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oude dagboek

日録2007年9月 


30 september 2007(日) ※ 月末サンデーは秋雨がしとしと降り続く

◆午前5時半起床.曇り.肌寒い.窓際の温度計は「18.5度」だった.弱い南風.のち北風に変わり,午前7時頃には雨が降りはじめる.天久保の〈Brotzeit〉まで歩き(ohne読み)で往復.しだいに雨足が強くなり,パンを抱えて家に帰り着く頃にはざあざあと本降りになった.天気予報では,今日は終日このような空模様で,気温は20度を下まわる11月の涼しさだそうだ.こないだまで夏日・真夏日と文句を言っていたのがうそのようだ.涼しいな.快適.

—— 自宅からのftpファイル転送がときどき失敗する.しかし,その原因をたどっているヒマはないので,そのまま放置する.研究所に行けばいいんだ.

◆ということで,午後1時過ぎに週末出勤.雨いよいよ強く,気温16.2度.涼しいわけだ.人気のない5階でクラくこまごま —— 進化学会関連の事務返事メール./分類学会連合のニュースに掲載される進化学会紹介記事の添削依頼.1年前に書いた記事なので,内容的に“賞味期限”の柵を大きく踏み倒している.このままではダメなので,アップデートのパッチ当てをpdfに書き込まないといけない.バンソーコーだらけになるぞ./メーリングリストの管理作業をちょこちょことすませて,明日の月例アナウンスに備える./10月5日(金)に名古屋大学で開かれる男女共同参画シンポジウムの会場に掲示するA0版ポスターをリモセン室でべろべろと印刷する.大きな紙をびらびらさせて持ち帰る.※あ,また「筒」の騒ぎか./出奔していた間に,来月から始まる駒場での講義に関する「教養学部第四学期専門科目カリキュラム」なる冊子が東大理学部か届いていた.生物統計学を毎週木曜の5限目に担当しますので,潜在的受講生のみなさん,よろしく.人類学科は必修.動物学科と植物学科は選択必修とのこと./Adobe InDesign 2.0 を再度 DynaBook くんにインストールして,2.0→2.0.1→2.0.2と順次バージョンアップする作業.Adobe CS はあるのだが,とりあえず必要なのは Mac / Win で共通に使える InDesign のみなので,あえて古いバージョンを入れる./ついでに Google Earth もインストール.※今浦島をアップデートするのはたいへんなことだ.

—— あっという間に時間が飛び去り,気がつけばもう午後4時半を回っていた.暗くならないうちにダッシュで帰宅.あいかわらずの雨模様.気温は16度台のまま.涼しいというよりは,肌寒いという形容がふさわしい.休日なのにこまごま仕事をたくさんしてしまった…….

◆エポカル高座の泥縄 —— あさっての10月2日(火)は植物細菌病談話会で系統推定の噺をしないといけない.そのためのスライド素材を用意する.※といっても,これまでのプレゼンで用いたものの再編集が中心だが,新しいのをいくつか入れないと“意欲”が鼓舞されない.

—— それにしても,植物病理学会のサイトがこの週末はメンテ閉鎖されているので,そのあおりを喰って傘下の植物細菌病談話会の大会情報などがほとんど見られないのがまどろっこしい.うろ覚えでは,明日の午後から始まって,当日夕方に懇親会.ぼくのトークはあさっての朝ということになる.外勤届はすでに出してあるので問題なし.

◆帰宅してからのこまごま —— 計量生物学会特集号のゲラ読みを中途半端で放り出していた.遅まきながら修正箇所を明日返送しよう./でもって,あさってのトークの準備をば,ちくちくとスライドをいじってみる.

◆つくばにいないワタシ —— 月末にカウントしてみたら,今月は18日間の平日のうち,農環研に“実在”したのはたった「8日間」であることが判明した.五割を切りましたかぁ.で,来月10月はといえば,お,「10日間」も農環研に実在するじゃん.エライエライ.誉めてつかわす.続く11月のつくば実在日はこれまた「8日間」…….ワタシって要するに「農環研にいないヒト」なのね.どこをふらふらしてんだか.

◆本日の総歩数=12328歩[うち「しっかり歩数」=7127歩/62分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.6kg/−1.6kg.


29 september 2007(土) ※ 一夜にして真夏日から晩秋へと飛ぶ季節

◆午前4時半起床.外が真っ暗だったので夜明けまで気づかなかったが,夜中のうちに雨が降りだしていたらしく,地面が濡れている.多摩モノレールから降りてきた早朝出勤らしき歩行者も傘で姿が見えない.雨の中を傘をさして歩き読みしつつ多摩ニュータウンを迷い歩くのは気が滅入るので,あっさりやめることになった.

◆明け方の長時間ダウンロード —— ホテルのインターネットに接続したところ,だらだらと何かがダウンロードされている.いつまでも途切れない.そのうち,Adobe Acrobat のアップデート命令が発令されたので,未明に降臨してきたのはアップデーターであることが判明した.今浦島の DynaBook に入っていた「7.0.5」を「7.0.6→7.0.7→7.0.8→7.0.9」と順次バージョンアップするために,実にこまめに一つずつアップデーターが降りてきたらしく,マイナー・バージョンアップなのに,ひとつ更新するのに10分以上の所要時間と再起動司令が繰り返し発令されるはめに.結局1時間近くかけて,やっと最新版にすることができた.※とはいえ,version 8 ではないところがいやはやなのだが…….

◆〈Mesquite〉の最新版と〈Cartographer〉パッケージの登場 —— ダウンロードついでに,先日9月21日に公開されたばかりの〈Mesquite〉の最新版 version 2.0 と,それに合わせて登場したパッケージ〈Cartographer〉をダウンロードする.〈Cartographer〉は「A Mesquite package for plotting geographic data」と銘打たれているように,地域分岐図を描画するパッケージだが,Google Earth の KMZ ファイルに対応している.

—— 〈R〉も〈Mesquite〉も外部パッケージが“レゴ”のようにかちかちはめ込まれるのがおもしろい.あ,Java もアップデートせよとの御下命あり.朝はダウンロードしまくりですな.

◆午前9時過ぎにホテルをチェックアウトして京王多摩センター駅に向かう.雨はたいしたことないのだが,この気温の低さはどうしたことか.昨日は真夏日で湿度も高くとても不快だったが,今日はおそらく20度を下まわる涼しさだろう.長袖の通行人多し.南大沢から小雨がぱらつく首都大学キャンパスに入る.昨日からは想像もできないほどの温度差.涼しい.

◆午前10時半から最終日の講義開始.午前いっぱいは一般化線形モデルの概論と,Rcmdr による計算演習.といっても,ほんの“門前”だけだ.ついでに,モデル選択論のポイントも話す.

◆昼休みは講義室に根を生やして,午後の準備をする.集中講義期間中は昼休みはないも同然だ

◆午後は計算機統計学(ブーツストラップとジャックナイフ)の考え方と,〈R〉での計算演習を1時間あまり.その後,多変量解析概論と〈R〉でのデモを少々.ここでちょうど午後4時前になったので,講義はおしまい.>みなさん,たいへんお疲れさまでした.レポート課題はのちほど,ということで.

—— 今回の集中講義では,Rcmdr を教材として初めて使ってみたが,なかなかいい感じだった.この秋は方々で〈R〉講習の機会があるが,Rcmdr を宣伝しましょう.

◆そのままつくばに直帰.帰り着いたのは午後6時過ぎだった.肌寒い小雨まじりの夕闇.明日の朝はさらに気温が下がるのだろうか.

◆復路の車中読書 —— David Wiggins『Sameness and Substance』(1980年刊行, Basil Blackwell, Oxford, ISBN:0-631-19090-2 → 目次).先日,トラブルと延滞の果てにようやくひねり出した『』第5回連載記事のタネ本.故・太田邦昌さんからこの本を譲ってもらったのは,記憶が定かではないのだが,大学院を出て“純粋OD”をしていた頃の1980年代後半のことだったと思う.ほかの何冊かの本と一緒にいただいたか(あるいは買ったか)したときに,「Wigginsのこういう本を読むのは三中くんくらいでしょ」と言われたことはしっかり覚えている.今にして思い返せば,あれはいったいどういう意味のコメントだったのか.いずれにせよ,【種】問題を論じる際に Wiggins 本をまたいで通ってはいけない.実に20年後に別の出版社から出た本書の改訂版である:David Wiggins『Sameness and Substance Renewed』(2001年刊行, Cambridge University Press, Cambridge, ISBN:0-521-45411-5 → 目次)は,改定前の特色だった「Longer Notes」がなくなってしまって,いい意味でも悪い意味でもスマートになってしまった.むしろ,内容から見た“祖本”である薄っぺらな:David Wiggins『Identity and Spatio-Temporal Continuity』(1967年刊行, Basil Blackwell, Oxford)の方を見るべきなのかもしれない.

◆本日の総歩数=7102歩[うち「しっかり歩数」=2341歩/21分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


28 september 2007(金) ※ 南大沢にて後半戦.DynaBookは空飛ばず

◆午前5時半起床.曇って風はなし.のち晴れてくる.蒸し暑いぞ.

◆早朝の〈R〉本近刊情報 —— 金明哲『Rによるデータサイエンス:データ解析の基礎から最新手法まで』(2007年10月13日刊行予定,森北出版,ISBN:978-4627096011)発刊日が確定したようです.→著者サイト

◆今日は首都大学東京の生物統計学集中講義.後半戦だ.午前7:12の TX 区間快速で秋葉原へ.都営新宿線・岩本町駅から京王線に入り,笹塚で乗り換え.南大沢に着いたのは9時半のこと.駅前のスターバックスにて講義準備を少しばかりしてから,可知研にたどり着いた.今日も暑くなりそうだ.

◆往路の車中読書 —— ウーヴェ・リゲス著/石田基広訳『Rの基礎とプログラミング技法』(2006年10月22日刊行,シュプリンガー・ジャパン,ISBN:4-431-71218-6 → 目次)の関数のプログラミングとグラフィクス諸相のところ.知らんことが多過ぎる…….

◆午前10時半から講義開始.ひたすら分散分析について.正午前におしまい.そのまま,昼休みに突入し,午後に予定している Rcmdr でのプレゼン準備をする.講義用にはとてもよいツールで,この感触は MacClade を連想させる.とりあえず,先週行なった確率分布まわりの描画とか,記述統計量に関する一連の計算は Rcmdr でぱぱっとできる.次いで,分散分析に関わる計算手順の確認をしないといけない.分散分析表までの仕上がりは問題ないのだが,あれれ「Anova()」って,外部パッケージのコマンドかな.メニューで選択した作業のスクリプトが背後で残っているのが,これまた教育的なこと.

◆午後1時半から講義再開.まずは Rcmdr とそれが要求するいくつかの外部パッケージをインストールしてもらう.R は最新版でないと Rcmdr のインストールに失敗するようだ.大学の共用パソコンを使用している受講生が大部分なので,以前に入れた version 2.1.x あたりの古いのがまだ残っている.すべて 2.5.1 にアップデートしてもらう.リンクしているさまざまな外部パッケージも最初にすべてインストールしておかないとダメみたい.なお,多重比較パッケージ「multcomp」を Rcmdr から起動するときには,さらに「mvtnorm」と「zoo」という別の外部パッケージがさらに要求される.ダウンロードとインストール作業はエンドレス.

やはりメニュー形式のインターフェイスがあるだけで,〈R〉の使い勝手は見違えるように変わる.もちろん,系統推定ソフトウェアと同じで,このような系統分析ソフトウェアも「理を知っている」ユーザーしか“安全運転”ではないのは確かだろう.それでも,運転席にまずは座ってもらうには,このような GUI の恩恵は偉大.

午後の講義の中心は,Rcmdr を使っての分散分析.正規性検定(シャピロ-ウィルク検定)とか等分散性検定(バートレット検定)がメニューに入っているので,外部データファイルのの入力から分散分析表の作成までを,すべて Rcmdr の中で実行することができる.その後,多重比較の論理と〈R〉での計算手順について説明し,最後に実験計画の「ネスト」(split-plot)と「クロス」(strip-plot)について説明する.午後5時前に講義終了.

◆夕方のこまごま —— 講義終了間際に音羽から電話あり.「大儀であった.なお刻苦勉励せよ」とのお言葉をいただく.へへーっ./ 気の早いことで,来年の首都大での集中講義日程が確定.2008年9月の第3〜4金土です.某“領域長どの”恒例の Perl 高座が終わった次の週からでーす.

◆午後6時を過ぎて,南大沢駅前の〈春庭花〉にてチャイニーズな歓待を受ける.みなさん,どうもありがとうございました.午後8時過ぎに京王多摩センターに降り立ち,いつもの京王プラザホテル多摩にチェックイン.放置したままだった昨日の日録をアップする.

◆今日はたいへん暑く,また日没後も蒸し暑さが残っていた.今日は持参の DynaBook が宙を飛ぶこともなく,心安らかに早寝できるぞ.

◆本日の総歩数=7429歩[うち「しっかり歩数」=2519歩/23分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.9kg/+1.0%.


27 september 2007(木) ※ 振替休日という名の準軟禁的原稿執筆日

◆午前4時起床.風のない曇り空.気温19.9度.蟲のすだく明け方.早朝の研究所にて,ぼく宛に届いた土壌細菌の同定依頼を事情通に丸投げしたり,来月の出張・年休・外勤・兼業届を書きまくったり,明日から始まる首都大学後半戦の心の準備をしたり.今日中にもう一度来て撃つべきトドがいる.

◆今日はいわゆる振替休日なのだが,すでに締め切りラインを大幅に超過している連載原稿に何としてもケリをつけないといけない.午前7時半頃,いきなりシャワーのような通り雨が.その後,北東風が吹いて涼しくなる.曇りときどき雨.

◆書評掲載誌届く —— 『蛋白質 核酸 酵素』(Vol. 52, no. 10)
(2007年10月1日発行,共立出版,ISSN:0039-9450).ショーン・B・キャロル(渡辺政隆・経塚淳子訳)『シマウマの縞 蝶の模様:エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源』(2007年4月30日刊行, 光文社, ISBN:9784334961978 → 書評目次版元ページ著者サイト)のぼくの短い書評記事は p.1492 に掲載されている.

◆自宅に自主カンヅメされる —— オランダ廃墟本をめくりつつ,妖怪学講義をひもときつつ,チョムスキーのGB理論を横目に,認知分類カテゴリー化についての文章を書き進めていく.正午前に第2節を書き終えて第3節に入ったところで,音羽から督促電話あり.透視されているのかな(……).正午過ぎには青空が広がり,日が射してきた.

午後,続き.共時的カテゴリーと継時的アイデンティティーが心理的本質主義の異なる発現であることを示す.David Wiggins の時空的同一性と sortal 概念に関するまとめをしつつ,一方で『棄景』を広げて廃校の痕跡写真を見ながら,同窓会組織の心理的「同一性」強化システムに関する論議.午後1時半に第3節を書き上げる.

さらに続くぬかるみ.井上円了の「真怪」概念の再検討と,「心」のもたらす進化心理的帰結について分類体系化との絡みで述べるべきことを総括し,次回へとつなげる.午後2時半,完了.ほぼ予定字数におさまったので,原稿を音羽にメール送信する.南風と曇り空.ときおりざーっと雨が降る.

—— ということで:三中信宏〈生物の樹・科学の樹〉連載第5回「老狐幽霊非怪物,清風明月是真怪」.『本』2007年11月号掲載(予定).

◆大文字版『ダーウィン書簡集』 —— Charles R. Darwin『Life and Letters of Charles Darwin; Volume 1』(2007年刊行,BiblioBazaar, ISBN:978-1-4264-0325-5→版元ページ).「大文字版」というのは日本だけの出版形式ではなく,海外にもあるのだということを初めて知った.百年前に出たダーウィン書簡集のこのリプリント版は,「Regular Print Size」と「Large Print Size」の2種類がオンデマンド印刷され(価格差はたった3ドル),大判の方はタテが30センチほどもあるらしい.ページ数も600頁近くあるので,さぞや重くて大きな本なのだろう.

◆午後6時に再び農環研へ.明日からの集中講義の器材と資料などをそろえる.湿度がやや高くて蒸し暑い気がする.空気が入れ代わったのか.

◆本日の総歩数=2629歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.7kg/−0.1%.


26 september 2007(水) ※ 鈍牛が歩むごとく書き続ける秋晴れの日

◆午前4時過ぎ起床.夜明け前の薄暗がりが心地よい.夜が明けてしまうとつまらないな.北東の風がとても涼しく,最低気温は18.4度.日に日に下がっている.

◆朝のこまごま —— 連載原稿がまだ書きあがらないので気が重い./ FFFtp の転送がときどきコケるのでどーしたかと思ったら,「PASV」モードがデフォルトのままオフになっていた.スイッチオンで正常にファイル転送できた./生物地理学会と昆虫分類学若手懇談会の会費をドンと払わないと./男女共同参画シンポジウムでの挨拶につき,茗荷谷からメールが来る.会長メッセージをよろしく./先日の東大ES特論IIの成績評価はレポートを集める時間など最初からないことが今になって判明した.なんじゃらほい.出席点だけとりあえず記して返送する.

◆原稿依頼の秋 —— とある雑誌から「エコロジー」に関する記事を書いてほしいとの依頼あり.ううむ,これ以上,“石”を抱くのはつらいなあ./別の出版社からも連絡あり.2009年の「ダーウィン記念イヤー」に合わせての出版企画に乗らないかとのこと.確かに,再来年はこれまで以上に大量の“ダーウィン本”が出るにちがいない.で,ワタクシは?

◆ダーウィン関連献本(いつもありがとうございます) —— ジャネット・ブラウン(長谷川眞理子訳)『名著誕生2:ダーウィンの『種の起源』』(2007年9月20日刊行,ポプラ社[シリーズ〈名著誕生〉], ISBN:978-4-591-09913-1).原書:Janet Browne (2007), Darwin's "Origin of Species". Atlantic Books [Books that Shook the World], ISBN:978-1843543947.

◆晴れ上がる昼休みの歩き読み —— 郵便局との往復で:細見三英子『中国「女書」探訪』(2007年8月15日刊行, 新潮社, ISBN:978-4-10-305271-5 → 目次版元ページ)を読了する.後半部になってやっと,「女書」の発祥地とおぼしき村に入るあたりのルポルタージュは,土の香りが漂う記述になっている.それにしても,現地の写真が一葉でも掲載されていたら,もう少し想像力が膨らむのに.文章が描画的であるだけに,この点は残念だ.著者は「女書」を絶滅危惧少数言語のひとつとして見る視点を最後に読者に示している.「女書」はこれからどうなっていくのだろう.

◆午後1時の気温は24.4度.いい秋晴れだ.こまごまと —— 先日,旅先で成仏した PowerBook くんの「シリアル番号」やいかにとの問い合わせあり.しかし,居室引っ越しの際に保証書ごと関連書類を廃棄してしまったようで,近くにまったく見当たりません.さらに綿密な捜索をする余裕もないので,勘弁してもらおう.かんにんえ.

◆午後1時半から1時間あまり,〈形態測定学講義〉の輪読41回目.第14章「Morphometrics and systematics」の続き(pp. 367-372).形態測定学的変量から「形質」を構築することができるかという論議.著者らはかつて肯定的な立場をとっていたにもかかわらず,本書では一転して全面否定のスタンスに変わっている.形態測定学に基づく系統推定をめぐっては,1) 形質状態のコード化;2) 形質としての信頼性,のふたつが主たる論点だった.伝統的な形態測定学では,形質変形のローカライズができないという根本問題があった.これに対して,幾何学的形態測定学は,局所変形の部分歪み(partial warps)による分割を実行できるという利点がある.しかし,著者らは部分歪みを形質として用いることはできないと断言する.その論拠は次の二つだ.

第一に,部分歪みは局所化のスケールに依存しているため,他の部分歪みとの関連性を見ることができないという.また,部分歪みのスコアが大きいからといって,必ずしも形態変形が大きいわけではないともいう.後半については確かにそのとおりなのだが(代数的な直交分割が必ずしも生物学にそのまま解釈できるわけではない),前半については言い過ぎだろう.彼らが挙げた実例(Figs. 14.2-3)は説得的ではない.それぞれの局所化のスケールについてある変形要素が共有されているかいないかは系統学的情報を十分にもっていると考えられる.

第二に,幾何学的な形状分析の前提である「変数選択からの独立性」に抵触するという点で,部分歪みスコアをもって形質とみなすことはできないと著者らは主張する.しかし,これまた反論が可能である.彼らは,部分歪みスコアというスカラー軸に形状空間を射影することには問題があると述べている.しかし,スコアではなく,部分歪みそのものを「形質」とみなすならば,ここで論じられているような問題点は回避できるだろう.部分歪み解析によって直交分割されたひとつひとつの軸を形質とみなし,その共有性を系統解析のための情報源として利用するというアプローチの可能性は本書では探索されていない.

—— 本節はとても重要な論点を論じているのだが,著者らの主張のバイアスはどうしようもない.

◆やばいやばい,原稿原稿,たいへんたいへん…….日が変わる直前まで,書いてやっと1節分.次の1節分はオアゾですでにいちど書いたところ.

◆本日の総歩数=9469歩[うち「しっかり歩数」=4676歩/40分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.5kg/+0.1%.


25 september 2007(火) ※ つかの間の平日もひたすら書くしかない

◆午前3時半起床.雨が降ったり止んだりしている.南から微風.気温19.4度.湿り気はあるが,涼しい.

◆未明の研究所にて,本日の原稿書きの予定を立てる.しかし,予定を立てても書かないことにはどうしようもない.それ以外にも「ぷちトド」が何頭か蠢いているようだが,見て見ないフリをする.ものごとには優先順位があるのだ.

先週のPowerBookの冥界入りとともに,いくつかの文書ファイルが手の届かない世界に去ってしまったおそれがあったので,こわごわ確認してみたら,さいわいプレゼン用や講義用ファイルの元は,八王子に行く前日に最新版をそっくりバックアップしていたようで,この点での損害はほぼゼロと思われる.やっぱり成仏当日に書いていた『本』連載原稿だけが直撃の被害をこうむったのね…….

—— 今浦島の DynaBook くんのアップデートはなお続く.

◆予報よりも早く,午前9時までには雲は晴れすっかり青空になった.9時半の気温は24.3度.午前のこまごま —— 駒場での生物統計学の兼業申請が通った.来月からは毎週木曜に駒場に通う./音羽から探針電話.ごめんなさいごめんなさい./計量生物学会ゲラに補足を書き加えて返送する./PAUP*の「自己流パラレル化」は無理でしょうね./男女共同参画シンポジウムのポスターがどさっと届く.事務で掲示許可をもらってロビーの壁に貼る.10月5日(金)名古屋大学にて.そろそろ進化学会からの掲示ポスターの印刷をしないと(訂正点はなさそうだし).ポスターの InDesign 文書が消滅しなかったのはさいわいだった./その前の10月2日(火)にエポカルで開催される植物細菌病研究会の依頼講演の準備というのもあるのだが…….

◆ほぼ真夏日(28.7度)の昼休みを歩く —— 細見三英子『中国「女書」探訪』(2007年8月15日刊行, 新潮社, ISBN:978-4-10-305271-5 → 目次版元ページ)を第12章まで.中国ディープサウスの調査地にたどりつくまでの紆余曲折がとても長い.肝心の「女書」が初めて紙面に登場するのはやっと「80ページ」になってから.それにしてもこの字は面妖な字体をしているな.文化大革命のときは“妖字”として弾圧されたという.

◆日射しの照りつける暑い昼下がりのこまごま —— 共済組合員証がアップデートされたので引き取る./生物科学学会連合のシンポジウムは10月18日だとの事務連絡.しかし,その日は京都でお籠りしているので参加できまへんな./その京都の湯川秀樹国際シンポジウムからも事務連絡.著書を販売するブースをつくるので,自著目録を送れとの依頼.5冊ほど連絡する./とても忙しい10月3日(水),午後5時のすき間時間に,東大農学部正門でさらなる待ち合わせ用事を詰め込む.

◆現実逃避の岩波文庫新刊 —— J・B・プリーストリー(橋本槇矩訳)『イングランド紀行(下)』(2007年9月14日刊行, 岩波書店[岩波文庫 赤 32-294-3], ISBN:978-4-00-322943-9).先月出た上巻:J・B・プリーストリー(橋本槇矩訳)『イングランド紀行(上)』(2007年8月17日刊行, 岩波書店[岩波文庫 赤 32-294-2], ISBN:978-4-00-322942-2)に続く下巻.初版が出たのは1934年のことなので,そんなに“むかし”の本ではない.エドウィン・ミュア(橋本槇矩訳)『スコットランド紀行』(2007年7月18日刊行, 岩波書店[岩波文庫 赤 32-296-1], ISBN:978-4-00-322961-3)の姉妹本.こちらも原書出版年は1935年だから,ほぼ同時代だ.日本で言えば“昭和初期”にあたる.

◆ハンコの旅立ち —— 進化学会から連絡あり.先日つくってもらった高校生ポスター賞の賞状に不都合があったとのことで,再注文となったとのこと.学会印を事務局で押印してもらうために,筑波事務所から印鑑を速達で飯田橋に郵送した.行ってらっしゃい〜.午後3時の気温は29.7度.暑過ぎる./ついでに,学会賞の英文呼称に関する問い合わせに答える.正式には評議員会で確定させないといけないだろうな.

◆午後3時を過ぎて,西日の射し込む居室の温度は30度を越えた.全館冷房もすでに停止されていて,居住性は低下の一途をたどる.毎年,残暑の厳しいこの時期は,午後4時以降は仕事にならないので,とっとと帰るにかぎる.それでも,いくつかこまごまと —— 男女参画シンポジウム事務局からまたまた連絡メール.10月5日の当日は「午前9時45分までにポスターを掲示されたし」だと.おい,その時間設定だとワタクシは午前5時42分のTX区間快速に乗らないとダメなのよ.ポスターの筒を小脇に,早朝のつくばセンターを急ぐわけね.おまけに,午後4時から「ポスター発表」があるという.さらにその後は,新規加入学会の代表としての「挨拶」もありだ.結局,朝から動員されて,つくばに帰り着くのは夜遅くじゃないか./行動計量学会から「複雑性」がらみのシンポジウム:日本行動計量学会シンポジウム〈複雑系データの解析〉を統計数理研究所で開催するので,講演を依頼したいとのメール.その日は他に予定が入っていないので,はいはい引き受けますと返事をする.日程が浮動していたが,ほどなく「12月1日(土), 13:00〜17:00」で確定したとの連絡メールが来た.ぼくのトークは:三中信宏「複雑なデータを単純化する:アブダクション的推論の基盤としての最節約原理」.まずタイトルを決めてしまえばコンテンツはあとからついてくる.

◆うへえ,せっぱつまりの原稿がぜんぜん進んでません.どーしましょ,どーしましょ.まずは,炎熱の居室から立ち去ることからはじめよう.午後5時前に退散.自宅で覚悟を決める.夕暮れとともに,気温はぐんと下がり,北寄りの風が吹く.雲はやや多いが,仲秋の月夜としては及第点か.団子を喰って原稿を書き続ける.

—— しかし,この遅々たる進捗はどーにかならんかしら…….まだエンディングに達していない.まずいなあ.

◆本日の総歩数=11598歩[うち「しっかり歩数」=6186歩/54分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.7kg/+1.2%.


24 september 2007(月) ※ 北東風吹く秋分の日は籠って原稿を書く

◆午前5時半起床.曇り.北東風が冷たく吹き抜ける.最低気温はきっと10度台後半だろう.残暑の片鱗すらなく,すっかり秋めいてしまった.

◆早朝のやや長めの歩き読みは筑波大学方面へ —— 最相葉月『星新一:一〇〇一話をつくった人』(2007年3月30日刊行, 新潮社, ISBN:978-4-10-459802-1)の第5章「円盤と宝石」では,戦後日本の推理小説・SF小説界の動きを概観する.作家・星新一のデビューに江戸川乱歩が間接的に絡んでいたとは知らなかった.第6章「ボッコちゃん」は作家に届いた“天の声”のこと.続く第7章「バイロン卿の夢」は結婚前後のこと.SFを読む習慣はほとんどなく,推理小説もごく限られた作家のものしか読んだことがなかったので,本書に登場する多くの人名はほとんど初見だ.おそらく,早川書房の『SFマガジン』の揺籃期から関わってきた星新一は,戦後のSF文学界のまさに中心にいた人物なのだろう.ぼくは星新一の書いた本には何の関心もないのだが(過去に1冊も読んだことがないし),彼を取り巻いた人間模様の方がずっと興味深い.

—— 北風に吹かれつつ〈Brotzeit〉のパンを抱えて帰還する.

◆先週,フィリピンから届いていた本 —— 執行盛行『統計解析手順ハンドブック(CD-ROM付)』(2007年9月刊行,非売品,ISBNなし).農水省をリタイアした後,JICA専門家としてフィリピンに派遣されていた執行さんが,まとめられた農業実験に関わる統計手法のハンドブック.A4版64ページ.本文は日本語だが,添付CD-ROM「Data Computing Handbook on Statistics」は英語版だ.記述統計学から始まり,確率分布,回帰と相関を含む単変量解析,実験計画と分散分析(直交表を含む),多変量解析,数量化理論,そしてノンパラメトリック統計学まで.わざわざお送りいただき,どうもありがとうございました.

◆次回の首都大の集中講義用に,テストデータファイルと〈Rcmdr〉関連のパッケージ一式をそろえる.Win派とMac派が受講生の中に混在しているので,こういうときの手間は2倍になる(Linux派はいないらしい).それとともに,スライドのハンドアウトをつくらないといけないのだが,故 PowerBook くんの騒ぎで作業がすっかり遅れてしまった.

◆最後の弁当 —— 今日は吉瀬の農園カフェ〈ピクニック〉が店を閉じる日なので,最後に持ち帰りの弁当を買ってくる.大賑わいで駐車スペースを探すのに一苦労.借地の関係で店じまいするが,近隣の別の場所で再オープンするそうな.今の場所はブルーベリー園に囲まれたロケーションだったが,新しい店はどこになるのだろうか(“ヒミツ”らしい).隣の大きな栗の木から実がこぼれ落ちていたが,最後のお弁当は栗ご飯でした.晴れときどき曇り,北寄りの風が涼しい.20度前後で快適な空模様の午後.寝読み本の読了:鈴木浩大『湯けむり台湾紀行』(2007年5月24日刊行, まどか出版, ISBN:9784944235353).台湾の温泉は炭酸泉が多いことを知る.それだけでも十分に魅力的なのだが,台東の「太平洋温泉」は注目したい(たどりつくのに難儀しそうだが).

◆さて,ケムリのごとく消え去ってしまった連載原稿のケリをつけないことには話にならない.しかし,原稿がいったん消えてしまうと,それと同じものをと言われてもなかなかその気にならないものでして.別のストーリーをふと思いついたのだが,その線で書き進めようかな.何はともあれ,書けば官軍だ.

◆午後3時過ぎ,給水にお出かけ.曇り空から雨がぼたぼたと落ちてきたが,またすぐ上がる.夕方からはアオマツムシがさかんに鳴きだす.あいかわらずの北東風。

◆夜は原稿原稿また原稿。逃げ場はありません。

◆本日の総歩数=15357歩[うち「しっかり歩数」=12309歩/106分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.1kg/−2.4%.


23 september 2007(日) ※ 2年半ぶりに「ウィンドウズ」なワタシ

◆昨夜は早く寝たので,夜中に一度目ざめた.窓を開けたら北東の風が涼しそうだったので,喜んで開けっ放しにしたら,そのうちびょうびょうと吹き荒れてきた.午前6時に完全起床.北風はさらに強くなってきた.曇り.気温は当然20度を下まわっているにちがいない.涼しいな.

◆『』の10月号が届いた:三中信宏「種よ,人の望みの喜びよ」(pp. 28-35).あ,魔除けの【 】が付いてないぞ.これはキケンだ.あまり近づかない方が身のためかもしれない.

◆Windows 今浦島状態 —— 南大沢で「不慮の死」を遂げてしまった PowerBook くんは,そのまま当地で荼毘に付して修理に出してきた.だから,つくばには“丸腰”で帰ってきたので,日録も記せない,メールも出せない,連載原稿も書けないの「ないない」環境で不遇をかこつことになる.これではどうしようもないので,2年半あまりのご無沙汰だった DynaBook SS くんを久しぶりに表舞台に上げることにしよう.

ところが,以前この DynaBook SS くんがグレて性根を叩き直してもらったときに,いくつかのソフトも叩き出されてしまったらしく,〈Wz Editor〉の xhtml マクロやら,〈FFFtp〉やら,〈縮小専用。〉やら,さらには通信まわりの設定ファイルやらがすっかり“きれい”になっていた.これではどうしようもないので,あらためてウィンドウズの環境整備を一からやりなおさないといけない.憂鬱なことだ.方々からアップデーターをダウンロードしたり,環境設定をやり直したりしているうちに,小気味よく時間がどんどん消費されていく.DynaBook SS くんと同時的パラレルに使っていた DELL Latitude の設定を確認した方が効率的かもしれない.やっぱり,研究所に潜入しないとダメかも.

たとえ短期であっても,Windows 環境から離れてしまうと社会復帰のハードルが高くなる.ギャップなしに今回のようなトラブルを回避するためには,完全に同一機種のパソコンを2台用意しておけばいいのだろうが,それでは新機種に移る機会を逃すともいう.難しいところだ./それにしても〈縮小専用。〉は使い勝手とてもよし.PowerBookのときは〈Squeeze〉のユーザーだったが,負けてるぞ./〈Ninja〉のランチャー機能の使い方をすっかり忘れてしまった…….PowerBook のときは〈LunchMenu〉をランチャーとして使っていたのだが.

◆とりあえず,長年使い慣れている「WZ Editor+ WXG」があれば日本語入力には不自由しないので,やっと溜まっていた日録を書くことができた.ただし,モデムやらLANの設定がまっしろなので,これから環境整備をもういちどしないといけないな.しかし,その前に,連載原稿をものしないとか.

◆今日は終日,北東の風が吹きぬけ,気温は20度そこそこまでしか上がらなかった.昨日までのような厳しい残暑はもうないと天気予報では言っていたが,その通りであってほしい.午後5時すぎに研究所に行く.集中講義の荷物の整理と,代替PCであるDynaBookのセットアップのためだ.小雨が降ってきて気温はさらに下がる.農環研の温度計は「20.8度」だった.涼しいわけだ.DynaBookに FFFtp をダウンロードし,Wz Mail 設定 / LANとダイアルアップ接続の設定など最低限の環境整備だけはすました.これで DynaBook くんを外に連れ出しても粗相はないだろう.雨がやんだ午後7時に帰宅.

◆〈Rcmdr〉の採用決定 —— 講義の中で採用しようかどうかと何年か逡巡していたのだが,次回の首都大学東京の集中講義から John Fox の R-Commander〈Rcmdr〉を積極的に講義に取り込むことにした.Rcmdr をインストールするときに,付随するいくつかのパッケージもとりこまないといけないので,準備がめんどうかと思っていた.しかし,とりあえずはすっぴんの Rcmdr だけでもある程度のメニュー形式での統計計算ができることがわかったので,その部分を採用することにした.どうせ「> library(Rcmdr)」で起動するたびに警告が出されるのだから,必要になった時点で該当パッケージをダウンロードしてくるということでいいでしょう.ね.それよりも教育的利用を優先したいということです.

◆一仕事終わったような心地だが,連載原稿がぜーんぜん書けてへんのですわぁ,これが.いやはや.たはは……(冷汗).※そう言いつつも傍らで Bluetooth 接続をごそごそしていたり.

◆本日の総歩数=2725歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+1.2%.


22 september 2007(土) ※ しつこい残暑に猩々蝿も大喜びする

◆早寝しすぎたからか,丑三つ時から夜明け前まで何度も目が覚めてしまった.午前4時に起床.しばしミクシィで遊んでから,午前6時前に俳諧開始.早朝はそれなりに涼しい.そびえ立つ多摩パルテノンの向こうに広がる多摩ニュータウンの歩道網はこれまで何度も歩いたことがあり,今朝もとくに何も考えずにずんずんと歩き読む:京極夏彦『妖怪の理 妖怪の檻』(2007年9月5日刊行,角川書店, ISBN:978-4-04-883984-6 → 目次)の「妖怪という言葉について」.これはケリがつかないよねえという感じがする.

しかし,それよりももっと厄介なことに,京極本を読みつつ歩き続けて,ふと気がつけばぜんぜん知らない住宅街に迷いこんでいた.ニュータウンの一角であることは確かなのだが,深奥部に入ってしまったのだろうか.住宅地図はところどころにあるのだが,定位ができないフシギな地図で,いくら歩いても同じ場所に戻ってきてしまう.これは怪談だなどといえば,圓了センセに叱り飛ばされるにちがいない.こういうときは道なりではなく,脇に入り込むにかぎる.やっと見覚えのある帰路にたどりつき,ホテルに戻ったときには1時間半も歩いていた.

◆ううむ,デジタルカメラもダメみたいね.単なるバッテリー切れかそれともワルいものが憑いたか…….

◆朝食をすませて,午後9時すぎにホテルをチェックアウト.南大沢はすでに人ごみで蒸し暑さも倍加していた.今日も真夏日になるのか.

◆午前10時半の定刻に講義開始.午前中は分散概念と確率分布の一般論の噺をする.そして昼休み.午後の〈R〉実習の準備をするために,実験室にい続けたのだが,持ってきたサンドイッチのまわりをショウジョウバエがぶんぶん飛び交う.まあ,場所が場所だし,ショウジョウバエの累代飼育で有名な研究室もあることだから,九月蝿いけれどもしかたないかとそのままにしておいた.午後1時半から講義の再開.〈R〉を用いたパラメトリック統計学の入門として,いくつかの確率分布のグラフを描画したり,無作為標本の性質,そして中心極限定理の〈R〉による計算例などなど.最後に時間があったので,来週の後半戦のために実験計画法のイントロについて触れたところで講義終了.

緊急避難的に借りた Win PC の〈R〉のバージョンが古かったので,日本語コメントが付けられなかったのは残念.今度来るときは DynaBook をもってくる予定なので,〈R〉はもちろん最新版にしてくる.

◆講義終了時に「それにしてもこの部屋はショウジョウバエが多いねえ.とくにそこの可燃物ポリバケツあたりが」と部屋の隅を指差したところ,学生が「それって……」と疑惑のポリバケツを取り囲み,中を開いたところ雲霞のごとくぶわっとショウジョウバエの“けむり”が立ち上る.どうやら,実験で使った生ゴミをそのまま捨ててしまって,それが栄養源になってここ数日の高温環境の中で大発生を招いたらしい.「わ,タマゴがいっぱい!」とのたまう女子学生とか(汗).ううむ,実験室はできれば清潔にしていただきたいな.よろしく.

◆夕方になっても蒸し暑さが濃密に漂う南大沢から帰路につく.不快指数高すぎ.次回来るときはぜひ涼しくなっていてほしいな.よろしく.※きのう成仏した PowerBook くんはどうやら保険で何とか修理をしてもらえることになったようだ.

◆とめどない疲労が服を着て京王線に乗っている —— 気分転換の1冊は京王多摩センター駅の啓文堂書店にて買った新刊:小学館辞典編集部(編)『句読点、記号・符号活用辞典』(2007年9月17日刊行, 小学館, ISBN:978-4-09-504176-6).句点「。」と読点「、」など punctuation に関する辞典.読点の中が白く抜けた「しろてん」とかまったく知らなかったし,2点リーダー「‥」と3点リーダー「…」の変遷,圏点のバラエティの豊かさなどなど.とても楽しい本.ひょっとして,今まで類書はぜんぜんなかったのではないだろうか.

◆やっとつくばにたどりついたのは午後7時過ぎのことだった.もう余力はないな,今日は.さて,電子の藻屑と消えた『本』連載原稿をなんとか復元しないことには音羽さまに手打ちにされてしまう…….

◆本日の総歩数=16682歩[うち「しっかり歩数」=11738歩/103分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


21 september 2007(金) ※ 南大沢ではPowerBookが宙を飛んだ

◆午前5時起床.晴れて,弱い南風が吹いている.しかし,ぜんぜん涼しくない.天気予報では今日の日中はたいへん不快な暑さになるそうだ.

◆8:32の TX 区間快速にて東京へ向かう.一泊二日だが,パソコンやら本やら資料で荷物がずっしりと重くなっている.秋葉原までの車中では,計量生物学会の特集号ゲラのチェックを完了:三中信宏「進化生物学と統計科学:系統樹の推定をめぐって」(計量生物学, 28[特別号1]: S25-S34, 2007).週明けにも編集部に返信しよう./丸の内オアゾの〈M & C Café〉にて連載原稿を書く.とりあえず1節分の1.5KBほどを書いてみる.うん,今回はこんな感じでしょ.うんうん.

◆エボデボ史 —— オアゾ丸善にて出会う:Manfred D. Laubichler and Jane Maienshein (eds.)『From Embryology to Evo-Devo: A History of Developmental Evolution』(2007年3月刊行, The MIT Press[Dibner Institute Studies in the History of Science and Technology], ISBN:978-0-262-12283-2).発生生物学を貫く“柱”はいったい何か.なかなかいい執筆陣だと思う.600ページほどもある大冊.

◆丸善の文房具売り場にて Filofax の来年度のイヤープランナーを買ってから,中央線で新宿まで.そして,京王線に乗り換えて,南大沢に向かう.蒸し暑い天気で確かに不快指数は極大化しつつある.午後1時すぎに南大沢にたどりついたので,駅前のスターバックスにて連載原稿の続き.第2節を書き始めて,これで2KBくらいかな.できればここにいる間に書き上げてしまいたいのだが.

◆【!緊急事態!】空飛ぶ PowerBook くんの運命やいかに —— 首都大学東京のキャンパスも暑かった.毎年のことながら,牧野標本館あたりで疲労感が漂い,理学部8号館に入るときには消耗する.鎖骨療養中の可知さんにあいさつしてから,講義室へ.学部の生物実験室を講義に使わせてもらう(去年もここだった).プレゼン用に持参した PowerBook をセットし,スライドを開いて,さあいつでもどーぞ,というまさにその瞬間,わが PowerBook くんはきれいに宙を飛び,物理法則にしたがって放物落下し,床の電源タップに激突したのだった.一瞬の鮮やかな事態になすすべもない.PowerBookくんの電源コードを足で実に力強く引っかけてくれた学生さんはその場で凝固し,ワタクシは生まれて初めて空を舞った PowerBook くんの安否を確認したのだが,再起動をかけたときは一瞬息を吹き返しそうになったものの,すぐに人事不省に陥り,HDDあたりから「きゅるきゅるっ」と異音を発して,心肺停止状態とあいなってしまった.諸行無常ですなあ…….※筐体の一部が“陥没骨折”したみたい.

こういうときのためにあらかじめ用意しておいたバックアップ用のUSBメモリーからプレゼン用ファイルたちを急遽借りた Win PC に移した上で,定刻よりも20分遅れの午後3時に講義を開始した.今日は統計学概論ということで,初っぱなのトラブルにもめげずに約2時間ほどの高座をつとめあげた.本日の講義終了後,PowerBook くんに再度の心臓マッサージを施したのだが,やはりハードディスクが読めないらしく,「泣きマック」(古いか)になってしまった.これじゃ植物状態だよねえ.

—— あ,『本』の連載原稿もみごとに消えてしまった…….

◆京王多摩センターに戻り,常宿の京王プラザホテル多摩にチェックイン.パソコンが昇天してしまったので,当面やることがない.〈山志菜〉で蕎麦をたぐってからホテルに戻ったもののやっぱりやることがない.フロントでPCを借りてはみたものの,マクラがちがうのでおちおち文章を書く気にならない.ミクシィに「こんなことがあって……」とちょろっと書いたら,思わぬ反響が国内外からいろいろと寄せられてビックリ.集計すれば,壇上でパソコンがコケたときには,第一の策は「バックアップを別マシンに移す」,第二の策は「ピュアに話芸で勝負する」ということかな.プロの噺家は高座で“パワーポイント”に頼ったりはしないのだ.

◆でもって,やっぱりやることがないので,午後9時すぎにはあっさりと寝てしまった.なんと健康的な夜であることか.

◆明日は朝から夕方までの講義がある.

◆本日の総歩数=9770歩[うち「しっかり歩数」=2460歩/23分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/+0.8%.


20 september 2007(木) ※ 【 】よ人の望みの喜びよ(またか)

◆午前4時50分起床.無風の暁.朝日がまぶしい.

◆エアポケットのような平日だが,今日は本来は振替休日なので働いてはいけないのだ.しかし,そうも言っていられないので,午前中だけ研究所にちょろっと顔を出す.そこを見透かされたように山盛的諸事が机の上に溜まっていてですねー —— 来月始めにエポカルである植物病理関係の学会での講演について「パワーポイントでプレゼンされると思いますが」と訊いてきたので,延髄反射で「いえいえ不肖ミナカは pdf で噺をいたします」と返事したら,「ではさっそく Acrobat をインストールいたします」とのこと.アクロバットってどの PC にも入っているはずじゃなかったっけ(少なくとも Acrobat Reader は)./先週のツリーファイルに関する質問への応答./ 計量生物学会から特集号のゲラが届いていた.今月28日までに返却とのこと./ 男女共同参画に関する名古屋シンポジウムの参加登録をうだうだという連絡./ 来月の京大・湯川シンポジウムのトークに関する時間配分の連絡./ 生科連のシンポジウムも10月にありまっせーという連絡./ 進化学会の高校生ポスター賞の賞状にハンコをぽんぽん押して即返送完了./ 来年度の研究室購入雑誌の申請用紙がひらひらしている./ モパニムシにあっさり釣られたワタクシは10月3日の午前11時に本郷〈ルオー〉に誘引されたりする./ 共済組合員証の更新がすんだので取りにこいとの事務連絡あり.

—— ごく短時間のうちに飽和したので,正午前に早々に退散する.気温29.8度.限りなく真夏日に近い.午後はもちろん“夏”の再来だろう.

◆献本感謝 —— 以前,お知らせいただいた本が送られてきました.どうもありがとうございました:樋口千洋・石井一夫『統計解析環境Rによるバイオインフォマティクスデータ解析:Bioconductorを用いたゲノムスケールのデータマイニング〔CD-ROM付〕』(2007年9月25日刊行, 共立出版, ISBN:978-4-320-05659-6 → 版元ページ).今年に入って〈R〉によるバイオインフォマティクスの本が(本書を含めて)日本でも出始めたが,根付きつつある分野なのでしょうか.ぼくは本書で照り上げられている「Bioconductor」はまだ使ったことがないのだけれど,ユーザーは多いそうだ.ざっとブラウズした感じでは,前半は〈R〉の入門,後半で Bioconductor やバイオインフォマティクスの話題が出てくる.添付のCD-ROMは S-Plus なのですね.

◆昼食は遠東の〈風土庵〉にて.最近のつくばにはこういう古民家を改築したレストランがぽつぽつとでき始めている.席数はどこも少ないので予約しないと入れないことが多い.京都市内にたくさんある“町家”風のアレとおんなじです.しかし,“町家”特有の心地よい狭さはつくばでは期待されていないようで,築何十年も経ってそうな家の大木のような梁やら柱をそのまま生かした内装が標準のようだ.

◆南大沢巡業の準備 —— 明日からの2日間と来週末の2日間は,首都大学東京で生物統計学の集中講義がある.1.5時×12コマという時間数だが,初日の明日だけは,始まりが午後2時40分なので,時間調整をする必要がある.今の予定では,21日(金)は14:40〜17:00,22日(土)は10:30〜17:00,そして来週は,28日(金)が10:30〜17:00で,最終日の29日(土)は10:30〜16:00とします./ 南大沢からメールが届き,受講生名簿と明日の段取りについて詰める.午前中はどこかの隠れ家で連載原稿が書けるだろう(と思いたい).

◆酷暑の午後が過ぎて,夕闇とともにやっと気温が下がり始める.

◆【 】よ人の望みの喜びよ —— 先の進化学会京都大会での WS04 では,高校生ポスター発表の審査があったので,講演順序を最初に変更してもらい,アジ演説だけしてそのままトンズラしてしまったので,その後のワークショップの経緯についてはよくわからなかった.さいわい,オーガナイザーのお一人だった藤井恒さんが,当日の総括をブログに書いておられるのに今日になって気づいた(→「BIO ONLINE AC」2007年9月8日記事).ワタクシのあとはそれなりにおもしろい展開になったようで,やはり【 】に関してはいわく言いがたいオーラがつねに立ち上っているのだなあという感慨を新たにした.

冒頭のぼくの講演ではただひと言「【 】は幻想だ」と言ったに過ぎなかったが,それがある演者には“着火剤”となったようで,ワクワクする展開があったとのこと.ぼくがその場にいたら「灰」になるまで完全燃焼させてあげただろうに.とりわけ,“【 】”というカッコ付きがよろしくなかったようで,せっかくぼくが魔除けの御札としてカッコを付けてあげたのに,それを軽率にも剥がしてしまうから魔がさしてしまったんじゃないでしょうか.これからは,ご自分の健康のため,【 】にはカッコの御札を必ず貼るようにしましょーね.除霊のカッコが効いているかぎり,【 】はワルサをしないでしょう.なお,“「 」”は御札の効力としては一段落ちますね.やっぱり“【 】”にかぎります.

何年も前から,ぼくは【 】という記法を心がけてきた.別に他人に強要した覚えはないのだが,その後のようすをたどってみると,“むき出し”のままではなく,何らかのカッコを付けているケースが目につく.そのあたりの心情はどうなっているのでしょうね.

◆さて,明日からの巡業の旅支度をしないと.

◆本日の総歩数=3522歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.3kg/+0.8%.


19 september 2007(水) ※ またランダム雲隠れして本郷で原稿

◆午前5時前に起床.風もない夜明け前の薄明に,虫がすだくのみ.秋本番.しだいに東の空が明るくなり,斑雲が浮き立つ.南から風が通り始める.

◆8時頃になって風向きが変わり,今度は北東風が強くなってきた.〈R〉の〈nlme〉パッケージをいじってみる.固定効果とランダム効果の影響について.やはり,一般線形モデルへの橋渡しとして,実験計画の事例のいくつかを混合効果モデルの観点から説明するという段階があってもよさそうだ.「lme」コマンドでできるところまで.またスライドをつくらないとか.

◆今日は本郷に出張.9:41 の TX 快速で根津へ.晴れて暑くなってきた.まずは御白州なしの〈ルオー〉にて,さらなる〈R〉探検をし,その後,『本』の連載原稿をものし始める.タイトルがないことには書けないので,あれやこれやと考えてみる.

◆正午前に,東大農学部の隠れ部屋に潜り込み,原稿の続き.しかし,ほどなく専攻の歓迎昼食会が始まったので,7号館7階の会議室に向かう.寄付講座の助教として着任された方の歓迎会だ.いったんお開き.1時過ぎに同じ部屋で教員会議が始まる.さくさくと議事が進み,午後2時半にお開きになる.隠れ部屋にて〈lme4〉と〈Matrix〉をダウンロードし,混合効果モデルについてさらなる探索の旅路を1時間ほど.

備忘メモ —— 10月3日(水)の修論中間発表は午後1時開始.また,発表会終了後の午後6時から専攻交流会(という名の飲み会)がある.

◆午後4時前に不忍通りに下って千駄木から乗る.北千住で16:41発の TX 快速に乗った.雲が急に厚くなってきた.流山付近で通り雨が降っていたが,つくばに着いたら晴れていた.北東風が心地よい.

◆何頭もの“トド”が並走するのは確かに精神衛生上あまり好ましいことではないが,ある“トド”で行き詰まったときの現実逃避“トド”が脇にいるので,意外にも相乗的に進捗してしまったりする.

というわけで,“原稿”がはかどらなければ“スライド”だ.日が変わる前に,またまた新作スライドを20枚もつくってしまった.これで実験区配置に関する「ネスト」と「クロス」は大丈夫.ネスト分散分析の事例として「スプリット・プロット(分割区法)」,クロス分散分析の例として「ストリップ・プロット(細分区法)」を取り上げたので,いったんは捨ててしまったこれらの事例を救出することができたのは幸いだった.

Faraway本では,クロス分散分析の実例として「ラテン方画(Latin square)」が出されているが,あまり一般的ではないだろう.もちろん,ストリップ・プロットだって特殊は特殊だが,実験区レイアウトが“一目でわかる”というのは圃場実験のよさでしょ.

◆いずれにせよ連載原稿を書かないと…….明日締め切りなんですけど…….円了センセに助けていただこうか.

◆本日の総歩数=8811歩[うち「しっかり歩数」=4214歩/39分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/−0.9%.


18 september 2007(火) ※ 平日復帰とフェイントかけて恵比寿

◆午前4時半起床.曇り.北東の風が強い.気温22.2度.

◆久しぶりに平日復帰した午前のこまごま —— 日本進化学会の自然史学会連合への加入状況に関する事務メール./ 系統樹質問お答え./ ご指摘いただいた日録リンクの訂正./ モパニムシに釣られるワタシ./ 統計研修テキストとスライドの一挙プリントアウトと関係連絡先に配布依頼を出しまくる.みなさん,よろしく./ 北大の兼業申請書提出./ トド.東大ES特論の出席リストとハンドアウト公開.早くっ.

◆午後は年休をとって,東京へ.午後1時41分発の TX 快速に乗り,恵比寿に着いたのは午後3時過ぎのこと.動く歩道を延々と歩いた先の恵比寿ガーデンプレイスにて所用.午後5時半に終わる.最節約系統樹計算に関するディスカッションしばし.BALANCE の同長解の保持について.さらに,T.N.T. の sectorial search / tree-fusing の意味(意義)について.初期系統樹を組み上げるわざあれこれ.会議終了後,道草なくそのまま TX でつくばに直帰.午後7時半に帰り着く.北東の風がびゅーびゅーと.昼間はやや蒸し暑かったが,夜は快適.

◆車中読書 —— 市原清志・岩本美江子『カラーイメージで学ぶ統計学の基礎』(2006年10月16日刊行,日本教育研究センター,ISBN:4-89026-123-0 → 目次).買ったまま放置していたのだが,いくつかの高座が近づきつつあるので読み始める.タイトルにも銘打たれているように,カラーイラストがふんだんに使われている初等統計学の本.思考実験や現実実験を通した統計学概念の理解を深める工夫がされている.中心極限定理の〈R〉によるデモは意外に簡単かもしれない.読了.

◆じたばた LaTeX の2冊 —— 奥村晴彦『[改訂版]LaTeX2ε美文書作成入門』(2000年7月25日刊行, 技術評論社, ISBN:4-7741-1107-4).よく売れている教科書のようで,最新版の「第4版」(→サポートページ)も買ったのだが,研究室のどこかの“本の山”の中に埋もれてしまっている…….自宅にあるこの「第2版」についていえば,確かに詳しく書いてあるのだが,索引がイマイチ詳しくないので,辞書的に引きづらいな.ぼくの当面の目的は,文書全体を LaTeX で書くのではなく,「数式エディタ」としてのちょこっと利用のみなので./ 本田知亮『LaTex2ε標準コマンド:ポケットリファレンス』(2005年7月25日刊行, 技術評論社, ISBN:4-7741-2423-0).そうそう,むしろこういう“辞書”的な編み方の方が今のぼくにはぴったりなのでした.

◆スライド作成マシンの独白 —— 実験計画法の「分割区法(Split-plot)」と「細分区法(Strip-plot)」は,今回のスライドからは除外しようと最初は考えていたのだが,Julian James Faraway『Extending the Linear Model With R : Generalized Linear, Mixed Effects and Nonparametric Regression Models』(2006年刊行,Chapman and Hall / CRC[Texts in Statistical Science Series 66], ISBN:158488424 → 目次著者サイト)の第8章「Random Effects」を読んでいて,これらの「ネスト化」された実験区の配置は,混合効果(mixed effects)モデルのいい説明例になるようだ.

いわゆる「ネスト分散分析(nested ANOVA)」についてはすでに解説を公開しているのだが,これも含めて混合効果モデルの事例として出せば,すでにスライドをつくってある「固定効果(fixed effects)」によるモデル化の先にある「ランダム効果(random effects)」の具体例になるだろう.Faraway 本だと,〈R〉に標準で付いてくる〈nlme〉バッケージのコマンド「lme」ではなく,その上位版の〈lme4〉をダウンロードしてそのコマンド「lmer」を使っている.とりあえずは〈nlme〉でやれるかどうか確認しよう.

◆明日は,本郷で教員会議あり.その前に,寄付講座に新しい方が来られたことを歓迎する昼食会がある.午前中は隠れ部屋かまたは独房にて『本』の連載原稿を書く予定.

◆北風が一段と強くなったかと思ったら,急に無風になる.秋の気配が深まる.23:00.

◆本日の総歩数=9359歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=+0.1kg/+0.4%.


17 september 2007(月) ※ 連休最終日もねじり鉢巻でスライド

◆午前7時過ぎまで寝過ごしてしまう.晴れ.強い南風が湿気とともに襲来する.体感的には涼しいように錯覚するが,実は気温は高い(にちがいない).

◆しかし,風が吹こうが槍が降ろうがスライドづくりに終わりはない.またまた,机に齧りつく朝.今日中に実験計画法のスライドをつくらないことにはどうしようもない.ところが,“手書き率”が極端に高いので,作業は遅々として進まず.LaTeXiT と〈R〉のグラフィクスと InDesign とを行き来しつつ.

◆昨日と同じく,今日も外は南からの“熱波”が吹いている.正午前後にちょっとだけ外に出たものの,生存空間がどこにもないことを知って,即撤収する.

◆午後7時までかかって,やっと完全無作為化法の説明スライドまでつくった.まずは35枚.しかし,まだ先がある.LaTeX からの数式貼りこみはラクでいいな.数式の組版がまだ力不足で頻繁にエラーが出るのだが,元がほとんど“地べた”なので,吸収力は高い.だから,擬似的達成感はとても強い.また,InDesign の作表機能というものを初めて使ってみた.ユーザー側がまだたどたどしいが,ちょこっと作表するには便利かも.セル内の組版が(もちろん)InDesign なので欲求が不満しないのもよろし.

◆午後11時をまわってやっと作業終了.2要因の乱塊法までスライドをつくり終えた.ほんとうは分割区法(split-plot)と細分区法(strip-plot)の分が残っているのだが,ここ数年の統計研修ではこれらの実験レイアウトを講義の中で説明することはなくなった.むしろ,〈R〉の実習の中で,実際に線形モデルを立てて計算をする過程で勉強した方がいいだろう.というわけで,この二つについてはスライドから削除した(配布資料には説明とともに残されたが).

—— 実験計画法の新作スライドは60枚ちょうど.これで,この三連休中につくったスライドの総枚数は 61+20+60=141枚ということになった.「多重比較」「等分散性」「一般化線形モデル」の三つについては,まだ“手書き”のまま放置されている.しかし,そこまで手を伸ばすだけの時間はない.実際に統計高座が始まるまでに,順次アップデートしていくことにしよう.

◆本日の総歩数=1647歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/−1.2%.


16 september 2007(日) ※ LaTeX 地獄に舞い飛ぶ高座スライド

◆午前5時過ぎにいったん目が覚めたものの,昨夜が遅過ぎたので,再度ご就寝.午前7時前に本格起床.強い南風が吹き抜けている.日が昇るとともに,気温は急上昇.それにしても居住性の悪い国だ.

◆起きてすぐにスライドづくりにとりかかる.昨日の格闘の成果が少しはあったのか,LaTeXiT まわりの作業がラクになってきた.しかし,これまで使ってきた旧スライドを眺めているうちに,あれもこれもと突っ込み始めたものだから,枚数が急激に増加.分散の定義だけの予定だったのに,パラメトリック統計学での分散パラメータとその不偏推定量だの,期待値オペレーターだのというイバラの道に迷い込んでしまう.結局,昼をはさんで午後4時までかかって61枚の新しいスライドをつくり終える.ちなみに,旧版の対応する手書きスライドはたった10枚だ.この増殖ぶりは尋常ではない.

—— まだ,実験計画法と確率分布,そして一般化線形モデルのスライドのアップデートが必要なのだが,それまでに燃え尽きそうな気配あり.

◆今日も,終日,厳しい残暑が続き,南からの熱風は止まず.

◆夜は,正規分布を中心とする確率分布の説明スライドをつくる.午前2時前に20枚の新しいスライドを書き上げて,本日のお仕事はおしまい.ワタクシももうおしまい…….

◆本日の総歩数=527歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/−1.2%.


15 september 2007(土) ※ いきなり始まる統計教材づくりの連休

◆午前5時15分起床.曇り.北寄りの風が涼しい.のち,晴れてくる.

◆朝からいきなり統計資料づくりに没頭する.考えてみれば,今年度にお呼びがかかっている統計高座の教材とかスライドは“一石四鳥”くらいの効率のよさで共有できる.この機会に,大幅なアップデートをしないといけないと昨日から考えていたのだが,よく考える前にさっさと始めた方がいいに決まっている.

—— ということで,朝から,InDesign と LaTeXiT を立ち上げ,これまでぼくが統計噺で使ってきたスライドや教材の洗い直しの開始.アップデートした順番に更新教材を列挙すると:

  • 「計算機統計学」:元集団からのサンプリングとデータ集団からのリサンプリングを対比できるような正規乱数の事例と〈R〉プログラムを追加した.[午前10時完了]
  • 「統計学概論」:あまり変更箇所はない.[午前10時半完了]
  • 「実験計画法」:これまたほとんど変更箇所なし.[午前11時完了]
  • 「R分散分析」:マイナーな変更のみ.[午前11時完了]
  • 「多変量解析概論」:新しい文献を追加した.[午後1時半完了]
  • 「R入門」:紹介文の更新などを少しばかり.[午後6時半完了]
  • 「一般化線形モデル」:大幅な追加と参考文献の追加.AICに基づくモデル選択のデモと線形モデルの一般化に関する補足説明を付け加えた.[午後9時半完了]

◆昼前に,髪を切りに行った.この残暑の厳しさは格別だ.南から強い熱風が吹き込み,逃げ場がない.今日は運動会が開催されている学校がつくばでは多いが,がまん大会だろうなあ.切るもん切ってさっさと帰宅.

◆夜は,統計スライドのアップデート.これがたいへんな作業になった.過去につくった OHP をスキャンしたスライドをそのまま使ってきたのだが,さすがに下手な手書きではよろしくないと考えたのがアップデートのそもそもの動機だった.とりあえず“手書き率”が最も高かった「分散概念」の説明スライドを一枚一枚 LaTeXiT で数式を整形していく.InDesign に貼り込むので,最初は LaTeXiT から数式を eps に出力して,それを InDesign で開いていたのだが,手間はかかるは eps 出力が頻繁にコケるはで,作業能率がゼツアク.次善の策として LaTeXiT の“窓”を画面キャプチャーして png にした上で,InDesign に送り込むというふうにしたら,多少はラクになった.LaTeX のさまざまな「わざ」もだいぶ忘れてしまっていたので,LaTeX本を脇に開いて作業する夜中 —— 結局,午前1時半までねばって「分散概念」スライドの半分までは仕上げたが,まだまだやな.

◆せっかくの三連休に何をやったはることやら…….明日も作業続行だ.

◆本日の総歩数=1199歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+0.3%.


14 september 2007(金) ※ 「ホネの部屋」で統計学の噺をする

◆午前5時にいったん目覚めるも再び居眠り.5時半に再度起床する.曇り.風はなく湿度が高め.

◆本郷統計高座 —— 8:12 の TX 区間快速で根津に向かう.車中では Conway Morris の訳文チェック.9時20分に赤札堂の向かいに出る.東大農学部の隠れ部屋でひっそりと講義準備.午前10時から7号館の113号室にて,生物・環境工学専攻〈エコロジカルセイフティー学特論II〉の始まり.プロジェクタ装置の鍵を教務まで借出しにいってもらったりする.今年の講義は「生物統計学」で,これから夕方まで計5時間の集中講義になる.受講生は修士1年が20名ほど登録している.午前中は概論を2時間ノンストップでしゃべる.そういえば休憩をまったくとらなかった.正午前に終わりにして昼休み.

◆外は晴れて蒸し暑い.なかなか厳しいな.隠れ部屋に舞い戻り,夕刻の“御白州”に向けて Conway Morris の翻訳に朱を入れたりする.しかし,1時間しかないのでぜーんぜん進みません(とほほ).

◆午後1時20分から講義再開.午前中は専攻の講義室が使えたのだが,午後は別件の講義が入っているらしく,3号館の別室(217号室)に移動する.行くまで知らなかったのだが,ここは獣医学科の実習室らしく,部屋中に「ホネ」が散らばっている.水牛のホネやら,牛馬のホネ,もっと小さい脊椎動物の骨格標本も.棚には頭蓋骨や大腿骨がずら〜り.講義している最中も,すぐ脇で頭蓋骨たちがにやにや笑っているので,あまり安息できる環境ではない.現世の“無常”を演出するため,ホネをあしらって記念写真を撮ったりする.受講生も他学科のこの部屋には入ったことがないという.それはワタシも同じです.

午後の講義は,正規分布に基づくパラメトリック統計学の説明として,まずはじめに線形モデル(LM)を取り上げ,分散分析を例として説明する(1.5時間).その後,一般化線形モデル(GLM)の理念について簡単に説明し(0.5時間),最後に,ノンパラメトリック統計学の事例として computer-intensive なリサンプリングの手法(bootstrap と jackknife)を〈R〉を用いて説明した(1時間).密な内容だったかもしれないが,さらっと流すわけにもいかず,かといって深入りもできない「5時間」という講義時間はいささか中途半端かもしれない.レポート課題とハンドアウトは後ほどお知らせします.>受講生のみなさん.

◆この秋は,首都大・東大駒場・統計研修・大分高座と統計学のお座敷がいくつもかかっている.プレゼン用のスライドもそろそろ賞味期限が切れてきたものがいくつかあるのだが,とくにOHPをスキャンした「手書き」のスライドはもう使えないことがわかったので,一念発起してつくり直すことにしよう.

◆いったん隠れ部屋に引き上げてから,〈ルオー〉の“御白州”にとぼとぼと歩いていく.夕方になってもまだ蒸し暑さが残っている.音羽のお代官様が姫君をお連れになってすでに到着されていた.Conway Morris の翻訳原稿はぜーんぜん進んでませんと白状して,最初の2ページ分の朱の入れ具合を見せる.月末までに第2章まで仕上げるようにとの温情ある御裁きをいただいた.ありがたやありがたや.その後,姫君と学術文庫に関するお話しをしばし.個人的には圓了か常一が文庫化されるとうれしいな.アラマタ系の絶版図版本もいいな.

◆午後6時11分に北千住を出る区間快速に乗り込み,つくばへ直帰.夕方から夜に書けては,北東の風が通り抜けしのぎやすくなった.Gustave Lorentz を1本ほど呑んで,しばし極楽.

◆明日からは三連休だが,堆積した仕事を掘り崩すのみ.

◆本日の総歩数=10126歩[うち「しっかり歩数」=1642歩/16分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/+0.5%.


13 september 2007(木) ※ 秋風に吹かれて再びえすばにょーる

◆午前5時20分起床.夜明け前の秋の風情.虫の声と北風.この涼しさは快適.おそらく20度を下回る最低気温だろう.

◆早朝のメモ —— ラチェットに関する備忘メモを公開した.これでもうまごつく心配はなくなったぞ.

◆秋晴れの中をJICAに向かう.二宮幼稚園では運動会だ.つくばの多くの公立学校では9月初めの残暑の中で運動会をやるのだが,1週間ずらすだけでこんなにちがうものか.9時半過ぎに高野台の JICA 国際センターに到着.今日は〈R〉を使っての実習なので,講義棟ではなく,宿泊施設のある本部棟のパソコン室での講義だ.ときどきこの実習室を使うことがあるので,その年度は全パソコンに〈R〉がインストールされるのだが,JICA は割に頻繁にすべてのパソコンを一挙に交換するという荒技を出してくるので,次の機会に〈R〉がそのまま使える保証はない.

今年も,PC がすべて更新されていたので,イチからのインストールと言うことになる.ところが,パソコン実習室であるにもかかわらず,インターネットにはつながっていない.セキュリティを考えての措置だろうか.別室の「つながったパソコン」を使わせてもらって,やっと〈R〉の ver. 2.5.1 をダウンロードし,インストーラーを USB メモリーで研修生に配布する.でもって,またまたスペイン語 WinXP との格闘が始まり,拡張子表示に関するシステム側の変更とか,アクセス権のある領域の確認とか,こまごま.さらに,インストールした〈R〉側の設定とか,作業ディレクトリの変更とか,さらなるこまごま.

結局,もってきたテストデータを配布して,エクセルのデータを〈R〉に読み込ませる手順を示しただけで午前中の講義は終わってしまった.

◆昼間の日射しは強い.牧園の〈davidpain〉でスミラーのほっぺをつんつんしてから,研究所に戻り,またこまごまと —— 年休届(9月18日午後と10月5日全日)の提出./ 来週から始まる首都大学東京での集中講義に伴う「勤務を要しない日」の届出.兼業のときは毎回この書式を提出する./ 最節約系統樹計算に関する電話連絡.すっぴんの PAUP* ではどんなに時間をかけてもスコアは「159」以下にならないが,BALANCE は約20秒の探索で「158」の解に到達する.きのう自分で計算してみたところでは,PAUPRat を使えば PAUP* でも同様に「158」に到達できるが,手間と時間はもっとかかっている.野生外群と栽培内群の情報が近日中に届く.

◆午後1時半から,再び JICA での講義.今回の〈R〉講義には,体系学の業界でもその名を知られている Ramón Díaz-Uriarte のハンドアウト「Introducción al uso y programación del sistema estadístico R」を副教材として用いた.プレゼン用スライドをそのままハンドアウトにしているみたいだが,けっこうな情報量が詰められている.このまま使うのはムリがあるので,前半の導入部の節のみを使わせてもらう(後半は cross-validation ネタがいろいろと).午後4時に講義終了.

◆今日も夕焼け.農環研の戻らず直帰する.明日は東大で生物統計学の集中講義があるが,プレゼン用のものたちはすべて持参した.

◆夜は,明日の講義準備を進め,その後の“御白州”のための白装束を用意する(……).北の風がかなり涼しい.

◆本日の総歩数=5658歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−1.4%.


12 september 2007(水) ※ 明け方からの大雨で凹地は水浸し

◆午前4時半起床.外は雨がざあざあ降っている.北の風.気温21.8度.涼しくなったものだ.熱帯夜が連続したのはついこないだだった.出水に弱いつくばは“へこみ”ごとに水たまり(というかミニ池)ができていて,車道・歩道を問わず通行に支障がある.この水はけの悪さは特筆ものだ.幹線の国道でも水深十センチくらいの溜まり水が随所にあってハンドルを取られるし,道路を下からくぐる箇所などはまちがいなく冠水している.農林団地に入ってからも安心はできない.広大な“池”がトツジョとして道路に出現するので,そのつどあわててしまうから.

◆午前のこまごま(小トド撃ち) —— 大分統計巡業に関する事務的なことども.大分といえばやはり麦焼酎でしょうか(何のこっちゃ).依頼出張なので,謝金はゼロということです./ 東京農大の狂乱の収穫祭は文化の日前後だそうだ./ 今年の統計高座シーズンに向けて〈租界〉のアップデートをしないといけないな./ 9月18日(火)の午後の予定を詰める.

◆午前9時頃になって雨足が強くなる.ほとんど土砂降りだ.南風も強い.低気圧がちょうど通り抜けているのだろう.1時間ほどで小降りになる.午前10時の気温は19.5度.20度を下回ったのは久しぶりのこと.

◆幻の「モパニムシ」ストラップ —— 昨日書評を書いた:野中健一『虫食む人々の暮らし』(2007年8月30日刊行, NHK出版[NHK Books 1091], ISBN:978-4-14-091091-7 → 書評目次)のイラストレーターである柳原望さんのブログ〈つれづれやな〉の8月29日付記事によると,本書にも登場する南アフリカの「モパニムシ」でつくったストラップ(著者が一家総出でつくったそうな)が都内某書店でプレゼントされていたが,あっという間になくなってしまったとか.ほしかったなあ……./ 書評を公開したことを,NHK出版の担当編集者氏に知らせる./ ついでに,久しぶりのML配信をば.

◆昼下がりの相談室 —— 午後1時過ぎから系統コンサルティング.オオムギの分子系統について,テストデータをもらった.結果は明日には出ます.関係者にメールで連絡して段取りを整える.100 OTU でノイズが多く,すっぴんの PAUP* ではややきついようだ.TBR branch-swapping にやたら時間がかかっている.これは PAUP ratchet の出番だ.久々に PAUPrat を起動したものだからまごまごしてしまった.使わない「ワザ」はどんどん忘れてしまう.以前使ったときの備忘メモが残っていたので助かった.こういうメモはどんどん公開した方がいいに決まっている(>自分のため).あとで html にしておこう./ Olia さんが飛び込みで質問.三つ目の線虫論文を用意しているので,またよろしくとのこと.滞日の間にいったい何本のペーパーを仕上げるつもりだろう.ILD 検定が必要かもしれない.

◆午後のこまごま —— 男女共同参画シンポジウムに出席する交通費を進化学会から払ってもらうための事務手続き.完了./ メーリングリストの全文検索がうまくいかないという連絡.認証のところでトラブるらしい.原因不明なので英知あるいは神託を求めることにしよう./ 生物学哲学の研究会が10月14日(日)に開催されるという情報.科学基礎論学会の翌日.慶應義塾大学にて.ただし,ワタシは翌日からの湯川シンポジウムのため京都に行かなければならないので,部分参加かなあ.

◆「モパニムシ」は忘れぬうちにやってくる —— 午後3時には雲間から青空が見えるようになった.NHK出版編集部より返事があり,「モパニムシ」ストラップが在庫ありなので,いただけるとのうれしいメッセージが.「つきましては,NHK Books からぜひ1冊……」という但し書き付き(汗).モパニムシにあえなく釣られるのか.ワタクシは.

◆夕焼け小焼けの MacPro —— 見事な夕焼けだった.ふと魔がさして,前年度末の3月に到着したまま,未開封で半年も放置してあった MacPro「Quad Xeon」のセットアップを始めてしまう.しかし,まずは本どもで埋まった机を“整地”してスペースをつくらないことにはどうしようもない.とりあえず長年の闘病ののちついに力尽きた G3 を廃棄して,その空きニッチの周囲を“整地”し MacPro をドカッと据え付けることにする.それにしても筐体でかすぎ.ファン大き過ぎ.branch-swapping で熱風が排気されたりするんでしょーか.2時間ほど格闘して,すべての接続などなどを滞りなく完了.午後7時前には「使える状態」になった.しかし,ソフトなどなどのインストールがぜんぜんすんでいないので,しばらくはゆっくりくつろいでもらうことにしよう.これまでデスクトップで長年使ってきた G4 はまだトラブルもなくよく働いてくれているが,たまに「再起動」の半透明画面が出ることがある.とりわけ mi を起動すると即フリーズするという病状はまったく直っていない.そろそろ乗り換えの時期であることは確かだ.

—— むしろ問題は“整地”したあとの“土砂”をどこに積み上げるかということでして…….パートさんには,「そろそろ本棚買わないとダメよ」とスルドイ釘を刺されるし.とりあえずは,奥の目立たないところにそっと押し込むことで許してもらおう.※ぜんぜん根本的解決になっていないともいう.

◆夕焼けの中を帰宅.風が涼しい.今夜はきっと気持ちよく寝られるにちがいない.しかし,その前に.明日の JICA の estadistica 講義準備と明後日の東大「ES特論II」の準備をあわせてすまさないと.どちらも統計学の噺だからあたふたすることはないのだが,心の準備くらいはしておかないとね.

◆本日の総歩数=5304歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+0.1%.


11 september 2007(火) ※ 猫娘に歯向かっても勝算は全然ない

◆午前4時半起床.湿った北の風が通り抜ける.涼しいがフローリングの床がべたべたしてくる.気温24.0度.夜中に雨が降ったようだが,今は小降りになっている.のち曇り空ときどき小雨.

◆早朝の決着 —— 茗荷谷からの鶴の一声により,そのまま“正面突破”することになった.フォーマルな報告よりは,新入学会の「挨拶」の方が大切でしょうとのこと.男女共同参画学協会連絡会の事務局にその旨をメールする.なくなった数時間はこれで活かされることになった.善哉善哉.

◆線虫に絡みつかれる午前 —— Olia さんから送られてきた線虫の分子系統論文のディスカッションの節に加筆する.クレードの信頼性に関しては問題ないと思われるので,系統関係と従来の分類体系に関する再考についてコメントを.これで大丈夫かな.対象線虫の分類群のランクが問題だと Olia さんは言うのだが,その点については分類学者にまかせよう.むしろ,最適系統樹の上での単系統性と姉妹群関係だけに注目する.午後1時から短時間ミーティングの予定.

◆朝のごたごた —— さて,車に乗るべいとタイヤを見たらぺったんこになっててですねえ…….その足でずるずるとガソリンスタンドに直行し,給油と格安のタイヤに交換する(側面が裂けていたそうだ).まったく運がないよねえ.11時の気温は23.9度(明け方よりも低い).曇って涼しい.

◆午前のこまごま —— 鶴の一声が効いたのか,ポスターの件はそのままでOKということになった.

◆曇天続く.しかし,気温が低めなので,不快指数は低い.この夏はあまりに暑かったので,日中の徘徊ウォーキングはやめていたのだが,そろそろ再開してもよさそうな季節だ.今日から始めるか.ということで,久しぶりの昼休み徘徊:野中健一『虫食む人々の暮らし』(2007年8月30日刊行, NHK出版[NHK Books 1091], ISBN:978-4-14-091091-7 → 書評目次)を読了する.とても楽しい「昆虫食」の紀行本だ.昆虫食に親しんだ著者自身の生い立ちから出発し,南アフリカのカラハリ砂漠での長期フィールドワークを経験し,「ずぶずぶ隊」を率いて進軍するラオスではツムギアリに局部を噛まれ,中国・雲南地方にかけてのアジア東南部を経て,再び日本に戻って自らに向かい合う.「虫を食べる文化」のもついくつかの様相を本書を通じて知ることになる.

本書は,単なる「ゲテモノ食」の突撃レポート本ではない.前書:野中健一『民族昆虫学:昆虫食の自然誌』(2005年11月16日刊行,東京大学出版会,ISBN:4-13-060185-7 → 目次書評版元ページ)で著者が訪れた地域と重なりを見せながらも,その後の知見を加えて一般向けに「昆虫食文化」を説く.昆虫学者による昆虫食の本は何冊かあるが,民俗生物学や文化人類学の観点からの切り口が著者の魅力だろう.栄養源としての昆虫資源というだけではなく,それぞれの地域ごとの社会や文化を構成するひとつの要素として「昆虫食」をとらえると言ってしまっては硬すぎるかもしれない.要するに,それぞれの社会でどのように虫を美味く喰っているかということだ.

カラハリ砂漠のエビガラスズメの幼虫(現地名ギューノー)は“ゴー”な美味さと“コムコム”な舌触りが絶品だという(p. 85).東南アジアの巨大なカメムシはその臭さは確かにきついのだが,生でかじると“キュー”なおとなの味わいがこたえられないという(pp. 121, 125).しかも,この国ではカメムシは比類のない“マン”な美味さで大人気の食材なのだそうだ(p. 117).日本のスズメバチ(信州のヘボ)も負けてはいない.生で,佃煮で,そして松茸と並んで鮨にもなるという.日本の伝統社会の中で食材としての昆虫がもっている地位の高さは驚くばかりである.ましてや,世界の中での昆虫食の広がりと深さははかりしれない.

ラオスでは,農耕用に飼育されている水牛の糞を丸める巨大なフンチュウ(糞虫)まで食べるという.著者は,その味わいを自分の舌で味わうためにたいへんな努力をし,その過程の試行錯誤は周囲の“一般人”にはたいへんな迷惑だったという.巨大なフン球の中で糞を食べながら育った幼虫が,蛹化する直前に胃の中の糞をすべて吐き出すその一瞬が“食べごろ”なのだという.それを発見した現地の人たちの執念とそれを伝える食文化の奥深さはもちろん,それを追体験しようとし続ける著者の好奇心の強さには脱帽せざるをえない.さぞかし美味いにちがいない.

もちろん,世の多くの人々が「蟲を喰う」ことに関してきわめて消極的であることを著者はよく知っている.その上でなお,著者は「蟲は美味い」と言ってしまう.大学の講義の中で学生に昆虫食を体験させるというのは賭けに近い試行だったのではないだろうか.しかし,それ以上に,「蟲を味わう」ときの微妙な食感や味覚をどのように伝えられているのかを本書を手に取った読者はぜひ疑似体験してほしい.もちろん食慾に負けてはいけない.著者が最後に言うように,「虫食む人々」は人間社会と昆虫世界とを同列に見通す視線をもっているという(p. 206).少しでもその視線を共有できれば,アナタももうりっぱな蟲喰いだ.

◆晴れから曇りに下る午後のこまごま —— Olia さんが来室.論文原稿についていくつか補筆の必要が出てきた.がしがしと数パラグラフに加筆して返信./ 午後3時から1時間ほど,〈形態測定学講義〉の輪読40回目.今回から次の第14章「Morphometrics and systematics」に入る(pp. 363-367).形態測定学が体系学ともち得る接点としては,分類学と系統学そして進化学の三つがあると指摘される.最初の部分では,分類学的な同定(identification)に焦点を当てる.正準変量分析(CVA)を用いた解析例が提示され,種間の判別ができたとしても,必ずしも検索表(key)が自動的に得られるわけではないことが示される.それぞれの正準変量軸が生物学的に単純な解釈を許す場合はともかく,一般にはもっと複雑になってしまうので当然のことではある./ 午後3時以降,雲が厚くなってきた.東京は所によって集中豪雨に見舞われているらしい./ 9月18日(火)午後に都内某所へ.

◆夕刻,一雨.いったん止んだものの,午後9時以降,本降りになる.

◆本日の総歩数=16613歩[うち「しっかり歩数」=10609歩/93分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+2.1%.


10 september 2007(月) ※ 締切大王が大口を開けて待っている

◆午前4時半起床.曇りときどき小雨.南風が吹いて蒸し暑い.気温25.1度.研究所にて一仕事.

◆朝の書評公開 —— John J. Wiens (ed.)『Phylogenetic Analysis of Morphological Data』(2000年刊行, Smithsonian Institution Press, Washington, ISBN:1-56098-841-X [hbk] / ISBN:1-56098-816-9 [pbk] → 目次書評).もう5年も前に書いた書評だが,どこぞに埋もれていたので公開.執筆者の選び方がなかなか秀逸だ.※Wiens センセは来春福岡に来てくれるかな〜?

◆午前のこまごま —— 文字どおり「孑孑」のごとく湧く仕事ども…….朝イチで歯医者に行って定期メンテ./外は,晴れときどき曇りときどき雷雨という不安定な空模様だ./10時半の気温は25.2度.湿度が高い(当然)./Olia さんが来室.線虫の分子系統論文について打合せ.もう少し加筆が必要とのこと.明日11日(火)午後1時からミーティング./男女共同参画学協会連絡会の10月5日(金)名古屋シンポジウムは,実は朝からずうっと開かれることを知る.新規加入学会の紹介は夕方だからそれだけ“参加必修”ということでいいですよね./で,9月18日(火)の夕方に駒場で連絡会の会議があるということらしいですが,恵比寿での別件が入りそうなので,うまくいけばそのまま流れで駒場に行けます.

◆午後の孑孑,じゃなくって,こまごま —— うう,ポスター…….どーしましょ.締切が./ 数理統計研修の〈R〉関連の事前準備の続き.インストールに関してはすでに解説ページがあるので,それで何とかしましょう.んんと,でも最近更新が滞っているので,この機会に自分のページをアップデートすればいいのかもね,Rcmdr どーしましょ?/ 箱崎の空飛ぶ教授からメール.来年の生態学会大会のシンポジウムに関する相談.テーマは「群集系統学」で決まっているので,あとは招聘メンツ.Google Earth な方は今回は見送るということで./ 北大の兼業申請書提出.完了./ 12日(水)午後1時から別件のミーティング./ 進化学会ニュースのワークショップ総括原稿を丸投げっ./ 総会・授賞式などの大会関連の写真CD-ROMも丸投げっ.

◆ようやく天候が安定して晴れ間が戻ってきた昼下がりにポスター作成雑用.3時間ほどかかって,A0版サイズのポスターをつくり,A4版サイズに縮小してpdf出力.締切が今日中なので,急いで相手方と学会関係者にメール送信する午後5時.ところが,向こうからすぐ返信が来て,内容的にずいぶんハズしてしまったことが判明する.おお,3時間が水の泡ですか.そのまますべてを放擲して帰宅する.集中して何かをやってすべてムダになったら,即座にその場を立ち去るにかぎる.Après moi le déluge.ごめんなさいね.燃え尽きた灰は無力だ.

—— 夕暮れ時,妖怪本を抱えてとぼとぼと家に帰る.一歩ごとに重くなる気がする(子泣き爺か……).

◆妖怪学のさらに奥深く —— 井上円了著(東洋大学井上円了記念学術センター編)『妖怪学全集・第4巻』(2000年3月20日刊行, 柏書房, ISBN:4-7601-1724-5 → 目次)の『迷信解』(1904)を読む.さまざまな俗説や迷信を「解いた」仕上げとして,円了センセは最後の節「真怪のこと,および結論」では,より一般化された妖怪テーゼを論じる.たとえば,この一節:

しかし世界には,人知をもって知るべからざることがあるは疑いなかろうと思う.その知るべからざるとは,未知という意味ではない.未知というときは,今日いまだ知るべからざるも,将来においては知るときがあろうという意味に解せらるるも,余がいわゆる知るべからずとは,真の不可思議の意にして,人知にて知ることは不可能なりとの意である.これを証明することは決して困難ではない.もし人知の性質の有限にして,宇宙の事物の無限なるを知らば,人知以外の事物ありて存することが分かる.すなわちその体たるや,不可知的不可思議と申すものじゃ.かかる不可思議を名づけて真怪とするときは,世界に真怪の存するは疑うことができぬ.(『迷信解』1904年,pp. 674-675)

円了センセはおそらく「不思議/思議」を念頭に置いて,“真怪”ということばを使っているのだろう.その言葉が決して「オカルト」や「超自然」を指すものではないことは,次の一句を見れば明らかだ:

老狐幽霊非怪物,清風明月是真怪.(『迷信解』1904年,p. 676)

円了にとっての“真怪”は,ふだんの身の周りの生活空間にこそあるのであって,異界にあるのではないということだ.では,彼にとっての最強不敵の“真怪”とは何か? おお,○○○なんですね.御意.確かにその通りです.よくぞ言ってくださった.

◆夜遅く,善後策を打ち合わせたりとか.しかし,一か八かしかないじゃん.今回は転戦します? それとも,正面突破する?

◆本日の総歩数=5148歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼△|夜△.前回比=+0.8kg/−0.9%.


9 september 2007(日) ※ 真っ青な夏空と残暑がまた戻ってきた

◆午前5時半起床.曇り.湿度は高いが南風が涼しい.しかし,日が昇るとともに,残暑の熱気が戻ってきた.気温急上昇.あわてて避難態勢に入る.

◆朝の歩き読みはハーフ —— 最相葉月『星新一:一〇〇一話をつくった人』(2007年3月30日刊行, 新潮社, ISBN:978-4-10-459802-1)の第4章「空白の六年間」を読む.戦後の混乱期に父がアメリカで客死し,残された満身創痍の会社を継いではみたものの,何もことは進まない.そして,文学の道に惹かれはじめる主人公に伏線が用意される.敗戦直後の日本のSF文壇史が描かれ,サイエンス・フィクションが当時どのような受け止められ方をしたかが綴られる.1950年代にあっては「宇宙旅行」と「ロボット」がもっとも人気を博したSF小説のテーマだったそうだ(p. 174).

—— 〈Brotzeit〉でパンを買い込んで帰宅.太陽がぎらぎら照りつけ,空には積雲が湧き上がる.ひたすら暑い.

◆〈TreeFinder〉のブーツストラップ計算は割にさくさくと完了した.〈FigTree〉で刈り込んだツリーを Olia さんにメール送信する.

◆押せ押せのポスターづくり —— とりあえず,「外枠」だけはつくってみたものの,コンテンツとかオブジェクトの配置とか,どうしますねんな…….基本線は,京都大会の「高校生ポスター発表で」ということにはなっているのだが,はてさて.写真はすでに送ってもらったので,今日はとりあえず全体のデザインと,文章をちょこちょこと考えればいいかな.じゃまくさいな……(ぽつり).

◆傍目にも自分でも明らかにノリノリでないので,円了センセにすたこら逃げ込む —— 身近に逃避口がぽっかり開いているのはたいへんよろしくないことでして.井上円了著(東洋大学井上円了記念学術センター編)『妖怪学全集・第4巻』(2000年3月20日刊行, 柏書房, ISBN:4-7601-1724-5 → 目次)と井上円了著(東洋大学井上円了記念学術センター編)『妖怪学全集・第5巻』(2000年5月10日刊行, 柏書房, ISBN:4-7601-1725-3 → 目次)を並べてよそ見読みするワタシ.

明治のデビューから今日に至るまで,稀代の「妖怪退治人」と評されていた円了センセは,自分に貼られたレッテルがいささか不本意のようでして,今の読者をきっと混乱させるに違いないこんな弁明をしている:

世人,あるいは余を目して極端な妖怪排斥家となすも,余はむしろ極端の妖怪主唱者にして,世界万有ことごとく妖怪なりと固執するものなり.ただ,余が世人とその見を異にするは,従来一般に認めて妖怪となすものは,真の妖怪にあらずして偽妖怪なり.しかして真の妖怪は,世人の全く知らざるところにありて存すべしというにあり.(『妖怪百談』1898年,緒言,pp. 66-67)

おそらく,井上円了のいう「妖怪」は現在理解されているような意味での「妖怪」とは異なっているのだろう.彼の「妖怪分類表」は割に有名なので,その筋の人たちにはおなじみだろう(『真怪』1919年,p. 349,『妖怪学全集』第5巻所収):

 妖怪(総称として)
  • 虚怪
    • 偽怪(=人為的妖怪)
    • 誤怪(=偶然的妖怪)
  • 実怪
    • 仮怪(=自然的妖怪)
      • 物怪(=物理的妖怪)
      • 心怪(=心理的妖怪)
    • 真怪(=超理的妖怪)

おそらく,彼の言う「妖怪」は「不思議」とほぼ同義になるほど広くとらえられているのだろう.エクソシストたる円了の役回りは,リクツで説明できるのにそうしない姿勢(文明開化されていない精神)を糾弾することにあり,妖怪退治では決してなかったのだろう.その証拠に,第4巻の最後に置かれている『迷信解』(1904)という小冊子では,円了にとっての最上位妖怪である「真怪」についての詳しい所信表明がある.

◆円了センセに続いて,京極堂の登場だ —— 京極夏彦『妖怪の理 妖怪の檻』(2007年9月5日刊行,角川書店, ISBN:978-4-04-883984-6 → 目次).いや,何と言うか,あまりにグッドタイミングすぎてこわいなあ.怪異だなあ.あ,これぞ“真怪”かも.まずは巻末の「妖怪年表」を見ましょう.久しぶりに,日文研の〈怪異・妖怪伝承データベース〉でも覗いてみようか.そのような寄り道はなりませぬか.

◆遅めの夕食の後,またまたボスター苦界の闇に堕ちてゆくワタシ…….

◆本日の総歩数=7886歩[うち「しっかり歩数」=3044歩/26分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.7kg/+0.3%.


8 september 2007(土) ※ 台風一過の翌日は書類と系統樹の週末

◆午前5時過ぎに起床.台風の翌日は晴れて暑くなる.やや雲は多いものの,朝から青空が広がっている.蒸し暑い明け方だが,秋の気配を消すことはもうできない.

印刷博物館の展示企画 —— しばらく行く機会がなかったのだが,次回の企画展示はとてもおもしろそうだ:〈百学連環−百科事典と博物図譜の饗宴〉.「雑協・書協創立50周年記念世界出版文化史展」と銘打たれている.展示期間は,2007年9月22日(土)〜12月9日(日).印刷博物館の特別展示では,毎回,充実した図録がつくられるので,それも愉しみのひとつだ.さらに,この企画に併せて,講演会も数回予定されているとのこと.

◆休日なのにこまごま —— 進化学会関連でまたもトドが出現した.第一トドはニュースの原稿.事務局関連のいくつかの報告文を書かないといけない.京都のドロナワひねりだし文章を調理してすませることにしよう./ 第二トドはもっとやっかいかも.男女共同参画委員会シンポジウムが来月5日に名古屋であるのだが,その際に各学会から「ポスター」を提出して掲示することになった.会長の意向では高校生ポスター発表の場面をポスターにしてはどうかとのこと.テーマ的にはまったく問題ないのだが,時間的には問題大ありでして…….締切は週明けの9月10日(月)だという.間に合うかどうかビミョーだが,A0版でつくっておいて,それをA4版に縮小して委員会事務局に送ればエントリーは完了かな.

◆進化学会懇親会で感動した伏見の齊藤酒造の〈英勲〉に関するメモ —— どこかでよく目にした銘柄だという記憶があったのだが,〈吟奏の会〉経由で入手できることを思い出した(→ページ).そうそう,東大農学部前の高崎屋には常備されていたのだった.今度,東大の専攻で呑むときはこれか.

◆昼飯は東光台の〈Kitchen Soya〉にて豆腐のランチをば.今日はええ天気ですなあ.しかし,めっちゃ暑いぞ.もちろん真夏日.

◆「コックリ(狐狗狸)さん」の顛末 —— 井上円了著(東洋大学井上円了記念学術センター編)『妖怪学全集・第4巻』(2000年3月20日刊行, 柏書房, ISBN:4-7601-1724-5 → 目次)の冒頭『妖怪玄談』を読む.50ページあまり.日本に「コックリさん」が初めて“渡来”したのは,この本が出版される2年前の1885年(明治18年)のことで,その“渡来地”は江戸時代から海外につながる伊豆・下田だったことを円了はつきとめる.それからほどなく,“上陸”を果たした「コックリさん」は日本の津々浦々に広く浸透し,あたかも日本古来の呪法であるかのような風説的誤解も生まれることになった.しかし,円了の推測では,下田の港に「コックリさん」をもたらしたのは,欧米からやってきた船とその船員だった.「コックリさん」の祖先は欧米で伝えられてきた降霊術の技法のひとつ「table-turning」であるとこの本では結論づけられる.本書の後半では,「コックリさん」の性質をひとつひとつ挙げながら,「コックリさん」装置の物理的特性,そしてそれを囲む“信じやすい”人々の心理状態の産物として,「コックリさん」の“予言”が生み出されたのだと円了は憑き物落としをしてみせる.

◆夕刻から,進化学会ニュースの原稿をつくり始める.夜9時過ぎに,一通り完成した:事務局活動報告・評議員会報告・総会報告・授賞式次第・選考委員会報告.テキストファイルで14KBほど.編集部にメール送信する.会計関連の文書は事務局からダイレクトに送ってもらうことにした.とくあえず,このトドは仕留めた.ポスター・トドは暴れまくっているが今はどうしようもない.

◆その後,〈TreeFinder〉で,ちょこっとネマトーダの系統分析をば.Mac OSX 版はターミナル UNIX 環境の JAVA まわりでトラブって使えず.しかたなく,Win XP 版の TreeFinder を使うはめに(こっちはトラブルなし).ただいまブーツストラップ実行中です.

◆明日は第二トドの攻略だ.休みのようで,ちっとも休みでない.

◆本日の総歩数=2340歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.5kg/0.0%.


7 september 2007(金) ※ 風雨に洗われつつ緊急引き蘢りの午前

◆午前4時頃にふと目が覚めると,外は轟々と暴風が吹き,吹き込む雨が窓ガラスを叩いていた.こりゃ外出不能だわ.昨日のうちに午前を年休にしておいてよかった.天気予報を見ると,未明に小田原に上陸して,そのまま北上中とのこと.

◆降りこめられた午前中は〈PhyML〉で遊ぶ —— ここのところ nexus フォーマットに慣れ過ぎていたせいか,久々の PHYLIP フォーマットにとまどう.かつて,系統解析プログラムとしては PHYLIP がほとんど唯一の選択肢であった時代はこんなミスはしなかっただろうにという初歩的ミスをいくつもやらかす.

MacOSX版 PhyML のための備忘メモ:1) nexus データファイルを PAUP* or MacClade に読み込んで PHYLIP 形式でエクスポートする.その際「no interleave」にしておくと便利.2) エディタで開いて,念のため改行コードを「UNIX」にしておく.3) データ内容の形式チェックを.つまずいたのは OTU名称.PHYLIP フォーマットでは,各行の最初の「10文字」は OTU 名として使えるのだが,不思議なことに「10文字目」が埋まっていると PhyML はどうやってもエラーを出してしまう(「キャラクタが変」とか「シーケンスの長さが変」とか).改行してもダメだったので,結局「10文字目」を空白にして1行にしたところ,するっとオープンされてしまった.最近の PHYLIP フォーマットでは OTU 名の上限は「9文字」で,10文字目はブランクにすることになっていたのか(昔からそうだったっけ?).

いずれにせよ,PhyML version 2.4.4 と 内部枝に関する近似的尤度比検定(aLRT)を実行する version 2.4.5 はどちらも使えるようになった.ほとんどむき出しのエンジンのみという仕様だが,最尤法に関しては計算がとっても早いねえ(塩基配列でもアミノ酸配列でもOKというのもプラス点).Barry K. Hall センセが PAUP* を見限って PhyML に乗り換えたのもムリはないか.一通り計算結果を出して,Olia さんにメールで通知.合わせて,論文の該当箇所を補筆する.午前はそんなこんなで過ぎ去ってしまった.

◆朝方の暴風は,台風が北に通り過ぎるとともに急速におさまり,昼前には晴れ間がのぞくまでに天候回復した.午後1時の気温は28.5度.台風一過でもっと過激な暑さになるかと思ったが,南風が通り抜けて,意外に快適だった.午後は農環研労組の定期大会があるのだが,スルーしました(ごめんごめんごめん).

◆午後のこまごま —— 不在中の問合せメールへの対応たくさん:11月の数理統計研修の事前準備.テキストは例年通りだが,〈R〉のインストールに関するガイダンスを公開してほしいとの事務局からの依頼.ぼくが新しくつくるまでもなく,すでにそういうページがいくつもあるので,ポータルサイトをちょこっとつくればいいか(それもすでにあるじゃん)./ 進化学会ニュースの編集に関する原稿依頼.ほとんどは京都でつくってしまったので,あとは天馬パパに送るだけでおしまい./ 同じく進化学会の記念出版物に関するウェブグループが開設された.承認手続きをする./ Olia さんの原稿に加筆.午後3時前に短時間ミーティング.直後に改訂原稿を送る.これでとりあえず作業はおしまい.あとは投稿するだけ./ 10月5日(金)に開催される男女共同参画委員会シンポジウムの委員長から進化学会に出席要請のメール.会長代理としてぼくが名古屋に出向くことになる.なんだかフォーマルみたいで気が重いのだけど……./ 東大理学部の兼業申請書を提出する./ pre-leeswijzer の頃の形態測定学文献の記事が公開されていないことに気づく.

◆夜の「狐狗狸さん」 —— 井上円了著(東洋大学井上円了記念学術センター編)『妖怪学全集・第4巻』(2000年3月20日刊行, 柏書房, ISBN:4-7601-1724-5 → 目次).今晩は「コックリさん」と対決する円了センセ.冒頭の『妖怪玄談』は明治中期の1887年に出された本.著者の処女作だという.地方によって異なるコックリさんの様式,その由来,そして憑き物落とし.この巻全体の1/10に過ぎないわずか50ページという分量だが,インパクトありまくり.

◆本日の総歩数=2339歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/+0.3%.


6 september 2007(木) ※ 迫り来る直撃台風の鼻先で噺をば一席

◆午前4時40分起床.曇りときどき雨,のち晴れ.気温25.2度.生暖かい南風が吹き,蒸し暑い.

◆早朝のこまごま —— 今日の動衛研研修で使うスライドのハンドアウトを印刷した.

◆晴れ間が広がっていたが,ときどきざあっと雨が降る.気温27.8度.午前10時過ぎにお隣の動衛研に向かう.地理的に隣りであっても“近縁”ではないので,つくばにきて20年近く経とうというのに,この研究所の敷地に足を踏み入れた回数は片手で十分に数えられるほどしかない.多くの研究所が「集結」していたとしても,それだけで自然発生的に何かしら生産的な状況が生まれるわけではない.そんなことは研究者であれば誰もが体感していることだろう.“うつわ”ではなく“ひと”の問題だから.Suzan Gelman(2003)が言うように,文化的な社会集団もまた「自然種(natural kind)」となり得るのであるとしたら,研究者に関する自然分類は陰に陽に当事者に影響を与え続けているのかもしれない.

小雨の中を徒歩数百メートルで動衛研の研修棟に到着.獣医疫学特殊講習は今週から2週間の日程で進められている.そのうちの一コマをもらっての「系統樹解析」という名の講義を担当する.受講生は20名あまりだ.定刻10時半から講義を開始.意外に時間がかかって,100枚ほどスライドを説明した時点で正午が近づいてしまった.残り30枚あまりの「見せ場」が実現できなかったのは残念だった.小雨に降られ蒸し暑さに包まれつつ農環研に戻る.

◆台風9号は予想通り関東を縦断するコースを進んでいるらしい.午後3時過ぎ,所内アナウンスがあり,遠方通勤者は早退してよしとのこと.予報では,今夜から暴風雨圏内に入るようなので,明日の午前中は年休を取ることにする.

◆台風直前のこまごま —— 遅れていたメーリングリストの月例アナウンスを流す.

◆午後4時過ぎに帰宅.まだ小雨だったが,日没とともに風雨が強まり,午後9時を過ぎる頃には強風が轟々と吹き,横殴りの雨がベランダを洗うようになった.このまま明日を迎えるのだろうか.

◆嵐の夜の読書 —— 井上円了著(東洋大学井上円了記念学術センター編)『妖怪学全集・第5巻』(2000年5月10日刊行, 柏書房, ISBN:4-7601-1725-3 → 目次).全6巻からなる本全集(→ 前半3冊後半3冊)のこの巻では,一般向けに書かれた『おばけの正体』,『迷信と宗教』,そして『真怪』の3冊を収めている.とくに,最後の『真怪』が興味を引く.著者が方々から収集した“実話”のコレクションは,松谷みよ子(編)『現代民話考』(全12巻)にあるような「あったること」として読者の前に置かれる.1919年に出版されたこの本の内容はまったく古びていない.同じような“怪談実話”は今も出版され続けているから.

◆本日の総歩数=8807歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/+0.1%.


5 september 2007(水) ※ 雨は降るは雑用は降るはでわやでっせ

◆久しぶりのつくばの朝は5時半起き.雨がしとしと降っている.この蒸し暑さはただごとではない.不快過ぎ.

◆朝のこまごま —— 1週間逃亡していると厚く堆積した雑用の地層ができている.しばし,その“切り通し”を巡検したのち,おもむろに別の仕事をはじめる(おい):京都からは進化学会大会の写真がCDで送られてきた.速攻でありがとうございます./ 10月5日(金)の男女共同参画委員会の会議に出ますと答えたものの,会場が名古屋大学の野依記念館であると聞いて引きまくる.また,出張かよっ./ その会議までに進化学会の男女共同参画ポスターなるものをひねり出さないといけない.

◆ときどき晴れては曇って雨がざあざあと降る.蒸し暑さにはなんら変わりない.

◆明日の動物衛生研究所の講義スライドをつくる.時間は90分.分子系統学の講義だが,この際,「Happy ML Show」とか「Bayes without tears」とか試してみようかしら…….とりあえず,150枚ほどのスライドを束ねて検討を開始.

◆10:30の気温28.8度.晴れときどき曇り.真綿で首を絞められるような蒸し暑さが続く.午後になって土砂降りの大雨になる.

◆雑用も土砂降りだ —— 放置していたメーリングリストの登録作業を消化する./ 組合員証の提出は7日金曜だ.分会定期大会もこの日.台風が直撃しそうな気配だが./ 10月3日(水)は朝から夕方まで,東大の修論中間発表があるとの連絡あり./ 領域内会議をすっぽかしたり(汗)./ 本にサインをしたり./ Olia さんから PhyML での分析を急かされたり/ 科研費応募の心の準備が必要な季節になっていたり./ 『ファウスト』の宣伝をリューさんから頼まれたり./ 14日の東大 ES 特論 II 講義のプロジェクタを調達したり.

—— 何が何やらわっかりませーん…….

◆夕方になって空が明るくなり,大雨は一時的に峠を越えたようだ.しかし,断続的に降っていて,不快度は変わらず.

◆『昆虫分類学若手懇談会ニュース』の最新号が届く —— 進化学会大会から帰ってきたら,『Panmixia』の別刷請求のメールが届いていた.ここ数年,昆虫学会大会にここ数年ぜんぜん行っていないので,会費が何年分か滞納になっている.郵便局から振込で送るか,それとも神戸を襲うか.すでに「43歳」という「若手」の年限を大きく越えているので,何も実質的な貢献はできないのだが,そのうち余裕ができたら『若懇ニュース』と『Panmixia』のバックナンバーのインデックスをつくって公開しようと思っている.本来は,若手の会事務局がやるべきことなのだろうが,こういう作業は独力で一気にやってしまうので効率的で,分担なんかしているとかえってムダが多い.第一そういうことに時間を使うよりもほかにやるべきことがある年代でもあるだろう.

『若懇ニュース』にしろ『Panmixia』にしろ,昆虫(分類)学の狭い世界の中だけで流通するメディアであって,外の世界から見れば秘密結社の機関誌みたいのものとしてしか受け取られていないことを「なかのひと」は理解すべきだろう.中の常識は外の非常識かもしれない(その逆もありえる).国会図書館に『若懇ニュース』と『Panmixia』のバックナンバーを納入するようにしたのはぼくが事務局を担当したときからだ(もう20年くらい前のこと).機関誌にISSNナンバーが付けられ,少なくとも国会図書館では全号見られることの意義は決して小さくない.

◆明日の講義スライドはほぼ完成.130枚ほどの分量なので,講義時間を考えればちょうどいいくらいだろう.動衛研の担当者からの情報によると,受講生の大半は都道府県の家畜保健衛生所の職員だという.ブーツストラップも入れたし,Google Earth Viewer による鳥インフルエンザの例も入ったし,聴衆の関心にできるだけフィットさせるように試みる.

◆積み残しの仕事がいくつもあるのだが,長旅から帰還してすぐにそれそれと進める気力と体力がまだ戻っていない.台風が通り過ぎてから立ち上がるようにしたいのだが,何だか足腰がぐきぐきしているような嫌な感じ…….

◆夜のお勉強 —— Ziheng Yang『Computational Molecular Evolution』(2006年12月刊行,Oxford University Press[Oxford Series in Ecology and Evolution], ISBN:0-19-856699-9 [hbk] / ISBN:0-19-856702-2 [pbk] → 目次)のベイズ系統推定の章と,Dan Janies らの論文「Genomic Analysis and Geographic Visualization of the Spread of Avian Influenza (H5N1)」(Systematic Biology, Volume 56, Issue 2, March 2007 , pages 321 - 329 → DOI)を読む.とりあえずは明日の講義のため.

◆本日の総歩数=4221歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.2kg/−1.1%.


4 september 2007(火) ※ 大徳寺で喝を入れられ,つくばに帰る

◆午前5時半起床.昨夜の雨も上がり,朝から日射しが強い.それが当たり前のように残暑が続く.

◆備忘メモ —— 梅小路の酒陶〈柳野〉は今年いっぱいで閉店するとのこと.マスターの話では,現在の店は期限付きの貸店舗で,新しい店に移転する予定らしい.しかし,まだどこに移るかは決まっていないそうだ.10月に京都に来るときはまだ現在の場所で営業しているので,とりあえずは安心.

◆午前9時半にタクシーで京都に向かう.大荷物をロッカーに預けて,地下鉄で北大路へ.バスで大徳寺に向かい,いつもの〈松屋藤兵衛〉にて(→紹介サイト)いつもの紫野味噌松風を買ったり送ったり(今日は残念ながら「福耳」がなかった……).その後,北大路バスターミナルにとんぼ返りして,今度は反対方向の〈ブラウニー〉にてベーグルを買い込む.まだ早い時間だったせいか,品揃えが十分ではなかった.途中の珈舎〈伊藤珈琲〉(→紹介サイト)が定休日だったのはとても残念.京都駅に戻り,ポルタの〈イノダコーヒ〉にて,7月に査読依頼されていた2件の原稿チェックを進める.だいたい読み終えた.

◆14:09発の「のぞみ22号」に乗る.平日のこんな時間帯なのにほぼ満席だ.車中では,明後日の動衛研・獣医疫学特殊講習での系統学講義と来月始めの植物細菌病談話会特別講演のスライドづくりに着手する.ついでに,来週金曜(9月13日)の ES特論II の統計噺スライドも.あ,そういえば,今年度の数理統計研修のテキスト原稿督促も届いていた.統計学概論・実験計画法・〈R〉テキスト・多変量解析概論の四つだが,これは例年通りなのですぐ対応できる(はず).その改訂テキストは11月の大分県基礎統計研修の講義テキストとしても流用できるだろう.もちろんその前に,今月の首都大学東京の生物統計学集中講義にも使えるか.お,さらに駒場で毎週木曜に開講する生物統計学の講義資料にもなるぞ.これは一石二鳥どころではない(うはうは).ピュアに地べたからつくる必要があるのは,10月の湯川シンポジウムの講演スライドだけだ.それには時間がかかる気配が濃厚.

—— 何と言っても「トド」は小さいときの方が仕留めやすいからね.大きく育ててしまうとやっかいだ.

◆熱海を過ぎて雲が厚くなってきた.関東の南海上を接近しつつあるという台風9号の遠い影響か.新横浜で晴れてきたが,東京は小雨が降っていた.結局,車中ではあれやこれやのスライドづくりにかまけて,読書時間がぜんぜんとれなかった.17:00秋葉原発の TX 快速に乗る.蒸し暑いな.午後6時前に帰宅.

TX 車中読書 —— 以前読んだ Susan A. Gelman『The Essential Child: Origins of Essentialism in Everyday Thought』(2003年刊行, Oxford University Press, ISBN:0-19-515406-1 → 書評目次)の復習を少し.心理的本質主義(psychological essentialism)について詳しく書かれた本なので,たいへん参考になる.

◆旅行中の画像の貼付けがやっと終わった.夜10時を過ぎて,雨がざあざあ降り出す.気温は高いままで,不快指数はとても高い.この週末は台風9号が関東に接近するという予報で,明日からは風雨がさらに強まるらしい.

◆本日の総歩数=7133歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


3 september 2007(月) ※ 転戦の朝:南山城にてお座敷がかかる

◆午前5時起床.曇りのち晴れ.いつまでも蒸し暑いな.

◆明け方の200枚 —— 今日から,京田辺の同志社大学文化情報学部2007年度日本行動計量学会大会があり,午後イチで特別講演を引き受けている.そのスライドを当日の朝つくっているというのはドロナワの極致だ.それでも約3時間で200枚のスライドをそろえ,とりあえず1時間のトークの素材はできた.あとは削りながら全体のストーリーを考えることにする.

◆午前9時にチェックアウト.言ってもせんなきことながら,蒸し暑いなあ.京都駅にタクシーで向かい,郵便局で要旨集など重いものをつくばに送り返してしまう.これで少しは軽くなった.その後,ポルタの〈イノダコーヒ〉にて,スライドの取捨選択を1時間あまり.その結果,130枚ほどに減量できた.一通り,脳内リハーサルもした.これで今日の午後のトークは大丈夫だ(と思おう).

◆11:43発の近鉄急行に乗る.吊り広告に〈チカンはあかんで,ぜんたいあかんで〉とでかでかと書かれているのに〈そやそや〉と反応するワタシは京都人.20分ほど乗って正午過ぎに新田辺着.猛烈に蒸し暑い.かんにんしてほしい.駅前からタクシーで,同志社大学・京田辺キャンパスへ.丘の上にあるので下界よりは少しだけ気温が低いようだ.文化情報学部の裏門から入って,大会会場となっている「夢告館」へ.受付にて今回招待してもらった矢野環さんに挨拶する.学部長の村上征勝さん,そして〈R〉師の金明哲さんとは初対面だ.金さんは大会に先立つ昨日,ここで〈R〉のチュートリアルをしている.

文化情報学部はできてからまだ間もないが,(少なくとも名前だけは)ぼくの知っている人が多い.数理生態学の重定南奈子さんも現在はここの所属だ.学部紹介のパンフレットを見ると,「データ・サイエンス」を中心にして文化現象を学ぶというのが趣旨とのこと.

ひととおり挨拶をすませ,学部長室の机を借りて,最後のスライド調整をさせてもらう.昨日からばたばたとスライドをそろえたドロナワだったが,これで何とかなりそうだ.

◆午後1時半に講演会場に向かう.200名ほど入る階段教室だ.「ネクタイ率」が高いのは医薬系あるいは企業からの大会参加者が多いせいか.もちろん,ワタクシは進化学会のドレスコードに準拠したのだが,行動計量学会の基準からいえば「最高度にラフ」な格好であるようだ.バンダナをしなかったのがせめてものごあいさつか.

◆定刻に特別講演が始まる:三中信宏「系統推定論と形質コード化問題:データから何を読み取るか」.生物・無生物に適用可能な一般化された系統推定論,そしてアナタのまわりの系統樹,さらにアブダクション,ついでに多変量解析の哲学まで含めて1時間ちょうどで終わった.今回のトークの「着地」は成功だ.昼下がりではあったが,聴衆の“睡眠率”は低く抑えられた.

◆講演終了後に,〈R〉の「pvclust」パッケージをつくられた鈴木了太さんと挨拶する.初対面だったが,下平英寿研究室を卒業後に起業され,現在は代表取締役とのこと.まだ20代後半とお見受けしたが,たいしたものだ.起業の時代なのか.

◆その後,また部長室に引きこもり,滞っていた dagboek を8月30日〜9月2日分を3時間ほどで書き上げてアップする.写真が貼り込めないのが残念だが,それはつくばに帰ってからの作業になる.

◆午後6時半に矢野さん,村上さん,金さん,そして昨日,金さんとパラレルに〈R〉チュートリアルを行なった石田基広さんご夫妻とともに,新田辺駅前のフレンチレストラン〈Bois de Vert〉に向かう.石田さんにはシュプリンガーの黄表紙〈R〉訳書をすでにもらっていたので,まずはお礼をば.この学会の〈R〉チュートリアルは教材が充実していて,受講者はとても多かったらしい.また,雑誌『エストレラ』に金さんが連載していた〈R〉記事は,来月にも森北出版から本になるそうだ.長期連載だったのでかなり厚くなるとのこと.〈Bois de Vert〉は矢野さんが選んだだけのことはあるおいしさだった.

◆午後9時過ぎ,新田辺から京都に向かう.小雨の京都駅で荷物をピックアップして,宇治の実家へたどり着いたのは午後11時だった.

◆今回のあわただしい旅路と5日間連日のトド撃ちはこれにてすべて完了した.明日は,つくばに帰るのみ.

◆本日の総歩数=5976歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


2 september 2007(日) ※ ドロナワで大トドを追い込み大団円

◆午前5時起床.曇りのち晴れ.今日も残暑が厳しいのだろうな.起き抜け2時間で WS04 のスライドをイッキにつくる.京都に入ってから,当日にスライドや資料をつくるというドロナワをこなしている.

◆午前8時半にタクシーで理学部6号館に到着.そのままワークショップ〈WS04−DNA塩基配列に基づく分類とその問題点〉会場で,講演準備.ほんとうは後半の出番だったのだが,高校生ポスター審査との兼ね合いで最初に変更してもらった.午前9時開始.【種】は幻想,【亜種】は妄想と連呼してしまった.批判される前に会場をあとにして,4階ロビーの高校生ポスター会場に直行.午前10時から正午まで,ポスター発表.何十名もの高校生たちと審査員などなどでとんでもない人口密度だった.

ポスター自体の質も平均的に高く,いくつかのものは昨日の会員ポスターの間に混ぜてもわからなかったにちがいない.正午過ぎに審査委員会を開いた結果,中学生のポスターが最優秀賞,もうひとつバイオインフォマティクス関連の高校生ポスターも最優秀賞と,ことしはふたつも最優秀賞が出た.画期的なことだ.その後,表彰式があり,郷通子会長から書くポスターに対する参加賞と最優秀賞の賞状が手渡された.

—— これでやっとすべての公式行事が終わり,ワタクシの夏も終わったのだった.

◆ほぼ「灰」と化してホテルへ帰着.寺町二条の〈Antonio〉と〈柳野〉を経て,割に健康的な時間にホテルに戻った(かな).

◆しかし,明日の行動計量学会の特別講演のトークをまだ準備していなかったりする…….でも,今日はもう原形をとどめていないので,寝てから復活しようか.

◆本日の総歩数=6944歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.前回比=未計測/未計測.


1 september 2007(土) ※ 公開行事デーは先斗町の露と消える

◆午前5時起床.好天(ということは残暑か).『本』ゲラの修正箇所をメールで音羽に通知する.

◆早朝のドロナワ一本 —— 夕方の授賞式の段取り(進行表)をつくって,実行委員会にメール送信.午前8時完了.

◆ほどほどの時間にタクシーで会場へ.今日は北部キャンパスの理学部ではなく,時計台の中で行なわれる.めっちゃ暑い.正門前でテレビのロケをしていた.京大の時計台がこのようにきれいになっていたとはぜんぜん知らなかった.

◆午前はポスター発表なのだが,それを覗いている時間はなかった.午後イチの公開講演会の司会を決めていなかったことに気づき,幹事長権限で深津君と長谷部君に勝手に割り当ててしまい,進行担当の学生さんに知らせる(なんと強権的なことで).しかし,当人たちは(当然)何も知らないので昼近くになってもポスター会場に姿を見せない.

◆急な打合せ —— 正午前になって田中泉吏さんがやってきて,「ちょっと打合せが……」とのことで,初対面の瀬戸口明久さんとともに,時計台真向かいの大学レストラン〈Comphora〉にて昼食をば.こんなしゃれた明るいレストランをあるとは.チキンマサラセットを注文.この急な会合の目的は〈ISHPSSB〉の日本巡業を日本で開催できるかどうかについて.

瀬戸口さんの話では,生物学哲学・生物学史の学会である ISHPSSB(読み方を今度確認しないと……)の次回の大会はオーストラリアで,その前年である来年の11〜12月に日本で開催しようという提案が出されているそうだ.その場合,日本のこの分野の講演者をどれくらい動員できるかについて意見交換した.テーマの設定によっては進化学や体系学の演者を動員できそうなのは確かだが,事前のPRをしっかりやることが必要で,あわせて“一本釣り”でどんどんオルグすべきでしょうね.

◆午後1時前に会場に戻ったら,駒場の殿がご出座されていて,「うん,もう引導はわたしたから」とのことで,あわれ深津・長谷部両君は午後の司会をすることにあいなった.ごめんねごめんね.

ところが,今度は新たな問題が発生.午後1時半からの公開講演会なのに,1時を過ぎても演者のひとりの四方さんが来てないと担当の学生があわてている.知っている人たちは「直前に滑り込むに違いない」と余裕の構えだ.実際,開演10分前に駆け込んできたので,また“四方伝説”は corroborate されてしまった…….

◆午後2時から学会創立10周年記念出版物である『進化学辞典』の編集会議が理学部2号館で行なわれた.共立出版の担当者と編集委員数名が,分野と担当,そして項目の字数を決定.現時点の項目数と予定頁数を考えると,ひとつひとつの項目の字数はたいへん多くなりそう.午後3時半に時計台に戻る.

◆木村基金の木村克美委員長が到着したというので,受賞者を紹介し,別室で待機してもらう.午後4時10分から総会.報告・審議事項は多かったが,予定時間よりも早く,午後5時過ぎには終了.さらに午後5時半からは学会賞の授賞式と倉谷滋さんの受賞講演が午後6時20分まで.さらにさらに午後6時半からは,ポスター会場だった大部屋で懇親会を午後9時まで(「十四代」と「英勲」に敬礼せよ).さらにさらにさらにその後また ikushimo さんにとっつかまって,先斗町へ繰り出すことに.某に名前を控えられてしまったという実行委員会元締の tom さんと琉球大の太田英利さんも合流するという最強力メンバーとともに,先斗町の〈海〉の夜は更けゆく…….先斗町は今夜もすれちがいすら苦労するほどの人出だった.

◆日が変わる直前にホテルによろよろとたどり着く.今日は日中が暑かっただけではなく,夜になってもぜんぜん気温が下がらなかった.

◆あれ,明日の朝イチで講演があったよーな……(汗).

◆本日の総歩数=11541歩[うち「しっかり歩数」=1381歩/15分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


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