images/image1.jpg

Home
oude dagboeken

日録2010年1月 


31 januari 2010(日) ※燃え尽き日曜日はゆきの美人

◆午前5時起床,昨夜は満月が大きかったそうだが,そういえばぜんぜん見なかったな.けっきょく,昨日は日録のアップデートが終わらなかった…….週末に二日もかけて日記を書くというのはどうしようもない.夜明け前のシャワーで目覚め.

◆計量生物学会のオーガナイザー仕事が進捗したついでに,同じ年会でのチュートリアルも.こちらの方は裏方ではなく噺家でございます. ——

【名称】日本計量生物学会2010年度大会チュートリアル
   〈統計思考と分類思考:Rを用いた分類パターンの認識
【主催】日本計量生物学会(→公式サイト
【日時】2010年5月21日(金)午前9時半〜12時
【場所】統計数理研究所・大講義室(東京都立川市 → アクセス
【噺役】三中信宏(農業環境技術研究所/東京大学大学院農学生命科学研究科)
【司会】上坂浩之(大阪大学)

【趣旨】データに基づく「分類」(classification)の構築とパターン認識は,現代統計学においては多変量解析の理論体系の中で論じられることが多い.しかし,人間が行なう認知行為としての分類のもつ意味は,統計学というひとつのサイエンスの中でのみ追究するのでは限界がある.今回のチュートリアルの前半第一部では,分類が担ってきた,多様な対象物に関するパターン構築を通じての体系化(systematization)を,クラスター分析の歴史的成立を例にとって考察する.統計的手法としてのクラスター分析はもともと生物分類学における数量表形学(numerical phenetics)という学派のツールとして1950年代に開発された.したがって,生物分類学史の文脈の中でクラスター分析を再検討することにより,分類思考と統計思考がたどってきた系譜をより深く理解することができるだろう.この理解をふまえて,後半第二部では,実際の研究の場でユーザーが直面する「定量的分類」の要請に対して,統計言語RならびにRコマンダーを用いてどのようにクラスター分析を実践していくかを解説する.多変量データからの全体的類似度の計算オブションとクラスタリング・アルゴリズムの選択,さらにはマルチスケール・ブーツストラップを用いたクラスターの信頼性検定など,いくつかのテストデータを用いたクラスター分析のデモを通じて,「分類」という行為に含まれる虚実を疑似体験していただきたい.

【参加費】正会員,応用統計学会員  年会・チュートリアルそれぞれ3,000円,非会員5,000円(事前申込 各500円引き/年会とチュートリアル一括事前申込の場合,両方合わせて1,000円引き/学生(会員,非会員共に)1,000円)

今年の年会はウラとオモテの両方で走り回ることになる.

◆日録を書く日曜日 —— 雲の多い昼下がりに 25日〜27日までの dagboek をアップロード完了.しかし,なお残り三日分が書ききれていないというていたらく.午後7時過ぎ, dagboek の28日〜30日までをやっとアップロード完了.ほんとうに日記を書くだけで週末がつぶれてしまった…….

◆今夜は〈ゆきの美人〉の純米吟醸「活性にごり酒」を飲みました.今の時期が活性にごり酒ですが,肉料理にも合う相性のよさが身上.今日はカレー味の海鮮鍋だったのですが,もちろん負けませんでした.最近は「ガス抜き栓」の活性にごり酒が多いけれども,〈ゆきの美人〉は密閉栓なので炭酸ガスの濃度がより高くてうまい.完全に「日本酒サイダー」な味覚.

◆さて,今日のこれからのお仕事はいずれも勁草書房さんがらみです.まずはソーバー訳本の原稿チェックからはじましょうかねー.そのあとはまたまた遅れている論文集の原稿のリヴァイス.伊藤悠『シュトヘル・第2巻』(2009年10月刊行,小学館,東京,ISBN:978-4091827999)のよそ見もしないといけないし:「あした,わたしが死んでも消えないのか,…それが文字なのか−−」すばらしいなぁ〜.

◆明日からはもう2月.トド撃ちリストを更新して年度末の闘いに備えないといけないぞ,と.

◆本日の総歩数=1010歩[うち「しっかり歩数」1540歩/16分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=86.7kg(−0.4kg)/27.0%(0.0%)


30 januari 2010(土) ※日録を書きながらオムライス

◆午前4時過ぎ起床.未明は冷え込んでいる.まる8日間も溜め込んだ dagboek のケリをつけないと,今月は終わるに終われない…….日録ならぬ週録と化しつつある.早朝のうちに,とりあえず3日分(22〜24日)の dagboek をアップロード完了.これくらい毎日さくさく書けよ,と自己叱責する.しかし,あることに気がとられると他のことが見えなくなる(どうでもよくなる)性格なので,マルチタスクはもともとできない.結果として放置プレイ続出ということになる.

◆朝から快晴の空が広がっている.NHKニュースで報道していた,船舶文化としての「花毛布」の伝統は文化系統学のテーマとして興味深い.そこに登場した上杉恵美(明海大学)さんの論文:「近現代の日本船における「花毛布」の継承」Journal of Hospitality and Tourism, 4(1): 46-62, 2008.こういうきっかけでもないと決して知らない研究だったにちがいない.アンテナは張り巡らすにかぎる./あらま,つくばセンターの〈Q't〉もツイッター(@creosq)していたんですねー.

◆朝イチでみらいだいら方面に所用あり.帰宅後,千現の〈千年一日珈琲焙煎所〉にてコーヒー豆を買う.〈たがみ酒店〉にて秋田醸造の〈ゆきの美人〉の「発泡にごり酒」をば,さらに〈やまや〉にて MacKays のシャンパン入りジャムとマーマレードを購入.買いまくる週末の昼下がり.

◆日中は風もなく,ぽかぽかと暖かかった.もう春ですなぁ.つくばセンターのリブロ西武店にてゲット:伊藤悠『シュトヘル・第2巻』(2009年10月刊行,小学館,東京,ISBN:978-4091827999).確かに「西夏文字」の文字盤がご神体のように扱われている.主人公ユルールはこの西夏文字に魅了されて旅をするという物語.思い起こせば「西夏文字」を初めて見たのは,高校に入ってすぐ,西田龍雄『西夏文字:その解読のプロセス』(1967年,紀伊國屋新書)を読んだときだった.とても新鮮な衝撃を受けて,京大文学部に行けばこのセンセイがいるのかと真剣に考えたこともあった.半ば文字痴だったのだろう./佐々木力『数学史』(2010年2月近刊,岩波書店,東京,本体価格15,000円,ISBN:978-4000055338 → アマゾン予約ページ ).「912ページ」!(マジですかっ?)

◆本日の残響 —— 壊れかけたメモリーの外部記憶「分類思考の世界 なぜヒトは万物を「種」に分けるのか」(2010年1月29日) /まとまり日記「分類思考の世界」(2010年1月29日)

◆紅の夕陽が西の地平線にみるみるうちに沈んでいった.地球の自転が感知できるほどのスピードだった.夜,ひさしぶりに厨房にてビシッとオムライスをつくる.たっぷりの冷やご飯と生活クラブのトマトケチャップがあれば,オムライスの調理頻度がつい高くなる.「客」が入ってくるたびに卵を割る愉しみもあり.オムレツパンの休むヒマはない.

—— ここ数日,月がとても大きく見えたのは気のせいではなかったことを初めて知った.

◆なんだかんだで日録を書くのみの土曜だったが,まだぜんぜん終わる気配がない.明日も続くのか…….溜めてはいけない日々の記録.

◆本日の総歩数=8738歩[うち「しっかり歩数」1540歩/16分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.計測値(前回比)=87.1kg(+0.1kg)/27.0%(−0.4%)


29 januari 2010(金) ※連続トド撃ちの月末を迎える

◆午前4時半起床.星空.大きな満月が西に沈もうとしていた.午前6時の最低気温はマイナス0.4度だった.曇りのち晴れの空模様.今日はめずらしく終日つくばに実在する.

◆午前のこまごま —— 昨日,駒場で出題した生物統計学のレポートを6時間後に早くも提出した一番乗りさんあり.他の受講生のみなさんも頑張ってねー./玉川学園大学農学部の訪問日は2月8日(月)正午と決まった.

◆「白羽の矢」は即死率100% —— 先日来,準備を進めてきた日本計量生物学会2010年度大会特別セッション〈農学・生態学・進化学でのベイズ統計手法の応用に関する諸問題〉は予定していた講演候補者全員からOKの返事をもらったので,以下のように確定した:

【名称】日本計量生物学会2010年度大会特別セッション
   〈農学・生態学・進化学でのベイズ統計手法の応用に関する諸問題
【主催】日本計量生物学会(→公式サイト
【日時】2010年5月22日(土)午後2時半〜5時
【場所】統計数理研究所・大講義室(東京都立川市 → アクセス

【趣旨】生物統計学の近年の応用研究では,ベイジアンMCMCに代表される計算統計学的手法を用いたベイズ推定がさまざまな応用分野に適用されるようになってきた.とりわけ,コンピューター・ハードウェアの高性能化と使い勝手のよいソフトウェアの普及により,農学・生態学・進化学の分野では最近十年の短期間に急速にこれらのベイズ統計学の手法が浸透している.今回の特別セッションでは,これら生物統計学の分野でいま先導的な研究を進めている若手の研究者に,ベイズ統計学をそれぞれの問題状況で用いるときに生じる理論的問題と実践的問題について話題提供をしていただき,分野を越えて共通する問題点について議論を深める場にしたい.

【演者・演題】 ※演者確定,演題仮題,順序確定
  1. 岸野洋久(東京大学)「ベイズ統計手法の応用の現状と展望」
  2. 北門利英(東京海洋大学)「水産資源学におけるベイズモデリング」
  3. 林 武司(農業生物資源研究所)「ベイズ手法を用いた遺伝育種研究」
  4. 田辺晶史(筑波大学)「ベイズ法をもちいた系統進化の解析」
  5. 伊東宏樹(森林総合研究所)「植物生態学とベイジアンMCMC」
  6. 久保拓弥(北海道大学)「集団動態のベイズモデリング」
【司会】三中信宏(農業環境技術研究所/東京大学大学院農学生命科学研究科)
【進行】趣旨説明2分,各講演20分,個別質疑3分,総合討論10分

◆午後のこまごま —— 昨日,駒場で実施した「学生による授業評価アンケート」の集計中.自由コメント:「5限のスライドは眠くって」,よちよち;「意外と有名人でおどろきました」,よしよし;「よい授業だったと思います」,なでなで;「先生の外見が胡散臭いです」,こらこら……./ろうきん担当者,13:00来室,2月2日(火)10:00に書類提出.

◆[欹耳袋]進化曼荼羅本!:ダグラス・パーマー[北村雄一監修/椿正晴訳]『EVOLUTION:生命の進化史』(2010年1月29日刊行,ソフトバンククリエイティブ,東京,ISBN:978-4-7973-5295-5 → 版元ページ).イラストで描く生命進化のタペストリーだそうな.北村さんはイラスト描いてない?

午後7時半のバスで帰宅.今年度の確定申告用紙が届いていた.季節は進んでいるなぁ.結局,溜まっていた日録を消化することはぜんぜんできなかった.週末のお仕事にしようか.

◆本日の総歩数=5880歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.計測値(前回比)=87.0kg(−0.5kg)/27.4%(+0.1%)


28 januari 2010(木) ※雨上がり温い駒場で最終講義

◆午前4時半起床.曇り.冷え込みはまったくなく,午前6時の気温はプラス2.2度もあった.今日の午前は原稿を書くしかない.連日,「締切フラッグ」が激しく振られるというのは精神衛生上よろしくありません.そして,午後は駒場で原稿納税をすませた後に,生物統計学の最後の授業.あわせてレポート出題と学生アンケートを実施する.昨日つくったレポート課題は印刷完了.

◆[欹耳袋]エルンスト・ヘッケルの『Kunstformen der Natur画像ファイル集./公開され始めたばかりの Apple の〈iPad〉が大フィーバーしている気配がツイッター越しに伝わってくる./1月26日に発表された R. J. Metrics 社の調査結果によると,全体のほぼ25%はフォローワー数が「0」で,80%は「10ツイート以下」の発言数で,うち40%は「まったくつぶやいていない」.全7500万アカウントのうち,“アクティヴ”なツイーターは「1500万人」とのこと.

◆ヘッケルな午前 —— 外は曇りときどき晴れという空模様だが,そんなことは知ったことではない.午前いっぱいとにかく書くしかないのでキーボードに向かっている.

◆狙撃結果 —— 加圧されまくりのヘッケル原稿を書きながら,昨日放ったべいづな「白羽の矢」の当たり具合をチェックする.昨日までにターゲット6名のうち4名から「命中リプライ」があり,残る1名からは「日程確認の上,返事します」,最後の1名は「矢は当たりました」との着弾確認.狙撃手たるオーガナイザーとしての責務を着実に果たしつつある.その後,5人目の犠牲者から「やっぱり命中したので逝きます」との返信あり.残るはひとり!(よろしく絶命してください)

◆車中書斎アゲイン —— 午後に鳴ってぽつりぽつりと雨粒が落ち始めてきた.13:55発のTX快速に乗り,渋谷までまたしても車中でキーボードを打ち続けた.天気予報では関東は雨が降るはずだったのに,どうやら移動中に雨雲は通り過ぎたようで,地面が湿った駒場キャンパスの上空は雨上がりの青空が広がり始めていた.気温は高く生暖かい.講師室で待ち合わせたNHKブックスの井本さんにヘッケル原稿10枚を手渡す.ついでに,2月の「カンヅメ日程」の調整をば.とりあえず2月10日(水)〜12日(金)に都内でカンヅメされることになった.ついに夢?の「カンヅメ」執筆生活か.その昔,講談社の草津寮にて数日間カンヅメにされたときは毎朝,温泉街の外湯めぐりをしたものだが,今回は都内だそうなので,さらにユウワクが多そうで困る(困らないかも?).

◆駒場での今期最終講義 —— きょうは「生物統計学」の最終講義として形態測定学.受講生のみなさんはたいへんお疲れさまでした.第2回のレポートはちゃんと提出するように.それから,マーマレードに混ぜるのはウィスキーであって,ビールではないので,まちがえないよーに(ツイッターはちゃんと読もうね).駒場で「生物統計学」の講義を担当するのはほんとうの意味で最後となる.来年度からは本郷(理学部二号館)にて同じ木曜の5限に開講されるとのことです.玉川学園で分子系統学の講義をした後に本郷に駆けつけるというのは,ひょっとしたら体力勝負かもしれないな.電車がトラブったら一巻の終わりだ.

—— 講義が終わり,生暖かい夕闇の駒場をあとにする.夕暮れの駒場をうろうろするのも,もうしばらくはないことかもしれない.

◆帰路車中読書 —— 渡辺公三『闘うレヴィ=ストロース』(2009年11月13日刊行,平凡社[平凡社新書498],東京,302 pp., ISBN:978-4-582-85498-5 → 版元ページ)の第3章まで読了.ここまでで200ページ.レヴィ=ストロースのブラジル滞在がかくも長期にわたっていたとは知らなかった.

◆そんなこんなで,毎日「フラッグ」が立ちまくりで,気がつけばまる一週間 dagboek の更新が滞ってしまった…….アップデートするのはまちがいなく半日仕事になるだろうなぁ.明日はつくば実在日なのでカタをつけるしかないか.「燃え尽き度」がイッキに悪化するかも.

◆本日の総歩数=7692歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前回比)=87.5kg(+0.3kg)/27.3%(+0.7%)


27 januari 2010(水) ※3トドを追う者は2トドを得る

◆午前6時起床.今朝も快晴で,氷点下だった.最低気温はマイナス5.4度.ぜんぜん雨が降らないので空気が乾ききっている.

◆本日のトド撃ち宣言 —— 今日は東大の専攻修論発表会に顔を出すことになっているが,その前に差し迫ったトドを2頭仕留めないといけない.そのうち1頭はベイズなトドで「白羽の矢」を全国に放つこと.もう1頭は明日の午後に駒場で納税する原稿を書くこと.いつまでたってもぬかるみは続き,ドロナワの日々は終わらない…….そうだ,3頭目のトドを忘れていた! 駒場「生物統計学」の第2回レポート課題を用意しないといけない.一日で3頭も大トドを仕留められるか,いささか不安ではあるが…….

◆午前のこまごま —— ラヂオつくばの録音予定が確定.2月16日(火)10:30から農環研にてということになった.台本らしき文書が広報から送られてきた.番組中に流す曲を何か一つ選んでいいそうだ.ヤナーチェック〈シンフォニェッタ〉冒頭を轟かせるか,それとも〈グラゴル・ミサ〉のイントラーダで弾けてみるか./[組合]任期付研究員の意向調査.丸投げします〜.

◆トド撃ち果たし(其の壱) —— ぼくがオーガナイザーとして企画中の計量生物学会大会特別セッション〈農学・生態学・進化学でのベイズ統計手法の応用に関する諸問題〉,5月22日(土)午後,統数研(立川).講演者をゲットするための「白羽の矢メール」を立て続けに全国に向けて発射した.心当たりのある方は逃げたりせず潔く射られてくださいね〜.この件はおしまい.あとは返事を待つばかり.

◆今日の残響 —— 育ちあい・親・子ども「「分けること」と「わかること」に 大きな関係有り!!」(2010年1月26日).「坂本賢三」発,「福岡伸一」と「三中信宏」を経由して,終着が「池田清彦」……って(汗).「中尾佐助」も通過してほしかったな.

◆トド撃ち果たし(其の弐) —— 駒場「生物統計学」第2回レポート課題がやっとできた.木曜の最終講義で配りますので,お楽しみに〜(>受講生諸氏).昼過ぎに諸方面に放った「ベイズ白羽の矢」.さっそく,「当たりました,痛いです……」,「積極的に射抜かれました」,「日程確認の上,射られます」という3名のターゲット氏からうれしい命中リプライが.残る3名の標的さんたちも早く射程内に入ってくださいねー.

◆本郷へ出発 —— ちょい遅めに東京へ出発.上空に雲がかかっているが晴天ではある.東大農学部での修論発表会(午前からやっていた)&専攻交流会(午後6時過ぎから).いつもながら先生も学生もよく飲む専攻だ(「男」社会だから?).埼玉〈神亀〉の「元旦搾り(おりがらみ)」を今年もいただいた.アルコール度数18〜19度って日本酒としては上限いっぱいという感じがして,この速攻イチコロ感がいい.午後7時前に交流会を退出.常磐線で人身事故があった影響で千代田線が走っては止まるという大遅延が続いていた.西日暮里で秋葉原にもどりTXに乗る.つくばに帰り着いたのは午後9時前だった.

◆往路車中仕事はソーバー訳者解説記事の朱入れ.ぽつぽつと修正すべき箇所がある.別件の原稿(BSC)も読む.同意できる部分とできない部分が混じる.ややアルコールが添加された復路車中では:平出隆『鳥を探しに』(2010年1月24日刊行,双葉社,東京,660 pp.,本体価格3,800円,ISBN:978-4-575-23685-9 → 版元ページ)読み始めている.かさばりますなぁ…….

◆さて,一休みしたら明日の「納税」のための原稿書きを始めないといけない.今日は大物トド3頭のうち2頭まで仕留められたが,残る1頭(ヘッケル原稿)は完全放置してしまったし.

◆本日の総歩数=4229歩[うち「しっかり歩数」738歩/10分].全コース×|×.朝−|昼○|夜×.計測値(前回比)=87.2kg(+0.4kg)/26.6%(−0.6%)


26 januari 2010(火) ※灰燼に帰しても旗だけは開く

◆原稿を書き続けてそのまま日が変わった.睡眠という“休符”なしにアタッカで夜なべをしていると,もはや生身の人間ではなく,「執筆機械」と変身してしまうみたいだ.午前2時半に「訳者解説」はすべて完了.本文には次のような見出しを付けた:

エリオット・ソーバー[三中信宏訳]
 『過去を復元する:最節約原理・進化論・推論
 (2010年4月刊行予定,勁草書房,東京)

訳者解説 − 余波:「かみそり」をさらに鍛えること

  1. 生物学哲学のローカライズされた生き方とは
  2. 系統推定論における弱い推論とアブダクション
  3. 最節約原理とモデル選択論との連携
  4. 最節約法・最尤法・ベイズ法 − 今後の展望
  5. 著者のプロフィールの補足
  6. 最後に − 蒼樹清誉の教え
  7. 引用文献

総字数は「11,478字(全角換算)」,本文「9,219字」+文献「2,259字」.勁草書房の組版で計算すると刷上がりでは10ページあまりになるだろう.初版(1996年)の「訳者あとがき」はたった7ページだったから,それよりもはるかに饒舌なポストスクリプトになったということだ.勁草書房編集部にメール送信を完了したのは午前2時半のことだった.

—— これでやっとつかの間の短い眠りに入り,再び「機械」から「人間」に戻ることができる.

◆午前4時過ぎに起床.星空.気温プラス3.1度.早くも夜明け前のグラデーションが広がり始めた.日に日に夜明けが早まっている.農環研に直行.研究室にて生物進化に関するカール・ポパーの New Scientist 記事(1980)をチェック完了.これで訳者解説が修整完了したので,「ウシジマくん」に修正原稿を再度送信した.よろしくお願いいたします.

◆[欹耳袋]今回はすべて「本」がらみ —— 紀田順一郎の新ウェブサイト〈紀田順一郎:書斎の四季〉.ぼくもこういう書斎がほしいなぁ.喫茶店カンヅメとか車中書斎ではなく……./さすがのワタクシでも躊躇する超豪華写真集:Ahmet Ertug『Temples of Knowledge: Historical Libraries of The Western World』(2009年刊行 → コンパニオンサイト著者サイト).オンラインで写真を見ているだけでもうお腹がいっぱい…….

◆午前10時.快晴だが北風が強くて寒い.午前のこまごま —— 本日夕方に開かれる農環研分会「旗開き」に関わる連絡メールをいくつか.細かいところの詰めができていないけど,基本的にあまり考えていません(汗)./ラヂオつくばの収録日の日程調整の打診あり./駒場「生物統計学」最終講義のための三点セットの準備完了.ただし,今回はレポート課題と学生アンケートが上乗せされるので特別に五点セットになる./ろうきん担当者の来室は1月29日(金)に.

◆本日の残響 —— 読書会報告:日本赤十字九州国際看護大学 - キャンパスライフ「キャンパス日記:第3回目の「本を読んで話す会」を開催しました」(2010年1月21日).※やっかいな本でほんとにごめんなさいねー.分類また分類あるのみ.

◆午後のこまごま —— 来年度のシラバス作成依頼が2校から.横浜国大と首都大学東京.あ,成績評価っ./旗開き関連の連絡をばたばたする.

◆農環研分会「旗開き」の夕べ —— フレックスで解放された午後4時前から,分会室と会場である農環研食堂との間を何度も行き来して荷物を運んだ.午後5時過ぎには分会執行委員が次々に集まり,分会旗(本日の主役)を広げたり,ゲーム景品を並べたり,机のセッティングとか.午後6時前に開会.長々と続けるわけではなく,午後7時過ぎにはあっさり終了だ.

今回の旗開きには,日本酒は笠間・須藤本家の〈郷乃誉〉純米吟醸と水戸・吉久保酒造の〈一品〉活性にごり酒,そして鳥取の〈日置桜〉純米吟醸「強力」を用意した.初めて飲む「強力」は確かに力強い飲み心地だった.食堂での一次会ののち,分会室で二次会があったので飲み過ぎてしまった.おつまみは大量にあまるはずが,パックを配ったらあっという間にすべてなくなってしまい,二次会ではあまった景品の落花生しか残らなかった…….

◆午後11時過ぎに帰宅.すでにほぼ燃え尽きている気がするが,明日はNHKブックス用のヘッケル原稿を書いた後,本郷での修論発表会だ.まだ「灰」になってはいけない.

◆本日の総歩数=5950歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=86.8kg(+0.3kg)/27.2%(−0.8%)


25 januari 2010(月) ※丑三つ時から始まる最終決戦

◆午前2時半起床.さて原稿に取りかかろうか…….ソーバー訳本の「訳者解説」原稿はまだしばらくはもがかないといけないのだが,今日午後の締切タイムには何とか間に合わさないと.ぎりぎりまで加圧すればドカンと書けるはずなんだが.こういうハメツ的な執筆姿勢はいつになったら直るのか.どこまで続くぬかるみぞ.そろそろ未明の出勤時間だったりする.外はもちろん夜明けにはまだ遠い漆黒の闇だ.午前6時の最低気温はマイナス2.2度だった.原稿書きはなお続く.それにしても,「訳者解説」でまるまる「1折」つまり「34字×34行×16頁=18,496字」まで書けるというのはシアワセなのかそれともフシアワセなのか.そのうち朝日とともに快晴になり,空気はからから,静電気飛びまくり.

◆ツイッター(@leeswijzer)のフォローワー数が「500人」を突破した! どうもありがとうございますぅ〜.

◆格闘の午前 —— 晴れときどき薄曇り.気温は低め.なおソーバー訳本の「訳者解説」と格闘中だが,なかなか先に進めない…….仕掛人がTXに乗ってやってくるまであと2時間しかない(汗).その隙間を縫って,南大沢の某大学での成績評価がまだ届いていませんよとの通告メールあり.これぞまさしく乱入トド!(どうしよう……).しかし,今は原稿に没頭するしかない.

しかし,ことはそうそううまく運ばず,午前いっぱいかかってもやはり終わりそうにない.しかたなく午後1時にTXつくば駅改札に出頭し,勁草書房仕掛人さんに連行されて,MOGの〈なかやま〉へ.昼下がりの時間帯は空いていて,またしても2時間弱の「対面執筆」とあいなった.この加圧が功を奏したらしく,午後3時前に本文はやっと脱稿.『過去を復元する』訳者解説:三中信宏「余波:〈かみそり〉をさらに鍛えること」.本文400字詰20枚ほど.文献リストは今日中に完成させるが5枚程度か.内容的には,1988年に出版された原書のもつ意義が20年が経過した現在でもなお失われていないという話.現在の系統推定論における最節約法・最尤法・ベイズ法の比較論議が,生物学の世界だけではなく,生物学哲学と統計科学の世界でも議論されているという付加説明をした.具体的には,カール・ポパーの反証(falsification)理論から験証(corroboration)理論への移行,非演繹的推論としてのアブダクション,ベイズ主義と尤度主義との論争,最節約原理のAICによる再定式化,そしてパラメトリック系統学における「MP=ML問題」の数学的証明についての補足など.

仕掛人さんの話では,今の進捗状況だと「4月出版」になるそうで.ソーバー教授による復刊序文が刷り上がりで2ページ,いま書いている訳者解説が13ページ(予定).春秋社がすでに生物学哲学の本を出し始めているので,勁草書房もこういうラインナップをしてくれるようになったのはありがたいことです.数年前に生物学哲学の論文集(Michael Ruse & David Hull 編の「黒本」)を翻訳出版しようとしたときは企画段階でみごとにボツになったことを考えると時代は変わったな,と.

—— 昼下がりの対面執筆で真っ白い「灰」になったワタクシは,北風に吹き散らされないように注意しつつ帰路についたのだった.午後4時半,薄曇り,気温は高め.

◆夕刻の大仕事 —— 午後5時すぎから計量生物学会の企画担当理事TEL会議.今日も2時間近くかかった.今週中に仕留めるべき巨大トドが一頭(年会シンポジウムの講演者決定),来月のターゲットになるトドが一頭出現(年会会場となる統数研の下見).会議をするたびにトドが増える今日この頃.次回のTEL会議は3月1日(月)9:30〜11:00.

◆明日の夕方は分会「旗開き」なんだけど,こまごました手配がぜんぜんできてまへん…….夜になっても,訳者解説のケリがつかず,最終決戦は明日の未明に持ち越されることになった.

◆本日の総歩数=8155歩[うち「しっかり歩数」1187歩/13分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=86.5kg(−0.5kg)/28.0%(+0.6%)


24 januari 2010(日) ※日射し春めき原稿書きの週末

◆午前5時半起床.今日も夜明け前の東のグラデーションが鮮やかだ.もちろん快晴.日が昇るとともに暖かな日射しが.春の気配か.空気はまだ冷たいが.

◆今日のトド撃ち命令 —— ソーバー訳本の「訳者解説」を今日中に仕上げないと,明日TXに乗ってつくばに登場する勁草書房仕掛人さまに会わせる顔がない.TXが開通して最大の「不幸」は原稿のダイレクト取り立てが厳しくなったことだ.

◆[欹耳袋]伊藤悠『シュトヘル・第1巻』(2009年3月刊行,小学館,東京,ISBN:978-4091825292)/伊藤悠『シュトヘル・第2巻』(2009年10月刊行,小学館,東京,ISBN:978-4091827999).「西夏文字」が“乱舞”するマンガだというのだが.

◆今朝の食卓 —— ザ・マッカラン(10年もの)が3%添加されたマッカイ(〈MacKays〉)のマーマレードをば.シングルモルトの渋味と苦味がほんのり効いて,薄くカリッと焦げ目を付けたトーストに塗るととても美味でした.オトナな風味をお求めのアナタ,いかがですか? ワタクシはたまたま近くの〈やまや〉で最後の一瓶をゲットしました.紀伊國屋とか明治屋だとあるんじゃないかな. 通販もあるようですが,マッカイのこのマーマレードはかなり人気が高いみたいですね.アイラのボウモア添加のマーマレードもあるそうですね.自前だとアルコール濃度が高くなりそうで…….マッカイのウェブサイトを見ると,この会社はダンジー(Dundee)地域に残った唯一のマーマレード製造業者であると書かれている.ダンジーといえば,かの D'Arcy W. Thompson のホームグラウンドだった場所じゃないか.

◆うう,原稿の進捗がイマイチで…….もう午後になったというのに…….ああ,夕陽が血の色のように真っ赤で…….

◆「文化の壁」 —— いわゆる「文系」の業績評価で,「原著論文」よりも「単著書籍」を上位に置く文化はそういう理由なのかも….大学の教員会議で人事関係の業績リストを見ていると,農学部の場合,「農業経済学科」だけが,原著論文の上位に単著書籍を置くというフォーマットを採用していて,農学部系の他の学科とはちがっている.同じ学部の中でもいわゆる「理系/文系」の学問文化のちがいが表面化する状況だ.前のことだが,ポパー哲学研究会の年次大会で発表したとき,座長の小河原誠さんから「三中さんは理系の学者なのにたくさんのご著書をおもちで…」というような紹介をされ,軽くカルチャーショックを受けた記憶がある.「文理の壁」はもともとないと思うが「文化の壁」はまだあるかもね.

◆結局,日曜のまる一日,呻吟して終わってしまったか.終わったな.午後10時過ぎに寝てしまうダメなワタクシ.明日未明に勝負をかけるしかない.

◆本日の総歩数=2427歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=87.1kg(−0.2kg)/27.4%(0.0%)


23 januari 2010(土) ※髪を短くして首筋が寒くなる

◆午前5時半起床.放射冷却中.快晴でみごとな朝焼けが広がっていたのでついカメラを向けてしまった.日射しはさんさんと降り注ぎ,日なたは暖かいが空気は乾いて冷たい.

◆午前のこまごま —— 昨夜,突如として「巨大トド」が出現した.計量生物学会の企画理事の仕事の一つとして,5月の年次大会に向けての「会場下見」を関係者を引率して実施しないといけなくなった.立川ですかぁ.統計数理研究所かぁ.つくばからだと遠すぎるな……./インターネット送金をしたり,事後処理にかけずり回ったり.

◆[欹耳袋]そうか,ここを見れば,自分のツイッター「id」がわかるのか.ワタクシは「id:58433977」(→参考記事:「Twitterをいつから利用し始めたのか?を調べるBookmarklet」)/駒場博物館 (@komabamuseum)の骨格標本もつぶやきましょうか?/@Nagasuke_Kujira: 大阪市立自然史博物館のクジラがつぶやき始めた.「ホネも踊るツイッター」は,サン=サーンス「死の舞踏」やプッチーニ〈トゥーランドット〉冒頭を連想させる.「死の舞踏」のテーマは近代のオーケストラ作品では,木琴を用いて演奏されることが多い.たとえばサン=サーンス〈死の舞踏〉やプッチーニの〈トゥーランドット〉はもちろん,シェーンベルク〈グレの歌〉でも骸骨軍団が暴れ回る情景は木琴が入る.ホネがぶつかる音の模写.

◆午後は,日々の悪行の禊のため髪を切ることにした.その帰路,ふと立ち寄った書店の新刊コーナーで,「レジに連れてってよ」と呼び止める本があり,そのままお連れしました:平出隆『鳥を探しに』(2010年1月24日刊行,双葉社,東京,660 pp.,本体価格3,800円,ISBN:978-4-575-23685-9 → 版元ページ).日頃から,小説のたぐいはあまり買わないし,向こうさんも呼びかけてはくれないのだが,この本は例外的にお声がかりがあった.

本文660ページ! 厚さにして5センチもある.木下杢太郎『百花譜』みたいな絵がカバージャケットはもちろん,表裏の見開きに.主役は対馬の絶滅鳥キタタキか.ぼくはたまたま書店で袖を引かれただけだったが,本書の刊行を首を長くしていた読者もいるようだ.キタタキのいた対馬とベルリンのTiergartenが妙に呼応したりして.それにしても,この造本と装丁はたいしたものだ.まだ手に取っていない人はシアワセをみすみす見逃すようなもの.まだ読み始めてはいないが,リチャード・フラナガン[渡辺佐智江訳]『グールド魚類画帖:十二の魚をめぐる小説』(2005年7月10日刊行,白水社,ISBN:4560027234 → 書評目次)と同じ感触の本であると直感した.ノンフィクションにしてフィクションな内容で,残された「絵」が物語るというのも共通するところ.

◆本日の総歩数=3155歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.計測値(前回比)=87.3kg(+0.3kg)/27.4%(+0.1%)


22 januari 2010(金) ※出先でも職場でも逃げ場なし

◆午前4時半起床.晴れ.北風がとても冷たい.しかし気温はプラス2.7度.その後もあまり暖かくならない.午前10時.快晴でも北風が吹き,気温は6.2度.

◆[欹耳袋]北の都よりツイートあり:某ベルギービールバーの牛肉のビール煮込みには,〈Barbar〉という銘柄が使われているらしい.蜂蜜・オレンジピール・香辛料が添加されているという.確かにそういう風味ならビール煮込みに合うだろう.※情報感謝です.

◆たまに本務地に実在すると,火山弾は降るは,トドは吠えるはでおちおち座っていられない.先ほど行政学での「系統樹」の歴史を調べているという熊本県立大学の先生から電話があり,ヘッケルの系統樹とルルスの知恵の樹について質問を受けた.予期しない出会いがあるのは実在していればこそ.居室に実在すると,トドや火山弾のほかに,電話回線経由で「ダイレクト加圧」される危険性が高い.メールでの間接加圧は「未読でした」というごまかしが効くが,電話口での直接加圧はもっと注入圧が高いので,それに耐えぬくガマン強さをいかにして涵養するかが大問題となる.仕事しましょ…

◆献本感謝:野内良三『発想のための論理思考術』(2010年1月30日,NHK Books,1150,ISBN:978-4-14-091150-1 → 版元ページ).「推論」のあり方を考えるための本.

◆日中のこまごま —— 東大連携大学院の委嘱に関する連絡.例年通りです./池谷氏の来室は1月26日(火)の午後とのこと./4月の一般公開のコンテンツについて考える.系統樹の展示の傍で,ダーウィン展示もついでにやってしまうか……./進化学会の新体制に関する連絡メールが届いた.

◆事務書類バトルと罫線戦争 —— 解釈によっては「いじめ(=パワハラ)」だとつねづね思っているのだが,事務書類を特定の書式にしたがってある文書作成ソフトウェアで提出せよという指示はそろそろ止めてほしい.かつて(今も?)昇格書類は「一太郎」で出せと言われたのですが,拒否してPageMakerで出し続けました.ちゃんと昇格したので問題はなかった.個人的には「一太郎 version 3」がベストでしたね.フロッピー1枚でワープロ全システムが格納できたし.テキスト部分は別ファイルだったし.今では,添付された「一太郎」文書はいつも捨てています.winでもmacでも一太郎ビューワーはあるのですが,あえて読んであげない.当局だろうが組合だろうが「一太郎」文書は今でも健在だ(「ワード」が圧倒しているとはいえない).もうひとつ,かつては所内で「罫線,いてもうたれ!」運動をがんばってやっていたのですが,最近は下火になってしまった.

—— ついでだが,Macでの一太郎ビューワーとしては〈xfy〉がある.ただし,「xfy Basic Edition」は1月28日付で配布停止になるそうなので,利用したい人は今のうちにダウンロードしておかないとダメ!

◆系統学者 Sinai Tschulok の本と小伝 —— 届いたばかりの Cladistics 誌の最新号にこんな評伝記事が載っていた:Olivier Rieppel 2010. Sinai Tschulok (1875 - 1945): a pioneer of Cladistics. Cladistics, 26(1): 103-111. 著作こそ少ないものの Tschulok(ウクライナからの亡命科学者だそうだ)は,分類学と系統学とは別物だと論じ,Rieppel は彼のことを「分岐学の先駆者のひとり」と主張している.この記事を読んで,ふと「Tschulokって,ひょっとして……」と書棚を掘り返したら,案の定,一冊もっていた:Sinai Tschulok『Deszendenztheorie (Entwicklungslehre)』(1922年刊行,Verlag von Gustav Fischer, Jena,xii+324 pp.).もちろん私蔵本だが,いったいいつ古書として買ったのかぜんぜん覚えていない…….しかも,どうやら「タイトル買い」したらしく,中もよく見ていない.書棚の肥やしと成り果てていたとは,いやはや.

◆本日の総歩数=3066歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=87.0kg(0.0kg)/27.3%(+0.5%)


21 januari 2010(木) ※原稿執筆,電車書斎は大活躍

◆午前6時起床.くもり.気分は「う゛〜」という感じで…….やはり前夜の鯨飲の天罰か.朝のうちは雲が多かったが,しだいに晴れ間が覗くようになった.気温は昨日と同じく高めに推移している.

◆加圧されつつ原稿を書く午前 —— いつもいつも「締切数時間前」になってあわただしく原稿を書くというのは精神衛生上まったくよくない.しかし,落ち着いてキーボードに向かうヒマがぜんぜんないので,気分的にも現実的にも「どこかで歩きながら書いている」という状態になる.今日は午後3時に NHK Books の井本さんに駒場で原稿を手渡すことになっているので,それまではできるだけ書き続けるしかない.

いま書いているのは第2章の第2節で,エルンスト・ヘッケルの伝記的解説.この機会に電子公開されているヘッケルの著作を整理しておく:

  • 主著『生物の一般形態学(Generelle Morphologie der Organismen)』(1866年,全二巻)は Biodiversity Heritage Library からオンライン公開されている:Band 1 ; Band 2
  • 『生物の一般形態学』(1866年)を除くヘッケルの著作38冊については,ドイツ語圏の進化学・博物学関連の電子ライブラリー〈BioLib〉でオンライン公開されている.『自然創造史』(1868年),『人類発生論』(1874),『宇宙の謎』(1899年),『自然の芸術的形態』(1899〜1904年),『生命の不可思議』(1904年),その他,紀行文集・書簡集など.
  • 1873〜76年に実施されたイギリスの国家事業 H. M. S. Challenger 号の探査航海の報告書(全50巻:1880〜1895年刊行,John Murray, London)がオンライン公開されている:『Report of the Scientific Results of the Voyage of H. M. S. Challenger during the Years 1873-76』.この報告書に所収されている動物編・第18巻『放散虫類(Radioralia)』(1887年)はヘッケルが担当した.二千頁を越える大著で,141葉の彩色図版が付けられている.それ以外にも,第4巻『深海性刺胞動物類(Deep-Sea Medusae)』(1882年),第28巻『クダクラゲ類(Siphonophores)』(1888年),そして第29巻『深海性カイメン類(Deep-Sea Keratosa)』(1889年)がヘッケルの担当したモノグラフだ.

ヘッケルの著作リストは彼の没後すぐに公表されている:Thilo Krumbach (1919), Die Schriften Ernst Haeckels. Die Naturwissenschaften, 7: 961-966.

◆車中執筆ライフ —— そんなこんなで午後1時過ぎまで粘ったものの,まだ6枚ほどしか書けていない.先週もはかばかしくなかったので,これはもう移動中も書きまくるしかないだろう.13:55発のTX快速から千代田線に乗り換え,午後3時過ぎに駒場東大前で下車するまで,ほとんどキーボードを叩き続けて,やっと13枚,約4,600字の原稿ファイルを講師室で待ち合わせた井本さんに手渡すことができた.次回は来週1月28日(木)の同じ時間に駒場にて.

◆駒場「生物体系学」講義 —— これでやっと原稿から解放されたので高座に向かう.今日は系統推定論のお話をした.「棒の手紙」は毎度のことながらとてもキャッチーな話題だ.次週は補講で,課題レポート(二回目)の出題と学生アンケートを実施しなければならない.駒場での講義もいよいよおしまいとなる(来年から「生物統計学」は本郷での開講が確定しているので).

◆とっぷりと日が暮れた駒場キャンパスは北寄りの風が吹いて寒く感じた.つくばに直帰し午後8時前に到着.今日は朝からずっと追いまくられていたので,慢性疲労が服を着てとぼとぼ歩いているという状態だった.

◆[欹耳袋] —— 農環研もつぶやくツイッター:農業環境技術研究所公式ツイッター が,今年に入ってヒソカにつぶやき始めたらしい.所内にいる(いないことも多いけど)ワタクシはぜんぜん知らんかったぞ./スケジュール合わせに特化したサイト〈調整さん〉があることを今になって知った.

◆夜のこまごま —— 計量生物学会の次回対面理事会は3月30日(火)17:00〜,東京理科大(九段)にて.

◆本日の総歩数=4395歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝−|昼−|夜△.計測値(前回比)=未計測/未計測.


20 januari 2010(水) ※早くも春めく弥生キャンパス

◆午前4時起床.農環研に直行する.曇って星は見えない.午前5時前の気温はプラス1.0度.午前6時半にマイナス0.7度.予報通り気温が高めの朝だった.

◆未明のこまごま —— 明日の駒場高座のための「三点セット」の用意をすっかり忘れていた.今日は朝から深夜まで東京にいるので,夜明け前のこの時間帯しか準備する余裕がない.今回の講義は生物系統学がテーマなのでハンドアウトは盛りだくさん.ついでに,「生物系統学文献リスト」を更新してこれも配布することにした.いずれも〈租界〉からダウンロード可能です.スライドは大丈夫,出席カードは用意できた.これで三点セットはOKだ.

◆いったん帰宅して,まず最初に日録の更新を完了させ,すかさずアップロード.昨年末から日録を数日間溜めこんでしまう悪習がすっかり身についてしまった.ツイッターをメモ(というか“Post-It”)代わりに使い始めた昨年下半期以来の常習犯だ.「140字」以内でツイッターの「紙片」をぺたぺた貼り付けるのは確かに一時的にはラクなのだが,それをまとめて日録として書き上げるというのは個人的には「ToDo」とみなしている.

◆10:25発のTX快速で都内に出る.根津で地上に上がったら風もなく日射しがさんさんと降り注いで暖かいことこの上ない.春の陽気という天気予報は当たっていた.復路車中読書:エルンスト・ヘッケル著[小畠郁生監修|戸田裕之訳]『生物の驚異的な形』(2009年4月30日近刊,河出書房新社,141 pp., 本体価格2,800円,ISBN:978-4-309-25224-7 → 参考目次目次版元ページ).オラフ・ブライトバッハの解説とイレネウス・アイブル-アイベスフェルトの記事を読む.科学者と芸術家のボーダーを行き来したヘッケルの人となり.

◆19世紀の生物分類学の歴史をたどってみると,寄り道したくなるテーマがいくつも転がっている.修士の一年のときに入手した:Mary P. Winsor『Starfish, Jerryfish, and the Order of Life: Issues in Nineteenth-Century Science』(1976年刊行,Yale University Press, New Haven, x+228pp.,ISBN:0-300-01635-2 [hbk])は,買ってはみたものの当時はこの本がもつ意味がよくわからなかった.生物学史にまだ目が向いていなかったからだろうと思う.その後,【種】のことやら分類学の形而上学に関心を持ち始めてから,再びひもとくようになった.現在の問題にアプローチするためには過去に目を向けないといけないということだ.

◆早くも春先の気配漂う弥生キャンパス —— 昼前に農学部図書館で待ち合わせ.またまた地下書庫から戦前の『国立公園』誌を館外借出しする.当時の同盟国ドイツの「ワンダーフォーゲル運動」(ナチス政権下では盛んだったはず)が日本の国立公園政策にどのような影響を及ぼしたかに少しばかり関心がある.

その後,農学部専攻会議室にて昼休みは専攻歓迎昼食会.今月付けで赴任された新任講師を囲む会.高木の「層別刈取り」をクレーンを駆使してやったという武勇伝を聞いた.低木・草原群落の場合に比べて高木の層別刈取りは実施が難しく,直球勝負でやり遂げた例は近年ではあまりないらしい.午後1時からは,引き続き同じ部屋で専攻教員会議.窓際で昼下りの暖かい陽光を背後から浴びて光合成していると,ついうとうとと睡魔が降臨してしまう.午後3時前に会議は終了した.

—— 今日の昼食会に出された弁当は,農学部ファカルティハウスに入っている店(〈おこわ米八〉)に注文した二段弁当だった.

◆備忘メモ —— 「ツイッターと「友達100人」の関係」.昨年5月時点の調査結果.全体の6割がfollower数「10人以下」,同「200人超」は上位1%,「1000人超」では上位0.1%.日ツイート数「0」が8割5分もいる.この結果を見るかぎり,あまり social ではないなあ./E. S. Morse『日本その日その日』に所収されている石川千代松の解説「モース先生」(→handsOut.jp).

◆午後になって上空に薄雲がかかり,風が出てきた.体感気温は降下中だが,昨日までの冬の寒さではない.

◆かなり飲んでしまって日が変わる前につくばにたどり着いた.明日の朝がコワいなぁ…….

◆復路車中読書 —— 渡辺公三『闘うレヴィ=ストロース』(2009年11月13日刊行,平凡社[平凡社新書498],東京,302 pp., ISBN:978-4-582-85498-5 → 版元ページ)を読み始めた.新書だと思って軽く読まない方がいいみたい.

◆本日の総歩数=10688歩[うち「しっかり歩数」1063歩/10分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=87.0kg(+0.2kg)/26.8%(−0.1%).


19 januari 2010(火) ※暖かい本郷通りにて原稿納税

◆午前5時起床.昨日までほどの厳しい冷え込みはない.朝日が射しこむ乾いた青空.

◆[組合]朝の丸投げ —— 1) 分会旗開きチケット(管理職向け)の販売分担;2) 旗開き参加者の概数把握と食堂への連絡;3) くじ引きゲームの段取りと買い出しなど.以上,すみませんがよろしく,ということで.

◆朝日を浴びつつ本郷の御白砂に向かう —— 9:32発のTX区快に乗る.確かに昨日よりも気温は高めだ.車中ではソーバー後半三章の読み込み続く.午前10時半に根津で下車.日射しが暖かい本郷構内を縦断して,いつもの〈ルオー〉に到着.勁草書房の仕掛人さんはすでに「御白砂」を用意していた.昨日までにできあがった分を手渡して,最後の章の読み込みを続ける.正午前に読み込み完了.第四〜六章の要修正箇所は「6カ所」ですんだ.「the principle of indifference」(訳書 p. 271)は何かいい訳がないかな.旧版では「どうでもいいや原理」などと indifferent な翻訳でごまかしてしまったけど…….やはりおとなしく「無差別原理」と訳そうか.

さて,これで「訳者解説」以外のすべての原稿を手渡した.で,この「訳者解説」.分量はマックスで「34字×34行×16頁=18496字=46.24枚/400字」という.さすがにこんなに書くわけにはいかないのだが,その半分くらいの分量にはなるかもしれないな.

—— 「訳者解説」の締切は1月25日(月)午後1時,TXつくば駅の改札にて.

◆正午前に〈ルオー〉をあとにして日射しの暖かな本郷通りを北上する.弥生の東大農学部前でばったり出会ったのは中村祐輔さん.〈大きなかぶ〉で日替わり弁当を食べつつ,しばしお話をする.アーカイヴィストは「文章」は何でも読み込んでしまう習性が刷り込まれているらしい.その後,東大農学部の隠れ部屋に潜り込み,溜まった日録を書いたり,加圧されている原稿を書いたり.

◆午後5時,医学部教育棟の13階会議室で計量生物学会理事会.企画担当理事の報告をした.前から名前だけ知っていたイタリア・レストラン〈カポ・ペリカーノ〉が同じフロアにあるのを確認した.西麻布の有名店が大学の中に進出するとは!

◆本郷三丁目から直帰.つくばに帰り着いたのは午後8時過ぎだった.日中は感じなかったが,よるになるとさすがに寒いかな.つくばセンターの新しいロータリーがオープンしていて,バスやタクシーがすでに入っていた.

◆明日も東京に出撃して夜まで戻らない生活.

◆本日の総歩数=5787歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=86.8kg(+0.1kg)/26.9%(+0.4%).


18 januari 2010(月) ※いきなり鞭が鳴って加圧され

◆午前4時半起床.夜明け前の澄み切った星空.午前5時の気温はマイナス5.6度.

◆朝のこまごま(備忘メモ) —— 科博のヘッケル展示を忘れずに見に行かないと./駒場「生物統計学」の第二回レポート出題を考えないと.今週の講義のときに出すと言ってしまったし.学期末の「学生アンケート」は本郷から用紙が郵送されてくるらしい.

◆午前10時,曇りときどき晴れ間.気温2.5度でとても寒い.

◆無言の加圧をされているソーバー翻訳作業の続き —— 新版序文の翻訳は昼前に完成したのでメールで送信完了.著者・訳者の経歴部分についても修正完了.本文の後半三章のチェック進行中.あらためて見ると数式が極度に多いなあ.幸い,ほとんど要修正箇所はないようで,フィルム切り貼りの依頼はミニマムです.しかし,なお終わらず…….

◆午後のこまごま(備忘メモ) —— 明後日1月20日(水)11時半に農学部図書館前にて待ち合わせ./1月27日(水)の専攻修論発表会のあと「専攻交流会」が予定されている(18:00〜20:00).

◆計量生物学会から鞭が飛ぶ —— 明日の夕方,本郷の東大医学部で計量生物学会の対面理事会が開催される.その提出資料の原稿が企画理事間で乱れ飛ぶ.チュートリアルの内容とオーガナイズする特別セッションの趣意文を早く送らないと.ということで,夕方4時過ぎからじたばたと作業する.午後5時半にとりあえずコンテンツを埋めた文書を企画理事に送信してやっと解放された.こういうことはもっと事前に段取りをしてと思っても,最後はどうしても駆け込みになる日々が続く.

—— そんなこんなで,分会「旗開き」の管理職向けチケット販売体勢がつくれなかった.明日まわしになるか.

◆夕刻,つくばセンター行きの路線バスで帰宅する.車社会のつくばではもともと公共交通が貧弱だが,帰宅タイムなのにこんなに乗客がいないのでは赤字がかさんでいくというのもむべなるかな.今夜は地元結城の〈武勇〉の「ひたち錦・活性諸白酒・純米にごり」をいただきました.しゅわしゅわして美味すぎますぅ.ついでに,国会図書館電子展示:〈江戸時代の日蘭交流〉見てます見てます.

◆「第7回ARGカフェ&ARGフェスト@筑波への招待(2/13(土)開催)」 —— 参加登録完了です.

◆本日の総歩数=5787歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=86.7kg(−0.3kg)/26.5%(+0.2%).


17 januari 2010(日) ※淀みなく流れゆく引き蘢り日

◆午前5時半起床.今日も晴れて放射冷却.センター試験二日目.

◆午前の翻訳者のお仕事 —— 『過去を復元する』の「新版序文」の翻訳を開始する.ソーバー教授の心づもりでは,1996年初版の「日本語版への序文」を増補改訂してほしいとの意図があった.しかし,今回の勁草書房版は「リプリント」なので,旧版はなるべくそのままにとの版元の意向を受けて,追加部分については独立した新版序文として翻訳を進めた.旧版序文の修正箇所が最少ですんだのは幸いだった.

◆備忘メモ —— Philipp Sarasin『Darwin und Foucault —— Genealogie und Geschichte im Zeitalter der Biologie』(2009年刊行,Suhrkamp,版元ページ)/Philipp Sarasin et al.『Evolution: Ein interdisziplin&#$252res Handbuch』(2010年近刊,J. B. Metzler,版元サイト未掲載) .

◆午後も翻訳作業の続き —— すでにチェックを完了した前半三章の要修正箇所の刈り込みをした.とくに第三章での「濾過→遮断」の一括変換箇所が数十カ所にもなりそうだったので,版元の負担にならないようにうまく処理することにした.

◆15:06に弱い地震があった.

◆夜のこまごま —— ソーバー本の作業の続き.第四章以降の本文チェック.しかし,ぜんぜん終わらず.

◆本日の総歩数=0歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=87.0kg(+0.2kg)/26.7%(0.0%).


16 januari 2010(土) ※低調きわまりない快晴土曜日

◆午前5時起床.未明の星空,のち朝から快晴の青空.冷え込んでいる.センター試験初日.

◆午前はまたしても溜め込んでしまった日録を書き連ねてみたり.午後は久しぶりにレンズ豆の激辛カレーと牛肉切り落としの中辛カレーを並行して仕込んだ.「肉」入りのカレーは確かに食べたときの充実感があるが,豆カレーの方がうまいと個人的には思う.日が陰ってきた頃に松代方面をちょっと歩いてみたり.ふと立ち止まり,「今日ってトド撃ちしなくていいのかな?」と他人事のようにつぶやいてみたり.

—— 目立った進捗がみごとに何もないなあ…….

◆サイエンスとアートの二股人生 —— ピーター・ラビットの作者ビアトリクス・ポターが菌類学者だったことや,現代作曲家ジョン・ケージがやはり菌類学者だったことと同じくらい一般には知られていない.ビアトリクス・ポターはキノコをはじめ菌類の生活史の研究者だったが,当時のイギリスでは女性が科学研究をすることへの社会的抑圧が厳しかった.そのために後半生は文学の世界に入っていったとある伝記(by Linda Lear)に書かれてあった.一方,ジョン・ケージはニューヨーク菌類学会の創立メンバーになるほどだったので,ポターよりは学問世界の中に深く入り込めたといえるだろう.そういえば,『分類思考の世界』の中で,『ロリータ』を書いた作家ウラジーミル・ナボコフがコーネル大学やハーバード大学で南米の蝶の分類研究に従事していたと書いたのだが,「それは初耳だ」という残響をネット書評で何度も耳にした.作曲家オリヴィエ・メシアンがどれほど鳥類学に傾倒していたか.〈レナードの朝〉の作者である精神科医オリバー・サックスも,彼の『オアハカ日誌』を読めば,ただの「シダ狂い」だし.

—— 作家や芸術家は自然科学と意外に近いと思う.そういう歴史エピソードは科学・科学史への関心への入り口なのだろう.ツイッターでこのあたりのやりとりをしている範囲では,日本人でこのような「二股人生」の実例となると意外にみつからないようだ.

◆夜,勁草書房まわりの加圧 —— 大晦日に滑り込みセーフさせた原稿が元締めから戻ってきた.図を三つ付け加えるという改訂をしないといけないようだ./ソーバー本の進捗も気になるところ.来週火曜日は本郷〈ルオー〉の「御白砂」に引っ立てられることになっている.

◆本日の総歩数=9618歩[うち「しっかり歩数」3234歩/32分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前回比)=86.8kg(+0.1kg)/26.7%(−0.6%).


15 januari 2010(金) ※再びつくばでトド撃ちに復帰

◆午前4時半起床.厳寒の星空.午前5時の気温はマイナス5.6度.今朝は昨日以上に冷え込んでいるかも.午前5時半にはマイナス5.8度.アメダスによると,その後,午前7時に最低気温マイナス6.4度になったそうだ.もちろん前日に続く記録更新だ.

◆未明のこまごま —— 勁草書房仕掛人さんの御白砂は,来週1月19日(火)午前11時に本郷〈ルオー〉にて.二階の暗い「半独房」ではなく,希望の光が射し込む一階の窓際にて.昨日の対面執筆に懲りたので(毎回懲りている),この週末は勁草書房とNHK Books の原稿書きを地道に進めよう.

◆備忘メモ —— Togetter まとめ「教育としての科学史・科学哲学議論」.研究者こそ科学史・科学哲学を知っておかないとつらい目に遭うとぼくは確信している.生物体系学の世界に長くいれば,さまざまな論争における「矛」としての科学哲学そして「盾」としての科学史の使われ方は熟知するだろう.「そとのひと」にはわからなくても「なかのひと」には常識./1月20日(水)の東大専攻教員会議に先立つ昼休みに,新しく赴任した講師の歓迎昼食会があるというので参加の返事をメールした.

◆午前11時.快晴.気温4.1度.寒気の流入が続いているようだ.

◆午前のこまごま —— [組合]第四回委員長・書記長会議.1月20日(水)午後5時半から.東京出張なので当然欠席.いきなり来週に予定を詰め込むことは不可能です./遅れていた復命書を提出し,駒場での兼業申請と時間年休の届けを提出した./ベイズ・セッションの白羽の矢をそろそろ発射しないといけないな.

◆悩ましい「筆順」のこと —— 本務地に実在しているかぎり,さまざまな事務書類トドどもを踏みつぶしていくしかない.これまで,こういう事務書類はずっと手書きで提出してきたのだが,ぼくの場合,漢字の筆順がめちゃくちゃなのはもちろんのこと,ひらがな・カタカナの書き順もむちゃくちゃであることをあらためてしみじみ実感してしまった.原稿に関しては,かつてワープロ専用機が登場して,手書きの労苦から解放されたと実感した理由もそこにあった.今でも教室で板書する機会がごくたまにあるが(ほとんどはpdfスライドでのプレゼンだが),「筆順センシティヴ」な人が見れば,さぞや正視に耐えない板書をしてきたのだろうな.大学の講義で毎回提出させる出席カードを見ると見事に達筆な学生がいたりする.うらやましいかぎりだ.字の美醜で就職採用の判断されたなら真っ先に淘汰されていたにちがいない.最近は,インターネット上に「筆順指南サイト」がいくつも開設されている.コッソリ見ては自信喪失していた.たとえば,「凸」や「飛」の筆順とか,「右」と「左」の書き順の違いとか,書道をしっかり勉強してきたら身に付いていたにちがいない“ニッポンの教養”がまったく欠落している自分に直面するからだ.

—— こんなことをツイッターでつぶやいたら,「筆順センシティヴなのは小学校までで,中学校以上では絶滅している」とのリツイートがあり,ほんの少しだけ救われた気がした.

◆午後の「一般公開」打ち合わせ —— 午後1時半から一時間ほどのミーティング.議題は4月16日(金)〜17日(土)に開催される農環研「一般公開」の展示について.すでに,系統樹に関わる展示をぼくが担当することは決まっていたのだが,その具体化に向けての打ち合わせだ.玄関ロビーの一等地に大きな系統樹を展示してはどうかという打診あり.生物多様性年だしそういう企画もいいかもしれない.問題は,説明要員がぼくしかいないということ.余人をもって代え難しという状況はいつまでたっても改善される兆しがない.いちおう二日間を丸抱えするということで企画を進めてもらうことにした.展示する系統樹やプレゼン,そして資料類はたくさんあるだろうから,演し物に困ることはないだろうけどね.

◆夕闇が降りるころ,東の産総研の中を歩いていた.ここの某所にて学研労協の旗開きが午後6時半からある.20年あまりをつくばで過ごしてきたが,夜の産総研は初めての経験だ.ここの敷地内をとぼとぼ歩いて危うく遭難しそうになった…….あまりにも茫漠として広過ぎる.旗開きが午後8時に終わた.夕方来るときは南門から入った.帰りは正門から東大通りに出るはずが,気がついたら何だかわからない“けもの道”に踏み入ってしまい,いつの間にか正反対の洞峰公園側に抜け出てしまった.う〜む,よくわからない.とぼとぼと北を目指す.午後9時前に帰宅.寒かった.

◆そういえば,@leeswijzer のツイート総数が昨日から今日にかけて「1000」を越えたようだ.フォローワー数は現時点で「450名」あまり.ここ数日の間に50名ほど増えている.どうもありがとうございます.

◆本日の総歩数=13016歩[うち「しっかり歩数」7015歩/70分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=86.7kg(0.0kg)/27.3%(+0.5%).


14 januari 2010(木) ※原稿丸腰のまま駒場に向かう

◆午前2時半起床.冷えきった星空.午前4時前の気温はマイナス3.9度.その後も低下し続け午前5時半にはマイナス5.6度になった.アメダスによると午前7時にはマイナス6.3度まで下がったとのこと.もちろん今季最低気温の更新だ.

◆未明のこまごま —— 今日の駒場三点セットを用意した.コピー機の紙詰まりとか,いろいろトラブって,夜明け前までかかってしまった./今日.午後に駒場で手渡すはずの原稿はまだぜんぜん…….

◆快晴無風だが寒すぎる.午前10時の気温は2.9度なり.これじゃあ池だって凍るはずだ.

◆午前のこまごま —— メール返信いろいろ./ソーバー訳本の作業にかかわる「御白砂」の日程調整./メーリングリストの雑用少し./4月の農環研一般公開でのプレゼン打ち合わせは明日になった.時間は午後1時半から領域セミナー室にて.

◆今年初の駒場高座に向かう —— そんなこんなで原稿丸腰状態のまま,昼過ぎに東京に向かうことになった.午後1:30発のTX区快に乗る.北風が少し吹いてきたが,昨日に比べればはるかに穏やかな冬晴れ.駒場東大前に降り立ったのは午後3時前.講師控え室前で NHK Books の井本さんが待っていた.用事が入ったとのことで午後6時に再度来てもらうことになった.講義開始まで約一時間弱あるので原稿を書き始めたものの,なかなかエンジンがかからない(当たり前).そうこうするうちに講義が迫ってきたのでいったん中断して,教室に向かう.今日はベイズ統計学の話.終了後に再び講師控え室にて,井本さんに待ってもらいながらさらに原稿を書き続けること半時間ほど.結局,午後6時半の閉室直前に400字詰で5枚ほど手渡した.ダメダメですな.こんなことでは.さすがによろしくないので,来週またここで年貢を納めることになった.ごめんなさい.

こういう「対面執筆」は心臓にワルいので,あらかじめ原稿をものしておきたいとつねづね肝に銘じるのだが,実際にはなかなか守れず…….井本さんからは「カンヅメ」の提案もあり.品川でも河口湖でもどこでも流されますのでよろしく.かつて講談社の草津温泉寮に流されたこともかつてあったなあ.

◆午後6時半に駒場東大前から乗って,つくばに着いたのは午後8時過ぎ.寒い.

◆車中読書とトド撃ち —— 富士川英郎『茶前酒後』(1989年12月20日刊行,小澤書店,東京,179 pp.,ISBN:なし[0095-120116-0791])を読み進む.最初は中国の『道徳経』の話.その後,『過去を復元する』の第4章の訳文チェック.ほとんど要修正箇所はなかったのは幸いだった.

◆本日の総歩数=8894歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前回比)=86.7kg(+0.2kg)/26.8%(−0.6%).


13 januari 2010(水) ※冬型気圧配置で筑波颪が吹く

◆午前4時起床.前夜から降り続いているが,雨足はなお強い.農環研に直行.気温はプラス1.6度.染み入る寒気.午前5時には小降りになってきた.某文書の最終修整と大量印刷に2時間ほどかかってしまった.午前7時,雨はあがり朝日が射してきた.それとともに強烈な筑波颪が吹きつける.京都にいた頃は「底冷え」こそあったものの,「空っ風」は未経験だった.高校卒業後に関東に下ってきて,初めて乾燥した北風もまた別タイプの寒さであることを知った.

◆これまた古書で —— 松井健『自然認識の人類学』(1983年4月21日刊行,どうぶつ社,東京,340 pp.,ISBN:4-88622-211-0).民俗分類に関する本.この著者の一連の著作は,前世紀末に『生物系統学』を書いていた時期にたいへん参考になった.当時,手元にあったのは:

  1. 松井健『琉球のニュー・エスノグラフィー』(1989年12月20日刊行,人文書院,京都,280 pp.)
  2. 松井健『認識人類学論攷』(1991年11月25日刊行,昭和堂,京都,x+231+12pp.,ISBN:4-8122-9121-6 → 版元ページ
  3. 松井健『自然の文化人類学』(1997年9月14日刊行,東京大学出版会,東京,xviii+213+v pp.,ISBN:4-13-063313-9)

の三冊だった.『自然認識の人類学』はすでに品切れになっていて,ずっと入手できなかったのだが,先日,八重洲古書館で入手できたのは幸いだった.琉球列島,フィリピンのバタン島,そしてアフリカのタンガニーカ湖沿岸地域での研究を通して,民俗分類について考察している.後年の著作群に連なる最初期の一冊.具体例がたくさん載っているようだ.読ませていただきます.

◆午前11時半.快晴で筑波颪に吹き晒される.気温6.0度.きりきり寒くて季節風がとっても痛い.

◆日中のこまごま —— 先日,所内の領域会議で〈ラヂオつくば〉での研究者紹介コーナー(「リサーチエクスプレス」)に出なさいと所内会議で言われた.今日,某地本委員長からもラヂオつくばに出演してはと勧められた.当局と組合から推薦されたからには引き受けるしかないだろうか./NHKからは今月の録画は延期との連絡が入った.メディア方面は日々動きがある./『生物科学』編集会議は4月10日(土)午後3時からいつもの立教大学で,/[組合]分会旗開きの仕事をちくちく進めてみる.チケット販売か…….予算を立ててみないとダメか.

◆午後7時に撤収.寒い夜にとぼとぼ帰る.明日は駒場の生物統計学高座があるのだが,うっかり「三点セット」のしたくを忘れていた.原稿書きもダメダメだし…….半強制的に夜中に再出勤することになる.

◆本日の総歩数=5033歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前回比)=86.5kg(+0.4kg)/27.4%(−0.4%).


12 januari 2010(火) ※氷雨降る連休明けは本が堆積

◆午前5時半起床.曇り.気温プラス0.5度.あいかわらず寒い.それにしても寝不足としか言いようがない…….予報では「雪かも」ということらしい.昼前に小雨が降り始めた.正午の気温は3.6度.寒いなんてもんではありませんな.

◆日中のこまごま —— NHKからいろいろと問合せあり.番組の企画づくりってたいへんですなぁ./[組合]今年の農環研分会の「旗開き」として,1月26日(火)午後5時半からの時間帯で農環研食堂を予約完了.チケットを作って売ったりとか,出し物とか,細かいことはこれからの仕事になる.

◆古書でゲットしました —— 田中純『アビ・ヴァールブルク:記憶の迷宮』(2001年10月30日刊行,青土社,東京,397 pp.,ISBN:4-7917-5918-4 → 版元ページ).伝記的な記述をベースにして,ヴァールブルクの美術史的・図像学的な世界に入っていく.買う機会を逸していたのでタイムリーだった.作品〈ムネモシュネ〉はやはりものすごく複雑そうだ.

◆備忘メモ —— 大阪市立自然史博物館がツイッターを始めたことを @argさんの記事で読んでフォロー完了,確かに自然史系ミュージアムでつぶやいている博物館は思いつかない.ついでにメーリングリストで広報する.

◆午後もずっと雨が降り続き,夜になって雨足が強まる.合間の時間は某書類にあちこち引き回される.

◆本日の総歩数=5639歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前回比)=86.1kg(−0.9kg)/27.8%(+0.5%).


11 januari 2010(月) ※ぎりぎり加圧とタイムライン

◆起床タイミングが何だかおかしくなったみたいで,午前8時という記録的な寝坊をしてしまう.曇り.空模様もいまいちパッとしないな.

◆日中はトド撃ちとは直接関係のない某原稿に追い回される.気がつけばもう午後3時だ.

◆ツイッター本 —— 根岸智幸『Twitter使いこなし術:パワーユーザー100人の「技」を公開』(2010年1月12日刊行,アスキー・メディアワークス[アスキー新書137],東京,191 pp.,ISBN:978-4-04-868304-3 → 版元ページ).先日の東京往復で読了.ツイッターの「便利ツール」がいろいろと.最近よく使うようになって,少しは「欲」が出てきたのか,勉強するようになってきた.

◆午後4時に農環研に休日侵入し,トド撃ちを始めるものの,のろのろしているのでなかなか仕留められない.溜まっていたメーリングリスト雑用とか微小トドを何頭か倒したものの,これでは進捗はおぼつかない.そのまま勢いで夜になだれ込んではみたものの調子が出ないなぁ.日が変わって午前1時過ぎに帰宅する.それからしっかり遅い夕食(深夜食)をすませて,午前2時前に就寝.健康上たいへんよろしくない食生活を送ってしまった.不健康の極み.

◆明日からはマジでがんばらないと.トド撃ちしないと…….日録,ぜんぜん書いてないし.

◆本日の総歩数=2065歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜−.計測値(前回比)=87.0kg(+0.6kg)/27.3%(+0.3%).


10 januari 2010(日) ※半死人もよみがえる成人の日

◆午前7時半起床.昨夜の「龍泉」の夢をまだ見つつ,半死人の朝を迎える.飲み過ぎたかなぁ…….つくばは今日が「成人の日」.朝から乾いた快晴の空が広がり,カビオ前は午後の「成人式」セレモニーに向かう車の渋滞と人の混雑で騒がしい.日録もトドも放置状態だし,イマイチ締まりがない連休中日.そろそろ再起動をかけないとダメっぽい.

◆日本科学哲学会の学術誌「科学哲学」のオンライン公開 —— 日本科学哲学会の機関誌『科学哲学』誌が,JST の Journal@rchive システムによりオンライン公開され,2007年のバックナンバーすべてが閲覧可能になっている. 拍手! オンライン公開.ワタクシの記事:三中信宏「科学哲学は役に立ったか:現代生物体系学における科学と科学哲学の相利共生」(vol. 40, no.1, 2007, pp. 43-54)もpdf公開されていた.

◆作業がちょい遅れている『過去を復元する』の訳文の改訂作業の続き —— 十五年前に訳したときは定訳がない科学哲学用語がいくつもあった.生物体系学の訳語であれば「定訳がなければ自分で新訳語を造語する」というスタンスでいけたのだが,科学哲学だとそうはいかなかった.たとえば,確率的因果関係に関する「screen-off」という言葉.Hans Reichenbachの「共通原因の原理」で,共通原因を置くことでふたつの結果が確率的に irrelevant になること.前訳では苦し紛れに「濾過」と訳したが今回は「遮断」と一括変換することにしよう.

—— 『過去を復元する』の中でもっともやっかいだった科学哲学がらみの第三章がやっと終わった.後半の第四〜六章の三つの章は生物体系学のお話しなので,もっとラクになってくれるものと期待している.蒼樹書房の初版のときぐりぐりと加圧されたから修正点は最少のはず.

◆休日のこまごま —— 東京農大・昆研の卒論発表会&追いコンは来月2月6日(土)との連絡があった.参加の返信を出す.

◆本日の総歩数=2065歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前回比)=未計測/未計測.


9 januari 2010(土) ※百人町発,銀の鈴経由,酒池

◆午前5時半起床.明け方はきりきり冷え込んだ.夜明けとともに快晴の青空が広がる.今日は都内をさすらいます.

◆まずは百人町へ —— 午前8:47のTX快速に乗って新大久保に向かう.よく晴れて日射しもあるが空気が乾いて冷たい.往路車中ではソーバー本の訳文チェックをする.ついでに:林洋子『藤田嗣治:手しごとの家』(2009年11月22日刊行,集英社[集英社新書ヴィジュアル版 015-V],東京,206 pp.,ISBN:978-4-08-720519-0 → 版元ページ)を読了.手描きの絵手紙がとても魅力的.画家は老いてもなお人生アーティスト.

◆分類学会連合の午前 —— 午前九時半にJR新大久保に到着し,その足で科博分館に向かう.来年にはつくばに移転してしまうそうなので,百人町の旧・資源研跡地に来ることもなくなるだろうな.午前10時半から,科博分館にて分類学会連合の総会に参加する.いちおう,進化学会の代表としてだが,連合のメーリングリスト〈TAXA〉の管理者としての関わりの方が大きいかもしれない.総会は正午過ぎに終了.午後1時半からは,同じ場所を会場として,日本分類学会連合第9回シンポジウム〈生物地理学の未来を考える〉が開催される.たまにしか会わない知人とあいさつしたりとか.あ,連合役員間のUJSSBメーリングリストの更新をしないといけない(あとで).

◆「銀の鈴」の午後 —— 晴れて風が冷たい昼下がりの百人町を抜けて,JR大久保駅から東京駅に向かう.八重洲地下の「銀の鈴」で待ち合わせて,近くの〈木村屋 KIMURAYA カフェ〉にてミーティングをば.

その後,時間があったので,八重洲地下街の〈八重洲古書館〉を一回りする.たまたま,店先の棚に:富士川英郎『茶前酒後』(1989年12月20日刊行,小澤書店,東京,179 pp.,ISBN:なし[0095-120116-0791]).この著者のエッセイ集はすでに四冊もっている:『読書好日』(1987年3月刊行,小澤書店,ISBN:なし);『讀書游心』(1989年6月20日刊行,小澤書店,ISBN:なし);,『読書間適』(1991年12月刊行,小澤書店,ISBN:なし);『読書散策』(2003年3月刊行,研文出版,ISBN:4-87636-217-3)がある.小澤書店の本だから,もっているだけでシアワセになれる.

レジでくじを引いたら,この古書店が発行している冊子:『八重洲のおはなし』(2007年11月1日刊行,金井書店,東京,112 pp.[非売品])をくれた.八重洲という土地にまつわるエピソードとエッセイ集.カラー写真も載っていて楽しめる.どうもありがとう.

◆さて,夕刻からは日本酒をば.この日はとてもいい日本酒がずらっと並んだので,たくさん写真を撮ってしまった.しかし,いずれをとっても美酒ですなぁ.まず最初に長野〈帰山〉の純米吟醸「活性にごり」から.慎重に開栓したにもかかわらず,噴水のように噴き出す元気のよさ.いまの季節は活性にごり酒にかぎる.

次は,かの〈十四代〉の「龍泉」,いきますっ.夢見そうです.こんなの他では飲めませんって.名古屋の〈醸し人九平次〉純米大吟醸,新潟の〈村祐〉亀口取り・純米大吟は「19BY」と「20BY」の飲み比べ.青森の〈田酒〉純米大吟は「短悍渡船」と「渡舟」の二本あり.

でもって,満を持してトリに登場するのは石川の〈黒龍〉.しかも,「八十八号」・「石田屋」・「二左衛門」の三役そろい踏み.ご尊顔を拝めるだけでありがたいかぎりというしかないのに.茨城からは〈来福〉の大吟醸「雫(限定品)」と〈渡舟〉の純米大吟.

—— これだけの美酒を集中的に味わえるとは今夜はシアワセだなぁと,ふと気がつけば当然「日付」は変わっていて,よろよろと深夜に帰り着くワタクシはもう限界かもしれない.いまは午前1時半だったりする…….ハードな一日は朝から夜中まで駆け回った.

◆本日の総歩数=8116歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=86.4kg(−0.4kg)/27.0%(−0.4%).


8 januari 2010(金) ※執筆依頼とラヂオとテレビと

◆午前5時前起床.雲一つない星空だったので,今朝は久しぶりに放射冷却.最低気温は氷点下0.1度の未明だった.

◆この季節は日本酒の活性にごり酒が方々の蔵元から登場する.真冬の愉しみ.しかし,そろそろ新年会な気分から脱却しないといけないので,まずはソーバー本の翻訳作業にいそしもう.今日の午後はNHKのディレクターさんが来室する.とある企画の打ち合わせミーティング.昨日,急に決まったことだがどういう風向きになるか.はたして番組企画として実現するかが問題だ.

◆献本感謝:斎藤成也『自然淘汰論から中立進化論へ:進化学のパラダイム転換』(2009年12月28日刊行,NTT出版[叢書コムニス10],東京,XII+228+vi pp.,本体価格2,500円,ISBN:978-4-7571-6045-3 → 版元ページ).中立進化論のスタンスからみた現代進化生物学.ところどころ“はみ出た”記述があるのが斎藤さんの魅力.

Michael S. Rosenberg (ed.)『Sequence Alignment: Methods, Models, Concepts, and Strategies』(2009年刊行,University of California Press, Berkeley, xvi+337 pp., ISBN:978-0-520-25697-2 → 版元ページ).ひたすらアラインメントする本.

—— 日頃から私費を投じて蒐書する場合がほとんどなのだが,ありがたいことに献本されてくる本もたくさんある.交付金にかぎらず科研費であっても消耗品ではなく備品みたいに登録されてしまうので公費で買っても不便なだけ.だから,蒐書手段は「私費」か「献本」にかぎる.価格は関係ない.

◆備忘メモ —— 『週刊読書人』(2010年1月8日号)の掲載記事がオンライン掲載された:三中信宏「分類する者と分類される物のはざまで:人間の分類思考のルーツをたどる旅」 → CanPan(2010年1月8日付).

◆日射しが降り注ぐ昼下がりの打ち合わせ —— わざわざつくばまで来られたNHKのディレクターさんとの打ち合わせミーティングが午後1時から約2時間あった.系統樹[思考]や分類[思考]の話とか,アヤシいヒミツ本とか.来週月曜の企画会議で通れば番組としてゴーサインということらしい.職場の広報担当への事前連絡とか,ロケ機材セッティングのためのお片づけとか,まあいろいろとこれから仕事が増えるでしょう.本決まりになれば,1月26日(火)午後1時から居室にて2時間録画ということになる.前日の午後いっぱいかけてロケ機材のセッティングをするらしい./〈ラヂオつくば〉に出演するという企画もこれから立ち上がるようだし.

amazonから届いた巨大な箱を開封した.ついに着弾ですかぁ:Carl G. Jung『The Red Book』(2009年10月刊行,W. W. Norton, New York, xii+371 pp., ISBN:978-0-393-06567-1 → 版元ページ).よくぞ年明け早々届いてくれたものよ.30×40×5cm という超弩級なサイズとその重量はもちろん,何よりもその内容のアヤシさは格別です.

著者ユングが亡くなって半世紀ぶりに初めて公開されたという,この『赤の書』(pp. 1-192)は手に取ればそのオーラが伝わってくるだろう(電子本という形式では伝わらないものが多すぎる).中世写本のごときカリグラフィーと,そこはかとなく禍々しい図像の数々.夜中に読んでいると取り憑かれるかもしれないな…….

◆メディアだけではなく原稿の依頼も新規にふたつ —— 生き物文化誌学会の機関誌『BIOHISTORY』の第13巻での特集〈生き物の多様性と日本文化〉に【種】に関する寄稿をしてほしいとの依頼.これは断るわけにはいかないのですよ./NTT出版より単行本の執筆依頼あり.さて,どうしましょう…….

◆午後7時半に撤収.当然だけど夜になると寒い寒い.

◆本日の総歩数=4479歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=86.8kg(−0.1kg)/27.4%(0.0%).


7 januari 2010(木) ※旗開き,旗をわすれる粗忽者

◆午前4時半起床.曇りところどころ星空.もっと冷え込むかと思っていたが,雲が多かったせいか氷点下にはならなかった.気温プラス2.6度.朝焼けが鮮やかだった.

◆午前のこまごま —— 今日中にソーバー翻訳関連作業の一角を攻略する(つもり).原本と蒼樹書房訳本はいつもお守りのように持ち歩いてはいるのだが./東大新聞のゲラ返送完了.よろしくお願いいたします.1月12日(火)発行予定./[組合]昨年からの年越し残務である「組合動態調査」の集計表をやっと地本にメール送信する.人数を数えたり,つじつまを合わせる作業がことのほかつらいし,意欲も出ないし,何よりも息切れしてしまうというのは,ひょっとしたら何かしら disorder があるのだろうか…….昨日今日のことではない./1月19日(火)に東大医学部で予定されている計量生物学会対面理事会に参加の返信完了.計量生物講演会もあり.医療統計学に触れる機会がこのところ多くなってきたが,問題状況のちがいを痛感する./『進化学辞典』の加圧あり.ぜんぜん手つかず……./そんなこんなで,10時半からの領域会議をスルーしてしまった(すまぬ).最後の十分間だけ駆け込んだら,「ラヂオつくばに出演する」という火山弾の直撃を受けた(即死).詳細未定.

◆午前10時半,薄曇り.気温7.3度.日射しがなくって寒いな.

◆科学哲学新刊本 —— ラリー・ラウダン[小草泰・戸田山和久訳]『科学と価値:相対主義と実在論を論駁する』(2009年12月刊行,勁草書房,東京,本体価格3,400円,ISBN:978-4-326-19954-9 → 版元ページ).手元にある原書ペーパーバック:Larry Laudan『Science and Values: The Aims of Science and Their Role in Scientific Debate』(1984年刊行,University of California Press, Berkeley, xiv+149 pp., ISBN:0-520-05743-0)を引っ張りだしたら「1984年」の刊行だった.四半世紀を隔てての翻訳刊行ですか,戸田山さん! いずれにしてもそのうち買わないとか.

◆着便本三冊 —— まずは:気谷誠『西洋挿絵見聞録:製本・挿絵・蔵書票』(2009年11月20日刊行,アーツアンドクラフツ,東京,333 pp.,本体価格3,800円,ISBN:978-4-901592-55-0 → 版元ページ).たくさん図版が載っていてとってもゴージャスな本.前半300ページは挿絵本について,残りが蔵書票に関する話.

次は:ロブ・ダン[田中敦子訳]『アリの背中に乗った甲虫を探して:未知の生物に憑かれた科学者たち』(2009年12月28日刊行,ウェッジ,東京,404 pp., 本体価格2,000円,ISBN:978-4-86310-063-3 → 版元ページ).生物分類学と生物多様性研究の「むかし」と「いま」をレポートする本.見知った個人名がたくさん出てきて,リンネやダーウィンはもちろん,ダン・ジャンセン,テリー・アーウィン,カール・ウーズも登場する.おもしろそう.

最後は:江渡浩一郎『パターン、Wiki、XP:時を超えた創造の原則』(2009年8月10日刊行,技術評論社[WEB+DB PRESS plus],東京,xiv+208 pp., 本体価格2,280円,ISBN:978-4-7741-3897-8 → 版元ページ).「時を越えた」というサブタイトルがすでに十分“クリストファー・アレグザンダー”です.ツイッターで教えてもらわなければ決して手に取らなかったにちがいない.彼の「パタン・ランゲージ」がどういうふうにソフトウェアの世界に持ち込まれることになったのか.ストーリーがぜんぜん読めないのがまた興味深い.

◆実にいい論文だなぁ,すばらしい! —— 松尾豊「なぜ私たちはいつも締め切りに追われるのか」.「研究者はいつも締め切りに追われている。余裕をもって早くやらないといけないのは分かっている。我々はあほなのだろうか?」.この記事に出てくる「ネルー値」とは「研究者における精神的ゆとりを表す単位」として定義され,「nネルー」=「n日寝てしまっても締め切り等に影響がない状態」とのこと.しかし締切を過ぎてしまったときの精神状態には適用できないので,「負のネルー値」なるものを新たに導入する必要があるでしょうなあ(きっと).

◆午後のこまごま —— [組合]やっと提出した「分会動態調査」の計算ミスを指摘され凹む…….集計結果を再検討するはめに.やっぱりスムーズには通らなかったか./TV出演しませんかという依頼.いいですねぇと二つ返事で引き受ける.金曜にさっそく打ち合わせにくるとのこと.忙しくなりそう./溜まっていたdagboekを書き上げたのは午後5時のことだった.

◆今夜は全農林筑波地本の「旗開き」ということで,地場の農産物の手作り料理を囲んでの組合新年会でした.午後6時から2時間弱という健康的この上ない宴会で,ワタクシもアルコールなしで大量摂食のみ.農環研分会の「旗」を持ってこなかったことを悔やんでもしかたがないのでただ飲み食いするばかり…….午後8時過ぎに健康的に撤収してそのまま帰宅.寒い夜だ.

◆本日の総歩数=4967歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=86.9kg(+0.5kg)/27.4%(+0.1%).


6 januari 2010(水) ※ぱたぱた追い立てられている

◆午前5時半起床.夜明け前の星空に半月が浮かぶ.プラス2.6度.今朝は氷点下にこそならなかったが,空気は極度に乾いて静電気飛びまくり.朝焼け.

◆〈Hennig XXIX〉 —— 昨年の Hennig Society Meeting は豚インフルエンザ騒動でキャンセルしてしまったが,今年はきっと大丈夫だろう:〈Hennig XXIX〉- The 29th Annual Meeting of the Willi Hennig Society, 22-26 May 2010, Waikiki, Hawaii.大会会場はワイキキ中心部にある Hilton Waikiki Prince Kuhio Hotel とのこと.その前に,Hennig Society の年会費をオンラインで支払った.ホテル予約は後ほど.演題とアブストラクトの提出締切はきっと年度末にやってくるにちがいない.要注意.

◆昨日,めずらしく集中的にトド撃ちをしたので,未処理案件の個体数はかなり減ったが,まだ絶滅にはいたらない.冬でもウサギなみに増殖するトドたちの生命力には敬服するばかり…….黙って仕留め続けるしかない —— まずは日録の更新./個人業績報告シートを提出完了.出版物のコピーあるいは現物を付けて十数件./出張伺の提出完了.兼業申請ならびに年休届はあとまわし.今月も後半は半分ほど不在します./領域会議は明日1月7日(木)10:30〜.

◆午前10時半.晴れて北風が強い.気温7.7度.

◆着便本と備忘メモ —— Annual Review of Ecology, Evolution, and Systematics, Vol. 40 (2009) 届きました(→ 版元サイト).統計学的系統地理学の総説あり.「Evolution」の一語が誌名に付け加わって以来,がぜん「巨体化」が進行したなあ…….全編にわたりカラー印刷で,しかも随所にボックス註が完備されるようになったので,期待される教育的効果は上がっている./平凡社からの近刊:ヘンリー・ペトロスキー[忠平美幸訳]『フォークの歯はなぜ四本になったか:実用品の進化論』(2010年1月近刊,平凡社[平凡社ライブラリー693],ISBN:978-4-582-76693-6 → 版元ページ).原本:ヘンリー・ペトロスキー[忠平美幸訳]『フォークの歯はなぜ四本になったか:実用品の進化論』(1995年11月20日刊行,平凡社,350 pp., ISBN:4-582-53211-X)はとても刺激的な読み物だった.今回,平凡社ライブラリーの一冊に入ることは大歓迎.

◆またもや本の大捜索 —— 昨日から松田隆一(Ryuichi Matsuda)の昆虫形態学の本を探して,居室の本の山に分け入っている.先日,東京農大の院生から昆虫の初期発生(変態)とヘテロクロニーとの関係についての質問を受けたので,それだったら松田の本が役に立つでしょうと答えた手前,いちおう手元に出しておくかと思い立ったのが運の尽き.二日がかりで探したもののぜんぜん埒があかない.探索対象は松田隆一の「頭」・「胸」・「腹」の三部作だった:

  • Ryuichi Matsuda (1965), Morphology and Evolution of the Insect Head. Memoirs of the American Entomological Institute, No.4, Ann Arbor, viii+334 pp.
  • Ryuichi Matsuda (1970), Morphology and Evolution of the Insect Thorax. Memoirs of the Entomological Society of Canada, No. 74, 431 pp.
  • Ryuichi Matsuda (1976), Morphology and Evolution of the Insect Abdomen with Special Reference to Developmental Patterns and Their Bearings upon Systematics. Pergamon Press [International Series in Pure and Applied Biology, Zoology Division, Vol. 56], New York, viii+534 pp., ISBN:0-080-18753-6 [hbk]

プラス,彼が最晩年に出した「異常変態」本(ネオ・ラマルキズムを標榜する本書は Science 誌をはじめメジャー誌で書評された):

  • Ryuichi Matsuda (1976), Animal Evolution in Changing Environments with Special Reference to Abnormal Metamorphosis. Wiley-Interscience, New York, xviii+355 pp., ISBN:0-471-87856-1 [hbk].

「頭」と「変態」はすぐ見つかったが,その近くにあるはずの「胸」と「腹」の二冊がどうしても見つからない.「頭」は今は亡き東京通販サービス(TTS)がまだ経堂にあったころに買ったもの.「胸」は富山の御大のところに転がっていたのでかっさらってきたもの.そして,「腹」は大学院生だったころに大枚三万円近く出して買った本だ.「異常変態」だけはふつうに買えたけど.いずれにしても,「胸」と「腹」の二冊は「もう一回買うぞ!」というわけにはいかない貴重書なので,ムダな抵抗をせずに早く出頭してきてほしい.

◆夕方の長丁場電話会議 —— 午後5時から計量生物学会の企画理事電話会議.たくさん議題があったので午後7時までたっぷり二時間も受話器を握りしめることになってしまった…….5月の年会でのチュートリアル高座とオーガナイズする特別セッションの仕事がのしかかる.5月22日(土)の午後に特別セッションをということだが,ワイキキビーチに飛び立つのもこの日なんですけど(どうしましょ).いずれにせよ,19日の理事会までに白羽の矢を立てることになる.

—— 次回の電話会議は1月25日(月)午後5時から.

◆午後7時半にやっと撤収.寒いな.〈醸し人九平次〉の純米吟醸「件の山田」を開栓した.酸味が爽やかで鍋物によく合うこと.

◆本日の総歩数=6126歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=86.4kg(−0.5kg)/27.3%(+0.4%).


5 januari 2010(火) ※加圧されつつトド撃ちまくり

◆午前4時半起床.夜中の間に降った(と思しき)雨はあがっていた.路面はまだ濡れているが,凍結するような気温ではなく,午前5時前にプラス3.4度.午前6時半でプラス2.4度.もうちょい下がれば凍っていたかもしれない.夜明けまでは曇っていたが,しだいに青空が雲間からのぞき始めた.

◆午前のこまごま —— 今月のトド撃ちリスト更新完了.やるぞー./1月9日(土)はJR東京駅「銀の鈴」にて待ち合わせることになった.客人が九州から上京するので打ち合わせあり.この日は,科博分館にて午前に分類学会連合の総会,午後はシンポジウムがある.たいへんあわただしい一日になりそうだ.

◆備忘メモ —— 生物多様性情報学10の予言:Rod Page「Thoughts on the International Year of Biodiversity 2010」(iPhylo: 2010年1月4日).並立する生物多様性データベースの今後に関して「Nobody will care」が実に多いなぁ.なお十番目の予測は半世紀にわたる一貫したトレンドですね.分類学と系統学の「蜜月」はとうの昔に終わっていたということ.Bravo, Rod!/伊藤元重「高等教育への“仕打ち”」(MSN産経ニュース:2010年1月5日).御意.科学研究の人脈的・世代的な系譜は切断されたらなかなか復元できない./塚本由晴・中谷礼仁「対談:ゼロ年代の建築的状況をふりかえり、現在とこれからを考える(極私的に。)」(テンプラスワン:2009年12月).お,中谷さん.アレグザンダー!

◆午前10時半.快晴.気温10.2度.今日は日射しが暖かく感じられる.いい日和ですなあ.

◆『月刊みすず』の原稿 —— 今回選んだ五冊の本に関して,下記の書評原稿を昨日みすず書房に送った:


昨年は進化学者チャールズ・ダーウィンの生誕二百年にあたっていた.国内外を問わずダーウィンと進化生物学に関する数多くの新刊が出版された.今回ピックアップした本の大半は進化がらみの新刊である.

  1. チャールズ・ダーウィン[渡辺政隆訳]『種の起源(上・下):一八五九年にロンドンで出版された,言うまでもなくダーウィンの代表作.生物の歴史が科学的な探究の対象であることを示すとともに,自然淘汰という進化プロセス理論を提唱した.この本が出版後一世紀半を隔てて読み易い新訳で文庫に入ったことはうれしい.まだキリスト教の影響力が強かった一九世紀のイングランドにおいて,ダーウィンがどのような理論武装と周到なデータ蓄積の上に進化論を世に問うたのか,この新訳を通じて彼の事績をあらためて振り返りたい.
  2. John van Wyhe『The Complete Work of Charles Darwin Online:ダーウィン自身の著作や論文はもちろん,彼が残したおびただしい数の研究ノートや書簡類は現在このウェブサイトを通じて全世界にオンライン公開されつつある.かつてはケンブリッジ大学をはじめ現地に出向かなければアクセスできなかった未公開資料がこのように閲覧できる時代が到来しようとは.あまりにも情報量が多過ぎて最初はどこから入ればいいのか迷うほどだ.
  3. エルンスト・ヘッケル[小畠郁生監修|戸田裕之訳]『生物の驚異的な形:『種の起源』によって産声を上げたダーウィニズムは波が伝わるように周辺国に急速に広がっていった.ダーウィン進化論をいち早くドイツに普及させたのは,ダーウィンと同時代に生物学のみならず哲学・政治・芸術にまで影響を及ぼしたエルンスト・ヘッケルだった.ヘッケルは,天賦の画才を駆使して,進化がもたらす生命の多様性を描いたのがこの図版集だ.日本でも戦中まではヘッケルの翻訳があったのだが,最近ではすっかり途絶えている.本書の出版はとてもうれしいサプライズだ.
  4. Robert J. Richards『The Tragic Sense of Life: Ernst Haeckel and the Struggle over Evolutionary Thought:そのヘッケルの大きな評伝が一昨年に出版された.イングランドの郊外に隠棲したダーウィンとは対極的に,いつも人の輪の中心にいて饒舌に語り続けたヘッケルの人となりを,そして公私にわたって錯綜した人間関係のありさまを詳細に解きほぐしたこの伝記は,進化論が国を越えて受容される際の社会的・文化的・学問的文脈のありようを明らかにしてくれる.
  5. 府川充男(編著)『聚珍録:漢字の字体と書体やひらかな・カタカナの表記法は,非生物的な意味での変異と進化を遂げる実体であるとみなすことができる.江戸時代から近代にいたる激動の時代に日本語がどのような変遷をしてきたかについて,タイポグラフィーの観点から膨大な資料を集積して考察したのが,全三巻三千ページを越える本書である.個人で購うのは尋常ならざることとは自覚しているが,一期一会の出会いにより入手できたのは実に幸運なことだった.

さて,来月発行される「読書アンケート特集」では,どのような本たちが舞台の上に上がってくるのだろうか?

◆昨年末に入手していた新書2冊:渡辺公三『闘うレヴィ=ストロース』(2009年11月13日刊行,平凡社[平凡社新書498],東京,302 pp., ISBN:978-4-582-85498-5 → 版元ページ).昨年亡くなった人類学者クロード・レヴィ=ストロースの生涯をぎゅっとしぼった一冊.新書なのにこの濃度の高さ./上村忠男『ヴィーコ:学問の起源へ』(2009年12月20日刊行,中央公論新社[中公新書2035],東京,x+241 pp., ISBN:978-4-12-102035 → 版元ページ).18世紀に活躍した思想家ジャンバッティスタ・ヴィーコの本.『闘うレヴィ=ストロース』と同じく,本書も索引や文献リストがきちんと完備されている.こういう資料性の高い(=読み捨てできない)新書がこれからも増えてくれるとたいへんありがたい.

◆午後のこまごま —— 東京大学新聞の『分類思考の世界』記事ゲラのチェック完了.昨年暮れにインタビューに来た学生さんは駒場の2年生だった.鵺みたいにとらえどころのないワタクシの話によくぞ一時間あまりもつきあってくれたと感心している.メールにて修正箇所を返信完了./所内の「職場巡視報告書」が回覧されてきた.わが居室の査察結果やいかに?:「本棚を固定してください。/書庫の上の本の整理をしてください。」 〈本が崩れる!〉って? 要するに,堆積した本を何とかしなはれ,ということですな? それがすぐにできたらこんなに苦労しないってば! /保健指導通告あり.く……./とある原稿のチェックを依頼される.了解./組合の残務がまだまだ残っているがぼちぼち進めています.はい……./ヘテロクロニーに関する質問への回答と文献紹介.完了.

—— 受診箱の未処理メールがどんどん少なくなっていくのはうれしいが,それ以外の仕事はどうしましょうかねぇ…….

◆夕暮れ,とある本探しに時間を盗られまくってそのあげく見つからず.しかし,「もう一回買うぞ!」というわけにはいかない貴重書なのですよぉ.早く出てきてねー,お願いねー.しかし,けっきょく見つからない.「頭」と「異常変態」は出てきたが,「胸」と「腹」が行方不明…….※なんだかバラバラ殺人みたいですが,松田隆一がそういう本ばっかり書くからしかたがないでしょ.

◆本日の総歩数=6705歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=86.9kg(−0.3kg)/26.9%(+0.1%).


4 januari 2010(月) ※すぐ「平日」は演じられない

◆午前5時半起床.晴れ.気温マイナス1.5度.三が日ほどではないが,出勤する身には冷え込みが身に染みる.午前6:44に緩い地震あり.今日からは早くも平日労働モードに戻さないといけない.居室では年末年始に我が世の春を謳歌してたトドたちが大きく成長していた…….ちょこちょこと征伐開始する.日が昇っても気温は低いまま午前10時半にブラス4.4度.曇りところどころ晴れ間.まだ年始休暇中の職員も多いのか,研究所の中はとても静かだ.駐車場にも空きがある.

◆午前のこまごま —— 年初めの定期昇給の辞令を交付される./メーリングリストの月例アナウンスを流す./個人業績リストを報告しないといけない.「随時受付」という現行のシステムは個人的にはいかがなものかと思われる.「いつでも届け出ていいよ」という文言は「いつまでも届け出なくていいよ」と勝手に脳内一括変換されてしまうからだ.しかし,きっかけさえあれば固めて申告をすませる心づもりはある.むしろ,定期的に“加圧”される方が効果的かもしれない.いずれにせよ,この半年間の研究上のアウトプット十数件を届け出る準備をする.

◆備忘メモ —— 「惑星の定義についての経緯と解説」(国立天文台サイト).惑星系の「自然分類」を学界として規則化すること.実にお見事ですなぁ.“カモノハシ”としての冥王星./礒田正美・Maria G. Bartolini Bussi(編)『曲線の事典:性質・歴史・作図法』(2009年12月刊行,共立出版,ISBN:978-4-320-01907-2 → 版元ページ)/海游舎の今年の刊行予定本リストから:高木隆司『形の科学』|東正剛・辻和希(編著)『社会性昆虫の進化生態学2』|新里達也他『カミキリ学のすすめ』|大原雅『植物の繁殖生態学』|佐々木正己『蜂からみた花の世界』.

◆昼休みの新年会 —— 正午からは領域の新年会ランチ.本年もよろしくお願いいたします.勤務時間中なのでもちろんノン・アルコール.炭水化物を多めに摂取してしまった(年末年始からのいけない過食傾向はなお続く……).かつては,御用納めと御用始めの日は,昼過ぎから所内のどこでも「宴会状態」で,ぜんぜん仕事にならなかったのだが(方々の部屋で酒が飛び交っていた),さすがに独法になって以来,そういう“無法状態”は見られなくなった.今日も「新年会・第一部」の昼食会ではノン・アルコールに徹するが,終業後の午後5時半からはアルコール付きの「新年会・第二部」が予定されている.

◆穏やかに晴れわたる午後のこまごま —— 個人業績報告のための資料の準備と報告シートの用意を完了.明日記入して提出します.こういう作業にはとても長い心理的時間と物理的時間が費やされてしまう.今回もその例外ではなかった…….

◆元日にゲットした「ローマ字本」をちらちらと盗み読んでいる:田丸卓郎『ローマ字文の研究』(1920年11月15日刊行,ローマ字教育会,東京,216+128+6 pp.).自分自身が受けてきた[はずの]ローマ字教育のかすかな記憶に照らし合わせると,この本に書かれている内容は,驚くほど詳細かつ多岐にわたっている.日本語をローマ字表記する“案”としては,本書が提唱する「日本式」とその好敵手である「ヘボン式」の他にも,「南部式」とか「左近式」などいくつもの学派があったそうだ(「速記法」の系譜みたいなものか).さらに,「分かち書き(附け離し)」の方式をめぐる議論,大文字・小文字の使い方の規則(「日本式」ではドイツ語と同じくすべての名詞は「大文字」で始まる),ローマ字での略記法の定式化(「10日=10 ka」,「三丁目=3-ty.」,「一番地=1-bt.」など)といった,初めて知ったことが山ほどある.

一般的な文字表記の問題としては,「ローマ字問題」はおもしろいといえばおもしろい.しかし,こういう議論が現代の社会生活の中でまったく取りざたされる機会がないということは,とりもなおさずローマ字表記がまったく定着していないことの証拠でもあるだろう.しかし同時に,何らかの理由で“厳密”な(すなわち誤解されない正確さを持った)ローマ字表記が求められる状況があるとしたら,あらためて自分でローマ字表記の正字法を一から体系だてる必要があるということでもある.ISO採用の「訓令式」ローマ字表記は,こういう長年にわたる議論を踏まえたとき,はたして合格点に達しているのかどうかはよく知らない.

もう昔のことだが,柴谷篤弘さんが自分の名前を「Atuhiro Sibatani」といつも書いているのを見て,その「訓令式」表記に違和感を感じたものだが,いま考えてみれば彼なりの考えがあってのことだったのかもしれない.さいわい(なのかどうか),ぼくの名前はいずれのローマ字表記法でも同一なので,そういう問題はまったく表面化しなかったのだが.

—— たった「五百円」でここまで楽しめる古書はなかなかない.正月早々とても縁起がよかったなあ.

◆『月刊みすず』の「読書アンケート」原稿を完成させ,午後6時に編集部にメール送信した.よろしくお願いいたします.

◆夕刻,「新年会・第二部」にちょっとだけ顔を出して午後7時前に帰宅.

◆本日の総歩数=5067歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.計測値(前回比)=87.2kg(+0.2kg)/26.8%(+0.2%).


3 januari 2010(日) ※正月の三が日は疾風のごとく

◆午前5時過ぎに起床.星空.朝焼けが鮮やかだったが,昨日までの厳しい冷え込みはなかった.今年の正月三が日が穏やかに過ごせることをよしとしよう.お雑煮のダシとりを先ほど完了.昨日までは醤油味だったが,今日は白味噌のお雑煮にする予定.関東にいると「角餅」しか見当たらず,「丸餅」がぜんぜん手に入らないので,いつも年の初めに困ってしまう.丸餅・かしら芋・里芋・大根と「丸くて白いもの」ばっかり入っていた記憶がある.

◆午前中は『月刊みすず』の「読者アンケート特集」原稿のとりまとめをする.選んだ五冊についてのコメントはまだ書いていない.意外に時間がかかってしまう.

◆アフターおせち料理 —— 昨年末,大晦日までじたばたとつくっていたおせち料理も,正月の三日目ともなればそろそろ底をつきはじめ,味もしだいに飽きてくる.そういう倦怠期にこそ「アフターおせち料理」の出番となる.

  1. 【牛肉のスティファド 】年末から煮込み始めて五日目,年が明けてからは日に一度火を入れるだけだったが,大量のタマネギもとろとろになり,牛肉の塊もすでにほろほろと煮くずれている(ゆすったりかき混ぜたりするとかたちがなくなるので要注意).最初の予定通り,そのままシチューとして試食してみたら,煮込みに使った赤ワインが軽過ぎたせいかコクがいまひとつ足りない.むしろ,パスタに合わせてみようということで,急遽スパゲティを茹でた.トマトピューレを加えて味を整えたスティファドをパスタに添えたらこれが大正解.ブロック肉を崩しながらパスタに絡めるとタマネギの甘みと香辛料の香りが広がって満足できた.反省点としては,もっとコクを出すにはどうすればいいかということ.マフロダフネ・オブ・パトラスのような極甘の赤ワインを使えというレシピはたしかに筋が通っている.もっとボディのある赤ワイン,あるいはいっそのことポートワインを使えばいいのかもしれない.
  2. 【ブリの照り焼き】京都にいたころは,正月のおせちには必ずブリの照り焼きが入っていた(サケはぜんぜん見なかった).その習慣があるので,関東に来てからもブリの照り焼きは定番アイテムにしている.ただし,うちの場合,「肉」系の料理がおせちの主役なので,魚は「アフター」の位置づけで,時間差をつけて食卓にのぼらせることにしている.日本酒・みりん・醤油で下味をつけたブリの切り身を,魚焼き網で油を落としながら焼く.浸け汁をときどき塗りながら「照り」をつけるという作業が何度も入る.じっくり香ばしく焼き上げると,多少厚みのある切り身でもおいしくできあがる.

—— 明日からは平常労働日なので,お正月&おせちモードからのスイッチ入れ替えをしないといけない.

◆午後になってしだいに雲が厚くなってきた.しかし,天気が崩れるような気配はない.

◆「裏勝り」という愉しみ —— 和服の世界で「裏勝り」ということばがあることを知った.羽織の表地のデザインは地味にしたまま,裏地の意匠で自由に遊ぶというコンセプトらしい.もともとは奢侈が公的に禁じられた江戸時代に発生した服飾スタイルとのことだ.厳しい制約と淘汰のかかる「表地」ではなく,それらが緩い「裏地」でおもいきり開花させるというのは十分にありえる可能性だ.明らかに,講談社現代新書のぼくの二冊は「裏勝り」ですよね?>お代官様.

◆明日からのトド撃ち再開に備えて討伐作戦を練ってみた.忙しくなりそう.

◆本日の総歩数=1609歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=87.0kg(+0.3kg)/26.6%(+0.6%).


2 januari 2010(土) ※翻訳と原稿と書評の正月休み

◆午前4時起床.外はまだ真っ暗で冴えた星空が広がる.未明の冷え込みが厳しい.今朝もみごとな夜明けだった.元日分の日録をものしてアッブする.年の初めは追憶スイッチがオンになってしまった…….日中はずっと好天だったが,午後になって西風が強く吹きつけてきた.体感気温はとても低くて,寒さが身に染みた.

◆厨房仕事からほぼ解放されたので,ようやく「書き物」の世界に復帰することができる.

◆『月刊みすず』書評号に挙げる5冊 —— 2006年以来,毎年恒例になっている『月刊みすず』の年頭「読者アンケート特集」への寄稿.昨年一年間で印象に残った本をピックアップせよとの依頼だ.「ダーウィン年」だったことを考慮して,〈leeswijzer〉を巻き戻しながら探索開始.最終的に,チャールズ・ダーウィンとエルンスト・ヘッケルで二冊ずつ,最後の一冊は“眼福”な本に決めた:


まずは,チャールズ・ダーウィン関連でふたつ:


【書名】種の起源(上)
【著者】チャールズ・ダーウィン[渡辺政隆訳]
【刊行】2009年9月20日
【出版】光文社,東京
【ISBN】978-4-334-75190-6
【目次】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20100101/1262042832

【書名】種の起源(下)
【著者】チャールズ・ダーウィン[渡辺政隆訳]
【刊行】2009年12月20日
【出版】光文社,東京
【ISBN】978-4-334-75196-8
【目次】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20100101/1262042833
【短評】「ダーウィン年」だった昨年を思い起こしつつ,まずはダーウィンの
    記念碑的著作の新訳を.

【書名】The Complete Work of Charles Darwin Online
【運営】John van Wyhe
【期間】2002〜2010[継続中]
【URL】http://darwin-online.org.uk/
【短評】このサイトのおかげで,世界中からインターネット経由でダーウィンの
    「一次資料」に触れることができるようになった.

続いて,エルンスト・ヘッケル関連の2冊:


【書名】生物の驚異的な形
【編著】エルンスト・ヘッケル[小畠郁生監修|戸田裕之訳]
【刊行】2009年4月30日
【出版】河出書房新社,東京
【ISBN】978-4-309-25224-7
【目次】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20090426/1240192128
【短評】この『Kunstformen der Natur』が翻訳されたこと自体がサプライズ.

【書名】The Tragic Sense of Life:
      Ernst Haeckel and the Struggle over Evolutionary Thought
【編著】Robert J. Richards
【刊行】2008年5月13日
【出版】The University of Chicago Press, Chicago
【ISBN】978-0-226-71214-7
【目次】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20080617/1213281266
【短評】エルンスト・ヘッケル伝の大著.

最後に,超弩級の日本語タイポグラフィー資料集:


【書名】聚珍録(全3冊)[第一篇:字體/第二篇:書體/第三篇:假名]
【編著】府川充男
【刊行】2005年2月23日
【出版】三省堂,東京
【ISBN】978-4-385-36232-8
【参照】http://www.sanseido-publ.co.jp/publ/syuchinroku.html
【短評】一度はあきらめていたこの和文タイポグラフィー資料集が,いくつかの
    偶然の連鎖で入手できたのは実に幸運なことだった.

続いて,「次点」となった5冊を列挙する:


まず,選り抜きの「本の本」を二冊:


【書名】西洋美術書誌考
【著者】西野嘉章
【刊行】2009年1月29日
【出版】東京大学出版会,東京
【ISBN】978-4-13-080211-6
【目次】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20090321/1236295578
【短評】本書を手に取って十年前の『裝釘考』を思い出しました.しあわせです.

【書名】書肆ユリイカの本
【著者】田中栞
【刊行】2009年9月15日
【出版】青土社,東京
【ISBN】978-4-7917-6465-5
【紹介】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20090930/1254608253
【短評】今はない出版社が出した本を調べ尽くそうという姿勢がすさまじい.
    真性「本」中毒でしょう.

続いて,ダーウィン年にふさわしい『種の起源』解説本:


【書名】ダーウィン『種の起源』を読む
【著者】北村雄一
【刊行】2009年2月12日
【出版】化学同人,京都
【ISBN】978-4-7598-1170-4
【目次】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20090203/1233752646
【短評】『種の起源』を章ごとにたどって解説した本.ダーウィン年にふさわしかった.

最後に,系統樹の図像史本を二冊:


【書名】The Trees of the Genealogia Deorum of Boccaccio
【編者】Ernest Hatch Wilkins
【刊行】1923年
【出版】The Caxton Club, Chicago
【紹介】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20090411/1238702888
【短評】『デカメロン』の作者ジョバンニ・ボッカチオがまとめた『異教の神々の
    系譜』の図像史.160部予約限定本の一冊で,本書に出会えたのはまさに
    一期一会.

【書名】The Early Iconography of the Tree of Jesse
【著者】Arthur Watson
【刊行】1934年
【出版】Oxford University Press, London
【紹介】http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20090314/1235976947
【短評】旧約聖書に登場する〈エッサイの樹〉の中世図像学に関する本.系譜学史の
    ルーツに到達するために.

毎年,年頭に一年間を振り返ると,印象に残る本が必ず何冊かは脳裏に浮かぶ.昨年は系統樹や【種】に関する文献を漁ることが多かったので,多かれ少なかれそのテーマに関わりを持つ本たちが選ばれた.


—— さて,あとはピックアップした上記五冊について,紹介コメントをつけてみすず書房に返送する作業が残っている.明日は,みすず書房へのコメント書きをすませたのち,ソーバー訳本の作業に進む予定.

◆本日の総歩数=1525歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.計測値(前回比)=86.7kg(+0.1kg)/26.0%(−1.7%).


1 januari 2010(金) ※元日なのに古本を物色する私

◆午前5時半起床.きりきりと冷え込む元日の未明.雲一つない星空で,東の空が白んできた.夜明け前のこの鮮やかなグラデーションは厳冬ならではの光景.西の空を見やると月蝕が終わった満月がこうこうと輝いている.それにしてもこの冷え込みはただごとではないですなあ.夜中に初詣に出かけなくてよかった.初日の出は午前6時50分前だった.東の地平線にかかる雲間から新年初めての朝日が射す.明けましておめでとうございます.

◆「零年代」から「十年代」に向けて —— 「2000年代」は「ダーウィン年」とともに過ぎ去り,今年から「2010年代」が始まった.十年前の「2000年代」の始まりは新ミレニアムという幟が立って,社会的にももっと華やかだった記憶がある.当時はまだウェブ日記としての「日録」をつけてはいなかった.プレ「日録」時代にやったことは,未公開アポカリプス・ファイルである「全出力.txt」と「全活動.txt」にすべて書き留められている.

十年前の「2000年」に何をしていたかと言えば —— 実は長きにわたる【種】論争のまっただ中で(いったい何度目の“ジハード”だったのだろうか),それ系の書き物をたくさんしていたのですね(未完に終わった『生物科学』誌での連載記事とか).EVOLVE メーリングリストでのやり取りも今よりもはるかに活発だったしね.もうひとつ,この年から森山和道さんに誘われてbk1の「ブック・ナビゲーター」を始めたことが挙げられる(この仕事は2004年まで5年間続いた).これが契機になってオンライン書評を数多く公開することになった.2005年に開設した書評サイト〈leeswijzer〉はこの書評活動の延長線上にある.

さらに十年さかのぼった「1990年」はといえば —— 5年ほど続いたピュアな“オーバードクター”期間を乗り越えて,やっとつくばに就職できたのが1989年10月だったので,引っ越しやら新職場での環境づくりやらの余波がまだ残っていた年だった.研究上のアウトプットが分岐学(cladistics)中心にまわっていたのは当然のことだろう(博士論文が分岐学の数理だったので).ただし,つくばに就職できたのは修士論文でやっていた幾何学的形態測定学が運よく選考採用に引っかかったからだったが.つくばに来る前はとある予備校で生物と数学の講師をしていた.その経験はつくばに来てすぐに担当することになった「数理統計研修」で思いがけず活かされることになった.就職して以来,現在にいたるまで,教壇に立つたびにワタクシは“予備校教師”に戻るのです.

さらにもう十年さかのぼった「1980年」はといえば —— 東大農学部の4年生でしたね.無謀にも大学院に進学することはすでに決めていた(担当教官からは「大学院なんか行ってもどうしようもないよ」と言われたにもかかわらず).卒論で手がけていた数理生態学的な研究テーマを離れて,分類学の世界に目を向けはじめたのはこの年のこと.『Systematic Zoology』誌(現在の『Systematic Biology』誌)を個人購読し始めた年でもある.「全出力.txt」を見てもほとんど空白で(当たり前か),むしろオーケストラの活動の方がよほど忙しかったかもしれない.就職活動なんぞ眼中になかったし,それはそれでのんびりした「凪の時代」だったのだろう.

—— さて,過去のことではなく,今から十年後の「2020年」にワタクシがどうなっているかを予想しよう.定年が今のまま(60歳)だとすれば,めでたく?リタイアしているだろう.うわ〜〜,うっそ〜〜.[ガクゼン]

◆元旦の食卓の風景 —— 昨年末にさんざん格闘したおかげで,元旦はいちおうそれなりのおせち料理が食卓を飾ることになった.大皿へ盛りつけは年の初めにふさわしい愉しみでもある.ローストビーフはスライスしてみたらミディアム・レアな焼け具合だった.この分だと,冷凍中のもっと大きい塊の方はレアになっていると予想される.

ヤツガシラやクワイ,金時人参や椎茸,そして手綱こんにゃくのお煮しめ類はまあこんなしあがりでしょう.時間がかかった黒豆は炊きあがってから一晩戸外においたので,さらに黒みが増してきたようだ.伊達巻きや栗きんとん,祝い蒲鉾,そしてお雑煮とともにいただきましょう.

昨年の元日は静岡の〈開運・無濾過純米〉を開栓したが,今年の元旦は島根の〈王祿・丈径〉にしてみた.いつもながら無濾過純米にして辛口しかも酸味がぷちっと弾ける飲み心地はこの銘柄の良さだ.

◆年の初めの「ローマ字」 —— 快晴で北風が冷たく感じる元日の午後,〈イーアスつくば〉に出かける.元旦だけは店も閉まって静かな世の中というのはもう昔語りなのだろうか.近年は元旦から営業を始めている店が少なくない.〈イーアスつくば〉も買い物客でごった返していた.一階フロアの一角に期間限定で店開きしていた〈古本れんが堂書店〉で新年早々の物色.歴史ものを中心に美術・芸術・芸能関係の古書の品揃えをしていた.一冊ピックアップ:田丸卓郎『ローマ字文の研究』(1920年11月15日刊行,ローマ字教育会,東京,216+128+6 pp.).500円.日本における「ローマ字推進運動」の中心人物の手になる本.「訓令式ローマ字記法」のもとになる「日本式ローマ字記法」を体系づけた書物だという.

日常生活では「ヘボン式ローマ字記法」が普及しているが,正書法(orthography)としてのローマ字記法を考えるとき,田丸の「日本式」は避けては通れないだろう.要するに,日本語をローマ字表記する正書法がいまだに確立していないという現状だ.本書の前半部200ページは,「ヘボン式」との比較のもとに「日本式」によるローマ字正書法を解説している.付録の120ページは文典.音声との対応はもちろん,大文字小文字の使い分け,分かち書きの規則,そして略記法についても触れられている.思い起こせば,ローマ字って小学校のころに習っただけではないだろうか.自白すれば,恣意的にアルファベットに「翻訳」したものをローマ字であると信じてきた過去がある.

ローマ字正書法が確立していないとなると,生物の和名や地名などの固有名詞の表記が揺れ動く.国際標準的にはISOが「訓令式」を採用している以上,それに変わるものはないだろう.しかし,巷間では俗流?ヘボン式が幅を利かせているのだから,それを考慮しないわけにはいかないのかもしれない.本書の前の持ち主はローマ字表記派だったのだろうか,見返しにローマ字表記各派の長所と短所に関する読書メモをローマ字で書き記している.

—— 考えるほど悩ましい問題が浮上してくるなぁ.ローマ字表記の問題に深入したくはないし…….

◆大晦日のツイッターのタイムラインは〈紅白〉一色だったが,一夜明ければ〈正月〉カラーですな.TwitPicを使い始めた.写真を投稿する趣味はないのですが,とりあえずおせち料理の盛りつけなど投げたりして.

◆快晴の元日は夕焼けも鮮やかだった.東の空に満月が昇りはじめる.今年もよろしくお願いいたします.>みなさま.

◆本日の総歩数=4160歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.計測値(前回比)=86.6kg(+0.6kg)/27.7%(+0.6%).


--- het eind van dagboek ---

Map フリーアクセスカウンター自転車 通販人気 シューズ
[sinds 19 april 2007] 無料アクセスログホームページ 素材集