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oude dagboek

日録2008年8月 


31 augustus 2008(日) ※ トドを撃ちまくる月末サンデー

◆午前5時半起床.雨上がりの曇り空.のち晴れてくる.弱い南風.

◆日曜の朝のこまごま —— 締切までまだ“マイナス1一ヶ月”もある,とある投稿原稿の査読報告をまとめ始める.これくらい日数に余裕があると,ほーんとにラクだ.いや,ホンマ(汗)./もうひとつ,これまた締切まで“マイナス二ヶ月”もあるISHPSSB Off-year Workshop Kobe〉の講演要旨があるが,こんなに余裕があるともう忘れてしまいそうだ……./カマジン訳,余裕のよっちゃん……(冷汗).

◆日がのぼり,蒸し暑さが増してきた.曇りときどき晴れ.

◆午後のトド撃ちまくり —— 吉田神社へのリモート願掛けが功を奏したようで,農林交流センターワークショップ〈分子系統樹推定法:理論と応用〉の最後の講師が無事に確定した.せっかく東下りしていただくのだから,時間を長めにとって(前後の細かな変更あり),講義と実習をお願いすることにした.これで,講師陣とカリキュラムはすべて確定したので,交流センターの担当に連絡し,事務的な手続きを進めてもらうことにした.今回のワークショップは「定員30名」での受講者募集なのだが,どれくらい集まるでしょう.※「募集範囲」については交流センターに確認しよう.

—— ついでに,ワークショップのサイトも開設した.講義資料や参考情報はここに載せることにします.

◆「Windows XP SP3」の自動インストールで自宅のPCが安楽に逝きました…….無限リセットやめれ〜.“死のブルー画面”は悪霊退散〜.※SP2に戻るしかないんでしょーか.それとも,OSの再インストールとか……(没).

◆明日からはもう9月.向こう3ヶ月のトド撃ちリストをつくってみたのだが,巡業に出たりお座敷がかかっている日数がマキシマムに多い.したがって,基本的に「農環研には実在しない」ので(これまで以上に),来室されても徒労だし,電話をかけてきてもムダです.

◆本日の総歩数=0歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/−0.4%.


30 augustus 2008(土) ※ 夏の終わりには秋の支度をする

◆午前4時半起床.夜中に雨が降ったらしい.しかし,明け方にはもう止んでいて,天気は回復傾向にあるように見える.しかし,天気予報はそうは言っていない.どちらを信じるか.湿度が高く,やや蒸し暑い.

◆来月のトド撃ちの予定 —— 月末になると,翌月の「トド撃ち」の予定が気になる.その月の出張伺や年休届をまとめて提出し,メーリングリスト月例アナウンスを流すとともに,トド撃ちリストを更新するというのが,ここ数ヶ月の月初めの“儀式”になっている.そして,月末になると,リストのうち何頭かについては仕留めた赤線が引かれている.何ヶ月も逃げ回っているトドもいれば,岩場の影でこっそり大成長してしまったトドもいる.しかも,サイズの大小を問わず,いったん出現したトドどもは決して視界から消えてくれないというやっかいな習性がある.

—— ということで,優先順位にしたがって仕留めるべきトドたちをざっと書き出してみる.

◆オーガナイザー修業は続く(2):「どのようにして口頭発表の時間を守[らせ]るか?」 —— 前回の続き.「講演者は持ち時間以上にしゃべりたがる生き物」というぼくの指摘に言及された機器会械さんは,「口頭発表のシンクロ率」(8月28日付)の中で,学会大会の裏方(実行委員)として,個々の口頭発表の punctuality をいかに実現するかに腐心していると言う.確かに,複数のパラレルセッションが併走している場合,あるセッション会場での発表時間のズレ(=遅れ)は,他セッション会場との“シンクロ率”を低下させ,結果として複数のセッション会場の行き来をする参加者の迷惑となる.

とすると,個々の演者に「口頭発表の時間を守らせる」ことは,単にそのセッションを仕切るオーガナイザーの“ローカル”な都合だけでなく,大会全体への波及効果(公共の利益)という点で“グローバル”な重要性をもつことになる.では,どうやれば「時間を守らせる」ことができるか.いったん,トークが始まってしまえば演者の独壇場になってしまうから,制限時間がきたからといってそれを中断させられるほどの“独裁力”あるいは“勇気”のあるオーガナイザーはほとんどいないだろう.とすると,大会運営側で「時間を守らない演者には赤っ恥をかかせる」システムを事前に用意しておくというのがもっとも有効かもしれない.

機器会械さんによると,とある国際会議では制限時間が来ると館内放送で大音量(トークが聞こえなくなるほど)の音楽が流されたという(すげぇ強制的シンクロ措置だ).私が読んだ David Hull のある本では,時間が来ると演壇マイクを強制的にオフにした会議があったそうな.要するに,会場のタイムキーパーが鳴らす「予鈴」程度では演者に対する“抑止力”がもはやなくなっているという証しだろう(慣れてしまって「チン!」と鳴ってもさらっと聞き流している演者は少なくない).だから,もっと激しく赤っ恥をかかせるシステムが必要かもしれない.たとえば,制限タイムになったらプロレスの試合で使うようなゴングを「カンカン!」鳴らすみたいな,オーディエンスの苦笑を誘う(←これが重要)手練手管は探せばいろいろあるにちがいない.

もちろん,そういう強制措置にいたらないように,節度のある個々の演者が自己研鑽を積めばそもそも問題は生じないはずだ.たとえば,生態学会会長だった菊澤喜八郎さんは,「会長からのメッセージ(12):小心者」の中で,講演を制限時間内に終わらせるためには「練習する以外にない」と言い切っている.また,竹中明夫さんも「聞き手に届く学会発表のために:口頭発表の心得」の中で,「時間厳守:基本中の基本のマナー」という見出しのもとに,「制限時間内で話す確実な方法は,発表原稿を書くことです」と明言している.

それはそーなんですよ.口頭発表を制限時間内に終わらせるべく分別のある演者はそれぞれ努力しているはずであるという〈演者性善説〉の立場に立つならば,学会会場でのタイムキーピングにかかわる問題はもともと生じるはずがない.しかし,現実には,大会のたびに多くの会場で制限時間をオーバーする延長トークが続出し,結果としてかけもちオーディエンスは会場間をあたふたと駆けまわる.

しかし,ここで考え方を変えて,演壇に上がった講演者は持ち時間以上にしゃべりたがる生き物であるという〈演者性悪説〉に立つならば,むしろオーガナイザーの側では「長くしゃべっても被害が出ないしくみ」を,そして大会実行システムの側では「長くしゃべれば恥をかくしくみ」を置く方がはるかに実効があるのではないだろうか.前回書いたように,オーガナイザーはセッションに演者を詰め込み過ぎないようにし,同時に,大会運営側はオーバータイムの演者には制裁を加える —— これらはすべて〈演者性悪説〉に立ったときにとられる措置と言えるだろう.

—— 壇上を占拠する講演者は誰もが筋金入りの利己的なワルモノである.全宇宙は彼らのまわりを周っている.

ぼくのいう〈演者性悪説〉は講演者は努力しなくてもいいという「怠慢の許容」ではない.先月,秋葉原での〈ARGカフェ〉で体験した「ライトニングトーク」は,持ち時間「5分」という厳しい縛りがあった.日ごろから「延長厳禁」という規則を自分に科してトークの練習を積むならばその成果はきっとはあらわれるにちがいない.しかし,たとえそのような努力と研鑽を影で積んできたとしても,いったん壇上に上がってしまうと,講演者は豹変して“性悪”になってしまうかもしれないことをオーガナイザーや大会運営側は想定すべきだろうということだ.

◆朝のうちに急速に天気は回復し,久しぶりに青空が戻ってきた.それとともに不快指数が上昇する.正午を過ぎて天候不安定になり,晴れたりスコールだったり曇ったりする.極度に蒸し暑い.単純作業の午後が過ぎていく.

◆夜のリクルートは続く —— 農林交流センターワークショップ〈分子系統樹推定法:理論と応用〉のうち,未確定だった一科目の講師予定者がけっきょくダメになり(これで二敗目),新たなリクルート作業に入る.今度はうまくいきますよーに,と吉田神社に遠隔で願をかけてみる.

◆夜遅く,また雨がしとしと降り出した.秋の長雨は風情があっても,晩夏の連日スコールは願い下げだ.

◆本日の総歩数=3136歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜○.前回比=+0.5kg/−0.1%.


29 augustus 2008(金) ※ 兇悪な雷雲は遠くに去ったかな

◆午前4時半起床.雨.エンマコオロギの鳴く夜明け前に残響する雷鳴と雲上で閃く稲妻.気温は23.2度.やや蒸し暑い.日がのぼるとともに,しだいに雲が切れてきた.断続的なシャワーののち,やっと兇相の黒雲は去り,午前中に青空が雲間にのぞくようになった.それとともに気温も上昇.午前11時には27.1度に.不快指数やや高し..

◆午前のこまごま —— 農林交流センターワークショップ〈分子系統樹推定法:理論と応用〉のヘッドハンティング&元締め業務に復帰する.あ,ダメですか.ということで,まず一敗(……).となると,直前の講義との調整で別の準最適解を考えるか.さらなる,リクルートと調整作業をば.もう一本の“白羽の矢”を三島に向けて放つ.ちゃんと届きますよーに.

◆昼休みのうちにはすっかり天気は回復した.いかにも水蒸気の多そうな空の表情.残暑のセミの合唱.

◆午後のこまごま —— 何とかカタチが整った〈ISHPSSB Off-year Workshop Kobe〉の【種】問題セッションの進捗状況について,大会実行委員会メーリングリストに報告する.演者と演題は確定したので,来月のアタマには全員分の要旨を耳を揃えて提出したいものだ.※とはいえ,ワタクシ自身がまだ何も書いていないんですけど…….

◆新書2冊 —— 斎藤潤『トカラ列島:絶海の島々の豊かな暮らし』(2008年8月15日刊行,光文社[光文社新書365],カラー口絵8pp.+ 270 pp.,本体価格860円,ISBN:978-4-334-03468-9 → 目次版元ページ).おお,島旅ですかっ.たとえ皆既日食があろうが,けっして自分では足を踏み入れる機会がない孤島だと思う./蔵本由紀『非線形科学』(2007年9月19日刊行,集英社[集英社新書0408G],254 pp.,本体価格700円,ISBN:978-4-08-720408-7 → 目次版元ページ).“リゾーム”がお嫌いという点では意見が重なるのだが,“ツリー”もダメとなりますと,あとは“構造”という名の essence しか残りませんなあ……(曲解するなよ>ぼく).カマジン本の翻訳の一助として買いました.ハイ.

◆よく晴れて西日がまぶしい夕方のとどめのこまごま —— 再び交流センターワークショップに復帰して,と.三島からは「OK」の返事が返ってきたので,これでやっとカリキュラム全体がほぼ確定するにいたった.あとふたりの候補者からまだ返事がないけど,来週はじめまでもう少し待ちましょう.交流センター事務局に進捗状況と確定分の講師連絡先を伝える.折り返し返事があり,すでに十数人の応募者が集まっているとのこと.定員「30名」だがこの分だときっと“満員御礼”の札が下がるにちがいない.その後,もう一人の講師候補から「OK」の返事が届いたので,『交流センターニュース(第418号)』のページ更新を担当者に依頼した.

今回の交流センターセミナーの現時点での講師とカリキュラムは下記の通り ——

第131回農林交流センターワークショップ
〈分子系統樹推定法:理論と応用〉
 場所:農林水産研究情報総合センター・プレゼンテーション室
  →※更新情報は『交流センターニュース(第418号)』を参照のこと.
【カリキュラム】
○2008年10月6日(月)
  9:30-11:00[講義]「生物系統学概論」 三中信宏(農業環境技術研究所)
 11:00-12:00[講義]「生物統計学概論」 三中信宏(農業環境技術研究所)
 13:00-15:00[講義]「分子進化学入門」 岸野洋久(東京大学)
 15:00-17:00[講義・実習]「ゲノム情報の探索と配列のアラインメント」
                 伊藤剛(農業生物資源研究所)
○2008年10月7日(火)
  9:00-10:30[講義]「系統推定論」 三中信宏(農業環境技術研究所)
 10:30-12:00[講義・実習]「系統ネットワークの理論と応用」
                 斎藤成也(国立遺伝学研究所)
 13:00-15:00[講義・実習]「分子進化モデル選択論」 田辺晶史(東北大学)
 15:00-17:00[実習]「系統推定ソフトウェア演習」
               田辺晶史(東北大学)・三中信宏(農業環境技術研究所)
○2008年10月8日(水)
  9:00-10:00[講義・実習]「系統樹グラフィクスとチャーティング」
                 三中信宏(農業環境技術研究所)
 10:00-11:00[講義]「タンパク質構造からの系統解析とゲノム情報学」
                 深海薫(理化学研究所バイオリソースセンター)
 11:00-12:00[講義]「分子系統樹に基づく共進化の分析」
                 [※交渉中※]
 13:00-15:30[講義・実習]「MEGA4を用いた分子系統解析」
                 田村浩一郎(首都大学東京)
 15:30-17:00[討論]「分子系統解析のトラブル・シューティング」
                 三中信宏(農業環境技術研究所)他

—— あとひとつ産総研からご返事があれば,講師陣はすべて確定ということになります.

◆本日の総歩数=7601歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.6kg/+0.3%.


28 augustus 2008(木) ※ 天変地異のように天候が七変化

◆午前4時起床.小雨ときどきざーっと本降り,小止みになってはまたぽつぽつと.気温22.2度.湿度が高いので涼しくは感じられない.夜明けとともに,空がいったんは明るくなったが,すぐまた雲が厚くなる.

◆つくば限定ローカル備忘メモ —— 第2回〈つくいち〉は9月7日(日),中央公園にて.9:00〜14:00./予想通り,最新刊『つくばスタイル No. 7』(2008年9月10日刊行,エイムック1585,ISBN:978-4-7779-1100-4 → 版元ページ)が書店店頭に平積みされていた.特集は〈続・里山ルネッサンス〉.でも,何だか知っている店ばっかりなんですけど…….

◆七変化する空模様 —— 目まぐるしい天候変化だ.朝のうちに雨が降り,雲間から日が射したと思ったら,一瞬ののちには雷鳴とともに本降りになった.午前11時半にいったんあがって晴れてきた.気温27.1度.蒸し暑い.

◆午前のこまごま —— 農林交流センターワークショップ〈分子系統樹推定法:理論と応用〉の講師候補者宛の依頼状づくり.講習カリキュラムを再度見直して,講義の配置と想定される講師とを結びつけてみる.講義だけでなくコンピューター実習も組合せるので,細切れのカリキュラムにはしない.とりあえず講師依頼のメールを書いて,どんどん発射する.日程が空いているかどうかのご都合伺いということ.何名かの方々には進化学会のときに話したのだが,飛び込み依頼も数件.うまく引き受けてもらえればありがたい.よろしくお願いいたします.

◆雷鳴とスコールの襲来 —— 正午を過ぎて空に兇相の黒雲が広がってきた.絶え間なく稲妻が光り雷鳴が轟く.BGMのマーラー〈復活〉が第1楽章だというのに,早くも「地獄の蓋」が開いてしまい,ものすごい土砂降りになってしまった(せめて第5楽章まで待てよ).締切った室内にいても雨降る音が響いてくる.

◆午後のこまごま —— 群馬県農業技術センターからの依頼出張の件.県庁の担当者とメールのやりとりをして段取りを詰める.まあ,これで大丈夫でしょう.あとは受講生を集めていただくだけですね./交流センターワークショップの講師予定者から「OK」の返事が次々に届く.それも,午後に配置した講義&実習の大きなコマを担当する講師が確定したのはよかった.リクルート作戦はとりあえずいまのところは“全戦全勝”ということで.

◆稲妻が走る夕方 —— 天候が兇悪なので,早めに撤収しようと考え,午後5時前に研究所を出た.しかし,そういう浅知恵を見透かしたように,いきなりどーんとスコールが降り始め,ワイパーがぜんぜん役に立たないような土砂降りの中を走らされることになった.あとでニュースを見たら,この時間帯のつくばでは「時間雨量100ミリ」という信じられない雨量を計測したそうだ.雷鳴と稲妻の中を帰宅したら,もう雨は上がっていた.その後もざーっと降ってはやむという“トロピカル”な天気に翻弄される.

◆夜のこまごま —— 交流センターワークショップの講師確定者氏(複数)とのやりとり.一両日中にはすべて確定することになるだろう.

◆本日の総歩数=10624歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.3kg/−0.5%.


27 augustus 2008(水) ※ 朝焼けの東の空に秋のすじ雲が

◆午前4時半起床.しだいに遅くなってきた夜明けの東空には朝焼けが.とても涼しく19.1度.南風のち北東風.空気が乾いている.全天にすじ雲が流れ,秋の風情.空はうそをつかない.

◆心待ちな来月の近刊メーリアン伝 —— キム・トッド著 [屋代通子訳]『マリア・シビラ・メーリアン』(2008年9月18日刊行予定,みすず書房,ISBN:978-4-622-07411-3 → 近刊案内).たまたまみすず書房の「近刊リスト」で発見した.原書は:Kim Todd『Chrysalis: Maria Sibylla Merian and the Secrets of Metamorphosis』(2007年刊行,Harcourt,ISBN:978-0151011087 [hbk] / ISBN:978-0156032995 [pbk] → 著者サイト).蟲愛ずるマリアさんをめぐっては意外なほどたくさんの本や伝記が各国語である.日本にも固定ファン層がじわじわと育ちつつあるのかもしれない.

◆午前11時半,晩夏の日射しが戻ってきた.晴れて25.5度.夏日になったのは久しぶりかも.湿度は低いがやや暑い.

◆オーガナイザー修業は続く(1):「なぜ“総合討論”の時間がなくなるのか?」 —— 学会大会に参加する機会は以前から多かったのだが(会員・非会員に関係なく行きまくりなので),年齢が不可逆的に上昇するとともに,一般講演で話をするよりも,シンポジウムやワークショップに呼ばれて話をすることがむしろ多くなってきた.しかし,それ以上に顕著に増えてきたのは,そのような集会を企画する側,つまり「オーガナイザー」としての役回りだ.何時間かのセッションを担当する「オーガナイザー」には,やはりそれ相応の“手練手管”が求められるはずだ.

オーガナイズしたりされたりする経験を積むと,このような口頭発表の場を切り盛りする際に共通に生じる問題群があることに気づく.たとえば,たいてい最後に置かれる“総合討論”の問題.プログラムには最後の10〜20分間はこの“総合討論”に当てると書かれていても,実際には時間が押せ押せになってしまって,けっきょく“総合討論”の時間がまったくなかった(あるいは不完全燃焼だった)ということはきわめてよくある.ぼくの経験でいえば,“総合討論”はほぼ有名無実になりつつあるのではという気さえしている.

ひねくれた見方をするならば,“総合討論”の時間というのはオーガナイザーにとっては“緩衝材”あるいは“のりしろ”のように自由に調整ができる便利な時間ともいえる.個々の演者の持ち時間の多少の「誤差」は,“総合討論”の時間をやりくりすればたいていの場合なんとかなるからだ.しかし,講演者は持ち時間以上にしゃべりたがる生き物なので(←ワタクシの持論),持ち時間の「誤差」は,偶然誤差ではけっしてなく,体系的な誤差となって全体の時間枠を圧迫する危険性が高い.

だから,たとえば「3時間」という時間枠がもらえたときに,もしもオーガナイザーが「質疑こみ30分/演者×5名+総合討論30分」というプランを描いたとしたならば,かなりの確率で“総合討論”は消え去るものと覚悟した方がいいだろう.日常的な学会風景として,各講演ごとに個別の質問があり,それが少しずつ(2〜3分ずつ)積み重なったとしても,5名分を累積すれば20〜30分の時間オーバーとなる.そうなれば“総合討論”の時間などきれいになくなってしまう.その結果,演者も聴衆も欲求が不満するということだ.

もしも,しっかりと“総合討論”したいという意欲が興行側・噺家・客のそれぞれにあるのなら,3時間枠だったら「質疑こみ30分/演者×4名+総合討論60分」というちょっと見には非常識な時間配分が,実は議論が完全燃焼できる最適プランではないだろうか.よくばって演者をぎゅうぎゅうに押し込んでも,結果としては消化不良になってしまうということだ.

おそらくこれは実行困難なことではけっしてなく,「いつもより演者をひとり減らす」という“口減らし”を心がけることで十分に達成できる目標だろうと思う.

一般講演のように時間管理が厳しい場合ならばともかく,特別講演や招待セッションなど自由度がやや高い企画の場合,えてして上記のような事態になる.幕の内弁当のようにいろいろ詰め込むことは禁物というオーガナイザー心得(のひとつ)をかみしめている.

—— アクティヴな研究者としての「人生の心得」はきっといくつもあるだろう.「オーガナイザー」も研究者であれば誰もが演じる機会がある役回りのひとつだ.それは他の活動とも深く関わりをもつ.酒井聡樹さんの〈これから3部作〉が記録的に売れたりするのは,研究活動の中で「書く・聴く・話す」という行為がもつ重要性を誰もが認識しているからにちがいない.先だっての駒場での進化学会大会のおり,休憩室で巖佐庸さんと話をしているとき,「未踏のおもしろい研究テーマをどのように発見し大きく展開させるか」についての彼の考えを聴いてとても印象に残った.近い将来,巖佐庸『これからPIになる研究者のために:一点突破と全面展開の極意[仮]』というような「メイキング・オヴ・イワサ」本が共立出版あたりからきっと出るのかも(ホンマか?).

◆午後のこまごま —— 所内の「RP中間検討会」の日程調整.9月下旬から10月上旬にかけて,どこかで半日.日程のやりくりがたいへんです./〈R 2.7.2〉のリリース.

◆〈上州統計旅〉のしたく —— 来月から11月まで毎月1回,群馬県農業技術センターに呼ばれて統計研修の講師をすることになった.群馬県農業技術センターは伊勢崎にあって,北関東道の伊勢崎インターを降りてすぐのところにある.いまその段取りを群馬県庁の担当者と進めているところ.まずは難しい日程調整の件だが,これは「9月30日+10月14日+11月25日」で確定した.いずれも火曜日で,13:30〜16:00という時間帯の講義となる.受講者はパソコン持参での参加で,場所は伊勢崎の群馬県農業技術センターか,もしくは前橋の群馬県庁研修室ということになる(おそらくは前者だろう).

◆午後4時半帰宅.曇りときどき晴れ.25度台の緩い暑さ.湿度がやや高くなってきたか.

◆本日の総歩数=7634歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=0.0kg/+0.5%.


26 augustus 2008(火) ※ 真夏の日射しは遠くなりにけり

◆午前4時半起床.今朝も夜明け前は北東からの涼風.湿りぎみなのは霧雨のせい.気温21.3度.熱帯夜だった日々がうそのようだ.のち,曇りときどき晴れ.

◆早朝の備忘メモ —— 本日夕方5時から,農環研教養室にて,教養あふれる夏祭り反省会,さらに教養あふれまくるお疲れさん会がある./農環研分会の定期大会は9月1日(月)の午後に開催される.

◆〈R〉による形態測定学 —— 意外に早く現物が届いた:Julien Claude『Morphometrics with R』(2008年8月刊行,Springer-Verlag[Series: Use R!], Berlin, xviii+316 pp.,ISBN:978-0-387-77789-4 [pbk] → 目次版元ページ).形態学的データの取得から始まって,伝統的な形態測定学と統計分析,そして標識点ベースの幾何学的形態測定学,さらに輪郭曲線ベースの形状解析について,〈R〉を用いた計算手順が解説されている.よく勉強しましょ.

◆午前11時半,曇り,気温24.9度.朝晩はしのぎやすくなったが,日中はまだそれなりに気温が上がる.しかし,一時期ほどの暴力的な蒸し暑さはなくなった.

◆日中のこまごま(段取りとリクルート) —— 群馬県から依頼されている統計研修「出前高座」の日程をそろそろ確定させないといけない.今年後半はたいへん忙しいので,勝手に計三日間の日程案を先方に提示させてもらうことにした.9〜11月の期間で,「毎月1回」かつ「同じ曜日」かつ「ほぼ均等間隔」という3条件を同時に満足する“解”はただひとつしかないことが判明した./懸案だった〈ISHPSSB Off-year Workshop Kobe〉のもうひとりの演者がやっと確定した.これでオーガナイズしていたセッションがやっと成立することになった.どうもありがとうございます(と葉山方向に一礼)./進化学会大会参加費の立替払い請求書を提出する./進化学会で知り合った方々に来年つくばで開催される形態測定学国際シンポジウムの First Circular を送る.

◆午後になって,晴れ間が広がってきた.いかにも暑そうだが,もう真夏日にはならないだろう.

◆雑誌『生物の科学 遺伝』のダーウィン特集号 —— 最新号2008年9月号(ISBN:978-4-86043-204-1)の特集〈ダーウィンと現代〉.佐倉統さん監修の特集で,ぼくも寄稿しています:三中信宏「ダーウィンの遺した知的遺産を現代に継承する」(pp. 22-25).版元であるNTSのサイトではまだ新刊情報が載っていないようです.あとで目次をアップしないと.

◆これまた懸案だった第131回農林交流センターワークショップ〈分子系統樹推定法:理論と応用〉(2008年10月6〜8日,農林水産研究情報総合センター・プレゼンテーション室)の時間割りを決める傍らで,講師候補者に出す依頼状を書く.すでに,進化学会大会でリクルートした何人かの方からはOKの返事をいただいているが,まだ数名の講師が必要になるだろう.交流センターでは集客力がある企画だと期待しているらしいので,できるだけお応えしたいと思います.

◆午後5時から,教養室にて夏祭りの教養あふれる反省会とお疲れさん会.土佐の〈酔鯨〉の純米吟醸を短期集中的に呑んだ.しかし,実に健康的なことに午後8時には宴席を退き,シラフの大東くんに送ってもらう.お手数をおかけしました.

◆今夜も涼しく秋の蟲.

◆本日の総歩数=7000歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.6kg/−1.0%.


25 augustus 2008(月) ※ 振替休日は朝から雨が降り続く

◆午前6時まで遅寝する.曇りのち雨,湿った北東風が吹きぬける.窓を開け放っていると,床がべたべたする.

◆今日は振替休日なので引籠る.しかし,遠隔操作でこまごまと —— 組合関連の指令処理.大東くん,代理よろしく./来月の植物病理学会・若手の会に関わる事務連絡への返事./交流センター分子系統学ワークショップの講師候補者からのメール連絡.どなたも引き受けていただけるようでほっとする.

◆学会中,盗み読みしていた新刊新書 —— 安田敏朗『金田一京助と日本語の近代』(2008年8月12日刊行,平凡社[平凡社新書432],284 pp.,ISBN:978-4-582-85432-9 → 目次版元ページ).ま,偶像破壊的な内容ですね.おもしろい.金田一家三代にわたる“家訓”が読み取れるような.何よりも,日本の国語学に関する「学統」を知ることは,個々の関係者を包括する全体シェマを鳥瞰する上で有効だ.第3章まで読了.

◆午後には本降りになってきた.先週からずっとこんな調子でぐずついている.

◆公開講演会で言及した明治時代の「ダーウィン本」は下記の通り ——

1) 査爾斯駝韻[チャールズ・ダーウィン]著(神津専三郎訳)『人祖論(全3冊)』(1881年7月刊行,山中市兵衛書肆,東京).ダーウィンの『人間の進化と性淘汰(Decent of Man)』の翻訳書として日本で初めて出版されたダーウィンの著作.本書は,国文学研究資料館の〈近代書誌・近代画像データベース〉に入っていて,全ページのカラースキャン画像を自由に閲覧することができる.

2) モールス[E. S. Morse]口述(石川千代松筆記)『動物進化論』(1887年刊行,共同書房出版,東京).明治の始め,東京大学の“お雇い外国人”として生物学・進化学を講じた Edward Sylvester Morse の進化本.本書は,東京大学附属図書館常設展示のひとつ〈モース文庫〉として公開されている.

3) チャ−レス・ダ−ヰン[チャールズ・ダーウィン]著(立花銑三郎訳)『生物始源 一名 種源論』(1896年刊行,経済雑誌社,東京).ダーウィン『種の起源』の日本初の翻訳書.本書は,国立国会図書館の〈近代デジタルライブラリー〉の1冊として,全ページのスキャン画像を自由に閲覧することができる.

◆ついでに,もうひとつ —— 三浦梅園『玄語』のオンライン版三浦梅園研究所が公開している,三浦梅園の主著『玄語』のオンライン版.スキャン画像が巻ごとにpdf化されている.江戸時代の超越論的宇宙観のひとつの発現として参考になる.

◆夜になっても雨は降り続く.あれほどかしましかったセミも冷たい骸と化して(もともと冷たいか……)そこかしこに落ちている.もう残暑なんぞどこかに消し飛んでしまったようだ.

◆さらなる近刊情報 —— 〈R〉本の翻訳ラッシュはさらに続く.Michael J. Crawley の電話帳『The R Book』(2007年6月刊行,John Wiley & Sons,ISBN:978-0-470-51024-7 [hbk] → 版元ページコンパニオンサイト)の翻訳がいま進められているとのこと.訳者から連絡をいただいた.頑張ってください.

◆さて,明日からはやっと平常営業だ.

◆本日の総歩数=2661歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+1.4kg/+0.5%.


24 augustus 2008(日) ※ 大会最終日も降ったり止んだり

◆前夜の深酒にもかかわらず,午前6時にはぱっちり目覚めてきっちり起床.ここ数日溜まっていた日録をまとめてものした.外は小雨が降り続いているようだ.

◆午前10時に南青山会館をチェックアウト.曇りときどき小雨.気温は低め.ほどなく駒場に到着.ときどきスコールが降ったり,また小止みになったり,はっきりしない空模様.雨空を見上げつつ,倉谷氏とベンチでヘッケルとか,オーウェンとか,オーケンとか,他の人とは決して交わさないだろう話題をば.「ドイツ語のフラクトゥール書体で書かれた本をいかに早く読むか」などという会話がふつうできるはずがないじゃない.

◆会場でのこまごま —— 教養学部の自然科学博物館での〈ダーウィン展〉を見に行く.東工大経由でシーラカンスの特別展示あり.卵大き過ぎ(10センチですかあ).この建物はかつては教務課が入っていたはず.駒場キャンパスは本郷キャンパス以上に変貌が激しい.あとかたもなくなっていたりするから./休憩室でのリクルート活動はなお続く.講師がもうひとり確定しそう.ありがたい./進化学会会場でしか実物に会わないペギオ氏と立ち話.

◆午後は田村浩一郎さんの〈MEGA4〉の講義に潜り込む.「夏の学校」のひとつとして“若手”に開かれた講義なので,ぼくがいてはよろしくなかったのかもしれないが,さらにさらに年上の根井正利さんもいたので許してもらおう.外は小雨が降ったり止んだり.気温は低めだが,湿度が高い分,昨日よりも蒸している.午後4時過ぎに早めに駒場をあとにする.

◆小雨が降り続く夕方.ときどき本降りになったり.つくばに帰り着いたのは午後6時半.駒場の「お祭り」が終わっても,つくばの「お祭り」はまだ続いていた.〈まつりつくば2008〉のフィナーレが近いと見えて,センター広場からペデストリアンにかけてはたいへんな混雑だ.例年通り屋台もたくさん出ている.人波をかきわけて帰宅.大きなねぶたが学園腺を練り歩く.ことしの〈まつりつくば〉は,小雨がときどきぱらつくというあいにくの空模様だったが,踊る人と見る人にとってはそんなことはたいしたことではないのだろう.

◆夜,〈扶桑鶴〉の純米吟醸をつい飲んでしまってですね……(ああ美味).祭りのあとだし.

◆本日の総歩数=10484歩[うち「しっかり歩数」=2784歩/22分].全コース×|×.朝−|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


23 augustus 2008(土) ※ 雨降る駒場の学会その日その日

◆午前4時起床.昨日と同じく北東からの風が涼しい.

◆直前のどたばた —— 講演当日の未明にまでスライドづくりがもつれこむとは段取りが悪かった.それでも,公開トークの後半のスライドを30枚ほど用意できた.これでやっとおしまいだ.午前6時にプリントアウトして,準備完了.全部で70枚ほどの分量になった.ぼくの場合,スライドづくりはトークづくりと並行して進めているので,スライドが完成した時点でトークの準備(実際の弁舌の展開)も終ったことになる.だから,あらためてスライドを流しながら,講演の“発声練習”をする必要はまったくない.実際に講演の“練習”をしたことはまったくない.

◆午前7:00発のTX区間快速に乗る.曇り.涼しい.午前8時半に駒場着.13号館のC会場に向かう.「WS7」のワークショップ〈哲学はなぜ進化学の問題になるのか(パート3):哲学的観点からみた進化生物学の諸問題〉はここで9:00〜11:30まで.ぼくの講演「【種】に楯突けば角が立つ:種問題の光と闇」は,まあいつも通りのお話しということで.ワークショップの最中に予想外の“大魔神”が相次いで会場に出現し,“民衆の敵”を折伏してくれた(ありがとうございます).

午前11時半から,アタッカで,進化学事典編集委員会が3号館にて開かれた.項目執筆者の選定と調整を完了.また辞書づくりですかあっ.12時半に退出.空き時間もこまめに交流センターワークショップ講師のリクルートをする

◆午後1時から,13号館D会場にて公開講演会〈進化で日本を考える〉が始まった.最初はぼくのトーク「日本の進化学史:極東の岸辺にダーウィンの波紋は広がった」.ダーウィン理論がどのようにして明治初期の日本に上陸したかについて,「人」と「本」の両面からふりかえる.東大理学部の「お雇い外国人」だったモースとホイットマンの経歴をたどって見えてきたもの.そして,日本を含む東アジアの「本草学」文化における“個物崇拝主義”と“超越論的原理”との隔たりの大きさを基層として,そこに上陸した grand theory としてのダーウィニズムがどのように受容されてきたかを論じた.30分の持ち時間だったが,1〜2分を残してさくっとおしまいです.他の公開講演のトークも,〈進化で日本を考える〉というテーマからはやや外れていたかもしれないが,それぞれおもしろかった.

◆午後4時から引き続き同じ会場で,総会と授賞式さらに受賞講演.今年の学会賞は前会長の郷通子さん.タンパク質の立体構造解析に関する研究史など.午後6時過ぎに終了.外は小雨が降り出していた.

◆雨のイチョウ並木を歩いてコミュニティ・プラザに移動.懇親会の始まり.午後8時まで.ISHPSSB Kobe のもう一人の演者が決まりそうでよかったよかった.雨足が強くなっている.

◆日本酒に関してさらなる“完全燃焼”を期すために,場所を変えて〈神田新八〉へ.〈神亀〉の「大古酒」はあまりに美味過ぎた.午後11時過ぎ,表参道の地上に出る.雨足強し.〈南青山会館〉にチェックインして,日が変わって即沈没.

◆備忘メモ —— 東大出版会から動物分類学と植物分類学の本(教科書)が出るとのこと./NHK出版の本の企画.今日のトークもその一部になるでしょう./岩波書店からのプレッシャー./生物学哲学の翻訳書2冊はどちらも今年中には出るそうな.

◆本日の総歩数=9902歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝−|昼○|夜×.前回比=−0.9kg/+0.8%.


22 augustus 2008(金) ※ 大会開始日なおスライドづくり

◆午前3時過ぎに起床.北東からの風が涼しいというよりも肌寒い.秋の虫の合唱.室内の気温は23度台.朝焼けの青空.

◆夜明け前のスライドづくり —— 今日から進化学会の大会が始まるというのに,まだ講演スライドにかかりきりとは.何時間か頑張ってはみたものの,まだ作業終了にならない.困ったな…….大会が始まってしまうと自由時間がなくなるというのに.

◆午前9:41発のTX快速に乗る.青空が広がっているが,空気が乾いて,しかも北東風が吹いているので快適だ.前回,駒場でほぼ同じ時期に進化学会大会をやったときは,残暑厳しき折りで,たいへんつらかった.それに比べれば今回は極楽だ.午前10時半に駒場に到着.残暑の気配はなく,木陰が涼しい.登録をすませる.海游舎の本間さんに出会ったので,カマジン本の第10章の再校ゲラを返す.宣伝ビラが用意されていたので,何枚かもらって配ることにする.

◆学会の役職をいったん引き受けると,大会期間中は何やかやといろいろな用務を仰せつかる機会が増える.実際,落ち着いて発表を見たり聴いたりする時間がほとんどないこともある.今日も,正午から評議員会がある.意外に長引いてしまって,終ったのは午後2時半だった.その後,元・駒場寮があった場所にできたコミュニティ・プラザでのポスター発表を見に行く.しかし,漫然と流すわけにはいかない用務がここでもある.高校生ポスター発表の審査委員を引き受けているので,10題あまりのポスターのひとつひとつを読んでは,高校生の説明を受けて質問しなければならない.

午後6時,別室にて高校生ポスターの審査委員会を開く.最優秀賞を筆頭にランク付けをした上で決定.またポスター会場に戻ってから,高校生ポスターの表彰式があった.午後8時まで他のポスターを見たあと,今日はつくばに直帰する.

◆午後9時半につくば着.北寄りの風がとても涼しかった.室内の気温は20度.もう秋ですな.

◆本日の総歩数=11471歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.5kg/−0.3%.


21 augustus 2008(木) ※ 大会前日の追い込まれ仕事数々

◆午前4時40分起床.曇りときどき小雨のち晴れ.気温22.0度で涼しい.ヒグラシとツクツクボウシの混声合唱.晩夏の風情.しかし,日がのぼるとともにまた暑くなる.しつこい残暑.

◆緊急の大トド撃ち作戦 —— 明日からの進化学会大会期間中に何としても仕留めなければならない2頭:1) 農林交流センターの分子系統学セミナーの講師陣.駒場ではリクルートさせていただきます;2) ISHPSSB Kobe の演者欠員補充.これまた早く早くぅ.

◆午前11時の気温28.9度.晴れ.昨日よりも暑くなった.講演スライドづくりにいそしむお昼前のひととき.まずは:23日(土)朝イチのワークショップ〈哲学はなぜ進化学の問題になるのか(パート3):哲学的観点からみた進化生物学の諸問題〉の講演「【種】に楯突けば角が立つ:種問題の光と闇」のスライド作成を昼過ぎに完了した.これはまあ順当な仕上がりでしょ.ただし,今回のワークショップは演者の数が多いので,持ち時間はきっと短いにちがいない(何分だったっけ?).さて,やっかいなのは,まだかたちをなしていない公開講演会の〈進化で日本を考える〉のトーク「日本の進化学史:極東の岸辺にダーウィンの波紋は広がった」の方だ.午後いっぱい,噺の展開を考えつつ,素材を集め,スライドに組み立てていく.午後4時過ぎに全体の構成がかたまった.明治初期に日本で出版されたダーウィン関連和本の情報収集,そして,Harvard University の比較動物学博物館の創立に関わる Louis Agassiz の足跡ならびに彼の弟子たちのたどった道.これらはすべて公開トークの支度のため.しかし,スライド本体はまだまだ仕上がらない.

◆午後のこまごま —— 交流センターから分子系統学ワークショップの受講生募集を広報するニュースが届いた.リクルート用にさっそく何枚か縮小コピーした.明日からの大会に持参することにしよう.

◆いきなりの雷雨 —— 午後5時過ぎ,ふと気がつくと空が黒くなってきた.兇相だ.ささっと撤収して車に乗り込んだところで,いきなりざばっと降り出した.今日は研究所からの撤収時刻を読み間違ってしまったようだ.しかし,雷雨は長続きせず1時間ほどであがり,夕焼けが広がる.

◆夜もスライドづくり —— 夜もなお公開トークのスライドを作り続けたのだが,意外におもしろくなってしまって,進捗よろしからず.日が変わる前にいったん寝て,明日の未明に仕上げることにしよう.

◆30年前のパート譜が届く —— 今年の冬に松戸シティフィルハーモニー管弦楽団のマーラー〈復活〉演奏会に出演することになっている.打楽器のパート譜が自宅に届いていた.これは今から30年前に東大オケが〈復活〉を定期演奏会でやったときにぼく自身が使っていたもののコピーだ(要するに松戸オケには東大オケ出身者がたくさんいるということ).30年ぶりに自分が使ったパート譜と“再会”するのはフシギな気分だ.マーラーは演奏に関わる楽想用語としてイタリア語よりもむしろドイツ語を多用するくせがある.東大で復活をやったときは,総譜に出てくるドイツ語の表記をぼくが全部リストアップして対訳をつけた.そのリストのコピーも今回送られてきた.いま見直してみると,実に拙い訳で,目立った誤訳は当時の指揮者だった早川正昭さんに逐一訂正されたか,なお“朱”を入れるべき箇所が多々ある.最初からイタリア語訳した方がよかったかもしれない.Pauken を除く他の Schlagzeug だけで20ページもあるパート譜だ.こんな長い交響曲をまたやることになるとは.

◆本日の総歩数=8725歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.7kg/−0.3%.


20 augustus 2008(水) ※ やっとこさ支度をする気になる

◆午前5時過ぎ起床.曇って霧がかかる.気温23.3度.涼しめだが湿度は高い.研究所に潜入したら,昨夜の雷雨で停電があったらしく,いろいろなタイマーがリセットされていた.そうこうするうちに朝日が射し込んできて,気温は急上昇.

◆午前のこまごま —— 統計コンサルティング.混合分布を仮定して説明すべきか,それとも単一分布で通すかという質問./メーリングリストの雑用いくつかすます.

◆こまごまのあいまに高座の支度を進める.生物学哲学のワークショップの方は【種】の噺なので実はもうスライドができていたりする(ここのところよく話しているのだ).公開講演会の方は,やっぱりアレを柱にしたほうが通りがいいだろうなと考えて,ストーリーを組立ててみる.

◆午前11時の気温は28.5度.晴れ.午後になって雲が広がってきた.3時のお茶の時間に「月影」を味わっていたら,いきなり突き上げるようにぐらっと揺れた.震度は3か4くらいだろう.茨城県南部ではこの程度の揺れは日常的だ.

◆さすがは「辞書の三省堂」とうならせる新刊 —— 届いた最新刊は,世界の言語の「辞書リスト」.2冊合わせて900ページを越える.すばらしい!

まずは,石井米雄(編)『世界のことば・辞書の辞典(ヨーロッパ編)』(2008年8月25日刊行,三省堂,xii+488 pp.,本体価格3,200円,ISBN:978-4-385-36391-2 → 目次版元ページ).この「ヨーロッパ編」では,35のヨーロッパ圏の言語について,その言語圏における辞書の成り立ちから始まり,著名な辞書,現代の標準辞書,そして特殊辞書まで含めて詳しく述べられている.「辞書の本」としては要注目.本文500ページもの厚さがある本書は,単に informative であるだけでなく,とても楽しい.ヨーロッパ圏の言語といえども,英独仏などメジャーな言語以外の情報はなかなか入ってこない.10年ほど前,オランダに行ったおり,市内の書店で手に入る蘭語辞書をすべて買い集めたことがあった(大辞典のみ10冊ばかり).本書の「オランダ語」の項を見ると,手元にあるそれらの辞書がどのようにアップデートされているかがよくわかる.ヘルシンキでもフィンランド語の辞書を手当たりしだいに買い求めたが,これまた「フィンランド語」の項をみて自分のセレクションが“外れ”ではなかったことに安心した.姉妹編の「アジア編」と合わせて,辞書フリークにとっては手放せない本になりそう.

その姉妹編は,石井米雄(編)『世界のことば・辞書の辞典(アジア編)』(2008年8月25日刊行,三省堂,xii+416 pp.,本体価格3,200円,ISBN:978-4-385-36392-9 → 目次版元ページ).「ヨーロッパ編」の姉妹編である「アジア編」では,30の言語を取り上げている.まず書体そのものが西洋のアルファベットとはぜんぜんちがう.当たり前の事実だが,ずらっと並ぶと壮観だ.また,ヨーロッパ編に載っている言語に比べれば,未知度がはるかに高いので,未踏地の探検のようでもある.数年前にJR東京駅地下の古書店で,店頭の平台に乗っていたネパール語の大きな辞典をたった「300円」で入手したことがある.もちろん,ぼくにとってネパール語は未知の言語で,叩き売りのように手に入れたその辞書がいったいいかなるものかぜんぜん知らなかった.しかし,本書の「ネパール語」の項を見ると,その辞書が実は「ネパール語史上にかがやく古典的辞書の筆頭」(p. 248)であることを初めて知った.ああそうだったのか.買ってからずっとホコリまみれにしてしまって申し訳ありませんでした,ターナーさん.

◆午後5時に撤収.曇り空.湿度はやや高いがしのぎやすい夕刻.しかし,しばらくしてまた遠雷の響きが.午後8時頃に雷雨が降ったが,昨日のように土砂降りになることはなく,すぐにあがった.

◆夜,高座のしたくの続き.スライド用にいくつかの画像を用意する必要がある.それは明日の仕事か.

◆本日の総歩数=7287歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/+0.7%.


19 augustus 2008(火) ※ 高座の支度中に雷が落ちてくる

◆午前4時起床.曇り.涼しい,気温23.3度.セミの鳴き声と秋の虫の声が混じる.

◆午前のこまごま —— 進化学会大会の出張届の再提出.もうすぐ./すっかり失念していた略歴届と振込依頼を用意して常盤台に郵送する.4ヵ月も遅れてしまった.

◆曇りがち.午前11時半の気温29.1度.やや蒸し暑いか.午後になっても雲が厚い.

◆午後のこまごま —— 進化学会大会での高座の支度をはじめようとする.しかし,まだ動き出してはいない.直前になってなんというナマケモノ./その他,進化学会関連のメールのやり取りなど.間近に迫っているのでいろいろと.

◆第131回農林交流センターワークショップ〈分子系統樹推定法:理論と応用〉 —— 農林交流センターから先日来やり取りしていた分子系統学ワークショップの広報ニュースを公開したとの連絡:農林水産研究情報総合案内「農林交流センターニュース 418号(2008.8.18発行)」.ぼくがオーガナイズするのは,第131回農林交流センターワークショップ〈分子系統樹推定法:理論と応用〉(2008年10月6日〜8日実施)です.応募要綱は上記サイトからダウンロードできますので,関心のある方はぜひどーぞ.

—— これでもう逃げ道はなくなったので,講師のリクルートをこれから必死でしないといけません.マジです.

◆ここのところ少しずつ盗み読みしているPNASの最新論文 —— Charles Kemp and Joshua B. Tenenbaum (2008) The discovery of structural form. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 105: 10687-10692 (5 August 2008, doi:10.1073/pnas.0802631105 → Abstract | Open Access Article pdf | Supporting Information pdf).半順序関係を含むツリーやネットワーク(著者の言う「structural form」)をデータからいかにして抽出するか.ヒトが対象物を見るとき暗に実行している認知分類の“人工知能”化というもくろみ.分類体系化に関わる認知心理に関する最新の理論的研究のひとつとして注目しましょ.

◆夕方近くになって,さてこれから講演準備をいよいよやらねばと思った矢先に,実にグッドバッドタイミングなことに,西方からいかにも兇悪な暗黒雷雲が接近してきた.これ幸いとやむをえず高座支度を中断し,荷物をまとめて研究所から撤収.しかし,雷雲はますますその兇相をあらわにし,低周波の雷鳴も強まってきた.これは来るぞと身構えて,自宅に駆け込んだ午後5時過ぎにどわーっと雷雨がいきなり降り出した.日頃の行ないが良いと濡れネズミにならずにすむということだ.落雷も幾度かあったが,ものの半時間ほどで山場を越えたらしく,午後6時前には何ごともなかったかのように,西空に夕焼けがのぞいたりしていた.あとでニュースを見たら,この時間帯の茨城は時間雨量が30ミリを越す豪雨で,大雨洪水警報が出されたそうだ.

◆夜の高座支度 —— いろいろとじゃまが入ってしまったが,夜になってやっと静けさと安らぎが,と思いきや,「をとし梅」に溺れてしまったさあたいへん…….

◆進化学会大会まであと二日(冷汗).

◆本日の総歩数=8567歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.5kg/−0.9%.


18 augustus 2008(月) ※ 社会復帰に手間取る平常営業日

◆午前4時半起床.晴れ.高い空には秋の雲.とても涼しく19.0度.夏は去りぬ(朝だけは).昨夜は北東からの涼風に吹かれて安眠できた.物の怪も出なかった.

◆午前中は晴れたり曇ったり.気温は上がらず.午前11時になっても24.9度.夏日にすら達しない.

◆社会復帰のプレッシャー —— さくっと社会復帰しないと,今週末の進化学会大会(駒場)の準備に支障があるのだが,なかなか調子が戻らず.お勤めする高座はふたつあって,一つはワークショップ(WS7)の〈哲学はなぜ進化学の問題になるのか(パート3):哲学的観点からみた進化生物学の諸問題〉で,「【種】に楯突けば角が立つ:種問題の光と闇」という噺をする.これはまあ大丈夫でしょ(定番ネタということで).もう一つがちょいたいへんで,公開講演会〈進化で日本を考える〉のひとつとして「日本の進化学史:極東の岸辺にダーウィンの波紋は広がった」という噺をしなければならない.これにはそれなりの準備が必要になる./この公開講演会に出るということで,学会からの依頼出張の申し出があったのだが,研究所の事務からは,学会からの依頼出張は手続きがめんどうですとの連絡が届いていた.結局は,依頼出張ではなく,通常の出張ということで再度の出張届提出が必要となった.めんどうです.

◆日中のこまごま —— メールボックスには未処理の用件が薄く降り積もっている.そのうち片づけたいが,いまはまだ放置したまま.小トドたちのたわむれ.

◆午後になってやっと夏日になったようだ.日射しが晩夏を連れて顔見せに.

◆社会復帰のウォーミングアップにカマジン本のゲラ読みを少しだけ進めようかと思ったのだが,またまた真っ赤な“発光ホタル”の大群が出現してしまう…….章番号でいえば「第10章」だから,全体の半分まで進んだはずだが,後半の各論の章がひとつひとつとても長いので,これからの登攀で息切れしないように気をつけよう.ただし,あとになればなるほど初校ゲラでの「全改訳」の度合が高いので(ホトケから大魔神へと変身したから),前半章に比べればきっとラクになっている[はず].

◆午後4時半に帰宅.曇り.気温は26.2度あるが,ちっとも暑くない.お盆の京都で数日鍛えられただけで,“熱耐性”が身についたようだ.暗くなり始めた夕方に,京都みやげの〈をとし梅〉をオンザロックで.ついでに,同伴の梅もかりかりと.

◆完全なる社会復帰にはほど遠かった.

◆本日の総歩数=6547歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.9%.


17 augustus 2008(日) ※ 逆タイムスリップしてつくばへ

◆午前5時半起床.なんと9時間近くも寝たよーな.しかし,夜中に何度か“もののけ”による中断があったぞ(何がやってきたんだろーか).曇り.湿度は高いが気温は低め.秋の虫の音(おお).しかし,油断はできない.日がのぼるとともにまたもや不快な蒸し暑さが再来する.

◆実家には積年の品々がそのまま積み上がっているので,思わぬ“年代物”が転がり出てきたりする.そのたびに今の時間が停止して,何十年もの過去へ瞬時にタイムスリップする.昔,買った本が書棚の奥から顔をのぞかせたので,この機会に何冊かをつくばに連れ帰ることにした.

◆午前10時にタクシーを呼んで,実家のある宇治の御蔵山を出発.今回は森林総研関西支所の横を通る山越えコースにて京都駅へ.下界は今日も蒸し暑い.駅地下の〈イノダコーヒ〉にてビーフカツサンドをつまみつつ,カマジン本のゲラ読みの再開.なんやしらん真っ赤っかでっせ(初校時の“仏心”がアダになったか).ホタルの「シンクロ発光」みたいに,そこら中で“朱”がちかちか点滅してるんですけど…….

◆おみやげに〈仙太郎〉の「竹の水」とか,冷たい甘いもんばっかし買うたりして.

◆12:53発の「のぞみ18号」に乗り込む.今日はお盆のUターンラッシュのピークとのことで,指定席の通路にまで客が立っている.京都は曇りときどき晴れの蒸し暑い空模様だったが,静岡あたりからは曇りときどき雨に変わった.15:13東京着.小雨から本降りに.いったいこの気温の低さは何なんだ.TXに乗り換えて16:15につくばに到着,雨がぱらぱら.北の風が吹き込んで,室内の気温は「23度」! まるで別世界だ.

◆車中読書 —— 宇治の実家から持ち帰ってきた本の1冊をのぞみの中で読了:水上勉『土を喰う日々:わが精進十二ヶ月』(1978年12月17日刊行,文化出版局,269 pp.,ISBNなし).

著者の出自である京都の禅寺での精進料理の想い出とともに,厨房に立つ著者の味わい深いモノクロ写真がたくさん載っている.料理は畑と相談しながらムリなくムダなく,そして感謝とともにつくるべし.この本は,大学の3年か4年のときに,確かに自分で買った記憶がある.当時は,千駄木で自炊していたこともあって,この本を手にしたのかもしれない(著者の本は高校時代からよく読んでいたこともあったし).しかし,最後まで通読した覚えがまるでない.なぜ読了しなかったのか.まだ,そういう読むべき年代に達していなかったからか,と思って,あとがきを読んだら,この本は著者が「59歳」のときに軽井沢の仕事場で書かれた連載がもとになっていたという.ガーン.昔はずいぶん世代がちがうアナザーワールドだったはずなのに,今ではそんなに離れてへんやんか…….ちょっとショック.それはともかく,本書は土の香りがするいい本です.クワイの丸焼きが喰いたいな.

—— 本書はいまだと新潮文庫で読めるみたい:水上勉『土を喰う日々:わが精進十二ヶ月』(1982年8月刊行,文化出版局,235 pp.,ISBN:4101141150).ただし,文庫化されてからもすでに四半世紀が経っている.

◆夜,雨はあがって,涼しい北東風が吹き抜ける.安眠快眠また睡眠.明日からは平常営業だ.

◆本日の総歩数=6287歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=未計測/未計測.


16 augustus 2008(土) ※ 送り火に送られる前に御蔵山へ

◆午前3時起床.二日分の日録をものし,明け方にランドリーにて洗濯をすませる.早朝にホテルのフロントにて宅急便でつくばに重めの荷物を発送してしまう.毎回そうだが,仕事に使ったこまごまのものを送り出して身軽になると,帰路の旅立ちの心構えができる.

◆メールチェックをしたら,音羽から『』連載原稿のテキストファイルの14回分がひとそろい届いていた.新書化に向けての動き.しかし,その前にまだ見ぬ「序文」が必要.帰ってからの仕事(その一)だ.

◆朝の大文字 —— 朝食をすませ,午前9時前にちょい外出.タクシーを飛ばして白川通り今出川の〈ワールド・コーヒー〉を目指す.しかし,ほんとうの目的地はその近傍にある〈にしむら酒店〉だ.ngtさんお薦めの「をとし梅」の四合瓶を2本買ったら,律義にもそれぞれ1本ずつに,この梅酒の仕込みに漬けた梅一袋をくれた.冷えた梅酒と冷たい梅でずっしり重くなった.梅からほのかに漂う純米酒の香り.銀閣寺道から見渡すと,まだ火が点いていない「大文字」が山の上に見える.夜8時の点灯に向けて作業している人多数.めっちゃ蒸し暑い.やめてやめて.

◆またまたタクシーにてホテルに直帰.荷物をまとめて午前10時半にチェックアウトする.晴れてきた.市役所前から地下鉄東西線に乗り,終点の六地蔵で下車する.腹立つほど暑おすなあ.

レストランでカマジン本の再校ゲラ(第10章のホタル同調発光)を読む.1時間あまり格闘したのだが,「朱」が多く入った.前回のチェックでは“仏心”を出してしまった部分か,あるいは“放置プレイ”に徹してしまった章かもしれない.今回は“大魔神”に変身して,いたるところ「×」マークのいちから訳し直しに徹する.ダメなものはダメです.さらに後半の章になれば,最初から“大魔神”だったので,再校で「朱」の入る頻度はきっと低くなるにちがいない(と期待しよう).

◆御蔵山の実家にたどりつく.夏場に来るところではないのだが,顔見せしないことには親不孝なので.午後4時頃になまじ通り雨があったのが災いしたのか,湿度がさらに上がってしまった.閾値を越えた蒸し暑さにげんなりする.そこそこに四方山話とか昔話をして(そーいうもんでしょ),午後8時前には早々に寝てしまった(おい).即爆睡だ.夜になっても蒸し暑さはなお続く.

◆明日はシンプルにつくばに帰るのみ.他の予定はまったくなし.

◆本日の総歩数=13028歩[うち「しっかり歩数」=2631歩/24分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=未計測/未計測.


15 augustus 2008(金) ※ お盆高座の二日目はすべりこみ

◆はっと目覚めリゃ午前9時半! シャレにならん.朝食抜きでぱっと着替えて,ホテルを出る.そのまま京大へ直行だ.朝の日射しがこたえるなあ…….

◆午前10時半に講義開始.前夜の“悪行”が祟ったか,マジへろへろです.とってもつらいです.昨日と同じ会場の理学部2号館315号室には,20名ほどの参加者が集まっている.午前いっぱいは形態測定学の概論.昼休みののち,形状空間論と変形解析,そして球面幾何学.ときどきデモも交えて.後半は,多変量の統計学など“統計噺”になだれ込んだり.午後5時過ぎにおしまい.みなさん,たいへんお疲れさまでした.

◆けっきょく日中いっぱい前夜からの“ひきずり”から解放されなかったが,今夜はさらなる第二戦を伏見桃山に場所を移して交えることになっている.

午後6時過ぎ,蒸し暑さの残る中,京大から出町柳まで歩いて,京阪電車で伏見桃山駅へ向かう.久しぶりに大手筋の商店街を見た.夕暮れの御香さんの鳥居方向に少しいったところにあるビルの2階が〈醪音〉に吸い込まれる.近くにある齊藤酒造の直営店であるこの店では,〈英勲〉の全銘柄を飲むことができる.お盆というのに店内はたいへん賑わって,卓上の炭火の煙があちこちから上がっていた.呑むしかないでしょう.おお,初っぱなから「一吟」ですかっ.それから「井筒屋伊兵衛(三割五分磨き)」とか「うすにごり」,「古都千年」もいきましたっけ? 疋田さん,ngtさん,どーもありがとうございました.

—— ほどほどに健康的な呑み方で,午後8時半には店を出た.すぐ近くの近鉄・桃山御陵駅から乗って,竹田で地下鉄へ.四条で下車してホテルへ直帰.実にヘルシーだ.昨夜とは大違いだ.

◆これにて,お盆のお仕事はすべて終わった.明日は宇治へ.

◆本日の総歩数=10832歩[うち「しっかり歩数」=4542歩/43分].全コース×|×.朝−|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


14 augustus 2008(木) ※ 京都の残暑にノックアウトされ

◆午前5時起床.曇りと晴れのまだら,その後,通り雨が降って,青空になる.日録ものす.その後,講義のしたく.

◆朝食後,午前9時過ぎにホテルを出る.蒸し暑いことは蒸し暑いが,昨日のようないびり殺されるような不快感はない.それでも暑い.クマゼミのわしわし.〈イノダコーヒ三条店〉にて本読み.しばらく放り出していた:Elliott Sober『Evidence and Evolution: The Logic Behind the Science』(2008年4月21日刊行,Cambridge University Press,Cambridge,xx + 392 pp.,ISBN:978-0-521-87188-4 [hbk] / ISBN:978-0-521-69274-8 [pbk] → 目次著者サイト正誤表[pdf])の続き.「1.2 The ABCs of Bayesianism」(pp. 8-32)をば.確証(confirmation)の理論としてのベイズ主義は,観察Oによって仮説Hの事前確率Pr(H)よりも事後確率Pr(H|O)が大きくなるとき,「OはHを確証する」とみなす.

◆午前10時半に京大へ.晴れて暑い.クマゼミやめれ.〈進々堂〉本店にてカマジン本のゲラ読みを進める.10ページほど読んでから,再び京大に向かう.理学部2号館315号室が会場だ.約20名ほどの参加者を前にする.

今回は二日間の日程で講義に来たわけだが,初日は午後1時から「発表会」ということで,京大理学部の院生のみなさんに,現在進行中の形態測定学に関する研究発表をしてもらう.morphometrics のテーマだけで7件もの発表があるとは以前は考えられなかった.ひとり30分でのプレゼンが次から次へと続く.コメントと質疑など.午後5時過ぎに終わった.

◆長い夜の始まり —— 明日もあることなので,初日はささやかにという疋田さんの思惑とはまったく何の関係もなく,事態は進展していく.

午後6時前には,発表会会場がそのまま飲み会会場に早変わりし,アルコールやらおつまみやらがずらり.どこからともなく人が参集してきて,わいわいと.まずは〈雪の茅舎〉の「純米吟醸秘伝山廃」,いきます.次,おお,〈黒龍〉の「大吟醸 しずく」,開けます.さらに,〈加賀鳶〉の「純米大吟醸にごり酒」,ええい,〈神亀・ひこ孫〉の「純米吟醸」だあっ.北白川〈にしむら酒店〉のオリジナル「をとし梅」まで登場し,そろそろトドメか.焼酎がいずこからか湧いてきたようだが,いったい誰が呑むんだあ.

—— というように,学問の場は“いくさ場”の様相を呈してきた.午後9時にはいったんお開きとなったはずだが,さらにどこぞへ“転戦”していった向きもあるようで…….

◆日中の蒸し暑さと夜のアルコールのせいで,ほぼ沈没寸前.しかし,明日は朝から高座があるのだ.ホテルに帰ってそのまま爆睡.

◆本日の総歩数=7498歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


13 augustus 2008(水) ※ 帰省の大波に流されて入洛する

◆午前4時起床.湿度高く曇りのち晴れ.空気がべたべたする.未明の旅支度,最後の確認.蒸し暑くなってきた.

◆11:11発の TX 快速で東京へ.お盆帰省の混雑が最高潮のJR東京駅は,コンコースを確かにまっすぐ進めないほど,大荷物を抱えた家族連れで混み合っていた.新幹線乗り場の人口密度はさらに高かった.ここのところのガソリン高の影響で,今年の帰省ラッシュは高速道よりも鉄道の方が混雑度が高いという.天候は曇りときどき晴れ.不快指数きわめて高し.

◆15:01定刻通りに京都着.プラットホームに降り立ったとたん,「お願いやしワタシをこれ以上いじめんといてね,かんにんしてやあ」と言いたくなるような,さらなるイケズな蒸し暑さに包囲された.これは超きびしいです.高温と湿気でもわもわしています.植物園の「熱帯温室」にいるみたいな.今日も京都は猛暑日だという.タクシーで一目散にホテルに向かう.柳馬場蛸薬師の〈コープイン京都〉にチェックインしたのは午後3時半のことだった.ここに投宿するのは,昨年10月の〈湯川秀樹シンポジウム〉以来のことだ.引きずってきた荷物を部屋に運び込んで,しばしエネルギー充電.

◆旅先でもこまごま —— 1階ロビーのパソコンでメールチェックする.要返信はすべて進化学会関連.木村基金への連絡に関する問合せ,そして学会から依頼出張を受けるにはたいへんめんどうくさい事務手続きが必要であることが判明して萎える.

◆強烈な夕陽にあぶられる —— 午後5時前にホテルの周囲を散策したのだが,洛西に沈まんとする西日のあまりの暑さにげんなりする.関東ではこういう肌を焼くような夕陽はついぞ経験しなかった.じりじりと皮膚が焦げていく感じ.

やっかいなことに,文字どおり“直交座標系”な街を歩いているので,南北“y軸”方向に進むときはつねに影を見つけて避難できるのに対し,東西“x軸”方向に曲がると真っ向からの日射しを避けられる影がまったくない.生き延びるための「影」はとても大切だ.再オープンした〈酒陶 柳野〉の新店舗を確認する(三条通新町西入ル).ひとまわりした後に,再びホテルに逃げ込む.この熾烈な環境の中を街歩きしている観光客も意外なほど多いが,ご苦労さまです.でも夏の京都はできれば避けた方がいいです.ネイティヴがそう言うのだからまちがいない.

◆夕方6時過ぎに再出撃,日没後なのでもう大丈夫だろうとうっかり油断したのが敗因だった.日射しこそないものの,遺産としての蒸し暑さはまだ残っていた.真綿をのどに詰め込まれたような逃げ場のない息苦しさを覚える.綾小路通高倉上ルの〈たかはし〉にて,〈竹鶴〉のにごり酒とともに牛スジの煮込みなど.強烈な残暑に負けないスタミナはにごり酒で.

◆車中読書 —— Norman Macleod and Peter Forey (eds.)『Morphology, Shape, and Phylogenetics』(2002年刊行,Taylor & Francis[Systematics Association Special Volume Series 64], London,x+308 pp.,ISBN:0-415-24074-3 → 目次).講義の前準備として.この論文集は,形態測定学的データからどのようにして「系統学的情報」を引き出すかを論じている.体系学の点からいえば,連続数として出てくる morphometrics の計量データをどのように離散的に「コード化」するかという問題(「the character coding problem」)が論議の中心だった.離散的な形質状態をもつ形質がこれまでの体系学では主流だったからである.たとえば,Fred Bookstein は「crease」という新しい概念を用いて,連続量から離散量への記述子の転換をもくろんでいる.一方,Joe Felsenstein は離散的な形質の背後に連続的な変量を想定して進化モデル化する場合には,離散から連続へという「the character uncoding problem」が新たな“逆問題”として浮上してくるだろうと指摘している.

◆明日からは昼夜のない「体力勝負」が続くので,しっかりきっちり寝ておきたいな.

◆本日の総歩数=14521歩[うち「しっかり歩数」=6544歩/66分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−0.6%.


12 augustus 2008(火) ※ 出奔前日にじたばたとトド撃ち

◆午前4時半起床.窓を開けて寝たのだが,一晩中,北東風が吹き抜けていた.体感的には涼しいが,湿度が高いらしく,そこらじゅうぺたぺたする.気温24.0度.曇りのち晴れ.朝日とともに気温も湿度も上がってきた.残暑厳しそう.セミもまだまだ元気だし.

◆直前トド撃ち(農林交流センターの巻) —— 前日の続きで,農林交流センターの「分子系統学」ワークショップのプランをひねり出す.とりあえず三日間のコース内容(カリキュラム)を設定し,受講生募集のための宣伝を打つ準備をする.午前10時に交流センターに素案を返信完了.折り返し返事があり,ニュース広報をつくるための素材の提供を求められた.今後の予定としては9月半ばまでに受講生(定員30名)を決定するとのこと.どれほどの応募があるかは不明だが,定員をオーバーした時は“選考”するという作業が増えてしまう.※できれば,定員ちょうどの応募をよろしく.>応募されるかもしれないみなさん.

◆さらに暑くなってきた.正午前の気温は30.5度.「残暑厳しき折りに」という時候の挨拶がぴったりだ.

◆午後のこまごま —— 〈ISHPSSB Kobe〉の講演要旨がひとつ届いた.ワタクシも用意しないと.“欠員補充”もしないと……./組合関連の雑用.地本定期大会代議員と分会次期執行役員に関する投票とか.計測班の次期職場委員もあっさり決まってよかったです.これで,ぼくはリタイアして副職場委員になれる./〈第2回生物学基礎論研究会〉が9月13日(土)〜14日(日)に京大で開催されるという.この情報は個人的にいただいたのだが,ぼくが調べたかぎりではまだインターネット上には流されていないようだ.いずれにせよ,この期間は,ぼくは9月10日(水)〜9月12日(金)の横浜国大での「統計学道場」と9月14日(日)〜15日(月)の藤沢での植物病理学会・若手の会「【種】高座」がある.ちょうどすき間で,日程的には「行けてしまう」のがコワイのだが,はてさてどーするか.

◆直前トド撃ち(農林交流センターの巻[続き]) —— なおも続くワークショップ準備.連絡があり,受講生の選考は9月16日(火)の午後3時から,筑波事務所の監理官室にて行われることになった.

◆午後4時半に帰宅する.西日がぎらぎら.気温は28度台でまだ暑い.ヒグラシの蝉しぐれ.

◆〈京都お盆高座〉のしたくをする —— いつものように,講義機材や印刷物などを取りそろえる.スライドOK,ハンドアウト原稿OK,パソコン一式OK,デモ用ツールOK,“紙”の参考資料は最低限にしておこう./京大に入洛に関する連絡メール.折り返し「夜の迎撃」に関する通告あり.“敵”はヒミツ兵器を繰り出してくるらしい.こちらもささやかながらロケットランチャーで応戦することにしよう./それと合わせて,講義宣伝ビラも送られてきた.14日(木)は形態測定学に関わる研究発表会,15日(金)はぼくの集中講義.よろしくお願いいたします./京都出張の旅程は13日(水)〜16日(土)の期間で申請していただいた.農環研側の兼業申請はすでにすんでいるので事務的な問題はまったくなし.あとは行くだけ.

◆直前トド撃ち(農林交流センターの巻[さらに続き]) —— 夕刻,交流センターから,セミナー宣伝のためのニュース原稿ができたとのことで,そのpdfが送られてきた.速攻ですな.今回の第131回農林交流センターワークショップ〈分子系統樹推定法:理論と応用〉(2008年10月6日(月)〜8日(水)開講)の宣伝は,近々出る「交流センターニュース418号」に掲載されます.他の講師陣がぜんぜん決まっていないので,いまのところ講師としてはぼくの名前しか載っていない.しかし,大学での集中講義を考えれば,実はこのままでも何の問題もなかったりするのだが.

◆夜の旅支度 —— いつもの国内旅行なので,いつもの旅支度をするだけ.ただし,今回は応戦のため持参する“武器”がちょっと重いかな…….※その分,帰路は身軽になっているだろう.

◆「長野県中信農業試験場」のこと —— 夜,長野県中信農業試験場の「大豆育種指定試験50周年記念会」が塩尻で開催されるとの連絡メールが来た.久しぶりに「中信農業試験場」の名前を目にした気がする.思い起こせば,大学の学部生から修士にかけては,研究室の恒例行事のひとつとして,ダイズの播種を手伝ったことがある.中信農業試験場がまだ塩尻の「桔梗が原」にあって,ダイズ品種「エンレイ」を育種したことで知られる故・御子柴公人さんが大豆育種指定試験を統括していたころのことだ.最初のうちは事情がわからなくて,とにかく塩尻まで行って「タネをまいてくる」という作業をしていた.ちなみに,ぼくの卒業研究は,当時の中信農業試験場の無農薬「ネマ圃場」で行なった調査に基づいている(空間分布の数理生態学).御子柴さんをはじめ,この試験場の方々にはたいへんお世話になった.

その後,中信農業試験場は別の場所に移転してしまい,「桔梗が原」という名前は,現在ではワインの銘柄としてのみ知られている(昔からこの地はワインづくりで有名だったのだが).しかし,いまでも「桔梗が原」といえば「中信農試」とつい連想してしまう.今回の「50周年記念会」は,中信農業試験場における長年のダイズ育種研究を記念するイベントになる.期日が9月19日(金)で,ちょうど首都大学東京での生物統計学講義日にあたっているため,ぼくは参加できないのだが,メッセージを寄せようと思っている.

◆本日の総歩数=9532歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.5kg/−0.3%.


11 augustus 2008(月) ※ 「夏休まず」の一週間の始まり

◆午前5時すぎに起床.晴れ.北東風が涼しい.気温は24.0度.昨日の朝よりはやや蒸し暑いかも.

◆今週は〈京都お盆高座〉があるので,「休み」という言葉は例外なく御法度だ.したがって,一括変換しよう →“夏休まず”,“お盆休まず”,“昼休まず”,そして“箸休まず”.(おい)

◆朝のこまごま —— 午前9時にカマジン本の第9章ゲラのチェックを終えたので,第8章と合わせて初台に返送する.と思ったら,実にバッドタイミングで第13〜16章の4章分のゲラがどさっと届いてしまった.東京とつくばの間で再校ゲラを互いに投げ合っているようなものだ./共済組合員証の検認関連書類を厚生係に提出した.あとは9月はじめに組合員証本体を提出するだけ./百万遍にお供えする“御供物”について.「純米吟醸古酒」がよろしいでしょうか? あるいは「純米大吟醸(にごり)」という激レア選択肢もあります./農環研分会から降ってきたたくさんの小トドども:次期職場委員の選出,合わせて次期の副職場委員.次期の分会役員と地本役員の投票用紙.うーん,「夏休まず」のワタシに,「夏休み」を取っている大半の組合班員の票を集めるというのはちとムリがありまくり…….適当に代行を頼もう.

◆昨日が涼しかっただけに,今日の暑さのぶり返しはこたえる.午前11時の気温は28.3度.これは真夏日になるぞ.晴れて暑い.日射しも強い.

◆献本感謝 —— 団まりな『細胞の意思:〈自発性の源〉を見つめる』(2008年7月30日刊行,日本放送出版協会[NHKブックス No.1116],219 pp.,本体価格970円,ISBN:978-4-14-091116-7 → 版元ページ

◆備忘メモクリップ —— 聖書の『シナイ写本』のデジタル公開:〈Codex Sinaiticus〉.原本の高精細画像とともに,その transcript と訳文が併記されている.世界数ヶ所に散在する『シナイ写本』をインターネット上で“製本”しようという試み.この写本はギリシャ語で書かれている.何年か前に印刷博物館であった『バチカン展』でも,最古の聖書写本が展示されていたが(紀元3世紀頃),それもギリシャ語だった./『生物科学』の最新号 Vol. 60, no. 1 (Sept. 2008) が届いた.この号の特集は〈女性研究者が語るこれからの生物学と生物学者〉.全64ページ,丸ごと1冊がこの特集に当てられている.若手の大学院生とポスドクの寄稿が多数.読んでください.次(の次?)の特集は生物学哲学なので,その編集やら執筆をしないといけないんだけど…….

◆そーか,このシーズンは下鴨神社で〈下鴨納涼古本まつり〉が始まるわけね.開催日程は8月11日(月)〜16日(土)なので,おそらく糺の森を徘徊する時間はきっとあるだろう.残暑でくらくらする可能性は大だが.

◆発つ鳥あとは泥だらけ —— 夕方,農林研究交流センターから連絡メールがあり,10月に予定されている分子系統学セミナーの広告をそろそろしないとという督促.講師陣がまだぜんぜん決まっていない.しかし,とにかく明日のうちには宣伝コンテンツを詰めた上で,諸方面にリクルートしないといけないだろう./他にも“大トド”どもがのたうっているので,京都に上るまでに“乱射”しまくって,できるだけ仕留める必要がある.しかし,この時期に撃っても命中率は低いかも./〈ISHPSBB KOBE〉の件は?(うーむ)

◆午後5時帰宅.晴れて暑い.気温は29.6度.やっぱり真夏日だったようだ.

◆本日の総歩数=8658歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+0.8%.


10 augustus 2008(日) ※ 久しぶりに涼しくゲラ読み三昧

◆午前5時半起床.曇り.一晩中,北東からの涼しい風が吹き抜けて,ぐっすりと快眠できた.

◆早朝の歩き読み —— リヴィエル・ネッツ,ウィリアム・ノエル著[吉田晋治監訳]『解読!アルキメデス写本:羊皮紙から甦った天才数学者』(2008年5月30日刊行,光文社,カラー口絵12pp. + 442 pp.,税込価格2,205円,ISBN:978-4-334-96203-6 → 目次版元ページ)の続き.第8〜10章の100ページあまり.今回の解読プロジェクトの山場.最先端のデジタル画像化の技法を駆使して,パリンプセストに書かれていたもとのアルキメデス論文を解読していく.今まではギリシャ数学は仮想無限は論じても実無限は想定していなかったという定説があったが,写本Cの『方法』を解読することでそれがくつがえされたという成果とか,いままでの数学史では重要視されていなかった『ストマキオン』というアルキメデス最晩年の短報が,実は数え上げ組合せ論のルーツだったかもしれないという発見とか.

◆今週のトドたち —— 共済組合員証の検認関連書類はすべてそろったので明日提出すること./〈ISHPSSB Off-year Workshop Kobe〉の要旨集めと,欠員の補充を確定させること.早く早く〜./京大お盆高座の準備.スライド(大丈夫)とハンドアウト(まあOK),デモ用ツール(要確認),そして岩波・形態測定学本のための草稿メモ(まだぜんぜん……).参考書のたぐいはどーしましょ./遅れている某誌の査読報告./今月中にパスポート更新に行かないと.

◆午前のゲラ読み —— 各論(Part II)に進む.まずは第8章の粘菌たち.

◆曇りときどき晴れ.北東風のおかげで午前も午後もとても涼しい.おそらく「夏日」にすら到達しなかったのではないか.

◆午後のゲラ読み —— 午後4時に第8章を作業終了.次の第9章の穿孔性昆虫のケーススタディーとモデリングだが,これは夜にまわそう.

◆ここ数日,ゲラ読みの合間にコッソリ読み進んでいた:泊次郎『プレートテクトニクスの拒絶と受容:戦後日本の地球科学史』(2008年06月2日刊行,東京大学出版会,vi+258 pp.,本体価格3,800円,ISBN:978-4-13-060307-2 → 目次版元ページ)だが,戦後の科学史を論じた新刊としては比類なくおもしろい.

著者は,駒場の学位論文として本書のもとになる論文をまとめたわけだが,詳細な出典への言及とその緻密な解読は,戦後生物学史の一断面を論じた本書が資料としての高い価値をもっていることを示している.

とくに,第二次世界対戦後の政治状況と連動した動きが,生物学だけでなく,地質学でもパラレルに起きていたことを本書ではっきりと再認識できたことは最大の収穫だった.さらに,地質学におけるこれらふたつの“学問的&政治的運動”がきわめて長期にわたって(個人的なタイムスケールでは“現代”にいたるまで)持続し,その影響力を及ぼし続けた原因と背景を探る著者の視線は,おそらくそのまま生物学における同時代の「並行世界」でのできごとを掘り起こすときにもきっと役に立つだろうという確信がもてた.この点でも収穫は豊かだった.

何といっても,「地団研」という地質学の団体(学術団体にして政治団体でもある)が,戦後日本の地質学の進展の中でどのような“力”を及ぼしたかを,プレート・テクトニクス理論の受容(拒絶)という事例を中核にして論じている.新しい科学理論が登場したときに,どんな理由を付けてそれを拒絶するかの良質なケーススタディーだ.

第3〜4章で論じられている「地団研」の出自と行動様式,とくに個人崇拝の弊害と団体主義の功罪,そして第6〜7章で概観される「地団研」によるプレート・テクトニクス理論への攻撃ぶりは,単に地質学という狭い科学者コミュニティの中の“嵐”だったわけではない.本書でも言及されている同時代の生物学における「ルイセンコ論争」の経緯とのこわいほどの並行性を連想する読者は少なくないにちがいない.

—— いずれにせよ,近いうちに書評文をまとめることになるだろう.きっと.

◆本日の総歩数=7970歩[うち「しっかり歩数」=7499歩/63分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+1.1kg/0.0%.


9 augustus 2008(土) ※ 今日も真夏日,シャンパン日和

◆午前5時起床.曇りときどき晴れ.もちろん熱帯夜で湿気がむんむんしている.前夜からつくりかけの〈禁断の果実〉煮込みの続きを開始,さっそく火を入れる.あと数時間の煮込みが必要だ.

◆こういう早朝にもたまには歩き読むしかない —— ひさしぶりの:リヴィエル・ネッツ,ウィリアム・ノエル著[吉田晋治監訳]『解読!アルキメデス写本:羊皮紙から甦った天才数学者』(2008年5月30日刊行,光文社,カラー口絵12pp. + 442 pp.,税込価格2,205円,ISBN:978-4-334-96203-6 → 目次版元ページ).第4〜7章の130ページほど.アルキメデス時代には「図」は,本文の単なる“添え物”ではなく,文字と同様の「読み」を必要としたという話だ.著者は「本文批判」ならぬ「図像批判」により,アルキメデス写本の幾何学図の“系譜関係”を論じているのが興味深い(“共有派生形質”としての補助線とか).今回新たに発見された「写本C」は,羊皮紙の古書としては実に劣悪な状況にあったそうで,それも伝承された近世の修理(補綴の方法)や解読作業上の悪行(薬剤を噴霧するとか)による劣化が大きかったという.

◆午後は客人あり —— 昼過ぎまではあいかわらずとても暑かったのだが,夕方近くになって急に北東風が吹き抜けるようになり,気温がするすると低下した.湿度も同調して下がったようで,久しぶりにエアコンが不要な夜を迎えることができたのは幸いだった.

◆〈禁断の果実〉煮込みもそろそろ食べごろになった.今回はバラ肉をつかったのだが,シチューにしたときの風味としてはやはりすね肉の方に軍配が上がる.ところが,つくばの中心部ではすね肉ブロックをキロ単位で買うことが意外に難しく,できれば並木の〈マルゲンミート〉,ダメなら少し落ちるが松代の〈ハナマサ〉しか選択肢がない.そこらのスーパーではまず入手不能だ.しかし,今回はいずれの店でも手に入らなかった.牛をつぶせば必ず「すね肉」は出るはずだが,いったいどこに消えてしまうのだろう.

—— 景気づけに,きりっと冷やした安いスパークリングワインをしゅぽんと開けてみる.また呑み過ぎ…….

◆本日の総歩数=8883歩[うち「しっかり歩数」=7491歩/62分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.前回比=−1.8kg/+1.0%.


8 augustus 2008(金) ※ 元気よすぎる残暑にビールで対抗

◆午前5時起床.気温26.1度の熱帯夜の名残.蒸し暑い.見上げると青い夏空と言いたいところだが,上層の雲の表情や空の色の具合は早くも秋を思わせる.夏の終わりを告げるツクツクボウシが遠くの“バンダ”から聞こえ始めた.しかし,そういう季節の移り変わりも早朝のうちだけですっと消え去り,ぎらつく朝日がのぼるとともにまたもや元気な真夏日に完全復帰.中央農研センター圃場のヒマワリ畑は今が満開中.

◆来週の旅支度のはじまり —— 三井ビルJTBにて新幹線チケットを入手.ちょうどお盆期間中なので,確保できるか心配だったのだが,何の問題もなく往復の“足”は準備完了:8月13日(水)往路「のぞみ229号」:東京[12:40]→京都[15:01]|8月17日(日)復路「のぞみ18号」:京都[12:53]→東京[15:13].宿は先月のうちに予約してある:〈コープイン京都〉,8月13日(水)check-in → 8月16日(土)check-out./旅支度はこれでおしまい.あとは高座の内容のみ.スライドは十分にあるので,あとはデモの準備と,統計学と数学の連射にあえなく斃れし者たちのための“気付け薬”を少々…….

◆正午の気温は34.5度.いやがうえにも青い夏空,照りつける太陽,そして蝉しぐれ.暑すぎます.

◆夏の献本,まことにありがとうございます —— マーク・G・カーシュナー,ジョン・G・ゲルハルト[滋賀陽子訳/赤坂甲治監修]『ダーウィンのジレンマを解く:新規性の進化発生理論』(2008年8月19日刊行,みすず書房,x+336+xxxi pp.,本体価格3,400円, ISBN:978-4-622-07405-2).みすず書房といえば人文社会科学系の出版社というイメージがいまだに強いのだが,最近は進化学をはじめ自然科学のいい本をよく出してくれるのがありがたい.今回の新刊は evolutionary novelty のお話し.

◆新調したメガネの引取り —— メガネにこだわる性格ではないので,飲み屋の壁に貼られたお品書きが読めなくなって,あわてて眼鏡屋に駆け込んで以来,まったく新調していなかった.ということは,約20年ほどプラスチックレンズを使い続けたということか.途中,一度だけフレームが崩壊して交換したことがあったが,レンズ本体はずっとそのままだった.しかし,さすがに「寄る年波」には勝てなかったようで,表面に細かい傷が無数につき,コーティングもところどころ剥げ始めてきた.買い替える潮時なんだろう(もっと早く買い替えろとの声あり).

前に初めてメガネをつくったときは,たいへん高い買い物をした記憶があった.今回は,つくばセンターの〈Q't〉に入っている〈Jin's Global Standard〉というものものしい名前の眼鏡屋でつくった.「近・乱・老」という三重苦な人なのだが,視力検査などもすべて含めて,驚くほど安く(しかもすばやく)メガネがつくれることを知った.こんなに手軽につくれるのならもっと早くするべきだった.

—— ということで,ふたつも新調してしまったワタシは“キャラ”が変わるかも.

◆外があまりに暑いので,西日が差し込まないうちに撤収した.午後5時の気温は32度台.いろいろムリです.さっそく帰宅して,レギュラー料理の一つである「大量牛肉の〈禁断の果実〉による籠絡」を決意する.〈禁断の果実(de verboden vrucht)〉はいつも通り〈MOG〉の〈やまや〉で5本ゲット.牛のバラ肉ブロック2kg超を〈ハナマサ〉で買い込み,あとは熱帯夜の残酷なる「解体ショー」を小一時間(外ではヒグラシが鳴きはじめたり).あいまに大量の新玉葱を無塩バターで1時間あまりキツネ色になるまでじっくり炒める.牛肉は一塊100gほどに大きく切り分け,フライパンで焼き色をつけてから,深鍋に炒めた玉葱とともに入れて,〈禁断の果実〉をこれでもか!というほど5本分ドボドボと注ぎ込む.これでおしまい.あとは最低まる一日,とろ火で煮込むだけで失敗なくできあがる.

◆調理中にちょうど北京オリンピックの開会式を横目で眺めることになった.もともと,こういうイベントにはほとんど関心がないのだが,チャン・イーモウ監督による開会式イベントは,これはもう良くも悪くも“チャン・イーモウ”だった.彼にとってはオリンピックなんぞどーでもいいんでしょうね.今から10年前に,史上初の〈トゥーランドット〉紫禁城ライヴをチャン・イーモウが大規模プロデュースしたとき,メイキング映像の中で指揮者のズビン・メータが「ところで,今回の企画で音楽や歌手は必要なのか?」とチャン・イーモウにジョークを飛ばしていたが.1/5くらいは当たっているのではないか.

◆〈禁断の果実〉で煮込み続けて日が変わった.あとは明日.

◆本日の総歩数=13598歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.8kg/−0.9%.


7 augustus 2008(木) ※ 酷暑の立秋は夏祭りのためにある

◆午前5時起床.晴れ上がる青空.立秋といわれれば確かにその気配がないではない.しかし,最低気温が25.0度の熱帯夜で,朝日とともに蒸し暑さが増し,まだまだ夏は元気だ.

◆『』の長い感想文 —— UBCの yuiami さんから太平洋越しに長文の感想記事が届きました(→「三中信宏「生物の樹・科学の樹」感想」2008年8月8日付).どうもありがとうございます.毎月の連載とそれを1冊にまとめるのとでは方針がきっと変わってくるだろうと思いますが,新書化の際には参考にさせていただきます.

心理的本質主義から「逃れられない」といういささか宿命論的な表現をぼくがしたのは,半分はあおりであり,残る半分は「気をつけましょう」という自戒(他戒?)でもあります.Michael T. Ghiselin であれば「species-as-individuality」こそ生得的だと言うし,David Hull はサイエンスを徹底的にたたき込むことで(彼の言う科学的帝国主義),ナイーヴな形而上学をこわそうと言う.いずれも,ヒトとしての「デフォルト」(それがどの程度の縛りになるかは別として)に相対するスタンスを表明しているわけですね.

なお,Robert J. O'Hara の G. C. D. Griffiths への言及については,tree-thinking の【種】問題への implications を論じた:R. J. O'Hara (1993), Systematic generalization, historical fate, and the species problem. Systematic Biology, 42(3): 231-246 を参照.

◆朝のこまごま —— メガネを新調する.「遠く用」と「近く用」のふたつ.要するにみごとに“○眼”になってしまったということです(……)./カマジン本の Chapter 6 のゲラ読みを終了.

◆炎天下のステージリハーサル —— 気温は午前中からぐんぐん上がり,立秋なんぞ蹴散らして,午前11時過ぎには早くも33.4度に達した.くらくらするほど暑い.湿度も高い.

昼休み,われわれ〈農環研つちのうえ太鼓隊〉は中央の櫓に集結し,マイクテストを兼ねたステージリハーサルをした.ひととおり通し練習をしたのだが,よしずがかかっているとはいえ,尋常ならざる蒸し暑さの中でのリハはつらいなあ.まあ,夕立の心配がまったくなさそうなのが幸いだ.昼休みの夏祭り会場では,すでに多くの店の設営が方々で始まっている.それにしてもこのクソ暑いのに火をおこすというのはガマン大会を通り越している.日に焼けて,さらに火に焼けるではシャレにならん.ごくろうさまです.

われわれは叩くだけでいいのだが,商売する方はそれではすまんのでね.さらに情け容赦なく灼熱地獄は昂進し,午後1時には34.6度に達した.四捨五入すれば猛暑日だ(実際あとで茨城県南部は公式に今年初の猛暑日だった).かんかん照りで逃げ場がないが,ぼくはあっさりと屋内に避難しました.

今回の〈太鼓隊〉は初のオモテ舞台への出番ということで,ジャンベにコンガをはじめ打楽器がいろいろとそろう.本番では和太鼓も加わるので,例年よりも狭い櫓の上は太鼓だらけになるだろう.

◆午後のこまごま —— カマジン本の Chapter 7 のゲラ読みが午後2時に終ったので,速達で初台宛に返送した.こういう地道な作業は一歩一歩さくさくと踏みしめて進むしかない.

◆第25回農環研夏祭り —— 夕方(といってもまだ西日が強い午後5時前に会場に向かう).そろそろ売り物が並び始めているが,公式には午後5時半の開始になる.もちろん気温は30度超のままで,日没にならないと下がらないだろう.三々五々客が集まってきた.

まわりが暗くなってきて,ようやくお祭りらしい雰囲気が漂いはじめる.露店は毎年のおなじみさんがほとんどだが,海外からの短期滞在研究者が新しいショップを店開きしてくれるのが毎年の発見と楽しみになっている.売り物ではない〈手取川〉の「吉田蔵(にごり)」の一升瓶が店の裏手でコッソリと封を切られ,ひっそりとまわし飲まれている.1回目の盆踊りが終って,午後8時前にいよいよ出番だ.うう,だいぶアルコールがまわっているかもしれない…….

しかし,いったん舞台が始まってしまえば,もうこっちのもの.ノリノリの〈太鼓隊〉のみなさん,よく頑張りました.また来年ね.

本番が終った午後8時過ぎには,もう完売御免の店がぽつぽつと出始め,2度目の盆踊りが終わる頃には早くも「宴の後」の空気がしのびよる.ぼくは午後8時半には会場をあとにした.今日はもうアガリということで.

◆備忘メモ —— 日本生物地理学会宛の質問メールが転送されてきた.トンボの研究者として知られている故・朝比奈正二郎の著作目録を日本トンボ学会で作成しているのだが,生物地理学会に関係する可能性のある下記文献を探しているという担当者氏からの照会だった:朝比奈正二郎(1948)「華北の蜻蛉相」,日本生物地理学会記事,1: 26-28, 44.ぼくの手元には日本生物地理学会「会報」は創刊以降の号がコンプリートにそろっているが,「記事」という名の出版物は初耳だ.もともとこの学会は,第二次世界大戦前から定期的に「会報」を発行し,臨時に「Biogeographica」という出版物を出してきた.しかし,敗戦の前後の混乱期には,学会としての出版がおぼつかなくなっていたことは事実だったようで,「会報」も戦中の1944年に出て,次の号が出る5年後の1949年まで“空白期間”ができてしまった.

上記の朝比奈の論文は,その発行年度が確かであったとしたら,ちょうどこの“空白期間”に出版されたことになる.敗戦により一時的に生物地理学会が崩壊寸前であったとは,個人的に聞いていたのだが,「会報」が出されなかったこの5年間に,公認されなかった学会出版物があったということだろうか.上記の「記事」には巻号が「1」と付されている.いつまでも出ない本家の「会報」の緊急避難的な代役として,あるいは「記事」と銘打たれた出版物が一時的にせよ配布されたのだろうか.

—— いずれにせよ,現物を手にしないことには推測の域を脱しない.

◆本日の総歩数=14684歩[うち「しっかり歩数」=962歩/11分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.前回比=−0.1kg/−0.1%.


6 augustus 2008(水) ※ 絵に描いたような夏空に叩きます

◆午前4時半起床.薄曇りの東の空に朝日がぎらぎらと.気温23.7度.まあすごしやすいでしょう.と油断したら,とたんに典型的な夏空がばっと広がって,積[乱]雲がそこかしこに湧き上がる.暑いです.つらいです.

◆朝のこまごま —— 自宅で本棚の組み立て.本が多過ぎるから本棚を買うのか,はたまた本棚を買うからさらに本が増えるのか…….

◆クマムシ本の着便 —— やはりこれをまず読まないことには始まらないでしょう:鈴木忠『クマムシ?!−小さな怪物 −』(2006年8月4日刊行,岩波書店[岩波科学ライブラリー122],xiv+116 pp.,本体価格1,300円,ISBN:4-00-007462-8 → 版元ページ).カラー口絵をはじめとして,散在するクマムシ図譜がとても美しい.

◆午前11時.ぎらぎらな夏空.気温32.0度.やけくそで昼休みの屋上太鼓練習に向かう.行ったことはないが“甲子園”のスタンド応援か,農環研の太鼓練習かという感じ.1時間のおさらい.明日は昼休みに夏祭り会場に設営された櫓でのマイクテスト.そして夕方からは本番という極限肉体派的な突き進み.また,指の内出血かも…….

◆午後のこまごま —— 今月の出張届(進化学会大会)と兼業届(京大お盆高座)を出す.そういえば,京都の行き帰りはお盆ラッシュの真っ只中だが,ちゃんと“足”を確保しておかないと手痛い目に遇う可能性が高い(とくに復路が要注意).

◆昼下がりの気温32.5度.午後2時から1時間ほど,1ヵ月半もあいてしまった『Modern Morphometrics in Physical Anthropology』の輪読セミナーの第19回輪読.今回から次の第6章:Chapter 6 : Michel Baylac and Martin Frieß「Fourier Descriptors, Procrustes Superimposition, and Data Dimensionality: An Example of Cranial Shape Analysis in Modern Human Populations」(pp. 145-165)に進む.標識点ベースの手法と輪郭ベースの手法はこれまで形態測定学の中で積極的な連携がうまくいかなかった.本章では,輪郭上の相同標識点に関する GPA(generalized Procrustes analysis)により,輪郭曲線を整列し,その上で楕円フーリエ解析を実行するという手法を提唱している.総論の部分では(pp. 145-153),フーリエ級数による輪郭曲線の記述に伴う「多パラメーター問題」をどのように回避するかが論じられている.三角関数項そのものを減らすと精度が悪くなるので,むしろ主成分分析のような次元減少による削減が望ましいと言う.後半の実例では,ヒトの頭骨の事例を用いて,集団間の多変量的判別の効率の善し悪しを論じる.

◆合間のゲラ読み —— やってますやってます.カマジン本の第6章はなかばまで進みました.

◆午後5時すぎに研究室を撤収.気温はちっとも下がらず30度台をキープしている.西日が暑すぎる.夕立の気配すらなく,今夜も熱帯夜になるのだろう.「吉田蔵」の残りを飲んでしまった.

◆夜のゲラ読み —— 第6章がもう終わるぞ.短い第7章をかたづければ,次は第2部だ.

◆本日の総歩数=9842歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.1kg/+0.1%.


5 augustus 2008(火) ※ 太鼓を叩けばまた雨が降り出して

◆寝坊して午前5時半に起床.蒸し暑い熱帯夜の名残り.気温25.8度.曇りのち遠雷.午前7時には雨が降り始めたがすぐやんだ.不安定な空模様.しかし,まったく暑くない.

◆朝のあとしまつ —— 農大の成績集計がしばらく滞っていたが,試験点と出席点の集計にやっとめどが立った.今日中にはオンラインで成績報告を大学に提出できるだろう.

◆午前11時の気温は25.9度.湿度こそ高いものの,前日のような致死的蒸し暑さはない.曇天.

◆直前の太鼓練習の日々 —— 明後日に迫ってきた農環研・夏祭りの「台本」を書けとの御達しがお祭り男から届いた.さっそくものして〈農環研つちのうえ太鼓隊〉の関係者にまわす.今日から毎日昼休みは屋上での太鼓練習.夕方からは歌の練習がある(こっちは不参加).昼休みに屋上に上がったら,すでに打撃音と歌声が.曇り空のもとでしばらく練習していたら,雨がぽつぽつと降り始めた.太鼓を叩くたびに雨が降るようだ.雨乞いの儀式をしているつもりはさらさらないのだが.

◆さりげなく反響を呼んでいるという新刊が届く —— 伊良林正哉『大学院生物語』(2008年7月15日刊行,文芸社,223 pp.,本体価格1,400円,ISBN:978-4-286-04894-9 → 版元ページ).小説仕立てにはなっているが,まぎれもない「理系大学院」の現実を教員の目から見た本.

◆昼下りのあとしまつ —— 農大の成績を受講生ごとにまとめ,“黄金比”に基づく成績計算を〈R〉で実行する.ムリすることもなく割にリーズナブルな成績分布が出てきた.黄金比スコアの標準偏差は大きいが,まじめな学生は必ず報われるということだ.

◆午後5時に帰宅.曇り.気温は25.5度で暑さがぜんぜん感じられない.そのうち遠方から雷鳴が轟いてきたが,都内のような土砂降りの気配すらなく.不穏な雲行きのみ.

◆夜のあとしまつ —— 成績の最終確認をした上で,午後9時に東京農大のサーバーに成績報告のための csv ファイルをアップロードした.今月末までは修正も可能だとのこと.これで対外的な“公務”のひとつはケリがついた.

◆コワイ世の中になった —— 〈Google Map〉の新機能として「ストリートビュー」という機能が付いた.ちょうど〈アド街〉のひとコマのように,道路を歩く仮想歩行者の視点で,界隈の風景の映像を写していくという機能だ.あらら,宇治の実家までちゃんと映ってるし……(向かいの空き地が駐車場になっていることを初めて知った).千駄木で10年近く住んだ下宿の木造建築も不忍通りからのストリートビューでしっかりくっきり見えてしまう.さすがに,つくばあたりだ「ビュー」できる道路がまだないみたいだが,東京や京都はほぼくまなく「ビュー」できてしまう.

—— スゴイ&コワイ…….

◆本日の総歩数=12442歩[うち「しっかり歩数」=3001歩/30分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.6kg/+0.5%.


4 augustus 2008(月) ※ 度を越した酷暑に力尽き撤収する

◆熱帯夜.午前4時前に目が覚める.明け方の蒸し暑さの中でヒグラシの合唱.気温26.0度.連日のこととはいえ,暑苦しい明け方は体調によろしくない.

◆〈京大お盆高座〉について —— 来週に迫ってきた〈京大お盆高座〉のアナウンスが大学から広報されている:〈三中信宏氏の「形態測定学講義」と研究発表会 8月14,15日〉.詳細日程は,8月14日(木), 13:00〜18:00:研究発表会;8月15日(金),10:30〜17:00:形態測定学講義.場所は両日とも理学部2号館315号室です.初日は院生諸氏の研究進捗を見させていただきます.こんな時期に集中講義を組んでまことに申し訳ありませんが,みなさん,よろしく.

◆酷暑度ひたすら上昇する —— 午前10時半には早くも32.5度.カンカン照りで逃げ場なし.午後2時には34.7度.ほぼ猛暑日といえよう.こんな日にかぎって研究所の全体空調がだめだめで,室温は28度を越えている.これではぜんぜん仕事にならない(ので仕事をしない).

◆“地団研”戦後乱闘史 —— 泊次郎『プレートテクトニクスの拒絶と受容:戦後日本の地球科学史』(2008年06月2日刊行, 東京大学出版会, vi+258 pp., 本体価格3,800円, ISBN:978-4-13-060307-2 → 版元ページ).

先日届いたばかりの本で,まだブラウズしている段階だが,読めば読むほど戦後の地学団体研究会すなわち“地団研”の動きは,同時代だった“ルイセンコ”な人びとのふるまいと連動している(少なくとも類似している)と感じる.戦後間もなくの日本共産党の指導下で進められた“民科”運動と連動したのが,“地団研”であり“ルイセンコ派”だった.前者の「井尻正二」と後者の「徳田御稔」とは当時の科学者コミュニティでの「イコン」としての性格がきっと似ていたのだろう.

いわゆる「マルクス主義科学」が敗戦直後の日本の科学コミュニティに何をもたらしたのかを地質学を題材にして論じたのが本書だ.しかし,ここで論じられていることがらの多くはそのまま同時代の生物学にもあてはまっただろうし,その余波が数十年にもわたって残り続けたという事実も共通しているように思われる.驚くべきは,プレート・テクトニクス理論の受容を執拗に拒み続けた“地団研”の影響が,少なくとも「1985年」までは日本の地質学界では残っていたという著者の指摘だ.とすると,これは昔話のたぐいでは決してなく,むしろ「いま」の話になってしまうじゃないか! 

しかし,考えてみれば,弁証法的唯物論の残骸は,確かに1970年代(つまりぼくらの世代が大学に入った頃)の生物学ではまだ命脈を保っていた.地質学や生物学が「歴史科学」であると当時の彼らが言うとき,本書の著者が指摘するように,歴史法則主義(sensu Popper)が前提になっていたという.ローカルな記載主義の伝統(とても古いアジア的知脈)を補強するかのように,「日本独自の学問」を頑に求め続けるという姿勢は,地質学でも生物学でも共通していたということなのか.何だかとても深く納得してしまう内容の本だ.

◆「都城秋穂」の訃報 —— まったくの偶然だろうが,泊次郎の新刊を手にしたちょうどその頃に,長年にわたって“地団研”と闘い続けた都城秋穂がニューヨーク郊外の森林公園で不慮の事故により亡くなったことを知った(→ Times Union).彼の著書:都城秋穂『科学革命とは何か』(1998年1月28日刊行,岩波書店,東京,xvi+331+16pp.,本体価格2,500円,ISBN:4-00-005184-9 → 書評目次版元ページ)は,出版されてすぐに読み,書評を書いたことがあった.この本の中でも,日本におけるプレート・テクトニクス受容を大幅に遅滞させた黒幕として“地団研”が糾弾されていた.

◆午後になって居室の居住性が急速に悪化してきたので,早々に撤収することにした.夕方,遠雷がごろごろ鳴る.蒸し暑い曇り空.

◆夜.カマジン本のゲラ読み続く.第5章をすませた.日が変わる前に雨が降り出した.久しぶりの降雨だ.

◆本日の総歩数=6675歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=0.0kg/−1.8%.


3 augustus 2008(日) ※ 大変身クマムシも〈吉田蔵〉へと

◆午前4時頃にいったん目覚めたが,熱帯夜であることを確認しただけで,再び睡眠に陥る.次の目覚めは午前7時前だった.曇りのち晴れ.気温は知らんが,むうっと蒸し暑い.

◆朝のこまごま —— スルガ銀行の国際送金サービス申請用の書類がすべてそろった.なくさないうちに封筒に封印して明日返送する予定./京大お盆高座の日程が決まった.初日(14日)は午後から研究発表.二日目は朝から夕方まで morphometrics の講義,そして夜は近鉄・桃山御陵駅前の〈醪音〉にて迎撃されることになる.

◆早くも午前中から,外はくらくらするほど蒸し暑くなってきた.もちろん真夏日.今日は方々で猛暑日になるのだろう.

◆昼のこまごま —— 〈無印良品〉のネット販売で本棚を発注完了.8月6日(水)の昼に配達予定とのこと./カマジン本のゲラ(第5章)をちょこっと覗き見するものの長続きせず…….

◆あのひと検索〈SPYSEE〉の実力 —— はい,ワタクシのページもしっかりできていました.インターネット上のさまざまな情報源から自動的にかき集めた情報をに基づいて,「人と人」あるいは「人とキーワード」を自動的に“つなげる”機能をもつそうな.それにしても,よく調べるなあと感心することしきり.

ぼくの場合は多くの「書評つながり」で思いもよらない方々と“つながって”いることになっています.たとえば,人物との〈つながり〉の筆頭はかの「ジョージ・レイコフ」だし,第2位は先日不慮の事故で亡くなった(一瞬,“地団研”の呪いかと思った……)「都城秋穂」で,第3位は昔の「ウィリアム・ギルバート」,第4位には「宇田川榕菴」が挙がり,第5位は「シーボルト」! 上位の人物名を見るかぎりワタクシは正体不明なヒトということになりそう.もちろん,ここに挙がった方々はすべて「書評つながり」の結果と言えます.

SPYSEEの人目を惹くもうひとつの興味深い機能は「人つながり」の〈ネットワーク表示〉です.ばねのようにびよんびよんと広がっていく「つながりネットワーク」を見るだけでも十分に楽しめるかも.ただし,ここでもまた「書評つながり」のバイアスが強く作用しているらしく,必ずしも“現実”の(と自分で理解してる)「人つながり」とは一致していないことは明らか.もうひとつ,「同姓同名」の扱いがまだ完全ではないようで,たとえばワタクシからダイレクト(Minaka number =1)に“つながって”いる某氏は,ぼくの知っている某氏ではありません.

—— SPYSEEに関心のある人は自分で「調査・分析」を依頼すると二日ほどで結果が出るようです.自分に関するインターネット上の情報がどのように集約され,相互に“つなげ”られているかを垣間見るために,ここはひとつトライしてみてはいかがでしょう.

◆昼下りから夕方にかけてあまりの蒸し暑さに呆然とする.買い物で外に出るものの思考力が失せていく自分がわかる.暑い季節と暑い地方は避けるしかない.方々で酷暑日になっているそうだ.

◆こう暑い日が続くと,ふだんならビールを飲みたくなるのだが,今日はもうちょっとちがった,もう少しガツンと効く“もの”がほしいなあ…….

ということで,たがみ酒店でこの季節限定の発泡清酒が並んでいたのでつい…….石川県で〈手取川〉をつくっている吉田酒造店が今の季節にしか出さない「吉田蔵」の「土用のにごり」をゲット.純米酒ではなく本醸造だが,どんなに暑くても負けない発泡清酒.いやあ,これは確かに美味い.鰻の蒲焼きや焼肉にも合うとの触れ込みだったが,今夜はあえてローストしたスパイシー・ベーコンとトマト&チーズ&バージンオリーヴオイルというシンプルな洋ものを肴にしてみた.この季節,いろいろな発泡清酒を試してみたが,発泡性のにごり酒は料理の和洋に関係なく負けないという評判はウソではなかった.

—— いささかへろへろになってしまった…….にごり酒の飲みすぎは効きます.

◆明日からはまた平日営業か.

◆本日の総歩数=6626歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/+0.1%.


2 augustus 2008(土) ※ 背骨のある緩歩動物と化す真夏日

◆午前5時起床.曇りのち晴れ.朝のうちは北東風が通って涼しかったが,すぐに夏らしい蒸し暑さに戻ってしまった.

◆いただいた本 —— 鈴木忠・森山和道『クマムシを飼うには:博物学から始めるクマムシ研究』(2008年7月30日刊行,地人書館,東京,206 pp., 本体価格1,400円, ISBN:978-4-8052-0803-8 → 目次版元ページ).おお,Tardigrada! どうもありがとうございました.本書は,森山さんが発行している〈サイエンス・メール〉の単行本化だ.卵も糞も大きすぎます.しかぁし,読み進む前に,肝心のタネ本:鈴木忠『クマムシ?!』(2006年刊行,岩波書店)を実はまだ買っていなかったのだった…….あわててオンライン発注する.

◆朝からゲラ読み —— カマジン本の第4章.お,意外に“朱”が多いかもしれない…….前半の章の初校ではまだ「ホトケ」だったしなあ.

◆Søren Løvtrup の公理論的生物学についての備忘メモ —— 2冊の大著が何年ぶりかで転がりでてきたのを表敬しつつ.まずは:Søren Løvtrup『Epigenetics: A Treatise on Theoretical Biology』(1974年刊行,John Wiley & Sons, London, xvi+548 pp., ISBN:0-471-54900-2).大学院生の頃に買ったときは30,000円近くしたはず.発生生物学の理論の本だが,最終章で生物体系学の“公理化”を提唱する.前後して出された Acta Zoologica Cracoviencia や Zoologica Scripta 掲載の論文内容を踏まえているようだ.Løvtrup は発生生物学者としてよりも,むしろ理論生物学者として知られている.Leon Croizat の汎生物地理学への親近感とダーウィニズムへの反感は,彼の最後の著作である:Søren Løvtrup『Darwinism: The Refutation of a Myth』(1987年刊行,Croom Helm, London, x+469pp.)からも読み取れる.Leon Croizat は分岐学者の中では例外的に Løvtrup に対してシンパシーを感じていたようだ.彼の晩年の長大な論考:Leon Croizat (1978), Hennig (1966) entre Rosa (1918) y Lovtrup (1977): Medio siglo de sistematica filogenetica. Boletin de la Academia de Ciencias Fisicas, Matematicas y Naturales, Caracas, 37: 59-147 では,本書を Daniele Rosa から Willi Hennig につながる分岐学の系譜の末端と位置づけていた.

もう1冊は:Søren Løvtrup『The Phylogeny of Vertebrata』(1977年刊行,John Wiley & Sons, London, xii+330 pp., ISBN:0-471-99412-X).冒頭の章で約50ページにわたる系統体系学の“公理化”が論じられている.基本的には分岐学のアプローチを採用しているのだが,ところどころで表形学的な“振れ”があるのが印象に残った.系統発生に関わる「公理」を置くことで,論議をクリアにしようという意図が見えた.大学院にいた頃に,彼から理論生物学に関係する別刷り一式を送ってもらったことがある.G・G・シンプソン[白上謙一訳]『動物分類学の基礎』(1974年刊行,岩波書店)の訳者あとがきには,Løvtrup が登場し,「日本名・葉山巌」とわざわざ注記している.同じ発生学者として白上は Løvtrup ときっと知り合いだったのだろうが,この「日本名」がいったい何を意味しているのか,いまだにつきとめられないままだ.

◆午後もゲラ読み —— やってますやってます…….

◆ダーウィン『種の起源』出版百周年論文集(1958) —— 進化学会大会の公開講演会に向けてのしたくとして:丘英通(編)『ダーウィン進化論百年記念論集』(1958年3月30日刊行,日本学術振興会,東京,x+229 pp.).ダーウィン生誕200年を前にして,日本で開催された過去のダーウィン祝賀イベントや論文集を心してチェックするようにしている.本論文集は,『種の起源』出版百周年を記念して出版された.さらにさかのぼった1908年の「生誕100年」の頃の想い出が,その場に居合わせた語り手によって述べられているのは要チェック.

—— 外箱を見ると,本書の定価はたった「600円」だったのだが,いま古書でこの本を買うとなるとゼロがふたつほど多くなってしまう…….

◆真夏日の休日の事務的こまごま —— 〈ISHPSSB Off-year Workshop Kobe〉の講演予定者のつごうがそれぞれに“悪化”してしまってですね…….これは急遽対策を練らないといけなくなった.

◆夜もゲラ読み —— 午後9時すぎにやっと第4章のチェックを完了した.初校でのチェック厳格度がゆるいと,再校でこういうふうに手間どることになるという教訓.

◆本日の総歩数=3203歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.5kg/+0.3%.


1 augustus 2008(金) ※ 月のはじめは改心してトド撃ち

◆午前4時半起床.北寄りの風が涼しくて,安眠快眠また睡眠.曇っていて朝日は見られず.気温22.1度.快適ですなあ.

◆早朝のこまごま —— 遅滞なくメーリングリストの月例アナウンスを送信した.やればできるじゃないか!/今月の「トド撃ちリスト」を更新した.またも大小取り混ぜてずらりと…….

◆〈ダーウィン生誕200年記念・進化学プレシンポジウム2008〉のピラがばさっと届いた.日時:2008年9月20日(土)13:00〜17:00;場所:東京大学農学部1号館8番講義室.行きがかり上,やっぱり申し込みましょーかねー,と思って来月のスケジュール表を見たら,あ,だめだめ,首都大での生物統計学講義日でしたあ.

◆いろいろこまごま —— 農環研夏祭り(8月7日)に向けての直前練習スケジュールの連絡.5〜7日は連日昼休みも夕方も練習ですかあっ?(>芝池さん)/カマジン本のさらなるゲラ(第11〜12章)が届いた.無間地獄かはたまた賽の河原の石積みか…….

◆『生物哲学の基礎』の続き —— 献本してもらったマルティン・マーナ,マリオ・ブーンゲ[小野山敬一訳]『生物哲学の基礎』(2008年7月26日刊行,シュプリンガー・ジャパン,xxii+558 pp., 本体価格13,000円, ISBN:978-4-431-10025-6 [hbk] → 目次).

昨夜から目次入力をし続けていた.小見出しまで含めて訳者サイトで公開されていたのだが,ページを入れるという作業が残っていた.朝やっと入力作業を完了したので,メーリングリストに新刊紹介投稿をした.

内容をざっと概観すると,哲学体系に関する総論としての第1部「哲学的基礎」に続いて,各論としての第2部「生物哲学の根本的争点」においては,生命論・生態学・身心問題・体系学・発生学・進化論・目的論の順番で論じられている.生物学の分野でテツガク的な論議がなされたテーマが取り上げられている.

公理・定理を前提として用語や概念をきっちり組み上げていくという本書のスタイルは,ぼく個人にとっては Joseph H. Woodger『The Axiomatic Method in Biology』(1937年刊行, Cambridge University Press, Cambridge, x+174 pp. → 目次)や Søren Løvtrup の『Epigenetics: A Treatise on Theoretical Biology』(1974年刊行,John Wiley & Sons, London, xvi+548 pp., ISBN:0-471-54900-2)および『The Phylogeny of Vertebrata』(1977年刊行,John Wiley & Sons, London, xii+330 pp., ISBN:0-471-99412-X)を強く連想させるものがある.

たとえば,第7章「体系学」をざっと見ると,分類体系に関する公理化は Woodger-Gregg の路線,系統関係に関する公理化は George F. Estabrook らによる1970年代の代数的アプローチ(今では当たり前になった離散数学的解法のはしり)の香りを嗅ぐことができるだろう.しかし,この本は関連文献を網羅的に挙げているわけではないので,関係する系譜やルーツを探すことは読者に委ねられている.

翻訳書で600ページ近くある大著であり,しかもささっと読み飛ばせるようなタイプの内容ではない.論理記号も頻出するので生物系の読者には敷居がやや高いかもしれない.おまけに,値段がちょい?高いのでまずは公費購入を考えるべきかも.しかし,こういうスタイルで書かれた生物学哲学の本は今ではめずらしいので(あえて「孤高の異端本」と呼ぼう),手に取る価値は高いと思われる.

—— 参考サイト → 版元ページ(英語版)版元ページ(独語版)訳者サイト

◆午前11時.晴れときどき曇り.気温26.2度.蒸し暑さが戻ってきたかも.さらなるこまごま —— スルガ銀行の国際送金サービスの申込書類を書く.秋の〈Hennig XXVII〉(Tucumán, Argentina)の大会参加費は Western Union 経由でしか送れない.そして,日本での Western Union の窓口はスルガ銀行だから.保険証のコピーだの公共料金の領収書だのいろいろ用意すべきものがある./パスポートの有効期限が今月で切れる.更新を忘れないように.今年から,わざわざ土浦まで出向かなくても,つくばの中で(桜庁舎)パスポートが取得できるようになったのは朗報だ.

◆夕方の ISHPSSB Kobe —— ここ数ヶ月すっかり怠けていたが,11月に神戸で開催される〈ISHPSSB Off-year Workshop Kobe〉のオーガナイザー業務を再開した.講演予定者にメールを出して確認と依頼をする.当初の予定とは演者がずれる可能性が出てきたが,いずれにせよ早く確定しないと.

◆午後5時過ぎに帰宅.気温25.6度.夕方になると許容範囲だ.よろし.

◆本日の総歩数=8504歩[うち「しっかり歩数」=1034歩/10分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+0.3%.


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