images/image1.jpg

Home
oude dagboek

日録2008年10月 


26 oktober 2008(日)〜3 november 2008(月)
        ♪ 行かうー 南米ぬアルゼンチンぬ旅に ♪

 Hennig XXVII 参加記録 →〈Diario de a bordo en San Javier de Tucumán


25 oktober 2008(土) ※ 遠くへ逃亡する前日に食欲の秋

◆午前6時起床.曇り.冷え込みなし.ここ何日かは秋晴れから見放されている.午前中は北寄りの風が涼しかった.

◆まだまだ旅支度は続く —— スーツケースへのパッキング[だけ]は順調に進んでいる.海外に出るたびにもっていくものが単調に減少している.旅先では時間があるだろうからとたくさんの未読本を詰め込んでいった時期もあったが,けっきょくぜんぜんページをめくらずにそのまま持ち帰ってくることを学んだだけだった.要するに,旅行先で本を買うので日本からもっていくには及ばないということだ.しかし,今回は往復の長時間フライトがあるので,少なくとも往路分の本は用意しておかないといけない.空港の書店はどーせろくな本がないのでこれだけは事前の支度が不可欠.はい,ゲラもっていきます(……).服装のたぐいはいつも通りなのでアタマをまったく使わずにすむ.かの地では季節が半年ずれているので,ちょうど今が「初夏」に相当する.昨年のニューオーリンズ大会のような地獄の蒸し暑さはないらしい.ただひたすら遠いだけ.

—— あ,プレゼン用スライドの印刷がまだだった.

◆ランチは吉瀬の〈Nachu Café〉へ —— つくばエリアでの“自然派”レストランとしていま注目株の〈Nachu Café〉は集客力も群を抜いているらしい.

今日は完全予約制の「スペシャルデイ」ということで,機会を逃さずランチに行った.ギターとマンドリンの生演奏付き.まずはオードブルの盛り合わせから.パンに乗っかった田舎風パテがしっとりした味わい.そしてベーコンと玉葱のピザが1/8カット.おお,美味いですね.まぐろと秋茄子のマリネが添えられていた.個人的には付け合わせのラディッシュのディップ(クリームチーズとクルミ?)に惹かれた.

次はメインディッシュ.ポークの切り身(ロースト済み)とソーセージ2種とジャガイモ・カブ・キャペツ・ニンジンのポトフが深皿に盛られてテーブルに運ばれてきた.うわ,こんなにたくさん出してもらっていいんですか.ソーセージのうちひとつはホワイト系で,ナイフを入れるとほろほろと肉が崩れる.スライスされたポークは今日のメニューの主役なのでしっかりいただきました.根菜類をほおばっているうちに満足度(満腹度)が急上昇していく.

ゴマの入ったふわふわなパンを追加するまでもなく,もう十分.最後はこれまた大きなタルト・タタン(ホイップクリーム付き).こっくりと煮たリンゴの甘さが“食慾リミッター”を解除してしまいますわ.

—— 今回の企画は完全予約制だったが,もちろん満席だった.前日から期待に満ちたブログ記事などを見ていると,次回またこういうイベントをするときは,きっと予約電話が殺到するのでしょうねえ.なお,次回の〈つくいち〉は11月2日(日)で〈Nachu Café〉も出店するが,ぼくは日本にいないので今回は行けないのだ.

◆なーんだか食欲の秋を満喫してしまったが,明日からの旅支度はまだ終ってはいなかった.断続的に詰め込みを続けたり,持参するプレゼン用の機材とか資料を確認したり,立ち寄る空港のフライト情報や空港内マップを眺めたりする.

◆明朝は農環研に潜入して最終準備をする.

◆本日の総歩数=8476歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.計測値(前日比)=83.4kg(+0.4kg)/24.2%(−0.8%).


24 oktober 2008(金) ※ 秋の土砂降りは勘弁してほしい

◆午前4時半起床.雨.気温19.1度.しっとり湿って冷え込まず.

◆さらなる献本(ありがとうございます) —— 矢島道子『化石の記憶:古生物学の歴史をさかのぼる』(2008年10月10日刊行,東京大学出版会[Natural History Series],vii+219 pp.,本体価格3,200円,ISBN:978-4-13-060751-3 → 目次版元ページ).「化石」をめぐる研究者とその言説の歴史を明治時代の日本を出発点として,通常の科学史の本とは逆に,時間軸を巻き戻して,ギリシャや中国の古代にまでさかのぼる.まだぱらぱらとブラウズしているところだが,初めて見る写真(著者自身が撮ってきたものも多いようだ)や図表がたくさんあって飽きない.

同時代の Charles Darwin や Thomas H. Huxley から毛嫌いされた Richard Owen についても詳しく書かれている.博物館に巣食う(実際その通りなのだが)“悪鬼”のごとき写真ばかり今に伝わっているが,若い頃の姿とか孫娘を抱いた伝記の写真などを見ると,むしろ「いいヤツじゃん」と感じてしまう.「見た目が9割」だかなんだか知らないが,とくに科学史的な「昔の人」については,ごくわずかに伝承されている(選択バイアスもあるにちがいない)写真から人となりを“判断”してはいけないぞという教訓ですらある.

著者の研究上の出自は「カイミジンコの古生物学」ということになるのだが,そこから出発して研究者コミュニティだけでなくもっと広い社会の中での活動にも手を広げている.このたび出版された本書には,著者自身のこれまでの研究活動や広報活動の成果も随所に盛り込まれていて,意外なほど自伝的な色合いが強い.

—— あとがきを見て思い出した.著者とも親交が深かった阿部勝巳さんが不慮の交通事故で逝去されてから今年でもう10年になるという.その夜,彼は三崎の臨海実験所に自動車で向かうはずだったのだが,訃報の第一報を受けた教員仲間はいくら酒を呑んでも酔うことができなかったという(あとで聞いた話だ).そういえば,本郷の著者の自宅で開かれた「阿部さんを偲ぶ会」に呼ばれたこともあった.

◆午前中は降ったり止んだりしていた,午後になると季節外れの土砂降りになってしまった.秋の長雨はできればしとしと降っていただいた方が情緒があるのに,こんな無神経な降り方ではどうしようもない.そこら中べたべたと湿気がまとわりついてしまう.正午の気温は21.2度.やや蒸し暑い.

◆午後のこまごま —— カマジン本のゲラ読みを進める.とりあえず3章分(第14〜16章)を海游舎に返送した./駒場の生物統計学の試験に関する問い合わせ./住宅に関する事務書類.申請済み./連携大学院の院生への教務からのメッセージを伝書鳩する./東大農学部の隠れ部屋を化してほしいとの申し入れあり.OKです./午後3時から1時間半ほど組合の勤評交渉./国立科学博物館の TAXA 会員から,この6月以降 TAXA メーリングリストからの投稿が配信されていないとの連絡があった.自分だけではなく科博の他の会員への配信も途絶えているという.おそらく kahaku.go.jp というドメイン自体が配信から外れてしまっているのではという問い合わせ.個々のアドレスそのものの登録状況は問題ないことを確認した.初めてのことだったが,帰国後にMLサーバーの管理者に確認する必要があるだろう.

◆「中立進化論」論争史セミナー —— Michael Dietrich さんの国立遺伝研(三島)でのセミナーの詳細が確定した.11月4日(火)午後4時〜5時.場所は遺伝研の「Seminar Room, 3rd Floor, Library Building」,演題は「The Neutralist/Selectionist Controversy and Its Legacy」.ぼくはアルゼンチンからの帰国直後で,神戸に行く前日なので三島に出向くことはできないが,ISHPSSB Kobe 事務局の瀬戸口さんが同行するもよう.遺伝研の事務から Dietrich さんへの旅費の支給に関する問い合わせあり.瀬戸口さんに転送して即対応完了.急なプロポーザルだったが首尾よくセミナー開催にこぎつけることができてよかった.

◆夕方のトツゲキ依頼 —— 農環研の生物多様性研究領域から【種】に関するトークを農環研で開催される予定のセミナーで話してほしいという依頼.外ではよく話すことだが,中ではいままでほとんど機会がない(10年ほど前の「加波山事件」は別として).日程的にも問題がなかったので二つ返事でお引き受けした.たまにしか所内実在しないワタクシを居室で捕捉するというのはたいへんラッキーなことですね.それにしても,セミナー全体のタイトルが〈法面緑化における在来種栽植について〉という,いかにも実践的な看板ですけど,そこで【種】除霊の祈祷をするのですか?

◆夕方,小降りにはなったが雨はまだ降り続いている.夜,スーツケースに荷物をパッキングし始める.南米への旅路はもう始まっている.しかし,講演準備はまだ終っていなかったりもする…….

◆本日の総歩数=6728歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.0kg(−0.5kg)/25.0%(+1.0%).


23 oktober 2008(木) ※ 海外逃亡直前の駒場統計お座敷

◆午前5時起床.曇り.北寄りの風が強めに吹いている.あまり冷え込まないのは雲が多いからか.

◆早朝のこまごま —— Mac OSX 版の最新版R(version 2.8.0)が公開された.Win / Mac 双方のパッケージを含めたアップデートをする./〈ISHPSSB Off-year Workshop Kobe〉の宣伝をメーリングリストに流す.いったい何人ほど集まるかがつかめないが,現時点では数十人規模だというので,もう少し生物系の参加者を増やした方がいいだろう./しばらく放置していた書評をまとめて出す:Brian W. Ogilvie『The Science of Describing : Natural History in Renaissance Europe』(2006年6月1日刊行, The University of Chicago Press, ISBN:0-226-62087-5 [hbk] / ISBN:978-0-226-62088-6 [pbk] → 書評詳細目次著者サイト版元ページ)および,泊次郎『プレートテクトニクスの拒絶と受容:戦後日本の地球科学史』(2008年06月2日刊行,東京大学出版会,vi+258 pp.,本体価格3,800円,ISBN:978-4-13-060307-2 → 書評目次版元ページ)./Michael Dietrich さんの遺伝研セミナーは11月4日(火)の夕方で確定しそうだ.タイトルと要旨が送られてきた.齊藤さん,よろしくお願いします.

◆午前中は不安定な空模様で,晴れたかと思うと曇ってぱらぱらと降ってみたり.湿度が高くやや蒸し暑い.午前11時,気温22.0度.曇り.正午に帰宅して出撃準備.午後1時すぎにいきなり本降りの雨.濡れてTXに駆け込み,13:25発の快速に飛び乗る.

◆コマバ高座(3回目) —— 午後3時前に駒場東大前に到着.すでに傘なしでは歩けないほどの雨足だ.講師控室にて南米トークのスライド準備を進める.16:20〜17:50 の講義ではパラメトリック統計学とくに確率分布と期待値について話をした.次に駒場に来るのは3週間後の11月13日(木)だ.

◆新刊「R本」献本感謝 —— P・スペクター[石田基広・石田和枝訳]『Rデータ自由自在』(2008年10月24日刊行, シュプリンガー・ジャパン, x+182 pp., 本体価格3,500円, ISBN:978-4-431-10047-8 → 版元ページ).

Rまわりのデータの扱いに特化した新刊で,RへのデータのインポートやRからのエクスポート,データベースとの連携(役に立つかも),さまざまなタイプのデータの処理(文字データ,日付データなど),さらにデータの整形や集約についても論じられている.日ごろからデータ処理の実用ツールとしてRをどんどん使えと受講生に言っている手前,こういう本を勉強しておかないと.お送りいただきありがとうございました(>徳島方面に一礼っ).なお,原書は:Phil Spector『Data Manipulation with R』(2008年刊行,Springer-Verlag[Series: Use R!], New York, ISBN:978-0-387-74730-9 [pbk] / ISBN:978-0-387-74731-6 [online]).ほとんど“時差”のない翻訳作業だ.

◆雨がしとしと降り続く夕暮れの駒場キャンパス内は,5時限目の講義が終わって外に“放出”された学生で人口密度が高い.つくばに帰り着いたのは午後7時半,TX沿線ではときどき雨足が強まったりした.つくばで地上に上がったときは小降りだったが,その後また本降りになってきた.

◆車中読書 —— しばらく放置していた本:岡田裕成・齋藤晃『南米キリスト教美術とコロニアリズム』(2007年2月25日刊行,名古屋大学出版会, ISBN:978-4-8158-0556-2→目次)の続きをおもむろに読み進める.征服者側の宗教としてのキリスト教と征服された先住民側の在来宗教とのこすれあい.巻末の教会資料から目を通す.

◆明日も雨が続くとの予報だ.そろそろスーツケースに旅支度一式を詰め始めないといけない.秋の〈試飲会(ためしかい)〉の日程が確定した:11月28日(金)の午後6時から.今からしっかり肝臓を鍛錬しておかないといけないな.特訓だ.

◆本日の総歩数=13028歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前日比)=83.5kg(−0.7kg)/24.0%(−1.4%).


22 oktober 2008(水) ※ 朝から雑用トドどもが群れ騒ぐ

◆午前4時起床.晴れ.気温10.9度.お,寒いぞ.

◆ダーウィン「ビーグル号」書簡集 —— Frederick Burkhardt (ed.)『Charles Darwin: The Beagle Letters』(2008年9月刊行, Cambridge University Press, xxx+470 pp., £25.00, ISBN:978-0-521-89838-6 [hbk] → 目次版元ページ).言わずと知れたビーグル号航海中の書簡集.すでに20年以上にわたって続けられている〈ダーウィン書簡集プロジェクト〉の副産物のひとつ.

◆朝の旅支度じたばた —— 海外旅行が近づいてくると,講演準備よりも何よりも,「旅に出る」ための実務的なこまごまがいろいろと湧いて出てくる.もちろん,毎年,どこかしらの海外に出かけているので,出国するまでの致命的な過ちを犯すことはまずない.要するに,もっと細かいことどもということだ.

最初はお金のこと.朝イチで銀行に行き,アルゼンチン・ペソを買おうとしたら,「お客さま,申し訳ありませんが,当行ではアルゼンチン・ペソは扱っておりません」とのこと.調べてもらったところ,つくぱエリアではもちろんのこと,成田空港ですらアルゼンチン・ペソとの換金はできないらしい.メキシコ・ペソやブラジル・レアルはまったく問題ないのに,アルゼンチン・ペソだけダメとはこれいかに.アルゼンチン・ペソの売買の需要はほとんどないらしい.うーん.ではどーするか,と思案していたら,「米ドルで現地までお持ちになってから換金されるのがよろしいかと」との示唆あり.まあ,それしかないんでしょうねえ.米ドルをいくばくか買うことになった.一敗め.

次はスーツケースのこと.貸倉庫に行って海外旅行用のスーツケースを引き取ろうと思ったら,うぬぬ,運悪く沼尻産業の〈暮らしの倉庫〉は水曜が定休日だった.くー.すごすごと敗退する.明日また出直しか.二敗め.

◆負けがこんできたので,職場に撤退する.正午の気温は22.0度.晴れて暖かい.

◆午後のこまごま —— 来月の出張伺・年休届・兼業届をまとめて用意する.月初めの〈ISHPSSB Off-year Workshop Kobe〉が最長だが,もっと細かい出張が他に四日ある.さらに,つくばでの数理統計研修が中旬に2週間あり,その合間にコマバでの統計講義.東大での連携講座の特論まである.集計すると,出張が長短取り混ぜて7日間,兼業日が2日間(部分年休日を含む),数理統計研修の出講日が6日間ある(フルではなく部分だが).したがって,全労働日18日に対する不在日数は計15日なので,11月の農環研実在率は「3/18=17%」となる.ついに2割を切ってしまったか…….

さらに,ISHPSSB で来日する前会長 Michael Dietrich さんの講演会の設定だ.現代進化学における中立進化論の歴史が専門で,今回の来日を利用して三島の国立遺伝研に資料収集に行くという.せっかくだからその機会に遺伝研で講演会かセミナーを開いてはどうでしょうという瀬戸口さんの発案で,遺伝研のVIPにさっそくメールをした.急な申し入れではあったが,幸い引き受けてもらえそうなので,神戸会議の直前の11月4日(火)に遺伝研での講演会が実現する運びとなった.詳細については追ってアナウンスすることになる.今日初めての一勝め.

◆いただきもの —— 溝入真治・相原光人・岡田典弘(主執筆者)『ヴィクトリア湖南部のシクリッド:種形成の現場』(2008年7月10日刊行,工学図書,vi+273 pp., ISBNなし → 目次).

本書は,〈文科省科研費特定領域研究「種形成の分子機構」報告書〉と銘打たれている.執筆者の一人である岡田さんが領域代表者となったプロジェクトの総括報告書だ.市販されていない図書だが,アフリカのヴィクトリア湖に分布するシクリッド科魚類の甚だしいまでの種分化の“アウトプット”を一千枚ものカラー写真の集積としてまとめた著作で,アカデミックにして読者層が極度に狭い通常の意味での「科研費報告書」とはその性格が大きく異なっている.現地に何度も足を運んで調査をした成果だろう.分子進化学的な研究成果の総括を期待した読者はきっと肩すかしを食らわされるだろう.しかし,むしろ虚心にこの大きなハードカバー本(しかもアート紙!)の「魚の図譜」を一枚ずつめくっていくことが,この湖での種分化の全体構図を疑似体験する近道になるのだろう.

◆〈農環研つちのうえ太鼓隊〉アゲイン —— 毎年恒例の農環研収穫祭は11月11日(火)の夕方にある.泣く子も黙る?収穫祭実行委員長の鶴の一声により,夏祭りの〈太鼓隊〉がまたもや登場することになりそうだ.

◆午後5時帰宅.北東の風が冷たくなってきた.昼夜の温度差といい,湿度の低さといい,何だか“大陸的”な感じの気候が連日続いている.しかし,明日からは雨が降り出すらしい.

◆夜,上野清士『ラス・カサスへの道:500年後の〈新世界〉を歩く』(2008年8月15日刊行,新泉社,382 pp,本体価格2,600円,ISBN:978-4-7877-0805-2 → 目次版元ページ)を読了.かの地の“歴史の背骨”をしっかりつかめたかのような読後感.

◆本日の総歩数=8783歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前日比)=84.2kg(+0.4kg)/24.4%(−1.3%).


21 oktober 2008(火) ※ 鳥から犬へと大変身してみる日

◆午前5時起床.快晴.冷え込みなし.今日は年休を取って,年に一度の人間ドック受診に備える.問診表とか検体とか.

◆殊勝で従順な人間犬 —— 午前7時すぎに自宅を出て,自転車で筑波メディカルセンターに向かう.人間ドックは毎年ここで受診している.午前7時半に入って,受け付けの説明.午前8時前に検査開始.あとはいつも通りあちこちたらい回しされ,X線照射台の上でトドのようにのたうってみたり,また心臓をどきどきさせられたり,生暖かいゼリーを塗られて超音波をぐりぐりされたり.それでも,午前10時前にはすべての検査コースを完了した.

前夜からほぼ“断食”状態だったので,病院の食堂で検査後に供される松花堂弁当を朝ご飯としていただき(ぜんぜん足りない……),医師との個別面談を正午前に受けて(しっかり指導され),これでやっと全面解放だ.“ラマダン”明けだぁ,と昼食はちょいと暴飲暴食してみる(おい).

◆病院内の待機読書 —— 内堀弘『ボン書店の幻:モダニズム出版社の光と影』(2008年10月10日刊行, 筑摩書房[ちくま文庫],294 pp., 本体価格950円, ISBN:978-4-480-42466-2 → 目次版元ページ).読了.それでなくても売れない「詩」の本を採算を度外視して特装本や限定本として出し続けたボン書店.「雲か霞を喰う」という表現がけっして比喩ではなく,現実にそれを実行してしまったような,良くも悪くも夢のようなエピソードの数々.これじゃ,ツブれますって…….

◆日中は秋晴れで日射しが強く,気温はぐんぐん上昇している.暖かいというよりは暑いほど.久しぶりに自転車でペデストリアンを行ったり来たりすると,街路の紅葉がいちだんと進んでいることがわかる.ここのところ日中は暖かい日がずっと続いているが,朝夕の冷え込みがもっと厳しくなれば一気に色づいてくるにちがいない.

◆午前中はそれでも北寄りの風が涼しかったが,午後はぽかぽかとさらに暖かく,3時の気温は21.2度.農環研にちょっと顔を出す.

◆いきなりこまごま —— 領域会議は明日10月22日(水)午前10時半から.たまには出ようね>ぼく./来月の出張届での何だのを出さないと./農環研収穫祭は11月11日(火)の夕方.またタイコですかぁ./Rの最新版(version 2.8.0)が公開された.Rコマンダーの最新版とともにインストールする./木曜のコマバ講義のハンドアウトをコピーしてもらった.これで三点セットはそろった.

◆午後4時半から1時間弱,実に実に1ヵ月半ぶりのSlice本『Modern Morphometrics in Physical Anthropology』の輪読セミナーの第21回輪読.今回から新しい第7章章:Hermann Prossinger「Problems with Landmark-Based Morphometrics for Fractal Outlines: The Case of Frontal Sinus Ontogeny」に入る (pp. 167-169).形状のノイズが大きすぎると,標識点(準標識点)を設定することもできないし,輪郭曲線を用いることもできない.本章では,そのような場合でも「フラクタル次元」を用いたシミュレーションを利用できる可能性を探る.まだイントロの部分しか読んでいないが,ざっと以下のような手順になるらしい:1) ノイズを含む輪郭画像から等角分割による極座標データを取得する(ここまではフーリエ解析の手順と同じ); 2) 個体発生の過程での形状変形をシグモイド関数で近似し,そのパラメーター(成長率r,飽和値K,初期時刻t0)をデータから推定する; 3) パラメーターrに関する形状輪郭のフラクタル次元を求める; 4) そのフラクタル次元に関するシミュレーションを実行し,実際のデータとのフィットを調べる.

◆午後5時過ぎに撤収.いったん帰宅してから,近くの竹園公園での午後6時からの組合イベント「県南大集会」に参加し,夜のつくばセンターを練り歩く.午後7時半まで.寒っ.

◆本日の総歩数=13076歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝−|昼×|夜△.計測値=83.8kg/25.7%.


20 oktober 2008(月) ※ 飛ぶ鳥,跡を濁しまくる直前週

◆午前4時半起床.夜中に雨が降ったらしく,路面が濡れていた.しかし,夜明け前にはもうあがって星空が見える.気温16.1度.南寄りの風のち北東の風.

◆論文メモ —— Kevin E. Omland, Lyn G. Cook, Michael D. Crisp (2008), Tree thinking for all biology: the problem with reading phylogenies as ladders of progress. BioEssays, 30(9): 854 - 867 (Published Online: 8 August 2008).“tree-thinking”で検索していたら,たまたまヒットした.著者らは系統樹ユーザーのすそ野の広がりとともに,「系統樹リテラシー」の欠如が露呈してきたと言う.要するに,系統樹をちゃんと“読めて”いないユーザーが目立つとの指摘.本記事で著者らが取り上げているのは,それは系統樹を「左」から「右」に向かう前進的段階移行(ladder)とみなすまちがった“読み方”で,彼らはこれを「the primitive lineage fallacy」と呼ぶ.

—— 要するに,時間化された「The Great Chain of Being」的な系統樹の素朴な解釈がいまだに残存しているということなんでしょ.

◆午前のばたばた —— つくばセンターから成田空港へのシャトルバスを予約しようと思って,旅行会社から手渡された旅程表を確認したところ,デルタ航空の発着は第二ターミナルではなく第一ターミナル(北ウィング)に変更されてるじゃないか.バスチケットを買ったのち,あわててドコモショップに直行し,海外レンタル携帯電話の受け渡しと返却場所を第二から第一ターミナルに変更する手続きをする.それやこれやで午前がつぶれた.

◆正午の気温は22.6度.快晴で暖かい.日中は半袖で何も問題ないのだが,10月下旬にこんな服装でいいのだろーか.また,アルゼンチンの内陸はどの程度の服装で過ごすべきか,ちと考えないと.南半球では季節が裏返しというのがいやはやなんとも.

◆午後のばたばた —— 木曜の講義のために,コマバ三点セットを前もって用意する.スライドはもともとあるので,出席カードとハンドアウト.印刷は明日以降に./海游舎からカマジン本のゲラ読みについての督促電話.コメツキバッタのように謝る.アルゼンチンに国外逃亡する前にばばーっと返送しないとどうしようもないな.

◆午後4時すぎ,早々に撤収し,帰宅.カマジン本のゲラ読み作業の久しぶりの再開.夜,北東風が強まってきた.YouTubeでさらなる〈復活〉動画のチェック.おお,レナード・バーンスタインが指揮棒を降りながら“昇天”していくぞ.サイモン・ラトルがイギリスのユース・オーケストラを振った演奏会は,ステージを埋めつくすものすごい数の演奏者と合唱隊だった(第8番ではありませぬ).

◆明日は年に一度の「人間犬」と化す日だ.朝イチにはメディカルに入っていないとダメなので,暴飲暴食は御法度.清く正しい食生活を送らないといけない.※“ラマダン”明けがコワイぞー.

◆本日の総歩数=8921歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.2kg/−0.4%.


19 oktober 2008(日) ※ 風に吹かれて日曜が過ぎていく

◆午前6時半,ゆるゆると起床.快晴.朝から北東の風が強い.近隣に障壁のない高層階だからよけいに吹き抜ける風は容赦がない.紙もホコリも時間も空間も何でも吹き飛ばしてしまう.

◆新刊メモ —— 内堀弘『ボン書店の幻:モダニズム出版社の光と影』(2008年10月10日刊行, 筑摩書房[ちくま文庫],294 pp., 本体価格950円, ISBN:978-4-480-42466-2 → 目次版元ページ).「四の五の言わずとにかく手に取って読め」というタイプの本です.本書の主人公であるボン書店店主(鳥羽茂)だけでなく,本書を書いた著者(石神井書林店主)もすばらしい.

本書の初版本は手にしたことがないが,書名だけはどこかで目にしたような記憶がある.伊達得夫『詩人たち ユリイカ抄』(2005年11月10日刊行, 平凡社ライブラリー558, ISBN:4-582-76558-0 → 紹介)に関連してか,それとも本書に解説を寄せている長谷川郁夫の読みかけの本:長谷川郁夫『美酒と革嚢:第一書房・長谷川巳之吉』(2006年8月30日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-01773-8 → 目次)に触れられていたからかは定かではない.

第二次世界大戦のさなかに“消えた”鳥羽茂の足跡を追い求めるようすは著者の尋常ならざる執念を漂わせる.長い探索の末に明らかになるその結末を急いではいけない.

◆こういう日のためのCDはこれ —— 〈J. S. Bach: Transkritionen〉(Gustav Leonhardt [Cembalo], deutsche harmonia mundi, BVCD-38105-06[2枚組]).バッハの〈無伴奏バイオリン(ソナタとパルティータ)〉と〈無伴奏チェロ組曲〉をチェンバロで演奏したもの.これもすばらしい!

◆午後になって,雲が出てきた.そして,風はいよいよ強まり,風呂場の天板が持ち上がるほどの風圧だ.とある翻訳をしつつ,昼下がりの時間がびゅうびゅう吹き飛んでいく.夕方,上空に広がるかすかな夕焼け.

◆明日からは,旅立ち直前モードで日常生活からは少しずつ遊離していくことになる.とはいえ,向こうの世界に行く前に,現実世界ですませておくべき雑用は多々残っている.トド撃ちに終わりはない.

◆本日の総歩数=4588歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−1.2kg/−1.3%.


18 oktober 2008(土) ※ 松戸の森で大きな太鼓を叩く夜

◆午前6時前に起床.快晴.冷え込む.行楽連休の始まりを告げるいい天気.関東も北の方ではすでに紅葉が見ごろになっているという.しかし,“行楽”ということばはわが辞書にはない.

◆午前のこまごま —— 断髪をして間近に迫ってきた旅立ちのための禊をする./アルゼンチン出発までの旅支度の段取りを確認.ペソの換金(もちろんトラベラーズチェックではなく現金のみ),貸倉庫からトランクを引き出す,成田シャトルバスのチケット確保 etc... しかし,帰国してすぐに神戸に向かうので,新幹線チケットの確保しないとか.いずれにしても,これらは週明け早々の仕事になる./肝心の発表スライドもアルゼンチンと神戸の両方を同時並行で用意しないといけない./その他,買い物とか.竹園のたがみ酒店に山形の〈初孫〉生もと純米大吟醸(山田錦)が入荷していた.さっそくレジにもっていったら,「昨日入荷したばかり」とのことでラッキーだった.

◆午後の徘徊 —— 12:55発のTX快速に乗り込む.新柏にて私用を三時間半.その後,電車を乗り継いで,新柏→流山おおたかの森→南流山→新八柱と移動する.

◆駅を出て,夜道をてくてく歩き,午後7時前に松戸の〈森のホール21〉の地下リハーサル室に到着.松戸シティフィルハーモニー管弦楽団の「第20回松戸市民コンサート」として,マーラーの〈復活〉を演奏する.80分を越える大曲だが,かつて(30年ほど前のこと)東大オケで演奏したことがあるので,ぼくにとっては2回目となる.今回の演奏では大太鼓を担当するのだが,Lefima の楽器が使えるのはありがたい(皮です皮).今夜は,長大な第5楽章のみの全体練習で,午後7時から9時まで延々と続いた.一つの楽章だけで30分もあるのだから,古典的な交響曲だったらまるまる一曲に相当する長さだ.本番は12月21日(日)午後2時開演だが,それまでは土曜ごとにオケ練習が入る.

一度は経験した曲なので,おおまかな楽曲の構成や演奏箇所は何十年経っても覚えている(いちおう予習として譜読みはしてあるのだが).しかし,随所でテンポが揺れて,変拍子のパッセージも多いので,うっかりしていると落ちてしまうこともある.本番では舞台上と舞台袖とを行き来することになるので,リハーサル室に慣れてしまうとよろしくない.

本日の大太鼓パートのできはともかくとして,大きい皮の太鼓をぼこぼこ叩くとストレス発散に効果的ですな(腹もへるが).とりわけ,マーラーの交響曲1,2,3,5,6,7,8番とかヴェルディ〈レクイエム〉の「怒りの日」などは,太鼓叩きとしては何度経験しても楽しいわけでして.

—— YouTube で〈復活〉を検索してみると,どういうわけだがこの第5楽章の動画ばっかりたくさんアップされている(たとえば:part 1 | part 2 | part 3 | part 4).楽章を通じて“見どころ”満載だからか.

◆午後9時すぎに練習が終わり,また夜道をとぼとぼと駅まで歩く.つくばに帰り着いたのは午後10時半だった.日中は日射しもあって暖かかったが,夜になると急に冷え込む.

◆本日の総歩数=15037歩[うち「しっかり歩数」=4084歩/41分].全コース×|×.朝○|昼−|夜−.前回比=−0.2kg/+1.5%.


17 oktober 2008(金) ※ トド撃ちについての簡潔な報告

◆午前4時前に起床.星空.国道408号沿いに植わっているフウノキからばらばらと舞い散る落葉がライトに照らされる.夜明け前で寒いなと思ったら,今朝は10.8度まで冷え込んでいた.

◆早朝のこまごま —— 兼業申請書類の再提出./勁草書房から出版予定の生物学哲学論文集の編集作業用メーリングリストが開設され,有無を言わさずそのメンバーに登録されていた.この原稿の〆切は年末だ./そう言えば,『植物防疫』誌から執筆依頼されている分子系統学の総説記事の〆切は今月いっぱいだった……./今月に入ってからずっと堆積していたメーリングリスト関連の雑用をちぎっては投げ,丸めては投げ.しかし,ぜんぜん終わらず.

◆今日も快晴.日射しとともに気温がぐんぐん上がり始める.午前10時にはもう20度を突破した.朝晩と日中の温度差が大きすぎる.

◆午前のこまごま —— コマバの講義用に「統計学へのお誘い本リスト(17-October-2008 version)」を更新し公開した.今年になってから重要な参考書が何冊か出たので,それを追加し,合わせて古すぎるものは削除./昨日の講義のハンドアウトを〈R-statistiek〉にアップした./ML管理作業はなお続くのだった./注文を受けていたソーバー『過去を復元する』の発送完了.たいへんお待たせしました./Hennig Society の fellow としての投票2件.完了./来年の生物地理学会大会のためのプッシュ案件ひとつ.返事よろしく.

◆午後になってさらにぽかぽかと暖かくなる.昼間は半袖で十分.

◆昼下がりのこまごま —— まだ月半ばではあるが,「トド撃ちリスト」の中間評価と追加改訂を行なった.トド多過ぎ./朝から続いていたML管理作業がやっと終わり,アドレス変更などの堆積作業は一掃処分された./組合動員2件.ひとつは10月21日(火)の夕方,竹園公園にて集会とデモ行進.この日は年に一度の“人間犬”と変身する日なんですけど.もう1件は10月24日(金)午後3時から5階セミナー室にて勤評交渉./午後2時過ぎ,事前に通知があった“抜き打ち”の居室臨検.どやどやと10人ほどが来室し,案の定,本の「崩落現場」を指摘された.倒壊可能性の高い本棚ひとつは早急に何とかしんとあきまへんな.

◆“人間犬”の日のために多少は節制した[食]生活を送らないといけないな —— と毎年毎年まったく学習効果のない直前ドロナワなフリを繰り返している.

◆夕方のこまごま —— 先日の交流センターワークショップ〈分子系統樹推定法:理論と応用〉のアンケート集計がもどってきた.受講者のみなさんには大筋では満足してもらえたようだが,実習の段取りについては再考の余地がある.事前のインストール準備をもっと確実にすれば,さらに実習時間が有効に確保できたにちがいない.来年以降も実施が期待されているよーですが……./「統計難民」さんからの質問メールにお答えする.

—— これでやっと「受信箱」が空っぽになった.メールでの仕事はこれにておしまい.

◆午後5時過ぎに撤収.午後の暖かさがまだ残っているらしく,気温は19度台.しかし,夕闇迫る中,吹く風はもう冷たくなっている.改訂したトド撃ちリストを見ると,アルヘンティーナと神戸での国際会議がらみの用事がずらっと並んでいる.神戸については,さらにひとつ追加の依頼が入ってきた.今回,ISHPSSB 前会長の Michael Dietrich さんが来日する.彼は木村資生の中立説が現代進化生物学の中でどのように発展したかを研究テーマとしてきた生物学史家だ.せっかく来日したのだから,神戸の国際会議だけではなく,分子進化学や集団遺伝学のオーディエンスがいる場で講演してもらってはどうかという申し入れだ.確かにいい機会なので,そういう場を設営するように働きかけたい.滞在日程を勘案しながらスケジュールを組む予定だが,積極的に手を挙げて申し入れていただくのも大歓迎.

◆この週末はプレゼン準備に当てたいのだけれど…….※この「……」は何やねん.

◆本日の総歩数=7629歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/−0.6%.


16 oktober 2008(木) ※ 中南米な読書とコマバでの高座

◆午前5時前に起床.冷え込む秋晴れ,朝日がまぶしい.

◆午前のこまごま —— またまたコンビニで振り込んだりなんやかんや数件./計量生物学会の新評議員になりましたとの連絡が今日になって届いた.新評議員会の開催通知はすでに先日届いていた.順序が逆やんか……./Rでの回帰分析のデモの準備.スクリプトをちくちく書いてみる.こうやって書き溜めたものを高座のネタにしているのだが,書きっぱなしで放置したあげく,行方不明になってしまったスクリプトもたくさんある.

◆午前10時.快晴.気温20.9度.暖かい.アルゼンチンへの航空券が農環研に届いたので引き取りに行く.旅程表を確認すると,往路のブエノスアイレスでは,国際線(Aeropuerto)から国内線(Aeroparque)への空港間遠距離移動は不要で,aeropuerto から トゥクマン行きの飛行機が飛ぶそうだ(信じていいのでしょーか).その後,〈Hennig XXVII〉事務局からメールがあり,Aeroparque は大規模改修工事が25〜26日にあるために全面閉鎖されるとのこと.これで納得.

◆正午過ぎにいったん帰宅し,プレゼン機材や配布資料をそろえてから出発.晴れて暖かい.13:55発の TX 快速に乗る.午後3時半に駒場東大前に降り立つ.

往路の車中読書:ラス・カサス著[染田秀藤訳]『インディアスの破壊についての簡潔な報告』(1976年6月25日刊行,岩波書店[岩波文庫33-427-1],ISBN:4-00-334271-2)を読了.著者ラス・カサスは,コロンブスが新大陸を発見し,16世紀以降,スペイン人が大挙して“ヌエバ・エスパーニャ”(メキシコ)を始めとする中南米を侵略した時期にこの報告書を上申した.なんだか旧日本軍による中国本土での“三光作戦”を髣髴とさせる extermination の記録.いわゆる「モンテスマの呪い」の出典はこの本だったか:

結局,スペイン人たちは神殿に火を放ち,インディオたちを火攻めにした.インディオたちは絶叫した.「なんと邪悪な人たちだ.いったい私たちが何をしたと言うのか.どうして私たちを殺すのだ.メキシコへ行くがいい.そうすれば,主君モテンスマ王が私たちに代りおまえたちに復讐なさるだろう」(p. 64)

◆16:20〜17:50 コマバ高座(第2回).今日は統計学概論を話した.予想はしていたが,Rを使ってのデモはぜんぜん時間が足りませんでした,ハイ.回収した出席カードを見てみると,もっと“数式”出してね,との声が多い(いいんですか?).次回はパラメトリック統計学に進む予定なので,いやでも数式を乱射するでしょうけど.

◆夕闇迫る(というか,もう真っ暗な)コマバを後にして帰路につく.車中読書の続きは,新刊のラス・カサス伝:上野清士『ラス・カサスへの道:500年後の〈新世界〉を歩く』(2008年8月15日刊行,新泉社,382 pp,本体価格2,600円,ISBN:978-4-7877-0805-2 → 目次版元ページ).中米に長く住んだ著者が,母国スペインと新大陸とをまたにかけたラス・カサスの足跡をたどった本.写真もたくさん.文章も満腹的.晩年のラス・カサスが最後に母国に出港した港がベラクルス.ここは来年〈ICSEB-VII〉が開催される場所だ.アステカの破壊者コルテスが上陸したのも,またロシアから亡命してきたトロツキーが密かに入国したのも,このベラクルス経由だったとは知らなかった.スペインのセビーリャに生まれたラス・カサスが大航海時代に修道士として新大陸に渡るまでを読む.100ページあまり.備忘メモ:Anonimo「Castas」, Museo de Virreinado.18世紀に描かれた系統図だという.

◆午後8時前につくばに帰り着いた.少し磨り減った月が雲一つない夜空に輝く.減った分だけじっと見ていても lunatic にはなる心配はない.夜風が涼しい.

◆本日の総歩数=11345歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/−0.5%.


15 oktober 2008(水) ※ まいくろトドの群れを一網打尽

◆久しぶりに午前4時半の起床.雨上がりの曇り空.気温16.0度.

◆早朝の小トド撃ち数発 —— 東大の集中講義の日程が確定したので,講義室の予約と院生への広報を東大の教務関係者に依頼する./計量生物学会の新しい役員が決まったので,第1回対面評議員会が10月25日(土)に開催される.しかし,その翌日から南米行きなので,今回は欠席することにして,その委任状を事務局に返送する.

◆朝から日が射して気温が上がってきた.吹く風は秋らしく涼しいが,日なたはかなり暖かい.

◆午前の微小トドども撃ちまくり —— 市役所(桜庁舎)に行って,おくればせながら先月できあがっていたパスポートをやっと引き取った.向こう10年間はこれでいける.ICチップ入りという新型パスポートだ./そのついでに,郵便局での変更手続きをすませ,銀行では十数件におよぶ微小トド案件を一挙に処理した.気がつけばもう正午前だった.ひとつひとつ小粒でも数で勝負されると時間がかかってしまう.

◆気温20度を越した暖かい昼休み.雲が切れて晴れ間が広がる.積み残し(撃ち損じ)のトドがまだ何頭もわが物顔でのたうっている.今日は小物ばかりターゲットにしているので,大物は身の危険をぜんぜん感じてはいないらしい.すでに開講している駒場での講義も兼業の手続きがまだ完了してはいない.そんなことを言い出せば,もっと大物のトドたちが覚醒してしまう./音羽からの探針メール.アノ本のプロローグとソノ本の訳文チェック.体勢がぜんぜんできてません.来月に入ったら再起動をかけるしかない.あるいは,アンデスの麓で書き始めるか./進化学会評議員会の投票案件への返事./電通からの長文アンケートに答えて返送の段取りをする.

◆午後の高座準備 —— 明日は駒場での講義なので,三点セットを用意する.印刷の手間はあるがそんなに重労働ではない.明日は二度目の講義だ.昨年は初めての開講だったので,来客数がまったく想像できず,ハンドアウトがまったく足りなかった.今年は,昨年並の分量を用意したのだが,先週の初回講義ではだいぶ余ってしまった.出席カードの回収枚数をふまえて適正量を用意していくが,はたして“歩留まり”はどれくらいだろうか

◆パソコン画面のズーム拡大ツールについて —— 方々で高座に上がる機会が多いので,パソコンを用いたプレゼンテーションの見やすさは毎回チェックするようにしている.とくに,“炭坑のカナリア”といつもぼくはたとえているが,教室の最後列の受講生がスクリーンに映写されたスライドやデモの画面がちゃんと見えるかどうかはとても重要な問題だ.えてして前後に長い構造の部屋が割当てられることがあり,その場合,映されたパソコン画面の“可読性”が確保されているかどうかを噺家は確認する必要がある.

先日の上州高座では,その“可読性”が必ずしも確保できなかった.Rを使った実習のとき,GUI Preferences を変えることで,画面の配色やフォントのサイズなどを変更することができる.後列からの“可読性”はこれで大幅に改善できる.しかし,問題はRコマンダーの側にあった.Rコマンダーでもオプションとして画面の概観を多少は変更することができるのだが,母屋のRほど自由度が高くない.スクリプト入力画面やアウトプット画面はフォントサイズを大きくできるが,メニュー操作での小ウィンドウのフォントは大きくすることができない.その結果,ぼく自身も確認したが,ファイル指定画面やモデル設定画面が後列の“カナリア”たちにはぜんぜん読み取れず,いつの間にか“さえずり”が聞こえなくなってしまうことにもなりかねなかった.

ソフトウェア側で“可読性”が確保できなければ,別のツールを用意するしかない.誰しも思いつくのは「画面拡大ツール」の使用だ.Mac OSX にはユニバーサルデザインのひとつとして,使いやすい画面ズーム機能がもともと備わっているが,Windows XP の「アクセサリー」→「ユーザー補助」に含まれている〈拡大鏡〉というツールは使いづらいことこの上ない.

画面を拡大したいというニーズは,必ずしも視覚障害者のための補助機能というだけではなく,日常的なプレゼンでも頻繁に生じる.幸い,Windows用のフリーのソフトウェアの中にはとても便利な画面拡大ツールがいくつもあることが調べてみてわかった.今回,試用してみるのは,〈lupe〉という“虫めがね”的な画面部分拡大ツールと,〈ZoomIt〉という全画面拡大ツールだ.いずれもメモリー常駐型のツールで,必要に応じてその場で起動することができる.〈lupe〉は拡大画面の中のみを数倍に拡大できる.一方,〈ZoomIt〉には,全画面をキーボード・ショートカットで拡大するという本来の機能のほかに,画面の上にフリーハンドで線画を書き込んだり,タイマー表示という付加機能がある.

—— いずれもシンプルかつ使いやすいツールで,今後,高座に上がるときには使わせてもらおうと思います.開発者のみなさん,どうもありがとう.

◆午後6時すぎに帰宅.雲のない東の夜空に満月がこうこうと輝いていた.明日の午後はコマバでの講義がある.からっとした秋晴れになるそうだ.

◆本日の総歩数=13126歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.4kg/+0.1%.


14 oktober 2008(火) ※ 雨降る上州にて統計高座の続き

◆うっかり午前6時まで寝てしまう.連休ボケか.曇り.北東風が吹き込んで気温は低い.

◆午前8時半.上州に向けて出発.午前10時に国道50号沿いの〈道の駅・思川〉にたどり着く.駐車場で日録を書いたり,早めの昼飯を喰ったり,だらだらと1時間ほど過ごしてしまう.平日のこんな時間帯の「道の駅」はとても空いているな.その後,さらに西へと走り,只上でおりて北関東道に入る.高速走行している最中に,ぽつりぽつりと雨が降り始めた.つくばを出て実走時間およそ2時間半で,正午過ぎに伊勢崎の群馬県農業技術センターに到着した.2階の講義室にて早めのしたくをする.

◆午後1時半から講義開始.みなさん,雨の中をご苦労さんです.テューキーの箱ひげ図から話し始め,続いて実験計画法に移行する.理論的な背景までは十分に話す時間が取れないことは最初からはっきりしていたので,リクツの直感的理解を目指す.完全無作為化法とそれにともなう分散分析・多重比較を解説し,Rコマンダーでの計算実習をちくちく進めていたら,もう午後4時になってしまった.2時間半ではさすがに“短距離走”のような講義になってしまう.かぎられた時間だが,Rコマンダーを使った線形モデル(LMとGLM)の利用はぜひ身につけてもらいたい.時間があればモデルの診断についても解説しよう.

—— 次回の最終回は11月の下旬に開催される.それまでにアルゼンチンと神戸での国際会議,そしてつくばでの数理統計研修という大仕事がずらっと並んでいる.

◆降りしきる雨の中を,午後4時過ぎに伊勢崎を出て,つくばに帰り着いたのは午後7時だった.2時間半の講義をするのに往復6時間かけるというのはたいへん疲れます.

◆帰宅後のメールチェック —— 「エコロジカル・セイフティー学特論II」の開講は,当初の日程通り11月の金曜(全4回)で確定した.さっそく東大の専攻に連絡して講義室の確保と院生へのアナウンスを依頼しないと./〈ISHPSSB Off-year Workshop Kobe〉の講演要旨がオンライン公開された.間に合ってよかったっす.

—— 夜も雨はしとしと降り続く.気温はあいかわらず低め.おそらく日中でも20度に達しなかったのではないか.

◆明日は久しぶりの農環研実在日.さらなるトドが乱入しないことを願うばかりだ.備忘メモ:17日(金)に所内の抜き打ち臨検があるという(抜き打ちなのに事前にわかっているとはこれいかに).居室をきちんときれいにしているかどうかだ.ぼくの居室はこれまで「崩壊しつつある本の山を何とかしろ」との指摘を例年受けてきたのだが,年度末に巨大な本棚を設置したので,この点についてはもうクレームはつかないだろう.その代わりに,「多過ぎる本を何とかしろ」と言われたらどうしましょ.

◆本日の総歩数=14778歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.9kg/−0.1%.


13 oktober 2008(月) ※ 最終日に起死回生のトド撃ち劇

◆午前4時半起床.晴れて冷え込みが身に染みる.ぐだぐだしているうちに連休も最終日になってしまった.まったく何の進捗もないぞ,とひとりごちつつ日録をものしてみたり,本を読んでみたりする早朝.

◆しかし,このままだらだらと連休を終わらせるわけにはいかないので,一念発起して〈ISHPSSB Off-year Workshop Kobe〉の講演要旨を書き始める.午前中はそれで手いっぱいだった.正午前に規程上限の「400 words」ぴったしで書き終える.大トドをしとめた心地ぞする.グッドタイミングで葉山からも講演要旨がメールで届いたので,シンポジウムの演者全員分の講演要旨を取りまとめることができた.さっそく,各演者に要旨をメール送信するとともに,大会事務局にも報告する.連休明けに講演要旨集の印刷に入るとのことだったので,まさに“滑り込みセーフ”ということだ.こういう寿命が縮むようなことをしていては本当はいけないのだが,現実には慢性的にそういう事態に陥っている.

◆日射しの暖かな午後,北東からの微風が吹く.秋晴れの日なたは暑くて涼しい.

◆『種の起源』独訳者ブロン伝 —— 新刊届く:Sander Gliboff『H.G. Bronn, Ernst Haeckel, and the Origins of German Darwinism: A Study in Translation and Transformation』(2008年9月刊行, The MIT Press [Transformations: Studies in the History of Science and Technology], xii+259 pp., ISBN:978-0-262-07293-9 [hbk] → 目次版元ページ).Charles Darwin の『種の起源』(1859)が出版された直後,一年も立たないうちに速攻でドイツ語訳が出版された.その翻訳を手がけた古生物学者 Heinrich Georg Bronn(1800-1862)がどのように『種の起源』を訳し,それがどのようにドイツ語圏内で受容されていったかを本書はたどっている.さらに,Bronn の死後,彼に続く世代の代表となったのが Ernst Haeckelだった.こうして,Darwin-Bronn-Haeckel の三つの極の間で,“Darwinismus”のさらなる展開と変容が実現することになった.

◆備忘メモ —— 東京農大・昆研OB同窓会は収穫祭の期間中の11月2日(日)に厚木キャンパスにて17時から開催される.この日はぼくは日本にいないのでもちろん参加できないが,代わりに御供物が届くように手配しましょう.

◆夕方,雲間からうっすらと色づいた夕焼けが広がる.爽やかな一日で行楽に出られたとしたらさぞかし気持ちがよかっただろう(仮定法過去完了).

◆明日は群馬県農業技術センターの統計研修(第2回)だ.農試の受講生から事前に長文の統計質問(「統計難民.doc」という質問状)を受けているので,その質問メールをもう一度チェックして回答を考えておかないといけない.実験計画についてのいくつかの項目はすぐに回答できそうだが,個体数の比率に関するものは一般化線形モデルを解説してからのことになるかな.

—— 明日は朝から上州に車で向かうが,天気予報では曇りのち午後から雨とのこと.前回のときも雨が降ったぞ.※「雨男」ではないはずだが(かといって「晴れ男」でもないけど).

◆本日の総歩数=6880歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−0.6%.


12 oktober 2008(日) ※ 秋晴れ中日は中だるんでしまう

◆午前5時半起床.快晴で冷え込みが厳しい.この秋一番かも.南寄りの風.日中も正しい秋の風情が漂う.

◆何の方向性もない日中 —— おもむろにキーボードに向かってみたり,カピオ前の農産物フェスティバルを物色したり,豚汁を鍋いっぱい大量に仕込んでみたり,積み上げ本を“まだら読み”してみたり.

◆よそ見的備忘メモ —— 形態測定学ソフトウェア〈MorphoJ〉の version 1.00h が公開された.Java 上で動く統合型のツール.Win / Mac / Unix いずれでもOKなので,幾何学的形態測定学の講義や解析では使えるかも.系統樹へのマッピング機能に注目.特徴的なのは遺伝分析の機能がついていることで,淘汰圧の算出もメニュー項目に入っている.分散共分散行列に関係する項目もある./認知科学会にかつて出した記事がpdf(161KB)でJSTAGEから公開された(10月3日付):三中信宏「分類者としてのヒト:体系生物学と認知科学のはざまで」,Cognitive Studies, 7(1): 1-2 (March 2000) → ダウンロードサイト.昔からの持論か(はたまた“持病”かも).

◆〈母をたずねて三千里〉の原作が「青空文庫」に入っていたことをいま知った(うかつ):エドモンド・デ・アミーチス『母を尋ねて三千里(1886)』(日本童話研究会訳,1927 → 青空文庫).マルコ少年がはるばるたどりついたトゥクマンは原作では次のように描かれている:

マルコはいたい足をひきずりながら、ふくろをせおって次ぎの日の朝早くアルゼンチンの国でもっともにぎやかな町であるツークーマンの町へはいりました。ここもまた同じような街で、まっすぐな長い道と、ひくい白い家とがありました。ただマルコの目をよろこばしたものは大きな美しい植物と、イタリイでかつて見たこともないようにすみ切った青空でありました。

—— そーかそーか,そういう町なのか,と勝手に想像を膨らませてみる.(もう百年も前の描写なのだが).

◆午後になって雲がやや広がってきた.空気は乾いて爽快.雲間から夕焼けが.気分転換に,〈leeswijzer〉のデザインを“秋”らしくしてみました.

◆再読の悦楽 —— アルベルト・マングェル著[野中邦子訳]『図書館:愛書家の楽園』(2008年10月10日刊行,白水社,302+38 pp.,本体価格3,400円,ISBN:978-4-560-02637-3 → 目次版元ページ).まずは訳注をしっかり読んでから,散在する固有名詞をきちっと刻みこむ.この翻訳はさぞかしたいへんな作業だっただろう.「夜の図書館」について著者は言う:

昼のあいだ,書斎は秩序に支配されている.活字を追いながら,私は明瞭な目的をもって動き,一つの名前や一つの声を探しながら,割り当てられた区画や書棚を追って,次々と本を開いていく.[中略] だが,夜になると雰囲気は一変する.物音は遠くなり,頭の中にあふれる思考が声高に語りだす.[中略] いまや本はその正体をあらわし,読者である私は,ちらりと姿を見せる活字の秘儀に誘われて一冊の特別な本に手を伸ばし,特定のページを開かずにはいられない.夜になると,蔵書目録の定める秩序はもはや通用しない.影のなかでは,その威力も保たれないのだ.[中略] 朝の書斎が見通しのきくまっとうな世界秩序をあらわすとしたら,夜の書斎はこの世界の本質ともいうべき喜ばしい混乱をことほいでいるように思える.(訳書 pp. 14-17)

ぼくの居室の“バベルの塔”(すでに崩落が始まっている)には昼なお仄暗い一角があって,夜中になるとできるだけそこには近づかないようにしている.

◆そんなこんなの「よそ見」は刹那的には楽しいのだが,本業の方がイマイチというかダメダメで.朝から夜まで何だか手の付けようのないほど怠惰でアモルファスな一日が通り過ぎていった気がする.もちろん,トドさんたちはすべて放置です…….※ぜんぜん話にならん.

◆本日の総歩数=4282歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.6kg/+0.6%.


11 oktober 2008(土) ※ “三連働”の初日は成果もなく

◆午前6時起床.曇りときどき小雨.冷え込みはまったくなく,気温は高め.〈Brotzeit〉でパンを買って帰宅.ここのところぜんぜん早朝の歩き読みをしていない.この三日間は世間的には三連休なのだが,個人的には追い込まれの“三連働”だ.「行楽」ということばはワタクシの辞書にはなく,連日のトド撃ちが三日間続くことになる.

◆朝からトド撃ち —— 〈ISHPSSB Off-year Workshop Kobe〉の講演者の滞在ホテルの予約はオーガナイザー一任であることをすっかり失念していた.事前予約の期限が今日までとのことで,あわてて事務局にメール連絡する.とはいえ,当の講演者たちへの連絡が同時並行というのは拙速きわまりないことだ.ごめんなさいごめんなさい.返事をよろしく.

◆小降りだった雨は午前10時には本降りになった.つくばでもこの連休に合わせて,カピオ前での農産物フェスティバルとか筑波大学の文化祭などイベントがいくつも開催されているが,あいにくの雨模様だ.しかし,昼前には天気は急速に回復し,午後には一転して快晴の青空が広がってきた.日射しはとても強いが,北東から吹く風がさわやかで涼しい.

◆午後のトド撃ち —— さて,アルゼンチンでの講演準備の前に,神戸でのセッションのしたくの方が先決だ.話す内容は最初から決まっているので,使うべきスライドの用意だけすればいい.持ち時間は30分なので,セッション全体の紹介を含めることを考えれば,たくさん詰め込むことはできない.日本語でのスライドは十分すぎるほどすでにあるので,いくつかを流用しながら新しい“紙芝居”をしたてることにしよう./しかし,それ以前に,講演要旨を書き上げてしまわないと,印刷に間に合わない.開催までもう1ヶ月を切っているというのに,なんということか.「要旨未着」とか書かれるのはみっともないので,これだけは何とかしないと.マジ,やば./来月の東大農学部での特論(集中講義)日程がほぼかたまりはじめた.4名の連携教員それぞれがトドを日常的にたくさん飼い馴らして?いるので,選択肢は実に狭く狭く限定されることがわかった.その隘路を縫うようにして,「金曜」の開講という線で暫定案を提示する.この曜日案だと,ぼくの担当日は11月28日(金)となる.

◆「生物多様性って何さ?」 —— 新刊本:James Maclaurin and Kim Sterelny 『What Is Biodiversity?』 (2008年7月刊行, The University of Chicago Press, xii+217 pp., ISBN:978-0-226-50080-5 [hbk] / ISBN:978-0-226-50081-2 [pbk] → 目次版元ページ).生物学哲学の側から見た「生物多様性」論.種概念や分類体系に関する論議,さらには形態的多様性や発生生物学からの論議,そして生物多様性の尺度(系統学的多様性とか遺伝的多様性)など,「生き物が多様である」ことの意味をいくつもの切り口から論じている.少なくとも,生物学者が手に取る意欲が湧く論点が並んでいるという点で,同じ科学論者であるデヴィッド・タカーチが著した『生物多様性という名の革命』[狩野秀之・新妻昭夫・牧野俊一・山下恵子訳/岸由二解説](2006年3月20日刊行,日経BP社,東京,433 pp.,本体価格3,400円,ISBN:4-8222-4486-5 → 目次書評)よりははるかにいい本だと思う.

◆「ワタシを探さないでください」 —— 来月から再来月の出張日程をいま確認してみたところ,ジグゾーパズルのピースが正確にはめ込まれていくように,方々への巡業がすき間なく割り振られつつある.アルゼンチンから生還する11月3日(月)の翌4日はかろうじて農環研に実在するが,その翌日5日には早くも神戸に転戦し,週末まで不在.翌週から2週間(10日〜21日)はつくばでの数理統計研修の講義のため,農環研にはいたりいなかったりする.あいまの木曜日(13日と20日)はコマバでの講義だ.自分でもコワイのはその翌週で,「勤労感謝の日」の振替休日である25日(火)から28日(金)までは,群馬県(統計講習最終回)→東大(教員会議)→東京農大(世田谷で系統学講義)→東大(本郷で特論)と連日の切り刻まれ不在になる.師走に入れば,12月1日(火)〜3日(水)は大分県から依頼されている統計研修の独壇場があり,豊後から帰ってきた翌12月4日(木)はコマバでの講義が夕方ある.

農環研実在率を半日単位でカウントするならば,11月は「5.5実在日/18労働日=30.6%」となり,“最低記録”を更新することは確実だ.とりわけ,11月21日(金)の次にぼくが[正規の労働時間内に]農環研に姿を見せるのは12月5日(金)となり,この2週間は行方知れずになります.探さないでくださいね.

—— ときどき自分でも思うのだが,ワタシはいったいどこが「本務地」なんだろーか(給料をもらっているところが本務地だという形式的定義は脇に置いといて).そーいう考えはそろそろ消し去ってしまった方がいいのかもしれない.裁量労働制が採用されていない今の農環研でもうこんな状態なのに,近い将来まちがいなく裁量労働になったら(三法人合併後か),ワタシ,いったいどーなるのでしょう.※そういう状況に対する違和感よりは,むしろ帰属なしの安堵感の方がはるかに大きいのだけれど.

◆夜のトド撃ちは不発 —— 夜,やっと時間ができたのでアブストラクト書きに取り組んではみたものの進捗はかばかしからず.困ったな.なまじっか連休が続くので効率があがらない(TVの〈フラガール〉なんかずっと見ていてはいけません).これぞ【種】の祟りか,はたまた【呪】をかけられたか.明日こそはエクソサイズして,決着をつけることにしよう./そういえば,延期になった所内のRP中間報告会はいったいいつ開催されるのだろうか.すでに予定が十分すぎるほど密にパッキングされているので,自由度はほぼなくなっているのですけど./ここのところカマジン本のゲラ読みが完全に滞っている./講談社の『分類思考の世界(仮)』のプロローグ書きも停止してます./アノ本,ソノ原稿,すべてダメダメです.ハイ.

—— すでに窮地に追い込まれているのにさらなるトドどもが押し入ろうとしている.汗牛充棟にトドが入れるスペースはもうないぞ.

◆夜更けになって,気温がぐんと下がってきた.明日の明け方は冷え込むだろう.南からの風が吹き込む.

◆本日の総歩数=5412歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.2kg/−0.3%.


10 oktober 2008(金) ※ 居室にトドの群れが押し寄せる

◆午前4時半起床.快晴.気温15.3度.夜明け前の農林団地に金木犀の香りが漂う.

◆朝のこまごま —— 何日か本務地を留守にしていると,確実に“堆積物の山”が新たにできている.以前ならば目に見える“書類の山”が盛り上がりこちらは盛り下がったものだが,最近は“電子メールの山”がパソコンの中に溜まることの方が多く,実感が湧かないだけに知らないうちに“放置トド”と化して難儀することが多くなった./群馬県農試から実験計画に関する質問メールあり.来週火曜に2回目の講義が伊勢崎であるので,そのときまでには答えます./先日の査読依頼のメールはそのまま放置していたら,もう一回督促されてしまった.初めてのジャーナルだし,引き受けたわけでもないのだが,どーしましょ.というか,まったく畑違いなので(著者たちはよく知っているのだが)断るのがスジなんでしょうねえ.

◆今日は冷気が入ってこないようで,日かのぼるとともに朝から20度前後の暖かさが続いている.

◆さらにアルゼンチンがらみで —— まずは,今月末からのアルゼンチン国外逃亡のための出張書類.南米で Hennig Society から“麻薬”をコッソリ買い入れるための資金を研究所から出してもらうにはいろいろと事前の事務手続きが必要だ(とくに出張旅費を前もってちゃんと受け取るためには)./「行かうー 南米ぬアルゼンチンぬ旅に」−〈ネーネーズ〉のCDを南米行きの御餞別をいただきました. Muchas gracias! /あ,もうプログラムと講演要旨が公表されてるっ(pdfで).ぼくのトークは10月30日(木)で,バンケットの前だ(「後」でなくてよかった……)./ということは,自分の発表の準備をさすがにそろそろ始めないといけないわけね.今回の共同発表者からプレゼン用の素材を送ってもらい,スライドをつくらないと.すでに,20枚程度はできているので,適用例のスライドを新規作成すればいいだろうな./しかしアルゼンチンから帰ってきても気は抜けない.帰国直後に神戸で開催される ISHPSSB Off-year Workshop Kobe の準備をずっと放置していた.申し訳ありません.講演者の宿泊予定は明日までに,そして講演要旨の取りまとめは今週末までに(同時とちゃうか?).急げ急げ.

◆心置きなく翻訳書を手にする —— 原書:Alberto Manguel『The Library at Night』(2008年3月17日刊行,Yale University Press,New Haven,viii+376 pp.,ISBN:978-0-300-13914-3 [hbk] → 書評目次版元ページ)を慌ただしく読み切ってしまったので,先日着便したまま机の上に未開封で放置してあった翻訳書をご開帳するときがやってきた:アルベルト・マングェル著[野中邦子訳]『図書館:愛書家の楽園』(2008年10月10日刊行,白水社,302+38 pp.,本体価格3,400円,ISBN:978-4-560-02637-3 → 目次版元ページ).

原書は真っ黒な地の表紙に,暗い森の中に場違いに置かれたソファの傍のぼうっと灯されたランプに照らされて浮かび上がる読み手の背中という構図の写真があしらわれていて,実にアヤシイ雰囲気が醸し出されていた.『夜の図書館』という原題にふさわしいダストジャケットだった.それに比べると,翻訳書のカバーはずっと明るくしかも健康的な白地で,良くも悪くもニュートラルな装丁デザインに変身している.読書をめぐる“うしろめたさ”とか“罪深さ”を微塵も感じさせない.

この本には古今東西の実在した(しないものも含まれる)文学作品や人名・固有名詞が散りばめられている.さすがにこれほどの読書人には勝てるはずもなく,読んでいてときどき振り落とされることがあった.同じ著者による前著:アルベルト・マングェル[原田範行訳]『読書の歴史:あるいは読者の歴史』(1999年9月30日刊行,柏書房[叢書Laurus],354+38 pp.,本体価格3,800円,ISBN:4-7601-1806-3 → 書評・目次)を読んで以来,その複雑きわまりない知の迷宮には惹かれるものがあった.せっかく訳書を手にしたからには,脚注も含めて「個物」を愉しみましょう.

—— マングェルといえば,数年前に出た共著の『架空地名大事典』も実は手元にある.しかし,この大著をいったんひもといてしまえばワタクシの時間はきれいさっぱり消失してしまうにちがいない(ので,いまだに書棚の奥に安置してある).

◆夕方からのドロヌマ —— 「思い立ったが吉日」というのはウソで,たいていの場合「思い立ったが災厄」の方が多い.夕方の逢魔が時に,ふと Mac の〈R〉で〈Rコマンダー〉を使いたいなと思い立って,Mac OS の DVD から「X11」システムをインストールしようなどと考えてしまったのが運の尽きだったのだろう.昨年のちょうど今頃,八王子で“空中浮遊”してしまったわが PowerBook G4 はその後ほぼ引退に近い境遇に追いやられていた.それを復活させようということだ.

しかし,「X11」システムを入れるには OS そのものを再インストールしなければならないことを,インストールの最中になって初めて気がついた.1時間ほどかけて再インストールしたものの「X11」が入っていない! 簡易インストールではなく,カスタムインストールをしなければならなかったのだった.しかたなくシステムの再々インストールでさらにもう1時間が消し飛ぶ.やっとこさ「X11」が PowerBook で動くようになり,〈Rコマンダー〉も起動できた.ついでに〈R〉の関連パッケージをダウンロードしたり,Adobe やら Microsoft のこまごまをインストールしてはアップデートの繰り返し.

ついでだから,デスクトップの G4 やら MacPro も更新してしまえ,とエンドレスに作業が展開してしまい,しかも待ち時間に〈R-statistiek〉に書き込みとかしたりして,はっと気がつけばもう午後10時じゃん……(晩ご飯まだなんですけど……).

—— ワタシの大事な時間を返して,と哀願するもせんなきこと.とぼとぼと小雨降る夜道を帰ったのだった.

◆思いもよらないインストール地獄に陥ってしまったため,肝心の大物トド撃ちはぜんぜん成就しなかった.まずい,これはまずいぞ.(連休中の持ち帰り仕事かっ)

◆本日の総歩数=7528歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+0.1%.


9 oktober 2008(木) ※ 久しぶりに夏日の駒場にて一席

◆午前5時半起床.晴れ.北東風が涼しい.街路のフウノキから大きな葉が舞い散り始めた.日射しとともに気温はぐんぐん上がる上がる.10時には22.6度,

◆午前のこまごま —— 昨日終了したワークショップの講師・関係者にお礼のメールを出した./大分師走統計巡業の段取りメール./東大での「エコロジカル・セイフティー学特論II」の開講日の案を他の連携教員に提示する.11月に開講予定.曜日を固定すると選択肢はほとんどないのだが./今日の講義のための「コマバ三点セット」をばたばたと用意する.スライドはもう用意できている.ハンドアウトと出席カードは,初回に何人集まるかがわからないので,いちおう100部用意した.去年の初回はそれくらい集まったので足りないことはきっとないだろう.なお,ハンドアウト(pdf)は〈租界R〉と講義ブログ〈R-statistiek〉からリンクする予定.

◆正午に帰宅.24.6度.10月らしからぬ暑さ.午後はきっと久しぶりに夏日になるだろう.しかし,空気が乾いているので不快ではない.空には積み雲が.

◆13:00発の TX 区快に乗る.暑いな.10月のダイヤ変更で,つくばエクスプレスの発着時刻(→時刻表)がだいぶ変わった.今までの刷り込みで駅に向かうと,予定していた電車が「ない」ということになる.渋谷には午後2時半に到着.改札を出たところにあるITOYA渋谷店にて,来年のFilofaxイヤープランナーをゲットする.この“屏風”さえあれば,メモ帳はいっさい不要だ.

◆駒場東大前には午後3時前に着いた.乾いた暑さが続く.講義が始まるまでまだ時間に余裕があったので,駅下の〈河野書店〉にまわって,店頭平台をしばし物色する.フランスワイン産地の“テロワール”に関する詳しい本がたった500円だったので即ゲットした:Charles Pomerol『Terroirs et vins de France: Itinéraires œnologiques et géologiques, 3 e édition』(1990年刊行,Éditions du BRGM, Orléans, 350 pp., ISBN:2-7159-0106-2 [hbk]).ほとんど専門書のような地質図や気候グラフのカラー図版が満載です.こーいうのをちゃんと勉強しないとダメなんですか?(だれに訊いてるねん) というか,フランス人はこういう本を片手に“舌”と“頭”で同時にワインを味わっているのかと思うと,「最初から負けてるやん」と意味もなくへこむ.もちろん,アルザスから始まってパリ近郊までの主要ワイン産地の遠景・近景をぱらぱらと見るだけでも十分に愉しめる本なのですがね.

◆コマバ高座(初回) —— 講師控室は今年は時計台のある1号館に移った.昨年まで使っていた102号館が耐震工事のため閉鎖されているからだ.思い起こせば「1号館」はほとんど足を踏み入れたことがなかったな.内装はもちろん更新されているのだろうが,基本骨格は昔のままにちがいない.「歴史的建造物」なんちゃらというプレートが玄関ホールにはめ込んであった.控室は2階の一角にある.今回の「生物統計学」に使う教室は5号館という新しい建物なので,マルチメディア機器の使用法をあらためて教えてもらった.去年の12号館よりは使いやすそうだ.

午後4時すぎに5号館に向かう.新しい講義棟で廊下も部屋も何だかぺかぺかしている.落ちつかないねえ.学生がどんどん入ってくるのだが,去年よりは少ないようだ.部屋のキャパシティは100名だが,まだ空席が残っている.プレゼン機材の準備をし,ハンドアウトをまわしてから,午後4時20分の定刻に講義開始.講義全体の目標とシラバスをざっと説明したあとは,「データの視覚化」が統計の第一歩という話をR&Rコマンダーを用いて実際にいくつかのデータをグラフ化しながら解説する.このまま概論になだれこんでもよかったのだが,中途半端になりそうだったので,午後5時半に早めの終了.

—— あとで出席カードを数えたら「59名」だった.昨年よりも20名ほど少ないが,受講生の顔が見える限度内の適正な規模ではないだろうか.

◆午後6時前に駒場東大前から乗って,つくばに帰り着いたのは午後7時すぎだった.昼間は神無月らしくない暑さだったが,日が暮れると急に涼しくなる.

◆車中読書 —— Alberto Manguel『The Library at Night』(2008年3月17日刊行,Yale University Press,New Haven,viii+376 pp.,ISBN:978-0-300-13914-3 [hbk] → 目次版元ページ)をほぼ読了した.これで悔やむことなく翻訳書を手にすることができるぞ.アビ・ヴァールブルクのちょっとビョーキな図書蒐集癖 とか,いかにも本を喰ってしまいそうなボルヘスの風貌とか,ナチス強制収容所でのユダヤ人の図書館の話とか,きらりきらりと気になる話題が方々にはめ込まれている.

◆なーんだか力尽きましたって感じで…….明日は実に久しぶりに農環研に“実在”します.

◆本日の総歩数=12076歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/−0.5%.


8 oktober 2008(水) ※ ワークショップ楽日は実習三昧

◆午前5時半に起床する.昨夜からの雨が降り続いている.北東からの湿った冷たい風.

ワークショップ最終日 —— 午前8時前に自動車で出勤.久しぶりにハンドルを握った.小雨が降りしきる中,筑波事務所に到着.電農館3階のワークショップ会場に入る.“系統樹漬け”の日々も三日目ともなると,そろそろ全身に“毒”がまわってくる.今回のカリキュラムではパソコン実習の時間を長くとってあるのだが,コンソール画面でコマンドをちくちくと入力するのは“非日常的”だし,目もよけいに疲れるな.

◆午前9時から2時間は,川北篤さんの cophylogeny に関する講義と実習.Dan Brooks や Rod Page の先駆的な研究からすでに四半世紀の時間が経過していることをあらためて実感した.実習に使用したのは Rod Page の「TreeMap」と Fred Ronquist の「TreeFitter」,そして Pierre Legendre の「ParaFit」にシェルをかぶせた「CopyCat」だ.前二者は1990年代のソフトだが,Java で動く「CopyCat」はごく最近のもの(NCBI分類データベースを参照している).ベイズ共進化解析は仮定多過ぎ(ムリ).Gyration の“空中マウス”は楽し過ぎ.

◆午前10時にはいったん雨は上がったが,ぐずついた曇天がなおも続く.

◆午前11時から正午までは深海薫さんのタンパク質ドメイン構造の系統進化に関するトーク.NeighborNet での全生物の系統樹.「GTOP」というドメインに関するデータベースがあるそうだ.「良き進化的距離」に関する備忘メモ:1) 進化的な計測をしていること(physicalに解釈可能ということ); 2) 一定の頻度で変化すること(ultrametricity); 3) 相加性(additivity)があること.確かにこういう「良き距離」があればシアワセな人生が送れるかもしれない.

◆曇り空の昼休みをはさんで午後の講義.田村浩一郎さんによる〈MEGA4〉の講義と実習.最初は系統推定法のパフォーマンスに関する最近の研究成果について.樹形探索方針として,PhyML の「NNI」に対して新たに「CNI」(最近隣ではなくひとつ飛ばしも許可)を対決させると,配列が短い・Ts/Tv比が大きい・GCリッチなどの場合は NNI ではダメらしい.〈MEGA4〉の背後には,「分子進化モデルにこだわってもしかたないでしょ」,「尤度が高くってもいいことないっす」,「わかることはわかり,わからないことはわからない」,「だって系統樹の探索空間は宇宙よりも広いし」−という思想が流れているとのこと(“諸行無常”の東洋的諦観が漂っているぞ).その後,〈MEGA4〉の実習.数ヵ月後には次期バージョンである〈MEGA5〉がリリースされるとのことで,その最新情報も初公開(距離法・最節約法・最尤法まで含む).備忘メモ:n=53で樹数(10^80)は全宇宙の原子数を越えるそうだ.午後4時まで3時間の講義だった.

その後,午後4時すぎから,〈PaupUp〉による系統推定の手順をぼくが説明し,Likelihood ratchet の“ナミダなし”のバッチファイルを田辺さんが解説した.ぎゅっぎゅっと詰め込まれて“フォアグラ”になりそう…….

—— 午後5時過ぎ.全日程を終了し,今回のワークショップはお開きとなった.受講生ならびに講師・関係者のみなさん,たいへんお疲れさまでした.

◆やっと雨が上がった夕闇の中を農環研にもどる.ワークショップの機材や本などをもとに戻して,これにて一件落着,といきたいところだが,明日は駒場での生物統計学の初回講義がある.そのための“三点セット”を用意しないといけない.

◆夜,交流センター事務局からメールがあり,ワークショップ参加者のアンケートを集計してみたら,全体としてとても評判がよかったとのこと.おかげさまです.今回は北海道から九州まで,全国から40名あまりの参加者があったが,応募状況を考えると次回また来年のこの時期に第2回目のワークショップを開催することになりそう.

◆帰宅後に“三点セット”をつくり終えたのは午後10時すぎだった.印刷などの作業はすべて明日にまわそう.ということで,今日はもうご就寝でございます.

◆本日の総歩数=7572歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+0.2%.


7 oktober 2008(火) ※ ワークショップ二日目は秋晴れ

◆午前5時半起床.晴れ.北東風が涼しい.昨日と同じく7:42につくばセンターを出る通勤バスに乗る.約半時間後に筑波事務所に到着.

ワークショップ二日目 —— 午前9時から高座(お題「系統推定論」)をつとめる(〜10:30).後半は時間がなくなってしまった.引き続いて,三島からやってきた斎藤成也さんの「系統ネットワーク」の講義(〜正午).系統ネットワークはデータの“可視化”のためのツールなのだから,ネットワークの進化モデルなどというものはそもそも考える必要すらないとの弁(だから,「最尤ネットワーク」はナンセンス).

◆よく晴れて暖かくなってきた.別室にて昼食.

◆昼下がりの格闘(角さん,ガンバレ) —— 午後は,田辺晶史さんの「モデル選択論」.いくつかのソフトウェアの事前インストールを各受講生に委ねたのだが,登攀しきれなかった人が多数いるとのことで,その個別対処に時間がかかってしまった.1時間半ほどの格闘ののち,必要なソフトウェアの正常な作動がほぼ全員についてやっとできるようになった.しだいにハイになりつつあるセンセ.その後,kakusan3 による塩基置換モデルの選択に進む.

◆午後3時からは「系統推定ソフトウェア演習」だったが,そのままアタッカで田辺さんが,MrBayes あるいは TreeFinder による系統推定を説明する.TreeFinder がこれまたクセモノで,なかなかすんなりとは動いてくれない.バッチファイルをつくったり,なんやかんやとごそごそ作業を進める.どわーっとおびただしい数のアウトプットが吐き出され,それを用いての解析が続く.午後5時半,やっと講義終了.真っ白く“灰”になってしまったセンセ.ワタクシは出番なし.

◆午後6時半から宿泊施設の休憩室にてちょっとお酒タイム.〈宗玄〉のひやおろしと〈神亀・ひこ孫〉の純米吟醸など.しかし,深酒することなく,昨夜と同じく農林団地中央19:34発のバスに乗ってつくばセンターへ帰還.実に punctual な生活リズムだ.東寄りの風が涼しかったが,その後,雨が降り出してしだいに強まってきた.

◆明日はワークショップの最終日.雨がこのまま降り続くとの予報.

◆本日の総歩数=11551歩[うち「しっかり歩数」=3090歩/28分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.6kg/+1.0%.


6 oktober 2008(月) ※ 雨の朝,電農館にて待ち受ける

◆午前5時起床.雨.北寄りの風が肌寒い.午前7時42分につくばセンター4番から出発する路線バスに乗る.つくばに就職してもう20年にもなるが,路線バスで通勤するのはこれが初めてだ.農林団地中央の停留所に着いたのは午前8時20分過ぎだった.霧雨が降り続いている.

◆第131回農林交流センターワークショップ〈分子系統樹推定法:理論と応用〉の初日 —— 計算センター電農館の会場に入る.すでに事務局が会場の設営を進めていた.40名を越える参加者がそれぞれ自分のパソコンをもちこむわけだが,確実にLAN接続をしないといけない.人によっては接続に手間取ることがあったが,計算センターの強力なサポートが即座にあったので,大きな問題にはならなかった.

午前9時半に開講式.交流センターからのあいさつのあと,さっそく「生物系統学概論」を1時間ほど.さらに続いて「生物統計学概論」を正午まで.いきなりの高座2連発で磨り減った.昼休みにほっと一息つく.

午後1時を少し回って,岸野洋久さんが到着した(“迷子”になったとか).「分子進化学入門」を2時間.最小二乗法の背景仮定は正規分布(メモ).引き続いて生物研の伊藤剛さんによる配列探索とアラインメントに関する実習が午後5時まで.〈ClustalW 2.0〉でファイルがオープンできないというエラーが頻発.前バージョン〈ClustalW 1.8〉ではそういう問題は生じなかった.予想される原因としては,2バイト文字がパスに混ざっていると〈ClustalW 2.0〉はダメなのだろうとのこと.

◆午後になって雨はやみ,やっと晴れ間が広がってきた.

初日からいささか詰め込みだったが,午後5時半から筑波事務所の食堂で懇親会.わりにたくさんの“リソース”があった.ビールはほどほどにして,ワインと日本酒に移行する.郷乃誉の「山桜桃」と東北泉の「特別純米」,そして仙台からやってきた大吟醸が1本.初日から呑み過ぎたかもしれない.

◆午後7時34分に農林団地中央を発つつくばセンター方面行きの最終バスに乗り込む.午後8時すぎに帰宅.発着時間が決まっている路線バスで通勤すると,あまりにも規則正しい労働形態になってしまうかもしれない.

◆ワークショップ関連の新たな配布資料をオンライン公開しました(→コンパニオンサイト).ご参考まで.>参加者&非参加者諸氏.

◆本日の総歩数=14272歩[うち「しっかり歩数」=3080歩/28分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.5kg/−0.7%.


5 oktober 2008(日) ※ やっぱりドロナワの興行前日

◆午前6時起床.晴れ.南からの涼風が吹き抜ける.午前9時から〈つくいち3〉,毎月1回の〈つくいち〉はとても混んでいたが,今回はやっと落ち着いた空気が流れ始めていた.しかし,客の行列はいつも通り長かった.そのうち,風向きが変わって北東風.しだいに雲が厚くなってきた.気温はなお低めに推移する.

◆直前日のスライド苦行 —— うう,時間がない.午前中に統計学概論のスライドをひねり出す.計83枚.昼過ぎに,続いて系統学概論のスライド76枚を削り出す.午後3時には系統推定論のスライド73枚を吐き出す(海鼠かいっ).イチからのつくり直しでなかったのは実に幸いだった.しかし,スライドの枚数が多過ぎるので,明日の午前中の二つの講義(系統学概論と統計学概論)はパソコンによるデモにかける時間はなく,話す一方になってしまうかもしれない.

—— ということで,日中は200枚余りのスライドが縦横に飛び交った.

◆午後4時過ぎに農環研に侵入する.曇り,気温21度台.暗い居室で,3回分の講義スライドをプリントアウトする.あわせて各講義のハンドアウトを作成し,コピー原稿としてpdfを事務局に送信した.これで明日のしたくはやっと完了した.

◆曇り空,そのうちぽつぽつと小雨が降ったり止んだり.暗くなってから本降りになった.天気予報通りだ.

◆ソフトウェアのインストールのどたばた —— 明日からのワークショップの時前準備として,各種のソフトウェアのダウンロード&インストールが必要だ.しかし,あまりにたくさんありすぎて.あれれ,Mesquite の最新版がちゃんと動くから Java 計算環境はもう大丈夫と思っていたら,CopyCat が「オマエの Java のバージョンは古すぎる」と文句を言ってきた.反論してもしかたがないので,最新版の Java にアップデートする手間が上乗せされる.Java の次は Perl だ.Active Perl はすでに入っているのだが,乱数発生用のメルセンヌ・ツイスターのモジュール(Math-Random-MT)のダウンロードをうっかり忘れていた.モジュールの圧縮ファイルをダウンロードしてきたのだが,よくよく考えれば CPAN から直接ダウンロードした方がラクそうだった.エンドレスに計算環境整備作業が続き,何百メガバイトものファイルがどかどかと詰め込まれる.

◆しかし,明日は自分の高座よりも,ワークショップ全体のお世話をするという大事な奉仕作業が待っている.ワークショップ開始は午前9時半からだが,もっと早く会場に着いていた方がいいだろう.懇親会が夕方あるので,車はダメ.したがって,明朝はつくばに来て初めてのバス通勤になる.通勤のための路線バスデビューだ.もっと早く寝ることにしたかったが,残念ながらそうもいかなかった.

◆ここ何日かは秋らしくいい日和で,もっとゆったりした週末を過ごしたかったのだが,週明けに興行があると気分的にゆるりとしてはいられない.生業?とはいえ因果なことだ.

◆本日の総歩数=9837歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/−0.2%.


4 oktober 2008(土) ※ 真っ青な秋晴れと興行のしたく

◆午前6時起床.空が高く真っ青で,ひんやりした南風が涼しい.いい季節になった.

◆さらなるワークショップのしたく —— 〈分子系統樹推定法:理論と応用〉を興行する側として,スケジュール全体が滞りなく進むように目配りする必要もあるのだが,噺家のひとりとして高座にあがるしたくもしておかないといけない.スライドの準備と実習用ソフトウェアを使う段取りを整える.必然的に,受講者が事前にダウンロード&インストールすべきものも増えてしまうのだが,こんな直前にどかどかと出されても困りますとなると,つくばに“出家”してからの作業が増えるかもしれませんな.

今回のワークショップで初日に担当する「系統学概論」と「統計学概論」では,データから最適系統樹を推定するまでのアブダクションのわざとして,「系統推定論」(“学”ではなくて“論”の方が好きなワタシ)を提示する.しかし,この系統推定論については,他の何人かの講師も講義(と実習)をしてくれるので,詳細についてはすべておまかせすることができる.

しかし,系統樹はいったんつくって「はい,おしまい」ではなく,その後のさまざまな“使いまわし”が実は重要だ.たとえば,得られた系統樹のグラフィクスは系統関係に関する“ことば”によるコミュニケーションにとってたいせつだし,形質データに関する系統樹上でのチャーティングは系統学的な形質分析を行なう上で有用である.さらに,系統樹を用いたさまざまな形質進化シミュレーションは帰無仮説のテストや統計モデリングに役立つだろう.

そんなことを考えると,ぼくが担当する講義ではできるだけ後者の方に力を入れて話をした方がバランスがいいかもしれない.とイメージしつつ,系統樹リテラシー育成のためのいくつかのツールを使う準備を始める.ウェブでの系統樹ヴィジュアライザーである〈Phylowidget〉はツリーファイルを介さずに“その場”で系統樹を組み上げていくことができるので,講義ツールとしてはうまく使えそうだ.

系統樹のグラフィクスと形質進化のチャーティングやシミュレーションのためのツールといえば,即座に〈Mesquite〉(かの〈MacClade〉の後継ソフトウェア)が思い浮かぶ.しばらくアップデートしていなかったのだが,最近出た version 2.5 はさらにさらにパワーアップしていて,その“密林”のごときメニュー構造とたくさんの小ウィンドウがつくる“市松模様”はとても幻惑的だ.これも使うか.

—— てな具合で,直前になってばたばたとしたくをしている.

◆午後になって日射しが強くなってきた.今日は一歩も外に出ていないのでわからないのだが,乾いて暑いそうだ.昼下がりも引きこもってしたくの続き.

◆午後5時過ぎ,薄暗くなってきたころを見計らって農環研に侵入する.気温21.2度.労働日の“正しい時間帯”にはちっとも寄りつかないのに,早朝とか休日になると職場に現われるというのは「ヘンな人」である証しだ.2時間あまり人気のない館内で作業する.外がすっかり暗くなり,空気がひんやりしてきた東の空に,恒例の土浦花火大会の大玉がいくつも「どーん」と花開くのを脇見運転しながら帰宅する.秋ですなあ.

◆よそ見もします —— Alberto Manguel『The Library at Night』(2008年3月17日刊行,Yale University Press,New Haven,viii+376 pp.,ISBN:978-0-300-13914-3 [hbk] → 目次版元ページ)でのボルヘスのある逸話.目が見えなくなってからのボルヘスはブエノスアイレスの小さなアパートで,なお本とともに暮らしていたという:

Sometimes the shade of the writer and that of his library mingle long before his death. For many years, until he left to die in Geneva in 1986, Borges lived in Buenos Aires among books he could no longer see, since blindness had overtaken him in his fifties. (p. 184)

あのボルヘスなのだから,自宅もさぞや膨大な蔵書に埋まっているにちがいないと来客は思いこんでやってくる.しかし:

Instead, they'd discover[sic] this modest apartment where books occupied a discreet, orderly place. When the young Mario Vargas Llosa visited Borges sometime in the mid-fifties, he remarked on the spartan surroundings and asked why the master didn't live in a more bookish, more luxurious home. Borges took great offence at this remark. “Maybe that's how they do things in Lima,” he said to the indiscreet Peruvian, “but here in Buenos Aires we don't like to show off.” (p. 185)

ボルヘスはかつて著者にこう語ったそうだ:

These few bookcases, however, were Borges's pride. “I'll tell you a secret,” he once explained. “I like to pretend I'm not blind, and I covet books like a man who can see. I even covet new encyclopedias, and imagine I can follow the course of rivers in their maps and find wonderful things in the various entries.” (pp. 185-6)

—— これはもう“心眼”というしかない.

◆夜遅くなってから講義スライドをちくちくといじり始める.通常の講義よりも時間が短かったり変則的だったりするので,スライドの内容の取捨選択が必要になる.とりあえず「系統学概論」「統計学概論」そして「系統推定論」の三つ分のスライドを作る必要がある.日が変わってやっと「系統学概論」のスライド70枚あまりができあがり.明日も続く興行準備.

◆本日の総歩数=3579歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/+0.4%.


3 oktober 2008(金) ※ プチ出張,柏の竹やぶから根津へ

◆午前5時半起床,雲は多いがいちおう晴れている.北東風.空気がさわやか.

◆朝からダウンロードとインストール —— ひとつひとつは単純作業でも,まとめてやるとなるとたいへん.エラーがでた日にはパニクります…….来週の分子系統学ワークショップでは,最節約法(and other methods)の説明に「PAUP*PaupUp」を使うつもりなのだが,PaupUp のセットアップには Microsoft の「.NET Framework」という巨大なシステムを事前にインストールしておかないといけない.3MBもあるインストーラーをダウンロードするのに5分間,さらに70MB超のシステムのインストールに10分間もかかるようでは,事前に各自ですませておいてもらうしかないよねえ.PaupUp の本体はほんのちょこっとしたものなのに,“お御輿”が大きすぎ.※なお PAUP* は有料なので配布するわけにはいきません,ハイ.

—— 事務局から,事前準備に関する確認と問合せが届いた.「インストールで死にました」という全国の受講生の声がすでにちらほらとあるらしい……(合掌).

◆朝のうちに青空が広がり,暖かくなってきた.20度は越えたにちがいない.昼前に,柏の〈竹やぶ〉本店に到着.こういうのを“レトロモダン調”って言うんですか,フシギな外装と内装そしてメニュー冊子.田舎せいろも卵焼きもたいへん美味でした.蕎麦通の間ではとても有名な店だが,平日の昼間だったからか,意外なほど空いていてゆったりできた.欲をいえば,おそばがもっと食べたいなあ(少なすぎ).所用で1時間弱.その後,新柏から東武線に乗り流山おおたかの森でTXに乗り継いで東京に移動する.

◆車中読書 —— 太田尚樹『伝説の日中文化サロン 上海・内山書店』(2008年9月16日刊行,平凡社[平凡社新書436],215 pp.,本体価格777円,ISBN:978-4-582-85436-7 → 目次版元ページ)を読了.後半は,魯迅を軸とする,日中の反体制派活動家が内山書店を拠点として入り乱れる.魯迅と内山書店との関わりはとても深かったという.現代では想像もできないが,“上海”(あるいは“台湾”)ということばは当時の日本人にとっては夢をかきたてる作用があったのだろう.

◆午後4時前に根津に到着.少し時間があったので,根津神社近くの〈芋甚〉で一休み.久しぶりに「小倉まめかん」をば.店内読書:Alberto Manguel『The Library at Night』(2008年3月17日刊行,Yale University Press,New Haven,viii+376 pp.,ISBN:978-0-300-13914-3 [hbk] → 目次版元ページ).しばらく放置していたのだが,そうもいかなくなった.

今年5月に初めて手に取ったとき,「とてもいい本だと思うのでぜひ訳してください(よろしくね)」とつぶやいたのだが,ほんとうに訳されてしまった:アルベルト・マングェル著[野中邦子訳]『図書館:愛書家の楽園』(2008年9月刊行,白水社,ISBN:978-4-560-02637-3 → 版元ページ).原書を読んでいる最中に翻訳が出てしまうというのは,考えようによってはたいへん悩ましいことだ.訳本はもちろんすでにオンライン発注しているので,来週始めには届くだろう.それまでには後悔しない程度に原書を読み終えておかないと.※そんな時間がどこにあるんですかっ,という声はさておき.

◆根津神社横のS坂をのぼり,恒例の芋煮会の準備で忙しそうな地震研を通り抜けて,農学部へ.午後5時から,東大農学部の専攻にて進学内定者ガイダンス.来春,この生物・環境工学専攻に進学してくるはずの2年生26名を前にしてのガイダンスだ.各研究室の紹介をしたのち,事務的な連絡あり.午後6時からはかるく懇親会.みなさん,コマバでの単位を落とさずしっかり履修するよーに.

◆午後7時すぎに早々に退出し帰路につく.来週のことを考えると深酒したり徘徊したりするわけにはいかない.午後8時半すぎにはもうつくばに着いてしまった.あまりに健康的すぎる.Manguel本は200ページまで読み進んだ.よしよし.

◆さ,明日もまたインストール泥沼にもがきつつ,講義のしたくをしないといけないぞ.

◆本日の総歩数=9949歩[うち「しっかり歩数」=1229歩/11分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/+1.1%.


2 oktober 2008(木) ※ 深夜の冷気に漂う金木犀の香り

◆午前3時起床.急激に忙しくなってくると,起床時間がどんどん早くなる.雲間からオリオン座が輝く真夜中に研究所に忍び入ろうとしたら,冷えた夜気に乗って金木犀のあの香りが漂ってきた.実にアヤシイなあ.午前3時半の気温は13.9度だった.

◆明け方のトド撃ちまくり —— 放置されたトドたちは決して立ち去らず,その場にとどまって大きく成長する.たくさんいるので撃ちまくっても当たる当たる.メーリングリスト管理作業などこまごまと.来週の交流センターのワークショップ関連で,事前の段取りを今日中につけておかないといけない.北海道から九州まで全国から受講生が集まるので,あまり直前過ぎるとスルーされてしまうおそれがある.講師に連絡をとって確認また確認.

◆午前5時半の気温は12.8度だった.朝焼けの東の空.秋はどんどん深まっていく.

◆午前のこまごま —— メーリングリストの月例アナウンスを一日遅れで流す.広報事項もいくつかあるのだが,そこまで手が回らない./来週から始まるコマバでの生物統計学講義は休講日がもう決まっているので,本郷の教務に連絡しておく./連携大学院の特論に関する日程調整を始める.担当教員が複数なので,キャッチボールを何回かしないと確定しないだろう.

◆午前10時.久しぶり雲一つないすっきりした秋晴れ.気温は20.3度.快適にして爽快.

◆また「書店の伝記」が —— 太田尚樹『伝説の日中文化サロン 上海・内山書店』(2008年9月16日刊行,平凡社[平凡社新書436],215 pp.,本体価格777円,ISBN:978-4-582-85436-7 → 目次版元ページ).大正から昭和にかけて上海の知識人や作家の間で有名だったという書店の伝記.こういう本屋一代記は心して手に取るように心がけている.海外だと,リン・ティルマン『ブックストア:ニューヨークでもっとも愛された書店』(2003年1月30日刊行,晶文社、ISBN:4-7949-6558-3)と W. G. Rogers『Wise Men Fish Here : The Story of Frances Steloff and the Gotham Book Mart』(1965年刊行,Harcourt, Brace & World,ISBN:なし)の2冊がまず思い浮かぶ.日本に目を向けても,古書店の伝記が多いようだ.書店を営むということは,さまざまな人が集まっては離れる“ハブ”を長年にわたって維持するということなのだろう.最初の3章を読んだ.郭沫若に魯迅,谷崎潤一郎に芥川龍之介ですか.上海の租界に集散した人物は実にいろいろだ.

◆午後の大仕事 —— 来週のワークショップ〈分子系統樹推定法:理論と応用〉のウリは,講義とパソコン実習の抱き合わせにあるのだが,実習で用いるソフトウェアの数が尋常ではないことがここにきて発覚してした.〈PAUP*〉や〈MEGA4〉のような統合型ソフトウェアというのはあまりなく,たいていの場合,さまざまなツールを部品として組合せることで,ひとつの分析工程が成立する.だから,それらのツールを世界中のさまざまなサイトからダウンロードしてこないといけない.

事前にダウンロード&インストールすべきツール群のリストが各講師から集まってくるとともに,その作業に要する時間がばかにならないことが見えてきた.午後1時からダウンロードをちくちく始めて,あっという間に3時間がふっ飛んでいった.新しい分析ツールがどんどん登場することがわかって勉強になるが,これらをたった三日間ですべて吸収するとなるとフォアグラの“本体”のようになってしまうな.

さて自分の講義ではどのツールを使おうかと思っているのだが,最節約法については,計算は「PaupUp + PAUP*-console」で,ツリー描画は「Mesquite」で,そして統計的概念の説明は「R + ape」でやろうかな,と.欲張り過ぎか.

—— そうこうしているうちに,またまた別の講師からの使用ツールのリストが送られてきた.あわわわ.

◆午後5時過ぎに撤収.北東の風が涼しい.18度台.明日はまた東大にプチ逃避なので,ワークショップの準備とか連絡は遠隔作業となる.

◆本日の総歩数=7205歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/−0.8%.


1 oktober 2008(水) ※ たまの在室勤務は雑用の山津波

◆午前5時半起床.雨また雨.午前7時には雨はあがり,曇り空になる.北東風が涼しい.台風崩れの熱帯低気圧は関東の南海上を通り過ぎたらしく,今回はまったく影響がなかった.

◆今日は平日勤務でめずらしく農環研に実在する.しかし,月初めに在室すると,雑用がどんどん降り積もるので健康によろしくない.

◆朝からハッピーなこと —— 〈ICSEB-VII〉の first circular(→印刷サイズ)がやっと出た.ここにいたるまでずいぶんと紆余曲折があったが,これでやっと集客活動に入れるだろう(council member の仕事だ).よしよし.大会会期は2009年7月5日〜10日,場所はメキシコのマリンリゾート地 Veracruz だ.ダーウィン生誕200年を祝うとともに,南米探検のフンボルトも高々と掲げられている.そうだ,メキシコに行こう!(ついでに発表も) いかがでしょうか.〈ICSEB-VII〉の詳細は大会サイトへどーぞ.

◆月初めのこまごま —— まずは今月のトド撃ちリストを更新する.月初めと月末に大物が二頭のたうっている…….む./次は,今月の「いなくてゴメンね」書類を書きまくる.出張伺が2件,兼業申請(東大理学部)が1件と関連する兼業届が3件.年休届が4件,外勤届が3日分.今月は全22日の労働日のうち,居室に実在する日数は8日なので,実在率は「約36%」ということになる.

—— あれやこれやの事務書類を書いたり破ったり格闘しているうちに,あっという間に午後になってしまった.

◆午後になって曇り空は変わらないものの気温がやや高くなってきたようだ.

◆数理統計研修の打合せ —— 午後3時に農研機構の担当者が来室し,しばし打合せ.例年,第2週目の「応用編」に出講していた講師のひとりが長期の中国出張のため出られないとのことで,その穴埋めにぼくが「計算統計学」とRによる実習を午前の二コマ(計3時間)担当することになった.第1週目の「基礎編」の受講生は各自がノートパソコンを持参してくるが,「応用編」受講者はそうではなかった.しかし,今年は「応用編」でもRの実習が可能ですので,どんどんRを布教しよう!(来年以降もそうしたいな)

◆午後4時を過ぎて青空が見え始め,西日が射し込んできた.久しぶりだ.

◆夕方のこまごま —— 来週月曜から始まるワークショップ〈分子系統樹推定法:理論と応用〉の段取りを整える.事前に受講生がダウンロードしたりインストールすべきものを各講師から知らせてもらって,周知するという作業.とりあえずは,コンパニオンサイトをこまめに更新しておけばすむことだ./来週木曜からはコマバでの生物統計学の講義が始まる.講義ブログ〈Inleiding tot de R-statistiek〉を3ヶ月ぶりに更新し,来るべき講義のための露払いをしておく.〈Hennig XXVII〉でアルヘンティーナに国外逃亡している期間と,それに続く神戸での〈ISHPSSB Off-year Workshop〉の期間は,講義を2週連続で休講することになる.すまんすまん.そういえば講演要旨をまだ全員分(including ぼく……)そろえていなかった(げ).

◆エルドラド・ギアナ高地・フンボルト —— こういう内容の新書が読めるのは幸福かもしれない:山田篤美『黄金郷(エルドラド)伝説:スペインとイギリスの探険帝国主義』(2008年9月25日刊行, 中央公論新社[中公新書1964], x+282 pp., 本体価格940円, ISBN:978-4-12-101964-6 → 目次版元ページ).南米ギアナ高地をめぐる伝説と歴史をたどる.南米にあるとされた「エルドラド」の伝説は,コロンブスがアメリカを発見した15世紀以後,かたちを変えながら連綿と伝えられてきた.この本には,エルドラド伝説と後世の列強による“探検帝国主義”が織り成す歴史のタペストリーに,数多くの歴史的人物とできごとが登場している.ギアナ高地とかロライマ山と聞けば,反射的に鳥類学者 W. H. Hudson の作品である『緑の館』を連想してしまう.あの岩波文庫本もこのタペストリーの中に織り込まれることになるのだろうか.

◆午後5時半に撤収.夕焼けが西の空を染めている.明朝は気温がぐっと下がるかもしれない.

◆本日の総歩数=6245歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+0.9%.


--- het eind van dagboek ---

Map フリーアクセスカウンター自転車 通販人気 シューズ
[sinds 19 april 2007] 無料アクセスログホームページ 素材集