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本書は,原著者による寄稿「復刊によせて」(2ページ)と訳者解説「余波:〈かみそり〉をさらに鍛えること」(13ページ)を前後に補筆しましたが,それ以外の本文はいくつかの細かい修正箇所を除いては1996年に刊行された旧・蒼樹書房版と同一の内容です.生物系統学の科学哲学的ならびに統計学的な側面を詳細に論じたモノグラフである本書は,原書の出版(1988年)からすでに20年以上の年月が経過し,旧版の翻訳が出てからも15年が経過しています.しかし,現在でも本書は系統推定論の論文では繰り返し引用・言及されており,この研究分野の基本文献のひとつであることはまちがいありません.
今なお本書が読まれるべき価値のある本であることは,今回の復刊に際して新たに書き下ろした訳者解説の中で述べました.その結論部分を下記に記しておきます:
精度の高い系統樹の推定は,現在,基礎から応用にわたる生物学のさまざまな問題を考察したり解決するときに不可欠となっています.そして,系統推定の理論と手法は,進化学・統計学・数学・コンピューター科学の境界領域においてさらに大きく発展しています.2004年3月に蒼樹書房が廃業して以来,この訳本を入手することはきわめて困難でしたが,系統推定論の理論的基盤とそれをめぐる科学哲学的な論議に関心をもつ多くの読者が,今回の復刊を契機に本書を手にされることを著者と訳者は願っています.