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日録2007年11月 


30 november 2007(金) ※ 初冬の冷たい雨がしとしと降る

◆午前4時20分起床.珍しく雨が降っている.気温5.7度.その後も雨が降ったり止んだりする.

◆朝のこまごま —— 明日の行動計量シンポジウムの出張届を出す./北大の出張に関する日程変更届けを事務に相談する./昨日の駒場講義のハンドアウトを公開し,あわせて補講の日時が確定したことを連絡する.

◆明日のスライド準備をば.系統推定に関わる「ネットワーク問題」を取り上げるつもり.ひとつは系統樹そのもののネットワーク性について.もう一つは系統樹間で定義されるネットワーク関数について.いずれもブール束の上で定義される半順序関係の離散構造だが,その図的表現に伴う解析する側のリテラシーの限界があることを話す予定.

◆〈R〉関連の情報いくつか —— 〈RjpWiki〉の中に,R和書リスト〈R本リスト〉がつくられた.もう二十数冊もの和書が出ているのだが,その過半数はここ一〜二年の間の出版だ.

—— などと言っているうちに,また最新刊が3冊も届いた:間瀬茂『Rプログラミングマニュアル』(2007年11月10日刊行,サイエンス社[新・数理工学ライブラリ[情報工学] 1],ISBN:978-4-901683-50-0 → 版元ページ).「R本」でハードカバーというのは珍しい.活字がとても細かいのでスクリプトの読み取りがたいへんだ(老眼か……)./荒木孝治『RとRコマンダーではじめる多変量解析』(2007年10月1日刊行、日科技連出版社、ISBN:978-4-8171-9241-7 → 版元ページ)./新納浩幸『Rで学ぶクラスタ解析』(2007年11月22日刊行,オーム社,ISBN:978-4-274-06703-7 → 版元ページ).

もうひとつ,〈Statistics with R〉のアップデートについて.〈R〉を用いた統計分析全般にわたるサイトで,もとはフランス語で書かれていたが,今年のアップデートとともに全面的に英訳された.何よりもグラフィクスまわりのスクリプトが大量に載っているので,こういうグラフを描きたいときにはあのスクリプトを使えばいいという情報が効率よく見つかると期待される.分散分析のセクションもあるのだが,講義に使えそうな図がいろいろ載っている.

◆午前中は断続的に雨が降り,気温は低いまま.11時になっても8.7度しかない.

◆さらに続くスライドづくり.午後4時になってやっと70枚ほどできあがり.それにしても,演者一人の持ち時間がいったい何分なのか,質疑はどうするのか,要旨はどうなったのか(要請されなかったのでもちろん書いてない)とか,「?」が点滅するシンポジウムだ.しかし,日時も場所も学会サイトで公開されているので,あることはまちがいないのだろう.とりあえずは開始時間までに南部坂を登り切っていればいいということか.

◆午後のこまごま —— 系統学的多様性の計算プログラムについての相談をもちかける./仮想的祖先形質状態が復元されていれば,path-length metric を計算するプログラムを書くのは難しくないでしょう.

◆夕方になってもぐずついた空模様は変わらない.明日はもう師走.方々走り回る予定はもうしっかりと組まれている…….

◆本日の総歩数=4969歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.6kg/+0.1%.


29 november 2007(木) ※ 北風に舞い散るイチョウもあった

◆午前4時起床.北風がびゅうびゅう吹き渡る.街路のイチョウはここのところの冷え込みで真っ黄色に色づいていたのだが,あえなく吹き寄せられ,道路のいたるところにイチョウ溜まりができる.気温8.4度.曇り.

◆ブルーノ・ムナーリ関連備忘メモ —— 東京都板橋区立美術館にてブルーノ・ムナーリ展が開催される:〈生誕100年記念ブルーノ・ムナーリあの手この手〉.会期は2007年12月1日(土)〜2008年1月14日(日)./みすず書房からの新刊:ブルーノ・ムナーリ(萱野有美訳)『モノからモノが生まれる』(2007年10月23日刊行,みすず書房,ISBN:978-4-622-07328-4 → 版元ページ).表紙が,ヘンリー・ペトロスキー『フォークの歯はなぜ四本になったか:実用品の進化論』(1995年11月刊行,平凡社,ISBN:458253211X)とそっくりの“フォーク図柄”.ただし,ムナーリ本のはちょいバロック.

◆朝のこまごま —— 常盤台からの統計高座依頼はまだ流動的で,もう少ししないと確定しないみたい./JTBにて札幌往復の航空券を確保する.往路は12月9日(日)の「JAL527」便で,羽田 [13:30] → 千歳 [15:05].復路は12月13日(木)の「JAL510」便で,千歳 [11:00] → 羽田 [12:35] だ.

◆コルシカ島直送のフルーツゼリー —— いつも行く牧園のパン屋〈david pain〉に,コルシカ島から直送されてきたフルーツゼリー「Pâtes de Fruits」(Confiserie St Sylvestre)がたった10箱だけ入荷したというので,平日年休をいいことにさっそく買いに行った.この手のスイーツは好きなんです(実は).あとでいただきまーす.※なお,ワタクシが行ったときはもう2箱しか残っていなかった.[追記:実は店の奥にまだあったらしい……]

◆正午なのに気温が「8.7度」までしか上がらない(明け方とほとんど変わりがない).研究室に短時間滞在して,いったん帰宅する.午後2時11分発の TX 快速で東京へ.駒場に着いたのは午後3時半だった.日も射さず寒い構内を歩く.紅葉の具合は今がちょうどよさそう.非常勤講師室に短時間滞在してから教室へ.

◆16:20定刻に「生物統計学」の講義開始,今日は実験計画法と分散分析なので,もう慣れたものだ.この9月以降,すでに3回も講義をしている.完全無作為化法を例にとって,実験区の配置から始まって分散分析表の作成まで一通り話をしたら,終了時刻になっていた.来週も続きの話をする.

「統計的検定」の話をしたのは今日が初めてだ.講義後に集めた質問票を見てみると,検定の考え方についての質問がいくつかあって,「意図はわかるがイマイチ理解が」とか「何となく雰囲気は読める」というもどかしさがあったようだ.帰無仮説を置いてデータを用いてそれを棄却しようとするというのは,やはり“ひねり”が利き過ぎるトリックと受け取られたのかもしれない.あとで追加説明をする必要があるだろう.

◆帰路の車中読書 —— 寒川旭『地震の日本史:大地は何を語るのか』(2007年11月25日刊行,中央公論新社[中公新書1922],ISBN:978-4-12-101922-6)を読了.島だった象潟が陸地化する話,さまざまな文献に残された地震被害の記述スタイル.「亡村」という言い方を初めて知った.年表のように次々と歴史的地震が登場するが,遺跡に残された断層痕跡や液状化砂層からヒストリーを読み取る“わざ”を垣間見たようだ.

◆本日の総歩数=10402歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−0.5%.


28 november 2007(水) ※ 真っ白に燃え尽きました……

◆午前4時20分起床.雨上がりの曇り空.気温7.3度.

◆みすず書房から献本(ありがとうございます) —— 山崎茂明『パブリッシュ・オア・ペリッシュ:科学者の発表倫理』(2007年11月29日刊行,みすず書房,ISBN:978-4-622-07344-5 → 版元ページ).「適切なオーサーシップが不正行為の歯止めとなりえる」というあたりが興味を引く.もうひとつ,「パブリッシュ・アンド・ペリッシュ」ということばが見えるが,この“アンド”は意味深だ.

◆朝から原稿原稿また原稿.逃げも隠れもできないが,とにかく書き続けて,書きまくって,ひねり出して,午後2時にやっと脱稿.見直して,午後3時過ぎに音羽にメール送信.ほぼ同時に,最終通告電話があって,「原稿はどのように……」「たった今入れ違いでお送りしました」「おお,それはそれは!」というどらまちっくな展開があったりして.即座に,修正意見が帰ってきたので,がしがしと改訂し,午後4時過ぎに再送信.また電話があって,これでOKとのこと.付帯意見として,「今回は“空中戦”だったので,次回は“地上戦”をよろしく」との作戦司令が出される.せっかく,種問題バトルを高見の見物でいこうと思っていたのに,地獄の黙示録のごとく地に足をつけてしっかり戦えとは…….今度の相手は Michael Ghiselin なんですけど.

今回の『』連載原稿は当初の予定とは題名も節名も変わってしまった:三中信宏「プリンキピア・タクソノミカ」.タイトル通りの本は実は登場させていないのだが,その方がいいのかも.

—— 改訂原稿をばたばたと提出して,ほっと息抜いて見直してみたら,キーワードのひとつが間違っているではないか.「メロロジー(merology)」じゃなくって「メレオロジー(mereology)」だってば.ゲラで訂正しないといけない.

◆午後2時半の気温は10.9度.一日中ずっと曇って寒いまま.罰が当たった右腕も痛いまま…….

◆そんなこんなの原稿騒ぎのあいまのこまごま —— サッポロ迎撃体勢整う:札幌で極限退化しつつある「ぷ」さんから裏メールが届き,北大での集中講義の際はオモテとウラの両方で迎撃していただけるそうだ.デビルマンもすでに発進準備しているという.別府では単に転倒しただけですんだが(まだぜんぜん癒えていないところが天罰のおそろしさ),冬の札幌で転倒したらイチコロなので十分に気をつけよう./メーリングリスト管理作業を少し./お,R 2.6.1 がリリースされてる.さっそくダウンロードしてと./駒場「生物統計学」の補講は来年1月31日(木)の4限と5限のふたつのコマを予約した.

◆遅めの 16:30〜17:15 は,『Modern Morphometrics in Physical Anthropology』の輪読セミナーの第4回.Chapter 2 : Fred L. Bookstein「After Landmarks」(pp. 49-71)をば(pp. 54-57).旧来の TPS から 新しい TPSQ へ移行する意義について.形状に関するモデルからの予測と残差との関係に着目し,現象を記述するモデルとしての有用性がもっとも重要であると論じる.TPS のアフィン変形を均一成分としたのでは形状の全変動の半分程度しか説明できないが,TPSQ の二次曲面を均一成分としたときには90%を越える変動が説明できる例が挙げられている.TPS / TPSQ の関係は,やはり線形回帰 / 非線形回帰にたとえるのがもっとも理解しやすいだろう.※遅遅とした進み具合だが,この著者の場合はしかたがない.

◆夕方,西日が沈むとすとんと急に暗くなる.明日の駒場講義の準備をする.出欠票+ハンドアウト+スライドの3点セットをいつも通り用意し,講義予定内容を〈R-statistiek〉に広報してから帰宅した.弱い北風.

◆明日からはまた準備また準備の日々が再開する —— 12月1日(土)の行動計量シンポジウム〈複雑系データの解析〉.つい先日,オーガナイザーの方からやっとメールが来たが,講演時間とか要旨のこととか(連絡がなかったので結局出してないけど)なーんにもわからずじまいのまま,当日を迎えることになりそうだ.自由といえば自由だが,はたして出張にしていいものやら.もちろん,日本行動計量学会主催のシンポジウムだし,学会サイトにも載っているイベントだから,大手を振って出張にすればいいのだろうが./北大「生物系統学」講義の準備.こちらは問題ないだろう./RP成績検討会の準備.これがたいへん.札幌から帰ってきた次の週に予定されている(日時未定).諸方面に手回しして用意すべきことがある.

◆本日の総歩数=4418歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.8kg/+0.7%.


27 november 2007(火) ※ 性懲りもなくまた追い詰められる

◆うっかり午前5時まで寝てしまった.これはやばい,やば過ぎる.北の風,曇り.気温7.5度.久しぶりに冷え込みが緩んだはずだが,体感的には寒いな.

—— 人間たるもの,犯したあやまちから学ばねばならない.原稿締切に毎月苦しめられているにもかかわらず,なお毎月その苦しみが続くのか.バッハのカンタータに救済を求めてはいけない.あ,こんなことを書き散らしている場合ではない.原稿だ.原稿を書くしかない.ゲンコウ〜.

◆天罰の呪いを受けた右腕はあいかわらずちーとも機能せず,先日の【禁断の果実】がやや足りなかったのか厄落しはまだ成就していない.それどころか鬱血していた箇所がしだいにおどろおどろしく黒変し,さながら絞殺死体の締め痕の様相を呈しはじめている.最初の数日は,打ち身証拠写真などと称して写真を撮っていたのだが,何だかネクロフィリアの趣味でもあるのかと疑われそうなので,そっとそのままにしてある.願わくば「九相図」みたいにはなりたくないものだ.

◆朝の現実逃避こまごま —— 進化学会の選挙の段取りはほぼ終わった.あとはこのままさくさくと作業を進めればいいのだ.よろしくよろしく./横浜国大から来年度の統計〈R〉高座の興行依頼が来た.お引き受けいたしましょう.詳細はのちほどということで.

◆午前10時の気温は10.5度.肌寒い灰色の曇り空.忘年会まわりのこまごま —— 東大の専攻忘年会(12月5日)の出欠返事./領域内の忘年会の日程調整.といっても,フリーの日はどんどん減っているよ./その他,駒場「生物系統学」の来年度シラバスを事務に返送する.お返しに?,最後の時間に実施する「学生による講義評価アンケート」用紙が送られてきた.ふむむ.あ,そうそう,2回分の補講の日時を決めないと.来年1月30〜31日が補講日.

◆新刊情報 —— David A. Liberles (ed.)『Ancestral Sequence Reconstruction』(2007年5月31日刊行, Oxford University Press, ISBN:978-0-19-929918-8 → 版元ページ).祖先塩基配列や祖先アミノ酸配列の推定と復元に関する論文集.祖先復元問題と樹形推定問題よりも“解きやすい”問題ではあるが,応用的にも実用的にも重要な分野だと思う.系統樹を踏まえた推論や考察をする場合,樹形だけでなく,仮想祖先の形質状態が決まっていないと先に進めない論議は少なくない.むしろ,樹形と祖先状態はつねにペアで推定しておく方がのちのちのためには便利だと思う.

◆うう,原稿…….呻吟する昼休み./箱崎から「同情してあげません」とのメールが来る.そんなこと言うても,別府での酒池肉林と天罰は不可抗力やんか,とぶつぶつ言ってみる.でもって,来春の生態学会大会「群集系統学」シンポジウムの講演タイトルをえいっと返す:Nobuhiro Minaka「Measuring phylogenetic diversity - some statistical and computational problems」.近日中に,演者全員の演題が確定することになるだろう.となると,その次の仕事は講演要旨の提出か.

◆右腕をさすりつつ,原稿をひねり出す昼下り.そのまま夕方から夜になだれ込む.ときおり,常盤台から大学のコンピュータ室のパソコンに〈R〉がインストールできるかという,個別事情的(やや脱力的)メールが飛び交い,Global COE リーダー様じきじきの御出座とか,いろいろあったりする.セキュリティをしっかりやるというのは大切なことだが,ときどき使い勝手がとても窮屈になることがあって,こんなことならオフラインでいいやっと投げやりになることもしばし.

◆夜も連載原稿を書き続ける.今回は第7回目になるのだが,「種はクラスではない,個物である」というある意味でこの連載の中で“本丸“なタイトルを付けているので,その攻略に手間取っている.とりあえず10枚ほどは書いたのだが,これで外堀が埋まったのかどうか.

◆今年のRP成績検討会の日程調整 —— 例年より早く年内にすませよとのお達しがあり,12月18日〜21日のどこかで行なうことになった.

◆夜遅く,音羽から再度の督促あり.…….

◆本日の総歩数=4061歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/0.0%.


26 november 2007(月) ※ まだまだぁ,まぁだまだな月曜日

◆午前3時半に起床して,研究所に直行する.満月の夜中.4時の気温は2.3度.午前5時になって霧が立ちはじめ,気温は2.0度になった.晴天だが,雲が薄くかかっている.

◆未明のこまごま —— 頼まれ仕事1件は完了した./貸会議室メーリングリストを一つ消去し,代わりにひとつ新設した./進化学会の評議員選挙の件.白羽の矢を立てた選挙管理委員がいずれも快諾していただいたので,作業がスムーズに進みそう.事務局で今後のスケジュールを立て,さくさくと進めよう./で,連載原稿…….

◆午前9時半の気温は11.0度.高層に雲が広がっているが,ほぼ晴天で,日射しは暖かい.

◆久しぶりにつくばに実在するとどうしてもこまごまと —— 農環研の集中暖房が早くも始まっていた.放置しておくと,室温が“夏日”になってしまうので,びしびしオフにして窓を開けないとダメだ./羊ヶ丘から質問.え,「SAS」でクラスター分析ですか!? 「proc clust」のスクリプトなんかとうの昔に忘れ去っているぞ.SASを最後に動かしたのはもう15年ほど前のことで,その後はいっさい起動したことがない.こういう質問はたいへん困るのだが,かと言って身近に「SAS師」はまったく見当たらない./溜まっていた事務書類をぼんぼん弾き返す.復命書・組合投票・保険更新 etc.……/大分から返送してもらった荷物を受け取る.

◆スティグラー統計学史本2冊がまとめて着便 —— Stephen M. Stigler『The History of Statistics: The Measurement of Uncertainty before 1900』(1986年刊行,Harvard University Press,ISBN:0-674-40340-1 [hbk] / ISBN:0-674-40341-X [pbk] → 版元ページ);Stephen M. Stigler『Statistics on the Table: The History of Statistical Concepts and Methods』(1999年刊行,Harvard University Press,ISBN:0-674-83601-4 [hbk] / ISBN:0-674-00979-7 [pbk] → 版元ページ).いずれも統計学史の本として定評があり,版を重ねている.今までもっていなかったのはうっかりしていたからだが,これからは“ルーツ探し”に苦労することは少なくなるだろう.いずれも500ページほどもある厚い本だが,ペーパーバックであれば,たった二千円ほどで買える.とても安い買い物だ.

◆その一方で,いつも悩ましいのは,ハードカバー版のあと微妙なタイムラグでペーパーバック版が出るときだ.出版社によっては,両方の版を同時に出してくれるところもあるのだが(大学出版局に多いようだ),Elsevier とか Springer のように,ものすごーくお高いハードカバー版しか出さない,あるいはハードカバー版をまず出してから半年あるいは1年ほどのちに,おもむろに(さほど安くない)ペーパーバック版を出すという出版社もある.しばらく待てばペーパーバック版が出るというのであれば待つのだが,結局出なくて,しかも待っている間にハードカバー版も品切れになった日には目も当てられない.過去にそういう痛い目に何度も遭っているだけに悩ましさは募るばかり.

—— こううだうだ言っているのは,先日から逡巡していた:Jürgen Haffer『Ornithology, Evolution, and Philosophy : The Life and Science of Ernst Mayr 1904-2005』(2007年刊行[hbkのみ], Springer-Verlag, ISBN:978-3-540-71777-5 [hbk] / ISBN:978-3-540-71778-2 [pbk] → 目次|版元ページ:hbk / pbk)のことだ.いくつかの情報ソースから総合判断すると,この本のペーパーバック版が出るのは来年になりそうだ.というわけで,もっとも安かったとあるオンライン書店の「お買い上げ」ボタンをえいっと押してしまった.引きずる悩みも一瞬にして消え去り,あとはもう天国(と地獄)が前に開けるばかりなり…….来月早々にもハードカバー版がやってくることだろう.

◆日射しの暖かな昼休みの歩き読み —— 寒川旭『地震の日本史:大地は何を語るのか』(2007年11月25日刊行,中央公論新社[中公新書1922],ISBN:978-4-12-101922-6)の第3章まで読み進む.縄文時代から室町時代までの地震史.上代は文字資料が乏しいので,遺跡に残された断層や液状化の痕跡から歴史を復元する.時代が下るにしたがって,しだいに文字記録が増えてくるが,思わぬところから意外な古文書が地震を語っていたりする.

◆午後のこまごま —— 2週間後に迫ってきた北大非常勤の段取りをば.日程は12月9日(日)〜13日(木).宿泊先は北大構内の「ポプラ会館」に予約したとの連絡があった(寒いだろうなあ).航空券の予約をしないと.※巡業に次ぐ巡業だ./師走には例年よりも早い成績検討会があるはずなのだが,いったいいつになるのか.すでに来月の平日はかなり埋まっているぞ./領域の忘年会? うーむ,やりくりがつかん…….

◆午後の日射しが射し込んで暖かく,しかぁし,原稿ははかどらないまま,音羽から督促電話あり.やばいなあ.

◆夕刻,すすっと撤収して,帰宅.夜の勝負だ.さあどうだ.※ダメか…….

◆本日の総歩数=9117歩[うち「しっかり歩数」=4232歩/38分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/0.0%.


25 november 2007(日) ※ ねじり鉢巻きで原稿を書く連休末

◆午前3時に目が覚めたが,午前6時まで二度寝する.呪いの青あざはちーとも消えず.それどころか青黒さ度を増しつつある.不吉な兆候だ.

◆怠惰な連休最終日の午前は,快晴で北寄りの風.冷たいが日だまりは暖かそう.この三連休は絶好の行楽日和で,筑波山も紅葉の見ごろだという.しかし,筑波山神社への参道が交通渋滞するのは目に見えているので,近づかない方が無難だろう.

◆〈R〉関連情報2件 —— 最新刊:新納浩幸『Rで学ぶクラスタ解析』(2007年11月刊行,オーム社,ISBN:978-4-274-06703-7).ついにクラスタリングの〈R〉本まで出たか.版元ページで公開されている目次をざっと見るかぎり,前半第5章までよりも後半章の方がおもしろいかもしれない./ 今年の〈Rユーザー会〉の開催をうっかり見落としていた:2007年12月6日(木)〜8日(土),統計数理研究所.最終日の8日は日本語での講演会だ.詳細プログラムは先月すでに公開されていた.知っている名前が何人も.なお,6日と7日は,来日中の Luke Tierney と Friedrich Leisch のお二人が入れ代わり立ち代わりレクチャーをするということらしい.たいへんだなあ.

◆備忘メモ —— 6月にあったICC開館10周年記念セッション・シリーズ Vol.2 連続シンポジウム「メディア・テクノロジーと生成する〈知〉」の第2回「アーカイヴが紡ぐ未来:再連結する情報」のオーガナイザー四方幸子さんの総括がオンライン公開されていた.出たばかりの InterCommunication No. 62 からの転載記事.このシンポジウムの録画も追って ICC からオンライン公開されると聞いている./ 『現代によみがえるダーウィン』のオンライン書評:「ミュージアムの小径」2007年11月17日付の記事.どうもありがとうございます.

◆夕暮れ間近のつくばセンターあたりを散歩する.寒さが和らいでいる.寒気はもう抜けたということだろう.イルミネーションを通り抜け,西武のリブロにて新刊新書をゲット:寒川旭『地震の日本史:大地は何を語るのか』(2007年11月25日刊行,中央公論新社[中公新書1922],ISBN:978-4-12-101922-6).同じ著者の前著である『地震考古学:遺跡が語る地震の歴史』(1992年10月15日刊行,中央公論新社[中公新書1096],ISBN:4-12-101096-5)がとてもおもしろい本だったので,今回出た新刊も買ったのだが,もう17年もの月日が経っていたとは知らなかった.日本史をさかのぼり,古文書をひもときながら,縄文時代から現代にいたるまで時代を追って,日本を襲った数々の地震の記録を探し求める.地震学でありながら,同時に歴史学でもあるところが魅力だ.

[追記]毎年,今の時期に行われているつくばセンターのイルミネーションには〈つくば光の森〉というイベントタイトルが付いていたことを初めて知った.今年はその第3回目だそうだ.

◆夜,原稿〜,原稿〜,原稿〜.※船の汽笛のように鳴り響く…….

◆本日の総歩数=2049歩[うち「しっかり歩数」=992歩/11分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.8kg/−1.4%.


24 november 2007(土) ※ 小春日和の連休中日は湿布とともに

◆午前5時起床.昨夜は湿布を貼って寝たせいか,多少は具合がよいかと思ったが,まだまだ.上腕に残った“青あざ”はそのまま.朝から快晴で,きりきりと冷え込む.北の風が強い.ぽつぽつと返事メールを書いたりする.※社会復帰はいまだ道遠し.

◆大分本(続き) —— 夕方なしかの本制作委員会『夕方なしかの本8』(2006年12月10日刊行,OBS大分放送,ISBN不明).別府の「ときはデパート」に入っているリブロで買った本.リブロの「大分コーナー」にこの“真っ黄色本”がずらりと並んでいるありさまは壮観だ.全編ディープな大分弁.県内ではたいへんよく売れているシリーズだそうで,最初の巻の方は何回も重版されている.もともとは大分放送ラジオの視聴者投稿番組〈松井督治の夕方なしか!〉から生まれた本とのこと.また,この『夕方なしか!』本とは別に,もっと薄い(しかし黄色い)『なしか!』本既刊二十数号も並んでいた.この大分弁,研修中はそこかしこで飛び交っていたので,なんとなく雰囲気と口調がわかる気がする.ぽんぽんと言葉が飛べばなかなか威勢よく聞こえる.

このように,大分県内では『なしか!』が何冊も出まわっている.しかし,県外ではまったく知名度がないようで,ぼく自身,現物を手にするまではこういうシリーズ本があるとはいっこん知らんかった.なしか! ひょっとして県内でしか売ってないのか.※今は亡き神保町の「書肆アクセス」でもまったく見かけたことがなかった.

◆さりげなくしっかりとプレッシャー —— 講談社『』の12月号が届いた:三中信宏〈生物の樹・科学の樹〉連載第6回「真なるものはつねに秘匿されている」(pp. 36-43).もうそういう時期か,と次なる原稿書きのプレッシャーを体感する.この連休中には何とかしないとまずい.

◆午前9時過ぎに,予約してあった医院にインフルエンザ予防接種に行ったところ,ものすごい混み方だった.その多くは同じインフルエンザ接種なのは季節柄しかたがないことかも.けっきょく1時間半も待ち,支払いをすませて家に帰り着いたら,もうお昼近かった.昨日も今日もただ単に医者にかかるだけで数時間が浪費されたことになる.

◆しかし,転んでもタダでは起きまへんでぇ —— 朝のうちに北風も止んだ小春日和の中,待ち時間に松代の田んぼのあぜ道を徘徊して,La La Garden の〈くまざわ書店〉を徘徊する.岩波文庫の今月の新刊はおもしろいかも:北原白秋『フレップ・トリップ』(2007年11月16日刊行,岩波書店[岩波文庫・緑48-7], ISBN:978-4-00-310487-3).タイトルを見ただけでは白秋の詩集の1冊かと思ったが,実は1920年代末に,樺太観光団の一員としてサハリンを訪れた白秋による紀行文だ.行き先のイメージとは裏腹に,この文体の明るさは何なんでしょ.400ページ超./ シエサ・デ・レオン著(増田義郎訳)『インカ帝国地誌』(2007年11月16日刊行,岩波書店[岩波文庫・青488-2], ISBN:978-4-00-310488-2).ここのところ,岩波文庫から出る“アンデス・インカもの”は心して買うようにしている.同じ著者による:シエサ・デ・レオン著(増田義郎訳)『インカ帝国史』(2006年1月17日刊行,岩波書店[岩波文庫・青488-1], ISBN:4-00-334881-8)の姉妹編.1553年初版からの翻訳.600ページ強もある厚さだ.

◆午後4時過ぎに研究所に出撃するも1時間ほどで撤収.気温10.6度.東の空に満月がのぼり始めた.

◆帰宅後,昨日からつくっていた「牛すね肉【禁断の果実】煮込み」の味の調整をする.なかなかいいできだと自画自賛しつつ食卓へ.さすが【禁断の果実】.このまろやかさは絶品.あまりに美味かったので,mixiにレシピを書き込んでしまった.

しかし,大量の【禁断の果実】を口にしてしまった報いだろうか,上腕のあざはさらに大きくなり,邪悪な蛇のごとく腕の裏側にまで青黒さが染み広がる.〈もののけ姫〉の主人公アシタカにかけられた“呪い”と同じじゃないか.困ったなあ.

◆ぼちぼち原稿の構想を練り始める.週明けには耳を揃えて音羽に出したいのだが…….※この「……」はなんやねん.

◆本日の総歩数=7786歩[うち「しっかり歩数」=2280歩/21分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/+0.5%.


23 november 2007(金) ※ 病院詣と「禁断の果実」で厄落し

◆午前5時起床.あいかわらず寝返り打てず.体勢によっては寝言で「いたたた」と言っている自分がいる.こんなことでは日常生活にも支障があるので,今日は近場の救急病院に行くことにした.連休初日だが,そんな悠長なことは言っていられない.

◆それでも,久しぶりに研究所に行ってみる.気温2.9度.寒過ぎますがな.晴れて静電気がびしばしと飛びまくる.この感じは冬本番です.居室にて,出張の荷物を片づけたり,机の上の書類をばさっと棄てたり(うそ),用事メールに遅い返事を書いてみたり.

—— 右腕が利かないと車のハンドルが満足に回せないことを発見してたいへんあせる.右折や左折のたびに「あたた」「いたた」と呻いているようでは,交通地獄のつくばを生き抜くことはできない.これは何としても早急に治療してもらうしかない.

◆ということで,午前10時過ぎにメディカルに行ったところが,えらい混雑で.休日の救急センターにはこんなにたくさん患者が集結するのかと愕然とする.受付で訊いたら「1時間半の待ち時間」とのことだったので,番だけとっていったん帰宅し,昼過ぎに再度来院する.午後1時過ぎ,まずレントゲンを撮ってもらってから,治療室へ.診察の結果,骨には異常はなく,右肩関節の打撲による痛みであることが判明した.湿布と鎮痛剤をもらって帰宅したのは午後2時過ぎのことだった.

—— 診察待ち時間の読書:田山花袋『温泉めぐり』(2007年6月15日刊行, 岩波書店[岩波文庫 31-021-7], ISBN:978-4-00-310217-6).しばらく前に買ったまま読み進んでいなかった.花袋は別府温泉が好きだったというが,それは本書後半に書かれている.前半は関東近辺の温泉いろいろ.群馬の水沢に近いところにあったという「ガラメキ温泉」に言及されている.古い温泉旅行記には,現在はない温泉のありさまが描かれているのが興味深い.

◆大分写真本 —— 政東準一(写真)/野田恭子(文)『大分鮨海道』(2004年12月25日刊行,おおいたインフォメーションハウス[九州十色シリーズ], ISBN:4-9901769-6-0).お,お,見てるだけでヨダレが……./樋口和美(取材)/江上真(撮影)『大分の酒蔵』(2005年2月25日刊行,おおいたインフォメーションハウス[九州十色シリーズ], ISBN:4-9901769-7-9).大分は「焼酎の国」だとばかり思っていたのだが,実際に来てみて話を聞くと,以前は宴席でも日本酒のことが多かったが,割に最近になって“焼酎化”したと年配の方々は言う.確かに,この本を眺めると,大分には焼酎だけでなく日本酒の蔵元も同じくらいあることを知る.今回,大分に来て,当然のごとく〈西の星〉を勧められる機会が多かったのだが,かの〈いいちこ〉の三和酒類が製造元だったか.なあるほど.

◆午後は「禁断の果実」をば —— イマイチ体調がよろしくないので,ここはひとつ「禁断の果実」を悔いまくって厄落しをするしかないでしょ.ということで,ベルギービール Hoegaarden の〈禁断の果実(de verboten vrucht)〉をふんだんに使った,牛すね肉のビール煮込みをつくることにした.すね肉1.5kgを「禁断の果実」5本分(約1.5リットル)のビールの中でただひたすら煮込むというシンプルな料理だ.たったひとつでエデンの園を追われるというのに,それを湯水のごとく1.5リットルも使うとは,まさに神をも畏れぬ蛮行というしかない.これこそ厄落しだ.※ホンマかっ.

◆夕方からおもむろにつくり始め,深鍋に仕込んだところでいったん中座し,向かいのノバホールへ.

◆つくば古典音楽合唱団第21回定期演奏会 —— 午後5時前にノバホールに入る.今夜は,つくば古典音楽合唱団の定期演奏会で,バッハのモテット4番とカンタータ106番の他に,ヨハン・シェンク(Johann Schenck)のヴィオラ・ダ・ガンバのソナタ第2番,そして前半はトマス・ルイス・デ・ビクトリア(Tomás Luis de Victoria)のエレミア哀歌.6弦のヴィオラ・ダ・ガンバと7弦のバス・ガンバは生演奏で聴くとたいへんよろしい.カンタータ106番はミュールハウゼン時代のバッハ初期のカンタータだそうだ.リコーダーが入ると雰囲気が変わって聞こえるが,どの楽器も「人の声」に近いものがある.独唱者が映える.今度はカウンタ・テナーのあるカンタータが聴いてみたいな.

◆帰宅後,再び「禁断の果実」の煮込みを続ける.明日の夜には食卓に並べられるようにしよう.

◆本日の総歩数=12130歩[うち「しっかり歩数」=7126歩/71分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/+0.5%.


22 november 2007(木) ※ 明け方の歓楽街の隙間を外湯巡り

◆前夜とても早く寝てしまったので,丑三つ時に目が覚める.右腕はあいかわらず使い物にならない.朝風呂ならぬ夜中風呂を堪能し(当然の湯舟独占),本を読んだり日録を書いたりしつつ,夜明けを迎える.

ここ三日間というもの,毎朝目覚めるたびに,「今日はあれとこれを教えて……」と脳内イメージしたものだ.今朝はそういうことがいっさい必要ないというのはシアワセなことだ.今日は風呂に入って,帰るだけだ.

—— それにしても,別府最終日に『温泉本』やら『スパポート』を手にしても仕方がないという気がしないでもないのだが,ま,気分だけでもゆったりと.

◆北浜の外湯めぐり —— 午前6時,まだ仄暗い北浜の街を抜けて、別府駅前へ.レトロな建物の〈駅前高等温泉〉がある.ここにはふたつの風呂があって,「高等湯」ともうひとつ泉質のちがう「並湯」があるのだが,フロントの女性に訊いたところ,「並湯は今の季節はぬるい」ち,言いよる.高等湯は半地下にしつらえられていて,熱い湯舟と階段下の奥まったぬるい湯舟のふたつがある.ここは当然,熱い方に入るしかない.早朝ゆえ客はほとんどおらず,半地下からガラス窓越しの外の暗さを感じつつ,ゆったりする.鉄輪も北浜も熱い源泉をあまり加水せずにそのまま浴槽に注ぎ込むというのが基本スタイルで,湯元には「水道を出しっぱなしにするな」という警告がどこの温泉にも記されている.

引き続いて,夜明けの歓楽街を通り抜けて,超有名な〈竹瓦温泉〉へと向かう.この木造本館の威容は,松山の道後温泉本館を連想させる.吹き抜けの高い天井と板張りの床.ここも半地下に湯舟があるのだが,下り階段には擬宝珠まである.こういう時間帯なので,地元の利用客が大半だったが,入湯スタイルから作法まで,いろいろ教わった.歓楽街の細い路地を縫って進むと,突然この場違いな建物が現れる.この落差がいいな.

—— 未明の外湯巡りと歓楽街探検をしたのちに,旅館に帰り着いたのは午前7時過ぎのことだった.もういっかい内湯に入ってから朝食をすます.窓から見える防波堤の向こうには別府湾が見える.午前9時過ぎに遅めのチェックアウト.明日からは三連休なので,ここもさぞかし賑わうことだろう.

◆日射しは強いが,海からの風は冷たい.1時間ほど,駅近くを徘徊したのだが,平日のせいか,どこも開店が遅く,一回りすればもう十分だ.11:20に北浜の「ときはデパート」前から出る,空港行きの高速バスに乗り込んだ.

◆大分空港着は正午過ぎ.だいぶ時間があったので,昼食に空港ビル3階にある〈鮨・海甲〉で握りずしをば.ここは,たいへん有名なお寿司屋さんらしい.関アジと関サバなどを握ってもらった.お,よだれよだれ.その後,空港から日録を更新したり,メールを書いたりしているうちに搭乗時刻が近づいてきた.1時半に「JAL 1790」便の搭乗口へ.定刻離陸.

—— あとはするすると長距離を運ばれて,TXつくば駅に降り立ったのは午後6時前だった.つくば駅前はセンター広場だけでなく,Right-on ビルのイルミネーションも点燈されていた.もう冬の装いだ.実際,この北風の冷たさは大分の比ではない.寒過ぎ.

—— 右肩をかばいつつ,大分からここまでリュックやスーツケースを運んでいるうちに,今度は左肩も凝ってきた.さんざんですな.

◆本日の総歩数=6726歩[うち「しっかり歩数」=3851歩/42分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


21 november 2007(水) ※ 名誉なき不肖,〈虎の穴〉最終日

◆寝返りを打ったとたん,右肩にはしる激痛に目覚める午前4時半.いたたた.右腕前腕はちゃんと動くのだが,上腕がほぼ機能停止しているらしい.上腕に力が入るたびに痛くなるので,右腕の上げ下げには左手で介助しなければならないというやっかいなことになった.昨日の日録を書くものの,マウスの操作すら満足にできないことに気づく.

—— しかし,利き腕が使えないというのは,何よりも日常生活に差し障りがある.服の袖に手を通せなかったり,ドアの鍵を回せなかったり,箸さばきが不自由だったり,生卵がうまく割れなかったり,納豆を上手にかき回せなかったり,リュックサックが背負えなかったり,…….

◆それでも何とかかんとか朝食をすませ,荷作りをして,午前8時半にチェックアウト.ほどなく甲斐さんが迎えに来られたので,そのまま県庁へ直行する.今日もいい天気のようだ.

◆〈虎の穴〉最終日 —— 今日も午前9時から開始.多変量解析概論,共分散と相関係数,そして一般化線形モデルとほぼ1時間ずつはなしをしたら.あっという間に正午になった.一般化線形モデル(GLM)については入り口のところだけしか話ができなかったが,〈久保講義のーと〉を適宜参照させてもらった.感謝.〈R Commander〉でも GLM のメニューが入っているので,ちょこちょことデモできた.

◆昼食は県庁前の〈こつこつ庵〉にて.焼酎の品揃えがとても多そうだが,ここで呑むわけにはいかない.とり天がうまそうだった.だんご汁とご飯というセットは重量級だと感心したら,県庁のコーヒーラウンジでは,だんご汁&おにぎり2個を平らげている妙齢の女性がいた.大分のみなさんは基本的にたくさん食べるのだろうか.

◆午後1時15分から講義再開.まずは,ブーツストラップとジャックナイフを題材にして,リサンプリング統計学の講義と〈R〉実習を行なう.これで1時間半.休憩後引き続いて,受講生からの質問票に答える形式での質疑の時間が1時間あまり.午後4時過ぎに全スケジュールを終了した.みなさん,お疲れさんでした.

—— 終日,右腕は麻痺状態で,板書にも支障ありまくり.参ったな.おまけに講義開始時には DynaBook くんが臍を曲げて起動しなかったりしてさんざんだったが,そういう祟りがしだいに解けたのは幸いだった.しかし,夕方になっても,右腕は死んだまま.

◆県庁の研究センターでみなさんに講義終了の挨拶をしてから,別府の達人・芦原さんに再び送ってもらった.行き先は,別府駅前の北浜にある〈旅館すえよ志〉.このあたりの温泉街の源泉だという.車中,鉄輪の〈ひょうたん温泉〉がミシュラン三つ星に指定されたことを知る.滞在中に行っておけばよかったが,営業時間帯とずれていたのでしかたなかった.

◆〈旅館すえよ志〉にチェックインして,まずはひと風呂.岩風呂の浴槽は巨大だ.泉源からの距離はたった20メートルしかない.高温の湯が絶え間なく注ぎ込み.あふれている.「ナトリウム-マグネシウム炭酸水素塩泉・塩化物泉」という名称だが,要するに「重曹土類泉」.色は黄褐色でやや濁っているが,赤茶色の析出物あり.このあたりの温泉はこういう泉質とのこと.適用症の中に“運動器障害”というのが含まれているので,ちょっとは効くのだろうかと期待してみる.しかし,作務衣の着替えにも苦労しているようでは,先は長いかも.

◆部屋出しの夕食後,もうひと風呂と思ったのだが,三日間の累積疲労がやってきて,午後9時過ぎには早くも寝てしまった.つくばに帰るだけの明日は講義のことをもう考えなくていいかと思うと気がラクだ.それにしても右腕が使えないのは不自由だ.

◆本日の総歩数=1471歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


20 november 2007(火) ※ 行ってはいけない都町,天罰覿面

◆午前4時起床.ううむ,寝過ぎだ.昨日の日録を書き,今日の講義準備をする.

◆旅すればとても忙しい —— 旅先で仕事をしたり準備をしたりしようとしても,満足にできたためしがない.旅先では,日々新たに発生する事態やら「フグづくし」やら「湯疲れ」で,予定していた用事や持ち込みの仕事に割く時間がほとんどないからだ.本務地にいないので,“火山灰”のごとき雑用はただ机上に降り積もっているだけでワタクシの知ったことではないが,だからといって旅先でヒマになるということはあり得ない.

—— あ,今日が締切の原稿があったような……(汗).

◆午前7時過ぎに1階で朝食をとり,その後,ホテルのまわりをぐるっと徘徊する.昨夜のフグ責めからの帰り道,参事が「みなかさん,アッチに行ってはいけませんよ」と指差したのが,泊まっているホテルのある“都町”あたりだった.しかし,朝日の射し込む都町界隈はただのくたびれた町並みで,“別府九湯目”のようなアブナサはちっとも感じられなかった.※それが盲点だったことをあとで思い知ることになる.

◆午前9時少し前にホテルを出たところで,県庁の甲斐さんがやってきた.講義開始定刻の9時にOAプラザに入ったところ,受講生諸氏はすでにそろっていた.県内から大分まで1時間以上かかる人もいるとのこと.お疲れさまです.

◆〈虎の穴〉二日目 —— 今日は「実験計画法の日」だ.これまでいろいろな場で実験計画法を教えてきたが,ここ数年は3時間程度にまとめた“簡略版”を高座にかけることが多かった.しかし,今回は“無修正完全版”をオンエアすることにした.そして,〈R〉と〈R Commander〉で統計解析をするときの限界点[〈R Commander〉では手に負えなくなる限界]を見極めて,〈R〉をベタで使う必要がある状況を体験をしてもらうことになる.

午前いっぱいは,実験計画の初歩として,1要因の完全無作為化法と乱塊法をスライドで説明し,〈R Commander〉での分散分析と多重比較(Tukey信頼区間)の手順を説明した.正規性の検定とか等分散性の検定,そして多重比較のりくつも.〈R Commander〉の利点のひとつは,読み込んだデータの記述統計量の計算や散布図のグラフ表示などの「定型的」な作業がぱぱっと手軽にやれることにある.実際,データの数字の海を前にしてぼー然とたたずむのではなく,とりあえず図表を描いてみて,アタリをつけるときには〈R Commander〉はありがたいツールだ.

◆正午になったので昼休み.曇りときどき晴れの空模様だ.昨日と同じく,13階のレストラン〈ぶんご〉にてランチ・バイキング.今日は,社会見学らしき小学生の巨大な一団が席を占めていた.別府湾が一望できるこのレストランはとてもいいロケーションにある.

◆午後1時過ぎに講義再開.2要因の乱塊法に進む.要因間の交互作用についてスライドで説明した後,やはり〈R Commander〉で分散分析などの計算をする実習をしてもらう.処理平均のグラフ表示を用いれば,交互作用のようすがひと目でわかる.統計計算に取りかかる前にデータを「よく見るべし」と,今回の講義では何度も言ってきたが,「よく見る」ためには〈R Commander〉は使い勝手がとてもよい.

しかし,〈R Commander〉の出番はここまで.続く Split-plot と Strip-plot になるともう使えない.〈R Commander〉の線形モデル設定では誤差項の指定それ自体はできるのだが,計算がうまくいかない.もう少しいじれば何とかなるのかもしれないが,それくらいだったらベタの〈R〉でやった方が手っ取り早い.というわけで,この二つの実験計画についてはコマンド打ちをしてもらった.最後に,エクセルのデータファイルを〈R Commander〉にインポートするわざについて説明.スプレッドシートからのコピー&ペーストでも,ファイルそのもののインポートでも,ちゃちゃっとできるのは〈R Commander〉の強み.これで,Excel統計苦界からの脱出はラクになるはず.午後5時に講義終了.

◆夕暮れの大分城のお壕を横目にいったんホテルに戻り,荷物をおろしてから,再び県庁へ.午後6時から歓迎懇談会を開いていただけるとのことで,13階〈ぶんご〉の奥の一室に向かう.座食パーティ形式でとても豪華だった.ありがたいことです.甲斐さんの話では,今回の講義には40名を越す応募があったのだが,OAプラザのパソコンが「16台」しかないということで,人数をぐっと絞ったらしい.「ですから,来年もよろしく」と頼まれたので,来年も来ましょう.はい.“ダブル佐藤さん”もよろしく.午後8時過ぎにお開きとなった.

ここで悪の誘いが —— 「みなかさん,もう一軒どうですか」とのお声がかかり,行ってはならないはずの都町へ向かう一群.この電飾の派手さはすごいなあ.〈国東のひと〉に入り,「佐藤[黒]」をいただいたり.午後10時半に店を出て,ホテルに帰り着き,「では,また明日」と振り返ったところに予期せぬ段差があって,近年にない派手なこけ方をして右肩を強打.いたたた.

◆いたたた…….天罰覿面,明日は最終日.いたたた…….

◆本日の総歩数=7140歩[うち「しっかり歩数」=2443歩/24分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


19 november 2007(月) ※ 地獄蒸しと〈虎の穴〉とフグづくし

◆午前4時起床.結局7時間も寝てしまったことになる.シンプルに寝過ぎ.外はまだ暗いが,遠くに見える別府湾は白み始めている.日録を書き,今日からの講義の準備をするうちに,外が明るくなってきた.風はなく晴天の予感.しかし,気温は低い.

◆温泉本 —— NPO法人ハットウ・オンパク(監修)『別府八湯・温泉本(2007〜2008年版)』(2007年6月25日刊行,おおいたインフォメーションハウス, ISBNなし[雑誌86044-06]).地元のことは地元に訊くのがいちばんだ.ということで,ホテルの売店で売っていたこの冊子を買い求め,速攻で付け焼き刃の勉強をする.宿泊施設や観光名所などはほかのガイドブックでも何とかなるが,外湯の共同浴場についてはなかなか情報が集まらなかった.

もちろん,インターネット上には,別府温泉の専門サイトがたくさんある.たとえば,別府全体の案内なら〈別府ウェブ〉があるが,ぼくにはあまり関係がない.別府温泉については,〈HATTO WALKERS〉が奥が深そうだ.別府八湯の中でも鉄輪温泉限定の〈鉄輪ウェブ〉まで開設されている.きりがなく,泥湯や蒸し砂にずぶずぶと入り込む心地.

◆早朝の外湯巡り(その二) —— 別府といえば方々の煙突から源泉の湯煙がぼうぼうと立ち上るイメージがあるが,それは鉄輪温泉のことだったかと改めて認識する.朝日を浴びて,煙突といわず,側溝といわず,排水溝といわず,とにかくいたるところから湯気がもうもうと立つ.朝方の気温が低いだけに,それはもう景気よく天に向かって吹き上げている.

昨日に続いて,再びいでゆ坂を下り,〈地獄原温泉〉の共同浴場へ.ここでもお賽銭を.お湯は熱め.そして,市営の共同浴場である〈熱の湯温泉〉へ.こちらは無料だが,その名前に反して,湯がぬるめ.いずれの共同浴場も常連客が元栓で「湯奉行」をしていて,湯温を調節しているらしかった.温泉街の外湯は近在のお年寄りの社交場であり,あるいは貸し間旅館の客が利用する.昨日からひたすら食塩泉に入り続けているので,塩類特有のぺとぺと感あり.帰りはみゆき坂を上がりきって,ぐるりと散歩し,再び坂を下ってホテルに戻る.そろそろ朝食の時間だ.

◆午前9時に,県庁の芦原さんにホテルまで迎えに来てもらった.送迎まことにありがとうございます.そのまま,別府湾を左に見ながら対岸の大分市に向かう.片側三車線の道を時間にして半時間ほど走る.天気よし.「別府八湯」まではいいけれど,くれぐれも“九湯目”に入ってはいけないと諭される.なるほど.※“九湯目”に入る予定はないが…….

◆県庁の巨大なビルに車は横づけされ,そのまま9階に上り,まずは大分県農林水産研究センターの挟間センター長に挨拶.植物病理が専門とのことで,法橋さんなど思わぬ名前が飛び出したりする.世界は狭い(かもしれない).統合された農林水産研究センターができたのはほんの数年前のことだそうだ.もちろん,研究所そのものは県内各地に分散している.

◆〈虎の穴〉初日 —— その後,県議会のフロアを通り抜け,別棟9階にある講義室「OAプラザ」に向かう.パソコンを用いた研修はすべてここで行なうそうだ.受講生は20名ほど.“ネクタイ率”はとても高い(という感想を述べた時点でワタクシは尋常ではない).センター長の挨拶のあと,さっそく講義を始める.午前中は統計学概論.いつもの通り.

昼食は,同じ棟の13階にあるバイキング・レストランにて.県庁内だけではなく一般利用者も多いという.550円という値段で,とても眺望がよいのだから,さもありなん.

午後は1時半から講義再開.〈R〉の起動を確認し,〈R Commander〉を含む関連パッケージをUSBメモリーで配る.まずは,〈R Commander〉を使って,データを「見る」ためのツールをいくつか説明する.とくに散布図行列や三次元散布図あたりが役に立つと.休憩時間にサッポロに飛び,〈久保講義のーと〉の全7回分が完結し,そのパックされたものが公開されたことを知る.これは〈虎の穴〉でも部分的に使わせてもらうことにしよう.

後半は,分散の話と正規分布を中心とする確率分布の話.パラメトリック統計学になると,どうしても「数式」が出てきてしまうので(〈R Commander〉のグラフ機能を十分に利用してはいるのだが),最後列の“カナリア”たちの具合がしだいによろしくなくなってくる.だもんで,最後は,〈R〉のリソースをインターネットからどのようにダウンロードするか,どのサイトを見れば勉強になるか,Excel はいかによくないかという話をして,初日の講義は午後5時過ぎに終わった.

◆いったん,大分での宿泊先であるビジネスホテル〈都イン大分〉にチェックインしたのち,今夜の“特別講習”の場である〈味どころ・五条〉に向かう.大分県農林水産研究センター長をはじめ VIP なみなさんと,大分県の農林水産業について語りつつ(うそ),ふぐ刺し,ひれ酒,ふぐ鍋とひたすらフグが押し寄せる.こりゃ参った.で,いつのまにか,話が「音楽」の方に急速シフトしてですね,ヒンデミットにスクリャビンに〈復活〉にブルックナーという言葉が飛び交い,ショスタコーヴィッチは「4番」と「8番」がいいですねという課長さんの熱弁に圧倒されて,センター長は早くも虫の息だったり.ショスタコーヴィッチの「15番」のエンディングはこの世のものではないという課長さんの絶叫に,参事が目を丸くしたり —— という“思わぬ展開”を楽しみつつ,午後9時にお開きとなった.ありがとうございました.

◆で,ホテルに帰ってから,すぐに寝てしまった[らしい].※またかよ…….

◆本日の総歩数=3400歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


18 november 2007(日) ※ 飛ぶ鳥,あとを濁しつつ,別府へ

◆午前5時半起床.晴れ上がり,初霜だ.気温2.4度.

◆出発当日の朝のこまごま —— 研究室にて,残務のメーリングリスト雑用をいくつかすませる.大分行きの資料・機材を確認して,これでおっけー.あ,ほぼ週刊の〈久保講義のーと〉の印刷もしないと……うわ,計百ページ超ですかっ(汗).

◆そのまま快晴になる.9:11発の TX 快速で東京へ.浜松町で乗り換えて,羽田空港第一ビルで下車.チェックインして,ぶらぶらしているうちに,11:35発の大分行き JAL1787 便の搭乗時刻となった.機内放送によると,大分は「曇り,気温12度」とのこと.12度! 九州で?

◆機内読書 —— プリントアウトした〈久保講義のーと〉をひととおり読了する.GLM[M] を〈R〉で愉しみたい?人はぜひ読みましょう(呻吟している方もどーぞ).今回の大分巡業に関していえば,ポアソン分布や二項分布などの離散分布をする変量からの一般化線形モデルの計算例もさることながら,データを「見る」ときに,平均と分散との関係から“使えそうな確率分布”の見当をつけるというあたりが受講生にとって役に立ちそう.もちろん,〈R〉のプログラム例としても教育的だ.

—— 気がつけば赤ペンをもって,文面のチェックをしていたりする(悲しい習性です).難しいのは,シンプルな“まちがい”なのか,それとも「くぼ語」特有の語用スタイルなのかの境界線がぼやけていること.※hokudaiの受講生たちはこの「くぼ語」を読みこなせているのだろうか.

◆午後1時半,大分空港着.曇っていたが,しだいに晴れ間が広がる.荷物の受け渡しコンベアに注意書として,「回転台の寿司には触らないように」とマジメに書かれている.寿司? 冗談でしょう,と笑い飛ばしていたら,ベルトコンベアの荷物の先頭に“巨大な海老の握りずし”が巨大な皿に乗って運ばれてきた.空港はウソつかない.しかし,とめどなく脱力した…….

◆大分県庁の担当である甲斐さんにわざわざ空港まで迎えにきていただいた.時間があるということで,国東半島をぐるりとまわる.走り始めてすぐに,大分弁の交通標識に混じって(他国者はつい読み込んで脇見運転してしまいそうだ),「三浦梅園生誕地」の表示が見える.彼の生地がこのあたりであることをうかつにも忘れていた.明日からは「くぼ語」ならぬ「玄語」を話すしかないか.

富貴寺から宇佐神宮,そして山越えで明礬温泉を経由して,別府・鉄輪温泉まで送ってもらった.ありがとうございます.それにしても,気温が低い.確かに10度そこそこしかないようだが,北風が強い分,体感温度はさらに低い.それでも,日が射してきたので,ひなたは暖かく感じる.

当初は,明礬温泉に宿泊して,などと考えたこともあったのだが,こんな山間の場所では対岸の大分まで研修に行くという雰囲気ではないな.鉄輪にしたのはよい選択だったと思う.午後5時に鉄輪の〈もと湯の宿・黒田や〉にたどりつく.チェックインしてから,まずは温泉に直行.湯口はとても高温で,触れないほど.舐めてしょっぱいのは,食塩泉(ナトリウム-塩化物泉)の証拠.

◆夕闇の外湯めぐり(その一) —— 夕食までにまだ時間があるので,夕闇迫る鉄輪の温泉街をぶらり.しかし,この寒さと北風で,温泉街を歩いている客はほとんどいない(というか,ぜんぜんいない).

強い風に吹かれて,いでゆ坂を下り,共同浴場の〈渋の湯〉に入る.外までもうもうと湯気が煙っている.温泉街の組合員専用の浴場だが,百円で観光客も入湯できる.このあたりの外湯はすべて源泉掛け流しなのだが,元湯が高温過ぎる.〈渋の湯〉では加水せずに竹製の冷却装置で源泉を冷やしてから浴槽に流し込んでいるという.それなのに十分過ぎるほど熱かった.

さらに坂を下って筋湯通りに入り,もうひとつの共同浴場である〈すじ湯温泉〉へ.ところが,人がぜんぜんいなくて,中は真っ暗だ.入湯時間内なので,入湯料がわりのお賽銭を大日如来さまにさし上げてから,風呂場へ.さっきの〈渋の湯〉もそうだったが,ここも脱衣場と風呂場の間仕切りがまったくない.さて,浴槽を見ると,湯は縁いっぱいまであるのだが,掛け流されていない.どーしてだろうと湯元を探ってみたら,巨大な塩ビの“栓”で塞いであって,「使わないときは流しっぱなしにしないように」と書かれている.なるほど,入湯するときにだけ,“栓”を開けて源泉を浴槽に注ぎ込み,出るときは“栓”をするというシステムらしい.結局,誰も入湯客がいなかったので,独り占めしてしまった.

—— いずれの外湯も源泉は熱くてしょっぱかった.鉄輪温泉の共通の泉質なのだろう.

◆午後7時半からホテル2階の〈竹紫〉で夕食.豊後牛のしゃぶしゃぶをメインにした懐石料理.何とも美味でございました.午後9時前に部屋に戻り,即座に爆睡している自分を午前1時に発見する.こりゃまずいというので,もう一度,あらためてきちんと睡眠体勢に入る.

◆で,明日から大分県庁のOAプラザで開催される数理統計研修の“稠密”この上ない講義スケジュールは次のとおりだったりする ——


—— 独演会にしてはとってもハードですなあ…….

◆本日の総歩数=9410歩[うち「しっかり歩数」=1557歩/16分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.4kg/−0.4%.


17 november 2007(土) ※ 色づくイチョウも寒さで散り始める

◆前夜早めに寝たせいか,午前3時半に目覚める.速攻で研究所に進入する.満天星.午前4時の気温は「2度」.今年度になってからの最低気温の更新だ.

◆未明の研究所にて旅支度は続く.まだスライドをつくらないといけない箇所があるのだが,そういうのはこっちに置いといて —— 進化学会の評議員選挙の準備が日単位で遅れているのであたふた進める.白羽の矢を立てるターゲットは決まったので,茗荷谷に連絡.あわせて,年度内の選挙作業の進捗について事務局に通知した.年内にばたばたとケリをつけましょう.

—— その後,夜明け前までさらに気温は下がり続け,帰宅する直前の午前5時半には「1.0度」を指していた.霜が降りそうな寒さだ.

◆午後1時からエポカルにて学研労協の催し〈独法つくば集会〉に参加する.その後,研究所にてまたまた旅支度の続き.支度は終わらず…….その合間に出奔直前のこまごま —— 先日の査読依頼.承諾/拒否の締切が昨日までだったので,瞬時に「ごめんなさい」してしまった.代わりの人身御供に天王台のとある御方を……./旧・蒼樹書房本に関する返事を書く.将来,誰かの私蔵本が流出するのをじっと待つしかないのでは./この冬のインフルエンザ予防接種は11月24日(土)の午前中にすませることになった.

◆オーウェン降臨 —— Richard Owen のリプリントが出たという情報がポートアイランドから届く:Richard Owen『On the Nature of Limbs: A Discourse』(2007年刊行[初版1849年],University of Chicago Press,Chicago,ISBN:978-0-226-64194-2 [hbk] / ISBN:978-0-226-64193-5 [pbk] → 版元ページ).原書はまちがいなく稀覯本だが,それをファクシミリ復刻している.で,興味深いのは,今回のリプリントの編者と寄稿者の方々:「Preface by Brian K. Hall. Introduction by Mary P. Winsor, Jennifer Coggon. Edited with an Introduction by Ronald Amundson」.いや,みなさん,完全に“つるんで”いるぞ.

◆つくばセンターのクリスマス・イルミネーションが今夜から点燈された.毎年のことだが,そろそろ今年も終わりが近づいてきたということだ.「忘年会」という言葉があちこちから飛び交うようになってきたし.

◆夜,やっと旅支度が終わる.服と本でスーツケースはすでに満杯状態だ.大分から帰るときは,いつものように重い荷物は郵送してもらうことにしよう.

—— 明朝はそれほど早い出発ではないので,気がラクだ.

◆本日の総歩数=6560歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=−0.2kg/+0.3%.


16 november 2007(金) ※ 寒風吹いてあたふたと旅支度をする

◆午前4時20分起床.雲多く,北風強し.気温8.2度.昨日よりもだいぶ寒い.研究所への早朝出勤がつらい季節になってきた.

◆早朝のこまごま —— そろそろ「旅支度」をしないと間に合わない.まずは,手拭いと下駄を入れてと……(ちがうやろ,それ)/〈Google Book Search〉おそるべし.あんな本やこんな本までぜーんぶ読めてしまいます.こわい世の中になってしまったものだ.もちろん,ところどころページが“抜いて”あるので,ブツをもっている人の“ガス”も抜けるのだが,「この本買うのにどんだけ払たか知ってんのかあっ」と“卓袱台返し”しそうになる本まで読めてしまいますぅ(く……)./午後の数理統計研修「質疑」の準備.送られてきた質問票をとりまとめて,プレゼン資料にする作業.

〈別府・虎の穴〉恐怖の稠密スケジュールの全貌 —— 午前は曇りのまま.10時半の気温は「11.3度」.冬並みの寒さ.大分県から,統計研修期間中のスケジュール表が送られてきた.実質的な研修日(19〜21日)の時間設定は,連日午前9時から午後5時まで.これはつくばですませたばかりの数理統計研修よりもハードなスケジュールだ.おまけに,夜ごとに「特別研修」の席が設けられているという.これじゃあ,もう社会復帰はできないかもねえ.

◆AbeBooksから届いた本 —— Joseph Henry Woodger『Biological Principles: A Critical Study』(1929年初版刊行, Routledge & Kegan Paul[International Library of Psychology, Philosophy and Scientific Method], London).1948年に出た第2刷.蔵書印や図書番号が付されていないところを見ると,個人蔵書だったようで,図書館などの公的機関から流出したものではなさそう.半世紀以上も前の本だが,ハードカバー製本はまだ崩れていない.本書はウィーン留学から帰国した彼の処女作であり,学位を得たのもこの著作のおかげだったそうだ,それにしても500ページもある大作だとは思わなかった.この本は古書価格がもともととっても高い本なのだが,版元の Routledge から 2000 年頃に一度リプリントされている.その新刊価格もほぼ40,000円だった.高すぎ.それを考えるとたまたま1/10の廉価で入手できたのは幸いだった.

本書はある種の「理論生物学」を目指していて,Russell & Whitehead の影響がすでに色濃いことは当然なのだが,彼の定位する目標とは「Introduction」の末尾に書かれている:

We require to devote more attention to what I have called ‘ principles of systematization ’ and this means that we must invoke the aid of logic and epistemology. [……] Biology has yet to discover the necessity for the virtue of patience. It is still in the metaphysical stage: too eager to press on to startling ‘ conclusions ’ rather than to devote more attention to the purification of its concepts and making more sure of its foundations. The accumulation of data, still less the erection of speculative theories, is not enough. (p. 84)

このアジェンダがそのまま継承されていったということなのだろう.何よりも本書全体が“ふつうの言葉”で書かれているところが「若書き」を感じさせる.同じ著者がほんの“8年後”に「異星人語」で綴った本を出すとは想像もできない.

—— なお,本書を含むシリーズ〈International Library of Psychology, Philosophy and Scientific Method〉だが,付録の目録をざっと見ると,ピアジェ,マリノフスキー,カッシラー,ユクスキュル,ラッセルといった“ビッグネーム”たちの著作がずらりと並ぶ.ヴィトゲンシュタインの『論理哲学論考』の英訳版がほかならないこの叢書の1冊として出版されていたこと(1922年)を初めて知った.Webcatを見てみると,1920年代から30年代にかけて次々に出されたこの叢書には200冊ものエントリーがあり(重版含む),哲学・科学哲学を主として,生物学分野では心理学・人類学を含む理論派の著作が多いようだ.

◆午後になって晴れ間が見える.多少暖かくなってきたかも.14:45から約1時間あまり,研修の質疑に参加し,解答役のひとりを務める.さくっと終わって,ささっと帰る.

◆夕方のこまごま —— 別府巡業準備の続き.今回は〈R〉演習を組みこんでいるので,基本線は9月の首都大での集中講義に準じればいいと思う.しかし,都道府県の農業研究に従事している人はバックグラウンドの“分散”がさらに大きいのがふつうなので,気をつけないと./「日本引きこもり協会」からメールで問い合わせあり.来年のダーウィン特集企画についてのコメントを求められている.これからはこういう機会や企画がさらに増えるにちがいない.

—— 後始末と旅支度は夜も続く.

◆本日の総歩数=8158歩[うち「しっかり歩数」=2553歩/26分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.7kg/−0.1%.


15 november 2007(木) ※ ヌーヴォーですかそうですかの駒場行

◆午前4時起床.晴れのち霧が発生する.気温7.6度.今夜から関東にも寒気が入るそうだ.今日は駒場行き.

◆未明の研究所にてこまごま —— 駒場講義用のスライドとハンドアウトをつくる.線形モデル(LM)を含む概論を後半にしたいので,そのスライドをつくりたいのだが,例によって時間ばかりどんどん過ぎてしまう.

◆日が昇るとともに気温も上昇.午前9時には13.8度になる.意外に暖かめかもしれない.

◆午前のこまごま —— 年末調整の申告書類をばさばさと用意して,がしがしと拙速なことをしたものだから,方々が訂正印だらけの提出書類になってしまった.とにかく出すことに意義がある書類なので,締切前にばたばたと事務に提出して,ハイおしまい./科研費の分担承諾書を本郷に郵送する./講義用のスライドづくりをさらに続け,正午前にやっとハンドアウトのコピーを完了する./大分県から電話あり.※来週の統計研修ではよろしくお願いいたします./来年度の東京農大化学科の生物統計学出講に関しての人事的なことども.すでに客員教員なので,この点はクリアしているはずだが,問題は依頼出張かそれとも兼業かという点.

◆午後1時からは全所火災訓練でてんやわんやになるので,あわてて所外に逃亡し,帰宅.気温19.8度.何ですか,このぽかぽか陽気は.13:48のTX区間快速にて東京へ.3時半に駒場に到着.本郷キャンパスよりも駒場の方が紅葉が進んでいるように見える.

◆本日の生物統計学の講義 —— 前半は,前回の続きで変量間の「共変動」とそのパラメータである共分散そして相関係数についての補足説明.後半は,線形モデル(LM)への導入として,データを説明するモデルの共通要因と個別要因について.さらに,モデル選択とパラメータ推定の概論をする.最後に,回帰分析を例にとって,最小二乗法による勾配と切片の推定法についてタブレット板書をしたのだが,どーもタブレット板書の評判がよろしくないようだ…….「板書ではダメですか」という声も聞こえる.粉まみれになりたくないからこそ,タブレットを持参しているのだが.やはり,タブレットで全部の内容を書きこむというのはムリかもね.せいぜい,事前につくったスライドの補足記入にとどめるべきか思案中.

—— 来週は駒場祭前日のためお休み.再来週へと続く.次回は,実験計画法に焦点を当て,背後の線形モデルと分散分析について説明する予定.

◆やや疲弊気味に逆コースをたどり,つくばへたどりついたのは午後8時過ぎだった.晴れて北風が冷たくなってきたので,明朝は放射冷却か.

◆メールチェックしたところ,数理統計研修(応用編)の質問票がいくつも届いていた.ぼく宛のものは少ないようだが,代理で“答弁”することもあるので,いちおう目を通しておかないと./おお,12月1日(土)午後に統数研で予定されていた第89回行動計量シンポジウム〈複雑系データの解析〉はやっぱり実施されるのか! オーガナイザーからぜんぜん連絡がないので,てっきり取り消しになったのかと思っていたのだが,biometry に開催アナウンスが流されてしまっている.こりゃたいへん.トークの準備をしないと:三中信宏「複雑なデータを科学する:アブダクション的推論の基盤としての最節約原理」./先日ばたばたと出した科研費書類は受理されましたとの企画戦略室からのメール.審査結果はともかくとして,来年5月まではもう煩わされることもなし.

◆車中読書 —— Simon N. Wood『Generalized Additive Models : An Introduction with R』(2006年2月27日刊行,Chapman & Hall /CRC[Texts in Statistical Science Series: Volume 67], ISBN:1-58488-474-6 → 目次版元ページ).一般化加法モデル(GAM)のみについての本かと思っていたのだが,LMから始まって,GLM, GLMM と順序立てて章が組まれていて,いずれも〈R〉の実例が載っているので,体系的にこの世界(GAM / GAMM)を知るにはいい教科書なのかもしれないと思う.GAM の場合,単一のパラメトリックな確率密度関数ではなく,データから経験的に構築されるスプライン補間関数が基礎になるので,幾何学的形態測定学をすでに勉強した人にとっては,GAMを学ぶ上でのハードルはとても低いのではないだろうか.ぼく自身,この本を読んでいて,スプラインに関する概念や術語にとまどうことはほとんどなかった.※あ,竹澤師のノンパラ回帰本が呼んでいる.

◆明日は,数理統計研修(応用編)の質疑に行かないといけない.駒場でもつくばでも統計統計また統計.週末からは別府温泉でふやけながらの統計研修巡業だ.その旅支度とともに機材と心の準備をしないといけない.時間がないない.ぜんぜんないない.

◆本日の総歩数=9521歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/0.0%.


14 november 2007(水) ※ なお動き回るアルコール液浸にんげん

◆午前5時起床.おっとまだ前夜のアルコール液浸状態から解放されていないみたい.ゆらゆらと研究所に向かう.北の風,晴れ.気温は7.3度.

◆先日,旧・蒼樹書房から出た小林四郎『生物群集の多変量解析』(1995年4月10日刊行,蒼樹書房,ISBN:4-7891-2053-8)に関する問い合わせメールがあった.2004年にぼくが〈蒼樹屋台〉を期間限定で店開きしていた頃だったら何とかなったかもしれませんが,いまはもう古書店をひとつひとつ当たる以外に入手することは不可能だと思います.ただし,オンライン古書店を少しまわったかぎりでは,残念ながら本書は現在まったく出まわっていないようですね.もともと,蒼樹書房は廃業する時点で残っていた在庫をすべて断裁処分するという方針だったので,新古書みたいなかたちで古書店業界に流れることはありえないわけですから,品薄感は否めません.ですから,フツイマの『進化生物学』に「34,000円」とか,ソーバーの『過去を復元する』に「16,000円」,クレブス&ディヴィス『進化からみた行動生態学』に「26,000円」,マッカーサー『地理生態学』に「34,000円」というような,定価の4〜6倍にも達する度を越した“投機的古書価格”が付くことになります.

—— 需要が多いようなら〈復刊ドットコム〉への働きかけをした方がいいのかもしれません,と答えることにしよう.

◆日が昇るとともに小春日和のぽかぽか陽気に.風もなく,日射しは暖か.午前10時の気温,17.6度.Conway Morris 第3章を音羽に返送する.

◆田中博『生命 — 進化する分子ネットワーク:システム進化生物学入門』(2007年7月25日刊行,パーソナルメディア,ISBN:978-4-89362-203-7).刊行直後に献本していただいたのですが,東大農学部の郵便箱に4ヶ月ほどシズカに眠っていてですね…….ありがとうございました&申し訳ありませんでした.→ 目次版元ページ

◆昼前後のこまごま —— 東大の大学院専攻会議は12月12日(水)午後4時から.ということは,この週いっぱいは札幌に出奔しているワタクシは自動的に欠席ということになる./もうひとつ,大学院入試出願に関する書類も届く./朝倉書店での進化学辞典の編集会議は12月4日(火)の午後3時からに確定した./科研費の分担承諾書が農環研の“上”の方から降りてきた.本郷にさっそく郵送します.

◆午後3時過ぎから1時間あまり,『Modern Morphometrics in Physical Anthropology』の輪読セミナーの第3回.Chapter 2 : Fred L. Bookstein「After Landmarks」(pp. 49-71)を牛歩の読みとり作業(pp. 52-53).難物だなあ.仮想変形のモデルとしての薄板スプラインそのものの再検討をしている.形態測定学でこれまで用いられてきた通常の薄板スプラインは,二次導関数に関する変分計算を行なって,汎関数としての解を離散化して求める.しかし,ここでは,新しい変分を提唱し,三次導関数に関する変分を出発点とするスプラインを考えようとする.二次導関数で定義される屈曲エネルギーを最小化する薄板スプラインは,一次導関数を平坦化するため,元の関数は平面に近い滑らかな曲面になる.従来から用いられてきたこの方法(線形 linear な「TPS」)では,全変形を大域的なアフィン成分(uniform component)でまず説明し,あとの残差を局所的な非アフィン成分(nonuniform component)に帰着させる.

しかし,このやり方では,著者の言う傾向性(trend)がうまく説明できない場合がある.最初に線形なアフィン成分ではなく,もっと高次の共通要素(たとえば二次曲面)で説明するためには,最小化される関数を三次導関数とし(高次の屈曲エネルギー),定数の二次導関数,線形の一次導関数,そして二次の関数というふうにすれば,平坦ではなく“曲がり”をもった関数をあてはめることができるだろうという考えだ.ここで提唱されている二次形式の薄板スプライン(「TPSQ」)は,Grace Wahba の一般スプライン理論を踏まえている:Grace Wahba (1990), Spline Models for Observational Data. SBMS-NSF Regional Conference Series in Applied Mathematics 59, SIAM, ISBN:089871-244-0.

—— たとえていえば,従来の「TPS」は一次関数による線形回帰であるのに対し,新しい「TPSQ」は二次関数を用いた非線形回帰と言えるだろう.

◆夕方のこまごま —— 東京農大・昆研の忘年会は12月7日(金)の夕方,新年会&卒論発表会は年明けの1月12日(土)とのこと.忘年会は欠席だが,新年会はきっと行けるだろう./生物地理学会の忘年会日程が変更になった.11月30日(金)だが,師走に入っての慌ただしさがいったいどれほどなのか想像したくもないな.

◆夜,DynaBook くんに pLaTeX をインストールする.LaTeXiT はまっくなので,それに類するフリーソフトを探して TeXaide にたどり着く.これってどこかで見たよーな.あ,かつて使ったことがある MathType の姉妹ソフトだった.しかし,式の組み立てとフォントのバランスがイマイチ.TeX ソースだけ拾って,LaTeX に送り込むことにする.環境整備はまだまだですな.

◆本日の総歩数=5114歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.1kg/+0.5%.


13 november 2007(火) ※ 快晴の本郷,イチョウいまだ色づかず

◆午前4時20分起床.雲一つない明け方の星空.気温7.6度.冷え込むと朝焼けが映える.

◆早朝のこまごま —— 次年度の首都大学東京の講義シラバス改訂版を南大沢に送る./11月18日(日)の大分空港送迎についての連絡メール.

◆「赤表紙」新刊 —— 内山勝利(責任編集)『哲学の歴史・第2巻:帝国と賢者 地中海世界の叡知【古代 II】』(2007年10月10日刊行, 中央公論新社, ISBN:978-4-12-403519-3 → 版元ページ)|伊藤邦武(責任編集)『哲学の歴史・第8巻:社会の哲学 進歩・進化・プラグマティズム【18〜20世紀】』(2007年11月10日刊行, 中央公論新社, ISBN:978-4-12-403525-4 → 版元ページ).シリーズ〈哲学の歴史〉の第6,7回配本.

◆快晴.10:11発のTX快速で根津へ.東大構内のイチョウはまだ青々としている.つくばではほぼ完全に黄色くなっているのに.銀杏の臭いがほのかに.〈ルオー〉にて Conway Morris の第3章ゲラのチェックを進める.半分ほど.その後,ベーカリー・カヤシマでパンを買ってから,農学部の隠れ部屋へ潜り込む.メールを読み書きしてから,ゲラのチェック作業の続き.

◆昼休みのこまごま —— 頼まれ仕事ばかり:朝倉書店の『進化学辞典』について,編集会議を年内に開くための日程調整.エクセルにてダメ日程を記入してメール返送する./とあるジャーナルから投稿論文の査読依頼.しかしですね,締切が12月上旬までというのは限りなく不可能です.依頼自体をリジェクトするしかないかな./東大農学部教務課から事務連絡.連携大学院宛の郵便物が学部メールボックスを“埋めつくしている”ので,早急に引取りをしてほしいとのこと.農学部にそういうメールボックスがあること自体,今の今まで知らなかったぞ.ということは,1年分以上の堆積があるのかな(こわ).のちほど,専攻の卒論ガイダンスが終わったら,3号館の事務室に出向くことにしよう.

◆生物・環境工学専攻の卒論ガイダンス(14:40〜16:10).卒論を書くための配属研究室を決めるガイダンス.各研究室の説明を一通りする.エコロジカル・セイフティ学講座はぼくの担当.対象は現3年生だ.昔話をしてもしかたがないのだが,以前はこういうたぐいのガイダンスはまったくなかったと記憶している.だから,卒論研究室を乏しい情報と伝聞によって「えいやっ」と決めてしまったがための悲喜こもごもの絵図がそこら中にあった.

この専攻では,教員による説明だけでなく,そこに所属している上級生によるガイダンスもある.それは午後6時以降に予定されている懇親会で行われる.

◆ガイダンスが終わって,またまた隠れ部屋に引きこもり,Conway Morris のゲラ作業の続き.午後5時前にやっと第3章を終えた.明日,音羽に郵送しよう.

◆予期せぬ汗牛充棟 —— 農学部3号館の事務室に出向いて,メールボックスのようすをうかがう.確かにこれはたいへんな量だ.研究室ごとにメールボックスが用意されているのだが,わが連携講座のメールボックスだけ冊子や本や書類がぎゅうぎゅうに詰まっていて,引っ張り出すことすら往生する.めいっぱい詰め込まれているだけではなく,自然圧縮されたようで,ボックスから引きずり出した途端に,かさが増えてしまった.何ヶ月も放置しておけばこうなるのか.宣伝ビラやら期限切れ書類のたぐいはばさっと棄てる.それでも,書類などでトートバッグがいっぱいになってしまった.隠れ部屋に引きずって帰り,分配作業とさらなる廃棄処分.7月にいただいた献本が何ヶ月もメールボックス内で熟成されていたとは申し訳ないことです.そんなこんなでもう5時半.

◆懇親会前に農学部前の高崎屋にて,千葉県佐倉にある〈旭鶴酒造〉のプライベートブランドである純米大吟醸「」(2006年)をお供え物として買う.午後6時を少し過ぎて懇親会の始まり.3年生が仕切ってくれた.研究室ごとにテーブルが割り当てられる.アルコール付きの集団就職面接みたいなものか.人口密度高し.

この専攻は年がら年中よく呑む文化が根づいているようで,教員から学部生までとにかく徹底的に呑み倒しているようだ(すばらしい……).酔いがまわったところで,各研究室ごとに所属上級生が卒研生をオルグする場へと移行.プレゼンあり寸劇ありでなかなかよく企画されている(すばらしい……).聞けば,こういう全体の交流会だけでなく,各研究室でも別枠で呑みまくっているようだ(すばらしい……).「試飯会(ためしかい)」という秘密結社が某研究室で開催されているという.

—— 午後9時になったので,ぼくはこれで退散したが,まったく終わる気配がなかった.「二次会はいかがですか」というすばらしいお誘いもあったのだが,それに引き込まれてはつくばに帰れなくなるのは火を見るよりも明らかだ.後ろ髪引かれつつ根津の坂をふらふらと降りる.つくばに帰り着いたのは午後10時半だった.

◆ちょっとばかし飲み過ぎたかも…….

◆本日の総歩数=10515歩[うち「しっかり歩数」=2728歩/25分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.9kg/−1.3%.


12 november 2007(月) ※ 木枯らしとともに研修後半戦の開始

◆午前4時過ぎに起床.一昨日の夜から降り続いた雨はやっとあがり,未明の星空が広がる.そして朝焼け.北寄りの木枯らしが早くも吹き,気温は7.2度まで下がった.初冬だ.これから冬が本番になるにつれて,早朝ごそごそするのがしだいにつらくなる.とくに,毎年1月から2月にかけては,つくばの最低気温は氷点下6〜7度まで下がる.刺すような冷気が厳しい厳冬期の早起きは試練というしかない.

◆夜明けのこまごま —— 今日から数理統計研修(応用編)が始まる.初っぱなの「多変量解析概論」で使うハンドアウトのコピー取り.正確な受講者数がわからないので,例年にならって30部を用意する.これまでの概論に加えて,昨日つくった共変動に関するスライドをつっこんだので,百枚以上のスライドをこなすことになる.

◆幾何学的形態測定学の新刊総説記事のフリー・ダウンロード —— Dennis E. Slice (2007), Geometric Morphometrics. Annual Review of Anthropology, Vol. 36, pp. 261-281, October 2007(DOI:10.1146/annurev.anthro.34.081804.120613:morphometrics.org の「Library」からたどる).約1.11MBの論文pdfファイルにフリー・アクセスできる.幾何学的形態測定学のアメリカ人類学での“ルーツ”は,かの Franz Boas であるとの10年前の“発見”も載っている.

◆日が昇るとともに,青空が広がり,日射しが暖かくなってきた.予報では昨日よりも大幅に暖かくなるらしい.午前10:45から講義開始.受講者は25名ほど.うち基礎編から引き続いての受講者は約10名らしい.ご苦労様です.つつがなくぼくの講義は終わり,昼休みに舞い散る落ち葉とともにゆらゆらと農環研に戻る.気温18度.確かに暖かいが,乾いた南風が強く吹きつける.

◆午後のこまごま —— 研修ウィークは他のことどもがすべて滞りがちだ.堆積した火山灰雑用は数知れず…….まずは,明日の東大での専攻卒論ガイダンスの打合せ.連携講座の代表として説明をする担当なので,各教員からのスライドをとりまとめて,担当者にメール送信する./11月18日(日)の大分行きに関わる振替休日の問いあわせあり.しかし,ピュアな移動日なので,振替えは不要です./年末調整に関わる証明書が届いた./来年度の東大の出講に関わる書類の確認.駒場での「生物統計学」はつらに続くのであった./もうひとつ,首都大学東京からも来年度出講の日程に関わる連絡メールあり./科研費がらみの分担依頼書が届く.即,企画戦略室へ丸投げっ./メーリングリストの管理作業をしばし./そういえば Camazine 訳本はどーなりましたでしょ? そうこうするうちに,Conway Morris の訳のプレッシャー(汗),岩波の本……(冷汗).

—— 仕事を溜めてはいけないことはわかっちゃいるけど…….

◆明日は東京出張.午後から夜にかけて本郷に出没します.

◆本日の総歩数=9261歩[うち「しっかり歩数」=3205歩/29分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/+0.8%.


11 november 2007(日) ※ 雨降りサンデーはひたすら高座支度

◆午前3時頃にいったん目覚めたが,即座に再睡眠.次に目覚めたのは午前6時前だった.外は冷たい雨が降り続いているかと思っていたら,雨上がりの湿った曇り空だった.しかし,晴れる気配はなく,ただどんよりと灰色が垂れ込める.農環研の気温計は11.9度を指していた.早朝の研究室にて LaTeX する.スライドづくりに必要な数式は出力できたので,午前8時過ぎに帰宅.

◆午前いっぱい,統計スライドづくりを続ける.多変量確率分布のスライドは,先週の駒場講義の当日にばたばたとつくったので,さすがに拙速すぎて修正点多過ぎ.だから,再度一からのつくり直しとなった.講義用のスライドは手間ひまがかかるのだが,反応応答曲線がシャープなので,できるだけきっちりつくるようにしている.

—— などと言っているうちに,枚数がどんどん増える.正午までに終わる気配がぜんぜんない.

◆午後もスライドづくりは続く.ほとんど「内職」のごとし.2時過ぎに『有頂天家族』を手に,Brotzeit まで歩き読みを始めたのはいいが,途中で霧雨が降り出してしまった.霧吹きのような雨粒で,傘を指していたとしても湿って濡れたにちがいない.『有頂天家族』の毛皮もじっとり濡れ狸になってしまった.1時間あまりで帰還.

◆さらに続くスライドづくり.結局,全部仕上がったのは夕食前の午後7時のことだった.計60枚ほど.前回つくったスライドと比べておよそ4倍のボリュームになった.明日の多変量解析概論の講義でさっそく使うことにしよう.

◆本日の総歩数=9614歩[うち「しっかり歩数」=6637歩/58分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/+0.3%.


10 november 2007(土) ※ 先走る初冬の冷雨に丸くなる

◆午前4時半起床.前夜からの雨は断続的に降り続く.農環研の温度計は12.0度を指していた.気温からいえばそれほどの冷え込みではないが,冷たい雨の湿気が効いてきたようで,冷たくなる.次第に本降りに.

◆未明の〈R〉関連こまごま —— 前夜からの続きの作業.「二変量正規分布の2D/3Dグラフィクス」を公開したのだが,2次元正規分布の同時密度関数そのものの描画をしていなかった.三次元グラフィクス関数 persp() を初めてまともに使ってみた.最初はエラー頻発でめげたが,よくよくみれば「外積ベクトル」として三次元を表示していることを知る.多変量正規分布の密度関数 mvtnorm() の定義域変数はベクトルだが,外積 outer() によって確率密度の値をずらりと並べる.

—— 新しい関数は実際に使ってみないとわからんもんですな.

◆二変量正規分布まわりのドキュメント改訂は午前中に終わったのだが,その傍らを見ると,4年ほど前に書いた確率分布のhtmlが不完全なまま〈租界R〉にずっと放置されていた.ついでに,もう少し見栄えよくして,少なくとも文字化けがないようにこちらも修正をする.昼過ぎまでちくちくとhtmlを書き換えて,やっと何とかなった.エンドレスな作業ではあるが,気づいたときにこまめに補修するしかない.

◆〈アンマー・カリヤ〉の辛いマトン・カリーの後は,一昨日の駒場講義の質問返答 —— 「共分散」がようわからんという質問.確かに,確率分布を決めるパラメータの中で,位置を指定する“平均”はもっとも直感的に理解でき,その次に制しやすいのはばらつきの尺度としての“分散”だ.このふたつに比べれば,変量間の“共分散”ははるかに理解困難度が高いかもしれない.少していねいに,地べたからの概念づくりを〈R-statistiek〉に書き込んだ.

—— しかし,さらに“ナチュラル”な導入が必要かもしれない.一変量から多変量への心理的ギャップはもともととても大きいと思うが,とくに「1」から「2」への壁の高さをクリアするのは並みたいていではない.変量と言われても変量の数が「10」とか「50」のレベルを考える必要はまったくなく,事実上は「2」変量の場合だけをじっくり考えれば,ほとんどの新出概念は出尽くしていると思う.もちろん,「1」から「2」への直感的なつながり具合を見るには,ベクトル・行列による記法は不可欠だ.まず「2」より始めよ.

◆午後になっても雨は止まない.気温も低く,予報では15度を下まわる師走並みの寒さだそうだ.しかし,午後4時頃にはやっと小止みになったので,散歩を少し —— 須賀敦子『須賀敦子全集・第3巻』(2007年11月20日刊行, 河出書房新社[河出文庫す4-4], ISBN:978-4-309-42053-0).ほぼ7ヶ月ぶりにこの文庫判全集の続巻が出た.本巻の内容は,ユルスナールの靴/時のかけらたち/地図のない道/エッセイ(1993〜1996).→版元ページ.残るは第5巻のみ.

◆変量間の「共分散」の意味を説明するとしたら —— 分散と共分散の共通パーツは“偏差”なので,そこから出発することにする.>二変量XとYの共分散 cov[X,Y]の定義式は:
 cov[X,Y]=E[(X−E(X))(Y−E(Y))]
である.X=Yのとき,この式は:
 E[(X−E(X))2]
となり,変量Xの分散var[X]の定義式と一致する.分散は変量Xの偏差平方の期待値である.

上の式が共分散になるのはX≠Yのときで,X−E(X)とY−E(Y)はそれぞれ変量XとYの偏差をあらわす.したがって,期待値演算子Eの内容は二変量の偏差積
 (X−E(X))(Y−E(Y))
であり,その符号を考えることにより,二つの変量XとYの共変動(covariation)の特徴を捉えようとする.

この偏差積の符号は各偏差が同符号のとき「正」になる.それは,変量Xが正の偏差を持つのに連動してYも正の偏差をもつ(あるいはその逆にどちらも連動して負の偏差をもつ)ときである.逆に,各偏差が異符号のとき偏差積は「負」になる.それは,変量Xの偏差の正負とは逆の符号を変量Yがもつときである.要するに,偏差積が「正」であれば両変量の増減は一致し,「負」であれば増減は逆になるということだ.

このようにして,二つの変量の線形的な共変動の様相は,偏差間の符号の関係(つまりは偏差積の符号)をみればわかるので,二変量の同時分布のもとでの偏差積の期待値:
 E[(X−E(X))(Y−E(Y))]
をとることにより,全体的傾向をつかもう —— というのが「共分散」という概念が目指すところである.

◆夜になっても雨は降ったり止んだり.湿った冷気が漂う.

◆分散と共分散についての補足 —— 一変量の場合の偏差平方期待値:
 E[(X−E(X))2]
を多変量に一般化する.変量ベクトルXと平均ベクトルE(X)は,それぞれp変量の要素から成る列ベクトルとなる.このとき,一変量での偏差平方期待値に相当するものは,p変量での偏差積期待値:
 E[(X−E(X))(X−E(X))'] #「'」は転置行列
となる.この式はp×p型の行列であり,要素で書き下せば,対角要素を分散,非対角要素を共分散とする分散共分散行列である.

—— というわけで,ベクトル・行列の記法では一変量から多変量への移行はたいへんスムーズにいける.あえて要素を書き下そうとしなければ,完全に同一の記法ですむことだから.

◆本日の総歩数=3903歩[うち「しっかり歩数」=1177歩/11分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=+0.2kg/−0.5%.


9 november 2007(金) ※ 研修研修また研修,RがRをRする

◆うっかり午前5時50分まで寝込んでしまう.うかつであった.雲がかかって北の風が吹く.午前7時の気温は10度ほど.晴れるかな.

◆今日は数理統計研修(基礎編)の最終日 —— 午前9時から〈R実習〉が始まる.午後まで4時間の予定.今年から〈Rcmdr〉を使って教えることにした.データの読み込みから記述統計,グラフィクス,簡単な分散分析など,基本的な操作はすべてメニューで実行できるので,とてもラクだし,初めて〈R〉に触れる受講生にとっても,入門ハードルはできるだけ低いに越したことはない.11時過ぎまで2時間あまり話をした.午前中の残りは竹澤邦夫さんの〈R〉プログラミング,そして午後の1時間は岩田洋佳さんによる〈R〉ティップス.午後2時過ぎにオシマイ.休憩後,全体の質疑討論.受講生からの質問票をもとに講師陣が答えるという形式で進める.これまた1時間弱で終わった.基礎編研修はこれにて終了.受講生はそれぞれ修了証をもらって帰ることになる.

◆午後4時前に農環研に戻って,夕方のこまごま —— 駒場「生物統計学」の受講者が確定:2年生=78名;3・4年生=8名.計86名.あと他学科聴講が数名予想されるとのこと.昨日のハンドアウトは公開した(→租界R)./組合行事への動員:11月17日(土)午後1時〜3時.エポカルにて./PAUP*の質問あり./大分湯煙研修の振替休日についての問い合わせ.純粋な移動日なので振替える必要はゼロだ.

◆夜,多変量正規分布の〈R〉による描画スクリプトを整理しておいた.日が変わってやっと作業終了.→「二変量正規分布の2D/3Dグラフィクス」.

—— 今日一日はとても短かった気がする.来週は,引き続き「応用編」の数理統計研修が同じ場所で開催される.高座はなお続く.月曜初っぱなに「多変量解析概論」の講義.あとは最終日に質疑の時間.

◆夜遅くなって雨が降りだした.この週末は雨模様だそうだ.

◆本日の総歩数=6174歩[うち「しっかり歩数」=1386歩/12分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/0.0%.


8 november 2007(木) ※ 立冬の駒場村に Orgel は鳴り響く

◆午前4時起床.さすが立冬の朝.きりっと冷え込み,5.3度.寒いぞ寒いぞ.

◆夜明け前の研究所にて,メール書きをいろいろ.しばらく前から溜まっていたメールへの返事を書く.その後,統計研修の質問票を見る.今年は枚数が少ない気がするが,講義場で質問を処理してしまったからかもしれない.

◆忘却が得意なわたし —— さっそく午後の講義のためのスライドをつくり始める.ところが,PowerBook くんが八王子で昇天してしまって以来,LaTeX をぜんぜん使わなかったので,記法やその他のわざをみごとに“まだら忘れ”してしまっている自分を発見する.まいったな…….

今日の講義では,多変量同時確率分布について説明することになっているのだが,同時分布の密度関数とか分散・共分散そして相関関数についてのスライドを新規につくらないといけない.LaTeXiT を開いて,TeX本を開いては捜し回り,数式を組み立てては画像保存する.なんというか,実に非効率的だ.時間がどんどん過ぎて,もう午前11時になってしまった.スライドをつくらないことには,ハンドアウトがつくれない.結局,正午過ぎまであたふたと書き続けて,やっと20枚弱が用意できた.ハンドアウト原稿を準備して,人数分のコピーが終わったのは,午後1時前のこと.ばたばたと機材・資料をそろえて,研究所を飛び出したのが午後1時半.自宅に帰ってから,14:11のTX快速に乗り込めたのは幸いだった.

◆午後になって,ぽかぽかと暖かくなってきた.駒場に着いたのは午後3時半だった.今日は900番教室でパイプオルガンの演奏会があるらしく(→オルガン委員会),リハーサルの響きが聞こえてきた.非常勤講師控室に貼られていたポスターを見たところ,今夜の演奏会(→第112回演奏会)はバッハを中心にポピュラーな選曲がされているようだ.

◆午後4時半から講義開始.まずはじめに〈R〉についての紹介をした後,とくにグラフィクス機能についてその効用を強調する.実際のデータが目の前にあるとき,最初にやるべきことはデータを“視る”こと.そのためにはデータのグラフ表示がもっとも効果的なツールだ.〈R〉のグラフィクス機能をうまく使うことで,統計計算やモデリングの前にデータの“視覚化”をすることができる.

後半は,多変量同時確率分布の説明だ.正規分布を例に取り,1変量から多変量への確率密度関数の一般化を示した.その際,分散共分散行列の非対角要素として「共分散」が出てくるので,その定義と関連する相関係数についても説明する.その後,〈R〉の多変量正規分布パッケージ「mvtnorm」と三次元プロットパッケージ「scatterplot3d」を用い,2次元正規分布の描画のデモンストレーションをした.午後5時45分に終了.

—— 2変量正規分布の説明スライドが必要だったかもしれない.

◆午後6時前はもう真っ暗だ,演奏会入場待ちの聴衆の行列が長く伸びている.しかし,気温はさほど低くない.つくばに帰り着いたのは午後8時のこと.もう何回か駒場に通ったが,たった90分の講義のために一日仕事になってしまう.

◆夜のこまごま —— 統計研修の質問がさらに3つ届いていた.明日は午前が〈R〉の実習,午後に質疑の時間がある./某VIPの動きに関するメールのあれこれ.対応が必要になるだろう.※えらい人は勝手に学会をやめないよーに.

◆FireFoxの拡張機能として〈R Site Search〉というのがあって,〈R〉使いにはたいへん便利のようだ.

◆とても疲弊した気がするので,早々に寝てしまうことにする.

◆本日の総歩数=9874歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+0.3%.


7 november 2007(水) ※ 正午に向かってイッキに滑り込め

◆午前4時半起床.研究所に直行する.曇り.気温12.3度.

◆明け方の科研費格闘タイム —— ウェブサイトの上で単にちくちくと項目入力するだけなのだが,思わぬ新たなミスが見つかり,それと連動して他の箇所の訂正も要求されたり…….しばしの空白時間ののち再度トライ.結局午前9時に「確定」ボタンを押してやって電子申請作業が完了した.

しかし,作業はこれだけではない.両面ハードコピーを「8部」作成し,よくわからない「所定の位置」にパンチ穴をふたつ開孔し,さらに左端を“糊付け”した上で,耳を揃えて農環研の企画戦略室に正午までに提出しなければアウトだ.ところが,他の頼まれ仕事が意外に手間取ってしまって,コピーを始めたのが午前11時半,パートさんに頼んで必要部数を用意してもらい,昨夜の収穫祭で“カケンヒの達人”から聞き出した「糊付けの極意」を遵守し,ちゃちゃっと製本完了.5階から2階に駆けおりて,企画戦略室に飛び込み,担当者に手渡したのは実に「午前11時56分」のことだった.

—— 滑り込みセーフ.そして燃えつきたワタシ.(しかも,こういうじたばた劇は書類審査結果とは何の関係もない…….)

◆午前中ばたばたしているうちに,雲は雲散霧消し,青空が広がる.気温は高め.

◆昼休みのこまごま —— 首都大学東京の集中講義レポートがやっと出揃ったかな.早く成績をつけないと./東大の専攻忘年会は12月5日(水)の午後7時から神田にある上海料理〈竹苑〉にて.その前に,大学院入試に関する教員会議が開かれるかもしれないとの連絡がある./生物地理学会スタッフの忘年会は12月7日(金)に川口の〈酔仙〉にて.しかし,この日はノバホールで鈴木秀美の〈鈴木秀美・Bach無伴奏チェロ組曲全曲演奏会〉の第二夜があるので,残念ながら出席できません./大分湯煙研修の予定について,県庁から連絡あり.いろいろとご配慮いただき,ありがとうございます.

◆午後2時から1時間ほど,『Modern Morphometrics in Physical Anthropology』の輪読セミナーの第2回.Chapter 2 : Fred L. Bookstein「After Landmarks」(pp. 49-71)を読み始める(pp. 49-52).例によって,一回読んだだけではぜんぜんわからないことが書かれているので,ひとつひとつつぶしながら這い進むことになる.標識点ベースの形態測定学はもう完成したと著者は言う.では「その次」に何が来るのかが本章のテーマとなる.ケンドール形状空間のケント接平面における変形の記述に関して,著者は従来の屈曲エネルギーの定義式に代わる新しい高次屈曲エネルギーの概念をさらりと提唱する.これまでの屈曲エネルギーは二次導関数の定積分によって定義されていたため,その値を最小化するのは凹凸ができるだけない“平ら”なスプライン曲面だった.しかし,屈曲エネルギーを三次導関数の定積分によって定義すると,これまでの論議を一つずつ高次に移行することにより,一次導関数が“平ら”になり,最適スプライン関数そのものが大きくたわむことが可能になる.trend-surface あるいは growth-gradient とこれまで呼ばれてきたたわみのある応答曲面は,このような新たな屈曲エネルギー概念のもとで再発見されると著者は言う.※とっても難しいっす…….Jim Rohlf は「Fred の話は3回聞いて初めてわかる」と言ったらしい.

◆もう夕方だが,明日の駒場講義のハンドアウトがまだできていない……./放置メール多数.ごめんなさい.

◆届いた古書の物語 —— John Richard Gregg『The Language of Taxonomy』(1954年刊行,Columbia University Press[Columbia Bicentennial Editions and Studies]→ 目次)が届いた.ダークグリーンのハードカバー製本された本.元の所蔵館は The Franklin Institute Library となっている.しかも,「The Marcus and Bertha Coler Collection」という蔵書票が貼られているところを見ると,寄贈された個人蔵書が何らかの理由で処分され,古書業界に流れたということだろう.と思って,検索してみたら,確かにそのとおりだった.フィラデルフィアにあるフランクリン研究所の図書館の蔵書がどのような理由で処分されたかの経緯が公開されている.1985年,研究所の運営側の判断により,ほとんどすべての蔵書が突如として処分されたのだそうだ.このドキュメントにはこう書かれている:

Today the Franklin Institute Library is a mere shell of its former self, its resources spread far and wide - a reminder that no collection, no matter how significant, can be considered truly permanent.

一方,蔵書を蒐集した Marcus and Bertha Coler についてはあまり情報が得られない.1910年に結婚したという新聞記事がとある家系サイトに見つかるだけで,どのような経歴をたどったのかはよくわからない.ただし,フランクリン研究所自体が,理学・工学分野でのメジャーな研究所であり(Benjamin Franklin Medalを出していることで有名),届いた本に押印されている「Markite Company」もまた技術系の会社らしい.だから,Marcus and/or Bertha Coler もおそらくその業界で活躍した人物なのだろう.

—— この本の冒頭ページには,鉛筆書きで「3/30/83 Coler Library」と記されている.ただの推測だが,この日付をもってフランクリン研究所図書館の蔵書となり,その2年後の1985年に放出されたということだろう.そういう経緯はともかく,アメリカの歴史ある研究所の蔵書コレクションの1冊が縁あってはるばる極東までたどり着いたことをここに記しておこう.

◆夜,駒場講義の準備をする.統計ツールとしての〈R〉の話をする予定なのだが,できるだけ効率のよい図示プレゼンをしたい.また,多変量同時確率分布の説明とそれに付随する共分散と相関係数についても説明をするつもり.今回のハンドアウトは〈R〉ビラかな.明後日のつくばでの講義も〈R〉演習だし,ちょうどいい.

◆明日は立冬.明け方の冷え込みは今年一番だそうだ.

◆本日の総歩数=5523歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.6kg/−0.4%.


6 november 2007(火) ※ 長い一日は一日では終わらなかった

◆午前4時半起床.小雨そぼ降る.気温12.7度.冷え込まず.

◆未明のこまごま —— Ernst Mayr 伝の目次を文書整形する:Jürgen Haffer『Ornithology, Evolution, and Philosophy : The Life and Science of Ernst Mayr 1904-2005』(2007年刊行, Springer-Verlag, ISBN:978-3-540-71777-5 [hbk] / ISBN:978-3-540-71778-2 [pbk] → 目次|版元ページ:hbk / pbk).ハードカバー版とペーパーバック版の“出版時差”は意外に長いかも.とすると,ハードカバー版をえいやっと買うしかない……./今日の午後は数理統計研修の「実験計画法」講義が3時間ある.スライドのハンドアウトをちくちくと編集して,プリントアウト完了.あとは人数分のコピーをするだけ(あとまわし).

◆朝のうちに雨は小止みになる.傘はいらんかも.

◆続いて午前のこまごま —— しかし,明日の駒場講義のハンドアウトはまだ.出席票だけは用意した./多次元同時分布と mixed model についての記述が欠落している.どこかで補わないと./事務から年末調整の書類一式が届く.またまた証明書どもを方々からかき集め,耳を揃えて提出しないといけない./そうこうするうちに,昨日とにかく出してしまった科研費書類が企画戦略室から戻されてきた.うへ,こんなに“朱”が入っている.マズイな.昼休み返上で修正し続け,12時半にほぼ完了.とにかく修正稿を出すしかない.考えている時間はないので,えいやっとメールに添付して投げてしまう.ここのところ,こういう“拙速”な仕事のしかたが身についてしまったようでよろしくない.でも時間は湧いてこないので,とにかくケリをつけてしまう.

◆午後1時から情報センターにて,研修講義.実験計画法の前振りとして,分散概念の導出と正規分布まわりのいくつかの話題を出す.これで1時間ほど.その後の2時間をかけて,実験計画について話し続け,気がつけば終了予定時刻の午後4時が迫っていた.定刻通りに終了.そのあと質問を受けて,講義室を出たのは午後4時半をまわった頃だった.

◆夕方すき間のこまごま —— さて,JST の科研費電子申請サイトに入ろうとして,ログインに「ID」と「パスワード」が必要だったことを初めて知った.企画戦略室に泣きついて,ID とパスワードを急遽発行してもらい,この点はクリアできた.(※あとで経験者たちに聞いたところでは,「三中さん,それ,あり得ないです」とのこと.締切前日まで ID / パスワードを知らなかった申請者はいないそうだ.) しかし,電子申請も手間かかりそうなので,あっさりめげてしまい,明日の未明に延期することにした./南大沢から復活した PowerBook くんが帰ってきた.※お手数をかけました./大分からは新鮮カボスが届いたり.※さっそく絞ります.

◆農環研に戻って,そうこうするうちに〈収穫祭〉の気配が濃厚に漂ってきた.午後5時過ぎに業務課別棟に向かう.ここしばらく,所内通達によりアルコール摂取が原則禁止だったので,久しぶりの夜の収穫祭だ.あっちをつつき,こっちに潜り込んでいるうちに,ふと時計を見れば,もう午後9時をまわっていた.アルコール摂取量ちと多し.

◆へろへろしていても,明日の未明はしっかり早起きして,とにかく何としても「カケンヒ」にケリをつけたい.

◆本日の総歩数=7410歩[うち「しっかり歩数」=2879歩/27分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.5kg/+0.1%.


5 november 2007(月) ※ とっても長い一日が始まってしまう

◆前夜からそのまま続いて,科研費書類ひねり出し作業は続く.「でやぁ」とか「うりゃぁ」と気合を入れて埋めてしまう箇所とても多し.こんなもんを毎年書くのも気分転換にはいいのですかね(大いに疑問).丑三つ時についうとうとしてしまって油断したところ,すかさず“生き霊”がとんとんとやってきて首を締めたが,そんなものにはちーともめげずに,明け方5時過ぎまでさらにまた書類を書き続ける.予算額をどかどかと詰め込んで,ほぼ完成だ.いくつか“穴”はあるが,そういうのは修正時に完成させることにする.

—— 午前5時,気温10.4度.夜明け前の朝焼けの中,いったん帰宅し,さらに書き続けて,午前9時半に「とりゃあっ」と担当者宛にメールで送信.

◆休むまもなく,そのまま筑波事務所の農林水産研究情報センターのプレゼンテーション室に向かう.今日から数理統計短期集合研修(基礎編)が始まる.今年の研修生は60名ほど.オリエンテーション後の最初の講義である「統計学概論」を受け持っている.午前10時半から講義開始.すでに場数を踏んでいるので,するすると正午前まで話し続ける.※寝不足なのによく話すわよねえ.

◆さっそく質問 —— 〈R〉を用いて直交法による分散分析をどう実行するかという問題.実のところ,直交表についてはぼくは詳しくないのだが,この機会に手順くらいは確認しておいた方がいいかもしれない.かつて,旧・農技研に物理統計部があった頃は,直交表による実験計画はさかんに行われていたという.ところが,その後はあまり表舞台には立たなくなった気がするが,それでも圃場実験の割りつけでは実用に用いられている.数理統計研修でも以前は「直交表分析」という講義開かれていたが,数年前になくなってしまった.その代わりに,実験計画法の中で直交表については言及する必要があるかもしれない.

◆今日のこまごま —— 『』の修正はそのままOKという連絡あり./科研費の修正箇所の指示が戻ってきていた.明日までの修正か.連日,時間との競走だ.明日までったって,午後はずっと統計研修の講義があるので,結局は正午までにケリを付けないことにはダメなんでしょ.また,午前中にばたばたとないといけない./明日の研修講義「実験計画法」のハンドアウトを急遽つくることになった.コピーは明日./もうひとつ,木曜日の駒場講義のハンドアウトと出席票の印刷もやらないと.ええい,ぜーんぶ明日だぁ./大分からファクスにて質問票がどさっと届いた./統計学史に関する情報を〈R-statistiek〉に載せたり.

—— 研修研修また研修.寝ても覚めても研修準備.合間に科研費書類の詰め.それやこれやで一日がはいオシマイ.

◆昼休み.ほぼ沈没寸前になる.雲が出てきた午後は事実上の「シエスタ」にしてしまい,午後5時までゆるりゆるりとする.午後5時半から筑波事務所の食堂で懇親会.全国から研修生が集まってくるので,長旅の人も多い.ごくろうさまです.午後7時過ぎまで.その後,農環研に立ち寄ってから帰宅.午後9時前.小雨が降り出した.

—— とても長い一日がやっと終わりに近づいた.

◆岩波文庫の新刊 —— アルブレヒト・デューラー(前川誠郎訳)『ネーデルラント旅日記』(2007年10月16日刊行,岩波書店[岩波文庫・青571-1],ISBN:978-4-00-335711-8).旅の行く先々での金の支払いのことが細かく書かれている.デューラーの『人体均衡論四書』が1995年に中央公論社美術出版から翻訳出版されていたことを初めて知った.

◆昼間に答えた統計学史サイトのメモ —— 統計学は,確率論とともに,とても長い歴史のある学問であり,現在使っている統計学・確率論の概念や理論のルーツをさかのぼると何世紀も前に引っ張り込まれることが少なくない.統計学史のサイトというのは意外にたくさんあるが,とくに充実したコンテンツをもつサイトとして:〈Materials for the History of Statistics〉(The University of York)がある.多岐にわたる統計学史の資料がここで公開されているが,とくに「Portraits of Statisticians」というページは見る価値がある.全部で370名に及ぶ古今東西の統計学者の写真が公開されている.

◆本日の総歩数=6908歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.5kg/−0.4%.


4 november 2007(日) ※ ゆるゆるしたツケがまとめて降り注ぐ

◆前日のゆるゆるが尾を引いて,気がつけば午前7時.朝日がさんさんと射し込んでいる.こんなに遅くまで寝過ごしたことはここ何年もない.途方もなく罪深い.必ずや天罰が下るにちがいない…….※などと言うまでもなく,今日中に仕上げるべき書類が十分過ぎるほどの“天罰”だ.

—— 基本的に睡眠時間は短い人なので,5時間も寝れば確実に目が覚める.高校の頃はもっと短くて,高一で3時間,高二で4時間,高三で5時間寝て,そのときの睡眠時間設定のまま今に至っている.ところが,ワタクシのこのところの睡眠時間は平均4時間.さすがにこれは寝不足だ.総務庁の最近の「社会生活基本調査」では,今の日本人は平均7時間しか寝ていないと報告されているが,7時間寝られれば何もいうことないじゃん.

◆本日は,もうこれ以上は望めないほどの秋晴れ快晴.空気も乾いて,きりっと涼しい.いずこも行楽客がさぞ多いことだろう.

◆罪滅ぼし?の読書しばし —— W. F. Floyd and F. T. C. Harris (1964), Joseph Henry Woodger, Curriculum Vitae. Pp. 1-6 in: John R. Gregg and F. T. C. Harris (eds.), Form and Strategy in Science : Studies Dedicated to Joseph Henry Woodger on the Occasion of his Seventieth Birthday. D. Reidel, Dordrecht. Woodger 小伝.UCLで動物学者としての教育を受けた Woodger は,卒業後すぐの1922年に Middlesex Hospital Medical School という医学校に職を得て,医学教育の傍ら,自分の研究を進めることになる.結局,彼はリタイアするまでの38年間の長きにわたってこの職場に奉職することになる.第一次世界大戦時はバグダッドに従軍した.その後,1926年,ウィーンに遊学し,ウィーン学団の影響のもと,生物学の「論理化」を目指すことになる.Karl R. Popper の知己を得て,A. Tarski や Lukasiewitz らポーランド学派の論理学者たちと知り合う.イギリスでは,私的サークルである Theoretical Biology Group に属し,Conrad H. Waddington, Joseph Needham, Peter B. Medawar, L. L. Whyte らと交わる.

◆午前のこまごま —— 駒場講義の質問に答えたり(Excel と〈R〉関連で)./ 世の中とても狭いことを痛感する.そんなつながりがあったとは…….

◆Ernst Mayr 伝記 —— Jürgen Haffer『Ornithology, Evolution, and Philosophy : The Life and Science of Ernst Mayr 1904-2005』(2007年刊行, Springer-Verlag, ISBN:978-3-540-71777-5 [hbk] → 目次版元ページ).やっと出版されたようだ.500ページもある.しかし,「96.95 EUR」というのは高すぎるなあ,と思っていたら,近々ペーパーバック版(ISBN:978-3-540-71778-2)も出るそうだ.こちらは「39.95 EUR」だから許そう(価格差大き過ぎ).著者についてはぜんぜん知らないのだが,Journal of Ornithology に Mayr に関する記事(「Ernst Mayr —— Intellectual leader of ornithology」Volume 145, Number 3, pp.163-176, 2004 - DOI:10.1007/s10336-004-0031-z)を書いているところを見ると,どうやら“鳥な人”のようだ.

◆ついでに —— 同じく Springer から:David M. Williams and Malte C. Ebach『Foundations of Systematics and Biogeography』(2007年12月刊行予定, Springer-Verlag, ISBN:978-0-387-72728-8).もう出たかと思っていたら,まだだった.→版元ページ./おっと,こちらはまだかと油断していたら,もう出ていた:Olivier Gascuel and Mike Steel (eds.)『Reconstructing Evolution : New Mathematical and Computational Advances』(2007年8月刊行,Oxford University Press, ISBN:9780199208227→版元ページ).

◆午後のじりじり —— 時間だけは過ぎていくのだが,いっこうにはかどらなくって……./どうにもしかたがないので,夜9時に研究所に到着.これから明朝までの9時間でケリをつけてくれる.くー.

◆本日の総歩数=3983歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/0.0%.


3 november 2007(土) ※ 文化の日に気を抜いてゆるゆるする

◆午前5時起床.曇り.気温12.2度.未明の研究所に潜り込んでごそごそする.それにしても,この期に及んで,こんなにエンドレスな書類をつくるんですか,と泣き言のひとつも言ってみる.しかし,ちくちくとつくるしかないんだろーな.

◆薄暗がりの研究室で『』ゲラのチェックは続く.18世紀フランスの百科全書派のひとり Du Marsais と前世紀の Roman Jakobson への言及を追加する.いずれもメトニミーに関連して./それと,エンドレス作業の準備…….

◆午前7時過ぎに帰宅する.しだいに青空が広がってきた.北寄りの風が吹き,気温も低めで,秋本番の行楽日和だ.原稿も書類もぜーんぶ“ぶちゃる”(←さて何弁でしょう?)のが精神衛生上よろしいかと.

◆〈R〉まわりの新しいことども —— Ian L. Dryden の〈shapes〉パッケージが新しくなっていた(Version 1.1-0 is now available: 29th October, 2007).今回のバージョンアップで,形状変数に関する三次元表示ができるようになったようだ(〈scatterplot3D〉パッケージを使う)./〈Tinn-R〉という〈R〉専用エディターがあることを初めて知った.Tinn-R は〈R〉と連動して使えるので,プログラムを書いたり,計算させたりする作業を効率化できるだろう.ダウンロード・サイトから「Tinn-R setup」というファイルをダウンロードし,インストールするだけ.必要な初期設定をいくつかするだけで,あらあら確かに連動してますな.参照サイト →「WindowsユーザーのためのR/Tinn-R」(奥村泰之さん)と「生態学のデータ解析 - R のインストール」(久保拓弥師).※なお,この Tinn-R は Windows 専用のエディターです.

◆それでも「とーけい」 —— 昨日,豊後の国から大量に届いた“とうけい質問”の山をざっと見渡す.エクセルでデータを添付してきた受講生もあり.質疑の時間に何らかのコンサルティングをすることになるが,ある程度カテゴリー化しておかないと収拾がつかないぞ./月曜の「統計学概論」のスライドをチェックする.しかし,9月以来いくたびとなく「概論」を話しているので,準備はなんにも必要ないでしょ,きっと.※ハンドアウト,どーしましょ.

◆昼時の「統計学・悩みの相談室」 —— 11月1日の駒場講義でもらった質問のいくつかを〈R-statistiek〉で答える.変量の統計学的独立性のところを訊いてきたか.多変量同時分布の説明をしていなかったので,確率密度関数が互いに「独立」である条件を説明するのがちと苦しい.高校でならった事象の「独立性」と同じですとメタファーに訴えてみた./他にもいくつか質問があるが,それはまたあとで.

◆午後のお散歩 —— 11月ともなると,つくば中心部の公園でも木々が色づいてくる.とくに,今日のようないい気候のときは,遠出するよりも,近場の散歩の方がよろしいかも.大清水公園も広沢通り沿いもあと1週間もすれば見ごろになるだろう.

◆PowerBook くんの退院通知 —— 南大沢で不慮の事故に遭い,入院を余儀なくされていた PowerBook くんが無事退院したとの通知をもらった.お手数をおかけしました.週明けにはつくばに帰ってくるでしょう.今のところ DynaBook くんがりっぱにピンチヒッターをつとめていますので,PowerBook くんにはしばし静養してもらおうと思います.

◆寒い夜のこまごま —— 夕方の『』ゲラの最終チェック.行数の変更をカウントし,修正箇所をメールにリストアップする.そして,再度読み直した上で,音羽に遅れ馳せメール送信したのは午後9時過ぎのことだった.この件はこれにておしまい./師走の札幌襲撃のための航空券の手配を忘れないように./首都大学の成績評価もまだだった./そして,ナニがまだ手つかずだったりする…….

◆本日の総歩数=5672歩[うち「しっかり歩数」=1272歩/12分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=+0.4kg/+0.3%.


2 november 2007(金) ※ 明け方のトゥーランガリーラ・愛の歌

◆午前4時10分起床.雨上がりの曇り空.気温14.9度.

◆オンド・マルトゥノの調べとともに明け方のこまごま —— 昨日の駒場講義のハンドアウトを〈租界R〉に公開した.出席票を数えたら講義出席者は74名だった./昨夜のうちに届いていた『』のゲラ(連載6回目)を印刷する.今日中にチェックして返送せよとのお達し付き./12月19日(水)午後はくれぐれも予定を入れてはならぬとの前理事長のメールあり.ちょうど専攻教員会議で本郷にいる時なので具合いいです./来週から始まる数理統計研修の初日の懇親会に出席するという返事を返す.

◆午前から曇りがちな空模様.気温は低めに推移していて,11時になってもまだ16.3度にしかならない.

◆午後の咆哮 —— 科研費のコンテンツがぁ……./首都大の成績評価がぁ……./たたみかけるがごとき研修の準備がぁ…….

—— ということで,瞬時に現実逃避し,別府“湯煙”研修の宿をあれこれ選んでみる.その結果,研修前日の11月18日(日)は〈もと湯の宿・黒田や〉(別府・鉄輪温泉)で,そして研修最終日の11月21日(水)〈旅館すえよ志〉(別府温泉)に投宿することが決定.いずれもオンラインで予約した.研修期間中は,会場である大分県庁に近いビジネスホテル〈都イン大分〉を県で用意してもらっている.航空券はすでに入手しているので,これでひとまず旅程は決まった.  

◆午後1時半からの業績評価WGは見事にスルーさせていただいて(……)午後のこまごま —— 大分県から研修生に出してもらった「質問票」がどさっとかためてメールで送られてきた.最終日のディスカッションのときに質疑の素材とすることになっている.あとでプリントアウトしないと./11月4日(日)に東京農大・厚木キャンパスで昆研OB会であるのだが,翌日の朝イチに統計研修講師の仕事があるので,不参加の返事を出す./科研費の書類をぼー然と眺める.ぼー然.締切は5日(月)の正午だというのだが,いろいろムリちゃうかなあ.※この週末はちょっとシビアなことになる気配.

◆近刊メモ —— 間瀬茂『Rプログラミングマニュアル』(2007年11月近刊,サイエンス社[新・数理工学ライブラリ[情報工学] 1],ISBN:978-4-901683-50-0).まだ実物を手にしていませんが,内容的には,ウーヴェ・リゲス『Rの基礎とプログラミング技法』(2006年10月22日刊行,シュプリンガー・ジャパン,ISBN:4-431-71218-6 → 目次)に近い内容と思われます.→版元ページ

◆夕方,北風が冷たくなってきた.おでんをつつきながら,奄美大島の黒糖焼酎〈やんご〉の封を切る.

◆本日の総歩数=6655歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+0.4%.


1 november 2007(木) ※ 霜月の始まりはグレッグ2とバロック

◆午前4時半起床.まだらな薄曇り.ちっとも冷え込まず気温14.0度.

◆未明のこまごま —— 最相葉月『星新一:一〇〇一話をつくった人』(2007年3月30日刊行, 新潮社, ISBN:978-4-10-459802-1)の書評をアップ.SFファンならば読んで損しません./科研費の提出書類をつくる“心の準備”をする(というからには,実質的にはまだなーにもしてません……)./至急の仕事は,首都大の成績評価と大分湯煙研修の宿泊先.

◆朝のうちに晴れ上がり,日射しがぽかぽかする.なごむ霜月の入り.

◆今日は年休のはずだが,いつものように研究所に行ってこまごまと —— メーリングリストの堆積火山灰を掃除してから,月例アナウンスを流す./今日の講義のために〈Rcmdr〉の調整をする.かの「iris」データの出番だ.データのプロットから記述統計まで./来週から始まる数理統計研修の懇親会が初日11月5日(月)の午後5時半から筑波事務所食堂にて./科研費分担書についての連絡と滑り込み提出.

—— ここで昼休みになり時間切れ.いったん自宅にかえって,荷物をまとめる.曇ってきたなと思ったら,もうぽつぽつと小雨が降り出してきた.予報通り.

◆13:41発のTX快速で東京へ.車中では確率密度関数の積分問題を解いてしまったり.秋葉原についたら雨.駒場も雨.時間が少しあったので,駒場下の〈河野書店〉にてアヤシイ古書を物色する.102号館に入ってしばしの休息.そして,講義室へゴー.

◆集中講義 vs. 定例講義 —— これまで,大学での講義はすべて「集中講義」で,毎週定時に行なう「定例講義」は今回が初めて.集中講義であれば,朝から夕方までの力と気持ちの配分が身についているので,15時間でも30時間でも,とくにきっちりと予定を立てなくても問題はない.しかし,駒場でやっているような「定例講義」だと,毎週90分をこつこつと積み上げることになるので,なんだか肩すかしを食らうような気分になる.ちょこっとやっては1週間,少しつついては1週間,という間歇リズムがきっとまだ体得できていないのだろう.朝9時から午後5時までの集中講義の方がいいな.

◆「生物統計学」第3回目(16:20〜17:40) —— 今日は正規分布を中心とするパラメトリック統計学の話.ペン・タブレット,使いました.やっぱりまだ慣れていないみたい.受講生のウケもやや“ビミョー”だが,どうか今後の進歩を見守っていただきたい.それでも,チョークの粉まみれで“リアル板書”するよりははるかにいいと思う.正規分布の確率密度については,定積分の計算過程をきっちり“板書”したのだが,久しぶりにたくさん書いてしまった気がする.相手が駒場の学生なので,生物系といえども「解析学」や「線形代数」の知識はまだ揮発せずに残っているだろうと考えてのことだ.最後に,〈R〉の作図デモもやった.〈Rcmdr〉のグラフ描画メニューを最大限利用して,「まずはデータを眺めるべし」という家訓をよく刷り込む.

—— 集めた出席票のコメントをざっと読むと,先週に比べて学生の“弱音”がメゾフォルテになっていることがわかる.いわく:「…難しいです」「きつい」「もう限界」「ヤコビア〜ン」という虫の息さんが,「もっと速くていいです」「どんどんやってください」という猛者さんを凌駕している気配.おそらくは正規分布しているであろう理解度が今回の講義でそのロケーションをずらしたかもしれない.寄せられたいくつかの質問については,〈R-statistiek〉で答えるようにしよう.〈R〉と〈Rcmdr〉については評判がよかったようだ.「自分でも〈R〉で遊んでみます」という声もあり.頼もしいですねえ.中には,「前回の講義コメントで“もっと難しくていい”と言ったヤツ,KY だぞ!」という怨嗟のつぶやきも…….※そーか KY か.

◆往復の車中読書 —— Walter Wilson Greg『The Calculus of Variants: An Essay on Textual Criticism』(1927年刊行,Clarendon Press, Oxford)をぼちぼちと舐め始める.本書が出版された「1927年」といえば実に80年も前の本なのだが,この本で示されている写本系図の“形式化”のスタイルはまったく違和感がない.これって1970年代の「分岐成分分析(cladistic component analysis)」と事実上まったく同じ考え方ではないか.

たとえば,写本群{a, b, c, d, e, f}が与えられたとする.いま c, d, e, f に対するある「共通祖本」は,Principia Mathematica の祖先関係の理論(関係の数学)に則って,A' cdef と記される.さらに,それらの共通祖本のうち,後の Hennig の意味での直接共通祖先(c, d, e, f の共通祖先であってしかも c, d, e, f 以外の子孫を導かないユニークな排他的共通祖先.言い換えれば,c, d, e, f の共通祖先集合に含まれる祖先関係に関する最大元)は,(x)A' cdef と表記される(p. 5).そして,この排他的共通祖先「(x)A' 」については,写本の単系統群の構造 (x)A' cdef, (x)A' def, (x)A' ef そして (x)A' ab がたとえばあるとしたとき:

(x)A' cdef+(x)A' def+(x)A' ef+(x)A' ab =(x)A' {ab}{c[d(ef)]}

という記法を著者は提案している(上図).系統樹をこのスタイルで要素に分ける仕方は分岐成分分析ではおなじみだった.

著者の動機づけは,Principia Mathematica の論理体系を写本系統学にも適用しようという点にあった:

The whole matter is, of course, at bottom one of formal logic, and the necessary foundations are fully set forth by Russell and Whitehead in those sections of Principia Mathematica which deal with the ancestral relation (*R: see Pt. II, Sect. E, *90 - *97, in Vol. i; also Introd. sect. vii and Appx. B in the second edition). (p. v)

同じ Principia Mathematica をルーツとしていても,Woodger の「公理化」路線に沿った John R. Gregg『The Language of Taxonomy』(1954年刊行,Columbia University Press)とはだいぶちがうスタイルで,Gregg よりも Greg の方が個人的には親しみやすいものを強く感じる.

◆つくば到着.雨は上がっているが,空気がまだ濡れている.定刻よりも数十分遅刻して,ノバホールでの〈第23回つくば国際音楽祭〉の「鈴木秀美・Bach無伴奏チェロ組曲全曲演奏会」に駆けつける.今夜は奇数番「1・3・5」だったが,ロビーで3番を,そしてホールで5番を聴いた.次回の第二夜はちゃんと間に合うようにしよう.

◆本日の総歩数=8315歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.1%.


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[sinds 19 april 2007] 無料アクセスログホームページ 素材集