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日録2008年1月 


31 januari 2008(木) ※ 睦月の終わりは重労働と重飲酒で

◆午前4時半起床.晴れ.気温1.2度.適度に寒い.ぴりぴり乾いているので,静電気が飛ぶ飛ぶ.

◆新刊届く —— Annual Review of Ecology, Evolution, and Systematicsの最新刊(vol. 38).昨年の vol. 37 から大判になったと思ったら,届いた vol. 38 は厚みまでさらにパワーアップされ,900ページ近い電話帳になってしまった(vol. 37 は700ページ弱だった).それにしても,この“定型外”の形状は本棚に納まりにくいぞ.

◆午前いっぱいはひたすら講義準備.とくに,デモ用ソフトウェアを見せる段取りを整える.tpSplin が頻繁に「out of range」エラーを出しやがる(前はこんなことなかったぞ).〈R〉の shapes は動画表示がおもしろい.またバージョンアップされてから 3D表示が高性能になっている.標識点の3D表示だけでなく,プロクラステス・フィッティングした後の主成分分析の結果も3D表示できる(「shapespca3d()」),しかも主成分軸に沿ってのアニメーション付き..前に書いた『いろはのい』は早々に改訂しないと.

◆「本気ですか?」と言われても…… —— 〈R〉を操作していて,作業スペースのオブジェクト全除去をする必要があった.今まではコマンドラインから「> rm(list=ls())」とキー入力していたのだが,たまたまメニューの「その他」に「全てのオブジェクトの消去」という項目があったので試しに使ってみたら,いきなり【本気ですか?】と訊いてきた.一瞬たじろいでしまった.消去のための確認として,【よろしいですか?】とか【この操作は取り消せません】というような事務的冷淡さを伴ったメッセージならばまだしも,【本気ですか?】ってふつー訊くか? 気の弱いユーザーだったら,「ゴメンナサイ,一晩考えさせてください」と尻尾を巻いて引き下がるかもしれない.別の場所に【本当にいいんですか?】とか【この操作の責任を取れますか?】などという確認メッセージが潜んでいたりしないでしょーね.※コマンドラインでは「> rm(list=ls(all=TRUE))」なので,どう考えても単なるオブジェクト全消去の命令に過ぎない.

◆12:11発の TX 快速に乗り込む.駒場に着いたのは午後1時半.北風が吹く乾いた晴天が建物だらけのキャンパスの上に広がる.講義開始まで1時間ほどあったので,再度プレゼン準備とデモの確認をする.まったくもってエンドレスな作業だ.

◆車中読書 —— 稲葉宏爾『カラー版・路上観察で歩くパリ』(2005年11月10日刊行,角川書店[角川oneテーマ21],ISBN:4-04-710018-8)を半分まで.煙突がつくる“ゲンバク”型トマソンが強烈だ.

◆生物統計学講義(補講) —— 今日は第4限(14:40〜16:10)と続く第5限(16:20〜17:50)のふたコマ連続.形態測定学の話をする.あらかじめ,受講生には本日の講義の内容に関して前もって次のように書いた(→〈R-statistiker〉):

「1月31日の補講は形態測定学」

1月31日(木)は第4〜5限に補講を行ないます.この補講では,形態測定学(morphometrics)について話します.生物形態を定量化して考察するという比較形態学の研究は一世紀前の D'Arcy Thompson の「デカルト変換格子」の理論に代表されるように,アイデアとしてはとても魅力的で,多くの研究者の関心を惹き続けてきました.

しかし,理論としていかにおもしろかったとしても,現実のデータ解析のための実践的ツールでなければ現場の研究者にとっては何の役にも立ちません.形態測定学が実用的なツールを提供できるようになったのは1980年代に入ってからのことです.この理論体系の構築には人類学や医学での個別事例研究が大きな役割を果たし,先導しました.

今回は,最近の形態測定学の進展を,とくに中心的な重要性を持つ幾何学的形態測定学(geometric morphpmetrics)に焦点を当て,その理論と適用例について解説します.生物学と統計学と幾何学の学際的接点として,いま形態測定学は進みつつあります.

きのう広報しましたように,補講のハンドアウトはすでに公開してありますので,各自ダウンロードしてください.カラー図版のほうがわかりやすいでしょうから.

上記の予定通り講義は順調に進み,デモをまじえつつ長丁場を乗り切った.ケンドール形状空間のリーマン多様体としての性質はさすがにはしょったが(死亡率が高くなることは明白),どういう方針で「かたちを測る」かについて理解してくれれば目的達成だ.午後5時半過ぎに講義終了.みなさん,お疲れさんでした.レポートもよろしく.※駒場で次に教壇に立つのは8ヶ月後だ.

◆午後6時前に駒場東大前から乗り,銀座線の溜池山王で南北線に乗り換え東大前へ.高崎屋で広島・藤井酒造の〈宝寿〉を.午後7時前に農学部7号館に入る.今日の午後は生物・環境工学専攻の修論発表会があって,その後に専攻交流会が午後6時から開かれている.途中から参加し,何だかもうさんざん呑んだ.この専攻は,伝統的に「いつでも飲む」・「だれもがのむ」・「とにかく呑む」という三つの家訓があるらしく,機会をひねり出しては“交流会”という呑み会がある.午後8時までが一次会,その後,各研究室に分散して二次会.埼玉・神亀酒造の〈神亀〉をいただいたり,ワインが出されたりと午後10時まで呑み続け,ふらふらと根津の坂を転がり落ちて,帰路につく.

—— つくばにたどり着いたのは午後11時半.重労働プラス重飲酒でほぼ燃え尽きた一日だった

◆本日の総歩数=9684歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=0.0kg/+0.6%.


30 januari 2008(水) ※ 振替休日はまた「禁断の果実」を

◆午前5時起床.雨上がりの曇り空.見下ろす路面はまだ濡れている.底冷え.そのうち濃い霧が立ちこめてきたが,朝日とともに青空が広がる.今日は振替休日なので,ゆるゆるする.

◆午前のこまごま —— 午前9時半に警察に免許の更新に行く.1時間弱の拘束で,むこう5年間は無罪放免(でありたい)./純水をもらって帰宅./進化学会のメーリングリスト運営に関するあれやこれやの事務連絡あり.

◆レストランの浮沈が激しい —— すぐ下の Dayz Town に入っていたイタリアン・レストラン〈Hill Top〉がつい最近閉店した.なくなってしまった店のことだから書けるが,以前,1回だけ食べに行って懲りたので,二度と足を運ばなかった.つくばは飲食店の入れ代わりがかなり頻繁な土地柄のようで,いったんダメとなるとほどなく店がなくなってしまうことが多い(そうならないこともあるが).もちろん,もっといい場所に移転するケースもあるが,そういうときはたいてい事前に情報が流れるので,敏感な客は行き先を知っている.しかし,実際には閉店の憂き目に遭う店の方が多いのだろう.なくなってとても残念だと感じる場合もないではないが,大半は「やっぱりね」と思えることがほとんどだ.

◆休日は「禁断の果実」で —— 生活クラブから牛すね肉ブロックが届いたので,またまた〈「禁断の果実」煮込み〉をつくることになった(→前回).時間さえかければ簡単につくれるというのがいい.MOGの「やまや」で〈禁断の果実(De verboten vrucht)〉を5本購入.昼過ぎから仕込みを始める.肉の塩故障とローストをすませて,玉ねぎスライスを1時間あまりかけて無塩バターでじっくり炒める.肉と合わせて深鍋に入れ,〈禁断の果実〉をいっぺんに注ぎ込んでひと煮立ち.あとは弱火にかけるだけでおしまいだ.今日はショートコースで6時間煮込むことにする..

—— 今夜の食卓に上げる予定なのだが,できれば明日の方がよりおいしくなっているにちがいない.

◆シェフ仕事が終わったのは午後3時すぎだった.雲が多くなってきたが,夕日は見えた.日中は久しぶりにとても暖かかった.

◆煮込みながらの読了本 —— 松本泰生『東京の階段:都市の「異空間」階段の楽しみ方』(2007年12月30日刊行,日本文芸社,ISBN:978-4-537-25545-4).谷中の“夕焼けだんだん”が載っていた(p. 144).あのエリアは旧・藍染川に向かって高低差がある地形が連なるので,長短太細さまざまな階段や坂道が隠れていることを知っている.それにしても,この著者が探し当てた選りすぐりの階段たちはいろいろな表情をしていた.個人的には路地裏に隠れた階段に惹かれる.戸口付き階段や,屈曲階段あるいは分岐階段もある.本書では実用階段をリストアップしているので,残念ながら“純粋階段”のような物件は出てこない.しかし,著者も指摘しているように,短期間に大規模な開発がなされる東京では,たとえば《田端駅そばの切り通し階段》(pp. 170-1)のような“トマソン”すれすれの物件が生じる確率もまた高いにちがいない.

◆「禁断の果実」を呑みかつ喰う夜 —— アルコール度数8.5度もあるビールをあおり,籠絡された肉を食らうとは,なんというバチあたりなことを.しかし,今回も美味だった.だから黙って追放されましょう…….

◆夜のこまごま —— 月の終わりには「トド」のリストを更新するようにしている.何だかまた頭数が増えてしまったぞ./でもって,頼まれ原稿入力の続きが……./明日の講義のデモ用ソフトウェアの順番を考える.tps系ソフトウェアはさておき,〈R〉の形態測定学パッケージ「shapes」は,昨秋のバージョンアップで3D表示と動画の機能が強化された.アニメーション表示は形態測定学ツールのセールスポイントなので,講義でもうまく使いたい.

◆明日は,午後に駒場での補講がふたつあり,その後は本郷で専攻交流会が夜に予定されている.気力と体力の勝負だ.知力も少しばかり.

◆本日の総歩数=2550歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/−0.5%.


29 januari 2008(火) ※ “ぽぱー”のカタマリを用意する

◆何だか午前3時に起床してしまう.小雨そぼ降る中を,夜中の研究所に到着.気温1.6度.冷え込みはないが,湿って寒い.

◆夜中のこまごま —— TiddlyWiki は農水省サーバーにおいても read only だったら機能することを確認(編集操作はできない)./農水交流センターからメールが入っていた.今日の午後1時半に来室とのこと.

◆朝のこまごま —— 貸し倉庫に行って荷物の整理と入れ換え.“ポパー”のカタマリを抱えて研究所へ.20年以上も前に買った本がほとんどなので,兇悪に茶色がかっている.湿気だか黴だかホコリだかが張りついていて,心持ち重くなっている気がする.投げて当たったらさぞかし痛いだろうな……./越中の“徒然亭草々”さんからチクリとメールが届く.返事を書く“徒然亭馬鹿狭”…….まいったなあ./東大図書館のオンライン閲覧について確認する.構内でしか e-DDS はダメっぽいかも.農学部図書館で確認する必要があるな.とりあえず登録作業だけはすませたけど.

◆午前10時の気温は3.7度.小雨がしとしと降り続く.

◆農水交流センターでの生物系統学ワークショップ企画 —— 午後1時半からセンター担当者と打合せ.秋に三日程度のワークショップ(実習付き講習会)をしてほしいとのアンケート希望が多くあるらしい.前向きに検討しましょう,ということでコーディネータを引き受けることになった.大まかなスケジュールと講師候補者の立案をする.農水省独法だけでなく,都道府県や民間にも受講者応募をするらしい.

資金的なことは交流センターの丸抱えなので,プランがしっかりしていれば実現の可能性は高い.tree-building だけではなく,“プラス・アルファ”を考えたい.マンパワー的にはバイオインフォマティクスか,それとも役に立つ統計モデリングか.年度末までに素案を出すことになった.※系統推定の手順であれば Barry K. Hall 本のような全体構成が立てられそう.

—— このワークショップは,農環研との共催企画にしたいということなので,所内のライン経由で上申する必要がある.事務的な仕事はミニマルにしたいが.

◆Rolf Löther の本を2冊 AbeBooks に発注完了 —— Rolf Löther『Biologie und Weltanschauung: Eine Einführung in philosophische Probleme der Biologie vom Standpunkt des dialektischen und historischen Materialismus』(1982年刊行,Urania Verlag)とRolf Löther『Das Werden des Lebendigen: Wie die Evolution erkannt wird』(1983年刊行)の2冊.この著者は,生物学の哲学の中でも,体系学・進化学・遺伝学・医学が専門.

◆午後のこまごま —— 進化学会の印鑑を事務局に返送した.これにてワタクシの責務は完了です.あわせて,進化学会が参加している外部団体との窓口を新役員に交代する手続きを依頼した./東京農大・昆研の卒論発表会は2月16日(土)の朝から開催されるそうだ.当然,終ったあとは狂乱の?懇親会になる./“草々さん”からまたまたちくりちくりメールが…….本にするときに改善しますです,ハイ.

◆午後4時から,2週間ぶりの1時間ほど,『Modern Morphometrics in Physical Anthropology』の輪読セミナーの第8回.Chapter 3 : Philipp Gunz, Philipp Mitteroecker, and Fred L. Bookstein「Semilandmarks in Three Dimensions」(pp. 73-98)の理論セクションを読む(pp. 80-83).3次元座標に対する薄板スプライン補間関数の構築を,カーネルから出発してたどる.変分法の離散化による最適化という点では2次元も3次元も変わりはない.この章では,通常の標識点(landmark)以外に,準標識点(semilandmark)をも許容する.問題は,座標のいくつかが不確定である準標識点の位置をどのように最適化するかということだ.著者らは,比較する形態の標識点セット(準標識点サブセットを含む)の間で,仮想変形を考えたとき,屈曲エネルギーが最小化されるような準標識点の位置決めを目指す.ある輪郭に沿っての準標識点の変位に伴うカーネルの値を線形結合で集計するとき,その係数ベクトルを屈曲エネルギーが最小になるように求めるという方法だ.

◆午後5時過ぎに帰宅.冷たい雨がまだ降り続く.明日は振替休日で休みだし,明後日は駒場での長時間補講.だもんで,コンピュータやらハンドアウトやらさまざまな荷物を抱えるはめになった.講義準備は素材は十分にあるのだが,スライド講義とデモ講義の“かけあい”をどのようにコーディネートするかを考えないといけない.tps系ソフトウェアと〈R〉の「shapes」パッケージを登場させる予定だ.

◆夜はまたまた頼まれ原稿入力作業の続き.外はまだ小雨が降っている気配.

◆本日の総歩数=4778歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.8%.

28 januari 2008(月) ※ 降り積もる火山灰を掃除する

◆うっかりすっかり5時半まで寝過ごしてしまう.晴れて寒い夜明け前.

◆入手メモ —— 藤枝守『[増補]響きの考古学:音律の世界史からの冒険』(2007年2月9日刊行,平凡社[平凡社ライブラリー603],ISBN:978-4-582-76603-5 → 目次).「音律」をキーワードにして,古代ギリシャ・古代中国・アラブ世界・西欧と時代を旅して,現代にいたる.まだ読み始めていないが,目次をざっと見るかぎり,現代音楽の実験的な音律について多くのページが割かれている.しかし,まったく知らない音律の世界だ.しばらく前に出たブルーバックスにも,音律の科学について書かれた本があった覚えがある.

◆午前のこまごま —— 〈TiddlyWiki〉を Mac にも導入したので,ブラウザを Safari から FireFox に乗り換えてしまった.Java の設定変更がめんどうなのでね./駒場「生物統計学」アンケートを本郷に返送するとともに,集計の公表をブログでアナウンスした.事務室からの連絡によると,過去数年間のアンケート集計結果は大学として公表している.しかし,ぼくが知りたいのは,講義“総体”としての集計ではなく,個々の講義がどうなのかということだ.※さすがにそこまでは公表していないか…….でも,それをしないとFDとしての効果はまったくありません./駒場三点セットの準備.出席票とハンドアウトの印刷は準備完了.今回はふたコマ続きで形態測定学をたたき込むつもりなので,ハンドアウトが重すぎて……(公開pdfも5.6MBあったりする).デモ用のtps系ソフトウェアの動作確認と手順を台本化しないと.名大の〈成長するティップス先生〉には「ポートフォリオ」をつくると講義のティップスが記録に残ると書かれている.確かにそうかもしれない.

◆午前10時.快晴.気温3.4度.

◆午後のこまごま —— 住所変更を各会計担当者に連絡していなかった.不手際./その他,いくつかの問合せに答える./堆積していたメーリングリストの変更作業とか./音羽から原稿OKとの返事あり.最初の予定では12〜15回の連載だったので,そろそろ今回の『』連載の結末をどーするかを考えよう./先日レフリー依頼があったのだが,さすがにこういうピュア数学な論文はワタシの出番ではありません.辞退の返事を書く.

◆午後になって雲が厚くなってきた.

◆近刊メモ —— 千葉県立中央博物館(編)『リンネと博物学:自然誌科学の源流(増補改訂)』(2008年2月刊行予定,文一総合出版,ISBN:978-4-8299-0129-8).大判300ページで本体価格が「15,000円」!.さあ,公費で買おう(汗).版元ページには,すでに「予約注文フォーム」が開設されている.また,内容紹介パンフレットも公開されているのだが,pdfで「15MB」もあるのは,ちと重すぎないかい? 悩ましいのは,1994年の「初版」をすでにもっているワタシのような読者だろうか.買うべきか,買わざるべきか.何はともあれ,実物をリアル書店の店頭で開いてみるまでは決断できそうにない.

◆夕方のこまごま —— 農林水産研究交流センターから,つくばで分子系統学の講習会を企画したいのでご協力をとの依頼あり.了承の返事を返す./ステップ行列の作成についての質問が来る./進化学会の新しい役員体制が確定したとの連絡あり.よかったです.頑張ってください./領域で主催するリモセン関係のシンポジウムは5月30日(金)に開催するとのこと.

◆午後5時すぎに帰宅.今日は農環研分会の旗開きがあるのだが,チケットは買ったもののするーしてしまった.ごめんなさいねえ.

◆本日の総歩数=4959歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.6kg/−1.1%.

27 januari 2008(日) ※ 日だまりで本読みタイムを

◆午前6時に自然起床.制約がなくなると,朝もゆるゆるになる.晴れ.冷え込んで寒さが続く.しかし,寒気の勢いは弱まりつつあるらしい.来週はもう2月だし.

◆日曜早朝のこまごま —— 駒場講義ブログに授業評価アンケートの集計結果を公表したことをアナウンスした.

◆とっても便利な〈TiddlyWiki〉 —— ngt さんに教えられた〈TiddlyWiki〉なるブラウザ用メモ帳Wikiをさっそくインストールしてみる.おお,これはとても軽快でいいツールじゃないですか.いまは世を忍ぶ仮の DynaBook を使っているので,これまでは〈Wzボード〉というエディタ付属のメモ機能を利用してきたのだが,イマイチ使い勝手がワルかったので,〈TiddlyWiki〉をしばらく試用することにしよう.→参考記事:「TiddlyWikiのススメ」.

—— メモ帳本体のhtmlファイルをひとつ持ち歩くだけで,いつでもブラウザでの編集操作がJava上でできるという簡便さが〈TiddlyWiki〉の魅力.

◆〈R〉新刊メモ —— 山田剛史・杉澤武俊・村井潤一郎『Rによるやさしい統計学』(2008年1月刊行,オーム社,ISBN:978-4-274-06710-5 → 版元ページ).出版社の紹介によると,前著『SPSSによるやさしい統計学』をR用に書き直した新刊らしい./長畑秀和・大橋和正『Rで学ぶ経営工学の手法』(2008年1月刊行,共立出版,ISBN:978-4-320-01855-6 → 版元ページ).こちらの新刊はOR(operations research)を中心とする内容とのこと.

—— それにしても,最近の〈R〉関係の新刊ラッシュは驚くばかりだ.

◆ちょいと頼まれ原稿仕事で時間がどんどんどんどんなくなっていく…….

◆おお,あの“妖鬼化”の「完全版」とは! —— 水木しげる『妖鬼化・完全版[妖怪原画集+DVDセット]』(全12巻,ソフトガレージ).今月から販売開始.まずは,『第1巻:沖縄・九州』(2008年1月25日刊行,ソフトガレージ,ISBN:978-4-86133-105-3)と『第2巻:四国・中国 I』(2008年1月25日刊行,ソフトガレージ,ISBN:978-4-86133-106-0)の2冊が刊行される.版元サイトでは「収録妖怪リスト」や動画(有料)も見られるようだ.

—— ぼくはすでにいちばん最初に出た大判の全6巻版をもっているので,もういいかな.でも動画DVDというのは魅力的ではある.なんせ「1,300体」やもんねえ.

◆午後は温室と化した西向きの部屋でぬくぬくと本など読んで —— Randall Collins『The Sociology of Philosophies : A Global Theory of Intellectual Change』(1998年8月刊行,Harvard University Press,ISBN:0-674-81647-1 [hbk] / ISBN:0-674-00187-7 [pbk]→本文目次図版目次)の序章をゆるりゆるりと読む進む.

著者が25年をかけてこのような大著を著した意図は,思想界の「知的[人的]ネットワーク」を鳥瞰することにより,世界史全体にわたる思想的なダイナミクスとソシオロジーを明らかにすることにあると言う.哲学のさまざまな概念や思想は「人」を通じて媒介され伝搬するのだから,思想家の「世代」を時間的な物差しとすることにより,そのネットワークの様相と変化をたどれば比較世界史・比較哲学が可能だと主張する.

知的ネットワークが概念を産み出すのであり,そのネットワークを支えた同僚たち・師弟のつながり・敵対者の存在が要因としてもっとも重要であると考える.「知識の社会学」の看板を掲げているので,当然のことながら“社会的構築論”に対しても一家言あるわけで,ポストモダニズムに対する批判する一方で,実在論を支持する“社会的構築論”を著者は目指している.

◆夕方のこまごま —— 生物地理学会の役員選挙の開票は2月11日(日)午後,川口にて./『本』のコンパニオン・サイトの体裁を変更してみる.連載もそろそろ後半に入ったので,全体としてのまとまりを考える必要があるだろう.

◆そういえば,今日は午前中にマンションの定期総会,午後は消防訓練があったのだが,どちらもスルーしてしまった.会議なとは“私的優先順位”がきわめて低いので,よほどやることがないかぎり,出ない確率が高い.最近は研究所の所内会議だっ……[以下略]

◆本日の総歩数=1848歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.6kg/+0.2%.


26 januari 2008(土) ※ ゆらゆら過ごすウィークエンド

◆午前5時起床.星空.冷え込み強し.夜明けが早くなってきたことを体感する.迫られ原稿にケリをつけたので,しばし in paradisum.

◆コマバ後始末(ひとつめ) —— 昨日集計が終わった「学生による授業評価アンケート」の結果を勝手に公開した(→集計結果).元のアンケート回答用紙は週明けに理学部事務宛に返送することになる(その後の処理は向こう任せ).駒場での講義は今年が初めてなので,“評価者”たちがどの程度のシビアさで臨んでくるのかがよくわからない.それは相手方にとっても同じで,ワタクシがどれくらいの“鬼仏度”で成績をつけるのかはきっと未知数にちがいない.

アンケート集計結果をざっと眺めるかぎり,まずまず妥当な結果ではないだろうか.毎回の講義ごとに質問やコメントを書いてもらっているので,今回の「大学公式アンケート」の自由記入欄にはほとんどコメントはなかった.しかし,講義に関するいくつかの改善すべき点は具体的にわかっているので,来年冬学期の講義の際にはできるだけ対応しましょう.

◆ぼくの場合,教壇に立ったときの“大技・小技”はかつて予備校にいた頃にすべて会得した.今では各大学もファカルティ・ディベロップメント(FD)にはそれぞれ工夫を凝らしているようで,たとえば名古屋大学の〈成長するティップス先生 Ver1.2〉のように書籍化されるほど有名なFDサイトもある.ただし,その一方で,学生による教員評価システムの功罪については論議が続いている.一昨年のARGの記事(「授業評価サイトは中傷でいっぱい?」とか「大学による授業評価アンケートの公開事例」)に伴うやりとりを読んだり,あるいは『生物科学』に数年前に載った論考:渡辺勇一「学生による授業評価をどう見るか」を読むと,試行錯誤は続いていることがわかる.

匿名の講義評価サイト〈みんなのキャンパス〉はすでに有名だが,駒場に関していえば,学生サークル「時代錯誤社」が発行している月刊マガジン『恒河沙』の別冊として「教員教務逆評定」が毎年出る.読者が投稿する「逆評定アンケート」の質問項目を見れば学生側のホンネが垣間見える.

—— いずれにせよ,ぼくの基本ポリシーは「教室にいる受講生には損はさせまへんでぇ」という一言に尽きる.今期の講義は来週の補講を残すのみとなったが,連続3時間の高座を務めさせていただきます.

◆コマバ後始末(ふたつめ) —— 〈R-statistiker〉にいくつかの情報を流した.まずは,第2回レポート課題のオンライン公開.次いで,ベイズ関連のソフトウェア〈Bayesian Coin Tosser〉,〈MC Robot〉,そして〈WinBUGS〉.さらに,Bayesian MCMC の近刊:David Spiegelhalter, Nicky Best, Andrew Thomas, and David Lunn『Bayesian Analysis Using Bugs: A Practical Introduction』(2008年1月近刊,Chapman & Hall / CRC, ISBN:978-1584888499 [pbk]).しかし,フシギなことに,版元 Chapman & Hall のサイトにも,また筆頭著者 David Spiegelhalter のサイトにも,この本の情報は載っていない.アマゾンに掲載されているだけだ.※まさか,「近刊予約可能」のまま“長期間”待たせるんじゃないだろうねえ.>amazon.

◆散策していてたまたま見つけたサイト —— 〈Mathematics Genealogy Project〉.AMSに置かれている.「Mathematical Genealogy」ではなく,「Mathematics Genealogy」なので間違わないように.世界中の数学者の研究者コミュニティにおける出自と師弟関係を系図化しようというプロジェクト.すでに10何万人かのエントリーがあるという.

◆厳しく寒い夜がゆるゆると更けていく.

◆本日の総歩数=2893歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+0.9%.


25 januari 2008(金) ※ 性懲りもなく,また窮鼠に変身

◆午前4時半起床.三日ぶりに研究所に未明出勤.北風が冷たい.星空.気温マイナス0.7度.朝から晴れてはいるのだが,北風が強くて寒い.午前10時の気温は4.4度だった.

◆窮鼠の決意 —— 今日こそは何としても連載原稿を書きあげないとどうしようもない.昨日までに1/3は書いてあるのだが,出だしと末尾が書けても,本論がなければキセルになってしまうので,朝からがしがしと書き始める.正午までに12枚まで書く(10KB越える).

バッド・タイミングなことに,音羽から“鞭電話”が入ったので(昨日も実はあったのだが講義中を口実にスルーした),午後もさらに書き続ける.BGMはペロタンのポリフォニーで.ああ中世に帰りたい…….しかし,書いている内容は,まさに“喜劇”と“茶番”のドッキングなので,とても静謐な気分にはなれない.

—— 午後4時過ぎにやっと仕上がったので,メールで送信完了.『』連載第9回:「一度目は喜劇,二度目は茶番」(2008年3月号掲載予定).これで今月の肩の荷は無事におりましたです.※なお,今回の掲載予定記事についてはミチューリン運動の試験地だった下伊那の読者から問合せがあった.どうもありがとうございます.今回の号が出たら送らせていただきます.

◆昨日,集めた駒場「生物統計学」講義評価アンケートを集計してもらう.こちらで集計する必要はなく,そのまま理学部に返送すればいいのだろうが,初年度だし,東大がどのように結果を公開するのか知らないので,念のため手元で集計した.※ほほー,そーいうことですか,ということでした(明日ね).

◆備忘メモひとつ —— David L. Dowe, Steve Gardner and Graham Oppy (2007), Bayes not Bust! Why Simplicity is no Problem for Bayesians. The British Journal for the Philosophy of Science 58(4): 709-754(doi:10.1093/bjps/axm033|アブストラクト).熱きベイジアンが蕎麦センセに挑戦する! 「最節約性」だの「AIC」なんぞ,屁のつっぱりにもならない,とか.こんなところで球面統計学が出てくるとはねえ.

◆今日は集中し過ぎてすり減ったので寒くならないうちに撤収しようと思ったのだが,北風が強過ぎて行き倒れそうになる.夜、昨日の日録を送信し,今日の日録を書き始める.いくつか堆積している雑用があるのだが,今日は対応不能でした.あとでまた.

◆日が変わる頃,やっと窮鼠から人間に復帰した.ふと思い立って:Randall Collins『The Sociology of Philosophies : A Global Theory of Intellectual Change』(1998年8月刊行,Harvard University Press,ISBN:0-674-81647-1 [hbk] / ISBN:0-674-00187-7 [pbk]→本文目次図版目次)のヘーゲル以降の弁証法の思想史マップをめくり始める.観念論から唯物論へとツリーやネットワークが絡みついている.

◆本日の総歩数=5603歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=+0.3kg/+0.3%.


24 januari 2008(木) ※ 今度はコマバに逃げ込んで……

◆午前5時起床.曇りのち夜明け前の濃霧.気温が下がってきたためか.路面はまだ濡れていて,湿気で底冷えする.

◆朝から原稿三昧 —— 午前中に8枚ほど書く.まだまだ.天気は朝のうちに回復し,青空が広がる.しかし,気温は低いまま.そのうち,強い北風が吹きつけてきた.前線が通り過ぎ,冬型の気圧配置になったのだろう.

◆新刊雑誌 —— 『谷中・根津・千駄木(第88号)』(2007年11月15日発行, 谷根千工房 → 谷根千ネット).特集は〈「介護」はたいへん?〉.終刊まであと5号だ.

◆今日も東京に出かける —— 13:11の TX 快速で駒場に向かう.強い北風が身を切る.午後3時前に非常勤講師室にたどり着く.直前ドロナワの講義準備.スライドの用意と配布物の確認,そしてデモ・ソフトの手順リハーサル.あっという間に1時間が過ぎる.

◆16:20〜17:40 生物統計学講義(第11回) —— 前回に引き続き,今週もベイズ統計学の続きで,Bayesian MCMC の解説をする.先週は,講義途中で DynaBook が死んだので,代替の Latitude をもってきた.まずは〈Bayesian Coin Tosser〉で beta-prior binomial のデモンストレーションをする.続いて normal-prior normal の事例.いずれも解析的に事後確率分布が計算できる.その後,Bayesian MCMC の解説スライドに進む.ここのところは割に詳しく話したと思うのだが,受容の程度はどうだろうか.

マルコフ連鎖のデモンストレーションは Paul O. Lewis〈MC Robot〉を使った.教育用ツールとしてはたいへんすぐれたソフトウェアだと思う.もっと複雑な事例については,〈WinBUGS〉を利用したデモを行なった(normal-prior hierarchical normal).今回の講義のために初めて〈WinBUGS〉を使ってみたのだが,これはとても使いやすい分析ツールね.今回のデモでは,〈R2WinBUGS〉パッケージは使わなかった.

—— 講義の最後に,第2回目のレポートを出題し,「講義評価アンケート」を記入してもらった.これでおしまい.来週は2コマ続きの補講だが,形態測定学をたたき込むことにしている.

◆日が暮れて,井の頭線の駒場東大前のプラットホームで北風にしばし吹きさらされる.来週の補講がすんだら,しばらくはここに来ないだろうな.

◆往復車中読書 —— 中村禎里『ルイセンコ論争』(1967年刊行,みすず書房,東京).たまたま古書で入手できたが,その後(1997年)『日本のルイセンコ論争』と改題されてみすず書房から復刊された.40年前の本だが,こういうふうに当時の記録をまとめてくれたので,今回の連載原稿の執筆にはたいへん役に立った.ルイセンコが失脚した「1954年」を境として,日本共産党のバックアップを受けていたルイセンコ主義やミチューリン運動は,その影響力を急速に低下させた.当時の基本文献だった徳田御稔『二つの遺伝学』(理論社)も手元にあるのだが,初版が出た「1952年」は確かに絶好調期だったが,新装版が出た「1968年」といえばすでに時代遅れだったはず.ところが,新装版の徳田の文章をいくら読んでも,総括や反省はいっさい見られない.時代の流れを見なかった,あるいは見えなかったということか.

◆午後8時半,筑波颪が吹きすさぶ中を帰宅.とにかく寒過ぎます.

◆夜,連載原稿をさらに書き続けるものの,日が変わる頃に力尽きる.ええい,明日だ明日だ.とケータイをみれば,音羽からしっかり督促電話が着信してるし…….orz.

◆本日の総歩数=7010歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/−0.8%.


23 januari 2008(水) ※ コッソリ本郷に逃げ込んで……

◆午前4時半起床.曇り,ときどき小雨(雪降らず).気温1.8度.昨夜は不甲斐なくも「TKO負け」を喫してしまい,原稿はケリつかず.しかし,とりあえず,今日と明日は東京出張が入っているので,その支度をすませておく.

◆新刊メモ —— 杉本つとむ『西洋人の日本語発見:外国人の日本語研究史』(2008年1月10日刊行,講談社[講談社学術文庫],ISBN:978-4-06-159856-0 → 目次).フランシスコ・ザビエル以降,17世紀から幕末までの3世紀の間に日本にやってきて「日本語」と格闘した外国人たちの話.日葡辞書は確か岩波文庫に入っていた覚えがある.杉本つとむの蘭学史本もいつかは読んでみたいのだが,なかなか手が届かない.また,20年も前の本だが:杉本つとむ『江戸の博物学者たち』(1985年2月15日刊行,青土社,ISBNなし)はたいへんおもしろい本だった(最近,学術文庫に入った).

◆雪の湯島天神からすずらん通りへ —— 10:18発の TX 区間快速で東京に出る.茨城は雨だったが,千葉に入ったとたん雪になって,車窓からの風景が白くなった.湯島天神でちょいと所用を.東京は雪というよりは霰かな.氷の粒が空から降ってくる.気温は零度近いのではないか.その後,神保町をサーチしてから,東大農学部に向かう.霰がぱらぱらと降っている.

◆往路車中読書 —— 湯浅俊彦『日本の出版流通における書誌情報・物流情報のデジタル化とその歴史的意義』(2007年12月20日刊行,ポット出版,ISBN:978-4-7808-0111-8 → 版元ページ目次)の残りの章:第5章「日本図書コードおよびISBN導入をめぐる図書館界の動向」,第6章「電子タグの導入と出版流通合理化」,そして第7章「結論」を読了.第4章で論じられていたように,日本ではISBN導入の旗振りを図書館が行なった(しかもその経緯には不明な点がある)という指摘が興味深い.

◆午後1時過ぎから3時半まで,専攻教員会議.今年の「大学暦」が配られた.こまごまとした議題が次から次へ流れていく.外は雪だか雨だか霰だかが降り続いている.冷え切った隠れ部屋でごそごそするものの,あまり生産的ではないので,帰路に着く.千駄木の往来堂書店を見回ってから,谷中の〈マミーズ〉でアップルパイを買う.小雨.つくばにたどり着いたのは午後5時半だった.雨止まず.茨城は,終日,雪ではなく雨だったそうだ.

◆補足情報 —— 田山花袋『日本一周』の書誌情報は下記の通り:『[復刻版]田山花袋の日本一周(全3巻+付録[箱入り])』(2007年12月19日刊行,東洋書院 → 版元ページ).「前編:東海・近畿」(復刻版 ISBN:978-4-88594-400-1|元本:大正3年4月8日刊行)|「中編:中国・九州・四国」(復刻版 ISBN:978-4-88594-401-7|元本:大正4年5月4日刊行)|「後編:関東・東北・北海道」(復刻版 ISBN:978-4-88594-402-4|元本:大正5年8月5日刊行).元本は博文館からの出版だ.なお,別冊付録は『大正四年版「時刻表」』で,200ページほどある.覆刻に際しての解説記事などはとくに付けられていない.

◆夜は原稿書き一筋です.ハイ.書きます書きます.ハイ.

—— ということで,せっせせっせと5枚ほど書いたところでタイムアップ…….まだ1/4.なかなかケリがつかん.※それにしても,いきなり結末の節を書くか,ふつー.

◆まだ小雨が降っている気配.明日はコマバ講義日.配布物や代替パソコンが重荷だ.

◆本日の総歩数=11928歩[うち「しっかり歩数」=1453歩/13分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+0.6%.


22 januari 2008(火) ※ ええぃ今日こそはカタつけたるぅ

◆午前4時20分起床.まだ真っ暗な西の空に満月が浮かぶ.気温は午前5時にマイナス2.2度,のちマイナス3.8度まで下がった.久しぶりのきつい冷え込みだ.

◆午前のこまごま —— 外部からの図書借出しの処理.うちの部屋には他にはない統計学の本がたくさんあって,割に頻繁に貸与依頼が届く.一昨年の居室移転の後始末がぜんぜんできないまま,また年を越してしまったので,当然のことながら本の整理もまったくできていない.できれば年度末に本棚だけでも買って置きたい.しかし,生半可な量ではないので,二の足を踏んでいる.始めればキリがないから.今朝も,“バベルの塔”の頂上近くに埋まっている本を掘り出そうとしたら,その振動で別の何冊かが暗黒の“奈落”の底に落ちていった.しかし,いったいいつそれらを回収できるのか,誰も知らない……./駒場三点セット.出席票とハンドアウト,レポート課題の印刷をすべて完了.授業評価アンケートを用意する.ついでに,WinBUGS 関連の資料をいくつか.DELL機の準備も怠りなく./12日(土)の振替えは30日(水)と連絡した.

◆午前10時の気温は3.8度.きりりと寒い快晴日.空気がとても乾燥しているので静電気がばちばち飛ぶ.

◆昨日,自宅宛に『』2008年2月号が届いていた(「いたるところリヴァイアサンあり」pp. 44-51).これでいよいよ次の分の連載原稿を書かないわけにはいかなくなった.ここ数日,参考資料を持ち歩いているのだが,そろそろ踏み出さないと.ケリつけないと.今回のテーマも“幽霊”といえばそのとおりなのだが,何だかグロ系の魑魅魍魎の世界みたいでしてなあ.ちゃんと死んだはる? どっこい,生きたはる?

いずれにしても一両日中には仕上げないといけないので,午後は手元の資料をもとにして“プロットづくり”に精を出す.そろそろ臨界点なのできっと大丈夫でしょう.

◆でも,よそ見したり —— 稲葉宏爾『カラー版・路上観察で歩くパリ』(2005年11月10日刊行,角川書店[角川oneテーマ21],ISBN:4-04-710018-8).おお,フランセな“トマソン”たち.その他,路傍のオブジェクトたちがカラー写真でずらりと.カラー版の新書という出版形式はなかなかお得な気がする.

◆夜は,斎戒沐浴ののち,ココロ静かにキーボードに向かう.弁証法的唯物論,ルイセンコ主義,ミチューリン運動(ヤロビ農法),メンデリズム vs. ラマルキズム,民科,日本共産党,徳田御稔『二つの遺伝学』,佐藤七郎,スターリン,そしてマルクス・レーニン主義的「種概念」論争

—— 蠢く魑魅魍魎が多過ぎて“毒”がまわりそう…….

◆明日こそは雪が積もると天気予報では力説していた.ホンマに降るんやろなあ…….

◆本日の総歩数=6635歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.2kg/−0.6%.


21 januari 2008(月) ※ ぜんぜん雪降らず大寒の肩すかし

◆午前4時半起床.おそるおそる外を覗いたら,雪なんかぜーんぜん降ってません…….ただの曇天.気温もプラス1.2度.ハズレましたな,これは.

◆午前のこまごま —— 今週の駒場三点セット+α:スライドとハンドアウト原稿そして出席票はすぐに完了.第2回レポート課題については,理学部への成績報告の締切日との関係でレポート提出期限を調整する./菌学会の要旨提出は2月末日までに./生態学会の講演pptは3月4日までに登録りこと.フラッグが方々で振られている./常盤台にメール.

◆午前10時の気温3.7度.曇り.低気圧が予想よりも南に下がったそうで,雪は降らずじまい.しかし,寒いことは寒い.

◆昼休みのこまごま —— メーリングリストの登録作業を少しばかり./ISHPSSB関連の事務メールやりとりが流れてくる./外は曇天.いかにも寒そうなので歩かず.逼塞あるのみ.

◆この本を覆刻してくれるとはねえ —— 山内志朗『普遍論争:近代の源流としての』(2008年1月10日刊行,平凡社[平凡社ライブラリー630],ISBN:978-4-582-76630-1 → 目次).元本は,15年前に哲学書房から出た:山内志朗『普遍論争:近代の源流としての』(1992年11月25日刊行,哲学書房[中世哲学への招待1],ISBN:4-88679-53-4)だ.当時としてはたいへん高価な本で(本体価格で「6,900円」もした),店頭で手にしたものの,さすがに買うのをためらった記憶がある.

実物を手にしたのはその数年後のことで,第2刷(1995年2月25日刊行)を古書として入手できた.もちろん,正しい意味での「形而上学」を学ぶ上でたいへん役に立ったわけで,新刊で出たときに逡巡したのは実に浅はかなことだった.

—— 今回の復刊に際しては,元本の各章への「補足」が付け加えられ,巻末の「中世哲学人名小辞典」には大幅に書き換えられた項目があるという.

◆〈ISHPSSB〉Off-year Workshop の日程が確定したとの連絡あり —— 期間は2008年11月5日(水)〜7日(金).場所は神戸大学・瀧川記念館にて.これで,この方面も本格的に動きだすことになる.

◆夕方のあたふた —— 完了したと思っていた駒場三点セットに思わぬ致命的ミスが発覚してしまった.あわてて元スライドを修正し,再度展開する.【質問】MCMCの「burn-in」の定訳はあるのでしょうか? 元はコンピュータ業界用語だそうですが.

—— いずれにせよ,これで講義準備はおしまいだ.コピー単純労働は明日まわし.

◆午後5時に撤退.気温3.7度.原稿書きの資料として本を何冊も抱えて帰る.徳田御稔や中村禎里の本をめくるのは何年ぶりのことだろうか./農環研の分会旗開きは1月28日(月)の夕方から食堂にて.チケットを買う.

◆夜は原稿のためにのみある…….

◆本日の総歩数=5219歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/−0.7%.


20 januari 2008(日) ※ 雪雲じわり接近中,原稿かまくら

◆つい寝過ごしてしまい,午前5時半起床.薄曇りの晴れ.ここのところ明け方の厳しい冷え込みが続いている.

◆久しぶりの早朝歩き読み.しかし,この季節はあまり朝が早過ぎると,夜明け前で本が読めない.だから,日の出した後の6時半くらいに出発 —— 湯浅俊彦『日本の出版流通における書誌情報・物流情報のデジタル化とその歴史的意義』(2007年12月20日刊行,ポット出版,ISBN:978-4-7808-0111-8 → 版元ページ目次)の第3章「出版流通対策協議会と第2次ISBN論争」と第4章「市民運動・労働運動の視点から見た日本図書コードおよびISBN問題」の途中まで読む.著者の言う出版流通業界の“南北問題”とは,小数の大手出版社と多数の中小(零細)出版社との利害対立の図式である.

第3章では,中小出版社がつくった流対協(出版流通対策協議会)の活動を軸として,この“南北問題”ならびに2005年以降に顕在化した“第2次ISBN論争”(ISBNの「13桁」化が火種となった)について論じる.前章で論じられた1980年代初頭の“第1次ISBN論争”が出版活動への国家統制への懸念という政治的メッセージをもっていたのに対し,四半世紀後の“第2次ISBN論争”は出版業界の利害対立すなわち“南北問題”がクローズアップされてくる.このちがいを著者は次のように述べている:

第1次ISBN論争と第2次ISBN論争とを比較すると,流対協の批判がかなりトーンダウンしているように思われる.[……]1980年代の「本の総背番号制」=国家による出版物の一元的管理と出版の自由の侵害という批判の論理はもはや展開していない.実際,書籍にISBNが表示されたことによって出版物の国家統制は行われなかったし,国際的にみてもISBNはそのような事態のをもたらすことはなかった.しかし,流対協の批判のうち,書誌情報のデジタル化がいずれ出版コンテンツそのものの売買をもたらす可能性があるという指摘の方は現実化したと言わざるをえない.(p. 114)

つまり,表層の「ISBN問題」と連動する深層の諸問題に目を向けなければならないという著者の指摘だ.

◆そのまま筑波大学の構内をうろうろしようと思ったのだが,考えてみれば今日はセンター試験の二日目だ.アヤシイ歩行読書者が徘徊していたのではいらぬ嫌疑がかかるかもしれない.あっさり日和って,Uターン.Brotzeit経由で帰路に.今朝も厳しく冷え込んで,池の水は凍りつき,路傍の霜柱は5センチほどに生長していた.天久保に新しく開店したとおぼしきメキシコ料理店の店先にて,断面がきれいな“ハート”型をした木のオブジェに遭遇した.みごとな“うろ”が材の芯部を縦に貫通している.よくぞ見つけた.Wunderbar!

◆薄雲がかかってはいるが,昼間はよく晴れて,北風もない.しかし,空気が冷たいので手袋は歩き読みの必需品.やっかいなのはページめくりがいささか不自由なことだけだ.

◆外は寒いが,中は暖か —— 湯浅本の続き:第4章「市民運動・労働運動の視点から見た日本図書コードおよびISBN問題」を読了.“ISBN論争”を一種の“政治闘争”とみなして運動を続けたという点では,書店業界よりもむしろ市民団体の方が敏感だったことがわかる.しかし,大きな潮流の中でそれらの運動が翻弄されていったことも事実だった.

◆新刊メモ —— 小沼純一(編)『武満徹対談選:仕事の夢 夢の仕事』(2008年1月10日刊行,筑摩書房[ちくま学芸文庫],ISBN:978-4-480-09129-1).既刊の『武満徹著作集』(全5巻)は“白い巨塔”のように平積みされっ放し.同様に,『武満徹全集』(全5巻)も後半の巻がぜんぜん聴けずじまいでなかなか完結しない.申し訳ないなあ.対談集である本書のあとがきに「サントリー音楽財団の佐々木亮さん」の名前(51Vc)が出てくる.たいへんご無沙汰してますね.

◆今夜遅くなってからは雪が降るという予報だ.明朝にかけては関東の平野部でも積もるというのだが,未明のマイカー運転ははたして大丈夫だろうか.

◆ああ,原稿原稿…….早く書かないと.※毎度毎度のことですが…….

◆本日の総歩数=11206歩[うち「しっかり歩数」=7619歩/66分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/−0.1%.


19 januari 2008(土) ※ 進捗ぐずつき,トマト・ラーメン

◆午前4時起床.曇り.マイナス0.9度.研究所に潜り込み.

◆未明のこまごま —— 11月中旬に神戸大学で開催予定の〈ISHPSSB〉Off-year meeting の実行委員会メーリングリストに登録されたとの知らせがあった.生物学哲学のセッションのひとつをオーガナイズするという仕事が付加された./Kodaly Zoltan の〈ハンガリー詩篇〉を久しぶりに聴いたらやっぱり感動した./来週に配布する予定の駒場「生物統計学」レポート課題の続きをば.

◆日が高くなるとともに雲が切れ,明るくなってきた.空気はもちろん冷たいが,日射しがある分だけ体感気温は高くなりそうだ.

◆昼食に,近くの竹園にあるレストラン〈Ben-Bella〉の「特製トマト・ラーメン」を初めて食べる機会があった.すでに評判のラーメンなのだが,何だか“ゲテモノ”みたいな先入観があってずっと遠ざけていた.しかし,予想に反してたいへん美味なラーメンだった.「トマト・スープ」と聴いただけで,いかにもイタリアンな濃密系ぎとぎとを連想してしまうのだが,実際はそのイメージとは正反対のすっきり系スープで,極細縮れ麺に生トマトのみじん切りがよく絡まっていい食感と味わいをつくっている.まさに,百聞は一食に如かずだ.今度来るときは「超辛口トマト坦々麺」にもトライしてみよう.

—— この店の「杏仁豆腐」は通信販売されるほどの人気商品だそうだ.その濃厚で滑らかな味わいはトマト・ラーメンの食後にとりわけよく合う.

◆快晴の午後はレポート課題づくりの続き.午後4時に完成した.いちおうpdf出力はしたが,実際に受講生に配るのは来週の木曜なので,しばらくこのまま寝かせておこう.来週と再来週の講義スライドはもうできている.そのハンドアウトは週明けには用意できるだろう.半年間の講義のエンディングが近い.講義アンケート集約とか成績報告など事務的なことどもにも注意また注意.

◆その他のこまごま —— 免許の書き換えがもうすぐだ.忘れないように./振替休日を今月中に一日とるよーに./福岡行きの航空券はもう確保できる.遅きに失するべからず./来たる確定申告のための心の準備(だけ)./夜は,『』の連載原稿を書き始める心の準備(だけ……).※おいっ.

—— 今日はイマイチ捗々しくなくサクサクとことが運ばなかったな…….

◆本日の総歩数=3593歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/+1.3%.


18 januari 2008(金) ※ 底冷えのする曇り空.PCお引越し

◆午前4時半起床.曇り.気温はマイナス0.8度で,たいしたことはないのだが,芯から寒い底冷えの夜明け前だ.

◆「ISBN導入史」新刊 —— 湯浅俊彦『日本の出版流通における書誌情報・物流情報のデジタル化とその歴史的意義』(2007年12月20日刊行,ポット出版,ISBN:978-4-7808-0111-8 → 版元ページ).実におもしろい.基礎的な資料をしっかり踏まえて書かれたこういう本は読み甲斐があるというものだ.タイトルだけでは,「書籍流通史」という個別業界ネタと思われてしまうかもしれないが,これまでほとんど調べられてこなかった,日本における「ISBN導入史」の掘り起こしを通じて,書店と取次店との微妙な力関係の推移を探った労作だ.

昨日の車中読書として,さっそく第1章「日本図書コードおよびISBN導入問題とは何か」と続く第2章「流対協の日本図書コードおよびISBN表示保留とその解除─日本の出版業界の“南北問題”」を読ん だ.とても小さなフォントで組まれた本文で100ページあまり.以前から疑問に思っていたことがあっさり氷解していくのがとても心地よい.たとえば,疑問:「日本におけるISBN導入時期は?」→回答:「1981年11月」(p. 19)/疑問:「ISBN以前はどうなっていたか?」→回答:「1970年1月から“書籍コード”なる統一番号が付与された」(p. 22)/疑問:「現行の“日本図書コード”とは?」;回答:「ISBN+Cコード+価格コード」 —— という具合だ.業界の人びとには常識であっても,部外者にはぜんぜん見えないことが多々ある.

もうひとつ,「ISBN」がどのような理由で,書籍流通上の論争を引き起こしたかということだ.取次店がすべての出版物に対して“総背番号制”を導入するということは,当然(当時の状況を考えれば),出版に対する“上からの管理統制の強化”という書店側の懸念を引き起こしただろう.しかし,本書の著者は,もうひとつの「出版社コード差別問題」を指摘する.ISBNには「出版社コード」が数桁含まれているのだが,その番号の割り当てをめぐって,中小出版社が差別されているのではないかという問題があったという.そういう歴史的経緯があったとは本書を読むまで何一つ知らなかった.

—— 本書は,著者の博士論文の単行本化だそうだ.そして,同じ著者の修士論文を本にしたのが,2年前の:湯浅俊彦『出版流通合理化構想の検証:ISBN導入の歴史的意義』(2005年10月5日刊行,ポット出版,ISBN:4-939015-80-7 → )だった.こちらは新刊で出てすぐに入手しようと思ったのだが,実際に手にしないうちに買いそびれてしまった.そのうち手元に置きたい.

◆PCのお引越し —— 午前10時半,気温2.2度.曇って寒い.グレて社会の迷惑をしでかした DynaBook くんにしばしの懲らしめをするべく,DELL Latitude への引越し作業に入る.このPCを本格的に使うことは今までなかったな(頑丈だけど重過ぎるし……).ソフトウェアとデータの引き継ぎ,そして環境整備.時間がどんどんなくなっていく.昼休みも返上し,午後にずれこんで,結局3時までかかってしまった.しばらくはコレを持ち歩くことになるのかなあ.

◆その他のこまごま —— 今年度の業績登録作業というのが実は放置されていた.届出書式がやってきた.気が重いな……./メールで届いた質問に関する電話あり./産経ニュース記事:「ギャル曽根もビックリ?到着ロビーに「巨大回転寿司」.確かに.ワタクシも大分空港に着いて脱力したもんね.昨年5月から始まったことだとは知らなかった./東大連携大学院関連で科学振興調整費なんちゃらの話.

◆午後5時前に撤収.寒いなあ.本といただいた米&生卵&山芋と〈dp〉のシュークリームと浄水ボトルふたつを抱えてやっとこさ帰宅する.甘やかすようだが,この週末は DynaBook くんにもう一働きしてもらおうか.※『』の連載原稿をそろそろ書かないといけないし.

◆夜,駒場「生物統計学」の第2回レポートの問題をつくりはじめる.まあ,こんなもんでしょ.来週のスライドと翌週の補講2回分のスライドは早くも用意できている.さて,次は『本』の原稿だ.

◆本日の総歩数=6332歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/−1.1%.


17 januari 2008(木) ※ 予期せぬ未明の初冠雪.駒場で災厄

◆午前4時半起床.隣の公園の植込みがいやに白いと思ったら,雪が舞っていたので驚いた.昨夜の天気予報ではそんなことは一言も言っていなかったぞ.夜中にいきなり降り出したのだろうか.あらあら,そのうち本格的な降雪となり,田畑も車も真っ白になっていった.気温マイナス0.9度.もちろん今季の初冠雪だ.早朝のニュースによると,旭川の某所では「マイナス33.3度」というとんでもない最低気温を記録したそうだ.

◆未明のこまごま —— 忘れた頃に駒場レポートの事後処理をふたつほどすませる./形態測定学スライドのファイルを DynaBook にコピーする.これは1月31日(木)の補講用./駒場の第2回目のレポート課題は来週24日には出題しないと.この日は学期末の講義アンケートの記入・回収日でもある.

◆まわりが明るくなってきた頃には雪はもう止み,急速に天候回復して,一転快晴になった.高層階を筑波颪が鳴り渡る.午前いっぱいはまたまた講義スライドの追加分をつくり始めてしまい,ドロヌマに陥る.正規分布の母平均に関するベイズ推定の説明のため.元スライドを3枚つくり,それらを14枚に展開する.本日の講義用スライドはすべて新作で「74枚」.十分すぎるぞ.

これまでの経験からすると,毎回90分の生物統計学の講義では60〜70枚のスライドを使っている.ということは,全13回の講義分を集計すると,ざっと800〜900枚のスライドを映写している計算になる.展開する前の元スライドでいえば,200枚から300枚といったところだろうか.

—— 考えてみれば,ここ数年は毎年4〜5つの定例出講あるいは非常勤出講をしている.純粋に教壇に立っている時間のみをカウントしたとしても,まちがいなく年間100時間を越えているはずだ.また1時間の講義にはそれと同じくらいの準備時間が必要になる(2倍以上かかっているかも).額面上の労働時間は「40時間×12月=480時間」だから,概算でその半分くらいは“高座”がらみのことに費やされているということだ.農環研は太っ腹ですなあ(うんうん).

◆正午過ぎにつくばを出発.雲が出てきて,北風がとても冷たい.12:41発の TX 快速で新御茶ノ水まで.ちょいとリフレッシュをば:駿河台下の崇文荘書店で『Henry Oldenbourg書簡集(全9巻)』が出ているのを見かける.たった「38,000円」じゃないか.たまには The Royal Society の揺籃期の頃を思い浮かべるのもいいのだろうねえ.彼の伝記:金子務『オルデンバーグ:十七世紀科学・情報革命の演出者』(2005年3月10日刊行,中央公論新社[中公叢書],ISBN:4-12-003618-9)を以前に読んだことを思い出した./すずらん通りの東京堂書店にて,新刊の『田山花袋の日本一周(復刻版)』(全3巻+付録[箱入り],東洋書院 → 版元ページ)に遭遇する.たった「8000円強」じゃないか.『温泉めぐり』(2007年6月15日刊行, 岩波書店[岩波文庫 31-021-7], ISBN:9784003102176)の次は『日本一周』か! 「付録」というのは花袋が旅した当時(大正4年)の時刻表だった.なかなかいい企画.“鉄”なヒトもきっと気になるにちがいない.「前編:東海・近畿」(大正3年刊)712頁|「中編:中国・九州・四国」(大正4年)672頁|「後編:関東・東北・北海道」(大正5年)616頁.全部で二千ページもあるんかい?(なんてこったい)※刊行年月日とISBNが不明なので,あとで現物で確認しないと.

—— 〈書肆アクセス〉亡き後には,もう別の書店が入っていた…….

◆午後2時半過ぎに駒場着.快晴で風は弱い.お,廣野さん,久しぶり.非常勤講義室にて,ごそごそする.

◆今日の駒場「生物統計学」講義(第10回) —— ベイズ統計学の入り口として,「ベイズの定理」の導出と,Bayesian abduction についての概論.パラメトリック統計学の簡単な実例をふたつほど(Beta-prior binomial と normal-prior normal).いずれも事後確率分布が解析的に求まる.Beta-prior binomial のデモをしようとして〈Bayesian Coin Tosser〉を起動したとたん,グレた DynaBook くんの“持病”がよりによってこんなときに再発してしまい,HDD が“カラカラ”と音を立ててあえなくご臨終……(冷汗).しかたがないので,急遽この講義始まって以来の“板書”をするはめになり,残り半時間ほどはチョークを握ってしまった.最後の方のスライドは次回もう一度説明しないとダメだろう.そういえば,マイクの電池も切れていた.今日は電気まわりのトラブルが多いな.※雪が降ったからか?

—— しかし,けがの功名かどうか,「板書の方がソレらしくていいです」との受講生のコメントがあった.コマバでは数学系の授業はもっぱら“板書”だそうだ.何がウケるかちっともわからないな.

◆寒風の中,午後8時前につくばに帰り着く.DynaBook くんを再度立ち上げてみたところ,何食わぬ顔で起動しやがった.この野郎……(逝ってよし).しかし,だからこそこの日録が書けるのだが.いずれにせよ,明日にも代役の DELL Latitude を動員することにしよう.

◆本日の総歩数=9884歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+0.7%.


16 januari 2008(水) ※ 引き継ぐ仕事,引きずるスライド

◆午前4時起床.曇り.気温0.2度.氷点下ではなかった.研究所にて速攻仕事.

◆進化学会引き継ぎの件 —— 新しい事務幹事長が決まったとのこと.さっそく幹事長業務の引き継ぎメールを書く.書いているうちにどんどん分量が増えてしまって…….学会の「顔」である学会長とはちがって,事務幹事長は実動部隊として“こまごま”を取り仕切る立場にある.ただし,進化学会に関しては,事務幹事長が会計と庶務も兼任するという伝統をここ数年引きずってきたせいで,学会としての規模が大きくなってくると,どうしても負担が大きくなってしまう.

ということで,次期への引き継ぎとしては,事務幹事長と会計幹事そして庶務幹事の「分業」を提言した.あと,広報幹事の新設は昨年の総会での決定事項なので,実行してもらう必要がある.

—— そんなこんなでようやく預かっていた学会印を返却することができる.

◆午前9時過ぎ.晴れ.気温4.4度.寒い寒い.こまごま続く —— 日本菌学会大会の講演を引き受ける返事を出す.

◆広辞苑(第6版)とその付録本たち —— 新村出(編)『広辞苑・第6版』(2008年1月11日刊行,岩波書店,ISBN:978-4-00-080121-8).辞書「本体」は「3049ページ」なのだが,「288+93ページ」もある付録本『広辞苑第6版付録』が同じ箱に同梱されている.漢字表と歴史的仮名遣いなど文法事項だ.さらに,刊行記念の出版物として,新書サイズの岩波書店辞典編集部(編)『広辞苑一日一語』(非売品)が付いてきた(218ページ).

◆昼下りの統計質問ふたつ —— 本務関連なので,ちゃんと対応して,と.いずれもすぐには処理済にならないだろう.返信待ちということ.

◆昼休みから,またまたスライドに引きずり回される.つくりこみを始めるとエンドレスな作業になってしまう.元スライドおよそ20枚はほぼ完成しているので,あとは「展開」作業だけ.けっきょく午後4時までかかって,90枚あまりのスライドにした.ベイズ統計学概論の part 1 が「61枚」,そしてベイジアンMCMCの part 2 が「30枚」だ.明日の講義はきっと part 1 だけで終わるんじゃないかなあ.

◆夕方の餡団子 —— 午後4時過ぎに,石下町(現:常総市)にある〈ゆたかや〉の餡団子が届けられた.真っ白い餅団子に絡まっているのは,ほどよい甘さの粒餡でした.素朴で美味.ありがとうございます.

◆「駒場三点セット」の作業完了 —— ハンドアウトを人数分印刷し,スライドの映写順序を確認し,出席票の短冊を束ねる.これで明日の講義の準備は大丈夫だろう.あとは,コンピュータのデモ用ソフトウェアの動作確認だけ.午後5時前に撤収する.外は夕暮れで,北風が冷たい.

—— でもって,夜も講義準備の続き.スライドの微修正とか.まったくキリがないな.エンドレス.

◆本日の総歩数=7426歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.6kg/+0.2%.


15 januari 2008(火) ※ 寒気の底だからカヌレを買いに行く

◆久しぶりに午前4時半起床.痛いほどの冷え込み.星空.気温マイナス3.2度.研究所にてかじかむ.

◆午前のこまごま —— やっと「ろうきん」関係の書類がすべてそろったので提出する.あとはよろしく./いきなり土壌微生物相のシーケンス・データが添付されてきて……(汗)./日本学術会議の連携候補者調書なるものが送られてきた./生態学会大会の宿をオンライン予約する.博多駅からほど近い,冷泉町の「山本旅館」.今回は趣を変えてですね,純和風ということで.かつての“駅前旅館”風なところがなんとも.とっても安いし.ひっそりと博多駅前.今大会は参加者がとても多いそうだが,今のところ,宿泊先の確保はまだ大丈夫なようだ.次は,足の確保をしないといけない.

◆午前10時だというのに,気温は「2.5度」.薄曇りで日は射さず.寒過ぎ.

◆お座敷のお声がかり —— 来たる5月31日(土)に,三重大学で開催される日本菌学会大会シンポジウムで,菌類学における「種概念」という,これまたヤバそうな講演を依頼された.ヤバい話をしていいんですよね.ということで,ハイ了解.※よろしくお願いいたします.

◆昼休みは久しぶりに歩き読み:ドナルド・ギリース『確率の哲学理論』(2004年11月15日刊行,日本経済評論社,ISBN:4-8188-1703-1 → 目次)をざっと.これまで論争が絶えなかった対極的なふたつの「確率観」とは,確率を物質や現象に備わる客観的な“自然物”とみなすか,さもなければ個人個人に付随する“信念の程度”とみなすかのいずれかだと著者は言う.気温5.1度の寒い冬晴れに歩き読める本ではなかったかも…….

—— 牧園の〈david pain〉にてこれまた久しぶりにカヌレを買って,3時のお茶菓子にする.

◆午後のこまごま —— またまたスライド内職苦界にずぶずぶと沈んでいく.溺れながらも今週の“駒場三点セット”を取りそろえる.午後4時に元スライドを仕上げる.ハンドアウトの印刷は明日の仕事.ウェブ公開と連絡はすませた.スライドの展開もあしたか.

◆午後4時から1時間ほど,『Modern Morphometrics in Physical Anthropology』の輪読セミナーの第7回.次の章:Chapter 3 : Philipp Gunz, Philipp Mitteroecker, and Fred L. Bookstein「Semilandmarks in Three Dimensions」(pp. 73-98)に入る(pp. 73-80).準標識点(semilandmark)をどのように設定するか.正規の標識点とは異なり,いずれかの座標値が“欠けている”準標識点の設定はこれまで恣意的に行われてきた.しかし,著者らは平均形状からの仮想変形を考えたとき,準標識点の設定が不自然だと artifact が生じてしまう例を挙げている.その上で,仮想変形の屈曲エネルギーを最小化するような準標識点の設定方法を以下で述べることになる.

◆午後6時過ぎ,気温0.2度.寒過ぎ.連休直後の労働日でとても疲れているところに,暗くて寒いというのは勘弁してほしい.

◆夜,DynaBook くんがいきなりヘソを曲げる.裏返しにして,きつくお仕置きをしたら,矯正してくれたらしい.※代役を用意した方がいいかも.

◆本日の総歩数=13951歩[うち「しっかり歩数」=5701歩/49分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.3kg/+0.5%.


14 januari 2008(月) ※ 傘貼り内職で暮れていく成人の日

◆午前6時過ぎ起床.星空が寒々として,厳しく冷え込む.

◆今日は朝から講義スライドづくり.いっさいどこにも外出せず.べいづ,またべいづ.気がつけばもう日は暮れて夜になっていた.外は日中ずっと気温が低かったようだが,そんなことはよう知りません.

◆朝はベイズの定理から始まり,午後もさらに作業は続き,日が暮れて,日が変わる頃,やっとMCMCの麓までたどり着いた.〈WTeXEdit〉はとても使いやすい.

—— ベースとなるスライドを10枚つくったので,展開すればきっと70〜80枚にはなるだろう.しかし,まだ Bayesian MCMC の説明スライドが増えるので,はたして1回の講義で終わるかどうか.MC Robot / Bayesian Coin Tosser / MCMCpack / MrBayes のデモも予定しているから,ひょっとしたら1.5回分にはなるかも.

◆実にシンプルな一日だった.

◆本日の総歩数=0歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.2kg/+0.8%.


13 januari 2008(日) ※ 酔い覚めの朝はべいづできゅっと

◆午前6時前にいったん目覚めたのだが,さらに二度寝の体勢に入る.次に目覚めたのは午前7時半のこと.怠惰な連休中日の始まりだ.雨上がりの青空.北風がとても冷たい.

◆起き抜けの“べいづ” —— 昨日の車中パラレル読書の続き:伊庭幸人・種村正美・大森裕浩・和合肇・佐藤整尚・高橋明彦『計算統計 II —— マルコフ連鎖モンテカルロ法とその周辺』(2005年10月28日刊行,岩波書店[統計科学のフロンティア],ISBN:4-00-006852-0 → 目次)の第I部:伊庭幸人「マルコフ連鎖モンテカルロ法の基礎」(pp. 1-106)と第III部:大森裕浩「マルコフ連鎖モンテカルロ法の基礎と統計科学への応用」(pp. 153-211)を読了./駒場「生物統計学」質問への回答をものす.

◆Leon Croizat (1976) —— 先日,ベネズエラから襲来した郵便物のあまりの「警告色的外観」にドン引きしてしまって開封がしばし遅れたのだが,届いたのは:Leon Croizat-Chaley『Biogeografía Analítica y Sintética ("Panbiogeografía") de las Américas (Tomo I y Tomo II)』(1976年刊行,Biblioteca de la Academia de Ciencias Físicas, Matemáticas y Naturales, Caracas, Volumen XV y XVI, 890 pp.)だ.本書は,その前年に,同じベネズエラ科学アカデミーの紀要(Boletin de la Academia de Ciencias Físicas, Matemáticas y Naturales, Caracas, vol. 35, nos. 1-4, pp. 1-890, 1975)に掲載された同名の論文を独立した単行本2巻として再出版したもの.

この本の「890ページ」という分量は,2000ページもある『Panbiogeography』などをものした前歴のある Croizat の大著群の中に埋もれてしまうと,確かにそれほど目立つ分量ではない.しかし,いまの中南米での汎生物地理学の興隆ぶりをみると,そのきっかけはほかならない本書だったのではないかとも推測される.

—— 思い起こせば,Croizat の本『Space, Time, Form: The Biological Synthesis』(1964, Published by the Author, Caracas)を最初に手にしたのは,修士1年の1980年10月3日のことだった.それから約30年弱の年月を経て,やっと彼のすべての単行本と単行本的モノグラフがぼくの手元にそろうことになった.フィレンツェからそのうちやってくるはずの最後の1冊をもって完結する.発注先のベネズエラの Guido Soroka 古書店にはさっそく着便した旨メールを返信し,迅速な送本に対して「Muchas gracias」と伝えた.折り返し,返信があり,「無事に届いてよかったです」とのこと.

◆筑波颪が吹きすさぶ昼過ぎに,北条大池から神郡あたりを徘徊する.前線が通り過ぎ,乾いた北風が空中のホコリを清めたせいか,筑波山の輪郭も神社の鳥居もくっきりと見ることができた.筑波道に沿って,2週間に一度しか開店しない焼菓子〈はしばみ〉,あんドーナツで知られるレトロな〈桜井菓子店〉,そして筑波山を中腹まで登ったところにある蕎麦処〈いだ〉で極太の鴨汁蕎麦をいただく.どこも,つくばの“学園”エリアからは遠く離れた店だ.

◆統計コンサルタントな夕方 —— 夕闇迫る午後5時過ぎから1時間あまり,駒場統計講義の質問の返答を〈R-statistiker〉に書き込む.計算統計学のことなど.そうこうするうちに,カウンタが「1万」の大台に乗ったことを知った.

◆夜のこまごま —— 〈ISHPSSB〉と論文集に関する連絡文書が届く./TeX数式入力ソフトとして〈WTeXEdit〉をダウンロードする(version 2.1.1,2007年11月16日公開).Windows環境での数式入力は試行錯誤がなお続いている.Mac の〈LaTeXiT〉みたいなツールがあればいいのだが,いまだに出会えない./統計講義スライド用の数式を〈WTeXEdit〉の操作練習かたがた入力してみる.

◆本日の総歩数=857歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.9kg/−0.7%.


12 januari 2008(土) ※ 冷たい雨降る厚木にて蟲な新年会

◆午前5時半起床.曇りのち霧雨が降り出す.気温は氷点下にはなっていないが,染み込む寒さ.今日,厚木に持参する〈王禄・渓〉の一升瓶は,ぷちぷちでぐるぐる巻きにした上で,一晩中戸外に安置しておいた.薄明るくなるとともにしだいに本降りに.今朝の天気予報によると,これから日中にかけてさらに気温が下がり続けるため,午後は関東の平野部でも雪になるかもしれないとのこと.

◆未明のこまごま —— 駒場「生物統計学」レポートの事後処理.送ったはずなのに受領メールが来ていないという連絡が2件あった.不着事故のようだったので再送信してもらい,この件は終了.受講生のみなさん,お疲れさんでした.

◆とてもこわい新刊 —— 講談社校閲局(編)『日本語課外講座 名門校に席をおくな!』(2007年12月20日刊行,講談社,ISBN:978-4-06-214418-6).泣く子も黙る「校閲局」.現代新書の原稿を書きあげたのち,お代官さまから「いま“校閲”にまわしています」と言われた.しかし,当時は“校閲”の何たるかをぜんぜん知らなかったので,「それってなんじゃらほい」と油断していたら,返されてきた指摘点が厳しいのなんのって.本書にたくさん例示されているような表記上のうっかりまちがいはもちろん,歴史的年号や記述内容に関する疑問や修正をはじめ,通常の論文査読で行われているようなチェックがびしばし入る.とてもコワかったです.だから,こわごわこの本を読んでおかないといけない…….

◆雨の中,厚木へ向かう —— 〈王禄〉を背負って,10:11発の TX 快速に乗り込む.小雨が降ってはいるが,傘をさすほどではない.北千住乗り換えで,小田急線直通,新百合丘と相模大野で乗り継いで,本厚木に着いたのは正午過ぎのことだった.駅ナカの書店には本日発売の『広辞苑(第6版)』が新刊コーナーにうずたかく積まれている.買わないといけないのだが,一升瓶を抱えて,その上,レンガのような辞書を持ち歩く気力はない.

しだいに雨足が強くなってきた.12:35駅南口発の農大行き路線バスに乗って(何だか満員……),終着停留所で下車.雨の中を校舎に駆け込んで,午後1時前に昆研に吸い込まれる.半年以上来なかったが,学生人口密度がさらに高まっているようだ.「犇めく」という表現がぴったりかもしれない.

◆午後1時半から,「第57回昆虫学研究室研究発表会」の後半戦.今年は「31件」ものトークがあるので(たった1研究室で! しかも卒研生抜きで!),朝9時から夕方4時までぶっ続けの発表会となる.研究棟2階の形態系実験室はもともとスペースは十分あるにもかかわらず,席はすでにほぼ埋まっている.今回,発表件数こそ「31」だが,連名でのトークもあるので,講演要旨には40名近くの名前が並ぶ.さらに,来月の卒研発表会では,昆研から「20名」あまりの発表があるという.他の大学なら,さしずめ「学科」クラスの規模だろう.予定通り午後4時に終了.

—— その後,午後4時半から同じ場所で新年会が始まる.外は雨が降り続いている.呑み始めがとても早いので,午後6時過ぎにはみなさんそうとうできあがっている.しかし,まだ夜は長い.〈王禄・渓〉の一升瓶の中では岩魚がゆったり泳いでいた.隣で開栓してくれた小島さんの話では,開けるときに「シュポッ」と炭酸ガスの音がしたそうで.ま,生酒だからそういうもんでしょ.午後7時までさらに呑み,ここでいったん中締め.階上の昆研に場所を移して,二次会の始まり,犇めく犇めく.ぼくは午後8時に退席したが,みなさんはエンドレスに呑み続けるにちがいない.外は雨だし,“終夜届”も提出されているので,このまま丘の上で夜明けを迎える学生も多いにちがいない.

◆午後8時20分発の路線バズで本厚木に向かう.小雨が降り続く.結局,雪にはならなかったな.20:35発の小田急急行に乗れた.つくばに帰り着いたのは午後11時前.霧雨がまだ降り続いている.お疲れさんです>みなさん.

◆車中読書 —— 講談社校閲局(編)『日本語課外講座 名門校に席をおくな!』(2007年12月20日刊行,講談社,ISBN:978-4-06-214418-6)読了.「予言と預言」とか「自認と自任」とか,実際にワタクシが指摘された点もあるぞ.こわ…….

◆本日の総歩数=5111歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.7kg/+0.5%.


11 januari 2008(金) ※ 即時驚倒的“千社札”南米本着便

◆午前4時20分起床.晴れ.気温マイナス0.4度.研究所にて駒場からの提出レポートの最終チェック.どうやら午前零時ちょうどに届いたレポートが最後だったようだ.提出者全員に受領メールを出した.※もらっていない受講生は不着の可能性が大ですのですぐに再送信されたし.

◆未明のニュース —— アオコ「ゲノム解読」完了 —— 東京新聞(2008年1月11日 02時00分)の記事「アオコラン藻のゲノム解読 毒素生産の仕組み解明へ」によると,microcystin産生アオコ(Microcystis)のゲノム解読が完了したとのこと.どのように自分の仕事につなげるか.

◆先日の天気予報では今日あたりから下り坂になるはずだったが,まったくそういう気配はなく,朝からよく晴れている.しかし,不健康な室内こまごまは続く —— メーリングリストの“火山灰”掃除をいくつか./進化学会の評議員選挙に関わる事務連絡と意見表明.

◆ベイズ関連教材とか資料とか —— 来週の駒場講義用に Bayesian MCMC 関連のツールを使わせてもらうことにした.Paul O. Lewis が公開しているベイズ洗脳ツール〈Bayesian Coin Tosser version 2.02〉と〈MCRobot version 2.1〉のふたつだ.前者はコイン投げ上げ試行を例にしてベイズ統計の基本概念である事前確立分布と事後確率分布のデモをするソフトウェアであり,後者は二次元正規分布を例にとって MCMC の探索プロセスを可視化するソフトウェアだ.

常日頃,人前で講義をする機会が多いので,さまざまな「教育用デモンストレーションツール」は心して収集するようにしている.データ解析用のツールはそれが有能であれほどすぐに周知される.しかし,計算がよくできるからといって,教育効果が連動して高いことにはけっしてならない.たとえば〈PAUP*〉は,オールラウンドな計算はよくしてくれるが,教室でディスプレイに映し出して講義をすると,受講生へのインパクトはいまひとつよろしくない.単純に視覚的な“見映え”がよくないのだ.その一方で,いい教育用ツールは開発されてもなかなか広まらない傾向があるようだ.たいていの場合,人づてかあるいは開発者のサイトを訪問して初めて知るということが多い.

—— あとは“ベイズ”なスライドを多々つくればいいのかな.

◆おそるべき“千社札”貼られまくりの航空便 —— 午前の郵便が届いた頃,事務から電話があり「海外からみなかさんあてに“へんな郵便物”が書き留めで届いているのですが……」との連絡があった.バクダンだったらえらいことなので,事務室に駆けつけてみると,見るからにけばけばしくアヤシイ郵便物を手渡された.南米ベネズエラからの航空便で,昨年暮れに発注した古書であることは明らかだったので,幸い爆発物捜査班の出動を要請する騒ぎにはならなかった.発注して2週間も経たないうちに届くとは実にすばやいかぎりだ.

しかし,この郵送ケースに“千社札”のごとく貼られまくった切手は何とかならなかったのか.まるでこの正月に行った水沢観音の納札堂と同じ概観だ.いくらインフレ気味のベネズエラだからといって,“襖の下貼り”ならぬ,切手の「重ね貼り」という裏ワザがあることを初めて知った.宛て先の記されたオモテ面はもちろん,側面までびっしりと切手が重ね貼りされている.郵便局の担当者はこのおそるべき郵便物に貼られた切手すべての枚数を数え上げたのだろうか.さながら“耳なし芳一”のからだに記された経文のごとく「VENEZUELA」という文字が犇めいている.驚倒するしかない.すごすぎる.

—— いったん開封してしまえば,封筒やケースはお払い箱になるのがふつうだが,今回にかぎってはあまりにインパクトが強かったので,研究室のパートさんに頼んで切手蒐集ファンに手渡してもらうよう頼んだ.はたして,この「切手重ね貼り」をきれいに剥がしてされるのだろうか.

◆昼下りのこまごま —— ふと論文を探し始めたら,もうたいへん.ボタ山のごとき本の堆積を掘り崩すはめになった.目的の論文コピーはなんとか“発掘”できたのだが,そのついでに思わぬものまで“出土”してしまい,しばし時間が取られる./〈ISHPSSB〉の日本巡業について連絡あり.開催時期は今年11月中旬.場所は塚原東吾さんのいる神戸大学にて.生物学哲学のセッションのオーガナイザーとして,この3月末までに講演予定者を決めて事務局に連絡することになった./もうひとつは,勁草書房から出す予定の生物学哲学の論文集.編者から今年の大晦日を締切としますとの連絡.他の寄稿予定者たちのようすはどうなのかな.担当する分量は400字×50〜60枚の予定.

◆夕方4時過ぎに研究所を撤退する.午後になって曇ってきた.明日の厚木行には王禄酒造(島根)の〈王禄・渓〉を持参することにした.

◆夜は,ベイズ法とベイジアンMCMCの教材準備.デモ用プログラムの手順確認と新規スライドの筋立てを考える.〈R〉の「MCMCpack」パッケージのいくつかのコマンドは教育用ツールとして使える.しかし,Beta-prior Binomial の場合,〈R〉の MCbinomialbeta よりは,「Bayesian Coin Tosser」の方がはるかに教育的効果があるだろう.「MCRobot」も同様によくつくられたソフトウェアだ.これらの講義用ツールのうまい使い分けのしかたが考えどころだ.

◆本日の総歩数=6773歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/+0.2%.


10 januari 2008(木) ※ 暖かな昼下りに世田谷から駒場へ

◆午前4時半起床.星空.気温マイナス1.1度.未明の研究所にて,本日の講義スライドのハードコピーを出力し,レポート受領の返信メールをたくさん出す.

◆須賀敦子全集の完結 —— 須賀敦子『須賀敦子全集・第5巻』(2008年1月20日刊行, 河出書房新社[河出文庫す4-6], ISBN:978-4-309-42055-4).意外に時間がかかったが,これでやっと文庫版全集が完結した.最終巻である本巻の内容は,イタリアの詩人たち/ウンベルト・サバ詩集(翻訳)/ミケランジェロの詩と手紙(翻訳)/歌曲のためのナポリ詩集(翻訳)ほか.詩集の巻.→版元ページ

◆世田谷徘徊 —— 10:11発の TX 快速に乗り,北千住乗り換えで経堂へ.風もなく日射しが暖かい.コートはまったく不要.「東京通販サービス」がかつて入っていた,アパートを見上げる(空き部屋が異様に多いようだが,取り壊されるのか?).「農大通り」をてくてくと15分ほど歩いて,東京農大・世田谷キャンパスにたどり着く.どこの駅からも遠いという微妙なロケーションにある.超レトロな瓦屋根の校舎があるかと思えば,超弩級の大校舎が聳えていたりする.

今日は,今春から開講予定の「生物統計学」講義の打合せにきた.担当の先生としばし話し合う.その後,構内を案内してもらったのだが,学生数が多いせいか,ひとつひとつの講義室が“巨大化”しているのが印象に残った.予定では,4月14日(月)から毎週月曜4時限目の講義のためにここまで来ることになる.その前に,2月上旬締切のシラバス提出という仕事あり.

◆佐藤信夫のレトリック本(続き) —— 佐藤信夫『レトリック感覚』(1992年6月10日刊行,講談社[学術文庫1029],ISBN:4-06-159029-4).講談社学術文庫には,佐藤信夫の「レトリック本」が何冊か入っていたのだが,すでに品切れとなっているタイトルがいくつかあるようだ.

◆経堂に戻って,下北沢経由で駒場にたどり着いたのは,午後3時過ぎのこと.まだ時間があったので,リサンプリング法を実行する〈R〉スクリプトを点検し,〈TNT〉のブーツストラップ計算の確認,そしてスライドの最終チェックをする.非常勤講義室の担当者の話では,講義アンケートは補講時ではなく,正規の講義の最終日までに実施することになっているそうだ.ということは,1月24日(木)に忘れずに用紙を配らないといけない.

◆16:20〜17:50,講義.リサンプリング統計学の解説.ブーツストラップ,ジャックナイフ,そしてモンテ・カルロ(というかパラメトリック・ブーツストラップ)をスライドとデモで説明した.最後に,今日が第1回目レポートの提出締切であることを念押しする.みなさん,忘れないように.来週の講義では,今日の延長線の上に,一般化線形モデルの選択における尤度比検定とAICによる比較,その際に用いられるパラメトリック・ブーツストラップ法,さらにはベイジアンMCMCについても話しようと思っている.またまたスライドをつくりまくらないといけないかも…….

◆つくばに帰り着いたのは午後8時過ぎだった.毎度のことながら,遠隔講義日は疲れる.夜になって,さらにまた多くの駒場レポートが届く.そのたびに卓球選手のように受領メールを返す.カンカンと.しかし,日が変わる直前まで「滑り込み提出」は続き,最後にやってきたツワモノは「0:00」ちょうどの受領となった.

◆本日の総歩数=14044歩[うち「しっかり歩数」=2887歩/27分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/−0.4%.


9 januari 2008(水) ※ 朝から晩までスライド職人に徹する

◆午前4時半起床.曇り.気温3.2度.朝のうちから小雨が降り出す.東の空は明るいのに.午前9時の気温8.6度.

◆午前のこまごま —— 明日締切の駒場レポートが小雨のように降り出し,そのうち本降りに.届くたびに受領メールを返す./RPの今後の研究計画についての打合せ./東京農大(世田谷)のコンピュータ実習室は来年度すでに予約で埋まっているらしく,新規参入は難しいとの返事./明日の講義のスライドづくり.やってますやってます./南保さんのプレゼン骨子をヒアリング.12日の農大発表会までに準備を頑張ってください.

◆午後になって雨は上がり,晴れてきた.入手本メモ —— 佐藤信夫(企画・構成)/佐々木健一(監修)/佐藤信夫・佐々木健一・松尾大(執筆)『レトリック事典』(2006年11月1日刊行,大修館書店,ISBN:4-469-01278-5 → 版元ページ目次).故・佐藤信夫のレトリック本はそろそろ品切し始めているので,今のうちに確保しておいた方がいいだろう.この『レトリック事典』は日本語の文彩の事例がたくさん載っていると評判の本だったので入手した.

◆午後のTeXタイム —— 講義スライドに貼りこむ数式のこまごました操作.ごりごりと LaTeXiT を使いまわして,InDesign に読み込む.午後5時までにベースとなるスライドを10枚ほど作成する.午後5時に撤収.

◆夜の在宅こまごま —— 駒場レポートの“雨足”はさらに強くなる./講義スライドの続き.約20枚のベースとなるスライドを分割して,結局72枚の「リサンプリング統計手法」スライドは完成した.午後11時半.

◆本日の総歩数=7552歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/+0.1%.


8 januari 2008(火) ※ いろいろ「三点セット」の耳を揃える

◆午前4時半起床.雨はもうあがっているが,路面は湿ったまま.雲間に明けの明星が.気温0.1度.

◆未明のこまごま —— 駒場からのレポートが散発的に届いている.受領メールを出す./メーリングリストの管理作業も.

◆午前のこまごま —— 「不在三点セット」:昨日からだらだらと続いている,年休届・出張伺・兼業申請の三点セットの耳を揃えるべく,何枚も書類を書く.1月分については完了.今月は「6日間」の不在となります./来年度の夏学期に開講される東京農大(世田谷)での生物統計学についての連絡あれこれ.どうやら〈R〉実習ができそうなので,その線でシラバスを書いて送る.学部学生が相手なので,また〈R Commander〉を使っての講義と演習ということになるか.詳細の打合せは木曜に.

◆午前11時の気温は8.8度.風もなく日射しが暖かい.

◆午後のこまごま —— 「コマバ三点セット」:明後日の駒場・生物統計学講義の準備をする.出席票・ハンドアウト・スライドの三点セットの支度.最初の二つはすぐに用意できた.午後2時にハンドアウトのウェブ公開完了.スライドは新作しようと思う.こういう機会に更新しておいた方がいいしね./今週土曜(1月12日)の東京農大・昆研の発表会&新年会は発表者の人数が覆いので朝から9時からやるそうだ.久しぶりの厚木行きだ./1月11日(金),13:30〜,領域会議あり.

◆午後3時半の気温は13.2度もある.冬を忘れてしまいそう.

◆夕方のこまごま —— 日本分類学会連合(UJSSB)の旧サイトがすでに1年以上放置されているにもかかわらず,いまだにウェブ検索ではトップでヒットしてしまい,その一方できちんと更新されている新サイトは引っかかってこない.これではいけないので,事務局に旧サイトの閉鎖を提案する.今週土曜日に科博分館で開催される第7回シンポジウム〈動物界高次分類群の系統と分類−発生から分子へ〉のアナウンスをメーリングリストに流すとともに,旧サイトへのリンクを切断する.

そのあいまに,久しぶりの炸裂メールがあったりとか…….

◆生態学会福岡大会の講演要旨登録がパンクチュアルに午後5時で打ち切られ,即座に全要旨がウェブ公開された:〈日本生態学会 大会講演要旨閲覧ページ〉.素早過ぎる.われわれのシンポジウムの分も公開されている:[S08]「Phylogenetic approaches to community ecology」.

◆先日,leeswijzer に公開した:植田実『集合住宅物語』(2004年3月1日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07086-3 → 版元ページ)について,現在品切中と書いたところ,みすず書房の担当の方からメール連絡があり,第3刷が出たので新刊入手可能とのこと.ご教示感謝です.この本は古書価格が数万円にもなっているので,増刷は朗報だ.※当該項目はさっそく修正しました.

◆夜は,計算統計学の新作スライドをつくる心の準備をしたりとか(しゃきしゃきやれよっ),デモ用に〈R〉のブーツストラップ計算の簡単なプログラムを書いてみたりとか(nonparametric / parametric bootstrap の両方で),ま,いろいろと.

◆「TNT is now completely free」 —— 日が変わる頃,最節約系統推定ソフトウェア〈TNT〉が完全無料化されたという知らせが届いた.Hennig Society のサポートによるものだそうだ:〈TNT: Tree Analysis Using New Technology〉(The Willi Hennig Society Edition, Version 1.1, December 2007 → ダウンロード).〈TNT〉は5,000程度のOTU数ならば“さほど待たず”に最節約解を出す(とされている)ので,使いみちはいろいろあると思う.とくに,「New Tech Search」の威力がどの程度あるかが気になるところ.

◆本日の総歩数=5496歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/+0.8%.


7 januari 2008(月) ※ 案の定,「雑用土石流」が迫り来たる

◆今日から平日だ.午前4時半にばしっと起床.曇り.気温マイナス1.6度.研究所に直行する.

◆未明のこまごま —— 今週からもう駒場の生物統計学の講義が始まるので,その支度をする.今月は休みなく毎週講義があるだけでなく,31日(木)は補講が二コマ入っている.毎週の出講はほとんどしたことがないのだが,集中講義とはまたちがった持続的な疲労感が残る.とりあえず,今週はリサンプリング統計学を〈R〉で解説するということになるが,残りの講義内容との調整をする必要がある.

◆午前10時前,曇りときどき晴れ.気温は7.8度.微妙な寒さだ.

◆午前のこまごま —— 元日付の昇給発令.小さな辞令をもらう.ありがたくいただきます.しかし,俸給号俸が変わるとなると,出張届やら何やら事務書類の一括訂正をしないといけないな./不在“三点セット” —— 今月からまたまた「いなくなる算段」をしないといけない.そのためには兼業申請・年休届・出張伺という「不在“三点セット”」を提出しないといけない(もちろん連言ではなく選言だが).しかし,年初めなので新しい年休届の書式がまだ配布されていないではないか.勝手に休んでくれようか.何枚も書かないといけないのだが,意欲がどんどん希薄になっていく.能率わろし.けっきょく終わらず…….

◆「リテラシー史研究会」ウェブサイトについて —— 〈arg〉の昨日の記事からの情報.以前読んだ:和田敦彦『書物の日米関係:リテラシー史に向けて』(2007年2月28日刊行,新曜社,ISBN:9784788510364 → 目次書評)の著者が,異動先の大学で,「リテラシー史研究会」のウェブサイトを先月開設したそうだ.資料やメーリングリスト,そしてブログも開いたとのこと.備忘メモとして.

◆新春早々の新刊着便 —— David M. Williams and Malte C. Ebach『Foundations of Systematics and Biogeography』(2008年1月刊行,Springer-Verlag, New York, ISBN:978-0-387-72728-8 → 版元ページ).昨年から出版が予告されていた体系学基礎論の新刊.さっそく筆頭著者の David に「出版おめでとう」とのメールを送ったところ,すかさず返事が来て「昨年10月にこの本のコンパニオン・ブログ〈Systematics and Biogeography〉を合わせて開設したのでよろしく」とのこと.昨年末にようやく配本されたらしい.Richard Owen や Louis Agassiz を皮切りに,Ernst Haeckel, Adolf Naef, Willi Hennig とドイツの体系学の系譜を下って,パターン分岐学にいたるまで.いわば生物体系学の思想的バックグラウンドを掘り返すタイプの著作なので,ぼくにはたいへん親近感が湧く.Gary Nelson が序言を書いている.

◆午後の雑用津波 —— 引き継ぎが遅れている進化学会関連のこまごま.評議員選挙の結果報告についての詰めをする事務連絡メールのやりとり.とくに,大きな問題はなさそうなので,文案を出して検討してもらうことにした.次期の評議員はこれで確定したので,あとは執行部人事だけか./元旦付けの人事異動があるらしく,メーリングリストの登録変更依頼が季節はずれの五月雨のように届く.

◆空が暗いと思ったらいつの間にか雨が降りだしていた.午後4時過ぎに撤収する.雨足はけっして強くはないが,しとしと降る冷たい雨で気が滅入る.本郷〜湯島の和菓子がそろっていたので,年初めの花びら餅(一炉庵)と甘食(明月堂)とどら焼き(うさぎや)でイッキに元気になる.※人間,とにかく食べなければ.

◆夜,本を読み散らしながら,駒場の受講生たちにメッセージを送る.「レポート締切が近いぞ」というリマインダーをば.その他の支度は明日まわしだ.

◆本日の総歩数=7537歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−1.9%.


6 januari 2008(日) ※ 穏やかに晴れて,みなし正月は最終日

◆午前6時半にゆるゆると起床する.そろそろ平日早起きモードにからだを慣らしておかないと,明日からがつらくなる.外は晴れているが,冷え込んでいる.

◆朝から人事書類“三点セット”を —— 頻繁に諸方面に出かける機会があるので,そのたびに「履歴書・研究概要・業績リスト」の“三点セット”を用意しないといけない.やっかいなのは,相手先によって,書式が微妙にちがうので,そのつどいちいち更新の手作業が必要になるということだ.公表できる個人情報はすべて公開してあるので,そのコンテンツを先方指定の書式で整形してもらって,最後にぼくがシークレット情報のみ記入して,はいオシマイ,というのが,もっとも望ましい.

—— しかし,現実はそうもいかないので,ちくちくとエクセルで文書を書いたりする.午前は履歴書作成でつぶれ,午後は業績リストとそのカウント,夕方になって研究概要を書き上げて,もう暗くなってきた午後5時に北白川宛にメールで書類を返送する.よろしくよろしく.ついでに,公開情報も更新しておいた.

◆書類書きのあいまに,買い物を兼ねたお散歩.日中は日射しが暖かく風もなかったので,小寒にしてはとてもすごしやすいおだやかな一日だった.

◆研究所に届いていた献本(いつもありがとうございます) —— 中澤港『Rによる保健医療データ解析演習』(2007年12月25日刊行,ピアソン・エデュケーション[Computer in Education and Research 11],ISBN:978-4-89471-755-8 → 版元ページコンパニオンサイト).同じ著者による4年前の前著:中澤港『Rによる統計解析の基礎』(2003年10月15日刊行,ピアソン・エデュケーション[Computer in Education and Research 7],ISBN:4-89471-757-3 → 版元ページ)の続刊にあたる.今回の新刊は,読者が自学自習できる〈R〉のワークブックとして書かれているとのこと.※個人的には「保健医療」という言葉はいらなかったのではないかと思う.(『Rによる医療統計学』の訳本タイトルを見たときと同じ感想だ.)

◆見なし正月の最終日だというのに,人事書類なんぞをものして一日が終わってしまった.明日からの労働日が思いやられる.夜,ゆらゆらと「手取川」を呑み始めて,あっという間に空いてしまった…….

◆本日の総歩数=3783歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.3kg/0.0%.


5 januari 2008(土) ※ 夜明け前の闇に乗じて農環研に初出勤

◆社会復帰への下準備 —— 午前4時半に起床.曇り.研究所に時間外初出勤する.気温2.1度.冷え込んでいない割には,染入る冷気.湿度が高いのだろうか.

◆未明の居室にてこまごまと初雑用 —— メーリングリストの月例アナウンスとか.すでに積み上がっている書類やそして書籍そして送られてきた献本を整理する.ついでに,差し迫っているであろう人事関連書類のための資料を揃える.来週月曜の労働開始日には“火山灰”がさらに堆積していることだろう.

◆午前8時前に研究所を出る.気温はさらに下がって1.6度.灰色の曇り空からはときおりちらちらと小雪が舞う.寒い寒い.牧園の〈david pain〉に新入荷したコルシカ産の羊乳チーズ(山羊乳ではなく)を買って帰宅する.

◆こんな本,いったい誰が読むのか(それはワタシ……) —— 松本泰生『東京の階段:都市の「異空間」階段の楽しみ方』(2007年12月30日刊行,日本文芸社,ISBN:978-4-537-25545-4).実にすばらしい! ほかならない「階段」を被写体とする写真集だ.思い起こせば,伏見稲荷の全山を取り巻く真っ赤な鳥居に覆われた神域階段に始まり,渋谷・丸山町から神泉あたりの急傾斜極細階段群,そして本郷から谷中にかけての下町を縫うほのぼの階段などなど,ぼくが住む先々にはさまざまな階段があった.そういえば,20年ほど前に“トマソン”路上観察が流行した頃は,“純粋階段”を探したこともあったなあ.建築学を専門とする著者は,都内に残るさまざまな階段をサンプリングしている.階段そのものとそれを取り巻く風景の混ざり合ったところに,ある種の「美」が生まれるのか.私的には,集落を縫う狭い急な階段が好ましい.戦災で焼けていない文京区にはそういう階段がたくさんあった.いま住んでいる平坦この上ないつくばにはもとよりあるはずもない風景である.こういうテーマで学位論文が書けるというのはシアワセだなあ.

◆午前いっぱいは曇り空だったが,午後になって日が射してきた.ほどよい気温になった.

◆新春なのでちょっとはりこんで —— 近くの竹園にあるフレンチレストラン〈Oh! La Vache〉にてランチなど.いまのつくばエリアではトップを争う人気レストランだそうで.確かに,前菜からスープ,メイン,デザートまで,細やかなワザが楽しめました.他の店よりもやや価格が高めですが,平日は昼も夜も予約でほぼ満員だそうで,ふらりと立ち寄るわけにはいきません.今日のランチは,白身魚のベニエを中心にした地場産の野菜のサラダ,クリーミーなスープ,豚バラ肉のメインディッシュ,そしてギリシア・ヨーグルトのデザートでした.うん,美味.

◆いわゆるひとつの「おせち読み」 —— 実にお行儀悪く,あっちこっちの本を読みかじる.“ビバ!純米酒”新書2冊を並べ読みしては,“階段本”をつらつら眺め,寝転がっては“眠れない本”を開く.昨年暮れに発注したベネズエラの古書店からメールがあり,「Muchas gracias por su compra. El libro fue despachado el pasado 28/12/07 y estime su llegada en 18-35 días laborables」とのこと.間違いなく彼の国から発送されたようだ.安心して,またまた「おせち読み」に復帰する.

—— そんなこんなで,ダニエル・T・マックス著[柴田裕之訳]『眠れない一族:食人の痕跡と殺人タンパクの謎』(2007年12月22日刊行,紀伊國屋書店,ISBN:978-4-314-01034-4 → 版元ページ目次)の残り200ページを読了.一方には,イタリアに家系的遺伝病に苦しむ一族がいて,他方には,性格的にも素行的にもやや難のありそうな有力研究者ふたりがいる.イタリア,イギリス,アメリカと国境をまたぐストーリー展開は,スリリングであり,科学をとりまく国ごとの事情や研究者コミュニティの中での動向まで見ることができる.このプリオン病は,出現頻度は低く,発病までに時間がかかり,しかし,いったん流行すればBSE問題のようにとたんに社会問題と化す,しかもDNAを介した通常の遺伝病とはちがって蛋白質の異常な“折り畳み”がダイレクトに伝染するという,特異な性質と病態をもつ.プリオン病の解明がノーベル賞の栄誉をもたらした傍らで,イタリアの「眠れない一族」の眠れぬ夜はなお続いているという.

◆本日の総歩数=6070歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.5kg/+0.5%.


4 januari 2008(金) ※ 小人閑居にして世に背き毒書に耽溺す

◆午前4時に目覚めるものの,寝正月を口実にまた惰眠を貪る.午前7時半に起床.外はもちろん快晴だ.冷え込んでいるようだが,室内にぬくぬくとどまっているので,ようわからん.本日は年休日なり.

◆世に背きて書に耽る —— 不眠症の本を枕に寝転がり,純米酒ガイドを読んだり,怪盗ジゴマを盗み見したり.世間様はすでに仕事始めでまっとうに生きているというのにこのていたらく.朝からだらだらと自堕落に過ごす.“密の味”とはこのことか.外は快晴だが,不健康な引き籠り生活.

◆備忘メモ —— 児玉善仁『イタリアの中世大学:その成立と変容』(2007年11月刊行,名古屋大学出版会,ISBN:978-4-8158-0576-0 → 目次).また名大出版会か!(罪よのう) ボローニャ大学とパドヴァ大学の成立を中心にした中世大学史の研究書.しかし,本代で破産したくないので,備忘メモだけにとどめよう.往生際の悪いワタシ.

◆しかし,周囲が勝手に仕事始めに入ってしまうと,否が応でもその波及効果から逃れることはできない.雑用の新年第一波が早くもひたひたと押し寄せる —— 生態学会シンポジウムの要旨登録が完了したとの箱崎からの通知あり./進化学会評議員選挙に関する事務連絡への返信をする./北白川から人事書類の書式が送られてきた.えくせるで書くのはたいへんつらいものがありますぅ……./駒場レポートがまた届いたので受領メールをば.

◆引き籠りだけでは何なので,日がかげってきた夕刻に散歩をば.空気が冷たく乾いているので,今年になってから夕焼け空に映えるシルエットがとても鮮明だ.センター広場のイルミネーションもなじんできたか.歩き読み:永嶺重敏『怪盗ジゴマと活動写真の時代』(2006年6月20日刊行,新潮社[新潮新書172], ISBN:4-10-610172-6).映画ファンなら共感できるだろう.ちょっとだけ読み進んだが,どうやら嫌われたみたい…….

◆帰宅後,またも日常的雑用の来襲あり.いずれも進化学会関連のことで.新評議員リストの公表は近い.そろそろ新役員への引き継ぎの段取りを考えないといけない時期になってきたな.

◆植田実の「住宅本」たち —— 植田実『都市住宅クロニクルI』(2007年12月21日刊行,みすず書房,ISBN:978-4-622-07302-4 → 版元ページ)/植田実『都市住宅クロニクルII』(2007年12月21日刊行,みすず書房,ISBN:978-4-622-07303-1 → 版元ページ).またみすず書房か!(罪よのう) 重くて厚くてとても魅惑的な本.写真もたくさん.同じ著者による:植田実『集合住宅物語』(2004年3月1日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07086-3 → 版元ページ)は,新刊で出た当時,みすずの本にしては写真集みたいで斬新だと感じたが,すでに新刊では入手できないらしい.そちらの業界ではきっと人気のある著者と著作なのだろう.

◆本日の総歩数=3656歩[うち「しっかり歩数」=1640歩/14分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.7kg/−0.8%.


3 januari 2008(木) ※ 寒風吹くつくば,新書を求めて三千里

◆夜中に一度目が覚めたのだが,ここで起きてしまっては「寝正月」のモットーに反するので,もう一度寝る.次に起きたのは午前8時のこと.すでに高く上がった新年の太陽から日射しが射し込む.朝はお雑煮でございます.「船尾瀧」が空になってしまった…….県外ではまったく手に入らないのだが,

◆寝正月していて寝読みしてしまって実にもうしわけない —— ダニエル・T・マックス著[柴田裕之訳]『眠れない一族:食人の痕跡と殺人タンパクの謎』(2007年12月22日刊行,紀伊國屋書店,ISBN:978-4-314-01034-4 → 版元ページ目次)を昨年末からベッドサイドブックとして読んでいる(ごめんなさい).イタリア・ヴェネチアの「眠れない一族」の話から本書の幕は開く.致死性家族性不眠症(FFI)という遺伝病に罹ったこの家系は,18世紀以降,代々「眠れないまま死を迎える患者」を出してきた.このヒト遺伝病であるFFIと,イギリスのヒツジに蔓延した家畜病スクレイピー,そしてニューギニア先住民の風土病クールーという,地理的にも遠く隔たった病気を結びつける“プリオン病”という共通項の発見までの経緯を本書は描き出している.とりあえず第6章まで150ページほど読んだところで,寝てしまった(すまん).

◆そろそろ「日常復帰」に気配が —— まだ正月休みだというのに,駒場「生物統計学」レポートがぽつぽつと届き始めた.受領メールを返信する.1週間後の1月10日(木)が締切ですので,受講生は忘れないよーに./備忘メモ:10年以上も前の研究会プログラムがオンライン公開されていることを今になって知った:第15回微生物分類研究会(1995年10月6〜7日:富士吉田市→プログラム).

◆〈leeswijzer〉アクセス50万台に到達! —— 年明け早々〈leeswijzer〉のアクセス・カウンタが「50万」の大台に乗った.大晦日に49万台なかばだったので,正月三が日のうちには大台に乗るだろうと思っていたが,確かにそのとおりだった.2007年8月中旬に「40万アクセス」に達したので,4ヶ月半で十万アクセスをカウントしたことになる.訪問者のみなさん,どうもありがとうございます.本年もよろしくお願いいたします.

—— 新年早々,とてもおめでたいことだったので,祝杯用に「手取川」の特別純米酒の封を切る(理由は何とでもつけられるぞ……)うん,これもなかなかいけますな.

◆新書を求めて三千里 —— ふと思い立って,新書を探し始めたのが運の尽き.西武のリブロ,吾妻の友朋堂書店,LaLa Garden の熊沢書店と3つの書店を自転車で駆け回って,やっと3冊ともそろった.新刊の新書ならばどこにでもあるのだが,少し前のものになるととたんに店頭から消えうせる.すったもんだの3冊とは:永嶺重敏『怪盗ジゴマと活動写真の時代』(2006年6月20日刊行,新潮社[新潮新書172], ISBN:4-10-610172-6)/上原浩『純米酒を極める』(2002年12月20日刊行,光文社[光文社新書078], ISBN:4-334-03178-1)/上原浩(監修)『カラー版・極上の純米酒ガイド』(2003年12月20日刊行,光文社[光文社新書126], ISBN:4-334-03226-5).

◆「ウッジャー」は珍しいですか? —— 〈nuhsnuhの日記〉(2007年12月31日付)の記事「Why did Woodger axiomatize biology?」で,『』の第7回連載「プリンキピア・タクソノミカ」への言及があった.J・H・ウッジャーについて日本語で書かれた文章はほとんどないとのことだ.確かに,生物学にかぎっても,理論分類学に関わる歴史的な文脈を除けば,「ウッジャー」を参照することは今ではほとんど皆無だろうと思う.上記の記事では,当時の論理学コミュニティでのウッジャー受容と生物学コミュニティでの排斥ぶりが対置させられている.正しい指摘だろう.

—— 『本』の連載を始めて以来,“死者”や“亡者”や“ゾンビ”を片っ端から叩き起こしている気がしないでもない.それが今回の仕事なのだが.※アルフレッド・タルスキーの伝記は入手しておいた方がいいかな.

◆夜,「手取川」を呑みつつ,時が過ぎる.明日は御用始めだが,あっさり年休にしてしまったので,見なし正月休みはなお続くのだった.

◆本日の総歩数=5016歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=−0.3kg/+0.4%.


2 januari 2008(水) ※ 夜中の寒中露天修行の後は寝正月の朝

◆真夜中に露天風呂に浸かってしまったので,目が冴えてしまう.しかし,正月の温泉旅館というのは呑んだくれて騒ぐ輩もいなければ,とんでもない時間に温泉に行こうという元気のある人たちもいない.ただただシズカに正月三が日が過ぎている.昨日は,旅館で餅つきイベントなるものもあったが,二日ともなれば再び静寂が支配するにちがいない.

—— などなどと考えつつ,うつらうつらしているうちに,再度の睡眠とあいなり,気がつけばもう午前7時だった.外は朝日が射している.温泉旅館で怠惰がふとんにくるまっているの圖.寝正月そのものだ.

◆ロビーでさらなる読書行為に耽る:Julia Voss『Darwins Bilder : Ansichten der Evolutionstheorie 1837 bis 1874』(2007年6月刊行, Fischer Taschenbuch Verlag, Frankfurt am Main, ISBN:978-3-596-17627-4 [pbk] → 目次)の序章(Einleitung, pp. 9-26)を読む.本書は,これまでのダーウィン産業が見落としてきた,ダーウィン進化学の「絵画論的側面」に着眼して,ダーウィンならびに彼の同時代人たちが進化をどのように“描いて”きたかを論じる:

Wie eng allerdings seine Theorie mit der bildlichen Darstellung verknüpft ist, wurde bisher wenig beachtet; die Bildgeschichte der Evolutionstheorie ist kaum bekannt. (p. 12)

Wie erklaärte Darwin Evolution im Bild? (p. 13)

著者は,ダーウィン関連資料を所蔵しているケンブリッジ大学のダーウィン・アーカイヴの中で,とくに「絵画アーカイヴ(Bildarchiv)」を主たる情報源として本書を執筆している.この絵画アーカイヴの大部分はこれまで探索されたことはなく,本書で初めて公開される「描かれた進化像」もあるという.確かに,挿入されているカラー図版を見ると,他書では見られない図がある.

もちろん,このような立論を支えるためには,当時の進化思想と絵画論との関係を明らかにしなければならない:

Dem Historiker gibt es die Frage auf: warum? Warum hängen Bild und Evolutionstheorie so eng miteinander zusammen? Die Antwort soll hier die Entstehungsgeschichte der Evolutionstheorie geben, die Weise, wie sie Darwin im 19. Jahrhundert entwickelt, im unermüdlichen Entwerfen, Umformen und Überarbeiten von Bildern. (p. 16)

もちろん,このような考察とダーウィン自身の画才の有無とは何の関係もない.著者が念を押しているように,ダーウィンは確かに「絵が下手」だった.にもかかわらず,進化思想の受容において“絵”は大きな役割を果たしたと著者はみている:

Hinsichtlich seiner eigenen Fähigkeiten muss die vielleicht überraschende Feststellung vorausgeschickt werden, dass Darwin in einen klassischen Sinne selbst kein guter Zeichner war. (p. 18)

Auch sie kommen aus dem Grund vergleichsweise wenig vor, dass Darwin keine solchen Bilder zeigte. In der Rezeption der Evolutionstheorie tauchen viele dieser Abbildungen auf; sie können im Rahmen der Entstehungsgeschichte von Darwins Evolutionstheorie jedoch nur vereinzelt, als Ausblick, angesprochen werden. (p. 22)

◆午前10時にチェックアウトして,寒風の中を高崎へ向かう.しばし,ぐでぐでしてから,高度渋滞中の関越道に果敢にも身投げし,2時間あまりぶーぶーしたのちに練馬料金所を通過する.都内で夕食後,軽度渋滞していた外環道と常磐道をぶんぶん飛ばして午後10時過ぎに自宅に到着した.長距離な運転だったので疲労がにじみ出る.

◆元日の重量級新聞を郵便ボックスから回収した.年賀状も来ていたが,ここ数年は「紙」の年賀状はまったく書いていないので,ぼく宛のプライベートな年賀状は一枚もなかった.きっと研究所には届くのだろうが,今年も欠礼させていただきます.ごめんなさいね.

◆明日は公認の正月休みの続きなので,さらなるタコツボ的読書行為に耽るしかないか.あるいは,寝正月飲酒に耽るというもうひとつの選択肢もあるのだが…….

◆本日の総歩数=6818歩[うち「しっかり歩数」=3036歩/28分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


1 januari 2008(火) ※ 年の初めの温泉街に霰がぱらぱら降る

◆大晦日は伊香保神社で年を越してしまったが,元旦の朝もいつも通り午前5時に起床.年初めの露天風呂に入る.夜のうちに小雪が舞ったようで,うっすらと雪化粧.露天風呂の屋根からは,湯気が氷結した氷柱が垂れ下がっている.もちろん氷点下の厳しい冷え込みだ.

伊香保の温泉街は山の中腹に位置しているが,東側の斜面に面しているので,初日の出が山の斜面を照らしはじめる.今日も乾いた冬晴れのようだが,昨日は見えていた上越の山々は今朝は厚い雪雲に隠れている.しかし,対面の赤城山はくっきりと見えていた.

◆温泉場ではやっぱり温泉文学論 —— 川村湊『温泉文学論』(2007年12月20日刊行,新潮社[新潮新書243],ISBN:978-4-10-610243-1 → 目次).今年の年末年始を伊香保で過ごしているが,田山花袋『温泉めぐり』(2007年6月15日刊行, 岩波書店[岩波文庫 31-021-7], ISBN:9784003102176)を再読している.この本は,温泉を描いたという点で,文字どおりの「温泉文学」だろう.しかし,そのような意味での「温泉文学」は数少ないのかもしれない.『温泉文学論』と銘打ったこの新刊は,「温泉を描いた文学」の本ではなく,正確には「温泉を舞台にした文学」の話だ.それでも,有名無名な(広義の)温泉文学についての談義はとても楽しい.夏目漱石『満韓ところどころ』など,初めて知る作品もある.なお,本書に登場する温泉のほとんどは(韓国の湯崗子温泉も含めて),田山花袋の本に取り上げられている.その昔は文学の舞台になるほど栄えても,その後は寂れてしまった温泉は多々ある.

◆雪雲がときおりかかる石段街を散策する.麓から吹き上がる北風が冷たい.昨夜は石段ごとに蝋燭が灯されて,あの世へ一直線という感じだったが,夜が明ければ正月らしい温泉街の華やぎにもどる.伊香保神社への初詣客もちらほらと.しかし,近くに水沢観音というメジャーな神社があるので,そちらに向かう参拝客がほとんどだろう.温泉街とはいえ,正月三が日のうちは店を閉じているところもあるのだが,〈豆腐茶房だんだん〉にて豆腐定食にありつけた.

外を見やれば,また風花かと思いきや,霰がぱらぱらと降りかかっている.今日はことのほか寒い.湯元通りに面した旅館の旧玄関にあるつくばいにも厚い氷が張っている.

◆昼間っから「船尾瀧」の大吟醸をちびちび呑みつつ,夕方までにもう1冊読む —— 永嶺重敏『東大生はどんな本を読んできたか:本郷・駒場の読書生活130年』(2007年10月10日刊行,平凡社[平凡社新書394],ISBN:978-4-582-85394-0 → 目次).とても内容の充実した新書だ.日本の社会の中での大学の位置づけがこの1世紀の間に大きく推移し,時代によって政治的・思想的な趨勢も変わってきた.現役のライブラリアンである著者は,東京大学が発足する前の明治維新直後から始まり,21世紀の現在に至るまでの東大学生の読書傾向と彼らを取り巻く社会的・文化的な読書環境と読書装置に着目し,ほとんど語られることがなかった「学生読者の歴史」に関わるさまざまな未知の事実があぶり出される.

明治時代の帝大学生は,とくに文科系の学生は,本を読むというよりは,講義録を筆記して暗記することにほとんどの精力をつぎ込まざるを得なかったという.卒業年次の成績が生涯年収に直結するという究極の「成果主義」が徹底されたからだそうだ.この学的伝統は何十年にもわたって受け継がれる.したがって,彼ら学生が自由に読書できたのは,大学に入ってからではなく,むしろ旧制高校に在学していた頃だったという当時の学生たちの回顧発言が見られる.

その後,大正時代に入ると,東大学内での政治的読書組織がいくつか組織され,たとえば左翼系の帝大新人会(大正7年創立)は一時期,東大の在籍学生の半数を勢力下に置いたという.この新人会は,組織的な読書会や合宿を通じて,大規模な読書装置をつくりあげ,マルクス主義などの政治思想の浸透を図ったそうだ.上の世代が積極的に新入生の読書を教え導くという構図ができたのはこの頃だった.

大正から昭和初期にかけての,東大図書館の蔵書形成の経緯を振り返ったとき,関東大震災による被害からの復興は重要な転機だった.東大総合図書館の蔵書の中には「ロックフェラー財団寄贈図書」という判が押された古書がある.大震災で灰燼に帰した東大図書館はこの財団からの巨額の援助により,短期間での復興が可能になったという.それにもまして印象的だったのは,当時の学生の大学図書館の利用度の高さで,連日,長い行列が伸びるほどの満席状況が続いたという.

興味深いのは単に,本を読むというだけにとどまらず,本の出版・販売・流通にも大学(とその周辺)の組織的運動が学生の読書空間の形成に対して大きな影響力をもったという事実だ.また,大学側もそのような活動を積極的に支持し,あるいは黙認していた.当時の文系学生にとって必須の講義録の出版はもとより,とても高価だった教科書の古書としての流通への積極的参画,学生による書評メディアの創刊など,学生個人のレベルを越えた組織的な力が働いた事例について,著者は東京学生消費組合赤門支部(現在の大学生協の先駆的組織)の活動に着目して論じている.

第二次世界大戦中は,左翼思想の退潮とともに,右翼思想が台頭し,それは東大の学内でも同様だった.しかし,著者はこの時代の特徴として,左右どちらにも属さない“ノンポリ学生”の率が高まったという点を指摘する.戦後は一転して,マルクス主義が勢力を盛り返すことになる.しかし,当時の学生生活実態調査などの資料を踏まえるかぎり,一般社会での読書傾向とさしてちがいがないと著者は言う.帝大学生が一般社会とは異なる別の読書文化をつくっていた時代は過ぎつつあったということだ.

続く昭和30年代の特徴は,一言で要約すれば,「岩波文化の独占」である.東大生の読書アンケートを集計すると,何年にもわたって学内ベストセラーの実に過半数を岩波書店の本(とくに岩波新書)が占めていたという.それとともに,岩波の「講座もの」に代表される全集の売れ行きも好調だった.当時の東大生は岩波書店によってその Bildung を行なっていたということだ.

学生運動がまだ盛んだった昭和40年代は,使命としての読書が“選良”としての東大生に共有されていた感覚だったという.しかし,学生運動の退潮とともに,そのような読者共同体は消滅していったのが1970年代以降の特徴だと著者は指摘する.この時期は,ワタクシが駒場・本郷に通った時代とかぶっている.確かに,1970年代当時の記憶をたどると,読書行為の同世代的〈共同性〉はすでに喪失し,組織的な読書運動や合評会はもはや影も形もなかった(左も右も含めて).読書環境としては,著者が指摘する「孤読」とまではいかないものの,少なくとも“個読”の時代に入りつつあったことは実感としてわかる.実際,同級生たちや同世代の学生が何を読んでいたかは全然知らなかったし,またまったく関心がなかったから.もちろん,学年が進み,研究室に配属されて専攻分野が決まってからは,定期的に専門書の輪読会が開催されたこともあるが,それらは Bildung としての読書とはもはやいえないだろう.

本書は,東大学生の読書史に焦点を絞った内容であり,現在の東大学生たちの読書傾向を分析した上で,今後どのように働きかけをしていくかという点については踏み込んだ主張をしてはいない.しかし,かつてのような大規模な読者共同体を再現するのはもはやムリだろう.「外に開かれた“個読”」あるいは「互いにつながる“個読”」に根ざした,もっとローカルなイメージしかぼくには思い浮かばない.

—— マンガが東大生の読書文化に浸透する初期の1960年代の話として,著者は白土三平の『カムイ伝』や『忍者武芸帳』に色濃く見られる反権力の姿勢から,当時の「大学生たちは唯物史観を読み取っていた」(p. 254)と記している.実際,ぼくは大学に入ってから,「『カムイ伝』は唯物論マンガだ」というコメントを何度も聞いたことがある.

◆読み疲れたせいか,夕食後,何となくそのまま寝入ってしまう.午前1時にふと目が覚めて,露天風呂に直行するも,あまりに寒過ぎて.またもやふとんに潜り込む.呑んで喰って読んで風呂に入るだけという実に怠惰な寝正月だ.

◆本日の総歩数=3291歩[うち「しっかり歩数」=1073歩/11分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


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