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日録2005年6月


30 juni 2005(木) ※ 詰め込まれる行事たち

◇午前4時起床 —— まとまった雨,気温22.6度.

◇とある講座の宣伝文章を用意する.※客寄せです.

◇しだいに天気は回復し,昼には晴れ間から陽射しが.とたんに暑くなる.歩き読み:久しぶりのマルク・ブロック『新版・歴史のための弁明 — 歴史家の仕事』(2004年2月20日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-002530-9).けっこう読めて,日なたで読了してしまった.歴史仮説の確率論的論証のこととか,系統学と関係ありそうな記述が見られる.カルロ・ギンズブルグがお好きなアナタにはお奨めかもしれない.

◇午後1時から〈系統学的考古学〉セミナー(第10回).考古学における分岐学と表形学の適用について.ultrametric tree / additive tree の補足解説をした.Stratocladistics が紹介されていた(pp. 83-86).層序データを組み込んだこの系統推定法に対しては,生物系統学でさんざん叩かれて廃れたと思っていた.しかし,著者たちは,推定された分岐図が層序学的に矛盾がないかどうかをテストする方法として,stratocladistics の利用をもくろんでいるようだ.どーなんだろ.午後2時半まで.

◇午後3時から,農環研の新人研修報告会.今年入ったふたりの新人さん(ひとりは明日,うちの研究室に配属になる)によるプレゼン.みなさん,人前での話し方が堂に入っています.大したもんだと思う.いまの修士の世代は,「人前でアガル」とか「どきまぎする」とか「言葉に詰まる」という不測の事態とは無縁なのだろうか.それともたまたまこのふたりが“天然芸人”としての資質を持っていたのだろうか.サンプル数が少な過ぎてなんとも言えない.

—— 午後5時から場所を移して(といっても所内だが),懇親会のはじまり.だいぶ呑みましたです.ハイ.炭水化物の食い過ぎかも…….夜9時過ぎまで延々と.

◇思わぬレスポンスがミュンヘンから届く —— Gidon Kremer の本は英訳はされていないが,和訳はすでに出ているとの連絡あり(>N間くん,ごぶさた&感謝). 『Kindheitssplitter』 (1997年刊行, Piper Verlag, ISBN:3-492-22391-5)の訳:ギドン・クレーメル『ちいさなヴァイオリン:ギドン・クレーメル自伝』(1995年5月刊行,リブロポート,ISBN:4-8457-1012-9)は,すでに絶版(出版社もない).しかし,エッセイ集 Gidon Kremer 『Obertöne』 (1997, Residenz, ISBN:3701710635)の訳は今でも入手できるようだ:ギドン・クレーメル『ギドン・クレーメル:琴線の触れ合い』(1997年10月刊行,音楽之友社,ISBN:4-276-21732-6).

◇心持ちへろへろになって帰宅.ぐでぐでする.

◇本日の総歩数=16238歩[うち「しっかり歩数」=8399歩/73分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.1kg/+0.6%.


29 juni 2005(水) ※ 徘徊する黒衣

◇またも4時起き.小雨降る.気温23.5度.昨日よりはマシだが,なお不快指数高し.研究所にて,とある文書作成作業に取り組む.慣れてるとはいえ,時間がかかる.午前7時前にプリントアウト.これにて完了.

◇「裏方さん」として —— 手紙を書いたり,ファクスしたり,メールを出したりする.できることなら,話がうまくまとまる方向にもっていきたいものである.自然科学系の出版がとりわけキビシイ状況にあることは重々承知の上で,アプローチされたことにまずは感謝したい.ぼくのすべきことは“仲人”あるいは“黒衣”みたいな役回りですね.来週に,一方の相手と会う予定.もう一方とはこれから打合せを詰めていきましょ.

◇明後日から配属される新人くん用のコンピュータを新調しなければならない.DELL のオンライン購入が公費でできるということなので,本体とオプションの組み合わせをいくつか試算してもらう.納品は速いらしいので,実際の購入手続きは来月以降でもいいだろう.プリンターは,別に考えないといけないか.

Trends in Ecology and Evolution 誌の最新号(Vol. 20, no. 6, June 2005)は書評特集号. Andrew Bourke による『Evolution of the Insects』の書評あり(「Insects triumphant!」 pp. 288-289).こら,ベタ褒めでっせー./まだ届いていないが,来月号(Vol. 16, no. 7, July 2005)には,『Phylogenetic Supertrees』の書評が載る( Christopher J. Creevey 「Can you see the wood for the trees?」 pp. 366).

◇久しぶりの昼の歩き読み —— 船曵建夫『大学のエスノグラフィティ』(2005年4月20日刊行,有斐閣,ISBN:4-641-07698-7)をあっさり読了.文化人類学者の調査フィールドのひとつとして,「大学」の「日常」の記載文を淡々と書き連ねているという読後感あり.もちろん当事者なんだけど,“観察者”でもあるということ:

私が文化人類学者であり,かつ,自分自身,属している世界を観察する性癖が昔からあり,大学における人々の生態に以前よりかなり強い関心を持って観察していました.(p. 67)

第1章「ゼミの風景から」はおもしろい.ぼくは駒場にいた頃もっとジミめな「全学ゼミ」を取っていたので,こういう起伏ある経験はなかったですね.ほー,小熊英二さん,船曵ゼミにいきなり登場か.第2章「大学教授の一日と半生」と第3章「大学の快楽と憂鬱」は,バクロ的ではあるものの,意外にもあっさりと書き過ぎているのでは?(推測ですが) 最後の第4章「大学人の二足のわらじ」は,なんだか“向こうの世界”に逝きつつある風に感じられてしまう.

—— この本は,おなじ〈コマバ〉を舞台とする,ほぼ同時期に出たもう1冊の本,石浦章一『東大教授の通信簿:「授業評価」で見えてきた東京大学』と読み合わせるとおもしろいと思う.同一の「場」を眺めているはずなのに,著者のスタンスの基本的なちがいが,文面から受ける印象の大きなちがいとなって増幅されているから.

—— “観察場所”としての〈コマバ〉を題材として次々に本が書けるというのはある意味すごいことなのかも.大学に関する「一般論」を読み取りたい読者には不満が残るかもしれない.しかし,少なくともぼくにとっては,あくまでもローカルな〈コマバ〉での「民俗・風習・芸能」の調査報告書として楽しませてもらった.

◇午後3時から始まっていた〈第6回NIAES昆虫Gセミナー〉に遅れて出席.今回は Wolbachia 関連の話題提供が2題:前半は,成田聡子(千葉大・園芸・応動昆)「Wolbachia感染によって遺伝的なSweepを引き起こした日本産キチョウ2型:その遺伝学的・生物地理学的考察」.後半は,田上陽介(静岡県農業試験場・病害虫部)「アメリカと日本の卵寄生蜂Trichogramma−Wolbachia感染、局所的配偶者競争、Wolbachia感染維持機構」.Wolbachia 感染のモデル化をする際に,host tree と parasite tree の上で,population parameters の復元ができるならば,感染パターンそのものの「系統発生」を推定することができるように思われた.

◇夕方になっても湿度はなお高いまま.酷暑だった昨日に比べれば確かに気温は低いが油断してはいけない.

◇うわ,尻たたきっ(油汗).

◇夜,Gidon Kremer のもう1冊の自叙伝:Gidon Kremer 『Zwischen Welten』 (2003年刊行,Piper,ISBN:349204459X)をぱらぱらながめる.前著『Kindheitssplitter』 (1997年刊行,Piper Verlag,ISBN:3-492-22391-5)は,幼少期から始まり著者のモスクワへの旅立ち(1965年)で終わっているが,本書は,そこから始まり,最終的に「西側」に脱出する1980年までが綴られている.

◇本日の総歩数=18560歩[うち「しっかり歩数」=10752歩/94分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.1kg/−0.4%.


28 juni 2005(火) ※ 熱帯夜が明けて

◇午前4時に暑くて目が覚める.雲が多く,気温は25.3度.今年初の“熱帯夜”か.※まだ6月なのに…….

—— 研究所にて,とある頼まれ文書作成の続き.うう,書式設定があー(時間喰い)./メーリングリスト関連の作業など./計量生物学会の電子メール会議など.※学会誌の電子化をどう進めていくのかは,学会ごとに事情が違うので,成り行きと雰囲気でそのまま進むのはよくないと思う.

◇関連メモ —— 〈ACADEMIC RESOURCE GUIDE の作業メモ〉から:図書館流通センター(TRC)が長年運営してきた「ブック・ポータル」が,今年8月をもって閉鎖されるそうだ(→告知).※個人情報保護とか著作権保護が主たる理由であるように書かれている.でも,プラス/マイナスを考え合わせると「マイナス」になるのではないか? 代替サイト(bk1を含む)に機能を移すようだが,基本方針が変わらないのだから,たいして期待できそうにないし.

—— うー,これから「新刊」の網羅チェックをどうしよーか.

家系図,萌え —— 〈日曜社会学>出不ろぐ de√Blog〉さん,いつも情報感謝です.

◇午後1時から定例の〈統計学〉セミナー(第9回) —— 今日は第8章の続き(pp. 136 ff.).F分布を用いた分散に関する推定と検定.ついでに Mann-Whitney のU検定について.Zar さん,サンプル数の最適化と脇道にイノチを懸けているふう(汗).

◇8月末の進化学会東北大会での仙台投宿先を早々と確定させてしまった —— オンライン予約したのは,カスタマー評判のよかった〈丘のホテル〉.※会場からちと遠いかしら.

あれ,肝心の参加登録をまだすませていない…….

◇試運転にしてはエアコンが効いていないな,と思ったら,外界はもっともっと暑かったよーで.東京・大手町で36度を越えたとか.つくばは内陸なので,同等以上に暑かっただろう.

◇夜6時を過ぎて,ごく控えめな雷雨.夜まで降り続く.

◇〈ぼくって何者?(Wer bin ich?)〉 —— Gidon Kremer 『Kindheitssplitter』 (1997年刊行,Piper Verlag,ISBN:3-492-22391-5)を読んでいる.幼い頃から著者は自らにそう問いかけていたそうだ.それにしてもねー:

Wer bin ich? —— Auf die Frage, wieso ich Geiger geworden bin, habe ich oft geantwortet, dies sei vor meiner Geburt entschieden worden. »Mein Vater, meine Mutter, mein Großvater, sogar der Urgroßvater — waren Geiger ... «
(S. 15)

これはもう「ヴァイオリニスト(Geiger)となるべく運命づけられたリネージであった」と言うしかないじゃん.

◇本日の総歩数=8992歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.5kg/+0.2%.


27 juni 2005(月) ※ 蝉がもう鳴きはじめる

◇5時起床.明け方なのにもう22.8度もある.暑すぎ.そういえば,先週あたりから,ニイニイゼミの鳴き声が樹間から聞こえ始めている.例年よりも出だしが早いのではないか.

◇『生物学史研究』の最新号(第74号,2005年4月発行)に「進化特集」が編まれている.瀬戸口明久さんの論説はどういうレビューになっているのか,気になる.

ModelTest 3.7 と R-2.1.1 のダウンロードをまだすませていない.

◇先週末は,集中講義やら人間犬やらで研究所を不在していたうちに,いつの間にか集中冷房の試運転が始まっていたみたい(6月22日から).これで少なくとも8:30〜17:00まではしのぎやすくなるだろう.※制度的にはフレックス労働時間のはずなのだが,冷暖房は昔ながらの定時運転のみなので,これが実は制約条件になっていたりする.

◇東大の集中講義のレポート課題(その2)を出題する ——

━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━
【レポート課題(2)】

(1)対象生物群(Taxon_A, Taxon_B, および taxon_C)ならびにそれらの外群
(Outgroup)のある塩基配列データ(長さ10)が得られたとする.この分子デー
タを用いて最節約法による分岐図を求めよ.途中の計算手順も記すこと.

DNA塩基配列データ
	Outgroup	GTCAA TGAGC
	Taxon_A		GCTGA TGAGT
	Taxon_B		ATCAA TGAGT
	Taxon_C		GTTGC AACGT

(2)上記の生物群の配偶システムを調べたところ,一夫一妻制と一夫多妻制に関
する情報が下記のように得られた.(1)で求めた分子系統樹のもとで解釈したと
き,この生物群の配偶システムの系統発生についてどのような知見が得られるかを
述べよ.

配偶行動データ(0=一夫多妻制/1=一夫一妻制)
	Outgroup	0
	Taxon_A		1
	Taxon_B		1
	Taxon_C		0
━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━

がんばってねー.>受講生諸氏.

◇それにしても暑いなー.みだりに日向に外たら日干しになりそう.“みなし梅雨明け”ということで.

◇メモ —— 松田行正『眼の冒険:デザインの道具箱』(2005年4月27日刊行,紀伊国屋書店,ISBN:4314009829).※視覚的にワクワクしそうな本.Albrecht Dürer,D'Arcy Thompson,戸田ツトム,の系列か.とりあえず買い物かごに入れといて,っと.

◇夕方になって,申し訳程度の小雨がぱらぱらと.※蒸し暑くなっただけですけど.

◇Gidon Kremer『Kindheitssplitter』(1997年刊行[初版1993年],Piper Verlag[Serie Piper 2391],ISBN:3-492-22391-5)到着 —— 世界的バイオリニストの自伝.とくに,ラトヴィアの首都リガに生まれた著者(誕生日が同じじゃないか!)がモスクワに音楽留学するまでの少年時代の回顧.後半100ページ弱は10代に書かれた日記.確かに Kindheit の Splitter だ.

◇本日の総歩数=10891歩[うち「しっかり歩数」=1230歩/11分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=0.0kg/+1.0%.


26 juni 2005(日) ※ 上州とんぼ返り

◇早朝,高崎に向かう.今日も炎天.暑いわ,蒸すわで,ワヤでんがな.2時間ほどで着.へたばる.

◇なんやかやで時間がどんどん過ぎていく.情け容赦ない真夏日.かんにんしてくれー.

◇室内で涼みつつ,船曵建夫『大学のエスノグラフィティ』(2005年4月20日刊行,有斐閣,ISBN:4-641-07698-7)をぱらりと.「学生」のみなさん,「教師」のみなさん,ぜひ読みましょう.もちろん,知っている人には「とーぜんのこと」しか書いてないのかもしれません.でも,こういう“フィールド・ノート”(?)はそのうちきっと役に立つのだろうと思います.

◇夕刻,帰路につく.高速はよく渋滞してくれた.道草喰ったりしたので,夜9時半につくばに到着.くたばる.

◇本日の総歩数=5166歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝−|昼×|夜○.前回比=+0.4kg/−0.3%.


25 juni 2005(土) ※ 真夏日から逃避[したいな]

◇午前5時起床.雲が多く,霧が少しかかっている.気温21.6度.そのうちに晴れて,かんかん照りになる.逃避あるのみか.引き蘢る.

◇〈ISBN-10〉から〈ISBN-13〉へ —— 国際標準図書番号(ISBN)を「10桁」から「13桁」に変更する規格が先月発効し(「ISO 2108 4th edition」,2005年5月),これによって,2年間の移行期間の後,2007年1月1日以降はすべての図書のISBNは「13桁」になる.最近届いた2冊の洋書には,従来の「ISBN-10」番号とともに,早くも新しい「ISBN-13」番号が与えられている.いずれも【ISBN-13978-ISBN-10(末尾1桁のcheck digitを除く)-再計算されたcheck digit】というやり方で機械的に作られているようだ.たとえば,一昨日届いていた Ruth Mace, Clare J. Holden, and Stephen Shennan (eds.)『The Evolution of Cultural Diversity: A Phylogenetic Approach』(2005年,UCL Press)に付与されているISBN番号は:

ISBN-10: 1-84472-065-9
ISBN-13: 978-1-84472-065-1

となっている.Check digit の再計算方法については,日本図書コード管理センター解説を参照のこと.

既存の図書についてはこのスタイルで一律に一括置換するのだろう.実際,ISO 2108 のドキュメントを読んでみると,「ISBN-13」の最初の3桁は現行は「978」としておき,番号が足りなくなった時点で「979」に移行するとのこと.

◇〈ISBN〉と〈ISMN〉 —— 出版されている楽譜(総譜を含む)にも,最近では国際標準楽譜番号(ISMN)が付くようになった.以前は,そういう番号は何もなく,参照のしようがなかったのだが.ISBNと同じく,ISMNも「国際標準化機構(ISO)」が後ろ盾になっていて,「ISO Standard 10957」という規格に則っているとのこと.最近出た,ビゼーの歌劇「カルメン」(原典版)の総譜は,ドイツの Edition Eurenburg から出ているのだが,ISBN番号(10桁)とISMN番号の両方が付いている:

ISBN: 3-7957-6311-8
ISMN: M-2002-2055-1

個人的には,こういう総譜も,通常の書籍と同じように(そして破格に高くつく国内取次店を経由しないで)オンラインで買えるようになればいいのにと思っている.

—— 久しぶりに Mercédès と Frasquita のかけあいデュエット(第3幕第2場)を想い出しつつ.明るいふたりが「お金よ(fortune)」「恋愛よ(amour)」と唄っているところに,Carmen が「死ぬことよ(la mort)」と絡みついてくる.刹那的というか頽廃的というか.

◇午後になって,日射しはますます強くなり,とても外に出る気力が湧かない.なお引き蘢り続ける.梅雨はいずこ?

◇夜は,頼まれ文書づくり.眠たい.

◇本日の総歩数=2902歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=+1.3kg/+0.1%.※おそるべし,リバウンド!(単なる喰い過ぎかも)


24 juni 2005(金) ※ 年に一度の「人間犬」

◇午前4時半起床.曇っている.気温20.6度.

—— 集中講義の機材を抱えて研究所に行ったら,さらなる“電話帳”が届いていた:サラ・ブラファー・ハーディ『マザー・ネイチャー:「母親」はいかにしてヒトを進化させたか』(上下2巻,2005年5月31日刊行,早川書房,ISBN:4-15-208639-4 / ISBN:4-15-208640-8).上下巻で計870ページ超.「母はとても重かった」ということですか.

1997年に出た原書も700ページ超だったので,訳本のサイズとしては妥当な線でしょうね.訳すのもたいへんなら,売るのもたいへん,もちろん読むのもたいへん.最近,重量級の本がぽんぽん届くのだが,本棚がきしんできた.

◇今日は,朝8時から午後まで人間ドック入りする —— 定時に,メディカルの隣のつくば総合検診センターに入る.受付をすませ,検診着に着替えて,あとはベルトコンベアーで運ばれるように,一連の検査.前夜からの絶食のせいか,バリウムでさえ美味に感じられてとても腹が立つ.11時前に全コースの終了.

待ち時間が長かったので,旅名人編集室(編)『ベルギーの田舎町:大都会を離れ,新しい世界を発見する』(2005年5月23日刊行,日経BP企画,ISBN:4-86130-088-6)を読了.400ページあまり.以前から,この〈旅名人ブックス〉シリーズは愛読している.写真と文章がうまくからんで,いい出来にしあがっていた.

◇午後の問診まで時間があったので,近くの天久保にある古書店〈今城屋古書店〉にはまりこむ.お,ありましたね.図書出版社の〈ビブリオフィル叢書〉の3冊が安く出ていた:ニコライ・スミルノフ=ソコリスキイ『書物の話』(1994年4月30日刊行,図書出版社,ISBN:4-8099-0514-4) /アンドリュー・ラング『書物と愛書家』(1993年2月28日刊行,図書出版社,ISBN:4-8099-0508-X) /大島堅造『山の古典と共に』(1992年2月20日刊行,図書出版社,ISBN:4-8099-0503-9).古書としての購入価格は,それぞれ税込定価の 32.4%/33.3%/29.4%.〈ビブリオフィル叢書〉はタイトルが互いによく似ているので,古書店の店先で見かけてもまだもっていないものかどうかすぐに判断できないことがある.そういうときは迷ってはいけない.重複をいとわずに買ってしまおう.迷ったあげく「今度来たときにしよう」などと引いたときにかぎって,どこかの誰かに買われてしまうからだ.今回も『書物の話』が灰色だったのだが,あとでチェックしたら,すでに手元にあったのはジョン・ヒル・バートン『書物の狩人』(1993年11月30日刊行,図書出版社,ISBN:4-8099-0512-8)で,ソコリスキイの本ではなかったのでほっとした.これで〈ビブリオフィル叢書〉のうち9冊が集まった.でも,まだ数冊蒐めなければならないものがある.※なんだか「蒐書日誌」と化しつつあるな.

—— まだ十分に時間があったので,松見公園の向こう側にある〈パルケ珈琲館〉にて,しばしの休息.

◇午後1時すぎにまた検診センターに戻る.順番待ちのあいだに,買ったばかりのアンドリュー・ラング『書物と愛書家』(1993年2月28日刊行,図書出版社,ISBN:4-8099-0508-X)をあっさり読了してしまう.200ページほど.詩とエッセイのサンドイッチ.とりわけ,〈エルゼヴィル本〉の挿話がとてもおもしろい.日本の幽霊本,とくに鳥谷石燕『画図百鬼夜行』へのコメントでは,「日本の芸術家は震えるような輪郭の幽霊を描くことで,偶発的で,変幻自在に姿を変える幽霊の本質を描いているようだ」(p. 75)と述べている.

◇問診をすませ,検診センターを出たのは午後2時半過ぎのこと.人間犬も1日仕事だ.

◇それにしてもこの蒸し暑さはいったい何なんだ.真夏日か.

◇LaLa Garden の〈Tully's〉にて,Michael J. O'Brien, R. Lee Lyman, and Michael Brian Schiffer『Archaeology as a Process: Processualism and Its Progeny』(2005年,The University of Utah Press,ISBN:0-87480-817-0)の第1章を読み進む.The Evolutionary Synthesis 期の文化進化論に関して,こんなくだりが:

Archaeologists were hesitant to make inferences about cultural dynamics, not hostile to the idea. a similar sentiment was present in paleontology, a sister discipline of archaeology that is also — in Bennet's terms — a “profoundly historical science” (Jepsen, Mayr, and Simpson 1949). Why should these two historical disciplines allegedly be so hesitant to write theory and test hypotheses? (p. 28)

その答えは,まだ先にある.

◇くまざわ書店にて:船曵建夫『大学のエスノグラフィティ』(2005年4月20日刊行,有斐閣,ISBN:4-641-07698-7).※ん,これもまた「参与観察」ですか? “完全なる参加者”から“完全なる観察者”へのグレードの中ではどのあたりに位置しているんでしょ? ぼくは「もう1冊の駒場本」として読むつもりですが.

◇今日は細切れ時間がありまくりだったので,「犬」にしてはよく読んだと思う.Hoegaarden のホワイトビール(witbier)と Chimay のブルーを呑んだりして,あとは寝るしかない.

◇本日の総歩数=10042歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝−|昼○|夜△.前回比=−0.8kg/−0.2%.


23 juni 2005(木) ※ 集中講義最終回

◇午前4時起床.曇り,かすかに小雨.気温20.8度.研究所にて,原稿を書き,準備をする.

◇今日は東大での集中講義の最終日.今日の前半は,系統推定における計算機統計学について話をする予定.「R」を用いたデモあり.そのあとで,PAUP* / MacClade がやってくる.後半は,過去半世紀の体系学史と系統推定の応用(生物地理と資源探索)について.※レポート(1)を出していない受講生は急ぐよーに.今日は別の課題を出します.

—— 先週と同じく,講義の前に“年貢”を納めるだけではなく,今日は講義の後にも打合せが予定されている.スケジュールが最密パッキングされている.

今回に限り,PowerBook と DynaBook を両方もっていかないといけないので,とても重い.※と言っても,あわせて「3kg」ほどだが.

◇系統学的考古学の新刊 — Ruth Mace, Clare J. Holden, and Stephen Shennan (eds.)『The Evolution of Cultural Diversity: A Phylogenetic Approach』(2005年,UCL Press,ISBN:1-84472-065-9).進化考古学はすでに“系統学化”が完了しつつあるということですか? 最節約法はもとより,最尤法・ベイズ法,そして系統ネットワークまで何でもありの世界.

◇さて,東京へ —— 本郷の〈ルオー〉に着いたのは午前10時過ぎ.雨がぱらついているが,傘をさすほどではない.即原稿を書き始めて,1時間くらいしたら,講談社の編集者氏が登場.またも「隣室に待つ担当編集者」状態でさらに1時間あまり原稿を書き続ける.この濃い空気を何とかしてほしいなあ.結局400字にして10枚ほどの原稿ファイルを手渡し,放免される.

—— つくばではこういう「カン詰め」になる時間がないので書けないということなのだろう.これからは自主カン詰めをつくばでも励行しよう.そーしよう.

◇午後1時から東大農学部での生物系統学講義の最終回.系統推定で用いられる計算機統計学の原理について説明し,〈R〉を用いたブーツストラップとジャックナイフ,そして経験的密度関数の推定についてのデモンストレーションをする.続いて,PAUP*を用いてのデモ.そのあと,生物体系学の現代史について1時間ほど話をし,どのような歴史的文脈のもとで「系統推定論」が擡頭してきたのかを示す(絵図の大活躍).最後に,系統樹を用いた生物資源探索について1時間ほどトークして,応用系統学の今後の展開について話をした.これで全部おしまい.みなさま,お疲れさん.あとで二つ目のレポート課題を流しますのでよろしく.

◇午後5時過ぎに,落第横丁の〈Neo Sitting Room!〉にて打合せを1時間ほど.なかなかイメージ湧きません?(微笑) テーマ・ミュージックは決まっていますから,あとはキヤッチフレーズだけですね.

◇〈アカデミア〉経由で,帰宅.もう雨は降っていないが,蒸し暑さが残る.

◇進化学会ニュースに出した『社会生物学論争史』書評に関して,“天守”からのコメントあり.ほほー,その「場」に居合わせるとちがったものが見えてくるわけですね.50年後,100年後の評価がどうなっているかは確かにわかりませんね.

◇明日は楽しい“人間犬”日なので,病院に一日拘束される予定.

◇本日の総歩数=19380歩[うち「しっかり歩数」=6704歩/57分].全コース×|×.朝○|昼△|夜−.前回比=−0.2kg/−0.5%.


22 juni 2005(水) ※ さらなる“電話帳”着弾

◇午前4時半起床.蒸し暑く,曇り空から雨がぱらつく.空気の粘度がとても高い.

—— 朝からこまごま:エルドリッジ本の書評ゲラをファクス返送する.掲載誌は,日本評論社の『からだの科学』,第244号.2005年7月25日刊行予定./統計関連学会(広島大会)の事務連絡./午前10時からグループ内会議,引き続き,組合の評定者交渉.正午過ぎまでずーっと./6月20日発行の日本進化学会ニュースの第6巻1号が到着.全体の半分はぼくの『社会生物学論争史』書評.みなさんも書評を書くようにね.

◇わ,こりゃ巨大だ! —— David Grimaldi and Michael S. Engel『Evolution of the Insects』(2005年6月刊行,Cambridge University Press,ISBN:0521821495).「xvi+755 pp. / 240×300 mm / 2.92 kg」という巨体は,投げればきっと殺傷力が大きいだろうな.※大きい本を見れば“投げたくなる”というのはどーかしているぞ.>ぼく.

◇雨はしだいに本降りに.しかし,昼過ぎには小降りになる.

◇東京農大の昆虫学研究室OBのメーリングリストが新しくできたので,挨拶投稿など.

◇献血されて,やや軽くなる(この受動態はいったい).

◇講義準備/原稿,うう.雨は止んだようだ.23時就寝.

◇〈R-2.1.1〉がリリースされた.

◇本日の総歩数=11904歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.前回比=−0.7kg/+0.2%.


21 juni 2005(火) ※ “電話帳”が空を飛ぶ夏至

◇午前4時の目覚め.晴れてもう明るい.気温は19.8度.梅雨はどこへ行った?

—— 早朝のじたばた:統計関連学会広島大会でのセッション座長依頼あり.これは企画シンポの期日が確定しないと返事できないな./進化学会関連の評議員宛メール.学会賞関連のことども./今週木曜は予定がいっぱい詰め込まれてた./集中講義レポートに関する質問への対応./某学会のジャーナル電子化に関する返事など./とある出版社から復刊の問合せ.※いい方向に話が進めば言うことなし.

◇へー,「ヴィトゲンシュタインが〈【種】問題〉を解く」とはね.※ 彼の「Family resemblance」はこの文脈でよく引き合いに出されますが,the final solution になるとは思えないのだが.

◇車のタイヤが老朽化してきたので,あわてて履き替える. —— 待ち時間の読書は“電話帳”:サイモン・シャーマ『風景と記憶』(2005年2月28日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-25516-7).ずっと前に買ったまま積まれていたが,やっと登攀開始.序論と第1部〈森〉の第1章「リトアニアのバイソンの地にて」を読了.100ページあまり.この著者らしく,ディテールを紡ぎ合わせて巨大なタペストリーを編み上げていく.歴史学の“グールド”みたいな人.

数年前にオランダへの機中,同じ著者による同じく巨大な『Rembrandt's Eyes』(1999年,Alfred A. Knopf,ISBN:0-679-40256-X)を抱えていた.470ページまで読んだのだが,さらに200ページを残して力尽きた.レンブラントのカラー図版をふんだんに盛り込んだとてもおもしろい本だったのだが,エコノミー席で読むべきサイズの本ではなかったかもしれない.ページをフルに開くと隣席を侵犯してしまったから.

風景と記憶』は,単にランドスケープ論(宮城俊作くんは元気か)というだけではなく,広く生態学的な意味での「原風景」がどのような心象のもとにかたちづくられてきたのかを歴史的にたどった本だ.著者のこだわりは言葉ひとつもおろそかにしない:

この「風景(landscape)」という言葉それ自体が実に多くを語る.「風景」は,十六世紀の終りにオランダから,ニシンや真白なリンネルの生地とともに,英語に入ってきた.“landschap”は,その語源になったゲルマン語の“Landschaft”同様,なべて描写して心地よいものがすべてそうであるように,人間による占有の一単位,一管轄区域を意味した.したがって,それ自体強力な人間工学の場であったネーデルラントの洪水地帯にあった社会が“landschap”概念を発展させたのは偶然であるはずはなく,それが当時の口語英語で“landskip”となったのだ.[…]ネーデルラントにおいては — たとえば,エサイアス・ファン・デ・フェルデの絵のあちこちにいる漁師,牛追い,普通の歩行者や騎乗の人々が示しているように — 人が風景をつくり,さして使うことそれ自体が,驚くべくひとつにまとまった物語を構成していた.(p. 18 )

—— 『Grote Van Dale』を見ると:

【landschap】= landelijke omgeving voor zover men die met één blik overziet, m. n. zoals zij zich in haar samenstel vertoont, de aanblik ervan.

と説明されている.「人間」が最初からそこに関わっているということですね.

◇午後1時から定例の〈統計学〉セミナー(第8回) —— 今日から2母集団に関する推定・検定の章.まずは平均値の差に関する検定のお話.午後3時まで.

◇正しいウラ情報筋から連絡 —— 統計連合学会広島大会の企画シンポジウム〈幾何学的形態測定学における統計学的問題〉は,9月14日(水)午後に開催されるとのこと.

— お,正式なオモテ通達あり.上記企画シンポは9月14日(水)の第2セッション(15:00〜17:00).ということは,ぼくが座長をする第3セッション〈人と動物の生態学〉は 17:10〜19:10 という時間帯になるのかな.

◇事務連絡 —— 6月30日(木)15:00 から農環研の「新人研修報告会」.来月から研究室の個体数がさらに1増える.※平均年齢がどれだけ低下するかは言いたくないぞ…….

◇新刊メモ —— 倉谷滋『個体発生は進化をくりかえすのか』(2005年7月刊行予定,岩波書店,ISBN不明).ご出版おめでとうございます.ゲラが出てからブツになるまでの時間がとても短いのは岩波だけの特徴か.それともいまはそういうものなのか?

◇エルドレッジ本の書評ゲラが届く.明朝返送予定.

◇夜になっても蒸し暑い.天気は下り坂だという.講義資料のプチ修正./それと,原稿〜(遠吠え).

◇本日の総歩数=9458歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.前回比=−0.6kg/−0.3%.


20 juni 2005(月) ※ 変異型 muziekstokkie 届く

◇午前1時15分に震度3の地震あり.平積みしてあった『新耳袋』全10巻の山が崩れた.※禍々しき予兆か…….

—— 5時半起床.気温20.7度.曇って蒸し暑い.悪しき空模様だ.昇格書類の修正し忘れがあるとの前夜のメール.さっそく訂正してpdfを提出する.※まったくもう.

◇〈ふこーのてがみ〉あるいは Musical Baton ミームあるいは 阿蘭陀 muziekstokkie —— さる兇悪なる院生氏に召還されてしまう(Eurekaに叱られなさいね). ほほー,〈Musical Baton〉の伝言系譜にワタクシも巻き込まれたということか.さらにルーツをたどると,昨年末からオランダのブロガーたちの間で流行りはじめた〈muziekstokkie〉がきっかけだとか(→ここ).

まずは,オランダでの plesiomorphic なメッセージたちをチェックしてみる(ソースはここ):

  1. Wat is de totale grootte aan muziekbestanden op je computer?
    =「あなたのコンピューターに入っている音楽ファイルの総容量は?」

  2. Wat is je laatste gekochte cd?
    =「あなたがいちばん最近買ったCDは?」

  3. Wat is letterlijk het laatst geluisterde nummer voordat je dit bericht las?
    =「あなたがこの通知を読む直前に聴いていた曲は?」

  4. Geef drie nummers door die je heel vaak luistert, of die veel voor je betekenen, en vertel waarom.
    =「あなたが頻繁に聴く曲,あるいはとても大切な曲を3曲挙げなさい.その理由は何?」

  5. Aan welke drie personen geef jij het Muziekstokkie door, en waarom?
    =「この muziekstokkie をどの3人に手渡しましたか? その人選の理由は?」

とすると,いま日本でめぐりめぐっている〈Musical Baton〉の「5曲選べ/5人に渡せ」というのは,この伝言系譜の過程で新規に生じた apomorphic なメッセージということになりますね.

—— では,ワタクシは“祖先返り”させて,「3曲選べ/3人に渡せ」というメッセージを次に伝承させることにしましょう.

◇その前に,ちょっと仕事をしておかないとねー.(おいっ,それは本末転倒だろっ) —— 速達で届いたパンフレットを読む.構想./木曜の集中講義の準備.デモンストレーションを多めにとるかな./学会の仕事を少し.連絡と通知./組合の要求書づくり.今週は交渉週間.

◇そうこうするうちに新刊が届く —— ピーター・シス『生命の樹:チャールズ・ダーウィンの生涯』(2005年6月30日刊行,徳間書店,ISBN:4-19-862027-X).※瞬間読了.小学生向けの絵本なのだが,文章よりもはるかに多くの情報を伝える「絵」がたくさん描き込まれており,それらがとても楽しめる.それにしても — 内容からいって,もっと学年が進まないと理解できないのではないか? あるいは,本書を手にする読者ごとにそれぞれ異なる「読み方」があるということかもしれない.

◇さて,本題(ちがうだろっ) ——

  1. あなたのコンピューターに入っている音楽ファイルの総容量は?
    PowerBookG4 のiTunes が管理しているのは 861曲/3.89 GB.そのほとんどがロスレスエンコードなので,ひとつひとつのファイルサイズがもともと大きい.曲数の過半数は J. S. Bach の教会カンタータ.

  2. あなたがいちばん最近買ったCDは?
    シカゴ交響楽団の〈A Tribute to Pierre Boulez〉(2005年,CSO CD05-2).一般の商業ルートには乗っていないCDとのこと.

  3. あなたがこの通知を読む直前に聴いていた曲は?
    上記CDの2枚目に入っている,L. Janacek の〈グラゴル・ミサ(原典版)〉.総譜を見ながら聴くべし.

  4. あなたが頻繁に聴く曲,あるいはとても大切な曲を3曲挙げなさい.その理由は何?

    1. Gary Burton / Chick Corea〈Crystal Silence〉(1973年,ECM 1024).※高校生のとき最初に買ったLPがこれだった.Burton のジャズ・ヴァイヴの教則本を買ったのもほぼ同時期.
    2. Carl Nielsen〈交響曲第4番・不滅〉.※これぞシンフォニー.ぼくにとってはルーツみたいなもの.総譜は読み込み過ぎてほとんど崩壊寸前.
    3. John Coltrane〈Ballads〉(2002年,UCCI-1003/4).※聴くのが当たり前で,理由は不要でしょ.かつてのジャズ喫茶で,これを聴いたらみんな自分の世界に没入したんだろーな.

    以下,参考までに上位曲を:Olivier Messian〈トゥーランガリーラ交響曲〉/Richard Strauss〈アルプス交響曲〉/武満徹〈系図〉/Keith Jarrett〈The Köln Concert〉/J. S. Bach カンタータ12〈Weinen, Klagen, Sorgen, Zagen〉.

  5. この muziekstokkie をどの3人に手渡しましたか? その人選の理由は?

    • 哨戒地点:もちろん「ノイズ系」.南部さんでキマリね.
    • 日々の雑感的なもの:やはりここはひとつ「良識派」として田崎さん,よろしく.
    • The Beach:訊くのがコワイよーな,でも尋ねてみたいし.細馬さん,いかがです? リヨンからご帰国後でいいですから.

     以上,引き渡し先を勝手に決めてしまって,ワタクシは晴れて御役御免ということで.

◇あ,もう夕方だ.

◇夜,少し本を読んだり,講義の準備をしたり,原稿も…….問合せとか,質問メールとか.

◇本日の総歩数=10718歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.前回比=+0.9kg/−0.3%.


19 juni 2005(日) ※ 蒸し暑いお籠り日

◇午前5時半に目覚める.曇って蒸し暑い.朝のウォーキングを1時間ほど.マルク・ブロック『新版・歴史のための弁明 — 歴史家の仕事』(2004年2月20日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-002530-9)を歩き読み.序文・第1章・訳者あとがきで70ページほど.「起源」に基づく説明への強迫について.あとがきに記されているブロックの「予定目次」を見ると,歴史を推論するための証拠の扱い,遡求的方法,比較法,歴史的説明の特徴など,もし著者が第二次世界大戦の対独レジスタンスで斃れなかったならばたいへん興味深い内容が書かれていただろう.

—— 木原浩勝・中山市朗『新耳袋・第十夜』(2005年6月19日刊行,メディアファクトリー,ISBN:4-8401-1281-9)が出版された.いまなお復刊を求める声が強いという伝説的な扶桑社版『新・耳・袋:あなたの隣の怖い話』(1990年9月5日刊行,扶桑社,ISBN:4-594-00629-9)から15年経ち,メディアファクトリーに移ってシリーズ化が始まってから7年の月日が流れた.こちらも最終巻とは感無量ですなあ.よく続いたものだ(拍手).※やっぱり〈件〉が最後の表紙を飾ることになったわけね.本文中でも隠されている(形式上).

◇高田里惠子『グロテスクな教養』(2005年6月10日刊行,ちくま新書539,ISBN:4-480-06239-4)の書評をアップ.

◇籠って原稿書き,ときどき歩く.日中の不快指数,とても高し.

◇夕方,ナイルズ・エルドレッジ『ヒトはなぜするのか』(2005年3月11日刊行,講談社インターナショナル,ISBN:4-7700-2790-7)の書評原稿(1200字あまり)を脱稿.編集部にメール送信.とても辛口な評になった.※あんな本,書くんだもん.

◇夜,アイスバインとビールを大量摂取.く゛.

◇新刊メモ —— 楊海英『モンゴル草原の文人たち:手写本が語る民族誌』(2005年6月刊行,平凡社,ISBN:4-582-48307-0)./ダニエル・ロング,橋本直幸『小笠原ことばしゃべる辞典』(2005年5月刊行,南方新社,ISBN:4-86124-044-1).

◇本日の総歩数=13551歩[うち「しっかり歩数」=7790歩/65分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=+0.2kg/+0.4%.


18 juni 2005(土) ※ 勤労奉仕の土曜日

◇午前4時半に目が覚める.即ウォーキング1時間.夏至が近いこの頃は,4時ともなればもう東の空が明るくなっている.活字を読むことも可能.ということで,朝の歩き読み:高田里惠子『グロテスクな教養』(2005年6月10日刊行,ちくま新書539,ISBN:4-480-06239-4)を読了.もっとストレートに書けばいいのにな.内容的にはとてもおもしろい「教養言説の展覧会」.書評文をさっそく書き始める.

◇雲が多いものの,雨は降らず.今日は自治会の草刈り清掃作業が午前中に入っている.清掃コスチュームを着て,10時過ぎに階段下で作業開始.湿度が高めでキモチわろし.1時間ほどでさっくり終わる.

◇午後になって天気は回復し,日射しが戻ってきた.読書と原稿書きの時間 —— ナイルズ・エルドレッジ『ヒトはなぜするのか』(2005年3月11日刊行,講談社インターナショナル,ISBN:4-7700-2790-7)の依頼書評もさっくり仕上げないと.※後回しにするなよっ.明後日が締切.

◇『グロテスクな教養』の書評文を書いている.つんつんと突き刺さるような皮肉やあてこすりがいささか気になるが,いいテンポで書かれている.排他的・階級的・打算的という点で,「教養[主義]」は確かに“グロテスク”なのかも.ずいぶん前に読んだ竹内洋『教養主義の没落:変わりゆくエリート学生文化』(2003年7月25日刊行,中公新書1704,ISBN:4-12-101704-8)と比較して,本書の方が教養主義のもつ「より冥い部分」に光を当てている.「教養」それ自体がグローバルにはつかみどころがない(ローカルな前提知識ゆえ)ものだから,「教養言説」が輪をかけて変幻自在になる傾向があるのも無理ないか.

—— 自分の知っていることの範囲が他者にも共有されていると仮定するとたいていは痛い目を見る(教壇でも対談でも).たまたま偶然にも,同世代的・同時代的に共有されている知恵や経験というものはあるのだろうが,それを越えて個人個人が意識的に獲得する知識の幅には重なりとズレがきっとあるはずで,社会階層的な「教養主義」がそのズレを最小化し重なりを最大化する作用を及ぼしていたとするなら,教養主義が衰退した現在はズレまくっているのかもしれない.

個人的には「教養がありますね」という表現よりは,「ヘンなことを知っていますね」と言われた方がはるかにうれしいです.

◇もう夜になってしまった — 『季刊・本とコンピュータ』の〈第二期・16号[最終号]〉(2005年6月10日刊行,トランスアート,ISBN:4-88752-195-2)をぱらぱらめくる.ほんとうにこれでおしまいなんですね.感慨深い.1997年の第一期創刊号から欠かさず買っていた雑誌.1回だけ寄稿したこともある(第二期・4号,2002年).もともとは将来的な“電子出版”を軸として編集が進められていたはずだったが,しだいにアジア志向の国際出版とか,読書文化・出版文化に関する特集とか,裾野がどんどん広がっていった.その一方で伝統的な book making あるいはタイポグラフィーについての連載記事も続いていたことを考え合わせると,「本とコンピュータ」というタイトル自体がしだいに内容にそぐわなくなってきたことは確かだ.キリのいいところで雑誌としての大団円を迎えたのではないか.

◇本日の総歩数=11726歩[うち「しっかり歩数」=6788歩/54分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=0.0kg/−0.3%.


17 juni 2005(金) ※ 雪隠詰めならぬ書庫詰め

◇5時半起き.雨は上がっていた,晴れ間がのぞく早朝.研究室にていくつか作業 ——

集中講義メーリングリストに新規追加./科研費報告書が届いていた.2冊受け取る./昇格書類の修正点を指摘される./組合の要求書とか.まあ,いろいろと.

◇よそ見少々 —— Amazon.de で調べてみたら,ギドン・クレメルの自伝は3冊あった:Gidon Kremer『Zwischen Welten』(2003,Piper,ISBN:349204459X)/Gidon Kremer『Obertöne』(1997,Residenz,ISBN:3701710635)/Gidon Kremer『Kindheitssplitter』(1994,Piper,ISBN:3492223915).いずれの本も,日本語訳はもちろんのこと,英訳もされていないようだ.

◇お,メモメモ —— Michael J. Crawley『Statistics: An Introduction Using R』(2005年4月刊行,Wiley,ISBN:0-470-02297-3 [hardcover] / ISBN:0-470-02298-1 [paperback]).→出版社のページ目次コンパニオン・サイト

◇シカゴ交響楽団の〈A Tribute to Pierre Boulez〉(CSO CD05-2)がタワーレコードから届く.2枚目に〈グラゴル・ミサ[原典版]〉というのが入っている.Intrada が最後だけでなく最初にも入っている.冒頭からいきなり攻撃的シンコペーションで煽られる感じがする.昼休みの一服.

◇昨日の集中講義で出題したレポート課題は次の通り ——

━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━
【レポート課題(1)】

A〜Dを端点とする次の無根分岐図を考える:

     X Y
  A●−○−○−●D
     | |
     ● ●
     B C

XとYは仮想祖先とする.いま,A〜DおよびX〜Yの形質状態を実数値a〜d
およびx〜yで表わす.枝の長さは平方ユークリッド距離(たとえば,(a-x)^2 
のように)で定義する.

このとき,下記の設問に答えよ:

1)上の樹形のもとで樹長(すべての枝長の総和)を最小化する仮想祖先XとY
の形質状態は:

	x*=(3a+3b+c+d)/8
	y*=(a+b+3c+3d)/8

で与えられることを証明せよ.

2)A〜Dを端点とする二分岐的な無根樹は次の三つである:

     X Y
  A●−○−○−●D
     | |
     ● ●
     B C

     X Y
  A●−○−○−●D
     | |
     ● ●
     C B

     X Y
  A●−○−○−●C
     | |
     ● ●
     D B

a=1,b=2,c=4,d=5 であるとき,平方ユークリッド距離で定義さ
れた樹長を最小化する最節約分岐図は上のいずれであるかを答えよ.
━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━

受講生のみなさん,頑張ってねー.提出期限は1週間後.

◇とある連続講座(高座)を引き受けることにした.秋から冬にかけて.

◇昇格書類の修正に時間を削り取られる昼下がり.曇り空のまま.夕方,やっと作業完了.いままでの文書資産の伝承で,これだけはずっと PageMaker を使い続けている.いずれにせよ,今年でケリをつけたいな.何年も成果差分を付け足し続けるというのは,マンネリなので.よろしくね.>関係者(評価者)のみなさま.

◇夕暮れとともに,再び梅雨空に戻った.

◇新刊近刊情報いくつか —— 稲垣佳世子・波多野誼余夫『子どもの概念発達と変化:素朴生物学をめぐって』(2005年,共立出版,ISBN:4-320-09441-7).数年前に出た英語の原書は稲垣さんからいただいた.生物(living kinds)の認知カテゴリー化に関する発達心理学の本.もちろん要チェック./福田眞人・鈴木則子(編)『日本梅毒史の研究:医療・社会・国家』(2005年,思文閣出版,ISBN:4-7842-1247-7).ん,今度の本は“結核”ではなく“梅毒”なんですね./高橋美由紀『在郷町の歴史人口学:近世における地域と地方都市の発展』(2005年,ミネルヴァ書房,ISBN:4-623-04401-7).地方中小都市の歴史人口学的研究は抜け落ちているというようなことを速水融が言っていたが,その穴を埋めるような本なのかな.

◇本日の総歩数=9834歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.1kg/+0.5%.


16 juni 2005(木) ※ 雨あがりの東京→また雨になる

◇午前5時起き.即研究所へ.修正資料のプリントアウトとコピー.いそがし.昨夜の雨はもう上がっていて,気温は17.6度.

◇今日は講義日なので,朝から東京に出て,最後のあがきの原稿書きをする予定.

◇9時にひたち野うしくから乗って,平方ユークリッド距離に基づく最節約法の検算をしつつ,根津に10時過ぎに着.またぽつぽつと降り出した.そのまま本郷通りの〈ルオー〉に直行し,珈琲を飲みつつ原稿を書く.おお,なかなか調子いいではないか.やっぱり“キャレル”的な喫茶店はよろし.たまにメールなんか出したりして.

—— そこに入ってきたのが,11時半に先週と同じ〈大きなかぶ〉で待ち合わせていたはずの講談社の担当者氏.「偶然ですねえ」「なんでまた,ここに」「すぐ裏に住んでいるので,時間調整にと思いまして」「せっかくですから,お隣の席で待たせていただきます」(汗).

これって,いわゆる「作家の原稿を隣室で待つ編集者の圖」そのものではないか.極楽転じて拷問と化す.正午過ぎまでに1節分400字詰にして10枚ほど書いて,コンパクトフラッシュを手渡す.磨り減る.何年ぶりかでここのカレーを食べて,12時半に東大農学部へ.雨脚が少し強まってきた.※また来週,ここで原稿を手渡すことになる.窓からコッソリ逃げようにも開かないし(大汗).

◇午後1時から〈保全生態学特論〉の集中講義(第2回目).今日は,最節約的祖先復元の手順をやや詳しく解説し,ついで統計学概論へ.abduction における「最良仮説の発見」に関連して,最節約性・尤度・モデル選択論の関わりについて2時間ほど話した後,最尤法に基づく系統推定についての説明.分子進化モデルの選択と最尤系統樹の探索について.デモンストレーションをする時間はまったくなかった(来週まわし).5時少し前に終わりにする.レポート課題をひとつ出した.

◇雨は断続的に降り続いている.傘を持ってくるべきだったか.東大の帰りに,アカデミアに立ち寄る.マヌエル・ド・ファリャ〈三角帽子〉の総譜が意外に安かった.組曲版ではなくやっぱり全曲版がいいな.ギドン・クレメルの自伝がドイツの Piper から出ていたことを知った(独語でしか出ていないのだろうか.ロシア人なのに).明日,書誌情報を確認しよう.2冊出ているようだ.

◇大江戸線の本郷三丁目から乗り,御徒町でJRに乗り換え,上野で常磐線に.雨はさらに降り続く.ヤナーチェク〈グラゴル・ミサ〉のティンパニ — これは死ぬなあ.どう考えても足が3〜4本ないと(れれれのおじさんか)ペダル操作が間に合わないでーす.あるいはニールセンの〈不滅〉のように,2台だけでやりくりするのが実は賢明なのかもしれない(でも無理っぽいか).悩ましい.

◇ひたち野うしく駅に降り立つ.よく降ってます.いかにも梅雨らしい.

◇今日はとても疲れて,自宅に帰ってもアモルファスにぐーたらしてしまった.

◇本日の総歩数=15615歩[うち「しっかり歩数」=4334歩/35分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/−0.8%.


15 juni 2005(水) ※ 雨雨降る降る

◇午前5時過ぎに目が覚める.曇り.地面が濡れていた.気温17.8度.涼しい.研究室にて,仕事する.BGM はメシアン〈みどりごイエスにそそぐ20のまなざし〉.ん,ピアノ独奏にしては意外にメシアンらしくない出だしだなと感じたのだが,予想を裏切らず,しだいに濃くメシアン化していった.こうでなくっちゃね.※同じピアノ・ソロでも,〈鳥〉は最初の音符からすでに一粒一粒がメシアン色だったし.

◇昨晩から読み始めたMichael J. O'Brien, R. Lee Lyman, and Michael Brian Schiffer『Archaeology as a Process: Processualism and Its Progeny』(2005年,The University of Utah Press,ISBN:0-87480-817-0)は,畑違いの読者が読んでもおもしろい.目次に沿ってざっとブラウズしただけだが,さまざまな人物の顔写真が載っている.「遺跡でポーズ」な写真が多いのは当然なのだが,必ずしも考古学者だけではなく,カール・ヘンペルとかウェズリー・サモンのような哲学者たちの御真影もある.※あとはさくさく読んで,書評を書くだけ.

—— 書評と言えば,ナイルズ・エルドレッジ『ヒトはなぜするのか』(2005年3月11日刊行,講談社インターナショナル,ISBN:4-7700-2790-7)の書評締切が迫っている.

—— しかし,それ以上に“年貢”の原稿が……(汗).

◇曇り空から雨が落ちてきた.午前10時から筑波事務所にて「第23回国立試験研究機関全国交流集会」なる組合イベントへの動員.特別講演として池内了トークとか.来月に予定されている総合科学技術会議との交渉素材を討論するというのが主目的.本来なら大学とは関係がない(というか口を出さない)はずの独法(旧国立)研究機関が「大学院教育については,定員のあり方も含め見直しを行うこと」という要求項目を立てたこと自体が,ことの深刻さを物語っているのだろう.

◇雨の昼休み,隣接する情報センターの図書室にて淀む.伊勢田さんのコメント(6月10日付)に対する返信 ——

  1. 所与の分類の枠組みに照らしてある具体的な分類が正しいかどうかは経験的に確認しうる問題」 — 分類群の包含構造がすでに決まっていて,個別の標本をどの群に帰属させるかという〈判別分析〉の1問題として「分類」を考えるのであれば,確かにデータに基づいて帰属を決定することは可能だろうと思います.正しい判別とまちがった判別は対置できるので.しかし,分類群の構造そのものをデータからつくろうという〈クラスター分析〉が本来の「分類」の問題だろうとぼくは考えます.ここで,分類の規則(類似度尺度とクラスタリング法)を与えればある形質データのもとで「解」はただひとつ出てくるわけで,分類をめぐる論議そのものが生じる余地はないわけですね.とすると,分類をめぐって論争が起こるとしたら,それはまさに分類規則の選択に関わることで,泥沼になるということです.「正しい分類」という表現に延髄反射してしまったのかな.

  2. 体系学が分類の科学ではなく系統の科学だ、というのは、ハルが扱っている論争の結果として発生した認識であって、論争の前から存在している場としての体系学の記述としては 不適当なのでは?」 — ぼくの理解では,Hull の本がたどった1960〜80年代の体系学論争は「生物分類のあり方」をめぐる戦いであって,それとちょうどレイヤーが重なるように「系統推定論」が体系学の世界に登場してきたわけですね.ですから,切り継いだように「分類から系統へ」と体系学が変身したというのではなく,スポットライトを浴びる論争舞台が分類から系統に移っただけなのかもしれません.

  3. ハルが「参与観察者」ではなく「参加者」であったとしたら、 彼の研究の社会科学的調査としての客観性に疑問符がつくことになります」 — なるほど.明らかにハルの書いた内容は部分的にまちがっていて,客観的かと問われれば記載の点ですでに「ノー」と言わざるを得ません.しかし,彼が採用した調査方法に関しては,ぼくの評価はむしろ高いですね.科学者の人間関係の網の目の中に自らが「役者」のひとりとして入り込み,それ以外では得られないような内部事情や資料あるいは私信を情報として得たという点で,科学社会学でいう参与観察では得られなかった(かもしれない)結果が得られたのではないでしょうか.逆に言うと,参与観察的な手法でこの対象にアプローチしたとすると,どのような結果が期待できるのでしょう.

◇本当なら,午後の分科会(〜17:00まで)にも出ないといけないのだけれど,ごめんなさーい,背に腹は代えられなくなりました. — そのまま情報センター図書室にて原稿を書くことにする.

◇夕方になって,雨は小止みになる.午後5時から業務課作業棟にて〈さなぶり〉 — 季節の行事のひとつ.新人の“お手植え”儀式とか.あとは鱈腹飲み食い.炭水化物摂取量とても多し.2時間あまり.※4月から新しく来た佐藤洋平理事長の顔を初めて見た.

◇研究室に帰ってきたら,統計関連シンポの最後の演者から要旨が届いていた.すべてとりまとめて大会実行委員会にメール送信する.これで荷の一つから解放された.形態測定学に関わる話題提供として,理論的な話題提供とともに,育種学・考古学・感性工学というレンジの講演を揃えることができたので,うまくヒットすればいい集会になると思う.

◇プチよそ見 —— 森洋子『ブリューゲルの「子供の遊戯」:遊びの図像学』(1989年2月25日刊行,未來社,ISBN:4-624-71052-5).昔のフランドルでは,お手玉として豚の後足の距骨(六面体でダイスとしても用いられたそうな)を5つ投げ上げていたとのことだ.へー.

◇さて,夜の原稿執筆タイムはこれから始まる.

— かと思いきや,明日の講義で配布する資料に不備があったので,あわてて手直し.

◇原稿〜.

◇本日の総歩数=15582歩[うち「しっかり歩数」=3484歩/28分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=+0.4kg/−0.2%.


14 juni 2005(火) ※ 堅実な1日になりそう

◇午前4時起き.曇り.気温は17.9度.多少涼しい気がする.

研究所にて,進化学会賞の公告文をメーリングリストにばらまく.あと関連する作業を少し./Elliott Sober の訳本の注文がまた入った(ありがとうございます).発送の準備完了./分散分析に関する質問への返答メールを書く./統計関連学会大会の要旨をぱたぱたと書き上げて,すでに集まっている分とともに大会事務局に送る.※まだ集まっていない分があるので,急がないと.

— ここまでで午前7時.

◇午前中は統計のお勉強.F分布とt分布の導出計算と格闘する.久しぶりにガンマ分布の密度関数と再会した.「パラメトリック統計学してるなあ」という実感ありまくり.数式処理能力が落ちていてとてもカナシイ./明後日の系統学講義の資料印刷をパートさんに頼む.また,量が多いぞ.※あ,受講者メーリングリストを開設しないと.

— ここまでで正午.

◇午後1時から定例の〈統計学〉セミナー(第7回) —— 先週に引き続き,正規分布から導出される確率分布としてF分布とt分布の導き出しを行なう.同時分布をまず考えて,トリッキーな変数変換の嵐,そしてひねり出したガンマ分布からの急転直下の解決.日本語で書かれた数理統計学で,確率密度関数の解析的導出をきちんと書いてある教科書というのは,何かあります.ぼくは30年近く前からAlexander M. Mood, Franklin A. Graybill and Duane C. Boes『Introduction to the Theory of Statistics, Third Edition』(1974年,McGraw-Hill,ISBN:0-07-042864-6)を愛用しているので,他の本の必要性を感じないまま現在にいたっています.この本も訳が出ているのだけれど,それはひもといたことがありません.

—— 「30年近く前」というのは誇張ではなく,駒場に入ってすぐの教養科目の統計学の先生がこの本を新入生に強く薦めたときから,ずっとということ.

◇雨が降るという予報だったのに,逆に晴れてきた.風が通ってなかなか快適.

◇うう,どーやら「丸投げ」されたようで.※まずは実行委員を決めないとね.困ったなあ…….

◇東大の講義用メーリングリストを開設したので,受講生に連絡する.これからの集中講義はこのメーリングリストを使って,やりとりする予定.明後日の講義資料はコピー完了.続いてプレゼン用の素材をそろえる.

◇広島の統計学会大会は最後の演者からOKの連絡あり.これでなんとかなりそうだ.ほっとする.※演題と要旨よろしく.>六本松に向かって手を合わす.

◇チャールズ・ライエルの翻訳! —— ビックリしたなあ,これには.かの『地質学原理』の抄訳が古今書院から新刊で出たそうだ:チャールズ・ライエル『地球の歴史を読みとく:ライエル「地質学原理」抄訳』(2005年6月刊行,古今書院,ISBN:4-7722-5100-6 ※→版元ページ).

原書は,1990年に出た初版(1830年)3巻本のリプリント(C. Lyell『Principles of Geology』1990,Univ. Chicago Pr.,ISBN:0-226-49794-1 / ISBN:0-226-49797-6 / ISBN:0-226-49799-2)を当時懇意にしていた洋書取扱店からもらった.今回の訳では,分量にして原書の1/4に短縮し,解説を付けたそうだ.気になるなあ.

◇夜,Michael J. O'Brien, R. Lee Lyman, and Michael Brian Schiffer『Archaeology as a Process: Processualism and Its Progeny』(2005年,The University of Utah Press,ISBN:0-87480-817-0)の序論(最初の10ページほど)を読み始める.1960年代に始まり現在にいたる40年間に及ぶ,アメリカ考古学界の流れを考古学の理論と方法をめぐる論争を軸に描くことがこの本の目指すところだそうだ(p. ix).

もちろん,本書のタイトルのもととなった David Hull の本については,評価はきわめて高い:

He [Hull] makes a convincing argument that one cannot hope to understand the history of a science without understanding the people involved. To that end he interweaves theories with personalities, methods with alliances, and results with jealousies. […] [I]f you want to know how science really works — read Hull's Science as a Process. As someone with a long professional involvement with systematics, Hull has an inside view of the social and conceptual development of the discipline, which he uses to full advantage. (p. 1)

ぼくが最初にこの本を読んだときに受けた印象とほぼ同じだ.

本書は考古学の現代史(それもアメリカの)なので,ぼくには畑違いであることは確かだ.それでも,基本方針がはっきりしているので,全体として心安らかに読めると思う.

◇時間がない(ぽつり…)

◇本日の総歩数=13188歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+0.7%.


13 juni 2005(月) ※ 『〜 as a process』は合い言葉

◇早く寝たので午前5時に自然起床.晴れて気温は21.7度.昨日みたいに蒸し暑くなるのだろう.明け方しか activity を維持できないみたい.※さらに超朝型になればいいのだが,それでは社会生活っつうもんに差し障りあるだろーし.

—— 少しだけ涼しいうちに研究所に行ってごそごそする.BGMはヤナーチェクをば.Michael Tilson Thomas〈Leos Janacek: Glagolitic Mass & Sinfonietta〉(SBK89903).オンラインサイトなどを見ると,1860年代の少年合唱団を皮切りにブルノの聖アウグスティノ修道院に専属オルガニストとして在職していた.だから,グレゴル・メンデル修道院長とは,長い年月を共有していたことになるのだろう.

◇統計関連学会シンポジウム関連の連絡をしたり,いろいろ届く郵便物をさばいたり(捨てたり)…….進化学会の作業もあり.

◇〈系統文献学〉 —— 埼玉大から同志社大に異動された矢野環さんの新サイト.系統樹は生物学者の専売特許ではない.

◇昼休みの歩き読み.気温は24.7度.風がある分,昨日よりはすごしやすい — 角田光代・岡崎武志『古本道場』(2005年4月30日刊行,ポプラ社,ISBN:4-591-08627-5).前半50ページほど読む.

◇午後は原稿書きと講義資料の準備.進化学会賞の公告を関係諸方面に流す手はずを.西日が射す南側居室の温度が28度を越えたので,北側別室に避暑.こちらは北からの風が入り,気温は25度を下回る.猫ではないが,これから暑くなるシーズンは,もっとも気温の低いところを求めて絶えず移動することが肝要だ.

◇次回(6月16日)の「生物系統学」講義は,最節約的祖先復元の手順について説明し,最尤法・ベイズ法に進む.ただし,途中「統計学概論」と「計算機統計学」そして「モデル選択論」がそれぞれ1時間ずつ入るので,来週の最終回講義にまたがることは確実だろう.

◇〈統計関連学会連合大会〉のシンポジウム要旨が集まり始めている.そろそろぼくのも書かないと……(\ポカ) ※〆切は今日でっせ(…).時間をちょい戻してっと.

Super-large tree —— おお,OTU数3万の最節約系統樹がやってきた.枝だらけ.もしもプリントアウトしたら300ページ.こうなったら新しいTreeViewerが必要ですな.

◇夕暮れとともに雲が厚くなり,北からの風が吹き出した.下り坂の空模様.明日は雨か.

◇本日届いた新刊本 —— Michael J. O'Brien, R. Lee Lyman, and Michael Brian Schiffer『Archaeology as a Process: Processualism and Its Progeny』(2005年,The University of Utah Press,ISBN:0-87480-817-0).もちろん,David Hull の体系学史本『Science as a Process』に刺激を受けて書かれたアメリカ考古学界の研究者ダイナミクスと学問系譜の本.必読です(for me).Cf: 出版元のページ

— 詳細目次は〈leeswijzer〉へ.※ついでに〈書庫〉にも置きました(久しぶりに更新).

◇本日の総歩数=18200歩[うち「しっかり歩数」=4669歩/41分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−1.3kg/−0.8%.


12 juni 2005(日) ※ 揮発する時間

◇午前5時起き.晴れ.気温21.7度.研究所にて少し作業.

◇本棚を掘り起こしていたら,学生時代に買った[のだと思う]レナード・バーンスタインの『West Side Story (Symphonic Dances)』(G. Schirmer, New York)の総譜が出てきた.東大オケでこの曲をやることは結局なかった.一橋オケにエキストラとして出演したとき,国立キャンパスの兼松講堂でやったのが唯一の演奏経験か.改修前の兼松講堂はレトロな(ぼろい)雰囲気で,いまでも印象に残っている.東大の安田講堂も“廃墟”だった頃の方がなじんでいる.いまは卒業式などのイベントに使われているという大講堂の客席にずらっと灯油ポリバケツが並んでいた光景はもう昔のことだ.

演奏会用の Symphonic Dances はそれなりに洗練されているのだが,あらためて総譜を読んでみると,とても Jazz な世界だったことを再認識させられる.作曲者自身の指揮による舞台上演版(キリ・テ・カナワが唱っていた)では,本職のジャズ・バンドも加わっていたはずだ.

— トランペットへの指示「high Es が吹けないなら黙ってな(If impossible, tacet)」だって!(765小節目).

◇とある抽選会に参加.人が多すぎるのか,それとも参加者が多すぎるのか,午前10時から午後3時過ぎまでめいっぱいかかってしまう.時間返せ〜(ぶつぶつ).

—— 待ち時間がとても長かったので,読書はできた:鎌田慧『大空港25時』(1996年1月31日刊行,草思社,ISBN:4-7942-0681-X)を150ページほど読み進む.機長・スチュワーデス・整備士・管制官・税関などなど航空業界関係者のインタビュー集.著者の顔がオモテに出ているわけではない.その点では最初は面食らうのだが,けっして能弁ではないだろうインタビュー相手の言葉をうまく引き出すというのもまた“著者”の才能ということか.

◇午後4時20分頃,ずずんと地響きする地震あり.

◇一日中とても蒸し暑かった.午後11時前に寝てしまう.

◇本日の総歩数=10833歩[うち「しっかり歩数」=0歩0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.前回比=+0.9kg/+0.3%.


11 juni 2005(土) ※ 不快指数的

◇寝過ごして午前6時.関東をかすめた台風4号は東海上に抜けていったらしく,天気は回復傾向.ただし,湿度が高く,曇って蒸し暑い.

—— 朝の歩き読み:お久しぶりの速水融『歴史人口学で見た日本』(2001年10月20日刊行,文春新書200,ISBN:4-16-660200-4).第4章「虫眼鏡で見た近世 — ミクロ史料からのアプローチ」を読む.70ページあまり.この章は,著者の本領(と熱意)が十分に発揮されていて,当時の“宗門改帳”を手がかりに江戸時代の社会を人口学的に再構築していく.とりわけ,なぜ日本人が宗教的な背景をもたずに勤労に勤しめたのかという謎を解読する過程で,西欧型の〈産業革命〉と対置する〈勤労革命〉という概念を提出するあたりはとてもおもしろい.著者は昔も今も日本人は「ひじょうに激しく働いた」(p. 99)と言う.この表現,とてもインパクトがある.単に「よく働いた」ということではなく,際限なく働くことが「美徳」とみなされるという社会が当時すでにできあがっていたというのだ.

本章後半では,農村と都市の間の人の動きを人口学的に考察している.この部分もまた興味がわく.農村部でつぶれた小作層がはじき出されてどんどん都市部に流れ込んでいき,農村の空きニッチは地主層から落ちていった分家が埋めるという農村部での階層間の流れがあった.一方で,農村部から都市部に流入していった人口は,著しく高い都市での死亡率のせいで,どんどん「消費」されていったという.当時の日本では,農村部と都市部で“生存曲線”そのものが異なっていたらしい.

人口の静態と動態の考察を通して,ここまでのシナリオがつくり上げられるというのは印象的だ.

◇昼寝しつつ,『歴史人口学で見た日本』の残りの章を読了.80ページほど.第5章「明治以降の『人口』を読む」は,明治時代の人口統計学の研究史みたいな内容.続く第6章「歴史人口学の『今』と『これから』」は,歴史人口学の将来的な研究ヴィジョンを論じている.近刊でいくつか出版物が出るようなことが書かれている.※もう出ているのもあるはず.

◇今月末の人間ドックの受診票が届く.例年のことだが,ドック前は身を慎むべし慎むべし.

◇頼まれ仕事のPTA文書作成を小一時間ほど./とある本に関する問合せ:もしあの本が翻訳されるようなら,進化過程(speciation)を論じた包括的教科書としていいレファレンスになるでしょうと返答する.訳書価格はとてもゴージャスかも……./最節約法の“護符”に関する質問に答えたりとか.

◇とある出演依頼がくる:ちょっとビビったりする.「高座」としてはまったく申し分ないのですがね.※さてはヤル気になってるな?>ワタシ.

◇午後から夕方にかけて,そして夜になってもまだ蒸し暑い.これからこのような天気が長く続くとなると,日常的避暑を考えないといけないな.

◇来週の木曜にまた“年貢”の取り立てがあるので,いやが上にも激しく労働しなければならないはずなのだが,やや燃え尽き気味なので,しばし逃避する.

—— ということで,ご就寝.※こらぁ,寝てすむのかぁっ!(すむすむ)

◇本日の総歩数=8709歩[うち「しっかり歩数」=7107歩55分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/+0.8%.


10 juni 2005(金) ※ 梅雨明け速攻

◇5時半に目が覚める.まだ疲れが残っているよーな.雲は多いものの,いちおう晴れ.気温20.4度.

◇事務連絡メールとか,郵便物の発送とか,こまごまと時間が削り取られていく午前中.

◇しだいに雲行きが怪しくなり,昼前に雨が降り出した.台風の影響か.気温は高いまま.

◇さらに,アヤしい雲行きが —— 昼前に電話連絡にて,とある科研費報告書の原稿の督促:「夕方までに印刷所に入れますっ」との最終通告.“きっと来る”とは思っていたのだが,まことに申し訳ありませんです.とたんに弾かれたように原稿を書き出す.約3時間後にA4版で20ページあまりの報告原稿(系統ネットワークについて)をpdfでメール送信する.これで印刷所への入稿には間に合っただろうか.

— 速攻ドロナワで,とても疲弊した.ごしごしと磨り減らされた心地.

◇おお,関東地方が梅雨入りしたそうだ.外はそれなりに雨が降っている.

◇夕刻にシンポジウム関連の事務連絡・依頼メールを集中的に発信する.よろしくお願いいたします.>関係者諸氏.

◇備忘メモ —— なるほど,北京筋は nMDS で春日とつながろうとしているわけね.

◇夜.黴っぽい.ふとんがしっとりしている.※サルマタケが生えたわけではない.

◇本日の総歩数=9863歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/+0.7%.


9 juni 2005(木) ※ 午前さまから始まる1日

◇丑三つ時にむくっと起き上がる.※妖怪か,お前はっ.

—— そのまま研究所に直行.今日の講義の準備は大丈夫なのだが,原稿がねー(汗).原図をスキャンしたり,また書いたりで,もう明け方.

◇Douglas J. Futuyma 進化本:これまでの「更新頻度」から推測して,Douglas J. Futuyma『Evolutionary Biology, Third Edition』(1998年, Sinauer Associates, ISBN:0-87893-189-9.※→版元ページ)の後継としての「第4版」がそろそろ出そうかなと思っていたら,今年はじめに D. J. Futuyma『Evolution』(2005年,Sinauer Associates,ISBN:0-87893-187-2.※→版元ページ)が出た.

ただし,この本はいわば学部生向けの「アップデート?された短縮版」という位置づけみたいだ.出版元ページを見ると「much shorter」なんて書いてあるが,それでも「543ページ」もあるわけで,『Evolutionary Biology』の「ほぼ840ページ」と比較すれば,たしかに「shorter」だけど,「much」かどうかは??? ※学部で『Evolution』にどっぷりと浸かり,大学院では『Evolutionary Biology』を抱えて歩くというのが,正しい進化学徒の生活スタイル(ほんまか).

— というわけで,「お買い上げ」をクリックするのをまだためらっているのだが,やっぱり買っておいた方がいいかも.フツイマだし…….

◇そんなよそ見しているヒマがあったら原稿書きなさいって.>ワタシ.

◇午前6時 — 今日は午後から東大で講義があって,その前に“音羽さま”にお会いして“年貢”を納めなければならないのだが…….あと数時間でなんとか前半部分を仕上げて,原稿ファイルを出せるか.

◇午前9時過ぎの常磐線に乗り,北千住乗り換えで根津まで.本郷通りの〈こころ〉にたどり着いたのは10時半のこと.さらに数十分ほどノートパソコンで原稿を入力.11時半に,農学部前の〈大きなかぶ〉にて,“音羽さま”に原稿の一部を手渡しし,昼食&情報交換.結局,予定の半分ほどしかできなかった.来週またここで残りの原稿を手渡しするという“御裁き”を受ける.※ひー.

— ちくまプリマー新書についての情報いろいろ.なるほど,そういう経緯で創刊されたのですか.装幀をしているのがクラフト・エヴィング商會とは気づきませんでした.

◇午後1時から,東大農学部1号館にて「生物系統学」の講義(1回目).体系学(systematics)とは何か/それははたして科学なのか/分類と系統との蜜月は終わったのだ — などなどといういつもの噺を4時間ほどする.受講したのは十数名の院生(プラスα).

— 講義のセクションはほぼ1時間ごとにきれいに四分割できた:1) 系統樹百面相(アナタの隣の系統樹);2) 体系化の方針(分類学 vs. 系統学)&図式言語としての系統樹;3) 系統学の推論様式と系統推定法概論;4) 系統推定法のバフォーマンス比較&1990年代の系統学革命について.

伊勢田さんの講義(8 June)でも,「体系学って科学なんですか」という論議があったそうだ.“分類が正しいかどうかは経験的に確認しうる問題”:そんなバカな! 「正しい分類」なんてのはどこにもありません(「自然な分類」なら可能かもしれないけど).もうひとつ,体系学を「分類の科学」と同一視するから,あらぬ方向に議論が飛んでいってしまうのであって,それを「系統の科学」とみなせば体系学を科学にすることは可能でしょう.昨日のぼくの講義はまさにこの点が核心だったわけでして.

ついでに:David Hull のやり方は,社会科学的には問題ありという指摘は新鮮.ぼく自身は,Hull は進化生物学でよく使われるツールを科学社会学に適用したのだと理解していました.それと,Hull はけっして「参与観察」をしたのではなく,哲学マインドをもつ体系学者としてその場にいたはずです.少なくとも Systematic Zoology 誌に原著論文を投稿していた頃の Hull は体系学者だったとぼくはみなしています.

◇定時の午後5時に講義を終え,真砂坂上にあるアカデミア・ミュージックに行く.ヤナーチェクの総譜をいくつか.〈シンフォニェッタ〉にしろ〈グラゴル・ミサ〉にしろ,このオーケストレーションであの響きが出るというのはすごいな.スクリャービンの〈プロメテウス:火の詩〉は総譜からしてすでに神秘オーラが立ちのぼっていたぞ.ニールセンの藍色の新版スコアを撫でてみる.※来週もまた来よう.

◇大江戸線に乗り,御徒町でJR乗り換え.そのままひたち野うしくへ —— 車中読書:小沼純一『武満徹:その音楽地図』(2005年3月30日刊行,PHP新書339,ISBN:4-569-64213-6).なんだかメモ書きみたいで(というか,そのものだけど),流し読みして興味を湧かせるというためには役に立つかな.でも,せめて『武満徹全集』とか『武満徹著作集』の書誌情報くらいはきちんと巻末に載せておかないとダメなんじゃないですか.

勢いで二ノ宮知子『のだめカンタービレ・12』(2005年5月13日刊行,講談社コミックスKiss 544,ISBN:4-06-340544-3)も読了.おお,千秋クンがパリで武満を振っているぅ.

◇一日中とても蒸し暑かった.台風4号の影響で南風が入っているせいだろうか.

—— だらしなくも寝てしまった.

◇本日の総歩数=20963歩[うち「しっかり歩数」=3260歩/26分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−1.8%.


8 juni 2005(水) ※ 朝から追い立てられる

◇午前5時起床.くもり.気温15.7度.湿度やや高め.

◇〈生物と統計と基礎〉について —— 毎年やっている統計研修では,分野を問わず“できるだけ数式を使わずに”話をするように心がけている.この基準から言えば,確立された(すでに乾ききった?)「数理統計学」を教えるというのは,ちょうど「微積分学」を教えるのとまったく同じ講義感覚を伴っているように思う.この4月から久しぶりに積率母関数法とか変数変換法による確率分布の導出をしてみて,あらためてそういう感覚を味わっている.

データ解析のツールとしてこれらのパラメトリック手法を用いることは体系学の分野ではほとんどないとしても,“一般教養”のひとつとして,統計学の文献を読んで理解するための“リテラシー”を向上させるためには意義のある内容だろうと思う.実際,一見やっかいそうに見える確率密度関数が,トリッキーな置換積分やスカイフックのような積率母関数によってみごとに導出されるのを追体験して,「おおっ!」と感激する学生はきっと少なくないだろう.

— ただ,こういう体験や感激は統計学にかぎることではない.

一方,データ解析のツールとしての統計学に目を向けると,学問分野ごとの「個性」が表に出てくる.“いつでもどこでも”な数理統計学(「数学」としての)とは別に,体系学なら体系学ならではの,あるいは生態学なら生態学ならではのちがいが統計ツールの使用頻度に反映されてくるだろう.粕谷さんが指摘されるように,一般的な意味での「尤度」を柱として統計ツールを統一しようとするなら,仮説選択の基準としての「尤度原理」は統計学の“奥の院”としての科学哲学の中に据えて,その原理の個別的な“降臨”として「最尤法」に則った統計ツールを組み立てていくという手順になるのだと思う.少なくとも尤度的な「ものの考え方」は,いったん統計学の「外」に置いて,必ずしも統計学に限定されない推論のための武器であるという基本認識を普及させる必要があるだろう.

◇午前10時半からグループ内会議.研究部のウェブサイトをどう運用していくかについての意見交換があった.オフィシャルなサイトは一挙一動に許認可というしばりが入るのでたいへんですねー.

◇昼前から地下書庫にまたまたお籠り — 原稿を書き続ける.最近こういう生活パターンが主流となってきた.午後2時まで.※まだぜんぜん終わりませんが(汗).

—— そのまま夜に突入.まだー.

◇く.早寝する.午後10時就寝.

◇本日の総歩数=11975歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.1kg/+0.4%.


7 juni 2005(火) ※ 寝耳に水っ

◇4時半起床,晴れ,気温15.0度.寝起きよし.手首ほぼよし.

—— 進化学会関連の事務仕事.文章をつくり,段取りをつける.

◇締切がいきなり「前倒し」になった文書が一件(汗).マジっすか.午前中に仕上げますと返事する.タイトルは「Tree of Life から Web of Life へ」./統計学会シンポジウムの方もあわただしくなってきた.連絡したり,要旨の依頼をしたりしないと.

◇わ,これは愉しいな! — 〈麺の系譜図〉(日清食品).まるで,MacClade で描いたかのような「麺」の系統発生.monogenism でいいのかという疑問は残るが.

◇そういえば,統計学的系統学(statistical phylogenetics)の[早くも定番となりつつある]教科書 Joseph Felsenstein『Inferring Phylogenies』(2004年,Sinauer Associates,ISBN:0-87893-177-5)の書評や正誤表が載っているコンパニオン・サイトは必見.山ほど書評が出ていて,逐一 Felsenstein が“逆書評”している.確かに cladistics に対する biasedness は Felsenstein の大きな特徴だと思う(しかも inconsistent だろうし).

◇だいたい,生物/無生物のいかんを問わず,“ツリー”がかかれていれば,無意識に呑み込まれるというのがふつーの人間の「さが」みたいなもんでね.これが“スパゲッティ・ネットワーク”やったら,惹かれるどころか,引くでしょ.ここのところが“ツリー”から“スーパーツリー”あるいは“ネットワーク”への跳躍を思いとどまらせている「ヒト側」の事情だと思われる.

◇先日からコッソリ読み始めている — ばるぼら『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』(2005年5月9日刊行,翔泳社,ISBN:4-7981-0657-7).※カバーを付けたまま本を読む習慣のある人は,いったんカバーを外して,ウラに描かれている〈インターネット系統樹〉をじっくり鑑賞するべきですよ.

◇午前中にやり終えるはずの文書作成が …… ダメダメっす.ごめん.

— 昼休み返上で,地下書庫に引き蘢る.このラインに沿って書こう.「魂が[こもって]ない」と言われたりしないように.※ワタクシ,そんなコメントが戻ってきたら,きっと“プチ出家”すると思う.[去年,そーいう気配がちらっとあったな(汗) — あ,忘れましょうね.]

◇でも,ついついよそ見したりしてしまう: Dædalus(Winter 2005 号)は〈On Race〉という「人種」特集号.この雑誌,農環研の図書室でしか読まないのだが,全米芸術科学アカデミーの機関誌らしく,数多くのビッグネームたちが寄稿しているのに驚くことがある.Ian Hacking の論文「Why race still matters」(pp. 102-116)は,認知カテゴリーとしての“人種”を論じていて参考になる.近刊予告:

Hacking, I. 2005 [forthcoming], The Tradition of Natural Kinds. (Cambridge University Press, Cambridge)

ほほー,自然種(natural kinds)の本ですか.買い物かごに入れとかないと.

—— もう一つ,気になるひとことをピン留め:同じく Dædalus の Fall 2004号〈On Human Nature〉特集で,Richard Rorty が Steven Pinker の「Blank Slate」論に対する反論(「Philosophy-envy」, pp.18-24)の中で記したことば:

Whereas physics-envy is a neurosis found among those whose disciplines are accused of being soft, philosophy-envy is found among those who pride themselves on the hardness of their disciplines. The latter think that their superior rogor qualifies them to take over the roles previously played by philosophers and other sorts of humaninsts - roles such as critic of culture, moral guide, guardian of rationality, and prophet of the new utopia. Humanists, such scientists argue, only have opinions, scientists have knowledge. (p. 22)

physics-envy という言い方は前から知っていたが,philosophy-envy という表現もあるわけですね.

◇あ,もう午後1時.〈統計学〉セミナー(第6回) —— χ二乗分布に関する定理の証明を板書しまくり.午後2時半まで.へとへと.

◇出たー,“セミラチス”! —— この忙しいときに,さらなるよそ見への誘惑は困りまんなあ.はいはい,Christopher Alexander 「都市はツリーではない」.その昔,『生物系統学』を必死で書いていた頃,ハマりました.第4.7節「系統はツリーではない」が,Alexander の歴史的論文「都市はツリーではない」(1965)のもじりであることに気づいてくれた“生物学者”は結局ひとりもいなかったねえ.※Alexander を読む生物学者の方がはるかに変人度が高いのだろうけど.

なお,系統学では“セミラチス”こと semilattice は,系統樹を記述する離散数学モデルとして1960年代からすでに定着していました.ツリーからネットワークへの脱皮の過程で,非階層的な semilattice はごく自然なグラフ理論的一般化だと思うのですが,直感からの乖離はどうしようもないですね.制約が緩い分,semilattice は記述ツールとしての自由度が高いでしょう,しかし,それは tree ほどの直感的・認知的インパクトをもち得ないのではという見解は,ぼくの中では『生物系統学』を書いていた頃とあまり変わっていません.

— 罪な pensiero さんに時間をかりっと削り取られたぜ.

◇こまごま —— 出張届(3件)を提出.※すべて東大への出講のため.

◇あ,もう夜.はかどらず(冷汗).

◇本日の総歩数=9218歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+0.4%.


6 juni 2005(月) ※ ICSEB VII ロゴ決定!

◇寝過ごして午前6時.晴れ.気温はすでに17度を越えていた.今日も暑いか.左手首の具合は徐々によくなってきた.ジャム瓶のフタなら開けられるようになった.細い瓶のアルミキャップはまだダメっぽい.

◇IOSEB事務局から,ICSEB-VII の大会ロゴが決まったとのメール連絡.添付で tiff 画像が付いてきた.大会会長の Jorge Llorente さんの夫人がデザインされたそうだ.いかにも“マヤ”らしい“アステカ”なポスターでいい感じ.「線虫」のデザインに苦労したらしい.

そろそろ,こちら方面の仕事も押し寄せてきそう…….

◇東大の非常勤講義〈保全生態学特論〉のサイトを更新した.2年前の構成を踏まえて,新しい内容を取り込むようにした.今回の特論は,前半はぼくの「生物系統学」,後半は森林総研の津村義彦さんによる「保全遺伝学」となっている.連絡によると修士課程の院生20名弱がすでに履修登録しているとのこと.

◇おお,なるほど! —— 〈巣立ちビナ対応マニュアル〉というものがあることを初めて知った.※アクシデントな「巣落ちビナ」ではなく,成長イベントとしての「巣立ちビナ」だったのか.昨日のカラス・ジュニアもきっとそうだったんだ.

◇帰国当日になって麗面人ご夫妻が農環研に来られた.ご無沙汰でございます.

◇集中講義の配布資料とプレゼン pdf の作成.午後はそれで消える.

◇夜は,明日の統計学講義の準備.積率母関数を使い回して,n個の独立な標準正規変量の平方和ΣX2とその標本平均Xbarの平方がそれぞれχ二乗分布(自由度n)をすることの証明.さらに,両者が互いに独立であることを利用して,統計量Σ (Xi−Xbar)2がχ二乗分布(自由度n−1)をすることの証明.

◇本日の総歩数=9404歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.8kg/−0.1%.


5 juni 2005(日) ※ まだ invalid な日曜日

◇序奏が2時間ほどあって,午前6時に起床.曇りのち晴れ.左手首はまだ痛みが続いている(よろしくないむくみがある).でも,やっとキーボードに向かうことができた.昨日は指がぜーんぜん動かなかったので,それに比べればはるかに事態は改善してきた.

◇再び「堆積」し始めている仕事への復帰 —— むこう3週間15時間分の集中講義の準備もさることながら,例の新書原稿の続きとか,科研費報告書の原稿とか,シンポジウムのことどもとか,大波小波がうねって打ち寄せてきた.※台風もやってくるみたいだし…….

◇「編集後記」の本 —— 柏原成光『黒衣の面目:編集の現場から』(1997年6月25日刊行,風濤社,ISBN:4-89219-155-8).※筑摩書房から発行されていた[いる]雑誌『人間として』,『文芸展望』,そして『ちくま』の“編集後記”だけを集めた本.類書はほとんど皆無だという.「埋め草」と言われようが「詰め草」であろうが,“編集後記”の書き手(編集者)にとっては,本文以上に心を砕く仕事だっただろうと推測される.それは黒衣がオモテに顔を出す一瞬だから.

ぼく自身,小学校のPTA広報や職場の組合広報で編集担当だったときは,長い“編集後記”を毎度のように書いていた.ま,広報担当のヒソカな愉しみみたいなもので,ことさらに小さなフォントで書き連ねた.単発も,連載もあった.何回か続けて書いていると確実に「固定読者」がついてくれるので,それがまた励みになったりして,さらに書く意欲が亢進するという[悪]循環になる.こうなればしめたもので,あとは自力(惰性ではない)で進むことができる.

ぼくの経験から言ってまちがいないことだが,“編集後記”でうまく読者を当てることができれば,その印刷物全体の「読まれ方」もよい方向に上向いていく.大事なことは“編集後記”にまず書くという〈逆転〉すら起こりえる.同時に,その「裏」もまた正しい.ヘタな“編集後記”をつけると,その印刷物そのものが読まれなくなる危険性がある.だから,惰性で“編集後記”を書くのはやめた方がいい.黒衣が“編集後記”でヘマをすると,本務であるはずの印刷物全体に傷がつくからだ.

—— 紙の印刷物だけでなく,オンライン文書であっても,よく書けた“編集後記”には印象に残るものが多い.「黒衣の面目」はデジタル出版時代にもなお通用する行動規範なのかもしれない.

◇昨日は遠歩きしなかった代償として,今日の午後はウォーキング(幸い足は invalid ではないので) — 洞峰公園まで往復.日射しがとても強い.〈Coffee Factory〉にて珈琲豆を仕入れ,〈Morgen〉で食パンを買い,さらに〈Andersen〉で飲み物を少し.つくばきってのベーカリー道路らしい買い物コースだ.さらに中の道を通って,帰ってくる.

とちゅう,ほんもんの〈黒衣〉が巣から落ちていたりとか(汗).※まだ巣立ち前の烏の雛だと思うのだが.

◇クスリ飲んだり,湿布貼ったりしたおかげか,徐々に左手首の痛みが引いていく気配.茶碗はもてるようになった.引きドアを開けるのもなんとか.しかし,瓶のフタをひねるという操作はまだまだ.一時的にせよ invalid になってみて,さまざまなものの「ユニバーサル・デザイン度」(今回はとくに「原則6」)がはじめて体感できる.

◇夜は,非常勤講義ページの更新作業.※公開は明日.

◇つい,夜更かししてしまう.

◇本日の総歩数=11820歩[うち「しっかり歩数」=8007歩/67分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.6%.


4 juni 2005(土) ※ To be invalid ...

◇丑三つ時あたりから寝たり起きたり.“正式”には午前6時に起床.外は小雨が降ったり病んだり,とちごて,止んだり.

◇左手首の痛みは少しだけおさまっている.湿布の貼り換え.

◇午前9時から小学校PTAの構内清掃活動.この日はもともと校舎周りの草刈りが予定されていたので,にわかに invalid になってしまったワタクシは晴れていれば参加を見合わせたはずだった.しかし,雨天のため,校舎内の窓ガラス磨きに作業内容が変更されたので,これだと右腕だけでも何とかなる.2時間ほど従事する.

—— 雨が上がり,空が明るくなってきた.午前11時から,小学校の野外炊飯場にてバーベキューを焼く.といっても,ウィンナやトウモロコシを鉄板で焼いたりするくらいの作業だったので,これまた右手だけでオッケー.

—— さらに,昼過ぎは中学校の文化祭に行って,そこらを徘徊する.※中学校では担当作業がないので,単にぶらぶらしただけ.

◇午後,整形外科へ左腕を診てもらいに行く.レントゲン撮られたり,ひねられたり.診断:ひー,アレではなくって,ソレだったんですかー.まいったなー.消炎剤と大きな湿布をもらって,包帯グルグル巻きのオフィシャルな“病人”となる.※これからまた節制につとめないと…….

◇夕方になってまた空が暗くなって大粒の雨が降り出す.遠くで雷鳴も.

◇正しい“病人”らしく,静かに横になって本を読む —— ジャネット・あかね・シャボット『オランダ暮らし十二ヶ月』(1995年11月20日刊行,平凡社,ISBN:4-582-82412-9).※読了.実生活のにおいが伝わってくるエッセイ集.安野光雅装丁の本をたった「100円」で買ってしまって,申し訳ありません.

◇夜も静かに過ごす.早寝.

◇本日の総歩数=15264歩[うち「しっかり歩数」=4387歩/36分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.7kg/−0.9%.


3 juni 2005(金) ※ アンパ〜ンチ,めろんぱ〜んち!

◇5時半起床.雨.気温16.9度.昨夜から左手の具合がよろしくない.悪い予感がする.年に一度あるかないかのことだが,だいぶ前から左手首の「腱鞘炎」という持病がある.手首が締め付けられる鈍痛が遠〜くからやってくる気配がすると,たいてい時間を置かず,左手全体が痺れるようになる.こうなるとしばらくの間は“狙撃”の業務に就くことはできない.おまけに,これまた20年近くおつきあいしている左肘のガングリオンが,湿度が高くなってきたせいか,ややお行儀が悪くなってずきずき痛む.まるで,アンパンマンとめろんぱんなちゃんにダブルパンチされたゴルゴ13と同じだ.※なんちゅう比喩か.

◇夜のうちに,〈leeswijzer〉のアクセス数が「40,000」を越えていた.この1月に開設して以来,月平均8,000回のページビューがあるということですね.訪問されたみなさん,ありがとうございます.これからもよろしく.

◇午前いっぱい,地下書庫に逃避して,原稿を仕上げる — 午後1時過ぎ,400字詰で25枚ほど書き上げて完了:三中信宏「Ernst Mayr と Willi Hennig:生物体系学論争をふたたび鳥瞰する」(TAXA 投稿原稿).※日本動物分類学会の和文誌編集部にメール送信して,とりあえず一件落着.午後2時過ぎ.

◇外は雨こそ降ってはいないが,どんよりと曇っている.

◇左腕の具合はますます悪化の一途をたどり,本の上げ下ろしにも支障が出始める.箸の上げ下ろしは何とかなっても,本が操れないとなると商売あがったりだ.もちろん,キーボード入力仕事も効率悪いことはなはだしい.

◇グウェン・ラヴェラ続き —— Frances Spalding による伝記『Gwen Raverat: Friends, Family, and Affections』(2001年6月21日刊行,The Harvill Press,ISBN:1-86046-746-6)を読むと,グウェンの晩年が見えてくる.『Period Piece』を出版したすぐ後に脳卒中に倒れたグウェンは,右半身不随になり,それでもカートに乗って外に出ては,絵を書き続けたという.しかし,何度かの発作を繰り返すうちに,まったくの寝たきりになってしまった.Margaret Keynes の『A House by the River: Newbham Grange to Darwin College』(1976年,Darwin College [privately printed], ISBN:0950519812)には,「グウェンは,死ぬことをみじんも恐れていなかった」と遠回しに触れられているだけだが,Spalding の伝記にはグウェンの死因は「服毒自殺」と書かれている.日頃から処方されていた鎮静剤を少しずつ溜めておいたらしい.遺書もあり,覚悟の自殺ということだったのだろう.

◇動物遺伝育種学会大会(神戸)での特別講演の依頼があった.11月18日とのこと.系統推定全般に関するトークをとの要望.もう一人の講演者は,もちろん魚のミトゲノミクスの最前線を話されるだろうから,わたくしめは露払いさせていただきますぅ.

◇ああ,もうダメダメ,左手の指が動かなくなってきた…….Нет....

夜になって,さらに悪化.茶碗をもつとか瓶のフタをひねるという“日常事”に差し障りが出てきた.シャレにならん.

◇起きていてもムダなので,湿布して,鎮痛剤飲んで,即就寝.午後10時半.

◇本日の総歩数=11043歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=−0.1kg/+0.6%.


2 juni 2005(木) ※ 梅雨も間近か

◇今日も午前5時起き.曇りだが,気温は18.7度もある.今日は蒸し暑くなるかもしれない.

◇研究室にて,日本進化学会の学会賞のアナウンス文案を作成.ちょっとやっかいな箇所があるのだが,ま,なんとか.関係者に送信〜.

◇午前いっぱいは図書室の地下書庫に籠って原稿書き.なんとか前半10枚ほど書けたので,これで後半が書きやすくなった.※ホンマか.

— 途中,現実逃避して地下書庫の書棚の間を徘徊する.おそらく長期間にわたって人が踏み入れたことのない一角(〈つくばの果て〉)をごそごそと物色する.※ふふふ,思わぬ文献は思わぬ場所にひっそりと置かれていたりするのだ.

◇午後1時から〈系統学的考古学〉セミナー(第6回).とりあげられている話題は適切なのだが,説明のスタイルが微妙にずれていて不適切な箇所あり.考古学者がこの本で“系統学”を勉強するのはつらいのではないかな.著者たちは十分な知識をもっているにちがいないので,文面だけの問題だろうとは思うが.一致指数や修正一致指数についてのリクツをまたまた板書してしまう.合意樹の節は PAUP* で計算してチェックしないとまずいんじゃないかな.

— 来週から3週間続きで東大での「生物系統学」集中講義(15時間)が入るので,木曜のセミナーはそれに振り替えることにする.※南保くん,弥生キャンパスで遭難しないように.

あ.その準備もそろそろはじめないと.

◇夕方,ピーターパン吾妻店にてフロッケン・セサミ1.5kg塊を仕入れる.これで向こう2週間分のパンは確保された.

◇ちょっと脇道 —— ダーウィンの孫娘のひとりグウェン・ラヴェラの回顧録『思い出のケンブリッジ:ダーウィン家の子どもたち』(1988年5月刊行,秀文インターナショナル,ISBN:4-87963-396-8)をめくってみたりする.訳本はあまり売れなかったのではないか(函入りハードカバーだもんねえ).でも,いまでも新刊として入手できるらしいので,それはありがたいことだ.原著『Period Piece : A Cambridge Childhood』(1952,Faber and Faber)はとてもよく売れたそうだ.

— 晩年のグウェンは車椅子に乗っていたという本人の絵があるので,健康が大きく損なわれていたのではと思っていたら,なるほどそういう「病み方」と「去り方」をしたんですか.納得.

◇午後から夜にかけてしとしとと暖かく雨が降り続く.湿気がまとわりつく心地ぞする.明日も雨模様という予報だ.

◇黴.

◇本日の総歩数=10377歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/−0.4%.


1 juni 2005(水) ※ いわゆる半病人

◇午前5時半起床.朝霧が深い.榎戸交差点あたりは視界がなくなるほど.気温15.4度.咳まだ続く.鼻の具合もよろしくない.

— 月のはじめなのでメーリングリスト関連の作業をこなす.お,〈EVOLVE〉の会員数が1800名に達したぞ.月例アナウンスを流す.

◇もうすぐ出る予定の『日本進化学会ニュース』(Vol. 6, No. 1)のゲラに関する返信.内容的に大きな問題はなさそう.今号は,8月末の仙台大会の案内が主だが,セーゲルストローレ書評が最後の10ページを占めている.もっとフォントを落としていただいてもよかったのですが.

◇イマイチ進捗がはかばかしくないな —— ちょい,現実逃避:『世界の車窓から — あこがれの鉄道旅行 — Vol. 1:遺産と古都をめぐる』(2005年6月7日刊行,テレビ朝日,ISBN:4-88131-282-0).※人気の長寿鉄道番組〈世界の車窓から〉の単行本化(秋には第2巻が出るそうな).チュニジア鉄道,とてもいいっす.ドイツのメルヘン街道を走るICEも.

つい先日出たばかりの阿部謹也の自伝『阿部謹也自伝』(2005年5月25日刊行,新潮社,ISBN:4-10-475901-5)は,前半はメルヘン街道沿いのゲッティンゲンでの学究生活の思い出,後半は日本の大学運営のウラ話(とくに国立大学法人となる前後の)という“ツートンカラー”な本だ(未了だけど).ゲッティンゲンの「ガウス・ケラー」で会食したという話が出てくる.数学者フリードリッヒ・ガウスにちなむこのレストランは超高級だと聞く.ゲンゼリーゼルちゃんが拝めるラーツ・ケラーの方が価格的にはリーズナブルだった.※食いもんのことになると記憶力が発揮される.(それ以外は……)

— いま調べてみたら,「生命の起原および進化学会」の機関誌『Viva Origino』の vol. 30, no. 4, December 2002 に,原田馨さんによるゲッティンゲン紀行「ドイツ科学巡礼史−大学都市ゲッチンゲンII」が公開されていた(Part I もある).ガウス・ケラーの写真が載っていた.

◇昼休みの徘徊はなし.咳ごほごほ,鼻ぐすぐす.

◇JST異分野交流事業の第3弾として〈領域探索プログラム〉が起動したとの連絡.うわ,また「実行委員長」ですかー(汗).※〈フォーラム〉と〈ワークショップ〉に続いて,3回連続でっせー.人集めと報告書づくり.

◇午後は原稿を書く.ちっとも進捗せず.※困ったなあ…….

◇もう夜じゃん.く.

◇本日の総歩数=9209歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+1.3%.


--- het eind van dagboek ---