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日録2008年2月 


29 februari 2008(金) ※ 閏日は単なる延長労働日で魔王降臨

◆午前4時20分起床.晴れ.気温マイナス4.1度.夜明けだけは寒い今日この頃.

◆朝からつまずく —— 郵便局から朝イチで振り込もうと思ったら,「10万円以上の高額送金については本人確認が必要」と拒否された.具体的には,本人自身が振り込む場合,「運転免許証」または「本人名義のゆうちょ銀行通帳」が必要であり,代理の場合は「健康保険証」の“原本”(コピー不可)とのこと.いずれの条件も満たされなかったので,送金不能.ははー,そーですか.郵便局が民営化されて以来,“ユーザー・インターフェイス”の劣悪化かつ非効率化がはなはだしいように感じる.たいていの場合,1回では用件にケリがつかないし,何回も足を運べば時間がとほうもなくかかってしまう.精神衛生上もよろしくないので,今後はできるだけ郵便局を利用しないような方策を考えよう.

—— あー,もちろんね.自分の事務処理能力はもともとないので,その分だけ割り引くべきではあるのだが.

◆白羽の矢が立つ —— 本人の「事務処理力」とは何の関係もなく“平等に”雑用は降ってくるものだが,たまに“不平等”な割り振られ方をすることがある.農環研分会からの依頼あり.今後の「裁量労働制」移行に向けてのワーキンググループを農環研所内でつくるのだが,委員になってほしいとのこと.聞けば,裁量労働制に移行した場合,農環研所員のいまの労働形態を見渡したとき,ワタクシがもっとも影響を受けるだろうということで分会内で意見が一致して,白羽の矢が立ったらしい.

平均的に労働日の半分程度しか農環研に実在しないので,かえって「周囲」とのちがいを意識しなくなっていたのだが,確かに「ミナカほど本務地に実在しない研究員はいない」というのは当たっているにちがいない.兼業は例年ヤマほどしているし,客員教員やら連携教員などなどの所用で「外」に出奔する時間数は,他の“まっとう”な所員とは比較にならないほど多いという.ま,個人業績評価の項目でいえば「外部貢献」ということで許してねー.※すでにサチっているという話もあるが…….

—— そういう事情を考えれば,裁量労働制WGの委員になるのは宿命かもね.ということで,来年度から仕事がもうひとつ増えることになった…….

◆そんなこんなであっという間に昼休みになる.しかし,閏日とはいえ,月末の労働日はそれくらいでは許してもらえない.さらなる雑用の大波小波が押し寄せてきた.

◆“ライン”様の御出座〜 —— 農林交流センターからオーガナイズを依頼されている,次年度の共催ワークショップについて,農環研の“上”の方にお伺いを立てたところ,「農環研との共催をするためには,正規の“ライン”を通して,領域帳→企画戦略室→所議→役員会とヒエラルキーを登る必要がある」とのこと.とりあえず,交流センターに提出する希望調書をでっちあげてメールで送ってしまう.折り返し,「交流センターの協議はこれで大丈夫です」との返事あり.さすがオトナだねえ.

さて,同様の文書を農環研に出したところ,共催イベントの提案に際しては全体のプランとか講師陣とかコンテンツを詰めて差し出すべしとの返答.コドモだねえ…….次回の所議は3月3日(月),役員会はその翌日だから,3月3日(月)の「午前8時55分」までに趣意書などを提出せよとのお達しだ.こーいうのがダメなんですってば.

◆昼下りのこまごまはさらに続くのだった —— Hennig Society のサイトが大幅にリニューアルされていた.昨年のニューオーリンズでの“乱痴気騒ぎ”のときに,「アノ貧相な学会サイトは何とかしろよっ」と誰かが言っていたけど,その通りになった./ついでに今年の年次大会情報もアップされていた:〈Hennig XXVII - A summit of Cladistics〉は,アルヘンティーナの北端にある San Miguel de Tucuman で開催される.会期は「2008年10月28日(火)〜31日(金)」.例年よりもだいぶ遅い.会場は郊外に隔離された〈Hotel Sol San Javier〉.ぼくは知らなかったが,アルゼンチンの「トゥクマン」といえば,〈母をたずねて三千里〉の主人公マルコが長旅の末に母と再開する地として知られているらしい.さらに,フォルクローレのユパンキに〈トゥクマンの月〉という有名な曲があるそうだ.※これだけの情報ではいかなる場所かぜんぜんわからん…….

◆夕方のこまごまのとどめ —— 〈Hennig XXVII〉の日程が決まったので,その他の秋の行事予定の日程を調整する./久しぶりに〈R-statistiker〉に投稿.補講の質問に対する回答が残っていた./Gromov変換のプログラミングと実装についての打合せ.生態学会大会対策./共催セミナーの起案書についてはすべて週末の仕事にする.

◆午後4時過ぎにもう帰る(長居は無用).筑波事務所の酒屋「駿河屋」に〈郷乃誉〉の「火入れ純米吟醸」の四合瓶があったので迷わず買う.午後5時に車に乗って,常磐道を北上.友部のいつもの隠れ家に午後6時過ぎにたどりつく.

今日はホウボウとカレイのお造り,そしていつものタイの塩竃焼きがどんと出された.魚のみで満腹になる.酒は〈魔王〉のお湯割で.最後に昆布でしめた柳カレイのお茶漬けをば.どうもご馳走さまでした.午後10時過ぎにつくば着.

—— 大瓶でいただいた生乳が実に「6リットル」もあったので,さっそく自己流低温殺菌処理をした.量が多かったので何回も“火入れ”することになり,日が変わる頃やっと全作業を終了した.冷蔵庫内は新鮮な牛乳だらけだ.

◆本日の総歩数=7707歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=0.0kg/−0.4%.


28 februari 2008(木) ※ 〈確率分布大曼荼羅〉を日夜拝みつつ

◆いつも通り午前4時半起床.晴れ.北西風が吹く.気温マイナス0.1度.もうすぐ3月だというのに,夜明け前はまだまだ冷え込み強し.

日本菌学会の招待講演要旨は今日が締切だ.一念発起して期限内の仕上げを目指す.今年の第52回日本菌学会年次大会は,5月30日(金)〜6月1日(日)の日程で三重大学(津市)にて開催される.5月31日(土)の午後に〈菌類における「種」とは何か〉というメイン・シンポジウムがあり,そこで「誰にとって【種】は実在するのか?:「種問題」の現状と展望」というタイトルの講演をすることになっている.

—— 今日もまた【種】だ.これじゃ,まるで「メシの種」じゃないかっ.

◆午前11時の気温は7.6度.西風16.1メートル!(強風).体感的に寒い.

◆さし込まれのこまごま —— 予算残額の執行をできるだけ早くねとのお達し./次年度の契約職員の更改の締切./学会誌の公費購入に関する申請./会計検査が入るので居室の備品管理を確認せよとのお触れがまわされる.

◆午後2時に菌学会の講演要旨を仕上げて,三重大学にメール送信完了.返す刀で,投宿先をあれこれ捜し回る.

◆わらわらと湧き出る雑用たち —— メーリングリストの雑用をきれいにする./質問2件にお答えする.放置してすみませんでした./Olia さんとのもうひとつの論文は日本線虫学会に投稿されたことを知る./e-Rad の確認はまだ./農環研の個人業績登録もまだまだ…….

—— でも,とりあえ受信箱の放置案件は[ほんの一時的にせよ]すべてクリアされた.よかったよかった.

◆おお,みごとな「確率分布曼荼羅」が —— Lawrence M. Leemis and Jacquelyn McQueston (2008), Univariate Distribution Relationships Source. The American Statistician, Volume 62, Number 1, February 2008 , pp. 45-53(DOI:10.1198/000313008X270448).この“曼荼羅”は,一変量の確率分布(離散型・連続型)の間の“類縁関係”を一幅の絵にしたものだ.Kendall & Stuart の“聖書”にもそういう確率分布相姦図が載っているが,それをもっと大規模にしたものだ.

別添の“大判ポスター”まではさみ込まれているというサービスのよさだ.ASA侮るべからず.名前すら聞いたことのない確率分布がいくつもあってあわててしまった.「Mekeham分布」とか「Erlang分布」って何? 「Muth分布」?? 「Lomax分布」??? 確率分布のプロになる道は遠いなあ…….

—— なお,本論文は上記サイトからpdfとしてフリーでダウンロードできる.修行してみたいという奇特な方はぜひどーぞ.→[追記 29/Feb/08]フリーではなかったみたい…….すまぬ.

◆午後5時,三重の宿泊先が早々と確定した.5月30日(金)は榊原温泉〈湯元榊原舘〉に,翌5月31日(土)は津の駅前にある津〈ザ・グランコート津西〉に宿泊します.いやあ,すんなり決まって,よかったよかった.

—— と油断したのが運の尽き,農林交流センターから連絡があり,この秋に予定している分子系統学ワークショップの講師人選を早く進めて,農環研との共催のための事務手続きを進めてほしいとのこと.ごめん,ムリ.こーいう事務仕事はダメなんですって,ワタシは…….ムリ.

◆本日の総歩数=6253歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/+0.6%.


27 februari 2008(水) ※ こんな日にも追い詰められて……

◆午前4時半起床.雨上がりの曇り空.北の風.気温は4.5度.

◆めでたく?“大台”に乗った日にもかかわらず,朝から追い込まれ原稿を書き続ける —— 午前11時までにとりあえず400字詰にして10枚ほどできた.引用文献が意外に多いのだが,『生物科学』の書式に合わせて調整しないとあとがたいへんだろう.時間が急いているので,ゲラになる前に必要な作業はすませておきたい.

今回の寄稿は,直海俊一郎さんの長大な論考「便宜的な分類単位としての種と進化の単位としての個体群」(生物科学, vol. 59, no. 4, pp. 194-237, 2008年3月近刊)を踏まえたコメントだ.前世紀の末,ぼくは『生物科学』誌に「ヒトが種をつくる:種問題のもう一つの根本的解決」という記事の part 1(vol. 51, no. 3, pp. 129-136, 1999)と part 2(vol. 51, no. 3, pp. 205-214, 1999)を出したのだが,結局,最後の part 3 を完成させないまま放置してしまった.現在進行中の『』の連載ではその決着をつけるつもりでいる.

—— だから,いま書きつつあるコメントも,すでに10回まで進んでいる『本』連載記事の内容をベースにして,さらにその先の“微小ベクトル”まで含めてまとめることになるだろう.

◆今日のランチは,倉掛の集落にひっそりと隠れている〈ビストロ・パスパス〉にて,ちょっとはりこんで ——

まずはオードブルに岩手の生牡蛎をつるりといただいてから,熱々のオニオングラタンスープに進む.そして,メインディッシュは蝦夷鹿の赤ワイン煮込み.その後,誕生日デザートの大皿プレートでしめる.実にうまかったですなあ.

◆午後1時前の気温は7.6度.晴れて北の風が吹いている.

◆これまた実にタイミングよく,ベルリンからバースデー・プレゼントがすばやく着便した.ここ何週間かの間,日独の郵便局相手に送金で手間どってしまったが,こうやってブツが届けばすべての苦労は消えてなくなる —— Rolf Löther『Die Beherrschung der Mannigfaltigkeit: Philosophische Grundlagen der Taxonomie』(1972年刊行,VEB Gustav Fischer Verlag, Jena,ISBNなし → 目次).

本書のコピーは大学院生だった頃にすでに入手していたのだが,できることなら現物を手にしたかった.そう思いつつ長年探してきたのだが,たまたま機会があって手に入ったのは幸運としかいいようがない.届いたのはいわゆる「献呈サイン本(Autographen)」で,内表紙には下記のような著者のサインが入っている:

Hrn. Hermann Ley in dankbarer und freundschaftlicher Verbundenheit vom Verfasser.
8. Mai 1972 / R. Löther
[Hermann Ley様へ,著者より感謝と友情をこめて,1972年5月8日,R. Löther]

少し調べてみたところ,「Hermann Ley」とは著者と同時代の旧東独(DDR)のマルクス主義政治哲学者で(→「Hermann Ley (IDIH)」),本書の出版許可を与えたベルリン大学(Humboldt-Universität zu Berlin)哲学科の審査委員会委員のひとりだったことが奥付からわかる.

かつてのかの国の「計画出版体制」がどのようなものだったかは知る由もないが,発行部数はおそらく極端に少なかったのだろうと推測される.出版されたその時点で入手しないと,あとで後悔することが何度もあったからだ.

—— ドイツ語の「筆記体」を読むのはとても苦労する.上のようなちょっとした自署であっても,活字が判読できない部分がある.いわゆる前時代的な「フラクトゥール書体」は Ernst Haeckel ら19世紀の本を通してある程度は慣れているつもりだが,筆記体はぜんぜん訓練できていない.

◆午後もなお続く幽閉原稿執筆苦界 —— さらに10枚ほど書いて,午後4時半にやっと脱稿.引用文献リストのウムラウトや傍点はゲラで直すしかないでしょう.編集部にメールで送信して解放されました:三中信宏「「種」概念の分類体系と系統関係」生物科学, vol. 59, no. 4 掲載予定, 2008年3月近刊).

—— 折り返し上田編集長からメールがあり,「刷り上がり6ページの予定」との返信あり.よろしくよろしく.

◆次は,日本菌学会の講演要旨だ.月末が締切だ.また【種】だっ.

◆午後5時から1時間弱,『Modern Morphometrics in Physical Anthropology』の輪読セミナーの第11回.Chapter 3 : Philipp Gunz, Philipp Mitteroecker, and Fred L. Bookstein「Semilandmarks in Three Dimensions」(pp. 89-96).この章の最後の部分は,三次元画像からの標識点のサンプリングに関する実例を示す.頭骨の三次元画像ファイルがあるとき,まずはじめに等密度かつ高密度に点をサンプリングする.その後,標識点ならびに準標識点を設定し,準標識点については本章が説明した方法で最適化する.実例では,このやり方によって,性的二型と成長による形状差を判別する手順が述べられた.

◆疲弊しつつ研究室を撤収する午後6時半.北風が身にしみる.夜もまた疲弊する.

◆本日の総歩数=5728歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.6kg/0.0%.


26 februari 2008(火) ※ 今日もまた動的平衡に原稿書き

丑三つ時にいったん目覚めたが,もちろん再眠.いつも通り午前4時半に起床.半月が雲に隠れている.今日は下り坂の空模様らしい.気温はプラス0.8度.明け方の研究室にて【種】関連の資料をちょっとだけ整理する.まだケリがついていないので,しまい込むわけにはいかない.

—— 今日は『生物科学』の【種】コメント日だから.連日こんなことばっかりしているから憑き物が多いにちがいない.困ったことだ.

◆新刊メモ —— 大河原恭祐『いつか僕もアリの巣に』(2008年2月12日刊行,ポプラ社,232 pp.,税込価格1,470円,ISBN:978-4-591-10181-0 → 版元ページ).全編アリです.表紙から見返しから本文まで,どこもかしこもアリだらけです.生態から進化まで,ハミルトンから蟻フェチまで,とにかく何でもアリです.アリとあらゆるアリが出てきます.アリ研究者の実体もバクロされています.いい本を出してくれてアリがとうね.

◆備忘メモ —— 広島国際大学の石原さんからのご教示:William Robins (2007), Editing and evolution. Literature Compass 4(1): 89-120(DOI:10.1111/j.1741-4113.2006.00391.x).文献系図学における系統学的方法の総説論文.最近のステマ推定の文献学的応用事例が参考になるかもしれない.この論文はフリーでダウンロードできる(→ htmlpdf).ざっと見た感じでは,割と古典的な cladistics(“neo-Lachmannian method”)が紹介されているようだ.もっと“とんがった” Bayesian stemmatics がそろそろ擡頭してきてもいい頃だが.

—— そういえば,1970年代の王立統計学会の会誌にマニュスクリプトの推移を記述する確率モデルの論文が載ったことがあったが,あの手の研究はその後どうなっていったのだろうか.

◆午前11時.曇り.風なく気温6.5度.確かに雲は多いのだが,みるみる下り坂ということではなさそうだ.

◆基本資料として —— 山本光雄(訳編)『初期ギリシア哲学者断片集』(1958年5月15日刊行[2005年4月15日第44刷],岩波書店,viii+153 pp., 本体価格2,800円,ISBN:4-00-000917-6 → 版元ページ).クラシックな函入りのハードカバー.半世紀を乗り切った超ロングセラー本だ.ページ数は少ないが,日本語だとこの本にしか載っていない情報が少なくない.ヘラクレイトスの“万物流転”の哲学をちらちらと眺めたりする.紀元前5世紀ですかあ.

さすがに2,500年も前ともなると,本人が遺した文章は文字どおりの“断片”のみだったり,他者からの“伝聞”だったりする.しかし,そういう“破片”を並べてみると,元の全体像が何となく描けるような気がする.

◆再び原稿地獄にリターンする —— 書くべきメッセージは最初から決まっているのだが,いつものことながら“離陸”に手間取る.書き出しの1パラグラフの苦労,というやつだ.うー.

◆午後のあいまのこまごま —— Cladisticsの最新号(Vol. 24, no. 1, February 2008)が届いた.一昨年のオアハカ大会の講演要旨が載っている./午後2時からミーティングをしばし./明日のためにCVを更新してみたりする./農環研の個人業績報告をまだ何もしていないぞ.会計の残務処理も急っつかれてるし…….

◆そうこうするうちに,夕方になってしまった.だらだらと晴れたり曇ったりの午後だったが,低気圧の進み方が遅いのだろう.午後5時過ぎに成果なく帰宅(orz).夜,音羽から原稿OKとのメールがあったので,気をよくして,『生物科学』の原稿にあらためてとりかかる.

—— どこまで続く泥濘ぞ.いつまで続く暗闇ぞ.

◆夜9時過ぎになって雨が降り出した.さ,原稿原稿.はいはい.

◆本日の総歩数=5779歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.7kg/−0.4%.


25 februari 2008(月) ※ 毎度毎度の追い詰められ原稿日

◆午前4時半起床.日中は強風に舞い上がる土埃で空気が黄色かったが,未明のこの時間帯は半欠け月に兎がよく見えるほど澄んでいる.気温マイナス4.4度.

◆すったもんだでやっと届いた本 —— 何ヶ月も前にアマゾンに頼んだものの,何回も延滞通知があったあげく,年が明けてやっと届いた:Richard Owen[Edited by Ron Amundson]『On the Nature of Limbs: A Discourse』(2007年刊行,The University of Chicago Press,cii+119 pp. + 2 plates, ISBN:978-0-226-64194-2 [hbk] / ISBN:978-0-226-64193-5 [pbk] → 版元ページ目次).原書は1849年に刊行された.脊椎動物の「原型(archetype)」の超有名な図版が載った本.この時代に1世紀前の反ダーウィニストの本を復刻する意味は十分に考える必要があるだろう.

オーウェンの書いた部分そのものは120ページほどしかないが,編者を含めた解説章が100ページもある.むしろこの部分を読む方がおもしろいのかもしれない.オーウェン以外の執筆者は,Brian K. Hall(「Preface」pp. vii-xiv);Ron Amundson(「Richard Owen and animal forms」pp. xv-li);Kevin Padian(「Richard Owen's quadrophenia: The pull of opposing forces in Victorian cosmogony」pp. liii-xci);Mary P. Winsor and Jennifer Coggon(「The mystery of Richard Owen's winged bull-slayer」pp. xciii-cii).

◆追い詰められての原稿書き.ひぃひぃ.午前11時の気温は5.9度.晴れ.冷たく暖かい.そのまま午後に突入し,さらに書きます書きます.ひぃひぃ.

◆午後のこまごま —— 事務所の郵便局から電話あり.先日のPostbankの余剰手数料が届いたので持参するとのこと.農環研庶務にて受領手続きをする.たった5ユーロ(=875円)のためにたいへんお手数をおかけしました./所の運営費交付金の残額処理は「3月5日」が締切とのこと.またあたふたしないといけないか./会計検査が入るとのコワイ通知あり.備品の所在を確認しないといけない./進化学会評議員メーリングリストの試験運用開始.

◆『』連載原稿にケリ —— 追われつつも午後6時前に脱稿する.いつも通り原稿用紙20枚分=約16KBのテキストファイルを音羽にメール送信してやっと解放された.来月までのつかの間の自由時間ができた.

今回でもう10回目になるが,連載を始めてから気づいたことがある.書き下ろしの場合はとにかく“離陸”して先に進めばいいのだが,連載原稿の場合は“離陸”して,所定の分量でちゃんと“着陸”しないといけない.行数がわりにかっちりと決まっているので,過不足分はせいぜい「プラスマイナス一桁行」にしておかないと,ゲラでの調整にてこずることになるから.

—— ああ,外はもう真っ暗だ.帰ろう帰ろう.

◆夜のこまごま —— 北白川からメールあり.今年の4月から2年間にわたり,京都大学大学院理学研究科の連携併任教授になることが正式に決まった.年に何度か講義をすることがデューティとなる.できれば“隠れ部屋”もつくってほしいな(“座敷牢”でもいいっす)./Nematology誌に投稿した論文が通ったとイランからメールが届いた.レフリー対応が必要ですか?

◆さて,次なる締切原稿は『生物科学』のコメントだー.勢いで書き抜いてしまいたいなあ.できるかなあ…….

◆本日の総歩数=6419歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.5kg/0.0%.


24 februari 2008(日) ※ 北風に吹き寄せられて原稿三昧

◆ぐずぐずと午前7時過ぎに起床.昨日の暴飲暴食が祟ったかも.よく晴れて,西風が強い.

◆冷たい風に吹かれて酔いざましの歩き読み —— 松田忠徳『江戸の温泉学』(2007年5月25日刊行,新潮社[新潮選書],255 pp.,税込価格1,260円,ISBN:978-4-10-603579-1 → 版元ページ)の残りの章を読了した.第7章「温泉の原点、湯治」では湯治の民間作法が成立するまでを振り返る.続く,第8章「温泉化学の勃興と敗北」では,宇田川榕菴を中心に,サイエンスとしての温泉学が形をなす過程をたどる.近代化学を日本に持ちこんだ宇田川の再評価.最後の第9章「近代化する温泉」と第10章「失われゆく温泉学」は明治以降の温泉をめぐる情勢の俯瞰.温泉と鉱泉との仕切り方の変遷が興味深い.

◆強い風は午前中にいったんおさまったが,午後になってまた遠景が風で舞い上がった土ぼこりで黄色くなってきた.この風塵で,鉄道の運休や遅延が今日もあったらしい.

◆原稿三枚じゃなくって三昧 —— 書いてます書いてます.あ,『生物科学』編集長さまからの督促が〜.原稿原稿また原稿.

◆午後のこまごま —— この〈dagboek〉のアクセス数が本日午後「10万」の大台に乗りました.昨年4月にカウンタを置いてから10ヶ月目ですね.ありがとうございます./東大農学部のエコロジカル・セイフティー特論Iのシラバスが全員分そろったので,教務にメールで送信完了.速攻でした./カール・R・ポパー『開かれた社会とその敵』の第1部「プラトンの呪文」(1980年3月20日刊行,内田詔夫・小河原誠訳,未來社,ISBNなし);第2部「予言の大潮:ヘーゲル,マルクスとその余波」(1980年6月1日刊行,小河原誠・内田詔夫訳,未來社,ISBNなし)を久しぶりに通してブラウズする.大学院の修士に入ってすぐの頃に未來社の訳本がタイミングよく出たので,すぐに買った2巻本だった.随所に書き込みがしてあるのも当時のままだ.

◆夜はひたすら原稿書き続けです.ハイ.明日までにどこまで書けるか,賭けるか?

◆本日の総歩数=9372歩[うち「しっかり歩数」=6791歩/57分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.1kg/+0.2%.


23 februari 2008(土) ※ 春一番が吹き荒れて呑んだくれる

◆前夜の真夜中クッキングが祟って,午前7時過ぎまで寝てしまう.外はすっかり明るくなっていて,遠景は春霞.

◆朝の歩き読み —— 松田忠徳『江戸の温泉学』(2007年5月25日刊行,新潮社[新潮選書],255 pp.,税込価格1,260円,ISBN:978-4-10-603579-1 → 版元ページ)の第5章「その後の江戸の温泉事情」と第6章「江戸の温泉学の結実」.第5章では,江戸時代に城崎温泉と有馬温泉の間で大バトルが繰り広げられたという.温泉の効用をめぐる論争は,続く第6章で詳しく論じられる.湯治文化の確立についても触れられていて興味深い.

◆午後の呑んだくれたち —— 昼過ぎに大東ご夫妻をお迎えしてのランチ宴会.昼ご飯にしては,ワインが2本もすっからかんになってしまいました.外は,南風がごうごうと吹き荒れ,巻き上げられた砂ぼこりで,遠くは真っ黄色になっている.その後,風向きが変わって冷たい北風が吹き込み,気温は急降下.この強風でJRはもちろんTXまでダイヤが乱れたという.

—— 午後4時に午後の宴会はお開き.もうへろへろです.夕方2時間ほど死ぬ.その後もゾンビと化してうろつき回る.原稿どころではない…….

◆本日の総歩数=9953歩[うち「しっかり歩数」=6897歩/61分].全コース×|×.朝○|昼×|夜○.前回比=−0.3kg/−0.2%.


22 februari 2008(金) ※ 真夜中の Carbonnade flammande

◆午前4時半起床.西の空には満月が輝く.気温0.4度.しかし,日が昇るとともに気温は急上昇.午前10時には9.0度になった.暖かく春霞.

◆午前のこまごま —— メーリングリスト雑用少し./2月29日(金)の夕方には再び友部に行くことになった./今日中に東大農学部のシラバスを出せとのこと.他の連携教員との調整がぜんぜんすんでませんが.

◆あいまに,連載原稿をちょこちょこ書いたりする.まだまだ…….

◆午後はシラバス書きです.今年は形態測定学の集中講義にしますので,よろしく.と他の連携教員をプッシュする.時間切れにならないかと心配したのだが,幸い夕方までには4人全員のコンテンツがそろった.東大農学部教務から「月曜の昼までに」と念押しされたので,週明け早々に取りまとめてメールで送ることにする.

◆すき間に,連載原稿をちくちく書いたりする.まだまだぁ…….

◆夕方5時前に帰宅.夕食後の大仕事はベルギービールの煮込み(Carbonnade à la flamande)の仕込み.明日は昼過ぎに大東夫妻が来るので,そのもてなし料理として,いつもより多めにつくることになった.牛すね肉をドンと1.5kg.De verboten vrucht はすでに冷蔵庫で待機している.だいぶ慣れてきたのだが,時間を湯水のように使う料理だ.玉ねぎ6個の薄切りをたっぷり2時間ほどかけて無塩バターで炒め,切り分けて焦げ目をつけた牛肉とともに,“禁断の果実”をひたひたに注いでとろ火で煮込む.日が変わる頃,やっとふつふつと煮立ってきたので,そのまま午前1時過ぎまで火にかけ続け,今日はここでおしまいにしよう.

これまでは「禁断の果実」を用意してきたのだが,それ以外にもいろいろなベルギー・ビールが使われていることを知った.「シメイ」のようなトラピストビールでも,「ベル・ヴー」のランビックビールでもOKとのこと.

◆原稿がですねえ,ちょっとね…….

◆本日の総歩数=4805歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+0.3%.


21 februari 2008(木) ※ 春めく陽気の本郷にて隠棲する

◆午前5時半起床.プチ寝坊.外はよく晴れている.今日は関東地方全体にわたって春めく陽気になるらしい.今日は東京出張日なので,農環研への早朝侵入はなし.

◆新刊メモ —— ジャン=バティスト・ド・パナフィユー(著)・パトリック・グリ(写真)[小畠郁生監訳|吉田春美訳]『EVOLUTION 骨から見る生物の進化』(2008年2月21日刊行,河出書房新社,288 pp.,税込価格9,240円,ISBN:978-4-309-25217-9 → 版元ページ).ホネまたホネの図版集.一度は手に取ってみたいなあ.大判で迫力ありそう.原書はフランス語(2007年10月刊行),即座に英訳されて(2007年11月刊行),このたびの日本語訳出版となった.速攻わざだ.著者 Jean-Baptiste de Panafieu のウェブサイトには詳しい紹介文が載っている.

◆朝のこまごま —— 『』3月号が届いた:三中信宏「一度目は喜劇,二度目は茶番」(pp. 44-51).節の小見出しは:「過ぎ去った昔のことではなく|ルイセンコ論争と種概念|「種は現実に存在する単位である」|隠れた水脈と隠された知脈を求めて」となっています./ベルリンの古書店 Antiquariat Weiland から,入金を確認したので注文本を配送しますとの連絡あり.Postbankへの送金にはだいぶてこずったがこれでやっと報われる日が近づいたか./イリノイから神戸参戦への色好い返事が返ってきた.KO大学は必ずグローバルCOEをゲットするよーに.でないと,たいへん困ります.よろしく.

◆午前9:41発のTX快速で東大へ.車中では,届いたばかりの『本』の連載記事をチェックしつつ,次なる連載原稿の“あらすじ”を書き続けた.本体原稿も今日中には何とかしないとよろしくない.ほんとうは今日が締切だが,いつも『本』の最新号が届いてから,あわてて書き始めるはめに陥ってしまう./そして,返す刀で,『生物科学』の【種】コメントと日本菌学会の【種】噺の要旨も仕上げるぞ.前者は今週中,後者は今月末が締切だ.

◆午前10時半に根津から地上に出た.気温はやや低いが,晴れて暖かい気がするのは,南風のせいかもしれない.東大農学部の隠れ部屋にするりと忍び込む.10:30から正午前まで,専攻の卒論発表会(前半).葉緑体の葉の中での三次元的計測をした発表があった.オルガネラでもちゃんと測れるのだから,ゲニタリアだってきった大丈夫でしょう.他には,地震による土中構造体の座屈のしくみを有限要素法で解析しましたとか,光合成プロセスのモデリングとか,東アジアの物質循環の解析とか,それはもう etc.質疑を含めて「10分間」という高速プレゼンだったので,あれよあれよという間に正午になってしまった.

◆隠れ部屋にて一仕事したのちに,赤門前の東大のショップに立ち寄る.総合研究博物館の出版物はここにそろっているというのだが,お目当てのものはなかった.それにしても,こんなにたくさん“東大グッズ”があるとはぜんぜん知らなかった.東大農学部の酵母を使ったという瑞泉酒造の焼酎〈御酒[うさき]〉のいいのがあったが,値段がちと高すぎますぜ.

午後2時過ぎに〈ルオー〉へと転戦する.ここに来れば,まるで“条件反射”のように,原稿を書く体勢ができる(過去にそれだけ痛めつけられたということだ……).今日は,2階の“独房個室”ではなく,1階窓際の開放スペースに陣取って,原稿を書き始める.節タイトルを全部変更したので,気分一新.とりあえずは5枚.まだ一節分だが.午後4時まで.

◆根津におりて,駅前のオヨヨ書林を一回り,その後〈芋甚〉で昭和焼を買いこみ,往来堂書店をざっと見て,千駄木から乗るつくばに帰り着いたのは午後6時過ぎ.〈やまや〉にて De verboten vrucht を5本買って帰宅.夜はハンバーグをこねる.つくばで肉を買うときは並木の〈マルゲン・ミート〉にかぎる.またまたつくることになった「禁断の果実」煮込み用のすね肉もここでそろえた.

◆帰路車中読書 —— Ron Amundson『The Changing Role of the Embryo in Evolutionary Thought: Roots of Evo-Devo』(2005年刊行,Cambridge University Press[Cambridge Studies in Phiosophy and Biology], ISBN:978-0-521-80699-2 [hbk] / ISBN:978-0-521-70397-0 [pbk] → 目次|版元ページ hbk / pbk)の序論の「本質主義」の記述をブラウズする.著者の言う総合学説寄りの歴史記述(SH = Synthesis Historiography, p. 11)の中核には,「本質主義物語」(ES = the Essentialism Story, p. 13)があるとする.Robert Boyd のいう homeostatic cluster concept は,どう考えても従来の本質主義と同じネーミングで称するのは誤解のもとだと思う.ぜんぜんちがうじゃない.

◆うう,原稿,原稿…….

◆本日の総歩数=9425歩[うち「しっかり歩数」=3623歩/34分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/−0.3%.


20 februari 2008(水) ※ 自発的かつ強制的なる現実逃避

◆午前4時半起床.西の空にちょい欠けた“準満月”が沈んでいく.マイナス4.4度.今日も冷え込みが厳しく,霜がびっしり.

◆〈鳥のビオソフィア〉 —— 事前アナウンスが届いた.来月,東京大学総合研究博物館にて,東京大学創立130周年記念特別展示のひとつとして〈鳥のビオソフィア — 山階コレクションへの誘い〉が開催される.会期は,2008年3月15日(土)〜5月18日(日).また,この特別展示に会わせて,図録も出版されるようだ:西野嘉章・秋篠宮文仁(編)/原研哉(アートディレクション)『上田義彦写真集:鳥のビオソフィア』(2008年3月刊行予定,東京大学出版会,ISBN不明).

なお,写真家・上田義彦については,総合研究博物館から他に下記の出版物が出ている:西野嘉章(編)・上田義彦(写真)『東京大学コレクション―写真家 上田義彦のマニエリスム博物誌』(2007年刊行,東京大学総合研究博物館,税込価格12,600円,ISBN不明).この写真集は,昨年,博物館でぼくがセミナーをしたとき,懇親会の席上,西野さんから直接見せてもらった.すごい腕前の写真だと思った.もう1冊の近刊:西野嘉章(編)/原研哉(アートディレクション)『上田義彦写真集:百石譜 One Hundres Stoneware』(2008年3月刊行予定,東京大学出版会,ISBN不明).

—— オープン前日の夕方に,今回の特別展示の内覧会とレセプションがあるというお誘いだった.すかさずイエスと返事する.翌日は福岡行きだ.

◆午前10時半.暖かく晴れる.気温7.8度.午前のこまごま —— ISHPSSB ミーティングの“人狩り”をあたふたと進める.ここ数日,「白羽の矢」を国内外に放っている.イリノイとか理研CDBとか千葉とか帯広とか.すでに早々と年貢を納めていただいた方々もいるのだが,納税思案中という向きもある.よろしくよろしく.ついでに,事務局にオーガナイズ進捗報告メールを出す.

◆やってきた本たち —— 牧野宣彦『ゲーテ『イタリア紀行』を旅する』(2008年2月20日刊行,集英社[集英社新書ヴィジュアル版007V],264 pp.,本体価格1,260円,ISBN:978-4-08-720432-2 → 版元ページ).ゲーテの足跡をたどった本.“カラー新書”の良さが十分に発揮されている./藤井恒『高校の生物が根本からわかる本[細胞・代謝・発生・遺伝編]』(2008年2月23日刊行,中経出版,288 pp.,税込価格1,680円,ISBN:978-4-8061-2958-5 → 版元ページ).著者の藤井さんから献本されてきました.どうもありがとうございます.近い将来,本書の続編も予定されているのでしょうか.

◆午後のこまごま —— 年度末の研究室予算の残高を確認する.国内外に出奔し続けたので,よ〜く使ってしまいました…….今月中に大きな備品は発注しないと会計に怒られます./昨年依頼された分岐年代推定コンサル仕事の尻叩きがですねー./懸案の原稿がですねー(汗).

◆午後4時から1時間弱,『Modern Morphometrics in Physical Anthropology』の輪読セミナーの第10回.Chapter 3 : Philipp Gunz, Philipp Mitteroecker, and Fred L. Bookstein「Semilandmarks in Three Dimensions」(pp. 86-89).標識点と準標識点に関する統計モデリングを論じる.標識点の個数が増えると,形状サンプルと比較してパラメータ数が増え過ぎてしまうというパラメトリック統計学固有の問題が表面化する.これを回避するためには,何らかのノンパラメトリック統計学の手法を導入しなければならない.ここでは,[準]標識点からなる形状ベクトルの間の統計的差異を検出するという問題を考える.もし標識点のみからなるケースであれば,2形状の標識点座標データから計算された検定統計量の帰無分布を permutation test によって構築するという手が使える.しかし,標識点セットの中に準標識点が含まれていると,いくつかの座標データがもともと“欠如”しているため,座標に関する無作為化という手順は困難があるかもしれない.その場合は,座標データではなく,計算された距離尺度に関する無作為化検定を考える必要があるだろう.この点についてはまだ open である.

◆夕方のこまごま —— 東京農大の卒業式と謝恩会は3月21日(金)とのこと.研究室ごとの謝恩会なのだが,あの大人数を収容できるスペースははたしてどこにあるのだろうか…….

◆夜,今度こその原稿書き.ごめんなさい,ごめんなさい./明日は,東大農学部の卒論発表会だ.関わる大学が増えると,それに応じて卒論発表の回数も増えてくる.だから,またまた本郷に姿を消すのだ.世を捨てて隠れ部屋で逼塞したいのだ.

◆本日の総歩数=6161歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/+1.3%.


19 februari 2008(火) ※ つくば無作為徘徊する振替休日

◆午前4時半起床.星空.冷え込み厳しく,今朝もマイナス4.8度まで下がった.今日は振替休日なので,研究所に出勤する必要はなかったのだが,長年にわたって染みついた習性みたいなものでしかたがない.居室でしばしごそごそしたのち,午前6時前に帰宅する.東の空はもう明るい.夜明けがしだいに早まっていることを実感する.

◆またも「生物学哲学コンパニオン」新刊 —— Sahotra Sarkar and Anya Plutynski (eds.)『A Companion to the Philosophy of Biology』(2008年2月刊行,Blackwell / Wiley[Blackwell Companions to Philosophy], 616 pp., US$ 174.95, ISBN:978-1-4051-2572-7 [hbk] → 版元ページ)がまもなく近刊との情報を得た.Marc Ershefsky が「Systematics and Taxonomy」という論考を書いている.

昨年から立て続けに大冊の“生物学哲学コンパニオン”の出版が続いている.2007年3月に,M. Matthen et al. (eds.)『Philosophy of Biology』(2007年3月19日刊行,North-Holland[Handbook of the Philosophy of Sciences], ISBN:9780444515438 → 版元ページ)が出た.これに続いて,8月には,David L. Hull & Michael Ruse (eds.)『The Cambridge Companion to the Philosophy of Biology』(2007年8月刊行, Cambridge University Press[Cambridge Companions to Philosophy], ISBN:9780521851282 [hbk] / ISBN:9780521616713 [pbk])が届いた.

—— 既刊2冊ですでに1000ページを軽く越えてしまう.さらに上乗せして今回の新刊だ.オニのようにいくら読んでもキリがない分量じゃないか…….それとも,コンパニオンは通読するものではないとでもいうのか.もちろん,エルゼビアに,ケンブリッジに,ブラックウェルと揃い踏みされた日には向かうところ敵なしだけどね.

◆朝から薄日が射したり曇ったりで,空気はまだ冷たいが,まさに春先の空模様だ.午前11時すぎに,北に向かって歩き始める.休日は歩くしかないだろう.筑波大キャンパスを縦断する.平砂宿舎の一角から三味線の音が.粋な姐さんでもいらっしゃるのか(まさか).構内北端にある植物園エリアを横断してから南下.科博の実験植物園の温室をひとまわりして帰宅した(おお,この高温多湿がなつかしい).ほぼ2時間半のコースだった.日射しがとても暖かかった.

◆歩行読書本 —— 稲葉宏爾『カラー版・路上観察で歩くパリ』(2005年11月10日刊行,角川書店[角川oneテーマ21],ISBN:4-04-710018-8).読み残していたが,さっくり読了.次っ:折原一『チェーンレター』(2004年3月10日刊行,角川書店[角川ホラー文庫H100-1],430 pp.,ISBN:4-04-191905-3).うーん,イマイチ…….その次っ:松田忠徳『江戸の温泉学』(2007年5月25日刊行,新潮社[新潮選書],255 pp.,税込価格1,260円,ISBN:978-4-10-603579-1 → 版元ページ).お,“温泉教授”はん,ものすごええ本書くやんか.とても楽しめます.やっぱり「棒」より「温泉」.当然ですな.至福.100ページほど読んだところで帰り着いた.

◆おいっ,原稿はどーしたっ.[ぎくうっ] —— 目覚めよと呼ぶ声が聞こえ,我に返る.そーだ,今日は“原稿量産マシン”に変身するはずだった.これはまずいと,あたふた着ぐるみを着て“大変身”を装う.さあ,どの原稿だ,アレか,ソレか,コレか.※そんなにたくさん抱え込んでるのかっ.[ハイな]

—— 背後に迫るウツボカズラ…….溺れさせないでね.溶かさないでね.※「棒」よりずっとコワイぞ.

◆ということで,夕方からすいすい書き始め……(ウソ).いつも通り,あっちこっちの文献を引っ掻き回し始める.※しかし,心理的には「すでに書き始めた」と表現する.

◆本日の総歩数=15471歩[うち「しっかり歩数」=13252歩/126分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/−0.4%.


18 februari 2008(月) ※ 今冬一番の冷え込みに凍りつく

◆午前4時半起床.晴れて無風.放射冷却はなはだしく,午前5時の最低気温は実に「マイナス7.2度」まで下がった.今冬一番の冷え込みだ.東の空の朝焼けグラデーションがとても鮮やかだった.

◆〈R〉入門統計学 —— 山田剛史・杉澤武俊・村井潤一郎『Rによるやさしい統計学』(2008年1月17日刊行,オーム社,xvi+404 pp.,本体価格2,835円,ISBN:978-4-274-06710-5 → 版元ページ).パソコンで〈R〉を起動しながら,統計学を自習するのに向いている.入門テキストとして使えるかもしれない.全体として入り口の敷居が低いので,手にとるユーザーはきっと多いだろう.どこかの講義で教科書に指定してみようかな.ただ,全編にわたってオブジェクト名に“漢字かな”が多用されているのは一長一短があるかも.

◆午前のこまごま —— 郵送準備2件./研究者データベース「e-Rad」の確認要請がきた./特許とるんですかぁ?/外部に複写依頼していた Mary P. Winsor の論文コピーが届いた.早い.

◆日射しの暖かな昼休みにちょい歩き読み —— 磯辺勝『江戸俳画紀行:蕪村の花見,一茶の正月』(2008年1月25日刊行,中央公論新社[中公新書1929], ISBN:978-4-12-101929-5)をぱらりぱらりと.余計な力みが抜けていく.午後1時の気温8.8度.風なし.

◆釣って釣られる午後の大仕事 —— 先月から積み残してしまった統計質問のひとつに答える.〈R〉で split-plot の線形モデルを立てるとき「Error(……)」という追加誤差項の指定をする書式が「aov()」にはあるが,「lm()」や「glm()」ではそれは利用できない.となると,一般化線形モデルでは,「lmer()」の混合モデルの中で,fixed effects に対する random effects として組み込むしかないのだろうか./ISHPSSB ミーティングの生物学哲学セッションの人集めを始める.オルグ文を数ヶ所に送ったのだが,幸いうまく“釣られて”いただいてありがとうございます./相手は同じで別件の『生物科学』の生物学哲学特集の原稿をプッシュされ,さらにもう一つ書くように釣り上げられる.世界はあまりに狭過ぎる.

—— 統計コンサルティングがもう1件あるのだが,今日はもうムリっす.

◆明日は振替休日だが,半強制的に“原稿量産マシン”に大変身することになっている(……).

◆本日の総歩数=8218歩[うち「しっかり歩数」=2940歩/28分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/−0.3%.


17 februari 2008(日) ※ 週末ごとにゆるゆるしてしまう

◆昨夜の【淫酒】のせいでふと魔が差したのか,日が変わってもそのまま夜更かしをしてしまい,今朝目が覚めたのは午前7時だった.すでにさんさんと朝日が射し込み,罪深き寝坊への天罰としては十分だ.悪霊退散.外は快晴だが北風が強い.

◆David Sharp 続き —— きのう昆研で遭遇した『The comparative anatomy of the male genital tube in Coleoptera』(1912)に引かれて深みにハマる.イギリスの甲虫学者 David Sharp(1840-1922)は,時代的・地理的にまさに Charles Darwin と重なる.Wikipedia の項目「David Sharp (entomologist)」を読むと,Sharp は当時のイギリスを代表する昆虫学者だったことがわかる.イングランドとスコットランドにまたがる甲虫相を明らかにするという研究キャリアの最後を飾る論考として,上記の雄ゲニタリアの比較解剖学をまとめ上げたということだろう.リタイア後の72歳のときの著作だった.

Sharp が没した翌年に,ニュージーランド王立協会が彼の訃報を掲載した:G. V. Hudson (1923), David Sharp, 1840-1922. Transactions and Proceedings of the Royal Society of New Zealand, 54: xiv-xv. これを読むと,Sharp は Herbert Spencer と親交があったと書かれている.同時代に姿を現わしつつあった進化論に対しても,Sharp はつねに一歩引いたスタンスを取り続けたそうだ.彼の描いた“系統樹”はいかにも19世紀的なフレーバーが漂っている.

—— David Sharp については,ひょっとしたら Robin Craw の分岐学史論文(1992)に言及があるかもしれない.あとで確認してみよう.

◆昼下りに強風の中を徘徊する.今日は冬型の気圧配置のせいか,季節風がとても強い.松代の休耕田の中を散歩していたら,2羽の“野良鶏”が風に吹かれていた.まだ若鶏のようで羽根が生えそろっていない.雄鳥だから棄てられたのか,それとも近在の農家から脱走したのか.

◆強風の中の歩き読み —— 折原一『チェーンレター』(2004年3月10日刊行,角川書店[角川ホラー文庫H100-1 (13278)],430 pp.,ISBN:4-04-191905-3)を100ページほど読み進む.なあるほど,こういうふうにプロットをつくっていくわけね.兇悪なる“棒”が降ってきやしないかと空を見上げてしまった.

◆夜は久しぶりの「きつね丼」.関東では非日常なご飯もの.

◆Robin Craw の論文をチェック —— Robin Craw (1992), Margins of cladistics: Identity, difference and place in the emergence of phylogenetic systematics, 1864-1975. Pp. 65-107 in: Paul Griffiths (ed.), Trees of Life: Essays in Philosophy of Biology, Kluwer Academic Publishers[Australasian Studies in History and Philosophy of Sciences, Volume 11], Dordrecht. 昆虫学における系統論を中心に系統体系学の歴史を論じた論文だが,ざっと見るかぎり,David Sharp の名前は登場していない.

◆本日の総歩数=3919歩[うち「しっかり歩数」=2635歩/24分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/+0.1%.


16 februari 2008(土) ※ 〈山桜桃〉を背負って本厚木へ

◆午前5時半起床.快晴,冷え込む.今日は東京農大の卒論発表会と追い出しコンパがある.遠距離なのでまずは厚木キャンパスにたどり着くだけの気力と体力が必要だ.

◆9:11発のTX快速に乗る.旧・友部町の須藤本家から届けられた〈郷乃誉・山桜桃〉の一升瓶が箱ごとリュックサックに入っているので,ずっしり重い.無濾過の生酒なので心配だったのだが,明け方の冷え込みが厳しいこの季節なので,昨日まで夜間はずっと吹きさらしのベランダで保管していた.一升瓶をそのまま保管できる冷蔵庫が自宅にほしいなあ…….※それって「飲み屋」かも.

◆往路車中読書 —— 坂口謹一郎『日本の酒』(2007年8月17日刊行, 岩波書店[岩波文庫 青 33-945-1], ISBN:978-4-00-339451-9).読了.意外な内容.“アル添酒”や“三増酒”,あるいは戦時中の“合成酒”まで含めて,著者に言わせれば,「醸造技術の近代的革新」であるという点で積極的に評価される.もちろん,日本酒のさまざまな蘊蓄はあふれんばかりなのだが,この本の初版が出された「1964年」という時代背景を考えなければならないのだろう.この岩波文庫版の解説:小泉武夫「酒の生き神さま — 坂口謹一郎先生の酒学」の中で,小泉は坂口の“先見の明”を指摘しているが,本書が世に出てからの40年間の「日本酒」をめぐる推移の大きさは確かに特筆されるべきだろう.

なお,故人に絡むエピソードのひとつとして,当時岩波書店にいた編集者・田村義也が坂口私邸の半地下の貯蔵庫から酒をどんどん持ちだしてきたと書いている.田村義也の『のの字ものがたり』(1996年3月25日刊行, 朝日新聞社, ISBN:4-02-256785-6)や『ゆの字ものがたり』(2007年3月10日刊行,新宿書房, ISBN:978-4-88008-365-0 → 版元ページ)に書かれているように,坂口本の装丁者として知られる田村は公私にわたって関わりがあったということだ.

◆つくばを出発して約2時間後に本厚木駅に降り立つ.今日もいい天気だ.遠景に広がる丹沢の山々がときおり雲に隠れる.農大行き路線バスで正午過ぎに厚木キャンパスに着いた.昆研の卒論発表会は午前10時半から始まっていたのだが,午後からの参加とさせてもらう.いつもは学生密度がとても高い昆研だが,昼休み前で午前の卒論発表会がまだ終わっていないらしい.

◆人が出払ってしまった昆研の所蔵書庫を一回りする.もともと蟲関係の珍しい図書がたくさんある研究室なのだが,本日手にした接近遭遇本はこれ:

David Sharp and Frederick A. G. Muir (1912), The comparative anatomy of the male genital tube in Coleoptera. Transactions of the Entomological Society of London, Part III (December) 1912, pp. 477-642, plates XLII - LXXVIII. 昆研に所蔵されているのは,長大な元論文に加えて,同じ著者らによる関連論考が数編バンドルされた復刻本(1969)だ.

ざっとブラウズすると,総論に続いて,鞘翅目昆虫の各分類群ごとに male genitalia に関する詳細な記載がある.そして,論文の末尾近くに「V. Taxonomy and Phylogeny」(pp. 613-639)という節があった.そこで,著者らは「知見があまりにも乏しすぎて憶測を重ねるのは気が引けるのだが」と何度も弁明しつつも,雄交尾器に基づく甲虫類の系統関係を推論し,その結果を“afffinities”と銘打ったダイアグラムとしていくつも描いている.当時,この文脈で用いられる“afffinities”とは系統関係に他ならないので,このダイアグラムは系統樹と見なすべきだろう.

◆昼休みになって,研究室内の人口密度が急上昇した.毎年,昆研に入ってくる学生は単調増加しているという.立錐の余地もないとはまさにこの状態で,実際,立ちっぱなしだった.午後1時半から午後の発表会が始まる.午後4時前まで8件の卒論発表があった.今年は午前も合わせると全18件の卒論が発表された.連名のものもあるので,実数は20名を越えるのだろう.聴く方もそれ以上いるので,発表会場には聴衆を含めれば70名近くいたのではないか.他に類を見ない規模の研究室だ.来年はさらに人数が増えるという.いったいどこからこれだけの“蟲屋”が湧いて出るのだろう.

◆午後4時前に発表会は終了し,午後5時すぎから同じ場所で,追い出しコンパが始まった.例年,早い時間帯から呑み始めるので,かなりできあがったような気がしてもまだ6時台だったりする.つくばから持参した〈郷乃誉・山桜桃[ゆすら]〉はさらりと呑めるこわ〜い純米吟醸酒だった.これはコワイぞー.毎回毎回,厚木に来るたびに,自分が呑む分を背負ってきているようなものだ.午後7時すぎに一次会は解散.昆研に場所を移して,さらにエンドレスな夜が続くのだろうが,ワタクシは午後7時40分のバスに乗って本厚木に向かった.

—— つくばに帰り着いたのは午後10時半をまわっていた.農大を出るときはまだ早過ぎるような気がするが,つくばに帰り着くまでに片道3時間かかることを考えればちょうどよい.油断して厚木の丘の上でゆるゆるしてしまうと,都内のどこかで“タイムアウト”になってしまう危険がある.

◆本日の総歩数=4453歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.1kg/0.0%.


15 februari 2008(金) ※ 積み残し残務処理するフライデー

◆午前4時半起床.星空.気温1.2度.空気が乾いているので,驚くほどびしびし静電気が飛ぶ.

◆『世界制作の方法』文庫版復刻 —— おお,文庫化されるとは:ネルソン・グッドマン[菅野盾樹訳]『世界制作の方法』(2008年2月10日刊行,筑摩書房[ちくま学芸文庫],296+ix pp.,税込価格1,365円,ISBN:978-4-480-09125-3 → 版元ページ).この翻訳はもとは20年前にみすず書房から出された:ネルソン・グッドマン[菅野盾樹・中村雅之訳]『世界制作の方法』(1987年10月30日刊行,みすず書房,xii+274+ix pp.,本体価格2,500円,ISBN:4-622-00623-5).30ページに及ぶ詳細な「訳者解説」が新たに付けられている.日本では分析哲学を専門にしている研究者であっても,グッドマンはみごとに脇に押しやられていると訳者は言う:

我が国の読書会にとり,哲学者グッドマンはまったくと言っていいほど無名の人物である.[……]そのうえ,我が国では,その名を当然わきまえている科学哲学の専門家の大方も,彼をもっぱら機能にかんするあの〈グッドマンのパラドックス〉を案出したいっぷう変わった哲学者として,あるいは特異な唯名論の提唱者として言及するにとどめているようだ.最近,日本人研究者が全編を執筆したということを謳い文句とする「哲学史」の叢書が刊行されつつあるが,旧弊はいっこうに是正されていない.欧米と日本におけるグッドマン研究の実績と評価には著しいアンバランスがある.(pp. 294-295)

—— 一般的な分類理論の世界ではグッドマンに出会う機会は比較的多いように思う.最近は,メレオロジーがらみで再び彼と対面している.

◆午前11時の気温6.0度.快晴,風なし.日射しが柔らかい.昼下りにかけてのこまごま —— メーリングリスト堆積雑用の処理./問い合わせメールの応答いくつか./久しぶりにソーバー訳本の注文あり./分類学会連合のウェブサイトに関する要請をする./実験計画についての大きな質問メールが二つあるのだが,とても処理しきれまへんな.おーばーふろー.

◆午後5時にとっとと退散する.風はないが,空気は冷たい.

◆〈棒の手紙〉はさらに連なる —— 本日入手した:折原一『チェーンレター』(2004年3月10日刊行,角川書店[角川ホラー文庫H100-1 (13278)],430 pp.,ISBN:4-04-191905-3).初版は2001年8月に角川書店から出ている.ざっと読むかぎり,『チェーンレター』は「棒の手紙」をライトモチーフとするもうひとつの作品なのだろう.他にも同様のモチーフの作品があるとしたら,それら自身が“系譜”をなしているということだ.

それにしてもこの小説は短編集ではなくひと連なりのストーリーで400ページあまりもある長さだが,〈棒の手紙〉だけでここまでホラー小説としての「物語性」を持続できるのだろうか.ネタバレになってしまうと困るので,これ以上は書けませんが.

◆明日は,東京農大・厚木キャンパスで昆研の卒論発表会と追い出しコンパ.体力勝負の一日になりそうだ.※知力はどーしたっ./同じく農大から,3月13日(木)夕方に開催される「教授の会」のアナウンスが自宅に届いていた.福岡に旅立つ直前なので欠席の予定.

◆本日の総歩数=5487歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.3kg/+1.4%.


14 februari 2008(木) ※ チョコよりも時間をちょうだいね

◆午前4時10分起床.西の風6メートル,気温マイナス0.6度.朝焼けがきれい.それだけ空気が乾燥しているということか.

◆未明の研究室にて —— 農大の人事書類のいじりまわしは続く.アイテムごとに“説明文”を添付するという泥濘的労苦に喘ぎつつ…….

◆Mary P. Winsor の「アンチ本質主義」論文ふたつ —— Mary P. Winsor (2006a), The Creation of the Essentialism Story: An Exercise in Metahistory. History and Philosophy of the Life Sciences, 28(2): 149-174. 出版前から言及されていた論文だった.→アブストラクト./Mary P. Winsor (2006b), Linnaeus's biology was not essentialist. Annals of the Missouri Botanical Garden, 93: 2-7. →アブストラクト.どちらも外部複写依頼をオンラインで申請した.生物学史系のジャーナルが農水省内にもともとないのはしかたがないとしても,ミズーリ植物園の雑誌まで購読中止にしないでよねっ.

◆午前の七転八倒 —— でもって,また現実に引き戻され,農大の脱力書類づくりが続く.アイテムごとの「POP」だと割り切ってしまえばいいのかもしれないが,アホらしい作業であることに変わりはない.何のかんので時間ばかり過ぎ,けっきょく午前11時前にやっと文章の入力を完了する.ワードの死ね死ね系の文書整形機能にあらためて立腹してしまう.人事書類のページ数は2倍に増量されてしまった.しかし,これで作業が終ったわけではない.いったんプリントアウトして,まずは押印.次いで,業績アイテムごとに貢献タイプのカテゴリー番号を手書きで記入しなければならない.午前11時半にすべて終了.あわてて,榎戸のクロネコヤマト営業所に飛び込み,着払いで書類を発送した.明日の午前中には桜丘に届くだろう.

—— ばたばたしてしまったが,これにて一件落着だ.今後しばらくは農大関係の事務書類はいっさい書きたくありません.よろしく.

◆今日も晴れて北風が強い.正午前の気温は6度台だ.

◆腑抜けな午後のこまごま —— 受信箱に先月から溜まっている質問メールとか,他の要処理案件にとりかからないといけない.しかし,ここでまた新たな脱力が…….事務所の郵便局から電話連絡があり,先日のドイツへの送金に関して,Postbank への送金についてはドイツ側の手数料 EUR 5.00 は不要とのことで,「送金事務手続きがすみ次第,返金いたします」とのこと.追加徴収されるよりは返金される方がありがたいに決まっているのだが,問題はそこではない.「送金事務手続きはまだすんでいないのでしょうか?」とのぼくの質問に,「ただいま進めておりますので,今しばらくお待ちを」との返事.ううむ,郵便局でドタバタしたのはもう1週間も前のことではないか.たかだか小額の送金をするのに何日もかかってしまうとはどーしたことか.さらなる脱力だ.空気が抜けたフーセンだ.

◆「百学連環」本 —— 『百学連環:百科事典と博物図譜の饗宴』(2007年9月21日刊行,印刷博物館,219+18 pp.,2,100円,ISBNなし → 印刷博物館ページ).「百学連環」とは西周による「エンサイクロペディア」の訳語だという.無料で配布されている『季刊Printing Museum News』の No. 27(2007年7月31日発行)と続く No. 28(2007年11月5日発行)で,この企画展示についての記事が載っている.

◆午後4時半に抜け殻のようになって帰宅する.気温7.7度.晴れて北風.友部から無殺菌の生乳が3リットルも届けられたので,さっそく自宅で「低温殺菌牛乳」をつくることにする.詳しくは mixi に書いたのでここでは簡単に.レシピ:1) ホウロウ深鍋に生乳を注ぎ,中火にかける.このとき熱がまんべんなく周るように撹拌する;2) 調理用温度計がなかったので,“舌センサー”を全面的に信用し,ときどきスプーンで牛乳をすくって70度くらいの温度を保つようにする;3) 沸騰させないように注意しつつ,15分ほど加熱し,冷やす.あとは容器に詰めて冷蔵庫へ直行.オンラインで調べてみたのだが,生乳を“煮立てて殺菌する”というやり方はあるようだが,低温殺菌を自宅で手軽に行なうやり方は見当たらなかった.上のレシピでいいのかどうかよくわからないが,少なくとも仕上がりはクリーミーな「いい牛乳」になったと思う.あとはどれくらい日持ちするかの問題だけかな.

—— 3リットルもの牛乳が冷蔵庫を占有することになってしまった.

◆夜は,昨年末にいただいた大分・浜嶋酒造の〈鷹来屋五代目(大吟醸)〉をやっと開封しました.とってもいい吟醸香ですねえ.ここ数日の脱力作業ですっかり抜けてしまった空気が再充填される心地ぞする.

◆本日の総歩数=6820歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.4kg/−1.6%.


13 februari 2008(水) ※ 百学連関,ミュン,本郷から谷中へ

◆午前4時15分起床.星空.北寄りの風がびょうびょうと吹きつける.研究所の風速計では西の風9.5メートル.気温0.3度,のちマイナス0.1度.昨日の予報通りの冬型の天気だ.

◆未明の脱力 —— 農大人事書類にダメだし.各業績ごとに「200字以内の要約」を付けた上で,共著業績についてはどのような貢献がしたかのカテゴライズを「手書きで記せ」とのこと.イッキに力が抜けたので,そのまま放置することにした.今日は朝から東京に出るので,この件に関しては何一つ進捗は起こらない.しかし,急ぎの事務書類であることは確かなので,今週中には相手方に届くように準備しないといけない.何でもいいからとにかく送ればいいということだろう.

—— と,ぶつぶつ言いつつ,いったん帰宅する.

◆朝から快晴だ.しかし北風が強すぎる.9:41発のTX快速で東京へ.新御徒町で大江戸線に乗りかえ,春日駅で下車.迷路のごとき地下道を右往左往し,やっと東京ドーム側に出られた.春日=後楽園は多くの地下鉄路線が三次元的に交錯するので,地下でときどき迷ってしまう.

◆風に吹かれつつてくてく歩いて〈印刷博物館〉へ.久しぶりにここに来た.いまやっている展示を見るつもりはまったくなかったが,博物館入り口のショップを見るだけでも来る価値は十分にある.特別展示ごとに出される「図録」はいずれも内容・装丁ともにしっかりした出版物だが,一般の書籍流通には乗らない.それらを手に取りたければ,ここに来るしかない.

東京築地活版製造所の活字見本 —— ショップで覆刻されて売られていた:『三十六ポイント總数見本(全)』[大正八年三月改正](大正九年十月二十三日印刷,東京築地活版製造所発行[非売品],和綴101頁).税込価格3,150円.1冊全部が漢字だらけの活字見本帳だが,これはこれで味わいがある明朝体なのだろう.もちろん,ここに載っている書体はさまざまな和文フォントの“祖先”にあたる.その意味では,本書は印刷史上の「歴史的資料」に位置づけられる.

◆印刷博物館から本郷まで,またまた歩く.本三近くのベトナム・サイゴン料理〈ミュン本郷店〉に久しぶりに立ち寄る.ランチタイムなので当然「鳥カレー」だ.安い,うまい,おかわり自由だが,さすがにライスの追加をすることあたわず.ただ鳥のホネをかじるのみ.本郷通りを通って,東大農学部に着いたのは正午過ぎだった.北風冷たすぎ.

◆午後1時〜4時まで,専攻教員会議.議題がたくさんあったせいで長引く.睡魔が来たりて笛を吹く.新しく連携教授になった米村さんに隠れ部屋の説明とか.午後5時すぎに東大を出て,根津から谷中の〈マミーズ〉へ.ほとんど中毒のようにアップルパイをホールで買ってしまう.千駄木から乗ってつくばに帰り着いたのは午後6時半のこと.一日中北風が吹き荒れていた.

◆往復車中読書 —— Jürgen Haffer『Ornithology, Evolution, and Philosophy : The Life and Science of Ernst Mayr 1904-2005』(2007年刊行, Springer-Verlag, ISBN:978-3-540-71777-5 [hbk] / ISBN:978-3-540-71778-2 [pbk] → 目次|版元ページ:hbk / pbk)をつまみ読み.

旧ソヴィエトのマルクス主義生物学者 K. M. Zavadsky についての記述がある(pp. 368-9).Zavadsky はマイアの生物学的種概念は“弁証法的唯物論”の主張とあまりにもぴったりだったので,「マイアはマルクス主義者なのか」と知人に問いかけていたそうだ.当惑したマイアはそれに答える形で「弁証法的唯物論のルーツ」(1997)という論考を Zavadsky 記念論文集(ロシア語)に寄稿しているという.マイア自身は,種は「個物」と「クラス」の中間的性質をもつ存在だと考えていたらしい(p. 370).

もうひとつ:マイアの大著『The Growth of Biological Thought』(1982)の序文には,機能生物学に関する続巻を書くようなコメントが書かれていて,ずっと気になっていたのだが,この伝記にはその話は『Growth』が出版された時点ですでにまったく意図されていなかったとのことだ(p. 346).この本の原稿は1970年代末にそろっていたのだが,序文は改訂されないまま出版に至ったそうな.

さらにもうひとつ:マイアの思想的バックボーンは彼がドイツにいた頃に影響を受けた当時の大陸的鳥類学によって形成されたと著者は言う.具体的には Erwin Stresemann に Bernhard Rensch だ.彼らの生物観と進化観がその種概念も含めてマイアに継承されているという.この点は要注意のポイントだ.

—— この伝記はまとまりのある narrative というよりは,メモランダムの束のような本だ.通し読みするのはつらいものがあるが,つまみ読みするのにはつごうがいい.

◆帰宅後日が変わるまで,“脱力系”農大文書の修正に着手するもまったく終わらず.世田谷からは「明日中に宅急便でお送りください」と書かれているのだが,できるかなあ.

◆本日の総歩数=14387歩[うち「しっかり歩数」=8671歩/78分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.4kg/+0.2%.


12 februari 2008(火) ※ ダーウィン・バースデーに航空券

◆午前3時半起床.小雨のち曇り.研究所にて気温4.0度.午前5時半には3.1度まで下がったが冷え込みはなし.今日は雨になるとの予報.

◆未明のこまごま —— 頼まれ書類づくりと追込まれ書類づくりに勤しむ.農大書類は遅々として進まず./メーリングリスト雑用をいくつかすませて,転載依頼文を送信./貸会議室メーリングリストの期限延長処理をすませる.半年に一度のタスク.

◆朝イチでJTBに行って,来月の福岡への航空券を確保した.生態学会参加者で芋の子を洗うがごとしかと思っていたのだが,さすがは拠点都市.運送キャパシティにも余裕があったようで,往路・復路ともすんなり買うことができた.行きは,3月15日(土)の JAL323(羽田空港12:20発);帰りは3月18日(火)の JAL324(福岡空港13:10発).これで“足”と“宿”はもう大丈夫.大丈夫じゃないのはトーク準備のみっ(汗).

—— 雨足がしだいに強まってきた.午前11時の気温は4.8度.

◆備忘メモ —— 〈第15回東京国際ブックフェア〉の開催アナウンス.期間:2008年7月10日(木)〜13日(日);場所:東京ビックサイト.以前,一度だけ行ったことがあったが,会場は広すぎるは,人は多過ぎるはで疲弊した記憶がある.今年はどーするか.

◆〈棒の手紙〉その後 —— 『系統樹思考の世界』を書いていたとき,「棒の手紙」の図を引用する必要があって,編集部経由で〈と学会〉の山本弘さんに連絡をとったことがあった.それをモチーフにした小説があることは知っていたし,その後,大学の講義などで「棒の手紙」の話をするたびに,受講生から「あの小説はこれがネタだったのですか?」と質問されることがよくある.しかしぼく自身はノベライズされた「棒の手紙」はまだ読んだことがない.

そこで,調べてみたところ,山本さん自身が小説化したという:山本弘・高井信・安田均『妖魔夜行しかばね綺譚』(1998年10月刊行,角川書店[角川スニーカー文庫],ISBN:404415211X)はすでに絶版のようだ.一方,同じモチーフを使った別の小説もあるようだ:折原一『チェーンレター』(2004年3月1日刊行,角川書店,ISBN:9784041919057).こちらは今でも新刊で手に入るようなので,さっそくオンライン注文してしまった.

◆NHK出版からいただきもの2冊 —— 山極寿一『暴力はどこからきたか:人間性の起源を探る』(2007年12月25日刊行,日本放送出版協会[NHK Books 1099],244 pp.,ISBN:978-4-14-091099-3).ゴリラまたゴリラ.人間また人間./森本喜久男『カンボジア絹絣の世界:アンコールの森によみがえる村』(2008年1月30日刊行,日本放送出版協会[NHK Books 11102],8 pls.+228+8 pp.,ISBN:978-4-14-091102-0).カンボジアでの伝統的養蚕業の復興記録.つむいだ絹糸をラック・カイガラムシで真っ赤に染色する.布地に描かれている“生命の樹”モチーフもまたとてもアジア的.こういう話はとても魅力的だ.

◆書評を公開するようになってから,方々から新刊を献本される機会が増えてきた.「自分で買った本でなければ書評できないでしょう」という意見を耳にすることがあるが,ぼくはそうは思わない.「こんな本があるよ」と知らせることが書評の唯一の機能だろう.自腹を切ろうが,ありがたくいただこうが,本の内容とは何の関係もない.だから,その書評対象本の“出所”はある意味どーでもいいでしょ.700円の新書がアタリであることもあれば,7,000円してもハズレな本もある.それだけのことだ.書評用にといただいた高価な本をボロクソに書評したこともかつてある.

◆雨が降り続く午後のこまごま —— 福岡への出張伺いを書いていて,はたと気がついた.今年度の予算残額がいったいどれだけあるのか,まったくチェックしていなかった.だいたい会計システムにログインしたことも今年に入ってあったかどうか記憶にない.まずは,それを見てみないことには,決済先を決めることもできやしない./でもって,引き伸ばし続けた懸案の農大人事書類をのろのろと書き始める.書式上の詳細にわたる“きまりごと”(印刷したらA4サイズでびっしり4枚もあった……)を眺めるたびに嫌気がさしてきたのだが,片目をつむって見ないことにして,とりあえず書き始めることにした.いやだいやだ.

◆午後5時半に雨の中を帰宅.気温4.8度.夜,さらに農大書類をちくちくと書き進め,午後10時半にやっと仕上がる.6ページにもなった.明朝,先方にメールで送ることにしよう.

◆進化関係こまごま —— 本日はチャールズ・ダーウィンの誕生日だった.〈http://www.aboutdarwin.com/〉というサイトがあることを知った./今年の進化学会第10回大会は東大教養学部(駒場)にて8月22日(金)〜24(日)に開催されることになった.残暑厳しき折り.

◆本日の総歩数=5826歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.8kg/+1.6%.


11 februari 2008(月) ※ 連休の最終日はリンネとベルデで

◆前夜は早々と沈没してしまったので,午前5時半に早々と再浮上する.今日は休日.天気は晴れ.

◆備忘メモ —— 昨年の湯川秀樹シンポジウムでお世話になったオーガナイザー村瀬雅俊さんの本が全文公開されることになった:村瀬雅俊『歴史としての生命:自己・非自己循環理論の構築』(2000年5月1日刊行,京都大学学術出版会,ISBN:4-87698-403-4 → pdf [23.71 MB]).今回のオンライン公開は,京都大学学術出版会の〈研究書コレクション〉として全文公開5冊のうちの1冊だ.他の公開タイトルとしては小野真『ハイデッガー研究 : 死と言葉の思索』とか,李長波『日本語指示体系の歴史』などの大著がある.これからも順次公開点数が増えていくのだろうか.

◆午前中はゆるゆるしてしまった.この三連休は“生産的”なことを何一つしていない.外側ではそろそろ諸方面からのプレッシャーが強まりつつある.「いしゅかびー」とか,交流センター企画など“人集め元締”仕事が先決か.あ,UBCからメールが.こちらから打診する前にまさにその件で問い合わせがあるとは世の中狭いということだろう.あと,年度末の会計事務処理とか.発注をかため打ちしないと間に合わないかも…….

◆昼の読書 —— 千葉県立中央博物館(編)『リンネと博物学:自然誌科学の源流(増補改訂)』(2008年2月10日刊行,文一総合出版,xxviii+298 pp.,ISBN:978-4-8299-0129-8 → 版元ページ).先日やっと現物を貸していただいたので,ざっと読み通す.『自然の体系』初版の対訳は他ではなかなか見る機会がないだろう.さらに,リンネ自身あるいは弟子たちの著作や関連資料など,千葉県博が所蔵しているリンネの大きな所蔵コレクションの解説や,リンネの業績についてのさまざまな視点からの論考も含まれている.カラー図版も満載で,生誕三百年を記念するのにふさわしい仕上がりの出版物になっていると思われる.14年前の千葉県立中央博物館での特別展図録『リンネと博物学:自然誌科学の源流』(1994年8月21日刊行,千葉県立中央博物館,ISBNなし)をベースにしてはいるが,大幅に増補改訂されている.別の書名にしてもよかったのではないか.

◆Thomas Junker 著作群 —— どこかで見た記憶のある著者だと昨日から気になっていたのだが、本人サイトをブラウズして判明した.19世紀のドイツ植物学へのダーウィン進化論の影響を論じた:Thomas Junker『Darwinismus und Botanik: Rezeption, Kritik und theoretische Alternativen im Deutschland des 19. Jahrhunderts』(1989年刊行,Stuttgart: Deutscher Apotheker Verlag,x+367 pp.,ISBN:3-7692-1225-8)の著者でもあった.また,Thomas Junker & Eve-Marie Engels (Hrsg.)『Die Entstehung der Synthetischen Theorie: Beiträge zur Geschichte der Evolutionsbiologie in Deutschland 1930-1950』(1999年刊行,Verlag für Wissenschaft und Bildung[Verhandlungen zur Geschichte und Theorie der Biologie, Band 2], Berlin)というドイツ進化学史の論集もあるようだ.しかし,これらの本はいまだに手にする機会がまったくない.縁が薄いのか.

◆午後2時からは,ノバホールにて,〈アンサンブル・ベルデ〉の創立20周年記念演奏会を聴きに行った.指揮者なしで〈英雄〉とは! ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番はずいぶん前に一度だけ耳にした記憶がある.あら,川崎さんや榊原さんはここに出ていたのか.ノバホールに立ち見が出るほどの満員だった.午後4時半に会場の外に出たら,西の空はもう赤かった.

◆夜は,どぶろくをあおりつつ,またまた書類作成作業の続き.明日になれば諸方面からの督促がきっとあるぞあるぞあるぞ.

—— 今日のうちにもうあったあったあった.うああ…….災厄が来ないうちに早く寝てしまおう.

◆本日の総歩数=1254歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.7kg/−1.3%.


10 februari 2008(日) ※ 東川口にて神亀が運ぶ穴子を味わう

◆午前5時にいったん目覚めるものの,二度寝.午前7時半にやっと起き出す.雨はすでに止み,曇りのち晴れ.午前はちょこちょこと書類づくり.

◆北風も吹かず,暖かな晴天.12:41のTX快速で南流山へ.武蔵野線に乗り継ごうと思ったら,浦和あたりでの信号トラブルで上下線とも不通との駅内放送あり.プラットホームで半時間ほど立ち往生していたら,幸いぽつぽつと電車が走り始めた.午後2時前に東川口で下車.向井さん・山田さんとともに,戸塚公民館にタクシーで乗りつける.2階の会議室にて,生物地理学会の役員選挙開票作業をする.午後4時すぎに終了.

◆連れ立って,近くの〈すし処・寿〉に入る.寿司屋なのだが,いろいろとおつまみがそろっていた.〈久保田〉の銘柄がずらっとそろっていたが,埼玉だから当然ご当地の〈神亀〉がメインになる.そして,穴子をちょいと.

—— まだ日も高いうちから呑み始めたので,午後6時過ぎにはもういっちょあがりということでお開き.東川口から逆コースでつくばに帰り着いたのは午後7時半のことだった.とても早い仕上がりでしたっ.

◆車中読書 —— Jürgen Haffer『Ornithology, Evolution, and Philosophy : The Life and Science of Ernst Mayr 1904-2005』(2007年刊行, Springer-Verlag, ISBN:978-3-540-71777-5 [hbk] / ISBN:978-3-540-71778-2 [pbk] → 目次|版元ページ:hbk / pbk)の第5章「Biological Species and Speciation: Mayr's First Synthesis」(pp. 183-241)を読み始める.

当時の英語圏では,進化プロセスに対してより深い関心を示す数理集団遺伝学が中心だったと著者は言う.その状況の中で,Ernst Mayr や Theodosius Dobzhansky のような“大陸”系の博物学・体系学の素養をもった研究者たちがどのようにして道を切り拓いていったかが本章で述べられる.1930年代後半の“Synthesis前夜”では,インフォーマルな人的ネットワークがしだいにつくられていく過程が印象的だ.この時期の Mayr の主著である『Systematics and the Origin of Species』(1942)のもとになった同名の連続講義(The Jesup Lectures, 1940)は,動物分類学者の Mayr と植物分類学者の Edgar Anderson との連名講義であることを初めて知った.初版のタイトルに「From the viewpoint of a zoologist」というサブタイトルが付けられた理由はそこにあるのだろう

◆帰宅後,忘れないうちにオンライン注文:Thomas Junker『Die Zweite Darwinische Revolution : Geschichte des Synthetischen Darwinismus in Deutschland 1924 bis 1950』(2004年刊行,Basilisken Press,635 pp.,ISBN:3925347674 [hbk & CD-ROM]).The Evolutionary Synthesis の時期のドイツの動向を論じた本.600ページを越える大著らしい(付属のCD-ROMっていったい何?).いくつかオンライン書店を当たってみたのだが,結局〈NHBS Environment Bookstore〉に注文した.

◆短期決戦型の呑み方をしてしまったので,帰宅後はほぼ invalid になってしまった…….神亀おそるべし.

◆本日の総歩数=6995歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.6kg/−1.0%.


9 februari 2008(土) ※ またもや雪が舞う連休初日を迎える

◆ゆるゆると午前7時前まで自堕落睡眠をする.曇り.天気予報では今日の午後からまた雪が降るという.

◆備忘メモ(1) —— 先日届いた月刊『みすず』の読書アンケート特集を読んでいたら,長野敬さんが:Robert J. Richards『The Meaning of Evolution : The Morphological Construction and Ideological Reconstruction of Darwin's Theory』(1992年刊行,The University of Chicago Press,ISBN:0-226-71202-8 [hbk]→目次)をいま訳しているという文章が目に留まった.あの本は,コンパクトながらいい内容なので,翻訳価値はあるでしょうね.やはりあの版元ですか? 個人的には,近刊予告されているヘッケル伝を早く出してほしいな.

◆備忘メモ(2) —— イギリスの The Guardian 最新号でダーウィン特集が組まれていて,フリーで読める:The Guardian (February 9, 2008), Darwin Bicentenaryからのリンクをたどること.Richard Dawkins の「Why Darwin matters」などなど数本の記事が最新号に掲載されている.

◆午前いっぱいは曇っていたが,昼前からちらちらと雪が舞い始めた.と思ったら,いったん晴れ間がのぞいて,今度は冷たい霙になる.雪と雨の境目の気温なのだろう.研究所にて,確定申告の書類を揃えたり,源泉徴収票やら領収証やらいろいろと夕方までかかる.今年は早めに提出できるだろうか.それにしても,連休初日というのに,ワタシはこんなところで何をやってるんでしょーねー.

—— 午後4時の気温は2.0度.氷雨が降り続く.夜になってもなお降り続く.しかし,雪にはならなかったようだ.関西から東海にかけてはよく積もったらしい.

◆今日もイマイチ非生産的な日だった.明日の午後は,東川口にて生物地理学会の投票作業がある.

◆本日の総歩数=5497歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.6kg/+1.5%.


8 februari 2008(金) ※ Vielen Danke für Ihre Antwort

◆午前4時20分起床.星空と北風.気温1.5度.白み始めた東の空で明けの明星とつるんでいる惑星はなんだっけ?

◆午前のこまごま —— 駒場レポートの変更処理は必要ないことが判明した.単に,ぼくからの受領確認メールが届かなかっただけのようだ.これで成績報告書を本郷に郵送しても問題なしだ./音羽から“ファン・レター”の転送あり.あらまあ.

◆ドイツの Boma の古書店から届いた本 —— Rolf Löther『Das Werden des Lebendigen: Wie die Evolution erkannt wird』(1983年刊行, Urania-Verlag, Leipzig, ISBNなし).進化学哲学の本.“朱色”との二色刷りというのは,一昔前にはあった古いスタイルだ.本書は,生命の多様性と歴史性に関する前半部:「Mannigfaltigkeit und Geschichtlichkeit des Lebendigen」(pp. 11-59)と,系統推定に関する後半部:「Auf den Spuren der Evolution」(pp. 60-130)のふたつの大きな章から成っている.種概念をめぐって論議される「Was ist eine Art?」(pp. 90-105)という章では,旧共産圏の弁証法的唯物論の立場から“種”の実在性が擁護されている.このあたりのことは突っ込む必要がある.

◆午前10時.快晴だが,冷たい北風が吹きつける.気温5.9度.

◆昼前の郵便局にて「国際送金」と格闘するワタシ —— Berlin の Antiquariat Weiland から,オンライン発注した古書の支払いに関するメールが届いた.ドイツ郵政省の郵便局(Postbank)経由で送金してほしいとのことだ.クレジットカードでの支払いであれば,この上もなくラクだったのだが,カード支払いの場合はいったん注文をキャンセルして,カードで再注文しなければならないという.そんなリスクは負いたくないので,日本の郵便局から振替えで送金してもらうことにした.

ゆうちょ銀行で国際送金について調べてみたら,幸い最寄りの筑波事務所の中にある「筑波農林研究団地内郵便局」でも扱っているという.そこで,午前11時過ぎに筑波事務所に勇んで駆けつけたのが災厄の始まりだった.何よりもまず,最近はカード決済がほとんどで,郵便局から国際送金をするケースがほとんどないらしい.係りの人がマニュアル片手にあたふたしている.それでも,送金依頼書を書くだけ書いて手渡したら,それは日本とドイツとの郵便口座間の送金用で,現金での支払いは別の書式であることがわかった.ここでまず第1回目の書き直し.

さて,新たに書き直した依頼書を窓口に出して,念のためドイツ国内での手数料は必要ないかと確認したところ,「EUR 5.00」が余分にかかってしまうことが判明した.金額がちがってしまうので,第2回目の書き直し.さらに,振込人の身分証明書の住所は自宅なのに,依頼書は研究所宛だということで,拇印訂正をさせられる.

そろそろいやになってきたところで,とどめを刺すように,今回の送金には「2,500円」の手数料がかかると言い渡される.あのぉ,本の代金は送料込みでたった「EUR 20.00」なんですけどぉ…….

そんなこんなで,たった「EUR 20.00(=3,140円)」の本を買うために,日本側の手数料「2,500円」とドイツ側の手数料「EUR 5.00」が上乗せされ,結局「6,424円」も支払うことになった.本代の2倍以上じゃん!(がっくり……) おまけに,郵便局内での送金申請書類の再三の書き直しと修正で1時間以上も拘束されて,気力と体力が十分過ぎるほど消耗してしまったし.

—— しかし,これだけのムダな時間を費やし,あれほどの理不尽な金額を支払ったおかげで,長年探していた:Rolf Löther『Die Beherrschung der Mannigfaltigkeit: Philosophische Grundlagen der Taxonomie』(1972年刊行,VEB Gustav Fischer Verlag, Jena,ISBNなし → 目次)は,ほぼまちがいなく入手できることになった.結果よければすべてよしということで太っ腹に許してあげよう.>ゆうちょ銀行くん.

◆快晴の昼休み.郵便局から実験圃場を通ってとぼとぼと農環研に戻る.気温7.9度.割と暖かいかもしれない.Antiquariat Weiland には「Ich hatte heute den Betrag von 20,00 EUR überwiesen. Alles Gute und viele Grüße aus Japan」という送金完了メールをすぐ書き送った.この件はこれでやっとカタがついた.

◆いずれにしろ,旧共産圏の専門書を古書で入手することは困難を極める.計画出版で発行部数がもともと少ないのか,単に書籍流通のアンバランスの問題なのか.

◆午後のこまごま —— 昨年10月の湯川秀樹シンポジウムでのぼくの講演スライド(大きなpdfファイル)が公開されていることに気づいた.このプロシーディング原稿……(冷汗)./『生物科学』誌の第59巻第4号(2008年もうすぐ出版予定)に掲載される直海俊一郎さんの【種】原稿:「便宜的な分類単位としての種と進化の単位としての個体群」ゲラが届いた.pp. 2-45 だから,44ページもある巨大な論考だ.解題を書けという編集長の鶴の一声で,数ページの記事を急遽書くことになった.昨年の生物地理学会大会で聴いた講演に即した内容だろう.ぼくは別の“軸”を刺しこむことにしよう.

◆今日は生産的なことは進まず,かといって雑用もできず,実によくない一日だった.

◆夜はノバホールのロビー(「ホワイエ」)にて,アンサンブル〈音楽三昧〉(→公式サイト)による,ドビュッシーとラヴェルのコンサート.たった5人で〈ラ・ヴァルス〉を演奏したぞ.しかし,前はショスタコーヴィチの〈交響曲第5番〉をやった“前歴”があるもんなあ.※騒音を避けるためロビーの暖房が止められたので,聴衆にはホッカイロが配布された.

それに触発されて,先日,エキストラ出演の依頼があった松戸シティフィルハーモニー管弦楽団の第30回定期演奏会の〈展覧会の絵〉(ムソルグスキー/ラヴェル編)に出ようかなと思い始めた.本番は5月18日(日),練習は同月10日(土)と17日(土).担当する楽器は,シロフォン,グロッケンシュピール,そしてカリヨン.

◆本日の総歩数=8109歩[うち「しっかり歩数」=2714歩/25分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.5kg/−0.7%.


7 februari 2008(木) ※ 日射しが戻り,にわか閻魔様となる

◆午前4時20分起床.前日の天候を引きずって路面は濡れているが,だらしなく水たまりのまま凍結することもなし.気温0.8度.

◆近刊の献本をいただく —— ピーター・D・ウォード[垂水雄二訳]『恐竜はなぜ鳥に進化したのか:絶滅も進化も酸素濃度が決めた』(2008年2月15日刊行[近刊],文藝春秋,ISBN:978-4-16-369960-8 → コンパニオン・サイト[近日公開]).原書は:Peter D. Ward『Out of Thin Air: Dinosaurs, Birds, and Earth's Ancient Atmosphere』(2006年刊行,The National Academies Press [A Joseph Henry Press Book], ISBN:0-309-10061-5 [hbk] → 目次書評版元ページ).

一昨年の秋のことだが,文藝春秋からこの原書と別の本の“リーディング”を依頼され,通読して翻訳に値するかどうかのレポートを提出した.各章ごとの要約もすでに公開してある(→ 前半後半).地球上における酸素濃度の変遷に関する新たな知見に基づいて,地質時代ごとの酸素濃度に適応するように生物たちが進化してきたという仮説を提出している.「酸素と進化」というテーマを中核として,昆虫から恐竜そして鳥類にいたるまでのさまざまな生物の消長が,長期にわたって変動する酸素濃度との絶えざる進化的追跡劇がもたらしたという大胆な主張をする.

この原書をリーディングしたのち,本書の翻訳についても文藝春秋から依頼されたのだが,それだけの時間が取れそうになかったので,ぼくの代わりに垂水雄二さんを推薦した.うまく話がまとまって,今回の翻訳出版にいたったのはたいへんよかったと思う.

原書は必ずしも親切な記述を心がけたものではなかったが,今回出版される訳書では,訳注や図版などが追加されていて,読者への便宜がはかられている.また,大量の引用文献については,近日公開されるはずのコンパニオン・サイトに掲載されると訳者あとがきには書かれている.

◆10時半の気温は5.9度.快晴.空気は冷たいが日射しは暖かい.春の予感.午前のこまごま —— 現実に引き戻されて,駒場「生物統計学」の成績評価と集計を始める.これがまた大仕事で,2回のレポートと出席状況などを勘案して評点を決めないといけない.

—— 当の然で,昼休み返上となる.

◆午前からアタッカで続く午後のこまごま —— 結局,成績集計が終わったのは午後4時すぎだった.明日締切の高学年および他学部からの受講者の成績を先につけて,スキャンした画像を本郷の事務室にメール送信する.残りの成績報告書は明日郵送で返送することにしよう.これにておしまい.

◆〈TiddlyWiki〉その後 —— 先月末から TiddlyWiki を使い始めてもう10日になる.たいへん使いやすいツールで,パソコンの“メモ帳”がわりに重宝している.もともとアタマで覚えるよりは,こまめに「紙」に覚えさせるという習慣をここ20年ほど励行してきた.不要コピーを4分割した“紙束”を備忘メモ用紙として研究室や自宅の方々に積み上げてある.実際,こうするようになってから,やるやらないは別として,少なくとも失念することはなくなった.

この“紙束メモ”をどうやってパソコンの中に移植するかは長年の試行錯誤の連続だった.その結果として,Windows PC ならば Wz Editor に付属する〈Wzボード〉を,Macであれば付箋紙ウィジェットを使うという暫定的措置に落ち着きつつあった.ただし,このやり方だと“メモ用紙”がOSごとに別々で,簡単にシンクロさせることがどうしてもできない.備忘メモは単一が理想だ.いくつもあると内容のズレやミスが生じる危険があるからだ.

ところが,今回導入した TiddlyWiki であれば,Win / Mac の環境を問わないという大きな利点がある.htmlファイルひとつを持ち歩くだけですむということだ.しかも,自分のウェブに最終更新した TiddlyWikiファイルを置いておけば,必要に応じてダウンロードして,新しいメモ(tiddler)を付加することができる.持ち歩く必要すらない.この簡便さというか利便性は,使ってみれば誰にでもすぐに実感できることだろう.

もちろん,Wikiのもつさまざまな記法やタグを利用すれば,溜まった項目のカテゴリー化や階層化,そして検索機能を何の手間もいらずに利用することができる.ウェブ・ブラウザーを利用した“メモ用紙”なので,リンクをわざわざ張るまでもなく記されたURLがそのままつながる.ユーザーがしなければならないことは,インターネットから拾ってきた情報や日常的に出くわすさまざまなことどもを,どんどん書き散らしていくことだけだ.

これから TiddlyWiki を使ってみたい向きには,「TiddlyWikiのススメ」や「TiddlyWiki Style」など,日本語で書かれたいい解説記事が参考になります.

—— ngt さん,いいツールを紹介してくれて,ありがとうね.

◆東京農大の人事書類は積み残しになってしまった.明日やるしかないのかなあ.※「今週締めきり」と言われたよーな気がするが……(汗).

◆午後5時に帰宅する.夕方はやっぱりまだ寒い.Dayz Town の〈ボン・サンテ〉の日本酒コーナーに,うちにある愛友酒造の〈隠れ造り〉が数本並んでいた.こりゃ朗報だ.これに安心して,夜はまた一本空けてしまって,またもや炭酸ガス発生装置と化す.こんなに連日どぶろくをあおっているよーでは,何だか荒んだ生活をしていると誤解されてしまいそうだ.

◆うう,終わったはずのコマバ作業がまたずるずると再開 —— この期に及んでレポートを送ってこないでよぉ.まあ,不着だからしかたがないか.明日,封筒に詰めた成績報告書を修正しないといけないな…….

◆本日の総歩数=6076歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.2kg/+0.2%.


6 februari 2008(水) ※ また朝から雪が降り続いて凍える

◆午前4時20分起床.曇り.北の風.気温0.8度.予報では,午後には雨か雪になるという.

◆しかぁし,午後を待つまでもなく,早くも朝8時過ぎには雪がちらちらと舞い始めてきた.午前9時にはもう本降りだ.また一面が銀世界となる.先日,都心で積雪した日よりも,今日の方がつくばの降りは強いような.それにしても,今年はよく降るねえ.

◆午前のこまごま —— 朝イチでろうきんに行って所用をすませる(しかし,ハンコと写しをもってまた来ないといけない).午前10時.粉雪がさらさらと降る.気温0.2度.明け方よりも低くなってきたぞ./ドイツ語圏のオンライン古書店〈Antiquario〉を介して,長年探している古書が何とか入手できそうな気配.当面は,相手方であるベルリンの古書店からの返事待ち.話がまとまればいいのだが./駒場からのレポートが霰のように降ってきた.すかさず返事を打ち返す.

◆わーど,死ね死ね死んでしまえっ —— 東京農大から個人調書の書式に関する“修正意見”(“改善意見”ではなく)がわんさか返ってきた.まず,西暦ではなく元号を使うべし,とのこと.農水省に入って以来,事務書類で元号を使ったことはほとんどなかったので,西暦との対応がぜんぜんわからない.Mac のウィジェットに変換ツールがあったことを思い出し,ちくちくと年号を置換する.書き手に理不尽な試練を与える罫線たっぷりの書式はそれだけで十分に脱力ものだが,さらに細かい書式指定が障害物のようにいろいろ置かれている.きー.※しかも,業績書の方はまだ手つかずだったりする…….

◆購入予定新刊メモ —— 『百学連環:百科事典と博物図譜の饗宴』(2007年刊行,印刷博物館,ISBNなし → 印刷博物館ページ).昨年9月から12月にかけて印刷博物館で開催されていた同名の企画展示の出版物.チケットをもらっていて行くつもりだけはあったのだが,飯田橋に向かうことができなかった.この企画展は,雑協・書協創立50周年記念世界出版文化史展と銘打たれていた.博物誌と百科辞典の本だそうだ.

◆タイミングよく雪が止んだ昼休みの歩き読み —— ルカ・トゥリン(山下篤子訳)『香りの愉しみ,匂いの秘密』(2008年1月30日刊行,河出書房新社,ISBN:978-4-309-25219-3)を50ページあまり読む.雪の積もった畑地に特徴のある足跡が点々とついていた.逆から眺めると「人の顔」にも見えるが,おそらく野ウサギの足跡だろう.昨夜のうちにぴょんぴょん飛び跳ねたらしく,「顔」と「顔」の間隔は1メートル以上も離れている.今日の新雪で足跡エッジが丸く埋まりつつある.参考:〈足跡図鑑〉.

◆歩き読みを終えて帰ってきた頃を見はからうように,また雪が強く降り出した.しかし,気温と地温がやや高いせいか,あまり積もりそうにない.

◆午後のこまごま —— 農大の個人調書の完成と世田谷への送信.折り返し,これでよろしいとの評定あり.しかし,まだ先がある./今月の出張伺いと振替休日の届けを3件出す./契約職員の次年度更改についての書類をあわてて提出する.そんなこんなで,もう午後3時だ./降り積もる雪のように駒場レポートがいくつも着信する.今日が締切だから,コレからが“豪雪”になるのかも.

◆午後3時半から半時間あまり,『Modern Morphometrics in Physical Anthropology』の輪読セミナーの第9回.Chapter 3 : Philipp Gunz, Philipp Mitteroecker, and Fred L. Bookstein「Semilandmarks in Three Dimensions」(pp. 83-86).前回の拡張として,曲面上を動く準標識点の位置を最適化するアルゴリズムの解説.曲線上の場合は,曲線の接線方向ベクトルの係数を最適化するという方針だったが,曲面上の場合はその標識点の散布図の第1主成分と第2主成分が張る接平面上で準標識点の位置をiterativeに最適化する(the basic algorithm).具体的には,主成分の張る接平面の中で,屈曲エネルギーが最小となる新たな座標値を求め,さらにプロクラステス整列を行なって再び主成分分析を行ない,接平面を更新するというアルゴリズムだ.このやり方だと行列代数による線形計算のみですんでしまう.しかし,移動後の準標識点が現実の曲面から離れてしまうので,接平面から曲面への正射影による戻すという処理を施す(the extended algorithm).このアルゴリズムを繰り返して得られた収束値が,準標識点の最適な位置ということになる.

◆夕刻のこまごま —— 神保町から電話あり,企画と目次だけ出したまま放置していたアノ本についてのプッシュでした.同シリーズの他の著者たちの動向をそれとなくうかがう.今年度中に第1章を書きましょう,とか返事したりして.年頭に予告してあるので,逃げるわけにはいかないし./農環研の新しい個人業績評価システムがいよいよ動きだすぞ.登録すべき物件はさくさく登録しよう.

◆午後5時すぎに撤収.雪かと思ったら,降っていたのは霙だった.そのうち限りなく雨に収斂していった.

◆夜は,今日,潮来の「愛友酒造」から届いたばかりの季節限定どぶろく〈隠れ造り〉をぐいぐいと一本空けてしまった.といっても,アルコール度数6〜7度で,600mlしかないのだが.酸味が効いた活性日本酒で,これがどぶろくというものかと開眼したしだい.「どぶろく」ということばから連想されるような“べたつく甘さ”はまったくありません.もちろん麹の「こく」はあるのだが,どちらかというとサイダーという感じ.だから,呑んでしばらくすると,炭酸のげっぷが何度もこみ上げてしまう.

—— この〈隠れ造り〉は今の厳冬期にたった500本しか仕込まないそうで,口コミで飛ぶように売り切れてしまったと,醸造元サイトには書かれている.“なまもの”の日本酒ならではの旬のものということ.

◆日が変わる直前になって,どとーの如く駒場レポートが押し寄せてきた.みなさん,もっと時間的な余裕をもって“投稿”しましょーね.気が焦るときほど予期しないメール不着が起こるものなので.けっきょく,午前0時半まで受領の返信メールを送り続ける.

—— さて,次は成績評価と報告書の作成だ.

◆本日の総歩数=10578歩[うち「しっかり歩数」=3563歩/31分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=0.0kg/+0.5%.


5 februari 2008(火) ※ 早春の濃霧,朝日に靄が湧き上がる

◆午前4時半起床.乳白色の濃霧が景色を包み込む.寒い.気温マイナス2.7度.研究所にてコピーをがーがー取る.いったい何やってんだか.

◆明け方の濃霧はいつもなら朝日とともに消えるのだが,今日は8時になっても9時になっても消えない.そのうち朝日がさんさんと射し込んできて,そこら中の裸地や芝地や圃場からは湯気のように靄が湧き上ってきた.とても珍しい光景だ.気温の低さと日光であたためられた地温の差が大きくなったからだろうか.午前11時の気温は2.9度しかないが,日射しが暖かい分,体感的にはけっこう快適だ.

◆午前のこまごま —— トロントの Dan Brooks からメールあり.来年にメキシコで開催が予定されている第9回国際系統進化生物学会〈ICSEB-IX〉の日程が「2009年7月5日〜10日」に決まりそうだとの council member への通知.この4月末に開催予定地ベラクルスに下見に行くそうだ.委員会もようやく動き始めるのだろう.メキシコでイベントしません?/ そういえば,パスポートが今年の夏で切れる.アルゼンチンに行く前に更新しないと./ 東京農大の履歴書写真をひねり出さないといけない…….

◆昼休みのこまごま —— 外はとてもいい天気なのだが,クラく引き籠って,本やらCDの移動を始める.今あるCDプレイヤーはさすがに10年近くも使っていると“音飛び”が目立つようになってしまった.早春の霧の晴れた昼休みはやはりドビュッシーでしょうか.

◆午後のこまごまはユウウツ —— 契約職員の更新は今週末までに決済すること./ろうきんにはあした朝イチで./散発的に着弾する駒場からのレポートに迎撃返信メールを撃ち返す.お願いだから,「ベイズの定理」くらいで玉砕しないでね.階級闘争に打ち勝って“鉄のベイジアン”になるにはまだ先が長いのよ.

◆『月刊みすず』の今年の「読書アンケート特集」 —— 『月刊みすず』の2008年1/2月合併号[第50巻第1号:通巻557号](2008年2月1日発行,みすず書房 → 版元サイト)が送られてきた.ここ数年,毎年寄稿しているので恒例年中行事の一つになりつつある.ぼくのセレクションは,pp.62〜64 に載っている.100名を越える他の寄稿者の書評文はそのうち読むことにしよう.それにしても活字量が多いなあ.目が痛くなりそう.あ,田中純さんが『系統樹思考の世界』を取り上げてくれている(pp. 54〜55).ダンケ! 彼の指摘するように,「新書という形式が自然科学啓蒙のための良質な媒体となっている状況がうかがえよう」(p. 55)には多くの人が納得するだろう.自然科学にかぎらず,いま“新書”[だけ]はとても元気だと思う.

◆さらにさらに極度にユウウツな農大人事書類づくり —— とりあえず,履歴書を含む「個人調書」は書き上げて,印刷&押印しましたです.数々の難関が待ち構えているのが「業績書」.書き始めてすぐ意識がなくなった……./だもんで,3ヶ月ほど暗闇に封印しておいた,蘇生 PowerBook くんのリハビリを開始することにした.単なる現実逃避にすぎないが,時間と手間がかかるという点で,実に充実した現実逃避だ.南大沢で空中ジャンプをして生死の境を彷徨ったのだが,つらい外科手術を乗り越え,また戻ってきてくれたのはありがたいことだ.バッテリーなんぞ完全にゼロ%になってるし.修理されたために,Mac OSX が退行して「10.2」だから,まずは「Panther」を飛び越えて「Tiger」にした上で,ものすごくたくさんのアップデート・パッチを当てまくる.いくら時間があっても足りない./ときどき,罪滅ぼしに農大書類をつついてはみるもののやっぱり気力が続かないので,よそ見して Mac リハビリに励む./諸設定やら,ソフトウェアのダウンロードやら,ネットワークまわりの整備やら,することはたくさんあるのだが,いくつかは明日まわしにしよう.

◆日がかげり始めた午後4時の気温は8.0度.ひょっとして最高気温は10度くらいあったのかもしれない.

◆農大書類のドロヌマはなお続く…….鬱な気分を反映して,BGM は,軽やかなドビュッシーから一転,クセナキスの不協和音の咆哮と引きずられリズムだ.アンサンブル・アンテルコンタンポラン,うまいじゃないか.やけくそだあ.

—— とりあえず,個人調書だけメールで送って,業績書は明日まわしね.

◆帰宅したら,さらなる頼まれ原稿が舞っていた.げ.

◆本日の総歩数=8094歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/−1.1%.


4 februari 2008(月) ※ 立春の日射しに残雪もゆるむ

◆午前4時起床.星空.無風.道端や田畑には雪がまだ積もっている.路面はかちかちに凍結.気温は午前4時半はマイナス2.5度だったが,2時間後にはマイナス3.3度にまで冷え込んだ.今日は暦では立春だが,厳しく冷え込んだ.研究室にて早朝のおまじないをする.

◆午前のこまごま —— 午前9時半の気温は3.6度.よく晴れて早春の太陽がまぶしい.午前いっぱいは『』のゲラを読み,修正点をチェックする.午前11時に音羽に訂正箇所リストをメールで返信.これにて校了.ついでに,『本』のサイトを更新する./東大の成績集計作業の続き.レポートは明後日が締切なので,それまでに出席票の方はケリをつけたい.評定基準について問い合わせる./背負ってしまったオーガナイザー業務について考え始める.四方八方から人集めする「胴元」みたいなもんかいなあ.

◆立春の残雪を踏みしめて歩き読み —— ルカ・トゥリン(山下篤子訳)『香りの愉しみ,匂いの秘密』(2008年1月30日刊行,河出書房新社,ISBN:978-4-309-25219-3).長大な節:「匂いのランドスケープ」(pp. 64-108)がことのほかおもしろい.新たな香りを求めて,分子構造の“探索空間”をかけずりまわる話だった.

ファムファタールなビターアーモンドの香りがする直鎖アルデヒドの場合,同じファミリーであっても,炭素原子数が「偶数」であれば“柑橘系”だが,「奇数」ならぱ“ワックス系”の香りがする.〈シャネル5番〉は絶妙な炭素数がもたらす香りなのだそうだ(p. 73).

匂いの“分子探索空間”を移動する手段について,著者は次のようなたとえをする:

炭素をいじるのが匂いの空間を散歩するようなものであるのに対して,官能基をいじるとたいていは,ひとまたぎで何十キロも行く魔法の長靴をはいているかのような影響が出て,ときにはまったくちがうところに行ってしまう.(p. 76)

——“匂いの帝王”は空を飛べるのだろうか.

◆午後のこまごま —— 進化学会の引き継ぎ残務処理をいくつか./計算結果が返ってくる.さらなる依頼を./メーリングリストの火山灰を吹き払う.

◆アレも絵なら,コレも絵だ —— 宮下誠『ゲルニカ:ピカソが描いた不安と予感』(2008年1月20日刊行,光文社[光文社新書335], ISBN:978-4-334-03436-8).本書は,ピカソの〈ゲルニカ〉という一枚の絵の成り立ちから読み込みまでを一冊を費やして論じている.読まないうちから引いていたりして……./ 磯辺勝『江戸俳画紀行:蕪村の花見,一茶の正月』(2008年1月25日刊行,中央公論新社[中公新書1929], ISBN:978-4-12-101929-5).江戸時代の代表的な俳人22人をとりあげ,その俳句に添えられた俳画を論じた本.カラー口絵といい,本文中に挿入されたモノクロの絵といい,そこはかとなく“脱力系”な絵柄が多く,その点では〈ゲルニカ〉とは対極的かもしれない.登場する俳人は,松尾芭蕉・井原西鶴・与謝蕪村・山東京伝・宝井其角・小林一茶ら.

◆夕方ののけぞり —— 返送した生物統計学シラバスのうち,横浜国大の分は問題なさそうだった.おおいに問題ありは東京農大だった.要するに,シラバス以前でつまずいたらしい.先方の話では,農学科で客員教授であったとしても,応用生物化学科では非常勤講師扱いなので,人事書類一式をあらためて耳を揃えて提出しなければならないことがこの期に及んで発覚したそうだ.

これは一大事だ.東京農大の人事書式は,ことのほか微に入り細に入り“決まり事”がたくさん制約として科されていて,それをすべてクリアするというのは難物だ.しかも今週中にとのこと.さてどーしましょ.※やるしかないの?

—— 農学科の人事書類をヨコ流ししてもらえれば八方丸くおさまるはずなのだけれど…….

◆最後の最後で気力が尽きた夕方,暗闇をとぼとぼと帰宅する.

◆本日の総歩数=12721歩[うち「しっかり歩数」=4425歩/40分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−0.4%.


3 februari 2008(日) ※ 雪また霙また雪

◆午前4時頃にいったん目が覚めた.窓の外を見たら,もう細かい雪が降り続いていて,大清水公園からカピオにかけて一面真っ白に雪化粧.二度寝して午前6時半に本格的に起きた.さらに雪は降り続いている.天気予報によると,今日は夜までこの調子で降り続くらしい.都心でも雪が積もりつつあるという.

◆午前のお仕事 —— 〈R〉の〈shapes〉パッケージが昨年アップデートされ,三次元表示機能が充実した.それに合わせて,一昨年の暮れに書いたぼくの解説記事「R の形態測定学パッケージ〈shapes〉:「いろは」の「い」」も更新することにした.「shapes3d()」と「shapepca3d()」から出力される画像をいくつか,そして関連する説明文を3KBあまり加筆した.午前11時すぎに作業終了.アップロード./頼まれ原稿の入力なお続く……./駒場レポートがぽつぽつと届き始めた.

◆早朝は本格的な雪だったが,朝のうちに霙になっているようだ.東京の方がもっと降雪しているというニュース.それにしても,氷点近い寒さで凍える.きょうは真冬日だろう.

◆シンプルでロバストなPCの話 —— ゆえあって,10年以上前に買った東芝の Libretto 60 をテキスト入力に使い始めている.『生物系統学』の印税の一部を当てて,中古で買ったことを記憶している(十万円弱だった記憶がある).Libretto シリーズは,当時としては画期的に携帯性の高いパソコンだった.ぼくのもっているのは Pentium 初代が入っていて,800MB(「GB」ではない)のHDDが付いていた.国内外の学会や書類作成にフルに活躍してもらい,対外的には5年ほど使った.その後,後継のPCがやってきて,ほぼ引退状態で自宅の机上で悠々自適?の生活を過ごしてきた.

今の家に引っ越してからほぼ2年間ほどは,押し入れの奥にしまい込んでその存在を忘れつつあったのだが,先日たまたま転がり出てきたので,こわごわ起動してみたらまったく何の問題もなく起動してくれた.ハードディスクの空き容量はわずか90MBしかない.しかし,エディタでテキストを入力するだけであれば,これで十分だ.バッテリーが老いぼれているのは,寄る年波を考えればしかたがない.しかし,トラブルを起こしそうなソフトはもともと入っていないかすでに駆除したので,シンプルこの上ない中身だ.ハード的にも故障したことはいまだかつてまったくない.矍鑠とした余生を送っている.(拍手)

—— シンプルなほどロバストである証しではないか.※ちゃうか?

◆霙のような氷雨が降る午後のこまごま —— 原稿入力続き./落語家をしている高校時代の同級生からメルマガが届く.『ちりとてちん』関連のウラ情報.ほほー./また駒場から「生物統計学」レポートが./『本』ゲラ,まだですぅ…….

◆夕方,気温が下がるとともに,いっとき雪になるものの,また霙に逆戻り.おそらく茨城県南部は,雪と雨の境界付近の気温だったのだろう.しばし,徘徊と買い物.どこのスーパーにいっても“恵方巻き”だらけ.日本中どこでも南南東を向いて恵方巻きをかじる人がたくさんいるの圖は気色わろし.

◆夜も原稿入力作業は続く.Libretto 大活躍.夜遅くなって,試しのpdfを出力して,今日はおしまい.

◆本日の総歩数=4120歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/+0.3%.


2 februari 2008(土) ※ “ちょいワル”な香りの本を読む

◆午前5時過ぎに起床.やや雲が多い.冷え込む.天気は下り坂で,明日は雨か雪という予報.

◆早朝のこまごま —— 今月の予定を方々のカレンダーやプランナーに記入して同期させる.大小取り混ぜて予定が入っているので,とにかく書きつけておかないことには管理できない.それも方々にメモを残さないとダメだ.ウェブ上の予定表や机横のカレンダー、携帯するプランナー etc.

—— 書きつけたところで,ひとつひとつ消化しないことには話にならないのだが,それはまあ大目に見ていただくということで…….

◆シラバスを書く午前 —— こういうゆるゆるした日にはやっかいな仕事はすましてしまおう.ということで,来年度に予定されている生物統計学のシラバスを書き上げる.東京農大(毎週)と横浜国大(集中)の2校分の必要書類とコンテンツを詰める.年を追ってシラバスとして要求される内容が増える傾向があるが,まだ始まってもいない講義の年間予定なんか立ちませんてば.だから,詳細に書き上げて事前に公開するのは当然だが,講義の進捗をみながら途中でどんどん変更するのもまた必然だ.お客を前にした高座では場の空気を読みながら臨機応変にやるしかないでしょ.

—— 意外に時間がかかって,メールでシラバスを送れたのは午後1時すぎだった.

◆曇りときどき晴れの昼下り.筑波大方面へ歩き読みに出発 —— 香る新刊:ルカ・トゥリン(山下篤子訳)『香りの愉しみ,匂いの秘密』(2008年1月30日刊行,河出書房新社,ISBN:978-4-309-25219-3).著者は“香水の帝王”だそうだ.それだけでもうなんだか“ちょいワル”な雰囲気が匂ってくるのだが,確かに冒頭から快楽的・山師的なアヤシサが行間から香ってくる.もちろん,内容的にいかがわしい本ではけっしてなく,こういう一般向けの本にしては,異様に多くの「分子式」や「化学構造式」が載っている.むしろ,そういう有機化学の詳細な記述と,つくられるアウトプットの使いみちとの落差を楽しむ本なのだろう.

原子一つのちがいが香りを大きく変えるのに,ヒト側の嗅覚メカニズムはよくわからない.化学者としての著者はこの問題に長年にわたって取り組んできた.その香りがどのような言葉で言い表されてきたかといえば:

甘くて,ハーブのようにあたたかく,ややスパイシーな匂いがあり,かなり希釈すると干草のような,ナッツのような,タバコのような香りになる.(p. 35)

まるでマイケル・ジャクソンがモルト・ウィスキーを評するときの文章表現のようだが,上の引用は香水の原料の一つである「クマリン」という物質の香りを述べたものだ.シングル・モルトだろうが香水だろうが,人間がそれをことばで言い表すスタイルは収斂するのかもしれない.しかし,もう少しヤバそうな匂いもある.フジェール・ロワイヤルという香水を評して,著者は次のように言う:

私はふいにわかった.これはバスルームのなかだ! この感じは大便,しかも人さまの大便,ディナーパーティに招かれた家のトイレでその空気をかいだときに受ける,かすかに不快な親密さの小さな衝撃だ.(p. 34)

「不快な親密さ」ったって,アナタ…….いずれにせよ,自然の香りを写実的になぞろうとする“フレーバリスト”に対して,この世にない香りを目指す“パフューマー”は抽象画家だそうだ.こんなふうに描かれると,香水の有機化学はまさに現代に遺された“錬金術”の末裔かと思ってしまう.

—— 本書は自伝的な本だが,この著者を主人公にした別の本:チャンドラー・バール(金子浩訳)『匂いの帝王:天才科学者ルカ・トゥリンが挑む嗅覚の謎』(2003年12月刊行,早川書房,ISBN:4-15-208536-3)という本があるそうだ.“匂いの帝王”とはますますアヤシイ…….

◆天久保の〈Brotzeit〉でパンを調達し,竹園にまわって〈Ben-Bella〉で杏仁豆腐(まったり味)を買って帰宅した.曇ったり晴れたりのすっきりしない天気だ.

◆夕方のこまごま —— 東京農大から折り返し返事があり,シラバス登録はオンラインで行なうので,その連絡が週明けにあるとか./『生物科学』誌の今年第4号の解題はどーですかとの問合せあり.さあ,どーしましょ.

◆本日の総歩数=8343歩[うち「しっかり歩数」=7597歩/66分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.8kg/+0.4%.


1 februari 2008(金) ※ 月の始めは残留アルコールに浸る

◆午前5時半起床.今日も晴れ.寒い寒い.前夜の痛飲の影響がモロに残っている.丑三つ時に一度目覚めたのだが,アルコールの“塊”がずしんとある感じがした.そこまで呑み倒すことはなかったのだが.うう…….

◆よろめく朝のこまごま —— 上野の国立科学博物館にて〈ダーウィン展〉開催予定.前売券はすでに販売されているらしい.四の五の言わず,とにかく行くしかないでしょう.アメリカ自然史博物館が“出張”してくるわけだし.開催期間は2008年3月18日(火)〜6月22日(日).その後,大阪に移動し,大佐か私立自然史博物館にて,2008年3月18日(火)〜6月22日(日)の期間に同じ展示がある./『』の第9回ゲラが送られてきた.1行分削ること.月曜までに返す./東京農大・昆研ニュース no.59が届く.ランビルでの虫取りの話.卒論発表会は,2月16日(土)10:30から.続いて追い出しコンパが午後5時半から.いずれも厚木キャンパスの形態系実験室にて./JICA筑波センターから,昨年の研修生レポートがCD-ROMで届いた.キューバ・コースは今年で終わる.来年からはどうなるのかは未定.別コースで講義を依頼されるかどうかも未定.

◆午前10時の気温5.3度.快晴.空気が乾いている.

◆統計稼業は来年度も続く —— 横浜国大から生物統計学の講義シラバスを送るようにとの指令があった.2月13日まで./そういえば,農大(世田谷)の生物統計学講義についてもシラバスを今月中に送らないといけない.

◆午後のよそ見 —— Ernst Mayr の伝記がやっと届いた:Jürgen Haffer『Ornithology, Evolution, and Philosophy : The Life and Science of Ernst Mayr 1904-2005』(2007年刊行, Springer-Verlag, ISBN:978-3-540-71777-5 [hbk] / ISBN:978-3-540-71778-2 [pbk] → 目次|版元ページ:hbk / pbk).この500ページはずっしりと重いな.さすがシュプリンガー.

◆とてもよい天気だ.カツラくん,がんばれ!

◆午後のこまごま —— 行動計量学会の中に「複雑系研究会」をつくる話が持ち上がっている.お誘いあり./メーリングリストの登録作業をすまし,月例アナウンスを流す準備をする./駒場からのレポートがさっそく届いた.2月6日(水)が締切なので,お忘れなく.昨日の講義後に受けた質問の回答を用意しないといけない.毎回の講義出席票の集計はすべて終わった.

◆波形「〜」の“山”と“谷”が「ウラ返し」になった表記を最近ときどき見かけるが,とても違和感がある.小学館辞典編集部(編)『句読点、記号・符号活用辞典。』(2007年9月17日刊行, 小学館, ISBN:978-4-09-504176-6→目次)によると(pp. 67-70),ユニコードではこの「ウラ返し」字形になるらしい(p.70).それにしても,この「反転〜」に出くわすのは MS Word ドキュメントのことが多いような気がする.何か理由があるのか.

◆レオナルド解剖図集の入手について —— 昨日の駒場講義のあとで質問された:松井喜三(編)『レオナルド・ダ・ヴィンチ解剖図集』(1971年6月20日刊行[2001年4月10日新装版],みすず書房,ISBN:4-622-04993-7)を読みたいのだがどうすればいいかという質問だった.東大であれば,駒場でも本郷でも本書は図書館に入っている(いずれも初版).ちなみに,ぼくがもっている新装版(「2001年東京国際ブックフェア記念復刊」とオビには書かれている)の定価は「5,400円」だった.この本を自分で入手するには古書店をあたるしかないが,いま調べた範囲では「2,900〜8,400円」というリーズナブルな価格帯で買えるようだ.

◆夕方のこまごま —— 月例アナウンスをメーリングリストにやっと流す.即撤収.

◆夜,形態測定学に関する情報を〈R-statistiker〉に流した.〈shapes〉パッケージもtps系ソフトウェアも,自分で使いながら体得・納得していくというのがいいと思います.もちろん,分析ツールの背後のリクツを知ることは大切なのですが,そのためのモティベーションはツールを実際に使うことによって強化されるでしょうから.

◆本日の総歩数=3859歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/−0.2%.


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