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oude dagboek

日録2006年11月


30 november 2006(木) ※ 駆け抜ける霜月のつごもり

◇午前4時起床.夜の寝入りは遅くても朝の目覚めはやっぱり早い.曇り一時霧雨.気温10.1度.まだまだ高いな.北風が吹いているので寒く感じるだけだろう.

◇かたちあるものはいずれなくなる —— 「え?」と不意を突かれた気がするが,〈The Lennox Hill Bookstore〉は今年始め(あるいは昨年暮れ)に廃業してしまったらしい(→参考ブログ記事).リン・ティルマン『ブックストア:ニューヨークでもっとも愛された書店』(2003年1月30日刊行,晶文社、ISBN:4794965583)の「続編」が書かれるとしたら悲しいものがある.Jeannette Watson さんは今どうしているのだろう.

◇午前中,断続的に雨が降る.天気予報はみごとに外れた.

◇午前のこまごま —— 計量生物学会の理事会開催日の問い合わせに答える./ 2年後の進化学会横浜大会の会場に関する問い合わせ.先立つものは……です./ 東大・専攻忘年会は12月12日(火)18:00〜,根津の〈RISAKI〉にて.

◇午後になってやっと晴れ間が見えてきた.

◇午後のこまごま —— 『遺伝』からさらなる無言のプレッシャーが.やばいなあ./ しかし,まずは切迫した翻訳作業に没入するしかない.

 夕方も翻訳.夜も翻訳…….

—— 休みなく日が変わり,霜月から師走へとなだらかな移行.

◇本日の総歩数=5985歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/+0.1%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「66位」


29 november 2006(水) ※ ヘイ・オン・ワイをめぐる一古書店の話

◇午前4時45分に起床.晴れ.気温8.6度.まだ暖かめな夜明け前だ.

◇「ウェルドン&ウェズリー古書店」後日譚 —— 2004年に,博物学系古書店としての164年の歴史を閉じた Wheldon & Wesley 書店の在庫についての後日譚が,まったく予期せず TaxaCom に配信された.廃業後の同書店の在庫は,オランダの古書店〈Hermann L. Strack〉によって,昨年,ウェールズの「古書王国」として有名な Hay-on-Wye のある倉庫に眠っているのが“再発見”された.そのときの記録が同書店のウェブに公開されている(→「10 DECEMBER 2005 - WHELDON & WESLEY....... THE FINAL CHAPTER」).

 写真を見るかぎり相当な量の在庫がまだあるようだが,保管状況はけっしてよくない.黴びたり崩れたりしはじめている古書も少なくないように見える.それでも200箱余りの本は商品価値があったとのこと.引き取られた在庫は Hermann L. Strack 書店によって目録がつくられているらしい.

 Wheldon & Wesley 書店の廃業の顛末は,2004年に当時の経営者から全顧客宛に送られてきた一連のメールで知ることができる.私信なのでここに書くわけにはいかないが(とはいえ,すでに本人がウェブ公開している部分もあるが),家庭の事情により書店を閉じ仏教に改宗したとのこと.幸せなエンディングとはとてもいえなかった.在庫はすべてロンドンの別の古書店に売却されたそうで,今回ヘイ・オン・ワイで“再発見”されたのはそれだろうと推測されている.

 ぼくは学生の頃から Wheldon & Wesley 書店をよく利用していた.いまのようにインターネット書店がなかった頃だったので,W-W 社から在庫カタログが郵送されてくるのが楽しみだった.Leon Croizat の汎生物地理学の大部な自家出版本(1958, 1961, 1964)がすべて入手できたのは,ひとえにこの書店のおかげだ.※それらはいまではきっと入手困難な稀覯本になっているだろう.

◇今日は久しぶりに暖かい秋空で,農林団地のイチョウやフウノキの紅葉がちょうど見頃だ.

◇午前のこまごま —— 書類2件:出張届の訂正と兼業不勤務届の書き直し./ メーリングリストのちょっとした作業./ 領域の忘年会は19日(火)または18日(月)になる.

◇速読中 —— Steve Jones『Coral : A Pessimist in Paradise』(2007年4月刊行予定,Little, Brown,ISBN:0316729418).サンゴで“re-root”した系統樹でものを言っているようだ.この話題のばらつかせ方がおもしろい.Peter G. Ward『Out of Thin Air: Dinosaurs, Birds, And Earth's Ancient Atmosphere』(2006年10月30日刊行,National Academics Press,ISBN:0-309-10061-5[hbk]→目次)とともに

 James Lovelock を有名にした“ガイア(Gaia)”ということばは,彼の友人の William Golding の示唆によるものであることを知った(p. 107).Golding は『The Lord of the Flies』の作者だ.

◇「ヘイ・オン・ワイ」つながり —— 昼休みは暖かく晴れて南風が吹く.気温16.8度.今日の歩き読み:ポール・コリンズ『古書の聖地』(2005年2月5日刊行,晶文社,ISBN: 4-7949-2665-0→目次原書関連情報).買ったままずっと放置していた本だったが,今朝方の“Hay-on-Wye”エピソードに刺激されて手に取る.第12章まで読了.200ページほど.カリフォルニアからはるばる Hay-on-Wye に引っ越してきた作家一家の話.さまざまな「本の死に方」があることを知る.ウェルドン&ウェズリーの在庫本もこういうことだったのか.

◇就職して以来16年間も使い続けてきた「出勤簿押印用ハンコ」が静かに天寿を全うしそうだ.今朝,長年にわたってずっと入れっぱなしだった朱肉つきハンコソケットから本体を取り出してみたところ,ハンコ印面のエッジが崩壊しつつあるだけではなく,ハンコ本体の円柱にも大小無数のヒビが入っていることが判明した.いわゆる安い三文判で,学生時代からずっと使い続けてきた.大学にいた頃はハンコを押す機会などほとんどなかったが,就職してからは出勤簿はもとよりさまざまな事務書類への押印にも使ってきた.実によく働いてくれました.

 さっそく代わりのハンコを新調しないといけない.インターネットでちょこっと調べてみたら,翌日納品してくれるオンライン店がいくつもあるようだ.問題は印材.木とか角のような“いきもの”素材だと意外にこまめな手入れが必要なことを知った.だからと言って,認印ごとき?に“石材”を使うのも仰々しい.ここは迷わず“チタン”にしよう. —— 注文完了.明日納品.

◇午後のプレッシャー(汗) —— 『遺伝』のゲラがどんどん届くのだが,ワタシのはまだ“かたち”そのものがなかったりする(やばっ).明日書かないと.

◇夜の「高速読書」 —— Steve Jones『Coral : A Pessimist in Paradise』(2007年4月刊行予定,Little, Brown,ISBN:0316729418)を読了.珊瑚礁をめぐるさまざまな話題が詰め込まれていて,図版が適切に割り付けられていれば,たいへんおもしろい読み物になると思う.ただし,読者への要求度はやや高いかもしれない.“流動食”のような本ではけっしてない.Peter G. Ward『Out of Thin Air: Dinosaurs, Birds, And Earth's Ancient Atmosphere』(2006年10月30日刊行,National Academics Press,ISBN:0-309-10061-5[hbk]→目次)もその意味では読者を選ぶ本なのだが,こちらはテーマが絞られているので,わかりやすいといえばわかりやすい.雑学教養系と話題集中系のちがいだ.

◇さらに依頼文書を修正したりとか,何やらかにやらでまたまた日が変わってしまった…….

◇本日の総歩数=13252歩[うち「しっかり歩数」=6544歩/58分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.5kg/−0.1%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「63位」


28 november 2006(火) ※ 原稿原稿また原稿(書かないと……)

◇午前4時前に目が覚める.雨.気温11.4度.昨日よりも空は明るいが,ときどきざーっと降ってみたり,また小止みになったりの繰り返し.

◇午前のこまごま —— 依頼出張の届出を2件提出する(12月1日と20日).いずれも東大農学部関連で./ 12月1日に東京に出るので,11月30日に予定されていた海游舎への翻訳ゲラ渡しを翌日に変更してもらえるよう連絡する./ 兼業による「勤務を要しない届出」を2件提出する.ひとつは12月11日〜13日の筑波大学の集中講義,もう1件は12月25日〜28日の信州大学(松本)での集中講義.

◇昨夜の「ヘッケル本」なでまわし顛末 —— Olaf Breidbach『Ernst Haeckel : Bildwelten der Natur』(2006年8月刊行,Prestel,ISBN:3-7913-3663-0→目次)をざっと見渡す.序言の中で,著者は,本書はヘッケルに関する伝記でもなければ彼の科学上の業績についての包括的な論考でもなく,むしろ彼自身の描いた絵(Bilden) — 図版,水彩画,そしてデッサンなど — の中に見られるヘッケルの自然観(Naturanschaunng)を明らかにすることが目的だと言う:

Der vorliegende Band ist keine Biographie und keine umfassende Darstellung des wissenschaftlichen Werkes von Ernst Haeckel. Hierzu ist eine Reihe von Studien erschienen oder in Arbeit. Auf fehlt bisher noch eine umfassende Darstellung, welche die wissenschaftliche Wirkung Haeckels im Detail und speziell auch bezogen auf seine Leistungen im Bereich der Morphologie und Systematik, besonders vor dem Hintergrund seiner wissenschaftspolitischen Bedeutung, nachzeichnet. ...[中略]... Interessieren muss aber, dass Haeckel seine Wissenschaft und seine Ideen von Natur nicht nur in Wort und Schrift formulierte, sondern auch ins Bild setzte. Und um genau diese Bilder geht es hier. In diesem Band werden folglich Haeckels Natur-Bild-Welten zur Darstellung gebracht. Der Band versucht dabei, die Vielfalt von Haeckels Natur-Ansichten in einen Zusammenhang zu setzen. Damit zeigt er die Dimension und Vielfalt von Haeckels Bildwelten der Natur.(S.29 : 下線部みなか)

この本にはヘッケルだけでなく,同時代の生物学者による「絵」も多数掲載されているのだが,とりわけオーケンの博物学書(『Abbildungen zu Oken's allgemeiner Naturgeschichte für alle Stände』1843)の図版がとても美麗なことに驚く.当時の彩色博物図鑑のレベルから言えばけっして珍しくないのだろうが,「あのオーケンが……」という素朴な感銘を受ける.

大判の「絵」を楽しんだ後,巻末の文献リストに沈み込む.2006年までの「ヘッケル研究」が見えてくるようだ.

—— なお,この敷石のごとく重々しい本は,体重計で計測したところ「約2.5kg」もあった.“兇器度”は十分過ぎる.また,〈新正書法〉で書かれるとこういうふうになるのかという見本でもある.

◇「近隣結合法(NJ)は一般化Pauplin計量(Σ[i,j]w(i,j)×d(i,j))として定義される樹長を最小化する系統推定法である」 —— Olivier Gascuel and Mike Steel (2006), Neighbor-Joining Revealed. Molecular Biology and Evolution, 23(11): 1997-2000(→doi:10.1093/molbev/msl072).NJの目的関数を確定した定理が示されている(p. 1999).これでやっと「NJは最小進化法(ME)の近似みたいなもので……」という頼りない言い方をせずにすむのかな.※あとは係数w(i,j)の決め方だけが問題だが,これは難しくなさそう.

◇昼休みは曇り空.気温12.6度.早朝とほとんど変わらず.歩き読み:樹下龍児『日本の文様:その歴史』(2006年11月10日刊行,筑摩書房[ちくま学芸文庫:キ-15-1], ISBN:4-480-09031-2).後半200ページを読了.本書全体にわたって計300葉あまりの図版が貼り込まれているにもかかわらず,結果的に本文テキストの方が勝っているように感じたのは,きっと“文庫”という本のかたちのせいだろうと思う.とくに,並行読書しているヘッケル本がことのほか大きな図集だったので,落差感覚がいっそう強まったのかもしれない.

◇13時50分から1時間ほど,〈形態測定学講義〉の第25回目.第10章「Regression」を読了する(pp. 242-255).サイズとシェイプとの関係をサイズを共変量(covariate)とする共分散分析によって調べる(tpsRegrのような分析).共変量としてはサイズだけではなく,他の要因(たとえば生態学的形質)でもOK.続いて,サイズを除去したシェイプの変動についての正準変量分析(これは定石).その後のベクトル間の内積による“角度”の分析は使い道がいろいろあるかもしれない.文中では個体発生ベクトルの種間差を“角度”によって定量化し,その有意差はブーツストラップによって調べるという事例が挙げられていた.

◇〈R〉で形態測定学 —— Ian Dryden 教授が,Rの幾何学的形態測定学パッケージである〈Shapes〉の新しいバージョンを公開した(12 Nov. 2006).チュートリアル,マニュアル,そして著書 Ian L. Dryden and Kanti V. Mardia『Statistical Shape Analysis』(1998年刊行,John Wiley & Sons,ISBN:0471958166→目次)からのデータセット(および正誤表)が配布されている.

◇午後5時前に帰宅.長雨はやっと上がり,雲間に半月がのぞく夜.

◇本日の総歩数=9173歩[うち「しっかり歩数」=5061歩/44分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.5kg/−0.6%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「60位」


27 november 2006(月) ※ 週明け早々“ヘッケル”づくし

◇午前4時半起床.本降りの雨.気温は15.1度で,暖かくさえ感じる.南風も吹いていたらしく,マンション1階の塗れた壁には蛙が一匹張りついていた.この天候では冬眠どころではないだろう.

◇午前のこまごま —— しばらく溜まっていたメーリングリスト管理作業をすませる./ 進化学会ニュースは今週発送の予定なので,来年度の学会費納入のレターの文案をチェックする.未納者には督促状を同封する.この件は完了した.ニュース発送の後は,学会サイトの更新をしないといけない./ 9月にあった首都大学東京の集中講義の成績評価をする.遅くなってしまったが,結果を返信完了.

◇雨は午前のうちにあがり,曇り空の昼休み.気温16.0度.歩き読みの同伴書は,樹下龍児『日本の文様:その歴史』(2006年11月10日刊行,筑摩書房[ちくま学芸文庫:キ-15-1],ISBN:4-480-09031-2).第2章第1節までざっと読了.200ページあまり.日本での唐草模様の変遷が跡づけられている.白黒写真ばかりだが,やはりカラー図版もあってほしかったな.

◇午後1時40分から2時半まで,Alan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読(第26回目).Chapter 5:「Standard Distributions」(pp. 184-189).離散的確率分布の変形の話題:重み付き分布・センサーされた分布・切断分布.続いて,連続的分布に入る.まずは,指数分布とガンマ分布だ.

◇午後のこまごま —— 松本俊吉さんから『生物科学』誌の「生物学哲学」特集に関する問い合わせあり(もう原稿が仕上がっているという素早さに驚く).すでに直海俊一郎さんからも同様の問い合わせがあった.さすがに動き始めないと時期を逸してしまうぞ.近日中に編集担当の小野山敬一さんと執筆予定者のみなさんに今後の予定について連絡します./ 先日の統計研修のアンケート集計が事務局から届いた.各講義ごとに,研修生による“評定”と“意見”がつけられている.まずは「負の意見」から目を通して,よく自省しないといけない(自分では気づかない点が指摘されていることがあるので).もちろん,「正の意見」と「負の意見」とは表裏の関係にあるので,講師側は一歩離れる姿勢が必要ではある(一喜一憂してはいけない).

◇時ならぬ「ヘッケルづくし」 —— ずいぶん前に研究室に届いていたヘッケル伝があまりに巨大なので,そのまま敷石のごとく机の上にずっと安置しておいたのだが,今日しげしげと中身をチェックした:Olaf Breidbach『Ernst Haeckel : Bildwelten der Natur』(2006年8月刊行,Prestel,ISBN:3-7913-3663-0→目次).彼が長年にわたって活動したイエナ大学の研究所(Ernst Haeckel House)の紹介も兼ねた伝記だ.大判の重厚な本のあちこちに,この伝統ある研究所のインテリアや書庫の写真が載っている.もちろん,ヘッケル自身の図版や水彩画もふんだんにあしらわれていて,写真集としても楽しめる.ヘッケルの「図像的自然観」について考察するというのが本書の主目的なので,こういう造本がふさわしいのだろう.なお,この新刊の英語版も同時に出版されているようだ:Olaf Breidbach『Visions of Nature: The Art And Science of Ernst Haeckel』(2006年8月刊行,Prestel,ISBN:3-7913-3664-9).

 ヘッケル伝といえば無意識のうちに「ドイツにしかない」と思いこんでいたのだが,この本の詳細な参考文献リストをブラウズしていて,不意打ちを食らってしまった.英語圏でも近年になって大きなヘッケル伝が新刊あるいは近刊であることを知ったからだ.

 まずは昨年の新刊:Mario A. Di Gregorio『From Here to Eternity : Ernst Haeckel and Scientific Faith』(2005年6月刊行,Vandenhoeck & Ruprecht[Religion, Theologie und Naturwissenschaft : Band 3], ISBN:3-525-56972-6).ほんと完全に見落としてました.反省反省.700ページほどもある大冊の伝記らしい.Vandenhoeck & Ruprecht 社はゲッティンゲンにある出版社で(高級レストラン〈ガウス〉の真向かいにある),2世紀前には Lorenz Oken の本も何冊か出している由緒ある版元だ.

 もう1冊は,来年出る予定の近刊:Robert J. Richards『The Tragic Sense of Life : Ernst Haeckel and the Struggle over Evolutionary Thought』(2007年刊行予定,The University of Chicago Press,ISBN不詳).Richards教授はすっかりドイツ観念論生物学づいているな.著者サイトに第1章のサンプルが公開されている.

—— “アンテナ感度”を鈍らせてはいけないぞ.

◇午後5時前に帰宅.また雨がぽつぽつと降ってきた.夜になって,本降りになった.もうすぐ師走だというのに変な天気だ.

◇夜は,自宅に抱えて持ち帰った大ヘッケル伝をしばしなでなでしてみる.うふふ.

◇本日の総歩数=12352歩[うち「しっかり歩数」=3626歩/32分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/−0.4%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「55位」


26 november 2006(日) ※ 曇るウィークエンドは遠出をしない

◇午前5時半起床.冷え込みやや強し.雲の隙間から日の出が見える.晴れ間がのぞいたり,また曇ってきたり,すっきりしない空模様だ.

◇日曜午前のこまごま —— 首都大学東京の来年度出講日(生物統計学)を確定させる.修正シラバスを送る./ 東京農大の研究発表会&忘年会(12月23日)に参加すると返信する./ 東大の学部パンフレット委員会(12月1日)への出席を返事する./ 進化学会ニュースの郵送に同封する手紙(会費請求)の文面をチェックしたいのだが,昨年度のがまだ送られてこない.

◇昼にプチ外出.しかし,曇り空からぽつぽつと雨が落ちてきた.予報では,今日の夜遅くなって本降りになるらしい.

◇ベッドサイド・ブック読了 —— 中国古鎮遊編集部(編)『中国・江南:日本人の知らない秘密の街 幻影の村34』(2006年5月5日刊行,ダイヤモンド社[地球の歩き方Books],ISBN:4-478-07953-6).観光産業で栄えていたり,あるいは時代に取り残されていたりと,鎮によってその現状には大きなばらつきがあるらしい.しかし,それらに共通しているのは,水郷と古鎮を切り結ぶ結節点として古橋がある点だ.津軽・黒石にある“こみせ”のような「廊棚」が水郷沿いに延々と続くようすは見物だ.

 こういう本を少しずつ旅していると,漢詩の世界や科挙の時代がそのまま「いま」にもちこまれている錯覚をふと覚える.9月に初めて訪ねた上海の日本的な近しい社会に隣接してこういう Altstadt が広がっているという意外性と歴史性がいまの中国がもつスケール効果かもしれない.

 先月からこの本をベッドサイドに置いてときどき寝読みしてきたのだが,日本の現実世界とは地理的にも心理的にも遠く離れた現実世界を読み歩くのは心地よい安眠を誘うものがある.

◇日曜午後のこまごま —— 先週金曜の東大の集中講義の集計をして成績をつける.あとで他の連携教員に結果を報告しておこう.1週間後の来週金曜には農環研で集中講義が予定されている(ぼくの講義担当ではない)./ 某書類の修正作業.夜まで続けてやっと半分./ 青木繁伸さんの〈R〉新刊を〈租界R〉の「教科書・参考書リスト」に掲載した.

◇夜9時を過ぎて,本降りになってきた.週明けはこのままぐずついた天気が続くそうだ.

◇晩秋の雨夜の読書 —— Olaf Breidbach, Hans-Joachim Fliedner & Klaus Ries (Hrsg.)『Lorenz Oken (1779-1851) : Ein politischer Naturphilosoph』(2001年刊行,Verlag Hermann Böhlaus Nachfolger,ISBN:3-7400-1165-3 →目次)を第4章まで読了.主人公 Lorenz Oken は医者として道を目指し,フライブルクからヴュルツブルクへ,さらにゲッティンゲン大学に進む.この修業時代に彼はシェリンクのロマン主義自然哲学と出会い,自ら博物学と生物学の「自然哲学的基盤」を確立すべく執筆活動を開始する.1805年に,26歳の彼は2冊の本『生物学大系梗概』と『自然哲学梗概』をゲッティンゲンで出版した.

◇本日の総歩数=1661歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.3kg/+0.5%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「51位」


25 november 2006(土) ※ 燃え尽きた翌日は蘭とドリアン

◇午前5時半起床.快晴.冷え込み強し.午前9時に研究所に入ったときの気温はまだ7.9度しかなかった.明け方の最低気温は今年いちばんの低さだったかもしれない.

◇「灰」になっても本は読む(1) —— 高野潤『インカの野生蘭』(2006年8月25日刊行,新潮社,ISBN:4-10-301571-3→目次).『アマゾン源流生活』(2006年1月11日刊行,平凡社,ISBN:4-582-83297-0→目次書評)の著者によるアンデスの「蘭」の本.午前中に読了.熱帯高山地帯の雲霧林に咲く野生蘭の生態写真が主だが,本文はやっぱり“源流生活”的だ.ナランホをはじめ南米の果実たちが食慾をそそる.

◇体系学業界の備忘メモ —— 来年の Wiili Hennig Society Meeting 第26回大会はニューオーリンズにて開催される.会期は2007年6月28日(木)〜7月2日(月).場所は Royal Sonesta Hotel on Bourbon Street(→サイト)にて.いつもよりひと月ほど早くなった.学会サイトにはまだ載っていない情報./ 廃刊オンライン雑誌のデジタル救出劇(→iPhylo の11月24日記事「Demise of Phyloinformatics.org」) —— オンラインのみで刊行されていた『Journal of Phyloinformatics』誌が廃刊になったそうだ.掲載論文(2004〜5年)はすべて Systematic Biololgy Site で公開されたとのこと(→Phyloinformatics archive).

◇空気は冷たいが日だまりは暖かい昼下がりになってもまだ「灰」のままだ.

◇「灰」になっても本は読む(2) —— 塚谷裕一『カラー版 ドリアン−果物の王』(2006年10月25日刊行,中央公論新社[中公新書1870],ISBN:4-12-101870-2→書評目次).暗くなる前に読了した.「ドリアン臭」がどこからか漂ってきそうな本.なぜって,著者自身が東南アジアでひたすらドリアンを喰いまくっているから.その旺盛な食慾は本書を埋めるおびただしい果実写真から読者にもびしびしと伝わってくる.第1章に出てくる“わんこドリアン”の逸話にいたっては,“gastronome”と賞賛すべきか,それとも“gastromanie”とあきれるべきか.

もちろん,本書は「喰う話」ばかりではない.第2章でのドリアンの発芽やその後の生育についての実験,第3章でのドリアンとその近縁群の東南アジアでの地理的分布と味覚の相互比較,そして第6章でのドリアン臭の原因となる化学物質など,ドリアンをとりまく生物学の話題がうまくまとめられている.

しかし,何よりも第4章で取り上げられている,日本の戦前戦後の「果実食文化史」がたいへんおもしろい(しかも意表をつく)テーマだ.かつて書かれたさまざまな文学作品や記録をひもときながら,著者は戦前よりも戦後の方が日本は「貧しくなった」のではないかと言う:

日本が貧しくなったのは,戦後の一時的な現象であって,それ以前の大正期から昭和初期には,さまざまな海外の品が街々に溢れていたのだった.(p. 112)

果物もその例外ではなく,バナナやマンゴーやバニラの例を挙げながら,著者は果物食文化における「文化の途絶」(p. 158)を論じる.

本書には,戦前から戦中にかけての歴史的エピソードがいくつも出てくる.中でも,植物地理学者である E. J. H. Corner が提唱した「ドリアン説」に関連して,彼の著書『思い出の昭南博物館』(1982年刊行,中公新書)への言及がある(pp. 71-73).第二次世界大戦中に日本軍によって占領されたシンガポールのラッフルズ博物館をめぐる史的挿話の集成本だ.以前から,この本は買わないとな,読まないとな,と思いつつどういうわけだか,現在にいたるまでその機会がない.今度こそ手にとってみよう.

個人的な経験をいえば,ぼく自身は「生ドリアン」を食べたことがない.たまたま東南アジアのフィールド調査に行った同僚が持ち帰った「干しドリアン」や本書の第5章にも出てくる「ドリアン羊羹」を口にしたことがある程度だ.嗚呼,ドリアンを喰いたいな.※そうそう,名古屋の浅間にある喫茶店〈にしわき〉では,生ドリアンをかけた「ドリアンかき氷」(p. 170)があるそうだ.また,ナゴヤかよっ(必修? 選択?).

—— ドリアン本を“食べて”,やっと少し元気が出てきた気がする.

◇西の空が赤紫色の夕焼けに染まり,今日は何事もなく終わった.たまにはこういう日があってもいいだろう.

◇本日の総歩数= 歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼△|夜△.前回比=+0.6kg/+0.3%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「51位」


24 november 2006(金) ※ 弥生での集中講義とカンヅメ仕事

◇午前5時に起床.朝風呂.夜明け前は,雨上がりで曇って寒かったが,後に晴れてきた.

◇東大から農環研に転送されてきた献本(ありがとうございます) —— Daniel Andler et al. (eds.)『Reasoning and Cognition : Interdisciplinary Conference Series on Reasoning Studies, Volume 2 (Tokyo Meeting, December 2005)』(2006年3月31日刊行,慶應義塾大学21世紀COE心の統合的研究センター,ISBN:4-902578-05-0).

◇午前8:26発の TX 快速で根津へ.1時間後にはもう弥生キャンパスに着いていた.いまだ“懲罰的再教育センター”みたいな隠れ部屋に荷物を置いて,集中講義をする7号館717号室へ.しかし,鍵はロックされたままで,近くには誰もいない.10分ほどその場で惚ける.10時少し前に向かいの部屋の塩沢さんが走り込んできたので,解錠してもらいセッティング.しかし,定刻の10時を過ぎてもまだ数名しかいないので,さらに数分間待つ.10時15分にやっと開始.

 定石通り,体系化の哲学と分類学/系統学から始めて,推論様式としてのアブダクションについて.系統樹の汎用性と普遍性について話をしたところでもう正午になった.午後は系統推定のロジックについて,離散最適化問題としての側面を中心に2時間ほど話をする.あっという間に終了時刻の午後3時になった.実質的に4時間くらいしかないので,深入りはできなかった.系統推定の統計学的な側面はまったく言及せず(モデル選択の概論だけはした).まあ,今回の講義は「顔見せ」ということだろうから,またの機会に噺をしましょうね.

◇午後3時からは,隠れ部屋に自主的にカンヅメされて,翻訳原稿にかかりきりになる.午後5時過ぎにルオーへ.海游舎の本間さんにできたところまでのゲラを渡し,さらにその場で1時間ほど,さらなるチェック作業の続行.午後6時過ぎにやっと“俘虜”から解放された.※いつまで続くぬかるみぞ…….

◇よろよろと根津の谷に降りていき,〈芋甚〉にて豆カンとあんみつを買う.往来堂書店を経由して千駄木から帰宅.つくばにたどり着いたのは午後6時前.

—— 今日は一日中晴れてしかも気温が低かった.ほぼ完璧に燃え尽きたかもしれない…….

◇夜に飛んでくる指令 —— 東大の学部紹介パンフレット委員会は,12月1日(金),15:00〜,農学部7号館512号室(環境地水研ゼミ室)にて開催./ 東京農大・昆研の研究発表会は,12月23日(土),10:00〜.引き続き忘年会は17:30〜.場所はいずれも厚木キャンパスの研究棟2階形態系実験室にて.

◇中澤さんのメモから得た耳より情報 —— 〈R〉資料の公開:青木繁伸さんが『Rによるデータ解析』(21 Nov. 2006)を公開された(→pdf).→詳細目次

◇今日は「灰」と化したので,午後10時過ぎには早くも寝てしまった.

◇本日の総歩数=10943歩[うち「しっかり歩数」=1921歩/17分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=−1.0kg/+0.3%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「52位」


23 november 2006(木) ※ 勤労感謝の日も勤労は続く

◇午前6時起床.このように惰眠をむさぼっていてはいけない.曇って肌寒い.昨日とは大違い.

 あれあれ,予報では雨模様とのことだったのだが,しだいに晴れてきたぞ.気温は低めだが.

◇統計三昧な昼間 —— まずは,明日の集中講義のスライド最終調整とハンドアウトづくり.印刷は夜の仕事.さらに,来年度冬学期の東大での「生物統計学」講義シラバスをつくる.こんな感じ:

東京大学理学部人類学教室
科目名:生物統計学(2単位/冬学期/2年)
担当:三中信宏

【趣旨】本講義では,与えられたデータのもとで最良の仮説を推論するツールとしての統計学とその手法について講義をする.生物統計学を学ぶ統計ユーザーにとって目標とすべきは,自分の取り組む問題を解決する上で必要な統計手法を自らの責任のもとに使いこなせることである.受講生には,統計分析ソフトウェアや統計数学に取り組む前に,統計学的な「ものの考え方」を身につけてほしい.

【内容】下記の内容に関する講義と演習を予定している:1)統計学的な思考法とその基盤;2)データからの推論(とくにアブダクション)をめぐる論議;3)統計学的説明における単純性;4)尤度原理とモデル選択論;5)パラメトリック統計学(正規分布を核として);6)実験計画と分散分析(線形モデルの基礎)ならびに関連する推定と検定の問題;7)一般化線形モデルへの拡張;6)コンピュータ集約型の計算機統計学;8)ノンパラメトリック統計学;9)多変量データの統計分析の原則(一般化・次元減少・グラフィクス);10)幾何学的形態測定学における“かたち”の定量化と多変量解析;11)統計言語〈R〉を用いたプログラミング.

【成績評価・教科書等】成績は出欠とレポートで評価する.教科書は指定しない.参考書:粕谷英一『生物学を学ぶ人のための統計のはなし』(文一総合出版,1998).なお,私のウェブサイトでも参考書リスト(http://cse.niaes.affrc.go.jp/minaka/R/InvitationStatistics.html)を公開しているので,参照されたい.

上記のシラバスを東大の事務に返送する.字数制限は【趣旨】【内容】【成績評価・教科書等】がそれぞれ「176字」「296字」「168字」という細かい設定だが,各項目とも上限字数ぴったりで仕上げることができた(“着地”がうまくきまった心地).

 シラバスとあわせて,講義曜日と時間帯を決めないといけない.ただし,今の段階では本郷で開講されるのか,それとも駒場なのかが確定していないそうだ.通勤時間がそれによって大きく変わる.

◇オーケン本:Olaf Breidbach, Hans-Joachim Fliedner & Klaus Ries (Hrsg.)『Lorenz Oken (1779-1851) : Ein politischer Naturphilosoph』(2001年刊行,Verlag Hermann Böhlaus Nachfolger,ISBN:3-7400-1165-3 →目次)をこっそり読んでいて,この主人公については英語圏の新しめの生物学史本にもときどき登場していたことを思い出した.とくに,Robert J. Richards の書いた:Robert J. Richards『The Meaning of Evolution : The Morphological Construction and Ideological Reconstruction of Darwin's Theory』(1992年刊行,The University of Chicago Press,ISBN:0-226-71202-8 [hbk]→目次)と Robert J. Richards『The Romantic Conception of Life : Science and Philosophy in the Age of Goethe』(2002年12月刊行,The University of Chicago Press,ISBN:0-226-71210-9 [hbk]→目次)には,確かにオーケンの節が立てられていた.しかし,Breidbach らの論集にはこれらの英語圏の著作はいっさい言及も引用もされていないようだ.

◇午後は曇り空.自転車で少し走ってみる.その後,また引き蘢り.

◇午後9時過ぎに,小雨の中を研究所に出勤する.気温10.2度.明日の集中講義のハンドアウトを印刷する.出欠表もつくった.レポートは今回はなしでいいよね.午後11時半に作業終了.持参する機材をそろえる.例の翻訳作業はいったん帰宅して,未明の仕事になりそう.

◇日が変わる前にひとこと —— どこが「勤労感謝の日」やねん!

◇本日の総歩数=11745歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=+1.3kg/−1.4%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「50位」


22 november 2006(水) ※ 気がつけば読書の秋は過ぎていた

◇午前6時前によろよろと起き出す.これは久しぶりの宿酔いかも.外は憎たらしいほどの好天だ.うう…….

◇午前のこまごま —— 東大理学部から来年度の統計学講義の日程についての問い合わせとシラバス作成依頼.開講が本郷か駒場かで通勤時間のちがいが大きい.授業趣旨は「176字以内」,成績評価については「168字以内」でという微妙な字数制限がある.12月1日まで./ 所内の忘年会についての日程調整.そろそろ年末が近づいてきた気がする.しかし,12月は集中講義が2件予定されているので,文字どおりの師走になりそう./ のびのび原稿がふたつもある./ それ以上に…….

◇午後の相談ごと —— 東大の来年度講義(駒場)として,学部生相手の全学セミナーを立ち上げてはどうかという話.どんどん深みにハマっていく気がする.

◇午前いっぱいはよろよろしていた.11時の気温は16.2度.やや薄曇りながら,散歩日和なので,昼休みには万博記念公園へ遠征.紅葉のイチョウ並木がことのほかみごとだった.

◇その前に,明後日にある集中講義の準備をしないといけないのだが,先月の霊研での講義内容を1/3に短縮すればいいだろうと安易な道を選びそうになっている —— 三中信宏:東京大学大学院農学生命科学研究科エコロジカルセイフティ学特論I(集中講義[2]:生物体系学),農学部7号館717号室,10:00〜15:00.

 1日だけの講義だが,出席をきちんととって,評価をちゃんとしてとなると,けっこう忙しいかもしれないな.

 夜も講義準備のスライドづくりの続き.更新スライドの差し替えとか,筋書きのイメージとか.実質的には4時間しかないので,系統推定のうち,統計学的な話題はほとんどできないだろう.系統樹思考を核にして,最適グラフのアブダクションについての高座になります.

◇日が変わる頃にやっと就寝.明日は勤労感謝の日ではあるが,なんやかやの勤労をすることになる.

◇本日の総歩数=10504歩[うち「しっかり歩数」=1870歩/18分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/+0.1%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「51位」


21 november 2006(火) ※ ばたばたとあちこち走り回る日

◇午前5時前起床.雨上がりの朝焼け.9.6度.地面はところどころまだ濡れている.地表近くは薄い霧がかかる.

◇午前のこまごま —— 先月の札幌出張の航空券半券と銀行引落しの明細書を事務に提出した.こういう事務手続きがどんどん煩雑化していくのは“定向進化”みたいなもので,もう誰にも止められない./ 交付金による海外出張の成果が査読付き論文に反映されているかどうかの調査.これまた“定向進化”のひとつだな.スルーしてずっと放置していたのだが,ごめんなさい,出します出します./ 文藝春秋社からリーディング依頼されていた2冊の中間報告をすます.正式レポートはあとで.

◇備忘メモ —— 讀賣オンラインにて11月1日付の記事が載っていたことに今日になって気づいた:「歴史の手法で生物学」(読売新聞11月1日朝刊記事).アヤシイ写真はカットされてテキストのみ.できれば,『系統樹思考の世界』の書影は載せてほしいな.

◇13時から1時間弱は,〈形態測定学講義〉の第24回目.第10章「Regression」に入る(pp. 229-242).回帰分析の前半部分は基本事項だけなので飛ばす.続いて,重心サイズに対する形状変数の回帰の例が説明される.tpsRegr で実行できるタイプの回帰分析だ.回帰の線形モデルで処理群カテゴリーに対する「ダミー変数」を設定すると,通常の分散分析と同じになるという説明がある.これは,次回に登場する予定の共分散分析の導入のためだろう.輪読終了後に,南保くんの修論に向けての打合せ.

◇新刊メモ —— インカ・ガルシラーソ・デ・ラ・ベーガ著(牛島信明訳)『インカ皇統記(三)』(2006年10月17日刊行,岩波書店[岩波文庫・青489-3], ISBN:4-00-334893-1)/インカ・ガルシラーソ・デ・ラ・ベーガ著(牛島信明訳)『インカ皇統記(四)』(2006年11月16日刊行,岩波書店[岩波文庫・青489-4], ISBN:4-00-334894-X).これで『皇統記』は完結した.

◇午後はまたまた年休を取って,いくつかのこまごまを消化すべく,つくば市内を走り回る.万博記念公園のイチョウはちょうど見頃だ.午後4時に任務完了.午後は晴れて暖かくなってきた.

◇16:39の TX 区間快速で根津へ出る.肉林なしの酒池…….完璧に呑み過ぎました.

 日が変わる直前に,へろへろになってつくばに帰り着く.明日が思いやられる.

◇本日の総歩数=13771歩[うち「しっかり歩数」=2167歩/22分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=0.0kg/+0.5%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「49位」


20 november 2006(月) ※ ざあざあと降ってやっと晴れる

◇午前4時20分に起床.昨夜からの雨はまだざあざあと降っている.雨足強し,気温10.9度で肌寒い.

◇朝のこまごま —— 年末調整のための書類を耳をそろえて会計に提出する./ 明日の午後は2時間年休をとる.届け完了./ 進化学会ニュース(Vol.7, no.2)のゲラpdfが届いた.ざっと読んで気づいた点を返信.ついでに,学会事務関係の返事も送った.

◇どの口がそういうことを言うのか —— 学会会場で私に謝罪したのはほかならないアナタでしょう.にもかかわらず,またもや理解不能な妄言をあちこちに垂れ流すとは.三歩歩いたらすべて忘れる御仁なのか,それとも三日経ったら記憶がきれいに揮発してしまうのか,あるいは不自然に歪んだガラスの眼鏡をかけていたりとか.ほんまに賢いなあ

◇とてもめでたいこと —— 挙式の日取りと場所が決まったのはたいへんめでたいことです.如月の東山は節分でさぞや春めくことでしょう.※で,ペギオくんも来るんでしょ?

◇こちらでも揮発する記憶 —— 午前10時を少し回った頃,企画戦略室から電話があり,「みなかさん,今から業績評価WGの会議なんですけど……」とのこと.ウソやー.そんな予定があったとはまったく記憶にない.書き付けメモもないし,スケジュール表にも書かれていない.どうやら,すっぽりと欠落していたらしい.あわてて会議室に駆け込んで,正午まで2時間の意見交換.農環研での今後の業績評価改訂のためのあれやこれや.

◇午前のうちに雨はあがり,昼休みには晴れ間がのぞきはじめた.歩き読みは,森まゆみ『円朝ざんまい:よみがえる江戸・明治のことば』(2006年10月10日刊行,平凡社,ISBN:4-582-83340-3)の第14章残りと最後の第15章.上州・沼田の塩原多助から北海道まで噺は広がる.これだけ込み入った噺をする方も聞く方も体力があったにちがいない.円朝噺の世界を自ら旅したバイオグラファー(とポン太さん)はいい本を書いてくれました.

◇午後1時半から1時間は,Alan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読(第25回目).Chapter 5:「Standard Distributions」(pp. 177-183).どんどん新しい離散分布が登場し,それらの相互関係が錯綜していく.P.183の「鳥瞰図」にさらに書き込みをして,なんとか消化しようとするのだが…….“共通祖先”としてポリヤ分布(一般化超幾何分布)を定義し,そのパラメータを変えることで,二項分布・超幾何分布・負の超幾何分布を導出する.N→∞のとき,超幾何分布と負の超幾何分布は二項分布になる.n→∞のとき,二項分布はポアソン分布になる.一方,負の超幾何分布から負の二項分布が導出できる.k→∞のとき,負の二項分布はポアソン分布になる —— 離散分布間の“相姦関係”はざっとこんな感じ(汗).

◇昼下がりのこまごま —— 計量生物学会の次期会長選挙の投票をすませる./ 信州大学理学部に振込口座の連絡.完了./ 東京大学理学部人類学教室に兼業可能の返事を返す./ 筑波大学の歓迎会は天久保の〈あじ彩〉にて(12月11日,18:00〜).

◇夕方,また雨が降り始めた.午後8時を過ぎて小止み.夜の散歩は雨上がりに.

◇本日の総歩数=13765歩[うち「しっかり歩数」=3180歩/28分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.4kg/+0.2%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「46位」


19 november 2006(日) ※ 冷たい雨がそぼ降る秋葉原

◇午前5時半に起きる.曇り.どんよりと寒い朝.午前8時を過ぎて雨が降り出した.

◇週末のオーケン —— Olaf Breidbach, Hans-Joachim Fliedner & Klaus Ries (Hrsg.)『Lorenz Oken (1779-1851) : Ein politischer Naturphilosoph』(2001年刊行,Verlag Hermann Böhlaus Nachfolger,ISBN:3-7400-1165-3 →目次).ついつい盗み読みをしてしまういけないワタシ.

 本書は,Lorenz Oken(1779〜1851)の没後150年を記念して彼の生誕地である Offenburg で2000年11月に開催された会議に基づく論文集だ.全体の半分は,Oken の伝記的章で,Offenburg での生誕から Zürich での逝去までの間に彼が生活した都市ごとに,その足跡をまとめている.後半は,本書の中心的テーマである「政治的自然哲学者としての Oken」に焦点を当てた論考である.

 巻末には,Oken の著作リストが付けられている(pp. 251-268).Oken 自身の著作は年代順に整理されていて,二次文献リストは2000年までカバーされている.彼の主著は,『Lehrbuch der Naturphilosophie』(1809-1811),『Lehrbuch der Naturgeschichte』(1813-1826),そして『Allgemeine Naturgeschichte für alle Stände』(1833-1841)のみっつだ.最初の自然哲学の本は有名だが,残り二つの博物学の著作の方が膨大で,いずれも計数千ページの分量があるとはまったく知らなかった.

 序言(Vorwort)はこう結ばれている:

Der Band versucht, Oken in seiner historischen Position verständlich zu machen: Ideen nur abstrakt zu präsentieren, wäre verfehlt; insbesondere bei dem politischen Naturphilosophen Oken. Es gilt nicht nur zu den „Dingen“ — und seien es die Dinge des Geistes — zu kommen, sondern auch zu den Lesern, die um diese Dinge wissen wollen. (p. 10)

単なる思弁的思想家にはとどまらない Oken の業績を再評価することにより,当時の Romantische Naturphilosophie 自体への先入観をひっくり返そうという編者の意図が見える.

—— あとはまた後日ということで.

◇午後1時11分の TX 快速で東京にお出かけ.私用.秋葉原で地上に出ると,冷たい雨がしとしとと降っていた.夕方までの用事.午後4時47分の区間快速で帰還.午後6時前につくばへ.宵闇の中,ざあざあと降り続く.予報では,これから明朝にかけて,さらに雨足が強まるらしい.

◇往復の車中読書 —— Peter G. Ward『Out of Thin Air: Dinosaurs, Birds, And Earth's Ancient Atmosphere』(2006年10月30日刊行,National Academics Press,ISBN:0-309-10061-5[hbk]→目次).最初から第2章まで独唱.50ページ.本書が取り組もうとする進化シナリオはごく単純だ(p. 47):1) 地球上の酸素濃度が低下すると,生物相の disparity が増加する[仮説2.1];2) 地球上の酸素濃度が増大すると,生物相の diversity が増加する[仮説2.2].酸素濃度と生物進化との関係を単なる“相関関係”だけではなく,“因果関係”として究明しようというのが本書の目指すところだ.まだ全体の1/5だが,なかなかおもしろい読み物になりそうだ.

◇夜もほっこりできず…….諸方面,滞りはなはだし.明日からまた平日が始まる.今度の金曜は東大で one-day の集中講義(生物体系学).その準備もいつかはしないといけないのだが,その前に差し迫った仕事が数件ある(いずれも「締切までマイナスん日」の原稿だ).

◇本日の総歩数=7096歩[うち「しっかり歩数」=1142歩/11分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=+0.6kg/+0.2%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「47位」


18 november 2006(土) ※ 秋晴れ週末は「凪」のごとし

◇前夜の夜更かしの当然の結末として,午前7時まで目が覚めない.北風が吹いて寒い.朝から快晴.明日からは下り坂だそうだ.まだ“統計アタマ”のまま.

 〈leeswijzer〉へのアクセスが22万台に達した.

◇昼間は日射しがあり,日だまりはそれなりに暖かい.しかし,風は冷たい.怠惰な午前の時が流れる.

◇週末のこまごま —— 午後は年末調整に向けての提出書類をそろえる.年末調整は毎年のことだが,今年はとくに住宅取得関連の書類が多いので,遺漏のないようにしないと.週明けに耳を揃えて事務に提出しよう.意外に時間をとられてしまった.

◇統計研修後の“アパシー”感とともに,さらさらと砂がこぼれ落ちるように時間が過ぎ去っていく気がする.もう,夜だ.

◇本日の総歩数=1606歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+0.2%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「42位」


17 november 2006(金) ※ 今年の統計研修も大団円を迎える

◇午前5時前起床.晴れのち曇り.気温5.3度.早朝の研究所にて,〈R〉パッケージの動作確認と今日のプレゼン準備.統計研修の最終日である今日の午後には質疑の時間があって,一席ぶたないといけません.

◇一昨日受けた質問(Rでクラスタリングのブーツストラップ)への返事の後半 ——

ご質問にある,クラスター分析のブーツストラップ信頼性評価には,東工大の下平英寿研究室で開発された〈pvclust〉パッケージを用いるのが便利でしょう.通常のブーツストラップとともに,マルチスケール・ブーツストラップの計算もしてくれます(最近,上位バージョンの〈scaleboot〉パッケージが公開されました).

テストデータを用いた説明は下記の通りです:

> library(pvclust)  #「pvclust」パッケージを組み込む.
> data(lung)  #データ「lung」を呼び出す.
> result <- pvclust(lung, nboot=100)
  #ブーツストラップ反復を100回行なって相関行列からUPGMAクラスタリングを実行する.
> plot(result)
  #デンドログラムとブーツストラップ値(「BP」と「AU」の2つ)を表示する.

参考文献

〈pvclust〉は,データサイズと反復数が多くなると,急速に足取りが重くなる.PowerBookG4 だと「nboot=100」で早くも我慢の限界を超える.

—— 以上で,今日の質疑時間のプレゼン資料は完成した.〈ape〉と〈pvclust〉については使用上の疑問点がいくつかあるのだが,それらが解決できたあとで,〈租界R〉に公開することにしよう.

◇午後1時から2時まで,〈文化系統学〉セミナーの第26回目:Chapter 12「Using cladistics to construct lineages of projectile points from Northeastern Missouri」(John Darwent and Michael J. O'Brien)の後半を読了(pp. 200-208).層序データを付加した分岐図の上で,鏃の形状形質を最節約マッピングする.鏃のクレードごとに,「耐久性と再利用生を重視する方向への進化」とか「長持ちしないが殺傷力を高くする方向への進化」という傾向を見いだす.図が過度に圧縮されていてほとんど“視力検査“”的でとてもつらい(やむを得ずOED用の拡大鏡を使ってしまった).この研究では,もともと鏃の機能的形質(とくに根元のグリップ部分)を重点的に拾っているようなので,得られた最節約マッピングは,文化形質の進化に関するテストをしているのではなく,その形質進化のトレースをしていると考えられる.

◇午後3時前から1時間弱は,統計研修(応用編)の質疑に出向く.事前に出された質問票を踏まえての応答と補足説明.研修生のみなさん,たいへんお疲れさまでした.応用編には,「計算機統計学」の講義があってもよかったな.ブーツストラップやジャックナイフの考え方の解説とか.データからのリサンプリングの際に,元データのもつ“個性”を和らげるためには,ノンパラメトリック・ブーツストラップではなく,パラメトリック・ブーツストラップの方がいいだろうと竹澤さんは言う.

 岩田さんから伝言:来年,つくばで形態測定学のシンポジウムを開催する予定.前回やってきた Pete Lestrel 氏もオーガナイザーの一人になるそうだ.

◇午後4時前に研修会場を出て,直帰.その後,なんやかんやで,就寝は午前2時過ぎ.夜更かしが過ぎました.

◇本日の総歩数=5958歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/0.0%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「44位」


16 november 2006(木) ※ ふと思い立って昼下がりの年休

◇午前5時前に起床.雨上がりの霧の向こうに朝焼け.気温5.3度.その後,すっきり秋晴れになる.

◇気分的に盛り下がり気味なので,午後は年休を取ることにトツジョ決定.気候的にとてもよい季節にこうも籠りっぱなしではよろしくない.

◇午前中は,研究室にて〈類人猿〉と格闘してみる.首尾よく組み伏せたか,それともあえなく組み伏せられたかは定かではない…….

 でもって,昨日受けた質問(Rでクラスタリングのブーツストラップ)への返事の前半 ——

まずはじめに,「クラスター分析」は「系統解析」ではありません.クラスター分析から出力される“デンドログラム”という図形言語は,外見的に“系統樹”と見かけは似ていますが,内実は別物と考えるべきですね.

〈R〉を用いて系統解析をしようとするなら,Emmanuel Paradis らが開発した系統解析パッケージ〈ape〉が利用できます(姉妹パッケージに〈apTreeshape〉というのもあります).〈ape〉を用いると,近隣結合法と最尤法による分子系統樹を〈R〉の上で構築することができます.

データファイル「woodmouse」(15 OTU のミトコンドリア Cyt b 塩基配列データ)を利用して,〈ape〉の使い方を簡単に説明します:

> library(ape)  #「ape」パッケージを組み込む.
> data(woodmouse)  #データ「woodmouse」を呼び出す.
> njtree <- nj(dist.dna(woodmouse))
  #K2モデルでの距離から計算した近隣結合樹をオブジェクト「njtree」に格納する.

> summary(njtree)  #系統樹を記述する.

Phylogenetic tree: njtree 

  Number of tips: 15 
  Number of nodes: 13 
  Branch lengths:
    mean: 0.002430697 
    variance: 5.135314e-06 
    distribution summary:
      Min.    1st Qu.     Median    3rd Qu.       Max. 
-3.161e-05  7.977e-04  1.715e-03  3.087e-03  9.407e-03 

> plot(njtree)  #系統樹を描画する(グラフィクス画面).
> prop.part(njtree)  #近隣結合樹からノード=分割(partition)を抽出する.
==> 1 time(s):
 [1] No0906S No0908S No0909S No0910S No0912S No0913S No1007S No1103S
 [9] No1114S No1202S No1206S No1208S No304   No305   No306  
==> 1 time(s):[1] No0909S No0912S No1007S No1103S No1114S No1208S No305  
==> 1 time(s):[1] No0909S No0912S No1007S No1103S No1208S
==> 1 time(s):[1] No0912S No1103S
==> 1 time(s):[1] No0909S No1007S No1208S
==> 1 time(s):[1] No0909S No1208S
==> 1 time(s):[1] No1114S No305  
==> 1 time(s):[1] No0913S No304   No306  
==> 1 time(s):[1] No0913S No304  
==> 1 time(s):[1] No0906S No0908S No0910S No1202S No1206S
==> 1 time(s):[1] No0908S No1206S
==> 1 time(s):[1] No0906S No0910S No1202S
==> 1 time(s):[1] No0910S No1202S

> boot.phylo(njtree, x = woodmouse, FUN = function(xx)nj(dist.dna(xx)), B = 100, block = 3)
  #ブーツストラップ(B=100反復)を実行し,上の各ノードの出現回数を出力する.
 [1] 100  74  61  90  99  50  84  54  45  15  57  45  80

以上の手順で,塩基配列データからの近隣結合法による系統推定と,ブーツストラップによる信頼性評価を行なうことができます.〈ape〉の使い方の詳細については,下記の参考文献を参照してください.

参考文献

  • Emmanuel Paradis 2006. Analysis of Phylogenetics and Evolution with R. Springer-Verlag[Use R Series], ISBN:0-387-32914-5.
  • Emmanuel Paradis et al. 2006. The ape Package : Analyses of Phylogenetics and Evolution. Version 1.8-5. Command Reference (6 October 2006). Available from the Internet : http://www.isem.univ-montp2.fr/PPP/PPPphylogenie/ParadisHome.php

—— 今回,試しに〈ape〉を使ってみて,そのあまりの“のろさ”に脱力してしまったが,研究ツールとしてではなく,教育ツールとしてであれば,うまく利用できる状況はきっとあるにちがいない.

 個人的には,n端点に対する系統樹の総数を計算する〈ape〉の関数「howmanytrees()」にちょっとハマったりして(「n=151」まではきっちり計算できるようだ).

◇午後1時の気温は13.2度.快晴.年休なので,とっとと退散する.

◇午後の突発的自由時間に —— 昨日 Amazon.de から届いた本の1冊:Olaf Breidbach, Hans-Joachim Fliedner & Klaus Ries (Hrsg.)『Lorenz Oken (1779-1851) : Ein politischer Naturphilosoph』(2001年刊行,Verlag Hermann Böhlaus Nachfolger,ISBN:3-7400-1165-3→目次).“悪名高い”Naturphilosoph の旗頭としてだけではなく,オーケンの「博物学者」としての側面,そして政治学者としての側面にも同等の光が当てられているようだ.

 ふと思い立って昔の本も —— Michael T. Ghiselin『Intellectual Compromise : The Bottom Line』(1989年刊行,Paragon House,ISBN:1-55778-065-X→目次).読み始めたばかりだが,「どういう土俵に乗っている本か」を言うことさえ難しいかもしれない.著者の主張の大きな柱は,知的な合理性に関して“哲学”ではなく,むしろ“経済学”をよりどころにしようというところにあるようだ.彼の「Species-as-individual」説についても,この“経済学”的な観点から光を当てようとする.

 意図的なのか,それとも結果としてそうなったのか,Ghiselin の本はどれもこれも「無視できない非主流派」の雰囲気が色濃く漂う.1969年の本(『The Triumph of the Darwinian Method』)はダーウィン会社内ではすでに「古典」扱いだから別格としても,『Intellectual Compromise』および先行する1974年(『The Economy of Nature and the Evolution of Sex』)のどちらも“経済学的”な本はいったいどれくらい受容されたのだろうか.1997年の【種】本(『Metaphysics and the Origin of Species』)のインパクトも気になるところ(生物学哲学者はともかく,生物学者は読んでる?).

 少なくとも,この『Intellectual Compromise』は出版後あっという間に絶版になって,オンライン古書店で探しまわって数年後にやっと手に入れた記憶がある.

◇本日の総歩数=6017歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.1kg/+0.3%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「44位」


15 november 2006(水) ※ 落ち着きのない平常営業日

◇うっかり午前5時半まで寝過ごしてしまう.明け方の気温が日に日に低くなってきたせいだろうか.晴れ.冷え込みはない.しだいに北からの風が吹いてきた.午前8時の気温は14.3度.快晴になった.

◇今朝,研究所に来てみたらこんな状態(→)になっていた.ちょっとスキを見せて居室にいないと,狙いすましたように国内外から本や古書カタログや新刊案内が堆積する.今回は“超弩級”のヘッケル本やら統計本やらが着弾していた.中身をじっくり眺めているヒマが今はないので,堆積物の山をとりあえず脇に押しのけて,喫緊の仕事にとりかかろう.

◇さらに,昨日の不在の間に,統計研修(応用編)の質問もいくつか届いていた.お,届いた4件中の2件は数理モデリングね.※講師の大東くんはしっかり解答するよーに.

 ぼくが担当したわけではないが,昨日の「クラスター分析」の講義に関連して,こんな質問が:

分子系統樹では各枝の支持率をブートストラップで算出するのが通常ですが,クラスター分析の場合,これに類似するような支持率を計算はできないのでしょうか.計算方法がある場合はその手法を教えて下さい(Rを使用の場合のコマンドなど).

 これまた“鴨ネギ”ですなあ.※じっくりと料理するまでもないか.

◇午前のこまごま —— 10:30〜11:30は領域内会議.利益相反なんちゃら委員会を所内につくるとかで,兼業しまくっている素行不良の輩はまたまた書類を書かないといけないらしい(それはワタシ)./ 来週の21日(火)は東大の教員会議日.しかし,別件の用事が入っているので午後は出られない.学部パンフレットの作成委員になったのだが,その打合せについての議題あり./ 年末調整に関わる残高証明書が発行された.

◇昼休み.曇り.気温14.6度.歩き読みは,森まゆみ『円朝ざんまい:よみがえる江戸・明治のことば』(2006年10月10日刊行,平凡社,ISBN:4-582-83340-3)の第14章半ばまで.「真景累ヶ淵」はそれだけでもう十分に“因縁ネットワーク”が絡み合っていて可読性が低い.しかし,円朝の“上州もの”の中でも,「安中草三」は「あまりに筋が複雑なので本書に記すことを断念した」(p. 280)とのこと.長大な落語を高座にかける噺家というのは芸力がものすごく高かったのだろうと思う.

◇ヴィジュアル系の統計本 —— 今から15年前に『バイオサイエンスの統計学:正しく活用するための実践理論』(1990年2月15日刊行,南江堂,ISBN:4-524-22036-4→目次)という名著(今年10月で実に20刷!)を書いた市原清志さんが共著で新刊を出した:市原清志・岩本美江子『カラーイメージで学ぶ統計学の基礎』(2006年10月16日刊行,日本教育研究センター,ISBN:4-89026-123-0→目次).序言によると,本書は前著『バイオサイエンスの統計学』を,さらに噛み砕いて,教養課程の学生向けに改定したものだそうだ.そして,前著よりもさらにさらにたくさんのカラー図版が使われている.ただひとつ心配なのは,この版元が割にあっさりと出版物を絶版にしてしまう傾向があるようなので(過去の出版歴から見て),本書も出回っているうちに入手しておかないと店頭から消えてしまうおそれがあるという点だ.

◇午後のこまごま —— 計算センターのセキュリティ・レベルが上がったことに対応して,各自メーラーの設定を変更することになった.内部専用と外部アクセス兼用とで設定を変える作業をする.多少あたふたしたが,無事に変更完了.※Apple Mailで所外からアクセスするとき,「MD5チャレンジ応答」ではダメで,「パスワード」に設定しないとつながりませんでした./ 筑波大の集中講義の「夜の迎撃態勢」が確定しつつあるそうな…….兼業申請は通りました./ 東大からの非常勤出講書類を書いてメール返信する./ さらに,長く堆積していたメールでの質問や問合せへの返信を一括処理する.

◇夕方6時前に外に出たら,雨がざあざあと降っていた.天気予報は大はずれ.気温12度台の冷たい雨で,夜になっても時おり降っては止むを繰り返す.

◇本日の総歩数=12954歩[うち「しっかり歩数」=5005歩/44分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=0.0kg/−0.5%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「42位」


14 november 2006(火) ※ 銀杏ころがる弥生でオルグ活動

◇午前5時前に目覚める.雲は多いものの晴れ.冷え込む.

◇新聞に載った新刊情報 —— ホルスト・R・ティーメ(齋藤保久監訳)『生物集団の数学:人口学・生態学・疫学へのアプローチ(上)』(2006年11月刊行,日本評論社,ISBN:4-535-78418-3→版元ページ).「上」があるということは,「下」もあるのだろうな(フェイントかけて「中」もあったりして).※大東くんはしっかり読むように(丸投げっ).

◇快晴秋晴れになる.今日は東京出張なので,午前いっぱいは自宅にて“翻訳苦役”に服する.軽くなったり,重くなったり…….10枚ほど仕上げる.真っ赤です.

◇午前11時11分発の TX 快速で本郷へ.朝日堂でパンを買い,弥生の隠れ家に潜り込み,またまた翻訳仕事に耽る.再教育センターで懲罰を受けている心地ぞする…….

◇午後2時前に正門前の〈ルオー〉で海游舎の本間さんにできたところまでの原稿を手渡す.いつも通りハッパをかけられる.今度は来週の金曜に,またまたここで“年貢”を納めることになる.※こういう生活がいつまで続くのかなー.

 東大のイチョウはまだ色づかず.銀杏が強い南風に転がるのみ.晴天で,気温は高め.きっと20度を越えているにちがいない.

 正門横の工学部何号館かに〈スターバックス〉が入ったことに気がついた.工学部の別の建物には〈松本楼〉は入るは,安田講堂の下にはコンビニはあるは,医学部(not 病院)には麻布からイタリアンの名店が移ってくるは —— どんどんダイガク構内が楽しくなりますなあ.

◇14時40分から,農学部7号館にて,生物・環境工学専攻の学部生向けに卒論ガイダンス.われわれはエコロジカル・セイフティー学講座(ES)は大学院のみなので,本来は関係ないはずなのだが,将来への先行投資として卒論生の指導も行なうことになる.各研究室ごとに卒論課題の説明をする.系統推定論と形態測定学に関心のあるみなさんは,ぜひワタクシの「庵」へどーぞ.歓待いたします.

 実際にどの学生がどこの研究室に配属になるかについては,教員はまったくタッチせず,学生どうしの話し合いですべてが決まるのだそうだ(ジャンケンとかアミダもあるらしい).来月上旬には配属が確定するとのこと.

 ES は連携大学院なので,教育・研究の「場」はつくばの農環研ということになる.しかし,つくばに学生を“幽閉”するようなことになっては教育的ではないので,学生の足場はあくまでも弥生に置いてもらって,必要に応じてつくばに出向くというのがいいやり方だろうと思う.ES を志望する卒論生がいたときは,とりあえず,弥生にある専攻内のどこかの研究室に形式的に属してもらって,実際の指導は ES の教員が担当するという方針だ.もちろん,弥生でのオフィス・アワーの設定のしかた.学生との日常的な連絡の取り方.セミナーや輪読会の開き方など,これから詰めないといけない点はいくつもある.

◇午後4時半にガイダンスは終了.不忍通りをぶらぶら北上し,往来堂書店でトラップされたのち,千駄木から乗る.北千住で16:56発の TX 区間快速に乗り換え,つくばに着いたのは午後6時前.夜はだらける.

◇往来堂書店にて —— 『谷中根津千駄木・其の八十五』(2006年10月25日発行,谷根千工房).最新刊.特集は〈本日はアート日和〉.千駄木にあるファーブル昆虫館の記事も.おお,東大医学部の校舎に入っているイタリアンの店は,〈カポ・ペリカーノ〉という店名だったのか./ 樹下龍児『日本の文様:その歴史』(2006年11月10日刊行,筑摩書房[ちくま学芸文庫:キ-15-1],ISBN:4-480-09031-2).文庫書き下ろし.いたるところ唐草が絡みつく.以前に読んだ伊藤俊治『唐草抄:装飾文様生命誌』(2005年12月15日刊行,牛若丸[発行]/星雲社[発売], ISBN: 4-434-07164-5→目次書評)を想起させる.

◇本日の総歩数=10228歩[うち「しっかり歩数」=2075歩/16分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/−0.2%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「38位」


13 november 2006(月) ※ 統計研修(応用編)初日の高座

◇午前5時前の起床.晴れ.気温3.1度.冷える冷える.氷点下の朝ももうすぐだ.

 研究所にて,今日の統計研修のためのハンドアウト原稿をつくる.講義に配布します.

◇快晴の朝のこまごま —— 今月の東大への出張届2件.

◇農研機構会議室での統計研修(応用編)の初日.ガイダンスの後,9:45〜12:15まで,〈多変量解析概論〉の講義を担当する.スライドを大幅に差し替えたので,密度は昨年よりも高くなったと思う.応用編の研修生は20名あまりだが,その大半は先週の基礎編からそのまま流れてきている.お疲れさまでございます.

 応用編から初めて参加した研修生のひとりから,「統計分析のソフトとしては何がいいでしょうか」という“鴨ネギ”な質問あり.それをワタシに問いかけたのはとても正しくしかもまちがっているよ:「〈R〉しかありません」(キッパリっ).

◇昼は快晴.羽成公園にて本読み.そののち歩く:森まゆみ『円朝ざんまい:よみがえる江戸・明治のことば』(2006年10月10日刊行,平凡社,ISBN:4-582-83340-3)の第10章まで.次の第11章はかの「真景累ヶ淵」だ.

◇午後のこまごま —— 明日の東大での卒論ガイダンスのためのスライドづくり.ppt を使いたくはないのだが,他の連携教員に合わせてということで妥協./ 東大・理・人類学教室から連絡あり.来年度の生物統計学の講義に関する事務連絡./ 来月の筑波大・数学の形態測定学講義の「夜の部」は11日(月)の夜ということになった.

◇夕方,帰宅後は,ひたすら翻訳原稿と格闘する.まだまだぁ.

◇本日の総歩数=13010歩[うち「しっかり歩数」=5703歩/49分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/+0.9%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「36位」


12 november 2006(日) ※ 晩秋つくばの南風凩とガラ・コンサート

◇午前5時に目が覚める.夜明けの空は晴れて,空気が冷たい.しかし,静電気がぴしぴし飛ばないところを見ると,空気はそれほど乾燥してはいないのかもしれない.

 日が昇るとともに南風が強まり,すでに色づいていた木々の落ち葉が舞う.秋晴れの散歩日和.

◇明日の〈多変量解析概論〉講義のためのスライドづくりをする —— 思い切って,今までのスライドのうち半分くらいを新しいものに差し替える.多次元図形関連はそのままにしておいて,説明的スライド部分をざくっと切り取り,新規スライドを挿入.全部で60枚ほどの分量になった.この入れ換えとともに,噺の筋書きも大きく変わることになる.

◇昼過ぎ,とても強い南風に抗して自転車をこぐ.あとでニュースを見たら,これが関東地方の今年の「こがらし1号」だそうだが,南風なので“凩”の雰囲気はまるでない.

◇『Lord of the Flies』(1954)について —— Steve Jones の原稿で,William Golding 作のこの本に言及されていた.〈蠅の王〉要注意.

◇午後3時から,ノバホールにて,〈第22回つくば国際音楽祭〉ブダペスト・フィルのガラ・コンサート.女性奏者がとても多い.なごやかな感じ.しかし,客席に空席が目立つのはなぜだ.午後5時半まで.

◇本日の総歩数=8265歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/0.0%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「37位」


11 november 2006(土) ※ 雨の神楽坂に潜入する

◇午前5時起床.曇りのち雨が降り出す.研究所に潜入したときにはすでに本降りになっていた.気温13.0度.

 統計研修(基礎編)のあとかたづけをして,来週から始まる応用編の準備を少ししてみる.基礎編ほどはコマ数がないのでラクではある.月曜のしょっぱなの「多変量解析概論」で受講生に引導を渡せばいい.

◇雷がごろごろ鳴る.ときおり,ざーっと降ったり,また止んだり.朝イチでインフルエンザ予防接種に行ったが,とっても混んでいて,昼前まで拘束されてしまった.

◇待合室での読書 —— Steve Jones『Coral : A Pessimist in Paradise』(2007年4月刊行予定,Little, Brown,ISBN:0316729418).本でも,ゲラでもない,打ち出したままの生原稿.こういう“生”な原稿を手にした経験は,Gareth Nelson の1970年代初頭の「Trees and cladograms」原稿,1980年はじめの Philip Kitcher の『Species』単行本原稿くらいかな.Nelson と Kitcher の原稿は結局そのままではパプリッシュされなかったのだが,Jones のは確実に出るだろう.10ページほどゆるゆると読み始める.

◇午後1時11分発の TX 快速で神保町へ.雨足はなお強い.東京堂書店をざっと探索してから,さっさと飯田橋へ向かう.やや蒸し暑い.

◇飯田橋駅で降りて神楽坂を上がる.東京理科大はいいロケーションにあるなあ.午後3時から,理科大と関わりがあるらしき〈理窓会館〉の3階会議室にて,日本計量生物学会の評議員会がはじまる.会長候補者の選考と理事の選考をする.1時間あまりで会議は終わった.雨はもうあがっている.そのまま新御徒町経由でつくばへ直帰.午後6時前に帰宅.

◇東京堂書店にて —— 西谷修(編)『グローバル化と奈落の夢』(2006年7月30日刊行,せりか書房,ISBN:4-7967-0274-1→目次)./ 井上進『書林の眺望:伝統中国の書物世界』(2006年11月9日刊行,平凡社,ISBN:4-582-44114-9).前著:井上進『中国出版文化史:書物世界と知の風景』(2002年1月30日刊行,名古屋大学出版会,ISBN:4-8158-0420-6→目次・書評)に続く大きな中国書籍文化本.外見は平凡社の本にはまったく見えない.

◇本日の総歩数=12751歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=−1.4kg/−0.6%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「30位」


10 november 2006(金) ※ 統計研修(基礎編)最終日は働き詰め

◇午前4時半起床.霧が濃い.気温6.6度の冷え込み.

◇今日は朝から午後まで統計研修の会場に張り付きだ.午前8時過ぎにリサーチ・ギャラリーの講義室に到着し,〈R〉講習の前準備をする.午前9時から〈R〉の時間が始まる.いつも通りの導入と,〈R〉の起動にともなう設定のいくつかを確認する(Windows側とR側の両方で).分散分析のテストデータを用いて,基本操作について説明しているうちに,あっという間に11時をまわっていた.引き続いて,竹澤邦夫さんによるR講習.ここまでが午前の部.さらに午後1時から岩田洋佳さんのR講習があって,午後2時におしまい.半日では時間がまったくないのだが,最低限の紹介と動機づけだけはできただろう.

◇10分の休憩をはさんで,基礎編全体にわたる質疑の時間.研修生からはあらかじめ質問票が届いていたので,それを映しながら,質問への解答をする.答えやすい質問もあれば,そうではない難物がときどき混じるのは例年のことだ.

 今年の質問リストと解答(ぼくが解答したもの) ——

  1. 「分割表検定における結果の解釈.フィッシャー正確確率法とカイ二乗分布近似法の使い分け」:いまのコンピュータの計算能力を考えれば,正確確率法ですべてすませられるでしょう.〈R〉を使えば,分割表のセルが万単位の数値であっても10秒そこそこで計算できます.したがって,近似法はもはや不用です.
  2. 「標準偏差と標準誤差のちがい」:「標準偏差」は記述統計でのデータの“バラツキ” を示す量です.一方,「標準誤差」は推測統計でのある推定量(たとえば母平均の推定量としての標本平均)の“バラツキ” を示す量 です.両者はもともと目的がちがう量であり,当然,その計算法もちがっています.
  3. 「順位尺度の統計解析について」:基本的にはノンパラメトリックな手法の適用を考えてみるべきでしょう.
  4. 「乱塊法でブロックのサイズは等しくすべきか」:できることならブロックの大きさは一定にした方がいいでしょう.ブロックの大きさに差があっても,それに起因する差異はすべて「ブロック効果」に入ってしまって,分析上は問題にならないように思います.しかし,明らかにシステマティックなバイアスを生むかもしれない要因はできるだけ事前に排除しておく方が安全だろうからです.
  5. 「分散分析で反復数はどのように決めればいいのか」:反復数をどのように設定するかはなかなか難しい問題があります.分散分析のF 検定での「検出力」に照らして反復数(サンプルサイズ)を決めるというロジックがあります.たとえば,永田靖『サンプルサイズの決め方』(2003 年9 月20 日刊行,朝倉書店[統計ライプラリー],ISBN:4-254-12665-4)を参照してください.
  6. 「経年的試験での“年度”はブロックとみなせるか」:みなせます.連作影響で,次年度に同一の試験区を連続使用できないような場合は,ブロック内での試験区の切り方を変えるという手もあるでしょう.
  7. 「ブロックと実験要因との交互作用は考えなくてもいいのでしょうか」:ブロックを通常の「要因」と同列にみなす立場もあります.たとえば,ソーカル&ロールフ『生物統計学』の分散分析では,ブロックと他の要因との交互作用を考察しています.厳密にはそのようなモデリングをするのが妥当かもしれません.たとえば,1要因乱塊法でしたら,
    y [ij]= μ+α [i] +ρ [j] + e[ij] (α:要因;ρ:ブロック)
    ではなく,
    y [ij]= μ+α [i] +ρ [j] +α×ρ [ij] + e[ij]
    という「要因×ブロック」交互作用を含むモデルになるでしょう.ただし,要因との交互作用をもつようなブロックはもともと“邪悪”であって,そのようなブロックをつくってはいけないという考え方もあります(事前にそうと言い切ることは難しいでしょうが).
  8. その他,個別的な質問が数件.

 分散分析での「サンプルサイズ」をどのように決めるのかという質問は,これまで受けたことのないものだった.永田靖『サンプルサイズの決め方』(2003年9月刊行,朝倉書店,ISBN:4-254-12665-4)というこの問題に特化した参考書をひもといてみると,要するに「検出力(power)」に関するある条件を満たすようにサンプルサイズの範囲を決定するということのようだ.ただし,検出力がらみの確率計算には「非心分布」の密度関数が必要なのでやっかい(〈R〉だと密度関数において「ncp」パラメータを設定することになる).

—— そんなこんなの質疑の時間がやっと終わったときにはもう午後3時半を過ぎていた.

 ※毎年毎年の研修生からの質問集(FAQ)を集計しないとなあ,と思いつつすでに何年も経っている.こういうときは,(上のように)たとえ低い完成度であってもそのまま公開していくのがきっといいのだろう.

◇朝から夕方までの講義で,もうへろへろでーす.講義会場からそのまま自宅へ直帰して.長い1日もやっと暮れようとしていた.朝晩はともかく日中は20度ほどもあって,割に暖かい.

◇本日の総歩数=4219歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/+1.3%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「34位」


9 november 2006(木) ※ 今日こそはいろいろ仕上げたいが……

◇午前5時半起床.晴れ.とても寒い.

◇統計研修のこまごま(午前) —— 昨日つくったリストを公開する:〈統計学へのお誘い本〉./ それに合わせて,しばらく更新していなかった〈R関連参考書リスト〉も更新した.これでリゲス黄表紙本まで追いつくことができた.

◇それ以外のこまごま —— 年末調整に関わる書類をいくつもそろえる必要がある.21日まで./ 5年ごとの「生活環境調査」.こういうアンケートのたぐいへの協力を依頼されることが頻繁にあるが,集計されたのち,それなりの“効果”があるのだろうか.16日まで.

◇ちょっと差し込み —— さすがにケリをつけないといけないので,進化学会ニュースの原稿(評議員会報告と総会報告)の文案をしあげ,事務局に送る./ 進化学会関係の“とど”な原稿:『遺伝』(1,600字)と分類学会連合の学会紹介原稿.前者は締切までマイナス〜日,後者はプラス〜日.

◇統計研修のこまごま(午後) —— 研修生からの質問票が続々届く.「“標準偏差”と“標準誤差”のちがいは?」とか「片側検定と両側検定の使い分けは?」といった毎年常連の質問もあれば,「反復数をどのようにして設定すればいいのか」という目新しいものもある.それぞれ担当の講師が答えるわけだが,実験計画法についての質問がことのほか多いぞ.各質問票について,調べたり,書いたり,考えたりする.

◇スライドのつくりなおしが必要 —— OHP時代からの遺産をひきずって,スキャンしたままの手書きスライドが残っているのだが,そろそろ新しいのに作り替える必要がある.と,毎年この時期に研修が始まるたびに痛感して,終わると放置してしまっていた.この機会に一新して,読みやすいものにしたい.師走の信州大学での集中講義にはぜひとも間に合わそう.

◇夕焼けの中を帰る.明日は朝から午後まで,ずーっとご奉公だ.

◇本日の総歩数=4660歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.前回比=+0.5kg/+0.4%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「33位」


8 november 2006(水) ※ 研修エアポケット日のリストづくり

◇午前5時起き,きりきりと冷え込んで6.7度.雲ひとつない快晴.朝焼け.空気が乾いて静電気がぴしぴし飛び始める.

 今日は統計研修の高座がないので,本来だったらほっこりできるはずが,吹き寄せられた仕事がいくつもあるので,それをこなすことにする.

◇〈統計学へのお誘い本〉 —— 統計研修の受講生からの依頼を受けて,下記のようなリストをつくってみた:

統計学へのお誘い本リスト 8-Nov-06 version(三中信宏)

  1. 門前で迷っている人のためのコミック系入門書

    • 高橋信『マンガでわかる統計学』(2004年7月刊行,オーム社,ISBN:4274065707)
    • 高橋信『マンガでわかる統計学:回帰分析編』(2005年9月刊行,オーム社,ISBN:4274066142)
    • 高橋信『マンガでわかる統計学:因子分析編』(2006年10月刊行,オーム社,ISBN:4274066622)
  2. 次は統計学史本

    • デイヴィッド・サルツブルグ『統計学を拓いた異才たち:経験則から科学へ進展した一世紀』(2006年3月刊行,日本経済新聞社,ISBN:4532351944)
    • C・R・ラオ『統計学とは何か:偶然を生かす』(1993年12月刊行,丸善ISBN:4621039075)※
  3. 入門の覚悟を決めた人のための本

    • 粕谷英一『生物学を学ぶ人のための統計のはなし:きみにも出せる有意差』(1998年3月刊行,文一総合出版,ISBN:4829921234)
    • 佐藤俊哉『宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ』(2005年12月刊行,岩波書店[岩波科学ライブラリー114].ISBN:4000074547)
    • 東京大学教養学部統計学教室(編)『統計学入門』(1991年7月刊行,東京大学出版会,ISBN:4130420658)
    • 東京大学教養学部統計学教室(編)『自然科学の統計学』(1992年8月刊行,東京大学出版会,ISBN:4130420674)
    • 山田作太郎・北田修一『生物統計学入門』(2004年4月刊行,成山堂書店,ISBN:4425824334)
  4. ひたすらヴィジュアル系な入門書

    • 市原清志『バイオサイエンスの統計学:正しく活用するための実践理論』(1990年3月刊行,南江堂,ISBN:4524220364)
    • 市原清志・岩本美江子『カラーイメージで学ぶ統計学の基礎』(2006年10月刊行,日本教育研究センター,ISBN:4890261230)
  5. 実例ごりごり系な電話帳(厚い重い苦しい)

    • R・R・ソーカル&F・J・ロルフ『生物統計学』(1983年10月刊行,共立出版,ISBN:4320052684)
    • G・W・スネデッカー&W・G・コクラン『統計的方法(原書第6版)』(1972年7月刊行,岩波書店)※
  6. ややイノチ懸け系な数理統計学書(登攀不能?)

    • 竹村彰通『現代数理統計学』(1991年12月刊行,創文社,ISBN:4423895080)
    • 竹村彰通『多変量推測統計の基礎』(1991年9月刊行,共立出版,ISBN:4320014480)
    • C・R・ラオ『統計的推測とその応用』(1977年11月刊行,東京図書,ISBN:4489001746)※
  7. すでに入門してしまった人のための次なる本(実験計画法まわり)

    • 永田靖『入門実験計画法』(2000年6月刊行,日科技連,ISBN:4817103825)
    • 石村貞夫『分散分析のはなし』(1992年2月刊行,東京図書,ISBN:4489003803)
    • 永田靖『統計的多重比較法の基礎』(1997年11月刊行,サイエンティスト社,ISBN:4914903466)
    • 奥野忠一『農業実験計画法小史』(1994年10月刊行,日科技連,ISBN:4817103809)※

なお,「※」印の本は,新刊での入手は現在不可能と思われる.

—— “門前”から“門”までの「参道」がやや長い気がするが,そこは気の迷いや逡巡が憑いてまわる相手のために,ということでご容赦を.また,いったん“入門”してしまった後は,手法ごとにそれぞれ適切な本(中級書)がきっとあると思うが,上のリストではそこまでは考えていない.ただし,ぼくの担当している講義が「実験計画法」だったりするので,この分野については数冊選んで,リストの最後に付けた.

◇昼休みの収穫祭 —— 快晴,気温17度台.例年はアフターファイブに開催されていた収穫祭だが,今年は飲酒運転に対する厳しい世論(と罰則強化)を鑑みて,真っ昼間に炭水化物を麦茶とともに大量摂取することになった.業務課作業棟に用意されたテーブルには,山盛りの焼きそばにおにぎり,オードブルに,農環研で収穫された新米で搗いた絡み餅などがずらっと.しかし,正午から午後1時までという短期決戦的炭水化物摂取にはおのずと限界がある.約30分で“飽和状態”に達したので,そのまま歩きに出て,まずは統計研修の会場に昨日の講演のハンドアウト原稿を持っていく.その後,圃場内を歩き読み:森まゆみ『円朝ざんまい:よみがえる江戸・明治のことば』(2006年10月10日刊行,平凡社,ISBN:4-582-83340-3)の第8章まで.敷地内をうろうろして午後1時過ぎに帰還する.

 備忘メモ —— 吉松慎一さんからの情報.「杉繁郎コレクション」は農環研にすべて納められたとのこと(標本とゲニタリアのスライド).あとは関連文献を散逸させないようにすればいいですね.

◇研修生からの質問がわんさか届いているのだが,対応しきれませ〜ん.

◇本日の総歩数=15965歩[うち「しっかり歩数」=6257歩/58分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.7kg/−1.1%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「34位」


7 november 2006(火) ※ 統計研修(基礎編)二日目の高座

◇午前5時起床.雨足強く,南風が吹く.予報通り.気温12.6度.しかし,ほどなく小止みになり,そのうち晴れ間がのぞき始める.気温は高い.

◇朝のこまごま —— 午前10時に,速達で初台宛に第8章の修正ゲラ10ページを送る.Box 8-1 と 8-2 は明日まわし./ 住宅取得に関わる年末残高証明書の申請.年末調整に向けて,またまた書類のアラシか./ 秋空晴れわたる.

◇講演ハンドアウトをいつ配るか? —— 昨日の統計学概論のハンドアウトがほしいとの希望が研修生から伝えられた.きょう午後にある実験計画法の講義のときに,ハンドアウト原稿を持参することにしよう.

 筋書きを目で追いながら落語を聴くというのは実際にはあり得ないだろう.それと同じく,講義もまた「噺」のみで完成させるべきであって,スライドやハンドアウトがたとえなくてもかまわないくらいにしておかないといけないだろう.だから,スライドに「話」の内容を書き込むなどというのは論外で,記入するとしても1枚につき数文字がもっともインパクトがある.あるいは,象徴的な図とか写真がスライドにはふさわしい.スライドにたくさん書いてはいけない.同様に,ハンドアウトは後の備忘として配布するにとどめておくべきで,講演中に聴衆がハンドアウトを読みはじめるようでは,その時点で講師は失格ということになる.あくまでも「噺」で勝負しましょう.

◇午前中,南風が吹き荒れ,落葉・落枝が風に舞う.午後1時から実験計画法の講義.例年通り,実験計画と分散分析について説明をする.最後の半時間ほどは,一般化線形モデルの導入にあてた.午後4時の定刻少し前に講義は終わった.最初はまだ足をやや引きずっていたが,最後の方は何とか回復したらしく,ほぼいつも通りの体勢で講義できた.

◇今日の統計研修のハンドアウトは明日にも原稿を持参する予定.もうひとつ,統計学の「参考書」をいくつか紹介してほしいとの研修生の依頼あり.そういえば,ここのところ〈R〉の参考書はいろいろと紹介しているが,統計学を学ぶための入門書のたぐいは紹介を怠ってきた.今回の統計研修テキストでも,少なくとも基礎編に関していえば,「参考書」を紹介している講師がまったくいない.これはよくないな.金曜の質疑の時間までに,とりあえずの「参考書リスト(和書)」をつくろう.

◇夕焼けの中を帰宅.風が冷たくなってきた.

◇質問のアラシ —— 電子文献の引用書式についての問合せ.これについては,leeswijzer の記事「電子文献引用規格〈ISO 690-2〉について」をごらんあれ./ 箱崎から質問:「主成分分析(因子分析)のヘンな使い方」について.そうですね.因子分析のヘンな使い方(ないはずの因子をreifyしてしまう)については,グールドの『The Mismeasure of Man』がいろいろとエピソードを拾っています.主成分分析についてはかつての形態測定学でそういう事例がいくつかありそうですね.たとえば距離変量からの主成分分析と相対歪みでの主成分分析とを比較すると「ヘン度」がはっきりするかも./ 来年度,東大理学部人類学教室での統計学講義.事務手続きに入るとの連絡あり./ とある原稿の査読に関する依頼.

◇届いた新刊 —— Massimo Pigliucci and Jonathan Kaplan『Making Sense of Evolution: The Conceptual Foundations of Evolutionary Biology』(2006年10月刊行,The University of Chicago Press, ISBN:0-226-66836-3 [hbk] / ISBN:0-226-66837-1 [pbk]→目次).進化学者と哲学者による共著.

◇本日の総歩数=3468歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.2kg/−0.1%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「35位」


6 november 2006(月) ※ 統計研修(基礎編)初日の高座

◇午前4時半起床.気温12.6度.西の中空に浮かぶ満月に雲が絡みついている.しばしリュネールになる.右足のくるぶしがいやな感じ.

◇今日から来週までは,中央農研での数理統計研修という「公務」がある.今日はオリエンテーション後の「統計学概論」を担当する.

 午前10時半から講義開始.今週の基礎編では国と県を合わせて50名あまりの研修生が集結している.毎年おなじみの「概論」なので,とくにトラブルも何もなかったが,スライド構成を大幅に変更したので,最後の数分間はやや駆け足になったかもしれない.それでも定刻5分過ぎに終了し,昼休みに入る.※午後は“死亡率”が極度に高いはずだが頑張ってサバイバルするよーに.

 晴れからしだいに雲が厚くなってきた.

◇午後のこまごま —— 所内の評価システム検討WGの第3回委員会実施日に関する日程調査./ 筑波大学の集中講義に関する時間帯マイナー変更(12日は午後3時まで)./ メーリングリスト関連の溜まっている仕事をすませ,やっと月列アナウンスを流すことができた.

◇夕方は早々と帰宅して翻訳作業を進める.第8章はほぼおしまい.

 午前1時前に寝る.

◇生物学哲学新刊情報 —— Elliott Sober (ed.)『Conceptual Issues in Evolutionary Biology, Third Edition』(2006年刊行,The MIT Press [Bradford Book], ISBN:0-262-19549-6[hbk] / ISBN:0-262-69338-0[pbk]→目次).初版(1984年)が725ページ,第2版(1994年)がぐっとスリムになって506ページ.ところが,今回の第3版は再び厚くなって612ページ.もちろん,ページ数だけでなく,セクション構成も版によって少しずつ差し替えがある.

◇本日の総歩数=9573歩[うち「しっかり歩数」=2926歩/28分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/−1.3%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「30位」


5 november 2006(日) ※ 連休最終日も静かに過ぎていく

◇午前6時前に起床.晴れ.この連休は世間的には格好の行楽日和だったが,ぼくには無縁だ(すねてみる).朝もきりきりと冷え込まず,日が射すとともにしだいに暖かくなってきた.

◇疑問氷解 —— 今年も明日から始まる統計研修の概論冒頭では,ある絵を何年も引用してきたのだが(別の文脈で),実は出典を知らないまま放置してきた.しかし,昨日の夜,この疑問はやっと解けた.昨夜のTV東京〈美の巨人たち〉の主人公は,スペインの画家フランシスコ・デ・スルバラン(Francisco de Zurbarán).アーノンクールの〈マタイ受難曲〉CDの表紙にあしらわれていた絵がスルバランの名作のひとつ〈神の子羊(Agnus Dei)〉であることを初めて知った.この諦観のまなざしが印象的でね.

◇午前中はずっと自宅に籠る.昼下がりに少しだけ外出.秋らしくない雲がもくもくと立ち上がる.日射しが暖か.半時間でまたまたお籠りへの復帰.

◇Oken のみならず Haeckel も! —— Lorenz Oken 全集の編纂者のひとりである Oraf Breidbach 教授(→サイト)は,いまイェナ大学の Ernst-Haeckel-Haus に所属しているとのことだ.当然,ヘッケル関連の資料も精力的に出版していて,ちょっと気を抜いていたら昨年から今年にかけて新刊書が何冊も出ていた.

  • Dirk Preuß, Uwe Hoßfeld, & Olaf Breidbach『Anthropologie nach Haeckel』(2006年10月刊行,Franz Steiner,ISBN:3-5150-8902-0)

  • Olaf Breidbach『Ernst Haeckel : Bildwelten der Natur』(2006年8月刊行,Prestel,ISBN:3-7913-3663-0)

  • Olaf Breidbach (Hrsg.)『Die Radiolarien, Faksimilie-Ausgabe, zwei Bänden mit CD-ROM』(2005年刊行,Prestel,ISBN:3-7913-3328-3)

  • Uwe Hoßfeld & Olaf Breidbach (Hrsg.)『Haeckel-Korrespondenz : Übersicht über den Briefbestand des Ernst-Haeckel-Archivs』(2005年刊行,VWB-Verlag,ISBN:3-8613-5489-6)

このうち,2005年に出た『Die Radiolarien』はすでに売り切れてしまったのか,新刊ではすでに入手不能のようだ(さもありなん).同じく2005年に出たばかりの書簡集『Haeckel-Korrespondenz』は900頁ほどもあるボリュームだが,これも同様に新刊では入手できない(たまたま Alibris に1冊だけあったのでよかったが).

—— “アンテナ”を錆び付かせてはいけないという教訓だ.

◇連休最終日の残された時間はすべて翻訳につぎ込む.下訳の文章は次々に部分修正され,あるいは完全置換され,ゲラの“空きスペース”はすべて“朱”で埋め尽くされていく.時間は確かにかかってしまうのだが,「売り物になる文」にするにはこの作業を乗り切るしかない.ゲラ1頁につき1時間はかけている勘定になる.しかも,長時間続けることはできないという別の問題もある.今回の基本路線は,「こまごまと手を入れるくらいだったら,最初からすっかり書き換えろ」ということだ.下訳の文章はまったく尊重していません.

 まだまだ先は長いぞ.

◇こんな本たち —— 箕輪成男『中世ヨーロッパの書物:修道院出版の九〇〇年』(2006年10月20日刊行,出版ニュース社,ISBN:4-7852-0123-1)./ 箕輪成男『紙と羊皮紙・写本の社会史』(2004年9月20日刊行,出版ニュース社,ISBN:4-7852-0114-2).

◇明日のために今日は寝るのだ.

◇本日の総歩数=2705歩[うち「しっかり歩数」=1494歩/14分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.7kg/+0.3%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「21位」


4 november 2006(土) ※ 連休中日のお勤めとお仕事

◇午前5時半に起床.曇りときどき晴れ.しばらく不調だった腹ぐあいもようやく健常に戻ったようだ.ただし,油断は禁物.しばらくは暴飲暴食禁止.節食あるのみ.

◇休みの朝のこまごま —— 〈R-help〉メーリングリストに入ったものの,スパムかスコールのようにざーっと降り注ぐメールにたじろぐ.打てば響くメールの撃ち合いかも.しかし,出先でこんな“千本ノック”のような大量のメール球をいつも受けるわけにいかないので,「ダイジェスト・モード」に即変更した.とたんに,ノイズ・キャンセルされたようにメーラーが静かになった./ ゲン直しに髪を切りにいく.アタマがすーすーと寒くなった./ 首都大のレポートがそろったので,そろそろ成績評価をしないといけないな.あ,霊研のはどーしようか(迷い中).

◇〈R〉教材の手直し —— 明後日から統計研修が始まる.受講生は毎年変わるので,噺の内容が正確に同一であったとしてもとくに問題はないのだが(少なくとも聴く側にとっては),話す側にとっては「同一のトーク」をするというのは苦痛である.「前回はここでこう間をとって,こう振って……」という記憶は意外に長く残存していて,まさに話をしているそのときに瞬間的に記憶が呼び戻される.すると,話している本人が内面的にしらけてしまってよろしくない.噺の大筋はそのままであっても,枝葉については毎回の講義で意図的に変えている理由は話し手の事情にほかならない.

 たいていの場合は,事前のイメージ・トレーニングで枝葉に“変異”をつけるように注意している.たいていの場合,スライドはそのままで,噺の方を少しずつ変えるというやり方がラクなのだが,それでは限界が見えてくる.そこで,今回はトークのスライドそのものを大きく変更することにした.ひとつには,スライドの中には「賞味期限」のあるものが含まれていて,あまり長く使い続けると受講生の「受け度」が顕著に低落する場合があるからだ.時事ニュース的や映画,本(とくに漫画ネタ)などを取り上げたスライドは要注意だ.この点に気をつけて,賞味期限切れのスライドは倉庫に入ってもらい,新しいネタのスライドをつくることにした.

  —— トーク・スライドは常時チェックして点検と更新を怠るべからず.

◇昼過ぎまで,スライドづくりをして脳内台本を読み上げる.とりあえず,月曜の統計学概論については準備完了だ.

◇その後,またまた翻訳作業の続きに入り込む.夜遅くまで.驚くほど進捗しないのはなぜ?

◇Lorenz Oken の自然哲学書の復刊 —— アンテナの感度を上げておかないと非英語圏の出版情報から取り残されてしまう.19世紀のドイツ観念主義生物学の中でもとくに有名だった代表的 Naturphilosoph の Lorenz Oken (1779-1851) の伝記と全集がいま出版されつつあるそうだ.ワイマールにある全集の版元 Hermann Böhlaus Nachfolger 社のサイトを検索すると,下記の2001年に出たまとまった伝記を皮切りに,これから出る予定の4巻本全集がヒットする:

  • Olaf Breidbach / Hans-Joachim Fliedner / Klaus Ries (Hrsg.)『Lorenz Oken (1779-1851) : Ein politischer Naturphilosoph』(2001年刊行,Verlag Hermann Böhlaus Nachfolger,ISBN:3-7400-1165-3)

  • Thomas Bach / Olaf Breidbach / Dietrich von Engelhardt (Hrsg.)『Lorenz Oken - Gesammelte Werke (vier Bänden)』(2006年近刊,Verlag Hermann Böhlaus Nachfolger,ISBN:3-7400-1170-X [set])
    1. Band 1: Frühe Schriften zur Naturphilosophie (ISBN:3-7400-1171-8)
    2. Band 2: Lehrbuch der Naturphilosophie (ISBN:3-7400-1223-4)
    3. Band 3: Schriften zur Naturforschung und Politik (ISBN:3-7400-1224-2)
    4. Band 4: Naturgeschichte für Schulen (ISBN:3-7400-1225-0)

ううむ,このリキの入りようはただごとではないな.かつて,大学院にいた頃,居室の「渡辺政隆文庫」に,オーケンの主著『Lehrbuch』の英訳本『Physicophilosophy』のリプリント本が横たわっていたことをしっかり記憶しているが,彼には自然哲学に関係して他にもたくさんの著作があるわけね.

◇本日の総歩数=4780歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.4kg/+0.4%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「19位」


3 november 2006(金) ※ 塒から顔を出す文化の日

◇ゆるゆると午前6時に起床する.晴れ.この連休は天気がよさそうだ.熱は平熱で問題ないが,腹のぐあいがまだよろしくない.

 それでも,早朝に30分ほど周辺を歩いてみる.朝晩が冷え込んできたので,つくば辺りでもそろそろ紅葉が広がってきた.街路のフウノキが色づくようになると晩秋が近い.

◇文化の日のこまごま —— 覚悟を決めて〈R-help〉メーリングリストに加入してみる.入会登録がすんだとたん,「[R]〜」という旗の立ったメールが来るわ来るわ.これだけたくさんの“R使い”が集結しているわけね./ Simon Conway Morris の翻訳作業が冬から再開されるとの音羽からのご下命あり.年明けにも「草津牢」に再び幽閉されることになりそうだ.

◇映画〈ダーウィンの悪夢〉関連で2件 —— まずひとつ:7月に新刊で出ていたのを見落としていたが,先日,神田の東京堂書店で発見:西谷修(編)『グローバル化と奈落の夢』(2006年7月刊行,せりか書房,ISBN:4-7967-0274-1).この冬にやっと劇場公開されることになった映画〈ダーウィンの悪夢〉を中心にして議論された論集.個人的には〈ダーウィンの悪夢〉という題名は,この本に見られる〈グローバル化の悪夢〉という方が内容にふさわしいのではないかと思う(インパクトでは劣るけどね).上記の新刊も新刊情報ではまったく“釣り針”にかからなかったが,たまたま平台で表紙を飾る「国立魚類研究所警備員の写真」を見て,はじめて気づいたしだい.→版元ページ

 もうひとつ:配給会社から連絡メールがあり,映画〈ダーウィンの悪夢〉の監督であるフーベルト・ザウパー監督が11月7日(火)〜8日(水)にかけて来日し,都内で記者会見(8日)ならびに上映会とシンポジウム(7日)を開催するとのこと.ただし,一般に公開されるわけではなさそうだ.

◇日中は,翻訳作業を断続的に続ける.精神衛生上からいえば,「朱を入れる」のではなく,「バッサリと置き換える」というのが比較的快適であることがわかったのは幸い(?)だった.それにしても,遅々としてなかなか進まず.泥濘.

 夜更かしせず健康的に寝よう.

◇本日の総歩数=3219歩[うち「しっかり歩数」=2714歩/24分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.前回比=−0.3kg/+0.5%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「20位」


2 november 2006(木) ※ 病み上がりのぼちぼち仕事

◇午前4時半に自然起床.前日にあれだけ寝まくったので,寝起きはラクちん.曇り,気温13.6度.冷え込みなし.

 腹ぐあいはちっとも改善されていないが,平熱(36.3度)だったので,とりあえず早朝の研究所に行ってみる.ムチ打ちメールとか(汗).

◇午前のこまごま —— 計量生物学会の理事会出席の連絡./ 遅ればせの年休届け./ これまた遅ればせの広報事項連絡届け./ 東大の卒論テーマを提出する./ 兼業関連の確認事項./ ムチ打ち電話…….

◇嘘八百を言うワタシ —— つい先日,「SUNY Press はペーパーバック版しか出さないと思っていたが」などと口走ってしまったが,とあるご指摘についつい不安になって,SUNY Press の叢書〈SUNY Series in Philosophy and Biology〉の既刊分をチェックしたところ,すべての巻について hbk 版と pbk 版の両方が同時に出版されていることが判明しました.ごめんなさいごめんなさい.

 さらによく調べてみると,1999年初頭までに出た巻については hbk と pbk の価格差が一律に「0.55ドル」という実に奇妙な価格設定だが,それ以降に出た巻については hbk / pbk 価格比=「3倍前後」という常識的な線に落ち着いている.どういうわけだか「SUNY Press はペーパーバック」と思い込んでいたようで,この叢書の新刊が出るたびにpbk版を買ってきたのだが,hbk−pbkの価格差がこんなに限りなくゼロに近いんだったらhbk版を買っておくべきだったなあ.

◇農環研の広報情報室にて,ぼくが載っている読売新聞記事:11月1日朝刊・文化欄(15面)〈ひと:歴史の手法で生物学〉のコピーを初めて見せてもらった.あ,これはとってもアヤシイ風貌だなあ(大汗).真人間には見られないかもなあ.ごめんなさいごめんなさい.

 方々から「見ました」「読みました」というつっこみが入る.農林交流センターにも早々とトラップされたらしく,「三中信宏上席研究員は、『もの自体の成り立ちが重視される日本では、歴史的視点を取り込んだ歯垢 [ママ] が弱い』と話す」というニュース速報が農林団地内をまわっているらしい(私は歯科衛生士ではありません).

◇〈R〉新刊本をいただきました(感謝) —— ウーヴェ・リゲス著/石田基広訳『Rの基礎とプログラミング技法』(2006年10月22日刊行,シュプリンガー・ジャパン,ISBN: 4-431-71218-6→目次).同じ「プログラミング」と銘打たれている竹内俊彦『はじめての S-PLUS / R 言語プログラミング』(2005年11月25日刊行,オーム社,ISBN: 4274066231)よりは,はるかに体系的な〈R〉プログラミング本だろう.なお,個人的感想ながら,数ある〈R〉和書の中ではかなりいい装幀のレベルにある本だと思う.「しっかり勉強しようね」タイプの本.

◇やはり,腹ぐあいがよろしくない.夕方早々に帰宅する.風呂に入れる幸福.明日からは3連休だが,溜まっている案件の処理が待っている.週明けからは2週間の統計研修の始まりだ.

◇本日の総歩数=7374歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.前回比=−1.8kg/−0.8%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「19位」


1 november 2006(水) ※ 思わぬ病に伏す霜月の初日

◇夜中に何度も目が覚めたのだが,いちおう正式には5時半起床.霧が濃い.しかし,ほどなく快晴になった.

 空模様はすっきりしても,しかし体調はゼツアク.今日は強制的に年休となった.午前9時に医者に行き診てもらう.「何かワルイものを食べませんでした?」と訊かれたのだが,まったく思い当たるふしがない.少なくとも風邪やインフルエンザではないそうだ.とりあえず,下痢と発熱の薬を処方してもらって,帰宅.またまた腹が痛くなってきたので,午前いっぱいは寝続ける.体温は薬が効いていたせいか,37度〜38度台を推移している.

◇読売新聞に載りました! —— 9月に取材を受けた記事が,今日の読売新聞朝刊の文化欄(「ひと」コラム)に載ったと,担当記者さんから連絡があった.すみません,ワタシんちは宿命のライバル紙・朝○新聞を購読しているので,すぐには確認できません.いずれにせよ,これで『系統樹思考の世界』のさらなる宣伝効果が期待できる(かな?).

◇正午過ぎにごそごそと起き出してみたものの,腹具合がやはりよろしくないので,また寝たり起きたりする.寝読みの友:中国古鎮遊編集部(編)『中国・江南:日本人の知らない秘密の街 幻影の村34』(2006年5月5日刊行,ダイヤモンド社[地球の歩き方Books],ISBN:4-478-07953-6).江南地方の古鎮(昔からある集落)をまわって歩いた記録.ほとんど“隠れ里”のような村が残っていたりする(村の歴史が「千年」単位).これじゃあ,太刀打ちできないなあ.中国人レポーターがまた素朴で,行く先々になじんでいて,肩の力が抜けるというか,“ヒーリング効果”(何ですか,それ)があるというか.

 そういえば,ここ数日の新聞報道で「リポート」という用語がやたら目につくのだけれど,以前からある「レポート」は報道用語としてはもう使わないことになったのでしょうかね.※そしたら,「レコード」は「リコード」になるんかいっ,とか,ひとしきりクダ巻いたりして.

◇さらなる“ヒーリング効果”がありそうな新刊 —— 『World Diagram Collection 世界のダイアグラム コレクション』(2006年10月7日刊行,ピエ・ブックス,ISBN:4-89444-572-7→目次版元ページ).文字通り「図形言語」たるダイアグラムの本.情報表現手段としてのダイアグラムについては,たとえば,日科技連からかつて出た『図の体系』のような集録がある.もっとビジュアルな側面を強調したのは Edward R. Tufte だろう.本書は,情報表現度と美的洗練度を兼ね備えたダイアグラムを集めている.系統樹もネットワークももちろん含まれている.1999年に同社から出された『The Best Informational Diagrams』(1999年12月刊行,ピエ・ブックス,ISBN:4-89444-120-9)という豪華本の改訂版だそうだ.より安く出してくれてありがたい.

◇夜.熱はしだいにおさまって37度台をキープするようになったが,おなかの調子はなお好転せず.またまた,寝てしまったりして.※起きている時間よりも寝ている時間の方が長いとは記録的だ.

◇コッソリと「はてなグラフ」をつけはじめたりする.コッソリ.

◇本日の総歩数=168歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝−|昼−|夜−.前回比=−1.4kg/+0.7%. leeswijzer〈ランキング〉定時観測=「12位」※総歩数が「168歩」というのは記録を付けはじめて以来のミニマムだ.


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