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oude dagboek

日録2006年9月


30 september 2006(土) ※ 首都大学東京へろへろ後半戦終了

◇午前5時起床.ぐずぐずと起きる.曇り空.

◇早朝のこまごま —— 今日は集中講義の最終日なので,エンディングまでの段取りをそれなりに考えておかないといけない.といっても,たいていの場合,適切な時間配分を事前に考えているわけではなく,適当に「コレとアレとソレ」という話すべき“お題”だけ予定しておいて,あとは高座の進み具合と客のウケを見ながら進めている.だから,きちんと台本を詰めているわけではない./ 日経サイエンス編集部に秋の書評特集で取り上げる本5冊を連絡する.結果的に,進化学関係で今年出版されたものがそろうことになった.書評締切は・・・げ,10月2日だったのね(汗).

◇午前9時半にホテルをチェックアウト.南大沢には早めに着いて,講義室に入る.昨日と同じく,午前10時半から講義を始める.まずは,昨日の延長線上にある「一般化線形モデル」についてざっと講義し,実際に〈R〉の「glm」を用いていくつか体験してもらう.同一のテストデータを用いて,「aov」→「lm」→「glm」という三つのプログラムを実際に使ってみて,線形モデルという枠組みの中で,データの“切り口”がどのようにちがっているのか,問題の定式化のスタイルにどのような差があるのかを説明する.

 一般化線形モデルの講義では,「モデル選択」という考え方に慣れておく必要がある.今回の集中講義でも,一般的な意味でのアブダクションの統計学バージョンがモデル選択であるという視点からの概論を話した.とくに,赤池情報量基準(AIC)による「期待尤度最大化」基準と通常の最尤法の「尤度最大化」基準とのちがいをこんなたとえで説明した:入学試験でのイッパツ勝負で最高点をとった受験生をそのまま合格させるのが最尤法であるのに対して,入試当日の点数だけではなく内申点(つまり他の試験での成績)を考慮してその受験生が取るであろう期待点数で判断するのが AIC だ,と.その後,〈R〉の「AIC」プログラムを用いて,線形モデルを「update」したときのAIC値の変化をトレースする実習が続く.

◇午後になって,晴れ間がのぞき,気温が高くなってきた.午後1時半から講義再開.計算統計学に進む.〈R〉の「sample」プログラムを使ってのブーツストラップ/ジャックナイフの実習.データを仮想母集団としてリサンプリングして得られた統計量の誤差と通常のパラメトリックな計算式によって得られた誤差とを比較することが目的だ.休憩後,多変量解析の概論と,Iris 花弁形態データを用いてのクラスター分析と主成分分析の実習.ここで,終了定刻の午後4時になった.

 集中講義のレポートは後日出します.>受講生諸氏,よろしく.

◇今回の集中講義はこれまでになく「Rと戯れる」時間が多かった.高座の時間が少ないのはちと物足りないのだが,受講生にとってはどうだったろうか.※あとでアンケートを見ればわかるだろう.

◇累積疲労がつらいなあ.帰路の読書 —— 朽木ゆり子『フェルメール全点踏破の旅』(2006年9月20日刊行,集英社[集英社新書ヴィジュアル版003V],ISBN:4-08-720358-1).読了.たった1枚の小さなフェルメール画を求めてヨーロッパからアメリカを渡り歩く旅の記録.「カラー新書」のスタイルが増えているように感じるが,きっと売れているのだろう.見映えがよく携帯性が高いので,車中読書向きだ.

◇つくばに帰り着いたのは午後7時過ぎのこと.あちこち飛び回っているうちに,9月がもう終わってしまうではないか.「積み残し仕事」が大量に残されている.

 ※「読書の秋」は逝きましたな…….

◇本日の総歩数=6308歩[うち「しっかり歩数」=2583歩/24分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


29 september 2006(金) ※ 首都大学東京へろへろ後半戦開始

◇午前5時半起床.曇り,北の風が強め.前夜の“午前様”が祟ったのか,立ち居振る舞いがのろのろしている.今日は首都大学東京での生物統計学集中講義の後半戦初日だ.

 午前7時56分の TX 快速で東京に出る.新宿で京王線乗り換えにもたもたしていたら,急行に逃げられてしまった.南大沢駅に降り立ったときには午前10時をまわっていた.遅過ぎっ.

◇国際交流会館の中講義室に入ったのは,講義開始時刻の直前だった.ばたばたとパソコンをつないだりする.そのうち受講生がほぼそろった.

 今年は,これまでの講義よりも「R実習」の時間を多くとって,できるだけ長い時間,自分でキーボードに触れてもらうように心がけた.だから,“高座”に振り向ける時間がそのあおりで少なくなった.今日は,前半戦の続きとして,実験計画と分散分析を例にとっての線形モデルの講義だ.複数の要因を含む実験計画とレイアウトを中心に午前中の時間を使う.

 午後は,古典的なパラメトリック線形統計学の仮定である,正規性と等分散性についての解説と R での検定について.その後,分散分析に続く多重比較のロジックと補正方法あれこれ(Bonferromi, Holm, etc.),さらに TukeyHSD によるステューデント化された信頼区間とその可視化.最後に,明日の講義につなげるための一般化線形モデルへの序論を少しばかり.

—— ここまでで終了定刻の午後4時になった.残りは明日の最終日に.

◇駅の啓文堂書店で入手した新刊の新書&ノベルズ —— 京極夏彦 『邪魅の雫』(2006年9月26日刊行,講談社[KODANSHA NOVELS キF-13],ISBN:4-06-182438-4).中国でうろうろしている隙に出ていた.822 pp.いつもの厚さ.レジで『講談社ノベルス・京極夏彦全作品解説書』(2006年9月発行,講談社,非売品)というパンフレットをもらった./ 朽木ゆり子『フェルメール全点踏破の旅』(2006年9月20日刊行,集英社[集英社新書ヴィジュアル版003V],ISBN:4-08-720358-1).何だか「百名山踏破の旅」みたいだけど,楽しめます./ 宮下誠『20世紀音楽:クラシックの運命』(2006年9月20日刊行,光文社[光文社新書272],ISBN:4-334-03372-5).スティーヴ・ライヒも,アルヴォ・ペルトも,オリヴィエ・メシアンも,カール・ニールセンも,ぜーんぶそろい踏みっ.

◇京王多摩センター駅に戻り,いつもの京王プラザホテル多摩にチェックイン.そして,多摩三越6Fの〈山志菜〉でヱビスビールと蕎麦の夕食.ふらふら徘徊するでもなく,ホテルに直帰する.だいぶお疲れのごようすですな.>ワタシ.

◇ううむ,そろそろ限界かも…….

◇本日の総歩数=9517歩[うち「しっかり歩数」=2671歩/25分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+1.7kg!/+0.7%.※とーぜんの報いですな…….


28 september 2006(木) ※ 良好的科学素養和規範的研究行為

◇午前3時半に起床.今日は早朝のチェックアウトなので,荷物をまとめないといけない.

 午前6時前に荷造りは完了したので,ホテルの周辺を徘徊する.中国の正しいみなさんは当然のことながら「早朝の太極拳タイム」を過ごしていて,ホテルの前の広場でもいくつかのグループが剣をゆっくりと振り回している.それにしても,こんな早朝から通りにもうあらゆる方角からの自転車軍団が激しく行き交っているとは驚きだ.

◇メモ1 —— 中国は喫煙率がとても高いようで,いたるところで煙草を勧められた(吸わないんですけど).一昔前の日本を思い出す.中国ではメジャーらしい銘柄〈中華〉は一種独特の癖のある匂いがする.

◇メモ2 —— 上海の古いマンションでは,洗濯物の物干竿が窓から外へ壁と直交方向に突き出ている.干し物や竿が下に落下したらえらいことになるだろうな.※九龍城みたいなものか.

◇メモ3 —— 現代中国トイレ事情.外国人旅行者が卒倒するのは中国の「トイレ文化」らしい.確かに,コンパートメントがしっかり区切られていない(場合によってはまったく仕切りがない)「大」は心理的抵抗が大きいな.

◇午前6時半にまたまた人民軍の自動車にピックアップしてもらって,一路,空港へ.国慶節が近いので,今日からは帰国する駐在員が空港に押し寄せるとのことだ.確かに,空港への高速道はもう混み始めている.約1時間で上海浦東国際空港にたどりついた.チェックインして,出国審査をすませる.花茶を買ったり.フライトは午前9時10分発の中国東方航空〈MU 523〉だ.ほぼ定刻の離陸.

—— 約2時間半で成田空港に着陸した.速い速い.上海とはぜんぜんちがう青い空と湿気の国に戻ってきた.気温26度.晴れて日射しが強い.

◇遅い昼飯代わりに柳橋の〈蕎舍〉で十割蕎麦を喰って帰宅したのは午後4時過ぎのこと.ふうっ.今年の海外旅行はこれでおしまいだろう(きっと).

◇午後9時過ぎに研究所へ出勤.明日から二日間は首都大学東京での生物統計学集中講義の後半戦がある.いろいろと講義準備をして,家に帰り着いたらもう午前零時を過ぎていた.

◇本日の総歩数=4757歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


27 september 2006(水) ※ 外灘でスッポンに喰いつかれる

◇午前4時半起床.上海に来てからはずっといい天気だが,日本は雨が降り続いているらしい.日録を書いたり,ごそごそしたり.ホテルの部屋からインターネットが使えて便利.

◇午前9時にホテルを出発し,車で北に向かう.約40分で復旦大学に到着した.上海だけでなく,中国全土でも屈指の大学だという.生物学科の金力(Li Jin)教授に会うのが今日の目的だ.根井正利さんの弟子にあたる研究者で,1990年代はじめに「Jin & Nei」の連名での論文がいくつもある.つい最近,上海に計算生物学中心(CAS-MPG Partner Institute for Computational Biology)を設立し,Andreas Dress 博士らこの分野の著名な研究者を集めつつある

 午前10時から2時間ほど話をさせてもらった.相手は Jin 教授および同じ学科の楊継(Ji Yang)さんのふたり.Yang さんはかの Ziheng Yang さんのもとで学んだそうだ.要するに,距離法なあるいは最尤法な方々に最節約なハナシをしに行ったという“なぐりこみ”な所業ではあるなあ.ありがとうございました.

◇プレゼンのあと,Jin 教授に連れられて,つい二ヶ月前にオープンしたばかりという,大学構内の新築「五つ星」ホテル〈Crowne Plaza Fudan Shanghai〉のレストランでランチ.このような豪勢なホテルを大学が所有するとは!(ひょえ〜) レストランもフランス人シェフが取り仕切っているようで,とても美味でした.

 Jin 教授の話をいろいろうかがう.日本人の共通の知り合いの名前が次々に出てくるのは,当然のことだろう.根井さんは計6人の中国人学生を指導したそうだ.できれば,これからコネクションを太くしていきたいと思う.

◇午後1時半に,新学期が始まったばかりで新入生らしき若人で混み合う復旦大学をあとにする.その後,上海総合産業交易所に寄ってミーティング.午後4時前にやっとすべての予定を消化し終えた.

◇さて,上海滞在三日目ともなると,しだいにやることがダイタンになり(ワルイ遊びはしてませんけど),夕方,上海最先端の外灘(ワイタン)地区をひとまわりしてきました.まずは,上海で最も高い88階建ての〈金茂大厦〉のてっぺんに超高速エレベータで上がり,最上階の展望フロアから下界を見下ろしてみる.それにしても,筍いや竹のごとくあちこちににょきにょき生えたこの高層ビル群はなんなんだ.ちょっと見ないと風景が変わっているとは同行者の弁だ. 金茂大厦のすぐ隣りで,さらに高い101階建ての超高層ビルが建設中だった.森ビルの所有になるという.エンドレスな競争だ.

 夜景の外灘を見下ろしつつ〈咸亨酒店〉にて最後の夜の懇親会.この店の本店は紹興市にあるらしい.はい,出ました出ました,家鴨の「血」の炒め物.「つい最近新宿で食べて感動した」と同席していた上海の人に言ったところ,「それは珍しい.日本人でアレを抵抗なく食べられる人はあまりいない」と大皿で,どんと「血」が出てきました.新宿の〈上海小吃〉で出されたものと“同種”だったことを保証しましょう.ただし,この日に食べたのは新宿よりももうちょっと辛味が強かった. 地元の方にもなじみのある料理らしく,あっという間に「血」はなくなっていました. つづいて何やら「肉」らしき煮物がやってきたので,おおこれはとまた箸を伸ばしたところ,スッポン様の「アタマ」とご対面.あらら,貴重なことに鼈がまるごと一匹さばかれてテーブルに運ばれてきたのだった.アタマはもとより,両足の爪とか,しっぽとか,ゼラチンたっぷりの一皿をいただいた夜でした.ちょっと変わった空豆と茹でた落花生とともに飲む紹興酒は魯迅風なのか.

◇健康的なことに,午後10時半にはホテルに帰り着いていた.帰国のフライトが早いので,明日は早朝にホテルを出発しないといけない.大まかに荷造りをしたところで就寝.

◇本日の総歩数=3088歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=未計測/未計測.


26 september 2006(火) ※ にわか熊猫は江南で竹を喰う

◇午前5時に目覚ましが鳴る.時差がある地域に行くときは,念のため旅行用のアラーム時計をいくつか持参するようにしている.外はまだ暗い.今日は,浙江省・抗州への強行軍が予定されている.サンダルではなく,靴にしないとダメかも.

 聞くところでは,北京に比べて上海の方が治安がいいそうだ.町中を巡視する警官の数がちがうらしい.

◇ホテルのロビーにある〈珈琲庁〉でバイキング朝食.まもなく〈上海F1〉が開催され,その直後には国慶節が1週間も続く.上海市内のホテルはもうどこも満杯状態らしい.

◇午前8時に中国人民軍からまわされてきた車に乗り込む.朝の上海は,車と人と自転車が渾然一体と鳴っていて,これで事故がないのがフシギなほど.上海から南に向かう高速道に乗る.またまた身が縮むようなスリルある運転だ.ドライバーは人民軍の兵士らしい.クラクションにパッシングの連続.

◇上海市を抜けるとそこはもう「水郷地帯」だ.これが原風景なのだろうか.しかし,ただの農村地帯ではない.高速道の脇には,「国際電気城」とか「皮革城」という看板がずらっと並んでいる.数多くの工場がこのエリアにはあるようだ.

 ひたすら南に走り続け,烏鎮を通り過ぎ,嘉興(Jiaxing)のゲートを通過し,浙江省に入る.杭州のゲートにたどり着いたのは午前10時のことだった.目の前に広がるのは対岸がかすむほどの銭塘江の流れだ.日本のテレビでもこの川の「逆流津波」はよく放映されるが,逆流そのものは毎月あるそうだ.

 さらに高速道を走り続ける.杭州を通り過ぎ,蕭山(Xiaochan)の工場地帯を走る.上海近辺は平野が広がるだけの景観だったが,ここまで来るとやっと「山」が見えてくる.水路や運河がそこかしこに張り巡らされている.ちょっと見にはオランダのポルダー(polder)に似た景色だが,あちらはすべて人造だが,こちらは天然というちがいがある.喪中の家が運河の向こうに見えた.弔いの花輪の真ん中に漢字が一文字書かれている.〈トゥーランドット〉紫禁城ライヴの第3幕でリューが死んだときに大きく垂れ下がったのはこの漢字だった.言霊は生きている.

 紹興(Shaoxing)を通過し,しばらくして高速を降りる.ここは紹興市の東隣りにある上虞市だ.運河沿いの古い街並を通り過ぎて,目的地に到着し,打合せを1時間あまり.その後,運河を戻って一同で町中にある〈建華酒府〉という店で江南地方の料理をいただく.古い集落で,家々の屋根瓦が独特の積み方をされている.

◇江南地方の料理は油っぽくなく辛過ぎもせず,とても美味.今年仕込んだという紹興酒の“アールヌーボー”が出てきたが,これまた絶品だった.常温でコップになみなみと注がれては飲み干すというサイクルが数度繰り返される.燗にするわけでもなく刻みショウガや氷砂糖や梅干しを入れるわけでもない,ごくストレートな飲み方だ.これは効きます.とっても“好!(ハオ)”だ.

 料理.前菜に出てきた壷入りの鶏肉がとってもうまかった.店員は紹興酒の樽で鶏肉を酒粕に漬けてつくると言っていた.名前だけは聞いていた糟鵞(ツォルー)がこれかもしれない.骨ごとぶつ切りにして漬け込んであるのだが,それをしゃぶるように食べる.他には,マテ貝,羊の皮付き肉,川海老,そして川魚の煮物.ときどき赤唐辛子がまるのまま入っていて,自分の皿に取ろうとすると,向こうの所長さんが「それはとても辛い(“辣(ラー)”)からよしなさい」と制止する.その割には自分はぱくぱくと口に放り込んでいる.ちょっと齧ってみたが,ハバネロのような暴力的な辛さではなかった.

 もうひとつの特筆すべき料理は「竹」.「筍」ではない,ちゃんとした?ぶつ切りの「竹」の煮物が皿に盛られて出てきた.おそるおそる同行者に「これ,食べるんですか?」と訊いたところ,「皮を剥いてばりばり食べてください.名物です」とのこと.筍がもう少し成長した若竹らしく,歯ごたえはあるもののちゃんと食べられる.醤油味もなかなかよろしい.※でも,どー考えても,これって“パンダ並み”だぞ.

 そして,芥藍(かいらん).蕗のような外見だが,繊維が硬くなく,齧った感じはむしろ胡瓜に近いというフシギな野菜.揚げて醤油に浸されていた.新鮮食感でグッド.日本では経験したことのない料理だ.

—— 外はよく晴れて穏やかな日和で,クリークを小舟が行き交う風景の中,しだいに“緩んでいく”気がする.魯迅の故郷はただものではない.帰りがけに所長さんが紹興酒を1箱(「1本」ではない!)お土産にもたせてくれた.謝々.

◇午後2時半に帰路につく.ホテルに着いたのは午後5時半.今日は,用務の時間の数倍をかけて往復し,そして食べた気がするぞ.

◇午後7時を過ぎて,市内の風呂に入りにいく.上海は温泉が湧き出る場所ではないのだが,市内にはたくさんの公衆浴場があるそうだ.行ったのは,〈海蘭雲天花園浴場〉というまことにめでたいネーミングの風呂だ.ゴージャスな入り口で履物を預け,中に入る.サウナや露天風呂も含めていろいろな種類の風呂がある.日本で言えば「スーパー銭湯」みたいな場所なのだろう.24時間営業.風呂上がりに足指マッサージをしてもらい,同じ建物のレストランで食事をする.昼に続いて,ここでも「竹」を食べた.タケノコではない「竹」そのものをばりばり食べていると“にわか熊猫”に変身したような気がする.芥藍もメニューに載っていた.

◇ホテルに帰り着いたときには午後11時を過ぎていた.今日は長距離移動をしてしまったので,疲れました.明日も朝から仕事がある.

◇本日の総歩数=3173歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼×|夜×.前回比=未計測/未計測.


25 september 2006(月) ※ 空間ワープで上海租界へゴー!

◇午前3時半に起床.気温16.1度.即,研究所に直行し,さらなるアガキを数時間.翻訳ゲラに手を入れまくりで,真っ赤…….

 結局,午前11時まで頑張ったのだが,どうしても3章分しか終わらず.ハイ,時間切れ,ということで速達返送.ごめんなさいごめんなさい.あとは帰国後に送ります.ごめんなさいごめんなさい.

◇合間のこまごま —— 進化学会事務局へハンコを送る./ 京大・基物研からの講演招待の受諾返事.まずは年末に主催者氏と会うことにする./ 午後からの年休届け.組合の大会があるのだが,ごめんごめん.

◇正午過ぎに荷物とともにつくばを出発し南下する.途中,牛久市街地の〈連根屋〉にてランチ(“つくばマダム”でとても混んでいた).そのまま成田空港へ向かう.晴れていい天気だ.空港の第2ターミナルに着いたのは午後3時過ぎだった.予約してあったレンタル携帯電話を受け取って,チェックイン&出国審査.今日は平日なので,がらがらに空いている.先月のお盆休みの頃とはぜんぜんちがう.

◇中国東方航空の上海・西安行〈MU 522〉便への搭乗は午後4時40分から始まった.機体の到着が遅れたとのこと.午後5時のフライトだったが,そのせいで20分ほど予定よりも離陸が遅くなった.エアバスは夕方の空に飛び立つ.

 ヨーロッパや南北アメリカには毎年のように行っているのに,中国を含めてユーラシア東部への旅は実は初めてのことだ.公私ともにその機会がなかったという単純な理由だ.たった3時間で上海に行けるのだったら,これまでにもっと行っておいてもよかったな.夕陽に向かって飛び続け,時差1時間の上海浦東(Pudong)国際空港に着陸したのは予定よりも早い午後7時前だった.離陸が遅れたのに着陸が早いとは.

 着陸直前に地上を見渡すと,メキシコシティー並の広大なエリアに「街の光」が広がっている.巨大な都市であることを実感する.人口は公称1600万人だが,実際には2000万人以上いるそうだ.2008年の北京オリンピックのサッカー会場はここ上海だという.さらに,2010年には上海万博が開催が予定されている.これらの大イベントを契機に,さらに急速に巨大化していくのだろう.

◇中国人民軍からまわされてきた車に乗せられて,まっすぐな高速道路をびゅんびゅん飛ばしていく.道路と並行して,「磁浮列車(リニアモーターカー)」の鉄路の高架があり,ときどき磁浮がぎゅんぎゅん行き来している.片道4車線の広い道路だが,炸裂的警笛・危険的運転・乱暴的割込の三点セットでかなりスリルがある.上海(中国全般?)では「人よりも車優先」なので,街歩きでも十分に気をつけないとアッサリ轢かれてしまうとのこと.

 空港から上海中心部までは50kmほどの距離だ.市街地がしだいに近づいてくるにつれ,デインジャラスな道路事情以上に,目を奪われたのは〈天空の城〉の列だ.空はすでに夕闇に包まれているのだが,市街地の“上空”に煌煌とライトアップされた〈御殿〉がそこかしこにある.もっと近づいてよく見ると,超高層ビルの最上階部分に特別に〈御殿〉をしつらえ,その階のみを強烈に照らしている.遠くから見ると,下の階は闇に包まれているので,まるで最上階だけが中空に浮いているいるように見える.このスタイルがいまの流行なのだそうだ.上海の空には〈ラビュタ〉がいっぱい.いったい何棟の高層ビルがここには生えているのか?

 北浦江にかかる南浦大橋をわたって,さらに市街地の中心部に近づくと,今度は爆発的電飾の渦に圧倒される.道路やビルの“エッジ”にさまざまなネオンサインが張り巡らされ,チッカチッカと瞬き続けている.人の過密と車の喧噪と電飾洪水,街中が「パチンコ屋」のごとし(視覚的・聴覚的に).

 ぐるぐるとラセンにまわる高架道を降りて,とてつもなく巨大なスタジアムが見えてきた.8万人が収容できるサッカー場だという(北京オリンピックのサッカー会場になるそうだ).このスタジアムの中にある〈上海富豪東亜酒店〉が宿泊先だ(このきらびやかなホテル名を何とかしてー).空港から2時間近くかかったことになる.

◇チェックインして,部屋に荷物を運び込んでもらい,やっと一息つけた.日本からの空路よりも,上海の道路の方がはるかに疲れたかもしれない.

◇夕食は,ホテルから車で10分ほどのところにある繁華街の中の〈香港竹家荘避風塘〉にて.竹張りの内装.うまいなあ.ビールを飲みつつ,食べているうちに怒濤の疲労感が押し寄せる.軽く2時間ほどであがり.ホテルに直帰する.

◇中国元への換金は明日ホテルですませることにしよう.日本で換金するとレートがめっちゃ悪いので損をするそうだ.上海に着いてから換金をと思っていて,〈ラピュタ〉に気を取られてうっかり忘れてしまった.

◇さ,今日はもう寝よう.明日は,銭塘江を越えて,江南への長旅だ.

◇本日の総歩数=7873歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=+0.4kg/−0.5%.


24 september 2006(日) ※ 旅支度しつつ,翻訳ゲラと格闘する

◇午前4時半起床.晴れ.北の風.気温15.7度.早朝の最低気温が日に日に下がっている.朝焼け鮮やか.研究所にて旅支度.機材と資料.

◇午前は〈Q't〉のスターバックスにて翻訳ゲラの仕事.もう真っ赤…….正午過ぎまで.今日は快晴だ.

◇午後は旅支度 —— スーツケースに詰める詰める.着替えとか,小物とか,旅行本とか./ docomo の海外携帯をオンラインでレンタル申込.いつものように成田空港で受け取る段取り./ 損保ジャパンの海外旅行保険〈off!〉にこれまたオンラインで加入する.げげ,こんなに安いの? 空港で直に申し込むより半額以下の保険料じゃないか.

 1時間ほどで旅支度はほぼ完了した.もう慣れたものだが,それでも3センチほど浮き浮きしたりする.

◇さて……と,翻訳原稿に再び向かう昼下がり.まだまだ,ハイ,まだまだぁ.(汗)

—— この調子で,日が変わるまで格闘が続いたのだが,たいへんヤバイ状況になってきたので,明日は未明から最後のアガキに突入する.

◇本日の総歩数=4611歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+0.2%.


23 september 2006(土) ※ 秋分の日も大あがきは続く

◇午前5時起床.北風がびょうびょうと吹き渡る.晴れときどき曇り.日射しは強いが,湿度は低い.

◇〈反響録〉 —— 『系統樹思考の世界』のオンライン書評や引用などの件数が百数十に達したようなので,一括して〈leeswijzer〉から参照できるようにした.

◇風に吹かれてゲラ校正 —— はためくゲラたち…….※だから,何っ!?(やや汗)

◇昼過ぎに,天久保の〈Brotzeit〉まで歩きで買い物に.1時間あまり.歩行読書:ラディヤード・キップリング(城宝栄作訳)『キップリングのなぜなぜ物語』(1985年1月30日刊行,評論社[児童図書館・文学の部屋], ISBN:4-566-01174-7→ 目次).読了.進化学者なら誰でも知っている「Just So Stories」本.生物進化や言語進化のもっともらしい“迷説”や“珍説”がこれでもかと勢揃い.adaptationist program を揶揄するときには必ずこの本が引用された時期があったが,いまはどうなんだろう.一世紀も前の本なので,子ども向けの本にしてはさすがに古びている.

◇蛾の好きなティンパニスト —— 進化学会大会の折り,ベルリン・フィルのソロ・ティンパニストである Rainer Seegers 氏が熱心な蛾の研究者であると初めて聞いた.Pauker だからといって Schmetterlinge が好きな音楽的理由はないと思う.Schmetterlinge マニアが必ずしも Pauker になるとはかぎらないように.そうしたところ,つい先日,かつてジュネス・オケで一緒に〈英雄の生涯〉をやったこともあるワグネルの鈴木隆太さんからほぼ20年ぶりのメールが届き,「いまゼーガース氏とともに仕事をしているのだけど……」とのこと.偶然とはおそろしく,世の中はとても狭いという象徴的なケースだ.

 そういえば,9月になって朝晩の気温が下がってくると,早朝に大きな蛾たち(スズメガとかヤガ,シャクガのたぐい)が道に“ぼとっと落ちている”ことがよくある.寒くて動けなくなったらしい.拾って手のひらで暖めてやると,しだいに体温が高まって翅を震わせるようになる.愛いやつ.

◇あがくあがく —— 時間は限られているのだが,←このていたらくなので,なかなかはかどらず.がりがりと作業を進め,ごりごりと赤を入れていく.「逃避先」をなくすのがこういう仕事を進める上で鉄則なのだが,「逃避先創成能力」には事欠かないので,さらなる制約や監視が必要かもしれない.

 お,あ,時間が…….

◇本日の総歩数=8566歩[うち「しっかり歩数」=6909歩/59分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.1kg/+0.3%.


22 september 2006(金) ※ 金木犀が香るフライデーは必死

◇午前4時半起床.北の風,曇り.気温19.9度.天気予報によると,この週末は超大型台風が関東の南海上に接近してくるらしい.研究所の周囲では金木犀の香りが漂うようになってきた.

◇午前のこまごま —— ひたすら事務書類を書く:名古屋大学への成績報告の確認と変更,追加など.今日の昼までに返事しないといけない./ 養賢堂から『新編 農学大事典』(山崎耕宇他(編),2004年3月1日刊行,養賢堂,ISBN:4842503548)の印税についての連絡.増刷されたとのこと.領収書の返信./ 国際協力事業団への事務連絡./ 計量生物学会の次期役員の選挙.投票用紙を返送する.

 ここまでで,もうお昼になってしまった.少しだけ晴れ間がのぞく.

◇今まで使ってきたG4のエディタ〈mi〉がおかしくなってしまったままどうしようもないので(起動するたびにやっぱりフリーズする),代わりにフリーのエディタである〈CotEditor 0.9.1〉を使いはじめた.まだ慣れないところはあるが,画面的にはとても使いやすい.※開発者の方,ありがとうございます.

◇先日注文した〈R〉本がもう届いた —— Julian James Faraway『Linear Models With R』(2004年刊行,Chapman and Hall / CRC[Texts in Statistical Science Series 63], ISBN:1-58488-425-8→目次著者サイト).これは,回帰分析と分散分析の本.ちょうど統計研修や集中講義の教材として使えそう./ Julian James Faraway『Extending the Linear Model With R : Generalized Linear, Mixed Effects and Nonparametric Regression Models』(2006年刊行,Chapman and Hall / CRC[Texts in Statistical Science Series 66], ISBN:1-58488-424-X→目次著者サイト).GL[M]Mとノンパラ回帰の本.GL[M]Mの教材として使おう.

◇午後のこまごま —— 来月の京大・霊長研での集中講義:三中信宏「生物の歴史をたどる方法論:系統樹思考とアブダクション」.期日は10月17日(火)〜18日(水),時間帯は9:30〜17:00.遠藤秀紀さんに返信する./ 同じく京大の基礎物理学研究所から招待講演の申し入れ.来年に湯川秀樹を記念する国際シンポジウムを開催予定らしい.物理学だけでなく,生物学や他の学問分野も含む広い領域をカバーするとのこと.ありがとうございます.前向きに考えさせていただきます.

◇夜,また必死でゲラ読み…….

◇本日の総歩数=7053歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=−0.5kg/+0.4%.


21 september 2006(木) ※ 秋晴れ引っ越し日和の大量移動

◇午前4時に目が覚める.晴れ.北の風.気温18.7度.夜,窓を開け放っておくと,明け方はもう肌寒いな.秋めいた雲と空の色.

◇もう一通の“処刑宣告文”を書き始める.関係するひとつのMLの方については,発言内容そのものが guilty なので問題がない.もう一つのMLについては,情報収集のための問合せメールを関係者に送信した.ウラがとれればあとの作業はラクだ.いずれにせよ,「役人」が罪状を読み上げ,「プー・ティン・パオ」が青龍刀を振り上げる日は近い.

◇今日は,研究室の居室の物品を移動する引っ越し日だ.要するに,向かい側で倉庫代わりに使っていた部屋を明け渡すというわけなのだが,やっかいなのは歴代の物品の数々が堆積岩(あるいは変成岩)のように部屋のいたるところに積み上がっている.したがって,移動よりはむしろ廃棄とか整理という表現がふさわしいかもしれない.

 大学よりも頻繁に「人」の異動がある旧・国研では,前任者がそのまま残していった機材や資料などの備品類が廃棄されないまま数十年にわたって「実在」し続けるということがけっしてまれではない.通常の備品(「黒ラベル」)であれば,廃棄はそれほどめんどうではない.ちょっと高価な備品(「赤ラベル」)でも,所定の手続きを踏めば(めんどうだけど)処理することができる.しかし,それらの備品が,購入された時代には「(超)高額物品」だったりすると(「金ラベル」),みだりに捨てると大目玉を喰うので(研究所の「資産」扱いなので),そっとそのまま安置しておくというあたりさわりのない選択肢を後任の室員たちは選ぶことになる.実際,「こんなものが〜」という物品が「金ラベル」だったりするので要注意だ.

 事態をさらにめんどうにするのは研究室の統廃合である.ある研究室がそのまま系譜として存続するのであれば,専門分野がある程度は共通し,知識も共有されているだろうから,部屋にある物品がどういう「素性」のものなのかを後任者が理解するのはさほどめんどうではない.しかし,旧・国研や現・独法研究所の場合,研究室そのものが統廃合(cladogenesis は不可能で,ひたすら融合あるのみ)され,まったく異分野の得体の知れない高額物品が管理下に置かれることがまれではない(知らないうちに押し付けられていることも……).こうなってしまうと,扱いに困った正体不明の(超)高額物品(ん千万円クラスの)は見えない隅に追いやるか,別室に格納してしまうという結末になることが多い.

 まずはじめに,搬入する今の居室にスペースをつくらないといけない.今なお輝く「金ラベル」のついた「化石」な画像解析装置を奥から掘り起こし(礼を尽くして別室に移動していただくことになる),10年あまり封印されていた机の裏側が露呈される.おお,大量の論文ファイルや本たちが棚から崩落しているではないか! 崩れた“ガレキ”の山を掘り進んだところ,数年前から見つからなかった柴谷篤弘『今西進化論批判の旅』とか,その今西錦司の『ダーウィン論』やら『主体性の進化論』やらがわらわらと出土してきた.なつかしいなあ.こんなところに埋まっていたとは.

 次に,空けるべき向かいの部屋の本や雑誌をどんどんダンボール箱に詰めていく.本棚というのは驚くべき収容力があって,いくら箱をもってきても足りないほどだ.公費購入のふっるーいコンピュータ関連書籍のたぐいはすべて倉庫送りだ.しかし,ぼくの私物の本も同じくらい大量にある.読んだり積んだりしているうちは気にならないが,こういう引っ越しに迫られると,一瞬(だけ)「買わなきゃよかった……」と弱音をつぶやいたりする.でも,しかたがないのでひたすら箱詰め単純作業にいそしむ.

◇秋晴れの午後,いよいよ大型物品の搬出が始まる.といっても,本棚とコンピュータ(&周辺機器)がほとんどだ.博物館の展示のごとく歴代のコンピュータやらディスプレイやらプリンタが,廊下の壁際に“ベルリンの壁”あるいは“石積み城壁”のように積まれていく.「今夜,地震でもあったら一巻の終わりですねえ」とつぶやく屈強の若者たち.いや,頑丈な城壁の石積みは地震くらいではびくともしないと聞いていますぞ.

—— 午後5時過ぎ,数十年の長きにわたって部屋の中に居続けた「歴史の証言者」たちは,このようにしてすべて搬出された.あるものは別室でさらに長い年月を暗く静かにすごし,またあるものは処分を待ち,またあるものはもらわれて(拾われて)あらたな歴史を刻むことになる.

◇夕方,日が暮れるのが早くなった.気温の下がり方も秋を感じさせる.北の風が吹く.

◇ありがとうございます —— 数人の方から,「災難でたいへんですね.ヘルプが必要でしたらいつでも」とのメールをいただいた.ありがとうございます.今のところはまだ大丈夫そうですが,証拠の保全は確実にしておきます.

◇近刊メモ —— 京極夏彦 『邪魅の雫』(2006年9月近刊,講談社,ISBN:4-06-182438-4).800ページ超のノベルズらしい.

◇本日の総歩数=2813歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=+0.1kg/−0.6%.


20 september 2006(水) ※ 本郷通り,あちらこちら出没

◇午前4時に起床.晴れ.北の風が吹き抜ける.夜明け前の東の空に下弦の三日月が,続いて朝日が昇る.

◇翻訳ゲラの修正が続く早朝.ぜーんぜんはかどらず.しかし,12時間後には海游舎のトゥーランドッ,いえ,本間さんに手渡さないといけないが,この分だとまたいずこかで「カンヅメ」になる気がする.

◇空は快晴.8時26分発の TX 快速で本郷へ.午前9時半に〈ルオー〉で翻訳原稿の作業の続きをする.追いつめられまでやらないというのではダメなんですが,諸般の事情がいろいろと.1時間あまり.今日は,ルオーさんにお世話になるので(午後も),新書を寄贈させてもらった.

◇予定通り,午前10時半に読売新聞文化部の記者さんが〈ルオー〉に登場.『系統樹思考の世界』についてのインタビューを1時間あまり受ける.オモテとウラの仕事のこととか,音楽のこととか(この記者さんは大学で音楽史を勉強されたらしい).学問の壁を越える系統樹の広がりについてのやりとりが中心だった.インタビューが終わった頃,正午前にカメラマン氏が到着したので,ルオーの2階を貸してもらって写真撮影.大量に撮られた気がする(バシャバシャと).写真を撮られつつ音楽談義をしばし.〈トリスタンとイゾルデ〉の系譜とか,この日の朝日新聞朝刊に載っていた皆川達雄氏による〈長崎オラショ〉のルーツ探しのこととか.

—— アヤシイ写真と記事は10月はじめに掲載されるとのことだ.書籍のコーナーかそれとも文化面になるかは未定とのこと.※あ,農環研に届けておかないと.

◇昼過ぎに,本郷通りをぶらりと.正門前のベーカリー〈カヤシマ〉にパンを買う.ずいぶん久しぶりにこの店に来た.さらに,ぶらりぶらりと「慶應書房」の看板がかかる〈ヴァリエテ本六〉に入る.9月13日(水)〜30日(金)まで「世にも美しい小画片 西洋のエクスリブリス」という蔵書票の展覧会が開催されている(未見の人はすぐ行くように).通りから覗くかぎり,いったい何のスペースかといぶかしく思う人も少なくないだろう.奥は古書店だが,前はフリー空間のように使われている.デンマークとハンガリーの Ex Libris をば.今日は,気温は30度くらいありそうだが,湿度が低いのでまあ許せるな.

◇その後,弥生の農学部キャンパス某所の「隠れ部屋」にて,翻訳ゲラを広げつつ昼ご飯.しかし,没入する前に,午後1時過ぎからの専攻教員会議に駆り出される(というか,これが今日の公務).全学の事務報告やら何やらが1時間あまり.その後,さらに午後4時過ぎまで専攻内の審議事項がいくつも.エコロジカル・セイフティー学講座の有効なPR方法について意見交換した.大学院のみの講座だとなかなか知名度がアップしないので,積極的に学部生あるいは駒場での出張講座も開催する必要があるだろうとの声あり.当然のことだと思う.制度的に問題のないところから,いくつか企画を進めて宣伝しましょうとのこと.

—— 会議後,ある先生から,「先日,北大に行ってきたのですが,生協でセンセイの本が“第9位”になっていましたよ!」とのこと.Katsura さんの目撃譚の追認だ.

◇うう,まだ次があるぞ.本郷通りの〈こころ〉で最後のゲラあがきをして,午後5時に再び〈ルオー〉へ.海游舎の本間さんと落ち合う.とりあえず,作業の終わった章まで渡して,さて「疑似カンヅメ」のはじまりだ.午後6時半まで約1時間半ほど,がりがりと訳文を削ったり書き直したりして,何とか60ページ(第5章)まで手渡す.ほとんど意識朦朧ですなあ,これは.へろへろと根津まで下り,北千住経由でつくばに帰り着いたのは午後8時過ぎのこと.

—— ぜーんぜん終わりが見えないのだが,今週中にはあらかた返送しないとエライことになる.

◇北の風がすーすーと吹き抜ける夜.夏はもう終わったな.

◇【警告】方々のブログやメーリングリストで,何の根拠もない好き勝手な妄言を書くのはやめようね,※ある意味,あの御仁よりも,この御仁の方が悪質かもしれない.

◇本日の総歩数=9811歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/−0.5%.


19 september 2006(火) ※ 連休明けのしわ寄せとお愉しみ

◇午前5時半に起床.遅すぎっ.南風が吹く.台風が通過したせいだろう.体感的にはすでに20度を越えているようだ.午前8時の研究所の温度計は27.3度を指している.今日は久しぶりに真夏日かもしれない.

昨日,農環研宛てに届いた「在原俊行氏(=seaGal=seaDragon=Saturns)」からのお茶目な“脅迫メール”が,事務から転送されてきた. こんな「脅迫メール」が何らかの効果があると思いこんでいる方がどうかしているぞ.もちろん,すべて門前払いの運命が待っているから,出すだけムダなんだけどね.証拠はきちんと保全したよ.やればやるほど自分のクビを絞めるだけ.※あ,プー・ティン・パオに切られて,「クビ」はもうないはずなんだけどな…….再生した?(プラナリアか)

◇さまき隊長から「ああいう手合いに関わってはいけませぬ」とのメッセージがあった.そーですね.ぼくも迫っているもろもろの仕事があるので(というか遅れまくり),そちらに没頭させていただきます.

◇日が昇るとともに蒸し暑くなってきた.研究所はすでに全館空調が止まっているので,窓を開け放つしか対処のしようがない.

◇あらあら,Mac OSX の mi を立ち上げるたびにハングアップするようになってしまった.インストールし直してもダメだし.困ったなあ…….とりあえず,PowerBook G4 でお仕事をする昼下がり.

◇蒸し暑い午後,ざーっと通り雨が.昨日から,首を切ったり亡者に憑かれたりで,ささくれ気味だったが,〈さまき隊〉で少し気を取り直す(→9月14日付記事「Aさんのこと(科学メイリングリストをやめた原因)」).

 その「科学メーリングリスト」は,今日のうちに消え失せるという管理者のアナウンスがあった.夜になっていったんは退会したさまき隊長が突如として再入会し言うべきことを言い尽くしたり,Saturns がまたまた意味不明の妄言を返したりという最後の一花を咲かせて,午後11時半に過去ログともども「消失」を確認した.※田口さん,お疲れさまでした.

◇明日は朝から夕方まで東京に遁走する.※あ,翻訳原稿が〜(大汗).

◇本日の総歩数=3373歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=+0.9kg/+1.1%.


18 september 2006(月) ※ かすめる台風,大立回り青龍刀

◇午前5時起床.曇りのち晴れ.強い北風が吹く.日本海に入った台風の影響か.気温21.5度.

◇早朝の研究所にて“公開処刑”を執行する —— ぼくが運営している〈EVOLVE〉に先月入ったばかりの在原俊行氏(「seaGal=seaDragon=Saturns」と名乗っている)が異常な投稿行為をするので,前夜ついにトゥーランドット姫がキレてしまい,プー・ティン・パオの召還とあいなった.入会直後からずっとマークしていたので,役人が読み上げる“宣告文”はすでに書き上げてあった.でもって,今朝早く刑を執行した.

◇はっきりしない空がいきなりざあざあと土砂降りになったのは午前10時過ぎのこと,遠景の視界がなくなるほどの豪雨だ.しかし,1時間もしないうちに小降りになって,蒸し暑さが増してきた.筑波実験植物園の南隣りに接するインド・レストラン〈ニュー・ミラ〉でランチをば.

◇午後もときどき小雨が降ったりしたが,夕方にはきれいな夕焼けが広がった.公開処刑日にはちと不似合いだったかもしれない.

◇夜は,またまた書類づくり.ちょっと仕事の進捗がヤバいかもしれませぬ…….

◇本日の総歩数=2403歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.2kg/+0.2%.※昨日今日と固着生物だよなあ…….


17 september 2006(日) ※ 連休中日は天気が下り坂

◇午前3時半に目が覚める.曇り.研究所の温度計は18.7度を指している.昨日はなんとか天気がもったが,今日はいよいよ下り坂から雨になるのだろう.知り合いの多くが,いま鹿児島で開催されている昆虫学会大会に参加しているようだが,暴風雨に降りこめられて学会どころではなかったりするんじゃないかなー.

◇未明のこまごま —— 名古屋大学の成績評価に関する事後処理の続き.危惧したように,この学生にはレポートに関する連絡メールがまったく届いていなかったようだ.やっぱり“手書き文字”は何の役にも立たないばかりか,有害である場合すらあるということだ.今後は,こういう状況で,相手との“手書き文字”でのコミュニケーションは絶対にしないことを決心する.連絡手段は徹底的に電子的に.アナログ排除.でもって,当該学生に善後策を伝える.ごめんなさいごめんなさい.

 要するに,誰もが判読できる(というか「誤読できない」)“美しい手書き文字”を書くことが(ぼくも含めて)今ではできなくなっているということだ.まわりを見回しても,きれいな手書き文字が書ける人はほとんどいないように思う.だからと言って,「お習字」を始めようという気はさらさらない.別のもっと効率的な伝達手段を考えればよい.

◇台風の遠い影響か,空模様がはっきりしない.昼間は晴れていたのに,夕方になって雨に.夜半にざあざあと降り出す.秋雨前線が活発化してきたのだろう.

◇ evolve-ML に先月入ったばかりの某氏が不適切な投稿をしてきたので,イエローカードを出す.※この分だとレッドカード=処刑の日は間近いな.

 そういえば,フィレンツェ歌劇場の〈トゥーランドット〉神奈川公演(→公式サイト)は今夜だった.姫君は“車椅子”だそうだが,大丈夫かなあ? ※チケットが「53,000円」だそーで.ひょえ〜.

◇本日の総歩数=1844歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−1.0kg/+0.2%.


16 september 2006(土) ※ 三連休初日は幸い運動会日和

◇午前5時半に遅めの起床.北の風,雲は多いものの及第点の秋晴れだ.極悪台風が南西諸島にあって,北に向かっているらしい.しかし,昨日の天気予報とは裏腹に,関東はいまのところ心地よい秋晴れになっている.市内の小学校の運動会関係者は胸を撫でおろしていることだろう.

◇午前中は頼まれ仕事 —— まあね,文書をつくるのはきらいではないのですが,時間があれあれと削られるのはこの時期よろしくないかもしれないな…….でも,つい細部にこだわったりして.

◇『祖先の物語』の「謎」 —— 持ち歩くのが大儀なサイズの訳本が出た:リチャード・ドーキンス(垂水雄二訳)『祖先の物語(上・下)』(2006年9月20日刊行,小学館,ISBN:4-09-356211-3 [上] / ISBN:4-09-356212-1 [下]).原書でも500ページ超(イギリス版)とか600ページ超(アメリカ版)なのだから,日本語訳が上下2分冊の計900ページ超という超弩級になるのもムリはない.翻訳作業はさぞたいへんなことだっただろうと推測する.全編,系統樹(the Tree of Life)のお話だ.

 訳者あとがきにはこう書かれている ——

原書では写真はオールカラーで,図表その他にもふんだんにカラーが使われているが,日本語版では,残念ながらコストの関係ですべてモノクロにせざるをえなかった.(下巻,p. 430)

 そんなバカな! ぼくがもっている「アメリカ版」Richard Dawkins『The Ancestor's Tale : A Pilgrimage to the Dawn of Evolution』(2004年,Houghton Mifflin, ISBN:0-618-00583-8)のハードカバー版は図表がもともとすべてモノクロだぞ.念のため,「イギリス版」Richard Dawkins『The Ancestor's Tale : A Pilgrimage to the Dawn of Evolution』(2004年9月2日刊行,Weidenfeld Nicolson Illustrated, ISBN:0297825038)のハードカバー版を amazon.co.uk でオンライン立ち読みして,卒倒してしまった.なんと,図表がオールカラーなのはイギリス版だけだった.あんまりじゃないか,Houghton Mifflin 社! 泣く泣く,イギリス彩色版をオンラインで再注文したのは言うまでもない(おいおい).英国版と米国版でダストジャケットやタイトルがちがったりしたことは今まであったが,図版がぜんぶ差し替えられているというのは初めての経験だ.

—— 【痛い教訓】これから『The Ancestor's Tale 』の原書を買おうという人は,まちがっても amazon.com で買ってはいけない.amazon.co.uk から買うように.くっそー(涙).

◇午後も割によく晴れる.天久保の〈Brotzeit〉まで歩きでパンを買いに行く.ついでに,〈銀の豆〉でコーヒー豆,石丸電機で電球も.1時間あまりの行き帰りは“上海本”を読んだり.

◇備忘メモ —— エルヴェ・ヴォドワ『星の王子さまの眠る海』(2005年8月刊行,ソニーマガジンズ,ISBN:4789726118).サン=テグジュペリの“最後”について詳しく書かれているらしい.>ngt さん,感謝.

◇夜は文書づくりの続きをば.別件の大仕事もあるのだけれど…….

◇本日の総歩数=12963歩[うち「しっかり歩数」=7909歩/68分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+1.0kg/−0.3%.


15 september 2006(金) ※ からっと秋晴れ,台風の予感なし

◇午前5時起床.きれいな朝焼け.気温はさらに下がって17.1度.北寄りの風.

◇午前中は,カメラを小脇に,つくば市内を50kmほど走り回る.雲は多いもののいい空ですな.つくば市内の小学校の多くでは,明日の土曜が運動会日になっているところが多いのだが,秋雨前線と台風のデュエットが気になる.※今日だったら何の問題もなかっただろうに.

◇正午の気温,23.7度.湿度が低いので快適だ.昼休みもなく研究所でごそごそする.午前のうちに今月の給料明細票が机の上に置かれていた.エーっ,給料が「ん万円」も下がってるやんか! 別にワルイことはしてないし,ヤマシイ行状もないし,と6分間ほど悩んだ末に,ハタと気がついた.あ,そーか,先月の「兼業」分が給料からさっくりと引かれていたんだ.ということで,青くなることはなかった.なんせ「兼業」は初めてなものでして(農環研でもまだ多くの事例はないと聞く).しかし,これからもこういう引かれ方をすると,心臓によろしくない気がする.

◇午後2時過ぎから1時間ほど,〈文化系統学〉セミナー第22回目.7月末以来久しぶりの輪読.Chapter 10「Tracking culture-historical lineages: Can "descent with modification" be linked to "association by descent"?」(Peter Jordan and Thomas Mace)の後半を読み終える(pp. 153-167).カリフォルニア先住民族に関するデータデータ解析の節.tree性については,consistency index やブーツストラップで確認する.文化的形質のサブセットごとに系統樹を推定し,それらの系統樹の間の整合性を Rod Page の〈COMPONENT〉に含まれている「Triplets」テスト(実際には random trees による triplets テスト)でチェックしようとする.パーフェクトな core は望むべくもないが,サブセット間の整合性は低くないので,co-phylogeny による文化進化の説明が可能であると結論する.

◇午後はからっと快晴.台風が南から近づいているとは信じられないくらい.

◇しかし,仕事の進捗はからっとしない —— 海游舎から電話あり.来週水曜(20日)に本郷にてゲラを渡すことに.「できるだけたくさんの章を〜」って,ひょえー(大汗).ワタシの三連休はこれでなくなりました(○| ̄|_).この20日は,午前中に読売新聞の取材を受け(ルオー),午後は東大での教員会議,そして夕方に海游舎への原稿渡し(またルオー)という,いろいろ詰め込まれデーとなった.今月末まで,〈ヴァリエテ本六〉にて蔵書票の展覧会をしているそうだ.逃避場所としてマークしておこう.

◇古書界近刊メモ —— 南陀楼綾繁『路上派遊書日記』(2006年10月2日刊行予定,右文書院,ISBN:4-8421-0075-3)/ 向井透史『早稲田古本屋街』(2006年10月刊行予定,未來社,ISBN:4-624-40059-3).「古本」本がどんどん出る(きっと売れているからさらに出る).古本を読むという行為を「その道の達人」あるいは「古書業界の事情通」に丸投げして,彼らの“お話し”だけ拝聴したいということですか? 古本読みも“芸”になるのかな.私的には,パーソナルな“逃避場所”として愉しみたいのですがね.願望的には,「古本」本を読んでいるヒマがあったら,古書店をまわりたいのですが(秋だし).

 そういえば,ソーバー訳本の古書価格は「15,000円前後」でずっと安定しているようだ.※定価の「3倍」かよー(驚).

◇夜は,行きがかり上,つくばの河川水系について調べる.「系統樹」というよりは,因果的な「経路分析」に近い性格をもっているのだろう.Google Earth でつくばを空から覗いたりする.秋から冬にかけての衛星写真のようで,田畑エリアに焦げ茶色が広がる.

◇本日の総歩数=6678歩[うち「しっかり歩数」=1320歩/12分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.3kg/+0.2%.


14 september 2006(木) ※ 今日もまたしとしと雨降る一日

◇午前4時半起床.雨.気温18.1度.研究所にて調べもの(埒あかず).しだいに雨足が強くなってきた.午前8時半の気温はさらに下がって,16.7度.10月並みの気温という予報は当たっているかもしれない.

◇朝からこまごま —— 来月の日本科学哲学会シンポジウムの講演予稿がまだできていない(というか,影も形……[以下略]).遅くなりますが,必ず出しますので.平身低頭.あ,ホテルの予約が.う,航空券も.お,出張届すら./ それを含めて数件の出張届に,年休届に,立替払い請求書.紙また紙./ 居室の引っ越し準備.前任者や前々[n]任者の“遺物”のような品々がごろごろと出てくる.十数年前の麦の種子が入った衣装ケースがそのまま残っていたりして(“新たな生命体”が中で発生していると引くなあ).圃場作業用の麻紐の入ったボール箱はすでに貯穀害虫の天国と化していた(甲虫のくせにぶんぶん飛ぶなよっ).来週にも大荷物の移動をしないといけない.

◇午前10時にはもう雨は上がって,空が明るくなってきた.

◇昼のこまごま —— メーリングリストの登録変更作業の続き./ 進化学会の大会後始末1件.賞状の作成が宙ぶらりんになっていた.さっそく発注してもらわないと.

◇新刊 —— アラン・ヴィルコンドレ(鳥取絹子訳)『サン=テグジュペリ 伝説の愛』(2006年6月27日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-023016-6).濃密.『星の王子様』の著者を「顔」を見たのは初めてのことかもしれない.行方不明になった機体が地中海底から見つかったというニュースを新聞で読んだのは,1999年のライデンのホテルだった.その後どうなったのか知らない.

◇午後のこまごま —— 農環研の図書室が来年購入する雑誌タイトルに関する問合せ.数理統計学の基本ジャーナル(JASAとかBiometrikaなど)が軒並み「購入中止」の予定になっていることに卒倒する.さっそくクレームの意見を出す./ 農環研の海外渡航費を使った出張について,refereed paper にどれくらい成果として結実しているかの調査依頼.うーーん.もちろんポジティヴに答えられるのだが,論文にならない部分での効果とか考えないの? それ以前に,海外出張をそういうふうに「特別扱い」するのはもうやめた方がいいと思う.国内にいようが,海外にいようが,関係なし.そうそう,農環研にいようがいまいが,どうでもよし.

◇夕方の歩き読み —— 長谷川眞理子『ダーウィンの足跡を訪ねて』(2006年8月17日刊行,集英社[集英社新書ヴィジュアル版002],ISBN:4-08-720355-7)をやっと読了する.ガラパゴスゾウガメは“むっしむっし”と草を食み,ダウンハウスには古書の“黄色い匂い”がたちこめる.文章とカラー写真だけでなく,聴覚と嗅覚にも訴えかけるダーウィン紀行.書評は近日中にアップ予定.

◇本日の総歩数=13064歩[うち「しっかり歩数」=7541歩/67分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/−0.5%.


13 september 2006(水) ※ 秋雨前線に滑って転んで

◇午前4時半に起きる.北の風が冷たく感じる.気温17.4度という低さ.曇りのち雨が降り出す.

◇早朝のこまごま —— しばらく事務連絡がなかったと思ったら,〈IOSEB〉の業務がうまく進捗していないようだ.2008年メキシコ大会(ICSEB-VII)の次は,2014年にオーストラリア(アデレード)での開催という案が浮上してきた./ 依頼されていた原稿読みを完了し,コメントを付けて返送する.

◇届いた本 —— Colin Renfrew and Paul Bahn (eds.)『Archaeology : The Key Concepts』(2005年刊行,Routledge[Routledge Key Guides],ISBN:0-415-31757-6 [hbk] / ISBN:0-415-31758-4 [pbk]→目次).全部で60項目ほどの見出しが出ている.各項目は4〜5ページの分量で,参考文献リストがしっかりしているので,勉強するためのガイドという位置づけの本なのだろう.

◇午前のこまごま —— 進化学会大会の高校生ポスター発表に対する賞状(追加分)に学会印を押印し,郵送する./ 午前10時半から領域会議.居室の引っ越しの件であれやこれやと1時間ほど.

◇昼休みの追い込み仕事 —— 名古屋大学の成績報告をすっかり忘れていた.督促電話があって,あわてて処理する.1時間半ほどでケリがつく(それくらいだったらもっと早くやれよっ).とりあえずpdfで返送し,原票は速達で返送.その過程でヤバそうな可能性が表面化し,またもばたばたと連絡したり.

【教訓】「肉筆はトラブルのもと」 —— 受講生のメールアドレスを聞き出すのに,「肉筆」で書かせたのがそもそもの元凶.肉筆文字は「基本的に読み取れない」という大原則を失念していた.その結果,メールが届かないというクレームがあったり,レポート課題が周知できていなかったり,etc.受講を希望する学生にはぼく宛にメールを実際に送信してもらえばこういうトラブルはなかったとあとになって悔やむ.「肉筆」はダメです.そういうのは“パーソナルな世界”でのみ通用すればいいのであって,署名などごくかぎられた状況を除いては,対外的な場面でもはや不要だ(さらにいえば有害だ)と確信した.手書き文字は対外的にはいらない.

自らを振り返っても,自筆・肉筆にいい思い出はまったくない.もともと字がとても下手なので,習字でも褒められた覚えがない.葉書や手紙を書くのはおっくうだった.書きなぐったノートやメモ類はきっと自分にしか読めない,特殊な“字体”が踊っているにちがいない.もちろん漢字の書き順なんかはデタラメの極みだろう.ワープロやパソコンで「文章」が書けるようになったのはほんとうに天恵だった.今でもぼくの板書はきっと可読性に欠けているはずだ.もしそれが読めるものであったとしたら,予備校時代に培われた“わざ”のおかげにちがいない.

◇午後になってもしとしとと秋雨が降り続いている.久しぶりに傘をさして歩いてみたが,路傍にドングリが散らばる季節になっていたことを知る.

◇原稿依頼 —— 進化学会大会シンポジウム〈哲学はなぜ進化学の問題になるのか:生物学の哲学の多様な展開〉について,雑誌『遺伝』編集部から.別冊として,今大会の特集を組むというプラン.オーガナイザーと各演者に執筆依頼が届いているようだ./ 進化学会ニュース編集長の深津さんから,次号ニュースについての原稿依頼.とりあえず,事務局サイドの原稿は早急に用意しないといけないな.

 上記の「生物学哲学シンポジウム」については,すでにいくつかの意見が公開されている.たとえば,shorebird さんの参加記とか(9月2日付),土松さんの感想とか(8月30日付).こういう分野のシンポジウムを企画したのは進化学会では初めてのことなので,演じる方も聴く方もプラスマイナスさまざまな意見があるだろうと思う.

◇さらなる原稿依頼 —— 毎年恒例の数理統計研修(→広報)のテキスト作成依頼.10月13日までに提出.

◇本日の総歩数=8766歩[うち「しっかり歩数」=5000歩/47分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/−0.8%.


12 september 2006(火) ※ 今日はえすぱにょーる.オーカ?

◇午前5時起床.北の風,曇り.涼しい.日の出が遅くなってきたことを実感する.午前8時研究所着.今日は年休を取っているので,遅めの出勤.気温22.7度.小雨.予報通りだ.

◇えすぱにょーる日の始まり —— 年休日ではあるのだが,遊びほうけるわけではない.午前9時半から,高野台のJICA国際センターで,統計学講義.先週の続きだ.〈R〉を使っての統計分析についての講義と演習の続き.研修生たちのデータをできるだけ使って,間近に迫っている報告書づくりと発表会に向けた話をする.エクセルからCSVにエクスポートしてから R に読み込むのだが,エクセルのCSV作成機能が完全ではないようで,変なキャラクターが混ざったりする.エクスポートしたCSVファイルは,いったんエディターで開いて,中身を確認してからでないと,安心して R に受け渡せない.

 分散分析のあとの処理平均比較については,Holm や Bonferroni ではなく,Tukey HSD 法を用いるやり方を説明し,計算と作図について解説した.なかなか使い勝手のよい方法だと思う.作図がすぐできるのがいい.個別の研究テーマごとにコンサルタント業務にいそしむ.研修生の中には Statgraphics Plus とか Stata を使って統計分析をしている人もいる.講義ではコマンド・ベースの R の利用を前提としたので,やはり使い具合がそれほど快適ではなかったようだ(Rcmdrを使えばよかったのかもしれない).

—— 午後4時前に講義終了.記念写真を撮って,解散.まだ小雨が降り続いている.気温は相変わらず低めで,きっと20度代前半だろう.

◇注文〈R〉本 —— Julian James Faraway『Linear Models With R』(2004年8月12日刊行,Chapman and Hall / CRC[Texts in Statistical Science Series 63], ISBN:1584884258→著者サイト)./ Julian James Faraway『Extending the Linear Model With R : Generalized Linear, Mixed Effects and Nonparametric Regression Models』(2005年12月20日刊行,Chapman and Hall / CRC[Texts in Statistical Science Series 66], ISBN:158488424X→著者サイト).

◇新刊・近刊メモ —— 青木茂『書痴,戦時下の美術書を読む』(2006年8月刊行,平凡社,ISBN:4-582-83336-5).タイトル衝動買いというやつで./ 遠藤秀紀『遺体科学の挑戦』(2006年9月刊行,東京大学出版会,ISBN:4-13-063328-7→版元ページ).次号(2006年10月号)の『UP』で寿くんとの対談あり./ 大塚攻『カイアシ類:水平進化という戦略』(2006年9月刊行,NHK出版[NHKブックス1069],ISBN:4-14-091069-0).「水平進化」って・・・./ 川出由己『生物記号論:主体性の生物学』(2006年9月刊行,京都大学学術刊行会,ISBN:4-87698-691-6).以前,『生物科学』誌に投稿されていたような記憶が./ 日本直翅類学会(編)『バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑』(2006年9月10日刊行,北海道大学出版会,ISBN:4-8329-8161-7→版元ページ).サイフのヒモが極端に緩いと言われる蟲屋であっても,おいそれとは手が出ないんじゃないかなあ.でも,生体色そのままのカラー図版4800枚超と言われると惹かれる.

◇夜遅く,〈leeswijzer〉のカウンターが「19万」を越えた.

◇本日の総歩数=6754歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/+0.9%.


11 september 2006(月) ※ 未処理案件一掃処分日

◇午前5時起床.南風.曇り.24.3度.早朝出勤の帰路,いきなりざあざあと雨が降り出す.雷こそ鳴らなかったものの,雨足は強い.しかし,2時間ほどで止んで曇天に戻った.この時間帯,東京地方には一時的に大雨洪水警報が出ていたらしい.

◇しばらく不在していると,未処理案件の「用事箱」(メーラーの受信箱とか机上の書類とか)があふれかえることになる.放置しておくと,堆積岩と化すので,今日はそれらを一掃処分することにする.一件一件は実質的にあるいは心理的に“砂”だったり“礫”だったりするのだが,合体すればやっかいな“堆積岩”になる.深層で着実に“変成岩”化しつつある案件は,すぐにはどうしようもないけど.

 東大を今年の春にリタイアしたある植物分類学者は,出張不在中に届いた郵便物の“山”を見るたびに,中身を確認せずにすべてバサッと捨てていたと聞いている(すげー).ワタシもそうしたいな

◇午前のお掃除 —— 首都大学東京への出講に関わる「勤務を要しない日の届け出」(兼業関連)を出す.今月末の29日(金)〜30日(土)に再び南大沢へ./ 統計学会大会(仙台)の復命書と参加費立替払い請求書を出す./ 京都大学霊長類研究所への集中講義に伴う兼業申請書類の提出.出講日は10月16日(月)〜18日(水).ホストは遠藤秀紀さん.生物系統学の講義./ もう一件,信州大学理学部への集中講義に伴う兼業申請書類の提出.出講日は12月25日(月)〜28日(木).ホストは浅見崇比呂さん.こちらは生物系統学の講義.また旭会館での厳冬サバイバル生活だ./ 某助成金の申請書のチェック.共同参画者として./ 居室の引っ越し準備.向かいの別室を明け渡すための下準備.とにかくスペースをつくらないことには話にならんので.パートさんに働いていただく.まだまだ続くが,来週が山場だ.

◇昼休みのお掃除 —— 日本計量生物学会の査読に関する連絡あれこれ.この件はとりあえず一段落./ 組合からの総会司会の委嘱あり.その日(今月25日)は「突発的別件[O Cina!]」の発生により,時間的にムリになってしまったので断りのメールを出す./ 進化学会大会実行委員会から追加賞状が送られてきた.学会印を押印して郵送することになっている.未処理.

◇一休み —— ホルスト〈惑星[冥王星付き]〉:サイモン・ラトル指揮/ベルリン・フィル(EMI 0946-3-59382-2-7).原曲の「海王星」に続く,「冥王星」を新たに付け加えたバージョン.女性コーラスが入ったりして,「海王星」との滑らかな接続はできているようだ(違和感があるのは聞き慣れていないからだろう).2枚目のCDには「セレス」や「オシリス」と銘打たれた世界初演の〈小惑星〉曲集.冥王星が小惑星に“降格”になった今となっては,「冥王星」は1枚目から2枚目に“移籍”するのが妥当かもしれない.

◇午後1時半から1時間ほど,Alan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読(第22回目).Chapter 4:「Characteristic Functions」の最後の部分(pp. 156-158).変量の和に関する特性関数の性質.一意性(uniqueness)は必ずしも達成されず,元の変量が異なっていても,和の特性関数が一致することもある.一意性が補償される条件についての解説.続いて,Chapter 5:「Standard Distributions」に進む(pp. 163-165).本巻の中心となる部分で,代表的な確率分布をひとつずつ取り上げ,その諸性質を解説する.まずはじめに二項分布.

◇午後のお掃除 —— メーリングリストの登録・変更作業などたくさん.そして,遅れに遅れていた月例アナウンスを中旬になってやっと配信する.ごめんごめん./ 東大の教員会議は9月20日(水)の午後に開催.出席する予定.エコロジカル・セイフティー学講座の広報に関すること./ 読売新聞社の取材(『系統樹思考の世界』のことで)はその20日の午前中に本郷にて.カメラマンも来るそうだ.アヤシイ風体をしないといけないな.秋山仁さんは「数学者はアヤシクなければならない」と考えて,その通りにしたらしい(実兄談).アヤシクなろう./ 筑波大学の非常勤出講(数学科での形態測定学講義)の人事書類を書く.これも半ば堆積岩化しつつあった案件./ 中国行きは今月下旬(25日〜28日)に決定.私用での上海往復.

—— 午後4時過ぎ,すべての案件が処理され.用事箱はめでたく空っぽになった.ワタクシも空っぽ…….

◇夕方,曇りときどき晴れ.北の風が吹く.日中もやっと秋らしくなってきたか.

◇「アンパンマン」は結界 —— 北海道のワルイ御方から,ワルイ掲示板へのお誘いが:〈DGCメッセージボード !〉の「アンパンマンとは何者か?」スレッド .おい,これって「Theseus の船」だろー.うわ,【種】も出てくるかっ.結界,結界.

◇明日は朝から夕方まで,またまた JICA でえすぱにょーるな講義.estadistica にして,varianza にして,azar な1日.

◇夜,北からの涼しい風が吹き抜ける.蟲の音.今年はまだアオマツムシが気にならない.

◇本日の総歩数=6297歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.前回比=−0.1kg/−0.2%.


10 september 2006(日) ※ 夏の終わりのラタトゥイユ

◇午前5時半起床.曇りがちながら,いちおう晴れ.遠方は水蒸気に霞んでいるように見える.ここ1週間ほどは徹底的に蒸し暑いが,早朝から“スチーム”のかなたの遠景を見るとは.今朝も熱帯夜だったのだろう.

◇久しぶりに研究室に行く.午前9時の気温がもう27.5度もある.空は曇りからしだいに晴れ渡ってきた.先が思いやられる.旅の荷物の整理と机上の堆積物の仕分け.

◇ここにいないワタシ —— 先月12日のメキシコ出発からちょうどひと月が経った.スケジュール表を見て集計したところ,過去「30日」のうち,出張や公演で不在していた日数は実に「22日」に及んだ.「73%」の不在率だ.ウィークデー「20日」にかぎって言えば不在日数は「15日」なので,不在率は「75%」になる.異常だ,異常だ.ただごとではない.

 来週からしばらくは,徘徊せずにつくばに「いられる」だろう.

◇新刊 —— 沼波瓊音『意匠ひろひ』(2006年8月31日刊行,国書刊行会[知の自由人叢書4], ISBN:4-336-04718-9→目次版元ページ).この叢書は良い意味で“趣味的”でいいなあ.

◇かんかん照りになって気温上昇.南関東地方の予想最高気温は34度にもなるという.異常だ,異常だ.ただごとではない.

◇日曜のこまごま —— メーリングリストの月例アナウンスをすっかり失念していた……(なんと)./ 突然的外遊のお話.詳細は未定.血とか脳とか蛇とか犬とか蛙とか./ 読売新聞からの取材日程の詰め.先月末の申し入れの具体化./ 堆積仕事の消化について:名古屋大学の成績報告(遅れ);翻訳原稿のバクハツ的進捗?;居室の引っ越し準備など.

◇『系統樹思考の世界』初の活字書評 —— 大谷卓史「存在の分類学から生成の系統樹へ:変化と生成の世界を捉える思考」Bionics誌(オーム社),Vol. 3, no. 9, p. 82(2006年9月1日発行).坂本賢三『「分ける」こと「わかる」こと』(2006年6月10日刊行,講談社[学術文庫1767], ISBN:4-06-159767-1→目次)とのデュオ書評.大谷さんから掲載誌を送ってもらった.どうもありがとうございました.

◇突発的ラタトゥイユづくり —— 午後になってラタトゥイユをつくりはじめる.とはいえ,いつもの簡単レシピなので,情けないほど記すことがない.鍋につくってもらっているというのが正しいかもしれない.手順:タマネギ/ナス/ズッキーニ/パプリカ/完熟トマトを大きく乱切りする(鍋に合わせて数量を適宜調節).厚鍋を熱して,オリーブオイルを注ぐ.野菜を層にして敷き,岩塩を振りつつ,オリーブオイルをたらしつつ,野菜の層をどんどん積み重ねる.重しふたが押し上がるほどになったら,中火でふつふつと煮て,次いで弱火に.これでおしまい.あとは鍋が調理してくれる.

 水分は野菜から出てくるので心配ない.2〜3時間煮てできあがり.まったく手がかからない.そのままスープ風に食べてもよし,パスタに絡めてもよし,煮詰まってきたらカレーソースに変身させてもよし.大量にできて,しかも使いまわし可能で,とてもよろしい.夏向きなので,暑い季節にもっとつくる機会があったはずだが,今年は「不在率75%」なので,とてもとてもそんなヒマはなかった.

◇今日は久しぶりに,ゆるゆると“廃人生活”を楽しんでしまった.夜,某MLが閉鎖されるとの情報を得たので,その余波がこちらにやってくる可能性がある.しかし,心配するには及ばない.なぜって,“ご入会”以来,青龍刀をずっと研ぎ続けているのでね.

◇本日の総歩数=4032歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=+1.0kg/+1.1%.


9 september 2006(土) ※ 首都大学東京での前半戦(二日目)

◇午前5時に起床.曇り.夜半に雨が降ったようで,ホテルから見渡すペデストリアンや車道が濡れている.水蒸気が煙っているような.今日も蒸し暑い一日になるのかと思うと気が滅入る.

◇朝食後,荷造りして,午前9時半にホテルをチェックアウトする.首都大学東京の講義室に着いたのは10時前のこと.セッティングをこまごまと.今年の集中講義は,これまでよりも「R実習」にウェイトをかけているので,ディスプレイを示す時間が長い.初日は,大半の受講生の計算環境をそろえるために,Windows 機の R を用いてデモしたのだが,GUI preferences の制約があるため,表示フォントのサイズや種類が大教室には向かないことがわかった.教室の最後列からはフォントの判読ができないらしい.そこで,二日目は Mac の R を使ってのデモをすることにした.これだと十分な可読性が達成できる.

◇午前10時半に講義開始.最初に正規分布とそれから導出されるいくつかの確率分布について説明する.パラメトリック統計学の初歩ということで.確率密度関数の R による描画など.パラメータを変えたときの効果も.昼休みをはさんで,午後は実験計画と分散分析についての概論.実際に R を使っての実習が延々と続く.午後4時に講義終了.前半戦はおしまい.進捗としてはほぼ予定通りだ.今月末の後半戦では,線形モデルから一般化線形モデルへの拡張,多変量解析,そして計算機統計学について講義をする予定.

◇夕方になっても不快指数は高いままだ.ホテルに戻って大きな荷物を引き取り,帰路につく.旅から旅への巡業もやっと一段落だ.

◇“ノブヒロさん”は冷や汗 —— 京王多摩センター駅の啓文堂書店で平積みされていた本:加藤淳也著/木原浩勝・中山一朗原作『怪談新耳袋・ノブヒロさん』(2006年6月23日刊行,メディア・ファクトリー,ISBN:4-8401-1550-8).あー,お願いだからなじみのあるファースト・ネームをタイトルにしないでねー.後生だから本屋の店先の平積みコーナーで呼びかけないでねー.(汗)

本書は『新耳袋』原作の映画化による本とのこと.もちろん,タネ本よりはゾクゾクしない.さらに,もちろん,こっちの“ノブヒロ”さんは,憑いたり襲ったり飛び降りたりしません(人畜無害なり).全250ページの読了までに30分しかかからなかった(TX片道の乗車時間にも満たず).

◇つくばに帰り着いたのは午後7時.シメイのブルーとヴーヴ・クリコであらあらもうあきまへんな.〈トゥーランドット〉の打族諸氏は公演後それぞれに“廃人”と化しているらしい.家に引き蘢ったり,あるいは社会生活を営めなくなったり.そろそろワタクシも1週間のタイムラグの後に“廃人生活”を楽しもうかしら.社会復帰はそのあとで.

◇本日の総歩数=9345歩[うち「しっかり歩数」=2320歩/22分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


8 september 2006(金) ※ 首都大学東京での前半戦(初日)

◇午前5時起床.曇りのち小雨.ホテルの部屋で,今日の講義の準備をする.旅立つ前はばたばたしていて,配布資料pdfをまだ送っていなかった.メール添付で送ることにする.今日は,午前10時半からの講義開始なので,時間はまだ十分にあるだろう.

◇南大沢で下車して,霧雨の中を首都大学東京の理学部に向かう.朝からものすごく蒸し暑い.可知さんに挨拶して,配布資料などの段取りを整える.今月は R 師やら Perl 師の集中講義が詰め込まれているそうだ.講義室は,国際会館内の中会議室だ.受講生は30名ほどなので,いつもより多い.各自がパソコンを持参してくるのだが,きっと最初の“門前”のところで固まる学生もいるにちがいない.午前10時半から講義開始.

◇午前中いっぱいは例によって「統計学概論」の時間だ.しかし,例年とは異なり,脇道への過度の入り込みは控えて,本道を進む(疲れているのだろう,きっと).昼休み前に R の起動を確認してもらい,合わせて R のいくつかの設定(GUI preferences での日本語フォント指定,作業ディレクトリの設定など)とWindowsの設定(拡張子表示)をすませる.これで,午後の R 演習にスムーズに入れるだろう.

◇午後1時半から講義再開.Rを使っての簡単なプログラムを動かしてもらう.とはいえ,実際に30人の受講生にそれぞれ実習してもらうと,いろいろなトラブルが起こるので,時間はどんどん過ぎていく.R を動かす前のいくつかの設定がうまくできていないことが大半の原因だった.気がついたらもう午後4時の終了時刻だ.

◇牧野標本館を急襲して,新任のりピーにご挨拶.薬剤臭の漂う環境にもすでになじんでいるようだった.しかし,地震がきたら一巻の終わりでっせ.この館内レイアウトは.

◇備忘メモ —— T・ブザン著/佐藤哲訳『頭がよくなる本』(1982年12月刊行,東京図書,ISBN:4489000413).〈トゥーランドット〉のステリハの日に,『系統樹思考の世界』を読まれた団員の方から現物を見せてもらった.全編にわたって,知識の体系化のためのツールとして「樹」が描かれた本.ときどき,一般向けのビジネス書あるいは教養書で,「図形的思考」とか「グラフ的思考」を論じた本がある.そういう一冊かもしれない.

◇午後7時に,可知さんとホテル内の〈あしび〉にて会食.その後は部屋でごそごそしているうちに日が変わってしまう.明日は二日目の集中講義.

◇本日の総歩数=9170歩[うち「しっかり歩数」=2444歩/23分].全コース×|×.朝△|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


7 september 2006(木) ※ 仙台から八王子へと転戦する

◇午前4時半に起床.曇り空.遅れていたメールを書いたり,辞退メールを事務に送ったり,集中講義のプランを[ちょっとだけ]練ったりしているうちに時間が過ぎていく.予報では,朝から雨のはずだが,晴れ間がときどきのぞいたり.

◇つい感想をひとくさり:このホテルの朝食バイキングはコスト・パフォーマンスがとてもいいなあ.全体としても,立地条件(〈きゃりっこ亭〉への近さ)も居住性も及第点を上回っていた.あとで気がついたのだが,高速LANも各部屋に通っていたのね(うっかり見過ごす).

 と部屋でごそごそしているうちに午前10時を過ぎていた.チェックアウトして仙台駅へ.スターバックスで日録を書いたりとか.

◇12:26仙台発の「はやて12号」に乗車する.あれよあれよという間に,途中駅をすべてスルーして,大宮を通過し,14:08には東京駅に着いてしまった.東京まで2時間弱,つくばでも3時間かからないというのは理不尽な気がする.※心理的にはもっと「遠かった」はずだ.仙台は.

◇雨がぱらぱらと降っている.すぐに上がったのだが,カビが生えそうな湿気が渦巻いている.ちっとも9月らしくない.丸の内北口のオアゾ丸善で,日本語の〈R〉本を物色する.どんどん出てくるなあ. —— 赤間世紀・山口喜博『R による統計入門』(2006年8月30日刊行,技報堂出版,ISBN:4-7655-3335-2)/ 垂水共之・飯塚誠也『R /S-PLUS による統計解析入門』(2006年4月26日刊行,共立出版,ISBN:4-320-01807-9)/ 竹内俊彦『はじめての S-PLUS / R 言語プログラミング』(2005年11月25日刊行,オーム社,ISBN:4-274-06623-1).

◇中央線で新宿まで.京王線に乗り換えて,京王多摩センターに着いたのは午後4時のこと.蒸し暑さは変わらず.京王プラザホテル多摩にチェックインして,荷物を降ろす.三越の〈山志菜〉で辛味大根せいろそば.大根をせっせと擦りおろす.

◇旅から旅への巡業生活はまだ続く.明日は朝から夕方まで集中講義.

◇本日の総歩数=6589歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼△|夜△.前回比=未計測/未計測.


6 september 2006(水) ※ 二枚舌は塩味で厚切り炭火焼

◇午前5時起床.曇り.北の風,気温24.0度.次なる旅立ちの朝.

◇8時26分の TX 快速で東京に向かう.雲がしだいに厚くなってきたようだ.予報ではこれから雨になる.東京9:56発の「はやて13号」で仙台へ,途中停車がほとんどなく,2時間もかからないうちに仙台着11:36.早すぎ.

 車中では,窓ガラスを斜めに這う雨滴を見ながら,今日の講演準備.仙台に着く頃にちょうど仕上がった.30分のトークなので,スライドの分量としては適当だろう.統計学曼荼羅と体系学曼荼羅のショーになる.大サービスじゃん.

◇知らないうちに仙台駅の地下が新しくなっていた(改修されたのは昨年5月のことらしい).ちょうどお昼だったので,〈助〉(は「七」みっつ)で挨拶?代わりの牛タン定食.その後,今夜の投宿先であるホテル リッチフィールド仙台に大きな荷物を預けて,大会会場の東北大学川内キャンパスにタクシーで直行する.曇り空だが傘は手放せない.気温は低めで,おそらく20度を超えてはいないだろう.

◇講義棟Bで統計関連学会連合大会の参加受付をすませる.要旨集を見ると,絵に描いたような“数理統計学”の講演題目がずらずらと.何のかんのといって.統計学者コミュニティはけっこう大きいな.友隣社の展示ブースをひとまわりする.〈R〉の新刊が並んでいたがどれも「売約済み」だ.この学会でも「〈R〉イノチ」なユーザーが増えつつあるのだろうか.

◇今回のトークは,日本計量生物学会の創立25周年の記念シンポジウムという場での話だ.早めに会場に陣取ってスライドの確認や,台本のイメージづくりをしていたのだが,聴衆がどんどん入ってきて,午後3時15分の開始時点では,200名ほど収容できる部屋がほぼいっぱいになった.

シンポジウム〈生物統計学の社会的貢献:四半世紀の経験と今後の展望〉.最初に,マジで赤髪の丹後俊郎会長(オマケに抹茶色のジャケット — 初見の人はのけぞったらしい)が基調講演.続いて,ぼくのトーク:「進化生物学と統計科学:系統樹の推定をめぐって」.ほぼ時間内に高座を勤めることができたと思う.佐藤“しまりす”俊哉さんの疫学モデル研究史はとてもおもしろかった.考えてみると,佐藤さんのこういうレビュー講演は初めて聞いたかもしれない.

 午後5時半に早めに退出.外は雨が降っていた.タクシーを拾って,いったんホテルに戻ってチェックイン.

◇雨夜の国分町は〈きゃりっこ亭〉で —— 仙台に来ればココ! 日本酒のセレクション,とてもよし. この日も,山形の「一四代」をはじめ,「東北泉」,「田酒」,静岡の「磯自慢」などなど,吟醸酒系をいろいろ飲み進む.しかし,居座り時間はほんの3時間足らずだったので,計7人が座敷に根を生やした割りにはたいへんヘルシーだったかも(ウソつけっ).

—— ikushimo さん,河田研のみなさんをはじめ,「迎撃」していただいたみなさまに感謝です.次回はいつかな〜.

◇降りしきる雨の中,享楽の国分町を通り抜けてホテルに帰還.ごそごそしているうちに眠くなる.明日は,早くも次ぎなる八王子への転戦準備をしないといけない.今回の仙台での実質的滞在時間は,たった「24時間50分」という短さだ.

◇本日の総歩数=9406歩[うち「しっかり歩数」=1783歩/17分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=−0.7kg/−1.0%.


5 september 2006(火) ※ またまた旅支度に追われる

◇午前5時起床.晴れ.気温21.8度.南からの涼しい風.

◇いくつかの堆積仕事があるのだが,この「崩落」の具合はちょっとなあ…….とりあえず,明日,仙台での統計関連学会大会でのトークの準備をしないといけないなあ(なんだかやる気が湧いてこないが).さらに,仙台から八王子に転戦して,今週末には首都大学東京での生物統計学集中講義(前半戦)が待っている.これが先決か.ほんとうはデッドラインの迫っている別件(複数)があるんだけど,いやはや何ともはや.

 まずは仙台の宿を確保しなければならない(杜の都で路頭に迷うのは避けたい).これはいつものようにオンラインでちょちょいとすませる.お,国分町のいいロケーションに取れましたな.ということで,明日の夜の迎撃ヨロシクね(もちろん〈きゃ○っこ亭〉ね) —— と某氏に連絡しようと思ったら,“電波”がすでに飛んだようでアチラからメールがやってきた.ワルイお誘いだ.しかし,これでやっとトークの準備をしようかという気になってきた.

◇映画〈ダーウィンの悪夢〉の劇場公開 —— 前に試写会に行ったドキュメンタリー映画〈ダーウィンの悪夢〉の資料が送られてきた.この冬,渋谷のシネマライズでの上映を皮切りに,全国公開されるとのことだ.“ダーウィン”というキーワードが複層的に使われているのが興味深くもあり,また気になるところでもある.タンザニア〜♪

◇日中はやっぱり晴れて暑い.午前10時には30度近くまで気温が上がってきた.諸般,停滞気味でよろしくない.

「拷問」としてのシロフォンについて —— これまた〈トゥーランドット〉挿話のひとつなのだろう.ミクシィを歩いていたら,「シロホンに耐え」という投稿があった.おお,ピットでシロフォンの真ん前に座っていた 1st trombone の方じゃないか.狭い狭いピット内では,配置の自由度はほとんどない.とくに,大きな打楽器があると,たまたま近くに配置された奏者は思わぬ“被害”を被ることになる.

 この 1st Tb 奏者も,よもや右耳から十センチしか離れていないところで,シロフォンの強打攻撃を受けるとは想像していなかったのだろう.不幸なことにシロフォンの音板の高さと座ったときの耳の位置とがバッチリ水平一致してしまったというのが災厄の始まりだった.ぼくがフォルテで叩くたびに,倍音込みの衝撃波が右耳を直撃したそうだ.耳が痺れ,これでは演奏に支障があると危機意識をもった 1st Tb 氏は iPod のイヤホンを付けてみたそうだ.どれくらいの衝撃音があったかというと,ご本人の弁によれば,「右の耳から入った割ばしが割れて2本になった状態で左の耳から飛んでったって感じ」とのこと.これって,爪を剥いだり,焼け火箸を刺したりと同じく,ほとんど「拷問」ですよね.

 実際,第一幕の最後の六重唱のところでは,Musser の「勝負マレット」を振り回したので,音源から1メートルは離れていた他の打族が「脳天を突き抜けた」と表現したほどの音の塊がシロフォンから飛び散っていた.だから,“爆心地”により近い 1st Tb 氏にとってはほぼ“即死”だったのではと申し訳ないかぎりだ.ああ,ごめんなさい,ごめんなさい.

 そういうとんでもないストロークをしていたのだが,音板がすこーし凹んだだけですんだ(ちょっとは控えたのだろう[アレで?]).かつて,東大オケでアルバン・ベルクの〈三つの管弦楽曲〉をやったときは,シロフォンの音板にクレーターがいくつもできた.しかし,幸いにして,高橋美智子さんのように,バキッと叩き割ったような経験はまだない.

—— 「勝負マレット」といえば,第一幕冒頭(と第二幕の中ほど)でマンダリンが宣言するときの独奏旋律は Playwood の黒檀マレットを使った.いま思い出してみると,楓と紫檀と黒檀の三種類のマレットの使用頻度がもっとも高かった.木には木がふさわしい.

◇午後1時から1時間弱,〈形態測定学講義〉の第19回目.第7章「Ordination Methods」の続き(pp. 164-170).主成分分析の主成分が分散を最大化するリクツの説明.Anderson による主成分の分散(固有値)の差に関する検定の解説.こういう検定があるとは知らなかったな.あまり使われていないような気もするが.詳しくは,Donald F. Morrison 『Multivariate Statistical Methods, Third Edition』(1990年刊行,McGraw-Hill,ISBN:0-07-100815-2)の pp. 336-338 を参照のこと.

◇積み残し仕事をそのまま放置しつつ,明日からの出奔予定 —— 9月6日(水)〜7日(木)は統計関連学会大会(東北大学川内キャンパス,仙台),引き続き9月8日(金)〜9日(土)は首都大学東京での生物統計学講義(八王子)と巡業が続く.つくばに戻ってくるのは土曜の夜ということになる.最低限必要なものをカバンに詰めて旅支度は完了[とみなそう].

 仙台よりヒミツのメールが届く.国分町での“迎撃態勢”は整ったらしい.

 噺の準備とか,講義の用意は,車中&宿中&街中で.※ドロナワどころではない.

◇本日の総歩数=6167歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼−|夜○.前回比=0.0kg/+0.7%.


4 september 2006(月) ※ JICAえすぱにょーる講義の一日

◇午前5時起床.晴れ.気温21.8度.北寄りの風.朝夕は秋めいてきたが,日中はまだ夏がしがみついている.

◇先週末に全力を尽くして〈姫君〉にお仕え申し上げた後遺症か,気力体力ともに“ほどけている”心地がする.しかし,今日は,朝から夕方まで JICA での統計学講義が入っているので,ほどけた部分は結び直しておかないといけない.

◇午前9時半から,高野台のJICA国際センターで講義開始.まずはじめに,実験の進捗状況を課題ごとに訊き,実験目的と統計分析について話をする.これで午前中はおしまい.午後は〈R〉を用いた分散分析と多重検定について話をした.例年のことだが,〈R〉を使う前のパソコンの設定に時間を取られた.キーボードと文字の配列がずれているので,よけいにたいへん.今日はテスト・データを用いての話だったが,次回(来週)の講義では,研修生自身が取ったデータを用いての演習&コンサルティングになるもよう.

◇受講生であるキューバ特設コースの研修員は,帰国が予定よりも1ヶ月も早くなったそうで,報告書づくりが慌ただしくなっている.聞いたところでは,帰国の便の確保もたいへんらしく,[当然]入国を認めないアメリカを回避して,カナダ経由でキューバに帰るという遠回りなコースらしい.

—— 午後4時過ぎに今日の講義は終了した.紫外線の強そうな日射しのもと,研究所にいったん戻り,堆積仕事にぼーぜんとして,そのまま帰宅(おいっ).夕方になって,また“ほどけてきた”ようだ.

◇いただいた本(ありがとうございます) —— 菊地直樹『蘇るコウノトリ:野生復帰から地域再生へ』(2006年8月18日刊行,東京大学出版会,ISBN:4-13-063326-0→目次)./ 栃内新・左巻健男(編著)『新しい高校生物の教科書』(2006年1月20日刊行,講談社[ブルーバックスB1507], ISBN:4-06-257507-8).

◇〈トゥーランドット〉後日譚 —— 大きな演奏会が開かれると,その反響は真っ先にインターネットに見えてくる.いろいろ探針していくと,mixi でのやりとり(新宿区民オペラ関係者を含む informal サークル)がもっとも敏感に反応しているようだ(当たり前か).誰も寝てはならないはずの三次会で爆睡していた“マエストロ”の話とか.哀れな[はずの]リューちゃんに“うさちゃん耳”が付いていたりとか……(ううむ).コミュまでできていたりする.発言したり,されたり.

◇本日の総歩数=7790歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.8kg/+0.4%.


3 september 2006(日) ※ 公演二日目は上海魔窟に融けゆく

◇午前5時起き.晴れ.気温19.9度.おお,ついに最低気温が20度を下回るようになったか.

◇今日は,〈トゥーランドット〉公演の二日目だ.昨日は,ステリハGPと本番の連続だったが,今日は本番のみなので多少はラクだ.しかし,緊張感が日をまたぐというのは,格別の疲労感が漂う.本番に次ぐ本番というのは,ひょっとしたら大学時代のサマーコンサート以来のことかもしれない.

◇午前10時18分の TX 区間快速で行き慣れた東新宿に向かう.正午前にオケ・ピットに入り,しばし「プチ難所」のおさらい.「最大難所」は独唱アリアやバンダ演奏に微妙に絡むパッセージだが,それは出たとこ勝負で何とかするしかない(お慈悲を!).それに比べて,「プチ難所」は練習すればそれだけミスが少なくなる[気がする].最終的にマレット選択が確定したので,譜面に書き込む.

◇リハーサル開始.昨日よりはさらりと進み,ところどころ音出し.あとはコメントのみ.1時間弱でおしまい.午後1時には開場する.今日の本番は午後2時開演だ.

◇開場と同時に客が席を次々に埋めていく.昨日と同じくらいの聴衆が集まったようだが,ピットから見るかぎり,2階の埋まり具合が昨日よりも少ないようだ.1200〜1300というところだろう.それでも,十分な集客だ.

◇午後2時に公演開始 —— 第一幕の最後のフォルテのところで“青龍刀”の誤爆がやや多かったかな(滝汗).第二幕では,バンダの旋律に合わせての音符を埋めるという最大難所のひとつがあるが,バンダの入りが遅れたらしく,死にそうになったが,なんとかリカバーできた.風鐸の響きは今日の方がよかったかも.第三幕は昨日と同程度かな.

—— カーテンコールの後,午後5時半に幕となった.ロビーで,本日のリュー役だった岩崎由美恵さんと記念撮影したり,サインをもらったり(みーはー).この3日間はとても長い日が続いたが,それもこれにてすべておしまいだ.お疲れさん,お疲れさん.関係者一同はこのあと文化センター地下で懇親会をすることになっているが,人口密度がきわめて高そうなので,打族は別行動をとる.

◇〈トゥーランドット〉公演の終了後,かねてからの打合せ通り,打族の面々で打ち上げとして向かったのが,歌舞伎町ウラ(というか深奥部)にある上海料理店〈上海小吃〉. 「その筋」では評判の店だそうだ.とど君はよくぞこういう“魔窟”を見つけたものだ.かの九龍城もかくやと思われる,とても暗くて狭い路地の中に入り込むと,店の入り口がある.ずずっと奥に入ると,そこはすでに日本ではない!

 どーして「血の塊」(ふるふるしていてうまかった.新鮮なレバーと勘違いしていたが,あとで判明)とか,「豚の脳みそ」(←“しわ”まで克明に……)とか,「鳩の肉」(くちばし付きのアタマを齧ったのは先導者とど君)とかが次から次へと運ばれてくるのか! ワインのようでワインでない「長城」もあり.ピンク色の菜っぱとか,蟹もいろいろ.店の奥はきっと上海の裏町とつながっているにちがいない. 蛇の肉やら犬鍋もあるそうだ.タニシもありまっせ.蛙の炒め物も骨までぼりぼりと.いろんな脳みそもあるらしい(お願いだから牛の脳みそだけは出さないでね).

 店を切り盛りしている女主人は客のさばき方がなかなかうまい.ただし,日本語が通じるとはかぎらない.注文を受けるたびに,路地に出て,2階の厨房に向かって「★◇◎! ▲○※!〜」と甲高い声でオーダーを叫んでいる.ああ,ここは日本ではないぞ.そもそも万人が店にたどりつけるかどうかも定かではない.店を出ればそこはあやしげな客引きがたむろする歓楽街だ. 味−−とてもよろし.トゥーランドット姫もリューもピン/ポン/パンも大喜び. 打族はここで最後にはじける.ドーン!

◇数ヶ月に及んだ〈トゥーランドット〉大作戦も,公演が終わったのでこれにて任務完了とあいなった.練習から本番にいたるまでの過程はとても濃密なものがあったと思う.エキストラ出演は正規団員よりもコミットする時間も短く,深さもまた浅いので,直前に向かっての“短期決戦”型参加になるのはしかたがないだろう.実際,今回の公演では本番で使う楽器がすべてそろったのは2週間前のことだった.打族のみなさんはそれぞれに全力を出し切った.ぼくはぼくで,『系統樹の世界』の内容に関わるきわめて重要なヒントをこの作品から得ることができた.公演参加の副産物としては十分過ぎたと思う.

 また,探索の途上,ドイツの古書店経由でたまたま手に入った半世紀前の総譜は,練習から本番にいたるまで欠かさず持ち歩いた.結局,いまだにこの総譜の旧所蔵者(指揮者であることはまちがいなさそうだ)が誰なのかは特定できていない.しかし,自分のもっていた総譜が半世紀後の極東での公演本番のオケ・ピットにまでもちこまれるとは,すでに物故しているにちがいない彼には思いもよらないことではなかっただろうか.

◇午後9時過ぎに店を出る.ほぼパーフェクトに燃え尽きて,つくばにたどり着いたのは午後11時半のこと.誰でも寝なくてはならぬ.明日は朝から夕方まで,JICAの統計学講義がある.

◇本日の総歩数=7295歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.2kg/−0.7%.


2 september 2006(土) ※ 公演初日はすっきり秋晴れの新宿

◇午前5時起床.ねむた過ぎ.よく晴れて,秋めいた風が通り抜ける.今日は,新宿区民オペラ〈トゥーランドット〉公演の初日だ.

◇日が昇るとともに暑くなってきた.しかし,空の底が深いので,もう夏空ではない.午前11時18分の TX 区間快速で東新宿へ.昼過ぎに新宿文化センターのオーケストラ・ピットに入る.午後2時からは,明日3日の独唱陣をそろえてのステージ・リハーサルがある.昼食のおにぎりをもってきたのだが,そわそわざわざわしていて飯喰うどころではない.そのままステリハに突入する.

 それ相応のぴりぴり感があるのがステリハだが,オペラのような大規模な公演になると,ステージまわりだけではなく,照明や音響そして字幕も含めた進行の調整が必要になる.オペラの日本語字幕を舞台カーテンの最上段に投影するとは知らなかった.進行に同期させてパソコンで字幕を流すのだが,セリフの切り替えは手作業でやる.それには〈トゥーランドット〉の歌詞に通じた担当者が張り付く必要がある.たいへんなことだ.

◇オケ・ピットに入ると客席からはせいぜい上半身しか見えないので,下の方ではいろいろな“物品”が散乱していたりする.ペットボトルとかお菓子とか食料が散らばったり,着替えやら持ち物が店開きしていたりする.ときどき,休憩時間にピットを覗きにくる人がいるが,あまり“美しい”ものではないと思う.※「生活の場」みたいなもんだし.

◇午後4時前にステリハが終わった.公演は午後6時からだから,2時間も余裕がある.おにぎりを喰っていたら,晩飯を喰いに行こうということになった.いっぺんに「2食」か,とひるんだのだが,やっぱり食べに行くことにした.近くの中華料理屋で皿うどんを頼んだら,これでもかというほどの量が運ばれてきた.全部平らげたらかなり苦しくなった.※身から出た錆だ.

◇午後5時前に戻ったら,どうしたことか開場前の客の行列が延々と続いている.ひょっとして予想以上に多くのチケットが売れたのだろうか.このハコは1800名は入ると聞いている.どれくらい客席が埋まるかはピットから見ればすぐにわかることだ.

 午後5時の開場と同時にどんどん客が入ってきた.むかし若かった頃は開場時刻になると緊張が高まったものだが,さすがに今では開き直るというか,“闘志”が湧いてくる.はたして皿うどんパワーが炸裂するか! ほどなく2階席までほぼ埋まったようだ,1400〜1500席は埋まったのではないだろうか.予想以上の入りだ.

◇午後6時,いよいよ公演開始 —— いったん始まってしまえば,もうこっちのものだ.「アタマ」が働く前にもう「手」が出ているという感じ.第一幕:青龍刀がすべってミスがいくつか(汗).最後の六重唱の盛り上がりのところで,音板が多少へっこんだかもしれない…….第二幕:大きなミスはなかったと思うが,「風鐸」の聞こえ具合がやや心配(倍音がびんびん飛んだらどうしましょ).第三幕もまあこんなもんでしょ.いずれの幕も「最大難所」がクリアできたのでよしとしよう.午後8時半にカーテンコールとアンコール(amor の大合唱)で初日は幕となった.公演後のロビーは独唱者たちを取り巻く混雑でごった返したそうだ.

 しかし,そんなことよりも今日は疲れ果てたので,早く帰って寝たいな.

◇つくばにたどり着いたのは午後11時を回っていた.なんという長時間活動か.起きて乗って叩いて乗って眠る.実に最節約的なシンプル・ライフではないか.

◇本日の総歩数=6535歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.前回比=−0.9kg/+0.5%.


1 september 2006(金) ※ 〈トゥーランドット〉ステ・リハ日

◇午前5時半に起床.疲れはとれず,うつらうつらと.曇りのち小雨.気温21.3度.北の風が入って涼しい.雨足がしだいに強まってきた.今日は夏季休暇日だが,のんびり休んでいられるわけではない.

◇午前中は,貸し倉庫に出向いて,ぼくのマリンバ(YAMAHA 400C)から,トゥーランドットの演奏に必要な低音部の音板を数枚引き抜く.借りたシロフォンでは,バス・シロフォンのいくつかの音が足りないので,窮余の策としてとりあえず音板だけでも持参してあとは何とかしよう.帰りに,上横場のホームセンターでフェルトとかウレタンとか材料一式を購入.帰宅後,音板の台をつくろうとするものの,なかなかうまくできない.

もともと共鳴管がないと響かないのは重々承知の上だ.しかし,今回は,マリンバとしてではなく,シロフォンとしての使用を考えているので,何とかならないものかとあれこれ試行錯誤する.何カ所かは音板をぶら下げて,「風鐸」のように叩けばいいことがわかった.台の上に置いたときでも,硬いマレットで叩けばそれなりの音が出ることもわかった.これで,ほとんどの演奏箇所はカバーできる.あとは,実際に新宿文化センターのオーケストラ・ピットに楽器を配置してから考えることにしよう.

◇午後3時18分の TX 区間快速に乗る.東新宿に着いたのは午後4時過ぎのこと.降りしきる雨の中を新宿文化センターの大ホールに到着したときには,もう舞台セッティングが始まっていた.チャイニーズ・ゴングとグロッケンシュピール&チューブラー・ベルは壇上で,それ以外はピットに入るそうだ.演奏者密度はとても高いがオペラだとしかたがない.ピットの銅鑼の他に,舞台で名を秘す王子カラフが叩く44インチの大きな銅鑼が別に用意されている.舞台の右側は銅鑼やゴングだらけだ.

狭いピット内で,ひしめく楽器と人をどのように最適配置すればいいのかは「早い者勝ち」で決まる.打楽器の場合もそれは変わりがない.これだけの“コンテンツ”がよくぞ詰まったと思えるほどだ.ただし,今までの練習場でのゆったり配置とはぜんぜん勝手がちがう.パイプ・オルガンの真下に置かれたグロッケンシュピール&チューブラー・ベルは,さしずめ「母屋」に対する「離れ」みたいなものかもしれない.ピットのすぐ上にゴングの“壁”が聳え立っている.勢い余って,ゴングの“壁”がピット内に崩落してきたら,一巻の終わりですな…….

◇午後6時から,明日9月2日(土)のキャストでのステージ・リハーサルが始まった.基本的には通しなので.まちがおうがオチようがどんどん進んでいく(汗).楽器の位置関係が今までとはちがうので,聞こえるはずの旋律が聞こえなかったり,その逆だったりする.午後9時半に終わったときには相当に疲弊していた.

◇外に出たら雨はもう上がっていて,涼しい風が吹いている.天気はこのまま回復するのだろう.つくばに帰り着いたのは午後11時過ぎ.明日からは〈本番〉が二日続くので,気力と体力がいやが上にも要求される.

◇本日の総歩数=13548歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.7kg/−0.9%.


--- het eind van dagboek ---