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oude dagboek

日録2007年7月


31 juli 2007(火) ※ 坂の街・神楽坂の夏の夜に融け込んでいく

◆午前5時過ぎ起床.午前3時頃にいったん目覚めたときは,まだ北風とともに雨が降っていた.しかし,明け方にはあがって曇り空に.気温19.7度.しだいに晴れ間が広がっていく.

◆しだいに蒸し暑くなってきた午前のこまごま —— 進化学会賞の選考資料を読んでます読んでます.ドロナワですドロナワです./ Olia さんからネマトーダの投稿原稿が送られてくる.加筆は後回し.すまぬ.

◆昼下がりにばたばたと帰宅.14:48の TX 快速で東京に出る.車中も選考資料読みが続く.すずらん通りを一回りしてから,飯田橋へ.レインボービル内の会議室に午後4時少し前に到着する.午後4時を少しまわって,選考委員がそろったところで,進化学会の学会賞に関する会議が始まる.自薦で応募してくれる若手研究者が多いというのはとてもよい兆候だ.誰かから推薦される前にどんどん手を挙げよう.

—— すべての選考作業が終わったのは,午後8時過ぎだった.今年は幸い候補者が多く,例年よりも選考作業に時間がかかった

◆その後,今日も明日もたいへん忙しいはずのやはら氏に拉致され,夜の神楽坂方面に引きずられていくワタシ.とある二階の〈てしごとや〉にするりと入る.おお,これは.かの御社の“なわばり”だったとは知らなんだ.わわ,社長さんにまで遭遇するとは.どうもありがとうございました.まずは,「獺祭」から始まり,魚と日本酒がずらりと.明日は朝イチで箱崎に帰るはずのやはら氏は瞬間的に箸の動きが“倍速化”することに気づいた.これがたくさん食べる秘訣だったのか.そーかそーか.

—— 二人が三人になりさらに四人と増え,機嫌良く呑んでいてふと時計を見れば,午後10時半をまわっているぞ.TX の終電は午後11時半のはず.神楽坂の上から転がり落ちて,飯田橋から秋葉原へ直行し,かろうじて終電に間に合った.自宅に着いたときにはもちろん午前さま.

◆でもって,いただきもの —— 森上信夫・林将之『昆虫の食草・食樹ハンドブック』(2007年4月1日刊行, 文一総合出版, ISBN:978-4-8299-0026-0).

◆本日の総歩数=14375歩[うち「しっかり歩数」=3509歩/36分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.4kg/0.0%.


30 juli 2007(月) ※ 突然の集中豪雨にびっくりして大トド逃げる

◆午前5時起床.雨上がりの曇り空.北東風が涼しい.気温21.6度.しだいに風が強まる.

◆午前のこまごま —— 9月の首都大学東京での生物統計学講義に関する連絡.毎年のことなのでもう慣れている.先日,センセは大学構内で自転車もろとも転倒し,鎖骨を折ったそうだ.御愁傷さまでございます.つくばの歩道では同じような自転車の転倒事故でこれまた同じような鎖骨骨折に遭ったというケースをときどき耳にする.かつて,もっと人口密度が低く,歩道が今以上に荒れ果てていたときは,冬場に自転車で転倒して気絶し,そのまま放置されて凍死ということもあったらしい.南大沢も気をつけないといけないですね./ カード会社から再発行された明細が届いたので,事務に届ける./ 今日,農環研を退職するポスドクの方が,別刷をもらいたいと来室された.先日メールがあったのだが,ご足労させて申し訳ないことをした.

◆午前10時半の気温は21.8度.夏らしからぬ涼しさが続く.しかし,雲がしだいに厚くなり,昼前に雨が降り始めた.ほどなく本降りに.雷もごろごろと.午後1時を過ぎて土砂降りになった.遠景が何も見えない吹き降りだ.この雨に驚いたのか,締切後ひと月ほどのたうっていた“大トド”が幸いにも一頭消え去ることになった.統計学会記念本の原稿は書かなくてもよくなった.農環研のもうひとりの統計師さまが充実した原稿を早々と提出したとのことで,農業関連の統計に関する章はこれでもういいだろうと知らせにきた三輪さんとうれし涙を流し合った.締切をひと月も過ぎ,プレッシャーが日に日に増しつつあるとき,このような形でケリがつくのは精神衛生上とてもよろしい.善哉善哉.※←よい子はまねをしてはいけません.

◆午後の進化学会関連こまごま —— 高校生ポスター発表がさらに3件増えたとのこと.喜ばしいかぎりだ./ 公開講演会は京大の泣く子も黙る GCOE との共催にすることになった./ 明日7月31日と8月8日の出張届を提出.

◆さんざん降ったあげく1時間ほどで急速に天候回復.午後2時半には晴れ間が見えてきた.午後5時半に帰宅.気温21.5度,北風が涼しい.しかし,東の空にはまだ黒々と兇雲が空を覆っていた.

◆夜の進化学会関連こまごま —— 学会費滞納者に関する処置を事務局と相談する.逃がしまへんで./ 明日の学会賞選考委員会に関するリマインダーを選考委員に送る.明日の夕方,飯田橋にて開催.

◆よそ見読書 —— 小林章夫『チャップ・ブックの世界:近代イギリス庶民と廉価本』(2007年7月10日刊行, 講談社学術文庫[1828], ISBN:978-4-06-159828-7→目次).17〜18世紀にかけてのイギリスで大流行したという「チャップ・ブック」と総称された貸本に関する歴史書.初めて目にするテーマなのでそそられる.教会・訓話はもとより,旅行記や小説のような文芸作品,家計・金儲けのたぐいの実用書,ジョーク・エッセイ,そして恋愛・不倫から魔術にいたるまで,さまざまな分野のごった煮が特徴だという.いまで言えば,『リーダーズ・ダイジェスト』のような出版物だったのだろうか.しかし,頁数はもっと薄く,パンフレットのような冊子が中心だったそうだ.

本書はたくさんの書影を示しながら,この雑多な「チャップ・ブック」の世界を見渡そうとする.当時は英語の本でも隔字体(gesperrt)が多く用いられていることを知った(現在ではドイツ語にしか残っていないようだが).また,鉄道時刻表に名を残すトマス・クックは,19世紀イギリスを代表する大旅行業者だったと記されている.

◆午後11時をまわった頃,再び雷雨がやってきた.こんなに不安定な空模様では,梅雨明けはまだ宣言できないだろう.

◆本日の総歩数=6390歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.5kg/−0.7%.


29 juli 2007(日) ※ 京島の時差疲労を熱々の参鶏湯で解消する

◆午前6時にごそごそ起きる.アタマがやや痛いぞ.昨夜の宴会の祟りか,腹中蟲でも盛られたか.たいへん蒸し暑く,外出する気力が失せる.

◆午前中は11ヶ月前の「復習」をする —— 第12回新宿区民オペラ〈トゥーランドット〉DVD(9月2日公演/9月3日公演).ピットに入り込んでしまうと,舞台上でいったい何が行なわれているのかはいっさいわからない.オペラの伴奏はしても,そのオペラそのものはリアルタイムでは鑑賞できず,あとで録画を見るしかない.〈トゥーランドット〉もその例に漏れず,昨年9月の本番以来実に11ヶ月後に初めてその「舞台」を見ることができた.

2回の公演の初日の録画を復習.ほとんど暗譜しているので,一年近く経った今でもほぼ正確に記憶している.しかし,正しく暗譜することと,正しく演奏することとは別だ.お,シロフォン,ミスってるやん(汗).それにしても,バス・シロフォン域の音盤がよく割れなかったなあ.

—— とりあえず,9月2日分の復習と反省を終えた.

◆雲の多い蒸し暑さがずっと続く,竹園公民館に参議院選挙投票に出かける.その後,西平塚の〈白飯家〉にて参鶏湯をいただく.この暑いときにこそ,熱い参鶏湯しかない.ほろほろにほぐれた鶏肉スープとともにすすり,丸ごとの朝鮮人参をかじり,ふやけた棗の種までなめてしまう.外を見たら通り雨がざーっと降って,すぐ止んだ.

◆午後もDVD鑑賞会の続きを夕方まで.9月3日分.前日とは演奏上の可否の箇所が微妙にちがうところがおもしろい.実際に演奏する身になってみると,首尾よく“成功”したところよりも“失敗”してしまった箇所の方が記憶に残るものでして,それもかすかにまちがったところでさえ,本人には実際よりも何倍にも増幅されて聞こえてしまったりする.ましてや,フォルテで叩き損なったりした日には,アナタ,そりゃあもう…… orz.

◆今日は,昼間から朝鮮人参でパワーアップしたのに,さらにスペアリブを焼いてしまった夕食.午後8時を過ぎて強い雨が降り出し,遠い雷鳴が響く.気温が下がり始めた.テレビでは,参議院選挙の開票が始まったが,開票数分後にもう「当選」や「当確」が出るとはね.ピン・ポン・パンとともに雨の夜は更けていく.

◆本日の総歩数=1432歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=+0.1kg/−0.3%.


28 juli 2007(土) ※ 隅田川花火と〈トゥーランドット〉の京島

◆午前4時半にいったん目覚めたが,暑かったので窓を開放して,二度寝.午前6時前にのろのろと起床する.朝から湿度がとても高い.最初は北東風が通って心地よかったが,その後,南風に変わるとともにさらなる湿気が侵入してきた.日射しも強く夏らしい一日の始まりだが,不快であることに変わりはない.梅雨明けはもう時間の問題だ.

◆AbeBooks からの着便本 —— 発注してからたった6日で届いてしまった.早すぎる:Léon Croizat『Manual of Phytogeography, or, An Account of Plant-dispersal throughout the World 』(1952年刊行, Uitgeverij Dr. W. Junk, Den Haag, ISBNなし→目次).著者が前任地であるハーバード大学の Arnold Arboretum を去り,ヴェネズエラのカラカスに移住する前後に本書はまとめられたと前文に書かれている.6年後の1958年に出版されることになる『Panbiogeography』の予告も述べられているが,『Manual』以降の Croizat すべての著作は商業出版ルートにはいっさい乗らなくなった.

隅田川花火大会への遠い道のり —— 不快指数がとても高く蒸し暑い昼下がりにお出かけ.14:11 の TX 快速で柏方面へ.1時間ほどの所用をすませた午後5時前,柏祭りに繰り出す「浴衣な人びと」の間をかいくぐり,蒸し暑さと人いきれで耐性限界を大きく超えたJR柏駅から常磐線快速で北千住に向かう.北千住で東武伊勢崎線に乗り換え曳舟駅へ.今度は隅田川花火大会に向かう別の「浴衣な人びと」軍団に巻き込まれる.

花火会場へ向かうらしき群集をすり抜け,久しぶりの京島界隈に沈潜していく.曲がりくねった細道といい,沿道のレトロな店の並びといい,“下町”のイメージをそのまま残している.谷中や千駄木あたりは一時期の高層マンション建設ラッシュで景観がだいぶ変わってしまったが,京島のあたりはいまのところそういう動きはなさそうだ.高い建物がぜんぜんないというのがミソ.

その京島の一画に隠れた,居酒屋〈まりちゃん〉にたどり着いたのは午後6時前だった.季節営業の会員制居酒屋〈まりちゃん〉は,打族関係者あるいは  とか  とかのみを顧客とする.すでに〈トゥーランドット〉鑑賞会をすませた招待客らは,店主らとともに買い出しに出かけて不在だった.しばし涼み,一行の帰還を待つ.今日は,〈百年の孤独〉と紹興ネイティヴの〈加飯酒〉をぶら下げてきたのだが,さらにフォションのバゲット2本と「賞味期限切れ(=食べごろで美味いということ)」のブリーとウォッシュタイプのチーズを買ってきた.しばらくして,買い出し部隊が帰ってきたので,なし崩し的に飲み会がはじまる.やっかいなことに,この狭い店内に十人以上もの「客」を詰め込むことになったので,すわる場所がない.強制的に“立ち飲み”状態になった.南千住か日暮里あたりにありそうな“立ち飲み”スタイルだ.しかし,さっと飲んでさっと帰るのとはちがって,この状態で何時間も居座るというのは足腰に負担がかかるなあ.新鮮なレバー刺を喰いつつ,〈百年の孤独〉を賑やかに飲みはじめる.

午後7時から花火大会が始まるというので,隣りのマンションの屋上に宴席を移動する.マットを敷いたりしてやっと座れたのは幸いだった.数々の料理にアルコール類が並ぶ.今年は参議院選挙の日程の影響で,方々の花火大会が延期や中止に追い込まれたそうだ.今年の隅田川花火大会も延期日程を組まない背水の陣で臨んだと聞く.定刻に始まった.いつも通り二カ所の打ち上げ場所からぼんぼん威勢良くあがる.毎年,新趣向の花火が披露されるのが楽しい(「の」の字花火とか,蛇行花火とか).例年よりも二千発も多く打ち上げられたというが,午後8時半の終了定刻にぴったりエンディングとあいなった.花火大会は人出で混雑を極めるという会場近くではなく,少し離れたところからゆったり鑑賞するにかぎりますなあ.

見るべきものを見てしまったので,あとはまた下に降りて店内での“立ち飲み”が再開された.別室からは「秘曲」についてのオタクな話がなされているようだが,こちらの一画では一時メタボな話題になる.午後10時を過ぎて,やっと帰り支度をのろのろと始める.逆コースで,曳舟から北千住に向かい.23:11分の TX 快速に乗る.つくばに帰り着いたのは,日が変わる5分前だった.夜中近いのにこの蒸し暑さは尋常ではない.今夜は熱帯夜かも.

◆昨年の新宿区民オペラ〈トゥーランドット〉公演DVD(二日分)は確かにお預かりしました.姫君のご機嫌を伺いつつ,しかるべき作戦に移ります.

◆本日の総歩数=8136歩[うち「しっかり歩数」=2446歩/23分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.3kg/+0.3%.


27 juli 2007(金) ※ 今日も真夏日なので暑気払いにこの交響曲を

◆午前4時半起床.濃霧が立ちこめる.気温22.9度もあって,朝からたいへん蒸し暑い.しだいに夏空になる.暑いことに変わりはない.

◆朝のこまごま —— 昨日,音羽に提出した原稿の一部分が文章欠落していたという.さっそく修正して,これでおしまいの原稿送信.午前8時過ぎ.

◆献本感謝 —— 鵜飼保雄『植物が語る放射線の表と裏』(2007年7月12日刊行, 培風館, ISBN:978-4-563-07805-8).どうも,ありがとうございました.植物への影響を通して,放射線の影響を論じた本.→ 目次著者サイト.※版元サイトにはまだ掲載されていない.

◆午前中からもう真夏日寸前だった気温は,昼休みあっさり大台に乗り,午後1時前に30.8度に達した.東海地方まで梅雨明したとの報道.関東も間近だろう.

◆今日はずっと『生物学大辞典』(東京化学同人)の項目書きをしている.全部で十数項目で,一項目あたり200〜400字.分量の総量は少ないものの,細かい参照が必要だ.午後4時前に作業完了.計「3,476字」.編集部にさっそく送信した.

「分岐進化(cladogenesis)」の元文献である Bernhard Rensch『Evolution above the Species Level』(1959年刊行,Columbia University Press)をめくっていて,Rensch 自身は英語版では一貫して「kladogenesis」と綴っていたことを確認した.また,この本の中で分岐進化の章がほぼ200ページもあるのに,対語である前進進化(anagenesis)の章はその十分の一ほどの短さだった.Rensch は“Kladogenese”こそ内因進化を奉じる定向進化説(orthogenesis)への鉄槌になると考えていたのだろう.祖先から子孫がランダムに分かれて生じるという分岐進化の定義が持つ意味は,今とはきっとちがっていたのだろうと思う.

◆辞書書きのBGMはまたもやショスタコーヴィチだ —— 本日のラインナップは,交響曲4番→8番→5番という三つにした.意外なことに(でもないか)「5番」がもっとも軽量で,あとの二つはどちらもクラくて長くて重い.しかし,「8番」は「7番」〈レニングラード〉のあとを受けてつくられた曲だから,それなりにメッセージ性があるのかもしれないが,問題は「4番」.この理不尽な粗暴さと荒み,そして逆なで的ざらつき感覚は何なんだろう.病んでいる気配が濃厚.

—— ということで,暑気払いには迷うことなく「4番」をお薦めしてしまおう.真夏日や猛暑日はじっと籠って「4番」を聴きましょう.病むぞ病むぞ(おいっ).それでも足りなければ,最後の「15番」へ逝ってしまおう!(成仏できるぞ)

◆夕方になってもまだ暑さが渦巻いている.夜は,ポークソテーを厚く焼いた.何だか疲れました.

◆翻訳希望本 —— さあ,みなさんも翻訳してほしい本を挙げよう.どんどん手を上げよう.とりあえずは1960年代の2冊:George C. Williams『Adaptation and Natural Selection : A Critique of Some Current Evolutionary Thought』(1966年, Princeton University Press)と Michael T. Ghiselin『The Triumph of the Darwinian Method』(1969年, University of California Press)に一票ずつ入れる.Williams の本はずいぶん前に訳師さまが手を伸ばそうとしたことがあったが,いまだに実現していない.Ghiselin の本は,執筆時の著者の年齢からいえば“若書き”の部類に入るはずなのに,すでに全部でき上がっているもんね.訳者がとても苦労することが目に見えている.

◆たいへん残念なことだが,人気ブログ〈つくばレストラン〉が本日閉鎖されたようだ.長い間,どうもありがとうございました(> kimazo さん).※つくばの迷える食いしん坊たちは「地図」がなくなってしまった.

◆本日の総歩数=7793歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+0.1%.


26 juli 2007(木) ※ ショスタコーヴィチに煽られる夏祭り当日

◆午前4時40分起床.薄曇り.気温22.4度.北寄りの弱い風.湿度が高めで蒸している.しだいに晴れて,今日も夏空が空いっぱいか.気温も不快指数も上昇中.

◆とあるヒミツ組織のサバト —— 今週土曜日の隅田川花火大会の件でメールあり.当日,京島のアジトにて極秘裏にサバトを決行するという.作戦遂行のため昼過ぎには参集せよとの号令が居酒屋〈まりちゃん〉から発令された.しかし,この日は緊急の別件が午後3時にあるため,アジトに到着できるのは午後5時頃になってしまうだろう.お詫びに紹興酒と日本酒を持参して,〈まりちゃん〉にお供えしないとコワイ神罰が下るかもしれない(ユビを詰めないと許してもらえないかも).その時刻には,すでに「四天王アマゾネスたち」は勢揃いし,怒濤の〈トゥーランドット〉DVD鑑賞会をしているという.興奮して青龍刀をもって暴れ回らないように(生贄にはなりたくないなあ).そして,ランダムウォークする“子とど”を放置しないように(>飼育係さま).

◆雲が増えてきた朝のこまごま —— 進化学会関連の事務連絡など.選考委員会のリマインダーも出しておかないと.

◆“革命歌”に煽られつつ原稿書き —— 『本』連載3回目の原稿も終盤だ.ショスタコーヴィチの交響曲11番〈1905年〉→12番〈1917年〉→13番〈バービー・ヤール〉→14番〈死者の歌〉とひたすらクラく長い後期交響曲に鼓舞されつつ,正午前に書き上げる.「7,916字」(16,080バイト).分量的にはフィットしている.とにかく音羽に送ってしまおう.ミッション完了.

◆着便本 —— 中谷礼仁『セヴェラルネス:事物連鎖と人間』(2005年1月25日刊行, 鹿島出版会, ISBN:4-306-04460-2 → 目次著者サイト).まず,装丁がいいな.ちっとも鹿島出版会らしくないところが(笑).

「セヴェラルネス(severalness)」というキーワードはあまり聞き慣れない.しかし,「単一」ではなく,かと言って「無限」でもない,いくつかの「有限」な場合のみが許されることを示す言葉としては納得がいく.著者は,クリストファー・アレグザンダーの「セミラティス」論を本書のいくつかの章で言及している.ツリーで表示される厳密なヒエラルキーは「単一」の階層構造は示す.一方,そのような構造性がまったくないときには「無限」の可能性が内包される.しかし,複数のツリーからなる「セミラティス」は,その中間にあって,いくつかの「有限」個の状態を指示する.だから,「セヴェラルネス」.系統ネットワーク理論を知っていれば,まったく違和感なく,著者の言わんとするところが理解できるだろう.

6月の ICCシンポジウム〈アーカイヴが紡ぐ未来:再連結する情報〉で,初めて著者の中谷さんと同席したのだが,建築学というまったくの畑違いの世界であるにもかかわらず,彼が使っていた「ことば」は意外なほどよく染み込んできた.おそらく,建築学の対象である都市構造とか配置あるいは建築物の歴史性は,“系統学的”な考察の対象になるということだろう.

◆ふと気がつけば,『生態学辞典』がどこぞにお隠れになって出てこない.向かいの部屋の引っ越しのときに,積み上がった段ボール箱の底に沈んでしまったものと思われる.無理に引きずり出すのもせんなきことゆえそのままにしておこう.

◆午後になって曇り空に.雨が降ったりしないだろうか.昼下がりのこまごま —— DGCbase の会計監査を進める.伝票などのチェック完了.金額の明らかな転記ミスを事務局に報告して,作業はおしまい.監査報告書を作成し,返送準備完了.2時間あまりのお仕事.

◆『本』連載原稿の続き —— 午後3時過ぎ,音羽からホットラインでの連絡あり.幸いにして,今回の改訂版はリジェクトされなかったようだ.しかし,進化理論の現代的総合に関する記述についての修正意見.Synthesis それ自体については次回以降の連載に持ち越すことにする.今回はマイアの提唱する生物学的種概念の顔見世だけにとどめよう.該当段落を修正し,午後4時に返送する.連載を続けるとはこういうことか.第3回目のタイトルは「種に交わればキリがない」かな.今後しばらくは「種に交われば〜」シリーズが数回は続くだろう.

◆農環研夏祭り —— 午後5時前には,早くも会場となるグラウンドに立っていた.蒸し暑い夕暮れ時だ.心配されていた雨もなさそうだ.客はまだ少ないのだが,早々とビールの“お味見”を2杯ほど(おいっ).正式には終業時刻の午後5時半が開始時刻だ.ワタクシは前倒しフレックスな人なので,午後4時以降は何をやってもいい.最高度にアヤシいグループに混じってジャンベを叩こうが,サンバ・タンバリンをじゃらじゃらさせようが,文句を言われる筋合いはないぞ(向かうところ敵なしだ).人口密度がしだいに高まり,農林団地の職員はもとより,近隣住民や子供たちもまじって,喧噪度は急上昇.櫓のまわりの踊りの輪とか,子ども神輿の練り歩きとか.お囃子の舞台とか.

なお,右の写真(→)で「いとけん三線」に合わせてジャンベを叩いているのは三中ではない(ウソではない).体型・髪型・髭型の3点で著しく収斂しているように見えるが,くれぐれも推論を誤ってはいけませんぞ.

—— 午後7時半,健康的に帰宅する.ビールとサングリアの飲み過ぎだ.即,撃沈.

◆本日の総歩数=7620歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=0.0kg/−0.3%.


25 juli 2007(水) ※ 朝からかんかん照りのミッション後半戦

◆午前4時半起床.曇り.気温19.3度.早朝は涼かったが,日が昇るとともに強烈な日射し,そして気温の急上昇.今日もハードな1日になりそうだ.※どうせ部屋に閉じこもっているので,ほとんど影響はないわけだが.

◆朝のこまごま —— 早朝,音羽からメールあり.「その調子でさらに精進せよ」とのこと.へへ〜っ./ DGCbase からの会計監査書類が宅急便で届いていた.監査報告書フォーマットはメールですでに来ている.こういう仕事は早めにカタをつけよう./ カード会社に電話をして,うっかり破棄してしまった利用明細の再発行を依頼する.過去2年間にさかのぼっての再発行は可能だそうだ.今回は4月に利用した米国送金の明細についてだったが,調べてもらったところ,実はまだ明細が発行されていなかったことが判明.前倒しの明細書は1週間ほどで郵送されるとのこと.

◆午前10時半の気温は27.8度.夏空と積雲.梅雨明け間近かも.

◆くまざわ書店にて —— エドウィン・ミュア(橋本槇矩訳)『スコットランド紀行』(2007年7月18日刊行, 岩波書店[岩波文庫 赤296-1], ISBN:978-4-00-322961-3).1930年代に,エジンバラから南はローランド地方,そしてグラスゴー,さらに北のハイランド地方を旅した紀行文.スペイサイドはスルーされてしまったか……./ 小林章夫『チャップ・ブックの世界:近代イギリス庶民と廉価本』(2007年7月10日刊行, 講談社学術文庫[1828], ISBN:978-4-06-159828-7).取り上げられているテーマと時代は,清水一嘉『イギリスの貸本文化』(1994年3月31日刊行, 図書出版社[ビブリオフィル叢書], ISBN:4-8099-0513-6)と重なっている気がする.

◆午前のこまごま —— 組合員証の検印.毎夏の恒例雑用.被扶養者のなんちゃらとか,収入証明書のへったくれとか,いろいろ取り揃えないといけない./ 進化学会関連:ニュース作成費用の決済,そして高校生ポスター発表者のリストと賞状作成の段取り.

◆はてなの「ISBN-13対応」が完了 —— 今気づいたのだが,はてながやっと「ISBN-13」に対応したようで,ハイフンを手動で抜く手間が必要なくなった.よかったよかった.

◆昼下がり,外はかんかん照りが続いているようで,どうしようもない.午後1時から Olia さんが来室.ネマトーダの分子系統論文の打合せ.あとはディカッションをものすれば,完成原稿だ.

◆隠蔽的収斂進化する生物学辞書たち —— うっかり忘れていた東京化学同人の『生物学大辞典』の執筆了承の返事を編集部に返す.今回,依頼されている項目は,分類学分野では「系統(phyletic line)」「系統学(phylogenetics)」「系統分類(phylogenetics)」「分岐学(cladistics)」「パターン分岐学(pattern cladistics)」「分岐分析(cladistic component analysis)」「数値分類(numerical taxonomy)」(※統計学分野ですでに入稿済),進化学分野では「枝分かれ進化(cladogenesis)」「一元性単系進化(monophyletic evolution)」「共通祖先(common ancestor)」「共適応(coadaptation)」「収束適応(convergent adaptation)」 —— まずは項目名そのものの修正と対応する英語の叩き直しが先決だろう.

それにしても,今回依頼された項目を眺めていると,どこぞで見た記憶のあるものが多すぎるぞ…….ここ10年ほどの間に,ぼくだけで8冊の辞書の項目執筆者になっている.複数の辞書で同一の項目を依頼されるのが常なので,どう控えめに見ても,内容的な“収斂”が生じているのはきっと避けられないだろう.手元にある数冊の生物学系辞書をぱらぱらとめくってみたり,執筆過程での項目リストを引っ張り出したりしたところ,やはり今回挙げられている項目はいずれも『生物学辞典・第4版』・『鳥類学辞典』・『植物育種学辞典』に由来するものであると推定された(不適切な用語まできちんと伝承されているので,アブダクションとしての確度は高い).しかも,そのすべての項目はぼく自身が書いたものだ.

—— 「おお,それってラクじゃん」などと油断してはいけない.自分がで書いたことのある辞書項目をアップデートしなければならないというのは,なかなかたいへんだ.しかし,なじみのない項目ではないというのは心が安らぐ.その一方で,まったく心安らげないのは,「動物名の選定」という追加依頼だ.辞書に挙げるべき動物名を今月末までに「500!以内」で報告せよ(マジっすか)という編集部からのプレッシャー.ヘイ,タクソノミスト.ヘルプ・ミー!

◆夕方近くなって,やっとミッションに集中できる.あと2節分10枚あまり書かないといけないのだが,もう帰ってしまおう.あとは家での仕事だ.

地表の突起を「山」と呼ぶか否かに言及したのは David Wiggins 『Sameness and Substance』(1980年刊行, Basil Blackwell, ISBN:0-631-19090-2)だった(p. 206).一方,集落を「町」と呼ぶか「村」と呼ぶかに触れているのは,Darwin 『Descent of Man』(1871)だった.Louis Agassiz の『Essay on Classification』(1859)でも,同様の論議が見られる.いずれも,もっとも一般的な「分類」が抱える根幹的問題だ.

—— 夜,さらに1節書き進んだ.全体の3/4になったので,明日の午前中に残り1節分を書いて完成させよう.日が変わる頃,できたところまでの原稿を音羽にメール送信する.

◆本日の総歩数=6102歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/+0.5%.


24 juli 2007(火) ※ 梅雨明けもどきの真夏日にミッション決行す

◆午前4時40分起床.濃霧.21.1度.すぐ晴れて夏空が広がる.9時半の気温27.2度.暑い暑い.

◆午前のこまごま —— 契約職員の賃金支払届./ カード会社の明細を捨ててしまったようなので,再発行を依頼しなければならない.でないと,カードで支払った Hennig XXVI の大会参加費の請求ができない.毎度毎度,この手間がめんどうなので,請求しなかった年もあるのだが,何日間かを浪費すればすむことなので,今年は手間をかけて請求しよう./ 進化学会大会関連のメールをちょこちょこと.

◆ミッション実行中 —— リライト原稿に取り組む.既存の文章をできるだけ再利用したいのだが,基本作戦が一挙に変わってしまったので,また地べたから書き直しているようなものだ.

◆正午の気温は 29.6 度.久しぶりの真夏日だ.かんかん照りで外出する気が失せる.

◆午後1時40分から1時間ほど,〈形態測定学講義〉の輪読37回目.第13章「The relationship between ontogeny and phylogeny」の続き(pp. 333-337).個体発生上のアロメトリーに関する検定問題.チャネリング(平行進化)すなわち paedomorphosis と peramorphosis をアロメトリーの観点から分析する.両対数プロットでアロメトリー関係を図示したとき,傾き k に関するチャネリング帰無仮説「すべての集団について k は等しい」の検定方法を与える.ベクトル(ki)の2集団間の角度を検定統計量とする.ベクトルの成分に関する permutation test を実施し,帰無分布を生成.検定統計量に基づくテストを行なう.この節は,伝統的なアロメトリー理論の枠組みの中での解析なので,標識点間の距離変量での議論に終始する.

◆午後もミッション続行中.午後5時までに2節分ほぼ10枚ほど書けたぞ.快調だ.『分類するは人の常:「種」に交わればバカになる』というタイトルをふと閃いたのですが,いかがでしょ?(近未来のために)

◆昼間は日射しが強かったが,日暮れとともに北寄りの風が入ってきて,とても心地よい.“地雷原”の奥深くを目指すミッションは夜もなお続くのだ.

◆本日の総歩数=5313歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.2kg/−0.9%.


23 juli 2007(月) ※ ダメ出しにより一転して“地雷原”に突入す

◆ついうっかり午前5時過ぎまで寝過ごしてしまった.曇りのち小雨.気温23.2度.朝からとても蒸し暑い.

◆午前のこまごま —— またまた進化学会関連:会計監査日当日の段取りなど連絡./ 京都大会での高校生ポスター発表の応募状況について./ 学会賞の賞状とメダルの作成依頼の手はず.

◆午前10時半,気温は24.6度.むっと暑い曇天.不快指数高すぎる.

◆やってきた情報 —— 某方面のナマズの眼.まだ開いていたか.注意せよとの元理事長からの伝言.了解.お座敷がかかればどこへでも行きまっせ.

◆午後のこまごま —— Olia さんから送られてきたネマトーダ論文の系統解析の節を加筆する.昼過ぎから3時までかかって書き終える.メールで送信.明後日25日(水)の午後1時に打合せ./ 契約職員の賃金に関する届出は明日まで./ DGCbase の会計監査書類が送られてきた./ Hennig XXVI の参加費請求のための明細書添付が必要との連絡./ 男女参画委員会から進化学会入会に関する連絡あり,入会申請書に記入して,即返信完了.

◆夕方のダメ出しと転戦指令 —— 音羽からホットライン.あの原稿では「ダメです」とのこと.なんと,リジェクトですか! まだ時期尚早かと思い,“地雷”をかわしつつ安全圏での執筆を心がけたのだが,それでは読者が読みたいと期待していることとズレてしまうだろうとの講評だ.確かに一理も二理もあるコメントだった.要するに,四の五の言わずに“地雷”を踏む覚悟をしろということですな.

というわけで,連載3回目の原稿はタイトルも内容も一新することにした.今週金曜までに「種に交わればバカになる」という題で,新しく書きおろすことになる.おそらく1回ではケリがつかないので,2〜3回の連射になるだろうなあ.※最初のタイトルとは大違いじゃん.

—— ミッション :〈“地雷原”ニ突入セヨ!〉/ ウラの声:〈地雷を踏んだらサヨウナラ〉.

◆本日の総歩数=6070歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/+0.8%.


22 juli 2007(日) ※ 雨が降っては止む高湿度日曜は除湿しましょ

◆前夜の夜更かしが祟って,午前6時前まで寝過ごしてしまう.曇り.湿った南風が吹く.午前7時を過ぎて雨がざーっと降り出した.その後,雨は止んで空が明るくなるとともに,温度と湿度が急上昇してきた.あわてて除湿する.

◆連載執筆マシン,第4コーナーをまわる —— 昨夜の続きで,現代的総合のオモテとウラについての残る1節に取りかかる.今回は結果的に「分類学(者)」がテーマとなった.キーワードは「経堂,ゲニタリア,The New / Old Systematics」だ.学問としての歴史がこれだけ長いと大小取り混ぜてのエピソードにはまったく事欠かない.絵になる人材も豊富だし.

—— 午後3時過ぎにやっと脱稿.7,997字.音羽にメールで原稿を送る:三中信宏「〈生物の樹・科学の樹〉第3回:分類学者はへこまない」.※アノ話題とソノ話題が入ってます.ただし“地雷”は抜きましたので安全です.

◆夕方近くになって,青空が広がり,風もなくなり猛烈に蒸し暑くなる.密閉してひたすら除湿し続ける.

◆〈書肆アクセス〉閉店! —— 神保町すずらん通りにある〈書肆アクセス〉が,業績不振のため,今年11月中旬に閉店することになったそうだ.「が〜ん」とショックを受ける前に,「ちょっと待ったらんかいっ」と言いたい.〈書肆アクセス〉は,地方小出版センターのアンテナ・ショップとして開設されたと理解している.今回この店舗を閉じて別の場所に新しいショップがオープンされるとはまず期待できないし,企業として単に縮小あるいは撤退体勢に入ったということなのだろう.将来性のまったくない決断だと感じる.

以下,関連記事のクリップ —— 〈内澤旬子・空礫日記〉(20 July 2007)|〈daily-sumus〉(21 July 2007)|他にもたくさんブログ記事が見つかる.

◆連載原稿が仕上がったので,やや脱力気味.締切を3週間ほど過ぎてしまった“大とど”が一頭のたうっているのだが,しばらく放置しておこう.

◆結局,今日は一歩も外に出なかったので,栄えある「零歩男」だ.

◆本日の総歩数=0歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/−0.2%.


21 juli 2007(土) ※ シアワセを呼ぶ孤高の Léon Croizat の導き

◆今朝も午前4時半起床.雨がざあざあ降っている.気温低め.北寄りの風.窓を開けていたので,そこら中がしっとりしている.例年だと20日が平均的な梅雨明け日だといういうが,今年はまだまだだろうな.

◆Léon Croizat 「草稿」(1974)のウェブ公開 —— 「分断生物地理学派(vicariance biogeography)」の事実上の旗揚げとなった「元論文」として最もよく引用されているのは:Léon Croizat, Gareth Nelson and Don E. Rosen (1974), Centers of origin and related concepts. Systematic Zoology, 23 : 265-287 だ.

しかし,筆頭著者の Croizat 自身は「汎生物地理学(panbiogeography)」の領袖 — 彼自身が学派を立ち上げたとはいえないのかもしれないが — として,後に分岐学と分断生物地理学に敵対するようになる.では,「Croizat et al. 1974」とはいったいどんな背景を担った論文なのか.これまで何度か指摘されてきたように(たとえば,David Hull 1988 の本),この論文の成立には「et al.」による“微妙な調整”があったといわれている.

当時ベネズエラにいた Léon Croizat は彼が書いた草稿をアメリカ自然史博物館の Gareth Nelson に送ったのだが,それが“改変”されて共著論文として発表されてしまったと,後に Croizat が声高に非難している.だから,汎生物地理学派の文献リストからはこの論文は「除外」されるのが通例となっている(たとえば,Michael Heads and Robin C. Craw 1984, Tuatara, 27 : 67-75 の Croizat 業績リスト).

Croizat が最初に書いたという「草稿」(1974)がいったいどのようなものだったかはこれまで明らかではなかった.このたび,John R. Grehan がその「草稿」を彼が開設している汎生物地理学サイト〈Panbiogeography links〉の中で pdf として公開した:「Léon Croizat's ms before Croizat et al 1974」(→ pdf : 752KB).34ページに及ぶタイプ原稿 — 「On the “center of origin”」というタイトルが付けられている — を読むことができる(ただし図は含んでいない).両者を比較すれば見えてくるものは少なくないだろう.しかも,それを単なる歴史上のトリヴィアと言い捨てることができないのは,それが今日的な意味での「系統地理学(phylogeography)」 のルーツだからだ.

—— 他の学問分野でも(水面下では)きっとあることだろうが,体系学の世界ではこういう“事件”は珍しくない.パブリッシュされていない段階でのさまざまな物事が実はもっとも大きな推進力だったりする.たとえ「外の人」には見えなくても,「中の人」はそういう事情をよく知っている.

◆梅雨らしい雨が降り続く午前中は,ひたすら引き蘢って原稿を書こうと心がけたものの,雑用とても多し.ダメだ,こりゃ.そっくり午後に持ち越しだ.昼前に雨は上がり,青空も.南風がよく通るので,ちょい外出.しかし,地表付近は蒸し暑かった.即退散して引き蘢りはなお続く.

◆連載執筆マシンはうなる —— 夕方から本格的に執筆開始.書いているうちに,当初の予定とはちがって「側枝」がぐんぐん成長してきた.剪定するのもかわいそうなので,そのまま伸ばしてみることにする.とりあえず400字詰にして7〜8枚ほど書いてみる.まあ,こんな感じでいいかな.

◆夕食後,エンジン冷却のため,オンライン書店を徘徊する.ふと思い立って「Léon Croizat」で検索したら,なんとここ10年ほどずっと探し続けてきた古書がたまたま出品されているではないか!:Léon Croizat『Manual of Phytogeography, or, An Account of Plant-dispersal throughout the World 』(1952年刊行, Uitgeverij Dr. W. Junk, Den Haag, ISBNなし).本文600ページに加えて図版100ページが付く,これまた電話帳のようなハードカバー本だ.Alibris と AbeBooks の両方に出ていたが,出品者は同じ古書店なので,おそらく現物は一点しかないのだろう.US$ 199.00.AbeBooks に即注文完了.UC Davis Library からの放出品だそうだ.

Croizat の自費出版本たち — 『Panbiogeography』(1958),『Principia Botanica』(1961),そして『Space, Time, Form : The Biological Synthesis』(1964)— は Wheldon & Wesley 書店がまだあった大学院生の頃にすべて入手できたのだが,商業出版されたはずの処女作『Manual of Phytogeography』だけは,古書市場にほとんどブツが出なかったため,東大農学部図書館に所蔵されている本を見るしかなかった.本書は国内では東大を含めて数館しか所蔵していないはずだ.それ以外にも,Croizat はイタリア語,スペイン語,フランス語で数百ページもの分量がある(本のような)論文をいくつかの学会のモノグラフとして出版している.実に幸いなことに,それらの超マイナーな学会誌は農環研の地下書庫にすべて揃っていたので,コピーすることができた.※このときだけは農環研に就職できたことに深く感謝した.

—— 今日は「Croizat つながり」でいいことがあったので,執筆マシンもがぜんエンジンが快調になってきたぞ.

◆連載執筆マシンが疾駆する夜 —— 日が変わるまでさらに原稿を書き続ける.3節分ほぼ13枚まで書けた.あとは明日の午前中に1節分(7枚)を書き上げておしまいだ.Ernst Mayr vs. Richard E. Blackwelder の分類学をめぐる構想と抗争について.

◆寝たのは午前1時前だった.

◆本日の総歩数=2651歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/+0.8%.


20 juli 2007(金) ※ 古本新刊近刊未刊「本」原稿執筆中本また本

◆午前4時半起床.朝から晴れ渡る.気温18.7度.北の風.日が昇るとともに気温も急上昇.日中は久しぶりに夏日になるらしい.

◆また早朝から進化学会こまごま —— 8月8日(水)に“一石三鳥”が実現した.よかったよかった.午前10時から活動開始の予定./ 木村資生財団から学会賞応募者に関する問合せあり,事務局から資料を郵送してもらう手配をする.

◆にょろりと受賞 —— 青山潤『アフリカにょろり旅』(2007年2月10日刊行,講談社,ISBN:978-4-06-213868-0)が〈第23回 講談社エッセイ賞〉を受賞したそうだ(7月12日発表 → 版元:プレスリリース特設ページ紹介ページ).こりゃ,「ウナギ第2作目」が期待できるかな? ※それにしても「在庫切れ」とは,講談社もうかつなことで.

◆午前10時.夏空が広がる.気温26.1度.暑いぞ.

◆10:00〜12:00前まで,業績評価システムWGの4ヶ月ぶりのミーティング.評価システムが詳細になればなるほど,問題が湧いて出るんだろうな.シミュレーションしてみて,妥当な線に収束すればよし.※「勤評」はもう死んだ.(共通理解として)

◆外は暑そう.中は涼しい(当たり前).進化学会関連なお続くこまごま —— どさっと届いた事務局からの宅急便は,学会賞選考資料だった.これを来週末までに読めって?(引く)/関連するメール往復連絡あり./別件の用務は電話になりそうか./ 公開講演会の演者のうち,3名分の演題と要旨が届いた.あと1名だ.よろしくよろしく.

◆山ほどの近刊案内 —— Jürgen Haffer『Ornithology, Evolution, and Philosophy : The Life and Science of Ernst Mayr 1904-2005』(2007年8月21日刊行予定, Springer-Verlag, ISBN:9783540717775 [hbk] → 版元ページ).高いけど買わないわけにはいかないだろうなあ(pbkも出る気配あり).ドイツでの生い立ちから始まる500ページもある伝記.“Mayr Industry”の始まりか./ David M. Williams and Malte C. Ebach『Foundations of Systematics and Biogeography』(2007年8月刊行予定, Springer-Verlag, ISBN:9780387727288 [hbk] → 版元ページ).これも同じく,お買い上げか.分岐学を中心とする体系学の哲学について./ M. Oksanen et al. (eds.)『Philosophy and Biodiversity』(2007年7月刊行予定, Cambridge University Press, ISBN:9780521039147 [pbk] → 版元ページ).2004年に出た hbk の再販.なんとなく微妙……./ Norman MacLeod (ed.)『Automated Object Identification in Systematics : Theory, Approaches, and Applications』(2007年7月刊行予定, CRC Press[Systematics Association Special Volume], ISBN:9780849382055 → 目次).形態測定学の論文集なので,食指は伸びそうだが./ David Young『The Discovery of Evolution, Second Edition』(2007年8月刊行予定, Cambridge University Press, ISBN:9780521868037 [hbk] / ISBN:9780521687461 [pbk] → 版元ページ).初版は20年ほど前じゃなかったか.

—— こうもいっぺんに出されると“サイフ的”にとても困るのですが…….公費購入書と私費購入書に分けてとにかく確保しておくことにしよう.

◆昼下がりの原稿書き —— 連載されている最新号が届いてやっと次の号の原稿を追われるように書こうとしている.が,ネタが次々と湧いて出てくるので,調教しきれないのがホンネ.こういうときは,迷わず“グールドの秘伝技”を遵守して,ディテールから書き始めしだいに大きく膨らませていくという定石を旨としよう.タネ本を本棚のうしろから引きずり出しては,ホコリを吹き払ってみる.これがまた愉しい(だから時間がかかる).

—— それにしても,毎月19日に『本』の最新号が届き,翌20日が次号の原稿締切とは“敵”もさるものよのう.などと他人事のように言ってないで,さっさと書かないとっ(>自分).

◆午後5時に帰宅.大粒の通り雨がざあっと降るもすぐに止んでしまう.湿度が高いが,不快ではない.そのうち,北東風が入って気温が下がり始める夕暮れ.ピンポイント爆撃のように,音羽から『本』原稿の督促電話のムチが正確に飛んでくる.ぐずぐずしている連載原稿はこの週末にはちゃんと書いて,耳を揃えて胸張って出せるようにしないと.もうひとつ Conway Morris の翻訳稿の第1章は月末でにチェックせよとの指令も.海游舎の“大蛇ゲラ”が来ないことを祈りつつ(来なけりゃ来ないで困るのだが.来月末の進化学会大会に間に合います?>あ,藪蛇っ).

◆午後9時頃になって,雨が降り出し,南風に変わる.またまた進化学会関連の用務が —— 京都大会での公開講演会の演題と要旨が全員分そろったので,関係者ならびに実行委員会に通知し,大会サイトへの掲載を依頼した.公開講演会の演者と演題は以下の通り:


進化学会京都大会・公開講演会

《進化研究の最前線に貢献する生き物たち》

【日時】2007年9月1日(土),13:30〜16:00
【場所】京都大学本部構内(時計台)
【演者】
     
  1. 13:30〜14:00 「種形成の現場:ビクトリア湖シクリッド」
       岡田典弘(東京工業大学大学院生命理工学研究科)
  2.  
  3. 14:00〜14:30 「人工細胞造りから迫る生命の起源」
       四方哲也(大阪大学大学院情報科学研究科)
  4.  
  5. 14:30〜15:00 「1+1=1:植物になる進化」
       井上 勲(筑波大学生物科学系)
  6.  
  7. 15:00〜15:30 「進化研究の最前線に貢献する生き物たち:ナメクジウオとホヤ」
       佐藤矩行(京都大学大学院理学研究科動物学教室)
  8.  
  9. 15:30〜16:00 総合討論

—— 講演要旨など詳細については追って大会サイトで公開されるでしょう.

◆げ,げ,原稿が〜〜〜.

◆本日の総歩数=5911歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.6kg/−0.7%.


19 juli 2007(木) ※ つくばに復帰すれば進化学会周りのあれこれ

◆午前4時半起床.曇り.気温19.3度.

◆早朝から進化学会関連こまごま —— 講演申込に関するリクエストを大会委員会に通知する./ 大会時に開催される評議員会は前日の30日(木)の午後5時から開催される.評議員への事前通知と開催場所の確認./ 選考委員会の日時が確定したことを木村資生財団に通知する.

◆午前9時,外は霧雨が降っていた.気温は20.3度しかない.あまりに気温が低いので,集中空調がオフにされたが,居住性にはまったく何の支障もなし.

◆午前のその他こまごま —— 午前10時過ぎに,居室点検.麻薬など“不適切な薬物”がないかどうかを全所チェック中.おお,これはヤバい! 覚醒剤,大麻,ヒロポン,シンナーが続々と……(ウソ).逆さにしてみてもこの部屋には「本」しかないことを再確認して,たった10分ほどで終了./ 動物衛生研究所での系統学講義の日程連絡あり.9月6日(木),9:30〜12:00.この週から2週間にわたって動衛研で実施される〈平成19年度獣医疫学特殊講習会日程〉のひとつの科目として.お隣の研究所なので(日頃のつきあいはまったくないが),たった数分で会場となる動衛研研修棟に行けるのがとてもラク.

◆またまた進化学会まわりのあれこれ —— 公開講演会の演題と要旨のリマインダーを演者に送る.よろしくよろしく./ 学会の会計監査を8月上旬に実施する必要がある.うまく日程を組んで,一石三鳥ほどの効果を上げたい.Parsimony!できれば同じ日に,決算・予算の案を立てることを目指す.まずは会計監査担当者に連絡して日程打診をば./ 京都大会の出店ブースについて大会委員会に問い合わせる./ 評議員会の会場が確定したので,評議員に期日と場所をアナウンスする.

—— ここまででもう昼休みだ.薄日が射してきた午後も暑くならない.セミの合唱が遠くから.

◆昼下がり,その他のこまごまいくつか —— メーリングリストの登録作業はあっという間に./ 大きな査読依頼がふたつ日向の国から届く.お引き受けしましょう.プリントアウトして読み始めると現実逃避モードにスイッチオン(汗).

◆さらにまた進化学会つながりにトラップされて —— 評議員会・総会の議案は後ほど検討するのだが,広報活動促進に関する提案があったので,前向きに対処することにしたい.他には,学会費の年度途中変更の件も立案しないとか./ 会計監査担当から8月8日(水)午前中でOKとの返事.事務局と会長にメールして,この日で確定させることにした./ 京都大会での出店に関する返信あり.そうですか,部屋の貸借料が高いわけね.法人化して以降の国立大学は“銭ゲバ”だぞ(古〜).

—— こういう連絡メールを今日だけで25通も書いてしまい,気がつけばもう夕方だ.はいぃ?

◆日暮れとともに北の風が通る.心地よし.帰宅したら,『本』8月号が届いていた:三中信宏「生物の樹・科学の樹[2]:宝ヵ池1980」(pp. 18-27).さて,連載3回目の原稿を書かないと……(まだ手ぇつけてへんのか).

◆本日の総歩数=5891歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.8kg/−0.1%.


18 juli 2007(水) ※ 梅雨寒が続く水曜は本郷通りに出没してみる

◆午前4時40分起床.曇り.北東風が吹き込み,涼しいというよりは肌寒い.

◆朝の進化学会関連こまごま —— 今日は東京出張なので,早朝に農環研に潜入する必要はない.しかし,進化学会関連の急ぎの事務メールはできるだけ乱射しておかないといけない.選考委員会の件はとくに即対処が必要だ.男女参画に関する投票集計を評議員会に報告する.

◆新刊着便 —— Barry K. Hall『Phylogenetic Trees Made Easy: A How-To Manual, Third Edition』(2007年6月刊行, Sinauer Associates, ISBN:978-0-87893-310-5 [pbk] → 版元ページコンパニオン・サイト).MEGA / PHYML / MrBayes の教科書として.最尤法とベイズ法はまあいいとしても,最節約法を MEGA ですませるというのはどう考えてもありえないな(それも PAUP* をひっこめてまで).本書は数年おきに改訂されているが,旧版もお蔵入りさせずに,ちゃんと手元においておく方がきっといいだろう.

◆空模様の基調は曇り.ときどき明るくなったりするものの,雲が切れることはない.オホーツク高気圧がよほど強いのだろう.

◆午前11:11発の TX 快速に乗り,東京へ.正午過ぎに根津に降り立つ.やや蒸し暑いかな.弥生キャンパスの隠れ部屋にて,またまたヒミツのメールを出したり受けたり./ 『本』連載原稿を書き始める.向こう三ヶ月分のプロットづくりもあわせて.書くことはたくさんあるのだが,筋書きをきちんと立てられるかどうかが難しい.毎回の“小まとめ”だけではなく,連載全体を通しての“大まとめ”も忘れてはいけない.

◆午後1時から4時までは,専攻教員会議.いろいろいろいろと議事が盛りだくさん.ほとんどは伝達事項で,審議事項はほんの少しだけ.来月はないので,次は9月だ.だいぶ疲れた.

◆再び隠れ部屋にて,メールを出したり受けたり.進化学会の学会賞選考委員会の日程は7月31日(火),17:00〜19:00に確定した.関係者に連絡をする./ 男女共同参画学協会連絡会から日本進化学会の正会員として加入を受け付ける旨の返事が届いた.正式には次回の委員会で議決される予定だそうだ.大学院入試とか進振りとか,この季節ならではの話題も多い.※学部生のみなさん,駒場でちゃんと広く深く勉強してから本郷に来るように.センセーはとても困っています.

◆午後4時過ぎ,メール疲れを引きずったまま千駄木に降りる.往来堂書店にて —— 『谷中・根津・千駄木(第87号)』(2007年6月20日発行, 谷根千工房 → 谷根千ネット).終刊まで「あと7号」だそうだ.今回は100ページ近くもある厚い号で,三つも特集が組まれている.『谷根千』の初期の号はもう品切れになっているのだが,谷根千ネットで創刊号から順次ウェブ公開されつつあるというのは朗報だ.

—— 谷中銀座の〈マミーズ〉でアップルパイをホール買いする.千駄木駅から乗ってつくばにたどり着いたのは午後6時過ぎのこと.

◆夜になって,また北寄りの風が吹き,気温が下がってきた.

◆本日の車中読書 —— Thomas J. M. Schopf (ed.)『Models in Paleobiology』(1972年刊行, Freeman, Cooper & Company, ISBN なし).修士に入って最初に読んだのがこの本だったというのは,今にして思えば意味深長だったのかもしれない.もちろん,ターゲットは Niles Eldredge & Stephen Jay Gould の断続平衡論の初出論文「Punctuated Equilibria : An Alternative to Phyletic Gradualism」(pp. 82-115)のひとつだけだった.今回,『本』の原稿書き用に久しぶりに開いてみたら,断続平衡論のこの章だけが地が黒く汚れていてびっしり書き込みがあるのに,他のページはみごとに真っ白だった.

前々から気になっていたのは,この論文集のタイトルにある「models」とは何を指しているのかという点で,この機会にそこのところを確認した.編者による序章(pp. 8-25)にはこう書かれている:

Generally, the term “model” is used to indicate a concept of lesser scope than a paradigm.

—— このひと言でもう十分だ.

◆本日の総歩数=7743歩[うち「しっかり歩数」=2741歩/25分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/−0.2%.


17 juli 2007(火) ※ 友部の隠れ家にて百年の孤独に浸る雨の夜

◆午前4時半起床.曇り空.北風が冷たいほど.気温19.2度.7月に入ってからというもの,「熱帯夜」がほとんどない.例年だと,もっと寝苦しい夜が多かった気がする.空梅雨&猛暑という長期予報はいまのところ外れ続けている.今日も日中は梅雨寒が続き,夏日にすら達しないとの予報だ.

◆午前のこまごま —— ニューオーリンズの復命書と立替請求を出し,あわせて明日の東京出張の伺いも提出する./ 一大ツアー「隅田川花火と〈トゥーランドット〉の夕べ in 京島」の企画が関係者に内密に公開された.すばらしい!/ 今月末からの農大・昆研のサバイバル夏合宿はやめとこうかな.

◆書評完成 —— ちょい時間がかかってしまったが,ショーン・B・キャロル(渡辺政隆・経塚淳子訳)『シマウマの縞 蝶の模様:エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源』(2007年4月30日刊行, 光文社, ISBN:9784334961978 → 目次版元ページ著者サイト)の書評を完成した.ロング・バージョンはメーリングリストにまず流す(leeswijzer にも掲載完了).短縮版の方は,『蛋白質核酸酵素』誌へは,今日の午前中にメールで送ることにしよう.すっかり遅れてしまった

—— ついうっかり,まちがった書名『シマウマの縞 チョウの模様』で書き続けていたが,昨日になってやっと,正しくは『シマウマの縞 の模様』であることに気づいた(フェイントちゃいます?これって).

◆曇り空で湿った空気に時おり霧雨が混じる.午前11時の気温,たった「20.0度」とは!(とても「夏」とはいえない) 

◆進化学会関連のこまごま —— 学会賞選考委員会の日程調整.きわめて多忙なる選考委員の面々がパーフェクトに顔を揃えられる可能性はかぎりなくゼロに近い.したがって「調整」もヘチマもない.出席または欠席の二値スコアの合計を最大化するという単純な話だ.しかし,委嘱した委員の日程の都合を集計してみると,意外にもダントツの最適解が1日だけ存在することがわかった.この線で進めよう./ 学会賞応募者の関連書類を選考委員に郵送するように事務局に手配する./ 公開講演会の演題と要旨が集まり始めた.ぜんぶそろってから,大会サイトに掲示する予定./ 会計監査の日程調整をしないといけない.例年は8月上旬にやっているので,今年もそうしよう./ 男女共同参画学協会連絡会への加入に関する投票締切は本日の夕方.大勢はほぼ決まったようなものだ.

◆隣りの国の温泉本たち —— 桂博史『中国温泉探訪記』(2007年6月15日刊行, 岩波書店, ISBN:978-4-00-023840-3)./ 鈴木浩大『湯けむり台湾紀行』(2007年5月24日刊行, まどか出版, ISBN:978-4-944235-35-3).

◆午後1時半から1時間ほど,1ヶ月ぶりの〈形態測定学講義〉の輪読36回目.第13章「The relationship between ontogeny and phylogeny」の続き(pp. 330-333).アロメトリー式における,傾き「k」と切片「b」の解釈について.傾き「k」は,ある変量(通常はサイズ変数)と特定の標的距離との相対的な成長の比率を表すという単純な解釈が可能である.k=1 ならば isometry と呼ばれ,k>1 または k<1 ならばそれぞれ正または負の allometry を示すと呼ばれる.問題は,切片「b」をどのように生物学的に解釈するかである.無次元量である k とは異なり,b は次元をもつ.ひとつの解釈は,k を一定値に固定したとき,b は成長系列における「差異」とみなすというやり方である.個体発生の過程での k と b の解釈はもう少し込みいっているが,いくつかのモデルが提唱されている.

◆霧雨の中,午後4時過ぎに撤収.午後5時半,しだいに強まる雨の夕暮れ,すっと横付けされた送迎車に乗り込み,常磐道を一路北へ向かう.岩間インターでおり,右折して友部町(笠間市)へ.とある細い農道の奥まったところにその“隠れ家”はあった.雨がしとしと降り続く.もとは割烹料亭だったというこの店はいまも主人が包丁をふるう.一般客を受け入れる営業はしていないので,ごくプライベートな客だけが来るのだろう.カウンター越しに厨房が見える座敷に陣取り,次々と出てくる新鮮なお造りに煮魚に巨大な鯛の塩竈焼き(木槌で叩き割った).最後は鯛ひらめ茶漬.大麦焼酎〈百年の孤独〉がごく当たり前のように出されたのには驚いた.ストレートでいただく.焼酎というよりはむしろウィスキーだ.

—— 今日ここに来た用件は別にあったのだが,その件については後日あらためて.

◆午後9時過ぎ,なお降り続く雨の中を帰路.送迎車がつくばに帰り着いたのは午後11時前のことだった.

◆本日の総歩数=7898歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+1.0kg/−0.2%.


16 juli 2007(月) ※ 台風一過の「海の日」は地震にゆらゆらする

◆午前4時半起床.台風一過の青空が雲間から見える.梅雨空とは無縁.北の風が涼しい.

◆きのうは終日“自主的軟禁”下にあったので,天気が回復した早朝に筑波大まで歩く.ショーン・B・キャロル(渡辺政隆・経塚淳子訳)『シマウマの縞 チョウの模様:エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源』(2007年4月30日刊行, 光文社, ISBN:978-4-334-96197-8 → 目次版元ページ著者サイト)の最後の2章を読了.第10章「ビューティフル・マインド:ホモ・サピエンスのつくり方」と第11章「すばらしい生物種は際限がなく」.第10章では,顎筋と発話に関わる遺伝子の研究を通じて,類人猿クレードの中でヒトの進化に与る遺伝子スイッチが何であったかを論じる.最後の第11章は,本書全体を総括し,エボデボがもたらした進化学の新たな知見を再確認した上で,それが「第三の革命」といえる理由をあらためて述べる.

遠縁な複数の生物群には(これまでの予想を越えて)古い遺伝子セット(ツールキット)が共有されてきたこと.それらのツールキットの発現を統御する“スイッチ”の多様化の結果として形態のめくるめく多様性が生み出されること.そして,生物の体制と形態の多様化を生み出した大進化は遺伝子レベルの変異すなわち小進化の外挿として説明できること —— エボデボが進化学全体にもたらしたこれらの知見がどのようにして見いだされ,さまざまな方面に波及していったのかを本書は生き生きと描いている.断続平衡説や種淘汰論をめぐる「大進化論争」が注目を集めたのは1980年代はじめのことだった.そのわずか四半世紀後にエボデボが“最終兵器”としてこの論争に決着をつけたことになるのだろうか.

1940年代の現代的総合から疎外された発生学が新たな「総合」に加わろうとするいま,発生学がたどってきた(進化学よりも長い)歴史を思い浮かべないわけにはいかない.本書では論じられていない発生学史とそれが現在の進化発生学の潮流とどのように関わってくるのかについては,少し前のステゥーヴン・ジェイ・グールド(仁木帝都・渡辺政隆訳)『個体発生と系統発生:進化の観念史と発生学の最前線』(1987年12月10日刊行, 工作舎, ISBN:4-87502-140-2)の第1部,最近であれば,ブライアン・K・ホール(倉谷滋訳)『進化発生学:ボディプランと動物の起源』(2001年5月20日刊行, 工作舎, ISBN:4-87502-351-0 → 目次・書評)や倉谷滋『動物進化形態学』(2004年1月8日刊行, 東京大学出版会, ISBN:4-13-060183-0 → 書評・目次)などが参考になるだろう.いずれも,圧倒されるほど厚い本だが,発生学の太い系譜をたどっていけばこれくらいの分量になるには当然のことかもしれない.

◆日射しが強く,久しぶりに暑くなってきた.午前10時14分,マンションがゆらりゆらりと大きく揺れる.強い地震が遠くで発生したのだろう.ニュース速報を見ると,新潟県で「震度6強」という大きな地震があったとのこと.雲がかかり,ミンミンゼミが鳴き出す.昼は,テクノパーク桜の〈アンマー・カリヤ〉でスリランカカレーをば.

◆雲が多い午後3時38分,再び横揺れがあった.新潟で余震(震度6弱)があった時刻と一致する.夕方になって,北の風が強くなり,体感温度がどんどん下がる.

◆昼下がりの読了本 —— 小池和夫『異体字の世界:旧字・俗字・略字の漢字百科』(2007年7月20日刊行, 河出書房新社[河出文庫こ-10-1], ISBN:978-4-309-40857-6 → 目次).漢字ファンにはこたえられないだろう.漢字をめぐる政策と規格の変遷について,具体的な事例を積み上げつつ,あるフォームをもった「漢字」がどのような位置付けを与えられてきたかを振り返る.体系的に述べられているわけではないが,原則なきリストアップや朝令暮改的な漢字政策の移り変わりが印象に残る.「文字地獄」と著者が呼ぶ現状は,歪んだ一意性をたっとぶ人名・地名漢字を制約しないかぎり改善は望むべくもないと結ぶ.“ロングテール”にこだわってはいけない.

◆夕方のこまごま —— 隅田川花火大会に合わせて京島の隠れ家にて,ヒミツの宴席と極秘の〈トゥーランドット〉上映会が催されるとの通知がヒソカにまわされてきた./ PNE書評を今晩中に書かないといけないぞ.

◆台風で始まり地震で終わった連休だったが,明日からはまた日常に復帰する.喫緊の要件がいくつもあるので,連日「フラッグ」が振られるようなものだ.

◆本日の総歩数=12590歩[うち「しっかり歩数」=11038歩/94分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.9kg/−1.3%.


15 juli 2007(日) ※ 台風4号が最接近,吹き降りで引き蘢る一日

◆午前5時半起床.予報通りの強い雨.しかし,ときどき小止みになる.生暖かい風が強く吹いている.ベランダが湿気と雨滴でべたべたする.

◆社会保険庁社会保険業務センターから,先月申請していた国民年金に関わる ID とパスワードがやっと郵送されてきた.年金個人情報提供サービスを利用するため.オンライン申請してから発行されるまで3週間くらいかかったようだ.今の職場に就職するまでの数年間におよぶ“流浪期間”の年金加入記録を確認する.さっそくインターネットで調べたが,とくに欠落はないようだ.※それにしても何十ヶ月もの間,律儀に払い続けたんだなあ…….

◆正午前後までは風雨が強かったが,午後になって空は明るくなり,雨足も弱まってきた.その代わりに,南から蒸し暑い空気が流れ込み,不快指数は急上昇.台風が通過して南からの湿った風が入ってきたのだろう.

◆毎月積み上がる「赤表紙本」 —— 中央公論新社の創業120周年記念出版のシリーズ〈哲学の歴史〉が,今年4月以降,毎月10日に刊行されている.今月刊行の新巻は,第4回配本:加藤尚武(責任編集)『哲学の歴史・第7巻:理性の劇場 カントとドイツ観念論【18〜19世紀】』(2007年7月10日刊行, 中央公論新社, ISBN:978-4-12-403524-7 → 版元ページ).これまでの巻と同じく新書とほぼ同じサイズだが,700ページ超というボリュームだ.「イメージの回廊」をざっとみて,ドイツ自然哲学の章に進む.Michael T. Ghiselin が Lorenz Oken の記事を書いているとは知らなかった.

哲学の全歴史を一望しようというこのシリーズは,各巻ごとの構成がうまく体系化されている.だから,分担執筆ではあるのだが,全体としてのまとまりが読者にわかりやすいようにつくられている.シリーズの各巻は時代ごとに切り分けられているが,それぞれの時代背景を図像でわからせる「イメージの回廊」をはじめ,年表やチャート,そしてコラムなどを随所に配することで,読者のための便宜を図っているのは,そういう編集方針の現われだろう.

これまでの配本をおさらいしておくと,第1回配本:飯田隆(責任編集)『哲学の歴史・第11巻:論理・数学・言語 科学の世紀と哲学【20世紀II】』(2007年4月10日刊行, 中央公論新社, ISBN:978-4-12-403528-5 → 版元ページ);第2回配本:伊藤博明(責任編集)『哲学の歴史・第4巻:ルネサンス 世界と人間の再発見【15〜16世紀】』(2007年5月10日刊行, 中央公論新社, ISBN:978-4-12-403521-6 → 版元ページ);第3回配本:松永澄夫(責任編集)『哲学の歴史・第6巻:知識・経験・啓蒙 人間の科学に向かって【18世紀】』(2007年6月10日刊行, 中央公論新社, ISBN:978-4-12-403523-0 → 版元ページ).そして,来月8月10日刊行の第5回配本は,須藤調任(責任編集)『哲学の歴史・第9巻:反哲学と世紀末 マルクス・ニーチェ・フロイト【19〜20世紀】』と予告されている.

—— ついでながら,このシリーズのポータル・サイトはたいへんよくできていて,各巻の内容紹介(目次・執筆者など)だけでなく,そこで取り上げられている人名・事項索引まで置かれている.オンラインでこのサイトを読むだけでも十分勉強になってしまう.シリーズ企画全体の趣旨はもちろんのこと,各巻のコスト・パフォーマンスのよさといい,版元サイトの充実したサービスぶりといい,一出版社による文化事業としての社会貢献度はとても高いと思う.

◆午後4時を過ぎて,台風の吹き返しの風が急に強まり,また雨がざーっと降る.湿度きわめて高し.

◆「女男娚嫐嬲娚嬲嫐娚姦嬲嫐男女嬲娚嫐嬲姦嬲嫐嬲女男娚嫐嬲姦嬲嫐嬲娚嫐嬲嫐男女」 —— 小池和夫『異体字の世界:旧字・俗字・略字の漢字百科』(2007年7月20日刊行, 河出書房新社[河出文庫こ-10-1], ISBN:978-4-309-40857-6 → 目次)を読む夕刻.表意文字の底知れぬ威力を実感したひととき.

◆書評本の続き:ショーン・B・キャロル(渡辺政隆・経塚淳子訳)『シマウマの縞 チョウの模様:エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源』(2007年4月30日刊行, 光文社, ISBN:978-4-334-96197-8 → 目次版元ページ著者サイト).第8章「蝶の目玉模様」と第9章「黒く塗れ」を読了.チョウの斑紋形成に関与する遺伝子がどのように特定されたかを,自らの研究をも踏まえて振り返った第8章がとてもワンダフルだった.いくつかの生物における発生過程でのメラニン形成のしくみを論じた第9章もまた引き込まれる.シマウマの縞が「黒地に白」なのか,それとも「白地に黒」なのかという論争は,現在の知識をもってしても実は決着が着いていないそうだ(p. 289).

もう20年近く前のことだが,スティーヴン・ジェイ・グールド(渡辺政隆・三中信宏訳)『ニワトリの歯:進化論の新地平(上・下)』(1988年10月31日刊行, 早川書房, ISBN:4-15-203372-X [上] / ISBN:4-15-203373-8 [下])の翻訳を手がけたとき,下巻第7部「シマウマ三部作」を担当したのはぼくだった.第29章「シマウマの縞はどうやってできるのか」を訳していて,末尾の「早い話,シマウマとは黒地に白縞の動物なのである」(p. 267)というオチに深く納得した覚えがある.しかし,キャロルの見解によればこの結論は早計であることになる.またまたよりどころのなく漂うことになるのだろうか.

—— 本書のタイトルにもなっているこのふたつの章の内容は,これまで未解決だった(しかもだれもが関心をもつ)生物学的問題に対して,エボデボがどのような解答を提示できたのかをアピールしている.

◆午後7時にも過ぎた頃,やっと台風の気配が遠のいた.明日は台風一過の青空となるだろうか.

◆本日の総歩数=0歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.4kg/+1.6%.※実にパーフェクトな無歩行日だった.


14 juli 2007(土) ※ 風雨が強まらないうちに,買い物をあれこれ

◆午前4時50分起床.曇りのち雨が降り出す.北寄りの強い風が吹き抜ける.九州の南海上を北上している台風4号はどうやら本土縦断コースを進んでいるらしい.関東に影響が出てくるのは,明日から明後日にかけてだそうだ.

◆連休初日のこまごま —— 明日締切の湯川シンポジウムの英文要旨を前日になってあたふたと書いている.今回は系統推定におけるアブダクションに関するテーマをめぐって講演する予定だ.講演の内容はほぼ決まっているので,あとは文章だけなのだが.今日中には書きあげてオンラインで登録しよう.台風が来る前に.※ここ数日はいろんな学会大会の「要旨書き」ばかりしている気がする(いったいいくつ噺をすれば気がすむのか).

◆秋のエジンバラ系統情報学ワークショップ(〈iPhylo〉より) —— 今年10月22日〜24日にエジンバラの「e-Science Institute」において,〈Phyloinformatics Workshop in Edinburgh〉というワークショップが開催されるという.Isaac Newton Institute for Mathematical Sciences の「Phylogenetics」プログラム(3 September - 21 December 2007)との共催で開かれるのだそうだ.ワークショップの趣意書と講演予定者のリストを見るとたいへん魅力的だ.これからの phyloinformatics の課題として,1) modelling reticulate evolution; 2) constructing large trees; 3) probabilistic models of evolution; 4) phylogenetic combinatorics の四つが挙げられている.確かに,いずれもチャレンジングでおもしろいテーマだと思う.

◆進化学会関連のこまごま —— 学会賞の応募が昨日締め切られたので,次は選考委員会がらみの事務を進めないといけない.とりあえずは選考日を確定した上で,各委員に応募書類を郵送するという作業が連休明けにある.お,そういえば,委員の委嘱願の返事がまだだったか.白羽の矢が立ったみなさん,よろしく.まりまりにも連絡しないと.※この学会は,会長と副会長が飛び抜けて忙しいので,日程調整がそれはもうたいへんなのだ./ 来週になると,公開講演会のコンテンツもそろうだろう./ こうして大会までは更新の日々が続く./ 男女参画の投票用紙が集まりつつある.この分だと締切り日までに決着がつくだろうな.

◆雨がしとしと降る昼前に外出,〈竹園珈琲〉にて連休中のコーヒー豆を買い込み(ルイス・グラシア[ケニア]とラグリマ・アンティグア[グアテマラ]),いくつか用事をすませて早々に帰宅する.風雨が強まってから外出するのは乗り気ではない.台風4号は午後にも九州に上陸するという.関東に来るのは明日後半から明後日にかけて.

—— 水出しコーヒーをいただきつつ,小池和夫『異体字の世界:旧字・俗字・略字の漢字百科』(2007年7月20日刊行, 河出書房新社[河出文庫こ-10-1], ISBN:978-4-309-40857-6 → 目次)を少し読み進んでみたが,体系的というよりは,むしろ断片的おもしろ知識の集積だ.何千字もの漢字の来歴をたどってみれば,いろいろなエピソードが隠れているのもむべなるかな.

◆雨足の強まってきた午後は,じっと引き蘢って要旨書きを続ける.途中,用事があってレンタル・ビデオ店に行ったところが店中ごった返していたので退散した.台風接近でしかも連休初日というのは,ビデオ店にとっては格好のかきいれ時なのだろう.雨中散歩して帰宅.午後4時過ぎにアブストラクトを完成する.230 words:

[Name] Nobuhiro Minaka (NIAES / Univ. Tokyo)
[Title] Historical reasoning and abductive inference in phylogenetic reconstruction
[Abstract] Phylogenetic reconstruction in general aims at estimating the most plausible tree (or network) based on character data. In evolutionary biology, comparative philology, and historical linguistics researchers have repetitively invented a set of rules for building phylogenetic trees from data on organisms, manuscripts, or languages. All these sciences have in common the basic features of historical sciences ("palaetiology" sensu William Whewell). Estimating evolutionary history searches for the best solution among possible alternative hypotheses. However, the best solution isn't necessarily historically true because we can't observe directly or experimentally the past evolutionary process and its products. All we can do is to find the best tree by comparing the universal set of possible trees on the basis of a given optimality criterion such as parsimony or likelihood. Thus historical reasoning is comparable in nature; it has been called "abductive" reasoning. Abduction is a form of non-deductive inference to the best hypothesis for a given data. Abductive inference in phylogenetic reconstruction poses several mathematical problems which includes 1) how large-scale phylogenetic trees can be calculated in a reasonable computational time (an NP-complete problem); 2) what properties ancestral character states reconstructed on a given tree have (a lattice-theoretical problem); and 3) what relationships there are between phylogenetic trees and networks (a combinatorial problem).

さっそくオンラインで京大・基物研のサーバーに要旨登録を完了した.この件はこれにておしまい.

◆夕方になり,雨足はさらに強くなってきた.予報では,南九州を横切った台風4号は,四国沖を北東方向に進み,紀伊半島をかすめた後,関東の南海上に達するという.気圧は950ヘクトパスカル.この季節にしては未曾有の大型台風だそうだ.15日(日)に最接近するとのことだ.風雨はこれからさらに強まるだろう.

◆次にしとめるべき「とど」は書評と線虫かな.

◆本日の総歩数=8407歩[うち「しっかり歩数」=2629歩/25分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−1.1%.


13 juli 2007(金) ※ 13日の金曜日,大型台風4号が西から接近中

◆いつも通り午前4時半起床.気温21.7度.北の風.この季節には珍しく濃霧が立ちこめる.ここのところ,MAFFINのメールサーバーが夜中に逝っていることが多い(朝になると蘇生する).

◆進化学会京都大会の大会プログラムが昨日公開された.全体スケジュールとともに,まだコンテンツがそろっていないが,シンポジウムワークショップの企画のリストも出ている.Qshinka を通じて周知する.公開講演会や夏の学校も含めて,大会企画のコンテンツはこれから順次公開されることになるだろう.

ぼくが関係する二つのワークショップは,WS03〈哲学はなぜ進化学の問題になるのか(パート2):生物学の哲学のさらなる展開〉と WS05〈DNA塩基配列に基づく分類とその問題点〉だ.それにしても,これだけずらりと「演題未定」が並ぶのは壮観ですなあ(……).少なくとも生物学哲学WSは趣旨・演題・要旨がすでにすべて出そろっているので,さっそく大会委員会に連絡しないと.

「地雷」と「不発弾」 —— 演者がまだ確定していない,アヤシく正体不明な WS05 では,ぼくの演題「DNA barcoding で【種】は延命できる?」だけがページに載ってるんですけど(→要旨).のりピーも召還するという話もあるが(同時並行のシンポジウムにのりピーの名前が挙がっていたが,あれはクローンか?),これだとかつての〈伊達騒動〉の再現かとワクワクしてしまう人がきっといるかも(ほんまかいな).※〈伊達騒動〉の勃発が「1996年4月22日」だったとは月日が経つのは速いなあと今あらためて思う.11年も前のことだったとはね.

【種】の論議は「地雷」だとぼくはつねづね言っているが,オーガナイザーからは今回のワークショップでは「不発弾」が出るという表現も聞いている.うっかり踏めば即座にドカンといくか,いじっているうちにドカンとくるかのちがいだとすると,用心すればそういう「場」に踏み込むことを避けることが可能な「不発弾」という表現の方がふさわしいかもしれない.みだりに【種】をいじってはいけない.ましてや「信管」を抜こうなどと試みるのはイノチがけだ.しか〜し,何が「地雷」だったり「不発弾」だったりしても,WS05の会場に来るからにはそれなりの覚悟(諦観)をもった聴衆が集まるにちがいない.

◆午前10時,小雨が降り出す.気温23.5度.ここ数日は夏日にも達しない.7月にしては不快ではない毎日が続いている.

◆さらに進化学会関連 —— 新入会員を登録し,Qshinka に本日が早期参加登録の送金締切である旨のリマインダーを流す./ 提案のあった男女共同参画学協会連絡会に参加学会が加盟するかどうかの評議員投票を依頼する.締切は7月17日(火).この日までに参加意思を連絡会に通知できれば,国立女性教育会館主催の〈女子高校生・夏の学校〉の後援学会に名を連ねることができる./ 事務局に学会賞応募の状況を確認する.幸い,何件かの応募が集まっているようなので安心する.これで,選考委員会を開催する甲斐があるというものだ./ 大会日程が確定したので,京都の宿泊先を確保した.いつも通り,二条大橋のたもとにある〈ホテルフジタ京都〉に部屋を確保完了(8月30日〜9月3日).残暑厳しいこの季節に京都に泊まるとは物好きも極まれり.進化学会大会直後の3日は,同志社大学の京田辺キャンパスで開催される計量行動学会大会で,朝の10時から特別講演を依頼されている.時刻表を調べてみたら,烏丸御池から地下鉄→近鉄と乗り継げば,1時間弱で最寄りの新田辺駅に到着できることがわかった./ その他,こまごまとした案件いくつか.

◆進化学会に関連しないこまごま —— 東京農大・昆研から夏合宿(7月31日〜8月3日)に関する連絡あり.武尊山にある夏期休業中のスキー場の宿泊施設を借り切って,自炊しながら朝から晩まで「虫取り」に精を出すそうだ(ナイター付き).何という“天然”ストレートな蟲屋のための合宿か.進化学会の選考委員会開催候補日に30日だか31日が入っているので,それが決まらないことには「蟲合宿」に行けるかどうかの返事ができない./ ぼくの〈租界R〉ページの html を修正したファイルを関西から送っていただいた.まだ検討できていませんが,早い段階で差替えたいと思います.どうもありがとうございました.

◆午後4時半に帰宅.曇って北寄りの風が吹く.涼しいな.午後6時過ぎに向かいのノバホールに行く.〈悠コンサート IV 2007〉にて,ライトな曲たちをば.ピアノ連弾,三味線,弦楽五重奏,バンドネオンにサックス.午後9時過ぎまで.来年の〈Hennig XXVII〉の開催地はアルヘンティーナだから,もちろんピアソラだっ(安直か).

◆北の風に乗って雨滴が混じる.明日からは台風と梅雨前線の影響で風雨が次第に強まるそうだ.この週末には,湯川シンポジウムの講演要旨と,PNE誌の書評原稿,Olia さんのネマトーダ分子系統原稿など,原稿仕事ばかりたくさんある.どうせ台風で外出はできないわけだから,引き蘢りの連休にはちょうどいいのかもね.

◆本日の総歩数=6895歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=+0.2kg/+1.5%.


12 juli 2007(木) ※ 大小取り混ぜ「とど」撃つ日々の始まり

◆午前4時20分起床.雨上がりの曇り.北の風.気温21.5度.昨夜は寝苦しかったので,睡眠直前まで除湿した.その後,しだいに空が明るくなり,晴れ間から日の光が射す.

◆早朝の読了(寝読み) —— 内海慶一『ピクトさんの本』(2007年4月30日刊行, ビー・エヌ・エヌ新社, ISBN:978-4-86100-504-6 → 目次版元紹介ページ版元特設ページ).我が身を省みることなく,“バンザイ突撃”しながら,次々に苦難に飛び込んでいくピクトさんが哀感を誘う.海外のピクトさんも取材されているが,オアハカやモンテ・アルバンの「メヒコ」ピクトさんが日本よりも“足長”だとは気がつかなかった.他にも,道路に唾を吐き続ける北京の黒ピクトさんとか,散歩中の犬の shit ball を手づかみしそうなエスパニョール系ピクトさんとか.個人的には「感電系」のピクトさんがびりびりしびれるな.他にもいろいろなキャラがありそうだ.

トマソン,オジギビト,そしてピクトさん —— いずれをとっても「分類の愉しさ」への期待が読者にはあるのだろう.どのようにナイスな分類をしてくれるか,いかにハマる分類群を示してくれるか,それでも分類しきれないものをどうするか,世界各地からの情報が集まれば集まるほど,さらなるエンドレスな作業は続く.

◆午前中いっぱいは『科哲』ゲラ読みと修正に費やす.編集部からメールがあり,明日には印刷所に入稿したいのでよろしく,とのこと.もうあとがないやん.リキを入れて読むほどに,修正箇所が積み上がっていく.朱で染まる…….

◆次第に天気は下り坂に.蒸し暑いことには変わりがない.昼過ぎに雨が降り出す.

◆こまごまと —— 来春の生態学会福岡大会の日程は,3月14日(金)〜18日(火).箱崎ではなく,博多駅からの近くの福岡国際会議場が会場になるとのこと./ Olia さんからネマトーダ分子系統の論文原稿が届いた.系統解析のセクションを加筆する予定./ 7月17日(火)は午後5時過ぎに自宅にて拾ってもらうことになった.

◆〈トゥーランドット〉の昆虫バージョン —— 葉山に着任したばかりのセンセから情報をいただいた.昨年10月の Volks Oper Wien 〈トゥーランドット〉公演は,「蟲」キャラが舞台を飛び回ったらしい.Videobeispiele で公開されている動画を見ると,確かに主役以外の脇役は「蟲」そっくり.プーティンパオにいたっては「アトラスオオカブトムシ」そのものだ.実際の舞台では“クワガタ”のように「三本角」を動かしていたとか.実際にこの公演を見た別の人の感想(→〈ウィーンの達人〉)を読んでも,やはり「むしむしワールド」だったようだ.カラフがコガネムシみたいなのに絡めとられている.うーむ.

◆届いた本 —— Stephen G. Alter『Darwinism and the Linguistic Image : Language, Race, and Natural Theology in the Nineteenth Century』(1999年刊行, The Johns Hopkins University Press, ISBN:0-8018-5882-8 [hbk] → 目次).ダーウィンと同時代の歴史言語学と比較文献学における「系統学的」方法について論じた本.とくに,当時の文献学・言語学がダーウィンに与えた影響について考察している.新刊で出たときに買おうとしたのだが,とても高価だった記憶がある.今回は Alibris 経由で安く買えた.

◆しとしと雨降る午後はゲラ読みの続き.午後3時にやっと修正を完了し,編集部に注釈付きpdfで返送する.間髪入れず修正ゲラが届き,またまたチェック.マイナーな追加修正をした上で午後4時半に校了.よろしくお願いいたします:三中信宏 (2007).科学哲学は役に立ったか:現代生物体系学における科学と科学哲学の相利共生.『科学哲学』40(1): 43-54.

◆引き続いて,計量行動学会大会の特別講演の演題と要旨を書き上げ,京田辺の同志社大学に送る:

【演者】三中信宏
【演題】系統推定論と形質コード化問題:データから何を読み取るか
【要旨】生物の系統関係を推論する科学は,系統樹をターゲットとするいくつかの学問分野(生物進化学,歴史言語学,比較文献学)において,同時代的にしかも互いに独立に成立してきた.観察対象のもつさまざまな形質データをうまくコード化することにより,系統学的情報をすくいあげる試みが過去2世紀にわたって続けられてきた.DNAの塩基配列データだけが系統に関する情報をもっているわけではない.形態や発生そして行動の形質もまた系統学的情報を有しているだろう.本講演では,系統樹のサイエンスのもつ普遍的性格を鳥瞰するとともに,系統推定のための形質コード化が今なお抱える問題について論じる.

◆雨が上がった夕方のこまごま —— 『蛋白質核酸酵素』誌から書評の督促メールがきた.週末までには書き上げよう./ 進化学会まわりのことが今日はおろそかになってしまった.男女共同参画学協会連絡会への参加という案件.明日の学会賞応募締切後のこと.その他,京都大会に向けてのいくつかのことども.

◆夜,北の風が通り抜けて涼しい.北上する台風は日本に接近中らしいが,風雨が強まる気配はいまのところまったくない.

◆本日の総歩数=5727歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/−1.1%.


11 juli 2007(水) ※ やっと梅雨らしく蒸し暑くなってきた

◆午前4時半起床.小雨が降って蒸し暑い.気温23.3度.南風.

◆またも進化学会関連の午前のこまごま —— さらなる事務連絡メールを出し続ける.学会賞がらみの段取り,公開講演会に関する依頼状./ 京都大会の参加費と学会費の払い込みを完了.※まだの人は今週金曜(13日)が早期割引登録の期限です./ 進化学会新入会員の Qshinka 登録作業をさらに続ける.ふと思い立って,“Qshinka 死に体アドレス”の一掃処分を始めてしまって後悔した.あるわあるわ.主に,卒業あるいは進学してしまった学生の遺産と思しきメールアドレスが軒並み“死んで”いて,逐一拾い上げていたら実に「250件」にも達してしまった(故・石川統さんのアドレスも active として登録されたままだった).気がつけばもう昼休みじゃないか.時ならぬ大掃除になってしまった.

—— 外をみれば久しぶりに梅雨らしい雨が降り続いている.大型台風4号が南海上を北上しつつあるという.この週末は荒れ模様かも.

◆「Math」な本たち —— 結城浩『数学ガール』(2007年6月30日刊行, ソフトバンク・クリエイティヴ, ISBN:978-4-7973-4137-9 → 著者サイト).いま評判になっている本.カタラン数,なつかしい.Richard Stanley『Enumerative Combinatorics』の訳本(日本評論社刊)に言及していないのはなぜ?/ 室田一雄・土谷隆(編)|赤池弘次・甘利俊一・北川源四郎・樺島祥介・下平英寿著『赤池情報量規準AIC:モデリング・予測・知識発見』(2007年7月11日刊行, 共立出版, ISBN:978-4-320-12190-4 → 版元ページ).前半は「自伝」みたいな感じかな.半独立の後半の諸章も読んでみたいが.甘利センセが AIC と MDL との大岡裁きを見せてくれるか?/ ルディ・ラッカー著|金子務監訳|竹沢攻一訳『四次元の冒険:幾何学・宇宙・想像力』(2007年9月復刊予定, 工作舎, ISBN:4-87502-151-8 → 版元ページ).翻訳初版は1989年の刊行.「四次元の視覚化」という著者の意図に共感する.秋口の復刻版の登場を心待ちにしよう.

◆雨の午後のこまごま —— Hennig XXVI の後始末.復命書を書き,搭乗券の半券を提出し,大会参加費の請求をする./ 農環研のどこぞの部屋から“麻薬”が転がり出てしまったおかげで,全所一斉に家宅捜索,じゃなかった,部屋の隅々まで再点検して,“不審なもの”がないかどうかをチェックせよというお触れが出ていたことに今日になって気がついた.パートさんに頼んで,棚とか引き出しのチェックを御願いする.しかし,ぼくの部屋は,たとえ家捜しされても,水木しげるの原画集とか,ダーウィン全集とか,中世哲学原典集成くらいしか出てこないはず.確かに,そういうものどもはアヤシイかもしれないが,即座にお縄になるような“御禁制品”はないはず.※それらの「はず」を払拭せよというのが今回の一斉捜索の目的なのだが./「実空間」ではもはや逃げ切れず,ついに「複素空間」に逃避しつつある,箱崎の多忙な某氏から,生態学会のあるシンポジウムに誘引された.イエスと言ってしまったワタシがこわいんですけど…….福岡大会っていつだったっけ?(年度末ぎりぎりで旅費が残っているかなあ) 締切まで「マイナス10日」くらいでおたおたしていてはいけないらしい.「マイナス数ヶ月」とか「マイナス数年」になるまでじっくり熟成すべき?なのだとか(シングルモルトかいっ).※そら大物すぎまっせ…….

◆午後5時過ぎ,外に出たら,とても暖かい雨がぼたぼた降っていた.この蒸し暑さといい,梅雨らしいな.しばらくして雨は上がり,夕焼けが広がる.

◆「とど」の頭数を再確認したら,締切までに撃ち損なった「とど」がまだ4頭も元気にのたうっている.小物のワタシはそれだけでもうビビっているのですよ.とりあえずは,9月3日の計量行動学会大会(同志社大学,新田辺)での特別講演アブストラクトを用意しないとか.それから科哲ゲラ,それから湯川シンポ要旨,それから統計学会原稿,それから『本』連載原稿.いやぁ,予定を立てるだけなら楽しいなあ(汗).

◆What is “Fellow”? —— 学会の「フェロー称号」とはいかなるものかをこれまでぜんぜん知らなかった.昨年,電気情報通信学会のフェローを授与された合原一幸さんが言っていたように,「fellow」といえばふつうは「野郎」とか「ダチ」とかいう口語的な(しかもあまり上品とはいえない)意味が最初に連想される.ニューオーリンズで思いもかけず,その「野郎」を授与されたので,帰国後ちょっと調べてみると,その意味するところがだんだん明らかになってきた.日本の学会や大学・研究機関でも「フェロー」を授与しているところがだいぶ増えているようだ.隣りの農研機構にもそういう制度があるようだ.Hennig Society の場合は,「学会に誠心誠意尽くすこと」とか「年会には必ず出席すること」みたいな“フェローの血の掟”がいくつかあるが(コーザ・ノストラかい),要するに大会最終日の Fellow Meeting に出ることが duty のようだ(あと,メール会議での投票もあると Mark Siddall は言っていた).いずれにせよ,日本の場合,学会の「フェロー称号」というのは授与されたら職場に届け出ないといけない性質のものらしい.それはそれでめんどうかも(授与証書なんかありまへんで).

◆本日の総歩数=6415歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.5kg/+0.8%.


10 juli 2007(火) ※ 夏祭りと花火−お姉さん,こっち向いてぇ〜

◆午前4時半起床.曇り.気温20.4度.北の風.予報では今日は下り坂で,午後には雨が降り出すらしい.

◆もうすぐ夏祭り —— 毎年夏にある恒例の〈農環研・夏祭り〉.「農環研」と銘打ってはいますが,実際にはうちだけではなく農林団地内の他のいくつかの研究所からも出店がある.みなさん,お祭りが大好きなようで.1989年に農環研に就職して以来,あって当然と思って気にも留めなかったのだが,あるときつくばの他の研究機関の人に,「出店数30あまり,参加人数は数百名,櫓を立てて盆踊り,出し物多数の夏祭り」と言ったところ,「マジでそんな大きなお祭りを独法研究所がやるんですか?」と問い詰められました.そう言われて考えてみると,確かに,つくばの他の研究機関ではこんなお祭りはないようだ(以前はやっていた研究所もあるらしいが,世の中せちがらくなってそんなことをしていられなくなったのか).やっぱり,農水省系はとっても非常識なのかしら……(「ひたすらわが道を進む」あるいは「地球はワタシの周りを回っている」) .

—— いずれにせよ,近隣住民のみならず遠隔住民からもたいへん期待されているという〈農環研・夏祭り〉は,今年も7月26日(木)午後5時過ぎから農環研グラウンドで大々的に開催されます.お近くの方はどーぞ.そうそう,今年のポスターもなかなかイケてます.お姉さん,お姉さん,こっち向いてぇ〜.ひゅーひゅー.

◆もうすぐ花火大会 —— 今年も隅田川花火大会が7月28日(土)に開催される.またまたディープ京島にお籠りする日が近づいてきたようだ.実はまだ見ていない昨年9月の新宿区民オペラ〈トゥーランドット〉公演のDVDを鑑賞する宴席もきっと設けられるだろう(>とど君,よろしく).おお,プーティンパオがまた青龍刀を振り上げたぞ.姫さま,お慈悲を,お情けを.

◆朝のうちから早くも小雨がぱらついている.気温は低め.昨日は夏日にも達しなかったらしい.

◆午前のあたふた —— いきなりのダブル・ブッキング未遂:9月14日(金)に JICA 講義を予定したのが昨日.そして,今朝 Google Calendar を確認したところ,その14日は朝から夕方まで本郷で ES 講座の特論(集中)がしっかり入っているじゃん.はい,ダブル・ブッキングぅ.あわてて,高野台に電話をかけ,担当者に詫びて,前日の13日(木)に日程変更してもらった.昨日はいったいどの予定表を見ていたのだろう.オンラインでつながっているときは Google Calendar,オフラインのときは自分のサイト,さらに Filofax のイヤープランナーも併用している.きっとデータのシンクロができていなかったのだろう.

◆進化学会関連の津波 —— 公演申込締切間際になって怒濤のごとく入会希望者があり(それは学会にとってはハッピーなことだが),Qshinka の登録作業がたいへんだ.今日までですでに30名以上の新規加入者がある./ 公開講演会の演者にタイトルとアブストラクトを依頼する.よろしくよろしく.と思ったら,大阪からさっそく届けられた.早過ぎっ./ 自分のアブストラクトも書かないともう時間がない.午後もあっという間に過ぎてしまい,もう夕方だ.雨足がしだいに強まってきた.

◆帰宅後,夜の締切直前滑り込み勝負 —— 午後9時半,まずひとつ仕上がった.ワークショッブ WS03〈哲学はなぜ進化学の問題になるのか(パート2):生物学の哲学のさらなる展開〉での講演.今年は各演者の話題が,実に具合よく「自然淘汰と適応」という直球勝負なので,それを踏まえての趣旨説明になった.日時は:8月31日(金)9:30〜12:00,場所はE会場(201号室):

【演者】三中信宏
【演題】生物学哲学と進化生物学はともに変遷してきた:
        自然淘汰と適応をめぐる論争のルーツと系譜

【要旨】今回のワークショップでは,「自然淘汰と適応」という現代の進化学にとって最も中心的な位置を占めるプロセス理論をめぐる,進化生物学哲学から見たいくつかの論点を取り上げる.生物学哲学が学問としてのかたちをなすにいたったのはやっと1970年代に入ってからのことである.若い科学としての生物学哲学が進化生物学に関するどのような“データ”によって育てられてきたかを振り返ることは,現在の論議がたどってきた道のりを系譜的に考える上で必要だろう.1940年代の「現代的総合」を経験した進化生物学は,集団遺伝学的な進化イメージとナチュラリスト的な進化イメージとを均一化させることなく混在させてきた.たとえば,進化や淘汰の「単位(unit)」に関する論議は,生物学哲学がそれに注目する前の1960年代から,すでに進化生物学の世界で議論されてきた.生物学哲学はこれらの生物学の問題状況に対してどのような視点を持ち込んだのだろうか.本講演では,今回のワークショップ全体に関わる「自然淘汰と適応」というテーマをめぐる論争史を振り返ることにする.

午後10時半に,残る一つも完成:ワークショップ WS05〈DNA塩基配列に基づく分類とその問題点〉での講演.日時は:9月2日(日)9:00〜12:00,場所はC会場(204号室):

【演者】三中信宏
【演題】DNA barcoding で【種】は延命できる?
【要旨】「種(species)」はつねにわれわれの中にあり,「種問題(the species problem)」は片時も離れずわれわれとともにあり続ける.高次分類群の実在性が次々に放棄され,最後に残った分類学者の砦は「種」だけかもしれない.しかし,種タクソン実在論や種カテゴリー実在論など,種問題をめぐる論争は終わる兆しすら見えない.本講演では,「種」がもともと帯びている概念的な問題状況は生物学だけでは解決できないことを示し,生物をめぐる現象世界におけるヒトの離散的認知カテゴリー化の実用的手段のひとつとして「種」の実用性を論じる.認知分類では対象物のもつ外的(すなわち視覚的)形質をよりどころにしてカテゴリーがつくられてきた.一方,DNA barcode をはじめとする分子マーカーによる「種」の仕分けは,認知分類(それが自然分類への近道だと私は考えるが)のもっとも根本的な要件に抵触しているのかもしれない.とすると,DNA barcoding で切り分けられた「群」とはいったいどういうものなのか,という新たな問いかけをしなければならないだろう.

◆本日の総歩数=7430歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−1.5%.


9 juli 2007(月) ※ 「自己犠牲にもほどがある,あの可哀想な人」

◆午前4時半起床.曇りのち晴れ.北の風.気温19.6度.今日は湿度がやや高いかもしれない.

◆早朝のこまごま —— 東大の集中講義レポートは締め切った.ご苦労さまでした.忘れないうちに成績評価を./ 農環研の夏祭りポスター画像を入手し,mixi で宣伝工作に務める.

◆叩かれる,落ちる,はさまれる,ぶつかる,ころぶ,切断される,燃やされる —— 今まで本書の現物になかなか出会えなかったのだが,もうナミダなくしては1ページも読めません:内海慶一『ピクトさんの本』(2007年4月30日刊行[6刷:2007年6月30日刊行], ビー・エヌ・エヌ新社, ISBN:978-4-86100-504-6→版元紹介ページ版元特設ページ日本ピクトさん学会).オビいわく,「自己犠牲にもほどがある」.御意.あまりにつらい人生にグレてしまった“黒ピクトさん”に,つい同情してしまう.欲を言えば,ピクトさんの「分類」だけではなく,とり・みき『街角のオジギビト』(2007年1月25日刊行,筑摩書房,ISBN:978-4-480-81654-2 → 目次書評)みたいに,それらの「系統」にも目を向けてほしかったな.

◆統計しまくる秋の予定 —— 数カ所から同時に「統計高座」のプランが提示された:JICA国際センター・キューバ稲作コース統計学講義.期日は8月28日(火)と9月14日(金).いずれも9:30〜16:00./ 農研機構主催・数理統計研修.基礎篇(11月5日〜9日)と応用篇(11月12日〜16日)の全体プランを提示された.とくに問題ないと返信.期間は/ 大分県農林水産研究センター主催・数理統計基礎研修.日程は11月19日(月)〜21日(水).場所は大分県庁OAプラザ.依頼出張の独演会で,〈R〉を叩き込みます.※前後に移動日が必要かもしれないな./ 秋には,東大・理・人類学教室の生物統計学講義(駒場)も毎週木曜の第5限に入っている.

◆マイナス日数がかさみつつある原稿 —— 日本統計学会創立75周年記念出版物への「生物統計学(農業分野)」の執筆.締切までまだ“マイナス10日”もある(……).※こめんなさい.ごめんなさい.

◆〈R〉で多変量解析 —— 献本ありがとうございました:B. エヴェリット著(石田基広・石田和枝・掛井秀一訳)『RとS-PLUSによる多変量解析』(2007年6月28日刊行, シュプリンガー・ジャパン, ISBN:978-4-431-71312-8 → 版元ページ).シュプリンガーの「黄表紙本」がまた1冊増えた.エヴェリットといえば統計学の「大御所」のひとりだ.多変量解析といえば“八幡の不知薮”のごとき世界だが,統計研修の参考書として研修生のため“アリアドネの糸”代わりに利用させてもらうことにしよう.同じ訳者による〈R〉本には昨年出た:ウーヴェ・リゲス著(石田基広訳)『Rの基礎とプログラミング技法』(2006年10月22日刊行, シュプリンガー・ジャパン, ISBN:4-431-71218-6 → 目次)がある.

◆午後1時から1時間ほど,Oliaさんのネマトーダ分子系統の解析について質問を受ける.ペーパーをいま書いているとのことで,いくつかの節を加筆した上で共著で投稿することになった.

◆迫り来るアブストラクト締切の嵐 —— 進化学会京都大会のアブストラクトは明日10日(火)が締切だ.ふたつもある.たいへんだ,たいへんだ./ 進化学会大会の直後に京田辺の同志社大学で開催される行動計量学会大会の特別講演(9月3日)の演題とアブストラクトも「二三日中に」と言われている.どーしましょう./ 10月の〈湯川秀樹記念国際シンポジウム〉(京都)のアブストラクトは7月15日締切./ 同じ月の日本植物病理学会大会・細菌病談話会(エポカル)のアブストラクトは8月中旬締切だったかな.

◆進化学会関連の押し寄せる波 —— 公開講演会の演者に報告を送る段取りをする./ 選考委員候補者への委嘱願と選考委員会開催日の調整について連絡をとる./ 会費に関する会員からの質問への解答./ 会計監査日をそろそろ決めないといけない./ 選考委員に関しての評議員資格の問題が浮上してきたが,すぐに解決できた./ 国際生物オリンピックへの学会としての協力態勢.意見いろいろ.2009年につくばで開催されることはもう確定したことなので,あとは学会としてあるいは個人としてどの程度コミットできるかの問題になる.伝え聞くところでは,役職によっては作業量がたいへん多くなるとのことだ.

◆つくばムクドリ戦争の終盤戦 —— 夕暮れ時,しばらく聞かなかったムクドリ大群の集団さえずりが久しぶりに接近してきた.それを追って,地上では撃退スピーカーをもった市職員?が走り回っているらしい.ひょっとして,ぼくがニューオーリンズで羽を伸ばしていたしっかり仕事していたときにも,つくばでは「ヒト vs. ムクドリ」の大乱戦が日暮れのたびに闘わされていたのだろうか.

◆ムクドリよりも何よりも,いまはとにかく,アブストラクトを書かないといけない./音羽より連絡あり:『本』連載原稿の校正が完了したとのこと.しかし気を抜いてはいけない.また,20日の締切が遠くに聞こえる.※草津に幽閉するという話もあるが,そんな先のことはまだ考えないことにしたいな.

◆本日の総歩数=6749歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/+1.1%.


8 juli 2007(日) ※ 甘くてつらいプラリーンに耐えるしかないか

◆寝坊して午前6時前にのそっと起きる.曇り.北の風が涼しい.

◆久しぶりの朝歩きは筑波大方面へ —— 締切がちょい過ぎてしまった書評本:ショーン・B・キャロル(渡辺政隆・経塚淳子訳)『シマウマの縞 チョウの模様:エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源』(2007年4月30日刊行, 光文社, ISBN:978-4-334-96197-8 → 目次版元ページ著者サイト).第5〜7章を読了.100ページほど.すでに読んだ本書前半では,いまのエボデボすなわち進化発生生物学の基本的な考え方を概観するとともに,それが進化生物学の歴史の中でどのような意義をもつのかが論じられた.19世紀におけるダーウィン自身による進化理論の提唱を「第一の革命」,20世紀半ばの現代的総合を「第二の革命」と呼ぶとき,現代のエボデボが先行する二つの革命に並ぶ「第三の革命」と称するに値すると著者は強調する.

第1部「動物のつくる」の最後の章である第5章「ゲノムの暗黒物質:ツールキットの取扱い説明書」では,遺伝子のツールキットをいつどこでどのように発現させるかを決める“スイッチ”について論じる.この“スイッチ”が進化の過程で変化することにより,さまざまな生き物の“かたち”が生じることになる.本章での総論を個別の事例を通じてさらに述べているのが,第2部「化石と遺伝子と動物の多様性構築」である.

本書の大きな特徴は,エボデボの詳細にわたる論議を簡潔に体系化し,ミクロな遺伝子とマクロな“かたち”とのつながりを読者につねに意識させながら,エボデボのもたらした“革命”の内容を伝えている点にある.第1部が総論であるとすれば,続く第2部は各論であり,胚の地図・体制モジュール・遺伝子ツールキット・そのスイッチという「エボデボ四つの神器」を武器にして,過去から現在にいたる地球上の生物多様性に対してエボデボがどこまで深く切り込めるのかを見ることになる.

第6章「動物進化のビッグバン」では,カンブリア爆発に焦点を当て,さまざまなボディプランをもつ動物たちがどのようにして生じたのか,そのメカニズムをエボデボの観点から論じる.そのもっとも大きな成果は,奇妙な形態をもつ生物たちのからだをつくるのに必要な遺伝子のすべては,カンブリア爆発のはるか以前にすでに存在していたという点だ(p. 177).実際,著者たちの研究グループは,カンブリア爆発のときの主役だった節足動物とそれに近縁なカギムシ類(有爪動物)の体節を形成するホックス遺伝子を調べることにより,有爪動物と節足動物の共通祖先の段階ですでにすべてのホックス遺伝子が揃っていたことを示した(p. 193).ということは,同じ遺伝子構成をもつ多様な生物たちは,その発現を変更することにより“かたち”を変えたということになる.

続く第7章「小爆発:翼などの革命的発明」は,節足動物の附属肢と翅や脊椎動物の指と翼の進化などいくつかの進化的革新の発生遺伝的背景を論じる.進化の過程で新規なものが生まれる秘訣を著者は次の四点としてまとめている:1) 既存のものの使いまわし;2) 多機能化;3) 重複;4) モジュール性.以下の章ではこれらの論点についてさらに議論が展開される.

—— 天久保の〈Brotzeit〉にて Brötchen のサンドイッチをつくってもらって帰還する.

◆進化学会メールあれこれ —— 学会賞の応募締切が一週間後に迫ってきた.選考委員会の体制づくりのためいくつか連絡.委員候補者への委嘱の手はずと選考委員会の期日の絞り込み.すべては今月内におさめたい./ 京都大会のワークショップ(生物学哲学)とシンポジウム(DNA barcoding)でそれぞれ講演をする予定なので,アブストラクトを締切の10日(火)までにひねり出さないといけない.関係者との連絡あれこれ./ 国際生物学オリンピック日本委員会(JBO)への学会としての協力に関する提案を評議員会にする.企画立案と実動部隊とではずいぶんちがいがあるらしい./ 学会賞の応募状況を週明けに確認する必要があるな.

◆新刊・近刊情報あれこれ(まとめて) —— 小池和夫『異体字の世界:旧字・俗字・略字の漢字百科』(2007年7月20日刊行, 河出書房新社[河出文庫こ-10-1], ISBN:978-4-309-40857-6).まさにタイトル通りの本.“カンジ”の大好きな読者層ってきっと予想以上に厚いんだろうな.こんな漢字本を手にしてしまうと,ここ何ヶ月か放り出したままの大著:笹原宏之『国字の位相と展開』(2007年3月31日刊行, 三省堂, ISBN:978-4-385-36263-2 → 概略目次第1部詳細目次第2部詳細目次第3部詳細目次版元ページ)にまた現実逃避的食指が伸びるじゃないか.しかし,いまここで漢字の深みにハマっている余裕はない(はずだ).

◆午後は晴れ上がり,セミの鳴き声が聞こえる.今日は北からの風が通って体感的にはとても涼しく感じるが,季節は「夏」だ.関東の梅雨前線がこれからどうなるのかは知らんぞ.

◆岩波書店からの近刊情報 —— 岩波文庫編集部(編)『80年版 岩波文庫解説総目録 1927〜2006』(2007年7月27日刊行予定, 岩波書店, ISBN:978-4-00-024437-4).岩波文庫創刊80年記念出版.10年ぶりの改訂になる.総頁数は1,200ページ.1996年に出た前の版は「文庫版」だったが,今回のは「四六版」/ エドウィン・ミュア(橋本槇矩訳)『スコットランド紀行』(2007年7月18日刊行予定, 岩波書店[岩波文庫 赤296-1], ISBN:978-4-00-322961-3)./ プリーストリー(橋本槇矩訳)『イングランド紀行(上)』(2007年8月17日刊行予定, 岩波書店[岩波文庫], ISBN:不明)./ 鎌谷直之『遺伝統計学入門』(2007年8月29日刊行予定, 岩波書店, ISBN:不明).

◆夜は,進化学会大会のアブストラクト書き(各500字以内)に勤しむ.ワークショップは「生物学哲学」で,シンポジウムは【種】がテーマ(地雷じゃん).生物学哲学の方は趣旨説明代わりだ./ 『科学哲学』誌ゲラ読みと重なって,しだいに philosopher of biology と化していく.

◆本日の総歩数=8458歩[うち「しっかり歩数」=6967歩/59分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.3kg/−0.4%.


7 juli 2007(土) ※ 朝からラタトゥイユを仕込む,ぞろ目の七夕

◆午前4時半起床.曇り.北の風が涼しい.ここ数日は晴れ間のない日が続くそうだ.九州では豪雨による被害がさらに広がっていると聞く.

◆朝からラタトゥイユを大量に作り始める.毎年,ズッキーニやナスや完熟トマトそして色鮮やかなパプリカが安く出回るこの季節には,ラタトゥイユを頻繁につくる.カレー用の深鍋いっぱいに食材を層にして詰め込み,オリーブ油と塩コショウで調味するだけのシンプルかつ手のかからない料理だが,素材の味わいはちゃんと生きている.煮込みはじめは野菜が鍋からこぼれそうでも,徐々に水分が出てくるので,かさは減っていく.鍋に隙き間ができるたびに,追加の野菜を詰めて,つねに鍋いっぱいにしておく.数時間の煮込みで一応の完成だ.

最初はそのままスープとして食べるが(バゲットを浸すと美味い),だんだん煮込みが進むにつれて,次にはパスタに絡める段階,さらにオムライスに添える段階へと遷移し,最後にはガラムマサラで調味し直して夏野菜カレーという極相にまで到達する.これがいつもの全コースだ(途中で食べきってしまうことも多いが).まったくムダにならない経済的な料理なので今の時期にはとても重宝する一品だ.

◆日付がぞろ目(7-7-7)の七夕の午前中は,ラタトゥイユのお世話をしつつ,原稿ゲラを読み進む —— 『本』の連載原稿「宝ヵ池1980」は書いてからすでに2週間も経っているので,第三者的にチェックすることができる.けっこう朱が入ってしまったかも.あとでメールで音羽に修正箇所を連絡しないと.チェック完了.

◆晴れ間がときどきのぞく午後のこまごま —— 第23回つくば国際音楽祭のチケット入手:鈴木秀美チェロ・リサイタル〈バッハ無伴奏チェロ組曲(全曲)〉.11月1日(木),1/3/5番|12月7日(金),2/4/6番.19:00〜,ノバホール.つくばで聴く機会がもてたというのは幸いだ./ 7月13日(金)の夜は,ノバホールにて催しあり

◆進化学会関連の堆積仕事を夕方に一掃処分する —— 選考委員会の立ち上げに関するリマインダー./ 生科連の国際生物オリンピック日本委員会への協力体制についての評議員会への提案./ 生科連への遅ればせの返事メール./ 京都大会についても懸案事項(公開講演会の詰めとか)がいくつかあるが,その「とど撃ち」は後にしよう./ 7月10日(火)が事前登録の締切だが,要旨登録もあるので要注意.

◆〈ダーウィンの悪夢〉DVD —— DVDがもう売られていたとは知らなかった(日本語字幕):〈ダーウィンの悪夢(デラックス版)〉(2007年. ジェネオンエンターテインメント, GNBF-1174).ブックレット付き.このドキュメンタリー映画は,事前の試写会(→23 mei 2006日録)で見てしまったので,結局,劇場公開にも行かずじまいだった.しかし,念のため購入した.

◆夜のゲラ読み —— 『科学哲学』誌の原稿「科学哲学は役に立ったか:現代生物体系学における科学と科学哲学の相利共生」は,不徳の致すところ煽られてばたばたと書いてしまったこともあって,砂利のような“瑕疵”が目立つなあ…….引用文献がオチていたりとか.朱に染まらないかな.できるだけ改善して,月曜には返送しよう.

◆帰国してからというもの,夜11時にはもう睡魔が取り憑いている.time lag で jet lag がやってきたのではあるまいな.

◆本日の総歩数=603歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+1.2%.


6 juli 2007(金) ※ ブードゥーの呪い,社会復帰への道なお険し

◆午前4時半起床.晴れ.北の風が涼しい.気温19.6度.しだいに蒸し暑くなってきて,午前11時には26.7度に.西日本では梅雨前線が活発化して豪雨になっているらしいが,関東地方は梅雨の中休みだ.

◆午前のこまごま —— IOSEB の新しい委員長になった Dan Brooks からICSEB-VII の事務メールがカウンシルメンバーに届く.2009年,メキシコのベラスケス州ハラーパ(Xalapa)にて開催予定./ 分類学会連合の役員会日程調整への返事./ DGCbase から毎年の会計監査依頼あり.OKの返信をする./ 東京農大・昆研から夏のサバイバル合宿へのお誘いメールあり.今年は群馬県の武尊山に籠るのだそうだ(7月31日〜8月3日).さてどーしましょ?(pending)/ 7月26日(木)開催の「農環研夏祭り」のチケットを買う.ポスター画像をもらうことにしよう.※毎年,たいへんクオリティの高いポスターなので.

◆カトリーナちゃんの御乱行は度を過ぎて —— Douglas Brinkley『The Great Deluge : Hurricane Katrina, New Orleans, and the Mississippi Gulf Coast』(2006年刊行, William Morrow, ISBN:0-06-112423-0 [hbk]→目次部分書評).目次と部分書評を公開した.著者は,これほどまでに大被害をもたらしたハリケーンに「カトリーナ」などという愛らしい名前はふさわしくない;もし,この巨大ハリケーンに「チンギス・ハン」とか「フン王アッチラ」とか「カリギュラ」などという恐ろしげな名前がついていたとしたら,すべてを放り出してすぐに避難していたにちがいないと言っている.西洋人的なセンスだとこういうネーミングが潜在的恐怖心を煽るのだろう.

◆午後もこまごま —— 所内のハラスメント・アンケートの提出期限が今日なのだが,その用紙が行方不明だ…….困った./ 10月の京大・湯川研シンポジウムの要旨締切が7月15日まで延長された.よかったー.※と言っているうちに,また締切間際であわてるにちがいない./ ぼくの〈R〉サイトの印刷ができないとの連絡があった.しかし,確認してみたかぎりプリントアウトに問題はない.計算環境によって html が印刷できたりできなかったりするのだろうか.原因不明のため対策不能./ 分岐年代のベイズ推定に関する質問あり.Ziheng Yang の教科書『Computational Molecular Evolution』の「Chap. 7-4: Bayesian inference of divergence times」がきっと適当でしょう.

◆「R と Bioconductor」関連の新刊と近刊 —— 〈RjpWiki〉によると,シュプリンガー・ジャパンからこういう新刊が出たそうだ:R. ジェントルマン,V.J. カリー,W. フーバー,R.A. イリザリー,S. ドュドイト(編)[荒川和晴・粕川雄也・川路英哉・河野信・神田将和・鈴木治夫・田中伸也・中尾光輝・長嶋剛史・二階堂愛・宮本真理(訳)]『RとBioconductorを用いたバイオインフォマティクス』(2007年7月刊行, シュプリンガー・ジャパン, ISBN:978-4-431-73464-2→版元ページ).500ページもある大著.ところが,この訳本とは別に,「R と Bioconductor」関連の単著が9月頃に出版予定だというメールが届いていた.バイオインフォマティクスの教科書としてこの分野の新刊・近刊がこれからもいろいろ出るのだろうか.

◆襲いかかる「とど」たち —— 締切が過ぎていたり,督促されたりしている原稿がすでにいくつもあるのだが,困ったな〜./ 東京化学同人の『生物学大辞典』の項目執筆とか.※まだ返事してないし./ 岩波書店の『生命のかたちを測る:生物形態の数理と統計学』とか.岩波ビルからメールが来たので延髄反射で弾き返してしまった.ところが“敵”もさるもの,「事情はわかりましたが,そこのところをお頼みします」ときた.さすが,百戦錬磨の手練は攻め方が“山本勘助”並みだなあ.※感心していてどーする./ ほかにも,アレとか,ソレとか,コレとか.etc. ※「とど」はちょっと油断すると繁殖し成長する.

◆夕方のこまごま —— 隣りの動物衛生研究所から,系統学概論の講義をしてほしいとの依頼あり.90分.9月に動衛研で実施される集合研修の1コマとしてのお座敷.了解しました.こういうスポット講義ならばいつでも大丈夫./ そういえば,東大の〈保全生態学特論〉のレポート締切が明日だった.リマインダーを流して,と.受講生の2/3はすでにレポートを提出済みだ./ 進化学会のフォーマルな体外的業務が進んでいないぞ.選考委員会とか,大会までにちゃっちゃっとすませるべき事どもいくつか.

◆北寄りの風が通り抜ける夜は,ゲラ読みを続ける.『本』の連載原稿のゲラはほぼ読了.やっぱり書名タイトルに間違いがあった(うろ覚えで書いてはいけない).『科学哲学』の原稿ゲラはまだ途中.英語タイトルと所属を知らせないと.

◆本日の総歩数=5842歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−0.2%.


5 juli 2007(木) ※ クレオール惚けとケイジャン酔いが残響する

◆午前4時半,ゾンビのように起床する.時差ボケはもともと基本的にないので,単に“社会復帰”できていないだけだろう.外は雨上がりの曇り空.研究所の温度計は19.3度を指している.ニューオーリンズ基準でいえば「快適な朝」ということになる.その後,天候は回復し,昼前には晴天に.午前11時半の気温は27.3度.暑いと言えば暑いのだが,ニューオーリンズ基準でいえば「快適な昼」ということになる.

◆よろよろと午前のこまごま —— まずは大量のメールをざっと見て,放置していいものと悪いものとを分類する.1週間の国外逃亡の間にざっと 250通ほど informative なメールが届いていた.その大半はメーリングリストの配信だったり,ダイレクトメールだったりするので,そのままメールボックスに入れてしまえばいい.その結果,事務メール・督促メール・質問メールが受診箱に50通ほど残った.これは対応するしかない./ 大分県からの統計研修出講依頼が決まりそうだ.9月以降に二泊三日の予定で,大分市にて集中講義をする.パソコンが使えるというので〈R〉の演習もきっと可能だろう.大学での集中講義(15時間)でカバーできる範囲の内容にしよう./ メーリングリストの堆積メールをちくちくと処理し始めたら,あっという間に昼休みになってしまった.進化学会の入会依頼メールも20通ほど届いている.ちくちく進める.ちくちくする.

◆ふらふらと午後のこまごま —— Oliaさんの系統推定コンサルタントは7月9日(月)午後1時から./ 所内業績評価WGの久しぶりの会合は7月20日(金)午前10時〜12時.3階第一会議室にて./ 東大ES特論 IIは,9月14日(金)10:00〜12:10[7号館113号室]|13:00〜16:00[3号館217号室]に実施する.内容は生物統計学./ 生科連シンポジウムは10月18日(木)開催に日程変更.アンケートの提出をすっかり忘れていたので対応しないと./ 『科学哲学』誌のゲラが届いていた.要チェック.英文のコンテンツを書き忘れた.すみませんすみません./ お,講談社『本』の連載原稿もゲラをまだ返していない.ごめんなさいごめんなさい.

◆〈EVOLVE〉の累積会員数が2000名を突破した.開設14年目にして新たな大台へ.アドレスの追加や変更をすべてすませて,月例アナウンスを流したときにはもう午後6時を過ぎていた.

◆夕方の帰宅途中,農林団地の桜並木でニイニイゼミが鳴いているのに気づいた.まだ元気いっぱいとはいえない.そういえば,ニューオーリンズのジャクソン広場の大木でもセミらしき鳴き声がしていたが,もっと弱々しかった.

◆進化学会関連 —— いくつかしておかないといけない案件がある:夜,進化学会京都大会の生物学哲学ワークショップの申込が受理されたとのメールが届いた.関係者に連絡する.今月10日が講演要旨と参加申込(割引)の期限なので忘れないように.あわらて,そろそろ京都での宿泊先を確保しないとあきまへんな.残暑厳しき折にわざわざ京都に行かはるけったいな御仁はそうそういやはらへんやろけど,まあ念のため早い目に確保しよう.

◆書評書いてます —— 宮紀子『モンゴル帝国が生んだ世界図』(2007年6月20日刊行, 日本経済新聞出版社[〈地図は語る〉叢書], ISBN:978-4-532-16585-7→目次書評).昨日の帰国後,溜まっていた朝日新聞を読んでいたら,たまたま2007年7月2日付の朝刊に,「お宝発見:混一疆理歴代国都之図」というコラム記事があった.本書の主役である地図の紹介記事だ.写真を見るとあらためてこの地図の巨大さがわかる.龍谷大学所蔵の門外不出の「宝」だそうだ.

◆Hennig XXVI の後始末は明日まわし —— 復命書の提出,参加費払い戻し申請,航空券の半券提出,共同発表者への帰国報告.

◆しばらく留守にしていた間に,たくさんの「とど」が出現している.撃とうとしてもなかなか焦点が定まらないのは,ガンボの喰い過ぎかもしれない.それとも crayfish の祟りかも.あ,眠たくなってきたぞ.これはブードゥーの呪いだ.

◆本日の総歩数=5880歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−0.9%.


28 juni 2007(木)〜4 juli 2007(水)
 ※ 亜熱帯ニューオーリンズの街角にて(Hennig XXVI 参加記録)

 →〈Cahier du Vieux Carré

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[sinds 19 april 2007] 無料アクセスログホームページ 素材集