● 2013年8月2日(金)ドイツ北辺のバルト海沿岸をハンザ特急でロストックへ

◆成田空港到着 —— 午前7時半,予定よりもやや早くバスは成田空港第一ターミナルに到着した.曇り空のすき間に青空がしだいに広がる空模様.気温は20度をやや越える程度で,どちらかと言えば涼しい朝.しかし,こんなに早い時間帯なのに,南ウィングは旅行客で混雑していた.たとえ平日でも夏休みに入ったからこんなものだろう.まずは,ネット予約しておいたグローバルデータのレンタルWiFi機器一式をQLライナーブースで受け取る.今回はドイツ一国のみの旅行だが,北辺の地でもちゃんとつながるだろうか?

ルフトハンザ/全日空のチェックインカウンターも長蛇の列.フライトの二時間前の空港到着なのでけっして時間的には余裕がない.じたばたしてもしかたがないので,フランクフルトに向かうというサッカー少年チームに混じってじっと列に並ぶ.やっと番がまわってきてチェックイン.窓口担当者の話では,この便はすでにエコノミークラスがほぼ満席なので,もしご希望があればビジネスクラスにアップグレードしませんかとの申出.ビジネスクラスなんて初めての体験だし,今後の海外出張でふたたびそういう機会に恵まれる可能性はきっと低いだろうから,たとえ差額を払ってもいいだろうと即断して,二つ返事でOK.初めてビジネスクラスの搭乗券を手にしてどきどき.

出国審査を経て,搭乗まで一時間ほどの空き時間がある.ビジネスクラス利用客はANAラウンジが利用できるとのことで,搭乗ゲートの階下にあるラウンジにおそるおそる入る.をを,軽食ビュッフェあり,ふかふかソファーあり.空港の “ラウンジ” とはこういう楽しい場所だったのか.いつもはエコノミークラスしか利用しないので,これまでまったく知らない世界が眼前に広がっている.そーかそーか.そーだったのか.

◆ルフトハンザ機中にて —— ラウンジで遅めの朝ごはんをすませてゆっくり一休みしたいところだが,搭乗時刻がもう迫っている.後ろ髪引かれまくりで天国ラウンジをあとにして,9:15に搭乗ゲートへ.9:25搭乗開始.そろそろオフにしないとね.機内案内で二階席に誘導された.ファーストクラスとビジネスクラスは二階席,エコノミークラスは一階席と分けられているようだ.何事も初体験.機内食もすばらしい.ワインは全種類制覇.そのあとはスリープシートにしてひと寝入り.らくちんらくちん.ごくたまには(←ココ重要!)こういう空の旅もいいもんだ.

◆ドイツ語の飛び交う飛行機に乗るのは何年ぶりのことだろう.Göttingen で開催された Hennig XVIII に参加したのは1999年だからもう14年も前のことだ.あのときはフランクフルト中央駅から ICE で鉄路移動した.Göttingen の旧市街(Altstadt)は石畳が続く町並みで,傾いた石造りの家が並び,古い教会が点在していた.なかでも St. Albani Kirche は今でもその印象が深く刻まれた教会だった.当時はまだ旅慣れていなかったので,列車に乗って隣の Kassel までしか足を伸ばさなかったが,今回は Deutsche Bahn をもっとたくさん利用したい.

◆あらためて機内を見回すと日本人乗客は観光客が大半のようだ.隣席のおじいさんは東京の木場からツアーで来たと言っていた.フランクフルトから乗り継いで地中海まで飛び,イタリアから南仏の海を一週間かけてシークルーズするとのこと.ええ人生やんか.┣┣" を引き連れてバルト海沿岸をさまようワタクシとは大違い.ワタクシもいつかは Reise ohne Arbeit を心ゆくまで満喫したいものだ.

◆14年前のゲッティンゲン日録を読み返してみたら,当時はモデムを使って国際電話回線でインターネットにつないでいたんだ.確かにあの頃は,行く先々の国ごとに異なる形状の電話回線モデムに合わせて,接続カップラーをいくつも買い求めた.LANが普及したいまからは想像もできないインターネット昔話だ.というか,たかだか十年あまりでこんなに変わるものかという感慨に耽る照明が落とされた暗い機中.

電話回線モデム形状に悩むことはなくなったが,国ごとに異なる電圧と電源プラグ形状のちがいは今でもトラブルのもと.ルフトハンザ機内のプラグ形状は “ドイツ型” だが,持参した差し替えプラグではうまく通電できなかった.あれこれじたばたしていたらスチュワーデスさんが,機内専用の差し替えプラグを貸してくれてやっと問題解決.ひとりで解決しようとしないことが肝要.

—— ルフトハンザ機内では「ワイン全銘柄制覇」を達成した.しかし,Frankenheim Alt という黒っぽいビールがことのほかうまかった.さすがドイツはビールの国だ.

◆ドイツ入国 —— 午後2時前,ルフトハンザ機は予定より早くフランクフルト空港に着陸した.巨大な空港をごろごろ転がること半時間,やっと到着ゲートへ.外気温はなんと32度超……(日本に帰りたい).とりあえず,入国審査やら国内線の荷物検査やらを通過して,ハンブルク行きのゲートA20(A15から変更)までたどり着く.初めて借りたグローバルデータの WiFi が快調に繋がってくれるのはとてもうれしい.その勢いに乗って空港内でビアフェストになだれ込みたいところだが,ワタクシはさらにハンブルクまでのフライトをこなさないといけない.だもんで,ビールの代わりにナミダを呑んで空港内のビアバーの横を目をつむって通りすぎる.なんというアンチ背徳なドイツ到着.16:00にハンブルク行きのルフトハンザが離陸した.

◆ハンブルクでの混沌と喧騒 —— およそ一時間後,ハンブルク空港に着陸.質実剛健そうなスチュワーデスさんとか乗客たちに囲まれて,ドイツの北の中心にたどり着いた.質実剛健といえば,機内や空港のトイレットペーパーもものすごく “質実剛健” だった(いたた……).入国審査はフランクフルト空港ですませてきたので,ハンブルク空港ではスーツケースをピックアップするだけの簡単なお仕事しか残っていない.空港のいたるところでビールジョッキを手にした多くの客がいた.うらやましいと思いつつも,ここで安心してはいけない.先はまだ長い.

さて,空港直結の S-Bahn に乗って,ハンブルク中央駅に向かうとしよう.真っ青な青空の下を走る真っ赤な列車.気温はやっぱり30度近くあるようだが,コワいことに S-Bahn には “空調” という概念が適用されないみたい.外はかんかん照りの真夏日でも,じっとがまんするしかない.大陸的には乾燥して暑いと思っていたのだが,人が多いせいかホームシックにかからないほど蒸し暑い.

◆きわめつけはハンブルク中央駅.ヨーロッパの古い駅舎をそのまま保存した,巨大でとても見栄えのいい建物.何かの映画に出てきそうなレトロな造りの駅舎.しかし,そのダイヤ管理がすばらしく “流動的” だった.事前にトーマス・クックでハンブルクからロストックに向かう「ハンザ特急」のダイヤを確認し,中央駅では掲示されている「黄表紙ダイヤ」でプラットフォームの番線(Gleis)もちゃんと確認したのに,いきなり場内アナウンスで「すまん,ロストック行き列車は30分ほど遅れる.すまん」とドイツ語でダイヤ遅延が流されるのはまだ許せる(よくあること).ダイヤ遅延の間に駅構内のビアスタンドで Hasseröder のピルスナーを飲んで,ハンブルガーなんちゃらというヴルストをかじることができたから.臨時背徳タイム.

ビールをひっかけ,ちょっといい気分で大勢の乗客が渦巻く蒸し風呂のような駅構内に戻ってきたら,いきなり,着く直前になって,「すまん,入線する番線は予定の〈5〉じゃなくって〈8〉に緊急変更.もうすぐ列車が来るんで急いでねー」との案内で大パニック.場内アナウンスは「グライス・アハト(番線8)〜」と連呼しているし,ロストック行きの真っ赤な Regional Express は今まさに入線してくるし,質実剛健なドイツ人たちはどいつもこいつも山のように荷物をもってるし.汗だくで35分遅れのロストック行きREに乗れたときには,マジで日本に帰りたいと思ったしだい.一昔前の国鉄上野駅の喧騒混沌度の拡大バージョン.あれでよくみんな動いているなあ.

【教訓】ハンブルク中央駅ではトーマス・クック時刻表も駅掲示の黄色い発車時刻表もまったく役に立たない.駅入口にある電光掲示板の変更案内をチェックしつつ,場内放送の早口ドイツ語にじっと聞き耳を立てるしかない.英語はここでは公用語ではない.

◆ハンブルク中央駅でのカオスに翻弄されつつ,北辺ドイツの原野(Heide)を満喫しつつ(睡魔に降臨されつつ),ハンブルク中央駅を19:15に発車した RE は,途中遅延を含みつつ午後10時過ぎにロストック中央駅に何とか到達した.時刻表では二時間あまりで着くはずが,今回は三時間近くかかった.さすがに疲れ果てたので,駅前からタクシーで宿泊先のホテルへ.チェックインはすべて自動化されていて,キーの受け渡しも入室も無人対応.ホテルの部屋に入ってまず炭酸水とコーラを合わせて1リットルを一気飲みして水分補給.高緯度ロストックの日没は午後10時.午後11時が過ぎても空は薄明るい.日本からちょうど24時間の長旅の末,やっとゴール.しかし,学会は明日からがスタートだ.

—— ドイツ全土は明日も猛暑が予報されていた.ミュンヘン33度,ロストックも28度が予想最高気温.そんなことを言っててもしかたがないので,そろそろ寝るかー.

◆本日の総歩数=6039歩



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