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日録2006年3月


31 maart 2006(金) ※ 年度最後は砂嵐が轟々と吹く

◇午前5時に目が覚める.数日間いなかったたげなのに,夜明けが早くなっていることがはっきりわかる.気温2.7度.冷え込みは強め.しかし,新潟慣れしているので,この程度なら許せる.

◇久しぶりに研究所に早朝出勤してみると,農林団地の桜並木が三分咲きくらいになっている.この週末はまだ早いが,来週末あたりは満開になって団体客の花見やら大型バスの乗り入れがあるにちがいない(勤務どころではないな,きっと).辛夷の花はそろそろ散りはじめるだろう.

◇案の定,いろいろの用件が机の上に(パソコンの中に)堆積していた.どんどんこなさないと,マクラを高くして新年度を迎えることができない.

◇到着していた雑誌 —— 岩波書店の『科学』の4月号(76巻4号,2006年4月1日発行,岩波書店→目次).特集は〈湯川・朝永生誕100年〉.てっきり5月号掲載だと思っていた記事が,今月号に載っていた:三中信宏「心にのこる1冊:ガレス・ネルソン,ノーマン・プラトニック著『生物体系学と生物地理学』」(pp. 438-439).

◇到着していた新刊 —— デイヴィッド・サルツブルグ『統計学を拓いた異才たち:経験則から科学へ進展した一世紀』(2006年3月23日刊行,日本経済新聞社,ISBN:4-532-35194-4→目次).新潟の“虎の穴”のお師匠さまは,本訳書をすでにゲットしていたばかりか,メモ付きで読了したとのこと.京大・医のS藤さんは訳文のクォリティを心配していたが,お師匠さまのお話では問題ないとのことです.ぼくもさっそく読んでみよう.※その前に討伐すべき書評“トド”本が何冊かあるのだけれど./ ジョルジュ・カンギレム『生命科学の歴史:イデオロギーと合理性』(2006年3月10日刊行,法政大学出版局[叢書ウニベルタシス839], ISBN:4-588-00839-0).フランスの進化思想史の流れが汲み取れるかな.

◇それにしても,大学での「せくはら」,あまりに多すぎませんか —— 今月だけでも,北大の沢口俊之教授(3月22日付解雇→読売新聞報道)とか筑波大の山下浩助教授(3月13日付解雇)とか.本やらマスコミで知っている「人物」たちの所業にしてはお粗末.発生件数そのものが増えているのか,それとも発生率は変わらないまま露見率がアップしているのか.

[訂正追記]沢口元教授の場合は「正しい(意味での)学内アカハラ」で,山下元助教授の場合は大学外での“淫行”での逮捕でした.セクハラよりなお悪い.※いずれにせよ…….

◇来年度の非常勤出講に関わる就業規則の変更について —— 事務から連絡あり.明日からの非公務員化にともない,就業規則も変更される.これまでは大学への非常勤出講は依頼出張ということで,無給ボランティアとしてのみ教えることが可能だった.また,出張依頼書についても複数大学での委嘱期間の重複は認めないというような制約があった.新年度からは,この制度が緩和され,期間の重複もオーケー,依頼出張ではなく「兼業」としての出講も大丈夫ということになるらしい.ただし,兼業の場合,本務先の給料を差し引いた上で,出向先からの給料をもらうということになる(有給休暇をとって行くというのはダメらしい)ので,事前に“シミュレーション”をした上で,依頼出張にするかそれとも兼業にするかを自分で判断しなければならないようだ.そのシミュレーションに際しては,基本給の差し引き分が期末手当など一時金の額に響くのかどうかという点が重要だ.これについては,農水省系独法の間の調整がまだ決着していないそうなので,4月にもつれこむのは確かだろう.

—— いずれにせよ,兼業規定が緩和されたのは喜ばしいことだ.

◇午後は「砂嵐」が轟々と吹き荒れる.雨の降らないこの季節のつくばではときどきあることだ.遠景は黄色くかすみ,畑地や圃場から舞い上がった土煙で,いつもはくっきりしている筑波山の稜線がまったく見えない.晴れ上がって気温は高いと思うが,窓を開けてまで確認する勇気はない.ひたすら締め切って砂塵の侵入を防ぐしかない.外歩きなどもってのほか.

◇年度末は所内で異動の挨拶回りがはじまっている.今日付けで去っていく人たちは新しい職場でがんばってください.

◇午後のこまごま雑用 —— 転居届(人事と厚生,別々に).ぐわー,まだ出してへんかったー.「転居日を証明するもの」.そんなもん,あるかあ?(またもや書類地獄)/ 新潟出張の復命書.はいはい,出します出します./ 物品廃棄手続き.未了./ 他にもいくつか積み残しがあるはずだが,それが何かさえ定かではない…….

◇気分的にまだ“旅行モード”が続いているようで,日が陰ってくると“そわそわ”してしかたがない.そういえば内野の「鶴の友」をけっきょく呑まなかったなあとか,「へぎそば」も逃したかとか,そういう食慾の権化となりつつ,日は暮れ行く.砂嵐がややおさまった夕刻に帰路につく.自動車は砂埃でざらざら,路傍には幾重もの砂丘が伸び,鼻がぐすぐす,目はしょぼしょぼ.帰るべえ,帰るべえ.

◇明日,年度が変わると新たな「雑用津波」が襲来することになっている.エイプリル・フールではなく.

◇本日の総歩数=6438歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.前回比=+1.1kg/0.0%.※久しぶりに計測したら,このていたらく.旅先でのクォリティの高い食生活による“越後肥満”かも.


30 maart 2006(木) ※ 統計“虎の穴”寺子屋,2日目に突入

◇うっかり午前6時起床まで寝込んでしまう(深酒禁物).あわてて起きて,発表準備に没入.フロントに重い荷物の発送を依頼する.その後,朝食とチェックアウト.天気は回復しつつあるようだが,まだ風が冷たい.タクシーで新潟会館へ向かう.開始定刻に10分ほど遅れて入室.

◇〈統計シューレ〉2日目 —— 和室の“寺子屋”は昨日と同じ席順だ.入室したときには,すでに「空間統計」な匍匐前進が始まっていた.平尾聡秀さんは,Gaussian Random Field(GRF)による捕食者-被食者系の空間統計モデリングという,即死的テーマに取り組んでいることがわかった.この話題は初めて聞くので,スポンジ状態になる.樹木に巣食う寄生者の空間分布を考えるとき,樹木間にバラツキがなければ単純なモデルですむ.しかし,樹木間にバラツキがあったり,さらに空間相関のような現象を仮定しなければならないときには,一転してたいへんなことになる.空間相関なしのバラツキのみを考えるときにはglmmでやっていけるのだが,空間相関を考慮したいときはGRFに基づく「一般化線形空間モデル(glsm)」を構築するのだそうだ(ぎょえー).実際に〈R〉でやるときには,geoRglm なるパッケージを召還する(こんな世界があるんですかっ).クリッギング(binom.krige.bayes)だのが出てきて「石」になる.

続く,鈴木牧さん(東大・農生・保全生物)は,シカ個体群の空間動態を「糞」の分布から推定するという話題提供だった.点として得られる分布情報を空間的に補間しながら,空間モデリングをするという.またも,「pois.krige.bayes」だの「kernel density estimation」だのというおそろしげな話題に突入する.幾何学的形態測定学の変形近似に近い話を“空間”の名を借りてやっているのだと感じた.

—— 平尾さんも鈴木さんも,間瀬茂・武田純『空間データモデリング:空間統計学の応用』(2001年5月刊行,共立出版[データサイエンス・シリーズ], ISBN:432012006X)という“毛語録”を振り回していた(赤くはなかったが).ううむ,“空間”,侮るべからず.

◇“空間”の次は“系統”だっ —— 田辺晶史さん(東北大)は,最尤系統推定における分子進化モデル選択のドロヌマにみんなを引きずり込んだ.分子配列データからどのようにして分子進化モデルを選択するか,必要なサンプル数はいくつか,“分子時計”モデルは改良できるか.etc.…….そりゃあ逝きますって(1時間半しゃべるし).続いて,ぼくが系統推定におけるパラメトリック推定とノンパラメトリック推定についての紙芝居を20分ほどお囃子代わりに上演して,午後1時過ぎにすべてのコースを完了することができた.

—— いやいや,お疲れさまでしたなあ.>皆の衆.

◇今回の統計合宿に参加したもうひとつの目的は,オーム社から企画が走りつつある〈R〉統計学本の執筆者をリクルートすることだった.参加者の話題をうまく調整して,目次案をつくるのがまずはじめの仕事になる.

◇解散後,新潟駅に向かい,ランチしつつメールをチェックし,日録をアップする.午後3時13分発の「Maxとき332号」に乗りこむ.内陸に近づくに連れて雪空がしだいに広がり,越後湯沢では吹雪.しかし,上野に着いたら晴れていた.南千住で TX 快速に乗ってつくばにたどり着いたのは,午後6時過ぎだった.

◇車中読書 —— デヴィッド・タカーチ『生物多様性という名の革命』(2006年3月20日刊行,日経BP,ISBN:4-8222-4486-5→目次)をさらに読み進む.長大な第4章「多様性の探究:サイエンススタディーズと環境史の出会い」は,“ポモ”度がめっちゃ高い.わざとそう言っているのか,ほんとうにそう信じているのかをはっきり言わないのは相当に重症ですね.もちろん,生物多様性の推進者たちの「証言」がコンパイルされているという点では資料的価値が高い本だ.だから,読む側としては,いちおう〈抗ポストモダン薬〉を服用した上で(アラン・ソーカルでもジャン・ブリクモンでもジャック・ブーヴレスでも),タカーチ本を開くのが精神衛生上はきっと望ましいでしょう.新妻さんも,訳者あとがきで「違和感が最後まで払拭できていないことを告白しておかねばならない」(p. 405)なんて上品なことを言ってないで,「こんなのはしょせんダメですね」と冷たく言い捨てるべきだったと思う.※それでもなお,読むべき本であることには変わりないのだが.

◇統計行脚の旅で磨り減り,最後に“ポモ(po-mo)”に取り憑かれたので,もうぐでぐでで…….でも,明日は年度末の平常営業日だ.

◇本日の総歩数=5458歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


29 maart 2006(水) ※ “統計シューレ”初日は雪空のもとに

◇午前5時起床.寒い寒い寒い.カーテンの隙間から冷たい空気が這い降りる.

◇未明のこまごま —— ホテルから発送する荷物をダンボール箱に詰める./ 今日から始まる〈統計シューレ2006〉の発表準備.系統推定に関わる「モデル選択問題」の“間奏”を演じるという役回りだ.主演は ikushimo さんなので,よろしく.わたくしのは間の手(あるいはお囃子)を適宜さしはさむことになります.pdf のプレゼン素材を切り貼りして調理する.1時間あまりでだいたい仕上がる.

◇午前7時にロビーで朝食バイキング.生態学会大会の“大波”が過ぎ去ったあとなので,とても空いている.外は暗い雪空で,ときどき晴れ間がのぞくこともあるが,予報では今日から明日にかけては季節はずれの冬型気圧配置で,最高気温は6度の予想だ.昨日に比べると日中で15度も低いことになる.この落差はいったい.

◇時間がまだあったので,またまた〈シャモニー〉へ.朝から冷たいダッチ・コーヒー「氷の女王」に凍りつく(予想通り,氷そのものが珈琲だった).ホテルにもどって,タクシーで新潟会館に向かう.

◇〈統計シューレ〉1日目 —— 午前9時半から始まる.今回の合宿の大きな柱は,一般化混合線形モデル(glmm)・空間モデル・系統推定論の三つだ.一番手は,飯島勇人(北大・造林)さんの倒木上の実生の生残率のモデル化について.〈R〉の glm / glmmML / glmmPQL を用いての線形モデリング.glmmML ではただ一つのランダム効果しか考慮できないが,glmmPQL だと複数個のランダム効果があっても大丈夫とのこと.ただし,glm と glmmML は“正しい尤度”を計算するが,glmmPQL は“疑似尤度”を出すので注意せよとのグルのお言葉.

overdispersion と underdispersion の figurative な説明:ある花に複数の種子が形成されるとき,花ごとに種子がすべて形成されるのとすべて形成されない場合があるとき,種子形成率の分散は過度に大きくなる(overdispersion).一方,花ごとにたとえば必ず半数の種子が形成されるというような場合は,種子形成率の分散は逆に過度に小さくなる(underdispersion).

◇途中,アラレが降ってきたりするとんでもない空模様.

◇続いて,齋藤大地さん(科博)による GLMM とモデル平均化の話題提供.glmmPQL を用いて,鳥の繁殖に関するデータをモデル化する.ある要因を固定効果(fixed effect)とみなすか,それともランダム効果(random effect)とみなすかについては判断が難しい場合があるという意見が出る.サンプル数が少ない場合の「AICc」は「−2・ln L+2・パラメータ数×n/(n−k−1)」(n:サンプル数;k:パラメータ数)によって求める.1パラメータあたり「40サンプル」というのが見極めの境界ラインらしい.

◇森本元さん(立教大・理)さん.ルリビタキの「けんか」データを glmm で解析する.ペアのデータをどのように「因子」として扱うかで議論が続く.

◇昼食に出る.ものすごく風が強く,吹きさらされるままに店を探して徘徊する.

◇午後2時から,山口典之さん(立教大・理)さんによる,ハイガシラゴウシュウマルハシの性比調節に関するトーク.ランダム要因をどのようにモデル化するのかという問題.ヘルパー集団の効果を組み込むやり方が問題らしい.一般化混合線形モデルの実際の使用にあたっては,モデル式の構築にそうとう考えをめぐらさないとダメみたいだ.

◇安元暁子さん(九大・理)は,ハマカンゾウとキスゲのF1形成に関する話だった.固定効果とランダム効果の割り付け方について.続く,伊東宏樹さん(森林総研・関西)は,パス解析(path analysis)を用いたササ群落へのシカによる食害効果のモデリング.〈R〉の sem と AMOS を用いて,構造方程式モデリングと共分散構造分析.Bollen-Stein bootstrap という方法があることを知る.Bill Shipley「Cause and Correlation in Biology」(ISBN:0-521-52921-2)というパス解析の新しい教科書が出ていることを知った.奥田将己さん(総研大)は,裸地におけるコケ群落の植生分布についての geostatistics を話題提供.

◇夕方,再度の山口典之さん(立教大・理)さんによる,パラメトリック・ブーツストラップの〈R〉によるやり方について.解決はできなかったか.

◇夕方6時をまわり,初日の合宿はこれにて終了.参加者全員で駅前の〈船栄〉に移動し,ちょっとだいぶ呑む.飲み屋の支払いにおける〈リサンプリング法〉 —— 1) 「ジャックナイフ法」:支払い予定者がランダムに飲み屋から逃亡することにより,残された者たちが会計を折半する("delete-one jackknife"ならばいいが,"delete-half"だと負担と怨嗟の声は小さくないだろう);2)「ブーツストラップ法」:重複を許すリサンプリングにより,特定個人が複数人数分の支払いをする(当然,払わなくてもいい人が出てくる).より複雑精緻な multiscale bootstrap をやるという選択肢もあり得るが,アルコールのまわった頭でそこまで考えつくはずがない.フトコロが切羽詰まった場合はジャックナイフ,ドキドキしたいならブーツストラップがいいかな.

終わって外に出たら,地吹雪のように雪が路面に渦巻いていた.風冷たすぎ.万代橋をわたりつつ,凍った.〈酒房いずみや〉に逃げこんで,内野・塩川酒造の〈濁り酒〉と〈麒麟山・越の山風〉を賞味する.午後11時過ぎにホテルにたどり着く.

◇こりゃ,たまらん.すぐ寝ましょっ.明日はシューレの2日目.

◇本日の総歩数=13873歩[うち「しっかり歩数」=4237歩/34分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


28 maart 2006(火) ※ 朝は一杯のコロンビア・スプレモから

◇気がつけば午前6時になろうとしていた.おお,寝過ごしだ.こりゃいかん.曇り and/or 雨の天気予報だったのに,とてもよい天気だ.

目覚めの珈琲は,ホテルのすぐ近くにある〈シャモニー〉(上大川前の本店)にて,コロンビア・スプレモのストレートを.この本店は午前7時から店を開けている.カフェインの吸収とともに,しだいにアタマが目覚めてくる.寝起きの論文読み:Chris Tuffley and Mike Steel (1997), Links between maximum likelihood and maximum parsimony under a simple model of site substitution. Bulletin of Mathematical Biology, 59(3): 581-603.あるツリーの最節約スコア(樹長)が,グラフ理論の「Menger's Theorem」の系として導出できるという話.一般的な r-state model のもとでのツリーの樹長に関する定理がこの論文では証明されている.一般マルコフ過程のもとでの最尤スコアのセクションはこれから.主要結果は,Charles Semple and Mike Steel『Phylogenetics』(2003年,Oxford University Press,ISBN:0-19-850942-1→目次)に要約されているのだが,その元論文だ.

◇ホテルに戻り,朝食をすませたら,もう10時を過ぎている〜.さて,さすがにそろそろ朱鷺メッセに向かわないと.外は暖かくてコートはもう不要だ.

—— 会場に着いてみると,人口密度は明らかに低下している.どの学会大会でもそうだが,日程最終日ともなると閑散として,“宴の後”の雰囲気が色濃く漂う.ロビーで翻訳原稿に齧りついていたら,さっそくトラップされてしまい,アカデミックな雰囲気とはほど遠く,朱鷺メッセに隣接する〈ときめきラーメン万代島〉の〈伝昔中華そば・港〉で岩のりラーメンを食べることになった.その後は,それぞれがほとんど解散状態なので(自由集会がまだあるのに),ぼくもついでに会場をあとにする.昨日以上に滞在時間が短かいぞ>ぼく@非会員.

◇帰ってからするべき用事の備忘メモ —— 進化学会関連:1) 学会ニュースの原稿(事務局報告,会長挨拶,会員異動 etc.)について,編集担当の深津さんに連絡する.5月中の発行を目指す;2) 大会に関して,実行委員会に進捗を確認する./ 農環研関連:計算センターの年度末報告(大東くんと南保くんは忘れないこと).今月末が締切.

◇いい日和だったので,万代橋を越えて,堤防ロードを歩き続ける.今回,新潟に来た目的は新潟会館での統計勉強会合宿なので,会場となる新潟会館の場所を確認しておかないといけない.万代橋の次の八千代橋をくぐり,昭和大橋まで2キロほど歩いてやっとたどりつく.

◇昭和大橋をわたって白山神社に詣でる.古町通りを北に上がった右手にあった〈佐久間書店〉にて長時間よどむ.ううむ,この品揃えはただものではないぞ —— 秋朱之介『書物游記』(1988年9月8日刊行,書肆ひやね,ISBN なし[初版800部])/ 青木正美『東京下町 古本屋三十年』(1982年12月1日刊行,青木書店,ISBN なし)/ 青木正美『古本商売 蒐集三十年』(1984年7月15日刊行,日本古書通信社,ISBN なし)/ 青木正美『自筆本蒐集狂の回想』(1993年6月25日刊行,青木文庫,ISBN なし).※ううむ,これだけの Books on Books がこのレトロな商店街の古本屋にずらっとそろっているとは.ううむ…….

◇〈シャモニー〉(古町通り店)でしばし休息.冷たいダッチ・コーヒー「マザグラン」をば.Tuffley & Steel の論文を読了する.2-state から r-state model への一般化がものすごくたいへんそう.しかし,その結果は強力だ.「no common mechanism」のもとでは,最節約樹と最尤樹は樹形が正確に一致することが証明された.

◇いったんホテルに帰還し,またまた佐久間書店に舞い戻る —— 木下杢太郎『百花譜(上・下)』(1979年3月19日刊行,岩波書店,ISBN なし[予約出版]).木下杢太郎が最晩年に遺した872葉に及ぶ植物画の復刻.1943〜1945年という太平洋戦争末期に病床でスケッチしたものだそうだ.前川文夫が描かれた植物を同定し,本書の前書きでその経緯を記している.この『百花譜』の「文」の方は日記として別にある(この図版集のあとに出た「著作集」に載っている).それにしても,病を得た作家や芸術家たちが人生の最後に「絵筆をとる」というのは何かしら理由や動機があることなのだろうか.木下杢太郎も,福永武彦も,武満徹も.

◇古町の〈かね清〉にて寿司など少し.はい,“ノドグロ”ももちろんいただきましたです(美味).午後6時を過ぎて急に雨が降りだし,気温が急降下する.風も出てきた.天気予報によると,今日は新潟市内で 21.1 度まで気温があがったが,明日は一転して雪空になり,ヒトケタ台の最高気温にしかならないそうだ.生態学会大会の終了とともに,“冬”に逆戻りだ.

◇風雨が強まらないうちに,ホテルに逃げ込んだ.明日からの勉強会の[心の]準備でもすることにしよう.窓の外は風がうなり,ときおり雨がガラスに叩きつけられている.えらい空模様やなあ.

◇本日の総歩数=19527歩[うち「しっかり歩数」=10941歩/87分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


27 maart 2006(月) ※ 跡を濁しまくりで越後へ

◇午前4時前に起床.全般的な旅支度はもうすんだのだが,個別的な準備がまだ終わっていないので,研究所に直行する.曇っているようで冷え込みはない.気温は5度台.

◇日が変わったので,JST の新サービスである〈Journal@rchive〉がすでに稼働している.たとえば,南方熊楠が『植物學雑誌』に出した論文(「本邦産粘菌類目録」,Vol.22 (1908),pp. 317-323)をpdfでダウンロードできる.このシステムはひょっとしたら利用価値が高いかもしれないな.歴史的論文が誰でも読めるというのは.

◇明け方の大仕事(“大トド”撃ち) —— 放置していた論文の査読を完結させる.オンラインでの査読報告というのは,投稿者には便利かな.査読者には? さあ,たいへん.

—— 2時間あまりの格闘の末,査読者サイトに報告をアップロードし終えたのは,午前7時過ぎのこと.多少短めのコメントだったかもしれないが,要点は押さえているはず.これでやっと「義理」を果たしたってことでして.

論文査読のボランティア仕事の依頼がときどき舞い込んでくるが,「いま査読しているから」という理由で他の仕事が消え失せるわけではない.上空からいきなり「投稿原稿様」が降臨してきて,「within three weeks」で査読せよとの「編集部様」のお告げがくだる.しかも,最近ではオンライン・レフリー制度が普及しつつあるので,のらくらすることが不可能になりつつある.これって,いったい……(汗).自らの意思に関係なく「白羽の矢」を立てられたにわか査読者のみなさんはいったいどのようにやりくりしているのでしょうね.もちろん,「査読しない」という選択肢はつねにあるのだが,そればかりをいつでも選択するという selfish な戦略は大局的には望ましくないだろうし.

◇越後逃避行へ —— とにもかくにも,のたうつ“大トド”1頭をしとめたので,少しだけ肩の荷を降ろして越後に向かうことができる.歩いて,TX つくば駅へ.途中,つくばセンターのロータリーで,今日からエポカルで開催される応動昆大会に向かっているらしい伊藤嘉昭さんとすれちがった.ぼくとは逆コースで,新潟からつくばを目指して移動した人もきっと少なくないだろう(Katsura さんは無事に来れただろーか).9時10分発の TX 快速に乗り,南千住で日比谷線に乗り換え,上野から Max とき 317 号に乗車する.春休みのせいか,指定席はほぼいっぱい.しかし,大半が越後湯沢と長岡で下車し,終点の新潟まで乗る人はそれほど多くない.国境のトンネルを越えたら,確かに「雪国」だった.新潟市街地に近づくにつれ,積もっている雪は少なくなり,下車した新潟駅前はからっと晴れ上がっている.朱鷺メッセからやってきた東京農大の根本正之さんと偶然出会って,しばし立ち話をする.

◇車中読書 —— デヴィッド・タカーチ『生物多様性という名の革命』(2006年3月20日刊行,日経BP,ISBN:4-8222-4486-5→目次)をさっそく読み始める.サイエンス・スタディーズに親近な著者らしく,変に“ポモ”度が高い箇所があるのはまあご愛嬌として笑い飛ばすとして,〈生物多様性〉に関わる本質的な論議はとてもおもしろい本だ.原書が出たのはもう10年前のことだが,ここで取り上げられているテーマの多くは今でもその賞味期限を過ぎていないだろう.日本の“生物多様性”関係者(分野を問わず)ならびにその批判者は,この本をじっくり読んで問題点や論争点がどこにあるのかをしっかり汲み取るべきだろう.※工藤慎一さん,この本は必読ですよ.

◇新潟駅前のドトールにて,昼ご飯とメールと翻訳にいそしむ.わー,いそがしー.適当にケリをつけて,ホテルにチェックインして,さらに朱鷺メッセに参上しないと.

◇午後2時過ぎに,万代橋をわたってすぐの〈ホテル・オークラ新潟〉にチェックインする.そのまま朱鷺メッセに参上せよという義務感とは裏腹に,わが“足”は逆方向の「古町」方面にすでに向いている.生態学会会場よりも「古町」を目指すとは実にリーズナブルな許しがたい“足”だ.でもって,“足”が選んだ古町の〈とんかつ太郎〉で,「特製カツ丼」なるものを賞味してしまう.この量は許しがたいなあ……(上に乗っている5枚のカツを食べ終えて油断したら,ご飯の下からさらに2枚も潜んでいた.フェイントだ!).しかし,極薄のコロモと脂身のない豚肉,そして絶品のタレだった.表現型としては,高崎の〈栄寿亭〉で出されるヒレカツの「C丼」に近いようだ.店の雰囲気もまたよし.※しかし,健康上の理由によりリピーターになってはいけないぞ.>ぼく.

◇少し重くなったので,朱鷺メッセに向かう.生態学会大会も終盤に近づき,そろそろ帰路につこうという参加者も多いのだろうか.広大な会場は人口密度が意外に低く,幕張メッセみたいなポスター発表会場も人いきれでむんむんするということはなかった.午後3時過ぎに参上したものだから,そろそろ後片付けの時間ではあったのだが.文一総合出版のブースにご挨拶し,向かい側の海游舎のブースでコメツキバッタのごとく謝り続け(例の翻訳の件で),ポスター会場を速攻でまわり,知り合いと挨拶し,午後5時前に朱鷺メッセをあとにした.大会会場の滞在時間は2時間弱.非会員としてはよく持続したものだと思う.

◇〈とんかつ太郎〉の後遺症でまったく食慾なし.だもんで,午後7時をまわった頃に,はやばやと古町の〈酒房いずみや〉に籠ってしまう.まだ早い時間帯だったせいか,客はぼくを含めて二人だけだった.最初に,「菅名岳」をまず賞味.お,なかなかすっきりしたいい味わいで.続いて,「〆張鶴」の生原酒を.このどっしり感も実にいいですなあ.アルコール度数は20度あるという.最後に,朱鷺メッセから見える場所で造られているという「桂清水」の純米大吟醸でしめる.エンディングとしてはばっちりだったのではないだろうか.やはり米と水の勝利か.

—— さて,この銘柄のセレクションはいかがだったでしょう?> ngt さま.仙台の〈きゃらっこ亭〉ほどたくさんの銘柄をとりそろえてある店ではないようですが,店主が選んだ,ここでしか呑めないものもあるとのことでした.[追記:店主の話では,確かに「菅名岳」は山の湧水をわざわざ汲みに行って造っているそうです.そして,「桂清水」は越の華酒造です.ご明答!> ngt さま.今度,新潟で学会があるときは会員であるか否かとは無関係に参加しましょうね]

◇店を出て,店主に勧められた,近所の〈澤寿司〉にて,上にぎり寿司をいただく.うん,うまかったです.ごちそーさま.

◇さてさて,今日はもう沈没かー.

◇本日の総歩数=20472歩[うち「しっかり歩数」=1745歩/14分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−1.0kg/−0.1%.


26 maart 2006(日) ※ 出発前日のあたふた

◇午前4時半起床.曇りときどき小雨.空気が湿っている.昨日までの静電気スパークも今朝は元気がまるでない.

◇研究所にて旅行準備をする.ついでに,学会功労者の推薦状を書き上げ,速達で返送する.やや拙速だったかもしれないが,デッドラインがきまっているので.もっと拙速しなければならない(はずの)「大物トド」は新潟に引き連れて行かないとダメだ.

◇新刊メモ —— 大場秀章『大場秀章著作選2:植物学史・植物分類学・植物地理生態学』(2006年3月刊行,八坂書房,ISBN:4-89694-789-4).今年始めに出た:大場秀章『大場秀章著作選1:植物学史・植物文化史』(2006年1月刊行,八坂書房,ISBN:4-89694-788-6)の続刊./ 藤田治彦『天体の図像学:西洋美術に描かれた宇宙』(2006年3月刊行,八坂書房,ISBN:4-89694-865-3)./ 川端裕人『動物園にできること:種の方舟のゆくえ』(2006年3月10日刊行,文春文庫[か28-3],ISBN:4167662035).1999年初版の文庫化とのこと(著者のブログからの情報).

◇きょうは曇りのままいきそうだ.向こう数日間の新潟地方の空模様はあまりすっきりしない予報.傘が必要だろう.

◇引き続きくだんの翻訳原稿に取り組む.いつものごとく「ドロナワ」なのはまったくもっていやはやなのだが,“共訳者”氏が今頃は朱鷺メッセで受賞講演をしているのだろうと思い描きつつ(拍手),舞台裏で訳文をびしびしとチェックしていたりするのだ.

◇JST が(やや)太っ腹なことを —— 〈Journal@rchive〉.明日27日にオープン.南方熊楠の粘菌論文も読めるらしい.かつての物理学ビッグネームたちの有名論文たちは“敬して遠ざけたい”けどね.

◇午後は,ベランダに籠って?遅れまくっていた査読論文を読み,チェック・ポイントを確認する.今夜か明朝には査読ページへの記入を完了したい.新潟に旅立つ前には何とかしよう.そうしよう.

◇あたふたと〈R〉のパッケージをダウンロードしたり…….今回の新潟でヒソカに挙行される〈生物統計学・春の合宿2006〉では,ぼくが今まで使ったことのない〈R〉パッケージ(glmmML だの geoR だの nlme だの MCMCpack)を使うことになりそうなので.

◇あー,旅支度,旅支度.

◇本日の総歩数=7277歩[うち「しっかり歩数」=1614歩/14分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.9kg/+0.5%.


25 maart 2006(土) ※ 光ファイバー「黒」電話の登場!

◇午前5時起床.晴れ.気温5.1度.研究所へ.

◇早朝のこまごま —— 学会賞候補者推薦の件で連絡メールあり.うまく進めたいのだが,時間がねー./ 科振調の申請書類に関する追加依頼.年度が変わってからですね,これは.

◇にぎわう新潟あたり —— さっそくの現地レポートによると,すでに新潟の市街地は朝も昼も夜も生態学会大会参加者であふれかえっているそうだ(飛行機もホテルも飲み屋も).「農環研フテキな三人衆」とやらが,長距離移動でへろへろになったK保セソセに取り憑いたらしい(御愁傷様でございます).大東くん,K保セソセをあまりいぢめてはいけませんよ.もともとアヤシイ小沼師と眼光スルドイ岩崎さんがタッグを組めば,向かうところもはや敵はない.※ワタクシの出る幕はもうないな(ぽつり……).

◇整形外科の待合室で読了 —— 枝川公一『バーのある人生』(2006年2月25日刊行,中央公論新社[中公新書1835],ISBN:4-12-101835-4)の残りを読み終わる.やっぱり,昼間から読むべき本じゃないってば.堪能堪能.

◇日射しは暖かく,空気は乾く.今の季節に“不快指数”という概念は消え失せる.

◇光ケーブルとともに「黒電話」が返り咲く —— 新居の電話が“光”になるとともに,各部屋に電話を置けるようになった.ISDN回線にしていた頃は,もともと2回線分の利用ができたので,電話機も二つあったのだが,今度はもっとたくさんの電話が使えるので,10年あまりホコリをかぶっていた,かつてのアナログ・パルス回線用の「黒電話」を復活させてみることにした(よく捨てずに保管しておいたものだ).写真の通りのトラッドな“御姿”なのだが(若い世代はひょっとして見たことも触ったこともないかも),何の支障もなく光ケーブル回線につながってしまった.ということで,久しぶりの「黒電話」が現役に返り咲くことになり,〈ALWAYS 三丁目の夕日〉的になつかしい“じーこじーこ”と“ぢりり〜ん”が戻ってきた.

◇勢いでもう1冊を読了 —— 和田哲哉『文房具を楽しく使う[筆記具編]』(2005年11月15日刊行,早川書房,ISBN:4-15-208622-X).筆記具へのこのこだわりようはただごとではなく,著者はただものではない.Rot「0.7mmシャープペンシル」への支持は納得できる.中学の頃から速記用の「0.9mm」芯を愛用していたし,その後も「0.7mm」よりも細い芯は日常的には使わなかった.今では,さらに太い「1.3mm」芯(Pentel のマークシート用シャープ)とか「1.4mm」芯(Faber Castell の木軸シャープ)に移行している.デッサン用の「6mm」芯のシャープもある.

〈Rotring Art Pen〉,使ってますよー.写譜用のカリグラフィー・ペンであるシャチハタの〈Artline Calligraphy Pen 2.0〉は,顔料インクのファイバーチップでとても書きやすいと思う.サイン用にはこれね.

油性インク,水性インク,ゲル・インクなどのちがいと長短について,本書から学んだことは数多い.紙との相性や用途による使い分けが必要だというのはもっともな指摘だが,そこまで気を使っていないのがふつうだろう.というか,そこまで深入りすると,どんどん「文房具の深み」にはまりそうでこわいし…….さらっと読むだけでなく「復習」する価値がある本だ.

◇〈Wikipedia〉関連の話題 —— 二木麻里さんが主宰されている〈Ariadne〉で実施されていた,『Wikipedia(日本語版)』に関するアンケート調査の集計結果が公表されている:「ネットユーザーのアンケート : ウィキペディア日本語版について」.自分の専門分野に引き寄せたときに,“辛口”の評価が多くなるのは当然かも./ 昨年12月15日付の Nature 誌の記事「Internet encyclopaedias go head to head」では,Wikipedia が Encyclopedia Britannica に迫りつつあるという論を展開した.これに対して,ブリタニカ側が全面対決する長文の反論記事を出した:「Fatally Flawed : Refuting the recent study on encyclopedic accuracy by the journal Nature」(→pdf).※「Fatally Flawed」なんて面と向かって言われたら,へこむよねえ…….一種の罵倒語でしょ,これって.

◇新潟行きの旅支度をしなければならない.

◇本日の総歩数=5988歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.1kg/−0.3%.


24 maart 2006(金) ※ 大波小波が打ち寄せて

◇今日も午前4時半起床.薄曇り.気温7.1度.研究所に直行する.

◇昨日届いた書評依頼本 —— ビル・ブライソン『人類が知っていることすべての短い歴史』(2006年3月25日刊行,NHK出版,ISBN:4-14-081101-3).『日経サイエンス』誌への書評を書く予定.「639+38 pp.」というボリュームはなかなかかさばります.「科学は退屈だと信じているあなたへ」というオビの文言は,「科学」ではなく,「科学史」のまちがいでしょう(きっと).目次をぱらぱらすると,宇宙・地球・生物という三本柱で構成されていることがわかる.背に書かれているように,「無味乾燥な科学史から堪能する科学史へ」ということなら,読む意欲が湧こうというものだ.量的に“満腹する科学史本”かもしれないが…….

◇日中のこまごま —— JICA「キューバ」コースの講義がまたある.4月17日(月)に午前と午後の one-day lecture をする.今年は10人(性比 1 : 1)だそうだ./ メーリングリストの管理作業を少々./ 質問群:AFLP の解析(clustering)と tree-building methods 間の比較について.お待たせしたあげく,速攻で答える.※だったら,早くレスポンスしろよ./ 微小サイズの形態の3次元座標を測定する装置についての情報をいただいた.コニカミノルタ社の〈VIVID 9i〉という3次元デジタイザを使えば,1センチ程度のサイズの立体計測ができるそうだ.

◇気温13度で暖かく晴れた昼休みは歩き読み —— 渡辺京二『逝きし世の面影』(2005年9月9日刊行,平凡社[平凡社ライブラリー552], ISBN:4-582-76552-1→目次)の残りをイッキに読了.第11章「風景とコスモス」と第12章「生類とコスモス」では,風景観あるいは生命観の“東西”の差異が外国人旅行者の記録文から明らかになるのが見えてくる.サイモン・シャーマだったらどう書くだろうか? 続く,第13章「信仰と祭」は,“八百万の神”にたじろぐ一神教の宗教観の対比が際立つ.

とりわけ印象的なのは,最終章である第14章「心の垣根」での全体の総括だ.「ああ,日本の何と美しくのどかなことか」(p. 447)と詠嘆する江戸時代の異国の旅行者の記録は,単なる思い込みでも幻影でもなく,事実の記録だっただろうと著者は考える.その上で,著者は「個人」という自我がつくる「心の垣根」の高さに東西の本質的なちがいがあったのではないかと指摘する.江戸時代に日本を訪れた外国人たちは,「西洋的な心の垣根の高さに疲れた」(p. 576)からこそ,心の垣根が低い,あるいはそれがまったくない日本のありように感銘を受けたのだろうと結論する.この対比のしかたはとても強烈だ.

「あとがき」で著者は言う:

私はたしかに,古き日本が夢のように美しい国だという外国人の言説を紹介した.そして,それで今ばやりのオリエンタリズム云々といった杜撰な意匠によって,闇雲に否認されるべきではないということも説いた.だがその際の私の関心は自分の「祖国」を誇ることにはなかった.私は現代を相対化するためのひとつの参照枠を提出したかったので,古き日本とはその参照枠のひとつに過ぎなかった.(p. 586)

近頃は伝統といえば,それはごく近代になって創られたフィクションだというのがはやりである.むろん,そういうことはあろう.では自分は過去とは無縁のまっさらな存在かといえば,そんなことは事実としてありえないので,伝統と呼ぶかどうか別として,自分とは過去の積分上に成り立ち,そこから自己の決断の軌跡を描こうとする二重の存在でしかない.(p. 587)

「過去の積分」というのは,なかなかいい表現だと思う.

本書は600頁を越える大著だが,中だるみすることなく,最後まできっちり読み終えることができた.当時の旅行者たちが遺した膨大な記録を読み解き,紡ぎあわせて,ひとつの一貫したストーリーをつくりあげたのはほかならない著者の力量だと思う.

◇午後のこまごま —— 計量生物学会への投稿原稿をレフリーに転送する.※再度,お手を煩わせますが,よろしく./ 東京農大の連携大学院についての事務連絡.実質的な“縛り”がないのであれば,タイトルは何でもいいです.

◇いつも使っていたリュックサックの底が擦り切れてきた.帰りに,千現の〈Bagland〉に立ち寄り,物色.結局,つくりの頑丈さを評価して,〈DAKINE〉 の Terminal(35リットル,型番:460-81873)に決める.ポケットがいやにたくさんあるなと思ったら,ノートパソコンを持ち運ぶために特化したリュックサックだったことをあとで知る.サイドから出し入れするパソコン専用のポケットはウレタンでしっかりくるむ構造になっている.なかなかいいかも.

◇夕刻,JTB に行って,来週の新潟往復の新幹線指定席券を購入する.これでやっと「宿」と「足」が確保できた.あとは,準備だけかあ〜.

◇本日の総歩数=16283歩[うち「しっかり歩数」=6876歩/57分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/+0.4%.


23 maart 2006(木) ※ “これから新潟に行くワタシのために”

◇午前4時半起床.前夜からの雨が残る.気温6.3度.研究室に行ったら,いろいろと用事が積み上がっていた.

◇午前のこまごま —— 来週月曜から新潟に行くので,その事前準備をする.朱鷺メッセで開催される〈生態学会大会〉の後半(27〜28日)と.それに続く〈生物統計学合宿〉(29〜30日)に参加するため.今日の航空会社のストの影響で,生態学会を取り仕切る VIP たちは空陸にわたって右往左往しているらしい.首尾よく万代橋をわたってゴールに到達しましょうね.> VIP のみなさん.生態学会会場には例の翻訳ゲラをもっていかないことには示しがつかない(……).合宿ではプレゼンがあるので,その準備が必要.

しかし,何よりも「宿」と「足」を確保しないことにはどうしようもないので,まずはその手配をば.「楽天トラベル」でちゃっちゃっと調べる.生態学会大会参加者であふれ返っていると思いきや,意外にもまだ予約できるホテルがたくさんある(さすが大都市).それに値段が安いのがとてもよろしい.いくつか調べて,〈ホテルオークラ新潟〉にオンライン予約を入れる.あとは新幹線の指定席券か.TX が開通して以来,全般的に所要時間が大幅に短縮されているのだが,「駅から時刻表」で調べたらたった3時間で新潟駅にたどり着いてしまうことがわかった.明日,JTB に手配しよう.

◇献本2冊(ありがとうございます) —— 酒井聡樹『これから論文を書く若者のために(大改訂増補版)』(2006年4月10日刊行,共立出版,ISBN:4-320-00571-6→サイト).おお,ついに名著の改訂版がやってきた! 酒井さん,感謝です.生態学会新潟大会では会期中の25日に「大サイン会」(→酒井サイト共立出版サイト)が挙行されるとのことだ.ぼくは大会後半からの参加なので,サイン会に並ぶことはできないが,きっと盛況だろうと思う./ 茂木幹義『マラリア・蚊・水田:病気を減らし,生物多様性を守る開発を考える』(2006年4月20日刊行,海游舎,ISBN:4-905930-08-1).たいへん感銘を受けた前著『ファイトテルマータ:生物多様性を支える小さなすみ場所』(1999年12月10日刊行,海游舎,ISBN:4905930324→書評・目次)に続いて,同じ出版社から.第1部「水田と蚊と病気」/第2部「開発の中の媒介病と寄生虫病:過去とこれから」.ローカルな地域ごとに特徴をもつ感染症と寄生虫病の生物学についての本.

—— 上記2件とも朱鷺メッセがらみだ.これはもう新潟に誘い込まれているにちがいないぞ.

◇雨は午前のうちにあがり,曇り空に.

◇午後1時から2時半まで,〈文化系統学〉セミナーの第8回目.新しい章 Chapter 5「Seriation and cladistics: The difference between anagenetic and cladogenetic evolution」(R. Lee Lyman and Michael J. O'Brien)に入る(pp. 65-68).イントロ部分は,前回輪読した本:Michael J. O'Brien and R. Lee Lyman『Cladistics and Archaeology』(2003年刊行,The University of Utah Press, ISBN:0874807751 →目次書評)の要約的な記述だ.後半にとてもおもしろい話題(Bashford Dean 1915 によるヘルメットと剣の系統樹)が出てくる.

◇午後3時を過ぎて,青空が広がってきた.この年度内に[いずこからか]お金をひねり出して,Samuel Kotz, Campbell B. Read, N. Balakrishnan, Brani Vidakovic (eds.)『Encyclopedia of Statistical Sciences, Second Edition [16 Volumes]』(2005年12月刊行,John Wiley & Sons,ISBN:0-471-15044-4→情報)を何とか買いたいなあ.所内のどっかにコッソリお金がないかなあー.天上からゼゼコが降ってこんかいなあ…….いや“天上”ではなく,“階下”を見た方がいいかも.

◇午後のこまごま —— 先日届いた巨大なプリンタの設置を開始.このサイズはひと一人分はありそう.安置する机を用意し,3人がかりで抱え上げる.RAM を増設し,ネットワーク・ボードをつける.システム管理科に行って,ネットワーク・プリンタ用の IP アドレスをもらう.Ethernet アドレスは中を覗いてみないとダメらしい(めんどー).とりあえずは近くのパソコンからダイレクトにつないで,設定作業を続けてもらうことにしようか.と思ったのだが,大東くんも明日から「朱鷺メッセの人」になってしまうので,月末までお預けだ./ 計量生物学会の査読に関する連絡.レフリーにこのまま転送しよう./ 進化学会の情報更新:UMIN から進化学会ページの更新完了との連絡あり.関係者に通知する.

◇夕方,自宅にてまたまた掃除とゴミ出しといそしむ.まだまだ終わらず…….

◇夜の新刊速報 —— 〈生物統計学合宿〉スタッフのみなさんは,明日は新潟への移動日だそうだ.統計学の格好の本:デイヴィッド・サルツブルグ『統計学を拓いた異才たち:経験則から科学へ進展した一世紀』(2006年3月23日刊行,日本経済新聞社,ISBN:4-532-35194-4→目次)が出版されたので,速報する.さっそくレスポンスあり.さすが! 原著は:David Salsburg『The Lady Tasting Tea: How Statistics Revolutinalized Science in the Twentieth Century』(2001年刊行,Henry Holt and Company,ISBN:0805071342).

◇本日の総歩数=11126歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/−0.7%.


22 maart 2006(水) ※ 「卒業式」日和

◇午前5時半起床.早朝,自宅にて「貸し会議室」メーリングリストの期間延長をする.Bフレッツ,快適.

◇朝からからっと晴れ上がり,実にみごとな「卒業式」日和.ということで,午前8時から午後1時まで,ずーっとセレモニー.

◇午後は“足”となり,つくば市内をうろうろする.天気はしだいに下り坂.雲が厚くなってきた.

◇午後6時を過ぎて,雨が降りはじめる.予報通りの天候の変わり方だが,卒業式が晴れたので,許してあげよう.

◇今日はシンプルかつ充実した1日が過ぎた気がする.年休もこういう使い方ができれば活きるというものだ.

◇本日の総歩数=6616歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=−0.1kg/+1.0%.


21 maart 2006(火) ※ 穏やかな春分の日に LAN と格闘

◇春分の朝は午前5時起き.爽やかに晴れる.兇悪な風も吹かず,今日は穏やかな天気になるようだ.

◇平日に「ぽこん」と休日が挿入されるのは,何だか得をしたような気になったりして.だからといって,「トド」がいなくなるわけではないのだけれど…….

◇久しぶりに朝の歩き読み —— 枝川公一『バーのある人生』(2006年2月25日刊行,中央公論新社[中公新書1835],ISBN:4-12-101835-4)の第1章まで.100ページ弱.うらやましい“空間”が広がる:

銀座の半地下のバーである.カウンターから離れたところに,ひとり席がひとつだけある.両側から煉瓦の壁が迫るデスクに向かって座ると,正面の書棚に相対する.だいぶ年季の入った図書館の閲覧室か,あるいは,ひっそりとして,家の中でもとりわけ落ち着く書斎にいるみたいな錯覚に襲われる.店の他の部分ともまたちがう時間が,そこだけに流れているかのようである.(p. 16)

これは“キャレル”以外のなにものでもない! 至福.こういう空間にトラップされたら,さぞかし原稿もどんどん書けるでしょうなあ.もう骨を埋めるしかない.※それにしても,「朝」に読むべき本ではなかったよーな.

◇性格の素直な風がよく通り,日射しが暖かい.自宅のベランダに机を出し,LAN の接続設定をする.問題なく開通.各部屋から LAN への接続ができるようになった.快適快適.これで〈B-Flets〉にした甲斐があったというものだ.

◇昼下がりの読書 —— 武満浅香『作曲家・武満徹との日々を語る』(2006年3月20日刊行,小学館,ISBN:4-09-387613-4)の残りの章を読了:第3章「デビューからミュージック・トゥデイまで」,第4章「映画にかけた情熱」,第5章「作曲家の日常」,そして第6章「あれから一〇年」.遺された家族からみた作曲家の日々が伝わってくる.全編を通してインタビューから構成された本だが,適切な傍注が付されているので,読者には便利だろう.思わぬ人間関係のつながりを確認できたりして興味深い.たとえば,武満徹の小学校時代についての夫人のコメント:

昔は人望が厚くて,勉強のできる子が級長になりましたから,その副級長の方が,後に東大の解剖学の先生になられた方ですから,……

武満徹級長のもとで副級長をしたという,この「東大の解剖学の先生」とは,『川に生きるイルカたち』(2004年4月16日刊行,東京大学出版会,ISBN:4-13-063323-6→書評)の著者である故・神谷敏郎にほかならない.意外や意外な接点だ.

◇夕方,CREO 前の交差点で,経塚淳子さんと久しぶりに出会った(横断歩道の真ん中でつい立ち話をしてしまい,クラクションの嵐).つくばで会議があるとのこと(エポカルかしら).この4月以降のことについて,もう情報が流れている(当然のことだけど).よろしくねー.

◇LAN の乱 —— 夜,LAN 接続でじたばたする.昼間,OCN のプロバイダーとの接続がすんなり成功したので,これで各部屋ともイッキに LAN 接続だーと息巻いたのだが,ところがどっこい,別の部屋からはぜんぜんつながらへんねん.Bフレッツの開設作業に来た NTT の担当者は,「室内の LAN 配線はいじる必要ありません」と言っていたのに,これはどーしたことか.

同じマンションの住民どうしの掲示板を見ると,何もしなくていいどころか,LAN を通すには一手間以上の「措置」が必要とのこと.なあるほどね.まずは浴室天井裏にはいあがって,Netgear 社のハブをチェックする.うわわ,ハブの電源コードが接続されてへんやんか(これでは LAN 分岐が機能するわけがない).さらに,LANケーブルの uplink 設定を変更をしなければならない.ブロードバンド・ルータを設置した部屋から出ている LAN ケーブルを見つけ出し(ハブに接続する末端に「洋室1」とか「和室」という記入がある),それを緑ランプが点灯しているハブの口(全部で九つあるうち,電源からもっとも遠い位置にある口)につないで,やっと各部屋からの LAN 接続に成功した.

—— 入居されている住民のみなさんで,室内の LAN 接続に立ち往生されている人は,以上の手順をご参考まで.

◇夜の新刊メモ —— 蜂須賀正氏『南の探検』(2006年3月10日刊行,平凡社[平凡社ライブラリー570], ISBN:4-582-76570-X).1943年に刊行された本の復刻本だ.戦前のフィリピン奥地を探検したときの記録.こういう本が読めるというのはありがたいと思う.500ページ近い厚さがある.写真や図がたくさん載っている.

◇明日は,年休.とはいえ,朝からぱたぱた動き回るのだ.

◇本日の総歩数=10456歩[うち「しっかり歩数」=7146歩/61分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.8kg/0.0%.


20 maart 2006(月) ※ 辛夷の花がほころんで

◇午前5時起床.昨日からずっと西風が強く吹き,体感的にとても寒い.今朝も西の風7.1メートル.気温4.6度(午前6時には2.1度に下がる).空は真っ青に晴れ上がり,例年通りこの時期に咲き始めたコブシの白い花が季節を逆なでする寒風に揺れている.

◇早朝のこまごま —— デヴィッド・タカーチ『生物多様性という名の革命』(2006年3月20日刊行,日経BP,ISBN:4-8222-4486-5)の広報アナウンスを岸由二さんにメールで依頼する(→対応するとの返信あり) / 日経サイエンス誌から書評依頼:ビル・ブライソン『人類が知っていることすべての短い歴史』(2006年3月25日刊行,NHK出版,ISBN:4140811013).700ページほどもあるらしい.お引き受けします./ 次年度の研究室での新聞購読申込./ 非常勤職員の次年度雇用届出.完了.

◇朝から風が冷たい吹きつける.乾いて静電気スパーク.

◇午前のこまごま —— 先日の RIKEN シンポジウムの要旨集の残部を関心をもってくれそうな人たちに発送する.※「紙爆弾」でございます./ 3月22日(水)の年休届を出す./ 個人業績評価に関するグループ長ヒアリングあり./ 4月1日付の人事異動の内定通知が回覧されてきた.ほー,いろいろ“動き”があるようで./ 次年度の人間ドック申込書類(月末までに).今年も“犬”になります.

◇昼休みに歩き読みしようとトライしたものの,強い西風で土ぼこりの煙幕ができていたので,抵抗せずにあっさりと撤退する.それでも,渡辺京二『逝きし世の面影』(2005年9月9日刊行,平凡社[平凡社ライブラリー552], ISBN:4-582-76552-1→目次)の第9章「女の位相」と第10章「子どもの楽園」を読む.ブリューゲルさながらに日本での〈子供の遊戯〉を詳しく記録した外国人記録者たちの驚きと好奇心とカルチャー・ショックが伝わってくる.

◇午後1時から1時間半ほど,〈形態測定学講義〉の初回.〈生物統計学講義〉の後継として.Zelditch et al. の教科書を素材にする.序言と第1章「Introduction」の最初の10ページを読む.これまでの形態測定学の通史を学ぶというよりは,むしろこの本が目指している幾何学的形態測定学の目標の全体像を大きく見渡そうとしている.生物形態のもつ“かたち”としての幾何学的情報をいかにしてすくいあげるか,それをどのような観点に立って定量化するのかという問題が提起される.幾何学と統計学が理論的なバックボーンであることは当然なのだが,“かたち”をはかるという問題を生物学の側からみることの重要性が強調されている.

なお,この教科書では,フリーの形態測定学プログラム〈IMP — Integrated Morphometrics Package〉を利用して,学習の便宜をはかっている.Windows 版と Mac OSX 版(X11環境)で利用できるようだ.まだダウンードしていないが,講義の進行とともに使ってみる必要があるかもしれない.

◇午後のこまごま —— 進化学会の事務手続き(「休会」の扱い)に関するやりとり./ 大学への非常勤出講にともなう提出書類づくり.遅れてすみません.意外に時間をとられてしまい,夕方までかかった./ 転居に伴う住所変更の届けをするようにと庶務係から教育的指導電話あり.※職場にかぎらず「住所変更」しなければならない諸方面があるのだが,どうにも時間がなくまったく徹一です.←あ./ 進化学会関連の連絡文案をつくって関係者に流す.幹事長になって以来,学会に関わるこまごまとした「補修」がそのつど必要であると感じるようになった.体制的に完璧はありえないので,問題が表面化するたびに迅速に対処していくべし.できることなら,〈幹事長日誌〉を別途つくって将来の後任者に手渡すようにしたいのだが,とりあえずは関連メールを整理し,日録に備忘メモを残しておくようにしよう.

◇春の近刊わんさか —— 赤羽正春『鮭・鱒(I, II)』(2006年4月刊行予定,法政大学出版局[ものと人間の文化史 133-I, 133-II], ISBN:4-588-21331-8 [I] / ISBN:4-588-21332-6 [II]).いつもながら食指をそそる叢書ですこと./ 合田昌史『マゼラン:世界分割を体現した航海者』(2006年4月刊行予定,京都大学学術出版会,ISBN:4-87698-670-3)./ アルフレッド・W・クロスビー『飛び道具の人類史:火を投げるサルが宇宙を飛ぶまで』(2006年4月刊行予定,紀伊国屋書店,ISBN:4-314-01004-5).“数量化革命”と“インフルエンザ”の次は“飛び道具”か./ リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子[第3版]』(2006年4月刊行予定,紀伊国屋書店,ISBN:4-314-01003-7).総ページ数が「576頁」なんですけど,どんどん肥満してまっせ……./ 島泰三『マダガスカル:アイアイのすむ島』(2006年4月刊行予定,草思社,ISBN:4-7942-1487-1)/ マーク・エイブリー『「消えゆくことば」の地を訪ねて』(2006年4月刊行予定,白水社,ISBN:4-560-02617-3).保全言語学(絶滅言語学)のフィールド・スタディーか./ スティーヴン・ピンカー他『言語進化とは何か:ことばと生物学が出会うとき』(2006年4月刊行予定,大学教育出版,ISBN:4-88730-679-2).聞いたことのない出版社だが,著者は超有名.

◇本日の総歩数=9766歩[うち「しっかり歩数」=1846歩/16分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/−0.4%.


19 maart 2006(日) ※ ここもまた“ダンボールハウス”か

◇午前5時起床.前夜からの小雨がまだ降り続いている.

新居の段ボール箱の“堆積”は,連日連夜の格闘が功を奏し,しだいに切り崩されてきてはいるものの,中身をいったいどこに収納するかが悩ましい.ハミ出した物品をまたまた捨て,古いパソコンをいずこかに移動し,さらに搬出する.エンドレスな苦行だ.

またも朝から研究所でごそごそする.月末までにやるべき書類書きや対応がいくつかある.持ち帰り仕事.

◇天気はしだいに回復し,午前中に晴れ間が見えてきた.気温は高め.

◇こっそり読了 —— 永六輔・大竹省二『赤坂檜町テキサスハウス』(2006年3月30日刊行,朝日新聞社,ISBN:4-02-250083-2).敗戦直後から1960年前後までの“テキサスハウス”に終結した人びとの懐古譚.著者たちの世代は“老人顔”しか今まで知らなかったのだが,大竹省二のモノクロ写真で若かりし頃の点景を見るのは意外で愉しい.芥川也寸志や團伊久磨の青年時代のポートレイトや,後の小沢征爾夫人に相対する坂本九,春風亭小朝が突然顔を出し,谷川俊太郎作詞&武満徹作曲という黄金ペアがすでに形をなしている.戦後の放送や芸能に関わった業界人がつどった赤坂の“テキサスハウス”には,ときを同じくして漫画家の梁山泊となった池袋の“トキワ荘”とはまた異なるオーラがあったそうだ.関係者がまだ生きているから言えないことも多々あるようだが,そうこうするうちに,みんないなくなってしまうんじゃないかと心配しつつ.

永六輔が言うには,“赤線”が公式になくなったのは,「昭和33年3月31日」のことだったという.ということは,ぼくが生まれたときには,まだ日本の各地で“遊郭”がふつうに営業していたということか.伏見の中書島に叔母の家があって,小さい頃はそこに何度も遊びに行った.当時のぼくの記憶では,中書島の街中には,ステンドグラスで彩られた洋館風の建物が並ぶ一角があって,疎水の向こうに見える酒蔵の風景との不思議なミスマッチだった.その“洋館街”が実は有名な「中書島遊郭」だったことを知ったのはずっと後のことで,今にして思えば廃業してまだ間もない頃の遊郭街を遊び回っていたわけだ.

◇午後になって,風が猛烈に強くなり,畑からの土ぼこりが巻き上げられる.遠景が黄色く霞む.新居からはみ出した段ボール箱を貸し倉庫に運び込むとき,風にあおられてよろけた.

◇別の用事で石丸電機まで歩いて行ったのだが,時間待ちの間に関心のないゲーム本コーナーを徘徊している最中に,意外にも探していた“ブツ”を発見してしまう —— デヴィッド・タカーチ『生物多様性という名の革命』(2006年3月20日刊行,日経BP,ISBN:4-8222-4486-5).つくば内の他の書店ではぜんぜん見かけなかったのに,場違いなこんなところにどーして置かれているのだろー?(とってもフシギだ) 「生物多様性はゲームだから(RPGって?)」などという深読みは禁物ね.

◇夕方,さくっと読了 —— 長嶋千聡『ダンボールハウス』(2005年9月10日刊行,ポプラ社,ISBN:4-591-08830-8).著者の学部卒業論文の単行本化だそうだ.こういうテーマを見つけるのが勝因だったのだろう.指導教官による解説記事の中で,今和次郎の「考現学」との関連性が指摘されている.今和次郎だけでなく,吉田謙吉の仕事にも同じような着眼が見られる.藤森照信(編)『吉田謙吉 Collection I : 考現学の誕生』(1986年11月25日刊行,筑摩書房,ISBN:4-480-85348-0)の第IV章「路上の考現学」に,犬小屋の構造を観察した「犬箱の話 採集」という1928年の記事が載っている.これなど,まさに“ダンボールハウス”に相通じるものがあるように感じる.

◇明日からはまた年度末残務処理のウィークデーが始まる.

◇本日の総歩数=8414歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜×.前回比=+0.6kg/0.0%.


18 maart 2006(土) ※ 掘り起こされる“出土本”たち

◇午前4時半起床.晴れて冷え込む0.4度.研究所に直行する.

◇未明のこまごま —— ここ10日間ほどメーリングリスト関連の作業を放置してきたので,その積み残し残務処理.アドレス登録やら変更やら,しめて二十数件なり./ 東京農大・昆研の卒業式に伴う謝恩会が21日にあるとの連絡が届く.残念ながらその日は別件の私用が入っているので,欠席の返事を出す./ 生物地理学会〈生物学哲学〉シンポジウムの追加資料 (松本俊吉さんの2論文)をアップする.

◇午前中の労苦 —— 旧居の後かたづけの続き.廃棄物しか残されていないのだが,それがまた大量にある.産業廃棄物ならぬ,生活廃棄物の堆積には恐るべきものがある.車に積めるだけ積んで,またまたクリーンセンターへ.廃棄するつもりだった Victor の LPレコードプレイヤーに,若い職員さんが興味津々.どうやら自分でも LP プレイヤーをもっているらしい.「これ,まだ使えますかねえ?」と訊かれたので,「25年も前のですけど,故障しているわけではないので,ひょっとしたら動くかも」と答えた.※LP レコードファンはまだ根強くいるようだ.

◇朝のうちは晴れていたが,しだいに曇ってきた.予報では今日遅くには雨が降るらしい.気温は高く,もう半袖の人も.

◇新刊メモ —— デヴィッド・タカーチ『生物多様性という名の革命』(2006年3月20日刊行,日経BP,ISBN:4-8222-4486-5).原書出版から10年後に翻訳が出るとはね.狩野秀之・新妻昭夫・牧野俊一・山下恵子訳&岸由二解説とのこと(ほー).多くの著名研究者へのインタビューを通じて,「生物多様性」の今日的意味を探る.原書:David Takacs『The Idea of Biodiversity : Philosophies of Paradise』(1996年刊行,The Johns Hopkins University Press,ISBN:0-8018-5400-8).以前,この原書をぱらぱらしていたとき,【種】に関する政治的役割について興味深い指摘があったことをメーリングリストに流していた([evolve:5379]):

Date: Fri, 2 Apr 99 04:56:34 JST
From: MINAKA Nobuhiro
Subject: [evolve:5379] Re: Political species concept
To: evolve@affrc.go.jp (EVOLVE ML)

EVOLVE reader 諸氏:

三中信宏(農環研)です。早朝の自己レスです。

生物多様性と保全生物学の生物哲学を論じた Takacs (1996)に、保全施策における「種」の位置付けに関する記述があります:

Targetting species as the exclusive level of conservation becomes dubious practice when species turn out not to be species, when that is not necessarily what we want to save anyway. We attempt to avoid such problems by moving to broad aegis of biodiversity, while still retaining some of the features that have made species an appealing focus for conservation. (p.54)

「種ではないと判明したとき、種の保全施策は無用である」という点が重要です。

引用文献

Takacs, D. 1996. The idea of biodiversity: Philosophies of paradise. The Johns Hopkins University Press, Baltimore, xxii+393pp.

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** 三中信宏 / MINAKA Nobuhiro / 農環研・計測情報科・調査計画研究室

◇今回の引っ越しで,何年もの間ずっと行方知れずだった何冊かの本が“出土”した.「普遍体系学」(大文字の“Systematics”)をぶち上げた大著である Don Hegberg 『Systematics』 (1977年刊行,Pasadena [Privately printed],ISBN:なし→目次)もそういう1冊だ.ペーパーバックで750ページもあるこの本は,万物の「体系化哲学」としての“Systematics”をつくろうとしている.でも……読めないんです,この本.自家出版ということもあるのか,読者向きの編集がまったくなされていないのか,ある章などは400ページを越えるアンバランスな分量があったりする.タイトル買いしたものの,積まれて埋もれてそのまま四半世紀が経ってしまった.いま,章のタイトルをあらためて眺めていると,シンパシーを感じないでもない.

◇夕方になって雨がぽつぽつと降り出した.春先の空模様とはいえ,めまぐるしい移り変わりだ.

◇本日の総歩数=11572歩[うち「しっかり歩数」=1100歩/12分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.6kg/+0.2%.日中12hr+未明2hr=14hr労働.


17 maart 2006(金) ※ 明け方の台風もどき,日中も強い風

◇午前3時半起床.風雨がとても強く,高層階のベランダでは,段ボール箱がはためく.気温8.9度.南風のせいで冷え込みはなし.

◇未明の研究所にて,今年度の「研究業績報告書」なる事務所類をちくちくとつくる.例年よりも早く,今日が締切なので逃げ場はない.昨夜インストールした〈office : mac 2004〉を初めて使ってみる.※今後,これを“自発的”に使うとは思えないな.

午前6時過ぎに完成したのでグループ長にメールで送信する.これでまずは「1トド」をしとめた.

◇来月になると,職場の組織が変わり,配置も変わり,肩書きも変わる.新しい名刺をつくらないといけないのだが,ポジションの「英文表記」が確定していないようなので,先走るわけにはいかない.組織再編に伴う会議やら書類がたくさん飛び交っている.キャッチできたものは幸いだが,スルーしてしまったのもきっと少なくないだろう.こわいのは,捕捉できなかった案件がそのまま確定してしまうことだろう.年休とか出張で「不在」のときがとりわけ要注意.実在しないときにかぎって重要なことが起きていたりするので.

◇空はどんどん晴れ間が広がり,南からの強風がなお吹き荒れている.

◇昼休みの歯医者の待合室にて読了 —— 劉達臨『中国性愛博物館』(2006年2月23日刊行,原書房,ISBN:4-562-03981-7)の残る第8〜9章.50ページ弱.宗教(道教と密教)と性との話題がおもしろい.実に sachlich (?) な中国の“歓喜天”は,日本でも見られるのかしら? と思って,ちょっと調べてみたら,何のことはない,ぼくの実家のある山の上の〈御蔵山聖天〉が実はそうだった.とはいえ,ここはその昔,虫取りに興じていただけで,そういうご本尊を見たことはなかったよーな.

本書の先駆として,ロベルト・ファン・フーリック『古代中国の性生活:先史から明代まで』(1989年3月刊行,せりか書房,ISBN:4-7967-0153-2)が挙げられている.またフーリクか.そういえば,フーリク『中国のテナガザル』(1992年9月25日刊行,博品社,ISBN: 4-938706-04-0→紹介)の訳者のひとりは中野美代子だったことにいま気づいた.コンパクトな人的ネットワークができているようだ.

当然,本書のあとは,中野美代子『肉麻図譜:中国春画論序説』(2001年11月15日刊行,作品社[叢書メラヴィリア8], ISBN:4-87893-758-0)でキマリでしょうなあ.

◇昼のこまごま —— 次年度設計計画検討会の日程調整.4月下旬のどこか./ 次年度研究計画に関する修正箇所の報告.

◇さて,これから『だから系統樹!』の文献解題に取りかからねば! あと3時間だっ.

—— そんなこんなで〈なかやま〉にて午後4時過ぎに,遅れてやってきたお代官様に原稿15枚分を渡す.文献リストをつくるのは苦痛ではない.各アイテムに注釈をつけるのははっきり言って愉しい.思いつくままに書いているといくらでも文章が長くなってしまいそうだ.全体の章の引用文献はとても多いので,取捨選択して挙げていかないと1章分の長さになる恐れが大だ.

文献解題の残りの文については週明けにメールで送ることになった.コンウェイ・モリスの翻訳稿ゲラの到達はもう少しあとになるそうだ.その間に海游舎の翻訳を少しでも進めておかないと…….

◇夕方になってやっと風がおさまり,体感温度がしだいに高くなってきた.新聞報道だと,今日の関東は場所によっては風速30メートルを越す強風が吹き荒れたらしい.

◇〈ハウス〉系の本2冊のメモ —— 永六輔・大竹省二『赤坂檜町テキサスハウス』(2006年3月30日刊行,朝日新聞社,ISBN:4-02-250083-2).大竹省二撮影の写真をじっくり読む本./ 長嶋千聡『ダンボールハウス』(2005年9月10日刊行,ポプラ社,ISBN:4-591-08830-8).去年に出てすぐ買おうと思って忘れていた本.ダンボールハウスの“建築技術”はどのように伝承されているのだろう? 機能的制約からくるホモプラジーも少なくないだろうけど,“棟梁”がしきることもあるらしい.佐藤和歌子『間取りの手帖』(2003年4月16日刊行,リトル・モア,ISBN:4-89815-090-X)を思わせる.

◇新居の“ダンボール・マウンテン”は標高がだいぶ低くなってきた…….※要するに,その大半がゴミまたは貸し倉庫行きということなのですが.

教訓(其の四) —— ゴミまで引っ越しさせてはならない.迷わず捨てる.迷っても捨てる.後悔しそうでもやっぱり捨てる.それくらいの気構えで事前に徹底的に捨てまくるべし.

◇本日の総歩数=9295歩[うち「しっかり歩数」=1114歩/10分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.3kg/−0.7%.日中12hr+未明3hr=15hr労働.


16 maart 2006(木) ※ 「本の虫になってはならぬ」

◇午前4時半起床.晴れ.気温1.3度.研究所にて「トド」の頭数を確認する.仕留めた「トド」よりも,あらたに襲来した「トド」の方が多いかもしれない…….

—— だからといって,いきなり現実逃避的読書に耽ってはいけません.>ぼく

◇午前のこまごま —— 非常勤出講関連:1) 非公務員となるこの4月以降は,大学への非常勤出講を含む「兼業」の規則が大きく変わるという連絡が研究企画科から昨日あった.規則がどのように変更されるのか,無給ボランティア身分から奴隷解放されるのか,当然のことながら今月末までに確定するそうだ.ぼくに出講を依頼してきた大学への事務連絡はそのあとになるそうです:2) 名古屋大学と首都大学東京への非常勤関連書類の返信をすっかり忘れていた./ 4月8日(土)午前の生物地理学会評議員会への出席を返信する.

◇予報通り,天気は下り坂になってきた.雲が空を覆う.

◇のたうつ「トド」たちのリスト —— 査読報告(締切までマイナス△日[汗])/ 『だから系統樹!』の文献解題(金曜まで)/ 業績評価リスト(金曜まで)/ アノ翻訳とソノ翻訳……./ 重要物品の廃棄手続き(すぐ)./ 非常勤雇用手続き(20日までに)./ 新潟行きのJRチケットと宿泊先の手配./ 非常勤出講関連書類.

◇曇りの昼休みの春宮画を歩き見る —— 劉達臨『中国性愛博物館』(2006年2月23日刊行,原書房,ISBN:4-562-03981-7)を一気にな[が]めまわす.第4章から第7章まで200ページほど.連射のごとく繰り出される天然色写真の数々にお腹いっぱいでございます.とりわけ,第7章の主題である「春宮画」のコレクションはすごい! 本棚に並んだままの中野美代子『肉麻図譜:中国春画論序説』(2001年11月15日刊行,作品社[叢書メラヴィリア8],ISBN:4-87893-758-0)の中心テーマでもある.いやいや,これはこれは.もう絶句でございます.

◇午後1時から2時半まで,久しぶりに〈文化系統学〉セミナーの第7回目.今日から Chapter 4「Branching versus blending in macroscale cultural evolution: A comparative study」(Mark Collard, Stephen Shennan, and Jamshid J. Tehrani)に入る(pp. 53-63).短い章だったので,読了.

文化進化の研究では,「分岐(branching)」かそれとも「混合(blending)」かという論争が長年にわたって続いている.分岐的プロセスを重視する論者は「tree model」を,一方で混合的プロセスを強調する陣営は「network model」を用いて,データを解析しようとする.著者らは,生物学と考古学の実際のデータを比較することにより,現実の知見がツリーとネットワークのいずれによって説明できるのかという問いに取り組んでいる.

生物データは〈TreeBASE〉からダウンロードしたものを,考古データは著者ら自身によって集められたものを用いている.それぞれのデータから PAUP* による最節約系統樹を計算し,データセットの保持指数(RI: retention index)を計算する.この RI を検定統計量として,生物データと考古データの間で RI に有意な差異があるかどうかを Wilcoxon rank-sum test で検定したところ,帰無仮説「差はない」は棄却できなかった.したがって,文化進化プロセスは生物進化プロセスとはちがって,分岐によってはうまく説明できないという混合派の主張は支持されない.

さらに,個別のケーススタディーを系統樹に基づく種間比較の観点からもう一度やり直してみると,ファクターとしての分岐と混合の寄与はケース・バイ・ケースで異なっていると著者は指摘する.

データセットの間での差異を検定するという方針は,これまでもよく使われてきた.たとえば,ホモプラジーの程度に関する「形態 vs. 分子」とか「形態 vs. 行動」という比較研究が1990年代になされたが,この章での研究方針もそれに準じている.

◇昼下がりに発注してあったレーザー・プリンターが届く.総重量は60kgだという.巨大すぎる…….設置やネットワーク設定はこれからの仕事だ.

◇夕方6時を過ぎて,急に雨が降り出した.さくっと帰宅.明日は超早起きしないと.

◇本日の総歩数=14030歩[うち「しっかり歩数」=6871歩/56分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/−0.5%.日中14hr+未明2hr=16hr労働.


15 maart 2006(水) ※ いきなり日常に引き戻される

◇午前4時半起床.暗闇の中,段ボール箱に蹴つまずく(痛……).ほぼ満月が西の空に輝き,東の空には明けの明星.空気が乾ききっていて,静電気が猛烈にスパークする.

◇久しぶりに未明の研究所に潜り込み,いろいろな用事が堆積していることを確認する(困ったなあ〜).ここ数日はとても冷え込んで,午前5時の気温が2.1度,6時過ぎには0.8度まで下がった.春は一歩遠のく.

◇朝イチで大量のゴミを集積所に運び込む.粗大ゴミもあるので,チケットを買わないとダメかも.今回の引っ越し作業でいったいどれほどものを捨てまくったことか…….

教訓(其の参) —— 「ひとつ買ったら,ふたつ捨てるべし」.

本の場合はそーはいかないのがつらいですなあ.1冊買ったら,アオリでさらに2冊買うことはあっても…….

◇〈統計学リテラシー〉について —— ぼくが〈くたくた〉になっていたここ数日,統計学と個別サイエンスとの関わりについての記事が掲載されている.ひとつは,津村ゆかりさんの「化学と統計のよそよそしい関係」,もうひとつはあらきけいすけさんの「研究日誌」(振り逃げるんだもん……).いずれも3月12日付の文章だ.

個別サイエンスで「統計学リテラシー」が必ずしも高くないというのは,確かにその通りですね.中学や高校で(あるいは大学で)しかるべき教育がされていないというのは歴然としています.ぼくの場合は,農水省の数理統計研修では農学系の研究員を相手にして,そして大学は主として理学部や農学部の生物系の学生を相手にして講義をすることが多いです.最初の講義では必ず「これまで統計学の講義を受けたことは?」と問いかけるのですが,中学での「場合の数」や「記述統計量」について学んで以来,何も講義されていませんというのが大半ですね.大学に入っても,生物系や農学系の場合,「生物統計学」が必修科目だったという話しは聞いたことがありません.選択科目に入っていれば御の字で,場合によっては科目そのものがないということもあります.これだもんねー.

ですから,統計学の概論的なトークをするときは,いつも“白紙”のごとき聴衆に色を塗るようなものですね.過去に数理統計学の数式責めで苦しんだ経験がある,適当な統計処理ソフトウェアでようわからんけど計算できてしまう,できればまたいで通り過ぎたいと願っている,etc. ユーザー側の複合的要因の結末として,低い〈統計学リテラシー〉がもたらされているのでしょう.

◇ここ数日,滞っていた仕事の処理と滞留していた情報の流れを復活させよう.

◇夕刻,静かに厳しく原稿の督促電話があった.すみませんすみません.やりますやります.やはり朱鷺メッセに参上しなければならないか…….※うまくずらそうなどとワルイことを考えていたのだが.

◇新刊メモ —— 枝川公一『バーのある人生』(2006年2月25日刊行,中央公論新社[中公新書1835],ISBN:4-12-101835-4).棒高跳びや走り高跳びの話ではござらぬ.嗚呼,かような“庵”に隠れたいなあ,籠りたいなあ.

◇〈つくばコンサート〉情報メモ —— 次年度のノバホールでのコンサート企画.昨年キャンセルだったギターの村治香織の演奏会が復活.さらに,古楽のエマ・カークビーが来日するという(リュートはヤコブ・リンドベルイ).なかなか魅力的.

◇気がつけば,また夜の引っ越し残務処理が続く.段ボール箱の山が切り崩され,新たなるゴミの山ができる.※わざわざゴミを運んできたんかいっ.

◇日が変わらないうちに寝ましょ寝ましょ.

◇本日の総歩数=10858歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/+1.0%.日中12hr+未明3hr=15hr労働.


14 maart 2006(火) ※ 引っ越しくたくたパック(2日目)

◇午前5時前に起床.外はかなり冷え込んでいるようだ.霜柱が立つほど.

◇引っ越しなお続く —— 前日の作業途中のままなので,家中,段ボール箱が散乱している.午前9時からまたまた〈軍団〉の到着.いたるところで,荷解きと詰め込みが始まった.それにしても,これだけ大量の荷物が果たしてちゃんと詰まるのかどーか,と見守っていたら,案の定「入りきりません」との報告が方々から……(汗).捨て方が足りなかったのか,それとも旧・公務員宿舎の収容力がバツグンだったのか,いずれにせよ最密パッキングしきれないものどもが空きスペースに積み上げられていく.

今回の引っ越しに際しては,売ったり捨てたりした本が1,000冊ほどあり,本の総量は3/5程度に減らしたはずだ.しかも,残りの半分は貸し倉庫に放り込んだので,“紙”の量そのものはさらに減っているにちがいない.他に,食器とか雑貨のたぐいも大量に廃棄処分した.しかし,それでもなお,これだけの「はみ出し」があるということは,最近の新しいマンションは「収納力」そのもののキャパシティが小さいということなのだろう.大きな押し入れとか納戸のような「詰め込みスペース」を取る余裕がないためかもしれない.いずれにせよ,公務員の世帯宿舎はその点でとても贅沢なスペースの使い方をしていたということを退去してみて初めて知らされた.

◇作業の合間に NTT の光ファイバー回線の工事が入る.室内 LAN の整備.担当者の計測では,うちの「Bフレッツ」は「49.1 Mbps」という回線速度だった.

◇昼を挟んで,午後もなお開封作業が続く.本の大半は縛られたままだが,食器など厨房用品は日常生活のため,荷解きするしかない.しかし,「容器」が多いのでかさばることかさばること.またまた,キッチンまわりで物品が溢れ出す.これはもう末期症状かもしれない.

◇夕方近くまで開封作業は続き,クロネコヤマト〈軍団〉は退去していった.しかし,残務整理と事後処理はまだまだ続くのだ…….

教訓(其の壱) —— クロネコヤマトの〈引越らくらくパック〉は,移動の前後の「家」の構造が“ほぼ isomorphic”であれば割にいい決着を見るかもしれないが,そうでない場合は(とくに収納スペースが小さくなったりする場合は)相当に“適当”な配置をされる危険性がある.ただし,そういう場合でも,梱包した箱から出してもらえるだけでもありがたいという利点は残るだろう.転居後の「初期値」としては必ずしも満足のいくものではないだろうが,何もないよりははるかにマシかもしれない(ただし,「何もしない方がよかった」という声もある).

利用者側の“幸福度”を最大化するためには,梱包&開封(=現状復帰)をこみにした〈らくらくパック〉ではなく,〈梱包のみ(without 開封)らくらくパック〉という選択肢があればベストではなかっただろうか.

◇夜の残務 —— ゴミでも何でもすべてが搬入されたので,捨てるものをどんどんゴミ袋に分別して詰めていく.ベランダがあっという間にゴミの山になる.明朝これを階下までおろすのは肉体労働だぞー.しかし,開封されない段ボール箱が和室に山のごとくそびえている.すべてを切り崩すのにいったいどれだけの日数がかかるのだろうか.

教訓(其の弐) —— 日常的な家庭生活で生じる「不要品」は放置していると単調に蓄積されていく.最初から明らかに不要とわかっているものは,即座に処分されるので,家庭内にとどまることはないだろう.しかし,かつては必要だったが,その後はいらなくなったモノというのがくせ者だ.ときどき転居するような機会があれば,そのつど不要品どもは廃棄される確率が高くなる.しかし,ぼくのように同一場所に20年近くも“定住”してしまうと,そのような「監査」が入ることがまったくないので,すべてのゴミは家庭内の奥深くに埋没していくことになる.

たとえば,今回の転居では,タンスの上の奥からとても重い段ボール箱がホコリまみれで出土した.何かと思えばぼくが大学に入って買った LP プレイヤー(Victor の当時としては高級品.シュアの針がついていた)だった.つくばに来るときにもったいない(←コレもくせ者)と思って,捨てずにとっておいたのだろう.こんな30年も前の LP レコードの再生機械など今となっては巨大なゴミにすぎないのだが,「監査」が入らないと未来永劫そのまま抱え込むことになってしまう.

◇夜,声もなく〈くたくた〉になる〈引っ越しくたくたパック〉.これで,あと10年は「引っ越し」なんかしたくない〜.※「異動困難者」になったろかー.

◇本日の総歩数=10009歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.日中18hr+未明2hr=20hr労働.


13 maart 2006(月) ※ 引っ越しくたくたパック(初日)

◇午前5時半起床.晴れ.今日と明日の2日間は市内での引っ越しのため年休を取った.

◇引っ越しのための事前準備の大半は「ものを捨てる」ことにある.とくに,一切合切すべてを運んでくれる〈らくらくパック〉を依頼しているので,いかにして「運び込ませないか」という点が肝要だ.

◇午前9時にクロネコヤマトの引っ越しチームが到着.総勢10名!分散作業でどんどん梱包が進む.この“わざ”はたいしたものです.食器の梱包グッズとか,衣服のぶらさげ箱とか,初めて見るものがたくさんある.しかし,いったい引っ越し作業が始まってしまえば,いちいち指図していられるわけではなく,単に流されるのみとなる.

◇新居では,朝から水道管の工事が始まっている.行ったり来たりでもうたいへん.

◇梱包が予定よりも早くすんだとのことで,午後は新居での部分搬入をすることになった.旧宅の後始末は後日ゆっくりやることにして,“戦場”は新居に移動する.

午後2時過ぎに,トラックが到着し,次々に大物小物が運び込まれてくる.〈らくらくパック〉の場合,事前に搬入場所を打ち合わせておいて,新居ではその場で「現状復帰」をすばやく行なう(←これが問題なのだ).本棚の本の順番まで保存されている.移動前後で家の構造が異なっているとき(とくに収納スペースのちがい),現状復帰は難問だろう.

—— 全体の荷物の過半数が搬入された.残りは明日まわし.

◇夕方,洗濯機が搬入され,取り付け工事.今日の引っ越し作業はこれにておしまい.

◇今日は一日中北風が強く,晴れて寒い日だった.大量の段ボール箱が部分搬入されたものの,何も片付いてはいない.明日は〈引っ越しくたくたパック〉の2日目.

◇マジ,くたくたでーす.とにかく寝る寝る.

◇本日の総歩数=19355歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+0.1%.日中14hr+未明2hr=16hr労働.


12 maart 2006(日) ※ 引っ越し前日の追い込み

◇午前5時半に起床.「あとがき」と「自己紹介」を講談社にメールで送る.

◇朝から荷造りの続き —— 今回の引っ越しは,直線距離にして「たった2キロ」の移動なのだが,手間ヒマは遠距離引っ越しと何も変わりはない.いくつかの引っ越し業者を比較して,クロネコヤマトの〈ラクラクパック〉にした.“繁忙期”である3月15日以降の年度末は,どこの業者でも引っ越し費用が二割増になるらしい(逆に師走は二割引以上引くとのこと).

「もっていくもの」は〈ラクラクパック〉に任せればいいのだが,そのまえに「もっていかないもの」を仕分けしておく必要がある.これが実にたいへん.同じ場所に20年近く住んでいれば,それなりに荷物が増えるのはしかたがない.しかし,過去の遺産のように引きずってきたものどもをこの機会に処分するとなると,当事者としての“線引き”が必ずしも即決できないケースが続出する.今回の移動では,千冊以上の本を処分した.それよりもさらに多い本を貸し倉庫送りにした.結果として,本棚5個分の本を,2個分にまで減らした上で,新居に搬入することになった.

もっと若い頃だったら,「まあ,とりあえず取っておきましょーか」で,単調に溜め込んでいけばいいのだろうが,それでは現存量が増えすぎていずれは破綻する.荷物の成長量がプラスであるかぎり,現存量をどこかでカットするしかない.移動の負担になるのは,とにかく本.業者による見積もりのときも,蔵書がどの程度あるのかどうかが見積額にダイレクトに跳ね返ってくる.本が多いか少ないかによって,必要な段ボール箱の個数が全然ちがうし,仕事量も変わってくる.今回は,近い場所への引っ越しなので,事前に自力で本の運搬をした(計500kg程度は運んだはず).

◇朝のうちは強い南風が入ってきて,湿度も低くいたるところで静電気が弾ける.しかし,午後になって雲が厚くなり,2時過ぎに少し雨がぱらついた.その後,北風が吹いて,気温が急降下.絵に描いたような「前線通過」だ.

◇貸し倉庫とのピストン輸送.荷物を縛り続け,いるものといらないものの判別作業が続く.すべてのものを無差別に運んでもらうというのは,何も考えなくてすむという意味では〈ラクラクパック〉なのだろうが,いったん事前の仕分けをするとなると,一転して〈くたくたパック〉になる.捨てるべきか捨てざるべきかの判断が夜まで延々と続く.

◇「判断」に疲れ果て,日が変わる前に寝てしまう.明日から2日間は年休を取って,引っ越しに専念する.

◇本日の総歩数=10091歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/−0.5%.日中15hr+未明2hr=17hr労働.


11 maart 2006(土) ※ 一段と春めいて,荷物を運ぶ週末

◇前夜の夜更かしのせいで,午前6時まで寝続ける.

◇朝の作業 —— 「あとがき」を html 化し,「自己紹介」を書き上げる.『だから系統樹!』の出版予定時期は新年度に入っているので,新しい所属名称や肩書きにしておかないと.

すでに“下山モード”に入っているので,加速度がついている感じがする.「文献解題」も来週中には書き終わっているだろう.この本では雑読系のさまざまな出典や引用が散らばっているので,逐一それらをリストアップしてコメントをつけたりしたら,とんでもない分量になるにちがいない.主要な文献のみ簡単な紹介をつけ,あとは「書名索引」として書誌情報を盛り込む予定.「事項・人名索引」はもちろんつくる.索引がない本に資料価値はないから.

◇今日は,朝から春めいて暖かい.昨日は日中でも8度台の気温しかなかったが,今日は20度近くまで上がるのかも.

◇日中の重労働あれこれ —— 午前中は先週に引き続きまたまたクリーンセンターに廃材を搬入し,処分してもらう.今日は粗大ゴミ扱いなので,有料だった.つくば市は昨年から粗大ゴミの回収は有料化され,事前にチケットを購入しないと回収してもらえなくなった.不便と言えば不便なのだが,クリーンセンターに自力で持ち込めばすむことなので,引っ越しを予定されているつくばエリアのみなさんは大量のゴミが出たときは迷わずクリーンセンターに直行しましょうね./ 午後は,借りた倉庫に古い本やら,巨大な五月人形一式,そして巨大なマリンバ1台を運び込む.同じところに長年住み続けると,澱のように不要品が蓄積されていくのはもちろんなのだが,巨岩のような(しかも処分する意志のない)ものの扱いに窮することがある.今回は思い切って倉庫を借りたので,行き場のないものたちの格納バッファとして役立てるつもりだ.

◇講談社ブルーバックスの絶版・回収本がつくばのリアル書店にはまだ店頭に並べられている.吾妻の友朋堂書店に立ち寄ったときに,店員さんに「これは〜の事情で回収されているので,もう売らない方がいいですよ」と余計な口を差し挟んでしまった.こういう緊急情報が末端の書店まで行き渡るには時間がかかるだろうし,場合によっては情報が到達しないこともきっとあるのだろう.

◇夕方の時点ですでに疲労困憊だったのだが,別宅でさらに搬入準備,本宅での搬出準備などに没頭してしまう.日が変わる頃には,立ち居振る舞いが極端に愚鈍化している自分がそこにいたのだが,「第4章」の図版の貼りこみ修正をしたりとか,「あとがき」に加筆したりとか,〈新世紀エヴァンゲリオン〉のオープニングに触発されて,カバラの図像をグーグル検索したりとか(おお,こんなところにって感じで).

—— 寝たのは午前1時前.またまた夜更かし.明日もまた引っ越し準備が続く.

◇本日の総歩数=9568歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/+0.5%.日中13hr+未明0hr=13hr労働.


10 maart 2006(金) ※ つくばの天気は下り坂

◇午前5時起床.曇り.気温6.3度で,冷え込みなし.朝のうちから小雨が降り出した.しだいに本降りとの予報.

◇朝のこまごま —— 生物地理学会シンポジウム〈生物学哲学からみた生物の進化と系統〉の要旨のひとつを差し替えた.関係者に連絡する.

◇雨脚が少しだけ強くなるが,ざあざあ降りではない.

◇午後は,ずっと『だから系統樹!』の「あとがき」に取り組む.店頭で新書を手に取ったときに,まずはじめに「あとがき」から読み始める読者は少なくないと思う(ぼくはそうしている).だから,本文と同等あるいは以上に「あとがき」は大事なのだ.論文の「アブストラクト」みたいなものだ.論文のタイトルを見て手に取るかどうかを判断し,次にアブストラクトを見て読み始めるかどうか決定する.それと同じこと.キャッチーなことばをいくつか埋め込んでと(これが愉しいのだ).

—— そういえば,今まで書いてきたこれまでの章の html 化をずっと更新しないままだった.図版を張り込んだ html をつくっておくと,仕上がりのイメージが見えてくるので便利.と思って,やりはじめたら,これが意外にも時間を食う.分量が多いのもあるのだが,それ以上に,1〜2年前の自分の html タグの使い方が稚拙でげっそりしてしまう.そういうバージョンアップまで始めたものだから,時間がどんどん過ぎていく.もう夕方だ.いったん帰宅.

◇夜のこまごま —— 夜も10時を過ぎてから,「あとがき」の書きあげ開始.こういうのは,書けるときに書かないとダメなのだ.日が変わった午前1時半に,原稿6枚分を書き終え,これでおしまい.さあ,寝ましょ.

◇長かったが,これでやっとゴールが見えてきた.昨日のお代官様の話しでは,図版の占めるスペースにもよるが,予想では270ページ前後の厚さになるだろうとのこと.平均レベルよりはやや厚めの新書になる.

◇本日の総歩数=6313歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+0.8%.日中12hr+未明2hr=14hr労働.


9 maart 2006(木) ※ 気まぐれではない神保町紀行

◇午前4時半起床.気温3.1度.

◇未明のこまごま —— 日本生物地理学会大会シンポジウム〈生物学哲学からみた生物の進化と系統〉の講演要旨がすべて出そろったので,講演者と大会関係者に連絡する./ 次期RPの「小課題」案に関してつとめて冷静なメールを返す(……)./ 岩波『科学』のゲラが届いていた.今日の午後は神保町に出るので,直接持参することにしよう.

◇市役所にて住民票をゲットしたあと,新しく契約した光電話のセカンドナンバーを決定する.そして,11時11分の TX 快速で東京に出る.車中では『科学』のゲラをチェック.マイナーな修正と書き足しを完了する.新御茶ノ水に着いたのは正午過ぎ.Tully's で新書原稿の「エピローグ」を書き続ける.今日中に脱稿して“お代官様”に渡さないと,石責めの刑が来週早々にも執行される.

確かに原著論文を書くのは苦しいけど,そうではない本や記事の原稿を書くのも別の意味で苦しいですぞ.前者は“査読者様”という関門があり,後者はまずはじめに“編集者様”,次いで一般読者という“閻魔様”がいる.気を抜いて書ける文章はどこにもないということ.※あ,「日録」は別ね.これは苦しい日常の 生き抜き 息抜きとして.

◇14時に神田のオーム社本社にて,企画中の生物統計学本の打合せと今後の予定を詰める.関係[予定]者のみなさんには後ほど個別に打診します.今月末の「新潟勉強会」でも書き手をリクルートする必要があるだろう.とりあえずは目次と各章の執筆予定者の案を出すということになった.仮題は『生物統計ユーザーのための統計モデリング』.「ゆーい差決戦主義」を越えましょうね.

◇少し時間があったので,小川町の Starbucks にて新書「エピローグ」を書き上げる.400字詰原稿にして20枚弱.これで『だから系統樹!』の本文はすべて書き終わった.あとは,あとがきと文献解題と索引,そして図版の確認だけ.

◇15時半に〈さぼうる〉にて講談社現代新書のお代官様にへへーっと原稿を差し出す.文献解題は来週に納税するということに.「石責め」の刑は今しばらくのお慈悲を〜./ そして.ついでに「例の件」のことについてヒソヒソと —— などとぼかさなくても,すでに新聞で報じられているように,講談社のブルーバックス2冊が回収・絶版という措置がとられた(→3月9日付:朝日新聞読売新聞).これについては,ブルーバックスによる盗用疑惑を指摘した工作舎による抗議があって以来,科学史メーリングリストなどで論議されてきたが,講談社側の謝罪と今回の措置により,とりあえずは決着するのかな.

◇返す刀?で岩波書店を襲撃し『科学』編集部に,修正ゲラを手渡す.「心にのこる1冊:ネルソン&プラトニック『生物体系学と生物地理学』」は5月号に掲載予定です./ その他,別件の〈確率と情報の科学〉シリーズの執筆本についても少し.

◇今日の午後はひたすら神保町を駆け回った気がする —— 東京堂書店にてゲット:岡崎武志『気まぐれ古書店紀行 1998-2005』(2006年2月10日刊行,工作舎,ISBN:4-87502-391-X).渦中の『科学史から消された女性たち』を出したのも工作舎なら,この本を出したのも工作舎.この本は“オビ”をはずしてしまうと,すっぴんになってしまうんですけど.

◇まだ所用は続く —— 神保町から本郷に移動し,午後5時から山上会館にて〈大場秀章 最終講義〉に参加する.ものすごい数の出席者で,座る場所の確保に苦労する.たまたま近くに大場さんがいたので挨拶する.東大が法人になってからというもの,時間が思いっきり削り取られたそうだ.長年にわたってお疲れさまでした.講義は,ボタニカル・アートについての話.ヨーロッパ中世のディオスコリデスの〈Materia Medica〉とかデッラ・ポルテの本草学書とか貴重な彩色図版がいろいろ出てくる.古代ギリシャとルネサンス以降の間の“中世”は,観察や実験ではなく宗教的教義に則った自然理解が幅を利かし,現実とはかけ離れた植物画が描かれたという.映された事例はほとんど〈ヴォイニッチ写本〉のそれ(→参照)のような奇怪な植物たちだった.

◇約1時間の最終講義の後,下の階で懇親会.これまた人口密度が高かった.日本の植物分類学者たちが集結するの圖.1時間ほど歓談して(たいへん美味),午後7時過ぎに会場をあとにした.根津から乗ってつくばにたどり着いたのは午後8時半のこと.飲み過ぎることも食べ過ぎることもなく,ひたすらくるくると動き回った1日だった.

◇帰路の車中読書 —— 向井透史『早稲田古本屋日録』(2006年2月28日刊行,右文書院,ISBN:4-8421-0066-4)を読了.第II部〈早稲田古本屋日録〉は,高橋徹の『古本屋月の輪書林』(1998年6月30日刊行,晶文社,ISBN:4794963599→紹介)とその続編『月の輪書林それから』(2005年10月10日刊行,晶文社,ISBN:4794966857→紹介)の「日録」と同じスタイルだが,もう少しさらりとした肌触りがする.特徴は本が擬人化されていること.

◇本日の総歩数=13116歩[うち「しっかり歩数」=3172歩/26分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.5kg/−0.4%.日中12hr+未明3hr=15hr労働.


8 maart 2006(水) ※ 和光市の理化学研究所へ

◇午前4時半起床.晴れ.研究所には行かず,家で仕事する.

◇未明のこまごま —— 生物地理学会大会の時間帯に関する相談.どーしましょ? / 次期RP(リサーチプロジェクト)の小課題設定に関する意見交換メールのやり取り(夜型と朝型の対話).研究分野によってある課題の受け止め方やヴィジョンに大きな違いがあることがわかる.詰める時間がどれだけ残されているか.

◇昨日の系統樹質問メールについて —— ある樹形上の条件(単系統性に関する制約)を満たす系統樹の群(「トポロジー群」)に関する検定をどうすればいいのかという質問だった.単系統性に関する検定には,最節約法だったら T-PTP 検定(PAUP* でもできる)がありますし,それの尤度版が Huelsenbeck らによって開発されていました(うろ覚えですが数年前の Systematic Biology 誌).尤度比検定を用いた単系統性の検定では問題があるだろうというのが質問者の指摘だ.とすると,ダイレクトにベイズ事後確率で「トポロジー群」間の検定をしようとすると,樹形制約を置いたパラメトリック・ブーツストラップみたいな手法しかすぐには思いつかないのだが,ベイズでそういうことってできましたっけ? ぼくの知っている範囲では,系統推定のパラメトリック・ブーツストラップは,階層的尤度比検定に関する尤度比の帰無分布の構築に用いられていたが…….

—— ううむ,すぐにはお答えできないかも.

◇理研シンポジウム〈生体形状情報の数値化及びデータベース構築研究〉 —— 午前7時56分発の TX 快速に乗る.池袋で何年ぶりかの東武東上線に乗り換え,和光市駅に着いたのは9時20分過ぎのこと.てくてく歩いて,目的地の理化学研究所・鈴木梅太郎ホールには9時40分頃に到着(歩道橋多すぎ).シンポジウムは10時からだから余裕余裕.気温が高く,鼻むずむず.

その昔,就職の面接のためここに来て,みごとに落ちて以来,広沢の地は「結界」にして近づくべからずという掟をきっちり守り,実に20年もの長きにわたって理研の和光研究所の敷地には足をいっさい踏み入れなかった.※実際には,フシギなことに,関係しそうな学会とか研究会がここでは開かれたことがなかったというだけのことなのだが.

いずれにせよ,今回,〈生体形状情報の数値化及びデータベース構築研究〉に招待されたということは,一時的にせよ結界は破られたわけだから,安心して受付に向かえる.事務局のスタッフに挨拶して会場に入る.定刻10分遅れで主催者の挨拶があり,シンポジウムが始まった.

最初の鳥脇純一郎(中京大学)さんの講演「3D画像処理に基づく人体組織の形状解析」は,医療画像処理の話.魅惑的な画像がたくさん.気管支から肺胞に分け入る動画は,さながら〈ミクロの決死圏〉だ(あ,古すぎっ).レイサムの「かたちの系統図」が出てきたのには驚いた.これはもう J. A. Bennyhoff の「考古遺物系統図」とそっくり.

ぼくのトーク「幾何学的形態測定学:生物学・幾何学・統計学の接点」は,もちろんケンドール形状空間とその線形接空間についての話題提供.45分の持ち時間だったが,質疑が終わってみると50分ほど占拠してしまったようだった.

今回のシンポジウムは,理研でいま進められているプロジェクトの発表会を兼ねているわけだが,中心テーマのひとつはマウスの3次元形態情報データベースだ.進化したマイクロトームみたいなスライス・マシーンを用いて,ミクロン単位で一頭のマウスを6,000枚にスライスして,その断面画像から逆に3次元復元をするのだという.当然,大容量の画像ファイルが「ギガ・バイト」さらには「ペタ・バイト」でごろごろ転がり出てくるので,その情報処理そのものも大きな問題なのだという.うへぇ.

このような3次元復元テクニックをさまざまな形態分析に用いることで,これまではわからなかった生体内での臓器や器官の形状や位置関係が“見える”ようになったとのこと.しかし,作業工程そのものは時間を食うようで,一頭,一器官の分析に数週間かかる場合もあるらしく,マウスの精細管の復元を担当した講演者のひとりは「もう二度とやりたくない」とぽつり……(汗).

理研最先端のハードウェアと人力の結合でやり抜いたという感じの研究発表が続く.すべての講演が終わったのは午後6時過ぎのこと.外はもう真っ暗だ.6時半から,理研構内の「広沢クラブ」にて懇親会.1時間ほど参加して,つくばに帰った.

◇ウィリアム・レイサム〈かたちの帝国〉 関連情報—— 『ウィリアム・レイサム展:The Empire of Forms』(1990年刊行,展示カタログ,品川文化振興事業団O美術館→サイト)/Stephen Todd and William Latham『Evolutionary Art and Computers』(1992年刊行,Academic Press,ISBN:012437185X).

◇帰路車中読書 —— 依頼書評本:長谷川眞理子『進化生物学への道:ドリトル先生から利己的遺伝子へ』(2006年1月26日刊行,岩波書店[叢書グーテンベルクの森],ISBN:4-00-026989-5)をさくっと読了.タイトルからはわからないが,とても“奔放”な読書遍歴ですなあ.同病相哀れむというか.『蛋白質 核酸 酵素』誌への書評もさくっと書きましょう.リヒアルト・シュトラウスの自伝的交響詩〈英雄の生涯〉もまた「若い頃」の作品でしたね.

◇明日も出奔…….

◇本日の総歩数=12757歩[うち「しっかり歩数」=4581歩/37分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/−0.3%.日中13hr+未明3hr=16hr労働.


7 maart 2006(火) ※ 春一番の南風は明け方に吹く

◇午前4時起床.南風が吹く.気温8.3度で,冷え込みも静電気もなし.昨日は関東南部で「春一番」が吹いたというが,つくばあたりではそうは感じなかった.むしろ,今朝の方が風が強い.いずれにせよ,一気に春めいて,花粉もホコリも飛びまくる.

◇曇りがちで昨日よりは多少寒い午前のこまごま —— 午前中は,次期中期計画の「小課題」案についてのコメントを用意する(→関係者にメール送信).今日の午後に関係者が集まってのミーティングあり.時間的余裕はまるでない./ 荷物の搬入と搬出.長年格納しておいた荷物を“解凍”すると,かぎりない無力感に教われるのはなぜ? エンドレスな作業が続く.

◇明日の理研シンポジウム〈生体形状情報の数値化及びデータベース構築研究〉のプレゼン pdf を出力する.120枚ほど.時間は45分…….ちょこっと削りますかぁ(汗).

◇〈虫の詩人の館〉 —— 読売新聞の記事によると(→3月6日付:「10万匹の標本集め昆虫博物館、ファーブル生家も再現」),6日に千駄木でオープンしたらしい.所在地は,不忍通りを一本内側に入った坂の上の道沿い.

◇昨日の献本(ありがとうございます) —— 高橋正道『被子植物の起源と初期進化』(2006年2月25日刊行,北海道大学出版会,ISBN:4-8329-8131-5).予告通りの出版だが,どーした,このボリュームは!500ページを越えているではないか.最近の日本人の植物進化学研究者は“たくさん書く”んですねー.

◇日本生物地理学会第61回年次大会シンポジウム〈生物学哲学からみた生物の進化と系統〉の私設サイトを開設する(学会サイトは後ほど).まだ,要旨がそろっていないが,近日中にすべて公開できる予定.シンポ関係者と学会関係者に連絡する.

◇午後1時半から,次期の RP(リサーチ・プロジェクト)の関係者によるミーティング.午後3時まで1時間半も会議をした割りには,ふわふわと浮遊する心もとなさが強い.こんなことで次期中期計画がうまく離陸するのかな? 時間の足りなさを浮いた言葉で埋めている感じ.今週中に今後5年間の道筋(「小課題」)が決まるはずなのだが…….

※「小課題」の立案に必要な情報などを関係者に流さないといけない.

◇夕方,系統樹の検定についての質問が届く.やや込み入っているようだが,考えてみよう.

◇夜は,生物地理学会大会についてはちょっとした事務連絡など.

◇明日は和光市へ.

◇本日の総歩数=6084歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.4kg/−0.5%.日中12hr+未明3hr=15hr労働.


6 maart 2006(月) ※ 花粉も凍る明け方

◇午前4時半起床.冷え込んで 0.6 度.昨日は花粉のせいか,夜はほとんどくたばっていたが,いまのところはなんとか持ち直している.

◇近刊情報 —— 岡本真さんが運営しているウェブサイト〈Academic Resource Guide〉のメルマガ 235 号によると,近刊で岡本真『これからホームページをつくる研究者のために(仮)』という本が築地書館から刊行されるそうだ.上記サイトに載っている目次を見ると,ぼくら研究者がウェブやブログを運営していく上で,日常的に関係しそうなことが取り上げられているようだ.期待しましょう.

◇いま行なわれているアンケート〈ウィキペディア日本語版について〉には,下記のように答えた:

「どちらともいえない」 / 40-49歳 / 進化生物学 / 男性 / 三中信宏 ( 2006-03-06 06:33:03 )
 生物進化や系統発生に関係する項目:「進化」「自然淘汰」「種(生物)」「分岐分類学」「分類学」「系統樹」「反証可能性」などをざっと見たかぎり,項目間のばらつきが大きい.不正確な記述もあり,またバイアスのある内容も見受けられる.ただし,それは「ウィキペディアだから」ということでは必ずしもなく,署名のある「紙」の百科事典でもありえることだ.個人的には,ウィキペディアから張られている各国語版 Wikipedia やオンライン参考文献などが資料的価値があるように思う.ある言語では不十分な記載しか得られない場合でも,別の言語では詳細な説明がなされている場合があるから(「オッカムの剃刀」のように).

◇うわわ,見逃し! —— 先月,メモったはずのドキュメンタリー映画〈ダーウィンの悪夢:アフリカの苦悩[前・後編]〉の放映(BS1: 3月5日(日),22:10〜0:00)をきちんと見逃してましたー.ネタ元さんもきちんと見逃していたそうなので(→森山日記),こりゃあ,そこかしこでウッカリさんがあふれたのでは?

◇午前のこまごま —— 次年度の雑誌購読の申請書提出/ 筑波大学図書館の入館証申請書提出./ 計算センター利用報告書提出./ 組合アンケートとストに関する投票./ 農環研食堂の利用に関するアンケート提出./ 沼尻産業に「暮らしの倉庫」の契約完了./ 次期中期計画の小課題をそろそろ何とかしないと…….

◇今日は曇りで,気温高め.よそ見 —— 武満浅香『作曲家・武満徹との日々を語る』(2006年3月20日刊行,小学館,ISBN:4-09-387613-4)の第1章「出会いの頃」と第2章「無類の映画好き」を読む.100ページあまり.え,「ノヴェンバー・ステップス」で琵琶を弾いた“鶴田錦史”って Mr. じゃなくって Ms. だったの?!(知らんかったー) いろいろとエピソードが満載.それに,脚註が親切でとても読みやすい.

◇『蛋白質 核酸 酵素』誌から書評依頼 —— 長谷川眞理子『進化生物学への道:ドリトル先生から利己的遺伝子へ』(2006年1月26日刊行,岩波書店,ISBN:4-00-026989-5).おっけーです.

◇〈講師論語〉 —— 先日,自宅の書棚を整理していたら,かつて純粋なオーバードクター(OD)だった頃に収入を得ていた,とある予備校の超名物講師(にして経営者)が講師全員に配布した〈講義心得:講師のための授業マニュアル〉なるヒミツ書類が出土した.ぼくの場合,大学に入るまでははっきり言って「話がヘタ」だったのだが,予備校で時給いくらの生活を数年間続けることで,“トークを売る”ためのいろいろなワザを身につけることができたように思う.今でもいろいろな講義の場で,初対面の受講生から「予備校の先生みたいですね」と感想を言われることがあるが,「みたい」じゃなくって「そのもの」だったのです.そういう印象を持たれるということは,今でも教壇に立つときは,きっと“ハッタリかます予備校講師”として“生意気な浪人生”を相手にしているのだろうと思う(心情的に).

15ページにわたってびっしり書かれたこの〈講義心得〉の見出しを下記に記す.それらは,ぼく自身が〈実践プレゼンテーションテクニック−講演はショータイム!−〉で書いたことに通じる(当然だ).

  • 心構え篇
    1. 人は“心”,授業も“心”である
    2. 生徒に“責任”を転嫁するべからず
    3. “話がわかりやすく,面白いこと”は,少なくとも人前に立って話す人間の最低限の“仁義”である
    4. “教えてやる”という気持でなく,“聴いてもらう”という気持を根本におくこと
    5. 予備校・塾は“企業”であり,講師の授業は売っている“商品”であることを忘れるな
  • マナー・外見篇
    1. “外見”を気にせよ!!
    2. 超重要!講師の目線
    3. “気配り”のシンボル,視線を“公平”に!
    4. ジェスチャーは極端に大き目に
  • 指導技法篇
    1. 多くをやろうとせず,習得目標をはっきりさせ,1つか2つのことを深く理解させること
    2. “話術”より,まず“わかりやすさ”を!
    3. テキストやプリントは,範囲を広げ,網羅的にするのではなく,重点集中的に! そして,なるべく“量を少なく,質を深く”をモットーに!!
    4. “選ぶこと”より“捨てること”の大切さ
    5. 生徒の中にRPG(ロールプレイング)できる“役者”を決めること
    6. “基礎”を教えるのは難しく,“難問”を解いてみせることは易しいことだ
    7. 生徒に好かれる努力と,“公平さ”のキープを!
    8. 細かなサービス精神を忘れない
  • 話し方篇
    1. 教える中身について絶対に“嘘”を言わない
    2. 生徒に“わかる言葉”で話すこと
    3. 純粋の“雑談”は控え目に,“雑談”も目的に合わせた雑談を! ためになる雑談を!
    4. 絶対するな“自慢話”と生徒の“軽蔑”
    5. “強調”と“繰り返し”だけで授業の効果は5倍に増大する
    6. 自分の授業についての“否定的コメント”は避けること
    7. 説明や板書はなるべくテキストや授業ノートを見ないでせよ!
  • 話術とは何か?
    1. スピードで話し,かつ“緩急”を大切に
    2. “話術”は“間術”である
    3. 声が大きいだけで3倍は有利
    4. つとめて“1対1の語り方”に徹する
    5. “自分流”の“術”を見つける
  • 板書篇
    1. 黒板に向かって話さず,身体を半分生徒に向けて書く
    2. 無言の“ライティングマシーン”になるな
    3. 板書は“デザイン”の感覚を大いに取り入れよ
    4. 生徒を“コピイングマシーン”にさせるべからず

—— 実際の〈講義心得〉には,上記の各項目ごとに詳細な事例と説明がついているのだが,見出しを見るだけでも十分に「気合い」が伝わってくるというものだ.さすが,何十年にもわたって県内随一と言われた有名講師だけのことはあると実感する.こういう人が身近にいれば,講義やトークに対する覚悟や心構えが鍛えられるのも当たり前だろう.実際,“講義名人”の肉声に接するのが最良のトレーニングだ.

◇本日の総歩数=7447歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.9kg/+0.8%.日中9hr+未明3hr=12hr労働.


5 maart 2006(日) ※ 急転直下で決着する

◇午前5時半起床.朝から晴れ上がる.

◇久しぶりに歩いたりして —— 渡辺京二『逝きし世の面影』(2005年9月9日刊行,平凡社[平凡社ライブラリー552], ISBN:4-582-76552-1→目次)の第5章〜第8章まで,130ページほど.オールコック『大君の都』など当時の資料の読み方や引用のしかたまで,石川英輔の「大江戸本」とそっくりなのは驚くほど.

◇午後は,オンラインで初めて購入した Dell のパソコンが配送されるというので,別宅にて待ち構える.おお,来ましたな.2台まとめてご到着の午後2時過ぎ.

◇〈Dayz Town〉の〈銀の豆〉にて,パプア・ニューギニアとキリマンジャロを焙煎してもらう.お,〈クーロンヌ〉の販売コーナーが新しくできているじゃないか!

◇夕方,アタマが痛くなってきたので,夕食も早々に寝てしまう.午後9時過ぎにまた起きて.

◇日本生物地理学会第61回年次大会シンポジウム —— 何だかばたばたしてしまったが,やっとタイトル・演者・演題が決まった.今回は「生物学哲学(philosophy of biology)」を核として,進化学のいくつかの問題を見るという趣旨でオーガナイズしました(これが“なに”ではない“あれ”です).

【タイトル】〈生物学哲学からみた生物の進化と系統
【オーガナイザー】三中信宏(農環研/東大・院・農生)
【開催日時】2006年4月9日(日),13:00〜15:00
【開催場所】立教大学(池袋)
【演者演題】下記の通り(仮題含む):

  1. 13:00 - 13:05 三中信宏(農環研/東大・院・農生)「科学哲学と個別科学:進化学の武器としての生物学哲学について」
  2. 13:05 - 13:30 森元良太(慶應義塾大・文・哲学)「進化論における確率概念を巡る哲学的問題」
  3. 13:30 - 13:55 南部龍佑(上智大・文・哲学)「いかなる世界像を系統樹は描くのか:系統学・形而上学・科学的説明」
  4. 13:55 - 14:20 直海俊一郎(千葉県立中央博物館)「進化する生物学的実体と“進化の結果”としての種」
  5. 14:20 - 14:45 松本俊吉(東海大・総合教育センター)「哲学は進化論研究にどこまで貢献できるか?」
  6. 14:45 - 15:00 総合討論

おお,久しぶりに【種】が出ますっ.自然淘汰論・系統推定論・進化形而上学に関心のある方,当日は池袋に集結しましょうね.

◇でも,やっぱり体調がイマイチなので,午後11時過ぎにまた寝てしまう.

◇新刊メモ —— 向井透史『早稲田古本屋日録』(2006年2月28日刊行,右文書院,ISBN:4-8421-0066-4).第I部:〈日々の帳場から〉を隠れ読みはじめる.この文体にはシンパシーを強く感じさせるものがある.「別冊・栞」なる挟み込みあり.著者のブログ「古書現世店番日記」が開設されている.また,『未來』の連載「開店まで:早稲田古書店街外史」が,今年中に未來社から刊行されるとのこと.

◇本日の総歩数=11246歩[うち「しっかり歩数」=7440歩/65分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=−0.3kg/+0.3%.日中7hr+未明1hr=8hr労働.


4 maart 2006(土) ※ ゴミもて走り回る週末

◇午前5時起床.自宅でごそごそする.

◇よい天気の午前中は,大量のゴミをまたまたクリーンセンターに搬入し,巨大な焼却炉にぶちこむ作業.日常的にこれだけ大量のゴミが出ているのかと思うと,考え込むなあ.昼過ぎにへたばる.正午の気温は10度ちょうど.

◇午後は,ひたすら本を縛りまくる.どこからこれだけ大量の本が湧いて出てくるのかと思うほど.長らく「行方不明」だった本が再発見されるのだが,立ち読みしているヒマはないはず.>ぼく.

◇植物体系学の新刊情報 —— Michael G. Simpson『Plant Systematics』(2005年11月30日刊行,Academic Press,ISBN:0126444609→目次).著者サイトおよび版元サイトがある.

◇式鬼や呪の効き目があったのか,生物地理学会シンポジウムの講演タイトルがやっと集まりはじめた.遅ればせながら,これで何とかなりそうな気配.おお,これは,グッド・タイミング.【種】の件,よろしく.

◇〈プレゼン道〉 —— 先日,「みなかさんのプレゼンの“哲学”は?」という質問メールが届いた.10年ほど前に応用動物昆虫学会大会(東大農学部)の自由集会で話した内容は,すでにオンライン公開している(→〈実践プレゼンテーションテクニック−講演はショータイム!−〉).基本的な考えはその頃とほとんど変わっていない.プレゼンのツールは,35mmスライド→ OHP シート→パソコン・プロジェクタとどんどん変遷しているのだが,「噺をする」というプレゼンの基本目的には何一つ変わりはない.とすると,プレゼン・ツールの変遷を超越するものがあるのは確かで,それが〈プレゼン道〉なのでしょうね.

◇本日の総歩数=819歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.7kg/−0.7%.日中9hr+未明2hr=11hr労働.※せめて「1000歩」は歩こうねっ.>ぼく


3 maart 2006(金) ※ 節分にみぞれと春雷とは

◇午前4時起床.気温3.5度.さむ…….

◇未明のこまごま —— 生物地理学会のシンポジウムは演者がやっと確定しはじめた.よかったよかった.演題と要旨に関するお願いをメールしたり.※待ってます待ってます.よろしくー./ 〈OccamsRazorBibliography.com〉.文字通り,「オッカムの剃刀」関連の用語の解説と文献リスト.最節約性も単純性もぜ〜んぶ./ 〈SEBA〉.生物地理学のサイトなのだが,「the International Code of Area Nomenclature(ICAN)」という生物地理学的命名規約をつくろうとしているらしい.

◇二木麻里さんの〈Ariadne〉から『Wikipedia』に関するアンケート調査の依頼あり(昨日).3月15日までに,上記サイトの「ネットユーザーのアンケート : ウィキペディア日本語版について」に協力していただきたいとのこと.検索していて,たまに Wikipedia がヒットしてくることがあるが,とくに内容そのものを重宝しているわけではない.むしろ,各国語版の Wikipedia があるという点が重要で,あるキーワードや概念が特定の言語でどのように表現されているかについて概略を知りたいときに便利に思うことがある.あと,項目によっては参考資料や文献がリンクされているので,感謝しています.このアンケートに答えるためには,ぼくだったら「系統樹」「体系学(なし)」「分類学」などなどの項目をチェックしないとダメだろうけど……,いま読んだかぎりでは,加筆修正の必要があるんじゃないかな.それぞれの項目をどの程度まで読み込んでいいのかの“探針”が難しいのが実は心理的なハードルなのかもしれない.

◇変な空模様 —— 朝は曇って小雨まじり,その後,いったん晴れ間がのぞいたなと思ったら,また曇る.

◇午前いっぱいは原稿書き.まだまだぁ.正午に講談社のお代官様に“年貢”を納めようとしたが,キリが悪いので,さらに午後3時まで原稿を書き続け,8200字.これで第4章の最終節を書き終える.ネットワークにスーパーツリーだ.残るは,エピローグと文献解題のみ.※ゲラ津波の予告あり(こわ).

◇午後3時頃,北の方から凶悪そうな黒雲が近づいてきた.ぽつぽつと小雨が降り出し,すぐ本降り.と思ったら,次の瞬間には霙になって,シャーベットみたいな氷雨に,雷がごろごろ鳴って,午後4時には本格的な雪になってしもうた.※なんだなんだ,いったい.

◇夕刻のばたばた —— 研究所に帰ってみたら,諸方面から電話やら来室やら……:先月末に会計システムに入力した本のうち,まちがった本を出してしまったらしい.ウォレスの本じゃなくって,ヴァイスマンのやつだったか(あれま)./ AFLPのデータ解析についての来室質問.とりあえずは PAUP* でやってしまいましょー.といったら,Amazon では,もう PAUP* の Mac / UNIX 版は両方とも販売していないとのこと(Windows 版は売っているが).Sinauer のサイトも確認した方がいいですよとアドヴァイス.※ついに,「正式版」リリースに向けての体制固めが始まったのかな? / 生物地理学会シンポジウムに関する電話連絡あり.これで,ぼくを含めて,演者は3人まで確定した./ 節分に分類カテゴリー「節」に関するQあり./ 来期組織体制のリサーチ・プロジェクト(“RP”)に関する打合せ.「リスク評価」ったって間口が広すぎるので,とりまとめはたいへんだと思う.週明け早々に RP での顔合わせをするとのこと.

◇午後6時の気温は1.6度.雪はもう止みそうだ.

◇夜もあれこれ —— 電話回線を光ケーブルにする件で,NTT と打合せ.ACCS もあるし,室内の LAN もあるけど.

◇石川英輔『大江戸妖美伝』(2006年2月23日刊行,講談社,ISBN:4-06-213281-8)を読了.意外にも(むしろ当然か),江戸時代末期の人びとの生活や武家の暮らしぶりなどについては,読みかけの渡辺京二『逝きし世の面影』(2005年9月9日刊行,平凡社[平凡社ライブラリー552], ISBN:4-582-76552-1→目次)と響き合う記述が多々ある.

◇本日の総歩数=7133歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=−0.3kg/+0.3%.日中10hr+未明3hr=13hr労働.


2 maart 2006(木) ※ イッパツ逆転か,それとも……

◇午前4時起床.霧雨が降る.気温5.4度.またも研究所に直行する.

◇未明のこまごま —— メーリングリストのお世話など.年度の変わり目は異動が多い./ 生物地理学会シンポジウム企画関連の“呪”を放つ.届けよー./ ウグイスの初鳴き.

◇朝イチでまたも小学校に 乱入して お邪魔して,卒対の作業を手伝う.PoorPoint ではなく,Acrobat で“ちゃんと見映えのする”プレゼンのしかたを教える.これで,きたる「お別れ会」は大丈夫かな.

◇午前10時半から正午まで,延々とグループ内会議.非公務員化に向けての新しい就業規則に関する説明はさくさくと進んだ.しかし,それに続く次期組織体成案にともなう予算執行のところでヌカルミにハマる.このままでは予算執行の「実務」が泥沼になりません? ん?

◇〈Hennig XXV〉サイトの開設 —— 海外出張申請が受理されたと同時に,UNAM の Instituto de Biología がホストとなる Hennig XXV オアハカ大会サイトもオープンされた.今大会から Hennig Society の membership をきちんと更新していないと大会参加ができなくなるとのことで,あわてて今年度の学会費をオンラインで支払う.これでもう大丈夫だ.参加登録と講演要旨の提出までにはまだ時間がある.

◇昨日からぐずついていた空模様だったが,昼過ぎになってようやく回復してきた.

◇午後1時から2時過ぎまで,〈文化系統学〉セミナーの第6回目.Chapter 3「Cultural traits and linguistic trees: Phylogenetic signal in East Africa」(Jennifer W. Moylan, Corine M. Graham, Monique Borgerhoff Mulder, Charles L. Nunn, and N. Thomas Håkansson)を読み終える(pp. 38-52).

アフリカのバンツー地方の民族学データのもつ系統学的情報(言語学的シグナル)を統計学的にテストする方法とその適用についての論議.たいへん役に立ちそうな部分.バンツー語圏の部族に関する言語系統樹を given として,民族学的データ(cultural traits)のそれぞれがどの程度の系統学的シグナルを有しているかを,「runs test」(Sokal-Rohlf 1995『Biometry』と「steps test」(Maddison-Slatkin 1991)を用いて検定する.前者の「runs test」は,与えられた言語系統樹にしたがってソートされた OTU(部族)の文化形質状態の列を反復して無作為化し,操作前後のちがいを検定統計量としてその帰無分布を構築する.一方,後者の「steps test」では,同様の無作為化された形質状態列を与えられた言語系統樹の上で最節約復元し,形質状態変化のステップ数をカウントする.このステップ数を検定統計量として帰無分布をつくり,検定するという方法だ.

著者らはこのふたつのテストを用いて,バンツー部族の文化形質の系統学的シグナルを解析した結果,1) 家族構成に関わる形質は低シグナル;2) 政治や儀式に関する形質は高シグナル;3) 日々の暮らしに関する形質もまた高シグナル,などという結論を得た.文化形質のもつ系統学的情報をどのように「解釈」するかは簡単ではないが,本論文は民族誌データと言語系統樹から文化形質の系統学的背景をテストする簡便な方法を提案し適用したという意義がある.使用されたソフトウェアは,「runs test」については〈Phylogenetic Independence〉,「steps test」については〈MacClade〉が用いられている.(あれ,MacClade 3.08 へのアップデートが不調……)

◇午後のこまごま —— 高額物品の廃棄に関する手続きの督促.ごめんなさいごめんなさい./ 組合から書名行動の督促.すみませんすみません./ 日本植物分類学会を退会することにした(滞納会費は払います払います).そろそろ学会活動の整理縮小が必要なもんでね.

◇ほほー —— 昨年,首都大学東京に生物統計学の非常勤出講したおり,可知さんとの四方山話で,「ところで,“牧野”の後任の教授にはだれがいいでしょうねえ」との問いに,「そりゃあ,北白川の“◎◇ぴ▽”しかいないでしょう.もうバッチリじゃないですか」と耳打ちしたのだが…….おめでとうございます.※事情通は〈ぴ〉だけで人物特定できるはず.

◇春のうららの新刊本 —— 石川英輔『大江戸妖美伝』(2006年2月23日刊行,講談社,ISBN:4-06-213281-8).ご存知〈大江戸〉シリーズの最新刊.昨日からこっそり読みはじめている.小説のたぐいは基本的に読まないのだが,このシリーズだけは別格.四半世紀も前の第1作『大江戸神仙伝』からはじまる連作本も今回で7冊目となった.江戸時代の考証がおもしろいのだが,それを感じ取るには第1作から読まないとダメでしょうね./ 武満浅香『作曲家・武満徹との日々を語る』(2006年3月20日刊行,小学館,ISBN:4-09-387613-4).これもまた〈武満徹全集〉から派生した本なのでしょうね.とてもいい装幀だ.

◇“呪文”の効き目がじわじわと見えてきたぞー.よし,この調子だ.

◇本日の総歩数=5790歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/+0.6%.日中8hr+未明3hr=11hr労働.


1 maart 2006(水) ※ 年度末の大回転(よそ見↓はダメよ)

◇午前6時過ぎによろよろと起床.小雨.気温2.8度.今日も寒いのか.研究所に直行する.これもまた“ピストン運動”かも.

◇午前のこまごま —— 昨夜,必死で入力した購入アイテムの請求書類一式を事務に提出する.今年度の会計関連ばたばたもこれにてジ・エンド./ コンピュータ・セキュリティ調査への回答をシステム管理科に提出./ メーリングリストへの月例アナウンスを今月はちゃっちゃっと流す./ 査読の督促がやってきたり(ぎくぅ),督促を送ったり(よろしくよろしく).

◇降り続く雨がしだいに本降りになっていく.大粒ではなく,細かい密な雨.気温はぜんぜん上がらず.

◇午後のこまごま —— 懸案のシンポはあれでいこうかな.なにではどうやらダメそうなので,その代わりにあれで.別方面に「式鬼」を放つことにした./ [超重要事項]農環研就業規則(案)の内部公開.農環研は(周囲の農水省系独法とともに)この4月から国立大学法人と同じく「非公務員」化されるので,就業規則そのものの見直しが必要になる.その叩き台ということ.直接かかわりのある重要変更点がいくつか含まれているので,木っ端みじんにならないでね.お願いね.

◇「匿名者」に対する“三中ポリシー”について —— 久しぶりに更新された津村ゆかりさんの〈技術系サラリーマンの交差点〉に,「実名ブロガーは「匿名による批判へのポリシー」を示しておいてはどうか」という興味深い記事が投稿されている(2月27日付).ウェブログやその他の掲示板によく見られるような「匿名で行われる批判」に対する“ポリシー”を実名ブロガーは明記すべきだという提案である.さまざまな“ポリシー”のひとつに“三中ポリシー”を挙げていただいた(あらま).

“三中ポリシー”とは「匿名者は石ころと同じ」という見解です(→参照:日録2004年4月15日).「石ころ」が路傍にたくさん転がっているからといって,目くじらたてて怒る人はいないでしょう.ひょっとしたらすごく役に立つ「石ころ」があって,感謝の念を抱くことさえあるかもしれません.逆に,蹴つまずいたり,飛んできたりして害を及ぼす「石ころ」には,腹を立てることだってあるでしょう.でも,そういう感謝や文句を「石ころ」に言ったところでしかたがないとぼくは思います.「ひと」と「石ころ」の間にはもともと越えがたいギャップがあるのだから,「石ころ」相手に対話をしようとか議論をしようなどということを考えること自体,ぼくにはアンビリーバブルなのです.「匿名者」とはしょせんそういう存在にすぎないということです.誤解してほしくないのは,ぼくは匿名者とか匿名掲示板あるいは匿名ブログの存在を否定しようと考えているわけではないということです.それらは存在していてもまったく問題ないんじゃないですか.どうせぼくには関係ないんだし.

—— ということで,津村さんの上記サイトに下記のコメントを送った:


津村ゆかりさん,ご無沙汰しています.ずいぶん久しぶりに更新されましたね.「匿名批判」についての興味深い記事を読ませていただき,ありがとうございます.「三中ポリシー」などと書かれると気恥ずかしいかぎりですが,今もその「ポリシー」にはまったく変わりありません.〈石〉は〈石〉,それ以上でもそれ以下でもありません.

名前: 三中信宏 | March 1, 2006 03:09 PM

◇午後のこまごま —— 研究推進費での海外出張が認められたとの連絡.Hennig XXV — オアハカ!

◇夕方,別宅にて翻訳原稿のチェック作業の続き.小雨なお続く.

◇夜になって雨はさらに強くざあざあと降ってきた.

◇本日の総歩数=10255歩[うち「しっかり歩数」=4881歩/42分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+0.2%.日中9hr+未明1hr=10hr労働.


--- het eind van dagboek ---