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日録2009年3月 


31 maart 2009(火) ※ 月の終わりにはギリシャを味わう

◆午前4時起床.曇り.気温プラス5.9度.冷え込みなし.

◆夜明け前の業績報告 —— 今日が締切という所内の「業績報告書」と「業績報告票」をばたばたと用意する.ほとんどは企画でガルーンにアップしておいてくれたので,それをぺたぺたと貼付けるだけですむ作業だ.あとはそれ以外の個別の報告事項とか,積極的アピールとか.午前6時半に書類が完成したのでメールで送信してこの件はおしまいだ.あとは来月始めの「個別面談」かな.

◆ラス・カサスの『インディアス史』がドンと届く —— たとえ「文庫」とはいえこれだけのボリュームになると物量感が出てくる.全7巻の中南米史.全巻構成はさておき,各巻の書誌情報は下記の通り:

  1. ラス・カサス[長南実訳/石原保徳編]『インディアス史・第1巻』(2009年3月17日刊行,岩波書店[青427-2], 436pp., ISBN:978-4-00-334272-5 → 版元ページ
  2. ラス・カサス[長南実訳/石原保徳編]『インディアス史・第2巻』(2009年3月17日刊行,岩波書店[青427-3], 412pp., ISBN:978-4-00-334273-2 → 版元ページ
  3. ラス・カサス[長南実訳/石原保徳編]『インディアス史・第3巻』(2009年3月17日刊行,岩波書店[青427-4], 405pp., ISBN:978-4-00-334274-9 → 版元ページ
  4. ラス・カサス[長南実訳/石原保徳編]『インディアス史・第4巻』(2009年3月17日刊行,岩波書店[青427-5], 397pp., ISBN:978-4-00-334275-6 → 版元ページ
  5. ラス・カサス[長南実訳/石原保徳編]『インディアス史・第5巻』(2009年3月17日刊行,岩波書店[青427-6], 320pp., ISBN:978-4-00-334276-3 → 版元ページ
  6. ラス・カサス[長南実訳/石原保徳編]『インディアス史・第6巻』(2009年3月17日刊行,岩波書店[青427-7], 428pp., ISBN:978-4-00-334277-0 → 版元ページ
  7. ラス・カサス[長南実訳/石原保徳編]『インディアス史・第7巻』(2009年3月17日刊行,岩波書店[青427-8], 494+17pp., ISBN:978-4-00-334278-7 → 版元ページ

すでに岩波文庫に入っている有名な著作:ラス・カサス[染田秀藤訳]『インディアスの破壊についての簡潔な報告』(1976年6月25日刊行,岩波書店[青427-1], 205pp., ISBN:4-00-334271-2 → 版元ページ)の“簡潔さ”とは比べようもない.

なお,著者ラス・カサスがたどった足跡は,上野清士の渾身の伝記『ラス・カサスへの道:500年後の〈新世界〉を歩く』(2008年8月15日刊行,新泉社,382 pp,本体価格2,600円,ISBN:978-4-7877-0805-2 → 目次版元ページ)にとても詳しく書かれている.これはとても読み応えのある伝記だった.

◆正午.曇りときどき晴れ.気温11.4度.風もなく暖かい.空気がぬるい昼下がり.

◆お,春の新刊がもう1冊やってきたか —— 小川糸『喋々喃々』(2009年2月5日刊行,ポプラ社,ISBN:978-4-591-10840-6 → 版元ページ特設ページ).常日頃,こういうたぐいの小説はまったく手にしないことにしているのだが,たまたま物語の舞台がほかならない「谷根千」だったからという理由だけで例外扱いとする.先日,千駄木の〈往来堂書店〉で平積みされていたのを実際に手に取って,こういう本だったのかと初めて認識したしだい.なんだか,まるで“ツキコさん”みたいな主人公.でも,お相手は“センセイ”ほど草食系ではなさそうな感じもするし.

◆午後4時過ぎに撤収する.晴れ.気温12.0度で暖かい.

◆今夜はまたまたにわかシェフに転身して,ひたすら肉を調理することになっている.メニューはいつものローストビーフを計1kgと,牛スネ肉のビール煮込みを大量に.

◆甘美なる〈Mavrodaphne of Patras〉 —— 今から7年前の2002年に,ギリシャのペロポネソス半島に学会(〈ICSEB-VI〉)に行ったおり,港湾都市パトラスの市内のワインショップで買ったのが,ギリシャ特産の甘口の赤ワイン〈Mavrodaphne of Patras (Μαυροδαφνη Πατρων)〉だった.その後,研究所の冷蔵庫にずーっと冷蔵保管してあったのだが,今夜,満を持して?開栓してみた.

ワイナリーは地元パトラスにある〈Antonopoulos Vineyards〉で,購入したワインショップでは別格の値段で,ギリシャではふつうにある松ヤニ入りの「レツィーナ」ワインに比べればものすごく高かった.1988年に詰められた一本で,15%というアルコール濃度は通常のワインにしては高い.ランクは「O. P. E.」(Onomasia Proelefsis Eleghomeni)だった.ポートワインではないのに,そのままで甘いという赤ワインは初めての経験だったが,これは「マブロダフネ」というブドウ品種の特性らしい.

ワイングラスに注いだときの,色合いは日本で言えば「ひやしあめ」のような赤褐色で,予想していたほど濃い赤さはない.味わいも確かに甘いが,ポートワインやトカイワインよりはもっと軽めのスイートさで,常温ではなくやや冷やした方がおいしいだろう.この〈マブロダフネ・オブ・パトラス〉は,日本ではあまり出会う機会がない赤ワインだが,海外の旅先ならではの小さな幸運ということ.ギリシャは食べ物や飲み物がとてもうまかった印象が強い.地中海沿岸はそれだけ恵まれた地域だろう.

—— 甘いワインを飲みながら,ビール煮込みの鍋がことこと音を立てる.料理人の夜はシズカに更けてゆく.

◆本日の総歩数=13328歩[うち「しっかり歩数」2640歩/28分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=84.1kg(+0.5kg)/27.3%(+0.3%).


30 maart 2009(月) ※ 桜花ほころび『異教の神々』降臨

◆午前5時起床.晴れ.気温プラス1.8度.きりきり冷え込んで寒い.

◆追い込まれてのばたばた —— 何はさておき,『現代思想』ダーウィン特集のゲラを読まないことにはどうしようもない.400字詰にして60〜70枚の分量がある原稿だが,最後までざーっと読んでみて,修正箇所を朱字で記入していく.締切ぎりぎりの正午直前に編集部にメール返信して,この件はやっとおしまいになった.

◆午前10時半の気温は9.8度.今日は風もなく朝のうちから春らしい暖かさになった.農林団地の桜も開きはじめ,気の早い花見客がもう散策している.花冷えの日々がやっと過ぎ,ようやく本来の「春」になるとの予報だ.今週末の日本生物地理学会大会では立教大キャンパスは満開の桜に彩られているにちがいない.

◆『異教の神々』はシカゴから —— 頻繁にあることではないが,とても立派な造りの本をたまに手にすると思わずなでなでしてしまう.先日,運よく発注できたボッカチオ本がマンハッタンの古書店〈James Cummins Bookseller〉から届いた:Ernest Hatch Wilkins『The Trees of the Genealogia Deorum of Boccaccio』(1923年刊行,The Caxton Club, Chicago, xii + 29pp. with 24 plates).31cm×24cmの大判の本が厳重に梱包されて届いた.

この本は,『デカメロン』の作者として有名な14世紀のジョバンニ・ボッカチオが生前にまとめた『異教の神々の系譜(Genealogia Deorum Gentilium)』に描かれた「系図」の図像史を論じた著作.ギリシャ・ローマ神話に登場する神々の系図を論じただけでなく,それを家系図として描いた点で注目される.Wilkins の本書は,ルネサンス期の『異教の神々の系譜』古写本に載っている系図をモノクロ図版あるいは彩色図版で複製した本だ.

「エッサイの樹」が図像化されたのとほぼ同時期に描かれたこれらの系図は,系統樹による図式表現のもっとも古い姿をとどめていると考えられている.あたかも蔦の葉が垂れ下がるように上から下へと祖先子孫関係を表現するというのは,根株から枝葉が下から上へ萌え出る「エッサイの樹」とは対極的な表現方法だ.

もちろん内容的にもたいへん面白いのだが,この本のもうひとつのすごいところは,造本に対する徹底的なこだわりようだ.版元の〈The Caxton Club〉は,シカゴに本拠地をもち,1895年の創立からすでに一世紀を越える長い歴史を持つ bibliophiles たちの結社で(当時の「Art and Crafts」運動のひとつ),インキュナブラ時代を代表する「カクストン」という名を看板としてあえて掲げていることからもわかるように,飽くことなく「とことん良い本」を追求してきたという.

本書は「160部予約限定本」の一冊.天金.背の堅牢な革装に金文字タイトルが輝き,本文の活版印刷に用いられている紙はイタリアの製紙業者〈Fabriano〉による手漉き紙(社名の透かしが入っている).図版のうち3葉は彩色プレートで,鈍く光る金泥までちゃんと復刻されていて,手にするだけでもなんだかとってもシアワセな感覚がする.他人には言えない物欲というか,日頃は顕現しないオブセッションというか.

ぼくの手元に届いた「トークン本」はシカゴ大学図書館からの除籍本で,パンチ文字が刻印されている.90年ほど経った本だが製本状態はとてもよく保たれている.ぼくがもっている古書の中でも,おそらくもっともゴージャスな一冊になるだろう.なお,本書の底本はシカゴ大学が所蔵している古写本だが,15世紀のヴェネツィア写本のいくつかの版からの図も再録されている.調べたかぎりでは,国内のどこの図書館にも本書は公的に所蔵されてはいないようだ.こういう彩色本の稀覯書は入手する機会がごくかぎられているので,誰かが「えいやあっ」と注文しなければ未来永劫にわたって手元にはやってこない.

◆シアワセのあとのフシアワセ —— 所内の業績報告の締切が明日の月末であるぞよとのリマインダーが飛び込んできた.評価,評価で日が暮れて,明日も続く評価かな./迫り来るトドの予感も.まずは原稿トドから:NHK Books の原稿が先か,その次は『分類思考の世界』の続き.さらにコンウェイ・モリス訳本.しかし,今週末の生物地理学会シンポジウム〈“種”をめぐる諸問題:錯綜する論争と解決への道筋〉のトークの準備もまだだった.

—— どっと疲れて撤収する午後5時.気温9.8度.晴れ.肌寒くなってきた.

◆〈ダーウィン年イベント〉は宮崎でも —— 日本イギリス哲学会宮崎大会での伊勢田哲治さんのトーク「ダーウィンの残した思考ツール:近年の生物学哲学の話題から」.大会シンポジウム〈ダーウィンと現在〉での高座.講演スライドが公開(→ pdf)されている.

◆本日の総歩数=8113歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前回比)=83.6kg(0.0kg)/27.0%(+1.0%).


29 maart 2009(日) ※ 爽快に晴れわたったので本の虫に

◆午前5時起床.晴れ.冷え込む明け方.

◆予期せず落下する“テポドン”ゲラ —— 『現代思想』の〈ダーウィン特集〉ブックガイドのゲラが doc ファイルで着弾していた.月曜の正午までにきちんと“迎撃”した上で返送せよとのこと.複数の執筆者の文章のとりまとめはなかなか深入りできませんが,明らかなミスや加筆だけは怠りなく進める.

◆日中はよく晴れて空気も乾燥している.しかし,花冷えという表現がぴったりの冷え込み方で,桜の開き具合はここ数日まったく進展なしだ.このようすだと農林団地の花見客の波は来月にずれこむにちがいない.

◆ヨアヒム・フォン・フィオーレによる「時間のデザイン」 —— こういう本まで手を出すようになったら,もう先は長くないかもしれない:

Marco Rainini『Disegni dei tempi. Il «Liber Figurarum» e la teologia figurativa di Gioacchino da Fiore』(2006年7月刊行, Viella, Roma, xvi+336 pp., ISBN:88-8334-203-8 [pbk] → 目次版元ページ).ヨアヒム国際研究センター(Centro Internazionale di Studi Gioachimiti)が出している叢書〈Opere di Gioacchino da Fiore: testi e strumenti〉の第18巻.12世紀に活躍したヨアヒム・フォン・フィオーレ(Gioacchino da Fiore / Joachim von Fiore)を代表する『形象の書(Liber Figurarum)』や『系譜論(Genealogia)』の図像世界に関する本.歴史や家系を「樹」として表現する,そのココロは? もともとあった「エッサイの樹(albero di Iesse)」の発展形としてこれらの「ヨアヒムの樹」を理解していいのだろうか.

ヨアヒム主義については:マージョリ・リーヴス[大橋喜之訳]『中世の預言とその影響:ヨアキム主義の研究』(2006年10月25日刊行,八坂書房,ISBN:4-89694-881-5 → 紹介版元ページ)や,Alexander Patschovsky (Hrsg.)『Die Bildwelt der Diagramme Joachims von Fiore : Zur Medialität religiös-politischer Programme im Mittelalter』(2003年12月刊行,Jan Thorbecke Verlag,ISBN:3-7995-0130-4 [hbk] → 目次版元ページ編者サイト)にある解説やテクストや図版が参考になる.しかし,本書ではヨアヒムの真骨頂である「生成の樹(alberi delle generazioni)」に焦点を絞っているので,彼の図像世界にずぶずぶと沈潜することができる.

—— そのまま「溺死」するかも…….

◆大変身して紙魚になりそうだったので,昼下がり,久しぶりに筑波大方面に向かって一時間ほど徘徊してみる.平砂宿舎あたりは,満開の辛夷のもと,年度末の引っ越しのトラックが行き交う.天久保の〈Brotzeit〉でパンをいくつか調達して帰宅する.夕方近かったのでショーケースにはほとんど残っていなかったが.

年度末の大学では学生や教員の出入りが多いものだが,独法研究所もその点では似たようなものかもしれない(前者の場合は一方向的「フロー」だが,後者の場合は基本的に「ローテーション」というちがいはある).農環研も今月末で長年の知り合いが何人か異動していくが,送別会には出るヒマがぜんぜんなかった.

◆さ,明日からは月末のばたばた雑用が待っているぞ.そうこうするうちに年度が変わって,またトドが増えているにちがいない.原稿トドに学会トド,所内トドに所外トド,もちろん私的トドもあり.いただきものの〈阿闍梨餅〉と熱いお茶を用意して,しばしくつろぐ.

◆本日の総歩数=8769歩[うち「しっかり歩数」6391歩/59分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.計測値(前回比)=83.6kg(+0.5kg)/26.0%(−0.4%).


28 maart 2009(土) ※ 雨上がりの土曜日はトマト担々麺

◆午前5時半起床.雨上がりの曇天.湿って冷え込む.のち晴れてくる.今週は気温の低い日が続いた.昨日も早く寝たはずだが,インフルエンザ病み上がりの咳はいっこうによくならない.

◆4月の予定が埋まってきた —— プライベートでひとつ.4月19日(日)流山の某所にて,昨年暮れの松戸シティフィル〈復活〉演奏会のDVDができたそうで,その鑑賞会が予定されている.復活だ,よみがえれ,涅槃に行け./ついでに,来月の公私の予定をカレンダーに埋めこんだ.今のところ,まだすき間が多いな.トド撃ちリストは来週更新しよう.原稿トドが巨大化しつつある.

◆こういう寒い日はやっぱり辛口トマトラーメン —— 肌寒い日が続いているので,久しぶりに竹園の〈Ben-Bella〉でトマトラーメンをいただくことにした.いかにも芯からからだが暖まりそうな「ベンベラとまと担々麺」の辛口に温泉たまごをトッピング.極細麺にぴりぴり辛い挽き肉ソースがからんでいる.もちろんセールスポイントのトマトのざく切りはふんだんに入っている.最後に残ったスープに,取っておいた半熟温泉たまごをつぶしてすする.

新メニューという「豚挽き肉トマトラーメン」は,稲庭うどん並みの太めの平麺にとろみのあるスープがかかっている.同じトマトスープだが,担々麺とはちがってこちらにはぴりぴりする辛みはない.

点心としては,定番の「自家製つるんこ水餃子」をば.大ぶりのつるんとした水餃子は意外にぴりりと辛い.今日はピリ辛系の料理を注文したので,とても暖まった.

—— 長引く病み上がりにはやや刺激系の食べ物が好ましく感じられる.

◆午後4時のTX区間快速で秋葉原に出かける.所用をすませて直帰.午後7時過ぎにつくば着.晴れて暖かかったがとても疲れた.

◆車中読書:Arthur Watson『The Early Iconography of the Tree of Jesse』(1934年刊行, Oxford University Press, London, xiv + 197 pp. + 40 plates → 目次).12世紀にさかのぼる現存する最古の「エッサイの樹」とされる Saint-Denis 聖堂のステンドグラスについての記述.

◆本日の総歩数=7198歩[うち「しっかり歩数」989歩/10分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.計測値(前回比)=83.1kg(−0.2kg)/26.4%(+0.2%).


27 maart 2009(金) ※ 夜なべ丑三つ時から雨の神楽坂へ

◆午前2時に目覚める.生活リズムも睡眠リズムは徹底的に乱れまくっているという感じで,誰の目から見ても不健康の極みだ(日本酒を飲んでいる方がはるかに健康的だ).それでも,ぐずぐず言わずに,丑三つ時の真っ暗な農環研に直行する.今夜は冷えるなあと思ったら,何と言うことか気温は「マイナス1.1度」だった.上を見上げると冬のように澄み切った星空だった.

◆本の山に包囲されつつ原稿仕事の続きをする.すっかり明るくなった午前6時過ぎに脱稿:三中信宏「ダーウィン進化論の裾野と周縁(人文科学から芸術・宗教まで)」.400字詰にして8枚あまり.編集部にメール送信して,これでやっと『現代思想』から解放された.なお,今回のブックガイド企画を含む『現代思想』2009年4月臨時増刊号〈総特集=ダーウィン〉は,4月14日配本予定とのことだ(→ 青土社トップページ).

◆午前6時半,気温はプラス0.8度.氷点下ではないが地表近くは霜が降りて真っ白になっている.快晴で冷え込みなお厳しい.

◆朝のこまごま —— すっかり放置してしまった『生物科学』のゲラをチェック完了.訂正箇所・英文タイトル・キーワード選定・和文要旨を記入して,スキャン→pdf化.池袋にメールで返信し,午前10時過ぎ,この件は完了した./今日の午後2時に NHK Books の井本さんにブツを手渡すことは現実的にムリなので,一週間延ばしてもらうことにした.来週金曜日4月3日(金)の東大進学生ガイダンス日に〈ルオー〉にて年貢を納めるという手はずを整える./音羽関係の原稿とか,コンウェイ・モリスのブツとか,ここのところすっかり放置プレイ./勁草書房の原稿も進捗なし.

—— こう考えると,連日,何かしらの原稿に追われていることがよくわかるなあ.※他人事のよーに眺めてどーするって.

◆11:30の空模様は春らしい晴天,気温はプラス11.2度.昨日よりもだいぶ暖かくなってきた.農林団地の桜並木はちらほらと花が開き始めている.この分だと4月はじめが花見のクライマックスということか.毎年恒例の花見渋滞は春休みなので激化するかもしれない.

◆午後のこまごま —— そういえば,4月3日(金)は学部ガイダンス(15:45〜17:00)の直前に,大学院進学ガイダンス(14:00〜16:30)が開催されるとの連絡が入った.これは休むわけにはいかないな.結果としてこの日はすき間なく予定が詰め込まれることになった:13:00〜,〈ルオー〉で原稿わたし|14:00〜,大学院ガイダンス|15:45〜,学部ガイダンス|17:30〜,農学部歓迎会.そして,翌日からは,立教大学(池袋)で生物地理学会第64回大会がある./そんなこんなの年度はじめ「出張・兼業・年休」どもの届けを来週早々にまとめて提出しないといけない.

◆夕暮れの神楽坂のたたずまい —— 午後は年休を取っていたのでさくっと撤収.曇って気温は高い.湿度もやや高く感じる.16:25発のTX快速で東京に出た.

新御徒町で大江戸線に乗換えて飯田橋へ.地上に出たらもう夕闇が降りていた.神楽坂界隈は勤め帰りや夜遊びの人出で賑わい始めている.今日は,東京理科大の神楽坂校舎で計量生物学会の対面理事会が予定されている.この学会の用事でときどき理科大の神楽坂キャンパスに来る機会があるが,いつ来てもここはいい立地だなあとうらやましく思う.校舎そのものはまとまっているのだが,神田坂から毛細血管のように入り込む細い坂道沿いに大学の附置施設がいくつか点在している.

今日の目的地は〈森戸記念館〉という理科大の施設のひとつだ.和風の路地の奥深く,昔ながらの店構えの割烹料亭が両側に軒を連ねる一角にいきなりモダンなつくりの〈森戸記念館〉が見えてきた.このギャップにくらくらする.この数日はここを会場とする国際多重比較会議〈MCP 2009 Tokyo〉が開催されていたので,海外からの参加者はこの上もなく“日本的なる情緒”を満喫できたにちがいない.

古風で和風な灯がともされている路地からいきなり近代的証明の〈森戸記念館〉ロビーに入り,階段を上がった2階奥の会議室で定刻午後6時から理事会の始まり.5月の大阪大会に向けての準備とか,ジャーナルの電子化とか,ウェブサイトの更新作業とか.いくつかの役職に関わっているのでタスクも増えてしまう.

—— 午後8時前に理事会は終了.会館の外に出たらいつの間にか冷たい雨が降り出していた.傘もささずに雨の神楽坂をしばし徘徊し,大江戸線の飯田橋駅で地下深く沈んでいく.つくばに帰り着いたのは午後9時過ぎだった.曇り空で気温は低い.ここ数日というもの,病み上がりにもかかわらず原稿を搾り取られる夜が続いたので,かなり疲弊しているという自覚あり.一段落ついたので,とりあえずドロのように寝ることにした.そのうち冷たい雨が降り始めた.

◆往復車中読書 —— 臼田昭『イン:イギリスの宿屋のはなし』(2009年2月10日刊行,講談社[講談社学術文庫1938],東京,284pp., 本体価格960円, ISBN:978-4-06-291938-8 → 目次版元ページ).読了.あふれんばかりの雑学的知識が押寄せてくる.たのしいな.

◆本日の総歩数=16070歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜−.計測値(前回比)=未計測/未計測.


26 maart 2009(木) ※ 丑三つ時は農環研にて(第二夜)

◆前夜からそのまま続く原稿執筆.身のまわりに「本の山」が築き上がるというのは快楽だが,睡魔が次々と降臨する.午前3時過ぎに『現代思想』誌〈別巻ダーウィン特集号〉の一つ目の原稿(ブックガイド)が仕上がる:三中信宏「〈進化的総合〉とネオダーウィニズムの成立(1930〜50年代を中心に)」.400字詰にして9枚あまり.1時間ほど仮眠してから,二つ目の原稿にとりかかる.

◆午前6時の気温はプラス1.9度.これだけ冷え込むと今の季節でもぴしっと霜が降りる.路面はまだ濡れているが空はからっと晴天.

◆二つ目の原稿は,ダーウィンまわりの人々に関する内容だ(ダーウィン自身は除外する).まずは「家族・親族」,次に「同志・論敵」か.ダーウィンの場合,家族内での人間関係がとても重要なので,関連文献は見過ごせない.デズモンド&ムーア本は必読.あれこれわらわらと関係本が湧いて出る.探すのに苦労はしないが,選択に困るぞ.

◆午前のこまごま —— 生物地理学会の学会費を払っていなかった./来月の出張・年休・兼業の申請準備をしないといけない.

◆日中は好天に恵まれる —— 午前11時,快晴,気温9.2度,暖かい./午後1時,晴れときどき曇り,気温10.7度./午後3時,晴れ,気温11.2度.

◆午後5時過ぎ,二つ目のブックガイド原稿を完成させ,『現代思想』編集部にメール送信完了:三中信宏「チャールズ・ダーウィンの家族そして同時代人たち」.400字詰にして10枚ほど.あと残るはひとつ…….

◆夕方のこまごま —— 放置していた『生物科学』の「生物学哲学」特集ゲラの返送督促メールあり./勁草書房「生物学哲学」論集の鬼元締がいよいよ本格起動か.ということは,ワタクシの命運も風前の灯……./明日の NHK Books の原稿渡しはほぼ絶望的…….早々に観念するか.

◆現実逃避的新刊の束 —— ラス・カサス[長南実訳/石原保徳編]『インディアス史(全7巻)』(2009年3月17日刊行,岩波書店 → 全巻構成).1994年に刊行された岩波書店〈大航海時代叢書・第II期 〔全25巻〕〉に所収された『インディアス史(第21〜25巻)』を文庫化したそうだ.各巻の書誌情報は下記の通り:第1巻第2巻第3巻第4巻第5巻第6巻第7巻.文庫化に伴い「縮約」されているとはいえ,各巻450ページもあるので,分量は膨大だ.〈大航海時代叢書〉は高い買い物だったので,こういうかたちの「廉価版」が出るのはありがたい.

◆午後6時前に撤収.晴れてはいるものの気温8.8度.しだいに寒くなってきた.先日のインフルエンザ罹患以来,咳が止まらない.しかし,『現代思想』の三つ目の原稿がまだ残っているので,これは何としてもケリをつけるしかない.帰宅して何時間か仮眠する.夜なべ仕事も三日目ともなるとそろそろリミットが近づきつつある.

◆本日の総歩数=9659歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前回比)=83.3kg(+0.3kg)/26.2%(−0.3%).


25 maart 2009(水) ※ 丑三つ時は農環研にて(第一夜)

◆前夜からそのまま続く夜なべ仕事.本どうしの「対話」を横目に2時間ほど仮眠する.午前3時に起床して作業の続き.しかし,原稿執筆は遅々として進まず.午前4時半の気温はプラス4.8度だった.

◆明け方のこまごま —— ここのところ堆積しまくっていたメーリングリスト管理作業をちょこちょこすませる.ずーっと放置していてもうしわけありません./4月3日(金)15:45〜,専攻での進学生ガイダンス.午後5時までにさくさく終わらせるべしとのこと.午後5時半からは東大・中央食堂にて毎年恒例の農学部進学生歓迎パーティ(合同)があるから./『生物科学』の特集ゲラは放置したままだ.

◆午前10時半,曇り,気温プラス7.2度で寒い.午前11時からしばし打合せをば.昼前に雨が降りはじめた.

◆献本どうもありがとうございました —— デイビット・ウィルキンソン[金子信博訳]『生物多様な星の作り方:生態学からみた地球システム』(2009年3月20日刊行,東海大学出版会,x+229 pp.,本体価格2,000円,ISBN:978-4-486-01798-1 → 版元ページ).ついに,「生物多様な」という形容詞まで造語されてしまったか…….原題の方が違和感が少ない気がするけど.

◆日中のこまごま —— RP設計検討会は4月14日(火)13:30〜15:30に決定.場所は5階中会議室.よくわからないけど,所内検討の結果RPの名称が「農業環境情報・指標RP」と変更されたそーな(前の名前て何だったっけ?[すぐ忘れる……]).へぇ.なお,設計検討会に提出する研究計画を作成する際には,評価会議における指摘事項を勘案することという指導あり.へいへい./来月から農環研の入退出には「専用磁気カード」が必要になるとのことで,職員への配布が始まった.何も記入されていない“真っ白”なカードで芸も何もあったものではない.首から下げるカードホルダーとともに.携帯をどうしようかな.

◆さらなる献本,感謝です —— スティーブン・ピンカー[幾島幸子・桜内篤子訳]『思考する言語(上) :「ことばの意味」から人間性に迫る』(2009年3月30日刊行,日本放送出版協会[NHK Books 1130],314 pp., 本体価格1,160円, ISBN:978-4-14-091130-3 → 版元ページ)/スティーブン・ピンカー[幾島幸子・桜内篤子訳]『思考する言語(中) :「ことばの意味」から人間性に迫る』(2009年3月30日刊行,日本放送出版協会[NHK Books 1131],330 pp., 本体価格1,160円, ISBN:978-4-14-091131-0 → 版元ページ).残る「下巻」はきっと来月刊行予定でしょうね.

◆午後4時過ぎに早々と撤収.冷たい雨,気温はプラス6.3度.しかし,帰宅しても仕事ができるわけではないので,午後11時過ぎに再び農環研に潜入する.雨はもうやんで雲間に星空が覗いていたが,気温は下がり続けている.こういう夜中に作業をするのはつらいな.日が変わる前の気温は3.6度だった.マーラーが鳴り響く.ハンマーがどかん!と2発.

◆本日の総歩数=11280歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前回比)=83.0kg(+0.1kg)/26.5%(+0.1%).


24 maart 2009(火) ※ 銀杏のガウンがはためく安田講堂

◆午前6時起床.曇りのち晴れ.北風が強くて寒い.咳止まず.

◆そろそろ仕事に復帰しないと —— 差し迫っては,明日25日(水)が締切の『現代思想』誌〈ダーウィン特集〉のブックガイド原稿を何とかしないといけない.今夜からイッキに勝負をかけるしかないか.「ダーウィン同時代人」,「The New Synthesis」,そして「ダーウィンの余波」の三題./もうひとつは27日(金)に飯田橋で渡す予定の,これまたダーウィン関連原稿.う……(汗).

◆訃報:Marjorie Glicksman Grene(1910-2009) —— 生物学哲学の研究者として知られている Marjorie Grene がつい最近(3月16日)亡くなったことを知った(→ Virginia Tech の追悼記事).享年98歳.その記事を読むと,彼女は大陸の生物哲学者たち(Adolf Portmann, Bernhard Rensch, Rupert Riedl ら),そしてアメリカでの同年代の Ernst Mayr, Theodosius Dobzhansky, そして G. Ledyard Stebbins から大きな影響を受けたという.The Modern Synthesis の「ど真ん中」で思想形成をしてきたということか.

関連メモクリップ:Randall E. Auxier and Lewis Edwin Hahn (eds.)『The Philosophy of Marjorie Grene』(2002年刊行, The Library of Living Philosophers 29, Open Court, La Salle, ISBN:0-8126-9526-7 [hbk] / ISBN:0-8126-9527-5 [pbk] → 版元ページ)/Jean Gayon and Richard M. Burian (eds.)『Conceptions de la Science: Hier, Aujourd'hui, Demain - Hommage à Marjorie Grene』(2007年刊行,Ousia, Bruxelles, ISBN:2-87060-132-8 → 版元トップページ).

◆今日もまた本郷へ —— 寒い曇天のもと12:25発の TX 快速で根津に向かう.今日は東大の学部卒業式だ.午後1時過ぎ,卒業式の式典が終わった安田講堂の周囲では,当事者はともかく傍目にはかなりはずかしいガウン姿(制定されてから数年経つが違和感があるなあ)の卒業生を取り巻く家族らしき一群があちこちで記念撮影しているのはこの時期ならではの光景だ.とくに,時計台のちょうど真下で花ほころびつつある桜の樹は格好の撮影スポットだった.時計台から正門にかけてよりも,赤門あたりの方がきっとさらに混んでいるにちがいない.おめでとうございます.

昨日の月曜は春めいていたが,今日は寒気が入ったせいで本来の肌寒さにもどった感がある.ドーバー海峡を越えて農学部キャンパスへ.午後2時から7号館奥の同じ講義室にて専攻の卒業証書授与式が始まった.半時間ほどで終わり.午後4時からはここで謝恩会が予定されているが,病み上がりだし,せっかくの卒業生たちにインフルエンザ・ウィルスをまき散らすのも気が引けるので,さくっと退出して,根津方面に降りる.

ダメージからまだ完全復帰できていないので,ここ数日は「本腹」はあいかわらず調子がよくない.しかし,あえなく行き倒れるわけではけっしてなく,「〈芋甚〉に立ち寄るべし」との天の声がいずこからか聞こえ,ふらふらと店内に誘引される.この店には「御膳しるこ」と「田舎しるこ」に二種類があることを初めて知った.しかし,今日の「別腹」さまは,迷うことなく「〈アベックまめかん〉をひとつっ!」と注文するようワタシに命令した.名物の小倉アイスとシンプルなバニラアイスがひと玉ずつ乗ったまめかんをいただくシアワセ.

◆つくばに帰り着いたのは午後4時過ぎだった.昨日も今日もセレモニーに出席するだけのトンボ帰り.

◆しかし,夜はまだ長い —— 午後9時過ぎに農環研に忍び込む.曇り空.気温プラス6.1度.これからが原稿執筆のための時間となる.『現代思想』の三本はいずれもブックガイドなので,何よりもまず本を積み上げて砦をつくらないことには話にならない.日が変わる頃まで関連する本のセレクション作業.そして,いくつかの堆積をつくった上で照明を落とす.真夜中のBGMはバッハの〈無伴奏チェロ組曲〉をば.あとは本どうしで対話をしていただければ何とかなる.よろしく.

◆本日の総歩数=12132歩[うち「しっかり歩数」3700歩/34分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前回比)=82.9kg(−0.4kg)/26.4%(+0.1%).


23 maart 2009(月) ※ 辛夷が散って桜花がほころぶ弥生

◆午前6時起床.雨上がりの快晴.風なし.気温は高め.咳止まず.

◆本郷へ —— 12:30発の TX 区間快速で東京に出る.根津の坂を上がる.南風が強くて,気温は高い.午後2時前に東大農学部に入る.午後2時から専攻の大学院・学位授与式.全体セレモニーは別に挙行されたが,個別の学位授与式はそれぞれの専攻ごとに行われる.会場は,いつも専攻の発表会や交流会をしている7号館1階奥の教室だ.教壇に生け花が用意されているので初めてセレモニーであることがわかる.大学院はもともと在籍人数が少ないので,授与式そのものは半時間もかからずに終わってしまった.

農学部構内では早くも桜の花がほころび始めていた.地震研からS坂に抜けて根津神社に降りると,先日満開だった辛夷はもう散っていた.足早に季節が進んでいく.寄り道せずにつくばに直帰.午後4時過ぎにつくばセンターの地上に上がったら,曇り空で北風が吹きつけ,気温がぐんと下がっていた.のどにこたえるなあ.

◆R本の近刊メモ —— 青木繁伸『Rによる統計解析』(2009年4月刊行予定,オーム社,ISBN:978-4-274-06757-0 → 版元ページ).しばらく前まで群馬大学の著者サイトで公開されていたR本(pdfファイル)をベースにして新刊だろう./金明哲(編)『Rで学ぶデータサイエンス(全8巻)』(刊行準備中,共立出版 → 版元ページ).これはまたR本を「シリーズ」で出すとは.予定されているタイトルは:『カテゴリカルデータ解析』・『多変量データ解析』・『ベイズ統計データ解析』・『ブートストラップ入門』・『パターン認識』・『マシンラーニング』・『空間データ解析』・『ネットワーク分析』.

—— これだけ大量の「R本」が日本語で出ることになるとは予想していなかった.そろそろ初学者のための「R本ガイドマップ」が次に必要になるかもしれない.

◆明日もまた午後は東大に出向いて,今度は学部の卒業セレモニーに出席する予定.それにしても病み上がりの下り坂はなかなか降りきらないな.

◆本日の総歩数=未計測[うち「しっかり歩数」未計測].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前回比)=83.3kg(+0.4kg)/26.3%(−0.2%).


22 maart 2009(日) ※ 連休最終日にぼちぼちと回復する

◆午前6時前に起床.曇り.数日ぶりに早朝の農環研に潜入する.気温プラス7.4度.南風が強い.ほぼ復調したが,のどの調子はまだよろしくない.腹の具合はさらにイマイチだ.

◆ちょっと元気になるとまたぞろ「本の虫」が —— Michel Pastoureau (ed.)『L'arbre: histoire naturelle et symbolique de l'arbre du bois et du fruit au Moyen Age』(1993年3月刊行,Le Léopard d'Or [Cahiers du Léopard d'Or 2], 220 pp., ISBN:2-86-377-112-4 [pbk] → 目次).広い意味での「樹」の中世図像学史に関する論集.家系図のような比喩的な「樹」だけでなく,実際の植物としての「樹」に関するエッセイもある.7世紀のセビリアのイシドール(Isidore de Séville)がまとめた百科辞典『語源論(Etymologiae)』には,もっとも古い家系図の図像(家系樹)が拾われていると Klapisch-Zuber の章に書かれている.また,14世紀のボッカッチオがつくった『神聖系譜(Genealogia Deorum)』にも惹かれるものがある.キリがない.

情報クリップ(1):イシドール『語源論』全20巻の「紙」版はいまでも Oxford University Press から入手できるようだが,それとは別にオンライン版もある.ただし,このオンライン版はテキスト本文のみで,図版は載っていないようだ.慶應義塾大学のデジタルライブラリーには15世紀の『語源論』写本の精彩画像が公開されている.

情報クリップ(2):ボッカッチオ『神聖系譜』は前世紀初頭に図版が復刻出版されているらしい:Ernest Hatch Wilkins (ed.)『The Trees of the Genealogia Deorum of Boccaccio』(1923年刊行,The Caxton Club, Chicago, xii + 21pp. +24 pls., 160部限定出版).機会があれば現物を見たいものだ.

◆日中は晴れときどき曇りで南風が吹き荒れていた.午後は雲が厚くなってときどき雨が.午後5時以降は本降りになった.

◆この一週間はインフルエンザで踏んだり蹴ったりだったが,明日と明後日は午後に東大の卒業式がある.セレモニーに出席するだけなのでとくに負担にはならないだろう.

◆本日の総歩数=5710歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前回比)=82.9kg(−1.0kg)/26.5%(−0.8%).


21 maart 2009(土) ※ 連休中日の陽気にぜいぜい咳込む

◆午前6時起床.快晴.北風が強くて気温は低い.しつこい熱もやっと36度台の平熱にもどった.ところが,今度はのどの調子が悪くなって,やたらにせきこむ.腹の調子もいまひとつだ.

◆日中は汗ばむほどの陽気になり,自動車でちょっと外出しただけなのにとても疲れてしまった.夕方になって曇り空,南風が強くなってきた.

◆どうやら今年の花粉シーズンはやっと終盤にさしかかっているらしい.しかし,ここ数日のインフルエンザ騒ぎで料理も原稿も仕事もすべてが放置されてしまった.明日からは復帰するようにできるだけ頑張ってみよう.今夜はもう一晩しずかに眠ることにしよう.

◆本日の総歩数=8464歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.計測値(前回比)=83.9kg(+0.1kg)/27.3%(+1.0%).


20 maart 2009(金) ※ 病み上がりな春分の日は動作停止

◆午前6時起床.曇りのち雨.36.9度の微熱の朝.朝のうちはしとしとと春雨が降り続いたが,午前10時にはあがって.午後はもう晴れてきた.

◆体調的には病み上がりなのだろうが,これで油断して人のいるところに混ざり込むと,ウィルス感染源という汚名が待ち受けている.ということで,明日21日(土)に町田で予定されている東京農大・昆研の卒業謝恩会は欠席することに決めた./農大つながりもうひとつ.4月10日(金)17:00から,農大グリーンアカデミーホール(世田谷)にて,生物応用化学科の教育懇親会が開催されるとのアナウンスあり.こちらの方は日程的にも健康的にも問題はないにちがいないので,出席との返事を出すことにした.

◆午後から夜にかけても37度前後の熱の上下が続く.そのつどタテになったりヨコになったりして時間が過ぎていった.

◆本日の総歩数=0歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前回比)=83.8kg(−0.5kg)/26.3%(−0.8%).


19 maart 2009(木) ※ インフルエンザB型患者の休息日

◆変に早寝をする生活が続いているので,丑三つ時に目が覚めたり,明け方に起き上がったりする.熱は38度前後を推移する.今日はほんとうは午前を年休にして別件に参加する予定だったのだがもうそれどころではない.午前中に医者に行ったところ,あっさり「インフルエンザB型です」との見立てだった.こりゃ本格的に病人じゃないか.熱が続いてアタマも痛いし,鼻はぐすぐすいいっぱなしだし,腹の調子も絶不調だ.

◆帰宅後はひたすらふとんにくるまって養生したが,すぐによくなるわけではない.夕暮れ時に思わぬ大王が降臨し,あわてふためいて善後策に追われる.春休みなんぞあってなきがごとし.晩御飯をちょっとだけ口にして,再び就寝体勢に入る.熱は37度台を上がったり下がったりしている.

◆とにかくひたすら寝て過ごした一日だったので他に何も書くことがない.

◆本日の総歩数=3855歩[うち「しっかり歩数」972歩/10分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.計測値(前回比)=84.3kg(−0.7kg)/27.1%(+0.6%).


18 maart 2009(水) ※ 春爛漫の東京ではもう辛夷の花が

◆午前6時起床.春霞.昨夜は早く寝たにもかかわらず何度も途中で目が覚めてしまった.体温は37度前後の微妙な状態.しばらくごろごろしてようすを見る.

◆もう春爛漫の根津裏門坂 —— 11:25発の TX 快速で東京に出る.千駄木で降りてぶらぶらする.霞んだ春の空に満開の辛夷の白い花が映える.桜の開花が間近との予想はむべなるかな.半袖の通行人が目立つほど気温は高くなってきた.もちろん20度超だろう.

◆12:50〜14:30 まで専攻教員会議.今年最後の会議だ.年度末なので人の異動も多く,また新年度の体制づくりとか専攻内委員会委員の委嘱とかいろいろと.今日の夕方は専攻送別会が予定されているが,ぼくは欠席します.もともと別の予定が入っていたから参加できないことはわかっていたのだが,それ以上に体調ゼツアクで,とにもかくにもつくばに帰り着くことをまず考えるしかない.

◆午後4時過ぎにつくば着.帰宅して体温を測ってみたら「38度」をかる〜く越えていた.やばい.からだの節々もだるくて痛い.もう寝るしかない.明日は朝イチで医者に直行だ.

◆本日の総歩数=7744歩[うち「しっかり歩数」2382歩/22分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.計測値(前回比)=85.0kg(−0.6kg)/26.5%(−1.3%).


17 maart 2009(火) ※ 陽気と黄砂と花粉で微熱にかかる

◆午前4時半起床.半欠けの月が夜明け前の霞んだ夜空に浮かぶ.気温プラス3.3度.朝から雲が多くて,北風が強い.ときどき明るい空から小雨がぱらぱら降ってくる.

◆午前のこまごま —— 農環研の「全所送別会」の通知.3月27日(金)夕方.しかし,この日は計量生物学会の理事会が都内であるので,送別会は欠席とする.農環研のような組織では頻繁に人が入れ替わるのがふつうだが(独法になってからはそれほどでもないか),ぼくの場合はフシギなほど「どこそこへ行け」という類の異動の話がない.要するに「異動困難者」ということでしょうか.※居室にはいまも日々崩落している本の“ボタ山”があるし…….

◆ネマトーダにも春が来る —— ということで,線虫の分子系統の共著論文が出ました:Majid Olia, Wasim Ahmad, Masaaki Araki, Nobuhiro Minaka, Hirosuke Oba and Hiroaki Okada (2008):Actus salvadoricus Baqri and Jairajpuri (Monochida: Mylonchulidae) from Japan with comment on the phylogenetic position of the genus Actus based on 18S rDNA sequences. Japanese Journal of Nematology, 38(2): 57-69. 所内の成果登録はすでに完了しました.

◆正午,曇り空で気温は12.6度.午後になって晴れ間がのぞくとともにさらに気温上昇.午後2時には17.7度に達した.黄砂と花粉でふがふがする.何だかからだのふしぶしが痛いようなだるいような感じが.

◆日本人はゲーテが大好きっ —— ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ[木村直司編訳]『ゲーテ形態学論集・植物篇』(2009年3月10日刊行,筑摩書房[ちくま学芸文庫ケ-6-2],465 pp., 本体価格1,500円,ISBN:978-4-480-09185-7 → 目次版元ページ).「もるふぉろぎー」です,「Urpflanzen」です,「メタモルフォーゼ」です.このように「植物篇」があれば,当然「動物篇」の続刊を期待してしまう.はい,本書の目次には,来月にも?出版されるであろう「動物篇」の目次がすでに掲げられていて,「観相学」と「動物学」に大別されて編集されるようだ.

◆午後のこまごま —— 来年度のフレックスタイムの申告用紙が届いた.ぜんぜん知らなかったが,来年度以降は毎日の労働時間が「15分間短縮」されるのだという.ほー.速攻で「朝型変更」を届出完了.

◆午後4時過ぎに撤収する.遠景の筑波山がぼんやりしているのは黄砂のせいか.それよりもこのだるさはあまりよろしからぬ兆候だ.

帰宅後に体温を測ってみたら,案の定「37.5度」もある.微熱状態.そういえば,のどがひりひりするような気もする.ここのところ空気がとことんまで乾いているのでどこぞでワルい風邪にやられてしまったか.しかし,こういう「ちょいワル」の体調のときはクスリなんぞを飲まずに,別のものを呑んで安静にしなければならないことはわかっている.そこで,先日手に入れた鳥取・山根酒造場〈日置桜〉の季節限定「無垢之酒」(純米吟醸生原酒あらばしり)を菜の花をつまみにしてちょっといただいてと.酒米は「強力」ではなく「山田錦」ですが,しっかりと造られている.体調がよければもっとエンジョイできるにちがいないので,今日はほどほどにしておこう.

—— 今の季節は方々の蔵元から「無垢之酒」と銘打った新酒が出ますが,キャンペーン展開なんですかね.ちょっと調べてみると,〈日本名門酒会〉が展開している「無垢之酒キャンペーン」の9銘柄のひとつが〈日置桜〉の「無垢之酒」だった.

—— 「桜」と「菜の花」ですっかり春めいたので,今夜はもうおとなしく寝るしかない.午後8時にご就寝.明日は東京出張があるので,根性で回復するぞ.

◆本日の総歩数=8268歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜○.計測値(前回比)=85.6kg(+0.4kg)/27.8%(+2.1%).


16 maart 2009(月) ※ 春めく暖かさにカモとプリンセス

◆午前5時起床.快晴.早朝は肌寒くても,日がのぼるにつれてすぐに暖かくなる.春らしい陽気.天気予報では関東地方は20度を越えるところもあるらしい.

◆今週は静かな農環研 —— 今週は生態学会をはじめ「春の学会シーズン」に入っているらしく,いつもより所内が静かだ.

◆ローレンツつながり(さらに) —— 地球は想像以上に小さくなってしまったのだろうか.つい一昨日オンライン発注した古書がドイツから速攻で届いてしまった:Konrad Lorenz『Comparative studies on the behaviour of the Anatinæ』(刊行年不詳[1953年以降?], Reprinted from the Avicultural Magazine, 87 pp., The Avicultural Society, London).

カモ亜科(Anatinae)の比較行動に関する Konrad Lorenz の連載翻訳論文:Konrad Lorenz (1953), Comparative studies on the behaviour of the Anatinae. Avicultural Magazine, 57:157-182 (1951), 58:1-17, 61-72, 86-93, 172-183 (1952)をまとめたもの.「本」としての出版年は不祥だが,雑誌連載が「1951〜52年」であることは確定しているので,版元の学会があとで別刷としてまとめて出版したのだろう.ソフトカバー製本されている.届いた本の前所有者は,アメリカの著名な動物行動学者 Daniel S. Lehrman で,彼の蔵書印が押されている.Avicultural Magazine という雑誌は,どこかの「鳥」の研究室なら片隅にありそうなものだが,国内にはほとんど公的所蔵されていないようだ.

本書の p. 80 以降の「Summary」を読むと,行動形質からの共有派生形質に基づく系統推定の方針が詳しく解説されている.行動形質状態の原始性・派生性を見極めた上での系統樹の段階的構築の手順が示されている.「分岐学的」方法がここでもまた“独立に”提示されていることが分かる.ローレンツの系統推定法に最初に関心をもったのは,Robin Craw の分岐学史の論文:Robin C. Craw (1992), Margins of cladistics: Identity, difference and place in the emergence of phylogenetic systematics 1864-1975. Pp.65-107 in: P. Griffiths (ed.), Trees of Life: Essays in Philosophy of Biology. Kluwer, Dordrecht だった.植物学者 Walther Zimmermann とともに,ローレンツが分岐学の先駆者のひとりとして挙げられていた.

この英訳連載のもとになった長文の独語論文:Konrad Lorenz (1941), Vergleichende Bewegungsstudien an Anatinen. Journal für Ornithologie, 89: 194-293 が分岐学的方法の先駆とされる論文だ.これについてもさらに情報が得られた.第二次世界大戦の戦火が激しくなってきたころに発行されたせいか,この Journal für Ornithologie もまた日本にはほとんど所蔵がないらしい.しかし,ローレンツのこの論文については,幸いなことに彼の論文集第2巻:Konrad Lorenz『Über tierisches und menschliches Verhalten: Aus dem Werdegang der Verhaltenslehre. Gesammelte Abhandlungen Band II』(1967年刊行,Piper)に再録されていることがわかった(pp. 12-113).しかもこの2巻本の論文集は,今から30年も前に和訳されていた:コンラート・ローレンツ[丘直通・日高敏隆訳]『動物行動学・2上』(1979年刊行,思索社,全4冊).何ということか.うっかり見過ごしていた.

第二次世界大戦末期にローレンツがソヴィエトに抑留されていたころにまとめた『ロシア草稿』:Konrad Lorenz[Agnes von Cranach 編/Robert D. Martin 訳]『The Natural Science of the Human Species: An Introduction to Comparative Behavioral Research - The "Russian Manuscript" (1944-1948)』.(1996年刊行, The MIT Press, Cambridge, xliv+337pp., ISBN:0262121905 → 書評)の中にある脊椎動物の系統樹(p. 107, fig. 2)もまた,1941年の系統樹スタイル,すなわち共有派生形質にもとづいて複数の系譜(lineage)を“束ねる”というスタイルに則って描かれていた.

◆ぽかぽかと暖かい正午過ぎ.春らしいかすんだ晴天.気温は16.7度もある.花も咲きます,蝶も飛びます.そんな昼休みに読了しました:万城目学『プリンセス・トヨトミ』(2009年3月1日刊行,文藝春秋,税込定価1,650円,512 pp.,ISBN:978-4-16-327880-3 → 版元ページ).京都の「鬼」の次は,奈良の「鹿」,そして三都物語の最後の大阪はコレできましたか.ヒミツの「合図」とともにグローバル・パターンを目指して,いっせいに動き出す大阪のオトコたち.私たちが訳したカマジン本では,「リーダー」による指令(すなわち「合図」)に基づくパターン形成は,自己組織化ではない典型例だ.『プリンセス・トヨトミ』の場合,もちろん「うわべの影のリーダー(♂)」が大坂城まわりのグローバル・パターンの総指揮をとっているのだが,人口の残る半分を占めるオンナたちはいったい何をしていたのか(それは最後にわかる).このようなオモテとウラの大阪,さらにオトコとオンナの世界を分断するプロットのなかで,必然的にオモテとウラを行き来するだけでなく,たまたま個人的事情でオトコとオンナの世界をも行き来することになった「大輔」くんこそ,頼りなげでありながら,実は主役だったのだ.

◆午後のこまごま —— 庶務から電話で出張届の書き換えと再提出を指示される.書き換えくらいなんぼでもやりまっせ〜./【種】の原稿,いただきました.ありがとうございます.読ませていただきます.

◆午後4時過ぎに早々に撤収する.気温は14.7度.夕暮れが遅くなり,その分,日中の暖かさが尾を引いている.夜はこまごまと時間が削り取られてですね…….

◆本日の総歩数=4273歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=85.2kg(−0.2kg)/25.7%(−1.4%).


15 maart 2009(日) ※ 兇悪前線が通り過ぎて髪を切る日

◆午前6時起床.昨日あれほど荒れ狂った低気圧と前線が通過して,一時的に冬型の気圧配置になった.快晴で北風とても強し.早朝は久しぶりに冷え込んだ.

◆朝イチで髪を切ったので,首筋と耳元が強い寒風になでられてすーすーする.

◆『Nullius in Verba』電子版 —— Gary Nelson さんがアメリカ自然史博物館にいたころに私的に出版した:Gareth Nelson (1996), Nullius in Verba. Published be the author, 16 pp.を送ってもらったのはもう10年以上前のことだった.それは,three-item analysis に関する論考だった.しかし,こういうプライベートな出版物は個人的なつてがないかぎり入手できない.

その後,1998年にサンパウロで Hennig Society Meeting(→〈Hennig XVII〉)があったとき,会場となったサンパウロ大学が出版する Journal of Comparative Biology という雑誌にリプリントされていることを知った:Gareth Nelson (1996), Nullius in Verba. Journal of Comparative Biology, 1: 141-152.

ところが,数年前,もっとメジャーな雑誌に再び復刻されていることを(今になって)知ったので,備忘メモクリップ:David M. Williams and Malte C. Ebach (2005), Drowning by Numbers: Rereading Nelson's “Nullius in Verba”. The Botanical Review, 71(4): 415-447(→ BioOne Online Journals | pdf [618KB]). この論文の「Appendix (pp. 430-447)」として,“Nullius in Verba”が復刻されている.

◆午後は要請により大量の五目豆を炊いた.豆,もう見たくない…….

◆なんやかんやで週末が終わってしまった.

◆本日の総歩数=4519歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=85.4kg(+0.6kg)/27.1%(+0.5%).


14 maart 2009(土) ※ 暴風雨の朝,カスレの昼,夕焼け

◆午前5時起床.風雨強し.気温は高めに推移する.そのうち,暴風雨の様相となり,午前8時頃がクライマックスで,一寸見には季節はずれの台風のような吹き降り.午前9時過ぎには風のピークは過ぎたが,雨は降り続いている.

◆ローレンツつながり —— Konrad Lorenz の昔の論文が古書に出ていた:Konrad Lorenz (1953), Comparative studies on the behaviour of the Anatinae. Avicultural Magazine, 57-59: 1-87. 以前参照したときはその一部分のみだったが,連載された全体をコンパイルした古書らしい.届くのを待ちましょう.もとの独語論文は:Konrad Lorenz (1941), Vergleichende Bewegungsstudien an Anatinen. Journal für Ornithologie, 89: 194-294. 行動形質の「系統樹」を描いた初期の論文のひとつ.どちらも巻号頁があやふやだったが,現物を手にすればそういう書誌事項は確定するにちがいない.

◆けっきょく〈Staub〉の勝利か —— まだ雨が降り続いている昼前に,苅間の集落のなかにある〈La Maison de Campagne〉で,先月からメニューに乗るようになった「ココット・ランチ」をいただいてきた(要事前予約).今月のメインディッシュとして「茨城県産ハーブ豚のカスレ」を,〈Staub〉のココット鍋で調理したものを出してくれるという.〈La Maison de Campagne〉は,ここ数年,つくばで増えてきた「民家風レストラン」のひとつで,場所的には苅間の集落のどまんなかにあって,最初はアクセスに難儀するかもしれない.他人にうまく説明できない「たどりつけなさ」もまた店の特徴ということでして.

「カスレ(cassoulet)」(→ Wikipedia)は,もともと南仏の郷土料理で,肉と豆を煮込んでオーブンで調理する料理だそうだ.ブラジルの郷土料理「フェイジョアーダ」のようなものか.今日のランチに供された「カスレ」は,豚バラ肉とソーセージを白インゲン豆とともに熱々に煮込んだもの.ボリュームも十分あり,もっと寒い時期には体の芯から暖まりそうな郷土料理だった.〈Staub〉の鍋があればきっと家でもつくれそう.

カスレの味つけ自体はとてもシンプルで,ほとんど塩味だけではないかと感じた.逆にいえば,それだけ手間ひまかけて仕込まれているということだろう.豚バラ肉の甘味と豆の甘味がうまく調和していて,夜だったらきっとフランスワインを合わせたくなったにちがいない.女性シェフにどんなワインが合いますかと訊いたところ,ライトボディの赤ワインがとても合いますとのこと.ラングドック地方のカスレとか,アルザス地方のシュークルートにはそれぞれの地方のワインが似合うという.

—— テーブルに登場した〈Staub〉のココット鍋は,最後までカスレの熱を逃がさなかった.まさに「鍋の勝利」を痛感したしだい.※そのうちぜひとも買わないと.

◆雨は夕方近くまで降り続いたが,午後4時過ぎにはやっと小止みになった.西の空に何条もの「ヤコブの梯子」が現われて,荒れ模様だった空もやっと浄化されたようだ.それとともに,気温がしだいに下がってきた.

◆明日は久しぶりの朝イチ“剃髪”です.何ヶ月かずっと放置していた蓬髪をバッサリと.

◆本日の総歩数=6013歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.計測値(前回比)=84.8kg(−0.6kg)/26.6%(−0.2%).


13 maart 2009(金) ※ 東京に出奔するも風雨に翻弄され

◆午前4時半起床.薄曇りの空にぼやけた月が浮かぶ.春らしいかすんだ空模様.プラス2.4度.

◆午前10時,晴れ,8.5度.朝のうちちょっとだけ農環研に顔を出すも,まとまった時間は取れず,またばたばたと用意して帰宅する.午後は半日年休を取っている.

◆「さあ,電子化しましょー」会議への動員 —— JR浜松町に降り立ったのはもう12時半を過ぎたころだった.つい習慣で羽田空港行きのモノレールに乗りそうになり,あわてて逆戻り.かつてはここで下車して竹芝桟橋から伊豆諸島へのフェリーに乗ったこともよくあったがずいぶん昔のことだ.今日の目的地は竹芝桟橋とは逆の芝公園側にある〈メルパルク東京〉だ.曇り空で,予報通り天気は下り坂.

午後1時から,〈メルパルク東京〉5階の「瑞雲の間」で,JSTが推進している〈J-STAGE / Journal@rchive〉事業の説明会に,日本計量生物学会の代表として参加することになっている.金ぴかのゴージャスなきらきら内装にくらくらしつつ,話を聞く.〈J-STAGE〉は学会誌のカレントナンバーに関する電子化事業であり,〈Journal@rchive〉はバックナンバーすべての電子化事業と位置づけられている.〈J-STAGE〉説明会には何年か前に別の学会の代表として参加したことがある.当時に比べれば作業がシステム化されていて,いくつかの条件をクリアしている学会にとっては,制度的に参画しやすくなっているように感じた.

ただし,説明の中でも強調されていたように,学会側が乗り越えなければならないハードルのいくつかはなお高いようだ.とくに,電子化する場合の「著作権処理」にからむすべての作業が各学会に委ねられているという点は,その事務作業量(学会会則に copyright transfer が明記されていない過去の著作権者を探索して了解を得ること;著作権者の探索をやりつくした上でなお不明であったばあいのリスク評価;文化庁長官の「複製権」と「公衆送信権」に関する裁定を得る場合の手間と金銭的負担など)を考えると,よほど事前に学会内の体制づくりを整えておかないとムリだろうと感じた.

というわけで,計量生物学会としては時期尚早かなという感触を得たのだが,今回の事業にアプライするしないに関係なく,以下の点を確認しておくことは学会として重要であるとの説明者の意見には同意できた:

  1. 学会の創立と沿革を確認すること.バックナンバーを電子化する〈Journal@rchive〉事業では,当該ジャーナルだけでなく,その「祖先」誌すべても電子化の対象になる,とくに歴史の長い大きな学会の場合,ジャーナルが“分岐的進化”を遂げていることがあり,祖先誌あるいは姉妹誌との“系統関係”の正確な究明は学会史をたどることから始まる.
  2. 著作権にからむ扱いを明確にすること.まず,著作権者が学会にあることを明記した会則がいつから発効したかの確認をすること.これにより,著作権者との交渉をどのように進めればよいかがちがってくる.
  3. 学会誌のコンプリート・セットをそろえておくこと.いざ電子化しようとしたとき,創刊号からすべての「紙」媒体としてのジャーナル1セットをJSTに手渡す必要がある.ところが,これがなかなかうまくいかなくて,どうしても欠号が出てきてしまうとのこと.

いずれももっともな指摘だろう.思い当たる学会関係者はきっと少なくないにちがいない.

◆今回のJST説明会で配布された資料のひとつ:「参考文献の役割と書き方:科学技術情報流通技術基準(SIST)の活用」(2008年12月10日発行,JST)は参考になった.電子文献に関しては,「電子文献引用規格〈ISO 690-2〉」に準拠しているようだが,多少ちがいもある.この〈SIST〉がどれくらい普及しているのかは知らない(国内のみ?).

◆外に出たら,風が強まり小雨がぱらついていた.そのうち風が強まってきた.つくばに帰り着いたのは午後5時半だった.夜になって雨は本降りになってきた.

◆本日の総歩数=15964歩[うち「しっかり歩数」1903歩/18分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.計測値(前回比)=85.4kg(−0.2kg)/26.8%(+0.1%).


12 maart 2009(木) ※ つくばにいるとテポドンが落ちる

◆午前5時起床.晴れ.気温はプラス1.4度.霜柱が立つ明け方.今日はおとなしく農環研に実在してます.

◆午前のこまごま —— ふと思い出して,先月依頼されていた系統推定のコンサルタント業務にケリをつける.nexusデータファイルをつくっていくつか計算し,ツリーファイルなど出力一式を相手方に送る./新年度はじめのRP設計検討会の日程に関する調整.来月の自分の予定を記入しつつ,空いている日をチェックする.

◆テポドン第一弾は初台から —— 昼前に,庶務から「重い段ボール箱が届きましたから台車で」との電話連絡あり.海游舎からカマジン本10冊しめて十キロが届いていた.とりあえず,農環研図書室に一冊寄贈して,あとはアタリのありそうな方々にお送りさせていただきます.

◆新学期の予定チェック —— 東京農大(世田谷)の生物統計学講義が,昨年と同じく夏学期の月曜第4限(14:40〜16:10)に開講される.カレンダーを見ると,6月22日(月)〜26日(金)にシンガポール植物園である〈Hennig XXVIII〉と7月5日(日)〜7月10日(金)にベラクルス(メキシコ)で開催される〈ICSEB-VII〉のため,2回の休講をしないといけない.

◆午後のこまごま —— あさってが締切の業績報告書の作成.コピーしたり,申請書をひとつひとつ添付したりと.午後2時半にどさっと提出完了./しばらく放置していたメーリングリスト関連の管理作業をまとめてすます.これら微小トドたちが去ったあとには,隠れ巨大トドどもが再び姿を現した.昨年来の越年トドも実はまだいたりするが,撃ち果せないまま…….

◆テポドン第二弾はイギリスから —— 先日発注したダーウィン書簡集の最新刊がもう届いた:Frederick Burckhardt et al (eds.)『The Correspondence of Charles Darwin, Volume 16: 1868 (Part I & II)』(2008年6月刊行,Cambridge University Press, Cambridge, ISBN:978-0-521-51836-9 [set] → 版元ページ).ダーウィン産業の一大プロジェクトである〈Darwin Correspondence Project〉のアウトプットの最新刊.これまでの書簡集『The Correspondence of Charles Darwin』の既刊(第1〜15巻)はいずれも単一巻だったが,今回出た第16巻はついに二巻分冊となった(半年分で一冊ということ):

  1. The Correspondence of Charles Darwin, Volume 16: 1868 (Part I), January - June 』(xlvi, pp. 1-604, ISBN:978-0-521-88195-1)
  2. The Correspondence of Charles Darwin, Volume 16: 1868 (Part II), July - December』(vi, pp. 605-1252, ISBN:978-0-521-88196-8)

分冊になったとはいえ,上下巻とも600ページ超の厚さがある.

◆午後5時前に撤収する.館外に出るたびに鼻が敏感にぐすぐすする.花粉飛散量ピークの今の時期はできるだけ外には出ないにかぎる.

◆テポドン第三弾は音羽から —— 帰宅したら,講談社からコンウェイ・モリスの訳本『生命の選択肢』の再校ゲラがどかんと届いていた.着弾したのは本文のみ500ページ分で,厚さにして3センチの紙の束だ.さらに加えて,おびただしい脚注を入れれば700ページになるらしい.月末までにチェックせよとのお達しだが,さてどーしましょ.その前に何本かの別件のフラッグが激しく振られることになっている.

◆明日は午後から半日年休でまたまた東京に出奔することになっている.午前中はおとなしく仕事をする予定.

◆本日の総歩数=8751歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=85.6kg(+0.1kg)/26.7%(+0.9%).


11 maart 2009(水) ※ 本郷にて原稿年貢を絞り取られる

◆午前4時半起床.快晴で日の出が鮮やか.冷え込む.その後も北風が強く吹きつける.午前9時半の気温は6.6度.

◆午前の原稿書き —— もうあとがないので正午までは原稿を書きまくる.昼休み,あわてて撤収する.午後は年休.晴れときどき曇り空.北風が強くて寒い.12:30発のTX区間快速で東京に出る.車中でも原稿書き.入試合格者が掲示されている東大キャンパスを貫通して,正門前の本郷〈ルオー〉にたどり着いたのは午後2時前だった.

一休みするヒマもなく,原稿書きの続き.とりあえず『分類思考の世界[仮]』の「プロローグ」だけは完成させたい.午後2時半に講談社・川治さんの到着.編集者を前にして原稿を書き続けるというドロナワは,前著『系統樹思考の世界』のときにさんざん繰り返したが,またその轍を踏むことになろうとは.

さらに1時間ほど格闘したあげく,午後3時半に「プロローグ」原稿ファイルをUSB で手渡す.400字詰にして15枚弱.最後の方は少し加筆しないといけない.ほかに,「インテルメッツォ」と「エピローグ」を用意する必要がある.

『分類思考の世界[仮]』の出版予定は今年6月とのことで,逆算するとゴールデンウィーク前にはすべての原稿を渡すという段取りになる.それまでに,連載〈生物の樹・科学の樹〉の各回の原稿の加筆修正という作業も残っている.

—— ついでに,コンウェイ・モリス翻訳作業の今後の予定についての打合せも.

◆〈ルオー〉を出たのは午後3時半だったが,原稿年貢のなんやかんやで昼ご飯をまだすませていなかった.久しぶりにすぐ近くの〈万定フルーツパーラー〉に飛び込んで,中途半端な時間帯のため誰もいない店内で,ただひとり「ハヤシライス」をいただきました.これこれ,この味です.この店は「カレーライス」の方が有名になってしまったようだが,それはダメです.この店では「ハヤシライス」こそ注文すべきです(いささか偏愛的すぎるかも).

◆その後は,東大農学部の隠れ部屋にじっと潜伏して,遅れていた日録をものす.午後5時過ぎにドーバー海峡をわたり,山上会館に向かうが,第二食堂の生協書籍部に誘引されてしまい,しばし書棚の間をさまよう.岩波講座〈哲学〉(全15巻)の第11巻『歴史/物語の哲学』は買っておいた方がいいでしょうか?(誰に訊いてるねん……).鹿島茂『モンマルトル風俗事典』(2009年2月刊行,白水社,ISBN: 978-4-560-02643-4 → 版元ページ)はジャケ買いしそうになってぐっとこらえた.

◆しあわせな定年退官という生き方 —— 夕暮れ迫る午後5時半,山上会館の地下にある〈御殿食堂〉に向かう.午後6時から農学部の同じ専攻でこの3月をもって定年退職される田中忠次さんの記念パーティがある.今日の午後は農学部1号館の第8講義室(イベント用ホールですな)で最終講義があったのだが,ワタクシは原稿年貢を搾り取られていて出席できなかった.田中さんは農業土木の専門家で,とくに有限要素法(FEM)などの数値解析をもちいた土質構造物(ダムなどの建造物)の変形解析で有名だ.ザンクト・ペテルブルクのマリインスキー劇場の基礎工事に関わる数値解析にも関係したと初めてうかがった.こういうふうに研究者人生の中締めをしてもらえるというのはしあわせなことなのだろう.同窓生たちの思い出話が交わされる中,午後7時過ぎに中途退席する.

◆つくばに帰り着いたのは午後8時すぎだった.北風が強くて寒い.空にはフルムーン.今日はことのほか花粉が多くてなかなかたいへんな1日だった.明日はおとなしく農環研に籠ります.

◆本日の総歩数=16007歩[うち「しっかり歩数」5874歩/54分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=85.5kg/25.8%.※体組成計を新調したので計測リスタート


10 maart 2009(火) ※ 中野坂上で本を手にする春の夕べ

◆午前4時半起床.雨.気温プラス5.7度.

◆朝のこまごま —— 東大農学部の学部と大学院の卒業式に関する事務連絡.大学院(23日)と学部(24日)の専攻内セレモニーはいずれも午後2時から開始./3月18日(水)夕刻の専攻送別会は所用で欠席することになった.翌19日(木)は午前年休./所内の業績報告は3月13日(金)までに.忘れるべからず./某投稿原稿は門前払いとする./今月分の細かい年休届を提出する.

◆春めく昼下がり.午後1時半の気温は16.1度.晴れて春らしい陽気に包まれる.とても暖かい.

◆日中は居室にてひたすら原稿書きに励む.「プロローグ」と「インテルメッツォ」と「エピローグ」を並べて書くという無謀なことをしている.要するにこれらの章を連携させようということだが,はたして明日までに何とかなるのだろうか…….

◆午後3時半,気温は17.6度に達していた.暖かいというよりはやや暑いという段階だ.ぽかぽか陽気がなお残る夕刻,16:25発のTX快速で東京に出て,午後5時半過ぎに大江戸線・中野坂上駅で下車する.駅近くの某所にある,何やらいわくありげな〈豆柿〉に向かう.定刻の午後6時少し前に店に入ったら,すでに海游舎の本間さんお二人が来ていた.

豆柿〉は外見はごくふつうのマンションの一階だが,一歩店内に足を踏み入れると,カウンター内に古民家のミニチュアもあれば,古民具のコレクションもあり,壁面を見れば時代がついた伝統こけしやら蓑笠やら背負子がずらりと.さながら〈アチック・ミューゼアム〉のごときアヤシサが満ちあふれる.インプレッションが強烈だったので,しばし,店内を鑑賞しまくる.

ミニチュア古民家の調度は季節によって変えているとのことで,今の季節は極小の雛飾りが並べられていた.陳列物のスペースが広く取られているせいか,客席はカウンター10席と隠れ部屋ひとつのみだ.ご主人の話によると,もともと民具の陳列場所からこの店が派生したのだというから,ものごとの優先順位は自明だ.そのうち「まっちゃん」も合流したところで宴の始まり.

日本酒のセレクションはとてもシンプルで,たった五種類しかない:青森の〈田酒〉,広島の〈竹鶴〉,新潟の〈〆張鶴〉,埼玉の〈神亀〉,岐阜の〈三千盛〉.この順番で「甘口→辛口」に並んでいるとのこと.

〈竹鶴〉の「8年古酒」があるというので,最初は燗酒,次は常温でいただいた.薄い紹興酒のような色合いは京都の〈たかはし〉で経験ずみ.他のお酒もたいへん美味でした.肴はすべておまかせコースだが,シンプルにして素材の味わいを活かした料理が出てくる.お酒をどんどん呑んでくださいなという料理だ.どんどんいただきました.

◆しかし,今日ここに来た目的は,単に銘酒を味わうだけではなく,やっと完成したカマジン本のブツを受け取ることだ.

初めて見る訳本を実際に手に取ると,印刷や紙質からいって原書よりはるかにゴージャス!かもしれない.重さはおよそ1kg弱.厚さは3.5cmほど.最初に話をもちかけられてから,今日までとてもとても長い時間がかかってしまったが,最後にこのようなりっぱな完成品にしあがったのだからよしとしましょう.

この訳本は来週の生態学会岩手大会で「デビュー」する.その後,一般書店の店頭に並ぶことになるが,これからどのように売っていけばよいのかという“販促会議”になったり,また四方山話に戻ったりを繰り返しつつ,午後9時を過ぎたので散会となった.どうもありがとうございました.

◆つくばに帰り着いたのは午後11時前だった.昼間は暑いくらいのぽかぽか陽気だったが,この時間帯になると北風が吹いてまた寒さが戻ってきたようだ.

◆明日はまた東京に出るのだが,その前に原稿を何とかしないことにはどうしようもない…….

◆本日の総歩数=11538歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=83.5kg(−0.3kg)/24.4%(+0.8%).


9 maart 2009(月) ※ ひとり静かに居室キャレルに籠る

◆午前5時起床.曇り.午前6時の気温はプラス5.8度もある.ぬるい空気の朝.

◆長い助走がまだ続いている —— 静かな月曜は作業机にいろいろものを広げてブレイン・ストーミングをしてみる.結晶が形成される「核」はたいてい偶然に向こうから姿をあらわすものだが,今回は出が遅いらしく,いつまでも“薄にごり”のような“澱がらみ”のような宙ぶらりんの状態がここ何日も続いている.しかし,すでに「過飽和」になっていることは確かなので,ちょっとしたきっかけでイッキにぶわあ〜っと……いきたいものだ.

◆午前のこまごま —— 進化学会札幌大会でのワークショップ企画のことなど.今年は「生物学哲学」と「科学史」の二本柱を狙っているとのこと.いいですね.虫下しのための“特効薬”も用意したし./勁草書房の論集執筆に関する擦り合わせ./カマジン本の追加宣伝,打ちました.

◆本日届いた古書 —— Morton Beckner『The Biological Way of Thought』(1959年刊行, Columbia University Press, New York, viii+200 pp. → 目次).今から半世紀前の本だが,今で言う“生物学哲学”の先駆にあたる著作.当時は,生物学と哲学の接点と言えば,論理実証主義らのっとった「統一科学運動」という主流派があった.Beckner もこの主流派の生物学側のカウンターパートだった Joseph Henry Woodger を視野に置きつつ議論を展開している.冒頭の序言で,彼は科学哲学が物理学にのみ関心を向けていて,生物学や人文科学を見ていない状況を憂えている.目次をざっと見るかぎり,後の1970年代初頭の生物学哲学「第一世代」に取り上げられる話題の多くは,この本ですでに登場している.

この本のコピーは大学院のころに太田邦昌さんのもっていたコピーからの孫コピーを取らせてもらった.そのうち原本を手にしたいと思いつつ四半世紀が過ぎてしまった.当時のColumbia University Press のハードカバー版は「天」が彩色されていて,本書は朱色に塗られている.堅牢な造本でまったく崩れていない.

古書として入手したからには,このトークン本の前所有者に敬意を払っておきたい.見開きには「Everett Mendelsohn 59 02.10」というペン書きの署名が入っている.人違いであるはずがない.この本は Harvard University 科学史学科のビッグネームである Everett Mendelsohn 教授が所蔵していたものだった.署名の年月日からみて,彼がハーバードに赴任する直前に,新刊で本書を入手したのだろう.全編にわたって鉛筆でのメモ書きや下線があることから,かなり精読した跡がうかがえる.書き込みのある古書は安く買いたたかれることがあるが,場合によっては“まっさら”な本よりもむしろ役に立つ.これも何かの縁ですので,ありがたく使わせていただきます.

◆少しひらめくものがあったので,午後も原稿のための助走をさらに続ける.外は曇って日射しはないが寒くはなさそう.今日はまる一日静かに過ごせた.午後4時過ぎに撤収.曇りときどき晴れ.気温11.9度で春の暖かさ.

◆夜もまた原稿助走の続き.キーワードを記したメモ書きがだいぶたまってきた.早く離陸しろよっ>ぼく.

◆本日の総歩数=7626歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜○.計測値(前回比)=83.8kg(+0.5kg)/23.6%(−2.8%).


8 maart 2009(日) ※ ノックアウトされた日曜は牛歩で

◆前夜の「古酒パンチ」がそうとう効いたみたいで,午後8時頃まで惰眠をむさぼる.外は曇天.昨日よりも寒いみたい.アタマがいたたた……(自業自得).

◆ゾンビのように室内を徘徊し,ときにキーボードに向かい,ときに死人のように横たわるという午前中を過ごす.昼前に天久保の〈じんぱちカフェ〉へ.さらに,隣りの〈百香亭〉へと転戦する.食生活の秩序はどうしようもなく乱れっぱなしだ.

◆午後になっても日は射さず,灰色の曇り空のまま.また,思い出したように,キーボードに向かってみたりする.

◆早田文蔵つながり —— 夕方,知人からメールあり.カナダの科学史家が「早田文蔵」の生物分類理論(「dynamische Taxonomie」)に関する問い合わせを求めてきているので,対応よろしくとのこと.ぼくがとりわけ早田文蔵に詳しいわけではないと思うが,周囲を見渡しても生物学史の研究者で早田に通じている人は見当たらない.既発表論文を見るかぎり,その科学史家の方が早田のことをよほどよく知っているようにも推測されるのだが.

◆夜のこまごま —— 現代新書の原稿を書くプロットづくりの続き.明日こそはしっかり書こう./勁草書房から刊行予定の生物学哲学論集について,元締からの連絡あり.全体の章構成を初めて知った.ぼくの章に関しては内容的に“ニッチ”をずらすようにいたします.月末までに書けと.千里の道は明日から./カマジン本の追加宣伝と計量生物学会の大会広報は明日します./メーリングリストの過去ログ参照方法についてのアナウンスも明日まわし.

—— 「明日のトド」が増えている.

◆本日の総歩数=3350歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝×|昼△|夜×.計測値(前回比)=未計測/未計測.


7 maart 2009(土) ※ 春うららのゲン直しに古酒の会へ

◆午前6時過ぎにのろのろと起きだす.もちろん,外はすっかり明るい.夜明けが日に日に早くなってきた.朝のうちは雲がまだ多かったが,しだいに青空が広がってきた.しかし,北寄りの風がとても強い.日射しを受けているうちは暖かいものの,風が吹き抜けると体感気温は低くなる.暖かくてしかも寒い春日の週末.雨上がりなので,花粉飛散量はとても多い.ここのところとてもよく働いてくれている鼻センサーもそろそろ鈍麻しつつある.

◆今日こそは原稿を書くぞ —— と(とりあえず)宣言してみる.

◆しかし,幸先はぜんぜんよろしくなく,いきなりつまずく —— 昨日ドイツから届いたばかりの古書を確認していて,自分が犯した単純ミスに大きく凹んでしまった.件の古書というのはこれだ:Ferdinand Wüstenfeld『Register zu den genealogischen Tabellen der arabischen Stämme und Familien』(1853年刊行[1966年復刻], Otto Zeller, Osnabrück, xvi+476 pp. → Google Books).アラブ王家の家系図を調べ上げた本書は,その筋の業界ではとても有名だと聞く.もともと,イスラム圏の家系図はとても精密に推定されていて,今から千年以上も前に「家系図の枝の信頼性」についての論議がなされていた.生物系統学には直接には関係しないかもしれないが(きっとないだろう),人間社会の家系図学の(もっと古い)歴史をたどるときにはおそらく関わりがあるにちがいない.国内所蔵館も三つしかないし.そんなわけでこの本を発注したのですが…….

ちょっとした買い間違いをしてしまってですね,…….何を間違えてしまったかというと,要するに,肝心の「本文(Tabellen)」を買わずに「索引(Register)」だけ早まって買ってしまったということでして(「刺し身を買わずにツマだけ買う」とか,「元本を買わずにコンコーダンスだけ買う」とか,たとえはいろいろあるだろう).オンライン古書店で眺めていたときに,このアイテムだけが異様に安かったので,中身をよく確かめずにあわてて「Place your order」ボタンを押してしまったのが敗因だった.

しかし,こうなってしまったからには,一刻も早く,「Register ohne Tabellen」を「Register mit Tabellen」にしないことには.このまま放置しておいたのでは,本書の「本体価格19.99ドル」+「郵送料13.00ドル」の合わせて「32.99ドル」がムダになってしまう.何よりも,この本の前所有者だった Ambassador College Library(Pasadena, California)に申し訳ないではないか.Register の初版は1853年に Göttingen で刊行されているが,Tabellen の初版はその前年の1852年に出版されている.Tabellen 付きのアイテムは,古書価格が十倍近くも高くなる(当然なんですけど)…….でも,ここで躊躇してはいけない.さっそく本編である Tabellen をオンライン発注した.それはおよそ100葉からなる図版集のようだ.今度こそサクセスストーリーとなりますように.

—— 久しぶりに,〈急いてはことを仕損ずる〉ならびに〈安物買いの銭失い〉という格言をむりやり思い出させられた.くー.

◆「のれそれ」で昼のゲン直し第一弾 —— いくら「To err is human」だとしても,ミスをして機嫌よくしていられるほど人間ができていない.ここはひとつ気分的に何らかの「ゲン直し」が必要だ.まずは昼飯からだ.TX研究学園駅前のホテル〈ベストランド〉の二階に〈福鮨〉という寿司屋が入っている.このあたりではとても評判がいいらしい.北から吹きつける強い風にあおられつつ,さっそく出かけてまずは寿司をいただくことにしよう.

お,珍しいネタですね.見た目は確かに軍艦巻なのだが,白魚のようでいてもっと透き通っていて,笹の葉のように薄くて細長い魚が上に乗っている.見た目には「葛きり」か「ところてん」のような感じだ.箸で一匹つまんで展開したら,長さは7〜8cmほどもあり,形状からして明らかにレプトセファルス幼生だ.初めて見るネタだったので,写真を撮りつつ店の人に訊いたところ,「アナゴの幼魚でのれそれと呼びます」とのことだった.今日入荷したばかりという.これはひょっとしたらゲン直しにぴったりの幸運の魚かもしれない.「のれそれ」のにぎり寿司は初めてだ.ありがたくいただきます.ほんのりかすかに甘かった.

◆〈笠真〉にて夜のゲン直し第二弾 —— 午後7時前に店に到着した.今夜は午後7時から「古酒の会」のため,貸し切りになっている.すでに,予約客が集まりはじめていて,全部で20名ほどになるという.ぼくが「古酒の会」に参加するのは初めてだが,この店にこれほど人が集まるようすは見たことがない.定刻に開始.

まずは乾杯として,明野(現・筑西市)の〈来福酒造〉の藤村さんがもってきてくれた今日しぼったばかりの〈来福〉をいただいた.新鮮というか,やんちゃというか,フルーティを通り越して味が暴れています.で,本日の「古酒」ラインナップは,店主の昨日のブログ記事「明日のお酒〜その1〜 」,「明日のお酒〜その2〜 」,そして「明日のお酒〜その3〜 」をごらんあれ.

ぼくにとっての「古酒」体験は,京都・四条高倉の〈たかはし〉に始まる.この店では広島の〈竹鶴〉を中心にしてハズレのない「古酒」のセレクションを用意していたが,〈笠真〉の「古酒の会」はむしろ“ロシアン・ルーレット”のようなイベントだ.事前にアナウンスされていたとおり,アタリもあればハズレもあるいわくつきの古酒の一升瓶がずらりとテーブルに並んだ.すでにラベルが変色している十年ものの古酒もある.

四の五の言わずに呑み進む.〈奥播磨〉の鑑評会出品酒(10年古酒)は,ほぼ完全に「酢」と化していてアウトだった.同様に,〈益荒男〉の山廃純米酒(7年古酒)や〈鳳凰美田〉の純米本生(5年古酒)も「酢度」が高くてアウト(隣にすわった来福酒造の藤村さんはしきりに「カプロン酸の出が」と言っていた).その一方で,アタリもあった.とりわけ〈黒龍〉の本醸造「垂れ口」(4年古酒)は純米ではないがおりがらみで,そのまま冷やで飲んでも十分にうまかった.もうひとつは,〈帰山〉の純米吟醸酒(7年古酒).こちらは冷やだと酸味が強すぎていただけないが,燗酒にするととても美味くなった.〈来福〉の純米大吟醸(3年古酒)は県内産の酒米「ひたち錦」を15%まで削り込んで造っている(精米されたサンプルが袋に入っている).ここまで削ると「米」というよりは小粒の「クスクス」のような形状だ.また,それとは別に一割を切る精米歩合の米も回覧されたが,けし粒のようなその削り込み具合は味覚を求めての「修行」ということばを思い起こさせる.

今日は「古酒」がメインの会なので,肴は比較的シンプル:大量のマカロニ・サラダ,粕汁,小玉こんにゃく,巻き寿司,それに〈来福〉純米大吟醸の酒粕をそのまま食べるという初体験もあり(酒粕は焼いて食べるともっとうまいらしい).

—— かなり呑んだはずだが,午後11時前にお開きとなり,店を出て自力で帰り着いた.リュックサックが重いなと思ったら,〈黒龍〉「垂れ口」と〈来福〉「15%精米」の一升瓶が2本詰め込まれていた.帰りがけに店主からいただいたものだ.

◆〈笠真〉の「古酒の会」では初めて会う方ばかりだったが,とても楽しい集まりだった.ゲン直しとしては十分すぎる一日.しかし,原稿が…….

◆本日の総歩数=4327歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝×|昼○|夜×.計測値(前回比)=83.3kg(−0.1kg)/26.4%(+1.8%).


6 maart 2009(金) ※ 冷たい春雨がざあざあと降り続く

◆午前4時半起床.雨がしとしと降っている,気温プラス5.1度.その後も冷たい雨が降り続く.

◆次年度の仕事の日程が次々とはめ込まれていく —— 東大農学部・生圏システムでの〈保全生態学概論(という名の生物系統学概論)〉.一年おきに開講されている集中講義だが,今年の開講日程は,「6月11日(木)」と「6月18日(木)」そして「7月2日(木)」に決まった.時間帯は「午後1時〜5時」.教室は農学部1号館のどこかになるだろう./『生物科学』編集会議の日程は,「4月25日(土)15:00〜17:00」にいつもの立教大学にて.また,その後の編集会議は「8月1日(土)」と「12月5日(土)」となった.

◆わくわくする新刊 —— こういう本を手にできるのはシアワセです:西野嘉章『西洋美術書誌考』(2009年1月29日刊行,東京大学出版会,東京,354 pp., 本体価格8,800円, ISBN:978-4-13-080211-6 → 目次版元ページ).西洋美術史の書誌に関する本だが,「本」そのものに対する偏愛的スタンスがとても好ましく,すばらしい.冒頭で,著者がフランスのアヴィニョンで出会った蒐集家エスプリ・カルヴェ(Esprit Calvet)の蔵書コレクションについて,こう言う:

カルヴェは,一八世紀百科全書派的精神に突き動かされ,前時代の知的・芸術的遺産を手当たりしだい集め尽くそうとする,稀有の愛書家でもあった.合理的な分類や専門的な分業の必要性を叫ぶ近代人が,時代の要請を口実に,歴史のなかへ追いやってしまった博物学的好奇心,それを具現する人物の築いたコレクションはつまらなかろうはずがない.(p. 5)

本書は,西洋の美術史に限定してその書誌を論じた本だ.著者の関心は「本」そのものの“すがた”にある:

この体験を通して得たものは少なくなかった.それまで安易に言及し,引用してきた古文献の各々を,具体的な物象として想起できるようになったからである.(p. 6)

古い文献を引照するさい,それらが具体的にどのような形状の,どのような版本であったのか,注意を払う研究者はいまや稀である.美術古文献のアンソロジーが容易に入手できる時代にあっては,然るべき学者の校訂を経たテキストがあり,出版年が判りさえすればそれで充分であるという,安直な意識が蔓延しているからである.(p. 7)

続く序説では,著者が想定する「美術書誌学」の射程について論じている:

われわれの関心のある美術の領域において,ある時代の,ある地域の,ある集団では,どのような書物がよく読まれていたのか.それを特定し,その流布の実態を具体的に把握すること.これが美術書誌学の主たる眼目となる.(p. 29)

これは「美術」に限らず,ほかの学問分野にもあてはめられるだろう.

◆雨が降り続く午前11時.気温6.0度.原稿を書くための助走に入る.そうこうするうちに昼休み.雨足が強まってきた.〈david pain〉にてパンを買う.david さんに女の子の名前は決まった?と訊いたら,「“アナ”です」とのこと.「“fleur”ね?」,「ウィ」.“violette”のあとが“fleur”だと,お花畑みたいですね.

◆午後のこまごま —— 海游舎より電話あり.カマジン本の追加宣伝をしましょう.売り込みイノチということで./進化学会札幌大会での「生物学哲学ワークショップ」を今年もという申し出あり.ぜひやりましょう.

◆作業台が本で埋まっていく —— 何もないところから原稿は生まれない.関係しそうな本たちを書棚から召喚して,作業台に積み上げていく.中国四千年の「生命の樹」とか,ヨアヒム・フォン・フィオーレの『形象の書(Liber Figurarum)』とか,家系図学史とか,もちろん「uirga Iesse」本もあり.ま,いろいろと(かつてオクスフォードでヨアヒム主義を研究するというのはとてもハードルが高かったと Marjorie Reeves は言う.Arthur Watson 本にヨアヒムが出てこないのはそういう理由か).そのうち,おぼろな想念がひとつまたひとつと湧いてきてまわりを飛び交う.そのいくつかを網ですくってメモに書き留めていくと,原稿を書くための方針がしだいにかたちを成すようになる.これもまた助走のひとつということで.

◆午後5時過ぎに撤収.さらに雨は強まり,気温は高くなってきた.10.7度.夜も雨だったが,午後10時を過ぎてやっと小止みになり,雲間から月がのぞくようになった.

◆本日の総歩数=8554歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=83.4kg(+0.2kg)/24.6%(+1.2%).


5 maart 2009(木) ※ 啓蟄の暖かさに本の虫も酒の虫も

◆午前4時半起床.路面はまだ濡れている.気温はマイナス0.9度で,しんしんと冷えている.しかし,日がのぼるにつれて,春の暖かさが戻ってきた.今日は啓蟄なので,諸方面ごそごそと動き出す.午前10時半,晴れ.風はなく気温は8.7度.

◆文庫新刊 —— 臼田昭『イン:イギリスの宿屋のはなし』(2009年2月10日刊行,講談社[講談社学術文庫1938],東京,284pp., 本体価格960円, ISBN:978-4-06-291938-8 → 目次版元ページ).イギリスの「宿屋(イン)」の歴史と文化のお話.乱痴気騒ぎあり,駆け引きあり,危ない場面あり.全編にちりばめられた奇妙でときに猥雑な挿絵がおもしろい.元本は1986年に駸々堂出版から刊行された.

◆午前のこまごま —— 新年度の『生物科学』編集会議は4月18日(土)または25日(土)に開催予定./次年度の農環研契約職員の申請書をメールで送る.この件はおしまい./計量生物学会の対面理事会の時間と場所が確定した:3月27日(金),18:00〜20:00,東京理科大・神楽坂キャンパス・森戸記念館(2階第3会議室).

◆昼休みの大仕事 —— 確定申告のため,昨年分の書籍購入の裏付けをする作業に耽る.国内の書店については問題ないのだが,海外の書店からのオンライン決済の場合は,領収書などがちゃんとそろっているかどうかを確認しないといけない.発注メールとの突き合わせを小一時間ほど.結果は,海外からの書籍購入費の集計は「1,661ドル」+「484ユーロ」+「121ポンド」と計算された.為替レートが激変しているので円に一括変換できないが,例年に比べてそれほど“浪費”しているわけではない(と自分では思う).

もともとが高い単価の稀覯書を探し求めるわけではなく,むしろ「手に入りにくい本」をどのように見つけて安く買うかに関心がある.こまめにチェックしてすかさず発注するという月並みな方針しかないのだが,とりわけ古書の場合はたまたま出品されたタイミングに同調してたまたま検索がヒットするという偶然の連鎖で,長年探していた本に出会えることがよくある.そういうときはあまり深く考えずに,「Place your order」とか「Bestellung abschicken」のボタンをポン!と押してしまう.本の虫,本の虫.

英米独仏あたりから本を取り寄せるときはほとんど問題はないが,それ以外のエリア,たとえばスペインやイタリアとか中南米地域に発注をすると,「極東に送るから割増送料です」ですめばいい方で,場合によっては「日本は当社の販売エリア“圏外”だ」とキャンセルされたこともあった.送金方法にしてもいつもいつもカード決済ですんなりすむとはかぎらず,昨年ドイツの Postbank に送金しろと指定されたときは,本の代金よりもはるかに高額の手数料を取られてしまった(ゆうちょ銀行から送ったのに「〒」間でどーしてこんなに手数料が高いのか).しかし,どんなトラブルや遅延がそれまでにあったとしても,最終的にブツが手元に届けばオーライだ.

—— いずれにせよ,今年の確定申告に必要な本がらみの領収書類はすべてまとめて都内某所に速達で送ってしまった.あとはよろしくよろしく.

◆午後2時,日射し暖かく,春の陽気.気温は11.4度.しかし,舞い飛ぶ花粉はどうしようもない.

◆昼下がりのこまごま —— 郵便局と銀行でまずは一仕事./向かいの部屋にオランダから短期来日しているレオさんが挨拶に来られた.ランドスケープの専門家でつくばの農耕地がこの20年間にどのような景観変化をしているかに関心があるとのこと.電話線の接続のお手伝いをした./次年度の東大農学部での「保全生態学特論」の日程調整の連絡.夏学期に三回それぞれの半日の講義をする.いくつか日程案を示した./農環研の業績報告は3月13日(金)が領域内締切とのこと.書かないと書かないと.

◆「しんなりたんわりがんばりましょうや」 —— 先日活性にごり酒に続いて,同じ蔵元〈諏訪泉〉の新酒「ばんなりました」に出会う機会があった.新しい品種の酒米「吟吹雪」を使って醸したのが,この〈ばんなりました〉で,去年まで使っていた酒米とはちがっているそうだ.「しぼりたて生原酒」&「おりがらみ(薄濁り)」&「アルコール度数18〜19%」という必殺要素てんこ盛りの新酒ですが,この価格にしてはとてもいい飲み口でした.うまく言えないのですが,「辛口でしかも甘い」というフシギなのどごし.

こういうタイプのお酒には,きっとしっかりした「肉」系の肴が合うにちがいないと思い,先月好評?だった「進化型牛丼」をさらに進化させた「スーパー進化型牛丼」をしこむことにした.深鍋いっぱいにつくるというイメージで,手順は以下の通り:

  • 材料:牛すね肉1kg,下仁田ネギ(大量),焼き豆腐,小玉こんにゃく,ジャガイモ,ゆで卵.※タマネギとか厚揚げもいいかも.
  • レシピの基本は前回と同じ.
  • 最低ひと晩はことこと煮込み続けること.ときどきすね肉と対話しながら,食卓に移すタイミングを見極める.

—— うん,確かに〈ばんなりました〉にはこういう肴が合ってました.酒の虫,酒の虫.

◆本日の総歩数=11448歩[うち「しっかり歩数」1128歩/11分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=83.2kg(−0.3kg)/23.4%(−0.3%).


4 maart 2009(水) ※ 雪は即座に融けてダーウィン津波

◆午前4時前に起床する.昨夜からの雪はすでに止んでいて,思ったほど積もってはいない.空が白むにつれて遠景を見渡せるようになってきた.ところどころ植え込みや裸地がうっすらと白くなっている.気温は低くて路面は凍結しているようだ.灰色の曇天が広がる.

◆押し寄せる「ダーウィン・ツナミ」の震源地から —— すでに昨年から何波もの「ダーウィン・ツナミ」が押し寄せているのだが,とりわけ今年は心してかからないといけない.大きな震源地であるケンブリッジ大学出版局が出している「The Cambridge Darwin Collection」という書籍カタログをもらった.同名のオンラインサイト〈The Cambridge Darwin Collection〉もすでに開設されている.〈Darwin Correspondence Project〉のアウトプットである書簡集『The Correspondence of Charles Darwin』をはじめ,数々のダーウィン文献を出版してきた版元だから,力の入れ具合もそうとうなものだ.新刊はもちろん,絶版本のリプリントもある.

◆注目するダーウィン本 —— John van Wyhe『Charles Darwin's Shorter Publications, 1829 - 1883』(2009年6月刊行予定,Cambridge University Press, Cambridge, ISBN:9780521888097 → 版元ページ).600ページもあるらしい.未発表資料もたくさんあるようだ./Frank Nicolas and Jan Nicolas『Charles Darwin in Australia, Second Edition』(2008年11月刊行,Cambridge University Press, Cambridge, ISBN:9780521728676 → 版元ページ).ビーグル号航海の最後の方でダーウィンがちょっと立ち寄ったオーストラリア.ちょっと気になります.

◆注文したダーウィン本 —— Frederick Burkhardt (ed.)『The Correspondence of Charles Darwin, Volume 16, 1868: Parts 1 and 2』(2008年6月刊行,Cambridge University Press, Cambridge, ISBN:9780521518369 → 版元ページ).〈Darwin Correspondence Project〉のアウトプットであるこの書簡集シリーズを第1巻からそろえはじめてもう25年目になる.これまでは各年が一巻でおさまっていたのに,この「1868年」はついに二巻本(計1300ページあまり)となった.本書は去年のうちに出ていたのだが,うっかり買い忘れたので(どーして?),速攻でオンライン注文しました.まだ円高が続いているおかげで,イギリスからダイレクトに買えばとても安い.

◆午前11時の気温は5.3度.曇り空なので暖かくなるはずがない.雪は跡形もなく消え去ってしまったようだ.

◆ダーウィン津波の震源地はイギリスだけではないぞ —— ニュートン・ムック,やっと届きました:『ダーウィン進化論 生誕200周年,『種の起源』150周年』(2009年3月10日刊行,ニュートン・プレス[ニュートンムック],東京,144 pp., 本体価格2,480円,ISBN:978-4-315-51853-5 → 目次版元ページ).ぼくの記事は第5章「ネオ・ダーウィニズムとその後」に所収されています:三中信宏「「種」とは何か:今なお解けないなぞの由来」(pp. 138-141).しかし,ワタクシの前にはもっとワルイお人が…….そして,さらにその前には,異界からの“神託”が貼られていて…….※こ,この三人が並ぶとは!(きっと空前絶後でしょう)

—— そういえば,日経サイエンスの〈ダーウィン特集号〉が,つくばでは品切れになっているとの情報が届いています.運よく見つけたらゲットした方がいいかも.

◆計算センター「新システム」の新たな発見事項 —— 旧システムでは,恒久的なメーリングリストとは別に,期間限定の「貸し会議室メーリングリスト」というレンタルMLが設けられていた.今日になって初めて気がついたが,旧システムで利用していた「貸し会議室ML」は,新システムではすべて「恒久ML」に“格上げ”されていることがわかった(すでに数年間も借り続けている「部屋」があるので,そのまま永住してもいいんですけど[借家権の主張?]).今後は,たとえ暫定的な場合でも恒久MLとして開設するということか.

新システムでは,それぞれのメーリングリストごとにログ・アーカイヴ+Wiki+共有ファイル・レポジトリーが用意されている.会員が利用できるウェブ・インターフェイスとともにこれらのリソースをどのように利用するかについて決めないといけないのだが,このトドたちと正面から格闘する気に今はなれないでいる.とりあえずは過去ログが会員に読めるようにしておこう.

◆午後のこまごま —— 今年の日本進化学会第11回大会の日程が確定した:9月2日(水)〜9月4日(金),北海道大学高等教育機能開発総合センター(札幌).〈分類学における哲学[仮]〉という大会シンポジウムが予定されているらしい./午前の領域会議はスルーしてしまったのだが,来年度,農環研所内で情報処理(統計処理?)に関する講習をしてはどうかという声が所議であがったらしい.※あ,ツナミだ,ツナミだ〜.

◆午後5時前に撤収.外に出たら,いつの間にか雨が降っていたらしかった.ぜんぜん気づかなかった.気温7.8度.気が滅入る灰色の空.

◆本日の総歩数=4406歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=83.5kg(+0.4kg)/23.7%(+1.0%).


3 maart 2009(火) ※ 桃の節句に雪が降りあちこち凹む

◆午前4時前に目が覚める.曇り.気温はプラス0.7度.湿り気のある寒さ.

◆計算センター「新システム」の中で迷子になる —— 朝方はftpができなかったが,そのうち通るようになった.メーリングリストまわりの新しい機能(Wikiサービスとか共有ファイル)についてはおいおい見ていくとして,とりあえずは会員それぞれが利用できるウェブインターフェイスの確認.いっぺんにはとても飲み込めませんな.コマンドメールが使えなくなったというのが,とりあえずもっとも重要な新旧システムのちがいなので,これは早急にアナウンスする必要がある.年度末が近いので異動によるアドレス変更のリクエストの急増が予想されるので.

◆午前10時,曇りだがときどき日が射してヒバリが舞い上がる.気温4.8度しかなくとても寒い.

◆〈エッサイの樹〉に登ってみる —— キリスト教というか聖書に関する知識がないと,この〈樹〉には登れないようだ.知識としてのキリスト教については,岩波書店の『旧約聖書』(全15巻)と同じく『新約聖書』(全5巻)を参照してすませることが多い.〈エッサイの樹〉は旧約聖書『イザヤ書』第11章が初出だが,登場人物の家系図は新約聖書『マタイによる福音書』第1章冒頭にある家系図「アブラハムはイサクを生み,イサクはヤコブを生み,……」(「エッサイ」という名前を初めて確認した)に載っている.

〈エッサイの樹〉については「若枝(uirga=vigra)」と「乙女(uirgo=virgo)」との誤読の歴史が二千年の長きにわたって続いたらしい.この点については,上智大学中世思想研究所(編)『中世思想原典集成』(全20巻+別巻)のいくつかの巻を書庫の奥から引っ張りだす.この膨大な“中世”の海をわたるチャートとしては,何よりもまず『中世思想史/総索引』をひもとくしかない.聖書の関連する章を手がかりにして,各巻に飛ぶことになる.

たとえば,第1巻『初期ギリシア教父』に訳されている紀元2世紀のエイレナイオスの著作「使徒たちの使信の説明」(pp. 197-281)には,次のようなくだりがある(第59節):

エッサイはアブラハムの子孫であり,ダビデの父親である.キリストを身籠った子孫,つまりあの処女はこのようにしてその「若枝〔および杖〕」となったのである.(p. 243)

また,第10巻『修道院神学』所収の12世紀カンタベリーのエアドメルス著「聖母マリアの御やどり」(pp. 69-98)は,イザヤ書の〈エッサイの樹〉に言及してこう言う:

この花を咲かせる小枝とは,もちろん処女マリアであり,その根から生じる花とは祝福された御子のことであった.(p. 77)

時代を隔てたこれらの神学者たちは,いずれも,〈エッサイの樹〉の「若枝(virga)」を「乙女(virgo)」と重ねて解釈している.そして,いまブラウズしている Arthur Watson『The Early Iconography of the Tree of Jesse』(1934年刊行, Oxford University Press, London, xiv + 197 pp. + 40 plates → 目次)は,このような歴史的文脈の中で,〈エッサイの樹〉の図像史を掘り起こしている.さらには,Joachim von Fiore の幻視的図像世界に沈潜していって,…….

—— こんな深みにはまってしまうと現実世界に戻れなくなりそう…….

◆午後1時,気温は4.4度.曇り.気温はまったく上昇せず,ひたすら寒いばかり.

◆献本ありがとうございます —— Michael A.McCarthy著[野間口眞太郎訳]『生態学のためのベイズ法』(2009年3月15日刊行,共立出版,東京,xiv+316 pp., 本体価格4,500円,ISBN:978-4-320-05678-7 → 目次版元ページ).いわゆるひとつのべいず系の「和製かえる本」.原書:Michael A.McCarthy『Bayesian Methods for Ecology』(2007年刊行,Cambridge University Press, ISBN:978-0521850575 [hbk] / ISBN:978-0521615594 [pbk])の表紙には大きな「かえる」の写真があった.縮小された書影では判別できなかったのだが,訳本のカバージャケットにも実は隠蔽された「かえる」が写っている.原書は一匹なので「かえるさん」,しかし訳本では二匹いるので「かえる属」と呼ぶべきか.

◆実に“幸い”なことに,厳しいゲンジツからの強力なる引き戻しが立て続けにどかどかと —— 音羽から電話あり,そろそろ年貢をおさめましょうとの加圧メッセージ.3月11日(水)の午後2時にいつもの本郷〈ルオー〉にて,懸案の『分類思考の世界(仮)』のプロローグを渡すことになった.渡すからには,ブツを用意しないといけない……./もうひとつ,音羽がらみ.コンウェイ・モリス訳本のゲラが“火砕流”のようにつくばに大量になだれ込んでくるらしい……./これまた原稿締切を過ぎてしまった勁草書房「生物学哲学」論集の原稿について,胴元から電話あり.テーマ的にダブらないようによろしくとの指導を受ける.ワタクシは「分類」について書きますので,【種】の方はどうかよろしく>UBC方面.

—— なーんだか,現実世界の中でいっぺんに加圧されてべこべこに凹んでしまいました.

◆加圧されついでに今月の「トド撃ちリスト」を更新した.トドは切れ目なく出現し,しかもこちらの都合とは関係なしに成長したり増殖したり.ざっと見るかぎり,今月も「原稿トド」が目につくな.

◆雪降る夜 —— 午後4時半に撤収.気温3.3度.すでに小雪がちらついていたが,夕闇が深くなるとともに本降りの雪になった.しだいに積もりはじめ,湿気のある寒さが忍び入ってくる.夜明けまではこのまま降り続くとの予報だ.

◆本日の総歩数=10108歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=83.1kg(−0.4kg)/22.7%(+0.3%).


2 maart 2009(月) ※ ことのほか粉っぽい一日を過ごす

◆午前4時半起床.ひさびさにぴしっと早起きする.晴れ上がって放射冷却.露地は霜が白く降りている.気温はプラス0.8度.寒い.夜明けが日に日に早くなってきた.

◆計算センターの「新システム」に試乗する —— 先月末から完全停止していた計算センターの新システムが午前5時に起動した.まだ使い慣れていないところもあるが,ウェブメールのシステムはずいぶんと使いやすくなって,スパムフィルターは強力そうだ(振り分け設定はすべて初期化されていたのでまたちくちくと設定する).

一方,旧システムとは様変わりしたメーリングリスト管理のウェブ画面はぜんぜん乗りこなせていない.アドレス登録の方式はむしろめんどうになったかも(たとえば,「アドレス+氏名+所属」をいっぺんに入力できなくなった,とか).とりあえず,メールの送信と配信は問題なくできているようなので,月例アナウンスでその旨を広報する.メーリングリストごとの管理設定がどのようになっているかは,これからひとつひとつ確認しないといけない.

◆午前10時.快晴.北風が強い.気温は8.8度.この風に乗って花粉も大量に襲来してきたようで,鼻感知器が常時作動している.昼休み,筑波事務所の郵便局に速達を出しにいく.確定申告関係はこれでおしまいかな.よろしくよろしく.日射しの暖かさと北風の冷たさがとってもミスマッチ.

◆2009年3月1日発行の『植物防疫』掲載号(2009年3月号)が届く:三中信宏(2009),「[植物防疫基礎講座]分子系統学:最近の進歩と今後の展望」(pp. 66-70/通し番号では vol. 63, no. 3, pp. 192-196).社団法人日本植物防疫協会という団体が発行している雑誌で(植物病理や病害虫関連で知り合いが寄稿していることもある),以前はもっとジミな表紙の雑誌だったが,しばらく見ないうちにとてもきれいな表紙になっていた.

かつては,総合誌は活字だらけだったし,それ以外の“硬派”な雑誌はどれもこれも「ジミ」の極致だった.岩波『科学』にしてもムリに目立たなくしているのかという装丁だったし,『生物科学』にいたっては藁半紙みたいな茶色い紙にびっしりと細かい活字が組まれていた.『植物防疫』とか『農業と園芸』にしても大差ない見栄えだった.時代の趨勢とはいえ,変われば変わるものだ.

◆晴れて陽の射す午後のこまごま —— 謝恩会・送別会シーズンで,諸方面から声がかかる.まずは根津方面で,3月18日(水)の東大農学部の専攻教員会議のあと,お茶の水の〈東京ガーデンパレス〉にて,この年度末に異動される人たちを送る会を催すとのこと(18:30〜20:30).参加します./もうひとつは厚木方面から.3月21日(土)の卒業式のあと,昨年と同じく町田駅北口の〈北の家族〉町田店にて,17:30から昆研の謝恩会.参加します./日経サイエンス編集部に,先日の対談記事に関する修正点二箇所を連絡する.将来,電子化されたときのために./先日依頼された系統樹コンサルティングの仕事.とにかく系統樹をつくってみましょう.

◆午後5時に撤収する.晴れて北風が強い.気温は7.4度.寒いなあ.3月になったというのに季節はまた逆戻り.

—— え,明日はまた雪が降るんですかっ?

◆本日の総歩数=10903歩[うち「しっかり歩数」2747歩/24分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=83.5kg(+0.5kg)/22.4%(−2.1%).


1 maart 2009(日) ※ 弥生のはじめは古い大木に登って

◆のろのろと午前6時まで寝過ごしてしまう.月の初めだというのにこのていたらく.どんよりした曇り空で,吹きつける北風が寒い.

◆さっそく〈売れろ!カマジン〉販促作戦に従軍する —— スコット・カマジン,ジャン-ルイ・ドノブール,ナイジェル・R・フランクス,ジェームス・シュナイド,ギ・テロラ,エーリック・ボナボ著[松本忠夫・三中信宏共訳]『生物にとって自己組織化とは何か:群れ形成のメカニズム』(2009年4月1日刊行,海游舎,東京,本体価格6,800円,約550ページ, ISBN:978-4-905930-48-8 → 目次版元トップページ).出版に先立ってコンパニオンサイトを新たに開設しました.今のところは目次情報しかアップしていませんが,おいおい「正誤表」(きっといくつかあるにちがいない)などの関連情報を公開していく予定です.

先月から月をまたいで読了した —— 皆川達夫『中世・ルネサンスの音楽』(2009年2月10日刊行,講談社[講談社学術文庫1937],東京,268pp., 本体価格960円, ISBN:978-4-06-291937-1 → 目次版元ページ).これまで断片的に知っていたりたまたまCDなどで聴いていたりした音楽家がひと連なりの系譜としてつながっていくのは雲が晴れていく心地だ.16世紀のフランスで大流行したシャンソンの作曲家として有名なクレマン・ジャヌカン(p. 176)をよく聴いたのは15年ほど前のことだったろうか.ちょうど時代を同じくして,当時の大分ではスペイン人宣教師による日本初の西洋音楽の演奏がなされたという(p. 208).それはかの天正少年使節団の渡欧に先立つできごとだったという.大分県庁ビルの横には,今でも「西洋音楽発祥の地」というレリーフ石碑が建てられていて,師走の統計集中講義のときは毎朝ホテルを出てこの碑の横を通って県庁ビル新館の講義室に向かった.

◆月イチの〈つくいち〉に出かけて,〈Brotzeit〉のパンをいくつかと〈季節屋〉の旬のジャムを入手する.今日は冷たい北風が吹いていて,あまり戸外でうろうろしたくはない日和だが,〈つくいち〉に集まる客筋は定着しているようだ.休憩用のテーブルが何脚も用意されていたが,回を重ねるごとに組織的なイベントになってきている.もう少し暖かくなれば,さらに人出が多くなるだろう.

—— 次回の〈つくいち〉は,おそらくもう春本番を迎えているにちがいない4月5日(日)9:00〜14:00に開催予定とのこと.

◆〈uirgo Maria〉から〈uirga Iesse〉へ —— 読了したばかりの『中世・ルネサンスの音楽』では,グレゴリオ聖歌の成立までのとんでもなく長い歴史が論じられている.その一節に,聖歌の歌詞にある「乙女[ヴィルゴ]マリア」の中の「乙女(Virgo)」ということばが,中世を下るにつれてどのように変容させられたかという言及がある(pp. 99-100).で,この「virgo」すなわち「uirgo」という語が次のもっと大きな話につながっていく ——

先日,手元に届いた古書:Arthur Watson『The Early Iconography of the Tree of Jesse』(1934年刊行, Oxford University Press, London, xiv + 197 pp. + 40 plates → 目次)は,旧約聖書に登場する有名な「家系図」である〈エッサイの樹(the Tree of Jesse)〉の中世図像学に関する研究文献で,中世以前の古写本や建造物の図像がたくさん載っている.Webcat で見るかぎり国内では名古屋大学文学部にしか所蔵されていない本だ.

本書の第1章「The Virga in Literature」では,旧約聖書『イザヤ書』の第11章の冒頭節「エッサイの根株より一つの若芽が生え,彼の根から一つの若枝(uirga)が出て実を結ぶ.その上にヤハウェの霊が留まる(Et egredietur uirga de radice Iesse, et flos de radice eius ascendet. Et requiscet super eum spiritus Domini)」(p. 2:訳文は 関根清三『イザヤ書』1997年5月8日刊行,岩波書店[旧約聖書VII],ISBN:4-00-026157-6)を全体の議論の出発点として,「エッサイの株(uirga Iesse)」が意味するものは何かを究明する.この〈uirga Iesse〉は,『創世記』第28章に出てくる〈ヤコブの梯子(scala Iacob)〉とともに,図像学的に興味深いと著者は言う.

しかし,著者が関心をもつのは,この〈uirga Iesse〉がどのような経緯で〈乙女マリア(uirgo Maria)〉につながるのかという点だ.著者の見解ははっきりしていて,「uirga」と「uirgo」とはもともとちがうことばだったが,12〜13世紀のころにこのふたつのことばは語形でも意味の上でも同一視されるようになったと言う.

まだ,ぱらぱら読みしているたけだが,ひとつ腑に落ちた点をメモ —— 家系図史の初期に登場する〈arbor iuris〉だが,なぜ「法(iuris)」ということばが付せられているのかが理解できなかった.しかし,本書では,〈arbor iuris〉が作成されたのは,いにしえのローマ法を遵守するキリスト教会が近親婚を防ぐ目的で,血縁関係を図式化したことにあると述べている(pp. 39-40).なるほどなるほど.

◆午後になって晴れたり曇ったりする.しかし,気温はちっとも上がらず冬の気配が続いている.

◆夜は,先日のレシピにしたがって,〈ローストポーク〉をもう一本焼くことになった.昨日のうちに下準備はすませてある.連日,肉を焼き続けているが今夜は自分の口に入るのでハッピー.今夜の肉料理のお供には,鳥取の〈諏訪泉〉の季節限定酒「特別純米 蔵出しにごり酒」を合わせてみることにした.いわゆる活性にごり酒だ.ラベルも何も貼っていないつるんとしたビンににごり酒が詰まっている.

こういう活性にごり酒の場合,ガス抜き栓をビン口にはめていることが多いが,この酒についていえばごくふつうの密閉栓がはめてある.ということは,炭酸ガスによる“バクハツ”の危険性がより高いわけで,その注意書きがくどいほど書かれている.事前に十分に冷やして,静かに栓を開けようとしたが,イッキにオープンするとぶわーっと吹きこぼれる気配があった.何度か閉めたり開けたりしながら,卓上で徐々にガス抜きした上でようやく成功した.

アルコール度数が18〜19度もある生酒なので,とてもアブナい.外で飲んだらイチコロまちがいなしの必殺ものだ.濃厚サイダーのようなしゅわしゅわ感を味わいつつ,柑橘系甘みのついた豚肉をつつくというのは,実に不健康でしかも幸福だ.こんな食生活を送っていたらとても楽しいよくない.

◆明日からは平日営業.先月下旬以来,ずっとサーバーが停止していたが,明日の明け方午前5時には復旧する予定だ.たまっていた日録などの更新とメーリングリストへの連絡など,いくつかの仕事がすでに待機している.

◆本日の総歩数=5113歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=83.0kg(−0.2kg)/24.5%(+0.1%).


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