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oude dagboek

日録2006年2月


28 februari 2006(火) ※ 月末の大波小波が打ち寄せる

◇午前5時起床.曇り.気温2.5度.寒い.研究所に直行する.

◇未明のこまごま —— 3月末の新潟出張届.今回は生態学会大会はパスし,〈生物統計学・春の学校〉のみ参加する予定./ 年休届.今月もぽつぽつとお休み./ コンピュータのセキュリティ調査.所内システム管理科からの通達./ 会計処理が今日までの期限なので,購入予定の物品の請求書類などをとりまとめる.日頃からちくちく作業してこなかったツケが今になってまわってきて,今日は,とにかく,今年度中に買わねばならないアイテムの入力作業をせっせとし続けなければならない.

◇でも,よそ見したりする —— 〈R〉による回帰分析と分散分析のドキュメント(pdf)を発見:Julian Faraway『Practical Regression and Anova in R』(2002年7月刊行,オンライン公開[pdf: 1.016 KB],著者サイト).このオンライン・ドキュメントは,後に商業出版された:Julian Faraway『Linear Models with R』(2004年12月8日刊行,CRC Press,ISBN:1584884258)の元になる文書だとのことだ(→著者サイト).

◇午前のこまごま —— 来年度の非常勤出講に関する日程調整の依頼をしたり,あるいは銀行口座に関する届けを依頼されたり./ 断りの連絡.あとで段ボールなどの梱包資材の返却に出向かないとか./ うう,またフリダシに戻ったか……._| ̄|○

◇午前に届いた中国系アヤシイ本たち(盗み見向きかも) —— 劉達臨『中国性愛博物館』(2006年2月23日刊行,原書房,ISBN:4-562-03981-7).おお,これは…….総天然色というのがスバラシイ!が,何よりもよくぞここまで“蒐集”し尽くしたものよと感動すること請け合い.あれまあ,なんと.ほほー,そーですか.うわっ./ 中野美代子『肉麻図譜:中国春画論序説』(2001年11月15日刊行,作品社[叢書メラヴィリア8],ISBN:4-87893-758-0).この中野美代子って『西遊記』の訳者として有名だが,個人的には,高校時代に読んだ『砂漠に埋もれた文字:パスパ文字のはなし』(1971年9月15日刊行,塙書房[塙新書],ISBN:なし)の著者としての印象が強い.でも,“肉麻”な人だったとは…….

◇郵便局を経由して,昼休みの歩き読み —— やっぱり『中国性愛博物館』ねっ.第4章の中ほどまで,150ページほど読む.大量の図版がー(百聞は一見に如かず,なんちゃって).

◇午後1時過ぎの気温は4.5度.曇って肌寒い.

◇午後のこまごま —— ほんとにこまごまと会計システムへの入力をする.日頃は使っていないパソコンなので手間取る.夕方になっても半分ほどしか進んでいない.何がたいへんって,キーボードからの〈ローマ字モード〉による日本語入力を強要するところが憎らしい.ワタクシは何を隠そう(隠してないけど),〈カナ・モード〉で日本語入力する人だったりするからだ.※カナ・キーのブラインドタッチだってできるぞー(自慢することではないが).

—— そんなこんなで,あっという間に夕方になり,午後7時にいったん帰宅する.あとは夜の作業だ.

◇午後9時に再出勤.霧雨にけむる夜.明日は会計システムへの入力がもうできなくなるという事務連絡がまわっているので,これは真のデッドラインだ.とにかく日付が変わらないうちに会計入力をすまさないことにはどうしようもない.すべての物品項目を入力し終えたのは午後11時を過ぎてから.請求書類などを取り揃えた後,自宅に帰り着いたのは午前1時過ぎ.

※研究室の予算はこれでほとんど使い切り,残額はたった「829円」になった.めでたしめでたし.

◇夜中の農環研で,BGMにマーラーの〈復活〉やら〈悲劇的〉をかけ続けたが,ハンマーの一撃をくらって一瞬くたばっても,天上から Urlicht が射してきて,auferstehn するのだー.

◇本日の総歩数=15846歩[うち「しっかり歩数」=8488歩/70分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.1kg/+0.2%.日中13hr+未明2hr=15hr労働.


27 februari 2006(月) ※ mijn verjaardag は淡々と

◇午前5時起床.雨上がりで濃霧が立ちこめる.視界とても悪し.畑地からもうもうと立ち上がっている気配がする.この季節に特有の霧の出方.気温は5.9度.

◇未明のこまごま —— 大場秀章さんへの「贈る言葉」を送る./ 生物地理学会大会シンポジウムの演者をリクルート中.はてさて,どーなるか./ 今月末までに処理すべき事務書類が多数湧き出る.やぶへびどころではない.たくさん,もーたくさん.

◇今日は年に1度の日ですが,この歳になるとねー,ウキウキすることもなく,淡々と月日は流れ行く…….

◇グレードアップ〈これ論(増)〉! —— 酒井聡樹『これから論文を書く若者のために(大改訂増補版)』(2006年4月はじめ刊行予定,共立出版,ISBN:4-320-00571-6).4月初めに販売開始とのこと.詳しくは,酒井師の〈これから論文を書く若者のために 大改訂増補版〉を見るべし.第1版(2002年5月25日刊行,共立出版,ISBN:4-320-00564-3→著者サイト)と比べると,新しい章の追加やリライトが広範囲にわたっているようだ.すでに〈これ論〉をもっている読者も,迷わず〈これ論(増)〉を買えということ.

◇午前のこまごま —— 朝イチで小学校に行き,PTAのお仕事を1時間ほど.卒業イベントのプレゼン資料づくり./その後,車検のため車を修理工場にもっていく./ さらにその後は翻訳原稿との格闘.まだまだ〜.

◇〈発掘オケ写真〉 —— 昨夜,自宅の本棚を掘り返していたら,東大オーケストラの演奏会写真がどっさりと“貝塚のごとく”出土した.おお,これは動かぬ証拠の数々だ.こういう所業に「時効」などありはしない.まずはこれかー↓













上は,1979年1月,新宿・郵便貯金ホールでの第64回定期演奏会のメイン曲であるベルリオーズ〈幻想交響曲〉の最後のショット.打族は「勝利の雄叫び」ですなあ.改めてよく見ると,“太鼓”だらけのステージだ.ティンパニ2組,小太鼓,中太鼓は必須だからしかたないとして,大太鼓3台というのは威嚇的だよねえ.刻みのリズムは奥の小さめのやつ,第5楽章のクライマックスで津波のような大太鼓の < > の繰り返しがあって,クレッシェンドとデクレッシェンドを大きい大太鼓2台で分業させた.当然,ホール全体が「低周波轟音」に包まれたことは言うまでもない.煽る三石精一.※みなか君はどこにいるでしょー?(ヒント:“読響の鐘”の後ろあたり)

次はこれか→.1981年の第66回定期演奏会(新宿文化センター)でのサブ曲の巨大編成は,アルバン・ベルクの〈三つの管弦楽曲〉.錯綜しまくる総譜,Hauptstimme と Nebenstimme が絡み合う驚異的な作品だったことを思い出す.総譜をいくら読み込んでも,ようわからんという経験は初めてだった.雛壇の上は管楽器で埋め尽くされたので,打楽器群は脇に追いやられているが,実は大量の打楽器を舞台に並べている.第2バイオリンのすぐ後ろに置かれた第1ティンパニは,現在 Rhode Island 大学で海洋学の教授になっている原哲くんが格闘した.後ろの壁際の第2ティンパニは,いま箱崎にいる石橋純一郎くんね.

←この曲では,ぼくはシロフォン担当.2台のシロフォンがパラレルに並んでいるのは,苦肉の策.ぼくのすぐ前のシロフォンは東大がもっていたポータブル・シロフォンで(その台は舞台袖にあったゴミ箱だ),音質は悪くないが,音域が3オクターヴしかない.それではベルクは演奏できないので,当時,学芸大オケにいた桑形くん(その後,新響に入ったっけ)から借りた KOROGI のシロフォンをもちこんだ.写真には入りきらなかったが,ハープの後ろには,マーラーの交響曲6番で使ったハンマーが再登場している.要所要所でドカドカと叩かれた.指揮はやっぱり三石の精ちゃん.

で,そのハンマーもちゃんと証拠写真が残っていたりする(→).この白黒写真は1978年に東京文化会館大ホールで開催された第63回定期演奏会での本番写真.と言っても,メインであるマーラーの交響曲〈第6番〉の前のサブ曲だったシューベルト〈未完成〉の演奏中に撮られた1枚だ.ハンマーが野ざらしになっている(隠せばいいものを).「帝大音楽部」の指揮台を文字どおりの“叩き台”にしたのだが,今よく見ると,表板を台の両端で固定していた2本の「梁」のうち1本がすでになくなっている.ぼくの記憶が正しければ,ステリハでドカッ!と叩いたときに早くも一方の「梁」が吹っ飛んだはずだ.そして,本番ではこの“叩き台”が木っ端微塵に叩きつぶされたことは以前ここに書いた(→2005年10月5日の日録).帝大音楽部指揮台が“成仏”する前の生前最後の写真ということになる.引導を渡したのはマエストロ早川正昭.※このとき録音したLPは後日NHK-FMで放送された.

写真がまだ見つからないのだが,1980年には同じく東京文化会館の第65回定期演奏会でマーラーの〈復活〉を演奏した.これはもう極度に肥大化したオケと合唱団で,舞台上が(舞台袖も)演奏者で埋め尽くされた.それにしても,東大オケ在学中にはよくもまあ極めつけの“巨大”な作品ばかりを演奏していたものだ.“中”にいたときはそれが当然だと思っていたのだけれど.

話しはそれるが,たまたま千駄木で同じ下宿にいた早稲オケの今井彰は,後に芸大を経て東フィルのホルン奏者になった(いまも).ジュネス以来の知り合いだが,当時は鼠の出る部屋でけんちん汁を喰いながら,飲み食いした記憶ばかりある.生年月日も血液型も同じ,体型も同じというのがいやはやなんとも.※今井くん,Alles Gute zum Geburtstag!

—— そんなこんなのオケ・エピソードは際限なく記憶の底に眠っていて,ときどきかき回すと“澱”のように浮上してくる.

◇昼間はずっと曇りがちの変な天気だった.春先にありがちな不安定さなのだろう.

◇筑波ハム〈自然味工房〉のチーズ・フォンデュは最終日に間に合いました.

◇明日までにケリをつけなければならない事務処理が累積している.“トド”はまだ暴れてるし…….

◇本日の総歩数=7173歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=+0.4kg/−0.2%.日中12hr+未明2hr=14hr労働.


26 februari 2006(日) ※ 雨降りサンデーは思い出ぽろぽろ

◇午前6時起床.曇りときどき小雨.前夜に梱包した本を20括り(計200kg超)ほど運搬する.約2時間の労働.これでもう1日のエネルギーをかなり使い果たしたようだ.

◇先週届いていた新刊 —— 柏端達也・青山拓央・谷川卓編訳『現代形而上学論文集』(2006年2月25日刊行,勁草書房[双書 現代哲学2], ISBN:4-326-19948-2→目次).著者は,ルイス、メリックス、インワーゲン、キム、デイヴィドソン、ルイス、プライアほか、サイモンズ.Peter van Inwagen の論文が日本語で読めるとはね.以前,【種】問題との絡みで,彼の著書Peter van Inwagen『Material Beings』(1990年刊行,Cornell University Press,ISBN:0-8014-8306-9)を読んだことがあった./ 本書を含む叢書〈双書 現代哲学〉は,昨年10月から刊行が始まった.既刊は,F・ドレツキ『行動を説明する:因果の世界における理由』(2005年10月20日刊行,勁草書房[双書 現代哲学1], ISBN:4-326-19947-4)と『現代形而上学論文集』の2冊だけだが,今後出る予定の本の中には興味深い著作がいくつかある:

  • J・キム『物理世界の心』(太田雅子訳)
  • S・スティッチ『理性の断片化』(薄井尚樹訳)
  • ダメット、ブーロス、ライト、パーソンズ、ルフィーノ、ヘイル、スンドホルム著『フレーゲ哲学の最新像 新フレーゲ主義とその彼方』(岡本・金子編訳)
  • D・ルイス『反事実的条件法』(吉満昭宏訳)
  • C・チャーニアク『最小合理性』(中村・村中訳) 
  • L・ラウダン『科学と価値』(戸田山・小草訳)
  • N・カートライト『物理法則はどのように嘘をつくか』(杉原桂太訳)
  • J・エチェメンディ『論理的帰結関係の概念』(遠山茂朗訳)

個人的には,Nancy Cartwright と Larry Laudan の翻訳に期待している.勁草書房,えらい! ※今度は“生物学の哲学”もよろしくね.

◇午後になって,雨はしだいに本降りになる.午後3時の気温は9.9度もあるが,体感的にはもう少し低い気がする.伸びてきた髪を切る.

◇大場秀章さん退官に寄せる文章は下記の通り:

「生物地理研究会」の想い出

三中信宏(独立行政法人農業環境技術研究所/東京大学大学院農学生命科学研究科)

大場秀章さんには,東大農学部の大学院生の頃からさまざまな情報をいただき,刺激を受けてきました.とりわけ,1980年代に当時の総合研究資料館で,大場さんが中心になって主宰されていた「生物地理研究会」が強く印象に残っています.

私の手元には,機関誌『生物地理研究会ニュース』のバックナンバーがあります.『生物地理研究会ニュース』は,1983年に出た第1号から始まって1990年の第8号まで毎年公刊され,その後,会の名称が「自然史研究会」に変更されたのにともない,後継誌として『自然史研究会ニュース』No. 9が1992年に出ています.これらの印刷物は毎号数百部刷られていたと大場さんから聞きましたので,ある程度のサーキュレーションを維持した出版物だったのでしょう.

バックナンバーをひもとくと,当時きわめて活発に活動していたこの研究会のようすが思い出されてきます.総合研究資料館の学際的プロジェクトの一環としてはじまったこの研究会は,月1〜2回のペースで開催されていた「談話会」を核としていました.『生物地理研究会ニュース』にはこれらの談話会の記録が毎号掲載されています.私が生物地理研究会の活動を知ったのは,大学院の博士課程にいた1984年のことでした.理学部の地質にいた安藤寿男さん(現:茨城大学理学部)が分岐学に関するトークを談話会でするという情報をたまたま知って,弥生キャンパスから本郷キャンパスの果ての資料館まで聞きにいったのがきっかけだったと記憶しています.

その後,分断生物地理学に関するレビューを談話会(第32回談話会:1984年10月6日)で話す機会をもつことができました.その頃は,ちょうど分岐学の方法論に関する博士論文を書いている最中だったので,生物地理研究会談話会で発展分岐学や分断生物地理学に関する論議ができたことは私自身にとってたいへん意義のあることでした(農学部の中ではそういうことがまったくできなかったので).談話会トークに基づく二つの総説記事が,「生物地理学:最近の諸学派の動向」(『ニュース』第4号,pp. 8-30:1985年1月25日発行)とその翌年の「生物地理学における vicariance の概念について」(『ニュース』第5号,pp. 1-18:1986年1月25日発行)です.

その後も,資料館の創立20周年記念シンポジウムで話したり,あるいはコンピュータ系統学についての第85回談話会トークを1990年に行なったり(その前年にはつくばに就職していたのだが)する機会がありました.この生物地理研究会を通して,私ははじめて自分と同じようなテーマに関心をもっている研究者が国内にもいるのだということを知って,とても心強く感じたことをここに記しておきます.魚類学の阿部宗明さんと顔見知りになって分岐学者-魚類学者について教えてもらえたり,養老孟司さんの生トークを初めて聞けたり,あるいは今日に至るまで長いつきあいになった多くの方々と出会えたのは,生物地理研究会という活動を10年も地道に続けた大場さんをはじめとして当時の資料館のおかげだと私は今でも感謝しています.

◇備忘メモ —— 系統樹の3次元表示ソフトウエア:Michael J. Sanderson「Paloverde: an OpenGL 3-D phylogeny browser」(doi:10.1093/bioinformatics/btl044).配布先は→こちら

◇巨大化した“トド”が暴れ回っているぞ.明日はまた未明から“トド漁”の再開だ.

◇本日の総歩数=7099歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=0.0kg/+0.2%.日中18hr+未明0hr=18hr労働.


25 februari 2006(土) ※ タイム・スリップ

◇午前6時起床.前夜の雨はもう上がっていたが,気温が低下したらしく,雨滴がガラスに凍りついている.

◇朝早くから,本の梱包と移送にのめり込む.自宅にいったい何千冊の本が堆積しているのか数えたこともないのだが,今回は500冊ほどを処分することにした.しかし,それだけ削減したにもかかわらず,本棚の外観からは多少とも「軽く」なったという気がまったくしない.比喩的表現ではなく,書庫に圧縮されていた本たちをいったん「解凍」してしまったために,膨れ上がっているにちがいない.ヒモでしばった「塊」が山になっているが,先はまだまだ長い.

◇その合間に,重みに耐えきれずに棚板が崩壊してしまった書棚などの不要品を,つくば市のクリーンセンター(KEKの北にある)まで搬入する.引っ越し業者になった気分だ.朝だけでもう十分な労働量をこなした気がする.

◇備忘メモ —— PAUP help メーリングリストからの情報では,PAUP* の“正式版”の公開は今年夏になるとのこと.Intel-Mac への対応もなされるそうだ.開発者 David Swofford の発言.※ユーザーズ・マニュアルもそのときに公開されるのかな.

◇日射しの暖かな午後2時半に,予約しておいた水海道の「ブック・オフ」から処分本の出張査定者が到着.手際よく評定して450冊ほどの中で315冊は値がつくとのこと.残りについてもただで引き取ってもらうことにした.しめて10,210円の臨時収入.

◇化石〈会計簿〉からの記憶解凍 —— 所蔵本の山を切り崩していくうちに思わぬ「出土物」を掘り当ててしまうことがある.ぼくが大学に入った直後の〈金銭出納帳〉なるものが出てきた.30年ぶりに読み込んでしまった.東京大学の入学式があった直後の「1976年4月12日午後3時半」から約2年間分の収支が記録されている.この期間は,今は亡き駒場寮で暮らしていた時期にあたる.忘却の彼方にあったことどもがしだいにかたちをなしてくる.

そうだ,駒場寮の食堂には A定(140円) / B定(180円) / 特定(230円)という3種類の定食があった(余った分については夜遅くに“残食〜”という寮内放送が流された.価格は半額だった).当時の銭湯が100円だったので,たいへん安い食費だったと思う.東大オケには入学式の春合宿(千葉の岩井だったかな)から参加していたので,早くもエキストラで他大学に出演していた.4月12日付けの最初の支出項目に「切符(成城学園前)」と書かれている.成城大学のレストロ・アルモニコ管弦楽団の練習に行ったのだろう.そして14日には「成城オケ出演料」として「2,000円」の収入が記されている.オーケストラで稼いだ初めてのお金ということだ.それでいい気になったのか,直後に「酒代」が「1,640円」支出されている(おい,未成年やろ).オリエンテーションが終わった19日には「教科書類」の購入費として「30,520円」もの大金が支出されている.5月に入ると,これまた今は亡き北軽井沢ミュージックホールでの東大オケの合宿があったり.

要するに,本を買うか,オケ練習に行くか,寮で呑むかくらいしか生活パターンがなかったかのような出納簿だ(講義にも出ていたはずだが).なんというシンプルな生活だったのだろう.10月22日には,冬の定期演奏会の曲でスネア・ドラムをやることになっていたラヴェルの〈ラ・ヴァルス〉の総譜とともに何の関係もないストラヴィンスキー〈春の祭典〉の総譜も買ったと記録されている.いつどんな本を買ったかまで書き記していたとはねー.

出納簿が“マドレーヌ”の役回りを演じるとは意外だったが,この際,思いつくまま人名も書いてと —— 駒場寮で同室だったことがあるのは,オケ仲間以外では,「日曜会」姫路西高出身の理I・岸秀敏さん(国鉄に入っていまはどーしているのだろう),神奈川出身の文II・大羽くん(酒飲み過ぎ),鹿児島の理I・中間さん,新潟の理I・渡辺くん,そして後年 Nステで顔を見ることになった文I・菅沼栄一郎くん(寮仲間ならば誰もが予期したであろう理由で途中降板したが)…….

寮文化としての“ストーム”はぼくらの時代が最後だったと思う(とある傷害事件で駒場寮では全面禁止となった).民青 vs. 中核派 vs. 革マル派,あるいは統一教会系団体などさまざまな活動団体がそれなりに浮いたり沈んだりしていた.“三里塚”は当時はまだ生きていることばだったし.

—— 想い出話はエンドレスだ.

◇本日の総歩数=6162歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=−0.5kg/−0.8%.日中15hr+未明0hr=15hr労働.


24 februari 2006(金) ※ 闇夜の“トド”撃ち,ふたたび

◇午前4時起床.気温5.1度.冷え込みまるでなし.“トド”がのたうつ研究所に直行する.

◇未明のこまごま —— 今年度の業績報告書づくりをば./ 3月の出張届を書きはじめる./ 非常勤出講についての問い合わせ(→名古屋大学).

◇新刊メモ —— ジュリア・M・シートン『燃えさかる火のそばで:シートン伝』(2006年2月23日刊行,早川書房,ISBN:4-15-208707-2).シートン夫人によるアーネスト・T・シートン伝記だそうな.『シートン動物記』(偕成社)や『シートン動物誌』(紀伊国屋書店)って結局ろくに読まないまま現在にいたっているなあ./ アンドリュー・パーカー『眼の誕生:カンブリア紀大進化の謎を解く』(2006年3月3日刊行,草思社,ISBN:4-7942-1478-2→目次).おお,訳師さま./ アンドリュー・ブラウン『はじめに線虫ありき:そして、ゲノム研究が始まった』(2006年2月刊行,青土社,ISBN:4-7917-6254-1).そーか,線虫は“ことば”だったのか.

◇すごい! —— W.D. Hamilton『Narrow Roads of Gene Land』(Vol. 1Vol. 2Vol. 3)を完全読破しつつあるとは.制覇された暁には,ぜひ書評記事をまとめて書いてほしいです(3冊分).よろしく.> shorebird さま.

◇まさに「Concession to the Imperative」! —— 午前は翻訳原稿と格闘.時間との勝負がすでに長期化していて,“トド”中の“トド”の一頭であることは明白だが,これがもう「大物」でね…….じりじりと進めて入るのだが,タイムリミットがあるので,しかるべき決断と実行が迫られている.

◇曇ってときどき小雨が混じる.昼下がりというのに気温は5.7度しかない(明け方とほとんど同じ).

◇午後のこまごま —— —— 学術会議から進化学会宛の郵便物:日本学術振興会〈特別研究員RPD:出産・育児による研究中断者への復帰支援フェローシップ〉(→サイト).進化学会メーリングリストで広報してもらうことにする./ 明日は東京農大の卒論発表会があるのだが,参加できそうにない旨,連絡する.ごめんなさいごめんなさい./ 大場秀章さんの退官記念行事(3月9日,東大山上会館)に出席しますという返事を出し忘れていた.かんにんかんにん.※今からでも間に合います?

◇〈pLaTeX〉のインストールを完了 —— ついでに,〈Ghostscript〉と〈LaTeXiT〉も.

◇あ,外が暗くなってきたと思ったら,雨がざあざあと.

◇夜はずーっと蔵書の整理 —— 本棚の「収納力」の大きさに感服する.処分すべく大量に縛っているにもかかわらず,少なくとも“外観上”はぜんぜん本が減っていないような錯覚に陥る.古い実録ものとか社会系の本はもう読む意欲が薄れているので,どんどん整理してしまう.しかし,発掘すればするほど昔の本が“出土”してくる.かつて予備校で教えていた頃に教材として使っていた生物や数学の受験問題集や入試問題正解のたぐいがわんさか湧いて出てきてげっそりする.きっと他にもまだたくさんの「本化石」が埋まっているにちがいない.

お,ずっと探していたバーンスタイン〈キャンディード序曲〉の総譜が本棚の裏から救出されたぞ.善哉善哉.

◇旧・東京大学総合研究資料館の「生物地理研究会」と『生物地理研究会ニュース』のこと —— 大場秀章さんの退官記念企画のひとつとして,“寄せ書き”のようなものをつくるらしい.寄稿のつもりで下記にメモ書きしておこう.こういうことは書き付けておかないと,どんどん記憶が揮発していくものだから.※明日の作業.

ものすごく夜更かししてしまった…….いま,午前1時.

◇本日の総歩数=7587歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/+1.0%.日中12hr+未明3hr=15hr労働.


23 februari 2006(木) ※ RIKEN 横浜へ遠征する

◇午前4時半起床.気温4.8度.今日は午後から鶴見の理化学研究所(横浜研究所)に打合せに行く予定(トツゼン挿入された用事).

◇未明のこまごま —— 研究所にて『生物科学』書評ゲラの返送完了./ とある学会からクラスター分析に関する論文査読の依頼メールが届く.この感じですと,ぼくではなく,もっと別の分野のレフリーの方が適しているのでは? 時間的にタイトすぎてこれ以上引き受けることはムリっぽいので,お断りのメールを返した(ごめんなさいー)./ 進化学会関連の個人情報公開に関する事務連絡& Qshinka への登録.

◇今朝,岩波書店に送った執筆予定本の「趣旨文」は下記の通り ——

【叢書】〈確率と情報の科学〉シリーズ(岩波書店,2007年〜)
【著者】三中信宏
【書名】『かたちをはかる:生物形態の数理と統計学(仮題)』
【趣旨】「かたち」を定量的に解析する手法のひとつとして,近年「形態測定学(morphometrics)」という研究領域が確立されつつある.さまざまな学問分野を横断して生じる「かたち」を“定量的”に見るというこのアプローチの特徴は,それが個別科学(たとえば生物学・医学・考古学など),数学,そして統計科学の融合する領域で急速に進展しているという学際的性格を強く帯びていることにある.いま切り拓かれつつある形態測定学のヴィジョンを描き出し,「かたち」を分析するツールとしてどのように利用できるのかを概観する.

もっと長い「説明文」もいっしょに送ったのだが,それは来月に理研(和光)で話す予定の形態測定学トークの要旨そのもの.

◇午前10時半から11時半まで,グループ内会議 —— 次期の組織体制のこととか,小課題の打合せとか,非常勤職員の雇用のこととか.備忘メモ:1) 今年度業績報告ー3月17日までに;2) 非常勤雇用届出−3月3日までに;3) 次年度小課題締切ー3月8日までに→3月10日に小課題検討会がある.

※たいへん重要なことどもを短期間に決着をつけろということだ.

◇午前11時半に所内で“拉致”され,そのまま車に押し込まれる.常磐道→湾岸線をひた走り,鶴見にある理研・横浜研究所(→サイト)に到着したのは午後2時前のこと(予期されていたように高速道の渋滞ひどし).横浜の海岸近くの工場地帯(昔はこの一帯は日本鋼管の工場が広がっていたそうだ)の中に埋没するように聳え立つ,理研のビルに吸い込まれる.隣りは横浜市立大学のキャンパスがあり,連携大学院として制度的にも物理的にも理研とつながっている.確か,このあたりは,かつては網の目のように旧国鉄線が張り巡らされていて,工場群に労働力を運んでいたはずだが,今はどうなっているのだろう.

午後2時からGSCでのミーティングが設定されている.ミーティングまでの空き時間にGSCの施設を案内してもらった.巨大な建物の窓の外の敷地内に,東南アジアの「パゴダ」のような銀色の建造物がたくさん並んでいたので,ここは新興宗教本部かと思っていたら,実はすべて NMR のエリアであることがわかった.タンパクの構造解析のために,巨大な NMR が林立している光景というのはなかなかの見物だ.強力磁力線が飛び交っているらしく,「心臓ペースメーカーを装着している方は立ち入り禁止」とか「クレジットカードなど磁気カードに影響があります」などという注意書きがそこら中にある.宗教的結界であることは明白だ.基本的に「鉄」は厳禁なので,〈芒[すすき]〉とか〈楓〉とか〈菊〉という和風旅館の部屋みたいなネーミングの“NMRパゴダ”の内装はすべて「木」だ(クギもステンレス製だという).どことなくしっとりした和風インテリアのソフトな質感と世界的に見ても例のない規模のNMR砲列とのズレ加減にとまどう.

午後2時過ぎからミーティングを1時間弱ほど.終盤戦に入った〈タンパク3000プロジェクト〉のこれまで成果とか,その後継企画とか.

午後4時過ぎに鶴見を出て,逆コースでつくばに直帰.帰りは渋滞がまったくなく,1時間ほどで谷田部インターを降りる.速い速い.

◇研究所にて夕暮れのこまごま仕事をする.※ネクタイ,もういや.

◇〈pTeX package for MacOSX〉 —— おお,こりゃラクちんだわい.※情報感謝いたします.

◇日中は晴れて暖かかったが,夜になって気温が下がってきたようだ.下り坂らしいが,明日から週末にかけてはどうなのだろう.

◇「パソコンをウェブサイトから買う」ということを初めてしてみる.本をオンラインで買うよりも価格の“ゼロ”の数が格段に多いのでドキドキしてしまう.

◇明日はまた未明の“トド撃ち”の再開だ.2月中にケリをつけるべきことがまだ残っている.

◇本日の総歩数=4867歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/−0.8%.日中9hr+未明2hr=11hr労働.


22 februari 2006(水) ※ 再び,深夜の“トド”撃ちに向かう

◇午前3時起床.気温6.3度.今の季節にしては“生暖かい”ぞ.異神でも物の怪でもいらっしゃいって.研究所に直行する.

◇未明の“トド撃ち” —— 岩波『科学』の〈心にのこる1冊〉の原稿を書き上げる.ちょうど400字×7枚におさまった.取り上げた本:Gareth Nelson and Norman Platnick『Systematics and Biogeography : Cladistics and Vicariance』(1981年刊行,Columbia University Press,ISBN:0-231-04574-3→目次)の書影画像とともに,午前5時前にメールで返信する./ 形態測定学本の「目次」はこれからだ.※だいたい決まってはいるのですが.

◇メモ —— 〈日本の古本屋〉はこれまでよく利用していたけど,〈本の枝折〉はついぞ使ったことがなかった.横断検索できるので,これからは利用してみよう.

◇昨日やっと入手した新刊 —— 井上勲『藻類30億年の自然史:藻類からみる生物進化』(2006年1月20日刊行,東海大学出版会,ISBN:4-486-01644-0→目次).東海大学出版会から出ている生物系の本にしては破格に分厚く500ページ近くもある.たいした本だ.※つくばだからすぐに手に入るかと思っていたのだが,リアル書店にはほとんどなくって,入手するのが遅くなってしまった.

◇早朝のこまごま —— 4月9日(日)に立教大学で予定されている日本生物地理学会大会のシンポジウム構成を今になってあたふたと詰めはじめている.毎年のことながら「もっと早く」とは思うのだが,それができないというのは何かしら年度末特有の構造的事情があるにちがいない.※関係しそうな方にはこれから連絡を差し上げます.よろしく.(どんな「関係」やねんな)

◇午前のこまごま —— 不要本の大量縛りこみ.よくぞこれだけ溜め込んだものだー.再読するだけの意欲の湧かない本,賞味期限の過ぎた本,近未来的に読む可能性がほぼゼロの本は,この際ぜーんぶ処分しましょ.目標3/4減(冊数にして)./ 事務から連絡.大学への非常勤出講に際しては,辞令の発令期間を再考してほしいとの連絡.農環研では,非常勤出講の期間が重複するのは内規として認められていないので,ぼくのように同一年度に複数大学に出講する場合は,各大学と辞令の発令期間をうまくやりくりして,オーバーラップがないようにしないといけない.

◇午後2時まで,岩波の形態測定学本の目次案をつくる.やっと完成したので,メールにて送信完了.しかし,趣旨文なるものの作成がまだ残務として残っている.く.

◇暖かな昼下がり.雲はやや多いものの,午後2時半の気温は14.5度もある.あの寒波の日々はどこに往ってしまったのだ.

◇午後のこまごま —— 今日が締切の海外出張対応経費への応募書類をつくる.ささっとつくって研究推進係に提出したら,間髪入れず「日付がまちがっていますー」との連絡.どんなに簡単な書類でもイッパツではけっして完成しないところがミソだ.延髄反射で数字を書き換えて,ささっと再度提出する./ 流動的だった所内の新体制組織案が固まりつつあるようで(だれかニガリでも注いだか?).今後は次期中期計画の小課題に論議の軸足が移っていくようだ.

◇岩波書店の新刊・近刊メモ —— 斎藤成也他『遺伝子とゲノムの進化』(2006年3月28日刊行予定,岩波書店[シリーズ〈進化学〉第2巻], ISBN:4-00-006922-5).全7巻シリーズの第5回配本.このシリーズはたいていの書店ではぜんぜん見かけないけど,売れてるの?(ちょっと心配) / 斎藤憲『よみがえる天才アルキメデス:無限との闘い』(2006年3月3日刊行,岩波書店[岩波科学ライブラリー117], ISBN:4-00-007457-1).アルキメデスの“幻の奇書”と呼ばれた『方法』に書かれていた「数学」についての本らしい./ 脇村義太郎『東西書肆街考』(2006年3月22日重版[初版:1979年6月20日],岩波書店[岩波新書・黄版87], ISBN:4-00-42087-3).もちろんすでにもっている本だが,25年も経ってなお重版されるとは着実に売れているわけね.

◇夕方になって,ほとんど磨り減り状態でございます.それでも舞い込む質問メールに対する返信をしたり.夕闇しだいに迫る.

◇夜のこまごま —— 『生物科学』の書評ゲラをチェック.ポーラ・フィンドレン『自然の占有:ミュージアム,蒐集,そして初期近代イタリアの科学文化』(2005年11月15日刊行,ありな書房,ISBN:4756605885→書評)は57巻4号まわしになったか.

◇本日の総歩数=6150歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/0.0%.日中9hr+未明4hr=13hr労働.


21 februari 2006(火) ※ 近場でプチ狩猟に励む

◇午前5時起床.寝過ごしたか…….曇り.気温2.7度.研究所に出勤.

◇早朝のこまごま —— メーリングリストの管理./ 科学技術振興調整費の申請書の訂正.エンドレスに修正が続いているが,提出締切がもうすぐなので,作業もまもなく強制終了になるだろう./ 岩波書店から督促のメール.『科学』の原稿と形態測定学本の目次構成.前者が先か.

◇朝,自宅に戻り,古い本を縛っていく.本棚の奥深くからとめどなく古本が“湧いてくる”心地ぞする.本棚の収容力の大きさを実感する(ゆっくり実感している場合ではないのだが).安心して処分できる本たちからどんどんまとめることにする.しかし,本の山を切り崩せるのはまだまだ先の話だ.

—— 古い本を整理するのに時間がかかってしまうのは,その場でつい「立ち読み」してしまうからだと思う.

◇これじゃ,“トド”撃ちどころか,近場の土木作業じゃないか.

◇昼休みの歩き読み.曇り,気温は9.0度 —— 渡辺京二『逝きし世の面影』(2005年9月9日刊行,平凡社[平凡社ライブラリー552], ISBN:4-582-76552-1→目次).ほんの1世紀半前の“日本”がどのような国だったかを,当時の来日した「外国人」の目を通して記録された多くの資料から復元しようとする意欲的な本だ.600ページもある大著だが,とてもおもしろい.第4章まで読む.200ページあまり.

本書は,1998年に福岡の葦書房という書店から出版された本の再刊.葦書房本は「和辻哲郎文化賞」を受賞し,順調に版を重ねていたらしいが,突如として絶版になったという.どうやら出版社側のゴタゴタが原因らしい(→このあたりの事情については,葦書房の公告を参照のこと).

◇午後1時から1時間ほど,〈Zar統計学本〉セミナー(第38回) —— Chapter 20. Multiple Regression and Correlation (pp. 443-450).Kendall の順位相関検定についての解説.複数の変量の間の「関係性」をノンパラメトリックにテストする方法について.

—— 今回をもって Zar の本の輪読を終了し,次回からは Zelditch et al. の形態測定学本に入る(→講義ページ).

◇午後のこまごま —— 岩波から原稿督促の電話がかかってくる.「幸いなことに」たまたま部屋にいなかったので,電話口でコメツキバッタにならずにすんだが,今日中にカタをつけないことにはどーしようもない./ 夕方,予約しておいた歯医者に行く.

◇パソコン関係 —— 通販で買うかな./ pLaTeX をそろそろ Mac にインストールしておかないとか.→こんなページを拝見したりする.

◇うわ,さらに“トド”が成長していたっ! 

◇もう午後11時.寝ないと寝ないと.明日はまた夜中起き.

◇本日の総歩数=13502歩[うち「しっかり歩数」=6409歩/55分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.6%.日中8hr+未明2hr=10hr労働.


20 februari 2006(月) ※ 真夜中の“トド”撃ち再開

◇午前2時半に目覚める.研究室に直行し,“トド”撃ちを再会する.気温は2.6度.薄曇りで,冷え込みさほどなし.

◇昨夜の“小さめトド”を追う —— 〈R〉の英智である R-help の過去ログを掘り起こしてみたら,やっぱり同様の質問が数年前にありました:「nested anova not giving expected results」(15 Apr. 2002).これに対して,間髪入れずに Peter Dalgaard 師曰く:「R は,SAS や GENSTAT と同じで,特別な指定がされていないかぎり,誤差項はただひとつしかないとみなす.つまり, Residuals がそれである」と.では,Zar や Rohlf & Sokal がやっているような nested ANOVA を〈R〉でするにはどうするか? Dalgaard 師のアドヴァイスに従えば:

> aov(Cholesterol 〜 Drug + Error(Drug:Source))

で問題は解決するとのこと.Split-plot design のように,誤差項を明示的に指定すればいいわけですね.おお,確かに! これにて“トド”1頭をまず仕留めた:

Error: Drug:Source
          Df Sum Sq Mean Sq F value   Pr(>F)   
Drug       2 61.167  30.583  61.167 0.003703 **
Residuals  3  1.500   0.500                    

—— ついでに,〈租界R〉のページに,「ネスト分散分析」を付加しておいた.これで,あとあと使えるメモになる.

◇夜明け前にもう1頭の“トド”を仕留める —— 某書類を書き終える.

◇晴れたり曇ったりの午前中はずーっと籠って原稿書き.2時間ほど.昼過ぎから雨は本降り.さらに原稿を書き続けて,午後2時に講談社の御代官様に年貢を納める.『だから系統樹!』の第4章の第3節まで.Simon Conway Morris『Life's Solution : Inevitable Humans in a Lonely Universe』(2003年, Cambridge University Press,ISBN:0521827043 [hardcover] / ISBN:0521603250 [paperback]→目次)の訳本タイトルやキャッチコピーについての密談あり.来週あたりドサっとゲラがやってくるらしい(“トド”の新たな大群か……).

◇午後3時半から1時間ほど,Alan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読(第11回目).Chapter 3:「Moments and Cumulants」の続き(pp. 97-102).Sheppard 補正によるモーメント,階乗モーメント,キュムラントの修正.確率分布の定義域端の関数の挙動によって修正の善し悪しが決まるという.複素積分のところでぬかるみに落ちる.生物系だと複素関数とか複素積分に遭遇する機会がほとんどないので,たまに“白熊”に出会うとこういうことになる.そういえば,佐々木顕さんが,かつて10年ほど前に“species”の離散的パッキングの論文を Evolution 誌に出したとき,「進化学で複素積分を使ったのはこれが最初です」というようなことを生態学会大会で言われた記憶がある.

◇なお“トド”は居座る —— ざあざあ降りの夕暮れ時になって,3月8日の理研シンポジウムの要旨をメールで送る.本日の“トド撃ち”はここまで.

—— もっと“トド猟”に励めという督促メールがきたのだが,すみませんすみません.

◇「ドロミーティ」本に関するするどい質問が西から飛んできてあわてる.※神仏魍魎のこういう主題に反応するのですね

◇日が変わらないうちに寝る.明日も未明から“トド”撃ちだ.

◇本日の総歩数=6906歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜○.前回比=0.0kg/−0.9%.日中9hr+未明4hr=13hr労働.


19 februari 2006(日) ※ 異界と魔物:“トド”の群れに囲まれて

◇午前6時起床.目覚ましも鳴らずに目が覚めてしまう.雲が多め.気温は一桁台か.天気は下り坂だという.

◇朝の歩き読み 兼 Brooks の Discover GW の履き初めを1時間半 —— 増山暁子『イタリア異界物語:ドロミーティ山地 暮らしと伝説』(2006年2月12日刊行,東洋書林,ISBN:4-88721-700-5).300ページを読了.新刊案内でタイトルを見たときから,早くも「買うべき本」と決めていた.北イタリアの峻険なドロミーティ地域の民話を現地にたどる.異人や異神,魔物や妖怪が続々と登場する.アタリです.序章でも引用されているように,15年も前に読んだ菊池照雄『山深き遠野の里の物語せよ』(1989年6月20日刊行,梟社,ISBN:なし)を彷彿とさせる,現実界と幽冥界との混ざりあいだ.ドロミーティはイタリア版の“遠野”ということですね.

北イタリアと言えば,ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』の舞台だったり,あるいは「ヴォイニッチ写本」(→参照)の発見場所だったりするわけで.さらにいえば,カルロ・ギンズブルグ『夜の合戦:16−17世紀の魔術と農耕信仰』(1986年1月28日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-01211-1)の舞台もここらあたりだったりするわけで,それはもう「場」としては実に申し分ないではないですか.

国や地域あるいは時代や文化を問わず,こういう妖しいものたちに関心をもつ書き手がいるというのはとても心強いと思う.かつて,リアル書店の店頭で山本ひろ子『異神:中世日本の秘教的世界』(1998年3月23日刊行,平凡社[2003年にちくま学芸文庫に入る],ISBN:4-582-47506-X)を衝動買いしたことを思い出す.日本にも「妖しい神々」がいたという事実を知ったのは幸せだったが,そういう対象に向かってアンテナを張っている人たちがいるということこそ実はもっと意義があるにちがいない.

『イタリア異界物語』では,「伝承神話」から「現代民話」への流れの中に,著者が自然にはまりこんでいるようだ.ひとつだけ注文をつけるとしたら,掲載写真がもうちょいクオリティが高ければ言うことないのだが.

—— Discover GW はなかなか履き心地がよろしい.さすが評判がいいだけのことはある.

◇昨今の“トド”たち —— さて,わが身の回りの「現実」に引き戻されると,大小取り混ぜて何頭もの“トド”たちがのたうっている.アタマが痛いことだ.見ないふりして放置してもちっとも減らないところがまた憎たらしい(あっちへ行って!).ウィークエンドにもかかわらず,“トド”の駆除に勤しまねばならないのは身から出た錆か…….

◇まずは昨夜やってきた“小さいトド君”から —— 〈R〉による nested ANOVA の計算についての質問が某県の水産試験場から届いた.分散分析を〈R〉を用いて実行するときの参考書としては:

  1. Michael J. Crawley『Statistics : An Introduction Using R』(2005年4月刊行,John Wiley & Sons,ISBN:0470022981→目次
  2. Michael J. Crawley『Statistical Computing: An Introduction to Data Analysis using S-Plus』(2002年4月刊行,John Wiley & Sons,ISBN:0471560405→目次

の該当章が役に立つ.ネスト分散分析についても解説されている.今回やってきた“トド君”は Jerold H. Zar『Biostatistical Analysis (Fourth Edition)』(1999年刊行,Prentice Hall,ISBN:0-13-081542-X)の nested ANOVA 例題(Example 15.1: pp. 304-305)を背負ってきた.この例題では,異なる3薬(Drug)の中でのソース(Source)に関するネストをデザインし,血中コレステロール値(Cholesterol)の値を計測するという観察をおこなう.データ(SampleNestedANOVA.txt)は下記の通り:

Drug  Source  Cholesterol
 1    a     102
 1    a     104
 1    b     103
 1    b     104
 2    a     108
 2    a     110
 2    b     109
 2    b     108
 3    a     104
 3    a     106
 3    b     105
 3    b     107

データの読み込みから,因子指定までは下記の通り:

> mm <- read.table("SampleNestedANOVA.txt", header=T)
> attach(mm)
> Drug <- factor(Drug)
> Source <- factor(Source)

Drug 下に Source がネストされているので,線形モデルは「Cholesterol 〜 Drug/Source」となり, aov による分散分析は下記の通り:

> summary(aov(Cholesterol 〜 Drug/Source))

出力結果の分散分析表は下記の通り

            Df Sum Sq Mean Sq F value   Pr(>F)   
Drug         2 61.167  30.583 20.3889 0.002110 **
Drug:Source  3  1.500   0.500  0.3333 0.802202   
Residuals    6  9.000   1.500                    

上表でのF値はいずれも Residuals を分母として計算されているので,Zar が説明しているような“階層的”な F 検定をするときには(Drug:Source を Residuals で検定し,次いで,Drug を Drug:Source で検定するという手順),再計算が必要になるだろう.あるいは〈R〉で指定してやればいいのかもしれないが,どーすればいいのかな?(求む,wisdom of crowds あるいは crowds of wisdom !)

◇こんなことで疲れていてはいけないのだが,午後11時前に沈没.

◇本日の総歩数=12997歩[うち「しっかり歩数」=10738歩/90分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.4kg/−0.2%.日中10hr+未明0hr=10hr労働.


18 februari 2006(土) ※ 山積的残務,消耗的時間,呆然的週末

◇午前4時半に起床.仕事しないとダメなんですけど…….

◇落涙的歓喜 —— 呉永華『被遺忘的日籍臺灣動物學者』(1995年1月30日刊行,晨星出版[臺灣歴史館1],ISBN:9575835018→目次)を入手.以前,台湾で出版されているという情報だけは得ていた『被遺忘的日籍臺灣動物學者』だったが,幸い知人のつてで入手することができた.同じ著者と出版社で『被遺忘的日籍臺灣植物學者』(1997年6月30日刊行,晨星出版,ISBN:9575835700)という姉妹編が出ている.これも機会があれば手にしたいと思うが,この2冊はすでに新刊では手に入らないそうだ.

『被遺忘的日籍臺灣動物學者』は台湾で出版された本なので,漢字の繁体字(つまり“舊字體”)が苦痛でない人であれば,まちがいなく読み通せると思う(その点,簡体字よりはラクだ).句読点が縦書き行のど真ん中に配置されているのにとまどうが,こういうビックリな組版もかの地ではきっと標準的なのだろう.

本書に取り上げられている動物学者たちの中でも,昆虫学者の比率が飛び抜けて高いのは,誰もがフォルモーサを目指した当時としては当然のことだ.この本の前半に登場する松村松年の自伝『松村松年自伝』(1960年12月25日刊行,造形美術協会出版局,ISBN:当然なし)が手元にある.彼が台湾に行った折の記述は意外なほどごく簡単なものだが(pp. 190-195),上記の本ではかなり大きな扱いを受けている.自らが創刊した昆虫学雑誌 Insecta Matsumurana などに台湾の昆虫に関するおびただしい数の論文を出したからだろう.もちろん,北大時代の弟子である素木得一(彼ももちろん載っている)を後任として台湾に派遣したこともあるにちがいない.

昨年出たという『臺灣昆蟲學史話』(2005年刊行,玉山社,台北)も,もし可能なら手に取って見てみたいなあ…….>F越さん,お願いできます?

◇春めいてぽかぽかと暖かく感じる.気温はなお低めだが.

◇昨日メールで送られてきた生物統計学本の「企画書」に目を通す.これではぜんぜんダメです.新味がないし,たとえ読者需要があって売れそうであるとしても,そういう本を書く意欲はぼくにはまったくありません.もっと別のやり方で“仕掛ける”あるいは“掘り起こす”ないし“気づかせる”という視点からの新企画であってほしいですね —— ということで,目の前の企画書を勝手に書き換えて,出版社に送り返すことにしよう.

ということで,「これこれこーんな統計学本はどーでしょう?」ってなプロポーザル文を勝手につくってみて,編者やら執筆者を勝手に割り振ってしまった.何でも勝手に決めてしまうというのは,とても愉しいな.メールで相手方に返信する.

◇夜は別宅にて仕事.翻訳文と格闘する.泥濘はなお延々と続く.

◇本日の総歩数=6622歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.2kg/+0.2%.日中6hr+未明3hr=9hr労働.


17 februari 2006(金) ※ 「魔の“20日”」が近づく

◇午前5時起床.小雨.気温4.8度.

◇いろいろな予定の「締切日」を「20日」に設定していることに気がついた.「お願いしていたアノ件ですが……」|「じゃ,“20日”くらいということで」とか「アレはいつまでに出していただけるでしょうか……」|「では,“20日”までにということで」などというノリで“20日”締切を自分で勝手に決めているようだ.“月末”というのはなんだかギリギリでよくないかという自己規制が働くのかもしれない.かといって,“20日”に特別な意味があるわけではない.

いずれにしても,“20日”までに仕上げること多数 —— 現代新書原稿(第4章の残り)./岩波書店「形態測定学本」の目次案と『科学』原稿./理研シンポの講演要旨./海外出張の申請書(22日まで)./所内の予算執行(月内).

◇午前中に翻訳原稿のチェック1章分をすませて,速達で返送する.「拙速度」をかなり上げないと終わりようもないですな,これは.今週末にあと数章は進めないと“新潟”にとても間に合わない.

◇郵便局をまわってから歩き読む昼休み.曇り気味で気温7.0度 —— 梅田望夫『ウェブ進化論:本当の大変化はこれから始まる』(2006年2月10日刊行,筑摩書房[ちくま新書582],ISBN:4-480-06285-8→目次).5週間で書き上げたというアップテンポの新書だから,イッキ読みしてあげないと著者に失礼?というものだろう.250ページを90分あまりで読了.

インターネット世界のいろいろな「現象」 — ロングテール現象とかオープンソース現象,あるいはブログ文化 — を報告している.“Web 2.0”ってこの本ではじめて聞いた言葉だぞ.グーグルってそういう企業だったのか,と納得してしまった.P. 223 に載っている〈ウェブ進化図〉を見るだけでもこの本を手にした甲斐はあったな.「不特定多数無限大への信頼」があるかどうかという踏み絵は,ぼくには踏めないですね.「匿名者」は“しゃべる石”に過ぎないという認識はいまだに覆されていないので.つまりは,Wisdom of Crowds は認めても,最後は「実名者」のみおっけーということ.こういう世代間での認識のズレは,新世代の登場とともに変わっていくだろうという著者の意見はその通りだと思います.「老兵」は消え去るのみだ.

ひとつ,おもしろい話題があった —— 「フォークソノミー(folksonomy)」,すなわち「folks+taxonomy」という概念(pp. 198-199).あるオブジェクトをカテゴリー分類するのに,マス・コラボレーションでもって“分類”してしまおうというお話.楽しいじゃないですか.そのオブジェクトとしては「生き物」もありですよね.ということは,「不特定多数無限大への信頼」に基づく“正しい生物分類(自然分類ともいう)”が Web 2.0 world では可能なのでしょう.※誰かやらない?

—— この新書はとてもよく売れているらしい.著者自身のブログ(当然,はてな!)からはさまざまな反響が聞こえてくる.

◇昼下がり,「生物統計学の本を書きませんか」という声が聞こえ…….※西五軒町ではなく,別の方角からね.

◇今年もまた確定申告用の書類や領収書を取りまとめる季節がやってきた.

◇夕刻,別宅にてさらに仕事を続行する.午後からずっと,かすかに雨が降り続いている.気温は低めだが,冷え込んではいない.「魔の“20日”」を乗り切るには今日からいろいろしないと間に合いそうにない.ぜーったいに.

◇夜,西五軒町から言霊が飛んできた.ついでに,〈キクマルのサイト〉があることを知らされる.単に,「写真の見せっこ」をしていただけではなかったのですね(>とし様).それにしても,まりまりやら,いづみちゃんやら,ジェーン・グドールさんに抱っこされまくる〈キクマル〉はすでに VIP(いや VID か).これで某誌が〈御犬様特集〉でも組んだ日には,向かうところ敵なしですなあ.

◇本日の総歩数=17126歩[うち「しっかり歩数」=10624歩/81分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.2%.日中9hr+未明2hr=11hr労働.


16 februari 2006(木) ※ 春雨の降る明け方に

◇午前5時起床.小雨で地面が濡れている.気温は6.7度.暖かい春雨の風情.当然,春はサティ.

昨年暮れに復刊された秋山邦晴『エリック・サティ覚え書』(2005年11月20日刊行[初版1990年6月],青土社,ISBN:4-7917-6214-2)をぱらぱらしつつ,高橋悠治の弾く〈ジムノペディ〉を聴いていると(DENON COCO-70702),まさに高橋アキつながりということで.

秋山邦晴のことはこれまでほとんど知らなかったのだが,数年前に武満徹全集に関わった関係で,1950年代の〈実験工房〉の同人のひとりとしてその名前を知るようになった.上記サティ本は550ページを越える力作だ(青土社,えらいっ).イラストいっぱい.文字もいっぱい.

—— 今日は未明にしてもうすでに“あがり”かな.

◇午前10時〜13時までは,昨日と同じく,地下キャレルにて翻訳作業を続ける.※まさに「作業」です.

◇昼休みもなく,午後1時から1時間ほど,〈文化系統学〉セミナーの第5回目.Chapter 3「Cultural traits and linguistic trees: Phylogenetic signal in East Africa」(Jennifer W. Moylan, Corine M. Graham, Monique Borgerhoff Mulder, Charles L. Nunn, and N. Thomas Håkansson)の続き(pp. 36-38).cultural core tradition の系譜を探るための cultural traits をどのようにして検出すればいいのかという問題.著者らは言語学的データを用いて言語系統樹を構築し,それに基づいてアフリカ部族の文化進化を論じようとしている.系統学的シグナルをもつ形質を事前に知ることはほとんど困難だが,言語学的データがその「シグナル」をもっていると仮定している.文化的グループは文化的形質を包む“スキン”であるという喩えが見える(p. 37).遺伝子系譜学でいう species-tree / gene-tree のアナロジーだと思われる.文化進化モデルとしての「demic expansion」,「cultural diffusion」,そして「independent innovation」は,tangled-tree 理論では,それぞれ「cospeciation」,「lateral transfer」,そして「homoplasy」に相当する概念だろう.

◇来月の理研シンポジウムの概要が送られてきた(参加を希望される方は下記サイトで申し込んでください) —— 〈生体形状情報の数値化及びデータベース構築研究〉.2006年3月8日(水),10:00〜18:30(その後,懇親会あり).

—— 和光の理化学研究所に行くのは,その昔(およそ20年前っす),ピュアなオーバードクターとしてふらふらしていた頃に,何の間違いか「理研の応募を受けてこい」という天の声に煽られて,バイオサイエンスなんちゃら情報室というところの選考採用を受けて以来のことだ.その後,遺伝研に移ったT野さんとか,偶然にもつくばの近くに来てまた遠くに言ってしまったU川さんが当時の研究スタッフだった.もちろん見事に落とされた.10年ほど前に三島でのとあるシンポジウムで飲んだとき,そのT野さんにその昔話をしたことがある.落ちた側だけではなく,落とした側も意外に覚えていたりすることがわかった.

その後,敬遠したわけでは必ずしもないのだが,和光に行く機会はまったくない.まあ,20年も経てば当然“時効”になっているので(ワルいことをしたわけではないが),久しぶりに「中」に入ってみるか.車だと外環経由でアクセスがとてもラクなのだが,今回は東武東上線の和光市駅からてくてく歩くことにしよう.

◇夕方は別宅にて翻訳作業の続き.

◇夜,よそ見読書 —— ジョン・ラッセル・テイラー『英国アール・ヌーヴォー・ブック:その書物デザインとイラストレーション』(1993年4月5日刊行,晶文社,ISBN:4-7720-0375-4→目次)の続き.〈一九〇〇年代のアール・ヌーボー〉とそれ以降.これで読了.訳者解説がとても情報的だ.アーツ・アンド・クラフツ運動とアール・ヌーボー運動とは「近親憎悪的な複雑な関係」があると指摘する(p. 280).アーツ・アンド・クラフツでは“隙間”をたとえば唐草模様で埋め尽くすという「空間恐怖」の傾向があったのに対し,英国のアール・ヌーボーでは逆にシンプルさを基調とする「空間愛」を特徴とするという(p. 283).なるほどね.

◇本日の総歩数=6341歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−0.7%.日中8hr+未明2hr=10hr労働.


15 februari 2006(水) ※ 「遠雷」が聞こえる

◇寝過ごして朝6時.げ.ちっとも冷え込まず1.1度.晴れ.低気圧と高気圧が入れ替わりやってくるようになっると,もう寒波は来ないのだろう.研究所にてゲラを読む.

◇諸般,立て込んできたぞー.遠雷のごとし.

◇岡田暁生『西洋音楽史:「クラシック」の黄昏』(2005年10月25日刊行,中央公論新社[中公新書1816],ISBN:4-12-101816-8)の中の「リヒアルト・シュトラウスとマンモス・オーケストラ」という1節(pp. 188-191)で,ロマン派音楽の「物量作戦」と「ハッタリ」について指摘している.確かに交響詩〈アルプス交響曲〉の風音(windmachine)や雷音(thundermachine)なんていうのを見ると,「ハッタリかましやがって」と感じるのもムリはない.でも,〈アルプス交響曲〉の場合,ふたりのティンパニストによる「遠雷」の接近の描写の方がはるかにリアルだったりする.オーケストレーションの勝利.

◇朝から晴れて気温が高い.春めいた霞み方.

◇午前のこまごま —— クラスター分析についての質問に回答.「種組成に基づく群集クラスタリングで類似度指数が同一になったときの問題点は?」という質問に対しては,たとえ similarity がOTUペア間で同一であったとしても,クラスター形成アルゴリズムによって,階層構造への反映にはちがいがあるので一般論はできないと答えた.もうひとつ,「類似度指数の有意差はどのようにテストするのか?」という質問については,ブーツストラップのような計算統計学的方法によって,類似度指数の誤差範囲(あるいは経験的確率分布)を構築してはどうかと回答した.ついでに,クラスター分析の樹形図の信頼性についても,通常のブーツストラップなどで評価できるが,昨年公開された「R」の〈pvclust〉パッケージを紹介しておいた.これはマルチスケール・ブーツストラップによる表形図の検定を行なう./ 進化学会についての事務メールのやりとり./ 今年度の課題業績評価に関する確認.

◇正午から午後3時までは,地下キャレルに隠れて,某書類をつくり続ける.やはり,人跡まばらな半地下書庫はいいですなあ.150年も前のドイツの昆虫学会誌をめくったり,アメリカの各州の農事試験場報告のホコリを払ったりとか.

◇午後になって,いよいよ暖かくなり,気温は18度をあっさり越えた.これはもう春だ.花粉だ.砂埃だ.

◇休憩をはさんで,速攻で『生物科学』ゲラのチェックを完了し,速達で返送する.

◇夕刻のお籠り —— 4時前に研究所から退散し,〈ピーターパン吾妻店〉に電話予約しておいた「Vollkornbrot」一塊を引き取りにいく.1.5kg超.ずっとりと重い.その後,別宅に入り込み.さらに書類作りに邁進.ほぼ完成する.pdf 出力しておしまい.自宅に帰ったのは午後7時前のこと.暗闇の中,暖かさがまだ残っている.

◇隙間読書 —— ジョン・ラッセル・テイラー『英国アール・ヌーヴォー・ブック:その書物デザインとイラストレーション』(1993年4月5日刊行,晶文社,ISBN:4-7720-0375-4→目次)の〈一八九〇年代のアール・ヌーヴォー〉の章を読み進む.100ページほど.装幀家チャールズ・リケッツは初めて聞く名前.やっぱり,オーブリー・ビアズリーかな.怪奇な図柄.

ついでに,これも —— ウィリアム・モリス『理想の書物』(2006年2月10日刊行,筑摩書房[ちくま学芸文庫],ISBN:4-480-08964-0)の長い編者イントロと訳者解説を読む.1982年の原書 — William Morris『The Ideal Book : Essays and Lectures on the Arts of the Book』(1982年刊行,University of California Press,ISBN:0-520-05625-6) — と比較すると,サイズは1/4ほどだが,文庫だからしかたないだろう.それよりも付録C「ウィリアム・モリスの愛読書」と詳細にわたる「ケルムスコット・プレス刊本リスト・解題」がついているのがいいな.晶文社のもとの訳本(1992年11月25日刊行,晶文社,ISBN:4794960964)も機会があったら手にしたいものだ.

◇何のかんので寝たのは 0:30.夜更かしさん.

◇本日の総歩数=4804歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.5kg/+0.7%.日中9hr+未明1hr=10hr労働.


14 februari 2006(火) ※ 早朝からめまぐるしい

◇午前4時半起床.晴れ.気温マイナス3.2度.研究所にて,〈Paris Concert〉を聴きつつ,仕事.

◇未明のこまごま —— 『生物科学』ゲラのチェック.「“みなか”の書評ワールド(11)」.今回とりあげるのは,関秀夫『博物館の誕生:町田久成と東京帝室博物館』(2005年6月21日刊行,岩波新書953,ISBN:4004309530→書評),アラン・カトラー『なぜ貝の化石が山頂に?:地球に歴史を与えた男ニコラウス・ステノ』(2005年8月9日刊行,清流出版,ISBN:4860291166→書評),戸田山和久『科学哲学の冒険:サイエンスの目的と方法をさぐる』(2005年1月30日刊行,NHK Books 1022,ISBN:4140910224→書評),野中健一『民族昆虫学:昆虫食の自然誌』(2005年11月16日刊行,東京大学出版会,ISBN:4130601857→書評),そして,ポーラ・フィンドレン『自然の占有:ミュージアム,蒐集,そして初期近代イタリアの科学文化』(2005年11月15日刊行,ありな書房,ISBN:4756605885→書評)の5冊.刷り上がりで10ページにもなる.ざっと読んで問題なければそのまま返送しよう.

—— あ,さっそく問題が浮上.書評のドッペるはダメよ(>U田さま).かといって,空白ページの「穴」をあけるわけにいかないしねえ.

◇数理言語系統学の備忘メモ —— 〈Computational Phylogenetics in Historical Linguistics〉プロジェクト:歴史言語学への数理系統学の適用.いくつかの論文がダウンロードできる.系統樹探索の“divide-and-conquer”法って有効なんでしょうか? / 〈Mathematical and Computational Approaches to Linguistic Phylogeny〉国際会議(27 May - 3 June 2006, Banff International Research Station):今月出る Peter Forster and Colin Renfrew (eds.)『Phylogenetic Methods and the Prehistory of Languages』(2006年1月20日刊行,The McDonald Institute for Archaeological Research,ISBN:1902937333)の後継シンポのようだ.

◇午前いっぱいは科振調の申請書類の手直しにかかりきり.毎度毎度のことながら事務書類書きは消耗戦だ.正午過ぎに課題代表者にメールで改訂版を送る.

◇晴れた昼休みは気温が14.8度まで上がった —— 歩き読み:ジョン・ラッセル・テイラー『英国アール・ヌーヴォー・ブック:その書物デザインとイラストレーション』(1993年4月5日刊行,晶文社,ISBN:4-7720-0375-4→目次).19世紀〜20世紀の〈アーツ・アンド・クラフツ〉運動とそれに続く〈アール・ヌーヴォー〉運動との複雑な関わり合いが論じられている.100ページほど.ケルムスコット・プレスの本は“芸術品”として鑑賞する分にはいいが,手に取って読む本ではないと著者は言う.なるほどね.

◇午後1時半から1時間ほど,〈Zar統計学本〉セミナー(第37回) —— Chapter 20. Multiple Regression and Correlation (pp. 437-443).複数のデータセットから計算された重回帰モデルのパラメータの差に関する検定について.偏回帰係数についてまずはじめに検定し,その同一性を確認した上で,切片の同一性をテストするという手順をとる.次いで,非線形回帰についての解説.多項式回帰と指数関数族のモデルが登場する.

◇午後のこまごま —— 来週,とある打合せのため横浜へ行く予定が入る./ いくつかの書評をメーリングリストに流す.ウェブサイトやウェブログをつくるようになってから,メーリングリストへの投稿がずいぶん選択的になったと自分でも思う.

◇ゲラと原稿をかかえてウロウロするが,なかなか進まず,そのまま夜になる.日が変わる頃に就寝.

◇本日の総歩数=11891歩[うち「しっかり歩数」=6955歩/58分].全コース×|×.朝△|昼○|夜×.前回比=−0.6kg/−1.9%.日中8hr+未明3hr=11hr労働.


13 februari 2006(月) ※ まだまだ寒いぞ!

◇午前4時起床.マイナス5.5度.めっちゃ寒すぎ.研究所に直行する.

◇未明のこまごま —— RIKEN から昨年のシンポジウム要旨集が届いていた:〈生物形態情報の数値化及びデータベース構築研究〉(2005年3月9日,理化学研究所,xx+96 pp.).引き続き,今年3月8日に予定されているシンポジウムでの演題をシンポジウム事務局に通知する:三中信宏「幾何学的形態測定学:生物学・幾何学・統計学の接点で」.50分の特別講演./ 進化学会の事務担当さんが退職するので,挨拶メール.

◇新刊情報 —— Peter Forster and Colin Renfrew (eds.)『Phylogenetic Methods and the Prehistory of Languages』(2006年1月20日刊行,The McDonald Institute for Archaeological Research,ISBN:1902937333→版元サイト).歴史系統学における系統推定法の適用.やっと出版されたか.

◇Ashgate Publishing から進化史本いろいろ —— C. U. M. Smith & Robert Arnott(ed.)『The Genius of Erasmus Darwin: Science, Technology and Culture, 1700-1945』(2005年2月刊行,Ashgate Publishing,ISBN:0-7546-3671-2)→版元サイト./ Martin J. S. Rudwick『Lyell and Darwin, Geologists: Studies in the Earth Sciences in the Age of Reform』(2005年3月刊行,Ashgate Publishing,ISBN:0-86078-959-4)→版元サイト./ Martin J. S. Rudwick『The New Science of Geology : Studies in the Earth Sciences in the Age of Revolution』(2004年5月刊行,Ashgate Publishing,ISBN:0-86078-958-6)→版元サイト

◇気温7度.晴れた昼休みの歩き読み(久しぶり) —— 富士川英郎『讀書散策』(2003年3月30日刊行,研文出版,ISBN:4-87636-217-3).クロス装幀で,手触りよし.前半は詩論.後半は自伝的回顧.かつての時代の大学人として良き生涯を送られたと思う.速読みすべき本ではないのだが,つい200ページあまりをイッキ読み(申し訳ありません……).

◇午後1時半〜2時半まで,Alan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読(第10回目).Chapter 3:「Moments and Cumulants」の続き(pp. 91-96).キュムラントの求め方をいくつかの確率分布について実際に計算してみる.前回に比べてはるかにわかりやすい.しかし,階乗キュムラントのあたりから,再びぬかるみに立ち往生するようになり,オイラー-マクローリン和とかベルヌーイ数あたりで,沼地の毒気にふらつく.

◇ずいぶん前に消えたはずのサイトがほとんどそのままウェブ・アーカイヴされていることに気がついた.たどり着けたのは幸運だ.

◇午後は翻訳原稿のチェック,またチェック.エンドレスな作業が続く.

◇おお,そうか「2月12日」はダーウィンの誕生日だったね.〈Darwin Day Celebration〉へ go !

◇夜10時に寝てしまう.

◇本日の総歩数=10680歩[うち「しっかり歩数」=6784歩/57分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+1.2%.日中9hr+未明3hr=12hr労働.


12 februari 2006(日) ※ 強風と土煙の日曜日

◇午前6時起床.明け方,冷え込んだらしく,霜が車のガラスにびっしりと.

◇午前9時半から正午まで,エポカルにて,とある管理組合の設立総会に参加する.晴れて風がとても強い.

◇朝の歩き読み1冊 —— 岡田暁生『西洋音楽史:「クラシック」の黄昏』(2005年10月25日刊行,中央公論新社[中公新書1816],ISBN:4-12-101816-8).第1章のグレゴリオ聖歌からはじまって,ルネサンス,バロックを経て,第4章のウィーン古典派まで.音楽史を大きく見渡しているところがとてもいいです.ペロタン! もう一度,ヒリヤード・アンサンブルの CD を引っ張り出してくるか.確かに八分の六拍子がペロタンの特徴だという指摘はよくわかる.スティーヴ・ライヒの作品「プロヴァーブ」は,歌詞はヴィトゲンシュタインからとっていたが,曲想はペロタンから得ていたはずだ(確か).

◇午後は別宅にて仕事.夕方まで.午後になって,北風はさらに強く吹き荒れるようになり,乾ききった田畑から土煙がもうもうと立ち上がっている.これが南風だったらきっと“春一番”だろう.

◇夜,『西洋音楽史』を読了.著者は読み方によってはとても“悲観的”なスタンスにあるように見えるのだが,正しいのかもね.たとえば交響曲を聴くことが一種の「宗教体験」であったり(p. 192),音楽を聴くことで「感動」したがる聴衆がいる(p. 229)かぎり,“クラシック音楽”はこれからも末永く存命し続けるという指摘は,その通りでしょう.後期ロマン派までは充実した記述だったが,20世紀以降の現代音楽については駆け足過ぎたのではないか.メシアンやタケミツがいないんですけど…….随所に掲載されている昔の演奏会の絵はおもしろい.

本書を読んでいてひとつ気になるのは,“クラシック音楽”を社会的文脈の中で相対化しようという著者の立場が,場合によってはいい方向に働いているのだが(たとえば J・S・バッハの音楽に関する見解のように),いろんなジャンルの音楽を全部ひっくるめて「同格扱い」されてしまって(とくに最終章),その結果,著者の論点がよくわからなくなってしまったという弊害もあるとぼくは感じた.

◇まだ暮れきらない東の空にくっきりと満月が.さらに寒くなってきた.

◇夜のこまごま —— 理研での形態測定学トークの持ち時間は50分とのこと.演題は明日送ることにする.

◇本日の総歩数=8032歩[うち「しっかり歩数」=2543歩/22分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=+0.8kg/+0.1%.日中9hr+未明0hr=9hr労働.


11 februari 2006(土) ※ 本厚木にて朝を迎える

◇午前5時に目が覚めたのだが,そのまま3時間ほどうだうだしてしまう(こら).メールを見て日録を書いてから,今日の予定の消化に入る.

◇10時前の小田急に乗り,神田に出る.小川町のスターバックスに陣取ってひたすら原稿を書き続ける.3時間で20枚弱を書き上げる.第4章の2節分にあたる.午後3時に〈さぼうる〉にて講談社の編集者氏に原稿を渡し,これからの打合せ.今月中にエピローグまでの原稿を渡す段取りにしておかないと,Conway Morris 訳本のゲラがどっと押し寄せてくるそうな(こわ).新創刊の『ラチオ』誌のこととか.

『だから系統樹!』も『生命の選択肢』もゴールデン・ウィークの頃には書店に並んでいるだろう.

◇午後5時過ぎにつくば着.車中読書 —— 笹原宏之『日本の漢字』(2006年1月20日刊行,岩波書店[岩波新書(新赤版)991],ISBN:4-00-430991-3→版元ページ).読了.漢字の系統発生とその進化過程を論じた格好の入門書.とくに,“俗字”という variation の発生過程と,それがどのような selection を受けて,後世に存続するか(あるいは絶滅するか)を具体的な事例を豊富に挙げつつ論じているところに注目したい.

漢字進化に関する population thinking を著者が徹底しているのは興味深い.個人的には「微小地名」に関する著者自身の体験談がとてもおもしろかった.漢字の使用頻度にともなって画数を減少させる方向への淘汰圧があることや,漢字の省略に伴って生じる homoplasy(「衝突」)が生じるなど現象は,生物の系統発生にも通じるものがあるように感じる.漢字の変遷という素材を通じて,文化進化あるいは文化系統という大きなテーマに通じる論議に展開できると思った.

それにしても,この新書は組版がさぞたいへんな作業だったろうと推測する.辞書にない漢字がばんばん出てくるから.その辺を堪能するという愉しみ方もある.

[付記]著者のあとがきによると,近刊として,『日本人が創った漢字:国字の世界』(講談社)と『国字の位相と展開』(三省堂)が出版予定とのこと.期待しましょう.

◇夜のこまごま —— 科振調の申請書類にまたまた要修正箇所が発覚.修正は週明け./ 〈生物統計学・春の学校〉のサイトが開設された.

◇本日の総歩数=6982歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝−|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.日中7hr+未明0hr=7hr労働.


10 februari 2006(金) ※ 霜も凍りつく遠距離セミナー日

◇午前4時半起床.最低気温はマイナス5.9度.この時期が1年でもっとも寒くなる.研究所に直行し,原稿を書きつつ,今日のプレゼン pdf の最終チェック.BGM は Glenn Gould の〈ゴールドベルク変奏曲〉.

◇研究所を出た午前7時にはマイナス6.1度になっていた.晴れ.帰宅し,プチ旅支度をして 9:41 の TX 快速で,北千住まで.千代田線/小田急と乗り継いで,いつもより短いちょうど2時間で本厚木に到着.車中ではプレゼンのイメージ復習と pdf ページの入れ替えをした.午後の二連続セミナーなので,下準備もそれなりにしておかないと.

◇タクシーで農大キャンパスへ.昆虫研究室に顔を出してから,講義室に直行.以前,昆虫学会大会で使った講義棟の1室がセミナー会場だ.

—— 午後1時〜2時45分:「一から出直す生物統計学:自然界のバラツキを科学するために」.次いで,午後3時〜4時45分:「生物の多様性を体系化する:分類学と系統学を対比しつつ」.受講者は50名弱.みなさん,お疲れさまでした.

◇午後5時過ぎから研究棟の実験室にて懇親会.黒糖焼酎をたくさん摂取した気がする.さらに昆研に戻ってから,さらに呑み進む.タクシーでホテル東海に送り届けられたのは午後11時過ぎのこと.さらにお疲れさまでした.

◇欲も得もなく寝る.明日は原稿を都内で書く日.

◇本日の総歩数=9541歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.2kg/−0.8%.日中14hr+未明2hr=16hr労働.


9 februari 2006(木) ※ 未明の研究室に魔は来ない

◇午前3時半起床.昨夜の雨で湿度が高いせいか,霜が降りる.気温0.2度.研究所に直行し,タケミツを聴く 原稿仕事に精を出す.

◇先日,岩波書店の編集者と形態測定学本の打合せをしたとき,「三中さん,ウェブ日記を本にしませんか?」と訊かれた.しかし,どう考えても,この〈dagboek〉は「紙」にする価値があるよーなものではない.もっとまとまった[本になりそうな]エッセイをウェブに出している人はたくさんいるはずで,こういう私的備忘録をことさらに「紙」で出版する意義はないのではないかと思う.むしろ,〈leeswijzer〉の方がむしろ「紙」化にふさわしいのでは,と答えた.アナザー“蒐書日誌”みたいだけど.

そういえば,〈leeswijzer〉へのアクセス回数は,いつもの月は8,000/月くらいなのだが,年明け以降の1ヶ月は10,000を越えている.

◇朝から北風が強く,気温の割には寒い寒い —— 午前10時半から,グループ内会議.いろいろなことがペンディングのまま,いたずらに時間が過ぎているようで.新年度に間に合うのかしら…….居場所があるかしら……./ 年休届けを提出する./ 研究交付金の予算執行は今月中に./ 海外出張申請は今月22日までに出す.オアハカ!

◇昼休みはいい天気だが,半地下キャレルにこもって原稿を書く.まだまだー.

◇午後1時から2時半まで,〈文化系統学〉セミナーの第4回目.今日から新しい章:Chapter 3「Cultural traits and linguistic trees: Phylogenetic signal in East Africa」(Jennifer W. Moylan, Corine M. Graham, Monique Borgerhoff Mulder, Charles L. Nunn, and N. Thomas Håkansson)に入る(pp. 33-36).言語系統樹にもとづく系統学的比較法を東アフリカの人類学データに適用する.序論では,文化的特性が系統学的に解析できるかどうか,そして方法論上の難点はどこにあるのかを論じる.単なる“pattern matching”から“model testing”に脱皮するためには,統計学的なツールと系統学的な比較法を用いるべきだという.

◇科振調の申請書類に不備があって書き直し(くー).速攻で完了させる.飛んでけー.

◇夕刻,別宅にて1時間あまり,原稿仕事の続き.

◇明日は,東京農大の厚木キャンパスにて2連続セミナーをするので,旅支度をする夜11時過ぎに就寝.

◇本日の総歩数=6488歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼−|夜○.前回比=−0.1kg/+0.3%.日中10hr+未明4hr=14hr労働.


8 februari 2006(水) ※ 十重二十重とはこのことか

◇午前3時半に目覚め,4時半に起きる(←この1時間の“時差”は何ですねん).研究所へ.気温マイナス0.5度.気温的には春めきませんな,ぜんぜん.でも,青空は広がる.

—— バッハのカンタータを聴きつつ,翻訳原稿に取り組む.“ワイルド・カード”をおもむろに使い始める.※亢進する拙速主義っ.

◇朝のこまごま —— 小学校に立ち寄り,PTA の仕事を1時間ほど.卒業式で映すスライドの写真取り込みと pdf 出力をする.すんなりと完了.

◇午前10時の気温は9度.晴れて暖かい.また一歩“春”が近づいた.

◇可愛い?「蛭」たち —— 〈新よりぬきカツラくん〉からの情報.AMNH のヒル研究者 Mark Siddall(→彼のサイトへ go !)の New York Times インタビュー記事(「His Subject: Highly Evolved and Exquisitely Thirsty」,7 February 2006).インタビュアーは Carl Zimmer.ヒルまたヒル.愛らしいヒル.近寄らないでほしいヒル.ヒル,ヒル,ヒル.4分におよぶ蛭ちゃんビデオ映像もあり(ひー).Willi Hennig Society Meeting では毎年のように Mark の「ヒル講演」がある.けっして愉しみにしているわけではないが,指の隙間からこわごわ“眼球に吸い付くヒルの圖”などを何度も見たりした.

◇科振調申請書提出完了 —— ここ数日じたばたした申請書だったが,午後3時にやっと担当分のサブテーマ内容や予算書,参画研究者リストとともに申請書類を仕上げて,課題代表者にメールで送信する.はてさてどーなることやら.

◇アマゾンから届いたシカゴ大学出版局本3冊 —— Deborah G. Mayo『Error and the Growth of Experimental Knowledge』(1996年刊行,University of Chicago Press,ISBN:0-226-51197-9 [hbk] / ISBN:0-226-51198-7 [pbk] →版元サイト).実験科学の哲学.本書では,統計学的推論に関する「error-statistics」が新たに提唱されている.なお,Systematic Biology 誌に Dan Faith によるとても長い書評が載っている(Vol. 48, no. 3, pp. 675-679: doi:10.1080/106351599260247)./ James A. Secord『Victorian Sensation: The Extraordinary Publication, Reception, and Secret Authorship of Vestiges of the Natural History of Creation』(2000年刊行,University of Chicago Press,ISBN:0-226-74410-8 [hbk] / ISBN:0-226-74411-6 [pbk] →版元サイト).Robert Chambers の伝記本.600ページ超だー./ Elisabeth S. Vrba and Niles Eldrtedge (eds.)『Macroevolution — Diversity, Disparity, Contingency : Essays in Honor of Stephen Jay Gould』(2005年刊行,University of Chicago Press,ISBN:1-891276-49-2→版元サイト).グールド追悼論文集.The Paleontological Society が発行している雑誌 Paleobiology の特集号(Supplement to Vol. 31, no. 2).

◇Dan Faith の新しい論文がたまたま釣り上がった —— Dan P. Faith「From species to supertrees: Popperian corroboration and some current controversies in systematics」.Australian Systematic Botany, 17 : 1-16, 2004.pdf として公開されている.この総説記事は〈L. A. S. JOHNSON REVIEW No. 1〉と銘打たれている.体系学は Rainbow's end を越えて大きく進んできたということなのだろう.

◇さて,再び翻訳労働に復帰しよう…….

◇夕方,燃えるような夕陽が見えたと思ったら,ぽつぽつと雨が降りだす.晴れているのか曇っているのか,不安定な空模様.別宅に隠れる.

◇夜,和光の理化学研究所から,形態測定学に関する講演依頼のメールが届く.RIKEN の〈生体力学シミュレーション研究プロジェクト〉の主催で,Biomechanics のシンポジウムを3月8日(水)に開催するそうだ.他の予定が入っていない日だったので,承諾の返事を出す.

◇近刊情報 —— ウィリアム・モリス『理想の書物』(2006年2月10日刊行,筑摩書房[ちくま学芸文庫],ISBN:4-480-08964-0).文庫版ということは,図版のインパクトは小さくなるのだろうね.

◇寄せては返す仕事波.

◇本日の総歩数=7288歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.前回比=+0.4kg/−0.6%.日中9hr+未明3hr=12hr労働.


7 februari 2006(火) ※ 降ったのは小雨のみ

◇午前3時半起床.小雨.雪にはならなかったようで.気温0.2度.

◇研究所に直行し,農大セミナーのプレゼン資料をチェックする.統計学入門と生物系統学の2回のセミナーをするので(90分×2),pdf のページにして300枚ほどになる.重複部分を削って,参考文献リストを含むハンドアウト用資料をつくる作業.

—— 今朝の BGM はショスタコーヴィチの交響曲14番〈死者の歌〉.またまた暗いぞ!(明るい交響曲なんかどこかにあったか?)

◇【つくば】—— そういえば,〈つくばレストラン〉の掲示板によると,北中島の〈トラットリア・デル・マーレ〉が店を閉めたそうだ(建物自体が取り壊されたとか).ときどき散歩で通りかかるだけだが,あのロケーションでは客はたどり着くことすらできなかったのではないだろうか.金田の〈藤右ェ門〉よりも到達困難度が数倍は高かったと思われる.

◇午前7時過ぎにハンドアウト作成作業を完了.これでセミナー関連の仕事はおしまい./ついでにメーリングリストの登録作業もさくさくとすます.

—— BGM はショスタコーヴィチの交響曲12番〈1917年〉.そらもう,なんちゅうても,「革命のペトログラード」に,「人類の夜明け」でっせ.

◇午前いっぱいは冷たい霧雨が降っている.このまま雪にはならないようだ.午後は晴れて気温急上昇との予報だが,いまはそういう雰囲気ではない.

◇午前のこまごま —— 駆け込みのプロジェクト申請書類についての督促.明日までねー(たら〜).知恵袋にまたまた召還しないとダメかな./ 農大セミナーの配布資料は郵送で送ることにした.計300MBもあるような pdf ファイルはメール添付では送れないしね.

◇出版社 PR 誌の「定価」について —— 先ほど〈leeswijzer〉でコメントをもらったのだが,『月刊みすず』はタダでは配っていなかったのね.定価300円(本体価格)とのこと(確かに記されている).そういえば,他の出版社の PR 誌は本屋のレジ近くでよく無料配布されている(もちろん,それぞれ「定価」がついている)が,『月刊みすず』はそのような配り方はされていなかったなあ.定価300円だとさすがにタダでは配らないだろう(うんうん).

◇備忘メモ —— 2月5日付の〈森山日記〉によると,ドキュメンタリー映画〈ダーウィンの悪夢:アフリカの苦悩[前・後編]〉が 3月5日(日),22:10〜0:00 に BS1 で放映されるとのこと(→NHK BS オンライン).公式サイトを見ても,英語版はまだ出ていないようだ.

◇午後1時から午後2時まで〈Zar統計学本〉セミナー(第36回) —— Chapter 20. Multiple Regression and Correlation (pp. 428-437).重回帰分析における変数変換(一次変換)の効果,独立変数のステップダウン削減による,モデルの単純化の手法(偏回帰係数の有意性検定による選択).さらに,ダミー変数の組み込みによるカテゴリー変数のモデルへの取り込み.最後に,変数間の交互作用のモデル化について.交互作用(interaction)とは,複数の独立変数が目的変数に与える同時的効果であり,独立変数の間の相関(intercorrelation)と混同してはならないと著者は言う.

◇予報に反して,夕方になっても寒い雪空のまま.午後10時過ぎに寝る.

◇明日[こそ]は,科学技術振興調整費の申請書を書かないといけない…….

◇本日の総歩数=5611歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=−0.5kg/+1.1%.日中7hr+未明4hr=11hr労働.


6 februari 2006(月) ※ 雪空アゲイン

◇午前3時半起床.気温マイナス5.8度.昨日同様,乾いて寒い.研究所に直行し,ショスタコーヴィチの交響曲13番〈バービー・ヤール〉を大音量で暗〜く聴きつつ,暗〜く仕事を続ける.暗〜く寒〜い明け方には,ショスタコーヴィチの後期のシンフォニーが似合う.

◇未明のこまごま —— 農環研の英文年報のゲラをチェック(完了)./ 朝日カルチャーセンターの宣伝文をチェック(完了)./ 成績報告書類に関する確認(完了)./ ソーバー訳本の郵送準備(完了)./ 東京農大の昆虫研究室の卒論発表の日程は2月25日(土)の午前11時から.厚木キャンパス./ 宿舎に関する組合のアンケートに答える.これも最後になるか.

◇数日遅れで,メーリングリストの月例アナウンスを流す.月初めが超多忙だったので,ずれこんでしまった.

◇今日は朝から雪空で,午後から夜にかけて雪が降るとの予想だ. —— と,思って窓の外を見たら.もう雪がしんしんと降り始めてしまった昼休み.歩き読みはもちろん中止ね.

◇以前,田口一夫『ニシンが築いた国オランダ:海の技術史を読む』(2002年1月18日刊行,成山堂,ISBN:4-425-30211-7→書評・目次)の書評を書いて以来やり取りのある著者の田口さんから,朝日ビジュアルシリーズ「司馬遼太郎『街道をゆく』」(2006年2月12日号)に掲載されたオランダのニシン産業についての記事を送ってもらった.ありがとうございます.

◇小雪は1時間ほどでいったん止んだ.

◇午後1時から,久しぶりのAlan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読(第9回目).Chapter 3:「Moments and Cumulants」の続き(pp. 85-91).階乗モーメントについての残りの説明ののち,いよいよ怪物“キュムラント”の登場.モーメント母関数の対数関数として定義されるキュムラント母関数は,いかにも“怪物的”に舞台にあがってくる.定義式の指数関数や対数関数をテイラー展開することで,はじめてモーメントとキュムラントの係数どうしの対応づけが可能になる.「タペストリー」のごとく逐次的に計算される関係式が何ページも続き,さすが Volume 1 の難所を特徴づけている.いやはやたいへん.次回の実例とともにもういちどこの一般論に立ち戻る必要があるだろう.

◇セミナーの間にも,翻訳原稿の督促とか,いろいろと,まあ……(汗).

◇午後のこまごま —— 研究室所有の高額物品の廃棄処分に関する書類作成を求められる.高いものは買うのも捨てるのもたいへん./ 東京大学総合研究博物館・大場秀章さんの退官記念講演,シンポジウム,およびパーティの招待状が届いた.2006年3月9日(木)の午後,東京大学山上会館にて.大学院生の頃,大場さんにはいろいろお世話になっていたので,できれば参加したい./ メーリングリスト関連の作業いろいろ.これから年度末にかけては異動が多くなるので,積もらないうちに処理する必要がある./ 旧・蒼樹書房本に関する問い合わせへの対応.申し訳ありません,ソーバー本 以外 の本につきましては,ワタクシにはどうしようもないのです.

◇やっと届いた〈月刊みすず〉 —— 毎年恒例の「読者アンケート特集」(月刊みすず,48巻1号[2006年1〜2月号]).去年よりもさらに20ページほど厚くなって,130ページもある.もし店頭でもらえるのなら,この号だけでももらっておいた方がいいですよ.>読者諸氏.

ぼくの寄稿は pp. 30-31 に載っている.届いたばかりでまだ読み切ったわけではないが,知った名前もたくさんある:小西正泰が挙げる『臺灣昆蟲學史話』(2005年刊行,玉山社,台北)はきっとおもしろいのだろうな./ 金森修いわく「科学の現状をそのまま肯定した幇間的作業に堕する可能性」(p. 13),とても勇ましい発言ですこと./ルシフェル大野克嗣の神託「人が生き物であることを忘れることを人文科学的誤謬と名づけるべきだろう」(p. 100),おお!/ 斎藤成也はやはり『NANA』を筆頭に挙げたか……./ 田崎晴明評はとても“硬派”な感じがする.ひょっとしてすごくマジメなキャラクターの人だったのか(失礼)./ 今回の特集では生物学者にくらべて物理学者からの寄稿が多くなったのでは? / 何だか「奥本ファーブル全集」が方々で取り上げられている気がする./ 最後に,再びルシフェルいわく「日本では,たとえば,こういうところに原稿を依頼されるのは引退したか引退寸前の印だ」(p. 101).ううむ,ワタクシなんぞはこの歳にしてすでに何十回も引退し続けていることになるのだろーか.うーむ.

—— ま,いずれにせよ,『月刊みすず』の最新号をまだ手にしていない方はリアル書店のレジ横(?)めざして走るべし.

◇なんだかもー,どーしましょ,どこから手をつけましょって感じで…….止んでいた雪がまた降り出しそうだし.だんだん暗くなってきたし.

◇夜,別宅に立ち寄ってから,本宅に帰る.今週末の東京農大セミナーのプレゼン資料とハンドアウトを用意し,午後11時に就寝.

◇本日の総歩数=5722歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=0.0kg/−0.1%.日中7hr+未明4hr=11hr労働.


5 februari 2006(日) ※ 極寒の早春は2倍速で進む

◇午前5時起床.久しぶりに研究所に直行する.気温はマイナス6.7度.予報通り,今年いちばんの冷え込みだ.湿度が低いので霜すら降りない.ただただ冷え込むのみ.

◇午前中は本宅にて原稿仕事をする.いまだエンジン暖まらず.

◇国書刊行会おそるべし —— 先週届いていた2冊の本は,いずれも〈知の自由人叢書〉から:坪井正五郎『うしのよだれ』(2005年9月30日刊行,国書刊行会[知の自由人叢書],ISBN:4-336-04714-6→版元ページ).人類学者.坪井正五郎のエッセイ集.500ページ超./ 斎藤昌三『少雨荘書物随筆』(2006年1月31日刊行,国書刊行会[知の自由人叢書],ISBN:4-336-04715-4→版元ページ).書痴中の書痴が書いた限定本3冊(『書痴の散歩』,『書淫行状記』,および『紙魚供養』)の復刻本.合わせて700ページを越える厚さ.

この叢書からは,今後,フレデリック・スタールや沼波瓊音の著作が予定されているという.

さらには,この6月に『澁澤龍彦:書物の宇宙誌』という本が国書刊行会から出るそうな.澁澤龍彦の全蔵書リストらしい.くいー.

◇もうひとつ,先週いただいた本 —— 総合地球科学研究所の野中健一さんから,野中健一(編)『野生のナヴィゲーション:民族誌から空間認知の科学へ』(2004年10月1日刊行,古今書院,ISBN:4-7722-1497-6)と朴恵淑・野中健一『環境地理学の視座:〈自然と人間〉関係学をめざして』(2003年8月30日刊行,昭和堂,ISBN:4-8122-0317-1)を含む,多くの別刷りを送っていただいた.どうもありがとうございます.>野中さん.

先日,ぼくが書評した野中健一『民族昆虫学:昆虫食の自然誌』(2005年11月16日刊行,東京大学出版会,ISBN:4130601857→目次書評)をごらんになったとのこと.

◇これから始まる「2倍速モード」に備えて,10時過ぎに寝る.明日は未明起き.

◇本日の総歩数=3025歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜○.前回比=+0.2kg/−0.6%.


4 februari 2006(土) ※ 立春はピストン運動の終焉

◇9時間も寝てしまい,午前6時半に起床.頭痛は治っていた.私的3連休に続いて,公的ウィークエンドの用事が入る.9:47 の TX にて東京へ.用事をすませて,即,つくばへ直帰.昼過ぎにはもう戻っていた.※ピストン運動はもうやめれー.

◇晴れてはいるが,とても寒い.5度前後という最高気温の予報は当たっていたようだ.

◇車中読書 —— 斎藤昌三『閑版 諸国巡礼記』(1998年8月10日刊行,平凡社[東洋文庫639],ISBN:4-582-80639-2)を読了.本の装幀は書かれた内容の自然な“延長”とみなされるべきだという主張が繰り返される.いたずらに豪華な造本,あるいは内容に比して質素過ぎる製本はことごとく拒絶するのが著者のスタンスなのだろう.吉野作造を囲む会が向ヶ丘の〈呑喜〉で定期的に開催されていたという話は楽しい.下戸の吉野はひたすら蒟蒻にかぶりついては,当時からすでにあった名物の茶飯をかきこんだそうな.吉野の葬式では〈呑喜〉から花輪が届けられたとか.ほかにも金尾文淵堂のこととか.この版元については,すでに伝記が出ている:石塚純一『金尾文淵堂をめぐる人びと』(2005年2月28日刊行,新宿書房,ISBN:4-88008-333-X→書評).斎藤昌三は金尾文淵堂の盛衰を同じサイドで見ている.

◇AMNH デジタル・ライブラリーから —— アメリカ自然史博物館が無料で公開を始めた逐次刊行物から,ためしにいくつかめぼしいものをダウンロードしてみた.いずれも数十MBもあるpdfファイルなので,ダウンロードするときには注意しないといけない.

  1. George G. Simpson『The principles of classification and a classification of mammals』(1945年刊行,Bulletin of the American Museum of Natural History, vol. 85, xvi+350 pp.)
    進化分類学のモノグラフ.1961年の『Principles of Animal Taxonomy』の祖形.分類学に関わる一般論は最初の数十ページだけで,あとはほ乳類分類体系の各論.
    ダウンロード先→「http://hdl.handle.net/2246/1104」.
  2. Ernst Mayr (ed.)『The problem of land connections across the South Atlantic, with special reference to the Mesozoic』(1952年刊行,Bulletin of the American Museum of Natural History, vol. 99, article 3, pp. 83-258)
    進化学会(SSE)の創立間もない頃のシンポジウム論文集.
    ダウンロード先→「http://hdl.handle.net/2246/312」.
  3. Don E. Rosen et al.『Lungfishes, tetrapods, paleontology, and plesiomorphy』(1981年刊行,Bulletin of the American Museum of Natural History, vol. 167, article 4, pp. 163-275)
    分岐学にもとづく当時の分類体系の変革を象徴する大きな論文.
    ダウンロード先→「http://hdl.handle.net/2246/1054」.
  4. Gareth Nelson and Pauline Y. Ladiges『Paralogy in cladistic biogeography and analysis of paralogy-free subtrees
    (1996年刊行,American Museum Novitates, no. 3167, pp. 1-58)
    3-item analysis に基づく地域分岐図の構築についてのモノグラフ.
    ダウンロード先→「http://hdl.handle.net/2246/3627」.

◇私的3連休にせいで,諸方面から「仕事せいっ」との督促メールが飛び交うようになってきた.すみませんすみません.明日からは倍速モードで頑張りますので./「とにかく早く……」.ごめんなさいごめんなさい.この件につきましては“ワイルド・カード”を使わしてもらいますので,ご了承ください.早く返送します.

◇夜になるとアタマがみしっと痛くなる.日が変わらないうちに寝る.明日も寒いらしい.

◇本日の総歩数=6990歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.5kg/+1.1%.


3 februari 2006(金) ※ 私的3連休の最終日は寒波の直前

◇午前4時半起床.蓄積疲労により,しばし動けず.5時半頃までぐだぐだしてしまう.天気は晴れときどき曇り.朝の冷え込みはなし.

◇2月に入ってこの3日間は,仕事を何ひとつしていない.研究所にもまったく顔を出していないので,机の上に堆積しているはずの“ブツ”たちの残務処理を考えるとアタマが痛いのだが,それは明日の週末からまとめてやるということで納得してしまおう.とりあえずは,のびのびになっている研究費の会計処理にケリをつけて,それから急浮上してきたプロジェクトの予算書書き,原稿もいくつかある.学会賞の選考委員の仕事を頼まれたが,これはデフォルトで引き受けざるを得ず.いくつかはきっと大脳を経由しないで応答することになるかも(脊髄反射っ).

◇10:18 の TX で東京に向かう.本郷の〈アカデミア〉に立ち寄り.オリヴィエ・メシアンの大きな伝記『Messiaen』が,昨年,Yale University Press から出ていたことを知る.書簡など内部資料がふんだんに使われているようだ.メシアン肉筆楽譜というのはまさに oiseaux の飛翔するがごとし.数年前から順次出版されているカール・ニールセンの交響曲総譜シリーズ〈Carl Nielsen Edition〉は,すでに 1番,2番,4番,そして5番まで出ていた.交響曲4番〈不滅〉の最終楽章のティンパニ乱打には「たとえ弱奏と書かれていても,オーケストラに埋もれてはいけない」と書かれ,交響曲5番第1楽章の小太鼓カデンツァ・アドリブには,「目の前にメトロノームを置き,オーケストラとは異なるテンポで,まったく関係なく独立に演奏すること」と註釈されている.演奏を聴くだけでなく,総譜を読んでもワクワクする作曲家というのはそう多くはいない.

◇本郷通りの井上書店にて,Alfred Kroeber(編)の『Anthropology Today』を手に取る.1,000ページにも達しそうな電話帳だ.当時の文化進化観のあり方が見渡せそう.昼下がりの谷中界隈を通る.用事をすませて,秋葉原へ.そして帰路.

◇車中読書 —— 森洋子『ブリューゲルの「子供の遊戯」:遊びの図像学』(1989年2月25日刊行,未來社,ISBN:4-624-71052-5)を読了.16世紀に描かれたブリューゲルの〈子供の遊戯〉に,人生訓話的寓意を読み取ろうという主張は,後の17世紀的解釈の過剰延長であるという著者の考えはよく納得できる.ブリューゲルは,〈バベルの塔〉で当時の建築土木技術の細部にわたる記述をエンサイクロペディア的に描いたのと同じく,〈子供の遊戯〉において当時広まっていた遊びを蒐集し記載した民俗学的コレクターだったというのが著者の考えの中核である.

それにしても,豚の足の骨のお手玉や膀胱の浮き袋などという遊びがあったとはね.

◇連日の東京ピストン往復で疲労が溜まっているようだ.アタマが痛くなってきたので,午後9時過ぎに寝る.

◇節分なので,オニもホトケもやってくる.夜中にごうごうと季節風が吹き荒れていた.

◇本日の総歩数=12383歩[うち「しっかり歩数」=4391歩/34分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.1kg/−1.2%.


2 februari 2006(木) ※ 一転して晴れあがり,お休み続く

◇今朝も午前3時半に起床.昨日の雨はあがったようだが,夜半に気温が下がったらしく,雨滴がばりばりに凍りついている.今日は一転して穏やかに晴れるらしい.よかったこと.

◇本日も年休を取って東京にお出かけする.といっても,所用ありなので愉しめるわけではない.9時過ぎの TX に乗って上京.あちこち歩いたり,待ったり,読んだり.

◇消化された“書痴本”たち —— 八木福次郎『書痴斎藤昌三と書物展望社』(2006年1月11日刊行,平凡社,ISBN:4-582-83313-6)をまず読了.200ページ弱の大活字本.斎藤昌三の書物展望社,ただごとではありません.いくら限定本中心の出版社とはいえ,シラカバの樹皮や竹皮で本をくるんだり,ミノムシの吐いた糸で外装を編んだり,番傘や蚊帳,紙魚に喰われた古紙の果てまでわざわざ装幀に使ってしまうというのは正気の沙汰ではないなー(確かに“ゲテ装”).カラー口絵ともども楽しませていただきました.第7章にずらっと並べられた出版リストを眺める.書痴につけるクスリはない.処置なし.

◇でもって,昨日,東京堂でゲットした2冊の東洋文庫本も実は“書痴本”たちだったりする —— 斎藤昌三『閑版 諸国巡礼記』(1998年8月10日刊行,平凡社[東洋文庫639],ISBN:4-582-80639-2).さっそく読みはじめる.最初の「東路:温故随録」を読了.200ページあまり.さまざまな雑誌の出自と変遷,消滅をたどる.『中央公論』がもともと仏教系断酒運動の『反省会雑誌』だったと書かれているが,別の本で読んだ気がする(あ,永嶺本だった) 国書刊行会は吉川弘文館から budding したそうな.裳華房は仙台で江戸時代から200年も続いた書肆だったとのこと.へぇ,ほー.口絵のモノクロ書影は八木福次郎による伝記のカラー図版で確認すること./ 内田魯庵『魯庵随筆 読書放浪』(1996年8月9日刊行,平凡社[東洋文庫603],ISBN:4-582-80603-1).斎藤昌三・柳田泉による編集.“書痴”たちは,同類どうし引き寄せられつつも,互いに反撥しあっていたらしい.

—— 定向進化的に書痴たちの病が膏肓に入っていくのを見るのはとてもコワイなあ.他人事ではないなあ.

◇山手線沿線を行ったり来たりして,〈グリル満点星〉に立ち寄ったりして,夕刻やっとつくばに帰還した.

◇へたばりくたばる.明日も同じ.午後11時過ぎに寝る.

◇本日の総歩数=15678歩[うち「しっかり歩数」=1406歩/12分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=未計測/未計測.


1 februari 2006(水) ※ 雨の如月,3連休初日

◇午前3時半起床.小雨.今日からは,私用にて早起き東京往復が3日間続く.

◇6:34発の TX にて東京へ.北千住にて乗り換え.雨脚がしだいに強まり,とても寒い.今年は,要所要所で雪が降ったり,雨だったりする.

◇朝の用事がすんだので,谷中の路地をしばし徘徊し,その後は神保町に流れていく.傘が手放せない.

◇本の街では近刊情報がいろいろ手に入る —— ハンナ・アーレント『思索日記I』(2006年2月刊行予定,法政大学出版局[叢書ウニヴェルタシス841],ISBN:4-588-00841-2)./ 小杉康(編)『心と形の考古学:認知考古学の冒険』(2006年2月刊行予定,同成社,ISBN:4-88621-345-6)./ 今里悟之(編)『農山漁村の〈空間分類〉』(2006年2月刊行予定,京都大学学術出版会,ISBN:4-87698-676-2).ここでいう「空間分類」って何だろう? / 岸野洋久『ゲノム進化の読解法』(2006年2月8日刊行予定,岩波書店[岩波科学ライブラリー116],ISBN:4-00-007456-3).おお./ 平野弘道『絶滅古生物学』(2006年2月24日刊行予定,岩波書店,ISBN:4-00-006273-5)./ 上田一成『ペンギンは歴史にもクチバシをはさむ』(2006年2月22日刊行予定,岩波書店,ISBN:4-00-005977-7).いいタイトル./ A・パーカー『眼の誕生:カンブリア紀大進化の謎を解く』(2006年2月刊行予定,草思社,ISBN:4-7942-1478-2).訳師さま,またまた登場.

◇雨はさらに強くざーざーと.小川町のスターバックスにて雨宿り.お茶のみ読書 —— 森洋子『ブリューゲルの「子供の遊戯」:遊びの図像学』(1989年2月25日刊行,未來社,ISBN:4-624-71052-5).1枚の絵をめぐって語られる,詳細にわたる図像学的分析.遊戯絵を単に「教訓的寓意」という視点からだけではなく,民俗文化学的という視点からもういちど読み解こうという姿勢が印象的だ.第1章「ブリューゲルの「子供の遊戯」,その作品成立の背景」と各論に当たる第2章「「子供の遊戯」の図像学」に進む.120ページほど.

◇東京堂書店にて東洋文庫を2冊ゲット.

◇千駄木から西日暮里へ.不忍通り沿いの“屏風”のごときマンション群はやはり異様ですなあ.逃げるようによみせ通りに入り込む.

◇満を持して新刊 —— 井上勲『藻類30億年の自然史:藻類からみる生物進化』(2006年1月20日刊行,東海大学出版会,ISBN:4-486-01644-0→目次).500ページを越す大著.「ハテナ」は?

◇午後3時半につくばに戻ってきた.雨はまだ降り続いている.

◇もう来週に迫ってきたが,本厚木で高座が予定されている.“年貢”も引き続き大量に納めないといけないみたいだし,別件の予算要求書類を早急につくる作業も浮上してきた.停滞している翻訳原稿もあるー.

◇またしても早寝してしまう.※明日も超早起きが求められているので.

◇本日の総歩数=15037歩[うち「しっかり歩数」=5456歩/48分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.4kg/−0.3%.


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