● 4月7日(木):では,ご出発〜 / たどり着いたぞー

◇つくばセンターを午前8時50分に発車した「エアポートライナー」バスは,まったく渋滞に遭わず,予定時刻前の10時30分に成田空港第2ターミナルに着いた.気温は高めで,強風が吹いている.

今朝になって花粉症の具合が悪化したようで,早く出国せよとの天の声と受け取る.平日で空いている空港で,旅行者保険の契約を済ませ,事前に申し込んでおいたDoCoMoの海外レンタル携帯電話をブースで受け取り,時計のボタン電池を購入,インターネットコーナーで100円分だけ遊んだりとか,ナンカレーをつまみつつ日録を書いたり ―― なんという余裕か.※いつもかくありたいものだ.

海外レンタル携帯って,端末だけではなく,充電器やらマニュアルやら一式からなるセットなので,意外にかさばるなあ.国内端末のFOMAカードを向こうで入れ替えないと.

◇バスの中で,大屋幸世『蒐書日誌 四』(2003年11月25日刊行,皓星社,ISBN:4-7744-0356-3)を読み始める.買ったのはもちろん新刊で出てすぐのことだったから,1年以上も放置していたことになる.文学や詩の本ばっかりなので,ぼくの守備範囲からいえば完全に out of mark なのだが,著者の“蒐書精神”にはいつも感服しつつ引いている.「そうなりたい」とは思わないものの,脈が通じることは多々ある.※ひょっとしたらすでに「そうなっている」のかもね.

本書では「2002年」の1年間の蒐書記録が綴られているわけだが,そろそろ続刊が出る頃なのかな.これまでの出版間隔からいうとそろそろ出てもいい頃なのだけれど.

それにしても,既刊4巻の『蒐書日誌』をいったいどういう読者が読んでいるのか,そもそもこの本がどのくらい売れているのかイマイチ読めない.メジャーな場所で書評されているようすもないし.しかし,続刊が出ているということは,意外に評判がいいのかもしれない.もちろん,ぼくは新刊が出ればすぐに買うようにしているので,そういう“メタ蒐書”をしている固定客がついているのかも.

◇さて,そろそろパソコンをトランクにぶち込んで,チェックインする時間が近づいてきた.今回のメキシコ行きでは何冊かの「厚い本」を携えてきたので,フライトの間,活字飢餓に苦しむことはありえないー.

―― では,次は彼の地にて.アディオス.アスタ・ルエゴ!(アスタ・マニアーナではない)[12:31]

◇成田を午後3時半に発ったデルタ航空 DL56便は,11時間半をかけて,アメリカ・ジョージア州のアトランタ Hertsfield-Jackson 国際空港に着陸した.機内食でやたらチキンが多かったのは,何か理由があることか? 雨が降りそうな空模様.途中,ユタからコロラドにかけて,雪山が延々と続いていた.トラッジットのためにいったん入国し,またまた検査を受けてから,共同運行乗継便の AeroMexico が出るゲートに向かう.しかし,搭乗まで2時間ほど余裕があるので,広い出発フロアをうろうろしてしまう.両替所でドルをペソに換金したら,“札束”になってしまった.小額紙幣にし過ぎたかもね.ここは,コカコーラとCNNの総本山がある土地なので,もちろん空港にもそれぞれショップが出ていた.

◇本屋で新刊棚を物色する.ほほー,Jared Diamond の新刊『Collapse: How Societies Choose to Fail or Suceed』(2005年刊行,Viking Press,ISBN:0-670-03337-5)が出ていた.ほとんど600頁に達する大著だ.量的には,評判になった前著『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』(上・下,2000年10月02日刊行,草思社,ISBN:4-7942-1005-1[上巻]/ ISBN:4-7942-1006-X[下巻])をもちろん越えている.いま買うとかさばるので,帰りに買うことにしよう./即お買い上げはこちら:John Dunning『The Sign of the Book』(2005年刊行,Scribner,ISBN:0-7432-5505-4).日本でもおなじみになった古書探偵推理小説シリーズの最新刊.訳されているシリーズ既刊のうち,『死の蔵書』と『幻の特装本』に続く『失われし書庫』(2004年12月31日刊行,ハヤカワ文庫,ISBN: 4-15-170408-6)の解説の中で,今回の新刊のことがちらっと触れられていた記憶がある.

◇搭乗ゲートが変更された AeroMexico /デルタ航空共同運行便 DL8077に乗り込むときには,外はもう本降りになっていた.6人がけの機内は「ガラ空き」状態で,みなそれぞれ寝そべって“トド化”している.隣席の日本人の若者はメキシコシティでこれから数ヶ月を暮らすのだそうだ.デルタ航空機内ではアルコールは有料だったせいでソフトドリンクばっかり飲んでいたが,AeroMexico は太っ腹にもテキーラやバーボンのボトルをずらっとワゴンに並べてやってくる.テキーラのストレートをいただいたら効く効く(へろへろ).またチキンの機内食が出された.※鶏に恨まれそう.

4時間あまりのフライトの後,薄暮の中に街の灯がきらめくメキシコシティに着陸.時差1時間なので,こちらの時刻では午後9時に到着したことになる.荷物を受け取ろうとしたら,いろいろな着便が重なっていたらしく,荷物コンベアのまわりがごった返している.広いことも広いのだが,人が多すぎてどーにもこーにも.

◇荷物探しに時間を取られてしまったので,空港タクシーに乗り込んだのはもう10時近かった.空港内であらかじめタクシー券を買ってから,乗り込むという流儀.流儀と言えば,空港にたどり着いてさっそく“チップ文化圏”に来たことを痛感する.タクシー乗り場のガイドにチップ.運転手にも.おかげで(?)混んでいる道をがんがん飛ばしてくれて,30分はかかるはずのホテルまでの道のりを20分で行ってくれた.グラシアス.

機上から見下ろしたときはまだ薄明るかったが,タクシーの窓越しに見える町並みはもう真っ暗で ―― とはいえ,さすが2000万都市というスケール効果なのか,こんな時間帯に人通りは多いし,車の行き来も激しい.第一,ここ,すごく空気が悪いんじゃない? 排気ガスだかなんだかの臭いが充満しているよう.大気の悪さで言えばブダペストに近いものを感じる.

◇たどりついた宿泊先(&今回の会議会場)の Radisson Paraiso Hotel Mexico City は,とても立派なホテルで,窓から見える夜景がすばらしい.さすが中央高原地帯だ.上にも下にも都市が広がっていることがよくわかる.

部屋(717号室)まで案内してくれたボーイさんにもチップを渡し,これにて16時間に及ぶ空の旅は大きなトラブルなく終わった.まだ初日にもなっていないのだが,まずは寝ましょ.いやはや長旅でございました.機中の読破本はいろいろあるのだが,それはまた明日ということで.

◇本日の総歩数=10416歩[うち「しっかり歩数」=2075歩/22分].


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