紐育あたふた日録:2003年7月23日(水)

・未明に窓の外を見ると,地面が濡れていた.夜の間も降り続いたようだ.ホテルの隣室とはドア1枚で隔てられているだけで(きっと家族で使うときは二部屋続きにするのだろうが),お隣さんの物音はよく聞こえる(逆もまた真なり).備えつけのアラームが警報機のようなでかい音を出すので,隣までも有効な目覚ましになっている.(おーい,早朝からテレビ・ドラマを見ないでー>お隣さん)



・このホテル,多少古びてはいるけど,落ち着ける.でも正規の宿泊料金(朝食なし)がUS$300.00というのは高過ぎないかねえ.インターネット経由で学会割引してもらっているから,その半額程度ですんでいるけどね.
・こういう学会大会に来ると(日本の国内でもそうだけど),たいていホテルと学会会場とのピストン運動を毎日繰り返すので,なかなか非日常を満喫するというわけにはいかない.その割には十分に愉しんでいるようではないかという指摘もあるのだが,それはもって生まれたキャラクターということでして....
・外を見ると土砂降り....出かけたくないぞ.
・ニューヨーク植物園は Willi Hennig Society の第1回年次大会が開催された場所だ(1980年).『Advances in Cladistics』(1981年,New York Botanical Garden)は,そのときの講演に基づいて編まれた論文集.第2回年次大会の講演もコロンビア大学から出版されているので(『Advances in Cladistics, Volume 2』),ニューヨークはこの学会が生まれ育った本拠地ということになる.
・よくも悪くも党派性の強い学会で,founding fathersの何人かは,だいぶ前からすでに顔を出さ[せ]なくなっている.David Hullがこの学会(およびかつてのSociety of Systematic Zoology)での闘争の知見を踏まえて書いた『Science as a Process』(1988)では,小さな研究者グループが科学の中でいかにして大きなインパクトを与えるアクターとして機能するかという点が繰り返し強調されている.この結論,どれくらい一般化できるのか.
・晴れてきたと思ったら,堪えがたい湿度が――もっとも「あってほしくない」天候.やばいな,こりゃ.新聞の天気予報によると,停滞前線がニューヨークの西部にいすわっているからだとか.
真綿ジェリービーンズの同時攻撃を受けつつ,植物園に向かう.午前中は〈環形動物の系統〉シンポジウムで,またヒルがのたうつビデオ画像が映されるに決まっている.いやだー,眼球にはりつかないでぇ;ふくらはぎに何匹もくっつかないでー;ゆらゆらと鎌首ふらないで〜.想像しただけで鳥肌(さぶいぼ)が立ってくる.ヒルに血を吸わせる民間療法なんか絶対にいやだあ.分子系統に基づく研究は着々と進んでいるようす.午後は一般講演とポスター発表.
・植物園内を歩いてみる――ブロンクス川に沿ってこの地域の原生林を保存したという一角がある.「一角」とはいえものすごく広い.いろいろな針葉樹が見られるが,日本からもちこまれたマツもあった.木っ端が敷き詰められた歩道は意外に起伏があり,一回りする間にもう暑くて閉口した.何とかしてほしいなあ.
・朝から腹の調子がイマイチで,きっと食欲に負けたからだろうと自己批判だけはいくらでもするものの,なったものはしかたがない.バンケットはパスすることにして,いつものようにグランド・セントラル・マーケットで,クランベリーのパン,トルティーリャ,マンゴ,そして少しホットなオリーヴ・ピクルスをお買い上げ.※「イマイチ」な腹調子とはとても思えない....
・ホテルで講演原稿を仕上げる.T-Timeだと別マシンでは心配なので,急遽pdfにすることにした.InDesignに画像とテキストを貼りこんでpdfに落とす.フルスクリーン表示だから,最初から横置き設定にしないといけないかな.〈Bogen〉デモ用のノートパソコンに説明用のpdfファイルをコピーするのは,明日の昼休みに山本・浅野両氏と打合せするときで大丈夫だろう.
・『A Rum Affair』読み進む――Heslop Harrison先生,Raven探偵に追い詰められてもう万事窮すのはずなのだが,ストーリーはまだまだ続く.『Library』――ひょっとして図書館エッセイとしてはいい本かもしれない.ハーバード大学の図書館に勤める著者がウンチク傾けまくるという内容.カバージャケットの意匠が財布のヒモを緩めさせている.
・体調(腹調)イマイチの割にはエンジョイしてるやん.明日は最終日,午後が発表です.
・本日の総歩数=10894歩.
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