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oude dagboek

日録2004年12月


31 december 2004(金) ※ 大晦日にも雪が降り

◇5時半に目が覚める.今年の“歩き納め”ということで,6時過ぎに外へ,まだ暗く寒い.雲が多い.大晦日の日の出前にごそごそ歩き始める人は少ないか.変人ないし怪人.日陰ではおととい降った雪が溶けて凍ったまま.

―― 工藤幸雄『ぼくの翻訳人生』(2004年12月20日刊行,中公新書1778,ISBN: 4-12-101778-1)を読了.翻訳家の人生にもいろいろあるということか.交友関係が興味深い.巻末の〈うるさすぎる言葉談義〉がおもしろい.言葉に対して[過度の]こだわりをもてない人間には翻訳はできないと言う.

◇曇り空から小雨がぱらついてきた.シネプレックスで宮崎駿〈ハウルの動く城〉を見る.ストーリーはどうでもいいのだが,付随音楽の醸し出す効果が気に入る(他の宮崎作品もそうだが).メインテーマはいかにも一昔前のフランスのシャンソンと同じつくり(「巴里の空の下」とか).冒頭で上空から主人公ふたりが見下ろすと,下界で人々が踊っているのが見える.この風景はモーリス・ラヴェルの〈ラ・ヴァルス〉での霧が晴れる感じと同一.ただし,作曲者・久石譲が指揮する新日フィルの演奏はニールセン第3交響曲の第1楽章にみられる非ロマン主義的なワルツを連想させる.独奏トランペットはチェコ・フィルから呼んだとのこと.

―― 映画が終わって外に出てみると,みぞれになっていた.年越し蕎麦を柳橋の〈蕎麦舎〉で喰っているうちに牡丹雪に変わり,視界がなくなるほどの本降り.今年は絶妙な寒気と低気圧のタイアップにより師走の雪となった.夕方にはあがる.

◇暗くなってから,ローストビーフをまたまた焼く.今回は1キロの塊を2本に分け,大量生産.一家族が喰う量ではないはずなのだが…….2時間ほどで焼き上がる.その他,おせちはそろっているので,これでなんとか年越しできそう.

◇今年も残すところあと1時間足らず.Mary Ann Cows (ed.)『Joseph Cornell's Theater of the Mind: Selected Diaries, Letters, and Files』(2000年刊行,Thames & Hudson, ISBN: 0-500-28243-9)をめくっている.日記を書くことが本来プライベートな“内省的行為”であるとしたら,誰が読んでいるかわからないウェブ日記はもはや“日記”ではない.あるいは,プライベートという言葉の定義を変えるしかないだろう.パブリックなプライバシーというへんてこなことになる.ぼくの場合は〈日録〉は〈dagboek〉すなわち〈day book〉なので,その日その日の活動記録を残すという利己的動機に基づいている.きっと来年もこのまま書き続けているだろう.

◇読者のみなさん,よいお年を.

◇本日の総歩数=14352歩[うち「しっかり歩数」=11295歩/91分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.4kg/−0.2%.


30 december 2004(木) ※ 氷点下の朝は惰眠向き

◇午前6時までだらしなく寝まくってしまう.馬鹿野郎から惰眠野郎になり下がってしまった.自宅の温度計は氷点下2度.宿舎の構内道路を通る自動車のタイヤがぱりぱりと氷を踏み割る音がする.路面はこちんこちんなのだろう.くわばらくわばら.

◇本当は年内にやっておかねばならない仕事[たち]がいろいろあったのだが,物理的に不可能な事態になりつつある.諸方面,ごめんなさい.来年早々にいろいろとカタをつけますので.かんにんです.

◇偉大なる〈醤油鯛〉のこと ―― 松本での非常勤講義のおりに,歓迎会の席上,どういう文脈だったか「ぜひ,あの〈醤油鯛〉の話を講義でしてください」と依頼された.頼まれたら,そらもう何でもやらしてもらいもすぅ.ということで,最終に予定していた多変量解析概論の中で,あの〈醤油鯛〉の体系学的研究の偉業を称揚し,分類精神かくあるべしという噺をしてしまった.※醤油鯛のスライドはいつも持ち歩いているのだ.

―― 筑前屋翫理堂こと兵庫県博の沢田佳久くんが醤油鯛(弁当に入ってる例の醤油の入った「鯛」のこと)の採集と分類を手がけるようになって,もう15年ほどになるだろうと推測する.その間,新聞や『サライ』に取材されるほどメジャーな話題になったりした.ぼくの手元にある『醤油鯛カラー図鑑』は,当時まだ九大にいた沢田くんから1989年7月1日に送られてきたものである(ぼくがつくばに就職が決まる直前のこと).その後もきっとタイプ標本は増え続け,記載は充実し,解剖図や検索表も拡大したにちがいない.

―― そう,ついうっかりしていたのだ.いまの時代,きっと〈醤油鯛ウェブサイト〉があるにちがいない.あの沢田くんのことだから,インターネットに載せていないわけがない.ということで,ちくちくと調べてみたら,はい,ちゃんとここにありましたわ:〈醤油鯛の頁〉.まだ工事中とのことですが,「醤油鯛の分類体系」には「科・属・種」までの分類がすでにつくられている.Internet Explorer だと四つの窓がぼんぼん開く(Safariだとそういうビックリ感は味わえない).醤油鯛の画像がモノクロなのが残念だが,今後だんだん完成されていくのを愉しみにしています.

―― それにしても,なぜ〈醤油〉なのか,どーして〈醤油〉とか〈醤油〉ではないのか,という基本的疑問はいまだに解けないままである.かつてはどのトンカツ弁当にも入っていた〈ソース豚〉は,明らかにであって,断じて〈ソース〉ではない.このソース豚問題と比較すると,醤油鯛問題ははるかに難解な分類認知能力を要求しているようにワタシには思える.ああ,悩ましい年の瀬である.

―― ※年の瀬に醤油鯛の話題ができるというのはそれなりに平和でシアワセな証拠か.

◇自分は年賀状をまったく書かないのだが,家族の要望により午後は年賀状の印刷をしたりする.

◇「三中さん」&「mandala」でGoogle検索したら,計量経済学の掲示板に出会ってしまった.どうやら「竹中明夫画伯」の画業からたどられているみたい.なんだかおもしろがられているよーで.※経済学の立場からは「時系列解析」が登場しないのは違和感があるらしい.〈大統計大曼荼羅〉に載っていないアイテムは少なからずあるのです.それは10年以上前に原図を鉛筆で“一気書き”したとき,思い浮かんだアイテムだけを書き付けたという事情があるから.

◇28日の〈祖先談義〉の続き ―― 存在論的な意味で「祖先がいた」という主張は,「進化が生じた」と同レベルの根本的な仮定であって,形質情報と系統推定とを結びつける前提だと考えられます.それは分岐学にかぎらず,もっと広い意味での進化的立場の基盤のひとつだと思います.しかし,存在論的に祖先がいたという仮定は,ある形質状態の組合せをもつ“生きもの”が認識論的に祖先であることを示すという推論とは別物でしょう.系統推定のターゲットが祖先子孫関係を表わす〈系統樹〉であるとこなすかぎり,認識論的に祖先であることを示す必要があります.祖先子孫関係の復元が系統推定の目的に他ならないからです.しかし,現実に入手できる形質データに基づいて認識論的に祖先であることを示すというのは困難というよりはむしろ不可能と言うべきですね.固有派生形質状態(autapomorphy)がすべての形質について「無い」ことを確認しないことには「祖先である」という証にはならないからです.固有派生形質をもつ祖先というのは論理矛盾ですから.

―― Gareth Nelson が1970年代はじめに言ったことは,系統推定のターゲットは,祖先子孫関係の復元(すなわち系統樹の推定)ではなく,姉妹群関係の復元(すなわち分岐図の推定)にあるという点でした.彼の未発表原稿を直接的あるいは間接的に目にした同調者たちは,Nelsonの見解を踏まえた上で,さまざまな程度で分岐学の“transformation”を実行したわけで,その余波はすでに「空気」のように系統推定論の研究分野に浸透しているとぼくは考えています.距離法・最尤法・最節約法の別を問わず,系統樹ではなく分岐図がつねに論議の対象であるという事実はその証拠と言えるでしょう.

―― 体系学の世界での「祖先(ancestor)」を系統推定の対象からはずすというのが,分岐学の基本的な考えで,それは今では分岐学のみならず系統推定論全体の共通理解になっているとぼくは考えています.

◇本日の総歩数=11089歩[うち「しっかり歩数」=1974歩/18分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−0.6%.


29 december 2004(水) ※ つくば初雪

◇午前6時半起床.寝坊です.小雨が降っていたが,そのうち小雪に変わり,昼前には大粒の牡丹雪となった.地面が白くなり始めている.午前11時の気温はたった「1度」.この分だと10センチほどの積雪になるかもしれない.

◇新たなデータが届く.お年玉にしては早いですな./最尤法に関する質問も.ちょっと待っててねー./信州大のレポート課題も出さないといけない.これは年明け./農水省関係の旧ドメイン名のメール・アドレスを1月7日までに一括削除しなければならなくなった.単にオフするだけではダメらしい.年内に連絡して,年明け早々にも一掃処分するか./計量生物学会の次期役員が決定した.メーリングリスト(JBS)担当はそのまま,編集担当(副)もそのまま ―― ということは,いままでとなんにも変わりないじゃん.むー.

◇午後4時に研究所に出没する.気温0.1度.寒いねー.年末にこんなとこでごそごそするのはスマートではないのだが,もともとスマートではないのでしかたない.

―― 裳華房『遺伝』の最新号(2005年1月号= Vol. 59, No.1)が届いていた.今号の特集(pp.30〜87)は〈科学コミュニケーション:生物学と社会の新しい関係づくり〉.テーマも執筆者も充実していると思う.連載〈非生命体の進化理論〉の最終回は,三中信宏「古くて新しい“系譜の科学”:歴史推定のための一般的方法について」(pp. 97-103).William Whewell,なかなか見栄えよく載っている.

―― 日本生物地理学会会報(和文誌)の最新号 Vol. 59(2004年12月20日発行)も届いていた.次期役員選挙の投票をしないと.

―― 『中尾佐助著作集』の月報ゲラ:三中信宏「書かれなかった“最終章”のこと:中尾佐助の分類論と分類学」(中尾佐助著作集・月報5,pp. 1〜4.2005年5月出版予定).この月報がはさみこまれる著作集第5巻『分類の発想』は来年5月予定の第4回配本になるようだ.なお,この月報には,山野美贊子「中尾資料がもつ力」(pp.4〜6)という寄稿も載る.図書分類の観点から見た中尾の普遍分類のビジョンについての記事.参考文献として下記の記事が引用されていた:

  • 川村敬一 1991. 生物分類学と図書分類学のかなたへ:中尾佐助氏の普遍分類学に学んで.医学図書館,Vol. 38, No.1, pp. 29-46.

『医学図書館』というジャーナルは初めて見た誌名だが,図書館情報学の雑誌なのだろう.中尾の考えは図書館情報学の世界にもインパクトを与えたということか

◇夜遅く,越中から電話あり.彼の地では真冬でもハムシが雪の下で活動しているのだと言う.雪をかき分けての昆虫採集とはこれいかに.太田邦昌情報をいただく.Panmixia 太田追悼特集の原稿をそろそろよろしくね. 昆虫分類学若手懇談会の創立時の記憶をたぐっているそうだ.創立以来30年も経てば,記憶も資料も散逸しはじめるのは無理もないでしょう.

◇明朝は放射冷却で路面がびしびしに凍りつくにちがいない.

◇本日の総歩数=3191歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.5kg/−0.3%.※“馬鹿”なことをした報いですな…….


28 december 2004(火) ※ 馬鹿野郎の年末お勤めはなお続く

◇5時半に起床.外は寒そう.窓を開けると冷気が痛い.今日は冬晴れになるかな.

◇昨日は結局,分散分析の骨格だけしか話ができなかった.多重比較の方法や等分散性の問題,[一般化]線形モデルへの拡張については今日にまわそう.いつものことだがコンピュータ実習はこちらが思う以上に時間と手間がかかるので,講義のときのようにさらさらと前に進めることはできない.

◇昨日のセミナー〈生物資源探索ツールとしての系統推定と祖先復元〉では「祖先」の地位について質問が集中した.系統樹ではなく分岐図(X-treeとしての)の上では,祖先(HTU)は末端OTUの形質情報から復元される仮想的構築物にほかならない.形質情報をもつものがOTUであり,それは現生か化石かは問わない.化石だから祖先だということにはならない.それは単に「昔いたOTU」にすぎないのであり,認識論的に祖先であることを正当化するものではない.仮想共通祖先を“データ”ではなく“推定値”とみなすことにより,はじめて次のステップに進むことができるのだと思う.それは transformed cladistics の知的遺産のひとつであり,それがすでに背景的前提となっているから(ここ30年の)もう明言するまでもないことなのだろうが,一般にはまだよく知られていないのは事実だと思う.

◇今日使う講義資料の確認とノートをつくる.講義は9時から始まり,午後は4時くらいまでの予定.

◇朝のうちに旭会館をチェックアウトしなければならないので,荷物をぱたぱたと片付ける.早めに講師控え室に入り,9時少し前に講義室へ.昨日よりも底冷えがするような気がする.

―― 定時に開始.年の瀬だというのに教える方も教わる方もたいへんですなあ.昨日の分散分析の論議を踏まえて,線形モデルと一般化線形モデルについての概論.従来の線形統計学の〈縛り〉となってきた,変量の確率分布と等分散性に関する制約を緩めることの意義について話をする.その後,コンピュータ実習室に移動し,同一のデータセットを使っての分散分析(aov)・線形モデル(lm)・一般化線形モデル(glm)の実習.時間があれば,統計的モデル選択についての解説(涙なしのAIC)をしたいところだが,今回はそれはスキップする.

―― Windows版のRでは作成したグラフィクスをさまざまな画像形式(PNG, postscript, jpeg, pdfなど)で保存できるのだが(それがRを用いる大きな御利益),Macintosh版のRでは PICT 以外での保存形式を選択できないのですね.なんだか Macintosh らしからぬ変な感じがする.デモするときは Macintosh 版Rのアクアな画面が好ましいのだが,画像の使い回しをしたいときは,並行してWindows環境のRも用意しておかないと不便ということか.

◇ランチタイムをはさんで,午後の講義も実習室からはじまる.多変量解析のイントロの部分をまず Iris のテストデータを用いて説明する.とくに,多変量データを見る「視点」として,あれこれいじりたおす前にまずは〈視覚化〉や〈次元減少〉などのわざを使って,ばらつきのようすを「目で見てわかるようにする」という基本原則を示す.クラスター分析と主成分分析の例をとってこの点についてのデモをする.

―― 講義室に戻り,いま実習した多変量解析についての講義を続ける.形態測定学を例にとり,多変量データとしての“かたち”の視覚的認知,「チャーノフの顔」とか「醤油鯛」とかいろいろならべて,今回の集中講義全体の締めくくりとする.最後に質疑の時間をとって,すべてのコースを終了したのが,午後3時過ぎ.みなさん,どーもおつかれさまでした.

◇東城さんにJR松本駅まで送ってもらう.駅ビルの改造社書店にて:伊藤俊治『バリ島芸術をつくった男:ヴァルター・シュピースの魔術的人生』(2002年1月23日刊行,平凡社新書126,ISBN: 4-582-85126-6).いま読んでいる坂野徳隆『バリ,夢の景色:ヴァルター・シュピース伝』(2004年12月3日刊行,文遊社,ISBN: 4-89257-043-5)ともちろんターゲットやテーマは重なるけれども,文脈はもう少し広い気がする.

◇松本発の〈スーパーあずさ30号〉は定刻16:59に発車した.ビールなんぞを飲んでみたり,岩魚寿司なんぞを食べてみたりする.松本にいる間はさいわい[日頃の行ないがいいので]天候に恵まれ,雪に降り込められたりすることはなかった.19時40分頃に終点の新宿に数分遅れで到着する.そのまま東京駅に向かい,20時20分発のつくばね号に間に合った.つくばにたどり着いたのは午後9時半過ぎ.これでやっと年の瀬の勤労奉仕にケリがついた.

◇帰路,『バリ,夢の景色:ヴァルター・シュピース伝』を300ページほど読み進み,読了.著者は[他の伝記作家もきっとそうだろうが]“芸術家”としてのシュピースに焦点を当てて筋立てをつくっている.その一方で,ナチュラリストとしてのシュピースの仕事にも非凡な才能があったように思われる.ライデンの国立自然史博物館(Naturalis)に彼の描いたものが残されているという.ナボコフがプロの鱗翅類学者であったのと同様に,シュピースもまた海洋無脊椎動物を含む節足動物に関心があったそうだ.両者のこの類似性はおもしろい.全体として,よく書けた伝記だと思う.資料集めや現地調査もしっかりされているように感じた.

◇本日の総歩数=13794歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


27 december 2004(月) ※ 長時間労働する馬鹿野郎

◇アタマがぐわんぐわんして,6時前に目覚める(当然の報いだわな).こら,きついなー.シャワーして,ちょっとだけ食べて,講義の準備をする.今日は午前9時から午後6時までの長時間労働.しかも,その後には「迎撃コンパ第2弾」が待ち受けている.

◇外は小雪が舞っている.

◇9時前に講義室に入る.受講する学部学生は50名ほど.いつものように最初に概論をして,実験計画と分散分析について説明.ちょろっとデモしたらもうランチタイムになる.午後1時過ぎからは実験計画の続きを講義して,その後,パソコン実習室に移動する.例によって,ファイルのダウンロードだの拡張子がどうのという問題で時間を取られる.分散分析の計算実習をいくつかした時点で,もう午後4時近く.ここで本日の講義はおしまい.

◇午後4時半からは学部のセミナーで講演する.1時間あまりのトークと質疑応答.午後6時前に終了.

◇午後6時からは大学近くの〈串松(追分店)〉にて,懇親会.いきなりベーコン風味のコンソメスープ仕立ての水餃子とロールキャベツが入った土鍋が出てくる.なんだなんだとのけぞったところに,さらに大量の茹で野菜が投入され,わけわからんうちに喰い尽くして,そこはかとない疲労感と怠惰ムードが漂い始めた頃,ざるに山盛りの固ゆでスパゲティが運ばれてきた.スープスパゲティとして食べろということらしい.よくわかんないけど何でもいいから喰ってしまおう.相当に喰いまくった感あり.午後10時に解散して,旭会館に帰る.昨日よりはまともだったかもしれない.

―― 天の声あり:〈いずくんぞ種あらんや〉.大塩平八郎もじり.※上田昇平くん,君の名は後世に残す.

◇本日の総歩数=14035歩[うち「しっかり歩数」=1398歩/12分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


26 december 2004(日) ※ 転がって松本に入る〈馬鹿〉野郎

◇5時半起き.気温−0.1度.さむ.フロントガラスに霜がびっしりと.

◇松本行きの荷物を最終チェック.信州大学構内の旭会館では自炊しないといけないので(年の瀬の下宿生活か),食材も少しはもっていかないと.商売道具のノートパソコン2台と,それなりの服装も詰め込むとスーツケースはがぜん重みを増す.あーたいへんですぅ.

―― ひたち野うしく駅から常磐線に乗り,まずは新宿へ.少し時間があったので,南口の紀伊国屋書店を徘徊する.お,ありましたありました:鹿野忠雄『山と雲と蕃人と:台湾高山紀行』(2002年2月22日刊行,文遊社,ISBN: 4-89257-037-0).車中,坂野徳隆『バリ,夢の景色:ヴァルター・シュピース伝』(2004年12月3日刊行,文遊社,ISBN: 4-89257-043-5)を200ページほど読み進む.ロシアでの生い立ちはナボコフに似ていて,ドイツで舞踏家として名をなしたあたりはリーフェンシュタールに通じるものがある(映画づくりに関わる点でも).自身ピアニストとしてスクリャービンを尊敬していたとか.蘭領印度にわたってからのガムラン音楽の採集話もなかなか.たいへんおもしろい伝記で,これは年の瀬の収穫だった.※文遊社の本はどれも厚みがある(といっても,サンプル数はたった2なので信頼性なし).

◇あずさ17号は新宿を定刻通り正午ちょうどに発車.山梨を越えて,長野に入ると,山並みに雪が目立つようになる.沿線の畑地が白くなっているところあり.14時45分に松本駅に到着.信州大の東城さんが迎えにきていた.そのまま旭会館に直行し,まずは荷物をおろす.2年前に投宿したのと同じ4階の401号室.食材を仕入れにアップルストアに行き,簡単に調理できるものを少し買う.向かいの本屋で,ジョン・ダニング『失われし書庫』(2004年12月31日刊行,ハヤカワ文庫,ISBN: 4-15-170408-6)を見つける.『死の蔵書』,『幻の特装本』に続くシリーズ第3作目の新刊.

◇午後5時に東城さんと待ち合わせて松本中心部へバスで移動.駅前通りの〈米芳〉にて迎撃コンパ接待を受ける.本田さんとかさきさかさんとか.馬刺やら馬鍋やらがどんどん出てきて,急速にアルコール摂取が進む.祟られるほど馬肉を喰った気がする.ビール以外に4合ほど飲んだんじゃない?(>本田さん).午後9時頃に店を出る.さらに駅前横町の〈太助〉に転戦し,今度は鹿の肉を喰う.また日本酒をがば〜っと飲む.午後11時過ぎにへろへろになって店を出て,旭会館にたどり着いたのは日が変わる前.馬喰って鹿喰った“馬鹿”野郎はそのままベッドに転がり込んだという1日の終わりだった.

―― 仕事が何一つ始まらないうちに,このていたらく…….※ワタシ,馬鹿でーす.

◇本日の総歩数=15827歩[うち「しっかり歩数」=4099歩/36分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.6kg / +1.4%


25 december 2004(土) ※ 前日あわわ

◇4時起床.外はまだ暗いので,夜明け直前の6時過ぎに歩き始める.工藤幸雄『ぼくの翻訳人生』(2004年12月20日刊行,中公新書1778,ISBN: 4-12-101778-1)を歩き読み進む.いろんな人脈が絡んでいるのが意外でもあり,愉しみでもあり.占領軍の検閲機関でアルバイトしていたとき,真向かいで仕事をしていたのが森山眞弓だったりとか.

◇Book-Ace の新刊棚にて遭遇 ―― 『ナボコフ-ウィルソン往復書簡集 1940-1971』(2004年12月20日刊行,作品社,ISBN: 4-87893-485-9).これだけナボコフ関連資料が翻訳されてきたのだから,これも例外ではないだろうと思っていたのだが,その通りでした.

◇北大図書刊行会から,〈中尾佐助著作集〉の月報ゲラを送ったとのメール.〆切は来年1月末とのことなので,さらに加筆できる時間的余裕あり./裳華房から『遺伝』2005年1月号ができたので発送したとのメール.三中信宏「古くて新しい“系譜の科学”:歴史推定のための一般的方法について」が載っています.

◇あ〜う〜,ただひたすら準備しています.夜までばたばたと.もーたいへん.

◇本日の総歩数=16063歩[うち「しっかり歩数」=10488歩/88分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.2kg / −1.3%


24 december 2004(金) ※ イヴは不夜城か,氷点下の朝

◇前夜からそのままなだれ込んでいる ―― 午前2時半に信州大学集中講義の配布資料がしあがったので,〈租界R〉に置くとともに,信州大学にもダウンロード依頼(と受講生への配布)の連絡をする.それとは別にプレゼン用のpdfが別に必要になるが,それはすでに準備できている.集中講義とは別に,27日(月)午後4時半から理学部生物学科セミナー(三中信宏〈生物資源探索ツールとしての系統推定と祖先復元〉)が予定されているが,そのプレゼン資料は多少差し替えが必要かな.

―― それにしても,OHPをお払い箱にして以来,「地方巡業」がとてもラクになった.プレゼン用のファイルが壊れたらという冷や汗状況は可能性としていつも考えておかないといけないわけだが,パソコン以外にUSBメモリーで持ち歩き(iPodにも入っている),念のためサイトにも置いておくという保険をかけておけば,まあ心配ないだろう.※万策尽きればマジで「噺」をするだけの覚悟もある.

◇今年の残りの日数を考えると,年賀状を書いている時間はまったくないだろう.ここ何年かは年賀状のことを何ひとつ考えるひまもなく年が明けている.そういう状況なのでしかたがない.この年末年始は原稿を書くための時間にあてる予定.他の予定はなし.

◇午前3時半にプレゼン用ファイルの中身チェック完了.高座はこれでなんとかなるだろう.あとは時間配分だけが問題.2日間の日程なので,おおまかには「午前講義/午後演習」という仕分け方でいいのだろうが,ついバランスを崩しがちだ.噺が長過ぎて,実習を走りすぎるということがよくある./セミナーの方もこれでおっけーということで.

◇昨夜から聴き通し ―― バッハ〈クリスマス・オラトリオ〉全曲,そしてパウル・ヒンデミットの管弦楽全集.交響曲〈世界の調和〉でおしまい.ヒンデミットは“きっちり”した音楽をつくっているので,まとめて聴くととても疲れる.理詰めで満腹という感覚.

◇午前4時過ぎに,もっていく機材の準備を完了.今回は Windows と Macintosh の両方を抱えていく.Windows 機は「デモ用」として,PowerBook は「板書用」として.出張講義のたびに少しずつ機材を換えるのは新鮮だ.※ということは,プレゼン機材に依存しないぞという決意表明でもあるわけだが.

◇少し時間が余ったので,今年中につくりたい[と思っている]成績報告関連の書類の様式を確認する.*.jtd と *.doc でしか降りてこないが,まあそういうどうでもいいことは無視するとして.

◇午前5時半.気温は氷点下1.4度.零下にまで下がったのはこの冬初めてかな.さて,いったん帰宅しませう.

―― でもって再び目覚めたのは午前10時半.しばらくぼーっとして,朝だか昼だかわからない食事をすませて,予約しておいた歯医者に行き,研究所に再度出現したのは午後2時近く.※ほとんど「自由業」のような生活だと自分でも思う.

◇歯医者の待合室で,徳永康元『ブダペスト日記』(2004年8月10日刊行,新宿書房,ISBN:4-88008-314-3)を読了.ハンガリー語の第一人者となった著者にして,二十代のブダペスト留学の頃は,会話ができない,ハンガリー語が苦手だとほとんど毎日のように日記に書き付けている.意外というか,ほっとするというか.第二次世界大戦中という時代背景もあったのだろうが,ハンガリーでは居心地があまりよくなさそうな日記の書きぶりだった.心はすでに婚約者のいる日本に向いていたということだったのだろう.

◇情報資料課から連絡あり.早田文蔵『臺灣植物圖譜・第拾巻』が農林水産政策研究所(旧:農業総合研究所)から届いたとのこと.すばやかったね.ぱらぱらとブラウズする.関係がありそうなのは所収されている二つの論文――

  1. Bunzô Hayata 1921. An introduction to Goethe's Blatt in his “Metamorphose der Pflanzen”, as an explanation of the principle of the natural classification of plants. Pp. 75-95 in: Icones Plantarum Formosanarum, Vol.10.[臺灣植物圖譜・臺灣植物誌料・第拾巻]臺灣總督府民政部殖産局編.
  2. Bunzô Hayata 1921. The natural classification of plants according to the dynamic system. Pp. 97-234 in: Icones Plantarum Formosanarum, Vol.10.[臺灣植物圖譜・臺灣植物誌料・第拾巻]臺灣總督府民政部殖産局編.

2番目の長い方の論文がより有名だが,思索的には最初のゲーテの原植物(Urpflanzen)論の方がおもしろそうな気もする.例の神がかった“ネットワーク”も初めて登場するしね.300ページあまりのこの本の中で唯一の彩色図がこの抽象画のごとき“ネットワーク”というのも意味深だ.

◇〈自然分類〉とは〈自然な関係〉に基づく分類であると著者は言う(p.99).著者にとって万物は網状のネットワークだから,それを踏まえた分類体系が早田にとっての自然分類ということになる.ただし,この論文を見るかぎり,後の1931年のドイツ語論文に見られるような,動的分類に関する理論化はまだ深まってはいないようだ.

◇松本行に持参する車中本をそろそろ決めないといけない.坂野徳隆『バリ,夢の景色:ヴァルター・シュピース伝』(2004年12月3日刊行,文遊社,ISBN: 4-89257-043-5)が分量的に適当かな(500ページ)と思っていたのだが,グッドタイミングな早田本も一興かもしれない.

◇さて,今年のクリスマスはローストチキンを大きく焼いて食べるのだ.だからそろそろ詰め物素材を買って帰らないとダメだ.さあ帰ろう帰ろう.と机上をぱたぱたと片付け始める午後4時のワタシ.

―― さっそく調理の開始.詰め物用のみじん切りセロリと人参そしてご飯を軽く炒めて,冷ましておく.チキン1羽を芯まで解凍し,強めの塩胡椒をふる.詰め物を尻の穴からぎゅうぎゅうに詰め込み,穴は楊枝で留め,足は凧糸で縛る(亀甲縛りする必要はない).220度に予熱したオーブンにアルミホイルを敷き,真ん中にチキンを置き,周囲に葉セロリ,人参,タマネギなどの香味野菜とつけあわせのジャガイモ(下茹でする)を配置する.うちのレンジだと,右側30分,左側30分,そして腹側30分の計1時間半できれいに焼き上がった.途中,しみ出す油を10分おきにすくっては鶏皮に塗るときれいな焦げ色がつく.以上,しめて2時間あまりの作業で,重さ3キロほどのローストチキンの完成だ.

◇はい,食べました,飲みました,疲れました,で,早々のご就寝.※明朝の“検閲”がこわいぞー(汗).

◇本日の総歩数=7574歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝−|昼○|夜×.前回比=+0.2kg / −0.1%


23 december 2004(木) ※ 年の瀬の巡業準備日

◇5時半起床.まだ暗く,寒い.1時間ほど歩き読み:松村昌家編『『パンチ』素描集:19世紀のロンドン』(1994年1月17日刊行,岩波文庫[青563-1],ISBN: 4-00-335631-4).しかし,ページをめくる指先の感覚がなくなってきたので,途中断念.Book-Ace にて:工藤幸雄『ぼくの翻訳人生』(2004年12月20日刊行,中公新書1778,ISBN: 4-12-101778-1).ロシア語を学び,ポーランド語翻訳の達人の回顧録.とてもおもしろいので,帰路は歩き読み再開.

◇新刊情報・近刊予告 ―― 『岩波数学入門辞典』(2005年2月18日刊行予定,岩波書店,ISBN: 4-00-080209-7).※かの『岩波数学辞典』よりは死亡率が低いだろう./松井章『環境考古学への招待:発掘からわかる食・トイレ・戦争』(2005年1月20日刊行予定,岩波新書[新赤版930],ISBN: 4-00-430930-1)./今橋理子『江戸の動物画:近世美術と文化の考古学』(2004年12月刊行,東京大学出版会,ISBN: 4-13-080204-6).

◇信州大学の講義準備あれこれ.今回は時間数が15時間なので,〈R〉の実習込みだとすると,それほど多くの内容は詰め込めないだろう.また,ノートパソコン持ち込みではなく,講義室と実習室が分かれているので,形式の上でも「話」と「手」は別々になる.そのあたりの事情を勘案して,時間と内容の配分を決めないといけない.実習室からはインターネット接続ができるので,必要なテストデータと講義資料はぼくのサイトに置くことにしよう.そうそう,一両日中に〈あずさ〉の指定席を取らないと.

―― 夕方,JTBに行き,26日(日)昼の「あずさ17号・新宿→松本」と28日(火)夕の「スーパーあずさ30号・松本→新宿」の指定席を確保する.

◇久しぶりにローストビーフを焼く.でも,たった400グラムのブロック牛肉では焼いたうちにはいらないな.※キロ単位でっせ,やっぱり.

◇夜10時に研究所に入る.これから非常勤講義の資料などすべての準備をすることになる.気温3.0度.明朝は氷点下になるかもね.

◇本日の総歩数=12110歩[うち「しっかり歩数」=6913歩/53分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg / +0.5% ※“検閲項目”が増えたぞ.


22 december 2004(水) ※ 体脂肪率計は冬至の朝やってきた

◇5時起き.気温4.1度.6時近くになっても東の空は闇のまま.さすが冬至だ.それなりに寒いぞ.雲は多めだが.

―― 恐怖の“検閲装置”こと体重計がオシャカになったので,これ幸いとの〜びのびしようと思っていたのだが,そーも言っていられなくなって,石丸電機に直行.体重計ひとすじをモットーにしているメーカーTANITAの体重・体脂肪率計なるものを選ぶ.体重のみならず体脂肪率まで測られてしまうとは(あー世も末だ,末世だ,地獄だ).しかも,最大4ユーザーまで登録できて,前回測定値との「差分」とやらを記憶してくれるという(そんなもんきれいさっぱり忘れろよっ).今後はさらなるきびしい“検閲”に連日苦しむのだ.もちろん100グラム単位ですー.※身から出た錆というか馬の耳に念仏というか喉元過ぎればなんとやらか.

◇うだうだしていたノートパソコンのサーバー登録はあっさり承認された.これで大手を振ってどっからでもつなげられるぞ.

◇10時半からグループ内会議.1時間ほどで終わる./計量生物学会理事会(27日)欠席の通知を出す.

◇〈三中(みなか)さんは第三中学校と勝負だ〉―― そうなんですよお.三中(さんちゅう)って日本中にあるんですね.せっかく極低頻度の「三中(みなか)」という名字を継承したのに,有象無象の「第三中学校」ごときに負けるとは(くっ).「訓読み」が「音読み」に負けるとは(うう).Google 検索するとき確かに劣勢は隠しようもなく.ま,もちろんフルネームをキーワードにすればいいのでしょうが,それだと漏れ落ち多過ぎ.要所要所にオランダ語(dagboekとかpaginaとかboekbeoordelingなどなど)を埋め込んであるので,それで引っ掛けるという手もあります.日本国内のオランダ語使用率は限りなくゼロに近いので,これはとても有効.ただし,場合によっては「はてな」がゴッソリ釣り上がってくることあり.

―― 〈研究者を長く続けるつもりの人は, 重複しにくい名前の表記法をはやめに決めるとよいかも〉.「Ito」ならぬ「Ytow」なんてバッチリですよねえ.ほんま.

◇晴れ上がった昼休みの歩き読み ―― 倉谷滋『動物進化形態学』(2004年1月8日刊行,東京大学出版会,ISBN: 4-13-060183-0)の残る第8章〜第10章の約100頁を読了.これにて登攀完了.やっと書評に移れる.※時間あるのかあ? >ぼく.

―― 見透かされたように不意打ち電話(from 音羽).今月中に第2章は送りますです,ハイ.

◇〈中尾佐助著作集〉第1回配本2冊が届く ―― 第I巻『農耕の起源と栽培植物』(2004年12月25日刊行,北海道大学図書刊行会,ISBN: 4-8329-2861-9)と第III巻『探検博物学』(2004年12月25日刊行,北海道大学図書刊行会,ISBN: 4-8329-2851-1).それぞれ750ページと600ページほどある.電話帳が2冊届いたようなもの.月報については第III巻のが〈月報1〉で,第I巻のは〈月報2〉.月報2の福井勝義寄稿がおもしろい.中尾は“輸入学問”がそうとう嫌いだったらしい.では,『分類の発想』は中尾独自の産物か.ぼくは,決してそうではない,中尾の分類論にもまた消し去ることのできない系譜とルーツが横たわっていることを来るべき月報原稿に書いた.学問の世界で「日本独自の」などという形容詞には何の価値もない.

―― 第2回配本の第IV巻『景観と花文化』は来年3月下旬の刊行予定とのこと.

◇信州大の講義資料づくりとセミナー準備を本気でやりはじめないとまずいなー.12月25日(日)に松本に入り,26日(月)〜27日(火)が講義日.

◇今朝の朝日新聞朝刊・科学欄に,植物群落の生産構造に関する門司・佐伯の超有名論文の〈生誕50年〉に関する記事が載っていた.来年には,日本の植物生態学者たちに手になる記念論文集も出るらしい.高校の生物の教科書に載っているくらい有名な理論だったので,予備校で教えていた頃,植物生態学の授業準備のため何の気なく原典を引っ張りだしてみたところ,それが ――

Monsi, M., Saeki, T.
Über den Lichtfaktor in den Pflanzengesellschaften und seine Bedeutung für die Stoffproduktion.
Japanese Journal of Botany, 14 (1) : 22-52 (1953)

という長大なドイツ語論文だったのでのけぞった記憶がある.あれは即死だった.いきなりだもんね.

―― 戦前だったらまだしも,戦後の日本でのドイツ語による自然科学論文の数少ない例ではなかったかと思う(必ずしも最終事例ではないが).※植物生態学者はポリグロットでなければならないということか? たいへんですなあ.

◇昨日読了した早田文蔵の論文について ――「すべての存在は互いに関連し合うネットワークなのだ〜」などと神がかったことが書かれてある箇所もあるんだけれど,要するに多次元形質空間を低次元(彼の場合は3次元形質空間にこだわりがあるようだ)に射影した上で,それを組み合わせる(Zusammensetzung)ことで自然分類を構築しようという意図があったようだ.これだけだったら,しごくまともな多変量解析の一手法としてしかるべき文脈に置くことができたのだろうが,1930年代という時代が早過ぎたかもしれない.もちろん,早田の動的分類学が発表された頃は,Karl Pearson の提唱する主成分分析が公表されてもう20〜30年が経っていたのだから,数学に通じていた[と思われる]早田はそういう次元減少の方法論の存在に気づいていてもよかったかもしれない.きっと後腐れなく成仏できたのではないかと思う.「動的分類」という言葉だけが往生せず,のちのち魑魅魍魎と化してしまったのは不幸なことだった.

◇新しく赴任された“検閲装置殿”にご挨拶申し上げ,さっそく計測させていただく.……絶句…….※これを初期値として明朝から検閲再開とあいなった.

◇夜,杉浦康平『宇宙を叩く:火焔太鼓・曼荼羅・アジアの響き』(2004年10月11日刊行,工作舎,ISBN: 4-87502-380-4)読了.第I部「天籟受器」はいまいちだったが, 中国の祝祭太鼓について論じた第II部「建鼓」,日本の対太鼓を分析した第III部「火焔太鼓」と進むにしたがって,ノリがよくなってきた.過剰な装飾を伴う巨大な火焔太鼓の存在理由はどこにあるか ――

太鼓の打音に「視覚的」な象徴性を加えること.「ただならぬ音」の響きを見るものに感じとらせること.聴覚効果を超えた視覚効果をその意匠にあしらい,対をなす太鼓を並べて舞台空間を引き締め,沈黙のただなかにあっても音の余韻,あるいは宇宙的な響きを予感させること.
火焔太鼓の過剰なまでの装飾が担うもの.それは,このような音の響きを超えた役割であったのです.[p. 214]

打楽器奏者ならば「しかり」と膝を打つにちがいない.実際,その「効果」を狙っての演出をぼく自身かなりやってきたから.パーカッショニストの役得みたいなもんです.かつて,慶應のワグネルがニールセン〈不滅〉を定期演奏会でやったとき,ステージの両端にペアで置かれたティンパニはヴィック・ファースの真っ赤なマレットで演奏された.あれもまた“火焔太鼓”だったのだろうと思い出す.

◇本日の総歩数=16329歩[うち「しっかり歩数」=8313歩/71分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=計測不能(“検閲装置”成仏のため)


21 december 2004(火) ※ 東京プチ出張の寒い日

◇5時起き.気温7.1度.北風が強く,寒い(冷たくはないが).バルトーク〈中国の不思議な役人〉をBGMとする.やや不気味な早朝.今日の午後は東京にお出かけ.

◇年末の新刊たち ―― リン・L・メリル『博物学のロマンス』(2004年12月10日刊行,国文社,ISBN: 4-7720-0507-2).※原書は1989年刊./府川充男『難読語辞典』(2005年1月1日刊行,太田出版,ISBN: 4-87233-901-0).※「史上最強の難読語辞典」と銘打つ.しかし,それよりも本書の活字の選択や組版のしかたに目がいってしまうワタシは変な読者かも./坂野徳隆『バリ,夢の景色:ヴァルター・シュピース伝』(2004年12月3日刊行,文遊社,ISBN: 4-89257-043-5).※手に取らずにはいられない本.

森山さん,それはいまはやりの「腹風邪」だと思われます.高熱も出る可能性あり.一晩中トイレと親密な関係になりたくなければ,早く医者に行って薬を処方してもらいましょうね.

◇ _| ̄|○  あの企画,どうやらダメげです.別の売れない本の割を喰ったみたいで,なんだか釈然とせず.困るんだいねえ〜.※では,次の手を考えますか.

◇北海道図書刊行会から月報の原稿についての返事.歓迎してもらえたようだ.ついでに,著作集編集委員への質問状を転送してもらうことにする.晩年の中尾佐助の健康状態についての質問と,『分類の発想[論理]』が単行本になるまでの経緯についての問い合わせ.

◇荒俣宏『世界大博物図鑑(本巻5/別巻2)』のうち,欠けていた第1巻『蟲類』を発注完了.※こういうことだけはすばやい.

◇さて,そろそろ東京にプチ出張するかな.今日は雲一つない冬空で,北風が強い.乾燥して静電気ぱりぱり.寒いというか痛いというか.

―― 途中,神保町に寄り道して崇文荘書店を流し,書肆アクセスをざっと見て,〈スヰートポーズ〉で天津包子をつまみ,そのまま泉岳寺へ直行.打合せしばし.〈古稀殿〉眺めよし.夕方,用事をすませて早々につくばに帰る.

◇速攻の往復は疲れる.車中読書:徳永康元『ブダペスト日記』(2004年8月10日刊行,新宿書房,ISBN:4-88008-314-3).戦前のハンガリー滞在日記を読み進む.研究者は日記を書いてはいけないよ,という日記を書く著者.Hayata論文(1931)も読了.「動的分類」論は世に出る時代を誤ったと思う.

◇本日の総歩数=13808歩[うち「しっかり歩数」=2823歩/23分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=計測不能(体重計が逝きました)


20 december 2004(月) ※ さすがのSASとのお別れ

◇ふと気がつくと午前6時を過ぎていた.あわてる.外は小雨が降っていて,寒くはないが冷たい.曇ったり,ざーっと降ったり.

◇午前中から私事をはさんで午後までずっと書類書き ―― 年末の年休届/出張届/サーバー変更届/成績検討会議の書類作成(未完成).

―― 契約係から次年度のSAS契約更新についての問合せ.これまでは研究室(ユニット)としてWindows版SASをずっと継続して契約していたが,もちろん来年度からは契約を打ち切ることにする.さすがのSASとも十有余年目にして縁の切れ目とあいなった.

―― 御用納めの当日(28日)は信州に逃亡していますので,連絡はメールでお願いします.

【欹耳袋(其壱)】―― 荒俣宏『世界大博物図鑑(本巻5/別巻2)』が復刻された(→平凡社の12月新聞掲載広告).第1巻『蟲類』はきっとすぐ売り切れてしまうだろうから,はやくおさえておかないと.他の巻はすべてあるのに第1巻だけずっと欠けていたので,今回は絶好の機会だ.

【欹耳袋(其弐)】―― 鹿野忠雄の復刻本『山と雲と蕃人と:台湾高山紀行』が文遊社から2002年に出たことは知っていたのだが,あっという間に品切れになったといううわさだった.しかし,まだ入手できるみたいですねー.

◇早田文蔵情報(池Tさん感謝)―― 1921年の著書『臺灣植物圖譜』は意外にも農水省研究機関に所蔵されていました.※なかなかやるやん.

Bunzô Hayata 1921
The natural classification of plants according to the dynamic system.
Pp.97-234 in: Icones Plantarum Formosanarum : nec nonet contributiones ad floram Formosanam, Vol.10.[臺灣植物圖譜・臺灣植物誌料・第10巻]
臺灣總督府民政部殖産局編
所蔵:農林水産政策研究所(書架:Ni--1897/日本農研文庫)

さっそく,借出しの申請をする.西ヶ原までてくてく行くのはつらいので.

◇年内にいろいろな事務所類の作成はすませておきたい(憂鬱ではあるのだが).とくに,予算残額の処理は早めにやっとかないとまたたいへんなことになる.※会計入力システム拒否症なワタシ.

―― しかし,まずは“一枚刷”の完成が先か.

◇家族が風邪にやられて伏している.インフルエンザ予防接種はしたのだが,それとは別の腹にくる風邪という医者の見立て.

◇本日の総歩数=10120歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg.


19 december 2004(日) ※ 冬至近づく

◇8時間睡眠の後,午前7時に起床.三年寝太郎の世界.快晴.ふとんを干して,2時間のウォーキング.椎名誠『からいはうまい』(2004年11月1日刊行,小学館文庫,ISBN: 4-09-403012-3)を歩き読み完読.条件反射で唾液が分泌される.紙魚から犬に急速進化したか.※読みかけで放置したまま数年間経ってしまったアマール・ナージ『トウガラシの文化誌』(1997年12月30日刊行,晶文社,ISBN: 4-7949-6331-9)にケリをつけないと.

―― Book-Ace の新刊棚チェック.洞峰公園に向かい,朝昼兼用のサンドイッチを〈モルゲン〉で買う.西大沼を回って帰宅.

◇午後,〈珈琲亭なかやま〉にて中尾佐助著作集の月報原稿を書く.地震あり.午後4時過ぎに書き上がる:三中信宏「書かれなかった“最終章”のこと:中尾佐助の分類論と分類学について」.400字詰で7枚あまり.携帯電話から北大刊行会にメールで送信する.ついでに著作集を全巻予約する.

◇ちょっと疲れたかもしれない.

◇本日の総歩数=13038歩[うち「しっかり歩数」=11427歩/89分].全コース○|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg.


18 december 2004(土) ※ 骨単,肉単,どうしたん

◇5時半起床.目覚めたものの再びプチ惰眠を貪ってしまう.よく晴れて日射しが強め.しかし,何となく朝からノリが悪い予感.

◇昨日コピーした早田文蔵論文(1931)をだらだらと読む.生物分類のあり方を「布地」の縦糸と横糸にたとえ,静的な分類体系(縦糸)を動的に併置すること(横糸)により,彼が理想とする動的分類を実現しようというもくろみだったようだ.中盤から多次元形質空間におけるパターン分析の論議に入っていく.この著者,植物学者にしては数学の素養があったように見受けられる.途中,垂直的(senkrecht)/水平的(waagerecht)という対置が頻繁に出てくる.後年の中尾佐助がよく口にした「垂直分類」対「水平分類」あるいは「垂直思考」対「水平思考」という論法のルーツはこういうところにあるのかもしれない.

◇ああ,だめだめ.ノリわろし.ここでガツンとくるものがないとこのまま1日が終わるぞー.

―― と思っていたら,友朋堂でその「ガツン」にいきなり遭遇しました.こりゃ,スゴイわ,やっぱし.原島広至『骨単(ホネタン):語源から覚える解剖学英単語集』(2004年3月22日刊行,NTS,ISBN: 4-86043-050-6)と同『肉単(ニクタン):語源から覚える解剖学英単語集』(2004年9月30日刊行,NTS,ISBN: 4-86043-060-3).存在そのものは新刊情報で知っていたのだけれども,実物がこれほどインパクトがあるとは知らなかった.医学生向けの解剖学用語集というのがオモテ向きのポーズなのだが,そのいれこみぶりは尋常ではない.手に取るだけで「ガツン」ときました.両方とも第4刷までいっているというのもうなずける.医学生ならぬ一般読者もついているのだと思われる.※来年には続刊『脳単』と『臓単』が出るらしい.期待しましょう.それにしてもこの表紙,人前でひらくのははばかられる…….

◇ううむ,翻訳業界もなかなかキビシイぞというメールあり.全訳はムリっぽい?

◇映画〈めぐりあう時間たち〉(2002)の音楽はフィリップ・グラスが担当していたのか.作家ヴァージニア・ウルフを主人公[のひとり]として,『ダロウェイ夫人』をめぐる三つの時空間でのストーリーが並行する.ニコール・キッドマン凄みあり(入水自殺の場面を繰り返し映さないでね).ジュリアン・ムーアはフクザツ.メリル・ストリープ,歳とったなあ.

◇本日の総歩数=2790歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.2kg.


17 december 2004(金) ※ 紙魚に変身する地下書庫

◇4時半起床.気温6.1度.冬型の気圧配置になっているという.日中は寒いままなのかもしれない.

◇今日もこまごまと ―― 科研費の残額消費について代表者に確認する.これでアノ本とソノ本とコノ本が買えるぞ.※最終年度はレビュー・レポートを用意しないといけない./日本の考古学業界についての情報をいただく.お礼と転送./来週,急な東京出張が入ることになった.※大阪よりは近いものの./DynaBook君の治療進捗.1.8インチハードディスクは今をときめく〈iPod〉に在庫をすべて押さえられていて,とても入手できないそうだ.おそるべし,アップル.次善策として,HDDの交換ではなく,初期化で乗り切るとのこと./統計に関する質問にメールで答える(1件).

◇昼休みの歩き読み ―― 中腹でのビバーク約半年後にしてついに登頂を再開する:倉谷滋『動物進化形態学』(2004年1月8日刊行,東京大学出版会,ISBN: 4-13-060183-0)の第6章と第7章の計100頁ほどを歩きつつ読む.北風がぴゅーぴゅー吹きつけ,寒いは重いは難しいはでとても難儀する.遭難しないうちに読み切ってしまわないと.本文はあと100頁あまりを残すのみ.※書く方も書く方だけど,読む方も読む方だと思う.(類は友を呼ぶって?)

◇気温12度の昼下がりは地下書庫にて大きな紙魚に変態する ―― 水を得た魚ならぬ,糊を得た紙魚.やっぱり蔵書はせめて100年は経過してくれないと価値がないよねえ.革なんかできればぼろぼろになっていてほしいよねえ.農環研の地下書庫は西ヶ原にあった旧農技研あるいはもっと古い旧農事試験場時代の蔵書がまだたくさん残されているので,百年前の本や雑誌はいつでも手に取れる.どこの図書室もそうだが,所蔵スペース不足を理由に古い蔵書の筑波事務所の情報センター図書室への移管が進められているが,昔の本をブラウズできないという不便さよりも新着文献の所蔵の方が大事だということか.Leon Croizat の大部の論文が載ったジャーナル(イタリア,スペイン,ベネズエラなどの非英語圏)もいつのまにか移管されてしまった.

―― 書棚の間を徘徊しつつ,ふと「あの論文」があるかなと思い出して,購入中止雑誌の棚を探索してみると,ありましたありました:

Bunzô Hayata
Über das „Dynamische System“ der Pflanzen.
Berichte der Deutschen Botanischen Gesellschaft, 49: 328-348 (1931)

早田文蔵の〈動的分類学(dynamic taxonomy)〉の原理について書かれた論文.今から70年も前にこういう“理論分類学”の論文を外国のジャーナルに出したというのは稀有の事例ではないかと思う.ざっと見ると多次元形質空間(複数のクライテリオンの総体)の中でタクソンのパターン分析をしようというのが早田の言う「動的(dynamisch)」な分類学なのだろう.単一の基準に基づく分類を「静的(statisch)」と対置させていることからわかる.今で言う多変量解析の萌芽的なアイデアも含まれているようだ.興味深いのは,ダーウィン的な系統樹(Stammbaum)が含意する分岐的関係ではなく,網状のネットワーク的関係(netzartige Beziehung)を重視するという視点だろう.この主張が何を言わんとしているかについてはまずは読んでみないことには.

◇12月27日〜28日の信州大学での非常勤講義に関する使用機材の事務連絡.やっぱり「実習室」を使うことになりそうですね.受講生は60名ほどとのこと.旭会館でのサバイバル生活再び.ついでのセミナーの準備はいいとして,〈R〉の教材などなどの事前準備をそろそろ始めないと.

◇本日の総歩数=19967歩[うち「しっかり歩数」=11210歩/93分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.6kg.


16 december 2004(木) ※ 逢魔が時の歩き読み

◇午前5時半起き.寝坊.冬晴れ.気温7.1度.

◇日常的こまごま ―― 昨夜の忘年会の会計報告を参加者に配る.意外にも黒字が万単位で出てしまったので,還付することになった.飲んだようで飲まなかったのか,それとも李厨房が安上がりだったのか./“考古系統学”について質問メールを出す.日本国内での学界の動向とか,動態とか./信州大と千葉大の非常勤講義の件.宿泊についての確認.

◇新刊メモ ―― 竹内啓・下平英寿・伊藤秀一他『モデル選択』(岩波書店[統計科学のフロンティア3],ISBN: 4-00-006843-1).※要チェック./ウッズ・ロジャーズ『世界巡航記』(2004年7月29日刊行,岩波書店[17・18世紀大旅行記叢書【第II期】],ISBN: 4-00-008846-7).“ロビンソン・クルーソー”のモデルの救出者として,またダンピアと対比される船長として.※本巻をもってこの叢書は完結した.

◇夕刻の歩き読み1時間 ―― 徳永康元『ブダペスト回想』(1989年12月20日刊行,恒文社,ISBN: 4-7704-0710-6)はあと30頁で読了予定なので,次なる同じ著者の『ブダペスト日記』(2004年8月10日刊行,新宿書房,ISBN: 4-88008-314-3)を持ち出す.90頁ほど歩き読みする.※暗くなってくると二段組版は読みづらい.

―― 北風が強くなってきた.体感気温下がる.

◇夜,『ブダペスト回想』読了.著者は,留学していた戦前のブダペストで,アメリカ亡命直前のバルトーク・ベーラによる最後のピアノ演奏会を聴いたことがあるという.The Milaculous Mandarin を〈ふしぎな中国の役人〉と訳している箇所があったが,初めて見る訳語の順序.と思ったら,たしかにそのようだ(→「役人は日本でどう訳されたか?」).※第二エッセイ集を読んだからには,第一集『ブダペストの古本屋』(1982年4月刊行,恒文社,ISBN: 4-7704-0486-7)を手に入れたい.ネット古書店をずっと探しているものの,いまだに出会えないまま.

◇本日の総歩数=16159歩[うち「しっかり歩数」=8426歩/73分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.6kg.


15 december 2004(水) ※ 忘年会でもとの木阿弥

◇午前5時起き.いかにもな冬空と最低気温5.6度.上方と比べて格段に寒いと感じる.よろよろと日常復帰する.

◇Billion tree ―― “山師”っぽくていいですねえ.ど〜〜んとやります?

◇こまごま ―― とある書評原稿の督促(年越しさせてくれなかったか……).山腹ビバークが長過ぎたと反省./とある長谷川ワークショッブの原稿がひとつ届く.※ほかの方,そろそろ首筋が./年末の信州大非常勤講義についての事務的な連絡.構内の旭会館はすでにおさえてもらった./【種】の実在性に関する文献の質問を受ける.群の形式的定義の問題ではなく,そもそもそういう群を想定しようとする心理的動機の問題ですね.Scott Atran の本(『Cognitive Foundations of Natural History』1990, Cambridge UP)と Jody Hey の本(『Genes, Categories, and Species: The Evolutionary and Cognitive Causes of the Species Problem』2001, Oxford UP) の2冊を紹介する.Stamos の『The Species Problem: Biological Species, Ontology, and the Metaphysics of Biology』も挙げておくべきだったか.※なんだか【種産業】って儲かるみたいね(とある業界では).

◇昼休みの歩き読み ―― 今日からは徳永康元のエッセイ集『ブダペスト回想』(1989年12月20日刊行,恒文社,ISBN: 4-7704-0710-6).ついつい140頁も読んでしまう.“笑み割れた栗の実”という言語表現(p.125)に感服.

◇お,なんとか社会復帰できるかなー.

◇届いた新刊 ―― 『The Correspondence of Charles Darwin, Volume 14: 1866』(2004年刊行,Cambridge University Press, ISBN: 0-521-84459-2).同プロジェクトのウェブサイトを見ると,Volume 14 は11月25日に出版されたばかりの新刊とのこと.前の Volume 13 が出たのが2002年12月のことなので,1年分の書簡の編集に2年かかっている勘定になる.ダーウィン没年の1882年までの書簡がすべて出版されるまでには,単純外挿で実に(1882−1866)×2=32年もかかることになる.げー.

―― 1866年はエルンスト・ヘッケルの『一般形態学』が出版される年だ.実際,イェナからのドイツ語の書簡がおさめられている.フリッツ・ミュラーとのやりとりも始まっている.

てつかず君,ダメじゃないですか!もう ―― 他人のことは言えないけど.※スネが傷だらけ…….

◇夕方からはグループの忘年会.小野崎の〈李厨房〉に行ってきますぅ.

―― 午後6時から忘年会のはじまり.なかなかお味のよろしい中華料理で.幹事なので多少は抑制しつつ(……).とても大きなエビのチリソース炒めとか,初めて見る“豆”の入った飲み物(“緑豆湯”というらしい)とか,約2時間で散会.その後,近くの〈安菜喰楽どやどや〉に場所を移して,お籠り部屋にて二次会.焼酎のボトルがどんどん空くんですけど....暑.午後11時過ぎにおしまい.ぶらぶらと歩いて帰って,日が変わる直前に自宅にたどり着く.

◇筑波事務所の生協に入っていた〈大西写真館〉が今月いっぱいで廃業するらしい.かつて発表用のスライドをつくっていた頃はよくお世話になっていた.

◇ご指摘いくつか ―― 外壁にクリスマス電飾しているのは“産総研”ではなく“物材機構”とのこと.※あのあたりの研究所群をひっくるめて〈さんそうけん〉とカテゴライズしてしまうワタシの分類認知能力にはやや難ありか./りそな銀行は協和銀行と大和銀行の合併により生まれ,富士銀行とは別とのこと.※ううむ,系統推定能力にも問題があるのか.こりゃたいへん.

◇本日の総歩数=18456歩[うち「しっかり歩数」=12940歩/108分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=0.0kg.


14 december 2004(火) ※ 中百舌鳥行脚

◇前夜がとても遅かったので,午前6時過ぎの起床.からっと晴れ.また気温が高くなるのかと思うと,コートを抱えてきたのが恨めしい.

◇なんやかんやで時間が過ぎて,チェックアウトしたのが午前9時半.その足で新大阪駅に向かい,いらない荷物をコインロッカーに預け,地下鉄・御堂筋線に乗ってなかもず駅まで.約40分かかった.とても遠い.地理的にはむしろ関空に近いからね.

―― 車中,中尾本の最後の数十頁を再読完了.やはり,動的分類の章とエピローグ部分は他の章と比較して不釣り合いに短い気がする.

―― 中百舌鳥の町並みを20分ほど歩くと,大阪府立大学のキャンパスが見えてくる.さらに大学構内をてくてくと横切って,目的地である総合情報センターにたどり着いたのは,午前11時過ぎのこと.中に入り図書館のカウンターで紹介状を見せて,中尾佐助コレクションのある地下1階書庫の一角に案内してもらう.ガラス展示ケースもあり,蔵書や資料などがよく整理されているように感じた.

―― 今回,ここを訪れた理由は,中尾の著書『分類の発想』(1990)と論文『分類の論理』(1977)に関する手稿と資料を閲覧するためだったので,さっそく当該資料の入ったボックスをもってきてもらう.原稿・資料・ゲラ・カード・メモ書き・書簡などいろいろなものが詰まっている.これらを整理するのはさぞかしたいへんだっただろうと想像する.

―― 時間がかぎられているので,さっそく手稿のチェックを開始./晩年の著書『分類学の発想』は,もともと『分類学の論理』というタイトルをつける予定だったらしいこと.すでに1977年に「分類の論理」という論文を発表していたので,そのつながりがあるのかもしれない./さらに,この『分類学の発想』はもともと別の出版社から新書として出す心づもりだったことも挟み込まれたメモから判明.このことと関係して,中尾コレクションの「分類の論理」と「分類の発想」の資料の集約には多少混乱があるように思われる.「論理」フォルダーに納められた資料のうちいくつかは「発想」フォルダーに移されるべきだろう./『分類の発想』の中の,第6章「動的分類」とそれに続く「終わりに:総括と展望」は,分量的にも内容的にも尻切れとんぼの感が否めない.前から不思議に思っていたのだが,自筆原稿を調べてみると,「終わりに」は単なるエピローグではなく,「第7章」として独立させる意図があったようだ.もとの原稿には「分類学と分類論」という節や八馬高明『理論分類学の曙』に言及した節があるからだ.しかもサブタイトルは「総括と展望」ではなく,「構想と展望」というより積極的な意味を込めた言葉になっていた.分量が多すぎたのかそれとも健康上の理由からか,この章は育つだけの時間を与えられなかったようだ./中尾の動的分類への関心は,早田文蔵のアイデアに刺激を受け,木原均の指導下で第二次世界大戦中の1940年代前半にまとめられたと推測される手稿「動的分類系による大麦分類の試案」から連綿と続いていたようだ.この手稿は印刷所にまわされた形跡(編集者による朱が入っている)があるのだが,けっきょく活字になって世に出たのだろうか.不明である.上記「総目」にも含まれていないようだ.第一,どういう経緯で書かれるにいたったのかもよくわからない.執筆趣旨などを報告するかのような調子の別文があるので,なんらかの形で出版する見込みがあったのかもしれない.※すかさず中尾コレクションの片隅から EVOLVE / TAXA に質問メールを投稿する.

―― 活字になって出版された本はあくまでも“最終子孫”であり,そこにいたるまでの“祖先原稿”を実際に参照することではじめて明らかになることは多々ある.中尾コレクションもその例外ではなく,他の情報源からは決して得られないような知見がここにはある.わざわざ堺まで来た甲斐があったというものだ.今回の調査は,いま書こうとしている中尾佐助著作集の「月報」原稿に反映される予定.

◇2時前に大阪府大を出発.逆コースで新大阪に着いたのは午後3時前のこと.遅い昼飯を〈551蓬莱〉で食べ,ついでに豚まん(チルド持ち帰り用)を2箱買って,3時半発ののぞみ134号に乗り込む.これでやっと一息つける.溜まっていた日録を書く.

―― 行きと逆コースをたどって午後8時頃にひたち野うしく駅に着.

◇ほとんど何もせずに寝てしまう.

◇本日の総歩数=14085歩[うち「しっかり歩数」=4275歩/34分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=未計測.


13 december 2004(月) ※ 師走の上方行

◇4時半起床.旅立ちの最終準備.7時過ぎに家を出る.ひたち野うしく駅から常磐線に乗り込み,東京駅で同行者と落ち合い9時11分発の新幹線のぞみ111号に.新大阪駅に着いたのは11時40分のこと.そのまま市内某所にてヒミツの打合せ会議を3時間ほど.今度はうまくいくでしょうか.

◇一息ついて,〈コルドン・ブルー〉に転戦.※よく飲んだね,みなさん.

◇日が変わる頃,ラフォーレ新大阪に転がり込む.明日もあるのに困ったちゃんですな.

◇本日の総歩数=14973歩[うち「しっかり歩数」=1428歩/12分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg.


12 december 2004(日) ※ 朝からずっと冷たい日

◇午前4時半起床.曇って冷たい日.きわめて個人的ながら,「冷たい日」と「寒い日」とは別物である.湿度が高く気温が低い(底冷えする)のが「冷たい日」,湿度が低く気温が低い(北風吹く)のが「寒い日」.朝のうちから雨がぱらついている.ときどき本降り.冷たい.

◇明日からの出張準備あれこれ続く.パソコン一式,デジ・カメ2台,資料類いくつか.あ,また“ドレスコード”かいっ.そういう機会が多いからとはいえ,今年はこんなんばっかし.※げんなり…….

―― できれば,印象の揮発しないうちに原稿を書いてしまった方がいいに決まっているので,それなりの心の準備と攻めの姿勢が必要か.

◇「きときと」の新刊ではないものの,こういう本は「なれ鮨」のごとく熟成が必要かも ―― リチャード・モラン『処刑電流:エジソン,電流戦争と電気椅子の発明』(2004年9月17日刊行,みすず書房,ISBN: 4-622-07104-5).※読まなくてもいい本はもともと視野に入ってこない.読まれるべき本は探さなくても向こうからアピールしてくる.

◇本日の総歩数=5955歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜○.前回比=+1.0kg.※なんやこれ!


11 december 2004(土) ※ 寝だめカンタービレの朝

◇午前1時半に寝たにもかかわらず,4時半に目覚めてしまう.メールチェックして再寝.次に目覚めたのは午前8時半(汗).こんなていたらくではいけませんな.>ぼく.

―― すっきりとした冬晴れ.

◇寝ぼけてぼーっとする間もなく,自治会の年末清掃奉仕作業が9時から始まってしまった.先日の台風崩れの低気圧が通り過ぎたせいで,膨大な量の落葉と小枝がそこら中に積もっている.作業量はかぎりなく,2時間ほどあくせくして,適当に切り上げてしまう.あとはこれからやってくる「筑波颪」がすべてを吹き飛ばしてくれるにちがいない.ぜったいそうに決まっている.

―― 剪定鋏を振り回したせいで,首から腕にかけてだるくなった.ああ,もうダメかもしれない.きょうは.

―― 立ち話(その壱):メールでやりとりしていた筑波大の数学者から,David Kendall 他の形態測定学本『Shape and Shape Theory』の輪読会を筑波大で行なっていると聞いた.おお,あれを読んでいるんですか.数学の中でも幾何学分野(位相幾何学,積分幾何学,統計幾何学)寄りの研究者による輪読会だという.David Kendall は超有名な統計学者 Sir Maurice Kendall の孫にあたる数学者で,morphometrics の数学的研究では第一人者.多くの生物系の人間にとっては,この本は開くだけでほぼまちがいなく息絶えるものと思われる.しかし,そこは数学者たち.読み進んでいるとのことだ.内容の「散らかりよう」から見て,教科書というよりはむしろ講義録に近いという見解で同意した.エンドユーザー側の立場から言えば,Kendall 本はずいぶん“遠くにある”ように思われるが,Kendall 自身は考古学的データ(イギリスのストーンヘンジのような遺跡の配置パターンのデータ)をもっていて,そのデータを解析するというのが当初の動機だったと理解している.※これからも情報交換することになった.

―― 立ち話(その弐):延々と続いているクラスター分析の質問者さんと.距離尺度の標準化の影響については,比較する必要があるので時間をくださいと答えておく.もらったデータを〈R〉に取り込めばいいので,きっと大仕事にはならないのだろうが,いまはその時間がとれないのです.

―― 竹箒をもちながらそんなこんなのやりとりがあった.※とても狭い世界.

◇清掃作業のし過ぎか,節々が痛い…….午後になってもだるい.※なまくらだ.

◇大阪出張の準備をちょこちょこと ―― 宿泊先を確認したり.もっていくものをチェックしたり(カメラが必要),車中本 etc.

◇冬至が近づくに連れて,夕闇の到来が実際よりも早く感じる.午後4時を過ぎるとすぐに暗くなってくる.

◇入江敦彦『ほんまに京都人だけが知っている』(2004年12月20日刊行,洋泉社新書y125,ISBN: 4-89691-873-8).※ほんまか./岸朝子『[続]東京五つ星の手みやげ』(2004年12月1日刊行,東京書籍,ISBN: 4-487-79999-6).※お,よだれよだれっ.

◇本日の総歩数=5389歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜○.前回比=−0.6kg.


10 december 2004(金) ※ 冬のそなたこなたかなた

◇4時半起床.曇り気味で,意外に寒くない.気温8.6度.夜半に雨が降るという予想だったが外れたようだ.※“曜日”チェック完了! これで天王台にも箱崎にも揚げ足はとられないぞ.

◇中尾佐助ライブラリーについての返事を大阪府大にメールする.予定していたものは,所在不明の一つを除いて,すべて閲覧できることになった.※あとは時間との勝負か.段取りを立てておかないと.

◇またもこまごまと独楽鼠化 ―― 計量生物学会の会長選挙の投票.ささっと書いて返送する.延髄反射./研究室のパソコンを買い替えるたびにネットワーク担当に変更届を出さないといけないのだが,それを怠った報いがきて,いよいよ届けをださないとならなくなった.はよやらんかーと言われてしまえばぐうの音も出ず.ごめんごめん.午後出します./大阪出張のための資料と機材の準備をいちおうしてみる.

◇あ,もう昼休みやん ―― 歩き読み.中尾本を60頁ほど.風もなく暖かめの昼下がり.

◇みすず書房から入れ違いの重複原稿依頼(今年の読書アンケート).ぼくはまた「さらに5冊挙げよ」と言われたのかと思いました.まあね,瞬時に“次点5冊”があがってしまうところがミソなのですがね ―― チャールズ・シミック『コーネルの箱』(2003年12月10日刊行,文藝春秋,ISBN: 4-16-322420-3),マシュー・バトルズ『図書館の興亡:古代アレクサンドリアから現代まで』(2004年11月1日刊行,草思社,ISBN: 4-7942-1353-0),ランドル・ケインズ『ダーウィンと家族の絆:長女アニーとその早すぎる死が進化論を生んだ』(2003年12月10日刊行,白日社,ISBN: 4-89173-110-9),片平孝『地球 塩の旅』(2004年10月20日刊行,日本経済新聞社,ISBN: 4-532-16487-7),そしてサイモン・ウィンチェスター『クラカトアの大噴火:世界の歴史を動かした火山』(2004年1月31日刊行,早川書房,ISBN: 4-15-208543-6).さらに続く3位のグループの筆頭は,リチャード・スプルース著(アルフレッド・R・ウォレス編)『アマゾンとアンデスにおける一植物学者の手記[上・下]』(2004年4月1日刊行,築地書館,ISBN 4-8067-1284-1 / 4-8067-1285-X)か.※かぎりない本たちの連鎖.

◇滞っていた年末調整の証明書類が午後になってやっと全部そろった.しずしずと会計課に提出に行く(平身低頭).

モグリ“青歯医者”顛末 ―― せっかく携帯電話を FOMA 900iT(F900iT)に買い替えたのだから,これはもう Bluetoothするしかないじゃん,と思い立ったのがまちがいのもと.FOMAはWindowsだけではなくMacintoshにも「実は」対応しているという話を方々で聞いていた.DynaBook がグレて以来,突如としてメイン機に成り上がった PowerBook G4 は「もともと Bluetooth がついている」ことになっていたので,据え膳食わぬはなんとやら,さっそくいじってみたのだが……,PowerBook は冷たく「Bluetooth モジュールはありません」というエラーメッセージを吐くばかり.

―― そういえばメニューバーの“青歯”印は使い始めた最初の頃から inactive だったよなあと不吉な予感が.インターネットで情報を集めてみると,PowerBook の Bluetooth は「虫歯」になっている(=ハードウェア的に死んでいる)ケースが少なくないという.「虫歯」があるかどうかの診断は,システム・プロファイラの「USB」の項目に「Bluetooth」が現れるかどうかでわかるらしい.そこで診てみると,どこにもない.ひょっとしてこの PowerBook 君はひどい「虫歯」をかかえているのかもしれない,というかそれ以外に考えようがない.Bluetooth のソフトウェア(USB Bluetooth Modem Adapter)はちゃんと入っているので,障害はハードウェアにあると推論された.この「虫歯」に苦しんでいるユーザーはどうやら少なくないようだ.修理に出せばすぐにマザーボードを叩き直して返してくれるそうだ(だったら最初からもっとチェックしてねー).

―― しかし,そんな手間をかける気はいまはさらさらないので(DynaBook 君が社会復帰を果たしたら PowerBook を通院させる予定),別の治療法を考えるしかない.「虫歯」はとりあえずそのまま放置して,新しい「歯」をインプラントしよう.ということで,D-Link (DBT-120)をもってきた.長さがほんの4センチほどの“差し歯”を USB に刺すと,あらあらフシギ,今まで inactive だった“青歯”印が active になってしまった.やっぱりハード的なトラブルだったようで.

―― さて,これでようやく Bluetooth の「ペアリング」に進むことができる.F900iT の Bluetooth をオンにして,「全接続」に設定する.PowerBook 側の Bluetooth 設定アシスタントを起動して,新規デバイスを設定する(モデムのスクリプトは定石通り〈NTT DoCoMo FOMA P2401〉と指定).F900iT が認識されると,PowerBook に「パスキー番号」が表示されるので,そのパスキー番号を F900iT に入力する.これでペアリングが完了する.あとは自動的に Bluetooth がつながり,携帯電話経由でワイヤレスにインターネットに接続できた.これでやっと作業完了.メール送受信もサイト表示もすべて問題なしです.

◇ 一仕事終わったところでもう日が変わる.

◇毎年恒例,産総研外壁のクリスマス・イルミネーションが今年も灯った.つくばの年の瀬はもう間近だ.

◇真夜中近くにタレコミ情報 ―― 今夜,九州大学のオーケストラが,第173回定期演奏会で,ニールセン〈交響曲4番:不滅〉とブラームス〈交響曲1番〉を演奏したという諜報員からの速報.えらい! よくやったねー.しかも〈不滅〉は女性ティンパニストふたりが叩きまくったという.おそるべし.でも快哉.※諜報員は「自爆プロ」だと評していたけど.

◇本日の総歩数=16783歩[うち「しっかり歩数」=8474歩/74分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg.


9 december 2004(木) ※ 両足とも揚げられて取られる

◇午前5時起き.北風少し.でも気温は高く,7.7度.天気は下り坂だという.

◇馬車馬ならぬ高麗鼠 ―― 千葉大の大学院集中講義(動物系統学)の日程が確定する:来年2月5日(土)〜6日(日)の15時間.※またまたあのゲストハウスに泊まるのかな./一昨日にもらった投稿論文の原稿をチェックし,系統推定の節について補足する./グループの紹介パンフレットに載せる系統樹の図版を提出する./年末調整の証明書のごたごた.明日には耳を揃えて提出できるだろう.※毎年のことなのにいつもスムーズにいったためしがない.学習能力の欠如? それとも怠惰? /農水省関係の旧ドメイン廃止にともなってメーリングリストを年末大掃除することになった.古いアドレスは機械的にばさばさと切り落としてしまえばいいのですよね.来週やります.※10年も続いていると,化石メールアドレスが「オフ」されたまま数多く眠っているのです.たとえば〈niftyserve.or.jp〉みたいな.

◇あっという間に昼休みに食い込む.今日は時間の経つのがとても速い.歩き読むヒマなし.

◇〈師走の上方出張〉の確定(12月13日〜14日) ―― 大阪府大の総合情報センターに資料閲覧依頼のメールを出す.中尾佐助リストから,活字になる前の段階の資料を中心にピックアップ.※折り返しレスあり.行方不明のアイテムもあるらしい./農環研の情報資料課に紹介状を発行してもらわないと.※明日,発行とのこと./出張伺と復命書をぱたぱたと用意して提出する./新幹線の指定席と宿泊先をこれから決めないといけないな.※大阪府大って新大阪から1時間ほどかかるところにあるのね.ずいぶん前に昆虫学会大会が開催されたとき以来のご無沙汰だ./今回は時間がかぎられているので,急ぎ足になってしまうのは残念.

◇「どーして今週は“火曜日”が二日もあるのか?」という狙撃メールを天王台からいただく.日にちはちゃんとチェックしているのですが,曜日はよく見落としてしまう.まずは左足を揚げられてしまった.コッソリ訂正しようと思ったら,今度は箱崎から追い打ちをかけるようにダブル“火曜日”ミスの指摘を受け,右足も揚げられてしまう.両足とも揚げられてしまったらなすすべなし.まずいなー.これでほおかむりできなくなってしまった…….

―― ウェブ日記作家の方々はくれぐれも“曜日”にご用心を.何よりもまず“曜日”を査読するこわ〜い読者[たち]がいるのでねー.

◇焼いた人骨からはたしてちゃんとしたDNAがとれるのかというメールが EVOLVE をしばし飛び交う.確かに,越えるべきハードルがいくつもありそうだ.

日本分類学会連合の第4回公開シンポジウム〈種の違いをどのように見分けるか:生物を種の単位で見てみよう〉.2005年1月8日(土),13:30〜18:00,国立科学博物館分館(新宿区百人町).連合の役員をしているので差し障りがあるのだけれど(こんなとこで書いちゃダメか),なんちゅうかタイトルがねえ…….(【禁句】がダブルで登場とはね.苦笑)

―― 当日の午前中は連合の総会が予定されている.

◇本日の総歩数=8675歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg.


8 december 2004(水) ※ 歩く・読む・書く

◇午前4時半起床.よしよし.気温3.1度.よしよし.惰眠をむさぼることなく,健康的早起きができたぞ.

―― と油断したのが災いだったか,データ持ち歩き用の USB メモリー(512MB)が突如として読み書き不能になる.初期化してもラチあかず,あっさり“廃棄処分”にする.ここのところハードウェアのトラブルに悩まされていたので,文書やデータのバックアップはばっちりとってある.新しい USB メモリーにごっそり移して,一安心.

◇10時半からグループ内会議.年度末の成績検討会がらみの会議開催と書類提出の日程確認.これからが忙しくなる./次年度の依頼研究員の受け入れについての意向調査票を提出.系統推定論と形態測定学に関心のある有職者のみなさん,どーぞ.

◇さらにこまごまと ―― 来年度の駒場出講に関わる履歴書を送る.システムなんちゃらという講義名なので「何やったっていいですよ」とのお言葉.そーか,“システム〜”ゆうのんは何やってもええのか,そーかそーか.こらラクちんでんなあ./

【欹耳袋】新刊いくつか ―― Robert R. Sokal and F. James Rohlf 『Biometry, Fourth Edition』(2005年3月刊行予定,W. H. Freeman, ISBN: 0-7167-8644-4).定評ある生物統計学の教科書の10年ぶりの改訂.コンピュータを使った統計計算に重きを置いて全面改訂らしい./Andrzey Konopka and M. J. C. Crabbe (eds.) 『Compact Handbook of Computational Biology』(2004年11月刊行,Dekker, ISBN: 0-8247-0982-9) /Oliver Gascuel (ed.) 『Mathematics of Evolution and Phylogeny』(2005年1月刊行予定,Oxford University Press, ISBN: 0-19-856610-7).※買うしかない……かな.

―― 『Biometry』の改訂版情報はもちろん BIOMETRY-ML 送りとする.

◇昼休みの歩き読み1時間ほど ―― 中尾「分類」本をさらに60頁あまり読み進む.宗教の類型分類についてのエクササイズ./散歩道の途中に〈ドックスペース〉なる公営の運動場らしき施設が新設されていた.なんじゃらほいと思って中を覗き込んだら,御犬様たちの運動場であることが判明.〈ドッグ〉をつい〈ドック〉と書いてしまう悪癖は後を絶たないようで(もちろん逆のまちがいもよくある).要するに,多くの日本人は「子音なんかどーでもええやん」と思っているにちがいない.母音が主,子音は従.

◇午後,緊急のグループ内会議招集.昨日の大臣折衝により,農水省傘下の独法について〈非公務員化〉という基本方針で大筋が固まったとのこと.農工研や食総研は農研機構に合体されるとか.農環研もいよいよ風前の灯か…….

◇来週始めに大阪に行くので,いろいろと前準備をしたり,諸方面に連絡したりする必要がある.とりあえず,出張届を出して,閲覧したい資料を相手方にメールしないといけない.時間がごく限られているので,関係しそうな最低限の資料を手早くチェックする段取りをする.出版前のゲラと執筆に用いた資料類が中心になるだろう.

◇ほっこりしたいときに ―― デヴィッド・デュビレ『魚の顔図鑑』(2004年9月刊行,ファイドン,ISBN: 4-902593-02-5).

◇『月刊みすず』新春号の原稿をしあげる ―― 今年読んだ本の中で印象に残った5冊を挙げよということなので,次の5冊をピックアッブすることにした:カール・ジンマー『「進化」大全――ダーウィン思想:史上最大の科学革命』(2004年11月25日刊行,光文社,ISBN: 4-334-96173-8)|サイモン・ウィンチェスター『世界を変えた地図:ウィリアム・スミスと地質学の誕生』(2004年7月15日刊行,早川書房,ISBN: 4-15-208579-7)|松本直子・中園聡・時津裕子『認知考古学とは何か』(2003年12月22日刊行,青木書店,ISBN: 4-250-20335-2)|西野嘉章『ミクロコスモグラフィア:マーク・ダイオンの〔驚異の部屋〕講義録』(2004年4月27日刊行,平凡社,ISBN: 4-582-28444-2)|長嶺重敏『〈読書国民〉の誕生:明治30年代の活字メディアと読書文化』(2004年3月30日刊行,日本エディタースクール出版部,ISBN: 4-88888-340-8).

―― それぞれの本につき数行の書評コメントをつけた上でメール返信.これでおしまい.夜も更けた.

◇本日の総歩数=13312歩[うち「しっかり歩数」=7740歩/67分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg.※よしよし.


7 december 2004(火) ※ ネクタイ絞首刑の日

◇寝坊して5時半に目覚める.不覚であった.気温2.1度.上空を雲が西からの風にちぎれ飛ぶ.地表近くは風は吹いていないが.

◇午後からのとある会議のためネクタイを締めるはめになる.今年は本当にこういう有形無形のドレスコードに縛られる機会が多い.これではいかん.

◇午前中はこまごまとしたことどもで時間が過ぎていく ――『認知考古学とは何か』の生物科学書評コピーを著者の松本直子さんに郵送する./日本学術会議に答申する次期会員候補者が方々で固まりつつあるという報告を関係する複数学会から受ける.

◇クラスター分析がらみの質疑なお続く ―― 論点は「距離の標準化をどのようにして計算しているのか?」ということ.Rの場合,daisy コマンド「stand = T」設定をすると,距離(overall similarity)を標準化してくれる.この標準化は形質列ごとに,元形質値から形質列の標本平均値を引き,さらに“mean absolute deviation”で割るという設定になっている.“absolute deviation”すなわち「偏差」をOTU数で割ることで“mean absolute deviation”が算出される.どうして,もっとスタンダードな“standard deviation(標準偏差)”を分母として用いなかったのかフシギだ.聞くところでは,SASは「(データ−標本平均)/標準偏差」というおなじみの標準化をしているらしい.最近,SAS/STAT はとんとご無沙汰なので,かなり忘却してしまっている.UPGMA clustering のアルゴリズム自体はきっと同じだろうから,標準化の方法を変えてみて結果を比較する必要があるかもしれない.意外に長引くな.※さらに削られる時間.

みすず書房から『月刊みすず』新春号に掲載したいとのことで,「読書アンケート」の依頼が届く.今年1年間で印象深かった5冊を挙げてほしいとのこと(コメントを付けて).※ははー,こういう頼まれ原稿がちょこちょこと届くようになってきた.

◇そろそろ,午後1時からの会議の最終事前打合せの時間が近づいてきた.筑波大学の某ポイントで工作員たちと接触.その後,市内の某ホテルにて作戦実行.午後4時まで.30分ほどのプレゼンをする.10人足らずの会議だったのでとても疲れました.「強い毒は良い薬です」という発言が印象に残る.来週は大阪にてさらに打合せをする予定.もっと現実的なことどもについての話し合いになる予定.

―― 投稿する予定の原稿を手渡される.英文校閲の依頼先について注目すべき情報を得る.へー,そーなんですか.知らんかったぁ.加筆すべき箇所を検討する.

◇先日ヘソを曲げてグレたかに見えた DynaBook 君だったが,性根を三たび叩き直してもらったところ,HDDのハードウェアのトラブルではなく,レジストリがわやになっていたらしい.それを治療の上,さらに矯正措置プログラムを受けさせることになった.※外科的手術が不要になってよかったこと.

◇ネ,ネクタイが苦しいっ! 肩が凝ってどーしようもない.※社会的不適応かも.

◇夕刻,新しい携帯電話の契約完了.それにしても〈基本編〉380頁と〈アプリケーション編〉416頁 ―― 計800頁もの「マニュアル」をいったいどーせえ言うねん!(それを読む時間が湧いてくるんかいっ) しばし,ぼーぜんとする.あれこれいじる以前に遠巻きに眺めるだけで時間が超特急に過ぎていく.Bluetooth に到達するまでの道のりの長いこと長いこと.

◇午後のヒミツ会議で初めてお会いした方に言われた一言 ―― 「三中さんは昼間いったいどのように過ごしておられるのでしょうか?」.その方はウェットな実験系の研究者.うーむ.我が身を振り返ってみれば,怪しいメールを書く,ワルイ文章をしたためる,高座で噺をする.確かに得体の知れなさはかぎりなく…….

◇中尾佐助没後に出た論文集 ―― 中尾佐助・秋道智彌『オーストロネシアの民族生物学:東南アジアから海の世界へ』(1999年1月19日刊行,平凡社,ISBN: 4-582-48305-4).愉し.

◇新しい携帯電話と格闘中…….あ,日ぃ変わってるやん.寝よ.

◇本日の総歩数=6909歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.8kg.※良い兆しか.


6 december 2004(月) ※ まっとうな冬日になるんだよ

◇4時半起床.8.2度でもとても寒く感じてしまうとは.昨日のジェットコースター的な気温乱高下の影響がまだ残っているのだろう.今日の新聞を見ると,昨日の朝5時に低気圧が通過したとき,それまで10度以下だった気温が1時間に13度も上がり,いったん5度ほど急降下した後,また瞬時に10度あがって夏日になったとか.

◇遅れまくっていた9月の都立大学集中講義のレポート成績評価を返送する.ごめんなさいごめんなさい.>南大沢方面に謝る.

◇師走のあくせく(汗)―― 日本鳥学会の会報に寄稿する原稿が今月中だ(真っ白〜).箱崎から探りが入る.「無い袖は振れねえ」などと言えない.至急“袖”を縫わないと./あおりを食って,明日の分類連合の役員会はパスすることにする.連絡済み./クラスター分析がらみの質疑なお延々と続く.〈SAS〉対〈R〉の一騎打ちかっ.

◇昼休みの歩き読み ―― 中尾佐助『分類の発想:思考のルールをつくる』(1990年9月20日刊行,朝日選書409,ISBN: 4-02-259509-4)の再読開始.出たときにすぐ読んだので,15年ぶりに開くことに.1時間あまり歩いて120頁ほど読み進む.

◇『生物科学』の最新号(Vol. 56, No. 2, Jan. 2005)が届く.今号の特集は〈移入種による生物多様性の攪乱〉.「“みなか”の書評ワールド(6)」は,『認知考古学は何か』,『世界を変えた地図』,そして『虫を食べる文化誌』の3冊をとりあげる.

◇とある本についての備忘メモ ―― Peter H. A. Sneath は Robert R. Sokal とともに数量分類学の代表的教科書『Numerical Taxonomy』(1973年刊行,W. H. Freeman)の著者として知られているが,もともとは微生物分類学者である.彼のものとおぼしき訳本をたまたま手にしたのは,1980年前後に板橋でアルバイトをしていたときに,新板橋近くの古本屋だった.ずっと忘れていたのだが,きょうふと思い出して検索してみた:ピーター・スニース『惑星と生命』(1976年刊行,TBSブリタニカ).原書は『Planets and Life』(Funk and Wagnells, New York).確かにスニースの本だった.四半世紀ぶりに疑問が氷解した瞬間.でも,ここに書き留めておかないと,また何年か(ずっとか)忘却の淵にずぶずぶと沈んでしまいそう.

◇明日午後,つくば某所にて開かれるとある会議に先立つ打合せをする.プレゼン資料のチェックと説明の分担について取り決める.ppt資料がすでに十分にあるので,あとは相手を説得する力がどこまで及ぶかの問題.ついでに,あるジャーナルに投稿予定の英文原稿についても明日検討する予定.あ,名刺名刺.

◇夕闇迫る頃,携帯電話を解約すべくショップに行く.一瞬[だけ]解放感を味わう.

◇〈中尾佐助著作集〉―― さっそく購入希望メールが届く.はいはい,寄ってらっしゃい,見てらっしゃい.損はさせまへんでぇ.

◇来年3月末(生態学会大阪大会重なり)に静岡で開催される日本植物病理学会のサテライト「第8回植物病害生態研究会」のアナウンスが届く――

第8回植物病害生態研究会

日時:2005年3月28日(月),13:00〜17:00
場所:静岡グランシップ[会議室910]
会費:無料
講演:
  1. 中島隆(九州沖縄農研センター)「ムギ類赤かび病とマイコトキシン汚染低減へ向けた研究戦略」
  2. 藤永真史(長野県野菜花き試験場)「レタス根腐病菌レース分化の実態解明とその防除への応用」
  3. 山口純一郎(佐賀県農研センター)「ナスすすかび病の発生生態と防除」
  4. 三中信宏(農業環境技術研究所)【特別講演】「親の因果が子に報い:生物のすべては系統進化の産物である」

な,なんやしらん,最終演者だけ“浮きまくってる”やんか…….

◇ゆるりと本を読み,就寝.

◇本日の総歩数=18727歩[うち「しっかり歩数」=11197歩/98分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg.※げげ.終わった…….叱られる.


5 december 2004(日) ※ 明け方の嵐に転がる

◇5時半起床.外がやけに騒がしいと思ったら,台風のような暴風が吹き荒れ,ベランダを大小取り混ぜていろいろなものが転がっているところ.横殴りの雨.生暖かい南風で気温は20度近くあるのではないか.季節はずれの変な天気.

◇つい放置してしまったとある原稿査読作業の再開(すみません).和文英文を問わず「査読」はさくさくすませないとダメですね.※わかっちゃいるけど.

◇午前7時前にようやく強風が止む.気温は急降下.低気圧の中心が通り過ぎたのだろう.雨はまだしばらく降り続いていたが,そのうち止んだ.青空が広がる気配.

―― と思ったのもつかの間,強い日射しとともに気温は急上昇.昼前には日のあたる南側の部屋で32度に達した(嘘ちゃう).北側の部屋でも25度.これって[真]夏日やん.マジで変な天気.映画〈インディペンデンス・デイ〉の1シーンのように兇悪な巨大な黒雲が空いっぱいに広がる.これは師走の雲ではない.

◇午前から午後にかけて査読のコメントとメモを書く(とてもtime-consumingである).論文原稿の査読作業は確かにボランティアではあるのだが,抱えている原稿の件数が多い人はいったいどのようにやりくりしているのかと思ったりする.

―― 査読原稿はpdfで送られてきているので,Acrobat の「注釈」機能をフルに使い回す.もちろん anonymous に徹する必要があるので,注釈の記入者欄の設定は変更しないといけない.テキストへの注釈とノートを添付しながらの査読作業となる.

―― それにしても,こりゃあ,原稿査読というよりは,体のいい英文チェッカーですなあ(たはは).もう,いたるところ注釈だらけ.結局,査読レポートを学会誌編集長に返信したのは午後6時過ぎ.今日1日は査読に始まり,査読に終わる.実にシンプルな週末である.

◇ついでに,計量生物学会の次期理事委嘱の件について,ML管理担当の業務だけはとりあえず引き受けましょうという返事を次期会長[候補者]宛に出す.編集担当についてはしだいに縮小していこうかな.進化学会の“勅許奴隷”業務が増えてきそうだし.

◇生物学の古典書籍を電子化するプロジェクト〈Kurt Stüber's Online Library〉新刊 ―― 既刊 316 冊(電子化総頁数 81375 頁)という巨大電子図書館だが,ついに Carl von Linné の著作が入った:『Philosophia Botanica』(1783),『Flora Lapponica』(1737),そして『Flora Zeylanica』(1747)の3冊.ほかに,Alfred Russel Wallace 著『Malay Archipelago』(1898),Paul Kammerer の遺伝学書『Beweise für die Vererbung erworbener Eigenschaften durch planmässige Züchtung』(1910)と『Newvererbung oder Vererbung erworbener Eigenschaften』(1920)などが新しいエントリー.※平均して毎月数冊ずつ新たに電子化されたタイトルが蓄積されている.現物のスキャンそのものなので,物理的にアクセス困難な書物であっても,“モノとしての本”を髣髴とさせてくれる.単に,文章部分だけを電子テキストにして公開するというだけではない.

◇本日の総歩数=2592歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.8kg.※げ.話にならん…….


4 december 2004(土) ※ 紙魚に大変身する週末

◇4時半起床.最低気温1.9度.とある古い本の序文を読む.40ページもあるのに閉口する.後期ヴィクトリア朝の過剰文体か?

◇計量生物学会の新会長候補から理事就任の依頼 ―― うすうす予想はしていたので驚きはしなかったのですが.完全個人的なボランティアではなく,学会の冠をかぶったメーリングリストの場合,その管理者はいきおい役員を担い続ける可能性がそうでない場合よりも高くなりがち.

―― 古い銀行口座番号の登録を変更.最近は金融再編のあおりを食って,銀行名や口座番号の変更届を出す機会が増えている.関東銀行とつくば銀行が合併し関東つくば銀行となり,来年にはさらに茨城銀行と合体して茨城関東つくば銀行(だっけ?)となるらしい.もうひとつのりそな銀行は富士銀行のなれの果てだし.“企業系統樹”を考えている分には楽しいが,ユーザーとしては不便きわまりない.※つくばは「都市銀行不毛エリア」だとつくづく思う.

◇朝はよく晴れていたのに,しだいに曇ってきた.久しぶりに禊の“剃髪”に行く.短く切られて首筋がすーすーする.散歩したらアタマが寒かった.

◇午後,大阪府立大学総合情報センター編『中尾佐助文献・資料総目:照葉樹林文化論の源流』(1997年3月18日刊行,大阪府立大学総合情報センター,非売品)を読了.中尾佐助の分類がらみのアイテムを探索する.『分類の発想:思考のルールをつくる』(1990年9月20日刊行,朝日選書409,ISBN: 4-02-259509-4)に関連する未公開資料などをチェックする.原稿やゲラが残されているようだ.さらに『知の考古学』11号(1977年,社会思想社)に載った「分類の論理」(pp. 2-21)の元原稿や資料・メモも整理されているらしい.「動的分類系による大麦分類の試案」といういかにも“早田文蔵”的なタイトルの未発表原稿もあるそうだ.できるだけ項目を拾った上で遠征する必要がありそう.

―― 照葉樹林文化論にはさほど関心がないが,中尾の「分類」観には興味がある.

◇夕方からノバホールにて,〈つくば古典音楽合唱団〉の第18回定期演奏会.モンテヴェルディを数曲とメインがフォーレ「レクイエム」.ふだんはフル・オーケストラで聴くことが多いが,今回の演奏会は初演に近いという独奏バイオリン1+ビオラ4+チェロ4+コントラバス2+ホルン2+オルガン1という伴奏に合唱が付く.第3曲(Sanctus)のホザンナがあるかぎりホルンなしではすまされないしね.良き演奏でした.

―― 7時過ぎにノバホールの外に出たら,いつの間にか雨が本降り.久しぶりのお湿り.

◇断片いくつか ―― シューベルトの歌曲集〈冬の旅〉の元になる詩をつくった詩人 Wilhelm Müller (1794〜1827)の息子が,ロンドンで活躍した比較宗教学者 Friedrich Max Müller (1823〜1900).J. G. R. Forlong は彼の宗教学に影響されているらしい.比較文献学(歴史言語学)に対するやや批判的なスタンスもそのせい? /“Gods and divine ideas would evolve pari passu with the growth of the human mind”(p. xxvii)とForlong が言うときの「evolve」の意味は? 20年近くも研究を続けていたということは,1860年代から「宗教の進化」に関心を持っていたということだろう.ダーウィンからの影響か? あるいは,スペンサーからか?(詳らかならず) /中尾佐助が『分類の発想』の中で延々と(pp. 154-172)宗教の分類を論じている.Forlong と中尾は根底で相通じるものがある. /『中尾佐助文献・資料総目』に掲載されている梅棹忠夫の回顧「中尾佐助との交遊」にも中尾の“宗教分類”が印象に残ったとの一節あり.

―― 抜き書きを続ける夜なべ仕事.

◇中尾佐助が京都大学農学部(応用植物学講座)の副手を辞めて浪速大学(現:大阪府立大学)に移ったのは1949年のこと.京大にいた頃は木原均のもとで大麦の集団遺伝学的研究をしていたようだ.一方,根井正利が同じく京大農学部助手(副手?)として大根の自家不和合性に関する育種学的研究の発表を始めたのが1950年代のことだから,ひょっとしたら年代的に重なっているのかもしれない.

◇本日の総歩数=6421歩[うち「しっかり歩数」=2338歩/21分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=0.0kg.


3 december 2004(金) ※ ほぼ氷点な明け方

◇今朝も4時半起き.放射冷却で気温0.2度.車のフロントガラスに初めて霜が降りていた.晴天.星がよく見える.

◇ Morphmet メーリングリストでの投稿 ―― スプライン(tps)系統の形態測定学ソフトウェアの多くは Windows 用だが,それを Macintosh / Vertual PC 上で問題なく動かせるかどうかという議論.G3ではダメだけど,G4以上ならエミュレーションでも快適らしい.ただし,マウスはダブルボタンのに換えないと快適さが満喫できないとのこと.なるほど.

◇雲一つない冬晴れ.湿度は低いものの,まだ静電気がぴりぴり飛ぶほどではない.週末は雨の予報.

◇北海道大学図書刊行会から〈中尾佐助著作集〉(全6巻)の宣伝リーフレットが届く.いまのところ,年末に中尾佐助著作集氈w農耕の起源と栽培植物』(2004年12月25日刊行,ISBN: 4-8329-2861-9)と同III『探検博物学』(2004年12月25日刊行,ISBN: 4-8329-2851-1)の2冊が出る予定.全6巻の平均頁数は600〜700頁で,各巻の平均価格は10,000円(本体価格)となっている.ぼくはこの著作集の「月報」執筆者なので,関心のある方はぼくにご連絡ください(→minaka@affrc.go.jp).

―― 月報執筆者と公言してしまったからには,その「月報」原稿(第V巻)を書かないと.今月中でしたよね?(>N田さん).でも,その前に一度は“お参り”しておかないといけないでしょ,学園町に.今月,なんとかなるかなー.

◇ランチにきのう仕入れたフロッケン・ゼザムを切る.ポジョレーヌーボーはあるけど飲まず(当たり前).

◇快晴の昼休み.プチ散歩の歩き読み.ここ数日,本を読みながらのウォーキングが習慣になりつつある.できるだけ交通量の多い車道は通らず,できるだけ踏み分け道を選ってたどる.しかも,直射日光が当たると読書環境としてはふさわしくないので,自然に日陰の細道を進むことになる.挙動不審な徘徊者.

―― わしわしと歩き読みしたおかげで,田中栞『古本屋の女房』(2004年11月4日刊行,平凡社,ISBN: 4-582-83242-3)をあっさり読了.子どもを連れての日本各地セドリ紀行,ただもの[ただごと]ではない.脱帽でーす.

―― 稲荷川沿いの農道でケラを見る.鳴き声をこの場所で耳にしたことが以前あるので,いることはわかっていたが,実物を見られるとはね(どーして穴から出てきたのでしょ?).体長3センチ.いかにもケラらしいケラ.

◇学会事務センターの「破産管財人」の通知書が届く.同センターが発行していた『生物科学ニュース』の代金支払いについての通告.これもまた破産に伴う波及的影響のひとつか.※今後,『生物科学ニュース』はどーなっていくんです? 学界の情報掲載ということであれば,ウェブサイトがあればそれで十分かとも考えるのですが.

◇さらなるプッシュのリクエストが届く.やっぱり書評を流すというのが手っ取り早いでしょうね.※そのためにはまず「読了する」必要がある.

◇新刊情報いろいろ ―― 内井惣七『アインシュタインの思考をたどる:時空の哲学入門』(2004年12月刊行,ミネルヴァ書房,ISBN: 4-623-04260-X)/ リン・L・メリル『博物学のロマンス』(2004年12月刊行,国文社,ISBN: 4-7720-0507-2)/ クリストファー・マガウワン『恐竜を追った人びと:ダーウィンへの道を開いた化石研究者たち』(2004年12月刊行,古今書院,ISBN: 4-7722-8037-5)/ 香内三郎『「読者」の誕生:活字文化はどのようにして定着したか』(2004年12月刊行,晶文社,ISBN: 4-7949-6640-7)./那須正幹『ズッコケ三人組の卒業式:花山第二小学校六年一組』(2004年12月刊行,ポプラ社,ISBN: 4-591-08377-2)※この巻をもって,長年にわたる小学生のベストセラー,全60冊に及ぶ“ズッコケ”シリーズは大団円を迎える.

◇明日の『生物科学』編集会議(&忘年会)には行けそうにない…….ということで,またまたドタキャンの連絡.まったくもう....

◇夜,読書また読書 ――“a sincere desire to save the past”/“some sort of base on which to investigate our Roots”/“the search is after ancient ideas &mdash the Roots of Faiths”/“the flow of the streams of ideas or faith lines, which, though diverging, are rarely lost in the historic advance of civilizations.”

◇本日の総歩数=15026歩[うち「しっかり歩数」=9095歩/76分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg.


2 december 2004(木) ※ たまにはタケミツな朝を

◇4時半起床.晴天.気温2.9度.BGMはストラヴィンスキー〈春の祭典〉,続いて,武満徹の映画音楽群.〈狂った果実〉とか〈太平洋ひとりぼっち〉というかつての“裕次郎もの”の映画の音楽は武満がつけている.見たことのない映画の音楽だけを聴くというのはフシギな感覚.とてつもなく前衛的な映画であっても,あるいは黒澤映画の〈乱〉とか〈心中天網島〉みたいな時代物であっても,変わりなく音楽をつけているところがすごいな.音源探索に苦労したという制作サイドの裏話もさることながら,充実した演奏者陣(ふつうオモテに出てこない)に感銘.

◇朝からこまごま ―― JST長谷川フォーラム報告書関連のメール連絡と対応./日本学術会議に推薦する会員候補者の選定について電話相談.選出制度ががらがらと変わってしまったので,どこの学会も困っているのではないかな.きっと./東北大学の非常勤講義時の不足書類の返送./来年3月に静岡で開催される〈植物病害生態研究会〉での演題を連絡する(「親の因果が子に報い――生物のすべては系統進化の産物である」)./日本分類学会の会報がpdf公開されていることを今になって知った.1995年7月に出版された18号には「生物分類と離散数学」というタイトルで〈巻頭言〉を書いた.

◇1669年に出版されたニコラウス・ステノの主著『プロドロムス:固体論』が先月突如として翻訳出版された(山田俊弘訳,2004年11月20日刊行,東海大学出版会,ISBN: 4-486-01668-8).EVOLVE に追加情報の提供を求めるメールを投稿する.グールドのエッセイ集『ニワトリの歯』(1997年,ハヤカワ文庫NF)の5番目のエッセイ「ティティオポリスの名義司教」の主人公が本書の著者 Nicolaus Steno.「世の中には変わった本もあるなあ」という感想を翻訳しつつ感じたのだが,まさか日本語で読めるとは驚き.ステノの問題設定「なぜ固体の中に固体が生じるのか?」が“化石”の意味を再検討させ,ひいては近代古生物学の開幕を告げるものだったという点は印象的だった.※直後に私信にてこの翻訳が出版されるまでのいきさつについて情報をいただく.まさに「機が熟した」ということだったようだ.

◇昼休みの歩き読み ―― 田中栞『古本屋の女房』(2004年11月4日刊行,平凡社,ISBN: 4-582-83242-3)を100頁ほど.全体の分量の半分以上を占める「古本屋めぐりは子連れで」が絶品ですな(文・絵ともに).“親の背を見て子は育つ”という格言を思い出しましたです.ハイ.

◇この前から断続的に続いているクラスター分析関連のコンサルタント業務 ―― SAS と R では同じ UPGMA でも結果に違いがあるのではないかという可能性.タイの扱いのちがいかな? あるいは,非類似度の計算のところですでに差異があるのかもしれない.

◇科学者による科学の〈アウトリーチ〉ということ ―― 東大出版会のPR誌『UP』の最新号(No. 386, 2004年12月5日発行)が届く.鎌田浩毅「基礎科学のフロンティアとしてのアウトリーチ」(pp. 22-28)がとても参考になる.科学の啓発活動・教育活動の意味で用いられる〈アウトリーチ〉には,研究資金獲得・後継者育成・社会的認知という三つの目的があると著者は言う.その上で,著者は「油の乗りきった」現役科学者がアウトリーチ活動に対して余技としてではなく本腰で取り組むべきフロンティアだと主張する.重要な点は,研究者の誰もがアウトリーチできる能力を持ち合わせているわけではなく,「天性の能力に相当するもの」(p. 28)が求められているという点だろう:

文章やトークによって,科学のおもしろさと重要性を伝える才能のある第一線研究者が本気でアウトリーチ活動に参画することを,私は強く願う.それが基礎科学の基盤をつくることになる. [p. 28]

と著者は結んでいる.がんばらねば.

◇夕刻,ピーターパン吾妻店にて電話予約しておいた Flocken Sesam Brot(1 kg 塊)を引き取りにいく.フランスパンの“かりんとう”を試食させてもらった.

◇夜,桂米二師匠からじきじきにメールをいただく.日録を見たとのこと.最近の落語家はインターネットしてへんと時代に置いていかれるねんて.あらまー.高座情報メルマガを送ってもらった(感謝).〈ふたり会〉は今日が本番.※本職が覗きにくるとなると,ここで“高座”だの“噺”だのという言い回しはもう恥ずかしゅうてできまへんなあ.

◇Another “Big Book”をかじり始める ―― Bernard Quaritch の出版した本というのはこういう感じなのか.

◇本日の総歩数=14555歩[うち「しっかり歩数」=8157歩/69分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.4kg.


1 december 2004(水) ※ 冬の大三角形,最低気温2度の未明

◇ここんとこ睡眠時間が5時間ほどの日が続いている.夢か現か幻か.夜明け前の南東の空に見える正三角形は“冬の大三角形”.最低気温は2.0度.氷点下になる日が来るのも時間の問題だろう.

―― メーリングリストに月例アナウンスを流す.年末になったので BGM はモーツァルトの〈レクイエム〉.アルノンクール/コンツェントゥス・ムジクス・ウィーンの演奏なので多少ごつごつしている気がする.Henessy を垂らしたコーヒーなど.

◇師走になると“積み残し仕事”が気になる.今年はとりわけ多い気がする.ひじょーによくない兆候だ.“年越し”はかんべんね.>ぼく

◇あっと言う間にモーツァルトが終わってしまったので,引き続きブラームスの〈ドイツ・レクイエム〉を聴きつつ.これまたジュリーニ/ウィーン・フィル.このがっちり感はいかにもブラームス.かつて信州大学合唱団と東大オケが松本と長野でドイツ・レクイエム演奏会をやったことがあった.ぼくはティンパニーを叩いたが,第2曲「なぜなら,すべての肉体は草のようなものである」の地底から湧き上がるようなリズム,第3曲「主よ,私に教えてください」に出てくる“天国のD音”の連打(それもロールではなく刻みの連符を延々と叩かせる),そして第6曲「なぜなら,私たちはこの地上には永遠の都をもっておらず」の最強奏でシアワセな昇天を遂げることができた.

中村びわさんのメモ「科学と哲学のハーモニー1〜5(Nos.471〜475)」(18-20 Nov 04):とてもありがたい激励文でした.今年中には原稿にケリつけますので,しばしお待ちを.〈系統樹〉をテーマにした詩集と歌集すら日本では出ていますので(海外ではもっとあるのかも),おそらくはサイエンティストだけでなく,広く一般受けするテーマなのだろうとひそかに考えています.“系図嗜好癖”はきっと universal だろうということ.「系図」とか「由来」って,みんなとても好きですよね.

―― 「系統樹の本」でぼくが事実上の座右の書(鳥山石燕『画図百鬼夜行』と並んで)にしているのは,Giulio Barsanti の『La scala, la mappa, l'albero: Immagini e classificazioni della natura fra Sei e Ottocento』で,それこそ中世神学以来の系統樹(および階梯とマップ)の図像学的意味を論じています.一般向けだけれどももっと生物学寄りなのは,フランスのクラディスト Pascal Tassy の本『L'arbre à remonter le temps』(1991年,Christian Burgouis Editeur, ISBN: 2-267-00712-6)です.「une histoire d'arbres」を論じたこの本は,Peter F. Stevens の大冊『The Development of Biological Systematics: Antoine-Laurent de Jussieu, Nature, and the Natural System』(1994年,Columbia University Press, ISBN: 0-231-06440-3)とともに,生物体系学の置かれた歴史的文脈を知る上でたいへん役に立つ資料だろうと思います.でも,もっと一般向きの「系統樹本」となると,何かあるかなあ.「系統樹音楽」だったら,武満徹とかアルヴォ・ペルトを挙げることができるのですが.

―― 中村びわさんの紹介されたクリムトの「生命の木」,なかなかいいですね(またもウィーンか).視覚的な言語やイメージとしての〈系統樹〉のもつ衝撃力と浸透力はあなどれないですね.たとえば Google Image で「tree of life」とか「arbre genealogique」というキーワードを用いて検索してみれば,きっと〈系統樹〉の深さや広さが体感できると思います.おそらくその辺から語り始めないと「系統樹の本」にはならないでしょう.

―― グッド[バッド?]タイミングで音羽から原稿督促つんつん電話がきた.書くしかないということで(自己追い込み中).

◇はれほれ ―― 「ルヴェ・ソン・ヴェール本郷店」は大学の“外”にあるらしい(>クニエ姉御,ダンケ).※でも,たどり着く前に〈万定〉にトラップされると思うが(ハヤシライス〜).

◇師走の献本第1号(ありがとうございます)―― 菅裕明『切磋琢磨するアメリカの科学者たち:米国アカデミアと競争的資金の申請・審査の全貌』(2004年10月20日/同12月1日第2刷,共立出版,ISBN: 4-320-05620-5).さっそくブラウズする.こういう資金システムでエンカレッジされる研究者たちが残っていくわけですね.勉強になる.確かに,切磋琢磨する“環境”(金銭だけじゃなく)に身を置かないと,どんどんナマクラになっていくというのはその通りだと思う.「アメリカの科学システムの全体像を示す」という著者の意図をストレートに受け取りたい.

◇〈やはらダイアリー〉いわく(12月1日付):「少なくとも私は、日記を書かなければ息がつまることはないなぁ」.息しなくてもいいほど,肺活量が大きいんでしょ,きっと.あるいは,エラ呼吸とかヒフ呼吸とか….ぜひ,方々に出張して,日記を更新し続けてくださいな.「大学でこんな日記を書いていたら、大学院生・卒業研究生の冷たい視線をひしひしと背後に感じ」―― ついに背中にまで視覚器を進化させてしまいました?(爆)※時間がない割にはウェブ日記たちの内容をよくご存知のように思われ.

―― ぼくの場合は,日常の活動メモとして「日録」をつけているので(備忘のため),時と場所を問わずものするのです.どんなに忙しくても息をすることを忘れないように,日録は呼吸される.

◇外注していた論文が届く ―― David M. Williams and Malte C. Ebach 「The reform of palaeontology and the rise of biogeography &mdash 25 years after ‘ontogeny, phylogeny, paleontology and the biogenetic law’ (Nelson, 1978)」(Journal of Biogeography, 31(5): 685-712, 2004).分岐学の現代史をまとめた総説記事.とくに注目されるのは,分岐学の現代的展開のきっかけとなった Gareth Nelson の講演(1969年:アメリカ自然史博物館にて)が末尾に再録されていること(pp.702-712).

―― 著者たちは,数量的な系統推定法を一括して:

Numeric methods in systematics and biogeography are inherently 'transformational' and suffer the same problems as the old palaeontology. [p. 685]

と批判する.う〜ん,説得力ないんじゃないか,これじゃ.transformational / taxic という対置そのものとは別に,形質データのもとである最適系統樹を選択するという便法と考えればいいんでしょ.結局のところ.それが taxic に解釈されるかどうかは,その後の話だと思う.

セールス電話「超」撃退法 ―― ご多分に漏れず,農環研にも勤務時間中に多くのセールス電話がかかってくる.以前は,「株を買わないか」というバブリーな勧誘が多かったのだが,最近はもっぱら「老後のためのマンション経営はどうか」という手合が多い.正攻法で相手(セールスマン)を論破するという主義の人もいるのだが,なかなか相手もしぶとくて時間とエネルギーを浪費しているようだった.ぼくもこれまでは「興味がありませんから〜」とか「いま来客中でして〜」というありきたりの断り方をしてきた.しかし,近頃は限度を超えたしつこさと頻度で電話がかかってくるようになり,次第に態度を硬化させて「関心ありません,ガチャン!」と受話器を叩きつけるような手荒なこともしてしまうようになった.でも,こういうのって精神的ストレスがまちがいなく溜まる.そうでなくても,声を荒らげたりすると“心の平静さ”がかき乱されるので,はっきり言えば〈業務妨害〉にあたるのではと内心考えている.でも,相手はそんなことおかまいなく電話をかけてくるので,悩ましいかぎりだった.しかし今日からはそういう苦悩からオサラバできるのだ.“これ論”氏の〈進行状況〉の11月29日記事を見るべし:「通話のまま、受話器を机の上に置く。」という目ウロコな解決策が提示されているではないか! そーか,そーだったのかっ.どこのウマの骨とも知れぬ相手に対してまっとうな受け答えをしようとするから,ストレスは溜まるし,精神的安寧も損なわれるのだ.何もしなければいいのだ.セールス電話と判明した時点で,何も言わずに受話器を放置する(切らないで).なんだ簡単じゃないか.さっそく実践してみた.冬晴れの昼下がり,のこのこと“獲物”はやってきた:「あの,ミカミ先生はご在室でしょうか?(わたしゃミナカね)」「はい,ミカミですが……」「老後に向けてのマンション投資について,ご案内……」[←ここで受話器を放置する].相手が受話器の向こう側で空しく何を言おうが当方の知ったことではない.相手は「人間」ではないのだ.30分ほどそのまま通話状態で受話器を放ったらかしにする.これでオシマイ.すごい! こんなラクチンな方法があったとは.もちろん,相手もさるもの,電話が一度でも通じると,間髪入れずかけ直してくる.しかし,その応戦は人間がやる必要はまったくない.すべて留守録にまかせてしまえばいいのだ.ラクラク.※酒井君,深く深く感謝します.

―― 基本的に電話には出ないようにしているので(とくに外線は),必要な方はメールでご連絡ください.上に書いたように電話機は“迎撃武器”ないし“遊び道具”と化していて,有効な通信手段でなくなっていることが多々ありますので.

◇Adobe Acrobat の新バージョン〈Acrobat 7.0〉が販売開始になったというダイレクトメールが届いた.Adobe Reader の version 7.0 は近日リリースとのこと.※ついこの間 version 6.0 にしたばかりなのに…….

◇夕闇迫る頃,8月末に八ヶ岳で開催された〈JST長谷川ワークショップ〉の演者たちに「報告書」原稿の依頼メールを出す.今月中になんとかしないとダメだ.※またもや「火事場のなんとやら」かっ?

―― と思ったら,カンパツ入れずに ppt ファイルを送ってきた段取りのいい演者あり.※さすが,suchii さん!

◇箱崎の御方から〈奴隷勅許状〉が電子で届く.※これが「定め」ということか.(ふっ)

東京大学音楽部管弦楽団の定期演奏会の案内が届く:2005年1月31日(日),サントリーホール,13:30開演,演目:モーツァルト〈魔笛〉序曲/シューベルト〈未完成〉/マーラー〈巨人〉.指揮:早川正昭(今回が最後のステージとのこと).※早川さん,長年にわたってお疲れさまでした.

◇本日の総歩数=6581歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg.


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