆オーケンつながり —— そういえば,Lorenz Oken の著作集(全4巻)の刊行状況はどんなもんだろうと思って調べてみたら,まさにいま刊行中だった:Thomas Bach, Olaf Breidbach, Dietrich von Engelhardt (Hrsg.)『Lorenz Oken - Gesammelte Werke (vier Bänden)』(2007年12月〜[刊行中], Verlag Hermann Böhlaus Nachfolger, Weimar, ISBN: 978-3-7400-1170-3 [set] → 版元ページ).全4巻合わせて1800ページにもなるそうだ.現時点での既刊は,初期の博物学論文を集めた第1巻:『Band 1: Frühe Schriften zur Naturphilosophie』(2007年12月刊行,ISBN: 978-3-7400-1171-0 → 版元ページ)と,彼の主著である『自然哲学梗要(Lehrbuch der Naturphilosophie)』を含む第2巻:『Band 2: Lehrbuch der Naturphilosophie』(2007年12月刊行,ISBN: 978-3-7400-1223-6 → 版元ページ)のみ.それぞれ500ページもある大冊らしい.残る後半2巻は未完.

◆午後5時に撤収.雲が空に広がっていた.寒さはあまり感じられない.しかし,明日は低気圧が関東の南海上を通るため,初雪になるという予報だ.明日からは“暖気運転”を終えて,ちゃんと“路上”を走ることにしよう.

◆本日の総歩数=8375歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=84.8kg(+0.9kg)/24.2%(−1.3%).


7 januari 2009(水) ※ ざわざわと一日がただ過ぎていく

◆午前3時50分起床.曇りところどころ星空.最低気温はマイナス0.7度だった.

◆未明のこまごま —— 首都大学東京の事務宛に伝言を出す./原稿遅れの弁明メールをば./ダーウィン家と縁戚関係にあったウェッジウッドが破産したというニュース.ピーター・ラビットのシリーズはどうなるんでしょ.

◆「駒場三点セット」の大量一括出力 —— 今月は駒場での生物統計学の講義が全部で5コマある(うち2コマは補講).講義内容はすでに確定しているので,「三点セット」を全部まとめてつくってしまうことにした.計算統計学からベイズ推定,形態測定学から系統推定論までてんこ盛りです.ハンドアウトと出席カードの原稿を作成完了.印刷にまわす(ウェブ公開は明日の仕事).あと残るは第2回目のレポート課題だが,まだ時間的余裕があるからいいでしょう.

◆午前11時,晴れときどき曇り,気温6.3度.気温は上がらないまま.持ち慣れないものを持ち歩くのは首が疲れる.昼休みになっても7.2度にしかならない.昨日に続いて徘徊する:柳家花緑『落語家はなぜ噺を忘れないのか』(2008年11月25日刊行, 角川書店 [角川SSC新書052], ISBN:978-4-8275-5053-5 → 版元ページ)を読了.口承芸としての「落語」の系譜が連綿として存続してきたのは,師弟関係の賜物だと実感する.

◆午後のこまごま —— いつも牛肉シチューに使っているベルギービール Hoegaarden の〈禁断の果実(de verboten vrucht)〉が,今後は日本に入ってこないというタレこみがあった.これは困ったことだ.〈禁断の果実〉に代わる別のベルギービールを今後は探さないといけないのか./計量生物学会の理事会は,1月26日(月)18:00〜19:30,東京理科大学・九段校舎・6F大学院ゼミ室(KS603室)にて開催される./『生物科学』編集会議は,1月17日(土)15:00〜17:00に立教大学でとの提案があったが,センター試験の日程とバッティングしているとの指摘あり.日程変更されることになるだろう./もうすぐ出版されるはずの線虫論文について,この期に及んでレフリーから指摘があったとの連絡.打ち合わせをする.

◆古本屋バイオグラフィー新刊2冊 —— 青木正美『古本屋群雄伝』(2009年12月10日刊行,筑摩書房[ちくま文庫], ISBN:978-4-480-42491-4 → 版元ページ).同じ著者による:青木正美『古本商売 蒐集三十年』(1984年7月15日刊行,日本古書通信社,ISBN なし→目次),青木正美『東京下町 古本屋三十年』(1982年12月1日刊行,青木書店,ISBN なし → 目次),そして青木正美『自筆本蒐集狂の回想』(1993年6月25日刊行,青木文庫,ISBNなし)はすでに手元にある./八木福次郎『新編 古本屋の手帖』(2009年10月10日刊行,平凡社[平凡社ライブラリー653], ISBN:978-4-582-76653-0 → 版元ページ).神保町の“生き字引”みたいな著者の本.「古本」本はすでに安定した読者層が形成されているのだろうか.この2冊は東京の古本業界を知り尽くしている著者の手になる“伝記”的著作だ.それにしても「もの書く出版人」,とりわけ「新刊を出す古本屋」の多さには驚くばかりだ.

◆連日続く「会計入力システム」苦役 —— 昨日はログインのところで息絶えたが,今日はその先に進むことができる.プリンターのトナーカートリッジと廃トナーボックスを無事に注文することができた./ついでに,残額の確認をした.まだ60万円ほど余っているようだ.それにしてもこのシステムは使いづらいことこの上ない.たいした作業をしていないはずなのに,小一時間もかかってしまった.

◆ゲン直しに,「別宅書斎」をひとつしつらえることにした.本棚の隙間の狭い空間を占有して,居心地のいいキャレルを構築できそうだ.原稿書きのためだけの特設空間として.

◆午後5時過ぎに撤収し,帰宅する.いま抱えているいくつかの原稿のヴィジョンを思い描いたり.※ということは,まだ書いてへんとゆうことです…….

◆本日の総歩数=11020歩[うち「しっかり歩数」=4590歩/39分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.9kg(−0.5kg)/25.5%(+0.2%).


6 januari 2009(火) ※ 運が尽きて隠蔽される工業暗化本

◆午前5時起床.晴れ.最低気温はマイナス0.5度. 朝焼けが鮮やかだった.よほど空気が乾いているのだろう.

◆居室に群れる書類トドども —— 1月の出張・兼業・年休の届けをまとめて書いてドンと事務に提出した.今月の居室不在率は「5日/19労働日=0.263」だから,四日のうち三日も農環研に実在するわけだ.ワタクシを捕捉するならイマです./昨年末のRP成績検討会を受けての業績報告書の内容チェック.とくに大きな問題はないと思います./プリンターの廃トナーボックスが満杯になってしまった,トナーカートリッジも要交換メッセージが出てしまった.いよいよ悪名高い「会計入力システム」に捕われることになるのか.

◆午前11時の気温は8.3度.無風快晴で日射しが暖かい.気温が10度を越えた昼休みは,何ヶ月ぶりかで農環研周囲を一時間ほど徘徊した.本日の歩き読みの友は:柳家花緑『落語家はなぜ噺を忘れないのか』(2008年11月25日刊行, 角川書店 [角川SSC新書052], ISBN:978-4-8275-5053-5 → 版元ページ).名人とか国宝と呼ばれる落語家のエピソードが実に人間離れしていておもしろい.みなさん,ただ者ではないプロの集団です.

◆午後のこまごま —— 早くも諸方面から「原稿まだぁ?」というプレッシャーが伝わってきた.残務原稿たち…… /領域会議,1月7日(水),10:30〜./午後3時から,種苗管理センターの担当者と来月の統計研修についての打ち合わせ.ほぼ「行政対応」ということらしいが,植物防疫に関する国際規約で使われている統計分析に関する講義をしてほしいということらしい.具体的には,実験計画・多重比較・サンプル数という三本柱になりそう.まだドラフトだという分厚い国際規約(案)のコピーをもらった.ざっと見たがごく標準的な統計手法を前提にしているようなので一安心.日程の詳細は他の講師陣との調整が必要とのことだが,とりあえず午後の3時間を使わせてもらうことになった.

◆「会計入力システム」という魔界 —— 公務に関わる「金まわり」の事務がオンライン化されて以来,ものを買わないようになってしまった.システムの扱いがめんどーなんですもん.しかし,プリンター関連の消耗品を買わざるを得なくなってしまったので,やむを得ず,いやいやながら,会計入力システムがインストールされている埃だらけのパソコンのキーボードに触れてみる.大東くんも今年度に入ってから何も買っていないというので,要するにこの専用パソコンは昨年の4月以来だれも触っていないのだ(そこまで毛嫌いするかっ).会計ソフトを立ち上げてまずはログインを試みる.無事に入れた.では,次にユーザーページに入ろうとしたところで,いきなり「パスワードがちがいます」とのエラーに玉砕する.大東くんに訊いたらこのパスワードで前回は入れましたと言う.しかし,再トライするもだめだめ.こんなことでつまずいたままだと時間のロスだけでなく精神衛生上もよろしくないので,経理担当に電話をして部屋に来てもらった.担当者はたったひとこと:「パスワードが昨年4月に変更されました」と.要するに,年度が変わってからこの部屋では誰も会計システムを使っていなかったので,パスワードの変更すら気づかなかったということだ.あまりにアホらしい結末だったので,会計項目の入力は明日に延期することにした.こんなことだからシステムに慣れるということがいっさい期待できないし,またその意思もさらさらない.だからどーしたって感じ.

◆姿を隠す工業暗化本 —— 昨日からオオシモフリエダシャクの「工業暗化」ネタを引きずっていて,Kettlewell の1973年の元本:Bernard Kettlewell『The Evolution of Melanism: The Study of a Recurring Necessity with Special Reference to Industrial Melanism in the Lepidoptera』(1973年刊行,Clarendon Press, Oxford, 1 color plate + xiv + 423 pp., ISBN:0-19-857370-7 [hbk])を見ようとするも,現物がいったいこの本の山のどこに隠蔽されているのか見当がつかない.本棚の入れ替えをしたりしたのが災いしたのだろう.見つからないとエンドレスに探し始めるという悪い癖があり,あっちこっちの本の堆積を掘り返しては途方に暮れる.ふと足下の段ボール箱を見たら,そこには見慣れた緑色の表紙が……(隠れてないでもっと早く出てこいよ).もう1冊の:Michael E. N. Majerus『Melanism: Evolution in Action』(1998年刊行,Oxford University Press, Oxford, xiv + 338 pp., ISBN:0-19-854982-2 [pbk])の真っ赤な表紙は,まるで警告色のように,本棚のどこにあってもすぐにわかるのだが.

◆今日は何だか運に見放されているようなので,長居は無用.午後5時過ぎにとっとと撤収する.雲の隙間から欠けた月が見えていた.気温はほどほどに低いが,この分だと明朝はそんなに冷え込まないだろう.

◆今日ひとつだけよかったこと —— 夜遅く,この日録のアクセス回数がめでたく「20万」の大台に乗った.トップページではなく,日録だけにカウンターを設置するという変なことを始めてから2年弱になるが,平均して日に400回のアクセスがある.訪問者のみなさん,どうもありがとうございます.これからもよろしく.

◆本日の総歩数=14853歩[うち「しっかり歩数」=5967歩/51分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前日比)=84.4kg(+0.5kg)/25.3%(+1.9%).


5 januari 2009(月) ※ 仕事始めに雑用土石流が押寄せる

◆久しぶりに午前5時起床.星空できりきり寒い.明け方の最低気温はマイナス3.8度.まだ小寒なのにもうこんなに冷え込むとは.戸外は霜で真っ白になっている.

◆早朝のこまごま —— まずは新年のまっさらな出勤簿に押印する./新年の仕事用のメールボックスを更新する.仕事始めというのに昨年の残務メールボックスがまだ残っているというのはとてもカナしいなあ.原稿〜原稿〜./今月の出張・兼業・年休の日程確認をする.月のはじめのきまりごと.

◆朝からよく晴れて気温はほどほどに上昇する.午前11時には9.3度.雲一つない快晴の冬空.空気からから,静電気ぱしぱし.

◆さらなるこまごま —— 横浜国大から来年度の生物統計学のシラバス登録についての連絡.右を向いても左を向いてもシラバス書かされまくり./年初めの昇給通知(34号俸→39号俸)を受け取る./年賀状がばさっと届く./進化学会関連の評議員会メール./年末年始に堆積したメーリングリスト関連の雑用をいくつか処理する.

◆今年一番乗りの献本 —— どうもありがとうございます:東浩紀・北田暁大(編)『思想地図 vol.2:特集・ジェネレーション』(2008年12月25日刊行,日本放送出版協会[NHKブックス別巻],451 pp.,本体価格1,500円,ISBN:978-4-14-009341-2 → 版元ページ).創刊号:東浩紀・北田暁大(編)『思想地図 vol.1:特集・日本』(2008年4月25日刊行,日本放送出版協会[NHKブックス別巻],468 pp.,本体価格1,500円,ISBN:978-4-14-009340-5 → 版元ページ)から一年も立たないうちに,またしても厚い第2巻が出版された.〈ニコニコ動画〉の変遷をめぐる,タクソノミー/フォークソノミー/フラクソノミーの論考に惹かれた.何でもいいけど,ポストモダン遺物的な「リゾーム」やめれ〜.

◆新年の領域昼食会(12:00〜13:00) —— たくさん米粒を摂取して腹がとても重いっす…….

◆午後も続くこまごま —— いきなりお座敷の声がかかる —— 2年後に農環研とともに合体する種苗管理センターから,来月始め(2月5日〜6日)に開催される研修で生物統計学の講義をしてほしいとのこと.日程的に問題ないのでOKと返事を返す.明日の午後3時に研修担当者と打合せをする予定./大分からRインストールに関する質問あり.こういう応答はすぐにできる.他にもスライドのファイルをほしいというリクエストが年末にあったが,これはどうしよー.

◆夕方,領域の新年会があるのだが,最初だけ1時間ほど参加して途中退席.そのまま直帰.気温が下がっているので,明朝も寒そうだ.

◆夜,日経サイエンス編集部より,オオシモフリエダシャクの工業暗化に関する質問を受ける.即座に松本に転送して意見を乞う.白色型と暗化型が幹に並んでとまっている有名な写真が「捏造」であるという風評はなお消えていない.しかし,結論としては,あの写真はもともと H. B. D. Kettlewell が両タイプのガのちがいを野外条件で示そうとしただけであって,ヤラセでも捏造でもない.ましてや,工業暗化の現象そのものに対して疑義を投げるというのは意図があっての曲解にすぎない —— ということです.いただいたコメントを編集部に送る.

—— この件については,何年か前に H. B. D. Kettlewell をめぐる人間模様を描いた:Judith Hooper『Of Moths and Men: The Untold Story of Science and the Pepper Moth』(2002年8月15日刊行,W. W. Norton, New York, xx+377 pp., ISBN:0-393-05121-8 → 書評目次)や 「工業暗化重金属説」を唱えた John W. Heslop Harrison をめぐる:Karl Sabbagh『A Rum Affair: A True Story of Botanical Fraud』(1999年刊行,Farrar, Straus and Giroux, New York, viii+276 pp., ISBN:0-374-25282-3 → 書評目次)を読んで感銘を受けた覚えがある.EVOLVEでも前世紀末に,工業暗化「疑惑」についてやりとりしたことがある(久しぶりに過去ログを読んでみた).

◆本日の総歩数=5919歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.計測値(前日比)=83.9kg(−0.2kg)/23.4%(−0.7%).


4 januari 2009(日) ※ 社会復帰へのイントロは長すぎる

◆午前7時起床.晴れ上がって冷え込みが厳しい.乾いた空気とぴりぴりする寒気はこの季節のつくばの特徴だが,年明けとともに北風が弱まってきたのはありがたい.

◆ダーウィン本の近刊情報(続) —— 続々と出てきましたなあ(先が思いやられる……):Jonathan Hodge and Gregory Radick (eds.) 『The Cambridge Companion to Darwin, Second Edition』 (2009年3月刊行予定,Cambridge University Press, ISBN:9780521884754 [hbk] / ISBN:9780521711845 [pbk] → 版元ページ).これまた叢書〈Cambridge Companions to Philosophy〉の1冊として.初版が出たのが2003年だったから,あまり間を置かずに改訂されたことになる.ダーウィン祝賀のひとつだろう.章が増補されたり,アップデートされたりしているらしい.

◆まる一日まったく外出せずに引きこもっているようでは,明日からの社会復帰はかなりヤバいとみた…….

◆正月休みの締めくくりとしての〈王祿・相伝〉 —— 島根県の〈王祿酒造〉の日本酒は,幸いなことにつくばで日常的に入手できるので,「超辛純米」シリーズや「渓」シリーズをときどき呑む機会があった.しかし,今回は年末に買った「相伝」をいただくことにしました.酒米は「東出雲上意東地区産無農薬無肥料栽培山田錦」,そして「純米吟醸酒・木桶仕込み・舟しぼり・19BY・仕込み第25号」の限定526本中の「1/526」と銘打たれている.ボトルナンバーが入っているところはまるでシングルモルト並みだ.

今夜は,「相伝」に合わせて,湯豆腐と焼き魚それに出し巻きという純和風な食卓にした.旨味の深さは他のシリーズとはちがっていて,〈王祿〉はこういうお酒も出しているのかと新鮮に驚いたしだい.「渓」のように炭酸がしゅぽっと音を立てるわけではない.しかし,じっくりと呑んでいるともはや社会復帰できなくなりそう.度数も高いし.※さて,残るは「丈径」と「意宇」だけか.

◆明日からは平常営業の仕事日で,ちゃんと正しく出勤する.今月は駒場の定例高座だけなので,あとの時間は「原稿イノチ」で執筆に励もう.

◆本日の総歩数=0歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.計測値(前日比)=84.1kg(−0.1kg)/24.1%(+0.2%).


3 januari 2009(土) ※ 年が明けてはや三日目ともなると

◆またも寝坊して午前7時に起床する.今日も晴れて,雲一つない青空が広がっていた.今年の正月三が日は天候に恵まれている.その一方で,怠惰な日々が続いているのはいかんともしがたい.

◆「ダーウィン年」の年頭を飾るダーウィン本近刊いくつか —— 今年は〈ダーウィン生誕200年〉と〈『種の起源』出版150年〉のダブル記念の年なので,すでに前哨戦がにぎやかだった昨年以上に,本番のイベントや出版が連続するものと予想される.すでに関連する依頼がちらほらと舞い込んでいるが,さらに多くのプロポーザルがあるにちがいない.ダーウィン関連近刊情報:Michael Ruse and Robert J. Richard (eds.) 『The Cambridge Companion to the “Origin of Species”』 (2009年1月刊行予定,Cambridge University Press, ISBN:9780521870795 [hbk] / ISBN:9780521691291 [pbk] → 版元ページ).叢書〈Cambridge Companions to Philosophy〉の1冊として./Adrian Desmond and James Moore 『Darwin's Sacred Cause: How a Hatred of Slavery Shaped Darwin's Views on Human Evolution』 (2009年1月28日刊行予定,Houghton Mifflin,ISBN:9780547055268 → 版元ページ).例の“二人組”による新しいダーウィン本./Deborah Heiligman 『Charles and Emma: The Darwins' Leap of Faith』 (2008年12月23日刊行,Henry Holt and Co., ISBN:978-0-8050-8721-5 → 版元ページ著者サイト).青少年向けの本?

—— 「本」より「鍋」という決意がしだいに揺らいでいく…….

◆今日も日中は乾いた晴天が続き,10度前後の気温で推移した.日射しは暖かく,風は冷たい.しかし,昨日に比べれば無風に近いので体感的には暖かく感じる.夕焼けが西の空を染めるころ,三日月の弓が放つ宵の明星が明るく輝いていた.

◆浪漫主義サイエンティストたち —— 19世紀の〈ロマン主義サイエンス〉について, 昨年末から Robert J. Richards『The Tragic Sense of Life: Ernst Haeckel and the Struggle over Evolutionary Thought』(2008年5月13日刊行,The University of Chicago Press, Chicago,xx+551 pp. with 8 color plates, ISBN:978-0-226-71214-7 [hbk] → 目次版元ページ著者ページ)の助走として,この本に先立つ姉妹本:Robert J. Richards『The Romantic Conception of Life : Science and Philosophy in the Age of Goethe』(2002年12月刊行,The University of Chicago Press, ISBN:0-226-71210-9 [hbk] → 目次版元ページ著者ページ)のエピローグをこっそり読み進めている.

『The Romantic Conception of Life』は,18世紀後半から19世紀初頭のドイツにおけるロマン主義か学(romantic science)に関する大著だ.先行する Naturphilosophie とロマン主義科学とのちがいを著者は強調している.すなわち,Naturphilosoph たちは有機体的自然観を打ち出し,原型(archetype)の概念を中核に据えた.シェリンク,ゲーテ,フンボルトの世代のロマン主義科学者たちは,Naturphilosophie に美学的・倫理的な要素を付け加えることで,自らのサイエンスを実践したと著者は言う.本書のプロローグでは,ロマン主義科学の特質は,機械論ではなく,有機体論だった(p. xvii)と書かれている.

そして,ダーウィンにもそのロマン主義的な科学観が確実に浸透していたと示すことがこの本のエピローグでの目標に据えられている.とくに,アレクサンダー・フォン・フンボルトからの影響を若きダーウィンは強く受けていたと著者は指摘する.ロマン主義科学における「形成力(Bildungstrieb)」が「自然淘汰(natural selection)」に置き換わったとまで言う(p. 518).本書の序章を見直すと,ロマン主義科学者はいずれも Naturphilosoph だったが,すべての Naturphilosophen がロマン主義科学に関わったわけではない(p. 8)と指摘されている.

そういえば,本書で代表的な Naturphilosoph として登場するローレンツ・オーケンについては,何年か前に論集:Olaf Breidbach, Hans-Joachim Fliedner und Klaus Ries (Hrsg.)『Lorenz Oken (1779-1851) : Ein politischer Naturphilosoph』(2001年刊行,Verlag Hermann Böhlaus Nachfolger,ISBN:3-7400-1165-3 → 目次紹介版元ページ)をぱらぱらめくったことがある.オーケンは悪い意味での「思弁的」な哲学者とばかり思いこんでいたのだが,膨大な博物図鑑を編んだ当代きってのナチュラリストであることを知って驚いた覚えがある.

◆夕方,日が影ってきたころにプチ外出し,正月早々店を開けていた たがみ酒店 にて,〈加賀鳶〉の「純米大吟醸・にごり酒生」をゲットする.今夜はローストビーフの残りとジャーマンポテトというメニューを予定しているので,炭酸ガスがぶくぶくいう純米酒がいいだろうというもくろみだ.

結論を言えば,〈加賀鳶〉にごり酒のもつスマートさでは,焼いたベーコンの脂っぽさやつけあわせのポテトの威圧感にはやや力負けしていた.もっと炭酸の効いた「活性にごり酒」の方がこういう肉料理にはふさわしいようだ.

実際,洋食系の肉料理がずらっと並んでも,それにふさわしい日本酒の銘柄は確かにあると思う.高田馬場の〈真菜板〉ではそういうハイカラ洋風料理とそれに合うぴったりの日本酒を用意してくれた.

◆本日の総歩数=2534歩[うち「しっかり歩数」=999歩/10分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=84.2kg(+0.4kg)/23.9%(−1.1%).


2 januari 2009(金) ※ 怠惰な正月二日目になだれこんで

◆何と午前7時半に起床する.怠惰な寝正月もここに極まれり.話にならん.外は昨日よりも雲は多いがよく晴れている.冷え込みきびしい.

◆ちっとも夢判断されたくない初夢 —— 昼下りのキャンパスをだらしない服装で小走りしているワタシ.よく見ると,あろうことか下着のシャツのまま小脇に服を抱えているようだ.不審そうにふりかえる通行人(学生)を無視するように,とある建物のロビーに駆け込む.さらにフシギなことに何十年も会っていない旧知の知り合いたちにばったり出くわして,そのままソファーで話し込むワタシ.しかし,気忙しく時計を見上げては昔話の談笑の輪にもどっていく.気がつけば午後5時半だ.たしか午後4時半から講義があったはずだが,もう1時間も定刻を過ぎているではないか.早く教務に連絡して臨時休講のアナウンスをしなければとそわそわしているのに,知人がつかまえて離そうとしない.そうこうするうちにしだいに夕闇に包まれて,光景が暗くフェイドアウトしていく……

—— という初夢だったのですが,何ともせわしない,ろくでもない,しかも夢のない初夢だった.う〜む.追い立てられる今年を暗示する正夢が,はたまた逆夢か.

◆何だか「正夢」になりそうなので,ゲンなおしに〈開運〉の残りを朝っぱらから全部呑んでしまった.これで大事な「運」を使い果たしてしまったかも.運が尽きないうちに今年の予定を書いてしまおう.

◆年初めの抱負(その一) —— 今年は長引いた翻訳たちにケリをつけるべき年だ:スコット・カマジン他[松本忠夫・三中信宏訳]『生物にとって自己組織化とは何か — 群れ形成のメカニズム — 』(2009年3月刊行予定,海游舎,ISBN:978-4-905930-48-8 → 版元ページ).最初に声がかかってから,けっきょく三年ほどかかったことになる.長かったです.社会性昆虫の superorganism としてのふるまいに関心のある方,そしてそのような現象の数理モデリングに関心のある方はぜひ手に取ってくだされ.よろしく.分量にして600ページほどあります./サイモン・コンウェイ・モリス[遠藤一佳・更科功訳|三中信宏編集協力]『生命の選択肢(仮題)』(2009年中刊行予定,講談社).こちらもそろそろ水面下で動き始めるか.やはり600ページ超の厚さになるようです.「ダーウィン年」である今年の『生物科学』誌の新しい特集企画テーマのひとつとして,コンウェイ・モリスの「収斂進化」が取り上げられる予定ですので,それに引っかけて宣伝宣伝(しましょう).

—— この2冊が今年出版されれば,超大物トドが2頭仕留められたことになるので,ずいぶん負担がへるはずだ.

◆正月なのにこまごま —— 自宅からメーリングリスト宛の月例アナウンスを送信する./遅滞なく日録をものしアップする.

◆年初めの抱負(その二) —— あとは著書か:三中信宏『分類思考の世界:「種」よ安らかに眠りたまえ(仮)』(2009年中刊行予定,講談社[現代新書]).『本』での連載が終わってもう半年になる.早くしあげろよ>ぼく./三中信宏『かたちをはかる:生物形態の数理と統計学』(forthcoming,岩波書店[シリーズ〈確率と情報の科学〉第I期] → 版元ページ).目次だけはとうの昔に提出しているのに,まだカゲもカタチもありまっしぇん…….苦しいなあ./他にも出版企画だけは立っている数冊の本たち…….

—— 以上は単著で,ほかに項目執筆する進化学事典が2冊,1章を担当する生物学哲学の論文集(まだやぁ……),etc. 単発の記事もちらほらと.原著論文は二つほど出るかな.

◆初売りの今日,つくばセンター近辺は朝から車の渋滞と買物客の混雑がはなはだしい.遠目に見下ろすかぎり,歩道橋までずらっと開店待ちの客の行列ができている.開店時刻の午前9時半には近隣の駐車場は近いところからどんどん満車になっていった.初詣といい初売りといい,行列やめれ.

◆午後になって日射しはわりに暖かいが,北風がまだ強くてとても寒い.夕方近くにちょっと外出したが,イマイチな収穫だったので早々に帰宅した.夜は年の瀬に焼いて冷凍年越しさせたローストビーフを解凍してみた.ちょうどいいレアさだったのは幸い.昨日の残りの Robert Mondavi が空いた.

◆年初めの抱負(その三) —— 今年もまた方々で「高座」や「お座敷」にお呼ばれする機会が多いと思います.かけられる大ネタはたかだか三つか四つしかありませんが,よろしくお願いいたします.確定している範囲では,毎週の講義が東京農大(世田谷:夏学期)と東大(駒場:冬学期),集中講義が首都大学東京と横浜国大と東大(本郷)ですが,それ以外の単発の噺でしたら物理的に可能なかぎり前向きに対応させていただきます.京大(北白川)と東京農大(厚木)に出向くこともあるでしょうね.国際会議の参加予定は〈ICSEB-VII〉(ベラクルス,メキシコ)と〈Hennig XXVIII〉(シンガポール)と国際形態測定学会議(つくば)の三つ.国内学会は毎年参加しているいくつかの大会に.

—— 今年もまたまた出勤簿の「斜線」や「四角」の率が高くなるぞ.

◆本日の総歩数=6484歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼−|夜△.計測値(前日比)=83.8kg(+0.5kg)/25.0%(+1.5%).


1 januari 2009(木) ※ つつがなく新年を迎えられました

◆午前6時起床.惰眠を貪って新年を迎えてはならない.快晴.東方にのぼる初日の出を拝む.あけましておめでとうございます.本年もよろしくお願いいたします.きびしく冷え込んでいるので,まちがいなく氷点下になっているのだろう.

◆新春読了第一号は栄えある〈百鬼夜行〉本 —— アヤシイ魑魅魍魎どもと元旦を迎えたが,今年一年の道のりを予期させるものがある:小松和彦『百鬼夜行絵巻の謎』(2008年12月21日刊行,集英社 [集英社新書ヴィジュアル版012V], ISBN:978-4-08-720472-8 → 書評詳細目次版元ページ).禍々しき“黒雲”に煽られるように元旦の朝に読了とあいなった.

気になる〈百鬼夜行絵巻〉異本群のステマ(文献系図)は第3章で詳細に論じられている.室町時代にまでさかのぼれるという「大祖本」から分岐した子孫本のそれぞれを本書では「I類」と称し,「A型(真珠庵本クレード)」・「B型(日文妍本クレード)」・「C型(京都市芸大本クレード)」・「D型(兵庫県歴博本クレード)」の四つがある.その中でも真珠庵本を祖本とする「A型」にはきわめて多くの異本があり,サブクレードとして「1」,「2」,および「3」型が類別されている.

上のようなツリー型の系譜によって体系づけられる写本群とは別に,複数の祖本からの「ハイブリッド」であると推測されるものを本書では「II類」と呼んでいる.可能性としては多くの混交によるハイブリッド異本があり得るが,著者らが調べた範囲では,真珠庵本をベースにしたハイブリッド型である「AB型」「AC型」ならびに「AD型」がほとんどだが,ごくまれに「BC型」ハイブリッド異本も存在するという.

著者が関わった〈百鬼夜行絵巻プロジェクト〉では現存する異本のほとんどにあたる60本もの絵巻きを比較した上でステマをつくっている.この異本群の特徴は「文章」よりも「画図」の形態学的特徴に基づく解析が実行されていて,通常の文献系図研究よりはむしろ“生物学的”な系統解析に近いように思われる.たとえば,中国の画図集に載っているという「神亀」から派生したと推定される妖怪が描かれているという仮説が立てられるのも(p. 174),言語学的ではなく“生物学的”な意味での morphology が形質として利用できるからだ.

◆新年を寿ぐ食卓は〈開運〉とともに —— 年の初めのハレの日にはめでたい〈開運〉(静岡・土井酒造場)をさっそくいただきましょう.「無濾過純米生酒」は今まで呑んだことがなかったが,すっきりとした旨味が広がり,最後に微炭酸の酸味があとを引く.これはコワイなあ.年の初めからこういうアタリの酒を味わってしまうと,今年の日本酒のステージがさらに上がってしまうなあ.それだけでなく,ついでに今年の運も開ければいいのになあ.

◆日中は北寄りの風が強く,低い気温のまま推移した.午後3時前にTXに乗って浅草まで初詣に行ってはみたものの,あまりの人出の多さにたじろいでしまって,浅草寺に詣でることなく帰ってきてしまった.単に詣でるだけなのに,雷門のはるか遠くから「人間腸詰め」のごとく仲見世に沿ってぎゅぎゅっと列に押しこまれてのろのろ進む行列を見るだけでもうおなかいっぱいでございます.浅草寺の周囲の雑踏をぐるっと歩き回っただけで,「みなし初詣」ということでさくっとつくばに帰ってしまった.元旦に初詣に行くのはもうやめましょうね(>みなさん).

◆夜は,文字どおりフォアグラになってしまいました…….〈Robert Mondavi〉の「Cabernet Sauvignon 1999」はフルボディでなかなかうまいナパ・ワインだった.しかし,こうも毎食飲んでいるようでは不健康の極みだ.テリーヌとかパテのたぐいを大食してはいけない.

◆新春の〈トド飼育日記〉 —— 長年,研究者として生活していると,撃たねばならないトドの「型」がしだいに増えてくることがよくわかる.昨年末から年越しで飼い続けている「原稿トド」数頭は順調に育っている(……),それに加えて,メール経由で「査読トド」が新たに出現してきた.「原稿トド」は基本的に一度“撃って”しまえばもうおしまいなのだが,「査読トド」はリジェクトしても再投稿という“Auferstehung”がありえるのでけっして油断できない.

—— その前にこの正月三が日で自分が「トド」にならないように食生活に気をつけよう.※もう遅いかもしれないが…….

◆本日の総歩数=5283歩[うち「しっかり歩数」=1009歩/11分].全コース×|×.朝△|昼○|夜×.計測値(前日比)=83.3kg(0.0kg)/23.5%(−1.3%).


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[sinds 19 april 2007] 無料アクセスログホームページ 素材集