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日録2005年9月


30 september 2005(金) ※ いろいろ放置して西へ向かう

◇前夜からそのまま続く……午前2時過ぎに講義関係の準備が完了し,帰宅.午前5時半に起床.風呂に入って,午前7時過ぎにTXつくば駅に,京王線・南大沢駅に着いたのは午前10時少し前.首都大学東京の講義室は前回と同じ“ハエ取り紙”のぶら下がる実習室.

10時半から講義開始.午前は,前回に引き続いて乱塊法による1要因と2要因の実験計画と分散分析について.午後は一般線形モデル(GLM)の解説とそれに付随するモデル選択論についての講義.いずれも〈R〉を用いた実習を含む.夕方の1時間ほどを使って,計算統計学,とくにブーツストラップとジャックナイフによる統計量の誤差評価と経験的確率分布の構築についての説明.午後4時まで.

午後4時半からは第9回生物学教室セミナー:三中信宏〈系統樹に悩んだときに:哲学・理論・道具〉.いろいろ話しすぎたかもしれないな.距離法に関しては,田村浩一郎さんから「形質から距離への変換は,データから十分統計量をつくるのと同じだ」というコメントをもらった.David M. Hillis のいう「1989年=系統学革命年」という主張は,他の分野での同時代的動向を比較検討した上でテストされるべき言明であるとの鈴木準一郎(@ときどきJST)さんの指摘.なるほどなるほど.午後6時まで.これでやっと今日の仕事が終わった.

◇午後6時半から,駅前イトーヨーカ堂上の〈春庭花〉にて懇親会.どーもごちそうさまでした.>みなさま.※系統樹の「ベイズ推定」の行く末について密談する.

◇午後10時にならないうちに早々と京王プラザホテル多摩にチェックインし,欲も徳もなし,さあ寝るべし —— と思いつつメールチェックしたら,またまた科振調関連のメールが入っていて,「明日午前中に必要書類を」などと言っている.ははは,ムリです.はい,じゃあ,おやすみなさい.

◇本日の総歩数=11578歩[うち「しっかり歩数」=3280歩/27分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=0.0kg/+0.9%.


29 september 2005(木) ※ 「過飽和」な前日

◇午前4時半起床.14.2度(午前6時には14.0度).日に日に寒くなっていく早朝.三日月が輝く東の空.

◇朝から科振調課題の相談事など.とにかく時間がないので,なんとかひねり出すしかないよねえ.それにしても,エクセルやらワードでちくちく書かせるなよお.まったく.

◇大量のアウトプットたち —— 明日の首都大学東京での生物学教室セミナーのスライド / 10月末の駒場での非常勤講義用のスライド / 11月の動物遺伝育種学会用のスライドとハンドアウト.いずれも姉妹群関係にある(InDesignファイルが同じなのだから当然).ただし,pdfにした段階で,それぞれ他のpdfからの水平伝搬ページを挿入するので,ホモプラジー的にばらつく.どれも100枚あまりの分量になる.サイズは120MB平均(pdfにして).

◇秋晴れ昼休みの歩き読み(郵便局立ち寄り) —— ドミニック・ルクール『科学哲学』(2005年8月30日刊行,白水社[文庫クセジュ891],ISBN:4-560-50891-7).最初の60ページほど.なんつーか,悪くはないんだけど,たった数ページしかない文章を「章」に仕立てるのはやめた方がいいんじゃないだろうか?(詐欺じゃん) まあ,試験直前の「要点確認シリーズ」みたいな本ですな.

◇午後2時から,〈系統学的考古学〉セミナー(第19回).Chapter 5 : 「Taxa, Characters, and Outgroups」の続き(pp. 129-137).アメリカ南部で出土した石器の鏃に関する“マニアック”なお話が延々と(汗).形態形質についてはいろいろとエピソードや論戦があるよーで(疲).14:30まで.

◇午後のこまごま —— レフリー丸投げ —— 依頼された査読を隣りの研究所に丸投げしてしまった.>なにとぞよろしく,Hくん./ 朝日カルチャーセンターの受講者が15名に達したとのこと.こちらの準備もそろそろやらんとあかんねえ(まだ先のことですが)./ それにしても科振調の提出書類がたくさんあるやん(間に合うんかい……).

◇科振調のそういうごたごたに足をすくわれ,明日からの集中講義の準備に支障ありまくり(く).とりあえず19時に家に帰り,21時に再出勤とあいなりました.

◇本日の総歩数=11272歩[うち「しっかり歩数」=4987歩/44分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.5kg/+0.3%.


28 september 2005(水) ※ あ,もう「飽和」してますぅ

◇午前4時半起床.曇り(雨粒が少し降りかかる).気温は17.1度.こりゃ涼しいわい.

◇明け方からこまごま —— 国勢調査票をちゃっと書き上げ./ とある申請書類をがりがりと記入する.時間がかかるなあ,もう.

◇その後,前日の続きの「出力作業」を再会する.スキャン魔と化し,どんどん素材をjpgにしてしまう.どんどんやる.今週末は首都大学東京の講義がある.統計学関連の素材はすでにそろっているのだが,初日(9月30日)には夕方に別のセミナーで話さないといけないので,それ用の分子系統学とモデル選択論のスライドをつくらないと.ほとんど出力マシンに変身している.

◇そうこうするうちに,いきなり“まつもっちゃん”から電話がかかってきて,「あわわ……」な依頼を受けてしまう.え,あ,ちょっと,マジっすか? いずれにせよ10月はじめに TX でつくばに来るということなので,予定を調整する.※ TX が開通してからというもの,東京からどんどん“いらっしゃる”ので,ぜんぜん逃げ場がないんですけど,ワタシ.

◇備忘メモ —— 忘れないうちに Filofax の来年のイヤープランナーを買っておかないとな.毎年,買い忘れてしまって,いろんな店を走り回ることになるので.かつてはシステム手帳とかメモ帳を持ち歩いていたものだが,Filofax の折りたたみイヤープランナーに出会ってからというもの,これ1枚ですべての用務を書き込むことにしたので,メモ帳や手帳はすべて駆逐された.これはグッドデザインだとつねづね思っている.

◇そろそろ,お昼休みだなあ,とホッコリしていたところ,いきなり理事長から電話が入り,とある科振調の新規課題応募に参画しないかという勧誘あり.バイオマス関連の統計モデリングに関わることだとのこと.提出書類の期限は来週月曜日(!).悪くはない話なのだが,いきなりのことなので,急に慌ただしくなってしまった.相手方(代表者)の電話での話だと,単に統計解析というだけではなく,もうちょっと広い役回りが期待されているらしい.どーしましょ.

◇なんだか厄介なことになりそうなので,逃避の歩き読み —— フェルナンド・ペソア『ペソアと歩くリスボン』(1999年7月10日刊行,彩流社,ISBN:4-88202-583-3)を読了.リスボンの古い絵葉書や写真がたくさん載っていて,しばしなごむ.晴れて,気温22.3度.快適な天気だ.

◇午後のこまごま —— とある(別件の)申請書類を耳を揃えて出す.この件はとりあえず完了./ 予算の二次配分に関する要求書を提出する.ネットワークプリンターを申請.この件も完了./ うう,科振調…….

◇届いた新刊と“お賽銭” —— 神保町のイタリア書房から届いた本:M. Zunino and M. S. Colomba『Ordinando la natura: Elementi di storia del pensiero sistematico in biologia』(1997年刊行,Medical Books,Palermo,ISBN:88-8034-064-6).生物体系学の歴史をたどった本.Ernst Haeckelの『自然創造史』のイタリア語版は Daniele Rosa が翻訳したとは知らなかった.

この本は封筒に入って送られてきたのだが,封筒の底に何か硬いものがあるなと思ったら,“500円硬貨”が1枚転がり出てきた.これっていったい…….本を注文したお駄賃かしら,それともお賽銭? なんだかよくわからないので,そのまま机の上に置いてあります.>イタリア書房の方,ご連絡くださいな.

◇明日は“飽和”してしまうかもしれない.

◇本日の総歩数=14395歩[うち「しっかり歩数」=6523歩/57分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/−0.5%.


27 september 2005(火) ※ いろいろ出力日

◇午前5時起き.気温17.9度.研究所にて作業 —— まずはメーリングリストの入退会処理など.続いて,形態測定学ハンドアウト用pdfの出力(→pdf[923KB]).これは首都大学東京の集中講義(後半戦)で使う予定です.

◇今日は,その他にもいろいろと“アウトプット”を出さないといけない.「出力しない者は死者である」という格言はつねに正しい.さあ,出力だ,出力だ ——

1) まずは,11月にある恒例の「数理統計研修」のテキスト原稿.今年も「統計学概論」,「実験計画法」,「〈R〉演習」,そして「多変量解析概論」の4つの講義を担当するので,計85ページのpdf原稿をつくり,事務局に発送した.

2) 続いて,今年新たにつくることになった「農環研研究者情報ページ」なるものの原稿.はいはい,ちゃちゃっとつくりましたので,早々とフライング公開しておきますね(→ここ).最初つくるのはいいとしても,更新作業がたいへんじゃないかなあ(>担当者さま).

3) 日本動物遺伝育種学会が主催する「第3回最先端遺伝育種セミナー」(2005年11月17日(木)〜19日(土),セント・キャサリンズ・カレッジ・神戸インスティテュート)のハンドアウトを作成.こちらは分量が多くなりそうなので,明日までかかりそう.とりあえず,配布資料3つ分のpdfを出力する.今回のセミナーのタイトルは〈家畜・水産動物における遺伝的多様性研究 — その目的と新しい方法論 —&〉というあたりさわりのない題目だが,その中身を見ると,ぼくのも含めて「分子系統学」の講演が多い.宮正樹さんがベイズ系統樹について話すし,キジの分子系統の講演もある.※詳しくは上記サイトで公開されている「案内文書」と「実施要領」をごらんください.

◇今日は昼間も雲が多くて,気温が低い.夏日に達しているのかどうか.

◇午後1時から1時間ほど〈Zar統計学本〉セミナー(第20回) —— Chapter 12 : Two-Factor Analysis of Variance の続き(pp. 250-261) .乱塊法を用いた実験計画と分散分析についての解説.ここまではよかったのだが,その後「repeated-measures」の節がとても怪しかった.たとえば,動物を用いた実験で各実験処理に対して異なる「個体」を用いるのであれば問題ないのだが,「repeated-measures」とは同一の個体を使い回して,異なる実験処理に対するデータを得ようというやり方だそうだ.この場合,「個体」がブロックに相当し,ムリをすれば,同一「個体」による複数処理のデータは乱塊法とみなせないことはない.しかし,処理間の独立性がすでにないので,形式的には乱塊法的な分散分析は可能でも,Type I エラーが増幅されるというような弊害は隠しようもない(著者も認めている).要するに,ヤバい方法ということでしょう.

◇近刊メモ —— 野中健一『民族昆虫学:昆虫食の自然誌』(2005年11月刊行予定,東京大学出版会,ISBN:未詳).〈Natural History Series〉の最新刊.そんなに「蟲が食べたい」とはねえ.イナゴや蜂の子ならまだしも,タガメとかクモは,ちょっと....同シリーズの周達生『民族動物学:アジアのフィールドから』(1995年9月14日刊行,東京大学出版会,ISBN:4-13-060161-X)に続く“民族生物学”もの.そういえば,去年のちょうど今頃,梅谷献二『虫を食べる文化誌』(2004年9月22日刊行,創森社,ISBN:4-88340-182-0)を読んだなあ.

◇おお,アヴァンギャルド! —— 井口壽乃・圀府寺司(編)『アヴァンギャルド宣言:中東欧のモダニズム』(2005年9月5日刊行,三元社,ISBN:4-88303-161-6).1910〜20年代の歴史的資料の発掘と翻訳.百年前がぼわっとよみがえるようで,なかなか楽しい. 井口壽乃さんの前著『ハンガリー・アヴァンギャルド :MAとモホイ=ナジ』(2000年12月刊行,彩流社,ISBN:4-88202-684-8)は,出た当時,どうしようかと相当迷ったのだが,今にして思えば買っておけばよかったかな(もちろん今でも入手可能なのだけれど).ん,圀府寺司さんといえば,ゴッホの書簡集の訳者でもありました:フィンセント・ファン・ゴッホ(二見史郎・圀府寺司訳)『ファン・ゴッホの手紙』(2001年11月22日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-04426-9).

◇午後もなお続く出力作業.夜まで,ずうっとね.

◇本日の総歩数=6215歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=−0.7kg/+0.3%.


26 september 2005(月) ※ 秋晴れ平日復帰

◇午前5時半起床.すっきりと秋晴れ.気温18.6度.なかなか快適ですな.残暑を引きずらないこういう時期こそ運動会や体育大会にはふさわしい.

◇最終調整 —— スライドの「0.1mm」単位のズレを修正していく.張り込んだテキストや画像のボックスをマウスで操作しているとつい目分量で動かしてしまうので,ミリ単位以下の座標のズレが生じる.人間の眼はとても敏感なので,0.1ミリや場合によっては0.01ミリのズレも検出してしまう.ましてやプロジェクターで映すと,そのズレが何倍にも増幅されてしまうのだから,この微調整をやらないわけにはいかない.InDesign で0.001mmまでの座標値を数値入力でそろえる.今日のプレゼンについては,これですべて準備完了.※毎度のことながら,この時間とエネルギーの投資はただごとではない.

◇朝からちくちくと事務書類書き —— あー,ガマンガマン.ひとつは郵送完了.でも,まだまだある.ぐわ.

◇あ,そーですか,「Kanti Mardia は必殺!」ですか.なるほどねえ.確かに,数理統計学者の中でも,もっともハードなひとりなのかもしれませんね.David Kendall だって,最初に読んだときは即座に“石”になりましたからね.

そういえば,先日,筑波大でトークしたときに,数理統計学が専門の赤平昌文さんから,「“Kendall”の家系は Sir Maurice Kendall のような統計学者をたくさん輩出していますが,“David Kendall”というのはどういう血縁なんでしょうね?」と訊かれた.そういえば,調べたことなかったなあ,と思いつつ,まずはオンラインで彼の経歴をチェック.なるほど1918年生まれか.統計学の総説誌 Statistical Science の Vol. 11, no. 3, pp. 159-188 (1996年8月発行) には N. H. Bingham によるインタビュー記事が載っていて,これはすでにオンライン公開されている.

では,Sir Maurice と David との関係はどーかというと,二人がともに在籍したケンブリッジ大学の統計学研究室史のドキュメントを読むと,実は「ない」ということらしい(苗字の一致は偶然とのこと).これは意外だった.「ケンドールさん」という苗字はイギリスの頻度ランキングでは上位にあるのかもね.

◇午前10時半から1時間ほどグループ内会議.次期中期計画・次期中期目標に関するライン討議.なんだか錯綜しているようで…….要するに,研究ユニット(&個人)としてやるべき(やりたい)テーマをしっかり持てということですね.しかも,対外的にちゃんと主張できるように.※こりゃ,まだまだ続くな.

◇晴れた昼休みの歩き読み —— フェルナンド・ペソア『ペソアと歩くリスボン』(1999年7月10日刊行,彩流社,ISBN:4-88202-583-3).100ページあまり読む.リスボンは一度も行ったことがないが,1920年代の彼の地の疑似旅行記として.古い絵葉書がたくさん載っている.

◇午後1時から,久しぶりのAlan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読第5回目.Chapter 2:「Measures of Location and Dispersion」の続き(pp. 47-52).確率分布の位置尺度としてのメディアン,モード,そしてクォンタイルについて.午後2時まで.

◇午後3時から第28回生態システム研究セミナー.時間が足りないかと思ったが,なんと50分で100枚あまりのスライドを話し終えてしまった! あまりないことだが,事前によく準備すると,たとえどんなに分量が多くても“時間内にめでたく完了”できるということだろうか.手元の時計を横目に見ながらの高座だったのでかなり疲れたが,最後に質疑時間もちゃんと取れたので,よかったのではないか.今日みたいに1時間程度のトークですむようなら,今週末に予定されている首都大学東京での生物統計学の集中講義(後半戦)のネタのひとつとして使うのも悪くないかな(生物形態の多変量解析の実例として).

◇近刊メモ —— 湯浅俊彦『出版流通合理化構想の検証:ISBN導入の歴史的意義』(2005年10月5日刊行予定,ポット出版,ISBN:4-939015-80-7→目次・書誌情報).1980年代に日本の出版界に導入された「ISBN」のめぐる経緯をたどった本だそうだ.

◇今日は1日中予定がいろいろあって疲れました.とても.

◇備忘メモ —— Fred Bookstein の〈ISHPSSB 2005〉(13-17 July 2005, Univ. Guelph)での形態測定学史に関する講演:「My Unexpected Journey in Applied Biomathematics: Morphometrics, the Singular-value Decomposition, and Death Row」(→abstract).生物学史・生物学哲学の学会でこういう講演があるとは知らなかった.※どなたか参加した方いません?

◇夜,〈R〉で少し描画をば ——

> x <- seq(-1.05, 1.05, 0.01)
> plot(x, x*(x^2-1), type="n")
> curve(x*(x^2-1), type="l", add=T)
> curve(3.4*x*(x^2-1)*(x^2-1/4), type="l", lty=2, add=T)
> curve(13*x*(x^2-1)*(x^2-1/2)*(x^2-1/4), type="l", lty=3, add=T)

1次元のスプライン補間における仮想屈曲エネルギー最小化の基準を説明する際の,あるいは curve-fitting におけるモデル選択の最節約基準を説明する際の,補助図としてね.昨日までつくりこんでいた形態測定学スライドのうち,1枚だけ「手描き」のスキャン画像が残っていたので,それを置き換えようと思う.※ほんとにエンドレスな作業ですなあ.

この上なくシンプルなんだけど,こういうグラフがいつでもちゃっちゃっと描けてしまう〈R〉ってとても便利だと思う.Mac OSX の場合,〈R〉のグラフィクスはいったん pdf に保存して,あとは Acrobat の中で jpg や png に変換するという手順でいいわけね(Windows 版よりめんどうだけど).

結局,形態測定学スライドは110枚を越えることになった.pdfで80MB超.

◇本日の総歩数=13101歩[うち「しっかり歩数」=4832歩/41分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/−0.1%.


25 september 2005(日) ※ 連休最後に台風かすめる

◇午前6時前に起床.この三連休はついついスライドづくりで夜更かししてしまって,朝がとても遅い.

—— 外は風雨が強い.台風の強風圏がかかってきたのだろう.天気予報を見ると,まだ八丈島あたりにいるそうだ.今朝は明け方の最低気温がとても低く,涼しいを通り越して,肌寒いほど.おそらく17〜18度くらいだろう.

◇昨夜つくったスライドを“上映”してみて,「弁士」がいい仕事をできるかどうかをチェック.こういう作業はマジでエンドレスになってしまってキリがないのだが,さすがに終盤に近づいている気がする.明日の1時間のセミナーなんかどうでもよくって,「形態測定学」の入門講座(15時間分)に匹敵する分量になりつつある.スライドの枚数はすでに93枚.100枚の大台を超えるのはまちがいない.

むしろ,明日の農環研セミナー用に“削る”ことを考えないといけないかもしれない.

—— そうそう,明日のセミナーは下記の通りです.お近くの方はどーぞ:三中信宏〈幾何学的形態測定学の「いま」:生物学・数学・統計学の接点で〉(第28回生態システム研究セミナー,2005年9月26日(月)15:00-16:00,農環研5階中会議室).なお,ぼくのトークの後は,ラオスの食料生産に関する講演です.

◇午前中に雨はもう上がり,北寄りの冷たい風が強く吹くようになった.関東の南海上を台風17号が通り過ぎているからだろう.これでやっと先日までの残暑から解放されることを期待しよう.しごく心地よし.

午後になって,風も止み,晴れ間がのぞくようになった.これでもう天候回復だ.

◇じわじわ増えるスライド枚数.大台をあっさり越え,102枚に達してしまった.これでもまだスキップした内容がかなりある.「相対歪み」のところもあっさりしすぎだし,何よりも Procrustes superimposition に関係する generalized Procrustes analysis(GPA:以前は GLS = generalized least squares と呼ばれていた手法)についてまったく言及できなかった.

◇夜,自宅に国勢調査の調査票が届けられた.

◇夕方から,冷たい北東風が吹いている.体感的にとても寒く感じるのは,まだ残暑の感覚が残っているからかもしれない.前から具合がよろしくなかった風呂釜の調子がきょうはことに悪く(制御ボードが逝ってしまったせいか),湯の調節がどうにもうまくいかない.ちょっと眼を離した隙に“源泉かけ流し”状態になって,風呂桶から溢れかえっていた(汗).外が涼しいので,“かけ流し”も悪くないのだが,水道代とガス代がちょっとね…….※元栓をその都度締めるという対症療法で今晩はしのぐ.

◇本日の総歩数=2876歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+0.5%.


24 september 2005(土) ※ “球面”連休,スライド耽り

◇前夜遅かったせいか,午前5時半まで寝てしまう.小雨.気温21.4度.フェイント台風の影響がじわりと.

◇またまた形態測定学スライドづくりに耽る(ようやる).前から気になっていた点がさらに気になりだして「勉強」なんぞ始めたりしたものだから,もう収拾がつきまへん.

Kendall 形状空間の接空間での近似的線形統計学の理論と実践についてはもういいのだが(やることはまだあるとしても),むしろ形状空間上の exact な「形状統計学」をどう進めていくのか,という点が気になっていた.“非線形”だし“多様体”だし“高次元”だし,と勝手に理由をつけて,「統計学的な研究はあまり進んでいないのでは」などと思い込んでいたのが大間違いでして……

ひょんなことから,現在一部の研究者が進めている形状空間の非線形統計学が,実は統計学の世界で長らく論議されてきた〈directional statistics〉をルーツをもつことを今日になって知ってしまったのが,運の尽きで,関連する本やら何やらをぜんぶ引っ張りだすはめになった.関連する資料は前から手元にあったのだが,そういう意識とまなざしで相手に向かっていなかったから,視野に入っていたのに見えなかったということですね.

ジャイナ経の本まで書いているインド人統計学者 Kanti V. Mardiaがかつて1972年に出版した『Statistics of Directional Data』(1972年,Academic Press,ISBN:0-12-471150-2)が研究室にたまたまあったので,開いてみると,あらら〜.形状空間の上にならぶ“かたち”のデータは,要するに“方向”や“軸”のデータと同じ性格をもっているわけね.通常のデータは「ベクトル」としての“長さ”と“向き”があるわけで,線形統計学が得意としている.一方,“長さ”を捨象した“向き”だけのデータ(〈directional data〉)は“球”の上にデータ点がずらっと並ぶという特徴がある.

もちろん,両者の間にちがいはある.従来的な〈directional statistics〉では“球”上にならぶ点は中心周りの角度によって極座標表示される点だ.一方,Kendall形状空間の場合,“球”の上の点はそれ自身が高次元ベクトル(2次元ならば複素数ベクトル)なので,問題が格段に複雑になる.

しかし,少なくとも〈directional statistics〉という足場があるだけでも心強いもので,徒手空拳で闘う必要はこれでなくなった.たとえば,複素平面上に表される標識点が複素正規分布に従うとき,重心センタリングとサイズ標準化した前形状(pre-shape)は,前形状空間の上で複素Bingham分布をするという定理がある.〈directional statistics〉で用いられてきた実Bingham分布の拡張である.これによって,形状に関するパラメトリック統計手法が作れることになる.さらに,前形状空間で複素Bingham分布をする変量(前形状)に対応する Kendall 形状空間の点の散布についてはFisher分布に従うという定理もある(ただし3標識点について).

〈directional statistics〉のほかにも,〈circular statistics〉とか〈spherical statistics〉というキーワードで多くの文献がヒットしてきた.それらのかなりの部分は形状統計学に関わりをもっているのだろう.過去の研究の蓄積が現在の形状統計学につながる系譜をたどってしまってしばしくらくらする.

—— 勉強しつつスライドをつくったりするので,時間が激しく速く経過していく.ほとんど外出もせず,ず〜っと夜まで勉強&スライドづくり.

◇本日読んだ本(〈directional statistics〉中心) —— Kanti V. Mardia『Statistics of Directional Data』(1972年刊行,Academic Press,ISBN:0-12-471150-2).※ Kendall & Stuartの“聖書”本にさえ,「directional data の統計分析は Mardia (1972) を見るように」と書かれているほどの〈directional statistics〉の古典.調べてみたら,2000年に改訂版が出ていた:Kanti V. Mardia & Peter E. Jupp『Directional Statistics』(2000年1月刊行,John Wiley & Sons,ISBN:0-471-95333-4).目次を見ると,最後に「形状統計学」に関する章があるらしい./ Kanti V. Mardia, J. T. Kent and J. M. Bisby『Multivariate Analysis』(1979年刊行,Academic Press,ISBN:0-12-471252-5).※第15章「Directiona Data」が含まれている./ Ian L. Dryden and Kanti V. Mardia『Statistical Shape Analysis』(1998年刊行,John Wiley & Sons,ISBN:0-471-95816-6 →目次).※最初,この本を手にしたときは半死半生だったが,〈directional statistics〉から派生したことを知って,生きる希望が[少し]わいてきた.

◇夜,雨が降り続く.涼しい風が通る.午前1時過ぎまで夜なべでスライドづくり(ほとんど傘張り内職に近いものがある).

◇本日の総歩数=4657歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/−0.1%.


23 september 2005(金) ※ 三連休にフェイント台風

◇午前5時半に起床.昨日は遅かったので,こんなもんでしょう.勤労感謝の日に,みだりに早く起きてはいけない.早朝は割に晴れている.

◇勤労感謝の休息日が必要なのだが,また朝からスライドづくりに勤しんでしまう自分がカナシイなあ.さらに,補足的スライドをつくっては,pdf出力し,Acrobat で映り具合をテストするというプロセスの繰り返し.単純作業と言えば,この上なく単純作業だ.

◇その間,曇ったり,雨が降ったり,また晴れたりと,倍速映像のように天気が移り変わる.小笠原の南を“西”に向かっていたはずの台風17号がどういう気まぐれか“北”に大方向転換し,この連休中に関東に接近するかもしれないとのこと.そういうフェイントはやめてねー.いまカリブ海で空前の兇悪化を遂げつつある「某女性」に比べればはるかにマシなのだろうけど.

◇午後も作業が続き,夕方,外が暗くなりはじめた頃にやっと納得できる段階に到達した.結局,昨日から始まったスライドづくりで,計20枚ほどの上乗せされた(pdfファイルにして約80MBもある).月曜の1時間のセミナーで終わりきる分量ではとうていない.いつかどこかでやるにちがいない「形態測定学講義」の際の教材として使おう.

—— こういう講義やセミナー用のスライドづくりは「エンドレス」に時間とエネルギーがかかる.単に,絵や文を書いているだけではなく,トークそのものの台本を頭の中で思い描いているから,自分で納得できる噺ができるまでいくどとなく改訂を繰り返してしまうのだろう.

昔(と言ってもほんの十数年前),35mmスライドがプレゼンの主流だった頃は,“本番日”の数日前に写真屋への発注デッドラインがあったので,おのずと覚悟とあきらめができたものだが,なまじっか科学技術が進歩して,前日だろうが当日だろうがおかまいなしにプレゼン準備ができてしまう時代になったものだから,その歯止めがまったく効かなくなった.〈噺家〉にとっては便利でしかも不幸な時代になってしまった.

しかし,こういう事情はいまの生命科学や自然科学分野だけのことなのかもしれない.先日,筑波大学でトークしたときには,数学系の講演ではまだPCプロジェクタ利用は普及しておらず,OHPに書き込むというスタイルが健在であるということをうかがった.また,以前,国語学系の研究者にトークを依頼したときは,マジに「スライド/OHPなしで,話のみ」と言われて慌てたことがあった(「論文を読む」というさらにさかのぼった講演スタイルに近いのだろう).

◇1日の作業の後,LaLa Garden まで歩いて水を買いにいく.夕暮れがどんどん早まっていることを体感する.

◇翻訳原稿チェックとか,とある申請書類とか,“秋の読書”本とか,「堆積物」はあまたあるのだが,どんどん後回しにしてしまう.※勤労感謝の日だしぃ…….

◇あ,やっぱり台風が来るみたい…….明日からは風雨か.

◇本日の総歩数=6606歩[うち「しっかり歩数」=4721歩/40分].全コース×|×.朝△|昼△|夜△.前回比=−0.3kg/0.0%.


22 september 2005(木) ※ 連休前のエアポケット

◇午前4時半に目が覚める.Buenos dias! とちごて,おはようさん.外は小雨.気温19.9度.

研究室にてこまごまする —— メーリングリストへの依頼配信を2件./ 忘れていた本のオンライン注文を2件(Amazon.com と Amazon.fr へ)./ 非常勤職員雇用に関する確認./ 振替休日の指定./ 研究室のネームプレートを印刷(ずっと忘れていたのだ).

◇いったん曇り空になるが,再び雨模様.

◇近刊情報 —— ずっと前にアマゾンに注文したのに,まだ届いていない物件が一つあったので確認したところ「来月出版」とのこと: Carl P. Lipo, Mark Collard, Michael J. O'Brien and Stephen J. Shennan (eds.)『Mapping Our Ancestors: Phylogenetic Approaches in Anthropology and Prehistory』(2005年10月30日刊行予定,Transaction Publishers,ISBN:0202307506 [hardcover] / ISBN:0202307514 [paperback]).これまた考古学への系統学的アプローチの論文集なので,早く手にしたい.

◇昼休みに1時間ほど歩く(久しぶり).霧雨.傘と同行.気温は22.3度だが,湿度が高い分だけ蒸し暑く感じる.

◇昼下がりのこまごま —— 研究室予算の二次配分に関する連絡./ 来週の月曜はグループ内会議とグループ内セミナーが連続.セミナー当番だし./ とある申請書類に関する説明を受ける.※書類なんかなんぼでも書きまっせー./ JSTの第2回研究会に関する事務連絡.日本人講演者2名はすでに決まったので,あとは外国からの招聘講演者だけか.

◇午後2時から,〈系統学的考古学〉セミナー(第18回).今日から新しい章 Chapter 5 : 「Taxa, Characters, and Outgroups」に入る.アメリカで1万年前の地層から出土した“鏃[やじり]”の系統発生に関するケーススタディー.長さ10センチほどのみごとな出土物が図示されている.最初の部分(pp. 125-129)では,この物件に関する概略の説明.発祥地(center of origin)に関して互いに対立仮説がふたつ提唱されているらしい.系統発生を推定することにより,これらの仮説への相対的支持の程度が決まるのだろうか.午後3時まで.

◇〈日本鳥学会・統計自由集会〉 —— ここでもまた〈R〉伝道が始まったということか.とてもいいことです.

◇最近連続している形態測定学トークで用いた Kendall 形状空間のスライドが一部まちがっていたことに今になって気づく.致命的ではないもの,恥ずかしいかぎり.すぐ修正しないと.※これまで2回も噺をしているのに,ぜーんぜん気がつかなかったとは……(汗).

センタリングとスケーリングが施された前形状(pre-shape)の空間の中で,回転によって一致する前形状の同値類(“fiber”あるいは“orbit”)の間で定義されるプロクラステス距離を図示するスライドと,前形状空間と Kendall 形状空間の関係を示すスライドが必要だろう.※月曜のトーク用に.

—— ついでに備忘メモ:形態測定学ソフトウェア〈morphologika〉 —— Paul O'Higgins と Nicholas Jones作.Windows環境で.※→ダウンロード先

Trends in Ecology and Evolution 誌の最新号(Vol. 20, no. 9, September 2005)に,Olivier Gascuel (ed.)『Mathematics of Evolution and Phylogeny』(2005年,Oxford University Press,ISBN:0198566107 ※→目次)の書評が載っている(Charles Semple, p. 480 ※doi:10.1016/j.tree.2005.04.028).この総説書[NOT教科書]は,生物学者には「a bit daunting」とのこと.まあ,たいていの場合,数式ひとつで「daunting」と言われることが多いので,10個も100個もたいして変わらないと思うけど……(死ぬときゃ死ぬし).ゲノム系統学の章が出色だそうだ(後半の3章だろう).ぼく自身は,ブラウズしているだけで,まだ踏み込んでいないのがちとカナシイ.

◇つい勢いづいてしまって,夜は形態測定学のプレゼン用スライドづくりで夜なべしてしまう.これまで足りなかった内容を補うスライドを InDesign でつくりこむ.10枚ほどつくったところで午前1時になってしまった.こんなに夜更かししてはいけませんよ.>ぼく.

◇本日の総歩数=12482歩[うち「しっかり歩数」=6576歩/57分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/+0.5%.


21 september 2005(水) ※ 再びエスパニョール

◇午前4時半起床.気温21.0度の早朝.研究所にて今日の講義準備.

◇ついでにこまごま —— 過ぎ去りし外勤の届けをば./ 遅いレスポンス……(すみません)./ 大磯でのJST第2回研究会に向けて.夜明けの演者獲得作戦.箱崎に1通.※と思ったら,速攻で承諾の返事が返ってきたりして(さすが).よろしくお願いいたします(>Iさま).おお,演題と要旨まで!(ドラえもんのポケットでもあるんですか?)

◇今日は,朝から夕方まで高野台のJICA国際センターで,統計学講義.すでに何度か講義しているキューバ国別コースの研修生が相手.そろそろ研修報告書をまとめる時期が近づいているので,統計データ解析も本腰を入れてやらないといけない.前回の講義で〈R〉を各自のパソコンにインストールしたので,今日の講義ではそれを使った実習が中心になる.

—— 午前9時半に別棟の講義室に行く.最初は,作業ディレクトリの所在確認と Windows 環境の整備(拡張子表示とか).それにしても,スペイン語 Windows 環境でみなさん使っているので,キー入力一つをとっても一筋縄では行かない.入るはずの文字がなかったりして(英語/スペイン語ではキーの割付けが異なっているので),〈R〉に入門する以前に斃死する研修生が続出しそうになる.さらに輪をかけて,Excel から〈R〉へのデータ移行もしないといけないが,なんというか英語版 Excel だけでなく,当然スペイン語版 Excel っつうものがあって,これもまたトラブル源になる(「csv形式」がいろいろあったりして).〈R〉実習しているんだか,パソコン実習しているんだかわからないっすね,これじゃあ.

それでも,研修生のExcel集計データを〈R〉に移し,分散分析とか t 検定をする段階になったところで,もうお昼休み.多種多様なノートパソコンに振り回された午前中だった.※でも,おかげで,スペイン語Windowsに慣れてしまったり.

◇今日は雲が多めで,風が強い.気温は夏日に達していないのではないか? この時期にしてはフシギな空模様.

—— 午後1時半に講義の再開.午前中に用意したデータ・ファイルをもとにさて計算という段階になって,あちこちから「エロール!」という悲鳴が飛び交う.何のエラーかと思いきや,オブジェクトへの格納がうまくいっていないようだ.あ,そーか.計算終了ごとの掃除コマンド「rm(list=ls(all=TRUE))」をちゃんとやっていなかった.これで,大半の「エロール」は氷解した.

その後,乱塊法,要因実験,多重比較について講義と実習をした.気がつけばもう午後4時になる.きょう1日はあっという間に終わった気がする.まあ,あとは研修生がこの調子で解析を進めてくれれば,計算の部分に関しては問題ないと思う.考察はまた別としても.

◇〈しっぽな〉経由で農環研に戻る午後5時.日没がどんどん早くなってきた.6時になるともうまっくらだ.いくつか事務仕事を片付ける.先週末のJST第1回研究会の写真が公開されていた.考えてみれば,なかなか“濃い”ミーティングだったのかもしれない.次回の他の演者候補もそろそろ決まってきたみたいだし.手早い準備が可能かも.

◇新刊メモ —— Richard W. Burckhardt, Jr.『Patterns of Behavior: Konrad Lorenz, Niko Tinbergen, and the Founding of Ethology』(2005年3月15日刊行,The University of Chicago Press,ISBN:0226080897 [hardcover] / ISBN:0226080900 [paperback]).※ダーウィン産業「会長」にして,『The Spirit of System: Lamarck and Evolutionary』(1977年刊行,Harvard University Press,ISBN:0-674-83317-1 ※→目次)の著者が行動学史の新刊を出すとは./ Peter J. Bowler and Iwan Rhys Morus『Making Modern Science: A Historical Survey』(2005年4月14日刊行,The University of Chicago Press,ISBN:0226068609 [hardcover] / ISBN:0226068617 [paperback] ※→目次)./ 揚南都『幻の人類学者 森丑之助:台湾原住民の研究に捧げた生涯』(2005年7月刊行,風響社,ISBN:4-89489-105-0).※柳本通彦の新書『明治の冒険科学者たち:新天地・台湾にかけた夢』の主人公のひとりとして登場した人物の伝記.

◇またまた早寝してしまう.

◇本日の総歩数=8845歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=0.0kg/−0.6%.


20 september 2005(火) ※ 連休谷間の平日の始まり

◇午前3時起床.気温22.2度.晴れた闇夜.少し欠けた月が煌煌と.研究所にて,翻訳原稿チェック.なかなかまとまった時間が取れずにいたが,明け方の居室だとこれ以外にすることがないのではかどる.午前7時までにまずは1章分.でもまだまだある.この脚註の「嵐」はなんとかなりまへんか?(> S.C.M.様) まるでオーバーハングみたいにせり出している後半の章に続く.

—— BGMにはギドン・クレメルのピアソラ系アルバムなど.ヴァイオリンがうまいとだいぶちがうな.

◇午前いっぱいは引き続き原稿を読む.昼前に TX でやってきた編集者氏にできたところまでを引き渡し.※あとは月末…….

◇しばらく溜まっていたメーリングリスト管理作業をすませる.

◇午後2時から1時間弱ほど〈Zar統計学本〉セミナー(第19回) —— 2要因分散分析に関する Chapter 12 : Two-Factor Analysis of Variance の続き(pp. 245-250) .各実験処理ごとの反復数が等しくない場合(proportional / not proportional)についての分散分析.とくに,実験上の欠測区が生じた場合は“not proportional”な反復になる.欠測区の数が少ない場合は補填式をもちいて埋めることができるが,多すぎるとダメ.続いて「反復なし」の場合の処理.要するに交互作用項を誤差項とみなしてF検定にもちこもうという算段だろうが,あやしすぎて使い物にならないと思う.ダメダメ.次回は乱塊法なのでもっとまともに役に立つだろう.

◇午後遅くのこまごま —— 駒場での〈システム科学特別講義I〉の日程が送られてきた.ぼくの講義(「システマティクス:体系化,進化史,歴史推論」)は10月24日(月)の4〜5限にある.ワンスポットなので,他の講義との関連性はぜんぜんないな,こりゃ.アラカルトというか,バイキングというか./ 朝日カルチャーセンターからも連絡あり.えっ,受講者がいらっしゃるんですかっ(おいっ).たいへん,ありがたいことでございます.もしかして聴いてみたいという方がいらっしゃいましたら,こちらをご覧あれ./ 明日はまたまた JICA の講義が朝から夕方まであるので,その心づもりをしておかないと.まあ,今回は報告レポートづくりのための統計計算が主になるはずだけどね./ 先週済んでしまった仕事の外勤届とはこれいかに(盛り下がる)./ 未処理のメールがまだまだたくさん…….

◇おお,〈蟲文庫〉とは.情報感謝です(>S田さん).※なんだか〈苔文庫〉あるいは〈石文庫〉みたいですけど(笑).

◇夕方になって雲がしだいに厚くなってきた.

◇リチャード・フラナガン『グールド魚類画帖:十二の魚をめぐる小説』(2005年7月10日刊行,白水社,ISBN:4560027234 ※→目次)の主人公である(実在する)画家 William Buelow Gould の描いた魚の絵が各章の冒頭にカラー印刷されているが,それらはタスマニア州立図書館のサイトですべてオンライン閲覧することができる.

絵とそれを書いた画家は“実在”するのに,ストーリーは“ほぼ”虚構だというのがフシギ感覚.もちろん,それが作家側の狙いなのだろうが.ただし,本書に書かれている体系学的内容はけっして虚構ではない.

◇夜,小雨が降った.明日は1日えすぱにょーるなJICA講義日.〈R〉をもってデータと格闘することになる.

◇本日の総歩数=9340歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/−0.2%.


19 september 2005(月) ※ 明け方の仲秋の名月

◇午前4時起床.昨夜はドロのように寝てしまったので,未明に目覚め.名残の名月を西の空に眺める.雲一つない空に浮かぶ満月.気温20.7度.研究所に荷物を運びこむ.

◇今日は三連休の最終日だが,そういう世間的なこととはまったく無関係に日々が過ぎていく.今日は所用で朝から柏に行く.天気がいいので行楽には最適なのだろうが,日常生活する上では単に暑いだけで,あまりいいことはない.この残暑,いつまで続くことやら.

◇待ち時間にJR柏の駅前を右往左往する.イマイチですなあ.ペデストリアン・デッキから入れるスターバックスにて,翻訳原稿のチェックが続く.11時過ぎまで.さらに1章終える.

◇駅西口の「柏一小商店街」を徘徊.飲み屋がずらっと並ぶ.夜は賑やかなのだろう.通りの途中に〈あ喜多〉という地酒の店を発見する.店先に日本酒の銘柄がずらっと貼り出されていて,とても強く惹かれる.※帰宅後,インターネットで調べてみたら,その筋ではとても有名な店らしい.なあるほど.→情報

さらに進むと,〈太平書林〉という古書店があった.ここもまたなんとなく激しく誘引されるものがあり,引きずり込まれる.とてもいい品揃えだと感じた.店の構えや内装は新しいようだが,棚に並んでいる古書はよく体系化されている.初めて入った店だったので,ご挨拶代わりに1冊購入:串田孫一『文房具』(1978年10月25日刊行,白日社,ISBN:なし.古書価300円).※あ,ここも古書界では知られた店だったんですね.あれあれ.

—— いつも賑やかな駅周辺はたいしたことないが,一歩入り込むとなかなかいい場所なのかもしれない.ヒット率[意外に]高し.

◇昼下がりにつくばに舞い戻る.それにしても暑いなあ,もう.

◇往復の車中読書 —— 二ノ宮知子『のだめカンタービレ・第13巻』(2005年9月13日刊行,講談社コミックスKiss,ISBN:4-06-340560-5).もちろん読了./ リチャード・フラナガン『グールド魚類画帖:十二の魚をめぐる小説』(2005年7月10日刊行,白水社,ISBN:4560027234)これまた読了.この本の隠れたテーマは〈taxonomic obsession〉にほかならないな.魚類分類学者はぜひ手に取りましょうね.詳しくはあとで書評をば.

◇することが溜まっているのだが,明日の未明まわしということで,あっさり就寝する午後10時.

◇本日の総歩数=14905歩[うち「しっかり歩数」=3949歩/36分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.8kg/−0.3%.


18 september 2005(日) ※ 湘南の丘の上にて(2日目)

◇午前5時半起床.雲ひとつなく晴れわたる.朝の散歩を少し.センター裏手の公園から,伊豆半島の向こうに富士山が眺望できた.冷え込みはまったくなし.

◇昨日の車中読書 —— マーカス・デュ・ソートイ『素数の音楽』(2005年8月30日刊行,新潮社,ISBN:4-10-590049-8)を読了.素数に関する〈フェルマー予想〉の波紋.「ゼロ点の風景」がちらりと見えたり,また見えなくなったり.整数論と量子物理学が思いもよらぬ関係にあることがわかったり,ブーツストラップに関するエフロンとの共著論文があるダイアコニス(この人の経歴がおもしろい.大道芸人だったそうな)が登場したり,あちらの世界に逝ってしまったグロタンディークとか,こちらの世界に踏みとどまったナッシュとか,「ハッセ図」のハッセが戦時中はナチに協力していたとか,それはそれはいろいろな逸話が満載されている.〈素数の音楽〉はいつか聞こえるのかどうか —— いまだに解決されていない〈フェルマー予想〉をめぐる数学史の本としてたいへんおもしろかった.ふしぎなほど数式が出てこなかったのだが,まともに「それを聴こう」とするのは覚悟がいるのかも.

◇午前7時から朝食.1階のレストラン〈Oak〉にてバイキング.焼き魚がうまかった.よく食べた.湘南国際村センターは一般の利用に解放されているそうで,この週末も聖歌合唱団の大きな合宿練習とか,企業の研修会などが入っていて,混んでいた.

◇午前9時から研究会 —— 今日の演者は小林春美(東京電機大)さんによる「Children's language development and evolution of language」.乳幼児の言語獲得に関する発達言語学的研究をベースにして,ことばの発生を左右するさまざまな要因,とりわけカテゴリー化に関する constraint theory(Ellen Markman)だけでなく,子供とその養育者との間の社会的なコンタクトが言語形成にとって重要な役割を果たしていると指摘する.養育者の発話の意図や視野(perspective)を共有しようとする欲求が言語進化の要因として作用するという点については議論が集まった.11時過ぎまで.その後,討論の時間を20分ほどもって,全体を締めくくる.これにて今回の研究会の予定はすべて終了した.

—— 今回は事前連絡が不徹底で,日本語スライドのときは英語でトーク,英語スライドだったら日本語トークも可,ということを講演者に伝えていなかった.にもかかわらず,その場でみなさん“バイリンガル”されていたのは大したものです.ありがとうございました.

正午からセンター2階の和食レストラン〈桂〉にて昼食.外は陽射しが強く,気温は高め.朝は見えていた富士山も,頂上が雲に隠れていた./ 「ジ・エンドですわあ」本がついに出る[かもしれない]情報(from まりまり)./ 昼食後,裏手の芝生公園にて,記念撮影.遠景の富士山は頂がすでに雲に隠れていた.いきなり裸足になるデグー岡ノ谷師.

◇午後1時39分の路線バスで逗子駅まで行く.日射し(&紫外線)が強く,とても暑い.理研岡ノ谷ラボ&Deacon一行はこのまま鎌倉あたりに転戦するらしい.ぼくはそのまま横須賀線で東京への帰路につく.しかし,東京駅が近づいてつい油断してしまったのか,そのまま寝過ごしてしまった.錦糸町であわてて降り,秋葉原まで戻る(成田空港まで連行されなくてよかった).“ピアソラ”数枚と出会ってシアワセ.

◇今回の葉山での研究会は,これまで2回にわたるJST研究会と同様に,個別のテーマに関して詳細なディスカッションができたという点で収穫があった.それと同時に,自然科学から人文科学に及ぶ看板を掲げているのだが,「大枠」を見失わずに論議を進めるのは意外に難しいことも感じる.誰しも自分の得意分野の〈詳細〉に入り込むことは快感だから.〈外〉に出てみる,あるいは擬似的にでもそういう状況に置かれた自分を想定してみるというのは時間のムダではない.

—— 次回の第2回JST異分野融合領域探索プログラム研究会は11月4日(金)〜5日(土)に,大磯プリンスホテルにて.「制度」をメインテーマとして演者を集め,今回と同様にクローズドな会議とする.JSTの異分野交流事業は予算枠がなくなったとのことで,今年(次回)が最後のイベントになる.過去に〈パシフィコ横浜・魔宮の伝説〉を生んだこのJST事業もついに幕を下ろすことになるのだ./ でも「楽しい」研究会の後は,「苦しい」報告書づくりが待っている.たいへんだなあ.また,InDesign くんと何日も懇意にならないと.

◇つくばエクスプレスに乗って帰宅したときにはもう6時近かった.仲秋の名月となるはずの夜だったが,単に月見団子を喰って寝ただけという興趣も何もないヤツ,それはワタシ.

◇帰路の車中読書 —— リチャード・フラナガン『グールド魚類画帖:十二の魚をめぐる小説』(2005年7月10日刊行,白水社,ISBN:4560027234)を250ページほど.この本,ノンフィクション小説にしてはとんでもない価格だが,手に取ればその理由はわかるはずだ.装幀もインクも[もちろん内容も]いずれをとっても破格.読書の秋向きの本だと思う.グッドです.

◇本日の総歩数=8966歩[うち「しっかり歩数」=1842歩/17分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


17 september 2005(土) ※ 湘南の丘の上にて(初日)

◇午前5時半起床.今朝は肌寒いと思ったら,案の定,最低気温が15.2度.つるべ落としというかなんというか.日中の乾いた暑さとの落差が大きすぎる.今日は,ベストの運動会日和だ.小学校のグラウンドにテーブルを運ぶ.しかし,運んだだけで,肝心のその「あと」にはまったく参加できない.

—— 今日は別件の仕事が入っていて,これがこの1週間の“大波”の最後を飾る JST領域探索プログラム〈人間行動と社会・文化現象の進化と適応をめぐって〉の第1回研究会だ.9時過ぎにTXつくば駅から快速に乗り,秋葉原→東京,そして横須賀線の逗子行きに乗る.途中の鎌倉駅で大半の乗客が降りた.正午前に逗子駅着.路線バスの接続が悪かったので,駅前からタクシーで湘南国際村センターに向かう.からっとした秋空の丘の上.

◇湘南国際村センターはとても立派な施設(どこかのホテル系の資金が入っているとあとで「寿くん」から聞いた)だった.この週末は研修会やら集会がいろいろと入っているようで,人がたくさん行き交っている.地下1階の小さな第三研修室が会場だ(「地下」とはいっても「地下牢」ではない).今回の研究会は参加者総数が10名そこそこなので,これくらいの小ささが適当だろう.過去2年におよぶフォーラムとワークショップに続く今回の領域探索プログラムはこれくらいの規模で行なってきたとのJST事務局の話だ.

今回の研究会のテーマは「言語進化」に絞られている.話題提供する演者は Terrence Deacon(Univ. California Berkeley),橋本敬(JAIST),そして小林春美(東京電機大)の3人.各2時間ずつのトークと総合討論の時間を設ける.時間的な余裕は十分なはずだが,これまでの会合での討議のようすを考えると,これでも時間不足になる可能性が大だ.

午前1時半に研究会が始まった.ぼくはコーディネーターという役回りなので,最初の挨拶なるものを一応はしなければならないのだが,そういうフォーマルなのは早々に切り上げて,各演者の話題提供に時間を使うのがきっと賢明だろう(だからそうした).あとは参加者のやりとりにまかせればいい.

◇午後2時から最初の講演:橋本敬「構成論的アプローチに基づく言語進化」.橋本さんのトークは先月の進化学会仙台大会での言語進化シンポジウムの内容と部分的に重なっているのでたどりやすかった.“構成論”というスタンスを取るかぎり,モデルの最初に与えたパラメータや初期条件によって,たとえそのシステム(ここではシミュレート言語)がうまく動いたとしても,それは言語進化という現象が生じるための〈十分条件〉を示しただけで,その〈必要条件〉とのつながりが希薄なのではないか.確かに,原因と因果の錯綜した状況では,構成論的アプローチの heuristic な意義はないわけではない.しかし,因果構造が錯綜していることと,必要/十分条件の問題とは本来別物である.提出されたモデルのテストに関してはもっと詰めるべき点が残されている気がした.

◇午後4時半からの第二の講演:Terry Deacon「The role of degenerative processes in the evolution of complex behavior: Devo-devo and epigenetic plasticity (or humans as simplified chimpanzees)」.ヒトへの進化における〈degradation〉をキーワードとする.言語進化と脳の構造から始まったトークは,表現可塑性に関する reverse Baldwin 効果(“masking”論) 対 C. H. Waddington のキャナライゼーション(“unmasking”論)に展開され,さらに遺伝子重複理論や中立進化論にまで到達した.遺伝子の重複に続く〈退化〉がヒトにおける複雑な近くや行動のもとになっているという主張だった(ざっくりとまとめれば……).

—— 日本語と英語が交じり合って飛び交う室内.

◇Deacon 師の話は延々2時間20分に及んだ.午後7時前に本日の本務はすべて終了.タクシーでピストン輸送され,近くのイタリアン・レストラン〈Bellavista〉にて会食.丘の上の水道塔のさらに上階にあるので,葉山の海まですべて見渡せる.眺めよし.午後9時までのエンジョイ.

その後,センターに場所を移し,宿泊棟のポケット・ラウンジにて二次会を延々と日が変わる直前まで.※マジで体力勝負だねえ.

「フェミニストなんてしょせん△△の経験がないんでしょっ!」という発言が聞こえたか聞こえないか.(あぶねー)

◇さて,寝ようか.朝は冷えるかも.

◇本日の総歩数=11752歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼−|夜×.前回比=−1.0kg/+0.6%.


16 september 2005(金) ※ 最後のビッグウェイヴ接近中

◇5時半起床.ここのところ寝過ごし気味.すぐ研究所に行き,昨日のプレゼン機材などを運び込む.気温は19.8度.おお,20度を下回るようになったか.

◇午前はずーっと書類書きに費やされる.電話連絡もびしびしと.昼過ぎになんとか懸案事項にケリがつきそうな気配(らっきー).昼休みも書類書きまくり.

◇午後1時過ぎから2時過ぎまで,〈系統学的考古学〉セミナー(第17回).Chapter 4 : 「Constructing Cultural Phylogenies」の最後の数ページ(pp. 121-124).文化系統学への批判を総括する.文科系統樹を推定するためのデータはすでに十分に蓄積されているのだが,ユニットに関する存在論的な論争は当分止みそうにないという予想.その他の批判は文科系統推定のユニットとスケールを考察することによって大半が反駁できるだろうと著者らは言う.次章からはいよいよデータ解析の実践編.

◇献本(ありがとうございます) —— 京都大学総合博物館(編)『日本の動物はいつどこからきたのか:動物地理学の挑戦』(2005年8月4日刊行,岩波科学ライブラリー109,ISBN:4-00-007449-0).※京大博物館での同名の企画展示の書籍化とのこと.

◇統計学会広島大会で石原茂和さんからいただいた著書2冊 —— 長町三生(編)『商品開発と感性』(2005年6月1日刊行,海文堂,ISBN:4-303-72391-6).※〈感性工学〉シリーズの第1巻./ 守一雄・都築誉史・楠見孝(編)『コネクショニストモデルと心理学:脳のシミュレーションによる心の理解』(2001年6月25日刊行,北大路書房,ISBN:4-7628-2219-1).

◇統計学関係の新刊メモ(いずれも広島で現物を手にした) —— J. C. Gower and G. B. Dijksterhuis『Procrustes Problems』(2004年刊行,Oxford University Press,ISBN:0198510586).※プロクラステス法の教科書./ Brian Everitt『An R And S-plus Companion To Multivariate Analysis』(2005年3月刊行,Springer Verlag,ISBN:1852338822).※〈R〉で多変量解析を教えるときの教材になるかも.

◇夕方4時過ぎにメディカルセンター病院に行く.お,意外に外は涼しいじゃん —— でも,検診結果はイマイチで,継続診療ということに.※あららー.

◇夜になってさらに涼しくなり,少し前の熱帯夜の連続がウソのように感じられる.なんだか疲れてしまったので寝ようかな.この週末はまたまた地方巡業なので.

◇本日の総歩数=7985歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=+0.8kg/−0.1%.


15 september 2005(木) ※ 空間ワープの翌日は

◇[前夜から続く]つくば駅にたどりついたのは午前0時半.家に着いて,荷物を片付けたり,風呂に入ったりしていたらもう午前2時になる.寝よう寝よう.

—— でもって,午前6時前に起床.曇って気温が低め.日中は真夏日でも朝晩はめっきり涼しくなってきた.

◇午前中は研究所にて事務書類作成のイバラ道が延々と続く.修正と追加と書き直しと訂正と……./ 今週末のJST研究会に関する最終連絡.まりまりは来れるようになったらしい(拍手).

◇しかし,そういう「先」のことよりも,今日の午後にある筑波大でのセミナー〈幾何学的形態測定学のルーツと現在:生物学・数学・統計学の接点で〉が待ち受けている.広島でのトークの拡大再現だから,そんなにかりかりすることはないのが幸い.※「その話,きのう広島で聴きました」などというイヂワルな人がいないことを願いつつ.

でも,またまたドロナワにも追加スライドを突っ込んだりしている.

◇午後3時前に筑波大学に到着.日差しは強いものの風が涼しいので意外にも快適.林立する自然科学系の校舎群の間をしばし彷徨った後に,“数学”な一角にたどりつく.驚くべきことに廊下には何一つ「もの」が置かれていない.暗く静かに並ぶ部屋からときどき人が出入りする以外は,そもそも人気が感知できない.今回セミナーに呼んでいただいた田崎さんの居室もそのひとつ.本やら雑誌やらが積み上がった横で,しばし積分幾何学のお話など.

3時からお茶の時間があり,その後3時半からセミナー開始.参加者は20名あまり.学生・院生も多い.昨日の統計学会に比べると持ち時間が3倍もあるので,余裕をもって話ができた.予想される聴衆側の関心の方向を考えると,Kendall 形状空間がリーマン多様体であること,そのリーマン計量はプロクラステス距離として定義できること,そしてプロクラステス平均形状を接点とする接部分空間がつくれること,などが今回の話のポイントになる.質問やコメントの差し込まれ方もこれまでのトークのときとは異なっていた.2次元とそれ以上の高次元ではリーマン多様体の“かたち”が大きくちがっているらしく,特異点が〜とか,メビウス変換が〜とか,なんちゃら構造が〜とか,あっという間に〈置いていかれる〉無力感を味わうことになった(予想されていたことではあるのだが).Kendall et al. の本(→目次)は数学者が読んでも「ようわからん」ということらしい(ちょっとだけ安心した).定刻通り午後5時に終わり.

—— 午後6時から懇親会.天久保の〈Finlaggan〉にて.これまで行ったことはなかったのだが,つくばエリアでは生のギネスやキルケニーを飲める店はここぐらいしかないということで,田崎さんに推薦しておいた.背丈ほどもあるハイテーブルによじ上るのはこの手のアイリッシュ・ビア・バーではよくあることだ.食べ物もよかったし,今月のモルトもいけました.飲む飲む.3時間ほどで一次会はお開き.続いて,田崎ご夫妻とともに,松野木の〈海鮮や・辰海〉を経て,小野崎の沖縄ダイニング〈海とぅ島〉へ.泡盛など.結局,午後11時頃に帰宅.お,日が変わっていないじゃん.

◇でも,ひょっとして体力的限界かも…….

◇本日の総歩数=12459歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.前回比=−0.7kg/−0.9%.


14 september 2005(水) ※ 統計学会連合大会(2日目)

◇5時半起床.うう,とっても寝過ぎ.前夜の痛飲が祟ったか.※でもそういう記憶はすぐに揮発させてしまおう.

◇ベイズ好き? —— ある仮説Hについて与えられたデータDのもとでの尤度P(D/H)の事前確率P(D)に関する“期待値”として事後確率P(H/D)が得られる.とすると,事前確率に関するモデルなりパラメーターをさらに推測しなければならないので,階層的[かつ一方向的]にモデルは複雑化する.もちろん,本丸である仮説Hのダイレクトなテスト可能性は「鎧」としての background models(そしてその hyperparameters)が厚くなるにつれてむしろ減少していく.

データによって反証された場合に,命題の conjunction の否定は即座に否定命題の disjunction に転化する.元の説明仮説が背景仮定の積み上げによって複雑であればあるほど,チェックすべき disjunct の数が増えてしまう.要するに,関与した“被告”の数がどんどん増えていくために,“責任”の所在がかぎりなく分散し,無色に見えるほど薄まって,結果として“主犯”が誰であるのかが見えなくなってしまうという状況だ.したがって,事前情報に関するさまざまな背景仮定を積み上げていくことが,ベイズ的なものの考え方の根幹にあるのであれば,それはすでに「説明責任」の所在を特定する努力を放棄していることにつながるのではないか.仮説群(本丸仮説と背景仮説の)のある conjunction として説明を提示することそれ自体は何も問題はない(背景知識のない説明はあり得ないから).ただし,無制限な背景仮説の積み上げとモデルの複雑化は〈シンプルであれ〉という家訓との正面衝突は避けられない.この点をどーするつもりかということ.

あるいは,まったく別の世界観のもとに,さまざまな仮説ならびに背景仮定をすべてふくむ「総体」が現象データをうまく説明できればそれでよしという新たな科学的推論のスタイルを提示しているということであれば話は単純だろう.その基本方針はまちがっているのだから.ベイズ事後確率を仮説選択の基準にすることは,統計学の中でどうこうできることではなく,ひとつの科学哲学的決意だと思う.今まで解けなかった推定問題が「ベイズ的方法」で解決できるというのは,現場の科学者にとっては確かに福音だと思う.しかし,そのようにして得られた「ベイズ解」はさまざまな衣装を厚く着込んだままを鑑賞するしかなく,本体(本丸)そのものにどれだけ御利益があるのかはわからないままだ.

—— 東大の大森くんは,「ベイズ法って要するに heuristics ですよね」と言っていた.そうだったらかえって気が楽になる.どんどんやってくれていいんじゃない.heuristics なんだし.

◇でもって,なんやかんやでお昼近くまで部屋で作業してしまった.今回のように,大会会場と宿泊場所が「合体」しているのは考えものだ.何十メートルか降りさえすればそこはもう会場というのは,「高いところ」で“天岩戸的に引籠る”ための絶好条件かもしれない.

—— はいはい,午後はまじめにセッションを聴き(計算機統計学とか),多変量データを可視化する新たなワザである“Textile Plot”に感銘を受けたり,多変量正規分布の確率を計算するという「闇」にオソレをなしたり,Ising 法の計算量推定なる怖い世界が広がっていることを体感する(あな,おそろしや〜).「ワタシ,統計してますっ!」という学生や院生が個体数として多い気がしたが,この業界のビッグネームたちとの間に世代間ギャップがあるんじゃないかな.

◇午後3時から〈幾何学的形態測定学における統計学〉の開始.大会参加者は多いはずなのに,どのセッションも人がギュウギュウということがないのは,単に部屋が広いだけなのか,それとも,みなさん忙しいためか.ぼくのイントロは時間が足りなかったが,あとの三方はみなさん持ち時間を守っていただいたのでありがたかった.今回は,形態測定学のさまざまな応用例が中心だった.岩田さんと江田さんの仕事はすでにある程度知っていたが,初めて聞く石原さんによる感性工学への適用例はとりわけおもしろかった.ご本人に聞いたところでは心理学出身なのだが工学の学位をもつ希有の経歴とのこと(確かに).“ものづくり”の精神が色濃く漂っていたように感じた.

個別例への形態測定学ツールの適用に際しての問題点:1)標識点(あるいは輪郭)データの取得の難度.たとえ2次元であっても,3次元サンプルをどのように定位するかによって体系的誤差が生じることがある.3次元の場合はデータが現実的にとれるかどうかという問題が上積みされる;2)missing data をどうするか.化石や遺跡のデータのように,さまざまな程度に「壊れて」いる対象物からどのように計測をするかという問題.;3)標識点への付加情報.とりあえずは輪郭の微小な情報(微分係数)をこみにした分析,あるいは輪郭線上を「すべる」 sliding semilandmark を用いるという新しいツールをどのように使いこなすか.

—— 総合討論の時間を含めても時間通り午後5時ににバッチリ終わった.さて,講演者のみなさんへの挨拶もそこそこに10分後の次のセッション〈人と動物の生態学〉では座長をしなければならない.SARS関連の講演では,中国は西洋医学に見切りをつけて東洋医学に乗り換えたら治療効果があがったということだ(ほんまか).また,日射量と癌発生率が負の相関を示すという発表には「いったいどんな因果関係があり得るのか」という質問が次々と.漁業での混獲モデリング(薄板スプラインで平滑化しながらゼロ切断の負の二項分布を当てはめる)とか,塩見正衛さんの牛の“人間関係”モデリングとか.午後6時半にすべて完了.

◇即座にホテルから広島空港まで延々とタクシーをとばす.リムジンバスは夜はさっさと運行を切り上げてしまうので,タクシー以外には足がない.高速経由で1時間ほど乗って,やっと空港へ(こんな辺鄙なところにつくるなよっ).チェックインして,あなご飯を食って,夜9時過ぎに定刻10分遅れの ANA688 便に搭乗する(これが本日最後のフライトだ).羽田に降り立ったのは10時半.モノレールで浜松町,そして秋葉原に到着したときには11時を回っていた.つくばエクスプレスのつくば行き最終電車(11:30発)になんとか乗れて,守谷あたりで日が変わった.※なんという慌ただしい一日であることか(空間わーぷ).

◇本日の総歩数=8756歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=未計測/未計測.


13 september 2005(火) ※ 統計学会連合大会(初日)

◇午前5時半起床.だらしなく長寝してしまった.メールをチェックして,必要な返信(すみません,遅くなって).昨夜は夜チェックインしたので,ホテルの周りのようすがよくわからなかったが,朝日がホテルの窓から差し込んできて,ここが港のすぐ傍に建っていることを知る.18階の部屋なので瀬戸内海の船の行き来がよく見える.たまにはこういう光景もいいものだ.

◇朝食は午前6時半から1階のビュッフェ・レストラン〈ポルト〉にて.団体観光客が多いのは宮島&厳島神社にここから船でそのまま行けるからだろう.広島に来るのは初めてで地理感がまったくないのだが,地図で確認すると,宮島というのは広島市街からはだいぶ離れているわけね.ちょっと覗きにというわけにはいかないのか(思案).

◇大会会場はホテルの2階にある.午前8時半に参加受付をすませる.そういえば統計学会の連合大会って,今回が初参加になる.どういう“人種”(あ,禁句)が参集してくるのか,興味がある.ぼくがオーガナイズした形態測定学シンポジウムは明日の午後なので,まだ時間の余裕はある(プレゼンの準備はさあこれからだ).受付横にあるWiley と友隣社の書籍ブースをざっとブラウズ.よくぞこれだけ「統計学」関係の本ばっかり集めたものだ(統計学者の集まりだから当然だが).それにしても,統計学の洋書は“叢書”化されているものが多いので,装釘が統一されてしまっていて,いちいちタイトルを読まないと判別できないのは困ったことだ.※統計学書は概して〈青っぽい本〉が多いように感じるのだが,それって標本サンプリングの偏りかそれとも統計学的に意味のある差異なのだろうか.

◇ブースで拾っためぼしい本のメモ —— E. L. Lehmann & J. R. Romano『Testing Statistical Hypotheses, Third Edition』(2005年,Springer,ISBN:0-387-98864-5).※さらにさらに厚くなっている.第2版が出たのは確か1986年のことだから20年ぶりの改訂か./ A. Baddeley & E. B. V. Jensen『Stereology for Statisticians』(2005年,Chapman Hall / CRC,ISBN:1-58488-405-3).※ひさびさのステレオロジー本./ Samuel Kotz et al. (eds.)『Encyclopedia of Statistical Sciences, Second Edition [16 Volumes]』(2005年10月刊行予定,John Wiley & Sons,ISBN:0-471-15044-4 [978-0-471-15044-4]).総ページ数13,000 pp.,セット価格が US$ 3,995(年内;来年以降は US$ 4,800).ぐむー.公費購入ったって50万〜60万くらいするわけでしょ.これまた思案./ 他には〈R〉本がたくさん並んでいた.

◇ん,〈K保セソセ〉も広島に攻め入ってきたか…….会場にてお会いしませうね.

◇さて,部屋に戻って,講演準備 —— 結局,昼ご飯を食べるでもなく,昼下がりまでひたすら作業を続ける.スライドが30枚あまり.ただし,明日の筑波大セミナーの準備を兼ねているので,principal warp / partial warp / relative warp の内容と Kendall shape manifold についてはさらにスライドを足さないとダメか.それは,またあとで.

◇おお,ベイズのセッション〈科学的な推論の形式としての Bayes 統計〉が夕方に.

◇夜は,久しぶりに会った東大の大森くんとともに,えびす通りの〈酔心〉で「酔心」をたっぷり飲んでしまう(すごく飲んだ).その後は近くの〈さけのさかな〉で泡盛古酒をゆるりと(またすごく飲んだ).しかし,短期集中決戦の心づもりで臨んだせいか,ホテルに帰りついたのは午後11時になるかならないか.よほど効率的にアルコール摂取したようだ.

—— あ,でも,ちょっと効いてるかも…….もう寝る.

◇本日の総歩数=5459歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=未計測/未計測.


12 september 2005(月) ※ 広島へ行ってきます

◇夜10時過ぎに研究所に到着.明日から〈統計関連学会連合大会〉が広島プリンスホテルで開催される.シンポジウム講演があるので,その準備をする夜なべ仕事.関連する資料や画像を集約してプレゼン文書(pdfとT-Time)をつくる作業をする.

確かにドロナワではあるのだが,生死に関わることでは決してないのが救いだろう.プレゼン素材や原稿はたとえなくてもまったく支障はないから.つまり,トークはすでに「頭の中」にできていて,それをどのように字に書くか,どういう絵にするかは些末な問題ということ.だから,時間は足りないのだが,忙しないわけではない.

—— レオナルドやデューラーの「画業」が形態測定学の“遠いルーツ”であることは再認識されるべきでしょうね.

◇ついつい脇道に寄り道しそうなアタマを叩きつつ,午前2時まで資料づくり.1時間ほど気を失って,午前3時過ぎにまたまた復活.さらにスキャンを続け,そのつど頭の中で講演のストーリーを立てていく.たいていの高座では,準備段階のこの時点で前フリからオチまで実は確定しているので,あとは“かたち”を仕上げるだけ.今回もそうなりつつあるのは幸いなことだ.プレゼンテーション本番は舞台に上がる前にもう終わっているべきなのだ.

—— 一晩中,居室の窓を開けておいたら,本や床がしっとり湿っていた.明け方に霧がかかっているようだ.最低気温は21.5度.ま,これくらいだったら許そう.

◇午前7時にほぼ必要な素材をファイル化完了.いったん家に戻り,旅支度をすませて,ふたたび研究所へ.翻訳原稿とか資料とか機材とか.

◇すっかり忘れていたとある書類の申請を農環研に出す(発行は後日になってしまった).その後,銀行口座を開設し,昼過ぎにつくば某所にてヒミツの打ち合わせ.死ぬほど事務書類を書かされた.3時間もの拘束で弱りまくる.外は蒸し暑いし,眠たいし,踏んだり蹴ったりですわあ.

◇拘束を解かれ,そのままTXつくば駅から快速に乗り込む.JR東京駅で速攻下車.北口のオアゾ丸善を10分ばかり高速回遊し,駅に舞い戻って17時13分発の〈のぞみ61号〉に間に合う.広島まで4時間ほどの車中読書:小林章『欧文書体:その背景と使い方』(2005年7月7日刊行,美術出版社,ISBN:4-568-50277-2 ※→目次).現役のフォント・デザイナーによる新刊.ぼくが予想していた以上にいい本で,一気に読了.こういう本をずっと待っていた.欧文組版の“伝統”と“常識”がそこかしこに読み取れて,たいへん勉強になる.とくに,カリグラフィーの素養がないと欧文フォントや組版の精神が理解・吸収できないだろうという指摘はなるほどと思った.奥の深い「文字」の世界にくらくらする.さまざまな欧文書体の特徴や目的に応じた選び方,そして使い分けの原則がとてもわかりやすく示されている.とりわけ第4章に書かれてある「スクリプト体の使いこなし」はすごすぎる.変にマネしたら痛い目に遭いそう.でも楽しそう.

—— 途中,爆睡していたようだが(本人は知らん),午後9時19分にJR広島駅に到着.そのままタクシーに20分ほど乗って,広島港の突端にある宇品島の広島プリンスホテルに運ばれる.ここが今年の統計関連学会連合大会の会場.チェックインして,部屋に入ったらもう10時を過ぎていた.

◇講演の“かたち”は,今晩はやめにして,明日つくることにしよーかなー.※そろそろ体力の限界かもしれへんし.

◇本日の総歩数=13117歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+1.0kg/+0.5%.


11 september 2005(日) ※ 今日も不快な投票日

◇午前5時半起床.寝過ぎかも.晴れてすでに蒸し暑い.※ええかげんにしてねー.

◇投票は午後行くことにして,朝は少し歩いてみる(こんな日は難行苦行ですわ).歩き読み:デイヴィッド・クリスタル『消滅する言語:人類の知的遺産をいかに守るか』(2004年11月25日刊行,中公新書1774,ISBN:4-12-101774-9).出てすぐに買ったものの,饒舌な「訳者あとがき」を先に読んでしまったので,萎えて放り出してしまった本.同じ著者による前著『地球語としての英語』(1999年1月8日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-03381-X)の姉妹書だという.第1章「言語の死とは何か」を読了.40ページほど.少数言語の〈訃報〉はいつ見ても心が痛む.

◇集中講義(前半戦)は終わったものの,今度は統計関連学会連合大会のプレゼン準備をしないといけない.持ち時間は30分なので,物理的にはたいした量ではないのだが,脇道や寄り道はできないな,きっと.明日未明からつくりはじめます.

◇督促連絡がいくつか届いているのだが,すみません,今週の「ビッグウェーヴ」を乗り切らないことにはどーもこーもできませんので,しばらくお待ちください.

◇朝からずっと気温と湿度の高い天気だった.午後3時15分頃,いきなりの雷雨に叩かれる.スコールは30分ほどであがったのだが,その後も天気が不安定で,ときどき雨がぱらつくようになった.小止みになったので小学校の投票所へ.国会議員(小選挙区&比例区)・最高裁審査・茨城県知事・補選が同時だったので,何枚もの投票用紙に記入しては投げ込んだ.

◇夕方,突然,映画〈妖怪大戦争〉を見させられるはめになった.なんちゅう映画か(嘆息).ただし,妖怪アイテムの「総復習」にはとても便利な「教材」かもしれない.まあ,水木しげる作品をきちんと履修していれば,いい成績がとれると思う.冒頭の異変(“くだん”が出てくる)の読み取りができた観客はいったい何人くらいいるのかな.“宮部せんせい”はいい味出してました.ストーリーはと問われても答えようがないのだが(汗),あえていえば〈帝都物語〉と〈鬼太郎〉の混ぜご飯かな.いやはや.※きっとCGや特撮にすごくお金をかけたのだろうが.

◇明日からの広島出張のため,今日は夜なべで準備をする予定.

◇本日の総歩数=10522歩[うち「しっかり歩数」=4088歩/35分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.7kg/=+0.4%.


10 september 2005(土) ※ 〈R〉巡業イン南大沢(2日目)

◇午前5時起床.曇り.早朝の多摩中央公園周りを1時間ほど散歩.周囲から一段浮き上がった空中回廊のような歩行者通路を延々と歩く.つくばもさらに年月が経てばこのような雰囲気の街になるのかもしれない.どちらにせよ“長居”するべき土地ではないように思う.

◇今日の講義は午前10時半から.準備をしたりなんやらかんやらでせわしない.でも,数時間もあれば何だってできてしまう.

◇昨日のビックリ —— 統計学高座にあがるときは,概論の中で必ず「仮説やモデルは“単純”であることをもってよしとする」と強調するように心がけている.昨夜もいろいろな本やら記事を引き合いに出してその点を話したのだが,そういう素材の一つである『ビッグコミック・オリジナル』に連載されているゴルフ漫画〈風の大地〉が今の学生に通じなくなってきた.ほんの数年前までは大学の講義で主人公(にして信念ある最節約主義者)の沖田プロをスライドで出せば数カ所でざわめきが波打ったものだが,最近ではその反響がしだいに明らかに弱まってきている.6月の東大の講義もそうだったし,今回もそう.

昨日はついに受講している学生に「ひょっとして『オリジナル』って読んでないの?」と訊いたところ,たった1名を除いては誰も読んでいないとのこと.そりゃあわからへんわなあ.あららー.『ビッグコミック』や『オリジナル』をいつも読んでいるのは要するにオジサンということかなあ,と振り向いたら,可知さんは大きくうなずいていた.

確かに,こういう“賞味期限のあるネタ”を講義で使うときには十分に注意しなければならないのかもしれない.かと言って,今の小中学生が見ているような〈仮面ライダー響鬼〉とか〈交響詩編エウレカセブン〉とか出すわけにはいかないしなー.ただし,それもこれも相手による.受講側の平均年齢がより高い農水省関係の研究機関で開く統計学高座では,いまでも〈沖田プロ〉は現役で活躍してくれている.このへんの見極めが肝心か.

【教訓】今の学生はオジサン系漫画を[も?]読まない.(今度は〈のだめ〉でいってみよーか)

◇さて,いつまでもビックリしている余裕はない.さくさくと今日の準備を進めないと.

◇9時半にホテルをチェックアウト.昨日以上に蒸し暑い気がする.10時を少し過ぎて,講義室に到着.受講生はまだ来ていない.DynaBook SS と PowerBookG4 を2台セットして,プレゼンに備える.pdf / T-Time の扱いは Mac の方がいいが,〈R〉の実習には受講生と同じく Windows 環境が必要になる.

10時半から講義開始.分散概念の導入と実験計画ならびに分散分析についての概論.簡単な完全無作為化法を例にとって,〈R〉で散布図を描き,総平均からの全偏差と処理平均からの偏差を図示し,偏差と平方和の分割について説明する.あっという間に正午になる.

昼休みは,そのまま講義室で午後の準備.空調が効いているはずなのだが,ダメですなあ,これでは.天井からぶら下がっている「ハエ取り紙」がゆらゆらするだけ.

午後1時半から講義再開.分散分析表としてまとめられる一連の計算を〈R〉の「aov」コマンドで実行する手順を説明.次いで,分散分析の背後で仮定されている線形統計モデルについて説明し,前提としての正規分布の性質を〈R〉で実習.いくつかのパラメーターを変化させることにより,確率分布の形がどのように変化するのかを体感してもらう.〈R〉また〈R〉.最後に,分散分析など線形統計モデル一般の仮定であるデータの正規性と等分散性がなぜ問題となるのかを説明し,それぞれの仮定をテストする「シャピロ-ウィルク検定(shapiro.test)」と「Bartlett検定(bartlett.test)」を実習.

最後に,分散分析に続く処理平均値間の多重比較問題に移り,ホルム補正とボンフェローニ補正の手順を解説と〈R〉演習(pairwise.t.test).平均値間のt検定については次回ちゃんと説明しておいた方がいいかも(パラメトリック統計学の“生き方”の一端を知るためにも).午後6時少し前に,本日の講義はおしまい.受講生のみなさん,お疲れさまでした.集中講義の後半戦は9月30日〜10月1日.より複雑な実験計画の実例を用いて,線形統計モデルについて講義する予定.一般線形モデル(glm)につなげられるようにする.あとは計算統計学と多変量解析について解説するつもり.

Crawleyの〈R〉教科書は実践的で役に立った.

◇午後6時過ぎに南大沢駅にたどりつく.不快指数とても高し.京王線→中央線快速と乗り継いで,つくばエクスプレスに.北千住あたりはお祭りだったようだ.午後9時前につくば駅に着.夜になってもまだ蒸し暑い.

◇へとへとになって沈没.欲も得もありまへん.

◇本日の総歩数=18687歩[うち「しっかり歩数」=11201歩/94分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=未計測/未計測.


9 september 2005(金) ※ 〈R〉巡業イン南大沢(初日)

◇午前5時起床.ちょっと寝過ごし.気温は23度台.曇り.早朝の研究所にて,この2日間に必要になりそうな機材と資料をかき集める(当日の朝やるかー)./ そして,最新の受講者名簿に沿って,講義用のメーリングリストを〈room98〉として開設した.※受講生のみなさん,すでに利用可能となっています.後ほどアナウンスします.

◇午前9時過ぎにTXつくば駅に.快速に運ばれて45分で秋葉原に着く.総武線に乗り換え,新宿から京王線快速で京王多摩センターへ.パルテノンへの坂を上がった角のスターバックスに入ったのは正午少し前のこと.今夜宿泊する真向かいの京王プラザホテル多摩のチェックインは午後2時からなので,しばらくここで仕事ができる.

◇車中読書 —— Michael J. Crawley『Statistics : An Introduction Using R』(2005年4月刊行,John Wiley & Sons,ISBN:0-470-02298-1).今回の講義に関係する本文部分(計200ページほど)はほぼ読了.これはとてもいい教科書ですねえ(独習書にもなる).学部生向けに書かれてあるので,予想される“致死ポイント”はうまく回避されているみたいだし.とくに,教える側にとっては,〈R〉を用いて,教材(テストデータ)をどのように「可視化」し,学生に要点を印象づけるかという手順が具体的に書かれているので,教壇でのプレゼンにすぐ役立てられそうだ.もちろん,今回の首都大学東京での集中講義にも反映させていただきます.

冒頭の「Preface」にはこう書かれている:

The approach adopted here involves virtually no statistical theory. Instead, the assumptions of the various statistical models are discussed at length, and the practice of exposing statistical models to rigorous criticism is encouraged. A philosophy of model simplification is developped in which the emphasis is placed on estimating effect sizes from data, and establishing confidence intervals for these estimates. The role of hypothesis testing at an arbitrary threshold of signufucance like α= 0.05 is played down.(p. xi:下線みなか)

仮説検定ではなく「モデル選択(“モデル単純化”)」が本書の中心テーマになっている.著者の言う“モデル単純化”とは,「最節約原理」に基づいて,与えられたデータに照らして相対的に単純なモデルを構築するということだ(pp. 7-8).その原理は,統計モデリングの総論にあたる第7章「Statistical Modelling」で詳細に議論されている:

  • パラメータや説明変数は少ない方が望ましい
  • 非線形よりも線形のモデリングが望ましい
  • モデルの仮定は少ない方が望ましい
  • ……

というような原則に要約できる(pp. 103-104).

この方針にしたがって,最初に仮定される「最大モデル」(maximal model:パラメータや変数をめいっぱい含んだモデル)を“オッカムの剃刀”によってどんどん削ぎ落としていく.逸脱度(degree of deviance)に影響しないパラメータや変数を削減することで,最終的に「最小十分モデル(minimal adequate model)」に到達する.本書では,回帰分析(第8章)や分散分析(第9章)など個別の分析方法に関して,この“モデル単純化”の原則を適用している.

モデル選択に関する一貫した姿勢と並んで特筆されるべきは,推定量の誤差評価に関する計算統計学的方法の重視だ.テキストの早い段階でブーツストラップを用いた推定量の信頼区間のつくり方が詳しく解説されている.そして,従来的な t 分布を用いた信頼区間との比較をした上で:

So which kind of confidence interval should you choose? I prefer the bootstrapped estimate because it makes fewer assumptions. (p.49)

これもまたオッカムの降臨か.

—— 個人的には,とてもなじみやすい(親和性の高い)統計学本だ.

◇ホテルにチェックインして,しばし予習と準備のあがき.午後5時過ぎに南大沢に向かう.見慣れたアウトレットを過ぎて,正門の左手に〈東京都立大学〉,右手に〈首都大学東京〉というキメラな看板を掲げた大学に到着.今日の講義は午後6時から午後9時という変則的時間帯だ.かつての予備校の授業を思い出す.講義室は学部の実験室とのことで,理科室のような机の並びだ.珍しいことにハエ取り紙が天井からぶら下がっていた(何年ぶりか).

—— 統計学のイントロを話し,〈R〉をちょこちょこ触りはじめたところで,あっという間に3時間が過ぎてしまった.まあ,明日もあることだし,きょうはこれくらいでアガリにしましょうかね.

◇遅い晩ご飯をすませ,京王多摩センターに帰ってきたらもう11時近かった.先生も生徒もたいへんな1日だった.しかし,明日も10時半〜18時という長丁場だ.こらもう寝るしかないな.

◇本日の総歩数=14825歩[うち「しっかり歩数」=2501歩/22分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/+0.1%.


8 september 2005(木) ※ 休みなく準備し続ける

◇午前4時半起床.南風が通り抜ける.気温24.6度.大型台風14号の影響もなくなり,今日は晴れ上がるだろう.台風一過の残暑が憂鬱だ.

—— 研究所にて,明日からの集中講義の資料づくり.統計学「本体」の資料は例年の蓄積があるので手直しは少しですむ.しかし,〈R〉の方は進歩が速いので,アップデートが常時必要だ./それと並行して,来週の統計関連学会&筑波大セミナー用の形態測定学プレゼン資料も用意しないと.

今日はこの2件で一日がつぶれる予定.※隙間時間にはあれやこれや別件があるのだけど.

◇午前10時の気温がすでに31.3度.真夏が戻ってきたような,厳しい暑さ.予想最高気温が35度台というのも不思議ではない.

◇講義資料などをばたばたと用意する.とりあえず pdf にしやすいものから順番に.

◇おお,なるほど〈須崎・苗字ランキング検索〉というサイトがあるのですね.すでに登録されている苗字の総数は現在「10万余り」もあるそうな.この須崎ランキングだと,「三中」姓は「18270位」で,総戸数は68戸となる.※情報ありがとうございます.>稀少苗字の「24310位」さん.

◇午後1時半から3時過ぎまで,〈系統学的考古学〉セミナー(第16回).Chapter 4 : 「Constructing Cultural Phylogenies」が続く(pp. 117-121).考古系統樹における文化の〈伝統〉をどのように定義するかという論議.Robert Boyd の homeostatic cluster 概念を延々と解説し,文化的ユニットについての理解を深めようという著者の意図なのだろう.しかし,所詮は文化伝統を生物【種】とのアナロジーにもちこもうというわけだから,歯切れ悪いことこの上なし.ぬかるみを歩かされている心地.ダメじゃん.

◇新刊情報いろいろ —— 培風館から連絡あり:ずいぶん前に40項目近くを執筆した日本育種学会(編)『植物育種学辞典』が本日付で出版されたとのこと.書誌情報を後で確認しないと./ ダーウィン伝の新刊:Sandra Herbert『Charles Darwin, Geologist』(2005年刊行,Cornell University Press,ISBN:0-8014-4348-2).※→版元ページ.|Nature に書評も(Martin J. S. Rudwick)./ 初版1857年のルイ・アガシー「分類論」が Dover から復刻されていたとはぜんぜん知らなかった:Louis Agassiz『Essay on Classification』(2004年7月刊行,Dover Publications,ISBN:0486435806).※→版元ページ./もう1冊アガシー本(伝記と書簡):Louis Agassiz『Louis Agassiz: His Life And Correspondence』(2004年6月30日刊行,Kessinger Publishing Co.,ISBN:1419131362).※→版元ページ

◇午後のこまごま —— 検印のための共済組合員証の提出(済)./ 出張振替休日の連絡(済)./ 研究室で次年度購入する洋雑誌の届出.14日が提出期限なので大東くんに提出を依頼する.

◇Trends in Ecology and Evolution 誌は農環研でうちのユニットでしか購入していない.それはそれでまた意外なことなのだが,TREE を購読しないとエルゼヴィアの〈ScienceDirect〉のサービスが所全体として受けられないとのことで,毎年この時期になると情報資料課から「次年度もぜひ TREE を継続購読していただきたい」という依頼が届く.もちろん,TREE を止める理由は全くないので,農環研の心配は杞憂なのだが,Trends 誌くらいいろんな研究室で購読すりゃいいのにね.まあ,Systematic Biology, Mol. Biol. Evol., Evolution, Mol. Phylogen. Evol. というトップジャーナルたちが図書室で何一つ購入されていない研究所なので,文句言うだけムダなんだけど(黙ってユニットで買えばいいのだ).

◇夕方,集中講義の配布資料を〈租界R〉に置く(ついでに「門前」のお手入れも).30日(金)に予定されている教室セミナーの演題と要旨も“南大沢城主さま”に送信する.とりあえず一段落.あとは明朝に.

◇本日の総歩数=5885歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/−0.3%.


7 september 2005(水) ※ 終日えすぱにょーる

◇午前4時起床.まだ暗い(魔が出るほどではないが).湿った南風が吹き抜ける.気温25.6度.べたつく感じ.

◇研究室にて今日の講義準備.〈R〉の起動チェックと講義の内容・順序をイメージする.JICA国際センターのコンピュータ室のパソコンには,昨年の講義のときに〈R〉の旧版をインストールしてあるはずなので,それが使えるようであればたいへんラクだ.しかし,そういう話をする前に,研修生の進捗状況を訊かないといけない.例年並みの進み具合だと,まだデータを取っている最中だろうから.

スペイン語の〈R〉関連文献をいくつかダウンロードする.

◇そういえば,遅まきながら Crawley の〈R〉本が届いた —— Michael J. Crawley『Statistics : An Introduction Using R』(2005年4月刊行,John Wiley & Sons,ISBN:0-470-02298-1 ※→目次).同じ著者による前著『Statistical Computing: An Introduction to Data Analysis using S-Plus』(2002年4月刊行,John Wiley & Sons,ISBN:0-471-56040-5 ※→目次)に比べると,厚さも価格も“軽量化”されている.あくまでも〈R〉の入門書という位置づけの内容だ(ざっと眺めた感じ).なお,本書にはコンパニオン・サイトが開設されている.

◇ちょこちょこっと —— 首都大学東京への出張届を2件出す.※忘れてた…….

◇午前9時半から高野台のJICA国際センターにて,統計分析の講義.受講生は今年始めからきているキューバの稲作専門家たち.すでに圃場試験は終わり,いまはデータ収集とその解析に追われているという.だいたい統計の諸手法は「自分のデータ」が目の前にあってはじめて“本気”が出るというものだから,春の講義で解説した実験計画法を中心とする統計分析の方法論は,「自分のデータ」を使ってもう一度復習してもらわないと身に付かない.午前中は各グループの進捗状況を報告してもらい,それに関連するコンサルティングをするという形式の授業にした.今年は思いのほか進捗がよいようで,大半のグループではデータの収集がほぼ終わっているという.そこで,午後は各自にノートパソコンを持参してもらい,〈R〉をインストールして,その使い方の手ほどきをする予定.スペイン語の〈R〉関連ドキュメントがいくつか公開されているので,自習や参考にするオンライン資料には事欠かないだろう.※スペイン語版の〈R〉ってないのかしらねえ.

◇昼休みに外に出たら猛烈に暑かった.気温31.3度.日本海を北上しているという台風14号の強風圏に入っていて.南からの湿った熱風が吹き荒れている.サイアクやな,これは.

—— パンをかじりつつ,午後の講義用の〈R〉の調整をば.インストール用のフォルダーをつくったりとか.

◇午後1時半からのJICA講義 —— 〈R〉のインストーラーとスペイン語ドキュメントを入れたフォルダーを研修員に配布して,各自インストールするところから始まった.こちらの期待としては,スペイン語環境ならば「スペイン語版〈R〉」がインストールできるかなあと思ったのだが,研修員の使っている(帰国後のために私費購入したケースもあるらしい)ノートパソコンのスペイン語Windows環境では,えすぱにょ〜る〈R〉がインストール候補に現れない.こんなことってあるの? というのも,フランス語〈R〉やポルトガル語〈R〉(ポルトガルとブラジルで別々)があるのは当然としても,カタロニア語〈R〉さえあるのに,どーしてスペイン語〈R〉がないんでしょ.

もうひとつやっかいなことに,研修生のパソコンの多くは日本語キーボードで,そこにスペイン語OSを乗せているせいか,キーと文字の割り付けがまったく一致していない.とくに記号(「<」とか「=」という〈R〉コマンド入力に不可欠の記号まで)の入力で苦労することが方々であり,そのたびに呼び止められる.ぜんぜん“統計噺”に入れない,「パソコン教室」のごとき状況になってしまった.

◇途中,3時頃にいきなり10分間ほどの集中豪雨が降り注いだ.その後も雲間からばらばらと雨が落ちてはやむという“台風接近”な空模様に.日本海を通過中とのことだが,垂線距離では最も近い時間帯だったのだろう.

◇午後4時過ぎに講義は終わった.教える方も教わる方もなんだか疲れて.Windows機に振り回されたようで,統計分析そのものに費やした時間はあんまりなかったような.次回(21日)の講義ではもっと「〈R〉統計学」に専念したいものだ.研修員にはスペイン語マニュアルを読んでくるように言っておいたけど.

—— いずれにせよ,本日の労働はおしまい.

◇あの〈百鬼夜行〉が「文庫化」されてしまうとは!(世の中変わった) —— 鳥山石燕『画図百鬼夜行全画集』(2005年7月25日刊行,角川ソフィア文庫319,ISBN:4-04-405101-1).つい,ふらふらと.その昔,〈百鬼夜行〉と仲良くなろうと思ったら,超高かった鳥山石燕『画図百鬼夜行』(1992年12月21日刊行,国書刊行会,ISBN:4-336-03386-2)しか選択肢はなかったのに.隔世の感あり.〈百鬼夜行〉を持ち歩きたいと希望する読者が増えてきたということか.いい世の中になったのか,それともヘンな世の中になったのか.※もちろん,国書刊行会の方が解説もしっかりしているし,何よりも圖が迫力あるので,今回出た〈ケータイ百鬼夜行〉に飽き足りない人は,どーぞ!

◇向こう1週間に迫り来る“怒濤”を考えると,ひょっとしたら明日が貴重な「ブランク日」となるのかもしれない.

◇本日の総歩数=12485歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+0.2%.


6 september 2005(火) ※ 「19079」位!

◇午前4時半起床.雨上がり.気温21.6度.涼しい.この季節になると,ツクツクボウシのフェイドアウトとコオロギたちのフェイドインが重なる.

◇ついに判明! —— 昨日届いていた村山忠重『日本の苗字ベスト30000』(2003年3月25日刊行,新人物往来社[別冊歴史読本40],ISBN:4-404-03040-1).新刊で出たとき「そのうち買おう」と思っていたら,あっというまに品切れになり,古書価格も上昇し続けているようだ.ぼくもamazonから古書としてやっと入手した.同じ著者による前著『日本の苗字ベスト10000』(2000年12月11日刊行,新人物往来社[別冊歴史読本64],ISBN:4-404-02764-8)の内容は,すでに著者のサイト〈苗字館〉でオンライン公開されているようだ.

で,本題.この『ベスト30000』でチェックしたところ,【三中】姓はちゃんと載っていた.ランキングは「19079」位で,電話帳ソフトウェアに基づく複数年サンプリングの平均は「60」戸とのこと.なるほど,日本全国には60戸の「三中」家があるということですね.ただし,村山ランキングでは苗字の“読み”のちがいは区別していないので,【みなか】だけでなく【みつなか】などの別読みの姓が混入している可能性がある(仮に半数の「30」戸が【みなか】読みだとすると,ランキングは「28000」位あたりに下がる).それでも,おおまかなランキングが判明したことで,長年の未解決問題がやっと解決した.

このランキングの最下位30000位あたりだと「26」戸という件数になる.頻度分布の裾野はさらにはてしなく伸びているのだろう.※ちなみに【長太】という姓はこのリストには含まれていませんでした.よほど稀少な苗字なのでしょうね.>長太さん.

—— なお,苗字の分布に関する統計解析については,東京工大の間瀬研究室で卒論研究として公開されている.→「日本人の名字の統計解析」.この論文によると,日本の姓の総数はおよそ10万であると推定されている.

◇止んでいた雨がまた降り始める.

◇午前のこまごま —— 10時半からグループ内会議.農業環境技術研究所研究員の紹介ページを所として作成するという[めんどうな]計画が持ち上がっている.最初つくる手間は別としても,今後のアップデートの作業の方がたいへんなんじゃないかな.10月初めに原稿〆切./ JST 関連の連絡あれやこれや./ 明日はJICAの講義が丸一日.えすぱにょーる.高座内容を脳内イメージ化しないと.〈R〉スペイン語版のインストールを明日やって,その実習を次回(21日)にするかな./ 今週末は首都大学東京の集中講義.講義資料を用意しないと.受講者メーリングリストの開設も必要か./ ソーバー本郵送完了./ その他,質問や問い合わせ,2件あり.ちょい,お待ちを.

◇昼休み,霧雨が降り続く.歩き読みはムリかな.※本がふやけるし…….

◇献本感謝 —— 鷲谷いづみ・武内和彦・西田睦『生態系へのまなざし』(2005年8月10日刊行,東京大学出版会,ISBN:4-13-063325-2 ※→目次).ぱらぱらめくると,こんな1節が:

「ランドスケープ」という言葉は,もともと地域の人間・自然関係を表現するものであった.この言葉が,風景の意味合いを強めたのは,オランダやフランドルの画家たちの作品名に使われるようになったからである.彼らによって,「風景画」(ランドスケープペインティング)という独特の画法が生みだされた.その絵に表現されているものは,多くが農村におけるいきいきとした人間の営みである.彼らの作品によって,ランドスケープが,風景という意味合いを強めながら,欧米諸国に広がっていったのである.(pp. 74-75)

ピーテル・ブリューゲル(父)の作品にも言及するこのくだりは,読了したばかりのシャーマの『風景と記憶』に内容的に連なる1節だと思う.当時の「ジャンル・ペインティング」が「ランドスケープ・ペインティング」とどのようになめらかにつながるのかはおもしろい問題だが,このテーマに限らず,残念なことに,本書には「参考文献」がまったく載っていないので,関心をもった読者はそのまま放置されてしまう.この手の本で書籍リストや索引がついていないのは珍しいですよ(たとえ〈タテ書き〉本であっても).内容的には,ランドスケープ論を含めて,保全生態学から保全遺伝学まで,「保全」を中心テーマにした読み物になっている.想定される読者層からいえば,低価格なソフトカバーで出した方がよかったのではないですか?

◇新刊もう1冊 —— ダイアン・アッカーマン『庭仕事の喜び』(2005年8月30日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-20447-3).うん,ネイチャー・ライティングですね.なんだか,レイチェル・カーソンを髣髴とさせるものが.アメリカではこういうスタイルが広く定着しているのか.

◇午後1時から,〈統計学〉セミナー(第18回) —— 2要因分散分析に関する新しい章Chapter 12 : Two-Factor Analysis of Variance (pp. 231-245) .2要因の分散分析について.完全無作為化法のもとでの2要因の実験計画と,それに続く分散分析.とくに,各要因の主効果と要因間の交互作用についての解説.要因効果に関する fixed model(Model I ANOVA) / random model(Model II Anova) / mixed model(Model III ANOVA)について説明が少し.午後2時まで.空が一瞬明るくなって,日射しが.

◇午後のこまごま —— クラスタリングに関する質問へのお答え.※ Macintosh 版〈R〉でグラフをファイル保存するにはどうすればいいんでしたっけ? Windows 版ならグラフィクス窓のメニューに画像保存形式の選択画面が出てきますが,Macintosh 版だとそれがないですよね.コマンド画面から操作するしかないのかな./ 別件の質問にも答える./ 筑波大学から事務書類が届く.来週のセミナーのことで.

◇夕方,雨が止む.蒸し暑い.南風が入っているようだ.

◇マーカス・デュ・ソートイ『素数の音楽』(2005年8月30日刊行,新潮社,ISBN:4-10-590049-8)の第6章読了.ラマヌジャンの章.彼がインドからイギリスに行くことで,“数学的”にはとても幸せだったのかもしれないが,“人生的”には果たしてどーだったのだろう.

◇明日は,終日,JICAの統計学講義.

◇本日の総歩数=6192歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.8kg/−0.1%.


5 september 2005(月) ※ TX 初乗りで“水浸し”の東京へ

◇4時半起床.雨.気温22.4度.気温の割りには蒸し暑い.

ニュースを見たら,昨夜,遠雷が聞こえていた頃,東京は100mm/時という猛烈な雷雨に見舞われていたらしい.今日の午後は東京に出る予定.

◇サイモン・シャーマ『風景と記憶』(2005年2月28日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-25516-7)の書評を公開.※3ヶ月ぶりにやっとリュックサックを下ろせた心地がする.

◇朝からこまごま —— メーリングリスト関連の作業./ 先日依頼された原稿査読は集団遺伝学に通じている人の方がいいですよと弾き返してしまった(ごめん)./ ソーバー本の注文への対応.そろそろ手持ちの在庫が底をつきはじめたぞ./文科省から「研究成果公開促進」に関わる科研費申請の資料と説明会の案内が.進化学会関連で./ JST研究会,もう一押しっ.

◇午後1時過ぎに,TXつくば駅から初乗り.開通当初の混雑はすでになく(平日の昼下がりだし),余裕で座れました.お,ちょっと座席シートのクッションが堅すぎるかな.ま,車中読書にはこれくらいの“硬度”が望ましいのかもしれない.快速に乗ったので,つくば〜守谷間は百キロ超で吹っ飛ばしてくれました.さすがに速い.ちょうど45分で秋葉原ターミナルに着.地下の奥底から地上に出るまでに時間がかかる.秋葉原とはいっても電気街側ではなく,反対側の再開発地区?にあたる.

◇そのまま中央線に乗り換えて,大久保下車.雨脚やや強し.科博分館の会議室にたどり着いたのは,午後3時を少し回っていた.分類学会連合の役員会が今日の用事.来年はじめのシンポジウムのこととか,科研費申請のこと.今月末に GBIF 事務局長の James Edwards 氏が来日するという.Edwards さんとは,4月のメキシコシティーでの IOSEB Council Meeting ですでに会っている.

—— 4時過ぎに会議が終わる.お茶の水駅前の丸善に立ち寄ってから,そのまま秋葉原方面に降りていく.降り続く雨.いくつか寄り道して,再び TX秋葉原駅へ.帰路も快速.つくばに着いたのは午後6時過ぎ.また降り続く雨の中を家まで徒歩.とぼとぼ.

◇TX 車中読書 —— マーカス・デュ・ソートイ『素数の音楽』(2005年8月30日刊行,新潮社,ISBN:4-10-590049-8).第5章まで,200ページほど.素数をめぐる数学史の本としてはとてもおもしろいと思う.ゼータ関数がびしびし飛び交うあたりで息絶えそうになったが.“じめじめしたゲッティンゲン”のヒルベルト教授が超モテモテ男だったとはね.リーマンはほとんど引きこもりな性格だったという.

—— 内容とは関係ないのだが,Crest Books の「仮フランス装」の造本は持ち歩くのに適していると思う.カバージャケットは脱がせて,本体だけ持ち歩くのがいいですね.

◇本日の総歩数=17234歩[うち「しっかり歩数」=5047歩/34分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=+0.7kg/+0.3%.


4 september 2005(日) ※ 何とか“下山”できました

◇午前4時半起床.曇り.気温23.9度.ちょっと蒸し暑いかな.北上中の台風14号は関東には影響なさそう.

—— 夜明け前に,つくばエクスプレス(TX)沿線の新設道路を車で走ってみる.ターミナルの「つくば」駅前はすでに“充分”に開発されているが,それ以外の新駅,とりわけそれまで何もなかったところにいきなりできた駅の周辺はパーフェクトな“空きニッチ”なので,これからいろいろ建ち並んでいくのだろう.

みごとに何もない茫漠たる〈研究学園駅〉とか,万博記念公園からすごく遠い〈万博記念公園駅〉とか,ムリにひねり出しました風の〈みどりの駅〉とか,まだまだこれからというベクトルを感じさせるが,くれぐれも「棄景」にならないでねー.

◇やっと“下山” —— サイモン・シャーマ『風景と記憶』(2005年2月28日刊行,河出書房新社,ISBN:4-309-25516-7)の第III部〈岩山〉の第8章「垂直の帝国,脳髄の深淵」と第IV部〈森と水と岩山〉の最終章第9章「再びのアルカディア」を読了.これにておしまい.第8章はいまや「山」のシンボルとなった“アルプス”に焦点を当て,登山家や画家の仕事を通して,“アルプス”のイメージがどのようにかたちづくられていったかをたどる.かの言語学者ソシュールの先祖がアルプス登攀で有名だったとは知らなかった.

続く最終章は全体の総括である.“桃源郷(アルカディア)”をキーワードとして,民族が記憶する「風景」のイメージがもつ連続体の両端として,【野性的なるもの】と【牧歌的なるもの】を著者は指摘する(p. 603).この両極的イメージは互いに敵対するのだが,一方が他方を置き換えるということはなかった.思い起こせば,本書冒頭の序論で,著者は以下のような問題提起をしていた:

子供の自然観にしてすでに錯綜した記憶,神話,意味をたっぷり孕んでいるのだとすれば,われわれ成人の目が風景を見るフレームはいかばかり緻密につくりあげられていることだろう.というのもわれわれは自然とそれに対する人間の知覚を二つ別々の領域に峻別することに慣れているが,実際には二つは分離不能なものなのだ.風景は五官を憩わせてくれる場である前に,精神の所産である.その風景は岩の積層からできているが,同じくらいたたなずく記憶の層からも組み立てられているのだ.[・・・]われわれがわれわれの文化と最も無縁のものと思っている風景でさえ,仔細に見ると,文化の産物であることがわかるかもしれない.(pp. 15-16)

そして,本書の締めくくりである次の1節は,冒頭のこの問題提起を受けた総括として引用する価値がある:

私はこれまでこの『風景と記憶』の厖大な紙幅を費やして,少しく違った見解を述べ,異なった物語をひとつ組み立ててきた.野生と文明の境界,そして過去と現在の境界がそう明確には決められるはずがないと思えるからである.山の斜面をよじ登っていようと,森をほっつき歩いていようと,我々西洋人の感性は神話と追憶でふくれあがった背嚢を背負っている.[・・・]我々は,最も悲観的な環境論者が考えるよりも徳があったり,賢かったりするわけではない.記憶がしっかりしているというだけのことだ.世代ごとに累重してきた過去の総体が四季のゆっくりした腐葉土のように,我々の未来の培養土【コンポスト】となる.我々はそのお蔭で生きていかれるのだ.(p. 658)

日常的な「風景」の背後に横たわる「神話と記憶の鉱脈を再び掘り起こす」(p. 24)ことにより,著者は風景がどのようにつくられるのかを規定する文化的な背景に目を向けた.この鉱脈はどれほど深くたどることができるのだろうか.また,地理的な要因はどのように関わってくるのだろうか.たとえば,日本人に固有の「記憶」が日本的「風景」をかたちづくっていると言ってもいいのだろうか.とても厚い本の先にはさらにもっと厚い本が書かれねばならないのかもしれない.

最後に一言.訳文,すごい! 初心者はマネをしてはいけませんよ.高等(高踏)な翻訳ワザに振り回されて,ときどき疎外されてしまうことすらあった.脱帽です,ハイ.

—— この6月にとぼとぼと登り始めたこの本も,夏が過ぎてやっと下山することができた.※書評は追って〈leeswijzer〉に.→書評を公開しました[9月5日].

◇相変わらず昼間は真夏の日射し.

【欹耳袋】 進化生物学者 William D. Hamilton の論文集成の最終巻『Narrow Roads of Gene Land : The Collected Papers of W.D. Hamilton —— Volume 3 : Last Words』(2005年10月27日刊行予定,Oxford University Press, ISBN:0-19-856690-5 ※→目次)は来月出版される予定.所収論文の範囲は,ハミルトン晩年の1990〜2002年をカバーしている.

既刊の第1巻『Narrow Roads of Gene Land : The Collected Papers of W.D. Hamilton —— Volume 1 : Evolution of Social Behaviour』(1997年9月4日刊行,Oxford University Press,ISBN:0-7167-4530-5 ※→目次|1963〜1980年の論文),および第2巻『Narrow Roads of Gene Land : The Collected Papers of W.D. Hamilton —— Volume 2 : Evolution of Sex』(2001年11月29日刊行,Oxford University Press,ISBN:0-19-850336-9 ※→目次|1981〜1991年の論文)を合わせると,軽く2000ページを越す分量になる.この“山”こそ高いかもしれない.

ここ数年,ときどき伝え聞いている本論文集の「日本語訳」プロジェクトの進捗はどうなっているのだろうか.

◇新刊1冊 —— マーカス・デュ・ソートイ『素数の音楽』(2005年8月30日刊行,新潮社,ISBN:4-10-590049-8).素数に関する「リーマン予想」をめぐる整数論の歴史.多くの数学者たちの伝記エピソードが綴られている.500ページ近くあるのにこの価格(本体価格2,400円)だと,ずいぶん割安感がある.新潮社の〈Crest Books〉シリーズといえば,「文芸小説」ばっかりかと思っていたのだが,こういうノンフィクションもあるとは意外だ.〈Crest Books〉はその造本が気に入っているので(ダストジャケットを外した本体の“手触り”がとてもいい),こういうジャンルの本がこれからも出るのであれば要注目.

◇夜は,翻訳原稿の続き.あ,雷雨が…….

◇本日の総歩数=3065歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−0.6%.※なんだかサボリ気味…….


3 september 2005(土) ※ ツクバ系≒アキバ系って?

◇午前3時起床.気温は23度台.まだ下がりきっていないのか.暗闇の中を研究室へ直行.すだくアオマツムシやエンマコオロギの合唱の隙間にスズムシの独唱.ソリストと合唱団員とはちがうのか.

◇時間不足で溜まっていた2日分の日録を書く.

◇昨夜もまた“みなかルーツ”情報が北海道から届いた.いろいろ情報をいただき,ありがとうございます(>北海道の「みなか」さん).今度は「家紋」の確認をしないといけないな.

—— メジャーな「姓」をもつ人たちは寄り合いサイトをつくっているようだ.たとえば〈「大江さん」のホームページ〉というのがある.「大江」姓を共有する人たちのサイトで,掲示板を見ると「実はワタシも大江です!」という投稿が相次いでいる.苗字ランキングで上位500位内に入っていればこそ,そういうことも可能なのだろう.ホモプラジーもきっと頻発していると推測するが,こういう〈場〉があるというのはうらやましい.

◇「姓」の継承に関する数理モデルはすでにいろいろ研究されているようだ.手元にある本:佐藤葉子・瀬野裕美『姓の継承と絶滅の数理生態学:Galton-Watson 分枝過程によるモデル解析』(2003年3月5日刊行,京都大学学術出版会,ISBN:4-87698-612-6).一方で,「姓」の系統推定はどうなのかなあ(いかがわし系も多いと聞くし).文字配列情報としては長さ1〜数個で,各“サイト”が数千〜数万の“形質状態(漢字)”をもつという状況.※深入りしたらえらいことになりそう(ドロヌマ).

Elliott Sober のいう〈Smith / Quackdoodle 定理〉にしたがえば,ランキング上位の「姓」を共有することは必ずしも家系の近さを期待させないが,下位の「姓」を共有していれば血縁度の期待値は増す.「姓」のルーツ探しへの動機づけがそれに応じて変化するのもむべなるかな.

◇〈「他者の心を読まない」質問やコメントを繰り返していた〉と見抜かれてしまった,とある「在野の研究者」氏 —— 大爆笑! 進化学会仙台大会で〈言語進化〉セッションの講演者だった大隅典子さんの大会感想記.御意.

◇「定量的古生物学」? —— Journal of the History of Biology 誌の最新刊(Vol. 38, no. 2, June 2005)の所収論文:

  • David Sepkoski「Stephen Jay Gould, Jack Sepkoski, and the 'Quantitative Revolution' in American Paleobiology.」 (pp. 209 - 237|DOI:10.1007/s10739-004-2084-5)

1970年代にグールドたち「新世代の古生物学者たち」が目指したのはどのようなスタイルの学問だったか.グールドの最初期の論文群は,形態の相対成長(アロメトリー)に関する統計学的な技法に関するものだった.1970年代に有名になった“スピンドル・ダイアグラム”についての言及もきっとあるだろう.要チェック.

◇今日も一日暑かった.

◇夜,翻訳原稿チェック.さらに1章がほぼ完了.

◇本日の総歩数=2111歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=−0.6kg/−0.2%.


2 september 2005(金) ※ 突如として“ルーツ”探し

◇午前4時半に起床.気温は21.5度.連日,朝だけは涼しいのだが…….

“みなか”のルーツ —— 昨夜遅く,北海道在住の「三中(みなか)」さんという人からメールが届いていた.まったく面識のない方だ.おそらくインターネットでぼくの名前にたどりついて,メールされたのだと思う.話をうかがうと,北海道の「みなか」一族のルーツに関心があるのだが,祖父母の世代よりも前のことがまったくわからないので,もし何かつながり(あるいは手がかり)があるようならば連絡をいただきたいとのこと.

北海道から問い合わせがあるとはまったく予期していなかったので,早朝に京都の実家に電話して両親に確認してみた.案の定,北海道に知り合いはいないとのこと.せっかくだからと,京都の「みなか」一族のルーツについて訊いたところ,次のようなことが判明した(こういう機会でもないと「ご先祖様」について知る機会はないので).祖父・三中吉太郎は現在の富山県氷見市の出身で,幼い頃に家庭の事情で,妹そでとともに,石川県輪島市に移った.その後,そでは輪島・海士町の「早川」家に嫁いだが,兄・吉太郎は京都にのぼった早川の家系はいまも輪島から舳倉島にかけて残っている.伏見稲荷大社にあるおびただしい数の鳥居のひとつは「三中吉右衛門」によって寄進された —— とのこと.その古風な名前から推測して,祖父・吉太郎の上の世代の同郷者(氷見出身?)が幕末から明治はじめにかけてすでに京都にいたという可能性もある.これまた憶測だが,「みなか」家の先祖たちは氷見から輪島・舳倉島という土地につながりをもっていたのだから,ひょっとしたら“海”に関係するしごとをしていたのかもしれない.日本海側から京都への「道」もまた海産物とともにあったわけだし.※輪島の「早川」家は今も漁業に携わっているそうだ.

◇こういう「祖先探し」とはまったく関係なく(汗),今日は一日中 JST 研究会関連の作業と連絡で追いまくられた.夕方,講演者と参加予定者に連絡メールを発信してもらって,やっと一息つけた.ほっとした.※まだ完了してはいないのだが.

今回の研究会(9月17日〜18日)は,進化学会仙台大会「言語進化」シンポジウムの“続編”みたいなことになりそうだ.

◇正午の気温は実に32.0度.何ですねん,この暑さ.1時間歩いてくらくらする.炎天下の歩き読み:鷲津浩子『時の娘たち』(2005年4月1日刊行,南雲堂,ISBN:4-523-29297-3 ※→目次)の第2部を50ページほど.アメリカ自然誌の系譜をたどる.とくに,「自然誌」から「自然史」への転換が当時のアメリカでどのように起こったのかが著者の関心の中核にある.「ナチュラリスト」ということば自体の意味が現在とは異なっているそうだ(エマーソンの文学作品の分析を通じて).

◇新刊届く —— 昨年末から刊行がはじまった〈中尾佐助著作集〉の最新刊『第II巻:料理の起源と食文化』(2005年9月25日刊行,北海道大学図書刊行会,ISBN:4-8329-2881-3).800ページを越える大冊.重いっす.続刊の『第V巻:分類の発想』は11月下旬に出版される予定だそうだ.

◇今日は磨り減ったぞー.

◇本日の総歩数=12934歩[うち「しっかり歩数」=7095歩/64分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/0.0%.


1 september 2005(木) ※ どたばた長[い]月の開幕

◇5時起床.気温は21.1度少し上回るくらいか.珍しく朝のウォーキングを40分ほど.夜明けがどんどん遅くなっているが,まだ昼間の方が十分に長い.晴れて暑くなってきた.

◇9月になった.今月はことのほか予定が立て込んでいて,“糊しろ”的な余裕がないと予想している.稽古と上演が「同時的」という事態も覚悟しておこうね(>ぼく).

◇午前のこまごま —— とある申請書類1件(15日までに提出)./ 投稿論文の査読依頼1件(この内容だと他の人の方がいいでしょう).

◇JST研究会の事務進捗わろし.時間がない.ぐわわ,尻に火がつく.趣旨文に手を入れて,連絡先リストの一覧づくりも.バークレーへの連絡役は,ワタシですか?(ぎぇ)

◇献本ありがとうございます —— 本田計一・加藤義臣(編)『チョウの生物学』(2005年8月26日刊行,東京大学出版会,ISBN:4-13-060216-0 ※→目次).『〜の生物学』シリーズの1冊.出版までに長い年月がかかったが,600ページを越す大著になった.この分量と価格であっても「蟲屋」は買うんでしょ,きっと.

◇正午の気温30.2度.また真夏日かいっ.暑すぎ.※湿度が低めなのがせめてもの救いだが.

◇『TAXA』(第19号)の「分類学・進化学曼荼羅」が読みづらいというクレームあり.記号・略号が多すぎるとのこと.う〜む,ウェブ掲載だったら“クリッカブル曼荼羅”にしておいて,マウスでポイントすると,吹き出し説明がポップアップ浮上するという演出をすれば可読性が増すのかもしれないが.※誰がそれをやるねん.ん?

◇瀬名秀明さんの読書ブログ〈瀬名秀明の時空の旅〉 —— 進化系の本がたくさん書評されている.『現代によみがえるダーウィン』も『これ論』も.

◇〈生物学を統合する〉 —— 瀬戸口明久さんの記事「生物学を統合する」(生物学史研究,(74): 97-100, 2005)を読む.V. B. Smocovitis の本『Unifying Biology: The Evolutionary Synthesis and Evolutionary Biology』(1996年,Princeton University Press,ISBN:0691033439)をベースにして,現代進化生物学の「統合」を論じている.最後の段落で日本の進化生物学界への言及がある:

実際に80年代における日本の進化生物学の状況を振り返ると、たんに「黒船」による「開国」という生態学界内部の変化だけでは説明できないほど、急速な展開を見せている。1985年には若手生態学者たちによって進化生物学の雑誌が発刊され(Networks in Evolutionary Biology)、フツイマの教科書『進化生物学』も翻訳された(1990年)。さらに89年には分子進化の研究者を中心に「進化学研究会」が結成され、日本進化学会の設立(1999年)への機運を高めた。このように日本では1980年代末以降、進化研究を中心とした「生物学の統合」が進展しつつあるといえるだろう。

確かに,日本の進化学者はいま元気がいいですし,進化学会の年次大会も毎年とてもアクティヴィティが高いと感じている.もちろん,それだからこそ「進化的なものの考え方」を周囲に浸透させようというスタンスがありありと見えるのも当然だろう.しかし,それは必ずしも科学史的現象としての〈The Unity of Science Movement〉と結びついているわけではなく,むしろ David Hull が言うような,ごく一般的な〈科学的帝国主義〉(取扱注意なことば)に近いものがあるようにぼくは感じます.

◇本日の総歩数=12239歩[うち「しっかり歩数」=4938歩/40分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.6kg/−0.2%.


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