● 7月20日(火):飛んで火に入る夏の蟲はいなかった

◇やはり午前3時頃に目が覚める.国内外を問わず生活時間が同期してしまうというのは,げに恐るべし.今朝はビュフォン先生とともに起床するか.

―― 一昨日の Grande Galerie での歓迎パーティの前に博物館の書籍部に立ち寄った.外壁にラマルクとビュフォンのプレートが掲げられている.今は書籍部となっているこの建物にビュフォンは1778年4月に死ぬまで住み続け,後のラマルクもまた30年あまりをこの建物で過ごしたのち1829年の暮れに亡くなったそうだ.ゴッホの言葉じゃないけれど,死者は記憶されているかぎり現世に生き続けるということか.ジャック・ロジェのビュフォン伝が平積みされていた(この本,英訳よりも日本語訳の方がずっと前だった).

―― Grande Galerie はもともと動物学博物館だったのを大改装して,1994年に真相オープンしたという.動物学博物館を真っ正面から撮影してみると,ど真ん中にあるブロンズ像の背中がとても気になる.誰かと思えばこれがビュフォンさん.二百年あまりもここに座ってミュージアムを見続けているということか.

◇未明からホテルの窓を開けているが,燈火があるのに蚊も蝿も蛾もなにひとつ飛んでこない.こちらでは当然のことなのだろうが,“亜熱帯”日本から来た旅人には多いに違和感がある.要するに昆虫相が貧困? ミュージアムのコレクションとは負の相関?(因果関係はないとしても)

◇カフェオレとクロワッサンの朝食をすませ,トークの準備をなお続ける.※往生際が悪いというか,往生するほど用意してこなかったというか.まったくぅ.

―― 今日はからっと快晴のようだ.とても爽やか.もう少しホテルでドロナワしましょう.

◇今日の午前中のセッションは〈Macroevolutionary patterns of character transformations〉.午後は〈Epistemology and cladistics〉.けだるい昼下がりの Popper はいかが.

◇ランチはサンジェルマン大通りのはずれ,メトロ10号線のMaubert Mutualité 駅近くにある〈Vartan〉にて昼定食をば.ここってひょっとしていわゆる【国籍混交】状態なのかも.日本人がフランスに来てたどり着いた店で,ロシア語も大丈夫なおじさんウェイターを前にフランス語のメニューを眺めつつ,半ば英語で尋ねながら,隣りのドイツ人家族を横目に見つつ注文するのはパリではめずらしいアルメニア料理.エジプト豆のピュレ〈ウモス(Houmous)〉をバゲットに塗ってはかじる.メインの〈ムサカ(Mousaka)〉はギリシャ料理として有名,パトラス港の食堂で食べて息絶えた時よりはあっさりした味つけで,付け合わせの米と挽き割り麦を挽き肉と混ぜながら食べると美味(久しぶりの米の飯).テーブルに出てくるワインは,クレタ島産のギリシャ・ワイン Kourtaki だったりする.仕上げはシナモン風味のプリンと濃いめのトルコ風珈琲 ―― さて,以上の文中でいったい何ヶ国の名前があがっているだろうか?

◇神殿のような巨大なソルボンヌ大学の校舎には圧倒されました.大学を取り巻くこのあたりまで来ると,書店がたくさん並んでいる.ふだんならば立ち寄らないわけがないのだが,今日はぐっと堪えて,見ないフリをする.本屋なんかありません.古書店なんか見えません.

◇乾いて暑いので,Evian やら Perrier の大量摂取に励む.※単に体内を通過しているだけとは知りつつ.

◇ダブルブッキングのまま固まっていた8月末の件は,まりまりWSを後にずらすということで方針が決まった.で,当のお方はベルリンに海外逃亡を計るとのこと.※みんなみんな外国に逃げてしまう.

◇ドロナワは伸びるよ,どこまでも.※早くケリをつけなさいね>ぼく.

◇本日の総歩数=7561歩[うち「しっかり歩数」=2161歩/20分].


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