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日録2007年12月 


31 december 2007(月) ※ 伊香保の石段街に風花が舞う大晦日

◆午前3時半に起床.大晦日なのに研究所に潜入する.星空.気温マイナス2.1度.いたずらにごそごそするものの,未完の大仕事はどーせ来年まわしだし,年内に撃つべきトドどもは昨日までにすでに始末完了したので,日録を更新したり,最後のメーリングリスト管理作業をしてみたり.午前5時に撤収する.

◆温泉に行く予習として,途中で放り出していた:田山花袋『温泉めぐり』(2007年6月15日刊行, 岩波書店[岩波文庫 31-021-7], ISBN:9784003102176)の「伊香保温泉」の節を再読する.明治半ばからから昭和31年まで渋川から伊香保まで通っていた伊香保電鉄についての記述がある.こういう軽便鉄道は伊香保にも草津にもかつてはあったのだが,すべて廃線となっている.水沢停留所の近くにある「船尾滝」に【ふにゅうのたき】とルビがふってあるが(p. 76),【ふなおたき】がきっと正しいだろう.

◆午前6時半,夜明け前の冷え込みの中,つくばを出発.年末年始の帰省ラッシュで道路事情が悪そうだったが,幸い常磐道→外環道→関越道のいずれもまったく渋滞がなく,2時間もかからないうちに高崎に到着した.快晴だが,空っ風が厳しい.昼前に高崎を出て,水沢観音を経由して,伊香保温泉に入る.駐車場からケーブルカーであがって,〈景風流の宿・かのうや〉にチェックイン.北風に乗って風花が飛ぶ.上越の山々は雪雲がかかって,雪が降り続いているようだ.まずは一風呂浴びてから,石段街に出撃する.大晦日の昼下りにここにいる人たちの多くは,そのまま泊まって新年を伊香保で迎えるのだろう.

◆アチック・ミューゼアムの日々 —— 拵嘉一郎『澁澤敬三先生と私:アチック・ミューゼアムの日々』(2007年10月17日刊行,平凡社[神奈川大学日本常民文化叢書7],ISBN:978-4-582-40617-7 → 版元ページ目次).神奈川大学日本常民文化研究所出版物の1冊として出された新刊.

澁澤敬三に関わる昔の本をひもとくと,この著者の名前が出てくることがあった.1914年の生まれというから,もう90歳を越していることになる.今回の新刊と同じシリーズ〈神奈川大学日本常民文化叢書〉の第1巻として,著者の出身地に関する民俗学書『喜界島風土記』を1990年に出している.今回出た新刊は,第二次世界大戦の頃から戦後にかけて,澁澤敬三が運営した「アチック・ミューゼアム」での民俗学研究とそれを支えた人びとのことが書かれた章が大きいようだ.

◆伊香保の泉源 —— 石段街を流れる温泉はもちろん,上流にある公共の露天風呂もそうだが,伊香保温泉は鉄分を多く含む“鉄気”のある湯が特徴で,飲泉するのがとてもつらい.しかし,〈かのうや〉は泉源が異なり,メタ珪酸を多く含む無色透明の泉質だ.この温泉街には外湯というか共同浴場がほとんどなく,湯巡りをする愉しみがあまりない.露天風呂はぬるいというし,石段街下の〈石段の湯〉は観光客で混み合っているという.いきおい,石段の純粋昇降運動を繰り返すことになる.途中の酒屋で地元・吉岡町の「船尾瀧」の大吟醸を買い(もちろん【ふなおたき】と読む!),増田屋佃煮店で生醤油で煮しめた佃煮を求める.昼間からちびちび呑み始める.

◆午後11時過ぎ,〈お多福行列〉が石段を上る時刻に合わせて,伊香保神社の境内に向かう.甘酒と年越し蕎麦が無料でふるまわれた.大晦日の夜の冷気の中を,蝋燭に照らされた石段を〈お多福行列〉が上ってくる.境内にたどり着いたお多福の一行は神殿前で一本締めをして,儀式はおしまい.とても素朴.二人の選ばれしお多福さんから御神酒をいただき,多忙な「2007年」はとても伝統的に締めくくられたのだった.旅館に帰り着いたら,もう「2008年」になっていた.

—— 本年はたいへんお世話になりました.来年もよろしくお願いいたします.>読者諸氏.

◆本日の総歩数=11088歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.7kg/+0.2%.


30 december 2007(日) ※ 歳末トド撃ち最終日は雷が鳴り響く

◆午前4時起床.まだ小雨がぱらぱら降りかかる.研究所に直行.気温8.5度.今日も冷え込みなし.さすがに御用納めを過ぎたこの時期になると,未明の所内に人気はない(いつもないけど).プッチーニ〈ラ・ボエーム〉を久しぶりに聴きながら,歳末トド撃ちの最終段階を迎える.

◆夜明け前の大立ち回り —— 首都大学東京が何をとち狂ったか,非常勤講師の履歴書・業績報告書・振込依頼書を提出せよと言ってきた.毎年毎年出講しているのに,何を気まぐれなことをと思ったのだが,12月21日締切で,このまま年越しさせるのは気持ちがよろしくない.ええいと,4枚の用紙にさらさらっと“達筆”な手書きで,必要最低限の事項を記入し,ささっと返信封筒に封印してしまった.午前5時.※読めるもんなら読んでみやがれ./ でもって,最後に残ったのが,「ESJ福岡トド」一頭.生態学会大会までの時間と現在の進捗状況を鑑みつつ,1時間ほど考えて講演アブストラクトをひねり出す.午前7時前に箱崎と海外にメール送信.これでおしまい.

◆その他,お礼メールとか質問回答メールをいくつか出し,居室の机まわりをそれなりに片づけ,年末年始用の本たちを詰め込んで退出.次に来るのは年明けの3日(木)あるいは4日(金)だろう.4日は年休にする予定なので,まる1週間は来ないかもしれない./帰りがけに牧園の〈david pain〉で今年最後のパンを買ってから帰宅する.

◆スパム必殺の“最終兵器”の効果 —— 今月に入って,農水の研究情報センターがスパムメール除去の“最終兵器”を投入してくれたおかげで,連日あれほど積もりまくっていた迷惑メールがほぼ100パーセント排除されている.驚くべき効率だ.それまではいろいろフィルターをかけてもS/N比が1/20以下というノイズだらけの受信箱だったのが(実数でいえば1000受信メール/日のスパム率が950通以上),“スパム必殺兵器”起動後は毎日たかだか一桁のスパムを棄てるだけですむようになった(スパムが1通も届かない日すらある).驚くべき殺メール率だ.所外からメールチェックするときもしごく快適になった.ありがたやありがたや.

◆新刊メモ —— 『書肆アクセスの本』をつくる会(編)『書肆アクセスという本屋があった:神保町すずらん通り1976−2007』(2007年12月20日刊行,右文書院,ISBN:978-4-8421-0704-2 → 版元ページ).今年11月で惜しまれつつ閉店してしまった神田神保町の地方・小出版流通センター〈書肆アクセス〉のオマージュ本.たくさんの寄稿者が今は亡き書店の想い出を綴っている.ぼく自身もこの書店にはよく通った方なので,自分なりのオマージュとして,5年前にbk1に出した書評を leeswijzer に再録しておこう:黒沢説子・畠中理恵子『神保町「書肆アクセス」半畳日記』(2002年5月20日刊行,無明舎出版,ISBN:4-89544-303-5 → 書評目次).この書評はぼくが bk1 のブックナビゲータをしていた頃のものだ.

◆乱調な空模様 —— 朝から天気が不安定だ.断続的に降っていた小雨は,7時過ぎにはあがり,曇天が続く.昼前にいったん日が射し,気温も上昇.短時間のうちに暖かくなった(10度を越えていただろう).ところが,午後になって不穏な雲が広がり始め,北風が強くなったと思ったら,遠雷が轟く.おそらく前線が通過している最中だったのだろう.午後3時を過ぎ,西から青空が広がって,やっと安定した晴天になった.この冬一番の寒気が入ってくるとの予報なので,明日からはぐっと冷え込むにちがいない.

◆さて,明日の大晦日からは,上州・伊香保温泉〈景風流の宿・かのうや〉にて年を越し,新春の石段街を上り下りする予定です.つくばに帰ってくるのは1月2日になる予定.明朝は未明の出発になるので,旅支度をささっとすませて,早めに寝ましょ.

◆本日の総歩数=4732歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=0.0kg/−0.2%.


29 december 2007(土) ※ 年の瀬の雨に打たれて土蔵で飲む

◆午前4時起床.前夜からの雨は断続的に降り続いているが,雨足は弱くなっている.路面のそこかしこにできた水たまりが街灯に反射する.年末休業の研究所に潜入して,年越しの支度をする.

◆未明の選抜作業 —— 2007年に読んだ本の総括として.毎年寄稿依頼されている『月刊みすず』(みすず書房)の書評原稿に取りかかっている.今年は次の5冊(順位1〜5)をとりあげることにした.さらに,選から洩れた次点(順位6〜10)の5冊もついでにリストアップ.次点とはいえ,点差はほとんどない.私的にびしっとくる“インパクト度”にしたがったランキングということだ.

【順位】1
【書名】書物の日米関係:リテラシー史に向けて
【著者】和田敦彦
【刊行】2007年2月28日
【出版】新曜社
【ISBN】ISBN:9784788510364
【書評】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20070419/1176908722

【順位】2
【書名】世界屠畜紀行
【著者】内澤旬子
【刊行】2007年2月10日
【出版】解放出版社
【ISBN】ISBN:9784759251333
【書評】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20070124/1169682995

【順位】3
【書名】月島物語ふたたび
【著者】四方田犬彦
【刊行】2007年1月20日
【出版】工作舎
【ISBN】ISBN:9784875023999
【書評】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20070216/1171585928

【順位】4
【書名】きだみのる:自由になるためのメソッド
【著者】太田越知明
【刊行】2007年2月15日
【出版】未知谷
【ISBN】ISBN:9784896421828
【書評】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20070220/1171940786

【順位】5
【書名】虫食む人々の暮らし
【著者】野中健一
【刊行】2007年8月30日
【出版】NHK出版[NHK Books 1091]
【ISBN】ISBN:9784140910917
【書評】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20070912/1189519136

【順位】6
【書名】一六世紀文化革命(1・2)
【著者】山本義隆
【刊行】2007年4月16日
【出版】みすず書房
【ISBN】ISBN:9784622072867(1) / ISBN:9784622072874(2)
【書評】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20070823/1187877374

【順位】7
【書名】Mapping Our Ancestors: Phylogenetic Approaches in Anthropology and Prehistory
【編者】Carl P. Lipo, Michael J. O'Brien, Mark Collard, and Stephen J. Shennan (eds.)
【刊行】2005年12月
【出版】Transaction Publishers, New Brunswick
【ISBN】ISBN:0-202-30750-6 [hbk] / ISBN:0-202-30751-4 [pbk]
【書評】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20070518/1179412325

【順位】8
【書名】世界の果てが砕け散る:サンフランシスコ大地震と地質学の大発展
【著者】サイモン・ウィンチェスター(柴田裕之訳)
【刊行】2006年12月15日
【出版】早川書房
【ISBN】ISBN:4-15-208785-4
【書評】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20070129/1169996507

【順位】9
【書名】シマウマの縞 蝶の模様:エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源
【著者】ショーン・B・キャロル(渡辺政隆・経塚淳子訳)
【刊行】2007年4月30日
【出版】光文社
【ISBN】ISBN:9784334961978
【書評】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20070718/1184705246

【順位】10
【書名】解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯
【著者】ウェンディ・ムーア(矢野真千子訳)
【刊行】2007年4月30日
【出版】河出書房新社
【ISBN】ISBN:9784309204765
【書評】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20070603/1180861128

今年は山本義隆本を除いては,厚い本は選ばれなかった.しかし,分野的にはなかなかいいばらつき方だと思う.来年もいい出会いを望みたい.

◆雨は降ったり止んだりを繰り返している.朝のうちは雲霧のような水墨画の雰囲気だったが,ゆっくりと天候は回復に向かい,昼には曇りになった.気温はとても高く,年の瀬らしくない.おそらく10度を越えているだろう.小野崎の〈Shingoster〉の土蔵の2階にて珈琲をいただきながら,“弁証法的唯物論”な種概念の本:Ulrich Sucker『Philosophische Probleme der Arttheorie』 (1978年刊行,VEB Gustav Fischer Verlag, Jena,ISBNなし → 目次)の一節を読む.旧ソヴィエトから東独にかけては,かつてこういう【種】の本が多かったのだろうな.「Die Art als Populationssystem ist “Träger” der Evolution」(S. 38)という認識が定着していたらしいことは読み取れる.しかし,その周辺には,「die Arten als objektive-real existierende Systeme」とか,「die marxistisch-leninistische Philosophie」とか,「die dialektisch-materiaristische Methode」とか,スローガンがてんこ盛りで,もう酔いそう…….

浜嶋酒造の「鷹来屋五代目(大吟醸)」が宅急便で届きました.生産量のとても少ない銘柄と聞いていますが,この正月休みにいただきます.どうもありがとうございました.

—— 温泉年越しの予定だが,あったまっては呑んだくれているようでは,新年早々,先が思いやられるぞ.

◆いったんあがったはずの雨が午後8時頃からまた降りはじめている.夜は『月刊みすず』の書評原稿を書く.原稿用紙2〜3枚の分量なのだが,5冊もあるのでまとめ方がたいへん.午後9時過ぎに原稿をしあげて,編集部にメールで送信する.

—— これでまたトドを1頭しとめたことになる.次は懸案の“ESJ福岡トド”か…….

◆本日の総歩数=7189歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.5kg/+0.1%.


28 december 2007(金) ※ 御用納めの大掃除にかたをつける

◆午前4時前に起床する.夜明けはるか前の研究所に直行する.薄曇り.気温マイナス0.8度.すでに並んでいる出勤簿に今年最後のハンコを押す.本年もよく休んだものだなあ.ハンコの押してある朱色セルよりも,出張印やら兼業欠勤線のセルの方が目立つ.

◆未明のこまごま —— 昨夜届いた『』のゲラを印刷し,さっそく読み始める.今回は原稿がちょっと短かったため,「27字/行×12行=324字」を加筆する必要がある.正確には,字数よりも,行数を合わせる必要がある.旧約聖書のレビヤタンの部分について書き足して,Michael Ghiselin の種個物説への接続を滑らかにしよう./進化学会の評議員選挙が本日開票となる.事務的な問合せがあったので返信する.よろしくお願いいたします./駒場の生物統計学の受講生からアブダクションに関する質問メールがきた.さっそく返答する.講義に関わる質問票が溜まっているので,今日中に R-statistiek に返信しないと年を越してしまうぞ.

◆午前9時半の気温は2.8度.日も射さずとても寒い.午前いっぱいは『』のゲラに加筆し続ける.行数をぴったり補正して,正午に音羽にメール返信を完了する.年内の追いまくられ原稿仕事はこれでおしまいだ.※追いまくられていない積み残し原稿は多々あるけど.

◆午後のこまごま —— ろうきんの担当者と面談.年明けの1月8日(火)に残りの書類を提出することになった./駒場・生物統計学の堆積質問票への回答を一挙にすませ, R-statistiek にばさっと掲載する.3回分の講義への質問となると,件数が結構多くなる.何事も溜めてはいけない./うっかり忘れたまま9月からずっと放置していた,首都大の生物統計学集中講義の成績表を年の瀬に返送する.すみませんでした.

日本生態学会第55回大会のプログラム(→ pdf: 6.5MB)がどかんと公開された.要旨なしのプログラムだけで「110ページ」もあるとは,何という巨大な大会か.いずれにせよ宿と足を早めに確保しないと,春先の博多で“ホームレス”になってしまうぞ.ぼくが講演をするシンポジウム〈Phylogenetic Community Ecology〉の日時場所は,「2008年3月17日(月),8:30〜11:30,福岡国際会議場・5階・Room A」と確定した.※この要旨は一両日中に書いて返送します(年越ししたくない……).

◆夕方のこまごま —— 午後4時から,理事長室にて東大連携大学院教員のミーティング.新しいスタッフが決まったので./音羽からゲラ修正箇所OKとのメールあり.これにて校了だ./進化学会評議員選挙の開票作業の進捗に関する報告.確定は年越しということで./今夜から雨が降るとの予報だが,午後は晴れ間も覗いたりして,変な空模様だった.灰色の夕暮れの中を帰宅する.

◆予報されていた雨はなかなか降り出さなかった.夜8時の時点ではぽつっとも降らず.しかし,9時頃になって,ざあっと降り始めた.このまま明日まで降り続くのだろうか.

◆備忘メモ —— 竹園の Off House 向かいにある〈たがみ酒店〉は間口の広さから予想されるよりもはるかに奥行きがあって,日本酒コーナーとワインセラーは別々に温度管理されているようだ.品揃えが豊富.今度じっくり見に行こう.

◆トド撃ちリストを更新する —— 師走のばたばた仕事がやっと一段落ついたので,「トド」のリストを書き換えた.すでに仕留めたトドを消して,残存トドを残し,新発生トドを追加する.リストを書き出すとともに,隅に隠れていたトドが姿を現したり,リヴァイアサンのごとく巨大化したトドがかなたに見えたりして震え上がる.すべては年明けからの狩猟の成果にかかっているが,毎年毎年こうやって連日のトド撃ちに憂き身をやつすというのもなんだかなあ…….

—— ま,とりあえず年末年始にかけては,子トドをつかまえることに専念しよう.

◆本日の総歩数=6885歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+1.0%.


27 december 2007(木) ※ 大掃除の終わるめどが立たないな

◆午前3時起床.研究所に直行する.星空.気温マイナス2.3度.昨日からの雑用大掃除の続編は未明から始まる.

◆闇夜のこまごま —— 依頼文書の作成と必要部数の印刷を完了./昨日発注したばかりのベネズエラの本屋がいきなりキャンセルを出しやがったので,再度の発注作業をする.今度は無事に通ったみたい.もうトラブらないでね.※年の瀬に,もうこれ以上,用事を増やさないよーに.

—— 午前5時半の気温はマイナス3.2度まで下がった.昨日に続く冷え込みだ.しかし,週末は天気が崩れて,雨模様らしい.その後,大晦日から年明けにかけては,強い冬型になるとの予報だ.

◆届いた献本(年の瀬にありがとうございます) —— ニック・レーン著[斉藤隆央訳]『ミトコンドリアが進化を決めた』(2007年12月21日刊行,みすず書房,ISBN:978-4-622-07340-6 → 版元ページ目次).同じ著者の前著として,ニック・レーン著(西田睦監訳/遠藤圭子訳)『生と死の自然史:進化を統べる酸素』(2006年3月20日刊行,東海大学出版会,ISBN:4486016572 → 目次)がすでに翻訳出版されている.今回の新刊も「酸素」を軸にして生物進化を論じようということかな.おそらく近いうちに文藝春秋社から翻訳が出るはずの:Peter D. Ward『Out of Thin Air : Dinosaurs, Birds, and Earth's Ancient Atmosphere』(2006年10月30日刊行,National Academics Press,ISBN:0-309-10061-5[hbk] → 書評目次)も,大気中の酸素濃度が生物進化に及ぼした影響に関する仮説を提唱した本だった.特定の元素が進化に果たした役割というのは,意外な盲点かもしれない.

◆朝から快晴.午前10時の気温は6.7度だ.空気が乾いて冷たい.こまごま —— 来年度から始まる東京農大(世田谷キャンパス)での生物統計学の講義の事前打合せを来月早々にやることになった.2008年1月10日(木)午後1時に世田谷に行く.つくばからどれくらいの所要時間がかかるのかを測らないと.

◆昼休み.気温8.7度.年末の髪落しの儀あり.首筋がすーすーする.

◆午後の一括大掃除大作戦 —— 別の共著論文の文章の加筆と訂正.済み./先々月から溜まっていた統計コンサルタントのお仕事.これも解答を出してケリをつける./所内登録をしていなかった MacPro の登録書類をやっと出す./とある放送局から届いていた来年のダーウィン生誕二百年記念企画についてのコメントを返す.遅くなって申し訳ありませんでした./午前中,欠席してしまった領域会議の資料が届く.本決まりになった「生物研+農環研+種苗管理センター」超合体に関する資料だが,いったいどのように“超合体”させるかのヴィジョンは誰にもわからない.合体させるよりは,“レゴ”のようにかちっとはめ込んで行くようにすればいいかなとも思うのだが,そんな“やわ”な造りではどんどん組織縮小・人員整理が進むにちがいないと殿上人たちは考えるのだろう.ごくろうさまです.

—— そんなこんなで,また午後4時を回ってしまった.そろそろすとんと日が落ちて夕闇がやってくる時刻が近い.長大なマーラー「10番」を聴きつつ,瞑想にふける(わけがない……).

◆今日の大掃除のおかげで,メール受信箱中の用務のうち大きなのは「あとひとつ」を残すだけになった.その「あとひとつ」とは何か.それは生態学会福岡大会の講演要旨だ(まだ書いてないっ).しかも,メール以外で届いている用事がまだぱらぱらと散乱している.とにかく,できるだけたくさんゴミ箱にぶち込んでからやり終えてから新年を迎えたいものだ.

◆午後5時に退散する.研究所もそろそろ年忘れモードになっていて,明日の御用納めはいったいどれだけ出勤してくるのかな.御用始めの1月4日(金)も年休率が高そうだし,この正月休みはいつもより長くなりそうだ./午後9時過ぎに,音羽から『』のゲラが届けられる.明日中に加筆修正して返送することになる.最後の最後まで気が抜けない.

◆本日の総歩数=6271歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/−1.5%.


26 december 2007(水) ※ 年の瀬こまごまを一掃処分する日

◆うっかり午前5時半まで寝坊してしまう.前日の夜なべ仕事が祟って,睡眠リズムがおかしくなっているにちがいない.晴れて放射冷却.とても寒い.

◆未明のこまごま —— 音羽から原稿OKのメールが届く.これで枕を高くして年を越せる./先般,イランに帰国した Majid Olia さんからメールが来る.日本線虫学会に投稿した共著論文のことで.本務地のある Sherakord はイランなのに「氷点下25度」まで下がったと書いてある.ほんまか.

◆眠りたいワタシ —— ダニエル・T・マックス著[柴田裕之訳]『眠れない一族:食人の痕跡と殺人タンパクの謎』(2007年12月22日刊行,紀伊國屋書店,ISBN:978-4-314-01034-4 → 版元ページ目次).ずいぶん前に読んだ:ロバート・クリッツマン『震える山:クールー,食人,狂牛病』(2003年11月10日刊行,法政大学出版局,ISBN:4-588-77201-5 → 目次・書評)と密接に関係する内容だ.その本はニューギニア高地が舞台だったが,本書はヴェネチアから話が始まる.プリオン病の文化史・社会史の本.

◆午前10時.快晴,気温5.9度.師走のこの時期になると,そろそろ研究所の人口密度が低くなる.

◆Leon Croizat 関連情報(続き) —— アンテナがその方向に定位されたせいか,妙に Croizat 絡みの情報が引っかかってくる.ベネズエラで Croizat の伝記映画が制作され,つい最近 YouTube にオンライン公開されていることを知った:〈Leon Croizat Chaley. Un pensador〉(Video Ciencia en Venezuela, 21 de septiembre de 2007).YouTube には四つに分割されて公開されている:part 1(9:47) / part 2(9:03) / part 3(9:12) / part 4(4:18).録画時間は合わせて32分ほどになる.スペイン語の動画だが,知っている生物地理学者の顔や名前が登場するので,なかなかおもしろい.

—— 汎生物地理学全般については,John R. Grehan の「Panbiogeography site」が知られているが,そこでも新着情報としてこの YouTube 動画のことが載っていた.

◆「大掃除」の昼下り —— 毎年,居室の大掃除はしたことがないが,雑用の大掃除はきちんとするように心がけている.今年も残りの労働日がほとんどないので,堆積した雑用を掃き出す.まずは,来年の予定をスケジュール表に書き出すことから./メーリングリスト関連の処理をイッキにすませる./いくつかの学会関連の事務連絡など.来年早々の分類学会連合の総会とシンポジウムは欠席する旨を連絡した./〈biometry〉の会員数が一千名を突破した./9月にリクエストされた別刷りを今になって用意する拙速ぶり…….申し訳ありません.昨年の居室引越しの際に別刷り類をすべて段ボールに詰めて以来,行く方知れずになってました.今日やっと方々を掘り返して発掘したしだいで./東大連携大学院の新しいメンバーが決まったので,28日午後4時に理事長室でミーティングあり./生態学会福岡大会のアブストラクトを早く出せというリマインダーが届いた.出します出します./Alibris に注文していた Ernst Mayr 伝がいきなりキャンセルされてしまった.せっかく安かったのにな.しかたがないので,ABE Books に発注する.それにしても,ハードカバー版で17,000円というのは伝記本にしては高すぎるぞ.近刊のペーパーバック版にしたって8,000円くらいするようだし.

—— そんなこんなで,あっという間に夕暮れになってしまった.しかし,大掃除はちっとも終わらず…….

◆紹介記事 —— 今日になって初めて知ったのだが,岡本真さんの記事:岡本真 2006.「Web2.0」時代に対応する学術情報発信へ:真のユーザー参加拡大のためのデータ開放の提案. 情報管理,Vol.49, No.11, pp.632-643(doi:10.1241/johokanri.49.632)に,書評系ブログの代表として〈leeswijzer〉が挙げられていた.あまりに遅いレスポンスではあるが,何だかうれしかったので,ブログの色調を“ピンク色”に変えてみた.

◆年賀状の組版をば —— ここ数年,紙の年賀状を出している時間的余裕が師走にはまったくないので,誰にも出していない.もらいはするのだが,返事も書かないのは欠礼の極みだが,どうしようもないのでごめんなさい.にもかかわらず,毎年の年賀状の図案だけはちゃんと組版している.

◆明日も雑用大掃除の続きだ.メーラーの受信箱の中で,ラクそうなのは今日中にすべて処理済となったが,やっかいそうなのがいくつかごろんと残っている.それは明日のタスクだ.他にも紙でやってきた雑用がいくつかあるのだが,見なかったことにしてスルーしようかな…….

◆本日の総歩数=3982歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/+0.4%.


25 december 2007(火) ※ 脱け殻クリスマスの雑用三昧昼下り

◆原稿を書きあげて午前3時前にやっと寝たものの,寝入りの時刻がワルかったせいか,金縛りにはなるは,足は引っ張られるは,胸の上には乗っかられるはとさんざんな取り憑かれようで…….

—— 結局,午前5時半に起き出すはめになってしまう.西の空に満月が雲にかすむ.研究所の温度計はマイナス1.1度を指している.昨日よりはだいぶ冷え込んでいるな.

◆今日は朝から雲の多い空模様だ.午前10時の気温は6.1度.あまり上がっていない.組合にて労金の担当者と相談する.いくつか資料と書類をそろえないといけない.仕事納めまでにはたして間に合うか.

◆いただいた本(ありがとうございます) —— 斎藤成也『ゲノム進化学入門〔CD-ROM付〕』(2007年12月25日刊行,共立出版,ISBN:978-4-320-05661-9 → 版元ページ目次).先週の講義で分子進化学の話をした駒場の学生にはさっそく紹介しておこう.

◆午後2時過ぎから1時間弱,『Modern Morphometrics in Physical Anthropology』の輪読セミナーの第6回.Chapter 2 : Fred L. Bookstein「After Landmarks」(pp. 49-71)を最後まで(pp. 64-69).通常の標識点(landmark)はすべての座標値が確定した「点」の情報である.一方,近年使われ始めた準標識点(semilandmark)は,形態上の曲線または曲面に沿って動くため,座標値のいくつかが確定されていない.1990年代はじめに考案された「輪郭素(edgel)」の理論は,標識点に対して微分係数の情報を付与することにより,標識点近傍の曲線・曲面の情報を考慮しようとした.準標識点と輪郭素(あるいは ridgel, archel, vessel, tubel etc.)とを組合せることによって,さらなる柔軟な手法が開発できるのではないかと提案される.

◆ついでに先週いただいた東大博物館の出版物のリストも —— 宮本英昭・橘省吾・平田成・杉田清司(編)『異星の踏査 ―「アポロ」から「はやぶさ」へ』(2007年10月20日刊行,東京大学総合研究博物館, ISBNなし → 博物館ページ)/西秋良宏(編)『遺丘と女神 ― メソポタミア原始農村の黎明』(2007年6月30日刊行,東京大学総合研究博物館, ISBNなし → 博物館ページ)/諏訪元・洪恒夫(編)『アフリカの骨、縄文の骨 遥かラミダスを望む』(2006年2月1日刊行,東京大学総合研究博物館, ISBNなし → 博物館ページ

大場秀章(編)『Systema Naturae ― 標本は語る[東京大学コレクション XIX]』(2004年12月8日刊行,東京大学総合研究博物館, ISBNなし).本文テキストについては,同博物館の「刊行物データベース」のサイトで読むことができる./*西野嘉章(編)『真贋のはざま[東京大学コレクション XII]』(2001年10月19日刊行,東京大学総合研究博物館, ISBNなし).およそ五百ページもある大著だが,本文テキストについては,これまた同博物館のサイトで読むことができる.

—— 東大の博物館から出されているこれらの「図録」は,一般の商業出版流通ルートに乗る場合もあれば,そうでないこともある.いい内容のミュージアム出版物が気づかれないまま埋もれてしまうのはもったいないことだ.

◆今日は一日中“睡魔”と戦い続けている気がする.というか,最初から戦う気力がないので,負けっぱなしなのだが,先週の大きな山場をいくつも越えた時点で「灰」と化しているので,あとは原形が崩れないように気をつけながら,年末まで過ごすしかないか.

◆しかし,こまごまとした締切フラッグはいくつもはためいている.年内にやれることはやりきって新年を迎えるようにしたい.残る労働日はあと三日間だ.

◆夜の古書漁りの収穫 —— たまたま Leon Croizat のスペイン語の本が2冊そろって出品されていた.一方の汎生物地理学の2巻本『Biogeografía Analítica y Sintética ("Panbiogeografía") de las Américas』(1976)は,東大総合図書館に所蔵されていたベネズエラのアカデミー紀要(Boletin)に載ったもののコピーを大学院の頃に取ったことがあるが,Biblioteca として出版されたものは見たことがない.

また,もう一方の歴史書『Aníbal y Roma: 218-202 a.d.C. Ensayo Histórico y Lingüístico: con particular referencia al Cruce de los Alpes, la Batalla de Canna, y la Marcha de Aníbal contra Roma』(1974)は,ベネズエラ国防省から出版された本だが,タイトルだけは前から知っているものの実物はまだ手にしたことがない.いずれも国内の公的機関に所蔵されていないはず.

—— どちらもさっそく発注する.前者はベネズエラのサン・アントニオ・デ・ロス・アルトスの古書店に,後者はフィレンツェの古書店に.※年末のささやかなお楽しみということで.

◆本日の総歩数=5176歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+1.2kg/+0.3%.


24 december 2007(月) ※ 快晴のクリスマス・イヴに追込まれ

◆午前5時半起床.晴れているが,さほど冷え込みなし.

◆夜明け前だが,薄明るくなってきた午前6時半に久しぶりの歩き読みを筑波大方面に向かって:佐野眞一『枢密院議長の日記』(2007年10月20日刊行,講談社[現代新書1911],ISBN:978-4-06-287911-8 → 目次版元ページ).しばらく放置してあったが,第5章「日記中毒者の生活と意見」,第6章「有馬伯爵家の困った人びと」,そして第7章「ロンドン海軍条約」の3章をイッキ読み.150ページほど.第5章にこんなくだりがある:

倉富日記にはその元となる覚書,もしくは下書きらしきものがあったことがわかる.これだけ膨大な量の日記を残しながらさらにそれを準備するためのメモまであったとは.(p. 251)

倉富はただ日記を書きっぱなしにしていたわけではない.暇さえあれば読み返していたことは,いたるところに後で追記した箇所があり,そこで誤記や記憶違いを訂正していることでも明らかである.(p. 252)

求道者のように日記を書き続けた倉富は,一体,何のためにこれを書いたのか.残る疑問は,結局そこにたどりつく.倉富の性格からして,何らかの見返りを期待したためだったとは到底思えない. (p. 253)

ウェブ日記を書いている多くのみなさんならば同感する点が少なくないのではないだろうか.少なくとも,上に挙げた3点(「下書き」,「読み返し」,「自分のため」)はぼくの日録にはそのまま当てはまっている.「倉富がなぜこれほど退屈で長大な日記を書いたのか」(p. 18)という著者が最初に抱いた疑問への答えは,自分を記録しようとする意志の強さにあったのだろう.

◆午前中はよく晴れていたが,しだいに北風が強くなり雲が出てきた.でも,身を切るような寒さではない.昼前にプチ外出.待ち時間に,『枢密院議長の日記』の残りの章:終章「倉富,故郷に帰る」を読了.400ページを越す厚い新書もこれでおしまいだ.お疲れさんでした.>著者&ワタシ.著者は7年もの間,倉富日記と付きあってきたという.途中,投げ出す寸前だったことも一度や二度ではなかったそうだ.書くのも執念なら,読むのも執念.

◆でもって,また原稿書きに強制復帰させられる午後.イヴにかかってくる音羽からの督促電話…….

◆いちおうイヴなので —— 酒食など少々.〈Memories〉のクリスマス・ボックスをつまみつつ,シャンパンをまる1本開けたりして,実はへろへろになって.でもって,いったん寝てしまったものの,えらい形相の生き霊さんが憑いてしまったので,あわてて飛び起きパソコンに向かう.

そのまま日を越してしまって,明けてクリスマスの午前2時半に,やっと『』第8回原稿を書きあげ,原稿を音羽にメール送信完了:三中信宏「いたるところリヴァイアサンあり」(『本』2008年2月号掲載予定).

—— こんなばたばたを年の瀬までしているようではどうしようもないな.※学習能力がないのかも.

◆さ,寝ましょ,寝ましょ.明日はふつうの平日勤務だ…….

◆本日の総歩数=13147歩[うち「しっかり歩数」=12599歩/113分].全コース×|×.朝△|昼○|夜×.前回比=−0.8kg/−0.3%.


23 december 2007(日) ※ 天候回復,X'mas ケーキ渋滞始まる

◆午前5時過ぎに起き出す.昨夜からの雨はなお降り続き.低温と湿気のダブルパンチ.乾燥した寒さよりもじっとりとした冷たさの方が身体にははるかにこたえる.乾いた木枯らしであと腐れなくすぱっと切られるよりも,湿った底冷えにねちねちと絡みつかれる方が死に際がよろしくない.

◆年末の冷や汗 —— 『岩波書店の新刊・2008年1月』を書店でもらってきてぱらぱらしていたら,「2008年の新企画から」のひとつとして,7月から刊行が始まる叢書〈確率と情報の科学・第I期(13巻)〉の予告がしっかり載ってしまっているではないか.これはヤバイ.先日来,岩波書店編集部から「例の叢書のご執筆の件ですが……」という手紙やメールが届いていたのだが,つくば実在率5割弱をいいことにスルーしていた.しかし,いよいよ逃げ場がなくなってきたか.三中信宏『かたちをはかる:生物形態の数理と統計学(仮題)』というタイトルだけはずーっと前に決まっていたのだが.

ついでに近刊チェック —— 清水哲郎『世界を語るということ:「言葉と物」の系譜学』(2008年1月8日刊行予定,岩波書店[双書・哲学塾], ISBN:978-4-00-028158-4).これは医療哲学ではなく,形而上学の本かな.

◆空模様は朝のうちにするすると快方に向かい,お昼前には晴れ間が覗くようになった.午後になってすっきりした青空.北風が吹くこともなく,意外に暖かい.となると,つくばセンターあたりはクリスマスの買物客で車も人も混みあうことになる.実際,今日は〈コートダジュール〉毎年恒例の「クリスマスケーキ渋滞」の日だ.店の周囲はぴくとも動かぬ道路渋滞となっていた.もちろん,イヴの明日も同じようなケーキ渋滞が発生するにちがいない.さらに,同時多発的な「KFC渋滞」やら「LaLa Garden渋滞」,そして「クレオ渋滞」の発生をも考え合わせれば,ここ一両日の日中は車での移動は控えた方が賢明かもしれない.

—— 中心街の交通渋滞をすり抜けて,苅間の〈la maison de campagne〉に予約しておいたキッシュを引取りに行く.ついでに,クリスマス用のシャンパン Masia Can Mayorの「CAVA Sàniger 2003」を買う.

◆原稿原稿また原稿.でも終わらず…….○| ̄|_ ※かの「枢密院議長」のように,書きまくりたいものだ.

◆本日の総歩数=4220歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+1.3%.


22 december 2007(土) ※ 冷たい雨が降る冬至に原稿を書き続け

◆午前5時起床.曇り空.今日は冬至.夜明けが遅いこともあり,いつもの明け方よりもさらに仄暗く寒い.朝のうちに雨が降りだした.この週末は天気がぐずついて,冷たい雨が降り続くという.今日の関東地方は最高気温が10度にも達しないらしい.

—— ふらふら出歩いたりせず,引き籠って原稿を書きなさいという“天の声”かも.

◆というわけで,朝のうちから『』の連載原稿(第8回目)を書き始める.今回は「いたるところリヴァイアサンあり」というタイトル.旧約聖書とかホッブズを引っ張り出す.あれやこれや,使えるのかどうかさっぱりわからない,得体の知れないものどもを召喚するときは楽しいのだが,与えられた任務に向けて整列させるのはいつもたいへんだ.

◆昼間は小雨が降ったり止んだりする.気温はとても低い.JA桜農協に直売農産物の買い出しに行ったら,暖かい蕎麦がとても美味そうだったので,つい立ったままたぐってしまった.美味いなあ.午後は再び引きこもり生活が続く.夕方から雨が本降りになってきた.

◆Paul Maas『Textkritik [Zweite verbesserte und vermehrte Auflage]』(1949年刊行[1927年初版],B. G. Teubner Verlaggesellschaft, Leipzig → 目次)のキーワードのひとつである「Leitfehler」について.写本に見られる偶然には生じにくい過誤(語句の欠落や文の転移など)を総称して,Maas は「Leitfehler(errores significativi)」と呼ぶ.英語訳本(1958)では指示的過誤(indicative errors)と訳されているが,独語原書では著者は「地質学者が用いる“示準化石(Leitfossilien)”という術語にちなんで“Leitfehler”と命名した」(p. 27)と書いているので,この言葉は「示準過誤」と訳すべきなのだろう.生物系統学でいう「相同形質」に相当するこの示準過誤を著者はさらに二つに区別する.そのひとつは,ある写本を他の写本と区別する「分離過誤=Trennfehler(errores separativi)」である.これは固有派生形質状態 autapomorphy に相当する.もうひとつは,ある二つの写本を結びつける「結合過誤=Bindefehler(errores coniunctivi)」であるが,これは共有派生形質状態 synapomorphy に当たる.

さらにこの本では,文献系図(Stemma)の「数え上げ」についても言及されている.この点で,樹形カウントの先駆的論文のひとつといえる.とりわけ興味深いのは,後年のパターン分岐学で展開されたような,「分岐図 vs 系統図」の区別を先取りした記述が見られることだ.著者は,写本の姉妹群関係(分岐図)よりは,祖先子孫関係(系統図)に関心があるらしく,端点数n=2,3,4,5について論じている.そして.1949年の「付記」としてこのように総括する:

Stehen 4 Zeugen zur Verfügung, so beträgt die Zahl der möglichen Typen 250; bei 5 Zeugen beträgt sie etwa 4000, und so weiter in gleichsam geometrischer Progression. (p. 30)

樹形グラフの場合の数を数えるという問題は19世紀から論じられてきたが,二分岐的な系統図(nicht 分岐図)の数え上げを行なうための再帰式(“geometrische Progression”)が与えられたのは,Joe Felsenetein (1978) のことだった.

◆明日も原稿書きは続く.早くケリをつけたいな.

◆本日の総歩数=1960歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−1.0%.


21 december 2007(金) ※ 早々と門松が立つ成績検討会の明け方

◆前夜からそのまま研究室に籠り続ける.冬至が間近なこの季節は,夜中から気温が急激に下がり,明け方には氷点下になる.

◆夜中の仕事 —— 今日の午後,所内のRP成績検討会がある.例年は年明けの1月に開催されるのだが,前倒しで前年末に開かれることになってしまった.それでなくても他の用事どもが詰め込まれるシーズンなのに迷惑なことだ.しかし,文句を言ってもしかたがないので,ちくちくと指定の書式でコンテンツを詰め込んでいく.途中,睡魔が降臨してきたので,午前1時から1時間ほど床に寝る(“ホームレス研究者”ここにあり).丑三つ時に目覚め,さらに書類を書き続ける.午前5時前にやっと完成.関係者にメール送信し,成績検討会資料は滑り込みセーフでやっとできあがった.

◆仄暗い午前5時半の気温はマイナス3.0度.早くも新春の巨大な門松が農環研の正面玄関の左右に立っている.ここ数日,忘年会通知ではなく,新年会のお知らせメールが増えてきた.今年ももう終わりだ.

◆いったん帰宅し,1時間あまり仮眠をとってから,再び出勤する.寝不足な午前のこまごま —— 進化学会と生物地理学会の役員投票をすませる.うっかりまだ投票していない会員は忘れずに投票を./分類学会連合の総会とシンポジウムの詳細が伝えられる.しかし,当日1月12日(土)は東京農大の卒論発表会と新年会が厚木で予定されているので,そちらを優先します.

◆RP成績検討会 —— 午後1時半から1階会議室にて成績検討会.担当者ごとに発表し,のち質疑時間.何とか切り抜けられたかな.来年はもう少し課題進捗をしないとダメだ.午後4時前に終了.

—— この成績検討会をもって,今月の大きな“お座敷”仕事はすべて完了となった.高座に上がることはもうありません.あとは原稿を書いたり,ゲラを読んだりという日々が年末年始と続くことになる.

◆午後4時過ぎに早々と退散する.前夜からの寝不足でふらりふらりするので,帰宅してから1時間ほど仮眠を取る.午後6時半に大角豆の〈Cafe Memories〉に向かう.今日はクリスマス・パーティでジャズトリオ(木村秀子 Piano Trio)の生演奏あり.午後10時まで飲食が続く.七面鳥がたいへん美味かった.

◆夜のこまごま —— メールチェックをしたところ,農環研の事務から「【緊急】」とのメールが入っていて,独法統合に関する農水大臣の談話が添付されていた.予想通り「生物資源研+農環研+種苗管理センター」の統合が確定したらしい.どうぞ好きにやってください.ワタシの知ったことではありません.統合に伴う雑用がいろいろ増えるにちがいないが,いずれも「真剣度3%ほど」で拙速対応いたします.こういう案件に対する“冷淡さ”は農水省に入って以来ずっと育まれてきた.基本的に“フィデリティ・ゼロ”な人なんだろうと自認する.

◆『』の新年1月号がきょう届いた:三中信宏「プリンキピア・タクソノミカ」(pp. 44-51).連載第8回の原稿は明日必ず完成させよう.しかし,今日はもう体力と気力のリミットに接近しつつある.これはもう安らかに寝るしかない.

◆本日の総歩数=4663歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.2kg/+1.0%.


20 december 2007(木) ※ 年内最後の駒場講義と深夜のツケ払い

◆午前5時起床.晴れて寒い.でも,昨日よりは暖かくなるという予報だ.

◆早朝のこまごま —— 駒場「生物統計学」の第1回レポート課題がようやく完成した.ちょっと長めだったかもしれないが,講義内容には即した基本的な出題だと思う.今日中にオンラインで公開するとともに,講義時に配布しないといけないな./進化学会と生物地理学会の役員選挙の投票締切が迫っている.会員に対しては尻を叩いて,自分が締切に間に合わないというのではシャレにならん.

◆文庫本2冊 —— 大場秀章(監修・解説)『シーボルト日本植物誌』(2007年12月10日刊行,筑摩書房[ちくま学芸文庫],ISBN:978-4-480-09123-9).シーボルトの『フローラ・ヤポニカ』の彩色図版を文庫化./堀越孝一『中世の秋の画家たち』(2007年12月10日刊行,講談社[講談社学術文庫1854],ISBN:978-4-06-159854-6).「中世の秋」と聞けば買わないわけにはいかないでしょ.

◆10:11発の TX 快速に乗り,取手へ.所用をすませた後に取手駅のスターバックスにて,駒場講義のスライド準備をする.ドロナワどころではないな,これは.2時間ほど粘って,なんとか大丈夫だろう.常磐線で上野に向かい,そのまま渋谷へ.午後4時前に駒場に滑り込んだ.レポート課題を印刷してから,講義室へ.今日は多重比較とモデル選択が二つの柱だ.とくに後半については,分子系統学を例に挙げながら,系統推定における統計論議を紹介するという形式にしたので,個人的にはとてもラクだった.年内の講義はこれにておしまい.来年は1月10日から始まる.

◆つくばに帰り着いたのは午後8時半.食事と風呂をすませてから,午後10時過ぎに研究所に出勤する.気温0.2度.明朝までに明日の所内のRP成績検討会の資料をつくらないとどうしようもない.仕事のしわよせはすべて睡眠時間の削減で対応するしかない./他にも堆積しているこまごました用事があるのだが,身一つではとても対応できない.申し訳ないが,大半の問い合わせや依頼はすべて放置しています.年末年始に一挙にカタをつけるという荒技もあるのだが,そういう時期は別件の大ごとが入るのでダメなんです.したがって,日常的に思い立ったときにちょこちょこと堆積岩を崩すという手しかありません.

—— などと横道にそれていないで,検討会資料をつくらないと…….日が変わってから室内が急に冷え込んできたぞ.

◆本日の総歩数=11927歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.2kg/+0.1%.


19 december 2007(水) ※ 隠れ酒の翌日は本郷にて隠れセミナー

◆午前5時起床.星空で冷えこむ.今日は出張日なので未明出勤もなく,自宅でごそごそする.昨日の“隠れ家”日録を書いてアップ.

◆朝のこまごま —— 京都北大路の〈ブラウニー〉から,大量のベーグルが冷凍宅急便で届く.オンライン発注したのが梅雨の頃だから,実に半年かかって届いたことになる.もともと〈ブラウニー〉のベーグルはいつ届くのか予測不能ということで有名だが,発注者がすっかり忘れた年の瀬に来るとは思わなかった.この間,何度か京都に滞在していたので,その折に〈ブラウニー〉に直接出向いて買った方がはるかに手間がかからないと思う…….いずれにせよ,急遽,冷凍庫にスペースをつくり,ベーグルを詰め込む詰め込む.何とか全部を収納することができたが,そのあおりで製氷室の氷をすべて処分することになってしまった.

◆ネクタイ締めて,10:41発の TX 快速で本郷に出る.〈ルオー〉でスライドの確認と点検.大場秀章さんと秋山忍さんを見かける.午後1時から農学部で専攻教員会議.年明けの行事予定とか.卒論発表会の日程注意.1月31日(木)は駒場の補講ふたつをこなした後に,専攻交流会に直行するというハードなことになりそうだ.異動により空いていたES講座の連携教員ポストがやっと埋まった.年末だったせいか,教員会議の議案がほとんどなく,午後2時半には早々と終わってしまった.

イチョウの葉がすっかり落ちてしまった東大構内を横切って,再び本郷通りに出る.〈ボンナ〉で一休みと準備(まったくもってエンドレスだ).今日はいい天気だが空気は冷たい.午後3時過ぎまでゆらゆらする.それから,赤門方向に向かう.

◆今日の本務地は東大の総合研究博物館 —— 博物館前に新しく外へのゲートがつくられていた.もともと博物館の位置するロケーションは本郷キャンパスの果てにあり,外から見えてもたどり着くには回り道をしなければならなかった.しかし,新設ゲートにより本郷三丁目からのアクセスは格段によくなるだろう.

◆午後4時から博物館の館長室にてセミナー開始:三中信宏「分類学と系統学:生物多様性を体系化する二つの軸」.久しぶりに【種】の噺を延々としてしまった.人前でこのテーマを話したのは5年ぶりくらいのことではないか.ウケもいいし,高座での【種】ネタはとても重宝する.ヒミツのセミナーなので,「【種】の辞典」とか,かつてその筋で盛り上がった内容もいろいろと盛り込む.午後5時半まで実に1時間半もしゃべってしまった.クローズドなお座敷なので,客の熱気も自然と高まるのだ.

—— セミナー後の午後6時から,同じ部屋に料理やおつまみなどが運び込まれ,東大製の黒麹焼酎とか,「メコン」の28年ものとか並んだり,いやいやよく呑む呑む,大したもんです.人は見かけによらない.初対面の西野嘉章さんの話がとても印象深かった.とくに,個人的に気に入っている西野嘉章『裝釘考』(2000年4月15日刊行,玄風舎,ISBN:4250200256→目次書評)の出版にいたるまでの苦労話とか.

◆午後10時半にやっとお開き.この長時間にわたる呑み続けはなかなかこたえる.タクシーを配車してもらって,そのままつくばに直行.高速代金を含めたタクシー運賃は実に25,000円を越えた.大分往復の航空運賃に匹敵するじゃないか.さすがは……だ.ありがとうございました.博物館の出版物もどっさりいただきました.感謝.つくばにたどり着いたのは日が変わる直前だった.

◆明日はまた東京に出る.連日うろうろしているおかげで,農環研の諸事がすべて放置されたままだ.そのツケを払う日は間近だったりする.

◆本日の総歩数=7792歩[うち「しっかり歩数」=1382歩/13分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/−0.4%.


18 december 2007(火) ※ タイやヒラメが舞い踊る友部の隠れ家

◆午前4時半起床.研究所に直行する.星空.気温マイナス2.8度.今朝も冷え込みが厳しい.

◆午前のこまごま —— 朝イチでガソリン,オイル交換,洗車など久しぶりに./IOSEBがやっと再起動し始めた.メキシコ側の委員が確定したとの連絡.さっそく賛成票を投じる.2009年のダーウィン・イヤーは世界中で記念イベントが予定されているようで,国際会議も予定が立てこみ始めているそうだ./しばらく静かだった初台も動き始めた.ひよっとして年内にも“大王”が天から降臨するのですか? いわゆるアルマゲドン.

◆午前10時半.快晴だが気温は低く7.6度.関東らしい乾燥した冬晴れ.

◆週末からずるずると引きずってきたスライドづくりがやっと完了した.これで内容は確定だ.計128枚.ハードコピーを再度出力する.1時間はたっぷりもたせられる分量になった.先方からの連絡によると,クローズドなセミナーなので,“ヒミツ”だそうです.“ヒミツ”だからワルイこともたっぷりと.はい.

◆午後のこまごま —— 駒場講義の準備に取りかかる.出席票とハンドアウトはすぐできた(公開済み).スライドはいくつかのファイルからかき集めないとダメかも.Akaike (1973) の骨子を説明しようと狙っているのだが,学部2年生を相手に「AIC」の導出を説明した人はいますか?

それよりも大事なのは,第1回のレポート出題だ.ウェブに掲載する予定なのだが,その内容を考える.夕方までかかって,課題をひねり出してみる.年明けに集める予定.まだ詰めができていないが,ほぼ確定した.明後日の講義までにはウェブ公開できるだろう.そのハードコピーは講義時に配布しないといけない.

◆夕闇の中,常磐道を走り,友部の隠れ家へ ——

—— 午後5時,すでにあたりは暗くなっている.予定通り車に乗り込み,常磐道をひたすら北へ.北関東道に入り友部インターで降りる.夜の暗がりの中,人気のない農道を進み,隠れ家に到着.すでに東京からの先客は到着していた.午後6時過ぎから忘年会という名の会が始まる.最初にいきなり出てきたのはハタ(クエ)の浜盛だ.巨大な頭部が尖塔のように屹立している.実にうまいもんですなあ.さすが,元料亭だっただけのことはある.正しい有機野菜たちもたいへん美味だった.自然薯のすいとんを初めて賞味したが,これはうまい.

続いて,タイの塩窯焼きがドンと出る.体調50cmものタイを卵白塩で包んでそのまま焼いたという逸品だ.木槌でこんこんと塩竃を叩き割るのがまた楽しい.さらに,カレイのお造りが大皿で出され,最後にメジナの舟盛でとどめだ.すべて八丈直送の魚だったが,魚のみで満腹になるのは初めての体験だ.酒は〈百年の孤独〉のみ.集中的に酒池肉林して午後9時にはさくっと解散.つくばに帰り着いたのは午後9時半を少しまわった頃だった.

—— タイやヒラメの舞い踊りの宴にしては健康的な時間帯に自宅に帰れたと思う.ごちそうさまでした.

◆さて,明日は午前中から夜まで本郷界隈をあちこちうろうろする予定.専攻教員会議あり,“ヒミツ”のセミナーあり,さらなるヒソカな会食あり.

◆本日の総歩数=5874歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜×.前回比=+0.3kg/−0.9%.


17 december 2007(月) ※ もう忘年会シーズンになったものの

◆午前4時半起床.星空.昨夜の予報通り,ぐんと冷え込んで,午前5時の気温はマイナス3.3度.静電気もびしびし飛ぶ真冬な明け方だ.

◆午前のこまごま —— みすず書房から毎年恒例の『月刊みすず』誌の書評特集への寄稿を依頼される.12月26日まで.今年はどの「5冊」を選ぼうかな./北大から荷物が届く.お手数をかけました.そして,忘れないうちに航空券半券と領収書を農学部事務宛に返送する./系統質問:昨夜送られてきたデータから崩壊指数を計算するコマンドファイルをつくって返信する.とくにトラブルの原因はありませんでした./札幌のアヤシイ Beer Inn の名前は〈麦酒〉ではなく〈麦酒〉であるとのご指摘を受けた.確かにそのとおりだ.しかし,それでは「バス停」とおんなじじゃないか.

◆午後のこまごま —— Hennig Society の来年度会費を支払う./注文を受けていたソーバー訳本の郵送をやっとすませる.すっかり遅くなってすみませんでした./隣の研究所からとある本が農環研にないかとの問い合わせ.私の部屋は情報資料課ではないのですが,知っている本人にメールを転送する./その後またまたスライドづくりとか.午後4時過ぎにもういいかと思ってプリントアウトしてみる.

◆ドイツの古書店から届いた文献系図学の古典:Paul Maas『Textkritik [Zweite verbesserte und vermehrte Auflage]』(1949年刊行[1927年初版],B. G. Teubner Verlaggesellschaft, Leipzig → 目次).文献系図における“分岐学的方法”を別個に確立した本として有名.30ページほどのパンフレットのように薄い本だが,伝承写本から祖本を推論する論理について簡潔にまとめられている.このツリーの形式化は明らかに“分岐学的”であることが見て取れる.

この第2版は1927年の初版(pp. 1-25)に,1937年の論文「Leitfehler und stemmatische Typen」を付録(pp. 27-31)として付けたもの.なお,この第2版を踏まえた英訳が出版されている:Paul Maas『Textual Criticism』(1958年刊行,Oxford at Clarendon Press).この英訳版はオンライン化されていて,その一部は「Questia」で無料で見ることができる(全文閲覧は有料).独語原書は第4版まで増刷されたようだ.

—— この古書も第二次世界大戦直後の敗戦国ドイツの厳しい紙事情を反映してか,質の悪いことこの上ない.紙の変色と変質,そして造本はほぼ崩壊寸前で,いつばらばらの紙束になっても不思議ではない.この時期のドイツの本はどれもこれも取り扱い注意だ.

◆夕方,いったん帰宅する.すでに日没しているが,あまり寒くはない.出直して,午後6時半から二の宮の〈Cafe de Elegance〉にて開催される領域の忘年会に向かう.立食パーティ形式の忘年会とは珍しいな.ヱビスビールとかワインとか.イタリア料理をいろいろいただきながら,約2時間ほどの飲み放題でした.〈Cafe de Elegance〉は店の前を通り過ぎるだけでここ何年かまったく来なかったが,むかし〈Clay Works〉のあった一角がこういうパーティ会場に様変わりしていたとは全然知らなかった.

—— 午後8時半をまわった頃に解散.その後,てくてく歩いて自宅に帰る.帰宅したのは午後9時過ぎ.あまりに“健康的”すぎる.こんなことではいけない.しかし,またまたスライドいじりをしてしまう自分がカナシイ.心理的本質主義に関して数枚のスライドをつくる.あ,日が変わってしまった…….

◆本日の総歩数=8026歩[うち「しっかり歩数」=1373歩/16分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.3kg/+0.4%.


16 december 2007(日) ※ 木枯らしが強いとラーメンが美味

◆午前5時半起床.放射冷却で冷え込む.風も冷たい.冬らしい朝.

◆日中のこまごま —— さらなるスライドづくり./JTBで札幌フライトの領収書を発行してもらう.年末年始に旅する人々で混んでいて小一時間も待つことになった./正午過ぎに農環研へ.気温9.8度.北西風が強く吹く.いくつか資料を確保してから午後2時に速攻で帰宅する./西武でかばんをひとつ調達する.こんなに寒い日は坦々麺がとりわけおいしい./早い夕暮れ.北風が身を切るように冷たく感じられる./午後6時過ぎにやっとスライドが完成した.110枚.

◆夜,やっとトークの要旨を書き始める.午後10時に書き上げ,関係者にメール送信完了.連日のドロナワで申し訳ありません.

◆備忘メモ —— 【種】タクソンと【種】カテゴリーに関する認知心理学と生物学哲学の本は10年ほど前に集中的に読んだが,久しぶりに“復習”してみると,新たな発見があったり,整理し直されたりする.とくに,Scott Atran『Cognitive Foundations of Natural History: Towards an Anthropology of Science』(1990年刊行,Cambridge University Press, ISBN:0-521-43873-3 [hbk] / ISBN:0-521-43871-3 [pbk]),Michael T. Ghiselin『Metaphysics and the Origin of Species』(1997年刊行,State University of New York Press,ISBN:0-7914-3467-2 [hbk] / ISBN:0-7914-3468-0 [pbk]),そして Marc Ereshefsky『The Poverty of the Linnaean Hierarchy: A Philosophical Study of Biological Taxonomy』(2001年刊行,Cambridge University Press, ISBN:0-521-78170-1 [hbk])の3冊.かつて通読したときに“マルジナリア”をしっかり記入したので,何年経っても復習がとてもラクだ.※Atran本の目次入力をまだしていなかったことに気づいた.

◆本日の総歩数=5144歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=−0.2kg/−0.2%.


15 december 2007(土) ※ 今年最後の多忙な一週間を前にして

◆うっかり午前6時過ぎまで寝過ごしてしまう…….えらいこっちゃ.外は乾燥した冬晴れ.

◆前日からの続きで,またまた講演スライドづくりに没頭してしまう.いくつかの画像ファイルが研究所にあるのだが,ぐずぐずして行かずじまい.結局,夜までかかって30枚ほどのスライドを新作し,差し替えたりいじったり.講演時間が1時間なので100枚が目安.残り1時間は質疑だそうだが,まる1時間も議論し続けるのか.

◆昼間にすませたこまごま —— スーツを二着つくる.着る機会はほとんどゼロに近いのだが,ないと困ることもたまーにある./竹園の〈Oh! la vache〉にランチに行ったら貸し切りで入れなかった.なんたることか.土曜の昼に貸し切らないでね.仕方がないので,苅間の〈la maison de campagne〉に行き,ポークのワイン煮込みなど.京都で“町家レストラン”が流行っているように,いまのつくばでは“古民家レストラン”が大流行.しかし,どこもアクセスに苦労するロケーションに店を開いている.当然のことながら昔からの集落の中に開店することが多いので,道がとても狭かったり,順路がわかりづらかったり.

◆リンネと博物学(近刊) —— 千葉県立中央博物館(編)『リンネと博物学:自然誌科学の源流[増補改訂]』(2008年1月下旬刊行予定,文一総合出版, ISBN978-4-8299-0129-8).近刊パンフレットが届いた.1994年に千葉県博で開催された同名の特別展の図録(1994年8月21日刊行,千葉県立中央博物館)をベースにして,リンネ生誕300年の記念出版物として増補改訂されるとのこと.初版よりも100ページも厚くなるが(320pp.),値段もなかなかのもので「税込15,750円」と予告されている.

◆関連して読んだ論文たち —— Jose M. Padial & Ignacio de la Riva (2007), Taxonomy, the Cinderella of science, hidden by its evolutionary stepsister. Zootaxa, 1577: 1-2. だから,分類学はその“stepsister”とは目指すところがぜんぜんちがう学問なのだから,当然でしょ.しかし,系統学の論文の単なる“オマケ”として分類学的な記載を付記するのは問題であるという著者らの指摘はよくわかる.両者はちがうのだからメディアも別々にしないとね.

さらに —— Tijdschrift voor Entomologie 誌の創刊150巻記念号(2007年12月1日発行)がフリーで読めるというので,いくつかダウンロードしてみた.農環研の地下書庫にはこの雑誌の古い号がずらっと並んでいるのだが,オランダ語の論文がとても多かった記憶がある.15年以上も前の話だが,当時JICAにいた阿部登さんがヤシの本を書いていた頃,東南アジアの昆虫相に関するオランダ語の古い文献の翻訳を依頼されたことがあった.昔は“蘭領”だったこの地域にオランダ語文献が残存していることは十分に予想されるのだが,今でも利用されているのだろうか.もちろん,現在の Tijdschrift voor Entomologie 誌は完全に英語のジャーナルになっているようだ.

冒頭の回顧論文:Erik J. van Nieukerken & Hans Huijbregts (2007), Tijdschrift voor Entomologie 150 volumes: one and a half century of Systematic Entomology in a changing world. Tijdschrift voor Entomologie, 150: 245-261 を読む.歴代編集長の顔写真とともに,このジャーナルのたどった足跡が述べられる.Alexey Diakonoff が20年以上も編集長のポストにあったとは知らなかった.本誌の包括的インデックスが母体であるオランダ昆虫学会からオンラインで本号発行と同時に公開されているそうだ.それに基づいて掲載論文のさまざまな統計値(言語・分類群・地域など)が示されている.単著論文の割合が急速に低下しているのが目についたが,昆虫分類学の世界でも連名の論文が増えているということか.

◆で,来週水曜(19日)のトークは:三中信宏「分類学と系統学:生物多様性を体系化する二つの軸」と銘打つことになった.演題は決まったものの,要旨がまだでして.話す内容はもちろん確定しているので書こうと思えば書けるのだが,今日はイマイチ気力がダメかも…….右肩はまだ痛いし(年越しするなよっ),急に口内炎はできるし.体調もダメダメか.

—— 来週は月曜から金曜まで,昼か夜のイベントが連日入るので,段取りよくしないとどうしようもない.

◆本日の総歩数=1047歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/+0.3%.


14 december 2007(金) ※ 日暮れて社会復帰への道はなお遠し

◆午前4時半起床.霧のち晴れてくる.気温3.1度.サッポロ慣れしてしまったせいか,ぜんぜん寒く感じられない.

◆久しぶりに研究所に顔を出したら,献本の「山」ができていた.みなさんありがとうございます.まずは一山めの封をさっそく切ってと —— 松本忠夫・長谷川眞理子(編)『生態と環境』(2007年9月27日刊行,培風館[シリーズ21世紀の動物科学・第11巻], ISBN:978-4-563-08291-8 → 版元ページ).各章の執筆者は:序章:フィールドと,ラボと,そして国境を越えて[松本忠夫];1.鳥の渡りの謎を解く―衛星追跡からわかったこと[樋口広芳];2.タンガニイカ湖の魚類群集と左右性の動態[堀道雄];3.昆虫と微生物の内部共生―宿主の生理,生態,生殖,進化における重要性とは?[深津武馬];4.環境要因による節足動物の表現型改変機構―動物における生体発生学とソシオゲノミクスの課題[三浦徹];5.カタツムリの左右―鏡像進化のパターンとメカニズム[浅見崇比呂].一章平均50ページもある.浅見さんからのいただきもの.

◆午前10時,雲一つない快晴.札幌の空とはまったくちがう色をしている.気温11.6度.暖かいな.

◆次,献本の二山めに移動してと —— 井上勲『藻類30億年の自然史(第2版):藻類から見る生物進化・地球・環境』(2007年11月5日刊行,東海大学出版会,ISBN:978-4-486-01777-6 → 版元ページ目次).「xxx+643 pp.」というボリュームにまず圧倒される.初版:『藻類30億年の自然史』(2006年1月20日刊行,東海大学出版会,ISBN:4-486-01644-0 → 目次)ですでにペーパーパック版500ページもあるのに,たった2年弱で200ページも増量,しかもハードカバー版で価格据え置きというのは驚異的だ.東海大出版会,えらい./高橋昌一郎『哲学ディベート:〈倫理〉を〈論理〉する』(2007年11月30日刊行,NHK出版[NHK Books 1097], ISBN:978-4-14-091097-9).

◆しばらく留守にしていると,こまごま雑用も山をなす —— RPの成績検討会は1週間後,12月21日(金),13:30〜15:30,1階会議室にて.前日までに報告書を提出すること./北大の事務から電話あり.札幌往復の航空券の半券は領収書をつけて郵送すること.しかし,領収書をもらってなかったので,再度JTBに出向いて発行してもらわないといけない.飛行機で出張するたびに,事後の雑用がやっかいで参ってしまう./農環研が生物研と「統合」するという話はまだ“案”の段階を越えるものではないそうだ.先日,いない間に理事長による全所説明会が開催されたそうだが,「統合されてゴメンね」という謝罪ではなく,「そういう報道もあります」との説明だったそうだ(どこが説明やねん)./農環研分会に行って先月の動員費をもらう./首都大学東京から,次年度の非常勤出講に関する提出書類が送られてきた.ここ数年,毎年出講しているのだが,几帳面にも毎年「履歴書」「業績報告書」「振込依頼書」の3点セットを欠かさず求められる.去年と同文ねという言い訳は通用しないようだ.これまた脱力する.

◆さらなる学会関連こまごま —— 進化学会の評議員選挙のプッシュを事務局に依頼する./次年度の学会役員の体制について相談./進化学会の後援依頼の了承とか,学会ニュースの会計のこととか./『生物科学』の特集への人選協力とか.

◆最短経路の本(これまたいただきもの) —— P・グリッツマン,R・ブランデンベルク著(石田基広訳)『最短経路の本:レナのふしぎな数学の旅』(2007年12月13日刊行,シュプリンガー・ジャパン, ISBN:978-4-431-10011-9 → 版元ページ目次).全編にわたってカラー図版を使いながら,最短グラフやスタイナー問題,そして最適グラフの分枝限定法や発見的探索が語られる.同じような内容の専門的な離散数学本はたくさんあるが,こんなスタイルの本が書けてしまうとは目からウロコが落ちる.万城目学『ホルモー六景』(2007年11月25日刊行,角川書店,ISBN:978-4-04-873814-9)の第二景「ローマ風の休日」に出てくる“鴨川の橋の問題”についてもっと知りたければ,迷わずこの本を読めばいいのだ.もちろん,系統推定論の樹形探索アルゴリズムの理解にも役立つだろう.

◆夕方4時半に早々と帰宅する.帰る直前に北白川から長期拉致予告のメールが届いたのだが,どの程度の監禁・軟禁を求められるのだろうか.座敷牢が用意されたりするのだろうか.ようわからん.

◆夜は来週の飛び込みトークの準備にいそしんだりする.師走もそろそろ後半になろうというのに,連日走り続けている気がする.来週はほぼ毎日用事が入っているので,“のりしろ”がすでにないので,空き時間はすべて先の支度にあてないと間に合わない.

—— 日付が変わる頃,120枚あまりのスライドを用意したが,もう少し取捨選択の作業を続けないといけないだろう.

◆本日の総歩数=3940歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=+0.4kg/+0.5%.


13 december 2007(木) ※ 新千歳で札幌ラーメンを初めて食べる

◆今朝も午前5時半に起床.晴れ.ぐずぐずしてから荷作りを始める.午前8時前に出発.正門の守衛所でキーを返却し,そのまま駅へ直行.8:25発のエアポート82号に乗る.新千歳に着いたのは午前9時.チェックインし,今回の旅で初めての札幌ラーメンを〈雪あかり〉で喰ってから,ショッピングエリアを小一時間ほどぶらぶらする.

◆移動中読書 —— 万城目学『ホルモー六景』(2007年11月25日刊行,角川書店,ISBN:978-4-04-873814-9)をさくっと読了.前著の“外伝”にあたる掌編集かな.

◆11:00発の「JAL510」便に搭乗.遅滞なく1時間20分のフライトののち羽田に着陸.雨上がりの曇り空.気温は9度との機内放送あり.〈アロマ〉にてトーストとコーヒー.

◆さらなる移動中読書 —— 小谷野敦『日本の有名一族:近代エスタブリッシュメントの系図集』(2007年9月30日刊行,幻冬舎[幻冬舎新書056],ISBN:978-4-344-98055-6)をこれまたさっくり読了.前書きによると,著者は子どもの頃から「系図づくり」が趣味だったという.渋すぎてスバラシイなあ…….家系によっては“謎”めく系図もあるという.川端康成一族とか大江健三郎一族とか.

◆つくばに帰り着いたのは午後4時過ぎのこと.曇り空.関東的には肌寒い1日だったようだが,北都から帰ってくると意外に暖かく感じる.

◆農環研が統合されるのは中央農研ではなく生物資源研であることを知った.※どことくっついてもそんなんどーでもええやん.統合に向けて事務的雑用が増えるにちがいないのが煩わしいが,そんなのはゼロに近いエフォート率で対応すればいいでしょう.

◆しかし,それよりも国内逃亡している間に降積ったもう少しまともに対応しないといけない用件がいくつかメールボックスに溜まっているぞ…….

◆本日の総歩数=7553歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼△|夜○.前回比=未計測/未計測.


12 december 2007(水) ※ 千秋楽:降り積る疲労にワルモノ集結

◆前夜のSS大量摂取が思いのほか効いたのか,午前5時半までしっかり寝てしまった.晴れ.いつも通り駅ナカの宮越屋珈琲で朝食.

セオドア・サイダー『四次元主義の哲学:持続と時間の存在論』をちびりちびりと読み始める.新しい形而上学の本はつい最近まで日本ではまったく出版されなかったと訳者は言う.“時空ワーム”とか“メレオロジー的ニヒリズム”,そして“延続”,“耐続”という術語につい惹かれてしまう.

◆こまごま —— 農環研が農研機構に統合されることが決まったようだ.以前から予想されていたことなので,ああそうかという感じ.時間の問題という雰囲気だったしね.

◆南陽堂書店できのう入手した本 —— 松木貞夫『本屋一代記:京都西川誠光堂』(1986年11月10日刊行,筑摩書房,ISBN:4-480-85346-4)京都市内にかつてあった有名書店の伝記.当時の“文化センター”のような役割をはたしたそうだ./壽岳文章・壽岳静子『紙漉村旅日記[覆刻]』(2003年11月20日刊行,沖積舎,ISBN:4-8060-4088-6).和紙のふるさとを求めて全国を歩いたという壽岳夫妻の紀行文.娘・壽岳章子によると本書は60年ぶりにリプリントされたとのこと.

◆千秋楽 —— 午前9時半から講義開始.系統推定法の相互比較.コンピュータ・シミュレーションによる比較が主流だが,ごく少ないOTUからなるモデル樹を用いた研究しかない.ほとんどすべて 4-taxon case だ.一度だけ 10-taxon case のシミュレーションを Hennig Society で聞いたことがあるが,数年後に Systematic Biology に載った.このような研究では系統樹空間がもともと小さいので,差がはっきり出やすい.しかし,現実的なサイズのデータでは,広大な系統樹空間の中での解探索をすることになるので,事実上どの系統推定法もそれほど外れた樹形を選ぶことはないのではないか.休憩後,科学哲学と体系学論争について説明する.“ぽぱー”.科学哲学会の大会で体系学と科学哲学の「相利共生」について話したのは,昨年10月の北大大会だった.

◆昼休みは〈きゃら亭〉で.その後,地環研の「くぼ亭」を表敬訪問する.挨拶のみにて失礼.

◆午後1時半から講義再開.トピックスいろいろ:祖先復元問題,系統ネットワーク推定,系統地理学,共進化,そして最後に巨大系統樹の推定と生物資源探索の話をしたところで,午後4時の終了時刻となった.受講生のみなさん,たいへんお疲れさまでした.重い資料などはあとで郵便で送り返してもらうことにする.講義最終日に出勤簿に押印.往復の搭乗券の半券は後ほど事務宛に郵送することを忘れないように.

◆夜陰に乗じるワルモノたち —— いったんポプラ会館に戻り,荷物を下ろす.午後7時前,でびるまんから拉致予告電話あり.降って融けて凍った道を踏んでかなたからやってきたワルモノたち3名.そのままタクシーに押し込まれて,一路,南へ.電飾華やかな大通り公園を通り過ぎ,欲望な人びとがあふれるススキノを横目にしつつさらに南下する.中島公園にほど近い,人口密度が低くなった一角.とあるビルの暗い地下に連行される.ここ〈麦酒亭〉にて最終日の夜の迎撃会が始まる.

でびるまんの話では,確かにぼくをこの店に連行したことがあると言う.しかし,自分ではまったく記憶がない.記憶を消去されてしまったのだろうか.オレゴンのビールをはじめアメリカのいろいろなビールあり.ベルギー・ビールの品揃えも豊富だ.店内は内壁すべてにビールの瓶や缶やフタか並べられまた貼り付けられている.雑然というか騒然というか.大柄なひげの主人フレッド・カフマンさんがちょっと姿を見せ,再び消えていった.非日常だ.

とびきり“シモ”な話題のあいまに“高尚”な話題が混じり合い,ロシュフォール10の「11.3%」による打倒効果もあいまって,しだいに睡魔が取り憑くようになる.気がつけばもう日が変わる寸前だ.〈麦酒亭〉に5時間もいたとは.記憶を消された後,再びタクシーに詰め込まれ北大に到着.昨夜に続き,真夜中のご帰還とあいなった.

◆連日の高密度スケジュールはこれですべて消化した.明日は朝のうちに札幌を出て,昼前のフライトで羽田に向かう.

◆本日の総歩数=9116歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


11 december 2007(火) ※ 中日:凍ってまた融けて足元要注意

◆寒さで午前2時にいったん目覚めたものの,暖房をかけて再睡眠.それでも午前3時半にはごそごそと起き出す.日録を書き,講義スライドとデモ準備をする.午前7時過ぎ宮越屋珈琲にて朝食をば.この店では,Ziheng Yang 本をいつも小脇にはさんでいる.ゆるゆるしてからポプラ会館に戻る.夜のうちに凍ったらしい路面が,朝日を浴びて融け始めていた.

◆Willi Hennig 関連情報 —— Wikipedia の記述を読むと,さすがに英語版よりは独語版の方が個々の業績に関しては詳しく述べられている.しかし,何よりもそこからリンクされている Michael Schmitt さんによる伝記記事(2007年1月11日付)が詳細にわたっていて参考になる.彼はずいぶん以前から Hennig の伝記資料やインタビューを通じて情報を収集していたので,このような記事が書けるのだろう.

◆形而上学な新刊本 —— セオドア・サイダー(中山康雄監訳/小山虎・齋藤暢人・鈴木生郎訳)『四次元主義の哲学:持続と時間の存在論』(2007年10月25日刊行,春秋社[現代哲学への招待:Great Works], ISBN:978-4-393-32313-7 → 版元ページ).こてこての形而上学本.David Wiggins, Peter van Inwagen, Joseph Henry Woodger ら総登場.時間切片でのみ「実在」するという著者の考えは,Willi Hennig の character-bearing semaphoront とか,Daniel Rosa の filomero(=phylomer)と通じるのかな.※読みもしないで何を言うかって.

◆午前9時過ぎに講義室に向かう.9時半から講義開始.午前中は,モデル選択論の概論を話し,分子進化における塩基置換モデルの選択を Modeltest で行ない,PAUP* で最尤法を実行する手順について説明する.その後,正午まではパラメトリック統計学について.昼食は構内の〈エンレイソウ〉にて.南陽堂書店に立ち寄る.午後1時半から講義再開.ブーツストラップを中心とする計算機統計学を解説し,PAUP* と〈R〉での計算デモをする.続いて,多変量統計学におけるデータ視覚化に話題を移し,幾何学的形態測定学での薄板スプライン関数による,形状変異と変形の分析方法を説明.のちに,tpsSplin / tpsTri / tpsRelw / tpsTree を用いた一連のデモをする.ここで講義終了.

—— 今日は完璧にびっしりと“とうけい”な1日だった.

◆晴れたり曇ったりの日中だったが,気温はさほど低くなかった.残り雪の冷気が伝わってはきたが,きっとすぐに融けてしまうのだろう.

◆午後6時から,晩酌処〈かんろ〉発寒店にて歓迎会.いまどきこのようにレトロな造りの飲み屋が残っているとは.鍋物を中心にして大量の食べ物が並ぶ.焼き物がとりわけ美味.他にも「ラーメン・サラダ」とか「味噌付きのオムレツ」とか変わったものがある.日本酒は島根の「死神」と「悪乃代官」など.“狸”や“狐”のとっくりが酒を運んでくる.短時間集中的に大量に飲み食いした気がする.どうもありがとうございました.

一次会が終わっても,まだ午後9時にもならない.さらに北上し北17条のカネサ・ビルに吸い込まれる.急な階段を2階に上がったところにある〈つくしん坊〉にて日が変わるまでサッポロ・ソフト(SS)など呑みつつ,しだいにアモルファスになっていく.柔道とかオノ・ヨーコとか.久しぶりにSSと対面した.夜中の北大構内を通り抜け,ポプラ会館に帰り着いたのは午前1時前.

◆明日はいよいよ千秋楽だ.

◆本日の総歩数=8706歩[うち「しっかり歩数」=1287歩/14分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


10 december 2007(月) ※ 初日:雪に降り込められて遭難寸前

◆午前4時半起床.外がやけに“無音”だと思ったら,雪がかなりの勢いで降り続いていた.すでに5〜6センチは積もっているようだ.銀世界.窓を開けたら冷気が一気になだれ込んできた.寒過ぎ.

◆雪の寒さですっかり目が覚めたので,またまた講義スライドいじりを始めてしまう.エンドレス.序論が大幅に増幅されてしまった.

◆午前7時過ぎに朝食を調達するためポプラ会館を出る.明け方ほどではないが,まだちらちらと降り続く.新雪の湿った寒さが足元から這い上ってくる.滑らないよう気をつけながら,駅ナカの〈宮越屋珈琲〉にてカフェラテなど.1時間ほど徘徊して帰還.

◆集中講義初日 —— 午前9時前に迎えに来てもらって,農学部の講義室に向かう.外壁にシートが大きく張られていた.内装の改修工事をしているとのこと.昔の農学部の建物は,廊下の天井がとても高く,照明の届かない“闇”が支配していて,特有の趣があった.しかし,改修後は天井板が低く付けられてしまったので,どこぞの新設大学の校舎みたいなありきたりの建物と化してしまった.これでは妖怪やワルモノはさぞ住みづらいにちがいない.

講義室は,農学部本館からやどりぎのように増設された総合研究棟の「多目的室」だ.到着したらすでに秋元さんがいた.他の受講生たちがしだいに集まり始める.機材のセッティングをした後,午前9時半から講義開始.最初は前口上を1時間ほど,そして,分類学 vs. 系統学, DNA barcoding と【種】問題,一般化系統学の射程と進化するオブジェクトたちについて.ここで昼休み.

◆昼食は,秋元さんたちととともに,晴れ間が戻るとともに早くも融け始めた雪を踏んで,構内の〈きゃら亭〉に向かう.その後,改修中の昆虫体系の院生室にてメールチェックさせてもらう.たった1日見なかっただけで,ジャンクメールが二千通も届いていた…….非ジャンクメールはたった数十通なのに.控室にて久しぶりにでびるまんと対談.最近は全国を飛び回り蹴球観戦が本務とうかがった(もっと世界平和に貢献しようね).明日は秋元さん主催の歓迎会が予定されているが,明後日の夜はもっとアヤシイ人々(低音研からもエントリーあり)が札幌の“闇”を案内してくれるそうだ.転ばないように気をつけないと.

◆午後1時半から講義再開.系統推定のいくつかの方法について.最節約法・最尤法・ベイズ法.その後,PAUP* と Mesquite を用いてのデモンストレーションをいくつか見せ,初日の講義は終了した.

◆Willi Hennig の幼虫形態モノグラフ —— つい先日届いたばかりだったので札幌まで携えてきてしまった:Willi Hennig『Die Larvenformen der Dipteren: Eine Übersicht über die bisher bekannten Jugendstadien der zweiflügeligen Insekten』(1948-52年刊行[Erster Teil 1948, Zweiter Teil 1950 und Dritter Teil 1952], Akademie-Verlag, Berlin).双翅目昆虫の幼虫形態に関するモノグラフ.第1巻が「iv+185pp.」,第2巻が「viii+458pp.」,そして第3巻が「viii+608pp.」もあるので,計1200ページを越える大著だ.ただし,敗戦国ドイツの終戦前後の出版事情を反映してか,紙質が極めて悪く,また装丁も仮製本みたいで,表紙などないに等しい.ただの“紙の束”と表現した方がふさわしい.

第1巻の前半60ページあまりが総論で,残りはすべて各論に当てられている.そして,総論の中で動物体系学の理念を論じているのは,「Theorie der zoologischen Systematik」 (pp. 2-22)の20ページだ.形態学的類似性ではなく,系統学的類縁性に基づく一般参照体系の構築を目指すべきであるという目標設定や空間的代置を含む種概念の提唱は,ほぼ同時に出版された『Grundzüge einer Theorie der phylogenetischen Systematik』(1950年刊行,Deutscher Zentralverlag)の内容を反映しているのだろう.今回の集中講義では,「体系学とは何か」を説明するのに Hennig のこの本を使わせてもらった.

—— このモノグラフを初めて手にしたのは,農環研に当時いた福原楢男さんの私蔵本を借りたときだった.そのときにも「この本は古くて壊れそうなので取り扱い注意です」と言われた覚えがある.ちなみに,本書を所蔵している国内機関は二つだけで,そのうち一つが北大の昆虫体系学教室だ.

◆今日はフリーの夜なので,いったんポプラ会館に戻り,荷物を下ろしてから街中に出る.昼間融けた雪が凍結し始めている.しかし,大分に続き札幌でも転ぶわけにはいかない.足元注意.〈南陽堂書店〉の古書棚をぶらぶらし,次いで〈紀伊国屋書店〉を徘徊する.その後,駅前の地下に潜行して〈味百仙〉に入る.飛露喜のうすにごりとか.雪の夜道をポプラ会館に帰り着いてみたら,まだ7時を過ぎたばかりだった.これは健康的すぎるな.しかし,いちおうは病み上がりなので,クスリを飲んでおく.ほぼ回復している気はするが,ここで油断してはいけない.

◆しかし,今日は初日でとても疲れてしまったので,早々と寝ることにする.午後9時就寝とは小学生以下じゃないか.

◆本日の総歩数=8391歩[うち「しっかり歩数」=885歩/10分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


9 december 2007(日) ※ 雪舞う札幌にてスープカリィに浸る夜

◆午前5時起床.晴れ.日曜だが背に腹はかえられないので,研究所に直行する.気温2.1度.

◆出発当日のじたばたが続く —— 前夜の続きで,講義スライドのいじり倒し作業.差し替えとか削除とか,もうええ加減にせいっ.午前6時過ぎにすべて完了.序論(25枚)+初日(184枚)+中日(204枚)+千秋楽(207枚)で,しめて「620枚」っ!(増えてるやん……).ハードコピーを取り,追加の序論のハンドアウトをウェブに置いて,秋元さんに連絡する.つくばでやるべき作業はこれにておしまい.午前8時過ぎに帰宅.あわただしく旅支度を直前確認する.

◆10:18発の TX 区間快速にて出発.空気は冷たいが,風はなく,日射しが暖かい.羽田空港の第一ターミナルに正午にたどり着き,チェックインと荷物を預けて,やっと人心地がつけた.日曜昼下りの空港は空いている.13:30発「JAL527」札幌行きの便も空席がちらほらと.機内の放送では新千歳空港は曇りで「気温1度」だそうだ.考えるだけで寒過ぎ.

ほぼ定時の午後3時に新千歳空港に着陸した.荷物を受けとって,15:34発の快速エアポート号に乗り,札幌へと向かう.車窓から見える道端には雪が残っていたりとか.見るからに寒過ぎ.午後4時10分に札幌駅に到着.やっぱり寒過ぎ.

昆虫研に電話をして,手はず通りポプラ会館まで鍵をもってきてもらう.寒いのにありがとうございました.ポプラ会館にこの前泊まったのは,10年ほど前のことだったか.最初,構内での位置がうろ覚えで確信がなかったのだが,幸いなことに足がしっかりポプラ会館の場所を記憶してくれていた.

過去の悪行記録をごそごそ掘り起こすと,北大農学部での前回の集中講義は1998年12月1〜4日に「環境資源学特別講義T」という科目として開講していたことがわかった.やっぱり10年前だ(10年で時効になったか……).季節としては今回よりも早い時期だったが,記憶ではポプラ会館前の雪はもっと深く積もっていたはずだ.とても寒かった覚えがある.それに比べると今回はまったく積雪がない.

—— などと思い起こしつつ,全館暖房で暖かいポプラ会館の部屋で荷物を開く.デスクを大きく占拠していたどでかいテレビを床に弾き飛ばし,臨時の書斎もどきを構築し,もってきた本やパソコンをようやく店開きすることができた.

◆一息入れてから,駅前に進撃する.紀伊国屋書店のフロアでは浅田次郎がサイン会を開いていた.入手本:『イエローページ・オブ・サッポロ '07-'08』(2007年3月24日刊行,イエローページ,ISBN:978-4-900835-35-1).サッポロのことは札幌に訊け,ということでさっそく購入.ふむふむ,新しい店がいっぱいあるな,と.しかし,にわか胃腸虚弱なワタシとしては欲望のおもむくままに摂食してはいけない…….※ただ見るだけ.

◆ありがたいことに,昆虫の部屋の院生さんたちが夕食に誘ってくれた.雪が舞い始めた札幌の街をひたすら北上し,北十三条にあるスープカリィ〈札幌ピカンティ〉に入る.超人気のスープカレー店だという.確かに満員御礼で,この雪空の中を店の内外で順番を待つ客が何人も.30分ほどしてから席に通された.定番の「開闢カレー」に舞茸をトッピングしたものを注文.胃腸の具合が心配だったのだが,幸いなことに,辛さよりもむしろ旨味のあるスープカレーで,舞茸がどっさり,じゃがいもが丸ごと,野菜の素揚げがたくさん入っていて,たいへん満足しました.いい店をどうもありがとう.

—— 寒空の下をてくてくと南下する.ポプラ会館に帰り着いたのは午後8時過ぎのことだった.念のため,胃腸薬をしっかり服用しておく.

◆夜はちょいちょいと準備をして,早めに寝ることにしたかったのだが,またもだらだらとスライドをいじり始めたのが運の尽き.結局,日が変わるまでごそごそしてしまった.

—— ふと窓の外を覗いたら,何と雪がしんしんと積もり始めているではないか.げ!

◆本日の総歩数=10170歩[うち「しっかり歩数」=857歩/10分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=+0.1kg/0.0%.


8 december 2007(土) ※ 冬晴れつくばでじたばたと旅支度

◆午前5時起床.夜明けがどんどん遅くなってきた.晴れ.しかし,冷え込みはきつくない.腹はときどき痛みを覚える.やっかいなのは,上腕がまたぞろ痛くなってきたこと.右肩のムリな動きを強制したせいだろうと思う.

◆早朝のこまごま —— 常盤台からメールあり.来年の横浜国大での生物統計学集中講義は実現しそうな気配.おお,かの師と超合体ですかあっ.今のところ,夏学期(8〜9月)の15時間をいただくということで調整してもらうことになった./先日ドタキャンした編集会議について朝倉書店から連絡があった.

◆午前10時の研究所にて.晴れているが空気は冷たい.気温10.9度.正午まで旅支度とスライドの泥縄準備をば.系統解析ソフトウェアも新たにインストールし,ランチャーに並べる.帰宅.昼食は金田の〈いちい〉にてシンプルなせいろ蕎麦を.

◆数理系統学の新刊が届く —— Olivier Gascuel and Mike Steel (eds.)『Reconstructing Evolution : New Mathematical and Computational Advances』(2007年6月28日刊行, Oxford University Press,ISBN:978-0-19-920822-7 [hbk] → 版元ページ).系統学的多様度とか巨大データセットとかいくつか新しいテーマが論じられている.一昨年に出た:Olivier Gascuel (ed.)『Mathematics of Evolution and Phylogeny』(2005年,Oxford University Press,ISBN:0198566107 [hbk] →目次版元ページ)の姉妹編と位置づけられる.そういえば,最近になってやっとペーパーバック版が出たようだ(→版元ページ).冒頭40ページをpdfで読むことができる.

◆晴れて北風が身にしみる午後早く,NTTがルータ修理に来た.結局,ルータの“ハングアップ”が原因らしく,再起動をかけてごちゃごちゃしていたらつながった.ルータの取り替えにいたらなかったのは幸いだった.

◆午後いっぱい,スライドの調整を延々と続ける.今回は「体系学特論」なので,系統学とともに分類学の噺もかけてみようと思う.話す内容はいくらでもあるが,いくつかアブナイ資料をランチャーにずらっと並べてみる.もう少し詰めないといけないかもしれない.この内容が固まったら,12月19日(水)の東大総合研究博物館でのトークは万全だ(演題と要旨を早く出さないと).そうこうするうちに,夕暮れが足早にやってきた.

◆夜はスーツケースに詰める作業.もう旅慣れているので,黙っていてもどんどん詰まってしまうので,ものの十分で完了.その後,またまたスライドの調整作業が続く.それとともに,ソフトウェアの動作確認とテストデータの容易.ついでに〈R〉もちょいとチェック.

—— 腹と腕がさりげなく痛いんですけど…….※半病人のままサッポロ行きか.[クスリだけはちゃんと持参しないとえらいことになるぞ]

◆明朝,出発直前のトド撃ち —— 講義スライドのバックアップとハードコピー,追加配布資料のアップロード.

◆本日の総歩数=1650歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.6kg/−0.4%.


7 december 2007(金) ※ エアポケットのような凪の金曜日

◆午前4時起床.星空微風.気温マイナス0.3度.研究所にて,札幌にもっていく機材や資料の確認をする.まずは持参必須のハードウェアから始める.ソフトウェアは後回しにしよう.

◆共立出版:来春新刊の進化・生態本たち —— 共立出版のサイトの「近刊情報」を眺めていたら,来年の2〜3月にかけては進化・生態関連の新刊本がいっぺんに「固め打ち」される予定であることがわかった.

  1. Michael Ruse[佐倉統・土明文・矢島壮平訳]『ダーウィンとデザイン:進化に目的はあるのか?』(2008年2月刊行予定,→ 版元ページ)※あ,ごめん,コメント返してなかった…….
  2. 巌佐庸『生命の数理』(2008年2月刊行予定 → 版元ページ
  3. Martin A. Nowak[ 竹内康博・佐藤一憲・巌佐庸・中岡慎治監訳]『進化のダイナミクス:生命の謎を解き明かす方程式』(2008年3月刊行予定 → 版元ページ
  4. 松田裕之『生態リスク学入門:予防的順応的管理』(2008年3月刊行予定 → 版元ページ

年度末にこの分野を集中的に固めて出版するということは,明らかに「福岡シフト」なんだろうなあ.

◆午前のうちに気温はどんどん高くなり,日射しも暖かく感じる.午前11時の気温は13.3度になった.中央水研から生物多様性のクラスター分析に関するコンサルティングを依頼される.当初は〈SAS〉での解析をということだったのだが,〈SAS〉から完全に離れてもう10年になるので,スクリプトの書き方を完璧に忘却している.〈R〉だったら「hclust」ひとつでキマリでしょ.

◆晴れた午後のこまごま —— 北大巡業準備を粛々と進める:0) 放っておいた DynaBook くんと携帯電話の Bluetooth 接続を完結する.これでポプラ会館からいつでもつなげられるぞ;1) スライドの整理とランチャーへの組み込み;2) ついでにイントロ用の新作スライドを10枚ほど補充する;3) デモに用いる系統推定ソフトウェアの動作確認とテストデータの容易.これは未完了;4) その他の資料・ファイル・DVDなど.明日中にはすべて終えないと明後日の旅立ちに間に合わない;5) そうそう,つくばから空路でJR札幌まで往復するタイムテーブルを確認しないと.

◆電話まわりの幸運と不運 —— 午後4時過ぎに帰宅.帰りしなにNTTショップに寄って,へたり気味の携帯電話バッテリー交換を依頼する.ちょい古い機種だったので発注して郵送するとのこと./帰ったら自宅のルータが死んでいた…….週末に緊急の修理依頼をする.フレッツの光ファイバー回線なのだが,インターネットはちゃんとつながるのに,電話回線のみ逝くとはなんじゃらほい.

◆夜7時からノバホールにて,〈第23回つくば国際音楽祭〉の「鈴木秀美・Bach無伴奏チェロ組曲全曲演奏会」の第二夜.先月の第一夜では,奇数番3曲だったが,今日の第二夜は偶数番の3曲.客席が空き気味なのは前回と同じだが(何で聴きに来ないのか),パッションは今夜の方が高かったかな.前回も感じたが,バロック・チェロの高音弦がときどききぃきぃ言うのはガットの癖なんでしょうか.最後の第6番がことのほか難曲であることは,至近距離から見ていてよくわかる.

◆午後9時過ぎに帰宅して遅い夕食をすます.腹具合はだいぶよくなってきたようだが,ここで油断すると,さらなる天罰が下るかと思うと暴飲暴食は御法度だ.※札幌に胃薬持参を忘れるべからず.

—— その後,旅支度をそろりそろりと.日が変わる頃に就寝.

◆本日の総歩数=6448歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/−0.3%.


6 december 2007(木) ※ ほぼガス欠のまま駒場村に向かう

◆午前5時20分起床.よく晴れて今朝も放射冷却.

◆明け方からまたもや腹痛が津波のように押し寄せてきた.昨夜の酒宴で腹中蟲が目覚めてしまったのか.病み上がるどころか,病みの最中に忘年会に出かけようなどという禁忌を犯してしまったための再度の天罰だろうか.いずれにしても,今日は午後に講義があるので,万難を排して駒場にたどり着かなければならない.まずは朝の絶食から始めよう.

◆午前10時.快晴.空気が冷たい.気温7.9度.研究所に顔を出したものの,腹痛はなお続く.

◆いただきもの(ありがとうございます) —— 田中純『都市の詩学:場所の記憶と徴候』(2007年11月26日刊行,東京大学出版会,ISBN:978-4-13-010106-6 → 詳細目次版元ページ).500ページ近くある大著.「文化表象論」というのは,ぼくにとってはまだよくわからない研究分野だが,“表現型”としての文化を眺めるということなのだろうか.ただし,本書に関していえば,形態学(morphology)というキーワードのもとに表象を論じるというスタンスが立てられているようだ.関連して,反復説・進化論・生態学という言葉も目次には見える.“表現型”の奥にある“遺伝子型”への掘り下げ? あるいは,中谷礼仁『セヴェラルネス:事物連鎖と人間』(2005年12月23日刊行, 鹿島出版会, ISBN:4306044602 → 目次)の「都市系譜学」とのつながりもあるにちがいない.

◆昼になっても腹痛はいっこうにおさまらず.昼も当然の絶食となり,クスリだけを口にする.※お願いだから“ワラ人形”を方々で打たないでね…….

◆午後1時過ぎに研究所を出て,いったん帰宅.朝から何も食べていないせいか,腹中蟲の動きはいったんおさまっている.もうこのまま東京に出るしかないだろう.14:11発の TX 快速にて出発.ほぼガス欠のまま駒場に到着し,教壇に立つ.

◆本日の生物統計学講義(16:20〜17:50) —— 実験計画法の続きで,乱塊法と要因実験,そしてスプリット・プロットについて説明する.前回は,R Commander を使って「データを見る」作業をしなかったので,今回の講義でそこのところを補った.メニュー形式のGUIを使うのは,講義ツールとしてはたいへん効率的だ.以前,地べたの〈R〉でコマンド入力しながらデモをしたときがあったが,コマンド入力の間に教室の緊張感がとぎれてしまうということがあった.キーボード入力ミスなどやらかしたら,いっぺんにダルな空気が流れてしまう.こういうときは,メニュー選択でささっと小気味よく結果を見せるというのが,講義のテンポを保つ上でつごうがいい.このように考えると,〈R〉の CUI と GUI の使い分けは自ずとはっきりしてくる.

◆午後6時前に教室をあとにする.もうだいぶ前から“ガス欠ランプ”は点灯しっぱなしなのだが,ここでへたに何かを口にして,駒場東大前とか渋谷駅でうずくまるわけにはいかない.是が非でも飢餓状態でつくばまで帰り着かないと.

◆帰路車中読書 —— 佐野眞一『枢密院議長の日記』(2007年10月20日刊行,講談社[現代新書1911],ISBN:978-4-06-287911-8 → 版元ページ)の長い第4章「柳原白蓮騒動」(pp. 168-246)を読了.皇室ゴシップのオンパレード.これはすごいかもしれない.

◆午後8時過ぎにつくば到着.ふらふらと帰宅し,一汁一菜の雑炊をやっと口にする.今日は日ごろの“蓄積栄養”のみで生き抜いた気がする.その後,『』第7回ゲラの修正箇所をまとめて,午後11時過ぎにメールで音羽に返信する.今日のトド撃ちはこれにて完了.

◆本日の総歩数=8140歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.9kg/−0.2%.


5 december 2007(水) ※ 小康状態のまま神田駅前に降り立つ

◆午前2時頃,きりきりと刺しこむ頭痛で目が覚める.やっぱり来たか.しばらく寝返りを打ったり,ソファに移動したりしたものの,あまり効果はなく,明け方4時過ぎに頭痛薬を飲んで押え込む.祟られてるのかなあ.

ふらふらと未明の研究所にむかう.この冷え込みは厳しいなとと思ったら,気温マイナス2.9度だった.確かにこの冬一番の寒さだ.三日月と明けの明星が並び,星空が冴える.しかし,頭はふらふらする.

◆昼間では,半死人のまま過ごす.11時の気温9.9度.快晴.葉がほとんど落ちてしまった木々の枝から冬晴れの空が見通せる.午前のこまごま —— 年末調整に伴う追加証明書の提出./生態学会福岡大会の参加者番号が割り振られてきた.「1522番」です./PAML解析のためのテストデータがさっそく送られてきた.しばらく時間をいただきます./進化学会ニュース vol.8, no.2 が届く.11月30日付けの発行となる.京都大会の総集編です.64ページもあるので,厚いし重い./ついでに,進化学会評議員選挙の投票用紙もやってきた.

◆凡ちゃん,またガンバレ! —— 万城目学『ホルモー六景』(2007年11月25日刊行,角川書店,ISBN:978-4-04-873814-9).前著:万城目学『鴨川ホルモー』(2006年4月20日刊行, 産業編集センター, ISBN:978-4-916199-82-0)の続編.安倍くんいわく,「人間は結局,自分の目で見たものしか信じない」(p. 8).

◆午後になってやっと半病人にまで復帰する.こまごま続く —— 来週からの北大での生物体系学講義のハンドアウトはウェブに置いてダウンロードしてもらうことにした.配布をよろしくお願いいたします.>関係者諸氏./領域忘年会の日程と場所が確定した.12月17日(月)午後6時半〜,二の宮の〈カフェ・ド・エレガンス〉にて.今年はずいぶんおしゃれじゃない,岩崎くん.

◆午後2時過ぎから1時間弱,『Modern Morphometrics in Physical Anthropology』の輪読セミナーの第5回.Chapter 2 : Fred L. Bookstein「After Landmarks」(pp. 49-71)をば(pp. 57-64).三次元的な形状変化を薄板スプラインを用いて解析するためには,新しいグラフィック・ツールが必要であると論じる.たとえば,三次元形態上の空間曲線の法平面に対して標識点を射影した上で形状変形をスプライン近似するという手順を,曲線すべてにわたってトレースし,それを動画的に動かすことによって,形状変形の動的な様相を視覚化するという提案がなされている(〈Edgewarp〉には実装されているらしい).また,形状曲線に対する法平面と接平面を組合せるというアイデアも述べられている.しかし,著者自身が指摘するように,この方面の研究はまだ端緒についたばかりだとのこと.

◆夕方のこまごま —— 音羽から電話あり.お代官さまはインフルエンザで伏しておられたそうな.『』連載第7回のゲラをファクスするのでよろしくとのこと.直後に,音羽の御家老様から直々にファクスが農環研に届く.明日までに返信か…….

◆病み上がり(というか,病み最中)にもかかわらず,忘年会に出かけるワタシ —— 17:09の TX 快速にて神田に向かう.JR神田駅前に降り立ったのは午後6時過ぎのこと.時間がまだあったので,北口近くの〈銘酒館むらこし〉に立ち寄る.午後7時前に上海料理〈竹苑〉に到着.午後7時過ぎから,東大農学部の生物・環境工学専攻の教員忘年会.久しぶりにちゃんとした食事を口にした気がするが,胃袋は大丈夫だろうかと気にかかってしまい,つい烏龍茶など気弱な飲み物に逃げてしまう.こんなことではいかんのだが,夜の神田でうずくまるわけにはいかないので,「今夜は飲めないワタシ」を装う.

—— 午後10時に解散.飲める方々はさらに「n次会」まで行き着くにちがいないが,ぼくはもちろん一次会で退散させてもらう.つくばにたどり着いたのは午後11時過ぎ.とりあえず自宅まで帰れたことをよしとしよう.

◆往復車中では『』のゲラのチェックを完了する.明日,修正箇所を連絡します.>御家老様・お代官さま.

◆さて,今日は即寝ることにしよう.

◆本日の総歩数=8140歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.9kg/−0.2%.


4 december 2007(火) ※ 肩から胃,胃から頭.What's next?

◆午前4時40分に起床.曇りところどころ晴れの星空.気温4.3度.胃痛はいっこうにおさまらない.

◆朝イチで医者に見てもらったところ,ノロウィルスとかインフルエンザというさらにやっかいな病気ではなく,シンプルな「急性胃炎」でしょうとの診断だった.しかし,いかにシンプルであろうともうっとおしい症状であることにはちがいがない.胃壁を保護する薬,胃液抑制剤,そして胃痛止めを処方してもらう.外は快晴.午前10時の気温は11.1度.

◆研究所にてこまごま —— 来週からの北大の兼業届けの修正を出す./組合で保険のことなど.

◆今日は振替休日なので,昼過ぎには帰宅し,薬を飲んでそのまま寝てしまう.今日の午後3時からは朝倉書店で進化学辞典の編集会議がある予定だったのだが,この体調ではどうしようもないので,出席を見合わせるメールを送る.そのまま夕方まで寝る.しかし,症状止まず.夕食を少し摂って胃液抑制剤を飲んだらだいぶましになった.夜はまたそのまま寝たり起きたり.

—— 平日の何倍かの睡眠時間を取る日々が週明けから続いているが,これじゃあ半病人というか半死人ですな.

◆夜中近くなって,今度は頭が締めつけられるように痛くなってきた.肩の打撲の次は予期せぬ急性胃炎.その次は頭痛かい.What's next?!

◆寒気が南下してきたそうな.明日の関東はこの冬一番の冷え込みになるそうだ.

◆本日の総歩数=2745歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.前回比=−0.3kg/−0.8%.


3 december 2007(月) ※ 冷たい雨が降り続き,落葉が降り積る

◆前夜,不規則な寝入り方だったので,丑三つ時頃から何度も目が覚める.午前4時半に起床.星空.気温3.4度.地表近くは薄い霧がかかる.腹はまだ痛いが研究所に直行.

◆南方熊楠の“くさびら”図譜 —— 萩原博光解説/ワタリウム美術館編集『南方熊楠 菌類図譜』(2007年9月25日刊行, 新潮社, ISBN:978-4-10-305551-8 → 版元ページ).ワタリウム美術館で開催されている展示〈クマグスの森〉に合わせて出版された図録.キノコの彩色手書き図版が大判で.エルンスト・ヘッケルの図譜集:Olaf Breidbach『Ernst Haeckel : Bildwelten der Natur』(2006年8月刊行,Prestel,ISBN:3791336630 → 目次)を連想させる.

◆早朝は晴れていたが,しだいに曇ってきて,午前10時頃には雨になった.予報通りだ.この雨ですっかり葉が落ちてしまうだろう.腹痛なお続く.

◆年の瀬の高座がトツジョとして —— 12月19日(水)の件.単に会うだけかと思ったら,そうではなく1時間のトークが必要だとの連絡あり.まあ,東大の総合研究博物館であれば勝手知ったる場所だからいいのですけどね.1時間のトークと続く1時間の質疑,その後に会食の場が設けられるという.ちょっと会うつもりが,えらいことになった.一両日中にタイトルと要旨を提出せよとのこと.

◆昼のこまごま —— 生物研の知り合いから質問あり.PAML4 で分岐年代の推定をしたいのだが,近くでは誰も知らないので手伝ってもらえないかとのこと.時間が差し迫っているようだが,考えさせてくださいね./系統学的多様度の計算に関する返事あり.割にラクに計算できるようでよかった.

◆午後2時過ぎには天気は回復し,晴れ間が見えてきた.前線はもう通り過ぎてしまったのだろう.腹痛が…….

◆午後のこまごま —— イッキにかたを付けてしまった:来週のサッポロ高座のスライドとハンドアウトを完成.スライド枚数はしめて「170+168+195=533枚」なり.ハンドアウトについては後ほどCD-ROMに焼いて郵送しますのでコピーをよろしく.>関係者諸氏./駒場講義のハンドアウトと出席票も完了.ハンドアウトは早々とオンライン公開してしまった.

◆午後5時に帰宅.雨上がりで気温が下がっているせいか,霧がかかっていた.空気が冷たく湿っていて,ことのほか腹によくない…….帰宅後,ほとんど活動せずに臥せる.振替休日の明日は医者に行くしかないな.

◆本日の総歩数=5278歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝−|昼○|夜○.前回比=−1.2kg/+0.6%.


2 december 2007(日) ※ Früchtebrotが並ぶ日曜の天久保

◆午前3時50分に起床.星空.研究所に直行する.この時刻の気温は1.9度だったが,午前6時前には0.6度まで下がった.冷え込む冷え込む.

◆未明の研究室にてこまごま —— 来週のサッポロ行について,宿舎の鍵の手配など連絡をもらう.天気予報を見るかぎりたいへん寒そうで,雪も予想される.構内で迷子になって凍死しないように気をつけよう.転倒にも気をつけよう.右肩はまだ痛いです./メーリングリストの管理作業.死にアドレスをばさっと削除し,月例アナウンスを一日遅れで配信する./ついでに,遅れていた日録もアップする.

◆朝からよい天気.北風が冷たく,刷毛のような雲が上空にたなびく.

◆帰りしな,天久保のパン屋〈Brotzeit〉に立ち寄ったら,焼きたての全粒粉トーストパンとともに,今年も「フリュヒテブロート(Früchtebrot)」が並んでいた.そういう季節になったか.手間がかかるフルーツパンらしく,たくさん作れないので,あっという間に売り切れになる.昨年の暮れにたまたま買えて,とてもうまかったので今年の冬も狙っていた.ドライフルーツがぎっしり詰まったパンで1週間は常温保存できるとのこと.シュトーレン(Stollen)と同じく,薄くスライスして少しずつ食べること.シュトーレンはつくば市内でも割りに簡単に手に入るが,あの甘さには閉口してしまう.フリュヒテブロートは,その点,フルーツの甘みだけなので,毎日食べていても飽きがこない.

—— 〈Brotzeit〉でフリュヒテブロートを運よく見つけられたらシアワセだ.

◆午後の障り —— 朝から腹具合がいまひとつよろしくなかったのだが,午後になって痛みが伴うようになった.最近,つくば界隈では「腹風邪」が流行しているという.それにやられたかもしれない.せっかく打撲から回復しつつあるというのに,今度は腹痛か.熱があるわけでもなく,咳き込むこともない.ただ腹痛あるのみ.腹はしくしく痛い,寝返りを打てば肩が痛いでどうしようもなく,だからといって徘徊する元気はないので,ただ無為な時間が過ぎていくばかり.

—— 腹中蟲でもいるのか,これはきっと何かの障りにちがいないと“方違え”を真剣に考えたり,あるいは六条御息所の生霊かとも思い悩みつつ,ひたすら臥せる.しかし,体調はよくならないまま夕闇が降りてくる.夜になってもそのままで,夕食も摂らず,薬を飲んでそのまま睡眠体勢に入る.師走に寝ていてはいけないのだが,これはもう仕方がない.

◆本日の総歩数=1957歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜−.前回比=−0.9kg/−0.9%.


1 december 2007(土) ※ 師走の有栖川公園の日だまりにて

◆午前5時起床.昨日の雨はもう上がり,朝日が射している.湿った冷え込み方だが,気温は高めなのだろう.

◆早朝のこまごま —— 師走に仕留めるべき「トド」のリストをつくる.こんなにたくさんのトドがいるのか,と言葉もなく.適当に分散してくれリゃあいいのだが.とりあえず,今日のトドをさくっと撃って,札幌で強大化しつつある大トドを何とかしないと.群れる子トドは数知れず.

◆粘着なワタシ —— ということで,今日の講演スライドをまだいじっている.話す内容が確定しないのは,他の演者が何を話すかがわからないからというシンプルな理由による.今回のシンポジウム〈複雑系データの解析〉の演者・演題はもちろん決まっているのだが,講演時間も決まっていないし,要旨というものももともと存在していないので,ぼくの講演内容はずっと未確定のままになっている.当日の朝なのに,なおケリがつかないとは.

◆出発前,越中殿より電話あり.某誌特集をどーするかとのこと.そういうことはすっかり脳裏から消え去っていた…….まあ,今日午後の編集会議ではよろしくよろしく.10:11発の TX 快速で秋葉原へ.気温はやや高めで,風もなく日射しが柔らかい.師走の入りとしては穏やかな日だ.秋葉原で,日比谷線に乗り換え,正午ちょうどに広尾駅の地上に出る.麻布ナショナルマーケットで,“サンドイッチ”を買ったはずが,クレープ生地のパンに巻かれた直径5センチ,長さ15センチもの巨大な“太巻き”みたいなパンがごろんと転がり出た.中は甘いサザンソースのチキンと野菜がぎっしり.有栖川公園の日だまりのベンチで黙々とかじる.食に関しては広尾は日本にして日本にあらず.

◆往路車中読書 —— 佐野眞一『枢密院議長の日記』(2007年10月20日刊行,講談社[現代新書1911],ISBN:978-4-06-287911-8 → 版元ページ).序章「誰も読み通せなかった日記」,第1章「宮中某重大事件」,第2章「懊悩また懊悩」と第3章「朝鮮王族の事件簿」を読む.150ページほど.戦前戦中を通じ長年にわたって,みみずののたくったごとき悪筆で「蝿頭の文字をもって記され」(p. 12)た日記を残した枢密院議長・倉富勇三郎の伝記.とにかく,書いて書いて書きまくったそうだ.うらやましい.著者も指摘するように,「倉富がなぜこれほど退屈で長大な日記を書いたのかという点」(p. 18)にぼくも関心がある.倉富は,日によっては400字詰にして50枚もの分量を書いたという.飽くことなき執念というか,ほとんどビョーキというか.※他人事ではないのだが…….

◆午後1時前に統計数理研究所の講堂に入る.世話人のみなさんに挨拶して着席.ぱらぱらと人が集まり始めたが,それほど多くはない.ひとり30分の持ち時間であることを初めて知った.他の演者の方々とも挨拶.複雑ネットワークなひとびと.

◆日本行動計量学会・第89回シンポジウム〈複雑系データの解析〉 —— 午後1時定刻にシンポジウムは開始した.講堂にいる頭数は20人ほどか.ワークショップみたいなものだ.内容的に,9月の2007年度日本行動計量学会大会での特別講演と重なる部分があるのでちょっと心配したが,幸い学会員よりは非会員の方が多かったようでよかった.先行する演者のトークを聴きながら,またまたスライドを大幅にいじり始め,取捨選択をいろいろしてしまう.Google Earth まで動員する手はずを整える.講演直前の大幅変更はふつうは危険なのだが,今回に限っては,他のトークの実質的情報が会場に来るまでは得られなかったので,しかたがないだろう.

午後2時過ぎから30分ほどトークをした:三中信宏「複雑なデータを科学する:アブダクション的推論の基盤としての最節約原理」.すでに慣れた内容ではあるのだが,高座のたびに噺は新しい.解放されたとたん,昼下りの睡魔が降臨する.ミクシィやブログのネットワーク分析,隣人関係のクラスリング,アンケート調査へのネットワーク分析の応用とか.

休憩後,指定討論者を交えての質疑の時間.ワタクシの噺はたいへん「元気がよかった」とのこと(そらそーでしょ).1) 系統樹の発見的探索はどの程度の価値があるかとの質問.まあ,今のところ,現実的なサイズのデータだと発見的探索しか道はないもんね.2) ツリーやネットワークの視覚化ははたして役に立つのかという質問.きれいにヴィジュアライズできたからといって,新しい情報が付け加わるわけではないが,込み入ったグラフの解読能力には自ずと限界がある.適切な視覚化のツールがあれば,解読の助けになることはまちがいないだろう.3) グラフの探索空間を事前に制約することにより,探索時間を短縮できないかという質問.確かに生物学的にありえないグラフを除外することは可能だが,それでは計算時間が大幅に節約できることには必ずしもならないだろう.4) 系統樹の最適化基準の統一に「MDL原理」を用いるというどういうことかという質問.いくつかある系統推定の基準はうまくいけば“統一”でき,上位の原理の異なる体現として下位の最適性基準が導出できるかもしれない.MDL原理はそういう上位原理の候補のひとつだろう.「KISS原理」(=「Keep It Simple and Stupid」→ Wikipedia)がヒトの認知基準として重要だろうというコメントをもらった.グラフの視覚化には「教育指導」と「認知傾向」のふたつが有効とのこと.

—— それやこれやの質疑の後,シンポジウムは終了した.午後5時過ぎに夕闇の南部坂を降りる.広尾の駅前はもうクリスマス一色だ.

◆帰路の車中読書 —— Michael T. Ghiselin『Metaphysics and the Origin of Species』(1997年刊行, State University of New York Press[SUNY Series in Philosophy and Biology], ISBN:0-7914-3467-2 [hbk] / ISBN:0-7914-3468-0 [pbk] → 目次・書評).ほぼ10年ぶりの再読.次回の『』原稿執筆のための復習としてざっと読みとおす.プロセス形而上学すなわち過程から実在を逆に切り出すという著者の方針を再確認する.生きているのが生物個体であるように,進化するのが「種(個物としての)」であるとの主張だ.ここでもまた,集合帰属関係(set-member relationship)ではなく,全体部分関係(whole-part relationship)を踏まえようとする.その割には,「mereology」の先駆者たちをいっさい引用していないのはどーいうことか.

◆つくばに帰り着いたのは午後7時半だった.ああ,疲れましたわ.

◆本日の総歩数=5155歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/−0.8%.


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