紐育あたふた日録:2003年7月25日(金)

・今日は気持ちのいい快晴だぞー.本日の天気予報――「Sunny, low humidity. High 85. Plenty of sunshine will fill the sky across the metropolitan region」ですって.実にお出かけ日和ですな.ほほほ.
・さて,イケイケのニューヨーカー初日は(といっても明日帰国なんですけど...),もちろん書店めぐりですな.何が悲しゅうて,自由の女神とかエンパイア・ステートビルに行かんとあかんのん? 本に決まってますな.うはうは徘徊してセントラル・パークで冷たくなっていたらどーするという懸念もなんのその.



・午前9時半にホテルを出る.ん?日射しがちょっと強いんじゃないかなー.行き先は地下鉄レキシントン・アベニュー線急行で一駅南下した14番街/ユニオン・スクエア駅.スクエア南の出口から地上に出てすぐ〈ストランド書店〉が見える.入り口でバッグを預け中に入る.つぶれかけた倉庫ですな,ここは.「体育館」という表現もあるが,ところどころ【廃墟化】していて,ぼくには好ましいのですがね.
・それにしても,こういうところでは最強の〈本の虫〉がさかんに繁殖しているのでしょうね.みんな,抱えきれないほど本を抱え,すでに底が抜けそうなカゴにうはうはとさらに突っ込んでいる.新刊でも半額になっているものがあるし,古書だともっと割り引かれた「Strand price」が設定されている.
・とりあえず「進化」コーナーに直行し,めぼしいものをカゴに積み上げていく...,ありゃ,持ち上がりませんな.あ,20冊以上突っ込んでるやん.こりゃダメダメ.この書店の本領はアート関連の在庫.そこで向かい側の壁一面に広がる美術書と写真集のコーナーへ転戦.ふーむ,とってもご奉仕価格ですこと.リーフェンシュタールの写真集,ヒエロニムス・ボッスの画集,ピーテル・ブリューゲルのデッサン集などなど.あ,またまた持ち上がりませんな.あらら,カゴの脇が割れてる....筋力トレーニングできそうな重さ.レジで会計をすませ,日本への郵送を依頼して,まずは一心地.ほんの十冊程度なのでかわいいもんでしょ.重さはきっと20kgを越えていると思う.
・今度は,地下の書庫に降りていく.ここには【アメリカーナ】というコーナーがあって,何列もの棚がすべてアメリカ関連の書籍で埋められている.お,ジャイルズ・ミルトンの新刊が.それにしても,これじゃあ,まわりきれないじゃないか――と思って時計を見たら午後1時.あれえ,いつの間に3時間以上も過ぎたのかな? フシギフシギ.確かに,一日かけても時間が足りないでしょう.かつて,植草甚一や常盤新平が通い詰めたとのことですが,むべなるかな.アヤシイ本もたくさんありました.
・空調などというしゃれたものはいっさいなく,業務用の強力扇風機がいたるところでぶおんぶおん回っていて,その一角だけは空気が動いているのだが,天井まで積み上がった本棚を越えることはもともとできない.だから,奥まった本棚はたいへん厳しい環境になっている.暑いなー.みんなよくがまんして本を選んでるなー.
・ホテルにいったん戻り,ちょっと休んだ後,今度は同じ地下鉄でレキシントン・アベニューを北上し,アッパー・イースト・サイドへ.ここはセントラル・パークの東隣にあたる.目指すは,73番街にある〈Lennox Hill Bookstore〉.『ブックストア』の主人公が新たに経営している店.
・ところが見つからない.ストランドやバーンズ・アンド・ノーブルみたいな間口を想定したのがまちがい.ほんとに小さな本屋でした.品揃えのしかたがおもしろい.それぞれの本に「推薦者名」タグが付けられている:「Jannette Watson recommends」とか.奥の棚は詩集だが,「本の本(books on books)」が目立つのが特徴かな.みごとに釣られて買ってしまいました――D.B. Updyke『The Well-made Book: Essays and Lectures』(2002年,Mark Batty, N.Y., ISBN: 0-9715687-4-X)とPaul Collins『Sixpence House: Lost in a Town of Books』(2003年,Bloomsbury, N.Y., ISBN: 1-58234-284-9).ほんの2冊の本の本.



・ここまで北上したからには,巨漢?巨艦・アメリカ自然史博物館を一目見てやろうとセントラル・パークに迷いこんだのが敗因.この錯綜した歩道はいったい....とにかくまっすぐの道がない.おまけに中に入ってみるとうっそうとした森があったりして,遠景が見通せない.こりゃ心得違いでしたかねえ.暑いは迷うはで懲りました.土曜日だからか,ほとんどハダカの状態の人々がたくさんいました.
・で,こういう休日だからか,アメリカ自然史博物館はチケット・カウンターが長蛇の列.こりゃたまらん,ということで,玄関ホールの恐竜さんにあいさつしただけで退散〜.



・でもって,またセントラル・パークで迷子になって(学習しろよっ),ひたすらてくてく歩いて気がつけば,もう夕方6時.今日は9時間近くも歩き回っているではないか.セントラル・パーク・サウスをまわり(途中,Argosy Booksを発見.ここでも食指がぴくぴく動いたが),再びレキシントン・アベニュー線に乗り込んで,いつものマーケットで買い物をして,ホテルに帰還.たいへん疲れましたでございますわ.
・トランクに帰りの荷物を詰め込んだり,日録を書いたりしていたら,もう午前1時過ぎ.明日(いや,もう今日か...)は早起きしなければ.
・本日の総歩数=11956歩.
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