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oude dagboek

日録2006年8月


31 augustus 2006(木) ※ 大会最終日はそこはかとなく宴の後

◇午前5時頃に起床.晴れ.大会最終日ともなると,累積疲労が隠しようもなく.朝食摂取もイマイチ元気なし.部屋に戻ってごそごそする.メールを見たり書いたり.いろいろと降り積もる用事があるのだが,出先だし出張だし疲労だし……としばしいいわけを考えてみる.

 午前9時半にチェックアウト.どーいうわけだかたくさんの荷物が詰まった(その大半は処理されないままだ)スーツケースを抱えて参宮橋までとぼとぼ歩くの圖はなんとしても勘弁してほしい.だから,まずは新宿駅へ向かいJRで秋葉原へ.TX のコインロッカーに大物を放り込んで,やっと身軽になった.

◇すべてはトゥーランドット姫のために —— 進化学会大会が終わったと思ったら,もう明日には新宿区民オペラの〈トゥーランドット〉公演のステージ・リハーサルが待ち構えている.そして,9月2日(土)と3日(日)は本番日だ.せっかく秋葉原まで来たついでに(?),そのまま TX に乗って浅草へ.田原町の Japan Percussion Center でシロフォンのマレットをあれこれ選ぶ.バス・シロフォン用のマレットを買い足す必要がある.イメージする“バス・シロフォン音”のためには,「ゴム球」+「中程度の硬さ」+「大きくて重い」の3条件を満たさないといけない.最初のふたつの条件を満たすマレットはたくさんあるのだが,3番目を満足する候補は,Encore 社の型番 FE 503 しか在庫がなかった.これは,ふつうのゴム撥の2倍の重さがあるので,低音域に向いていると予測する.

◇いつもでも衰えない日射しのもと,参宮橋の大会会場に到着したのは昼過ぎのことだった.すでにポスターも撤去され,気分的には“宴の後”の空気が漂い始めている.しかし,実際には,今日も夜9時半まで大会プログラムが組まれているので,関係者は気を抜くことができない.午後は社会性進化のシンポジウムに顔を出してみたりする.午後5時頃に自主的に大会参加を終え,新宿の巷に沈む.夜は,生物学哲学なみなさまと懇親会の予定がある.

◇久しぶりに新宿の紀伊国屋書店の本店に立ち寄った.新宿南口に大きな店舗ができて以来のことだ.なんとなく手狭な感じは昔と変わりがない.グールドの論文集が新刊で出たことを知った(Steven Rose らの編集).ドーキンスの『祖先の話』が新刊コーナーに上下2巻でドカッと鎮座していたが,tree-thinker としては買わないわけにはいかないよね.でも,今日は荷物が多過ぎるから,後日まわしか.

◇午後7時半から〈DOMA DOMA〉にて懇親会.昨日のシンポ講演者が全員集まった.みなさん,たいへんお疲れさまでした.いろいろ“カミング・アウト”な話が飛び交ったようですが,科学哲学者のキャリア・パスにはさまざまなあり方があることを知る.来年は,京都で進化学会大会が開催されるので,また今回のような企画を立てられればいいと思う.午後9時半に健康的に散会し,ぼくはそのまま秋葉原へ.

—— つくばに帰り着いたのは午後11時を回っていた.

◇明日からは「トゥーランドット」な三日間が始まる.

◇本日の総歩数=12861歩[うち「しっかり歩数」=2259歩/22分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


30 augustus 2006(水) ※ 大会2日目は the longest day

◇午前3時に目が覚める.メールを書いたり,日録をものしたり.今日も蒸し暑かったりするのだろうか.

 午前7時過ぎに,ホテル新館1階にある〈ふじた〉で和食の朝食.本館から新館への移動途中,一瞬だけ“外”に出たのだが,やっぱり蒸し暑かった.昨日よりも雲が厚いが,下り坂なのかもしれない.

◇午前9時過ぎに遅めの出発.会場の国際会議棟に陣取って,今日のプレゼン準備.10枚ほどのスライドを考えている.2時間ほどでプロトタイプはできあがった.あとの改訂は午後まわし.外に出たら,小雨がぽつぽつと降ってきた.湿度的にはサイアクな日だ.

◇正午前に,カルチャー館の受付で,海游舎の本間さんと待ち合わせ,2階の〈ふじ〉にて遅れている「自己組織化」翻訳の今後のことについて打ち合わせる.ひさしぶりに共訳者である松本忠夫さんとも会う.翻訳契約の関係で,10月にはどうしても出さないといけないとのこと.本文の文字校はほぼでき上がっているので,あとは訳文のチェックと図版のキャプションの作業が待っている.9月になったらそれにかかりきりにならないと間に合わないぞ.

 さらに5章分のゲラを上乗せされて(汗),会談終了.

◇雨足はしだいに強くなってきた.南部さんと網谷さんに遭遇したので,参宮橋商店街の〈上海飯店〉にてランチ.今夜のシンポジウムについてあれこれ.少し濡れながら,会場に戻る.ぼくはスライドの改訂を続けないといけないので,またまた国際交流棟にUターン.ついでに,ポスター会場をひとまわりする.今回の大会は過去最高のポスター数とのことで,枚数も多いし,人口密度も高い.これは時間をずらして出直さないと,人のアタマを見ているようなもんだ.

◇夕方になってやっと雨は止み,空が明るくなってきた.

◇午後7時半からセンター棟の5階501号室にてシンポジウム〈哲学はなぜ進化学の問題になるのか:生物学の哲学の多様な展開〉の始まり.午後9時半まで.こんな夜遅くまで学会をやるとは前代未聞だ.三中信宏「進化学と生物学哲学の視線の交わり:趣旨説明に代えて」は,イントロ噺.科学と科学哲学を相利的に entangle させましょうというメッセージ.森元良太「決定論と確率概念:進化論的世界観とは」は,進化学における確率概念を,情報理論の延長線の上に理解しようとする.限定された情報を利用した推論を行なうときに,確率が生まれるということ.もちろん,実際にはつねに“かぎられた情報”しかない.網谷祐一「種問題と哲学」は,久しぶりに進化学会で【種】の話.種は発見的・研究仮説としての意義があるのではないかという主張.“よい種(good species)”がトークンとしてあるということが,種タクソンの実在論,ひいては種カテゴリーの実在論に結びつくという考え方だ.要するに,【種】は心のささえであり,愛する対象ということなんでしょ?(>網谷さん) 南部龍佑「生物はいかにして体系化されるべきか:系統樹の二つの顔」は,系統樹/分岐図の区別を,因果性に対する態度のちがいとして理解しようとする.確かに,姉妹群関係を表示する分岐図は,系統樹の集合なので,ダイレクトな祖先子孫関係を表示する系統樹とはちがうタイプの由来関係を現わしている.しかし,確率論的因果性の論議は,系統樹であっても分岐図であっても,等しく適用されると思うので,因果性の解釈そのもののちがいではなく,因果性の絞り込みの程度が異なるだけではないだろうか.田中泉吏「道徳性の進化:生物学の哲学の観点から」は,利他行動の進化に関する群淘汰説の検討にはじまり,淘汰単位論争につながっていった.自然淘汰が「力」(force)ではなく,モデルに過ぎないというストレルニーらの主張は,ソーバーらの見解と正面衝突するように見えるが,本当にそうか.

—— 午後9時半を過ぎてシンポジウムは無事に終了した.同じ時間帯に開催されるパラレルなシンポジウムがいくつもあったが,幸い50名ほどの聴衆を集めることができた.

◇午後10時前に外に出たところで,長谷川夫妻にトラップされ,別会場で熱弁を振るった(はずの)やはらさん,辻和希さんたちと幡ヶ谷の長谷川邸へタクシーで乗り付ける.さらにさらに“巨大化”したキクマルが留守番をしていた.極上のワインが3本空っぽになって,再びタクシーでホテルに帰り着いたときにはもう日が変わっていた.※たいへん,ごちそうになりました.

◇本日の総歩数=9236歩[うち「しっかり歩数」=1501歩/15分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


29 augustus 2006(火) ※ 進化学会,初日にして燃え尽きる

◇午前5時起床.ホテルの部屋でごそごそする.例年のことだが,進化学会は大会初日に「公式行事」をすべてすませようとする(あとは遊んで過ごそうというわけではないが).だから,初日は来ない参加者もいるのだが,運営する側はそういうわけにはいかない.

◇午前7時過ぎに,ホテル最上階(25階)の〈マンハッタン・テーブル〉にて朝食.午前8時半にホテルを出る.何ですねん,この蒸し暑さは.昨日まではそれなりに「秋めいて」いたのに…….日射しと湿気にぐったりする.

◇参宮橋方面に30分ほど歩いて,代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターにたどり着く.ここが進化学会大会の会場だ.他の学会や会議では使われたことがあるそうだが,ぼくにとっては初めての会場だ.施設と敷地があまりに巨大すぎて,迷子になりそうになる.

◇午前10時からは,国際交流棟の第2会議室で評議員会.決算報告と予算案,そして次期会長の選出.会長任期の延長案とそれに伴う会則変更案,創立十周年記念企画などなど,いくつかの議案の審議.正午まで.午後1時からは,カルチャー棟の大ホールでメイン・シンポジウム〈生体システムの進化〉.しかし,それには参加せずに,ひたすら総会のためのプレゼン資料を2階のレストラン〈とき〉でつくり続ける.初日の作業密度がもっとも高いぞ.午後3時過ぎに一通りのスライドをつくり終える.

◇午後3時半に終わるはずのメイン・シンポジウムが午後4時過ぎまで伸びた(よくあることだが).その後に総会がある.司会はやはらさんで,ぼくが説明役をつとめたのだが,短い時間でのこういう役回りは毎度のことながら違和感がある.30分ほどでとくに問題なくすべての議事を終了できた.続いて,16時45分から学会賞の授賞式,さらに続いて今年度の木村賞受賞者である高畑尚之さんの受賞講演(木村資生と日本の集団遺伝学の歩みについて)が1時間あまり.木村資生は若い頃は「厳密解」の導出にこだわったそうだ(後年は「近似解」もよしとしたらしい).

◇午後6時半からは,国際交流棟のレセプション・ホールにて,学会懇親会.りっぱな大ホール.“リソース”も十分にあったので,よかったよかった.次期幹事長を誰にするかというヒソヒソ話とか.おお,それでキマリだ!(よろしく) 次期会長(2008年〜)のまりまり,喜ぶ.DDBJセンター長の短歌の吟詠もあり.アトラクションもあり.

◇午後8時半に懇親会はお開き.その後,まだ蒸し暑さの残る参宮橋商店街をとぼとぼと通り抜け,新宿方面へ帰る.ホテルに帰還したのはまだ午後9時をまわったばかりだったが,きょう一日の疲れと蒸し暑さに圧倒されたまま,ご就寝.初日にして白く燃え尽きた感がある.しかし,明日が実質的な大会初日だ(……).

◇学会関連の備忘メモ —— ウェブ担当の田村さんに情報を流すこと./ 創立十周年記念企画の立ち上げはすぐ始めること.まずは場所の確保(ヨコハマ)と企画者の選定.

◇本日の総歩数=9928歩[うち「しっかり歩数」=4580歩/44分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


28 augustus 2006(月) ※ 進化学会前夜は Orval とともに

◇午前5時起床.曇り.北寄りの弱い風.気温22.4度.早朝の表情からして,夏はもう去っていったようだ.

◇研究所にて,明日からの進化学会の準備 —— 初日の評議員会・総会・授賞式などについては,事前に十分にやり取りしてあるので,あとは本番アドリブということで乗り切ってしまおう.その後の懇親会はとくに準備することはないだろうし.

 30日の夜にはシンポジウムでのトークがあるのだが,その準備は会場とホテルですまそう.趣旨説明だけなので,さらっとするっと.

◇午前のこまごま —— おお,また事務所類の書き直し返却か.書式が古いそうで.組織が変わったり規則が変わったりするたびに,事務所類の書式が変わるのはしかたがない.やっかいなのは,ときどき「化石」な書式の書類が混ざっていて,よく考えずに書いてしまって,あとで指摘されるというケースが多々ある.リニューアルのときには事務書類棚の中身をぜ〜んぶ捨てて,空っぽにするというのが後腐れがなくっていいのかもしれない./ 予算申請の書類はとても書いている時間がない.これまた,“旅先”の仕事?/ うわ,件の「翻訳」の件でトラップされる.はい,大会会場に“白装束”でうかがいますデス.

◇午後3時過ぎに研究所を出奔.帰宅して旅支度をして,TX に乗る.大江戸線の都庁前に降り立ったのは午後6時過ぎ.新宿ワシントンホテルにチェックイン.

◇夕食を求めてホテルの地下街を徘徊する.オイスターバー〈旬海〉に惹かれて入店.岩牡蠣を通年で出している店らしい(食べなかったけど).Hoegaarten 樽生とサラダ,そして Orval と炙り肉.

◇ん? ちっとも仕事してへんやん…….※旅先だからふだんできない仕事をと意気込んでも,たいていの場合は裏切られる.日常的にこなせない仕事は,旅先でもこなせない.これ真実.

◇本日の総歩数=10197歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/+0.6%.


27 augustus 2006(日) ※ トゥーランドットはゴング乱れ打ち

◇午前5時起床.涼しい北寄りの風が通り抜ける.気温22.3度.これは秋だ.

◇今日は新宿にて〈トゥーランドット〉練習を昼から夜までずっと.初めての「歌合わせ」をする.今回の公演は,9月2日(土)夜と3日(日)昼の2回あるのだが,独唱者が入れ替わるので,リハーサルも2回することになる.本日の歌合わせでは,午後が2日の独唱陣,夜が3日の独唱陣だ.

◇早朝の研究所にて必要なマレットをそろえる.今日から本番までの楽器はレンタルしたシロフォンなので,音板と相談しながらマレットを決めないといけない.

◇11時11分の TX 快速に乗る.東新宿に着いたのは正午過ぎ.

◇新宿文化センターの地下練習室の前にはずらっと荷物が積み上げられていた.何事かと思ったら,すべて“Chinese gongs”だという.こんな巨大なモノがステージに乗るのかと思う.「チャイニーズ」とはいっても,実際に製造されたのはベトナムだそうだ.〈トゥーランドット〉では全部で12音のゴングを使用するので,壁のようなフレームに三段重ねでぶら下げることになる.ぼくがメキシコ逃亡中で参加できなかった19日の練習では,ヨコにずらっと並べたそうだ(その配置だと奏者が走り回らないと演奏できなかっただろう).

 実際に練習が始まってみると,ゴングのあたりから“うなり”と“倍音”が津波のように押し寄せてくる.低周波の振動も.プーティンパオは大喜び.

 ゴングそのものを初めて見る人が少なくなかったようで,練習の休憩時間のたびに人だかりが.写真を撮る人もいれば,こわごわ撫で回る人も.

 レンタルのシロフォンは当初の予定とはちがって4オクターヴの楽器だった.最低音のいくつかが足りないのだが(B, A, G),聞いたところでは,借りる予定だった5オクターヴ xylorimba を硬いバチで叩かれた日には,音板がもたないとの配慮らしい.まあ,これはしかたないでしょう.というか,ぼくが自分でもっている YAMAHA 400C のマリンバから,必要な低音域音板だけ当日持参してくればいいのかな.※グッド・アイデアやんか!(共鳴部分はどうしようか)

◇独唱者はそれぞれ個性があって楽しい.同じ役でも歌い手がちがうとキャラクターもちがって見える.昼と夜の2回の通し練習で,独唱と合唱,そしてオーケストラとの調整をする.基本的には通し練習なのだが,バンダの金管隊やら舞台裏での合唱が混じるので,それぞれの指揮者の間でのコミュニケーションも考えないといけない.地下練習場には百数十人のメンバーが渦巻いているのだが,方々から音が聞こえてくるのはサウンドスケープとしては壮観だ.

◇「露店」は完売! —— 事務局の配慮により,練習所の片隅に『系統樹思考の世界』の露店を出させてもらった.前回の練習のときに宣伝させてもらったのだが,あとで事務局の方に「30冊くらいはきっと売れますよ」と言われた.さすがにそれはないだろうと思って,この日は25冊抱えてきた.重いのをまた持ち帰るのはなあと気も重かったのだが,実際に店開きしてみると,あれよあれよと売れていき,気がつけばすべて完売.もうないのですか?と追加注文もあったりして.これはほとんど夢のようなことだった.※一般書店でもこういうふうに“飛ぶように”売れてほしいものだ.

◇夜の練習が終わったのは午後9時半近かった.「赤い打族」たちはそれぞれに疲れ果てたようで,新宿の夜の巷に融けていった…….

◇つくばに帰り着いたのは午後11時をまわっていた.実にハードな一日だった.

◇明日からは進化学会大会(8月29〜31日,代々木)に向けての準備がある.

◇本日の総歩数=15403歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.4kg/−0.6%.


26 augustus 2006(土) ※ 極端に短い土曜日はお祭り気分

◇午前6時にいったん目が覚めるものの,「半病人」状態でふらふらする.1時間ほど室内を徘徊してから,また就寝.午前10時半に再起したものの,やはり「1/4病人」なのでもう一回寝る.午後1時過ぎに再々起.やっと活動の開始だ.

 もうムリをしてはいけないことはわかっているのだが…….

◇午前中は曇ってときどき小雨も降ったりしたが,午後になって天気は回復してきた.厳しい残暑もなく,お祭り向きの空模様だ.

◇午後のこまごま —— 頼まれ文書づくりに励む.午後になってもまだ「1/8病人」なので,進捗ははかばかしくない.

◇この週末の〈まつりつくば2006〉は,TX 開業により,例年以上にとても(ものすごく)見物客が集まるらしい.いま住んでいるマンションの周りは,昨夜から「祭り一色」だ.すでに,センター広場をはじめ,ペデストリアンの露店や施設の準備はほぼ完成したようすが上層階からうかがえる.目の前の土浦学園線が封鎖されるので,マンションからの車の出入りは不可能になる(代替駐車場を利用する).

行き交う雑踏のざわめきと,もえみさんのアナウンスが響き渡っている.上から眺めるとセンター広場あたりはすでに人ごみで埋まっているのがわかる.日中はまだ蒸し暑さが残っていたので,とても外出する気にならないが,夕方になって北寄りの涼風が吹いてきたのに誘われて,お祭り会場をひとまわりしてくる.この混みようではまっすぐ歩くのもままならない.蛇行酔歩しつつ,露店を覗いたり.

そのうち,午後7時になって山車やねぶたの練り歩きがはじまる.「地域色豊かに」というよりは,「無国籍的肥大」と言った方がふさわしいんだろう.確かに観客の数はいつもよりは多いようだ.

—— 午後9時までが開催時間のはずだが,雑踏の人口流量が減って,露店が店じまいをしたのは午後10時をまわっていた.発電機の振動音がやんだのは午前零時前のことだった.

◇頼まれ書類を仕上げたのは日が変わってから.今日は日中の活動時間がふだんの半分くらいしかなかったので,あっというまに日曜になってしまった.今日は,新宿にて〈トゥーランドット〉練習が午後から夜まである.姫君,お慈悲を! Grazia! Grazia!

◇本日の総歩数=4109歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝−|昼△|夜○.前回比=0.0kg/+0.8%.


25 augustus 2006(金) ※ 冥王星がドロップアウトした金曜日

◇午前3時半起床.研究所に直行.気温25.6度の熱帯夜.まだまだトロピカルな関東平野.

◇未明のこまごま —— 『農業と環境』掲載予定の『系統樹思考の世界』紹介記事のチェックと返事./ JSTの申請は来週はじめになるな(この分だと).

〈冥王星はずし〉 —— プラハで開催されている国際天文学連合の会議で,「冥王星」を太陽系の惑星から“はずす”ことが議決された.惑星としての認知分類カテゴリーからいえば,もともと肉眼では見ることができない「冥王星」がそのカテゴリーからはずされたとしても,天体分類における認知的危機はきっと訪れないだろう.もちろん,冥王星の発見者がいるアメリカを中心として,分類をめぐる“愛憎劇”はしばらく続くかもしれないが,それは惑星分類の認知的側面とは無関係だろう.冥王星はもともと〈惑星〉という認知カテゴリーの“プロトタイプ”ではありえなかった.

 今回の“分類学的事件”を通じて,分類のもつ認知的なパワーに少しでも注目が集まればいいと思う.報道を見ていると,冥王星が“はずされた”ことが,何かしら太陽系の構造そのものに関する新発見であるかのようなニュアンスが感じられることがある.しかし,単に「分類」あるいは「名前」の問題なのだから,そういう深遠な意味を探るのはやめた方がいいだろう.プルートはたとえ惑星という呼称をはずされたとしても,やはり太陽のまわりを公転するプルートであり続けるのだから.

 オーケストラ的に言えば,今回の決議により,ホルストの組曲〈惑星〉に長年にわたって刺さっていた“小骨”がとれてとてもよかった.ホルストが〈惑星〉が作曲していた頃には,冥王星という“惑星”はまだ発見されていなかったので,この組曲は「海王星」で終わっている.だから,解説記事などでは必ずこの点に触れ,「ホルストの頃には冥王星は未発見で……」との一節が付されていた.つい先日,東芝EMIから“幻”の「冥王星」を追加した〈完全版・惑星〉というCDが発売されたそうだ.しかし,今後はこういう但し書きも救済措置もいっさい不要になる.〈惑星〉の聴衆は,終曲「海王星」のエンディングで合唱とチェレスタによるしだいにフェイドアウトしていく旋律のリフレインに身を委ねつつ,太陽系の惑星系列が“ここで終わる”ことをすなおに実感すればいい.とてもハッピーなことだ.

◇午前のこまごま —— 出勤前の歯科定期検診./ 午前10時からの「成績評価ワーキンググループ」の第2回会議に遅れて滑り込む.いろいろ意見は出るのだが,決定打はなかなか見いだせない.discouraging ではなく encouraging な成績評価システムに改訂したいという点では同意できるのだが.各論になるとなかなかねえ…….

◇午後2時から,中央農研センター第一会議室にて,形態測定学セミナー〈Fourier Descriptors and their Applications in Biology〉に参加する.来日中の Pete E. Lestrel 博士を囲む会みたいなセミナー.Lestrel さんの講演は「Computerized shape analysis : An approach based on a Fourier-Wavelet Model」.90分に及ぶトークだったが,たいへんおもしろかった.形状の輪郭に関するフーリエ解析は,形状の大局的特性を記述する方法としては有効であることは知っていたが,逆にローカルな形状特性がフーリエ係数に“散らばって”しまうという欠点があった.今回のセミナーでは,この欠点を補うために,ウェイヴレット解析を用いるという新しい提案がなされている.ウェイヴレット変換を使うと,局所的な輪郭の特性までうまく拾い上げることができるようだ.したがって,フーリエ変換とウェイヴレット変換を組み合わせることで,形状輪郭の大局的ならびに局所的な特徴を測ることができるという展望が見えてきた.

◇今日は,よく晴れてはいるものの,真夏日ではない.午後になってもはじける暑さは感じられない.

◇午後のこまごま —— 進化学会大会に関わる事務連絡のやりとり.

◇この週末は,つくばの中心エリアでは〈まつりつくば2006〉が開催されるため,露店もたくさん出るは,ねぶたは練り歩くは,イベントたくさんで,お祭り一色になる.前夜からその準備が進められている.

◇夕刻に帰宅したとたん,日常的(季節的)業務が飛び込んできて,夜中の3時まで,「夏休みの宿題」に追いまくられるハメになる.今日はとても長い一日だ.まる24時間活動して,なお寝られないとは…….

◇本日の総歩数=8976歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=0.0kg/+0.2%.


24 augustus 2006(木) ※ 猛然かつ猛烈かつ猛速に燃え尽き

◇午前4時起床.曇り,気温24.5度.研究所にて,明け方の系統解析コンサルティング. Bremer support index の計算について.

【教訓】「類は友を呼ぶ」 —— したがって,変な人は変な人をいつの間にか呼びこむ.でも,気にすることはない.さくさくと処刑するだけ.「Quando rangola il gong gongola il boia! Il lavoro mai non langue, dove regna Turandot!」 プー・ティン・パオに夏季休暇はまだない.

◇朝から蒸し暑く,雲間から雨滴らしきものがぱらついたりする.

◇午前のこまごま —— 書類書き1件.メキシコの出張復命書.あ,参加費立替払いを出さないと./ 進化学会大会準備関連のメール書きまくり.遅ればせの評議員会招集メール.表彰式の案内文(受賞者と木村財団宛),大会当日のこまごましたこと(受賞メダルと賞状の受け渡し,表彰式の段取り,評議員会の昼食準備)の事務連絡.総会議長の委嘱(やはらさん,グラシアス!).これでいちおう大丈夫でしょう.

◇すでに昼になった.天気は回復し,残暑がぶり返す.

◇午後のこまごま —— 海外逃亡中に溜まっていた問合せや質問のメールにすべて対応する.系統解析がらみの質問,さらに2件(RAPDデータは見込みないですよ/系統ネットワークしましょう)./ メーリングリストの登録申請処理,たくさんたくさん.ここまででもう午後4時になった.

◇〈EVOLVE〉の会員数が1900名を越えた.ごく少数の“困ったちゃん”を含めてね.※その大半はすでに“処刑”したが,まだ…….

◇巨大トド —— JST の申請締切(所内)が「明日」なのだけど,ムリ.ぜーったいムリっ.※で?

◇生物学哲学の単行本をお願いします,との某出版社からのオファーに返事を書く.他の出版企画が立て込んでいるので,すぐにはできませんね.※ついでに,ソーバー本の復刊もお願いしますぅ./ 関連して,別の出版社から企画されている生物学哲学の入門書に関する問合せにも返事を書く.潜在的執筆者は日本でもそろそろ擡頭してきています.ハルやソーバー,あるいはルーズのような書き手が国内にもいてほしい.

—— てな具合で,溜まっていた数十通の要処理メールはすべて処理済みとなり,Apple Mail の受診箱は空っぽになった.実にすっきりと.久しぶりのことだ.

◇白く燃え尽きる夜…….

◇本日の総歩数=6002歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=−0.1kg/−0.6%.


23 augustus 2006(水) ※ 逆モンテズマはただの夏風邪

◇午前5時30分起床.気温24.3度.研究所に行く.

◇早朝のこまごま —— 海外逃亡中に堆積していたメーリングリスト関連の作業.十日近くも放置しておくと,さすがに“山積み”状態になっていた./ 他にも返事しないといけないメールがいくつかあるのだが,順を追って処理していきます.すでにオーバーフロー状態なので,「拙速度」を1段階上げないと終わらない.何でもいいからとにかくこなして相手に投げる.それで問題なしとみなされれば(実際そうであるかは知らない),オッケーということで.

◇午前のこまごま —— 共済組合証の検認に関わる書類の提出./ 午前10時半から正午まで,久しぶりに出席した領域会議.部屋の引っ越しに関する打合せ.9月の第3週以降に行なうということになった.ひとつの部屋を明け渡すことになったので,またまた「本」の移動かよっ./ 常磐高速バス〈つくばね号〉は今年10月1日をもって運行廃止が内定しているとのこと.TX の既存交通機関への影響は着実に及んでいる.

◇午後2時の気温は30.7度.残暑が厳しい.国道408号沿いのフウノキ街路樹がところどころで立ち枯れている.植物にとってもつらい残暑なのだろう.

◇献本またまたありがとうございます(>訳師さま) —— アダム・フィリップス[渡辺政隆訳]『ダーウィンのミミズ,フロイトの悪夢』(2006年8月24日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-07241-6→目次).

◇夜はごろごろしてしまう.帰国して以来,どうも体調が思わしくなく,腹の調子もイマイチだと感じていた.勝手に“逆モンテズマの呪い”かと納得していたのだが,どうやらいま流行っている「腹にくる夏風邪」とやらに罹ってしまったようだ.

◇本日の総歩数=7626歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼丸○|夜△.前回比=−0.1kg/+0.4%.


22 augustus 2006(火) ※ Principessa! Morte! Morte! Morte!

◇午前3時起床.夢枕に〈トゥーランドット姫〉が降臨され,「〈プー・ティン・パオ〉を召還し,即座に処刑せよ」とのお告げを下される.

—— 弾かれるように研究所に向かい.明け方に宣告文を書く:「Il principe di neo-imanishismo avversa ebbe fortuna; al sorger della luna, per man del boia muoia !」 群集は声なき声でつぶやく:「Morte! Morte! Morte!」 午前5時過ぎ,死刑執行人プー・ティン・パオの無慈悲な青龍刀が振りおろされ,哀れな“王子”はメーリングリストの露と消えた.「これにてジ・エンドです」.夜明けの一幕劇は静かに終わった.

◇明け方の秋の気配は日に日に強く,晩夏のヒグラシと初秋のコオロギがあわせ鳴く.

◇午前のこまごま —— 今年度の研究計画に関する個人面談.もっと頑張らないといけませんかね(ふっ……).独法研究所における「統計研究」のこれからについて密談.アナリストが「不遇」であるという長期的・大域的傾向に歯止めはかかっていない.かつての農技研にあった物理統計部のような“巨大”な組織はもう時代錯誤だとしても,統計研究の場がなくなりつつあるという現状はなんとかしないといけない.とくに,日本の場合,医学統計学にくらべて,それ以外の分野での統計学で研究者コミュニティがあまり育っていないという長年の問題がある./ 進化学会大会直前のばたばた.外国にトンズラしていたのが祟って,段取りがまだ決まっていないことが多々ある.評議員会の出欠とか委任状とか,表彰式関係者への連絡とか.etc.

◇午後1時15分から1時間ほど,久しぶりの〈形態測定学講義〉の第18回目.今日から Part II「Analyzing Shape variables」に進む.ここではいくつかの多変量解析の手法が解説される.まずは,第7章「Ordination Methods」(pp. 155-164).主成分分析(PCA)と正準変量分析(CVA)がふたつの柱になっている.前半は PCA について.多変量の分散共分散行列の固有値と固有ベクトルが導出される.最初に直感的な理解を促し,そのあとで代数的操作の詳細に進むという“生物学者にやさしい”配慮がなされている(もちろん,ヨロイは透けて見えている).

◇午後は厳しい残暑の中,ツクツクボウシの大合唱.

◇献本ありがとうございます —— 根井正利,S・クマー/根井正利[監訳・改訂]/大田竜也・竹崎直子[訳]『分子進化と分子系統学』(2006年7月20日刊行,培風館,ISBN:4-563-07801-8).翻訳をするというのはいつでもたいへんな作業だと思う.

◇体調がよろしからず.不適応かも(……).

◇本日の総歩数=6877歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.前回比=−1.0kg/+0.5%.


21 augustus 2006(月) ※ 蒸れる朝は霧まで立ちこめる

◇午前5時起床.蒸し暑い.外を見ると霧が立ちこめている.熱帯雨林地域か,つくばは.気温24.7度.ミンミンゼミの合唱.

 10日ぶりに研究所に行ってみたら,書類やら何やらの堆積物.ブランクの解消には時間がかかるにちがいない.その前に,労働意欲にカビが生えてきそうで…….この気温,この湿度.

◇献本感謝(>まりまり) —— 長谷川眞理子『ダーウィンの足跡を訪ねて』(2006年8月17日刊行,集英社[集英社新書ヴィジュアル版002],ISBN:4-08-720355-7).この新書企画はだいぶ前に聞いたことがある(ガラパゴス行の頃だったか).カラー写真がとても美しい.

◇メキシコ旅行の記録〈Another Oaxaca Journal〉の全日程分を公開しました.ご覧ください.

◇帰国早々,諸方面から,督促に,質問に,問合せに,依頼にとわらわらと取り巻いてくる.ううむ.

◇夜,腹の調子がいまいち.メキシコにいたときは〈モンテズマの呪い〉にかかり,帰国しては〈逆モンテズマの呪い〉に苦しむって? 夕食にも不自由する.困った困った.

◇本日の総歩数=5380歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.前回比=−0.3kg/−0.6%.


20 augustus 2006(日) ※ というわけで,無事に帰国

—— いろいろと気力と体力を使うオアハカ旅行でしたが.本日午後7時に無事,つくばに帰り着くことができました.

◇今回の旅行の詳細は〈Another Oaxaca Journal〉に公開しました.まだ前半部分しか書けていませんが,後半も一両日中にアップできるでしょう.

◇さあ,寝よう! Buenas noches!

◇本日の総歩数=3850歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼△|夜×[2食喰ったよーな……].前回比=未計測/未計測.


Another Oaxaca Journal(12〜20 augustus 2006)

—— メキシコのオアハカで開催される The Willi Hennig Society 25th Annual Meeting(14〜17日)の参加記録と日誌です.オリヴァー・サックスの『オアハカ日誌(Oaxaca Journal)』にちなんで命名してみました.もちろん,シダの採集に行くわけではありません.


12 augustus 2006(土) ※ では,行ってきます!

◇午前4時起き.曇り,北から弱い風が吹く.気温23.8度.今日は天気がよくないようだ.

◇いつものことながら,海外に出かける当日は,早朝になってもなおバタバタとしている.日本を発つのは今日午後5時過ぎのフライトなので,本当だったらもっと余裕があるはずだ.しかし,時期がどうしようもなく悪い.そのひとつは,お盆休みの海外旅行者たちの大波に巻き込まれるということ.これは毎年のことだろうから,あきらめましょう.もうひとつはイギリスでのテロ?未遂事件の余波が地球の裏側まで到達したこと.これは予測しなかったな.空港でのチェックインや手荷物検査が「最高レベル」の警戒度とのこと.新聞やニュースで空港での長蛇の列が報じられていたが,アレを見ると,何だかなあ…….

◇頼まれていた論文原稿読みの仕事をする.本文とくにメソッドの部分を読んで返事を書く.MacClade のファイルがダメっぽいので,再度の訂正をお願いします.系統解析の方法についても再検討が必要ですよ.

◇〈Hennig XXV〉の大会事務局から緊急のメール —— メキシコでの政治情勢があまりよくないらしく,Ciudad de Mexico や Ciudad de Oaxaca では抗議行動も起こっているとのこと.いやはや,まったくもってタイミングが悪いなあ…….

◇旅支度と講演準備はすんでいるので,あとは旅程がさくさくと消化できれば,9日後には再び日本に帰ってこれるのだが,どうなることやら.

—— あとの顛末は〈Another Oaxaca Journal〉をご覧あれ.¡ Hasta otro día !


11 augustus 2006(金) ※ 一瞬だけ「秋」を感じて駆回る

◇午前2時起床.気温23.3度.そこはかとなく涼しく,虫の音など聞こえてくる.これって「秋」の気配か.昼間はごまかせても,明け方は季節の素顔が見える.研究所に直行し,じたばたする.

◇新刊情報 —— Lawrence Edwards『The Vortex of Life: Nature's Patterns in Space And Time』(2006年5月4日刊行,Floris Books, ISBN:0863155510 [pbk]).1993年に出たハードカバー版のペーパーバックでの復刊のようだ.生物形態に関する射影幾何学に関する本.自然界の「かたち」に関する数学的論議の本はときどき見るが,なかなか生物学者が使えるツールにまでは発展しないようだ.morphmet からの情報によると,この本も「形態測定学」への言及はいっさいないという.

◇ポスターつくりまくり.前日にやるなよっ.>ぼく.(……)

◇メーリングリストから退会するというのは久しぶりのことだ.Free ML で運営されている「科学ML(Science)」から退会した.運営者が放置しているとああいうことになる.

◇共同研究者とあれやこれやメールでやりとりした結果,午後6時前にやっとポスターが仕上がる.カラーA3版8枚に出力する.これでプレゼンは大丈夫.※ん,発表原稿は?(そんなもんつくったことありまへん)

◇耳より情報 —— David Grimaldi and Michael S. Engel『Evolution of the Insects』(2005年6月刊行,Cambridge University Press, ISBN:0521821495→目次)の翻訳企画が提案されているそうだ.大著なのでたいへんですが,うまく進むといいですね.

◇これでやっと旅支度と準備の山場を越えたかな.

◇〈トゥーランドット〉にトライする方々 —— 細馬さんが初めて聴いたそうだ(→〈The Beach〉の8月8日).いきなり「ベリオ版」ですか!(通やなあ) よく知られている「アルファーノ版」は最後のエンディングがいささか問題ありと言われているのですが(演奏する側は盛り上がるのだが),確かにぼくの現代新書を読むときにも「ベリオ版」の方が,この歌劇で「なぜ“愛”が重要なのか」を整合的に理解するのにはきっと適しているでしょうね.ぼくの本にとってもそれは“第3レイヤー”での重要なテーマです.※ピン/ポン/パンの役回りについての情報,ありがとうございます.

◇本日の総歩数=11592歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.6%.


10 augustus 2006(木) ※ 何でもかんでも“chapulines”……

◇午前2時半起床.サクソフォーンの調べとともに,プーティンパオが出てきそうな月夜.気温24.5度.研究所にて発表準備が続く.

◇バッタを食べる話 —— ずいぶん前の〈Hennig XXV〉の連絡メールに,「オアハカでは“バッタ・タコス”をどーぞ!」と書かれていた.いつものジョークだろうと思っていたのだが(Hennig Society は冗談が多い),そうでもなさそうだということがしだいに判明してきた.マジでバッタを喰うらしい.天王台からの未明情報によると,オアハカで「赤いバッタ」を喰い過ぎて腹の調子が悪くなったとか.こわいことに,タコスだけではなく,いろいろな料理にバッタが入っているらしい.

 オアハカ名物のバッタ(“chapulines”)について調べてみる.まずは画像から.今年オアハカを旅行した家族とおぼしき方々の写真日記が公開されている.この中に,繁華街の雑踏で“chapulines”が売られている光景が写されている.ほとんどポップコーンかスナック菓子みたいなもんでしょうか.見た目が赤いのはなぜ? もともと「赤いバッタ」なのか,それとも調理のためか.

 昆虫食のサイト〈Insects as Food〉をちらっと覗いてみると,メキシコはもともと昆虫食文化の広まっている国柄で,とくにオアハカではバッタだけでなく,何でもかんでも蟲を食べるようだ.これは覚悟した方がいいかもしれない.

  —— などと,“chapulines”の拡大図を見て喜んでしまったりする早朝.

◇しかし喜んでいる場合ではない,国外逃亡する前のこまごまを何とかしないと —— 成田空港へのシャトルバスのチケットを購入する.さらに米ドルも./ 名古屋大学集中講義の引きずり.今後は“肉筆”での情報のやりとりはやめた方がいいかもしれない.決着がついたはずの「メールアドレス」の件がまだおさまらず,不配の知らせが受講生が届いたりする.だ・か・ら,アルファベットが読めないんだってば! 次回からは,メール返信で登録アドレスを通知してもらうという方式を真剣に考えないと,非効率的でどうしようもない./ 今年度内の業績リストを所に提出する.面談は帰国後./ 大学との兼業の場合,うっかり年休を取ってしまったものだから,書類の書き直しを指示される.まずは年休届けの訂正.すでに決済されてしまったので,主筆にて取り消し&現状復帰をする.さらに,一部はピュアな年休なので,再度の年休届けをする.届出の用紙が訂正印やら取消線でぐちゃぐちゃになったが,届けたんだからこれで許してね.さらに,兼業のための「勤務をしないことの承認願い」なる書類を再度提出する.これって,健康診断とかレクリエーションのために使う書式で,兼業届けも兼ねるというのはいささか問題ありません?

◇午後のこまごま —— 今年の統計研修に関する打合せ(午前にすっぽかしてもうしわけありません,佐藤さん).例年通り,11月に2週間の予定で実施する./ 国民年金の住所変更に関する届け出.完了./ 進化学会大会のホテル予約(新宿).完了.いくら TX が開通したからとはいえ,さすがにつくばから毎日通うというのはムリがある./ 某学会大会のオーガナイザーに確認メール.事前に知らされていたシンポ日程と,送られてきたプログラムに記載されている開催日とがズレていることを知らせる.折り返し,「ひょえ〜……」という返信メール.オーガナイザーのみなさん,開催日はよくご確認ください.

◇ひょえー,講演準備が〜(汗).

◇本日の総歩数=9484歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/−0.3%.


9 augustus 2006(水) ※ 台風来襲でも仕事は吹き飛ばない

◇午前2時半起床.北の風.強い雨.くるりと向きを変えた台風7号は,東海地方に上陸後,関東に向かってくるそうだ.気温24.2度.

◇研究所にて未明のあれこれ —— 名古屋大学の集中講義受講者のメールアドレス全員分がやっと確定した.これでレポート課題が出せる./ 〈Hennig XXV〉の連名発表者宛に進捗状況の連絡をする.ここ一両日中にポスター発表のコンテンツを詰めないといけない.勝負勝負.

◇昨日の朝に24時間抽出完了のはずだった水出し珈琲を今朝まで引き延ばしてしまった.「40時間もの」の味はどうかと思ったのだが,多少濃いもののまったく問題なかったのは幸いだった.

◇集中講義のレポート課題 —— 下記のような問題を出題した:1) アブダクションについて;2) 系統樹思考 vs. 分類思考;3) 科学と科学哲学との関わり;4) 身のまわりの「系統樹」体験.8月23日の締切厳守でしっかり書くよーに.>受講生諸氏.

◇午前中のこまごま —— 東京農大・農・昆虫学研究室のサイトが開設された.まだ工事中の部分もかなりあるが./ 昨日立てた進化学会の予算案をチェックする.事務局から駒場の殿に転送してもらう.

◇ざあざあと降るわけではないが,コンスタントな雨足.時おり,木の枝が風に大きく揺れているところを見ると,やっぱり台風が通り過ぎているようだ.

◇メキシコ旅行関連 —— 航空券の「束」を事務で受け取る./乗り継ぎ時のアメリカでの宿泊先が確定する.サンフランシスコ(往路)とロサンゼルス(復路)で何とまあゴージャスな乗り継ぎ泊であることか./ オアハカでのホテル予約のリコンファーム.これで,とりあえず向こうまで行って,そして帰ってくる“足”は確保したことになる.※あとは本務の“中身”だけだっ.(……)

 今回のメキシコ行きの旅程表をつくった.これで気分だけはもう国外.まだすんでいないのは,旅支度と発表準備だけだ.

◇午後のこまごま —— トゥーランドット姫のお一人を「彩の国」へ嫁がせた.向こうではたかびーなふるまいをするんじゃないよ.

◇〈Hennig XXV〉関連 —— オアハカ大会のプログラム(→pdf : 96KB)に続いて,講演要旨(→pdf : 576KB)が公開された.

 この学会は事前に段取りよくコトが決まるのではなく,たいていは1ヶ月前になってバタバタと予定が決まる.講演要旨にいたっては1週間前にならないと公開されない.これまでほとんど毎年参加しているが,開催国によらずこの傾向は続いているので,学会の運営方針(慣習)なのかもしれない.昨年のノルウェー大会(Hennig XXIV)は,サーキュラーが出るのが遅かったので,研究所の海外出張対応経費への申請に間に合わなかった(だから不参加).

 ポスター発表の「素材」の配置を考えている.

◇早朝からずっと降り続いていた台風の雨も夕方になってやっとあがり,青空が広がってきた.黄金色でも血の色でもない青色.

◇本日の総歩数=6581歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=+0.6kg/+0.2%.


8 augustus 2006(火) ※ いきなり東京でごそごそする

◇午前5時起床.晴れのち曇りときどき小雨.朝から不穏な空模様だ.やっぱり台風が接近しているせいか.気温26.0度.しっかり熱帯夜やんか.

◇早朝の研究所にてこまごま —— メーリングリストの月例アナウンスを大幅遅れで配信する.もうしわけありませぬ./名古屋大学の集中講義受講者メーリングリスト.不着エラーが何件か残っているが,とりあえずテスト送信してみる.今日中に全員のアドレスを確定したい./ その他,たくさんの“こまごましたこと”があるのだが,処理しきれないまま.中断.

◇午前11時11分の TX 快速にて,飯田橋の日本進化学会事務局に向かう.小雨が降ってきた.到着したのは昼休みの時間帯.今日の仕事は進化学会の予算案を検討すること.殿はしっかりどたキャンするし……(orz).それでも向こう2年間の予算案と,評議員会への提案事項について整理して,お勤めは午後2時に完了.

 その後,丸の内の〈オアゾ〉に立ち寄って,メキシコ本を物色する.そーか,オアハカではやっばり「バッタ」を食べるんだ.昆虫食の世界ですな.

 さらに,秋葉原に転戦する.ヨドバシAKIBAのレストラン街を徘徊していたら,〈うな匠〉という鰻屋が「ひつまぶし」を大々的に宣伝していることを知った.さてさて,いかなるお味なのか? (中部国際空港にも出店している店らしい)

◇午後5時前にはもうつくばに帰り着いてしまった.研究所に放置した仕事がそのまま溜まっているにちがいないが,ちょっともうどうしようもない.

 禍々しき夕焼け —— 台風がやってくる前だからか,雲の彼方の西の空が黄金色に輝いたと思ったら,次には真っ赤な夕焼けが広がっていた.明日は終日雨だそうだ.

◇『系統樹思考の世界』関連 —— 第2刷の見本が自宅に届いていた.2006年8月4日刊行です./大きな蟲どもはもう取り尽くしたはずだったのだが,「まだいます」との報告あり.うへー.第3刷に向けての訂正リストがもう埋まりはじめた.蟲リスト:p. 287「Ulica」→「Ullica」|p. 67 「ツュキュジデス」→「トゥキュディデス」| etc.

◇本日の総歩数=9197歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.1kg/−0.6%.


7 augustus 2006(月) ※ 泥縄ウィークのはじまり

午前5時起床.晴れ.気温23.6度.急速に暑くなる.午前9時には早くも31.2度の真夏日に.

◇午前のこまごま —— JSTの公募プロジェクトにアプライしてほしいとの依頼が来る.9月アタマが締切なのだけれど,ひょっとして絶頂繁忙期と重なってないかい?/ 居室の一つを明け渡すことになった.実際の物品の移動は9月に入ってからだが,ほとんどが本や書類なので人手が必要になる.秋口にまた忙しくなるのはつらいなあ./ すっかり忘れていた計量生物学会の電子メール理事会の返信を出す./ 進化学会関連の連絡.明日は東京で予算案を立てる.

◇メキシコ旅行準備いろいろ —— 往路復路ともにアメリカでの宿泊が必要になる.それぞれのホテルの予約をエージェンシーに依頼する.市内にのこのこ出て行く余裕ないので,いずれも空港周辺で確保してもらうことにする./ パスポートのコピーを事務に届ける./ オアハカでの宿泊の再確認が必要./ 航空券は明日に研究所に届けられるそうだ./ NTTドコモの海外ローミングサービスに申し込む.成田空港で海外用携帯電話を受け取ることになった.

◇ばたばたと時間が過ぎていく.外は極度に暑いようだ.

◇午後のこまごま —— 〈トゥーランドット〉の城を見に行くという話がある.それも本番前に.詳細未定.※時間が〜 / それよりも,メキシコでの発表準備が先決だ!

◇夜,数年ぶりにニフティーの昆虫フォーラム(FKONCHU)に投稿した.フォーラムという仕組み自体が来年の3月末で廃止になるという.ぼくにとってはきっと最後の発言になるだろう(レスがつけば別だが,今の発言密度だとどうなるかわからないな).

◇lunatic な満月が西の空低く輝く夜.

◇本日の総歩数=6764歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.前回比=+0.1kg/+0.3%.


6 augustus 2006(日) ※ 姫は炎暑でも新宿召還する

◇午前4時半起床.曇り.湿度の高い北の風.気温23.8度.

◇思い立って,タイ風カレーをつくる(簡単バージョン).辛みがあっても,ココナツミルクの風味は“夏”向きだ.今度はもっと辛いのにしよう.そういえば最近はリキの入ったカレーをつくる時間がぜんぜんない.こういうことではいけないのだが,それをやり始めるとかんぺきに「現実逃避」になってしまう.メキシコに行ったあと,〈トゥーランドット〉が終わったあと,なんやかんやが終わったあと,と考えてみると,1ヶ月後だな,こりゃあ.

◇午前11時41分発の TX 快速で新宿文化センターに向かう.とんでもない暑さだ.朝から始まっていた〈トゥーランドット〉練習は午後の部から参加する.前回はさんざん苦しんだ演奏箇所がさらっとできたのは幸いだったが,その他の箇所は方々で落ちまくった.これではよくない.プーティンパオがやってきてしまう. 次回はメキシコ逃亡後の月末の練習だ.もう「合唱」が混ざるぞ.楽器もそろうし,いよいよ本番間近ということで.

生まれて初めて「チンバッソ」という楽器の実物を目にしてしまったので,すかさず写真を撮らせてもらう.周囲からもカシャカシャというシャッター音が相次ぐ.プッチーニの「コントラバス・トロンボーン」のパートを今の時代に演奏するときはチンバッソを代わりに使用することが多いそうだ.バリバリと低音が響いていたが,確かにチューバではこういう音質は期待できないだろう.うまいたとえが見つからないが,“異常巻きアンモナイト”のような,フシギな楽器だ. 

—— 午後5時前に練習終了.楽器を片付けて外に出たら,夕方なのにまだじりじりと暑かった.午後6時半につくばに帰り着く.

 今日の練習で『系統樹思考の世界』を団員諸氏に宣伝させてもらった.現代新書の執筆時期とたまたま重なって,新宿区民オペラの〈トゥーランドット〉のエキストラを引き受けなかったとしたら,あの本はずいぶんとちがった顔つきになっていただろう.それを考えると,偶然に関わりをもったオペラが原稿書きに及ぼした必然の影響を大きさを考えないわけにはいかない.次回の練習には数十冊持参するようにと言われているので、著者割引分を用意しないと.※サインでも手形でも何でもさせてもらいまっせ.

◇夜は,累積していた疲労&姫による拷問のためにほとんど死んでいた.

◇明日からは「ドロナワの1週間」が始まる.

◇本日の総歩数=12603歩[うち「しっかり歩数」=1144歩/12分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.前回比=−0.4kg/+0.1%.


5 augustus 2006(土) ※ “味噌味”禁断症状からの社会復帰

◇午前5時半に起床.夏晴れ.ナゴヤでの累積疲労のせいか,一挙一動がのろのろしている.“イツツユビナマケモノ”.ここ数日分の新聞を読んだら,昨日の名古屋は最高気温が36度もあったそうだ(そういえば連日「光化学スモッグ注意報」が発令されていたな).しかし,関東も負けてはいない.今日の予報では35度になるそうだ.避暑だ,避暑だ.もうそれしかない.メキシコだ,オアハカだ.

 あまり暑いと,「何かをしてやろう」という前向きさが蒸発してしまう.時が過ぎゆくのを受動的に受け止めるというかなんというか.

◇「味噌ミーム」の感染 —— 自宅の食卓でもイマイチ「味」が足りないように感じる.そうそう,あの甘い味噌味が関東にはないのよねえ,などと言うようになってはもう後戻りはできないのだろうか.ナゴヤ人は非ナゴヤ地域にやむをえず出かけるときは,“マイ味噌”をフトコロに持参するという.そりゃあ,ああいう味の料理が基準であれば,味噌なしには生きていけないというのもむべなるかなだ.

 といいつつ,味噌煮込みやら味噌カツを思い出しては“パブロフの犬”と化すのは,すでにもう条件づけられてしまったという証しか.

◇宅急便で名古屋から届いた大量の洗濯物をひたすら洗う午前中.1週間後には国外逃亡するので,スーツケースへの衣類の入れ替えをしないといけない.

◇献本感謝 —— 数日ぶりに研究所に行ってみたら,日本昆虫学会発行の〈The Insects of Japan〉叢書(→学会サイト)の1冊が届いていた.岡島さん,ありがとうございます:Shûji Okajima『The Insects of Japan, Volume 2 : The Order Tubulifera (Thysanoptera)』(2006年8月1日刊行,日本昆虫学会/櫂歌書房,ISBN:4-88757-112-7).日本産クダアザミウマ亜目のモノグラフ.700ページを越える大著だ.今年始めに,カバージャケットの見本だけは見ていたが,中身が詰まるとこういうボリュームの本になる.本体はペーパーバックだが,外函に入っている.本文は英文で,巻末に日本語の検索表がついている.

◇累積疲労をずるずるとひきずったまま夜になる.今日も真夏日で,終日とても暑かったので,活動意欲が低迷したまま.

◇夜になって,集中講義受講者のメーリングリストをつくりはじめたが,肉筆が判読できずに四苦八苦する.他人のことはいえませんが,アルファベットはていねいに書きましょうね.>学生のみなさま.

◇明日はまた新宿にて「姫」のきびしい詮議が待っている.

◇本日の総歩数=4390歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=−0.3kg/−1.0%.


4 augustus 2006(金) ※ トゥーランドットと大学ビールの宴

◇午前4時半に起床する.今日は朝のうちにチェックアウトし,宅急便を送ったり,大きな荷物を名古屋駅のロッカーに入れたりしないといけない.荷造りをしつつ日録を書く明け方.

◇午前7時前には,早くもフロントでつくば宛の宅急便を送り出し,チェックアウトをすませていた.まずは名古屋駅に向かい,コインロッカーにスーツケースをあずける.駅ビルの〈カフェ・ジャンシアーヌ〉でモーニング.(朝からバナナを食べてはいけません.)

◇大学に着いたのは午前8時前.講義開始が9時半だから1時間半も余裕があるのだが,今朝は機材のセッティングと調整がたいへんなのだ.なぜって,今日の午後は〈トゥーランドット〉のDVDを受講生全員で鑑賞しつつ,『系統樹思考の世界』の読み方を教えることにしているから.

 PowerBook と携帯スピーカーとの接続,できるだけ廊下に音が漏れないように,しかも大音量で流すためのくふう,そして全部で2時間あるオペラの要所のみをピックアップして,1時間に収めるためのシーンの取捨選択をした(ご苦労なことだ).古い校舎の割りには遮音がよかったので,各幕のエンディングを最大音量で流しても,とくに騒音公害にはならないようなのは幸いだった.

 音響を含めて,全部のセッティングがすんだのは午前9時前のことだった.

◇午前9時半から,最終日の集中講義のはじまり.計算統計学の手法として広く用いられているブーツストラップとジャックナイフについて説明したのち,系統推定でそれらの手法がどのように適用されているのかを説明した.その後,PAUP* / MacClade を用いて,実際の形質データ(塩基配列データ)を出発点として,どのような手順で系統樹が構築され,その信頼性が評価されるのかをデモした.午前の講義はここでおしまい.

◇昼休み休憩をはさんで,午後の時間は予定通り〈トゥーランドット〉鑑賞会.事前に予想されていたことではあるが,「Nessun Dorma」は曲としては知っていても,オペラ全体を見たことのある受講生はいないようだった(オペラそのものが未体験だったりしたのかもね).

 〈トゥーランドット〉のDVDを流しつつ,「トゥーランドット姫とは系統学で言えば○○の化身であって・・・」とか,「なぜぼくがティムールを現代新書に登場させなかったかは○○の理由で・・・」とか,「リュウとトゥーランドットの対話の体系学史的な意義は・・・」という噺をえんえんと1時間半ほど講義したのであった. これで名古屋大学の受講生たちは,『系統樹思考の世界』の第1レイヤーはもちろんのこと,学史的な第2レイヤーの読み取り,そして〈トゥーランドット〉の筋書きを知っている者だけがわかる学問系譜の行く末に関わる第3レイヤーのコード解読ができるはずだ.もちろん,プッチーニを演奏するオーケストラ側の苦労については十分に語りました.プッチーニがいかにオーケストレーションがうますぎて演奏者は多大な苦労と緊張を強いられるかとか,ワーグナーやマーラーと同時代だったことの影響とか.たまたま名大オケの部員が受講していたので,きっと十分にしみこんだでしょう.

 1時間あまりの鑑賞会の後,受講生たちとともに,工学部地下の「IBカフェ」に場所を移し、〈名古屋大学ビール〉なる銘柄のラガーとエールを初めて味わいましたです. しかし,この〈大学ビール〉を初めて見たという学生も少なからずいて,さかんに携帯で写真を撮ったりしていた.午後5時過ぎまで,IBカフェで呑んで,これにて大団円.みなさま,お疲れさまでございました.レポート課題はあとでメールにてご連絡いたします.

  —— トゥーランドットとビールの午後は,今回の集中講義の最後を飾るのにまことにふさわしいイベントだった.善哉善哉.※「栄光をわれらに! われらに栄光を!」,あるいは「私は勝つ! 私は勝つ!」

◇[追記]謎が謎を呼ぶ名古屋大学ビールの話題 —— 集中講義の最終日に受講生たちと呑んだ〈名古屋大学ビール〉は学内ですらその存在があまり知られていないような珍品だった.まじで「初めて見ます」という学生が少なからずいた.※いせだセンセの話では,名大教職員の間では知られているとのこと.

名古屋大学ビールには,「ラガー」と「ゴールデン・エール」の2銘柄があって,いずれもやや甘めだが,熱処理や濾過をしていないんじゃないかな.330cc の小ビンだったので,コップにつぐまでもなく,そのままゴクッと呑んだ方がふさわしいのかもしれない.

それにしても,学内でこの知名度の低さなのだから,学外ではほとんど無名なのでは? 悪くない風味なので「選択科目」のひとつとしてお薦めできる.名古屋大学の中で学会の懇親会が開かれるようなときには,この地ビール(というか学内ビール)が供されるようだ.そもそも学外では流通しているのかという問題は残される.

◇ナゴヤ入りして以来,連日の猛暑だったが,今日はことのほか暑かった.大学キャンパスの中は熱風が吹いていたし,駅の構内も熱気がたちこめていた.たまりませんなあ.やっぱりしっかりした“味噌味”でスタミナをつけないと生き抜いていけないのかしらねえ…….

◇名古屋駅に戻り,お土産をいくつか買い込んで,18時36分発の「のぞみ144号」に乗り込む.ふだんならば当然のごとく息をするように車中読書をしたにちがいないのだが,5日間の疲労のせいか不覚にも寝入ってしまった.きっと息もしていなかったのだろうな.

◇つくばに帰り着いたのは午後9時半だった.長期にわたる巡業はやはりこたえる.荷物の後かたづけもそこそこに,ハイ,おやすみなさいませ.

◇本日の総歩数=15207歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


3 augustus 2006(木) ※ いきなり“不可”を喰らう三日目

◇午前4時半にきげんよく起床.〈ミクシィ〉を覗いたら,「“味噌煮込み”に関しては不可です.再履修を求めます」との思わぬ成績評価がくだされていた.げ,味噌煮込みで単位を落とすか,ふつー(……).しかし,ネイティヴ名古屋人の評定とあれば,これはもう逃げ場はない.その時間がはたしてあるのか? しかし,必修科目を落としたまま名古屋を離れるわけにはいかないし,困ったなぁ.

◇メキシコの旅路の確定 —— オアハカから連絡が届く.〈Hennig XXV〉の大会プログラムとホテル予約の確認メール.旅行日程は「8月12日(土)〜20日(日)」(っつうことで,19日の新宿トゥーランドット練習はダメっす>とど君)で,コースは往路が「成田→サンフランシスコ(泊)→メキシコシティー→オアハカ」,復路が「オアハカ→メキシコシティー→ロサンゼルス(泊)→成田」ということになった.

 さて,あとはポスターづくりだけか……(おい!)

◇昨日と同じく,7時半にホテルを出て,栄の地下街の〈コンパル〉にてモーニング.大学に着いたのは9時を少しまわっていた.今日も暑そうだ.講義室にてセッティング.9時半に講義開始.前ふりの植物進化噺.引き続いて.「体系学曼荼羅」をざっと説明する.午後は現代系統学におけるアブダクション基準をめぐる論争史をたどり,パラメトリック/ノンパラメトリックな系統推定の長短について説明.ほぼ予定通りの進捗だ.

 ローカルな生物学哲学についても講義で言及したので,今回の集中講義の主だったテーマは今日まででほとんど話し終えたことになる.最終日に積み残された内容は,計算機統計学のいくつかの手法を解説した上で,系統樹の信頼性評価を説明するという点だけかな.PAUP* / MacClade を用いたデモの準備を考えておこう.しかし,明日の午後は急遽「別件のお愉しみ」が入りそう.

◇いったんホテルに戻る.途中,栄の中日ビル地階にある〈山本屋本店〉にて,落とした必修科目の再履修を滞りなくすませた.ナゴヤ人はウソつかない.確かにうまかったっす.>今度は単位をちょうだいね.

◇午後6時に本山に舞い戻り,〈風来坊〉本山店にて戸田山・伊勢田コンビによる「手羽先」迎撃パーティの洗礼を受ける.これって,ビールをどんどん飲みなさいということなのだろうか.どーもそのようだ.これで必修科目をさらにひとつこなしたことになる.美味.

 同席した院生の話では,「ひつまぶし」と言えば,こちらでは自動的に熱田の〈蓬莱軒〉を指すのだそうだ.栄の松阪屋のとなりにも支店があるが,いつも行列しているとのこと.知らんかったぞ.戸田山さんによれば,「台湾ラーメン」も選択必修科目らしい.「あんかけスパ」は必修だったっけ.それとも選択必修でしたっけ? 「〈マウンテン〉は行かないのですか?」とも訊かれたのだが,それってゼッタイ選択科目ですよね.お願いだから必修って言わないよーに.

 冷酷なるトゥーランドット姫の手にかかった哀れな王子たちのごとく,手羽先の骨は限りなく積み上がっていく.呑むたびに科学哲学ネタががんがん飛び交うのだが,「三中さんはリアリストのポパーリアンですね」というあたりが落としどころだったか.席上,『系統樹思考の世界』の「第3レイヤー」の読み方について初めて他人に話したのだが,詳しくは明日の午後に講義室で〈トゥーランドット〉の DVD を鑑賞しながらさらに説明しましょうね.

 翻訳進行情報(メモ) —— 『Sex and Death』はいま翻訳されつつあるとのことだ.期待しましょう.

◇午後9時半に散会.どうもごちそうさまでした.ホテルに直帰し,のびる.

◇明日はとても楽しい最終日になる予定.※買い出しをよろしく.>受講生諸氏.

◇本日の総歩数=15920歩[うち「しっかり歩数」=3200歩/28分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


2 augustus 2006(水) ※ 二日目は味噌煮込みと小倉サンド

◇午前5時半起床.初日の疲れが出たのか,不覚にも寝過ごしてしまった.ひたすら今日の講義準備.今日は「統計学」の日になるだろう.

◇午前7時半にホテルを出発.栄の地下街の〈コンパル〉でモーニング(ハムエッグトーストは美味だった).そのまま東山線に乗り,命題に向かう.9時前に大学着.非常勤講師控室にて出勤簿にハンコを押してから,講義室にて機材のセッティングなどなど.

 午前9時半に二日目の講義を開始する.「自然界における人間の位置」の噺を前降りにしてから,統計学概論(with 統計学曼荼羅).系統学の背後には,もっと一般的には,現代版の「アブダクション」の基盤には「統計学的思考」が密接に関わっているので,避けて通るわけにはいかない.いつも通り,素朴統計学から始まって,存在の学としての形而上学に進み,ネイマン-ピアソンの仮説検定パラダイム,さらには最近の“法科学的パラダイム”まで.アブダクションの実行手段として統計ツールを使おうということだ.

 昼休みをはさんで,午後の講義は最尤法,ベイズ法,そしてモデル選択論.とくに,科学哲学の観点から見た「涙なしのAIC」について解説した.証拠(エヴィデンス)としてのデータが対立するモデル(仮説・説明・理論)の間でどのように相対的な重みづけをするのかという点に着目する.データとのフィット(尤度)のみに着目するとき,モデルが複雑であるほど尤度は高くすることができる.しかし,over-fitting の危険性も同時に高まるので,モデルの複雑度(パラメータ数)に対するペナルティを与える必要がある.フィットとペナルティとのトレードオフにより(AIC),モデルの単純性を確保する余地が可能になる.最節約基準を擁護する「科学哲学AIC派」への言及(そんな“派”があるんか?).分子進化確率モデルを実例にして説明した.

 今回の集中講義はいちおう“生物学哲学”をオモテ看板に掲げているのだが,内容はいつもとまったく変わりがない.ということは,つねづね方々で開いている高座が実は“テツガク”だったということなのでしょう.

◇午後3時半過ぎに本日の講義は終了.栄に戻り,松阪屋向かいのアップル・ストアに立ち寄ってから,〈山本屋総本家〉にて味噌煮込みうどんをいただく.この蒸し暑さの中で味噌煮込みを食べようと言う猛者はいないのか,夕方の時間帯なのに店は空いていた.ぐつぐつと煮え立った鍋を目にすると,さすがに引くものがある.しかし,「何人も私を引き止めることはできないと」と名を秘す王子カラフも言っているではないか.いただきます! このうどんの硬さが味噌味に妙にマッチしている気がする.よくある煮込みうどんのように麺が軟らかくないのがいいな.ついでに,味噌おでんも.これまたうまいです.

 味噌に沈潜しきったところで,くるっと転戦して,ホテル向かいにある〈珈琲カラス〉にて「あんトースト」という名の小倉サンドをデザートがわりに.いやあ,どんどん“必修科目”の履修が完了していくのは心地よい.実に優秀な“生徒”だと自画自賛してみる(……).

◇ホテルに戻ってからは,有意義にすごさねばと思いつつ,ぐだぐだしてしまう.疲れますって.

◇明日は,体系学の近現代史(体系学曼荼羅)と系統推定アブダクションの最適化基準をめぐるここ数年の論議を概観する.その後にふたたび統計学に戻り,計算機統計学を用いた誤差評価(無作為化とかブーツストラップとか)の解説.それから,系統樹の信頼性評価.最後に,PAUP* / MacClade でのデモ.これくらいかな.いくつかは最終日への積み残しになるかもしれない.

◇方々からメールが届いている.スパムも山ほど溜まっていて,つくばを離れてからまで3日しか経っていないのに,計800通ものメールが受信箱を埋めている.農環研事務からの連絡:メキシコ出張は往路・復路ともアメリカでの途中宿泊が不可避らしい.ということは,旅程として「往路(2日)+Hennig XXV(4日)+帰路(3日)」の計9日の大旅行になるわけね.出張本体よりも往復の所用日数の方が長いとは,メキシコって遠い国なんだ(と絶句するナゴヤの夜).

◇本日の総歩数=17338歩[うち「しっかり歩数」=6037歩/52分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


1 augustus 2006(火) ※ “シロノワール”な講義初日

◇午前4時起床.曇り.夜中に雨がぱらついたようで,地面がところどころ濡れている.暗いうちからごそごそ起き出して,ぐずぐずと講義準備を進める.

 朝食は〈コメダ珈琲〉のモーニング.ナゴヤに来たら全員が“必修”だという.午前7時過ぎの開店と同時に,〈コメダ〉広小路店に入り,モーニングをいただく.すぐ客でいっぱいになった.

 車道のみならず,歩道の広さもこの街の特徴か.店舗から歩道に張り出したルーフはマンハッタン的だ.ときどき,とんでもない建物に出くわすのも特徴って?

◇午前9時過ぎにホテルを出て,名古屋大学に向かう.伏見駅から地下鉄の東山線に乗って,本山で名城線に乗り換え,一駅で名古屋大学駅につく.ずいぶん以前に名古屋大学で昆虫学会大会があったときは,なんだかずいぶん苦労して名大までたどり着いた記憶があるが(何年前のことか!),ずいぶんラクになったものだ.

 名古屋大学情報文化学部の事務室にたどり着いたのは午前10時前.そこはかとなく“古びた高等学校”あるいは“時代がかった大学教養部”の建物を連想させる.出勤簿にハンコを押し,学部棟4階の第4講義室に向かう.パソコンをつないで,直前の準備.

◇10時半から講義開始.いったん始まってしまえば,もう止めることはできない(猪のごとし).集まった学生は20名あまり.午前中はイントロ的に“生物の系統樹”について噺をする.1時間半の昼休みをはさんで,午後は“非生物の系統樹”,そして最後に恐竜について.具体的な話題の合間に科学方法論と生物学哲学についての話題をちょこちょことはさんでいく.「小倉サンド」や「あんこスパ」ほどの違和感しかないように工夫したのだが,どうだったろうか.※たとえが悪すぎたか.

 たてつけが悪いのか,空調がイマイチなのか,講義室の中の温度分布のばらつきが大きかったようだ.

 午後4時前に初日の講義を終了した.推論様式として演繹と帰納そしてアブダクションには「命題の真偽」にかかわる要素を絡めない方がいいだろうという指摘を受けた.実在論的態度と道具主義的態度とではこの点について認識が異なるからとのこと.もし真偽の要素を除去するとしたら,アブダクションに固有の特徴は対立仮説との相対的ランキングによる競争的選択という一点だけが残ることになるだろう.

◇隣接する立派な研究棟にある伊勢田研究室に挨拶に出向いてから帰路に.栄駅で下車して,〈ラシック〉の7階にある〈ひつまぶし備長〉にて,これまた必修科目のひとつである「ひつまぶし」を履修する.「ひつまぶし」とは要するに「ウナギごはん」なので,常識の範囲内におさまる,リーズナブルかつ美味なものだった.ナゴヤの良識を感じとった.

 その後,返す刀で,もうひとつの必修科目である「シロノワール」を〈コメダ珈琲〉の伏見店にて履修する.この「シロノワール」は前評判がいろいろ飛びかって,おどろおどろしいものを想像していたのだが,意外や意外,暖かい円形クロワッサンの上に,ソフトクリームがう○こ(失礼!)のようにとぐろを巻いているひょうきんなデザートだった.量的に多いといえば多いのだが,腹もたれ具合はさほどではなく,かつてブダペストで食べたチョコクレープ(「グンデル・パラチンタ」)の方が,はるかに殺人的なボリュームだった.ということで,「シロノワール」は無事に履修をすませた.

—— 必修科目を次々にクリアするとは,実に勤勉なことだ.さて,明日はどの必修科目にトライするかな.

◇ホテルに帰還したあとは,ひたすら明日の講義準備.

◇本日の総歩数=19761歩[うち「しっかり歩数」=3790歩/32分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=未計測/未計測.


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