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oude dagboek

日録2007年2月


28 februari 2007(水) ※ じたばたする週の中日そして月末

◇午前4時45分起床.曇り.気温5.6度.冷え込みなく,ぬるい夜明け前.日が昇るとともに,北風が吹いてきて,雲がなくなっていく.

◇午前のこまごま —— 東京農大から次年度の人事決定の連絡メールあり./ ふと思い立って,〈Google Calendar〉に手を出してみる.記入した住所に自動的に地図をリンクさせてくれるらしいが,つくばの「TX」がなぜ「JR京都駅南側」につながるのだろー??(ひょっとして「DX」とまちがえたか?−あ,それってとってもローカル……)/ シンポジウム趣意文をひねり出してみる.(まだ脳内にとどまっているが)/ 進化学会の「辞典企画書」を読まないと.

◇曇って北風がやや強い昼休み.花粉を浴びつつ歩き読む —— レヴ・グロスマン(三川基好訳)『コーデックス』(2006年3月29日刊行,ソニー・マガジンズ,ISBN:4-7897-2833-1)の第13章まで.快調に120ページほど.

◇新刊 —— 『季刊 InterCommunication, No. 60:Spring 2007号』(2007年2月27日刊行,NTT出版→目次).特集〈デザイン/サイエンス:芸術と科学のインターフェース〉.系統樹リテラシーの話,ちゃんと載ってます:三中信宏「サイエンスとアートのはざまで図像を読みとる:系統樹をめぐるリテラシー」(pp. 62-73).図版19葉.見てね(&読んでね).

◇午後のこまごま —— メーリングリスト雑用いくつか.会員数が二千人に近づくとともに,fml の挙動がしだいにアヤシクなってきた.アドレス・リストの取得に失敗する頻度が高まっている./ イタリアへの〈R〉返信メール.先方は日本のブログにイタリア語の統計学本が引用される“文化的背景”にとても関心があるらしい.あまり一般化されても困るのだけれど……(個人的な要因が大きいにちがいないだろうから)./ つい出来心で,〈Gmail〉の登録もすませてしまう.魔が差したのかしら.それにしても「2800MB空いてます」と言われたって使いようがないでしょー.

◇夕暮れの修論指導 —— 南保くんの修論原稿も順調に進捗しているようだ.文化系統樹の図と形質マッピングについて打合せ.あとは,文化系統学のイントロを少しと,考察の残り部分だけか.今週中にケリをつけて,来週早々にも印刷製本に出してしまおうね.

◇大学入試と分子系統学 —— 毎日新聞サイトの「大学入試コーナー」に,今年の東大入試での「生物」の問題と解答が掲載されている(→pdf).その昔,予備校講師をしていたときには,こういう入試情報はいの一番に読んでいたが,さすがに最近はそういう意欲がなくなってきた(これからは「解く側」ではなく,むしろ「作問する側」になるのだろう).今年の東大の「生物」では,分子系統学の大きな問題(《問題3》)が出題されている.最近の高校生は進化生物学の授業をあまり受けていないと聞いているが,こういう分子進化に関する出題にどれくらい取り組めたのだろう.今でも記憶しているが,1990年代はじめに距離法に基づく分子系統樹を描かせる問題を早々と出題したのは東大だった.その後,あちこちの大学で距離法や最節約法による分子系統樹の出題が続いていたことを考えると,今回の《問題3》はそれほど意外でも新奇でもなく,むしろオーソドックスな部類に属する問題カテゴリーになったのだろうと推測する(受験生側に対応する知識が身についているかどうかとはまったく関係なく).次に予想されるのは,当然,最尤法あるいはベイズ法に基づく系統推定問題が大学入試の「生物」でいつ出題されるかということだが,どーでしょうね?(むしろ,「数学」で出されたりするかな)

◇工作舎からメールあり —— 四方田犬彦『月島物語ふたたび』(2007年1月20日刊行,工作舎,ISBN:978-4-87502-399-9→目次書評)の書評にリンクさせてほしいとの依頼.どーぞどーぞ.リンクに許可は不要です.

◇夜は,ひたすら翻訳あるのみ.※明日はまた“納税日”だ.

◇本日の総歩数=9872歩[うち「しっかり歩数」=6366歩/55分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.1kg/−0.1%.


27 februari 2007(火) ※ そうこうするうちにまた一年が

◇午前4時45分起床.日中はともかく,明け方はまだ寒い.マイナス2.7度 —— ということで,本日またひとつ「大人」になってしまいました.※御供物はけっこうです,ハイ.

◇未明の研究所とのピストン往復.朝食もそこそこに,緊急原稿に取りかかる.担当者からの昨日のメールでは,「27日の朝8時半までに原稿が届いていれば」とのこと.時計をにらみつつ.速攻で原稿書き.午前8時過ぎの時点で2000字ほど書き上げたところで,戦略的電話をかけ,「実際のデッドラインは?」と探りを入れる.「ま,とりあえず昼までには」という肩すかし返事を聞いて(だったら「朝8時半までに」って言わんといてっ),一挙に“気圧”が下がり,気力がしぼみつつも,さらに600字ほど書き足して,午前9時前にメールで原稿を送信した:三中信宏「生物多様性を進化系統学的な尺度で測る」,『農業と環境』83号(2007年3月1日オンライン公開予定).

—— 緊急任務はこれにて完了.

◇〈R〉近刊情報 —— もうひとつの『The R Book』が近刊予定:Michael J. Crawley『The R Book』(2007年6月出版予定,Wiley,ISBN:978-0-470-51024-7).なんと「960」ページ!もあって100ドルとはとってもお得でしかも満腹.→版元ページ

◇午前のこまごま —— 今朝方の緊急原稿がさっそく内部向け仮公開されたので,内容をチェックし,参考文献へのタイトル付加を依頼する./ CV の年齢をひとつ加算する.その他,現時点での進行状況を更新する.

◇ぽかぽかと暖かく春霞む遠景の筑波山.正午の気温は11.6度.歩き読み —— レヴ・グロスマン(三川基好訳)『コーデックス』(2006年3月29日刊行,ソニー・マガジンズ,ISBN:4-7897-2833-1)の第6章まで.50ページあまり.

◇国境を越えるブログ —— 今朝,イタリアからメールがやってきた.珍しいことがあるものだと覗いてみたら,「あなたのブログでワタシの著書が紹介されているようだが」とのこと.先月,〈leeswijzer〉に記したイタリア語の〈R〉本:Stefano Iacus and Guido Masarotto『Laboratorio di statistica con R』(2003年刊行,McGraw Hill, ISBN:8838660840→目次)の項目が,たまたまグーグル検索に引っかかって,筆頭著者の Stefano Iacus さんから連絡が入った次第.日本語のブログであったとしても,いつでも海外から検索されることは当たり前だと頭ではわかっているのだが,こうやって実際に相手から連絡が入るとそれが実感できる.

—— 明日,返事を出そう.改訂版の情報も欲しいし.

◇午後のこまごま —— 首都大学東京に提出する非常勤講師の人事書類をちくちくと書く.すべてを書き終え,封書で返送したのは午後4時前のこと.なんじゃらほいっ./ 出張届の提出期限は明日.とはいえ,今年度中は遠出の出張はもうない(松山には行かないよん.道後温泉はもう入ったし)./ 南保くんの修論進捗をちぇっく.頑張ってください.※Mesquite を駆使しよう.

◇おお,やばい.さすがに何とかしないと…….

◇夜は鱈腹.※おいっ!

◇「人型」の家系表について —— Christiane Klapisch-Zuber『L'arbre des familles』(2003年刊行,Éditions de la Martinière,ISBN:2-7324-2825-6→目次)の続きをば.

9世紀から11世紀にかけて,家系表(tableau de consanguinitè)を「人体」に模して描くというスタイルが流行したことがあった.「樹」ではなく「人」.

著者はこの「人型」に図像化された家系表についてこう記している:

Le dessinateur laisse deviner derrière le tableau un corps humain dont les seuls extrémités surgissent : le tête aux grands yeux fixes au-dessus des plus lointains ascendents, les mains derrière les cousins les plus éloignés, ceux du septème dgré, et les pieds énormes en bas. La totalité de la parenté se trouve de la sorte enserée par ce corps invisible. (p. 38)

この「人型(corps humain)」と並行して浸透し始めたのが,ほかならない「唐草(rinceau)」であり,家系の系譜関係を表す図形言語の間の競争の結果として「樹」が残ったと考えているようだ.

◇本日の総歩数=9072歩[うち「しっかり歩数」=4926歩/44分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=−0.3kg/+0.2%.


26 februari 2007(月) ※ 追い込み追い込まれる最終週

◇午前5時前起床.晴れ.気温マイナス2.5度.研究所にて,先週末にセットした系統樹計算の進捗をチェックする.う〜む.遅過ぎ…….しかし,予定反復回数の5分の1にはなんとか達しそうなので,今日の午前中に探索を打ち切って結果を見よう.

◇からりと晴れ上がった午前のこまごま —— 今月末までに決済しなければならない購入品の書類を揃えて提出する. Quad Xeon も,科学哲学百科も,プリンター感光体も,ぜーんぶ完了.これでおしまい./ すっかり忘れていた首都大学東京の来年度の非常勤講師関連書類.毎年やっているのに,毎年欠かさず履歴書を出さないといけないのは,いやはや.※まだ書けてませんが…….

◇系統樹計算の終了(というか打ち切り) —— 南保くんの修論に関わる台湾先住民の“煙管”に関する形態形質からの最節約系統樹の計算をしてきた.notu に比して nchar が小さいので多重解が出まくり.最適系統樹は PAUP* で計算して,その結果を Mesquite へ.形質マッピングや出力はすべて Mesquite でやればいいだろう.各クレードの信頼性は bootstrap でも Bremer support でもあまり期待しない方がいいですね.いずれにせよ,修論は今週中にケリをつけましょう.>南保さん.

◇『ヘッケルは正しい!』 —— 着便本:Gerhard Heberer (Hrsg.)『Der gerechtfertigte Haeckel : Einblicke in seine Schriften aus Anlaß des Erscheinens seines Hauptwerkes « Generelle Morphologie der Organismen » von 100 Jahren』(1968年刊行,Gustav Fischer Verlag Stuttgart,ISBNなし→目次).ヘッケルの『生物の一般形態学(Generelle Morphologie)』(1866)の刊行百周年記念の論文集.全体は550ページほどあるが,そのうち約450ページ(第II部)はヘッケルの主要著作からの抜粋だ(『Generelle Morphologie』の他にはガストレア理論とか紀行文とか).それを除く残り100ページ弱は寄稿論文だ.Haeckel justified!

◇快晴の昼休みは風もなく気温9.6度.歩き読み —— レヴ・グロスマン(三川基好訳)『コーデックス』(2006年3月29日刊行,ソニー・マガジンズ,ISBN:4-7897-2833-1).暗く静かに分解されつつある背革の匂いが…….第3章まで,70ページほど読む.

◇午後の追い込まれこまごま —— 生物地理学会大会のシンポを何とかしないとなあ…….※おいっ./ と思ったら,先日つい引き受けてしまった「系統学的多様性(PD)」の解説記事の締切が実は明日だったという驚愕の事実が判明.あのう,「明日」って……(冷汗).

◇ま,とりあえず帰ろう.帰ってしまおう.

◇現実逃避的な本の備忘メモ —— Sigrid Weigel (Hrsg.)『Genealogie und Genetik : Schnittstellen zwischen Biologie und Kulturgeschichte』(2002年4月刊行,Akademie-Verlag,ISBN:3050035722).Amazon.de に発注済み.※とまらないわ./ 鈴木俊幸『江戸の読書熱:自学する読者と書籍流通』(2007年2月刊行,平凡社[平凡社選書227], ISBN:978-4-582-84227-2).江戸の「読書空間」論らしい./ 和田敦彦『書物の日米関係:リテラシー史に向けて』(2007年2月28日刊行,新曜社,ISBN:978-4-7885-1036-4).戦前から戦中にかけて日本からアメリカに流れていった本の航路について.こういう本には心惹かれるものがある./ 矢田脩(監修)『新訂 原色昆虫大圖鑑・第 I 巻(蝶・蛾 篇)』(2007年,北隆館,ISBN:978-4-8326-0825-2).ん,読んではいけない?(→「問題だらけの北隆館の大図鑑改訂版」)

◇ま,とりあえず寝よう.寝てしまおう.※緊急原稿は「早朝短期決戦」だー.

◇本日の総歩数=8664歩[うち「しっかり歩数」=4986歩/45分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.3kg/−0.4%.


25 februari 2007(日) ※ 冷え込みサンデーの引き蘢り

◇うつらうつらと午前6時まで寝過ごす.外は,久しぶりの冬晴れで,北風が強め.冷え込みがきつい.

◇日中は,ゆらゆらと本を乱れ読んだり,ちくちくと翻訳文に手を入れたりする.シロアリ君たちの大活躍を思い描きつつ,千年前の家系図に見入ったり(魅入られたり).

◇昼下がりにしばし散歩.早春の雑木林でパーティをしている家族連れあり.日射しはあるのだが,北風が吹いているので,体感温度は低い.花粉多し.

◇「芸術」の系統樹 —— Astrit Schmidt-Burkhardt『Stammbäume der Kunst : Zur Genealogie der Avantgarde』(2005年刊行,Akademie Verlag,ISBN:3-05-004066-1).アヴァンギャルド芸術の「学派系統樹」の本らしい.500ページほどもある.現物はまだ届かないが,書評記事はすでにいくつか出ている:

  • Petra Kipphoffによる書評(Die Zeit, 2005年8月25日)
  • Stefan Neunerによる書評(Sehrpunkte, 5巻9号, 2005年)

本の方は未着だが,この著者の論文のひとつはたまたますでに手元にある:Astrit Schmidt-Burkhardt 「Querelle des Modernes. Zum Generationskonflikt der Avangarde」Pp. 57-89 In: Sigrid Weigel et al. (Hrsg.) 『Generation : Zur Genealogie des Konzepts — Konzepte von Genealogie』 (2005年6月刊行,Wilhelm Fink Verlag,ISBN:978-3-7705-4082-2→目次).上記の著書のテーマに直結したタイトルだ.芸術の「世代論」は昔からあったと著者は指摘した上で,そのような「世代(Generation)」として芸術の歴史をとらえるのではなく,もう一歩進んで「系譜(Genealogie)」とみなす必要があるという立場だ.

エンディングの一文:

Der Künstler wiederum reiht sich mit dem Stammbaum in ein Bezugssystem ein, das ihm im Rahmen einer Generationenfolge Teilnahme wie Teilhabe an der Geschichte sichern soll. Die legitimierende Genealogie dient dabei als Regulativ zwischen Kontinuität und Innovation. Innerhalb eines größeren Ganzen nimmt der Künstler eines Selbstpositionierung vor, die ihm Bedeutung zukommen läßt. [……] Geschichte bleibt dadurch immer aktuell. (p. 89)

これもまた“系統樹百態”ということか.芸術家の系統樹はとてもアーティスティックだったりするな(見習おう!).

◇夜も翻訳と本読みが続く.シンプルこの上ない1日だった.明日からはマジで追い込み[まれ]ます.

◇本日の総歩数=9011歩[うち「しっかり歩数」=4332歩/37分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.前回比=+0.1kg/+0.4%.


24 februari 2007(土) ※ あの記憶を消し去ることはできない

◇午前5時半起床.雲はまだやや多いが,よく晴れてきた.朝日がまぶしい.北風とともにまたまた花粉が襲来する予感が.

◇音楽関係いろいろ —— ミクシィに〈東大オケ50あたり〉というOBたちのコミュができて以来,30年前あたりの「昔話」が続々と投稿されている.かつて東大オケの部室には『何でも帳』という雑記帳が置かれていたが,それの電子版に相当するものになりつつある.ひとりひとりの記憶は欠落があったりまちがっていたりすることがあるが,そのパズルのピースを埋めるような発言があると,かつての全体像がしだいに復元されていく.

三石精一指揮の〈幻想交響曲〉とか,早川正昭指揮の〈マーラー6番〉とか,自ら経験した激烈記憶的定期演奏会は数々ある.〈幻想〉のときは,精ちゃんの高速指揮についていくために大太鼓を舞台に3台並べて,第5楽章エンディングの強弱を分業した.炸裂演奏終了直後の写真が残っているが,燃え尽きた打族の後ろの椅子で高笑いしているのうみさんが印象的だった.しかし,そういう実体験以上に,ぼくが入楽する直前の[だから当然知らないはずの]〈英雄の生涯〉とか〈マーラー5番〉の演奏会をめぐるスレッドの成長を傍で見ていると,仮想記憶が創られていくかのようだ.楽年から楽年へと受け継がれていく généalogie がそこには確かにあった.

音楽ネタをもうひとつ —— 二ノ宮知子『のだめカンタービレ#17』(2007年2月13日刊行,講談社[コミックスKiss 632], ISBN:978-4-340632-0)の冒頭はニールセンの〈不滅〉だ.それがいかなる曲かは,ぼくの『生物系統学』の冒頭を読むべし.

—— 出自の記憶を消し去ることはできない.

◇風は強いが,日射しも強い.外を出歩くと花粉まみれになりそうなので,それを口実にじっと引き蘢る.昼頃に〈leeswijzer〉のアクセス数が「28万台」に達した.

◇シロアリ塚の自己組織化的建設の章(第18章)の翻訳文チェックもぼちぼちと進めてはいるのですが…….昼下がりの日だまりにて,ついよそ見など —— Christiane Klapisch-Zuber『L'arbre des familles』(2003年刊行,Éditions de la Martinière,ISBN:2-7324-2825-6→目次).10世紀前後の古写本から拾われてきた「arbres de consanguinité」(p. 22)や家系図としてのステマすなわち「tableau de consanguinité」(p. 32)を眺める愉しみがここに.大きなカラー図版が印象的なのだが,それに付随する説明文をいくつかピックアップする.

まずは,家系図の起源について:

Depuis l'Antiquité tardiva, un langage visuel s'est en effet lentement élaboré qui a porté l'Europe entière et ses extensions d'outre-Atlantique, à se représenter la généalogie d'un groupe familial comme un arbre. Cette image nous est familière encore aujourd'hui. (p. 9)

図形言語としてのダイアグラムが系譜表現に用いられるようになったのは9世紀から10世紀にかけてのことだ.

Pour les souverains carolingiens, par exemple, les premièrs généalogies écrites remontent à la périodes des IXe — Xe siècles, et un diagramme maintes fois reproduit par la suite fut alors fixé. (p. 12)

そして,家系図が「テキスト」による表現から「図形言語」による表現へと置き換わっていったことについて:

L'image, ici, a un rôle essentiel : elle vient éclaircir le texte d&#crivant les passerelles jetées entre lignées par les femmes.[……] La généalogie graphique révèle ici son avantage sur l'écrit : elle ne souffre guère la discussion. (p. 21)

文字から図像への系譜の表現形式の転換はこの本の中核テーマ.本書に載っている最古の家系図は,9世紀末の写本にある〈stemma de Cujas〉だ(p. 33).祖先から子孫へのつながりを「表」の形式で図示しているのだが,ところどころ萌えいずる「樹」があしらわれていたりして,後の“進化方向”を予期させる.

◇さて,また翻訳苦役に復帰しないと…….

◇本日の総歩数=1217歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/0.0%.


23 februari 2007(金) ※ 雨の日は鼻の調子がとてもよろしい

◇いつも通り午前5時前に目が覚めてしまう.外は,予報通り本降りの雨.夜明け前の研究所に行ってみるも,寝不足でまだふらふら揺れている心地.気温9.2度.

◇午前のこまごま —— 先日依頼された植物病理学会の第24回植物細菌病談話会での演題を送る:三中信宏「過去をさかのぼるために:分子系統樹推定の最前線」.こういう高座でしたらいつでもおっけー./ 所内の運営費交付金の会計決済が今月末までなので,あわてている.書店に未決済分の確認メールを送る./ Nature誌の phylogenetic diversity (PD) 論文の解説を引き受ける返事をする.※こうしてクビがどんどん締まっていく…….

◇午前10時を過ぎて,空がしだいに明るくなってきた.まだ小雨は降っているようだが.

◇またしても届いた「系図本」(類は友を) —— Christiane Klapisch-Zuber『L'arbre des familles』(2003年刊行,Éditions de la Martinière,ISBN:2-7324-2825-6→目次).大きなサイズ(25cm×20cm)の「系図」写真集.もちろん,フルカラーだ.

本書を一通りブラウズした感触では,いまちらちら眺めつつある,同じ著者の『L'ombre des ancêtres : essai sur l'imaginaire médiéval de la parenté』(2000年刊行,Librairie Arthème Fayard, ISBN:2213604274 [pbk]→目次素読未満)に所収されている縮小モノクロ図版の部分をカラー図版集として別の本に仕立てたものだろう.明らかに姉妹本なので,並べてひもとくのがいいだろう.

古写本や教会絵画などから西洋の中世に遺されたさまざまな「家系図」を蒐集されていて,時代的には9世紀から19世紀までの千年間に及ぶ.細密画のようにびっしり書き込まれた血縁のツリーやネットワークをじっくり眺めるとき,大判の彩色図版ならではのメッセージ力を再認識させられる.

—— 本書のドイツ語訳は原書出版の翌年に早くも出ている:Christiane Klapisch-Zuber『Stammbäume : eine illustrierte Geschichte der Ahnenkunde』(2004年,Knesebeck, ISBN:389660239X).系図に並々ならぬ情熱を燃やす国々が確かにここにはある.なお,独訳本の国内での公的所蔵は明治大学のみ.一方,仏語原書の所蔵館は皆無だ.系図にとても冷淡な日本ということか?

◇昼のこまごま —— 昼前は南保くんの修論読みが続く./午後1時,TX つくば駅改札にて海游舎・本間さんに翻訳原稿11ページを手渡す.これで第17章「Wall Building by Ants」はおしまい.次は,第18章「Termite Mound Building」だ.ここはすんなり「部分修正」だけですませたいなあ(楽観的観測).次回納税日は3月1日(木),やはりTXつくば駅にて.

◇午再び雨足が強まってきた.午後1時半の気温は11.3度.

◇午後のこまごま —— 進化学会関連の後援依頼の承諾書を返送する./ 『生物科学』編集会議は3月8日(木)に開催.13:00〜15:00,立教大学13号館会議室(その後,懇親会あり)/ もうすぐ来年度の東大の辞令が出るだろう.毎年こうなる予定.

◇修論読み続く —— 午後いっぱいは南保くんの原稿を読んで,コメントを記入する作業.今日聞いたところでは,台湾先住民のキセルの「ミッシング・リンク」に相当しそうな新しいサンプルが発見されたとのことだ.急遽,その形質をデータに組み込んで,PAUP* での最節約系統樹の再計算を開始することになった.OTU数に比して,形質数が少ないので,探索のしかたに注意しないとダメだ.この週末のうちには,新しい「キセルの文化系統樹」がつくれるだろう.

◇夕方になって,ようやく雨は上がった.これから冬型になるらしい.

◇夜の〈反響録43〉 —— とても大きな連続書評が載った.ビックリ![ワタシにはこういうマネはできない]

◇本日の総歩数=5585歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+0.1%.


22 februari 2007(木) ※ 書き続けられた日記を読む愉しみ

◇午前5時前起床.晴れ.気温マイナス0.5度.

◇朝からこまごましすぎている —— 午前10時半から領域会議.新しい研究評価システム(案)をめぐる意見交換.評価評価で日が暮れる(研究は?)./ 次年度の契約職員の雇用届.3月16日までに./ RP予算執行の期限は2月26日まで.※もうすぐ.

◇古川ロッパ昭和日記の再刊 —— 古川ロッパ(滝大作監修)『古川ロッパ昭和日記・戦前篇:昭和9年−昭和15年[新装版] 』(2007年2月10日刊行,晶文社,ISBN:978-4-7949-3016-3→版元ページ).20年前に同じ出版社から出た4巻本(1987〜89年)の新装版(価格は約半分になった).今月出た第1巻「戦前篇」は2段組で800ページ超というボリューム.古川ロッパは,戦前戦後を通して有名な喜劇役者だったが,それと同時に,美食家・読書家・日記魔でもあったそうだ.

全4巻の次号以降の続刊は,第2巻「戦中篇:昭和16年−昭和20年」 ;第3巻「戦後篇:昭和20年−昭和27年」;第4巻「晩年篇:昭和28年−昭和35年」.来月以降毎月刊行される予定.なお,20年前の初版の各巻には〈緑波写真館〉が別冊附録の分冊として付けられていたが,今回の再刊では全巻予約購読または各巻のオビの引換券を集めて送れば別途もらえるらしい.

個人的な記憶だが,エノケンやロッパが活躍した時代は体験したことがない.花菱アチャコだったらテレビで何度も見たことがある.幼い頃に,吉本新喜劇や松竹新喜劇を呼吸しつつ育ってしまうと,特有の笑いのリズムや間が刷り込まれてしまうので,成長してから地方に下ると(=東京に出ると)とまどうことがよくある.

第1巻をざっとブラウズしてみて感じるのだが,ロッパさん,高座の合間にうまいもん喰いまくってるなあ.仕事してるのか喰うてるのか,どっちが本業だか.どこぞの日録でも年柄年中喰うたもんを書いてるお人がいやはるけど…….あ,そういうたら,「大食いの美食家で,身長一六八センチ・体重八六キロの堂々たる体躯で劇場を沸かせていた」(オビ)というあたり,なんやしらん表現型的に収斂しているともいえるやん.

◇暖かく晴れた昼休みはことのほか花粉が飛んでいるらしい.気温13.6度.鼻ぐすぐすの歩き読み —— 宮下志朗『読書の首都パリ』(1998年10月22日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-04660-1)を最後まで読了.120ページほど.後半は短いエッセイが中心.19世紀初頭のパリでは,女性が読書するという行為それ自体が後ろめたく罪深いこととみなされていたらしい.フロベール『ボヴァリー夫人』の主人公のように.

◇〈R〉関連の情報と相次ぐ質問 —— マンテル行列相関検定についてのメール質問に答える.〈R〉で実行するには,群集生態学パッケージ〈vagan〉に入っている関数「mantel()」と「mantel.partial()」が利用できます(→ドキュメント).ただし,欠測値があるとダメですね./ 中澤港さんの『Rによる保健医療データ解析演習(仮題)』が公開されている.pdfにして「260ページ」っ!(げ)/ 他にも〈R〉質問がいくつも届いているのですが,オーバーフロー中…….

◇今日は,ことのほか「花粉症」がひどい…….ぐすぐす.

◇統計コンサルタント跳梁跋扈 —— ごめんなさいごめんなさい,年明け以来放置し続けてきた統計質問メール群に一挙にカタをつけた.計6通.細かいのやら,めんどうなのやら,すべて取りまとめて解答メールの乱射.2時間ほどかかりましたわ.※今日の「公務」はこれにて完了か.

◇夜になって,今年度の所内課題評価会議(「過大評価会議」ではなく)の報告が RP リーダーから回送されてきた.案の定,けちょんけちょんに書かれていたのだが,そんなことどーだっていいもんね.

◇夜は,明日の“納税”に向けて,翻訳作業あるのみ.下訳の完全差し替えがなお続く.アリの第17章の残り11ページが完了したのは日が変わった午前1時半のこと.

—— これから3時間ほど寝られる.

◇本日の総歩数=10589歩[うち「しっかり歩数」=5972歩/54分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.3kg/+0.3%.


21 februari 2007(水) ※ 春の陽気,バロック,雑用の嵐

◇午前5時前に起床.曇り.前日の雨の名残で路面が濡れている.気温4.8度.冷え込まず.しだいに青空が広がってきた.予報では,今日は暖かくなるらしい.花粉の予感がむずむずと.

◇時代を超えてやってきた本 —— ハンス・ドリーシュ著(米本昌平訳・解説)『生気論の歴史と理論』(2007年1月30日刊行,書籍工房早山,ISBN:4-88611-504-7).Naturphilosophie と Entwicklungsmechanik な世界が21世紀に“移植”された心地がする.クラシックな著作を世に送るバロックな訳者.ドリーシュのこの本は「二十世紀最大の悪書」であると銘打たれているが,本当にそうなのか? 彼の「生気論」が歴史の闇に消えていったのは,それがなくても世の中がまわっていくことが受け入れられたからではないのか?

◇午前のこまごま —— 進化学会関連でいくつか.役員メーリングリストの開設準備.午後には関係者に広報できるだろう.その他,学会への申し入れやら依頼の処理.おくればせでごめんごめん.

◇季節はずれな表現だが「春霞」の暖かさ.昼休みの気温13.3度.歩き読み —— 宮下志朗『読書の首都パリ』(1998年10月22日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-04660-1)の第I部と第II部を読了.150ページほど.19世紀前半のパリで,「文学」ないし「売文」で生計を立てることについて.ゾラやバルザックのパリでの文筆生活を取り上げながら,原稿料とか出版社との関係,文壇ライフなどなど.新聞連載小説が大流行し,パリ中にあったブッククラブでの貸本文化,そして書籍流通の末端に位置したブキニスト(古本屋)たち.パリのアカデミーでキュヴィエとジョフロワが大論争した1830年代のパリは出版大不況時代だったそうだ.当時の文学者たちがいかにして出版業者と丁々発止の立ち回りをしてきたことか.彼らは単に“破滅的”に暮らしていたわけではなかったんだ.

◇午後のこまごま —— 午前に続いて進化学会関連.メーリングリストを広報し,いくつか要請メールを送信.積み残しがいくつかあるのだが,その前に別方面の残務が大量にあるのでそちらを何とかしないといけない.

◇夜はまたまた翻訳の続きを4ページほど.

◇さらに夜更けての“素読” —— Christiane Klapisch-Zuber『L'ombre des ancêtres : essai sur l'imaginaire médiéval de la parenté』(2000年刊行,Librairie Arthème Fayard, ISBN:2213604274 [pbk]→目次素読未満).第1章「Héritages antiques」に進む.著者は,古代に発祥をもつ祖型としての系譜表(「stemmata」)に着目し,それが中世になるとともに家系樹(「arbre généalogique」)に置換されていく過程に注目する.原点にあったのは,古代から中世にかけての聖職者や法律家が直面した貴族のそしてキリストの「系図(stemmata)」の作成だった:

Comme bien d'autres cultures, les clercs médiévaux ont dû affronter le problème d'organiser dans un espace réel — mur, rouleau de papyrus ou de parchemin, feuille de codex — les positions d'individus particuliers égrenées au fil des générations, suggérer leurs relations réciproques afin de rendre perceptible la temporalité qui les englobe. (p. 19)

Les généalogies réelles, mais aussi la théorisation des liens de parenté valables en droit, également liées à des pratiques sociales très concrètes, ont été traduites par des images qu'à un moment ou à un autre de leur longue histoire on a désignées par le terme stemmata. (p. 20)

ここでいう「stemmata」すなわち「le tableau généalogique」(p. 21)が,後世に与えた影響は大きかった:

Les stemmata et les imagines des ancetrâs furent longtemps choyés, même quand les usages funéraires et la contexte politique eurent profondément changé. (p. 22)

「tableau」としての「stemmata」そのものは必ずしも「樹(arbre)」を含意しなかったと著者は指摘する:

Il est assurément abusif de traduire par « arbre généalogique» les stemmata de l'atrium, et plus encore ceux des traités de droit. Pour ce qui est des premiers, la structure d'arbre n'est jamais évoquée par les contemporains ; quant aux seconds, les juristes romains ne recourent pas devantage au terme arbor pour désigner leurs schémas. (p. 26)

著者が「唐草模様(rinceaux habités)」に否定的に言及しているのはとても興味深い:

Rien n'autorise à penser que les stemmata patriciens aient utilisé le rinceaux végétal plutôt que les lignes sinuettes et rubannéees dont parlent les textes (fila, lineae, venae) — rien ne permet donc de parler d' « arbre généalogique» sur les murs patriciens. (pp. 31-32)

しかし,血縁を表す「ダイアグラム」としての「arbor」の萌芽は,キケロやポルピュリオスら古代の思想家にも見ることができる(p. 29).系図がもともと祖先子孫関係に基づく階層性を含んでいるということが,グラフ表示としてのツリーにやがてたどりついたのは自然な流れだったのだろう.

—— 以上,第1章からのピックアップ.

◇本日の総歩数=13518歩[うち「しっかり歩数」=8181歩/71分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=+0.6kg/−0.7%.


20 februari 2007(火) ※ ちぎっては投げ,転んでは起き上がる

◇午前5時前に起床.曇り.気温4.7度.今日は天気がよくないらしい.

◇午前のこまごま —— 仕事前に本年度の確定申告関連書類をそろえる.昼に都内某所に郵送予定.この件はとりあえずおしまい./ 『生物科学』編集委員会の日程調整.3月9日(金)の午後になってくれるとうれしいな./ 『Nature』記事(phylogenetic diversity関連)の解説を農環研ニュースに書いてほしいとの依頼.今後の仕事に関係しそうな内容なので読んでみよう.→ Nature 445 (15 February 2007):「Preserving the evolutionary potential of floras in biodiversity hotspots」とその解説「Conservation biology: The diversity of biodiversity」./ そして,南保くんの修論読みは続く.

◇午前10時.曇りときどき小雨.気温6.7度.朝から気温がほとんど上がっていない.昼休み.霧雨が降っているが,歩き読む(正気の沙汰ではない) —— 宮下志朗『読書の首都パリ』(1998年10月22日刊行,みすず書房,ISBN:4-622-04660-1)を50ページあまり.久しぶりに「換喩(メトニミー)」という修辞法の用語を目にして,かつての記憶が引きずり出されてきた.あとで,元本をチェックしよう.

◇午後のこまごま —— またまた堆積していたメーリング関連雑用を一掃処分./ 広報依頼されていた転載アナウンスをすべて流す./ 『実験医学』誌の最新号に,NPO法人サイエンス・コミュニケーション(編著)『理工系&バイオ系 失敗しない大学院進学ガイド:偏差値にだまされない大学院選び』(2006年11月20日刊行,日本評論社,ISBN:4-535-78414-0→目次書評)の書評が載ったそうだが,まだその現物を見ていない./ 〈Evolution 2007〉はニュージーランドにて(16-20 June, Christchurch).※USAの学会が南半球で年次大会を開催するとは./ 分類学会連合の役員会の日程調整.実にうまいぐあいに3月9日(金)だそうだ.ベストなのは,午前に計量生物学会広報委員会(理科大)→午後イチに分類学会連合役員会(科博分館?)→夕方に『生物科学』編集委員会(立教大)という連鎖スケジュールだ./ 進化学会事務局からファクス督促.うおお〜.こっち関連,ごめんなさい./ 生物地理学会大会の方も…….

◇夕方になっても小雨が降り続いている.

◇修辞で一服(隠喩と換喩) —— 昼休みに「換喩」ということばをたまたま見て,前世紀の末に読んでいた本をいきなり引きずり出すはめになった:Patrick Tort『La raison classificatoire : quinze études』(1989年4月21日刊行,Éditions Aubier[Les complexes discursifs 2], ISBN:2-7007-1853-4→目次).広義の「体系学」の思考基盤に関する大著(600ページ近くある!).今から10年ほど前にぱらぱらめくっていて何度も七転八倒した原因は,分類のスタイルを修辞のスタイルに結びつけるという著者の議論の要点にあった.修辞学についての知識がほとんどないので,歯ごたえありまくりの読書経験だった.

体系学に関する著者の主張を要約すれば,類似(similarité)による体系化は「隠喩(métaphore)」であるのに対し,血縁(généalogie)による体系化は「換喩(métonymie)」であること,そして体系学史はこの両極の間の往復を繰り返してきたという点に尽きる:

Or, la plupart des grands systèmes classificatoires qui portent sur des objets appartenant à la nature ou à l'histoire sont fondés soit sur la similarité (métaphore), soit sur la connexité — contiguïté, association, généalogie — (métonymie). Une histoire de la pensée classificatoire décrirait donc nécessairement une ocillation, millénaire entre ces deux schèmes, dont chacun tour à tour, selon la prédominance de tel ou tel enjou théorique et historique qu'il appartient à l'analyse de déterminer, refoulrait l'autre sans pouvoir cependant totalement se soustraire à son travail d'intime subversion.(p. 11)

分類の基礎となる修辞学での概念分類について著者は言う:

La catalogue des tropes met en œuvre, dans et sous son exposition, deux principes classificatoires confondus ou interférents : l'un superficiel et visible, l'autre occulté et profond. Le premier range les tropes selon l'ordre apparent d'une proximité typologique dont on peut avoir une idée sommaire en constant par exemple que la métonymie voisine avec la métalepse et synecdoque, ou la métaphore avec l'allégorie. (p. 16)

上では修辞学用語が頻発するが,métaphore(隠喩)プラス allégorie(諷喩)に対するのが,métonymie(換喩)プラス métalepse(転喩)と synecdoque(提喩)である.前者は表層的な属性(=類似性)が唯一の基準だが,後者は本質的・秘匿的な属性(=関連性)に基づく.

当時は「〜喩」系の術語たちに酔ってしまったのだが,修辞学の本を参照すると少なくとも概念分類については見通しがはっきりする.野内良三『レトリック辞典』(1998年6月9日刊行,国書刊行会,ISBN:4-336-04074-5)を見ると,隠喩とは何らかの「類似性」による見立てに基づく文彩であり,換喩とは「部分-全体」のつながりによる関連性に基づく文彩と定義されている.月見うどんの“卵”を“月”と見立てるのは隠喩であり,『坊つちゃん』に登場する“憎まれ役”を“赤シャツ”と呼ぶのは換喩である.

◇うう,レトリック酔いのまま,翻訳地獄に堕ちる夜更け…….

◇本日の総歩数=9886歩[うち「しっかり歩数」=5762歩/50分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.6kg/−0.6%.


19 februari 2007(月) ※ ぐるりとペンギン,あるいは埴輪かも

◇午前4時50分起床.晴れ.気温マイナス0.8度.

◇確定申告シーズン —— 毎年のことなのに,またまた2月になってからようやく源泉徴収票やらレシートやらその他の申請書類を取りまとめ始める.学習能力とても低し.去年提出した書類の残りがあったはずと言われて,家中をあちこち捜索するもののちっとも見つからず.ということで,貸し倉庫にまで捜索の網を広げることになった(大仕事やがな……).※「前もって準備する」ということばはワタシの辞書にはない.

◇朝のこまごま —— 強制的に貸し倉庫でごそごそ探し物をする(in vain ……)/ 来年度の東大エコロジカル・セイフティー学講義の日程調整./ またまた積もり始めた雑用がうずたかくなってきて,心理的圧迫感の高まり(サスペンス番組のごとし).などと言っている間にさくさくカタをつければいいのだが…….南極でペンギンに取り囲まれるかのような心地がしてきた.あるいは,埴輪か兵馬俑かも.

◇晴れた昼休みは気温11.1度.歩き読み —— 太田越知明『きだみのる:自由になるためのメソッド』(2007年2月15日刊行,未知谷,ISBN:978-4-89642-182-8→目次)の第2部を300ページあたりまで読み進む.戦後の「気違い部落」の話.

◇13:30から,年明け初めての“聖書”読み(去年の11月27日以来のこと) —— Alan Stuart and Keith Ord『Kendall's Advanced Theory of Statistics, Volume 1: Distribution Theory』(6th edition,1994年,Edward Arnold,ISBN:0-340-61430-7)の輪読(第26回目).Chapter 5:「Standard Distributions」(pp. 189-196).連続変量の分布論の続き.Weibull 分布を経て,正規分布の節に突入する.先はまだ長いぞ.1時間ほど.

◇隙き間の本読み —— 太田越知明『きだみのる:自由になるためのメソッド』(2007年2月15日刊行,未知谷,ISBN:978-4-89642-182-8→目次)を最後まで読了.戦後,八王子の「村」に棲むようになってからも,彼の“部落論”をめぐってはいろいろと紆余曲折があったらしい.といっても,その紆余曲折は,棲んでいた「村」の中での人間関係に関わることが主であって,当時の日本の社会学あるいは民俗学という場での論議の深まりは最後までなかったと著者は指摘する.

彼[きだみのる]の論が深まりを見せないまま放置されたことには,同情すべき余地もある.踏み込んだ批評や反応が皆無に等しかったからだ.たとえば評判の高かった『気違い部落周遊紀行』について,何が語られたのかをみても,どう扱って良いか困り果てている評者の姿勢が目立つばかりなのである.残っているのは,山村という,彼らにとっては聖なるフィールドに異説を立てられた左翼陣営からの批判である.(pp. 316-317)

最終章で,著者は民俗学者・宮本常一との比較を試みている(pp. 320-323).両者がそのスタイルにおいて鋭い対比を見せていた点が印象的だ.いくつかの点での比較をした上で,こう総括される:

宮本ときだの間には,もっと本質的な違いがある.きだは人間を見るとき,個人に注目するのではなく共同性からとらえようとしている.だから篤農家にせよ運命の放浪者にせよ,きだの本には宮本の書くような人間は登場しない.きだが見ているのは,個人を動かしている社会の枠組みや構造である.これは,精神が生み出したものに安易に価値を置かないと言っている彼の懐疑論と,科学志向の精神に根ざしたものである.だから揺れやすい個々の人間よりも,堅固で動揺しにくい,共同の精神性を追うのである.(p. 323)

—— ぼくは,稀覯書らしい『モロッコ紀行』はもちろんのこと,代表作である『気違い部落周遊紀行』も手に取ったこともない.遠ざけたというのではなく,その機会がなかっただけのことだ.しかし,この伝記を読んで,“きだみのるの本を読もう”という気にはならない.むしろ,“きだみのるの世界に入ろう”という覚悟をもった人が遡っていけばいいのだと感じた.

◇夜は翻訳タイム.しかし,眼がクローズし始めたので,あっさりタイムアウト.すみません…….

◇本日の総歩数=8578歩[うち「しっかり歩数」=5481歩/48分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.2kg/+0.1%.


18 februari 2007(日) ※ 朝寝坊しても発見サンデー

◇昨夜は何のかんので午前2時頃までごそごそしていたので,午前8時前まで寝坊してしまった.昨日から降り始めた雨は本降りになっている.放射冷却の冷え込みよりも,湿った冷たい朝の方がむしろ身にこたえる.

◇「多和田葉子」と「Sigrid Weigel」と表象文化論 —— 夜中に,『系統樹思考の世界』の〈反響録〉のサンプリングをしていて,たまたま田中純さんのブログ記事〈SITE ZERO Diary Blog〉(2007年2月11日付)に出会った.その記事には,今年に入ってからときどき開いている系譜学史の本:『Generation』(2005年刊行,Wilhelm Fink Verlag,ISBN:3-7705-4082-4→目次版元ページ)や『Genea-Logik』(2006年刊行,Wilhelm Fink Verlag,ISBN:978-3-7705-4173-7→目次版元ページ)の著者 Sigrid Weigel について,こう書かれていた:

ドイツでは著名な文学研究者、ベンヤミンの研究書もある。多和田葉子氏の師匠と言ったほうがわかりやすいか。

おお,そうでしたか! 多和田葉子(→著者サイト紹介記事)の名前を聞けば,その著書『エクソフォニー:母語の外へ出る旅』(2003年8月21日刊行,岩波書店,ISBN:978-4000222662)がまず思い浮かぶ.しかし,著者サイトをざっと見ると,日独にまたがって幅広い活動を続けている文学者であることをあらためて認識した.系譜学の歴史が「文化表象論」の世界にこのようにつながっていることがわかって,いい収穫だった.たまには夜更かしも許そう.

◇午前いっぱいは降ったり止んだりの空模様だったが,午後になって雨も上がりしだいに晴れてきた.北寄りの風.

◇週末の“素読” —— Christiane Klapisch-Zuber『L'ombre des ancêtres : essai sur l'imaginaire médiéval de la parenté』(2000年刊行,Librairie Arthème Fayard, ISBN:2213604274 [pbk]→目次素読未満).系譜と系図の歴史というテーマでこれだけの大冊を書き上げるからには,著者の意図するところを押さえておく必要があるだろう:

On aura compris que cet ouvrage ne prétend pas livrer une histoire générale de la généalogie médiévale, ni analyser en tant que tels les limites, les erreurs ou les biais de généalogies particulières dressées au Moyen Âge. Son objet principal — la figure généalogique — ne peut assurément se comprendre sans se référer aux autres formes contemporaines de la généalogie, orales ou écrites, descriptives, narratives ou mythiques. (pp. 12-13)

ポイントは,「本書が論じようとする系譜学的図像をしっかり理解するためには,同時代に使われた系譜のさまざまな表現形式(それは口伝えだったり書き記されたり,記載的・叙述的・神話的だったりする)を参照しなければならない」というくだりだ.中世における系譜の通史ではなく,むしろ系譜を表す「図像(図形言語)」に焦点を絞って論を進めるということだろう.

本書には,差し込み図版として計50葉の中世系譜が載せられているが,それらの「言葉としての意味」を掘り下げることが本書全体の目指すところなのだろう.さらに言えば,これは単に「arbre」にかぎらず,もっと一般的な「moyen visuel」にも敷衍できることになる:

Car l'une des questions qui court en filigrane dans cet essai vise le surcrôit d'âme apporté non seulment par l'arbre à la généalogie, mais par quelque moyen visuel que ce soit à la description ou à la démonstration. (p. 13)

中世の家系図研究の出発点はイタリアにあり,フィレンツェとボローニャの商人たちが描いたダイアグラムが嚆矢であると著者は言う:

Le point de départ de mes interrogations sur la généalogie médiévale s'est naturallment situé en Italie : quelques diagrammes et textes rédigés par des marchands florentins et bolonais du bas Moyen Âge m'avaient fait deviner, derrière leur apparente sponranéité, un système de représentations infiniment plus complexe. (p. 13)

その後,9世紀以降,今度はキリスト教に関わる系図が広く描かれるようになった:

Les généalogies du Moyen Âge tardif substituent au temps eschatologique et à la perspective du salut qui orientait les généalogies de la période précédente une vision fragmentée du devinir des sociétés chrétiennnes, et un temps historique que convoitent et s'approprient les princes et le nations. [……] Parallèlement, la figure de l'arbre s'installe au cœur de la symbolique religieuse et du travail scientifique.(p. 14)

このようにして,キリスト教世界の中で占めるべき位置を獲得した系譜は繁茂することになった:

La floraison des images généalogiques pendant le Moyen Âge central semble bien le produit d'une pensée originale qu'investit la démarche généalogique et qui place l'arbre au centre de son imaginaire.(p. 14)

—— 以上,序章のピックアップ.

◇備忘メモ —— 〈ファイナルファンタジー〉と〈ドラクエ〉の系統樹:系統樹というキーワードで徘徊していたら,たまたま「ファイナルファンタジーとドラゴンクエストの歴史をまとめた樹形図」(2007年02月14日)というページに出会った.「2720x2193ピクセル」という超巨大なドラクエの系統樹(→ jpgpdf)へのリンクが張られている.同じサイトをさらにさかのぼると,「任天堂ソフトの歴史を1枚の画像にまとめてみた」(2006年11月12日)という記事にもたどり着いた.ニンテンドーの企業系統樹はすでに知っていたが,製品(ソフト)系統樹は初めて見る(→ jpg).探せばいろいろあるもんだ

◇本日の総歩数=5125歩[うち「しっかり歩数」=3585歩/32分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.5kg/−0.2%.


17 februari 2007(土) ※ 連日の出奔,雨がしとしと本厚木

◇午前4時50分起床.晴れ.気温マイナス3.9度.久しぶりの放射冷却.朝のうちは乾いた晴天.しかし,予報では雨になるらしい.

◇9時41分の TX 快速で本厚木へ.今日は東京農大・昆研の卒論発表会だ.昼前に本厚木駅に着いたので,駅下の〈Café Albert〉にてシナモントーストをば.その後,バスで農大へ.しだいに曇ってきた.卒論発表会自体は昼前から開始していたのだが,午後1時過ぎに発表会の午後の部が再開され,夕方4時半まで続く.人口密度の高い研究室なので,こういう会はどうしても長丁場になる.

◇午後5時過ぎからは懇親会.外は小雨が降っている.夜7時過ぎにおいとまして,逆コースでつくばに直帰.それでも3時間ほどかかってしまい,帰り着いたのは午後10時半だった.たいへんお疲れさん>みなさん&ぼく.

 南保くんから修論の原稿をもらったが,来週中にみないといけない.

◇本日の車中読書は,太田越知明『きだみのる:自由になるためのメソッド』(2007年2月15日刊行,未知谷,ISBN:978-4-89642-182-8→目次)のプロローグ(1〜2),第1部,そしてインテルメッツォの計230ページあまりを読了.きだみのるの後半生の“むら”での陋屋生活はスゴいなあ.ジョセフ・コットとレヴィ・ブリュルが友人で,ブリュルの知人がマルセル・モースという人間関係のつながり.滞仏時代には岡本太郎とも接触があったとか(両者の関係にはやや問題ありか).1930年代にモロッコに渡り,かの地の植民地政策を論じた紀行本『モロッコ紀行』という幻の著書があるそうだ.見てみたい.

 本書の造本について —— ダストジャケットをはずすと,近頃珍しい「クロス装」の本体だ.手触りいいなあ.カタツムリの意匠もとてもよろしい.心ゆくまで触りたい人は,借りたりしないで,自分で買うように.そういう本です.

◇本日の総歩数=5992歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+0.9%.


16 februari 2007(金) ※ 北風に吹かれて再び東京に飛ばされる

◇午前4時50分起床.晴れ,2.1度.寒風.未明の東の空低く糸のように細い三日月が.そういえば,昨日あたりから花粉飛散量が増えている気がする.研究室とのピストン移動.

◇晴れ上がって北風がぴゅーぴゅーと吹く(冬らしい).午前いっぱいはひたすら翻訳に没入する.ええぃ,パラグラフ全部の訳文差し替えだぁー.1時間1ページ.牛歩の歩み.

◇12:41 の TX 快速で東京へ向かう.車中でも翻訳し続ける.JRお茶の水駅にて海游舎・本間さんにできた4ページを手渡す.次回は2月22日(木)13:00につくばにて納税予定.

 とても長くかかった『トンボ図鑑』は,松山でドーンと現物が初公開されるらしい.900ページ超で,価格はたった3万円足らず!とのこと(ひょえー).

◇とぼとぼとつくばに帰り着いたのは午後5時前のこと.北風がまだ吹いている.空気がとても乾燥していて,いたるところで静電気が飛ぶ.

◇本日の総歩数=13867歩[うち「しっかり歩数」=6046歩/57分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.4kg/−0.6%.


15 februari 2007(木) ※ 春一番の余波に吹き流されるワタシ

◇なんだかもう……午前3時半起床.もちろん,外はまっ暗闇で,しかも「霧筑波」そのものの濃霧がじっとりと立ちこめる.よくないものが蠢きそうな妖しい気配.視界ゼロの中を遠目で走り抜けて研究所へ.気温8.0度.しばしごそごそして5時過ぎには再び帰宅する.なにやってんだか…….

◇早朝の寝読み —— 四方田犬彦『月島物語ふたたび』(2007年1月20日刊行,工作舎,ISBN:978-4-87502-399-9→目次書評)を読了.300ページまでが既刊の『月島物語』のリプリントで,その後に100ページほどの「後日譚」が付いている.著者は,1980年代末にマンハッタンから月島に移り住み,1990年代はじめにボローニャに旅立つため月島を離れた.月島在住の数年間の生活を記録したのがもともとの本だ.今回の刊行に際して追加された末尾の百ページでは,その後の月島の変貌ぶりが対談などを通じて語られる.失われつつあるものとともに,なお遍在的に生き残るもの.ある対談の中で指摘されている通り,著者は「月島のモノグラフ」(p. 309)を遺したということだ.

—— 月島に移った版元が月島の過去・現在・近未来を見通す本を出したというのはひとつの“縁”にちがいない.なお,本書は本の造りがとてもよい.判型と組版とインクのいずれをとっても.

◇日が昇るとともに,昨日の春一番の余波らしき西風が強く吹きつけてきた.未明の濃霧はあっという間に吹き飛ばされ,木々の枯れ枝は散々にちぎれ飛び,立て看板はいやも応もなくなぎ倒される.この強風に朝型まで残っていた上空の雲は一掃されてすっかり快晴.体感的には寒い.

◇午前のこまごま —— 越中の殿からひさびさの電話攻勢.とっくに忘れていた某用件に関する愚痴の言い合い.よろしゅうに./ 明日2月16日(金)午後の年休届を出す./ 計量生物学会広報委員会会合は,3月9日(金),9:30〜,東京理科大・九段キャンパス(6F第3会議室)にて.

◇昼休み.気温は12.8度と高いものの,北風がびゅうびゅうと吹いている.歩き読み —— 三輪一記・石黒謙吾『ベルギービール大全』(2006年12月29日刊行,アートン,ISBN:4-86193-052-9)ぐびぐびと読了.ごちそうさまでした.

◇午後のこまごま —— 年度末の会計決算をいろいろしないといけない.まだ決済していない物品がいくつかあるのだが,どーんとまとめてRPにツケてしまおう,そーしよう.どーんと買ってしまおう! そーだそーだ./ うう,明日納める“税金”がまだ調達できてへんがな〜.朱ペンを片手に,ゲラをにらんではうんうんとうなる.うんうん./ そろそろ,確定申告の源泉徴収票やら領収証のたぐいを集計しはじめないといけないぞ.

◇夕方帰宅.夕焼けはきれいだが,北風がとても寒い.

◇献本感謝 —— J・スコット・ターナー(滋賀陽子訳|深津武馬監修)『生物がつくる〈体外〉構造:延長された表現型の生理学』(2007年2月9日刊行,みすず書房,ISBN:978-4-622-07258-4).延長表現型をめぐる生理学的な至近因と進化学的な究極因との関わり合い.後半の章で,ミツバチやシロアリなど社会性昆虫の実例が出てくるが,ちょうどいま格闘しているカマジン本の内容とも重なる部分があるにちがいない.どうもありがとうございます.

◇夜はそのカマジン本の翻訳原稿との格闘が続く.ドロヌマのドロナワでドロドロ…….

◇明日はまた年休をとって東京へお出かけ.私用と“納税”.

◇本日の総歩数=11215歩[うち「しっかり歩数」=6654歩/58分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/+0.1%.


14 februari 2007(水) ※ 今日は本郷,降りしきる雨と春一番

◇午前5時起床.雨が降っている.昨日の予報では,今日は関東地方に「春一番」が吹くそうだ.東京では初雪が降らないうちの春一番は初めてのことだという.

◇今日は出張日だ(昨夜,そうなった).午後,東大農学部での教員会議があるので.昨年来,東京出張日イコール“原稿納税日”というのがキマリのようになっていたが,昨日,ちょこっと“納税”したので,今日は免除となった.※よかったよかった.

◇朝の某書類作成作業をひとつすませて,午前10:11発の TX 快速で東京へ.小雨が降っている.気温は低め.

◇往路車中読書 —— とり・みき『街角のオジギビト』(2007年1月25日刊行,筑摩書房,ISBN:978-4-480-81654-2→目次)をさくさく読み進む.こういう系が好きな人にはこたえられない本でしょう.カラー図版が効果的.いろいろな“オジギビト”がいらっしゃることを知る.文化系統学のひとつのケースとして見たとき,“オジギビト”はとてもいい素材かもしれない.著者自身,“オジギビト”の「進化」には,共通祖先(プロトタイプ)を出発点とする系譜における「コピーノイズ」(pp. 25, 32, 61)が重要な要因だったと示唆しているからだ.

◇11時過ぎに,根津交差点に立つ.雨がぽつぽつと.お昼は,前から狙いをつけていた根津の饂飩〈釜竹[かまちく]にて,大盛ざるうどんをば.昼前だったので割に空いていて,注文を受けてから,こねて切って茹でるそうだ.しばし待って喰ったが,これはうまいですなあ.つるつると,しこしこと.だし汁もええお味で.大阪・羽曳野に本店があるらしい.

 釜竹のメニューは,釜揚げうどんとざるうどんの二種類しかないが,吟醸酒のコレクションは上質のものがそろっているようで,まずは〈十四代〉がずらーり,静岡の〈磯自慢〉とか福井の〈黒龍〉もあり.店ではこれらを「麺前酒」と銘打って,肴とともに供している.夜来ても楽しいかもね.

◇その後,東大農学部前の〈高崎屋〉にて、「吟奏の会」の銘柄のひとつ,三重の〈喜代娘〉の純米大吟醸「吟」を一升買う.これは週末の東京農大・昆研の卒論発表会&懇親会のための“お供え品”として.雨足が強くなってきた.

◇午後1時過ぎから,東大農学部にて専攻教員会議.午後3時半に終わる.できたばかりの専攻紹介パンフレットをひと〆抱えて帰路につく.雨は小止みになった.つくばにたどり着いたのは午後4時半を少し過ぎた頃.ぽつぽつと降り続いている.

◇帰路車中読書 —— とり・みき『街角のオジギビト』(2007年1月25日刊行,筑摩書房,ISBN:978-4-480-81654-2→目次)をさくっと読了.著者が調べたところによると,“オジギビト”の実在仮想ではない)共通祖先は,1960年前後に大成建設のある社員が考案した“安全坊や”だという(pp. 122-124).“オジギビト”のクレード全体を特徴づける“オジギ”という共有派生形質はここに発生した.著者は,推測上の分岐図(p. 35)あるいは系統ネットワーク(p. 62)を描いているが,本書に記載されている“オジギビト”の形態的形質や行動的形質をうまくコード化すれば,もっとリーズナブルな系統推定ができるのではないかと思う.

 いずれにせよ,「descent with modification」という進化過程は,生物全般と同様に,“オジギビト”クレードにも適用される:

新規のデザインを決定する際に「基本はあまり変えずに,でもせっかく作り直すのだから,ちょっとは新しい試みも入れてみたい」ということがあるかもしれない.後継者は先代の技を踏襲しつつ自分なりのオリジナリティを入れてみたくなるものだ.オジギビト業界にも流行やトレンドがあるだろうし,納品先の意向というのも考えられる.
 そういう意図的な変化とは別に「コピーノイズの増加」という要素も多分にあるような気がする.つまり伝言ゲームによるミスの増幅の過程を我々は見ているのではないか,ということだ.前のデザインのトレースを重ねるたび彼らは「進化」していったのだ.(pp. 32-34)

楽しいなあ,こういう話って.もともと,こういう“トマソン的な物件”は「これまで視界に入ってはいたが実はすっかり見落とされていた」(p. 9)ものを見いだす悦楽を共有できる人たちによって“発見”されてきた.“オジギビト”がさまざまに進化したり,あるいは“歩行者信号人”がエイリアンのように変容したりする.しかも,そういう“非生物”たちが,大多数の一般人に気づかれないところでヒソカに「進化」してきたということそれ自体でも十分におもしろい.しかし,文化系統学という観点から見れば,本書で開陳されている「物件」の数々はまた別の意味合いをもつことになるだろう.そして,“オジギビト”たちは,将来,「アイソタイプ」のように収斂進化していくのか(欧米の“オジギビト”姉妹群にはその傾向が強いようだ),話題と興味はまだまだ尽きない.

—— なお,トマソンや醤油鯛のオンライン図鑑があるように,〈オジギビト集会所山陰本部〉というオンライン図鑑が公開されている.とても参考になる.

◇夜になって,風雨が一段と強くなってきた.そして,「春一番」が吹いたというニュース報道あり.

◇本日の総歩数=8436歩[うち「しっかり歩数」=3141歩/29分].全コース○|○.朝○|昼○|夜△.前回比=0.0kg/−0.6%.


13 februari 2007(火) ※ 春めく年休日は都内をあちこち

◇午前4時起床.今日は年休を取っている.北の風.冷え込む.

◇こまごまと用意して,6時56分の TX 快速にて東京へ.茗荷谷から音羽方面に下りて,道をはさんだ講談社の神殿を参拝し(初めて見た!),護国寺からお茶の水へ移動.駿河台の〈Tully's〉に陣取って,ひたすら翻訳また翻訳.3時間で5ページほど仕上げる.正午に JR お茶の水駅改札にて海游舎の本間さんに,できた7ページを手渡して本日の“納税”は終わった.※次回は2月16日(金)の午後[時間と場所は未定].

◇往路車中読書 —— 四方田犬彦『月島物語ふたたび』(2007年1月20日刊行,工作舎,ISBN:978-4-87502-399-9→目次).小津安二郎や黒沢明の「下町」映画に登場する月島.映画評論家ならではの視点と視線だ(第11,13章).『明日のジョー』の舞台が月島だといううわさがあるらしい(p. 205).当時のちばてつやの作品の系譜を見ると根も葉もないことではなさそうだ.しかし,個人的にもっとおもしろかったのは,月島における「台所」の変遷系譜.もともと表通りに面して煮炊きしていた台所が,どのような経緯で家の“奥”に引っ込んでいったかについての考察だ(第7章).なかば「考現学」的なお話.

◇今日も晴れて穏やかな天気だ.気温がしだいに上がってきた.しばしの自由時間は神保町・すずらん通りを徘徊する.

◇“醤油鯛”かはたまた“オジギビト”か —— 東京堂書店にて新刊ゲット.とり・みき『街角のオジギビト』(2007年1月25日刊行,筑摩書房,ISBN:978-4-480-81654-2→目次).“オジギビト”とは工事現場で日がな一日「おじぎ」し続けている“アノ人”のことです.本書はその“オジギビト”を20年にわたって蒐集し続けた「路上観察学会会員」の著者がそのコレクションを開陳した本.“トマソン”の筑摩書房から出たというのもうなずける.“オジギビト”の「百態」はもちろん楽しいのだが,それ以上に「オジギビト進化論」に付けられている2葉の〈オジギビト系統樹〉に注目したい.この新刊,明日の車中読書用かな.エンジョイ!

◇しばしの徘徊ののち,淡路町の〈トプカ〉にてムルギーカリーをば(辛っ!).その後,神田→湯島天神(&うさぎや)→本郷→茗荷谷を経て,つくばに帰り着いたのは午後4時半のこと.

◇復路車中読書 —— 四方田犬彦『月島物語ふたたび』(2007年1月20日刊行,工作舎,ISBN:978-4-87502-399-9→目次).レバーの“肉フライ”(第14章)と,いまはもういない水上生活者の話(第15章).吉本隆明の故郷も月島(新佃島)だったそうだ(第16章).

◇その後,研究所に顔を出して,南保君の修論指導.本当は午後3時から研究評価WGのミーティングがあったのだが,ないことにしてスルーした(ごめん).夜の研究室でごそごそする.明日の出張届を前の晩に出すやつ.再帰宅したのは午後8時.疲れました.

◇本日の総歩数=16422歩[うち「しっかり歩数」=3471歩/34分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.3kg/+0.1%.


12 februari 2007(月) ※ 知らないことが多過ぎるなあ……

◇前夜,早々と寝てしまったので,午前4時半に自然起床.放射冷却のせいで冷え込み強し.氷点下かも.震え上がる.3連休の最終日だが,何一つ予定なし.翻訳に励まないと,

◇まことに恥ずかしながら…… —— 『月島物語ふたたび』に書かれていない後日譚.1912年に月島の工場で自活を始めた少年きだみのるは,アテネ・フランセで仕事を続け,後年,本名“山田吉彦”の名で,『ファーブル昆虫記』の全訳を岩波文庫から出すことになる(1930〜1952年:部分的に林達夫との共訳).『気違い部落』著者の“きだみのる”が『ファーブル昆虫記』訳者の“山田吉彦”と同一人物であるとは今の今まで気がつかなかった…….それぞれの著者の名前はもちろん前から知っていたにもかかわらず.うかつというか,大ぼけというか.知らないことが多過ぎる.ほかにも,きだみのる=山田吉彦がレヴィ-ブリュル『未開社会の思惟』やラマルク『動物哲学』(小泉丹と共訳)の翻訳も手がけていたとはね.本の著者はしっかり覚えていても,訳者の記憶は定かでないことが多い.

◇というわけで,あまりにもタイミングがよすぎる新刊「きだみのる=山田吉彦」伝 —— 太田越知明『きだみのる:自由になるためのメソッド』(2007年2月15日刊行,未知谷,ISBN:978-4-89642-182-8→目次).まるでピンポイントで狙いすまされた気がする.こういうかっちりした本のつくり方は未知谷ならでは.きだみのる少年の月島生活については,「prologue 2」で一言触れられている(p. 32).それにしても,若い頃の海外流浪ぶりが大胆というか,なんというか.

◇連休最終日の“素読” —— Christiane Klapisch-Zuber『L'ombre des ancêtres : essai sur l'imaginaire médiéval de la parenté』(2000年刊行,Librairie Arthème Fayard, ISBN:2213604274 [pbk]→目次素読未満).著者は本書の先行研究を列挙した上で,それとの継続性をまず強調する(p. 10).その上で,〈生命の樹(l'Arbre de vie)〉に関する従来の説を再考しようとする:

À l'inverse, l'image de l'arbre a suscité des essais de synthèse ambitieux, mais qui semblent souvent prématurés ou partiaux. Ici, l'éclairage généralement retenu a privilégié l'Arbre de vie et ses racines qualifées de « folkloriques » pour en faire la matrice culturelle large où aurait mû la figure qui nous occupe.(pp. 11-12)

従来的な〈生命の樹〉説とそれに対する著者のスタンスは,これから本論を読んでみないとわからない.

◇夜のドロナワ翻訳 —— 学習能力のないワタシ.“朱ペン”を uni の油性インク〈PowerTank〉から,同じく uni の水性ゲルインク〈EnerGel〉に代えてみた.さらさらするものの,文章はぜーんぜんさらさらしてない(汗).でも,午後10時半には寝てしまった.

◇明日は私用により年休.しかし,“原稿年貢”の取り立てはキッチリある…….

◇本日の総歩数=2224歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.1kg/0.0%.


11 februari 2007(日) ※ 予期しなかった「みなか」つながり

◇午前5時起床.雨上がり.明け方は湿って冷え込む.からりと快晴に.空気が冷たい.

◇上海スイーツ〈MINAKA〉について —— 「みなか」という名字でたまに検索すると,「おおっ!」という物件に遭遇することがある.昨夜,Google で出会ったのは,上海にある〈MINAKA〉というスイーツの有名店(→紹介1紹介2紹介3).「MINAKA」というネーミングからして,「ひょっとして」と思ったら,案の定,オーナー・パティシエは日本人女性だという.ん? 数年前,同じような「みなか検索」をしたとき,たまたま広島在住の「三中とも子」さんというパティシエに出会ったのだが,同一人物かしら……とさらに検索してみたら,どうやらその通りだった(→記事).

—— 名字がマイナーだと,こういう「愉しみ」がある.Elliott Sober 教授のいう〈Smith / Quackdoodle 定理〉がこのケースに当てはまるかどうかは知らないが.

◇新刊・近刊メモ —— 須賀敦子『須賀敦子全集・第6巻』(2007年2月20日刊行,河出書房新社[河出文庫す4-7],ISBN:978-4-309-42056-1).第4回配本の第6巻は「イタリア文学論/翻訳書あとがき」.→版元ページ./ オーウェン・ギンガリッチ(編)『ダーウィン』(2007年2月刊行予定,大月書店[オックスフォード 科学の肖像],ISBN:978-4-272-44041-2).「図版49点」というのに惹かれる./ 関村利朗・梯正之・竹内康博・山村則男『理論生物学入門』(2007年2月近刊,現代図書,ISBN:978-4-434-10077-2)/ J・スコット・ターナー(滋賀陽子訳|深津武馬監修)『生物がつくる〈体外〉構造:延長された表現型の生理学』(2007年2月9日刊行,みすず書房,ISBN:978-4-622-07258-4).「延長された表現型」の生理学./ 大塚英志『怪談前後:柳田民俗学と自然主義』(2007年1月31日刊行,角川書店[角川選書],ISBN:978-4-04-703401-3).

◇ぽかぽかと暖かな午後の日だまりで“光合成”しつつ寝読み —— 四方田犬彦『月島物語ふたたび』(2007年1月20日刊行,工作舎,ISBN:978-4-87502-399-9→目次).新佃島にあったという「海水館」なる旅館での小山内薫ら大正時代の文学者たちの交友録(第6章).もっとおもしろかったのは,『気違い部落周遊紀行』の“きだみのる”(1895〜1975)のたどった経歴だ(第3章).奄美大島に生まれたきだは台湾に育ったが,漂泊の末,月島に流れ着いたのは二十歳前の1912年のこと.安月給の工員として働いていた頃,たまたまアテネ・フランセ創立者ジョセフ・コットの知己を得て,1934年に渡仏.ソルボンヌ大学では,かのマルセル・モースの教えを受けたそうだ.この前半生だけでも十分に波瀾万丈だ.

◇今日は,終日引き蘢っていたので,夕暮れ時に少しだけ外を徘徊する.今日は穏やかな日射しだったが,北風が強かった.

◇“素読”の続き —— Christiane Klapisch-Zuber『L'ombre des ancêtres : essai sur l'imaginaire médiéval de la parenté』(2000年刊行,Librairie Arthème Fayard, ISBN:2213604274 [pbk]→目次素読未満).本書が書かれたもともとの目的:

L'essai qui suit entend explorer le contexte des représentations où a prix place une figure aussi particulière.(p. 8)

にいう「コンテクスト」は中世にある.とりわけ,著者は家系図にまつわる中世的な想像や隠喩や寓意に着目する:

Je me propose, dans ce livre, de parcoirir les chemins que cette métaphore a suivis dans l'imaginaire médiéval de la parenté. À travers le langage, les diagrammes et les images, je voudrais scruter les représentations mentales et figurées que l'on s'est faites de la généalogie. Afin de dessiner le cadre de cet imaginaire, je considérerai les formes visuelles auxquelles on a recouru au fil des siècle s pour suggérer la filiation, la transmission, la reproduction, la perénité. Dans l'arsenal des moyens graphiques qui ont donné forme à ce teritoire imaginaire, l'arbre a trouvé tôt sa place.(p. 8)

疑問の核心は,そのような中世的なメンタリティの中で,「樹」という概念がどのように芽生えたのかという点にある:

Car la familiarité que nous ressentons face à une image d'arbre généalogique est en elle-même problématique. Qu'y a-t-il de naturel ê représenter par un arbre l'ancestralité et la descendance? L'arbre naturel ne peut les évoquer que grâce ê maintes associations mentales et ê diverses médiations culturelles.(p. 9)

家系や先祖という時間的経過(歴史)の図式表現としての「樹」が当時どのように受け入れられていたのか:

Cet essai interrogera donc la fortune des figures arborescentes sans oublier qu'elles ont pu recouvrir, parfois englober, d'autres représentations culturelles de la parenté, du temps, de l'avenir et du passé.(p. 9)

もちろん,ヨーロッパ中世はキリスト教世界でもあったわけだから,家系図もまたその神学的意味を色濃く帯びることになる.たとえば,ロマネスク期に広く流布した「エッサイの木(arbre de Jessé)」のような宗教的な系図は,中世的な家系図の伝統の末裔だという(p. 10).

◇連休中日は,早々に就寝してしまう.午後11時前.

◇本日の総歩数=2751歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=+0.1kg/+0.1%.


10 februari 2007(土) ※ 今日はめずらしくゆるゆるサタデー

◇生活リズムがずれてしまったせいか,午前6時に自然起床する.前夜の雨はもうあがっていて,薄曇り.冷え込みなし.

◇午前いっぱいは InterCommunication(No. 60, Spring 2007)誌の文字校正ゲラのチェック.原稿を急いで書いたので,方々でボロがボロボロ出ていた.もうボロボロ…….エラー部分のパッチ当てに追われる.幸い,原稿の“躯体”そのものには問題なさそうなので,がらがらと“倒壊”することは[きっと]ないだろう.

◇Marco Corti 博士逝去(1951〜2007) —— Morphmet メーリングリストからの告知.2002年にギリシアであった国際会議(ICSEB-VI,Patras,Greece)で一度だけお会いしたことがある.イタリア圏で形態測定学者といえば,まずはじめに彼の名前が挙がった.ここ数年は癌と闘病していたそうだ.享年56歳.

◇昼下がりにプチ外出.風もなく晴れて春先の陽気だ.ひとまわり自転車でまわって,また引き蘢る.

◇午後は,InterCommunication 文字校正の修正箇所をpdfに書き込む作業を終わらせる.注釈リストを添付したpdfを出力し,メールで編集部に送信する.残る一仕事は図版20葉が入ったゲラのチェックだが,それはこの連休中のどこかに挿入されるはずの作業だ.

◇グッド・タイミングで着便した本 —— Theodore M. Porter『Karl Pearson : The Scientific Life in a Statistical Age』(2004年刊行,Princeton University Press,ISBN:978-0-691-12635-6 [pbk]→目次).2004年にハードカバー版として出た本のペーパーバック版(2006年).何がグッド・タイミングだったかといえば,ピアソンが今で言う「統計グラフィクス」の founder に当たるということが本書に書かれていたから.InterCommunication 原稿では,系統学と統計学における「図形言語」(系統樹,グラフ,ネットワーク)をテーマにしていたので,この本がたまたまいいタイミングでやってきてくれたおかげで,初期の数理統計学における“グラフィクス”の扱われ方がよくわかった.Edward R. Tufte のグラフィクス本とのつながりについての記述を改訂することもできた.

 目次をざっと見た感じでは,「統計学者カール・ピアソン」が登場するのは,本書後半の第7章以降のようだ.しかし,“Making-of”の部分にこそおもしろみがあるはずなので,きっと前半も捨てがたし.

◇夕方,InterCommunication 図版校正がpdfで届く(6MBもある!).さっそく,通し読みする.本文はすでにチェック完了しているので,図版の配置とキャプションを確認するだけでよい.“樹”だらけ.いくつか修正箇所を記入した巨大pdfファイルを午後9時過ぎに返信し,この件は無事にすべて完了とあいなった.

◇午後10時を過ぎた頃,いきなりざあざあと雨が降り出した.1時間ほどで雨足は弱まったが,今度は雷鳴と稲妻が.ほんまに変な天気やなあ.

◇本日の総歩数=1028歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.前回比=−0.5kg/+0.5%.


9 februari 2007(金) ※ 超早起きしてあえなく燃え尽きる……

◇日が変わる頃,ごそーと起きだす.夜中のミクシィ〈R〉談義は続く.研究所に着いたのは午前1時過ぎ.欠けた月が輝く.気温2.3度.

◇深夜の成績評価作業 —— まずは筑波大学からかたをつける.数学科の学生さんはやはり“数式”がお好きですか? 続いて,昨日から尻叩かれまくりの信州大学へ.こちらは提出レポートが60もあって火を噴く.午前5時過ぎまでごりごりと粘ったのだが,そろそろリミットか.眠過ぎ.「早朝の研究所で研究員が不審死」とか報道されたりするととてもカナシいので,いったん自宅に向かう午前6時.ほぼ死んだな.

◇しばらくして蘇生したので,午前9時に再び出勤する.晴れ.気温7.7度.成績報告書をまとめて,正午前に筑波大学と信州大学にメールと〒で返送した.この件はやっと完了.

◇その他,午前のこまごま —— 来年度の非常勤職員の雇用届.済み./ 2月13日(火)の年休届.済み./ 某大学に公費購入されるというソーバー本を京都の取次店宛に遅まきながら発送する.その他,数カ所に本を発送する準備をする.午後には送れます.

◇複数レベル淘汰論争での「versus」の嵐 —— Samir Okasha『Evolution and the Levels of Selection』(2006年12月刊行,Oxford University Press,ISBN:0-19-926797-9 [hbk]→詳細目次版元ページ)の目次を入力してみて,本書のだいたいの筋書きが見えてきた.2.2.4節で,著者は二つの複数レベル淘汰理論(MLS : multilevel selection theory)を区別している(p. 56).そのちがいは,ある群(collective)とそこに含まれる個物(particle)の包含関係があるときに,いずれに焦点を当てて淘汰プロセスを論じるかのちがいだと著者は言う.「MLS1」とは個物に焦点を当てる複数レベル淘汰理論であるのに対し,「MLS2」とは群に焦点を当てる理論である.本書全体を通じて,この対比が繰り返し登場する.

◇昨夜からの実働時間が長いので,午後になるとアブラが切れてきた.それでも,まだ動けるうちはやっておかないと.午後のこまごま —— 10月1日(月)〜10月2日(火)にかけて,日本植物病理学会の細菌病談話会で系統推定の噺をするようにとの依頼.はいはい./ 年度末の業績報告書の提出の締切は「3月9日(金)」とのこと./ Edward R. Tufte の読み方は「タフティ」と呼ぶのがベストだとのこと.情報感謝.今夜にも,文字校に手を入れますです.

◇キーボードを打ちつつ,前後左右にゆ〜らゆらしているのが自覚できる.そろそろ限界でしょうなあ.午後6時過ぎ,長かった1日が終わった.

◇夜8時頃にざーっと雨が降り出す.春先みたいで,冬らしからず.

◇ほっこり仮想ワープ —— 邸景一他『上海歴史散歩:レトロな建物群から国際都市の魅力を探る』(2007年1月22日刊行,日経BP企画[旅名人ブックス88], ISBN:978-4-86130-232-9).外灘に,租界に,衡山路に,…….おっ.ほっ.ふっ.

◇ずるずると夜更かしして,寝たのは午前1時過ぎのこと.昨夜から25時間も起きていることになる.※夜更かしと早起きとは紙一重のちがいしかない.

◇本日の総歩数=5644歩[うち「しっかり歩数」=2701歩/24分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.前回比=+0.6kg/−0.4%.


8 februari 2007(木) ※ ん,もう,しごと大杉……

◇午前5時前に起床.晴れて寒い.気温はマイナス2.6度.日中の“春”との温度差が身に染みる.

◇翻訳の朝〜昼(……).午後1時,TX つくば駅改札にて,海游舎の本間さんに仕上がったゲラ10枚を手渡す.ミツバチの16章が終わるかと思ったら,最後の1ページが積み残しになってしまった.※次回は2月13日(火)にJRお茶の水駅改札にて.これだけ「納税」場所を変え続けているのに,一度もすれ違いがない.

◇日中はまたまた日射しが春めいて気温高し.午後3時に12.6度.風もなく日だまりは暖かい.

◇それにしても,しごと大杉 —— 信州大学から成績評価の督促あり.メールと電話./ 筑波大からもきっと近いうちに督促されるはず./ InterCommunicationのゲラも今日中に返さないとか./ 所内の業績報告書の提出期限は「3月9日(金)」とのこと./ 公費購入の本の決済がまだ./ 生物地理学会大会のシンポジウムはまだ白紙でーす./ 進化学会事務局体制,ぐ./ 他の原稿のことは考えないようにしよう.そうしよう.

—— 要するに,しごと大杉…….

◇届いた新刊 —— Michel-Marie Deza and Elena Deza『Dictionary of Distances』(2006年10月刊行,Elsevier,ISBN:978-0-444-52087-6→目次).マジで「距離の事典」だった.生物学を含め,方々の学問分野でさまざまな「距離」概念が現れていることを知る.巻末に,距離のイメージにぴったりの“奥の細道”的な写真がわざわざカラー図版で入っている.いいなあ.こういうスタンスって.

◇完全にオーバーフローしているぞ…….こういうときはオーバーワークしてもらちがあかない.夕方,よろよろと帰宅する.午後10時に仮眠開始.日が変わる頃に超早起きして研究所に行く予定.成績は夜中に決まるのだ.

◇夜のミクシィ —— 〈R〉コミュにて形態測定学論議をする.

◇本日の総歩数=6238歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.4kg/0.0%.


7 februari 2007(水) ※ じりじりと底から乾留されている心地

◇午前4時50分起床.晴れ.気温0.9度.昼間と夜間の温度差が大き過ぎる.

◇午前のこまごま —— 計量生物学会の広報委員会の対面ミーティングの日程擦り合わせ.年度末までに./ InterCommゲラ読み.「タフテ」は「タフト」にすべきだな./ アカデミア洋書にがっぽりと……(涙).

◇快晴の昼休み,気温は12.5度.あたたか.歩き読み —— 澁澤龍彦『快楽図書館』(2006年12月20日刊行,学習研究社,ISBN:4-05-403233-8)の後半100ページを読了.浮世離れした人かと勝手に思っていたのだが,けっこう怒る,イヤミは言う,皮肉はかます,というなかなかパッションな人であることがわかってよかったな.

◇午後のこまごま —— 総合研究大学院大学「先導科学考究」セミナーの予定決定:5月22日(火),15:00〜18:00.総研大(葉山)にて.講演タイトルは,「進化系統学の先端で甦る歴史研究:サイエンスとヒストリーを隔てる壁は幻だった」.Tree-thinker はどこにでも根を張るぞ(“外来有害植物”ってか).

◇組成データの統計分析について —— 〈BIOMETRY〉に質問があったので,下記の通り答えた:

From: minaka@affrc.go.jp
Subject: [biometry:2763] Re: 組成の検定
Date: 7 februari 2007 14:39:53 JST
To: biometry@ml.affrc.go.jp

○○さん(2762)&みなさん:

三中信宏です.

On 6-feb-2007, at 21:10, ○○ wrote:
> さて、スタマック・ポンプで得た胃内容物組成と、本当の胃内容物組成のデータ
> が採集個体数の数だけあり、組成を比較して差があるか、ないかを検討したいの
> ですが、どのような手法を用いたらよいでしょうか。

組成データ(compositional data)に関するパラメトリック統計学でしたら,「正規分布」ではなく,「ディリクレ分布」が基礎になると思います.

参考書としては:

  1. J. Aitchison 1986. The Statistical Analysis of Compositional Data. Chapman and Hall, London.
  2. R. A. Reyment and E. Savazzi 1999. Aspects of Multivariate Statistical Analysis in Geology. Elsevier, Amsterdam.

Aitchison の本は組成データの統計学に関するモノグラフ,Reyment & Savazziの本は,地質学での化学組成データを例にとっています.

組成データの場合,「変量和が1になる」という線形制約条件が付くので,通常の正規分布に基づくパラメトリック統計学では対応できません.変量の自由度がひとつ減る「シンプレックス空間」でのバラツキを相手にしなければならないからです.

組成データに変換する前の元変量「Xi」(i=1, ..., n)が正規分布に従うとして,その挿話ΣXi(正規性をもつ)で割り算した組成変量Zi=Xi/ΣXiはコーシー分布をします.しかし,コーシー分布にはモーメントが存在しませんので,どうしようもありません.推定も検定もダメ.

もし,非負の範囲で動く変量だけ考えればいいというのであれば(多くの場合はこれ),ポアソン過程から導出されるガンマ分布変量を考えるのが都合がいいです.というのも,元変量がガンマ分布をするとき,その総和もまたガンマ分布をします.そして,ガンマ変量から得られた組成変量(ガンマ分布の比)は「ディリクレ分布」に従うので,組成データのパラメトリック統計学の基礎にはディリクレ分布があるということになります.上記の2冊の本はこの方針に沿って書かれています.

以下,余談です.通常の制約のないベクトル・データ(長さと方向を持つデータ)の場合は(たとえば)正規分布を前提とするパラメトリック統計学で何とかなるわけですが(楽観的すぎるかっ?),変量間にもともとある制約が課されると,パラメトリック統計学のベースになる確率分布(“帝王”)が変わることになります.

通常のベクトル・データならば「正規分布」が帝王です.ご質問のあった組成データでは「ディリクレ分布」が帝王となります.幾何学的形態測定学では,「変量の二乗和が1になる」という二次の制約式が付くことがあり,この場合の帝王は「複素ビンガム分布」になります(2次元座標データの場合).

以上,ご参考まで.

組成データがディリクレ分布に従う話は,何年か前のレイメントさんの講演で聴いた(→2003年10月23日の日録).

◇新刊情報 —— ドイツ語版分子系統学ハンドブック:Volker Knoop and Kai Müller『Gene und Stammbäume : Ein Handbuch zur molekularen Phylogenetik』(2006年5月刊行,Spektrum Akademischer Verlag,ISBN:3-8274-1642-6|ISBN:9783827416421→目次版元ページ).目次構成をざっと見るかぎり,「いかにもドイツっ!」という雰囲気は薄いようだ.距離法・最節約法・最尤法・ベイズ法まで一通り説明して,手法の比較検討へと進むという定石通りのコース設定になっている.

◇夜,ひたすら「原稿年貢」をひねり出す.明日は「納税日」(汗).まだ納税額に達せず…….

◇本日の総歩数=9431歩[うち「しっかり歩数」=6734歩/59分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/0.0%.


6 februari 2007(火) ※ さらに春めく火曜日の追いまくられ

◇午前4時40分起床.朧月夜.気温1.9度.今日は4月並みの暖かさになるとの予報.

◇不在中に着便していた本たち —— 月刊『みすず2007年1/2月合併号[第49巻第1号:通巻546号]』(2007年2月1日発行,みすず書房→版元サイト).毎年恒例の「読者アンケート特集」.ぼくの書いた書評は,pp. 66〜68に載っている./ Samir Okasha『Evolution and the Levels of Selection』(2006年12月刊行,Oxford University Press,ISBN:0-19-926797-9 [hbk]→版元ページ).淘汰単位論争をめぐる生物学哲学.

◇昼休み.晴れて気温15.0度の暖かさ.歩き読み:角田多佳子『大阪食堂:なにわっ子の★★★グルメ案内』(2006年6月20日刊行,平凡社,ISBN:4-582-83331-4)を読了.アウトドア図鑑のように「野外使用」される可能性のある本では“ビニール装幀”はときどき見るが,本書のような食べ物本で“ビニール装幀”されている例は他に見た記憶がない.大阪の町中を歩くときはいつも持ち歩きなさいということか,それとも大阪タウンは“ジャングル並み”やし要注意ゆうことか.関東ではありえない「箱寿司」が喰いたいな.焼き肉パラダイスの鶴橋界隈にも行きたいな.天かすならぬ「油かす」とは.

 ついでに,先日の購入本 —— ブリア・サヴァラン『美味礼讃(上)』(1967年8月16日刊行,岩波書店[岩波文庫:赤524-1], ISBN:4-00-325241-1)と『美味礼讃(下)』(1967年9月16日刊行,岩波書店[岩波文庫:赤524-2], ISBN:4-00-325242-X).誰もが知っている「美味学」の元祖本.しかし,この本,読者を厳しく選びそうですなあ.

 しかし,昨年読んだ中でもっとも印象に残る「食べ物本」はコレ!:福田浩『Meshi 飯』(2006年6月14日刊行,ピエ・ブックス,ISBN:4894445352→目次).単なる「飯」の写真集と言ってしまえばそれまでなのだが,このインパクトは手に取った人にしかわからないはず.シンプルこの上ない江戸時代の“めし”を再現したこの本は,その上質な写真の数々とともに食慾をいやが上にも亢進させる.単に写真を見るだけではなく,つい作りたくなってしまう.

—— 食いもんのことばっかし書いていても仕事はぜんぜん進まんな……(あたりまえ).

◇午後のこまごま —— メーリングリスト雑用いくつか./ 集中講義の成績評価をそろそろ返送しないと(→筑波大学|信州大学)./ 月の変わり目までに返事するべきだった案件いくつか.ひょえー.

◇夜は,InterCommunication原稿の画像についての連絡あれこれ.明日ゲラをチェックして返送する予定./ あ,翻訳……(冷汗).

◇しばしの“素読”を —— Christiane Klapisch-Zuber『L'ombre des ancêtres : essai sur l'imaginaire médiéval de la parenté』(2000年刊行,Librairie Arthème Fayard,ISBN:2213604274 [pbk]→目次素読未満).まずは「Introduction」(pp. 7-16)から.本書の中で,著者は,中世ヨーロッパ社会での「家系図」(arbre généalogique)のルーツをさかのぼる.16世紀にはヨーロッパの広い地域で,「樹」としての家系図が見られるようになったという:

Nous n'en sommes qu'à l'aube de la diffusion extraordinaire de ce genre de figure. Car les images d'arbres généalogiques vont proliférer après 1550, [……] Une mémoire longue de la généalogie visualisée, et en particulier de l'arbre, semble irradier, imperturbable, à travers les siècles.(p. 7)

L'arbre généalogique ne se réduit donc pas à une pure visée généalogique. Il ne prétend pas simplement illustrer une connaissance des liens de parenté que d'autres procédures — le récit, le raisonnement, le diagramme — montreront beaucoup mieux. (p. 8)

本書の目的は「家系図」という図形言語のスタイルとコンテンツに関わる当時の社会的文脈を明らかにすることにあると著者は言う(p. 8).16世紀に登場した「家系図」をたどる旅が始まる.

◇本日の総歩数=9728歩[うち「しっかり歩数」=4851歩/43分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=+0.2kg/−0.3%.


5 februari 2007(月) ※ 週明け年休は洛北の豆餅とベーグル

◇午前5時起床.1時間ほどまどろみ.朝食後,宇治を出発したのは午前9時半のこと.今日は春めいた暖かさになるらしい.

◇タクシーで京都駅に到着.荷物をロッカーに放り込んでから,地下鉄にて今出川へ.今日は同志社の入試日らしい.日和とてもよし.河原町今出川の〈出町ふたば〉にて豆餅と黒豆大福をゲット.平日の朝のこんな時間帯に行列していた.出町商店街を通り抜けて,寺町通を北上する.北端まで突き当たってから鞍馬口に出る.

 再び地下鉄にて一駅乗り北大路へ.〈ブラウニー〉にてベーグルを買おうと思ったら,まだ時間が早過ぎて焼き上がっていなかった.近くの〈伊藤珈琲〉で,時間つぶしの日録書き.昼過ぎに再び〈ブラウニー〉に寄る.焼きたてのベーグルがずっしりと.

◇北大路から地下鉄で京都駅に戻り,〈のぞみ88号〉に乗り込んだのは 13:26 のこと.東京着は定刻 15:46 だった.気温とても高し.コート不要.秋葉原から TX 区間快速に乗り,つくばに帰り着いたのは午後5時過ぎのこと.

◇京都に来る前につくばに届いた本 —— Peter Kosso『Knowing the Past : Philosophical Issues of History and Archaeology』(2001年刊行,Humanity Books,ISBN:1-57392-907-7 [hbk]→目次).ハードカバーの割には,触り心地が“ふかふか”してよろしくないな.内容には関係ないんだろうけど.著者サイトも“すかすか”していてよろしくないぞ.

◇週末すっかり放置してしまったメールボックスを開けたところ,着信メール「計1,649通」のうち,実に「917」通が自動的にスパムと判定され,さらに手動によって残存スパムを除去すると,たった「125通」だけが“有効メール”となった.わずか3日間不在下だけでこのありさまだ.

◇旅路の合間に時々めくっていた本 —— Christiane Klapisch-Zuber『L'ombre des ancêtres : essai sur l'imaginaire médiéval de la parenté』(2000年刊行,Librairie Arthème Fayard, ISBN:2213604274 [pbk]→目次素読未満).著者である Christiane Klapisch-Zuber さんは,もともと「家族史・女性史」が専門で,その方面の著作は日本語訳がすでに出版されているらしい.本書は,家系図と系統樹の中世的図像学に関する歴史書で,500ページほどもあるこういう本が出されているということ自体がひとつの驚きだ.10世紀前後から15〜16世紀までの西洋社会の中で,「系図」がどのように描かれてきたのか,そして系図のデザインにこめられたさまざまな意味を解読しようとする.階層・樹・ネットワークの実例として挙げられている50の図版は他では目にしたことがないものばかりだ.

 同じテーマによる続編:Christiane Klapisch-Zuber『L'arbre des familles』(2003年刊行,ditions de la Martinièr,ISBN:2732428256)も出ている(→ Amazon.fr 発注済).

◇夜,InterCommunication 原稿の文字校が届いた.図版の割付はまだとのこと.

◇本日の総歩数=10207歩[うち「しっかり歩数」=3574歩/32分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=未計測/未計測.


4 februari 2007(日) ※ 早朝の祇園花見小路を散策してみる

◇午前6時起床.夜中に雨が降ったらしく,地面が濡れている.午前7時頃,朝食前の散歩に出かける.

 道順は,茶屋〈一力〉の前から花見小路をひとまわりして,その後は八坂さんから大谷祖廟,そして高台寺へと続く石畳コース.京都にいた頃は,こういうコースをふらふら歩く機会はほとんどなかった.古銭集めに凝っていた中学生の頃の方が,むしろ頻繁に東山界隈の寺や骨董屋まわりをよくしていたと記憶している.昨日の日中から夜にかけては花見小路は観光客でごった返していたが,さすがに早朝散策する向きはほとんどいなかった.曇りから,しだいに晴れてきた.

◇午前8時に朝食.昨夜シズカに飲んだ面々は早くもチェックアウトしていった.午前9時過ぎにホテルを出発し,とりあえず JR 京都駅に行って,中央郵便局からウェディング関連の衣裳などをつくばに送り返してしまう.

◇タクシーにて北野天満宮へ.今年の「立春」は名目だけではなく実質を伴っていて,境内ではすでに梅が咲いていた.今日は冷え込みもなく行楽日和だ.その後,数カ所を経由した後,宇治の実家へ到着.2年ぶりか,それとももっとご無沙汰か? しばらくご無沙汰しているうちに,なんだか“部分的廃墟”と化しつつあるよーな(汗).※高齢者家庭ではありがちなことなのだろうが.

◇もらいもん(おおきに) —— 角田多佳子『大阪食堂:なにわっ子の★★★グルメ案内』(2006年6月20日刊行,平凡社,ISBN:4-582-83331-4).大阪を食べ歩いたことはぜんぜんないけど,食慾をそそるだけに罪な本やなあ…….〈釜たけ〉の「生醤油うどん」を根津で食べましょう.

◇今夜もまた爆睡.

◇本日の総歩数=12207歩[うち「しっかり歩数」=4159歩/39分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=未計測/未計測.


3 februari 2007(土) ※ The Sodoh Higashiyama での“立春公務”

◇午前4時40分起き.快晴.ほぼ満月が南の空高く.0.5度.研究所にていくつか荷物をまとめる.

◇午前9時10分の TX 快速にて東京へ.オアゾ丸善にてポケット仏和辞典を買う.10:50発の「のぞみ21号」に乗る.くっきり富士山は雪をかぶり,関ヶ原から滋賀にかけては雪が積もる.13:11に京都着.タクシーにて〈京都祇園ホテル〉に乗り付け,午後2時前にチェックイン.

◇礼服に着替えて,東山・高台寺向かいの〈The Sodoh Higashiyama〉に余裕をもって到着.今日は大東くんの結婚式と披露宴がここで開かれる.午後3時過ぎにチャペルで挙式.その後,披露宴に.乾杯の挨拶という“公務”を早々とすませてしまったので,気がラクになった.竹内栖鳳の旧宅(〈艸堂〉)を改築したという〈Sodoh〉は,京都ではとても人気のある結婚式場だそうだ.ここ数年,結婚式なるイベントから遠ざかっていたので,ひさしぶり感がある.おめでとうございます.>新郎新婦ならびにご親族のみなさん.

◇午後6時過ぎにお開きになり,ホテルにいったん戻る.同じ農環研から出席した小Nさん,T岡くん,楠Mさん(←隠す意味はほとんどない)の3人とともに,街中に出撃したのは午後7時過ぎのこと.先斗町をひとまわりしてから,木屋町の路地を入った〈夢庵〉へ.無濾過の濁り酒系をいくつか味わう(>ngtさん,ぜひお試しを).その後,時間つなぎに〈The Hill of Tara〉でギネスを0.5パイント.さらにその後,姉小路の奥まった〈柳野〉にて Bowmore 61.0度という必殺モルトであえなく撃沈される.けっして騒ぐことなく,ひたすら静かに液浸されていった.へろへろとホテルにたどり着いたのは午前1時過ぎのこと.そのまま静かに深夜安眠界へ.

◇車中読書 —— 四方田犬彦『月島物語ふたたび』(2007年1月20日刊行,工作舎,ISBN:978-4-87502-399-9→目次)を100ページほど.現在の月島のルーツとなった佃島と石川島の歴史と明治以降の干拓史.東京にいた頃は,この元祖ウォーターフロントに足を運んだことは一度もなかったので,なんだか新鮮.場所的には海辺だが,コミュニティー的には下町./ さらに,もう1冊.ほほー.

◇本日の総歩数=9449歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.前回比=未計測/未計測.


2 februari 2007(金) ※ 吹き晒される翻訳者,ここは本厚木

◇午前5時過ぎに起床.晴れ上がって冷え込む.今朝はきっと氷点下だろう.いくつかメールを送信した後,即,翻訳ゲラを広げて格闘開始.エンドレス作業はまだ続く.

◇午前9時18分の TX 区間快速に乗り込む.北千住で千代田線に乗り換える.車中はずっと翻訳作業(こればっかし).代々木上原でいったん下車する.吹きさらしのホームにてなおも翻訳を続ける.なんだか“懲役刑”の心地がしてきた.午前11時前に海游舎の本間さんがホームにやってきて,ここまで仕上がった7枚を手渡す.次回は2月8日(木)につくばにて手渡すことに.いまやりかけている第16章はぜひ終わらせよう.

◇小田急の快速急行に乗って,本厚木にたどりついたのは正午過ぎのこと.やっと一心地ついて,日録を送信する.

◇東京農大の修論発表会は午前から始まっているが,ぼくが出なければならないのは午後2時以降だ.タクシーにて厚木キャンパスへ直行.

昼食休憩後の午後2時からの発表会.講義棟の3回教室にて.ウツワはとても大きいが人口密度は低い.クズの繁茂を防ぐには腐ったカボチャが効くという“民間農法”があるそうだ(へぇ).トビケラの巣糸の接着力の微細研究とか.あ,南保くん,よく頑張りました.修士のみなさんはたいへんお疲れさま.終了後の夕方からは懇親会があるそうだ.

◇午後4時に発表会を抜けて,バスで本厚木に戻る.今日は一日中北風が強く寒かった.大山から丹沢にかけての山頂は雪で白くなっていた.逆コースでつくばにたどり着いたのは午後7時過ぎ.

 2月17日(土)には卒論発表会があるので,また厚木まで出向くことになるのでしょう.

◇車中読書 —— おお,これは実におもしろい!

◇帰宅後,旅支度.週末は“西”に向かいます.

◇本日の総歩数=6075歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.前回比=−0.2kg/−0.3%.


1 februari 2007(木) ※ 如月の始まりはあわただしく

◇午前4時40分起床.晴れ.1.8度.やや冷え込む.春めいた数日をすごしてしまうと,こういう寒の戻りは身に染みる.

◇午前のこまごま —— 昨年11月の東大ES講座集中講義のレポートが届いたので,成績評価をした上で,他の連携教員に連絡する.昼までに集計をしてもらって一件落着.気合い入ってへんぞ(>あとだしの受講生諸氏).こんなことではいけませんな./ メーリングリストの登録作業をすませた後,とても久しぶりに遅れず月例アナウンスを流した.〈EVOLVE〉は,きっと年度が変わる前に「2000名」の大台に乗るにちがいない./ 進化学会まわりの用事を少し.

◇新刊 —— 四方田犬彦『月島物語ふたたび』(2007年1月20日刊行,工作舎,ISBN:978-4-87502-399-9→目次).1990〜1991年に雑誌『すばる』に連載され,1992年に集英社から出た『月島物語』の復刻本.追補として,その後の月島をめぐるエッセイと対談が約100ページ付けられている.この縦長の判型はどこかで見たような記憶が……と思ったら,1990年以降10年にわたって数冊出た巖谷國士の『〜の不思議な町』シリーズ(筑摩書房)の判型と同じじゃないか.こういうジャンルのタテガキ本にはふさわしい判型なのかもしれない.

 『〜の不思議な〜』シリーズの最初は,巖谷國士『ヨーロッパの不思議な町』(1990年8月30日刊行,筑摩書房,ISBN:4-480-81287-3→目次)だった.

—— 月島物語は今週末の“西”への旅路の車中読書用にしよう.

◇ついでに,ざっとブラウズ —— Sigrid Weigel, Ohad Parnes, Ulrike Vedder, and Stefen Willer (Hrsg.)『Generation : Zur Genealogie des Konzepts — Konzepte von Genealogie』(2005年刊行,Wilhelm Fink Verlag[Trajekte : Eine Reihe des Zentrums für Literaturforschung Berlin],ISBN:3-7705-4082-4→目次).目次を入力しつつ,全体をざっとブラウズ.第1部「Zur Genealogie des Koncepts : Verhandlungen Über Zeugung, Gattung, Geschlecht」は,中世にさかのぼって「家系」と「系譜」が人間社会の中でどのように受けとめられてきたかを論じる.第2部「Koncepte von Genealogie : Bilder, Metapheren, Narrative」では,そのように社会的・文化的な受容を経験してきた Genealogie がどのように“描かれて”きたかを様々な視点から論じる.個人的には,第2部の方がおもしろそうではあるのだが.

◇正午の気温11.6度.春らしい青空 —— 歩き読み:澁澤龍彦『快楽図書館』(2006年12月20日刊行,学習研究社,ISBN:4-05-403233-8)をさらに200ページほど読み進む.ディテールにトラップされるワタシ:インドネシアの旧 Buitenzorg 植物園の園長だった中井猛之進の息子が中井英夫だったとは./ サド侯爵の研究者は「サディスト」と呼ばれるらしい.※そりゃそうだろうけど……./ 鶴見俊介がかつてヤマギシ会を擁護する論陣を張っていたとは知らなかった./ 1960〜70年代の書評ではさらにボルテージがあがって,やたら怒りまくるシブサワと化している気がするぞ.

◇午後のこまごま —— こまごまをこなす間もなく,午後3時から所内の研究評価WGの第4回ミーティングに駆り出される.午後4時半まで.うう,もう今日も終わってるぞ…….

◇夕方,気温が下がってきたので,そそくさと退散する.

◇夜は,翻訳原稿に齧りつく……ものの,こりゃまたタフですなあ.下訳のパラグラフ全体に「×」を付けて吹き出し差替え訳文を朱で書き込む.

◇明日は,東京農大で修論発表会がある.その前に,原稿渡しも(ふぅ……).

◇本日の総歩数=11677歩[うち「しっかり歩数」=7898歩/70分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.前回比=−0.2kg/+0.1%.


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