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日録2011年12月 


31 december 2011(土)※暮れゆく年は朝からエポワス

◆午前5時起床.最低気温が氷点下4.9度まで下がった大晦日.朝イチで取手ピストン往復.さすがに道路はどこもガラ空きでさえぎるものは何もなかった.すっきり快晴の青空が広がっている.さて,そろそろ牛スネ肉1kg塊のお世話を始めないと,圧力鍋を使わないので時間がかかる.大晦日に着弾した新たなる巨大┣┣" を追う夜明け前.半時間の追撃により撃ち果たし,330MBのzipファイルを Dropbox に転送するも,直リンクがめんどくさいので,急遽いつもの格納場所に移し変える.この件はこれにて一件落着かな.

◆[蒐書日誌]今年最後の二冊 —— David Sloan Wilson『The Neighborhood Project: Using Evolution to Improve My City, One Block at a Time』(2011年8月刊行,Little, Brown and Company, New York, viii+433 pp., ISBN: 978-0-316-03767-9 [hbk] → 版元ページ著者サイトThe Binghamton Neighborhood Project).前著:ディヴィッド・スローン・ウィルソン[中尾ゆかり訳]『みんなの進化論』(2009年4月25日刊行,日本放送出版協会,東京,411 + 26 pp., 本体価格2,300円, ISBN:978-4-14-081371-3 → 目次)の姉妹編にあたるのかな./John Kruschke『Doing Bayesian Data Analysis: A Tutorial Introduction with R and BUGS』(2011年刊行,Academic Press, Amsterdam, xviii+653 pp., ISBN:978-0-12-381485-2 [hbk] → 版元ページ著者サイト).おそろしく厚みのあるベイズ本.こういう教科書を一冊読めばお腹いっぱいになるにちがいない.

◆昨日の午後,クレオ西武のチーズ売り場で「Époisses de Bourgogne」が半額で叩き売られていたので即ゲット.マールでウォッシュしたエポワスの熟成度がいくら気になるからと言って,朝からフロマージュな朝食というのはやっぱり背徳だったかも.でも,ちょろっと味見したのが運の尽き.もともとウォッシュ系のチーズには目がないのだが,日本で買うととんでもなく高い.エポワスも賞味期限切れにでもならないとなかなか手が出ない.今回のエポワスは中心部が液状化していて食べごろかもしれない.正月三が日に Georges Vigouroux 2005 の「黒ワイン」とともにいただくことにしよう.背徳だなあ.

◆今日のお昼は,やや変則的ながら笹かまぼこの「笹の葉丼」をば.ふつうのかまぼこだったら「木の葉丼」になるのだが,笹かまぼこだからネーミングを変えるしかない.薄めのだしで笹かまぼこと長ネギを煮て卵でふわっととじる.やや甘めの味が合っているかもしれない.しかし,「笹の葉丼」では健康的過ぎて背徳にならないな.今年最後の陽光が降り注ぐ昼下がり,暖かな南向きの部屋にて背徳のひとときを過ごす.マリオ・バルガス=リョサの本はスペイン語の原書のカバージャケットはもっと味わいのある図柄だったのだが,訳本のこの絵柄じゃあほとんど「サロメ」みたいな la niña mala あるいは femme fatale じゃないか.

◆今夜の夕餉は年越しそばとともに牛スネ肉と大根のポトフ.調味は岩塩と黒胡椒のみ.スネ肉からじわりじわりと出てくるスープを時間をかけて丸大根に含ませる.薬味は柚子胡椒がベスト.朝イチで仕込み始めた時点の鍋のようす.牛スネ肉1kgを500gずつに切り分け,岩塩をすり込みながらタコ糸で縛って水一リットルで茹でる.アクは徹底的にすくいとり,澄んだスープになるように.丸大根は米のとぎ汁で半時間ほど茹でて,竹串がすっと通るようになれば大丈夫.スネ肉の鍋に移して鍋が微笑むような弱火で煮込み続ける.煮込み開始から6時間ほど経過した鍋のようす.牛スネ肉からじわじわとスープが出てきて,こんな色に変わる.調味はあくまでも岩塩のみ.好みで黒胡椒の粒を投入する.半日ほど煮こめばできあがり.今夜は〈蒼空〉の無濾過生原酒を開栓することに自分会議で即決〜.さくっと空っぽになった.

—— 喰うべきものを喰い,飲むべきものを飲んで,あと二時間ほどで今年も終わるのだが,さてどのように過ごすべきか.手元にあるエイトル・ヴィラ=ロボス〈ブラジル風バッハ(全曲)〉のCDでも聴いてみるか.

◆今年の前半は,いつものように国内外を駆けまわって,あちこち高座や巡業をこなしてきた.この調子だと後半も駆け抜けられるだろうと予想していたのが大間違い.8月末に京都から連絡があり,父親が末期癌との告知を受けて生活が一変した.一人息子であって,しかも頼るべき親戚もないとなればこれはもうしかたがない.9月からはほぼ毎週のように京都に通っては病院での付き添いや介助などをする遠距離介護生活が始まった.しかし病状の進行は予想以上に早く,10月以降は介護休暇を利用しつつ平日にも病院に詰める日が続いた.11月18日に逝去.その後の葬儀の手配や役所がらみの手続きなどで走りまわる.結局,師走のつい先日までたびかさなる“京都ミッション”をこなすことになった(まだ完了してはいない).父親の件は落ち着いたが,年が明ければ今度は母親の入院介護が始まるので気を抜くひまはまだない.研究者という人生を選択した時点で,親がすむ故郷を離れて暮らす確率は格段に高くなる.それとともに苦労の多い遠距離介護の可能性も高くなる.ワタクシの世代になれば誰もが経験する可能性があることではあるのだが,心の準備をする間もなく多忙な「日常」にいきなり「非日常」がなだれこむ事態に綱渡りの日々はなお続く.

◆本日の総歩数=2425歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=93.2kg(−0.8kg)/30.2%(−0.3%)


30 december 2011(金)※年の瀬にじたばた上野界隈へ

◆午前5時過ぎ起床.早朝の最低気温は氷点下4.4度まできりきり冷え込んだ.その後は冬晴れの青空が広がり,気温も徐々に上がってきた.年末年始の休みに入り,幹線道路は空き空き.取手までのピストン往復後,停電中の農環研に侵入して物品をかっさらってきた.真っ暗なのに出勤している車とても多し.停電の研究所でいったい何をしているのだろー?(他人のことは言えないが)

◆[蒐書日誌]歳末の着便本 —— Alex Mesoudi『Cultural Evolution: How Darwinian Theory Can Explain Human Culture and Synthesize the Social Sciences』(2011年9月刊行,The University of Chicago Press, Chicago, xvi+264 pp., ISBN:978-0-226-52043-8 [hbk] / 978-0-226-52044-5 [pbk] → 目次版元ページ | 著者サイト).文化進化学の新刊本.文化進化の因果プロセスとその結果としての文化系統のパターンとの橋渡しを試みている.前半の文化小進化(cultural microevolution)の章では文化進化のプロセスを考察し,後半の文化大進化(cultural macroevolution)では文化系統学のトピックスが取り上げられる.さらに,文化小進化の方法論としての「室内実験」と「野外実験」について論じられているのが目を惹く.

◆クレオは連日の買い出し混雑の真っ只中.和牛スネ肉のブロック1kgをゲットした.今夜あたりから大根とスネ肉の煮込みをつくってみようかと思案している.来年の┣┣" 撃ちカレンダーを用意し,日録フォーマットも新年に向けて更新完了.実際に記入するのは年が明けてからにしよう.

◆[蒐書日誌]さっき,ごみ収集所に年末最後のゴミ出しをしに行ったら,尾瀬あきら『夏子の酒』(全12冊セット)がこともなげにひもで縛られて捨てられていた.ありがたやありがたやと捨てたどなたかに何度も礼をしつつ即座に回収した.「拾書日誌」と書くべきかもしれない.ゴミ収集所や古書店の平台あるいは図書館の放出品の中から“珍品”をゲットするのはこの上もなく幸運でうれしいことだ.

◆[欹耳袋]MacBook Air で Perl を使うために(備忘メモ) —— 頼まれ仕事のついでに:

  1. 使用ファイルはパスが通っている「Macintosh HD」に置く.
  2. 「ターミナル.app」を起動し,キー入力「cd ..」を二回繰り返して,「Macintosh HD」フォルダーまで降りる.
  3. データファイルの改行コードが「UNIX(LF)」かつ文字コードが「UTF-8」であることを確認する.
  4. Perl のスクリプトを実行する.

◆年の瀬で賑わう上野の夕暮れ —— 晴れ上がった昼下がりにTXに乗る.時間帯のせいか年の瀬でも空きまくり.しかし,北千住で常磐線に乗り換えて上野に着いたら,帰省客らしき人波でごった返していた.そういえばJR上野駅で降りたのはずいぶん久しぶりのことだ.広小路口から出てアメ横方面へ.つくばに帰り着いたのは午後8時前だった.年の瀬の雑踏は流れがとても早かった.車中読書はマリオ・バルガス=リョサ『悪い娘の悪戯』の続き.舞台はパリからロンドンへ,そして東京のダークサイドへと移っていく.la niña mala の対語は el niño malo だったのかー._φ(..)

◆明日は大晦日だが,今年はおせち料理に追いまくられる心配がないので,ゆるりゆるりと厨房に籠もることにしよう.

◆本日の総歩数=6646歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=94.0kg(+1.1kg)/30.5%(+0.2%)


29 december 2011(木)※腑抜けのまま年末休暇が始動

◆午前5時過ぎに目覚めたものの当然の報いとして使い物にならない.乾いて冷え込む夜明け前.今朝の最低気温は氷点下4.5度まで下がった.うつらうつらしつつ時間が過ぎていく.午前9時半に歯医者にて定期メンテナンス.

◆[欹耳袋]〈Carl Nielsen Udgaven〉 —— デンマーク王立図書館から公開されている作曲家カール・ニールセンのサイト.彼の交響曲(全六曲)すべてを含む作品の総譜またはその一部が公開されている.カール・ニールセン協会〈Carl Nielsen Selskabet〉のサイトからもリンクが張られている → Download (dansk)|Download (engelsk).かつて,ヤマハやらアカデミアを駆けまわってスコアを探した時代とは隔世の感がある.

◆午後は怠惰きわまりないシエスタを決め込む.怠惰であることがまったく許されなかったこの三ヶ月間だったので,それだけよけいにこの背徳は蜜の味がする.背徳シエスタのお供は,もちろん届いたばかりのマリオ・バルガス=リョサ『悪い娘の悪戯』をば.物語は1950年のペルーの首都リマの夏から始まり,1960年代のキューバ革命の地鳴りが響くパリのカルチエ・ラタンへと続く.まだ,冒頭なのにすでに全力疾走している.la niña mala の正体はまだ見えてこない.

◆今日の日中は南風が吹いて最高気温が9.0度まで上がり,縮み上がるような寒さはなかった.背徳シエスタから目覚め,土浦学園線のかなたに夕日が落ちるころ,やっと復調の兆しが見えてきた.昨夜は背徳の「馬喰い」をしてしまったので,今宵の夕餉は「きつね丼」.関東で生活していると店で「きつね丼」を食べる機会はまったくないので自分でつくるしかない.肉厚の油揚げと九条ねぎをみりんと砂糖そして薄口醤油少しのやや甘めの汁で煮る.最初に刻み油揚げを煮てから火を止め,大量の刻みネギは予熱のみで煮上げるのがポイント(ネギの青みを残すため).風味付けにはできれば粒山椒を数個入れたい.

—— デパートの食料品売り場は一足早く「正月」の雰囲気が漂っていた.今年はおせち料理をつくる元気がないので,これから大晦日にかけてはいつもの年に比べてヒマになるのかな.

◆本日の総歩数=2130歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜○.計測値(前回比)=未計測/未計測


28 december 2011(水)※仕事がぜんぜん納まらない日

◆午前4時半起床.今朝は厳しく冷え込むことなく,最低気温は丑三つ時の氷点下2.4度どまり.早朝は氷点下を少し下回る程度だった.仕事がぜんぜん納まらないけど,むりやり納めてしまう日がやってきた.午前10時すぎ,研究室にて激しく歳末┣┣" 撃ちに励んでいる.受信箱の未処理┣┣" どもをなぎ払い,残るは一頭のみ.しかし,真の意味での大物┣┣" どもは受信箱なんぞでうろうろしてはいない.

◆[欹耳袋]R の〈ReadImages〉パッケージの使い方:Data visualization (in R)「Getting data from an image」(2010年3月5日).グラフ画像から数値データを読み取れるとのこと./カレントアウェアネス・ポータル「Microsoft Academic Search、研究者の師弟関係や論文の引用関係を可視化するツールを公開」.家系図探索みたいな感じ.

◆仕事が納まらなくても日は暮れる —— 午後4時過ぎ,さて,そろそろ撤収しようかな.結局,居室の大掃除など何ひとつしないまま新年を迎えることになる.完全放置の┣┣" 放牧場がどうなっているのか気にならないでもないが,静かに静かに冬眠してもらいたい.仕事納めである今日の午後7時から来年1月3日までは農環研本館は停電なので,向こう一週間ほど居室には寄りつかない.

◆[蒐書日誌]ローゼンバーク科学哲学本(最新版) —— Alex Rosenberg『Philosophy of Science: A Contemporary Introduction, Third Edition』(2012年刊行,Routledge [Series: Routledge Contemporary Introductions to Philosophy], New York and London, xii+308 pp., ISBN:978-0-415-89176-9 [hbk] / ISBN: 978-0-415-89177-6 [pbk] → 目次版元ページ).つい先月,第二版の日本語訳:アレックス・ローゼンバーグ著[東克明・森元良太・渡部鉄兵訳]『科学哲学:なぜ科学が哲学の問題になるのか』(2011年11月25日刊行,春秋社[シリーズ〈現代哲学への招待〉],東京,vi + 404 + 26 pp., 本体価格3,800円,ISBN:978-4-393-32322-9 → 目次版元ページ)が出たと思ったら,早くも原書の第三版が届いてしまった.第二版と比較して章構成が大きく変わり,内容的にも増補改訂がされているという.

◆背徳な夜の宴 —— 鮮やかな朱に染まった夕焼けの西空.糸のように細い三日月から放たれた宵の明星がひときわ明るく輝く.今日の日中は風が弱く,最高気温は8.0度まで上がったが,日没とともに急に寒くなってきた.暗く寒い夜は背徳な忘年会にふさわしい舞台設定だ.午後7時から〈笠真〉にて“日本背徳協会”の背徳な忘年会でへろへろ.夜陰に乗じて跳梁跋扈.午前様とあいなった.

◆本日の総歩数=4318歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=92.9kg(+0.6kg)/30.3%(−0.2%)


27 december 2011(火)※農環研にて年の瀬┣┣" 撃ちを

◆午前5時起床.きりきり冷えて今朝の最低気温はマイナス4.7度.静電気がびしびし飛ぶ夜明け前は朝焼けが鮮やかだった.年内は出勤簿にハンコを押す必要はもうないのでゆるゆるしている.昨日,北白川でゲットした〈風の森〉と〈蒼空〉「純米無濾過生原酒・美山錦」を冷蔵庫へ.冷蔵庫に日本酒の四合瓶やらワインボトルがたくさん詰まっていて,心豊かにして背徳な朝のひととき.農環研が年末年始は停電になるらしいので,居室冷蔵庫に安置してある南部酒造〈花垣〉の「鑑評会出品酒」を引き上げてこないといけないな.

◆年末年始のお酒たち(壱) —— 1) 京都・伏見の藤岡酒造:〈蒼空〉「純米無濾過生原酒・美山錦」; 2) 奈良・御所市の油長酒造:〈風の森〉「山田錦・純米吟醸・しぼり華」; 3) 福島・会津若松の曙酒造:〈天明〉「中取り壱号・特別純米生酒(五百万石)うすにごり」.いずれも四合瓶だけど,とりあえず年末までもつかな.

◆[蒐書日誌]マリオ・バルガス=リョサ[八重樫克彦・八重樫由貴子訳]『悪い娘の悪戯』(2012年1月5日刊行,作品社,東京,426 pp., 本体価格2,800円,ISBN:978-4-86182-361-9 → 版元ページ).翻訳が年の瀬に出版されていたことを知った.原書は:Mario Vargas Llosa『Travesuras de la niña mala』(2006年刊行,Santillana Ediciones Generalis, Madrid, ISBN:970-770-466-7 [pbk]).とある会議でメキシコを訪れた際,ベニート・フアレス国際空港の本屋の新刊棚にたまたま並んでいたのをゲットした.カバージャケットと「la niña mala」というタイトルに惹かれて.

◆東新井の〈トライブ〉にて年末年始用のコーヒー豆「福袋」をゲットしたのち,農環研へ.よく晴れて気温は7度台だが,冷たく乾いた北西風が吹きつけて体感気温は低い.しばし居室に実在して,カオス状態の┣┣" 放牧場の現状視察ちう.注文していたレーザーポインター三色セット(赤・緑・青)が届いた.来年からは光の三原色が飛び交う高座となるだろう.片手で三本のポインターを操作するワザを独習ちう.二本までだったら慣れているけど三本になるとなかなかたいへん.ポインターの見やすさからいえば「緑」がベスト.赤が次点,青はイマイチかな.でも三色あるから全部使いたい.

◆昼下がりの居室で┣┣" のめんどうを見ているとなんだか疲労感が蓄積してくる.夕焼けがきれいだったので早々に撤収.明日の仕事納めもいちおう出勤してみようか.

◆本日の総歩数=2381歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=92.3kg(−1.5kg)/30.5%(+0.2%)


26 december 2011(月)※小雪の舞う京都を駆けまわる

◆午前4時半起床.しんしんと冷え込む.気温こそプラス0.1度とたいしたことはないが,関東とは異なるタイプの寒さ.今日は短期決戦的にミッションを遂行しないといけない.午前6時,外はまだ真っ暗.すぐ近くのカルメル教会修道院が時を告げるカリヨンを叩いている.さて,早朝ミッション始動なう.外がやっと明るくなってきた.よく晴れた青空からときおり風花が舞い落ちる洛南.こりゃあ寒そうだねぇと出撃意欲がみるみるうちに損なわれていく.洛北ではすでに雪が降っているらしいのでその影響かも.午前8時の気温は+0.4度と,今朝の最低気温からほとんど上がっていない.

◆朝からずーっと歳末ミッション —— JR奈良線を行ったり来たりする.中学から高校にかけては通学の「足」だったのだがローカル線だなあ.1┣┣" 撃って2┣┣" 増えるのなら,まあ仕方がないのだが,一頭も仕留めていないのに窓口でぞろぞろと┣┣" 軍団がおぶさってくるのはかんべんしてほしい…….今日の洛南は青空の雲間からときおり風花が飛んでくる冬らしい空模様.午後3時の気温は4.0度と寒気のまっただ中.午後4時前,ほぼ燃え尽きたので,今年最後の遠征┣┣" 撃ちはこれにて終了とする.さて,撤収する前に北白川で年越しの燃料補給をしてくるか.

◆[欹耳袋]Togetter - 「邦訳の重要性と「直接性の原理」」 —— ワタクシは,これまで何冊か英語からの翻訳書を出版したことがあるが,あくまでもパーソナルな「読書」の延長線上に「翻訳」という作業があった.幸いなことに出版元から書籍流通に乗ったのでパブリックな性格をもった本となったが,基本的にはパーソナルな読書のひとつのアウトプットにすぎない.だから,自分が訳した本がほかの読者にとって何かの役に立ったとしたら,それは望外の喜びと言うべきだろう(この点については著書も訳書もちがいはない).もちろん出版社的にはたくさん売れた方がいいに決まっているし,訳者としてはそのための販促に務めることにけっしてやぶさかではない.翻訳者的には「私的読書の延長」,読者的には「売っててよかった」,批判者的には「もうやめろよ」 - ということで,これからも翻訳書は売られ続けるにちがいない.

たとえば進化生物学の著名な教科書はいろいろな言語に翻訳されている.翻訳書を求める読者はどこの国にも必ず存在するので,それが役立っていることは誰にも否定できない.自然科学系にかぎって言えば,翻訳書「を」学び,翻訳書「で」学ぶというのが大多数の日本の学生がたどるコースだろう.先ごろ重版が決定した:「科学」編集部(編)『科学者の本棚:『鉄腕アトム』から『ユークリッド原論』まで』(2011年9月27日刊行,岩波書店,東京, x+264 pp., 本体価格2,600円, ISBN:978-4-00-005212-2 → 版元ページ目次など追加情報)を見ても,多くの研究者は学生の頃に感銘を受けた翻訳書があると語っている.このように,翻訳を通して科学理論や科学的主張が広まっていくことはまぎれもない事実なのだから,それはそれでちゃんと正当に評価するべきである.

さらに言えば,翻訳書が「科学」にとって意義がないという主張は,たとえば Willi Hennig の英訳本『系統体系学』(1966)が出版されたからこそ「分岐学派(cladistics)」が成立し得たという一例を挙げるだけであっさり反証される.別の例を挙げると,Charles Darwin の『種の起源』(1859)の独訳版が翌年(1860)に早々と出版されなかったとしたら,若き Ernst Haeckel がダーウィニストに転向したかどうかわからない.そのような科学史的事例は枚挙にいとまがないだろう.

もちろん,研究上の引用をする場合には原書がないと話にならないので,科学者業界にいる人々はたとえ何語であろうとも原書を手元に置く必要はあるだろう.この点に関して言えば,昨今の「英語オンリー」で突き進む風潮のしっぺ返しの方がよほどコワいと思う.実際,第二外国語や第三外国語のリテラシーのない“理系研究者”がまわりでどんどん増えている実感がある.科学における lingua franca としての英語は言語ではなくむしろ表現ツールとみなせばいい.それが英語の宿命だろう.しかし,日本語も含めて英語以外の言語にぜんぜん目が向かないというのはどういう“群集心理”なのだろうか.

日本語ですら“英語以外”ということで業績評価的に軽視されるようなインセンティヴの低さでは,科学者による科学コミュニケーションとかアウトリーチと言ったって単なるポーズあるいはリップサービスに終わってしまうだろう.少なくとも原著論文を英語でどんどん出していくという研究者ライフスタイルは,世代とともに徐々に変わっていくのが自然なのではないだろうか.いくつになってもプロ野球の現役選手であり続けた“アブさん”のようなスーパーマンは研究者の“モデル”ではありえない.

—— ただし,翻訳という作業は日本語と外国語の間で格闘する“気迫(覚悟)”が必要なので,誰も彼もがこの世界に入る必要はないだろうと思う.一冊翻訳するとしばらくの間は使い物にならなくなっているワタクシがいる.うちわのためだけの「翻訳」と読者に金銭的代価を求める「翻訳」とはそもそも異なっているから.

◆歳末ミッション完了 —— 年の瀬の燃料補給のため北白川あたりを徘徊していて洛北の方角をながめたら,すっぽり雪雲に覆われて山稜がぜんぜん見えなかった.午後6時過ぎ,京都での歳末ミッションを終えて,新幹線に乗り込む.米原から名古屋あたりの積雪の影響で徐行運転をしていて,十分程度の遅延が生じているとの車内放送あり.確かに,外はもう真っ暗だけど,車窓から見渡すかぎり,岐阜羽島あたりは積雪がすごい.徐行運転.東京駅には定刻よりも十分あまり遅れて到着.つくばに帰り着いたのは午後10時前だった.明日から仕事納めまでの二日間は特別休暇を取っているが,たまには農環研に顔を出すしかないな.

◆本日の総歩数=8785歩[うち「しっかり歩数」802歩/10分].全コース×|×.朝○|昼△|夜○.計測値(前回比)=未計測/未計測


25 december 2011(日)※クリスマスは京都ミッション

◆午前5時起床.気温は氷点下4.1度と冷え込んでいる.厳冬期が近づくにつれて朝の起床が日ごとにのろくなるのはしかたないな.快晴モーニング.最低気温は氷点下5.2度まで下がった.寒い寒い.今日は今年最後の京都ミッション遂行のため,朝から西に向かう.

◆歳末の京都ミッションへ向かう —— 9:56発のTX快速にて出発.静岡県内までは快晴の冬晴れだったが,新幹線が名古屋を通過するあたりから曇りがち.関ヶ原から米原にかけては積雪で一面の雪景色.しかし,昼下がりの京都は雲がやや多かったものの雪ではなく,ふつうの冬だった.洛南の地をあちこち移動して,夕方,やっと本日のミッション完了.

◆[蒐書日誌]“主義者”と“出版人”のはざまで —— 黒岩比佐子『パンとペン:社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』(2010年10月7日刊行,講談社,東京,446 pp., ISBN:978-4-06-216447-4 → 目次版元ページ).出張巡業中の車中読書本として読了.序章「一九一〇年,絶望のなかに活路を求めて」と第一章「文士・堺枯川」は,主人公・堺利彦のやや屈折した前半生の記録から始まる.豊前から東京に出て遊興の日々を送った青年期を経て物書きとして自立するまでの紆余曲折.後年の“社会主義者”としての顔はまだまったく現れない十九世紀末の明治日本の話が続く.堺利彦も含めて周囲にいた知人たちはそろって外国語スキルに長けていた.同志の大杉栄にいたっては一回投獄されるたびに一言語を習得したという(「一犯一語」p. 20).「大逆事件」後の1910年代,本書の言う「冬の時代」に,堺が起こした「売文社」が翻訳まで含めた総合出版エージェンシーの運営を可能にしたのは,そういう人脈があればこそだったらしい.

続く第二章「日露戦争と非戦論」では,世紀の変わり目を背景にして,「冬の時代」が到来する前の不安定にして平穏な日々が描かれている.「売文」に対応する英語が「book making」であることを知った(p. 86).第三章「“理想郷”としての平民社」は平民社と平民新聞の顛末.社会主義の“同志たち”の内輪もめが最終的な解散にいたるまで.第四章「「冬の時代」前夜」は,“主義者”たちの投獄が日常となる「冬の時代」前夜の社会状況.社会主義者と無政府主義者との乖離はもう無視できなくなった.続く第五章「大逆事件」は力のこもった章.国家権力による冤罪事件として有名な大逆事件の遺族を堺利彦はひとつひとつ訪ね歩いたという.第六章「売文社創業」と第七章「『へちまの花』」ならびに第八章「多彩な出版活動」では,本書の中心である売文社について.出版エージェンシーとして力量を発揮した堺は,翻訳・代筆・編集のあらゆる面で活躍し続けた.

このように社会的に脚光を浴びる一方で官憲からは付け狙われた売文社ではあったが,第九章「高畠素之との対立から解散へ」で述べられているように,やがて社内派閥抗争が勃発し,最終的には消滅することになる.終章「一九二三年,そして一九三三年の死」のほろ苦いエンディングは,やがて到来する第二次世界大戦に切れ目なく続いていく.

—— 膨大な資料と複雑な人間模様を解きほぐして叙述した本書は,“主義者”ではなく“出版人”としての堺利彦に新たな光を当てている.

◆[蒐書日誌]佐藤郁哉・芳賀学・山田真茂留『本を生みだす力:学術出版の組織アイデンティティ』(2011年2月15日刊行,新曜社,東京,x+568 pp., 本体価格4,800円, ISBN:978-4-7885-1221-4 → 版元ページ).今年はじめに出版されて以来,ずっと逡巡していたのだが,やっぱり買うしかないかと観念した.海外の専門書には査読付き論文並みの“レフリー”がつくことは知っていたが,本書にはそのような制度について比較検討されている.日本の専門書出版とのちがいが気になるところ.理系の専門書でも同様の“レフリー”が日常的になれば,研究者が「本を執筆する」インセンティヴが格段に上がるにちがいないと思う.個人的には名古屋大学出版会のケーススタディーを入れてほしかったな.

◆今夜は宇治に潜伏する.今年最後のお勤めになるが,夜から朝にかけて冷え込みそうなので完全防備をして寝ないと.明日26日から仕事納めの28日まではあまり自由にならない.いずれにしても農環研には年明けまで顔は出さない予定(夜明け前とか休日に侵入する可能性は高いが).

◆本日の総歩数=5255歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=93.8kg(+0.6kg)/30.3%(+0.4%)


24 december 2011(土)※クリスマス・イヴは美食休息

◆いつも通り午前4時半に起床する.放射冷却できりきりと冷え込んで,今朝の最低気温は氷点下4.6度まで下がった.クリスマス寒波がやってきているとの天気予報.午前7時前には鮮やかな朝焼けとともに日の出.乾燥した快晴の冬空が広がる.今年のクリスマスは,神戸〈ダニエル〉の真っ白いシュトーレン.

◆[欹耳袋]最新版〈R-2.14.1〉がリリースされた.まずは Windows版の実行ファイルをダウンロードする.Mac版も近日中にリリースされるだろう.とりあえず,実習用 Win PC にインストールした.一ヶ月ぶりに起動したら,いろいろな更新作業が延々と続いて待ちぼうけを喰わされた.前バージョンの R-2.14.0 for Mac では mgcv パッケージが名前空間苦界の中でまだあえいでいる(三次元グラフィクスが不具合のまま).R-2.14.1 ではそこから脱出できるかな.

◆[蒐書日誌]寄贈本感謝 —— オーレン・ハーマン[垂水雄二訳]『親切な進化生物学者:ジョージ・プライスと利他行動の対価』(2011年12月20日刊行,みすず書房,東京,viii + 514 + lxxxi pp., 本体価格4,200円,ISBN:978-4-622-07666-7 → 目次版元ページ).利他行動の進化研究の礎となったジョージ・プライスの伝記.ドラマチックにして悲劇的な人生.原書:Oren Harman『The Price of Altruism: George Price and the Search for the Origins of Kindness』(2010年6月刊行, W. W. Norton, New York, x+451 pp., ISBN:978-0-393-06778-1 [hbk] → 版元ページ|宣伝YouTube「Oren Harman and The Price of Altruism 」).

いつものことだが,原書を読む前に翻訳が出てしまうと,なんとなくフクザツな心持ちになる.それにしても,こんなに早く本書の翻訳が出るとは予期していなかった.原書も十分に厚いが,みすず書房の判型だと600ページ超の厚さになるのかあ.

◆[欹耳袋]信州大学の「自然科学史」集中講義では,生物科学・地球科学での「科学の現場」に焦点を当てて,科学・科学史・科学哲学の相互関係について話をした.四日間もあればネタは尽きるのではないかと思ったのだが,振り返って反省するとまだ話し足りなかったトピックスがいくつも残されていた:

  • 1930〜40年代の「進化的総合」の諸科学への浸透差の原因
  • 1970年代以降の「中立進化論争」の展開とその受容の過程
  • 1975年以降の「社会生物学論争」における科学モデルの対立
  • 1980年代以降の「形態測定学革命」の科学者コミュニティの動態と戦略
  • 1990年代以降の「生物多様性科学」が“サイバー分類学”に変貌した背景

科学者ならびに科学者コミュニティが生き続ける「すべ」として,科学史や科学哲学を知ることはきっと意義があると考える.上に列挙した話題については,いずれまた機会があるときのために準備しておこう.

◆クリスマス・イヴのランチは吉瀬のフレンチ・レストラン〈Sucre-en-Rose〉にて.アミューズは,フェンネル・ムースにウニと柚子のクリームジュレ,イクラがトッピング.クリーミーでウニがとても濃厚な味わい.前菜は,烏骨鶏のポーチドエッグのまわりにチョリソー,菊芋.豆乳&トリュフのソース.暖かい前菜で気分がほぐれるなあ.魚料理は鯛のソテー.付け合せはアワビと温野菜.白ワインと柚子のソース.金柑のソテーがとてもいい味わいのアクセントになっている.肉料理は,鴨のロースト.周囲にいろいろな茸があしらわれている.ソースはブラック・カラント.やっぱり肉にはベリー系のソースが合う.最後のデザートはクリスマスらしいプレート.シュークリームの雪だるまが愛らしい.

◆市中の賑わい —— *警報* 竹園〈コート・ダ・ジュール〉周辺の「クリスマスケーキ渋滞」が昼過ぎから激しくなっているので,つくばセンターに接近予定のみなさんは通行コースをよく検討しましょう./*注意報* 土浦学園線のKFCあたり,そろそろ夕方からの「フライドチキン渋滞」を予期させる雰囲気が漂っています.毎年,クリスマスになると,「ケーキ」や「鶏」で局所的交通渋滞が生じるのはつくばならではかも.

◆今日の午後は久しぶりに髪の毛を切ったので,首筋がすーすーして寒いぞ.クリスマスの夕暮れタイムは渋滞タイム.最高気温は7度台で,昨日とあまり違わなかったが,身を切るような北風が吹かなかっただけ,体感的にはすごしやすかった.日だまりはほどよく暖かかったし.さて,今年のクリスマス・イヴは激動の三ヶ月を乗り越えてゆっくりさせていただきます.

◆本日の総歩数=4502歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.計測値(前回比)=93.2kg(−0.5kg)/29.9%(+0.1%)


23 december 2011(金)※北西風が吹いて寒すぎる休日

◆午前3時過ぎ起床.気温プラス2.1度.昨夜は深くにも寝落ちしてしまった〜.今日の予定は何もないなあとぬくぬくしているうちに二度寝してしまい,気がついたら午前7時半.外は快晴で,しかも冷たい北西風が風速6メートルで吹きつけて,体感気温の低さは信州を上回る.とりあえず一週間ぶりに農環研に休日侵入を決行する予定.放置し続けている┣┣" 放牧場はいったいどうなっていることやら…….

◆[欹耳袋]「型式学的研究法」(Wikipedia).情報量多し.もう少し勉強してみよう.

◆[蒐書日誌]粕谷俊雄『イルカ:小型鯨類の保全生物学』(2011年11月刊行,東京大学出版会,東京,656 pp., 本体価格18,000円,ISBN:978-4-13-066160-7 → 版元ページ).版元から新刊案内が送られてきた.畢生の大著か.

◆今日は身を切るような北風という表現がぴったり.午前中は快晴の青空だったが,そのうち雲がかかってきた.日射しがあると暖かいが,日が陰るととたんに寒々とした冬になる.関東地方はこの季節風がくせもの.強い風で空気中の塵芥がことごとく吹き払われて,今日の筑波山は山稜の輪郭がことのほかくっきりと乾いた冬空に浮かび上がっていた.

◆外があまりに寒いので,今日のランチは竹園の〈ベンベラ〉にて,この時期限定メニューの「スパーク旨辛トマトラーメン」をば.定番のトマトラーメンをベースにして,ピリピリと辛いトッピングが味を引き締める細麺のラーメン.からだの芯から温まる心地がする.こういうお店が近くにあるのはうれしいな.ついでに,サイドメニューとして「つるんこ餃子」も.なお,先月から〈ベンベラ〉の営業時間は昼間だけになったと掲示されていた.

◆冷たい北西風が吹く昼下がり,ほぼ一週間ぶりに農環研に潜入.居室の┣┣" 放牧場をそっと覗き見したら,“大物”はまだ寝ているようだったので,“小物”数頭を一網打尽にしたところ.進化学会の副会長選挙の投票とか,ネットワーク・セキュリティーのアンケート回答とか.献本とか購入本とかがうずたかく積み上がっていた.この分なら年の瀬に活字欠乏で死むことはないだろう.マーラーの三番と五番をBGMとして,夕闇が迫るまで居室に籠る.他の職員とはいっさい遭遇することなし.もう何年も前から,要するにワタクシは他の研究員とは時間的・空間的な生息ニッチが異なっているのだと自覚するようになった.この分だと誰にも会わないまま年越しするかもしれない.

◆[蒐書日誌]モデル選択論本の価格設定はベストチョイスか? —— Kenneth P. Burnham and David R. Anderson『Model Selection and Multi-Model Inference: A Practical Information-Theoretic Approach, Second Edition』(2002年刊行,Springer-Verlag, new York, xxvi + 488 pp., ISBN:978-0-387-95364-9 [hbk] → 版元ページ).遅れ馳せながらモデル選択論についての定番本が届いた.ハードカバー版(hbk)とソフトカバー版(pbk)の値段がまったく「同一」というフシギな価格設定の本でもある.同一価格だったらふつうハードカバー版を買うよねぇ…….個人的には電子本はアウトオブ眼中なので,hbk / pbk の価格比はときに悩ましい問題を提起する.基本方針は耐久性を考えれば「多少高くても」ハードカバー版を買うようにしている.しかし,出版社によっては hbk / pbk 比が数倍になることがあり,明らかに高価なハードカバー版は図書館向けに売っていることが見え見え.一般大衆はペーパーバックを買えということか.そういう価格設定の事例を考えると,価格比「hbk / pbk =1」というのは逆に「どーして?」と深読みしてしまう.ほんとうにどーしてだろう?(AICはいくら?)

◆午後6時過ぎに帰宅.風はおさまったが,今度は気温がぐんぐん下がってきた.新たな寒波の到来か?

◆本日の総歩数=393歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前回比)=93.7kg(+0.4kg)/29.7%(0.0%)


22 december 2011(木)※信州から瞬速移動する冬至日

◆冬至を温泉場で迎える.午前4時半起床.気温はプラス4.1度と冷え込みなし.夜明け前に内湯に行ったら湯舟に柚子がいくつも浮かんでいた.この気遣いがうれしい.そして,朝食の膳には「冬至かぼちゃ」が並んだ.かぼちゃと小麦粉だんごをほのかに甘く煮込んだ料理.初めて味わうが,冬至らしい一品ですなあ.素朴ながらとてもうまかった.小豆をいっしょに煮こむこともあるらしい.今日は午前中は信州大学「自然科学史」の最後の講義.昼過ぎにスーパーあずさで松本を出発し,夕方は本郷にて今年最後の生物統計学の高座がある.切れ目なくお座敷をはしごしてまわるあわただしい年末.今年も残すところあと十日もない.

ここ〈飯田屋別館〉には日曜からまる四日間滞在した.冬休み前のシーズンオフで,客がワタクシひとりだったこともあり,たいへんよくしてもらった.チェックアウトの前に三階建ての建物の上の階を探検してきた.最上階の三階に通じる急な階段をのぼるといくつもの和室や広間が狭い廊下をはさんで続いている.どうやら三階建ての旧館の向こう側に,巨大な新館を増築した構造になっていて,新旧で階の高さにズレがある.旧館は客室のみだが,新館は宴会用の大広間がある.ワタクシが泊まった和室は畳の間が八畳で,板の間が四畳で,ひとりではもったいないくらいの広さでした.泊まり込みの勉強会とか研修会合宿に使うといいかもしれません.かなりの多人数まで対応できそう.いずれにしてもこの上もなくレトロな建物.よく磨きぬかれた廊下の黒ずみ方,階段の手すりのギマール的曲線美がいいなあ.かつてはさぞや賑わっていたのだろうと想像した.浅間温泉旅館の原風景を見たような気がする.24時間入湯可能の源泉かけ流し温泉は浅間温泉でもっとも古い源泉を引いているとのこと.また機会があればぜひ泊まりたい旅館.

◆集中講義四日目(最終日) —— 午前9時前に旅館をチェックアウトして,タクシーで大学に乗り付ける.今日が「自然科学史」の最終日.空は曇って風がやや強い.最終日の講義ではこんな話をした:


「科学」のさまざまなタイプ

 「一般化科学」vs.「歴史科学」(カール・ポパー)

 ポパーの定義によれば,一般化科学とは「普遍法則に関する研究」であり, 
歴史科学とは「個別事象に関する研究」と対置される.要するに,物理学や
化学のような一般化科学の対象は「クラス(類)」であるのに対し,歴史科
学の対象は「個物」であるというちがいがある.

 具体的には,「クラス」とは「ある必要十分条件を満たす個物の集合」で
ある.たとえば「酸素原子」とは「元素番号16を与えられた元素」という条
件を満たす原始の集合(クラス)である.「酸素と水素を反応させると水が
できる」という言明は,時空的に限定されない「普遍言明」である.一般化
科学は観察や実験を通してクラスに関する普遍言明をテストすることができ
る.

 対極的に,歴史科学ではクラスではなく個々の個物(トークン)に関する
特殊言明(時空的に限定された事象に関する言明)のテストを考える必要が
ある.「ある酸素原子iとある2つの水素原子j,kを反応させるとある水分子が
できる」という特殊言明を扱わねばならないということ.この場合,ダイレ
クトな観察や実験が不可能になる.

 対象に関するこのちがいがテストのあり方に差異をもたらす.アブダクシ
ョンがダイレクトな実験・観察に変わる推論方法として浮上してくる.

 しかし,科学哲学の歴史はこれまで一般化科学を“典型科学”とみなして,
科学のモデルや規範はどうあるべきかについての論議を展開してきた.グロ
ーバルな科学哲学では不十分であるという認識は,要するに考察対象である
科学のサンプリング・バイアスがあったということ.それを補正するために
はさまざまなタイプの科学に対応できるように特化したローカルな科学哲学
が求められるようになってきた.

 ただし,歴史科学がいつも時空的に限定された「特殊言明」だけを論じて
いるかといえば必ずしもそうではない.生物進化学に目を向けると,進化の
因果プロセス理論のひとつに「自然淘汰(natural selection)」がある.こ
れは以下のようなプロセスである:

1) 集団内に遺伝的変異がある.
2) 変異によって繁殖成功度(子孫を残す率)にちがいがある.
3) 次世代では繁殖成功率の高い遺伝子が広まる.

この自然淘汰の仮説は時空的に限定されない「普遍言明」の
ような性格を帯びている.このような場合は実験的に淘汰があるかどうかを
検証することが可能になる.

他方,一般化科学であっても,つねに普遍言明だけを相手にしているわけで
はない.たとえば天体物理学の事例をあげると,あるひとつの彗星がどのよ
うな挙動を示すかという研究は,「個別命題」に関する論議をすることにな
る.

以上のことを考えるならば,科学の側が「武器」として利用できる科学哲学
というツールは,一般化科学的な普遍命題であるのかそれとも歴史科学的な
個別命題かによって戦略が変わってくことになる.

◆講義に先立って,課題レポートを出題した.年明けの締め切り日なので,ゆめゆめお忘れないように.休憩後,全体の総括として次のような話題で締めくくった.


科学・科学史・科学哲学の相互関係

 科学哲学には「規範的」な側面がある.グローバルな科学哲学が流行
した時代にはそのような役割が科学哲学に求められてきた(反証可能性
の理論のように).ところが,ローカルな科学哲学(生物学の哲学のよ
うに)が登場すると,むしろ「記載的」な側面が強まってくる.規範的
な科学哲学は科学史のデータによって再考を迫られることはないが,記
載的な科学哲学は科学史のデータによって検証可能である.

 記載的な科学哲学は科学史データによって経験的に検証できるという
ことは,通常の科学研究が観察や実験データによって検証されることと
同じである.

 科学実験はデータを得る重要な場である.科学哲学や科学論もまたそ
のような「実験」ができないだろうか? 生物体系学がらみで実例がひ
とつある.科学哲学者 David Hull は生物体系学コミュニティーに深く関
わっていたが,1980年代はじめにある“実験”を行なった.それは「非
平衡熱力学にもとづく生物進化理論」を提唱させ,その後の学説の動向
を“観察”した.

 生物学哲学が形成された経緯を考えると,次の三時期に区分できる:
○第一期(1970年代~)
 生物学哲学と銘打った論文や著作が登場し始めた時期.この時期はそれ
 までの科学哲学の延長線上で「生物学の哲学」を進めようとした.
○第二期(1980年代~)
 生物学固有の問題.歴史性の問題・体系学論争・種の問題・自然淘汰単
 位の問題など.現場の科学者との相互作用が高まった.1985年に
 『Biology and Phiosophy』が創刊された.
○第三期(1990年代~)
 生物学哲学としての独立独歩の道を歩み始める.それとともに,科学の
 現場からの乖離が目立つようになる.

個別科学に寄り添う科学哲学は今後ほかにも出てくるかもしれない.
「臨床哲学」(医学がらみの科学哲学),「古生物学哲学」,etc....

いったんローカライズされた科学哲学(「記載的」であることを目指す)
が,「規範的」であることを目指すかもしれない.ローカルな個別科学に
とって新しい“武器”ができる前触れかもしれない.

◆信州湯けむり巡業に続いて本郷での高座を一席 —— 正午前に集中講義が終わった.初めての科目なのでいささか不安とともに松本に入ったのだが,全日程を終えてみれば,しゃべるべきことを話した感がある.浅見さんに車でJR松本駅まで送ってもらう.13:02松本始発の特急スーパーあずさ18号はがらがらだ.平日のこんな時間帯に新宿に向かう客はいないのかもしれない.極私的お疲れさんセレモニーとして,白昼のワイン飲みなう.背徳度高し.新宿までは2時間あまりの旅だ.本郷三丁目にたどりついたのは午後4時前.午後4時半から本郷キャンパスにて生物統計学の講義.今年はこれにておしまい.

◆来年の┣┣" 撃ち予定 —— 東京大学理学部「生物統計学講義」の補講日程は「2012年1月31日(火)4〜5限」で確定した.@本郷キャンパス・理学部旧1号館350教室.

◆本郷での講義後,夕闇の根津から乗る.スーツケースがことのほか重く感じられる.つくばに帰り着いたのは午後7時半.日曜日以来まる四日ぶりにつくばに帰ってきた.ひさしぶりだのぉ.夕食後,前後不覚で寝落ちしてしまった.

◆本日の総歩数=4506歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜○.計測値(前回比)=未計測/未計測


21 december 2011(水)※朝から夜までトライアスロン!

◆午前4時半起床.夜明け前の闇に沈む温泉街.今朝はことのほか冷え込みが厳しくて,松本の今の気温が氷点下4.6度まで下がっているから,浅間ではそれよりもさらに寒いということだろう.朝湯から戻ってきておしんこ餅をば.今朝の松本の最低気温は氷点下5.1度まで下がった.旅館の水道が凍りついて水が出ないところを見ると,浅間温泉ではそれ以上に冷え込んだにちがいない.夜明け前の内湯は湯舟の縁からお湯がどんどんあふれている.快適にして背徳.旅館の窓から見上げる空は曇っているようだ.さて,そろそろ朝ごはんの時間かな.その前にもう一風呂か.今日の高座のイメージングをする.午前8時半に旅館を出て大学までてくてく.温泉街の坂道から見渡す対面には,真っ白に冠雪した北アルプスが遠方に広がっている.昨日と同じく,女鳥羽川にかかるスポーツ橋を渡り,信州大学のキャンパスに入る.

◆集中講義三日目 —— 午前中は分岐学派の内部的変遷を題材にして,“個物”としての個別科学の「系譜」について話をする:


個々の「科学」はどこまで変われるのか?

 「科学とは何か?」という問いかけは愚問である.
  ・「個々の科学とは何か?」→それは定義できない
  ・「科学なるものとは何か?」→科学的思考を共有すること

「個々の科学」が定義できない理由
 時空的に変遷するオブジェクトとしての「科学」は,本質主義的な
 解釈に基づく科学観ではとらえられない実体である.個物としての
科学は,かぎりなく変化することができるから.

例:分岐学派の「変遷」をたどる
 ルーツは Willi Hennig (1950)の著作.彼の系統体系学の理論は系統
 樹のみに基づいて分類体系は構築されるべきであるという主義に則る.
 彼の理論体系はその後どのように伝承されていったか? 伝承の過程
 でどのような「変更」を受けたか?

 Hennigの論点(Hennig 1948, 1950)
 ・体系学の構築は系統関係のみに基づくべきである.それが
  多次元的な生物多様性の一般参照体系を導く.

 その後の理論変容について(1970年代以降)
 1) 進化プロセスの余計な仮定の除去
 2) 系統樹の概念そのものの再検討
 3) 系統推定の作業の明確化と理論化

 これらの「変容(transformation)」によって,分岐学派(cladistics)
 はどのように変貌していったか?

 1) 進化プロセス仮定の除去
 Hennig の置いた諸仮定を除去するだけでなく,それ以外の多くの進化
 的仮定をことごとく排除していく.その動機は,進化的な仮定を置く
 系統推定ならびに分類構築をすると,仮定に対する依存関係が生じる.
 系統発生の「パターン」を表示する系統樹は,進化的な「プロセス」の
 仮定とは隔離させたい.したがって,自然淘汰や遺伝的浮動あるいは中
 立進化などなどすべての進化的仮説は除外された.

 以上の「変容」を推進したのは Gareth Nelson だった.1960年代末に
 ニューヨークのアメリカ自然史博物館に所属した Nelson は分岐学派の
 研究グループを開設する.1970年代の10年間をかけて彼らは分岐学派
 の変容を推進した.分岐学派が目指したのは「パターン分析」の方法論
 の確立だった.

 1970年代末には,この変容がほぼ終了し,「発展分岐学(transformed 
 cladistics)」あるいは「パターン分岐学(pattern cladistics)」と称さ
 れる新たな分岐学の理論を確立した.当時の大進化論争(シカゴでの)
 あるいは創造説論争の中で,パターン分岐学は“反進化”の烙印を押され
 ることもあった.

 2) 系統樹の概念の再検討

 もともとHennigは系統発生を図示する図として「系統樹」を考えていた
 (大多数の生物学者は同意見).ところが,1970年代の分岐学派は,
 その「系統樹」から祖先-子孫の系統関係を排除した.その結果,系統樹
 とは異なる「分岐図(cladogram)」という新たな概念を生み出す.分岐
 図は系統樹の「集合」であり,それ自身は「祖先子孫関係」ではなく,
 単系統群に基づく「姉妹群関係」を表示する樹形図である.「祖先」の
 特定は系統推定にとっては不要であるという宣言をした.

 3) 系統推定の作業の明確化と理論化
 系統推定の対象(目標)は系統樹の復元ではなく分岐図の推定である.
 Hennig自身の系統推定の手順(「論証図式」)をより明確なアルゴリズ
 ムとして再定式化し,「最節約基準」に基づく方法論として確立した.
 1980年代になってからの成果.コンピューターを用いた系統推定のソフ
 トウェアの開発が進んだ.

まとめると:
 1) 分岐学派の変容により,系統推定のターゲット(=分岐図)が明確に
   なった.推定手順の明確化とソフトウェア開発が進んだ.
 2) 進化プロセスの仮定や理論やモデルに対してどのようなスタンスをと
   るか.分岐学派内での路線対立が先鋭化している:

 パターン分岐学派:進化の仮定そのものも不要である.
  自然界に「パターン」が存在するという仮定のみですべてはすむ.
 系統学的分岐学派:パターン分岐学に反対して,進化モデルや仮定を
  組み込む系統推定を支持する.

つまり,同じ分岐学派の中での「派閥対立」が発生している.この事例から
言えることは,ひとつの個別科学は時空的に大きく限りなく変化する可能性
があり,さらに内部的に分岐することもありえる.

さらに,分岐学派についていえば,学説の変容だけではなく,研究者コミュ
ニティの中での「人間関係」の果たす役割は極めて大きい.コミュニティの
ダイナミクスはそこにいる人間としての科学者が積極的に動かしている.

 Systematic Zoology 誌(Society for Systematic Zoology, 1952年創刊):
  1970年代の体系学論争の場.
 Cladistics誌(Willi Hennig Society, 1985年):分岐学派の学会誌と学会
  コミュニティ.人間関係が内部的に大きく変わっていく.1990年代に
  パターン分岐学は Hennig Society から追放される.

 個々の科学は「生き物」として活動し続ける.

◆午前の講義が終わり,ようやく全体の半分以上がすんだことになる.明け方は水道が凍る冷え込みだったが,昼休みのいまはほどほどの寒さ(5度くらいか).

◆午後1時半から講義再開.生物体系学以外のケーススタディーに話を進める:


ケーススタディー2:ダーウィニズムの日本上陸

明治時代にチャールズ・ダーウィンの進化思想がどのような形で,日本に
“上陸”したのか.ダーウィンの著作に先立って,E. S. Morseら「お抱え
外国人」たちが進化思想を日本に伝えた.ダーウィンの著作の翻訳は1890
年代には,東アジアで初めて日本に上陸したが,東洋本草学と西洋博物学
との思想的軋轢(落差)がすんなりと解決されたわけではない.

生物多様性の問題(分類や系統がらみのことども)についていえば,日本
の研究者コミュニティは原理原則に関する議論を好まない傾向が強い.
「リクツがきらい」で「収集できればいい」という傾向が目立つ.体系や
原理に関する論議の場を日本でもてなかった理由はどこにあるのか? 
伝統なのか,それとも研究者コミュニティの体質なのか.文化的要因
(「正名思想」のような)がどこかで働いている.

ケーススタディー3:ルイセンコ学説の興亡

政治的に決定された綱領(「弁証法的唯物論」)が科学者コミュニティー
の動態を決定する要因となった時代があった.遺伝学説としてのミチュー
リン遺伝学は早々に衰退したが,種概念にからむシステム論的思考は長続
きした.

ケーススタディー4:生物地理学,動植物の地理的分布

生物地理学(biogeography)は,生態学的視点と歴史的視点のふたつの方
向から研究されてきた.ここでは,歴史生物地理学における過去半世紀の
進展を振り返り,生物体系学とのパラレルな関係についてまとめる.

 1970年代,分岐学派が理論変容を始めたころ,生物体系学(時間的復元)
と生物地理学(空間的復元)とは「一体のもの」として扱われていた.最終
的に時空的な系統発生の復元を達成するという目標を設定した.Gareth 
Nelson はこの統合的な研究プログラムを提唱するにあたり,科学哲学者 
Karl Popper と汎生物地理学者 Leon Croizat の理論を利用した.

 分岐学派が提唱した「分断生物地理学(vicariance biogeography)」の
理論は,当初は生物地理学の新たな方法論として主張された.当時は体系学
論争(第一期)の最中だったので,他学派(とくに進化分類学派の Ernst Mayr 
ら)との間で激しい論争があった.

 この分断生物地理学の方法論は,その後,分子レベルの種内系統地理学
(intraspecific phylogeography)をはじめとして,共進化分析や遺伝子系
図学の分野にも適用領域を拡張していった.異なる研究領域で,同一の方法
論が利用できることが認識されたことにより,共通の問題に対する共通の解
決法が利用できるようになった.

◆午後4時,午後の講義終了.しかし,ここで休んではいられない.半時間後に浅見研究室セミナーが始まる.信州大学理学部生物科学科第184 回教室セミナー:三中信宏「分類思考と系統樹思考:多様性のパターン分析について」2011年12月21日(水)16:30〜18:30,理学部多目的ホール(A棟1階).集まってくれた聴衆は30名ほど.ここのところ十八番になっているネタなので,とくに前もってしたくをする必要はなかったのだが,それでもスライドを追加したり並べ替えたりしたので,170枚あまりのスライド分量になった.質疑を含めて二時間ほどしゃべった.

◆セミナー後は懇親会へ.午後7時に大学正門前に送迎バスが横付けされ,研究室の面々が乗り込む.行き先は女鳥羽川の上流にある〈月の蕎麦〉.とても大きい蕎麦屋で宴会用のお座敷あり.かなりたくさん食べたので,山賊焼きが出てきたときにはほぼ限界だったかもしれない.午後9時半に店を出て,浅間温泉バス停まで送迎バスで送り届けられ,本日の“トライアスロン”はやっと任務完了.温泉に入ってすぐに寝てしまった.

◆[欹耳袋]松本市内でいまオススメの日本酒スポットは〈厨 十兵衛〉とのこと._φ(..)

◆明日は午前中は信州大で最終日の「自然科学史」講義.その後,本郷に直行して東大での「生物統計学」の講義が夕方にある.

◆本日の総歩数=3379歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜×.計測値(前回比)=未計測/未計測


20 december 2011(火)※小雪が舞う温泉街の坂道を下る

◆昨夜も早く寝てしまったので,午前3時前に起床.目覚ましの超朝湯.泊まっているのが和室のせいなのか,明け方の室内の温度が低すぎる.まずは石油ストーブを点火して急速暖房する.昨日の日録を書き,今日の講義のしたくをする.受講生にはハンドアウトを配布するかな.夜明け前に小雪が舞ったらしく,旅館の屋根がうっすらと白くなっていた.氷点下の早朝はしんしんと冷え込む.午前7時半,朝食をすませてゆっくりしているところ.集中講義での配布資料と明日の研究室セミナーのハンドアウトはすでにつくり終えた.

◆集中講義二日目 —— 今日の講義開始は9:30なので,大学までてくてく歩くことにしよう.温泉街の坂道を下り始める.曇りところどころ晴れの空からときおり小雪が舞い落ちる.スポーツ橋をわたって信州大学キャンパスへ.午前の講義は生物体系学論争の「第一期(1960〜80年)」から始まる.生物体系学と生物学哲学が互いに利用し合いながら,自らの研究者コミュニティを構築していった経緯について.外は晴天が広がる.


ケーススタディー1:「生物体系学」の場合 ・生物体系学の第一期論争(1960~80年代)  論争点:生物の分類体系は「何」を基準にして構築すべきか?   進化分類学派(Mayrら): 類似性と近縁性の両方が必要.   分岐分類学派(Hennigら):近縁性のみが必要.   表形分類学派(Sokalら): 類似性のみが必要.  論争の推移:分類の基準をめぐる論争は,最初のうちは「科学」の枠内で 進んでいた.しかし,表層的な論争はしだいに深化していく.とくに,SSZ (動物分類学会)を中心に論争が進行していった.SSZはもともと実践的な 動物分類学者のための学会であり,その機関誌Systematic Zoologyもそう いう性格をもっていた.ところが,1960年代以降,この学会と機関誌は分 類の理念と方法論に関する論争の場と変遷していった.  そのうち(1970年代以降),この体系学論争に科学哲学が絡むようにな ってくる.とくに,カール・ポパーの反証可能性の理論が分類体系の「科学 性」を擁護するために持ち出されてくる.Bock(1973)とWiley(1975)以降, Syst. Zool.誌にポパー哲学が頻繁に登場するようになった.ちょうどこの時 期に「生物学の哲学」が形成される時期と一致する.David L. Hull や Michael Ruse ら第一世代の生物学哲学者たちは,逆にこの時期の生物体系学における 論議を吸収しつつ,生物学の哲学を構築していった.

◆引き続いて「第二期(1980〜2000年)」へ.


ケーススタディー1:「生物体系学」の場合 ・生物体系学の第二期論争(1980~2000年代)  論争点:生物分類の基準についての論争は弱まり,その代わりに系統推定 論すなわち系統樹をいかにして推定するかが議論の新たな焦点となった. 「分類」から「系統」へ.この時期はDNAやタンパク質の分子配列データが 体系学研究の情報源として重要視されるようになってきた.分子系統学の占 める地位が高くなった.分子データの意義は二つ:  1) 分子進化に関わる統計的モデリングが容易である.定量的な方法(コン ピューターを用いる系統推定など)の導入がしやすい.  2) これまでの分類学の伝統の束縛を受けることが少なかった.分子系統学 では,定量的な系統推定論が論議の中心となった.  論争の経緯:系統推定論争では,進化分類学派は退場し,分岐学派と表形 学派だけが残った.正確に言えば,表形学派はこの時期までに事実上,生物 体系学の世界から軸足を外の「生物統計学」の世界に移し始めた.多変量解 析の「クラスター分析」を遺産として生物体系学コミュニティに残した.こ のクラスター分析は系統推定法としての「距離法」として分子系統学で幅広 く使われるようになる(たとえば「近隣結合法」).一方,分岐学派は「最 節約法」という系統推定法を開発し,分子系統樹の推定に用いられる.さら に,統計学的な系統推定法が新たに参戦することになった(最尤法とベイズ 法).結果的に,第二期の論争は四つの“学派”の間での論争になっている. 統計学的手法の導入は,生物統計学派の歴史と深く関わっている.生物統計 学が分子進化学・分子系統学という新たな適用分野を入手したことで,統計 学的系統学という領域が1970年代以降成立した.時を同じくして,科学哲 学に関する論議はいったん下火になる.  第二期論争におけるポパーの「反証理論」に対する反省は,科学哲学のサ イドからの動きともいえる.もともとポパー的には仮説は実証はできないけ れども,反証はできる(Popper 1959『科学的発見の論理』).これは「強 い意味での仮説検証(真か偽かの判定)」を前提としている.ところが,ア ブダクションを前提とする系統学に「強反証」や「強実証」を当てはめるこ とは無理がある.もっと弱めて,仮説間の相対的ランキングを目指すならば 「弱反証」あるいは「弱実証」という選択肢もあるだろう.

◆穏やかな昼休み.今日のランチタイムはまたしても大学前の〈メーヤウ〉にて.正午前なのにものすごく混んでいた.タイ風イエローカレー.辛い〜.ひー.

◆午後の講義は体系学論争の「第三期(2000年〜現代)」に進む.


ケーススタディー1:「生物体系学」の場合 ・生物体系学の第三期論争(2000年代~現在)  論争点:系統推定論(とくに分子系統学)が生物体系学の主たる論点 となるとともに,ポパー(その他)の科学哲学の有効性が再検討される ようになった.さらに,分子進化学の浸透により,進化プロセスに関す る仮定(背景仮定)をどの程度まで許容すればいいのかという問題に対 する科学哲学的な問題提起がなされるようになった.そのような model- based なアプローチに対する論議が浮上してきた.  系統推定法のまとめ  1) 距離法:元の形質データをいったん距離尺度に変換する.距離の近 いものどうしをグループ化(クラスタリング)して,系統樹を構築する. 代表的な方法は近隣結合法.  2) 形質状態法:元データから直接的に最適な系統樹を計算する.目的 関数(最適化基準)を最適化する系統樹を求める.  2-1) 最節約法:形質状態の変化総数を最小化する樹形.  2-2) 最尤法:形質データの尤度を最大化するする樹形.  2-3) ベイズ法:形質データの事後確率を最大化する樹形.  統計的系統推定法(最尤法とベイズ法)について  ・最尤法:観察データを説明するベストな分子進化モデルを選択する. モデルが決まったら,配列データに対する尤度を計算し,最大尤度をもつ 樹形を探索する.  ・ベイズ法:ベイズの定理(事後確率∝尤度×事前確率)を用いて, 推定するパラメーター(樹形など)の事前情報を組み込む最適化を行なう.  「ベイズの定理」とは何か? データがもつ情報は尤度によって評価す る.それ以外の事前情報を利用しようとするベイズ統計学は「事後確率∝ 尤度×事前確率」を使って,両者の情報を結合する.  モデル・ベースの系統推定法の問題点  分子進化プロセスに関するモデルをたくさん詰め込むことで,最尤法や ベイズ法(距離法も含めて)は成立している.そのモデルが正しくなかっ たとしたならば(妥当でなかったならば),それを前提にして得られた結 論はどう解釈すればいいのか? 最節約法(分岐学派)は逆にできるだけ プロセス仮定を置かないようにして系統推定をしてきた.両者の間の論争 が生じ得る.推定の前提になる仮定(「背景仮定」と呼ばれる)はどこま で許容すればいいのかという問題が浮かび上がる.  分岐学派の変容(Willi Hennig 以降)  Hennig 自身は,系統推定の前提としていくつかの進化的仮定を置いた:  1) 二分岐的種分化モデル(種分化は二分岐で生じ祖先は絶滅する),  2) 偏差則(種分化での分化は非対称的),  3) 移動則(原始的子孫は元の分布域にとどまり,派生的子孫は遠くに移    住する). これらの仮定は進化生物学的に見て制約が強すぎる.Hennig 理論が英語圏 に上陸した1960年代末以降,これらの「余計なプロセス仮定」を除去する ように理論的変遷が進んだ(→1980年代の「パターン分岐学」の出現). したがって,分岐学は進化プロセスの仮定に関して分子系統学とは逆の方向 に進んだ.  Hennig 理論→・プロセス仮定の除去   1960年代 ・ポパー科学哲学との合体            ↓          パターン分岐学の出現(1980年代~)  分岐学派はポパーをどのように使い回してきたか?  第一期論争では:「反証可能性(falsifiability)」が論点となった.分類の 方法論が反証可能であるかどうかが,分類学の「科学性」とからめて議論さ れた.とかく科学とみなされてこなかった分類学を“科学”に格上げする方 策としてポパーが駆りだされた.  第二期論争では:ポパーへの言及はいったん少なくなる.反証理論に対す る「反省」が体系学者の中に見られた.分類ではなく系統に関して言えば, ポパーの反証理論はそのままでは適用できないだろうという共通認識が体系 学コミュニティ内で広まった.  第三期論争では:モデルベースの系統推定論をポパーの科学哲学と絡めて 論議する傾向が強まってきた.今度新たに登場してきたのはポパーの「験証 (corroboration)=裏付け」の理論だった.   h : 仮説   e : 証拠(データ)   b : 背景知識(事前仮定) このとき,仮説hの「験証度(degree of corroboration)」は:   C(h,e,b)∝p(e|h&b)-p(e|b) となる.「p(.)」は論理的確率,「|」は条件付き確率を意味する.験証度を 大きくするためには:  1) p(e|h&b)を大きくする.仮説hのもとでの証拠の生起確率を大きくする.  2) p(e|b)を小さくする.背景仮定bを最小化する方がいい.  このように生物体系学の現代史を見直すと,科学哲学との緊密な関係が随 所に見られる.  第三期論争の顛末:モデルベースの系統推定における背景仮定をどこまで 許容するか.進化的な仮定が少ないに越したことはない.最小限不可欠な仮 定(生物進化が生じた/形質状態の変化が生じた/系統発生の“グラフ”が 描ける)を置く必要がある.これ以外の追加的な仮定については,形質デー タごとにケースバイケースで異なる.むしろ,選択されたモデルの妥当性と 導かれた結論の頑健性に注目すべきだろう.

—— 午後4時過ぎ,本日の高座は終わった.今日はまる一日かけて生物体系学の現代史と科学哲学との錯綜した相互作用について話した.夕闇の中をてくてく歩いて女鳥羽川をわたる.〈飯田屋別館〉に帰り着いて,部屋に入ったらお茶と餡ころ餅が用意されていた.夕食は豆腐料理〈まるゐ〉にて.

◆明日は集中講義&研究室セミナー&歓迎会という三点セットが予定されている.気力と体力の限界に挑むトライアスロンだ.

◆本日の総歩数=6287歩[うち「しっかり歩数」2000歩/22分].全コース×|×.朝△|昼○|夜×.計測値(前回比)=未計測/未計測


19 december 2011(月)※浅間温泉の朝湯から始まる巡業

◆午前4時起床,気温マイナス1.9度.昨夜は長旅の疲労と湯疲れで寝落ちしてしまった.未明の旅館は真っ暗でまだひっそりと寝静まっている.起き抜けの朝風呂は気持ちよし.午前6時を過ぎて,空が少しずつ明るくなってきた.しかし,温泉街はまだ起きだしていないようだ.〈飯田屋別館〉は浅間温泉の中でももっとも奥にあり,路地のような細い道沿いにあるので,人も車もぜんぜん通らない.松本のアメダス気温によると今朝の最低気温はマイナス2.7度だが,山間の浅間温泉ではもっと低いだろう.

過去の日録を検索したら,信州大学に「生物統計学」の集中講義に来たのは2002・2004・2006の三回だったことをいま確認した.かれこれ五年ぶりになるのか.今回の担当は学部生相手の「自然科学史」というぜんぜんちがう科目なのでほんとうはちゃんと事前のしたくが必要なのだが,なかなかそうはいかない.早朝のドロナワ作業は続く.

◆[欹耳袋]浅間温泉公式マップ〈アサマップ〉.いずこの温泉地もこういう宣伝サイトがあるんだな.

◆ここ〈飯田屋別館〉は外から見るととても巨大な木造三階建ての造りになっている.昔,浅間温泉に旅館が少なかったころは,とても繁盛していたらしい.なお,〈飯田屋別館〉の「別館」に対する「本館」は,松本駅前でビジネスホテルとして営業しているとのご主人の話.午前7時過ぎに部屋に運ばれてきた朝ごはんは,湯豆腐・焼き鮭・焼き海苔・ハムサラダ・蕪のお味噌汁・山芋の千切り・野沢菜お漬物・リンゴとリンゴジュース,そしてコーヒー.正しいニッポンの和食.では,いっただきます〜.

◆久しぶりの信州大学へ —— 午前8時過ぎに浅間温泉バス停に向かう.すでに路線バスが停まっていたので,あわてて乗ってしまったら,信州大学経由ではなく,横田経由だったので,またまたあわてて浅間温泉入り口で下車し,浅間橋をわたっててくてくの開始.およそ20分ほど歩いて信州大学キャンパスに入った.理学部・浅見研に立ち寄って一休み.午前9時前に講義室に向かう.受講生は理学部2〜4年の十数名.

自然科学史」の初日午前の講義はこんな板書をした:


自然科学史の視点
 現場の科学者・研究者にとって「役に立つ」科学史を.
 ↓
 1) 「科学」を“生き物”としてとらえよう.
 ・「科学とは何か?」という疑問はナンセンスである.
 ・「科学的とは何か?」という疑問は重要な意味がある.
 2) 「科学史」は科学に関する言説をテストするデータ
 ・科学哲学や科学論の仮説・モデルは科学史のデータに照らして検証
  されるべきである.
 ・科学,「科学」論,「科学論」論,etc...
 3) 科学とはきわめて「人間的」な営為である.

グローバルな科学論ではなくローカルな科学論を.
 ・科学の「多様さ」を理解しよう.いろんなタイプの科学を包括的に
  許容する姿勢.
  ・物理学や化学:実験系・理論系のサイエンス
  ・進化学や系統学:実験不可能な歴史を論じるサイエンス

個別科学を隔てる「壁」はあるのか?
 実体としての科学は歴史的にたまたま分割されたものかもしれない.
 異なる科学が同一の方法論や目的を共有する理由はそこにあるのでは
 ないか? “文理の壁”は幻想にすぎないといえるかも.
 ↓
 複数のサイエンスの「共進化」がありえる.学際的という表現は乱用
 しない方がいい.もともとルーツは同じだったかもしれないから.

進化する「オブジェクト」の歴史を追う.

 生物・言語・写本など一見異なるオブジェクトの系統推定には類似す
 る(事実上同一の)理論と方法が用いられている.オブジェクトに依
 存しない一般論としての歴史 学(古因科学)が成立し得る.学問分
 野の別を問わず,オブジェクトの歴史は科学的研究の対象となる.
 ↓
 科学もまたそのような時空的に変遷するオブジェクトとみなそう.そ
 の視点はどれくらい生産的であるのか?
 1) 科学を支えている科学者コミュニティの動態(マンパワーや資金),
   社会学的要因,人間関係などなどのファクターを作用因とみなす
   =科学の因果プロセス.
 2) そのような要因が現実の科学の様相(パターンや系譜)にどのよう
   に発現しているか?
 3) これらのパターンとプロセスをローカルな個別科学のレベルで調べ
   ていく方針.「記載的」な科学研究.
 4) ローカルな知見の蓄積からグローバルな科学論的言明(「規範的」
   な意味)が導けるかどうか.

では,個別科学のケーススタディーはどれくらい蓄積されているのか?
 ・生物体系学の現代史(1960~90年代)
 ・進化生物学の「現代的総合」(1930~50年代)
 ・ルイセンコ論争(1940~50年代)
 ・生物統計学(1950年代以降の論議)
 ・形態測定学の発展(1980年代以降の発展)
 ・社会生物学論争(1975年以降)
 ・プレートテクトニクス論争:生物地理学との関連で(1970年代以降)

 ※科学は「生き物」として変遷・伝承されていく.

集中講義の進め方
・開始は9:30 .9:30~12:00 / 13:30~16:30
・最終日にレポート課題を出題します.提出はメールで.出席はとりません.

◆本日のランチは大学前の〈メーヤウ・桐店〉にて,インド風のブラックカレー.かなり辛かったぞー(火吹く).午後1時の講義再開までひっそり休憩する.

◆「自然科学史」午後の講義:


歴史科学は「科学」と言えるのか?

 進化学・系統学のように自然科学
であって,しかも過去の歴史を論じ
る分野は,はたして「科学」と呼ん
でいいのか?
 ↓
 科学的な「推論」とは何か? 科学的思考の本性はデータに照らした
 「経験主義」にある.データから何かを学ぶ姿勢を保持しているかど
 うかがポイント.

 推論の様式について
 1) 演繹(deduction):真なる前提から真なる結論
 2) 帰納(induction):個別観察から真なる一般則
 3) アブダクション(abduction):ベストの説明を.
 ↓
 科学的思考の範囲をアブダクションまで広げると,「ベスト」の基準
 とは何かという問題が浮上する.

 統計科学における「モデル選択論(model selection thoery)」では,
 データに対するベストの統計モデルをいかに選ぶかを論じてきた.こ
 の論議を他の科学(アブダクションを採用する)にも適用できないか?

 個別科学でのアブダクションの適用(例:系統学)
  与えられたデータのもとでベストの系統樹を求めるためには:
  1) ベストの基準(最節約・最尤etc)の選択
  2) 実際の探索の手順(網羅的探索か発見的探索か)

 ベストのモデルとは何か(アブダクション問題)
  ベストである仮説やモデルを選び出すための基準を決めるには,候補
  となるモデル(仮説)に求められる「資質」を議論する必要がある.
  ↓
  モデル選択論の議論が参考になる.
  ・単純なモデルに比べて,複雑なモデルほどデータに対する当てはまり
   (適合度)はよくなる.データとモデルとの適合度は「尤度」によっ
   て定量化できる.複雑なモデルほど尤度は高くなる.
  ・AIC(赤池情報量基準)は,データに対する適合度とモデルの複雑度
   を同時に考慮する.トレードオフにより中程度の複雑さをもつモデル
   をもってベストとみなす.
  ・アブダクションに基づく推論の場合にも,これらモデル選択論から導
   かれる知見を適用したい.

 アブダクションは「将来のこと」を考えていない.その時点でベストであ
 るかどうかが選ばれる条件のすべて.尤度やAICもまた「将来のこと」は
 考えていない.「今がすべて」.

◆午後の講義はいまちょっと休憩.統計学の「モデル選択論」のもつ科学哲学的な意味(アブダクションとのからみで)について話をしたんだけど.個別科学への踏み込みと一般論とのバランスがとてもとても難しいなー.本日最後の講義は下記の通り:


「科学哲学」についていくつかの基本事項(20世紀以降)
・論理実証主義:数理論理学(ホワイトヘッド&ラッセル『数理哲学原理』) 
 ならびに言語哲学(ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』)によって諸
 科学を公理論的に統一する.エルンスト・マッハ流(ウィーン学団)の実
 証主義.統一科学運動.
・論理経験主義:実証主義の流れをくみ,確率論的な帰納主義を目指す
 (カルナップ).
・仮説演繹主義(反証主義):カール・ポパーは科学的仮説は実証ではなく
 反証によってテストされるべきだと言った.科学と非科学の境界設定.直
 系のイムレ・ラカトシュやパウル・ファイヤーアーベントら同時代の科学
 哲学者たちとの論争.
・新科学哲学:反証主義や経験主義を受け継ぐ次世代の科学哲学者たち.ラ
 リー・ローダンら.
・STS:科学技術社会論.個人的にはどうでもいい言説の群れ.

科学哲学のトレンドについて
 ポパーら旧世代の科学哲学者たちは,科学がどうあるべきかについて論議
 し続けた.彼らはグローバルな規範的科学哲学をつくるべきだと考えた.
 1970年代以降,ローカルな個別科学のなかに科学哲学者たちが入り込ん
 でいくようになる.その代表例が「生物学の哲学(philosophy of biology)」
 である.このようなローカルな科学哲学は,科学者たちとともに歩み始め
 ている.記述的な科学哲学が主流になる.科学哲学そのものも変遷するオ
 ブジェクトである.

統計学のトレンドについて
 かつては,データを用いて仮説の「真偽」を判定しようとした(1930年代
 に確立された「ネイマン-ピアソン主義」).一方で,データは仮説に対す
 る証拠(エヴィデンス)であるという立場が強まっているのも事実.モデル
 選択論(尤度やAICがらみ)の基本姿勢はそれに傾きつつある.統計学もま
 た変遷するオブジェクトである.

◆初日の集中講義は午前4時に終了.浅間温泉街まで歩いて帰る.さっそく信州そばを食べに行こう.ご主人に訊いたところ,「この辺ではもちろん〈あるぷす〉が一番です」と力強く宣言された.をを,行くしかないッ.温泉街を下って〈生蕎麦あるぶす〉へ.開店直後でまだほかの客はいなかった.まずは鴨のローストと「大信州・純米吟醸(氷結貯蔵)」.メインはめずらしい「水蕎麦」の大盛りを注文.水蕎麦の食べ方は,最初は水に浸して一口二口,次いで箸先に塩を付けてたぐり,最後につゆとともにいただくという.水につけるとのどごしがよくなって蕎麦の風味がダイレクトに味わえるとのこと.

〈あるぶす〉を出てから温泉街をふらふらしたのだが,平日とはいえぜんぜん人が歩いてなくてかなり寂しいな.帰りがけに宮島商店にて〈おしんこ餅〉を買って旅館に戻る.眼点のようなぽっちりが愛らしい.こし餡を米粉の皮で包んである平べったいお餅.見る方向によっては心理テストの画像みたい.さて,お風呂直行〜.

◆明日と明後日が今回の巡業の核心部分となる.全体の流れとストーリー構成をよく考えておこう.

◆本日の総歩数=6225歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝△|昼○|夜△.計測値(前回比)=未計測/未計測


18 december 2011(日)※京都を経由して信州湯けむり旅へ

◆午前3時くらいから目が醒めていたが,いつも通り午前4時半に起床.きりきりと冷え込んで最低気温はマイナス5.1度まで下がった.5:51発のTX区間快速にのって秋葉原へ.守谷あたりでとても鮮やかな朝焼けを車窓から見られた.

◆師走の京都ミッションに向かう —— 東京駅.外は冷えきっているが,新幹線の中はとても暖かい.一路西へ西へと移動する.米原あたりは見渡すかぎり雪また雪.京都は曇りときどき晴れ.九条河原でのミッションを小一時間ですませた.北風が冷たい.これから洛南へ移動して第二ミッションの開始.洛南での第二ミッションを終え,引き続き第三ミッション場所までタクシー移動中.よく晴れて気温が上がってきた.第三ミッションをさくっとすませて,やっと京都駅の新幹線ホームにたどり着いた.夜明け前から始動した一連のミッションの完了だ.次なるミッションは一年後.先月から続いた険しい大きな山をやっと越えたことになる.

◆本日のランチはJR京都駅のSUVACOにある和久傳〈はしたて〉にて「十二月限定ランチ」.蟹玉丼と力うどんのセット.寒い日にはこういう料理がおいしい.それにしても人気店.ランチタイムだったので待ち客の行列がよけい長く伸びている.しかも女性客がほとんど.

◆アタッカで信州湯けむり旅の始まり —— 本日の最後の仕事は松本の浅間温泉に向かうこと.15:16に京都駅を発車するのぞみ29号に乗る.じわ〜と染み出る疲労感.名古屋駅にてわずかの接続時間ののち,16:00発の特急ワイドビューしなのに乗り換える.中央線本線に乗るのはいったい何年ぶりのことだろう.松本まで約二時間の鉄路の旅が始まる.中津川あたりで,しだいに標高が上がり,トンネル区間が増えてきた.夕暮れて山々の輪郭がぼやける.塩尻手前でとっぷりと日が暮れ,真っ暗な山の中を特急しなのはなお走り続ける.午後6時に松本駅到着.久しぶりにここに降り立った.駅前の温度は+2度.さすが信州,寒いのう.

◆夜の浅間温泉にて一息つく —— では,タクシーで浅間温泉に移動する.夜の温泉街を上りきったところにある〈飯田屋別館〉にチェックインだん.本館はないのに別館だけがある純和風旅館.温泉は源泉かけ流し,朝は部屋食にしてくれるとのこと.歓迎していただいて感謝また感謝.無線LANがちゃんと受信できるので(ついでに)仕事もできるぞ.まずは内湯へ直行.別府温泉の高温酸性泉の“修行”に耐えてきた身としては,〈飯田屋別館〉の内湯は,ほのかに硫黄の匂いが漂うアルカリ単純泉で,とてもやさしく感じられる.

チェックインしたときに部屋にはすでに布団が敷かれていた.寒冷地仕様なのか,石油ストーブ,石油ファンヒーター,エアコンに加えて,電気毛布のかけられた布団がコタツと一体化していて,「是が非でも温めてくれようぞ」オーラが濃厚に漂っている.それでも夜が更けるとともに冷気がどこからか忍びこむのは和風旅館の宿命だが,暗く冷たい廊下をひたひた歩くのはタイムスリップしたような感覚.師走の日曜の夜にここに泊まっているのはひょっとしてワタクシだけみたい.夕ごはんは京都で調達してきた〈いづう〉の鯖寿司.昆布でぐるぐる巻いてあるのをはがしながら食べるシアワセ.ミッション完了ごとに鯖寿司を一品食べるというのが“儀式”のようになってきた.

—— さて,明日からの信州大学「自然科学史」のしたくをしないといけないかなー.でも今夜はもう寝てしまおうかなー.

◆本日の総歩数=6463歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜○.計測値(前回比)=未計測/未計測


17 december 2011(土)※氷点下のつくばから都内に向かう

◆午前4時半起床.予報通りきりきりと冷え込んで午前5時にはマイナス4.0度まで下がっていた.凍りつく明け方は朝焼けがみごとだった.朝日が昇る快晴の朝.最低気温はマイナス4.7度まで下がった.今日は自然史学会連合の総会が中央大学(後楽園キャンパス)である.都内も寒いだろうから服装注意.

◆[欹耳袋]「Jeu de timbres(鍵盤付きグロッケンシュピール)」を通常のグロッケンシュピール(奏者ふたり)で代用するのは難度が高いなあ.

◆後楽園にて自然史学会連合総会 —— 午前10時半のTXで出発.新御徒町で乗り換えて春日で下車.そびえ立つ文京シビックセンターを背に坂を登れば,そこは中央大学理工学部(後楽園キャンパス)のゴージャスな新二号館だ.今日は自然史学会連合の総会がここである.会場は生物実験室.とてもりっぱ〜.ワタクシは総会の議長を依頼されているので,事前の打合せから参加することになった.

正午から開始とのことだったが,ご飯を食べながらそろりそろりと総会前の打合せが始まるのかな.しかし,まだローカルな動きしかないので,とりあえず好き勝手なことをする.午後1時前,自然史学会連合運営委員会がやっと開会.総会の議事次第が確定し,ワタクシの役回りも決まった.総会は午後2時から.各学会の代表委員がぽつりぽつりと集まってきた.定刻開始.擬似をさくさくと進めて,午後3時半に終了.

午後4時から引き続き特別講演:自然史学会連合特別講演 —— 大石雅之(岩手県立博物館)「被災自然史標本の救出から広がる博物館活動へ」2011年12月17日(土)16:00〜17:30.中央大学理工学部・後楽園キャンパス・2号館2338実験室.終了後は懇親会になだれ込む.

—— 午後9時半にへろへろになってつくば着.明日のしたくをしているうちに睡魔がべったりと取り憑いた.

◆[欹耳袋]ソーシャルリーディングサイト〈bukupe〉から —— 「系統樹思考の世界 (講談社現代新書)(三中 信宏)の要点まとめ」/「分類思考の世界 (講談社現代新書)(三中 信宏)の要点まとめ」.いろんなサービスがあるんだなあ.

◆本日の総歩数=4528歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=未計測/未計測


16 december 2011(金)※年に一度の成績検討会議は粛々と

◆午前4時半起床.気温7.0度と冷え込みはまったくない.昨日の都内は16.5度まで気温が上がり,半袖でも問題ない気温だった.ほんとうに寒気が南下してきているのかぜんぜん実感できない.今日は朝イチで成績検討会がある.やっぱりスライドつくる必要あるかな?(なんとかしましょ)

◆年明けの┣┣" 撃ちに向けて —— 東大の「生物統計学」の補講(二回分)は1月31日(火)にまとめて開講できるよう教務と打合せ中.他の補講と重ならないようにしないといけない./玉川大学の「分子系統進化学」の補講(二回分)についても1月14日(土)にまとめて開講する予定.開講時限については教務と相談.最近はどこの大学も講義に関するしばりがきつくなって,休講の後始末がとてもたいへん.休みっぱなしというわけにはいかない.そういえば,常盤台の成績評価をまだしていなかったな.うっかり年越ししないように注意しよう.

◆[蒐書日誌]ご恵贈感謝 —— アレックス・ローゼンバーグ著[東克明・森元良太・渡部鉄兵訳]『科学哲学:なぜ科学が哲学の問題になるのか』(2011年11月25日刊行,春秋社[シリーズ〈現代哲学への招待〉],東京,vi + 404 + 26 pp., 本体価格3,800円,ISBN:978-4-393-32322-9 → 目次版元ページ).原書第二版の翻訳.今年出た第三版はすでに発注完了.

もう一冊のいただきもの —— リチャード・C・フランシス[野中香方子訳]『エピジェネティクス:操られる遺伝子 』(2011年12月8日刊行,ダイヤモンド社,東京,viii + 261 pp., 本体価格2,400円,ISBN:978-4-478-01546-9 → 目次版元ページ).訳者の野中さんとは:Carol Kaesuk Yoon『Naming Nature: The Clash between Instinct and Science』(2009年刊行,W. W. Norton, New York, viii+344 pp., US$ 27.95, ISBN:978-0-393-06197-0 [hbk] / ISBN:978-0-393-33871-3 [pbk] → 目次)の翻訳で来年いっしょに仕事をすることになる.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 年に一度の成績検討会.午前9時前,そろそろ成績検討会の会場へ行くとしよう.4月の「設計検討会」と12月の「成績検討会」は年中行事のようなもの.農環研に来て20年あまり,所内的な季節の移り変わりはこのふたつの行事を通して感じ取ってきた.いつもは所内にいないことがほとんど,たとえ所内にいてもたいてい誰とも会わないなので,検討会では数カ月ぶりに顔を見る人たちが多い.午前9時から開始.サブテーマごとに担当者が発表を進める.ワタクシも系統情報学に関する進捗状況について報告した.正午前につつがなく閉会.大きなグループなので,議論が拡散するのはしかたないかな.実施的な部分は学会のようなオープンな場所で話をすればいいわけだから,形式的といえば形式的な会議.しかし,研究上は直接の関係がないとしても,所内のだれが何をしているのかをざっとブラウズする上では役に立つこともある.

◆今日のランチは久しぶりに〈おはん〉にて「まぐろ煮定食」をば.空気は冷たいがとりたててきびしい寒さとも思えない.昼休みは市内を方々駆けまわる.農環研に戻る.MacBook Air のタイムマシンがバックアップ中.たった160グラムしかない外付けHDDが「1TB」もあるなんてとても信じられない.

◆[欹耳袋]以前,とある論文集について検索していたら,あるサイトからまるまる一冊ダウンロードできることがわかった.わー,よかったーと思って,ふとドメインをみたら著作権に関して何かと物議を醸している国だった…….要注意.これまた以前のことだが,別の近刊論文集について検索していたら,たまたま丸ごとダウンロードできるサイトが見つかった.出版前なのに太っ腹だなあとよくよく見たら,その論文集の編者のサーバーに入り込んでしまったことがわかった.ごめんなさいごめんなさい.悪意はなかったんですぅ.ウェブ検索能力が高まったせいか,悪気なく思わぬ結界に入り込んでしまうことがある.

◆昼下がりの┣┣" 撃ち —— 午後になって黒雲が空を一時覆った.小┣┣" をひとつひとつ仕留めているところ.大┣┣" はしばし放置.メール返信を期限付きで求められて,しかもやたらたくさん記入しなければならない項目があって,かなり固まっているところ.そんなもん直前ならないとわからないでしょという詳細を前もってがんじがらめに決めさせる.うむ〜.ステリハまでと本番とがぜんぜんちがうという即興もまた一興だと思うのだが.小雨がぱらついたようだが,その後,きれいな夕焼けが広がる.気温がしだいに下がってきた.

◆本日の総歩数=7772歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=93.5kg(+0.5kg)/30.0%(−0.2%)


15 december 2011(木)※冬らしくない暖かさの都内を巡業

◆午前4時半起床.今日は都内巡業の日.7:56発のTXに乗る.外はよく晴れて,朝から日射しが暖かい.今日の日中は気温が上がるとの予報.都内もよく晴れてぜんぜん寒くない.小田急快速急行で新百合ヶ丘へ一足飛び.各停に乗り換えて玉川学園前へ.

◆午前のお座敷 —— 風もなく日射しが暖かな玉川大学キャンパス.今年は巨大なクリスマスツリーはつくらないことになっているらしい.講義棟への石段を登る.陽だまりではコートいらず.講師室にて今年最後の分子系統進化学の高座のしたくなど.本日の講義は祖先復元問題とその応用.ついでに来月の補講日の相談.分子系統進化学の補講は来年1月14日と21日(いずれも土曜)が候補.学生のコンセンサスでは14日にまとめて二つやってほしいらしい.まるで集中講義みたい.あとで教務と打ち合わせる.

◆[欹耳袋]Cambridge Digital Library: 〈Newton Papers 〉.ニュートンの『ブリンキピア』とか『光学』とかその他ノートブック類が大量に電子化公開された.

◆銀座にて —— 暖かな昼下がりの玉川学園前駅は混雑している.クリスマス直前の銀座に出て,今日のランチは久しぶりに東銀座の〈ナイル・レストラン〉にて.

オーダーをゆっくり考える間もなく,店員さんが「ムルギーランチねー」と勝手に確定してくれたので,自動的に看板メニュー「ムルギーランチ」になった.この店では気の弱い客はムルギーランチしか食べられない〜.骨付き鶏肉・キャベツの炒め物・マッシュポテトが盛られたこの「ムルギーランチ」は,毎度毎度食べているはずなのにやっぱりまた食べてしまうというおそるべき習慣性がある.辛くてうまくてボリューム満点.背徳度きわめて高し.見るも無残にぐっちゃぐちゃにかき混ぜて食べるのがお作法.きれいに食べようとすると,インド人のウェイターさんがしつこく「混ぜて混ぜて混ぜて」と耳元でささやき続ける.

◆本郷にて —— 銀座から本郷へ.〈ルオー〉でしばし休憩.今日の午後は最高気温が16度を超えた.暖かいというよりも暑いと表現するのがふさわしい.都内の午後のいる.しばしの休憩ののち本郷キャンパスへ向かう.本郷キャンパスのイチョウが遅まきながら綺麗に色づいていた.赤門の周囲はもちろん,正門から安田講堂にかけての色づき方もみごと.午後4時半から生物統計学の講義.今日は一般化線形モデルについて話をして,その後,変量間の共変動について.生物統計学の補講(二回分)は来年1月31日(火)と2月1日(水)に開講しようと思い,学生の意見を求めた.他の科目の補講や試験があるみたいで,調整が必要.教務に確認をとって期日と時間帯を決定しよう.

◆今日は朝から夕方まで都内を飛び回ったので,夜はゆるゆるする.〈王祿〉の「渓・うすにごり」とともに石狩鍋をば.今日は気温が高かったが,明日からはぐんぐん寒くなるらしい.土日が寒気の底らしいが,ワタクシが信州湯けむり巡業に行くのを狙われたみたい〜.

◆明日は朝イチで所内のRP成績検討会がある.配布資料はすでにつくったけど,プレゼン用スライドは手付かず.どこかで何とかしよう.

◆本日の総歩数=6382歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=93.1kg(+0.1kg)/29.2%(−1.0%)


14 december 2011(水)※屋形船で隅田川をゆったり下る夜

◆午前4時半起床.今日は曇り空の夜明け.今日は午後に東大での専攻教員会議があり,夜は専攻忘年会で舟遊び.

◆[蒐書日誌]ウンベルト・エーコ[上村忠男・廣石正和訳]『完全言語の探求』(2011年12月刊行,平凡社[平凡社ライブラリー750],東京,ISBN:978-4-582-76750-6 → 版元ページ) ※1995年に平凡社から出た初版:ウンベルト・エーコ[上村忠男・廣石正和訳]『完全言語の探求』(1995年1月30日刊行,平凡社[叢書ヨーロッパ],東京,532 pp., ISBN:978-4-582-76750-6)の復刻ということか.手元にある初版はすでに読んだので,あえて買うこともないかな.ハードカバーの初版はとても分厚かったが,平凡社ライブラリー版も550ページ超の厚さがあるらしい.

◆[欹耳袋]かつての翻訳書の中には,経費削減のためかそれとも単なる軽視か,原書にはそろっている脚註・参考文献・索引をきれいサッパリ「削除」して平気で出版されているものもあった(文理問わず).そういう翻訳書は資料としての価値がゼロなので原書をわざわざ買うしかなかった.現在でも,とくに出版点数の多い新書には,脚註・文献・索引の三点セットが伴っていないものがとても多いようだ.それらは確かに出版物ではあるけれども,しょせん資料的価値はない.

◆朝は自宅にて成績検討会資料をつくる.午前11時すぎにつくばを出発.曇り空だが寒くない.根津の坂を上って本郷へ.午後1時から東大農学部での教員会議.午後3時前に終了.文学部のある教授とても興味深い計画を東大に立案したことを知った.連携講座関連の宿題をひとつ持ち帰る.昼下がりの弥生キャンパスは日が射さず,灰色の曇り空が広がる.ひんやりしてはいるが,寒いという感覚はない.

◆先月,オランダ帰りの知人からドイツパンのようにずっしりと重い「Echte Groninger Koek」をいただいた.フローニンゲンで焼きたてを買ってきたのだという.長さにして三十センチあまり.断面は正方形でちょうどプンパーニッケルのような暗褐色の色合い.おやつの時間にちびちび切っては食べているのだが,これがまたとびきり甘くて腹もちが良すぎる背徳なお菓子.しかも日持ちがするらしく,毎日毎日食べているのにぜんぜん減らない.写真はかなり食べ進んで元の1/4のサイズになったところ.いかにも「ネーデルラント」な食べ物で,まかりまちがっても「lekker!」とは言いにくいな.小洒落たちゃらちゃらしたスイーツとは対照的.禁欲的にして質実剛健という表現があてはまる.それにしても食べきる頃にはクリスマスになっているんじゃないか.

◆屋形船の夜 —— 農学部のある弥生キャンパスもイチョウが見頃で,弥生講堂から三号館にかけては真黄色な絨毯が敷き詰められていた.今夜は専攻忘年会.千住大橋から屋形船に乗る.時間があるので,農学部構内の潜伏場所にて金曜の成績検討会議資料をつくり続ける.午後4時半,成績検討会の配布資料はつくり終わったので(スライドはまだだけど…),北千住へ移動開始.そろそろ暗くなってきたし.北千住に午後5時前着.乗船まではまだまだ時間があるので,駅前の〈大升酒場〉にてホッピーと煮こごりでちょいと.午後6時前に店を出て,千住大橋まで歩き続ける.専攻教員が橋の袂に集結し乗船したのは午後6時半.屋形船に乗るのは初めてのこと.意外にもぐんぐん水面を滑る屋形船は隅田川をくだってお台場へ.スカイツリーを間近に見上げ,レインボーブリッジを一回りしてまた元の船着場に戻る.船内は典型的な忘年会.たえず船底からエンジン音の振動が伝わってきた.午後9時前に下船.北千住まで戻ってつくばへ直帰.

◆本日の総歩数=9364歩[うち「しっかり歩数」986歩/11分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=93.0kg(+0.3kg)/30.2%(+0.1%)


13 december 2011(火)※今日も農環研に終日実在し続ける

◆午前4時半起床.丑三つ時には氷点下まで冷え込んだようだが,この時間帯は+3.4度.昨日までのようなきびしい寒さではない.それでも室内との温度差は大きく,窓ガラスの結露が気になる季節でもある.午前6時,夜明けまではまだ遠い.東の空は朝焼けに染まり始め,西の空は紡錘形の月が高く輝くころ,一ノ矢八坂神社の定時の鐘が響きわたる.

◆明日の東大専攻忘年会は,千住大橋から屋形船〈入船〉にて隅田川をお台場まで船下りすることになった.寒中ではあるけど趣がありますなあ.

◆[蒐書日誌]León Croizat『El Océano Pacífico en la Prehistoria de las Américas』(1981年刊行,I. P. Publicaciones, Caracas, 115 pp. → 目次).ベネズエラの首都カラカスで発行された雑誌 Revista Integración y Progreso に1971〜1972年にかけて掲載された論文の単行本化.環太平洋地域の汎生物地理学と絡めて南北アメリカの先史を論じた Croizat 最晩年の本.Tuatara 誌に載った彼の著作目録:Michael Heads and Robin C. Craw (1984), Bibliography of the Scientific Work of León Croizat, 1932-1982. Tuatara, 27(1): 67-75 にあることは知っていたのだが,今まで実物を手にする機会がなかった.古書としてもほとんど出品されることはなかったが,カラカスの古書店〈Andres Almandoz〉でやっと見つけて,先日つくばに届いた.

—— いま初めて気がついたのだが,英語フランス語の表記だと「Léon」だが,スペイン語だとアクセントの位置が「León」と変わるのか.ちなみにイタリア語では「Leone」と書き記すのがふつう.日本語では「レオン・クロイツァ」がもっとも近い発音だとハーバード時代に彼と同僚だった植物分類学者・原寛は言っていたとのこと(大場秀章談).

◆[欹耳袋]京都精華大学・特別公開講座〈われわれにとって柴谷篤弘とは「何」か――現代科学と社会の批判と実践〉.2011年12月23日(金)15:00〜18:00@京都精華大学対峰館1F T-109教室.演者・演題:1) 林真理「柴谷篤弘と生化学・分子生物学」; 2) 横山輝雄「柴谷篤弘と科学論」; 3) 中島勝住「柴谷篤弘と差別論」 with 斎藤光(司会・コーディネーター).柴谷篤弘は精華大の学長だったこともあるので,大学としての公式行事となったのだろう.柴谷が彼の提唱する“構造主義生物学”との関わりで Léon Croizat の汎生物地理学に言及したのは1980年代のことだった.もう30年も前のことだ.

◆今日も日がな一日┣┣" 撃ち三昧(午前の部) —— 広報情報室から研究室に所蔵されている(はずの)単行本の探索依頼あり.本探しはけっして嫌いではないが,現物を見たこともないのに書棚の間を徘徊するのは非効率的.版元で書影の〝ゲシュタルト〟を確認してから探索開始(丸投げだけど).来年度の首都大学東京の人事書類を書き上げ,えいやっと封筒に叩き込んで,どぇりゃっとセロテープで封入しようとしたら,リキが入りすぎて指先を紙で切ってしまい,封筒が血まみれ.でも,“血判”を押したまま,南大沢に返送だん!(教務課すまぬ)./農水省内の「MAFFIN Web Filtering」がヘンに強化されてしまって,オンライン書店bk1の書籍案内にある「この本を見た人は下記の本も見ています」欄がすべて「アクセス制限」の対象にされてしまっている.なんだこりゃ? 一方,アマゾンの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」はまったくのフリーパスで表示される.こういう〝偏向〟はよくないぞ.> MAFFIN.まあ,農水のアクセス制限がどうであれ,e-mobileでつなげば「実害」は何もないんだけどね.

◆昼下がりの狙撃タイムのあいまに,献本が積み上がっていくシアワセ.それに煽られて,どーいうわけだか,アマゾンの「Place order」ボタンばかり〝乱射〟している気がするんだけど.

◆今日も日がな一日┣┣" 撃ち三昧(午後の部) —— 今週と来週の東大「生物統計学」三点セットを用意終了./東大と玉川大の補講日程調整.今月はもうムリなので,来年1月にまとめてケリをつける.玉川大は土曜のどこか.東大は1月31日(火)と2月1日(水)が補講日に当てられている.調整続行./来年に依頼された統計高座.なんだかいろいろと細かいことを言ってくるなあ.締切もタイトだし.提示された日はダメなので再度の日程調整が必要だ./メーリングリストのちょっとした登録作業をすませる./そろそろ,信州大学での集中講義の「心の準備」をしないといけないな.ハンドアウトはどうしようか……./進化学事典の作業が先月以来ずっと滞っている.他の原稿がらみの仕事もダダ遅れでどうしようもない./それよりも何よりも,金曜のRP成績検討会の資料がぜんぜんできていないんですけど.成果ブツの提出もしてないし.

◆いくら仕事がはかどらなくても,そんなこととはまったく関係なく,今日も鮮やかな夕焼けを研究室から眺めることができた.

◆本日の総歩数=3026歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=92.7kg(−0.5kg)/30.1%(−0.3%)


12 december 2011(月)※師走になって初めて出勤してみる

◆午前4時半起床.昨夜遅く帰ってきたときは冷え込みをあまり感じなかったが,それでも夜明け前のいまはマイナス1.3度まで下がっている.月が煌々と輝いていたので,しっかり放射冷却しているのかも.世の中は忘年会シーズンのまっただ中.今週水曜は東大の専攻忘年会があるが,翌日に予定されていた生物地理学会事務局の忘年会の一つが日程調整がうまくいかずに流れた.農環研の領域忘年会は“自粛”となったが,「有志」が自主開催することになったらしい(12月19日開催なので松本巡業中のワタクシは参加できないけど……).

◆冬景色の観音台にて —— 師走に入って初めて出勤簿に押印した.今朝の最低気温は−1.7度.見渡すかぎり畑地は降霜,水たまりは結氷の冬景色.とりあえずの┣┣" 撃ちは特別休暇に関するやりくりをしまくらないといけないこと.先月の農環研実在率は「四割」ちょうど,今月の予想される実在率は「三割二分」.実在率の最低レコードを軽く更新するにちがいない.農環研が裁量労働制であれば,こういうめんどうな「休暇」のやりくりはしなくってすむのだろうけど.近隣の独法が導入しているからハードルは限りなく低いはず.しかし,なかなか話が進まないのはなぜだろうか.現実問題として,通常の年休はまだしも,特別休暇のたぐいはおそるべき「非常識」な運用があって困っている(クレバーな「小技」はあるようだが).

◆[欹耳袋]ううむ,これはすごすぎるかも〜 —— 「Statistical and Mathematical Gifts by NausicaaDistribution on Etsy」.にっこり正規分布枕とか,有名な Leemis センセの確率分布曼荼羅ポスターも売られているっ.箱ひげ図ベビー服とか p-value 服も笑える.Cauchy 分布Weibull 分布が bad guy のイメージだったとは知らなかった.それに引き換え,t 分布とか chi-square 分布は笑顔だ.確率分布キャラは善玉も悪玉もどちらもかわいらしい.

◆しんしんと┣┣" 降り積む —— 来週から始まる信州大学理学部の「自然科学史」集中講義.行き帰りのJR時刻表を調べた.松本(というか浅間温泉)への往復の「足」は確認できたので,必要なチケットをあとでJTBに買いに行こう./うん,確かに来年度の学会費を払い込む季節だなー./方々に巡業するたびにもらった名刺が増えて処理しきれないな.とりあえず積み上げてはあるけど.整理できないものは「即廃棄」を心がければさぞやシアワセな人生が送れるにちがいない.「ロータリー式回転名刺入れ」なる名刺整理ツールがあるらしい./北白川のTBさんは来春が定年だったのかあ.退職記念パーティーへのお誘いハガキが届いた./サイン依頼の本が郵送で届いたので,さっそく処理して即返送完了.どうもありがとうございました./次回の松戸フィルの定演は来年の5月13日(日).プロコフィエフの〈ロメオとジュリエット〉の鍵盤打楽器を担当する予定.

◆[蒐書日誌]ハインツ・ホライス/矢沢潔/三中信宏/河田雅圭/長野敬『眠れなくなる進化論の話:ダーウィン、ドーキンズから現代進化学まで全部みせます』(2012年1月10日刊行,技術評論社[知りたいサイエンス105],東京,245 pp., 本体価格1,580円,ISBN:978-4-7741-4907-3 → 詳細目次版元ページ).矢沢サイエンスオフィスが本書全体の編集を担当した.書店に配本されるのは12月9日以降とのことなので,すでに大手書店の店頭には並んでいることだろう.研究室に届いていた見本刷りをざっと読了.“異端”な進化学説に対する評価が甘々なのはたいへん気になる.それに「ジェイ・グールド」というオランダ系人名みたいな表記はしないだろう.しかし,全体的に見るかぎり,現代進化学の置かれている状況を概観する上ではもしかして役に立つかもしれない.ワタクシの担当した章では「進化的総合マンダラ」(pp. 118-121)を描いたのでぜひ見てくださいくださいください(ひつこい).なお,そのマンダラの中で「ガレス・ネルソン(植物学者)」と書かれているが,正しくは「ガレス・ネルソン(魚類学者)」ね.ゲラで修正しそこなったのかな.

◆よく晴れた午後も┣┣" 降り積む —— みすず書房の毎年恒例『月刊みすず』「年頭読書アンケート」の執筆依頼が届いた.この原稿依頼が届くたびに年の瀬が間近であることを実感する./もうひとつ,出版ニュース社の『出版ニュース』誌への「今年の執筆予定」の寄稿依頼あり.これもまた年頭特集らしい.当然あの本とその本を挙げておくべきでしょうなあ(いわゆるひとつの販促として)./締切日がさらさらと過ぎて,自動的にむこうに去っていったと思い込んでいた連載原稿┣┣" が実はそのまま┣┣" まっていた.タダでは去らぬ┣┣" .年明けには必ず出します.1月11日(水)が締切./東大の学位論文審査の日程は来年2月2日(木)14:00〜16:00と確定した./今週末に都内で開催される某総会の議長を依頼されたのでOKの返事をする.打合せのため二時間ほど早く後楽園キャンパスに出向くことになる./来週と再来週の東大「生物統計学」の三点セットを用意完了.玉川大の方は別途考えないといけないな.だいいち両校とも補講(二回分)の日程調整をしないといけない.

—— こうして夕方まで┣┣" まることなく┣┣" 撃ちをし続けたのだが,ぜんぜんゴールが見えてこない.今週金曜のRP成績検討会の資料をつくらないといけないのだが,それは明日まわしにするしかない.

◆夜,ヴェールのような薄い雲の向こう側に丸い月がアヤシく輝いている.明日の朝も氷点下の冷え込みになりそうだ.

◆本日の総歩数=2022歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=93.2kg(+0.6kg)/30.4%(0.0%)


11 december 2011(日)※松戸の森で世俗な中世歌を愛でる

◆午前6時半にのろのろ起床する.今日も朝から快晴で,きりきりと放射冷却し,最低気温はマイナス2.7度まで下がった.午前8時半,演奏会用コスチュームを用意したので,そろそろ出発の準備だ.9:20発のTX快速に乗る.雲ひとつない快晴冬晴れ.日射しはあっても空気は冷たい.車内でもパート譜の確認をし続ける勤勉なワタクシ(練習回数が少ないのでそれだけ追い込まれているということ).新八柱駅に着いたのは午前10時ちょうど.

◆本日のお座敷は —— 松戸シティフィル(→ホームページ)・第23回市民コンサート@松戸市森のホール21(大ホール).メインはカール・オルフの世俗カンタータ〈カルミナ・ブラーナ〉,サブはヨハン・シュトラウスの喜歌劇〈こうもり〉序曲と〈皇帝円舞曲〉(→プログラム詳細).指揮:新井久雄/独唱:澤畑恵美(ソプラノ)・小原啓楼(テノール)・高橋祐樹(バリトン)/合唱:松戸市民コンサート合唱団.

◆事前 —— 午前10時半から大ホールにてステリハ開始.昨日のゲネプロで打楽器の配置はほぼ終わっているので,あとは通し練習での出番の確認と微調整のみ.〈カルミナ・ブラーナ〉は長い曲なので,ステリハでもまだ全体構造のイメージングが終わらない.とにかくパート譜にたくさん書き込みをして,それぞれの「場所」に記憶させるのは記憶術の基本.正午前にステリハ終了.予定時刻よりも早く開場された.開演は一時間後の午後1時半.もう着替えもすんだので,あとは本番を待つのみ.定刻に開演.最初はサブなので,舞台袖にて待機する.覗き見る感じでは一階席はほぼ満席で,二階と三階もだいぶ客が入っている.あとで聞いたところでは,今日の客数は1600名あまりだったとのこと.

◆本番 —— 〈カルミナ・ブラーナ〉を演奏するのは今回が初めてのことだが,グランドピアノ二台だけでもかなりのスペースを占拠するのに,さらに加えて大量の打楽器群が配置される.ティンパニー五台,グロッケン三台,シロフォン一台,小太鼓二台,チューブラーベル,銅鑼,シンバル,トライアングル,大太鼓など.ワタクシの担当は,チューブラーベル,グロッケンシュピール,トライアングル,銅鑼,そしてサスペンダー・シンバルも.カルミナ・ブラーナは一時間もかかる長大な曲だが,ほとんど出ずっぱり.「休符が仕事」の打族としてはめずらしく「音符」のお勤めが多い演奏会だった(逆に弦楽器は「休符」ばっかりで戸惑ったらしい).本番では銅鑼の「音量つまみ」がひとつ上がったかもしれない.

◆事後 —— 午後3時半,〈カルミナ・ブラーナ〉は大きく破綻することなく終了した.ホール入口にて閉会ミーティング.その後,午後6時から新松戸駅前の〈だんまや水産〉にて怒濤の懇親会に突入.〈カルミナ・ブラーナ〉の「酒場にて」そのものの.午後8時過ぎに懇親会を終え,つくばに直帰.今日は夜になってもあまり寒さを感じなかった.

◆明日から二日間は今月に入って初めて農環研に終日実在する.┣┣" 放牧場の管理が行き届かなくて,いったいどこから手をつければいいのかわからない.

◆本日の総歩数=4388歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=92.6kg(−0.9kg)/30.4%(+0.7%)


10 december 2011(土)※皆既月蝕の赤い月が空高く浮かぶ

◆放射冷却と寒気で冷え込んだ今朝はいったん午前4時半に目覚めたものの,氷点下の気温におじけづいて二度寝してしまった.快晴の夜明けは東の空が真紅に染まった.午前6時にやっと本格的起床.最低気温はマイナス3.1度まで下がった.今日はめずらしくつくばに実在する.ずっと放置していた日常┣┣" どもを追い払ったのち,夕刻から〈カルミナ・ブラーナ〉のゲネプロに向かう予定.今夜は皆既月蝕が見られるという.ゲネプロが終わったら松戸の夜空を見上げよう.

◆[欹耳袋]立川の統計数理研究所のサーバーが CRAN のミラー登録されたとのこと.これまでは兵庫とつくばしか国内のミラーサイトがなかったが,東京にも増設されたのはよかった.

◆[蒐書日誌]ヴォイニッチ写本のウェブ公開 —— 『Voynich Manuscript』→ Yale University Beinecke Rare Book and Manuscript Library.以前読んだ:ゲリー・ケネディ,ロブ・チャーチル[松田和也訳]『ヴォイニッチ写本の謎』(2006年1月25日刊行,青土社,東京,ISBN:4-7917-6248-7 → 版元ページ書評)はとてもおもしろかった.

◆今日の日中はつくば実在でゆるゆるうだうだできるかと思っていたら,お買い物┣┣" に引きずり回されて,市内を走りまわった.ランチはお久しぶりの韓国食堂〈白飯家〉にて熱々の参鶏湯をば.最高気温は10.1度で冬らしい冷たさの土曜だった.さて,そろそろ夜の┣┣" 撃ちに出かけるしたくだ.17:20のTX快速にて南流山へ.乗り換えて午後6時ちょうどに武蔵野線・新八柱駅に到着.てくてく歩いて松戸の「森のホール」へ.来る途中,見上げる空にはまだ丸い月が浮かんでいた.対照的に大ホールでは世俗カンタータの舞台セッティングが進んでいた.午後6時半から〈カルミナ・ブラーナ〉のゲネプロ開始.今回の担当は金属系打楽器が中心だが,打楽器が多すぎてあたふたする.あっという間に二時間が過ぎ,ゲネプロ終了.それにしてもたいへんな曲ですなあ.午後11時過ぎにつくば到着.センター広場の上空には,月蝕で大部分が欠けた赤い月がくっきり見えていた.

◆明日は朝からステリハ,午後が本番だ.午前10時に大ホール集合.

◆本日の総歩数=5075歩[うち「しっかり歩数」673歩/10分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=未計測/未計測


9 december 2011(金)※幾度目かの「そうだ京都行こう」

◆午前4時半起床.冷たい雨がしとしと降り続く.気温+3.5度.今日はまたまた京都との瞬間往復移動日.洛南を中心に駆けまわる.紅葉シーズンはもう終わって,観光客も少なくなっていることだろう.氷雨が降り続くセンター広場を通り抜けて駅に向かう.7:56発のTX快速で都内へ.大分に比べたら,今日の鉄路移動ははるかに近いんだけどねえ.午前9時すぎののぞみに乗車.都内は冷たい雨が降り続いている.新横浜駅.外は本降りの雨.明後日に迫ってきた松戸フィルの定期演奏会.カルミナ・ブラーナの総譜読みはなお続くのだった。静岡県は曇り空.こんな空模様ではさすがに富士山は拝めない.西に走るとともに雲の切れ目から青空がのぞくようになった.すっきり青空が広がる名古屋駅.正午前に京都駅に到着.晴れところどころ曇り.観光客の波は去ったかと思いきや,新幹線コンコースは修学旅行の団体で大混雑していた.これから近鉄にて南下する.午後1時過ぎ,最初のミッション完了.日が陰って雲が広がり,吹きつける北風が冷たい.山の方はしぐれているようだ.近鉄で北上しいったん京都に戻る.続いて奈良線で南下.お,また青空が広がってきた.黄檗で下車.しぐれ雨に濡れる万福寺.しかし,すぐに上がって日が射す目まぐるしい空の表情.次なるミッションに向かう.午後3時半に第二のミッションを終え,本日の最終目的地である六地蔵に向かう.しかし,最後のミッションは不発だった.京都駅に戻って,そのまま新幹線ホームへ.午後10時半につくば着.路面が凍りついていて滑りそうになった.明朝はきびしく冷え込むことだろう.

◆本日の総歩数=9023歩[うち「しっかり歩数」1038歩/13分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=93.5kg(0.0kg)/29.7%(+0.2%)


8 december 2011(木)※今日は朝からいつもの都内巡業日

◆午前4時半起床.まだ体中から硫黄の匂いが漂っている.おそるべし,別府温泉パワー.

◆[欹耳袋]別府マップふたつ —— 『もぐもぐマップ』(2011年7月28日刊行,BEPPU PROJECT,別府)と『ふむふむマップ』(2011年10月28日刊行,BEPPU PROJECT,別府 → サイト).いずれも別府で発行されているフリーペーパー『旅手帖beppu』(BEPPU PROJECT → サイト)と連動しているマップ.山田屋旅館でもらった.

◆都内巡業の一日 —— では、今日も元気に都内へ出撃しよう.灰色の曇り空が広がる.いつも通り7:56発のTX快速に乗る.千代田線が遅延したが,代々木上原で快速急行に乗り代えられた.都内は曇天.午前10時前に玉川学園前駅に到着する.日射しのないキャンパスは木々の葉が落ちて見通しがよくなった.講師控え室にてしばし休息.その後,分子系統進化学の高座.今日は,分子系統樹の信頼性評価について,リサンプリング統計学の考え方からブーツストラップ法まで解説した.その後,MEGA 5 を用いた実習.時間があったので,系統樹のコンセンサス計算についても話した.午後1時前に昼の高座終了.

◆[欹耳袋]エリオット・ソーバー[三中信宏訳]『過去を復元する:最節約原理・進化論・推論(新版)』(2010年4月20日刊行,勁草書房,東京,本体価格5,000円,336 pp.,ISBN:978-4-326-10194-8 → コンパニオンサイト紹介目次版元ページ).詳細な「メモ群」の完結.どうもありがとうございます:Masashi’s Web Site Memo@はてなの「感想 1〜8」→ 1〜23〜8

◆都内巡業はなお続く —— 昼下がりの玉川大学キャンパス.うすら寒い曇り空だが.雨はまだ降りだしてはいない.これからランチ移動する.経堂にて途中下車.冷たい雨がぽつぽつ降りだした.はるばるていにて香麺を食べてから.さらに移動する.千駄木下車.冷たい雨が降る不忍通りを南下していつもの潜伏場所である〈結構人ミルクホール〉に潜り込む.三日分の日録をものし,アップロード.午後4時前,雨足がしだいに強まってきたが,これから本郷に向かわないといけない.東大の生物統計学は線形統計モデルとモデル選択論について.赤池弘次の元論文(1973)はどこかにpdfで公開されていなかったかな.午後6時前,本日の高座はすべて終わった.真っ暗な本郷キャンパスはすでに雨が上がっていたが,しだいに寒くなってきたようだ.寄り道せずにつくば直帰.午後7時半に帰り着いた.

◆所内の忘年会がないなーと思っていたら,「自粛ムードにつき」,年末年始の忘年会はやらないらしい.あらまー.でも,ワタクシは「所外」で勝手に忘年会をやるからぜんぜん関係ないけどね.もともと「所内」のことはほとんど念頭に置いていないし.

◆本日の総歩数=5800歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=93.5kg(+1.5kg)/29.5%(+0.3%)


7 december 2011(水)※明礬温泉の最強底力で湯疲れ満点

◆午前4時半に起床してうだうだすごす.午前6時.北浜だったらそろそろ共同湯が開く時間帯だが,同じ別府でも明礬はまだ闇の中にひっそりと眠っている.もうしばらくすれば明礬大橋越しに別府湾の日の出が望めるはず.東の別府湾の空が白んできた.湯けむりに隠れていた小┣┣" どもを一網打尽にしているところ.年末の成績検討会┣┣" が受信箱からぬっと頭をもたげる湯の町の夜明け前.今朝は雲が多かったが,明礬大橋の隙間から昇る朝日を見ることができた.明礬温泉はこの光景がもっとも印象的だ.

◆朝の敗退と帰還 —— 温泉街の共同湯の「鶴寿泉」は午前7時にオープン.しかし朝イチで入ったのが運の尽き.一晩中ずっと浴槽に湛えられた高温源泉(湯元で60度)がぜんぜん冷めていなくて,ほんの十秒も湯舟に浸かっていられない.こりゃ素直に敗退を認めるしかない. 実にもったいないけど,やけどのダメージには代えられない.

◆[欹耳袋]来年3月の生態学会滋賀大会では形態測定学の自由集会が企画されている.ワタクシの噺は:三中信宏「形態測定学の戦略的展開:過去・現在・未来」で確定です.小集会関係者のみなさん,よろしくよろしく.

◆湯けむり巡業の幕は降りて —— 朝食をすませて,午前9時過ぎに山田屋旅館をチェックアウト.温泉街のバス停から別府駅西口へ路線バスで下方移動する.北浜のトキハ前で空港行きのエアライナーに乗り換え,午前11時半に空港着.曇り空で気温は高め.大分では寒さ知らずだった.12:15発のJALは強い西風に煽られて一時間あまりで羽田空港着.つくばに帰り着いたのは午後4時前だった.

◆大きな西日が沈んだ観音台にこっそり出没し,明日の講義準備をする.ほんとうはもっとたくさんの┣┣" がいるのだが,ぜんぜん手がつけられない.それどころか,またしても統計高座をひとつ引き受けてしまったー.それよりも,放置中の┣┣" どもの成長がコワいんですけど……(冷汗).

◆[蒐書日誌]ハインツ・ホライス/矢沢潔/三中信宏/河田雅圭/長野敬『眠れなくなる進化論の話』(技術評論社[知りたいサイエンス105]→ 版元ページ)の見本刷が主のいない研究室に届いていた.とりあえず書影だけスキャン完了.奥付では「2012年1月10日刊行」となっている.

◆本日の総歩数=4787歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=未計測/未計測


6 december 2011(火)※目玉焼き二つで今日もガンバロー

◆午前4時半に起床したものの,なんだかんだでうだうだしてしまう.午前7時過ぎに一階の〈いねや〉にて鯖のみそ焼きの朝食をしっかり食べる.午前9時前に荷物をまとめてチェックアウト.ふたたびスーツケースをごろごろ転がして県庁に向かう.今日もいい天気になりそうだ.

◆[蒐書日誌]アレックス・ローゼンバーグ[東克明・森元良太・渡部鉄兵訳]『科学哲学:なぜ科学が哲学の問題になるのか』(2011年11月刊行,春秋社[シリーズ:現代哲学への招待],東京,ISBN:978-4-393-32322-9 → 版元ページ).ほほー.

◆今日も青空が広がって日射しがほかほかと暖かい大分市街地.県庁のOA実習室内は朝から20度超.外も15度くらいかな.上着不要.午前の講義は一般化線形モデルの解説の続きと変量間の共変動,そして多変量解析の「心」について.

昼休みのランチは県庁近くにある中華料理〈新華園〉にて「焼豚玉子飯」をば.ご飯の上に味付きチャーシューを敷き詰め,さらに目玉焼き二つがトッピングされている.かぼすをたっぷり絞ってからいただく.美味し.これでワンコインとは!〈新華園〉の「焼豚玉子飯」は大盛りを注文すると「目玉3つ」になるらしい!(背徳度マックス).

午後は計算統計学(リサンプリング法)から,ベイズに突入して午後4時過ぎにめでたく大団円を迎えた.関係者のみなさん,どうもお疲れさまでした.

◆明礬温泉の夜は更けて —— 大分県庁から車で別府まで送ってもらう.湯けむりが吹き上がる鉄輪の温泉街を通りすぎ,目指すは明礬温泉の〈山田屋旅館〉.三年前に改装されてから見違えるようなモダンな内装になった.さて,まずはここでしか体験できない「緑礬泉」に浸かってくることにしよう.旅館の館内にはちゃんとフリーの無線LANが張られていてとても快適.温泉ぶくぶく,ネット三昧.

山田屋旅館 の緑礬泉はpH1.7の強酸性.切り傷があるとかなりの拷問になる.熱い源泉が湯舟に引きこまれていて,ぐっとガマンしてつかるのもまた快楽.〈山田屋旅館〉の緑礬泉の注ぎ口.左手の源泉槽に貯められた源泉(60度)がそのまま右の管から湯舟に注ぎ込まれている.確かに緑色をしていることがよくわかる.高温強酸性のぴりぴり感は群馬・草津温泉の泉質と同じだ.

山田屋旅館の今夜の夕食.まずは前菜から.なかなかいい感じ.アルザスのゲヴルツトラミネールがぴったりの相性.山田屋旅館の夕食は続く.牛頬肉のポトフ.スープが実に精緻.山田屋旅館の夕食.そろそろメイン.クリスマス・チキンが運ばれてきた.外側はローストチキン,内側はチキンのひき肉.実に美味ですなあ.明礬温泉のイメージを軽やかに破壊する山田屋旅館にエールを!さて,食後の湯浴みだ.

◆本日の総歩数=2171歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=未計測/未計測


5 december 2011(月)※湯ったり朝風呂三昧して温泉列車

◆いつも通り午前4時半に起床.昨夜は夜更かししてしまったのでまだ眠たい.そういえば,昨夜の寝入りばなにゆらりと揺れた気がしたな.旅館の内風呂で目覚まししてから日録を書いてみたりする.背後の山々が朝焼けに染まる前から湯の町は動き始めていた.駅前の店は午前6時台からすでに営業.共同湯だけではなく,餅屋にパン屋,そして雑貨屋も.朝食前の午前6時半に駅前から少し入ったところにある市営の共同湯〈不老泉〉にて朝風呂をば.こんな早朝から入浴客で賑わっている.一度行ったきりでその後はすっかりご無沙汰しているが,超有名な〈竹瓦温泉〉はオープン前から入浴待ちの客が並んでいたような記憶がある.

◆鉄路で移動 —— 午前8時にチェックアウト.JR別府駅はホテルからすぐそこに見える距離にある.8:10発の各停はがたんごとんと動き出す.ここのところ新幹線にばかり乗っていたから,こういう振動はなつかしい.15分でJR大分駅に到着.今日も穏やかないい天気になりそう.駅ナカにあるロッテリアで「さくさく鳥天バーガー」なる新商品が売られていたが,やはり大分限定なんだろうか.かぼす風味とのこと.大分駅南口で県庁の送迎車をずっと待っていたのだが,念のため段取りを確認したところ,別府駅に送迎車が来ることになっていた.うっかり間違えのポカミス.戦法に謝りの電話を入れて,てくてく歩いて県庁ビルへ.

◆大分湯けむり高座(応用編)の初日 —— OA実習室にて研修のセットアップをして研修開始時刻を待つ.9:30から開始.応用編は線形統計モデルに焦点を当てることにした.モデル選択論に基づく統計モデルの相対的評価,Rの関数「aov」と「lm」によるモデル・フィッティングについて.午前のお座敷を終え,近くの〈ほどじま〉にて日替わりランチ.今日は白身魚のフライだった.日中は上着いらずの暖かさが続いている.昼下がりのOA実習室の現在の室温は24度なんだけど,そろそろ半袖の出番かも〜.午後は一般化線形モデルと「glm」を用いたR実習.応用編はかなりの時間を実習に割くようにしたのだが,反応はどうだろうか.午後4時半,初日の高座を終える.今日は風こそやや冷たかったが,館内はとても暖かかった.

◆健全ナイトライフの道のり —— 県庁からスーツケースをごろごろ転がして,基礎編のときと同じホテル〈フォルツァ大分〉にチェックインして一休み.中央町〈かくれん房・藤や〉にて焼酎のお湯割りとともに炙りホタルイカをば.引き続き,都町〈ちゃんて〉にてクアトロ・フォルマッジオと山桜桃のデュオ.午前9時前にホテルに帰還するというこの上ない健全さ.しかし,別府での湯疲れと県庁での高座疲れと都町の飲み疲れのせいで前後不覚な寝落ちをしてしまった…….

◆本日の総歩数=4280歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=未計測/未計測


4 december 2011(日)※豊後湯けむり巡業は別府温泉から

◆超寝坊して午前7時起床してしまった.外は雲ひとつない快晴で,すでに空高く上がった太陽から朝日がさんさんと降り注いでいる.今朝の最低気温は11.0度.意外に冷え込んでいない.さて,大分湯けむり巡業の後半戦に向けてばたばたと旅支度をしている.数時間後には羽田空港第一ターミナルに実在する予定.

◆[蒐書日誌]「科学」編集部(編)『科学者の本棚:『鉄腕アトム』から『ユークリッド原論』まで』(2011年9月27日刊行,岩波書店,東京, x+264 pp., 本体価格2,600円, ISBN:978-4-00-005212-2 → 版元ページ目次など追加情報)の重版がさっそく決定したとのこと.よしよし.

◆大分湯けむり巡業ふたたび —— 朝から西風が吹き荒れているが,すっきり快晴.午前9時の気温は13.3度で,寒さはぜんぜん感じない.午前9時過ぎにスーツーケースを転がしてTXつくば駅に向かう.9:25発のTX区間快速に乗る.朝なのに睡魔が降臨.根雪のような累積疲労は今回の豊後湯煙旅で解消してしまおう.秋葉原から浜松町へ.都内も快晴,風はなく暖かい.羽田空港第一ターミナルは意外に混んでいる.空港ビル内はとても暖かい.遠景に見える富士山は真っ白に冠雪している.

12:30に羽田を飛び立ったJALは午後2時過ぎに大分空港に着陸.飛行機から見下ろした豊後水道は昼下がりの陽光を鏡のように反射していた.JR別府駅までは空港バスに揺られて移動.気温は15度もあり,とても暖かい.上着は不要.

別府湾をぐるりと回って北浜に到着.別府駅前の旅館〈新ほり井〉にチェックイン.まずは源泉かけ流しのお風呂に入って,長旅の疲れと先月からの累積疲労を癒そう.ここ〈新ほり井〉の温泉は敷地から自噴しているとのこと.大風呂と家族風呂の二つがあってゆったり湯ったり〜.これでビジネスホテル並みに安い宿泊料なのだから言うことないなあ.家族風呂はサイズこそ小さいが,湯船が深くてなかなか快適.

〈新ほり井〉の源泉は成分的には炭酸水素塩泉だが,“金気”や“土気”がするのは別府ではよく体験するタイプのお湯.湯舟の縁に析出物がびっしりと付着していた.北浜エリアでは海岸近くの割烹旅館〈すえよ志〉の湯がものすごく濃厚だ.夕暮れとともにあたりが暗くなってきた.別府での背徳の夜は北浜の〈大和田鮨〉にて関鯖と関鯵などとともに.うますぎて死む.

◆明日は別府から大分までJRで移動し,大分県庁での統計研修(応用編)に向かう.

◆本日の総歩数=5083歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=92.0kg(−0.1kg)/29.2%(+0.3%)


3 december 2011(土)※深夜に起きだして高座の準備開始

◆午前零時に起床し農環研に向かう.冷たい小雨が時おり降る観音台.農林団地入り口の布袋池交差点で深夜の交通事故.一台は前部大破,もう一台は裏返しになっていた.右折車に直進車が突っ込んだのかな.警察の現場検証中.闇夜のつくばは車道がアナーキー.

◆真夜中の研究室にて —— ちょうど半日後に六本木で開催される日本学術会議公開シンポジウム〈いま、ともに、古典(伝統知)に学ぶ意義を、考える:現代文明の危機をのりこえるために〉での噺の準備をしている.深夜の農環研は真っ暗で人気がないのがありがたい.トゥーランガリーラ交響曲が響きわたる丑三つ時の農環研.午前5時過ぎ,講演スライドがやっと完成し,ハンドアウトpdfとともに乃木坂の事務局宛にメール送信完了.今回も滑り込みだった.それがセーフかアウトかは登壇してみれば結果がわかる.ヴィラロボスの〈ブラジル風バッハ・5〉とともに大地がゆらゆら揺れる雨降る明け方.

◆[欹耳袋]日本学術会議公開シンポジウム「いま、ともに、古典(伝統知)に学ぶ意義を、考える-現代文明の危機をのりこえるために-」2011年12月3日(土)13:00〜17:00@日本学術会議講堂(六本木)→日本社会学会ニュース・メール325号

◆午前6時過ぎ,そろそろ農環研から撤収しようかな.次にここに来るのは来週の金曜だ.先月から緊急の京都ミッションが続き,不在率が有意に高まっている.帰宅後,さらに数枚の総括スライドをつくる.たった20分のトークだが,スライド枚数は40枚近くになった.

◆雨の乃木坂にて —— ネクタイなど締めて,午前11時すぎのTXに乗り,正午過ぎに千代田線の乃木坂駅に到着.日本学術会議の建物に入るのは久しぶりのことだ.まずはシンポジウム講演者たちとあいさつを,講堂では野家啓一さんや清水哲郎さんと名刺交換など.午後1時からシンポジウム開始.ワタクシのお勤めを:三中信宏「科学的思考と民俗知識体系の共存:進化するサイエンスの源を振り返る」を無事にすませてほっとしている.あとでまたパネルディスカッションのときに登壇する.このシンポジウムでは,現代人がいかに「古典」に学ぶ姿勢をなくしているかが指摘されている.その傍らで,微小┣┣" どもがどんどん消え去っていく昼下り.午後5時過ぎにシンポジウムだん.外はもう真っ暗だが雨は上がっていた.乃木坂のイタリア料理店〈La Lingua Ochiai〉にてかなり贅沢な懇親会.帰宅したのは午後11時前だった.

◆今日の日本学術会議シンポジウムは人脈がいろいろ広がってたいへん有意義だった.話ができる相手は「外」にもたくさんいることをあらためて実感した.周縁部に生き続けることのシアワセを実感する日々は充実している.しかも,それが中心部から理解されないことがさらに自らをたくましくする.それにしても「印度哲学」な関係者があんなにたくさん集結しているところを初めて目撃した.「達磨」とかほとんど普通名詞だし.“印哲”,おそるべし.また,シンポジウムでワタクシの前の演者がヘブライ語の使い込まれた聖書をめくりながら質疑に応じていたのもかなり衝撃的な光景だった.“ユダヤ”,おそるべし.昨日のシンポジウム報告をベースにして,岩波ジュニア新書を一冊編む計画が立ち上がっている.

◆明日は大分湯けむり巡業(後半戦)に出発する.旅支度は朝やればいいかな.

◆本日の総歩数=8644歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜×.計測値(前回比)=92.1kg(−0.9kg)/28.9%(0.0%)


2 december 2011(金)※筑波山に雪が舞う日は冬眠しよう

◆午前6時前によろよろと起床.冷たい雨が降っている.ぱらぱらと音がしていたのだが,どうやら霰だったらしい.最低気温は2.4度.師走だからといっていきなり寒くならないでほしいな.二日酔いでふらふらするのかと思ったら,どうもそうではなく体調がよくないみたい.そんなわけで昼間はずっと寝たきりになる.日中の最高気温は7.2度までしか上がらなかった.筑波山は初冠雪との情報が届く.明日のシンポジウムの準備がぜんぜんできていないのだが,それは夜中から作業を始めることにしよう.

◆本日の総歩数=0歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝−|昼○|夜○.計測値(前回比)=93.0kg(+1.4kg)/28.9%(0.0%)


1 december 2011(木)※冬本番の寒さの都内をうろうろと

◆深夜の農環研をあとにして帰宅.午前5時前によろよろと起床.北風がひゅーひゅーと吹きすさび,ときどき雨音が混じる.いかにも師走の入りらしい天候.午前5時の気温は6.0度だが,さらに下がっている.今日は朝から玉川学園,夕方は本郷と転戦し,夜はお茶の水でAGF統計研修の打合せ.

◆師走の忘年会予定リスト —— 12月14日(水)東大農学部・専攻忘年会./12月15日(木)生物地理学会事務局忘年会./12月24日(土)東京農大・昆研忘年会.よりによってイヴにやるのかっ!/農環研の領域忘年会はいつなんだろう?(ぜんぜん行ってないからようわからん……)

◆都内出撃の早朝 —— では,今日も元気に出撃しよう.7:56発のTX快速に乗る.曇りどきどき冷たい小雨が降り続いている.気温は5度台の寒さ.千代田線のダイヤ遅延はいつものこと.都内は寒々とした雨空が広がり,道行く人は傘をさしている.やっぱり傘をもってくるべきだったか.代々木上原にて小田急の快速急行に乗り換える.玉川学園前駅.雨足が強くなってきたので,大学購買部で傘を買う.冷たい雨が降りしきるキャンパスは木々からの落葉が進んでいる.今日は行き交う学生さんの数が少ないようだが気のせいか.講師控え室にて一休み.都内の午前10時の気温は7.6度だ.本日の分子系統進化学の講義は最尤法について,尤度計算の詳細を解説して,MEGA 5 を用いた実習をする.

◆背徳カレーの午後 —— 玉川大での講義ののち,下北沢経由で久しぶりに渋谷に出る.雨はもう止んでいる.さらに過激にけばけばしくなった道玄坂を上がって,円山町の〈ムルギー〉にて「卵入り」を注文.最後にこの店に来たのはいったい何年前のことだろう.1970年代はまだ創業者夫婦がいて,真っ暗な店内は一種独特な雰囲気があった.場所も場所だし.しかし,いまは道路側が改装されて窓が付けられ,ずいぶん明るい雰囲気になっていた.営業時間は11:30〜15:00というランチタイムのみ.卵入りムルギーカレーのライスの“標高”は昔よりもやや低くなった気がする.それでも,「ああ,この味だ〜」と昔の記憶がどんどん湧き上がる感覚がいいな.

◆[蒐書日誌]ハインツ・ホライス/矢沢潔/三中信宏/河田雅圭/長野敬『眠れなくなる進化論の話:ダーウィン、ドーキンズから現代進化学まで全部みせます』(2011年12月上旬刊行予定,技術評論社[知りたい!サイエンス],東京,本体価格1,580円,ISBN:9784774149073 → 目次案).アマゾンでは「予約可」となっている.よろしくよろしく.追記:技評サイエンス分室(技術評論社)「『眠れなくなる進化論の話』見本出来 」(2011年12月2日)によれば発売日は12月9日とのこと.

◆昔懐かしの夜 —— 根津の〈Amber〉にてしばし休息.その後,本郷キャンパスに向かい,生物統計学の講義.実験計画法の後半.午後6時前に根津からお茶の水に向かう.JRお茶の水駅を眼下に見下ろす〈八吉〉にてAGF井村氏と打合せ.来年,百人町で統計研修をする予定なので,その打合せをする.という名目で,昔話に花が咲く.ま,東大農学部を卒業して以来の再会なので30年ぶりということか.気がついたら深夜だった.あらら.

◆本日の総歩数=8125歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜×.計測値(前回比)=91.6kg(+0.2kg)/28.9%(+0.1%)


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