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日録2015年5月 


31 mei 2015(日)※あれまあもう月末か

◆午前5時半起床.薄雲の向こうから朝日が昇る.気温19.1度.

◆[系統樹大全]Lance・Hawk「樹形ダイアグラムの歴史を叙述した優れた著作」(2015年5月22日).

◆[蒐書日誌]「日本的な働き方」の社会的帰結 —— 筒井淳也『仕事と家族:日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(2015年5月25日刊行,中央公論新社[中公新書・2322],東京,x+209 pp., ISBN:978-4-12-102322-3 → 目次版元ページ).本書は,現在みられるような「日本的な働き方」がどのようにして成立したのかを現代史的に振り返り,さまざまな国際比較データを用いて,この国の「かたち」を浮かび上がらせようとする(第1〜2章).そして,未婚率の増加と出生率の低下,そして女性の社会進出を阻むのはこの「日本的な働き方」にほかならないと著者は指摘する.第3章ではその「日本的な働き方」の正体に迫る.

まずはじめに,著者は欧米に広く見られる「ジョブ型職務給制度」に対する日本の「メンバーシップ型職能資格制度」について次のように定義する:

日本独自の人事システムとして知られる職能資格制度とは,仕事(職務)ではなく人,あるいはその人の潜在能力を評価する制度である.これはある意味,日本人にとって「わかりやすい」システムだ.(pp. 101-102)

この職能資格制度は,1970年代〜80年代にかけて広まった「日本的な働き方」にマッチしていたと著者は言う.その「日本的な働き方」とは以下のような働き方だ:

日本企業の基幹労働力として採用された者は,仕事に関する三つの「無限定性」を受け入れることを要求される.職務内容の無限定性,勤務地の無限定性,そして労働時間の無限定性である.(p. 103)

この「日本的な働き方」は,「内部労働市場における柔軟な人員配置」(p. 106)という日本企業ならではの強力な武器を提供する反面,業績評価の主観性や女性・外国人の基幹労働力からの排除,さらにはワークライフバランスへの障害という副作用をもたらすと著者は指摘する.そして,「コミュニケーション力」などという得体のしれない能力が日本企業で評価されるのも「日本的な働き方」の無限定性が根底にあるからだと説明される:

職務内容が無限定的だと,柔軟で複雑な課題遂行が労働者に期待されることが増える.管理的立場にない労働者にも「問題解決【ソリューション】」といった高度で抽象的な作業が要請されてしまうのである(熊沢 1997).日本企業の採用において「コミュニケーション力」が重視される理由の一つはここにある.コミュニケーション力というのは,それ自体漠然とした能力であるが,あえていえば相手や自分が置かれた状況を理解し,相手の要求に適切に対応したり,自分側の事情・問題を上手に相手に伝えたりする能力であろう.(p. 107)

著者はこの「コミュニケーション力」の期待値の低さが外国人労働者への排除につながっていると続けて指摘する.コミュニケーション力という曖昧なジェネラリスト的素質が重視されるのであれば,排除されるのは外国人労働者だけではない.最初から高度なスペシャリストである(=「コミュニケーション力」が低い)とみなされている博士やポスドクたちが容易に “なか” に入れない現実もこの観点から理解できるだろう.

第4章では現状の分析を通して,今後どのような道を国として選択すればいいのかを論じる.残念ながらモデルとなる国は世界にはないという指摘,そしてどの選択肢を選ぶにせよ光と影がついて回るという結論は,ハッピーエンドを期待してはいけないというやや苦い読後感を残す.しかし,そういう現実は直視せざるをえない.

次の第5章は,社会から家族へと視点を移し,家庭内で生じる労働問題(家事や育児,介護などのケアワークなど)を論じる.この章がまたとても興味深い.ケアワークを支えるのは「企業と家族」であるという「日本型福祉社会」がこれまでの基本的な路線だったが,そのほころびがいま顕在化し始めている.では,家庭内でこれらのケアワークをどのように分担すればいいのか.

ここで表面化する問題が家庭内での「男女のスキル格差」(pp. 178-181)と「希望水準の不一致」(pp. 181-184)である.とくに,日本の家庭では日々の食事に関する希望水準が欧米に比べて高いらしい(pp. 184-185).確かに,ハイレベルな食事を家庭で求めるのは負担が大きすぎるだろう.料理スキルは個人差と格差が開きがちだろうだから.“おふくろの味” を配偶者に気軽に求めてはいけない(自分でつくれるように努力せよ).ウラを返せば,欧米の家庭では多少の “手抜き” でも許されるという希望水準の低さがあるということだろう.だから家族間スキル格差が日本ほど表面化しない.これらは確かに現実の家庭生活ではどこでも起こりえる問題群であり,しかもあまりにパーソナル過ぎて一般的な解決策があるとはとうてい思えない.

本書の文体は最初から最後までいささか “冷静” すぎるような気がするけど,よくよく考えてみればヘンにあおられるよりははるかに誠実かもしれない.いずれにしても,とてもおもしろい本なので,多くの読者の手に届きますように.

以前読んだ:中野円佳『「育休世代」のジレンマ:女性活用はなぜ失敗するのか?』(2014年9月20日刊行,光文社[光文社新書・713], 東京, 349 pp., ISBN:978-4-334-03816-8 → 書評目次版元ページ)とテーマや内容そして主張がかなり重なっているが,統計的なデータ解析の姿勢に関しては本書の方がワタクシには “有意” に好ましく思われる.

◆今日の最高気温は真夏日ライン寸前の29.3度どまりかな.来月の統計研修に関わる巨大な┣┣" を制圧.せっかくの日曜に何やってんだか.今日はけっきょく一歩も外に出なかったので,万歩計は「歩数ゼロ」のまま終わろうとしている.固着生物化.

◆なんやかんやと慌ただしかった五月も今日でおしまい.水無月をお迎えする儀式として,滋賀の個性的な蔵元・上原酒造の〈不老泉〉山廃仕込純米吟醸滋賀渡船無濾過生原酒を開栓.〈不老泉〉は無敵です.琵琶湖の北で醸されるので関東ではなかなか手に入らない(これも京都からの直行便).アテがチキンカツだろうが,レンズ豆カレーだろうが,真正面から立ち向かう日本酒.いつも仁王立ちする酒質がすばらしい.

◆カレンダーは早々と水無月へ.例年六月に入ると “水無月欠乏症” が重篤化する.しかし,今年はめずらしく一週間おきに6月の京都に行くので,水無月の供給源はまったく心配ない.関西風の大きな “三角形” をしっかり食べよう.

◆本日の総歩数=0歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 92.3kg(−0.1kg) / 29.7%(−1.1%)


30 mei 2015(土)※段雷と地震とカレー

◆午前5時過ぎ起床.昨夜の雨雲は雲散霧消して,朝日がさんさんと.気温16.6度.段雷鳴りまくりの午前6時.Gmail ┣┣" 箱が賑わっている.小野川方面から緊急┣┣" 退治要請あり.

◆[欹耳袋]箱ひげ図百珍 —— 一人抄読会「ボックスプロット(箱ひげ図)作成のためのオープンソースアプリケーション:BoxPlotR」(2014年2月23日)※元論文: Michaela Spitzer, Jan Wildenhain, Juri Rappsilber and Mike Tyers 2014. BoxPlotR: a web tool for generation of box plots. Nature Methods, 11: 121–122. 30 January 2014. doi:10.1038/nmeth.2811. html | pdf [open access]. ※箱ひげ図はデータ可視化の第一歩.

◆〈モルゲン〉で食パン,〈コーヒー・ファクトリー〉にて珈琲豆をゲットしたのち,夏の日差しが照りつける観音台.気温は午前のうちに26.8度まで上がっている.しばし,ごそごそする.そのおかげでGmail ┣┣" 箱は瞬間的に空っぽになった.キャリアデザインシートと住宅調査票を提出だん.昼下がりの気温は28.1度.そろそろ扇風機では力不足だ.午後2時,来月の不在届一式を提出だん.おお,外は29.0度だ.

◆[蒐書日誌]筒井淳也『仕事と家族:日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(2015年5月25日刊行,中央公論新社[中公新書・2322],東京,x+209 pp., ISBN:978-4-12-102322-3 → 目次版元ページ)※目次情報くらい版元がちゃんと公開してよね.

◆夕暮れて午後7時過ぎ,どこかで花火が盛大に打ち上がっている.どうやら筑波大の〈やどかり祭〉の景気づけらしい.

◆今宵はひさしぶりにチキンカレーを仕込む.ビーフカレーやポークカレーとはちがって,ほぼ “即席” でできあがる.レシピは次の通り:

  1. 鶏むね肉400グラムは大きめに切り分け,ヨーグルトと酒粕で下味をつける.
  2. 玉ねぎ2個・土ショウガ1片・ニンニク5片を薄切り.
  3. 深鍋に油を熱して,2 を小一時間,きつね色になるまで炒める.
  4. つぶした香辛料類を 3に入れさらに炒める.
  5. 缶詰トマト1缶を 4 に少しずつ混ぜてルーをのばしていく.コンソメスーブを注ぐ
  6. 1 の鶏肉を生のまま 5 に投入し,いったん沸騰させ,その後は中火にする.
  7. 下茹でした根菜類を投入する.
  8. あれば冷凍の残り物カレーソースも投入する.

ポーチドエッグ(というか温泉卵)をトッピングすれば,親子丼ならぬ「親子カレー」になる.

◆20:24 小笠原諸島での深発地震により茨城県南部は震度4とのこと.直後,ツイッターが乗っ取られたので,対抗措置.レイバンごみツイートが届いた方,たいへん申しわけありませんでした.

◆本日の総歩数=3226歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 92.4kg(−0.2kg) / 30.8%(+0.4%)


29 mei 2015(金)※小雨の中の避難訓練

◆午前4時半起床.曇り.気温18.5度.涼しい北東風.午前7時半,つくば駅.定例都内出撃の朝は曇り空.湿度が高いのはとてもよくない.午前9時,新宿駅.ダイヤがやや遅延して,小田急に乗り換え.蒸し暑い曇り空.午前10時前,曇り空の農大キャンパス.ときおり小雨がぱらぱらと.こんな日に地震避難訓練とは.

◆[進化思考]本日の余響 —— 山形浩生 の「経済のトリセツ」—「桑木野『叡智の建築家』:記憶術が生み出した建築による世界記述と創造」(2015年5月29日)※ライムンドゥス・ルルス,パオロ・ロッシ,三中信宏と続くのかぁ.

◆[みなか先生]Blend*Board での紹介記事(2015年5月26日).

◆[欹耳袋]産経ニュース「国立大学の人文系学部・大学院、規模縮小へ転換 文科省が素案提示」(2015年5月28日)※「理系強化に重点を置いた政府の成長戦略に沿った学部・大学院の再編」— “なかのひと” たちは?/琉球新報「琉大、新学部を検討 薬学部・獣医学部・醸造学科」(2015年5月28日)— 泡盛だけですかそうですか.

◆農大高座と避難訓練 —— 早々とコンピューター演習室へ.USBメモリーをぜんぜん読み込んでくれない農大PC(泣).本日の「実験データー解析概論」は先週の続きで,平方和のもつ分散の意味について,R を用いて実習.続きの確率分布についての解説は地震避難訓練までの間にできるだけ進めたいなぁ.でも,避難訓練が11時半からなので,実質的な講義時間は10:40〜11:20.けっきょく今日は自由度のR実習のみ.ちょっと早く終わりすぎたか.短縮講義を終え,地震が来るのをじっと待っている.あと3分で地震だ.警報が鳴り響き,PCのシャットダウンと戸締まりをしてから,学生を引率してグラウンドへ.講義棟からわらわらとグラウンドに集結する学生たち.いつもなら学長の挨拶だの消防署長の講評だのが続くのだが,雨が降ってきたので正午前に解散.午後1時から「生物統計学」.前回の実験計画法の続き,偏差と平方和分割の復習をしたのち,平均平方(分散)からさらにF値への最後の階段を登る.そこで降臨するのは正規分布.本日は完全無作為化法の分散分析のロジックについて解説.次回は乱塊法.

◆雨上がりの農大通りを上って経堂へ.気温は19.9度.雨上がりは涼しいようで,実はむしむしする.今日は寄り道せずにつくば直帰だ.

◆[欹耳袋]朝日新聞デジタル「フランス文学者の杉本秀太郎さん死去 生家は京都の町家」(2015年5月28日)※みすず書房から出たエッセイ集『洛中生息』や『続 洛中生息』はかつて読んだことがある./NHK NewsWeb「鹿児島・口永良部島で爆発的な噴火 警報レベル5」(2015年5月29日)

◆午後5時,つくば帰還.小雨が降ったりやんだりで,そこらじゅうが湿気でべたべたしている.夜,雨足が強まってきた.南岸通過中の低気圧の北側だったせいか,スコールをもたらした前線は東から西へと逆向きに移動.

◆本日の総歩数=13149歩. 朝◯|昼−|夜△. 計測値(前回比)= 92.6kg(+0.5kg) / 30.4%(+0.2%)


28 mei 2015(木)※終日蒸し暑い観音台

◆午前5時前起床.曇り空,北東風が冷たい.気温17.7度.米とぎ.曇り空の観音台は湿っぽい空気が淀んでいる.午前8時の気温は19.1度.朝イチの BGM はガーシュインの歌劇〈ポギーとベス〉全曲.ロリン・マゼール/クリーヴランド管弦楽団.これもまた英語というリンガ・フランカのもつ variation のひとつ.

◆[蒐書日誌]科学の「リンガ・フランカ」がもたらす光と影 —— Scott L. Montgomery『Does Science Need a Global Language? : English and the Future of Research』(2013年5月刊行,The University of Chicago Press, Chicago, xiv+226 pp., ISBN:978-0-226-53503-6 [hbk] / ISBN:978-0-226-01004-5 [eBook] → 詳細目次版元ページ).一昨年,新刊で出たときにすぐ買って読み始めたのに,途中で放り出したまま2年が過ぎてしまった.やっと読了.科学英語の歴史と展望を論じたとてもおもしろい本であると同時に,英語でアウトプットし続けている現役の研究者にとっても得るものが多いだろう.

かつて David Crystal[デイヴィッド・クリスタル/國弘正雄訳]『地球語としての英語』(1999年1月8日刊行,みすず書房,東京,iv+215+x pp., ISBN:4-622-03381-X → 情報)は,英語のネイティヴ・スピーカーは今や少数派であり,その数倍もの非ネイティヴ・スピーカーが世界中で増大しつつあると指摘した.彼は,地球規模でグローバル化してしまった「地球語としての英語」は言語として絶え間なく変化し続け,その結果,複数形としての「新たな英語たち(new Englishes)」を生み出しつつあると述べている.本書に寄せた序文のなかで Crystal はこのキーワード「new Englishes」をふたたび登場させ(p. x),現代科学が “共通語” として用いている科学英語もまた今なお変化し続けているのではないかと予測する.

ワタクシたち研究者にとって,国際会議での発表や学術誌への論文投稿などでの英語によるさまざまな研究アウトプットはいまや日常のことである.しかし,研究者が英語で話し,英語で書き,英語でやりとりするとき,その “英語” はいったい何者なのかについて深く考える機会はあまりないのではないだろうか.Scott L. Montgomery の本書は,詳細なデータと関連資料を踏まえつつ,現代科学のリンガ・フランカたる英語(あるいは英語たち)の現状と将来予測,そしてそれが科学と科学者さらに科学者コミュニティーに及ぼす影響について考察する.Montgometry は,科学における英語使用の現状分析に始まり,英語学習や英語教育にいたるまで,「証拠に基づいてものを言う」というモットーを掲げて議論を展開している.巻末に付けられた詳細な註を見れば,単なる思いつきや特殊例からの無理な一般化が入り込む隙はない.

ワタクシたち日本人は自らが読み書き話す “英語” について,ともすれば過度に神経質になりすぎているのがふつうではないだろうか.“ネイティヴ英語信仰” がとても強いように思われる日本のいまの趨勢を振り返るとき,本書が最後に到達する科学英語における「言語的公平性」と「複数言語主義」のスタンスは学ぶべきところが多い.非ネイティヴ英語ユーザーである多くの日本人にとって,「“ネイティヴ英語信仰” は百害あって一利なし」と言い切る本書は “[科学]英語” に対する別の見方があることを示してくれる.

英語に関して “ネイティヴ” のように「流暢(fluent)」である必要はない.むしろ,互いに「理解し合える(intelligible)」ことこそ重要なのだという著者の単純明解な結論は,科学のリンガ・フランカとしての英語がもたらす暗い「影」よりもきらめく「光」の方がまさっているという著者なりの楽観主義の発現でもある.もちろん, “非ネイティヴ” である日本のワタクシたち研究者にとっては,そんなきれいごとではすまされない経験や感情がくすぶり続けるかもしれない.しかし,そういう日本(あるいは東アジア)の言語文化的特性もまた本書で言及されているのが興味深い.

Chapter 1「A New Era」(pp. 1-23)では,本書全体として取り組むべき疑問点「科学はグローバル言語を必要としているのか?」(p. 8)が呈示される.すでにこの点に関しても甲論乙駁の論争が続いているらしいが,著者の基本的立場は,科学の共通グローバル言語としての英語がもたらすさまざまな問題点は確かにあるのだが,それでもなお得られる恩恵の方がより大きいという主張で首尾一貫している(p. 9).

かつてのアラビア語やラテン語がグローバル言語だった時代を経て,英語がその地位を占有した現在,アメリカやイギリスなどの anglophone な英語ユーザーよりも,それ以外の non-anglophone な英語ユーザーの方が人口的にはるかに上回っている.その結果,英語世界の中での力関係が変わりつつあると著者は指摘する:

The universe of English is no longer centered on the United States and the United Kingdom. Most communication in the language is between non-native speakers, and this will only grow. English has become something different from “native” or “second” tongue; it is now a global means of communication whose use and advance are much greater than American influence. (p. 13)

英語がグローバル化した結果,それぞれのローカルな地域ごとに「言語進化」が進展する.David Crystal の主張に沿いつつ,著者は次のように言う:

At the spoken level, the language has become decidedly, inevitably plural. Linguists, in fact, do not speak of “world English” any longer but rather “World Englishes” or “new Englishes.” (p. 14)

すなわち,“英語” とは単一の実体ではなく,地域ごとに分化した “変種(varieties)” の集合体としてのみ存在するということになる.言語進化的には当然ありえる変化プロセスだろう.

Chapter 2「Global English: Realities, Geopolitics, Issues」(pp. 24-67)は,英語がどれくらいグローバルなのかを証拠を踏まえて把握しようとする.言語地理学のデータベースなど基礎資料をもとにして,著者は話者数・英語教育・使用分野・地政要因などいくつかの観点から英語と多言語との比較を進める.その上で,グローバル化した英語における「規範(standard)」の問題を取り上げる:

The reality of world Englishes raises the issue of standards. Are there now no final reference points for the English language? Are such standards soon to become irrelevant? The answer is no, as any corporate manager or scholar will tell you. Anglo-American English has not lost its role as a global norm in one major and critical domain: professional written discource. Here, what is called Standard Written English (SWE) continues as a de-facto world orthodoxy. (p. 57)

Written English にはやはり「規範」があると著者はここで主張する.しかし,同時にその「規範」は必ずしも絶対的ではないと言い添える:

The spoils of the battle for “whose English?” will therefore always be intelligibility. To this point, world Englishes have remained fully intelligible to one another in professional writing — a good thing for any profession having a global reach. (p. 59)

Yet in some areas, such as the natural sciences, where a higher degree of global consensus comes to exist for established knowledge, a set of flexible norms roughly agreed upon by journal editors, publishers, and researchers appears to be possible. Growing fragmentation (and thus isolation) would be resisted; it would be seen to generate “rogue” knowledges and thus not serve the international scientific community well. (p. 60)

では,written English ではなく spoken English についてはどうか.著者は英語話者を「English as a native language [ENL]」,「English as a second language [ESL]」そして「English as a foreign language [EFL]」の三つの段階的カテゴリーに分ける.ESL話者は4億人足らずなのに対し,ESL話者は18億人,そしてEFL話者は20億人を越えている(p. 62, Figure 2.1).“ネイティヴ英語話者” の10倍もの “非ネイティヴ英語話者” が存在する現状を考えたとき,英会話教育のこれまでの規範は変わるしかないだろうと著者は言う:

Now the widespread claim that the traditional native-speaker model is too narrow and unhelpful. (p. 63)

The native-speaker model (read: US-UK standard) prevents people in non-anglophone nations from taking ownership of the language and the methods of teaching it. Indeed, this model does have its origins partly in colonial ideology. (p. 64)

ここまでのグローバル英語の現状分析に続いて,Chapter 3「English and Science: The Current Landscape」(pp. 68-101)では,科学において英語が占める地位とそれが果たした役割に議論の軸足が移る.まずはじめに,著者は近代科学におけるグローバル言語の推移をたどる.とくに興味深い点は,ラテン語が衰退した17世紀後半から20世紀後半にいたる三世紀にわたっては,科学のグローバル言語はないに等しい状態だったという著者の指摘だ(次章参照).

著者は過去一世紀に及ぶ科学言語の推移を見渡す.20世紀初め,第一次世界大戦まではドイツ語とフランス語が英語と同等またはそれ以上のシェアを占めていた.しかし,その後,第二次世界大戦が終結するころには英語の “一人勝ち” 状態となり,現代にいたるまでその傾向は強まるばかりであると著者は指摘する(p. 90, figure 3.3).要するに,二つの世界大戦が英語を三世紀ぶりの「科学のリンガ・フランカ」に押し上げたということだ.この時期の歴史的経緯については,最新刊:Michael D. Gordin『Scientific Babel: How Science Was Done Before and After Global English』(2015年4月刊行,The University of Chicago Press, Chicago, vi+415 pp., ISBN:978-0-226-00029-9 [hbk] → 目次版元ページ情報)に詳述されている.

このようにして,現代科学のグローバル言語としての地位を確立した英語は,同時に,国境を超えて広がっていった:「A global tongue, as we have noted before, is a language at once denationalized and supranational」(p. 75).

著者が挙げるデータによれば(pp. 76-77),現在,中国やインド,ブラジルでの科学への資金投入額の激増ぶりはただごとではない.これらの国は科学に国の将来を委ねているかのようだ.一昔前ならぱ発展途上国から先進国へ科学者の一方向的な頭脳流出(brain drain)が見られたが,現在では母国に還流する科学者が増えている.能力のある研究者は複数の国をまたいで活動の場を得ている事例も増えてきたと著者は言う(pp. 80-81).

科学をめぐるこのような世界情勢の変化は,SCI(Science Citation Index)データベースの数字にはっきり反映されている.とりわけ,科学技術分野での中国のめざましい擡頭,そして複数の国の研究者が関わる国際研究の進展はグローバル言語としての科学英語の地位を盤石にしていると著者は指摘する(p. 84).

このような科学そのもののグローバル化は,言語としての英語にどのような影響をもたらすか.著者は,いくつもの実例を挙げながら,現在の学術誌に見られる英語表現は必ずしも標準的ではない英語をも許容する方向に動きつつあると言う:

Today, we do indeed find varieties of scientific English. Or to put it more accurately, we find acceptance of nonstandard forms of written English in a growing number of journals. Some of these forms are specific to regions where a world English has developed, and they share characteristics with that variety. But other nonstandard forms do not follow this pattern. They appear in the work of researchers from countries where English remains a foreign language (pp. 96-97)

“ネイティヴ英語話者” から見れば「まちがい」と言わざるをえない英語表現であったとしても,ちゃんとした学術誌に掲載される論文であってもそういう「まちがい」が(場合によっては)許容されつつあるという点を著者は強調する.Standard Written English (SWE) の規範から外れた英語表現であったとしても intelligible ならばいいじゃないかという新たな緩い規範の登場である:

What we see is a significant flexibility in what is now acceptable as written scientific English. And other factors are at work here besides an overload of jornal submissions. As science has become more globalized, as more researchers from the outer and expanding circles described in chapter 2 have entered the scientific workforce, become authors and editors themselves, founded journals, taken seats on editorial boards, they have helped the global lingua franca to become less strict, more open to variation. The gatekeepers of many journals today seek to encourage a wider geography of contributors and to lessen language inequality between those who have English as a first or second tongue and those who do not, but whose work is valuable and deserves a wide audience. (p. 98)

この箇所は,ワタクシたち日本人研究者が英語で論文を書くときの基本的な心構えあるいは向き合い方を見直すきっかけになるのではないだろうか. “ネイティヴ英語” みたいな書き方は科学英語の規範ではもはやないかもしれないという新たな軸の出現である.著者は次のように結論する:

The notion of “American science”—or, a few decades later, “anglophone science”—seemed powerful and legitimate. Yet it would provincial and temporary in the long run. As researchers from more nations employ the English language to communicate their work and collegiality, science itself will become increasingly globalized beyond the borders of any single group of states, no matter how powerful. (pp. 100-101)

リンガ・フランカとして君臨するグローバルな英語はローカルな変異と変遷を寛大に許容せざるを得なくなるということだ.

次の Chapter 4「Impacts: A Discussion of Limitations and Issues for a Global Language」(pp. 102-131)では,英語が現代科学のリンガ・フランカであることの「光」と「影」を議論する.「影」の筆頭はワタクシたち自身が日々痛感している「言語不平等」である.本書には非ネイティヴ英語ユーザーならではの苦労話がいくつも登場する.英語圏に長く暮らしているのに論文英語がはちゃめちゃなエジプト人研究者,癖のある発音が治らない中国人研究者などの実例の中には,日本人の(笑えない)ケースもちゃんと挙げられている:

It is not hard to imagine the following scenario repeated in a number of countries, particularly in Asia: The nervous [Japanese, Korean, Chinese, Vietnamese, Thai] post doc spent two weeks creating slides, 30 hours drafting a script and 44 hours rehearsing. Altogether, she spent one month away from the bench so that she would not disappoint her supervisor and colleagues during a short informal presentation, in English, before her co-workers. Yet they remembered only the mistakes, she says. (p. 114)

思わず「あるある!」と頷く研究者は少なくないのではないだろうか.日本人を含む東アジア出身者は自分の英語に対する劣等感から神経質になりすぎているということだろう.著者は上のような事例は「small, daily tragedies」(p. 114)であると言うが,当事者にしてみればもっと切迫した状況だったにちがいない.

本書には科学英語教育に関するいくつもの提言がなされている.英語教育が順調に効果を上げた北欧やオランダのような成功例に対して,日本は失敗例の筆頭とされている:

The Japanese are not known to be highly successful second-language lerners, due to a medley of reasons too complex to discuss here. Nonetheless, Japan's contribution to global publication in English remains above that of the United Kingdom, so it seems a good bet that a fair number of Japanese scientists have found a way to be proficient. (p. 115 脚注)

「こちとら,どれだけ苦労してると思ってんだ,このやろう」と愚痴のひとつも言いたくなるが,客観的にみて日本の英語教育の成果が上がっていない現状は認めるしかないだろう.著者が言う「諸般の理由(a medley of reasons)」の一つはこう書かれている:

Yet in countries where a single national tongue tends to dominate training and works as well as the educational system in general, such as Spain, Russia, and Japan, English teaching and learning tend to be less effective. Here there is less opportunity to use the language on a routine, daily basis. (p. 127)

確かに,英語を使わずにすむ日常生活がふつうに送れるという状況は,英語を勉強しなければならない動機を大きく弱めてしまう背景にあることは誰もが納得するだろう.では,どうすればいいのだろうか.著者は最終章である Chapter 6 でいくつかの提言を出している.

次の Chapter 5「Past and Future: What Do Former Lingua Francas of Science Tell Us?」(pp. 132-165)では,紀元前6世紀から現在にいたるまでの歴史を振り返り,ラテン語・アラビア語・中国語などのリンガ・フランカがどのような栄枯盛衰の歴史をたどってきたかを論じる.なかでも注目すべきは,ラテン語がリンガ・フランカの地位を追われた1680年から英語が新たなリンガ・フランカのニッチを専有するまでの300年間はグローバルな共通語が存在しなかったという著者の指摘である(p. 134).リンガ・フランカなきこの時代を科学者たちはどのように乗り切ったのか?:

We are tempted to ask: how did science progress for two full centuries without a lingua franca? Or, to put it a bit differently but more precisely, how was important work in one language transmitted to speakers of other languages? The simple answer is that a fair number of researchers during the eighteenth, nineteenth, and early twentieth centuries were multilingual and could therefore read and translate the scientific literature of other countries. For the majority who were not so linguistically capable, these multilingual workers became mediators and did the hard labor of transmission theselves. (pp. 154-155)

英語がリンガ・フランカとなったことによる功罪を総合的に評価したとき,影の「罪」よりも光の「功」の方が上回っている(p. 158)と言う著者は,その一方で,科学者による多言語主義(multilingualism)を足がかりにして近未来への道を模索しているようだ.たとえ共通語がなかった時代には,多言語を操る科学者が媒介者(mediator)としての役割を果たし,彼らによる言語間翻訳がリンガ・フランカの欠落を穴埋めしていたという指摘はたいへん興味深い.なお,著者は科学翻訳の意義を論じた別の本:Scott L. Montgomery『Science in Translation: Movements of Knowledge through Cultures and Time』(2000年刊行,The University of Chicago Press, Chicago, ISBN:978-0-226-53480-0 [hbk] → 版元ページ)をすでに書いている.

それでは,単一のリンガ・フランカを “インストール” する際に不可避の「言語不平等」の問題はどのように軽減すればいいのか.著者が提案するひとつの方策は,英語表現の非標準的なブレを,intelligibility が保たれるかぎり,許容していくという方針である:

The future will not bring, therefore, a grand opening of discourse in science to a panoply of flexibilities. Editors and also authors will resist the call to full localization, with its eventual abandonment of the edict for global intelligibility. In all probability, this will likely mean continued loyalty to Anglo-American standards for some time, at least at a basic level, and with important variations that will progressively be viewed as international norms, noy those of particular nations. These standards will define the most globally recognized, understandable, and (in most scientific minds) reasonable model. (p. 164)

最終章 Chapter 6「Does Science Need a Global Language?」(pp.166-187 )は,冒頭で提起された疑問への明解な回答を与える:

So, does science need a global language? Yes, it does. (p. 175)

ここで問題となるのは,科学の発展に寄与できるようなリンガ・フランカたる英語を広めていく上での「言語変異」と「言語不平等」をどのように乗り越えるかである.英語表現の変異は制約はあるものの積極的に許容しようという著者のスタンスはすでに明示されている.もうひとつの “非ネイティヴ英語話者” の不平等性については早期英語教育で克服するというヴィジョンが示される.まずはじめに著者が強調するのは “ネイティヴ英語信仰” からの脱却である:

First and most important, it means unburdening English of its association with any specific country and treating it as a skill that anyone can learn. (p. 179)

One type of improvement would likely come from abandoning the native-speaker model as the standard for student performance: accented speech should be considered normal, acceptable (as an indicator of origins, identity). Again, full intelligibility, especially to those from other countries, constitutes the only real, functional standard in a world with so many speakers from so many different linguistic backgrounds. (p. 180)

もちろん,このような英語教育を効果的に進めるには教師側の高い能力が要求される(pp. 181-185).ワタクシが見るかぎり,いまの日本じゃムリなんじゃないかというほどの要求度の高さである.日本に当てはめようとするときの課題はとても多い気がする.

英語という単一のリンガ・フランカが制圧しつつある現代科学の言語世界で,多言語主義はいかなる役割を果たし得るのだろうか.本書の最後はこの問題をふたたび取り上げている.この問題についての著者の見解ははっきりしている.それは単一の言葉しか使えない話者は言語的な “ハンディキャップ” を背負っているという立場である:

Practically, however, having access to scientific work and thought in only one language, while the rest of the world is able to utilize two or three, must be counted a disadvantage, even if that single language is global in extent. (p. 185)

In another sense, monolingual speakers of English, particularly those who have never studied another language to any great extent, can find certain important realities difficult to understand (or easy to ignore). They may be less telerant of nonstandard forms of English or less able to comprehend speakers with strong accents. They may be unwilling to accept their own minority status in the global realm of English speakers and the inevitable varieties of their own language that legitimately exist. (p. 186)

リンガ・フランカとしての英語の役割を評価する著者は,多言語主義(multilingualism)あるいは複数言語主義(plurilingualism)に賛同しつつ,著者は,地球語としてのグローバルな英語に対する尊重が intelligibility の基準であるとするならば,逆に地域ごとのローカルな言語に対する尊重が plurilingualism の精神であると結論する.本章を締めくくる次の一文の意味するところをじっくりかみしめたい:

Science needs, and indeed has, a blobal tongue, but such a language cannot flatten the world. As long as national science is a vital part of the scientific enterprise, monolingualism is itself a form of isolation. (p. 186)

現代科学における英語は確かにリンガ・フランカである.そのことは現役の研究者・科学者ならばよくも悪くも身に染みついている.それと同時に,科学英語を中核テーマとする本書を通じて,読者は「グローバルとはどういうことか?」というより一般的な問題が通奏低音のように流れ続けていることに気づくだろう.本書を読了してみてそれがはっきり見えてくる.グローバルなリンガ・フランカの価値基準は極東からみればはるか遠くの anglophone なワールドから無慈悲に降臨してくるのではなく,実は自分の身の回りでローカルに構築することができるという可能性を本書は強く示唆している.地球語たるリンガ・フランカの宿命である “言語変異” を逆手に取るという戦略がありえるということだ.英語に関するエビデンスに基づかない妄説を排除しようとした本書は実現性のある新たな選択肢を提示している.

—— 以上の書評は〈本録〉に分割掲載した:三中信宏「科学の「リンガ・フランカ」がもたらす光と影」(123).

◆曇りときどき晴れの昼休み.気温は25度にも達しないのに,湿度が高くていやな季節の到来を予期させる.ロングコース徘徊だん.歩き読み:山田奨治『東京ブギウギと鈴木大拙』(2015年4月22日刊行, 人文書院, 京都, 249 pp., 本体価格2,300円, ISBN:978-4-409-41081-3 → 版元ページ)第4章まで読了.素行が悪いなぁ.東京ブギウギ!

◆午後の┣┣" 撃ち —— 秋の数理統計研修に関する農研機構事務局との打ち合わせ.基礎編11月9日(月)〜13日(金),応用編11月16日(月)〜20日(金).今年はいつものプレゼンテーション室ではなく,電農館VCホールで実施される./駒場「生物統計学」講義の事務連絡./奈良のお座敷.セキュリティ制約が “鉄壁” すぎて困るんですけど.

◆午後5時前,そろそろ撤収.長居は無用だ.朝からずっと蒸し暑かったが,日暮れてやっと涼しくなったので,秋田の〈ゆきの美人〉純米吟醸活性にごり酒をシュポンと開栓.これから梅雨に入ると酸度の高い夏向きの日本酒が欠かせない.前菜はフルーツトマトに馬蹄形のチーズ〈Baraka〉のスライスを乗っけて,黒胡椒とトスカーナのオリーヴオイルをたらす.メインはポークソテー.豚肉をしっかり食べる.四合瓶なんぞあっという間に空っぽだ.

◆明日は定例都内出撃日.これからの蒸し暑い季節はつくばとの往復だけでも十分にきびしい.

◆本日の総歩数=9273歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 92.1kg(−0.3kg) / 30.2%(+0.3%)


27 mei 2015(水)※ブツ着便で大わらわ

◆午前4時半起床.日の出.まずは米とぎ.気温14.3度.朝から陽光が照りつける観音台はすでに気温22.8度まで上がっている.朝イチのお仕事は,午後の職場巡視に対抗して,崩落寸前の本の山の “整地作業” である.

◆[系統樹大全]先日,仙台でのお座敷に呼んでいただいたお席亭 Tohoku Forum for Creativity でマニュエル・リマ『THE BOOK OF TREES』を英文紹介していただきました.どうもどうもです.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 住宅調査票とキャリアデザインシートという毎年恒例の┣┣" 様がいらっしゃったので,とりあえず┣┣" 箱にご案内./今月中に予定されているプレスリリース原稿が厚木から送られてきた./来月の橿原での宿の件. “方違え” が必要との占いがあったそうで,急遽,別の宿泊先に変更.神々がおわす地はタイヘンである./10:30〜11:30,所議報告と領域会議.今日予定されていた職場巡視は来月まわしとなった.

◆[蒐書日誌]ブツ着弾! —— 三中信宏『みなか先生といっしょに 統計学の王国を歩いてみよう:情報の海と推論の山を越える翼をアナタに!』(2015年6月5日刊行,羊土社,東京,191 pp., 本体価格2,300円, ISBN:978-4-7581-2058-6 → 目次版元ページ).昨日26日に刊行されたと聞いていたが,奥付を見ると「2015年6月5日」が第1刷刊行日となっている.いずれにしても,ブツが届いたからにはこのまま販促大作戦になだれ込むしかない.まずはメーリングリストにアナウンス送信.続いて,コンパニオン・サイトを開設.ばたばたと走り回る.ワタクシは今日初めてブツを手にしたが,献本先にもほぼ同時に着便したようだ.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 昨日からの原稿を書き進め,15,000字ほど書いたところでおしまい.

◆[欹耳袋]T. Orr and A. K. Yamazaki 2004. Twenty problems frequently found in English research papers authored by Japanese researchers. IPCC: Professional Communication Conference [abstract]— 論文内容についての論説記事:enago-ulatus blog「日本人がよくする英語の間違いトップ20 (1)〜(4)」(2010年9月9日〜15日).※この場合の正誤の “規範” がどこにあるかが興味深い.ま,明日の露払いみたいなもの.

◆今日は日差しこそ強かったが,最高気温は26.0度と低めだった.涼しい東風が吹き抜ける夕刻.

◆本日の総歩数=3930歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 92.4kg(−0.1kg) / 29.9%(0.0%)


26 mei 2015(火)※観音台は真夏日寸前

◆午前4時半過ぎ起床.気温15.9度.朝日が輝く青空.東風が涼しい.朝日がさんさんと降り注ぐ観音台は新緑が乾いた涼風にそよいでいる.気温20.9度と順調に上がっている.日中は夏日ライン超えは確実との予報.気持ちいい朝イチの BGM はスクリャービンの交響曲4番〈法悦の詩〉から始まる.

◆[欹耳袋]国立大学協会「政策研究所 研究報告書「運営費交付金削減による国立大学への影響・評価に関する研究」」(2015年5月25日)|報告書 [pdf].150ページもある.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 研究者情報(和文・英文)の更新確認完了を広報情報室に連絡./神がかった〈プロメテウス:火の詩〉が終ったので,しばらくは静謐の時を.

◆カンカン照りの昼休み.気温は26.6度まで上がってきた.ひさしぶりのロングコース徘徊だん.歩き読み本:山田奨治『東京ブギウギと鈴木大拙』(2015年4月22日刊行, 人文書院, 京都, 249 pp., 本体価格2,300円, ISBN:978-4-409-41081-3 → 版元ページ)第2章まで読了.出来の悪い息子ほど…….

◆午後の┣┣" 撃ち —— 午後は5,000字余り書いてみる.ぜんぜん終わりそうにない.

  • #NodaiStat 先週の「実験データー解析概論」での質問から. posted at 10:00:27
  • #NodaiStat 【質問】「自由度がわからない……」/【回答】前回は解説の途中で終ってしまったので,今週,その残りとRでの演習が続きます.どうせ地震避難訓練で後半が潰れてしまうので,「自由度」とその意味について徹底的に理解する「自由度自由自在」のワンポイント講義. posted at 10:03:11
  • #NodaiStat 続いて「生物統計学」の質問へ. posted at 10:19:26
  • #NodaiStat 【質問】「全偏差を処理要因と誤差要因に分割するところがイミフです」[同様の質問多数]/【回答】実験計画法の基礎は,データがばらつく原因を線形統計モデルにしたがって “腑分け” するという考え方です.今週はデータのばらつき・偏差・平方和を視覚化します. posted at 10:25:51
  • #NodaiStat 【質問】「誤差平方和の自由度がイマイチわからなかった」/【回答】各水準ごとに計算された処理平均を基準にして同一水準内のデータとの差を数値化したものが誤差偏差です.各水準について誤差偏差の総和はゼロになるという制約が付くので,誤差自由度=偏差個数−制約総数. posted at 10:31:54
  • #NodaiStat 【質問】「だんだん難しくなってきたのでいい参考書があれば……」/【回答】本日発売!:三中信宏『みなか先生といっしょに 統計学の王国を歩いてみよう:情報の海と推論の山を越える翼をアナタに!』 ow.ly/NpSDg ※宣伝イノチ. posted at 10:34:42
  • #NodaiStat 【回答】続)統計学の参考書についてはワタクシの〈租界R〉でブックリストを公開しています:「統計学へのお誘い本リスト(Version 21-May-2015)」 ow.ly/NpSNw ※よりどりみどりです. posted at 10:38:14
  • #NodaiStat 【感想】「この授業は二番目に好きです!」/【回答】(●'◡'●)ノ♥〜 posted at 10:39:16
  • #NodaiStat 【感想】「教室の後ろがうるさい」(複数の怒りの声あり)/【回答】暑くなってきたので教室の中で “蝉” が鳴き始めたんでしょう.次回まだ鳴き続けているようなら対処します. posted at 10:42:20

◆[欹耳袋]京都大学>「研究・産官学連携 研究成果 最も多様な淡水性ハゼ科魚類、ヨシノボリ類の進化史を解明 -回遊魚の淡水域への適応進化と大規模な種間交雑-」(2015年5月26日)|元論文 [abstract].

◆午後3時,気温29.0度.早々と撤収したくなる.西日から逃れるように午後5時前にさくっと撤収.

◆本日の総歩数=10159歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 92.5kg(0.0kg) / 29.9%(+0.4%)


25 mei 2015(月)※ぐらりと揺れる午後

◆午前5時半起床.朝日がまぶしい.気温13.9度.週明けの観音台は空高く斑雲が広がり,気温はすでに21.7度と出だしが高い.週末は多摩の奥地の “電波僻地” に実在していたので,つぶやきがかなり不足していた.

◆[欹耳袋]J-CASTニュース「大学の専攻で米国では給料にこんなに差がつく 「勝ち組」は工学系、1600万円超えも」(2015年5月24日) http://ow.ly/NlH6t ※「学部卒はそれほど高所得にはならないが、院卒になると跳ね上がる例」— その実例とは:「動物学は5万8000ドル(約696万円)から10万4000ドル(約1248万円)」— いったいどこの異次元世界の話かと(@_@).

◆[蒐書日誌]山田奨治『東京ブギウギと鈴木大拙』(2015年4月22日刊行, 人文書院, 京都, 249 pp., 本体価格2,300円, ISBN:978-4-409-41081-3 → 版元ページ).

◆午前の┣┣" 撃ち —— 東大で後期に担当している生物統計学の講義は来年度から変わるようなという話を多摩の丘の上で聞いた.詳細はあらためて打ち合わせることになるだろう./秋の数理統計研修に関するコーディネーター依頼のメールに返信./えいやぁっとアマゾンをポチッ.硬い表紙の “紙” は高いなぁ./『自然を名づける』と『分類思考の世界』が今年の大学入試問題に出題されたとの連絡を受ける./奈良県農試からの統計研修出講依頼状を開封.所内決済へ.

◆昼休み.外は薄雲が広がっている.気温は夏日ラインに届かないが,不快指数が高い.徘徊はお休み.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 今年もまた “人間犬” に変身する日が確定した./14:28,茨城県南部が震度5弱の地震.今の地震の衝撃で本棚から『カントとカモノハシ』と『リスボンへの夜行列車』が崩落した.

◆[欹耳袋]アナザー・ワールド —— 太郎丸博 2010. 投稿論文の査読をめぐる不満とコンセンサスの不在. ソシオロジ, 54(3): 121-126. [J-STAGE] [pdf]—「査読されるという不愉快な体験」「一方的に審査する安定した身分の人々と、一方的に審査される不安定な身分の人々に階層が分化」「人文・社会科学系の雑誌では七〇〜九〇%が掲載不可になるが、自然科学系の雑誌では二〇〜四〇%であるという」※異世界だ.自然科学系のジャーナルのリジェクト率が「二〇〜四〇%」っていうのは根拠レス.分散はもっともっと大きいはず./太郎丸博 2007. 編集後記—論文を投稿すること、審査すること—. 理論と方法, 22(1): 105-108 [J-STAGE] [pdf—「論文の審査で嫌な思いをすると、投稿するのが嫌になる。私も専任講師になった後は、投稿を一時期やめてしまった」「就職が決まると学会誌への投稿をやめてしまう人は多い」※驚いてはいけないんだろう.

◆吹き抜ける東風が涼しい夕暮れ.グラッと揺れた今日は初夏らしからぬ空模様だった.農環研はまだエレベーターが停止したままなんだろうか.

◆本日の総歩数=2582歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 92.5kg(+0.7kg) / 29.5%(−0.8%)


24 mei 2015(日)※今日も多摩の丘の上

◆午前6時前のろのろ起床.雲が広がり,昇る朝日を覆い隠す.気温18.0度.大分からの統計質問への返答メールを送信して,そろそろ高幡不動へ出撃するぞ.

◆[欹耳袋]Togetter -「「文学部はなぜ必要なのか?」不要論者の多い文学部について考える人々」※山内史朗さんの連ツイ.

◆多摩の丘の上へ —— 午前10時前,つくば駅.湿っぽい曇り空.気温20.9度.予報では雨になるというので,しかたなく傘を持参.きのうと同じ往路ルート.週末の京王線特急は東府中に臨時停車する.しかし,府中競馬場に行くわけではないので,そのまま特急に乗り続ける.正午過ぎ,高幡不動着.駅前ロータリーに面している〈パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウ〉にてさっそく必修科目と選択科目を履修する.高幡不動の五重塔を仰ぎ見た後,バスで帝京大学へ.高幡不動ははじめて来たが,丘の上まで建造物が立ち並ぶ,広い寺社敷地をもっていることを知った.

◆「図書交換会」のカルチャー・ショック —— 多摩奥地の丘の上に立つ昼下がり.初夏の日差しにあぶられてあっつ~.雨降る言うたんはどこのどいつやっ.責任者出てこいっ! 午後のセッションまでまだ時間があったので,大会参加者の流れに運ばれるまま,グラウンド横の巨大な体育館に吸い込まれた.日本考古学協会の「図書交換会」会場と書かれている.とても広い空間にもかかわらず,どこから湧き出してきたかと思うほど大勢の学会参加者たちに埋め尽くされていた.図書交換会という言葉からなんとなく物々交換を連想したが,それはみごとにはずされた.

会場入り口で配られていた「交換図書リスト」なるチラシを見ると,考古学関連の出版社や企業も20社ほど展示していたが,それ以外の100あまりのブースは全国各地の博物館あるいは考古学団体の出版物を展示販売する場所だった.これほどの規模で図書販売が行われている事例はほかの学会では目にしたことがない.

すれちがいにも難渋する混雑をかき分けて,図書交換会会場をひとまわり.遺跡調査報告書や図録の類がたくさん並んでいた.これほど多様な考古学関連の出版物が出されていることも驚きだが,ふだん目にしない書名が多すぎる.おそらくは,商業ベースに乗らない出版物なので,こういう学会がある機会に対面で売らないとサーキュレートされないのだろう.あとで学会員から聞いたところでは,確かにその通りで,図書交換会で売った代金を元手にして,次の出版資金にしている団体が少なくないらしい.

それにしても,こんなにたくさんの出版物をいったい誰が買うのかと思ったワタクシは浅はかの極みだった.図書交換会会場には宅急便の発送窓口が臨時に設けられていて,行列が伸びているではないか.ひとりひとりが大量の本を段ボール箱に詰め込んでは発送手続きをしている.この買い方は尋常ではない.宅急便窓口のうしろには台車が用意され,積み上げられた重い段ボール箱たちはそのまま裏手に駐車していた宅急便トラックにどんどん運び込まれていった.昨今の「電子出版」とか「キンドル」とかいうチャラチャラした言葉はこの業界ではきっと禁句なのだろう.ひたすら大量の “紙” が展示され,それらの “紙” は大量に買われていく.戦慄すべき光景だった.そして,こういう大規模な図書交換会を目撃できただけでも,日本考古学協会に来た甲斐があったというものだ.

あとで会員から聞いた話では,以前の図書交換会はもっと大規模で,各地の遺跡資料などローカルにしか出回らない出版物を入手するほとんど唯一の機会だったとのこと.研究発表会よりもむしろ図書交換会の方が重要とさえ位置づけられているらしい.それにしても,なぜ「図書販売会」ではなく「図書交換会」なのかというワタクシの素朴なギモンに対しては,お金が絡むことなので “婉曲表現” をしているとのオトナの回答が返ってきた.なぁるほど,税務署はコワいもんねぇ.

自分の知っている狭い世界の中からしかものを見ないのはしかたがないといえばそうなんだけど,たまにこういう「畑違い」の学会に顔を出してみると,学問とか研究の「場」がワタクシたちの想像を超える “変異” を有していることが実感できるだろう.

◆図書交換会のカルチャー・ショックによろめきつつ,午後の講演会場に向かう.今回参加した主目的は,セッション5〈数理的解析による型式学と社会発展理論の刷新に向けて〉だ.古墳や土器の形状を形態測定学をもちいて解析するという話.「型式学[けいしきがく]」はアップデートできるか?という攻めのセッション.歴史科学諸分野の連携による文化進化学の構築〉プロジェクト参画者が勢揃いした.

◆[蒐書日誌]Stephen J. Lycett and Parth R. Chauhan (eds.)『New Perspectives on Old Stones: Analytical Approaches to Paleolithic Technologies』(2010年刊行,Springer-Verlag, New York and Berlin, viii+345 pp., ISBN:978-1-4419-6860-9 [hbk] → 版元ページ).考古学への形態測定学の適用など.こういう論文集が5年も前に出ていたとは知らなかった.

◆セッション終了後,高幡不動駅前の〈あんず村〉にてビールなど.その後は転げ落ちるように,日本酒ワールドへ.岐阜〈小左衛門〉純米吟醸播州山田錦うすにごり,出雲〈王祿〉超王祿,香川〈悦凱陣〉讃州雄町純米無ろ過生,群馬・藤岡〈巌〉直汲み純米雄町生原酒と続いた.午後10時過ぎにつくば帰還.当然の報いの「うう……」.明日からは平常労働.研究者に休息の日々は訪れないのだ.

◆本日の総歩数=11423歩. 朝◯|昼−|夜×. 計測値(前回比)= 91.8kg(−0.4kg) / 30.3%(−0.5%)


23 mei 2015(土)※テラ・インコグニタ

◆午前5時半のろのろ起床.気温12.5度.朝から青空.段雷が鳴り響く午前6時.どこかでイベントがあるのだろう.「段雷」という広報伝達手段は茨城に来て初めて知った.

◆[系統樹大全]《熔融鐵鐵斎》只管読書「THE BOOK OF TREES―系統樹大全:知の世界を可視化するインフォグラフィックス」(2015年5月22日).

◆午前11時,つくば駅.薄雲が広がる蒸し暑いセンター広場.気温は24.1度.不快指数高し.連日の都内出撃.今日は多摩エリア深奥部の terra incognita に潜入する.今日のお仕事は日本考古学協会第81回(2015年度)総会.八王子の帝京大学で開催されている.もちろん初参加の学会,しかも帝京大学キャンパスも初めてという初物尽くしだ.つくばからだとどうあがいても2時間かかるので,観念して,TXで秋葉原まで,岩本町から都営新宿線&京王線と乗り継いで運搬される.まずは人生初の高幡不動駅で下車.おお,高幡不動尊ってのが駅前にあるわけね.時間があったらお参りに.

◆[欹耳袋]「あとで読む」とか「メモクリップ」とか「_φ(・・」とかツイートしたあげく,けっきょくぜんぜん読んでないアナタ! 論文をダウンロードしただけで安心してしまい読む意欲がなくなってしまったそこのキミっ.今度呑もうね(オトモダチ).

◆帝京大学行きの路線バスは,多摩丘陵を上っては下り.百草団地なる巨大なアパート群を通過したのち,丘の上の広大なキャンパスに到着した.E-mobile も WiMAX も電波がぜんぜん届かない秘境の地である.人工芝のグラウンドを回りこんで,日本考古学協会総会会場の17号館へ.今日のところは,午後最初の公開講演会:阿部朝衛「初期人類の子どもたち」(14:00〜)と,それに続くセッション1〈子どもをめぐる考古学〉というセッションを覗いてきた.この学会はドレスコードが厳然として守られているらしく,スーツ&ネクタイ率はきわめて高かった(ワタクシは “外れ値” 確定).

◆[蒐書日誌]『日本考古学協会第81回総会 研究発表要旨』(2015年5月23日,日本考古学協会,東京,232 pp., 税込価格2,500円)— 講演ごとの要旨分量は見開き2ページ.石器や土器の描画が繊細きわまりない.きっとそのワザが伝承されてきたのだろう.巻末の宣伝ページにはそういう出土物の描画を専門に引き受ける会社まであるようだ.新鮮な驚き.

◆帰路は多摩センターに降りる路線バスに揺られ,またまた2時間あまりかけてつくば帰還.車窓から見える西の空は夕焼けで真っ赤に染まっていた.

◆本日の総歩数=7715歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=92.2kg(−0.8kg) / 30.8%(+1.0%)


22 mei 2015(金)※夏日じりじり農大へ

◆午前5時前起床.気温は11.5度.やや涼しい.昇る朝日がまぶしすぎる.今日も夏日か.

◆[蒐書日誌]古沢和宏『痕跡本の世界:古本に残された不思議な何か』(2015年6月上旬刊行予定,筑摩書房[ちくま文庫],東京,ISBN: 978-4-48043280-3 → 近刊情報)※前著:古沢和宏『痕跡本のすすめ』(2012年2月17日刊行,太田出版,東京,160 pp., 本体価格1,300円,ISBN:978-4-7783-1297-8 → 書評版元ページ古書五つ葉文庫)はとても印象に残る本だった.

◆定例都内出撃の朝 —— 午前7時半,つくば駅.初夏の日差しを避けるように地下へ直行.気温16.1度.湿度が低くてとてもよろしい.午前9時前,新宿駅.今日はさしたる遅延もなく運ばれている.午前9時半,薄曇りの農大キャンパス.南風.気温21.7度.速攻でコンピューター演習室へ.今日のセットアップ真っ最中.

  • #NodaiStat 本日の「実験データー解析概論」はデータとモデルの関係について解説したのち R を用いた実習を行ないます. posted at 09:55:36
  • #NodaiStat 今日は,データとモデルの関係を見る際に「ばらつき」をどのように可視化するかという話をしました.後半は,その「ばらつき」の数値化を目標に,偏差・平方和・分散という基本概念とともに,自由度の意味を話しました.自由度については来週のR実習でさらに解説します. posted at 12:14:44

◆昼休み.正午直前に25.2度の夏日ラインを突破.今日のR実習は「不幸せ度」が軽微ですんでシアワセだった.

  • #NodaiStat 本日の「生物統計学」は先週の続きである「中心極限定理」から始まって,実験計画法に入ります. posted at 12:52:18
  • #NodaiStat 今日は実験計画法の完全無作為化法について,実験区のレイアウト原理(反復実施・無作為化・局所管理),ならびに線形統計モデルの説明と偏差・平方和・自由度まで話をしました.つづきはまた来週. posted at 14:58:16

◆今年度に入ってからというもの,毎週金曜の定例都内出撃は疲弊の連続である.今日も東京農大世田谷キャンパスにて大勢の学生さんを相手に高座ふたつ.100人とか200人とか,やっぱりタイヘンやわぁ.

“灰” と化したパーツを補填するためにはしっかり摂取する必要がある.今宵は牛肉を食べるのだ.常温に戻した牛もも塊肉300グラム×2に岩塩と黒胡椒をすりこみ,さらに熟成黒味噌を塗りつける.今回は細身の肉塊なのでたこ糸で縛る必要はない.熱したフライパンでしっかり焦げ目を付けてから,150度に予熱したオーブンへ.500グラムの塊なら30分あまりかかるが,今回は20分の設定.ちょうどいいレア加減に焼きあがった.ローストビーフとともに〈風の森〉25BY笊籬採り・山田錦・純米吟醸をシュポンと開栓.

◆明日は多摩奥地の terra incognita の “探検” に出発する.

◆本日の総歩数=11018歩. 朝◯|昼−|夜△. 計測値(前回比)= 93.0kg(+0.1kg) / 29.8%(−0.6%)


21 mei 2015(木)※初夏の観音台に復帰

◆午前5時前,雷鳴が鳴り響いて目が覚めた.昨夜からの雨はずっと降り続いている.気温14.1度.強烈な雨雲分布は目にも鮮やか.雷鳴と稲妻 — ヨハン・シュトラウスとちゃいます.午前6時,雷雲は関東の東海上に抜けたようで,しだいに青空が広がってきた.気温は13.2度.風が涼しい.

◆農林団地は前夜の雷雨のなごりで水たまりだらけ.しかし,見上げれば初夏の青空が広がり,すっきり爽快な朝.午前8時の気温は15.9度.今日は乾いた北東の風が吹き抜けるとの予報.朝イチの BGM は Steve Reich「Proverb」— Ludwig Wittgenstein のつぶやき「How small a thought it takes to fill a whole life[どんな些細な考えでも一生を埋めるには十分である]」が歌詞.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 第7回連載原稿ゲラ修正版のチェック./仙台出張の復命書提出./向こう一ヶ月間の┣┣" 撃ちリスト更新./今週末の日本考古学協会総会に参加するのだが,会場の帝京大学八王子キャンパスに到達できる気がぜんぜんしない.最寄りの聖蹟桜ヶ丘駅とかいったい “何県?” — もちろん人生初.仮に行けたとして,つくばまで日帰りできるのか.要するにワタクシにとって「多摩エリア」はメンタルマップがぜんぜん形成されていないということでして.多摩センターから南大沢までだったらかろうじて「脳内マップ」ができているが,帝京大学あたりになるともう terra incognita.

◆[蒐書日誌]盛口満『植物の描き方:自然観察の技法 III』(2015年5月1日刊行,東京大学出版会,東京,170 pp., 本体価格2,400円, ISBN:978-4-13-063343-7 → 版元ページ).ご恵贈ありがとうございます.前著2冊:盛口満『生き物の描き方:自然観察の技法』(2012年12月5日刊行,東京大学出版会,東京,160 pp., 本体価格2,200円, ISBN:978-4-13-063335-2 → 版元ページ)と盛口満『昆虫の描き方:自然観察の技法 II』(2014年7月7日刊行,東京大学出版会,東京,160 pp., 本体価格2,200円, ISBN:978-4-13-063342-0 → 版元ページ)に続く最新刊.これで三部作完結とのこと.

◆正午の気温は21.4度.からりと晴れ上がった観音台は強い日差しと乾いた北風が心地よい.ロングコース徘徊だん.コリン・コバヤシ『ゲランドの塩物語:未来の生態系のために』(2001年5月18日刊行,岩波書店[岩波新書・新赤版730],東京,xiv+200+4 pp., ISBN:4-00-430730-9)読了.ゲランドとカマルグでは同じフランスの製塩地でも対照的.昼下がり,いきなり吹き荒れる西風.煽られるブラインド.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 来月の奈良〈風の森〉巡業の準備と連絡.

◆[欹耳袋]一昨日の仙台クワトロセミナーでの話 —— ワタクシはコメントのなかで,日本の生物分類学者は「各論=個別記載」は大好きでも「総論=原理原則」は口にしない.全体を支配する体系は “天上から降臨する” と彼らは考えていると言った.すると,フロアから「日本の考古学はまさにそれ」とか「いや経済学にも当てはまる」という意見が相次ぎ,日本の研究者は分野を問わずどこまでも「個物の蒐集と記載」が大好きなんだなあと痛感したしだい.

◆西日に照らされて輝く「未読本の壁」がテーブルマウンテンのようにそびえ立つ.いったいいつ読むつもりなんですか?>ワタクシ.

◆つくばの某組合(≠全農林)の役員になりませんか?との申し入れがつい先ほどあった.役員候補になりそうな組合員を探しているとのこと.そういえば一昨年のちょうど今頃に全農林筑波地本委員長になりませんか?とささやかれたことがあった.日録アーカイヴを検索したら「2013年4月15日」に確かに筑波地本のヒアリングを受けていた.当時の勤務状況は全1800労働時間のうち700時間はつくばの「外」で仕事をしていた.地本の役員を引き受けるのはどう考えても「時間的にムリ」ということでケリがついた.本務地不在時間が800時間(=100日)を越えると,筑波地本の組合費が再計算されることもそのとき知った.要するに,職場にいなければ組合費もそれに応じて安くなるらしい.おそらく今後は,本務地を持ちながら,同時に複数の職場をまたいで働く「兼業研究員」が今よりももっと増えるだろうと思われる.そのとき組合活動はどうする(どうなる)んだろうなと考えたしだい.というわけで,一昨年とほとんど変わらない勤務形態が続いているワタクシとしては,今回の某組合(≠全農林)の役員についても「やっぱりムリ」と返事した.

◆居室温度が27度を超えたので,そろそろ撤収準備だ.来た風が吹く夜,とんがった三日月が西の空にくっきり浮かんでいる.夜更けに販促戦略メールが飛び交い,献本先リストを神田小川町に送信.本日はこれにて寝るん〜♫•*¨*•.¸¸♪ .

◆本日の総歩数=10101歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 92.9kg(−0.2kg) / 30.4%(+1.4%)


20 mei 2015(水)※迎撃翌日つくば帰還

◆午前5時過ぎ起床.朝日がまぶしいあおば通.気温は12.4度.盛大なる「うう……」真っ最中.高速転送外付け肝臓が必要.今日は単につくばに帰るだけの簡単なお仕事.

◆[欹耳袋]日本経済新聞「寡占化・急な円安…海外学術誌高騰、悩む大学:通常の図書費を圧迫」(2015年5月16日)※「学術出版社の寡占化」「中国など新興国の研究者の論文投稿数激増」「追い打ちをかけるのが急激な円安」「今秋にも始まりそうな海外ソースの電子商取引に対する消費税課税」— 最初の三つは知っていたが,最後のひとつは初耳.ジャーナルの「パッケージ購入」を止めて単一論文の「ペイパービュー購入」に切り替えたところで,海外からダウンロードするかぎり逃げ場がない.

◆[蒐書日誌]やっと刊行 —— 三中信宏『みなか先生といっしょに 統計学の王国を歩いてみよう:情報の海と推論の山を越える翼をアナタに!』(2015年5月26日刊行,羊土社,東京,191 pp., 本体価格2,300円, ISBN:978-4-7581-2058-6 → 詳細目次版元ページ)※見本刷はまだ手にしていないのだが,版元ページには目次と序文そして索引が公開されている.

本書の本文に登場するのは,ガウス,ベルヌーイ,ド・モアブル,ラプラスら確率論・統計学の先駆者,たちをはじめとして,ピアソン,フィッシャー,テューキーらより現代に近い統計学者たちも頻繁に登場する.脇役を演じるのは,科学史・科学哲学ではカール・ポパー,イアン・ハッキング,カルロ・ギンズブルグ,セオドア・ポーター,エリオット・ソーバー,インフォグラフィクス分野ではエドワード・タフティとマニュエル・リマ,そして形態測定学のフレッド・ブックスタイン.今あらためて見なおしてみたら,けっこうゴージャスなキャスティングだなぁ.

—— さぁ,次は販促だ!

◆[欹耳袋]第62回日本生態学会大会・自由集会W28〈道具としての「形態測定学」:昆虫のかたちの定量化法〉〉— 2015年3月21日(土)鹿児島大学(郡元キャンパス)の講演資料が公開された.

◆よれよれになってつくば帰還.夜遅く,遠雷がゴロゴロ鳴り,雨が降りだした.

◆本日の総歩数=4186歩. 朝◯|昼−|夜◯. 計測値(前回比)= 未計測/未計測


19 mei 2015(火)※雨上がりの杜の都へ

◆午前4時過ぎ起床.まずは米とぎ.夜中の雨はもう上がったようだが,下界の道路を行き交う車の音はまだしゅるしゅると.気温17.5度.北西風.プチ旅支度真っ最中.雨はまだしとしと降り続いていた.

◆[欹耳袋]沖縄タイムス+プラス「元沖大教授の伊藤嘉昭さん死去 ウリミバエ根絶を指揮」(2015年5月19日)※ ワタクシは実はほとんどお会いした機会はないのですが,旧農技研(西ヶ原)の大先輩のひとりでした.伊藤嘉昭『楽しき挑戦:型破り生態学50年』の書評:三中信宏「もうひとつの〈無法松の一生〉」.また,岩田俊一(責任編集)昆虫科西ヶ原OB会有志『農技研昆虫科 ― 西ヶ原三十年の記憶』(2013年4月発行,非売品, ii+67 pp.)にも伊藤嘉昭さんの文章が載っている.

◆新緑の杜の都へ —— 今日は東北大学にてお座敷がある.小雨のつくばを出発したのが午前8時.南流山で乗り換えた時は本降りだったが,武蔵野線経由で大宮に着いたら空はもう明るくなっていた.東北新幹線〈はやぶさ11号〉に乗ったのが午前10時,そして仙台着が11:07.大宮—仙台間が早すぎて実感が湧かない.ひさしぶりの仙台.外はときどき霧雨が降りかかる.

仙台駅に着いたらもちろん「到着の儀式」をおごそかに執り行わねばならない.お昼前というのに,仙台駅「牛たん通り」はどこもかしこも長蛇の列だった.さすが “牛の舌” の帝国だ.今回は〈喜助〉にて「特切り厚焼定食」を注文.しっかり “牛の舌” を噛み締めて滑舌をよくすることも仕事のうちなのだ.

“牛の舌” の儀式をつつがなく終え,エスパル地下の〈アフターヌーンティー〉にて一休みする昼下がり.あおば通の半袖人口がどうも少ないと思ったら,正午の仙台の気温は16.9度だった.あらあら夏モードの半袖しかもってきていませんけど.夜はもっと涼しくなるのかな.

◆仙台マップで今日のお座敷の場所を確認するも,いっこうに土地勘が湧かない.それもそのはず,ワタクシ,東北大学・片平キャンパスって初めて行くみたい.ずーーーっと前に,宿泊施設のようなところに泊まったことがあったけど,アレって「片平」だったようななかったような.東北大学って青葉山とか川内みたいな熊さんが出るキャンパスしか知らないので,街ナカのキャンパスは超ビギナー.とにかく「片平キャンパス・北門」なる場所が目標.駅前のあおば通から仙台文化横丁を抜けて先にいけばいいのか.

ホテルにチェックインした後,てくてく歩いて午後4時前に片平キャンパス北門にたどり着く.東北大学出版会が入っているレトロな木造建築の横目に進むと,目的地の〈知の館〉はそのすぐとなりにあった.

ここ〈知の館〉は先週オープンしたばかりとのことで,インテリアがリッチすぎる.このセンターは世界中のビッグネームに滞在してもらって,東北大学に知的刺激をという意図があるとか.今年度は利根川進さんが来られると聞いた.ロビーで担当者と打ち合わせをすませてから,三階の講義室へ.

午後4時半,第7回クワトロセミナー〈帝国の基層 :西アジア領域国家形成過程の人類集団〉の開始.まずは,有松唯さんの基調講演「帝国の基層」スタート.そのあいまに紙芝居を増強する.ワタクシのコメントは15分,さくっとお仕事おしまい.続いて,松木武彦さんのコメント.その後,有松さんの返答タイムとフロアからの質問など.「国家とは何か?」の概念は時代的に変遷しているという質問には国家の定義はムリだろうという返答.今回の演者とコメンテーターは,全員が〈歴史科学諸分野の連携による文化進化学の構築〉プロジェクト参画者なので,すでに顔見知りだったりする.お呼ばれされたクワトロセミナーは東北大学の文系四学部の連携を深める目的で開催されているとのことで,この日は経済学部長の秋田次郎さんや考古学教室の阿子島先生とか教育学部の秋永先生とかフル登場だった.

◆予定通り,午後6時半に終了.片平でのお座敷がはけたあと,まずは生協食堂でもあるレストラン〈萩〉の二階別室で立食一次会.〈萩〉は生協食堂 な の に リッパすぎる.全般的に片平キャンパスは青葉山とか川内よりも風格があるのは「発祥の地」だからか.その後,街ナカへ繰り出す.サンモール一番街アーケードの途中から分岐する毛細血管のような「壱弐参横丁」と「仙台文化横丁」の異界は明るいうちにしっかり探検してきた.暗くなってから入り込むと二度と帰れなくなるらしい.

二次会は肴菜や〈〉にて.ウニやホヤが舞い踊る展開に.福井〈伯楽星〉の濃厚なにごり酒.地元宮城の〈黄金澤〉限定酒 Hitoméboré 大きな♡などなどなどなど…….

—— たいして夜更かししたわけではないのに,かように盛大かつ集中して迎撃されては,当然の結末として「うう……」になるのは必定.

◆本日の総歩数=14839歩. 朝◯|昼△|夜×. 計測値(前回比)= 93.1kg(−0.1kg) / 29.0%(−0.8%)


18 mei 2015(月)※夏日の昼,雨降る夜

◆午前5時半のろのろ起床.朝日がぎらぎら.気温は14.5度.霞む青空の観音台は気温が20度寸前.湿っぽい空気で不快指数が高まっている.昨日の疲れを引きずったまま新たな週に突入する.

◆[欹耳袋]前日再送:東北大学文系URA/知の創出センター〈クワトロセミナー〉第7回「帝国の基層:西アジア領域国家形成過程の人類集団」【日時】2015年5月19日(火)16:30〜18:30【場所】東北大学片平キャンパス〈知の館〉3階講義室.

◆[蒐書日誌]日本酒が大好きなそこのアナタの必読書:鈴木芳行『日本酒の近現代史:酒造地の誕生』(2015年5月1日刊行,吉川弘文館[歴史文化ライブラリー・401],東京, 6+232 pp., ISBN:978-4-642-05801-8 → 目次版元ページ)./ポール・ブルーム[竹田円訳]『ジャスト・ベイビー:赤ちゃんが教えてくれる善悪の起源』(2015年5月15日刊行,NTT出版,東京,viii+277 pp., 本体価格2,800円,ISBN:978-4-7571-6063-7 → 版元ページ)※ご恵贈本.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 仙台ではコメンテーターとしてのお仕事があるので,それなりに “紙芝居” を準備しているところ.明日,仙台に進撃したらまずは「舌」を「1.5人前」食べないと滑舌がよくならないにちがいない./あちこちうろうろの午前中,気がつけばもうお昼休み.気温は夏日ラインを超え,蒸し暑さが単調増加.今日の昼休み徘徊はやめにしよう.

◆[欹耳袋]表象文化論学会ニューズレター『REPRE』最新号 vol.24 の小特集〈人文系出版の現在〉は「座談会」も「各国の出版事情」もたいへん興味深い.関連して:Togetter -「「座談会 アートと思想と批評をめぐる出版の可能性」(小特集「人文系出版の現在」/表象文化論学会ニューズレター『REPRE』第24号)」 /Y!ニュース「瓦解していく科学技術立国、博士進学者は激減(団藤保晴)」(2015年5月17日).

◆昨日の松戸演奏会の後片付けをしていたら,すっかり黄ばんだ一冊の薄い総譜が本棚の奥から “出土” した.ヴォーン・ウィリアムズの交響曲第8番.おそらく彼の交響曲の中ではもっとも演奏される機会が少ない作品だろう.今でこそなじみのない曲でも,YouTube を検索すればいくらでも聴くことができる.しかし,本郷のアカデミア・ミュージック旧店舗でこの総譜を手にした30年ほど前は,これがどんな曲か一度も耳にしたことがなかったはずだ.

では,どうして買ったのか.おそらくは第1楽章「Fantasia」出だしのヴィブラフォーン独奏(交響曲では唯一だろう)にまず惹かれ,フィナーレ「Toccata」の金属系打楽器ががんがん鳴り響くヴォーン・ウィリアムズらしからぬエンディングがお財布のひもを緩めたにちがいない(たった「970円」だったし).いまあらためて見なおしてみると,両端楽章こそフルオーケストラだが,第2楽章「Scherzo alla Marcia」は管楽合奏,第3楽章「Cavatina」は弦楽合奏とずいぶん風変わりな構成の交響曲だ.

ヴォーン・ウィリアムズのファーストネームは「ラルフ(Ralph)」だとずっと思っていたが,最近は「レイフ」とかな書きするようになったことを知った.彼の出自はかの進化学者チャールズ・ダーウィン(とウェッジウッド家)に連なる家系で,グウェン・ラヴェラ[山内玲子訳]『ダーウィン家の人々:ケンブリッジの思い出』(2012年9月14日刊行,岩波書店[岩波現代文庫・文芸208],東京,xii+404 pp., 本体価格1,220円,ISBN:978-4-00-602208-2 → 版元ページ)にはこう書かれている:

「幼いジョス,三代目ジョサイア[・ウェッジウッド]は私の祖母の長兄で,のちに私の祖父[チャールズ・ダーウィン]の姉キャロライン・ダーウィンと結婚した.その孫が,作曲家のレイフ・ヴォーン・ウィリアムズ(1872-1958)である」(p. 200)

ヴォーン・ウィリアムズは当時のダーウィン家の中では “ごくつぶし” と評判が悪かったらしく,ダーウィンの娘であるヘンリエッタにいたってはくそみそにけなしている:

「小さい時の思い出でおもしろいのは,レイフ・ヴォーン・ウィリアムズについて大人たちが話しているのを聞いたことだった.『あのばかな青年といったら,まったく見込みがないのに、音楽の勉強を続けようとしている……』というような話だった.この記憶を裏付けるのが,エティ伯母[ダーウィンの娘ヘンリエッタ]の手紙の一節である.『彼は小さい時からずっと弾いてきたし,この六ヶ月は特にいっしょうけんめい練習しました.それなのに、本当に簡単なものでも、ちゃんと弾けないんですよ.でも,音楽で身を立てる望みはないっていわれたら,絶望してしまうだろうって,みんないっています.』」(p. 368)

イギリスを代表する作曲家もダーウィン-ウェッジウッド家の中ではけちょんけちょんである.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 明日の仙台お座敷の紙芝居が完成したところで,撤収のお時間です.曇り空の夕方.そして,夜,予報通り雨が降りだしていた.しだいに強まる雨足.旅立つ明日は晴れてほしいものだが.

◆本日の総歩数=5391歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.2kg(+0.8kg) / 29.8%(−0.8%)


17 mei 2015(日)※松戸の本番と長い夜

◆午前5時過ぎ起床.雲が多めの青空.気温17.1度.今日は本番日.

◆[欹耳袋]毎日新聞「ツイッター:頭蓋骨模型にたばこ 投稿した学生処分へ」(2015年5月16日)※「学生は「遊びでやった」などと話して」— そうだろうな./「学部長は「医療従事者として許されない行為だ。厳重な処分が必要」」— はい?/セントラルスポーツ「ありすいきいきプラザ」— 元・統数研があった場所はいまは高齢者介護施設になっている.統数研が広尾にあった当時は,南部坂を這い上って統数研で仕事し,お昼は〈ナショナル麻布スーパーマーケット〉で買ったランチを有栖川公園でいただいて,また統数研に戻り,帰りは今は亡き〈テオブロマ〉広尾店に立ち寄るという黄金ルートがあったのに — もう昔話になってしまった.

◆本日のお座敷 —— 松戸シティフィル・ファミリーコンサート【日時】2015年5月17日(日)14:00開演【場所】松戸市〈森のホール21〉大ホール【曲目】バーンスタイン〈キャンディード〉序曲/コープランド〈アパラチアの春〉組曲/ドボルザーク交響曲第9番〈新世界より〉.

◆午前9時前,つくば駅.日差しがまぶしい.気温はすでに20.6度.午前10時から始まったステリハは正午過ぎに終わった.会場は午後1時半.外は夏の日差しで気温も高い.館内も暑い.

午後2時から本番.最高気温は28度近くまで上がったようだ.ワタクシはサププロの〈キャンディード〉序曲の本番がたった4分あまりでさくっと終わってしまったので,もう御役御免とあいなった.あとは夕方の打ち上げまでフリーダム!

午後6時から新松戸駅前〈だんまや水産〉にて恒例の打ち上げ.午後9時前に解散.午後10時すぎにつくば帰還.暑い一日がやっと終わった.

◆本日の総歩数=8250歩. 朝◯|昼△|夜×. 計測値(前回比)= 92.4kg(+0.1kg) / 30.6%(+0.7%)


16 mei 2015(土)※直前全奏で叩く練習

◆午前4時過ぎ起床.雨.気温18.5度.第7回連載ゲラ修正.やっとヘッケルの時代にまで到達した.

◆[蒐書日誌]重版アナウンス:三中信宏『分類思考の世界:なぜヒトは万物を「種」に分けるのか』(2009年9月20日第1刷刊行/2009年10月8日第2刷刊行/2009年12月3日第3刷刊行/2013年7月26日電子本刊行/2015年5月8日第4刷刊行,講談社[現代新書2014],本体価格800円(税込価格840円),328 pp.,ISBN:978-4-06-288014-5 → 目次コンパニオンサイト版元ページ残響録)の第4刷(800部)が5月8日に刊行されました.

◆曇りときどき霧雨が降り続くお昼前の観音台.気温こそ20.4度だが,湿度が高いのでムシムシする.居室にもゴキブリやら蚊やらムシムシが今年はじめて出現.ゲラを見てもムシムシが潜む.ひさしぶりに牧園〈david pain〉にてパン確保.〈david pain〉は今やパン激戦地のつくばでも有数の名店になってしまったので,勤め帰りに立ち寄ろうにも,完売御礼で閉まっていることがほとんど.午前中に行かないと何も買えない.

◆土曜の┣┣" 撃ち —— 来週はじめの仙台出張の出張伺を今頃になってコッソリ提出するやつ./さて,質問への回答タイムだ:

  • #NodaiStat 5月8日「実験データー解析概論」の質問から. posted at 13:01:35
  • #NodaiStat 【質問】「 “不幸” にならないためには,どうすればいいですか?」/【回答】予期できない唯一的な “不幸” は耐え忍ぶしかありませんが,ワタクシたちがPC実習室で遭遇する “不幸” には共通原因がありますので,必ず対処できるでしょう. posted at 13:07:11
  • #NodaiStat 【質問】「Excel よりもR(Rコマンダー)の方がすぐれていて,役に立つのでしょうか?」/【回答】その通りです! posted at 13:08:09
  • #NodaiStat 【感想】「Rコマンダー,おもしろいです.感動しました」/【回答】その感動を共有するために,ワタクシは毎回走り回っているのです.ハイ. posted at 13:09:22
  • #NodaiStat 【感想】「同じデータなのに,グラフを変えるだけで,印象が変わってビックリ」/【回答】データ可視化の妙というやつです. posted at 13:11:03
  • #NodaiStat 【感想】「大人数だとタイヘンですね」/【回答】TAを付けてもらえばよかったかも. posted at 13:11:54
  • #NodaiStat 【質問】「宿題を出してはいかがでしょう?」/【回答】それだ! 時間を効率的に使えるように実習課題を用意しましょうかねー. posted at 13:13:08

  • #NodaiStat 続いて5月8日「生物統計学」の質問から. posted at 13:23:56
  • #NodaiStat 【質問】「偏差を絶対値で集計してはならない理由を詳しく」/【回答】講義では絶対値関数は場合分けが必要なのでめんどうという説明をしましたが,偏差の絶対値和の基準値は平均ではなくメディアンであるという別の理由があります.偏差平方和であれば平均を基準にとれます. posted at 13:29:24
  • #NodaiStat 【回答】(続)詳しくはワタクシの記事「偏差平方和・偏差絶対値和・シュタイナー問題」 ow.ly/N1oZp をごらんください. posted at 13:30:26
  • #NodaiStat 【質問】「自由度を決める制約条件とは何でしょうか?」(自由度に関する同様の質問多数)/【回答】自由度はある統計量を構成する変数の個数から変数間に存在する制約条件の個数を引いたものです.平方和に関しては偏差の総和がゼロという制約条件ひとつを差し引きます. posted at 13:33:34
  • #NodaiStat 【質問】「なぜ平方和/自由度で分散を推定した方が真値に近いんでしょうか?」/【回答】講義ではRのデモンストレーションで示しましたが,きちんとして数学的証明(「平方和/自由度の期待値は真の分散になる」)があります: ow.ly/N1pps posted at 13:36:59
  • #NodaiStat 【質問】「記述統計学と推測統計学のちがいについて具体例を挙げて説明してほしい」/【回答】具体的な数値データを扱うときに,もういちどこの話題を説明することになります. posted at 13:38:51

  • #NodaiStat さらに続いて昨日5月15日「実験データー解析概論」の質問から. posted at 13:52:21
  • #NodaiStat 【質問】「箱ひげ図は実際に論文などで用いられているのでしょうか?」/【回答】ワタクシが見るかぎりとても頻繁に用いられていますね.ヒストグラムなど他の統計グラフィクスに比べて「場所を取らない」経済性も利点の一つでしょう. posted at 13:54:15
  • #NodaiStat 【質問】「具体的なデータを見せて説明してもらえないか」/【回答】近いうちに実験計画法の講義に入りますが,そのときは具体的この上ないデータをいくつもお見せします. posted at 13:55:46
  • #NodaiStat 【感想】「あんまり進まなかったですね」「ヒマな時間が多すぎる」「TAを雇ったら?」/【回答】ソフトウェアをインストールするだけの作業に時間がかかりすぎるのはかなり問題なので,対応策を考えます. posted at 13:57:48

  • #NodaiStat 最後は5月15日「生物統計学」の質問から. posted at 13:58:57
  • #NodaiStat 確率分布と密度関数の式がわらわら登場したとたん “息絶えた” 学生さんがとても多かったようですまんすまん.あとでお線香を立てておきますね. posted at 14:07:15
  • #NodaiStat 【感想】「確率分布曼陀羅がおもしろすぎる」/【回答】講義中に示したウェブサイトは Lawrence Leemis 先生の〈Univariate Distribution Relationships〉 ow.ly/N1r7n です. posted at 14:14:45
  • #NodaiStat 【回答】(続)このサイトは百数十個もの確率分布の相互関係を鳥瞰できるチャートです.最近縁な確率分布群はポップアップされ,またクリックすれば数学的詳細がダウンロードできます.パラメトリック統計学王国の布陣がひと目で分かるすぐれもの.エンジョイ! posted at 14:16:54
  • #NodaiStat 【感想】「正規分布の神の力のすごさを体感してみたい」/【回答】来週の講義では「中心極限定理」のデモをします.それで神パワーが実感できるでしょう. posted at 14:18:11
  • #NodaiStat 【質問】「講義を円滑に進めるためにマイクの改善を」/【回答】講義室のマイクの不具合については教務課に連絡して対応を依頼しました. posted at 14:19:06
  • #NodaiStat 【質問】「ウェブサイト〈租界R〉にアップロードされているスライドが講義中に使われたものよりも少ないんですけど……」/【回答】画像がたくさん含まれていて,どうしてもサイズが大きくなりすぎるので,スリム化したものをアップロードしています. posted at 14:21:31

◆午後3時,やっと晴れてきたようだし,そろそろ撤収タイムかな.午後4時,つくば駅.これから松戸へ練習に.今回の曲だけはきっちり暗譜しておかないとオチる.練習初参加の今日がGP,そして明日が本番という実にスリリングな日程.

◆午後6時,松戸市〈森のホール21〉着.地下のリハーサル室は練習準備の真っ最中.午後6時半からGP.乗り番の曲はたった5分足らずなんだけどね.午後10時前,つくば帰還.

◆[欹耳袋]明日の本番 —— 松戸シティフィル・ファミリーコンサート(→ホームページ)@松戸市〈森のホール21〉・大ホール,10:00〜 ステリハ|14:00〜 本番|18:00〜 懇親会

◆本日の総歩数=8993歩. 朝◯|昼◯|夜×. 計測値(前回比)= 92.3kg(+0.2kg) / 29.9%(−1.1%)


15 mei 2015(金)※むしむし都内出撃日

◆午前4時過ぎ起床.朝焼けから日の出へ.気温17.2度.東風.ゲラ┣┣" さん一頭が上陸.┣┣" 箱に迎え入れた.

◆定例都内出撃の朝 —— 午前7時半,つくば駅.気温はすでに20度近い.夏の日差しがぎらぎらと.午前9時前,新宿駅.都内は青空.気温は22.2度.経堂から農大通りを下って午前9時半過ぎに農大キャンパス着.気温は23.9度.湿度が高いので蒸し暑い.コンピューター演習室にて本日の R スクリプトの動作点検.

  • #NodaiStat 本日の「実験データー解析概論」は観察データと統計モデルとの関係をスライドで解説したのち,Rを用いて実習します.データのばらつきを “視覚化” して,それを足がかりに統計モデリングに結びつけます.今日は “不幸” が起こらないことを祈りつつ. posted at 10:11:15
  • #NodaiStat 【連絡】5月29日(金)2限は世田谷キャンパスの「自信防災訓練」が実施されますので,「実験データー解析概論」は10:40〜11:30までの短縮授業となります.11:30に “地震が発生する” ということです. posted at 10:14:35
  • #NodaiStat あ,今日の講義は最初に「箱ひげ図」を解説しないといけなかった(Rコマンダー使いますっ). posted at 10:32:06
  • #NodaiStat 今日は最初の一時間ほどRがらみの “不幸せ” の救済措置に追われました…….箱ひげ図の説明と実習,最後にデータとモデルとの関係に触れ,来週への橋渡しとします. posted at 12:18:46

◆学生が100人もいれば, “不幸せ” の累積確率は増えないはずがない.ということで,灰と化し昼休みを迎える.しかし,一時間も経たないうちに次の講義へ.

  • #NodaiStat 講義室なう. posted at 12:59:12
  • #NodaiStat 本日の「生物統計学」は確率変数と確率分布から始まり,確率分布曼陀羅を経て,正規分布の二つの “神” 属性について話をしました.三つ目の “最強神” 属性は来週まわしです. posted at 14:55:59

◆農大キャンパスは空き地がことごとく「畑」になるらしい.さすがである.午後3時,経堂駅前.薄曇りの駅前は蒸し暑い空気が淀んでいる.気温は26度くらいだが,不快指数が高すぎる.珈琲充.今年度の経堂通いは去年までとは様変わりして大仕事.PC実習(100人)と200人相手の講義.乗り切れ(れ)ば経験値はかなり上がるだろう.しかし,その前にTAがいてほしいなあ.それから講義室のマイクが絶不調.

◆午後5時前,つくば帰還.気温20.7度というわりには蒸し暑い.験直ししないとなぁ.台湾産の天然マグロの巨大なカマがなんと250円で売られていたので,即ゲット.岩塩と粒胡椒でしっかり下味をつけ,エキストラ・ヴァージン・オリーブオイルを塗りたくって,220度のオーブンで25分ロースト.“お水” は先日開栓した〈久保田・萬壽〉の無濾過生原酒の残り.もちろん空っぽのすっからかんになったわけでして.験直しが度を越したらしく,やや「うう……」.

◆[欹耳袋]朝日新聞デジタル「「味の素」国内生産に幕 操業1世紀、年内に海外へ」(2015年5月13日)※ワタクシの両親の世代だと,お漬物に〈味の素〉をパッパッと振りかけて醤油を垂らして食べるのはごくふつうの食卓風景だった.

◆この週末はマレットを握って叩くのだ.

◆本日の総歩数=11675歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 92.1kg(−0.7kg) / 31.0%(+0.8%)


14 mei 2015(木)※今日も夏日の五月晴

◆午前4時過ぎ起床.夜明け前の朝焼けグラデーション.気温13.2度.南風が吹き抜ける.朝から青空が広がる観音台.気温は早くも22.2度まで上がっている.今日こそは真夏日か.

◆[欹耳袋]東北大学・文系URA/知の創出センター〈クワトロセミナー〉第7回「帝国の基層:西アジア領域国家形成過程の人類集団」【日時】2015年5月19日(火)16:30〜19:00【場所】東北大学 片平キャンパス「知の館」3階講義室【演者】有松唯 「帝国の基層:西アジア領域国家形成過程の人類集団」/【コメンテーター】三中信宏・松木武彦.※有松さんの同名の著書は東北大学出版会から出るようだ.

◆午前の┣┣" 撃ち —— Scientific Reports 誌の uncorrected proof が届き,チェックあれやこれや.同時並行で広報情報室への連絡と今後の対応であれやこれや./来年度の公費購入雑誌アンケート回答.来年,農水国研が “合体” してしまったら,購入雑誌の顔ぶれもきっと変わっていくだろう.

◆気温28.6度まで上がった昼休みは真夏のまぶしさと暑さ.ロングコース徘徊だん.うう,疲れた.炎天下の歩き読み本:コリン・コバヤシ『ゲランドの塩物語:未来の生態系のために』(2001年5月18日刊行,岩波書店[岩波新書・新赤版730],東京,xiv+200+4 pp., ISBN:4-00-430730-9)※「塩の本」だが有機農業,GMO,原発問題と話題いろいろ.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 常盤台から集中講義履修者名簿が届いた.四ヶ月も先のことだが,そろそろチャイナタウンの定宿を確保しないといけないかも.出張が決まったらとにかく「宿」だけは忘れないようにしないと.つぶやく時間があったら「宿」をゲットしろ — ということで,横浜中華街の前線基地確保完了./プレス・リリースの件で厚木からメールあり.なにぶんよろしくよろしく.

◆[欹耳袋]富山の一件 —— 日本の科学と技術「10年間で論文20報が出なかった研究室の教授を解雇」(2015年2月14日)※富山大学の当該ラボの論文リストを見たら2005年以降で25報もあるじゃない.ぜんぜん解雇する理由がない.それとも,トップとかコレスポで「20報」が採用条件とか?/女性教授奮闘記 from Toyama「祝・論文受理」(2014年1月18日)※「所属大学で定められている10年の任期の論文業績の要件である20報はクリアしています」— やっぱりそういう規則が富山大の任期付教員にはあるのか./薬剤師求人.com「元薬学部教授、解雇不当と提訴 「論文数で評価は偏り」」(2015年2月24日)※「学部内でもトップクラスの成績を上げたとして「業績ではなく論文数に偏った評価方法は合理性を欠く」と主張」./bikingjpのブログ「論文の量と質」(2015年5月14日)※「平均して年2報出していこうと思ったら、質は妥協」「Natureとかに載る仕事を切り刻めば」「そういうことをしないのがトップレベルの研究者の矜持」— あ,記事が消えてる.

◆今日は〈風の森〉26BY「笊籬採り」をぶらさげて観音台から撤収だ.〈風の森〉と共に去りぬ.しかし,せっかく〈風の森〉とともに帰宅したのに,ジャーマンポテトとオムライスにはふさわしくないという緊急動議が自分会議に上程され可決されたため,〈風の森〉は氷温室に直行.代案として〈インドの青鬼〉が食卓に登場した.

◆本日の総歩数=10092歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 92.8kg(0.0kg) / 30.2%(−0.6%)


13 mei 2015(水)※台風一過の夏日復活

◆午前5時過ぎ起床.台風一過の青空が広がってきた.気温15.9度.6:15頃,ゆらりゆら〜りと地面が揺れる.台風一過とはいえまだ雲がかかっている観音台.前夜の風雨のなごりがいたるところに水たまりを残している.気温は19.3度まで上がっている.今日は確実に真夏日ラインを超えるとの予報.アロハ&サンダルで出勤したのは正解だったようで.朝イチの BGM はトーマス・タリスの〈エレミアの哀歌〉.ヒリヤード・アンサンブル.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 今日は本を読むのが仕事の日./MAFFIN ネットワークが死んでるみたいね.ワタクシには実害にないけど./午前10時半から所議報告&領域会議.外は夏の日差しがまぶしい.気温はすでに24.3度に達している.

◆[蒐書日誌]科学研究の “異分野連携” から “異分野融合” へ —— 京都大学学際融合教育研究推進センター『異分野融合、実践と思想のあいだ。』(2015年3月31日刊行,京都大学学際融合教育研究推進センター,京都,119 pp., 非売品 → 目次情報).異分野の研究者を “つなぐ” ことを目指してつくられた京都大学学際融合教育研究推進センターの公式ガイドブック.前半の第1部「異分野融合の実践」(pp. 8-65)では,このセンターがこれまで実際に手がけてきた「異分野融合」の事例がコンパクトに示されている.異分野ネットワークになりそうな “卵” を「ユニット」と命名して育てたり,敷居の低い「分野横断交流会」を定時的に開催したり,学際研究着想コンテスト,産学連携,ワークショップ支援など,このセンターがさまざまな試みをしてきたことがよくわかる.具体的な実践例を本ガイドブックの前半にもってきたことで,読者は「異分野融合」のイメージが容易につかめるだろう.

後半の第2部「異分野融合の思想」(pp. 66-107)は,このセンターを切り盛りしている宮野公樹による,異分野融合の「理念」の解説である.そもそも異分野の研究者あるいは研究者コミュニティーを「融合」するとはどういうことかというもっとも核心となる理念がくわしく説明されていて,ワタクシにとってはとても興味深かった.著者は言う:

そもそも,学問の細分化は歴史的なもの.今の学術界は,数世紀をかけて現在の形態になった.それを無視して「重層化する課題解決には分野融合が必要」と一言述べたところで,歴史によって積み重なった学術界の形態が一瞬で変わるわけがない.本当に “分野融合” を推進したいのであれば,現状にいたる “分野分裂” に要した時間と同等かそれ以上の時間をかけなければならないだろう.(p. 69)

個々の学問分野は時空的な進化体なので,科学の歴史の中でどのように変遷・分裂・消滅・融合するかは,著者が正しく指摘するように,おいそれと変更できるものではないだろう.著者はさらに続けて言う:

そもそも「異なる分野の研究者が連携,協働する」という内容は異分野 “融合” ではなく,異分野 “連携” である. “連携” の推進には,効果的なマネジメントを適用すればいいだけである.一方,本来研究者の内発的な同期から生じるべき学術分野間の “融合” には「管理」という概念はそぐわない.(p. 71)

著者は,ここで異分野の研究者レベルでの “連携” とそれをさらに進めた異分野そのものの “融合” とを分けて考えていることがわかる.ワタクシ個人の実感としてもそれは妥当な見解だろう.研究者レベルでの “連携” や “交流” はフットワークさえ軽ければ(研究資金があればなおありがたい)なんとかなる.しかし,異分野レベルの “融合” となるとそんなに簡単なことではない.分野がちがえば “文化” がちがうから.

著者の考えでは,“異分野連携” は特定の目的を掲げた協力体制の構築であるのに対し,“異分野融合” はもっと普遍的な真理探究にある.ここで気になる点は,異分野の “融合” を誰が担って進めていくのかである.著者は “融合” の推進者は意識をもった個々の研究者であると指摘する:

いうまでもなくその学術分野の融合が生じる場面は,他ならぬ個々人の内側にある.つまり,「異分野融合」とは,他の世界観に触れて体得した個々人の実践の言語化を通じて,学者自身の内面で生じる啓発(気づき)のことである(p. 75)

しかし,実際には時空体としての個々の研究分野が “融合” するまでには,今を生きている研究者個人ではどうしようもない歴史的経緯や文化的伝統,そして研究者コミュニティーのなかの社会的ネットワークの動態という要因が横たわっている.著者自身,その点は十分にわかっているようだ:

連携は短期的だが,融合は長期的.
連携は科学的だが,融合は人文的.
連携は制度的だが,融合は歴史的.(p. 77)

手始めに異分野間で発生した “連携” は,科学者コミュニティーの中での適応度が高ければ,首尾よく生き残って「学際分野」となる(p. 89).しかし,著者はそのような制度的な「学際分野」はそのままでは “異分野融合” にはならないと言う.歴史的時間軸の重要性がここで強調される:

特に今日誕生するような学際分野は,得てして政策的意図を含んでいる.これは,異分野 “連携” ではあるが,一定の歴史を積み重ねて学術界全体のなかで定着したとき,おそらくそれは伝統学問として認知される.(p. 89)

著者は研究者ひとりひとりの “構え” が学際的連携には求められると主張する:

学際研究とは,「真理を追究したい」という研究者の内発的動機によって,他の研究領域に関心を持つことから始まる.異分野間で対話がなされ,対立的衝突が起こる.さらに,対立の後に個々人の内面にて世界観の再構築がなされれば,それが「融合」だ.(p. 93)

著者の言う “連携” を超えた “融合” を目指すためには,研究者は自分が属する研究分野(および周辺関連領域)の歴史的変遷と科学社会学的動態を “枠組み” として正しく認識する必要があるのだろう.残念ながら科学史や科学哲学の素養のない(大半の)研究者にはそれを期待できないところが問題となるかもしれない.

ワタクシがいま過ごしている生物体系学の分野は歴史的にみれば,言語学や文献学あるいは歴史学との接点があるので,分野の壁を超えたつながりはすでに部分的に進みつつある.さらに,この分野は研究者コミュニティーとしての科学社会学的動態もたいへんアクティヴなので,これから新たな “連携” や “融合” の契機もありそうだ.おそらく,他の研究分野でも同様のシーズなりニーズは水面下にまだまだたくさん潜んでいるだろう.研究者個人が活動しているいまの研究分野を越えて他のどの分野と “連携” や “融合” を目指せばいいのかという「最初の一歩」がたいせつだろう.本ガイドブックを手がかりに,多くの読者が自ら “壁” を越えていくことを期待したい.

なお,本書は非売品であり,しかも今ではめずらしくなった糸かがり装幀本という手間ひまのかかる本造りがなされている.可能であれば,本書のコンテンツをもっとアクセスしやすい形式で公開できないだろうか.

—— 宮野公樹さんの関連記事が公開されている:現代ビジネス「たこつぼ化する専門の世界。「問う」だけでなく「届ける」研究者になるには?「これからの学者」目指す若者の道しるべとなる本『研究を深める5つの問い』」(2015年5月10日).この記事で取り上げられている最新刊:宮野公樹『研究を深める5つの問い:「科学」の転換期における研究者思考』(2015年4月20日刊行,講談社[ブルーバックス・B-1910],東京,185 pp., ISBN:978-4-06-257910-0 → 目次版元ページ)はこれから読む.

◆カンカン照りの昼休み.気温は夏日ライン超えの25.3度.暑いのでショートコース徘徊だん.宮野公樹『研究を深める5つの問い:「科学」の転換期における研究者思考』(2015年4月20日刊行,講談社[ブルーバックス・B-1910],東京,185 pp., ISBN:978-4-06-257910-0 → 版元ページ)読了.「研究者である前に学舎であるべき」(p. 182)という著者の主張には深く同意する.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 杜の都からネ申エクセル事務書類が降臨した.ひれ伏して紙に印刷し,手書きで記入してから送り返してあげるね(ふふふ)./さ,読書読書.

◆今宵はだし巻きがきれいにできた.いつもは脇役に甘んじているが,今日は準主役ということで.主役はもちろんきのう開栓した〈久保田・萬壽〉の無濾過生原酒ね.

◆本日の総歩数=6890歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 92.8kg(−0.2kg) / 30.8%(+1.0%)


12 mei 2015(火)※俊足台風が接近する

◆午前5時前起床.気温13.7度.南東風.雲間から朝日が差し込む.曇りところどころ晴れ間,ときおり小雨が強い南風に乗って降りかかるという不穏な空模様の観音台.湿度がだんだん高くなっているような.朝イチの BGM はジョスカン・デ・プレのモテットとシャンソン.もちろんヒリヤード・アンサンブルで.

◆[欹耳袋]生物科学学会連合ポスドク問題検討委員会「生科連からの〈重要なお願い〉第二版」掲載のお知らせ」(2015年4月28日)※もっと具体的な報告書名にした方がいい./毎日新聞「財政審:教職員4万人削減…「少子化」着目、歳出見直し案」(2015年5月11日)※「国立大入学者は富裕家庭の子供も多いことから、私立大の授業料近くに値上げした上で、親が低所得で優秀な学生向けの奨学金制度を充実」— どの口がそれを言う.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 農環研ウェブサイトの研究者情報(和文・英文)の更新依頼.ついでに,ワタクシのサイトのCV情報(日本語と英語)も更新した./来週の仙台では日本酒で熱烈迎撃されることが確定した.

◆[蒐書日誌]なんぼでもアラインメントしたるでぇっ —— David J. Russell (ed.) 『Multiple Sequence Alignment Methods』(2014年刊行, Springer / Humana Press [Methods in Molecular Biology: 1079], New York, xii+287 pp., ISBN:978-1-62703-645-0 [hbk] → 版元ページ).

◆曇り空.不穏な南風が強まってきた.気温は20度ラインを超えている.この強風じゃ,今日の昼休み徘徊は中止だな.

◆[欹耳袋]R25「ネット新聞が全角英数なのはなぜ?」(2014年10月16日)※「半角英数をコピーして、出稿システム上にペーストしても、枡目に一文字ずつ入るので、自動的に全角になってしまう」— ネ申というかなんというか./The Conversation | Let’s ban PowerPoint in lectures | 30 April 2015 — "PowerPoint produces stupidity."/ほくそ笑む「実践 統計モデリング入門 【1. 概要・目次】」(2015年5月12日)※「Stan」の連載解説が始まるらしい.ワタクシの MacBook Pro はまだ Stan フリーなんですけど.

◆午後の┣┣" 撃ち —— ちょっとワルな┣┣" が出現したけど,しばらく動向を注視することにしよう./進化学会東京大会のワークショップ企画案は通過したようだ.ただし,日程変更を依頼しないとね.

◆曇り空からときおり大粒の雨が南風にあおられながらぼたぼた落ちてくる.湿っぽい夕暮れに迫る台風の予兆.夜になっていかにも台風らしい雨が降りだした.迫り来る台風崩れの温帯低気圧に立ち向かうには,隠し球の新潟・朝日酒造の純米大吟醸〈久保田・萬壽〉の無濾過生原酒しかない.麹米50%・掛米33%という精米歩合.同じ久保田でも気合の入り方がちがう.〈萬壽〉の無濾過生原酒は一般には出回らない.おねだん的にはかの須藤本家の〈花薫光〉と同レベル.前菜アテは筑波ハムの逸品チョリソーのジャーマンポテト,メインは洛中〈一の傳〉直送のトロ鮭の西京漬け.絶品.

◆夜が更けるとともに土砂降りになってきた.谷田部は冠水しているらしい.夜中のうちに通り過ぎてくれればいいのだが,そうなると明日は台風一過の猛暑がやってくる.

◆本日の総歩数=2548歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.0kg(−0.2kg) / 29.8%(+0.2%)


11 mei 2015(月)※爽やかな初夏の青空

◆午前4時半起床.日の出まぶし.気温は6.2度とこの時期にしては冷え込んでいる.雲ひとつない初夏の青空が広がる観音台は乾燥した北西風が流れている.明け方の最低気温は5.4度まで下がったが,午前7時には12.9度まで上がっている.週明け朝イチの BGM はメキシカン・バロックから.

◆[欹耳袋]Togetter -「大学選びに綿密な調査は要りません」※ “たまたま” 行けた大学で “勝手に” 勉強して “しぶとく” 生き延びていくというのがワタクシなりの学生像./日本経済新聞「「生徒化」進む大学生 従順だが向学心乏しく(武内清 敬愛大学特任教授)」(2015年5月11日)|「中高の延長線上、出席しても私語」(2015年5月11日).

◆午前の┣┣" 撃ち —— 「②-19」の┣┣" に取り憑かれる朝./仙台に出張依頼状を出してねメール送信./「②-19」┣┣" — 924字だん./「②-19」┣┣" — 累計1,895字だん.

◆[欹耳袋]朝日新聞デジタル「文書作成を「地獄」と恐れて 警官パワハラ自殺から1年」(2015年5月10日)※「文書をしつこく書き直させたりしたパワハラが原因だった」— そこまでやるか.

◆初夏の陽気の昼休み.気温は22.2度でも,風が涼しいので快適なロングコース徘徊だん.歩き読み本:西牟田靖『本で床は抜けるのか』(2015年3月刊行,本の雑誌社,東京,ISBN:978-4-86011-267-7 → 目次版元ページ)読了.大量の蔵書がたどる道は一つではないことを知る.新緑の昼下がり,BGM はヨハネス・オケゲムの〈レクイエム〉をヒリヤード・アンサンブルで.あまりに精緻すぎる選曲である.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 「②-19」┣┣" — 累計2,137字+図1葉.これにて本日締切の┣┣" 撃ちだん./来月の東大見学旅行受け入れのあれやこれや.

◆冷蔵庫に残っていたにごり酒で鶏の手羽元を煮込むととても「まいう」であることを発見してしまった今宵.厨房は「発見の現場」である.レシピはとても簡単.厚手鍋を熱して油を引き,鶏手羽元15本に焦げ目をつける.別鍋で煮抜き4個を茹で,ついでに皮付き新じゃがいもを4つ用意する.にごり酒200ccをどばどば注いで沸騰させ.みりん50ccと濃口醤油50ccを注ぐ.煮抜きとじゃがいもを投入し,蓋をして中火の蒸煮を小一時間.にごり酒だと煮詰まって焦げやすいので要注意.煮汁にとろみが出てきたら完成.即食卓へ直行だ.実費で1000円もかかっていない.うまくて経済的な肴.もちろんご飯のおかずにもぴったり. “お水” は滋賀〈七本鎗〉純米吟醸ね.近江は酒どころ.

◆一週間後のバーンスタイン〈キャンディード〉序曲のシロフォンとグロッケンシュピールをG.P.+ステリハだけで乗り切ろうというのはリスキーだったかも(gkbr).アレ,暗譜しないと絶対オチるしね.指揮者が張り切ったらもうタイヘン.とくに231小節からの più mosso はS.D.&T.D. の刻みをけっして聴いてはならぬ(絶対オチる).四の五の言わずにとにかく暗譜に励むしかない.かつて東大オケの〈キャンディード〉ではティンパニーをやったので記憶に刻み込まれてはいるのだが.

◆本日の総歩数=10173歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.2kg(+0.8kg) / 29.6%(−0.2%)


10 mei 2015(日)※夏日の今日も昼呑み

◆午前5時半起床.晴れ.朝日がまぶしすぎる.気温11.3度.急いで米をとぐ.午前9時,気温はすでに20度ラインを超えた.下界では〈つくばフェスティバル〉二日目がもう始まっている.今日は暑くなるにちがいない.

◆[欹耳袋]一研究者・教育者の意見「米国の研究費配分の考え方」(2015年5月9日)※「氏は、生物学研究費配分の中核となる原理は、「財政投資」と同じであり、「多様性」が重要と指摘する。つまり、集中的な投資はリスクを生じさせるので、なるべく多様に投資するということだ」「それは歴史が証明するように、「大きな進歩は予期しない所から生じる」からであり、どこでいつ大きな進歩が起こるかは予測することが不可能であるためだ」./西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループ>「西洋史若手研究者問題アンケート調査最終報告書ダウンロード」[pdf].

◆昼下がりのつくばフェスティバル会場を一周り.かんかん照りの26.1度超.しかも強い北西風にあおられる.白昼の背徳ワイン.今日は Camillo Donati の Fortana 2011.スパークリング赤ワイン.稲葉酒造場のブースは通り過ぎただけ.ワインと日本酒をはしごしたら,お天道さまに顔向けできないではないか.

◆[欹耳袋]朝日新聞デジタル「南方熊楠賞、井上勲さんに賞状 萩原博光さんが特別賞」(2015年5月9日)|南方熊楠顕彰館「南方熊楠賞」第25回南方熊楠賞・南方熊楠特別賞./NHK NewsWeb「水を調べれば生き物が分かる 環境DNA」(2015年5月9日).

◆[蒐書日誌]形態測定学関連2件メモクリップ —— Ian L. Dryden and John T. Kent (eds.)『Geometry Driven Statistics』(2015年9月刊行予定,Wiley, Hoboken, ISBN:978-1-118-86657-3 → 版元ページ)./Fred L. Bookstein 2015. Integration, Disintegration, and Self-Similarity: Characterizing the Scales of Shape Variation in Landmark Data. Evolutionary Biology, DOI 10.1007/s11692-015-9317-8, abstract | pdf [open access].

◆[欹耳袋]研究者人生のロシアン・ルーレット —— 先日,日本経済新聞「大学で増殖する造語、「学群」「学域」「学環」って? 」(2015年5月6日)という記事を目にした.大学の中での組織体制の名称は “高次分類” のカテゴリー名として適当にネーミングしてもぜんぜんかまわないだろう.すぐ近くの筑波大学もそういうネーミングをしている.もともとそういう高次カテゴリー自体が,大学側の理念はあっちに置いといて,そこに所属する学生にとっては何ら実質的な効力をもたないだろうから,どうでもいいということ.むしろ,奇をてらったネーミングは,これから入学や進学を考えている当事者にとってはかえって実体(実態)が見えなくなるのではないだろうか.

しかし,わが身を振り返ってみれば,大学の組織構造が可視化されていようが,不可視のままであろうが,そんなことは実はたいした問題ではない.むしろ,研究者としてキャリアをつくっていく途上で遭遇するさまざまな「偶然」をちゃんと受け入れて生き延びることができるかどうかの方がはるかに重要だろう.

ワタクシが卒業した学部は「農学部」に属する「農業生物学科」だったので,これ以上わかりやすいネーミングはなかったと思う.もちろん,とてもわかりやすいネーミングの学部・学科に入ったからといって,個人個人がその後とてもわかりやすいキャリアを積むことになるわけではけっしてない.ワタクシの場合は,シンプルな「農学部農業生物学科」のなかの「生物測定学研究室」をたまたま選んでしまったため,その後ぜんぜんシンプルではないキャリアを積むことになった.最初行こうとしていた研究室の教官にかなり “問題” があることを進学後に知ったので,次善の選択肢としてその研究室を選んだという事情がある.当時の「生物測定学研究室」はオーバードクターの巣窟で,年齢不詳な院生がたくさん棲息していた.そのまま大学院に進学するときも,担当教官から「大学院に進んでもどうにもなりませんよ」と念押しされた.こんな裏事情は見えなくても当然だっただろう.

学部や学科の「名」だけではぜんぜん手がかりにならない.「誰」がそこに所属していて,「何」をやっているのかを見ないと判断できない.今でこそ,ウェブサイトやSNS経由で,大学の「中」がある程度は見えるようになったが,ワタクシが大学に在籍していたころは「便覧」以外に進学先の内情を知るすべはなかった.入学先・進学先の内情(人材と研究)はわかった方が “平均” 的には望ましいし,大学の組織体制はすっきり可視化した方がわかりやすいかもしれないが,しかし,実際にそこに入ってみた自分がその後どうなるかは個別的・個人的な「たまたま」が大きく作用する.

たとえば,お目当ての研究室なり研究者がいる学部・学科に首尾よく入れたとしても,ちゃんと指導してもらえるかどうかはまったく別問題だろう.ケースバイケースで状況は変わるので賭け同然だ.ワタクシの場合は,所属研究室の指導教官が “たまたま” 卒論・修論・博論の指導をぜんぜんしなかった(昔はよくあった)ので,これ幸いと好き放題させてもらったあげく,今みたいなワタクシになってしまった.その「たまたま」がほんとうに良かったのかどうか今となってはもうわからない.

大学院を修了して農学博士の学位を取っても,ワタクシに職は何もなかった.当時はいまのポスドクのような任期付ポストがほとんどなかったので,それがゲットできなければ文字通りの無職無収入しか道はない.何度か公募に出しては落ち続け,5年後にやっと農業環境技術研究所の常勤職に就職できた.修士論文で手がけた形態測定学が選考採用で評価されたようだった.その修論テーマにしても,大学研究室のテーブルに丸善からの見計らい本として:Fred L. Bookstein 1978. The Measurement of Biological Shape and Shape Change(Springer-Verlag, Berlin, viii+191pp.)が “たまたま” 置かれていなかったら,きっとその後はちがう人生を歩んでいたにちがいない.偶然のつながりで “たまたま” 研究職ポストを得られたわけだ.

いまも在籍している農業環境技術研究所に配属されてからも,もともとが生物統計学というマイナーな研究分野だったので,独り仕事と独り言の毎日が延々と続く. “たまたま” 参加した国際会議で知己を得たり, “たまたま” 買った専門書に刺激されたり, “たまたま” 参加した学会で新たな展開のきっかけをつかんだりという無数の「たまたま」のつながりが今のワタクシを形づくっている.歴史に「if」が意味をもたないように,ワタクシの個人史にも「if」は考えられない.時空的にユニークな存在としていまここにいる.

まさにロシアン・ルーレットと同じく,研究者の人生航路は賭け事のように “たまたま” 決まる.大学から大学院さらにその後のキャリア形成で遭遇したさまざまな幸運・不運・悪運・偶然・棚ぼたなどの個別的かつ唯一的事象の連続が研究者人生を良くも悪くも方向づけしたことを実感する.ロシアン・ルーレットを楽しめる学生は生き延びられる.進路選択を誤ったとか研究資金が調達できなかったとか人事公募に外れたとか研究ポストが不安定だとかいろんな “フシアワセ” は,運命的な「必然」ではなく「たまたま」だと思えるようになれば,きっとしぶとく生きていける.しっかりアンテナを張って,次のチャンスをつかみ取ること.

実際のロシアン・ルーレットは当たれば一巻の終わりだが,人生のロシアン・ルーレットはたとえ当たってもその先がまだまだずっと続く.

—— 上の文章は note.mu でも公開しました:三中信宏「研究者人生のロシアン・ルーレット」(2015年5月10日).

◆夕暮れ時,賑やかだった下界のお祭り会場はすでに撤収作業が始まっている.今日の午後は26.5度まで気温が上がり,昨日よりも6度近く高くなった.夜,明日締切の事典項目原稿┣┣" がにやにやすり寄ってきた.

◆本日の総歩数=2092歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 92.4kg(0.0kg) / 29.8%(−0.1%)


9 mei 2015(土)※白昼ワインの背徳を

◆午前4時半起床.曇り.気温15.4度.ローストビーフ用の牛赤身肉塊500グラムを緊縛してにごり酒と熟成味噌と濃口醤油で和風に下味をつけ半日常温放置.半日安置してから午後オーブンで焼きに入る.レシピが定まっているこの厨房仕事に妥協はない.今日の午後から明日にかけて〈つくばフェスティバル2015〉が開催される.すでにセンター広場から大清水公園にかけては屋台テントが立っていた.雨が降らなければ午後は徘徊したい.

◆[欹耳袋]2015年5月11日(月)まで,オアゾの丸善にて開催されている〈THE BOOK OF TREES — 系統樹大全〉ブックフェア(→証拠写真).出展本リストとコメントを公開した.そういえば,ヨドバシアキバの有隣堂書店でもインフォグラフィクスの特設コーナーがあって,マニュエル・リマ本を中心に配架されていたな.他の書店さんでもブックフェアさせてもらいまっせ〜.

◆お昼前,〈モルゲン〉で食パンを買って,〈コーヒー・ファクトリー〉にて珈琲豆を入手.カプチーノでゆったり.外は春雨しっとり.その後,観音台へ.ワタクシの行動パターンを察知した某氏から「論文コピーよろ」メール.どうしていまワタクシが研究室に実在していて,Cladistics 誌のバックナンバーがそろっていて,スキャナーまであることを彼は知っているのだろうか.確かに,Mark に頼んで蛭を送りつけられるよりは,ワタクシの方がはるかに人畜無害である.不意の┣┣" はさくっと┣┣" めを刺してあげた.それにしても Cladistics 誌をもっと購読してくださいな(>大学とか研究所とか).WHS Fellow のひとりとして声を大にして言いまくりたい.

◆午後1時,そろそろ観音台から撤収する時だ.雨はもう止んでいる.曇り空の昼下がり.遅めのランチは〈つくばフェスティバル〉会場にて.まずは白昼の背徳ワインを〈フィンラガン〉で調達.もっとも濃厚な皮の混ざった白ワインをゲット.続いて,インドネシア留学生の団体が出していた店で「Mie Ayam」という鶏肉そばを.辛いかと思ったら,意外に甘口でうまかった.蒸し暑かった昨日とはちがって,20度にも達しない涼しさ.外をうろうろするにはちょうどいい日和.

◆[蒐書日誌]大型連休の間に蓄積されていた新着本たちが研究室の机に積み上がっている —— まずはカラー版中公新書3冊から:高野潤『〔カラー版〕新大陸が生んだ食物:トウモロコシ・ジャガイモ・トウガラシ』(2015年4月25日刊行,中央公論新社[中公新書2316],東京,vi+182 pp., ISBN:978-4-12-102316-2 → 版元ページ)※これはもう買うしかないでしょ./塚谷裕一『〔カラー版〕スキマの植物の世界』(2015年3月25日刊行,中央公論新社[中公新書2311],東京,viii+180 pp., ISBN:978-4-12-102311-7 → 版元ページ)※“スキマ” という殺し文句がとっても効果的./塚谷裕一『〔カラー版〕スキマの植物図鑑』(2014年3月25日刊行,中央公論新社[中公新書2259],東京,vi+182 pp., ISBN:978-4-12-102259-2 → 版元ページ)※買い忘れていたつかやん本が芋づる式にレジにくっついてきた./神里達博『文明探偵の冒険:今は時代の節目なのか』(2015年4月20日刊行,講談社[現代新書2312],東京,253 pp., ISBN:978-4-06-288312-2 → 版元ページ)※これはご恵贈本.

◆[蒐書日誌]Willi Hennig の生誕100年記念論文集 —— David M. Williams, Quentin D. Wheeler, and Michael Schmitt (eds.) 『The Future of Phylogenetic Systematics: The Legacy of Willi Hennig』(2015年刊行予定, Cambridge University Press, Cambridge).おととい,一年がかりの book chapter 原稿をやっとロンドンに旅立たせた.これにて本件の大┣┣" は去っていった.一昨年ロンドンの The Linnean Society で開催されたシンポジウム〈Willi Hennig and the Future of Phylogenetic Systematics〉がもとになっているこの論文集は,今年中に出版されるだろう.

ワタクシが寄稿した章は MINAKA Nobuhiro: Chain, Tree, and Network: The Development of Phylogenetic Systematics in the Context of Genealogical Visualization and Information Graphics.系統体系学(生物・写本・言語)における可視化の歴史とその理論的変遷について論じた.英文の book chapter を書くのは実はこれが初めてだったので,とてもいい経験になった.書く言語がちがうと「別人」になれるかと思いきや, “地” が同じなので,内容的にはそんなに変わらない.ただし,文体的には有意差あり.日本語で書くときと比べて,悪名高いワタクシの晦渋さが大幅に軽減されている.きっと英語で書く能力と正の相関があるからにちがいない.

今回の book chapter はデータ解析的な論文ではなく,科学史的な内容が主なので,日本語でいつも書いている文章の延長線上になめらかにつながる.編者と校閲者による英文修正は施されているけど,日本語の元原稿を “英訳” したわけではないので,英文表現としてブロークンなところはきっとあるだろう.いつもなら “和訳” しなければならない箇所が原文のママで使えるのでかえってラクかもしれない.他方,文中のドイツ語引用文を英訳するというのはとてもスリリングだった.

ワタクシの場合,ほとんどいつも単著で論文や本を書くので,調子がいいときは快調に書き進んでも,いったんスランプに陥ると目も当てられない.今回の book chapter も途中ぜんぜん書けなくなってしまった.今だったら「Write a lot !」をスローガンにして書き続けるところだ.

めずらしい体験をすると本題とは関係のないところがむしろ気になる:

  • 日本語だと「字数」で執筆進捗をモニターできるが,英語だと「語数」が基準.なかなか実感が湧いてこない.いっそテキストの「バイト数」で統一すればいいか.
  • Book chapter 原稿にも,通常の査読雑誌と同様の匿名レフリーがつくことを今回知った.大手の学術出版社から出る専門書の原稿は必ず査読者が読むと前に聞いていたが,確かにその通りだった.
  • 編者による原稿督促のスタイルもとても勉強になった.独特の婉曲的な,それでいて決然と尻を叩くクイーンズ?イングリッシュ.

—— 最終(のはずの)原稿を見なおしたらマイナー “蟲” がなお数頭うごめいていた.いつものことながらバグの根絶はムリですな.あとはケンブリッジ大学出版局の校閲部におすがりするしかない.

◆午後3時からローストビーフの焼きに入った.オーブンを150度に設定し,たった30分で合格点のレアさに焼きあがる.いつもと同じ音頭設定なので,金串を通して中心部の温度チェックをする必要なし.粗熱を取ってから冷蔵庫に直行させ,今夜の出番を待つ.夕餉の “お水” は,最近ぶいぶいいわしている秋田〈新政〉の「亜麻猫」26BY白麹仕込純米酒・別誂中取りを開栓.白麹の醸しだす絶妙な酸味はこの銘柄独自.切り分けたローストビーフがどんどんなくなっていく.つけあわせはパスタとじゃがいも.野菜サラダたっぷりでお肉の免罪とする.そして,夕餉の最後はローストビーフごはん.炊きたてご飯に並べて柚子胡椒をトッピング,そして熊本馬刺醤油をひと垂らししていただくシアワセよ.ローストビーフであったかいご飯をくるんでいただくんです.ああ,シアワセよ.

◆夜遅く第7回連載原稿を送信し,やっと心置きなく寝られる.

◆本日の総歩数=3573歩. 朝−|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 92.4kg(−1.1kg) / 29.9%(+0.1%)


8 mei 2015(金)※夏日の定例都内出撃

◆午前4時半起床.寝覚めの米とぎ.雲間から真っ赤な朝日が昇ってきた.気温13.5度.北東風.真夜中に Scientific Reports 誌から投稿論文アクセプトのメールが着弾していた:「Congratulations on acceptance of your paper」という文章は蜜の味がした.年度越しの大きな┣┣" たちが一頭また一頭と去っていくのを静かに見送る.

◆[欹耳袋]【書籍化もうすぐ】羊土社『実験医学 online』連載の三中信宏〈統計の落とし穴と蜘蛛の糸〉は初回記事を除いてすべて閉鎖されました.今月下旬に刊行される『みなか先生といっしょに 統計学の王国を歩いてみよう:情報の海と推論の山を越える翼をアナタに!』(2015年5月26日刊行予定,羊土社,東京,本体価格2,300円, ISBN:978-4-7581-2058-6)を乞うご期待.

◆連休後の定例都内出撃 —— 午前7時半,つくば駅.都内出撃の朝は太陽がまぶしい.午前9時前,新宿駅.都内は青空.気温はすでに19.7度まで上がってきた.小田急乗り換え.二週間ぶりの農大キャンパスは初夏の日差しが照りつけていた.気温は22度を超えた.コンピューター実習室にて早くも連休前の “雪辱戦” のしたく.今日こそは是が非でも Rcmdr をインストールしてくれる.教師PCでチェックしたかぎりでは,Rcmdr のzipパッケージをまとめてダウンロードし,オフラインで R に組み込めば起動することを確認した.一方,RStudio は管理者権限がどうたらと文句を言われて敗退.R+Rcmdr の二点セットで今期の実習は乗り切ることになりそう.とにもかくにもRコマンダーが使えるようになってハッピー.

  • #NodaiStat 本日の「実験データー解析概論」はまず始めに,連休前に敗退したRコマンダーのインストール作業を終わらせます.その後,データ可視化の説明へ. posted at 10:23:51
  • #NodaiStat Rコマンダーのインストールに必要なパッケージ類はすべてダウンロードできるようにしました.委細説明は教室にて. posted at 10:25:09
  • #NodaiStat 絶賛ダウンロードの祭典真っ最中. posted at 11:05:18
  • #NodaiStat 本日の講義:とりあえずRコマンダーがちゃんと起動して,グラフが描けたということで.箱ひげ図とかモデルの話は来週ね. posted at 12:04:08

◆今日はPCの個別対応に追われた.個人ユーザー領域(1GB)を食いつぶしていたり,R 本体のインストールがまだだったり,古い R がゾンビみたいに動きまわっていたりと百花繚乱.受講生が百人もいれば,そりゃてんてこまいになるって.ワタクシの Yosemite の野郎がまたもやディスプレイ出力を拒否しやがったし.

◆[欹耳袋]J-CAST「嵐コンサート開催で仙台のホテル大争奪戦! 嵐ファン、スポーツファン、研究者が入り乱れて争う」(2015年5月3日)※仙台にかぎらず,最近はうっかり忘れると「出張宿泊難民」と化すリスクが高まっている.要注意.ということで,〈嵐〉のコンサートとは何の関係もないが,仙台のホテル確保.

◆正午過ぎ,真っ白に燃え尽きて昼休み.都内の気温は25.7度と夏日ライン超え.南風に吹き飛ばされる灰.午後1時からは200人相手の講義.

  • #NodaiStat 本日の「生物統計学」講義はデータの “ばらつき” がどのように視覚化されるのか,そして数値化できるのかという話を中心に,パラメトリック統計学の基本を解説します. posted at 12:53:22
  • #NodaiStat 今日の「生物統計学」はデータのばらつきの可視化,分散の導出と自由度の考え方,そして記述統計学と推測統計学とのスタンスのちがいについて話しました.来週は確率分布が主題です. posted at 14:53:39

◆午後3時前,夏日に照らされて農大通りをとぼとぼ歩いてきた.午後の最高気温は午後2時過ぎの26.8度だった.さらに暑くなるこれからの2ヶ月,経堂通いは修行というしかない.経堂駅前にて珈琲充.

◆[欹耳袋]Visual R Platform ※Rcmdr があれば十分じゃね? そういえば,あんまり広まっているとは思えないけど,「RExcel」というExcel 魔界に R を降臨させるツールがあった(ある)よね:R・M・ハイバーガー,E・ノイヴェルト[石田基広・石田和枝訳]『ExcelでR自由自在』(2010年3月31日刊行,シュプリンガー・ジャパン,東京,xxiv+332 pp.,本体価格4,500円,ISBN:978-4-431-10088-1 → 版元ページ).初心者を引きずり込むのに Rcmdr は意外に役に立つ(桜丘でいまその “洗脳” の真っ最中なのだが).達人は RStudio でがんがんスクリプトを書いてください.

◆午後6時,つくば着.日が長くなってきたな.

◆本日の総歩数=13411歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.5kg(+0.3kg) / 29.8%(−0.5%)


7 mei 2015(木)※原稿完成燃え尽きて

◆午前5時前起床.日の出.気温12.5度.連休明けの観音台は曇り空.気温は17.7度,湿っぽい空気が淀んで朝から蒸し暑い.平日に引き戻された朝の BGM は菌類学者 John Cage の打楽器曲で盛り上がってみる.そして,おもむろに…….

◆午前の┣┣" 撃ち —— 一晩寝かせた原稿を再度チェック.追加文献をいくつか.計6,264 words.これでもういいことにしようかな.ロンドンには今日中には送ると宣言してしまったし.手元に置いて “熟成” させるほど,余計なことを原稿に書き加えてしまいそうな気がする.すでに十分すぎるほど風呂敷が広がっているのに.でも,さすがに英語では晦渋な文章とか書けないので,日本語よりはすっきりクリアな文章になっていると思いたい.図版8枚とキャプションを出力して一休み.ロンドンとはずっと MS Word で原稿のやりとりをしているんだけど,校正履歴とかどういうふうに伝わっているのか,やや不安.

◆正午の気温が19.9度と低い割には,じっとり蒸し暑い薄曇りの昼休み.田植えがすんだ田んぼの脇をキジが駆けまわる.ロングコース徘徊だん.歩き読み本:西牟田靖『本で床は抜けるのか』(2015年3月刊行,本の雑誌社,東京,ISBN:9784860112677 → 版元ページ).第7章まで読了.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 文献リストの項目漏れ落ちという大きな “蟲” を数頭捕捉(今頃になって……).もういいかな,大丈夫かな,と疑心暗鬼がむくむくと.しかし,ここは覚悟が肝心.原稿の最終点検をして,西日が真横から差し込む研究室から 6,327 words の最終原稿をロンドンに発射完了.すかさず返信あり:「Many thanks, this is excellent!」— ということで,一年がかりの book chapter 原稿はやっと Cambridge University Press に送られていくことになった.

◆連休中ワタクシが “対外応戦” していたスキにコッソリ(違)上陸していた査読依頼┣┣" 二頭.やっと心の余裕ができたので,査読者サイトを見に行ったら,いつのまにかもぬけの殻だった.頭上を越えて別の査読者候補に泳いでいったのか.たいへん申しわけないことをしてしまったのだが,身一つで日々をしのいでいるので,すまんすまん.

◆[欹耳袋]Yosemite 人柱レポート:ダッシュボードの「世界時計」の挙動がヘンになったら,ライブラリ>preferences>widget-com.apple.widget.worldclock.plistを削除して再起動.Cf: 参考記事

◆明日は二週間ぶりの定例都内出撃の日.今度こそ Rcmdr のインストールを完遂しないと.

◆本日の総歩数=10673歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.2kg(−0.2kg) / 30.3%(0.0%)


6 mei 2015(水)※涼しい立夏の攻防戦

◆午前5時半起床.気温6.6度とやや冷え込んでいる.早朝の米とぎ.朝日がまぶしい.そろそろ生活リズムを平日パターンに戻さないと.

◆[欹耳袋]【再送】羊土社『実験医学 online』連載の三中信宏〈統計の落とし穴と蜘蛛の糸〉は明日5月7日をもって閉鎖されます.

◆今日は立夏の割には夏日ラインにさえ届かなかった.午後は観音台に立てこもって,対レフリー応戦ミッション.とりあえず 280 words.いったん撤収.そこを見透かされたように,ディフェンスなかばにしてロンドンからの遠距離バクゲキが.残りを可及的速やかに終わらせないと. “攻撃” に対しては延髄反射で “反撃” すべし.ぐずぐずしないこと.

◆[欹耳袋]中心極限定理の可視化 —— 「statistics - 【統計学】中心極限定理のイメージをグラフで掴む」(by @Kenmatsu4 on @Qiita)/「可視化で理解する中心極限定理 #rstatsj」(by @hoxo_m on @Qiita)/一年ほど前,R のパッケージ「TeachingDemos」を使ってワタクシも可視化を試みたことがある:RPubs | Central Limit Theorem on R

◆攻防は夜も続く.ロンドンから繰り返し飛んでくる矢をかいくぐりつつ,さらに 153 words 追加.これで final revision はOKかな.けっきょく 500 words ほど追加されて原稿全体で 6,054 words となった.このまま一晩寝かせることにする.原稿が寝たので,ワタクシも寝るん〜♫•*¨*•.¸¸♪ .明日からはいきなり日常だ.

◆本日の総歩数=2319歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 93.4kg(+0.5kg) / 30.3%(+0.7%)


5 mei 2015(火)※陶炎祭といなりずし

◆午前5時半起床.曇り.気温13.9度.北風に変わっているので,前線はもう通過してしまったんだろう.忘れないうちに,昨夜のツイートを束ねた:三中信宏「拙速主義は最強である」(2015年5月4日)

◆[欹耳袋]日本経済新聞「大学教員「任期付き」4割 主要11大学、6年で4000人増」(2015年5月3日)※「特に若手研究者で増えており、特定の研究プロジェクトに対する外部資金を財源にした雇用の増加が背景にある。同省の担当者は「若手のポストが不安定になっている」と分析し、懸念を示している」— 何べんも言うけど,どの口がそれを言う?

◆[蒐書日誌]連休読書:互盛央『言語起源論の系譜』(2014年5月22日刊行,講談社,東京,430 pp., 本体価格2,300円,ISBN:978-4-06-218975-0 → 目次版元ページ)読了.カスパー・ハウザーとフェルディナン・ド・ソシュールに翻弄されてよくわからなかった.「はじめに」と「終章」はよくわかったんだが,はさまれた真ん中の章がよくわからない.嫌われてしまった感じ.索引はちゃんと付けてね.

◆天気に恵まれた今年のゴールデンウィークもそろそろおしまい.昨日は笠間あたりをうろうろしてきた.お昼前につくばを出発したのだが,常磐道は千代田石岡以北で早くも下りが渋滞との情報.岩間インターで下の道に降りて.笠間に向かう.大型連休でも混雑しないイバラキとかアド街で言われていた割には(からこそ?)そこそこの混雑をエンジョイできた.〈陶炎祭【ひまつり】〉会場である笠間市の芸術の森公園に近づくに連れて,道路はにっちもさっちもいかない長蛇の渋滞が伸びていた.〈陶炎祭〉は茨城県下最大の陶器市.200件の店舗が並ぶ.会場の外の公園では連休を楽しむ家族連れがぞろぞろ.飲食店舗がこれまた充実していて,一日中楽しめそうな感じだった.

◆〈陶炎祭〉会場をあとにして,すぐちかくの超有名な豆腐店〈佐白山のとうふ屋〉へ.観光バスも止まるほどの人気店は,田植え間近の田んぼのそばにある.背後には “恐怖の心霊スポット” としてこれまた超有名な佐白山がある.続いて,笠間の街なかへ移動.門前町のど真ん中にある蔵元・笹目宗兵衛商店へ.〈松緑〉という銘柄で知られている江戸時代からの蔵元.

◆笹目宗兵衛商店の向かい側はいきなり笠間稲荷の参道である.ひなびた門前を観光客が行き交う.笠間に来る途中の方々で雑木に絡みついた「野良藤」がきれいに咲いていたが,ここ笠間稲荷も藤がちょうど見頃だった.ふつうの藤棚の奥にある天然記念物の八重の藤はもっと濃い紫色に咲き誇っていた.

◆笠間稲荷にお参りしたら当然「いなりずし」を買うしかない(→笠間いなり寿司いな吉会「笠間いなり寿司」).御神木の胡桃にちなみ,門前の〈二ツ木〉ではクルミの入ったいなりずしが有名.ついでに〈蕎麦いなり〉も.ご飯の代わりに蕎麦が油揚げに詰まっている.そんなわけで,夕餉の主食は二種類のお稲荷さん.〈佐白山のとうふ屋〉のざる豆腐は岩塩とオリーブオイルで. “お水” は笹目宗兵衛商店の〈松緑〉にごり酒.

◆本日の総歩数=7462歩. 朝◯|昼△|夜×. 計測値(前回比)= 92.9kg(−0.1kg) / 29.6%(+0.2%)


4 mei 2015(月)※丸の内で熱狂のとき

◆午前5時前起床.気温16.2度.曇り空.しだいに晴れてきたが,南風が吹き荒れている.

◆[欹耳袋]Colorless Green Ideas「数式の多い論文は引用されにくい?」(2015年5月3日)※数式がひとつあるだけで読者が10人減りますととある出版社の編集者に言われたことがある.生態学や進化学の業界はいまでは数学と統計学ができないとサバイバルできない.それぞれの分野の潜在読者層の「数学リテラシー」というか「数式耐性」によって結論は大きく影響されるだろう.Ronald A. Fisher のように「数式で書くべき内容を地の文で “文字化” する」という〈数式隠し〉の裏ワザはあるが,現代でもそれが通じるかどうか./Colorless Green Ideas「最短の学術論文」(2015年5月2日).

◆今日は朝から〈ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン〉へ.有楽町側から会場に入ると,昼間っからビール全開な人とか,ワインのボトルを転がす人とか.音楽イベントとしてはきわめつけの特大だが,人出もただごとではない.会場である東京国際フォーラムの広大な敷地が客で埋まり,屋台もトイレもホールも長蛇の列が伸びていた.近隣の丸の内ブリックスクエアでもいたるところでイベントが.午後のバッハ・コレギウム・ジャパンのバッハ演奏会を二つ聴いた.今年の〈ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン〉体験はこれにておしまい.午後6時半につくば着.都内は日中の最高気温が26.6度まで上がったが,風が強かったので体感的には涼しかった.

◆[欹耳袋]拙速主義は最強である —— 読書猿Classic: between / beyond readers「もっとうまく書けるかもという妄執をやめれば速くうまく書ける-遅筆癖を破壊する劇作家 北村想の教え」(2015年5月4日).

ポール・J・シルヴィア[高橋さきの訳]『できる研究者の論文生産術:どうすれば「たくさん」書けるのか』(2015年4月7日刊行,講談社サイエンティフィク,東京, xii+178 pp., 本体価格1,800円, ISBN:978-4-06-153153-6 → 版元ページ|原書書評:書評篇実践篇投稿篇共著篇)の見出しにもあるように,「言い訳は禁物」であり,「まずは書く,後で直す」を旨とすべきである.

ワタクシは過去に何冊も本を書いているので,Writer's block というか “スランプ” みたいな状態に陥ることはよくあった.そういうときの弁解なんか何通りもあるのだが,要するに「ちゃちゃっ」と書いてしまえばいいんだ.「もっと調べて,もっと練って,もっとうまく」などと考え始めると,ぜんぜん先に進めなくなる.文章が書けなくなる.まさに「負のスパイラル」ってのに取り憑かれる.四の五の言わず「さらさら」「ちゃちゃっ」と書きましょうよ.

もちろん,かつてのワタクシは執筆上のそういう「拙速主義」に対してはうしろめたさを覚えたこともある.しかし,今ではそういうためらいには不感症になってしまった.なぜなら,書き足りないことや調べ足りないことがあったら,単に「もう一冊書けばいい」だけのことだから.文章を書くことで筆者が負う「負債」は,さらに多くの文章を書くことで償うしかない.そして,さらに積み上がった「負債」はもっと多くの……[以下,無限ループ]

以前,『進化思考の世界:ヒトは森羅万象をどう体系化するか』(2010)の「あとがき —— かき消せない進化」にこんなことを書いた:

「『生物系統学』以降の私の「思考本」たちは、本書を含めて、いずれもこの問題意識を共有しつつ書かれてきた姉妹本である。この意味で、私はなお未完成の単一仮想本を今も連綿と書き続けているのかもしれない。装幀と造本の上では確かに個別分割された別個の書物であることは否定しようもない。もちろん、本書だけ単独で読んでもらえるようにはなっている。しかし、内容のつながりからいえば、私はこの一〇年あまりをかけて一冊の仮想本を書き続け、なおそれは完結しそうにないという夢想すらしてしまうことがある。」(p. 250)

—— ということで,ワタクシはこれからも一冊の未完の「仮想本」を書き続けていくのだろう.そして,背負った「負債」は際限なく増え続けていく.

◆今夜は遅くなってから雨が降りだすとの予報.

◆本日の総歩数=10566歩. 朝◯|昼△|夜△. 計測値(前回比)= 93.0kg(+1.3kg) / 29.4%(−1.2%)


3 mei 2015(日)※冷気と山桜と白い灰

◆午前4時半,山里の朝は早い.当然の報いとしての「うう……」.朝風呂する.昨夜飲み過ぎて,キャンプファイヤー横のベンチで寝込んだこじまセンセは,真夜中までそのまま放置され,残り火でかろうじて凍死をまぬかれたという武勇伝を耳にした.燃え尽きた学生さんたちは死人の群れのようによろよろと朝食の席につく.ワタクシも真っ白な灰と化している.

◆帰路 —— 午前8時半,〈ペンションすずらん〉をあとにする.大菩薩の山道から見える富士山は残雪が輝いていた.紫外線たっぷりの日差しが降り注ぐ午前9時,甲斐大和駅はハイカーたちでごった返していた.駅舎からあふれるくらいの大混雑.無人駅のはずが臨時に駅員が配置されていた.立川行き各停に乗る.

◆午後1時前につくば帰還なう.午後の気温は26.6度.しかし,乾いた東風が吹き抜けて心地良し.シエスタに最適の日和.午後5時,シエスタから目覚めて,買い物へゴー.長旅の疲れでふわふわしている.

◆本日の総歩数=6427歩. 朝◯|昼△|夜×. 計測値(前回比)=未計測 / 未計測


2 mei 2015(土)※大菩薩峠に立て籠る

◆午前5時前起床.日の出.気温12.7度.さあ,まずは米とぎだ.旅支度の真っ最中.山梨は今日の予想最高気温が29度か.

◆[欹耳袋]How Old Do I Look? —— ワタクシの肖像写真だと平均して10〜15歳ほど逆サバが読めることがわかった.42歳の写真を「13歳」と “誤判定” するのはこのサイトの機械学習能力にいまだやや難ありということかも.

◆関東甲信越小さな旅へ —— 午前9時,つくば駅.気温はすでに20度を超えている.初夏のからっとした暑さと日差し.つくばセンターは大きな荷物を転がす人多し.これから大菩薩峠まで運搬するバクハツ系日本酒がJR車内で “覚醒” しないことを祈るのみ.午前10時半,お茶の水.都内の気温はすでに夏日ライン超えの25.6度.駅も車内も混みまくり.大型連休ど真ん中を実感.これから西へ西へ.

◆正午,高尾駅.ハイキング客の群集に混じって下車.駅売店で「高尾天狗パン」を買ってお昼ごはんにする.気温は27.0度に達している.中央線下りの小淵沢行きはえらい混みよう.しかも,どんどん乗客が増えている.ネージュブランはおとなし目なので心配していないが,スパークリング生は振動で覚醒しないように.大月駅でどっと乗客が降りた.みなさん,富士山に登るのだろうか.

◆午後1時半,今年度から無人駅になってしまった甲斐大和駅にて下車.駅前には大菩薩峠に向かう捕虫網をもった学生さんたちがわらわら.カンカン照りの昼下がりは空気が乾燥してやたらに喉が渇く.あと10分でバスが来る.甲斐大和駅発の路線バスはさらにマイクロ化していた.急な山道をひたすら大菩薩峠に向けて上がっていく.切り立った山々は新緑と山桜に彩られている.40分ほど乗って,今日の目的地〈ペンションすずらん〉着.下界は最高気温30.5度と真夏日ラインを超えたのに,ここは半袖では涼しすぎる別世界.〈ペンションすずらん〉といえば昆虫館.今年は結局なかに入らなかったが.

◆農大昆研の学生さんたちが次々に到着する.年季の入った捕虫網は昆虫少年たちや虫愛ずる姫君たちの持ち物.山の涼風に吹かれてしばし本を読む.その後,真っ昼間から一升瓶が立つのは昆研の輝かしい伝統である.ワタクシが持参した一本は和歌山〈雑賀〉の純米吟醸にごり「ネージュブラン」.上品な微炭酸とフレーバー.白昼にもかかわらず一升瓶がどんどん減っていく.

◆いつものように,夕食は別棟にて焼き肉三昧.三河の〈奥〉スパークリング生と奈良の〈篠峯〉山田錦純米・超辛無濾過生.夕食の後はキャンプファイヤーがあったが,ワタクシはもう燃え尽きてしまった…….

◆本日の総歩数=8149歩. 朝◯|昼◯|夜×. 計測値(前回比)= 91.7kg(−0.4kg) / 30.6%(−0.2%)


1 mei 2015(金)※五月晴れ原稿追込み

◆午前4時半起床.米とぎ.気温11.7度.朝焼けグラデーション.青空が広がる観音台は日差しがまぶしい.午前8時の気温は19.9度と元気よく上昇中.

◆[欹耳袋]47NEWS「北大の教授夫婦、研究費不正取得 1550万円、懲戒処分に」(2015年5月1日)※農学研究院・有賀早苗教授と薬学研究院・有賀寛芳特任教授./Academic genealogy [Wikipedia]/Academic Genealogy Wiki /Nature | Bar graphs criticized for misrepresenting data | 30 April 2015 | doi:10.1038/520589f ※Nature はレスポンス早い./C-PIER「学際融合教育研究推進センター公式本が刊行!」(2015年3月21日).ご恵贈いただけることになった.

◆午前の┣┣" 撃ち —— SSB オンライン投票./メーリングリストへの月例アナウンス送信./本郷〈明月堂〉は閉店したのか.あの甘食が…….

◆[欹耳袋]朝日新聞デジタル「オランダ人はなぜ世界一背が高いのか 「進化」の証拠」(2015年4月29日)※「自然淘汰の一つの結果としてどれだけ身長が伸びたか」.元記事:Carl Zimmer | Natural Selection May Help Account for Dutch Height Advantage | The New York Times | 9 Apri 2015.元論文:Gert Stulp et al. | Does natural selection favour taller stature among the tallest people on earth? | DOI: 10.1098/rspb.2015.0211.

◆カンカン照りの観音台は南からの風のせいで,気温25.9度と夏日ラインを超えた.空気がじめじめしていないので,ロングコース徘徊にはいい日和だった.紫色の藤の花が垂れ下がる茂みからはうぐいすのツイート.農林団地周囲の集落ではすでに田植えがスタンバイ.明日からの連休はどこの水田もさぞや人が増えるだろう.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 短くてもたいせつな謝辞 75 words は書けた.しかし,その続きの原稿改訂がなかなか進捗しない.切羽詰まったその心象風景やいかに:

   ♫•*¨*•.¸¸♪
    「お父さん、お父さん!
      原稿が僕をつかんでくるよ!
      原稿が僕を苦しめる!」    「落ち着くんだ坊や
                       締切が風で揺れているだけだよ」
                                 ♫•*¨*•.¸¸♪

◆[欹耳袋]ハフィントン・ポスト「安倍首相の演説、海外でカンペ画像が報じられる「顔を上げ拍手促す」」(2015年4月30日)※大舞台でのスピーチのやり方として参考にする人もきっといるだろう.スピーチの一語一文が各方面から注目されているこういう状況では,読み上げ原稿やプロンプターに “準拠” しないと危なくてしかたがないだろう.以前,レーガンだかクリントンの大統領演説で,特大のプロンプターに講演原稿が映しだされていたのを見たことがあった.ふりかえって,研究者の学会発表や一般向け講演会で,そういうスタイルがいいのか?と訊かれれば,ワタクシ的にはオススメしない.「読む」と「語る」との間にはまちがいなく “溝” があると考えているので.

◆明日からはここのところ毎年恒例となった大菩薩峠立てこもりである.しっかり立てこもらねばならない.

◆本日の総歩数=12645歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)= 92.1kg(−0.1kg) / 30.8%(−0.2%)


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