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日録2005年8月


31 august 2005(水) ※ ひいこらひいこら

◇5時過ぎに起床.気温21.4度で涼しい.曇り.しかし,陽がのぼってまたまた暑くなってきた.

◇早朝からこまごま —— 首都大学東京での集中講義関連.ホテルを予約してもらう./ 計量生物学会の名簿アンケートを返信(済)./ 9月にある JICAキューバ国別コースの出講依頼が届く.そろそろデータは取れはじめているでしょうか?>研修員諸氏./ 朝日カルチャーセンター新宿教室への出講承諾書を投函(高座名〈進化する生物〉です)./ JST研究会の連絡をさくっと進めないとまずいかも…….

なんだかもう,エンドレスに“用事”がたたみかけてくるようですなあ(実感).

◇「訳語」の問題が急速浮上 —— ある分岐図上でのノードの“分岐年代”を指定するにあたって,あるクレードの直接共通祖先である crown node の年代〈crown node age(cna)〉と,その crown node を生んだ直接祖先である stem node の年代〈stem node age(sna)〉のふたつの“分岐年代”が現在広く使われている.で,この〈cna〉と〈sna〉の訳語をどーするのかという問題.もし,定訳がまだないようなら,勝手に〈cna〉=「最近根分岐年代」と〈sna〉=「基幹部分岐年代」という訳語を与えてしまおうと質問者と話し合っているところ.もしすでに「これは」というナイスな訳語がありましたら教えてください.

◇午後2時から,ひさしぶりの〈系統学的考古学〉セミナー(第15回).Chapter 4 : 「Constructing Cultural Phylogenies」の続き.考古系統樹における〈ユニット〉とは何かというテーマの節(pp. 115-117).要するに,著者たちにとって,考古学における〈ユニット〉とは,生物学における〈種(species)〉みたいなものなのね.歯切れとても悪し(あったりまえじゃん).いっこうに進まなかったのは,すべて著者のせいなのよ(>南保くん).考古学における〈ユニット〉の系譜を考えようとしている点だけは評価できるかな.すべてを「リネージ」ですませてしまえばラクになれるのに.

◇午後のこまごま —— 来月下旬のグループ内セミナーの演題と要旨を提出.今回は形態測定学に関するお話.同月にある「統計学会大会」「筑波大学数学系月例談話会」で話す内容の「流用」です.

【欹耳袋】 —— 実に驚くべきことに,C. J. Lumsden and E. O. Wilson『Genes, Mind, and Culture: The Coevolutionary Process: 25th Anniversary Edition』(2005年8月刊行,World Scientific,ISBN:981-256-274-5 ※→詳細情報)がリプリントされたらしい(現物未確認).1981年初版のこの本がまさか25年後に再刊されるとは予想していなかった.社会生物学の路線の上に,文化遺伝子(culturgen)の概念とそれをふまえた遺伝子-文化共進化の数理モデルを提示した専門書.結局,本書は日本語訳されることなく終わったが,最初の章「The Next Synthesis」だけは見ておいてもいいかな.初版に比べてはるかに高いけど.

◇あららら,消化しきれていない仕事たちの堆積がうず高く〜.

◇Ernst Mayr 追悼特集が編まれている『TAXA』第19号の目次を公開した.特集の他の記事を見てみると,ぼくだけが「2倍以上」書いてしまったことになる(非会員なのにねえ).というか,もっと書かんとあかんがな.>みなさん.

個人的には,この号に載っている一般記事のひとつ:鈴木實「動物分類学会の創立に関した見聞録」(pp. 79-82)が関心を惹いた.日本動物分類学会は1951年に創立されたが,その前段階は敗戦直後の1948年にまでさかのぼるという.占領軍GHQとのやり取りの中で,基盤を喪いつつある分類学を維持し,後継者を育てることが急務であるという,当時の指導的分類学者・内田亨の動機づけがあったことが指摘されている.同じく当時有力だった江崎悌三はより分類学プロパーの問題(標本保管と命名規約)の上からも同様の動機を抱いていたそうだ.このような状況は,Ernst Mayr や Waldo LaSalle Schmitt が同時代に活動する動機づけを与えた学問的バックグラウンド(pp. 98-99 に載せたぼくの“分類学・進化学曼荼羅”を参照)と共通するものがあるように感じる.アメリカからの進駐軍の生物学担当者が,この学問的バックグラウンドをどれほど共有して日本に乗り込んできたかはわからないが,きっとおもしろい科学史的問題がそこにあるにちがいない.

◇本日の総歩数=7065歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/+0.2%.


30 august 2005(火) ※ 残暑平日

◇午前5時半起床.気温20.6度.日中はごまかせても,朝晩でわかってしまう季節の移り変わり.

—— 旅行の荷物類を抱えて早朝の研究所に入り込む.事務連絡類の堆積がいっぱい(……).

◇日本動物分類学会和文誌『TAXA』の最新号(第19号)の“本体”が届いていた.通常の記事に加えて〈Ernst Mayr 追悼特集〉が上乗せされているので,ボリュームがある.

—— 上記の学会サイトはまだ更新されていないようだが,〈ハネカクシ談話会BBS〉では,今回の特集にからんで活発なコメント投稿がされています.※【種】の好きなアナタ,ひさしぶりにいかがっすかー.

そういえば,Robert Trivers をハーバードに呼び戻したのはほかならない Mayr だったと巌佐庸さんが飲み会のときに本人談として言っていた.(メモ)

◇さっそく午前のこまごま雑用処理 —— 仙台の復命書(済)./ 振替休日届け(済)./ 次期中期計画に関する意見交換(済)./ JST研究会の連絡文書に関する検討(未)./ 計量生物学会アンケート(未)./ 朝日カルチャーセンターからの依頼書(未)./ 進化学会関係の事後処理やら依頼やら(未).

◇もう,お昼だ.日中はまだ真夏日が続いている.と思ったら,意外にも気温は29.6度どまり.本日の歩き読み —— 中村浩志『甦れ,ブッポウソウ』(2004年6月1日刊行,山と渓谷社,ISBN:4-635-23000-7).意外にも(失礼)おもしろい本で,200ページをたちまち読了.ごちそうさまでした.

◇午後1時から,〈統計学〉セミナー(第17回) —— 多重比較に関する新しい章:Chap. 11「Multiple Comparisons」の後半部分(pp. 217-230).先週に引き続き「多重比較」の続き.対照群と処理群との平均値比較を行なう Dunnett 検定.続いて,Scheffé 検定を用いた多重比較(multiple comparison)とその一般化としての多重対比(multiple contrast)についての解説.ノンパラメトリック法を用いた多重比較法:Kruskal-Wallis 法による分散分析を行なった後では,Nemenyi-Dunn 検定による平均値の多重比較が使える.Dunnett 検定のノンパラ版もある.さらに,多重対比のノンパラ版も開発されている.最後に,メディアンと分散の多重比較について説明された.午後2時半まで.

◇午後のこまごま —— 出張届けの書き直し.※いつまでたっても学習しないとは./ 進化学会関連の事務連絡メール.そろそろリクルートしはじめないとか./ ソーバー本,ひさびさの注文あり.荷作り完了です.明日発送./ 今年の統計研修テキストの提出時期が近づいてきた(締切は10月7日)./ 来月ある首都大学東京での生物統計学講義(集中)に関する事務連絡メール.

◇夜,小雨が降った.

◇本日の総歩数=12341歩[うち「しっかり歩数」=6556歩/55分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.8kg/+0.5%.


29 august 2005(月) ※ 大会最終日は帰るだけ

◇午前5時起床.またまた寝覚めの朝風呂.雲もなく,秋の青空が広がる.

今日は大会最終日〈進化学・夏の学校〉の日だが,ぼくはただ帰るだけ.クロークに預けられた荷物の量からみて,昨日のうちに帰った人も多いようだ.

◇朝は涼しめだったが,日がのぼって気温が上がってきた.お土産を買って,午前10時21分発の常磐線〈スーパーひたち32号〉に乗り込む.水戸駅に着いたのは13時24分.降りるともう暑い.上りの各停に乗る.ひたち野うしく駅に14時45分到着.タクシーでそのまま家に直行.

車中読書 —— 鷲津浩子『時の娘たち』(2005年4月1日刊行,南雲堂,ISBN:4-523-29297-3 ※→目次).ときどきうたた寝しつつも,第1部〈アート〉を読了(160ページほど).アメリカ文学に関する本なのだが,自然や科学技術に関する話題との接点がいろいろなところで見えてくるのがおもしろい.“からくり”に対する著者の関心ぶりはただものではなさそうだ.個人的には,第3章第2節「空の座標」で論じられているエドガー・アラン・ポウと“気球”との関わりがおもしろかった.ポウはどーでもええのですが,気球をめぐる逸話が紹介されていて楽しめた.続く,第2部はいよいよ〈ネイチャー〉だ.

そういえば,この本の英語タイトルは『Daughters of Time: Art and Nature in Antebellum American Prose』となっている.このサブタイトルが日本語でもちゃんと付けられていたら,もう少し読者層が広がったのではないか?

◇う゛ー.疲れましたー.

◇本日の総歩数=5248歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.前回比=未計測/未計測.


28 august 2005(日) ※ 大会3日目は疲労困憊

◇午前4時半起床(もっと寝ていればいいものを).大浴場で朝風呂.外気は涼しい(さすが仙台).朝のうちは雲が多いが,日中は昨日と同じく晴れ上がるだろう.

◇それにしても,昨夜の疲れがまだ残っています.色濃く.ハイ.

◇9時半にホテルを出発.徒歩およそ1時間で川内の大会会場に到着した.さーっと通り雨があったが,すぐに青空.真夏日ではないが,夏日にはなるだろう.

◇混まないうちにポスター会場をざっとブラウズ.〈雑煮と鳥居の系統樹〉,〈自然淘汰の科学哲学〉,そして〈マウスの形態測定学〉の三つをターゲットとしよう.

◇シンポジウム〈意識の進化〉 —— みんな早口(2時間枠では足りなかったか).数年ぶりに生ペギオ氏のトークを聴いた:「関数が壊れるんです」(束構造の変換について.壊れたのはワタシ).あとで挨拶をする.午後1時まで続く.

◇昼食後にポスター・セッション.昨日同様,人口密度は高かった.松本俊吉・森元良太「自然淘汰説の哲学的分析」(P2-72):もし,遺伝子頻度の確率概念をベイズ的な「信念の度合い(degree of belief)」と解釈するのであれば,priors をどのように設定すればいいのか,という点は避けて通れないだろうと思う.背景的知識の問題と言い換えることもできるだろう.土松隆志他「系統樹から迫る非生命進化:鳥居・雑煮・デジタルカメラ」(P2-46):文化要素の系統は“形態形質”からの系統推定問題なので,情報量から見て距離法は使わない方がいいように思う.考古系統学と同列に扱えば,個々の文化要素の系統樹だけでなく,それらの間の関係も見えてくるかもしれない.細谷理樹他「マウス亜種系統間における下顎骨形態差の遺伝的解析」(P2-4):楕円フーリエ解析とQTL解析を組み合わせた形態測定学の講演.標識点座標からの幾何学的形態測定学を実行して,部分歪みと相対歪みを調べてみれば形態変異のパターンがきっと検出できるだろう.それにしても,遺伝的背景が十分に調べられているマウス系統のデータベースができつつあるというのはうらやましいかぎりだ.

◇クローク自習室で原稿チェック.その後,午後4時からは行動遺伝のシンポジウムに行く.午後6時まで.

◇オサムシな群にトラップされ,みたび国分町へ.〈Beer Dining 杜〉→〈時流〉というはしご.「異種ハイブリッド」の健全な話題が,いつのまにか「○姦」(変数は“鶏”,“羊”,“牛”などいろいろ)な話題に収束していったのはどーしてか?(O舘&S藤という強力デュオがいたからにちがいない) 

—— ホテルにたどり着いたのは,またも日が変わってから.※まったくもう.

◇明日は大会最終日だが,ぼくは帰るのみ.

◇本日の総歩数=14106歩[うち「しっかり歩数」=6723歩/59分].全コース×|×.朝△|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


27 august 2005(土) ※ 大会2日目は天気回復

◇午前5時前に起床.雲は多いが,天気はすっかり回復している.気温と湿度が高そうだな,こりゃ.まずは,ホテル1階の大浴場で朝風呂.

◇今日は大会2日目 —— 朝から一般講演があり,午後はポスター発表,夜は懇親会.体力の限界に挑むって感じか(知力はどーした?).会場は東北大学の川内キャンパスに移る.

◇昨夜の飲み会ばなし —— 学会大会のパラレル・セッションの複線化が進み過ぎるとつまらなくなるかどうか.大規模学会の場合,複数のセッションが並列化するのは,大会運営上はしかたがないことだ.しかし,その場合,参加者は自分の関心のある分野だけ聴くという傾向が強まり(意識的 or 無意識的に),ハタケちがいの話を聴いてやろうという意欲をなくしてしまうのではという意見(辻さん).全体共通の基調講演と個別ローカルな一般講演との組み合わせがうまくいけば,そういう事態は少しは改善されるのだろう.個人的には,全体が1セッションしかない学会大会(たとえば Hennig Society みたいな)はなかなか濃密でいいと思うが.

◇またまたタクシーで会場に乗り付ける.午前8時50分からのセッションは〈言語の起源と進化〉.この半日セッションは,〈言語起源研究は何を問題とするのか〉,〈言語能力のモデルと実際〉,そして〈言語の系統発生〉という3テーマを柱として構成されている.最初の講演は,大谷卓史さんによる「言語の起源論はどのような科学なのか」.ポパーの反証可能性の理論を出発点として,それが言語起源研究のような歴史科学としての進化学に適用できるのかどうかを主題とする.異なる科学は異なる検証の方法論をもつべきだという「多元論」を踏まえ,研究者コミュニティにおける“暗黙知”や伝統そして討論を通じての仮説の経験的テストが重要であるという.

ポパーの反証理論が科学哲学の世界で“時代遅れ”であるという主張はよく耳にする.それは科学方法論のユーザーである[たとえば]体系学者はよく知っていて,研究遂行上の武器(ツール)としての反証可能性なりテスト可能性をどのように使い回していけばいいのかという「見極め」のすべをすでに身につけているように思う.そういう成熟期間を経て,はじめてポパーの科学哲学そのものに対する,あるいはそれ以外のすべての科学哲学・科学方法論に対するユーザー側の“距離感覚”が体得できるのだろう.

だから,David Hull や,最近では Olivier Rieppel による「体系学にポパーを持ち込んだのは間違いだったのでは?」という問題提起,あるいは Edward O. Wiley の“転向”を目の当たりにしても,天地がひっくりかえるようなことにはもうならないだろう.〈The use and abuse of Karl Popper〉はさまざまな個別科学分野で並行的に見られた現象だと思うから.さらにいえば,科学方法論ユーザー側でのツールとしての改良や改変はすでにポパー(あるいは他の科学哲学者たち)を越えて「その先」を進んでいるから.

◇言語進化のセッションは午後1時過ぎまで続いた.終了後,会場で瀬名秀明さんを紹介された(「ダーウィン著作集,期待してます」とのこと).小原嘉明さんとも初めて会った.その後,生協食堂にてランチ.午後はポスター・セッションなのだが,ポスター会場があまりにも人口密度が高く,即座に退散してしまう.例年のことだが,進化学会のポスター発表はたいへんアクティヴな研究交流の場になっていると感じる.それにしても人が多過ぎ.あとで見に来ることにして,クローク奥の自習室で原稿のチェック作業を2時間ほど続行する.午後4時になってから,ポスター会場を再訪し,めぼしい発表を見て回る.

◇午後6時半からは,生協食堂にて学会の懇親会.昼間は湿度の低い真夏日だったが,夕方になって気温が下がってきた.いつものことですが,懇親会は最初の10分が勝負です.日本酒がいろいろ出ました.午後8時半で散会.いろいろな方にお会いできました.

—— 二次会は,トムさん,長太さん,ikushimo さんとともに,国分町を定禅寺通から入ったところにある〈きゃりっこ亭〉にて.大吟醸の香りが4人テーブルに満ちた.おお.補足:確かにこういう店だった.

◇タクシーでホテルにたどり着いたときには,もう日が変わっていた.あったり前か.

◇明日も続く体力勝負.知力も少し[だけ]要る[かもしれない].

◇本日の総歩数=8424歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=未計測/未計測.


26 august 2005(金) ※ 台風にあおられる大会初日

◇午前4時起床.外は雨風ともに強まっている.関東南部に台風が上陸し,暴風雨圏に入ったらしい.予想よりも東寄りに進んでいるようで,東北南部を直撃するという可能性は低くなったが(強風圏にはかかりそう),それでも宮城県内は強い雨が一日中降り続く見込み.

ホテルの大(中?)浴場でひとり朝風呂.その後,仕事.草津温泉に引き続いて“カンヅメ”になる.

◇今日は進化学会大会の初日.午前中は評議員会があり,午後は学会賞授賞式・記念講演・公開シンポジウム,最後に夕方から総会,と公式行事が夜まで直列して続く.場所は仙台国際センター.台風が出足に影響しなければよいのだが.空路はともかく,新幹線は平常運行とのことなので,関東方面から仙台に入るのはいまのところ問題なさそうだ.

◇午前6時,ざーざー降っている.いまのところ風はないようだが.気温は高め.蒸し暑かったりすると,ちょっとたまらんなあ.

—— あ,しごとしごと.

◇朝食をすませた.もうすぐ午前9時になる.外は雨が降り続いているが,そろそろ今日の会場に出かける準備をしないといけないかな.台風は東海上に抜けたようだが,どれくらい影響が残るのだろう?

◇ホテルから軟弱にもタクシーで川向こうの仙台国際センターに乗り付ける.大粒の雨が降っているが,風はない.

◇午前10時半から評議員会.今回は議題が多かった.テーブル上は書類だらけ.うっかりプリントアウトしてこなかった名誉会員に関する会則変更案の資料をセンター事務室であたふた印刷したりとか.弁当の昼食をはさんで12時半に散会.

—— 午後1時15分から学会賞授賞式と受賞講演での司会業.今回の学会賞(&木村資生賞)の受賞者は統計数理研究所の長谷川政美さん.

午後3時からは公開国際シンポジウム〈適応放散と種分化〉.しかし,この時間帯は,評議員会の資料をもとに,総会資料をつくらないといけない.ロビーで1時間ほどはちまきをねじる.“暖炉”の酒井聡樹さんにお願いして,青葉山で総会資料のスキャンとハンドアウトの印刷.いちおう“病人”のはずの嶋田さんも動向.1時間ほどでふたたび国際センターに下る.

まだ続いていた国際シンポジウムもそろそろ終盤.おお,「ピンポイント」攻撃だ.さすが,三島のSさん,食い下がる.と思ったら,思いもよらぬ〈大魔神Gの怒り〉の炸裂で,演者も聴衆も司会者もみーんな吹っ飛んだ.ひさびさに手に汗握る質疑の時間だった.

予定より少し遅れて,午後6時15分から総会.決算とか予算とか会則・細則変更案の説明などする.議事はさくさくさくと進み,午後7時にすべて終了した.

—— 今日は朝から夜まで「公式行事」が続いたので疲弊した.明日からはもう来なくてもいいほど.

◇その後,関係者たちと国分町に.台風の残響はフェイドアウトして,ときどき暖かい雨がぱらつく程度.傘は不要になった —— 午後10時過ぎまで飲んでしまう.

解散後,駅向こうのホテルまで徒歩.11時過ぎにやっと部屋に転がり込む.

◇そういえば,講演要旨集をまだぜんぜん開いていなかった…….

◇長い1日だった.たいへんおつかれさまでした.※まだ初日なのだが.

◇本日の総歩数=15338歩[うち「しっかり歩数」=3990歩/32分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


25 august 2005(木) ※ “北”に逃れたはずだったが……

◇午前5時起床.小雨が降っている.気温は20度そこそこか.台風予報はによると11号は着実にじわじわと接近しているらしい.

曇ったり,陽が射したり,また降ったりとめまぐるしく変化する空模様.しかし,吹く風はしだいに“兇悪度”を増しつつある.

◇研究所にて出発直前のばたばた —— 進化学会役員・事務局の携帯電話&メールの確認.大会委員長からの直前指令と連絡など.※キンタくん,あとは仙台でね./ JST研究会の事務連絡についての打ち合わせ.連絡文面をこれからチェックしないといけない.※行きの車中仕事か./ 件の翻訳原稿と原書を忘れないよーに.※重いんだな,これが.

◇日本動物分類学会和文誌『TAXA』の最新号(第19号)の別刷りが届いた.“体系学曼荼羅”が載っているぼくの記事「Ernst Mayr と Willi Hennig:生物大系学論争をふたたび鳥瞰する」は pp. 95-101 に掲載されている.→この記事の別刷がありますので,欲しい方はメールしてくださいね.※ぼくは動物分類学会会員ではないので,あとで今号の雑誌本体を編集部におねだりしてみよう.ほかにも関連する追悼記事がたくさんあるはずなので.

◇『生物科学』57巻1号(2005年9月1日刊行,農文協,ISSN:0045-2033)が届く —— 今号の特集は〈新昆虫目はどこまでわかったか?:発見から3年,カカトアルキの生物学〉.短報の集積だが,Mantophasmatodea のさまざまな知見がまとめられている.〈“みなか”の書評ワールド(9)〉は『人種概念の普遍性を問う:西洋的パラダイムを越えて』と『明治の冒険科学者たち:新天地・台湾にかけた夢』の2編(pp. 62-64).

◇お昼前にひたち野うしく駅から下りの各停に乗る.すでに風が強く吹き始めている.1時間あまりで水戸駅に到着.こちらもすでに雨が混じり始めていた.駅ビルのスターバックスでこの日録を書いているところ.2時7分発の〈スーパーひたち27号〉仙台行きに乗る予定.北上する台風との競争みたいなもんですなあ.

◇水戸から北に向かう車窓からは,吹き降りの雨と北茨城の海岸に打ち寄せる高波しか見えない.

◇常磐線の車中読書 —— 鷲津浩子『時の娘たち』(2005年4月1日刊行,南雲堂,ISBN:4-523-29297-3).※リアル書店で“実物”を手に取らなかったら,きっと一生読まないままだったろうねえ.本の「書名」はもちろん自由につけていいんだけど,〈時の娘たち〉というタイトルだけを見て,その本がアメリカの博物学史に関わる本であることを連想せよというのはぜーったい無理でしょう(せめてサブタイトルが付いてればよかったのに).本書は18〜19世紀のアメリカ(独立戦争から南北戦争の時代)の“文学”における「アート」と「ネイチャー」との関わり合いを論じた本です.まだ半分ほどしか読んでいないけど,けっこうおもしろいかもしれない.

◇午後5時10分に仙台着.だいぶ雨脚が強くなっている.儀礼として“牛タン”にお参りした後(“舌”の在庫が払底しているせいか,前回来たときとくらべて,御利益が薄れているよーな気がする.東口の〈利休〉で追試しないといけないな),榴ヶ岡天満宮の横にある〈丘のホテル〉までタクシーを飛ばす.チェックインして,近くのコンビニまで買い物.明日になったらこうやってぶらぶら散歩してはいられないだろう.早々にホテルに舞い戻る.

夜になって,さらに強く降ってきた.関東はすでに暴風圏が迫っているという.このコースだと仙台もあぶないぞ./ わ,夜になって,宮城県全域に「大雨洪水警報」が発令されたっ!

—— お,会長は無事に空路にて仙台入りできたとの携帯メール.数理モデルの勝利か.(何の?)

◇本日の総歩数=9259歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.5kg/+0.8%.


24 august 2005(水) ※ 〈TX〉開業日は台風目前

◇午前4時半起床.小雨が降っている.昨夜から気温が下がり.久しぶりに心地よい明け方.6時の気温21.6度.

◇本日24日,〈つくばエクスプレス(TX)〉が開業! ということで,ここのところ,つくばエリアの本屋でとてもよく売れている[という]『つくばスタイル』(2004年12月10日発行,エイムック948,ISBN:4-7779-0215-3)の続刊『つくばスタイル,No. 2』(2005年9月30日発行,エイムック1076,ISBN:4-7779-0388-5)が,タイミングよく登場(商売うまいなあ).でも,このムックに乗っている“いかにも”な古民家たちはいわゆる「学園地区」にはまったくなかったりする(筑波山の方ね).

個人的には,〈TX〉が浅草や千住という「東京下町」を通過しているというのがとてもうれしい.愉しみが増えそう.

◇台風11号は速度遅すぎ.26日中に通り抜けてしまうどころか,27日にも影響があるかも.

◇昨日に引き続きこまごまする —— あさってからの進化学会大会の評議員会だあ,総会だあ,授賞式だあ,の段取り.台風が乱入して,来るべき人が来れなかったりとか,遅れたりしたときの危機管理について./ JST研究会の事務連絡もやらないとか.

◇昼休みの歩き読み.雨なしの曇り空.気温は26.6度 —— 関秀夫『博物館の誕生:町田久成と東京帝室博物館』(2005年6月21日刊行,岩波新書953,ISBN:4-00-430953-0 ※→目次)の残りの章を読了.100ページあまり.明治初期に“博物館”という外来の概念を輸入し,明治15年に上野に博物館を開設した先駆者・町田久成の苦労話.それにしても,美術品・芸術品以外の〈天産〉すなわち考古学的な遺物とか動植物の収集物が徹底的に「排除」され,「お荷物」扱いされてきた経緯には驚くばかりだ.文部省・内務省・宮内庁のいずれもが〈天産〉コレクションの所蔵と管理を互いに押し付け合ったという.

江戸時代の本草学者たちが蒐集してきた膨大な標本コレクションが,明治時代になると少なくとも公的には重きを置かれなくなったということだ.廃仏毀釈の運動の中で消え去ろうとしていた日本古来の美術品や芸術品の保存を唱えた点では町田久成の主張には先見の明があった.しかし,その町田にして,彼の構想した博物館からは〈天産〉のコレクションはできれば排除したかったと考えた背景はいったい何だったんだろうか.古物崇拝が江戸時代から続く日本の博物学の基本的傾向であることを考えれば,収集が必ずしも保存に結びつかなかった歴史的経緯に目を向けざるを得ない.本書ではそこまで踏み込んだ論議はなされていないのは残念なことだが.

明治期の日本で「ゼロ」から博物館を造ろうと志した町田久成の頭の中には「自然史博物館」というものの考え方はなかったようだ.おそらく,当時の日本の社会では「技芸品博覧館」以上に「自然史博物館」は“エイリアン”な発想だったのだろう.少なくとも,町田が上野の山に建造した博物館は,その後の変遷を考えると,皇室への規模の大きな「献上品」と同格だったわけだから.本書の主人公・町田久成は博物館づくりの歴史の中ではいわば「導火線」みたいなもので,彼がリタイヤさせられた後の火の着きぐあいまでは関わりをもてなかったようだ.本書を読むと,実際に造られた博物館だけでなく,当時の日本では造られ[得]なかった博物館についても考えさせてくれる.とりわけ,現在の国立科学博物館ができるまでの「難産」ぶりは印象的だ.

江戸から明治に移行する錯綜した時代の歴史記述にときどき迷わされるが,全体としてはとてもおもしろい本だった.

◇本日の総歩数=14256歩[うち「しっかり歩数」=7661歩/65分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.3kg/−0.3%.


23 august 2005(火) ※ 晴れのち曇りのち雨のち台風か

◇いつも通り午前5時起床.気温26.6度.南風が吹いて,蒸し暑い.曇ったり晴れたり.

◇早朝からまたこまごまと —— 形態測定学に関する質問へのメール返信./ 共済組合員証の検印に伴う書類提出./ JST領域探索プログラムの第1回研究会(9月17日(土)〜18日(日))の演者が確定した.第1回研究会のテーマは「言語進化」で,Terry Deacon 博士をスピーカーとして呼ぶことになった(他に日本人スピーカー2名).※これから事務的な作業をさくさく進めないといけない./ 先月投稿した〈TAXA〉の最新号(第19号)がもうすぐ届くという編集部からの連絡メール.Ernst Mayr 追悼特集号です.

◇〈Xu Bing〉でホッコリ.

◇午前11時から統計コンサルタント業務 —— 生体元素含量パターンに関するクラスター分析の手順について説明する.とりあえずヒューリスティックに使うということであれば,クラスター分析と主成分分析の組合せで「パターン認知」という手がありますね.

◇昼休みの電話連絡1件 —— 件の共同研究の論文執筆に関すること.数報を並列生産中とのこと.昨年の講演要旨をメール返送する.

◇晴れたり曇ったり.でも,台風は着実に接近しているらしい.

◇午後1時から,〈統計学〉セミナー(第16回) —— 多重比較に関する新しい章:Chap. 11「Multiple Comparisons」(pp. 208-217).まずは Tukey 検定とそのヴァリアントである Newman-Keuls 検定についての解説.その後,平均値とその差に関する信頼区間の構築について.さくさく進む.

◇〈leeswijzer〉のカウンターが「6万」を越えた.ありがとうございます.

◇あっという間に夕方で,雷雨の到来.ざーっと降ってきた.気温が下がり,久しぶりに涼気が.夜もぽつぽつと雨が降っている.

◇今夜も論文読み ——

  • Elliott Sober 2005. Parsimony and its presuppositions. Pp. 43-53 in: V. A. Albert (ed.), Parsimony, Phylogeny, and Genomics. Oxford University Press, Oxford. ※→目次

半分ほど読み進む.この論文集は references が巻末にまとめられていて,ちと不便.

◇遅まきな進化 —— 今夜〈Panther〉が〈Tiger〉に前進進化しました.がお.

◇明日は〈つくばエクスプレス(TX)〉の開業日だ.つくばはもうお祭り騒ぎになっている[ほんまかいな].

◇台風はじわじわと本州上陸を狙っている予報だ.25日はまだいいとして,大会初日の朝に東日本の太平洋岸のどこかに上陸し,そのままゆっくりと本州縦断コースを進んだ日には,仙台“暴風雨”大会になってしまうなあ.※空路がまずあぶないぞ.次は鉄路か.道路ならばいいか.航路は論外ね.

◇本日の総歩数=6044歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/+0.1%.


22 august 2005(月) ※ いやな天気が続く

◇午前5時起床.夜明け前の赤っぽい空から雨滴がぽつぽつと.一晩中,南寄りの温風が吹いていた.明け方の気温26.6度の熱帯夜.蒸し暑くていやな感じ.曇っては晴れる.あ,また小雨が.何だろう,この空模様.

—— 南海上を北上中のアベック台風のうち,東側の12号ははやばやと日本から離れていくようだ.しかし,西側の11号はさらに発達して930HPaという強大な台風になりつつある.25日の朝に太平洋岸に接近するとなると,26日の進化学会の期間中は,強風あるいは暴風というもっともいやな可能性も考えないとか.青葉山にこの点を連絡する.

その他,進化学会大会関連の事務連絡メールが午前中飛び交う.公的行事が大会初日に集中しているので,向こうに行ってからやりくりするというドロナワができない(ちっ).

◇昼休みの歩き読み.気温28.8度.雲間から雨がぱらつく蒸し暑さ —— 関秀夫『博物館の誕生:町田久成と東京帝室博物館』(2005年6月21日刊行,岩波新書953,ISBN:4-00-430953-0 ※→目次)の第5章まで読了.120ページほど.明治時代に本格的な博物館づくりを目指した町田久成の伝記.単にモノを集めればいいというのではなく,体系的・徹底的に蒐集するという町田の姿勢が印象的.江戸時代から明治時代への大きな移り変わりの中で,町田は「古物・埋蔵物・図書」という三本柱によって博物館の基礎となるモノを集め続ける.第5章以降は上野の山に建てられた博物館とその後が論じられる.

小雨で本がふやけた.

◇午後1時から,Alan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読第4回目.今日から Chapter 2:「Measures of Location and Dispersion」に入る(pp. 39-47).location parameter としての平均(算術平均,幾何平均,調和平均),メディアン,モードが導入され,関連する性質が論議された.さまざまな平均の間の関係についての証明とか.午後2時過ぎまで.

◇昼下がりはカンカン照りになる.

◇夜は論文読み ——

  • Kevin G. Helfenbein and Rob DeSalle 2005. Falsifications and Corroborations: Karl Popper's Influence on Systematics. Molecular Phylogenetics and Evolution, 35 (1) : 271-280. ※→アブストラクト.[Corrigendum 2005 : Ibid., 36 (1) : 200.]

読了.カール・ポパーの科学哲学と生物体系学との長年にわたる“絡みあい”がうまくまとめられていると思う.Felsenstein が言うように(『Inferring Phylogenies』, p. 138-145)ポパーの定義する験証度(degree of corroboration)がはたして“ベイズ的”であるのかとか,Felsenstein のように最尤法をポパーの科学哲学に沿って“再解釈”することは本当に妥当なのかとか,あるいは,そもそも最尤法のように頻度的確率でもって歴史現象を推論することは妥当なのかとか,さらには,最後にやってきたベイズ法の主観的確率フレーバーをどのように脱臭するつもりなのか,というようなもろもろの問題群を考えるときに,論議の要点を押さえる上でたいへん参考になる.

◇本日の総歩数=13118歩[うち「しっかり歩数」=6702歩/57分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.1kg/+0.9%.


21 august 2005(日) ※ 月末追い込み作戦開始

◇午前5時起床.連日,とても力強い“残暑”が居座っていて,へばる.夏眠したい…….

◇マジでいろいろ「決着」をつけないといけない懸案事項がいくつもある.間近に迫ってきた進化学会仙台大会にからめて“非日常的”な雰囲気でケリをつけてしまおうと思う.

—— でも,ちょっと,なかなか,進まん…….

◇南の方角から湿気のある“熱風”が吹きつけてくる.もちろん,真夏日.こういう天気ってサイテーだと思う.

しかも,南方海上ではダブル台風11号と12号が発生し,本州に近づいているそうだ.これだけ暖気が溜まっているのだから,11号の方は大きくたくましく成長してしまう懸念がある.25日以降,本州に接近するというのだけれど,ちょうど進化学会大会前の移動日にあたる.遠方から仙台にやって来る参加者は「足」の確保にご注意を! 12号は東海上に逸れそうな気配だが,11号はきっと来るぞー.

◇なんと“造り”のしっかりした本であることか —— チェーザレ・ブランディ『修復の理論』(2005年6月30日刊行,三元社,ISBN:4-88303-159-4).※絵画や彫刻などの芸術作品の〈修復〉のあり方を論じた本.「唯一無二性」(p. 21の紹介文)を特徴とする芸術作品の〈修復〉は,大量生産される工業製品の〈修理〉とは異なる原理・原則に則る必要があるという.著者は,芸術と言う“人造物”に対してのみ〈修復〉という概念を適用しようとしているように見えるが,唯一無二性をもつ“自然物”に対しても同様の論議ができるのではないだろうか.

この本は,装幀もりっばなら,組版もいい感じです.こういう本なら高くても(実際には安いけど)買う気になるね.

◇あ,しごとしごと.

◇本日の総歩数=5670歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−0.7%.


20 august 2005(土) ※ じりじり残暑続く

◇午前4時半起床.陽が昇りきらないうちにウォーキングを1時間ほど.

—— 円満字二郎『人名用漢字の戦後史』(2005年7月20日刊行,岩波新書957,ISBN:4-00-430957-3 ※→目次)の残り100ページ余りを読了.漢字をめぐる“時代精神”の変遷が底流となっていたことを再認識させられる.第二次世界大戦直後の〈民主化〉という錦の御旗が「漢字制限派」と当時の「漢字政策」のよりどころとなったわけだが,その後の半世紀の間に,このよりどころがしだいに頼りなくなって,それに代わる新たな論争点が浮かび上がってくる経緯がとても興味深い.

戦後から現代にいたる人名用漢字の変遷をたどった第2章以降でとりわけ注意を惹きつけられたのは,国語学や言語学の側での学問的な見解や漢字政策に関わる政治の側の問題(省庁間の対立も含む)の他に,役場の窓口で新たに申請される人名用漢字を審査する「戸籍実務者」,あるいは人名用漢字の無制限な増大を懸念する「印刷業界」という漢字を“生業”とする関係者の思惑が大きく作用することがあったという点だ.敗戦直後の漢字制限派=民主化推進勢力 vs. 漢字推進派=復古反動勢力という対立図式がしだいに弱まっていくとともに,漢字制限派=漢字実務者 vs. 漢字推進派=一般の漢字ユーザーという新たな対立図式が現われつつあると著者は指摘する.

表意文字としてのある漢字を使うことは「唯一無二性」を帯びると著者は繰り返し言う.要するに,他の漢字を用いた書き換えでは対処できない“かけがえのなさ”がそこにあるということだ.たとえ,その漢字が俗字や誤字であったとしても,当事者にとっては「唯一無二性」がある.とすると,漢字表現の自由を求める一般の漢字ユーザーの欲望をそのまま放置すると,たちまち「無限性」の問題にぶつかるだろうと著者は警告する.それは,漢字実務者にとっては何としても回避しなければならない問題だ.このジレンマを簡単に解決する方法はないだろう.しかし,そういう今日的問題があるということがわかっただけでも本書を読んだ価値はあったと思う.

著者は最後の段落でこう述べている:

考えてみれば,唯一無二性とは,漢字自身がもっている性格ではない.漢字を使う私たちの意識に存在している性格なのだ.だとすれば,読み方と唯一無二性だけをまとった漢字とは,おそろしく空虚な漢字なのだ.(p. 216)

表意文字としての漢字は「具象」に発する系譜をもつリネージだと考えられる.とすると,そのようなリネージを「文字」として用いるとき,著者の見解とは逆に「唯一無二性」は漢字のリネージ本体がもっているのであって,ユーザーはその漢字リネージを利用しているだけだという見方も可能なのではないだろうか.

たとえば,俗字・誤字の唯一無二性の例として,著者が挙げている〈土方〉姓のケースがある(pp. 176-177).このケースでは,本家筋は〈土+上`〉(〈土〉の上の横棒の右上に〈`〉がつく)を用い,分家筋は〈土+下`〉(〈土〉の下の横棒の右上に〈`〉がつく)を用いているそうだ.いずれも俗字であることは明らかだ.しかし,このケースの唯一無二性は関係者の「意識に存在している」わけではない.むしろ,〈土〉という漢字の祖先リネージに対して,〈土+上`〉ならびに〈土+下`〉という共有派生形質が生じることで,新たな子孫リネージが生じていると見るしかないだろう.すなわち,唯一無二性は漢字本体が帯びている内的な属性(もっと正確にいえば漢字の「系統樹」がもつ属性)であって,漢字ユーザーの心象いかんでどうにでもなるものではないということだ.唯一無二性が「漢字自身がもっている性格」であるという見解は本書の範囲ではまだ棄却できていないとぼくは思う.

とすると,著者の提起したジレンマに対するぼく自身の見方はさらに悲観的なものになるのかもしれない.

[付記]敗戦直後に論議された漢字のもつ「封建的性格」が薄らいでいったことを象徴する文化現象のひとつとして,著者は“漢字とたわむれる”傾向,具体的には漢字を題材とするタイポグラフィック・アートが1970年代以降しだいに広まってきた点を指摘している(p. 160-161).ぼくの手元に,あの夢枕獏が書いた『カエルの死:タイポグラフィクション』(1985年1月1日刊行,光風社出版,ISBN:4-87514-470-6)という大判の本がある.漢字や仮名を“字絵”としてデザインした作品集だ.この本のあとがきを見ると,著者が“タイポグラフィクション”と命名するこれらの作品の初出は「昭和52年」とのことだから,やはり1970年代に入ってからの創作活動といえる.今だったらこういう作品は,少なくとも気分的には,あってもフシギではないと感じてしまうだろうが,20年前はとても新鮮に感じられて,書店の店頭で手に取って速攻でレジに走った記憶がある.

◇午前は買い出しとチケット買い —— 来週(8月25日〜29日)の仙台行は,往復JRで常磐線プチ旅行が確定(東北新幹線は使わず).ところが,来月の広島行(9月12日〜14日)がちとやっかい.往路は問題なく新幹線で行くとしても,14日夜の復路というのが難物.午後7時までセッションの座長をして,その足で帰るとしても,新幹線では東京にたどり着けない.寝台列車〈富士〉はと調べてもらったらどーいうわけか満席(寝台列車の時代はもう終わったんとちゃうんかっ?).結局,広島からの空路最終便(ANA)で東に帰ることになりました(1万円安くなったし).

これで,とりあえず目前の2件の国内出張については,移動の「足」の確保を完了.

◇そこはかとなく醸し出される熟成原稿たち(汗) —— よそ見しつつ:コッソリ読み続けているサイモン・シャーマ『風景と記憶』(2005年2月28日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-25516-7)は,夏になってからすでに第3部「岩山」に登り始めている.第7章「デイノクラテスとシャーマン」は,“絵”になるアルプス地域に目を向け,“山を描く”というテーマを中心に回る.山岳が心象的にどのように受け取られていたかをディテール積み上げで論じている.この章を読了して,やっと500ページを越えたところ.あと200ページあまりもあるぞ.※歩き読み,寝読み,立ち読み,などあらゆる「自由」な読書態勢を頑強に拒否し続けるこの本はまったくもって困ってしまうな.

◇本日の総歩数=12807歩[うち「しっかり歩数」=6930歩/57分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−1.0kg/+0.4%.


19 august 2005(金) ※ やっと平日復帰

◇午前5時起床.気温23.8度.「熱帯夜」の季節はようやく過ぎたようだ.晴れ.

◇朝から質問の嵐 —— 形態測定学に関するチュートリアル(これから)./ NPOサイコムが企画編集している近刊『大学院完全ガイド』に関する連絡を取り合う.アナウンスを関連メーリングリストに転載する./ 昨日メーリングリストに配信した情報に関する転載依頼.※ぼくがメーリングリストに流した情報や書評は原則として“転載自由”ですので,そのつど承諾依頼をお送りいただく必要はありません.ただし,部分転載ではなく全文転載してください.あと.できれば転載時に cc をぼく宛にもお願いいたします.

◇アラン・カトラー『なぜ貝の化石が山頂に?:地球に歴史を与えた男ニコラウス・ステノ』(2005年8月9日刊行,清流出版,ISBN:4-86029-116-6)の書評を公開.メーリングリストにも流す.

◇午前9時から,とある打合せ.1時間半ほど.

Panmixia 太田邦昌氏追悼号の別刷がどさっと届く.※今号(16号)全体の別刷(というか1冊まるまる)ですので,関心のある方はご連絡ください.

—— さっそく送付依頼が数件連続する.ささっと発送完了です.

◇かんかん照りの昼休み.気温32.7度(何とかならんかー).でも歩き読む —— 円満字二郎『人名用漢字の戦後史』(2005年7月20日刊行,岩波新書957,ISBN:4-00-430957-3)の第1章読了.100ページあまり.これまた興味深い“歴史掘り起こし本”だと思う.単に「人名漢字制限」の話ではなかったのですね.敗戦直後という歴史的な時期にあって,戦前の軍国主義の影をひきずる〈漢字〉が帯びていた歴史的性格が,一方で本来的に表意文字である〈漢字〉1字1字の“かけがえのなさ(=唯一無二性)”と激しく衝突していたことが本書を読むとよく理解できる.漢字推進派と漢字制限派との確執のルーツを著者は“人名漢字”を軸に読み解いている.次章以降も楽しみだ.

◇新書新刊もう1冊 —— ヘルベルト・プルチョウ『江戸の旅日記:「徳川啓蒙期」の博物学者たち』(2005年8月22日刊行,集英社新書0304F,ISBN:4-08-720304-2).※江戸時代のナチュラリストたちによる「紀行文学」を“再発見”しようという試み.ここのところ,博物学がらみの新書がとても多いな.

◇メモメモ —— 琵琶湖博物館・第13回企画展示〈歩く宝石オサムシ:飛ばない昆虫のふしぎ発見〉.とても立派な同タイトルの展示解説書(カラー図版含む123pp.)を送っていただきました(感謝).展示期間は11月27日までとのこと.

◇夕方になっても暑いまま.こたえるなあ.

◇本日の総歩数=15312歩[うち「しっかり歩数」=8611歩/72分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/+0.2%.


18 august 2005(木) ※ まだ休んでいるが……

◇午前5時起床.曇り.気温23.7度.草津行きから始まった長いお盆休みも今日が最終日だ.“下界”はまだ残暑が続いている.今日も日中は30度を超えるのだろう.それでも,ツクツクボウシの声量が日に日に高まり,朝夕はエンマコオロギが鳴き始めている.

◇翻訳原稿チェックの続き —— さらに1章分を終える.カンヅメ状態と比べるとやっぱり能率が上がっていないかもしれない.ここから1章ごとの分量と原注が飛躍的に増加していく.「収斂(convergence)百科事典」の本領発揮というところか.登攀の旅,なお続く.

◇田中正明(編)『柳田國男の絵葉書:家族に当てた二七〇通』(2005年6月25日刊行,晶文社,ISBN:4-7949-6654-7)を読了.とてもおもしろくて充実した葉書集だ.晶文社はよくぞ出版してくれたと思う.柳田國男がたいへん子煩悩な父親であることを知る.また,國男の長男の妻である柳田冨美子による巻末エッセイ「絵はがきの心」は,家庭内の家族の視点から見た「柳田國男」が描かれている.“殿様”のごとき主人公は周囲にいろいろな(プラスマイナスの)強い影響を及ぼしていたのだろう.

編者解説「柳田國男:旅と絵葉書」の中に,当時の〈絵葉書ブーム〉についての言及が関心を惹く.柳田國男は国内外の「塔」の絵葉書を熱心に蒐集していたそうだ(p. 314).時代を問わず,「塔」へのオブセッションは広く見られるということか.同時代の風俗の断片を切り取った“歴史資料”としての絵葉書の再評価は別として,遠隔地間の通信コミュニケーションの媒体として〈絵葉書〉が普及したのは19世紀後半のヨーロッパがはじまりだったと柳田國男は書いている(p. 313).日本でもたとえば竹久夢二のデザインする絵葉書がブームになったそうだ.確かに,この柳田書簡集やエルンスト・ヘッケルの絵葉書集を見ても(宛先の種類はそれぞれ全然ちがうのだが),“絵”や“写真”付きの葉書は,それを出した本人と受け取った相手にとって大切な交信の記録だったのだろう.

—— 「ライプチッヒ(Leipzig)」という地名はスラヴ語の「菩提樹(lipa)」に由来する地名./ 「橄欖石」の“橄欖”とは“オリーヴ”の意味.※いずれもトリヴィアなこと.

◇さて,明日からは平常営業です.

◇本日の総歩数=4943歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.3kg/+0.2%.


17 august 2005(水) ※ いわゆる夏休みなんだが

◇午前5時起床.気温は21.7度でちょっと涼しい.

◇早朝の研究所にてごそごそする —— 木村資生基金との事務連絡など少々.進化学会の仙台大会(地震で会場が壊れたりしてません? 川内だからだいじょうぶかな.青葉山はだいぶ揺れてたみたいやしが近づいてきたので,諸般の段取りをちゃっちゃっとしておかないとね.

◇昆虫分類学若手懇談会から Panmixia 誌の「太田邦昌追悼号」(No. 16)がやっと届いた.これにて〈太田関連企画〉はすべて公表されたことになるので,まとめて更新しておく ——

  1. 『Panmixia』第16号(2005年6月30日発行,昆虫分類学若手懇談会,ISSN:1340-4253)の〈太田邦昌氏追悼号〉.
  2. 『生物科学』第55巻第4号(2004年5月1日発行,農文協,ISSN:0045-2033)の〈特集:追悼・太田邦昌〉.
  3. 鈴木邦雄・三中信宏(編)〈太田邦昌著述目録〉.

没後2年目にしてようやく全部終わったという心境.盂蘭盆だからタイミングとしてはちょうどよかったのだろうが.

◇昼間は相変わらず暑いのだが(今日はよく晴れた),夕方になるとさすがに季節の移ろいを感じる.夕日に力がなくなり,ツクツクボウシが鳴いたりすると,これはもう“秋”の到来を実感するしかない.

◇夕方の歩き読み —— アラン・カトラー『なぜ貝の化石が山頂に?:地球に歴史を与えた男ニコラウス・ステノ』(2005年8月9日刊行,清流出版,ISBN:4-86029-116-6.※→目次)を読了.地質学の創始者にして.後半生はキリスト教とともに生きた「聖者」という筋書き.ライプニッツとの交流が興味深い.ステノと「化石は石の中で成長する」という当時受容されていた見解との衝突が随所に出てくるが,その頃,両者は“科学的”な説明としてはきっと同格だったのだろう.ステノの主著『固体について』のほかにも“失われた地質学論文”原稿があったそうだ.ステノは大陸に生きたのだが,イングランドの王立協会への波及とか,ケンブリッジ大学に古生物学の寄付講座ができた話など,本書にはステノをめぐる科学と宗教のさまざまな話題が盛り込まれている.訳文は読みやすいのだが,引用文献は省かれている.縦書きの索引に多くのページを費やすのであれば,むしろ文献を省かないようにしてほしかった(両方とも必要なんだけど).

◇くつろぎのバッハ.

◇本日の総歩数=7904歩[うち「しっかり歩数」=5976歩/50分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.6kg/+1.1%.


16 august 2005(火) ※ 揺れる高田馬場

◇午前5時起床.雨上がり.気温24.7度.蒸し暑い.研究所にて,進化学会関係の事務処理.お盆もへったくれもありまへんな.

—— 今日は朝から東京にお出かけ.変な天気で,東京に近づくとともに雨がざーっと降ったり,また晴れてみたり.常磐線−山手線と,車窓の天気はめまぐるしく変わる.

◇高田馬場の〈The Hamburg〉でランチしていた11時50分頃に,ゆら〜,ゆら〜と店が揺れた.体感で1分あまりも続いたが,緩くそして大きな地震だった.つくばではまた本の山が崩れているにちがいない.山手線が止まっているらしい(すぐ復旧したけど).帰りの足がやや心配

◇降ったり晴れたりの表参道から原宿あたりをふらふら徘徊し,夕方,帰路につく.

◇車中読了本 —— 水口博也『風の国・ペンギンの島』(2005年8月15日刊行,アップフロントブックス,ISBN:4-8470-1615-7).※驚異的な「ペンギン写真集」だ.フォークランド,サウスジョージアから南極大陸にいたる,日本から見て“真裏”の地域そのものが十分に異界的だが,南米南端エリアは一年中風が吹き荒れているとはダーウィンのビーグル航海記にも書かれている通りだ.そこに広がるペンギンたちの数々の写真には目が釘付けになる.その愛らしいイメージとは裏腹に,ペンギンたちがとても厳しい環境のもとで,過酷な生存競争をくぐり抜けていることがよく伝わってくる.撮影中,気がつくとキングペンギンのひなたち(といっても立ったときの体長は80センチにもなるらしい)に静かに取り囲まれることもあったという.みだりに“擬人化”してはいけないことはわかっているのだが,「なんなんだ,こいつらは」と思ってしまう.至近距離からのみごとな構図は文章と同等に能弁だ.

◇草津での連日の湯疲れに,東京徘徊の疲労が上塗りされたようで…….

◇本日の総歩数=13741歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼×|夜△.前回比=+0.4kg/−1.8%.


15 august 2005(月) ※ 草津お籠り(最終日)

◇午前3時起床.早朝の仕事.「生命の起源」と「化学進化」でねばねばする.さすがに外はまだ暗い.

—— 5時前に温泉街に下る.散策する人,とても多し.昨日までと比べて外湯の混み混み度も高い.西の河原通り沿いにある〈凪の湯〉に入る.湯舟は半地下にあって,西の河原源泉から引かれている湯はとても熱い.他の外湯は足の踏み場なし(入らず).〈地蔵の湯〉は意外に空いていたので,ここで長湯をしてしまう(疲れた).

結局,滞在4日間で18ある共同浴場のうち「10湯」に入ったことになる.

◇朝から青空が広がっているが,これはもう「夏の空」ではないね.すでに秋の顔つき.

◇朝食までの時間は最後のあがき仕事を続けることにしよう.

今回の“出家修行”の成果として,本文の1/3と脚注の1/2を終わらせることができたが,まだ先は長い.できれば,お盆明けには「ほい」と渡せるようにしたいのだけれども,「別件」(いや「本件」か)もあるし…….

このカンブリア紀の節足動物を専門とするこの著者が,どのようにして“畑違い”の研究分野の知識を獲得しているのかを想像するのはおもしろいかもしれない.引用のパターンから見て,Nature, Science, あるいは PNAS といったトップジャーナル掲載の論文を手がかりにして,それぞれの個別分野での研究の最前線に到達しているように感じられる.

◇午前8時半にチェックアウト(たいへんお世話になりました).長野原草津口行きのバスは9時15分にバスターミナルを出るので,重い荷物を転がして坂道を下っていく.早くも晴れて暑い(下界が憂鬱だ).

◇JR吾妻線は10時発の各駅停車に乗り,11時27分に高崎に到着.ここからは自動車でつくばに帰る.

◇車中読了本 —— 小林しのぶ『日本駅弁大全』(2005年4月10日刊行,文藝春秋,ISBN:4-16-366660-5).列車旅行にはピッタリの車中本.カラー図版が食欲をそそる.定番の「幕の内」もバカにならないなあ.第3章〈限定&珍弁〉の「期間・個数限定」が要チェック.個人的には〈峠の釜飯〉で超有名なJR横川駅の「おぎのや」が出している〈玄米弁当〉は超珍品駅弁だと思う.

◇夕方になって空が暗くなって遠雷あり.つくばに帰りついたときにはぽつぽつと雨が降り出し,夜になって本降りの雷雨になった.

◇本日の総歩数=15021歩[うち「しっかり歩数」=5869歩/50分].全コース×|×.朝○|昼×|夜○.前回比=未計測/未計測.


14 august 2005(日) ※ 草津お籠り(3日目)

◇午前4時半起床.滞在3日目ともなると余裕が出てくる.今日はとてもよく晴れそうな空模様だ.お盆休みの週末なので温泉街は混み合うにちがいない.

◇外が少し明るくなってきた5時過ぎに早々と温泉街へ.ふだんなら混みまくりの湯畑下〈千代の湯〉もこの時間帯なららくらく入れる.うーん,とくに印象に残らず.次いで,温泉街のど真ん中にある小さい〈関の湯〉へ.あ,こっちの方がいいです.雰囲気は断然.有料の〈大滝の湯〉の前にある〈煮川の湯〉は爺様たちの憩いの場.源泉からの距離が近いせいか,めっちゃ熱い.とうてい長湯はできない.しかし,〈地蔵の湯〉と並んでとても効きそうな気がする.最後は,中心街からはずれたところにある〈白嶺の湯〉でジ・エンドですわ.今朝も四つ入った.

◇午前8時からの朝食まで一仕事.宗教的ファンダメンタリズムへのスタンスが原書でははっきりしているのだが,翻訳原稿の方ではそこのところがよく見えてこない.翻訳がはじまったのは原書が出版された2003年よりも前の“草稿段階”だと聞いている.とすると,草稿時の記述が改訂された上で出版されたということなのだろうか.これは翻訳者に確認をとる必要がある点だ.

—— それにしても,このエンサイクロペディックかつ攻撃的なところは,好敵手だった故スティーヴン・グールドにかなり“収斂”してきたように感じるのだけど…….

◇お昼前に,再び温泉街へ.昼食だけは外で調達しないといけないので,まあ,やむを得ない外出ということでして.再び〈とん香〉にて.昨日はロースカツだったが,今日はヒレカツに.この衣の具合からいうと,たしかにヒレカツの方がおいしいかもしれない.個人的には,このヒレカツで“カツサンド”をつくっていただければ,新たな「草津名物」になると思うのだが.

◇さらに坂道を湯畑方面に下っていく —— 今日はやはり人も車も多いようだ.湯畑から湯滝を通り過ぎて,〈長寿の湯〉への急坂を上がっていく.午後の目的地は中澤ヴィレッジのコーヒーショップ.ベルツ通りは草津の温泉街とはひと味ちがう客筋が群れる一角だが,そういうのとは無関係に,ロビーにあるコーヒーショップのオープンテラスに陣取る.温泉街では長居できる場所はほとんどないが,ここだと追い立てられる心配はない.勝手知ったるホテルだし.

◇午後1時前から3時間ほど仕事しました.本文第4章までチェック完了.それまで晴れ間が覗いていたのに,雲が出てきて,ぱらぱらと小雨が.急いで帰路につくが,ついふらふらと〈町営の湯〉に立ち寄ってしまう.ここは,草津山荘と同じく万代鉱源泉から引いているので,“酸っぱい”.温泉街のはずれにあるので,人口密度も低く,なかなか快適だ.

◇寄り道をすませてから,今度こそ帰りのルートへ.いたるところ車の渋滞が激しい.午後4時前に草津山荘にたどり着き,またまた“酸っぱい”お風呂に入って,一休み.

◇夕食.Weizen な「草津ビール」なんぞを呑んだりして…….ソーテルヌが空いたぞ.

—— 飲みつつ食べつつ読了:クラフト・エヴィング商會『アナ・トレントの鞄』(2005年7月30日刊行,新潮社,ISBN:4-10-477001-9).そうそう,この感じです.

「種」が消えて,魔法が抜ける.(p. 105)

とっても,いいですねえ.

同宿のみなさんは,家族連れで夏休みを楽しんでいる風情ですが,ワタクシだけが独りで何泊もして,部屋に籠ったりというのはなかなか“例外的”で,これまたいいですねえ.※何が…….

◇さて,午後7時が過ぎ,今日も「夜の部」が始まるか —— しばらく頑張ってみて早寝する.

◇本日の総歩数=18784歩[うち「しっかり歩数」=13526歩/111分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=未計測/未計測.


13 august 2005(土) ※ 草津お籠り(2日目)

◇午前5時半起床.昨夜は雨がざあざあと本降りになってどうなることかと思ったが,一晩で天気は回復し,雲はあるが,降りはしないみたい.気温は19.5度.「下界」と比べればパラダイスですな.

◇早朝の共同浴場へ出撃.出足が遅かったので,当然のことだが「湯畑」周辺の外湯(白旗の湯,千代の湯,離れて煮川の湯)は中に入ることもできない.湯畑の裏に回り込んだところにある〈地蔵の湯〉はすいていた.硫黄臭たっぷりのお湯は極熱で,じっと浸かっているだけなら,微温層がからだのまわりにできてガマンできるものの,湯船の出入りでお湯が動くともうダメです.意外な穴場の〈瑠璃の湯〉には誰もいなかったので,独占.らっきー.さらに上がって,〈千歳の湯〉も独占.湯畑から離れるほど,湯温も下がり,人口密度も低下する.今朝の外湯まわりの最後は〈喜美の湯〉.

今日まわった4湯はすべて湯畑から源泉を引いているせいか(あ,地蔵の湯は独自の地蔵源泉か),硫黄臭はあるものの,酸味はそれほど強くないように思う.万代鉱源泉の方がはるかに“すっぱい”味がする.切り傷があったりすると,滲みて痛いくらい.今日明日はお盆の週末でさらに「草津人口」が増加するにちがいない.明朝の出撃計画はじっくり考えないとな.

—— もっとじっくり考えることが他にもあるだろーが!という声にはまことにごもっともでございますと言うしかない.ハイ,仕事仕事っ.

◇午前は3時間ほど訳文と格闘.神学がらみの記述がもつれているなあ.本文1章まで,原注4章まで終わる.まだまだぁ.

午前11時に講談社の編集者氏が「中間査察」のためわざわざ草津までやってきた.〈とん香〉にて衣かりかりトンカツを食べて,しばし打合せとハッパかけられ.湯畑とか西の河原とかうろうろしたあげく,〈茶房ぐーてらいぜ〉で互いのよき旅路をしみじみ思うという結末に.※単にめし喰って温泉街を徘徊しただけという気がしないでもないが.

◇差し入れにもらった本 —— 植島啓司『性愛奥義:官能の〈カーマ・スートラ〉解読』(2005年8月20日刊行,講談社現代新書1801,ISBN:4-06-149801-0).※書店店頭にはまだ並んでいない.現代新書始まって以来の「ぐふふ」系だという.なんたって〈カーマ・スートラ〉だしぃ(ぐふふ).ううむ,“鉗子”に“独楽”に“回転”かあ(ぐふふ).※読み始めてどーするっ>ワタクシ@ぐふふ.

◇仕事に差し障りありまくりの差し入れをいただいた編集者氏と別れてから,ぶらぶらと帰路につく.〈もくべえ〉向かいの〈きんか堂〉にピーロートのワインが入荷していたが,それは買わずに炭酸水だけぶら下げて店を出る.さらにのぼって草津山荘にたどりついたら管理人さんが「お仕事の進捗はいかがですか?」と一言.きっつ〜,痛〜.

◇今日は朝から,晴れては曇り,雨が降ったかと思えばまた陽が射すという実にめまぐるしい天気だった.気温は20度を少し越えたくらいかな.泊まっている部屋にアイスクーラーを持ち込み,炭酸水やらワインやらコーヒーをきんきんに冷やしておく.あとは原稿仕事あるのみかっ(そーかあ?).もうすぐ夕方だ.

◇とても“酸っぱい”お風呂に入ってから夕食.ソーテルヌの飲み過ぎか(アタマいたた……).午後7時から心を入れ替えて原稿仕事を再開しよう.そーしよう.

◇仕事仕事 —— 収斂(convergence)のエンサイクロペディアともいえるこの本の本論は第6章以降.著者の貪欲なる“蒐集慾”のなせるところか,膨大な脚注が付けられている.とにかく広範囲にわたる.書くのはハッピー,訳すのは超タイヘン,読むのは体力勝負かも.なお先の長い登攀の道のりを残しつつ,今日はおしまい.

◇本日の総歩数=15995歩[うち「しっかり歩数」=6177歩/56分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=未計測(非公式記録:〈千歳の湯〉の体重計では「−2.8kg」)/未計測.


12 august 2005(金) ※ 草津お籠り(初日)

◇午前7時起床.今日は時間的に急いでいないので,つい極度に大幅な寝過ごしをしてしまう.平日なら情状酌量の余地なく極刑に処せられるところ.

—— 外は雨が降っている.湿度高く,蒸し暑い.これは一刻も早く標高の高いところに行けというお告げにちがいない.

◇ひたち野うしく駅から常磐線に乗ったのが,午前10:07発.上野に到着.特急乗り場の近くにワインショップを発見.ここんとこ赤ワインをよく飲んでいるので,たまにはソーテルヌの白を(極甘) — 〈Carmes de Rieussec〉の2002年もの.

正午発の〈特急・草津5号〉に乗り換え,吾妻線の長野原草津口駅に着いたのが14:27.気温は低いものの,曇って霧がかかっている.草津温泉バスターミナル行きの路線バスで30分弱.さすがに気温は低いとはいうものの20度は越えているようだ.ときどき雨粒が落ちてくる空模様.

バスターミナルから続くだらだら坂をひいひい上がって,講談社の〈草津山荘〉にようやくたどり着いたときにはもう午後3時を過ぎていた.チェックインして荷物を投げ出してから,まずはすぐ近くの〈リンデンバウム〉(10年ぶりくらいじゃないか)で,ランチ代わりのレーヴェンブロイとソーセージ(しっかり中身が詰まったレーゲンスブルガーとぷるぷると茹で上がったヘジッシュ・ブルートブルスト)をば.※もうしっかりでき上がったかも.

◇草津山荘の温泉は,湯畑ではなく,万代鉱の源泉から引いてきたものだという.ああ,酸性泉.ふずふずと腐食してしまいそう.

◇夕食後は,バーカウンターでさっそく仕事.この著者,クセありすぎ(やっぱり).まずは膨大な脚注からチェック進行中です.本文が330ページなのに,脚注が全部で120ページもあるとはねえ.プリントアウトしたら,本文の半分ほどの厚さになりました.先はとーっても長いです.ソーテルヌをときどき舐めつつ(甘〜).午後10時まで粘る.宿泊客は3組しかいないので,とても静かだ.

◇車中読了本 —— 椎名誠『全日本食えば食える図鑑』(2005年7月30日刊行,新潮社,ISBN:4-10-345617-5).うーん,20年前の前著『全日本食えばわかる図鑑』との関連性はかぎりなく希薄.ゲテモノ食どころか,全体としてはとてもまともな“民俗食物学”の本ではないか.たとえて言えば,「小泉武夫」的な印象を受ける本だ.もちろん,『食えばわかる』以来の懸案事項だった「アオイソメ・ゴカイ丼」の雪辱?を逃げ腰で果たさんとする著者が,三陸のメデューサ“エラコ”に挑戦する箇所もあったりする.しかし,それ以外のほとんどの章は,昆虫食だったり発酵食だったりあるいは自然食だったり,とてもとてもマトモなつくりの本ではないか.鹿肉の食文化がない日本人にどのようにして北海道で増え過ぎたエゾシカを食わせるようにできるのかとか,琵琶湖を席巻しつつある味はイマイチなブラックバスを食うための努力とか,とにかく著者の中での「20年間」の時の流れはこの2冊を比べつつ「読めばわかる」.

◇もう1冊,上野駅で買った本は —— 円満字二郎『人名用漢字の戦後史』(2005年7月20日刊行,岩波新書957,ISBN:4-00-430957-3).※人名漢字をめぐる「漢字規制派」と「漢字推進派」のもみ合い.漢字が社会問題であることを実感する.

◇夜遅くなって,iPod に入っている〈Carmen〉を聴きながら,総譜を少しずつ読む.読みながら聴くと過去の演奏の記憶が再び撚り出されてくるぞ.

◇明日は早起きする予定.早朝から忙しいのでね.

◇本日の総歩数=11307歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=−0.3kg/+0.4%.


11 august 2005(木) ※ お盆の前のエスカミーリョ

◇今日も午前5時起床.少し曇っていて,気温23.0度.ちょっと低めか.でも,すぐに晴れてきた.暑そう.

一足早く,うちの研究室は“お盆休み状態”で,人影もなく.スパン独占状態.カルメン,唱うたはります.オペラの総譜があるのでついよそ見…….おお,テレサ・ベルガンサ.※ドン・ホセの役回りってただのダメ男やんか.ミカエラ,弱過ぎ.あかんたれ.

—— かつて「藤沢市民オペラ」で歌劇〈カルメン〉全3幕をやったときの演奏記録が公開されている.25年も前のことだ.打楽器パートはみーんな東大オケから行った(正規の団員は“小林龍生”だけ.あとはエキストラ).小学館にいたはずのその“小林龍生”がいつのまにかジャストシステムに移り,文字コード標準化という世界に入っていたり,しかも〈小林龍生の怠惰な日々〉なるウェブログまで持つようになるとは!(ビックリ).※当時は,年上であるにもかかわらず,打族はだれもが「コバヤシ・タツオ」と呼び捨てにしていた(すみません).

◇進化学会の学会賞受賞者への連絡の手はずは昨日つけたのだが,その返事が返ってくるのはお盆明けになるかもね.授賞式っつうものがあるので,“主賓”がその場にいないことにはハナシにならんし.※随時対応します.

◇〈R〉の近刊 —— 渡辺利夫『フレッシュマンから大学院生までのデータ解析・R言語』(2005年8月近刊,ナカニシヤ出版,ISBN:4-88848-878-9).※コンスタントに「R本」が出るようになった.心理学データの統計解析を〈R〉でやってしまおうということか.

◇明日からの「草津牢」での持ち込み原稿やら資料を揃える —— 長らく死んでいた DynaBook SS をぐいっと蘇生させ,OED やらリーダーズ英和辞典やらを詰め込む.ターゲット原稿が〈ワード〉で打たれているので,しかたなくプリントアウト.あ,その前に EPSON LP-9500C のドライバも入れ直さないとか.なにやら時間ばかり喰ってしまって,もう午前が終わる.大量のプリントアウトを抱え,ノートパソコン2台.それからオマケの資料もつけたりすると,相当な荷物になってしまうな.

◇ん,ピン留め —— 〈ザ大衆食つまみぐい〉(2004年11月6日)で,『汁かけめし快食學』の著者・遠藤哲夫さんに拾われていた(日録に書きゃあ当然のことですが).

◇夕方の新刊 —— マルティン・ペッツォルト『バッハの街:音楽と人間を追い求める長い旅へのガイド』(2005年8月9日刊行,東京書籍,ISBN:4-487-79840-X).※本書の想定デザインを見れば,5年前に出たバッハゆかりの地のカラー写真集:加藤浩子・若月伸一『バッハへの旅:その生涯と由縁の街を巡る』(2000年6月2日刊行,東京書籍,ISBN:4-487-79437-4)の“姉妹本”であることは明白.今回出た新刊は文字データ中心なので(しかも項目はアルファベット列挙),2冊の本を補間しながら読むのがいいのでしょう,きっと./ クラフト・エヴィング商會『アナ・トレントの鞄』(2005年7月30日刊行,新潮社,ISBN:4-10-477001-9).※ほっと一息ということで.

◇日本進化学会賞と公益信託進化学振興木村資生基金「木村賞」に関わる選考作業はすべて完了したという連絡あり.あとはセレモニーだけだ.よかったよかった.

◇今日は音楽ネタが多いなあ〜 —— これって,いったい……:近刊CD『ブラームス交響曲第1番ハ短調作品68』(2005年9月発売予定).うーむ,「千秋真一指揮/R☆Sオーケストラ演奏」っていうんだけど.※え,マジ? 何,これ??[『のだめ』が好きなアナタ,買ってみてねー.ワタシ,引いてます.]

◇JST領域探索プログラム〈人間行動と社会・文化現象の進化と適応をめぐって〉の第2回研究会は,11月4日(金)〜5日(土)に大磯プリンスホテルで開催されることが確定した.これで,コーディネーターとしての仕事のうち,「日時」と「場所」は完了.あとは「人」だけですなあ(汗).

◇大量の原稿・パソコン・本や資料を抱えて家に帰るはめに.重っ!

◇夜は旅立ちの準備にかかりきり.明日から週末にかけて天気がぱっとしないという予報だが.小雨の温泉街は風情があるというものだが,豪雨に立ち往生というのでは話にならんぞ.

—— 日が変わる前にパッキングほぼ完了.寝る.

◇本日の総歩数=6434歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.4kg/+0.7%.


10 august 2005(水) ※ 曇って湿って雨降ってまた晴れて

◇午前5時に起床.曇っている.気温24.0度.小雨がぱらつく.

—— 早朝からばたばたする:すべて進化学会関連の作業.学会賞受賞者への連絡など.今月下旬の仙台大会での授賞式に間に合わせるには,それなりの段取りをつけておかないと間に合わなくなる.連絡文案のチェック.木村資生基金への推薦文の検討など.

うっかり10時半からのグループ内会議を忘れてしまった.後れ馳せの忍び込み.11時半まで.中期計画がらみの鬱々.

◇午前はこういうあれやこれやで消えてしまった.雨が降り始める.湿度高い.黴びそう.

◇いろいろ —— 9月26日(月)の午後3時からグループ・セミナーでの発表.形態測定学のトークにする予定.

◇8月16日(火)〜18日(木)は夏季休暇をとる予定.といっても,どこかへ出かけるわけではない(はず).単に出勤簿に押印しなくてもいいというだけの「休み」です.

◇アラン・カトラー『なぜ貝の化石が山頂に?:地球に歴史を与えた男ニコラウス・ステノ』(2005年8月9日刊行,清流出版,ISBN:4-86029-116-r6)の続き.故国デンマークで有能な解剖学者として売り出しつつあったステノは,戦火を逃れ,オランダ,フランス,そして最後にイタリアにたどりついたという.1638年生まれのステノがイタリアにやってきたとき,チェシやガリレオが活躍した Accademia dei Lincei はすでになく,実験科学を重視する Accademia del Cimento がステノに活動の場を与えたそうな.ステノ自身の解剖学から地質学への転向もさることながら,17世紀の自然科学の動向が垣間見えて興味深い.

先行する Accademia dei Lincei については,大部の伝記:David Freedberg『The Eye of the Lynx: Galileo, His Friends, and the Beginnings of Modern Natural History』(2002年刊行,The University of Chicago Press,ISBN:0-226-26147-6 [hardcover] / ISBN:0-226-26148-4 →目次)が出ている.ナチュラル・ヒストリーの歴史としても楽しめる本.

◇午後1時から〈系統学的考古学〉セミナー(第14回).Chapter 4 : 「Constructing Cultural Phylogenies」.文化系統学への第3と第4の批判に応える(pp. 111-115).「分類は因果的秩序化」であると批判する人がいるそうだ.要するに,系統が推定できたところで因果的な推論をしたことにはならないだろうし,むしろ,民俗誌記述(ethnography)の方が文化系統樹よりも役に立つのではないかと彼らは考える.しかし,民俗誌記述はせいぜい文化“小進化”の解明にしか役立たないだろう.文化“大進化”はむしろ文化系統樹に照らして論じるべきだろうと著者は反論する.最後の,「言語・文化・生物は必ずしも同調して進化するわけではない」という批判はその通りだが,それは必ずしも reciprocal illuminating な仮説間の照らし合わせを否定するものではないはずだ.

◇午後になって晴れ間が広がる.今日は真夏日にはならなかったようだ.

◇お盆休みの期間が近づいているせいか,研究所の人口密度が低下しつつある.夏季休暇だったり,出張だったり,理由はさまざま.

—— で,ワタクシもこの週末から1週間ほど行方をくらますことになる.まず手始めに,12日(金)〜15日(月)は講談社の〈草津山荘〉にて原稿の仕事(いわゆる「カンヅメ」)に没頭[の予定].例の原稿ではなく,別件の方だったりするのだけど.その後は高崎経由でつくばに戻り,北茨城にてしばし海に浮く予定[土左衛門ではない].

そんなこんなで,7月19日までは放浪することになる.旅先から遠隔指令を飛ばしたりということもあるにちがいない.

◇旅の準備あれこれ.

◇本日の総歩数=4979歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.8kg/+0.2%.


9 august 2005(火) ※ よろめきつつ日常復帰

◇午前5時起床(睡眠不足).気温23.7度.昨夜の雷雨が効いたようだ.

◇午前のこまごま —— とある事務書類を急遽用意することになった./ 埼玉県立久喜図書館より〈障害者用DAISY図書〉への転載依頼.承諾./ 進化学会東北大会の講演要旨pdfが公開された.いや,たいへんなんですよ.要旨集つくりってえのは.ご苦労さまでございます.

◇午後1時から,〈統計学〉セミナー(第15回) —— 分散分析に関する第10章「Multisample Hypotheses: The Analysis of Variance」の最後の部分(pp. 195-206) .まずはノンパラメトリック分散分析(Kruskal-Wallis検定)についての説明.続いて,等分散性(homoscedasticity)に関する Bartlett検定(数式はいいから考え方を教示してねー).さらに,ディープな「変動係数」の均一性検定などなど.そろそろ,疲れてきた.次回からは多重比較の新しい章に進む.

◇来月のJICA講義の日時が確定 —— 9月7日(水)と9月21日(水).いずれも,午前から午後にかけての one-day lecture.またもエスパニョールと化す.

◇進化学会の学会賞関連の作業がにわかにあわただしくなってきた.あわわ.

◇〈Quantitative parsimony〉に関する pdf をお送りいただき感謝です.>“夏休み”中のN部さん(ごぶさた).

◇学会大会の「講演要旨集」の体裁についての追記 —— 推測ですが,ほとんどの場合,学会大会の「講演要旨集」の作成は,実行委員会のボランティア業務の“天から降ってきた仕事”のひとつに過ぎないと思います(その割には負担が大きい).だから,講演要旨集をブツとしてつくってもらったというだけで担当者はすでに十分に感謝されるべきですね.基本的な認識として,要旨集に印刷物としてのクオリティを求めるというのはムリです.組版に対する関心と経験を重ねた人がつねに大会実行委員会に含まれているわけではないですから.たまたま,そういうケースがあったとしたら,それはたいへん幸福な場合であって,それが普通であるとみなすことはできません.

というような理由で,講演要旨集は「文字情報」さえ正確に載っていればOKだと個人的には思います.もちろん,ぼくが要旨集の編集を担当したときは,はるかに厳しい条件を自分に課しましたがね.それを他人に求めることはしません(できない相談というやつですよ).

◇本日の総歩数=6986歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.9kg/−0.7%.※乱高下してる……


8 august 2005(月) ※ 都内を飛び歩く日

◇午前5時起床.気温24.1度.ややしのぎやすい.今日は東京出張.朝から晩まで.

予定 —— 午前中に本郷で原稿を書き,渡す.午後は,飯田橋で進化学会の学会賞選考委員会.その後,夕方から湯島でJSTの領域探索ブログラム実行委員会.さらに夜はお茶の水で飲み会.フルに活動します.

◇午前7時に常磐線に乗り,北千住から根津へ.午前9時前に本郷通に到着.〈こころ〉→〈ルオー〉と喫茶店のはしごをして,原稿を書くときには,基本的に disturb されないまとまった時間がないとだめだ.細切れ時間でも書けてしまうというのは「特技」にちがいない.だから,〈喫茶店カンヅメ〉とか,あるいは〈草津カンヅメ〉というのはぼくのようなタイプの人間には効果的かもしれない.要するに disturb されないという条件さえ満たされれば,場所はどこでもええねん.作家なら誰しも憧れるそうな〈「山の上ホテル」カンヅメ〉などという贅沢は申しません.ハイ.

—— 午前いっぱい原稿を書いて,講談社の担当者氏に手渡す.この6月以来,〈ルオー〉でのこの光景がいったいなんべん繰り返されたことか.それにしても,さくさくと書けないというのは追い込みとカンヅメ度が低いからだろう.ツメ具合をもっとタイトにしないといけないな.

◇昼過ぎに〈ルオー〉を出て.南北線の東大前から飯田橋へ.スターバックスにてアラン・カトラー『なぜ貝の化石が山頂に?:地球に歴史を与えた男ニコラウス・ステノ』(2005年8月9日刊行,清流出版,ISBN:4-86029-116-6)を読み進む.ステノのデンマーク名は「ニルス・ステンセン」というそうだ.一気に北欧チックな名前.若い頃は相当に知的放浪的な学び方をしたらしい.

◇午後2時からは,日本進化学会の学会賞選考委員会のため東京瓦会館の会議室に集合する —— 選考委員6名による検討,2時間半.いい選考ができたと思う.午後4時半の終了間際,ヨウさまのみごとな采配が映える.

◇飯田橋からタクシーで湯島へ.間際に飛び込む —— 午後5時からJSTビルの8階会議室にて,JST領域探索プログラム実行委員会:〈人間行動と社会・文化現象の進化と適応をめぐって〉.9月17日(土)〜18日(日)の第1回研究会は湘南国際村にて.11月4日(金)〜5日(土)の第2回研究会は場所未定.それぞれのテーマを設定し,演者について打ち合わせる.午後7時少し前に終了.時間に余裕がないので,来週早々にも関係者への連絡をしないといけない.

◇またまたタクシーでお茶の水へ直行 —— 午後7時半から,山の上ホテルの〈モンカーヴ〉にて会食.午後10時過ぎまでしこたま.そろそろ体力の限界か.

◇よろめきつつ常磐線の勝田行き最終列車に転がり込む.ひたち野うしく駅に着いたのは,日が変わった午前0時15分頃.なんのかんので寝たのは午前1時半を回っていた.駅の中央コンコースが水浸しになっていた.激しい夕立があったのだろう.※東京ではそんな気配はなかった(夕刻に少し小雨がぱらついたが).

—— 今日は3日分ほど労働した心地がする.起床まであと4時間弱.

◇本日の総歩数=12849歩[うち「しっかり歩数」=3617歩/30分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.9kg/−0.3%.


7 august 2005(日) ※ 研究室ガマン大会の日

◇午前5時半起床.久しぶりに朝のウォーキングを12,000歩ほど.雲が多めで陽射しは痛くないものの,十分に暑過ぎ.

—— 歩き読み読了:今柊二『定食バンザイ!』(2005年5月10日刊行,ちくま文庫,ISBN:4-480-42059-2).※歩行の友に“食べもの本”というのはなかなかマッチしていると思う.それも“B級”な方がふさわしい.この本,いいなあ.横浜国大の関係者は本書を片手に歩くべきだ.それにしても,この著者は有意に喰い過ぎ(他人のことはとやかく言えないが……).

◇午前中にふたたび研究所にトライする.午前10時の室温がすでに「31.5」度.ふふんとせせら笑って,某ヒミツ部屋に籠る.独立空調がある部屋は所内でもかぎられているが,使ってしまえばこっちのもんだ.へへんだ.※子ども並み.

—— 夕方までヒミツ部屋にて原稿を書く.暗くなってきたので,居室に戻る.室温32.5度.話にならんので,いったん撤収する.あとは夜の仕事.

—— 『だから系統樹』の「インテルメッツォ」と「第3章」の構成を改訂.

◇はかどらない……(_| ̄|○)

◇本日の総歩数=21019歩[うち「しっかり歩数」=12052歩/96分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−1.4kg/+0.1%.※よし!


6 august 2005(土) ※ うだる週末,うだうだ.

◇午前4時半起床.早朝からもう暑い.日が昇り,またかんかん照りになる.

◇ウィークエンドのこまごま —— 進化学会から来週月曜に開かれる学会賞選考委員会に関する連絡.議事進行の手順とか.“宿題”もあり./ この日(8月8日)はいくつものイベントが「タイリング」で重なっているので,段取りをきちんとしておかないと.

◇画像サイズの変換ソフトウェア —— Windows 環境だと〈縮小専用。〉という使いやすいフリーソフトウェアを利用しているのだが,Mac OSX 環境でそれに相当するものがなくて不便していた.これまでは数年前に配布されていた〈Pic-a-chu X〉というソフトウェアを利用していたのだが,イマイチ使いづらいところがあった.今日,たまたま〈Squeeze〉という先月公開された新しいフリーソフトウェアを見つけたので,即ダウンロード.なかなか使い勝手がよさそうです.※開発者の方,ありがとうございます.

◇寝転がり本 —— 常盤新平『山の上ホテル物語』(2002年9月30日刊行,白水社,ISBN:4-560-04948-3).※なかなかのグッドタイミングで読了しましたでございます.※月曜の“予習”として.

◇夕方,午後5時過ぎに研究所に顔を出してみる.西日に焼けた居室の室温は32度.週末・休日は館内空調がすべて止まっているので,こういうことになる.2時間ほど仕事らしきことをしてはみたものの,室温は32度のまま,作業環境が悪過ぎるので,あっさり退散する.

—— 「勝負」は明日だ.

◇本日の総歩数=3958歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.4kg/0.0%.


5 august 2005(金) ※ 夏眠したいぞ

◇ぐうたら5時半起床.連日の熱帯夜.朝6時にもう25.5度もある.晴れ.

◇生物体系学における「分類同定」シンポジウムの情報 —— 〈Algorithmic Approaches to the Identification Problem in Systematics〉.今月19日にロンドンで開催される.演者・演題から見て,分類同定(identification)への形態測定学の応用についてのシンポジウムか.この会議の議事録は,スポンサーである The Systematics Association から『Automated Object Identification in Systematics: Theory, Approaches, and Applications(仮題)』(2006年刊行予定,The CRC Press)として出版されるそうだ.

◇こまごま —— 南保くんが熱でダウンしたそうだ.今日午後に予定されていた〈考古系統学〉ゼミは取りやめ./ 〈DGCbase〉の総会に欠席する連絡をする./ 8月8日(月)の出張届を出す./ 振替休日の届けも.

◇炎暑の昼休み.正午の気温が33.9度.1時間ほど徘徊して帰ってきたら,34.3度に上がっていた.昨日よりもさらにパワーアップした暑さ.

◇新刊メモ —— デイヴィッド・プロッツ『ジーニアス・ファクトリー:「ノーベル賞受賞者精子バンク」の奇妙な物語』(2005年7月刊行,早川書房,ISBN:4-15-208658-0).※ショックレー,マラー,ホールデーンらの「優生運動」がこのように実際に機能していたとはまったく知らなかった.

◇「数理系統学」落ち穂拾い —— 吉田知行「サイエンス・トピックス:数学の応用事例 — 比較言語学への応用」(→ pdf:2005年6月6日付).※こういう関心をもつ数学系の人がいるとは心強い.第14節「数学の核」がおもしろそう.

◇そろそろ尻に火がついてきたので,この週末は頑張ります.ハイ.

◇考古学史についてのメモ —— 安斎正人『理論考古学入門』(2004年5月15日刊行,柏書房,ISBN:4-7601-2540-X →目次).※いま読みつつあるMichael J. O'Brien, R. Lee Lyman, and Michael Brian Schiffer『Archaeology as a Process: Processualism and Its Progeny』に関係しそうな日本語の新しい文献としては本書しか出会っていない.“系統学”的な記述はほとんどないようだが,少なくとも現代考古学史の部分は参考になるかも.

◇昼間の暑さを抱えたまま夜になる.

◇本日の総歩数=12689歩[うち「しっかり歩数」=5676歩/48分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+1.5kg/+0.3%.※げ,ヤバっ.


4 august 2005(木) ※ 夏祭りにふさわしい日和で

◇午前5時前に起床.蒸し暑い朝.気温25.7度.連日の熱帯夜.今日は農環研の恒例行事〈夏祭り〉の日.本番は夕方からだが,露店や櫓そしてステージなどの準備をしている人たちは当然そわそわうろうろしている.日中はまた真夏日になりそうなので,たいへんだと思う.

◇午前のこまごま —— 宿舎の風呂釜の付け替えについて,関東財務局との個別交渉.「自費で交換しろ」と言われるのは予想された答弁の範囲内だったので,いざとなったら15年前からベランダに放置してある古い釜を付けるフリをしよう(あとのことは関財の責任です)./ 私用が入ってしまったので,統計関連学会広島大会で広島に入るのが1日遅くなってしまうことに.ホテルに予約変更の電話.この件,完了.※あおりを喰って計量生物学会の対面理事会に出席できなくなった.ごめんなさいねー./ またまた,とある事務書類のハンコの件で足止めを食う.※書類とハンコではいつもとらぶる.

◇新刊情報 —— 大場秀章(編)『標本は語る』(2005年7月刊行,東京大学出版会,ISBN:4-13-020219-7).※いま,東京大学総合研究博物館で開催されている特別展示〈『Systema naturae』〜標本は語る〜〉の図録(展示は9月4日まで).リンネの『自然の体系』を出発点とする自然物の“体系化”をテーマとしているそうだ.10年ほど前に千葉県立中央博物館で開催された特別展〈リンネと博物学:自然誌科学の源流〉を思い出した.このときの同名の図録(1994年8月21日刊行,千葉県立中央博物館,ISBNなし)はよい仕上がりの資料だったと思う.今回の東大博物館のはどうなのだろうか.興味がある./ 川島正樹(編)『アメリカニズムと「人種」』(2005年8月刊行,名古屋大学出版会,ISBN:4-8158-0516-4).※人種の政治学と社会学の論集だとしたら,買うまでもないかな.版元の「目次」を見ると,そのような気配が濃厚だが./ アラン・カトラー『なぜ貝の化石が山頂に?:地球に歴史を与えた男ニコラウス・ステノ』(2005年8月刊行,清流出版,ISBN:4-86029-116-6).※黎明期の古生物学史の本.ステノはグールドのエッセイにもたびたび登場する人物で,かつて彼の『ニワトリの歯:進化論の新地平(上下)』(1988年10月刊行[1997年11月文庫化],早川書房,ISBN:4-15-050219-6 / ISBN:4-15-050220-X)を訳したとき,いちばん最初に手がけたのがステノの伝記エッセイ(第5章:「The Titular Bishop of Titiopolis」)だった./ 椎名仙卓『日本博物館成立史:博覧会から博物館へ』(2005年6月刊行,雄山閣,ISBN:4-639-01892-4).※今年の6月は「博物館本」ラッシュだったということか.

◇正午の気温「33.7度」 —— ほとんど拷問.でも炎天下をうろうろ歩いたりする(死にそう).

◇『UP』8月号からの情報 —— 本田計一・加藤義臣(編)『チョウの生物学』(2005年8月刊行予定,東京大学出版会,ISBN:4-13-060216-0).※計640ページ,本体価格9,500円という大部高価な論文集に……(げ).

◇午後5時前 —— そろそろ農環研・夏祭りが始まる頃なので,この炎天下,覚悟を決めて会場のグラウンドに行こう.限りなく暑そう(引く).

—— 例年通り,多くの客が集まる.アフリカの〈ジェンベ(djembe)〉を叩かせてもらった(ヤギ皮).締めが緩めなのでトーキング・ドラムみたいなもんか.

◇飲み食いしすぎ,午後8時過ぎに早々退散.

◇本日の総歩数=15529歩[うち「しっかり歩数」=5055歩/44分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=0.0kg/+0.2%.


3 august 2005(水) ※ 暴力的な高温と高湿

◇午前2時頃にふと目が覚める.暑いなあ〜.窓を開けたとたん,暖かい空気のカタマリが押し込んできたので,あわてて締め切って即エアコンをつける.再度就寝するまでにメールを書いたりしてしまう.午前5時前に再び起床.気温は26.3度.正しい熱帯夜だった.

—— 進化学会の事務費支払い内容のチェックと返事./ 日本生態学会和文誌に〈統計高座〉の記事を書くことになりそう.※ワタシ,いまだに非会員なんですけど…….

◇すっかり忘れていた IOSEB の旅費申請書類を遅まきながら準備し始める.航空券の半券とか,ホテルのレシートとか,いろいろとかき集めて.それだけではなく,ICSEB-VII の進捗報告もしないといけないはずなのだが(こっちが本題).

◇正午の気温は32.7度.真夏の陽射しと湯気が立ちそうな湿気のダブルパンチの中を歩くのは酔狂以外の何ものでもないな —— 南陀楼綾繁『チェコのマッチラベル』(2005年7月5日刊行,ピエ・ブックス,ISBN:4-89444-447-X)の後半を読了.〈チェコ・マッチラベル協会〉という蒐集マニアの団体があるそうだ./ もう1冊,『縞のデザイン:わたしの縞帖』(2005年4月11日刊行,ピエ・ブックス,ISBN:4-89444-422-4)も勢いで読了.またピエ・ブックスか.でも,惹かれるもんはしゃあないでしょ.布地の“縞々パターン”の蒐集.うまく分類されていて,これまたおもしろい.かつては〈縞帖〉というコレクション・ブックが布地を扱うところには必ずあったのだそうだ.そういえば,川上紳一『縞々学:リズムから地球史に迫る』(1995年7月刊行,東京大学出版会,ISBN:4-13-060709-X)という本があったなあ,と思ったら,あーこの著者〈全球凍結〉な人だった.いま初めて知ってしまった.

◇ヒトにとつては熱中症寸前の天気であっても,カブトムシにはむしろ最適なのだろう.散歩コースの中山地区にあるクヌギの大木には,真っ昼間に♀カブトムシだけが何頭も樹液に群れていた.一方,♂はといえば,鳥につつかれたのか,腹部がなくなって horn 付きの頭部だけが空しく根元に転がっていた.※鳥にとっては♀よりも♂の方が食べやすかったりする?

◇〈年貢〉 —— く.来週月曜に〈ルオー〉にて.

◇午後のこまごま —— 日本進化学会の学会賞関連の書類一式が届く.来週月曜までにいちおう目を通す必要あり./ 共済組合員証の検認に関する書類の提出,は締切までまだ余裕があるな./ 明日はハンコを忘れてはいけませぬ.

◇「博物学・博物館」新書3冊 —— 先月買ったままずっと放置されていた:関秀夫『博物館の誕生:町田久成と東京帝室博物館』(2005年6月21日刊行,岩波新書953,ISBN:4-00-430953-0).※これは日本の官立博物館史./ 出口保夫『物語 大英博物館:二五〇年の軌跡』(2005年6月25日刊行,中公新書1801,ISBN:4-12-101801-X).※こっちはかの大英博物館の通史./ 周達生『昭和なつかし博物学:「そういえばあったね!」を探検する』(2005年6月10日刊行,平凡社新書279,ISBN:4-582-85279-3).※こりゃあ,もっと生活空間寄りの“博物学”だ.ほぼ同時に同じジャンルの新書がそろい踏みするとは偶然にしてはでき過ぎだ.

【欹耳袋】 —— 〈Tree Thinking Group〉.その趣旨,ごもっともです.

◇いくつか論文をブラウズ —— まずは「定量的最節約」の概念に関する論文ふたつ:

  • D. Nolan 1997. Quantitative parsimony. The British Journal for the Philosophy of Science, 48 (3) : 329-343. ※→アブストラクト
  • A. Baker 2003. Quantitative parsimony and explanatory power. The British Journal for the Philosophy of Science, 54 (2) : 245-259. ※→アブストラクト

上の2論文はさっそく複写依頼を提出しないとか.最節約原理と“説明能力”とを結びつけているところは Steve Farris の立論と共通するものがあるように感じるけど.

—— 次のスレッドはもっと込み入っている.

  • K. de Queiroz and S. Poe 2001. Philosophy and Phylogenetic Inference: A Comparison of Likelihood and Parsimony Methods in the Context of Karl Popper's Writings on Corroboration. Systematic Biology, 50 (3) : 305-321. ※→アブストラクト
  • A. G. Kluge 2001. Philosophical Conjectures and Their Refutation. Systematic Biology, 50 (3) : 322-330. ※→アブストラクト
  • K. de Queiroz and S. Poe 2003. Failed Refutations: Further Comments on Parsimony and Likelihood Methods and Their Relationship to Popper's Degree of Corroboration. Systematic Biology, 52 (3) : 352-367. ※→アブストラクト
  • Kevin G. Helfenbein and Rob DeSalle 2005. Falsifications and Corroborations: Karl Popper's Influence on Systematics. Molecular Phylogenetics and Evolution, 35 (1) : 271-280. ※→アブストラクト.[Corrigendum 2005 : Ibid., 36 (1) : 200.]
  • A. G. Kluge 2005. What Is the Rationale for 'Ockham's Razor' (a. k. a. parsimony) in Phylogenetic Inference? Pp. 15-42 in: V. A. Albert (ed.), Parsimony, Phylogeny, and Genomics. Oxford University Press, Oxford. ※→目次

最尤法が Popper の「験証理論」とすなおに結びつくとはちょっと考えられないので(論理的確率と頻度的確率を同一視しないかぎり),de Queiroz & Poe の主張はトリッキーなことをしていると思う.Sociological にはとても興味深い主張ではあるが.Likelihoodists のこの戦略が諸刃の剣であるように見えるのは,最尤法を Popper と連携させると,呉越同舟なベイズ法との間での戦略的連帯が壊れる可能性があるから.いまのところ「科学哲学」に関心のある統計学者は少ないようなので表面化していないだけなのだろうけど.

◇本日の総歩数=12120歩[うち「しっかり歩数」=5251歩/46分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/+0.2%.


2 august 2005(火) ※ 夏祭り近づく

◇午前5時起床.今朝も蒸し暑い.雲が多く,気温はすでに25.9度.

—— 研究所にて朝のこまごま:進化学会のメールと事務連絡./ 外部依頼した査読原稿が戻ってきた.コメントを付けて編集部に転送し,作業完了./ 午前中はずっと某書類を書き続ける.お昼前にやっと完了.一部分は郵送を終えて,作業終了.ところが,残る部分はまたもや印鑑が適合せず,後日回しに.このぬかるみ,まだ続くのか…….

◇“チェコ系”のデザインや装幀を見ていて,隣国のハンガリーにも同様の傾向があるように感じる.以前,駒場下の河野書店で,500円で買った Mesterházi Lajos『Játék : Szinmüvek és hangjátékok[演劇集:舞台劇とラジオ劇]』(1961年刊行,Szépirodalmi Könyvkiadó).マジャールな中身はチンプンカンプンでも,この表紙の装幀はとても印象的だ.

◇炎天下の中距離歩行読み.南陀楼綾繁『チェコのマッチラベル』(2005年7月5日刊行,ピエ・ブックス,ISBN:4-89444-447-X)の続き.“ピストル”というのはチェコ語由来だったのか! ※限りなく暑かったぞ.

—— いよいよ明後日に迫ってきた〈農環研・夏祭り〉の準備が着々と進められている.櫓とか太鼓の準備とか.

◇午後1時から,〈統計学〉セミナー(第14回) —— 分散分析に関する第10章「Multisample Hypotheses: The Analysis of Variance」の続き (pp. 189-195) .分散分析の検定力について.F分布と非心F分布が登場する(密度関数は見ない方がよかったかも).検定力がパラメーターとともにどのように変化するかについて知った.さらに,非心度φを用いたサンプルサイズ,処理水準数,最小可能検出差の算出と最適化の手順について.

◇学会参加に伴う代休日の取得確認.

◇Semple & Steel 本の素読(っていうか……).

◇本日の総歩数=10873歩[うち「しっかり歩数」=3400歩/28分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/0.0%.


1 august 2005(月) ※ よみがえる葉月

◇暑過ぎて3時半にいったん目覚める.さすがに真っ暗.空が明るくなりはじめる4時過ぎにヒグラシの合唱がたちあがる.晴れ.気温23.8度.

—— 研究室にて,高橋悠治のエリック・サティを聴きつつ,進化学会の事務メールとメーリング・リストへの月例アナウンス.学会賞候補者の書類が近日中に届く予定.

◇お,哲学者の系統樹ですか.こりゃおもしろい.が,この広大な — 哲学者2400人あまりを含み,pdf にして500ページを越える — ツリーをどのようにして描画すればいいんでしょ???

Nelson Goodman が「情報 wanted」ステータスになっている.学問的な師弟関係があまり知られていないということですか?

◇午前中のこまごま —— 第15回〈ブループラネット賞〉の推薦依頼が届く./ 『からだの科学』(244号,2005年9月1日発行,日本評論社).特集「コーヒーの医学」もおもしろそうなのだが,この号が送られてきたのは,ナイルズ・エルドリッジ『ヒトはなぜするのか』(2005年3月11日刊行,講談社インターナショナル,ISBN:4770027907)の書評を書いたから(p. 89)./ 『生物科学』の書評掲載が1号ずれるとの連絡.分量が多過ぎたらしい(刷上がりが「9ページ」ですもん,なんたって).

◇昼休み,炎天下を予約しておいた歯医者に行く.

◇午後1時から,Alan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読第3回目.Chapter 1「Frequency distributions」の残りの部分.最初は積分論.通常のCauchy積分を一般化した,Riemann-Stieltjes積分が本書では多用されている.連続変量・離散変量で共通の記法が用いられるという利点あり.さらに一般化したLebesgue積分は時系列解析のようなかぎられた場合以外はあまり用いないとのこと.続いて,多変量確率分布における条件付き分布と周辺分布についての解説.14時にセミナー終了.来週からは,確率分布の location parameter に関する新しい章に入る.

◇「マッチ」デザインの世界 —— またまたピエ・ブックスの新刊にハマってしまう:南陀楼綾繁『チェコのマッチラベル』(2005年7月5日刊行,ピエ・ブックス,ISBN:4-89444-447-X).※図柄や配色がとても魅力的.明らかに,『チャペックの本棚:ヨゼフ・チャペックの装丁デザイン』(2003年3月12日刊行,ピエ・ブックス,ISBN:4-89444-249-3)と同系列だ.同じ「マッチ」のラベルではあっても,同時代の日本のそれとは大違い — 加藤豊『マッチレッテル万華鏡:明治・大正・昭和の登録商標燐票』(2001年5月30日刊行,白石書店,ISBN:4-7866-3033-0).こういうディープな「蒐集の世界」もあるのか.※「缶詰めラベル」の蒐集行為に比べたら,まだ日常世界的ではあると思うけど.

—— ピエ・ブックス,おそるべし.

◇今年の11月17日(木)〜19日(土)に神戸で開催される,日本動物遺伝育種学会主催第3回最先端遺伝育種セミナー〈家畜・水産動物における遺伝的多様性研究:その目的と新しい方法論〉の案内が届いた.追って学会サイトでもアナウンスされるだろう.ぼくが系統推定全般の話をして,宮正樹さんがベイズ系統樹の講演をする.これらを含めて3日間のセミナーで8講演が予定されている.

◇日が陰っても湿気はいっこうに去らず.蒸し暑いままの夜がやってきた.

◇明日には書かないとどーにもならん書類の束が積まれている.※書類書きの“無間地獄”とはこのことか…….

—— 脱力してしまう.

◇本日の総歩数=9463歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−0.8%.


--- het eind van dagboek ---