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日録2007年1月


31 januari 2007(水) ※ 春めく月末に,溜まったツケが

◇午前4時45分起床.晴れ.気温2.6度.予報では4月上旬の春めく天気になるそうな.確かに,春先によくあるやや霞んだ晴天.9時の気温は7.9度.

◇午前のこまごま —— 進化学会に関する事務連絡をいくつか.とりあえずは,事務局メーリングリストづくりと,学会ウェブサイトの更新をしていかないとか.要するに,さくさくこなさず脇に置いてしまうとそのまま堆積岩化するといういつものことなのだが(いまだに学習できないとは).手に取ったら,置かずに処理する,もしくはどこかの誰かに丸投げする.少なくとも,持ち上げてその場に置きもどすという「純粋運動」をしてはいけない.やりますやります.

◇春の陽気の昼休み.ほんわか霞んで13.3度 —— 歩き読みの友は,澁澤龍彦『快楽図書館』(2006年12月20日刊行,学習研究社,ISBN:4-05-403233-8)を110ページほど.1950年代〜60年代の書評なので,ぜんぜん知らない著者も本もある.戦中派とかアプレという言葉がまだ活きていた時代のこと.冒頭の数十ページは『アサヒ芸能』掲載の短評集成だが,よりによってこんな本までという[エロ]本が取り上げられている.書評を読めば,書き手だけでなく,その媒体を通して読み手まで透けて見える.澁澤は当時人気を得つつあった松本清張に代表される“社会派推理小説”はキライだったようだ.

◇真昼の「消える人」 —— 昼休みのいつもの散歩コースを読み歩いていた.畜草研の飛び地圃場の小藪沿いの脇道を歩いていたとき,数十メートル向こうの曲がり角に車が止まって持ち主が連れてきた犬の毛づくろいをしている光景が見える.その横をちょうどひとりの歩行者(歩き方は男っぽかった)がこちらに向かって歩いてきた.圃場側には高さ2メートルのフェンスがあって,反対側は一面に水田が広がる,横道のまったくない一本道だ.目算にして約1分ほどで「彼」とすれちがうなと思いつつ,澁澤本に目を落として歩き続けた.ところが,曲がり角の車までたどり着いたのに,とうとう「彼」とはすれちがわなかった.後ろを振り返っても周りを見回しても,誰もいない(ゆるく湾曲した道なので遠くまで見渡せる).横を通り過ぎれば必ずそれとわかるはずなのに,その気配すらなかった.春めく日の光がまぶしい昼休みのことだ.いったい「彼」はどこに行ったのだろう?

こういうことになるのは,やるべきことをさぼっているときだ.やりますやります.

◇グッドタイミングというか,何というか —— フェルナンド・ペソア著(高橋都彦訳)『不安の書』(2007年1月31日刊行,新思索社,ISBN:4-7835-1196-9).内表紙に記されている,サブタイトルめいた「リスボン市に住む帳簿係補佐ベルナルド・ソアレスの」という文言は,本書の正式な題名には含まれていないようだ.650ページを優に越える電話帳だ.厚過ぎっ.

◇あ,やりますやります,と言いつつ,睦月から如月へと時は空しく流れていく…….ごめんなさいごめんなさい.

◇本日の総歩数=10796歩[うち「しっかり歩数」=6334歩/55分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/−0.2%.


30 januari 2007(火) ※ そっと年休で,方々を歩きまわる

◇午前4時半起床.晴れて冷える早朝.今日は私用の年休.

◇午前6時56分発の TX 快速に乗る.方々で乗り換え,待ち続け,つくばに帰ってきたのは午後2時過ぎのことだった.風もなく気温も10度を越え,快適な1日だった.暖冬のまま,早春を飛び越して春がやってきてしまったような天気.増尾城址公園にもそこはかとなく春の気配が.

◇久々に歩きすぎて足が棒のようになったが,夕方は研究所に向かう.南保くんの修論プレゼン練習を聴いて,またまたいくつかコメントする./ 2月2日(金)の東京農大修論発表会では午後2時からが発表時間だそうだ.

◇読書時間だけはたくさんあったので —— アントニオ・タブッキ(須賀敦子訳)『島とクジラと女をめぐる断片(新装版)』(1998年9月30日刊行,青土社,ISBN:4-7917-5664-9→目次)をあっさり読了.断片を束ねたようなもの.この時代の“実験小説”とはこういうものか(すなおに置いていかれたな).

◇午後7時前に帰宅.明日は平常営業だが,月末のツケの支払いがいくつかある —— 農環研評価制度WGの第4回委員会は2月1日(木)午後3時から./筑波大学の成績評価は2月はじめに返すこと.

◇夜の寝読み(続き) —— 山崎秀夫『ミクシィ[mixi]で何ができるのか』(2007年1月15日刊行,青春出版社[青春新書Intelligence PI-164], ISBN:978-4-413-04164-5).さくっと読了.ぼくはミクシィ以外の SNS についてはまったく知識も経験も持ち合わせていないので,“ライバルたち”との相互比較のしようがない.著者のいう「相互依存的の自己」をもつ日本の社会では“もの柔らかな”SNSが流行するというのは正しい指摘かもしれない.自己開示や認知要求あるいは抱き込み効果というような数多くの人間心理に関わる現象の存在を知った上でそれを使いこなしていくことは,もしそれができるのであれば望ましいのだろうが,大部分のユーザーはそうではないのだろう.

◇本日の総歩数=19650歩[うち「しっかり歩数」=13269歩/113分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/+0.6%.


29 januari 2007(月) ※ 霧雨の週明けは錬金術したいな

◇午前4時40分起床.夜半に雨が降ったようで地面が濡れている.と思ったら,まだ霧雨が降り続いているようだ.この空模様では冷え込むはずもなく,気温は5.9度.

◇午前のこまごま —— 早朝に南保くんの修論アブストラクトが届いていた.さっそく添削して返却する./ InterCommunication 原稿の追加図版は「ロックンロール系統樹」に決定! E. R. Tufte 本からスキャンして,編集部に送った.

◇午前いっぱい霧雨が断続的に降り続いたが,昼にはあがって曇りから晴れへと天気回復.正午の気温は6.2度.肌寒いまま.

◇午後のこまごま —— またまた堆積し始めたメーリングリスト雑用を掃除する./ メールでの統計質問がいくつか届いているのだが,ぜーんぜん対応できていません.ごめんなさいごめんなさい./ 進化学会関連の体制づくりを急がないといけない.

◇着便本 —— Sigrid Weigel, Ohad Parnes, Ulrike Vedder, and Stefen Willer (Hrsg.)『Generation : Zur Genealogie der Konzeptes — Konzeptes von Genealogie』(2005年刊行,Wilhelm Fink Verlag[Trajekte : Eine Reihe des Zentrums für Literaturforschung Berlin],ISBN:3-7705-4082-4).先日届いたばかりの Sigrid Weigel『Genea-Logik : Generation, Tradition und Evolution zwischen Kultur- und Naturwissenschaften』(2006年刊行,Wilhelm Fink Verlag,ISBN:978-3-7705-4173-7→目次)の姉妹編に当たる論文集.系譜と世代に関わる分野横断的な論考の集積だが,方々に「系統樹文化史」が見いだせる.Carlo Ginzburg が写本系統樹を論じている章が含まれているのに驚く.

◇夜の寝読みは軽く —— 山崎秀夫『ミクシィ[mixi]で何ができるのか』(2007年1月15日刊行,青春出版社[青春新書Intelligence PI-164], ISBN:978-4-413-04164-5).SNSによる地域コミュニティや企業内コミュニティの立ち上げに関わってきた著者によるミクシィ案内.方々に社会心理学的あるいは進化心理学的なコメントが付されているのがおもしろい.近視眼的IT技術ではなく,心理学的な配慮と戦略が必要だという著者のメッセージが伝わってくる.

◇本日の総歩数=10088歩[うち「しっかり歩数」=4856歩/43分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/−0.5%.


28 januari 2007(日) ※ 春めく日曜に準カンヅメされるワタシ

◇午前5時起床.晴れ.冷え込みなし.この週末は気温が高めで,ぜんぜん冬らしくない.

◇日が昇るとともに,さらに春めいて日射しが暖かい.風もなく心地よい小春日和だ(春そのものかも).

◇午前いっぱいはカマジン本の翻訳にいそしむ.ごりごりと3ページほど進む.また〈朱筆度〉が高くなってきた.第16章は,ミツバチの巣盤形成に関する「自己組織化仮説」の検証に当てられているのだが,養蜂学に特有の言葉があるらしい.

◇夕方,引き蘢りから脱して,少し歩いてみる.日没がしだいに遅くなってきたとはいえ,6時近くになるともう真っ暗だ.

◇ベッドサイドでゆるゆる読了 —— サイモン・ウィンチェスター(柴田裕之訳)『世界の果てが砕け散る:サンフランシスコ大地震と地質学の大発展』(2006年12月15日刊行,早川書房,ISBN:9784152087850→目次).昨年末から年越しで少しずつ寝読み進み,今日やっと読了.500ページもある大冊だったが,歴史(地球史を含む)の大きな流れからアメリカ史の片隅の挿話まで,盛りだくさんの内容をひとつの作品に組み上げる筆力は,同じ著者によるこれまでの本,たとえば『クラカトアの大噴火:世界の歴史を動かした火山』(2004年1月23日刊行,早川書房,ISBN:9784152085436)とか『世界を変えた地図:ウィリアム・スミスと地質学の誕生』(2004年7月15日刊行,早川書房,ISBN:9784152085795)を1冊でも読んだことがあればすぐに納得できるだろう.

 本書が扱っているのは,今からちょうど1世紀前の1906年にサンフランシスコを襲った大地震である.しかし,日本でもよく出版されるタイプの「地震本」とはだいぶちがっている.というのも,サンフランシスコ大地震の原因に関する地質学的論議(著者の専門分野だ)とかその地震がもたらした被害のようす,そしてその後の復興ぶりなど,日本の多くの読者がすぐに想像するような項目内容は,実は本書を250ページあまり読み進んだ後半の第10章以降にならないと登場しない.それまでの長い前半部分は,「サンフランシスコ」という土地が置かれた地質学的背景,アメリカ史的背景,そして地震当時の社会的・文化的・人脈的背景についてのとても長い叙述である.

 自然現象としてのサンフランシスコ大地震そのものの経緯(100ページに及ぶ第10章は手に汗握るものがある)もさることながら,それが置かれたさまざまなコンテクストをひとつひとつ切り出してくる,それもディテールの積み重ねの延長線上に大きな流れを描き出す —— これは著者お得意の物語スタイルである.

 サンフランシスコでこの地震に遭遇したオペラ歌手エンリコ・カルーソーが動転しつつも周囲の崩壊状況を描いた“イラスト”(p. 278)や,震源地から打電された事務的な文面の電報,火事嵐の中で崩れゆく街並を映した歴史的写真,そして波打つ大地に不幸にも居合わせてしまった人びとの証言など,掘り起こされたさまざまな情報ソースを丹念に配置しながら,著者は「自然現象」としてだけではけっしておさまらないサンフランシスコ大地震の重層的な「実像」を明らかにしようとしている.

 サンフランシスコという土地がたまたま大陸プレートの境界に位置し,サンアンドレアス断層の影響を直撃する運命を背負ってしまったことは,そこに住んでいた(住んでいる)人びとの責任ではない.しかし,そのような“天変地異”があることが確実なのに(いつやってくるかは不詳だが),日常生活に埋没した生活人はともすれば想像力が萎えてしまいがちだ.著者は,アメリカ大陸を東西南北走りまわり,「相手」の巨大な全体像を実感として読者に伝えようとしている.

 本書の冒頭は宇宙からの地球の眺めから始まる.まるで,ヒエロニムス・ボスの〈快楽の園〉を開封するような気がする.現世のささやかな幸福が大地の一撃であっけなく揺れ崩れてしまうその落差をわれわれは本当に理解できているのだろうか.著者は本書の末尾で読者に向かって語りかける:

新しい地質学は教えてくれるのだ.モンタナ州やワイオミング州の山々のような場所は,地球の許しを得てこそ存在するのだということを.ニューマドリッドも,チャールストンも,アンカレッジも,バンダアチェも,そしてもちろんサンフランシスコも,町や都市はみな,この惑星の許しがあってこそ存続するのだということを.そして,その許しは人類に特別に与えられた恵みであり,突然,何の警告もなく奪いさられてもおかしくないものだということを.(p. 426)

 このような「天の一撃」に比べるならば,100年前のこの大地震を契機として,サンフランシスコが西海岸での覇権を失っていったこととか,キリスト教ペンテコステ派が大躍進を遂げたこととか,チャイナタウンの住民たちが天使島で地獄を見たことなどは,ことごとく「束の間のもの」(p. 426)なのかもしれない.

 もともと地震に敏感なはずの日本人読者であっても,本書から読み取るべきことがらはきっと少なくないにちがいない.タイムリーな翻訳書だ.

—— ついでに検索してみたら,「サンフランシスコ大地震」関連サイトがいくつか見つかった:

  • アメリカ地質調査所(USGS)のページ
  • サンフランシスコ市立博物館のページ
  • サンフランシスコ・クロニクル紙のページ

◇夜はまた翻訳の続き.進まず…….

◇本日の総歩数=5070歩[うち「しっかり歩数」=4576歩/40分].全コース×|×.朝 ○|昼△|夜△.前回比=−0.2kg/+1.2%.


27 januari 2007(土) ※ 凪の土曜日は水面下でじたばたする

◇午前5時起床.晴れ.あまり冷え込まない.

◇amazon.com 〈なか見!検索〉の人騒がせビックリ箱 —— まずは,英会話テキスト:Ronald Carter and Michael McCarthy 『Exploring Spoken English』(Cambridge University Press)の〈なか見!検索〉をご覧あれ.百聞は一見に如かず.(気分が悪くなった方はごめんね) ※アマゾン,なかなかやるやん……(汗).

◇北風もなく日射しがぽかぽかと暖かい週末.午前中は不健康に引き蘢り続け,午後は少し外出する.

◇Walter Haeckel『Agnes Haeckel geb. Huschke. Ernst Haeckels zweite Frau — Ein Nachtrag zu dem Briefwechselroman : Franziska von Altenhausen』(1929年,Verlag Adolf Tienken,Pritzwalk,ISBNなし)からの抜き書き ——

Unter den vielen unerlösten Verehrern und Unbeterinnen ragte „Franziska von Altenhausen“ bedeutsam hervor, denn in ihr der „sinnlich-übersinnlich“ Freier das Abbild seiner früh Geliebten, Anna Sethe, wiederzufinden.(S. 20)

Und mitten in diesem Verjüngungsprozeß an Geist und Körper, an dem die hochgespannte Neigung zu der Freundin den innersten Anteil hatte — Eros und Schöpfertum ! — starb Franziska von Altenhausen, während Ernst und Agnes Haeckel den Winter 1903-4 an der Riviera weilten, um den Feierlichkeiten zu seinem 70. Geburtztag zu entgehen. (S. 23)

何とも微妙な言い方をしているのだが,1927年の暴露本『Franziska von Altenhausen』(→書影)に対する親族の立場を言い表しているようだ.この冊子の中で唯一の隔字体(gesperrt)表記されている「unsere lieben guten Mutter」(S. 28)たる Agnes を守りつつも,Haeckel の愛人の存在は否定できないので,それをあえて先妻の Anna Sethe の面影に射影しようとする,なかなか苦しい言いまわしではないだろうか.

◇ついでにこちらも —— Heinrich Schmidt (Hrsg.)『Anna Sethe : Die erste Liebe eines berühmten Mannes in Briefen』(1930年刊行,Carl Reißner Verlag, Dresden, ISBNなし).「Himmelhoch jauchzend, mein süßes Liebchen」と夫がいえば,「Liebster Erni」と妻が応える.若書きですなあ.

◇夜になってもさほど寒くない.冬らしくない.翻訳の続きを少し進める.

◇夜の新刊情報 —— ハンス・ドリーシュ著(米本昌平訳・解説)『生気論の歴史と理論』(2007年1月刊行,書籍工房早山,ISBN:4-88611-504-7).この著者にこの訳者の組み合わせとは,いったい・・・.ブツを手にしてみないことには何ともいえません.今の時代にこの本の新訳をあえて出す意図を知りたい./ フェルナンド・ペソア著(高橋都彦訳)『不安の書:リスボン市に住む帳簿係補佐ベルナルド・ソアレスの』(2007年1月刊行,新思索社,ISBN:4-7835-1196-9).この著者にこの出版社の組み合わせとは,いったい・・・.ブツを手にしてみないことには何ともいえません.リスボンだけですむのかな.アソーレスに連れて行かれることはないのかな.

◇本日の総歩数=4817歩[うち「しっかり歩数」=3266歩/29分].全コース×|×.朝 ○|昼△|夜△.前回比=−0.2kg/−0.1%.


26 januari 2007(金) ※ またまた午後から東京出奔中

◇午前4時起床.曇りのち晴れ.気温はマイナス3.0度.

◇未明の研究所にて InterCommunication 原稿の図版差替えをする.メールに添付して編集部に送信完了.

◇しだいに暖かくなってきた朝のこまごま —— 会計システムの登録をする./ 1月30日の年休届を出す.

◇リプリント情報 —— J. G. R. Forlong の稀覯本類が〈Kessinger Publishing〉から「32冊」も一挙に復刻された.大著『Rivers of Life』など,比較宗教学関連の本がたくさん.2005年になってから品目がいっぺんに増えたようだ.→復刻書リスト

◇研究所に届いていた本 —— Walter Haeckel『Agnes Haeckel geb. Huschke. Ernst Haeckels zweite Frau — Ein Nachtrag zu dem Briefwechselroman : Franziska von Altenhausen』(1929年,Verlag Adolf Tienken,Pritzwalk,ISBNなし).Ernst Haeckel の2度目の妻 Agnes の小伝.著者は夫妻の長男.どういう「Nachtrag」なのかと思ったら,付け加えられたものはたいしたことなかった.30ページ足らずの冊子.初出は1929年発行の『Die Drei』誌の記事.同誌のサイトで検索すると,元記事は「1929/30,581ff」だそうだ.なお,この雑誌は,Rudolf Steiner の還暦を記念して1921年に創刊された人智学(Anthroposophie)系ジャーナルで,その正式誌名は『Die Drei : Die anthroposophische Kulturzeitschrift』という.

◇今日は出張日なので正午でいったん帰宅する.午後1時11分の TX 快速で東京へ.車中は本読みする間もなく,ひたすら翻訳原稿と格闘する.千駄木で下車.〈古書ほうろう〉に立ち寄り,「屠畜本」展示を一通り見る.ついでに,探していた本にも遭遇:アントニオ・タブッキ(須賀敦子訳)『島とクジラと女をめぐる断片(新装版)』(1998年9月30日刊行,青土社,ISBN:4-7917-5664-9).

◇午後3時に東大農学部に到着.7号館にて,専攻の修士論文発表会.午後4時半に抜け出して,〈ルオー〉へ.2階階段横の「独房」にてさらに翻訳格闘続く.午後5時に海游舎の本間さんが到着.さらに,格闘し続けて5時半にやっと5ページ分を手渡す.次は,2月2日の11時に代々木上原駅にて.午後6時に再び農学部7号館に戻り,専攻交流会を1時間あまり.午後7時過ぎに帰路につく.つくばに帰り着いたのは午後8時半のこと.

◇備忘メモ —— ううむ,Rudolf Steiner と誕生日が同じだったとは…….知らなんだぁ./ ヘッケルの秘書 Heinrich Schmitt の伝記記事があった:Uwe Hoßfeld「Haeckels »Eckermann« : Heinrich Schmitt (1874-1935)」(→pdf).Schmitt の Haeckel に対するは Eckermann の Goethe に対するがごとしというわけね.

◇午後10時を過ぎて,ぱらぱらと雨が降り出した.気温は低くないので雪になるはずがない.ふらふらする.

◇あわただし過ぎる日々.それでも,積み残し仕事は数知れず.(だから数えないことにしよう……)

◇本日の総歩数=14492歩[うち「しっかり歩数」=4275歩/37分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/0.0%.


25 januari 2007(木) ※ 不在の隙き間につくば実在中

◇午前4時半起床.晴れ.きりきり冷えてマイナス2.4度.その後も快晴.午前10時に6.4度.

◇午前のこまごま —— 前日になって出張届を出す奴.明日は東大の修論発表会がある.原稿年貢を納めて,夕方から専攻交流会.東京に出るときには必ず最密パッキングされた「用事連鎖」があるので,時間的・精神的余裕はゼロ.いつも煽られる.

◇新刊情報 —— 山浦玄嗣『ケセン語の世界』(2007年1月刊行,明治書院,ISBN:978-4-625-43400-6).ケセン語の伝道書.でも,同じ著者の手になる『ケセン語大辞典(上・下)』(2000年7月30日刊行,無名舎出版,ISBN:4-89544-241-1)がすでに手元にあるから,買わなくてもいいでしょうか.月曜に東京堂書店で現物を手にした.→版元ページ./ チャールズ・ライエル(河内洋佑訳)『地質学原理(下)』(2007年1月20日刊行,朝倉書店[科学史ライブラリー], ISBN:978-4-254-10588-9→版元ページ).昨年暮れに出た上巻:チャールズ・ライエル(河内洋佑訳)『地質学原理(上)』(2006年12月5日刊行,朝倉書店[科学史ライブラリー], ISBN:978-4-254-10587-2→版元ページ)に続く後半.

◇日中いっぱい,InterCommunication 原稿用の図版のスキャンとキャプション作成に追われる.20葉近く掲載することにしたので,作業もたいへん.謝辞に引っ張り出した某氏と写真転載をした某氏に事後承諾メール(なんてワルモノなんでしょ).

◇午後のこまごま —— またまた溜まりだしたメーリングリスト火山灰のお掃除./ 紀伊国屋書店京都営業部からソーバー本を購入したいとの依頼があった.南山城にある某大学が公費購入したいそうな.事務書類づくりがどーのと言われると引くだろうけど,注文には迅速に対応いたしましょう.

◇わらわら届く新刊雑誌 —— 『進化でどこまでわかるか』(2007年1月20日刊行,NTS[『遺伝』別冊 no. 20], ISBN:978-4-86043-165-5).昨年の日本進化学会大会(代々木)の特集号.250ページもある!→版元ページ./ 『Annual Review of Ecology, Evolution, and Systematics, Volume 37』(2006年刊行,Annual Reviews,ISBN:0-8243-1437-9→目次).今号から版型が大きくなり,多色刷りになった.ほとんど700ページ近くもあるぞ.毎年感じることだが,進化・生態・体系学分野の年報としての本誌はとてもコスト・パフォーマンスが高い質の良いメディアだと思う.凡百な本を積み上げるよりは,本誌を毎年1冊買った方が結果的にはるかに割安だろう./ おお,『The Quarterly Review of Biology』の最新号(Vol. 81, no.4, December 2006)も届いたか.

◇午後4時過ぎに,画像ファイルとキャプションのURLを編集部に連絡する.自分用に組版した図版入り原稿pdfは,A4にして14ページ.ほどよい分量に仕上がったと思う.これでやっと仕事が一つすんだ.

◇本日の総歩数=4222歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝 ○|昼−|夜△.前回比=+0.8kg/−0.3%.


24 januari 2007(水) ※ またも煽られつつ本郷をうろつく

◇午前5時半に起床.あんまり寝てへんやん……(ふっ).曇り.

◇ほんの数時間前にしあがったばかりの原稿(テキスト部分)を未明にpdf化して,打ち出してみる.画像の貼りこみはこれからだ.できるだけグラフィックな原稿にとのことなので,いろいろと資料を掘りかえさないといけない.そういうもろもろの仕事はすべて研究所でやらないとどうしようもない.

◇しかし,その前に目前に差し迫った仕事がある.今日,本郷で手渡すはずの翻訳ゲラがまったく手つかずなので,何とかしないと.しばし自宅で格闘するも,東京に出かける時間が迫ってきた.9時18分の TX 区間快速に乗りこみ,車中でもひたすら訳文のチェック.根津で下車して,〈ルオー〉にたどり着いても,さらにさらに作業の続行.海游舎の本間さんが午前11時にやってきてもなお奮闘は続く.結局,正午前に5ページを仕上げて,本日の手渡しはドロナワ完了だ.※次は,26日の夕方.(どんどんインターバルが短くなってるぞ)

◇東大農学部キャンパスへ.晴れてきた.あまり寒くない.正午過ぎから生物・環境工学専攻に新しく赴任された教員を囲む昼食会.午後1時から引き続いて,専攻教員会議.午後3時過ぎまで.農事暦ならぬ“大学暦”がそこはかとなく実感できるようになってきたが,それにしてもさまざまな用事が降りかかってくるなあ.

◇少し時間があったので,神保町をひとまわり巡回する —— 書肆アクセスをチェック.昨年末に出た青木正美の部厚い古書店回想録が平積みされていたが,後回しだな,これは.(古書業界の内輪話が好きな向きはどーぞ)|内澤旬子『世界屠畜紀行』(2007年2月10日刊行,解放出版社,ISBN-13:978-4-7592-5133-3| ISBN-10:4759251332→目次)の出版記念企画が千駄木の〈古書ほうろう〉でいま開催中(ビラを配布していた).金曜にちょっと顔を出すか.同じく不忍通り沿いの〈往来堂書店〉では「屠畜本」フェアを同時開催しているらしいが,いったい誰が買うんだろう…….

◇東京堂書店にて —— マージョリ・リーヴス(大橋喜之訳)『中世の預言とその影響:ヨアキム主義の研究』(2006年10月25日刊行,八坂書房,ISBN:4-89694-881-5).本文700ページあまり,カラーを含む図版が50葉近くというとんでもない大著だ(かの『中世思想原典集成』の別巻かと勘違いしそう).それにしても,絡みつかんばかりのケルト的な「生命の樹」の数々はいったいどーしたことか.異端なんでしょうね,やっぱり.※ツリーがツリーを呼び寄せる.

◇秋葉原まで歩いて,午後4時半の TX 快速に乗り,直帰する.帰路の車中読書 —— Sigrid Weigel『Genea-Logik : Generation, Tradition und Evolution zwischen Kultur- und Naturwissenschaften』(2006年刊行,Wilhelm Fink Verlag,ISBN-13:978-3-7705-4173-7|ISBN-10:3-770-5-4173-1→目次)をぱらぱらする.「Genealogie(系譜)」の語源と概念史.語源はタイトル通りの「Genea-Logik[= genos + logos]」だ(S. 23).初出は18世紀の『エンチュクロペディー』にまでさかのぼれるそうだ.おもしろいのは,「Genealogie」が王侯貴族の「Ahnentafel」としだいに結びついていく社会的過程だ(S. 44).

◇本日の総歩数=9817歩[うち「しっかり歩数」=3176歩/29分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=−0.6kg/−0.3%.


23 januari 2007(火) ※ 朝から最後の追い込み

◇午前5時前起床.晴れ.気温0.7度.

◇朝のこまごま —— 前夜の〈吉田屋治助〉は喜んでいただけたようだ./ RPのまとめについてのミーティング.なんとかよろとく./ 筑波大学から昨年の集中講義レポートがどさっと送られてきた.採点はちょい待ちね./ 生物地理学会の和文誌着便./ 会計システムのマシン登録をし忘れていたみたい……./ 日本統計学会が企画している創立なんちゃら周年論文集への寄稿依頼.締切は「3月末」って,ムリムリ.

◇こまごまの合間に,なお原稿を書き続ける.本文テキストで10000バイトは書かないと.昼休みも返上して,午後もなお研究室引き蘢り状態で書き続ける.

◇着便本 —— ロジャー・クック(植島啓司訳)『生命の樹:中心のシンボリズム』(1982年12月15日刊行,平凡社[イメージの博物誌15],ISBNなし→目次).全編にわたって,古今東西ありとあらゆる「生命の樹」のオンパレード.原書は,Roger Cook『The Tree of Life : Symbol of the Center』(1974年刊行,Thames and Hudson).妖しげな占星術あり,フィオーレのヨアヒムあり,もの言う木もあり.カラー図版入りの大判本.

◇夕方4時過ぎから,南保さんの修論プレゼン練習第1回め.通常の学会一般講演と同じく,持ち時間は15分だという.本番と同じ要領で話してもらって,スライドとトークについてのコメントをいろいろ.機会を改めて,また練習しましょう.午後5時前に帰宅する.

◇夜もなお原稿を書き続け,そのまま日が変わった.午前1時過ぎにやっと最後まで書ききる:三中信宏「サイエンスとアートのはざまで図像を読みとる:系統樹をめぐるリテラシー」(『InterCommunication』誌掲載予定).午前1時半に編集部宛にメール送信し,午前2時前にやっと寝られた.

◇本日の総歩数=3060歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/+0.2%.


22 januari 2007(月) ※ 小雨のち晴れ,格闘なお続く

◇午前4時半起床.小雨のち曇り.気温3.7度.ひりひりする寒さではなく,芯に染みこむ寒さ.

◇朝からこまごま —— 進化学会関連の郵送物.募集と調整が必要か./ 『生物科学』の事務メール./ 先日のRP成績検討会を踏まえて,2月上旬に開催される所内検討会のための打合せ.まだまだ続く会議ドロヌマ…….

◇それ以外の時間はもちろん原稿書きに勤しむ.頑張らないとなあ.

◇曇りのち晴れ.気温9.8度.風もなく体感的に暖かい.昼休みの歩き読み —— 内澤旬子『世界屠畜紀行』(2007年2月10日刊行,解放出版社,ISBN-13:978-4-7592-5133-3| ISBN-10:4759251332→目次)を最後まで読了.100ページあまり.芝浦(牛の解体)から始まって,インド,アメリカと屠畜場めぐりをしたレポート.たいへん満腹いたしました.日米の「BSE対策」のあり方のちがいがよくわかって興味深い.全部読み通すうちに,“屠畜”という言葉への違和感がなくなっていく.

◇午後も原稿書きが続く.なお遠い道のり…….

◇献本感謝! —— Alan Grafen,Rosie Hails著(野間口謙太郎・野間口眞太郎訳)『一般線形モデルによる生物科学のための現代統計学−あなたの実験をどのように解析するか−』(2007年1月30日刊行,共立出版,ISBN-13:978-4-320-05639-8→情報版元ページ).

◇ヘッケルつながり,さらに1冊 —— Heinrich Schmidt (Hrsg.)『Anna Sethe : Die erste Liebe eines berühmten Mannes in Briefen』(1930年刊行,Carl Reißner Verlag, Dresden, ISBNなし).昨年暮れに AbeBooks を通じて,ドイツの Geert Pötter Antiquar に発注した本が届いた.アンナ・ゼッテ(1835-1864)はエルンスト・ヘッケルの最初の妻(にして従姉妹)だったが,結婚後2年足らずで早世してしまう.本書は,ヘッケルの秘書だったシュミットによる二人の書簡集だ.

 いま調べてみた範囲では,Kurt Stüber の電子ライブラリー〈www.biolib.de〉に入っている『Ernst Haeckel: Briefe an Anna Sethe (1858-1865)』(→ミラーサイト)の元本は本書のようだ.

◇帰宅したら,土浦税務署から今年度の確定申告用紙が届いていた.いよいよ年度末の締めだ.

◇夜中近くに再び原稿を書き始める.まだまだか…….

◇本日の総歩数=10092歩[うち「しっかり歩数」=6278歩/54分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜×.前回比=−0.2kg/−0.5%.


21 januari 2007(日) ※ 髪を切ってさらに書き続ける

◇午前5時半起床.夜のうちに降ったらしく路面が濡れているようだ.曇り.底冷え.

◇朝9時半,美容院に行き,ウンベルト・エーコ『前日島』(1999年6月1日刊行,文藝春秋,ISBN:4-16-318500-3)を読みつつ,“禊の剃髪”をする(スキンヘッドにしたわけではない).

◇その後,研究所に潜入して.作業開始.気温6.2度.穏やかに晴れる.昨夜の文献リストに沿って載せるべき図と書くべき文を確認し,ストーリーをつくっていく.

◇The Tree of Life 新刊 —— Guillaume Lecointre and Hervé Le Guyader『The Tree of Life : A Phylogenetic Classification』(2007年1月5日刊行,Harvard University Press,ISBN:978-0-674-02183-9 [hbk]).著者と内容から判断して,2001年に出た仏語版『Classification phylogénétique du vivant』(2001年,Éditions Belin,ISBN:2-7011-2137-X)の改訂英訳版だろう.翌2002年に仏語第2版が出ているので,今回の新刊は第3版に当たるのかもしれない.

 ぼくは,2001年夏の Hennig XX(Corvallis, Oregon)の会場で著者自身から新刊を入手し,2002年夏の Hennig XXI(Helsinki)でその改訂版を手にした(「あんまり変わっていないぞ」と著者は言っていた).もともとイラストのたくさん入ってる教科書だが,今回の英語版はどういうふうになっているのだろうか.→版元ページ

◇夕方まで,研究室に引き蘢り,執筆作業の続き.しかし,まだ終わらず.資料本の“標高”だけは着実に高くなっていく…….

◇本日の総歩数=5265歩[うち「しっかり歩数」=1857歩/17分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+1.1%.


20 januari 2007(土) ※ 週末冬眠中は原稿原稿また原稿

◇午前4時半起床.ばたばたする.曇り.気温とても低し.

◇「はてな」が「ISBN-13」に対応 —— はてなダイアリー日記[2007年1月9日付]の記事「isbn/asin記法のISBNコード13桁化対応について」.はてなの中で,新しい「ISBN-13」(現時点では「978-……」)でも該当する本に正しくリンクできることを確認した.ただし,たとえば「978-4-320-05639-8」のようにハイフンを残しておくとダメで(13桁目を読まないようだ),ハイフンをすべて除去した「9784320056398」の形式にしておかないと正しくリンクしてくれない(たとえば「ISBN:9784320056398」のように).従来の「ISBN-10」のときは,ハイフン付きでもはてなが自動的にハイフンを削除して表示&リンクしてくれたが,「ISBN-13」はそうではないので手動でハイフンを外す必要がある.いずれにせよ,「ISBN-13」対応になったのはよかった.

◇朝から原稿の素材をいじり倒す.備忘メモいくつか —— Heinz Brücher『Ernst Haeckels Bluts= und Geistes=Erbe : Eine kulturbiologische Monographie』(1936年刊行,J. F. Lehmann, München,ISBNなし→目次)について.〈EFGH〉についての情報.Johannes Werner の編集による元本(1927年)では二人とも匿名,1930年の英訳では Ernst Haeckel のみ実名になっていた.Brücher 本には「Frieda[ママ] von Uslar-Gleichen」(p. 23)として彼女の実名も明かされている(同じページには,この点について「1927 veröffentlicht」と書かれているが,Werner 本が出た当時はまだ匿名のままだったはず).

 もうひとつ:あとがき(Nachwort)を読むと,イェナ大学総長にして同大学の人類系譜研究ならびに人種政策研究所の所長でもあった Karl Astel の援助,そして Haeckel 一族ならびに Ernst-Haeckel-Archiv と彼の弟子たちの情報提供のもとに本書が書かれたことがわかる.なお,添付されている巨大な Haeckel 家の Ahnentafel(Sippschaftstafel)を描いたのは二人の女性秘書だったようだ.

◇外は曇ってとても寒そうだが,カンヅメなので関係ありまっしぇん…….

◇「“系譜”の系譜」の新刊 —— Sigrid Weigel『Genea-Logik : Generation, Tradition und Evolution zwischen Kultur- und Naturwissenschaften』(2006年刊行,Wilhelm Fink Verlag,ISBN-13:978-3-7705-4173-7|ISBN-10:3-770-5-4173-1→目次).正月に発注した本がもう届いた.予想した通り,「系図(Genealogie)」をキーワードとする“境界侵犯”的な系統樹本.→版元ページ

 同じ著者によるもう1冊:Sigrid Weigel, Ohad Parnes, Ulrike Vedder, and Stefan Willer (Hrsg.)『Generation : Zur Genealogie des Konzepts — Konzepte von Genealogie』(2005年6月刊行,Wilhelm Fink Verlag,ISBN:978-3-7705-4082-2).「世代」と「系譜」の概念史の論集.→版元ページ

◇午後3時過ぎに〈Singoster〉までちょっと歩く.冬空からぱらぱらと降ってきたのは霰だった.この冬初めて.その後,小雨になった.しかし,また曇り空に戻る.大寒らしい空模様の1日だった.

◇夜は原稿をひたすら書くのみ.督促メールあり.ひー.

◇本日の総歩数=3083歩[うち「しっかり歩数」=1366歩/13分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=+0.6kg/0.0%.


19 januari 2007(金) ※ あ,もーあとがありません……

◇午前5時起床.あ,寝過ごした.ぼー然.晴れて,気温3.1度.ぼー然としたまま,午前9時になる.気温6.1度.さらなる快晴.ぼー然.

◇朝のこまごま —— 〈Jedit X〉と〈JChecker X〉のライセンスが届いたので,さっそくインストールする.いままで HTML のタグは見よう見まねで打ってきたが,JChecker さまの審判を通すと泣く子も黙る「警告の嵐」だ.ごめんなさいごめんなさい.新しいエディタはそれなりに「現実逃避的」な楽しさがあるが,ここはぐぐっとこらえて本務にもどるしかない.

 いずれにせよ,昨年来〈mi〉がずっと使えないまま(原因不明)やりくりしていた G4 の文字入力環境が格段に改善された.※もうすぐ Quad Xeon を買う予定だが,書類作成マシンはしばらく G4 のままにしておくつもり.

◇「距離概念」のエンサイクロペディア —— 新刊:Michel-Marie Deza and Elena Deza『Dictionary of Distances』(2006年10月刊行,Elsevier,ISBN-13:978-0-444-52087-6|ISBN-10:0-444-52087-2→目次).さまざまな学問領域で用いられている「距離概念」の総覧.数量分類学あり,多様体論あり,もちろん系統推定論あり.それにしても,400ページもの本が1冊書けるほど,さまざまな距離が世の中にはあるということか.参照→版元ページ著者サイト(M. -M. Deza).著者サイトからは目次および両端章(pdf)を入手できる.

◇すっきり快晴の昼休み —— 内澤旬子『世界屠畜紀行』(2007年2月10日刊行,解放出版社,ISBN-13:978-4-7592-5133-3| ISBN-10:4759251332→目次)の第13章まで100ページほどさらに読み進む.肉の芝浦・革の墨田・猿の犬山,そして山羊の沖縄まで.

◇午後のこまごま —— 信州大学から成績評価連絡票が届いた.グッド・タイミングというべきか,生かさぬよう殺さぬようということか.締切は2月7日./ 東京農大の卒論発表会と追い出しコンパは2月17日(土).農環研の他に関わりのある大学がふたつあるので,要所要所で会議やイベントへの参加要請が単純に3倍に増える.

◇さらにこまごま —— 南保さんの修論発表打合せ.15分のプレゼンとのことなので,スライドの構成について相談する.1枚のスライドにたくさん書かないように.字は少ないほどよい.スライドは見た目が9割.あとは噺芸です.

◇夕方,執筆エンジンをかけ始める.資料本が積み上がり,頭のなかは原稿の構成イメージング.「1936年」をキーワードにして大陸間を飛ぶ.プロローグとエピローグはこれで描けるだろう.本論は多変量解析と系統学に関わる図形言語のアートとリテラシーについて.

◇粕谷さんから近刊情報1件 —— Alan Grafen,Rosie Hails著(野間口謙太郎・野間口眞太郎訳)『一般線形モデルによる生物科学のための現代統計学−あなたの実験をどのように解析するか−』(2007年1月近刊,共立出版,ISBN-13:978-4-320-05639-8→目次).一般線形モデルではなく,一般線形モデルの教科書だ.詳細は,版元ページを参照のこと.まえがき「なぜこの本を使うのか」と詳細目次が公開されている.原書は,Alan Grafen and Rosie Hails『Modern Statistics for the Life Sciences』(2002年3月21日刊行,Oxford University Press,ISBN-13:978-0-19-925231-2|ISBN-10:0-19-925231-9→版元ページコンパニオン・サイト[正誤表・データセット・本文中の全図表ファイル・プレゼンpptファイル]).

◇原稿プレッシャーと督促の夜.週末はまたカンヅメです.

◇本日の総歩数=10644歩[うち「しっかり歩数」=7072歩/62分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−0.4%.


18 januari 2007(木) ※ 今日こそは原稿を仕上げないと

◇午前4時50分起き.地面はまだ濡れているが,昨夜の雨はあがっていた.冷え込みまるでなく,4.4度もある.朝日とともに晴れてきて,地表は薄い霧がかかる.

◇午前のこまごま —— 信州大学のレポートは締め切りました.みなさん,締切までに出してくれて,感謝です.卒業間近の4年生受講者がいるので,成績評価を早く返送しないといけない.でも,成績記入用紙がまだ届いてないよん./ ふと思い立って,Mac OSX 用のエディター〈Jedit X〉と付随する HTMLチェッカー〈JChecker X〉を購入する.

◇穏やかな冬晴れの昼休み.歩き読み —— 内澤旬子『世界屠畜紀行』(2007年2月10日刊行,解放出版社,ISBN-13:978-4-7592-5133-3 [ISBN:4759251332]→目次)をさらに100ページあまり.第8章まで読了.チェコやモンゴルでの家庭的屠畜もさることながら,芝浦の大規模屠畜場は「肉の作られ方」を実感させてくれる.文字とイラストの多さをまったく感じさせない迫真のレポート.牛でも豚でも犬でも何でも食べられそう.

◇午後のこまごま —— 今年10月15日〜20日に京都で予定されている,京都大学基礎物理学研究所の湯川秀樹記念国際シンポジウムの概要が主催者から伝えられた.市内のホテル〈コープイン京都〉で1週間におよぶカンヅメだそうな.あら,KKさんとか,Y-PGさんとかも参加予定らしい.ほほう,錦市場の近くですか.イノダ・コーヒ本店の間近でもある.※食いもんで定位してはいけません>ぼく./ またまた溜まってきたメーリングリスト関連の雑用をこなそうと思ったら,思いのほか大量の作業に溺死してしまった.もう夕方だ.

◇夜,〈Jedit X〉と〈JChecker X〉のライセンスがメールで届いた.明日,さっそくインストールしよう.

◇「今日こそは!」の原稿がまだやんか…….○| ̄|_ ※明日こそは超早起きしてやらないと.

◇本日の総歩数=12236歩[うち「しっかり歩数」=7846歩/68分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/−0.2%.


17 januari 2007(水) ※ 捌けるもんなら捌いてみやがれ検討会

◇午前4時半の目覚め.曇り.気温は1.8度.研究所往復.

◇天気予報通り,朝のうちにもう小雨が降り出してきた.気温は昨日よりも低いまま推移している.

◇こまごましたことども —— 日本進化学会(編)『進化学辞典』(共立出版)の編集委員の依頼あり./ 総研大セミナーに関する事務連絡.やはり五月晴れの頃がいいでしょうか./ 信州大のレポートが続々と届く.感想を見ると,やはりコンピュータ実習の体系化が不足していたようだ.大学によって,実習の体制(教育設備としてのハード面)がそれぞれ異なっているので,個別対応にならざるをえない.実習室の場合はどうしても「講義」がしにくくなるので,課題実習をきちんと体系化して出題するようにしないといけない.

◇今日の午後は,恒例の成績検討会があるので,イメージ・トレーニングをば少々.

◇昨年の出版直後から,入手に手間取った〈R〉系統学本が年越しでやっと届いた:Emmanuel Paradis『Analysis of Phylogenetics and Evolution with R』(2006年9月出版,Springer[Use R], ISBN-13:978-0-387-32914-7 |[ISBN:0-387-32914-5]→目次).200ページそこそこの薄い本の入手にこんなに苦労するとは.しかも,超大手の版元にもかかわらず.

◇午後1時過ぎから,農業環境リスク指標RPの成績検討会.粛々と進む会議.「聖地化」じゃなくって,「精緻化」がとある研究業界のキーワードになっているらしいことを知る.しかたがないので,まことに精緻ではない荒削りな報告をした(「系統学的多様性(PD)」をどのように定量化するか?).午後4時過ぎにお開き.

◇夕方,再び雨が降り始める.夜になってもしとしとと.

◇あ,原稿がぁ.原稿〜,原稿〜.

◇本日の総歩数=3523歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/−0.1%.


16 januari 2007(火) ※ 隙き間に原稿を書くしかない日

◇午前5時起床.やや曇り.気温0.8度.未明の研究所とのピストン往復.

◇朝のこまごま —— 契約職員予算コードの変更完了.そろそろ年度末のいろいろな「〆」をつけないといけない.予算の〆とか,業績の〆とか,原稿の〆とか.会計システムと仲良くなる日々が始まる.決済していない物件もあるからね./ 発送依頼した松本からの年末荷物が届いた.集中講義のレポートは順調に集まっているが,締切間近なので出すべき受講生は忘れないように./ 2月2日(土)の東京農大修論発表会は10時から講義棟3階1308号室にて開催.

◇〈センセイの書斎〉から〈禁断の屠畜場〉への華麗なる転身 —— 新刊:内澤旬子『世界屠畜紀行』(2007年2月10日刊行,解放出版社,ISBN-13:978-4-7592-5133-3 [ISBN:4759251332]→目次).これはスゴい! よくぞ出してくれた.拍手また拍手.ちょうど今の時期にこういう本を出すというのは,時節柄ジャストミートで“バッド・タイミング”と言わざるをえない(運が悪かった).しかし,そんなことくらいでは負けない強さのある本だと思う.文章もさることながら,解体イラストがハマりです.引きずり出された駱駝の胎児とか,羊の大動脈を手で引きちぎるとか.屠畜業や皮革業にからむ日頃訊けない(書けない)ことまで国内外を問わずずばずばと切り込む著者の姿勢が印象的だ.おお,解放出版社ですか.たまにはいい本出すじゃん.

◇午前10時の気温は5.8度.しだいに晴れてきた.

◇原稿のプロット練り.引用すべき文献は揃いつつある.あとは人工降雪核があればよし.

◇晴れた昼休み.9.5度.歩き読みの友は小脇に抱えた「屠畜本」 —— 内澤旬子『世界屠畜紀行』(2007年2月10日刊行,解放出版社,ISBN-13:978-4-7592-5133-3 [ISBN:4759251332]).韓国からバリ島へ,そしてエジプトまで読み進む.2段組みの本書は活字量も多いし,イラストもふんだんにある.この調子で360ページも書いたとは力仕事だ.

◇午後1時半から1時間ほど,南保君の修論打合せ.コンテンツはもう決まっているので,あとは2月2日の発表会のプレゼンに備えた上で,修論内容を整えていく.金曜までにプレゼンのスライド構成を決めて,その後で発表練習.合間に本文をつくりこむ.

◇午後のこまごま —— 初めての質問者から電話にて系統樹Qあり.できるだけお答えする.その他,メールで受けた質問もいくつかあるのだが,まだ対応しきれていない./ 4月の生物地理学会大会のシンポの企画と準備をしないとか.※まだ白紙ですが.

◇原稿は「隙き間時間」にと思いつつ,その隙き間がないのは気のせいか.それとも必要な隙き間が実は広かったりするからか.

◇本日の総歩数=10370歩[うち「しっかり歩数」=6548歩/56分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=−0.5kg/0.0%.


15 januari 2007(月) ※ 雑用と出奔と翻訳と会議と原稿

◇午前5時半起床.晴れて冷える.今日は事務上は「出張日」になっているので,未明に出勤簿押印する必要がない.しかし,午前は研究所に出勤し,夕方から東京に出る.諸般の用事は立て込んでいるのだが,引き蘢るだけでは能率が上がらない.(だからと言って,うろうろ外出することが能率アップにつながるわけでもない)

◇学ぶ新刊 —— 真下五一『【復刻版】京ことば事典』(2006年12月25日刊行,アートダイジェスト,ISBN:4-900455-98-9).初版は1972年とのこと.「辞典」ではなく「事典」と銘打たれている.さあ学びましょう.

◇午前のこまごま —— 東大農学部の非常勤講義「保全生態学特論」の依頼にOKの返事を出し,すぐに履歴書を郵送する./ ダーウィン関連質問に半分だけ対応する./ InterCommunication の原稿を何とかしないといけないのだが……./ 農環研分会の旗開きは1月23日(火)の夕方./ 年初めから堆積していたメーリングリスト雑用を掃き清めているうちに昼になってしまった.

◇いったん帰宅.晴れて,気温は9.5度.風もなく暖かく感じる.15:11の TX 快速で東京へ.午後4時過ぎに本郷の〈ルオー〉の2階独房に自発的監禁される.1時間ほど翻訳苦役が続く.5時前に海游舎の本間さんが“徴税”に登場.さらに半時間ほど労働し,本日は9ページを“納税”できた.ミツバチ,なかなか終わらず.熟年ランナー Bernd Heinrich のように軽やかに駆け抜けることあたわず…….※第15章の残り5ページは郵送.次章は1月24日に取り立て.

 そういえば,彼の「走る本」が去年翻訳されていた:ベルンド・ハインリッチ『人はなぜ走るのか』(2006年11月刊行,清流出版,ISBN:4-86029-173-5).タイトルを見ただけでは,『マルハナバチの経済学』(1991年11月刊行,文一総合出版,ISBN:4-8299-3031-4)や『ヤナギランの花咲く野辺で:昆虫学者のフィールドノート』(1985年11月刊行,どうぶつ社,ISBN:4-88622-223-4)と同じ作者の手になる本とはとうてい思えないが,実はつながっているのだろう.

◇午後6時から,東大農学部にて専攻紹介パンフレット作成委員会.見本刷りの確認はすんなりと終わり,そのままプチ飲み会になだれこむ.プチなので午後7時半には早々とお開きになり,つくばへ直帰.午後9時過ぎにはもう帰り着いてしまった.

◇ああ,原稿原稿.うう.

◇本日の総歩数=10373歩[うち「しっかり歩数」=2494歩/22分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜○.前回比=+0.2kg/−0.5%.


14 januari 2007(日) ※ 終日,研究所にて自発的監禁される

◇午前6時起床.相変わらず寒い.午前9時の気温は5度.

◇朝から研究所に潜入し,引き蘢りの仕事続行.業績リストは早々と送信したので,あとは成績検討会の資料づくりに没頭.文章はほぼできたので,あとは作図をば.図と文章との対応づけなど.最終的には .doc にしないといけないが,そういう憂鬱作業は後回しにする.まずはコンテンツをつくること.

◇〈TaxaCom〉の社会学 —— 昼前のよそ見.体系学メーリングリスト〈TaxaCom〉が開設されて今年で20周年というアナウンスがあった.ぼくは知らなかったが,この〈TaxaCom〉の投稿群を“科学社会学”的に分析した研究があるそうだ:「Taxacom and systematics: a summary」.こういう研究者[電子]コミュニティの実例は[科学]社会学者にとっての格好の素材となるのだろう.〈EVOLVE〉にはまだないが,〈BIOMETRY〉には MOCA が入っているので,このツールをうまく使えば“社会学”的な分析ができるだろう.

◇午後も作業続行 —— 図と本文のコンテンツはできたので,あとは .doc フォーマットへの詰め込み.しかし,組版機能がだめだめなので,適当にぎゅっと押し込んでおしまいにしよう.気にし過ぎると精神衛生上よろしくないので,それなりに.

◇著者から私信 —— 鈴木直『輸入学問の功罪:この翻訳わかりますか?』(2007年1月10日刊行,筑摩書房[ちくま新書637], ISBN:978-4-480-06342-7→書評)の書評を昨日公開したところ,著者ご本人からメールをいただいた.ありがとうございます.

◇日曜の研究室潜入を見透かされたように〈PAUP*〉系統推定の質問が飛び込んできた.これ幸いとすぐにドロップアウトする.質問によると,「ntax=134」×「nchar=1429」の塩基配列データ(昆虫)から最節約系統樹を出したいのだが,何日計算してもらちがあかないとのこと.

添付されてきた nexus データを見てみると,「CI=0.3」程度の低さなので,おそらくおびただしい数の同長樹がメモリーに吐き出されているにちがいない.「Multrees=Yes」に設定すると,確かに何万ものツリーが swapping 待機になってしまう.Rachet で締め上げると少しはましになるのだろうが,心地よい解決とはいえないだろう.茫漠とした探索空間の[まちがいなく]険しいランドスケープがここにはある.

Steve Farris は「スワッピングしたがるのは“文化”の問題だ」と言っていたけど,すべての同長樹を探索しつくさなくてもいいじゃないかと一歩引いてしまえば,もう少しラクなやり方(というか中間的ビバーク)も可能ではないか.つまり,1回の TBR swapping で最短樹をとりあえずひとつ見つける(Multreesはオフ)という探索を繰り返して,tree islands の配置の検討をつけるだけでも得られる知見は少なくないだろう.もちろん,さらに精査したければ,そこで得られたツリーを user trees として発見的探索を続ければいいだけのことだ.

というわけで,次の2段階からなる方策を提案した:

 Hsearch
  Start=Stepwise AddSeq=random nreps=1000 swap=TBR Multrees=No;

 Hsearch
  Start=Current swap=TBR Multrees=Yes;

第1段階では「島探し」,第2段階では「山登り」を意図した探索方針だ.前半の島探しでは,Multrees をはずしておけば1000回の randomized addition でも数分間ですむ.後半の山登りでは適宜 rachet を組み合わせればなおよし.

◇わわ,もう夕方ではないか.あわてて .doc を整形して送信.これで本日の作業は終了.午後6時前だ.気温2.6度.寒い寒い.

◇本日の総歩数=1370歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜×.前回比=−0.5kg/+0.9%.


13 januari 2007(土) ※ 穏やかサタデーにクラく引き蘢る

◇前夜,夜更かししてしまったので,午前7時まで寝入る.惰眠あるのみ.今日も穏やかに晴れ上がる.寒波の襲来はもうないのか,などと油断してしまう.

◇午前いっぱい,来週の成績検討会のための考察と書類づくり.しかし,その前に,提出期限を大幅に過ぎている業績報告ファイルを完成させないといけない.合間に,いくつか文献を読み,要点を整理する.

◇午後1時24分,周期のとても長い揺れを感じる.時間にして1分ほど,震度1くらいのかすかな揺れ方だ.ニュース速報によると千島列島でマグニチュード8クラスの大きな地震があったそうだ.昨年来,年越しでベッドサイドに置いているサイモン・ウィンチェスター『世界の果てが砕け散る:サンフランシスコ大地震と地質学の大発展』(柴田裕之訳,2006年12月15日刊行,早川書房,ISBN:4-15-208785-4)は,著者らしいディテールの積み上げ方が特徴だが,地震に居合わせた体験者の記録を丹念に拾い集めているところがすごい.ちょっとしたことでも記録しておけば,後世のためになる(かもしれない).

◇風もなく暖かい正午前に,田んぼの畦道を軽く散歩する.日だまりでは水が温んでいるようで,もう早春の雰囲気がかすかに漂う.

◇午後はまたまた引き蘢って書類づくりと考察の続き.夕方,やっと業績リストだけは完成した.夜は検討会の配布資料に進もう.あるコンテンツを既定のフォーマットにそろえるというのはラクではない.この場合,フォーマットは“強圧的”なので,コンテンツは身をよじることになる.

◇本日の総歩数=4249歩[うち「しっかり歩数」=3292歩/28分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=+0.5kg/−0.3%.


12 januari 2007(金) ※ 小春日和に書類づくりと翻訳論読み

◇午前5時起床.曇り.気温マイナス0.8度.

◇朝のこまごま —— 文献複写依頼2件を発注したところ,ほどなく「オンラインで入手できました」との返事が情報資料課から返ってきた.最近こういうことが多い.職場の中からは,テツガク系とかレキシガク系を除く“農水省的にまっとうな雑誌”はたいていオンラインで読むことができる.それ以外は,別途外注することになるのだが,やや狭く自己規制しすぎたかもしれない./ 昨年の JICA キューバ特設コースの報告書が CD-ROM で郵送されてきた.昨年までは“紙”の報告書だったのだが,これまた時代の趨勢かも./ 科学哲学会の事務局から会誌『科学哲学』のサンプル・コピーが送られてきた(感謝です).いずれぼくの「14,000字」が収まる媒体ということ.

◇RP成績検討会のための資料づくりはなお続く…….書式のうち,すぐ埋まるのはいいのだが,それ以外の部分がね.ま,いろいろとね.

◇小春日和の昼休みは雲間から日が差す.気温は6.2度しかないが,風がないので寒くない.歩き読み —— 鈴木直『輸入学問の功罪:この翻訳わかりますか?』(2007年1月10日刊行,筑摩書房[ちくま新書637], ISBN:978-4-480-06342-7).本書は,日本の思想書・哲学書の「翻訳文体」を手がかりにして,現在にいたるまで続く“直訳調翻訳”を支えてきた背景を探ろうとする.序章「思想・哲学書の翻訳はなぜ読みにくいのか」では,読者を一顧だにしない直訳調の文体は日本ならではの「文化制度」のひとつであるという著者の基本認識が提示される.続く第1章「『資本論』の翻訳」でのマルクス『資本論』翻訳文体をめぐる攻防戦はなかなかおもしろい.一般読者が読んでも理解できない“逐語訳的直訳文体”を河上肇や三木清が執拗に擁護したエピソードが綴られている.やや中だるみな第2章「ドイツの近代化と教養理念」と第3章「日本の近代化の基本構図」では,明治以降の日本が文化的手本としたドイツにおける教養教育と,それを輸入した日本側の事情について.そして,再び本題に戻った第4章「ジャーナリズムとアカデミズムの乖離」は,20世紀初頭に堺利彦が創った「売文社」をひとつの軸として,翻訳における文体のありようについて述べ,さらには当時のアカデミズムに身を置いた者たちの深く屈折した心象風景を描く.

三木清,叩かれます:

三木[清]の翻訳観に見られるのは原文への強迫観念的な自己同化であり,欠落しているのは読者の視点からの解釈学的反省だ.そうなればいきおい,わかりにくい翻訳を苦労して解読する責任は読者に転嫁される.原文の構造を忠実に再現することこそ訳者の任務であり,それを解読するのは読者の責任だ,となる.ここに権威主義が発生する根拠がある.…[中略]… ここで主張しておきたいことがある.真理は細部に宿るがごとく,権威主義は文体に宿る場合があるということを.(p. 58)

そのあとに続く世代も同罪だ:

私が問題にしたいのは,個々の訳者の力量とは別の次元で,この国の思想・哲学書の翻訳と受容を拘束してきた,いわば暗黙の共通理解の方だ.(p. 14)

◇午後1時半から1時間ほど,〈文化系統学〉セミナーの第30回目:Chapter 14「Archaeological-materials characterization as phylogenetic method: The case of copodor pottery from Southeastern Mesoamerica」(Hector Neff)に進む(pp. 231-240).メキシコ・オアハカのモンテ・アルバン遺跡およびマヤ遺跡から出土した陶器の系統関係を推定する話.

◇夕方のよそ見読書:鈴木直『輸入学問の功罪:この翻訳わかりますか?』の後半を読了.第5章「輸入学問の一断面:カントとヘーゲルの翻訳」では,カントとヘーゲルの著作の翻訳例を挙げながら,直訳と超訳のはざまの細道を進まねばならない翻訳道のきわどさと難しさに触れる.かの「長谷川宏訳ヘーゲル」も著者にかかれば噴飯ものになるのか.最後の第6章「翻訳とはなにか」は,全体を総括し,著者なりの翻訳のあり方を論じる.

しかし —— 本書で挙げられているような翻訳の問題点は,少なくともぼくの関心からは遠いところにある.著者のもともとの問題設定は:

訳文をわかりにくくしているのはひとえに,原文と同じ構文で訳文を構成しようとする訳者の基本方針であり,その基本方針を貫く一徹さにほかならない.私などがよくしでかすような「うっかり誤訳」とは根本的に違う,いわば確信犯なのだ.この自身と一徹さはいったいどこからきているのか.(p. 23)

という点にあった.外国語に関する十分な知識があり,やろうと思えば流麗なこなれた訳文を紡ぎ出せたはずの訳者たちがなぜそうしなかったのか(という高尚な動機)を著者は問題とした.一方,ベック先生が一貫して糾弾し続けたのは,外国語のてにをは(基本的な語彙や文法)すら満足に知らない者ができの悪い翻訳書を量産し続けるもうひとつの現状(訳者の能力自体が足りないことが脱力的原因)だったはずだ.ぼくにはむしろベック先生の指摘の方が今でも身に染みる.

本書はドイツ語翻訳を通じた「学問文化論」に重きが置かれている.その意味で,メインタイトルとサブタイトルの配置はこの通りでよかったのだ.最初,新刊広告で見たときは,メインとサブは逆ではないかと思ったが,通読してぼくの勘違いに気がついた.

◇よそ見が災い?して,夜なべ仕事.成績検討会の資料づくりをちくちくと進める.とりあえず寝たのは午前1時半のこと.ねむ.

◇本日の総歩数=14781歩[うち「しっかり歩数」=8290歩/71分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=−0.7kg/−0.2%.


11 januari 2007(木) ※ 検討会資料をちくちくと紡ぎだす日

◇午前5時前に起床.晴れ.気温マイナス2.7度.ぴりぴりと静電気ショックが.

◇朝のこまごま —— ドイツからの書籍発送のトラブル.先日,AbeBooks に注文した本が在庫切れとの連絡があったので,Amazon.de に鞍替えしようとしたら,「日本は発送先ではない」などと意外なエラーを返してくる,昨年暮れまでは問題なかったはずなのに.しかたがないので,Libri.de とか buch.de など名前だけは知っていたドイツのオンライン書店に当たってみたら,これまたいずれも「日本は発送圏外だ」とのつれない返事(発送先の選択肢に「日本」がそもそも入っていない).結局,いくつかあたったあげく,Neubuch24というコンビニみたいな名前のオンライン書店でやっと発注できた.

◇〈はてな〉のはてな —— 〈はてな〉の「注目ISBN/ASIN」は,〈ISBN-13〉にはまだ対応できていないのだろうか?

◇昼休みは晴れて気温9.2度.歩き読み —— 筒井功『サンカの真実 三角寛の虚構』(2006年10月20日刊行,文藝春秋[文春新書533], ISBN:4-16-660533-X)を読了.三角寛の「サンカ研究」のウソを,彼の生い立ち以来の“個人史”をたどり,彼が持って生まれた“虚言癖”とともに暴こうとする.三上寛というペンネームの背後にある自称経歴の虚構性,朝日新聞社記者の頃から人気小説家時代を経てサンカ研究家になって以降も続く著作物の虚構性,そして描かれた“サンカ”なるものが帯びてしまった虚構性を指弾した上で,著者は自分自身(と今後)のサンカ研究について論じている.

◇午後のこまごま —— 信州大学から集中講義レポートが次々に飛んでくる.頑張ってください./ 東大農学部から隔年の非常勤講義依頼.〈保全生態学特論〉という名前の生物系統学特論です.受諾メールを出さないと./ とど君から年賀状.昨年の新宿区民オペラ〈トゥーランドット〉公演のDVDができたそうだ.早く観てみたいのだが,この時期は都合がつかないなあ.

◇夜のこまごま —— 来週に迫ったRP検討会資料についてあれこれ考える./ 午後10時,〈leeswijzer〉のカウンタが25万台に達した.

◇本日の総歩数=11964歩[うち「しっかり歩数」=6369歩/55分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=+0.6kg/+0.2%.


10 januari 2007(水) ※ 仲見世を駆け抜け,錦小路を走り過ぎる

◇午前5時起床.晴れ.マイナス1.0度.平坦な「平日」が続く.

◇午前のこまごま —— 計量生物学会の編集委員の委嘱メールを出す.すぐに受諾の返事あり(感謝).編集部にその旨連絡する./ 東大のパンフレット作成.修正箇所を指定したpdfを印刷会社に返送する.この件,完了.来週月曜に最後?のパンフレット委員会が予定されている./ 東京農大の人事関連で別刷りを厚木に発送する.まだ続くのかしら? 製本済み修士論文の最終提出期限は3月16日とのこと.>南保さん.

◇冬らしく乾いて晴れ上がり,ところかまわず静電気がびしびし飛ぶ.

◇ほっこり —— 東大オケOB/OGのための新しい mixi コミュが昨夜トツジョとしてできた:〈東大オケ50あたり〉.言い出しっぺさん(SK-III氏)は,入楽年度が「1975年±(何となく)5年」世代の参加者を想定しているようだ.この範囲に該当するおじさん&おばさんはすぐ集結するように(ミクシィ招待状やったらなんぼでも出しまっせ).※すでに,東大オケ関係のコミュはいくつかあるようだが,世代や楽器でクラスターされているみたい.

 といっても,午前の時点でコミュ参加者はまだ3名……か.Fl. と Cb. と Perc. では三重奏にならへんなあ.※ほれ,もっと集まらんかいっ.

◇昼休みは冬の日射しがぽかぽかと.気温8.0度の歩き読み —— 新刊の久我勝利『知の分類史:常識としての博物学』(2007年1月10日刊行,中央公論新社[中公新書ラクレ236],ISBN:978-4-12-150236-0→目次).新書の形式をうまく利用して,古代から現代まで,東洋から西洋にいたる「分類思想」を見渡そうという本だ.章構成は以下の通りである:

  • 序章:分類の歴史は人類の「知」の歴史である
  • 第1章:博物学の豊穣
  • 第2章:西洋の百科事典の歴史をひもとく
  • 第3章:東洋の百科事典
  • 第4章:図書分類 — あまりに広い「知」の森のなかで
  • 第5章:分類の可能性について

生物分類に関する記述のほとんどは第1章にある.それ以外は,百科事典(第2〜3章)と図書分類(第4章)に関する内容である.だから,「分類」と言われて延髄反射で「生物分類」を思い浮かべた読者は肩すかしを食わされるだろう.むしろ,守備範囲としては,中尾佐助『分類の発想』や坂本賢三『「分ける」こと「わかる」こと』に近いものが感じ取れる.本書は,そのような「一般化された分類」に着目して蒐集された事例集という位置付けになるだろうか.

両端章では,著者の目から見た「分類」の一般論が述べられている:

では,現代はどうなのか.分類学は,ついに単独で学問とはならなかった.かならず,“植物の”分類学であったり,“動物の”分類学であったり,“図書の”分類学であったりする.それらの分類学は,専門家の仕事でしかない.…[中略]… では,現代では分類などもはや必要ではなくなったのだろうか.(p. 24)

分類するとは,人間の基本的能力であり,また非常に高度な技術です.それにもかかわらず,分類が単独の学問として真剣に研究されてこなかったのは不思議なことです.(p. 222)

著者のこういう見解が,たとえまちがっていないとしても,偏った見方であると言うのはたやすいことだ.対象を特定しない分類の「形式」に関する一般的論議は昔も今も連綿とあったのだから.しかし,そういう一般論の厳密性を本書に求めてもしかたがないだろう.むしろ,「分類」そのものに関心をもつ読者層を予想してこういう新書が書かれたことが考えさせられる.著者自身は「分類」のもつ実利的側面にも関心があるようだ.一般読者は「分類」のどんなことに興味をもって本書を手にするのだろうか.博物学や百科事典に象徴される「知の分類」ではまだ抽象的過ぎる.もっと具体的な何か(現世的御利益)がそこにあるのだろう.

本書はいい意味でも悪い意味でも「新書スタイル」の本なので,内容的な深みを求めることはできないだろうし,著者側にもその意図はないようだ.だからと言って,高みから見下ろす鳥瞰図的なレビューでもない.むしろ,たとえていえば,“仲見世”を駆け抜ける,あるいは“錦小路”を走り過ぎるような読後感だ.古今東西の分類書や百科事典の「陳列」を間近で横目にしつつ,スライドビューのようにどんどん進んでいく感じ.おもしろい“店”があっても,あえてそこで立ち止まらない定速走行.

ぼくは,この本の200ページ余りを1時間の歩き読みで読了した.このペースが最適読書速度のようだ.それ以上の高速読書では“動体視力”がついていかないし,かといって過度にのろのろ読んでいると,“店々”にトラップされて先に進めなくなる.著者が言うように,「駆け足の旅」(p. 221)を満喫するのがベストなのだろう.広義の“分類”に関心のある一般読者に向けて書かれた新書だが,“分類”を生業にしている読者も楽しめると思う.

◇〈ISBN-10〉から〈ISBN-13〉へ —— 前にも記したように(→こちら),今年から ISBN 番号の制度が変わり,従来の10桁番号(ISBN-10)から新しい13桁番号(ISBN-13)になる.昨年出た洋書の中には両方の番号を併記するケースもあったが,今年の新刊からは,和書・洋書を問わず, 一挙にISBN-13に統一されていくのだろう.

◇午後のこまごま —— 年度末の出張届を2件出す.いずれも東大農学部(15日と24日)./ 今月から来月にかけては会議と会議と会議と……でてんやわんや.資料づくりもついてまわるし.

◇本日の総歩数=13600歩[うち「しっかり歩数」=7575歩/66分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/+0.3%.


9 januari 2007(火) ※ 寒風乾燥の平常営業スタート

◇いつもの平日と同じく午前5時前に起床.晴れて北西の風が冷たい.気温1.6度.夜明け前の南の空に半月が浮かぶ.

◇〈leeswijzer〉開設2周年 —— 一昨年(2005年)の今日,〈leeswijzer〉は開設された.この2年間,ただ1日の空白もなくコンテンツを積み重ねることができたことは幸いだった.画像も何もないテキストとリンクのみの「本のブログ」だが,これまでのべ24万アクセスを越える閲覧があったことに深く感謝したい.今年も,これまでと同じく,「毎日の更新を欠かさない」ことを旨として続けていくつもりだ.地道に続けていくことが力になる.

 これからの抱負は? —— はい,昨年のこの日の「〈開設1周年〉コメント」をご覧あれ.まさにその「利己的動機」に支えられて2年目が過ぎ,定速状態のまま3年目に入ろうとしているということだ.

◇遅ればせのカレンダー更新 —— 「平常営業」と言うからには今年分の予定表も書き始めないといけない.昨年後半から自分の予定は〈近未来不在予定一覧〉としてウェブに載せてしまったので,うっかり油断して手持ちの filofax year planner への記入を怠っていた.確定している予定を書き込む.今のところはまだ“空白”が多い.

◇午前のこまごま —— 昨年から引きずっている東大の専攻紹介パンフレット.年末に送られてきた見本刷りに対する連携教員の意見をまとめ,見本刷pdfにコメントを書き込む.明日,返送する予定./ 喫緊の仕事を確認する.※とりあえず「確認」のみです……(ハイ).

◇気温8.0度の昼休みの歩き読み —— 鈴木一誌『ページと力:手わざ,そしてデジタル・デザイン』(2002年11月8日刊行,青土社,ISBN:4-7917-6000-X)を80ページほど.第1章「文字」をほぼ読了.テキストをとりまく組版・デザイン・装幀などに対するこだわりがある著者だからこそこういう本が書けるのだろう.字体・書体・字形について,著者は次のように定義する(pp. 46-47):

  • 字体:文字の骨格をなす点画の組み合わせをいう.
  • 書体:文字の共通の肉付けの状態をいう.すなわち同じコンセプトに基づいてデザインされた共通の字形表現方法をいう.
  • 字形:具体的に表現された個々の文字の形をいう.大きさまで含まれる.

この定義にしたがえば,「字形」とは size-and-shape を変換不変量とする「form space」に属し,「書体」とは「字形」をサイズでスケーリングした「shape space」に属するということになるだろう.もちろん,書体の具現化としての字形にはばらつきが生じるはずだから,それもこみにして考えないといけないかも(字形=書体+誤差).書体そのものは認知カテゴリー化でグルーピングできるだろう.最初の「字体」は,そういう認知カテゴリーの“壁”を越えたちがいをあらわすということだろう.

◇午後2時から1時間ほど,〈形態測定学講義〉の第28回目.第11章「Partial least squares analysis」(pp. 276-285)を終える.PLS についてはこれまで断片的なことしか知らなかったが,うまく使えば有効なツールになるかもしれない.とくに,形態測定学に関連していえば,形態上の標識点の「グループ」を設定する際に使えるだろう.いまN標識点のk分割(標識点セット)を Gi ,それぞれの標識点数を ni とする(i = 1,2, ..., k.ただし,Σ[i]ni = N).標識点セット Gi と Gj の対の PLS に基づく相関係数を rij と書くとき,「2対の標識点セットの相関係数には差がない」という帰無仮説 H0:「d=rij −rkl=0」の検定を考える.検定統計量 d の帰無分布はブーツストラップによって構築する.この検定によって,PLS相関係数が有意に異なる標識点セット対が検出できれぱよいという考え方だ.場合によっては,多重比較の補正が必要になるかもしれない.

◇文庫本2冊 —— ヘレーン・ハンフ(江藤淳訳)『チャリング・クロス街84番地:書物を愛する人のための本』(1984年10月10日刊行,中公文庫,ISBN:4-12-201163-9).ぼくが最初にこの作品を目にしたのは,たしか『リーダーズ・ダイジェスト』の抄録?だった記憶がある.原書は1970年の出版だそうなので,ぼくが中学に入った頃のことだろうか.その後,翻訳は文庫で買ったが,引っ越しのばたばたでゆくえ知れずになってしまったので,またまた買い求める(2002年9月25日刊行の第8刷).いまこの本を読めば,きっとちがった読後感があるだろう.なんといっても,昔は,ここに取り上げられているさまざまな古書や稀覯本がいったいいかなる価値があるのかがぜんぜんわからなかったので.

もう1冊は,別宮貞徳『さらば学校英語 実践翻訳の技術』(2006年12月10日刊行,ちくま学芸文庫,ISBN:4-480-09028-2).かつて同じ著者が名著『誤訳迷訳欠陥翻訳』シリーズを出していた頃は(1980年代),まかりまちがってもベック先生の無情な鉄槌が振り下ろされないような“ちゃんとした翻訳”を世に出すことが一つの品質管理基準になっていた.実際,この悪訳糾弾シリーズには頻繁に自然科学系の翻訳書が俎上に上がっていたので,それはけっして他人事ではなかった.その刷り込みはいまだに効力を保っている.下手な訳文が読者に及ぼす被害を考えれば,その訳者は断罪されなければならないというぼくの意識はほかならないベック先生から植え付けられたものだ.

◇本日の総歩数=9135歩[うち「しっかり歩数」=4993歩/43分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−0.4%.


8 januari 2007(月) ※ 連休最終日は本のあれやこれや

◇前夜,丑三つ時まで夜更かししてしまったので,午前6時まで寝てしまう.晴れ.「台風低気圧」の余波か,北西からの風がまだ強いようだ.晴れ.寒い寒い.

◇〈R〉定番教科書『ISwR』の翻訳近刊 —— 〈RjpWiki〉からの情報によると,〈R〉の定番教科書である『ISwR』こと,Peter Dalgaard『Introductory Statistics with R』(2002年刊行,Springer-Verlag,ISBN:0-387-95475-9 [pbk]→目次・正誤表・演習解答)の翻訳が今月下旬に出るそうだ:ピーター・ダルガード著(岡田昌史監訳)『Rによる医療統計学』(2007年1月刊行予定,丸善出版事業部,ISBN:4-621-07811-2→版元ページ).税込定価2,940円.ぼく自身,方々で〈R〉の高座をするときの教科書としてこの本の原書を愛用してきた.今回出される訳本は「医療統計学」と銘打たれているが,かえって読者層を限定してしまうおそれがあるのにね.原書タイトルにはそういう「よけいな色」はついていない.

◇ついでに,イタリア語の〈R〉本も1冊:Stefano Iacus and Guido Masarotto『Laboratorio di statistica con R』(2003年刊行,McGraw Hill,ISBN:8838660840).→版元ページ〈R〉Projectページ.なお,著者サイトによると,近いうちに第2版が出るようだ.

◇午前中は気温が低かったが,午後になって穏やかな天気になってきた.しかし,それでも気温はやや低め.風がない分,暖かく感じるが.

◇新刊『集団遺伝学と小進化理論』 —— Alan R. Templeton『Population Genetics and Microevolutionary Theory』(2006年9月刊行刊行,Wiley-Liss,ISBN:0-471-40951-9 [hbk]).御大が電話帳をものしたということでしょうか.700ページ超.厚過ぎっ.→版元ページ著者サイト.Amazonでは高すぎるので,Aliblisにて新刊を2割引にてすでに注文した.Alibris からの着便が最近遅れ気味だが,米国内での荷物検査が律速段階になっているのかな?(よう知らんけど)

◇夜のアヤシイ読書 —— D・フォーチュン『神秘のカバラ』(1985年10月30日刊行,国書刊行会[世界幻想文学大系40], ISBN:なし)をぱらぱらと.誰がどう弁護しようが,いわゆるひとつの“オカルト本”だよねえ.「西洋の秘教の伝統の修行者」(p. 13)だの,「物質界の征服を霊的向上の使命として」(p. 16)だの,「隠された栄光の三十二の神秘的小径」(p. 23)だの,という表現がいたるところにある.アレクサンドル・スクリャービンやルドルフ・シュタイナーの大好きなアナタは,ほれ,こういう“オカルト本”を胸に抱いて逝きなさいな.あ,もちろん,とあるアニメが好きな方々にもぴったりか.

◇みなし平日のはずの今日はまったく仕事をしなかったので,明日からはしっかり平常営業に復帰しないといけない.

◇本日の総歩数=3645歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/−0.2%.


7 januari 2007(日) ※ 風に吹かれる成人の日,東京に出る

◇午前5時半起床.晴れ上がって冷え込む.昨日は雨の日,今日は風の日.つくばの成人式は昼から〈カピオ〉にて開催.こんな日にご苦労さまなことで.

◇寝ぼけ眼の翻訳作業がなお続く.ミツバチの章(第14章)はケリをつけて手渡したい.午前11時まで.何とか17枚を仕上げてこの章は完了.それからお出かけ準備.

◇午前12時11分の TX 快速で秋葉原へ.北風(というか西風)が強い.気温はさほど低くないようだが,体感的に寒い.大塚でとぼとぼと所用をすませて,午後2時過ぎに新大久保駅着.海游舎の本間さんにチェック完了した第14章を手渡す.その足で,百人町の科博分館へ.午後3時から日本分類学会連合の総会が開催される.〈TAXA〉に関する報告をちょっとだけする.この連合も大きくなったものだ.午後5時過ぎに終了.秋元信一さんと一瞬だけあいさつする.松井正文さんの話では, 雪と風の影響で新幹線はたいへんだったらしい.総会後,午後6時から近くのサンマーク・ホテルにて懇親会が予定されていたが,ぼくはそのまま直帰.大久保駅から秋葉原へ,そしてつくばへ.

◇今日の収穫(1) —— ヨドバシ AKIBA の友隣堂書店にて:須賀敦子『須賀敦子全集・第4巻』(2007年1月20日刊行,河出書房新社[河出文庫す4-5],ISBN:4-309-42054-7→版元ページ
.内容は,「遠い朝の本たち/本に読まれて/書評・映画評ほか」.第1巻と第2巻はすでに出ているが,第3巻を飛ばして第4巻が先に出た.

◇今日の収穫(2) —— 百人町の畸人堂書店にて:D・フォーチュン『神秘のカバラ』(1985年10月30日刊行,国書刊行会[世界幻想文学大系40], ISBN:なし).〈セフィロトの樹〉の解読書として./ ヨーハン・V・アンドレーエ(種村季弘訳)『化学の結婚[普及版]』(2002年12月31日刊行,紀伊国屋書店,ISBN:4-314-00931-4).「付・薔薇十字基本文書」と記されている.どんどん深みに入っていくワタシ.

◇強風のため,JRが方々で止まっているとのアナウンスあり.新宿では埼京線が止まり,武蔵野線も動かず.TX も徐行運転するほど(初めての経験だ).午後7時前に定刻より数分遅れてつくばに到着.びょうびょうと風が吹き抜けていく.北風ではなく,西風だ.夜になってもひゅーひゅーと吹き続ける.

◇車中読書 —— リジー・コリンガム(東郷えりか訳)『インドカレー伝』(2006年12月30日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-22457-1→目次)の第3章まで.100ページあまり.前に読んだ,アマール・ナージ『トウガラシの文化誌』(1997年12月30日刊行,晶文社,ISBN:4-7949-6331-9→目次・書評)を思い出した.しかし,「食材」と「料理」ではおのずと切り口がちがってくるのだろう.インドをめぐる国々の歴史物語.順応させたり,させられたり.

◇届いていた本 —— Randall Collins『The Sociology of Philosophies : A Global Theory of Intellectual Change』(1998年8月刊行,Harvard University Press,ISBN:0-674-81647-1 [hbk] / ISBN:0-674-00187-7 [pbk]).昨年の科学哲学会(札幌)で教えてもらった本.1100ページを越える電話帳.古今東西の哲学者たちの知的系譜とネットワークが随所に描かれている.Belknap の本もこれくらいの厚さになると造本が収斂するようだ(というか物理的制約のために選択肢がかぎられてくるのだろう).紙質や触り心地が,Ernst Mayrのほぼ1000ページの電話帳『The Growth of Biological Thought』とおんなじだ.

◇明日は連休最終日だが,みなし平日ということで仕事が続く.万歩計の電池が切れてしまった.あした交換しないと(電池型番 LR43).

◇本日の総歩数=9679歩[うち「しっかり歩数」=2586歩/24分].全コース×|×.朝 ○|昼−|夜△.前回比=−1.0kg/+0.2%.


6 januari 2007(土) ※ 冷たい雨がざあざあ降る三連休初日

◇午前5時に起床.冷たい小雨が降り始めた.気温2.8度.

◇早朝の研究所にて —— 遅れてしまったメーリングリストの月例アナウンスを流すとともに,いくつかの情報を連射する.午前7時に作業終了.

 ここのところ自分のウェブサイトとブログ(とミクシィ)に書き込むことが多いので,その反動でメーリングリストに流す情報フラックスが減っている.うまいバランスの取り方はなかなか難しい.いずれにせよ,メーリングリストの“トラフィック安定定常値”が低くなることは自然の理だろう.

◇雨がしだいに強くなってきた.気温はいっこうに上がらないまま.天気予報ではこの連休は台風並みに発達する低気圧のせいで荒れ模様になるとのこと.ふらふらと徘徊するわけにはいかないが,明日は百人町で日本分類学会連合の総会がある.その前に,翻訳原稿の年貢を納めないといけない.

◇という事情で,朝から翻訳ゲラとの格闘なお続く.戸外はぬかるみ,文面もぬかるむ.

◇ランチは,柴崎のイタリア食堂〈Faro〉へ.店にたどりつくだけで一苦労.雨足いよいよ強く,気温は低いまま.きっと5度台だろう.

◇午後から夜にかけては翻訳ゲラとのさらなる格闘あるのみ.がしがしと./ InterCommuniation 原稿の締切が迫っている./ あらら,分類学会連合の原稿は次号まわしになってしまった…….

◇抜き書き —— 清水徹『書物について:その形而下学と形而上学』(2001年7月25日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-023359-9).最終章「バベルのあと」(pp. 291〜)から数カ所:

  • 書物とは読めさえすればどんな品質でもどんな形態でもいいのかという問題が提起されてくる.(p. 329)
  • ある作品を上質の紙のページのうえで,みごとに割付られた鮮明な活字印刷で読むことと,粗悪な紙質のうえのぼけた印刷で読むことと,文庫本の小さな活字で読むこととは,断じて同じではない.(p. 348)
  • 書物における〈紙〉は,…[中略]…ただたんに活字を載せる支えとしてではなく,活字と一体化しながらそれ自体から「主題」を放射してくる「基底材」としてある.(p. 350)
  • 〈電子的書物〉は〈基底材〉をもたない.(p. 352)
  • 〈基底材〉をもたないことへの「真空恐怖」.(p. 353)

◇夜遅くなってからやっと雨は止んだ.予報では強い冬型気圧配置になるそうだが,とくに北風が強くなるわけでもなし.明日は東京に出る.

◇本日の総歩数=未計測[うち「しっかり歩数」=未計測/未計測].全コース×|×.朝 ○|昼○|夜△.前回比=+1.2kg/+0.3%.


5 januari 2007(金) ※ 早くも着火してしまう三連休の前日

◇午前4時半起床.ほぼ満月が西の空高くくっきりと映える.気温はマイナス3.8度.

◇未明の研究所にて,年越ししてしまった分類学会連合の投稿記事(進化学会紹介)をせっせと書く.午前6時半に書き上げ,連合にメール送信.滑り込みセーフか,はたまたアウトか.

◇午前のこまごま —— 成績検討会の資料づくりの依頼.もうそんな季節になってしまったか./ 諸学会の新年度学会費を払わないと./ 進化学会の事務メールのやりとり.

◇昼休みの新年昼食会 —— 生態系領域のセミナー室にて,しらふのランチパーティをば.寿司喰いねえ,麦茶飲みねえ.

◇午後のこまごま —— 進化学会の会長交代に伴う事務連絡をば.進化学会は年初めに会長が代わるので,それにともなうこまごましたことがある.事務幹事長はこのままなので,あとは新役員の体制づくりをしないといけない.新会長に挨拶のメールを送る./ 年末から年始にかけて降り積もっていたメーリングリスト関連の“火山灰”業務を掃除する.年度変わりの時期ではなく,年末年始なので異動の件数そのものは多くない.あ,月例アナウンスをまだ流してへんやん.

 新年早くも雑用が「着火」しているぞ.ぼうぼうと燃え出さないようにしないと.

◇夜は,翻訳原稿と格闘する.

◇オンライン生物地理学誌『Biogeografía』の創刊 —— 『Biogeografía : Bulletin of the Systematic and Evolutionary Biogeographical Association』(→雑誌サイト).今月創刊されたばかりの生物地理学の新しいオンライン雑誌で,上記サイトからその全論文が pdf で公開されている.本誌は,SEBA(=the Systematic and Evolutionary Biogeographical Association)の Bulletin という位置づけだ.使用言語は,英語・スペイン語・フランス語とのこと.

 創刊号をざっと見る.David Williams の論文は Otto Kleinschmitt の「形態環種(Formenkreis)」理論を初期の“分岐学”の理論とみなす観点からの論議.John Grehan の「コロへの旅路」は,汎生物地理学者 Leon Croizat の終焉の地であるベネズエラの Coro における伝記的記事だ.この創刊号を見るかぎり,ラテンアメリカ圏の生物地理学者の層を取り込んだ,ここ数年の歴史生物地理学メディアのひとつかと思われる.編集者(Malta Ebach)および創刊号の執筆者陣を見ればどのような傾向のジャーナルかはすぐにわかるだろう.

◇備忘メモ —— 〈leeswijzer〉はこの9日で開設以来満2年になる.「25万台」に達するかどうか./ 研究者コミュニティの「世代論」に意味があるかどうかは別として,コミュニティ・ネットワークの「証拠」だけは積極的に記録に残しておかないと.私的な要素も少なくないだけに,後に残りにくいものも多いだろう(墓場まで持っていかれた日には目も当てられない).

◇本日の総歩数=5258歩[うち「しっかり歩数」=1507歩/14分].全コース×|×.朝 ○|昼△|夜△.前回比=−1.2kg/−0.5%.


4 januari 2007(木) ※ 煽ったり煽られたりの年明け仕事始め

◇ふと目覚めれば,なんと午前7時! おいっ,起きんかぁっ.ということで,仕事始めにいつにない寝坊をしてしまった.まったく.午前8時過ぎにのろのろと出勤する.気温3.6度.早朝,とても脱力することがあった.類は朋を呼ぶったってねえ.

◇仕事始めのこまごま —— 東大の専攻紹介パンフレットのゲラを連携教員に配った.一両日中にコメントを集計して印刷所に連絡する./ 昇級辞令の手渡し.今年からは元日付の辞令交付になるそうだ.

◇澁澤龍彦蔵書に関する備忘メモ(書目番号は『書物の宇宙誌:澁澤龍彦蔵書目録』に従う) —— まずは【01】棚から始める:グールド『パンダの親指(原書)』[01-01-82]|シュレーゲル『ロマン派文学論』[01-02-83]富山房百科文庫※“romantisch”のルーツ? 近くに同百科文庫の本多し|スウィフト『書物合戦』[01-03-35]|ゴールディング『蠅の王』[01-03-49]|※文庫クセジュがたくさん[02-03棚]|ボードリヤール『物の体系』[02-04-50]|ヤコブセン全集[02-05-09]|ドルバック『自然の体系』[03-02-24]※数年前に復刊されたものか?|『Les Rose-croix』※「薔薇十字軍」関連の仏語文献甚だしく多し[03-04棚]|Frere『Raymond Lulle』[03-04-12]※ライムンドゥス・ルルス伝|Duvic『Monstres et monstrusites』[03-04-23]※怪物・異形論の本もいっぱいある.|ブリニウス『博物誌』全巻[03-04-42]|Robert Fludd と R. Lulle の本数冊[03-05-12〜14]|このあたりに,シュールレアリズム,錬金術,神秘学,宗教学とカバラの本が散在する.|P. Reage『Histoire d'O』[04-06-72 / 05-02-85]※おお!|「歴史的殺人者」たちが集まるコワイ棚[07-03]※Gille de Reis とか Cesar Borgia とか.|続いては「錬金術師」たちの棚[07-04]※ノストラダムスにパラケルスス.|金風山人『四畳半襖の下張り』[07-05-08]※ううむ.|Ambroise Pare『Des monstres』[08-04-20 / 08-05-28]※怪物論の古典.あるべき本が当然あるのがすごいなあ.|※この近辺には悪魔学,秘教学,紋章学,グノーシス,異形論の本多し.|Athanasius Kircher 伝[08-05-40]|Roger Cook『The Tree of Life』[08-05-41]|ブラヴァツキー『The Theosophical Glossary』|エロティシズム関連の本は 09-02〜03 に多い.他に,ミルチャ・エリアーデや悪魔(diable)の本も散在する.|大量の「サド侯爵」関連の本[09-04〜05]|『蘭和大辞典』(第一書房)[09-06-43]※ぼくももっている.

続いて,【11】以降の棚に移動 —— 城市郎『発禁本』桃原選書[11-01-01]※他の「桃原選書」のセレクションが魅惑的.|『医心方』[11-01-08]|F. A. イェイツ『薔薇十字の覚醒』[11-02-69]|マルシリオ・フィチーノ『恋の形而上学』[11-03-55]|ピコ・デッラ・ミランドラ『人間の尊厳について』[11-03-56]|※11-06棚はレヴィ-ストロースとマルセル・モース本.|J. ゴドウィン『キルヒャーの世界図鑑』(工作舎)[11-08-41]|C. H. シュトラッツ『女体の人種美』[11-09-28]※シュトラッツ本多し.|『プリニウスの博物学』[12-01棚]|W. H. ハドソン『ラプラタの博物学者』[12-02-36]|※パオロ・ロッシにCh. シンガー本も.|※12-04棚にはロジェ・カイヨワとミルチャ・エリアーデ文献がごっそりある.|カルロ・ギンズブルグ『チーズとうじ虫』[12-04-47]|ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』[12-05-10]と『中世の秋』[12-05-11]|Ch. シンガー『魔法から科学へ』[12-05-20]|ドレイパー『宗教と科学の闘争史』[12-05-22]|パノフスキー『イコノロジー研究』[12-06-08]|バートランド・ラッセルの科学史本[12-08棚]|E. グラント『中世の自然学』[12-08-42]|四谷シモン『人形愛』[15-02-05]|ソーントン『フローラの神殿』[15-02-17]|荒俣宏『世界大博物図鑑4:鳥類』[15-02-17]|『Aux sources de la biologie』[15-04-01]|プリニウスの博物誌[15-04-20]|アタナシウス・キルヒャー『China illustrata』[15-04-21]

—— 以上が,国書刊行会編集部(編)『書物の宇宙誌:澁澤龍彦蔵書目録  Cosmographia Libraria』(2006年10月20日刊行,国書刊行会,ISBN:4-336-04751-0→目次)の第I部(120ページほど)から拾った書目だ.

◇昼過ぎに,『月刊みすず』の書評原稿をみすず書房編集部にメール送信する(→選ばれし5冊).年越しトドを1頭仕留める.気温は6.1度.晴れ上がった冬空.しばし,歩き読み:清水徹『書物について:その形而下学と形而上学』(2001年7月25日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-023359-9)を読了.第3章「マラルメと〈書物〉」および第4章「バベルのあと」.全部で170ページほど.マラルメの“形而上”と“形而下”への同時的こだわりが印象的.最終章は現代にもつながる書物論になっている.

◇どうやら Moleskine には Rotring Art Pen の方がしっくりくるようだ.※ウラににじんだりしないのがうれしい.

◇午後のこまごま —— 昨年末に松本に郵送したはずの「鍵」が料金不足で戻ってきた.なんたることか.再度の郵送をする.ごめんなさい.>TJ さま.

◇夕方,東の空にまん丸い月が見えた.

◇本日の総歩数=9587歩[うち「しっかり歩数」=7982歩/70分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=+1.5kg/+0.8%.


3 januari 2007(水) ※ 昼下がりのベランダで澁澤龍彦に耽る

◇午前5時半の目覚め,半時間後に起床.曇り.冷え込みはあまりない.

◇「産業技術系統樹」の本を発見! —— Curt Brandis『Stammbäume der Technik : Einführung in die Systematik und Geschichte technischer Innovationen』(2005年8月14日刊行,MontAurum Verlag,ISBN:3-937729-09-7→版元ページ).正月に徘徊するとこういう本にも出会えるのか.産業技術(機械・電気・土木・電子 etc.)の「テクノロジー系統樹」の本.実物はまだ入手していないが,著者のサイトの〈テクノロジー樹〉ページにはいろいろな技術分野の系統樹の画像(↑上図のような)が公開されている.このサイトの目次をざっと眺めると次のとおり:

  1. 基盤技術:力学・熱学・電磁気学・光学
  2. エネルギー
  3. 産業技術:繊維・土木・建築・冶金・加工・化学
  4. 交通運輸:陸上輸送・船舶輸送・航空輸送・宇宙技術
  5. 情報産業:印刷・写真・通信・情報処理

これらの産業技術の「系統樹」が必ずしも分岐的なツリーではなく,むしろ系統ネットワーク的であるのは,こういう「文化系統樹」ではきっとありがちなことなのだろう.水平的な伝播がまれではないということ.しかし,それにもかかわらず,共有派生形質が伝承されていることの重要性は系統樹に示されればよくわかる.どこかに「キーボードの系統樹」はないだろうか(キー配列の innovation の系譜に関心があるので).

本書はさっそく AbeBooks.com に発注したのだが(Amazon.de にも在庫があったのだが,この本にかぎっては日本発送はダメみたい),はたしてどういうことが本文に書かれているのか気になる.

—— 「系統樹」を意味する各国語キーワード — phylogenetic tree, arbre généalogique, albero generalogico, Stammbaum, stamboom, etc. — で Google 検索(あるいは Google image 検索)をしてみると,ときどきおもしろいページにたどりつくことがある(その多くは“家系図業界サイト”なので必ずしも思うようなヒット率は稼げないが).忙しいときにはそういう「徘徊」をしているヒマはまるでないのだが,正月のようなエアポケット期間ならではの思わぬ収穫だった.

◇関連して?もうひとつ —— 〈涼宮ハルヒ〉ファンの派閥系統樹を発見.「ハルヒ好きだよ派」クレード内での“箱庭的”な種分化か.テキストでの系統樹表示ではなく,「絵」にしてほしかったな.

◇さらに関連して?もういっちょう —— 〈週刊少年ジャンプ・アシスタント系統図〉はすでに有名だが,同じノリで,〈週刊少年マガジン・アシスタント系統図〉や〈週刊少年サンデー・アシスタント系統図〉が公開されているとは知らなかった.「樹」ではなく「図」と明記してあるところがスルドイ.

◇朝のうちに晴れ間が広がってきた.先月の予報では正月三ヶ日はぐずついた空模様とのことだったのだが,幸い雨が降ることもなく,いい日和の休日を過ごすことができた.南海上の前線は離れていったのだろう.昼前には室内に日射しがさんさんと差し込むようになった.しかし,北風がやや強めで,外出すると体感的に寒く感じる.炊飯器を新調する.

◇昼下がりの澁澤龍彦 —— 国書刊行会編集部(編)『書物の宇宙誌:澁澤龍彦蔵書目録  Cosmographia Libraria』(2006年10月20日刊行,国書刊行会,ISBN:4-336-04751-0→目次).第I部120ページあまりを日だまりのベランダで読み進む.この本は一見ただの「蔵書目録」に過ぎないのだが(確かにいくら目を凝らしても形式的には目録そのものだ),その背後にある“もの”を読込む愉しみがそこにはある.目に留まった書名を Moleskine の無罫メモ帳に書きとめていく.あっという間に数ページが埋まってしまう.

◇明日は仕事始め.more or less 緊急の原稿書きがいくつかある.

◇本日の総歩数=2974歩[うち「しっかり歩数」=2101歩/20分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/−0.5%.


2 januari 2007(火) ※ 初売り二日は徹底的にアルコール漬け

◇午前6時起床.曇り.初売りの混雑は午前8時前からもう始まっていた.福袋を待つ人だかりはつくばセンターの陸橋に行列をつくり,駐車場は端からどんどん埋まっていく.

◇正月にもかかわらずこまごまと —— 昨年末の信州大学集中講義のレポート課題を出題する.関連して,受講生から受けた質問に答える./ まりまりからの出撃依頼にラジャー.来年度,葉山にスクランブル発進する予定./ 計量生物学会は来年度は御役御免になる予定だったが,またまた巻き込まれてさらに2年間の継続に./ とある訳文のチェックを差し込み依頼される.

◇今日は一日中すっきりしない天気だったが,雨にはならなかった.日射しがないので薄ら寒い.

◇神社の系統樹 —— 新書で2冊も!:戸部民夫『神社のルーツ:血統から探る「神様ネットワーク」』(2006年12月26日刊行,ソフトバンク・クリエイティヴ[ソフトバンク新書026], ISBN:4-7973-3362-6→目次).各「神社クレード」ごとに,特徴・発生・発展・祭神に関するクレードごとの共有[派生?]形質が記され,そのクレードに属する神社が列挙される.この形式で全編が体系化されているので見通しがよい.各章は高次クレードに対応しているのか.あとは“polarity”の推定ですな.

 もう1冊は:宮元健次『神社の系譜:なぜそこにあるのか』(2006年4月20日刊行,光文社[光文社新書251], ISBN:4-334-03351-2→目次).この本は「神社の系譜」について書かれた本ではない気がする.むしろ,キーワードである「自然暦」,すなわち:

このような夏至や冬至,春分・秋分に特定の場所から日の出没が起きるしくみを「自然暦」といい,世界中で多くの事例が報告されている.(p. 31)

という地理的なパターンに,現存する「神社の配置」を当てはめて論じるという内容だ.かなりムリをして言えば,汎生物地理学的なパターン配置の発見とか分断生物地理学でいう代置パターンの発見みたいなものを目指しているのだろう.サブタイトルにある「なぜそこにあるのか」という設問に対しては,「自然暦がそう言っているから」という答えを著者は用意している.さて,その反証可能性は?

◇朝から吟醸酒が飲めるとは善哉善哉.昼は軽くフレンチ・トースト.夜はワインでフォアグラのテリーヌ.

◇本日の総歩数=2387歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/−1.4%.


1 januari 2007(月) ※ 静かな元旦の夜はモンドールを焼こう

◇午前6時起床.晴れてとても冷え込んだが,東の空に初日の出を拝むことができたのは幸いだった.予報では,これからの三ヶ日は曇りがちになるらしい.

 あけましておめでとうございます.>みなさん.

◇正月のオンライン眼福本 —— 久しぶりに見た〈Stüber's Online Library〉の新着公開図書から:Carl Gustav Calwer 『Käferbuch : Naturgeschichte der Käfer Europas』(1876年刊行,第4版).一面の甲虫たち./ Jan Kops 『Flora Batava』(第7巻:1836年刊行).バタヴィア植物誌の最終巻.19世紀の彩色博物誌図鑑は度を越して美しすぎるな.しかし,オンライン画像で舐めまわしているうちに「実物」に触れたくなってしまうイケナイわたし.(不善だ)

◇午前中はうちに引き蘢ってうだうだする.不健康な正月三ヶ日のはじまり.

◇初買い本 —— 元旦からオンライン書店を覗き回ってはいけないと思いつつも:Sigrid Weigel『Genea-Logik : Generation, Tradition und Evolution zwischen Kultur- und Naturwissenschaften』(2006年3月刊行,Wilhelm Fink Verlag, ISBN:3770541731).版元の内容紹介を見るかぎり,ぼくの現代新書に近い“越境的”な内容が含まれていそうな気がする.出版時期も近いし.Amazon.de に即発注した.※元旦からこれでは今年も思いやられる…….(またまた不善をなしてしまった)

◇年のはじめのヘッケル読み —— Olaf Breidbach『Ernst Haeckel : Bildwelten der Natur』(2006年8月刊行,Prestel,ISBN:3-7913-3663-0→目次).『タイムズ世界地図』みたいな大判の本だが,正月三ヶ日用の本として持ち帰ってきた.昨年は序章だけ読んだのだが,続く部分には未発表の手稿とかスケッチが載っていて,ページをめくるたびにとても惹かれるものがある.

 とりわけ,当時のドイツで「自然画(Naturbilder)」が「自然装飾(Naturdekor)」と同一視されていたことを考えるとき,「自然画家」としてのヘッケルの影響力は多方面にわたって甚大だったと著者は指摘する.

◇そのうち,おせち料理やら,先月いただいた松本・岩波酒造の大吟醸やら,ワインやらが次々に並び始める.毎年のことながら,それなりに正月らしい風景でして…….しかし,この時期の暴飲暴食は災いのもと.かと言って,せっかくの料理を食べないのはもったいないし.

◇今日は,風も吹かず,とても穏やかでしかも静かだ.元旦の初詣客は,筑波山とか浅草寺に出払っているのだろう.しかし,初売りがある明日になれば,つくばセンターまわりは朝からきっと喧噪状態になるにちがいない.

◇ヘッケル続き —— しかし,当時の社会の中で嗜好されたのはヘッケルの自然画だけではなかった.彼に先立つローレンツ・オーケンや彼と同時代のマティアス・シュライデン(細胞説の提唱者)が公刊した博物図譜もまた広く受け入れられたという.しかし,ヘッケルの衝撃ははるかに大きく,それを彼の一連の著作の「自然画」をたどることで解明しようというのがこの本の目的だ.これはこれでもう十分に満腹です.

◇元旦の夜はモンドールを焼こう —— クリスマスに中身を食べたモンドールだったが,残りの部分は年を越すことになった.そろそろ熟成がピークに達したようなので焼くことにした.まず木枠を湿らせてアルミホイルでくるむ(焼いたときに焦げないように).辛口の白ワインを少量注いで,刻みニンニクを少々とパン粉を散らす.220度に予熱したオーブンで20分ほど焼けば「焼きモンドール(=“フォンドール”)」のできあがり.実に簡単にチーズフォンデュのようになる.かりっと焼いたバゲットに浸して食べたが,とても美味.茹でポテトでもよかったか.あっと言う間にすべて食いつくし,樹皮までかじりかねない勢いだった.

 衛星中継のウィーンフィルのニューイヤーコンサートを聴きつつ,旬の季節に旬のチーズを食べるシアワセ.

—— それにしても,このモンドールの“変容”ぶりは,まさに「九相図」を髣髴とさせるものがあるが,そんなことを口にするのは正月早々縁起がワルイですかね.

◇本日の総歩数=4319歩[うち「しっかり歩数」=2594歩/23分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+1.2kg/+1.3%.


--- het eind van dagboek ---