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oude dagboek

日録2006年7月


31 juli 2006(月) ※ 名古屋初日は味噌カツで始まる

◇午前4時半起床.朝焼け.晴れて,北風が涼しい.気温19.3度.明け方に20度を下回ったのは久しぶりだ.

◇今日から1週間,名古屋に巡業に出る.「名古屋場所」ではないので,誤解なきよう. 本務は,名古屋大学の情報文化学部にて〈メディア社会系特論I〉というタイトルで,生物学哲学の集中講義30時間! “迎撃態勢”は着々と進んでいるらしい.撃墜されないよーにしないと.

 彼の地では,「あんかけスパ」に「シロノワール」が待ち構えている!(エビふりゃーとかきしめんとか味噌カツに名古屋コーチンは当然の必修だ).味覚が洗練されるか,はたまた相当ヘンになって帰ってくるか?

 すかさず,〈コメダ珈琲店〉だけではなく,〈喫茶マウンテン〉にも登攀すべしとの声が京島から聞こえる.ワタシ,生きて帰ってこれるでしょーか(不安).※名古屋に行く前からこの騒がしさ…….

◇しかし,名古屋に出かける前に一仕事ある.午前10時から,所内で業績評価検討ワーキンググループの初会合.独法になってからの個人の研究業績をどのように評価するかについて,現状の問題点を論議する.もちろん,いろいろありますわなあ.2時間ほど意見を出し合った(だけ).次回の会合は8月下旬.

◇午前の着便 —— 岡本真『これからホームページをつくる研究者のために:ウェブから学術情報を発信する実践ガイド』(2006年8月10日刊行,築地書館,ISBN:4-8067-1335-X→サポート・ブログ).事前に注文したのが届いた.書店店頭でももう入手できるらしい.グッドタイミングに今日午後の往路読書用として.

◇昼過ぎに研究所をあとにして(いくつかの仕事も放置して),いったん帰宅.14時11分の TX 快速で東京に向かう.15時33分の〈のぞみ93号〉に乗りこむ.名古屋に着いたのは17時15分だった.

 この車中3時間で,『これからホームページをつくる研究者のために』をさくっと読了.ハイ,まだこの本を手にしていない人は即書店に走るべし.タイトルこそ「これからホームページをつくる研究者」が想定読者であるかのような先入観を与えてしまうが,決してそうではないことは一読すればわかる.「もうすでにホームページをもっている研究者」も本書から得られるものはきっと多いはずだ.研究者としてサイトを運営する上での基本的な心構えからはじまって,実践的な大技小技について述べられている.たとえば,単に本を紹介するだけではなく,ブツとしての本を実感させる書影を貼るとか,オンライン書店へのリンクをつけて“後押し”することの意義についてこれまで考えたことがなかった.しかし,本書の中心である数多くの研究者ウェブサイトの実例を見ていくことが何よりも勉強になる.ぼくの書評ブログ〈leeswijzer〉も掲載されているが(p. 161),他にも知った顔ぶれがたくさん登場する.もちろん,初めて見るサイトもいっぱい.ちゃんとした書評は近いうちにアップします.※できれば名古屋にいる間に.

◇伏見駅近くの〈ハミルトンホテル・アネックス〉にチェックインして,荷物をほどく.その後,夕方の街をぶらぶらして,広小路の〈キッチン・マツヤ〉にて挨拶代わりに?「味噌カツ定食」を食べる(黒豚を越えるイベリコ豚だそうだ).その後,栄あたりをふらふらしてホテルに帰還.一休みしてから集中講義の準備をしたり,ごろごろしたり,また本を読んだり,メールを見たり,というメリハリのないホテル住まい.

◇明日からはハードな四日間が始まる.

◇関西某書店では店頭から『系統樹思考の世界』の平積みが“消滅”したという報告が届いている.地殻変動のせいで本の山が「沈没」してしまったのだろうか.

◇本日の総歩数=10992歩[うち「しっかり歩数」=2199歩/20分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.2kg/0.0%.


30 juli 2006(日) ※ 梅雨明けトライアングル

◇午前4時半起床.曇り.北の風やや強く,気温20.9度.

◇研究所にてこまごま —— メーリングリストの世話./ 進化学会の予算打合せ日.賞状とメダルの作成依頼./ 進化学会シンポの英文タイトル届出.

◇来週の集中講義の素材をいろいろ取り揃える.プレゼンは例によってすべて pdf でやるので,切り貼りと差し替えをあとでしないといけない.ちょっと時間がかかるはずだが,気分的にまだ“起動”していないみたい.>ぼく.

◇関東甲信地方の梅雨明け宣言 —— 8月にずれこむという線はなくなりましたか.しだいに雲が切れて,晴れ間が広がってきた.

◇午後のこまごま —— 貸し倉庫での荷物出し入れ.その後,髪の毛を切る(剃髪ではない).あ,切りすぎたっ.

◇日が暮れて北風が強くなり,気温が下がってきた.この季節には珍しいことだ.夜,某NPO団体の会計監査書類をチェックする.明日には報告書を返送します.

◇来月は国内外の学会出張と,翻訳原稿の仕上げ,その合間の経常業務という“トライアングル”で日が過ぎていくだろう.

◇歌人の眼 —— 音羽から回送されてきた手紙を読む.『系統樹思考の世界』の最後は,系統樹を詠んだ結城千賀子さんの短歌で締めくくっている.結城さんとはまったく面識がないが,彼女の『歌集 系統樹』を求めてさんざん古書店を探しまわったのも何かの縁だと思い,1冊献呈させていただいた.そのお礼の手紙だ.

 歌人ならではの直感は,ぼくの本のいくつかの“コード”を知らず知らずのうちに解いていたようだ.「風のうわさによると“樹”はときどきものを言うそうだ」(p. 270)という一節に応答して,短歌新聞に作品を出されるとのこと(その作品をここで書き記すわけにはいかない).いえいえ,その表現は,ぼく自身ではなく,現代日本を代表する(“樹”の大好きな)ある作曲家にちなむものですよ.だから,結城さんは,物故した“彼”の意図に呼応して詠まれたということになる.ぼくはただ仲を取り持っただけだ.これもまた縁なのかも.ありがとうございます.

◇本日の総歩数=6391歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.5kg/+0.5%.


29 juli 2006(土) ※ 「巡業」直前の土曜日は休みなし

◇午前4時半起床.薄曇り.北寄りの風が通り抜ける.

◇『系統樹思考の世界』反響リスト —— 〈ミクシィ〉に蓄積してきた「反響」がだいぶ溜まってきたので,今朝の分までをリストしてとりあえず〈leeswijzer〉に公開した(→反響1).その後も,方々で拾い集めているが,ある程度溜まってきたら,また公開する予定だ.

 この反響リストは「音羽」に転送するとともに,自分のサイトにも追加した.

 長らく放置してきた〈ミクシィ〉だったが,あちこち訪問して「足跡」を残すようになってから,返事をいただくことが増えてきた.どうもありがとうございます.また,思わぬ方たちからの“マイミクシィ依頼”もあったりして.

◇分子系統学の新刊情報 —— 根井正利&S・クマー『分子進化と分子系統学』(根井正利監訳・改訂/大田竜也・竹崎直子訳|2006年7月20日刊行,培風館,ISBN:4-563-07801-8).偶然にも刊行日が同じだったりする.それにしても,何年も待たされて,やっと翻訳が出ることになったか.すぐ買わないと.原書『Molecular Evolution and Phylogenetics』(2000年8月15日刊行,Oxford University Press,ISBN:0-19-513585-7)は数年前の出版だが,今回の訳書では内容の増補があるので,実質的には「第2版」に相当するらしい.ブツを手に取らないことには,確たることは言えないが.

◇来週の名古屋大学の集中講義は〈メディア社会系特論I〉という科目で,学部3〜4年生が対象となる.よくよく考えてみれば,生物学哲学を看板にしてオモテで講義をするのはこれが初めてのことだ.しかし,これまで数多く踏んできた場数のほとんどは,実質的に「テツガク」の噺だったと思う.プレゼン資料も作成しているところだが,違和感はほとんどない.きっとそのままやればいいのだろう.

◇梅雨の気配すらなく,夏晴れが続く.日中はとても暑い.

◇“生物学哲学”本のオファー —— いくつかの出版社から「生物学哲学の本を書きませんか」とのオファーが届いている.まだ返事を書いていなくて申し訳ないのだが,どーしましょうかね.過去の『生物系統学』も,今回出した『系統樹思考の世界』も,芯の部分は生物学哲学のはずなので,とくに驚くようなことではない.まずは,すでに分野として確立されている生物学哲学なので,教科書的な本はいかがかと思うが,以前,いちど企画がコケた経緯があるので,国内の出版社はまだ乗り気ではないのだろうと勝手に思っていた.マジにやるつもりであれば,協力するのにやぶさかではありません.

◇明日は,巡業出発前日なので,たいへんだ.あれもこれもそれもやらないと.

◇今夜は,京島で例年通り〈隅田川花火大会〉を見物するはずだったのだが,来週は月曜から金曜まで「名古屋場所巡業」があるので,旅支度と講義準備でそれどころではない.ごめんねごめんね.>とど君.

 つくばの近くでも花火大会があったようで,遠景に打ち上げ花火が見えた.午後9時を過ぎて,いきなり雨がざあざあと降り出し,そのまま夜中に突入したようだが,もう夢の中で何もわからない.昼間の熱気が夜まで持ち越されたように蒸し暑かったが,この雨で多少はしのぎやすくなるかもしれない.

◇本日の総歩数=4252歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼×|夜○.前回比=+0.1kg/+0.5%.


28 juli 2006(金) ※ いろいろ準備する金曜日

◇午前4時半起床.晴れ.気温22.5度.いつも通り5時には研究所にたどりついたのに,出勤簿が並んでないぞ!(初めてのことだ)

◇朝の頼まれ仕事あれこれ —— 某論文を読むこと./ ある監査業務.※関連書類は午後ドサッと届いた.ふぅ.

◇さて,今日の雑用は,「名古屋」の次の「メキシコ」の準備だ —— まだ出張届すら出していないというのでは,お盆の混み合う時期に日本を離れることすらできなくなる.あたふたと書類を書いたものの,海外出張旅費を申請してから何ヶ月も経っているので,必要な文書がなかなか見つからん.あれこれ掘り返しているうちに,もう午後になってしまった.来週は,名古屋に逃亡してしまうので,何としても今日のうちに提出書類を取りまとめて,耳をそろえて企画に出さないといけない.

 そんなこんなで,書類の「かたち」が整ったのは午後3時近かった.※あとはよろしくよろしく.

◇『系統樹思考の世界』をめぐる怪挙と暴挙 —— 音羽からの連絡:渋谷のブックファーストにて,〈1階で「系統樹思考の世界」の大きな平積みをやっていました。6冊×2列ぐらいだったと思います。「セフィロトの樹」のパネルも立っていました〉とのこと.まちがって〈エヴァ〉まにあが買ってしまうにちがいない.これは怪挙だ./ 別ルートからの情報:「一番上の一冊を隣の本の上に乗せて二列にしてしまいました。隣の本、ごめんなさい」.それは暴挙だ…….

 その他,インターネットでの反応は,見つけるたびに,ぼくの〈ミクシィ〉に追加記入している.

◇午後3時過ぎから1時間あまり,〈文化系統学〉セミナー第21回目.今日から,Part 4〈Culture〉に進み,新しい章 Chapter 10「Tracking culture-historical lineages: Can "descent with modification" be linked to "association by descent"?」(Peter Jordan and Thomas Mace)を読みはじめる(pp. 149-153).

 著者は,文化系統が分岐的かそれとも網状的かはさらなるデータの蓄積がないと結論できないという.本章では,それに関わるもうひとつの問題として,「まとまりのある文化的なコア(核)はあるのか?」と提起する.文化のさまざまなパーツ(パッケージ)の系統が推定できたとして,それらのパーツを取りまとめたときに,ひとつの“coherence”をもつコアがあると言えるのかどうか,という問題だ.

 この章では,この問題へのアプローチとして共進化の系統解析に用いられてきた手法を援用しようとする.部分を成すパッケージそれぞれの系統関係を推定した上で,それらの間の整合性をテストし,整合性の有無によって,高次の文化的コアの有無を推論しようという方針だ.tangled trees の理論で培われてきたいくつかの手法を文化現象に適用することが続く節での内容だ.

◇来週からのナゴヤでの非常勤講義の“イメージ・トレーニング”を開始する.プレゼン資料よりも何よりも,「こういう筋立てで,こういう方向に噺をつくっていく」という筋書きがまず必要だ.とくに,15時間とか30時間の長丁場の講義の場合は,それが不可欠.資料やハンドアウトはあとからやってくる.※ホンマか?

 いずれにせよ,この週末に段取りよく作業しないと間に合わないな.

◇中国民謡〈茉莉花〉と歌劇〈トゥーランドット〉のメモ —— プッチーニの歌劇〈トゥーランドット〉は,ぼくの『系統樹思考の世界』の公式BGMだ.最表層の第一階層の読書ではそれを気にする必要ないが,第二階層の深読みと第三階層のコード解読では〈トゥーランドット〉のあらすじと配役を頭に入れておく必要がある.

 先日来,主役トゥーランドット姫のライトモティーフの元になっている中国民謡について,新宿区民オペラの打族間で話題になっている.〈茉莉花〉という江南地方の民謡がそれなのだが,とど君がヒミツのポケットから楽譜を見つけてきてくれた.日本に輸入されたときには〈まつり花〉というタイトルがつけられていたとのことだ.中国語の元歌詞は「人民中国インターネット版」に掲載されている.

 前は,トゥーランドット姫のライトモティーフは〈夕焼け小焼け〉だと確信していたのだが,送られてきた〈まつり花〉の楽譜を見ると,考えを変えざるをえなくなった. そーか,トゥーランドット姫は「ジャスミン」をイメージすればいいのか.高貴だ高貴だ.

◇本日の総歩数=6395歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.5kg/−0.1%.


27 juli 2006(木) ※ 夏祭りにはもってこいの日和で

◇午前4時起床.曇りときどき晴れ.無風,のち北寄りの風.気温22.5度.未明にムクドリとミンミンゼミの合唱が響き渡る.夏.

◇「蟲採りリスト」の暫定公開 —— サポート・サイトをまだつくっていないので,とりあえず〈leeswijzer〉に出しておきました.→「『系統樹思考の世界』第2刷のための蟲採り」.他にも“蟲”がいましたら,ぜひご連絡ください.よろしく.

◇昨日よりは少ししのぎやすいが,それでも夏本番を感じさせる.蝉たちの大合唱.今日の夕方に開催される,毎年恒例,農環研〈夏祭り〉にはふさわしい日和だ.独法研究機関で大々的に〈夏祭り〉をやっているところは,つくばではほとんどない(or まったくない)と聞いている.「このご時世に何やってんだか」と思われようが,そんなことはどーでもいいのです.田植えシーズンの“さなぶり”と,今の季節の“夏祭り”,そして秋の“収穫祭”の三つは「あって当然」という感じの年中行事だ.

◇午前のこまごま —— 遅れていたフレックス届出の提出.勤務時間内の休憩時間が変更になったので,終了時刻が30分伸びた.

◇きょう届いた献本(ありがとうございます) —— ジュリアン・バジーニ&ジェレミー・スタンルーム(編)『哲学者は何を考えているのか』(松本俊吉訳|2006年5月25日刊行,春秋社[現代哲学への招待 Basics]. ISBN:4-393-32308-4→目次).「哲学者たちの胸のうち」や「赤裸々な本音」が書かれているという.ヘレナ・クローニン,エドワード・O・ウィルソン,リチャード・ドーキンス,ヒラリー・パットナムら22人をターゲットとするインタビューを踏まえて書かれた本.ホンネが見えます?

 この叢書〈現代哲学への招待〉は,丹治信春の監修でこれから刊行されていくという.今回の新刊はこの叢書の中の入門シリーズ〈Basics〉の1冊で,本叢書は,この〈Basics〉とともに,名著シリーズ〈Great Works〉,日本人哲学者〈Japanese Philosophers〉,そしてアンソロジー〈Anthology〉の合計4シリーズから構成されていて,カバージャケットの色がそれぞれ青・赤・紫・緑の4色で色分けされることになるそうだ.

◇正午の気温は26.7度.晴れてほどよい暑さだ.いよいよ夏祭り日和.

◇午後のこまごま —— 来週は月曜から金曜まで,名古屋大学情報文化学部で生物学哲学の集中講義がある.その講義準備やら旅支度をほとんどしてこなかったので,ややあわてている.あわわ,あわあわ./ 名古屋大学の事務に「えっと,あのー」とメールしたら,「集中講義につきましては,6月にすでにお知らせしてあります」とのこと.ひょえー.あわてて過去メールを掘り返す./ 名古屋での投宿先もまだ決めていなかった.京都と同じくらい暑い[はずな]ので,しっかりしたホテルにしないといけない.オンラインで予約完了.4泊とは長丁場だが,30時間あるのでしかたがない.学生もたいへんだが,こっちもたいへん./ 機材は大丈夫として,ハンドアウトをどうするか.せっかく現代新書が出たばかりなので,それが教材になることはまちがいない.pdf のハンドアウトを配るくらいなら,新書1冊の方がラクかな.

◇午後5時過ぎから農環研グランドにて夏祭りが始まる.実行委員を引き受けると,事前の準備がいろいろたいへんだが,今年は単なる一参加者なので,呑んで食べるのみ.まずは,30軒近くある出店を一回りする.タイ風激辛グリーンカレーとか中国水餃子とか.食欲が満たされれば,あとは“打慾”しかないので,盆踊りの櫓にのぼって1時間ほど,和太鼓を叩かせてもらう.半分はアドリブね.毎年出演している土浦の〈新川囃子〉のおじさんに基本パターンを叩いてもらって,さらに学習する.これで「枠打ち」もオッケーです.

 午後8時過ぎに帰宅.上腕部に疲労感あり.あれだけドンドコ叩いたのだからしかたないか.

◇本日の総歩数=12236歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.前回比=0.0kg/−0.3%.


26 juli 2006(水) ※ 炎天東京,すかさず重版

◇午前4時に起床.晴れ.気温21.5度.昨日までとは打って変わって,いかにも夏らしい空が広がる.いよいよ梅雨もジ・エンドか.しだいに暑くなってきた.ミンミンゼミの初鳴き.今日は真夏日になるかも.

◇今日は,午後に進化学会の学会賞選考委員会があるので,それまでに候補者の資料に目を通しておかないといけない.こういう「審査」の担当をしたからといって“見返り”があるわけではまったくないが,“ToDo”の1頭ではある.

◇午前11時に〈leeswijzer〉のカウンタが「17万」を越えた.また,昨日からいきなりつくりはじめた〈ミクシィ〉のサイトにも,これまでになくたくさんの「足跡」が付くようになった.

◇11時41分の TX 快速で東大へ.根津で降りたとたん,真夏の日射しにくらくらする.もちろん真夏日なのだろう.気分はもう梅雨明け.朝日堂でパンを買って,弥生キャンパスへ直行.暑い暑い.

◇「隠れ部屋」の内装整備 —— 東大の中での“居場所”のスペースそのものはずいぶん前に割り当てられていたのだが,内装が何一つなかったので,居住性はゼロだった.このほど,運営費交付金の配分が確定したので,内装や什器を買うことができ,今日がその搬入・工事日にあたっている.ぼくが弥生キャンパス内の某所にある「隠れ部屋」にたどり着いたときは,すでに机が運び込まれていて,写真のような〈再教育センター〉チックな雰囲気を醸し出していた.あとは,机の間のパーティションを切る工事を午後やってもらって,やっと居場所ができることになる.今日中にはすむとのことだ.

◇さくっと重版 —— 〈(いまはまだ)再教育センター〉の中でメールチェックしたら,音羽から「『系統樹思考の世界』の重版決定!」との連絡が入っていた(8月3日予定).20日の出版から1週間も経たないうちに重版が決まるというのは幸先がいいことだそうだ.すなおに喜ぼう.第1刷で見つかった「蟲」のリストは今日中に音羽に知らせないといけない.あら,いそがし.

◇部屋への搬入とパーティション工事の進行を見届けて,午後2時過ぎに東大をあとにする.南北線で飯田橋に向かい,東京瓦会館というビルなのに瓦葺きのヘンな建物に入る(「瓦」業界関係の建物なのだろう).進化学会の学界賞選考委員会はここの会議室で午後3時から開かれる.まだ時間があったが,すでに何人かの委員が集まっていた.午後3時ちょうどに駒場の殿のおでましで,選考委員会の開始.まずは,教育啓蒙賞の選考,続いて研究奨励賞,最後に学会賞の順番で選考作業を進めた.すべての議事がすんだのは午後6時前だった.予定よりは順調にさくさくと選べたと思う.

◇進化学会大会が1ヶ月後に迫ってきたが,フォーマル行事の段取りをちゃんとしておかないといけない.とくに,来月は“大型不在”がふたつあるので(名古屋とメキシコ),つくばに実在する間に降りかかる仕事の密度が高まるにちがいない.

◇今日は夏らしい1日だった.夕暮れに淡路町に立ち寄って,秋葉原から TX 快速に乗る.つくばにたどり着いたのは午後8時過ぎ.夜になってもまだ暑い.

◇「夜間採集」 —— 夜は,念入りに『系統樹思考の世界』の蟲採りに励んだ.10匹あまりつかまえたが,そのほとんどが巻末の「文献リスト」に集中していた.最後まわしだったのでチェックしきれなかったのだろう.採集品はとりあえず〈ミクシィ〉に陳列しておいた.一両日中にオモテのページでも公開します.

◇本日の総歩数=13154歩[うち「しっかり歩数」=2591歩/22分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.8kg/+0.6%.


25 juli 2006(火) ※ いきなりミクシィ

◇午前5時半.うげげ,寝過ごしてしまったー.昨夜の乱痴気が祟ったにちがいない.外は霧がかかっていて,雨がぱらぱらと降っている.気温21.5度.

 いたた.何だかヒジを擦りむいたようだが…….ぜーんぜん記憶がありまっしぇん.※いったいどこで?(ほれ,アブダクションしてみぃ>ぼく)

いきなりミクシィ —— 根が小心なもので,こっそり評判や反応を気にしているのだが,けっこうな量の情報断片が溜まってきた.だもんで,メモ代わりに,これまで1年ほども放置してきた〈ミクシィ〉の日記に,『系統樹思考の世界』のネットでの書評や反応を記録しておくことにする.そのうちまとまった段階で(=「すぐに」ということ),サポート・サイトに公開することになるだろう.それまでの備忘メモとしてミクシィを利用することにしよう.

 これまでは,〈ミクシィ日記〉の使い道がまったくなかったので,そのまま放置してきたのだが,これでやっと“メモ帳”としての利用価値が生じたわけだ.ほー,らくちん.

◇気温24.7度.曇りときどき晴れ.昼の歩き読み —— 岡崎武志『気まぐれ古書店紀行』(2006年2月10日刊行,工作舎,ISBN:4-87502-391-X)の続きを読む.“音羽”というのはぼくが勝手に付けたのではなく,業界的に正しい“隠語表現”であることを初めて知った.そーかそーかあ.

◇午後1時半から1時間あまり,〈形態測定学講義〉の第17回目.第6章「The thin-plate spline : visualizing shape change as a deformation」を読了(pp. 143-152).非アフィン変形の薄板スプライン補間と,仮想屈曲エネルギー行列の固有値分解について.仮想薄板の屈曲エネルギー最小化問題という変分問題(双調和方程式)の解は,薄板スプラインの基底関数U(R)によって与えられる.標識点の対応付けから行列演算によって計算されるアフィン部分と非アフィン部分の係数がスプライン関数の形を決定する.

 次回からは「Part II」に入る.

◇午後のこまごま —— 予算が一時的に払底したりとか./ 選考委員会の資料を読んだりとか,

◇夜,〈ミクシィ〉つながりでいろいろとやりとり.「〈ミクシィ〉に入れて」要請の処理とか,「マイミクシィ」の加えろ/加えてメッセージ送受信とか.

◇明日は,また東京にお出かけ.

◇本日の総歩数=10335歩[うち「しっかり歩数」=5044歩/46分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/−0.2%.


24 juli 2006(月) ※ 小心者の週明けに降り注ぐ雨と本たち

◇午前4時半起床.小雨で遠景が煙っている.気温22.4度.

◇“気にしぃ”の日々 —— 先週の出版以来,インターネットでの反応をいろいろ探針している.たとえば,〈はてなダイアリー〉であればまとめページ『系統樹思考の世界』を見れば,言及・反応・書評などがすでに蓄積されつつあることがわかる.

 その他,いくつかの検索サイトを見回って,ひとつひとつ拾っていく.ミクシィもしっかり覗いたりして.

 第1層レイヤーはおおむね「いい感じ」に読まれているようだ.次は,特定の想定読者群にターゲットをしぼった第2層レイヤーがどのように読まれるかだ.さらに,わかる人にはわかる第3層レイヤーをどこまで楽しんでいただけるかも気になるところ.

—— 本書を読まれた方はぜひぜひ感想をウェブ公表してください.よろしくよろしく.※とりあえず,拾い集めた情報断片を並べたいな.

◇午前のこまごま —— 郵送作業にいそしんだり,メーリングリストのお世話をしたり.

◇献本が届く —— 小田中直樹『フランス7つの謎』(2005年2月20日刊行,文藝春秋[文春新書427], ISBN:4-16-660427).さっそくお返しをいただき,ありがとうございます.ピエール・ブルデューっておもしろそうですね./ 斎藤成也他『遺伝子とゲノムの進化』(2006年3月28日刊行,岩波書店[シリーズ進化学2], ISBN:4-00-006922-5).これまた,お返しにいただきます.感謝.

「面白すぎて寝られへん」 —— 玉木正之サイト〈Camerata di Tamaki〉のコラム〈ナンヤラカンヤラ〉でのコメント(7月22日付).おおきに,ありがとうございます.全編にわたってトゥーランドットねたも入ってたし,きっとそのへんが効いたんちゃうかなあ.新幹線車中で寝たくない向きは『系統樹思考の世界』を1冊どーぞ![以上,音羽からの情報] ※「世の中で目立たへん」−うーむ,もっと目立たんとあかんのか…….

◇午後1時半から1時間ほど,Alan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読(第21回目).Chapter 4:「Characteristic Functions」の続き(pp. 153-156).特性関数の無限分割に関する論議.数理統計学の中でももっともスウガクな部分ですな,これは.データからの特性関数の経験的構築の話題はいきなり“地べた”という感じ.カーネルを仮定して最小二乗法で経験的特性関数の最適パラメータ値を推定するということ.理解度のあまりのギャップに戸惑うほど,とてもよくわかる.

◇午後のこまごま —— 進化学会の学会賞選考に関する段取り.明後日の選考委員会までにもう少しやることがある.

◇着便本2冊 —— Alibris から,Imre Reiner『Typo-Graphik : Studien und Versuche』(1944年刊行,Verlag Zollikofer & Co.,ISBNなし).タイポグラフィーの本./ イタリア書房から,Giulio Barsanti『Una lunga pazienza cieca : Storia dell'evoluzionismo』(2005年刊行,Einaudi[Piccola biblioteca Einaudi. Nuova serie], ISBN:88-06-17329-4→目次).現代進化思想史.入手できないかと案じていたのだが,忘れた頃にポンと届いた.

◇夕方4時18分の TX 区間快速に乗って東京へ.さんざん呑むだけならいつものことだが,ワタクシは「三板(サンバ)」(→写真解説)の叩き過ぎで指が痛かった.触り心地が昔もっていたスパニッシュ・カスタネットと同じなので黒檀だったのだろう.そのむかし,スパニッシュ・カスタネットにハマっていた時期があって,トレモロがなんとかできたこともあった(サボったらすぐダメになったが).しかし,「三板」は板がもう1枚多いので,〈∞〉を描くようなトレモロのわざを身につけるには練習がきっと必要だろう.泡盛と古酒の呑み過ぎ.

 午後11時発の TX でつくばにたどりついたのは日が変わった頃.へろへろ.

◇本日の総歩数=9676歩[うち「しっかり歩数」=1539歩/13分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.前回比=−0.2kg/−0.6%.


23 juli 2006(日) ※ きびしい姫君は情け容赦なく

◇午前5時起床.曇り.湿った北の風が吹く.

◇今日はうんといぢめられる日 —— 8時28分発の TX 快速で東新宿に向かう.9時半過ぎに新宿文化センターに到着.今日の〈トゥーランドット〉の練習では打族が初めて全員そろう.オペラで「7人」という打族動員数は破格に多いのではないかと思うの.しかし,実はこれでも足りなくて,Xilofono と Xilofono Basso をかけもちしないといけない.

 10時を少しまわって練習開始.いきなり“難所”を繰り返し練習することになった(大汗) ——

←ゆったりした流れの中に,連符のキザミを入れさせないでって! こわいのは,同一のパッセージを奏する複数の楽器があることでして.入りのタイミングがピタリと合う確率はかぎりなくゼロに近い.目ぇつむって,「えいゃぁっ」と叩いてしまうしかないか(入ったもん勝ち).鍵盤打楽器はどれもこれも“打点”がくっきりしているので,ゴマカシようがないのだ.「あ,ゴメン……」てなことで.心臓に悪いなあ.

 最初の難所を無事クリアしたかと思っていたら,次なる問題箇所↓が ——

 だ・か・らぁ,気持よく唄いまくる独唱の合間にシロフォンのパッセージをちょこっと置くのはやめてー.トゥーランドット姫に一目惚れしてしまった大阿呆カラフが自己陶酔するのは勝手だが,そのとばっちりを喰うシロフォン奏者は災難というしかない.チェレスタとハープが同じパッセージだが,ステリハまできっと姿を現さないにちがいないので不安だなあ.これもまた「入ったもん勝ち」かなあ.

 打楽器の場合,「叩いてしまえばこっちのもん」なので,最後はハラをくくりませう.百人規模のオケがどんなに頑張ったとしても,シンバルの一撃,銅鑼のイッパツ,木琴のストロークですべては消し飛んでしまうのだ.わははー.(冷汗)

 それはさておき,これだけ大量の打楽器を新宿文化センター第ホールのピットに詰め込むのはとうていムリ.スペースを占有するチャイニーズ・ゴング一式とシロフォンをまず舞台脇に追いやることは決定された.ついでにグロッケンシュピールとチューブラー・ベルも“上”にあげるしかないか.とすると,客席の最前列から直視されるので,それなりの「コスチューム」が要るかもしれない(化粧はいらんぞ).

◇昼食は,前回と同じく,〈サンサール〉にて,キャベツとジャガイモのカレー(ナーン付き)をば.

◇午後1時半から練習再開.第1幕と第3幕の部分練習.ワーグナーの楽劇には及ばないにしても,2時間もあるオペラだと,それなりに疲れます.午後5時前に練習終了.楽器を倉庫に運び終えて,散会.つくばに帰り着いたのは午後6時を回っていた.蒸し暑いな.

◇伝言(>とまる君へ):〈Turandot〉の廉価版CDは Membran から昨年出た,1955年録音のマリオ・デル・モナコ/インゲ・ボルク/レナータ・テバルディ(オケと合唱はサンタ・チェチーリア音楽院)です.「222938-311」で検索するとヒットします.CD2枚組でたった1300円!(ぼくはタワーレコードで買いました).半世紀前の録音ですが,ゴングを学ぶには最適な演奏だと思います.

◇本日の総歩数=13205歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.2kg/+0.3%.


22 juli 2006(土) ※ ちょっとだけダルな土曜日

◇午前5時半に目覚める.曇り.昨日,極度に歩きすぎたせいか,今朝は「歩行慾」がすっかり喪われている…….

◇だから,PR! —— 現代新書の新聞広告は昨日打たれていた(朝日新聞のみ確認).講談社のPR誌である『本』の8月号(38巻8号,2006年8月1日発行)にも,ぼくの寄稿「旅するサイエンティストたち」(pp. 42-43)と同じページに新刊広告が掲載されている.

 さらに多くの「着弾メール」が夜のうちに届いていた.販促にご協力をよろしくよろしく.

◇「分類しない」という決意 —— 野村雅昭『落語の言語学』(2002年6月10日刊行,平凡社ライブラリー435,ISBN:4-582-76435-5→目次)の第3章「オチの構造」は,落語の“オチ(サゲ)”の分類を論じている.これまで多くの“オチ分類体系”が提唱されてきたが,コンセンサスが得られた分類はいまだにないという.実際,「サゲの分類は一切やめた」と公言してしまった例もあるそうだ.「分類しない」と口にしてしまうところがすごい.内面的にどのように折り合いをつけたのだろうか.そこが気になる.

◇午後3時の気温は24.0度.曇りときどき小雨.研究所に半時間ほど潜入してごそごそする —— 進化学会の学会賞選考委員会関連の連絡メールあり.委員会の会場が確定したので,各選考委員に連絡しないといけない.

◇明日はまたまた一日中〈トゥーランドット姫〉にいたぶられる…….観念して,総譜の勉強を少し.

◇本日の総歩数=6803歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.5kg/−0.2%.


21 juli 2006(金) ※ “人間犬”,夜明けの雨中行軍

◇午前5時起床.外は強い雨.早朝の雨中ウォーキングを1時間半ほど.なんとも物好きなことで.赤塚公園往復コース.途中の洞峰公園を一周したりする.もともと水はけの悪い地なので,雨が降るたびに道路は水没する.雨足いよいよ強く,濡れまくる.

◇強制的絶食…….食べ物はもちろん,飲み物も御法度.

◇午前9時前に,またまた徒歩で,つくばメディカルセンターの総合検診センターに入る.今日は年に一度の人間ドックの日.年休をとって,審判を受ける.診察そのものは午前中に終わる.いったん帰宅.問診は午後.げー,そーすか.ひょえー,そりゃまた.…….※節制生活あるのみ.

◇検診服での合間読書 —— 野村雅昭『落語の言語学』(2002年6月10日刊行,平凡社ライブラリー435,ISBN:4-582-76435-5→目次).元本は1994年5月に平凡社から出された.第1章「落語の言語空間」と第2章「マエオキはなぜあるのか」を読む.120ページほど.マエオキの談話形式の分析もおもしろいのだが,噺家によってマエオキに大きな“変異”があることを知る.それとともに,社会の中での落語の地位の変遷が読み取れるという指摘もある.よほど“対象”が好きじゃなければこういう本は書けないだろう.

◇午後2時半に帰宅し,用件二つをこなす.

◇新刊2冊とインカ関連 —— 吉井勇『東京・京都・大阪:よき日古き日』(2006年7月10日刊行,平凡社ライブラリー581, ISBN:4-582-76581-5).初版は1954年,中央公論社.「吉井勇」といえば“祇園”を詠んだものしか知らないなあ./ 松本三郎『江戸和竿職人 歴史と技を語る:竹,節ありて強し』(2006年7月10日刊行,平凡社ライブラリー580, ISBN:4-582-76580-7).美しい釣り竿が次々と./ ラス・カサス『インディアスの破壊についての簡潔な報告』(1976年6月25日刊行,岩波文庫[青427-1], ISBN:4-00-334271-2)./ ティトゥ・クシ・ユパンギ『インカの反乱:被征服者の声』(1987年12月16日刊行,岩波文庫[青444-1], ISBN:4-00-334441-3).

◇結局,午後いっばい雨は降り続き,夕方になってやっと小やみになった.

◇[平台観察記]つくば内のいくつかの書店をサンプルしたかぎり,“テポドン”は相対的にほどよく売れているように見えます(欲目か).同月に出版された他の6冊の現代新書が平台に積まれている“高さ”の初期値が同一であると仮定したときの,“標高”の逓減についての推論です.

 順次発射してきた“テポドン”も多少の時差はあるものの,北は青葉山から,越中平野,つくば,北白川を総嘗めして,南は北九州まで順調に到達したようだ.※あ,“望”ではなく,“希”でしたね.(ああ,もうしわけない.今度からは“ひらかな”で宛名を書こう)

 反響いろいろ —— 着弾された“被害者”のみなさんからメールが届いたり,ウェブに綴られていたり.ついでに,20年前の予備校時代の教え子からも連絡があったり,ソーバー訳本が売れたり.本を出せば,予期する/しない反応があるものだ.

◇夕暮れ読書 —— ジョゼフ・ブレント『パースの生涯』(2004年12月5日刊行,新書館,ISBN:4403120172→目次)を第2章まで読了.約240ページ.第1章「父・息子・メルジーナ」では,父親ベンジャミンからの強い[強過ぎる]影響があったことをうかがわせる.後半生の「危うさ」の予感は子どもの頃からあったようだ.

 アブダクションに関するパースのことばを拾う:

我々のもっている知識の全体構造は帰納的推論によって裏づけられ純化された純粋な仮説という一枚のフェルトのようなものであるというのが真相である.一歩一歩アブダクションを行なうことなくしては,ぼんやりと見つめることから一歩も知識を前に進めることはできない.(pp. 136-137)

 第2章「『我らが勝利のときは喪失のとき』」では,パースやウィリアム・ジェイムズ,そしてルイ・アガシーを含むボストンの知識人たちがつくったアメリカ東海岸の秘密結社〈The Metaphysical Club〉について少し論じられている.プラグマティズムの母体と呼ばれるこの結社はわからない点が多く,その存在そのものが疑問視されたことさえあったと著者は言う.

 この〈The Metaphysical Club〉そのものを論じた本がその後出ている:Louis Menand『The Metaphysical Club』(2001年刊行,Farrar, Straus and Giroux,ISBN:0-374-19963-9→目次). この〈The Metaphysical Club〉といい,同時代のロンドンでの〈The X-club〉といい,とてもアヤシそうで惹かれるものがある.

 もうひとつの話題:20世紀初頭に『哲学・心理学辞典』を編んだ J・M・ボールドウィンの名前がよく出てくる.ぼくの『系統樹思考の世界』に載っている「ポルピュリオスの樹」(p. 51)の図版はほかならないこの辞典が出典だ.パースとも関わりがあるとは知らなかった.

◇夜になって北東風が吹く.ここのところ降ったり曇ったりのうっとおしい空模様だが,夏日とか真夏日が縁遠くなって体感的にはなかなかいい具合だ.それにしても今日は疲れた.明日からは節制しようと堅く誓う人間ドック当日(毎年……).

◇本日の総歩数=26152歩[うち「しっかり歩数」=19317歩/167分].全コース×|×.朝−|昼△|夜△.前回比=−0.8kg/0.0%.


20 juli 2006(木) ※ 久しぶりに朝日を拝む

◇午前4時半起床.青空が見える早朝.雲間から射す朝日.気温19.5度.最低気温が20度を下回ったのは久しぶりのことだ.

◇午前のこまごま —— 今月から来月にかけての国内出張届4件(メキシコ出張書類は別途用意しないと).年休届を2件.事務書類をいったんつくり始めるとどんどん時間が過ぎていく.

◇情報クリップ —— ニフティーの〈フォーラム〉が,来年3月31日をもってすべて閉鎖されることになった(→アナウンス).「パソコン通信」からの撤退の次は,「フォーラム」からの撤退か.おびただしい数の既存のフォーラムは別形態の電子コミュニティとしてそのリネージを存続させていくことになるのだろう.

◇進化学会の大会参加費を振り込む.こういうことは忘れないうちにしておかないと.

◇昼の歩き読み —— 大貫伸樹『製本探索』(2005年9月20日刊行,印刷学会出版部[デザイン製本2],ISBN:4-87085-181-4)を読了.文庫本サイズのわりに活字が大きいので150ページ超の分量でもさくっと読了.なお,添付の「著者オリジナル消しゴム版画蔵書票」には「2006年5月」というサインが入っていた.

 装幀の様式としての「フランス装」という用語の意味は前から気になっていた.単なる「アンカット」では条件として十分ではなく,フランス表紙+三方断裁を「仮フランス装」と呼び,フランス表紙+アンカットを「本フランス装」と呼ぶのだそうだ(p. 88).他にも,「あじろ装」のこととか,「装釘・装丁・装幀」という用語のこととか.“モノ”としての「本」にはさまざまなこだわりと執着がついてまわる.

◇午後1時の気温は22.3度.曇り空だが雨の気配はない.

◇夕方の社会貢献 —— つくばセンタービルにて献血を400cc.数百グラムだけ軽くなる.

◇“テポドン”たちの着弾報告が各地から届く.公式には今日が発売日だ.アマゾンのランキングはまだ3000台.どれだけ伸びるだろう?

 ウェブサイトでの言及もしだいに増えつつある.〈NeighborNet〉を用いた言語系統ネットワークの研究が日本言語学会でも発表されたそうだ.知らなかった.

◇明日は「人間ドック」を受診するので,午後7時までに食事をあわててすませる.夜の飲み食いは禁物.

◇〈トゥーランドット〉の読譜をする.まずは,フル・スコアとパート譜との対応づけ.パート譜に散らばった“ジグゾーパズル”のピースをひとつひとつ総譜に当てはめていく.ヴォーカル・スコアでは見えなかったものが見える.こういうオーケストレーションをするんだから,もう.

 コントラバス・トロンボーンのこと:〈トゥーランドット〉の金管楽器の最低音部は,よくあるチューバではなく,コントラバス・トロンボーンが受け持つ.いまのオーケストラではコントラバス・トロンボーンが使われることはまずないが,19世紀末から20世紀はじめにかけては使われていたそうだ.再度,CDを聴くと,確かにチューバの「大砲」のような低音はこの曲では聞こえてこないことに気づかされる.

 ぼくが見たコントラバス・トロンボーンの現物は,東大オケに所蔵されている大昔の楽器で,いつも初夏に“虫干し”がてら,音出しされていた.ハンドル付きの長いスライド管が印象に残っている.しかし,こんなのをオケ・ピットの中で振り回されたら,周囲の演奏者はさぞかし迷惑だろうな.

—— Niles Eldredge ばりに楽器の系統発生を調べるというのはたいへんおもしろい系統学のテーマだと思う.それも単に「系譜」を調べるだけではなく,オーケストラ環境の中での fitness,作曲家の作曲傾向との共進化などなど.

◇本日の総歩数=17196歩[うち「しっかり歩数」=8773歩/76分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.3kg/+0.7%.


19 juli 2006(水) ※ “改心しすぎ”の駿河台下

◇午前4時半起床.雨足が強い.気温20.0度.北寄りの風が高層階を吹き抜ける.

◇今日はいくつかの用事を消化するために,東京に出かける.9時11分発の TX 快速に乗る.北千住で乗り換え,小川町についたときにはすごい土砂降りになっていた.空梅雨を改心してまっとうに降ってくれるのはありがたいのだが,この降り具合はちと改心し過ぎではないか.>梅雨前線氏.ほどほどに,よろしく.

◇10時半に,小川町の〈スターバックス〉にて,講談社の川治さんから『系統樹思考の世界』を20冊受け取る.公式には20日の発売だが,早い大手書店では18日から店頭に並んでいるらしい.ぼくはまだ目撃していない.一新されてからもうだいぶ時間が経っているのに,まだがにぎやかな,現代新書の「新カバー」について四方山話をば.ああ,そうでしたか./ コンウェイ・モリス訳本の作業は夏休み明けからということで.※その前に“大もん”が待ち構えているので.

◇続いて,11時から近くのオーム社にて,企画中の〈R〉統計モデリング本の目次構成に関する打合せをする.最近たくさん出ている統計言語としての〈R〉の入門書ではなく,〈R〉を使ってどのようにしてまっとうな統計モデリングをするかという趣旨の本にしたいので,章立てについては少し変更した.※後ほど関係者のみなさんにアナウンスします.昼前に退出.雨はなおざあざあと降り続く.

 その後,東大の出身研究室を訪ねたら,同じオーム社から別の「生物統計学シリーズ」の企画が進みつつあることを知った.奇なる偶然.

◇すずらん通りの〈書肆アクセス〉にて —— 『本の手帳[創刊号]』(普及版:2006年7月1日刊行,本の手帳社,ISBNなし).大貫伸樹・田中栞(編集)とのこと.創刊号の特集は〈蔵書票まつり〉.1冊まるまる,えくす.りぶりす./ 大貫伸樹『製本探索』(2005年9月20日刊行,印刷学会出版部[デザイン製本2],ISBN:4-87085-181-4).「著者オリジナル消しゴム版画蔵書票付きサイン入り限定本」全88部の「第72番」.テキストファイルとしては大きなサイズではないが,“ブツ”としては魅力的.同じ著者による姉妹本:大貫伸樹『装丁探索』(2003年8月6日刊行,平凡社,ISBN:4-582-83166-4)がある.

◇南北線に乗って東大農学部へ.降り続く雨の中,午後1時過ぎから専攻教員会議が始まる.いつものように長い長い連絡事項が伸びていく.各研究室への運営費交付金配分額の確定とか,専攻共通経費の負担割合とかは重要.進振りの話題はなかなかたいへんそうだった.連携教員の居室への内装整備と什器搬入は来週水曜になるそうだ.ちょうどタイミングが合うので立ち会うことにする.無線LAN接続の準備はいつでもOKだそうだ./8月29日に修士課程入学試験の面接があるのだが,ちょうど進化学会大会の評議員会&総会&授賞式などなどの公式イベント日と重なっているので,出席はできないな.※ふつうは逆か?

 会議そのものは午後4時前まで続いた.いつもより早いあがり.

◇これまでいつも振られていた,不忍通り沿いの〈根津のたいやき〉でやっと買うことができた.会議が早めに終わってくれたおかげだ.以前は人形町の〈柳屋〉の系譜に連なることをもっと大きくアピールしていたと思ったが,いまでは〈根津のたいやき〉という方が知名度が高いのか? ※谷根千ネットによるとしばらく前に店名が変わったとか.

◇小降りの雨の中を千駄木駅に向かう.TX に乗っていると,しだいに空が明るくなり,夕陽が射してきた.午後5時過ぎにつくば着.もう雨は降らないようだ.

 北寄りの風が吹く.今日は一日中気温が低めで,おそらく夏日ではなかっただろう.20度そこそこかな.しかし湿度が高いので,密閉空間では不快指数がすぐに高くなってしまう.

◇車中読書 —— Aviezer Tucker『Our Knowledge of the Past: A Philosophy of Historiography』(2004年刊行,Cambridge University Press,ISBN:0521834155)の「Introduction : The Philosophy of Historiography」をぼちぼち読む.歴史(=過去事象)に関する確かな知識をもたらすのが「科学的歴史叙述(scientific historiography)」であると著者は定義する.両者の関係について,著者は明快に:

The distinction between history and historiography parallels that of nature and science. (p. 2).

と言う.もってまわったことを言わないところがいいな.本書のメインテーマである「philosophy of historiography」はどういう姿をとるのだろうか?

◇本日の総歩数=12123歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=−0.5kg/−0.6%.


18 juli 2006(火) ※ すっかり改心したか,梅雨前線

◇午前4時半起床.雨.南風が入る.20.7度.ここのところ怠けていた梅雨前線もやっと性根を入れ替えたようだ.予報では,今日の関東地方は強い雨に注意とのこと.

◇朝のこまごま —— 進化学会関連:この連休中に,新規入会者がまたまた十数人“堆積”していた.すみませんすみません.メーリングリストへの登録作業をすませる./ 年休届と出張届(とりあえず3件)を書く.

◇向こう2週間の予定 —— 明日19日(水)は東京でいくつか用事をすませる予定.午前中はオーム社でR統計本の企画についての打合せ.午後は東大での専攻教員会議./ 20日(木)も分類感学会連合の会議で東京に出る予定だったのだが,ちょっとムリっぽい.他の仕事がわらわらとあるので,ごめんなさいしよう./ 21日(金)は“人間犬”に進化する日なので,心の準備をしておこう.※その前に生活の節制を>ぼく./23日(日),新宿で終日トゥーランドット姫にいぢめられる./ いきなり24日(月)に予定が入りそう.迎撃準備をする.※予約完了しました./26日(水)は都内某所で進化学会の選考委員会./27日(木)は農環研の夏祭り./29日(土)は隅田川花火大会.京島からお誘いあり./ 7月31日(月)の午前に所内の業績評価検討委員会の会議.その日の午後から名古屋に出発しようと思っていたのに〜.

 なんのかんので,今月末までほとんど自由時間はない,と見た.

◇昼になっても,雨は止まず.歩き ohne 読み.午後1時の気温は21.4度.真夏日とはほど遠いが,湿度は高い.

◇午後1時40分から1時間ほど,〈形態測定学講義〉の第16回目.第6章「The thin-plate spline : visualizing shape change as a deformation」の続き(pp. 134-142).仮想形態変形におけるアフィン成分(均一成分)の導出に関する解説.形状空間の線形接空間における正規直交基底の導出する.変位・回転・等率拡縮の変換は形状を変えないアフィン変換である.形状が変わるのは,ずれ(shear)と不等拡縮(compression / dilatation)の変換を施したときである.いま,ずれと不等拡縮を互いに独立なアフィン変換として定式化すると,それぞれの微小変換から一組の正規直交基底(uniform components)を導出することができる.基本方針は,Fred L. Bookstein (1996)「Standard formula for the uniform shape component in landmark data」, pp. 153-168 in: L. F. Marcus et al. (eds.)『Advances in Morphometrics』(1996年刊行,Plenum Press,ISBN:0-306-45301-0)に準拠している.ただし,複素幾何学の説明がはしょられているので,数式が“でかい”わりには,導出をフォローするのがつらい.

◇午後も雨がざあざあ降り続く —— とある国内出版社が「生物学哲学」の入門書を企画しているそうだ.期待しましょう.ソーバーの訳本の注文とともに./ とある国立大学から,morphometrics の関わる“幾何学”の集中講義の依頼.呼ばれたらどこでも行きまっせー.教壇の上では“チョーク芸者”になりきります,ハイ.

◇夕方のこまごま —— 献本リスト(第4弾)をつくっているのだが,まだ終わらない./ そろそろ来月のメキシコ出張の旅程表を事務に提出しないと航空券の発注が間に合わない./ その前に,来月早々の名古屋大学での集中講義(30時間)があるのだが,その準備がちーともできてません…….※宿泊先はどーすればいいんでしょうか?(とひとりごちる)./ うう,翻訳が…….むむ.

◇Alibris から着便 —— Aviezer Tucker『Our Knowledge of the Past: A Philosophy of Historiography』(2004年刊行,Cambridge University Press,ISBN:0521834155).簡略目次だけでは感触がイマイチわからなかったのだが,ブツをぱらぱらしてみると何となく“ウマが合いそう”だ.小見出し付きの詳細目次をアップしよう.

 日頃から,「目次内容」は心して入力し,公開するようにしている.時間がかかってたいへんでしょうと言われることがあるが,ぼくにとっては目次入力は“大幅に短縮されたショートカット読書”という位置づけだ.大部の本は詳細目次をたどるだけでも,論議の流れを追うのには十分だと思う.

◇夜もざあざあと雨が降り続く.今日は一日中20度台前半の気温だったので,久しぶりにしのぎやすかった.明日は東京出張.

◇本日の総歩数=13359歩[うち「しっかり歩数」=7490歩/66分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−0.2%.


17 juli 2006(月) ※ 連休ラストは朝から土砂降り

◇午前3時に目が覚める.しばしごそごそしてから,二度寝に突入.次に目が覚めたときには午前5時を過ぎていた.北寄りの風が吹く.

 曇り空だったが,いきなりざあざあ降り出した.土砂降り.気温21.4度.早朝の研究所に潜り込むものの,前日までの“熱気”が居室に封入されたままだった.居住性とてもわろし.早々に退散する.

◇せっかくの三連休だった公私ともにイベントがあるわけでなし,単に巨大な“紙魚”と化していた感がある.外出しようにも,雨が降ったり止んだりしているので,イマイチ気分が乗らないし,歩き読みもできないし.

◇迫り来る“仕事津波”があるのだが,ごめんなさいごめんなさい.

◇昼下がり,よそ見の論文読み —— Johann-Wolfgang Wägele「Hennig's phylogenetic systematics brought up to date」,pp. 101-125 in: David M. Williams and Peter L. Forey (eds.) 『Milestones in Systematics』(2004年5月12日刊行,CRC Press, ISBN:0-415-28032-X→目次).Willi Hennig の系統体系学(「phylogenetic cladistics」)の理論は,コンピュータ化された最節約分析(「phenetic cladistics」)とはちがっているのだという見解.

 しかし,少なくとも著者の論旨を追うかぎり,著者自身の主張は最初から論駁されている.そもそも,著者が描いている「phylogenetic cladistics」の構図の中で,最節約原理に基づく「phenetic cladistics」は必須の段階として組み込まれている.形質データから最適系統樹を推論するというステージを回避したり省略することはできない.皮肉なことに,著者の主張にしたがえば,「phenetic cladistics」は批判されるべき対象とならない.最適化基準にもとづくグラフ探索が必須の構成要素であることが Wägele から逆に明らかにされる.

 Wägele の主張はむしろ,コンピュータ・ソフトウェアに盲目的に依存すること,そして出力された結果を無批判に受け入れることへの批判にある.これは確かにその通りだろう.形質データ行列の調製に先立つ形質の注意深い検討と得られた最適系統樹がさまざまな付加的知見のもとでどの程度妥当な結論であるのかを考察することは,“サル”ではない系統学者には当然期待される思考段階だ.ところが,著者はこのような考察をしているのは,Hennig 流の「phylogenetic cladistics」であって,「phenetic cladistics」はそういう考察をしようともしない“サル”だと言う.明らかにこの手の批判は,相手をおとしめるための戯画化にすぎない.Hennigian であれ Nelsonian であれ,系統学者はそれほどアホではないでしょう.

 やや「誤爆」な書き方は気になるが,Wägele の教科書:Johann-Wolfgang Wägele 『Foundations of Phylogenetic Systematics』(2005年刊行,Verlag Dr. Friedlich Pfeil,ISBN:3-89937-056-2→目次紹介)は,内容的にも最新の系統推定論のトピックスまで十分に広くカバーされていて,いい教科書だと思う.

 Wägele の上記論文の中で,ドイツにおける「Hennig 以降」の生物体系学の現代史への言及がなされている.1976年に Hennig が亡くなり,1980年代前半に彼の一連のドイツ語著作が出版された後,その学問的リネージを引き継いだのは Peter Ax だったそうだ.Gustav Fischer Verlag から出ている彼の2冊の本は広く読まれたそうだ:Peter Ax『Das Phylogenetische System : Systematisierung der lebenden Natur aufgrund ihrer Phylogenese』(1984年刊行,Gustav Fischer Verlag,ISBN:3-437-30450-X)と Peter Ax『Systematik inder Biologie : Darstellung der stammesgeschichtlichen Ordnung in der lebenden Natur』(1988年刊行,Gustav Fischer Verlag[UTB 1502], ISBN:3-437-20419-X).前者は英訳されている:Peter Ax『The Phylogenetic System : The Systematization of Organisms on the Basis of their Phylogenesis』(1987年刊行,John Wiley and Sons,ISBN:0-471-90754-5).しかし,独語版に比べて,印刷はめっちゃ悪いし,価格もばか高かった記憶しかない.

◇夜になって雨足はいっそう強くなってきた.

◇時間が“千切り”に消費された三連休だった.今週はあちこちこまめに出かける日が続く.

◇本日の総歩数=5662歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼△|夜○.前回比=+0.4kg/+0.5%.


16 juli 2006(日) ※ 連休中日はとぐろを巻く

◇午前5時半起床.北の風が涼しい.曇り.

◇久々の早朝歩き読みは筑波大方面への北行き —— 岡崎武志『気まぐれ古書店紀行』(2006年2月10日刊行,工作舎,ISBN:4-87502-391-X)をさらに80ページほど.著者は自他とも認める「均一小僧」だそうだ.古書店前の「均一棚」を探しまわるシーンがあちこちに(その姿勢,『蒐書日誌』に描かれている大屋幸世に相通じるものがある).ぼくは,文庫や新書の均一定価本にはまったく関心がないので,古書店の店先の平台を漁ったことはほとんどない(拠点洋書店は別格だが).やればきっと愉しいのだろうが,いまはその意欲(と時間)がない.新刊・古書を問わず“一本釣り”あるのみ.

 1時間あまりで,戻ってくる.夏場は日中の“行軍”はつらいので,やはり早朝にかぎる.

◇午後,弱い雨が降りだす.

◇昼下がりのぐうたら読み —— 部屋ごとに別の本を置いて,巡回読みする(何やってんだか).ある部屋には,ジョゼフ・ブレント『パースの生涯』(2004年12月5日刊行,新書館,ISBN:4403120172→目次).電話帳のように部厚い本だが,読み進むにつれてしだいにおもしろくなってくる.チャールズ・S・パースの父であるベンジャミン・パースは,米国の国立科学アカデミーの創立者のひとりだったそうだ.エイブラハム・リンカーン大統領とともに描かれた肖像画が載っている(そこにはルイ・アガシーもいたりする).そして,息子チャールズは,ハーヴァード大学のあるケンブリッジに生まれ育った.論理学の卓越した地位が印象的だ.

 別の部屋では,鹿島徹『可能性としての歴史:越境する物語り理論』(2006年6月28日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-022465-4→目次)を読み返す.「?」マークがさらに増えてしまった.なかなか先に進めない.著者はアーサー・ダントのちがうところばっかり読んでいる気がする.というか,人間の社会・国家の歴史を論議するスタイルは「そういうもの」なのだと飲み込んでしまえばいいのかもしれないが.

 さらに別の部屋には,トゥーランドット姫が待ち構えている.来週末にはまた新宿文化センターでの練習があるので,総譜をよく勉強しておかないとダメだ.

—— 何度か巡回しているうちに,もう夕方になってしまった.いやはや.

◇夜遅くなって,進化学会シンポジウム〈哲学はなぜ進化学の問題になるのか:生物学の哲学の多様な展開〉の講演要旨がすべて登録されたとの連絡が入った.演者のみなさん,どうもありがとうございました.

◇本日の総歩数=9269歩[うち「しっかり歩数」=7309歩/62分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.2kg/+0.1%.


15 juli 2006(土) ※ トロピカル慢性疲労シンドローム

◇午前4時半頃目覚める.朝から青空が広がって,梅雨末期とはとうてい思えない.もちろん,早朝からもう蒸し暑い.“亜熱帯”にいるのだとあきらめればいいのかも.動作が自然に緩慢になる.

◇もうひとつの“亜熱帯”からのお誘い —— 〈Hennig XXV〉の確認メールが届く.メキシコ行きが1ヶ月後に迫ってきた.事務連絡メールに,「オアハカでタコスを喰おうぜ!」って書くか,ふつう……(ニューヨーカーってば).

◇さらに詳しく —— 『系統樹思考の世界』の小見出しをつけたさらに詳細な目次を leeswijzer にアップした.

◇日中いっぱい,厳しい暑さが続く.昼下がりに少し外歩きをしたが,ほどなく“閾値”を越えたのでさっさと撤退する.東京は35度超とのこと.つくばもおそらくそれくらいの最高気温だったのだろう.やめてー.

◇ 『系統樹思考の世界』のバグ取り作業.本文についてはゲラの段階でリキを入れて読んだので,体裁上の「凡ミス」はあまりないと思う(内容は別ね).しかし,最後の文献リストにたくさんの細かい“蟲”たちが潜んでいた.生き死にに関わることではけっしてないが,チクチク刺されて不快だ.[もしも]版を重ねたときには,ちゃんとツブしてあげるからね(この野郎っ).

 何度か読んでいるにもかかわらず,「ミス」がすり抜けて生き残ってしまうというのは,腹立たしいのだが,何度もそういう経験がある.とくに文献リストはフォーマットが決まっているので,その基準を満たさない記述はすぐにわかりそうなものだが,それでもやっぱり「あ!」というまちがいが見つかってしまう.

◇夜になって雨が降り出した.今日は異国的などばどばスコールではなく,しっとりと情緒?のある和風の降り方だった.しかし,東京ではものすごい雷雨だったそうなので,ちょっとした積乱雲の分布のちがいにすぎないだろう.それにしても温度が高過ぎる.

◇夜遅く,共著論文の添削をする.このペーパーもそろそろ世に出したいな.

◇本日の総歩数=5109歩[うち「しっかり歩数」=1029歩/10分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/−0.4%.


14 juli 2006(金) ※ 明け方は熱帯ミスト,夕方はスコール

◇午前4時半起床.熱帯温室のミストのように遠景が霧で煙っている.気温25.3度.昨日に続いてまたも熱帯夜.とろける勤労意欲.しだいに晴れ間が広がる.午前8時半には気温が早くも28.8度に達する.当然,真夏日になるにちがいない.

 今をときめくアイス・バーならぬ,“アイス研究室”を夢想してしまう.あるいは,夏場だけどこか緯度か標高の高いところに避暑用アネックスをつくるか.

◇午前のこまごま —— ブツが昨日着弾したので,引き続き献本リスト第三弾をつくって,音羽に返信する./ 来週以降の出張届やら年休届やらを出さないといけない.未了./ 進化学会の新入会員が続々と.またまた溜め込んでしまう.講演要旨の登録締切は明日(15日)なので,心当たりのある方はお忘れなく.→大会サイト.※あ,ぼくもまだ書いてへん.

◇東京大学出版会から献本(いつもありがとうございます) —— 高槻成紀『シカの生態誌』(2006年6月22日刊行,東京大学出版会[ナチュラルヒストリーシリーズ], ISBN:4-13-060187-3→目次).ほとんど500ページもあろうかという大著.シカ,シカ,シカ.

◇正午の気温は「33.5度」だ.ううぬ.歩き読みにふさわしい外気温ではもはやない.こんな炎天下じゃ読めないって.もはや致死的.でも歩くだけは歩いて,当然の帰結としてへばる.もうぐたぐた.

◇午後1時半から2時20分まで,〈文化系統学〉セミナー第20回目.Chapter 9「Phylogeography of archaeological populations: A case study from Rapa Nui (Easter Island)」(John V. Dudgeon)を読了する(pp. 138-145).イースター島の人口動態とその歴史を,集団遺伝学とコアレッセント理論の両方から分析する.著者は,分子系統に基づくコアレッセント理論だけでは解決できない問題があって,それに対しては従来的な集団遺伝学によるアプローチが今でもなお有効だろうと結論する.

◇午後2時半の外気温は実に「35.9度」を指している.※ワタシはもう死んでいる…….

◇進化学会の大会サイトからオンラインで参加申込と講演要旨の登録をすませ,関係者に写しを転送した.8月30日(水)19:30〜21:30に開催される公募式シンポジウム〈哲学はなぜ進化学の問題になるのか:生物学の哲学の多様な展開〉の他の演者のみなさんもお忘れなく.

 あ,参加費の振り込みをしないと.忘れないうちに振込用紙だけは記入しておく.

◇延々と続く進化学会新入会員の列.ありがたくも雑用は増える.

◇3時過ぎに一瞬だけ通り雨が降ったものの,またかんかん照りの空に戻る.と思ったら,南の方角からいかにも兇悪そうな黒さの雷雲が湧き上がり,みるみるうちに外は暗くなって,午後4時過ぎに強烈な雷雨が降りだした.ちょうど駐車場に向かう途中だったのだが,生暖かいスコールの様相.ざあざあと降り続いて,午後6時頃やっとあがった.※トロピカルなつくば.

◇“テポドンたち”の着弾速報 —— 今週に入ってから,本家の“テポドン”に隠れて,こっそり音羽発の“プチ・テポドン”を全国数十カ所に向けて発射している(来週は国外に向けて発射しようと思う).今日になって“被害者”の方々からお礼のメールをいただいたり,ウェブ日記での言及を拝見したりする.すでに上州を含む関東一円には到達しているらしい.20日の公式発売日よりもこんなに早く着弾するとは思わなかった.『系統樹思考の世界』は,オンライン書店でもやっと購入できるようになったみたいだ(→ bk1amazon).

◇本日の総歩数=13860歩[うち「しっかり歩数」=9401歩/82分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.2%.


13 juli 2006(木) ※ 「着弾」:百聞は一見に如かず

◇午前4時半起床.曇り.気温24.3度.寝苦しい夜だった.

◇早朝のこまごま —— 多忙どうしの予定の調整はなかなかたいへん.進化学会の学会賞選考委員会の日程と時間帯がやっと確定した(7月26日午後3時〜,都内某所にて).遠方から来る委員に連絡して,宿泊の有無について確認する./ 出版契約書のうち1通を音羽に返送完了.

◇高温高湿度の中,昼に自宅にいったん戻ったら,『系統樹思考の世界』の見本刷10冊が宅急便で届いていた.いつものことだが,自分の本に初めて「触れる」というのは達成感を高揚させてくれる.四連符でも銅鑼でもハンマーでも,エンディングが過ぎれば,あとは極楽あるのみだ.

 さっそく本文をざっと見て,まだ残っていた“蟲”たちをすかさず捕捉する.※近日中に,本書のサポート・ページをつくる予定ですので,バグを発見された読者のみなさんはぜひお知らせください.

←書店で本書をお見かけの際は,カバージャケットのウラにご注目を! —— 本書のカバージャケットのウラ側には〈セフィロトの樹〉が大きくプリントされている.このカバージャケットは,オモテ・ウラが「リバーシブル」に使えるのが特長だ.現代新書が,杉浦康平デザインによるあのクリーム色の表紙を卒業して以来,新しいカバージャケットのシリーズになってからは初めての試みだそうだ.『系統樹思考の世界』のオモテ側はダークグリーン(黒緑)の色調だが,新デザインがいまいちお気に召さない場合は.ぜひカバージャケットを裏返しにして巻いてみて下さい.

カバージャケットの折り返しの部分には,〈セフィロトの樹〉についての説明文が書き込まれていて,リバースでまきつけると,ちょうど具合よく読めるようにデザインされています.→

 「本文よりもカバージャケットを」というのは著者としては大きな声では言えないのだが,こういう試みがこれからどの程度受け入れられていくのかは気になるところだ.※すでに「2ch」には,この件について長いスレ〈講談社現代新書の装丁変更について〉が立っていることだし.

 この現代新書はところどころ細かい活字で組まれたページがあるが,pp.152-153 の見開きに印刷されている〈現代体系学曼荼羅〉は,きっと“たくましい視力”を読者に要求するにちがいない.

◇晴れわたる午後3時の気温は32.7度.梅雨前線はどこへ行ってしまったんだっ?(暑すぎて死む)

◇午後のこまごま —— 駒場の殿から電話あり.進化学に関する辞典の編集について.一方は,すでに走りはじめているようだが,もう一方の話は初めて知りました.後者の企画に加わることになりそう.

◇蒸し暑さの残る夕方に小雨がぱらついて,さらに不快になる.しかし,すぐにあがって西空には夕焼けが.

◇夜は,ノバホールでタンゴ.バンドネオンの生演奏を聴くのはひょっとして初めてかも.

◇本日の総歩数=7880歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/0.0%.


12 juli 2006(水) ※ 末尾の四連符は出版契約

◇未明に目が覚めて,顔を洗い,さて活動開始と時計を見たら午前3時だった.ううむ,さすがに早過ぎるので,二度寝する.次に目が覚めたのが午前5時.これじゃあ寝過ごしだ.曇りときどき晴れ.気温24.5度.昨日よりさらに蒸し暑い.熱帯夜で熟睡できなかったので,変な時刻に目覚めたのかもしれない.

 しばらくして小雨が降り出す.湿度は十分過ぎるって.

◇朝のこまごま —— 進化学会の新規入会者がここ数日「たば」になってやってくる.気を抜くと Qshinka の登録作業がすぐに停滞する.今朝も20名ほどのアドレスを追加完了./ほか,転載情報などの処理も完了./所内の「業績評価検討委員会」の委員になれという“天の声”(というか3階からのお達し)が聞こえてきた.7〜9月にかけて委員会を開くそうだ.※でも,ワタシ,この期間は所内にほとんど実在しない可能性が大ですが./進化学会の学会賞応募に関する問合せあり.

◇とても蒸し暑い昼休みの歩き読み —— 岡崎武志『気まぐれ古書店紀行』(2006年2月10日刊行,工作舎,ISBN:4-87502-391-X)を50ページあまり.古本紀行文.曇りときどき晴れ,気温27度台.不快度きわめて高し.

◇『系統樹思考の世界』の献本リスト第2弾を音羽に送る.

◇夕方のこまごま —— 進化学会関連:学会賞選考委員会の日時決定.委員の都合を問い合わせて,日程の擦り合わせをする.応募締切は20日なので,今月中に開催しないといけない.それぞれに多忙な選考委員の予定の隙間にたった1日だけ「空白日」があることが判明したのは幸いだった.ということで,7月26日に開催決定.あとは時間帯を決めるだけだ./ついでに,予算案の立案もこの日の別の時間帯にすませられれば一石二鳥.

◇最後の最後に「出版契約書」 —— 帰宅したら音羽から「出版契約書」が届いていた.署名捺印して1部を返送しないといけない.気分としてはモーリス・ラヴェル作〈ラ・ヴァルス〉の最後の四連符を叩いた心地.緩急自在,紆余曲折がいくらあっても,これですべておしまいね.

 形式的には,これで「本を出す」取り決めがすんだわけで,農環研にもやっと届け出ができる.印税収入に関する書類を出すときに,契約書がないことには示しがつかない.「事前」に出せと言われても,題名は決まっていない,本体価格は未定,ページ数もわからない,印刷部数も不確定,もちろんいつ出版されるかは神のみぞ知る−−では何ひとつ情報がないに等しい.だから,店頭に並ぶ十日前に「事前届け出」をすればそれでいいにちがいない(と勝手に解釈する).

—— 明日の午前中に見本刷りが届くことになっている.※1日も早く見たい向きは農環研へゴーゴーゴー.

◇本日の総歩数=13227歩[うち「しっかり歩数」=7695歩/68分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/0.0%.


11 juli 2006(火) ※ ほぼ熱帯夜だったかも

◇午前4時半起床.曇り.気温24.0度.早朝からもう蒸し暑い.

◇午前の仕事は見学者対応 —— 予定されていた東大(農学部第6類)の学生見学につきあう.午前9時に会議室をセットする.9時半に学生さんの到着.10人あまり(引率のセンセはたいへんです).会議室で理事長の挨拶と,それに続くエコロジカル・セイフティー学講座の紹介が1時間ほど.その後,農環研内の見学に移る.まずは,土壌モノリス館(初めて見たぞ).続いて,組換え体植物の野外実験圃場の紹介.最後に,とても“お金”がかかっていそうな植物群落の測定装置(ライシメーター).ここで,お昼になったので,学生さんたちを農環研食堂に誘導.ここで御役御免.※学生さんたちは,午後は農林団地内の別の研究所をまわる予定が入っている.夕方には懇親会で再び会う.

 とても不快指数の高い日だ.

◇午後1時半から1時間ほど,〈形態測定学講義〉の第15回目.今日から次の第6章「The thin-plate spline : visualizing shape change as a deformation」に入る(pp. 129-134).薄板スプラインによる形態変形の記述の詳細に入る以前に,ものの考え方をことばで説明する.アフィン的な均一変形(uniform component)と非アフィン的な非均一変形(non-uniform component)の“和”として全変形を記述するというのが,本章の目的である.非均一変形のみによって全変形を説明することは不可能ではないが,それは最節約的ではない説明に陥ると著者は言う(p. 134).すなわち,形態の仮想変形においては,ある「共通要因」としての均一変形と「個別要因」としての非均一変形という性格付けが可能になる.

◇15時から,Hennig XXV での発表の打合せ.今回はポスター発表なので,宣伝かたがた内容を詰める必要がある.共同発表者との連絡の必要あり.

◇夕方のこまごま(新たな“津波”の予感) —— オーム社から統計本の目次構成に関する打合せの申し入れ.前に送った目次案をベースにして社内で検討してもらったようだ.来週水曜に出向く./ 海游舎から進捗探針電話.(汗……)

◇『系統樹思考の世界』の見本刷は明日できるとのこと.献本リストをあわててつくる.20日に書店店頭に並んでからでは「二重買い」される可能性があるので,その日に相手方に届くようにしないといけない.※心当たりのある方は20日に店頭でブツを見かけても衝動買いなさらないよーに.式鬼がもう放たれている可能性があるので.

◇18時から筑波事務所の食堂で懇親会.最近の「進振り」の事情をいろいろ聞く.物理学科の底が抜けたという話はすでに有名だが,薬学部がおそるべき高得点化しているとはまったく知らなかった.農学部の場合はそういう競争にはもともと無縁で,農学部二号館が安定トップらしい(昔からそうだった).理学部二号館もそこそこに高値安定とか.こういう情報は当事者から直接もらうにかぎる.午後7時半に散会.

◇音羽からの連絡 —— 『系統樹思考の世界』の見本刷は,明日発射され,自宅に着弾することになった.

◇本日の総歩数=11457歩[うち「しっかり歩数」=957歩/10分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=−0.3kg/−0.4%.


10 juli 2006(月) ※ いきなり“二人”やってくる

◇午前4時起床.小雨.気温22.3度.

 研究所にて,「妖術」を駆使して“トゥーランドット姫”のクローンを400ページあまり造る.明け方にアヤシイことをしてはいけません.>ぼく.クローン親は速攻で京島にお帰りいただく(とど君,グラッチエ).

◇明日は,東大からの学生見学者が来るので,その段取りを打ち合わせる.所内紹介と見学はまあいいとして,エコロジカル・セイフティー講座についてのプレゼンを分担しなければならない.説明スライドは,先日の東大での大学院ガイダンスで用いたものをそのまま転用しよう.

◇昼休みの難行苦行歩き読み.とにかく蒸し暑かった —— ウィリアム・ブレイズ『書物の敵』(2004年10月25日刊行,八坂書房,ISBN:4-89694-849-1→目次)を最後まで読了.本論は170ページで終わるが,それに続く訳者・高橋勇による「『書物の敵』解題」(pp. 175-202)と監修者・高宮利行による「書物の敵あれこれ」(pp. 203-219)がとても informative だ.ブレイズの『書物の敵』は有名な本だが,今回が初の「完訳」だとは知らなかった.この本の翻案書である庄司泉水『書物の敵』はだいぶ前に講談社学術文庫に入っていたのを読んだ記憶である.ブレイズのシミ(紙魚)へのこだわりにはただならぬ気迫を感じた.この観察力は昆虫学者に通じるものがあるのではないか.

◇午後1時45分から1時間ほど,Alan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読(第20回目).Chapter 4:「Characteristic Functions」の続き(pp. 146-153).特性関数に関する「第2極限定理」.ううむ,意識がときどき遠のいたり,リミット酔い,あるいは漸近失調ともいう.

◇これまでさんざん探してなかったのに.あるときはいきなりまとめておいでになる…….今朝未明にせっかく“おひとり”用意したと思ったのに.

←※「あなたはだ〜れ?」
   (わかった方は教えてください.)


午後の便でドイツの古書店からやっと届いた〈トゥーランドット〉のフル・スコア:Giacomo Puccini『Turandot : dramma lirico in tre atti e cinque quadri』(1958年刊行,Ricordi).ハードカバー版だ.日本に上陸してから,方々を行幸したごようすで,やっとつくばにおいでになった.

 この総譜は,abebooks.com を通じて,ベルリンの〈Umbras Kuriositätenkabinett〉から取り寄せたのだが,説明には「Starke Gebrauchsspuren. Zahlreiche Anstreichungen.」と記されていた.ふつうの古書であれば,前所有者の書き込みがあまりに多すぎるようではきっと売り物にはならなかっただろう.しかし,書き込みが多い総譜というのは可能性はひとつしかない.つまり,それは指揮者が実際の演奏に用いた総譜にちがいないということだ.

 開封して中を覗いてみると,まさにその通り.いやこれはすごいです.変拍子が多いこの曲のタクトの振り方からはじまって,歌とオケの演奏上の注意点,変更点.そして譜面の印刷ミスにいたるまでまで,細かい書き込みがドイツ語で記されている.“すっぴん”(というか新品)の総譜に慣れている眼には,この濃密な書き込みによる総譜のパーソナライズは一瞬たじろがせるものがある.

 それにしても,この総譜の前所有者はいったい誰だったのだろう? サインがあるのだが読めない(……).何度か試行錯誤して調べてみてもヒットする情報断片もない.どなたか心当たりのある人はいないかなあ.

—— ということで,けっきょく1日にして〈姫君〉が“お二人”も降臨したことになる.並べておくと祟られそうなので,とりあえずは自宅と職場に別れていただくことにしよう.

◇本日の総歩数=15829歩[うち「しっかり歩数」=10450歩/93分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/+0.1%.


9 juli 2006(日) ※ 新宿トゥーランドット練習日(2回目)

◇午前5時起き.曇りときどき小雨.気温21.7度.蒸し暑い.

 研究所にてマレット選び.今日は朝から新宿に行く予定だったのだが,所用で午前中は土浦に向かう.正午前にいったん帰宅.雨がぽつぽつと降ってみたり,晴れてみたり.

◇12時41分の TX 快速で東京へ.新御徒町で大江戸線に乗り換えて,東新宿に着いたのは1時半のこと.朝からもう始まっていた新宿文化センターでの〈トゥーランドット〉練習はすでに午後の部に入っている.たまに鍵盤に触ると練習不足が露呈してしまう(譜読みだけだはダメかな).今回の本番では,シロフォンとバス・シロフォンをひとりでやるのだが,とてもきびしい箇所が第1幕にある.

◇本番が1ヶ月半後に迫ってきたので,当日の舞台設営とオケの配置についての話が出た.新宿文化センターのオケ・ピットは小さいので,どう考えても必要な人員をピット内に収容することはムリらしい.そこで,舞台の“そで”にはみ出して楽器をセットするということになる.大きなスペースをとる打族に白羽の矢が立つのは当然予想されることだ.ティンパニーを“そで”に上げるわけにはいかないので(ニールセンの〈不滅〉じゃあるまいし),ここはやっぱり見映えのするチャイニーズ・ゴングの12個セットをフレームごと“そで”に乗せるべきだろう.と思ったら,「じゃ,ついでに Xilofono も“そで”の上で〜」ということになってきた.

当日レンタルで借出すシロフォンもほぼ決まった.通常の4オクターヴ(C28〜C76)のマリンバがあれば,〈トゥーランドット〉のシロフォンとバス・シロフォンは音域的にカバーできる.ただ,レンタルできるレパートリーの中に適当なのがなかったので,シロリンバ(xylorimba)の5オクターヴのを借りてもらうことにした(音域は C28〜C88).音質がちょっと心配だけど,ブツを見ないことには話にならないし.マレットの選択も変わってくるかも.

 いずれにせよ,5オクターヴ楽器だと間口が2メートル半くらいになるだろうから,もうピットには入らないはず.自動的に“そで”送りか.

 新宿文化センターにパイプオルガンが設置されたとはぜんぜん知らなかった.ぼくらが使っていた頃(20年以上前)は,そんなものはなかったぞ.いずれにせよ,これで第2幕のフィナーレは盛大になるかも.※使うかどうかわからないけど.

◇第3幕を終えて,また第1幕に戻って,午後4時半過ぎにオーケストラ練習は終わった.そのまま,東新宿から逆コースでつくばに直帰.

◇繰り返しふられ続けてきたが,もう時間がなくなってきたので,京島のトゥーランドット姫に一時的につくばにお輿入れしていただくことになった.一晩でお帰りになるが,丁重にもてなさないと.>とど君,ありがとね.メモ:隅田川花火大会は7月29日(土).

◇つくばに帰り着いたのは午後6時過ぎ.まだ雨がぽつぽつ降っている.街路樹からニイニイゼミの合唱が聞こえてきた.蝉の鳴き声を耳にするのは今年初めてだ.

◇車中読書 —— 鹿島徹『可能性としての歴史:越境する物語り理論』(2006年6月28日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-022465-4)の第1章「物語り論的歴史理解の可能性のために」を読む.50ページほど.アーサー・C・ダントやアブダクションに言及するあたりはいいのだが,カール・G・ヘンペルをここでもちだすなんてどうかしてる.自然科学における「一般法則」を歴史学にとってつごうがいいように(すわりがいいように),勝手に読み替えてはいけない.カルロ・ギンズブルグは文中では言及されているのに,文献としては引用されていない.でも,全般的にはイントロとしてなかなか informative な内容だと思う.勉強になります.

◇夜,“疲労”が服を着ている状態に陥る.タテになったりヨコになったり.寝たり起きたり.

◇本日の総歩数=13169歩[うち「しっかり歩数」=3971歩/36分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/−0.1%.


8 juli 2006(土) ※ またまた引き蘢る週末

◇午前4時半にいったん目覚めたが,場所を移して二度寝する.午前6時に再度起床し,1時間ほど自宅周辺を徘徊する.今日も曇ってやや蒸し暑い空模様だ.

 備忘メモ:天久保の〈Brotzeit〉は「7月31日〜8月16日」の期間は夏休みとのこと.

◇さっそく注文 —— 岡本真『これからホームページをつくる研究者のために:ウェブから学術情報を発信する実践ガイド』(2006年7月下旬刊行予定,築地書館,ISBN:480671335X→サポート・ブログ).岡本さんのメルマガ読者宛てに,事前割引予約のメールが届いたので,さっそく注文する.

◇しだいに晴れて暑くなる.

◇鹿島徹『可能性としての歴史:越境する物語り理論』(2006年6月28日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-022465-4)がやってくる.目次をぱらぱらブラウズするかぎり,内容的には悪くないかもしれない.

◇古びた html ファイルの書き換え —— 自分の新刊が間もなく出るので,このついでに〈pagina〉の玄関ページの掃除をする.

 初めて自分のサイトをつくった頃は(2003年),html の文法をよく知らなかったので(とくにcssは無知同然),Adobe InDesign でとりあえず文書をつくって,html を出力するという迂遠なやり方をしていた.その後,ある程度の慣れが出てきてからは,自分で html ファイルをつくるようになったのだが,最初期の「index.html」は今の今まで“祖先形”のまま放置していた.案内板しか掲げていないので,とくに書き換えなければというプレッシャーもなかったからだ.

 しかし,今回,あらためて InDesign が出してくれた html をチェックしてみると,たったあれだけのページに何枚ものレイヤーが設定され(各イメージごとにレイヤーが別々),それぞれが独立なので手がつけられない.とにかく,のたうつ html 文を短くしないとどうしようもない.〈ラ・ボエーム〉のロドルフォだって「短いことは美徳だ(“La brevità, gran pregio!”)」と第1幕で唄っているではないか.さっそく,やりませう.

 ということで,あれこれいじっているうちに,もう夕方になってしまった.確かに html は短くなったものの,時間はとても長くかかってしまったぞ.これじゃ,悪徳だ.外観はまったく変わっていないが,これで少しはラクにいじれるようになった.

◇〈人間犬〉になる日 —— 7月21日(金)は朝から人間ドックに入る.ここのところ不摂生しているが,どーなることやら.

◇発見:Bloc Rhodia の「No. 13」は Q't の Loft にあった.

◇あ,やりますやります.と言っているうちに,もう夜.…….

◇本日の総歩数=12559歩[うち「しっかり歩数」=9004歩/83分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.9kg/−0.5%.


7 juli 2006(金) ※ たなばたは活字とともに

◇午前4時半に目が覚める.曇り.夜中に雨が降ったようだが,もうあがっている.気温21.7度.

◇いったん「下山」して,ふたたび「登山」するというのは,それなりに決意ときっかけが必要だ.

◇近刊情報 —— メルマガ〈ACADEMIC RESOURCE GUIDE〉(No. 248,2006年7月6日発行)に,岡本真さんの近著の情報が載っている:岡本真『これからホームページをつくる研究者のために:ウェブから学術情報を発信する実践ガイド』(2006年7月下旬刊行予定,築地書館,ISBN:480671335X).もうすぐですね.待ちます待ちます.

◇『系統樹思考の世界』のサポート・サイトをつくろうかと考え中.

◇午後1時半から1時間あまり,〈文化系統学〉セミナー第19回目.Chapter 9「Phylogeography of archaeological populations: A case study from Rapa Nui (Easter Island)」(John V. Dudgeon)の続きを少しばかり(pp. 134-137).イースター島の過去に関するさまざまなデータ(民族誌・生物学・考古学)を概観する.そして,集団遺伝学とコアレセント理論を用いて人口動態と地理との関わりを解析しようとする.この島のたどってきた歴史の詳細は,ジャレド・ダイアモンド『文明崩壊:滅亡と存続の命運を分けるもの』(上・下,2005年12月28日刊行,草思社,ISBN:4794214642 [上巻] / ISBN:4794214650 [下巻]→目次)の第2章「イースターに黄昏が訪れるとき」を読んだ方がきっとわかりやすいだろう.

◇午後のこまごま —— すべて進化学会関連で,予算打合せのための会合のアレンジ.もっと時間的に余裕がないのは,学会賞選考委員会だ.8月上旬の開催でいいかと思ったら,もう少し早い方がよろしかろうとの駒場からの声.ということは,20日に応募を締め切ってから月末までの間に選考委員会を開くということになる.今月下旬に開催する方向で,選考委員の予定を訊かないと.忙しい忙しい(はず).8月になると,ぼくもいたりいなかったりすることが多いので,やるべきことは今月中にケリをつけたい.

◇丸善の新刊カタログ(A〜D:2006年7月号)からピックアップ —— Robert Whittaker and Jose Maria Fernandez-Palacios『Island Biogeography : Ecology, Evolution, and Conservation, Second Edition』(2007年1月刊行予定,Oxford University Press,ISBN:0-19-856611-5 [hardcover] / ISBN:0-19-856612-3 [paperback]→版元ページ).Whittaker って,あの“ホイッタカー”ですよね? まだ存命なの?(と失礼なことを口走る)/ Jane Buikstra and L. Beck (eds.)『Bioarchaeology : The Contextual Analysis of Human Remains』(2007年1月刊行予定,Academic Press,ISBN:0-12-369541-4→版元ページ).いまセミナーで読んでいる Carl P. Lipo et al. (eds.)『Mapping Our Ancestors: Phylogenetic Approaches in Anthropology and Prehistory』(2005年12月,Transaction Publishers,ISBN:0-202-30750-6 [hbk] / ISBN:0-202-30751-4 [pbk]→目次)にも関係する「bioarchaeology」の論文集.

◇今日は,いまひとつ緊張感に欠けた生活リズムで,よろしくないな.だらっとしているわけでは必ずしもないのだが,BGM が Largo でして…….

◇〈The Systematics Association〉からの近刊 —— Malte C. Ebach and R. S. Tangney (eds.)『Biogeography in a Changing World』(2006年10月刊行予定,CRC Press[Systematics Association Special Volumes 70],ISBN:0849380383)/ Trevor R. Hodkinson and John AN Parnell『Reconstructing the Tree of Life: Taxonomy and Systematics of Species Rich Taxa』(2006年11月刊行予定,CRC Press[Systematics Association Special Volumes],ISBN:0849395798)/ Quentin D. Wheeler (ed.)『The New Taxonomy』(2007年4月刊行予定,CRC Press[Systematics Association Special Volumes],ISBN:0849390885).※いずれも論文集だが,執筆陣を確認しないことには,コワくて発注できない.

◇夕方5時には研究所を出てしまう.これからどんどん暑くなるとともに,西日が許容限度を越える5時が帰宅時刻になる.しかし,昼休みの時間変更とともに,近い将来,勤務時間終了の「定時」は午後5時半になるらしい.フレックス・タイムの時間帯もそれに合わせてきっと変更されるのだろう.

◇夜は,パース伝を少し読み進んだり,タテになったり,ヨコになったりする.

 週末はカマジンの自己組織化本の翻訳に取りかからないといけない.こちらもタイム・リミットが近づきつつあるので.

◇本日の総歩数=5231歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.5kg/+1.5%.


6 juli 2006(木) ※ つかの間の“凪”の読みもの

◇午前4時半起床.雨.南風.20.2度.

◇早朝の研究所にて —— 昨日送られてきた講談社『』のゲラpdfに加筆して,メールで音羽に返信する.大きな修正箇所はなし.刷り上がりでちょうど2ページになる.

◇ふっと“凪”に入った心地.※台風の目ともいうが……(冷汗).

◇午前のこまごま —— 形態測定学の研究者である Pete E. Lestrel さんが8月25日に農林団地で公開セミナーを開催する.楕円フーリエ分析などの手法の応用について.詳細は未定./ 来週の東大の学生見学会について連絡あり.宿泊者数の変更.あとで事務に通知する./ 蜂須賀正子さんから手紙.いくつか資料など.ありがとうございます.

◇講談社から連絡あり.講談社『本』の8月号は,現代新書と同じ20日発売とのこと.

◇空がだんだん明るくなってきた.昼の気温は24.7度.夏日ではないが蒸し暑いことに変わりはない.歩き読む —— ウィリアム・ブレイズ『書物の敵』(2004年10月25日刊行,八坂書房,ISBN:4-89694-849-1)を第5章まで100ページ弱.火・水・ガス・埃・無知,etc. ……「敵」はいたるところにあり.

◇午後のこまごま —— 東大農学部の居室整備についての打合せ.図面の上ではやっと“居住空間”らしくなってきた.

◇夜の読書 —— ジョゼフ・ブレント著(有馬道子訳)『パースの生涯』(2004年12月5日刊行,新書館,ISBN:4403120172→目次).ずっと放置していたのだが,ぼちぼちと.C. S. Peirce というのは相当に“錯綜”した生涯を送ったということなのだろう.本書を除いてはまとまった伝記らしいものはないそうだ.

 こんなくだりがある:

事実は自ら証しはしない.それは人生の謎めいた残骸で,どのように扱ったらよいかよくわからないものである.一世紀以上前にパースが彼の説明モデルにおいて指摘したように,事実は,演繹的に意味され次に帰納的に証明されることになる推量,憶測,仮説の可謬的な声によってのみ物語られる.それがいかにつまらないあるいは重要な歴史であろうとも,いかなる歴史をも我々が求める説明を指し示す仮説を何とかしてつくり出さないかぎり,意味を持つことはない.歴史著述家の行なうことの多くは,パースが憑かれたようにその人生をかけて研究した主として仮説的な論理によって記述されるのである.(pp. 40-41)

 とんでもない訳文ではあるが(苦痛だ),背後にある原文のメッセージ性はとても高い.

◇本日の総歩数=9934歩[うち「しっかり歩数」=5296歩/47分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/−0.9%.


5 juli 2006(水) ※ 本の呪縛〜四ッ谷の結界に入る

◇午前4時起床.夜半に雨が降ったようだが,明け方は曇り.北風が強い.気温20.2度.湿度高し.

◇早朝のこまごま —— 進化学会大会のシンポジウム講演者への連絡.>N部くん,よろしく.

◇今日は,進化学会の会計監査があるので,東京に出張.ついでに四ッ谷にお詣りする.

◇もう小雨が降り出してきた.9時41分の TX 快速で東京へ.丸善Oazoで洋書バーゲン.とくに意欲はないので,辞書を2冊ゲット —— Charmant Theodore『Haitian Creole-English / English-Creole Dictionary』(1995年刊行,Hippocrene Books,ISBN:0-7818-0275-X).ハイチのクレオール語の語彙集.以前,ニューヨークに行ったとき,タクシーのドライバーどうしが窓越しに会話していたのがクレオール語だった./ Jan Kromhout『Afrikaans-English / English-Afrikaans Dictionary』(1997年刊行,,Hippocrene Books,ISBN:0-7818-0846-4).南アフリカのアフリカーンス語の辞書.書かれてある文を見ると,オランダ語の“遠隔方言”みたいな感じ.オランダ語の知識があれば,何とかなるのかしら.

 同じフロアで〈Rhodia〉のブロック・メモ「No. 14」を見つける.サイズ的には各辺がわずかに小さい「No. 13」がベストなのだが在庫がなかった.まあ試しにということで.あとで Itoya で探してみよう.

 やはり同じフロアでの新刊情報 —— Viktor A. Albert (ed.)『Parsimony, Phylogeny, and Genomics』(2006年6月刊行,Oxford University Press, ISBN:0-19-929730-4[paperback]).昨年,ハードカバー版(ISBN:0-19-856493-7→紹介・目次)が出たばかりなのに,もうペーパーバックになるとは./ Atocha Aliseda『Abductive Reasoning : Logical Investigations into Discovery and Explanation』(2006年4月17日刊行,Springer Verlag[Synthese Library 330],ISBN:1-4020-3906-9).おもしろいテーマなのだが,この本,めっちゃ高い.

◇久しぶりに「早矢仕ライス」を食べてから,飯田橋へ移動.雨足が強くなってきた.何度も来ているはずなのに,またまた迷ってしまう(UEDAビルが見つからん).三往復してクバプロにやっとたどり着いたときには,もう12時半をまわっていた.動員されたメンバーがそろったのは1時前のこと.会計監査作業の傍らで決算と予算について討議する.〈殿〉ご多忙のようで,またまた駒場に戻らないとダメらしい.今日は決算のみ作業をすませ,あとは後日ということになった.

 クバプロでいただいた本 —— 志村令郎『私と分子生物学:隠居のたわごと』(2004年6月5日刊行,クバプロ,ISBN:4-87805-037-3)./ 「脳の世紀」推進会議(編)『脳を知る・創る・守る・育む(8)』(2006年6月15日刊行,クバプロ,ISBN:4-87805-074-8).

◇予定よりも早めに終わったので,神保町までてくてく歩く.雨はまだぽつぽつと降って,蒸し暑い.〈さぼうる〉にてちょっと休憩.

◇書肆アクセスにて実物に遭遇する —— 清水誠『西フリジア語文法:現代北海ゲルマン語の体系的構造記述』(2006年2月28日刊行,北海道大学出版会,ISBN:4-8329-6621-9).800ページを越える大著.とても魅力的なのだが(価格はゴージャス!),こんなのまで買い込んだらオシマイよ.>ぼく.

◇東京堂書店の筋向かいにある同じ東京堂書店の〈ふくろう店〉を探書する.東方出版の2冊が大特価になっていた —— 社団法人日本缶詰協会(監修)『缶詰ラベル博物館』(2002年6月11日刊行,東方出版,ISBN:4-88591-776-X)/ 大隅浩(監修)『ボタン博物館』(2002年7月15日刊行,東方出版,ISBN:4-88591-790-5).

 もう限界かもしれないぞ.

◇午後5時に,四ッ谷駅にてN部さんと落ち合う.まずは,ヒソカに治外法権な租界と化しつつある上智大学に向かう.このキャンパスもどんどん新しいビルが立ちつつあり,かつてのたたずまいの記憶はもう薄れつつある.しかし,いわくありげな一角とか,由緒がにじみ出る場所はまだまだあるそうだ.※カタコンブってまじであるんですか?

 講義を終えた大学生たちの大波に逆らって図書館に入る.目指すは雲上の8階にある「中世思想研究所」だ.租界の中の結界.生きて戻れるのだろうか.一足中に踏み入れればそこはもう「書物地獄」だった.これはちょっと太刀打ちしようなどという意欲は消え去りますなあ.タテヨコあらゆる方向に本が堆積している.『中世思想原典集成』の各巻に圧縮されている〈もの〉たちを解凍すれば,きっとこのような本の海になるのだろう.

 オッカムはと探せば全集を含めて,山のようなラテン語本の連なりに遭遇し,ドゥンス・スコトゥスもいっぱい,トマス・アクィナスにいたっては本棚からはみ出る大判の書物が堆積している.これで「鎖」でもついていたらワタクシは尻尾を巻いて逃げ出しそう.他にも,まだカットされていないフランス装とか,ギリシャ語をラテン語訳してある本とか.人影の絶えた夜中には,宗派間の“書物戦争”が大々的に繰り広げられているにちがいない.(こわいこわい)

 これだけの蒐書の管理は並大抵ではないだろう.ヨコに積まれた本の向こうの下層にはいったい何が埋もれているのだろうか.呪文を唱えれば,ふうっと浮き上がってきそうな気配がある.

◇朝から本に憑かれていることは明らかで,すでにリュックサックの中は10キロ以上もの本が詰まっている.これを背負って歩くのは山登りの訓練みたいだ.

◇夕方6時に,四ッ谷の〈萬屋おかげさん〉にそろりと入る.おお,これは,なかなか…….久しぶりの「十四代」や「田酒」など.肴もいけます.店を出て,道路を挟んだところにあるアイリッシュ・バー〈Three Thread〉にて生ギネスとフィッシュ&チップス.

 N部さん,どーもありがとうございました.で,進化学会シンポの打合せはあんなもんでいいですか?

◇つくばに帰り着いたら,もう午後11時を過ぎていた.くそ重い,蒸し暑い,ねむたいの三点セットにはあらがえず.

◇本日の総歩数=18780歩[うち「しっかり歩数」=5982歩/57分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.1kg/−0.3%.


4 juli 2006(火) ※ ついでにエッセイをひねりだす

◇午前5時起床.前夜が遅かったので寝過ごしてしまった.晴れ上がる.気温21.0度.梅雨はいったいどーなってしまったのだろう.九州では豪雨が続いているのに,関東はもう梅雨明けしたかのようだ.今日も蒸し暑いにちがいない.

 早朝の農林団地入り口で衝突事故を傍観する(前方大破のジープが道を塞いでいた).国道408号と農林団地とのT字路は,少なくとも未明から早朝にかけては「交通無法地帯」で信号があってなきがごとしなのが第一の問題だろう(マナー悪すぎっ).

◇新刊情報 —— 鹿島徹『可能性としての歴史:越境する物語り理論』(2006年6月28日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-022465-4).タイトルに惹かれるものが少しはあるが,ブツを見ないことには何とも言えない.

◇先日,急遽依頼された,講談社『』の原稿を書き始める.まだですまだです.

◇かんかん照りの昼休み.気温27度台の割には強い日射しのせいで暑く感じる.歩き読み本 —— 和田哲哉『文房具を楽しく使う[ノート・手帳編]』(2004年7月31日刊行,早川書房,ISBN:4-15-208582-7).読了.20年ほど前に“システム手帳”が日本で大流行したのは,景気がよかったからだそうだ.今では“バインダー手帳”と言わないと通じないのか(知らなかった).それにしても,〈Rhodia〉はえらい.

 高野台の〈パン工房ミューレ〉で,偶然 JICA のスタッフと出会う.数年ぶりに外地から帰ってきたそうだ.夏のオアハカ旅行の話をしたら,「オアハカ,最高です! 新婚旅行で行きました」とのコメント.そーですか,最高っすか.なるほど.

 脇道:〈つくば高野台info〉という情報サイトがあることを知った.あそこって,RIKENとJICA以外なにかあったっけという印象しかないのだが.

◇午後1時半から1時間あまり,〈形態測定学講義〉の第14回目.第5章「Superimposition methods」の続き(pp. 113-121).GLS-Procrustes superimposition 法とResistant-fit superimposition 法との比較.GLS はある任意に決められた基準形態との部分プロクラステス距離が最小になるように対象形態の位置決めをする.具体的には,重心へのセンタリングと重心サイズによるスケーリングをした上で,部分プロクラステス距離を最小にする回転角を計算する.この時点で基準形態と対象形態との“平均形態”を再計算し,それを新しい基準形態として別の対象形態との比較に移る.この作業をすべての形態について行なうことで,最終的に“平均形状”が求まる.得られた到達値がグローバルな最適解なのかどうかわからないが,いずれにせよ逐次的に計算を積み重ねることで解に到達できることは確実だ.一方,resistant-fit 法は,はずれ値(outlier)の効果を軽減するのに役立つと著者は考えている.平均ではなくメディアンを用いて平均形状を計算し,線形計画法(動的計画法?)を用いて数値的に最適配置を計算する.それぞれ一長一短がある.

◇午後3時に,『系統樹思考の世界』の差し替え図版のゲラがファクスで届く.問題なし.※これで完全に手を離れたことになる.

◇午後5時前に,『』の原稿(30字×64行=1920字)を書き上げる(「旅するサイエンティストたち」).メールで音羽に送信.8月号に載るのでしょうか?

◇北の風が吹き抜ける夜.

◇本日の総歩数=13560歩[うち「しっかり歩数」=8518歩/75分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/−0.2%.


3 juli 2006(月) ※ またまたドロナワなことで……

◇午前4時起き.北の風.曇り.気温22.3度.

◇朝のこまごま —— 研究所にて,遅れていたメーリングリスト関連の作業をする.月例アナウンスもさくさく流さないと./ 今週水曜の出張届を提出する./ 進化学会から事務連絡.五條堀孝さんと巌佐庸さんが AAAS の外国人名誉会員に選出されたとのこと(→AAAS広報).進化学・生態学関連では他に Ilkka Hanski もリストに入っている.

◇昼休み.曇り.気温28.7度.粘り着くような湿気が疎ましい.歩き読み本は,さわやかにステーショナリーおたく —— 和田哲哉『文房具を楽しく使う[ノート・手帳編]』(2004年7月31日刊行,早川書房,ISBN:4-15-208582-7).50ページほど読み進む.著者お薦めの〈Rhodia Pads〉はメモ用紙としてとても使い勝手がよさそうだが,「No. 13」は,よくよく見れば,ぼくが常用している A4 反古紙4分割「14.8cm×10.5cm」のメモ用紙と同じサイズではないか.どこかで見つけたら試してみよう.メモメモ.

 確かに,「ノート」にこだわりだすと深みにハマるかもしれない.かつて流行していた(過去形ではまずいか?)“システム手帳”の太いのを持ち歩いていたこともあった.しかし,あまりにかさばるので,退化に退化を重ねたあげく,〈Filofax〉のリフィル「Vertical Year Planner」のみを単独で持ち歩けばスケジュール管理の上で携帯性・機能性ともに十分だという結論に達した.Filofax のシステム手帳本体はどこかにしまい込んでしまって,もう見つからない.

 日々のメモ帳も試行錯誤を重ねた.いろんな“ノート”を試したあげく,まとまった内容を書き記すときには〈Lucky〉製の「White Superior Note」を使うようになった.銀座の〈Itoya〉でしか見たことがないので,東京に出たおりにはときどき何冊かまとめて買うようにしている.罫線のないパーフェクトな無地なので,とても気に入っている.

 しかし,さらに持ち歩きに便利な“メモ帳”となると意外に難しい.これまた〈Itoya〉特製の「Post-itケース(革)」に小さいサイズの「Post-it」をはさんでウエストポーチに放り込んであるが,これはいざというときの緊急避難用だ.ふだん使いの“メモ帳”は上にも書いたA4反古紙を四等分にカットしたもので,これを机の横にうずたかく積み上げてはどんどん使うようにしている.アタマで覚える気質ではないので,備忘には紙に覚えさせるのが一番だ.この dagboek を書くようになってからは,日常的なこまごましたことは,反古メモ用紙にまず書き留めて,あとでキーボード入力するよう心がけている.

◇あわてふためく —— 夕方5時までに統計関連学会シンポジウムの要旨を出せばいいんだろうと油断していたら,昼過ぎにオーガナイザーからメールがあり,とりまとめの時間がほしいので「午後3時までによろしく」とのこと.げげっ.あわてふためいた拍子に1時間半で1600字を書いて,速攻で返信する.この件はおしまい.ごめんなさい,ごめんなさい>オーガナイザーさま.※こういうことをしていてはイケナイのだけど…….

◇午後4時過ぎに雷がなり,雨がざーっと降り始める.しかし,1時間あまりであがってしまった.北風が涼しい.

◇午後6時過ぎ,『系統樹思考の世界:すべてはツリーとともに』の事前宣伝を関係しそうなメーリングリストに流す.目次にページ番号を追加した(→leeswijzer).

 夜,お代官さまから電話あり,最後の修正箇所の検討をする.本文数カ所と図1葉の差し替え.今晩,すべての作業を終えて,印刷所に入稿するとのこと.見本が届く前に,献本リストをつくらないと.

◇某出版社から「進化論の入門書を書きませんか?」とのオファーがあった.しかし,今後抱えることになる6冊 — うち1冊は20日に公刊されるのでカウントしないとしても,今年中の翻訳2冊,岩波の統計シリーズ,某新書, および統計本2冊— のことを考えると,これ以上はムリであると判断し,「ごめんなさい」メールを返信した.

 これまではずっと,出版社からのオファーがあってはじめて単行本を書く企画が立ち上がるという経験しかぼくにはない.お座敷がかかるうちが花なのよ,とは思うのだが,クローンも含めてそろそろくたびれはじめているので,ムリをさせるわけにはいかないのです.

◇北風がひゅうひゅうと吹きぬける.雷雲が通過して北からの寒気が入っているのだろう.しばらく吹かれた.

◇本日の総歩数=12835歩[うち「しっかり歩数」=7000歩/62分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.6kg/+1.1%.


2 juli 2006(日) ※ 天候不快な日曜日は引き蘢る

◇午前5時起床.薄曇り.北の風が吹く.のち,南風になる.朝から湿度がとても高い.

◇現代新書の件は「後始末モード」に入りつつある —— 刷り上がるまでの間に献本先リストをつくらないといけない.並行して,諸方面への宣伝もそろそろ始めようと思っている.著者割引での購入ももちろんできるが,体裁が新書なので「割引オトク感」はほとんどないだろう.むしろ,郵送料がかかって割高になってしまうことも危惧される.今月20日以降,『系統樹思考の世界:すべてはツリーとともに』の現物を書店で見かけたら手に取ってみてください(→願わくば,そのままレジへ直行されんことを).>潜在読者のみなさま.大手書店では「19日」に並ぶこともあるそうです.

 ほとんどの「新書」は700〜800円の価格帯に入るので,書籍としてはたいへん割安な出版物だそうだ.「400字詰にして200〜250枚」の分量の原稿があれば新書が1冊できる,という話をときどき耳にする.現代新書の場合,刷上がり1ページでは「39字×16行=624字/頁=1.56枚/頁」となる.すべてのページを字で埋め尽くしたと仮定して単純計算すると,200ページの新書ならば「1.56枚/頁×200頁=312枚」,300ページでは「1.56枚/頁×300頁=468枚」だ.けっして少ない分量とはいえない.もちろん,改行・余白のあけ方や図表の分量によって,実際の活字量はこれよりもかなり少なくなるだろう.

 ぼくの本の場合は,文献リストを縮小活字で組んだりして工夫しているので,300ページ以内におさまった.いまチェックしてみたところ,脱稿直前のバージョンの原稿ファイルのサイズは,テキストにして「計265,599バイト」だった.「400字=800バイト」として換算すると,「約332枚」に相当する.初校ゲラになってから,さらに追加したりしているので,大ざっぱにみて「350枚」くらいは書いたのではないだろうか.

 10年ほど前に書いた『生物系統学』を例にとると,判型が「34字×31行=1056字/頁=2.64枚/頁」なので,472頁だと「472頁×2.64枚/頁=1246.08枚」となる.確かに,あの本では実質的に1000枚分は書いた記憶がある.ぼくの場合,原則的に“たくさん書く”性向があるので,新書で「350枚」,単行本で「1000枚」というのはしごく妥当な線だ.「新書=200枚」とか「単行本=500枚」という世間的な平均レベルではあまりに少なすぎて,“それって詐欺じゃん”と言いたくなる.もっとたくさん書きましょうね.>潜在ライター諸氏.

 本来ハードカバーの「単行本」となるはずのものが「新書」として出版されることが多くなってきたと聞く.確かに,分量的にいえば両者の差異はどんどん狭まりつつあるし,この点で「選書」というカテゴリーの存在意義はほとんどなくなってきたのではないだろうか.内容的にみても,いい意味でも悪い意味でも,新書の“変異幅”がどんどん広がっていて(新規参入の新書も多い),単行本や選書のシェアを侵略しつつあるように見える.いずれにせよ,価格的に新書はまちがいなく「オトク」だ.『系統樹思考の世界』の分量(468枚)で東大出版会から単行本を出したとしたら,「468枚÷2.64枚/頁=約177頁」程度の薄目の本になる.価格設定としてはおそらく 2,500円〜3,000円程度にはなるだろう.

—— ね,新書だと安いでしょう? ※揉み手揉み手っ(ヨロシク)

◇昼過ぎにざーっと雨が降ってきた.しかし,また晴れてきて,蒸し暑さがぶり返す.不快不快.喜んで引き蘢ろう.

◇書評ならぬ感想 —— 郡司ペギオ-幸夫『生きていることの科学:生命・意識のマテリアル』(2006年6月20日刊行,講談社[現代新書1846], ISBN:4-06-149846-0→目次書評).炎天下の難行苦行で読み通したものの,ぼくのフックに引っかかってきたものは数えるほどしかない.

 一般化されたもの(タイプ)と眼前のモノ(トークン)の間には“対立関係”があると著者は言う.そして,一般的概念化によって排除されてしまう「そのもの性」は〈マテリアル〉なるものの〈影〉として立ち現れると考える(p. 4).これって,タイプとトークンに関する心理的本質主義の論議と結びつければ,もっとましな説明になるのじゃないでしょうか.“対立関係”と言われてもピンとこない.だって,もともと対立していないんだろうし.タイプとトークンの問題については,ぼくの『系統樹思考の世界』の第1章第2節で論議した.

 おそらく著者は,事物や現象に対する「説明」に関して,ある特殊な立場をとっているように見受けられる.

[P] りんごが木から落ちるのは,妖精に引っ張られて落ちたり,りんごが落ちたいから落ちたと考えるより,重力によって落ちる,と考えるのが妥当なのはなぜか.そう考えることによってボールの落下地点を予測したり,ロケットを飛ばせたりできるからだ.力学を導入することで世界を変えていけるから,妥当だったわけだよ.単に解釈するだけなら,妖精でもいいもんね.モノそれ自体の形式を導入して,創造の場に立ち会っていけるよう世界を変える.そうするしかないんじゃないかな.(pp. 195-196)

 著者にとっての「説明」というのは,世界に対する何らかの「働きかけ」ないし「行為」なのだろうか.創造するということと説明ということとは別問題だとぼくは考えるので,著者の立場は理解できない.

[P] 本書全体を通して,僕たちの問題は実在論との戦いであり,だけど同時に擁護だったとも言える.主体の側から,独我論的に出発,展開していく.このときどうしてもわたしには自由にできない何ものかが発見されるわけだけど,そこですぐに,「だから世界は実在する」って回収のされ方はしたくない.そういった実在論は,何も生み出さず,生の現場に何も貢献しない.だから僕たちは,実在論と戦う.(pp. 264-265)

 明らかに,著者は何ものかに“いらだち”を感じていることは想像できる.やはりここでも,著者は何らかの積極的な「働きかけ」に価値を置くスタンスをもっているようだ.その価値観が何なのかはぼくにはわからない.少なくとも,ある現象に対する可能な説明が複数個あったときに,それらの間の選択を著者のいうようなラインで進める気にはとうていなれないことは確かだ.

 全体として何だかよくわからないのだが,ぼくのフックに引っかかったパーツについてのみ感想らしきものを記しておいた.今後,この本はあるサークルの人たちによって評価されていくのだろうが,それはぼくの関心事ではない.

◇夕焼けに染まる日暮れは梅雨らしくないぞ.

◇明日は,統計関連学会連合大会(東北大)の講演要旨締切だ.まだぜーんぜん書いていないのだが,困りましたな.

◇うーむ,疲れた.これは首と肩の“痛み=傷み”かって?(爆)

◇本日の総歩数=5528歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.3kg/+0.2%.


1 juli 2006(土) ※ 7月初めは明け方に笹を刈る

◇午前3時過ぎに起床.夜明け前の外は風雨が強い.気温22.4度.生暖かい.まだ何かが祟っているのだろうか.※みなづきの食べ方が足りなかったかな.

◇最後のあがき —— 雨の中を研究所に潜入し,前夜,音羽から放たれた最後の式鬼,じゃなかった,索引と文献リストの校正ゲラpdfにコメントを付け続ける.夜中に音羽からさらなるメールも届いていた.目次のページ数がかぎられているので,全部で「32項目」削らないといけない.すでにピックアップされた項目をチェックして,削除していいもの,他項目とのドッキングができるもの,内容移管ができるものをひとつずつつぶしていく.

 今日の「午前8時」が印刷所に入稿するぎりぎりのデッドラインとのことなので,ゆっくり検討しているヒマはない.瞬時に判断して項目の“生死”を決断していく.思わぬところに大間違いがあったりして慌てる.「まさか,こんなところに」という箇所ほどミスが最後まで生き残っていたりする.

 午前6時に最後のチェックを完了し,現代新書編集部にメールで修正pdfを送信する.

—— 書いた原稿の“バグ”採りはエンドレスな作業だ(10年前の『生物系統学』に今でも新しい“虫”が見つかるほど).しかし,印刷所に送られてしまえば,これでほんとうのオシマイね.最後のステージの慌ただしさは単著を書いた経験のある人ならば誰もが経験しているにちがいない,時間的な緊迫感と心理的な前傾姿勢が感じられる.今回もそうだった.

◇未明の一仕事が終わり,外に出てみたら,雨は小降りになっていた.七夕用の笹を刈り,帰宅する.またざあざあと降り出す.

◇〈Hennig XXV〉の運営事務局から,アブストラクト受領のメールが届く.ホテルの手配が済み,アブストラクトも送ってしまったので,あと残るはオアハカでの発表内容だけだ.※順番が逆だろう(いやはや).

◇8時28分の TX 快速に乗り,淡路町を徘徊する.いつの間にか兇悪な雨雲は消え去り,晴れ間がのぞいて蒸し暑くなってきた.淡路町交差点の〈Tully's〉にて,メールチェックをしたり,日録を書いたり.ようやく(一時的ながら)心の余裕というものが出てきた.※よしよし.

◇晴れていたのに,また雲が厚くなってきて,昼前には再び雨がぽつぽつと降り出す.淡路町交差点角の〈北谷食堂〉にて「そーきすば」をいただいて,その後は秋葉原をぐるぐると徘徊すること小一時間.雨のせいで湿度が高く,不快指数はぐんぐんと上昇する.

◇近刊情報 —— 長谷川眞理子『ダーウィンの足跡を訪ねて』(2006年8月刊行予定,集英社[集英社新書], ISBN:不明).だいぶ前に,著者が「集英社から出す予定のガラパゴス本」と言っていたのはこの本のことか.ガラパゴスだけではなさそうね.写真がたくさん載るのかな?>まりまり.

◇夕方,つくばに帰還する.今日は一日中,時おり雨が降ったり上がったりで蒸し暑かったので,とても消耗した.

◇夜,〈leeswijzer〉のカウンターが「16万台」に達した.

◇本日の総歩数=18036歩[うち「しっかり歩数」=1348歩/13分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.8kg/−0.6%.


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