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日録2016年1月 


31 januari 2016(日)※暖かい昼下りの背徳へ

◆午前5時過ぎ起床.気温0.2度.米とぎ.早朝は氷点下1.8度まで下がったが,ひさしぶりの朝日は心地よし.今日は自治会の総会に出席してから,〈モルゲン〉とか〈コーヒーファクトリー〉とか市内をあちこちうろうろ徘徊する予定.

◆[系統樹曼荼羅]本日の集音:読書メーター・15deossan(2016年1月17日).

◆午前9時半から始まった自治会総会は午前11時半に終わった.北風もなく乾いた冬空が広がっている.午前11時の気温は7.7度.お昼時の〈モルゲン〉は混雑の極みだったが,かろうじて食パンをゲットし,ついでに〈コーヒーファクトリー〉にて珈琲豆も調達した.これから日頃の悪行の禊のため断髪へ.昼下りのつくばは気温が10度を超えてひさしぶりに暖かくなってきた.

◆[欹耳袋]東洋経済オンライン「「日本は努力次第で上に行ける平等社会だ」 学生支援機構トップが奨学金制度批判に苦言」(2016年1月28日)※日本学生支援機構・遠藤理事長インタビュー(前篇)|東洋経済オンライン「奨学金「貧困問題」、最大の責任者は誰なのか 返せない人は一部の大学に集中している」(2016年1月30日)※日本学生支援機構・遠藤理事長インタビュー(後篇)— 他人事みたいに好き放題なことを言っていてどうにもならん.

◆アカン街・つくば(続編)— 西平塚〈da Dada〉を昼下りに襲撃した.当然お客はひとりもいない午後3時.それにしても真っ昼間から酩酊系日本酒が供されるようでは,つくばはもうアカンすぎる.今日の標的は〈竹鶴〉場外編「vinaiOTATSUYA」八反錦無濾過純米生原酒.アルコール度数21度,日本酒度+22度.竹鶴酒造の原酒のタンクひとつを太田社長が買ったとのことで,完全なるプライベートラベルらしい.これを加水したものは〈秘幻〉の銘柄で市場に出回るとのこと.アレの原酒だったとは.熱燗でどーぞ.あ,もちろん,つくばのこの店でしか飲めないみたいなのでご注意を.もうアカンすぎて言葉もない.

◆気がつけば今月はもうおしまい.来月は東奔西走月間と名付けたい.

◇本日の総歩数=15454歩. 朝◯|昼−|夜△. 計測値(前回比)= 93.5kg(+0.5kg)/ 30.7%(+0.6%)


30 januari 2016(土)※雪がちらつく寒々しさ

◆午前6時起床.けっきょく雪にはならず,雨も上がっている.気温は1.5度.しかし,また雨が降り出し,午前9時にはいちおう雪になった.気温は1.2度.

◆[欹耳袋]生態学会仙台大会のお愉しみ —— フォーラム〈ビブリオバトル@生態学会2016仙台〉3月21日(12:15〜), 22, 24日(11:45〜) @RoomE./自由集会〈生態学における英語化を考える〉3月23日(15:30〜17:30)@RoomF .施光恒『英語化は愚民化:日本の国力が地に落ちる』(2015年7月22日刊行,集英社[集英社新書・0795A], 東京, 254 pp., ISBN:978-4-08-720795-8 → 版元ページ)の著者が登場.

◆ゆく┣┣" くる┣┣" —— そんなこんなで,水面下進行中のワルダクミは弥生三月に開催される方向で話が進んでいる.善哉善哉.で,あさりんセンセから朝の加圧メール(汗).

◆ついにアカン “お水” が手に入ってしまいました:久保本家酒造〈生酛のどぶ〉26BY仕込14号生原酒.ガス抜き栓から染み出す日本酒の香り.こういうアカン “お水” は関西に出撃したときだけにとどめておいたのに,つくばで好き放題に買えるようではもうアカン.社会復帰は遠のいた.いつ開栓するの? そりゃ今日でしょ.

◆お昼前に雨は止んだが,陰鬱な曇り空が広がる.湿った寒気に包まれて気温はいっこうに上がらず.今日のランチは吉瀬の〈ナチュカフェ〉にてポークソテーを.

◆[欹耳袋]ムチャぶりはケガのもと —— 日本経済新聞「大学入試新テスト、複数回見送り 文科省「日程に難」」(2016年1月29日)※「文科省は記述式問題などの導入により「複数回実施の狙いが相当程度実現すると考えられる」と説明」— 落としどころを探してるわけね./NHK NewsWeb「大学入試新テスト 年複数回実施見送りへ」※「記述式の問題の採点などに最長で60日程度かかるという試算」「高校の授業日程への影響や、試験会場となる大学側の負担、それに問題の難易度を平準化できるのか」./今朝の朝日新聞朝刊記事「センター後継の複数回実施 文科省 引き続き検討」(2016年1月30日).有識者会議での南風原朝和意見:「記述式導入について「採点の基準作りや労力の確保が課題.採点基準を単純化するほど多様な解答の評価が難しくなり,本末転倒だ」と反対した」.

◆最高気温4.7度の寒々しい日中だったが,日が暮れてからも気温はさらに低下している.アカン日本酒に引きずられてアカン肴が食卓に.仕込んで三日目のおでんは気分一新にリニューアル.秩父にごり酒と〈風の森〉酒粕を添加して「酒粕おでん」として復活した.酒粕おでんにはセリが必須だ.そして和辛子ではなく柚子胡椒がベター.開栓直後の〈生酛のどぶ〉をまずは冷酒で.今回は瓶火入れではなく生原酒を選んだので,炭酸ガス感がすばらしい.続いて熱燗でビシっとキメる.+13の辛口にごり酒はめったにないので,燗酒もすっと線が通るキレの良さ..酒尽くしのアカン夜は更けてゆく. シメはいつもの「親が多めの親子丼」の小丼でした.酒尽くしのアカン夜は更けてゆく.次なる登攀は同じ久保本家酒造の〈睡龍〉だが,これまたつくばで自由に買えるようになってしまって,社会復帰の道は遠のくばかり.こら,もうアカンで.

◆アカン “お水” に水没したまま寝るん〜♫•*¨*•.¸¸♪ 明日は月末の日曜日だが,┣┣" が数頭待ち構えている.

◇本日の総歩数=1641歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.0kg(0.0kg)/ 30.1%(−0.9%)


29 januari 2016(金)※またしても雨から雪か

◆午前6時前のろのろ起床.いまの気温6.4度とは高すぎる.しかし,今日は雨から雪になるそうな.をを,一大事のワルダクミが突発的に発生.方々にメールしまくる早朝.冷え込みが緩んだ観音台は曇り空からときおり小雨が降る空模様.午前8時の気温は変化なく6.8度.予報ではこれから日中にかけて気温はさらに下がるとのこと.

◆[欹耳袋]本日の驚愕 —— 「リケジョ」は講談社の登録商標だった! したがって,今後は「リケジョ®」って書かないと怒られるぞ(笑)→ 講談社 Rikejo講談社Rikejo 公式アカウント.リケジョを旗振りしている一方で,『あの日』とか売り出してるし,なんだかもう…….

◆午前の┣┣" 撃ち —— 早朝の乱入┣┣" に関係しそうに面々にメールを次々と放つ.日程的資金的に問題ないようなので,実にすばらしい展開になりそうである.ワルダクミはかくあらねばならぬ./その余勢をかって別件の停滞┣┣" も今日中に成敗しよう./玉川大学の提出レポートがすべて届いたので,さくっと成績評価とオンライン入力.学務関係のお仕事はこれですべておしまい./最後の白羽の矢を放った.

◆曇り空のままお昼を迎える.午前11時の気温は6.8度とぜんぜん変化なし.西からは雨雲だか雪雲だかがどんどんやってきているはずなんだが,今のところは何も降っていない.正午過ぎ,やっと雨が降りだした.気温は5.8度.

◆午後の┣┣" 撃ち —— ふたたび会計入力システムと格闘./年度末事務作業の有形無形プレッシャーを実感する加圧の日々が続く./邪悪なる?会計システムとの大格闘を終え,RP経費から研究交付金の果てまで発注しまくって,やっと一息ついた.来月から会計システムの仕様が変わるらしくて(たった二ヶ月のイノチなのに),そんな末期的な変更に付き合うのはイヤなので,今月中に決済できる案件にはすべてケリをつけたしだい.予算残額はもうほんのわずかになってしまった./外は雨がしとしと降り続いているが,午後3時に気温3.9度なので,まだ雪にはならない./最後の白羽の矢は無事に奈良に到達したようで,OKとの返事あり.これでオモテの方の┣┣" はやっとケリがつきそうだ./短期間に多くの┣┣" どもを成敗して,引かれた赤線が増えすぎたので,半月も経たないうちに早くも┣┣" 撃ちカレンダーをアップデートすることになった.

◆[蒐書日誌]厚くて高い本たち —— 手代木求『世界のタテハチョウ図鑑:卵・幼虫・蛹・成虫・食草』(2016年1月25日刊行,北海道大学出版会,札幌, 566 pp., 本体価格32,000円[2016年3月31日までの特価30,000円], ISBN:978-4-8329-8223-9 → 版元ページ)※カラー図版いっぱいで「566ページ」もあって「たった32,000円」ということは,印刷部数がかなり多いんだろうなあ./こりゃまた電話帳だ:David Moore, Geoffrey D. Robson, and Anthony P. J. Trinci [堀越孝雄・清水公徳・白坂憲章・鈴木彰・田中千尋・服部力・山中高史訳訳]『現代菌類学大鑑』(2016年2月29日刊行予定,共立出版,東京, 744pp., 本体価格20,000円, ISBN:978-4-320-05721-0 → 版元ページ)※744ページで本体価格たった20,000円だ.

◆雨夜(not 雪夜)の┣┣" 撃ち —— 朝からのワルダクミは水面下で着々と進行しているん.ワルいことの方がうきうきするのはどーしたことか.

◆[欹耳袋]〈酒フェス2016〉第1回:スパークリング日本酒※「微発砲で美味しい上、アルコール度数が低く女性には飲みやすい」そうだが,「すぐバクハツする高アルコール度数の日本酒」は?

◆いつまで待っても雨のママなので,これはもう寝るしかないん.

◇本日の総歩数=4760歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.0kg(−0.3kg)/ 31.0%(−0.1%)


28 januari 2016(木)※夕暮れの神楽坂を歩く

◆午前5時半起床.いまの最低気温は氷点下2.6度.ひさしぶりに冷え込まなかった観音台はすでに氷点を超えている.天気予報では昨日よりも暖かくなるらしい.今日は何となく「ふんがー」なんだけど,いやなアノ季節が忍び寄ってきたのだろーか

◆[欹耳袋]日本経済新聞「大学入試改革、複数回テスト見送り 文科省検討」(2016年1月27日)※単発だったら「記述試験」はオッケーって?(マジですか)/朝日新聞デジタル「農業高校、女子が5割目前 ペット飼育・料理…授業充実」(2016年1月28日)※「農家が減って志願者も減少。指導要領を改め、料理や花の装飾の仕方、犬など小動物の育て方を学ぶ授業を充実させることになった」

◆午前の┣┣" 撃ち —— とある店の情報がわからなかったのだが,以前行ったときの箸袋がたまたま見つかり,そこにすべてが書かれていた.紙片,侮るべからず.ワタクシの知人の途上国リテラシー問題研究者は「書かれたものは読まれるためにそこにある.だからすべて読む」と言っていたことを思い出した./先日の大寒波のせいか,自宅の “鼠” ばかりか研究室の “鼠” までご臨終されてしまったようだ./帯広モール泉に沈む前に,ワタクシは橿原神宮にて神罰をくだされたあげく,西に飛ばされ馬刺しと酒池肉林の刑を受け,最後は犬山城でおサルさんと暮らすことになっている

◆[欹耳袋]系統学的多様性(PD)尺度の多様性を検討する —— Caroline M. Tucker et al. 2016. A guide to phylogenetic metrics for conservation, community ecology and macroecology. Biological Reviews. First published: 20 January 2016. DOI: 10.1111/brv.12252View/save citation.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 来月の東奔西走の事務的なことはだいたい終わったが,出先での高座の切り盛りについてはまだ残務┣┣" どもが吠えている.奈良と熊本はOK.犬山はこれからか.帯広はまず出張依頼を観音台に送っていただかないことには所内手続きが進まない.年度末┣┣" 撃ちスゴロクは錯綜している./犬山や帯広にメールを出しまくっている.

◆午後4時過ぎ,つくば駅.午後の最高気温は13.7度.ひさしぶりの暖かい日差しと南風が吹く一日だった.午後6時前,神楽坂着.夕闇の仄暗い坂道の両側で,お店のあかりがひとつまたひとつと灯っていく.いつもながら魅惑的な場所である.しかし,今宵のお仕事は東京理科大(神楽坂キャンパス)にて日本計量生物学会対面理事会.午後7時過ぎに終わったが,残念無念のつくば直帰である.でなかったらパラダイスなのにね〜.午後9時過ぎ,つくば帰還.気温は3.5度.暖かい夜だねぇ.遅い晩ごはんはおでん&にごり酒の炭酸割り.後ろ髪を引かれまくった “神楽坂” との落差はあまりにも大きい…….

◆[欹耳袋]日本サイエンスコミュニケーション協会「魅せられた航海~ダ―ウィンと進化論をめぐる四日間〜」2016年2月11日(木)〜14日(日)@ダーウィンルーム(世田谷).

◆明日から週末にかけては雪が降るとの予報.今年は暖冬暖冬と言っている割には,けっこうよく雪空になるな.むむ寝るん〜♫•*¨*•.¸¸♪

◇本日の総歩数=9481歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.3kg(+0.1kg)/ 31.1%(−0.4%)


27 januari 2016(水)※寒気の底から生還する

◆午前5時半起床.いまの最低気温は氷点下5.0度.冬晴れの観音台は昨日よりも日差しが暖かいような.

◆[欹耳袋]NHK NewsWeb「News Up 便利な「パワポ」にNGの動き?」(2016年1月26日)※おせち料理や幕の内弁当みたいな “ぎゅうぎゅう詰め” のスライドは見たくないなあ.

◆本日の┣┣" 撃ち —— Alan de Queiroz 2014. The Monkey’s Voyage 書評公開:leeswijzer「Gary Was Not So Bad a Guy, or a Rape of History」(2016年1月26日)./所議報告&領域会議 10:30〜11:30./日本計量生物学会大会@統数研のウェブ参加申込完了.

◆[蒐書日誌]データの定量化と情報の視覚化をめぐる認知心理の問題 —— Scott Slovic and Paul Slovic (eds.)『Numbers and Nerves: Information, Emotion, and Meaning in a World of Data』(2015年10月刊行, Oregon State University Press, Corvallis, xxiv+238 pp., ISBN:978-0-87071-776-5 [pbk] → 目次版元ページ).

◆[欹耳袋]吹奏楽fun☆music公式ブログ「音楽を学ぶ者に立ちはだかる現実の壁。」(2016年1月25日)※研究者世界のパラレルワールドを見ている気がする./政策作ってる人のブログ「生きる力と同調圧力」(2016年1月25日)※「一人でやるよりみんなでやる方が評価される。ここに、学校生活の息苦しさ、日本社会の同調圧力が見事に表れている」— みんな,タイヘンなんやなぁ./docbase という情報共有ツールがあるのか./エルの楽園「日本酒は水で薄めて飲んでいい」(2016年1月26日)※ “お水” にはお水をお供に.

◆今日は凍てつくような寒さからは解放された.明日はさらに暖かくなるらしい.

◇本日の総歩数=4893歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.2kg(−0.1kg)/ 31.5%(−0.3%)


26 januari 2016(火)※年越し書評を仕上げて

◆午前5時起床.いまの最低気温は氷点下5.8度.まだまだ下がりそう.朝焼けグラデーション.現在の最低気温は氷点下6.2度.もっと下がりそう.凍てつく観音台なう.今朝の最低気温は氷点下6.3度だった.寒い朝の居室は足元暖房オンが一日の始まり.

◆[欹耳袋]2016年度日本計量生物学会年会【期日】2016年3月18日(金)〜19日(土)【場所】統計数理研究所(立川市)→ 大会ウェブサイトが開設されている.

◆本日の┣┣" 撃ち —— 来月の┣┣" 撃ちカレンダー更新.三泊四日の遠出が四回もある./書評原稿5,320字だん.ふう.読み終えた本の感想メモは忘れないうちに書き留めること./書評文をちょいと書き足して6,012字になった.これでもういいかな.ということで,やっと公開できる.

◆[蒐書日誌]「Gary Was Not So Bad a Guy, or a Rape of History」 —— Alan de Queiroz『The Monkey’s Voyage: How Improbable Journeys Shaped the History of Life』(2014年1月7日刊行,Basic Books, New York, viii+360 pp., ISBN:978-0-465-02051-5 [hbk] → 目次版元ページ特設ページ|著者ブログ〈The Monkey's Voyage〉|書評リスト).本書の著者は,爬虫両生類学(herpetology)を専門とする進化学者の観点から,われわれの常識をはるかに越えた長距離分散能力を生物がもち,それが今日の地理的分布を形成してきた主たる要因であると主張する.本書にはさまざまな生物の驚異的な分散能力に関する研究とそれらに関わった研究者群像がいきいきと描き出されている.本書は,現代生物地理研究の最前線をたどる “物語” として読むかぎり,とても楽しい内容である.

まず全体の構成を見ていこう.最初の第1部「Earth and Life」(pp. 21-112)は,Charles Darwin や Alfred R. Wallace が活躍した19世紀前半の生物地理学の黎明期から説き起こす.20世紀に入り,Alfred Wegener の大陸移動説あるいは当時流行した陸橋(land bridge)説を経由して,1970年代以降に興隆した分断生物地理学(vicariance biogeography)と汎生物地理学(panbiogeography)とそれ以前の分散生物地理学(dispersal biogeography)に絡む生物体系学・生物地理学の論争へと進む.本書全体を通じて通奏低音として「分散 vs. 分断」(vicariance vs. dispersal)の論争が鳴り響く.著者は「ネオ分散主義(neo-dispersalism)」のスタンスを一貫して標榜する.

続く第2部「Trees and Time」(pp. 113-148)では,DNA塩基配列情報に基づく分子系統樹の年代推定の理論とその有用性が解説される.著者は,本書全体を通じて,分子データと化石較正による時間スケールが刻まれた「時間系統樹(timetree)」をよりどころとして議論を進める.確かに,多くの仮定を置かねばならないが,時間軸をもった系統樹を利用することにより,生物地理研究は格段に進んだことはまちがいないだろう.本書の後半ではその研究成果が取り上げられる.

本書の中核となるのは,次の第3部「The Improbable, the Rare, the Mysterious, and the Miraculous」(pp. 149-253)だ.マメ科やウリ科植物が海を越えて長距離分散してきたという研究事例(pp. 155 ff.),アフリカ西部の孤島サントメ・プリンシペに生息するカエルがコンゴ川から流出した浮島に乗って海流に流されて漂着したというケース(pp. 187 ff.),同様に,大西洋上の島に分布するアシナシイモリは距離的に近い南米からではなくもっと遠いアフリカから海流とともにやってきたという例(pp. 203 ff.),そして,南米のサル類はアフリカから島伝いに長距離分散してきたのではないかという仮説(pp. 207 ff.)などなど,分類群を問わず,生物が示す長距離分散のみごとな事例がいくつも示されている.

最後の第4部「Transformations」(pp. 255-304)では,さまざまな長距離分散の事例を踏まえて,歴史生物地理学の考え方の根幹を再考すべきだとの著者の主張が再確認される.すなわち,1970年代以降の「分散 vs. 分断」論争は分岐学(クラディスティクス)という邪悪な学説に毒された分断主義者の悪しき “ドグマ” が支配する暗黒時代の象徴であり,新ミレニアムに燦然と輝く分子データのもとでは長距離分散こそ新たな data-driven パラダイムにほかならない,と.

著者の滑舌が紡ぎだす “物語” に感銘を受ける読者はきっと少なくないだろう.実際,本書はいくつかの新聞,雑誌,ブログなどで書評紹介されている(→ 書評リスト)ところをみると,好意的に読まれているのかもしれない.

けれども,しごく雄弁な “物語” が根拠のある “歴史” であるとは必ずしもいえない.

著者は,最初から「分散 vs. 分断」論争を生物地理学的なプロセスの問題にすりかえている.分断主義が大陸移動のような地史的プロセスを重視したのに対し,分散主義は生物のもつ長距離移動という確率的プロセスを重視する.DNAデータに基づく分岐年代推定によれば,地史的イベントと系統発生とは必ずしも一致しないのだから,分断主義の主張には根拠がない.だから,分散主義に頼ろう — このロジックのもとでは “奇跡” としての長距離分散プロセスがつねに要請されることになる.長距離分散の反証可能性? ワタクシが本書を読んだかぎり,著者はそういうめんどうくさいことはまったく念頭にないようだ.

しかし,ワタクシが理解する「分散 vs. 分断」論争は単にプロセスの問題ではなかった.同一の分布域をもつ複数の分類群の系統関係(種分岐図: species cladogram)が一致したとき,分断現象の存在が仮定できるのではないか.系統関係の分岐パターンが一致したときに構築できる地域分岐図(area cladogram)の上で,はじめて共通要因としての分断と個別要因としての分散が対置できるというのが,分岐学に基づく分断生物地理学の考え方の基本だった.もちろん,当時の分岐学には時間軸を導入しようという考えはなかったし,分子系統学が登場する前だったのでそのような推定をするためのしかるべき分子データがなかったという事情は勘案されるべきだろう.

幸いなことに,1970〜80年代の分断生物地理学の後継にあたる研究分野が1990年代直前に出現した.John C. Avise が確立した分子系統地理学(molecular phylogeography)の方法論である.ミトコンドリアDNAのデータに基づいて分布域を同じくする複数の生物群の分子系統樹を推定し,それらの種分岐図を同時に説明する分断現象あるいは分散現象を探るという系統地理学の考え方は分断生物地理学の直系子孫にあたると考えてもかまわないだろう.

ところが,驚くべきことに,本書には「phylogeography」という言葉はいっさいなく,索引にも載っていない.もちろん「John C. Avise」という名前も彼の先駆的な論文(Avise et al. 1987)ならびにそれに続く数々の著作もまったく引用されない.この選択バイアスはいったいどうしたことか.分子データに基づく生物地理学の最先端を論じたはずの本に分子系統地理学に関する記述がいっさいないというのは現代生物地理学の歴史記述としてありえないことである.それとも,著者の見解では「分子系統地理学」はすでに過去のもので取り上げる価値すらないということか.いやいや,Google Ngram Viewer でお手軽にチェックしただけでも,その主張はあっさり反証される.現実には,「phylogeography」は「long-distance dispersal」に比べればはるかにメジャーな言葉であり,多くの研究の蓄積がある.

この異様な科学史的バイアスは,著者がネオ分散主義(neo-dispersalism)のスタンスに立って本書を書いていることを考えれば十分に納得がいく.生物体系学や生物地理学の現代史をひもとけば,いささか極端な主張どうしが衝突する論争が少なからずあった.半世紀前の生物地理学論争でも「分断のみ」vs.「分散のみ」という対立が初期の頃はあったが,1990年代に入ると,共通要因としての分断に対して,個別要因としての分散を位置づけるという方向に議論は収束しつつあったようにワタクシは理解している.ところが,本書の著者はまたしても「分散のみ」という極端な反動主義(20世紀前半に回帰するという意味で)を持ちだそうとしているようだ.John C. Avise の分子系統地理学は分子データに基づく分断現象の検出を目指した点で,おそらくネオ分散主義にとってはつごうの悪い理論だったのだろう(だからといって無視していいわけがない).

科学史的に検討したとき,本書の欠点はほかにもある.たとえば,“悪役” として登場する Gary Nelson はかつての分断生物地理学の領袖だった.本書ではその彼がどういうわけだか汎生物地理学の Leon Croizat や Michael Heads と一緒くたにされて「分断主義者」と一括されている.ありえへんでしょ.分断生物地理学と汎生物地理学が反目し続けたことはわれわれの世代であれば当然の常識だ.また,本書のいたるところで挿入されるエピソードのいくつかは根拠があやしいうわさ話にすぎない(David L. Hull 1988『Science as a Process』を鵜呑みにするのはそろそろやめようよ).本書を書くにあたり,著者は Nelson や Haeds からも直接情報を得ているのだが,それがどうしてこういう歴史記述になるのか腑に落ちない.Gary ってそんなにワルいやつじゃないぞ.

また,著者は分断主義は theory-driven だったが,分散主義は data-driven だからすぐれていると言うのだが,そんなナイーヴな対比ですむわけがない.そもそも本書のよりどころである時間系統樹は分岐年代推定の精度に完全に依存している.その年代推定はほんとうに信頼していいのか.最尤法でもベイズ法でもいいけど,いったいどこが data-driven なのだろう.分子進化の確率モデルやパラメーターの事前分布までひっくるめればはるかに theory-driven ではないか.それとも,オッカムの剃刀を振り回す分岐学は悪しきドグマだから叩いてもかまわないというのか.ベイズ確証理論だっておなじくらい後ろ暗いドグマじゃなかったっけ?(裏声で言いたい)

著者が本書でどのような見解を示そうが,分断生物地理学の知的遺産は現在でも生き続けている.複数の系統樹の間の対応関係に基いて高次の進化的関連性を推測するという問題は,分断生物地理学だけでなく,host-parasite の共進化解析や gene tree と species tree の解析でも共通して出現する.視野狭窄な本書ではまったく触れられていないが,単にプロセスとしての「分散 vs. 分断」論議を越えたところで,歴史生物地理学の方法論は既存の研究分野をまたぐ広がりを見せている.

悪玉の分断主義者=クラディストを善玉の(ネオ)分散主義者が成敗するという「勧善懲悪物語」を心地よいと感じる読者はどこかにいるかもしれない.しかし,ワタクシが本書から読みとった顛末は,「“物語” イコール “歴史” ではなかった.以上」という身も蓋もない結論だった.これはどうやらワタクシの独断ではなさそうだ.専門誌でのいくつかの書評(たとえば Morrison 2014, Haeds 2014, あるいは Ebach 2014)のいずれもが本書の科学史的偏向を指摘している.本書を手にする読者は著者のうわべの雄弁さに惑わされることがないよう十分に気をつけていただきたい.

—— 原書は一昨年に出版されたにもかかわらず,読了したのがなんと昨年の師走で,書評を書いたのが年越しになってしまった.この遅延については個人的におおいに反省しなければならない.手にした本はさくさく読了して書評をさくさく書き記すべきだった.

[追記]本書は日本の某出版社がすでに翻訳権を取得しているので,そのうち日本語訳が出版されることになるだろう.実はワタクシは別の出版社から本書の翻訳監修を依頼されたのだが,その出版社が翻訳権を取り逃してくれたのは ま こ と に 幸 い な こ と だった.

◆連日のお肉な夕餉が続いています.今宵はビーフシチュー継承メニューとして「煮込みハンバーグ」をご用意いたしました.武甲酒造〈秩父にごり酒〉の炭酸水割りとともにいかがでしょうか?

◆[欹耳袋]図書館発、キュレーション行き「「学術論文、ネットで原則公開へ」に関するQ&Aと課題」(2016年1月25日)※「オープンアクセスはそもそもカール・ポパーの『開かれた社会とその敵』により提示された、「開かれた社会」概念を思想的根拠として、進められてきました」「「開かれた社会」概念では、科学における絶対的真理を認めず、漸進的に真理探求を進めるために「反証可能性」の担保、すなわち、情報のバリアフリーな形での公開を要求していると理解されています」←これホンマでっか?— 仮説の反証主義をオープンアクセス運動と連携させるのは確かに政治的かもしれないが.

◆書き疲れて寝るん〜♫•*¨*•.¸¸♪

◇本日の総歩数=4818歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.3kg(+0.3kg)/ 31.8%(+1.2%)


25 januari 2016(月)※どっかり居座る冬将軍

◆午前5時半起床.気温は氷点下4.5度まで低下.午前6時,西の空に満月が煌々と.最低気温は氷点下5.4度だった.週明けの観音台は乾いた北風が吹きつけて痛い.今日も冬空.午前8時の気温は氷点下0.3度と凍ったまま.すきま風の居室も十分すぎるほど寒々しい.室内にいるのに指先がかじかむのはなぜ,どーして?

◆今日の┣┣" 撃ち —— 年度末までのすべての不在申請を昼過ぎにやっと提出.2月の不在率は「11不在日/20労働日=55%」,3月は「11不在日/22労働日=50%」と意外にも健全な勤務状況だ.これで,今年度研究交付金の残額用途が見えてくるはず.

◆[欹耳袋]オープンアクセスの光と影 —— 朝日新聞デジタル「学術論文、ネットで原則公開へ 公的資金使った研究対象」(2016年1月24日)※「研究者は、論文を無料で読める電子雑誌に投稿する」— はい,そう言うんだったら,オープンアクセス雑誌に載せるための掲載料を出してね./Togetter -「朝日新聞デジタル「学術論文、ネットで原則公開へ 公的資金使った研究対象」への反響」 — 雑誌論文をオープンアクセスにしたとたん,雑誌購読のため(だけ)に学会費を払っていた会員はいなくなるだろう.もちろん,学会員以外からの投稿も認めるとなれば,学会発表と論文投稿するため(だけ)に学会費を払う意義も薄れていくだろう./ロンドンはイギリスにある「オープンアクセスで得をするのは誰なのか」(2016年1月24日)※「オープンアクセスオプションの代金を誰が払うのか」「結局得するのは出版社のままで、出版社は儲け続けるだろう」./雑誌のOA化は学会の存続それ自体にも深く関わっている:Togetter -「消えゆく学会 ~問い直される学会の役割と社会との関係性~」※ワタクシも以前こんな記事を書きました:leeswijzer「研究者コミュニティの「限界集落」化について」(2012年11月18日)ならびに「研究者コミュニティの「限界集落」化について(続)」(2012年11月19日).

◆午後7時を過ぎて,外はすでに氷点下1.3度の凍える寒さです.今宵のメニューはオムライスにパスタを付け合せ,ビーフシチューのソースをかけて茹で野菜をトッピング.洋食屋の日替わり定食みたいなワンディッシュ・スタイルです.ご注文を雄町しています.昨夜のビーフシチューの消化メニューでしたが,けっこうな量の牛肉がごろごろと.たまには小麦の “お水” も.

◆[蒐書日誌]斎藤成也・塚谷裕一・高橋淑子(監修)〈遺伝子から探る生物進化〉(2016年2月以降刊行予定,慶應義塾大学出版会,東京 → 版元ページfacebook)※慶應義塾大学出版会から分子進化学の新シリーズ〈遺伝子から探る生物進化〉全6巻が刊行開始.

◆明日の最低気温はどうやら今季最低を更新しそうだ.

◇本日の総歩数=3059歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.0kg(−0.5kg)/ 30.6%(−0.7%)


24 januari 2016(日)※北風が吹きすさぶ日曜

◆午前6時過ぎのっそり起床.結局,雪どころか雨もたいして降らないまま夜が明けた.最低気温は氷点下1.4度.夜明け前は濃霧がすごくて視界がまったく効かなかったが,まぶしい朝の日差しによって文字通り雲散霧消された.6:33 地震でゆらり(茨城が震源で,震度は3とのニュース).気温は午前8時を過ぎても氷点下0.6度と冷えきっている.今日の朝餉は洋風に.ポトフも三日目になると熟成感が漂う.天久保〈ブロートツァイト〉のイチジクとクルミのパンとともに.

◆[欹耳袋]国立国語研究所〈『日本言語地図』地図画像〉.1966年~1974年に刊行された『日本言語地図』(全6巻)の図版計300葉がオンライン公開されている./Darwin Room Special Days〈魅せられた航海~ダ―ウィンと進化論をめぐる四日間〜〉【期日】2016年2月11日(木)〜14日(日)【場所】ダーウィンルーム@下北沢※渡辺政隆さんがガイド役.

◆お昼前,食材の買い出しに出かける.雲一つない快晴で,日差しはまあまあ暖かいものの,北風が冷たいのなんのって.今日の最高気温は正午過ぎの7.7度だった.午後の厨房作業は,ポトフの残りスープをビーフシチューに “完全変態” させること.

◆[欹耳袋]ある医療系大学長のつぼやき「日本の大学ランキングが急落した理由とは?その2(被引用数とは?)」(2016年1月23日)※首都大学東京にブースト効果をもたらしたのはやはりアノ人だった!

◆日没後,気温はするする低下し,北風の冷たさはどうしようもない.夕餉の前にもらいものの秩父・武甲酒造〈秩父にごり酒〉を開栓試飲.アル添&糖添なので,ゲロルシュタイナーで割ってみたら意外にいけるかも.筑波颪が身を切る今宵はビーフシチューをご用意いたしました.それに合わせて “お水” はアルゼンチン最大のワイン産地 Medoza の Bodega Tamarí AR Malbec 2012 はいかがでしょうか.今宵のビーフシチューのレシピはこんな手順でした:

  1. 牛モモ肉1.5kgを50gサイズに切り分け,塩胡椒してからフライパンで焼き目を付け,圧力鍋へ.
  2. 玉ねぎ大3個を12分割の櫛切りにして,別の深鍋にオリーヴ油を熱し,一時間しっかりきつね色になるまで炒める.焦げないように要注意.
  3. 1 の圧力鍋に玉ねぎ丸ごと1個,にんじん大2本乱切り,ニンニク一球(ホール),ローレル・クローブ・粒胡椒を投入し,ひたひたに水を注いで沸騰させる.アクを取ってから蓋をして,加圧すること20分.火を止めて減圧する.
  4. 3 の圧力鍋の中身を 2 の深鍋に移し,ポトフの残りスープと赤ワインを加えて弱火で一時間ほど煮こむ.
  5. 缶詰のデミグラスソース(250g)を加え,弱火で煮込み,適宜調味する.
  6. 芽キャベツとブロッコリーはあらかじめ塩茹でし,シチューをさらに盛りつけてから最後にトッピングする.付け合せはマッシュ・ポテト.

◆お米を研いで,それから寝るん〜♫•*¨*•.¸¸♪

◇本日の総歩数=3613歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.5kg(−0.1kg)/ 31.3%(+0.5%)


23 januari 2016(土)※西から大寒波が襲来す

◆午前6時のろのろ起床.気温は氷点下0.3度.薄明.夜明けが早くなってきた.しかし,朝から雲が広がり,日差しもなく,寒さだけが染みこんでくる.午前9時の気温は1.8度.

◆[欹耳袋]別軸としての科学哲学(a.k.a. #ParsimonyGate) —— ハッシュタグ「#ParsimonyGate」が炎上している.そもそもの導火線は Cladistics 誌最新号の巻頭記事: Editorial. Cladistics, 32(1): 1. DOI: 10.1111/cla.12148, 12 January 2016 だった.この記事がある方面でトンデモなく叩かれているようだ.Altmetric とか The Tree of Life | Cladistics Journal Drops Science for Dogma, 16 January 2016 では,「Possibly the worst editorial at a science journal ever」だの「Back to the Cold War of systematists」だの「Cladistics or Creationists?」だの,さんざんな貶されようだ.

Editorial 冒頭の「The epistemological paradigm of this journal is parsimony」などという一文は The Wiili Hennig Society ではごく当たり前の認識なので「時代錯誤」だの「冷戦復帰」と叩かれるいわれはないだろう.あれくらいで炎上しているようじゃ,Cladistics 誌の Forum や Letters 欄で戦わされている記事群の “口汚さ” はガマンできないんじゃないか.第一,いまのCladistics 誌は最節約法だけではなく最尤法やベイズ法を用いた論文だってちゃんと掲載されている.ただし,この Editorial 記事の最後にある「Cladistics will publish research based on methods that are repeatable, clearly articulated and philosophically sound」という主張から透けて見える WHS 主流派の考えは,系統推定のさまざまな方法論がそもそも科学哲学的に妥当(「philosophically sound」)なのかという点に読者の注意を向けさせる.

生物体系学論争が燃え上がった1970〜80年代に比べれば,21世紀の現在は系統推定論をめぐる “哲学論議” が戦わされることは少なくなってきた.しかし,たとえば,Systematic Biology 誌, volume 50, issue 3, 2001 の特集に端を発する「最尤法-最節約法 Popper 論争」を見れば,系統推定法としての technical soundness と philosophical soundness とは別軸で論議されるべきものであり,一方が他方を保証しているわけではないことがよくわかるはず:

  1. Richard Olmstead 2001. Phylogenetic Inference and the Writings of Karl Popper. Systematic Biology, 50(3): 304 doi:10.1080/10635150120308 pdf
  2. Kevin de Queiroz and Steven Poe 2001. Philosophy and Phylogenetic Inference: A Comparison of Likelihood and Parsimony Methods in the Context of Karl Popper's Writings on Corroboration. Systematic Biology, 50(3): 305-321 doi:10.1080/10635150118268 pdf
  3. Arnold G. Kluge 2001. Philosophical Conjectures and Their Refutation. Systematic Biology, 50(3): 322-330 doi:10.1080/10635150119615 pdf
  4. Daniel P. Faith and John W. H. Trueman 2001. Towards an Inclusive Philosophy for Phylogenetic Inference. Systematic Biology, 50(3): 331-350 doi:10.1080/10635150118627 pdf
  5. James S. Farris, Arnold G. Kluge, and James M. Carpenter 2001. Popper and Likelihood Versus “Popper*”. Systematic Biology, 50(3): 438-444 doi:10.1080/10635150119150 pdf
  6. Kevin de Queiroz and Steven Poe 2003. Failed Refutations: Further Comments on Parsimony and Likelihood Methods and Their Relationship to Popper's Degree of Corroboration. Systematic Biology, 52(3): 352-367 doi:10.1080/10635150390196984 pdf

日本の生物体系学コミュニティーは,ごく一部の “outlier” たちを除いては,もともと哲学論争がまったく好きではなかった.その点は今世紀はじめにワタクシたちがまとめて発表したとおりである(三中信宏・鈴木邦雄 2002. 生物体系学におけるポパー哲学の比較受容. 所収:日本ポパー哲学研究会(編)『批判的合理主義・第2巻:応用的諸問題』, pp.71-124. 未來社,東京 → 目次).「philosophical soundness」を差し置いて,「technical soundness」のみに集中できる学問的雰囲気はあるタイプの研究(者)にとっては居心地がいいかもしれない.

現状を見ると,最尤法とかベイズ法の論客たちには「科学哲学的」に論じようという内的動機がほとんど見えないのがむしろ大きな問題かもしれない.科学哲学的・認識論的問題なんかはデータと統計ツールがあればスルーしておっけーと考えているのか.そして,そういう「technically sound」な手法群しか知らない(もっと若い)世代はどうやら「philosophically sound」かどうかという論点があることすら認識していないようだ.あまつさえ,科学史まで自分たちにとってつごうのいいように適当にでっち上げているみたいだし.

しかし,系統推定は,配列データがたくさんありさえすれば決着が付いたり,ソフトウェアを何万世代か走らせればケリがつくわけでは必ずしもない.そのことを知っておかないと,科学哲学的(場合によっては科学社会学的)な “戦争” がときおり勃発したときに丸腰のまま “戦場” に放り出されて無慈悲になぎ倒されかねない.そうならないためにも,生き延びるすべとして自分の “哲学的武装” を錆びつかせないように怠りなく手入れしておきたい.科学という軸は誰の目にもよく見えるが,科学哲学というもうひとつの軸はいつもそれほど明確に見えるものではない.しかし,「見えない」は「存在しない」と同義ではない.それは埋み火のごとく隠れているだけである.

#ParsimonyGate の延焼はその後も続いている —— Judge Starling[Dan Grauer] | Once Upon a Time at a Willi Hennig Society Meeting #ParsimonyGate | 16 January 2016.WHS の雰囲気は今も変わりがない.Dan Grauer が “タコ殴り” された翌年には,Keith A. Crandall が犠牲者になったことは,その場にいたワタクシがよく知っている:「In the next WHS meeting (São Paulo 1998) Keith A. Crandall was the "Punch-Bag" for Steve Farris and other hard-core cladists!」.あれはきっとWHS特有の “黒ミサ” みたいなもんなんだろう.

この機会に,ワタクシがこれまで参加してきたウィリ・ヘニック・ソサエティ年会の記録(1998-2013+)をすべて公開した:ポータルサイト →〈The Willi Hennig Society Meeting Reports〉.意義があるから記録するのではなく,記録するから意義が生まれる.飽くことなくひたすら記録し続けることを旨とせよ.

—— 以上は archief voor stambomen「別軸としての科学哲学(a.k.a. ‪#‎ParsimonyGate‬ )」(2016年1月23日)という記事として公開した.

◆ノバホールで Blue Note Tokyo All-Star Jazz Orchestra を聴いて帰宅なう.小雪ならぬ小雨が降り続いている.しかし,気温は1.8度まで下がっているので,そのうち雪に変わるだろう.最高気温が5.0度どまりだった今日は日が暮れても氷雨が止まず.こういう夜に蟹すきはいかがでしょうか.元日直汲みの〈来福〉特別純米「SBP福来酒」を用意して雄町しています.

◆空から何が降ってくるかわからないけど,とりあえず寝るん〜♫•*¨*•.¸¸♪

◇本日の総歩数=2465歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.6kg(−0.1kg)/ 30.8%(+1.3%)


22 januari 2016(金)※寒風に吹きさらされて

◆午前5時半起床.気温氷点下2.0度.三日ぶりの観音台はカラカラに乾燥している.氷点下3.5度まで冷え込んだせいで,ひさしぶりに水たまりの氷を割りながら出勤した.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 「国立研究開発法人」は「(研)」と略称するようにと “雲の上” からそれとなくお達しあり>なかのひと./東大の連携講座に関する意見や対応などを関係者にメール./今日が締切の「情報セキュリティ自己点検票」提出./日本分類学会連合の新役員・委員アドレスのメーリングリスト登録.けっこう時間がかかった./新年度からは,たとえ報酬が生じない場合でも,本務以外の業務はすべて「兼業申請」をしなければならないとの人事担当からの通達.これは大学などへの非常勤出講だけでなく,学会などの役員・委員を引き受ける際にも適用されるとのこと.事務手続きが今まで以上にめんどうになる.

◆[蒐書日誌]メノ・スヒルトハウゼン[田沢恭子訳]『ダーウィンの覗き穴:性的器官はいかに進化したか』(2016年1月25日刊行,早川書房,東京, 340 pp., 本体価格2,000円, ISBN:978-4-15-209596-1 → 目次版元ページ)※ご恵贈感謝.著者・訳者より推薦者の名前が断然目立つ.この著者はオランダのライデン自然史博物館 Naturalis の研究者.どこかで見覚えのある名前だと思ったら,今世紀初頭の彼の著書が “森” の奥から出土した:Menno Schilthuizen『Frogs, Flies, and Dandelions: The Making of Species』(2001年刊行, Oxford University Press, Oxford, vi+245 pp., ISBN:0-19-850393-8 [hbk]).良識ある早川書房は目次の翻訳にも気配りを忘れない.さすがである(笑).

◆居室の椅子でふんぞり返ったら琴奨菊みたいになってしまった.

◆[欹耳袋]東京新聞「給付型奨学金の早期導入に慎重 首相「財源など検討必要」」(2016年1月22日)※「財源」なるものがかなり恣意的に “掛け流し” だったり “枯渇” したりしている.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 新年度からは,たとえ報酬が生じない場合でも,本務以外の業務はすべて「兼業申請」をしなければならないとの人事担当からの通達.これは大学などへの非常勤出講だけでなく,学会などの役員・委員を引き受ける際にも適用されるとのこと.事務手続きが今まで以上にめんどうになる.「手続き型合理主義」は絶滅にいたるまで定向進化するのかも./UT-mate で「生物統計学」の成績登録完了.

◆今宵のような寒い夜はベーコン塊と黒胡椒ソーセージのポトフを仕込む.ベーコン塊を大きくカットして,根菜類とともに圧力鍋に放り込み,あとはお水のみ.スープはまったく使わない.圧力鍋で半時間ほど加圧調理してから,深鍋に移し,葉菜類とソーセージ,香辛料と塩で調味しながら弱火でふつふつと.手間のかからない洋風おでんのできあがり.熱々のポトフにはキリッと〈七田〉を.「幸せは口から入る」— 実に名言である.

◆[欹耳袋]お一人様の研究ライフ —— 農環研に入賞して以来ずっとひとりで本や論文や記事を書く研究スタイルだったので,業績評価面談の場で「ひとりで勝手なことをしていると思われてるよ」と言われたことは確かにある.「で,それが何か?」と返事したらもう二度と言われなくなって現在にいたる.共同研究すれば共著の仕事になるが,お一人様での単著の方が割合から言えばずっと多い.もちろん,全体から見ればワタクシのようなやり方は少数派なんだけど.

◆明日はまた雪になるとの予報だ.

◇本日の総歩数=3812歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.7kg(+0.1kg)/ 29.5%(−0.2%)


21 januari 2016(木)※玉川大学へ最後の出講

◆午前5時半過ぎ起床.気温は氷点下4.1度まで下がっている.

◆[欹耳袋]東京大学農学生命科学図書館「農学部の先生から学生へのおすすめブックリスト」(2016年1月)※生物・環境工学専修は『東大ハチ公物語』の他にももっと読むべき本があるはず(笑).この専攻にとって “ハチ公” がいくら永遠のアイドルだからといって./BioMedサーカス.com「教授と僕の研究人生相談所」※こんな連載をつい読み耽ってはならぬぞ./吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』(2016年2月刊行予定,集英社新書)→版元ドットコム

◆最後の定例都内出撃 —— 午前8時前,つくば駅.定例都内出撃は今日が最終日.冬晴れ大寒の朝はきりきり冷え込んで,最低気温は氷点下4.7度.都内は雲一つない完璧な青空.午前9時の気温は6.0度.新百合ヶ丘にて乗り換え.沿線のいたるところに残雪多し.午前10時,玉川大学着.残雪を踏みしめてキャンパスの坂を登る.本日をもって,6年間にわたって玉川大学でワタクシが担当した非常勤講義「分子進化系統学」は大団円を迎えた.最後の最後ということで,玉川学園駅前の創業63年という洋食屋〈レストラン富士〉にて小野正人さんと肥塚信也さんとともにランチ.特製メンチカツ定食がとても美味だった.何年も通ったのにこの店はぜんぜん知らなかった.

◆ワタクシが玉川大学で担当した「分子進化系統学」は新規に開設された科目だったので,最初のうちに割り当て教室のスペック的な不具合などいろいろあった.しかし,玉川大学の教務課の高度学習能力により教室は年々よくなった.

ワタクシは今年でこの「分子進化系統学」から手を引くが,後任の非常勤講師はすでに内々に決まっている.MEGA を使ったパソコン実習が講義の中心なので,ノウハウの表裏を知っている人材が望ましい.幸いなことにMEGA本拠地の首都大学東京から若手の直弟子が名乗りを上げてくれたのですんなり引き継ぎが進んでいる.

今年度が最後になるのは玉川大学の「分子進化系統学」だけではない.東京農業大学「実験データー解析概論」(5年間)と東京大学「生物統計学」(9年間)といういずれも学部生相手の講義も今年度で終わりになる.ワタクシの場合は本務を考えれば教歴なんかまったく不要なんだけど,結果的に教歴が積み上がってしまった.今後はこういう概論的講義はもっと若い世代にバトンタッチするべきだろう.

若手研究者は,つい「研究業績」の積み上げにのみ目を奪われがちだが,公募によってはむしろ「教育経験」の履歴を重視して選考が行われることがある.とくに私立大学の教員公募では,学士教育の潜在能力がちゃんとあるかどうかがポイントだと今日聞いた.その一方で,若手研究者が「教歴」を付ける機会は実はなかなかない.非常勤講師の人材データベースとしてはたとえば〈JREC-In Portal〉のようなサイトがあるけれども,現状では,完全公募されずに,教務担当者がツテで候補者を探している(あるいは既得権のようにポストが継承されている)ケースがほとんどなのではないか.

学部生相手の「概論的講義」こそ,その学問体系を広く鳥瞰し,酸いも甘いも噛み分けた年長のプロフェッサーが担当すべきという意見にも一理ある.しかし,体系的概論を高座にかけることができる「次の世代の年長者」の着実な育成もきっと必要だろう.ピンポイントの専門的分野の最先端について熱弁を振るう若手研究者は,そのままでは,おそらく学部生相手の講義をする教員としては「不適格者」と言うしかないだろう.今日のランチでもその点で意見が一致した.学部生相手の「概論」は教員にとってはかなりハードルの高い “大ネタ” であるのかもしれない.

ワタクシが「統計学概論」と銘打った講義をスタートしたのは1995年の数理統計研修(つくば)からだった.その年以降,かれこれもう21年も続いている.これもそろそろ次の世代にバトンタッチしないといけないようだ.

◆午後5時前,つくば帰還.もう夕暮れが降臨している.

◇本日の総歩数=9082歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.6kg(+0.2kg)/ 29.7%(−1.3%)


20 januari 2016(水)※残雪を踏みしめる本郷

◆午前5時半のろのろ起床.気温は氷点下2.7度と,それなりの冷え込み.

◆[欹耳袋]朝日新聞デジタル「宮城)石巻、タクシーに乗る幽霊 東北学院大生が卒論に」(2016年1月20日)※まさに「現代民話考」の世界.

◆[蒐書日誌]Philip P. Wiener (ed.) 『Dictionary of the History of Ideas: Studies of Selected Pivotal Ideas, 4 Volumes』(1973年刊行, Charles Scribner's Sons, New York) ※観念史の基本文献であるこの事典は University of Virginia Library でオンライン公開されている.本書の翻訳は平凡社から出版された:フィリップ・P・ウィーナー(編)『西洋思想大事典[全5冊]』(1990年8月刊行,平凡社,東京, ISBN:9784582100105 → 版元ページ).

◆[欹耳袋]朝日新聞社 WEBRONZA — 高橋真理子「博士号取得者の初の追跡調査まとまる:修了時に半数以上が平均440万円の借金という衝撃」(2016年1月18日)※参照元:科学技術・学術政策研究所「「博士人材追跡調査」第1次報告書-2012年度博士課程修了者コホート-[NISTEP REPORT No.165]の公表について」(2015年11月4日)/東京新聞「給付型奨学金を検討へ 予算委で文科相」(2016年1月19日).

◆北風が吹く本郷にて —— 正午前,根津.冬晴れの都内は正午の気温が8.1度.吹きつける乾いた北風が痛い.日陰には先日の名残り雪がまだ点々と.根津駅前の〈秋田屋〉にて「田舎ぜんざい with 粟餅」を注文.この店はこし餡の「御前志るこ」,粒餡の「田舎志るこ」,そして粒餡汁なしの「田舎ぜんざい」の三種類がすべてそろっている(近くの〈芋甚〉には「田舎ぜんざい」はなかった).京都でいえばそれぞれ「おしるこ」「ぜんざい」「亀山」に対応する.

◆その後,弥生キャンパスへ.本郷台地の上は風が一段と強く,農学部構内の自転車がドミノ倒しのようになぎ倒されていた.農場は残雪で真っ白.しばらく来なかったうちに,農学部3号館の隠れ部屋にじゅうたんが敷き詰められていて「全面土禁」になっているぞ.こたつ&みかん&猫ちゃんを用意しないと.午後1時から専攻教員会議から始まり午後3時半に終了.

午後11時前につくば帰還.やや うう…….

◇本日の総歩数=12957歩. 朝◯|昼◯|夜×. 計測値(前回比)= 93.4kg(−0.3kg)/ 31.0%(+0.6%)


19 januari 2016(火)※冬の嵐が過ぎ快晴の空

◆午前5時過ぎ起床.気温5.2度.米とぎから一日が始まる夜明け前.雲一つない冬晴れの観音台は冷たい北風に吹きさらされている.しかし,朝の最低気温は5度台とむしろ高めで,通勤路の路面凍結はまったくなかった.昨日の風雨のなごりの水たまりが点々と残る農林団地.朝イチの BGM はリヒテルの平均律から.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 都内近郊出張は(どんなに遠くても)「日帰り」しなければならない規則と思い込んでいたのだが,つい先ほど「中央線なら立川以西」「小田急線なら生田以遠」「東海道線なら横浜以南」はすべて「宿泊可」であると事務から知らされた.え,マジっすか? 実は数年前からそうなっていたそうな.農環研の規則としては「100km以遠ならば宿泊付きの出張」になるらしい.たとえば,立川までだと牛久からの距離は75km,それに農環研から牛久駅までの距離7.5kmを「4倍」(←ココ重要※根拠不明だが)を加算すると,見事に100km超になる! 拍手拍手.そして,あわてて先日の立川出張のホテル領収書を提出した.しかし,このすばらしい農環研規則も今年度かぎり.来年度からは泣く子も黙る農研機構に吸収されるので,出張に関する新たな「規則」が適用されるとのこと.ひー.

◆[蒐書日誌]作家という「幻想的職業」の財務分析 —— 森博嗣『作家の収支』(2015年11月30日刊行,幻冬舎[幻冬舎新書401],東京, 204 pp., ISBN:978-4-344-98402-8 → 版元ページ)※こういうテーマの本は初めて手にした.淡々と冷静にしかも生々しく「お金の話」をする筆致につい引き込まれてしまう.よけいな脚色や婉曲がいっさいない直球表現が小気味よい.ワタクシはこの作家の小説を一冊も読んだことがないが,本書は良書.

まずは第1章「原稿料と印税」から.小説家の本務は「小説を書くこと」と断言する直球ぶり:

  • 「最も大事なことは、多作であること、そして〆切に遅れないこと」(pp. 72-73)
  • 「細かい仕事はあまりひき受けないほうが良いように僕は思う。メインの仕事ではないということだ。メインは,やはり自分の作品を執筆することであり、自分の本を上梓することである」(p. 77)
  • 「1作出して、それが売れるまで放っておくというマーケティングではまず成功しない。やはり、常に新作を出すことが作家の仕事の基本といって良いだろう」(p. 91)

続いて第2章「その他の雑収入」に進む.小説を書く以外にもいろいろあるようで.それにしてもこの著者はちゃんと記録を残しているなあ.あ,この点はワタクシと同意見だ:

  • 大学入試問題に自分の作品が出題されることについて:「「ここで作者は何を言おうとしているのか?」みたいな設問がたまにあったりする.作者としては「べつになにも言おうとしていない」と密かに思う」(p. 139)— やっぱり!

第3章「作家の支出」はとてもおもしろい.入る金があれば,出る金もあるのは当然:

  • あ,これは重要な指摘:「自分の好きなものがはっきりわかっている状況こそが,その人を成功へと導くという例が多い.この道理でいくと,人を羨む人は成功しない」(p. 171)

第4章「これからの出版」が本書のクライマックス:

  • 冒頭節:「まず,非常に簡単な傾向が観察される.メジャなものが減り,マイナなものが増えている,ということである.……簡単に言うと,かつてあったような「大当り」はもうない.大ヒットするものがない,ということだ」(p. 174)
  • 「そこで,方向を転換し,もっとスペシャルな需要に,製品を投入するようになる.最初からマイナなものは恐いので,せいぜいカスタマイズが可能なオプションで誤魔化す.それでも,一辺倒だったものよりはそれがスペシャルに見える.そういうイメージを作って宣伝をすれば,大衆は誤魔化される」(p. 175)
  • 反響について:「マイナスの反響で落ち込まないことは当然だが,プラスの反響で有頂天になるのはもっと良くない.数人に褒められてもしかたがない.良い気持ちになっても,さっと忘れること.この切り換えができないとプロにはなれないと思った方が良い.大事なことは,個々の反響ではなく,反響の「数」なのである」(pp. 190-191)— ワタクシだったらすかさず「書評確率分布をつくれ」と言いたい.総数だけでなく平均と分散が必要だから.
  • 率直すぎる!:「スランプというものを経験したこともない.どうしてかといえば,僕は小説の執筆が好きではない.いつも仕事だからしかたなく嫌々書いている.小説を読む趣味もない.この仕事がさほど好きではないし,人に自慢できる価値があるとも認識していない.スランプにならないのは,このためだと思われる」(pp. 196-197)

この第4章のエンディングは示唆に富む:

  • 「小説家以外の職業,あらゆる職業でも,まったく同じことがいえるだろう.近頃は,仕事に「やり甲斐」を求めたり,「憧れの職業」などといった幻想を持ったりする若者が多い.……実社会にはそんなものは存在しない.幻想なのである」(pp. 197-198)— 著者はこの「幻想」に悪い意味をこめてはいない.
  • 「小説家だって,多くの志望者が遠くからぼんやりと見ているもの,自分の将来に対して思い描いているものは,確実に「幻想」である.そういった「幻想的職業」の最たるものの一つといっても良い」(p. 198)— そっくりそのまま “研究者” に当てはまりそう.
  • 「自分の好きなことが仕事にできる,というのはたしかに幸運ではあるけれど,そこには,必ず違った側面がある.だんだん,その違った部分が大きくなるだろう.そのときに,職業としての立場を支えるものは「その仕事が好きだ」だけではなく,むしろ,「好きなことができる」自由であり,そのために必要な環境なのである.その自由と環境は,仕事をして得た報酬によって実現されるものだ」(p. 198)— この身も蓋もないストレートな文章表現が実に心地よい.すばらしい.

書くことを生業とする作家というキャリアがどのようにつくられていくのかは外からはよくわからない.いわゆる “破滅型” 作家たちのとんでもないエピソード群は,たとえば:校條剛『作家という病』(2015年7月20日刊行,講談社[講談社現代新書・2323],東京,320 pp., ISBN:978-4-06-288323-8 → 版元ページ)に(編集者の観点から)蒐められている.そのような作家集団と比べれば,本書の著者は伝記的にはけっしておもしろくないかもしれない(鉄道マニア的には注目すべき人物だろうけど).作家としての収入と支出を冷徹に評価するという本書のテーマそれ自体が,ハチャメチャな作家群像に野次馬的興味を示したがる(よく知らないけど)一般読者にはウケないかもしれない.

もうひとつの「幻想的職業」である「研究者」に置き換えたとき,いずれ誰かが書くかもしれない『研究者の収支』はいったいどんな本になるんだろうかとつい想像してしまった.先日読んだ:室井尚『文系学部解体』(2015年12月10日刊行, 角川書店[角川新書・K-58], 東京, 238pp., ISBN:978-4-04-082051-4 → 書評目次版元ページ|著者ブログ〈短信〉)のある章で書かれていた:「好きな勉強ができれば収入などなくても大丈夫という貧乏人の変わり者」(p. 127)の研究者(大学院生・ポスドクを含む)であっても,光合成で栄養を得ているのでないかぎり,どこからかお金を得て,何かしらにお金を使っているはずである.しかし,研究者というキャリアのなかでの「お金の話」は研究資金とか奨学金に関連する話題をのぞけばほとんど語られることがない. 書くとなれば輪をかけて身も蓋もない話になってしまうのかもしれないが.

小説を読む習慣がまったくないワタクシは,これからも小説家・森博嗣を読むことはけっしてないだろう.しかし,仕事人としての彼の考え方と主張にはおおいに共感できた.ワタクシと同年齢である著者はすでに「引退作家」を自称している.しかし,本書でもっともすばらしい「あとがき」(pp. 199-204)はストライクゾーンど真ん中に入りすぎて,棒立ちするしかない.ワタクシもかくありたいものである.この「あとがき」に書かれている内容はあまりに感銘を受けすぎてとてもここには書けない.みんな,買って読め.

[追記]著者はカタカナ語末の「長音記号(ー)」を徹底排除する主義らしく(工学系出身だからか?),「ミリオンセラ」「メジャ」「マイナ」と表記している.本筋には何の関係もないことだが,ちょっと気になった.

—— 以上の書評は leeswijzer にて公開した:三中信宏「作家という「幻想的職業」の財務分析」(2016年1月19日).

◆午後の┣┣" 撃ち —— 年度末の研究費執行案件と格闘しているうちにお昼休みに突入してしまった./昨年末からの年越し事業科目の予算を使いきった.New Dictionary of the History of Ideas, 6 Volume-set は強力である./きのう会計システムから発注した本のタイトルと巻号ミスが発覚,会計システム上でどう修正したものかとじたばたしたあげく,契約担当に電話したところ「こちらで手作業で修正しますよ」と言われてガクッ.華麗なるデジタルとアナログの融合ワザなり./週明けからこんなことばかりしているようでよろしくない…….

◆明日は本郷にて専攻教員会議だ.

◇本日の総歩数=3834歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.7kg(+0.3kg)/ 30.4%(−0.6%)


18 januari 2016(月)※雪ならぬ風雨に濡れる

◆午前5時過ぎ起床.雨(雪ではなく).気温3.7度.この風雨は台風そのもの.TXに運休が出ているということは,都内で雪が降りまくっているからか.東京は道路も鉄路も方々で止まっているとのニュース.センター試験の翌日でよかったよねぇ.土砂降りの観音台はどこもかしこも水浸し.午前8時の気温は4.5度.雪に変わる気配はまったくない.ただただ台風のような吹き降りに濡れまくるのみ.週末を越した居室は冷蔵庫のように寒い.不穏な週明けの BGM はキース・ジャレット〈The Köln Concert〉から.

◆[蒐書日誌]矢野憲一『魚の文化史』(2016年1月8日刊行,講談社[講談社学術文庫2344],東京, 298 pp., ISBN:978-4-06-292344-6 → 版元ページ)※1983年出版本の文庫化.民俗写真がいろいろ載っていて楽しそう.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 昨年9月14日から開始した「研究記録ツイッター」の投稿数が500に達した.平均120字/ツイートとして計算すると今日までの四ヶ月で60,000字書いたことになる.研究記録ノートとして毎月15,000字も書けば十分でしょ.もちろん毎月管理職のチェックを受けた公式のもの.しかも,呼吸するように書いたツイートを束ねるだけなので,ぜんぜん負担にならない./来年度の分子系統ワークショップ開催の申し込みはもうすぐ.

◆ざんざか降り続いた雨(not雪)は昼過ぎにはあがり,西の方から空が明るくなってきた.爆弾低気圧が通り過ぎ,雨がやっと上がったと思ったら,今度は強烈な北西風が吹きつけ,すきま風が寒いのなんのって.お昼前は10.8度まで上がった気温が,午後になって急降下し,午後2時には4.1度.どうりで寒いはず.

◆午後の┣┣" 撃ち —— んヶ月ぶりに所内会計システムに潜入し,現時点での残額確認とか年度末までの支出予定額の予想とか.毎年忘れたころに起動するので,ログイン名とかパスワードとかきれいサッパリ記憶が “揮発” してしまって白紙状態.発注作業をじたばたとキー入力して,プリントアウトした発注依頼書を経理に直送しようとしたら,「みなかさん,先に領域長決済ですよ」と若いもんに諭されて,領域長室に向かうワタクシ.すべての記憶が揮発しているのだろーか./来年度から始まる東京大学大学院理学系研究科講義:三中信宏「生物統計学:Rを用いた統計データ解析の講義と実習」のシラバス入力完了.A1〜A2ターム中に開講します./電農館での分子系統ワークショップの企画案を提出./

◆[欹耳袋]SankeiBiz「京都の公衆トイレ“想定外の汚れ方” 訪日客の「爆買い」はうれしいけれど…」(2015年8月9日)※「和式トイレの使い方が分からないというのはまだ理解できる。しかし、洋式トイレでも汚されるとはどういうことかよく分からない」— いや,トイレの機能形状と使用様式には常識ではとらえきれないめくるめく「文化多様性」があることを早く知るべきだろう:ヨコタ村上孝之『世界のしゃがみ方:和式/洋式トイレの謎を探る』(2015年9月15日刊行,平凡社[平凡社新書・788],東京, 191 pp., ISBN:978-4-582-85788-7 → 書評目次版元ページ).

◆[欹耳袋]Aleta Quinn 2015. Phylogenetic inference to the best explanation and the bad lot argument. Synthese First online: 05 October 2015 abstract. ※Synthese などというジャーナルは農水省系国研ではいまでは図書購入経費的に “禁書” だよねぇ.

◆嵐が去って鮮やかな夕焼けグラデーション.雨上がりの今夜は北風が吹いて冷え込みますね.からだの芯から暖まるきりたんぽ鍋のご用意ができています. “お水” は〈たかちよ〉27BYしぼりたて生原酒おりがらみ(限定品)と〈七田〉27BY純米吟醸五百万石無濾過生のどちらになさいますか?

◇本日の総歩数=5262歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.4kg(−0.1kg)/ 31.0%(0.0%)


17 januari 2016(日)※爆弾低気圧が迫り来る

◆午前5時半起床.気温は氷点下1.8度まで下がっている.最低気温は氷点下2.7度だった.暖冬暖冬と連呼されてすっかり油断していたが,ここ数日は例年並みの寒さがすぐそばまで忍び寄っている.

◆[蒐書日誌]若手研究者のために —— The Howard Hughes Medical Institute and Burroughs Wellcome Fund 2006. Making the Right Moves: A Practical Guide to Scientific Management for Postdocs and New Faculty, Second Edition.2006年に出版された若手研究者のための電子本.Resources for Early-Career Scientists で公開されている.260ページもある.

◆正午を過ぎても気温は8.5度どまり.朝のうちはよく晴れていたが,雲がしだいに広がり,日差しがあまり届かなくなった.今日のおうちランチは昨夜の残り物のカンパチかまの炊いたん.一晩置くと脂の旨味が深くなる.もちろん付け合せの大根も熟味に.今夜から雪が降るとの予報に震え上がっている.

◆[蒐書日誌]飯島周『カレル・チャペック:小さな国の大きな作家』(2015年12月15日刊行,平凡社[平凡社新書・798],東京, 279 pp., ISBN:978-4-582-85798-6 → 目次版元ページ)読了.とことんこだわり抜いて何人分かの人生を生きた人.「ロボット」はチャペックの造語だったか.いろいろ情報が盛り込まれた良書.

◆サンデー┣┣" 撃ち —— 来週の専攻教員会議資料が送られてきた.たった「292ページ」しかない.うれしい(ウソいえ)./年越し┣┣" 一頭をナゴヤに放流./ダメっぽかった依頼を何とか引き受けていただけそうでよかったよかった.

◆[蒐書日誌]室井尚『文系学部解体』(2015年12月10日刊行, 角川書店[角川新書・K-58], 東京, 238pp., ISBN:978-4-04-082051-4 → 目次版元ページ|著者ブログ〈短信〉)これも読了.国立大学がたどってきた経緯を振り返り,文系分野に対する国からの “逆風” は昔から一貫していたと書く.歴史的文脈を知る上で有用.

本書で印象に残った言葉のひとつ:「手続き型合理性」— すなわち,組織の管理運営・経費処理・問題対応に関するこまごまとした事務的な「手続き」をひたすら要求する姿勢を著者はそう呼ぶ(p. 156-157).この「手続き型合理主義」のやっかいな点は,その「手続き」を踏むことで何かしら有意義な結果がもたらされたか,意味のある効果があったかの検討がいっさいなされないこと.「手続き」を踏むことにのみ意味があるという非生産性が貴重な時間と労力をどんどん削りとる.悪く言えば「ちゃんとやることはやったよ」と組織側が弁解するための「手続き」に過ぎないので,言われた側としては負担にならない程度に “てーげー” に対応してすませるようになる.

この本を読むと,かつての「古き良き国立大学」へのあこがれをもつ読者がいるかもしれない.もちろん教員にとっては “自由かつ多様” だったかつての国立大学は失われた楽園だろう.昔の国研もそれはそれは自由すぎる楽園だったことをワタクシは記憶している.本書に出てくる「すき間」「空き地」「ノイズ」という言葉が表すものをいまの国立大学や国研が取り戻せるのかと問われれば口ごもるしかない.というか,すでに個人レベルでの “防衛戦” に徹するしかないのかも.

著者の言う “アカデミー” あるいは “私塾” というアイデアは大学の外で新たな学びの場をつくろうという提案なのだろう(たとえば〈国立人文研究所〉のような).学問分野としての蓄積性とか継承性を度外視するならば,それも選択肢のひとつとなるのかもしれない.ただし,そういう「外」に研究活動の場をつくれるかどうかは個別科学によって大きなちがいがあるだろう.著者が想定している “文系” 分野ならばそれは可能であると楽観できるのだろうか.

—— 関連情報いくつか:短信「全国の国立大学をこのまま国(文科省)の奴隷にしていいのか!」(2016年1月16日)※早くも『文系学部解体』の続編が書かれつつある./横浜国大学生有志主催〈人文社会系学部の縮小に抗議する集団行進〉※まさに,今日やってるのか.

◆うすら寒い曇り空の夕方,形ばかりの周辺徘徊をして帰宅.午後4時の気温は7.7度.雨雲(雪雲?)はまだしばらくは押し寄せてこないようだ.夜,小雨が降りだしたが,まだ雪にはなっていないようだ.

◇本日の総歩数=4345歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.5kg(−0.5kg)/ 31.0%(+1.4%)


16 januari 2016(土)※寒くて静かな土曜満喫

◆午前5時半起床.気温0.9度.まずは米とぎ.今朝も乾いた冬晴れの空.最低気温は氷点下2.3度まで下がった.センター試験を受験する人も監督する人もトラブルがないことを.国研にいて唯一?「よかったぁ」といえるのはセンター試験がらみの業務がいっさいないことかな.

◆[自然を名づける]Amazonカスタマーレビュー:θ「環世界センスvs系統樹解析」(2015年3月27日)/嫁に来ないか「2015年に読んだ面白かった本」(2016年1月15日)

◆[欹耳袋]ワタクシの書く文章はたまに大学や高校の「国語」入試問題として出題されることがある.「この下線部で著者は何を言おうとしているのか?」という設問を見るたびに,「そんなん,著者はなんにも考えてまへんでぇ」とは口が裂けても言えない.ひとりの書き手としては,「国語」の入試問題に出題されるというのは考えものなのかもしれない.だからこそ,入試問題の出題者は タ イ ヘ ン な仕事であるとしみじみ思う.そんな問題を解かされる受験生の方がもっともっと タ イ ヘ ン なんだけどね.Cf: 参照1参照2参照3

◆週末の┣┣" 撃ち —— 東洋大学経営学部FD講演会の演題と要旨をメール送信:三中信宏「大学教員のための『役者論語』〜聴衆を寝かさない高座の奥義〜」.白山キャンパスに行くのは初めて.評判の高い学内食堂にとても関心があったりする(不純な動機).ファカルティ・ディベロップメント関連でお座敷に呼ばれるのは初めてかもしれない.昔々その昔,応動昆の小集会で「実践プレゼンテーションテクニック-講演はショータイム!-」という噺をしたのはもう20年前か!

◆空気は冷たいが日差したっぷりの午後は気温が11度を超え,ふらりふらりと歩きまわるにはちょうどいい日和になった.中央公園をひとまわりしてから,晩ごはんの食材とともに帰還.

◆たいへんお待たせしております.一品目の「鶏手羽元の親子煮込み」がやっと炊きあがりました.開店まで今しばらくお待ち下さい.二品目の「天然ものカンパチのあら炊き」も煮えましたので,遅ればせながらただいま開店いたします.どうぞ中へ.

    【鶏手羽元の親子煮込み】
  1. 鶏手羽元10本を厚手のフライパンでしっかり焦げ目を付ける.
  2. 圧力鍋を熱し,鶏手羽元とともに煮抜き3個を投入,日本酒100cc,みりん50cc,濃口醤油大さじ2,蜂蜜大さじ1を入れてふたをする.
  3. 蒸気弁が動き始めたら中火で20分.火を止めて降圧する.
    【カンパチのあら炊き】
  1. 大根は大ぶりに乱切りして,米のとぎ汁で下茹でする.
  2. カンパチのあらは塩を振ってから熱湯をかけて “霜降り” にする.その後,冷水を流しながら血合いをていねいに取り除く.
  3. 平鍋に日本酒200ccと水1リットルを入れて火にかけ,カンパチを投入する.沸騰したら中火にして,浮いてくるアクをていねいにすくい取る.
  4. 大根をアラの隙間に詰め,みりん100ccと土生姜の薄切り少量を投入して,しばらく中火で炊く.
  5. 濃口醤油50ccを投入したのち,弱火で1時間ほど炊く.

◆今宵の酒肴の組合せ:1) カンパチあら炊き+山形〈麓井〉熱燗純米の飛び切り燗.飛び切り燗に最適化されためずらしい日本酒.60度まで上げるよう指示される.2) 手羽先親子煮込み+山口〈カネナカ〉生酛純米の熱燗.不動の〈カネナカ〉にはこっくり煮付けた手羽元を.そして 3)〈風の森〉酒粕の粕汁+佐賀〈七田〉純米吟醸の冷酒.あたたかい粕汁には冷たい “お水” を合わせる.

◇本日の総歩数=5049歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 94.0kg(−0.4kg)/ 29.6%(0.0%)


15 januari 2016(金)※一週間ぶりに観音台へ

◆午前5時過ぎ起床.気温2.8度.一週間ぶりの観音台は乾いた冬晴れ.最低気温は氷点下0.6度とたいした冷え込みではなかったが,いたるところに霜が真っ白に降りていた.ずっと放置していた居室に積み上がる┣┣" の群れ.

◆[欹耳袋]毎日新聞「岡山大:2教授を解雇…論文「不正」を告発」(2016年1月12日)/朝日新聞デジタル「文化庁、京都に移転へ 政府方針」(2016年1月14日)※消費者庁と文化庁の移転でメンツを保ったということね.

◆午前の┣┣" 撃ち —— まとわりつく┣┣" たち.首尾よく撃ち取った┣┣" もいれば,仕留め損ねて取り逃がした┣┣" もあり.┣┣" 源泉掛け流し./実は昨年末が締め切りだった(華麗にスルーした),とある経費の後始末./分会旗開きチケットという微小┣┣" はその場でひねりつぶす./なんちゃら所内事前検討会をいまやってるみたいだけどもちろん掛け流し./複合機セキュリティー報告も傍観してよし./町田へのTA業務報告書メール返送./向こう一ヶ月の┣┣" 撃ちリスト更新.

◆[欹耳袋]ランチタイム前情報:〈未来食堂〉— 神保町・日本教育会館の地下にオープンしたそうな.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 昼休み返上の┣┣" 撃ちが続く.今年度の業績報告書ならびに業績評価票をメール提出.ワタクシ側の計算では「s」+「b」=「A」となる予定.評価委員会の裁定はワタクシのあずかり知らぬこと./遅めのお昼ごはん.BGM はブラジル風バッハの5番./確定申告の足音が遠くから聞こえてきた./なんだか日程がいろいろうまくかみ合いませんなぁ./帯広統計高座と白山噺家高座の詳細がほぼ確定した./┣┣" 放牧場の個体数がだいぶ下がった気がする.

◆今宵のビールのアテは「ジャガイモ-ベーコン-チーズ」.皮剥きジャガイモに7mmスリットを入れ,電子レンジで硬めにチンする.スリットに薄切りベーコンをはさんで,チーズをトッピング.180度で余熱したオーブンで15分焼いたらできあがり.塩胡椒は各自どーぞ.上のはゴーダチーズをトッピング,下のはゴルゴンゾーラをトッピング.金串を刺した理由はベーコンが厚すぎて,ジャガイモが “分裂” しそうだったから.単なるサイドメニューのはずだったのに,メインディッシュのようなでかいツラで食卓に登場した.もうちょい温度を上げて焦げ目をつけなさいという杉並シェフのご指導あり.Cf: 参照元

◇本日の総歩数=5380歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 94.4kg(−0.3kg)/ 29.6%(−0.2%)


14 januari 2016(木)※冬晴れの定例都内出撃

◆午前5時半起床.気温は氷点下2.2度.最低気温は氷点下4.6度まで下がり,昨日に続いて凍てつく朝となった.

◆[欹耳袋]岡山大学の件 —— 毎日新聞「岡山大:2教授を解雇…論文「不正」を告発」(2016年1月12日).Cf: 記者会見配布資料(→ pdf)/現代ビジネス「これは言論封殺だ!不正告発教授のクビを切った岡山大学の愚挙」(2016年1月14日).

◆午前8時前,つくば駅.定例都内出撃の朝,最低気温は氷点下4.6度まで下がった.快晴冬空.午前9時過ぎ,新宿駅で小田急乗り換え.都内も好天.午前10時,玉川大学着.都内の午前10時の気温は8.6度.北風は冷たいが,日差したっぷりなので,日なたは暖かい.玉川大学の高座も今日を含めて2回となった.課題レポート出題.高座は歴史生物地理学と分子系統学との関係について.昼下りの都内は日差しが心地よい.午後4時,つくば直帰.

◆[蒐書日誌]ジャレド・ダイアモンド著/レベッカ・ステフォフ編[秋山勝訳]『若い読者のための 第三のチンパンジー:人間という動物の進化と未来』(2015年12月18日刊行, 草思社, 東京, 351 pp., 本体価格1,800円, ISBN:978-4-7942-2175-9 → 版元ページ)/『ワイン展:ぶどうから生まれた奇跡』(国立科学博物館,2015年10月31日〜2016年2月21日開催, 144 pp., 税込価格1,500円 → ウェブサイト)※同名の展示(2015年10月31日〜2016年2月21日開催)の公式ガイドブック./『Annual Review of Ecology, Evolution, and Systematics, Volume 45, 2014』(2014年刊行 → 版元ページ)※実に一年以上も遅れてやっと納品された…….最新刊(Volume 46)がもう出ているんですけど.

◆たいへんお待たせいたしました.銀杏の炒りたてをお持ちいたしました.お飲み物のご注文は〈七田〉27BY純米吟醸五百万石無濾過生でよろしかったでしょうか.ほかに燗酒もございますので,のちほどご注文を承りにまいります.

◆明日は一週間ぶりに観音台にずっと実在する.

◇本日の総歩数=10335歩. 朝◯|昼−|夜△. 計測値(前回比)= 94.7kg(+1.2kg) / 29.8%(−0.8%)


13 januari 2016(水)※氷点下立川から富士山

◆午前7時前にのろのろ起床.すっきり冬晴れ.東京西部の気温は氷点下3度か.つくばは氷点下5.2度.

◆ホテルをチェックアウトして,統数研へ.昨日の雪空から一転して今朝は青空が広がり,富士山もくっきり見えている(と島谷オーガナイザーは言っていた).〈What is a good model?〉シンポジウムの二日目は下平英寿さんのトークから始まる.

◆[欹耳袋]朝日新聞デジタル「消費者庁、地方移転を明記 徳島へ、政権方針」(2016年1月13日)※「消費者庁について、本庁の機能を含めて徳島県に移す方向で一致した」— どこかが “人身御供” になるとは思っていたが./日本経済新聞「「獺祭」の光と影 最後までわかり合えなかった父子」(2016年1月13日).

◆下平トークでぐねぐね曲がるモデル空間の話を聴き,「負の長さ」をもつ配列データが頻度主義とベイジアンを反転超合体させるというシュールな曲率酔いのまま,ランチタイムに突入.粕谷師と「地方国立大学はタイヘンですねぇ(新潟とか秋田とか)」という会話で現実に引き戻されたなう.

◆本日の名言集:

  • AIC は “神託” ではない
  • 「最良」は「真実」の同義語ではない
  • Write the R package

◆隙間の┣┣" 撃ち —— 来月の〈とよなかサイエンスBar〉の演題と要旨をメール送信./粕谷師の法話を聴きながらコッソリ内職:序章(4,424字)・第1章(12,827字)・第2章(12,730字)・第3章(10,874字)・第4章(10,291字)を Dropbox に島流し.統計噺は統計原稿を効果的に捗らせるなあ.

◆午後6時半,立川は大団円.さ,たっぷり2時間かけて遠隔地つくばへ直帰だ.

◇本日の総歩数=8660歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=未計測/未計測


12 januari 2016(火)※初雪つくばから立川へ

◆午前6時のろのろ起床.気温2.3度.小雪が降り始めた.もちろん今季初雪.午前9時,本格的な雪になってきた.気温は2.1度とさらに低下.出撃先の立川あたりも雪なんだろうか.

◆[欹耳袋]Togetter -「研究不正を告発した教授らを岡山大学が解雇処分に」./〈今、岡山大学で何が起きているのか?〉 /科学政策ニュースクリップ「岡山大学の研究不正対応、疑問の声広がる」(2016年1月11日).

◆午前10時,つくば駅.雪がちらちら降りかかる.気温は1.1度ともっと下がってきた.中央特快で立川に向かっている.都内の雪はいまは止んでいるようだが,気温は2.8度と冷え込み真っ最中.正午前,JR立川駅着.ランチは立川駅南至近の〈Rainbow Spice〉にて「今月のマサラカリー(サグチキン)」を.カウンター8席のみの極小空間なので,すぐ満席になってしまう.その後,モノレールで立川の統計数理研究所へ.雨も雪も降っていないが,しんしんと冷え込んでいる.

◆今日と明日の二日間参加する統数研シンポジウムは〈What is a good model? Evidential statistics, information criterion and model evaluation〉.講演要旨・参考資料はコンパニオン・サイトにうずたかく積み上がっている.

◆午後6時までシンポジウムが伸び,ホテルにチェックインしてから,JR立川駅前の懇親会場へ.午後10時にホテル帰還.

◇本日の総歩数=12225歩. 朝◯|昼◯|夜×. 計測値(前回比)= 未計測/未計測


11 januari 2016(月)※お出かけ新年会の午後

◆午前5時半起床.気温氷点下2.0度.

◆[欹耳袋]MEGA からデータをエクスポートする —— MEGA 6.06 の「.meg」から「.nex」などへのエクスポート手順:「Display」メニューの「Use Identical Symbol」はオフにする.MEGA Sequence Data Explorer 画面で「Data」メニュー>「Export Data」で「Nexus (PAUP 4.0)」のフォーマット指定をする.MEGA PAUP* version 4.0a147 へのエクスポートはこれで成功.

  1. MEGA Sequence Data Explorer 画面の「Display」メニューの「Use Identical Symbol」をオフにする.
  2. MEGA Sequence Data Explorer 画面の「Data」メニュー>「Export Data」で「Nexus (PAUP 4.0)」のフォーマット指定をする.PAUP* version 4.0a147 へのエクスポートはこれで成功.
  3. MrBayes version 3.2.2 へのエクスポートには .nex ファイルの characters block の書き換えが必要.format 行の「datatype=nucleotide」を「datatype=dna」と変更する.PAUP* と MrBayes の両方で実行可能.
  4. TNT version 1.5 beta へのエクスポートは,PAUP* の「File」メニュー>「Export data」で「Hennig86 1.5」フォーマットを選択.ファイル拡張子は「.tnt」ではなく「.hng」だが問題なく TNT で開ける.

◆薄曇りの午前,気温は4.5度と寒々しい.玉川大学のレポート課題づくりがやっと終わった.MEGA にはもうしばらく働いてもらわないと.それにしても MEGA は実に “淡白” な樹形探索しかしてくれない.最節約法でいえば,同じ TBR branch-swapping でもPAUP* は120個の同長分岐図を発見してくれるけど,MEGA はたった9個で打ち切り.あまりに潔いというべきか.

◆正午前,そろそろ新年会に出撃するしたくなど.バクハツ系の飲み物とか背徳な糧食とか.薄曇りところどころ青空.真っ昼間から飲み始め,夜10時過ぎにつくばご帰還.長時間飲食の当然の報いとしての「うう……」.

◇本日の総歩数=9153歩. 朝◯|昼△|夜×. 計測値(前回比)= 93.5kg(−0.5kg)/ 30.6%(+0.4%)


10 januari 2016(日)※連休中日はうろうろと

◆午前6時半のろのろ起床.気温は氷点下1.0度.朝日がまぶしい.InDesign CC をアップデートしたら正常起動するようになった.善哉善哉.

◆[欹耳袋]Publishable Stuff | bayes.js: A Small Library for Doing MCMC in the Browser | 15 December 2015 ※MCMC のデモに使えるかも.

◆今日はつくば市主催の成人式がカピオで開催される.近辺はお昼前から成人式渋滞が発生.人も車もパトカーも集結してきた.本日のお昼ごはんは,仕込んで四日目のおでんの大根をおかずに,目玉焼きごはん.何となくまん丸い簡便ランチになってしまった.午後3時,カピオでのつくば市成人式イベントが終わったらしく,大清水公園がふたたび賑やかになってきた.次は記念写真タイムか.ときおり歓声があがる.

◆[欹耳袋]日本経済新聞「【あとがきのあと】「東大駒場寮物語」— 松本博文氏 「魔窟」の青春を振り返る」(2016年1月10日).

◆人だらけの下界を逃れて,いろいろ買い出しに走る昼下り.食材とか珈琲豆とか〈麓井〉の一升瓶とか.午後5時,夕焼けグラデーションにそまる西の空.成人式がらみの珍走団の爆音とパトカーのサイレンが鳴り響いた喧騒の大清水公園にやっと静かな夜の帳が下りてきた.年に一度の賑わいだった.

◆今日の夕餉は舞踊音楽〈肉の祭典〉として,年越しのローストビーフを解凍していただいた.〈風の森〉初しぼりの酒粕で下味を付けたので,ほんのり日本酒のフレーバーが漂う和風味.もちろん “お湯” である〈カネナカ〉生酛純米の飛び切り燗の燗冷ましとともに.

◆明日はお出かけ新年会である.そのためのバクダンと糧食はすでに用意した.

◇本日の総歩数=3424歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 94.0kg(+0.2kg)/ 30.2%(+0.2%)


9 januari 2016(土)※三連休初日の上野公園

◆午前7時前のっそり起床.晴れ.今朝の最低気温は氷点下2.9度.朝から揚げ餅おろしは背徳の極み.サラダ大根のすりおろしとともに.

◆[欹耳袋]日本経済新聞(2016年1月9日)記事ふたつ:「「ポスドク」雇用安定狙う」|「文科省、若手研究者と企業仲介 トヨタや日立など30社に」※PD雇用→卓越研究員→応用研究?

◆午前9時,つくば駅.すっきり冬晴れ.今日は三連休初日の上野へ出撃し,日本分類学会連合の総会(10:00〜12:00)と公開シンポジウム(13:00〜17:00)@国立科学博物館に参加する.四本目の白羽の矢を発射.TX内は移動発射基地である.午前10時,国立科学博物館着.何とか数分遅れでたどりついた.ワタクシが担当するメーリングリスト TAXA に関する総会報告.都内の気温は8.6度.三連休初日の上野公園は人出多し.午前11時半,分類学会連合総会は終わった.

◆[欹耳袋]日本経済新聞「春秋」(2016年1月8日)※「マーラーは、50年の生涯で10の交響曲を完成させた。曲中で様々な「鳴り物」を使っている。牛用のベル、ドラ、小枝を束ねたむちなどだが、度肝を抜かれるのは6番に出てくるハンマーだ」「4楽章で2度、奏者が大きな木づちを材木などに振り下ろす。別名「運命の打撃」といい、「大木に斧(おの)が当たるように」との演奏指示がある」—ドカン!

◆お昼休みは,科博でいま開催中の〈ワイン展〉を一周りしてきた.とても上質の展示.ワイン造りとその歴史.まだの人はすぐ行くように.展示はもちろん,併設ショップも賑わっていた.

◆午後1時,ワインの “エアー酔い” の後は,分類学会連合公開シンポジウム〈東南アジアにおける生物多様性研究最前線~現在、そして未来~〉がスタート(→ 講演要旨 [pdf]).

◆[欹耳袋]最良のメールとは「わざわざ開かなくてもタイトルだけですべてわかるメール」.だから,タイトルに「新刊出版アナウンス」とか「講演会ご案内」とか言うのはダメダメ.ましてや,添付pdfやdocのオープンを強制するメールは,市中引き回しの上,逆さ磔の刑.時間泥棒だから.理想を言えば,タイトルにすべての情報が書かれている.あるいは,タイトルを見れば開くべきかどうかの判断がつけられるメール.現実にはメールを開いてみないと(さらに添付ファイルを開いてみないと)内容がわからないメールが多すぎて困る.

午後9時過ぎ,よく呑んでよろり帰還.今夜はまったく使いものにならないので,すぐ寝るん〜♫•*¨*•.¸¸♪

◇本日の総歩数=13506歩. 朝◯|昼◯|夜×. 計測値(前回比)= 93.8kg(+0.2kg)/ 30.0%(0.0%)


8 januari 2016(金)※連休前のじたばた格闘

◆午前5時半起床.気温は氷点下1.0度まで低下.七草粥のあとからやってくる朝ぜんざいのおいしさよ.曇りところどころ青空が覗く観音台はまだ氷点の寒さが残る.手元にあったブーレーズの総譜は〈水の太陽(Le soleil des eaux)〉だった.朝イチの BGM はシカゴ交響楽団によるブーレーズのトリビュートCD二枚組.

◆[欹耳袋]The Telegraph | Pierre Boulez - obituary.※〈Le soleil des eaux〉の動画がリンクされている.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 「自分の番号」を兼業先へ一斉郵送./新年度からの法人統合がもうすぐなので,いろいろな事務手続きに有形無形の変更が押し寄せてくる気配が濃厚.東大農学部の連携講座をどのようにするかについてはほぼ現状通りのママかな./法人統合により,新年度以降は自動的に裁量労働制が適用されることになるので,兼業申請の手続きがめんどうくさくなるよとの事務からの連絡メールあり.組織が巨大化するので,農研機構理事長決済には一ヶ月かかるらしい.春学期(S1ターム)開始に間に合わないおそれががが./明日の分類学会連合総会&シンポジウムのための「国立科学博物館通用門通行許可証」のプリントアウト.関係者のみなさん,忘れないように./来月の奈良農試での統計研修にかかわる事務連絡.

◆[欹耳袋]文献引用をめぐる “棒の手紙” 的系譜 —— Roderic D. M. Page 2016. Surfacing the deep data of taxonomy. ZooKeys 550: 247-260 (07 Jan 2016), doi: 10.3897/zookeys.550.9293./この論文に引用されていた興味深い記事:The Scientist Magazine® Christian G. Specht. Mutations of citations. 16 September 2010 ※文献引用の “突然変異” とその伝承過程.「Just like genetic information, citations can accumulate heritable mutations」— 論文引用の過程で生じた「誤引用(WC: wrong citation)」は系統樹をつくる.これらの文献の誤引用(WC)は同一研究機関あるいは同一研究グループ内で生じやすい.そういえば,William D. Hamilton の利他行動と包括適応度に関する論文 The genetical evolution of social behaviour (1964) がさんざん孫引きされて「WC」が蓄積したと聞いたことがあった.頻繁に引用される「神棚論文」は意外にちゃんと読まれなかったり孫引きですまされたりするケースは少なくない.引用はされてもちゃんと確認していない(= 読んでいない)ことが丸見えなこともある.とくに古い論文や本は現物にあたってチェックしないと足をすくわれる./もう一つ関連文献:M. V. Simkin and V. P. Roychowdhury 2011. Theory of Citing. Handbook of Optimization in Complex Networks, Volume 57, pp 463-505 [arXiv]「about 70-90% of scientific citations are copied from the lists of references used in other papers」— コピペにより WC は伝承される.その確率過程を調べた研究成果.

◆お昼休みの BGM はシェーンベルク〈グレの歌〉.ブーレーズ指揮/BBC交響楽団,40年前の1974年録音.数ある〈グレの歌〉の演奏の中で,歌唱と Sprechgesang に関してはいまでもピカイチ.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 兼業申請手続きについて.来年度以降は年度が変わってから当該年度の兼業申請を受け付け,機構長決済の案件(有給兼業)については一ヶ月の時間が必要とのこと.したがって四月から始まる夏学期に大学で講義をもつことは制度的に不可能になった.ワタクシだけではなく,みんなそうなる./ということで,本郷に「すまん,開講時期をS1タームからA1タームに変えてね」メールを送信だん.ごめんごめん.東京農大の夏学期の講義を事前に断っておいてよかったー./いま事務に確認したら,法人統合年の今年だけめんどうなことになるらしく,来年度からは夏学期の兼業も大丈夫らしい.ほっ./玉川大学のレポート課題をつくらないと.Mac OS X 版の MEGA はホントに見にくい/醜いんですけど,何とかなりませんかね>南大沢.とりあえず Windows 版は大丈夫だからいいけど.

◆夕焼けグラデーションに染まる西空を見ながら帰宅.喫緊の┣┣" 一頭を撃ち果たしたなう.今宵は山口は周南市の〈カネナカ〉家伝造り生酛純米(限定品)の開栓の儀ならびに燗酒の儀.

◆[欹耳袋]The Huffington Post「六曜カレンダーの配布中止を撤回 大分県佐伯市「政治的判断で配布する」」(2016年1月7日)※当然の流れ.難癖を付けた部落解放同盟側は別府湾よりも深く(深くないけど)反省しようね.

◆明日は,朝から上野公園に出撃し,国立科学博物館講堂にて,日本分類学会連合の総会(10:00〜12:00)に出席し,メーリングリスト関連の報告.午後は第15回公開シンポジウム〈東南アジアにおける生物多様性研究最前線~現在、そして未来~ 〉(13:00〜17:00)がある.

◇本日の総歩数=4929歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.6kg(−0.3kg)/ 30.0%(−0.4%)


7 januari 2016(木)※定例都内出撃の初仕事

◆午前5時過ぎ起床.気温0.7度.晴れ.最低気温は氷点下1.1度だった.

◆[欹耳袋]PAUP* 最新版 version 4.0a147 が公開された.つ ダウンロードサイト

◆午前7時半,つくば駅.定例都内出撃の初仕事.午前9時,新宿駅.まだ本調子の混雑ぶりではない.学校が休み中だからか.小田急乗り換え.車内から白羽の矢を三本発射.午前10時,玉川大学着.北西風は冷たいが,日差しは暖かい.都内の気温は10.1度.昨日よりも若干高い.キャンパス・カードをうっかり忘れて,守衛さんに注意される(とほほ).

◆[欹耳袋]2016年度統計関連学会連合大会【期間】2016年9月4日(日)〜7日(水)【場所】石川県教育会館ならびに金沢大学角間キャンパス.First Circular [pdf] には「宿泊早期予約の注意喚起」として,「2015年3月の北陸新幹線開業以来,金沢市内および近辺では宿泊施設の予約が取りにくい状況」「また本大会の開催期間には,金沢大学角間キャンパスにて他学会の開催も予定されており,近隣の宿泊施設は満員になることも予想されます」と書かれている.さて,どのあたりに宿を確保すればいいのだろーか.やっぱり香林坊とか近江町市場あたりがいいのかな(何しに行くねん).

◆午後2時,玉川大学での高座を終え,新宿へ.何とかとケムリは高いところに昇りたがる.実に良き眺めである.これから某案件についての打ち合わせ.はかりごとを終え,四谷駅前の酒屋を経由してつくばへの帰路につく.今日の都内は雲が多めで,暖かいような寒いような.午後5時過ぎ,つくばに帰り着いたらもう真っ暗になっていた.

◆夜の七草粥にはお供えの “お水” が付いてくる.〈たかちよ〉純米吟醸しぼりたて生原酒おりがらみ.微炭酸ののどごしが心地よし.お粥には黒豆味噌をちょいとトッピング.

◆[欹耳袋]John Horgan 2016. Bayes's Theorem: What's the Big Deal? Scientific American 4 January 2016. ※ベイズの定理は迷信やニセ科学にとって「も」役に立つという記事.これはそのうち日経サイエンスに載るのかな.

◆明日はまた観音台で┣┣" 集団に取り囲まれる運命が待ち受けている.

◇本日の総歩数=12188歩. 朝◯|昼−|夜△. 計測値(前回比)= 93.9kg(−0.2kg)/ 30.4%(+0.6%)


6 januari 2016(水)※酒粕が厨房を支配する

◆午前4時前起床.気温6.6度.氷点下じゃない.曇り空の観音台.今朝の最低気温は3.8度までしか下がらなかったが,日差しがないせいで昨日よりもひんやりしている.所内事務仕事の締め切りが例年よりも一ヶ月ほど前倒しになっているので,デッドラインをひとつひとつ確認しながら段取りをしないとタイヘンなことになりますよ.

◆[欹耳袋]AFPBB News「生物医科学論文の大半に不備、信頼性に疑問符」(2016年1月5日)※「無作為に抽出した441編を分析したところ、研究の評価や再現に必要な情報のプロトコルを完全に満たしていた論文は1編しかなかった」.元論文:Shareen A. Iqbal et al. 2016. Reproducible Research Practices and Transparency across the Biomedical Literature. 4 January 2016. DOI: 10.1371/journal.pbio.1002333.PLOS Biology 側の対応:Editorial | Meta-Research: Broadening the Scope of PLOS Biology. 4 January 2016. DOI: 10.1371/journal.pbio.1002334.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 「昇給しない」という昇給辞令を手渡された./昨日(1月5日)までの「研究記録ツイート」はすべて完了.今年もこの方式で「研究記録ノート」を蓄積していく./来月の熊本火の国統計巡業の事務連絡.

◆[欹耳袋]ヒトの顔は共生生物にとっての「地域(area)」である —— Yahoo!ニュース「ヒトの顔に生息するダニは「人類の歴史」を紐解く秘密を知っている(WIRED.jp)」(2016年1月3日)※PNAS元論文:Michael F. Palopoli et al. 2015. Global divergence of the human follicle mite Demodex folliculorum: Persistent associations between host ancestry and mite lineages. PNAS, vol. 112 no. 52 doi: 10.1073/pnas.1512609112 December 29, 2015. html

◆午後の┣┣" 撃ち —— 今年度の研究アウトプット(論文・著書・発表など)の申請.全部で40件ほどあった.各研究者に「紙」で提出させた上,所内ネットにアップし,あらためて業績報告書&評価票作成時には,各自にダウンロード(コピペ)させるという,平安時代のような悠長なシステムがまだ続いている.コピーしたりプリントアウトしたりで,昼休み時間が消滅したので,午後2時過ぎにやっとランチタイム.

◆昨年暮れから氷温室に安置していた〈風の森〉の新酒酒粕が今か今かと出番を待っていたので,今宵は粕汁を初めて仕込むことにした.具は鮭の切り身・大根・にんじん・じゃがいも・油揚げ・しめじ.大根とにんじんは米のとぎ汁で下茹でする.鮭の切り身は湯通ししておく.油揚げは短冊切り.あとは適当に乱切りにして厚底鍋へ.ひたひたの水から釜茹でに.酒粕と味噌で調味してからまた煮込み,最後に醤油と日本酒で調味してできあがり. “お水” も揃いで〈風の森〉ならよかったのだが,今日は横手の〈まんさくの花〉純米吟醸うすにごり生原酒「槽しずく」を開栓.メタリックに輝く雫ラベルが印象的.

◇本日の総歩数=6842歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 94.1kg(+0.1kg)/ 29.8%(0.0%)


5 januari 2016(火)※ようやく観音台初出勤

◆午前5時過ぎ起床.気温0.6度.年明け最初の観音台は乾いた青空.朝日がまぶしい.明け方の気温は氷点下1.0度まで下がったが,根性なしの寒気はすぐに撤退し,いまは7.8度まで上がっている.農環研最期の門松を見やりつつ,一週間ぶりの居室なう.新春奇譚 — 年末には空いていた居室の冷蔵庫をいま明けてみたら四合瓶がいつの間にか “増殖” していた.南魚沼市・高千代酒造の〈たかちよ〉純米吟醸しぼりたて生原酒おりがらみと新潟市・樋木酒造の〈鶴の友〉「上々の諸白」.

◆[欹耳袋]第15回日本分類学会連合公開シンポジウム〈東南アジアにおける生物多様性研究最前線~現在、そして未来~〉【日時】2016年1月9日(土)13:00〜17:30【場所】国立科学博物館(上野本館)2階講堂.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 今月の不在届一式を耳を揃えて提出.今月の不在率は「7不在日/19労働日=37%」なので,まずまずの勤務態度である./来週の立川出張のホテル確保.よく利用した〈ザ・クレストホテル立川〉が昨年11月に〈ホテル日航立川 東京〉としてリニューアルされたことを知った.経営母体が変わったので「リブランドオープン」と呼ぶそうだ.

◆[欹耳袋]No tweeting マークの件 —— Nature | Conference tweeting rule frustrates ecologists | 18 August 2015.|ASN Social Media Policy|Togetter -「tsudaってもいいですか? - ソーシャルメディアでの学会中継の是非」.

◆所内での新年ランチ会.外気温は14度近くまで上がっている.そりゃあ,花粉の一つや二つ飛びますって.

◆[蒐書日誌]松岡正剛・イシス編集学校(編著)『インタースコア:共読する方法の学校』(2015年12月26日刊行,春秋社,東京, 530 pp., 本体価格2,200円, ISBN:978-4-393-33348-8 → 目次版元ページ)※ご恵贈感謝.530ページもある分厚い本.ワタクシは昨年のISISフェスタがらみで p. 259 にちょろっと登場している.あ,p. 278 でも再登場していた./山本義隆『私の1960年代』(2015年10月8日刊行,金曜日,東京, 366 pp., 本体価格2,100円, ISBN:978-4-86572-004-4 → 版元ページ)※「2016年1月17日・第8刷」とのこと.売れてるねぇ.

◆[欹耳袋]大隅典子の仙台通信「大学における研究費不正を防ぐためのシステム改革」(2016年1月3日)

◆午後の┣┣" 撃ち —— 昨年の問い合わせについて,学務から返答あり.非常勤講師の場合「時給G円」と設定し,一時間に満たないときは一時間に繰り上げて計算する.したがって「90分講義」も「2時間」なら,「105分講義」も「2時間」とみなされ,いずれも「2×G円」が支給される.ただし,講義時間が「90分」から「105分」に伸びると,講義回数は「15回」から「13回」に減るので,給料の上では「2×(2×G)円」の減額となる.以上.

◆[欹耳袋]出版学会(活字離れ)資料 :林智彦「「活字離れ」論の文化史 — 「定義」と「統計」の実証研究」(2015年5月16日)[SlideShare].

◆喫茶店で仕事ができるのかと訊かれたら,迷わず「もっちろん」と答える.10年前に出したワタクシの『系統樹思考の世界:すべてはツリーとともに』(2006年7月20日第1刷刊行, 講談社[現代新書1849], ISBN:978-4-06-149849-5 → 版元ページ詳細目次反響録コンパニオンサイト)の「あとがき」謝辞では,快適な執筆環境を提供してくれた各地の喫茶店に対して最大限の謝意を表している.ワタクシの場合,誰にも何にもじゃまされない時間と空間が必須なので,地下書庫の奥とか喫茶店の隅は原稿書きにとって絶好の場所である.欲を言えば「動かない場所」という条件も追加しないといけない.せっぱつまればTX車中でも原稿を書くことはあるが,新幹線だと,たとえアルコールを遠ざけても,たまに「酔う」ことがあって困る.

◇本日の総歩数=4341歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=94.0kg(+0.4kg)/ 29.8%(−0.8%)


4 januari 2016(月)※暖かすぎるつくば帰還

◆午前6時起床.朝イチのお風呂へ直行.夜明け前の谷川岳を見るのも今日が最後.午前6時の気温は0.9度.つくばよりも暖かい.

◆正月┣┣" 撃ち(続) —— 日本計量生物学会会報の「巻頭言」原稿(1455字)を送信:三中信宏「知識の樹をささえるダイアグラム思考」.

◆[欹耳袋]〈医療人のための群馬弁講座〉 —— ほんの数日, “ディープ群馬エリア” に滞在しただけでも,多言語能力ならぬ多方言能力は高まる.ひさしぶりに「かんます」「おっかく」「ぶっくらす」「むらす」「どっくむ」など,上州会話ならではの基本動詞を聞く機会は他県ではなかなかない.上州会話で特徴的なのは「あいのて」の入れ方と,そのコミットメント・レベルのちがいだ.「そうなん」とか「そうなんかい」は聞き流しレベルだが,コミットがやや高まると「そういうん」,そして相手の話にのめりこむと「はぁそういうん」が連発されるようだ.

◆午前10時,二泊お世話になった谷川温泉〈やど莞山〉をチェックアウトし,JR水上駅へ.標高500メートルのこの地点で気温は4.3度もある.ふだんの年なら積雪が1メートルあるのに,今年は除雪車不要の暖冬で,日なたではフキノトウが顔をのぞかせる始末.今日も日差しが暖かすぎてどうしようもない.正月を水上や谷川で過ごしたと思しき人たちが集結してきた.10:35 高崎行きの鈍行に乗る.車内は差し込む陽光と人いきれで暑いほど.JR高崎からは特急〈草津2号〉に乗り換え.すでに仕事始めではあるが,大きな荷物を抱えた乗客でほぼ満席.

◆[蒐書日誌]上州往復車中読書本:飯島周『カレル・チャペック:小さな国の大きな作家』(2015年12月15日刊行,平凡社[平凡社新書・798],東京, 279 pp., ISBN:978-4-582-85798-6 → 目次版元ページ)※上州往復車中読書本.ちくま文庫から「カレル・チャペック旅行記コレクション」を出した著者による評伝.けっこうおもしろい.「チャペック」といえば,20年ほど前に金沢大学で闇の講習会を開いたとき,近江町市場近くにあった〈チャペック〉という珈琲専門店に通ったことを思い出す.すでに閉店してしまったらしいが.

◆午後3時過ぎ,つくば帰還なう.気温15.8度.日差しがさんさん.半袖でちょうどいいくらい.新春┣┣" どもが観音台で┣┣" 首を揃えている.

◇本日の総歩数=5250歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=未計測/未計測


3 januari 2016(日)※谷川岳を仰ぐ風呂三昧

◆午前6時むっくり起床.朝風呂一番.窓を開ければ,夜明け前の谷川岳が遠くに白く暗く鎮座している.気温の下がり具合は氷点下0.5度どまり.氷点下2.1度のつくばよりもはるかに暖かい! 朝イチの露天風呂へ.朝日の染まる谷川岳は絶景.風呂あがりには「湯あがり堂サイダー」.たった95ccのシュワシュワ快感.昨日の日録を更新し,やっと一日が始まる.

◆[欹耳袋]日本化学会「会長談話 - 113番元素の命名権決定を受けて」(2016年1月2日)※元素の「周期表」そのものへの関心が広まる機会になればいいと思う.いま読んでいる:Michael D. Gordin『Scientific Babel: How Science Was Done Before and After Global English』(2015年4月刊行,The University of Chicago Press, Chicago, vi+415 pp., ISBN:978-0-226-00029-9 [hbk] → 版元ページ情報)には,メンデレーエフの周期表をめぐる「言語戦争」が取り上げられている.

◆温泉街お散歩 —— とてもよい天気で高山の雪景色がとても鮮やか.日差しがぽかぽかと暖かく,残雪がどんどん融けている.いったい何なんだろうねぇ,この陽気.

今日は時間があるので,風呂に入っては温泉街の坂道や階段をあちこち昇り降りした.林道に入れば雪が残り,ところどころに谷川温泉ゆかりの若山牧水の碑が建つ.気温は6.2度まで上がってきた.コートは不要.

温泉街の階段を上がり切ると富士浅間神社がある.本殿は谷川温泉の中にあるが,奥の院は谷川岳の山頂にあるとのこと.神社の横にも牧水の句碑が.午後の最高気温は11.1度.

谷川温泉そのものは霧島や別府ほど勢いよく高温泉が噴き出るわけではないようだ.

◆正月┣┣" 撃ち —— 月刊みすず「読書アンケート」原稿を編集部に送信.毎年,年越してしまうな.結びの言葉は「自分の探書アンテナが受信したおもしろい本が読める幸せは,他者の探書アンテナに拾ってもらえる本を自ら書くことによって初めてお返しができる.今年も読んでは書く生活が続きそうだ」.

◆[蒐書日誌]1921年にアルスから出版された若山牧水『静かなる旅をゆきつつ』は〈近代デジタルライブラリー〉で公開されている.谷川温泉についてはコマ番号120以降の「利根より吾妻へ」に記されている.牧水が谷川温泉・金盛館に投宿したのは大正7年11月16日のことだった.

◆ゆるゆる歩いて,ゆるゆる浸かって,ゆるゆる寝るん〜♫•*¨*•.¸¸♪

◇本日の総歩数=6400歩. 朝◯|昼◯|夜×. 計測値(前回比)= 未計測/未計測


2 januari 2016(土)※上州正月みなかみ紀行

◆午前6時半起床.気温0.3度.晴れ.今日は関東平野を縦断する.

◆[欹耳袋]The Verge | Anne Frank's diary is now free to download despite copyright dispute | 1 January 2016.※『アンネの日記』のオランダ語原文(→ テキストファイル).

◆正月みなかみ紀行 —— 午前10時,上野駅にてMAXときに乗車.都内は好天.正月二日目だが,意外に乗客多し.高崎駅にて上越線を待つ.駅はどこもかしこもえっれぇ混んでて容易じゃあねぇ.正月くらいちったぁゆっくりすりゃあいいんに.そうだんべ? 高崎は駅ビルも駅前地域も再開発されてしまって,かつての面影は駅ビルの壁面タイルにしか残っていない.

高崎駅4番線から水上行きがやっと発車.ドアを手動で開け閉めするローカル線的雰囲気がとてもよろしい.それにしても,今日は暖かい.この季節なら身を切るようなからっ風が吹き抜けるはずだが.午後1時,前橋の気温は12.9度まで上がっている.しかし,目的地の水上は同時刻に4.9度までしか上がっていないので油断は禁物.みなかみ紀行はどうなることやら.新前橋駅から分岐する両毛線にはいったい何年乗っていないだろう.榛名山がだんだん迫ってきた.今日は上毛三山がとてもクリアに見える.渋川駅着.何年も前に正月を過ごして以来,伊香保温泉の石段街もすっかりご無沙汰になってしまった.もちろん,JR吾妻線もご無沙汰しまくりだ.榛名山のさらに向こうには冠雪の浅間山が.

沼田駅で乗客がどっと降りて車内はイッキにがらがらになった.さらに北上を続ける上越線.山間を走る車窓風景グッド.真正面に白く輝く谷川岳がせり上がってきた.午後3時,JR水上駅で下車.年によっては何十センチもの積雪に覆われる駅前なのに,今年は異様な暖かさで残雪すらほとんどない.迎えに来てくれた旅館の人の話では,水上周辺のスキー場は雪不足に悲鳴を上げているとのこと.谷川温泉のとある旅館にチェックイン.日中の最高気温は9.3度,夕方になってやっと3度台にまで下がってきた.

さっそくお風呂へ.九州で体験してきたワイルドな温泉とは大違いなお行儀のよさ.正座して入らないといけないのかも.露天風呂の真正面には陽光に輝く白銀の谷川岳がそびえ立つ.この旅館は主人が主宰する尺八工房を併設しているとのことで,喫茶室には尺八コレクションがずらりと.午後6時半から夕餉.最初の “お水” は水上限定地ビール〈谷川岳〉ヴァイツェンから.続いて〈谷川岳〉吟醸原酒へと進む.群馬KAZE酵母を使ったお酒.有田焼の酒器の盃はうさぎが日本酒に浸っていた.ひさしぶりの上州牛はとてもうまいものである.夕食後には尺八と琴のデュエット生演奏もあり.

—— とても居心地がよいので,仕事始めの1月4日(月)は年休を取ることが緊急自分会議に上程され満場一致で可決された.

◇本日の総歩数=7370歩. 朝◯|昼◯|夜×. 計測値(前回比)= 93.6kg(+0.5kg)/ 30.6%(+0.2%)


1 januari 2016(金)※新年早々風の森を歩く

◆午前7時起床.初日の出を拝み,厨房でだしを取るのが元旦最初のお仕事.今朝の最低気温は氷点下1.4度.あけましておめでとうございます.

◆[蒐書日誌]毎年師走になると,みすず書房から『月刊みすず』の「読書アンケート」原稿依頼が届く.ワタクシ的には年の瀬の恒例行事である.原稿はまだだが,今年は下記の5冊を選び,次点5冊と合わせてリストアップした:leeswijzer「『月刊みすず』「読書アンケート」用セレクション5冊+次点5冊」(2015年12月31日):

    【今年の5冊】
  1. Scott L. Montgomery『Does Science Need a Global Language? : English and the Future of Research』2013年5月, The University of Chicago Press, Chicago 目次書評
  2. 佐藤恵子『ヘッケルと進化の夢:一元論、エコロジー、系統樹』2015年9月, 工作舎,東京 目次書評
  3. 馬場明子『蚕の城:明治近代産業の核』2015年8月, 未知谷,東京 目次書評
  4. Richard Goldschmidt『Neu-Japan: Reisebilder aus Formosa den Ryukyuinseln ・ Bonininseln ・ Korea und dem südmandschurischen Pachtgebiet』1927年, Verlag von Julius Springer, Berlin 目次書評
  5. 松本博文『東大駒場寮物語』2015年12月, 角川書店, 東京 目次書評

  6. 【次点の5冊】
  7. 中野円佳『「育休世代」のジレンマ:女性活用はなぜ失敗するのか?』2014年9月, 光文社[光文社新書・713], 東京 目次書評
  8. 筒井淳也『仕事と家族:日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』2015年5月, 中央公論新社[中公新書・2322],東京 目次書評
  9. 和田敦彦『読書の歴史を問う:書物と読者の近代』2014年7月, 笠間書院,東京 目次書評
  10. 鈴木哲也・高瀬桃子『学術書を書く』2015年9月, 京都大学学術出版会,京都 目次書評
  11. 近藤信行『安曇野のナチュラリスト 田淵行男』2015年11月, 山と渓谷社, 東京 目次書評

◆朝からお酒をいただけるシアワセな元旦.めでたき新年一本目は御所・油長酒造の新酒〈風の森〉27BY初しぼり・秋津穂純米・無濾過無加水生酒「笑う門には福来たる」.蓋がはじけ飛ぶ炭酸ガス気圧の高さがフレッシュ.食卓を彩るお料理とともに笑門来福.

◆[蒐書日誌]〈青空文庫〉—「今日からパブリック・ドメインとなり、青空文庫に加わりました。安西冬衛、梅崎春生、江戸川乱歩、大坪砂男、河井酔茗、蔵原伸二郎、式場隆三郎、高見順、谷崎潤一郎、中勘助、森下雨村、山川方夫、米川正夫」(2016年1月1日).青空文庫は ephemeral じゃない! 盤石のオープン・ライブラリー(すばらしい)Cf: Colorless Green Histories「2016年から作品が自由に使えるようになった人たち」(2016年1月1日)

◆元日のつくばセンター界隈は車も人も少ない.穏やかな日和の昼下り,気温は12度近くあるが,北西風がやや冷たい.真っ青な空のかなたに筑波山の稜線がくっきりと見える.午後になってしだいに人出が多くなってきた.福袋をぶらさげた人多し.

◆[欹耳袋]Wired「メモを取っても記憶は定着しない:研究結果」(2015年1月17日)※「メモを取れば、あなたの記憶をむしばむ。あなたの脳を救うには、鉛筆を置き、メモ帳から離れよう」 —— えーっとね,ワタクシたちは「きれいに忘れたいからしっかりメモを取る」んですよ.メモを取ったり,書き込みをしたり,ツイートしたりするのは,「ああ,これで安心して忘れてしまえる」という最強の動機づけがあるからね.ワタクシは前世紀からずっと続けている習慣は,コピー紙の反故をA6サイズに四分割していたるところにメモ用紙の「山」を積み上げること.居室でも自宅でもどんどんメモするので「山」はみるみる低くなる.いつも補充が欠かせない.どんどんメモして,どんどん忘れる.その “アウトソーシング” がシアワセな人生をもたらす.ツイッターを「電子メモ」として使うようになってからは,さらにシアワセ度は向上している.備忘のためには即座にツイート,飛び込んできた情報はすぐにリツイートすれば,その場でさくさく忘れることができるから.もちろん,これまで使ってきた紙のメモとの共存はまったく問題なし.

◆夕焼けグラデーション.新年最初の日が穏やかに暮れていく.

◇本日の総歩数=4953歩. 朝◯|昼−|夜△. 計測値(前回比)= 93.1kg(+0.3kg)/ 30.4%(0.0%)


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