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日録2013年12月 


31 december 2013(火)※厨房に立てこもる大晦日

◆大晦日の夜明け前.午前5時半起床.気温は氷点下3.7度まで下がっている.昨日よりはましか.丸ごとキャベツカレーの煮込みは続く.午前6時,朝焼けグラデーションが始まった.午前6時前の気温は氷点下4.2度.カレーに素焼きミックスナッツと無糖ヨーグルトを投入する.

続いて,戸外で昨日から一昼夜吸水させた黒豆を炊き始める.空がだんだん明るくなってきた夜明け前.前日から吸水させた黒豆は厚手の鉄製フライパンに砂糖・日本酒・薄口醤油を投入していったん沸騰させる.火を止めて氷点下の戸外で冷却.炊き始めるのはそのあと.黒豆を炊くのは三日がかりの仕事.

◆[欹耳袋]THE NEW CLASSIC「「残念な論文」執筆法」(2013年12月31日)※ワタクシは「自分のため」に文章を書いている.それでも,読者に「時間を返せ」と言われない文章だったならばそれはシアワセなこと.

◆[蒐書日誌]厨房仕事のあいまに読了:伊藤悠『シュトヘル・第8巻』(2013年8月4日刊行,小学館,東京,ISBN:978-4-09-185447-6 → 版元ページ)※西夏文字の漫画がこんなに長く続くとはねー.

◆今朝の最低気温は氷点下4.5度.戸外に出した黒豆はあっという間に冷め切った.さて,いよいよ炊き始める.今年のレシピは次の通り:【黒豆 version 2013】 —— 黒豆250グラム・砂糖250グラム・日本酒小さじ2・薄口醤油50cc・水1.5リットル.※重曹と鉄くぎは不要.1)前日から黒豆は鉄の厚手のフライパン(または鉄鍋)に入れて24時間水に浸す.2)黒豆の吸水が終われば砂糖250グラム・日本酒小さじ2・薄口醤油50ccを加えて沸騰させる.いったん火を止め戸外で放置して冷めるのを待つ.3)再び火入れし,沸騰したら弱火にして10時間ゆっくり煮て水分を飛ばす.ときどき冷水を少量足す.炊いている間は豆が煮汁から露出しないように注意する.これがしわが寄らずにふっくらと炊き上げるコツ.4)黒豆がちょうど浸るくらいまで水分がなくなったら,火からおろして,フライパンに入れたまま落としぶたとラップで密閉したのち,戸外に一晩放置する.

◆お昼前,黒豆を炊いている鉄のフライパンに差し水をしながらお世話の真っ最中.カレーはだいぶ形になってきた(というか形がなくなってきた).カレー鍋のキャベツ玉が “オオマリコケムシ” のようにふよふよに変態したので,次なるステージとして冷凍庫から前回のカレーソース塊を凍ったまま投入.過去のカレーソースを冷凍保存しておくとこういうときにとても便利.カレー作りも系譜である.ふつふつと煮えつつあるカレー鍋のなかで丸ごとキャベツの解体ショー.これで今回の丸ごとキャベツカレーの仕込みは山場を越えた.あとは黒豆に専念する.午後3時過ぎ,キャベツ丸ごとカレーは変身し続け.今朝の夜明け前はかろうじて全形が保たれていたが,いまやあとかたもなくなり完成状態.

◆[欹耳袋]瀬名NEWS「2013年の終わりに際して」(2013年12月28日)|「2013年の終わりに際して(その2)」(2013年12月29日)|「2013年の終わりに際して(おしまい)」(2013年12月30日)※日本SF作家クラブのことがいろいろと.私はSFファンではないので,むしろコミュニティー動態的に興味をもった.

◆黒豆は朝からおよそ7時間あまり炊いて,やっとできあがり.これから戸外に一晩放置して味を染み込ませる.今日の昼下りは気温が13.0度まで上がり,大晦日らしからぬ陽気.

◆[蒐書日誌]leeswijzer「『月刊みすず』読書アンケート本+α」(2013年12月31日)※5冊+10冊のリストアップ.あとはコメントを書いてみすず書房編集部に送るのみ.

◆年越しそばの夕餉.夜はうだうだと寝読みタイム.午後11時前から一ノ矢八坂神社の除夜の鐘がもう響いてきた.今年ももう終わりだ.

◆本日の総歩数=1468歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=93.8kg(−0.3kg)/ 31.0%(−0.3%)


30 december 2013(月)※冷え込み厳しい厳冬の朝

◆午前5時半起床.気温は氷点下5.5度ときびしく冷え込む夜明け前.北風が弱いので放射冷却しまくっている.朝焼けグラデーション.鶏がらスープと粕汁に火を入れて暖まる早朝.最低気温は氷点下5.6度.あまりに寒い.来年早々『もやしもん』連載が終わってしまうらしい.

◆[自然を名づける]本日の打音:MY BOOKSHELF「自然を名づける」(2013年12月28日).

◆クリスマスのローストチキンは鶏雑炊へと大変身 —— クリスマスイヴに食べたローストチキンのホネを一羽分のほかに,セロリ・ニンジン・しいたけ・にんにく・タマネギなどの野菜類と黒胡椒・白胡椒・カルダモン(すべてホール)を用意する.深鍋に水2リットルを沸かし,すべての材料を投入して,最初はひたすら強火でぐつぐつ煮込む.アクをすくってからは火を弱め,水を適宜足しながら,長期戦に入る.二日間が目安.氷点下5.6度まで下がった今朝はこの鶏がらスープをつかって鶏雑炊.スープとはいえローストチキンの名残の肉片が大量に浮遊しているので,具を追加する必要はまったくない.岩塩でちょいちょいと調味して,熱々の土鍋ごと食卓へ.サムゲタンもどきの鶏雑炊は小骨ならそのまま食べられるほど.厳冬期にはこういう朝餉もあり.

◆年の瀬の┣┣" 撃ち —— 統数研の共同研究者登録.年の瀬にワタクシはいったい何やってんだろーねー./長野県農試からの統計質問への回答.これで年内の統計コンサルティング┣┣" はすべて討伐した./昨日も今日も “お仕事メール” を送信しているワタクシってば.

◆[欹耳袋]開田奈穂美 Researchmap「人工知能学会関係者の皆様へ」(2013年12月29日)※「クラウドソーシングで絵を募集し、会員全体に開かれた投票で選んだからといって、それが万人に受け入れられる表現であるという保証はどこにあるのでしょうか?」— 確かにその通り.

◆今日は穏やかな日和で,綿毛のような雲の表情は秋空のようだった.午後は観音台へ.気温は11度を越え,冷たい北風もなくすごしやすい.冬晴れの空からの陽光が心地よし.農環研のフロアに人気はなく,暗く冷たく静まり返っている.しばしごそごそしてから撤収する予定.クロネコヤマト若栗集荷センターで荷物の引き取り,洞峰公園〈モルゲン〉で食パン3斤,東新井〈トライブ〉で珈琲豆とペーパーフィルターをゲットして夕焼けグラデーションのなかを帰宅.

◆[欹耳袋]昨日開設された Google グループの(暫定)科学史MLに続いて,本格的に後継となる科学史ML kagakusi@greekmath.org が開設されたとのアナウンスがあった.これで途切れることはなくなった.Google グループの方は一時的な立ち上げだったようだが,後継 ML がまだサイトをつくっていないので情報がない.いずれにしても,新しい科学史MLへの参加希望メールを送信した.

◆夜は,鶏がらスープの残量を使って,丸ごとキャベツカレーの仕込みをする.キャベツ一玉を刻まずに丸ごと深鍋に投入する超ド級のカレー.最初のうちは水面がほとんど見えないんですけど,これからキャベツがどんどん amorphous に変化していく.ルーは基本に忠実にタマネギ・にんにく・しょうがをきつね色になるまで炒める.カットトマト缶は使うが,鶏ガラスープ以外に汁気のある食材はない.一昼夜煮込めばキャベツの繊維がほぐれて粘度が高まるだろう.食べられるのは年明けかな.

◆本日の総歩数=3585歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=94.1kg(0.0kg)/ 31.3%(+0.4%)


29 december 2013(日)※年の瀬には鶏がらスープ

◆午前5時前起床.気温は氷点下1.1度とそこそこ冷え込んでいる.朝焼けグラデーション.鶏がらスープをとる用意を始める夜明け前の厨房.クリスマスのローストチキンのなれの果ては鶏がらスープ.鶏さん,エライ! そろそろ正月に向けての料理の準備を始めないと.ワインの箱買いは尊敬の目で見られることが多いのに,日本酒の一升瓶の箱買いは一般にあきれられるのはどーしてなんだろうか.朝ごはんにはどっしりシンプルに tortilla española を.卵8個,ジャガイモ2個でささやかに.ただし,厚みが5センチになったので,オムレツパンで焼きあげるのに30分もかかってしまった.

◆[系統樹思考]本日の反響:北白川縄文文化研究所「型式論と系統 [方法論]」(2013年12月26日)※千葉豊 2009 「文様の伝達・変形について―図形伝達実験―」所収:『考古学の源流:木村剛朗さん追悼論集』という論文が気になる.

◆[欹耳袋]shorebird 進化心理学中心の書評など「[書評]「異端の統計学ベイズ」」(2013年12月28日)/数学的帰納法による「算術平均≧幾何平均」の証明:Yasuharu Uchida | A Simple Proof of the Geometric-Arithmetic Mean Inequality | Journal of Inequalities in Pure and Applied Mathematics | Volume 9, Issue 2, Article 56 | 2008./科学史メーリングリスト(Google グループ)への参加登録完了.

◆昼下り,竹園〈本橋ワイン食堂〉にて今年最後のサンデーブランチをば.リリコイ・パンケーキとフレンチトースト.

◆[欹耳袋]東京新聞連載記事が完結した —— 「科学の街の一角で:筑波研究学園都市50年(全5回)」:(1)「日本を産油国に」(2013年12月18日)/(2)「「技術立国」足元に不安」(2013年12月19日) /(3)「高い教育熱 悩む子も」(2013年12月21日) /(4)「公務員宿舎削減に困惑」(2013年12月27日) /(番外編)「息づく多彩な顔」(2013年12月29日).

◆今宵の夕餉は秋田〈雪の茅舎〉の酒粕でつくった粕汁にあわせて,京都から届いたばかりの〈風の森〉「しぼり華・秋津穂 純米大吟醸」を開栓.午後8時,外気温はすでに氷点下0.7度だが,ぜんぜん平気の平左.

◆[蒐書日誌]おととい京都の実家から発送した本がつくばに届いた.ダンボール箱にして5箱.可動式本棚にいっぱい詰まっていた昔々の本からの作為的サンプリング数としてはいささか少なかったかもしれない.

開封してみて「あれ,こんなの入れたっけ?」という本があった.その本とは手塚治虫の『奇子(上):深淵の章』(1971年1月10日刊行,大都社[ハードコミックスII],東京)と『奇子(下):奔流の章』(1971年1月10日刊行,,大都社[ハードコミックスIII],東京)の2冊.大学に入ってすぐに買ったものだろうが,記憶が定かではない.「科学時代」を描き続けた手塚治虫にしては異色なほど “社会派” なストーリー展開.大団円もハッピーエンドもなく,戦後間もない地方都市の「暗部」を描き続ける.物語的には松本清張や水上勉の社会派小説に近く,描き方は横溝正史や江戸川乱歩を髣髴とさせる.場面によっては,白土三平の『カムイ伝』のような雰囲気も漂ってくる.

数ある手塚治虫の漫画のなかで,よりにもよってなぜ『奇子』を買ったのかはいまとなってはもうわからない.何よりもピックアップした記憶がないんだけど,ひょっとしてひとりで勝手に入ったか? というわけで,いまつくばに “奇子” がいる…….

◆今年がどんどんなくなっていく.

◆本日の総歩数=4319歩. 朝◯|昼△|夜△. 計測値(前回比)=94.1kg(+0.1kg)/ 30.9%(−0.5%)


28 december 2013(土)※寒風のつくばで歳末奔走

◆午前6時前起床.気温0.3度.今年も残り数日になってしまった.雲ひとつない夜明け前の空が朝焼グラデーションに染まっている.気温は氷点下2.3度まで降下.午前11時,気温は6.6度.北風が冷たすぎて外出の意欲が萎えまくり.結局この日の最高気温は8.0度どまりだった.

◆来年のお座敷予定 —— 三中信宏「統計的データ解析の基本に立ち返る:思考法・視覚化・モデル」,横浜植物防疫所統計研修,2014年1月17日(金)15:00〜17:00,横浜植物防疫所会議室/三中信宏「涙なしの形態測定学:これから学ぶ人たちのために」,日本生態学会広島大会・自由集会 W05〈道具としての「形態測定学」:生態学と周辺分野との交差点〉.2014年3月14日(金)13:30〜15:30@E会場./三中信宏「都市と分類思考:変遷する構造を捉える視点[仮]」.横浜国立大学大学院都市イノベーション学府修了展,2014年3月21日(金)10:00〜20:00@ヨコハマ創造都市センター.

◆歳末┣┣" 撃ち果てしなく —— 午後は観音台へ.身を切る北風が冷たすぎる.農環研正面ゲートにはすでに門松ポスターが貼られていた.人気のない研究室で┣┣" どものようすを物陰から観察.とりあえず静かに年を越してくれそうなので一安心.〈大七〉の「妙花闌曲」と「宝暦大七」を小脇に抱えて帰宅しよう./歳末メールボックスにぬくぬく安住する未対応┣┣" を一頭また一頭とひねりつぶしている昼下り./月刊みすず恒例の「新春書評アンケート」に寄稿する5冊を選考している.とりあえず今年一年間に手にした本から20冊ほどピックアップ.前回の書評アンケートに出したリストはこれ.ずっと本録を記載しているので,こういうときの対応はラクラク.

◆[蒐書日誌]今年最後のご寄贈本 —— 樋口広芳(編)『日本のタカ学:生態と保全』(2013年12月5日刊行,東京大学出版会,東京,vi+356 pp., 本体価格5,000円,ISBN:978-4-13-060223-5 → 版元ページ)./今年も “読了未遂” のまま放り出してしまった本が何冊もある.そういう本のあるものはまだ読むべき時期ではなかったのだろう.新酒で飲むべき酒と熟成させて飲むべき酒のちがいのようなもの.年末年始用の本を何冊か選び,残りは研究室で静かに年を越す.

◆夕焼けグラデーションとともに気温はさらに下がり続けている.午後5時,2.9度.今宵の夕餉は暖かいものを用意するしかない.グッドタイミングで年末年始を元気よく乗り切るための燃料到着.昨日,京都・北白川の〈にしむら酒店〉から発送した〈風の森〉御一行様がいましがたつくばにお着きになった:まずは御所の〈風の森〉が3本で,「しぼり華・秋津穂・純大吟」「笊籬採り・キヌヒカリ・純大吟」「笊籬採り・露葉風.純吟」いずれも24BY.ついでに伏見の〈蒼空〉「純米美山錦おりがらみ(限定)」1本.こちらは25BY.計4升もあれば年末年始は乗りきれるにちがいない.

◆夜は氷点前後の気温.明朝はぐぐぐと冷え込み,冬眠必至だろう.寒い夜は暖かくして寝るしかない.

◆本日の総歩数=3060歩. 朝◯|昼−|夜△. 計測値(前回比)=94.0kg(+0.5kg)/ 31.4%(+0.1%)


27 december 2013(金)※宇治から氷雨の北白川へ

◆午前7時起床.気温6.3度.うう……は当然の報い.昨夜の雨は上がっていまは曇り空.東山を吹きわたる風が冷たすぎる.高台の蹴上から市街地を見下ろすと,灰色の雲が垂れ込めていた.和定食の朝ごはんをのんびりすませて,これからまた洛南ミッションの続きだ.空がだんだん明るくなってきたのはよしとしよう.

◆[蒐書日誌]往路の新幹線車内読書本:Scott L. Montgomery『Does Science Need a Global Language? : English and the Future of Research』(2013年5月刊行,The University of Chicago Press, Chicago, xiv+226 pp., ISBN: 978-0-226-53503-6[hbk] / ISBN: 978-0-226-01004-5 [eBook] → 目次版元ページ)※まずはイントロと第1章を読了.これはめっちゃおもしろい.

◆洛南ミッション(続) —— 本の整理作業ははてしなく続く.昔の本の大半は処分するつもりなので,めぼしいものだけ拾っていく.お昼すぎに段ボール箱に梱包完了.クロネコヤマトに取りに来てもらって今回の京都ミッションはこれにておしまいとなった.その後,地下鉄東西線で京都市内に移動.冷たい雨がふたたび降り始めた.北白川にて正月用の日本酒〈風の森〉と〈蒼空〉を買い込み,これまたつくばに発送完了.

仕事をすればお腹がすく.すぐ近くの〈ワールドコーヒー〉で遅いランチとなった.まずはロースカツサンドから.京都のサンドイッチは,〈イノダコーヒ〉に代表されるように,どこもボリュームがある.〈ワールドコーヒー〉もその例外ではない.マスタードをたっぷり塗った厚手のロースカツがトーストにはさまれてご登場.しかし,このロースカツサンドは単なる前菜にすぎない.メインは「大エビサンド」.巨大なエビフライが丸太のように並び,その隙間を埋めているのはポテトサラダ.こんがり焦げ目のついたトーストにサンドイッチされて厚みは5センチあまり.どこぞのハンバーガーショップの「クォーターパウンダー」よりもはるかに重量級.店のウェイターさんをして「私も最初に見たときはその大きさに驚きました」と言ったほど.京都,おそるべし.

◆本日の洛南ミッションは無事終了し,物資の搬送はすべて終わった.北風が冷たい六地蔵を皮切りに,氷雨が降り続く北白川から寺町界隈を経由して京都駅へ.雨は本降りに.明日は雪になるらしい.午後4時半,新幹線に乗る.午後9時前,やっとつくばに帰還.こっちも雨が降った形跡あり.長距離移動で疲れたまま,寺町二条〈末廣〉のおみやげ鯖寿司をばくばく喰う.

◆京都往復して帰ってきたらもう仕事納めの日を軽やかにスルーしていた.明日あたり観音台に出没して居室の┣┣" 放牧場を遠目に観察してこないと.年末年始は静かに放置する予定なので.

◆本日の総歩数=10133歩. 朝◯|昼△|夜△. 計測値(前回比)=未計測/未計測


26 december 2013(木)※年の瀬の洛中は雨に濡れ

◆午前5時半起床.気温は氷点下2.3度.今朝は雲が多い.午前6時の気温は氷点下1.8度.

◆[欹耳袋]カメムシの東大 —— 47 News「東大構内で新種カメムシ 珍しい都市部の発見」(2013年12月25日)|時事ドットコム「新種カメムシ、都心の東大に=皇居並みに自然豊か」(2013年12月25日).元論文: Tomohide Yasunaga, Tadashi Ishikawa, and Motomi Ito 2013. Two new species of the plant bug genus Sejanus Distant from Japan (Heteroptera: Miridae: Phylinae: Leucophoropterini), inhabiting urbanized environments or gardens. Tijdschrift voor Entomologie, 156(2-3): 151-160, 2013. DOI: 10.1163/22119434-00002025 | abstract

Tijdschrift voor Entomologie のバックナンバーが Biodiversity Heritage Library と Internet Archive から電子化公開されていることを知った.

◆年の瀬の京都ミッション —— 午前9時半につくばを出発.10:40発ののぞみで京都に向かう.東海地方も曇り空が広がっていたが,雨はまだ降りだしていないようだ.年の瀬プチ旅行の空模様はかんばしくない.午後1時,京都着.地下鉄で四条に出る.雨は今は降っていないが,道はしっとり濡れている.

年の瀬で観光客と地元客が激混みの錦市場を横目に洛中ミッション開始.まずは新たに発見された古い銀行口座の確認作業.何十年も前の(しかも銀行合併前の)古い口座の素性を調べあげてもらう.結果はすでに解約されていることが判明し,一件落着.

遅い昼ごはんは寺町二条の〈末廣〉へ.待つこと15分,ほかほかと湯気の立つ「蒸し寿司(上)」が運ばれてきた.冬だけの季節もののお寿司は〈末廣〉ならでは.

その後,六地蔵に移動し,いつもの洛南ミッション.今回は宇治の実家で蔵書の整理をした.高校時代に買い求めた大半は文庫や新書だったが,講談社ブルーバックスの初期のものがずらっとそろっていた.ダレル・ハフの統計学本とか相対性理論,量子力学など.当時としては画期的な科学本だったことを実感する.かつて読んで楽しんだお返しに,いま読んで楽しい(そうか?)本を書いているということだ.

夕方,すっかり暗くなってから蹴上の定宿にチェックイン.雨足がだんだん強くなってきた.夜の闇が忍び寄り,疲労がじんわり包み込む.しかし,冬の長い夜はこれからだ.冷たい雨が降り続く高倉綾小路西入の〈奇天屋〉にて晩ご飯.いただいたお酒リスト(順番に):〈不老泉〉24BY山廃仕込純米吟醸おりがらみ生原・〈大信州〉25BY槽場詰め純米吟醸生・〈喜楽長〉25BY特別純米あらばしり生・〈喜楽長〉24BY特別純米生囲い・〈十旭日〉25BY改良雄町六〇純米・〈十旭日〉17BY五百万石六八純米熟成(燗)・〈北島〉23BYきもと純米無濾過 渡船 生原・〈不老泉〉15BY山廃仕込大吟醸 山田錦(燗),ついでに〈秋鹿〉24BYも.以上.

◆当然のごとく,うう…….

◆本日の総歩数=14502歩. 朝◯|昼◯|夜×. 計測値(前回比)=93.5kg(−0.6kg)/ 31.3%(−0.2%)


25 december 2013(水)※今年の出勤は今日で完結

◆午前5時起床.気温は氷点下4.0度まで下がっている.さぶさぶ.朝焼グラデーション.今朝の最低気温は氷点下4.6度まで下がった.昨夜のローストチキンのホネを分別し,鶏スープ用に保管完了.冬晴れの観音台は午前8時の気温は氷点下1.0度.露地は真っ白に降霜し,硬く凍りついている.今年の出勤簿に押印するのは今日でおしまい.年内最後の朝イチ BGM はマーラー〈巨人〉から.

◆午前の┣┣" 撃ち —— そろそろ来年のお座敷へのお呼ばれがちらほら届きはじめた.年明けて,横浜・馬車道近くのお座敷に呼ばれる機会が二度もある.ヨコハマづいている./来年5月24日(土)に統数研(立川)で開催される日本計量生物学会年次大会シンポジウムの演者が全員確定した.オーガナイザーとしての┣┣" 撃ちは年末ぎりぎりの滑り込みセーフとなった./明日の日本計量生物学会対面理事会への欠席連絡と委任状提出完了.

◆[欹耳袋]行政改革推進会議(第8回)議事次第(2013年12月20日)※「独立行政法人改革等に関する基本的な方針について(概要)」および「http://www.kantei.go.jp/jp/singi/gskaigi/dai8/siryou1.pdf">独立行政法人改革等に関する基本的な方針について(本体)」.「本体」pp. 17〜19 に「(5)研究開発型の法人への対応」が記述されている.「国立研究開発法人(仮称)」(p. 17)ならびにその上位に位置する「特定国立研究開発法人(仮称)」(p. 19)が浮上している.農水省系独法に関しては pp. 42〜45 に記述あり.JIRCAS は合併しないのか.なお,本日午後2時から所内での理事長説明が開催されることになっている.

◆お昼前の居室 BGM は高橋悠治のエリック・サティ.そして,一ヶ月分溜め込んだ生物統計学の質問への回答.これは年越させたくない┣┣" .


  • #TodaiStat 質問カードの海でぶくぶく…….まずはモデル選択の講義をした11月28日分から. posted at 11:17:15
  • #TodaiStat 【質問】「AIC を導出するときのデータの “ばらつき” がよくわからない」/【回答】AIC は実際のデータから計算された尤度に対する「期待値」を計算します.その期待値を求めるときに変量の未知の密度関数を想定します.それが “ばらつき” の意味です. posted at 11:29:10
  • #TodaiStat 【質問】「モデルの期待最大尤度を最大にすることとAIC が「期待尤度−パラメータ数」であることとの関係がわかりません」/【回答】期待最大尤度の変量に関する期待値をパラメータ真値の周囲でテーラー展開したもののパラメータに関する期待値をとれば AIC. posted at 11:35:30
  • #TodaiStat 【質問】「AIC はどのくらいの値ならばモデルとして適当なのでしょうか?」/【回答】AIC は対立モデル間の「相対差」に意味があります.AIC の「絶対値」に意味があるわけではありません. posted at 11:37:30
  • #TodaiStat 【質問】「AIC では予測確度を計算するときにモデルの適合度と複雑度について重み付けしますか?」/【回答】AIC に近縁ないくつかの情報量基準がありますが,それらの中にはパラメーター数の「罰則」の重みが異なるものがあります. posted at 11:40:08
  • #TodaiStat 【質問】「実験系の異なる場合でもモデルの予測確度や尤度は比較できますか?」/【回答】できません.尤度主義の立場はある与えられたデータのもとでの比較に尽きます.異なるデータに対しての比較はムリです. posted at 11:42:13
  • #TodaiStat 【質問】「モデルのパラメーター数はどのように数えるのでしょうか?」/【回答】モデルの基本構造が決まれば「自由パラメーター」の個数は自動的に決まるでしょう.y=ax+b ならばふたつ,y=ax ならばひとつ. posted at 11:44:09
  • #TodaiStat 【質問】「赤池弘次先生の AIC の初出論文を教えて下さい」/【回答】つ H. Akaike 1973 ow.ly/s3gVv [pdf] posted at 11:52:27
  • #TodaiStat 【回答】(承前)元論文名は「Information theory and an extension of the maximum likelihood principle」です. posted at 11:53:04
  • #TodaiStat 【回答】(承前)もし絶命しそうなら,こちらをどーぞ:How to Tell When Simpler, More Unified, or Less Ad Hoc Theories Will Provide More Accurate Predictions. posted at 11:55:52
  • #TodaiStat 【回答】(承前)この論文 ow.ly/s3h34 [pdf] は Elliott Sober と Malcolm Forster による AIC の科学哲学に関する上質の導入になっています. posted at 11:57:54
  • #TodaiStat 【回答】(承前)出典誌は British Journal for the Philosophy of Science, 45: 1-36 (1994).駒場なら図書館にコンプリートに揃っているでしょう. posted at 11:59:53
  • #TodaiStat 【質問】「強弱の確証/反証の話が興味深い」/ルドルフ・カルナップとカール・ポパーの科学方法論の対置については講義で説明しました.データに基づく推論としての確証と反証を,強い意味ではなく,弱い意味で用いるというのは科学方法論として重要です. posted at 12:03:48
  • #TodaiStat 【回答】(承前)弱確証と弱反証については,ワタクシが翻訳したエリオット・ソーバー『過去を復元する:最節約原理,進化論,推論』(2010年4月,勁草書房) ow.ly/s3hbm の「4.2節:反証可能性」に詳しい説明があります. posted at 12:09:29
  • #TodaiStat 【質問】「帰無仮説を保持するという言い方は反証主義か帰納主義の影響を受けているのでしょうか?」/【回答】そうではなくて,むしろ Neyman-Pearson 流の仮説検定フレームワークの要請でしょうね. posted at 12:14:06

  • #TodaiStat 返答再開〜 posted at 12:41:28
  • #TodaiStat 続いては一般化線形モデル(GLM)と一般化加法モデル(GAM)そしてそれらの混合効果バージョンについて解説した12月5日分ね. posted at 12:43:07
  • #TodaiStat 【質問】「これまでの線形モデルでは正規分布に従わないデータをどのように躾けてきたのでしょうか?」/【回答】手っ取り早い “躾” はさまざまな「変数変換」の小技ですね.元変量を対数関数や三角関数などで変換して「正規分布屋敷」にご奉公に出していたということです. posted at 12:51:52
  • #TodaiStat 【質問】「GLM でデータのリンク関数変換は,従来の LM でのデータの変数変換と何がちがうのでしょうか?」/【回答】従来型 LM では正規分布に合わせるために変数変換をしましたが,GLM ではリンク関数を正規分布を仮定しない線形予測子にリンクします. posted at 12:55:55
  • #TodaiStat 【質問】「リンク関数によって線形予測するとのことですが,線形であるかないかの判断はどのようにするのでしょうか?」/【回答】基本的にはデータのタイプ(比率・計数など)によって線形予測のためのリンク関数の候補は絞られてくるでしょう. posted at 13:05:20
  • #TodaiStat 【質問】「GAM の非線形予測子の作り方(スプライン関数)っていったい何なんでしょう?」/【回答】データに適合する “滑らかな” 非線形関数のパッチワークがスプライン関数です.補講で幾何学的形態測定学の話をしますので,詳しくはそのときに. posted at 13:09:50
  • #TodaiStat 【質問】「リンク関数自体が確率分布にしたがって変化するようなモデルはありますか?」/【回答】ちょっと想像できませんねぇ……. posted at 13:11:22

  • #TodaiStat さらに続いて,多変量確率分布と多変量解析の話をした12月12日分. posted at 13:13:34
  • #TodaiStat 【質問】「多変量正規分布のパラメトリック理論を勉強してみたいです.駒場の線形代数では二次形式まではやりました」/【回答】多変量正規分布の指数部分は偏差ベクトルと分散共分散行列の二次形式なので,行列の固有値解析で分布の「形状」が決まります. posted at 13:20:36
  • #TodaiStat 【質問】「主成分分析の主軸が分散共分散行列の固有値に対応する理由が知りたい」/【回答】平均センタリングされた元変量X[i]の線形結合Σa[i]X[i] の分散共分散行列は a'Sa (Sは元変量の分散共分散行列)という二次形式になります.(続) posted at 13:26:45
  • #TodaiStat 【回答】(承前)a'a=1 というノルム制約のもとでこの二次形式を最大化すると(ラグランジュ乗数法),分散共分散行列の最大固有値に対応する固有ベクトルが線形結合の計数ベクトルとなり,最大固有値が分散最大値となります.これが第一主成分.下位主成分の計算も同じ. posted at 13:29:23
  • #TodaiStat 【質問】「主成分分析で全分散の何%が説明できれば妥当なのでしょうか?」/【回答】主成分分析はデータの変動の固有値分析によって線形代数的に部分空間を構築します.できるだけ少数の上位主成分軸で説明できればOK.ただし,軸がうまく “解釈” できるかは別問題. posted at 13:31:53
  • #TodaiStat 【質問】「クラスター分析の樹状図から何がわかるのか?」/【回答】多変量空間を「距離」のみに着目してグルーピングしたのがクラスター分析のデンドログラムです.しょせんは「分類」ですから高望みしない方がいいですね.(そこまで言う!) posted at 13:35:01
  • #TodaiStat 【質問】「クラスター分析のアルゴリズムを変えると結果がどのように変わるのか知りたい?」/【回答】Rコマンダーでやってみてください.アナタが見たいものを見ることができるでしょう.(そこまで言う!) posted at 13:36:46
  • #TodaiStat 【質問】「クラスター分析はノンパラメトリック統計なのか,それともパラメトリック統計学なのか?」/【質問】特定の確率分布を前提としないという意味でノンパラメトリックですね.クラスター分析は “クラスター” を心理的に認知するためだけのツール.(そこまで言う!) posted at 13:39:57

  • #TodaiStat 最後は,先週12月19日のリサンプリング統計学の分ね. posted at 13:47:17
  • #TodaiStat 【質問】「bootstrap とか jackknife という名前はどこからきたのか?」/【回答】ブーツストラップ(bootstrap)は文字通り「ブーツのひも」.だから「ブートストラップ」という訳語はありえへん! posted at 13:51:50
  • #TodaiStat 【回答】(承前)ブーツストラップ法の開発者である Bradley Efron は「pull oneself up by one’s boostrap(自力でやり遂げる)」という熟語表現を踏まえて命名しました.確率分布に頼らずデータのみを頼りにするという意味. posted at 13:52:57
  • #TodaiStat 【回答】(承前)「靴紐を引っ張って自分のからだを引き上げる」という表現は,ビュルガー作『ほらふき男爵の大冒険』に出てくる逸話がルーツ.ほら吹きミュンヒハウゼン男爵は敵から逃れるために,自分の靴紐を引っ張って宙を飛んだのです. posted at 13:54:11
  • #TodaiStat 【回答】(承前)もうひとつの「ジャックナイフ(Jackknife)」は,開発者 John W. Tukey が「いつでもどこでも切り落とせる道具」という意味で命名したという話.確かにいいネーミング. posted at 13:54:55
  • #TodaiStat 【回答】(承前)ついでに,「モンテカルロ法(Monte Carlo)」はカジノで世界的に有名な Monte Carlo にちなむ反復数値シミュレーション法の総称です. posted at 13:55:47
  • #TodaiStat 【質問】「ブーツストラップとジャックナイフで誤差推定値に違いが出る理由は?」/【回答】リサンプリング方法がちがうので体系的に差異が生じます.一般に削り落としが小さいジャックナイフはブーツストラップよりは統計量のばらつきが小さいですね. posted at 13:58:54
  • #TodaiStat 【質問】「ブートストラップは何回以上やればいいんでしょう」/【回答】多い方がいいです(キッパリ).というか,それ以外どうしようもないですねー. posted at 14:00:53
  • #TodaiStat 【質問】「リサンプリングの元になるデータはどれくらいとればいいのでしょう?」/【回答】多い方がいいです(キッパリ).というか……[以下略] posted at 14:02:22
  • #TodaiStat 【質問】「モンテカルロ(パラメトリック・ブーツストラップ)でモデルが誤っていたら……」/【回答】リサンプリング法は統計量の誤差推定のための方法なので,モデル選択には責任を負わないです. posted at 14:04:39
  • #TodaiStat これにて年内の質問回答はすべておしまいっ.受講生のみなさん,良いお年を. posted at 14:05:42

—— この質問フルコースでもうお腹いっぱいですな.今年の「生物統計学」受講生は科学哲学が好きみたいでワタクシはとてもうれしい.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 居室の大掃除をするでもなく,今年も年賀状を書くでもないのに,残る一週間が早回しで終わりそうな気配濃厚./午後2時から独法合併に関する理事長説明会に参加.まあ,しばらくは動向を静観するだけだろうね./撃ち残った査読┣┣" 一頭に早く┣┣" めを刺さないと〜.大富豪 E*s*v*er のために “タダ働き” するのは腹が立つけど…….

◆京都の実家でまた新たに得体のしれない「証書」が発見された.主がふたりともあちらの世界に逝ってしまってからもう一年以上も経つのに,またしても死亡診断書と戸籍謄本そして実印の三点セットをもって走り回ることになろうとは.死せる両親,生ける子供を走らす.※これまた子供の責務のひとつということ.

◆本日の総歩数=4028歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=94.1kg(−0.3kg)/ 31.5%(+0.4%)


24 december 2013(火)※クリスマスイヴは鶏さん

◆午前5時半起床.気温0.1度.今年もあと一週間でおしまい.乾いた冬空の観音台はぴりぴり冷たい.今朝は氷点下2.0度まで冷え込んだ.今年の出勤日は今日を含めてあと二日を残すのみ.大きな Mont d’Or を買わないと!

◆[欹耳袋]Slidify: Stunning presentations from markdown. knitr はすでに使ってるけど Slidify は知らなんだー.R出力をスライドにしてくれるツールか./Hidetoshi Shimodaira | Technical details of the multistep-multiscale bootstrap resampling | 22 December 2013.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 査読┣┣" 一頭を仕留めた.しかし,もっと大物の査読┣┣" の締切りまであとマイナス4日だ./この世に┣┣" 撃ちの「恩赦」とか「徳政令」はないものか

◆[欹耳袋]日本経済新聞「独法再編、100から87に 成果に応じ研究者の給与高く」(2013年12月24日)※「農業生物資源研究所など4法人を一本化」– 「など」のなかにのーかんけんも入ってるぞ./日本経済新聞「純米酒と米だけの酒、生酒と生貯蔵酒 何が違う? 」(2013年12月24日)※「米だけの酒」って知らんぞ.

◆朝から┣┣" 撃ちに励んでいたので,冬晴れの昼休みは引きこもり.メシアン〈トゥーランガリーラ交響曲〉が BGM.電話帳のような総譜をめくりつつ.

◆[蒐書日誌]ブツがやっと届いた —— 上田恵介他(編)『行動生物学辞典』(2013年11月22日刊行,東京化学同人,東京,x+637 pp., 本体価格9,500円/特別定価7,800円[2014年5月15日まで],ISBN:978-4-8079-0837-0 → 版元ページ).ワタクシが担当した項目は:項目執筆「大進化」「小進化」「節約」「系統的慣性」「調和的アルゴリズム」「社会的慣性」「系統学」「分岐図」「種選択」「進化生物学」「「種の利益」説」「目的論」「ナイルズ・エルドリッジ」そして「スティーヴン・ジェイ・グールド」.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 二つの学会シンポジウムのオーガナイザー┣┣" 二頭を同時におっかける昼下り.うち一頭はそろそろ白旗をあげそうな気配.しかし,もう一頭は往生際が悪くじたばた逃げまわっている.年内には追い詰めないと.

◆クリスマスイブの夕暮れの闇を鶏がいままさにやってくる.鶏鶏鶏.スパークリングワインとともに.鶏鶏鶏.午後11時,氷点下1.2度.冬眠タイム到来.

◆本日の総歩数=3145歩. 朝◯|昼◯|夜×. 計測値(前回比)=94.4kg(−0.2kg)/ 31.1%(−0.3%)


23 december 2013(月)※年の瀬三連休は犇また犇

◆午前7時のろのろ起床.最低気温は氷点下3.8度.こりゃ寒いはず.とりあえず,夕餉用ローストビーフの下準備をすませる.

◆[欹耳袋]甘利俊一「巻頭言・研究は楽しいか?」情報・システムソサイエティ誌 2(1):3 (1997年4月)※ほんの15年前のエッセイだがまるで「昔話」のように聞こえる.

◆[蒐書日誌]イアン・ハッキング[広田 すみれ・森元良太訳]『確率の出現』(2013年12月28日刊行,慶應義塾大学出版会,東京,viii+394 pp., 本体価格3,800円,ISBN:978-4-7664-2103-3 → 版元ページ)をすでに読み始めている.1660年前後に出現した “確率” 概念のもつ「二元性」についてピックアップ:

  • 「注目すべきなのは,突如出現した確率にヤヌス的な二面性があるという点である.一つの面では,確率は統計的であり,偶然的な過程についてのストカスティックな法則に関連している.もう一つの面では,確率は認識論的であり,統計的な背景がまったくない命題についての合理的な信念の度合いを評価するために用いられている.」「現在でもこの二元性は十分明白である.」(p. 18)
  • 「確率と帰納は今日どうなっただろうか.…一つは,整合的な信念の理論であり…これは現在「ベイズ主義」と呼ばれているが,私の意見ではトマス・ベイズとはほとんど関係がない.もう一つは,安定した相対頻度の理論を現実世界の予測に適用するものである」(pp. 347-8)
  • 「人々はこれまで,ここで終着点と思われるもの,すなわち二つの異なる推論様式とは折り合いがつかなかった.〔そして〕私は今後も折り合いがつかないと考えている.」(p. 348)
  • 「それぞれの種類の確率は,… 帰納の問題を解決するためではなく回避するために,独自のやり方を進化させてきたということは学ぶところが多い.信念の度合いによる回避では,ベイズの規則を使って経験から学習するという考えが用いられている.頻度タイプの回避では,帰納的行動という考えが展開されている.純粋に論理的観点からは,どちらの回避にも欠点がある.」(pp. 348-9)

ワタクシのもっている原書は1978年の初版第二刷: Ian Hacking『The Emergence of Probability: A Philosophical Study of Early Ideas about Probability, Induction and Statistical Inference』(1975年刊行,Cambridge University Press, Cambridge, x+209 pp., ISBN:0-521-20460-7 [hbk] → 版元ページ[第2版])だ.

統計学基礎論に関するもっと古い本: Ian Hacking『Logic of Statistical Inference』(1965年刊行,Cambridge University Press, Cambridge, x+232 pp., ISBN:0-521-29059-7 [pbk] → 版元ページ)も本棚の奥に横たわっている.

大学院のころに Anthony W. F. Edwards 『Likelihood』(1972年刊行/1984年, Cambridge University Press [Cambridge Science Classics], Cambridge, ISBN:0-521-31871-8 [pbk] → 目次)を輪読したことがあったが,おもしろくてしかも辛かった.ハッピーな統計学ライフを送るには Edwards とか Hacking はまたいで通るのがベストかもしれない.

◆肉を焼く年の瀬 —— 毎年,年末年始は肉を料理する機会が増える.今日はその前哨戦のローストビーフ.分量は800グラムのカタマリ.400グラムふたつに切り分けて,塩胡椒をすりこみ,いつものようにたこ糸でしっかり緊縛する.赤ワイン・醤油・にんにくスライス・行者ニンニク醤油で下味をつけ,常温で半日放置.厚手のフライパンでしっかり焼き目をつけてから,150度設定のオーブンで今回は45分焼いてから,戸外で急速冷却.これでできあがり.

焼き加減はミディアムレア.さっそく食卓に運び,ヌーボーの “お水” を呑みながら夕餉.今夜の “お水” は秋田醸造の〈ゆきの美人〉純米吟醸活性にごり生酒.できたてのヌーボー.今夜の “お水” は秋田醸造の〈ゆきの美人〉純米吟醸活性にごり生酒.できたてのヌーボー.〈ゆきの美人〉はその名前に似合わず,炭酸ガスがかなり強いので,開栓注意.もちろん,飲み過ぎてはいけません.雪女,コワい.

◆明日からはまた「日常」が戻ってくる.

◆本日の総歩数=573歩. 朝◯|昼△|夜△. 計測値(前回比)=94.6kg(−0.6kg)/ 31.4%(+0.8%)


22 december 2013(日)※冬至の朝はきりり氷点下

◆午前7時半のろのろ起床.雲ひとつないパーフェクトな冬晴れ.氷点下の冬至の朝.

◆[欹耳袋]Mauro J. Cavalcanti | References on Fish Geometric Morphometrics.魚類を題材にした幾何学的形態測定学文献リスト./R AnalyticFlow:これはフリーだから,使い道があるかもしれない.

◆寒風の本郷は人影まばら —— 午後2時前,本郷.これから東京大学総合研究博物館にて自然史学会連合総会.都内も冬晴れ.午前1時の気温は10.8度.北風が吹く寒々しい本郷キャンパスは人影もまばら.博物館7階の “ミューズホール” という名の物置部屋で例年会議をしている.意外に長引いて,本郷での会議は午後5時過ぎにやっと終わった.つくば直帰.北風が冷たすぎる.

◆今夜の夕餉は “おっきりこみ” ではなく “ほうとう” なのだ.日が変わるときの気温がすでに氷点下2.6度.これから放射冷却できりきり急降下か.熱が出てきたので,さくっと寝るのだ.

◆本日の総歩数=4819歩. 朝◯|昼−|夜△. 計測値(前回比)=95.2kg(+0.8kg)/30.6%(+0.6%)


21 december 2013(土)※寒風の厚木にて蟲忘年会

◆午前6時半過ぎ起床.氷点下の寒い朝.朝焼けグラデーションから夜明けへ.

◆残響の事後処理 —— 山内志朗『「誤読」の哲学:ドゥルーズ、フーコーから中世哲学へ』(2013年12月13日刊行,青土社,東京,329+xii pp., 本体価格2,800円,ISBN:978-4-7917-6743-4 → 版元ページ)の書評を公開.もうひとつ,池袋での雨夜の対談で話題になったマイケル・ギセリンについても,彼の【種】形而上学本:Michael T. Ghiselin『Metaphysics and the Origin of Species』(1997年刊行,State University of New York Press, New York, xii+377pp., ISBN:0-7914-3468-0 [pbk] → 版元ページ)の15年近く前に書いた書評を公開した.「種問題」の極北は中世哲学の涅槃に連なっている.これでトークイベントの後始末はつけたことにしよう.

◆厚木の丘の上にて —— 昼下り,つくば駅へ.久しぶりの青空がまぶしい.午後になって気温は10度ラインを越えた.今日は厚木にて東京農大昆研忘年会.本日のお供え物は栃木〈仙禽〉しぼりたて活性にごり酒純米「雪だるま」.もう一本は福島〈奈良萬〉純米生酒おりがらみ.こちらは酔い潰し用.今回は活性にごり酒を武器として持参.

午後5時前,本厚木駅着.丹沢の山並みが夕焼けに染まっている.丘の上の農大へ.昆研では早々と忘年会が始まっていた.お供えした〈仙禽〉の「雪だるま」はアルコール度数12度の果物フレーバーな米ジュースだった.一方の〈奈良萬〉おりがらみは17度のしっかりした活性にごり酒.新酒の季節ですな.

午後8時前に退散し,つくばに帰り着いたのは午後10時半.遠くで呑むときほど帰りが早くなるフシギ.

◆世の中はクリスマス三連休なので,ワタクシもゆるゆる過ごしたい.

◆本日の総歩数=8798歩. 朝◯|昼◯|夜×. 計測値(前回比)=94.4kg(−0.2kg)/ 30.0%(+0.1%)


20 december 2013(金)※観音台は雨ときどき落雷

◆午前6時,のろのろ起床.昨日からの雨がまだ降り続く観音台.午前8時の気温は4.7度.芯まで冷える寒い朝.三日ぶりの農環研はいつものように静かな朝を迎えている.鈴木秀美(Vc)のバッハ無伴奏チェロ組曲から始まる┣┣" 撃ちの一日.さて,研究室にお線香を立てましょーか.成仏成仏.

◆[欹耳袋]風信2011「追悼:南原実氏(改定版)」(2013年12月3日)によると,駒場時代のドイツ語の先生だった南原実さんが先月亡くなったとのこと.ロベルト・シンチンゲル&南原実のドイツ語辞書はいまも手元にある.その彼が「青樹簗一」の名前でレイチェル・カーソン『Silent Spring』を翻訳していたとはまったく知らなかった:レーチェル・カーソン[青樹簗一訳] 『生と死の妙薬:自然均衡の破壊者科学薬品』(1964年刊行,新潮社).南原実さんの父親は東大総長だった南原繁.

◆[蒐書日誌]山内志朗『「誤読」の哲学:ドゥルーズ、フーコーから中世哲学へ』(2013年12月13日刊行,青土社,東京,329+xii pp., 本体価格2,800円,ISBN:978-4-7917-6743-4 → 版元ページ).昨夜の対談では,生物体系学が抱える「分類体系」や「種」あるいは「高次分類群」などの概念が中世形而上学とどのようにつながってくのかをめぐってとてもおもしろい展開になった.Michael T. Ghiselin の「プロセス形而上学」に関心をもつ山内志朗さんは,Ghiselin の考えは新プラトン学派のアヴィセンナ[イヴン・シーナ]の思想に近いものがあるのではないかと示唆した.時間的に変わり得る実体が果たす機能を重視するという点で両者には親和性があるということらしい.

日頃からこういう “形而上学的暗黒” を覗きこんでいる身としては,その筋の専門家とこういう場で話ができるだけでもシアワセということだ.いずれにしても,種や分類群をめぐる存在論的問題は,確かにスコラ哲学者たちが何世紀にもわたって議論し続けた形而上学の知的伝統に連なる末裔で,この点では逃げ場はもはやないという実感をもった.分類学者は,生きて帰れるかどうかは別にして,とにかく中世哲学の “黄泉の国” に詣でる必要があるという確信である.

本書の最初の数章は,ドゥルーズやフーコーら現代フランスの思想家たちが中世哲学をどのように「誤読」してきたかが述べられている.フランス現代思想はイマイチなワタクシにはそのまま拝聴するしかなかった.しかし,それ以降は戻るあてもなく中世哲学の深みと暗闇にどんどん沈み込んでいった.ずぶずぶ.

たとえば,こんなくだりがある:

「普遍はどこにあるのか,という問いもそれと或る程度似ている.本来の意味での普遍は,概念としてあるが,概念としてしか存在しないわけではない.事物の中に現れるのである.言葉の中にもある.ほぼ同じことが対象・オブジェクトについても言える.知性の中にあるものでも知性の外にあるものでもない.知性の外に現れるものだ.」(p. 163)

本書のキーワードのひとつである「対象的概念」に関わるこのような指摘を前にすると,生物学の「種問題」が絡め取られている「実在論 vs. 唯名論」という土俵そのものが崩れ始め,その隙間から魑魅魍魎がゆらゆらと立ち上がり,その背後に立ち並ぶ墓標の下から中世形而上学のつぶやきが読経のように流れ出てくる.中世哲学コワすぎる.

—— 本書にはクリアな結論があるわけではない.お遍路旅はまだ終わってはいないとのことだ.

◆昼休みの観音台は雨足が強まってきた.ガソリンを入れ,黒猫に荷物をもたせ,熱々の삼계탕を食べて帰ってきたところ.いまの気温は農環研の計測で6.4度.午後1時半,いきなり雷がどかーんと落ちて気温が急降下.

◆[蒐書日誌]ご恵贈感謝しまくり! —— イアン・ハッキング[広田 すみれ・森元良太訳]『確率の出現』(2013年12月28日刊行,慶應義塾大学出版会,東京,viii+394 pp., 本体価格3,800円,ISBN:978-4-7664-2103-3 → 版元ページ).

◆[欹耳袋]論文の “賞味期限” について —— カレントアウェアネス・ポータル「米国出版社協会(AAP)、学術雑誌論文の利用傾向に関するレポートを公表」(2013年12月19日)|ワイリー・サイエンスカフェ「雑誌論文が読まれる「寿命」はどのくらい? 各分野での論文の「利用半減期」に関する初めての大規模調査結果が公開される」(2013年12月19日)|Science | The Secret Half-Lives of Scientific Papers | 19 December13.元資料:Philip M. Davis | Journal Usage Half-Life [pdf] | 18 December13.平均的には「3〜4年」のようだが,研究分野によってばらつきが大きいにちがいない.

◆冷え冷え夕暮れ.まだ雨は残っているが,西から晴れてきたみたい.午後4時前に今日の最低気温2.9度を記録.今夜はおでん.

◆本日の総歩数=3814歩. 朝◯|昼△|夜△. 計測値(前回比)=94.6kg(−0.1kg)/ 29.9%(+0.1%)


19 december 2013(木)※雨降る池袋でお遍路対談

◆午前5時前起床.気温3.5度.雪にはならなかったみたいね.今日は今年最後の定例都内出撃日.

◆[蒐書日誌]尾形希和子『教会の怪物たち:ロマネスクの図像学』(2013年12月10日刊行,講談社[選書メチエ・565],東京,350 pp., 本体価格1,900円,ISBN:978-4-06-258568-2 → 目次版元ページ

◆今年最後の講義ふたつ —— 午前10時に玉川大学着.気温6.7度.都内までは雨が降っていたが,町田はあがっている.講師室にて一休み.どこかから合唱がかすかに聞こえてくるのだが,天上の音楽が聞こえるほど「あっちの世界」に連れて行かれつつあるのだろうか.今日の講義はベイズ統計学だったが,MCMC Robot の iOS バージョンが出ていたとはまったく知らなかった.講義が終わって,再び玉川学園前駅へ.冷たい小雨が降り続いている.午後1時の気温6.9度.ぜんぜん上がらないな.午後4時,駒場へ.雨雨しとしと.時間がなかったので講義室直行.本日の講義はリサンプリング統計学で.午後6時前終了.過去4回分の質問カードはあとでまとめてお答えします.みなさん,良いお年を〜.

—— さて,いよいよ池袋・夜のお座敷に出撃だー.

◆[欹耳袋]NY Times | Japan’s Dangerous Anachronism | 16 Dec 2013 ※「he is seeking to resurrect the pre-1945 state」— まさになます切りですな.恥さらし.次回の選挙では目に物見せないと./秒刊SUNDAY「筑波大学宿舎より「ノルウェー刑務所」のほうがマシと話題に」(2013年12月18日) ※そーかそーか.でも,かつての駒場寮に比べれば,筑波大の学生宿舎の方がはるかにはるかにマシだと思うが.関東大震災クラスの地震でも倒れないようにと極厚のコンクリ壁で建てられた駒場寮の薄暗い寮内には女子大学生はけっして立ち入らなかったとか.

◆今宵の池袋のお座敷 —— 「山内志朗『「誤読」の哲学――ドゥルーズ、フーコーから中世哲学へ』刊行記念『「誤読」する哲学と(の)進化論』山内志朗×三中信宏」2013年12月19日(木)19:30 ~@ジュンク堂書店池袋本店.午後7時前,駒場から池袋へ.雨足が強まってきた.ジュンク堂書店のトーク会場にたどり着き,山内志朗さんをはじめ,青土社とジュンク堂書店のみなさんにご挨拶など.今日の参加者は40名ほどとのこと.定刻19:30からトーク開始.対談しながら時は過ぎ,気がつけば一時間以上もふたりで話をしたことになる.最後にフロアからの質問を受け,予定通り午後9時に終了.

—— お遍路さんのごとく,中世哲学者たちの墓標に線香を手向ける山内センセだった.

今夜のターゲット本:山内志朗『「誤読」の哲学:ドゥルーズ、フーコーから中世哲学へ』(2013年12月13日刊行,青土社,東京,329+xii pp., 本体価格2,800円,ISBN:978-4-7917-6743-4 → 版元ページ)はもちろんすでに読了したんだけど,八幡の藪知らずに大蛇が何匹も潜んでいてコワいんですけど…….中世哲学コワすぎる.農水省に入ってすぐのころに読んだ:稲垣良典『抽象と直観:中世後期認識理論の研究』(1990年2月25日刊行,創文社,東京,viii+343+13 pp., ISBN:4-423-10085-1 → 版元ページ)とか清水哲朗『オッカムの言語哲学』(1990年5月30日刊行,勁草書房,東京,iv+309+14 pp., ISBN:4-326-10085-0 → 版元ページ)はそんなにコワくなかったけど,あれは単に千年熟成された魑魅魍魎や背後霊が “見えてなかった” だけなのかも.対談後の打ち上げでは,中世哲学者との付き合いは「霊場恐山のイタコが “口寄せ” するようなものです」と言っていた.コワすぎる.

◆降りしきる雨の中,トークイベント後は近くの臺灣家庭小皿料理〈青龍門〉池袋店にて懇親会.午後11時過ぎに池袋を出て,つくばに帰り着いたら日が変わっていた.

◆本日の総歩数=13638歩. 朝◯|昼◯|夜×. 計測値(前回比)=94.7kg(−0.6kg)/ 29.8%(−0.6%)


18 december 2013(水)※冷たい雨の湯島で忘年会

◆午前5時過ぎ起床.気温1.4度.うすら寒い曇り空.今日は雪が降るとの予報.

◆本郷出撃 —— つくば駅.午前10時の気温は7.2度.冷え冷えとした曇り空が広がるセンター広場.関東平野の西の端に天雲がかかり始めた.統計質問┣┣" 一頭をまず征伐.続いて,TX車内ゲラ読み┣┣" 一頭征伐.引き続き難読書┣┣" の征伐を目指す.

◆[欹耳袋]プレジデント・オンライン「帰ってきたバッタ博士:バッタ博士の「今週のひと工夫」番外編」前篇(2013年12月17日)| 後編(2013年12月18日) ※をををを!/アメリカポスドクの歩き方「大学内の競争を煽ることは業績向上につながるのか?」(2013年12月17日)

◆正午過ぎ,根津の坂を上る.弥生キャンパスは冬の景色.大量の銀杏がむなしく踏み潰されている農学部3号館前.都内の気温は7.8度.雨雲はまだ関東平野の西端にかかったまま.午後4時前,専攻教員会議がやっと終わった.膨大な量の案件あり.外は冷たい雨が降り始めている.もう夕暮れの薄暗さ.気温8.0度.

◆[蒐書日誌]共立出版から新春統計本2冊 —— 石田基広『とある弁当屋の統計技師(データサイエンティスト)2 ― 因子分析大作戦 ―』(2014年1月刊行予定,共立出版,東京,ISBN:978-4-320-11082-3 → 版元ページ).前著:石田基広『とある弁当屋の統計技師(データサイエンティスト)― データ分析のはじめかた ―』(2013年9月25日刊行,共立出版,東京,x+211 pp., ISBN:978-4-320-11048-9 → 版元ページ)に続く第二冊目./大森崇・阪田真己子・宿久洋『R Commander によるデータ解析・第2版』(2014年1月刊行予定,共立出版,東京,ISBN:978-4-320-11084-7 → 版元ページ).初版は:大森崇・阪田真己子・宿久洋『R Commander によるデータ解析』(2011年2月25日刊行,共立出版,東京,x+225 pp., ISBN:978-4-320-01920-1 → 版元ページ).

◆午後6時,夕暮れの湯島.夕闇を濡らす氷雨がしとしと降り続いている.パークサイドホテルの中華海鮮料理〈蓮風〉へ.これから東大の専攻忘年会.酔っぱらい上海蟹など料理はなかなか美味だった.午後10時過ぎ,雨降るつくばに帰還.

◆本日の総歩数=12268歩. 朝◯|昼−|夜×. 計測値(前回比)=95.3kg(+0.5kg)/ 30.4%(−0.8%)


17 december 2013(火)※年の瀬の恒例行事ふたつ

◆午前5時前起床.午前6時前,朝焼けグラデーション.気温は0.5度.まもなく日の出.今朝は北風が弱い.氷点下0.4度まで下がった朝の観音台はさざなみのような雲が広がっている.朝イチの BGM は Gary Burton (Vib.) ソロの〈Alone at Last〉1971.名作〈Crystal Silence〉が出る2年前のアルバム.今日は午前9時から所内成績検討会があり,午前いっぱいは会議室に詰め込まれる.直前までドロナワで報告スライドの修整を続ける.あー,ココロがない,ココロがない.

◆[欹耳袋]呼吸器内科医「病棟に置いたチョコレートの生存期間中央値は51分」(2013年12月16日) ※チョ,チョコレートの生存時間解析だと! 元論文:The survival time of chocolates on hospital wards: covert observational study | BMJ 2013;347:f7198 によると「We analysed the primary outcome using Kaplan-Meier survival analysis and Cox regression」だそーな.また,本論文の結論には「病棟にはもっと多くのチョコレートが届けられなければならないし,それと同時に,チョコレート箱のサイズを小さくしようとする製造会社の最近の動きに対抗するロビー活動を展開すべく共闘する必要がある」と書かれている.ナイス・ペーパー!

◆午前の┣┣" 撃ち —— 9:15から所内RP成績検討会.みっしりコンテンツが詰まって,正午前にやっと終了.本日の成績検討会を聞いていて,どの研究者も抱えきれないくらいの研究課題を背負っているようで,誰もがせわしなく駆け抜けていた.返す刀で,統計学哲学研究会のメモ校正作業も完了.ついでに今年最後の講義ハンドアウト用意.やっとお昼ごはんだ.師走の成績検討会が終わると「年の瀬」をひしひしと実感する.今晩は領域忘年会がひたち野うしく駅の近くである.明日からは年末お疲れさんモード全開で連日の忘年会合戦に突入するのだー.そうこうしているうちに,いろいろ本が届いて積み上がる昼休み.

◆[蒐書日誌]「にょろり旅」三部作 —— 第一作は読んでいたのだが,まさか続編と続々編が出て全部で三冊になっていたとは知らなんだ:

  1. 青山潤『アフリカにょろり旅』(2007年2月10日刊行,講談社,東京,282pp., ISBN:978-4-06-213868-0 → 書評版元ページ
  2. 青山潤『うなドン:南の楽園にょろり旅』(2011年2月17日刊行,講談社,東京,286pp., ISBN:978-4-06-218711-4 → 版元ページ
  3. 青山潤『にょろり旅・ザ・ファイナル:新種ウナギ発見へ、ロートル特殊部隊疾走す!』(2013年12月11日刊行,講談社,東京,368pp., ISBN:978-4-06-218711-4 → 版元ページ

もう一冊はいただきもの:キム・ステレルニー[田中泉吏・中尾央・源河亨・菅原裕輝訳]『進化の弟子:ヒトは学んで人になった』(2013年12月10日刊行,勁草書房[ジャン・ニコ講義セレクション・8],東京,本体価格3,400円,xviii+303+37 pp., ISBN:978-4-326-19969-8 → 目次版元近刊情報).

◆[欹耳袋]みすず書房『月刊みすず』編集部から新春恒例の「読書アンケート」原稿依頼が届いた.これまた年の瀬イベントのひとつ.2006年に最初に寄稿してから9回目になる.今年はどの5冊をリストアップしようかな./ワタクシは本の書誌情報についてはできるだけ出版元のページに直接リンクを張るようにしている.しかし,見回すと多くの人がアマゾンのページを参照するように仕向けているのはどうしてだろう.

◆領域忘年会の夜 —— 紅の夕焼けのあと,すとんと日没.つくばセンター発のバスはイオンモールへ.初めて入る巨大ショッピングセンターはきらびやか.しかし,ここで降りてはならぬ.ひたち野うしく駅前.TX ができてからというもの,ここに来る機会はまったくなくなった.以前は何もなかった西口方面にいろいろできていてびっくり.駅前のお野菜居酒屋〈菜のはは〉にて領域忘年会.ひたすら野菜を喰いまくるヘルシー?な忘年会だった.午後10時前には帰宅.健康的すぎる.

◆明日は本郷にて専攻教員会議があり,その後,引き続いて専攻忘年会が湯島にて.

◆本日の総歩数=4361歩. 朝◯|昼◯|夜×. 計測値(前回比)=94.8kg(−0.2kg)/ 31.2%(+0.3%)


16 december 2013(月)※忘年会ウィークの週明け

◆午前5時前起床.気温3.4度.起き抜けの米とぎから.真っ赤に燃えるアヤシい朝焼けグラデーション.身を切る冷たい西風が強すぎる.気温は3.1度でも,体感的にはもっと低い.忘年会ウィーク週明けの観音台は乾いた冬晴れ.午前8時の気温は5.3度.北風が吹きつけるきびしい寒さ.シュトーレンの季節がやってきた.怠りなく〈モルゲン〉に注文した.甘いシュトーレンには暖かいグリューワイン.今年は Nürnberger Glühwein が2本もある.

◆[欹耳袋]media pub「大英図書館が100万点以上の画像を公開、無料で利用可能に」(2013年12月15日) ※これはすごい:〈The British Library〉.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 明日の成績検討会のスライドをつくるつくるつくる/真冬の京都は,観光的にシーズンオフのせいか,宿泊料金が安すぎる./なぜワタクシは朝っぱらから麹菌の論文をダウンロードして,麹菌のクラスター分析について考えているのか./とりあえず明日の所内成績検討会スライドはつくったぞ,と.

◆[欹耳袋]砂漠のリアルムシキング「無収入からの脱出ドキュメンタリー」(2013年12月16日)※プレジデント誌に「バッタ博士の「今週のひと工夫」番外編」が載るとのこと.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 正午の気温10.4度,北西風が強そうなので,昼休み徘徊は中止.居室にじっと引きこもる.業績登録を始めたら終わらなくなった.今日は適当に切り上げないと.

◆[欹耳袋]ライフハッカー「プレゼンのとき、ぐちゃぐちゃなデスクトップを瞬時に非表示にしてくれる『Pinstriped』」(2013年12月16日)※デスクトップは「更地」のまま何も置かないにかぎる.ワタクシの場合,ノートPCのデスクトップは “黒板” なので,アイコンは一つも置かず,般若心経が綴られた真っ黒な背景の単色にしておく.必要なファイルやアプリはすべてデスクトップ・ランチャーに装備.必要があれば “黒板” に板書もできる.

◆外はもう夕焼けグラデーションが染まり始めた.午後6時の気温は4.2度.北風はおさまったようだ.大きなシュトーレンを抱えて帰宅.まだ箱入り状態.食パンみたいに厚くカットしたら顰蹙モノ.今夜は満月の朧月夜.

◆[欹耳袋]細野透 #safety_japan 「何冊で床抜け?――「本崩れ」にまつわる意外な難問【前編】」(2013年12月10日)|「何冊で床抜け?――「本崩れ」にまつわる意外な難問【後編】 「4万冊の書庫の家」づくりのポイント」(2013年12月16日)※「現在、本の収納に最も悩んでいるのは、自宅以外に仕事場を持ちそこに本を置いていたけれど、定年を迎えたので自宅に引き上げるという人たち。特に大学の先生が悩んでいる」– ほんにほんに.これはもう他人事ではない.

◆明日は年に一度の所内RP成績検討会なので身を清めておかないと.

◆本日の総歩数=4436歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=95.0kg(+0.3kg)/ 30.9%(+0.4%)


15 december 2013(日)※寒気の底の冬晴れ日曜日

◆午前5時過ぎ起床.気温1.8度.今朝はそれほど冷え込んでいない.深紅の朝焼けが広がってきた.

◆[欹耳袋]読書猿Classic: between / beyond readers「慶応2年から平成25年までのベストセラーをリストにしてみた」(2013年12月14日)※ワタクシが手にしたことがない本ばかり./〈people's store〉:つくば市天久保の本などを扱うショップ./STI Updates 学術情報流通ニュース「エルゼビア社の論文撤去催告、物議を醸す」(2013年12月10日)※Academia.edu に対して公開停止の圧力をかけたということか.

◆[蒐書日誌]村上一郎[竹内洋解説]『岩波茂雄と出版文化:近代日本の教養主義』(2013年12月10日刊行,講談社[講談社学術文庫・2208],東京,166 pp., ISBN:978-4-06-292208-1 → 版元ページ).歩き読み読了.とてもおもしろい.元本は1979年に砂子屋書房から『岩波茂雄:成らざりしカルテと若干の付箋』として出版された.今回の文庫化に際しては竹内洋による序論「学術文庫版イントロ 村上一郎と『岩波茂雄』」(pp. 3-23)と長めの評論「解説 岩波茂雄・岩波文化・教養主義」(pp. 125-164)が付されている.

半世紀前に書かれた村上一郎の本論「岩波茂雄:成らざりしカルテと若干の付箋」(pp. 31-124)は,岩波書店創業者・岩波茂雄の出自からたどる内容で,いわゆる「教養主義」としての “岩波文化” そのものについての体系的記述はあえて避けている.これに対して,竹内洋の序論と解説が詳細な背景説明の役割を担い,村上の遺した「断片メモ集積」の空白部分を埋めている.

村上は「岩波文化 vs. 講談社文化」の表面的な対立の底流を流れる日本的な “野合” に光を当てている:

「一般に民衆は「講談社文化」を好み「岩波文化」に寄りつかぬようにいわれる.が,そうではない.疎外された民衆は,むしろ亜インテリの型につらなる.彼らは「教育され」たり「きたえられ」たりすることをむしろ好むから,「講談社文化」的な媒体をへて,それなりの「岩波文化」的エリート意識の無意識的萌芽であるコンプレックスをもつのである.」(p. 62)

竹内洋は巻末解説の中で, “岩波文化” のその後の系譜をたどり,かつては対置させられていた “講談社文化” との相互乗り入れが始まったと指摘する.この文庫本も岩波書店ではなく講談社から出たわけだが,創業百年を迎える岩波書店側からは,分厚い三部作〈物語・岩波書店百年史〉が出たばかりなので,グッドタイミングな文庫本である.

竹内洋解説で言及されていた “出身階層” による「割増金」のちがいの話が生々しい.フランスの学生の出身社会階層を調べたロバート・スミスは「文化系の学問は,家族の中で秘めやかに慎重に培われる嗜好や言語が割増金になるのに対し,自然科学のほうは,そうした割増金が少なく,貧困層の学生にも習得しやすい学問である」(p. 132)と書いている.竹内洋の議論は,日本ではフランスとは「真逆様」(p. 133)であって,帝大理学部に比べて帝大文学部は「あまり豊かでない階層出身者が多く,地方出身者が多い農村的な学部」だったと続く.そのことが彼の言う日本的教養主義を支えてきたとのこと.

日本の「教養主義」をめぐっては,下記の二冊を以前読んで書評した:竹内洋『教養主義の没落:変わりゆくエリート学生文化』(2003年7月25日刊行,中央公論新社[中公新書1704],東京,ISBN:4-12-101704-8 → 書評・目次版元ページ)/高田里惠子『グロテスクな教養』(2005年6月10日刊行,筑摩書房[ちくま新書539],東京,ISBN:4-480-06239-4 → 書評・目次版元ページ

そういえば,竹内洋が NTT 出版のウェブマガジンに連載していた〈大学・インテリ・教養〉 はまだ単行本化されないのだろうか.ウェブでの連載記事へのリンクはすでに切れているので,近いうちに本になることはまちがいないはずなのだが.この連載には「教養難民の系譜」という副題が付いていて,毎回とてもおもしろかった.

◆午後イチ,懸案の大┣┣" 一頭が京都からつくばにおいでになり,万事遺漏なく対応して,いま京都にお帰りになった.ふー.

◆[欹耳袋]BioMedサーカス.com - 医学生物学の総合ポータルサイト「ポスドクに求められる業績のインフレーション化と40代助教・准教授の業績の陳腐さのアンバランスについて」(2013年12月15日) /現代ビジネス「国立大教員の「年俸制」導入でどうなるのか」(2013年12月15日)※両方ともまったく読む価値のない記事だった.

◆夕方近くの徘徊タイム.しかし,現実逃避徘徊をしたからといって┣┣" がいなくなってくれるわけではない(冷厳なる現実).午後6時,来週の所内成績検討会ハンドアウト原稿を放流して,やっと一息ついた.

◆冷たい北風が吹きぬける一日だった.最高気温は昼過ぎの10.4度どまり.こりゃ,夜は内から外から暖かくしないと.師走になるとどこの蔵でも新酒を出す.その開幕を告げるのは初搾りのにごり酒.冷え込む夜のために笠間・磯蔵酒造の「稲里初搾り」を調達してきた.注意書きを見ると,ええかげんに取り扱うとバクハツすると書かれている.保冷袋からそっと取り出す.ニトログリセリンみたいなもの.栓をひねればいきなりボコボコ泡が湧き上がってバクハツ寸前.油断も隙もない.何回か開ける締めるを繰り返してやっと開栓.フレッシュな活性生原酒らしい元気さ.アルコール度数は17度.あっという間にすっからかんになって,今夜はもう使いものになりまへん〜.ぜんぜんあきまへん〜.

◆明日から始まる忘年会ウィーク.

◆本日の総歩数=5888歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=94.7kg(−0.7kg)/ 30.5%(−0.1%)


14 december 2013(土)※ゆるゆるするヒマもなく

◆午前6時半のろのろ起床.日の出.気温は氷点下0.4度とやや寒い.乾燥した晴天が連日続く.午前中にインフルエンザ予防接種をすませた.

◆[欹耳袋]車内アナウンスの「隠語」リストってどこかにあったっけ? たとえば〈立ち入った人が代々木駅まで歩くと強硬に主張している〉という状況は “翻訳” したらどうなるんだろう.以前,横浜線に乗ったとき,車内痴漢されたとおぼしき女性が停車駅で駅員を呼びに行って,目の前でその被疑者が “連行” されていったことがあった.その遅延についての車内アナウンスは「ただいま臨時のお客様対応により停車しています」だった.これはとてもわかりやすかった.

◆[欹耳袋]日本経済新聞「英語での授業、中学から 職員の英語力も公表:文科省が教育改革計画」(2013年12月13日) —— ある “X” が身につかないと一日たりとも生きていけない状況になったら,みんな必死でその “X” を身につけようと努力するだろうし,その効果はきっと絶大だろうと信じる.日本での “英語” という “X” はいつもこの意味で「王様」扱いされているが,実際には日々の生活で必須の “X” ではない.

たとえば地の果ての国際学会にひとりで参加して,壇上にふらっと上がって原稿なしで15分とか30分とか “ワタクシ的英語もどき” で自分の主張を話し,フロアからのこれまた変異の多い “英語” の質問に受け答えできれば,りっぱに「ぐろーばる化」完了だろう.そういうとき,正体の判らない “正しい英語” にこだわるよりも,フランス英語の「いぽてし」が「hypothesis」であり,スペイン英語の「れすると」が「result」であることをちゃんと理解する方がはるかにはるかに重要だとワタクシは思う.

かつて,つくばの JICA 国際センターでアフリカや中南米から来た研修生相手に統計学を教えていたことがあった.母国によって人によって雑多な “英語” に接すると, “英語” が本質のない変異体の集合であることに気がつく.そういう言語的認識もまたりっぱな「ぐろーばる化」だと思う.自分の学んだ “英語” をどんな状況で使うのかは, “英語” をまったく使わなくてもちゃんと生きていける日本ではけっして実感できないだろう.学習意欲が湧くとは思えない.そもそも “ぐろーばる化” なんて言葉は中身のない(そしてどこかの誰かがお金を儲けるための)空虚なスローガン.

—— 真の「ぐろーばる化」は国を挙げてグローバルに強制することではなく,必要な個人がローカルにやればいい.

◆冬晴れの正午は気温9.3度.冷たい風の中を松代までインフルエンザ接種に行ってきた.午後は┣┣" どもとたわむれる.統計┣┣" まずは一頭を仕留めた.

◆[蒐書日誌]G. W. ライプニッツ[橋本由美子監訳/秋保亘・大矢宗太朗訳]『形而上学叙説 ライプニッツ-アルノー往復書簡』(2013年8月9日刊行,平凡社[平凡社ライブラリー・794],東京,359 pp., 本体価格1,500円,ISBN:978-4-582-76794-0 → 版元ページ)/舟田詠子『パンの文化史』(2013年12月10日刊行,講談社[講談社学術文庫・2211],東京,344 pp., ISBN:978-4-06-292211-1 → 版元ページ).元本は1998年に朝日新聞社から刊行された.以前に読んだ藤本徹『パンの源流を旅する』(1992年12月,編集工房ノア)という世界パン紀行本がとてもおもしろかった./篠遠泉・長岡努『温泉遺産の旅 奇跡の湯:ぶくぶく自噴泉めぐり』(2013年8月刊行,山と渓谷社,東京,ISBN:9784635080071 → 版元ページ).新湯温泉〈霧島新燃荘〉のロビーにあった本.日本全国♨♨♨ぶくぶく.

◆夕焼けグラデーション.西の空には宵の明星.気温は5.3度と早くも冷え込みが厳しくなってきた.インフルエンザ予防接種の跡がうずくんだけど,日本酒を呑めばたちまち治るというエビデンスはあるのだろーか.夜遅く,二頭目の統計┣┣" を仕留めた.

◆明日はとてもとても重要な┣┣" 撃ちがある.

◆本日の総歩数=9056歩. 朝◯|昼−|夜△. 計測値(前回比)=95.4kg(−0.3kg)/ 30.6%(−0.2%)


13 december 2013(金)※一週間ぶりに農環研出勤

◆午前5時半起床.気温は氷点下2.7度.夜明けがどんどん遅くなる.きりきり冷え込んで最低気温は氷点下3.4度.一週間ぶりの観音台は乾いた冬晴れの青空が広がっている.朝イチの BGM はバッハの〈クリスマス・オラトリオ〉でキマリでしょ.

◆[欹耳袋]ナショナルジオグラフィックニュース「系統学で見る「赤ずきん」のルーツ」(2013年12月2日).あの PLoS ONE 論文の反響はまだまだ続いていた.

◆午前の┣┣" 撃ち —— あの本,そろそろ書かないとな[棒読み]/あの原稿,締切りいつだったっけ[白目]/あの査読,二週間でやれってムリ…/来週火曜の所内成績検討会の資料作成ががが.これが先決だな.週明け月曜の午前9時が提出締め切りというハードさ./それでも,残務┣┣" どもを蹴散らし続け,やっと最後の統計┣┣" 三頭を残すのみとなった.

◆[欹耳袋]本務地を一週間留守にしている間に何頭もの┣┣" がアタマの上を素通りしていた.来年1月から55歳を越える独法職員は昇給を “抑制” するとのお達しもそのひとつ.要するに業績評価による昇給加点をこれまでの半分にするということ.来年3月には震災後2年間続いた給料の「特別減額」が廃止されるので,時期的にはグッドタイミングな “飴と鞭” かもしれない.

ワタクシ的には働いた分だけ正当に評価されたいので,同じ労働が安く叩かれるというのはイヤなんだけど,お金がないならしかたないよねー.ただし,「55歳以上」といえばいろいろ物入りな世代だろうから,たとえ文句は口にできなくても,経済的に苦しくなるケースもきっとあるだろうと思う.ローンを抱えていたり,介護の負担をしている場合もあるだろうし.

研究費にしろ生活費にしろ今後はさらにパイが小さくなるだろうから,「55歳以上」の世代はどんどん “外” で稼ぐようにしないとどうしようもないかも.職務専念義務は合法的に解除できることを知らない人はまわりに多い. “お金” の問題はホントにたいへん.とりわけ,研究者という職業は自分で稼ぎ出せるスタート年齢がふつうよりも10年ほど遅いので,早々と給料抑制されると目も当てられない.

◆[蒐書日誌]クリストファー・アレグザンダー[稲葉武司・押野見邦英訳]『形の合成に関するノート/都市はツリーではない』(2013年12月20日刊行,鹿島出版会[SD選書263],東京,xii+254 pp., 本体価格2,400円, ISBN:978-4-306-05263-5 → 版元ページ). “黒本” が着弾した./アリソン・フーヴァー・バートレット[築地誠子訳]『本を愛しすぎた男:本泥棒と古書店探偵と愛書狂』(2013年11月25日刊行,原書房,東京,x+270 pp., ISBN:978-4-562-04969-1 → 版元ページ)はピカレスク小説のような実話エピソードが続く.

◆[欹耳袋]読売新聞「3科学誌は商業主義…ノーベル受賞者が「絶縁」 」(2013年12月13日)※「CNS」への叛旗./シアワセ藻!:東京大学 大学院理学系研究科プレスリリース「世界最小の多細胞生物の発掘 — 4細胞で2億年間ハッピーな生きた化石 "しあわせ藻" —」(2013年12月12日)/京都大学哲学研究会「なぜ理系は文系がわからないのか」※なぜ理系/文系にこだわるのか.

◆〈クリスマス・オラトリオ〉に続く BGM はグレゴリオ聖歌集.まずは「Tempus adventus」から.所内がとても静かなのは,午後,新宿で開催される農環研30周年記念シンポ〈21世紀の農業と環境〉でみんな出払っているからかな(よく知らないけど).削岩機の地響きも聞こえないし仕事をするにはとてもいい職場環境.昼休みも引きこもり.BGM は続いて「In Nativitate Domini」.正午の気温は13.6度.南西の風が吹き荒れている.宮崎みやげの「ゆべし」が「味噌ゆべし」であることが判明し,「ゆべし=くるみが入ったほんのり甘いぷにぷにしたお菓子」という先入観がガラガラと音を立てて崩れ去る.

◆午後の┣┣" 撃ち —— 宮崎巡業の後始末.宿泊証明書とフライト半券を佐土原に返送./『普遍論争』はやはり哲学書房の初版本と平凡社ライブラリー版の両方を持参してサインしてもらうべきだろーか.『存在の一義性を求めて:ドゥンス・スコトゥスと13世紀の〈知〉の革命』を買いそこねたのは返す返すも残念無念……./師走になると「うわ! 年越し禁物でやり遂げます.すみませんすみません.みなか 」という返信メールを送ることががが.お詫びのメールは “超速返信” をもって旨とする./ぐぐぐ,統計┣┣" 一頭が新規ご来襲なう.ががが.

◆[蒐書日誌]河野通和(「考える人」編集長)「網野善彦『古文書返却の旅』(中公新書)」※この新書は10年あまりも前に読んで書評を書いた:網野善彦『古文書返却の旅:戦後史学史の一齣』(1999年10月25日刊行,中央公論新社[中公新書1503],東京,viii+199 pp.,本体価格660円,ISBN:4-12-101503-7 → 書評・目次版元ページ).

◆鮮やかな夕焼けグラデーションを背に帰宅.冬至に向かって昼間がどんどん短くなっていく.

◆本日の総歩数=2604歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=95.7kg(+0.2kg)/ 30.8%(+0.2%)


12 december 2013(木)※冬日でも定例都内出撃日

◆午前4時半起床.気温は氷点下0.3度.つくばは寒すぎる.午前6時,朝焼けグラデーション.気温は氷点下1.2度まで下がった.

◆[欹耳袋]ワタクシを現在の独法研究所に専攻採用で拾ってくれた元室長は,「みなかさん,研究者でいたいなら,何があっても管理職にだけはなってはいけません」と静かに言ったことを思い出す.振り返ってみればその言葉を守って今まできた.ただし,その道のりは自分だけのもの.

ある個人の過去の経験談や人生談が別の個人の将来の進路に当てはまる確率はきわめて低いので,聞く側は鵜呑みにしてはいけないし,話す側は訓話みたいな言い方はしない方がいい.たまたまうまくいったからよかっただけだろうから.他人の経験談に何かしら意味があるとしたら,選ぶべき人生の選択肢の多様性.自分が気づかなかった生き方があることを知るだけでも無意味ではない.それを自分に当てはめられるかどうかは別問題.いわゆる「ロールモデル」の意義はそこにある.あるロールモデルが賞賛されて,後追いされて多数派になるのは戦略的にはかえって不利なのかもしれない.あえて少数派にとどまることの有利さはきっとあるはず.自分の人生は自分だけの唯一性がついてまわる.普遍的なものを読み取るのは他人の勝手.

—— ということで,今日も一日 “自分勝手” に生きよう.

◆定例都内出撃の朝 —— 午前8時前,つくば駅.気温は高めで4.7度だが,日中はあまり上がらないらしい.午前9時,新宿駅で小田急乗り換え.都内も冬晴れ.新百合ヶ丘駅で各停へ.この一週間の間に玉川学園に三回も通うことになる.午前10時,玉川大学.キャンパスはからりと冬景色.今日の講義は分子系統推定の信頼度評価についての解説と MEGA 実習.午後1時,玉川学園前駅に戻る.都内の正午の気温は12.3度.北風は冷たいが,日差しが心地よい.

◆[欹耳袋]朝日新聞デジタル「「共謀罪」創設を検討 政権、予算成立後に法改正案視野」(2013年12月11日)※ああ,治安維持法のエイリアスね./国立大学法人総合研究大学院大学「【プレスリリース】『女性に更年期が存在する進化的な理由を解明』」(2013年12月10日).

◆駒場師走風景 —— 経堂駅で途中下車し,〈はるばるてい〉でいつもの香麺を食べてから,駒場に向かう.講師室にて堆積しているメール受信箱の┣┣" どもを一頭ずつ征伐すること小一時間.だいぶ減ったけどまだ残っているな.午後4時半から講義.今日は多変量統計学について.線形代数の知識は意外なところで役に立つという話.午後6時前,講義終了.真っ暗な駒場キャンパスは5限講義を終えた学生で混雑している.

◆駒場から新宿に出たのだが,渋谷駅で京王井の頭線から副都心線への乗り換えにまちがいなく成功できる気がしなかった.案の定,渋谷駅で延々と歩かされてやっと乗り換え.「渋谷チカ道」とか逝ってよし.午後7時前,新宿三丁目にて生物地理学会事務局忘年会.午後8時過ぎには終わったのでさくっと直帰.午後10時前につくば帰還.今日は午前7時半から14時間ほど飛び回った.

◆明日は一週間ぶりの農環研出勤日だ.

◆本日の総歩数=13627歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=95.5kg(+1.5kg)/30.6%(+0.8%)


11 december 2013(水)※氷点下の朝は硫黄泉三昧

◆午前3時半起床.昨夜は硫黄泉の湯疲れでいつの間にか寝入ってしまったようだ.旅館はまだ真夜中の静寂の中.脇を流れる霧島川のせせらぎが響く.ごそごそ起きだして活動開始.

◆[蒐書日誌]温泉読書本 —— アリソン・フーヴァー・バートレット[築地誠子訳]『本を愛しすぎた男:本泥棒と古書店探偵と愛書狂』(2013年11月25日刊行,原書房,東京,x+270 pp., ISBN:978-4-562-04969-1 → 版元ページ).主役の古書泥棒さんはかなりヘン.

◆午前6時前に,夜明け前の岩風呂と露天風呂へ.冷たい霧雨が降る露天風呂はさすがに温まらないので,湯屋の岩風呂に引きこもる.適温.一晩中,源泉の熱湯が湯舟に掛け流されていたはずだが,それでも別府みたいな “ガマン大会” にならないのは,標高のせいかそれとも季節のせいか.源泉ひとりじめの夜明け前.大きな湯屋の仄暗い高天井を見上げながら,旅館の言いつけを守ってぴったり半時間の入湯.あとは朝ごはんまで部屋でごろごろするぜいたくな時間.湯屋の一角にケロリン盥が積み上がっている.温泉になくてはならないもの.

空はしだいに白んできたが,山間なので夜明けはまだまだだろう.今日の空模様はどうなるのだろう.内湯の木臼風呂アゲイン.こちらは源泉が冷めないまま小さな湯舟に注がれていたのでかなり熱かった.夜は暗くてぜんぜんわからなかったが,明るくなってから見ると,湯舟に泥のように沈殿した湯の花は純白色というよりはレモン色に近いクリーム色だった.たった一晩でさらに新たな白泥が付着している.

朝食前に温泉周辺を散歩する.氷雨が降り続いている.足元の水たまりが凍りついていたので,氷点下まで冷え込んでいるのだろう.霧島はいま霧氷の季節.昨日,韓国岳に登ったという同宿の人たちは山頂近くでは雪がちらついていたとのこと.前線が通過して寒気が入り込んでいるのか.朝食は五穀米中心の和食だった.

午前9時のチェックアウトまでまだ時間があるので,またまた♨三昧エンドレス.午前8時を過ぎてやっと雨はやみ,雲間からときおり差し込む朝日がまぶしい.午前9時のチェックアウト前にもう一風呂.♨♨♨.あらら,また雨がざあざあ降ってきた.くるくる変わる空模様.

◆薩摩からつくばへの帰路 —— 旅館のご主人に最寄りのバス停まで車で送ってもらう.標高千メートルの新湯温泉から山道をうねうね下って〈霧島いわさきホテル〉着.いわさきホテルの起点.バス停にて霧島神宮駅行き路線バスを待つ.氷雨ときどき晴れ間.山の上は雪が降っているとらしい.吹きさらしのバス停は寒すぎる.9:55 バスに乗る.バスは山道をさらにうねうねと下る.途中の霧島温泉郷は別府鉄輪並みに盛大な噴気を上げていた.昨年泊まった〈霧島湯之谷山荘〉下のバス停を過ぎ,霧島神宮を経由して,10:30に霧島神宮駅着.山はしぐれても平地は青空.ただし,風が冷たすぎてどうしようもない.

10:49発の特急〈きりしま〉に乗ったとたん雨が降りだした.南九州は晴れたり曇ったり降ったりするへんな空模様.南宮崎まではただ座っているだけ.正午過ぎ,宮崎空港.よく晴れてはいるが,風がとても冷たい.トアルコトラジャで珈琲充ちう.保安検査場を無事に通過し(硫黄臭がするからといって引っかからなかった),搭乗ゲート前にて一休みする午後2時前.

午後4時過ぎ,羽田空港.天気はよくても吹きつける風が冷たい.つくばセンター行きバス乗車.午後6時前に帰還.とても長い帰路だった.

◆このズシンと響く疲労感は,連日の巡業のせいか,それとも湯疲れのせいか.今夜は宮崎土産のおび天とともに〈日置桜〉鍛造にごりのお燗をば.そして,今夜はすぐ寝るに限る.

◆本日の総歩数=4556歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=未測定/未測定


10 december 2013(火)※宮崎巡業から新湯温泉へ

◆午前4時半起床.今日の質疑の準備として,いきなりRのスクリプトを書き始める夜明け前.午前6時半,朝食バイキング.宮崎の朝は「冷や汁」から始まる.具だくさんの冷たい味噌汁をご飯の上にざばあっとかけて.前夜から降り続いていた雨はすでに上がり,今日は冬晴れに回復.朝日がさんさん.今朝の宮崎の最低気温は9.6度もあった.

◆[欹耳袋]日本経済新聞「日本酒でも偽装 醸造アルコールとは何か 」(2013年12月10日)※これは単なる「偽装」記事じゃないね.日本酒を海外に輸出するときに,アルコール添加によって関税率が変わるという話.

◆佐土原統計高座の最終日 —— ホテルをチェックアウトし,佐土原に向かう.本日は高座の最終日.午前9時すぎ,佐土原着.今日は雨上がりの晴天からり.午前9時半から統計研修の最終日がスタートする.まずは,変量間共変動の視覚化と定量化.共分散と相関係数のRデモ.Windows ユーザーが Mac OS X ファイルのヘッダー「._***」ファイルに軒並みよろめく現象.本体ファイルはそのうしろにあるって.その後,多変量解析の講義が終わって正午前.楽しいランチタイム.今日も元気に水稲食味試験〜.場内を一周り散歩してから午後の講義に向かう.リサンプリング統計学の解説と実習.その後,質疑討論の時間.個体数データのポアソン回帰をRコマンダーで実行する.その他,さまざまな質問への回答.午後3時半,今回の統計研修の全スケジュールを消化し,これにて佐土原のお座敷は大団円.また来年もこの時期に来ることになるだろう.

◆霧島・新湯温泉で♨ぶくぶく —— 午後4時前,JR佐土原駅.先週と同じく典型的なローカル駅舎で宮崎空港行きの特急〈にちりん〉を待つ.日が翳り風がしだいに冷たくなってきた.宮崎駅にて,鹿児島中央行き特急〈きりしま〉に乗り換え.先週も同じ列車に乗った.先週に引き続き,鹿児島への旅がまた始まる.午後5時,都城駅通過.大きくて真っ赤な夕陽が山に沈んでいく.西都城駅通過.夕暮れ.先週とまったく同じ風景が車窓に広がる.

◆午後5時半過ぎ,霧島神宮駅で下車.駅前に一台だけ停まっていたタクシーを拾う.霧島神宮を越え,夕闇に浮かぶ高千穂の峰を見上げ,新燃岳への山道をさらにたどる.途中,鹿が道を横切り,狸が路傍にうずくまるワイルドな光景を横目にすること半時間.やっと新湯温泉〈霧島新燃荘〉にたどり着いた.携帯電話も E-mobile も通じない山の中.今夜の宿はここ.泊まり客は関西からの山登り四人組のほかはまったくなし.昨日までの日常からは完全に隔絶される.

◆ここ〈霧島新燃荘〉は民営国民宿舎の指定を受けている.タクシーの運転手の話では韓国岳や新燃岳への登山客がよく利用するらしい.先年の新燃岳の噴火でここはしばらく閉鎖されていたが,昨年やっと再開できたとのこと.宿の利用案内には「新燃岳噴火の際の避難ルートと注意事項」が詳細に記されていた.

◆旅館の玄関の外,湯屋の仄暗い電灯に照らされて石段を降りると,巨大な露天風呂が広がる.〈霧島新燃荘〉の紹介文によく写真が載っているこの「混浴露天風呂」は確かに開放感があふれる.湯の色は目にも鮮やかな白色.標高千メートル近いロケーションなので,夜はぐんと冷え込む.源泉が滝湯のように絶えず注ぎ込まれていても,この季節の露天風呂は湯温がかなり低め.月と星空はクリアに見えるがからだはなかなか温まらない.

むしろ露天風呂に隣接する湯屋の中の「岩風呂」の方が湯温が高くて心地よく感じた.また,旅館の中には内湯として大木を丸くくりぬいた「家族風呂」がある.これはなかなかすばらしい.ちょうど人ひとりが入れるサイズの湯舟に源泉がこんこんと注ぎ込まれている.源泉掛け流しどころか,究極の源泉独り占めだ.湯温調節のため加水されて,ちょうどいい湯加減になっている.

◆新湯温泉は単純硫黄泉.泉質は pH 5.9 なので,先週行った栗野岳温泉〈南洲館〉のような強酸性のぴりぴり感はまったくない.その代わり,真っ白い硫黄の湯の花の量が尋常ではなく,源泉注ぎ口近くの湯舟や壁に柔らかい白泥のようにこびりついている.指でいくらでもこそげ取れる.湯の色が乳白色なのはこのせいだろう.皮膚病に対してとくに効き目があると効能が書かれていた.かつて亜硫酸ガスの死亡事故があったとのことで,入湯は30分以内に制限されている.もちろん真夜中は入湯禁止.

◆夕食は食堂のテーブル席で.温かい料理が次々に運ばれてくる.鱒のあらいと塩焼き,黒豚の軟骨煮込みは地元の焼酎〈伊佐錦〉にこの上なく合う.野菜の素揚げと茶碗蒸し.最後に土鍋で「新燃鍋」を煮込む.地元の黒味噌をベースにした薩摩黒豚の鍋物.これは絶品.汁の色は八丁味噌のような赤黒さだが,味はけっしてくどくない.豆腐も白菜も椎茸もえのき茸もみごとに真っ黒に染まるが,ご飯のおかずにぴったり.最後に鍋に残った汁も白飯にかけて食べ尽くしてしまった.

◆温泉と夕食と読書という黄金の三点セット.寝床に入れば聞こえるのは旅館の横を流れる渓流の音のみ.宮崎巡業の最後を飾る霧島の夜は静かに更けていく.

◆本日の総歩数=4229歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=未測定/未測定


9 december 2013(月)※佐土原お座敷は雨のなか

◆午前5時前起床.もちろん真っ暗.午前6時半,ホテルの朝食バイキング.宮崎に来れば「チキン南蛮」と「鶏炭火焼き」と「冷や汁」はどこにでもある.午前8時,青空に雲が点々と浮かんでいる.今朝の最低気温は4.3度.氷点下3.4度まで下がったつくばに比べれば格段に暖かい.さすが南国.あと一時間ほどしたら,佐土原の農業試験場に出撃する.

◆[欹耳袋]warblerの日記「ある大学で起きた研究不正についての実例」(2013年12月7日)

◆佐土原統計高座(後半戦)の初日 —— 午前9時,宮崎県総合農業試験場着.すでに受講生が集まり始めている.講義開始は9:30から.雲がだんだん広がってきた.午前9時半スタート.前回の基礎編の復習から始まり,二要因乱塊法と要因間の交互作用について.午前中は多要因乱塊法の解説とRコマンダー実習.昼休み.今日も元気に水稲食味試験 mgmg.水稲食味試験を終え調査票記入.食味検査室では昼時になると一升釜が五つならび,炊きたての新米が湯気を立てている.それを一種類ずつてんこ盛り(げふ).聞くところでは,農試の試験調査員のみなさんはワタクシの倍くらい毎日食べているとのこと.曇り空の午後1時から講義再開.線形モデルと一般化線形モデル.モデルまたモデルで午後4時前に本日の講義が終わった.外はいつの間にか雨になっていた.

◆[欹耳袋]日本経済新聞「おいしすぎて……「うどん県」香川の悩み 」(2013年12月9日)※n=5〜10程度のサンプル数で糖尿病率をあれこれ言うのはヤバいんでないかい?/中日新聞「雇用環境の変化 奨学金返済で窮地に」(2013年12月1日)※「「奨学金は金融事業になっている」と現状を憂慮」

◆いつまでも あると思うな 宮崎牛 —— 午後5時前にホテル帰還.本降りの雨になった.午後6時,一番街を通りぬけたところにある〈グリル爛漫〉へ.景気づけに宮崎牛を食べるのだと意気込んで一番街のアーケードを駆け抜ける.「ステーキの美味しい店」.ショーウィンドーを見れば,いかにもうまそうな肉料理の数々が陳列されている.これはもう宮崎牛を食いつくすしかない.

ところが,なんということか,本日は宮崎牛は入荷していないという!(がーん) 宮崎牛ってそんなに品薄だったのか,地頭鶏に追っかけられていなくなってしまったのか.選択の余地なく,この店の看板料理である「チキン南蛮」を注文したのだった.もちろん,ここのチキン南蛮は〈おぐら本店〉と並ぶ名品でとてもうまかったのだが,肩透かし感はいかんともしがたい.冷たい雨が降り続く宮崎一番街.牛を喰いに行ったはずが代わりに鶏を食べて帰ることになって茫然自失.とぼとぼホテル帰還.宮崎牛に逃げられ,鶏に取り囲まれる雨夜になってしまった.

—— 雨降る夜に┣┣" 降り積む.今夜はあまりに長すぎる.もう寝るかー.

◆明日は佐土原高座の最終日.終わったら験直しに♨に行くしかない.

◆本日の総歩数=7474歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=未測定/未測定


8 december 2013(日)※ふたたび宮崎へ飛ぶ日曜

◆午前6時半起床.気温は氷点下1.1度まで下がっている.朝焼けの名残と東雲を染める朝日.清らかな昨夜のタタリでうう…….

◆[自然を名づける]本日の打音:あさみ れい「『自然を名づける』(キャロル・キサク・ヨーン著、NTT出版)を読む。 」(2013年12月8日)※どうもありがとうございます〜

◆[欹耳袋]人間行動進化学会広島大会のハッシュタグ #hbesj2013

◆再び宮崎へ飛ぶ —— 午前10時,つくば駅.冬晴れ北風.今日も飛ぶのだ.走るのだ.午前11時半,浜松町にて東京モノレール空港快速に乗り換え.都内は曇りところどころ晴れ.正午前,羽田空港第二ターミナル着.出発ロビーの端っこで〈Fortnum & Mason〉のアールグレイアイスティーを飲むひととき.宮崎フライトが機体の準備が遅れているらしく半時間ほどズレこむとのアナウンスあり.けっきょく40分遅れで離陸となった.

◆午後4時に宮崎空港着.気温は13.9度.穏やかな夕方はもうすぐ.JR宮崎空港駅から市中心部へ移動.車内がアスリートらしき大勢の乗客で混んでいたのは,この日開催された〈青島太平洋マラソン2013〉のせいみたい.JR宮崎駅ヨコのJR九州ホテル宮崎にチェックイン.駅が見下ろせる高層ロケーション.ビジネスホテルなのにバス・トイレのユニットではなくセパレート.お風呂が広くてゆったり.そうこうするうちに夕暮れ.

◆夜は刀根鶏を食べに西銀座通りの〈鶏みょうが屋〉へ.一年ぶり.まずは刀根鶏セセリの炭火焼きから.〈豊盃〉を出している青森・三浦酒造の「ん」生酒おりがらみとともに.佐土原茄子の焼きナスと原木椎茸の炭火焼きには佐賀〈鍋島〉の特別純米を.この日は軽くすませてホテルへ帰還.健康ナイト.

◆[欹耳袋]宮崎・食べ呑む情報いろいろ(2013年12月8日更新):

  • ぐんけい〉※宮崎地頭鶏を食べるならこの店.西銀座通りの奥深くにある本店〈ぐんけい隠蔵〉では目の前で炭火焼きの炎が踊る.JR宮崎駅直近にも〈ぐんけい宮崎駅前店きてん〉あり.焼酎いろいろ.
  • 鶏みょうが屋〉※宮崎地頭鶏ではなく,あえて「とねどり(刀根鶏)」を出す.日本酒のラインナップが比類なくすばらしい.西銀座通りの鶴原ビル3Fにある.かなり強くおすすめしたい.
  • おぐら本店〉※山形屋デパートの裏路地にある洋食屋.宮崎名物「チキン南蛮」発祥の店で,客の大半が迷わず注文する.かなりボリュームがある.
  • 一心鮨光洋〉※宮崎で鮨を食べたいならこの店.値段は高いが,出される寿司に合う日本酒やワインのおすすめが絶品.駅から歩くとちょっと遠いかも.
  • グリル爛漫〉※繁華街中心の中央通りウェストビル1階の老舗洋食屋.鉄板ステーキよし,チキン南蛮よし.
  • Fooding Bar Vendange〉※県庁近くのビストロ.宮崎牛ステーキがとてもうまい.ワインもいろいろ.
  • Wine Bar Eki〉※隠れ家的ワインバー.いろいろなワインがグラスで楽しめる.
  • 宮崎風土 あっぱれ食堂〉※宮崎郷土料理のオンパレード.

—— 備忘メモをまとめた.こういう情報は実地に体験してから記さないと.

◆明日と明後日の二日間は,先週の基礎編に引き続き,佐土原の宮崎県総合農業試験場にて数理統計研修(応用編).

◆本日の総歩数=9776歩. 朝◯|昼◯|夜×. 計測値(前回比)=94.0kg(0.0kg)/ 29.8%(−0.1%)


7 december 2013(土)※ダブル補講と同窓会ナイト

◆午前4時半起床.気温3.3度.今日も雲が広がる夜明け前.

◆[欹耳袋]「ツワネ原則(国家安全保障と情報への権利に関する国際原則)」– Open Society Foundations /日本弁護士連合会未定訳 [pdf]

◆補講への出撃 —— 午前10時,つくば駅.今日の午後は玉川大学での補講が4時間,その後,八重洲に移動して清らかな都心ナイトをすごす.午前11時過ぎ,新宿駅.都内は晴天.ゆるり小田急快速急行.正午,玉川学園前駅着.駅ビルの〈ドトール〉で一休み.あと一時間ほど余裕あり.ただし,玉川大学の教室がいつもと違うので要注意.教室を探しに大学キャンパスに早めに出撃しないといけない.玉川学園キャンパス.正門付近の大工事はまだ続いている.この工事が終わるとかなり大きく景観が変わりそうな気配.今日は付属高校の説明会が開催されているとのことで,親子連れがキャンパスのそこかしこに.

◆今日の補講は,テストデータを使って,MEGA による分子系統推定の実習が中心.最節約法あるいは最尤法のデフォルト探索オプションはまったく使えないことがよくわかった.午後5時前,玉川大学での4時間の補講を終えた.

◆清らかなる八重洲ナイト —— 午後6時過ぎに八重洲に到着.今日は駒場で同じクラスだった同級生たちとの30年ぶりの同窓会.イングリッシュパブ〈HUB八重洲店〉にて.理IIと理IIIの合同クラスだったので,理系とはいえその後の人生行路はいろいろ.高校の時分からぶいぶいいわせて,東大入学後は革マル派で三里塚闘争に走り回っていたやつが,いまや開業医になっているとか.これだけ年月が経てば名前はわかっても顔が見分けられないとか,その逆とか,あるいは顔も名前も結びつかないとか,記憶の揮発はもうどうしようもない.懸命に昔の記憶をたどりつつ.それでもみんないい年を取ってきたようで,たまにこういう機会があるのもいいものだと思う.

昨夜の同窓会参加者のほとんどは研究者業界とは無縁で,大学や研究機関に職を得ているのは少数派だった.理学部や農学部に進学しても民間に就職することが多かったのは確か.当時は大学院に進むのは物好きの極みだったのかもしれない.世の中の景気がよかったからかも.卒業後の人生行路の多様性は人さまざま.その唯一性は一般論や理想論ではつかみきれない.同窓会は人生の(だれもが選べるわけではない)選択肢があることを知るいい機会.思いもよらない生き方がある.自分が生きなかった道を他人が実際に生きてきたというリアリティー.

—— ぐだぐだに呑んで午前さまとあいなった.当然のごとく,うう…….

◆本日の総歩数=8108歩. 朝◯|昼−|夜×. 計測値(前回比)=94.0kg(−0.5kg)/ 29.9%(−0.1%)


6 december 2013(金)※一週間ぶりの初師走観音台

◆午前5時前起床.雲が広がる夜明け前.午前6時の気温は2.3度.今朝はどんより曇り空.午前8時の気温は3.9度.一週間ぶりの農環研.BGM は〈フーガの技法〉.グスタフ・レオンハルト(チェンバロ).

◆午前の┣┣" 撃ち —— 研究室を一週間放置していたので┣┣" が積み上がっているのではと危惧していたのだが,幸い穏健な┣┣" がちらほら見えるだけで,兇悪大物┣┣" は隠れたままだった./学会の役員選挙の投票.ある学会は締切に間に合ったが,別の学会は今日が締切でアウトなので投票用紙を破棄./来週の講義ハンドアウト準備完了.続いて,土曜の玉川大学補講のしたくをしないと.

◆[欹耳袋]ある疑心暗鬼の降臨 —— 夜明け前の闇.MAFFIN 内から Wikkipedia と Twitter が利用できなくなったという情報が届いた.一週間ぶりの農環研実在日なので,出勤後,MAFFIN ネットワークの現状をじっと見ると,確かに HootSuite での送受信は大丈夫だが,ツイッターのサイトにはつながらない.また,夜フクロウにも接続できない.Wikipedia も接続不能.こりゃタイヘン.特定秘密保護法に先立っていきなり “MAFFIN鎖国” かとあわてる.所内にいるときも MAFFIN ネットワークはできるだけ使わないようにしよう.これでは仕事ができる環境ではない.

それにしても,農環研ツイッターアカウントから発信されたツイートはいったいどういう扱いなんだろーか(フシギだ……).再度確認しても所内LANからはやはりツイッターはつながらず,Wikipedia もダメ.MAFFIN じゃないとしたら所内LANのせいか.いずれにしてもやはり切断するのが正解.「ガルーン見ろ」とか「会計システム使え」と言われたときだけ所内LANにちょこちょこつなげばいい.いきなりつながらないとか,予期せぬ「MAFFIN警告オレンジページ」がいきなり飛び出すのは精神衛生上よろしくないので,代替手段をそれぞれ用意しないと仕事ががが.

—— もうちょい広範囲からの情報がほしいなあと思っていたら,けっきょく MAFFIN ネットワークの不具合が原因だったということで,やっと疑心暗鬼は退散した.

◆正午の気温14.0度.風もなく暖かいお昼休みは一週間ぶりの農林団地周辺徘徊.イチョウもフウノキもほぼ散り果て冬景色.歩き読み:山田篤美『真珠の世界史:富と野望の五千年』(2013年8月25日刊行,中央公論新社[中公新書・2229],東京,4 color plates + x +309 pp., ISBN:978-4-12-102229-5 → 目次版元ページ)読了.著者が造語した “バイオジェミネーション(生物的宝石形成)” をコントロールしようとする真珠興亡史の良書.宝石と流行ファッションとは不即不離の関係にあった,

◆[欹耳袋]Togetter -「生命科学研究を考えるガチ議論@第36回日本分子生物学会

◆午後の┣┣" 撃ち —— 大┣┣" を招き入れる.期限は二週間.オンライン査読は無慈悲である./来年の熊本農試からの出張依頼が届いていた.押印して放流すればすむ簡単なお仕事./┣┣" 撃ちカレンダーはすでに「2014年」が埋まり始めている.

◆[蒐書日誌]新刊:クリストファー・アレグザンダー[稲葉武司・押野見邦英訳]『形の合成に関するノート/都市はツリーではない』(2013年12月刊行,鹿島出版会[SD選書263],東京, ISBN:9784306052635 → 版元ページ)※1978年の旧版は手元にあるんだけど.クリストファー アレグザンダーの “ツリー/セミラティス” に関するこの論考は,かつて『生物系統学』を書くときにとても参考になった.邪悪なる「リゾーム」を焼きつくすために.

◆本日の総歩数=9411歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=94.5kg(−1.0kg)/ 30.0%(−0.5%)


5 december 2013(木)※いつもの定例都内出撃の朝

◆午前5時前起床.朝焼けグラデーション.夜明けがさらに遅くなってきた.午前6時すぎに最低気温0.8度.

◆[欹耳袋]週刊金曜日ブログアーカイブ「特定秘密保護法案 徹底批判(佐藤優×福島みずほ)」(1〜5)(2013年12月4日)

◆定例都内出撃日 —— 午前7時半,つくば駅.晴れ.寒いことは寒いが,風が弱いのでさほど寒くない.午前9時すぎ,新宿駅.都内は晴天,気温は9.2度.北風.午前10時,玉川大学到着.快晴のキャンパスはスーツ姿の学生が目立つ.控室にてメールボックスに巣食っていた┣┣" 数頭を撲滅して,講義室に出撃.今日は最尤法のモデル選択について解説した.

◆[欹耳袋]そろそろ来年度の学会費を支払う季節がやってきた.自分が支払った(けっして安くはない)学会費に見合うだけ,学会という「場」を利己的にエンジョイできるかどうか.大学院生以降の数年間は “ホーム” でも “アウェイ” でも関係なく,いろいろな学会や研究会に参加することは確かに意義がある.しかし,世代が上がるとともにいろんな役職が降ってきて「学会雑務」に費やされる時間とエネルギーは無視できなくなるので立ち止まって再考する必要あり.

ワタクシのように独法研究所に在籍していると,学会雑務は「本務」とはみなされなず,出張扱いにならない.大学でも似たようなものだろう.でも,誰かが学会の仕事をしないと動かないのも事実.そのボランティアを引き受ける覚悟は参加学会の絞り込みを伴う.自分が演じられる “舞台” がつくれる学会や研究会なら奉仕作業をしても報われるものはきっとあるだろう.その一方で,必要に迫られてとか役職上しかたなくという場合はそれなりにということになる.使える時間とリソースの分配は自分で決定するしかない.

昔は楽しかったけど,今はそうでもないという学会は少なくないかもしれない.当人の関心が変わったということもあるだろうし,その学会が研究者コミュニティとして変質したという場合もあるだろう.沈没しつつある学会とどのように付き合っていくか.

◆午後1時,玉川学園前駅.真っ青な空を飛行機雲が一直線に切り裂いていく.日差しぽかぽか.正午の気温は13.8度.池ノ上にて途中下車して珈琲充.そして┣┣" は(ほとんど)いなくなった.残るはターミネーター┣┣" のみ.午後3時半,駒場キャンパス着.初冬の静けさ.今日の講義は一般化線形モデル(GLM)の解説.先週のハンドアウトを使う.今週配る分は来週まわしになるかも.

◆[欹耳袋]Ritemail | The San Diego and Arizona Eastern Railway The Impossible Railroad | 4 December2013※映画〈カサンドラ・クロス〉みたい./GrapeCity「 Excel方眼紙が自社開発アプリに生まれ変わる!?Forguncy(フォーガンシー)特設サイトOPEN」※「この日本の独自の文化に対しては賛否両論あるものの」– すばらしい言い逃れ!

◆午後8時前につくば帰還.明日は一週間ぶりの観音台出勤日.

◆本日の総歩数=12336歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=95.5kg(+1.5kg)/ 30.5%(+0.1%)


4 december 2013(水)※八幡地獄で蒸される夜明け

◆午前4時半起床.内湯へ直行なう.山の上なので冷え込みがきびしい.外が明るくなってきたので「竹の湯」へ.〈南洲館〉の看板はやはり歴史のある「竹の湯」だ.しかし,〈南洲館〉でもっともアヤシいのは「蒸し風呂」かもしれない.外見はなんてことないんだけど,中に入ると「頭上注意」と書かれている.てっきりこの中に入ればいいのかと引き戸を開けたら,煮えたぎる源泉と硫黄ガスで即死しそうになった.こちらは蒸気の供給部屋だった.入ってたらイチコロだったにちがいない.蒸し風呂の入り口は隣の方だった.電灯も何もない暗黒の洞窟みたいだった.アヤシさ満点.内側のドアノブが腐ってもげていた.扉を閉めたらひょっとして閉じ込められてやはりイチコロになったのかも.

◆〈南洲館〉の異界は温泉だけではない.宿の裏手にある「八幡地獄」.このエリア一帯を覆い尽くすように噴気が吹き上がるさまは見もの.足元を見れば,泥湯がいたるところで沸騰している.サンダルを履いていても熱さが伝わってくる.路傍で泥湯が沸騰し,転がる巨岩は噴気で黄色に染まり,盛大に硫黄ガスが立ち上っていた.後生掛温泉あたりの荒涼とした景色を連想させる.すごいなあすごいなあと,どんどん入り込んで行ったらそのうち硫黄ガスで右も左もわからなくなってしまった.噴気の向こうに見えてきた標識には「危険・立入禁止/警告・現在,八幡地獄は見学できません」と.わわ.生きて帰らねばならぬ〜

◆旅館をチェックアウト.栗野駅へ.駅前の丸池湧水地から朝霧が立っている.さすが湧水町だけのことはある.駅のショップに飾ってあった「焼酎呑んだくれ猫」.目つきの兇悪さは “猫” から “虎” へと進化しつつある証拠.ワンマン運転の一両各停がごとんごとんやってきた.約1時間で隼人駅.特急〈きりしま〉に乗り換える.何だか硫黄臭が漂っているんですけど.正午過ぎ,宮崎空港着.おだやかな日向の昼下り.搭乗までにはまだ時間がありまくり.宮崎のおみやげは〈おび天〉でキマリ! 午後1時半離陸.午後4時前,羽田空港着.八幡地獄から生還した.つくばセンター行きバスで帰る途中,雨がときどき降ってきたが,つくばは曇りだった.

◆[蒐書日誌]日本秘湯を守る会(監修)『日本の秘湯(第19版)』(2012年3月30日刊行,,朝日旅行,東京,226 pp.).ずいぶんと加入旅館が増えたような.

◆明日は定例都内出撃日.

◆本日の総歩数=4896歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=未測定/未測定


3 december 2013(火)※仕事が終わって♨ぶくぶく

◆午前5時半起床.明け方は5度台まで冷え込む.今日も元気よく佐土原に出撃.宮崎に来るとどこにでもソテツの街路樹がある.朝から真っ青な空が広がる宮崎農試.今日は午前9時半から講義開始.

◆[欹耳袋]本への「書き込み」について —— 一橋大学大学院国際企業戦略研究科図書室「本に書き込みしないでください」/筑波大学附属図書館「本に書き込みすることに関する資料集」(2013年8月9日).これらのドキュメントはいずれもライブラリアン側からの意見表明.資料を「保存」する立場からはもっともなのだが,私蔵本には適用されない.書き込みしたければ自分で本を買えということ.書き込み本は極度にパーソナライズされた物件なので,他者が手に取ることを前提としていない.だから,たまたま書き込み本を読むときは要注意.距離感を保ちつつ深入りするのは禁物.

以前読んだ:古沢和宏『痕跡本のすすめ』(2012年2月17日刊行,太田出版,東京,160 pp., 本体価格1,300円,ISBN:978-4-7783-1297-8 → 書評版元ページ古書五つ葉文庫)は,書き込み本を含む「痕跡本」との付き合い方を学ぶ上で有用だった.

ワタクシは「書き込む=読み込む」派なので,私蔵本はどれもこれもマルジナリアが花開くことになる.

◆佐土原統計高座の二日目 —— 午前中はパラメトリック統計学の続きで,正規分布を中心にR実習をまじえて解説.朝イチの確率分布はいささか辛かったかも.ときどきRやRコマンダーの実習をはさむ.大分での統計研修と同じく,今回の宮崎でもRスタジオは使わないつもり.インストールのときにトラブルことがあり,また研修内容の範囲では使わなくてもよいケースがほとんどだから.今日のお昼ごはんもまた元気に水稲食味試験だ.午後1時からの研修は実験計画法について.完全無作為化法から乱塊法まで解説した.その後の質疑を含めて午後3時半に基礎編の統計研修は終了.受講生諸氏,おつかれさま.続く応用編は来週の月曜と火曜に予定されている.

◆佐土原から栗野への鉄路 —— 午後4時前にJR佐土原駅まで送ってもらう.ほどなく特急〈にちりん〉がやってきた.長旅の始まり.宮崎であわただしく特急〈きりしま〉に乗り換える.都城あたりで暗くなり始め,夕陽が霧島の山々を染めている.霧島神宮駅に着く頃には日が暮れて夕闇に包まれる.車窓風景の楽しみがないので,淡々と運ばれていくのみ.隼人駅にて下車.今度は肥薩線(吉都線経由都城行き)の鈍行に乗り換える.たった一両だけのワンマン運転.こういうローカル線はひさしぶりの体験だ.肥薩線そのものも初体験.夜の闇の中をごとごと進むこと一時間弱で栗野駅に到着.

栗野の駅前にたった一台だけ停まっていたタクシーで栗野岳の山道をうねうね登っていく.右を見ても左を向いても巨大な杉の鬱蒼とした林が続くのみ.約20分で目的地の栗野岳温泉〈南洲館〉にたどり着いた.日帰り宴会の会場に隣接する部屋で夕食をすませてから温泉へ直行.別棟の〈桜湯〉は単純硫黄泉.マイルドな湯質.続いて,歴史のある〈竹の湯〉へ.石壁上のパイプから源泉がどぼどぼ浴槽に注ぎ込まれている.明礬緑礬泉のこの温泉はpH2.2という猛烈な酸性.別府・明礬温泉〈山田屋旅館〉の緑礬泉を思わせる力強さ.別府ほど “熱湯” ではないのでゆっくり長湯できる.酸性泉は肌がぴりぴりしてくる.しかも,沈殿した泥でぬるぬるするワイルドさが印象に残る.最後に館内の内湯.こちらもかけながしの酸性泉.夜中でも入れる.

—— 温泉のはしごをしているうちに睡魔が降臨.今回の地方巡業が一段落したので一安心.

◆本日の総歩数=3664歩. 朝◯|昼◯|夜△. 計測値(前回比)=未測定/未測定


2 december 2013(月)※佐土原高座と水稲食味試験

◆午前4時半起床.つくばは氷点下の朝でも,宮崎は5.5度の暖かさ.しかし,外はまだ真っ暗.さすが西にズレているだけのことはある.今日から佐土原の農試で統計高座.すでに朝食をすませ,午前8時に迎車が来るまで一休み.午前8時,そろそろ佐土原へ出撃する.青空だ青空だ.よしよし.

◆[蒐書日誌]幾何学的形態測定学 “黒本” のオンライン公開 —— Leslie Marcus, Elisa Bello and Antonio Valdecasas (eds.)『Contributions to Morphometrics』(1993年刊行, Monografias Museo Nacional de Ciencias Naturales, Consejo Superior de Investigaciones Cientificas, Madrid, 264pp.).Internet Archive から pdf として公開された.

◆[欹耳袋]読売新聞「NYで脱線、4人死亡63人負傷…速度超過か」(2013年12月2日)※メトロノース線がブロンクス地区で脱線事故って,ニューヨーク植物園の近くかな.NYTimes | Focus Turns to Investigation in Fatal Bronx Train Crash | 2 December 2013.

◆佐土原統計高座の初日 —— 午前8時半すぎ,佐土原.午前9時から宮崎県総合農業試験場主催の数理統計研修(基礎編)で二日間のお座敷がスタートする.まずは,試験場長室にてご挨拶.今回の研修受講生は58名.県庁の農林振興局から農試関係諸機関にわたる.9:15から研修の「開会式」がある.場長の挨拶から始まるらしい.

開会セレモニーのあとは高座.とりあえず,いつもの統計学概論を終えて休憩.このあとRのインストール作業という難関に立ち向かう.いったいどれだけの “不幸” が発生するだろうか.Rのインストール作業開始.午前のRインストールは不幸な人がほとんどまったく出現せず,実にスムーズに作業が終わってしまった.この分だとR実習はトラブルなく進めそうな気配.

お昼休み,宮崎農試のお昼ごはんは水稲新品種の食味試験を兼ねている.研究員は何種類ものごはんを大量に食べるのが仕事.午後1時,講義室リターン.午後1時から講義再開.Excel からのデータインポートで不幸な人たちが続出.RODBC ではなくクリップボード経由のインポートで全員が幸せになれた.ある受講生から「コマンドは正しいはずなのにエラーになるんですけど」と.ワタクシ:「すぐ ATOK をオフして半角で入力し直してください」.受講生:「あ,できた!」(◞‸◟ ) 受講生の OS 状況: Windows XP が数名,Windows Vista が2名,Windows 8 が1名,それ以外はすべて Windows 7.午後4時前に研修終了.最後は確率分布がらみの噺で死亡率が高かったかも〜.

◆午後5時前にホテル帰還.今日は鶏はやめにして,駅南の〈一心鮨光洋〉へ.宮崎でお寿司といえばこの店らしい.カウンターに案内される.まずは,琥珀ヱビスとともに餅銀杏とむかごの素揚げから.〈而今〉の特別純米にごりとともに,金目鯛の松前あぶりのにぎり.続いて,富山〈羽根木〉純吟ひやおろしが金ふぐとわけぎのぬたを連れてきた.グラスはオールドバカラ.鯛・アラ・鯵の三点盛りには〈新政〉のラベルなし.あこや貝の刺身.〈竹鶴〉きもとの燗とともにからすみが美味すぎてどうしようもない.川南のさわら西京焼きとジュラの赤ワイン.宮城〈伯楽星〉特撰純米吟醸・雄町.あいぶりのにぎり.こはだのにぎり.フリウリの無濾過白ワインとともに.最後は玉子で.

◆うう…….明日も仕事ががが.

◆本日の総歩数=8889歩. 朝◯|昼◯|夜×. 計測値(前回比)=未測定/未測定


1 december 2013(日)※師走九州巡業で宮崎に飛ぶ

◆午前5時起床.気温は氷点下1.4度.ぶるぶる.月始めのお仕事であるメーリングリスト月例アナウンス送信完了.師走になってしまったのであちこち走らないと.明日の月曜から佐土原の宮崎県農業試験場にて統計研修を二日間担当する.別府から帰ってきたばかりで,まだ明礬温泉の臭いが抜けないうちに,今度は宮崎だ.

◆[欹耳袋]あるメーリングリストの終焉 —— 科学史メーリングリスト(kagakusi)が今年いっぱいで閉鎖されるとのこと.メーリングリストという初期のネット・コミュニティがどのような終焉を迎えるのかはつねづね気になっている.かつてはメーリングリスト “ネット” コミュニティの主要なひとつで,議論を目的とする投稿も頻繁だった.しかし,代替コミュニティあるいは相互通信ツールがいくつもできた現在では,多くの選択肢のひとつにすぎない.

複数のメーリングリストを管理運営するワタクシは,「昔の栄光を再び」的な幻想ではなく,むしろ過去に投稿されたログの保管と保全そしてできれば有効利用をどうするかに関心が向きつつある.メーリングリストの投稿ログは歴史的資料のひとつだと考えている.管理下の EVOLVE / BIOMETRY / TAXA については,いまのところは MAFFIN Web での過去ログの保管と全文検索ができるが,それ以外の方策が具体的に思いつかない.

いずれにしても,そろそろ “行く末” について考えておこう.メーリングリスト(のようなもの)を開設するのは簡単.だれか有志が「私がやる」と宣言すればよい.あとはちゃんと離陸できさえすれば10年や20年は飛び続ける.幕引きはケースバイケース.だれでも年を取っていくんだ.

◆師走宮崎高座(前半戦)への旅立ち —— 午前10時前,つくば駅.きりりと冬晴れ.午前9時の気温は6.8度.午前11時,浜松町にて東京モノレールに乗り換える.都内はいい天気.気温10.8度.

羽田空港第二ターミナルは混雑している.保安検査場Dの端っこにある〈Fortnum & Mason〉にてアールグレイを前に優雅な搭乗前のひととき.保安検査場を通過し,搭乗口にて待機.その後,バスで搭乗機まで移動.羽田空港は広い.13:15離陸.

曇り空を突き抜けて宮崎空港に着陸したのは2時間後の15:15だった.宮崎に来たら何はともあれ「完熟マンゴージュース」を注文するのが通過儀礼.空港からはJRで宮崎中心部に移動するが,待ち時間が長すぎる.雲間から日が差し込んできた.地頭鶏の反撃はまだない.

午後5時前,JALシティホテルにチェックイン.宮崎は日中の最高気温が17.0度まで上がったようだが,夕方の今は14度台.とりあえず,もってきた荷物を店開きする.

◆一休みしてから近くで夕食.宮崎といえばしっかり「鶏」を食べるしかない.宮崎中心部の繁華街入り口にある山形屋デパートの裏手の路地をたどると,ありましたありました.宮崎チキン南蛮の有名店〈おぐら本店〉.もちろん,ここのの看板メニュー「チキン南蛮定食」を注文.まわりを見回すと老若男女の別なく,みなさんチキン南蛮を食べまくっている.

やがて運ばれてきた巨大な “山”.チキンが大きすぎて野菜とかナポリタンがお隠れになっている.この甘めのタルタルソースが鍵だったのか.ジューシーでとても美味い.チキン南蛮といえば,つい「甘酢ソース」を連想してしまうのだが,〈おぐら本店〉のはとても濃厚なタルタルソースだった.付け合せのナポリタンがおでんのしらたきのように結ばれていたのがとても新鮮.この店,客の回転の速さがすごい.牛丼屋のように次から次へとチキン南蛮の注文が立て続けに.宮崎,スゴい.

◆[蒐書日誌]またまた【種】の新刊 —— John S. Wilkins and Malte C. Ebach『The Nature of Classification: Relationships and Kinds in the Natural Sciences』(2013年11月刊行,Palgrave Macmillan, Houndmills, ISBN:9780230347922 [hbk] → 版元ページ)※発注完了./関連記事:John S. Wilkins | Evolving Thoughts | Are species theoretical objects? | 27 October 2013.

◆明日からのお座敷を前にして,これ以上の背徳には耽らない理性的なワタクシ.

◆本日の総歩数=9168歩. 朝◯|昼−|夜△. 計測値(前回比)=94.0kg(+0.1kg)/ 30.4%(+0.6%)


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